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特表2023-522038修飾CCRポリペプチド及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】修飾CCRポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230519BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230519BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230519BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20230519BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230519BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20230519BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230519BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230519BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C07K16/30
C12N15/13
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0789
C12N5/0783
C12N5/0786
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562711
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 US2021027648
(87)【国際公開番号】W WO2021211948
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/011,494
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エバンス, ジョン ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、改善されたキメラ共刺激受容体(CCR)、融合タンパク質、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞、及び疾患を治療するためのこれらの組成物の使用を提供する。本開示は、概して、部分的には、改善されたCCRポリペプチド、融合タンパク質、及びそれを使用する方法に関する。特に、本発明は、CAR及び修飾CCRポリペプチドを含む融合ポリペプチド、並びにがんの少なくとも1つの症状の治療、予防、又は改善におけるそれらの使用を提供する。より具体的には、CCRは、修飾ヒンジ領域を含み、CAR/CCR融合ポリペプチドは、低減された抗原非依存性シグナル伝達、例えば、CAR抗原の不在下のシグナル伝達を示す。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合ポリペプチドであって、
a)第1のヒンジ領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)と、
b)ポリペプチド切断シグナルと、
c)キメラ共刺激受容体(CCR)であって、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減するように修飾された第2のヒンジ領域を含む、CCRと、を含む、融合ポリペプチド。
【請求項2】
融合ポリペプチドであって、
a)第1のヒンジ領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)と、
b)ポリペプチド切断シグナルと、
c)別のアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む第2のヒンジ領域を含むキメラ共刺激受容体(CCR)と、を含む、融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記第2のヒンジ領域内の前記1つ以上のシステイン置換が、非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第2のヒンジ領域内の前記1つ以上のシステイン置換が、非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する、請求項2又は3に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記第1のヒンジ領域が修飾されており、任意選択で、前記修飾が、1つ以上のアミノ酸置換又は欠失を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
修飾された前記第1のヒンジ領域が、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む、請求項5に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記修飾された第1のヒンジ領域が、非修飾の第1のヒンジ領域を含むCARと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する、請求項6に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記修飾された第1のヒンジ領域が、非修飾の第1のヒンジ領域を含むCARと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する、請求項6に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域内の前記1つ以上のシステイン残基が、セリン又はアラニンで置換されている、請求項2~8のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
前記第1及び第2のヒンジ領域が、同じタンパク質に由来する、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項11】
前記第1及び第2のヒンジ領域が、異なるタンパク質に由来する、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項12】
前記第2のヒンジ領域が、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ、PD-1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択される、ヒンジ領域、又はその機能的断片を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項13】
前記第1のヒンジ領域が、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ、PD-1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択される、ヒンジ領域、又はその機能的断片を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項14】
前記第2のヒンジ領域が、CD8αヒンジ領域、又はその機能的断片である、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項15】
前記第1のヒンジ領域が、CD8αヒンジ領域、又はその機能的断片である、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項16】
前記第1及び第2のヒンジ領域が、CD8αヒンジ領域又はその機能的断片である、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項17】
前記CD8αヒンジ領域が、配列番号2の27位にアミノ酸置換を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項18】
前記CD8αヒンジ領域が、配列番号2の44位にアミノ酸置換を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項19】
前記CD8αヒンジ領域が、配列番号2の27及び44位にアミノ酸置換を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項20】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項21】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号3に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項22】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項23】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号4に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項24】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号5に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号7に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD4ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項27】
前記第1及び/又は第2のヒンジ領域が、配列番号8に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項28】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号9に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD7ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項29】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号10に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD152ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項30】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号11に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むPD-1ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項31】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号12に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG1ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項32】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号13に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG2ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項33】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号14に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG3ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項34】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号15に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG4ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項35】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号16に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG1ヒンジ/CH2/CH3ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項36】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号17に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG1ヒンジ-CH3-ヒンジ-M1ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項37】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号18に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG4ヒンジ/CH2/CH3ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項38】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号19に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG4ヒンジ/CH2ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項39】
前記第1又は第2のヒンジ領域が、配列番号20に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むPD-1ヒンジ領域、又はその機能的断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項40】
a)前記CARが、第1の抗体又はその抗原特異的結合断片を更に含み、
b)前記CCRが、第2の抗体又はその抗原特異的結合断片を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項41】
前記第1及び/若しくは第2の抗体又はその抗原特異的結合断片が、Fab’断片、F(ab’)断片、二重特異性Fab二量体(Fab2)、三重特異性Fab三量体(Fab3)、Fv、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、bis-scFv、(scFv)、VHH、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、及び単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)、並びにラクダ科抗体(VHH)又はその断片からなる群から選択される、請求項40に記載の融合ポリペプチド。
【請求項42】
前記第1及び/若しくは第2の抗体又はその抗原特異的結合断片が、scFv又はVHHである、請求項41に記載の融合ポリペプチド。
【請求項43】
前記第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片が、同じ標的抗原と結合する、請求項40~42のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項44】
前記第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片が、同じ標的抗原上の異なるエピトープと結合する、請求項40~42のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項45】
前記第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片が、異なる標的抗原と結合する、請求項40~42のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項46】
前記第1の抗体又は抗原特異的結合断片が、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても知られる;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2);黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異性1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する、請求項40~45のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項47】
前記第2の抗体又は抗原特異的結合断片が、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても知られる;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2);黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異性1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する、請求項40~45のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項48】
a)前記第1の抗体又は抗原特異的結合断片が、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合し、
b)前記第2の抗体又は抗原特異的結合断片が、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合する、請求項40~47のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項49】
a)前記第1の抗体又は抗原特異的結合断片が、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、CD79a、CD79b、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、MAGE-A4、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合し、
b)前記第2の抗体又は抗原特異的結合断片が、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、及びTAG72からなる群から選択される標的抗原と結合する、請求項40~48のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項50】
a)前記第1の抗体又は抗原特異的結合断片が、B細胞成熟抗原(BCMA)と結合し、
b)前記第2の抗体又は抗原特異的結合断片が、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、及びTAG72からなる群から選択される標的抗原と結合する、請求項40~49のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項51】
a)前記CARが、第1の膜貫通ドメインを更に含み、
b)前記CCRが、第2の膜貫通ドメインを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項52】
前記第1及び/又は第2の膜貫通ドメインが、T細胞受容体のアルファ鎖又はベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドに由来する、請求項51に記載の融合ポリペプチド。
【請求項53】
前記第1及び/又は第2の膜貫通ドメインが、CD8αに由来する、請求項51に記載の融合ポリペプチド。
【請求項54】
a)前記CARが、第1の細胞内共刺激ドメインを更に含み、
b)前記CCRが、第2の細胞内共刺激ドメインを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項55】
前記第1及び/又は第2の共刺激ドメインが、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子に由来する、請求項54に記載の融合ポリペプチド。
【請求項56】
前記第1及び/又は第2の共刺激ドメインが、CD137(4-1BB)に由来する、請求項54に記載の融合ポリペプチド。
【請求項57】
前記第1及び/又は第2の共刺激ドメインが、CD28に由来する、請求項54に記載の融合ポリペプチド。
【請求項58】
前記CARが、一次シグナル伝達ドメインを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項59】
前記一次シグナル伝達ドメインが、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからなる群から選択されるポリペプチドに由来する、請求項58に記載の融合ポリペプチド。
【請求項60】
前記一次シグナル伝達ドメインが、CD3ζに由来する、請求項58に記載の融合ポリペプチド。
【請求項61】
融合ポリペプチドであって、
a)第1の抗体又は抗原特異的結合断片、第1のヒンジ領域、第1の膜貫通ドメイン、第1の細胞内共刺激ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)と、
b)ポリペプチド切断シグナルと、
c)第2の抗体又は抗原特異的結合断片、第2のヒンジ領域、第2の膜貫通ドメイン、及び第2の細胞内共刺激ドメインを含むキメラ共刺激受容体(CCR)と、を含み、
前記第2のヒンジ領域が、i)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減するか、又はii)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する、1つ以上のシステイン置換又は欠失を含む、融合ポリペプチド。
【請求項62】
融合ポリペプチドであって、
a)BCMAと結合する第1の抗体又は抗原特異的結合断片、CD8αに由来する第1のヒンジ領域、CD8αに由来する第1の膜貫通ドメイン、4-1BBに由来する第1の細胞内共刺激ドメイン、及びCD3ζに由来する一次シグナル伝達ドメインを含むCARと、
b)ポリペプチド切断シグナルと、
c)EGFRと結合する第2の抗体又は抗原特異的結合断片、CD8αに由来する第2のヒンジ領域、CD8αに由来する第2の膜貫通ドメイン、及びCD28に由来する第2の細胞内共刺激ドメインを含むCCRと、を含み、
前記第2のヒンジ領域が、i)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減するか、又はii)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する、1つ以上のシステイン置換又は欠失を含む、融合ポリペプチド。
【請求項63】
前記修飾された第2のヒンジ領域が、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項62に記載の融合ポリペプチド。
【請求項64】
ペプチド切断シグナルが、ウイルス自己切断ポリペプチドである、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項65】
前記ポリペプチド切断シグナルが、ウイルス自己切断2Aポリペプチドである、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項66】
前記ポリペプチド切断シグナルが、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)2A(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)2A(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、及び脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである、先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項67】
先行請求項のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項68】
請求項67に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項69】
前記ベクターが、発現ベクターである、請求項68に記載のベクター。
【請求項70】
前記ベクターが、エピソームベクターである、請求項68又は69に記載のベクター。
【請求項71】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項68~70のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項72】
前記ベクターが、レトロウイルスベクターである、請求項68~71のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項73】
前記ベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項68~72のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項74】
請求項1~66のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを発現する、細胞。
【請求項75】
請求項74に記載のポリヌクレオチド又は請求項52~57のいずれか一項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項76】
前記細胞が、遺伝子操作された宿主細胞である、請求項72又は75に記載の細胞。
【請求項77】
前記細胞が、造血細胞である、請求項74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項78】
前記細胞が、造血幹細胞又は前駆細胞である、請求項74~77のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項79】
前記細胞が、CD34+造血幹細胞又は前駆細胞である、請求項74~78のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項80】
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、請求項74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項81】
前記細胞が、T細胞である、請求項74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項82】
前記細胞が、CD3、CD4、及び/又はCD8細胞である、請求項74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項83】
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、又はヘルパーT細胞である、請求項74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項84】
前記T細胞が、αβ-T細胞である、請求項81~83のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項85】
前記T細胞が、γδ-T細胞である、請求項81~83のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項86】
前記宿主細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項87】
前記ナチュラルキラー細胞が、ナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項86に記載の細胞。
【請求項88】
前記宿主細胞が、マクロファージである、請求項74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項89】
請求項74~88のいずれか一項に記載の細胞及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項90】
がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療する方法であって、治療有効量の請求項89に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項91】
対象においてがんに関連する1つ以上の症状において改善する方法であって、前記がんに関連する少なくとも1つの症状を改善するのに十分な、治療有効量の請求項89に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項92】
改善される前記1つ以上の症状が、脱力、疲労、息切れ、あざができやすい及び出血しやすい、頻発する感染、リンパ節の拡張、腹部膨張又は腹部疼痛、骨又は関節の疼痛、骨折、予期せぬ体重減少、食欲低下、寝汗、持続性の微熱、並びに排尿減少からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記がんが、固形がんである、請求項90~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記がんが、液性がんである、請求項90~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記がんが、血液悪性腫瘍である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記がんが、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項94又は95に記載の方法。
【請求項97】
前記非ホジキンリンパ腫が、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、又は辺縁帯リンパ腫(MZL)である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記非ホジキンリンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記がんが、明白な多発性骨髄腫、くすぶっている多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、及び髄外性形質細胞腫からなる群から選択されるMMである、請求項94~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
請求項1~66のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを発現する細胞集団を生成する方法であって、請求項67に記載のポリヌクレオチド、又は請求項68~73のいずれか一項に記載のベクターを前記細胞集団に導入することを含む、方法。
【請求項101】
前記細胞集団が、造血幹細胞又は前駆細胞を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記細胞集団が、CD34+造血幹細胞又は前駆細胞を含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記細胞集団が、免疫エフェクター細胞を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記細胞集団が、T細胞、NK細胞、及び/又はNKT細胞を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項105】
前記細胞集団が、T細胞を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項106】
CAR及びCCRの両方を発現する細胞におけるT細胞シグナル伝達のCCR共刺激を低減する方法であって、
a)各々がヒンジドメインを有するCAR及びCCRポリペプチドを得ることであって、任意選択で、前記CAR及びCCRが、融合ポリペプチドとして発現される、得ることと、
b)前記CCRヒンジドメイン内の1つ以上のシステイン残基を別の残基に置換し、それによって修飾CCRを産生することと、
c)細胞において前記CAR及び修飾CCRを発現することと、を含む、方法。
【請求項107】
非修飾ヒンジを含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する方法であって、
a)各々がヒンジドメインを有するCAR及びCCRポリペプチドを得ることであって、任意選択で、前記CAR及びCCRが、融合ポリペプチドとして発現される、得ることと、
b)前記CCRヒンジドメイン内の1つ以上のシステイン残基を別の残基に置換し、それによって修飾CCRを産生することと、
c)細胞において前記CAR及び修飾CCRを発現することと、を含む、方法。
【請求項108】
非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達の抗原媒介性刺激の前記ヒンジドメイン内の前記システイン残基置換である、請求項106又は107に記載の方法。
【請求項109】
前記CCRの前記ヒンジドメイン内の前記システイン残基置換が、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下の前記CARとの会合を低減する、請求項106又は107に記載の方法。
【請求項110】
前記CCR及びCARの両方が、修飾ヒンジ領域を含む、請求項106~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記修飾CARヒンジ領域が、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記CARヒンジ領域内で置換された前記1つ以上のシステインが、非修飾ヒンジ領域を含むCARと比較して、前記CARの抗原非依存性シグナル伝達を低減する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記CARヒンジ領域内で置換された前記1つ以上のシステインが、非修飾ヒンジ領域を含むCARと比較して、前記CCRとの抗原依存性会合を低減する、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記CAR及びCCRヒンジ領域が、同じタンパク質に由来する、請求項106~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記CAR及びCCRヒンジ領域が、異なるタンパク質に由来する、請求項106~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記CCR及び/又はCARヒンジ領域内の前記1つ以上のシステイン残基が、セリン又はアラニンで置換されている、請求項106~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記CCR及び/又はCARヒンジ領域が、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152(CTLA-4)ヒンジ、PD-1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択される、ヒンジ領域、又はその断片を含む、請求項106~116のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項118】
前記CCR及び/又はCARヒンジ領域が、CD8αヒンジ領域、又はその断片である、請求項106~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記CCR及び/又はCARヒンジ領域が、CD8αヒンジ領域である、請求項106~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号2の27位にアミノ酸置換を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号2の44位にアミノ酸置換を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項122】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号2の27及び44位にアミノ酸置換を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項123】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項124】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号3に示される配列と少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項125】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項126】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項127】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項128】
前記CCR及び/又はCARの前記CD8αヒンジ領域が、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項129】
前記CAR及びCCRが、請求項1~66のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドとして発現される、請求項106又は107に記載の方法。
【請求項130】
ステップ(c)が、前記CAR及び/又はCCRをコードするポリヌクレオチド又はベクターを前記細胞に導入することを含む、請求項92~129のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年4月17日に出願された米国仮出願第63/011,494号の35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
配列表に関する記載
本出願に関する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、BLUE-127_PC_ST25.txtである。テキストファイルは27KBであり、2021年4月14日に作成され、本明細書の出願と同時にEFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0003】
本開示は、疾患を治療するための改善された組成物及び方法に関する。より具体的には、本開示は、改善されたキメラ共刺激受容体(CCR)、融合タンパク質、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞、及び疾患を治療するためのこれらの組成物の使用に関する。
【0004】
関連分野に関する記載
キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原認識及びT細胞活性化の両方を単一の受容体に組み合わせた受容体タンパク質である。CARは、抗原特異的結合ドメイン、ヒンジ又はスペーサー配列、膜貫通ドメイン、1つ以上の共刺激ドメイン、並びにシグナル伝達ドメインなどのいくつかのタンパク質ドメインを有する複雑なタンパク質である。CARを発現するように操作されたT細胞は、標的抗原を発現する特定の細胞型(例えば、がん細胞)に再指向され得る。実際に、そのようなCAR T細胞は、CD19抗原を発現するある特定の白血病及びリンパ腫のT細胞媒介殺傷の誘導に有用であることが証明されている。
【0005】
しかしながら、CAR T技術に関する気勢にもかかわらず、効果的なCARの設計は、引き続き困難で時間のかかる試みであり(例えば、Guedan et al.,Mol Ther Methods Clin Dev.2019 Mar 15;12:145-156を参照されたい)、CAR T細胞を使用する試みは限定的に成功している。例えば、CAR T細胞療法の有効性を制限する大きな障害の1つは、「抗原陰性」がんの再発である。更に、CAR T細胞の投与は、有害な副作用、例えば、サイトカインストーム及び/又は神経毒性を引き起こすことも知られている。更に、CARで使用される所与の抗原結合ドメインの治療有効性は、予測不可能であり得る。抗原結合ドメインが強すぎる場合、CAR T細胞は、「サイトカインストーム」とみなされる致命的な可能性がある免疫反応もたらす大量のサイトカイン放出を誘導し、抗原結合ドメインが弱すぎる場合、CAR T細胞は、がん細胞を消す際に十分な治療有効性を示さない場合がある。腫瘍内の抗原発現の異形成性は、CAR T細胞療法の有効性にも影響を与える。
CAR T細胞シグナル伝達を改善及び/又は増強するための成功した戦略は、まだ実現されておらず、CAR T療法を様々ながんに対して進歩させるのに実質的な障害となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Guedan et al.,Mol Ther Methods Clin Dev.2019 Mar 15;12:145-156
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、概して、部分的には、改善されたCCRポリペプチド、融合タンパク質、及びそれを使用する方法に関する。特に、本発明は、CAR及び修飾CCRポリペプチドを含む融合ポリペプチド、並びにがんの少なくとも1つの症状の治療、予防、又は改善におけるそれらの使用を提供する。より具体的には、CCRは、修飾ヒンジ領域を含み、CAR/CCR融合ポリペプチドは、低減された抗原非依存性シグナル伝達、例えば、CAR抗原の不在下のシグナル伝達を示す。
【0008】
様々な実施形態では、a)第1のヒンジ領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)と、b)ポリペプチド切断シグナルと、c)キメラ共刺激受容体(CCR)であって、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減するように修飾された第2のヒンジ領域を含む、CCRと、を含む融合ポリペプチドが提供される。
【0009】
様々な実施形態では、a)第1のヒンジ領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)と、b)ポリペプチド切断シグナルと、c)別のアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む第2のヒンジ領域を含むキメラ共刺激受容体(CCR)と、を含む、融合ポリペプチドが提供される。
【0010】
特定の実施形態では、第2のヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する。
【0011】
特定の実施形態では、第2のヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する。
【0012】
様々な実施形態では、第1のヒンジ領域は修飾されており、任意選択で、修飾は、1つ以上の置換又は欠失を含む。いくつかの実施形態では、修飾された第1のヒンジ領域は、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む。いくつかの実施形態では、修飾された第1のヒンジ領域は、非修飾の第1のヒンジ領域を含むCARと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する。いくつかの実施形態では、修飾された第1のヒンジ領域は、非修飾の第1のヒンジ領域を含むCARと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する。
【0013】
様々な実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域内の1つ以上のシステイン残基は、セリン又はアラニンで置換されている。いくつかの実施形態では、第1及び第2のヒンジ領域は、同じタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、第1及び第2のヒンジ領域は、異なるタンパク質に由来する。
【0014】
様々な実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ、PD-1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ-CH3-ヒンジ-M1、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択される、ヒンジ領域、又はその機能的断片を含む。特定の実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、CD8αヒンジ領域、又はその機能的断片である。
【0015】
いくつかの実施形態では、CD8αヒンジ領域は、配列番号2の27位にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジ領域は、配列番号2の44位にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジ領域は、配列番号2の27及び44位にアミノ酸置換を含む。
【0016】
特定の実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、配列番号3に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
特定の実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、配列番号4に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0018】
特定の実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のヒンジ領域は、配列番号5に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、配列番号7に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD4ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号8に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号9に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD7ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号10に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むCD152ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号11に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むPD-1ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号12に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG1ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号13に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG2ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号14に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG3ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号15に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG4ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号16に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG1ヒンジ/CH2/CH3ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号17に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG1ヒンジ-CH3-ヒンジ-M1ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号18に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG4ヒンジ/CH2/CH3ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号19に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むIgG4ヒンジ/CH2ヒンジ領域、又はその機能的断片。いくつかの実施形態では、配列番号20に示される少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%のアミノ酸同一性アミノ酸配列を含むPD-1ヒンジ領域、又はその機能的断片。
【0020】
様々な実施形態では、CARは、第1の抗体又はその抗原特異的結合断片を含み、CCRは、第2の抗体又はその抗原特異的結合断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1及び/若しくは第2の抗体又はその抗原特異的結合断片は、Fab’断片、F(ab’)2断片、二重特異性Fab二量体(Fab2)、三重特異性Fab三量体(Fab3)、Fv、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、bis-scFv、(scFv)2、VHH、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、及び単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)、並びにラクダ科抗体(VHH)又はその断片からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1及び/若しくは第2の抗体又はその抗原特異的結合断片は、scFv又はVHHである。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、同じ標的抗原と結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、同じ標的抗原上の異なるエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、異なる標的抗原と結合する。
【0022】
様々な実施形態では、第1及び/若しくは第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても知られる;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異性1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する。
【0023】
様々な実施形態では、第1の抗体又は抗原特異的結合断片は、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合し、第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0024】
様々な実施形態では、第1の抗体又は抗原特異的結合断片は、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、CD79a、CD79b、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、MAGE-A4、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合し、第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、及びTAG72からなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0025】
様々な実施形態では、第1の抗体又は抗原特異的結合断片は、B細胞成熟抗原(BCMA)と結合し、第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、及びTAG72からなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0026】
様々な実施形態では、CARは、第1の膜貫通ドメインを更に含み、CCRは、第2の膜貫通ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖又はベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドに由来する。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の膜貫通ドメインは、CD8αに由来する。
【0027】
様々な実施形態では、CARは、第1の細胞内共刺激ドメインを更に含み、CCRは、第2の細胞内共刺激ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の共刺激ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子に由来する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の共刺激ドメインは、CD137(4-1BB)に由来する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の共刺激ドメインは、CD28に由来する。
【0028】
様々な実施形態では、CARは、一次シグナル伝達ドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dからなる群から選択されるポリペプチドに由来する。いくつかの実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。
【0029】
様々な実施形態では、CARは、第1の抗体又は抗原特異的結合断片、第1のヒンジ領域、第1の膜貫通ドメイン、第1の細胞内共刺激ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメインを含み、CCRは、第2の抗体又は抗原特異的結合断片、第2のヒンジ領域、第2の膜貫通ドメイン、及び第2の細胞内共刺激ドメインを含む。
【0030】
特定の実施形態では、a)第1の抗体又は抗原特異的結合断片、第1のヒンジ領域、第1の膜貫通ドメイン、第1の細胞内共刺激ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)と、b)ポリペプチド切断シグナルと、c)第2の抗体又は抗原特異的結合断片、第2のヒンジ領域、第2の膜貫通ドメイン、及び第2の細胞内共刺激ドメインを含むキメラ共刺激受容体(CCR)と、を含む融合ポリペプチドが提供されており、第2のヒンジ領域は、i)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減するか、又はii)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する、1つ以上のシステイン置換又は欠失を含む。
【0031】
特定の実施形態では、a)BCMAと結合する第1の抗体又は抗原特異的結合断片、CD8αに由来する第1のヒンジ領域、CD8αに由来する第1の膜貫通ドメイン、4-1BBに由来する第1の細胞内共刺激ドメイン、及びCD3ζに由来する一次シグナル伝達ドメインを含むCARと、b)ポリペプチド切断シグナルと、c)EGFRと結合する第2の抗体又は抗原特異的結合断片、CD8αに由来する第2のヒンジ領域、CD8αに由来する第2の膜貫通ドメイン、及びCD28に由来する第2の細胞内共刺激ドメインを含むCCRと、を含む融合ポリペプチドが提供されており、第2のヒンジ領域は、i)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減するか、又はii)非修飾の第2のヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する、1つ以上のシステイン置換又は欠失を含む。
【0032】
様々な実施形態では、修飾された第2のヒンジ領域は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
様々な実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断2Aポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)2A(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)2A(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、及び脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0034】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合ポリペプチドのうちのいずれか1つの融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、エピソームベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0035】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合ポリペプチドを発現する細胞が提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド又はベクターを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、遺伝子操作された宿主細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、造血細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、造血幹細胞又は前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CD34+造血幹細胞又は前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、免疫エフェクター細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CD3+、CD4+、及び/又はCD8+細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、又はヘルパーT細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、αβ-T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、γδ-T細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態では、ナチュラルキラー細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、マクロファージである。
【0036】
特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物が提供される。
【0037】
特定の実施形態では、がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療する方法が提供される。様々な実施形態では、方法は、治療有効量の本明細書に記載される組成物を対象に投与することを含む。
【0038】
特定の実施形態では、対象においてがんに関連する1つ以上の症状において改善する方法が提供される。様々な実施形態では、方法は、がんに関連する少なくとも1つの症状を改善するのに十分な、治療有効量の本明細書に記載される組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、改善される1つ以上の症状は、脱力、疲労、息切れ、あざができやすい及び出血しやすい、頻発する感染、リンパ節の拡張、腹部膨張又は腹部疼痛、骨又は関節の疼痛、骨折、予期せぬ体重減少、食欲低下、寝汗、持続性の微熱、並びに排尿減少からなる群から選択される。
【0039】
様々な実施形態では、がんは、固形がんである。いくつかの実施形態では、がんは、液性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、血液悪性腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんは、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性骨髄性白血病(CML)である。いくつかの実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、又は辺縁帯リンパ腫(MZL)である。いくつかの実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態では、がんは、明白な多発性骨髄腫、くすぶっている多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、及び髄外性形質細胞腫からなる群から選択されるMMである。
【0040】
特定の実施形態では、本明細書に記載される融合ポリペプチドを発現する細胞集団を生成する方法が提供される。様々な実施形態では、方法は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド又はベクターを細胞集団に導入することを含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、造血幹細胞又は前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、CD34+造血幹細胞又は前駆細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、免疫エフェクター細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、T細胞、NK細胞、及び/又はNKT細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、T細胞を含む。
【0041】
特定の実施形態では、CAR及びCCRの両方を発現する細胞におけるT細胞シグナル伝達のCCR共刺激を低減する方法が提供される。様々な実施形態では、方法は、a)各々がヒンジドメインを有するCAR及びCCRポリペプチドを得ることであって、任意選択で、CAR及びCCRが、融合ポリペプチドとして発現される、得ることと、b)CCRヒンジドメイン内の1つ以上のシステイン残基を別の残基に置換し、それによって修飾CCRを産生することと、c)細胞においてCAR及び修飾CCRを発現することと、を含む。
【0042】
特定の実施形態では、非修飾ヒンジを含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する方法が提供される。様々な実施形態では、方法は、a)各々がヒンジドメインを有するCAR及びCCRポリペプチドを得ることであって、任意選択で、CAR及びCCRが、融合ポリペプチドとして発現される、得ることと、b)CCRヒンジドメイン内の1つ以上のシステイン残基を別の残基に置換し、それによって修飾CCRを産生することと、c)細胞においてCAR及び修飾CCRを発現することと、を含む。
【0043】
様々な実施形態では、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達の抗原媒介性刺激のヒンジドメイン内のシステイン残基置換。いくつかの実施形態では、CCRのヒンジドメイン内のシステイン残基置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCARとの会合を低減する。いくつかの実施形態では、CCR及びCARの両方は、修飾ヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、修飾CARヒンジ領域は、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む。いくつかの実施形態では、CARヒンジ領域内で置換された1つ以上のシステインは、非修飾ヒンジ領域を含むCARと比較して、CARの抗原非依存性シグナル伝達を低減する。いくつかの実施形態では、CARヒンジ領域内で置換された1つ以上のシステインは、非修飾ヒンジ領域を含むCARと比較して、CCRとの抗原依存性会合を低減する。いくつかの実施形態では、CAR及びCCRヒンジ領域は、同じタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、CAR及びCCRヒンジ領域は、異なるタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARヒンジ領域内の1つ以上のシステイン残基は、セリン又はアラニンで置換されている。
【0044】
様々な実施形態では、CCR及び/又はCARヒンジ領域は、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ(CTLA-4)、PD-1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択される、ヒンジ領域、又はその機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARヒンジ領域は、CD8αヒンジ領域、又はその断片である。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARヒンジ領域は、CD8αヒンジ領域である。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号2の27位にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号2の44位にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号2の27及び44位にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号3に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号4に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号5に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0045】
様々な実施形態では、CAR及びCCRは、本明細書に記載される融合ポリペプチドのうちのいずれか1つとして発現される。様々な実施形態では、ステップ(c)は、CAR及び/又はCCRをコードするポリヌクレオチド又はベクターを細胞に導入することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】EGFR+HT-1080線維肉腫細胞の不在又は存在下の、抗EGFR CCRを有するか又は有しない抗BCMA CARを発現する非形質導入T細胞(UTD)及びCAR T細胞からのIFNγレベルを示す。
図1B】20:1、10:1、及び5:1のエフェクター:標的(E:T)比で、EGFR+HT-1080線維肉腫細胞と共培養された抗EGFR CCRを有する及び有しない抗BCMA CARを発現するUTD T細胞及びCAR T細胞によって誘導される細胞傷害性%を計算するためのインピーダンスデータを示す。
図2】ビヒクル、UTD T細胞、並びに抗EGFR CCRを有する及び有しない抗BCMA CAR T細胞を用いた処置後の、免疫不全NSGマウスにおけるヒトA549腫瘍体積を示す。
図3】CCR活性化が、CAR抗原の不在下のCAR媒介性シグナル伝達を誘導し得るいくつかの機序を表す漫画を示す。
図4A】それらのヒンジ領域に変異を有する異なるCAR/CCR構築物対を表す漫画と、BCMAの外因性発現を伴う及び伴わない、EGFRを発現する2つの異なるがん細胞株におけるUTD T細胞及び異なるCAR/CCR対を発現するCAR T細胞からのIFNγレベルを示すグラフとを示す。
図4A-1】それらのヒンジ領域に変異を有する異なるCAR/CCR構築物対を表す漫画と、BCMAの外因性発現を伴う及び伴わない、EGFRを発現する2つの異なるがん細胞株におけるUTD T細胞及び異なるCAR/CCR対を発現するCAR T細胞からのIFNγレベルを示すグラフとを示す。
図4B】外因性BCMAの発現を伴う及び伴わない、EGFRを発現する2つの異なるがん細胞株におけるUTD T細胞及び異なるCAR/CCR対を発現するCAR T細胞からのTNFαレベルを示す。
図4C】外因性BCMAの発現を伴う及び伴わない、EGFRを発現する2つの異なるがん細胞株におけるUTD T細胞及び異なるCAR/CCR対を発現するCAR T細胞からのIL-2レベルを示す。
図5A】例示的なCAR/CCR構築物のドメインを示す。
図5A-1】例示的なCAR/CCR構築物のドメインを示す。
図5B】T細胞上のCAR及びCCR構築物のFACS発現を示す。
図6】EGFRを発現するがBCMAではない2つのがん細胞株における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するUTD T細胞及びCAR T細胞からのIFNγレベルを示す。
図7AB】BCMAも発現するように修飾されたA549細胞(EGFR+)及びA549細胞(EGFR+)における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するCAR T細胞からのIFNγレベルを示す。BCMAも発現するように修飾されたA549細胞(EGFR+)及びA549細胞(EGFR+)における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するCAR T細胞からのIL-2レベルを示す。
図7CD】BCMAも発現するように修飾されたHT-1080細胞(EGFR+)及びHT-1080細胞(EGFR+)における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するCAR T細胞からのIFNγレベルを示す。BCMAも発現するように修飾されたHT-1080細胞(EGFR+)及びHT-1080細胞(EGFR+)における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するCAR T細胞からのIL-2レベルを示す。
図8AB】EGFR+HT-1080線維肉腫細胞における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するUTD T細胞及びCAR T細胞によって誘導される細胞傷害性%を計算するためのインピーダンスデータを示す。BCMAも発現するように修飾されたEGFR+HT-1080線維肉腫細胞における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するUTD T細胞及びCAR T細胞によって誘導される細胞傷害性%を計算するためのインピーダンスデータを示す。
図8CD】EGFR+HT-1080線維肉腫細胞における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するUTD T細胞及びCAR T細胞によって誘導される細胞傷害性%を計算するためのインピーダンスデータを示す。BCMAも発現するように修飾されたEGFR+HT-1080線維肉腫細胞における、ヒンジCからSへの変異を有する又は有しない、抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRの様々な組み合わせを発現するUTD T細胞及びCAR T細胞によって誘導される細胞傷害性%を計算するためのインピーダンスデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1は、ヒトCD8αタンパク質のアミノ酸配列を示す(Swiss-Prot受託番号P01732)。
【0048】
配列番号2は、例示的な野生型CD8αヒンジ領域のアミノ酸を示す。
【0049】
配列番号3は、(C27S)の27位にシステインからセリンへの変異を含む例示的なCD8αヒンジのアミノ酸配列を示す。
【0050】
配列番号4は、44位にシステインからセリンへの変異(C44S)を含む例示的なCD8αヒンジのアミノ酸配列を示す。
【0051】
配列番号5は、27及び44位にシステインからセリンへの変異(C27S;C44S)を含む例示的なCD8αヒンジのアミノ酸配列を示す。
【0052】
配列番号6は、例示的なCD8α膜貫通(TM)領域のアミノ酸配列を示す。
【0053】
配列番号7~20は、更なる例示的なヒンジ領域のアミノ酸配列を示す。
【0054】
配列番号21~31は、様々なリンカーのアミノ酸配列を示す。
【0055】
配列番号32~56は、プロテアーゼ切断部位及び自己切断ポリペプチド切断部位のアミノ酸配列を示す。
【0056】
前述の配列において、Xは、存在する場合、任意のアミノ酸又はアミノ酸の不在を指す。
【0057】
A.概説
本開示は、修飾CCRポリペプチド、融合ポリペプチド、及び遺伝子修飾された細胞を提供し、CCRは、修飾ヒンジ領域を含む。特定の実施形態では、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現するように修飾された細胞は、非修飾CCRヒンジ領域を含むポリペプチド、融合ポリペプチド、又は細胞と比較して、CAR標的抗原の不在下の低減された抗原非依存性シグナル伝達を示す。より具体的には、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現するように修飾された細胞は、CCR抗原の存在下及びCAR抗原の不在下の低減されたシグナル伝達を示す。
【0058】
言い換えると、本明細書に記載される遺伝子修飾された細胞は、CAR抗原及びCCR抗原の両方を発現する標的細胞に対して活性化される一方で、CCR抗原のみを発現する細胞に対してほとんど又は全く活性化を示さない。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、CCR抗原の存在下及びCAR抗原の不在下のシグナル伝達の減少は、CCR及びCARヒンジ領域の間のジスルフィド結合を低減することによって達成されることが企図される。
【0059】
特定の実施形態では、CCRは、CARシグナル伝達を増強する能力に有用である。更に、CCRは、CARとは異なる抗原を標的とするように設計されてもよく、したがって、標的細胞特異性を増加させ、かつ/又は難治性標的細胞の発生を低減する可能性がある。重要なことに、二重抗原アプローチは、その最も純粋な形態で、ブール論理(AND、OR、NOT)を利用して、細胞の特定サブセットを標的とし、他のサブセットを標的としない能力を提供し得る。細胞療法におけるこのアプローチの有用性は、がん特異的抗原を発見することの難しさによって強調される(例えば、Newick K.et al.,Annu.Rev.Med.2017;68:139-152を参照されたい)。実際に、多くの抗原は、他の細胞型及び/又は体内の他の場所に少なくともいくらかの発現を示す。したがって、この問題を克服するためのアプローチの1つは、CAR及びCCR抗原特異性を区別することである。
【0060】
特定の実施形態では、療法は、CAR及びCCR抗原の両方を発現する細胞のみを標的とするように設計される。更に、シグナル伝達/活性化のレベルを適切に調整することによって、抗原のうちの1つしか発現しない細胞の標的化は除外される。例えば、1)CAR抗原、並びに2)CAR抗原及びCCR抗原の両方を発現する細胞が標的化されるが、CCR抗原のみを発現する細胞ではない。他の実施形態では、療法は、1)CCR抗原、並びに2)CCR抗原及びCAR抗原の両方を発現する細胞を標的とするように設計されるが、CAR抗原のみを発現する細胞ではない。したがって、CAR/CCRの組み合わせ及び/又は融合ポリペプチドの慎重な選択及び調整、並びにブール論理の使用により、特定の細胞型(例えば、がん細胞)の標的化を可能にしながら、オフターゲット効果、例えば、CAR又はCCR抗原のみを発現する細胞の標的化を最小化する。
【0061】
興味深いことに、発明者らは驚くべきことに、いくつかのCAR/CCRの組み合わせ(例えば、融合ポリペプチド)が、CCR抗原のみを発現する標的細胞に応答して、すなわち、CAR抗原を発現しない標的細胞に対して、シグナル伝達を呈することを発見した(例えば、図1A、1B、及び2を参照されたい)。上で議論されるように、これは、CCRがシグナル伝達ドメインを含まないため、理論上は単独ではシグナル伝達しないはずであるため、驚くべきことである。更に、CCR抗原が他の細胞型(例えば、EGFR抗原)上で広く発現されているものである場合、CCR抗原の存在下の活性化/シグナル伝達は、二重抗原アプローチの利益を著しく低減する。更に、そのようなシグナル伝達はまた、T細胞機能不全及び/又はオフターゲット細胞型の殺傷も誘導し得る。
【0062】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本明細書の発明者らは、ある特定のCCRが、CAR抗原の不在下のCAR媒介性T細胞シグナル伝達を誘導する、CARとCCRヒンジ領域との間のシステイン残基のジスルフィド結合を介して対応するCARと相互作用することができることを企図している。このCCR抗原依存性、CAR抗原非依存性シグナル伝達は、T細胞の機能不全をもたらし、T細胞の有効性を低減する。本明細書に記載及び例示されるように、発明者らは驚くべきことに、CAR抗原非依存性シグナル伝達の問題が部分的にはCCRによって駆動され、そのようなシグナル伝達は、CCRヒンジ領域内の特定のシステイン残基を変異させることによって解決され得ることを発見した。特定の実施形態では、本明細書に企図される修飾ヒンジ領域を含むCAR及びCCRを発現する免疫エフェクター細胞は、CAR及びCCR抗原の両方を発現する細胞に対して活性化され、一方で、CCR抗原のみを発現する細胞に対する活性化を排除/低減する。
【0063】
したがって、本発明は、部分的に、CAR及びCCRポリペプチド、融合ポリペプチド、並びにCAR及びCCRを発現する遺伝子修飾された細胞を提供し、CCRは、修飾ヒンジ領域を含む。特に、本明細書に記載されるポリペプチド、融合ポリペプチド、又は遺伝子修飾された細胞は、非修飾CCRヒンジ領域を含む融合ポリペプチド又は細胞と比較して、CAR抗原の不在下の低減されたT細胞シグナル伝達を示す。より具体的には、本明細書に記載される改善されたポリペプチド、融合ポリペプチド、又は遺伝子修飾された細胞は、驚くべきことに、CAR抗原非依存性シグナル伝達を低減し、一方で、両方の抗原の存在下のT細胞シグナル伝達を維持又は増加させる(例えば、図7A~7Dを参照されたい)。
【0064】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)と、ポリペプチド切断シグナルと、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR共刺激を低減するように修飾されたヒンジ領域を含むキメラ共刺激受容体(CCR)と、を含む、融合ポリペプチドが提供される。
【0065】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)と、ポリペプチド切断シグナルと、別のアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含むヒンジ領域を含むキメラ共刺激受容体(CCR)と、を含む、融合ポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、CCRヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する。いくつかの実施形態では、CCRヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する。
【0066】
様々な実施形態では、CCR及びCARは、修飾ヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、修飾CAR及び/又はCCRヒンジ領域は、異なるアミノ酸(例えば、セリン又はアラニン)で置換された1つ以上のシステインを含む。いくつかの実施形態では、CAR及び/又はCCRヒンジ領域内で置換された1つ以上のシステインは、非修飾ヒンジ領域を含むCAR及び/又はCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する。いくつかの実施形態では、CAR及び/又はCCRヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCAR及び/又はCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCAR/CCRの会合を低減する。
【0067】
様々な実施形態では、CAR及びCCRヒンジ領域は、同じ又は異なるタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、CD8αヒンジ領域(例えば、配列番号2)に由来する。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号2(例えば、配列番号3)の27位にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号2(例えば、配列番号4)の44位にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、CCR及び/又はCARのCD8αヒンジ領域は、配列番号2(例えば、配列番号5)の27及び44位にアミノ酸置換を含む。
【0068】
様々な実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)、ポリペプチド切断シグナル、及びキメラ共刺激受容体(CCR)を含む融合ポリペプチドが提供され、CARは、第1の抗体又はその抗原特異的結合断片、第1のヒンジ領域、第1の膜貫通ドメイン、及び第1の細胞内共刺激ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメインを含み、CCRは、第2の抗体又はその抗原特異的結合断片、第2のヒンジ領域、第2の膜貫通ドメイン、及び第2の細胞内共刺激ドメインを含み、CCRの第2のヒンジドメインは、異なるアミノ酸に置換された1つ以上のシステイン残基を含む。
【0069】
様々な実施形態では、本明細書に記載される融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合ポリペプチドを発現する細胞が提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、遺伝子操作された宿主細胞、造血細胞、造血幹細胞、造血前駆細胞、CD34細胞、免疫エフェクター細胞、T細胞、CD3細胞、CD4細胞、CD8細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、ヘルパーT細胞、αβ-T細胞、γδ-T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、又はマクロファージである。
【0070】
様々な実施形態では、本明細書に記載される細胞を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、治療有効量の本明細書に記載される組成物を対象に投与することを含む、がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療する方法が提供される。
【0072】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチド又はベクターを細胞集団に導入することを含む、本明細書に記載される融合ポリペプチドを発現する細胞集団を生成する方法が提供される。
【0073】
様々な実施形態では、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR抗原媒介性刺激を低減する方法が提供され、方法は、各々がヒンジドメインを有するCAR及びCCRポリペプチドを得ることであって、任意選択で、CAR及びCCRが、融合ポリペプチドとして発現される、得ることと、CCRヒンジドメイン内の1つ以上のシステイン残基を別の残基に置換し、それによって修飾CCRを産生することと、細胞においてCAR及び修飾CCRを発現することと、を含む。様々な実施形態では、CAR及びCCRの両方を発現する細胞におけるT細胞シグナル伝達のCCR共刺激を低減する方法が提供され、方法は、a)各々がヒンジドメインを有するCAR及びCCRポリペプチドを得ることであって、任意選択で、CAR及びCCRが、融合ポリペプチドとして発現される、得ることと、b)CCRヒンジドメイン内の1つ以上のシステイン残基を別の残基に置換し、それによって修飾CCRを産生することと、c)細胞においてCAR及び修飾CCRを発現することと、を含む。
【0074】
組換え(すなわち、操作された)DNA、ペプチド及びオリゴヌクレオチド合成、免疫アッセイ、組織培養、形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、精製、並びに関連する技術及び手順は、本明細書を通じて引用され、議論される、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学、及び免疫学における様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されるように一般的に行われてもよい。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、2008年7月に更新)、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience、Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985)、Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley&Sons,NY,NY)、Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK、Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991)、Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984)、Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1985)、Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984)、Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH)、PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press)、Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986)、the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.)、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987)、Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and CC Blackwell,eds.,1986)、Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988)、Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual Review of Immunology、並びにAdvances in Immunologyなどの専門誌の研究論文を参照されたい。
【0075】
B.定義
本開示をより詳細に記載する前に、本明細書で使用されるべきある特定の用語の定義を提供することは、その理解に役立ち得る。
【0076】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した、又は均等の方法及び材料を、特定の実施形態の実施又は検証に使用することができるが、本明細書においては好ましい組成物、方法及び材料の実施形態を開示している。本開示の目的に対し、以下の用語を、以下に定義する。
【0077】
「a」、「an」、及び「the」といった冠詞は、本明細書において、冠詞の文法上の対象の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ、又は1以上)を指すために使用される。例示として、「要素」とは、1つの要素、又は1つ以上の要素を意味する。
【0078】
選択肢(例えば「又は」)の使用は、いずれか1つ、両方、又はその選択肢の任意の組み合わせを意味すると理解されたい。
【0079】
「及び/又は」という用語は、いずれか1つ、又はその選択肢の両方を意味すると理解されたい。
【0080】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さに対し、最大15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%変化する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さを指す。一実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さに関し、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さの範囲を指す。
【0081】
一実施形態では、例えば、1~5、約1~5、又は約1~約5といった範囲は、その範囲に包含される各数値を指す。例えば、1つの非限定的かつ単に例示的な実施形態では、範囲「1~5」は、表現1、2、3、4、5、又は1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、若しくは5.0、又は1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、若しくは5.0と同等である。
【0082】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上である数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さを指す。一実施形態では、「実質的に同一」とは、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さとおよそ同じである、例えば、生理学的効果などの効果を生じさせる数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さを指す。
【0083】
本明細書全体を通じて、文脈が別段要求しない限り、語句「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと」は、規定される工程若しくは構成要素又は工程若しくは構成要素の群を含むことを暗示するが、任意の他の工程若しくは構成要素又は工程若しくは構成要素の群を除外することを暗示しないことは理解されるだろう。「~からなる」とは、語句「からなる」に続くもの全てを含み、それらに限定されることを意味する。ゆえに、「~からなる」という文言は、列記される要素が必要又は義務であり、他の要素は存在し得ないことを示す。「本質的に~からなる」とは、当該文言の後に列記される任意の要素、及び列記される要素に関して本開示中に特定される活性若しくは作用に干渉しない、又は寄与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。ゆえに、「本質的に~からなる」という文言は、列記される要素が必須又は義務であり、しかし列記される要素の活性又は作用に実質的に影響を与える他の要素は存在しないことを示す。
【0084】
本明細書全体を通じて「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加的な実施形態」、若しくは「更なる実施形態」、又はそれらの組み合わせに対する参照は、当該実施形態と関連付けて記載される特定の性質、構造又は特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに本明細書全体の様々な箇所での前述の文言の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の性質、構造、又は特徴は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。更に、一実施形態でのある性質の肯定的な列挙は、特定の実施形態では当該性質の除外の根拠として機能することを理解されたい。
【0085】
追加の定義は、本開示全体を通じて記載されている。
【0086】
C.キメラ抗原受容体(CAR)及び修飾キメラ共刺激受容体(CCR)
様々な実施形態では、免疫エフェクター細胞は、免疫エフェクター細胞の細胞傷害性を特定の抗原を発現するがん細胞に再指向し、かつ免疫エフェクター細胞療法の効果を相乗的に増加させるために、CAR及びCCRを発現するように修飾される。CARは、所望の抗原に対する抗体ベースの特異性を、T細胞受容体の一次及び共刺激シグナル伝達構成要素と組み合わせた分子である。CARとは異なり、CCRは、所望の抗原に対する抗体ベースの特異性をT細胞受容体共刺激ドメインと組み合わせた分子であるが、一次シグナル伝達ドメインを欠く分子である。本明細書で使用される場合、「キメラ」という用語は、異なる起源に由来する異なるタンパク質部分又はDNA部分から構成されるものを表す。
【0087】
特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、抗原結合ドメインを含むCARと、異なる抗原結合ドメインを含むCCRとを発現する。CARは、細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、細胞内共刺激ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメインを含み、CCRは、細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、及び細胞内共刺激ドメインを含み、一次シグナル伝達ドメインを欠く。標的細胞の表面上の抗原とCCRの抗原結合ドメインとの結合は、CCRのクラスター形成をもたらし、CAR含有細胞に共刺激シグナルを送達する。CCRの主な特徴は、MHC非依存的様式で免疫エフェクター細胞の特異性を更に再指向又は微調整し、かつCARの存在下、好ましくはCAR抗原の存在下の免疫エフェクター細胞応答を増強する能力である。
【0088】
様々な実施形態では、CCRは、抗原特異的結合ドメインを含む細胞外結合ドメインと、修飾ヒンジ領域と、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達ドメインと、を含むが、一次シグナル伝達ドメインではない。
【0089】
好ましい実施形態では、CCRヒンジ領域は、1つ以上の他のアミノ酸残基(例えば、1つ以上のセリン残基)で置換された1つ以上のシステイン残基を含む。
【0090】
CAR及びCCR構成要素の例示的な例を以下に更に開示する。
【0091】
1.結合ドメイン
特定の実施形態では、CAR及びCCRは、標的細胞、例えば、がん細胞上に発現される特定の抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む細胞外結合ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「結合ドメイン」、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」、及び「細胞外抗原特異的結合ドメイン」という用語は、互換的に使用され、CAR及びCCRに、対象の標的抗原に特異的に結合する能力を提供する。結合ドメインは、天然、合成、半合成、又は組換えの供給源のいずれかに由来し得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「特異的結合親和性」又は「特異的に結合する」又は「特異的に結合した」又は「特異的結合」又は「特異的に標的とする」という用語は、バックグラウンド結合よりも高い結合親和性での抗体又はその抗原結合断片(又はそれを含むCAR及びCCR)の抗原への結合を説明する。結合ドメイン(又は結合ドメイン若しくは結合ドメインを含む融合タンパク質を含むCAR及びCCR)は、例えば、約10-1以上の親和性又はKa(すなわち、1/Mの単位を有する、特定の結合相互作用の平衡会合定数)で抗原に結合する、又は抗原と会合する場合、抗原に「特異的に結合する」。ある特定の実施形態では、結合ドメイン(又は融合タンパク質)は、約10-1、10-1、10-1、10-1、1010-1、1011-1、1012-1、又は1013-1以上のKaで標的に結合する。「高親和性」結合ドメイン(又はその一本鎖融合タンパク質)は、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1、少なくとも1013-1、又はそれ以上のKaを有するそれらの結合ドメインを指す。
【0093】
あるいは、親和性は、M単位(例えば、10-5M~10-13M、又はそれ未満)での特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義されてもよい。本開示に従う結合ドメインポリペプチド並びにCAR及びCCRタンパク質の親和性は、従来の技術を使用して、例えば、競合ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によって、又は結合会合によって、又は標識されたリガンドを使用した変位アッセイを使用して、又はBiacore T100(Biacore,Inc.(Piscataway,NJ)から入手可能)などの表面プラズモン共鳴装置、又はEPICシステム若しくはEnSpire(それぞれCorning及びPerkin Elmerから入手可能)などの光学バイオセンサーを使用して容易に決定することができる(また、例えば、Scatchard et al.(1949)Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660、及び米国特許第5,283,173号、第5,468,614号、又は等価物を参照されたい)。
【0094】
一実施形態では、特異的結合の親和性は、バックグラウンド結合より約2倍高いか、バックグラウンド結合より約5倍高いか、バックグラウンド結合より約10倍高いか、バックグラウンド結合より約20倍高いか、バックグラウンド結合より約50倍高いか、バックグラウンド結合より約100倍高いか、又はバックグラウンド結合より約1000倍高いか、又はそれ以上である。
【0095】
特定の実施形態では、CAR及びCCR細胞外結合ドメインは、抗体又はその抗原結合断片を含む。「抗体」は、免疫細胞によって認識されるものなどの、ペプチド、脂質、多糖類、又は抗原決定基を含む核酸などの抗原のエピトープを特異的に認識し、結合する軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチドである結合剤を指す。「単離された抗体又はその抗原結合断片」は、その自然環境の構成要素から識別され、分離及び/又は回収されたものである。
【0096】
「抗原(Ag)」とは、動物へ注射される、又は動物に吸収される組成物(例えば、がん特異的タンパク質を含む組成物など)を含む、動物において抗体産生又はT細胞反応を刺激し得る化合物、組成物、又は物質を指す。抗原は、例えば、開示される抗原などの異種抗原により誘導される産物を含む、特異的な液性免疫又は細胞性免疫の産物と反応する。
【0097】
「エピトープ」又は「抗原性決定基」とは、結合物質が結合する抗原の領域を指す。エピトープは、タンパク質の三次フォールディングによって並置される連続アミノ酸又は非連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露で保持され、一方で三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒を用いた処理で失われる。エピトープは、典型的には、固有の空間構造に少なくとも3個、より一般的には少なくとも5個、約9個、又は約8~10個のアミノ酸を含む。
【0098】
抗体は、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ共役抗体(二重特異性抗体など)、及びその抗原結合断片を含む。また、Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.、Rockford,IL)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997を参照されたい。
【0099】
当業者によって理解されるであろうように、及び本明細書の他の箇所に記載されるように、完全抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。各重鎖は、可変領域、並びに第1、第2、及び第3の定常領域からなるが、一方で、各軽鎖は、可変領域及び定常領域からなる。哺乳類の重鎖は、α、δ、ε、γ、及びμに分類される。哺乳類の軽鎖は、λ又はκに分類される。α、δ、ε、γ、及びμ重鎖を含む免疫グロブリンは、免疫グロブリン(Ig)A、IgD、IgE、IgG、及びIgMに分類される。完全抗体は、「Y」形状を形成する。Yの幹は、一緒に結合された2つの重鎖の第2及び第3の定常領域(またIgE及びIgMについては、第4の定常領域)から成り、ジスルフィド結合(鎖間)がヒンジに形成される。重鎖γ、α、及びδは、3つのタンデム(一直線)Igドメインからなる定常領域と、更なる柔軟性のためのヒンジ領域とを有し、重鎖μ及びεは、4つの免疫グロブリンドメインからなる定常領域を有する。第2及び第3の定常領域は、それぞれ「CH2ドメイン」及び「CH3ドメイン」と呼ばれる。Yの各アームは、単一の軽鎖の可変領域及び定常領域に結合された単一の重鎖の可変領域及び第1の定常領域を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。
【0100】
軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、3つの超可変領域によって中断される「フレームワーク」領域を含み、これは「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる。CDRは、Kabat et al.(Wu,TT and Kabat,E.A.,J Exp Med.132(2):211-50,(1970)、Borden,P.and Kabat E.A.,PNAS,84:2440-2443(1987)(参照により本明細書に組み込まれる、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991を参照されたい)による配列、又はChothia et al(Chothia,C.and Lesk,A.M.,J Mol.Biol.,196(4):901-917(1987)、Chothia,C.et al,Nature,342:877-883(1989))による構造によってなど、従来の方法によって定義又は識別することができる。
【0101】
軽鎖CDRを予測するための規則の例示的な例には、以下が挙げられる:CDR-L1は、約残基24で始まり、Cysが先行し、約10~17残基であり、Trp(典型的には、Trp-Tyr-Glnであるが、またTrp-Leu-Gln、Trp-Phe-Gln、Trp-Tyr-Leu)が続く。CDR-L2は、CDR-L1の終了後に約16残基で始まり、一般にIle-Tyrであるが、またVal-Tyr、Ile-Lys、Ile-Pheが先行し、7残基であり、CDR-L3は、CDR-L2の終了後に約33残基で始まり、Cysが先行し、7~11残基であり、Phe-Gly-XXX-Gly(XXXは任意のアミノ酸である)(配列番号58)が続く。
【0102】
重鎖CDRを予測するための規則の例には、以下を含む:CDR-H1は、約26の残基で始まるが、Cys-XXX-XXX-XXX(配列番号59)が先行し、10~12の残基であり、Trp(典型的にはTrp-Valであるが、またTrp-Ile、Trp-Ala)が続き、CDR-H2は、CDR-H1の終了後に約15残基で始まり、一般にLeu-Glu-Trp-Ile-Gly(配列番号60)、又はいくつかの変形が先行し、16~19残基であり、Lys/Arg-Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala-Thr/Ser/Ile/Alaが続き、CDR-H3は、CDR-H2の終了後に約33残基で始まり、Cys-XXX-XXX(典型的にはCys-Ala-Arg)が先行し、3~25残基であり、Trp-Gly-XXX-Gly(配列番号61)が続く。
【0103】
一実施形態では、軽鎖CDR及び重鎖CDRは、Kabat方法に従って決定される。
【0104】
一実施形態では、軽鎖CDR並びに重鎖CDR2及びCDR3は、Kabat方法に従って決定され、重鎖CDR1は、Kabat方法とClothia方法との間に含まれるAbM方法に従って決定され、例えば、Whitelegg N&Rees AR,Protein Eng.2000 Dec;13(12):819-24 and Methods Mol Biol.2004;248:51-91を参照されたい。CDRを予測するためのプログラムは、例えば、AbYsis(www.bioinf.org.uk/abysis/)に公開されている。
【0105】
異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、ヒトなどの種内で比較的保存される。抗体のフレームワーク領域は、構成軽鎖及び重鎖の結合フレームワーク領域であり、三次元空間においてCDRを位置付け、整列させる役割を果たす。CDRは、抗原のエピトープへの結合を主に担う。各鎖のCDRは、一般的にCDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、N末端から順次番号付けされ、また一般的に、特定のCDRが位置する鎖によって識別される。したがって、抗体の重鎖の可変ドメインに位置するCDRは、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3と呼ばれ、一方で抗体の軽鎖の可変ドメイン内に位置するCDRは、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3と呼ばれる。異なる特異性を有する抗体(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)は、異なるCDRを有する。抗体ごとに異なるのはCDRであるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置のみが抗原結合に直接関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0106】
「VL」又は「VL」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、又は本明細書に企図される他の抗体断片を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。「VH」又は「VH」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、又は本明細書に企図される他の抗体断片を含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。
【0107】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンによって、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞の融合からハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって、当業者に公知の方法によって産生される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0108】
「キメラ抗体」は、ヒトなどの1つの種に由来するフレームワーク残基、及びマウスなどの別の種に由来するCDR(一般に抗原結合を付与する)を有する。特定の好ましい実施形態では、CAR及び/又はCCRは、キメラ抗体又はその抗原結合断片である抗原特異的結合ドメインを含む。
【0109】
特定の実施形態では、抗体は、ヒト抗体(ヒトモノクローナル抗体など)又はヒトポリペプチドに特異的に結合するその断片である。ヒト抗体は、ヒト由来ファージ表示ライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を、上述の既知のヒト定常ドメイン配列と組み合わせることによって構築することができる。あるいは、ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製されてもよい。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.、New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)によって記載されている。更に、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して、内因性免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができる。例えば、Jakobovits et al.,PNAS USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照されたい。遺伝子シャッフリングを使用して、ヒト抗体を非ヒト、例えば、齧歯類の抗体から誘導することもできるが、ヒト抗体は、開始非ヒト抗体と類似の親和性及び特異性を有する。(1993年4月1日に公開されたPCT WO93/06213を参照されたい)。CDR移植による非ヒト抗体の従来のヒト化とは異なり、この技術は、非ヒト起源のFR残基又はCDR残基を有しない完全ヒト抗体を提供する。
【0110】
一実施形態では、CAR及び/又はCCRは、「ヒト化」抗体を含む。ヒト化抗体は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(例えば、マウス、ラット、又は合成)免疫グロブリンからの1つ以上のCDRとを含む免疫グロブリンである。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは、「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。一実施形態では、全てのCDRは、ヒト化免疫グロブリン中のドナー免疫グロブリン由来である。定常領域は存在する必要がないが、存在する場合、ヒト免疫グロブリン定常領域と、すなわち、少なくとも約85~90%、例えば、約95%以上実質的に同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、CDRである可能性を除いて、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、追加の保存的アミノ酸置換を有することができ、これは抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を与えない。ヒト化抗体は、遺伝子工学の手段によって構築され得る(例えば、米国特許第5,585,089号を参照されたい)。
【0111】
抗体は、ラクダIg、リャマIg、アルパカIg、Ig NAR、Fab’断片、F(ab’)2断片、二重特異性Fab二量体(Fab2)、三重特異性Fab三量体(Fab3)、Fv、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、及びシングルドメイン抗体(sdAb、ラクダ科VHH、ナノボディ)並びに抗原結合に関与する完全長抗体の部分などの抗原結合断片を含む。抗体はまた、ポリクローナル及びモノクローナル抗体並びにその抗原結合断片と、マウス抗体、ラクダ科抗体、及びヒト抗体、並びにその抗原結合断片と、及びキメラ抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、並びにヒト化抗体、並びにその抗原結合断片と、を含む。また、Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.、Rockford,IL)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997を参照されたい。
【0112】
「重鎖抗体」は、2つのVHドメインを含み、かつ軽鎖を含まない抗体を指す(Riechmann L.et al,J.Immunol.Methods 231:25-38(1999)、WO94/04678、WO94/25591、米国特許第6,005,079号)。「カメリド抗体」は、2つのVHドメインを含み、かつ軽鎖を含まない、ラクダ、アルパカ、又はリャマから単離された抗体を指す。「ヒト化VHH」又は「ヒト化ラクダ様抗体」は、ヒトレシピエントにおける抗体の潜在的免疫原性を低減するためにヒト化を受けた非ヒトVHH又はラクダ様抗体を指す。
【0113】
「免疫グロブリン新規抗原受容体」の「IgNAR」は、1つの可変新規抗原受容体(VNAR)ドメイン及び5つの定常新規抗原受容体(CNAR)ドメインのホモ二量体からなるサメ免疫レパートリーからの抗体のクラスを指す。IgNARは、最も小さい既知の免疫グロブリンベースのタンパク質足場のいくつかを表し、非常に安定であり、効率的な結合特性を有する。固有の安定性は、(i)マウス抗体にみられる従来の抗体VHドメイン及びVLドメインと比較して、かなりの数の荷電及び親水性表面曝露残基を表す基礎となるIg足場、並びに(ii)ループ間ジスルフィド架橋を含む相補性決定領域(CDR)ループにおける構造的特徴、及びループ内水素結合のパターンの安定化の両方に起因し得る。
【0114】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位と、その名称が容易に結晶化する能力を反映する残存する「Fc」断片とを有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、かつ依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2断片を生成する。
【0115】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、緊密な非共有結合の会合における1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、軽鎖と重鎖が二本鎖Fv種と類似した「二量体」構造で会合できるように、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインを、可撓性ペプチドリンカーによって共有結合することができる。この構成では、各可変ドメインの3つの超可変領域(HVR)が相互作用して、VH-VL二量体の表面に抗原結合部位を画定する。まとめると、6つのHVRは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識し結合する能力を有するが、結合部位全体よりも低い親和性である。
【0116】
Fab断片は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基を付加することによって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’の本明細書の名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学結合も既知である。二重特異性Fab二量体(Fab2)は、2つのFab’断片を有し、各々が異なる抗原に結合する。三重特異性Fab三量体(Fab3)は、3つのFab’断片を有し、各々が異なる抗原に結合する。
【0117】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、その断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインとペアになり、2つの抗原結合部位を作製することが強制される。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,PNAS USA 90:6444-6448(1993)により完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディについても、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0118】
「シングルドメイン抗体」又は「sdAb」又は「ナノボディ」は、抗体重鎖(VHドメイン)の可変領域、又は抗体軽鎖(VLドメイン)の可変領域からなる抗体断片を指す(Holt,L.,et al,Trends in Biotechnology,21(11):484-490)。
【0119】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中、及びいずれかの配向(例えば、VL-VH又はVH-VL)中に存在する。概して、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これによりscFvは抗原結合のための所望の構造を形成することができる。scFvの概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0120】
好ましい実施形態では、抗原特異的結合断片は、scFv又はVHHである。特定の実施形態では、scFvは、マウス、ヒト又はヒト化scFvである。一本鎖抗体は、所望の標的に特異的なハイブリドーマのV領域遺伝子からクローニングされてもよい。このようなハイブリドーマの産生は、ルーチンとなっている。可変領域重鎖(VH)及び可変領域軽鎖(VL)のクローニングに使用され得る技術は、例えば、Orlandi et al.,PNAS,1989;86:3833-3837に記載されている。
【0121】
様々な実施形態では、CAR(例えば、第1の結合ドメイン)及び/又はCCR(例えば、第2の結合ドメイン)の抗原特異的結合ドメインは、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても知られる;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2);黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異性1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する。
【0122】
特定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、scFv又はVHHである。
【0123】
特定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、ヒトBCMA又はEGFRポリペプチドと結合するscFvである。
【0124】
2.リンカー
ある特定の実施形態では、CAR及び/又はCCRは、様々なドメイン間にリンカー残基を含み、例えば、分子の適切な間隔及び構造のために追加される。特定の実施形態では、リンカーは、可変領域を結合させる配列である。「可変領域を結合させる配列」は、V及びVを繋げるアミノ酸配列であり、2つの下位結合ドメインの相互作用と適合可能なスペーサー機能を提供し、得られたポリペプチドは、同じ軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む抗体と同じ標的分子に対する特異的結合親和性を保持する。特定の実施形態では、CAR及び/又はCCRは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上のリンカーを含む。特定の実施形態では、リンカーの長さは、約1~約25個のアミノ酸、約5~約20個のアミノ酸、又は約10~約20個のアミノ酸、又はアミノ酸の任意の介在する長さである。いくつかの実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個、又はそれ以上のアミノ酸長である。
【0125】
リンカーの例示的な例には、グリシンポリマー(G)と、nが少なくとも1、2、3、4、又は5の整数である、グリシン-セリンポリマー(G1-51-5と、グリシン-アラニンポリマーと、アラニン-セリンポリマーと、及び当該技術分野で既知の他の可撓性リンカーと、が挙げられる。グリシン及びグリシン-セリンポリマーは比較的構造化されておらず、したがって、本明細書に記載されるCAR又はCCRなどの融合タンパク質のドメイン間の中性テザーとして機能することができる。グリシンは、アラニンよりも非常に多くのphi-psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ない(Scheraga,Rev.Computational Chem.11173-142(1992)を参照されたい)。当業者であれば、特定の実施形態におけるCAR又はCCRの設計が、全て又は部分的に可撓性であるリンカーを含むことができ、それによりリンカーは、可撓性リンカー、並びに所望のCAR又はCCR構造を提供する、より可撓性の低い構造を付与する1つ以上の部分を含み得ることを認識するであろう。
【0126】
他の例示的なリンカーには、これらに限定されないが、以下のアミノ酸配列が含まれる:DGGGS(配列番号21);TGEKP(配列番号22)(例えば、Liu et al.,PNAS 5525-5530(1997)を参照されたい);GGRR(配列番号23)(Pomerantz et al.1995、上記);(GGGGS)(式中、1、2、3、4、又は5(配列番号24)(Kim et al.,PNAS 93,1156-1160(1996.));EGKSSGSGSESKVD(配列番号25)(Chaudhary et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号26)(Bird et al.,1988,Science 242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号27);LRQRDGERP(配列番号28);LRQKDGGGSERP(配列番号29);LRQKD(GGGS)ERP(配列番号30)。あるいは、可塑性リンカーを、DNA結合部位とペプチド自体の両方をモデル化することができるコンピュータプログラム(Desjarlais&Berg,PNAS 90:2256-2260(1993),PNAS 91:11099-11103(1994))を使用して、又はファージディスプレイ法により合理的に設計することができる。一実施形態では、リンカーは、以下のアミノ酸配列を含む:GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号31)(Cooper et al.,Blood,101(4):1637-1644(2003))。
【0127】
3.スペーサードメイン
特定の実施形態では、CAR及び/又はCCRの結合ドメインに続いて、1つ以上の「スペーサードメイン」が続き、これは、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離して、適切な細胞/細胞の接触、抗原結合、及び活性化を可能にする領域を指す(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412-419)。スペーサードメインは、天然、合成、半合成、又は組換えの供給源のいずれかに由来し得る。ある実施形態では、スペーサードメインは、これらに限定されないが、1つ以上の重鎖定常領域、例えば、CH2及びCH3を含む免疫グロブリン部分である。スペーサードメインは、天然発生型免疫グロブリンヒンジ領域、又は改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0128】
一実施形態では、スペーサードメインは、IgG1、IgG4、又はIgDのCH2及びCH3を含む。
【0129】
4.ヒンジドメイン
「ヒンジ」、「ヒンジドメイン」、及び「ヒンジ領域」という用語は、本明細書で互換的に使用され、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離して位置付けて、適切な細胞/細胞の接触、抗原結合、及び活性化を可能にする役割を果たす可撓性ドメインを指す。CAR及び/又はCCRの結合ドメインには、概して、結合ドメインと膜貫通ドメイン(TM)との間の1つ以上のヒンジドメインが続く。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、又は組換えの供給源のいずれかに由来し得る。ヒンジドメインは、天然発生型免疫グロブリンヒンジ領域、又は改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、スペーサードメインを含む。
【0130】
本明細書で使用される場合、「改変ヒンジドメイン」、「修飾ヒンジドメイン」、及び「修飾ヒンジドメイン」という用語は、(a)最大30%のアミノ酸変化(例えば、最大25%、20%、15%、10%、又は5%のアミノ酸の置換又は欠失)を有する天然発生型ヒンジド領域、(b)最大30%のアミノ酸変化(例えば、最大25%、20%、15%、10%、又は5%のアミノ酸の置換又は欠失)を有する少なくとも10アミノ酸(例えば、少なくとも12、13、14、又は15個のアミノ酸)長である天然発生型ヒンジ領域の部分、又は(c)コアヒンジ領域(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15、又は少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15アミノ酸長であり得る)を含む天然発生型ヒンジ領域の部分を指す。
【0131】
好ましい実施形態では、修飾ヒンジ領域は、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野で既知の好適なヒンジドメイン/領域に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヒンジ領域は、4個以下、3個以下、又は2個以下のアミノ酸置換及び/又は欠失を有する、本明細書に記載されるヒンジ配列を含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、天然発生型ヒンジ領域中の1つ以上のシステイン残基は、1つ以上の他のアミノ酸残基(例えば、1つ以上のセリン残基)によって置換されてもよい。特定の実施形態では、改変ヒンジ領域は、別のアミノ酸残基(例えば、セリン残基)によるプロリン残基の置換を含む。
【0133】
本明細書で特定の実施形態に企図されるCAR及び/又はCCRにおける使用に好適な例示的なヒンジドメインとしては、これらに限定されないが、例えば、CD8α、CD4、CD28、及びCD7を含む1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、それは、これらの分子からの野生型ヒンジ領域であってもよく、又は改変されてもよい。一実施形態では、ヒンジは、PD-1ヒンジ又はCD152ヒンジである。別の実施形態では、ヒンジドメインは、天然発生型免疫グロビンヒンジ領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4ヒンジを含む。別の実施形態では、ヒンジドメインは、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、又はIgG4ヒンジ/CH2を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、CD8αヒンジ領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、CD4ヒンジ領域は、配列番号7に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、CD28ヒンジ領域は、配列番号8に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、CD7ヒンジ領域は、配列番号9に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、CD152ヒンジ領域は、配列番号10に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、PD-1ヒンジ領域は、配列番号11に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、IgG1ヒンジ領域は、配列番号12に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、IgG2ヒンジ領域は、配列番号13に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、IgG3ヒンジ領域は、配列番号14に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、IgG4ヒンジ領域は、配列番号15に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、IgG1ヒンジ/CH2/CH3ヒンジ領域は、配列番号16に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、IgG1ヒンジ-CH3-ヒンジ-M1ヒンジ領域は、配列番号17に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、IgG4ヒンジ/CH2/CH3ヒンジ領域は、配列番号18に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、IgG4ヒンジ/CH2ヒンジ領域は、配列番号19に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、PD-1ヒンジ領域は、配列番号20に示されるアミノ酸配列、又はその機能的断片若しくは改変を含む。
【0149】
様々な実施形態では、本明細書に記載される融合ポリペプチドは、上に記載されるヒンジドメイン/領域のうちのいずれか1つに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む修飾された第1及び/又は第2のヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、修飾された第1及び/又は第2のヒンジ領域は、4個以下、3個以下、又は2個以下のアミノ酸置換及び/又は欠失を有する、上に記載されるヒンジ配列を含む。
【0150】
ある特定の実施形態では、ヒンジ領域/ドメイン中の1つ以上のシステイン残基は、1つ以上の他のアミノ酸残基によって置換されて、修飾ヒンジドメインを産生してもよい。いくつかの実施形態では、修飾ヒンジドメインは、セリン又はアラニンで置換された1つ以上のシステイン残基を含む。別の実施形態では、修飾ヒンジドメインは、セリンで置換された1つ以上のシステイン残基を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、アラニンで置換された1つ以上のシステイン残基を含む。いくつかの実施形態では、CCRヒンジドメインは、修飾されている。いくつかの実施形態では、CARヒンジドメインは、修飾されていない。いくつかの実施形態では、CAR及びCCRヒンジドメインの両方が修飾されている。
【0151】
好ましい実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域/ドメインを含む。一実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸残基を含む。別の実施形態では、CAR及び/又はCCRは、修飾CD8αヒンジドメインを含む。別の実施形態では、CCRは、修飾CD8αヒンジドメインを含み、CARは、任意選択で、野生型ヒンジ配列を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、1つ以上の他のアミノ酸残基で置換された1つ以上のシステイン残基を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、セリン又はアラニンで置換された1つ以上のシステイン残基を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、セリンで置換された1つ以上のシステイン残基を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、アラニンで置換された1つ以上のシステイン残基を含む。
【0152】
一実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号2の27位にシステインからセリンへの置換を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号3に示されるアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号3に示される配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号3に示される配列に対して、少なくとも90%、93%、95%、又は97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、4個以下、3個以下、又は2個以下のアミノ酸置換及び/又は欠失を含む。
【0153】
一実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号2の44位にシステインからセリンへの置換を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号4に示されるアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号4に示される配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号4に示される配列に対して、少なくとも90%、93%、95%、又は97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、4個以下、3個以下、又は2個以下のアミノ酸置換及び/又は欠失を含む。
【0154】
一実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号2の27及び44位にシステインからセリンへの置換を含む。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号5に示されるアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号5に示される配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、配列番号5に示される配列に対して、少なくとも90%、93%、95%、又は97%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾CD8αヒンジドメインは、4個以下、3個以下、又は2個以下のアミノ酸置換及び/又は欠失を含む。
【0155】
5.膜貫通(TM)ドメイン
「膜貫通ドメイン」は、細胞外結合部分及び細胞内シグナル伝達ドメインを融合し、かつCAR及び/又はCCRを免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定するCAR及び/又はCCRの部分である。TMドメインは、天然、合成、半合成、又は組換えの供給源のいずれかに由来し得る。TMドメインは、T細胞受容体のアルファ又はベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、及びPD1に由来し得る(すなわち、T細胞受容体のアルファ又はベータ鎖の少なくとも膜貫通領域を含む)。特定の実施形態では、TMドメインは合成であり、主にロイシン及びバリンなどの疎水性残基を含む。
【0156】
一実施形態では、CAR及び/又はCCRは、PD1、CD152、CD28、又はCD8αに由来するTMドメインを含む。別の実施形態では、CAR及び/又はCCRは、PD1、CD152、CD28、又はCD8αに由来するTMドメイン、及び場合によっては、TMドメインをCAR又はCCRの細胞内シグナル伝達ドメイン又は共刺激ドメインに連結させる、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸長の、短オリゴリンカー又はポリペプチドリンカーを含む。グリシン-セリンベースのリンカーは、特に好適なリンカーを提供する。
【0157】
例えば、1つの非限定的かつ単に例示的な実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号6に示されるCD8α膜貫通ドメインを含む。特定の実施形態では、CD8α膜貫通ドメインは、配列番号6に示される配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0158】
6.細胞内シグナル伝達ドメイン
特定の実施形態では、CARは、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、CAR結合標的細胞へのサイトカイン因子の放出、又は細胞外CARドメインへの抗原結合で誘発される他の細胞応答を含む、ヒト抗原への効果的なCAR結合のメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に形質導入して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、及び細胞傷害活性を誘発することに関与するCARの一部を指す。
【0159】
「エフェクター機能」という用語は、免疫エフェクター細胞の専門的な機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又はヘルプ又は活性であってもよい。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを形質導入し、細胞に専門化機能を行うよう指向するタンパク質の部分を指す。通常は細胞内シグナル伝達ドメインの全体が採用され得るが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される程度まで、そのような切断部分は、エフェクター機能シグナルを形質導入する限り、ドメイン全体の代わりに使用され得る。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを形質導入するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0160】
TCRによって生成されたシグナル単独ではT細胞の完全な活性化に不十分であり、二次的すなわち共刺激性のシグナルも必要であることが知られている。したがって、T細胞活性化は、2つの明確に異なるクラスの細胞内シグナル伝達ドメイン、すなわち、TCR(例えば、TCR/CD3複合体)によって抗原依存性一次活性化を開始する一次シグナル伝達ドメインと、抗原依存様式で作用して二次的すなわち共刺激性のシグナルを提供する共刺激シグナル伝達ドメインとによって媒介されると言うことができる。好ましい実施形態では、CARは、1つ以上の「共刺激シグナル伝達ドメイン」及び「一次シグナル伝達ドメイン」を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0161】
一次シグナル伝達ドメインは、刺激方法又は阻害方法のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を調節する。刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs)又はITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0162】
特定の実施形態で有用なITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例示的な例としては、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが挙げられる。特に好ましい実施形態では、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。細胞内一次シグナル伝達ドメイン及び共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の順序でタンデムに、膜貫通ドメインのカルボキシル末端に連結され得る。
【0163】
特定の実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CAR及びCCR受容体を発現するT細胞の有効性及び拡大を増強するための1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」又は「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。共刺激分子は、抗原に結合するとTリンパ球の効率的な活性化及び機能に必要とされる第2のシグナルを提供する、抗原受容体又はFc受容体以外の細胞表面分子である。そのような共刺激性分子の例示的な例としては、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、TNFR2、及びZAP70が挙げられる。一実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CD28、CD137、及びCD134からなる群から選択される1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン、並びにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0164】
別の実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CD28及びCD137共刺激シグナル伝達ドメイン、並びにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0165】
更に別の実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CD28及びCD134共刺激シグナル伝達ドメイン、並びにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0166】
一実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CD137及びCD134共刺激シグナル伝達ドメイン、並びにCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0167】
一実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CD137共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0168】
一実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CD134共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0169】
一実施形態では、CAR及び/又はCCRは、CD28共刺激シグナル伝達ドメイン及びCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0170】
D.CAR及びCCRの例示的な実施形態
一実施形態では、CARは、抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、ヒンジ領域と、膜貫通ドメインと、共刺激分子からの1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、一次シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0171】
一実施形態では、CARは、がん細胞に発現される抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、ヒンジ領域と、T細胞受容体のアルファ鎖又はベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN1、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドに由来する膜貫通ドメインと、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22,CD79a,CD79b、及びCD66dに由来する一次シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0172】
一実施形態では、CARは、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ、PD1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択されるヒンジドメインを含む。
【0173】
一実施形態では、CARは、がんに発現される抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ、PD1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択されるヒンジドメインと、T細胞受容体のアルファ鎖又はベータ鎖、CDδ、CD3ε、CDγ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN1、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドに由来する膜貫通ドメインと、TMドメインをCARの細胞内シグナル伝達ドメインに連結させる、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸長の、短オリゴリンカー又はポリペプチドリンカーと、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22,CD79a,CD79b、及びCD66dに由来する一次シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0174】
特定の実施形態では、CARは、がんに発現される抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、CD8αポリペプチドを含むヒンジドメインと、約3~約10個のアミノ酸のポリペプチドリンカー(例えば、テール-CD8リンカー)を含むCD8α膜貫通ドメインと、CD137(4-1BB)細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0175】
特定の実施形態では、CARは、がんに発現される抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、CD8αポリペプチドを含むヒンジドメインと、約3~約10個のアミノ酸のポリペプチドリンカー(例えば、テール-CD8リンカー)を含むCD8α膜貫通ドメインと、CD134細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0176】
特定の実施形態では、CARは、がんに発現される抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、CD8αポリペプチドを含むヒンジドメインと、約3~約10個のアミノ酸のポリペプチドリンカー(例えば、テール-CD8リンカー)を含むCD8α膜貫通ドメインと、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0177】
様々な実施形態では、CAR抗体又はその抗原特異的結合断片は、scFv又はVHHである。いくつかの実施形態では、CAR抗体又はその抗原特異的結合断片は、scFvである。いくつかの実施形態では、CAR抗体又はその抗原特異的結合断片は、VHHである。
【0178】
本明細書に記載される実施形態のうちのいずれか1つでは、CARヒンジ領域は、本明細書に記載されるように、低減された抗原非依存性T細胞シグナル伝達に修飾され得る。本明細書に記載される実施形態のうちのいずれか1つでは、ヒンジ領域は、非修飾ヒンジ領域を含むCARと比較して、CAR抗原の不在下のCCRとの会合を低減するように修飾され得る。
【0179】
一実施形態では、修飾CARヒンジ領域は、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む。別の実施形態では、1つ以上のシステイン残基は、セリン又はアラニンで置換されている。好ましい実施形態では、修飾ヒンジ領域は、CD8αヒンジ領域である。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2に由来する。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2の27位にアミノ酸置換を含む(すなわち、配列番号3を参照されたい)。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2の44位にアミノ酸置換を含む(すなわち、配列番号4を参照されたい)。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2の27及び44位にアミノ酸置換を含む(すなわち、配列番号5を参照されたい)。
【0180】
上述の実施形態のうちのいずれにおいても、CARヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCARと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR共刺激を低減する。上記の実施形態のうちのいずれか1つでは、CARヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCARと比較して、CAR抗原の不在下のCCRとの会合を低減する。
【0181】
一実施形態では、CCRは、抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、ヒンジ領域と、膜貫通ドメインと、共刺激分子からの1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0182】
一実施形態では、CCRは、がんに発現される抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む修飾ヒンジ領域と、T細胞受容体のアルファ鎖又はベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN1、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドに由来する膜貫通ドメインと、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0183】
一実施形態では、CCRは、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ、PD1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択される修飾ヒンジ領域を含む。
【0184】
一実施形態では、CCRは、がんに発現される抗原と結合する抗体又はその抗原特異的結合断片と、CD8αヒンジ、CD4ヒンジ、CD28ヒンジ、CD7ヒンジ、CD152ヒンジ、PD1ヒンジ、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgG3ヒンジ、IgG4ヒンジ、IgG1ヒンジ/CH2/CH3、IgG1ヒンジ/CH3/ヒンジ/M1、IgG4ヒンジ/CH2/CH3、及びIgG4ヒンジ/CH2からなる群から選択される修飾ヒンジ領域と、T細胞受容体のアルファ鎖又はベータ鎖、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN1、及びPD1からなる群から選択されるポリペプチドに由来する膜貫通ドメインと、TMドメインをCARの細胞内シグナル伝達ドメインに連結させる、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸長の、短オリゴリンカー又はポリペプチドリンカーと、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、NKD2C、SLP76、TRIM、TNFR2、及びZAP70からなる群から選択される共刺激分子からの1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0185】
特定の実施形態では、CCRは、がんに発現される抗原と結合するscFv又はVHHと、本明細書に記載されるCD8αポリペプチドを含む修飾ヒンジ領域と、約3~約10個のアミノ酸のポリペプチドリンカー(例えば、テール-CD8リンカー)を含むCD8α膜貫通ドメインと、CD137細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0186】
特定の実施形態では、CCRは、がんに発現される抗原と結合するscFv又はVHHと、本明細書に記載されるCD8αポリペプチドを含む修飾ヒンジ領域と、約3~約10個のアミノ酸のポリペプチドリンカー(例えば、テール-CD8リンカー)を含むCD8α膜貫通ドメインと、CD134細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0187】
特定の実施形態では、CCRは、がんに発現される抗原と結合するscFv又はVHHと、本明細書に記載されるCD8αポリペプチドを含む修飾ヒンジ領域と、約3~約10個のアミノ酸のポリペプチドリンカー(例えば、テール-CD8リンカー)を含むCD8α膜貫通ドメインと、CD28細胞内共刺激シグナル伝達ドメインと、を含む。
【0188】
様々な実施形態では、CCR抗体又はその抗原特異的結合断片は、scFv又はVHHである。いくつかの実施形態では、CCR抗体又はその抗原特異的結合断片は、scFvである。いくつかの実施形態では、CCR抗体又はその抗原特異的結合断片は、VHHである。
【0189】
本明細書に記載される実施形態のうちのいずれか1つでは、CCRヒンジ領域は、本明細書に記載されるように、低減された抗原非依存性T細胞シグナル伝達に修飾され得る。本明細書に記載される実施形態のうちのいずれか1つでは、CCRヒンジ領域は、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCARとの会合を低減するように修飾され得る。
【0190】
一実施形態では、修飾CCRヒンジ領域は、異なるアミノ酸で置換された1つ以上のシステインを含む。別の実施形態では、1つ以上のシステイン残基は、セリン又はアラニンで置換されている。好ましい実施形態では、修飾ヒンジ領域は、CD8αヒンジ領域である。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2に由来する。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2の27位にアミノ酸置換を含む(すなわち、配列番号3を参照されたい)。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2の44位にアミノ酸置換を含む(すなわち、配列番号4を参照されたい)。別の実施形態では、修飾CD8αヒンジ領域は、配列番号2の27及び44位にアミノ酸置換を含む(すなわち、配列番号5を参照されたい)。
【0191】
上述の実施形態のうちのいずれにおいても、CCRヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のT細胞シグナル伝達のCCR共刺激を低減する。上記の実施形態のうちのいずれか1つでは、CCRヒンジ領域内の1つ以上のシステイン置換は、非修飾ヒンジ領域を含むCCRと比較して、CAR抗原の不在下のCARとの会合を低減する。
【0192】
様々な実施形態では、CAR及び/又はCCRの抗原特異的結合ドメインは、アルファ葉酸受容体(FRα)、αβインテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても知られる;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異性1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する。特定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、scFv又はVHHである。特定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、scFvである。特定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、VHHである。特定の実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、ヒトBCMA又はEGFRポリペプチドと結合するscFvである。
【0193】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、アルファ葉酸受容体(FRα)、αβインテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても知られる;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異性1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する。
【0194】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0195】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトBCMAポリペプチドと結合する。
【0196】
様々な実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、アルファ葉酸受容体(FRα)、αβインテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても知られる;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異性1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異性膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する。様々な実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される、標的抗原と結合する。
【0197】
様々な実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチド、EGFRvIIIポリペプチド、TAG72ポリペプチド、又はCD20ポリペプチドと結合する。
【0198】
様々な実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。様々な実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。様々な実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。様々な実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0199】
特定の実施形態では、CCRの抗原特異的結合ドメインは、scFv又はVHHである。
【0200】
様々な実施形態では、CARは、第1の抗体又はその抗原特異的結合断片を含み、CCRは、第2の抗体又はその抗原特異的結合断片を更に含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、同じ標的抗原と結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、同じ標的抗原上の異なるエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体又は抗原特異的結合断片は、異なる標的抗原と結合する。
【0201】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0202】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、CD33、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、ErbB2を含むEGFRファミリー(HER2)、MAGE-A4、MUC1、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、及びTAG72からなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0203】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、CD79a、CD79b、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、MAGE-A4、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドからなる群から選択される標的抗原と結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、及びTAG72からなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0204】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD33、CD79a、CD79b、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、MAGE-A4、MUC16、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、及びNKG2Dリガンドである標的抗原と結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD20、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、及びTAG72からなる群から選択される標的抗原と結合する。
【0205】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトBCMAポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0206】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトBCMAポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0207】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトBCMAポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0208】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトBCMAポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0209】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD33ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0210】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD33ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0211】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD33ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0212】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD33ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0213】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79aポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0214】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79aポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0215】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79aポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0216】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79aポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0217】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79bポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0218】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79bポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0219】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79bポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0220】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD79bポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0221】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCLL-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0222】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCLL-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0223】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCLL-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0224】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCLL-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0225】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMAGE-A4ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0226】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMAGE-A4ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0227】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMAGE-A4ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0228】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMAGE-A4ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0229】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0230】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0231】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0232】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトMUC16ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0233】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトNY-ESO-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0234】
様々な実施形態では、抗原特異的結合ドメインは、ヒトNY-ESO-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0235】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトNY-ESO-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0236】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトNY-ESO-1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0237】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトPRAMEポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0238】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトPRAMEポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0239】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトPRAMEポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0240】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトPRAMEポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0241】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトROR1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0242】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトROR1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0243】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトROR1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0244】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトROR1ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0245】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0246】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0247】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0248】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトNKG2Dリガンドポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRポリペプチドと結合する。
【0249】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトNKG2Dリガンドポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトEGFRvIIIポリペプチドと結合する。
【0250】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトNKG2Dリガンドポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトCD20ポリペプチドと結合する。
【0251】
様々な実施形態では、CARの抗原特異的結合ドメインは、ヒトNKG2Dリガンドポリペプチドと結合し、CCRの抗原特異的結合ドメインは、ヒトTAG72ポリペプチドと結合する。
【0252】
特定の実施形態に企図されるCAR及びCCRの設計は、非修飾T細胞又は他のCARを発現するように修飾されたT細胞と比較して、CAR及びCCRを発現するT細胞における拡大、長期持続性、及び細胞傷害性特性の改善を可能にする。
【0253】
E.ポリペプチド
これらに限定されないが、CARポリペプチド、CCRポリペプチド、融合ポリペプチド、及びその断片を含む、様々なポリペプチド、融合ポリペプチド、及びポリペプチドバリアントが本明細書に企図される。特定の実施形態では、本明細書に企図される例示的なポリペプチドには、修飾ヒンジ領域及び関連する融合ポリペプチドを含むCCRが含まれる。特に、本明細書に記載されるポリペプチドは、非修飾CCRヒンジ領域を含むポリペプチド又は細胞と比較して、CAR抗原の不在下の低減されたT細胞シグナル伝達を示す。より具体的には、本明細書に記載される改善されたポリペプチドは、驚くべきことに、CCR媒介性CAR抗原非依存性シグナル伝達を低減し、一方で、CAR及びCCR抗原の両方の存在下のT細胞シグナル伝達を増加させる。
【0254】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、反対であることが明記されない限り、互換的に使用され、従来的な意味、すなわち、アミノ酸の配列としての意味に従う。ポリペプチドは特定の長さに限定されず、例えば、ポリペプチドは、完全長ポリペプチド又はポリペプチド断片を含んでもよく、ポリペプチドは、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの1つ以上の翻訳後修飾、並びに当該技術分野で既知の天然発生型及び非天然発生型の両方の他の修飾を含んでもよい。
【0255】
本明細書で使用される場合、「単離ポリペプチド」などは、細胞環境からの、及び細胞の他の構成要素との会合からの、ペプチド分子又はポリペプチド分子のインビトロでの合成、単離及び/又は精製を指し、すなわち、インビボでの物質と実質的に関連付けられていない。特定の実施形態では、単離ポリペプチドは、合成ポリペプチド、半合成ポリペプチド、若しくは組換え源から得られた、又は誘導されたポリペプチドである。
【0256】
ポリペプチドは、「ポリペプチドバリアント」を含む。ポリペプチドバリアントは、1つ以上の置換、欠失、付加、及び/又は挿入により、天然発生型ポリペプチドとは異なっている場合がある。そうしたバリアントは、天然発生型であってもよく、又は例えば、上述のポリペプチド配列のうちの1つ以上を修飾することにより合成的に生成されてもよい。例えば、特定の実施形態では、1つ以上の置換、欠失、付加、及び/又は挿入を結合ドメイン、ヒンジ、TMドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン又は存在する場合、一次シグナル伝達ドメインに導入することにより、CAR及び/又はCCRの結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、ポリペプチドは、本明細書において予期される参照配列のいずれかに対して、少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含み、典型的には、バリアントは、参照配列の少なくとも1つの生物学的活性を維持している。特定の実施形態では、生物学的活性は、結合親和性である。特定の実施形態では、生物学的活性は、細胞溶解活性である。
【0257】
ポリペプチドは、「ポリペプチド断片」を含む。ポリペプチド断片は、単量体又は多量体であってもよく、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、及び/又は天然発生型若しくは組換えにより産生されたポリペプチドの内部欠失又は置換を有するポリペプチドを指す。生物学的に活性なポリペプチド断片の例示的な例には、抗体断片が挙げられる。本明細書で使用される場合、「生物学的に活性な断片」又は「最小限の生物学的に活性な断片」という用語は、天然発生型ポリペプチド活性の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%を保持するポリペプチド断片を指す。好ましい実施形態では、生物学的活性は、エピトープに対する結合親和性である。ある特定の実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約500アミノ酸長のアミノ酸鎖を含み得る。ある特定の実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、又は450アミノ酸長である。特に有用なポリペプチド断片は、抗原結合ドメイン又は抗体の断片を含む機能性ドメインを含む。
【0258】
ポリペプチドはまた、ポリペプチド(例えば、ポリ-His)の合成、精製、若しくは同定の容易さのために、又は固体支持体へのポリペプチドの結合を増強するために、インフレームで融合されてもよく、又はリンカー若しくは他の配列に結合されてもよい。
【0259】
上述のように、特定の実施形態では、ポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断、及び挿入を含む、様々な方法で改変されてもよい。そうした操作のための方法は、当該技術分野において一般的に既知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNA中の変異により作製され得る。変異誘導及びヌクレオチド配列改変のための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.,(Molecular Biology of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)、及びその中で引用されている参考文献を参照されたい。対象のタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出され得る。
【0260】
ある特定の実施形態では、ポリペプチドバリアントは、1つ以上の保存的置換を含む。「保存的置換」は、アミノ酸が、類似した性能を有する別のアミノ酸に置換される置換であり、ペプチド化学分野の当業者であれば、そうした置換によって、ポリペプチドの二次構造及び疎水親水的性質が実質的に変化しないと予測するであろう。特定の実施形態に企図されるポリヌクレオチド及びポリペプチドの構造に修飾を行ってもよく、それでも所望の特徴を有するバリアントポリペプチド又は誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子が得られる。ポリペプチドのアミノ酸配列を変更し、同等な、又は改善されたバリアントポリペプチドを生成することが望ましい場合、当業者は、例えば、表1に従い、コードDNA配列のコドンのうちの1つ以上を変えることができる。
【表1】
【0261】
どのアミノ酸残基が、生物学的活性を無効化することなく置換、挿入、又は欠失され得るかを決定するガイダンスは、DNASTAR、DNA Strider、Geneious、Mac Vector、又はVector NTIソフトウェアなどの当該技術分野で周知のコンピュータプログラムを使用して見出すことができる。本明細書に開示されるタンパク質バリアント中のアミノ酸の変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、類似した荷電アミノ酸、又は非荷電アミノ酸の置換であることが好ましい。保存的アミノ酸変化には、その側鎖で関連付けられているアミノ酸ファミリーの1つの置換を含む。天然アミノ酸は一般的に以下の4つのファミリーに分けられる:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、及び非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、合わせて芳香族アミノ酸として分類される場合もある。ペプチド又はタンパク質において、アミノ酸の好適な保存的置換は当業者に既知であり、一般的に得られる分子の生物学的活性を変化させることなく行うことができる。当業者であれば、ポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換は概して、生物学的活性を大きくは変化させないと認識している(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照されたい)。
【0262】
上述のように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基、例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなどの相対的類似性に基づいてもよい。
【0263】
ポリペプチドバリアントには更に、グリコシル化形態、他の分子との凝集コンジュゲート、及び無関係な化学部分(例えば、ペグ化分子)との共有結合コンジュゲートが含まれる。共有結合バリアントは、当該技術分野で既知であるように、アミノ酸鎖中、又はN末端残基若しくはC末端残基中に存在する基に機能性を連結することによって調製することができる。バリアントにはまた、対立遺伝子バリアント、種バリアント、及び変異タンパク質が含まれる。タンパク質の機能的活性に影響を与えない領域の切断又は欠失もバリアントである。
【0264】
特定の実施形態では、同じ細胞におけるCAR及びCCRの発現が望まれる。CAR及びCCRをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書の別の箇所で議論されるように、IRES配列によって分離され得る。
【0265】
好ましい実施形態では、融合ポリペプチドが本明細書に企図されている。
【0266】
特定の好ましい実施形態では、CAR及びCCRは、CAR及びCCRを分離する1つ以上の自己切断ポリペプチド配列を含む融合ポリペプチドとして発現され得る。
【0267】
融合ポリペプチド及び融合タンパク質は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。融合ポリペプチドは、典型的には、C末端からN末端に連結されているが、それらは、C末端からC末端に、N末端からN末端に、又はN末端からC末端に連結されてもよい。融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序又は指定された順序であってもよい。一実施形態では、融合タンパク質は、CAR、ポリペプチド切断シグナル、及びCCRを含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、CCR、ポリペプチド切断シグナル、及びCARを含む。
【0268】
一実施形態では、融合タンパク質は、CAR、ポリペプチド切断シグナル、及びCCRを含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、CCR、ポリペプチド切断シグナル、及びCARを含む。
【0269】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、がんに発現される抗原と結合するscFv、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び一次シグナル伝達ドメインを含むCARと、ポリペプチド切断シグナルと、抗原と結合するscFv、本明細書に記載される修飾ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、及び共刺激ドメインを含むCCRと、を含む。例示的なドメイン/領域は、本明細書に記載されるものから選択されてもよい。
【0270】
好ましい実施形態では、融合タンパク質は、がんに発現される抗原と結合するscFv、CD8αヒンジ、膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、及びCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含むCARと、ポリペプチド切断シグナルと、抗原と結合するscFv、本明細書に記載される修飾CD8αヒンジ、膜貫通ドメイン、及びCD28共刺激ドメインを含むCCRと、を含む。
【0271】
ポリペプチド切断シグナルの例としては、例えば、プロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、稀な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、及び自己切断ウイルスオリゴペプチド(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照されたい)などのポリペプチド切断認識部位が挙げられる。
【0272】
好適なプロテアーゼ切断部位及び自己切断ペプチドは、当業者に既知である(例えば、Ryan et al.,1997.J.Gener.Virol.78,699-722、Scymczak et al.(2004)Nature Biotech.5,589-594を参照されたい)。タンパク質分解酵素切断部位の例としては、これらに限定されないが、ポティウイルスNIaタンパク質分解酵素(例えば、タバコエッチウイルスタンパク質分解酵素)、ポティウイルスHCタンパク質分解酵素、ポティウイルスP1(P35)タンパク質分解酵素、ビオウイルスNIaタンパク質分解酵素、ビオウイルスRNA-2-コードタンパク質分解酵素、アフトウイルスLタンパク質分解酵素、エンテロウイルス2Aタンパク質分解酵素、ライノウイルス2Aタンパク質分解酵素、ピコルナ3Cタンパク質分解酵素、コモウイルス24Kタンパク質分解酵素、ネポウイルス24Kタンパク質分解酵素、RTSV(ライスツングロ球状ウイルス)3C様タンパク質分解酵素、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様タンパク質分解酵素、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子及びエンテロキナーゼの切断部位が挙げられる。その高い切断ストリンジェンシーにより、TEV(タバコエッチングウイルス)プロテアーゼ切断部位は、一実施形態では、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号32)、例えば、ENLYFQG(配列番号33)及びENLYFQS(配列番号34)(Xは、任意のアミノ酸を表す)(TEVによる切断は、QとG又はQとSの間で生じる)が好ましい。
【0273】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ペプチド又はリボソームスキッピング配列である。
【0274】
リボソームスキッピング配列の例示的な例には、これらに限定されないが、2A若しくは2A様部位、配列又はドメインが挙げられる(Donnelly et al.,2001.J.Gen.Virol.82:1027-1041)。特定の実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、アフトウイルス2Aペプチド、ポティウイルス2Aペプチド、又はカルジオウイルス2Aペプチドである。
【0275】
一実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2Aペプチド、ゾセアアシグナウイルス(TaV)2Aペプチド、ブタテスコウイルス-1(PTV-1)2Aペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、及び脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択される。
【0276】
2A部位の例示的な例を表2に提供する。
【表2】
【0277】
好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書に記載されるCAR、T2A自己切断ポリペプチド、及び本明細書に記載されるCCRを含む。
【0278】
F.ポリヌクレオチド
好ましい実施形態では、1つ以上のCARポリペプチド、CCRポリペプチド、又はCAR、2Aペプチド、及びCCRを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、及びDNA/RNAハイブリッドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であってもよく、かつ組換え、合成、又は単離のいずれかであってもよい。ポリヌクレオチドには、これらに限定されないが、プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅DNA、相補的DNA(cDNA)、合成DNA、又は組換えDNAが含まれる。ポリヌクレオチドは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、又は少なくとも15000以上のヌクレオチド長のヌクレオチドの多量体型を指し、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド、又はいずれかタイプのヌクレオチドの修飾型、並びに全ての中間の長さのものを指す。本文脈において、「中間の長さ」とは、例えば、6、7、8、9など、101、102、103など、151、152、153など、201、202、203などの引用されている値の間の任意の長さを意味すると容易に理解されるであろう。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド又はバリアントは、参照配列に対して、少なくとも若しくは約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%,76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0279】
本明細書で使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」とは、天然発生状態で隣接する配列から精製されたポリヌクレオチドを指し、例えば、通常では断片と隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。特定の実施形態では、「単離されたポリヌクレオチド」はまた、自然界には存在せず、人為的に作製された、相補的DNA(cDNA)、組換えDNA、又は他のポリヌクレオチドも指す。特定の実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、合成ポリヌクレオチド、半合成ポリヌクレオチド、又は組換え源から得られた若しくは誘導されたポリヌクレオチドである。
【0280】
様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書に企図されるポリペプチドをコードするmRNAを含む。ある特定の実施形態では、mRNAは、キャップ、1つ以上のヌクレオチド、及びポリ(A)テールを含む。
【0281】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コドン最適化されてもよい。本明細書で使用される場合、「コドン最適化」という用語は、ポリペプチドの発現、安定性、及び/又は活性を増加させるためにポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中のコドンを置換することを指す。コドン最適化に影響を及ぼす因子には、これらに限定されないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:(i)2つ以上の生物体又は遺伝子又は合成構築されたバイアステーブルの間のコドンバイアスの変動、(ii)生物体、遺伝子又は遺伝子セット内のコドンバイアスの程度の変動、(iii)コンテキストを含むコドンの体系的変動、(iv)その解読tRNAに伴うコドンの変動、(v)3つ組全体又は3つ組の1つの位置のいずれかのGC%に伴うコドンの変動、(vi)例えば、天然配列などの参照配列に対する類似性における変動、(vii)コドン頻度のカットオフにおける変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造的性質、(ix)コドン置換セットの設計の基礎となるDNA配列の機能に関する予備知識、(x)各アミノ酸に対するコドンセットの合成的変動、及び/又は(xi)誤った翻訳開始位置の分離された除去。
【0282】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」及び「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列と相当の配列同一性を呈するポリヌクレオチド、又は本明細書において規定されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語は、1つ以上のヌクレオチドが、参照ポリヌクレオチドに比べて、付加若しくは欠失若しくは異なるヌクレオチドで置換されたポリヌクレオチドを含む。この点に関し、当該技術分野において、参照ポリヌクレオチドに対し、変異、付加、欠失、及び置換を含むある特定の改変がなされ、改変されたポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能又は生物学的活性を保持し得ると十分に理解されている。
【0283】
ポリヌクレオチドバリアントは、生物学的に活性なポリペプチド断片又はバリアントをコードするポリヌクレオチド断片を含む。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド断片」という用語は、少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、又は少なくとも5%の天然発生型ポリペプチド活性を保持するポリペプチドをコードする、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700以上のヌクレオチド長のポリヌクレオチド断片を指す。ポリヌクレオチド断片はアミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、カルボキシ末端欠失、及び/若しくは内部欠失又は天然発生型若しくは組換え産生ポリペプチドの1つ以上のアミノ酸の置換を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。
【0284】
「配列同一性」、又は例えば「~に対して50%同一の配列」を含む、という文章は、本明細書において使用される場合、比較ウィンドウ上で配列が、ヌクレオチドごとで同一である、又はアミノ酸ごとで同一である程度を指す。したがって、「配列同一性の百分率」は、比較ウィンドウ上の2つの最適アラインメント配列を比較すること、同一核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一アミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が、両方の配列中に存在する位置の数を決定して、合致位置数を算出すること、合致位置数を、比較ウィンドウ中の総位置数(すなわちウィンドウサイズ)で割ること、及び結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を算出することにより計算されてもよい。本明細書に記載される参照配列のいずれかに対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド及びポリペプチドが含まれ、典型的には、ポリペプチドバリアントは、参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持する。
【0285】
2つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド間の配列関係を記載するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、及び「実質的な同一性」が挙げられる。「参照配列」は、長さが、少なくとも12個の単量体単位であり、多くの場合、15~18個の単量体単位であり、多くの場合、少なくとも25個の単量体単位である、ヌクレオチド及びアミノ酸残基を含む。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、及び(2)2つのポリヌクレオチド間で発散する配列を含んでもよく、2つの(又はそれ以上の)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性の局所領域を同定し、比較するために、2つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」で比較することによって行われる。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6個の連続する位置、通常は、約50~約100、より一般的には約100~約150の概念セグメントを指し、配列は、2つの配列が最適に整列された後、同じ数の連続する位置の参照配列と比較される。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアラインメントのため、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して約20%以下の付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。比較ウィンドウを整列するための配列の最適なアラインメントは、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAにおけるアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータ化実行によって、又は選択された様々な方法のいずれかによって生成される検査及び最良のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたり最も高い相同性をもたらす)によって行われ得る。例えば、Altschul et al.,1997,Nucl.Acids Res.25:3389により開示されるプログラムのBLASTファミリーへの参照もなされ得る。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons Inc,1994-1998,Chapter15のUnit 19.3に見出され得る。
【0286】
ポリヌクレオチドの配向を記載する用語には、5’(通常、遊離リン酸基を有するポリヌクレオチドの末端)及び3’(通常、遊離ヒドロキシル(OH)基を有するポリヌクレオチドの末端)が含まれる。ポリヌクレオチド配列は、5’から3’の配向又は3’から5’の配向で注釈付けされ得る。DNA及びmRNAについて、5’から3’の鎖は、その配列が、プレメッセンジャー(プレmRNA)の配列と同一であるために、「センス」鎖、「プラス」鎖、又は「コード」鎖と指定される[DNA中のチミン(T)の代わりに、RNA中のウラシル(U)を除く]。DNA及びmRNAについては、RNAポリメラーゼによって転写された鎖である相補的な3’から5’鎖は、「鋳型」、「アンチセンス」、「マイナス」、又は「非コード」鎖として指定される。本明細書で使用される場合、「逆配向」という用語は、3’から5’の方向に書かれた5’から3’の配列、又は5’から3’の方向に書かれた3’から5’の配列を指す。
【0287】
「相補的」及び「相補性」という用語は、塩基対形成規則によって関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、DNA配列5’AGTCATG3’の相補鎖は、3’TCAGTAC5’である。後者の配列は、しばしば、5’末端が左に、3’末端が右にある、5’C A T G A C T 3’、逆相補体として記載される。その逆相補鎖と等しい配列は、パリンドローム配列であると言われる。相補性は、核酸塩基の一部のみが塩基対合規則に従って一致する、「部分的」であり得る。又は、核酸間には、「完全」又は「総合的な」相補性が存在し得る。
【0288】
更に、当業者であれば、遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載されるポリペプチド又はそのバリアント断片をコードするヌクレオチド配列は多数存在することを認識するであろう。これらポリヌクレオチドのうちのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して、最小の相同性を担持する。それにもかかわらず、コドン使用頻度の差異によって変化するポリヌクレオチドが企図され、特定の実施形態では、例えば、ヒト及び/又は霊長類のコドン選択に最適化されたポリヌクレオチドが企図される。更に、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子も使用され得る。対立遺伝子は、ヌクレオチドの欠失、付加、及び/又は置換など、1つ以上の変異の結果として改変される内在性遺伝子である。
【0289】
本明細書で使用される場合、「核酸カセット」又は「発現カセット」という用語は、RNAを発現し、その後にポリペプチドを発現することができるベクター中の遺伝子配列を指す。一実施形態では、核酸カセットは、対象の遺伝子、例えば、対象のポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、核酸カセットは、1つ以上の発現制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリ(A)配列、及び例えば対象のポリヌクレオチドなどの対象の遺伝子を含む。ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上の核酸カセットを含み得る。核酸カセットは、ベクター内で位置的に、そして連続的に方向付けられる。それにより、カセット中の核酸はRNAに転写されることができ、必要な場合にはタンパク質又はポリペプチドへと翻訳され、形質転換細胞での活動に必要とされる適切な翻訳後修飾を受け、適切な細胞内コンパートメントに標的化されることで生物活性に適したコンパートメントへと移行され、又は細胞外コンパートメントへと分泌されることができる。カセットは、ベクター内への即時の挿入に適合された3’末端及び5’末端を有することが好ましく、例えば、各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有している。好ましい実施形態では、核酸カセットは、CAR及び/又はCCRをコードする。カセットは取り出され、単一ユニットとしてプラスミド又はウイルスベクター内に挿入されることができる。
【0290】
ポリヌクレオチドは、対象のポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、「対象のポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチド、ポリペプチドバリアント、又は融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。ベクターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の目的のポリヌクレオチドを含んでもよい。ある特定の実施形態では、対象のポリヌクレオチドは、疾患又は傷害の治療又は予防において治療効果を提供するポリペプチドをコードする。対象のポリヌクレオチド、及びそれからコードされるポリペプチドは、野生型ポリペプチド、並びに機能的バリアント及び断片をコードする両方のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、機能的バリアントは、対応する野生型参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性を有する。ある特定の実施形態では、機能的バリアント又は断片は、対応する野生型ポリペプチドの生物学的活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を有する。
【0291】
本明細書に企図されるポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さにかかわらず、本明細書の他の箇所に開示されるか当該技術分野で既知である、プロモーター及び/又はエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、シグナル配列、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、付加的な制限酵素部位、多重クローニング部位、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、及びAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、及び自己切断型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの他のDNA配列と組み合わされてもよく、その結果、それらの全体的な長さが大幅に変動してもよい。したがって、ほぼ任意の長さのポリヌクレオチド断片が特定の実施形態で使用されてもよく、全長は、意図される組換えDNAプロトコルにおける調製及び使用の容易さによって制限されることが好ましい。
【0292】
ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知であり利用可能な様々な確立された技術のうちのいずれかを使用して調製され、操作され、かつ/又は発現されてもよい。所望のポリペプチドを発現するために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適切なベクターに挿入されてもよい。
【0293】
ベクターの例示的な例としては、これらに限定されないが、プラスミド、自己複製配列、及び転位因子、例えば、piggyBac、Sleeping Beauty、Mos1、Tc1/mariner、Tol2、mini-Tol2、Tc3、MuA、Himar I、Frog Prince、及びその誘導体が挙げられる。
【0294】
ベクターの追加の例示的な例としては、限定するものではないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、又はP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、例えば、ラムダファージ又はM13ファージなどのバクテリオファージ、及び動物ウイルスが挙げられる。
【0295】
ベクターとして有用なウイルスの例示的な例としては、限定するものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴型ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。
【0296】
発現ベクターの例示的な例には、これらに限定されないが、哺乳類細胞における発現のためのpClneoベクター(Promega)、哺乳類細胞におけるレンチウイルス媒介性遺伝子導入及び発現のためのpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、及びpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen)が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドのコード配列は、哺乳類細胞でのポリペプチドの発現のために、そのような発現ベクター内にライゲーションされてもよい。
【0297】
特定の実施形態では、ベクターは、エピソームベクター、又は染色体外で維持されるベクターである。本明細書で使用される場合、「エピソーム」という用語は、宿主の染色体DNA内に組み込むことなしに、及び宿主細胞の分裂により徐々に失われることなく複製することができるベクターを指し、当該ベクターは染色体外又はエピソームで複製することも意味する。
【0298】
発現ベクター中に存在する「制御エレメント」又は「制御配列」は、ベクターの非翻訳領域であり、複製起源、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(Shine Dalgarno配列又はKozak配列)、イントロン、ポリアデニル化配列、5’及び3’の非翻訳領域が挙げられ、宿主の細胞タンパク質と相互作用して、転写と翻訳を実行する。こうしたエレメントは、その強度及び特異性において変化し得る。利用されるベクターシステム及び宿主に応じて、ユビキタスプロモーター及び誘導性プロモーターをはじめとする任意の数の好適な転写エレメント及び翻訳エレメントを使用してもよい。
【0299】
特定の実施形態では、ベクターは、これに限定されないが、発現ベクター及びウイルスベクターを含み、プロモーター及び/又はエンハンサーなどの外因性、内因性、又は異種制御配列を含む。「内因性」制御配列は、ゲノム中で所与の遺伝子と自然に連結される配列である。「外因性」制御配列は、その遺伝子の転写が連結されたエンハンサー/プロモーターによって指向されるように、遺伝子操作の手段(すなわち、分子生物学的技法)によって遺伝子と並立に配置されるものである。「異種」制御配列は、遺伝子操作される細胞とは異なる種に由来する外因性配列である。
【0300】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNA又はRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを開始及び転写する。特定の実施形態では、哺乳動物細胞において作動されるプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するATが豊富な領域を含み、かつ/又は転写の開始から70~80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域であり、式中、Nは、任意のヌクレオチドであり得る。
【0301】
「エンハンサー」という用語は、転写の増強を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指し、いくつかの場合では、別の制御配列に対する配向に関係なく機能することができる。エンハンサーは、プロモーター及び/又は他のエンハンサーエレメントと協働して、又は相加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指す。
【0302】
「作動可能に連結した」という用語は、記載される構成要素が、それらが意図された様式で機能することができるような関係にある並置を意味する。一実施形態では、用語は、核酸発現制御配列(プロモーター及び/又はエンハンサーなど)と第2のポリヌクレオチド配列、例えば、対象のポリヌクレオチドとの間の機能的結合を指し、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を指向する。
【0303】
本明細書で使用される場合、「構造的発現制御配列」という用語は、作動可能に連結された配列の継続的な、又は連続的な転写を可能にするプロモーター、エンハンサー、又はプロモーター/エンハンサーを指す。構成的発現制御配列は、幅広い多様な細胞及び組織型における発現を可能にする「遍在」プロモーター、エンハンサー、若しくはプロモーター/エンハンサーであり得るか、又は制限された多様な細胞及び組織型それぞれにおける発現を可能にする、「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞系列特異的」、若しくは「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、若しくはプロモーター/エンハンサーであり得る。
【0304】
特定の実施形態で使用するのに好適な例示的な遍在性発現制御配列としては、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例えば、初期又は後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5、及びP11プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1a)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、真核細胞翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaベータメンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA 26遺伝子座(Irions et al.,Nature Biotechnology 25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーター、及び骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失dl587revプライマー結合部位置換(MND)U3プロモーター(Haas et al.Journal of Virology.2003;77(17):9439-9450)が挙げられる。
【0305】
一実施形態では、ベクターは、MNDU3プロモーターを含む。
【0306】
一実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第1のイントロンを含むEF1aプロモーターを含む。
【0307】
一実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第1のイントロンを欠くEF1aプロモーターを含む。
【0308】
本明細書で使用される場合、「条件付き発現」は、これらに限定されないが、誘導性発現、抑制可能な発現、特定の生理学的、生物学的、又は疾患状態などを有する細胞又は組織における発現を含む任意のタイプの条件付き発現を指し得る。この定義は、細胞型又は組織に特異的な発現を除外することは意図されない。ある特定の実施形態は、例えば、細胞、組織、生物体などを、ポリヌクレオチドの発現を引き起こす処理若しくは条件、又は対象のポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドの発現の増加若しくは減少を引き起こす処理若しくは条件に供することによって発現が制御される、対象のポリヌクレオチドの条件発現を提供する。
【0309】
誘導性プロモーター/システムの例示的な例としては、これらに限定されないが、ステロイド誘導性プロモーター、例えばグルココルチコイド受容体又はエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーター(対応するホルモンの処理で誘導可能)、メタロチオネインプロモーター(様々な重金属の処理で誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンで誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン制御性システム(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、クミン酸塩(cumate)誘導性遺伝子スイッチ(WO 2002/088346)、テトラサイクリン依存性制御システムなどが挙げられる。
【0310】
条件付き発現は、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによっても達成され得る。ある特定の実施形態によれば、ベクターは、部位特異的リコンビナーゼによって媒介される組換えについて少なくとも1つの(典型的には2つの)部位を含む。本明細書で使用される場合、「リコンビナーゼ」又は「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、1つ以上の組換え部位(例えば、2、3、4、5、7、10、12、15、20、30、50など)を含む組換え反応に関与する排他的又は組み込みタンパク質、酵素、補助因子又は関連タンパク質を含み、野生型タンパク質(Landy,Current Opinion in Biotechnology 3:699-707(1993)を参照されたい)、又は変異体、誘導体(例えば、組換えタンパク質配列又はその断片を含む融合タンパク質)、断片及びそのバリアントであってもよい。特定の実施形態での使用に好適なリコンビナーゼの例示的な例には、これらに限定されないが、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、及びParAが挙げられる。
【0311】
ベクターは、広範囲の部位特異的リコンビナーゼのいずれかに対して1つ以上の組換え部位を含んでもよい。部位特異的リコンビナーゼの標的部位は、ベクター、例えば、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターの組み込みに必要とされる任意の部位に追加されることが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「組換え配列」、「組換え部位」、又は「部位特異的組換え部位」という用語は、リコンビナーゼが認識及び結合する特定の核酸配列を指す。
【0312】
例えば、Creリコンビナーゼの1つの組換え部位は、8塩基対コア配列に隣接する2つの13塩基対逆位リピート(リコンビナーゼ結合部位として残る)を含む34塩基対配列であるloxPである(Sauer,B.,Current Opinion in Biotechnology 5:521-527(1994)の図1を参照されたい)。他の例示的なloxP部位としては、これらに限定されないが、lox511(Hoess et al.,1996、Bethke and Sauer,1997)、lox5171(Lee and Saito,1998)、lox2272(Lee and Saito,1998)、m2(Langer et al.,2002)、lox71(Albert et al.,1995)、及びlox66(Albert et al.,1995)が挙げられる。
【0313】
FLPリコンビナーゼの好適な認識部位としては、これらに限定されないが、FRT(McLeod,et al.,1996)、F、F、F(Schlake and Bode,1994)、F、F(Schlake and Bode,1994)、FRT(LE)(Senecoff et al.,1988)、FRT(RE)(Senecoff et al.,1988)が挙げられる。
【0314】
認識配列の他の例は、attB、attP、attL、及びattR配列であり、これはリコンビナーゼ酵素のλインテグラーゼ、例えば、phi-c31によって認識される。φC31 SSRは、ヘテロタイプ部位のattB(34bpの長さ)とattP(39bpの長さ)との間の組換えのみを媒介する(Groth et al.,2000)。attB及びattPは、それぞれ細菌ゲノム及びファージゲノム上のファージインテグラーゼについての結合部位について名付けられ、両方とも、φC31ホモ二量体によって結合される可能性のある不完全な逆方向反復を含む(Groth et al.,2000)。生成物部位、attL及びattRは、更にφC31媒介性組換えに対して効果的に不活性(Belteki et al.,2003)であり、反応を不可逆的にする。挿入を触媒するために、attP部位がゲノムattB部位に挿入するよりもattB担持DNAのほうが容易にゲノムattP部位に挿入されることが見出されている(Thyagarajan et al.,2001、Belteki et al.,2003)。したがって、典型的な戦略は、相同組換えによって、attP担持する「ドッキング部位」を定義された座位に位置付け、その後、挿入のためのattB担持incoming配列と結合される。
【0315】
本明細書で使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」又は「IRES」とは、シストロン(タンパク質コード領域)の、ATGなどの開始コドンに内部リボソームが直接侵入することを促進し、キャップ非依存性の遺伝子翻訳を生じさせるエレメントを指す。例えば、Jackson et al.,1990.Trends Biochem Sci 15(12):477-83)及びJackson and Kaminski.1995.RNA 1(10):985-1000を参照されたい。特定の実施形態では、ベクターは、1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の対象のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、複数のポリペプチドの各々の効率的な翻訳を達成するために、ポリヌクレオチド配列は、自己切断ポリペプチドをコードする1つ以上のIRES配列又はポリヌクレオチド配列によって分離され得る。一実施形態では、本明細書に企図されるポリヌクレオチドに使用されるIRESは、EMCV IRESである。
【0316】
本明細書で使用される場合、「Kozak配列」という用語は、リボソーム小サブユニットへのmRNAの初期結合を大きく促進し、翻訳を増加させる短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサスKozak配列は、(GCC)RCCATGG(配列番号57)であり、Rはプリン(A又はG)である(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92、及びKozak,1987.Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)。特定の実施形態では、ベクターは、所望のポリペプチド、例えば、CARをコードするコンセンサスKozak配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0317】
異種核酸転写物の効率的な終止とポリアデニル化を指向するエレメントは、異種遺伝子の発現を増加させる。転写終止シグナルは、概して、ポリアデニル化シグナルの下流に見出される。特定の実施形態では、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのポリアデニル化配列3′を含む。本明細書で使用される場合、「ポリA部位」又は「ポリA配列」という用語は、RNAポリメラーゼIIによって発生期のRNA転写物の終止及びポリアデニル化の両方を指向するDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、ポリAテールをコード配列の3’末端に付加することによってmRNA安定性を促進することができ、したがって、翻訳効率の向上に寄与する。切断及びポリアデニル化は、RNA中のポリ(A)配列によって指向される。哺乳類プレmRNAのコアポリ(A)配列は、切断ポリアデニル化部位に隣接する2つの認識エレメントを有する。典型的には、ほぼ不変のAAUAAA六量体が、U残基又はGU残基が豊富な、より可変性であるエレメントの上流20~50ヌクレオチドに存在する。初期転写物の切断はこれら2つのエレメントの間で発生し、5’切断産物に最大で250個のアデノシンが付加される。特定の実施形態では、コアポリ(A)配列は、最良のポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)である。特定の実施形態では、ポリ(A)配列は、SV40のポリA配列、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリA配列(rβgpA)、それらのバリアント、又は当該技術分野で既知の別の好適な異種又は内因性ポリA配列である。
【0318】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドを保有する細胞は、直接的な毒性及び/又は非制御増幅のリスクを低減するための誘導性自殺遺伝子をはじめとする自殺遺伝子を利用する。特定の態様では、自殺遺伝子は、ポリヌクレオチドを保有する宿主、又は細胞に対して免疫原性ではない。使用され得る自殺遺伝子のある特定の例は、カスパーゼ-9又はカスパーゼ-8又はシトシンデアミナーゼである。カスパーゼ-9は、二量体形成の特定の化学誘導物質(CID:chemical inducer of dimerization)を使用して活性化され得る。
【0319】
G.ベクター
ある特定の実施形態では、CAR及びCCRをコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターによって細胞(例えば、免疫エフェクター細胞)に導入される。特定の実施形態では、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターによって細胞に導入される。特定の実施形態では、CAR、2A自己切断ポリペプチド、及び抗CCRをコードする融合タンパク質をコードするポリシストロニックポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターによって細胞に導入される。
【0320】
「ベクター」という用語は、本明細書において、別の核酸分子を移送又は輸送することができる核酸分子を指すために使用される。移送された核酸は、一般的に、例えば、ベクター核酸分子に挿入される。ベクターは、細胞内で自己複製を指向する配列を含んでもよく、又は宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。特定の実施形態では、非ウイルスベクターを使用して、本明細書で意図される1つ以上のポリヌクレオチドをT細胞に送達する。一実施形態では、ベクターは、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージをコードするインビトロで合成又は合成的に調製されたmRNAである。
【0321】
一実施形態では、ベクターは、CAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質をコードするインビトロで合成又は合成的に調製されたmRNAである。
【0322】
非ウイルスベクターの例示的な例としては、これらに限定されないが、mRNA、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、及び細菌人工染色体が挙げられる。
【0323】
特定の実施形態に企図されるポリヌクレオチド又はベクターの非ウイルス性の送達の例示的な例としては、これらに限定されないが、エレクトロポレーション法、ソノポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、バイオリステック法、ウイロゾーム法、リポソーム法、免疫リポソーム法、ナノ粒子法、ポリカチオン又は脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA法、人工ビリオン、DEAE-デキストラン介在移送、遺伝子銃、及びヒートショックが挙げられる。
【0324】
特定の実施形態に企図される特定の実施形態での使用に好適なポリヌクレオチド送達システムの例示的な例としては、これらに限定されないが、Amaxa Biosystems,Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、及びCopernicus Therapeutics Inc.により提供されるシステムが挙げられる。リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体-認識リポフェクションに適したカチオン性脂質及び中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liu et al.(2003)Gene Therapy.10:180-187、及びBalazs et al.(2011)Journal of Drug Delivery.2011:1-12を参照されたい。抗体標的化送達、細菌誘導送達、非生物ナノセル系送達も特定の実施形態に企図される。
【0325】
様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、所望のポリペプチドを一過性に発現させるために細胞に導入されるmRNAである。本明細書で使用される場合、「一過性」とは、数時間、数日、又は数週間の期間にわたる非統合型導入遺伝子の発現を指し、発現期間は、細胞内のゲノムに組み込まれるか、又は安定的なプラスミドレプリコン内に含まれる場合、ポリヌクレオチドの発現期間よりも短い。
【0326】
特定の実施形態では、ポリペプチドをコードするmRNAは、インビトロで転写されたmRNAである。本明細書で使用される場合、「インビトロで転写されたRNA」は、インビトロで合成されたRNA、好ましくはmRNAを指す。概して、インビトロで転写されたRNAは、インビトロ転写ベクターから生成される。インビトロ転写ベクターは、インビトロ転写RNAを生成するために使用されるテンプレートを含む。
【0327】
特定の実施形態では、mRNAは、5’キャップ若しくは修飾5’キャップ、及び/又はポリ(A)配列を更に含み得る。本明細書で使用される場合、5’キャップ(RNAキャップ、RNA 7-メチルグアノシンキャップ、又はRNA m7Gキャップとも呼ばれる)は、転写開始の直後に真核性メッセンジャーRNAの「前」又は5’末端に添加された修飾グアニンヌクレオチドである。5’キャップは、第1の転写ヌクレオチドに連結され、リボソームによって認識され、RNaseから保護される末端基を含む。キャッピング部分は、翻訳の安定性又は効率など、mRNAの機能を調節するように修飾され得る。特定の実施形態では、mRNAは、約50~約5000個のアデニンのポリ(A)配列を含む。一実施形態では、mRNAは、約100~約1000塩基、約200~約500塩基、又は約300~約400塩基のポリ(A)配列を含む。一実施形態では、mRNAは、約65塩基、約100塩基、約200塩基、約300塩基、約400塩基、約500塩基、約600塩基、約700塩基、約800塩基、約900塩基、又は約1000塩基以上のポリ(A)配列を含む。ポリ(A)配列は、局在化、安定性、又は翻訳の効率などのmRNA機能を調節するために、化学的又は酵素的に修飾され得る。
【0328】
特定の実施形態に企図されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、個々の患者に投与することにより、典型的には以下に記載されるように全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内点滴)又は局所適用することによりインビボで送達され得る。あるいは、ベクターは、例えば、個々の患者から外植された細胞(例えば、動員(mobilized)された末梢血、リンパ球、骨髄吸引液、組織生検等)又はユニバーサルドナーの造血幹細胞などの細胞に生体外で送達されてもよく、その後、患者に細胞を再移植してもよい。
【0329】
一実施形態では、抗CAR及びCCRをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、インビボで細胞の形質導入のために生物に直接投与される。一実施形態では、CAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、インビボで細胞の形質導入のために生物に直接投与される。あるいは、ネイキッドDNAが投与されてもよい。投与は、これらに限定されないが、注射、注入、局所適用、及びエレクトロポレーションを含む、血液又は組織細胞との最終接触に分子を導入するために通常使用される任意の経路による。そのような核酸を投与する好適な方法は、利用可能でかつ当業者に周知であり、1つを超える経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、特定の経路は、別の経路よりもより即時的かつより有効な反応を提供し得る場合が多い。
【0330】
本明細書に企図される特定の実施形態での使用に好適なウイルスベクター系の例示的な例には、これらに限定されないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、及びワクシニアウイルスベクターが挙げられる。
【0331】
様々な実施形態では、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージをコードする1つ以上のポリヌクレオチド、又はCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質は、1つ以上のポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)で細胞を形質導入することによって、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞に導入される。
【0332】
AAVは、小さな(約26nm)複製欠損、主に、エピソーム非エンベロープで覆われたウイルスである。AAVは、分裂細胞及び非分裂細胞の両方を感染させることができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込み得る。組換えAAV(rAAV)は典型的には、最小で導入遺伝子とその制御配列、並びに5’及び3’のAAV逆位末端反復(ITR)から構成される。ITR配列は約145bpの長さである。特定の実施形態では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、又はAAV10から単離されたITR及びカプシド配列を含む。
【0333】
いくつかの実施形態では、キメラrAAVが使用される。ITR配列は、1つのAAV血清型から単離され、カプシド配列は別のAAV血清型から単離される。例えば、AAV2由来のITR配列及びAAV6由来のカプシド配列を含むrAAVは、AAV2/AAV6と呼ばれる。特定の実施形態では、rAAVベクターは、AAV2由来のITRと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9又はAAV10のうちのいずれか1つに由来するカプシドタンパク質とを含み得る。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列及びAAV6由来のカプシド配列を含む。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列及びAAV2由来のカプシド配列を含む。
【0334】
いくつかの実施形態では、操作及び選択の方法をAAVカプシドに適用して、それらが対象の細胞に形質導入される可能性を高めることができる。
【0335】
rAAVベクターの構築、その産生、及び精製は、例えば、米国特許第9,169,494号、第9,169,492号、第9,012,224号、第8,889,641号、第8,809,058号、及び第8,784,799号に開示されており、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0336】
様々な実施形態では、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージをコードする1つ以上のポリヌクレオチド、又はCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質は、レトロウイルス、例えば、1つ以上のポリヌクレオチドを含むレンチウイルスで細胞を形質導入することによって、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0337】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを直鎖2本鎖DNAコピーに逆転写し、その後、そのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有的に組み込むRNAウイルスを指す。特定の実施形態での使用に好適な例示的なレトロウイルスには、これらに限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV))、並びにレンチウイルスが含まれる。
【0338】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合レトロウイルスの群(又は属)を指す。例示的なレンチウイルスには、これらに限定されないが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス、HIV1型及びHIV2を含む)、ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス、カプリン関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、及びシミアン免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。一実施形態では、HIVを基にしたベクター骨格(すなわち、HIVシス作用配列エレメント)が好ましい。
【0339】
様々な実施形態では、本明細書に企図されるレンチウイルスベクターは、1つ以上のLTR、及び以下のアクセサリーエレメント:cPPT/FLAP、Psi(Ψ)パッケージングシグナル、輸出エレメント、ポリ(A)配列のうちの1つ以上又は全てを含み、任意選択で、本明細書において別段に検討されるように、WPRE又はHPRE、インシュレーター因子、選択マーカー、及び細胞自殺遺伝子を含み得る。
【0340】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるレンチウイルスベクターは、組み込み的、又は非組み込み、又は組み込み欠損レンチウイルスであり得る。本明細書で使用される場合、「組み込み欠損レンチウイルス」又は「IDLV」という用語は、ウイルスゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込む能力を欠いているインテグラーゼを有するレンチウイルスを指す。組み込み-インコンピテントウイルスベクターは、特許出願WO2006/010834に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0341】
インテグラーゼ活性を低減するのに好適なHIV-1 pol遺伝子における例示的な変異には、これらに限定されないが、H12N、H12C、H16C、H16V、S81R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263A、及びK264Hが挙げられる。
【0342】
一実施形態では、HIV-1インテグラーゼ欠失pol遺伝子は、D64V、D116I、D116A、E152G、若しくはE152A変異、D64V、D116I、及びE152G変異、又はD64V、D116A、及びE152A変異を含む。
【0343】
一実施形態では、HIV-1インテグラーゼ欠失pol遺伝子は、D64V変異を含む。
【0344】
「長末端反復(LTR:long terminal repeat)」という用語は、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指し、本来の配列ではLTRはダイレクトリピートであり、U3、R及びU5領域を含む。
【0345】
本明細書で使用される場合、「FLAPエレメント」又は「cPPT/FLAP」という用語は、配列が、レトロウイルス、例えば、HIV-1又はHIV-2の中央ポリプリン区域及び中央終止配列(cPPT及びCTS)を含む核酸を指す。好適なFLAPエレメントは、米国特許第6,682,907号及びZennou,et al.,2000,Cell,101:173に記載されている。別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPT及び/又はCTSエレメント中の1つ以上の変異を有するFLAPエレメントを含む。更に別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPT又はCTSエレメントのいずれかを含む。更に別の実施形態では、レンチウイルスベクターは、cPPT又はCTSエレメントを含まない。
【0346】
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」又は「パッケージング配列」という用語は、ウイルスRNAをウイルスカプシド又は粒子に挿入するのに必要とされる、レトロウイルスゲノム内に位置するpsi[Ψ]配列を指す。例えば、Clever et al.,1995.J.of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照されたい。
【0347】
「輸出エレメント」という用語は、核から細胞の細胞質へのRNA転写物の輸送を調節するシス作用性転写後調節エレメントを指す。RNA輸出エレメントの例としては、これらに限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のrev反応性エレメント(RRE)(例えば、Cullen et al.,1991.J.Virol.65:1053、及びCullen et al.,1991.Cell 58:423を参照されたい)及びB型肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(HPRE)が挙げられる。
【0348】
特定の実施形態では、ウイルスベクターにおける異種配列の発現は、転写後調節エレメント、効率的なポリアデニル化部位、及び任意選択で、転写終止シグナルをベクターに組み込むことによって増加される。様々な転写後調節エレメント、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE;Zufferey et al.,1999,J.Virol.,73:2886)、B型肝炎ウイルスに存在する転写後調節エレメント(HPRE)(Huang et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3864)、及び同様のもの(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766)は、タンパク質における異種核酸の発現を増加し得る。
【0349】
レンチウイルスベクターは、好ましくは、LTRの修飾の結果としていくつかの安全性の増強を含む。「自己不活化」(SIN:self-inactivating)ベクターとは、複製欠損ベクターを指し、例えば、右(3’)LTRエンハンサー-プロモーター領域はU3領域として知られているが、この領域が(例えば、欠失又は置換により)修飾されて、ウイルス複製の最初のラウンドを超えたウイルス転写が阻害される。追加的な安全性の増強は、5’LTRのU3領域を、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を誘導する異種プロモーターと置き換えることで提供される。使用され得る異種プロモーターの例には、例えば、ウイルス性サルウイルス40(SV40)(例えば、早期又は後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、最早期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられ得る。
【0350】
本明細書で使用される場合、「シュードタイプ」又は「シュードタイピング」という用語は、好ましい特性を有する別のウイルスのウイルスエンベロープタンパク質で置換されているウイルスエンベロープタンパク質を有するウイルスを指す。例えば、HIVは、水疱性口内炎ウイルスG-タンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質を用いてシュードタイピングされ得、これにより、HIVがより広い範囲の細胞に感染することが可能になるが、これは、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子によってコードされる)が、通常、ウイルスの標的をCD4提示細胞とするためである。
【0351】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、既知の方法により産生される。例えば、Kutner et al.,BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10、Kutner et al.Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照されたい。
【0352】
本明細書に企図されるある特定の実施形態によれば、ウイルスベクター骨格配列のほとんど又は全てが、レンチウイルス、例えば、HIV-1に由来する。しかしながら、レトロウイルス及び/若しくはレンチウイルス配列の多くの異なる源を使用することができるか、又はある特定のレンチウイルス配列の組み合わせられた多数の置換及び改変が、移入ベクターの本明細書に記載される機能を行う能力を損なうことなく適応され得ることが理解されるべきである。更に、様々なレンチウイルスベクターが当該技術分野で既知である。Naldini et al.,(1996a、1996b、及び1998)、Zufferey et al.,(1997)、Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号、及び第5,994,136号を参照されたく、それらの多くが、本明細書に企図されるウイルスベクター又はトランスファープラスミドの産生に適合され得る。
【0353】
様々な実施形態では、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージをコードする1つ以上のポリヌクレオチド、又はCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質は、1つ以上のポリヌクレオチドを含むアデノウイルスで細胞を形質導入することによって、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0354】
アデノウイルスを基にしたベクターは、多くの細胞型において極めて高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そうしたベクターを用いることで、高力価及び高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純なシステムで大量に産生され得る。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、及び/又はE3遺伝子を置き換えるように操作され、その後、トランスで欠失した遺伝子機能を供給するヒト293細胞において、複製欠損ベクターが増殖される。Adベクターは、肝臓、腎臓、及び筋肉に見出されるものなどの非分裂の分化細胞を含む複数の種類の組織をインビボで形質導入し得る。従来のAdベクターは、高い運搬能力を有する。
【0355】
複製欠損である現行のアデノウイルスベクターの生成及び増殖は、Ad5 DNA断片によってヒト胎児腎臓細胞から形質転換されて、E1タンパク質を構造的に発現する293と呼ばれる固有のヘルパー細胞株を利用し得る(Graham et al.,1977)。E3領域は、アデノウイルスゲノムには不必要であるため(Jones&Shenk,1978)、現行のアデノウイルスベクターは、293細胞を利用して、E1、D3、又は両方のいずれかの領域に外来DNAを運搬する(Graham&Prevec,1991)。アデノウイルスベクターは、真核性遺伝子発現(Levrero et al.,1991、Gomez-Foix et al.,1992)及びワクチン開発(Grunhaus&Horwitz,1992、Graham&Prevec,1992)において使用されている。組換えアデノウイルスを異なる組織に投与した研究には、気管点滴(Rosenfeld et al.,1991、Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注射(Ragot et al.,1993)、末梢静脈内注射(Herz&Gerard,1993)、及び脳内への定位接種(Le Gal La Salle et al.,1993)が含まれる。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注射での抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド療法を含んだ(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。
【0356】
様々な実施形態では、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージをコードする1つ以上のポリヌクレオチド、又はCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質は、単純ヘルペスウイルス、例えば、1つ以上のポリヌクレオチドを含むHSV-1、HSV-2で細胞を形質導入することによって、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0357】
成熟HSVビリオンは、152kbである直鎖2本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを含むエンベロープで覆われた二十面体カプシドからなる。一実施形態では、HSVを基にしたウイルスベクターは、1つ以上の必須又は非必須HSV遺伝子において欠損している。一実施形態では、HSVを基にしたウイルスベクターは、複製欠損である。ほとんどの複製欠損HSVベクターは、複製を防ぐために1つ以上の最早期、早期、又は後期HSV遺伝子を除去するための欠失を含む。例えばHSVベクターは、ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される最早期遺伝子が欠損であり得る。HSVベクターの利点は、長期間のDNA発現をもたらし得る潜伏期に入る能力、及び最大25kbの外因性DNAを収容し得るその大きなウイルスDNAゲノムである。HSVを基にしたベクターは、例えば、米国特許第5,837,532号、第5,846,782号、及び第5,804,413号、並びに国際特許出願第WO91/02788号、第WO96/04394号、第WO98/15637号、及び第WO99/06583号において記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0358】
H.遺伝子修飾された細胞
様々な実施形態では、がんの治療における使用のために、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現するように遺伝子修飾された細胞が提供される。本明細書で使用される場合、「遺伝子操作された」又は「遺伝子修飾された」という用語は、DNA又はRNAの形態の追加的な遺伝物質を、細胞中の総遺伝物質に加えることを指す。「遺伝子修飾された細胞」、「修飾細胞」、及び「再指向された細胞」という用語は、相互交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「遺伝子療法」という用語は、遺伝子の発現を回復するか、修正するか、又は修飾する細胞において、又はCAR及びCCR、若しくはCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を発現させる目的で、余剰な遺伝物質を総遺伝物質にDNA又はRNAの形態で導入することを指す。
【0359】
特定の実施形態では、CAR及びCCR、又は本明細書に企図されるCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質は、対象の標的抗原にそれらの特異性を再指向するように、免疫エフェクター細胞に導入及び発現される。「免疫エフェクター細胞」は、1つ以上のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性の細胞殺傷活性、サイトカイン分泌、ADCC及び/又はCDCの誘導など)を有する免疫系の任意の細胞である。本明細書に企図される例示的な免疫エフェクター細胞は、これらに限定されないが、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、TIL、及びヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)を含む、Tリンパ球である。特定の実施形態では、細胞は、αβ T細胞を含む。特定の実施形態では、細胞は、γδ T細胞を含む。一実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む。一実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む。
【0360】
免疫エフェクター細胞は、自己又は非自己(non-autologous)(非自己(non-self)、例えば、同種、同系、又は異種)であってもよい。本明細書で使用される場合、「自己」とは、同じ対象に由来する細胞を指す。本明細書で使用される場合、「同種」とは、比較した細胞と遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「同系」とは、比較した細胞と遺伝的に同一である、異なる対象の細胞を指す。本明細書で使用される場合、「異種」とは、比較した細胞と異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、細胞は自己である。
【0361】
特定の実施形態に企図されるCAR及びCCRと使用される例示的な免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球を含む。「T細胞」又は「Tリンパ球」という用語は、当該技術分野において認識されており、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、休止Tリンパ球、又は活性化Tリンパ球を含むよう意図される。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)又はTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)CD4+T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、又はT細胞の任意の他のサブセットであり得る。特定の実施形態での使用に好適な他の例示的なT細胞の集団としては、ナイーブT細胞(TN)、Tメモリー幹細胞(TSCM)、中央メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、及びエフェクターT細胞(TEFF)が挙げられる。
【0362】
当業者によって理解されるように、他の細胞も本明細書に企図されるCAR及びCCRを有する免疫エフェクター細胞として使用され得る。特に、免疫エフェクター細胞は、NK細胞、NKT細胞、好中球及びマクロファージも含む。免疫エフェクター細胞は、エフェクター細胞の前駆体も含み、このような前駆細胞は、インビボ又はインビトロで免疫エフェクター細胞に分化するように誘導されてもよい。したがって、特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、例えば、臍帯血、骨髄又は動員末梢血に由来する細胞のCD34+集団内に含まれる造血幹細胞(HSC)などの免疫エフェクター細胞の前駆体を含み、それらは対象に投与されたときに成熟免疫エフェクター細胞へと分化し、又はインビトロで誘導されて成熟免疫エフェクター細胞へと分化してもよい。
【0363】
本明細書で使用される場合、「CD34+細胞」という用語は、その細胞表面上にCD34タンパク質を発現する細胞を指す。本明細書で使用される場合、「CD34」とは、細胞-細胞接着因子として作用することが多く、リンパ節へのT細胞の侵入に関与する細胞表面糖タンパク質(例えば、シアロムチンタンパク質)を指す。CD34+細胞集団は、造血幹細胞(HSC)を含み、HSCは患者に投与されたときに分化し、T細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、及び単球/マクロファージ系統の細胞を含む全ての造血系に寄与する。
【0364】
本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現する免疫エフェクター細胞を作製する方法が、特定の実施形態に提供される。一実施形態では、方法は、免疫エフェクター細胞がCAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージ、又は本明細書に企図されるCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を発現するように、個体から単離された免疫エフェクター細胞をトランスフェクト又は形質導入することを含む。ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、インビトロでの更なる操作を伴わずに個体から単離され、及び遺伝子修飾される。次いで、そのような細胞を個体に直接再投与してもよい。更なる実施形態では、免疫エフェクター細胞は、CAR及びCCRを発現するように遺伝子修飾される前に、まずインビトロで増殖するように活性化され、刺激される。この点に関して、免疫エフェクター細胞は、遺伝子修飾の前及び/又は後に培養されてもよい(すなわち、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現するように形質導入又はトランスフェクトされる)。
【0365】
特定の実施形態では、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞のインビトロでの操作又は遺伝子修飾の前に、細胞源が対象から得られる。特定の実施形態では、修飾された免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。
【0366】
特定の実施形態では、PBMCは、本明細書に企図される方法を使用して、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージ、又はCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を発現するように、直接遺伝子修飾されてもよい。ある特定の実施形態では、PBMCの単離後、Tリンパ球を更に単離し、ある特定の実施形態では、細胞傷害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球の両方を、遺伝子修飾及び/又は増殖の前又は後のいずれかに、ナイーブ、メモリー、及びエフェクターT細胞亜集団に保存することができる。
【0367】
T細胞などの免疫エフェクター細胞は、既知の方法を使用して単離後に遺伝子修飾され得るか、又は遺伝子修飾される前に、インビトロで免疫エフェクター細胞を活性化及び拡張(又は前駆細胞の場合に分化)させることができる。特定の実施形態では、T細胞などの免疫エフェクター細胞は、本明細書に企図されるキメラ抗原受容体で遺伝子修飾され(例えば、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージをコードする核酸、又はCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を含むウイルスベクターで形質導入される)、その後、インビトロで活性化及び拡張される。様々な実施形態では、T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、第6,867,041号、及び米国特許出願公開第2006/0121005号に記載されるような方法を使用して、遺伝子修飾の前又は後に活性化及び拡張することができる。
【0368】
一実施形態では、CD34+細胞は、本明細書に企図される核酸構築物で形質導入される。ある特定の実施形態では、形質導入されたCD34+細胞は、概して、細胞が本来単離された対象である対象に投与後、インビボで成熟免疫エフェクター細胞に分化される。別の実施形態では、CD34+細胞は、以前に記載される方法(Asheuer et al.,2004、Imren,et al.,2004)に従って、以下のサイトカイン:Flt-3リガンド(FLT3)、幹細胞因子(SCF)、巨核球成長及び分化因子(TPO)、IL-3及びIL-6のうちの1つ以上への曝露前又はそれにより遺伝子修飾された後にインビトロで刺激されてもよい。
【0369】
特定の実施形態では、がんの治療のための修飾された免疫エフェクター細胞の集団は、本明細書に企図されるCAR及びCCRを含む。例えば、修飾された免疫エフェクター細胞の集団は、本明細書に記載されるB細胞悪性腫瘍と診断された患者(自己ドナー)から得られた末梢血単核細胞(PBMC)から調製される。PBMCは、CD4+、CD8+、又はCD4+及びCD8+であり得るTリンパ球の異種集団を形成する。
【0370】
PBMCはまた、NK細胞又はNKT細胞などの他の細胞傷害性リンパ球を含み得る。特定の実施形態に企図されるCAR及びCCRのコード配列を担持する発現ベクターは、ヒトドナーT細胞、NK細胞、又はNKT細胞集団に導入される。特定の実施形態では、発現ベクターを担持する形質導入に成功したT細胞は、フローサイトメトリーを使用して選別され、CD3陽性T細胞を単離し、次いで更に増殖されて、抗CD3抗体及び/又は抗CD28抗体、並びにIL-2を使用した細胞活性化、又は、本明細書の別に記載される当該技術分野で既知の任意の他の方法に加えて、これらのCAR及びCCR発現T細胞の数を増加させることができる。標準的な手順は、ヒト対象における使用のための保存及び/又は調製のためのT細胞の凍結保存に使用される。一実施形態では、T細胞のインビトロ形質導入、培養、及び/又は増殖は、胎児仔ウシ血清及び胎児ウシ血清などの非ヒト動物由来産物の不在下で実施される。PBMCの異種集団が遺伝子修飾されるため、結果として生じる形質導入細胞は、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージ、又は本明細書に企図されるCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む修飾された細胞の異種集団である。
【0371】
更なる実施形態では、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の異なる発現ベクターの混合物を、免疫エフェクター細胞のドナー集団を遺伝子修飾する際に使用することができ、各ベクターは、本明細書に企図される異なるキメラ抗原受容体タンパク質をコードする。結果として生じる修飾された免疫エフェクター細胞は、修飾された細胞の混合集団を形成する。
【0372】
I.T細胞製造方法
様々な実施形態では、遺伝子修飾されたT細胞は、CD3 TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤、及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとの接触によって拡張される。
【0373】
特定の実施形態では、PBMC、又は単離T細胞は、IL-2、IL-7、及び/又はIL-15などの適切なサイトカインを含む培養培地中で、可溶性抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又はビーズ若しくは他の表面上に結合された抗体などの刺激剤及び共刺激剤と接触する。
【0374】
特定の実施形態では、PBMC、又は単離T細胞は、IL-2、IL-7、及び/若しくはIL-15などの適切なサイトカイン並びに/又はPI3K阻害剤を含む培養培地中で、可溶性抗CD3抗体及び抗CD28抗体、又はビーズ若しくは他の表面上に結合された抗体などの刺激剤及び共刺激剤と接触する。
【0375】
一実施形態では、末梢血単核細胞(PBMC)は、本明細書に企図されるT細胞製造方法においてT細胞の供給源として使用される。PBMCは、CD4+、CD8+、又はCD4+及びCD8+であり得るTリンパ球の異種の集団を形成し、単球、B細胞、NK細胞、及びNKT細胞などの他の単核細胞を含み得る。CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージをコードするポリヌクレオチド、又は特定の実施形態に企図されるCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を含む発現ベクターが、ヒトドナーT細胞、NK細胞、又はNKT細胞の集団に導入される。特定の実施形態では、発現ベクターを担持する形質導入に成功したT細胞は、フローサイトメトリーを使用して選別され、CD3陽性T細胞を単離し、次いで更に増殖されて、抗CD3抗体及び/又は抗CD28抗体、並びにIL-2、IL-7、及び/又はIL-15を使用した細胞活性化に加えて、これらの修飾されたT細胞の数を増加させることができる。
【0376】
T細胞組成物の十分な治療用量を達成するために、しばしばT細胞に、1つ以上のラウンドの刺激、活性化、及び/又は拡張が行われる。T細胞は、一般的に、例えば、米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、及び第6,867,041号に記載されるように方法を使用して活性化及び拡張することができ、その各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0377】
好ましい実施形態では、本明細書に企図される方法によって製造されるT細胞は、改善された養子免疫療法組成物を提供する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本明細書に企図される特定の実施形態の方法によって製造されたT細胞組成物は、生存率の増加、分化の相対的非存在下での増殖、及びインビボでの持続性を含む、優れた特性を有すると考えられる。一実施形態では、T細胞を製造する方法は、細胞を、PI3K細胞シグナル伝達経路を調節する1つ以上の薬剤と接触させることを含む。
【0378】
特定の実施形態では、T細胞は、T細胞を刺激して活性化し、1つ以上の刺激シグナル及び任意選択でPI3K阻害剤の存在下で増殖させることによって製造される。
【0379】
次いで、T細胞は、ポリシストロニックメッセージCAR及びCCR、又はCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を発現するように修飾され得る。一実施形態では、T細胞は、CAR及びCCRをコードするポリシストロニックメッセージ、又は本明細書に企図されるCAR、2A自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を含むウイルスベクターでT細胞を形質導入することによって修飾される。ある特定の実施形態では、T細胞は、刺激及び活性化の前に修飾される。別の実施形態では、T細胞は、刺激及び活性化後に修飾される。特定の実施形態では、T細胞は、刺激及び活性化の12時間、24時間、36時間、又は48時間以内に修飾される。特定の実施形態では、T細胞は、PI3K阻害剤の存在下又は不在下で活性化、刺激、及び/又は修飾される。
【0380】
T細胞を形質導入及び/又は編集した後、細胞を培養して増殖させる。T細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、又は7日間、少なくとも2週間、少なくとも1、2、3、4、5、又は6ヵ月以上、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上のラウンドの増殖で培養されてもよい。特定の実施形態では、T細胞を培養して増殖させる。
【0381】
様々な実施形態では、T細胞組成物は、PI3K阻害剤の存在下で製造される。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、製造プロセスの刺激、活性化、及び/又は拡張期うちのいずれか1つ、それらの任意の組み合わせ、又は全ての間に、T細胞を、PI3K経路の1つ以上の阻害剤と処置又は接触させることは、若いT細胞を優先的に増加させ、それによって優れた治療用T細胞組成物を産生することになる。
【0382】
本明細書で使用される場合、「PI3K阻害剤」という用語は、核酸、ペプチド、又はPI3Kの少なくとも1つの活性に結合し、かつ阻害する小さな有機分子を指す。PI3Kタンパク質は、クラス1のPI3K、クラス2のPI3K、及びクラス3のPI3Kの3つのクラスに分けることができる。クラス1のPI3Kは、4つのp110触媒サブユニット(p110α、p110β、p110δ、及びp110γ)のうちの1つと、2つの制御サブユニットファミリーのうちの1つとからなるヘテロ二量体として存在する。PI3K阻害剤は、好ましくはクラス1のPI3K阻害剤を標的とする。一実施形態では、PI3K阻害剤は、クラス1のPI3K阻害剤の1つ以上のアイソフォームに対する選択性を示す(すなわち、p110α、p110β、p110δ、及びp110γ又はp110α、p110β、p110δ、及びp110γのうちの1つ以上に対する選択性)。別の実施形態では、PI3K阻害剤はアイソフォーム選択性を示さず、「汎PI3K阻害剤」とみなされる。一実施形態では、PI3K阻害剤は、PI3K触媒ドメインへのATPとの結合について競合する。
【0383】
ある特定の実施形態では、PI3K阻害剤は、例えば、PI3K、並びにPI3K-AKT-mTOR経路中の追加のタンパク質を標的とすることができる。特定の実施形態では、mTOR及びPI3Kの両方を標的とするPI3K阻害剤は、mTOR阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかと呼んでもよい。PI3Kのみを標的とするPI3K阻害剤は、選択的PI3K阻害剤と呼んでもよい。一実施形態では、選択的PI3K阻害剤は、経路中のmTOR及び/又は他のタンパク質に関して、阻害剤のIC50よりも少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、又はそれ以上低い、PI3Kに関して50%の阻害濃度を示す薬剤を指すと理解され得る。
【0384】
特定の実施形態では、例示的なPI3K阻害剤は、約200nM以下、好ましくは約100nm以下、更により好ましくは約60nM以下、約25nM、約10nM、約5nM、約1nM、100μM、50μM、25μM、10μM、1μM以下であるIC50(活性の50%を阻害する濃度)でPI3Kを阻害する。一実施形態では、PI3K阻害剤は、約2nM~約100nm、より好ましくは約2nM~約50nM、更により好ましくは約2nM~約15nMのIC50を用いてPI3Kを阻害する。
【0385】
特定の実施形態に企図されるT細胞製造方法での使用に好適なPI3K阻害剤の例には、これらに限定されないが、BKM120(クラス1 PI3K阻害剤、Novartis)、XL147(クラス1 PI3K阻害剤、Exelixis)、(汎PI3K阻害剤、GlaxoSmithKline)、及びPX-866(クラス1 PI3K阻害剤、p110α、p110β、及びp110γアイソフォーム、Oncothyreon)が含まれる。
【0386】
選択的PI3K阻害剤のその他の例示的な例としては、これらに限定されないが、BYL719、GSK2636771、TGX-221、AS25242、CAL-101、ZSTK474、及びIPI-145が挙げられる。
【0387】
汎PI3K阻害剤の更なる例示的な例としては、これらに限定されないが、BEZ235、LY294002、GSK1059615、TG100713、及びGDC-0941が挙げられる。
【0388】
好ましい実施形態では、PI3K阻害剤はZSTK474である。
【0389】
特定の実施形態では、操作されたT細胞受容体を発現するT細胞の増殖を増加させる方法が提供される。そのような方法は、例えば、対象からT細胞源を採取すること、T細胞を刺激及び活性化すること、CAR及びCCRを発現するためのT細胞の修飾、並びに培地においてT細胞を拡張することを含み得、T細胞は、製造プロセスのより多くのステップのうちのいずれか1つにおいて1つ以上のPI3K阻害剤の存在下で製造される。
【0390】
本明細書に企図される製造方法は、ヒト対象における使用のための保存及び/又は調製のための修飾されたT細胞の凍結保存を更に含んでもよい。一実施形態では、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞を保存する方法は、細胞を解凍時に生存可能なままにするように、免疫エフェクター細胞を凍結保存することを含む。T細胞は、解凍時に細胞が生存し続けるように凍結保存される。必要に応じて、凍結保存され、形質転換した細胞を解凍し、増殖させ、より多くのそのような細胞に対して拡張させることができる。本明細書で使用される場合、「凍結保存」とは、(典型的には)77K又は-196℃(液体窒素の沸点)など、ゼロ以下の温度に冷却することによって細胞を保存することを指す。凍結保存剤は、保存されている細胞を低温での凍結又は室温への加熱により損傷しないように、ゼロ以下の温度で使用されることが多い。凍結保存剤及び最適な冷却速度は、細胞損傷から保護することができる。使用され得る凍結保護剤としては、これらに限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Lovelock and Bishop,Nature,1959;183:1394-1395、Ashwood-Smith,Nature,1961;190:1204-1205)、グリセロール、ポリビニルピロリジン(Rinfret,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1960;85:576)、及びポリエチレングリコール(Sloviter and Ravdin,Nature,1962;196:48)が含まれる。好ましい冷却速度は、1℃~3℃/分である。少なくとも2時間後、T細胞は、-80℃の温度に達し、長期低温貯蔵容器など、永久保存のために液体窒素(-196℃)に直接配置することができる。
【0391】
J.組成物及び製剤
特定の実施形態では、薬学的に許容される担体溶液の製剤は、当該技術分野で周知であり、例えば、腸内及び非経口、例えば、血管内、静脈内、動脈内、骨内、脳室内、大脳内、頭蓋内、髄腔内、クモ膜下腔内、及び髄内の投与並びに製剤を含む様々な治療レジメンにおける、本明細書に記載される特定の組成物の使用に関する好適な投薬レジメン及び治療レジメンの開発も同様である。当業者であれば、本明細書に企図される特定の実施形態は、例えば、薬学分野で周知であり、かつ例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II.22nd Edition.Edited by Loyd V.Allen Jr.Philadelphia,PA:Pharmaceutical Press;2012に記載される製剤などの他の製剤を含み得ることを理解するであろう。
【0392】
本明細書に企図される組成物は、本明細書に企図される1つ以上のCARポリペプチド、CCRポリペプチド、ポリヌクレオチド、それを含むベクター、遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞などを含み得る。組成物としては、これに限定されないが、薬学的組成物が挙げられる。好ましい実施形態では、組成物は、CAR及びCCRを発現するように修飾された1つ以上の細胞;CAR、自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質;又はCAR、自己切断ポリペプチド、及びCCRをコードする融合タンパク質を含む。
【0393】
「薬学的組成物」とは、細胞又は動物への投与に対し、薬学的に許容される溶液又は生理学的に許容される溶液中で、単独で、又は1つ以上の他の治療モダリティと併用されて製剤化される組成物を指す。所望の場合には、組成物は、例えば、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、低分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬剤、抗体、又は他の様々な薬学的に活性な剤などの他の剤も同様に併用されて投与され得ることも理解されたい。事実上、組成物に含まれ得る他の構成要素に制限はないが、追加される剤は、意図される療法を送達する組成物の能力に有害な影響を与えないものとする。好ましい実施形態では、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、並びにCAR及びCCR、又はCAR及びCCRをコードする融合タンパク質を発現するように修飾された1つ以上の細胞を含む。
【0394】
本明細書において、「薬学的に許容される」という文言は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比に見合った、それら化合物、物質、組成物及び/又は剤型を指すために採用される。
【0395】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤」は、限定するものではないが、ヒト又は家畜での使用に許容されるものとして米国食品医薬品局によって承認されている、アジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、又は乳化剤を含む。例示的な薬学的に許容される担体としては、これらに限定されないが、ラクトース、グルコース、及びショ糖などの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのその誘導体;トラガカンス;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物及び植物性脂肪、パラフィン、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウレートエチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに薬学的製剤に用いられる任意の他の適合物質が挙げられる。
【0396】
特定の実施形態では、組成物は、本明細書に企図されるCAR及びCCR発現免疫エフェクター細胞の量を含む。本明細書で使用される場合、「量」という用語は、臨床結果を含む、有益又は所望の予防又は治療結果を達成するために、遺伝子修飾された治療用細胞、例えば、T細胞などの「有効な量」又は「有効量」を指す。
【0397】
「予防的有効量」は、所望の予防的結果を達成するために有効な遺伝子修飾された治療用細胞の量を指す。必ずではないが典型的には、予防的投与量は、疾患の早期ステージの前、又は早期ステージの対象において使用されるため、予防的有効量は、治療有効量よりも少ない。
【0398】
遺伝子修飾された治療用細胞の「治療有効量」は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの因子、並びに個体において所望の応答を引き出す幹細胞及び前駆細胞の能力に応じて変化し得る。治療有効量はまた、ウイルス又は形質導入された治療用細胞の任意の毒性又は有害な影響を、治療上有益な効果が上回るものである。「治療有効量」という用語は、対象(例えば、患者)を「治療する」のに有効な量を含む。治療的な量が示されている場合、投与される組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染又は転移の程度、及び状態における個々の差を考慮し、医師により決定され得る。
【0399】
一般的に、本明細書に記載されるT細胞を含む薬学的組成物は、102~1010細胞/体重kg、好ましくは105~106細胞/体重kgの用量で、その範囲内の全ての整数値を含み、投与され得ると言える。細胞数は、組成物の意図される最終用途、組成物中に含まれる細胞のタイプに依存する。本明細書において提示される用途に関し、細胞は一般的に、リットル以下の量であり、500mL以下、更には250mL又は100mL以下であり得る。ゆえに所望される細胞の密度は、多くの場合、106細胞/ml超であり、一般的には、107細胞/ml超、一般的には108細胞/ml以上である。臨床的に関連する免疫細胞数は、複数回の点滴に分けられてもよく、累積的には105、106、107、108、109、1010、1011又は1012細胞以上となる。いくつかの態様では、具体的には注入される全細胞は特定の標的抗原へと再指向されるため、106/キログラム(患者当たり106~1011)の範囲の少ない数の細胞が投与される場合がある。組成物は、これらの範囲内の用量で複数回投与されてもよい。細胞は、療法を受けている患者にとって同種、同系、異種、又は自己であってもよい。望ましい場合、治療は、本明細書に記載されるようにマイトージェン(例えば、PHA)又はリンホカイン、サイトカイン及び/若しくはケモカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-アルファ、IL-18、及びTNF-ベータ、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与も含み、免疫反応の誘導を強化してもよい。
【0400】
一般的に、本明細書に記載されるように活性化及び拡張された細胞を含む組成物は、免疫不全状態の個体で生じる疾患の治療及び予防に活用されてもよい。特定の実施形態では、CAR及びCCRを発現するように修飾された免疫エフェクター細胞、又は本明細書に企図されるCAR及びCCRをコードする融合タンパク質を含む組成物は、がんの治療に使用される。修飾された免疫エフェクター細胞は、単独で投与されてもよく、又は担体、希釈剤、賦形剤を併用した薬学的組成物として、及び/又は例えばIL-2若しくは他のサイトカイン若しくは他の細胞集団などの他の構成要素を併用した薬学的組成物として投与されてもよい。特定の実施形態では、薬学的組成物は、遺伝子修飾されたT細胞の量を、1つ以上の薬学的若しくは生理学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と併用して含む。
【0401】
CAR及びCCRを発現するように修飾された免疫エフェクター細胞集団、又はT細胞などのCAR及びCCRをコードする融合タンパク質を含む薬学的組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチド又はグリシンなどのアミノ酸;抗酸化物質;EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);防腐剤を含み得る。組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内又は動脈内)腹腔内又は筋肉内投与のために製剤化されることが好ましい。
【0402】
液体薬学的組成物は、溶液、懸濁液、又は他の類似の形態であるかどうかにかかわらず、以下:注射用水、生理食塩水、好ましくは生理食塩液、リンガー液、等張食塩水、溶媒又は懸濁媒として役立ち得る合成モノ又はジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化物質;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張性の調整のための薬剤、のうちの1つ以上を含み得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、又はガラス若しくはプラスチックで作製された複数回用量バイアルに封入され得る。注射用薬学的組成物は、滅菌であることが好ましい。
【0403】
一実施形態では、本明細書に企図されるT細胞組成物は、薬学的に許容される細胞培養培地中で製剤化される。そのような組成物は、ヒト対象への投与に好適である。特定の実施形態では、薬学的に許容される細胞培養培地は、無血清培地である。
【0404】
無血清培地は、血清含有培地を超える利点をいくつか有しており、単純でより明確な組成物、汚染物質量の低下、感染性実体の源となる可能性の排除、及びコスト低下が挙げられる。様々な実施形態では、無血清培地は、動物質を含まず、任意で無タンパク質であってもよい。任意選択で、培地はバイオ医薬品的に受容可能な組換えタンパク質を含み得る。「動物質を含まない」培地とは、構成要素が非動物源に由来する培地を指す。組換えタンパク質は、動物質を含まない培地中で天然動物性タンパク質を置き換え、その栄養素は合成、植物又は微生物の源から得られる。「タンパク質を含まない」培地は、対照的に、実質的にタンパク質を含まないと規定される。
【0405】
特定の組成物において使用される無血清培地の例示としては限定されないが、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies)、及びX-VIVO 10が挙げられる。
【0406】
好ましい一実施形態では、本明細書に企図される免疫エフェクター細胞を含む組成物は、PlasmaLyte Aを含む溶液中で製剤化される。
【0407】
別の好ましい実施形態では、本明細書に企図される免疫エフェクター細胞を含む組成物は、凍結保存媒体を含む溶液中で製剤化される。例えば、凍結保存剤を含む凍結保存培地を使用して、融解後の高い細胞活性成績を維持してもよい。特定の組成物において使用される凍結保存培地の例示としては、これらに限定されないが、CryoStor CS10、CryoStor CS5、及びCryoStor CS2が挙げられる。
【0408】
より好ましい実施形態では、本明細書に企図される免疫エフェクター細胞を含む組成物は、CryoStor CS10に対してPlasmaLyte Aを50:50で含む溶液中で製剤化される。
【0409】
特定の実施形態では、組成物は、CAR及びCCRを発現するように修飾された有効量の免疫エフェクター細胞、又はCAR及びCCRをコードする融合タンパク質を、単独で又は1つ以上の治療剤と組み合わせて含む。したがって、CAR発現免疫エフェクター細胞組成物は、単独で、又は放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光力学的療法などの他の既知のがん治療と組み合わせて投与されてもよい。組成物は、抗生物質と併用して投与されてもよい。そのような治療剤は、例えば、特定のがんなどの本明細書に記載の特定の疾患状態に対する標準治療として当該技術分野において承認されている場合がある。企図される治療剤の例としては、特定の実施形態では、サイトカイン、成長因子、ステロイド、NSAID、DMARD、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法、治療用抗体、又は他の活性で補助的な剤が挙げられる。
【0410】
ある特定の実施形態では、CAR及びCCRを発現するように修飾された免疫エフェクター細胞、又はCAR及びCCRをコードする融合タンパク質を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与され得る。
【0411】
様々な他の治療剤が、本明細書に記載される組成物と併せて使用されてもよい。一実施形態では、免疫エフェクター細胞、CAR及びCCR、又はCAR及びCCRをコードする融合タンパク質を含む組成物は、抗炎症剤とともに投与される。
【0412】
一実施形態では、免疫エフェクター細胞、CAR及びCCR、又はそれらをコードする融合タンパク質を含む組成物は、治療用抗体とともに投与される。特定の実施形態に企図されるCAR修飾T細胞との併用に好適な治療用抗体の例示的な例としては、これらに限定されないが、アテゾリズマブ、アベルマブ、バビツキシマブ、ベバシズマブ(アバスチン)、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、コナツムマブ、クリゾチニブ、ダラツムマブ、デュリゴツマブ(duligotumab)、ダセツズマブ、ダロツズマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ(HuLuc63)、ゲムツズマブ、イブリツモマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、イピリムマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、ミラツズマブ、モキセツモマブ、ニボルマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、ペムブロリズマブ、リツキシマブ、シルツキシマブ、テプロツムマブ、及びウブリツキシマブが挙げられる。
【0413】
K.治療方法
本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現する遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞は、がんの予防、治療、及び改善に使用される、又はがんに関連する少なくとも1つの症状の予防、治療、又は改善に使用される養子免疫治療の改善された方法を提供する。
【0414】
様々な実施形態では、本明細書に企図される遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞は、対象においてがん細胞における細胞傷害性を増加させる、又は対象においてがん細胞の数の減少に使用される養子免疫治療の改善された方法を提供する。
【0415】
特定の実施形態では、一次免疫エフェクター細胞の特異性は、本明細書に企図されるCAR及び/又はCCRで一次免疫エフェクター細胞を遺伝子修飾することによって、特定の抗原を発現する細胞、例えば、がん細胞に再指向される。様々な実施形態では、ウイルスベクターを使用して、CAR及びCCRをコードする特定のポリヌクレオチドを有する免疫エフェクター細胞を遺伝子修飾する。
【0416】
一実施形態では、T細胞が、がん細胞を発現する特定の抗原を標的とするCAR及び/又はCCRを発現するように遺伝子修飾され、T細胞をそれを必要とするレシピエントに注入されるある種の細胞療法が提供される。注入された細胞は、レシピエントにおいて疾患を引き起こす細胞を死滅させることができる。抗体療法とは異なり、T細胞療法は、インビボで複製することができ、その結果、持続的ながん治療をもたらすことができる長期持続性をもたらす。
【0417】
一実施形態では、CAR及びCCRを発現するT細胞は、強固なインビボT細胞増殖を経ることができ、長期間持続することができる。別の実施形態では、CAR及びCCRを発現するT細胞は、任意の追加の腫瘍形成又は増殖を阻害するために再活性化され得る特異的メモリーT細胞又は幹細胞メモリーT細胞へと進化する。
【0418】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、状態関連特定の抗原発現がん細胞又はがん幹細胞の治療に使用される。
【0419】
CAR及びCCRを発現する免疫エフェクター細胞を使用して、治療、予防、又は改善され得る状態の例示的な例が特定の実施形態に企図される。
【0420】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現するT細胞を含む組成物は、骨肉腫又はユーイング肉腫の治療に使用される。
【0421】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現するT細胞を含む組成物は、液性がん又は血液がんの治療に使用される。
【0422】
ある特定の実施形態では、液性がん又は血液がんは、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。
【0423】
ある特定の実施形態では、液性がん又は血液がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、ヘアリー細胞白血病(HCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、及び真性多血症、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、菌状息肉症、未分化大細胞リンパ腫、セザリー症候群、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、明白な多発性骨髄腫、くすぶっている多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、及び髄外形質細胞腫からなる群から選択される。
【0424】
特定の実施形態では、液性がん又は血液がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される。
【0425】
好ましい実施形態では、液性がん又は血液がんは、DLBCLである。
【0426】
好ましい実施形態では、液性がん又は血液がんは、再発性/難治性DLBCLである。
【0427】
特定の実施形態では、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現する治療有効量の免疫エフェクター細胞、又はそれを含む組成物を、それを必要とする患者に、単独で、又は1つ以上の治療剤と組み合わせて投与することを含む方法が提供される。ある特定の実施形態では、細胞は、がん細胞と関連する病態を発症するリスクがある患者の治療に使用される。したがって、特定の実施形態では、がんの少なくとも1つの症状を治療又は予防又は改善する方法は、本明細書に企図されるCAR及びCCRを発現する治療有効量の修飾されたT細胞をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0428】
本明細書で使用される場合、「個体」及び「対象」という用語は、しばしば相互交換可能に使用され、本明細書において他の場所で企図される遺伝子療法ベクター、細胞系治療剤、及び方法で治療され得る疾患、傷害又は病の症状を呈する任意の動物を指す。好ましい実施形態では、対象は、遺伝子療法ベクター、細胞系治療剤、及び本明細書の他の場所で企図される方法を用いて治療することができる、がんに関連する疾患、傷害、又は病態の症状を呈する任意の動物を含む。適切な対象(例えば、患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ又はモルモット)、家畜(farm animal、domestic animal)、又はペット(例えば、ネコ又はイヌ)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者も含まれる。典型的な対象としては、がん若しくはがんと診断された、又はそのリスクのある、又はがんを有するヒト患者が挙げられる。
【0429】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、遺伝子療法ベクター、細胞系治療剤、及び本明細書の他の場所で開示される方法を用いて治療され得る特定の疾患、傷害又は病態と診断された対象を指す。
【0430】
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」又は「治療すること(treating)」には、疾患又は病態の症状若しくは病理に対する、あらゆる有益な作用又は望ましい作用を含み、治療される疾患又は状態の1つ以上の測定可能なマーカーの最小の低減さえも含み得る。治療には、任意で、疾患若しくは病態の減少、又は疾患若しくは病態の進行の遅延のいずれかが含まれてもよい。「治療」は必ずしも、疾患若しくは状態、又はその関連症状の完全な排除又は治癒を示すものではない。
【0431】
本明細書で使用される場合、「予防する」、及び例えば「予防される」、「予防すること」といった類似の文言は、疾患若しくは状態の予防、阻害、又は発生若しくは再発の可能性の低下を目的としたアプローチを示す。更に、疾患若しくは状態の発生又は再発の遅延、又は疾患若しくは状態の症状の発生又は再発の遅延も指す。本明細書において使用される場合、「予防」及びその類似文言も、疾患若しくは症状の発生又は再発の前の、疾患若しくは状態の強度、作用、症状、及び/又は負荷量の低下を含む。
【0432】
本明細書で使用される場合、「~の少なくとも1つの症状の改善」とは、対象が治療される疾患若しくは状態の1つ以上の症状の減少を指す。特定の実施形態では、治療される疾患又は状態は、がんであり、この場合において改善される1つ以上の症状としては限定されないが、脱力、疲労、息切れ、あざができやすい、及び出血しやすい、頻発する感染、リンパ節の拡張、腹部膨張又は腹部疼痛(膨張した腹部臓器が原因)、骨又は関節の疼痛、骨折、予期せぬ体重減少、食欲低下、寝汗、持続性の微熱、及び排尿減少(腎機能の障害が原因)が挙げられる。
【0433】
「増強する」、又は「促進する」、又は「増加する」、又は「拡張する」とは概して、本明細書に企図される組成物、例えば、CAR及びCCRを発現する遺伝子修飾されたT細胞が、ビヒクル又は対照の分子/組成物による反応と比較して、より大きな生理学的反応(すなわち、下流効果)をもたらす、誘発する、又は発生させる能力を指す。測定可能な生理学的反応としては特にT細胞の拡張、活性化、持続性、及び/又はがん細胞殺傷能力の増加が挙げられ、当該技術分野及び本明細書の記載の理解から明白である。「増加した」又は「強化された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクル又は対照組成物によりもたらされる反応の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30又はそれ以上(例えば、500倍、1000倍)(その間及び1を超える全ての整数及び小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である増加を含む場合がある。
【0434】
「減少する」、又は「下げる」、又は「低める」、又は「低減する」、又は「弱める」とは概して、本明細書に企図される組成物が、ビヒクル又は対照の分子/組成物による反応と比較して、小さな生理学的反応(すなわち下流効果)をもたらす、誘発する、又は発生させる能力を指す。「減少」又は「低減した」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクル、対照組成物によりもたらされる反応、又は特定の細胞株での反応の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30又はそれ以上(例えば、500倍、1000倍)(その間及び1を超える全ての整数及び小数点を含む、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である減少を含む場合がある。
【0435】
「維持する」、又は「保存する」、又は「維持」、又は「変化がない」、又は「実質的な変化がない」、又は「実質的な減少が無い」とは概して、本明細書に企図される組成物が、ビヒクル、対照の分子/組成物により生じた反応、又は特定の細胞株での反応と比較して、細胞において類似した、又は同等の生理学的反応(すなわち、下流効果)をもたらす、惹起させる、又は生じさせる能力を指す。同等の反応は、基準反応と実質的に違わない、又は測定可能な程度に違わない反応である。
【0436】
一実施形態では、がんを治療することを必要とする対象においてそれを治療する方法は、有効量、例えば、治療有効量の本明細書に企図される遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞を含む組成物を投与することを含む。投与の量並びに頻度は、患者の状態、患者の疾患のタイプ及び重大度といった因子により決定されるが、適切な用量は、臨床試験により決定されてもよい。
【0437】
一実施形態では、対象に投与される組成物中の免疫エフェクター細胞、例えば、CAR及びCCRを発現するT細胞の量は、少なくとも0.1×10細胞、少なくとも0.5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも0.5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも0.5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも0.5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも2×10細胞、少なくとも3×10細胞、少なくとも4×10細胞、少なくとも5×10細胞、又は少なくとも1×1010細胞である。
【0438】
特定の実施形態では、約1×10T細胞~約1×10T細胞、約2×10T細胞~約0.9×10T細胞、約3×10T細胞~約0.8×10T細胞、約4×10T細胞~約0.7×10T細胞、約5×10T細胞~約0.6×10T細胞、又は約5×10T細胞~約0.5×10T細胞が対象に投与される。
【0439】
一実施形態では、対象に投与される組成物中の免疫エフェクター細胞、例えば、CAR及びCCRを発現するT細胞の量は、少なくとも0.1×10細胞/kg体重、少なくとも0.5×10細胞/kg体重、少なくとも1×10細胞/kg体重、少なくとも5×10細胞/kg体重、少なくとも1×10細胞/kg体重、少なくとも0.5×10細胞/kg体重、少なくとも1×10細胞/kg体重、少なくとも0.5×10細胞/kg体重、少なくとも1×10細胞/kg体重、少なくとも0.5×10細胞/kg体重、少なくとも1×10細胞/kg体重、少なくとも2×10細胞/kg体重、少なくとも3×108細胞/kg体重、少なくとも4×10細胞/kg体重、少なくとも5×10細胞/kg体重、少なくとも1×10細胞/kg体重である。
【0440】
特定の実施形態では、約1×10T細胞/kg体重~1×10T細胞/kg体重、約2×10T細胞/kg体重~0.9×10T細胞/kg体重、3×10T細胞/kg体重~約0.8×10T細胞/kg体重、約4×10T細胞/kg体重~約0.7×10T細胞/kg体重、約5×10T細胞/kg体重~約0.6×10T細胞/kg体重、又は約5×10T細胞/kg体重~約0.5×10T細胞/kg体重が対象に投与される。
【0441】
当業者であれば、所望の治療効果を発揮させるために、本明細書に企図される組成物の複数回の投与が必要とされる場合があることを認識するであろう。例えば、組成物は、1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、1年、2年、5年、10年、又はそれ以上の期間にわたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上投与されてもよい。
【0442】
ある特定の実施形態では、対象に活性化された免疫エフェクター細胞が投与され、次いで対象から採血して(又はアフェレーシス療法を実施し)、それに由来する免疫エフェクター細胞を活性化し、これら活性化及び拡張された免疫エフェクター細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週ごとに複数回実施されてもよい。ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、10cc~400ccの採血から活性化されてもよい。ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、100cc、150cc、200cc、250cc、300cc、350cc、又は400cc以上の採血から活性化される。理論には拘束されないが、複数回の採血/複数回の再注入のプロトコルを使用することで、免疫エフェクター細胞のある群の選択に役立つ場合がある。
【0443】
本明細書に企図される組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植、又は移植を含む、任意の都合の良い方法で実施され得る。好ましい実施形態では、組成物は非経口的に投与される。本明細書で使用される場合、「非経口投与」及び「非経口的に投与」という語句は、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を指し、通常は注射によって、限定されるものではないが、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内の、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。一実施形態では、本明細書に企図される組成物は、腫瘍、リンパ節、又は感染部位への直接注射によって対象に投与される。
【0444】
一実施形態では、対象のB細胞関連状態に対する細胞性免疫反応を増加させる有効量の組成物がそれを必要とする対象に投与される。免疫応答は、感染細胞を殺傷することができる細胞傷害性T細胞、制御T細胞、ヘルパーT細胞応答によって媒介される細胞免疫応答を含んでもよい。主にB細胞を活性化することができるヘルパーT細胞によって媒介され、したがって抗体産生をもたらす液性免疫応答も誘発され得る。様々な技術を使用して、組成物によって誘導される免疫応答のタイプを分析することができ、当該技術分野、例えば、Current Protocols in Immunology,Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober(2001)John Wiley&Sons,NY,N.Y.に十分に説明されている。
【0445】
一実施形態では、対象から免疫エフェクター細胞を除去することと、本明細書に企図されるCAR及びCCRをコードする核酸を含むベクターで当該免疫エフェクター細胞を遺伝子修飾して、それによって、修飾された免疫エフェクター細胞の集団を産生することと、修飾された免疫エフェクター細胞の集団をその対象に投与することとを含む、がんと診断された対象を治療する方法が提供される。好ましい実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。
【0446】
ある特定の実施形態では、対象において標的細胞集団に対する免疫エフェクター細胞媒介性免疫調節因子応答を刺激する方法が提供され、方法は、CAR及びCCRをコードする核酸構築物を発現する免疫エフェクター細胞集団を対象に投与するステップを含む。
【0447】
特定の実施形態に企図される細胞組成物を投与する方法は、対象においてCAR及びCCRを直接的に発現するか、又は対象に導入するときにCAR及びCCRを発現する成熟免疫エフェクター細胞に分化する免疫エフェクター細胞の遺伝子修飾された前駆体を再導入するかのいずれかである、エクスビボで遺伝子修飾された免疫エフェクター細胞の再導入をもたらすのに効果的である任意の方法を含む。1つの方法は、本明細書に企図される核酸構築物を用いてエクスビボで末梢血T細胞を形質導入することと、形質導入細胞を対象に戻すこととを含む。
【0448】
L.配列表
【表3-1】
【表3-2】
【0449】
本明細書に引用される全ての公表文献、特許出願及び登録特許が、個々の公表文献、特許出願又は登録特許のそれぞれが具体的に、及び個々に参照により組み込まれることが示されているように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0450】
前述の実施形態は、明確性及び理解を目的として、図及び実施例により詳細に記載されているが、本明細書に企図される教示に照らし、特定の変化及び改変が、添付の請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく実施され得ることが当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、説明の目的のみで提供され、限定の目的で提供されるものではない。当業者であれば、本質的に類似した結果をもたらすために変更又は修正され得る様々な非臨界パラメータを容易に認識するであろう。
【実施例
【0451】
実施例1
CCR抗原単独の存在下でのT細胞シグナル伝達の活性化
T細胞をレンチウイルス形質導入を使用して修飾し、CAR分子又はCAR及びCCR(CAR/CCR)分子のいずれかをコードする構築物を送達した。CAR構築物は、4-1BB及びCD3zシグナル伝達ドメイン(BBz)に融合した抗BCMA scFvを発現した。CAR+CCR構築物は、CD28シグナル伝達ドメインCCRに融合したBBz抗BCMA CAR及び抗EGFR scFvを発現し、それはCCRを形成した。CAR+CCR構築物内のCAR及びCCR配列を、2Aリボソームスキッピングエレメントを使用して分離した。
【0452】
次いで、修飾されたT細胞を、内因性BCMA発現を欠くEGFR+HT-1080腫瘍細胞株と共培養した。図1Aでは、培養上清を24時間後に収集し、IFNγ産生をLuminexアッセイにより評価した。図1Aに示されるように、非修飾T細胞(UTD)又は抗BCMA CAR T細胞は、抗原曝露の不在下でIFNγ分泌し損ねた。一方で、CAR+CCR T細胞は、EGFRにのみ曝露されているにもかかわらず、検出可能な量のIFNγを産生した。
【0453】
同様に、図1Bでは、CAR+CCR T細胞のみが、標準的な4時間のインビトロ殺傷/細胞傷害性アッセイ中に、用量依存的様式でEGFR+腫瘍標的を殺傷することができた。
【0454】
実施例2
CCR依存性シグナル伝達は腫瘍体積を低減する
免疫不全NSGマウスに、内因性にEGFRを発現するがBCMA発現を欠くヒトA549腫瘍細胞を皮下移植した。移植の約20日後、マウスを非修飾T細胞(UTD)、抗BCMA CAR T細胞、又は抗BCMA CAR+抗EGFR CCR T細胞で処置し、腫瘍体積を評価した。図2に示されるように、非形質導入又は抗BCMA CAR T細胞のいずれも腫瘍増殖を制御することができず、最終的にはそれらのマウスは腫瘍形成に屈した。あるいは、抗BCMA CAR+抗EGFR CCR T細胞で処置されたマウスは、研究期間中、完全な腫瘍退縮を示した。
【0455】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、図3は、CAR及びCCRを与えられたT細胞が、CAR抗原を欠いたまま、CCR抗原を発現する腫瘍標的細胞にどのように反応することができるかを説明する、3つの例示的で非限定的なモデルを示す。CCRは、CCR抗原と結合することができ、その後、CAR分子とは無関係のシグナルを形質導入することができる(図3、左パネル)。CD3zによる抗原非依存性基底CARシグナル伝達は、CCR共刺激シグナルによって、標準的なインビトロ実験によって今や検出可能であり、かつインビボで腫瘍対照として現れるレベルにまで増強される(図3、左パネル)。CAR分子とCCR分子との間の分子相互作用は、CCR抗原を介したCCRの結合がシグナル伝達を開始し、T細胞活性化を誘発するように存在する。
【0456】
実施例3
CAR及びCCRヒンジ変異は、CAR T細胞シグナル伝達を調節する
実験は、CAR及びCCRのCD8aヒンジ領域中の4つのシステインのうちのいずれか1つ(CAR中の2つ、及びCCR中の2つ)が、2つの異なるタンパク質間の分子相互作用に関与しているかどうかを試験するために設計した。CAR又はCCRのいずれかのCD8aヒンジの289及び306位(配列番号2の27及び44位に対応)におけるシステイン及びセリンの使用において変化した6つの異なるCAR+CCR構築物が生成され、T細胞に形質導入された。C1は、システインを4つの位置全てで利用する親CAR+CCR構築物である。C2は、CAR中に2つのセリン、及びCCR中に2つのシステインを含む。C3は、CAR中に2つのシステイン、及びCCR中に2つのセリンを含む。C4は、CARの配列番号2の27位にセリン、及び配列番号2の44位にシステイン、並びにCCRの配列番号2の27位にシステイン、及び配列番号2の44位にセリンを含む。C5は、CARの配列番号2の27位にシステイン、及び配列番号2の44位にセリン、並びにCCRの配列番号2の27位にセリン、及び配列番号2の44位にシステインを含む。C6は、4つの位置全てでセリンを利用する。
【0457】
T細胞を、上に記載される6つの構築物並びに2つの対照:配列番号2の27及び44位でシステインをセリンで置き換える抗BCMA BBz CAR及び抗BCMA CARのバリアントを用いて修飾した。次いで、各T細胞の状態を、EGFRのみを発現する様々な腫瘍細胞(A549及びHT-1080)、又はBCMA及びEGFRの両方を発現する腫瘍細胞(A549.BCMA及びHT-1080.BCMA)のいずれかで共培養した。IFNγ産生を24時間後に評価した。図4A~4Cに示されるように、対照抗BCMA CAR T細胞は、BCMA発現腫瘍細胞の存在下で培養されたときにのみサイトカインを産生した。抗BCMA CAR中の配列番号2の27及び44位にセリンを導入することは、BCMA発現腫瘍細胞で培養したときにIFNγ産生の低減をもたらした。親CAR+CCR構築物(C1)を発現するように操作されたT細胞は、BCMA及びEGFR、又はEGFRのみのいずれかを発現する腫瘍細胞に応答した。これらの実験で使用された他のCAR+CCRバリアントのいずれも、EGFRのみを発現する腫瘍細胞に対する完全な反応性を保持することができなかった。興味深いことに、構築物C4は、EGFR発現腫瘍細胞に対する部分応答性を呈する唯一のバリアントであった。まとめると、これらのデータは、CAR/CCR分子相互作用を媒介することにおけるヒンジシステインの重要性を示す。
【0458】
実施例4
CAR及びCCR融合ポリペプチドの設計及び発現。
図5Aは、抗EGFR CCR、2つのシステインからセリンへの変異を含む抗EGFR CCR、及び対応するCAR+CCR構築物(それぞれC1及びC3)の構築に使用されるモジュラータンパク質ドメインを示す。C3は、配列番号2の27及び44位に対応するCD8aヒンジ内のシステインの代わりにセリンを有する抗BCMA CAR及び抗EGFR CCRをコードする構築物である。C1は、CAR及びCCR中に存在する4つのシステイン全てを有する親CAR+CCR構築物である。
【0459】
これらの構築物の各々を、3つの異なるドナーからのT細胞に形質導入し、フローサイトメトリーを使用して、CAR又はCCRのいずれかを発現しないUTD対照と比較して、CAR及びCCRの両方の細胞表面発現を評価した。図5Bに示されるように、配列番号2の27及び44位におけるセリンの存在は、CCRのみの構築物の全体的な形質導入効率に影響を与えない。同様に、C1又はC3構築物で形質導入されたT細胞は、細胞表面上のCAR及びCCRの両方の発現をもたらす。CCRの両位置にセリンが存在するにもかかわらず、形質導入効率への影響はない。
【0460】
実施例5
CCRヒンジ二重変異は、CAR抗原の不在下のT細胞活性化を低減する
実施例4に記載される構築物で形質導入されたT細胞を、CCR、EGFRに対する抗原を発現するのみのA549又はHT-1080腫瘍細胞で共培養し、24時間後にIFNγ産生について評価した。図6は、EGFRを発現するが、BCMAを欠く腫瘍細胞に対するCAR+CCR T細胞の応答性を示しており、これらのT細胞は、BCMA+腫瘍だけでなく、EGFRのみを発現する腫瘍も標的としたことを示唆している。CCRの配列番号2の27及び44位にセリンが導入されると、この反応性は、陰性対照と一致するレベルまで低減され、CCRヒンジ内のシステインが、EGFR単一陽性腫瘍細胞への反応性を媒介するのに重要であることを示す。
【0461】
これらの結果は、図7A~7D及び8A~8Dのデータによって更に裏付けられ、これは、BCMA及びEGFRを標的とするCAR+CCR T細胞が、システインの使用量にかかわらず、BCMA+腫瘍細胞のサイトカイン放出及び殺傷を増加させたことを示す。しかしながら、CCRのヒンジドメイン内に天然システインを含む細胞のみが、EGFR単一陽性腫瘍細胞を除去することができるが、一方で、CCRのヒンジ内にシステインの代わりにセリンを含むT細胞は、BCMAの不在下でそれらの腫瘍細胞を殺傷することができない(図8A~8D)。
【0462】
概して、以下の特許請求の範囲において、使用された用語は、特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定させるものと解釈されるべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利を与える等価物の完全な範囲とともに全ての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示により限定されない。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4A-1】
図4B
図4C
図5A
図5A-1】
図5B
図6
図7AB
図7CD
図8AB
図8CD
【配列表】
2023522038000001.app
【国際調査報告】