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特表2023-522043半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20230519BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230519BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H01L21/365
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562900
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 KR2021004685
(87)【国際公開番号】W WO2021210907
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0045913
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ, ヒョン-ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ソク, チャン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チュン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン, テ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シェン, ジャチェン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミンジュン
【テーマコード(参考)】
5F045
5F110
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB40
5F045AC00
5F045AC07
5F045AC11
5F045AD07
5F045AD08
5F045AE01
5F045AF03
5F045AF07
5F045AF10
5F045BB16
5F045CA15
5F045DA52
5F045DA62
5F045EE17
5F110AA01
5F110AA05
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD05
5F110FF02
5F110GG01
5F110GG45
5F110GG58
5F110HK07
5F110HK35
5F110PP10
(57)【要約】
【課題】 半導体層の製造方法が提供される。
【解決手段】 前記半導体層の製造方法は、基板を用意するステップと、インジウム(In)を含む第1前駆体および第1反応ソースを反応させる第1ユニット工程(first unit process)、ガリウム(Ga)を含む第2前駆体および第2反応ソースを反応させる第2ユニット工程(second unit process)を行って、前記基板上に前記インジウムおよび前記ガリウムを含む半導体層を形成するステップとを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を用意するステップと、
インジウム(In)を含む第1前駆体および第1反応ソースを反応させる第1ユニット工程(first unit process)、ガリウム(Ga)を含む第2前駆体および第2反応ソースを反応させる第2ユニット工程(second unit process)を行って、前記基板上に前記インジウムおよび前記ガリウムを含む半導体層を形成するステップとを含み、
前記第1前駆体および前記第2前駆体は、同一の化学構造のリガンド(ligand)を有することを含む半導体層の製造方法。
【請求項2】
前記第1前駆体は、下記の<化学式1>で表される化合物を含み、前記第2前駆体は、下記の<化学式2>で表される化合物を含む、請求項1に記載の半導体層の製造方法。
【化1】

【化2】
【請求項3】
前記半導体層を形成するステップの後、前記半導体層を熱処理するステップをさらに含み、
前記半導体層の熱処理温度は、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数および前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数に応じて制御されることを含む、請求項1に記載の半導体層の製造方法。
【請求項4】
前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数:前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数が4:1の場合、
前記半導体層は、350℃超過450℃未満で熱処理されることを含む、請求項3に記載の半導体層の製造方法。
【請求項5】
前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数:前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数が6:1の場合、
前記半導体層は、300℃超過400℃未満で熱処理されることを含む、請求項3に記載の半導体層の製造方法。
【請求項6】
前記半導体層は、紫外線(UV)によって熱処理されることを含む、請求項3に記載の半導体層の製造方法。
【請求項7】
前記第1反応ソースおよび前記第2反応ソースは、酸素(O2)およびアルゴン(Ar)が混合されたプラズマ(plasma)を含む、請求項1に記載の半導体層の製造方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に配置されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に配置され、インジウム(In)およびガリウム(Ga)を含む活性層と、
前記活性層の一側と接触するように前記ゲート絶縁膜上に配置されるソース(source)電極と、前記活性層の他側と接触するように前記ゲート絶縁膜上に配置されるドレイン(drain)電極とを含み、
前記活性層中において前記インジウムの含有量は25.3wt%超過33.5wt%未満であり、前記ガリウムの含有量は6.8wt%超過16.9wt%未満であることを含むトランジスタ。
【請求項9】
前記活性層の移動度(mobility)は、26.0cm2/Vs以上であることを含む、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項10】
オン(ON)/オフ(OFF)比率(ION/IOFF)は、6.2E+10以上であることを含む、請求項8に記載のトランジスタ。
【請求項11】
基板を用意するステップと、
前記基板上にインジウムを含む前駆体を提供するステップと、
前記前駆体が提供された前記基板上に反応ソースを提供して、前記前駆体および前記反応ソースが反応した半導体層を第1温度で形成するステップと、
前記半導体層を第2温度で熱処理するステップとを含み、
前記反応ソースの種類に応じて、前記第1温度が制御されることを含む半導体層の製造方法。
【請求項12】
前記反応ソースは、酸素(O2)およびアルゴン(Ar)が混合されたプラズマ(plasma)を含み、
前記第1温度は、100℃超過250℃未満に制御されることを含む、請求項11に記載の半導体層の製造方法。
【請求項13】
前記反応ソースは、水(H2O)を含み、
前記第1温度は、100℃超過200℃未満に制御されることを含む、請求項11に記載の半導体層の製造方法。
【請求項14】
前記前駆体は、下記の<化学式3>で表される化合物を含む、請求項11に記載の半導体層の製造方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタに関し、より具体的には、基板上にインジウムを含む前駆体および反応ソースを提供して形成された半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイ市場、特に、LCD分野ではa-Siベースのトランジスタを主に用いている。しかし、最近、高解像度およびOLEDの適用を希望する市場の要求に応じて酸化物半導体ベースのトランジスタを研究中である。
【0003】
例えば、大韓民国特許公開番号10-2019-0067556(出願番号:10-2017-016714、出願人:延世大学産学協力団)には、基板上にゲート電極を形成するステップと、前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成するステップと、前記ゲート絶縁膜上に半導体薄膜を形成するステップと、前記半導体薄膜上に互いに離隔するソース/ドレイン電極を形成するステップとを含み、前記半導体薄膜を形成するステップは、酸化物半導体ターゲットおよびポリマーターゲットを用いたコスパッタリング(co-sputtering)方法で前記半導体薄膜を形成して、前記半導体薄膜の疎水性を改善することを特徴とする酸化物半導体薄膜トランジスタおよびその製造方法が開示されている。
【0004】
しかし、既存のスパッタリングシステムを用いた酸化物薄膜半導体層の場合、信頼性と移動度の調節が難しいというデメリットがある。また、高移動度素材の場合、一般的に信頼性が良くないというデメリットがあり、逆に、信頼性が良い素材の場合には、移動度が低いというデメリットがある。また、精密な厚さの調節が困難であり、組成の調節による特性制御が困難であるというデメリットがある。それだけでなく、薄膜蒸着後の過程にも大部分必然的に高い温度の熱処理が必要であるため、低温工程での使用が困難であるというデメリットがある。これにより、上述した問題点を解決できる酸化物半導体薄膜の形成に関連する多様な技術が研究および開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許公開番号10-2019-0067556
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする一つの技術的課題は、移動度(mobility)が向上した半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタを提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、オン/オフ比率(ION/IOFF)が向上した半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタを提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の技術的課題は、組成の制御が容易な半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタを提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとするさらに他の技術的課題は、信頼性が向上した半導体層およびその製造方法、そしてこれを含むトランジスタを提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は上述したものに限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した技術的課題を解決するために、本発明は、半導体層の製造方法を提供する。
【0012】
一実施例によれば、前記半導体層の製造方法は、基板を用意するステップと、インジウム(In)を含む第1前駆体および第1反応ソースを反応させる第1ユニット工程(first unit process)、ガリウム(Ga)を含む第2前駆体および第2反応ソースを反応させる第2ユニット工程(second unit process)を行って、前記基板上に前記インジウムおよび前記ガリウムを含む半導体層を形成するステップとを含み、前記第1前駆体および前記第2前駆体は、同一の化学構造のリガンド(ligand)を有することを含むことができる。
【0013】
一実施例によれば、前記第1前駆体は、下記の<化学式1>で表される化合物を含み、前記第2前駆体は、下記の<化学式2>で表される化合物を含むことができる。
【化1】
【化2】
【0014】
一実施例によれば、前記半導体層を形成するステップの後、前記半導体層を熱処理するステップをさらに含み、前記半導体層の熱処理温度は、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数および前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数に応じて制御されることを含むことができる。
【0015】
一実施例によれば、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数:前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数が4:1の場合、前記半導体層は、350℃超過450℃未満で熱処理されることを含むことができる。
【0016】
一実施例によれば、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数:前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数が6:1の場合、前記半導体層は、300℃超過400℃未満で熱処理されることを含むことができる。
【0017】
一実施例によれば、前記半導体層は、紫外線(UV)によって熱処理されることを含むことができる。
【0018】
一実施例によれば、前記第1反応ソースおよび前記第2反応ソースは、酸素(O2)およびアルゴン(Ar)が混合されたプラズマ(plasma)を含むことができる。
【0019】
他の実施例によれば、前記半導体層の製造方法は、基板を用意するステップと、前記基板上にインジウムを含む前駆体を提供するステップと、前記前駆体が提供された前記基板上に反応ソースを提供して、前記前駆体および前記反応ソースが反応した半導体層を第1温度で形成するステップと、前記半導体層を第2温度で熱処理するステップとを含み、前記反応ソースの種類に応じて、前記半導体層の熱処理温度が制御されることを含むことができる。
【0020】
他の実施例によれば、前記反応ソースは、酸素(O2)およびアルゴン(Ar)が混合されたプラズマ(plasma)を含み、前記第1温度は、100℃超過250℃未満に制御されることを含むことができる。
【0021】
他の実施例によれば、前記反応ソースは、水(H-2O)を含み、前記第1温度は、100℃超過200℃未満に制御されることを含むことができる。
【0022】
他の実施例によれば、前記前駆体は、下記の<化学式3>で表される化合物を含むことができる。
【化3】
【0023】
上述した技術的課題を解決するために、本発明は、トランジスタを提供する。
【0024】
一実施例によれば、前記トランジスタは、基板と、前記基板上に配置されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に配置され、インジウム(In)およびガリウム(Ga)を含む活性層と、前記活性層の一側と接触するように前記ゲート絶縁膜上に配置されるソース(source)電極と、前記活性層の他側と接触するように前記ゲート絶縁膜上に配置されるドレイン(drain)電極とを含み、前記活性層中において前記インジウムの含有量は25.3wt%超過33.5wt%未満であり、前記ガリウムの含有量は6.8wt%超過16.9wt%未満であることを含むことができる。
【0025】
一実施例によれば、前記活性層の移動度(mobility)は、26.0cm2/Vs以上であることを含むことができる。
【0026】
一実施例によれば、オン(ON)/オフ(OFF)比率(ION/IOFF)は、6.2E+10以上であることを含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施例による半導体層の製造方法は、基板を用意するステップと、インジウム(In)を含む第1前駆体および第1反応ソースを反応させる第1ユニット工程(first unit process)、ガリウム(Ga)を含む第2前駆体および第2反応ソースを反応させる第2ユニット工程(second unit process)を行って、前記基板上に前記インジウムおよび前記ガリウムを含む半導体層を形成するステップとを含み、前記第1前駆体および前記第2前駆体は、リガンド(ligand)が同一であることを含むことができる。これにより、前記半導体層中の組成比が容易に制御されるので、前記半導体層を含むトランジスタの電気的特性および信頼性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施例による半導体層の製造方法を説明するフローチャートである。
図2】本発明の第1実施例による半導体層の製造工程を示す図である。
図3】本発明の第1実施例による半導体層の製造工程を示す図である。
図4】本発明の第1実施例による半導体層の製造工程を示す図である。
図5】本発明の第1実施例による半導体層の製造工程を示す図である。
図6】本発明の第1実施例による半導体層の製造工程を示す図である。
図7】本発明の第1実施例による半導体層の製造工程を示す図である。
図8】本発明の第1実施例による半導体層を含むトランジスタを示す図である。
図9】本発明の第2実施例による半導体層の製造方法を説明するフローチャートである。
図10】本発明の第2実施例による半導体層を示す図である。
図11】反応ソースによる半導体層の製造工程を示す図である。
図12】反応ソースによる半導体層の製造工程を示す図である。
図13】本発明の実施例1による半導体薄膜中のInの成長率を示すグラフである。
図14】本発明の実施例1による半導体薄膜中のGaの成長率を示すグラフである。
図15】UV annealingされた実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図16】UV annealingされた実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図17】炉(furnace)内で熱処理された実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図18】炉(furnace)内で熱処理された実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図19】炉(furnace)内で熱処理された実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図20】炉(furnace)内で熱処理された実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図21】本発明の実施例2による半導体薄膜の電気的特性を示すグラフである。
図22】本発明の実施例2による半導体薄膜の構造を示すグラフである。
図23】本発明の実施例2によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図24】本発明の実施例2によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図25】本発明の実施例2によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図26】本発明の実施例2によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図27】本発明の実施例3による半導体薄膜の電気的特性を示すグラフである。
図28】本発明の実施例3による半導体薄膜の構造を示すグラフである。
図29】本発明の実施例3によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図30】本発明の実施例3によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図31】本発明の実施例3によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
図32】本発明の実施例3によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、本発明の技術的思想は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底かつ完全になるように、そして当業者に本発明の思想が十分に伝達できるようにするために提供されるものである。
【0030】
本明細書において、ある構成要素が他の構成要素上にあると言及された場合、それは他の構成要素上に直接形成されるか、またはそれらの間に第3の構成要素が介在してもよいことを意味する。さらに、図面において、膜および領域の厚さは技術的内容の効果的な説明のために誇張されたものである。
また、本明細書の多様な実施例において、第1、第2、第3などの用語が多様な構成要素を記述するために使われたが、これらの構成要素がこのような用語によって限定されてはならない。これらの用語は単にある構成要素を他の構成要素と区別させるために使われただけである。したがって、いずれか一つの実施例において、第1構成要素として言及されたものが、他の実施例では第2構成要素として言及されてもよい。ここで説明および例示される各実施例は、その相補的な実施例も含む。また、本明細書において、「および/または」は、前後に並べられた構成要素の少なくとも1つを含む意味で使われた。
【0031】
明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。また、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を排除すると理解されてはならない。また、本明細書において、「連結」は、複数の構成要素を間接的に連結するもの、および直接的に連結するものをすべて含む意味で使われる。
【0032】
また、下記に本発明を説明するにあたり、かかる公知の機能または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにしうると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0033】
図1は、本発明の第1実施例による半導体層の製造方法を説明するフローチャートであり、図2図7は、本発明の第1実施例による半導体層の製造工程を示す図であり、図8は、本発明の第1実施例による半導体層を含むトランジスタを示す図である。
【0034】
図1図3を参照すれば、基板100が用意される(S110)。一実施例によれば、前記基板100は、半導体基板である。例えば、前記基板100は、シリコン(Si)基板であってもよい。これとは異なり、他の実施例によれば、前記基板100は、金属基板、プラスチック基板、またはガラス基板であってもよい。前記基板100の種類は限定されない。
【0035】
図1図7を参照すれば、前記基板100上に半導体層200が形成される(S120)。一実施例によれば、前記半導体層200は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition)で形成される。具体的には、前記半導体層200の形成ステップは、図1および図2に示されるように、前記基板100上に第1前駆体を提供するステップと、パージ(purge)ステップと、前記第1前駆体が提供された前記基板100上に第1反応ソースを提供するステップと、パージ(purge)ステップと、前記基板100上に第2前駆体を提供するステップと、パージ(purge)ステップと、前記第2前駆体が提供された前記基板100上に第2反応ソースを提供するステップと、パージ(purge)ステップとを含むことができる。
【0036】
一実施例によれば、前記第1前駆体は、インジウム(In)を含むことができる。これとは異なり、前記第2前駆体は、ガリウム(Ga)を含んでもよい。ただし、前記第1前駆体および前記第2前駆体は、リガンド(ligand)が同一であってもよい。より具体的には、前記第1前駆体は、下記の<化学式4>で表される化合物を含み、前記第2前駆体は、下記の<化学式5>で表される化合物を含むことができる。
【化4】
【化5】
【0037】
一実施例によれば、前記第1反応ソースおよび前記第2反応ソースは、互いに同一であってもよい。例えば、前記第1反応ソースおよび前記第2反応ソースは、酸素(O2)およびアルゴン(Ar)が50:50wt%の比率で混合されたプラズマ(plasma)を含むことができる。プラズマにより薄膜が製造される場合、既存のスパッタリング(sputtering)システムにより作製された薄膜と比較して、品質が向上できる。
【0038】
上述のように、前記第1前駆体がインジウム(In)を含み、前記第2前駆体がガリウム(Ga)を含み、前記第1および第2反応ソースが酸素(O2)を含む場合、前記半導体層200は、IGOを含むことができる。
【0039】
前記第1前駆体提供ステップ-パージステップ-第1反応ソース提供ステップ-パージステップは、第1ユニット工程(first unit process)と定義される。これに対し、前記第2前駆体提供ステップ-パージステップ-第2反応ソース提供ステップ-パージステップは、第2ユニット工程(second unit process)と定義される。また、前記第1ユニット工程および前記第2ユニット工程が順次に行われる場合、前記第1ユニット工程および前記第2ユニット工程は、グループ工程(group process)と定義される。
【0040】
一実施例によれば、前記第1ユニット工程が行われる場合、第1物質層210が形成される。すなわち、前記第1前駆体および前記第1反応ソースが反応して、前記第1物質層210が形成される。これとは異なり、前記第2ユニット工程が行われる場合、第2物質層220が形成される。すなわち、前記第2前駆体および前記第2反応ソースが反応して、前記第2物質層220が形成される。
【0041】
一実施例によれば、前記グループ工程は、繰り返し行われる。これにより、前記基板100上に前記第1物質層210および前記第2物質層220が交互に、そして繰り返し形成される。この場合、複数の前記第1物質層210および複数の前記第2物質層220は、半導体層200と定義される。
【0042】
他の実施例によれば、前記第1ユニット工程および前記第2ユニット工程がそれぞれ複数回繰り返し行われる。前記第1ユニット工程および前記第2ユニット工程が複数回繰り返し行われる場合、前記第1物質層210および前記第2物質層220の厚さがそれぞれ制御可能である。例えば、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数が増加する場合、前記第1物質層210の厚さが増加できる。また、前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数が増加する場合、前記第2物質層220の厚さが増加できる。これにより、前記基板100上に厚さ制御された前記第1物質層210および第2物質層220が配置される。この場合、厚さ制御された前記第1物質層210および前記第2物質層220は、前記半導体層200と定義される。
【0043】
上述のように、前記第1前駆体および前記第2前駆体は、同一のリガンド(ligand)を含むことにより、前記半導体層200は、前記第1前駆体提供ステップ-前記第2前駆体提供ステップ-パージステップ-反応ソース提供ステップ-パージステップにより形成される。前記反応ソースは、上述した第1および第2反応ソースと同一であってもよい。この場合、前記第1ユニット工程および前記第2ユニット工程が順次に行われる場合と比較して、パージ(purge)ステップの回数が減少するので、工程費用および手順が簡素化されるというメリットがある。
【0044】
一実施例によれば、前記半導体層200は、前記第1物質層210および前記第2物質層220に区分されなくてもよい。より具体的には、前記第1物質層210および前記第2物質層220がそれぞれ所定の厚さを有さない場合、前記半導体層200中において前記第1物質層210および前記第2物質層220が視覚的に区分されない。
【0045】
これとは異なり、他の実施例によれば、前記半導体層200は、前記第1物質層210および前記第2物質層220が区分されてもよい。より具体的には、前記第1物質層210および前記第2物質層220がそれぞれ所定の厚さ以上に形成される場合、前記半導体層200中において前記第1物質層210および前記第2物質層220が視覚的に区分される。
【0046】
一実施例によれば、前記第1ユニット工程および前記第2ユニット工程の比率が制御されて、前記半導体層200中の前記インジウム(In)および前記ガリウム(Ga)の比率が制御可能である。例えば、前記第1ユニット工程の繰り返し実行比率が前記第2ユニット工程の繰り返し実行比率に比べて、3倍超過9倍未満に制御される。この場合、前記半導体層200中の前記インジウム(In)の含有量は25.3wt%超過33.5wt%未満に制御され、前記ガリウム(Ga)の含有量は6.8wt%超過16.9wt%未満に制御される。これにより、前記半導体層200を含むトランジスタの性能が向上できる。前記半導体層200を含むトランジスタの具体的な構造は後述する。
【0047】
より具体的には、前記第1ユニット工程の繰り返し実行比率:前記第2ユニット工程の繰り返し実行比率が4:1または6:1に制御される場合、前記半導体層200を含むトランジスタの移動度(mobility)、オン/オフ比率(ION/IOFF)などの電気的特性が向上できる。前記第1ユニット工程の繰り返し実行比率:前記第2ユニット工程の繰り返し実行比率が4:1の場合、前記半導体層200中の前記インジウム(In)の含有量は28.6wt%であり、前記ガリウム(Ga)の含有量は12.6wt%である。これとは異なり、前記第1ユニット工程の繰り返し実行比率:前記第2ユニット工程の繰り返し実行比率が6:1の場合、前記半導体層200中の前記インジウム(In)の含有量は31.3wt%であり、前記ガリウム(Ga)の含有量は9.3wt%である。
【0048】
一実施例によれば、前記第1前駆体および前記第2前駆体のリガンドが同一の場合、前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数に対する前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数の増加比率と、前記半導体層200中の前記インジウム(In)の含有量に対する前記ガリウム(Ga)の含有量の減少比率とが実質的に一定であり得る。例えば、前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数に対する前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数が100%増加する場合、前記半導体層200中の前記インジウム(In)の含有量に対する前記ガリウム(Ga)の含有量が約100%減少できる。
【0049】
具体的には、前記第1ユニット工程の繰り返し実行比率:前記第2ユニット工程の繰り返し実行比率が3:1から6:1に変化する場合、前記半導体層200中の前記インジウム(In)の含有量:前記ガリウム(Ga)の含有量は1:0.67から1:0.30に変化することができる。結果として、前記第1前駆体および前記第2前駆体のリガンド(ligand)が同一の場合、前記半導体層200中の前記インジウム(In)および前記ガリウム(Ga)の含有量が容易に制御できる。
【0050】
前記半導体層200は、熱処理される。例えば、前記半導体層200は、紫外線(UV)によって熱処理される。これとは異なり、他の例として、前記半導体層200は、炉(furnace)内で熱処理されてもよい。
【0051】
一実施例によれば、前記半導体層200の熱処理温度は、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数および前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数に応じて制御可能である。例えば、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数:前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数が4:1の場合、前記半導体層200は、350℃超過450℃未満で熱処理される。これとは異なり、他の例として、前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数:前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数が6:1の場合、前記半導体層200は、300℃超過400℃未満で熱処理されてもよい。この場合、前記半導体層200を含むトランジスタの性能(例えば、移動度、オン/オフ比率など)が向上できる。
【0052】
前記半導体層200は、トランジスタの活性層(active layer)として使用できる。具体的には、図8に示されるように、前記トランジスタは、基板100と、前記基板100上に配置されるゲート絶縁膜110と、前記ゲート絶縁膜110上に配置される活性層200と、前記活性層200の一側と接触するように前記ゲート絶縁膜110上に配置されるソース電極(source、S)と、前記活性層200の他側と接触するように前記ゲート絶縁膜110上に配置されるドレイン電極(drain、D)とを含むことができる。
【0053】
この場合、前記活性層200は、インジウム(In)の含有量が25.3wt%超過33.5wt%未満に制御され、ガリウム(Ga)の含有量が6.8wt%超過16.9wt%未満に制御される。また、前記活性層200の製造過程において、熱処理温度が300℃超過400℃未満または350℃超過450℃未満に制御される。これにより、26.0cm2/Vs以上の高い移動度(mobility)および6.2E+10以上の高いオン(ON)/オフ(OFF)比率(ION/IOFF)を有するトランジスタが提供できる。
【0054】
本発明の第1実施例による半導体層の製造方法は、前記基板100を用意するステップと、前記インジウム(In)を含む前記第1前駆体および前記第1反応ソースを反応させる前記第1ユニット工程(first unit process)、前記ガリウム(Ga)を含む前記第2前駆体および前記第2反応ソースを反応させる前記第2ユニット工程(second unit process)を行って、前記基板100上に前記インジウムおよび前記ガリウムを含む前記半導体層200を形成するステップとを含み、前記第1前駆体および前記第2前駆体は、リガンド(ligand)が同一であることを含むことができる。これにより、前記半導体層200中の組成比が容易に制御されるので、前記半導体層200を含むトランジスタの電気的特性および信頼性が向上できる。
【0055】
以上、本発明の第1実施例による半導体層の製造方法が説明された。以下、インジウム(In)を含む前駆体と反応ソースとを反応させて半導体層を形成する本発明の第2実施例による半導体層の製造方法が説明される。
【0056】
図9は、本発明の第2実施例による半導体層の製造方法を説明するフローチャートであり、図10は、本発明の第2実施例による半導体層を示す図であり、図11および図12は、反応ソースによる半導体層の製造工程を示す図である。
【0057】
図9および図10を参照すれば、基板100が用意される(S210)。一実施例によれば、前記基板100は、半導体基板である。例えば、前記基板100は、シリコン(Si)基板であってもよい。これとは異なり、他の実施例によれば、前記基板100は、金属基板、プラスチック基板、またはガラス基板であってもよい。前記基板100の種類は限定されない。
【0058】
前記基板100上にインジウム(In)を含む前駆体が提供される(S220)。例えば、前記前駆体は、下記の<化学式6>で表される化合物を含むことができる。
【化6】
【0059】
前記前駆体が提供された前記基板100上に反応ソースが提供される。この場合、前記前駆体および前記反応ソースが反応できる。これにより、半導体層200が形成される(S230)。一実施例によれば、前記反応ソースが提供される前および前記反応ソースが提供された後、パージ(purge)工程が行われる。すなわち、前記前駆体提供ステップ-パージ(purge)ステップ-前記反応ソース提供ステップ-パージ(purge)ステップにより前記半導体層200が形成される。前記半導体層の形成ステップは、第1温度で行われる。
【0060】
一実施例によれば、前記反応ソースは、酸素(O2)およびアルゴン(Ar)が50:50wt%の比率で混合されたプラズマ(plasma)を含むことができる。これとは異なり、他の実施例によれば、前記反応ソースは、水(H2O)を含むことができる。これにより、前記半導体層200は、インジウム酸化物(Inxy、x、y>0)を含むことができる。
【0061】
すなわち、前記半導体層200は、図11に示されるように、前記前駆体提供ステップ-パージ(purge)ステップ-O2/Arプラズマ(plasma)提供ステップ-パージ(purge)ステップにより製造されるか、図12に示されるように、前記前駆体提供ステップ-パージ(purge)ステップ-H2O提供ステップ-パージ(purge)ステップにより製造されてもよい。
【0062】
一実施例によれば、前記第1温度は、前記反応ソースの種類に応じて制御可能である。例えば、前記反応ソースが酸素(O2)およびアルゴン(Ar)が混合されたプラズマ(plasma)を含む場合、前記第1温度は、100℃超過250℃未満の温度で熱処理される。これとは異なり、他の例として、前記反応ソースが水(H2O)を含む場合、前記第1温度は、100℃超過200℃未満の温度で熱処理されてもよい。この場合、前記半導体層200を含むトランジスタの性能(例えば、移動度、オン/オフ比率など)が向上できる。
【0063】
前記半導体層200は、第2温度で熱処理される(S240)。例えば、前記半導体層200は、紫外線(UV)によって熱処理される。これとは異なり、他の例として、前記半導体層200は、炉(furnace)内で熱処理されてもよい。
【0064】
本発明の第2実施例による半導体層の製造方法は、前記基板100を用意するステップと、前記基板100上に前記インジウムを含む前記前駆体を提供するステップと、前記前駆体が提供された前記基板100上に前記反応ソースを提供して、前記前駆体および前記反応ソースが反応した前記半導体層200を形成するステップと、前記半導体層200を熱処理するステップとを含み、前記反応ソースの種類に応じて、前記半導体層200の熱処理温度が制御されることを含むことができる。これにより、前記半導体層200を含むトランジスタの電気的特性が向上できる。
【実施例
【0065】
以上、本発明の実施例による半導体層の製造方法およびトランジスタが説明された。以下、本発明の実施例による半導体層の製造方法およびトランジスタの具体的な実験例および特性評価の結果が説明される。
【0066】
実施例1による半導体薄膜の製造
基板上に第1前駆体提供-パージ-O2/Ar(50:50wt%)plasma提供-パージ-第2前駆体提供-パージ-O2/Ar(50:50wt%)plasma提供-パージを行って、実施例1によるIGO半導体薄膜を製造した。第1前駆体および第2前駆体は、下記の<化学式7>および<化学式8>で表される化合物を使用した。
【化7】
【化8】
【0067】
上述した工程において、第1前駆体提供-パージ-O2/Ar plasma提供-パージは、第1ユニット工程と定義され、第2前駆体提供-パージ-O2/Ar plasma提供-パージは、第2ユニット工程と定義され、各ユニット工程は繰り返し行われた。
【0068】
より具体的には、第1ユニット工程:第2ユニット工程は、2:1、3:1、4:1、6:1、9:1、および19:1の比率で繰り返し行われ、それぞれの比率によって製造された半導体薄膜は、実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、実施例1-4、実施例1-5、および実施例1-6による半導体薄膜と定義される。実施例1-1~1-6による半導体薄膜の製造工程において、第1ユニット工程:第2ユニット工程の比率が下記の<表1>によりまとめられる。
【0069】
【表1】
【0070】
比較例1による半導体薄膜の製造
基板上に第1前駆体提供-パージ-O2/Ar(50:50wt%)plasma提供-パージ-第2前駆体提供-パージ-O2/Ar(50:50wt%)plasma提供-パージを行って、比較例1によるIGO半導体薄膜を製造した。第1前駆体はDADI([3-(dimethylamino)propyl]dimethyl indium)を使用し、第2前駆体はTMGa(Trimethylgallium)を使用した。
【0071】
また、実施例1による半導体薄膜で説明したように、第1ユニット工程:第2ユニット工程の比率を2:1、3:1、4:1、6:1、9:1、および19:1に制御した後、それぞれの比率によって半導体薄膜を製造した。それぞれの比率によって製造された半導体薄膜は、比較例1-1~1-6による半導体薄膜と定義される。
【0072】
実施例1によるトランジスタの製造
Siゲート上にSiO2ゲート絶縁膜(100nmの厚さ)を形成した後、ゲート絶縁膜上に前記実施例1-1~1-6による半導体薄膜(20nmの厚さ)、およびITOソース電極(100nmの厚さ)とITOドレイン電極(100nmの厚さ)を形成して、実施例1-1~1-6によるトランジスタを製造した。
【0073】
図13は、本発明の実施例1による半導体薄膜中のInの成長率を示すグラフであり、図14は、本発明の実施例1による半導体薄膜中のGaの成長率を示すグラフである。
【0074】
図13および図14を参照すれば、前記実施例1による半導体薄膜を用意し、第1前駆体および第2前駆体の温度(precursor temperature、℃)によるGPC(Å/cycle)およびRefractive indexを測定して示した。半導体薄膜の全体的な成長温度(Growth Temperature)は200℃に制御され、O2/Ar plasmaは300W、5sに制御された。また、実施例1-2~1-6による半導体薄膜の計算された蒸着率と実際の蒸着率を測定し、その結果は下記の<表2>によりまとめられる。
【0075】
【表2】
【0076】
<表2>から確認できるように、前記実施例1-3による半導体薄膜は、計算された蒸着率と実際の蒸着率とが一致することを確認することができた。また、実施例1-2~1-6による半導体薄膜の組成比率および比較例1-2~1-6による半導体薄膜の組成比率を測定した。実施例1-2~1-6による半導体薄膜の組成比率は下記の<表3>でまとめられ、比較例1-2~1-6による半導体薄膜の組成比率は下記の<表4>でまとめられる。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
<表3>から確認できるように、リガンド(ligand)が同一の前駆体を用いて製造された実施例1による半導体薄膜の場合、第1ユニット工程:第2ユニット工程の比率が3:1から6:1に増加する場合、In:Gaの比率が1:0.67から1:0.30に減少した。すなわち、第2ユニット工程に対する第1ユニット工程の繰り返し実行回数の比率が100%増加(3→6)することにより、Inに対するGaの比率が約100%減少(0.67→0.30)することを確認することができた。これに対し、<表4>から確認できるように、リガンド(ligand)が異なる前駆体を用いて製造された比較例1による半導体薄膜の場合、第1ユニット工程:第2ユニット工程の比率が3:1から6:1に増加する場合、In:Gaの比率が1:1.07から1:0.71に減少した。すなわち、すなわち、第2ユニット工程に対する第1ユニット工程の繰り返し実行回数の比率が100%増加(3→6)する場合、Inに対するGaの比率は約50%減少(1.07→0.71)することを確認することができた。
【0080】
すなわち、リガンド(ligand)が同一の前駆体を用いて半導体薄膜を製造する場合、前記第2ユニット工程の繰り返し実行回数に対する前記第1ユニット工程の繰り返し実行回数の増加比率と、半導体薄膜中のインジウム(In)の含有量に対するガリウム(Ga)の含有量の減少比率とが実質的に一定であることが分かった。結果として、リガンド(igand)が同一の前駆体を用いてIGO薄膜を製造する場合、ALD工程のシーケンス(sequence)を制御することにより、IGO薄膜中のInの含有量とGaの含有量を容易に制御できることが分かる。
【0081】
図15および図16は、UV annealingされた実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
【0082】
図15および図16を参照すれば、前記実施例1-2~1-6によるトランジスタを用意し、それぞれのトランジスタが含む半導体薄膜を250℃の温度および300℃の温度でUV annealingした後、それぞれに対して電気的特性を測定して示した。
【0083】
図15および図16から確認できるように、半導体薄膜中のGaの比率が増加するに伴い、トランジスタのVthはpositive shiftされ、slopeが次第に高くなることを確認することができた。特に、UV annealing温度に関係なく、実施例1-3(4:1)によるトランジスタの移動度(μsat、cm2/Vs)およびオン/オフ比率(ION/IOFF)が最も高く現れることを確認することができた。
【0084】
図17図20は、炉(furnace)内で熱処理された実施例1による半導体薄膜を含む実施例1によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
【0085】
図17図20を参照すれば、前記実施例1-1~1-6によるトランジスタを用意し、それぞれのトランジスタが含む半導体薄膜を300℃、350℃、400℃、および450℃の温度で3時間熱処理した後、それぞれに対して電気的特性を測定して示した。より具体的には、図17は、300℃で熱処理された半導体薄膜を含むトランジスタの電気的特性を示し、その結果は下記の<表5>によりまとめられる。また、図18は、350℃で熱処理された半導体薄膜を含むトランジスタの電気的特性を示し、その結果は下記の<表6>によりまとめられる。さらに、図19は、400℃で熱処理された半導体薄膜を含むトランジスタの電気的特性を示し、その結果は下記の<表7>によりまとめられる。また、図20は、450℃で熱処理された半導体薄膜を含むトランジスタの電気的特性を示し、その結果は下記の<表8>によりまとめられる。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
また、前記実施例1-3および1-4によるトランジスタの半導体薄膜の熱処理温度による移動度およびオン/オフ比率が下記の<表9>および<表10>によりまとめられる。
【0091】
【表9】
【0092】
<表9>から確認できるように、第1ユニット工程の繰り返し実行回数:第2ユニット工程の繰り返し実行回数が4:1の場合、温度が増加するに伴い、移動度(μsat)が増加することを確認することができた。しかし、オン/オフ比率(ION/IOFF)の場合、400℃まで次第に増加してから、400℃の後に再度減少することを確認することができた。
【0093】
【表10】
【0094】
<表10>から確認できるように、第1ユニット工程の繰り返し実行回数:第2ユニット工程の繰り返し実行回数が6:1の場合、350℃の温度まで移動度(μsat)およびオン/オフ比率(ION/IOFF)が増加し、その後に減少することを確認することができた。結果として、<表9>および<表10>から分かるように、第1ユニット工程:第2ユニット工程の繰り返し実行回数の比率が4:1の場合、半導体薄膜の熱処理温度を350℃超過450℃未満に制御し、第1ユニット工程:第2ユニット工程の繰り返し実行回数の比率が6:1の場合、半導体薄膜の熱処理温度を300℃超過400℃未満に制御することにより、トランジスタの電気的特性が向上することが分かる。
【0095】
実施例2による半導体薄膜の製造
基板上にIn前駆体提供-パージ-O2/Ar(50:50wt%)plasma提供-パージを行って薄膜を製造した後、製造された薄膜を250℃の温度で1時間UV annealingして、実施例2によるIn23半導体薄膜を製造した。In前駆体は下記の<化学式9>で表される化合物を使用した。
【化9】
【0096】
また、In前駆体提供-パージ-O2/Ar(50:50wt%)plasma提供-パージ工程温度を100℃、150℃、200℃、および250℃に制御して半導体薄膜を製造した後、それぞれの温度で製造された薄膜を実施例2-1、2-2、2-3、および2-4による半導体薄膜と定義した。実施例2-1、2-2、2-3、および2-4による半導体薄膜の工程温度が下記の<表11>によりまとめられる。
【0097】
【表11】
【0098】
実施例2によるトランジスタの製造
Siゲート上にSiO2ゲート絶縁膜(100nmの厚さ)を形成した後、ゲート絶縁膜上に前記実施例2-1~2-4による半導体薄膜(20nmの厚さ)、およびITOソース電極(100nmの厚さ)とITOドレイン電極(100nmの厚さ)を形成して、実施例2-1~2-4によるトランジスタを製造した。
【0099】
図21は、本発明の実施例2による半導体薄膜の電気的特性を示すグラフである。
【0100】
図21を参照すれば、前記実施例2-1(100℃)、2-2(150℃)、2-3(200℃)、および2-4(250℃)による半導体薄膜それぞれに対して、Carrier concentration(cm-3)、Hall mobility(cm2/Vsec)、Resistivity(Ohm cm)を測定して示した。
【0101】
図21から確認できるように、前記実施例2による半導体薄膜の場合、半導体薄膜の工程温度が増加するに伴い、Carrier concentration、およびHall mobilityは増加し、Resistivityは減少することを確認することができた。
【0102】
図22は、本発明の実施例2による半導体薄膜の構造を示すグラフである。
【0103】
図22を参照すれば、前記実施例2-1(100℃)、2-2(150℃)、2-3(200℃)、および2-4(250℃)による半導体薄膜の結晶構造を測定して示した。図22から確認できるように、前記実施例2-1~2-4による半導体薄膜ともIn23の一般的な構造であるCubic構造を示すことを確認することができた。
【0104】
また、前記実施例2-1~2-4による半導体薄膜のO/In ratioおよびImpurityを測定し、これは下記の<表12>によりまとめられる。
【0105】
【表12】
【0106】
<表12>から確認できるように、前記実施例2-1~2-4による半導体薄膜の場合、Carbon、Nitrogen不純物がなく、In/O Ratioが1:2で理想的な値を示すことを確認することができた。図23図26は、本発明の実施例2によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
【0107】
図23図26を参照すれば、本発明の実施例2-1~2-4によるトランジスタのGate Voltage(V)によるDrain Current(A)を測定して示した。図23および図26から確認できるように、100℃の温度で蒸着された半導体薄膜を含むトランジスタの場合、insulator特性が現れ、250℃の温度で蒸着された半導体薄膜を含むトランジスタの場合、conducting特性が現れることを確認することができた。これに対し、図24および図25から確認できるように、150℃および200℃の温度で蒸着された半導体薄膜を含むトランジスタの場合、半導体薄膜がUV熱処理されることにより半導体特性を示すことを確認することができた。
【0108】
結果として、In前駆体提供-パージ-O2/Ar(50:50wt%)plasma提供-パージ工程でIn23半導体薄膜を製造する場合、トランジスタの電気的特性を向上させるために、半導体薄膜の蒸着温度を100℃超過250℃未満に制御することが効果的であることが分かった。
【0109】
実施例3による半導体薄膜の製造
基板上にIn前駆体提供-パージ-H2O提供-パージを行って薄膜を製造した後、製造された薄膜を250℃の温度で1時間UV annealingして、実施例3によるIn23半導体薄膜を製造した。In前駆体は下記の<化学式10>で表される化合物を使用した。
【化10】
【0110】
また、In前駆体提供-パージ-H2O提供-パージ工程温度を100℃、150℃、200℃、および250℃に制御して半導体薄膜を製造した後、それぞれの温度で製造された薄膜を実施例3-1、3-2、3-3、および3-4による半導体薄膜と定義した。実施例3-1、3-2、3-3、および3-4による半導体薄膜の工程温度が下記の<表13>によりまとめられる。
【0111】
【表13】
【0112】
実施例3によるトランジスタの製造
Siゲート上にSiO2ゲート絶縁膜(100nmの厚さ)を形成した後、ゲート絶縁膜上に前記実施例3-1~3-4による半導体薄膜(20nmの厚さ)、およびITOソース電極(100nmの厚さ)とITOドレイン電極(100nmの厚さ)を形成して、実施例3-1~3-4によるトランジスタを製造した。
【0113】
図27は、本発明の実施例3による半導体薄膜の電気的特性を示すグラフである。
【0114】
図27を参照すれば、前記実施例3-1(100℃)、3-2(150℃)、3-3(200℃)、および3-4(250℃)による半導体薄膜それぞれに対して、Carrier concentration(cm-3)、Hall mobility(cm2/Vsec)、Resistivity(Ohm cm)を測定して示した。
【0115】
図27から確認できるように、前記実施例3による半導体薄膜の場合、半導体薄膜の工程温度が増加するに伴い、Carrier concentrationは増加し、Resistivityは減少し、Hall mobilityは一定に維持されることを確認することができた。
【0116】
図28は、本発明の実施例3による半導体薄膜の構造を示すグラフである。
【0117】
図28を参照すれば、前記実施例3-1(100℃)、3-2(150℃)、3-3(200℃)、および3-4(250℃)による半導体薄膜の結晶構造を測定して示した。図28から確認できるように、前記実施例3-1(100℃)および3-2(150℃)による半導体薄膜はIn23の一般的な構造であるCubic構造を示し、前記実施例3-3(200℃)、3-4(250℃)による半導体薄膜はRhombohedral構造を示すことを確認することができた。
【0118】
また、前記実施例3-1~3-4による半導体薄膜のO/In ratioおよびImpurityを測定し、これは下記の<表14>によりまとめられる。
【0119】
【表14】
【0120】
<表14>から確認できるように、前記実施例3-1~3-4による半導体薄膜の場合、結晶構造と同一の傾向でO/In Ratioが100℃および150℃では約1.3、200℃および250℃では約1.6の値を有し、100℃では14%程度の炭素不純物が含まれることを確認することができた。図29図32は、本発明の実施例3によるトランジスタの電気的特性を示すグラフである。
【0121】
図29図32を参照すれば、本発明の実施例3-1~3-4によるトランジスタのGate Voltage(V)によるDrain Current(A)を測定して示した。図29から確認できるように、100℃の温度で蒸着された半導体薄膜を含むトランジスタの場合、insulator特性が現れ、図31および図32から確認できるように、200℃および250℃の温度で蒸着された半導体薄膜を含むトランジスタの場合、conducting特性が現れることを確認することができた。これに対し、図30から確認できるように、150℃の温度で蒸着された半導体薄膜を含むトランジスタの場合、半導体薄膜がUV熱処理されることにより半導体特性を示すことを確認することができた。
【0122】
結果として、In前駆体提供-パージ-H2O提供-パージ工程でIn23半導体薄膜を製造する場合、トランジスタの電気的特性を向上させるために、半導体薄膜の蒸着温度を100℃超過200℃未満に制御することが効果的であることが分かった。
【0123】
以上、本発明を好ましい実施例により詳細に説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲によって解釈されなければならない。また、この技術分野における通常の知識を習得した者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく多様な修正と変形が可能であることを理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明による半導体層の製造方法は、基板を用意するステップと、インジウム(In)を含む第1前駆体および第1反応ソースを反応させる第1ユニット工程(first unit process)、ガリウム(Ga)を含む第2前駆体および第2反応ソースを反応させる第2ユニット工程(second unit process)を行って、前記基板上に前記インジウムおよび前記ガリウムを含む半導体層を形成するステップとを含み、前記第1前駆体および前記第2前駆体は、リガンド(ligand)が同一であることを含むことができる。これにより、前記半導体層中の組成比が容易に制御されるので、前記半導体層を含むトランジスタの電気的特性および信頼性が向上できる。
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【国際調査報告】