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特表2023-522050血管炎の処置のための住血吸虫由来の28KDA GSTタンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】血管炎の処置のための住血吸虫由来の28KDA GSTタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/31 20060101AFI20230519BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230519BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230519BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C12N15/31
A61P9/00 ZNA
A61P29/00
A61P9/10 101
A61P15/00
A61P9/12
A61P19/08
A61P25/16
A61P1/16
A61P9/10
A61K38/16
A61P37/02
A61K39/00 H
A61K35/76
A61K31/7088
A61K48/00
C12N15/63 Z
C07K14/435
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562967
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2021060001
(87)【国際公開番号】W WO2021209636
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20169888.3
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TWEEN
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】522403664
【氏名又は名称】パーイミューン エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キャプロン,モニーク
(72)【発明者】
【氏名】ラシュガール,アブデラヒム
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD11
4B050LL01
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA70
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA401
4C084ZA402
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB071
4C084ZB072
4C085AA03
4C085BA01
4C085BB11
4C085CC21
4C085EE06
4C085FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA40
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB07
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA40
4C087ZA42
4C087ZA45
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA96
4C087ZB07
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA50
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、血管炎またはM1/M2マクロファージ比の調節不全、例えば、M1型免疫応答の減少および/またはM2型免疫応答の増加を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置において使用するための、異なる住血吸虫寄生虫に由来するグルタチオン-S-トランスフェラーゼである、特定のポリペプチド、ならびに核酸、ベクター、組成物またはキットに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象において、M1型免疫応答を減少させるおよび/またはM2型免疫応答を増加させるための、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、または以下からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、ポリペプチド:
a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の配列;
b)前記ポリペプチドが前記M1型免疫応答を減少させ、および/または前記M2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)で定義される配列の断片;
c)前記ポリペプチドが前記M1型免疫応答を減少させる、および/または前記M2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【請求項2】
以下の防止的処置または治療的処置における使用のための請求項1に記載のポリペプチド:
-血管炎、または
-アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患。
【請求項3】
血管炎の防止的処置または治療的処置における使用のための、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、または以下からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、ポリペプチド:
a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の配列;
b)前記ポリペプチドが前記M1型免疫応答を減少させ、および/または前記M2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)で定義される配列の断片;
c)前記ポリペプチドが、前記M1型免疫応答を減少させる、および/または前記M2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、前記M1型免疫応答を減少させ、および/または前記M2型免疫応答を増加させる、請求項3に記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項5】
前記断片が、配列番号19~配列番号51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項6】
以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、または以下からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド:
a)配列番号1の配列:
b)配列番号19~配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する断片;および
c)前記ポリペプチドが、前記M1型免疫応答を減少させる、および/または前記M2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【請求項7】
血管炎またはアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置において使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸、または前記核酸を含むベクター。
【請求項8】
血管炎またはアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置において使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド、または請求項7に記載の核酸もしくはベクターを含む組成物、例えば、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物、または少なくとも1種のアジュバントをさらに含むワクチン組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のアジュバントとの同時、別々または順次の組み合わせで使用するためのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのポリペプチド。
【請求項10】
血管炎またはアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の前記防止的処置または前記治療的処置において同時に、別々に、または順次使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドおよび少なくとも1種のアジュバントを含むキット。
【請求項11】
前記アジュバントが、天然または非天然のアルミニウム塩である、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物、ポリペプチドまたはキット。
【請求項12】
それを必要とする対象において、M1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させるための方法であって、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、または以下からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、ポリペプチドの治療有効量を前記対象に投与することを含む方法:
a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の配列;
b)前記ポリペプチドが前記M1型免疫応答を減少させ、および/または前記M2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)で定義される配列の断片;
c)前記ポリペプチドが、前記M1型免疫応答を減少させる、および/または前記M2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【請求項13】
前記患者が、血管炎、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症または心筋梗塞に罹患している、請求項1または2に記載のポリペプチドまたは請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血管炎が、ベーチェット病(BD)、コーガン症候群(CS)、高安動脈炎(TAK)、巨細胞性動脈炎(GCA)、結節性多発動脈炎(PAN)、川崎病(KD)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー)(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス)(EGPA)、免疫複合体小血管血管炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)疾患、クリオグロブリン血症性血管炎(CV)、IgA血管炎(ヘノッホシェーンライン)(IgAV)、低補体血症性蕁麻疹様血管炎(HUV)(抗C1q血管炎)、皮膚白血球破砕性血管炎、皮膚動脈炎、原発性中枢神経系血管炎、孤発性大動脈炎からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、キット、または方法。
【請求項15】
前記血管炎が、ループス、関節リウマチ、サルコイドーシス、C型肝炎、B型肝炎、梅毒およびがんからなる群から選択される別の疾患に関連する、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、キット、または方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な住血吸虫寄生虫に由来するグルタチオン-S-トランスフェラーゼである特定のポリペプチド、ならびに、血管炎またはM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする任意の疾患の防止的処置または治療的処置における使用のための核酸、ベクター、組成物またはキットに関する。
【背景技術】
【0002】
血管炎は、血管の一般的な炎症を有する希少疾患の群である。これらの血管には、動脈および静脈が含まれる。多くの種類の血管炎が存在し、症状、重症度、および期間が大きく異なり得る。ほとんどの種類の血管炎は稀であり、それらの原因は、概して不明である。血管炎は、男女およびすべての年齢の人々に影響を及ぼす。
【0003】
血管炎に関連する症状
血管炎の症状は、炎症応答に関与する血管に特有のものである。様々な種類の血管炎が、局所的血管関与のパターンを有するが、血管炎は、全身性疾患であり、発熱、倦怠感、体重減少、頻拍、ならびに痛みおよび疼痛など、炎症の典型的な症状を引き起こす。皮膚、肺、関節、腎臓、消化管、血液、目、脳、神経、副鼻腔、鼻、および喉など、事実上すべての臓器系が血管炎の影響を受け得る。臓器の関与のパターンは、血管炎の種類のみでなく個体に対して特異的である。
【0004】
International Chapel Hill Consensus Conference on the Nomenclature of Vasculitides (CHCC2012)によれば、血管炎は:
a)以下であり得る、関与する血管のサイズ;
-大血管(large vessels)(例えば、大動脈、冠動脈など)
-中型血管(medium vessels)(例えば、中動脈または小動脈)
-小血管(small vessels)(例えば、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、免疫複合体)
-種々の血管(variable vessels)(ベーチェット病、コーガン病)
b)以下であり得る、関与する臓器または組織:
-多臓器(ベーチェット病、免疫複合体)
-単一臓器(皮膚、精巣、中枢神経系...)
c)他の疾患(例えば、ループス、関節リウマチ、梅毒、がんなど)との関連
に従って分類することができる。
【0005】
ベーチェット病
ベーチェット病(BD)は、原因不明の慢性再発性の多臓器自己免疫性炎症性疾患である。病理学的には、この疾患は、小血管および大血管の全身性壊死性血管炎、ならびに関節炎を特徴とする。口腔潰瘍、性器潰瘍、皮膚病変、眼(ブドウ膜炎)および関節病変は、この疾患の最も高頻度の特徴である。消化管、中枢神経系および大血管の関与の頻度は少ない(Baharav et al.2006 Drug Discovery Today:Disease Models3(1):11-14)。粘膜皮膚病変は、この疾患の顕著な特徴と見なされ、多くの場合、他の症状に先行する(Alpsoy 2016 Journal of Dermatology 43(6):620-632)。
【0006】
ベーチェット病は、通常、生後3~4年頃に始まる。性別分布は、ほぼ同じである。疾患特徴的な検査がないため、診断は、臨床基準に基づく(Alpsoy 2016 Journal of Dermatology 43(6):620-632)。
【0007】
ベーチェット病は、トルコを含む地中海諸国(人口10万人あたり370例)から中東および東アジア諸国など、古代シルクロードに沿って主に分布しているが、ベーチェット病は、北欧州(人口10万人あたり0.64例)、北米(人口10万人あたり0.12~0.33例)、オーストラリア、およびアフリカではほとんど見られない(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0008】
臨床症状に関しては、口腔アフタ症が、95%を超える患者に見られ、生殖器アフタ症は、60~90%の患者、皮膚症状(偽毛包炎、結節性紅斑)は、40~90%の患者、眼症状(ブドウ膜炎/網膜血管炎)は、45~90%の患者、胃腸症状(下痢、出血、穿孔、疼痛)は、4~38%の患者、血管症状(静脈/動脈血栓症、動脈瘤)は、2.2~50%の患者、神経症状(あらゆる種類の、特に髄膜脳炎)は、2.3~38.5%の患者、関節症状(関節痛、関節炎、強直性脊椎炎)は、11.6~93%の患者に見られる(Davatchi et al.2017 Expert Review of Clinical Immunology 13(1):57-65)。
【0009】
HLA-B*51などの遺伝的要因ならびに微生物成分を含む環境要因が、ベーチェット病の病因に関係している(Nakano et al.2018 Arthritis Research&Therapy 20:124)。
【0010】
病理生理学に関する主な仮説は以下を含む:好中球活動亢進、自己抗原に対する自己免疫反応(熱ショックタンパク質、S抗原またはα-トロポミオシン)、免疫複合体形成、およびウイルスまたは細菌感染など)(Baharav et al.2006 Drug Discovery Today:Disease Models3(1):11-14)。
【0011】
自然免疫細胞
自然免疫細胞、特にマクロファージ、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞およびγδT細胞が、ベーチェット病の病因に関与している(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0012】
M1/M2マクロファージ
マクロファージは、病原体に対する戦いを助ける自然免疫系の重要な細胞である。マクロファージは、免疫炎症性障害の病因においても極めて重要である。マクロファージは当初、炎症を促進するのみであると考えられていたが、後に炎症を促進するのみでなく解消する能力も有することが発見された。この炎症および解消のパラドックスは、2つのマクロファージサブセット:M1およびM2の発見後に解決された。ナイーブ(M0)マクロファージは、異なる条件下で分極して、M1またはM2マクロファージのいずれかになり得る。
【0013】
「古典的マクロファージ」としても知られるM1マクロファージは、微生物を殺滅して炎症を引き起こすことに関与しているため、炎症誘発性である。M1マクロファージサブセットは、リポ多糖(LPS)などの微生物産物、またはインターフェロンγなどの炎症誘発性サイトカインによって活性化される。それらは、活性酸素および窒素種ならびにIL-6、IL-12、IL-23、IL-1βなどの炎症誘発性サイトカインおよび腫瘍壊死因子(TNF)-αを放出することによって病原体を殺滅する。
【0014】
一方、「代替活性化マクロファージ」としても知られるM2マクロファージは、炎症の解消、血管新生、組織リモデリング、および修復において主要な役割を有する。これらのマクロファージは、IL-4、IL-10、IL-13などのサイトカインによって刺激され、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP1)およびトランスフォーミング成長因子(TGF-β)、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)ならびに胸腺および活性化調節ケモカイン(TARC)などのケモカイン、IL-10などの抗炎症性サイトカイン、またはアルギナーゼ-1、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)などのリモデリング因子を産生する。
【0015】
ADA2遺伝子の両対立遺伝子有害変異によるヒトアデノシンデアミナーゼ2型欠損症(DADA2)は、最初に記載された単一遺伝子型の小血管および中血管の血管炎である。DADA2において、単球/マクロファージの分化は、炎症誘発性のM1サブセットに偏向しており(skewed)、内皮の完全性にとって有害である(Moens et al.2019 Immunol Rev.287(1):62-72)。
【0016】
また、ベーチェット病を含む免疫媒介疾患に関連する感受性遺伝子としてIL10および関連遺伝子が同定され、この疾患の病因における異常なM2マクロファージ機能の関与が示唆されている。実際に、M2マクロファージの機能不全は、単純ヘルペスウイルス誘発ベーチェット病マウスモデルでは、炎症を悪化させることが示されている。ベーチェット病皮膚病変では、全身性硬化症皮膚病変と比較して、M1マクロファージが優勢であることが示されている。一塩基多型は、ベーチェット病において、M1マクロファージ優勢炎症に寄与し得て、マクロファージ分極の偏向は、免疫学的介入によって修正可能であり得る(Nakano et al.2018 Arthritis Research&Therapy 20:124)。
【0017】
好中球
ベーチェット病患者の好中球は、HLA-B*51に関連し得る高い内因性活性化を示す。好中球は、通常、ベーチェット病病変の血管周囲浸潤に関与している。実際に、急性期では、好中球が血管炎浸潤物中で優勢であり、後にCD4+T細胞、形質細胞およびマクロファージに置き換わる(Baharav et al.2006 Drug Discovery Today:Disease Models3(1):11-14)。活性酸素種(ROS)の産生は、好中球の正常な特徴である。好中球媒介酸化ストレス異常は、ベーチェット病の病因に重要な役割を果たし得、タンパク質過酸化物(AOPP)は、ベーチェット病患者の疾患活動の進行および重症度をモニターするための有用なマーカーであり得る。病理組織学的解析から、動脈および静脈に好中球およびリンパ球が浸潤し、血管内皮機能不全を引き起こすことが示された。内皮機能不全および好中球性の血管炎症は、ベーチェット病患者の血栓症を媒介する重要な要因である(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0018】
NK細胞
NK細胞は、感染細胞および腫瘍細胞において細胞傷害性の役割を果たすのみでなく、サイトカインを分泌することによって、他の免疫細胞の機能を調節する。ベーチェット病患者の末梢血中のNK細胞の数は、有意に減少している。ベーチェット病患者における末梢血NK細胞の枯渇は、これらの細胞傷害性細胞の炎症部位へのホーミングの増加を反映し得る。ベーチェット病患者におけるNK1サブセットの利点が報告され、健康な対象と比較して、ベーチェット病患者ではNK2およびIL-10分泌細胞の割合が低かった。IL-10は、特に重要な抗炎症作用および免疫抑制効果を有する。ベーチェット病患者では、IFN-γの阻害効果によりNK1細胞の優勢な機能が増加し、IFN-γの分泌の増加は、NK2細胞を阻害し得る。NK細胞は、NK2分極を介してベーチェット病患者の寛解において積極的な役割を果たし得る(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0019】
γδ T細胞
末梢血中のγδT細胞の主要なサブセットは、成長因子およびサイトカインの存在下で複数の炎症誘発性サイトカインを産生することができる。特に、IL-1およびIL-23は、自己免疫性炎症性疾患を媒介することが示されている。これらのサイトカインは、自然IL-17およびIL-21産生の重要な供給源であるγδT細胞を活性化する(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0020】
自然免疫細胞によって産生されるサイトカイン
炎症誘発性サイトカイン
ベーチェット病患者では、自然免疫細胞による炎症誘発性サイトカイン、例えば、IL-1、IL-6、TNF-α、IFN-γ、IL-21、IL-23およびTGF-βの産生が増強される(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0021】
IL-1、IL-6、およびTNF-αは、ベーチェット病患者における主要な炎症誘発性サイトカインである。これらのサイトカインは、20年以上前から、ベーチェット病患者の眼液中に発見されており、疾患の発症をもたらす主要な炎症メディエーターであると考えられている。
【0022】
IL-6は、明らかに、自然免疫細胞によって産生される多面的サイトカインである。IL-6の産生は、厳密に負に調節されており、IL-6の異常な過剰産生は、自己免疫疾患および慢性炎症性疾患に関連することが見出されている。神経ベーチェット病患者のCSF中でのIL-6の増加は、長期予後および疾患活動性に関連していることが報告されており、疾患活動性のマーカーと見なされている。
【0023】
TNF-αは、代表的な炎症誘発性サイトカインであり、自己免疫応答における炎症の誘導および維持において中心的な役割を果たす。炎症性疾患では、TNF-αは、主に単球/マクロファージ系列の細胞によって産生される。過去10年間、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、およびゴリムマブなどのTNF-αアンタゴニストの適応外使用により、特にベーチェット病における難治性免疫媒介性ブドウ膜炎の処置が改善しており、TNF-α阻害が、重症かつ抵抗性のベーチェット病患者の処置における重要な展開であることを示唆する十分なエビデンスがある(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0024】
抗炎症性サイトカイン
逆に、ベーチェット病患者では、いくつかの抗炎症性サイトカインのレベルは低い。IL-37は、自己免疫疾患および炎症性疾患における抗炎症性サイトカインとして最初に記述された。活動性ベーチェット病患者の血清およびPBMC培養上清では、IL-37のレベルが減少することが報告された(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0025】
さらに、発現研究では、疾患関連IL-10バリアントが、この抗炎症性サイトカインの発現の減少に関連しており、それが感受性炎症状態を引き起こし、したがってベーチェット病に対する感受性を増加させ得ることが示された(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0026】
治療アプローチ
ベーチェット病の患者に世界中で使用されている主な処置法は、コルヒチンである。
【0027】
並行して、一部の地域では、臨床医は、重症疾患を有する患者において、免疫抑制剤を使用している。ベーチェット病のためのいくつかの処置は、自然免疫応答を標的としている。これらには、TNF-αアンタゴニスト(主に、日本およびイスラエルで使用されている)、およびIFN-α、ならびにIL-1遮断薬(アナキンラおよびカナキヌマブ)、IL-6遮断薬(トシリズマブ)など、インターロイキンおよびその受容体を標的とする作用剤、ならびにIL-12/IL-23を標的とするモノクローナル抗体(ウステキヌマブ)の使用が含まれる(Tong et al.2019 Front.Immunol.10(665))。
【0028】
処置戦略は、IL-10産生の増強または炎症性病変へのM2マクロファージの局所蓄積にも向けられ、ベーチェット病の臨床転帰の改善に寄与し得る。TNF阻害剤は、M1マクロファージ機能を阻害することにより、M2マクロファージの相対的濃縮をもたらし得る。
【0029】
あるいは、ベーチェット病の国際臨床試験が進行しているホスホジエステラーゼ4選択的阻害剤であるアプレミラストは、IL-10の産生を刺激し、炎症誘発性サイトカインの産生を下方制御する。これらの処置の臨床効果は、M1/M2バランスの修正に関連している(Nakano et al.2018 Arthritis Research&Therapy 20:124)。近年、FDAは、ベーチェット病に関連する口腔潰瘍および皮膚潰瘍を有する成人の処置のために、1日2回30mgで投与されるアプレミラストの使用を承認した。
【0030】
近年、より新しい薬物の導入により処置はかなり有効になってきているが、ベーチェット病は、依然としてかなりの罹患率および死亡率の増加に関連している。
したがって、血管炎全般およびベーチェット病の新しい防止的処置および/または治療的処置を開発することが依然として現実的かつ緊急に必要である。
【0031】
さらに、異なるベーチェット病患者が、異なる臓器に影響を及ぼす異なる症状を経験し得る。臨床医は、多くの場合、患者が経験する特定の症状を処置するために、影響を受けた臓器に応じて、患者に異なる製品を処方する。例えば、主な推奨事項にしたがって:
-皮膚、粘膜または関節病変を有する患者には、局所コルチコステロイドおよびコルヒチン、乳酸桿菌トローチ、アザチオプリン、IFN-αおよびエタネルセプトが投与される。
-ブドウ膜炎および静脈血栓症を有する患者には、アザチオプリン、IFN-α、インフリキシマブまたはアダリムマブが投与される。
-肺動脈瘤または末梢動脈瘤を有する患者には、手術を行い、シクロホスファミドおよびインフリキシマブが投与される。
-CNSの関与または消化管の関与を有する患者には、局所および/または経口の5-ASA誘導体およびアザチオプリン、インフリキシマブまたはアダリムマブが投与される。
【0032】
そのため、血管炎およびベーチェット病などの全身性炎症性疾患において観察される多臓器病変を世界全体で防止および/または処置することが可能な新規製品の開発が緊急に必要となっている。
【0033】
ベーチェット病の動物モデル
ANCA関連血管炎(AAV)に関しては、現在まで、多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧ウェゲナー病)に見られる肉芽腫性病変、または肺もしくは腎臓以外の臓器における血管炎病変の発症を再現する良好なモデルはない。しかし、利用可能なモデルを組み合わせて使用することにより、疾患の重要な要件をより深く理解できるはずである。
【0034】
ベーチェット病(BD)の病因を研究するのに好適な動物モデルは比較的少ない。これは、多くの場合、遺伝的要因および環境要因の組み合わせを伴い、免疫不全をもたらす自己免疫疾患および自己炎症性疾患について当てはまる。ベーチェット病の免疫病因を試験し理解するために、環境汚染物質、細菌およびヒト熱ショックタンパク質由来ペプチド、およびウイルス注射に基づく動物モデルが開発された。これらの動物モデルを別々におよび/または同時に使用することにより、ベーチェット病のより効果的な研究が可能になる。
【0035】
韓国のSohnらのグループは、ICRマウス(「BDマウス」)において単純ヘルペスウイルス(HSV)誘導モデルを開発し、口腔、生殖器、および皮膚潰瘍、眼病変、関節炎、および腸の病変など、患者で観察されたものと同様のベーチェット病様症状を生じさせた(Sohn et al.2012 Clin Exp Rheumatol30(Suppl.72):S96-S103)。しかし、このモデルは、韓国では十分に管理されているが、韓国外で設定するには、困難であり道のりは遠いと考えられる。
【0036】
英国のStanfordらのチームは、LewisラットにおけるHSP(熱ショックタンパク質)の使用をベースにしたモデルを開発した(Stanford et al1994Clin Exp Immunol97:226-31)。しかし、このモデルは、ブドウ膜炎の症状に限定されているため、ベーチェット病のモデルとして完全に満足のいくものではない。
【0037】
Mor et alのグループは、イスラエルにおいて、完全フロイントアジュバントの存在下で、Lewisラットに注射後、前部ブドウ膜炎、関節および皮膚病変を誘導するために、標的自己抗原として、α-トロポミオシンを使用した(Mor et al 2002 Eur.J.Immunol.32:356ー365)。トロポミオシンは、多数の組織に存在し、BD患者の血清によって認識される自己抗原である。自己免疫病原性の誘導は、ラットが前部ブドウ膜炎および皮膚の炎症を発症することから、完全フロイントアジュバントの存在下で、α-トロポミオシンによるラットの免疫後に示された(Baharav et al.2006 Drug Discovery Today:Disease Models 3(1):11-14)。病原性細胞のサイトカインプロファイルは、M1/Th1パターンを有していた。
【0038】

結論として、ヒトの疾患のすべての態様を忠実に再現するベーチェット病の理想的なモデルは現在入手できない。しかし、現在の動物モデルは、BDの病理生理学に関する有用な情報を提供した。特に、これらのモデルは、細胞およびサイトカイン修飾をBDの免疫病理学に関連付けるのに有用である。
【0039】
本発明者らは、イミキモドマウスモデルおよびα-トロポミオシン/Lewisラットモデルを使用して、臨床症状(眼、関節および皮膚)および免疫応答の調節に及ぼすP28GST免疫の効果を評価した。実際に、α-トロポミオシン/Lewisラットモデルが、ベーチェット病の3つの症状を模倣する自己免疫病原性を誘導する場合、皮膚炎症の動物モデルとして古典的に使用されるイミキモドマウスモデルは、ベーチェット病の処置における新しい分子の効力アッセイを開発するためにも使用できる。実際に、イミキモドモデルは、以下のようなベーチェット病患者で観察されたものと非常によく似た免疫障害を誘導する:
-TNF-α、IFN-γ、IL-23およびIL-6サイトカインの増加、
-好中球の関与、
-VEGFの増加(強い血管新生および血管炎の誘導)、
-これら2つの免疫媒介性炎症性疾患を改善するためのM2マクロファージの関与。
【0040】
発明者の驚くべき発見
寄生虫は、感染した宿主において、免疫応答を誘導する。特に、住血吸虫などの蠕虫寄生虫は、宿主免疫系の強力な調節因子である。
【0041】
本発明者らは、住血吸虫由来のP28GSTタンパク質が、抗炎症免疫応答(特にM2マクロファージによって媒介される)を誘導し、および/または炎症性免疫応答を減少または抑制することが可能である(特にM1マクロファージによって媒介される)ことを示した。実際に、本発明者らは、驚くべきことに、住血吸虫由来のP28GSTタンパク質が、M2マクロファージを誘導し、および/またはM1型マクロファージ免疫応答(例えば、M1マクロファージの数およびM1関連分子のレベルを含む)を低減させることが可能であることを示した。M1型応答のこうした減少により、血管炎において観察される炎症に関連する症状を軽減することができるようになる。特に、本発明者らは、驚くべきことに、P28GSTタンパク質が、M1マクロファージによって顕著に産生されることが知られている炎症誘発性サイトカインおよび/またはメディエーターの分泌を減少させ、および/または、M2マクロファージによって顕著に産生されることが知られている抗炎症性サイトカインおよび/またはメディエーターの分泌を増加させることを示した。これらの分子は、全身を循環し、それらの減少または増加が、すべての臓器に潜在的に影響を与える。
【0042】
したがって、P28GSTタンパク質は、それを必要とする対象において、M1型免疫応答を減少させ、および/またはM2型免疫応答を増加させるために使用することができる。
【0043】
例えば、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病理、脂肪異栄養症および心筋梗塞など、様々な疾患が、M1/M2マクロファージ比の調節不全に関連していることが示されている。
【0044】
したがって、P28GSTタンパク質は、M1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置にも有用である。
【0045】
最後に、P28GSTタンパク質は、全身に存在するサイトカインおよび/またはメディエーターに作用するため、血管炎など、あらゆる臓器または全身にさえも影響を与える多臓器疾患の防止的処置または治療的処置に使用できる。
【発明の概要】
【0046】
本発明は、それを必要とする対象において、M1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させるための、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるポリペプチドに関する:
a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の配列;
b)ポリペプチドがM1型免疫応答を減少させ、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)で定義される配列の断片;
c)ポリペプチドがM1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【0047】
一実施形態によれば、上記ポリペプチドは、以下の防止的処置または治療的処置における使用のためのものである:
-血管炎、または
-アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患。
【0048】
本発明は、血管炎の防止的処置または治療的処置に使用するために、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるポリペプチドに関する:
a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の配列;
b)ポリペプチドがM1型免疫応答を減少させ、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)で定義される配列の断片;ならびに
c)ポリペプチドがM1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【0049】
一実施形態によれば、上記ポリペプチドは、M1型免疫応答を減少させ、および/またはM2型免疫応答を増加させる。
【0050】
実施形態によれば、上記断片は、
-配列番号1(配列番号19)、配列番号2(配列番号20)、配列番号3(配列番号21)、または配列番号5(配列番号22)の24位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片:
-配列番号1(配列番号23)、配列番号2(配列番号24)、配列番号3(配列番号25)、または配列番号5(配列番号26)の115位のアミノ酸から131位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片;および/または
-配列番号1(配列番号27)、配列番号2(配列番号28)、配列番号3(配列番号29)または配列番号5(配列番号30)の190位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片を含む。
【0051】
一実施形態によれば、上記断片は、
-配列番号1(配列番号31)、配列番号2(配列番号32)、配列番号3(配列番号33)または配列番号5(配列番号34)の15位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片;
-配列番号1(配列番号35)、配列番号2(配列番号36)、配列番号3(配列番号37)、または配列番号5(配列番号38)の100位のアミノ酸から150位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片;および/または
-配列番号1(配列番号39)、配列番号2(配列番号40)、配列番号3(配列番号41)または配列番号5(配列番号42)の170位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片を含む。
【0052】
別の実施形態によれば、上記断片は、
-配列番号6(配列番号43)、配列番号7(配列番号44)、または配列番号8(配列番号45)の21位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片;
-配列番号6(配列番号46)、配列番号7(配列番号47)、または配列番号8(配列番号48)の112位のアミノ酸から125位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片;
-配列番号6(配列番号49)の181位のアミノ酸から217位のアミノ酸、または配列番号7(配列番号50)の172位のアミノ酸から187位のアミノ酸、または配列番号8の181位のアミノ酸から203位のアミノ酸(配列番号51)の範囲のアミノ酸配列を有する断片を含む。
【0053】
したがって、一実施形態によれば、上記断片は、配列番号19~配列番号51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0054】
別の実施形態によれば、上記ポリペプチドは、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる:
a)配列番号1の配列:
b)ポリペプチドがM1型免疫応答を減少させ、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)で定義される配列の断片;ならびに
c)ポリペプチドが、M1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【0055】
一実施形態によれば、上記断片は、
-配列番号1(配列番号19)の24位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片;
-配列番号1(配列番号23)の115位のアミノ酸から131位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片;
-配列番号1(配列番号27)の190位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲のアミノ酸配列を有する断片を含む。
【0056】
別の実施形態によれば、上記ポリペプチドは、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる:
a)配列番号1の配列:
b)配列番号19~配列番号30からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する断片;および
c)ポリペプチドが、M1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【0057】
本発明はまた、血管炎またはアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置において使用するための、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸、または上記核酸を含むベクターに関する。
【0058】
本発明はまた、血管炎の防止的処置または治療的処置において使用するための、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸、または上記核酸を含むベクターに関する。
【0059】
本発明の別の目的は、血管炎またはアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置において使用するための、本明細書に記載のポリペプチド、または本明細書に記載の核酸もしくはベクターを含む組成物である。
【0060】
一実施形態によれば、上記組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物である。
【0061】
一実施形態によれば、上記組成物は、少なくとも1種のアジュバントをさらに含むワクチン組成物である。
【0062】
本発明の目的は、血管炎の防止的処置または治療的処置において使用するための本明細書に記載のポリペプチド、または本明細書に記載の核酸もしくはベクターを含む組成物である。
【0063】
一実施形態によれば、上記組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む医薬組成物である。
【0064】
一実施形態によれば、上記組成物は、少なくとも1種のアジュバントをさらに含むワクチン組成物である。
【0065】
別の実施形態によれば、ポリペプチドは、少なくとも1種のアジュバントとの同時、別々または順次の組み合わせで使用するためのものである。
【0066】
本発明の別の目的は、血管炎またはアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択されるM1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置において同時に、別々に、または順次使用するための、本明細書に記載のポリペプチドおよび少なくとも1種のアジュバントを含むキット・オブ・パーツである。
【0067】
本発明の目的は、血管炎の防止的処置または治療的処置において同時、別々または順次に使用するための、本明細書に記載のポリペプチドおよび少なくとも1種のアジュバントを含むキット・オブ・パーツである。
【0068】
一実施形態によれば、上記アジュバントは、天然または非天然のアルミニウム塩である。
【0069】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象において、M1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させるための方法であって、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなるポリペプチドの治療有効量を対象に投与することを含む方法である:
a)配列番号1:配列番号2:配列番号3:配列番号5:配列番号6:配列番号7:または配列番号8の配列;
b)ポリペプチドがM1型免疫応答を減少させ、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)で定義される配列の断片;
c)ポリペプチドが、M1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させることを条件とする、a)またはb)で定義される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列。
【0070】
一実施形態によれば、患者は、血管炎またはアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症または心筋梗塞に罹患している。
【0071】
一実施形態によれば、上記血管炎は、ベーチェット病(BD)、コーガン症候群(CS)、高安動脈炎(TAK)、巨細胞性動脈炎(GCA)、結節性多発動脈炎(PAN)、川崎病(KD)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー)(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス)(EGPA)、免疫複合体小血管血管炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)疾患、クリオグロブリン血症性血管炎(CV)、IgA血管炎(ヘノッホシェーンライン)(IgAV)、低補体血症性蕁麻疹性血管炎(HUV)(抗C1q血管炎)、皮膚白血球破砕性血管炎、皮膚動脈炎、原発性中枢神経系血管炎、孤発性大動脈炎からなる群から選択される。
【0072】
一実施形態によれば、上記血管炎は、ベーチェット病である。
【0073】
一実施形態によれば、上記血管炎は、ループス、関節リウマチ、サルコイドーシス、C型肝炎、B型肝炎、梅毒およびがんからなる群から選択される別の疾患に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0074】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
【0075】
「アジュバント」
本明細書において使用される場合、「アジュバント」は、本発明の免疫原性産物の免疫原性を増強する物質である。アジュバントは、多くの場合、免疫応答を高めるために与えられ、当業者に周知である。
【0076】
「単離された」
本明細書において使用される場合、用語「単離された」または「非天然に存在する」は、生物学的成分(例えば、核酸分子、タンパク質細胞小器官または細胞など)に関して、天然状態から改変または除去された生物学的成分を指す。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸またはペプチドは、「単離」されていないが、その天然状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離」されている。単離された核酸またはペプチドは、実質的に精製された形態で存在することができるか、または、例えば、宿主細胞などの非天然環境に存在することができる。典型的には、単離された核酸またはペプチドの調製物は、少なくとも約80%の純度、少なくとも約85%の純度、少なくとも約90%の純度、少なくとも約95%の純度、95%を超える純度、約96%を超える純度、約97%を超える純度、約98%を超える純度、または約99%を超える純度の核酸またはペプチドを含む。「天然に存在しない」または「単離」されている核酸およびタンパク質は、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含する。「単離されたポリペプチド」は、その天然の環境の成分から同定され、分離され、および/または回収されているポリペプチドである。
【0077】
「防止する(prevent)」、または「防止すること(preventing)」または「防止(prevention)」
本明細書で使用される場合、「防止する(prevent)」、「防止すること(preventing)」および「防止(prevention)」という用語は、予防的手段および防止的手段を指し、その目的は、対象が所与の期間にわたって病的状態または障害を発症する機会を低減させることである。そのような低減は、例えば、対象の病的状態または障害の少なくとも1つの症状の発症の遅延に反映され得る。
【0078】
「対象」
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳動物を指す。ここでの用語「哺乳動物」は、ヒト、家畜、および農場動物、ならびに動物園、競技、またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む任意の哺乳動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、霊長類であり、より好ましくはヒトである。ヒトは、成人または子供であり得る。「子供」とは、0歳~18歳までの個人として定義される。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち、医療が施されるのを待機している、または医療を受けている、または医療行為の対象であった/対象である/対象となる、または疾患の発症についてモニターされる対象であり得る。
【0079】
「処置すること」または「処置」または「軽減」
本明細書で使用される場合、「処置すること」または「処置」または「軽減する」という用語は、予防的または防止的処置を除く処置的処置を指す。ここで、目的は、標的となる病理学的状態または障害を減速(弱める)させることである。処置を必要とする対象は、すでに障害を有する対象、ならびに障害を有することが疑われる対象も含む。対象は、本発明による単離されたポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品の治療量を投与された後に、標的化される病理学的状態または障害について首尾よく「処置」され、対象は、特定の疾患または状態に関連する1つ以上の症状の観察可能なおよび/または測定可能な減少もしくはそのような症状がない、罹患率および死亡率の低減、ならびに/または生活の質の問題の改善を示す。処置の奏功および疾患の改善を評価するための上記のパラメータは、医師が精通している日常的な手順によって容易に測定可能である。
【0080】
詳細な説明
28kDaおよび26kDaのグルタチオンS-トランスフェラーゼ天然タンパク質は、住血吸虫症の原因となる扁形虫である住血吸虫寄生虫によって発現されるタンパク質である。住血吸虫にはいくつかの種類がある。マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)は、アフリカおよびブラジルでのヒトの腸住血吸虫症の原因である。ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)は、アフリカおよびアラビア半島でのヒトの尿中住血吸虫症の原因である。各住血吸虫種は、独自の特徴的な28kDaグルタチオンS-トランスフェラーゼを発現する。したがって、マンソン住血吸虫種は、Sm28GSTおよびSm26GST(2つのアイソフォーム)を発現し、ビルハルツ住血吸虫種は、Sh28GSTを発現し、ウシ住血吸虫(住血吸虫感染家畜)は、Sb28GSTを発現し、日本住血吸虫種(東南アジア-フィリピンおよび中国南部に影響を与える)は、Sj28GSTおよびSj26GSTを発現する。これらのタンパク質をコードする遺伝子は公知であり、および/または当業者がこれらを同定することが可能である。したがって、当業者は、例えば組換え技術によって本発明の前述のタンパク質およびポリペプチドを製造することができる。
【0081】
Sh28GST、Sm28GST、Sb28GST、Sj28GST、Sm26GSTおよびSj26GSTタンパク質は、同定され、データベースに列挙されている配列を有する。特に、NCBIデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov)において、Sh28GSTのポリペプチド配列は、アクセッション番号XP_012797862で見出され得、Sm28GSTのポリペプチド配列は、アクセッション番号XP_018646799で見出され得、Sb28GSTのポリペプチド配列は、アクセッション番号AAA29893で見出され得、Sj28GSTのポリペプチド配列は、アクセッション番号AAB03573で見出され得、Sm26GST(アイソフォーム1および2)のポリペプチド配列は、それぞれ、アクセッション番号AAA29888およびXP_018652834で見出され得、Sj26GSTのポリペプチド配列は、アクセッション番号AAB59203で見出され得る(2020年4月9日現在更新されている)。
【0082】
Sh28GSTタンパク質とSb28GSTタンパク質は、97%同一であるが、Sh28GSTタンパク質とSm28GSTタンパク質は、91%同一であり、Sh28GSTタンパク質とSj28GSTタンパク質は、78%同一である。
【0083】
種々の住血吸虫由来の28kDaおよび26kDaのグルタチオンS-トランスフェラーゼタンパク質の配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8によって表され、これらは、それぞれSh28GST、Sm28GST、Sb28GST、Sj28GST、Sm26GST、およびSj26GSTタンパク質の配列を表す(以下の表1を参照されたい)。
【表1】
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号1,配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはこれらからなる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。
本発明のポリペプチドは、炎症反応(特に、M1マクロファージによって媒介されるもの)を低減または抑制すること、および/または抗炎症免疫応答(例えば、M2マクロファージによって媒介されるもの)を誘導することが可能である。
【0086】
実際に、驚くべきことに、本発明者らは、住血吸虫由来のP28GSTタンパク質が、M1型マクロファージ免疫応答を低減することが可能であることを示した。M1型免疫応答のこうした減少により、血管炎において観察される炎症に関連する症状を低減することができるようになる。
【0087】
特定のタイプの免疫応答は、例えば、上記免疫応答に関与する免疫細胞、サイトカイン、免疫メディエーターなどの種類など、以下のような様々な態様を特徴とする。
【0088】
本明細書において使用される場合、「M1型免疫応答」または「M1型マクロファージ免疫応答」は、「M1型マクロファージ」および/または「M1型マクロファージ」によって産生される分子によって少なくとも部分的に媒介される免疫応答を示す。
【0089】
同様に、本明細書において使用される場合、「M2型免疫応答」または「M2型マクロファージ免疫応答」は、「M2型マクロファージ」および/または「M2型マクロファージ」によって産生される分子によって少なくとも部分的に媒介される免疫応答を示す。
【0090】
「M1型免疫応答」および「M2型免疫応答」は、当該技術分野において周知であり、例えば、Ansari(2015)Journal of the Neurological Sciences 357:41ー49およびXin et al.(2016)Biochemical and Biophysical Research Communications 477:589-594において概説されている。
【0091】
実施例の節に示されるように、本発明のポリペプチドは、M1マクロファージによる炎症誘発性サイトカインおよび/またはメディエーターの分泌を減少させ、および/またはM2マクロファージによる抗炎症性サイトカインおよび/またはメディエーターの分泌を増加させる。
【0092】
したがって、本発明のポリペプチドは、生物活性を有する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドの「生物活性」は、M1型免疫応答を減少させる、および/またはM2型免疫応答を増加させる。
【0094】
特に、「M1型免疫応答を減少させるおよび/またはM2型免疫応答を増加させる」とは、例えば、M1マクロファージの数を減少させること、M2マクロファージの数を増加させること、M1/M2マクロファージ比を減少させること、M2/M1マクロファージ比を増加させること、炎症誘発性サイトカインまたはメディエーターの分泌を減少させること(例えば、M1マクロファージによる)、炎症誘発性サイトカインまたはメディエーターのレベルを減少させること、抗炎症性サイトカインまたはメディエーターの分泌を増加させること(例えば、M2マクロファージによる)、および/または炎症誘発性サイトカインまたはメディエーターのレベルを増加させることを意味し得る。
【0095】
本発明のポリペプチドは、上記の活性のうちの少なくとも1つを有するとすぐに本発明の意味の範囲内で生物活性を有する。
【0096】
本細書において使用される場合、「M1マクロファージ」または「古典的マクロファージ」という用語は、炎症誘発性マクロファージのサブセット、すなわち炎症を引き起こすマクロファージを指す。M1マクロファージサブセットは、典型的には、リポ多糖(LPS)などの微生物産物、またはインターフェロンγなどの炎症誘発性サイトカインによって活性化される。これらは通常、活性酸素および窒素種ならびに炎症誘発性サイトカインまたはメディエーターを放出することによって病原体を殺滅する。
【0097】
本明細書において使用される場合、「M2マクロファージ」または「代替活性化マクロファージ」という用語は、抗炎症性マクロファージまたは調節性マクロファージのサブセットを指し、これらは炎症、血管新生、組織リモデリング、および修復の解決に関与する。これらのマクロファージは、IL-4、IL-10、またはIL-13などのサイトカインによって刺激され、次に抗炎症性サイトカインまたはメディエーターを産生する。
【0098】
本明細書において使用される場合、用語「炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター」は、限定するものではないが、サイトカインまたはインターロイキン、例えば、IL-1、IL-1β、IL-6、IL-12、IL-15、IL-17、IL-23、TNF-α、IFN-γ、S100タンパク質、血清アミロイドA(SAA)またはオンコスタチンMが挙げられる。
【0099】
本明細書において使用される場合、用語「抗炎症性サイトカインまたはメディエーター」は、限定するものではないが、サイトカインまたはインターロイキン、例えばIL-10、IL-37、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βまたはマウスキチナーゼ-3様3が挙げられる。
【0100】
ポリペプチドの生物活性は、当業者によって、特に以下のアッセイによって、in vitro、ex vivo、またはin vivoで容易に評価することができる。
【0101】
例えば、M1マクロファージ(それぞれM2マクロファージ)の数は、フローサイトメトリーまたは定量PCR(qPCR)、好ましくはリアルタイム定量PCR(RT-qPCR)によって測定され得る。
【0102】
例えば、これらのアッセイは、表面バイオマーカーであり得るM1特異的バイオマーカー、例えば、CD80、CD86、または細胞内バイオマーカー、例えばiNOS、Cox2、STAT-1、IRF5などのバイオマーカーを検出し、定量化するために使用され得る。
【0103】
また、一例として、これらのアッセイは、例えば表面バイオマーカーであり得るM2特異的バイオマーカー、例えば、マウスCD200R、CD206、CD163、または細胞内バイオマーカー、例えばマウスArg-1、PPARγ、STAT-6、IRF4であるバイオマーカーを検出し、定量化するために使用され得る。
【0104】
非限定的な例として、M1マクロファージ(それぞれM2マクロファージ)の数を決定するために行われるフローサイトメトリーアッセイは、以下のように実施され得る。典型的には、細胞は、固定可能な生存率解析用色素を用いてブロックされ、生存率が評価され得る。次に、細胞表面免疫染色は、典型的には、CD80、CD86、CD206、CD200RまたはCD163に対する抗体などの抗体を用いて行うことができる。典型的には、細胞は、フローサイトメーターで分析され得、データ解析は、例えば、適切なソフトウェアを使用して実施され得る。フローサイトメトリープロトコールの非限定的な例を、実施例1の材料および方法に示す。
【0105】
非限定的な例として、M1マクロファージ(それぞれM2マクロファージ)の数を決定するために行われるqPCRアッセイは、以下のように実施され得る。典型的には、総RNAは、細胞、例えば皮膚の細胞から抽出され得る。RNA濃度および純度は、典型的には、260nmおよび280nmでの吸光度によって決定され得る。逆転写は、典型的には、当業者に公知である適切な市販のキットを用いて実施され得る。遺伝子発現は、典型的には、RT-qPCRによって、例えば適切な機器においてFast SYBR Green Master Mix試薬を使用して、評価され得る。例えば、β-アクチンまたは任意の他のハウスキーピング遺伝子を用いて正規化を行ってもよい。好適なプライマー、例えばβ-アクチン、iNOS、Arg1の検出を可能にするフォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用してもよい。結果は、典型的には、例えば2-ΔΔCt法を用いて、対照と比較した相対的発現として表され得る。フローサイトメトリープロトコールの非限定的な例を、実施例1の材料および方法に示す。
【0106】
M1マクロファージの数を、例えば、本発明のポリペプチドの投与前後など、いくつかの時点で測定してもよく、ポリペプチド投与後のM1マクロファージの数の展開(減少または増加)を決定するために、測定された数を比較してもよい。
【0107】
同様に、M2マクロファージの数を、例えば、本発明のポリペプチドの投与前後など、いくつかの時点で測定してもよく、ポリペプチド投与後のM2マクロファージの数の展開(減少または増加)を決定するために、測定された数を比較してもよい。
【0108】
あるいは、本発明のポリペプチドの存在下で、または本発明のポリペプチドの投与後に測定されたM1マクロファージの数を、M1マクロファージの数に及ぼすポリペプチドの効果(減少または増加)を決定するために、陰性対照(例えばポリペプチドの非存在下)において測定されたM1マクロファージの数と比較してもよい。
【0109】
同様に、本発明のポリペプチドの存在下で、または本発明のポリペプチドの投与後に測定されたM2マクロファージの数を、M2マクロファージの数に及ぼすポリペプチドの効果(減少または増加)を決定するために、陰性対照(例えばポリペプチドの非存在下)において測定されたM2マクロファージの数と比較してもよい。
【0110】
ポリペプチドの生物活性を評価するために、炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター(それぞれ抗炎症性サイトカインまたはメディエーター)のレベルも、例えばELISAによって、好ましくは定量的ELISA、マルチプレックス分析によって、または定量的PCR、好ましくはリアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)によって測定され得る。
【0111】
例えば、これらのアッセイは、炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター、例えば、IL-1、IL-1β、IL-6、IL-12、IL-15、IL-17、IL-23、TNF-α、IFN-γ、S100タンパク質は、血清アミロイドA(SAA)、もしくはオンコスタチンMを検出し、定量化するために使用され得るか、または抗炎症性サイトカインもしくはメディエーター、例えばIL-10、IL-37、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β、もしくはキチナーゼ-3様3を検出し、定量化するために使用され得る。
【0112】
非限定的な例として、サイトカインまたはメディエーターのレベルを定量化するために行われるqPCRアッセイは、以下のように行われ得る。典型的には、総RNAは、細胞、例えば皮膚の細胞から抽出され得る。RNA濃度および純度は、典型的には、260nmおよび280nmでの吸光度によって決定され得る。逆転写は、典型的には、当業者によって知られている適切な市販のキットを用いて実施され得る。遺伝子発現は、典型的には、RT-qPCRによって、例えば適切な機器においてFast SYBR Green Master Mix試薬を使用して、評価され得る。例えば、β-アクチンまたは任意の他のハウスキーピング遺伝子を用いて正規化を行ってもよい。好適なプライマー、例えばIL-1β、TNFα、β-アクチンの検出を可能にするフォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用してもよい。結果は、典型的には、例えば2-ΔΔCt法を用いて、対照と比較した相対的発現として表され得る。フローサイトメトリープロトコールの非限定的な例として、実施例1の材料および方法に示す。
【0113】
非限定的な例として、C反応性タンパク質、S100A8またはS100A9タンパク質などのサイトカインまたはメディエーターのレベルを定量化するために行われるELISAアッセイは、以下のように実施され得る。典型的には、試験キットは、例えば、標的分子の定量的測定用に設計されたマイクロプレートフォーマットの固相酵素免疫測定法(ELISA)であり得る。マイクロプレートは、典型的には、捕捉抗体でコーティングされ得る。次いで、キャリブレータおよびサンプルを典型的に添加し、例えば、2時間インキュベートしてもよい。このインキュベーションの間、抗体に結合したサンプル中の内因性標的は、ウェルの内面に固定され得る。非反応性試料成分は、典型的には洗浄ステップによって除去され得る。その後、例えばビオチン化検出抗体を添加してもよい。例えば2時間のインキュベーションの間、2つの抗体および標的からなるサンドイッチ複合体が形成され得る。過剰量の検出抗体は、典型的には洗い流され得る。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされたストレプトアビジンを典型的に添加して、20分間インキュベートし、サンドイッチを完成させることができる。過剰量の酵素コンジュゲートは、典型的には洗い流され得る。最後に、発色基質、例えばTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)が、典型的には、すべてのウェルに添加され得る。例えば、20分間のインキュベーションの間、基質は、典型的には、固定された酵素によって発色した最終生成物に変換され得る。酵素反応は、典型的には、例えば塩酸を停止液として分注することによって停止され得る。これらの条件では、色の強度は、サンプル中に存在する標的の濃度に正比例する。カラー溶液の光学密度は、典型的には、例えば450nmのマイクロプレートリーダーを用いて測定され得る。マルチプレックス分析プロトコールの非限定的例は、実施例2の材料および方法に記載している。
【0114】
炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター(それぞれ、抗炎症性サイトカインまたはメディエーター)のレベルを、例えば、本発明のポリペプチドの投与の前後など、いくつかの時点で測定してもよく、ポリペプチド投与後の炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター(それぞれ、抗炎症性サイトカインまたはメディエーター)の展開(減少または増加)を決定するために、測定されたレベルを比較してもよい。
【0115】
あるいは、本発明のポリペプチドの存在下または本発明のポリペプチドの投与後に測定された炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター(それぞれ、抗炎症性サイトカインまたはメディエーター)のレベルを、炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター(それぞれ、抗炎症性サイトカインまたはメディエーター)のレベルに及ぼすポリペプチドの効果(減少または増加)を決定するために、陰性対照(例えば、ポリペプチドの非存在下で)で測定された炎症誘発性サイトカインまたはメディエーター(それぞれ、抗炎症性サイトカインまたはメディエーター)のレベルと比較してもよい。
【0116】
本明細書では、第1の測定値、測定数または測定レベルが、第2の測定値、測定数または測定レベルより1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%または300%低い場合、第1の測定値、測定数または測定レベルは、第2の測定値、測定数または測定レベルと比較して減少していると考えられる。
【0117】
本明細書では、第1の測定値、測定数または測定レベルが、第2の測定値、測定数または測定レベルより1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%または300%高い場合、第1の測定値、測定数または測定レベルは、第2の測定値、測定数または測定レベルと比較して増加していると考えられる。
【0118】
好ましくは、第1の測定値、測定数または測定レベルが第2の測定値、測定数または測定レベルよりも統計学的に低い場合、すなわち、適切な統計学的検定でp値が0.05未満の場合、第1の測定値、測定数または測定レベルは、第2の測定値、測定数または測定レベルと比較して減少していると考えられる。
【0119】
好ましくは、第1の測定値、測定数または測定レベルが第2の測定値、測定数または測定レベルよりも統計学的に高い場合、すなわち、適切な統計学的検定でp値が0.05未満の場合、第1の測定値、測定数または測定レベルは、第2の測定値、測定数または測定レベルと比較して増加していると考えられる。
【0120】
いくつかの実施形態では、「第1の測定値、測定数または測定レベル」は、本発明のポリペプチドの存在下または本発明のポリペプチドの投与後に測定された値、数またはレベルであり、一方、「第2の測定値、測定数または測定レベル」は、ポリペプチドの非存在下または投与前に測定された値、数またはレベルである。
【0121】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0122】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0123】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0124】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0125】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0126】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0127】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0128】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列の断片を含むかまたはこれらからなる。
【0129】
参照配列の「断片」とは、本明細書において、参照配列の連続するアミノ酸の鎖によって構成され、そのサイズが参照配列のサイズよりも小さい配列を意味する。本発明の文脈において、断片は、例えば6~210、6~200、6~175、6~150、6~125、6~100、6~75、6~50、6~25、6~15、6~10アミノ酸、または6~210、10~210、25~210、50~210、75~210、100~210、125~210、150~210、175~210、200~210、205~210アミノ酸のサイズを有し得る。
【0130】
一実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の15位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、20位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、24位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0131】
一実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の100位のアミノ酸から150位のアミノ酸の範囲の配列、110位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、115位のアミノ酸から131位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0132】
別の実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の170位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、180位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、190位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0133】
一実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の10位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、15位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、21位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0134】
一実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号6、配列番号7、または配列番号8の100位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、105位のアミノ酸から130位のアミノ酸の範囲の配列、112位のアミノ酸から125位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0135】
一実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号6の160位のアミノ酸から218位のアミノ酸の範囲の配列、170位のアミノ酸から217位のアミノ酸の範囲の配列、181位のアミノ酸から217位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0136】
一実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号7の150位のアミノ酸から195位のアミノ酸の範囲の配列、160位のアミノ酸から190位のアミノ酸の範囲の配列、172位のアミノ酸から187位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0137】
一実施形態によれば、本発明による断片は、配列番号8の160位のアミノ酸から218位のアミノ酸の範囲の配列、170位のアミノ酸から210位のアミノ酸の範囲の配列、181位のアミノ酸から203位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、本発明による断片は、
-配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の15位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、20位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、24位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
-配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の100位のアミノ酸から150位のアミノ酸の範囲の配列、110位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、115位のアミノ酸から131位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
-配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の170位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、180位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、190位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、本発明による断片は、
-配列番号6、配列番号7、または配列番号8の10位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、15位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、21位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片、
-配列番号6、配列番号7、または配列番号8の100位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、105位のアミノ酸から130位のアミノ酸の範囲の配列、112位のアミノ酸から125位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片、
-配列番号6の181位のアミノ酸から217位のアミノ酸の範囲の配列、配列番号7の172位のアミノ酸から187位のアミノ酸の範囲の配列、配列番号8の181位のアミノ酸から203位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む。
【0140】
本発明のポリペプチドはまた、本明細書のポリペプチドの「バリアント」、「相同体」または「誘導体」であり、同じ生物活性を呈する任意のポリペプチドを含む。
【0141】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、ビルハルツ住血吸虫、マンソン住血吸虫、ウシ住血吸虫または日本住血吸虫由来の天然28kDaグルタチオンSトランスフェラーゼタンパク質のバリアント、またはマンソン住血吸虫または日本住血吸虫由来の天然26kDaグルタチオンSトランスフェラーゼタンパク質のバリアントである。
【0142】
したがって、本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1の配列との配列同一性のパーセンテージによって定義される、配列番号1のアミノ酸配列の断片に由来する配列を有するポリペプチドを含む。
【0143】
また、本発明のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の配列との配列同一性のパーセンテージによって定義される、配列番号2のアミノ酸配列の断片に由来する配列を有するポリペプチドを含む。
【0144】
さらに、本発明のポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3の配列との配列同一性のパーセンテージによって定義される、配列番号3のアミノ酸配列の断片に由来する配列を有するポリペプチドを含む。
【0145】
また、本発明のポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列、または配列番号5の配列との配列同一性のパーセンテージによって定義される、配列番号5のアミノ酸配列の断片に由来する配列を有するポリペプチドを含む。
【0146】
さらに、本発明のポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6の配列との配列同一性のパーセンテージによって定義される、配列番号6のアミノ酸配列の断片に由来する配列を有するポリペプチドを含む。
【0147】
さらに、本発明のポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列、または配列番号7の配列との配列同一性のパーセンテージによって定義される、配列番号7のアミノ酸配列の断片に由来する配列を有するポリペプチドを含む。
【0148】
さらに、本発明のポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号8の配列との配列同一性のパーセンテージによって定義される、配列番号8のアミノ酸配列の断片に由来する配列を有するポリペプチドを含む。
【0149】
「バリアント」、「相同体」または「誘導体」ポリペプチドは、参照配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらに少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むと定義される。
【0150】
これらの誘導配列は、これらの修飾がポリペプチドの生物活性にいかなる顕著な影響も有さないような位置において、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または挿入が参照配列と異なってもよい。
【0151】
置換は、特に、保存的置換、または非天然アミノ酸もしくは偽アミノ酸による天然アミノ酸の置換に対応し得る。
【0152】
本明細書において「(例えば)参照配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列」とは、本明細書において参照配列と同一の配列を意味するが、この配列は、参照配列の100アミノ酸の各部分当たり最大20個の変異(置換、欠失および/または挿入)を含み得る。したがって、100アミノ酸の参照配列では、参照配列と比較して、80アミノ酸の断片および20個の置換を含む100アミノ酸の配列は、参照配列と80%の配列同一性を有する配列の2つの例である。
【0153】
同一性のパーセンテージは、一般に、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center.1710 University Avenue.Madison,Wis.53705)を使用して決定される。比較されるアミノ酸配列を、最大のパーセンテージ同一性を得るように整列させる。この目的のために、配列内に人為的にギャップを追加する必要があり得る。アライメントは、手動または自動で実施され得る。ヌクレオチド配列の自動アラインメントアルゴリズムは、当業者に周知であり、例えばAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389に記載され、BLASTソフトウェアなどのソフトウェアによって実装されている。単離できるアルゴリズムの1つは、例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch(1970)J Mol Biol.48:443-53)である。最適なアラインメントが達成されると、位置の総数と比較して、2つの比較される配列のアミノ酸が同一であるすべての位置を記録することによって、パーセンテージ同一性を確立する。
【0154】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下を含むかまたは以下からなる:
a)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列:
b)配列番号1のアミノ酸配列の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列。
【0155】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下を含むかまたは以下からなる:
a)配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列:
b)配列番号2のアミノ酸配列の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列。
【0156】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下を含むかまたは以下からなる:
a)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列:
b)配列番号3のアミノ酸配列の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列。
【0157】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下を含むかまたは以下からなる:
a)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列:
b)配列番号5のアミノ酸配列の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列。
【0158】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下を含むかまたは以下からなる:
a)配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列:
b)配列番号6のアミノ酸配列の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列。
【0159】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下を含むかまたは以下からなる:
a)配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列:
b)配列番号7のアミノ酸配列の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列。
【0160】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、以下を含むかまたは以下からなる:
a)配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列:
b)配列番号8のアミノ酸配列の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の同一性を有する配列。
【0161】
一実施形態では、ポリペプチドの配列は、保存的置換が存在することのみが参照配列と異なる。保存的置換は、同じクラスのアミノ酸の置換であり、例えば、アミノ酸の非荷電側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミンセリンシステインおよびチロシン)との置換、アミノ酸の塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、およびヒスチジン)との置換、アミノ酸の酸側鎖(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)との置換、アミノ酸と非極性側鎖(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンなど)との置換である。
【0162】
本発明によれば、ポリペプチドは、それらの安定性または生物学的利用能を改善するために化学的または酵素的に修飾され得る。このような化学的または酵素的修飾は、当業者に周知である。以下の修飾例に言及することができるが、これらに限定されない:
-ポリペプチドのC末端またはN末端の修飾、例えば、N末端脱アミノ化もしくはアシル化(好ましくはアセチル化)またはC末端アミド化もしくはエステル化;
-2つのアミノ酸間のアミド結合の修飾、例えば窒素またはアルファ炭素でのアシル化(好ましくはアセチル化)またはアルキル化;
-キラリティーの変化、例えば、対応するD-鏡像異性体による天然アミノ酸(L-鏡像異性体)の置換;この修飾は、任意により、側鎖の反転(C末端からN末端へ)を伴い得る。
-1つ以上のアルファ炭素が窒素原子で置換されているアザペプチドへの変化、および/または
-1つ以上の炭素が、主鎖のN-α側またはC-α側に付加されているベータペプチドへの変化。
【0163】
これに関して、ポリペプチドのリジンアミノ酸(K)の1つ以上を、特に以下の方法により修飾することができる:
-アミド化:この修飾は達成するのが簡単であり、リジンの正電荷が、疎水性基(例えば、アセチルまたはフェニルアセチル)によって置換される;
-アミノ化:第一級アミンR=(CH-NH からの第二級アミドの形成による、例えば、N-メチル基、N-アリル基またはN-ベンジル基を形成すること;および
-N-オキシド基、N-ニトロソ基、N-ジアルキルホスホリル基、N-スルフェニル基、またはN-グリコシド基を形成することによる。
【0164】
同様にまたはあるいは、ポリペプチドの1つ以上のスレオニン(T)および/またはセリン(S)アミノ酸を、特にスレオニンおよび/またはセリンの側鎖のOH基に、エステル基またはエーテル基を付加することによって修飾することも可能である。エステル化は、簡便な操作で、カルボン酸、無水物、架橋などにより、酢酸塩または安息香酸塩を形成するために実施することができる。より安定な化合物が得られるエーテル化を、アルコール、ハロゲン化物などを用いて行って、例えばメチルエーテルまたはO-グリコシドを形成することができる。
【0165】
同様にまたはあるいは、例えばアミド化によって、特にメチル、エチル型の基で、官能化されているか否かにかかわらず、第二級または第三級アミンを形成することによって、1つ以上のグルタミン(Q)アミノ酸を修飾することも可能である。
【0166】
同様にまたはあるいは、例えば、以下によって1つ以上のグルタミン酸(E)および/またはアスパラギン酸(D)アミノ酸を修飾することも可能である:
-エステル化によって、置換または非置換のメチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、チオール(活性化エステル)を形成する;および
-アミド化によって、特にN,Nジメチル基、ニトロアニリド、ピロリジニルを形成する。
【0167】
その一方で、アミノ酸G、AおよびMは、一般に、明確な目的の修飾可能性を提供しないことにも留意して、ポリペプチドの二次構造に関与するプロリンアミノ酸を修飾しないことが好ましい。
【0168】
一実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号5のうちの1つに由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の15位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、20位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、24位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0169】
一実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号5のうちの1つに由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の100位のアミノ酸から150位のアミノ酸の範囲の配列、110位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、115位のアミノ酸から131位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0170】
一実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号5のうちの1つに由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の170位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、180位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、190位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0171】
別の実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のうちの1つに由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号6、配列番号7、または配列番号8の10位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、15位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、21位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0172】
別の実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号6、配列番号7、および配列番号8のうちの1つに由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号6、配列番号7、または配列番号8の100位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、105位のアミノ酸から130位のアミノ酸の範囲の配列、112位のアミノ酸から125位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0173】
別の実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号6に由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号6の160位のアミノ酸から218位のアミノ酸の範囲の配列、170位のアミノ酸から217位のアミノ酸の範囲の配列、181位のアミノ酸から217位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0174】
別の実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号7に由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号7の150位のアミノ酸から195位のアミノ酸の範囲の配列、160位のアミノ酸から190位のアミノ酸の範囲の配列、172位のアミノ酸から187位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0175】
別の実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号8に由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号8の160位のアミノ酸から218位のアミノ酸の範囲の配列、170位のアミノ酸から210位のアミノ酸の範囲の配列、181位のアミノ酸から203位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0176】
いくつかの実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号5のうちの1つに由来するか、またはそれらのうちの1つに対して相同である配列を有し、有利には配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の15位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、20位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、24位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片、
一配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の100位のアミノ酸から150位のアミノ酸の範囲の配列、110位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、115位のアミノ酸から131位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片、および/または
一配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号5の170位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、180位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列、190位のアミノ酸から211位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0177】
他の実施形態によれば、本発明のポリペプチドは、配列番号6、配列番号7および配列番号8の配列のうちの1つに由来するかまたはこれに相同である配列を有し、有利には
-配列番号6、配列番号7、または配列番号8の10位のアミノ酸から60位のアミノ酸の範囲の配列、15位のアミノ酸から50位のアミノ酸の範囲の配列、21位のアミノ酸から43位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片、
-配列番号6、配列番号7、または配列番号8の100位のアミノ酸から140位のアミノ酸の範囲の配列、105位のアミノ酸から130位のアミノ酸の範囲の配列、112位のアミノ酸から125位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片、
-配列番号6の181位のアミノ酸から217位のアミノ酸の範囲の配列、配列番号6の181位のアミノ酸から217位のアミノ酸の範囲の配列、配列番号7の172位のアミノ酸から187位のアミノ酸の範囲の配列、配列番号8の181位のアミノ酸から203位のアミノ酸の範囲の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの断片を含む配列を有する。
【0178】
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドをコードする核酸の使用である。
【0179】
本発明の核酸は、ポリヌクレオチドとも呼ばれ、遺伝暗号の縮重を考慮しながら、上記で定義したポリペプチドをコードするDNAまたはRNA分子であり得る。それらは、当業者によって周知の標準的な技術、例えばin vitroDNA増幅または重合、in vitro遺伝子合成、オリゴヌクレオチドライゲーション、またはこれらの技術の組み合わせによって得ることができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチドを有する。
【0181】
Sh28GST、Sm28GST、Sb28GST、Sj28GST、Sm26GSTおよびSj26GST核酸は、同定され、データベースに列挙されている配列を有する。例えば、NCBIデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov)では、2020年4月9日に更新されたアクセッション番号M87799で、Sh28GSTのヌクレオチド配列が見出され得る。
【0182】
配列番号4のヌクレオチド配列は、配列番号1のポリペプチドをコードする。
一実施形態では、核酸は、配列番号4に対応するヌクレオチド配列を有する(以下の表2を参照)。
【表2】
【0183】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸は、単離または精製された核酸である。
【0184】
当業者によって理解されるように、コードされたポリペプチドにおいて天然に存在しないコドンを保有するポリペプチドコードヌクレオチド分子を生成することがいくつかの例において有利であり得る。例えば、特定の原核生物または真核生物の宿主によって好まれるコドンは、組換えポリペプチド発現の速度を増加させるように選択され得る。
【0185】
本発明による核酸はまた、タグ、担体タンパク質、シグナルペプチドをコードする配列、または分子の発現または安定性を増加させる非転写もしくは翻訳配列を含むこともできる。
【0186】
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドをコードする核酸を含むベクターの使用である。
【0187】
好ましくは、本発明のベクターは、発現ベクターである。上記発現ベクターは、発現制御エレメントと作動的に会合する本発明によるポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0188】
典型的には、本発明の核酸は、任意の好適なベクター、例えばプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターに含まれ得る。
【0189】
「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という用語は、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進するために、DNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入することができる媒体を意味する。
【0190】
本発明による発現ベクターは、機能的発現カセットを含んでもよい。発現カセットは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含み、これは、その発現に必要なエレメントに作動可能に連結されている。上記ベクターは、有利には、対象への投与時に上記ポリペプチドの発現を引き起こすかまたは指示するように、プロモーター配列、翻訳の開始および終了のためのシグナル、ならびにプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの翻訳の調節のための適切な領域を含有する。動物細胞の発現ベクターにおいて使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーターおよびエンハンサーが挙げられる。
【0191】
本発明によるタンパク質は、それが由来する住血吸虫に関係なく、およびその分子量に関係なく、天然の単離された(天然の)または組換え体であり得る。
【0192】
本明細書全体を通して、用語「組換え28kDaグルタチオンS-トランスフェラーゼ」(rSh28GST)は、Sh28GST(配列番号4)またはこの配列の一部をコードする完全な配列を宿主生物に挿入することによって組換えにより得られた任意のタンパク質またはポリペプチドを示す。この合成は、コード配列が挿入されるベクターおよび発現を制御するシグナルに応じて、様々な宿主細胞、細菌、酵母または高等細胞において実施され得る。本発明による組換えタンパク質は、ビルハルツ住血吸虫中に存在するSh28GST天然タンパク質と同一の一次構造を有していてもよいが、後者の誘導体であってもよく、またはSh28GST不完全タンパク質(タンパク質断片)であってもよいが、免疫原性活性を有する。このタンパク質またはこのタンパク質断片はまた、宿主細胞におけるタンパク質のより良い発現を促進するために、または任意により細胞外へのその排泄を引き起こすために、対応するDNAセグメントの遺伝子操作後に、別のタンパク質(またはタンパク質断片)と融合してもよい。
【0193】
様々な宿主細胞において、外来遺伝子または外来遺伝子断片をクローニングおよび発現させる技術は、当業者に公知である。例えば、rSh28GSTタンパク質は、配列番号4の核酸を挿入することによって、サッカロミセス・セレビシエにおいて産生され得る。例えば、rSh28GSTタンパク質は、配列番号4の核酸を挿入することによって、サッカロミセス・セレビシエにおいて産生され得る。例えば、論文「Crystal structure of the 28 kDa glutathione S-transferase from Schistosoma haematobium」では、大腸菌において組換えSh28GSTを産生する方法を教示している。さらに、論文「Vaccine potential of a recombinant glutathione S-transferase cloned from Schistosoma haematobium in primates experimentally infected with an homologous challenge」 Vaccine 1999は、サッカロミセス・セレビシエの特定の株において産生されたSh28GST組換えタンパク質を開示している。
【0194】
一実施形態では、本発明によるポリペプチドは、サッカロミセス・セレビシエまたは大腸菌における配列番号4の核酸の発現産物である。
【0195】
本発明の組換えタンパク質はまた、当技術分野で周知である他の方法に従って、または他の宿主細胞において産生され得る。
【0196】
また、遺伝子治療を使用して、ポリペプチドの代わりに本発明のポリペプチドをコードする核酸を使用または投与することによって選択することもできる。この場合、目的のポリペプチドをコードする核酸を、核酸が移入されている患者の細胞によってポリペプチドがin vivoで発現されるような条件下で患者に投与する。
【0197】
したがって本発明は、本発明のポリペプチドをコードする配列を含む、またはそれからなる核酸にも関する。核酸は、本発明のポリペプチドをコードするcDNAの断片をクローニングすることによって容易に得ることができる。
【0198】
本発明のポリペプチドをコードするこのような核酸は、特にDNAベクター、例えばプラスミドベクターの形態であり得る。1つ以上のベクターを投与することができ、各ベクターは、本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする1つ以上の配列を担持している可能性がある。このベクターにおいて、本発明のポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードする配列(複数可)は、転写プロモーター、アクチベーターおよび/またはターミネーターなどの発現またはその発現の調節を可能にするエレメント(複数可)に機能的に連結されている。
【0199】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明のポリペプチドをコードする配列を担持するベクターが使用される。
【0200】
DNAベクターまたは複数のベクターを、当業者に公知の任意の技術を用いて、in vivoで挿入することができる。特に、DNAベクター(複数可)をin vivoにおいて裸の形態で、すなわち細胞内のベクターのトランスフェクションを容易にする何らかのビヒクルまたは系の支援なく、挿入することができる(欧州特許第465529号)。
【0201】
例えば、「金」粒子の表面にDNAを堆積させ、DNAが患者の皮膚の中を通過するようにこれらの粒子を撃つことによって、遺伝子銃も使用することができる(Tang et al.,(1992)Nature 356:152-4)。皮膚、筋肉、脂肪組織および乳腺組織をすべて同時にトランスフェクトするために、液体ゲルを用いた注射も可能である(Furth et al.,(1992)Anal Biochem.205:365-8)。
【0202】
他の利用可能な技術としては、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムによる沈殿、ナノカプセルまたはリポソームを使用する製剤が挙げられる。
【0203】
ポリアルキルシアノアクリレート中の生分解性ナノ粒子は、特に有利である。リポソームの場合、カチオン性脂質の使用により、負に帯電した核酸のカプセル化が促進され、負に帯電した細胞膜との融合が容易になる。
【0204】
あるいは、ベクターは、そのゲノムに挿入され、ポリペプチド(複数可)をコードする核酸配列を含む組換えウイルスの形態であってもよい。
【0205】
ウイルスベクターは、好ましくは、アデノウイルス、レトロウイルス、特にレンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクチンウイルスなどから選択することができる。レンチウイルスベクターは、例えばFirat et al.,(2002)J Gene Med 4:38-45によって記載されている。
【0206】
有利には、組換えウイルスは欠陥ウイルスである。用語「欠陥ウイルス」は、標的細胞内で複製することができないウイルスを意味する。一般に、欠陥ウイルスのゲノムは、感染細胞中でのウイルスの複製に必要な配列を少なくとも欠いている。これらの領域は、排除されるか、または非機能にすることができるか、または他の配列によって、特に目的のポリペプチドをコードする核酸によって置換され得る。それにもかかわらず、好ましくは、欠陥ウイルスは、ウイルス粒子を封入するために必要なそのゲノムの配列を維持する。
【0207】
そのような欠陥ウイルスは、パッケージング細胞をトランスフェクトすることによって、またはヘルパープラスミドもしくはウイルスによる一過性トランスフェクションによってなど、当技術分野において公知である技術によって産生され得る。
【0208】
遺伝子の標的投与は、例えばWO95/28494に記載されている。
【0209】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドを含む組成物の使用である。
【0210】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸を含む組成物の使用である。
【0211】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを含む組成物の使用である。
【0212】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドおよび少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の使用である。
【0213】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の使用である。
【0214】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤またはビヒクルを含む発現ベクターを含む医薬組成物の使用である。
【0215】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、あらゆる任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。上記賦形剤は、動物、好ましくはヒトに投与された場合、有害な、アレルギー性の、または他の不都合な反応を引き起こさない。ヒト投与の場合、調製物は、例えば、FDA OfficeまたはEMAなどの規制当局によって要求される滅菌性、発熱性、ならびに一般的な安全性および純度の基準を満たす必要がある。
【0216】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容される賦形剤としては、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0217】
一実施形態では、本発明による医薬組成物は、対象に注射することができる製剤に対して薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは、特に等張性、滅菌、生理食塩水(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなど、またはそのような塩の混合物)、または場合によっては、滅菌水または生理食塩水を添加したときに、注射用溶液の構成が可能になる乾燥、特に凍結乾燥された組成物であり得る。
【0218】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドを含む医薬品の使用である。
【0219】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸を含む医薬品の使用である。
【0220】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを含む医薬品の使用である。
【0221】
一実施形態では、組成物、本発明の医薬組成物は、ワクチン組成物である。一実施形態では、本発明のワクチン組成物は、少なくとも1種のアジュバントを含む。
【0222】
したがって、一実施形態では、本発明の組成物、医薬組成物、またはワクチンは、1種以上のアジュバントを含む。
【0223】
本発明において使用され得る好適なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(1)天然または非天然のアルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム(水和または非水和)、ミョウバン(KAl(SO4)2.12H2O)、式(BAl(SO4)2.12H2O)などの任意の他の塩など;
(2)水中油型エマルション製剤(他の特異的免疫刺激剤、例えばムラミルペプチド(以下に定義)または細菌細胞壁成分の有無にかかわらず)、例えば、スクアレン系エマルションなど(例えば、スクアレンベースの水中油型エマルション)またはスクワランベースのエマルション、例えば、
(a)MF59(国際公開第90/14837号に記載のスクアレン系水中油型アジュバント)であって、5%スクアレン、0.5%Tween 80、および0.5%のspan85(任意により、様々な量のMTP-PEを含有し(必須ではないが下記参照))、モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,Mass)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に配合されているMF59、
(b)SAFであって、10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr-MDP(下記参照)を含有し、マイクロ流体化してサブミクロンエマルジョンにするか、またはボルテックスしてより大きい粒子サイズのエマルジョンを生成するSAF、および
(c)Ribi(商標)アジュバント系(RAS)、(Corixa,Hamilton,Mont.)であって、2%スクアレン、0.2%Tween 80、および米国特許第4,912,094号に記載の3-O-脱アイル化モノホスホリリピドA(MPL(商標)からなる群からの1種以上の細菌細胞壁成分(Corixa)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標)を含むアジュバント系;
(d)スクワラン系アジュバントであって、クエン酸緩衝液に分散されている、限定されないが、以下の組成:スクワラン3.9%、W/V、トリオレイン酸ソルビタン(0.47%、W/V)、およびポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレエート(0.47%、W/V)を含むアジュバント;
(3)油中水型エマルション製剤、例えばISA-51またはスクアレン系油中水型アジュバント(例えば、ISA-720);油中水型エマルジョン中での使用に好適である油アジュバントは、鉱油および/または代謝性油を含み得る。鉱油は、Bayol(登録商標)、Marcol(登録商標)、およびDrakeol、例えば、Drakeo(登録商標)6VR(SEPPIC,France)から選択することができる。代謝可能な油は、SP油(以下に記載)、Emulsigen(MPV Laboratories,Ralston,NZ)、Montanide264、266、26(Seppic SA,Paris,France)、ならびに植物油、動物油、例えば、魚油スクワランおよびスクアレン、ならびにトコフェロールおよびその誘導体から選択され得る。
(4)サポニンアジュバント、例えばQuil AまたはSTIMULON(商標)QS-21(Antigenics,Framingham,Mass.)(米国特許第5,057,540号)、またはそれから生成した粒子、例えばISCOM(免疫刺激複合体)を使用してもよい;
(5)細菌性リポ多糖類、合成脂質A類似体、例えば、アミノアルキルグルコサミンリン酸化合物(AGP)、またはそれらの誘導体もしくは類似体(これらは、Corixaから入手可能であり、米国特許第6,113,918号に記載されている;そのようなAGPの1つは、2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2-デオキシ-4-O-ホスホノ-3-Oi[(R)-3テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]-2-[(R)-3-テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-b-Dグルコピラノシドであり、529としても知られており(以前はRC529として知られていた)、水性形態または安定なエマルジョンとして製剤化されている)、CpGモチーフ(複数可)を含むオリゴヌクレオチドなどの合成ポリヌデオチド(米国特許第6,207,646号);
(6)サイトカイン、例えば、インターロイキン類(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18など)、インターフェロン(例えば、ガンマインターフェロンなど)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、共刺激分子B7-1およびB7-2など;
(7)細菌ADPリボシル毒素の無毒化変異体、例えば、野生型または変異型のいずれかのコレラ毒素(CT)、例えば、アミノ酸29位のグルタミン酸が別のアミノ酸、好ましくはヒスチジンに置換されている(国際公開第00/18434号(WO02/098368およびWO02/098369も参照されたい)に準拠)、百日咳毒素(PT)、または大腸菌熱不安定性毒素(LT)、特にLT-K63、LT-R72、CT-S109、PT-K9/G129(例えば、WO93/13302およびWO92/19265を参照されたい);および
(8)組成物の有効性を向上させる免疫刺激剤として作用する他の物質。ムラミルペプチドとしては、これらに限定されないが、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチルノルムラミル-L-アラニン-2-(1’2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)などが挙げられる。
【0224】
いくつかの実施形態では、アジュバントは、アルミニウム塩、より具体的には水酸化アルミニウムである。
【0225】
使用されるアジュバントは、部分的には、レシピエント生物に依存し得る。さらに、投与するアジュバントの量は、動物の種類および体格に依存するであろう。
【0226】
アジュバントの濃度は、例えば、0.5mg/ml~2mg/ml、特に0.3mg/ml~1mg/ml、特に220μg/ml~280μg/ml、好ましくは250μg/mlとほぼ等しい。
【0227】
一実施形態では、アジュバントは、上述の濃度の範囲内で、特に250μg/mlで構成される濃度で使用される水酸化アルミニウムである。
【0228】
本発明のさらなる目的は、本発明によるポリペプチドおよび本明細書に記載の少なくとも1種のアジュバントを含む組み合わせ、医薬の組み合わせ、またはキット・オブ・パーツの使用である。
【0229】
組み合わせ、医薬の組み合わせ、またはキット・オブ・パーツの各部分の投与は、同時に、別々に、または順次行うことができる。
【0230】
本発明の第1の態様は、それを必要とする対象において、血管炎を防止または処置する方法であって、治療有効量の本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物を対象に投与することを含む。
【0231】
別の態様は、それを必要とする対象において、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症、または心筋梗塞を防止または処置する方法であって、治療有効量の本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物を対象に投与することを含む。
【0232】
別の態様は、血管炎の防止的処置または治療的処置における使用のための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物である。
【0233】
別の態様は、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧症、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症、または心筋梗塞の防止的処置または治療的処置における使用のための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物である。
【0234】
さらなる態様は、血管炎の防止的処置または治療的処置のための医薬品の製造のための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物の使用である。
【0235】
さらなる態様は、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧症、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症、または心筋梗塞の防止的処置または治療的処置のための医薬品の製造のための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物である。
【0236】
別の態様は、血管炎の防止的処置または治療的処置においてワクチンとして使用するための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、または医薬組成物である。
【0237】
別の態様は、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧症、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症、または心筋梗塞の防止的処置または治療的処置においてワクチンとして使用するための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、または医薬組成物である。
【0238】
さらなる態様は、血管炎の防止的処置または治療的処置のためのワクチンの製造のための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、または医薬組成物の使用である。
【0239】
さらなる態様は、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧症、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症、または心筋梗塞の防止的処置または治療的処置のためのワクチンの製造のための、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、または医薬組成物である。
【0240】
本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物は、M1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患の防止的処置または治療的処置に好適かつ有用である。こうしたM1/M2マクロファージ比の調節不全は、M1型免疫応答の減少および/またはM2型免疫応答の増加に起因し得る。様々な疾患が、M1/M2マクロファージ比の調節不全に関与するか、または関連することが示されている。M1/M2マクロファージ比の調節不全に関連するこのような疾患の非限定的な例として、例えば、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞が挙げられる。
【0241】
したがって、本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物は、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、高血圧症、骨壊死、パーキンソン病、脂肪性肝炎、肥満誘発性病態、脂肪異栄養症および心筋梗塞からなる群から選択される疾患の防止的処置または治療的処置に好適かつ有用である。
【0242】
本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物、またはワクチン組成物もまた、任意のタイプの血管炎の防止的処置または治療的処置に好適かつ有用である。
【0243】
International Chapel Hill Consensus Conference on the Nomenclature of Vasculitides (CHCC2012)によれば、血管炎は:
a)以下であり得る関与する血管のサイズ;
-大血管(例えば、大動脈、冠動脈など)
-中型血管(例えば、中動脈または小動脈)
-小血管(例えば、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、免疫複合体)
-種々の血管(ベーチェット病、コーガン病)
b)以下であり得る関与する臓器または組織:
-多臓器(ベーチェット病、免疫複合体)
-単一臓器(皮膚、精巣、中枢神経系...)
c)他の疾患(例えば、ループス、関節リウマチ、梅毒、がんなど)との関連
に従って分類することができる。
【0244】
本発明の文脈において、防止または処置される血管炎のタイプは、任意の種類の血管炎であり得る、例えば:
-種々の血管を侵す血管炎(variable vessel vasculitis)(VVV)、例えば、ベーチェット病(BD)およびコーガン症候群(CS);
-大血管炎(LVV)、例えば、高安動脈炎(TAK)および巨細胞性動脈炎(GCA);
-中型血管炎(MVV)、例えば、結節性多発動脈炎(PAN)および川崎病(KD);
-小血管炎(SVV)、例えば、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)(例えば、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー)(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス)(EGPA))および免疫複合体SVV(抗糸球体基底膜(抗GBM)疾患、クリオグロブリン血症性血管炎(CV)、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン)(IgAV)、低補体血症性蕁麻疹様血管炎(HUV)(抗C1q血管炎));
-単一臓器の血管炎(SOV)、例えば皮膚白血球破砕性血管炎、皮膚動脈炎、原発性中枢神経系血管炎、弧発性大動脈炎;
-全身性疾患に続発する血管炎、例えば、ループス血管炎、リウマトイド血管炎、サルコイド血管炎;または
-誘因の推定される続発性血管炎、例えば、C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血管炎、B型肝炎ウイルス関連血管炎、梅毒関連大動脈炎、薬剤関連免疫複合体性血管炎、薬剤関連ANCA関連血管炎、および腫瘍関連血管炎。
【0245】
したがって、いくつかの実施形態では、血管炎は、ベーチェット病(BD)、コーガン症候群(CS)、高安動脈炎(TAK)、巨細胞性動脈炎(GCA)、結節性多発動脈炎(PAN)、川崎病(KD)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー)(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス)(EGPA)、免疫複合体小血管血管炎、抗糸球体基底膜(抗GBM)疾患、クリオグロブリン血症性血管炎(CV)、IgA血管炎(ヘノッホシェーンライン)(IgAV)、低補体血症性蕁麻疹性血管炎(HUV)(抗C1q血管炎)、皮膚白血球破砕性血管炎、皮膚動脈炎、原発性中枢神経系血管炎、孤発性大動脈炎からなる群から選択される。
【0246】
一実施形態では、防止または処置される血管炎は、ベーチェット病(BD)である。
【0247】
実施形態では、血管炎は、ループス、関節リウマチ、サルコイドーシス、C型肝炎、B型肝炎、梅毒およびがんからなる群から選択される別の疾患に関連する。
【0248】
一実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物またはワクチン組成物は、対象への投与のために製剤化されるであろう。
【0249】
本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、組成物、医薬組成物またはワクチン組成物の投与方法は限定されない。
【0250】
一実施形態では、本発明に係るポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、全身的または局所的に投与されるものとする。
【0251】
一実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、注射によって(例えば皮下注射によって)、直腸、経口、局所、経鼻、頬側、経膣、気管内、内視鏡検査によって、経粘膜的に、または経皮的に投与されるものとする。
【0252】
一実施形態では、本発明に係るポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、好ましくは全身的に注射されるものとする。
【0253】
全身注射の例としては、これらに限定されないが、静脈内(iv)、皮下、筋肉内(im)、皮内(id)、腹腔内(ip)注射および灌流が挙げられる。
【0254】
一実施形態では、本発明に係るポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、皮下注射されるものとする。
【0255】
一実施形態では、本発明に係るポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、経腸投与されるものとする。
【0256】
本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、例えば、鼻または頬スプレー、坐剤、錠剤、凍結乾燥物、カプセル、シロップ、静脈内、皮下または筋肉内経路により注射可能な溶液、局所適用のための軟膏剤またはゲルの形態で投与され得る。
【0257】
製剤に適合した形態の例としては、これらに限定されないが、溶液(例えば、滅菌水溶液)、ゲル、分散液、エマルジョン、懸濁液、固体形態(例えば、粉末、リポソーム形態など、使用前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するために使用するのに好適であるもの)が挙げられる。
【0258】
一実施形態では、注射されたときに、本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、滅菌性である。滅菌組成物を得るための方法としては、これに限定されないが、GMP合成(ここで、GMPは「適正製造基準」の略である)が挙げられる。
【0259】
組成物の滅菌注射可能形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当技術分野において公知である技術に従って製剤化され得る。滅菌注射調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒に含まれる滅菌注射用溶液または懸濁液であり得る。使用され得る許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油は、従来、溶媒または懸濁媒体として使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドなど、任意の低刺激性固定油が使用され得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にポリオキシエチル化型のオリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液または懸濁液はまた、エマルジョンおよび懸濁液などの薬学的に許容される剤形の製剤中に一般的に使用されるカルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤などの長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含み得る。薬学的に許容される固体、液体、または他の剤形の製造に一般的に使用される、Tween、Spanおよび他の乳化剤または生物学的利用能増強剤などの他の一般的に使用される界面活性剤もまた、製剤の目的に使用され得る。
【0260】
本発明において他の適切な投与経路も企図されることが理解され、投与様式は、最終的には健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されるであろう。注射による投与とは別に、例えば噴霧などの他の経路が利用可能である。
【0261】
一実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、処置有効量でそれを必要とする対象に投与されるものとする。
【0262】
本明細書で使用される用語「処置有効量」は、所望の防止結果および/または処置結果を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量を指す。
【0263】
しかし、本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。任意の特定の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、以下の様々な要因に依存する;処置される疾患および疾患の重症度;使用されるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品の活性;対象の年齢、体重、全身健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路、および使用される特異的に単離された抗体またはその結合断片、核酸、発現ベクター、組成物、の排泄速度;処置期間;使用される特定のポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品と組み合わせてまたは偶然に使用される薬物;および医療分野において周知の要因。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当業者の技術の範囲内である。各処置に必要な総用量は、複数回投与または単回投与で投与してもよい。
【0264】
一実施形態では、単独でまたは本発明による組成物、医薬組成物または医薬品中で投与される単離されたポリペプチドの治療有効量は、約10μg/kg~約2000μg/kg、約20μg/kg~約1750μg/kg、約30μg/kg~約1500μg/kg、約40μg/kg~約1250μg/kg、約50μg/kg~約1000μg/kgの範囲である。
【0265】
例えば、治療有効用量は、50μg/kg、500μg/kgまたは1000μg/kgに等しくてもよい。
【0266】
対象あたり投与される精製タンパク質の量は、例えば、253μgに等しくてもよい(これは、rSh28GST28および水酸化アルミニウムを1mg/mlの濃度で含むワクチン100μgの最終用量に相当し得る)。タンパク質の用量は、例えば、100μg以上500μg以下のタンパク質であり得る。
【0267】
一実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、1日1回、1日2回、1日3回またはそれ以上投与されるものとする。
【0268】
一実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごとに投与される。
【0269】
一実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、毎週、2週間ごと、3週間ごとに投与される。
【0270】
一実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、毎月、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごとに投与される。
【0271】
好ましい実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、12時間ごと、24時間ごと、36時間ごと、48時間ごと、60時間ごと、72時間ごと、96時間ごとに投与される。
【0272】
好ましい実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、60時間ごとに投与されるものとする。
【0273】
一実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、急性投与用である。一実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、慢性投与用である。
【0274】
一実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、約5日間、7日間、10日間、14日間、21日間、28日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、またはそれ以上投与される。
【0275】
一実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、約1週間~約8週間、約2週間~約7週間、約2週間~約6週間、約2週間~約5週間の範囲の期間投与されるものとする。
【0276】
好ましい実施形態では、治療有効量の本発明によるポリペプチド、核酸、発現ベクター、組成物、医薬組成物または医薬品は、約10日間~約40日間、約15日間~約35日間、約20日間~約30日間の範囲の期間投与されるものとする。
【0277】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、少なくとも1種のアジュバントと組み合わせて使用される。アジュバントの例は、本明細書において上記に記載される。
【0278】
本発明のポリペプチドおよび少なくとも1種のアジュバントの投与は、同時、別々または順次であり得る。同時投与の場合、剤は、必要に応じて、1つの組成物または別個の組成物として投与し得る。
【0279】
本発明のポリペプチドは、少なくとも1種のアジュバントの前、同時、または後に投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0280】
図1図1は、皮膚炎症マウスモデルにおけるP28GSTの予防効果を研究するために用いたプロトコールの図である。マウスを、イミキモド誘導皮膚炎症前に、アジュバント(ミョウバン)を含むP28GST(0.5μg/kg)の3回の皮下注射により免疫した。異なる陰性対照を使用した:NaCl注射のみのマウス(対照)、NaCl注射およびイミキモド適用(IMQ)を受けたマウス、およびアジュバント単独の注射、次いでイミキモドの適用(プラセボ)を受けたマウス。抗炎症処置であるベタメタゾンを基準処置として使用した。
図2図2は、イミキモド適用前にP28GSTで免疫したマウスにおいて、イミキモド誘導皮膚炎症後に得られ、イミキモド適用の5日間の間に毎日測定した臨床スコアを表す。異なる陰性対照を使用した:NaCl注射のみのマウス(対照)、NaCl注射およびイミキモド適用(IMQ)を受けたマウス、およびアジュバント単独の注射、次いでイミキモドの適用(プラセボ)を受けたマウス。抗炎症処置であるベタメタゾンを基準処置として使用した。*p<0.05(P28対プラセボ)および##p<0.01(P28対IMQ)。
図3図3は、イミキモド適用前にP28GSTで免疫したマウスにおいて、炎症マーカーTNFαおよびIL-1β(β-アクチン遺伝子で正規化)の相対的mRNA発現を表す図である。異なる陰性対照を使用した:NaCl注射のみのマウス(対照)、NaCl注射およびイミキモド適用(IMQ)を受けたマウス、およびアジュバント単独の注射、次いでイミキモドの適用(プラセボ)を受けたマウス。
図4図4は、P28GSTおよびイミキモド適用による免疫後の、F4/80+脾集団におけるCD80+マクロファージおよびCD206+マクロファージの割合、脾臓におけるM2/M1比(F4/80+CD80+細胞対F4/80+CD206+細胞比で示される)および皮膚におけるM2/M1比(アルギナーゼ/iNOS mRNA発現比で示される)を表す。炎症誘発性M1マクロファージはCD80+およびiNOS+であり、抗炎症性M2マクロファージは、CD206+およびアルギナーゼ+である。異なる陰性対照を使用した:NaCl注射のみのマウス(対照)、NaCl注射およびイミキモド適用(IMQ)を受けたマウス、およびアジュバント単独の注射、次いでイミキモドの適用(プラセボ)を受けたマウス。*p<0.05、**p<0.01および***p<0.001。
図5図5は、試験デザインを示す図である。血管炎誘導を、最初の3日間に行い、アジュバント(ミョウバン)と共に注射するP28GST(5μg/kg)、または抗TNFα(300μg/ラット)を、18、25、32日目にLewisラットに投与した。異なる陰性対照を使用した:血管炎誘発を有し、NaCl注射(NaCl)を受けたマウス、血管炎誘発を有し、アジュバント単独の注射を受けたマウス(プラセボ)。抗TNFα、抗炎症処置を、陽性対照として使用した。
図6図6は、対照(NaCl)、プラセボ(アジュバント)またはP28GST(5μg/kg、アジュバント)で処置したラットにおける、25日目(AおよびC)ならびに32日目(BおよびD)における亜硝酸塩(A)、尿素(B)、リポカリン-2(C)およびTimp-1(D)の濃度を示すヒストグラムを表す図である。統計分析を、マンホイットニー検定を使用して実行し、次のように示した:*p<0.05および**p<0.01。
図7図7は、対照(NaCl)、プラセボ(アジュバント)またはP28GST(5μg/kg、アジュバント)または抗-TNFαによって処置したラットにおける、25日目(AおよびC)ならびに32日目(BおよびD)での亜硝酸塩(A)、尿素(B)、リポカリン-2(C)およびTimp-1(D)の濃度を示すヒストグラムを表す図である。統計分析を、マンホイットニー検定を使用して実行し、次のように表した:*p<0.05および**p<0.01。
【実施例
【0281】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【0282】
実施例1
材料および方法
動物および倫理的考慮事項
4週齢の雄性BALB/CマウスをJanvier Labs(Le Genest-Saint-Isle,France)から購入した。マウスを病原体フリーの動物収容施設で管理し、疼痛の臨床的兆候および行動的兆候について管理し、毎日の体重測定を行った。すべての実験は、地域の動物倫理委員会およびMinistry of Higher Education, Research,and Innovationによって承認された。
【0283】
免疫および皮膚炎症の誘導
マウスを、0.5μg/kgのP28GSTの3回の皮下注射によって2週間ごとに免疫した。P28GSTの最後の注射から1週間後、前述のとおり剃毛した腹部皮膚に62.5mgのイミキモド(Aldara(登録商標)、5%、MEDA Pharma S.A.)を5日間連続毎日塗布することによって、皮膚炎症を誘導した(van der Fits et al.,2009)。1つの群は、IMQ適用の5時間後に、損傷した皮膚に、直接50mgのベタメタゾン(Betneval 0.1%クリーム)を処置した。マウスをペントバルビタール(Dolethal(商標登録)、ベトキノール)を用いた致死麻酔により屠殺した。皮膚病変を、組織学的分析およびリアルタイム定量PCR分析のために切除した。
【0284】
化学物質および試薬
組換えShP28GSTタンパク質は、培養サッカロミセス・セレビシエにおいて発現され、Eurogentec S.A(Seraing,Belgium)によって適正製造基準条件下で精製された。P28GSTのバッチ(バッチM-BIX-P03-225a)を、10mM NH4HCO3および2.8%ラクトース中で凍結乾燥することによって保存した。この調製物を、0.9%NaCl(Aguettant,Lyon,France)または0.2%アルヒドロゲル(Eurogentec S.A.,Seraing,Belgium)を使用して、適切な濃度で即時に再懸濁した。
【0285】
ARN抽出およびRT-qPCR
Precellysホモジナイザー中で、TRIzol(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)により溶解後、ヌクレオスピンRNAキット(Macherey Nagel,Hoerdt,France)を使用して、皮膚から総RNAを抽出した。RNA濃度および純度を、NanoDrop1000(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を用いて260nmおよび280nmにおける吸光度によって決定した。Superscript RT kit(Applied Biosystems,Foster City,CA)および1μgのRNAを用いて逆転写を実施した。遺伝子発現を、StepOne装置(Applied Biosystems,Foster City,CA)でFast SYBR Green Master Mix試薬を使用してRT-qPCRによって評価し、β-アクチンに対して正規化した。

IL-1βに関して、以下のマウスプライマー、フォワードAGCTCCACCTCAATGGAC(配列番号9)およびリバースAGGCCACAGGTATTTTGTG(配列番号10)、TNFαフォワードCCTGTAGCCCACGTCGTAG(配列番号11)およびリバースGGGAGTAGACAAGGTACAACCC(配列番号12)、β-アクチンフォワードCCTTCTTGGGTATGGAATCCT(配列番号13)およびリバースCTTTACGGATGTCAACGTCAC(配列番号14)、iNOSフォワードCAGCTGGGCTGTACAAACCTT(配列番号15)およびリバースCATTGGAAGTGAAGCGTTTCA(配列番号16)Arg1フォワードCAGAAGAATGGAAGAAGCAGG(配列番号17)とリバースCAGATATGCAGGGAGTCACC(配列番号18)を使用した。結果を、2-ΔΔCt法を用いて対照と比較した相対的発現として表した。
【0286】
臨床スコア
炎症の重症度を、van der Fitsに従ってマウスに適合させた乾癬面積および重症度指数(PASI)を使用して、毎日盲目的に評価した。3つのパラメータ(紅斑、スケーリング、肥厚)を0から4で採点した(0:不在、1:軽症、2:中等症、3:顕著、および4:重症)。
【0287】
累積スコア(0~12)を使用して、皮膚の炎症を評価した。
【0288】
フローサイトメトリー
屠殺後に脾細胞を抽出し、70μm濾過および赤血球溶解後に培養液中に維持した。細胞を2.4G2(BD Bioscience)中でブロックし、固定可能な生存率解析用色素(eBioscience,Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を用いて生存率を評価した。細胞表面免疫染色を行い、次いで、真核因子キット(Ozyme,Saint-Cyr,France)を用いて、固定および透過後の核内免疫染色を行った。細胞は、抗体固定生存率解析用色素(13539140)、F4/80(12-4801)、CD206(141729)およびCD80(15-0801)(eBiosciencesおよびBiolegend)を使用して、Fortessa X20(BDバイオサイエンス、カリフォルニア州サンノゼ)によって分析した。データ解析は、FlowJoソフトウェア(Tree star,Ashland,OR)を用いて行った。
【0289】
統計分析
臨床スコアは、平均の平均±標準誤差として表され、二元配置分散分析+ボンフェローニ事後検定によって分析した。
【0290】
他のすべての結果は、中央値として提示した。Mann Whitneyノンパラメトリックt検定を、2つの群を比較するために使用し、2つ以上の群を比較する場合は、Kruskal-Wallis+Dunnの事後検定を使用した。各検定を、0.5%のアルファ水準を用いて実施し、結果は、p<0.05である場合に有意であると考えられた。統計解析は、GraphPad Prism 5(GraphPad Software,La Jolla,CA)によって行った。
【0291】
結果
目標は、実験的なイミキモド誘導皮膚炎症Balb/Cマウスモデルにおいて、P28GSTによる免疫過程の試験を行うことであった。血管炎は、典型的な皮膚炎症を特徴とする全身性疾患であり、この動物モデルは、血管炎の適切なモデルである。マウスは、1日目、14日目、および28日目にアジュバント(ミョウバン)を含むP28GST(0.5μg/kg)の3回の皮下注射を受けた。次いで、イミキモドを毎日5日間免疫マウスの皮膚に塗布した(図1)。P28GSTによる免疫により、臨床スコアによって示されるとおり、紅斑が減少した(図2)。P28GSTによる免疫はまた、炎症誘発性サイトカインTNFαおよびIL-1βの相対発現の減少をもたらした(図3)。興味深いことに、これは脾臓におけるM1炎症誘発性マクロファージ(CD80+およびiNOS+)の減少、および脾臓におけるM2抗炎症性マクロファージ(CD206+およびアルギナーゼ+)の増加、ならびに皮膚におけるM2/M1比の増加に関連していた(図4)。これらの結果は、M2マクロファージの誘導ならびにM2型免疫応答への分極を示した。したがって、P28GSTは、皮膚の炎症を軽減するために炎症応答を調節することができ、M1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患に罹患している患者、およびベーチェット病(BD)患者などの血管炎患者の防止または処置のための新しいアプローチを表している。
【0292】
実施例2
材料および方法
血管炎の誘導
【0293】
Lewisラットを下記のとおり免疫し、1日目に、TPM誘導BD群のラットにおいて、CFAの存在下で、TPMを両方の後足蹠に注射(50μg/ラット;すなわち、後足蹠あたり50μL中25μg)することにより、ベーチェット様疾患(BD)を誘導した。同日および3日目に、ラットに百日咳毒素200ngを腹腔内(IP)注射した。
【0294】
14日目に、BDの発生を評価するためにラットで生物発光を取得した。TPM誘導BDモデルは確認されたとみなされなかったため、17日目に別の生物発光獲得を行った。この最後の生物発光獲得により、処置試験を開始するのに十分な全身性炎症が示された。次いで、18日目に、ラットをP28GST試験品、アジュバント単独、抗ラットTNF-αまたは生理食塩水で処置した。
【0295】
試験デザイン
げっ歯類の全身性炎症性疾患誘導後に皮下投与した場合の症状の進展および組織の炎症に対するP28GST(5μg/kg)の治療的処置の効果を評価するために、4つの群の試験を行った。研究デザインでは、異なる陰性対照:血管炎が誘導され、NaCl注射(Nacl)を受けたマウス、血管炎が誘導され、アジュバントの2用量を18日目および25日目に注射したマウス(プラセボ)。種々の炎症性自己免疫疾患の処置において、参照薬物である抗TNFαを陽性対照として用いた(図5)。抗TNF処置のために、300μg/ラットの4用量(18日目、22日目、25日目および29日目)腹腔内注射した。P28GST(5μg/kg)を18日目および25日目に注射した。
【0296】
サンプル
全血(WB)を、亜硝酸塩および尿素、ならびにいくつかの全身性サイトカインのレベルを評価するために、週に1回サンプリングした。ラットあたり約1mLをサンプリングし、リチウム/ヘパリンチューブに入れた。血液と抗凝固剤との最適な均質化を確実に行うためにチューブを穏やかに混合し、次いで2000g、室温で5分間遠心分離を行った。上清(すなわち血漿)を2つの微量遠心管に分割した。一方のチューブは、生化学的分析(亜硝酸塩および尿素測定)まで-20℃で保存し、他方のチューブは、サイトカイン分析まで-80℃で保存した。
【0297】
安楽死後、TIMP-1分析のために眼を採取した。眼をサンプリングし、次いでタンパク質抽出のために試薬希釈濃縮物2で粉砕した。総タンパク質の投薬量は、Pierce Coomassieアッセイキット(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を用いて行った。その後、タンパク質抽出物をTimp-1 ELISA分析まで-80°Cで保存した。
【0298】
生化学的分析
亜硝酸塩:亜硝酸塩濃度は、亜硝酸塩測定用試薬グリース試薬キットG-7921(Thermo Fisher提供)を用いて、540nmにおける光度(グリース試薬)定量により測定した。測定範囲は、1~100μMであった。
【0299】
尿素(UREE):尿素濃度は、試薬尿素981820(Thermo Fisher Diagnostics提供)を用いた520nmでの光度定量により測定した。測定範囲1.5~75.0mmol/L、検出限界(ゼロサンプル+3SD)1.1mmol/L、実行内および実行間の不精度の範囲1.9%~6.4%であった。
【0300】
リポカリン-2:試験キットは、ラットリポカリン-2の定量的測定用に設計されたマイクロプレート形式の固相酵素免疫測定法(ELISA)であった。
【0301】
マイクロプレートを捕捉抗体でコーティングした。次いで、2時間インキュベーションするために、キャリブレータおよびサンプルを添加した。このインキュベーションの間、サンプル中の内因性リポカリン-2は、ウェルの内表面に固定された抗体に結合した。非反応性試料成分は、洗浄ステップにより除去した。その後、ビオチン化検出抗体を添加した。2時間のインキュベーション中に、2つの抗体およびリポカリン-2からなるサンドイッチ複合体が形成された。過剰の検出抗体を洗い流した。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンを添加し、20分間インキュベートするためにサンドイッチを完成させた。過剰の酵素コンジュゲートを洗い流した。最後に、発色基質であるTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)を全てのウェルに添加した。

20分間のインキュベーション中に、基質は、固定酵素によって発色した最終生成物(青色)に変換した。酵素反応は、停止液として塩酸を分注することにより停止した(青色から黄色に変化)。発色強度は、試料中に存在するリポカリン-2の濃度に正比例した。色溶液の光学密度は、マイクロプレートリーダーで、450nmで測定した。
【0302】
TIMP-1:TIMP-1レベルは、R&D Systems Luminexアッセイ(R&D Systems,Bio-Techne,Lille,France)によって決定した。測定プロセスは、製造業者の指示書を用いて実行し、吸光度は、FLUOstar Omega(BMG labtech,Champigny-sur-Marne,France)で読み取った。
【0303】
結果
α-トロポミオシンは、全身性自己免疫疾患患者の血清中に見られる抗体によって標的化される37-kDa抗原として同定された。α-トロポミオシンに対する病原性自己免疫の誘導は、完全フロイントアジュバント(CFA)中のウシα-トロポミオシンによって免疫したLewisラットにおいて試験し、確認した。免疫したラットは、ブドウ膜管、関節および皮膚に炎症性病変を発症した(Mor et al 2002Eur.J.Immunol.32:356-365)。

したがって、α-トロポミオシンは、全身性炎症性自己免疫疾患の患者で観察されるものと密接に相関する複数の症状および免疫調節不全を誘導する。したがって、本発明者は、血管炎およびベーチェット病のモデルとして、α-トロポミオシンモデルを使用した。
【0304】
実験モデルでは、眼、関節および皮膚への病状の誘導後14日で炎症が観察された。これは、誘導後21日目に拡大するまで増加した(データ示さず)。目標は、処置された動物の炎症組織における炎症性および調節性メディエーターを測定することによって、関与する機構を研究することであった。Touri et al.,2018が、亜硝酸塩の上方制御がM1マクロファージの活性および炎症に関連しているが、尿素の上方制御が、M2マクロファージの活性および炎症の減少に関連していることを示したため、亜硝酸塩および尿素の濃度を評価した。
【0305】
疾患の誘導から25日後、したがって処置開始から7日後に、血漿亜硝酸塩濃度は、群間で有意に異なっていた。特に、P28GST群では、プラセボと比較して、亜硝酸塩が有意に減少した(p=0.007)(図6A)。疾患誘導から32日後、したがって処置開始14日後に、血漿尿素濃度は、群間で有意に異なっていた。

P28GST群では、プラセボと比較して有意な増加(p=0.0045)が観察された(図6B)。これらの結果はいずれも、全身性炎症の解消の所見を示している。
【0306】
リポカリン-2(LCN2別名NGAL)は、近年、炎症性自己免疫疾患の有用なバイオマーカーとして出現した
次に、リポカリン-2の血漿濃度を評価した。

最初に、D0とD18(処置開始)との間でリポカリン-2血清濃度の有意な増加が観察され、すべての群において炎症の発生が確認された(データ示さず)。しかし、LCN2血清濃度のわずかな低下は、25日目にP28GST処置群に現れた(図6C)。

P28GSTによって処置したラットのLCN2血清濃度のこの低下は、疾患の弱化を示唆している。
【0307】
メタロプロテイナーゼ-1の組織阻害剤(TIMP-1)は、多くの炎症性自己免疫疾患および重要な機能領域(すなわち、眼)における炎症の制御に関与している。その上方制御は、炎症、次いで、臓器破壊を減少させる。試験終了時および処置開始14日後に相当する疾患を誘導して32日後、眼のタンパク質抽出物は、対照群(NaCl)と比較して、P28GST処置群において、TIMP-1の有意な増加を示した(図6D)。この有意差(*p=0.0490)は、P28GSTが炎症の調節を誘導したことを示している。
【0308】
全体として、これらの結果は、全身性炎症性疾患におけるP28GSTのプラスの効果を強く示唆している。
【0309】
最後に、P28GST効果を、抗TNFα処置である標準処置によって媒介される効果と比較した。疾患の誘導から25日後、処置開始から7日後に、血漿亜硝酸塩濃度は、群間で有意に異なっていた。対照群(NaCl)と比較して、P28GST処置群は、有意に減少した(p=0.007)。抗TNFα処置および対照群またはP28GST処置群のいずれかとの有意差はなかった(図7A)。
疾患誘導から32日後、処置開始14日後に、血漿尿素濃度は、群間で有意に異なっていた。

特に、P28GST処置群では、対照群(NaCl)および抗TNFα処置群(p=0.0067)と比較して、有意な増加(p=0.0045)が見られた(図7B)。疾患誘導後のD0~D18のリポカリン-2血清濃度の有意な増加により、すべての群における炎症の発生が確認される(データは示さず)。疾患誘導から25日後および処置開始から7日後には、LCN2血清濃度の有意な低下はP28GST処置群(p=0.0047)でのみ現れ、抗TNFα処置群では現れなかった(図7C)。疾患誘導後32日目および処置開始後14日目に、眼からのタンパク質抽出物は、P28GST処置群と対照群(NaCl)の間で、TIMP-1の有意な増加を示した。この有意差(p=0.049)は、P28GSTが炎症の調節を誘導したのに対し、抗TNFαは、このような効果を示さなかったことを示している(図7D)。
【0310】
結論として、結果は、全身性炎症性疾患の処置において、P28GSTが、抗TNFαよりも良好であり得ることを示した。実際に、抗TNFα処置は、血漿尿素濃度、Timp-1濃度および血清リポカリン-2濃度の変化を誘導しなかったが、P28GST処置では、誘導した。したがって、P28GST処置は、全身性炎症の解消を誘導し、疾患の症状を弱化した。
【0311】
全体として、これらの結果は、住血吸虫由来のP28GSTタンパク質が、M2型免疫応答を誘導し、および/またはM1型免疫応答を減少させることができ、M2型免疫応答に向けて分極を誘導することができることを示している。実際に、本発明者らは、P28GSTタンパク質が、M1マクロファージによって産生されることが知られている炎症誘発性サイトカインおよびメディエーターの分泌を減少させ、M2マクロファージによって産生されることが知られている抗炎症性サイトカインおよびメディエーターの分泌を増加させることを示した。さらに、M1型応答のこうした減少は、炎症に関連する症状の軽減に関連していた。
【0312】
結論として、住血吸虫由来のP28GSTタンパク質は、炎症応答を調節することができ、M1/M2マクロファージ比の調節不全を特徴とする疾患に罹患する患者または血管炎の患者を防止または処置するための新しいアプローチを表している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023522050000001.app
【国際調査報告】