(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】駆動要素
(51)【国際特許分類】
F16B 23/00 20060101AFI20230519BHJP
B25B 15/00 20060101ALI20230519BHJP
B25B 13/54 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F16B23/00 U
B25B15/00 610A
B25B13/54 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562968
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2021059983
(87)【国際公開番号】W WO2021209624
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】102020110450.2
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522403697
【氏名又は名称】ボンガルツ ニコル
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ボンガルツ ニコル
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、輪郭軸P
Iを画定するとともに、輪郭軸P
Iの周りに規則的に分布するように配置された複数の凹状駆動面6を内側に有し、かつ隣り合う駆動面6間に平面状または凸状に湾曲した移行面7aが設けられている内側駆動輪郭9を備えているか、または輪郭軸P
Aを画定するとともに、輪郭軸P
Aの周りに規則的に分布するように配置された複数の凹状駆動面10を外側に有し、かつ隣り合う駆動面10間に平面状または凸状に湾曲した移行面7aが設けられている外側駆動輪郭9を備えている、駆動要素8に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪郭軸(P
I)を画定するとともに、輪郭軸(P
I)の周りに均一に分散して配置された複数の凹状駆動面(6)を内側に有し、かつ隣り合う凹状駆動面(6)の間に平面状のもしくは凸状に湾曲した移行面(7)が設けられている内側駆動輪郭(5)、
または輪郭軸(P
A)を画定するとともに、輪郭軸(P
A)の周りに均一に分散して配置された複数の凹状駆動面(10)を外側に有し、かつ隣り合う凹状駆動面(10)の間に平面状のもしくは凸状に湾曲した移行面(7a)が設けられており、
横断面において、駆動面(5,10)と移行面(7,7a)との間の変化点(P1)または遷移点は、内径Diを有する共通の内側円上に位置し、
駆動面(5)は、直径Daの外側円上に、輪郭軸(P
I,P
A)の周りに均一に分布するように位置し、かつ輪郭軸(P
I,P
A)を囲む長手方向に延びる中心面に対して対称に形成されている駆動要素(8)であって、
外径Daおよび内側円と外側円の中心間距離Lが、内径Diの関数として選択され、輪郭軸(P
I,P
A)の周りのトルクMDが駆動輪郭(5,9)に作用した際に、いずれの場合も各駆動面(6,10)とこれに隣接する移行面(7,7a)との間の遷移点に作用する法線力が、1つの駆動面(6,10)と隣接する駆動面(6,10)の接線方向に作用するか、または後者内で作用することを特徴とする、駆動要素。
【請求項2】
ランニング比K=Da/Diが0.3~2.0の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の駆動要素。
【請求項3】
前記中心間距離Lが、F(L,D
i)=0.494e
(0,605K)において、式L=F(L,D
i)D
iに従って計算されることを特徴とする、請求項1または2に記載の駆動要素。
【請求項4】
前記内側駆動輪郭(5)を備え、前記内側駆動輪郭(5)の駆動面(6)が前記輪郭軸(P
a)に対して傾斜し、前記内側駆動輪郭(5)の挿入開口(5a)から前記内側駆動輪郭(5)の後端に向かって前記輪郭軸(P
a)に近づいていることを特徴とする、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の駆動要素。
【請求項5】
前記内側駆動輪郭(5)の駆動面(6)が、前記輪郭軸(P
a)に対して、傾斜角α
Iが少なくとも1度、特に少なくとも1.5度となるように傾斜し、および/または前記内側駆動輪郭(5)の駆動面(6)が、前記輪郭軸(P
I)に対して、傾斜角α
Iが最大で5度、特に最大で3.5度、好ましくは最大で3度となるように傾斜しており、前記傾斜角α
Iは、好ましくは2±0.2度または3±0.2度であることを特徴とする、請求項4に記載の駆動要素。
【請求項6】
前記移行面(7)は、前記輪郭軸(P
I)に対して傾斜し、前記内側駆動輪郭(5)の挿入開口(5a)から前記内側駆動輪郭(5)の後端に向かって前記輪郭軸(P
I)に近づいていることを特徴とする、請求項4または5に記載の駆動要素。
【請求項7】
前記移行面(7)が前記輪郭軸(P
I)に対して、傾斜角β
Iが少なくとも1度、特に少なくとも1.5度となるように傾斜し、および/または前記内側駆動輪郭(5)の移行面(7)が前記輪郭軸(P
I)に対して、傾斜角β
Iが最大で5度、特に最大で3.5度、好ましくは最大で3度となるように傾斜しており、前記傾斜角β
Iは、好ましくは2±0.2度または3±0.2度であることを特徴とする、請求項6に記載の駆動要素。
【請求項8】
前記輪郭軸(P
I)に対する前記駆動面(6)の傾斜角α
Iは、前記輪郭軸(P
I)に対する前記移行面(7)の傾斜角β
Iと同程度の大きさであることを特徴とする、請求項6または7に記載の駆動要素。
【請求項9】
前記外側駆動輪郭(9)を有し、前記外側駆動輪郭(9)の駆動面(10)が前記輪郭軸(P
A)に対して傾斜し、前記外側駆動輪郭(9)の挿入端に向かって前記プロファイル軸(P
A)に近づいていることを特徴とする、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の駆動要素。
【請求項10】
前記駆動面(10)が、前記輪郭軸(P
A)に対して、傾斜角α
Aが少なくとも0.5度、特に少なくとも1度、および/または最大で1.5度となるように傾斜しており、前記傾斜角α
Aは好ましくは1.15±0.2度であることを特徴とする、請求項9に記載の駆動要素。
【請求項11】
前記移行面(7a)が、0度よりも大きくかつ0.7度よりも小さく、好ましくは0.4±0.05度である傾斜角β
Aで前記輪郭軸(P
A)に対して傾斜していることを特徴とする、請求項9または10に記載の駆動要素。
【請求項12】
前記輪郭軸(PA)に対する前記移行面(7a)の傾斜角β
Aは、前記輪郭軸(P
A)に対する前記駆動面(10)の傾斜角α
Aよりも小さく、前記傾斜角α
Aの前記傾斜角β
Aに対する比が≧2、特に≧2.5、好ましくは2.8±0.2であることを特徴とする、請求項11に記載の駆動要素。
【請求項13】
前記外径(D
A)が、前記駆動輪郭(5,9)の軸方向の全長にわたって一定であることを特徴とする、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の駆動要素。
【請求項14】
前記駆動輪郭(5,9)の軸方向の全長にわたる内径(D
I)は、一定であるか、または挿入開口(5a)の方向の内側駆動輪郭(5)の場合および挿入端から始まる外側駆動プロファイル(9)の場合にそれぞれのプロファイル軸(P
I、P
A)に対する移行面(7,7a)の傾きに適合するように連続的に増加することを特徴とする、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の駆動要素。
【請求項15】
前記駆動輪郭(5,9)は、5つまたは6つの駆動面(6,10)を有することを特徴とする、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の駆動要素。
【請求項16】
前記駆動要素(1)はねじであり、前記駆動輪郭(5)はねじ頭部(4)に形成されていることを特徴とする、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の駆動要素。
【請求項17】
前記駆動要素(8)はスクリュービットであることを特徴とする、請求項1~16のうちのいずれか一項に記載の駆動要素。
【請求項18】
2つの構成部材、特にねじ(1)と回転工具(8)を回転不能に接続する方法であって、構成部材の1つが外側駆動輪郭(5,9)を有する駆動要素(8)として設計され、他の1つの構成部材が内側駆動輪郭を有する駆動要素(1)として設計されており、2つの構成部材(1,8)間に回転不能の接続を生じさせるために、2つの構成部材(1,8)の駆動輪郭(5,9)が軸方向に互いに差し込まれるようになっている2つの構成部材の接続方法において、2つの構成部材は、先行する請求項のうちのいずれか一項に記載の駆動要素(1,8)として設計されており、駆動要素(1,8)の駆動輪郭(5,9)は、駆動輪郭(5,9)が軸方向に互いに差し込まれた際に、2つの構成部材(1,8)の駆動面(6,10)が互いに面接触するように互いに補完し合うように選択され、これにより、構成部材(1,8)に互いに軸方向に接続される摩擦および/またはクランプによる接続が、両構成部材(1,8)間に形成されることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記2つの構成部材(1,8)の駆動輪郭(5,9)が、それぞれの輪郭軸(P
I,P
A)に対して傾斜した駆動面(6,10)を有することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記内側駆動輪郭(5)の駆動面(6)が前記輪郭軸(P
I)に対して傾斜する前記傾斜角α
iが、前記外側駆動輪郭(10)の駆動面(6)が前記輪郭軸(P
A)に対して傾斜する前記傾斜角α
Aよりも大きいことを特徴とする、請求項19に記載の2つの構成部材を回転不能に接続する方法。
【請求項21】
前記内側駆動輪郭(5)の前記駆動面(6)の前記傾斜角α
iが3±0.2度であるとともに、前記外側駆動輪郭(6)の前記駆動面(10)の前記輪郭軸(P
B)に対する傾斜角α
Aが1.15±0.15度であること、または前記内側駆動輪郭(5)の前記駆動面(6)の前記輪郭軸(P
I)に対する傾斜角α
iが2±0.2度であるとともに、前記外側駆動輪郭(6)の前記駆動面(10)の前記輪郭軸(P
A)に対する傾斜角α
Aが1.15±0.15度であることを特徴とする、請求項20に記載の2つの構成部材を回転不能に接続する方法。
【請求項22】
前記2つの構成部材(1,8)の前記駆動輪郭(5,9)の前記移行面(7、7a)は、それぞれの輪郭軸(P
I、P
A)に対して傾斜しており、前記内側駆動プロファイル(5)の前記移行面(7)の前記輪郭軸(P
I)に対する前記傾斜角β
iと、前記外側駆動輪郭(9)の前記移行面(7a)が前記輪郭軸(P
I)に対して傾斜している前記傾斜角(β
A)は、5以上、特に6以上、好ましくは7.5以上であることを特徴とする、請求項18~21のうちのいずれか一項に記載の2つの構成部材を回転不能に接続する方法。
【請求項23】
内側駆動輪郭(5)の外径(D
a)が外側駆動プロファイル(6)の外径(D
a)よりも小さい駆動要素、特に1.5~3%、好ましくは2%小さい駆動要素(1,8)が使用されることを特徴とする、請求項18~22のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記2つの構成部材の前記駆動面(6,10)が、円周方向の全範囲の少なくとも25%以上、特に少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%にわたって互いに面接触することを特徴とする、請求項18~23のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記2つの構成部材が、前記長手方向中心面の両側の各接触面(6,10)と接触することを特徴とする、請求項18~24のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記駆動輪郭(5,9)は、前記移行面(7,7a)の領域に接触しないように設計されていることを特徴とする、請求項18~25のうちのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動要素に関し、特に、シャフトの一端に、輪郭軸を画定するとともに、輪郭軸の周りに均一に分散して配置された複数の凹状駆動面を内側に有し、かつ隣り合う凹状駆動面の間に平面状のもしくは凸状に湾曲した移行面が設けられている内側駆動輪郭、または輪郭軸を画定するとともに、輪郭軸の周りに均一に分散して配置された複数の凹状駆動面を外側に有し、かつ隣り合う凹状駆動面の間に平面状のもしくは凸状に湾曲した移行面が設けられており、
横断面において、駆動面と移行面との間の変化点または遷移点は、内径Diを有する共通の内側円上に位置し、
駆動面は直径Daの外側円上に、輪郭軸の周りに均一に分布するように位置し、輪郭軸を囲む長手方向に延びる中心面に対して対称に形成されている駆動要素に関する。
【0002】
さらに、本発明は、2つの構成部材、特にねじと回転工具を回転不能に接続する方法であって、一方の構成部材が外側駆動輪郭を有する駆動要素として設計され、他方の構成部材が内側駆動輪郭を有する駆動要素として設計されており、2つの構成部材の回転不能な連結を生み出すために、2つの構成部材の駆動輪郭が軸方向に互いに差し込まれるようになっている2つの構成部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ねじおよび回転工具は、種々の設計において従来技術から公知である。ねじは、おねじを有するスクリューシャンクを備え、その上端領域には、通常、ねじ頭部上に形成される回転工具と結合するための駆動要素が設けられている。回転工具は、例えば、リングレンチまたはスパナの形態で形成されるか、またはビットホルダを介して、たとえばハンドルまたはコードレススクリュードライバの形態で駆動装置に接続される交換可能なビットを含む。あるいは、ビットホルダは、代わりの使用のために、アダプタを介して、スクリュードライバハンドルまたはアングルハンドル、ラチェット、トルクレンチ、コードレススクリュードライバまたはラチェットスクリュードライバに接続することができる。
【0004】
ねじおよび回転工具は、互いに相補的に設計された駆動要素を使用して、回転工具からねじにトルクを伝達するために提供される。この目的のために、2つの構成部材のうちの1つは、その自由端の一方に外側駆動面を有する外側駆動輪郭を備え、他方の構成部材は、その自由端の一方に、外側駆動輪郭と相補的な内側駆動面を有する内側駆動輪郭を備えている。駆動輪郭は、たとえば、内側六角形、外側六角形、トルクス輪郭、および十字スロット輪郭またはスロット輪郭の形態である。内側駆動輪郭を外側駆動輪郭に結合した後、両駆動輪郭は互いに遊びを持って接触する。これは、両駆動輪郭が意図せずに互いに分離する可能性があり、駆動輪郭を軸方向に互いに整列させることもできないことを意味する。回転工具でねじをねじ込んだり、緩めたりする際の取り扱いを簡単にするために、磁石を備えた回転工具または磁石で磁化できる強磁性回転工具が提供されている。しかしながら、これには追加費用が伴う。さらに、磁気回転工具を使用すると、両駆動輪郭の同軸位置合わせも達成できない。しかしながら、ボルト締結を自動製造プロセスに統合するには、このような同軸の位置合わせが必要である。
【0005】
この問題を解決するために、独国特許出願公開第102005011734号明細書 から、いわゆるトルクスねじをねじ込んだり、ゆるめたりするための回転工具の駆動面が輪郭軸に対して鋭角に傾斜することが知られており、その結果回転工具とねじの駆動輪郭が軸方向に嵌合するとき、きつい嵌合が生成され、ねじをねじ山にねじ込むために追加の保持手段が必要とされない。同様に、国際公開第2013/062895号および米国特許出願公開第2010/0269644号明細書から、構成部材間に緊密な嵌合を作り出すために、ねじおよび回転工具の駆動面を傾斜して形成することが知られている。
【0006】
ねじをねじ込む際およびねじを緩める際に繰り返し起こる問題は、ねじのねじ込みおよび緩めに必要なトルクが高すぎる場合に、駆動輪郭が、特にエッジの領域で損傷することである。
【0007】
この問題を解決するために、国際公開第2019/238250号は、ねじおよび回転工具を備えた駆動システムを提案しており、その駆動輪郭にはテーパが付けられている。さらに、外側駆動輪郭は、凹面、すなわち輪郭軸に向かって円弧のセグメントの形状で内側に湾曲した駆動面を有し、内側の駆動輪郭は、これを補完する駆動面を有する。この構成は、嵌合時に、2つの構成部材の駆動面が、円周方向で見たときに凹曲面の頂点の両側で接触/係合するようになる。
【0008】
この設計は、確実でねじり剛性のある接続に加えて、ねじと回転工具の間に摩擦またはクランプ接続も生成し、これを介して構成部材は軸方向に接続され、互いに同軸方向に整列される。さらに、力またはトルクは、頂点の両側にある円弧状に湾曲した駆動面で発生する面接触を介してのみ伝達され、駆動部の間に位置する移行領域/移行面には接触しない。このようにして、駆動面のエッジ領域または周辺領域へのダメージを完全に回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005011734号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/062895号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0269644号明細書
【特許文献4】国際公開第2019/238250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述の駆動システムをさらに最適化し、特に、高トルク伝達および多数の負荷サイクルを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、上述したタイプの駆動要素において、外径Daおよび内側円と外側円の中心間距離Lが、内径Diの関数として選択され、輪郭軸の周りのトルクが駆動輪郭に作用した際に、各駆動面とこれに隣接する移行面との間の遷移点に作用する法線力が、1つの駆動面と隣接する駆動面の接線方向に作用するか、または前記隣接する駆動面内で作用することにより解決される。換言すれば、法線力は、隣接する駆動面と輪郭軸との間にある駆動輪郭の中央領域に向けられる。したがって、この課題は、最初に述べたタイプの2つの構成部材、特にねじと回転工具を回転不能に接続する方法で解決され、2つの構成部材は、本発明による駆動要素として設計され、2つの駆動要素の駆動輪郭は、構成部材が互いに軸方向に差し込まれた際に2つの構成部材の駆動面が互いに面接触するように互いに補完するように選択され、その結果、2つの構成部材が互いに軸方向に接続される摩擦および/またはクランプによる接続が構成部材間に生じるようになっている。
【0012】
駆動面でのトルク伝達中に生じる駆動面に対して垂直な法線力が駆動輪郭の中心に向けられ、したがって、凹状に湾曲した駆動面間にある領域には、曲げ力および/またはせん断力による力が負荷されないか、またはほとんど負荷されない場合に、達成可能な負荷サイクル数と伝達可能なトルクに関して、最適な結果が得られることが示されている。これは、外径Da、内径Di、および中心間距離Lを本発明に合わせることによって達成される。法線力は、それぞれの円形セグメント形状の駆動面に対して垂直に、したがってその円の中心を通るトルクを生成するために、駆動輪郭に導入されるレバー力の一部分であると理解される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、中心間距離Lは、F(L,Di)=0.494e(0,605K)において、式L=F(L,Di)Diで計算されることが規定されている。 ここで、ランニングレシオK=Da/Diは、0.3から2.0までの範囲にあるべきである。
【0014】
本発明のさらなる一実施形態によれば、内側駆動輪郭を備え、内側駆動輪郭の駆動面は、輪郭軸に対して傾斜し、内側駆動輪郭の挿入開口から内側駆動輪郭の後端に向かって輪郭軸に近づくことが提供されている。本実施形態の好ましい実施形態は、内側駆動輪郭の駆動面が、輪郭軸に対して、傾斜角αIが少なくとも1度、特に少なくとも1.5度となるように傾斜し、および/または前記内側駆動輪郭の駆動面が、輪郭軸に対して、傾斜角αIが最大で5度、特に最大で3.5度、好ましくは最大で3度となるように傾斜しており、前記傾斜角αIは、具体的には2±0.2度または3±0.2度であることを特徴としている。
【0015】
この実施形態のさらなる改良では、移行面が輪郭軸に対して傾斜し、内側駆動輪郭の挿入開口から内側駆動輪郭の後端に向かって輪郭軸に近づくことが提供されている。本実施形態の構成では、移行面が、輪郭軸に対して、傾斜角βIが少なくとも1度、特に少なくとも1.5度となるように傾斜し、および/または内側駆動輪郭の移行面が輪郭軸に対して、傾斜角βIが最大で5度、特に最大で3.5度、好ましくは最大で3度となるように傾斜しており、傾斜角βIは、具体的には2±0.2度または3±0.2度であることを特徴としている。好ましい態様では、輪郭軸に対する駆動面の傾斜角αIは、輪郭軸に対する移行面の傾斜βIの角度と全く同じ大きさである。
【0016】
換言すれば、内部駆動輪郭は、それらの挿入開口から円錐形に収束するように設計される。
【0017】
同様に、本発明による駆動要素の外側駆動輪郭の駆動面は、輪郭軸に対して傾斜され得、それによって外側駆動輪郭の挿入端に向かって輪郭軸に接近する。ここで、駆動面が、輪郭軸に対して、傾斜角αAが少なくとも0.5度、特に少なくとも1度、および/または最大で1.5度となるように傾斜しており、傾斜角αAは、好ましくは1.15±0.2度である。
【0018】
この場合、移行面は、輪郭軸に対して平行に延びることができる。しかしながら、本発明の1つの実施形態によれば、移行面は輪郭軸に対して、傾斜角βAが0度よりも大きくかつ0.7度よりも小さくなり、好ましくは0.4±0.05度であるように傾斜していることが提供される。
【0019】
この実施形態のさらなる実施形態では、輪郭軸に対する移行面の傾斜角βAは、輪郭軸に対する駆動面の傾斜角αAよりも小さく、傾斜角βAに対する傾斜角αAの比は≧2、特に≧2.5であり、好ましくは2.8±0.2であることが提供される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によれば、外径Daは、駆動輪郭の軸方向全長にわたって一定である。ここで、円錐状に収束する駆動輪郭の場合に、駆動面を異なるように製造することができることを考慮に入れるべきである。一方では、円筒形カッタを使用することができ、これは所望のテーパ角度に合わせて調整される。この場合、駆動面は、テーパ状駆動輪郭のそれぞれのフランク角に対して垂直な平面において真円形を有するが、当該真円形は輪郭軸に対して垂直な断面においてわずかに楕円形に歪んでいる。同様の歪みは、他の製造方法でも生じ得る。このような逸脱は、製造公差とみなされるべきである。
【0021】
同様に、内径Diは、駆動面の軸方向全長にわたって一定であってもよく、または移行面の傾きに適応して、内側駆動輪郭の場合には挿入開口の方向に連続的に増加し、外側駆動輪郭の場合には挿入端から増加してもよい。後者の場合、クレームされた条件、したがってクレームされた作用する法線力の範囲は、外側駆動輪郭のテーパ状端部に、好ましくはその有効長全体にわたって存在しなければならない。ねじ頭部と同様に、駆動輪郭は、5または6の駆動面を有することが好ましい。 しかし、輪郭は異なった数でも可能である。
【0022】
好ましい態様では、駆動要素はねじであり、駆動輪郭はねじ頭部上に形成される。同様に、駆動要素は、スクリュービットであってもよい。
【0023】
本発明に係る方法の好ましい実施形態によれば、2つの構成部材の駆動輪郭は輪郭軸に対して傾斜した駆動面を有し、2つの構成部材の駆動輪郭は、駆動輪郭が軸方向に互いに差し込まれた際に、2つの構成部材の駆動面が互いに面接触するように互いに補完し合うように選択されることが提供され、これにより、構成部材に互いに軸方向に接続される摩擦および/またはクランプによる接続が、両構成部材間に形成される。
【0024】
本発明による方法では、回転不能に接続される構成部材の対が、キットのように互いに割り当てられ、構成部材は互いに適合し、互いに対応するように設計される。本発明の一実施形態において、2つの構成部材は、2つの構成部材の駆動輪郭が、それぞれの輪郭軸に対して傾斜した駆動面を有するように選択される。好ましい実施形態では、内側駆動輪郭の駆動面が輪郭軸に対して傾斜する傾斜角αIが、外側駆動輪郭の駆動面が輪郭軸に対して傾斜する傾斜角αAよりも大きくなることが提供される。内側駆動輪郭の駆動面の輪郭軸に対する傾斜角αIが3±0.2度であるとともに、外側駆動輪郭の駆動面の輪郭軸に対する傾斜角αAが1.15±0.15度であること、または内側駆動輪郭の駆動面の輪郭軸に対する傾斜角αIが2±0.2度であるとともに、外側駆動輪郭の駆動面の輪郭軸に対する傾斜角αAが1.15±0.15度であることが提供される。この設計は、2つの駆動輪郭がテーパの小端部で係合するが、大端部に小さなギャップがあることを確実にしている。これは、輪郭軸に対して横断方向に力が加えられた場合でも、確実な接続を保証することが示されている。
【0025】
同様に、2つの構成部材の駆動輪郭の移行面は、それぞれの輪郭軸に対して傾斜しており、輪郭軸に対する内側駆動輪郭の移行面の傾斜角βは、外側駆動輪郭の移行面の輪郭軸に対して傾斜する傾斜角に対して、>5、特に>6、好ましくは>7.5である。
【0026】
本発明の方法のさらなる実施形態によれば、内側駆動輪郭の外径が、外側駆動輪郭の外径よりも小さく、特に1.5~3%、好ましくは2%小さい駆動要素を使用することが提供される。
【0027】
これは、外側駆動輪郭をわずかに小さくすることで、駆動面の製造中の切削インサートの摩耗現象を補償することができることを示している。
【0028】
この実施形態のさらなる実施形態では、2つの構成部材の駆動面が、円周方向の全範囲の少なくとも25%以上、特に少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%にわたって互いに面接触することを提供することができる。
【0029】
好ましくは、2つの構成部材は、その長手方向中心面の両側の各接触面で接触する。 同様に、駆動輪郭は、それらが移行面の領域に接触しないように設計することができる。
【0030】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図1のねじの駆動輪郭に対応する、本発明による外側駆動輪郭を有するねじビットの形態の駆動要素の斜視図である。
【
図3】駆動面の傾斜角αを示す断面図におけるねじビットとねじとの係合を模式的に示す図である。
【
図5】移行面の傾斜角βを示す別の断面図における係合を模式的に示す図である。
【
図7】本発明による駆動要素の外側駆動輪郭の幾何学的形状および力の伝達経路を示す図である。
【
図8】本発明による外側駆動輪郭の寸法を付した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、ねじ1の形態の駆動要素の一例を示す。ねじ1は、雄ねじ3を有し、ねじ1の縦軸を画定するシャンク2を備える。シャンク2の上端に、ねじ頭部4が設けられており、ねじ頭部4は、ねじ頭部4の上側に向かって開口するとともに内側駆動面6を有し、かつねじ1の長手方向軸と同軸上に位置する輪郭軸P
Iを画定する内側駆動輪郭5を内側に備えている。これにより、開口した上端は、ねじビット用の内側駆動輪郭5の挿入開口5aを形成する。
【0033】
断面図または平面図において、内側駆動輪郭5は、正六角形の基本形状を有し、その側面は駆動面6を形成し、駆動面6は、内側駆動輪郭5の挿入開口5aから内側駆動輪郭5の後端に向かって輪郭軸PAに接近するように、輪郭軸PAまたはねじ1の長手方向軸に対して傾斜角αIが2°なるように傾斜している。換言すれば、駆動輪郭5は、ねじ頭部4において先細り状となっている。小ねじの場合、傾斜角αIは3°でもよい。
【0034】
内側駆動輪郭5の駆動面6は凹状の断面を有し、すなわち、それらは、輪郭軸PIに向かって内側に湾曲している。具体的には、凹状の駆動面6は、それぞれ断面が円弧状のセグメント形状を有し、それによって駆動面6の半径は、それらの軸方向全長にわたって一定である。
【0035】
駆動面6は、6つのコーナーにおいて、凸状に湾曲するとともに円弧形状を有する遷移領域または移行面7によって互いに接続されており、その結果ビーム状に外方に突出している。移行面7と駆動面6との間の移行は連続的である。移行面7は輪郭軸PIに対して傾斜しており、これにより、移行面7は内側駆動輪郭5の挿入開口5aから始まり内側駆動輪郭5の後端に向かって輪郭軸PIに近づいている。この場合、輪郭軸PIに対する移行面7の傾斜角βIは、輪郭軸PIに対する駆動面の傾斜角αIとちょうど同じ大きさであり、したがって図示の実施形態では2°である。
【0036】
図2に、
図1に示すねじ1を操作するように設計されたねじビットの形態の駆動要素/回転工具8が示されている。回転工具8は、外側駆動輪郭9を有し、その下端は図示されていないねじビットのシャフトに設けられ、ねじ1の駆動輪郭に対応するように設計され、それによって輪郭軸P
Aを画定している。したがって、外側駆動輪郭9も横断面が六角形の基本形状を有し、駆動輪郭9の駆動面10は凹状であり、すなわち輪郭軸P
Aの方向に湾曲し、輪郭軸P
Aに対して傾斜している。具体的には、ねじビットの駆動面10は、輪郭軸P
Aに対して1.15°の角度α
Aで傾斜し、外側駆動輪郭9の自由挿入端(
図2の上端)に向かって輪郭軸P
Aに近づき、外側駆動輪郭9がねじ1の内側駆動輪郭5内に挿入される。したがって、ねじビットの駆動面10は、ねじの駆動面9よりもいくぶん急勾配である(
図3および4参照)。駆動面10は、その軸方向の全長にわたって一定でかつねじ1の駆動面6の曲率半径と同じ値である半径を有する円弧状のセグメント形状の断面を備えている。
【0037】
駆動面10は、テーパ状であるとともに円弧形状を有する凸状の遷移領域または移行面7aによって互いに連続的に接続されている。
【0038】
内側駆動輪郭5と同様に、外側駆動輪郭9の移行面7aは、輪郭軸P
Aに対して傾斜し、外側駆動輪郭9の挿入端に向かって輪郭軸P
Aに近づいている。これにより、移行面7aの輪郭軸P
Aに対する傾斜角β
Aの角度は0.4°である。これは、輪郭軸P
Aに対する移行面7aの傾斜角β
Aが、輪郭軸P
Aに対する駆動面10の傾斜角α
Aよりも著しく小さいことを意味しており、ここでは傾斜角α
Aの傾斜角β
Aに対する比α
A/β
Aがほぼ3である。さらに、外側駆動輪郭9の移行面7aが輪郭軸Pに対して傾斜する傾斜角β
Aは、内側駆動輪郭の移行面が輪郭軸P
Iに対して傾斜する傾斜角β
Iよりも著しく小さくなっている(
図5および6参照)。この場合、傾斜角β
Iの傾斜角β
Aに対する比β
I/β
Aが7.5である。この構成は、ねじ1と対応するねじビット8の移行領域が互いに接触しないようにしている。したがって、ビット8の移行領域7aの曲率半径は、ねじ1の遷移領域7の曲率半径よりも大きい。
【0039】
換言すれば、駆動輪郭5,9間の面接触/係合が、中間の遷移領域7、7aではなく駆動面6,10の領域でのみ行われ、かつ接触ゾーンは、円周方向に見て、凹状に湾曲した駆動面6、10の頂点の両側にそれぞれ延在するように構成される。嵌合状態で2つの構成部材1、8の駆動面6、10間が面接触していることが望ましく、これにより、2つの構成部材1,8が、それらの2つの駆動輪郭5,9が、駆動面6、10の駆動輪郭5、9が円錐であることにより2つの構成部材1,8間にクランプ接続が生じるまで互いに差し込まれたときに、軸方向に互いに正確に同軸上に位置合わせされる。さらに、面接触は、高いトルクを伝達しうる摩擦結合を作り出す。
【0040】
図7は、本発明による自由先細端におけるビット8の外側駆動輪郭5の形状を示す。
【0041】
移行面7は、内径Daを有する共通円(内側円)上に位置していることが分かる。しかしながら、移行面7は、連続的な円弧形状を有する必要はなく、例えば、平坦であってもよい。駆動面6と隣接する移行面7との間の遷移点(ここで矢印P1で示す)は、上述した共通の内側円上に位置することが必須である。
【0042】
さらに、駆動面6は、輪郭軸PAの周りに均一に分布する直径Daの外側円上に配置され、輪郭軸PAを囲む長手方向中心面に対して対称に形成されることが示されている。
【0043】
輪郭軸P
Aを中心とするトルクM
Dが駆動輪郭5に導入されたときに、駆動面6と隣接する移行面7との間の移行点に作用する法線力が、1つの駆動面6と隣接する駆動面の接線方向に加えられるように、外径Da および内側円と外側円の中心点間の中心間距離L は、内径 Diの関数として選択される。法線力F
N1は、
図7において、上側の駆動面6と左側に隣接する移行面7との間の遷移点P1の例として示されている。
【0044】
所望のトルクM
Dを生じさせるためには、レバー力F
H1が点P1に作用しなければならない。これは、駆動面6が位置する外側円に対して垂直に向けられてその中心を通る法線力F
N1と、それに垂直になる接線力F
T1とに分けることができる。
図3から明らかなように、この構成は、法線力F
N1が、上部駆動面6の左側に隣接して配置された駆動面6に対して接線方向に作用するようになっている。本発明によれば、法線力F
N1は、また、
図3に破線矢印F
NBに例示されるように、描画された法線力F
N1と輪郭軸P
Aとの間に作用しうる。法線力F
N1が、駆動輪郭9またはねじビットとして設計された構成部材8の中央領域に導入され、2つの駆動面6間のビーム状の遷移領域7が曲げまたは剪断を受けないかまたはほとんど受けないことが不可欠である。
【0045】
所定の内径Diが与えられると、外径Daと、内側円の中心と外側円の中心との間の中心間距離 Lは、次の式に従って計算することができる。
L=F(L、Di)Di
実行比K=Da/Diは0.3 から2.0の間で選択できる。
【0046】
計算例を
図8に示す。パラメータは次のように選択される。
【0047】
Di=5.6mm
K=0.8(上記範囲で自由に選択)
このことから、Da= Di×K=5.6×0.8=4.48となる。
【0048】
F(L、Di)=0.494e(0.605K)=0.494e(0.605× 0.8)=0.8479からLが算出される。
【0049】
L=(L、Di)Di=0.8479×5.6=4.748
これらのパラメータから、
図4に示される幾何学を構築することができる。
【0050】
内側駆動輪郭5の形状は、外側駆動輪郭の外径DAが適合する内側駆動輪郭5の直径DAよりも約2%小さいという条件で、それに応じて選択される。これは、駆動面が切削インサートによって形成される場合に、切削インサートにより材料の大部分が除去されなければならないので、駆動面の中央領域で最大の摩耗が発生するという事実を考慮している。摩耗の増加に伴い、駆動面の中央領域で除去される材料はより少なくなり、従って、ここでは、減寸を補うために最小の湾曲が形成される。
【0051】
なお、駆動面の傾斜角αおよび移行面の傾斜角βは、それぞれ対応する面を中心として円周方向で測定される。したがって、角度は、それぞれの駆動輪郭の輪郭軸と交差する対応する表面の中心平面で測定される。
【符号の説明】
【0052】
1:ねじ
2:シャフト
3:雄ねじ
4:ねじ頭部
5:内側駆動輪郭
5a:挿入開口
6:駆動面
7:遷移領域
7a:移行面
8:駆動要素/回転工具/ビット
9:外側駆動輪郭
10:駆動面
Da:外径
L:中心間距離
MD:トルク
PI:輪郭軸
PA:輪郭軸
【国際調査報告】