(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ヒト酸性α-グルコシダーゼの新規の薬理学的シャペロン化合物およびその治療用途
(51)【国際特許分類】
C07D 211/46 20060101AFI20230519BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20230519BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20230519BHJP
C07D 455/02 20060101ALI20230519BHJP
C07H 15/26 20060101ALI20230519BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20230519BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/4523 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/4353 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C07D211/46
C07D401/12
C07D401/04
C07D455/02
C07H15/26
C07D471/04 102
C07D471/04
A61P3/00
A61P43/00 105
A61K31/445
A61K31/4523
A61K31/454
A61K31/706
A61K31/437
A61K31/4353
A61K31/4375
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563028
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021060572
(87)【国際公開番号】W WO2021214245
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516247100
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・グルノーブル・アルプ
【氏名又は名称原語表記】Universite Grenoble Alpes
(71)【出願人】
【識別番号】519208029
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ピー,サンドリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カナザワ,アリス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエイラ・ダ・クルス,アナイス
(72)【発明者】
【氏名】タンガラ,サリア
【テーマコード(参考)】
4C057
4C063
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ55
4C063AA01
4C063BB01
4C063BB08
4C063CC12
4C063CC42
4C063DD10
4C063EE01
4C065AA01
4C065AA03
4C065BB01
4C065BB04
4C065BB20
4C065CC01
4C065DD01
4C065HH04
4C065JJ05
4C065KK02
4C065KK04
4C065LL01
4C065PP03
4C065PP04
4C065QQ02
4C065QQ04
4C065QQ05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC21
4C086CB02
4C086CB05
4C086CB09
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZC21
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、ピペリジン環を持ち、D-グルコ構成を有し、ピペリジン環の窒素のα位に4級中心を有するイミノ糖クラスの特定の化合物に関する。これらの化合物は、ヒト酸性α-グルコシダーゼを安定化させる能力を有すると同時に、他のグリコシダーゼに対して選択的である。これらは特に、ポンペ病の治療のためにこの酵素のシャペロン分子として使用するのに有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤として使用するための、一般式(I)の化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つであって、
【化1】
式中、
- R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R
1が水素原子を表すとき、前記炭化水素ラジカルは少なくとも2個の炭素原子を含み、
- またはR
1およびR
2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した3~6員の複素環を形成し、任意に、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭素ラジカルから選択される、同一でも異なっていてもよい1つまたは複数のラジカルによって置換されており、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む
化合物。
【請求項2】
前記一般式(I)において、
R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2は-CH(R
3)-R
4基を表し、式中、R
3およびR
4は、同一または異なっており、それぞれが、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R
1が水素原子を表すとき、R
3およびR
4は同時には水素原子を表さない、
請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)において、
R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2は-(CHR
7)-SO
2-Ar
1基を表し、式中、Ar
1はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、ならびにR
7は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む炭化水素ラジカルを表す、
請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記一般式(I)において、
R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2はトリアゾール基を表し、任意に置換されている、
請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記一般式(I)において、
R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2は-(CH
2)
2-R
8基を表し、式中、R
8は以下を表す:
- 水素原子;
- C1-C12アルキル基またはシクロアルキル基、任意に置換されており、任意に、単環または複数の縮合環を含む;
- -(CH
2)
a-OH基、式中、aは0~18の整数である;
- -(CH
2)
b-Ar
2基、式中、Ar
2はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにbは0~18の整数である;
- -(CH
2)
c-Si(R
9)
3基、式中、R
9は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表し、およびcは0~18の整数である;
- または-(CH
2)
d-Z-R
10基、式中、Zは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、R
10は、水素原子、またはC1-C18アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールラジカル、もしくはアシルラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、ならびにdは0~18の整数である、
請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記一般式(I)において、
R
1は、C1-C18、好ましくはC1-C6、直鎖状、分岐状、および/または環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
一般式(I’a)において、
【化2】
式中、
R
1は、水素原子またはC1-C18の直鎖状、分岐状、および/もしくは環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
R
8は以下を表す:水素原子;メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル、シクロアルキルラジカル、アダマンチルラジカル、アルキルシクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、またはアリールラジカル、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており;ヒドロキシル基;Si(R
12)
3基、式中、R
12は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表し;-(CH
2)
f-Y-R
13基、式中、fは0~6の整数であり、Yは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、ならびにR
13は、C1-C18アルキルラジカルまたはC1-C18アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し;-(CH
2)
g-CO-R
13基、式中、gは0~6の整数であり;または-(CH
2)
h-SO
e-R
13基、式中、hは0~6の整数であり、ならびにeは1または2に等しく、
R
1がプロピル基を表さないとき、R
8は水素原子を表さない、
請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
一般式(I’’a)において、
【化3】
式中、
R
1は、水素原子、またはC1-C18の直鎖状、分岐状、および/または環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
R
18は直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、4~18個の炭素原子を含み、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む、
請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
一般式(I’b)において、
【化4】
式中、
R
14は、水素原子、カルボニルラジカル、またはC1-C18アルキルラジカル、アルケニルラジカル、アルキニルラジカル、アルキルアリールラジカル、もしくはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
ならびにR
15は、水素原子、ヒドロキシルラジカル、アミノラジカル、またはC1-C18アルキルラジカル、アルケニルラジカル、またはアリールラジカルを表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている、
請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記一般式(I)において、R
1およびR
2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した3員の複素環を形成し、任意に、-X-R
5基によって置換されており、式中、
- Xは-C(=O)-または-CH(OR
6)-ラジカルを表し、式中、R
6は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにR
5は、水素原子、アミノ基、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
- またはXは-CH(OH)-ラジカルを表し、ならびにR
5は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む、
請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
ポンペ病を治療するための、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
ヒト酸性α-グルコシダーゼを安定化させるための、請求項11に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
経口投与に好適な形態を有する組成物に含有されている、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
薬学的に許容される賦形剤中に、請求項1~10のうちいずれか一項に定義される化合物を含有する医薬組成物。
【請求項15】
経口投与に好適な形態である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
一般式(I’)の化合物であって、
【化5】
式中、
- R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2は-CH(R
3)-R
4基を表し、式中、R
3およびR
4は、同一または異なっており、それぞれが、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R
3およびR
4は、R
1およびR
3がそれぞれ水素原子を表すとき、R
4が水素原子またはフェニルラジカルを表さないものとなり、
ならびにR
1およびR
2は、それぞれ同時にはプロピルラジカルおよびエチルラジカルを表さないものとなり、
- またはR
1およびR
2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した4員の複素環を形成し、任意に、それぞれがヒドロキシル基、アミノ基、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭素ラジカルから選択される、同一でも異なっていてもよい1つまたは複数のラジカルによって置換されており、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
- またはR
1およびR
2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した3員の複素環を形成し、任意に-X-R
5基で置換されており、式中、
・Xは-C(=O)-または-CH(OR
6)-ラジカルを表し、式中、R
6は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにR
5は、水素原子、アミノ基、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み;
・またはXは-CH(OH)-ラジカルを表し、ならびにR
5は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R
5は、n-プロピルラジカル、シクロヘキシルラジカル、もしくはフェニルラジカル、または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つを表さない、
化合物。
【請求項17】
前記一般式(I’)において、
R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2は-(CHR
7)-SO
2-Ar
1基を表し、式中、Ar
1はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、ならびにR
7は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む、
請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記一般式(I’)において、
R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2はトリアゾール基を表し、任意に置換されている、
請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
前記一般式(I’)において、
R
1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR
2は-(CH
2)
2-R
8基を表し、式中、R
8は以下を表す:
- 水素原子;
- C1-C12アルキル基またはシクロアルキル基、任意に置換されており、任意に、単環または複数の縮合環を含む;
- -(CH
2)
a-OH基、式中、aは0~18の整数である;
- -(CH
2)
b-Ar
2基、式中、Ar
2はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにbは0~18の整数である;
- -(CH
2)
c-Si(R
9)
3基、式中、R
9は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表し、ならびにcは0~18の整数である、
- または-(CH
2)
d-Z-R
10基、式中、Zは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、R
10は、C1-C18アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールラジカル、もしくはアシルラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、ならびにdは0~18の整数である、
請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
一般式(I’a)の化合物であって、
【化6】
式中、
R
1は、水素原子、またはC1-C18の直鎖状、分岐状、および/または環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
R
8は以下を表す:水素原子;ヒドロキシル基;メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル、シクロヘキシルラジカル、アダマンチルラジカル、アルキルシクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、またはアリールラジカル、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており;-Si(R
12)
3基、式中、R
12は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表し;-(CH
2)
f-Y-R
13基、式中、fは0~6の整数であり、Yは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、ならびにR
13は、C1-C18アルキルラジカル、またはC1-C18アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し;-(CH
2)
g-CO-R
13基、式中、gは0~6の整数であり;または-(CH
2)
h-SO
e-R
13基、式中、hは0~6の整数であり、eは1または2に等しく、
R
1がプロピルラジカルを表すとき、R
8は水素原子を表さない、
請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
一般式(I’’a)の化合物であって、
【化7】
式中、
R
1は、水素原子、またはC1-C18の直鎖状、分岐状、および/もしくは環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
R
18は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、4~18個の炭素原子を含み、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む、
請求項16に記載の化合物。
【請求項22】
一般式(I’b)の化合物であって、
【化8】
式中、
R
14は、水素原子、カルボニルラジカル、またはC1-C18のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アルキニルラジカル、アルキルアリールラジカル、もしくはアリールラジカル、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
ならびにR
15は、水素原子、ヒドロキシルラジカル、アミノラジカル、またはC1-C18アルキルラジカル、アルケニルラジカル、もしくはアリールラジカルを表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている、
請求項16に記載の化合物。
【請求項23】
一般式(I’c)の化合物であって、
【化9】
式中、R
16は、水素原子、またはC1-C18のアルキルラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、R
16は、n-プロピルラジカル、シクロヘキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表さない、
請求項16に記載の化合物。
【請求項24】
請求項19~21のうちいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、以下の連続的なステップ:
a/一般式(III)または(IV)の化合物と一般式(V)の化合物との反応であって、
【化10】
式中、Bnはベンジルラジカルを表し、R
8は、請求項19または20に定義されているが、有機金属化合物が存在する場合、R
8は、水素原子もヒドロキシル基もアミノ基も表さない、
b/任意に、ヒドロキシルアミン官能基のアミンへの還元、
c/任意に、ピペリジン環の窒素原子のアルキル化、
d/ならびに、ステップa/の最後、適用可能な場合はステップb/またはステップc/の最後に得られた生成物の水素化分解
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライソゾーム病の治療、より具体的にはポンペ病の治療の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、特にポンペ病を治療する薬剤として使用するために、ヒトα-グルコシダーゼと選択的に相互作用すること、および特に内在性(GAA)または遺伝子組換え(rhGAA)のヒト酸性α-グルコシダーゼを、ライソゾームに輸送するのに有利な形態で安定化させることが可能なクラスのイミノ糖に属する化合物;ならびにそのような化合物を含有する医薬組成物に関する。また本発明は、ヒト酸性α-グルコシダーゼと選択的に相互作用が可能なクラスのイミノ糖に属する化合物にも関する。さらに本発明は、そのような化合物を調製する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
糖原病II型とも呼ばれるポンペ病は、ヒト酸性α-グルコシダーゼ(GAA)ライソゾーム酵素をコードするGAA遺伝子に1つまたは複数の変異があるために、この酵素の活性が欠損し、その結果、この酵素が加水分解型生分解を行うグリコーゲンがライソゾームに蓄積し、それにより筋肉や心臓の細胞機能不全が生じることを特徴とする、まれな遺伝性疾患である。症状は多岐にわたり、出生時か成人後のいずれの時期に発症するかによって、進行が早くも遅くもなる。全身の筋肉、特に呼吸筋と心筋が侵される。そのため患者の寿命は短くなり、特に乳幼児では、生後1年以内に死亡することもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Boyd et al.,2013,J.Med.Chem.56:2705-2725
【非特許文献2】Markham,2016,Drugs 76:1147-1152
【非特許文献3】Flanagan et al.,2009,Hum.Mutat.30:1683-1692
【非特許文献4】Parenti et al.,2007,Mol.Ther.15(3):508-514
【非特許文献5】Boisson et al.,Org.Lett.,2015,17(15)、3662-3665
【非特許文献6】Tangara et al.,Org.Lett.,2017,19(18)、4842-4845
【非特許文献7】Vieira Da Cruz et al.,J.Org.Chem.,2017,82(18)、9866-9872
【非特許文献8】Ahn,et al.,1994,J.Org.Chem.59:6282-6286
【非特許文献9】Bornschein et al.,2015,Eur.J.Org.Chem,1915-1919
【非特許文献10】Xie and Dixon,2017,Chem.Sci.8:7492-7497
【非特許文献11】Stecko et al.,2014,Tetrahedron 70:7817-7844
【非特許文献12】Khangarot & Kaliappan,2013,Eur.J.Org.Chem.7664-7677
【非特許文献13】Tangara et al.,2018,New J.Chem.42:16735-16743
【非特許文献14】Lahav et al.,2017,J.Am.Chem.Soc.139:14192-14197
【非特許文献15】Porto et al.,2012,Molecular Therapy 20:2201-2211
【非特許文献16】Niesen et al.,2007,Nat.Protoc.2:2212-2221
【非特許文献17】Artola et al.,2017,ACS Cent.Sci.3:784-793
【非特許文献18】Bradford,1976,Anal.Biochem.72:248-254
【非特許文献19】Bruckmann et al.,2012,ChemMedChem 7:1943-1953
【非特許文献20】D’Alonzo et al.,2017,J.Med.Chem.60:9462-9469
【非特許文献21】Asano et al.,1995,J.Med.Chem.38:2349-56
【非特許文献22】Wennekes et al.,2010,J.Med.Chem.53:689-698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、販売承認を得ているポンペ病の治療法は1つしかない。酵素補充療法(ERT)として知られるこの治療は、疾患の症状を安定化させることが可能な組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)を有効成分とするMyozyme(登録商標)を静脈内投与するものである。しかしながらこの治療法は、非常に高価であり、病院環境で2週間ごとに点滴を行う必要があるため患者の負担が大きく、また多くの場合、有効性が限定的であるなど、多くの欠点がある。有効性や治療対象者の耐性に影響を与える免疫反応を引き起こす可能性もある。さらに、組換え酵素は血液中で比較的不安定であり、必要投与量は、他のライソゾーム病の治療のために投与される量よりもはるかに多い。
【0006】
そのため、現在もなお、ポンペ病に対する満足のいく治療が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はそのような治療を目的としている。より具体的には、本発明は、ポンペ病の有効な治療をもたらす化合物を提供することを目的とし、さらにこの治療は、投与が容易で、先行技術に基づく酵素補充療法による治療よりも安価である。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、これらの化合物を先行技術の酵素補充療法と同時に投与することで、後者の有効性を有意に向上させることである。
【0009】
これらの目的を達成しようと、本発明者らは、現時点でライソゾーム病の治療に最も有望なものの1つと考えられている治療アプローチ、いわゆる薬理学的シャペロン分子の使用に興味を持った。シャペロン分子は、変異酵素が正しく折りたたまれるよう誘導し、小胞体で分解されずにライソゾームに輸送されるのを可能にする小分子である(非特許文献1)。この治療アプローチは、別のライソゾーム病であるファブリー病で成功を収めており、この疾患に対しては、現在、酸性αガラクトシダーゼの薬理学的シャペロンとして、イミノ糖であるミガーラスタット(Galafold(登録商標))が処方されている(非特許文献2)。
【0010】
そのため本発明者らは、ポンペ病の治療に使用するために、活性のある折りたたまれた形態でヒト酸性α-グルコシダーゼを安定化させ、さらに、酵素補充療法による治療で使用する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの有効性を高めることができる化合物を探索した。
【0011】
既存の化合物の中で、次式で表されるイミノ糖であるデオキシノジリマイシン(DNJ)は、ヒト酸性α-グルコシダーゼの有望なシャペロン分子として先行技術で提示されている(非特許文献3)。
【0012】
【0013】
次式で表される、NB-DNJと呼ばれるDNJの誘導体も、同じ用途向けに先行技術で提示されている(非特許文献4)。
【0014】
【0015】
しかしながら、これらの化合物はこの酵素に対する選択性が低く、他のヒト酵素であるα-グリコシダーゼとβ-グリコシダーゼ、およびグリコシルトランスフェラーゼを阻害し、そのため被験者に投与すると、多くの望ましくない副作用を引き起こす。
【0016】
非特許文献5は、S.cerevisiaeおよびコメのα-グルコシダーゼを阻害する能力の高い、インドリジジンの特定のポリヒドロキシル化誘導体を説明している。
【0017】
非特許文献6は、特定のアジリジニル-イミノ糖を説明している。
【0018】
非特許文献7は、特定のポリヒドロキシル化キノリジジン、ならびに酵母およびコメのα-グルコシダーゼを阻害するそれらの能力を説明している。
【0019】
現在、本発明者らは、イミノ糖クラスに属し、DNJに由来する特定の構造に適合する特定の化合物が、ヒト酸性α-グルコシダーゼ(GAA)に結合してこれを安定化させること、さらにこれを高選択的に、すなわち、他のヒトグリコシダーゼと、具体的には、ヒトβ-グルコセレブロシダーゼ(GBA1およびGBA2)、ヒトβ-グルコシルセラミドトランスフェラーゼ(GCS)、またはヒト小胞体α-グルコシダーゼII(GANAB)と少なくとも大きく相互作用することなく行うことを見出している。それに加え、これらの化合物がGAAを安定化させる効果は特に優れている。したがって、これらの化合物は、ポンペ病患者に投与すると、患者の内因性酸α-グルコシダーゼを正しく折りたたまれた形態で安定化させ、これらのライソゾームへの輸送を改善し、グリコーゲンの加水分解活性を高め、それにより、この疾患を効果的に治療すると同時に、治療時の望ましくない副作用を低減することができる。これらの化合物は、酵素補充療法(ERT)と併用すると、組換え酵素(rhGAA)を安定化させ、それによりこれらの有効性を高めることもできる。
【0020】
DNJやNB-DNJなど、似てはいるが異なる構造を持つ分子では、治療レベルでそのような特に有利な結果を得ることはできない。
【0021】
よって、第1の態様に従って、本発明は、薬剤として、特に薬理学的シャペロンとして使用するための、特にポンペ病を治療するための、特にヒト酸性α-グルコシダーゼを安定化させるための、以下の一般式(I)の化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つに関し、
【0022】
【0023】
式中、
- R1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR2は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R1が水素原子を表すとき、前記炭化水素ラジカルは少なくとも2個の炭素原子を含み、
- またはR1およびR2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した3~6員の複素環を形成し、任意に、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、または炭素ラジカルから選択される、同一でも異なっていてもよい1つまたは複数のラジカルによって置換されており、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む。このような構成は、炭素ラジカルが炭素原子によって3~6員の複素環に分岐している場合に加え、炭素ラジカルが、それが含むヘテロ原子によってそれに分岐している場合も包含する。
【0024】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書では、それ自体従来的に、炭素と水素以外の元素に属する任意の原子、例えば、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素、ハロゲンなどを指す。
【0025】
優先的に、R1が水素原子を表すとき、R2はメチルラジカルまたはベンジル基を表さない。
【0026】
本明細書では、「薬学的に許容される塩」は、それ自体従来的に、被験者、特に哺乳動物に投与したときに、何らかの有害反応やアレルギー反応などの望ましくない反応を引き起こさない物質を対イオンとして含む一般式(I)の化合物の任意の塩を意味する。
【0027】
一般式(I)の化合物の従来の薬学的に許容される塩はいずれも、本発明に従って使用することができる。例として、塩化物、臭化物、ギ酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
【0028】
本明細書では、用語「治療」は、所望の薬理効果または生理効果を得ることを意味する。本明細書で使用する「治療」という語は、1つもしくは複数の疾患症状の予防もしくは部分的な予防、および/または疾患の部分的もしくは完全な治癒、および/または1つもしくは複数のそれらの症状の完全もしくは部分的な消失を含む。
【0029】
ヒト酸性α-グルコシダーゼは、GenBank Accession番号ABI53718.1の952アミノ酸のタンパク質である。
【0030】
本発明に従って使用する、一般式(I)を有する化合物はこれらのリガンドである。さらに、この酵素に対して特に強い選択性を有する。特にこの選択性は、グリコシダーゼと相互作用する、DNJまたはNB-DNJなど他のイミノ糖よりもはるかに強い。
【0031】
本発明に従って使用する化合物の特徴、特に、そのような有利な特性を得ることを可能にするその三次元構造に関連する特徴を、ここで早計に判断することはしない。しかしながら、ピペリジン核の窒素のα位に4級中心が存在すること、化合物のD-グルコ構成、ならびにピペリジン核の窒素のα位にある4級炭素およびこの窒素上に存在する特定の置換基がこれに関与していると想定できる。少なくとも部分的には、これらの特性ゆえに、本発明に従って使用する化合物は、酵素と非共有結合することで、その折りたたみを安定化し、これに、ライソゾームにおける欠損した酵素の輸送および活性の回復を可能にするシャペロンの役割を与えることになる。
【0032】
よって、本発明に従って使用する化合物は、低濃度でヒト酸性α-グルコシダーゼを安定化させ、ポンペ病の治療に好適な薬理学的シャペロンの必須特性を有する。特に、100μMの濃度では、in vitroにおいて、pH4.0でヒト酸性α-グルコシダーゼの熱変性温度を8℃から12℃に、pH7.4でヒト酸性α-グルコシダーゼの熱変性温度を10℃から13℃に上昇させる。ヒト酸性α-グルコシダーゼに対する、本発明に従って使用する化合物のシャペロン効果は、培養下のヒト細胞、より具体的には、疾患を有する患者の線維芽細胞、およびマウスのin vivoにおける実験によって確認されている。
【0033】
よって、本発明に従って使用する化合物は、ヒト酸性α-グルコシダーゼに選択的に結合してこれを安定化させ、それにより患者の欠損酵素の活性を回復させる、および/またはrhGAA酵素補充療法において、本発明に従って使用する化合物と併用した場合に、投与されるrhGAA組換え酵素のバイオアベイラビリティを向上させることから、ポンペ病を治療するための薬理学的シャペロンとしての使用に完全に適合し、有利である。
【0034】
したがって、一般式(I)の化合物は、活性のある折りたたまれた形態でヒト酸性α-グルコシダーゼを安定化させ、さらに、一般式(I)の化合物と組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを患者に併用投与する酵素補充療法による治療で使用する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの有効性を高めるために使用できる。
【0035】
本発明に従って使用する化合物は、有利には、患者に容易に、特に経口で投与でき、かつ安価に調製できる。
【0036】
本化合物は、毒性リスクが低く、バイオアベイラビリティが良好である。
【0037】
さらに、酵素補充療法と併用すると、本発明に従って使用する化合物は、有利には、投与した組換え酵素のバイオアベイラビリティを向上させ、それにより、その用量を低減しながらも、治療において同じ有効性、あるいはさらに優れた有効性を得ることが可能となる。
【0038】
本発明に従って使用される一般式(I)の化合物は、それを必要とする、すなわち疾患を有する、または疾患にかかる可能性の高い任意の被験者に投与できる。この被験者は、特に哺乳動物、とりわけヒトであり得る。
【0039】
本発明に従って使用する化合物は、好ましくは治療上有効量で被験者に投与する。
【0040】
「治療上有効量」は、疾患を治療するために被験者に投与した場合に、疾患のそのような治療を確保するのに十分な化合物の量を意味する。
【0041】
本発明に従って使用する化合物の治療上有効量は、疾患およびその重篤度、被験者の年齢、体重など、使用する特定の化合物、投与経路、剤型など、いくつかの要因によって異なる。本発明に従って使用する化合物の治療上有効量は、症例ごとに医師が決定する。
【0042】
本発明に従って使用する化合物は、治療対象者に、従来の任意の方法で、特に非経口的に、例えば、皮下、硬膜下、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、脳内、動脈内、病巣内、鼻腔内、直腸内、例えば噴霧もしくは吸入で肺内に、または局所的に投与できる。優先的には、経口投与する。
【0043】
本発明に従って使用する化合物の投与量を決定することは、医師の能力の範囲内である。本化合物は、例えば、酵素補充療法との併用療法において、1日1回または2回、長期にわたって、一定間隔で、または標的化方式で、これを必要とする被験者に投与できる。
【0044】
上記に開示するように、本発明に従って使用する化合物は、有利には、酵素補充療法に使用する酵素と併用して、特に、Myozyme(登録商標)という名称で販売されている組換え酵素などの組換えヒト酸性α-グルコシダーゼと併用して被験者に投与できる。その後で本化合物は、有利には、その有効性を向上させる。
【0045】
本発明の特定の実施形態である一般式(I)では、R1およびR2は、互いに結合していない、特に、化合物のピペリジン核と縮合した環を一緒に形成していないという意味において互いに独立している。
【0046】
特に、一般式(I)において、
- R1はここで、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR2は、-CH(R3)-R4基を表すことがあり、式中、R3およびR4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれが、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R1が水素原子を表すとき、R3およびR4は同時には水素原子を表さない。
【0047】
本発明の特定の実施形態では、R3およびR4は同時には水素原子を表さない。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、R1およびR2はそれぞれ同時にはプロピルラジカルおよびエチルラジカルを表さないものとなる。
【0049】
優先的に、R3およびR4は、R1およびR3がそれぞれ水素原子を表すとき、R4がフェニルラジカルを表さないものとなる。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、R2は-CH(R3)-R4基を表し、式中、R3は上記に定義されており、ならびにR4は炭化水素ラジカルを表し、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにそれぞれ酸素、窒素、硫黄、およびケイ素から選択される1つもしくは複数のヘテロ原子ならびに/またはそれぞれカルボニル基、スルホキシド基、スルホニル基、およびシラン基から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含む。
【0051】
そうでなければ、R1は水素原子または炭化水素ラジカルを表し、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R2は-(CHR7)-SO2-Ar1基を表してよく、式中、Ar1はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、特に5~18個の原子を含み、ならびにR7は水素原子または炭化水素ラジカルを表し、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む。本発明の特定の実施形態では、Ar1は芳香族複素環、特にピリジン環を表し、任意に置換されており、および/またはR7は水素原子を表す。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、R1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R2はトリアゾール基を表してよく、任意に置換されている。
【0053】
本発明の他の変形では、R1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R2は-(CH2)2-R8基を表し、式中、R8は以下を表す。
- 水素原子;
- C1-C12アルキル基またはシクロアルキル基、任意に、単環または複数の縮合環、例えばアダマンチル基を含む;
- -(CH2)a-OH基、式中、aは、0~18、好ましくは0~12、および特に0~6の整数である;
- -(CH2)b-Ar2基、式中、Ar2はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにbは、0~18、好ましくは0~12、および特に0~6の整数である;
- -(CH2)c-Si(R9)3基、式中、R9は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表し、ならびにcは、0~18、好ましくは0~12、および特に0~6の整数である;
- または-(CH2)d-Z-R10基、式中、Zは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、R10は、水素原子、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールラジカル、もしくはアシルラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基、特にスルホニルラジカルによって中断および/または置換されており、ならびにdは、0~18、好ましくは0~12、および特に0~6の整数である。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態では、R1は、水素原子、またはC1-C18、好ましくはC1-C6、例えばC1-C3、およびより詳細にはC1-C2、直鎖状、分岐状、および/もしくは環状のアルキル基を表し、このアルキル基は、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている。
【0055】
本発明に従って使用する化合物は、特に一般式(I’a)に適合することがあり、
【0056】
【0057】
式中、
R1は、水素原子、またはC1-C18、好ましくはC1-C6、直鎖状、分岐状、および/もしくは環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、ならびにR8は以下を表す。
- 水素原子;
- メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル、シクロアルキルラジカル、アダマンチルラジカル、アルキルシクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、またはアリールラジカル、特にフェニルラジカル、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている;
- ヒドロキシル基;
- -Si(R12)3基、式中、R12は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表す;
- -(CH2)f-Y-R13基、式中、fは0~6の整数であり、Yは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、ならびにR13は、C1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアルキルラジカル、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表す;
- -(CH2)g-CO-R13基、式中、gは0~6の整数であり、ならびにR13は上記に定義されている;
- または-(CH2)h-SOe-R13基、式中、hは0~6の整数であり、eは1または2に等しく、ならびにR13は上記に定義されており、
R1がプロピルラジカルを表すとき、R8は水素原子を表さない。
【0058】
本発明の特定の実施形態では、使用する化合物は、一般式(I’’a)に適合し、
【0059】
【0060】
式中、
R1は、水素原子、またはC1-C18の直鎖状、分岐状、および/もしくは環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
R18は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、4~18個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子、および特に5~12個の炭素原子を含み、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む。
【0061】
R18は、特にブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、またはアダマンチル基を表してよい。
【0062】
優先的に、式(I’’a)において、R1は水素原子を表す。
【0063】
本発明に従って使用できる特定の化合物は、次の式(IIa)、(IIb)、(IIb1)、(IIb2)、(IIb3)、(IIb4)、(IIb5)、(IIb6)、(IIb7)、(IIc)、(IIc1)、(IId)、(IIe)、(IIo)、(IIp)、(IIp1)、(IIq)、(IIr)、(IIs)、(IIt)、(IIu)、(IIv)、(IIw)、(IIw1)、(IIx)、(IIx1)、および(IIy)に適合する。
【0064】
【0065】
本発明の別の実施形態では、使用する化合物は、一般式(I)において、R1およびR2が、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した6員の複素環を形成し、任意に、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、カルボニル基、または炭素ラジカルから選択される、同一でも異なっていてもよい1つまたは複数のラジカルによって置換されており、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含むものとなる。
【0066】
本発明に従って使用できる特定の化合物は、式(IIf)に適合する。
【0067】
【0068】
本発明の他の実施形態では、使用する化合物は、一般式(I)において、R1およびR2が、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した5員の複素環を形成し、任意に、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、カルボニル基、または炭素ラジカルから選択される、同一でも異なっていてもよい1つまたは複数のラジカルによって置換されており、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含むものとなる。
【0069】
本発明に従って使用できる特定の化合物は、式(IIg)に適合する。
【0070】
【0071】
本発明のさらに別の実施形態では、使用する化合物は、一般式(I)において、R1およびR2が、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した4員の複素環を形成し、任意に、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、または炭素ラジカルから選択される、同一でも異なっていてもよい1つまたは複数のラジカルによって置換されており、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含むものとなる。
【0072】
本化合物は、特に、一般式(I’b)に適合してよく、
【0073】
【0074】
式中、
R14は、水素原子、カルボニルラジカル、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C16のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アルキニルラジカル、アルキルアリールラジカル、もしくはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
ならびにR15は、水素原子、ヒドロキシルラジカル、アミノラジカル、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、もしくはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている。
【0075】
本発明に従って使用できる特定の化合物は、特に、式(IIh)、(IIz1)、(IIz2)、(IIz3)、(IIz4)、および(IIz5)に適合する。
【0076】
【0077】
本発明のさらに別の実施形態では、使用する化合物は、一般式(I)において、R1およびR2が、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した3員の複素環を形成し、任意に-X-R5基で置換されており、式中、
- Xは-C(=O)-または-CH(OR6)-ラジカルを表し、式中、R6は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにR5は、水素原子、アミノ基、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
- またはXは-CH(OH)-ラジカルを表し、ならびにR5は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含むものとなる。後者の構成では、特にR5は、優先的に、非置換のn-プロピルラジカル、非置換のc-ヘキシルラジカル、または非置換のフェニルラジカルを表さない。
【0078】
本発明に従って使用する化合物は、特に、一般式(I’c)に適合してよく、
【0079】
【0080】
式中、R16は、水素原子、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および優先的にC1-C6のアルキルラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている。
【0081】
特にR16は、-CH2-OH基、メチルラジカル、またはエチルラジカルを表してよい。
【0082】
本発明に従って使用できる特定の化合物は、式(IIj)、(IIk)、(IIm)、および(IIn)に適合する。
【0083】
【0084】
本発明は、疾患、特にポンペ病を有する被験者、またはこれにかかる可能性の高い被験者を治療する方法に関して表すこともでき、本方法は、それを必要とする前記被験者に、一般式(I)に適合する化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つの治療上有効量を投与するステップを含む。本方法は、一般式(I)の化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つの、薬剤としての治療用途に関して、上述の特徴の1つまたは複数に適合し得る。
【0085】
また本発明は、薬剤、特にポンペ病を治療する薬剤を製造するための、上記に定義する、一般式(I)の化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つの使用にも関する。
【0086】
別の態様に従って、本発明は、有効成分として、一般式(I)に適合する化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つを、薬学的に許容される賦形剤中に含有する医薬組成物に関する。
【0087】
本明細書では、「薬学的に許容される賦形剤」は、医薬組成物を調製するのに有用であり、かつ一般的に安全で、毒性がなく、治療対象者、特に哺乳動物、とりわけヒトにとって生物学的にもその他の点でも望ましくないことがない任意の賦形剤を意味する。
【0088】
本発明による医薬組成物の賦形剤は、固体または半固体または液体のいずれであってもよい。また、希釈剤、アジュバント、または医薬組成物を形成するためのそれ自体従来の任意の他の賦形剤であってよい。
【0089】
本発明による医薬組成物は、任意のガレノス形態、特に、非経口、鼻腔内、直腸内、肺内、または局所投与に適合した形態であってよい。優先的に、本医薬組成物は経口投与に好適な形態である。本発明の非限定的なこのようなガレノス形態の例として、顆粒、粉末、錠剤、カプセル、丸薬、シロップ、溶液、または飲用懸濁液などの形態に言及できる。
【0090】
本発明による医薬組成物は、例えば、保存料、甘味料、香料、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、界面活性剤、分散剤、潤滑剤、安定剤、緩衝剤、抗菌剤、抗真菌剤など、もしくはそれらの混合物のいずれか1つから選択される、医薬組成物を形成するための、それ自体従来の1つもしくは複数の賦形剤/添加剤;ならびに/または被験者へのその投与後に、有効成分の急速、持続、もしくは遅延、および/または標的化放出を可能にする任意の化合物を含有してよい。
【0091】
さらに、本発明による医薬組成物は、一般式(I)の化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つ以外の1つまたは複数の有効成分を含有してよく、これらの有効成分は、前記化合物と相乗的に作用できる、またはできない。
【0092】
本発明による医薬組成物は、好ましくは、単位用量の形態で処方する。
【0093】
本発明は、疾患、特にポンペ病を治療するための、上記に定義する、本発明による医薬組成物の治療用途にも関する。本用途は、一般式(I)の化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つの治療用途に関連して、上記に定義する1つまたは複数の特徴に適合し得る。
【0094】
別の態様に従って、本発明は、次の一般式(I’)に適合する化合物に関し、この一般式(I’)は、上述の一般式(I)の化合物または薬学的に許容されるこれらの塩のうちの1つの亜群を定義し、
【0095】
【0096】
式中、
- R1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR2は-CH(R3)-R4基を表し、式中、R3およびR4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれが、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R3およびR4は、R1およびR3がそれぞれ水素原子を表すとき、R4が水素原子またはフェニルラジカルを表さないものとなり、
ならびにR1およびR2は、同時にはそれぞれプロピルラジカルおよびエチルラジカルを表さず、
- またはR1およびR2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した4員の複素環を形成し、任意に、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、または炭素ラジカルから選択される、同一でも異なっていてもよい1つまたは複数のラジカルによって置換されており、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
- またはR1およびR2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した3員の複素環を形成し、任意に-X-R5基で置換されており、式中、
・Xは-C(=O)-または-CH(OR6)-ラジカルを表し、式中、R6は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにR5は、水素原子、アミノ基、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み;
・またはXは-CH(OH)-ラジカルを表し、ならびにR5は水素原子または炭化水素ラジカルを表し、例えば1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R5は、n-プロピルラジカル、c-ヘキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表さない。ここで、n-プロピルラジカル、c-ヘキシルラジカル、およびフェニルラジカルは、これらの非置換形態のラジカルを意味する。したがって、R5は、置換n-プロピルラジカル、置換c-ヘキシルラジカル、または置換フェニルラジカルを表してよい。
【0097】
本発明の特定の実施形態では、化合物は式(I’)において以下のようなものとなる。
R1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、
ならびにR2は-CH(R3)-R4基を表し、式中、R3は上記に定義されており、ならびにR4は炭化水素ラジカルを表し、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにそれぞれ酸素、窒素、硫黄、およびケイ素から選択される1つもしくは複数のヘテロ原子ならびに/またはそれぞれカルボニル基、スルホキシド基、スルホニル基、およびシラン基から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み;R1およびR3がそれぞれ水素原子を表すとき、R4はフェニルラジカルを表さない。
【0098】
特に、式(I’)において、R1が、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含むとき、R2は-(CHR7)-SO2-Ar1基を表してよく、式中、Ar1はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、好ましくは5~18個の原子を含み、ならびにR7は水素原子または炭化水素ラジカルを表し、好ましくは、1~18個、優先的に1~12個、および特に1~6個の炭素原子を含み、直鎖状、分岐状、および/または環状、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む。
【0099】
本発明による化合物は、例えば一般式(I’d)に適合してよく、
【0100】
【0101】
式中、R1、R7、およびAr1は上記に定義されている。
【0102】
そうでなければ、式(I’)において、R1が、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含むとき、R2はトリアゾール基を表してよく、任意に置換されている。
【0103】
本発明による化合物は、特に式(I’e)に適合してよく、
【0104】
【0105】
式中、R1は上記に定義されており、ならびにR19は、水素原子、またはC1-C18のアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、トリアルキルシリルラジカル、もしくはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている。
【0106】
本発明の変形では、一般式(I’)において、R1は、水素原子、または直鎖状、分岐状、および/もしくは環状の炭化水素ラジカルを表し、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、R2は-(CH2)2-R8基を表し、式中、R8は以下を表す。
- 水素原子;
- C1-C12のアルキル基またはシクロアルキル基、任意に置換されており、任意に、単環または複数の縮合環、例えばアダマンチルラジカルを含む;
- -(CH2)a-OH基、式中、aは、0~18、優先的に0~12、および特に0~6の整数であり;任意に、R1が水素原子を表すとき、aは1とは異なっていてよい;
- -(CH2)b-Ar2基、式中、Ar2はアリールラジカルまたはヘテロアリールラジカルを表し、任意に置換されており、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含み、ならびにbは、0~18、優先的に0~12、および特に0~6の整数であり;任意に、R1が水素原子を表すとき、bは1とは異なっていてよく、ならびにAr2はフェニルラジカルを表す;
- -(CH2)c-Si(R9)3基、式中、R9は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表し、ならびにcは、0~18、優先的に0~12、および特に0~6の整数である;
- または-(CH2)d-Z-R10基、式中、Zは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、R10は、C1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、アリールラジカル、もしくはアシルラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基、例えばスルホニル基によって中断および/または置換されており、ならびにdは、0~18、優先的に0~12、および特に0~6の整数である。
【0107】
本発明の特に好ましい実施形態では、R1は、C1-C18、好ましくはC1-C6、直鎖状、分岐状、および/または環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている。
【0108】
本発明による化合物は、例えば一般式(I’a)に適合してよく、
【0109】
【0110】
式中、
R1は、水素原子、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、特にC1-C6、例えばC1-C3、およびより詳細/具体的にはC1-C2、直鎖状、分岐状、および/または環状のアルキル基を表し、前記アルキル基は、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
R8は以下を表す。
- 水素原子;
- ヒドロキシル基;
- メチルラジカル、エチルラジカル、プロピルラジカル、ブチルラジカル、ペンチルラジカル、ヘキシルラジカル、シクロアルキルラジカル、アダマンチルラジカル、アルキルシクロアルキルラジカル、アルキルアリールラジカル、またはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている;
- -Si(R12)3基、式中、R12は、ヒドロキシルラジカル、C1-C4アルキルラジカル、C1-C4アルコキシルラジカル、またはフェニルラジカルを表す;
- -(CH2)f-Y-R13基、式中、fは0~6の整数であり、Yは、酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、ならびにR13は、C1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアルキルラジカル、またはアリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカル、好ましくはC1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6を表す;
- -(CH2)g-CO-R13基、式中、gは0~6の整数であり、ならびにR13は上記に定義されている;
- または-(CH2)h-SOe-R13基、式中、hは0~6の整数であり、ならびにeは1または2に等しく、ならびにR13は上記に定義されている;
R1がプロピルラジカルを表すとき、R8は水素原子を表さない。
【0111】
本発明による化合物は、一般式(I’’a)に適合してよく、
【0112】
【0113】
式中、
R1は、水素原子、またはC1-C18の直鎖状、分岐状、および/または環状のアルキル基を表し、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
R18は、直鎖状、分岐状、および/または環状の炭化水素ラジカル、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族であり、任意に置換されており、4~18個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子、および優先的に5~12個の炭素原子を含み、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基を含み、ならびに任意に、単環または任意に縮合した複数の環を含む。
【0114】
R18は、特に、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、またはアダマンチル基を表してよい。
【0115】
特定の本発明による化合物は、上述の式(IIa)、(IIb)、(IIb1)、(IIb2)、(IIb3)、(IIb4)、(IIb5)、(IIb6)、(IIb7)、(IIc)、(IIc1)、(IId)、(IIo)、(IIp)、(IIp1)、(IIq)、(IIr)、(IIs)、(IIt)、(IIu)、(IIv)、(IIw)、(IIw1)、(IIx)、(IIx1)、および(IIy)の化合物である。
【0116】
本発明の別の実施形態では、化合物は一般式(I’b)に適合してよく、
【0117】
【0118】
式中、R14は、水素原子、カルボニルラジカル、またはアルキルラジカル、アルケニルラジカル、アルキニルラジカル、またはアルキルアリールラジカル、例えばベンジル、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており;そのようなラジカルの一例は、式-CH2-TMSに適合し、式中、TMSはトリメチルシリル残基を表す;
ならびにR15は、水素原子、ヒドロキシルラジカル、アミノラジカル、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および特にC1-C6のアルキルラジカル、アルケニルラジカル、またはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている。
【0119】
本定義に適合する特定の化合物は、上述の式(IIh)、(IIz1)、(IIz2)、(IIz3)、(IIz4)、および(IIz5)の化合物である。
【0120】
本発明の他の変形では、化合物は一般式(I’c)に適合し、
【0121】
【0122】
式中、R16は、水素原子、またはC1-C18、好ましくはC1-C12、および優先的にC1-C6のアルキルラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている。
【0123】
特にR16は、-CH2-OH基、メチルラジカル、またはエチルラジカルを表してよい。
【0124】
本定義に適合する特定の化合物は、上述の式(IIj)および(IIk)の化合物である。
【0125】
一般式(I’)に適合する本発明による化合物はすべて、有利には、本発明による、特にポンペ病を治療するための薬剤として使用できる。
【0126】
本発明に従って使用する一般式(I)の化合物、特に、上述の一般式(I’)に適合する化合物は、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法によって合成できる。特に、特定の化合物ごとに、どの出発物質を使用し、どの合成方法を適用するかを決定することは、当業者の能力の範囲内である。
【0127】
さらに本発明は、一般式(I)、および特に一般式(I’)の化合物を調製するために発明者らが開発した新規の合成方法に関する。
【0128】
本発明による調製方法の一部によって、一般式(I’)の化合物を得ることができ、式中、R1およびR2は、特に、上記の一般式(I’a)または一般式(I’’a)に適合し、互いに独立している。
【0129】
本発明によるそのような特定の調製方法の一例に、以下の連続的なステップがある。
a/一般式(III)または(IV)の化合物と一般式(V)の化合物との反応であって、
【0130】
【0131】
式中、Bnはベンジルラジカルを表し、R8は、本発明による一般式(I’)の化合物に関連して上記に定義されているが、有機金属化合物が存在する場合、R8は、水素原子もヒドロキシル基-OHもアミノ基-NH2も表さない、
b/任意に、ヒドロキシルアミン官能基のアミンへの還元、
c/任意に、ピペリジン環の窒素原子のアルキル化、
d/ならびに、特に、ベンジルラジカルの開裂を起こしてヒドロキシル基を形成するための、ステップa/の最後、適用可能な場合はステップb/またはステップc/の最後に得られた生成物の水素化分解、ならびに、適用可能な場合はヒドロキシルアミン官能基のアミンへの変換、および三重結合の水素化。
【0132】
ステップa/に使用する有機金属化合物は、有機亜鉛、有機リチウム、有機マグネシウム、有機アラン、有機銅などの化合物、またはこれらの混合物のいずれか1つであり得る。優先的に、ステップa/において、反応は、ジアルキル亜鉛、特にジエチル亜鉛Et2Znまたはブチルリチウムの存在下で行う。
【0133】
より一般的に、有機金属化合物は、一般式(VII)に適合してよく、
R17-M (VII)
式中、
R17は、C1-C18アルキルラジカル、アルケニルラジカル、アルキニルラジカル、アルキルアリールラジカル、またはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
ならびにMは金属元素、例えば、リチウム、亜鉛、銅、アルミニウム、もしくはマグネシウムを表し、またはMはMg-X2表し、式中、X2はハロゲン原子を表す。
【0134】
ヒドロキシルアミン官能基をアミンに還元するステップb/、およびN-アルキル化のステップc/は、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従って実施できる。
【0135】
水素化分解のステップd/は、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法によって、特に接触水素化によって実行してもよい。
【0136】
まったく驚くことに、有利には、そのような方法によって、完全に立体選択的に、一般式(I’)、特に一般式(I’a)、または一般式(I’’a)の化合物を調製することが可能となる。
【0137】
そのような方法の例は、一般式(I’a)に適合する化合物の特定の例について、
図1に示す合成スキーム1によって表すことができる。
【0138】
そうでなければ、一般式(I’a)または(I’’a)の化合物は、例えば、以下の連続的なステップを含む方法によって調製してよい。
a/一般式(III)の化合物とトリメチルシリルアセチレンとの環化付加反応、
b/例えば非特許文献8に記載されているものと同様のプロトコルによる、得られた環化付加物と、テトラブチルアンモニウムフッ化物などのフッ化物との反応、
c/金属水素化物、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、もしくは水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)などによる還元、またはボラン、例えばジメチルスルフィド-ボラン錯体(BH3・Me2S)、ボラン-テトラヒドロフラン錯体(BH3・THF)、ボラン-ピリジン錯体(BH3・ピリジン)、ジボランB2H6、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)などによる還元が特に好ましい、
d/任意に、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従って実施できる、O-アルキル化、O-アシル化、またはO-スルホニル化のステップ、
e/任意に、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従って実施できる、N-アルキル化のステップ、
f/ならびに、特に、ベンジルラジカルの開裂を起こしてヒドロキシル基を形成するための、ステップc/の最後、適用可能な場合はステップd/またはステップe/の最後に得られた生成物の水素化分解。
【0139】
本合成方法は、以下の場合に特に有利である。
- ステップa/は実行しやすく、D-グルコ構成の生成物に有利に、完全に位置選択的およびジアステレオ選択的である;
- ステップa/で形成された環化付加物は、容易にかつ効果的にβ-ラクタムに変換され、それ自体、容易にかつ効果的にピペリジンアルコールに還元される(そうでなければ、得られたβ-ラクタムは、シランによる還元によって、または金属触媒の存在下での還元アルキル化によって飽和4員環に変換され得る)。
【0140】
そのような方法の一例は、一般式(I’a)に適合する化合物の特定の例について、
図2に示す合成スキーム2によって表すことができる。
【0141】
上記の式(I’d)の化合物は、上記の式(III)または(IV)の化合物と、一般式(VI):
【0142】
【0143】
の化合物との、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)またはリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)などのリチウム化塩基の存在下、好ましくはLiHMDSの存在下における低温、好ましくは-78℃での反応;次いで、任意に、ヒドロキシルアミン官能基をアミンに還元するステップ、および任意に、ピペリジン環の窒素原子のアルキル化ステップの後に、得られた生成物を水素化分解することを含む方法によって調製できる。
【0144】
そのような方法の一例は、一般式(I’d)に適合する化合物の特定の例について、
図3に示す合成スキーム3によって表すことができる。
【0145】
そうでなければ、一般式(I)および特に一般式(I’)の化合物は、式(III)または(IV)の化合物から、以下の連続的なステップを含む方法によって調製できる。
- a/一般式(VII)の化合物との、特にルイス酸の存在下での反応であって、
R17-M (VII)
式中、
R17は、C1-C18アルキルラジカル、アルケニルラジカル、アルキニルラジカル、アルキルアリールラジカル、またはアリールラジカルを表し、前記ラジカルは、任意に、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されており、
ならびにMは金属元素、例えば、リチウム、亜鉛、銅、アルミニウム、もしくはマグネシウムを表し、またはMはMg-X2を表し、式中、X2はハロゲン原子を表す、
- b/次いで、任意に、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従った、特に亜鉛粉末を用いた処理による、酸性媒体中でのヒドロキシルアミン官能基のアミンへの還元、
- c/次いで、任意に、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法によるピペリジン環の窒素原子のアルキル化、
- d/次いで、任意に、ルテニウムをベースとする錯体、優先的に第2世代グラブス触媒によって触媒したオレフィンの環化メタセシスのステップ、
- e/ならびに最終的に、ステップa/の最後、適用可能な場合は、ステップb/、ステップc/、またはステップd/の最後に得られた生成物を、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従って、特に水素、および炭素上の触媒量のパラジウムの存在下で、酸媒体中で水素化分解すること。
【0146】
一般式(I)に適合する化合物を得るのに使用する合成経路は、
図4に示す一般合成スキーム4に該当する。
【0147】
本発明による他の調製方法によって、一般式(I’)の化合物を得ることができ、式中、R1およびR2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した4員の複素環を形成する。
【0148】
そのような方法の例は、以下の連続的なステップを含む。
- a/一般式(III)の化合物とトリメチルシリルアセチレンとの環化付加反応と、それに続く、例えば、非特許文献8に記載されているものと同様のプロトコルに従った、テトラブチルアンモニウムフッ化物などのフッ化物との反応;次いで
- b/非特許文献9に記載されているものと同様のプロトコルに従った、[Rh(COD)2]BF4などのロジウムをベースとした触媒および1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンの存在下での、フェニルシランPhSiH3などのシランによるβ-ラクタムカルボニルの還元;
またはb’/非特許文献10に記載されているものと同様のプロトコルに従った、バスカ触媒の存在下で、環境温度でのテトラメチルジシロキサンとの反応によるβ-ラクタムカルボニルの還元アルキル化と、それに続く、-78℃での、上記に定義した式(VII)の化合物の添加のいずれか;
ならびに最終的に
- c/特に、ベンジルラジカルを開裂してヒドロキシル基を形成するための、ステップb/またはb’/の最後に得られた生成物の水素化分解。
【0149】
水素化分解のステップc/は、特に接触水素化によって、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従って実施できる。
【0150】
ステップb/およびb’/は、窒素原子がピペリジン環に含まれるβ-ラクタムを還元または還元アルキル化し、コニジン系の複素環を形成することを可能にする点で、特に有利であり、新規である。
【0151】
そのような方法の例は、一般式(I’b)に適合する化合物の特定の例について、
図5に示す合成スキーム5によって表すことができる。
【0152】
そのような方法の別の例は、以下の連続的なステップを含む。
a/一般式(III)の化合物と一般式(VIII)の化合物との、非特許文献11または12による考察に記載されている衣笠反応であって、
【0153】
【0154】
式中、R15は、C1-C18アルキルラジカル、アルケニルラジカル、またはアリールラジカルを表し、任意に、Cu(I)塩およびアミンの存在下で、1つもしくは複数のヘテロ原子および/または少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つもしくは複数の基によって中断および/または置換されている;次いで
b/非特許文献10に記載されているものと同様のプロトコルに従った、バスカ触媒の存在下で、環境温度でのテトラメチルジシロキサンとの反応によるβ-ラクタムカルボニルの還元アルキル化と、それに続く、-78℃での、上記に定義した式(VII)の化合物の添加;ならびに最終的に
- c/特に、ベンジルラジカルの開裂を起こしてヒドロキシル基を形成するための、ステップb/の最後に得られた生成物の水素化分解。
【0155】
水素化分解のステップc/は、特に接触水素化によって、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従って実施できる。
【0156】
ステップb/は、窒素原子がピペリジン環に含まれるβ-ラクタムを還元アルキル化し、コニジン系の複素環を形成することを可能にする点で、特に有利であり、新規である。
【0157】
そのような方法の一例は、一般式(I’b)に適合する化合物の特定の例について、
図6に示す合成スキーム6によって表すことができる。
【0158】
本発明による他の調製方法によって、一般式(I’)の化合物を得ることができ、式中、R1およびR2は、それぞれが結合しているピペリジン環の原子と一緒に、ピペリジン環と縮合した3員の複素環を形成する。
【0159】
そのような方法の一例は、以下の連続的なステップを含む。
- a/一般式(III)の化合物または一般式(III’)の化合物と上述の一般式(V)の化合物との環化付加反応であって、
【0160】
【0161】
式中、Acはアセチルラジカルを表し、R8は、本発明による一般式(I’)の化合物に関連して上記に定義されているが、水素原子もヒドロキシル基-OHもアミノラジカル-NH2も表さない、
- b/非特許文献6に記載されているものと同様のプロトコルに従った、アシルアジリジンを形成することを可能にするBaldwinの熱転位であって、本ステップは優先的に、マイクロ波放射による照射下で、110℃で実施する、
- c/このようにして、金属水素化物、優先的にLiAlH4またはNaBH4との反応によって得られたアシルアジリジンカルボニルの還元、
- d/ならびに、当業者にとって任意のそれ自体従来の方法に従った、特に、低温、好ましくは-78℃で液体アンモニアに溶解した金属の存在下でのバーチ還元による脱ベンジル化であって、使用する金属は、好ましくはリチウムである。
【0162】
そのような方法の一例は、一般式(I’c)に適合する化合物の特定の例について、
図7に示す合成スキーム7によって表すことができる。
【0163】
上記の一般式(I’e)の化合物を調製する方法の一例は、
図8に示す合成スキーム8によって表すことができ、R
20はR
19と同一だが、R
20は水素原子を表さない。
【0164】
本発明の特徴および利点は、簡単な説明による、決して本発明を限定するものではない以下の例示的な実施形態に照らして、
図1~8を参照することで、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【
図1】本発明による式(I’a)の化合物を調製するための一般合成スキームの第1の実施例(合成スキーム1)を示す。
【
図2】本発明による式(I’a)の化合物を調製するための、一般合成スキームの第2の実施例(合成スキーム2)を示す。
【
図3】本発明による式(I’d)の化合物を調製するための、一般合成スキームの実施例(合成スキーム3)を示す。
【
図4】式(I’a)の化合物、より一般的に、本発明に従って使用する一般式(I)の化合物を調製するための、一般合成スキームの第3の実施例(合成スキーム4)を示す。
【
図5】本発明による式(I’b)の化合物を調製するための、一般合成スキームの第1の実施例(合成スキーム5)を示す。
【
図6】本発明による式(I’b)の化合物を調製するための、一般合成スキームの第2の実施例(合成スキーム6)を示す。
【
図7】本発明による式(I’c)の化合物を調製するための、一般合成スキームの実施例(合成スキーム7)を示す。
【
図8】本発明による式(I’e)の化合物を調製するための、一般合成スキームの実施例(合成スキーム8)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0166】
A/本発明に従って使用する化合物の合成および特徴付け
マイクロ波照射下での反応を除き、反応はすべて、不活性雰囲気下で、あらかじめ乾燥させたガラス器具を用い、器具を磁気撹拌機の上に置き、磁気棒で撹拌しながら実施した。マイクロ波照射下での反応は、マイクロ波反応器内に設置した、磁気棒を備えた密閉チューブ内で、内部の赤外線プローブで温度を調節しながら実施した。反応溶媒として使用したトルエン、エーテル、ジクロロメタンは、あらかじめInert PureSolv(登録商標)精製システムでろ過しておいた。アセトニトリルおよびジクロロエタンはCaH2で蒸留した。THFは、ベンゾフェノン存在下で、ナトリウムで蒸留した。市販の試薬、メタノール、およびエタノールは精製せずに使用した。反応は、シリカが塗布されたアルミニウムプレート(Merck、Kieselgel60 F254)を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)で、紫外線を照射して、次に10%(w/v)水酸化カリウム溶液中の3%過マンガン酸カリウム溶液で追跡した。カラムクロマトグラフィーによる精製は、Macherey-Nagel(登録商標)Silica Gel60(70-230メッシュ)を用いて行った。旋光能はPerkinElmer341偏光計で測定した。赤外スペクトルはATR(全反射減衰)モジュール付きのNicoletのMagna550分光計で得て、生成物はここに純粋な固体または液体の状態で蒸着した。データはcm-1で表す。1H NMRおよび13C NMR{DEPT-Q}は、Avance500(1H:500MHz,13C:125MHz)またはAvance400(1H:400MHz,13C:100MHz)分光計で得た。1Hスペクトルの化学シフトは、CDCl3(δ7.26ppm)またはCD3OD(δ3.31ppm)に含まれる残留溶媒の化学シフトを基準として表す。13Cスペクトルの化学シフトは、溶媒CDCl3(δ77.16ppm)またはCD3OD(δ49.00ppm)を基準として表す。1H NMRスペクトルは、化学シフト(ppm)、多重度(br:broad;s:シングレット;d:ダブレット;dd:ダブルダブレット;t:トリプレット;pst:偽トリプレット;m:マルチプレット)、結合定数(Hz)、および積分で報告する。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Thermo Scientific ESI/LTQ Orbitrap XL(登録商標)またはWaters G2-S Q-TOF質量分析計で記録した。
【0167】
A.1/合成方法1
上記の一般式(I’a)に適合する化合物を得るために使用する合成方法は、
図1に示す一般合成スキームに該当する。
【0168】
1)一般プロトコルA-式(III)のニトロンをアルキニル化して、式A-1のプロパルギルヒドロキシアミンを得る
ヘキサン中の1Mジエチル亜鉛溶液(1.5当量)を、0℃、アルゴン雰囲気下で、無水トルエン中の式(V)のアルキン溶液(4当量)に滴下する。得られた混合液を、0℃で30分間撹拌する。次いで、無水トルエン中の式(III)のケトニトロン溶液(1当量)を0℃で滴下し、続いて、反応が完了するまで反応混合液を撹拌する(その後TLCを行う)。NaHCO3の飽和水溶液を添加し、次いで、得られた混合液をジエチルエーテルで希釈する。有機相を分離し、水相はジエチルエーテルで2回抽出する。有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、減圧下で蒸発させる。それにより形成された式A-1のヒドロキシルアミンは、シリカゲルクロマトグラフィーで精製した後、以下の一般プロトコルBに従って、還元および脱ベンジル化する。
【0169】
2)一般プロトコルA’-式(III)のニトロンをアルキニル化して式A-1のプロパルギルヒドロキシアミンを得る
ヘキサン中の1.4M n-ブチルリチウム溶液(2.5当量)を、-10℃、アルゴン雰囲気下で、無水THF中の式(V)のアルキン溶液(2.5当量)に滴下する。得られた混合液を、-10℃で15分間撹拌し、続いて-78℃に冷却する。次いで、無水THF中の式(III)のケトニトロン溶液(1当量)を-78℃で滴下し、続いて、反応が完了するまで反応混合液を撹拌する(その後TLCを行う)。NH4Clの飽和水溶液を添加し、混合液を環境温度に上げ、次いで、酢酸エチルで3回抽出する。有機相を回収してブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、減圧下で濃縮する。それにより単離した式A-1のヒドロキシルアミンは、シリカゲルクロマトグラフィーで精製した後、以下の一般プロトコルBに従って、還元および脱ベンジル化する。
【0170】
3)一般プロトコルB
1.5当量の塩酸HCl(無水エーテル中2M溶液)および0.2当量のPd/C10%を、無水エタノール中のO-ベンジル化イミノ糖溶液(1当量)に添加する。得られた懸濁液を、室温で17時間、水素の圧力(5bar)下で撹拌し、次いで、Celite(登録商標)でろ過する。Celite(登録商標)をメタノールですすぎ、ろ液を減圧下で濃縮してイミノ糖塩酸塩を得る。この塩は、あらかじめHClで活性化させたDowex(登録商標)50W-X2イオン交換樹脂で精製し、水性NH4OHで溶出して、溶媒を蒸発させた後に、式(I’a)の対応する中性化合物を得る。
【0171】
式(IIc)の化合物
上記の式(IIc)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)-2-フェネチルピペリジン-3,4,5-トリオール:36.7mg;2つのステップで73%)を、一般手順AおよびBに従って、式(III)のニトロン(110.0mg,0.205mmol)およびフェニルアセチレン(Va:R8=Ph,0.034mL;0.307mmol)から調製した。
【0172】
以下の特徴を有する黄色の固体を得る。
[α]20
D+4.7(c0.98,CH3OH);
IR ν 3291、2918、2864、1632、1494、1455、1363、1270、1198、1094、1076、1040、1004cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ7.31-7.08(m,5H)、3.73(d,J=10.4Hz,1H)、3.55(d,J=10.5Hz,1H)、3.55-3.43(m,2H)、3.45-3.34(m,1H)、3.00-2.90(m,1H)、2.68-2.51(m,3H)、1.91-1.72(m,2H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ144.4(ArCq)、129.4(ArCH)、129.3(ArCH)、126.7(ArCH)、76.5(CH)、75.2(CH)、73.8(CH)、65.6(CH2)、60.5(Cq)、45.9(CH2)、30.7(CH2)、29.9(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C14H22NO4[M+H]+:m/z=268.15433;Found m/z=268.15372。
【0173】
化合物(IIx1)
上記の式(IIx1)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(2-(トリメチルシリル)エチル)ピペリジン-3,4,5-トリオール:7.1mg;2つのステップで29%)を、一般手順AおよびBに従って、式(III)のニトロン(102.1mg,0.189mmol)およびトリメチルシリルアセチレン(Vb:R8=TMS,0.105mL;0.759mmol)から調製した。
【0174】
以下の特徴を有する白色の発泡体を得る。
[α]20
D+4.51(c0.71,MeOH);
1H NMR(400MHz,CD3OD)δ3.57(d,J=10.9Hz,1H)、3.52(d,J=9.3Hz,1H)、3.44(t,J=4.0Hz,1H)、3.39(d,J=10.0Hz,1H)、3.39-3.33(m,1H)、2.85(dd,J=12.8,5.5Hz,1H)、2.42(dd,J=12.8,10.8Hz,1H)、1.62-1.51(m,2H)、0.56-0.44(m,1H)、0.39-0.29(m,1H)、0.02(s,9H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ76.6(CH)、75.5(CH)、73.8(CH)、65.6(CH2)、60.5(Cq)、45.8(CH2)、21.0(CH2)、8.60(CH2)、-1.86(CH3)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C11H26NO4Si[M+H]+:m/z=264.16256;Found:m/z=264.16282。
【0175】
化合物(IIr)
上記の式(IIr)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(2-((3R,5R,7R)-アダマンタン-1-イル)エチル)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオール:15.0mg;2つのステップで27%)を、一般手順A’およびBに従って、式(III)のニトロン(100mg,0.185mmol)およびアダマンチルアセチレン(Vh:R8=アダマンチル、74.5mg,0.465mmol)から調製した。
【0176】
以下の特徴を有する黄色がかったラッカーを得る。
[α]20
D+7.46(c0.63,MeOH);
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ3.79(d,J=10.9Hz,1H)、3.64-3.48(m,4H)、3.11(br d,J=11.3Hz,1H)、2.78-2.66(m,1H)、2.00-1.91(m,3H)、1.82-1.63(m,8H)、1.58-1.49(m,6H)、1.19-1.03(m,2H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ74.9(CH)、72.5(CH)、70.8(CH)、63.7(Cq)、62.5(CH2)、44.2(CH2)、43.3(CH2)、38.2(CH2)、37.0(CH2)、30.1(CH)、20.7(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C18H31NO4[M+H]+:m/z=326.23258;Found m/z=326.23225。
【0177】
化合物(IIb7)
上記の式(IIb7)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(2-シクロヘキシルエチル)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオール:57.3mg;2つのステップで59%)を、一般手順AおよびBに従って、式(III)のニトロン(99.8mg;0.185mmol)および1-エチニルシクロヘキセン(Vd:R8=シクロヘキセン;87μL;0.742mmol)から調製した。
【0178】
以下の特徴を有する白色の固体を得る。
[α]20
D+3.63(c1.43,MeOH);
1H NMR(400MHz,CD3OD)δ3.60(d,J=10.6Hz,1H,7CH2)、3.52-3.43(m,2H,3CH,4CH)、3.43-3.33(m,2H)、2.87(dd,J=12.8,5.0Hz)、2.49(ps t,J=11.7Hz,1H)、1.83-1.62(m,5H)、1.60-1.47(m,2H)、1.34-1.06(m,6H)、1.01-0.86(m,2H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ76.5(CH)、75.1(CH)、73.8(CH)、65.5(CH2)、60.3(Cq)、45.8(CH2)、39.9(CH)、34.6(CH2)、34.5(CH2)、30.6(CH2)、27.8(CH2)、27.5(CH2)、24.8(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C14H20NO4[M+H]+:m/z=274.20128;Found m/z=274.20139。
【0179】
化合物(IIb1)
上記の式(IIb1)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)-2-ペンチルピペリジン-3,4,5-トリオール:32.8mg;2つのステップで67%)を、一般手順AおよびBに従って、式(III)のニトロン96.8mg;0.180mmol)および1-ペンチン(Ve:R8=C3H7;71μL;0.720mmol)から調製した。
【0180】
以下の特徴を有する黄色の固体を得る。
[α]20
D-1.29(c1.01,MeOH);
1H NMR(400MHz,CD3OD)δ3.61(d,J=10.6Hz,1H)、3.52-3.33(m,4H)、2.87(dd,J=12.8,5.3Hz,1H)、2.49(ps t,J=11.8Hz,1H)、1.62-1.43(m,2H)、1.43-1.17(m,6H)、0.92(t,J=6.7 Hz,3H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ76.5(CH)、75.2(CH)、73.9(CH)、65.7(CH2)、60.2(Cq)、45.9(CH2)、33.9(CH2)、27.7(CH2)、23.6(CH2)、22.9(CH2)、14.4(CH3)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C11H24NO4[M+H]+:m/z=234.16998;Found m/z=234.17004。
【0181】
化合物(IIb3)
上記の式(IIb3)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-ヘプチル-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオール:33.2mg;2つのステップで69%)を、一般手順AおよびBに従って、式(III)のニトロン(100.7mg;0.187mmol)および1-ヘプチン(Vf:R8=C5H11;98μL;0.749mmol)から調製した。
【0182】
以下の特徴を有する黄色の固体を得る。
[α]20
D+1.04(c0.96,MeOH);
1H NMR(400MHz,CD3OD)δ3.61(d,J=10.6Hz,1H)、3.51-3.44(m,2H)、3.41(d,J=10.8Hz)、3.39-3.33(m,1H)、2.87(dd,J=13.0,5.4Hz,1H)、2.49(ps t,J=11.4Hz,1H)、1.58-1.47(m,2H)、1.43-1.18(m,10H)、0.90(t,J=6.2Hz,3H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ76.5(CH)、75.1(CH)、73.8(CH)、65.6(CH2)、60.3(Cq)、45.9(CH2)、33.0(CH2)、31.7(CH2)、30.4(CH2)、23.7(CH2)、23.2(CH2)、27.8(CH2)、14.4(CH3)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C13H28NO4[M+H]+:m/z=261.20128;Found m/z=261.20131。
【0183】
化合物(IIc1)
上記の式(IIc1)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(3-フェニルプロピル)ピペリジン-3,4,5-トリオール:20.2mg;2つのステップで45%)を、一般手順AおよびBに従って、式(III)のニトロン(96.7mg;0.179mmol)および3-フェニル-1-プロピン(Vg:R8=CH2Ph;89μL;0.719mmol)から調製した。
【0184】
以下の特徴を有する黄色のラッカーを得る。
[α]20
D+1.68(c1.37,MeOH);
1H NMR(400MHz,CD3OD)δ7.10-7.10(m,5H)、3.60(d,J=10.6Hz,1H)、3.49-3.37(m,3H)、3.37-3.32(m,1H)、2.84(dd,J=13.1,5.4Hz,1H)、2.69-2.53(m,2H)、2.42(dd,J=13.0,10.8Hz,1H)、1.75-1.49(m,4H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ143.6(ArCq)、129.4(ArCH)、129.3(ArCH)、126.7(ArCH)、76.5(CH)、75.1(CH)、73.8(CH)、65.6(CH2)、60.3(Cq)、45.8(CH2)、37.6(CH2)、27.5(CH2)、25.3(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C15H24NO4[M+H]+:m/z=282.16998;Found m/z=282.16968。
【0185】
A.2/合成方法2
下記の一般式(I’a)に適合する化合物を得るために使用する合成方法は、
図2に示す一般合成スキーム2に該当する。
【0186】
式(IId)の化合物
上記の式(IId)の化合物(2R,3R,4R,5S)-2-(2-ヒドロキシエチル)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオールを以下の方法で調製する。ニトロン(III)(566mg,1.05mmol)およびトリメチルシリルアセチレンアルキン(Vb:R8=SiMe3,2.2mL,15.75mmol)の混合液を環境温度で21時間撹拌し、次いで、余分なアルキンを減圧下で蒸発させた。そうして得られた未処理のイソキサゾリンB-2(667mg,1.05mmol)を無水THF(20mL)に溶解し、TBAF溶液(THF中1M,1.05mL,1.05mmol)を0℃で添加した。溶液は0℃で45分間撹拌し、次いで、CH2Cl2と水を添加した。水相はCH2Cl2で3回抽出した。有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた残渣をクロマトグラフィーで精製し、二環性β-ラクタムC-2(440.6mg,2つのステップで74%)を得た。エーテル(1.5mL)中のこのβ-ラクタムC-2溶液(71.3mg,0.13mmol)に、0℃でLiAlH4(9.6mg,0.25mmol)を添加した。混合液を環境温度で2時間撹拌した後、CH2Cl2、水性NH4Cl、および数滴の水性NaOHで希釈して塩基性pHにした。水相はCH2Cl2で抽出した(3回)。有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、溶媒を減圧下で蒸発させて、クロマトグラフィーによる精製後にピペリジンD-2(半透明の油,61.1mg,85%)を得た。この化合物(26.3mg,0.463mmol)を一般手順Bに従って脱ベンジル化して、ピペリジン(IId)(9.3mg,97%)を得た。
【0187】
以下の特徴を有する淡黄色のラッカーを得た。
[α]20
D+8.2(c0.61,CH3OH);
IR ν 3287、2920、1644、1431、1081cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ1.86(t,J=6.5Hz,2H)、2.65(dd,J=11.2,12.6Hz,1H)、2.92(dd,J=5.4,13.1Hz,1H)、3.33-3.43(m,2H)、3.48(d,J=9.1Hz,1H)、3.58(d,J=10.8Hz,1H)、3.64-3.76(m,3H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ30.5(CH2)、45.8(CH2)、58.8(CH2)、60.9(Cq)、65.7(CH2)、73.5(CH)、74.6(CH)、76.3(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C8H18NO5[M+H]+:m/z=208.1185;Found m/z=208.1184。
【0188】
A.3/合成方法3
下記の一般式(I’d)に適合する化合物を得るために使用する合成方法は、
図3に示す一般合成スキーム3に該当する。
【0189】
式(IIw)の化合物
上記の式(IIw)の化合物(2S,3S,4R,5S)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-2-((ベンジルオキシ)メチル)-2-(ピリジン-2-イルスルホニル)ピペリジン-1-オールを以下の方法で調製する。アルゴン雰囲気下の無水THF(10mL)中の式(III)のニトロン(196mg;0.366mmol)および2-ピリジル-メチルスルホン(VIa)(74.6mg;0.475mmol)の溶液を-78℃に冷却した。THF(548μL;0.548mmol)中1M LiHMDSを滴下し、次いで、反応が完了するまで、反応混合液をこれと同じ温度で撹拌した。水と酢酸エチルを添加した後、水相を酢酸エチルで抽出した(3回)。回収した有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。得られた残渣をクロマトグラフィーで精製し、式A-3aの化合物(R7=H)(115mg;55%)を得た。この化合物を一般手順Bの変形に従って脱ベンジル化して、ピペリジン(IIw)を得た。
【0190】
A.4/合成方法4
一般式(I)に適合する化合物、特に以下の一般式(I’a)に適合する化合物を得るために使用する合成方法は、
図4に示す一般合成スキーム4に該当する。
【0191】
式(IIa)の化合物
上記の式(IIa)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオール)を、合成方法1に記載する一般プロトコルBに従って、非特許文献5に記載のように得られたピペリジンD-4b(R17=ビニル,74.0mg,0.137mmol)から調製し、95%(24.9mg)の収率で単離した。
【0192】
以下の特徴を有する淡黄色のラッカーを得る。
[α]20
D+1.6(c1.22,CH3OH);
IR ν 3286、2939、1643、1445、1096cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ0.86(t,J=7.6Hz,3H)、1.55-1.68(m,2H)、2.51(dd,J=10.8,12.8Hz,1H)、2.89(dd,J=5.4,13.0Hz,1H)、3.34-3.40(m,1H)、3.42(d,J=10.7Hz,1H)、3.44-3.51(m,2H)、3.62(d,J=10.7Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ7.0(CH3)、20.1(CH2)、45.7(CH2)、60.5(Cq)、65.0(CH2)、73.6(CH)、75.1(CH)、76.4(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C8H17NO4[M+H]+:m/z=192.1236;Found m/z=192.1237。
【0193】
式(IIb)の化合物
上記の式(IIb)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)-2-プロピルピペリジン-3,4,5-トリオール)を、合成方法1に記載する一般プロトコルBに従って、非特許文献7に記載のように得られたピペリジンD-4a(R17=アリル,39.7mg,0.071mmol)から調製し、79%(11.4mg)の収率で単離した。
【0194】
以下の特徴を有する無色のラッカーを得る。
[α]20
D+5.4(c0.55,CH3OH);
IR ν 3291、2932、1625、1454、1090cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ0.94(t,J=7.2Hz,3H)、1.22-1.42(m,2H)、1.49-1.57(m,2H)、2.53(dd,J=10.8,13.0Hz,1H)、2.89(dd,J=5.5,13.0Hz,1H)、3.34-3.41(m,1H)、3.42(d,J=10.7Hz,1H)、3.45-3.51(m,2H)、3.64(d,J=10.7Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ15.3(CH3)、16.6(CH2)、30.4(CH2)、45.7(CH2)、60.7(Cq)、65.3(CH2)、73.5(CH)、74.9(CH)、76.3(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C9H20NO4[M+H]+:m/z=206.1392;Found m/z=206.1396。
【0195】
式(IIe)の化合物
上記の式(IIe)の化合物(2R,3R,4R,5S)-2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1-プロピルピペリジン-3,4,5-トリオールを、以下の方法で調製する。非特許文献5に記載のように得られたピペリジンE-4b(R1=アリル,R17=ビニル;62mg,0.105mmol)を無水アセトニトリル(0.5mL)に溶解し、0℃で2-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(186mg,0.84mmol)で、次いでヒドラジン一水和物(0.08mL,1.68mmol)で処理し、0℃で滴下した。この反応混合液を環境温度で28時間撹拌しながら維持し、次いで水を添加し、水相をジクロロメタンで抽出した(3回)。回収した有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、減圧下で濃縮した。クロマトグラフィーによる精製後、アリル基のみの水素化生成物とアリル基およびビニル基の水素化生成物の混合物を単離した(58mg,94%,3:7混合物)。この混合物を、メタノール(1.5mL)に溶解し、次いで、水素雰囲気(1気圧)下で激しく撹拌しながら40時間、パールマンの試薬(20%Pd(OH)2/C,16.8mg,0.119mmol)およびHCl(エーテル中2M溶液,0.2mL,0.4mmol)で処理した。混合液をCelite(登録商標)でろ過し、Celite(登録商標)をメタノールで数回すすぎ、次いで、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣を水中で可溶化し、カチオン交換樹脂(DOWEX 50W-X8,H+を形成;1M NH4OH水溶液で溶出)で精製して、生成物(IIe)を得た(11.9mg,49%)。
【0196】
以下の特徴を有するベージュの固体を得る。
[α]20
D-40.7(c0.60,CH3OH);
IR ν 3363、2962、2932、2874、2826、1653、1464、1379、1097、1048、1016cm-1
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ0.90(t,J=7.5Hz,3H)、0.96(t,J=7.5Hz,3H)、1.39-1.50(m,1H)、1.51-1.60(m,1H)、1.61-1.75(m,2H)、2.26-2.34(m,1H)、2.42-2.51(m,1H)、2.76-2.85(m,1H)、2.93-3.00(m,1H)、3.40-3.52(m,3H)、3,65(d,J=11.0Hz,1H)、3.79(d,J=11.0Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ9.6(CH3)、11.9(CH3)、19.2(CH2)、23.2(CH2)、52.0(CH2)、52.2(CH2)、62.5(CH2)、71.5(CH)、74.9(CH)、76.4(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C11H24NO4[M+H]+:m/z=234.1700;Found m/z=234.1696。
【0197】
式(IIf)の化合物
上記の式(IIf)の化合物(1R,2R,3S,9aR)-9a-(ヒドロキシメチル)オクタヒドロ-1H-キノリジン-1,2,3-トリオールを以下の方法で調製する。非特許文献7に記載のように得られたピペリジンE-4a(R1=R17=アリル;35mg,0.06mmol)を無水CH2Cl2(3mL)に溶解した。この溶液を慎重に脱気し、次いで、第2世代グラブス触媒(1.3mg,2.5mol%)を添加した。混合液を環境温度で20時間撹拌しながら維持し、次いで、シリカでろ過した。シリカを酢酸エチルとメタノールですすぎ、溶媒を減圧下で蒸発させた。そのようにして得た残渣をクロマトグラフィーで精製した後、F-4aオレフィン(32mg,95%)のメタセシスによる環化生成物を単離した。この生成物(34mg,0.06mmol)をメタノール(1mL)に溶解し、次いで、水素雰囲気(5bar)下で激しく撹拌しながら17時間、パールマンの試薬(20%Pd(OH)2/C,14mg,0.10mmol)およびHCl(エーテル中2M溶液,0.045mL,0.09mmol)で処理した。混合液をCelite(登録商標)でろ過し、Celite(登録商標)をメタノールで数回すすぎ、次いで、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣を水中で可溶化し、カチオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)50W-X8,H+を形成;1M NH4OH水溶液で溶出)で精製して、生成物(IIf)を得た(9mg,73%)。
【0198】
以下の特徴を有する無色の油を得る。
[α]20
D+16,6(c0.41,CH3OH);
IR ν 3336、2942、2869、1053cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ1.28(br d,J=11.6Hz,1H)、1.37-1.44(m,1H)、1.62-1.76(m,3H)、1.81-1.94(m,1H)、2.66(dd,J=3.0,14.0Hz,1H)、2.72(dd,J=4.9,11.3Hz,1H)、3.12(t,J=11.0Hz,1H)、3.20(pstd,J=3.0,14.0Hz,1H)、3.38(pst,J=9.3Hz,1H)、3.45-3.52(m,2H)、3.68(d,J=11.1Hz,1H)、3.95(d,J=11.1Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ18.7(CH2)、19.2(CH2)、20.7(CH2)、48.5(CH2)、53.3(CH2)、60.7(CH2)、62.0(Cq)、71.4(CH)、74.1(CH)、75.9(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C10H20NO4[M+H]+:m/z=218.1392;Found m/z=218.1396。
【0199】
式(IIg)の化合物
上記の式(IIg)の化合物(6S,7R,8R,8aR)-8a-(ヒドロキシメチル)-オクタヒドロインドリジン-6,7,8-トリオールを以下の方法で調製する。非特許文献5に記載のように得られたピペリジンE-4b(R1=アリル,R17=ビニル;74mg,0.125mmol)を無水CH2Cl2(6.3mL)に溶解した。この溶液を慎重に脱気し、次いで、第2世代グラブス触媒(5.3mg,0.006mmol)を添加し、混合液を撹拌しながら40℃で3時間加熱した。環境温度に冷却した後、シリカでろ過し、シリカをエーテルですすぎ、溶媒を減圧下で蒸発させた。そのようにして得た残渣をクロマトグラフィーで精製した後、オレフィンF-4b(65mg,93%)のメタセシスによる環化生成物を単離した。この生成物(50mg,0.089mmol)をメタノール(1.4mL)に溶解し、次いで、水素雰囲気(5bar)下で激しく撹拌しながら17時間、パールマンの試薬(20%Pd(OH)2/C,17.9mg,0.025mmol)およびHCl(エーテル中2M溶液,0.066mL,0.133mmol)で処理した。混合液をCelite(登録商標)でろ過し、Celite(登録商標)をメタノールで数回すすぎ、次いで、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣を水中で可溶化し、カチオン交換樹脂(DOWEX 50W-X8,H+を形成;1M NH4OH水溶液で溶出)で精製して、生成物(IIg)を得た(16mg,89%)。
【0200】
以下の特徴を有するベージュの固体を得る。
[α]20
D+27.9(c0.41,CH3OH);
IR ν 3330、2924、1652、1031cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ1.46-1.53(m,1H)、1.67-1.76(m,1H)、1.88-1.96(m,1H)、1.98-2.08(m,1H)、2.46(pst,J=11.0Hz,1H)、2.80-2.89(m,2H)、3.09-3.18(m,1H)、3.33-3.41(m,2H)、3.43-3.49(m,1H)、3.53(d,J=11.5Hz,1H)、3.76(d,J=9.5Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ21.0(CH2)、26.1(CH2)、53.8(CH2)、55.9(CH2)、63.6(CH2)、71.0(CH)、73.0(CH)、73.2(Cq)、76.5(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C9H18NO4[M+H]+:m/z=204.1236;Found m/z=204.1234。
【0201】
A.5/合成方法5
上記の一般式(I’b)に適合する化合物を得るために使用する合成方法は、
図5に示す一般合成スキーム5に該当する。
【0202】
化合物(IIh)
上記の式(IIh)の化合物((3S,4R,5R,6R)-6-(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタン-3,4,5-トリオール)を以下の方法で調製する。[Rh(COD)2]BF4(2.5mg,0.006mmol)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(2.7mg,0.006mmol)およびPhSiH3(25μL,0.20mmol)を、蒸留THF中のβ-ラクタムC-5溶液(上記の化合物(IId)を調製するプロトコルに記載の合成方法2の中間体として得た化合物C-2に相当)(57.1mg,0.10mmol)に添加した。溶液は50℃で4時間撹拌した。冷却後、反応混合物をEtOAcと水性NaOH(1M)で希釈した。水相はEtOAcで抽出した(3回)。有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、溶媒を減圧下で蒸発させ、クロマトグラフィーによる精製後、コニジンG-5(33.2mg,60%)を得た。この化合物(20.0mg,0.04mmol)を、一般手順Bに従って脱ベンジル化し、化合物(IIh)(6.3mg,93%)を得た。
【0203】
以下の特徴を有する淡黄色の油を得る。
[α]20
D-5.17(c0.58,CH3OH);
IR ν 3234、2917、1429、1030cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ2.18-2.26(m,1H)、2.55-2.63(m,1H)、2.89(dd,J=5.9,13.3Hz,1H)、3.21(dd,J=5.1,13.3Hz,1H)、3.62(d,J=11.7Hz,1H)、3.69-3.80(m,5H)、3.99(pst,J=6.5Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ21.3(CH2)、51.4(CH2)、52.9(CH2)、65.5(CH2)、71.2(CH)、72.7(CH)、73.2(Cq)、76.8(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C8H16NO4[M+H]+ m/z=190.1074;Found m/z=190.1074。
【0204】
一般プロトコルC-β-ラクタムC-5を還元アルキル化して一般式(I’b)のコニジンを得る
アルゴン雰囲気下の無水ジクロロメタン中のβ-ラクタムC-5(1当量)およびバスカ触媒(4%mol)の溶液を、環境温度でテトラメチルジシロキサン(TMDS,2当量)に添加する。混合液を45分間撹拌し、次いで、-78℃に冷却する。グリニャール試薬(2当量)を滴下し、次いで、混合液をこれと同じ温度で7~10分間、環境温度に上昇するまで撹拌する。続いて21時間撹拌する。NH4Clの飽和水溶液を添加し、次いで、得られた混合液をCH2Cl2で希釈する。有機相を分離し、水相はCH2Cl2で2回抽出する。有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、減圧下で蒸発させる。そのようにして形成した式(I’b)のコニジンは、シリカゲルクロマトグラフィーで精製した後、上記の一般プロトコルBに従って、還元および脱ベンジル化する。
【0205】
化合物(IIz2)
上記の式(IIz2)の化合物((3S,4R,5R,6R,8R)-8-ベンジル-6-(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタン-3,4,5-トリオール:20.3mg;2つのステップで65%)を、一般手順CおよびBに従って、THF(R14=Bn;36.3μL;0.248mmol)中のβ-ラクタムC-5(70.1mg;0.124mmol)および2Mベンジルマグネシウムクロリドから調製した。
【0206】
以下の特徴を有する半透明のラッカーを得る。
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ7.39-7.20(m,5H)、4.45-4.34(m,1H)、3.95(t,J=5.7Hz,1H)、3.80-3.74(m,2H)、3.70(d,J=5.6Hz,1H)、3.56(d,J=12.1Hz,1H)、3.21-3.12(m,2H)、3.00(dd,J=13.6,8.4Hz,1H)、2.94(dd,J=13.1,6.5Hz,1H)、2.60(dd,J=11.9,9.0Hz,1H)、2.32-2.20(m,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ137.1(ArCq)、130.1(ArCH)、129.7(ArCH)、128.0(ArCH)、76.5(CH)、71.5(CH)、71.1(CH)、65.7(CH)、64.1(CH2)、51.4(CH2)、41.0(CH2)、27.3(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C15H22NO4[M+H]+:m/z=280.15433;Found m/z=280.15437。
【0207】
化合物(IIz3)
上記の式(IIz3)の化合物((3S,4R,5R,6R,8R)-6-(ヒドロキシメチル)-8-メチル-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタン-3,4,5-トリオール:8.5mg;2つのステップで46%)を、一般手順CおよびBに従って、THF(R14=Me;228μL;0.683mmol)中のβ-ラクタムC-5(192.6mg;0.342mmol)および3Mメチルマグネシウムクロリドから調製した。
【0208】
以下の特徴を有する黄色がかった固体を得る。
[α]20
D-22.9(c1.07,MeOH);
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ3.99(t,J=6.7Hz,1H)、3.85-3.75(m,1H)、3.75-3.69(m,1H)、3.67(d,J=7.6Hz,1H)、3.54(d,J=11.2Hz,1H)、3.47(d,J=11.2Hz,1H)、3.10(dd,J=13.9,5.5Hz,1H)、2.71(dd,J=13.8,4.0Hz,1H)、2.58(dd,J=11.5,8.9Hz,1H)、1.64(dd,J=10.9,8.0Hz,1H)、1.21(d,J=6.1Hz,3H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ77.2(CH)、74.7(CH)、71.7(CH)、68.3(Cq)、67.4(CH2)、58.4(CH)、52.4(CH2)、29.1(CH2)、22.0(CH3)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C9H18NO4[M+H]+:m/z=204.12303;Found m/z=204.12232。
【0209】
化合物(IIz4)
上記の式(IIz4)の化合物((3S,4R,5R,6R,8S)-8-シクロペンチル-6-(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタン-3,4,5-トリオール:14.6mg;2つのステップで62%)を、一般手順CおよびBに従って、エーテル(R14=cPent;36.4μL;0.248mmol)中のβ-ラクタムC-5(70.0mg;0.124mmol)および2Mシクロペンチルマグネシウムクロリドから調製した。
【0210】
以下の特徴を有する黄色がかった固体を得る。
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ3.98(t,J=7.0Hz,1H)、3.76-3.63(m,2H)、3.58-3.36(m,3H)、3.10(dd,J=14.5,5.0Hz,1H)、2.76(dd,J=14.5,4.0Hz,1H)、2.50(t,J=11.8Hz,1H)、2.06-1.95(m,1H)、1.89-1.76(m,1H)、1.74-1.47(m,6H)、1.36-1.22(m,1H)、1.15-1.00(m,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ77.7(CH)、75.0(CH)、71.9(CH)、67.5(CH2)、67.2(CH)、66.3(Cq)、54.2(CH2)、48.9(CH)、31.0(CH2)、29.1(CH2)、27.0(CH2)、26.4(CH2)、25.9(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C13H24NO4[M+H]+:m/z=258.16998;Found m/z=258.16987。
【0211】
化合物(IIz5)
上記の式(IIz5)の化合物((3S,4R,5R,6R,8R)-6-(ヒドロキシメチル)-8-ペンチル-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタン-3,4,5-トリオール:19.1mg;2つのステップで45%)を、一般手順CおよびBに従って、THF(R14=n-Pent;33.6μL;0.248mmol)中のβ-ラクタムC-5(70.0mg;0.124mmol)および2Mペンチルマグネシウムクロリドから調製した。
【0212】
以下の特徴を有する黄色の固体を得る。
[α]20
D-31.1(c0.46,MeOH);
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ3.99(t,J=7.0Hz,1H)、3.74-3.64(m,2H)、3.64-3.55(m,1H)、3.51(d,J=11.1Hz,1H)、3.46(d,J=11.1Hz,1H)、3.09(dd,J=13.7,5.4Hz,1H)、2.70(dd,J=13.7,4.0Hz,1H)、2.52(dd,J=11.4,8.9Hz,1H)、1.68-1.53(m,2H)、1.51-1.39(m,1H)、1.39-1.21(m,6H)、0.90(t,J=6.7Hz,3H)ppm;
13C NMR(100MHz,CD3OD)δ77.5(CH)、75.2(CH)、71.9(CH)、67.8(CH2)、66.4(Cq)、62.4(CH)、53.8(CH2)、38.8(CH2)、33.0(CH2)、27.9(CH2)、26.5(CH2)、23.7(CH2)、14.3(CH3)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C13H26NO4[M+H]+:m/z=260.18563;Found m/z=260.18561。
【0213】
A.6/合成方法7
以下の一般式(I’c)に適合する化合物を得るために使用する合成方法は、
図7に示す一般合成スキーム7に該当する。
【0214】
化合物(IIk)
上記の式(IIk)の化合物((3S,4R,5R,6R,7S)-6,7-ビス(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3,4,5-トリオール)を、以下の方法で得る。CH2Cl2溶液(0.4mL)中のニトロン(III)(P=Bn;193mg,0.360mmol)とアルキンVc(R8=NBnTs;308mg,1.079mmol)の混合液を環境温度で3日間撹拌し、次いで、反応混合液を減圧下で濃縮した。残渣(未処理の環化付加物B-7c)をエタノール(0.1M)に溶解し、封管に移し、110℃(IRプローブ)、マイクロ波照射下で15分間加熱した。減圧下で濃縮した後、残渣をクロマトグラフィーで精製してアシルアジリジンH-7c(P=Bn,R8=NBnTs;238mg,2つのステップで80%)を得た。この化合物の分画(58mg,0.070mmol)をTHF(1mL)に溶解し、次いで、LiAlH4(6mg,0.157mmol)を0℃で添加した。混合液を環境温度で1.5時間撹拌した。水(0.1mL)とNaOHの10%水溶液(0.1mL)を添加した後、反応混合液を環境温度で2時間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)でろ過した。減圧下で濃縮したろ液をクロマトグラフィーで精製して、アジリジンアルコールJ-7c(P=Bn,R16=H;34.2mg,86%)を単離した。THF(2mL)中のこのアジリジンアルコールJ-7c溶液(28mg,0.067mmol)を液体アンモニア(10mL)中のリチウム溶液(54mg,7.78mmol)に-78℃で添加した。混合液を-78℃で45分間撹拌し、次いで、ミリQ水(0.5mL)とMeOH(2mL)を添加した。溶液を環境温度に戻した後、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をミリQ水に溶解し、あらかじめ1M HCl(15mL)で処理したAmberlite(登録商標)IR-120(22.8g)で中和した。樹脂をカラムに導入し、水で洗浄した後、化合物(IIk)を水性NH4OHの1M溶液で溶出した。溶媒を減圧下で蒸発させた後に得られた溶液をクロマトグラフィーで精製して、純粋なイミノ糖(IIk)(R16=H;7mg,60%)を得た。
【0215】
以下の特徴を有する白色の固体を得る。
[α]20
D=+2.90(c0,34,CH3OH);
IR ν 3409、3010、2926、1084、1032cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ4.16(d,J=7.9Hz,1H)、3.79(d,J=11.6Hz,1H)、3.60-3.50(m,3H)、3.47-3.40(m,1H)、3.33-3.25(m,2H)、2.55(dd,J=10.6,12.4Hz,1H)、2.19(dd,J=6.8,5.3Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ76.0(CH)、73.2(CH)、70.6(CH)、63.2(CH2)、62.0(CH2)、57.0(CH2)、51.9(Cq)、51.6(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C8H16NO5[M+H]+ m/z=206.1028;Found m/z=206.1028。
【0216】
化合物(IIj)
上記の式(IIj)の化合物((3S,4R,5R,6R,7S)-7-((S)-1,2-ジヒドロキシエチル)-6-(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3,4,5トリオール)を以下のように得る。非特許文献6に記載のように得られたアシルアジリジンH-7d(P=Bn,R8=CH2OAc;33mg,0.052mmol)をTHF(1mL)に溶解し、次いで、LiAlH4(38mg,0.165mmol)を0℃で添加し、混合液を環境温度で1時間撹拌した。水(0.1mL)とNaOHの10%水溶液(0.1mL)を添加した後、反応混合液を環境温度で2時間撹拌し、次いで、Celite(登録商標)でろ過した。減圧下で濃縮したろ液をクロマトグラフィーで精製して、半透明の油J-7d(R16=CH2OH;26mg,83%)を単離した。THF(2mL)中のこのアジリジンアルコールJ-7d溶液(40mg,0.067mmol)を液体アンモニア(10mL)中のリチウム溶液(25mg,3.571mmol)に-78℃で添加した。混合液を-78℃で45分間撹拌し、次いで、ミリQ水(0.5mL)とMeOH(2mL)を添加した。溶液を環境温度に戻した後、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をミリQ水に溶解し、あらかじめ1M HCl(5mL)で処理したAmberlite(登録商標)IR-120(8.5g)で中和した。樹脂をカラムに導入し、水で洗浄した後、化合物(IIj)を水性NH4OHの1M溶液で溶出した。溶媒を減圧下で蒸発させた後に得られた固体をクロマトグラフィーで精製して、純粋なイミノ糖(IIj)(R16=CH2OH;10.1mg,64%)を得た。
【0217】
以下の特徴を有する白色の固体を得る。
[α]20
D=+5.90(c0.34,CH3OH);
IR:ν 3249、2939、2885、1748、1656、1404、1031、995cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ4.16(d,J=8.0Hz,1H)、3.91(d,J=11.6Hz,1H)、3.71(dd,J=3.5,11.4Hz,1H)、3.61(dd,J=5.8,11.4Hz,1H)、3.54-3.48(m,1H)、3.48-3.41(m,1H)、3.39(d,J=11.6Hz,1H)、3.30-3.25(m,2H)、2.52(dd,J=10.2,12.2Hz,1H)、2.10(d,J=8.7Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ75.9(CH)、73.1(CH)、72.4(CH)、70.7(CH)、66.1(CH2)、63.8(CH2)、56.5(CH2)、52.0(Cq)、51.2(CH)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C9H18NO6[M+H]+ m/z=236.1129;Found m/z=236.1124。
【0218】
化合物(IIm)
上記の式(IIm)の化合物(3S,4R,5R,6R,7S)-7-((S)-ヒドロキシ(フェニル)メチル)-6-(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3,4,5-トリオールを以下のように得る。非特許文献13に記載のように得られた環化付加物B-7e(P=Ac,R8=Ph;15.2mg,0.030mmol,4:1ジアステレオマーの混合物)を封管内のジクロロエタン(0.1M溶液)に溶解した。溶液を110℃(IRプローブ)、マイクロ波照射下で45分間(30+15)加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させた後、残渣をクロマトグラフィーで精製することにより、アシルアジリジンH-7e(P=Ac,R8=Ph;12mg,79%)を2つのジアステレオマーの9:1混合物の形態でアシルアジリジンH-7e(P=Ac,R8=Ph;12mg,79%)を単離することができた。これらのアシルアジリジン(30mg,0.067mmol)をTHF(1.2mL)に溶解し、溶液を0℃に冷却し、次いで、LiAlH4(5.6mg,0.147mmol)を添加した。反応混合液を環境温度で1.5時間撹拌し、次いで、水(0.1mL)とNaOHの10%水溶液(0.1mL)をこれに添加した。環境温度で1.5時間撹拌した後、この混合液をCelite(登録商標)でろ過し、ろ液を減圧下で濃縮してから、残渣をクロマトグラフィーで精製して、アジリジニルイミノ糖(IIm)(R16=Ph;15mg,82%)を単一ジアステレオマーの形態で得た。
【0219】
以下の特徴を有する無色の油を得る。
[α]20
D-4.1(c1.58,CH3OH);
IR ν 3296、2931、1557、1409、1053、697cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ7.49-7.44(m,2H)、7.40-7.35(m,2H)、7.31-7.25(m,1H)、4.29(d,J=8.7Hz,1H)、4.18(d,J=7.9Hz,1H)、4.01(d,J=11.6Hz,1H)、3.56(d,J=11.6Hz,1H)、3.48-3.37(m,2H)、3.26(dd,J=9.1,8.0Hz,1H)、2.26-2.18(m,2H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ144.6(ArCq)、129.5(ArCH)、128.6(ArCH)、127.1(ArCH)、75.8(CH)、73.8(CH)、73.1(CH)、70.7(CH)、63.6(CH2)、56.4(CH2)、56.0(CH)、52.8(Cq)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C14H20NO5[M+H]+:m/z=282.1341;Found m/z=282.1346。
【0220】
化合物(IIn)
上記の式(IIn)の化合物(3S,4R,5R,6R,7S)-7-((R)-シクロヘキシル(ヒドロキシ)メチル)-6-(ヒドロキシメチル)-1-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3,4,5-トリオールを以下のように得る。非特許文献6に記載のように得られたアシルアジリジンH-7f(P=Bn,R8=c-Hex;77mg,0.119mmol)、エタノール(1.4mL)に溶解し、0℃に冷却し、次いで、NaBH4(13mg,0.342mmol)を添加した。混合液を同じ温度で3.3時間撹拌し、次いで、水、NaOHの10%水溶液、およびCH2Cl2を添加した。水相はCH2Cl2で抽出し(3回)、有機相は回収し、MgSO4で乾燥させてから、減圧下で濃縮した。そのようにして得られた残渣をシリカでろ過し、アジリジンアルコールJ-7f(R16=c-Hex;72mg,94%)を油の形態で単離した。THF(4mL)中のこのアジリジンアルコールJ-7f溶液(42mg,0.064mmol)を液体アンモニア(10mL)中のリチウム(12mg,2.0mmol)溶液に-78℃で添加した。反応混合液を-78℃で45分間撹拌し、次いで、ミリQ水(0.5mL)とMeOH(2mL)を添加した。溶液を環境温度に戻した後、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をミリQ水に溶解し、あらかじめ1M HCl(2mL)で処理したAmberlite(登録商標)IR-120(3.5g)で中和した。樹脂をカラムに導入し、水で洗浄した後、化合物(IIn)を水性NH4OHの1M溶液で溶出した。溶媒を減圧下で蒸発させた後に得られた固体をクロマトグラフィーで精製して、純粋なイミノ糖(IIn)(R16=c-Hex;13mg,72%)を得た。
【0221】
以下の特徴を有する白色の固体を得る。
[α]20
D+2.8(c0.80,CH3OH);
IR ν 3335、2916、2846、1451、1087、1054、1008、660cm-1;
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ4.17(d,J=7.8Hz,1H)、3.88(d,J=11.7Hz,1H)、3.50-3.44(m,2H)、3.42(d,J=11.7Hz,1H)、3.33-3.29(m,1H)、2.95(dd,J=8.6,6.6Hz,1H)、2.51(dd,J=11.8,9.0Hz,1H)、2.08(d,J=8.7Hz,1H)、1.99-1.66(m,5H)、1.53-1.45(m,1H)、1.36-1.03(m,5H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ76.3(CH)、76.0(CH)、73.3(CH)、70.8(CH)、64.1(CH2)、56.0(CH2)、52.9(CH)、51.1(Cq)、45.3(CH)、30.1(CH2)、29.7(CH2)、27.7(CH2)、27.4(CH2)、27.2(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C14H26NO5[M+H]+:m/z=288.1811;Found m/z=288.1810。
【0222】
A.7/合成方法8
以下の一般式(I’e)に適合する化合物を得るために使用する合成方法は、
図8に示す一般合成スキーム8に該当する。
【0223】
化合物(IIw1)
上記の式(IIw1)の化合物((2R,3R,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)-2-(1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピペリジン-3,4,5-トリオールを以下の方法で調製する。EtOH/AcOHの4:1混合液(5mL)中の式A-1aのヒドロキシルアミン(240.0mg;0.377mmol)と亜鉛粉末(247.0mg;3.77mmol)の溶液を、65℃、超音波下で、反応が完了するまで撹拌した。反応混合液をCeliteでろ過し、次いで、減圧下で蒸発させる。未処理の生成物をCH2Cl2に再溶解し、次いで、水性1M NaOHで処理する。水相をCH2Cl2で抽出した(3回)。有機相はブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させてから、減圧下で蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、相当するピペリジンD-8(178.0mg;76%)を得た。無水THF(1.7mL)中のクロロギ酸ベンジル(121μL;0.852mmol)のこのピペリジンD-8(176.0mg;0.284mmol)とK2CO3(157.0mg;1.14mmol)の混合液を、反応が完了するまで環境温度で撹拌した。メタノール(2mL)を添加し、次いで、反応混合液を、反応が完了するまで環境温度で撹拌した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、式K-8の化合物(164.0mg;2つのステップで78%)を得た。ヨウ化銅(3.5mg;0.018mmol)およびDIPEA(108μL;0.618mmol)を、DMF(1.5mL)中のこれと同じ化合物K-8(46.8mg;0.062mmol)とベンジルアジド(247μL;0.124mmol)の溶液に不活性雰囲気下で添加した。反応混合物は反応が完了するまで環境温度で撹拌した。未処理の生成物を酢酸エチルで希釈し、ブラインで数回洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させてから、減圧下で蒸発させた。得られた残渣をクロマトグラフィーで精製し、式L-8の化合物(38.2mg;76%)を得た。この化合物(32.1mg;0.039mmol)を、一般手順Bに従って脱ベンジル化して、ピペリジン(IIw1)(11.0mg;100%)を得た。
【0224】
以下の特徴を有する無色のラッカーを得る。
[α]20
D-17.2(c1.09,CH3OH);
1H NMR(500MHz,CD3OD)δ7.90(s,1H)、3.80(d,J=10.9Hz,1H)、3.69(d,J=9.7Hz,1H)、3.59(d,J=11.1Hz,1H)、3.52-3.45(m,1H)、3.27(t,J=9.3Hz,1H)、2.99(dd,J=12.6,5.5Hz,1H)、2.54(dd,J=12.3,11.2Hz,1H)ppm;
13C NMR(125MHz,CD3OD)δ144.5(Cq)、131.0(CH)、76.9(CH)、74.5(CH)、73.0(CH)、68.1(CH2)、62.5(Cq)、47.2(CH2)ppm;
HRMS(ESI+)calcd for C8H15N4O4[M+H]+:m/z=231.10878;Found m/z=231.10861。
【0225】
B/生物学的評価
以下のさまざまな生物活性試験を、上述の化合物(IIa)~(IIn)で実施する。
【0226】
B.1/Fluopol-ABPPによるrhGAAの阻害率の決定
組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)に対する化合物の阻害活性は、非特許文献14に記載のFluopol-ABPP法(蛍光偏光活性に基づくタンパク質プロファイリング)を用いて確認する。この技術は、酵素の活性部位に共有結合できる蛍光プローブと阻害剤の競合に基づくもので、ライデン大学ライデン化学研究所(オランダ)のHerman S.Overkleeft教授とJohanes M.F.G.Aerts教授の研究室が今回の実験で使用したrhGAA酵素の活性部位に対するこの阻害剤の親和性を測定することが可能で、酵素はMyozyme(登録商標)という名称で市販されている。半数阻害濃度(IC50)は、96ウェルプレート(Griener)で、0.1%(w/v)ウシγグロブリンおよび0.5mg/mLのChaps界面活性剤(Sigma)の存在下、マッキルベイン緩衝液(クエン酸・リン酸)150mM(pH5.0)で測定する。rhGAA酵素(10μg/mL)を、緩衝液中で、さまざまな濃度[I]の阻害剤溶液(化合物の母液の調製に用いた2.5%DMSOを含む)と共に37℃で45分間プレインキュベートする。次に、緩衝液中のテトラアミノメチルローダミン(TAMRA)の蛍光プローブ溶液(25nM)を混合液に添加する。4時間後、試料に偏光(λ=530nm)を照射し、発せられた蛍光(λ=580nm)をInfinite(登録商標)M1000Pro分光蛍光光度計(Tecan)を用いて測定する。各阻害剤の濃度について、酵素の阻害率は、式:
阻害率(%)=[F測定-F対照1)/F対照2)X100
で決定し、式中、F測定はイミノ糖の存在下で測定した蛍光に相当し;F対照1は、陽性対照となるヒト酸性α-グルコシダーゼの強力な阻害剤(阻害率100%)であるCF022((1S,2R,3S,4R,5R,6R)-2,3,4-トリヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)-7-(8-アジドオクチル)-7-アザ-ビシクロ[4.1.0]ヘプタン)に相当し、F対照2は、阻害剤の非存在下(阻害率0%)で測定したプローブの蛍光を表す。
【0227】
IC50値は、GraphPad Prism6.0ソフトウェアを用いて、濃度[I]の関数として、阻害率(%)の非線形回帰によって算出する。結果は同一の実験3回(トリプリケート)の平均値である。
【0228】
B.2/in vitroにおける阻害剤存在下での残存活性測定によるrhGAAの阻害率の決定
補完的に、フェデリコ2世ナポリ大学生物学部(イタリア)のMarco Moracci教授のチームが、非特許文献15に記載の方法を用いて、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)に対する化合物の阻害活性を評価した。使用したMyozyme(登録商標)の名称で販売されているrhGAA酵素は、フェデリコ2世ナポリ大学トランスレーショナル・メディカル・サイエンス学部(イタリア)でポンペ病患者を酵素療法で治療するのに使用される組換え酵素の残基から得たものである。
【0229】
化合物は、さまざまな濃度で、100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)および4-ニトロフェニル-α-D-グルコピラノシド基質(20mM)で可溶化する。37℃で2分間温度均衡を行った後、同じ緩衝液中のrhGAA酵素を添加する(総量:200μL)。37℃で2分間反応させた後、1M炭酸ナトリウム溶液(800μL)(pH11.0)を添加し、混合液を氷上で冷却する。溶液の吸光度は、環境温度で420nmで測定する。基質の自然加水分解は、酵素を含まない対照(ブランク)の吸光度を測定して差し引く。提示する結果は、少なくとも2回の同一実験の平均値である。データはPrism 5.0ソフトウェア(GraphPad)を用いて処理、解析する。
【0230】
B.3/rhGAAの熱安定性の決定
化合物存在下でのrhGAAの安定性を、非特許文献16に記載の方法に従って決定する。rhGAA酵素(2.5μg,0.1mg/mL)を、各化合物(濃度[I]=100μM)、SYPRO(登録商標)オレンジ染料(Life Technologies)、およびリン酸ナトリウム緩衝液(25mM)とNaCl(150mM)(pH7.4)または酢酸ナトリウム緩衝液(25mmol)とNaCl(150mM)(pH4.0)の非存在下または存在下でインキュベートする。これらのさまざまな条件における酵素の熱安定性は、25~95℃の範囲で1℃/分ずつ温度を変化させ、Real-Time Cycler分光蛍光光度計(Biorad)を用いてSYPRO(登録商標)オレンジ染料の蛍光を毎分測定し、DSF(示差走査蛍光定量法)で評価する。スキャンごとに、測定された各蛍光値をSYPRO(登録商標)オレンジ染料の最大蛍光値と比較して相対蛍光を決定する。結果は同一の実験3回(トリプリケート)の平均値である。
【0231】
B.4/他のヒト由来酵素の阻害率の評価
化合物の選択性は、ライデン大学ライデン化学研究所(オランダ)のHerman S.Overkleeft教授とJohanes M.F.G.Aerts教授の研究室で実施した。さまざまなヒト酵素に対する化合物の阻害の選択性を決定するのに使用する酵素は、小胞体(GANAB)のα-グルコシダーゼII、組換えヒトライソゾームβ-グルコセレブロシダーゼ(GBA1)、ヒト非ライソゾームβ-グルコシルセラミダーゼ(GBA2)、およびβ-グルコシルセラミド合成酵素(GCS)である。これらのさまざまな酵素に対する化合物の阻害活性は、非特許文献17に記載されているように決定する。Cerezyme(登録商標)という名称で販売されている酵素GBA1と、Myozyme(登録商標)という名称で販売されている酵素rhGAAを使用する。本研究で使用したヒトGANAB酵素は、GAA活性が欠損していると診断されたポンペ病患者およびボランティアのドナーの線維芽細胞のものである。これらの線維芽細胞は、10%(v/v)FCS(ウシ胎児血清)を添加したHAMF12-DMEM培地(Sigma)で培養した。GBA2酵素は、10%NBS(新生仔ウシ血清)と100単位/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を添加したグルコース(Gibco)を含むDMEM培地と5%CO2で37℃で培養したHEK298T細胞で過剰発現させた。ヒトβ-グルコシルセラミド合成酵素(GCS)に対する化合物の活性は、10%FCS、1mMのGlutaMAX、100単位/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を添加したRPMI培地(Gibco)と5%CO2で37℃で培養したRAW264.7細胞でin situ評価する。
【0232】
GANAB、GBA2、およびGCS酵素のIC50値は、pH7.0の緩衝液(20mM hepes,2mM DTT,0.25Mスクロース,1mM MgCl2,2.5U/mLベンゾナーゼ)で調製し、氷上に30分間静置した細胞可溶化物で決定する。これらの細胞可溶化物は、SilentCrusherグラインダー(Heidolph(登録商標))を用いてホモジナイズし、次いで、32,000rpm、4℃で30分間超遠心分離する。総タンパク質濃度は、Bradford BioRad Quick Start(登録商標)キット(Pierce)とBSA(Sigma)を用いて、Bradford法(非特許文献18)に従って決定する。次に、可溶化物を分取し、使用するまで-80℃で保管する。
【0233】
GANAB酵素のIC50値は、緩衝液として150mMのマッキルベイン(pH7.0)、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)、濃度が2.4mMの基質(4-メチル-ウンベリフェロン-α-D-グルコピラノシド)を用いて、2時間インキュベーションして決定する。
【0234】
GBA1酵素のIC50値は、緩衝液として150mMのマッキルベイン(pH5.2)、0.2%(w/v)タウロコール酸塩、0.1%(v/v)トリトンX-100、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)、濃度が0.7nMの酵素、濃度が3.0mMの基質(4-メチル-ウンベリフェロン-β-D-グルコピラノシド)を用いて、30分間インキュベーションして決定する。
【0235】
化合物存在下でのGBA2の残存活性を、GBA1の阻害剤であるコンズリトールBエポキシド(Sigma)を1mMの濃度で用いて、GBA2を過剰発現させたHEK298T細胞のホモジネートを30分間プレインキュベートした後に決定する。IC50値は、緩衝液として150mMのマッキルベイン(pH5.8)、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)、濃度が3.0mMの基質(4-メチル-ウンベリフェロン-β-D-グルコピラノシド)を用いて、1時間インキュベーションして決定する。
【0236】
化合物存在下でのGCSの残存活性を、GBA1の阻害剤であるコンズリトールBエポキシド(Sigma)を300μMの濃度で用いて、RAW264.7細胞のホモジネートを1時間プレインキュベートした後に決定する。GCS酵素のIC50値は、前述の非特許文献14に記載されているように、基質として1μMのNBD-セラミド(N-[12-[(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアゾール-4-イル)アミノ]ドデカノイル]-D-エリスロ-スフィンゴシン)を用いて、pH7.0の細胞培養培地でin situで決定する。
【0237】
これらすべての試験について得られた結果を、以下の表1および2に示す。これらの表には、比較として、先行技術文献に記載のDNJおよびNB-DNJの化合物について得られた値も示す。表中、aは非特許文献15を示し;bは非特許文献19を示し;cは非特許文献3を示し;dは非特許文献20を示し;*は[化合物]=Kiの10倍の値で測定したΔTmを示し;eは非特許文献21を示し;fは非特許文献22を示す。
【0238】
【0239】
これらすべての結果は、試験した他のヒト酵素と比べて、本発明に従って使用する化合物のヒト酸性α-グルコシダーゼに対する選択性を実証している。この選択性は、先行技術であるDNJおよびNB-DNJで提案された分子よりもはるかに高い。さらに、本発明に従って使用する化合物は、DNJおよびNB-DNJに匹敵する重要なrhGAA安定化効果を有する。
【0240】
さらに、一般式(I’’a)に適合する化合物(IIb7)、(IIb3)、(IIc1)、(IIr)、および(IIc)、ならびに化合物(IIx1)は、本発明による他の化合物よりも優れた性能を有する。
【国際調査報告】