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特表2023-522086リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材とその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材とその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20230519BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230519BHJP
   C01B 32/00 20170101ALI20230519BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 A
C01B32/00
C01B33/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563222
(86)(22)【出願日】2021-02-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2021075668
(87)【国際公開番号】W WO2022007401
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】202010639966.5
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522406698
【氏名又は名称】アンフイ ケダ プールイ エナジー テック カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522406702
【氏名又は名称】アンフイ ケダ ボールイ エナジー テック カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522406713
【氏名又は名称】ケダ (アンフイ) ニュー マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオロン
(72)【発明者】
【氏名】フー リャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャオボー
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハオ
【テーマコード(参考)】
4G072
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072DD03
4G072DD04
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH01
4G072TT05
4G072UU30
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD22
4G146AD23
4G146BA12
4G146BC08
4G146BC23
4G146BC33B
4G146BC37B
4G146CB17
4G146DA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に属し、具体的には、リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材とその作製方法に関し、前記負極材は、ナノシリコンおよび気相炭素源を含み、ナノシリコンは複合材料全体に分散し、ナノシリコンの表面の一部は気相成長した炭素源によって覆われ、前記ナノシリコンの中央値粒度D50は100nm以下であり、ナノシリコンの結晶粒は10nm以下であり、気相成長炭素源の平均厚さは10~200nmであり、前記ナノシリコンは、酸素を含み、酸素の質量含有量は5~30%であり、前記負極材は、60%~90wt.%のナノシリコン、および10%~40wt.%の気相炭素源を含み、既存技術と比較して、本発明によって作製されたリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材は、優れた電気化学的特性を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極材は、ナノシリコンおよび気相炭素源を含み、ナノシリコンは複合材料全体に分散し、ナノシリコンの表面の一部は気相成長した炭素源によって覆われ、前記ナノシリコンをMastersizer 3000粒度分析計で検出すると、中央値粒度D50は100nm以下であることを確認し、前記ナノシリコンをX線回折パターンで分析すると、2θ=28.4°付近のSi(111)に起因する回折ピークの半値幅に基づいて、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒は10nm以下であり、複合材料全体をTEMでスキャンすると、測定した気相成長炭素源の平均厚さは10~200nmであることを特徴とする、リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材。
【請求項2】
前記ナノシリコンは、酸素を含み、酸素の質量含有量は5~30%、好ましくは10~20%であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材。
【請求項3】
前記負極材は、60%~90wt.%のナノシリコン、および10%~40wt.%の気相炭素源を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材。
【請求項4】
前記負極材の比表面積は1~20m/g、好ましくは2~10m/gであり、前記負極材のメジアン粒径D50は1~30μm、好ましくは3~20μmであり、前記負極材の含水率は0.01~1wt.%、好ましくは0.05~0.5wt.%であり、前記負極材のタップ密度は0.3~1.4g/cm、好ましくは0.5~1.0g/cmであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材。
【請求項5】
(1)ナノシリコンペーストの調製:シリコン粉末原料と研磨助剤を有機溶媒に添加して均一に混合し、研磨装置に導入して30~60h研磨し、ナノシリコンペーストを得るステップと、
(2)噴霧乾燥:ステップ(1)のナノシリコンペーストをスプレードライヤーによって噴霧乾燥し、ナノシリコン乾燥粉末を得るステップと、
(3)機械的成形:ステップ(2)のナノシリコン乾燥粉末を機械的に成形し、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン粒子を得るステップと、
(4)気相炭素源の被覆:ステップ(3)のナノシリコン粒子を気相成長炉に入れ、保護ガスを注入し、さらに炭素源ガスを注入して昇温加熱し、気相炭素源をナノシリコン粒子に成長して被覆し、シリコン-カーボン負極材を得るステップと、を含むことを特徴とする、請求項1-4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材の作製方法。
【請求項6】
ステップ(1)で記載したシリコン粉末原料はポリシリコンであり、シリコン粉末原料の純度は99.9%を超え、シリコン粉末原料のメジアン粒径は1~100μm、好ましくは3~20μmであり、
前記研磨助剤は、塩化アルミニウム、高分子アルコールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、オクタデカン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メチレンビスナフタレンスルホン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、ナフテン酸鉛、トリエチルヘキシルリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、メチルアミルアルコール、セルロース誘導体またはグァーガムのうちの1つ又は複数であり、
前記有機溶媒は、メタノール、トルエン、ベンジルアルコール、エタノール、エチレングリコール、塩化エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブタノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ネオペンチルアルコール、オクタノール、アセトンまたはシクロヘキサノンのうちの1つ又は複数であり、
前記シリコン粉末原料と分散剤の質量比は、100:(1~20)、好ましくは100:(5~15)であり、溶媒を添加した後、混合溶液の固形分は10~40%、好ましくは20~30%であり、
湿式研磨装置はサンドミルであり、サンドミルの撹拌軸の構造形状はディスク、バーまたはバーディスク状のいずれかであり、サンドミルの最高線速度は14m/sを超え、
ボールミルビーズの材質は、セラミック、ジルコニア、アルミナ、カーバイドから選ばれ、ボールミルビーズとミクロンシリコン粉末の質量比は、(10~30):1であることを特徴とする、請求項5に記載の作製方法。
【請求項7】
ステップ(2)で記載したスプレードライヤーは、密閉型スプレードライヤーであり、その熱風入口温度は150~300℃、好ましくは160~280℃であり、出口温度は80~140℃、好ましくは90~130℃であり、
前記スプレードライヤーの霧化ディスクの回転数は10000rpmを超えることを特徴とする、請求項5に記載の作製方法。
【請求項8】
ステップ(3)で記載した機械的成形は、粉砕、選別、ふるい分けを含み、具体的には、
ステップ(2)で得られたナノシリコン乾燥粉末を粉砕機で処理し、本体の強度を30~50Hzに調整し、選別強度を30~50Hzに調整し、ナノシリコン乾燥粉末の粒度寸法を小さくし、かつ選別により微小な粉末を除去し、さらに粉末を篩にかけて大きな粒子を除去し、篩のメッシュ数は100~400であり、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を得ることを特徴とする、請求項5に記載の作製方法。
【請求項9】
ステップ(4)で記載した気相炭素源成長過程の昇温速度は1~3℃/min、炭素成長温度は600~900℃、有機炭素源ガスの流量は1~5L/min、反応持続時間は1~4hであり、
前記有機炭素源ガスは、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、アセトン、ブタン、ブチレン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、ナフタレン、フェノール、フラン、ピリジン、アントラセン、液化ガスのうちの1つまたは2つ以上の組み合わせであり、
前記保護ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンのいずれかであることを特徴とする、請求項5に記載の作製方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池用負極材は、請求項1-4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材であることを特徴とする、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に属し、具体的には、リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材とその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、既存のリチウムイオン負極材は黒鉛負極が主流であるが、黒鉛負極の理論的な比容量は372mAh/gに過ぎず、利用者の要望に応えることができなくなった。シリコンの理論容量は4200mAh/gと高く、黒鉛負極材の容量の10倍以上であり、また、シリコン-カーボン複合製品のクーロン効率も黒鉛負極に近く、安価で環境に優しく、地球上に豊富に存在することから、新世代の高容量負極材として最適な材料と言える。しかし、シリコンは材料自体の電気伝導性が悪く、充電時の体積膨張が300%と高いため、充放電時の体積膨張によって材料構造の崩壊や電極の剥離・粉砕が起こりやすく、活物質が失われ、さらに電池容量の急激な低下とサイクル性能の劣化を招くという問題があった。
【0003】
充放電時のシリコンの構造を安定させ、膨張を緩和し、電気化学的性能を向上させる効果を達成するために、シリコンと混合してリチウム電池の負極材として使用できる、高導電性や高比表面積を備えたカーボン材料が急いで求められている。
【発明の概要】
【0004】
シリコン-カーボン負極材の上記課題を解決するために、本発明は、リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材とその作製方法を提供し、本発明に記載の負極材は、ナノシリコンと気相炭素源を含み、ナノシリコンは湿式研磨により調製され、負極材の比容量を大幅に高めることができ、また、この方法で調製したナノシリコンは、粒度や結晶粒サイズが小さく、優れたカイネティクスを持ち、大規模に生産できることにより、性能が制御可能になり、ナノシリコン粒子間のギャップが小さいため、気相成長した炭素源を使用すれば、優れた被覆効果を達成し、保護シェルとして機能し、電子伝導性を向上させる役割を果たすことができる。
【0005】
具体的には、本発明は、リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材に関し、前記負極材は、ナノシリコンおよび気相炭素源を含み、ナノシリコンは複合材料全体に分散し、ナノシリコンの表面の一部は気相成長した炭素源によって覆われ、前記ナノシリコンをMastersizer 3000粒度分析計で検出すると、中央値粒度D50は100nm以下であることが確認され、前記ナノシリコンをX線回折パターンで分析すると、2θ=28.4°付近のSi(111)に起因する回折ピークの半値幅に基づいて、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒は10nm以下であり、複合材料全体をTEMでスキャンすると、測定した気相成長炭素源の平均厚さは10~200nmであった。
【0006】
好ましくは、前記ナノシリコンは、酸素を含み、酸素の質量含有量は5~30%、好ましくは10~20%である。
【0007】
好ましくは、前記負極材は、60%~90wt.%のナノシリコン、および10%~40wt.%の気相炭素源を含む。
【0008】
好ましくは、前記負極材の比表面積は1~20m/g、好ましくは2~10m/gであり、前記負極材のメジアン粒径D50は1~30μm、好ましくは3~20μmであり、前記負極材の含水率は0.01~1wt.%、好ましくは0.05~0.5wt.%であり、前記負極材のタップ密度は0.3~1.4g/cm、好ましくは0.5~1.0g/cmである。
【0009】
本発明はさらに、電池用シリコン-カーボン負極材の作製方法であって、以下のステップを含む、
(1)ナノシリコンペーストの調製:シリコン粉末原料と研磨助剤を有機溶媒に添加して均一に混合し、研磨装置に導入して30~60h研磨し、ナノシリコンペーストを得るステップと、
(2)噴霧乾燥:ステップ(1)のナノシリコンペーストをスプレードライヤーによって噴霧乾燥し、ナノシリコン乾燥粉末を得るステップと、
(3)機械的成形:ステップ(2)のナノシリコン乾燥粉末を機械的に成形し、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン粒子を得るステップと、
(4)気相炭素源の被覆:ステップ(3)のナノシリコン粒子を気相成長炉に入れ、保護ガスを注入し、さらに炭素源ガスを注入して昇温加熱し、気相炭素源をナノシリコン粒子に成長して被覆し、シリコン-カーボン負極材を得るステップと、を含むことを特徴とする、請求項1-4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材の作製方法である。
【0010】
好ましくは、ステップ(1)で記載したシリコン粉末原料はポリシリコンであり、シリコン粉末原料の純度は99.9%を超え、シリコン粉末原料のメジアン粒径は1~100μm、好ましくは3~20μmであり、
前記研磨助剤は、塩化アルミニウム、高分子アルコールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、オクタデカン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メチレンビスナフタレンスルホン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、ナフテン酸鉛、トリエチルヘキシルリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、メチルアミルアルコール、セルロース誘導体またはグァーガムのうちの1つ又は複数であり、
前記有機溶媒は、メタノール、トルエン、ベンジルアルコール、エタノール、エチレングリコール、塩化エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブタノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ネオペンチルアルコール、オクタノール、アセトンまたはシクロヘキサノンのうちの1つ又は複数であり、
前記シリコン粉末原料と分散剤の質量比は、100:(1~20)、好ましくは100:(5~15)であり、溶媒を添加した後、混合溶液の固形分は10~40%、好ましくは20~30%であり、
前記湿式研磨装置はサンドミルであり、サンドミルの撹拌軸の構造形状はディスク、バーまたはバーディスク状のいずれかであり、サンドミルの最高線速度は14m/sを超え、
前記ボールミルビーズの材質は、セラミック、ジルコニア、アルミナ、カーバイドから選ばれ、ボールミルビーズとミクロンシリコン粉末の質量比は、(10~30):1である。
【0011】
好ましくは、ステップ(2)で記載したスプレードライヤーは、密閉型スプレードライヤーであり、その熱風入口温度は150~300℃、好ましくは160~280℃であり、出口温度は80~140℃、好ましくは90~130℃であり、
前記スプレードライヤーの霧化ディスクの回転数は10000rpmを超える。
【0012】
好ましくは、ステップ(3)で記載した機械的成形は、粉砕、選別、ふるい分けを含み、具体的には、
ステップ(2)で得られたナノシリコン乾燥粉末を粉砕機で処理し、本体の強度を30~50Hzに調整し、選別強度を30~50Hzに調整し、ナノシリコン乾燥粉末の粒度寸法を小さくし、かつ選別により微小な粉末を除去し、さらに粉末を篩にかけて大きな粒子を除去し、篩のメッシュ数は100~400であり、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を得る。
【0013】
好ましくは、ステップ(4)で記載した気相炭素源成長過程の昇温速度は1~3℃/min、炭素成長温度は600~900℃、有機炭素源ガスの流量は1~5L/min、反応持続時間は1~4hであり、
前記有機炭素源ガスは、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、アセトン、ブタン、ブチレン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、ナフタレン、フェノール、フラン、ピリジン、アントラセン、液化ガスのうちの1つまたは2つ以上の組み合わせであり、
前記保護ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンのいずれかである。
【0014】
本発明はさらに、リチウムイオン電池に関し、前記リチウムイオン電池用負極材は、上記のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材である。
【0015】
従来の技術と比べて、本発明の利点は以下のとおりである。
【0016】
(1)本発明により作製されたシリコン-カーボン負極材では、湿式研磨によりナノシリコンを作製し、得られたナノシリコンの中央値粒度D50は100nm以下であり、ナノシリコンの結晶粒は10nm以下であるため、シリコンの絶対体積膨張を抑え、負極材でのナノシリコンのカイネティクスを向上させる。
【0017】
(2)本発明により作製されたシリコン-カーボン負極材では、噴霧乾燥工程および機械的成形工程によりナノシリコンペーストを処理するため、一方では、ナノシリコンペーストに含まれる有機溶媒を霧化装置で回収してリサイクルし、環境保護とコスト削減を実現し、他方では、霧化装置のパラメータおよび機械的成形パラメータを調整して、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン粒子を得る。
【0018】
(3)本発明により作製されたシリコン-カーボン負極材では、気相成長法によって炭素源をナノシリコン粒子に成長させて炭素被覆層を形成し、気相成長炭素源の厚さは10~200nmと測定され、これにより、負極材の導電率を向上させ、内部抵抗を下げることができるとともに、電解液の侵食を隔離して負極材のサイクル性能を大幅に向上させることができる。
【0019】
(4)本発明により作製されたシリコン-カーボン負極材は、優れた電気化学的特性を有し、初回可逆容量は高く(>2200mAh/g)、初回クーロン効率も高い(>86%)。
【0020】
以下、図面を参照して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1で作製したナノシリコンのSEM画像である。
図2】本発明の実施例1で作製したナノシリコンのXRD図である。
図3】本発明の実施例1で作製したシリコン-カーボン負極材粒子のTEM画像である。
図4】本発明の実施例1で作製したボタン電池の初回充放電曲線を示す図である。
図5】本発明の実施例1で作製した18650円筒型電池の1C/1C倍率でのサイクル曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を容易に理解するために、以下に本発明の実施例を挙げる。なお、記載された実施例は、本発明を容易に理解するためのものに過ぎず、本発明を具体的に限定するためのものではないことは、当業者によって理解されるべきである。
【0023】
実施例1
リチウムイオン電池用シリコン-カーボン負極材の作製方法であって、以下のステップを含む。
【0024】
(1)ナノシリコンペーストの調製:メジアン粒径3μmのポリシリコン粉末1000gとポリビニルピロリドン10gを、100:1の質量比でメタノールに添加し、混合溶液の固形分は20%であり、混合ペーストをサンドミルに導入し、ここで、研磨ビーズジルコニアボールとシリコン粉末の質量比を10:1とし、研磨時間を50hとし、目的のナノシリコンペーストを得て、当該ナノシリコンペーストをMastersizer 3000粒度分析計で検出すると、ナノシリコンのメジアン粒径が72nmであることを確認した。
【0025】
(2)噴霧乾燥:ステップ(1)のナノシリコンペーストを、熱風入口温度190℃、出口温度110℃の密閉型スプレードライヤーによって噴霧乾燥し、ナノシリコン乾燥粉末を得た。
【0026】
(3)機械的成形:ステップ(2)で得られたナノシリコン乾燥粉末を粉砕機で処理し、本体の強度を50Hzに調整し、選別強度を50Hzに調整し、ナノシリコン乾燥粉末の粒度寸法を小さくし、かつ選別により微小な粉末を除去し、次に粉末を篩にかけて大きな粒子を除去し、篩のメッシュ数は400であり、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を得て、そして、前記ナノシリコン乾燥粉末をX線回折パターンで分析すると、2θ=28.4°付近のSi(111)に起因する回折ピークの半値幅に基づいて、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒は6.9nmであり、酸素・窒素・水素分析装置により検出したナノシリコン乾燥粉末における酸素の質量含有量は17%であった。
【0027】
(4)気相炭素源の被覆:ステップ(3)の規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を気相成長炉に入れ、窒素を注入して酸素含有量が100ppm以下になるまで空気を排出し、続いて、昇温速度3℃/minで900℃まで昇温させ、その後、気相成長のためにメタンを注入し、流量を1L/minにし、反応時間を1hに制御し、質量割合10wt%の均一な炭素被覆層を形成してシリコン-カーボン負極材を得て、そして、TEMによりシリコン-カーボン負極材をスキャンすると、測定した気相成長炭素源の厚さは10~30nmであった。
【0028】
実施例2
(1)ナノシリコンペーストの調製:メジアン粒径8μmのポリシリコン粉末1000gとドデシル硫酸ナトリウム50gを、100:5の質量比でプロパノールに添加し、混合溶液の固形分は20%であり、混合ペーストをサンドミルに導入し、ここで、研磨ビーズ硬質合金ボールとシリコン粉末の質量比を10:1とし、研磨時間を60hとし、目的のナノシリコンペーストを得て、当該ナノシリコンペーストをMastersizer 3000粒度分析計で検出すると、ナノシリコンのメジアン粒径が78nmであることを確認した。
【0029】
(2)噴霧乾燥:ステップ(1)のナノシリコンペーストを、熱風入口温度280℃、出口温度130℃の密閉型スプレードライヤーによって噴霧乾燥し、ナノシリコン乾燥粉末を得た。
【0030】
(3)機械的成形:ステップ(2)で得られたナノシリコン乾燥粉末を粉砕機で処理し、本体の強度を40Hzに調整し、選別強度を40Hzに調整し、ナノシリコン乾燥粉末の粒度寸法を小さくし、かつ選別により微小な粉末を除去し、さらに粉末を篩にかけて大きな粒子を除去し、篩のメッシュ数は300であり、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を得て、そして、前記ナノシリコン乾燥粉末をX線回折パターンで分析すると、2θ=28.4°付近のSi(111)に起因する回折ピークの半値幅に基づいて、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒は7.4nmであり、酸素・窒素・水素分析装置により検出したナノシリコン乾燥粉末における酸素の質量含有量は26%であった。
【0031】
(4)気相炭素源の被覆:ステップ(3)で得られた規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を気相成長炉に入れ、アルゴンを注入して酸素含有量が100ppm以下になるまで空気を排出し、昇温速度2℃/minで800℃まで昇温させ、その後、気相成長のためにアセチレンを注入し、流量を2L/minにし、反応時間を2hに制御し、質量割合20wt%の均一な炭素被覆層を形成してシリコン-カーボン負極材を得て、そして、TEMによりシリコン-カーボン負極材をスキャンすると、測定した気相成長炭素源の厚さは50~80nmであった。
【0032】
実施例3
(1)ナノシリコンペーストの調製:メジアン粒径15μmのポリシリコン粉末1000gとグァーガム100gを、100:10の質量比でアセトンに添加し、混合溶液の固形分は30%であり、混合ペーストをサンドミルに導入し、ここで、研磨ビーズステンレスボールとシリコン粉末の質量比を10:1とし、研磨時間を40hとし、目的のナノシリコンペーストを得て、当該ナノシリコンペーストをMastersizer 3000粒度分析計で検出すると、ナノシリコンのメジアン粒径が85nmであることを確認した。
【0033】
(2)噴霧乾燥:ステップ(1)のナノシリコンペーストを、熱風入口温度200℃、出口温度100℃の密閉型スプレードライヤーによって噴霧乾燥し、ナノシリコン乾燥粉末を得た。
【0034】
(3)機械的成形:ステップ(2)で得られたナノシリコン乾燥粉末を粉砕機で処理し、本体の強度を35Hzに調整し、選別強度を35Hzに調整し、ナノシリコン乾燥粉末の粒度寸法を小さくし、かつ選別により微小な粉末を除去し、さらに粉末を篩にかけて大きな粒子を除去し、篩のメッシュ数は250であり、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を得て、そして、前記ナノシリコン乾燥粉末をX線回折パターンで分析すると、2θ=28.4°付近のSi(111)に起因する回折ピークの半値幅に基づいて、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒は8.3nmであり、酸素・窒素・水素分析装置により検出したナノシリコン乾燥粉末における酸素の含有量は13%であった。
【0035】
(4)気相炭素源の被覆:ステップ(3)の規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を気相成長炉に入れ、窒素を注入して酸素含有量が100ppm以下になるまで空気を排出し、昇温速度3℃/minで700℃まで昇温させ、その後、気相成長のためにメタンを注入し、流量を3L/minにし、反応時間を3hに制御し、質量割合30wt%の均一な炭素被覆層を形成してシリコン-カーボン負極材を得て、そして、TEMによりシリコン-カーボン負極材をスキャンすると、測定した気相成長炭素源の厚さは90~130nmであった。
【0036】
実施例4
(1)ナノシリコンペーストの調製:メジアン粒径20μmのポリシリコン粉末1000gと脂肪酸ポリエチレングリコールエステル150gを、100:15の質量比でイソプロピルアルコールに添加し、混合溶液の固形分は30%であり、混合ペーストをサンドミルに導入し、ここで、研磨用セラミックボールとシリコン粉末の質量比を10:1とし、研磨時間を30hとし、目的のナノシリコンペーストを得て、当該ナノシリコンペーストをMastersizer 3000粒度分析計で検出すると、ナノシリコンのメジアン粒径が97nmであることを確認した。
【0037】
(2)噴霧乾燥:ステップ(1)のナノシリコンペーストを、熱風入口温度160℃、出口温度90℃の密閉型スプレードライヤーによって噴霧乾燥し、ナノシリコン乾燥粉末を得た。
【0038】
(3)機械的成形:ステップ(2)で得られたナノシリコン乾燥粉末を粉砕機で処理し、本体の強度を30Hzに調整し、選別強度を30Hzに調整し、ナノシリコン乾燥粉末の粒度寸法を小さくし、かつ選別により微小な粉末を除去し、さらに粉末を篩にかけて大きな粒子を除去し、篩のメッシュ数は200であり、集中された粒度分布と規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を得て、そして、前記ナノシリコン乾燥粉末をX線回折パターンで分析すると、2θ=28.4°付近のSi(111)に起因する回折ピークの半値幅に基づいて、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒は9.7nmであり、酸素・窒素・水素分析装置により検出したナノシリコン乾燥粉末における酸素の含有量は8%であった。
【0039】
(4)気相炭素源の被覆:ステップ(3)の規則的な形状を持つナノシリコン乾燥粉末を気相成長炉に入れ、ヘリウムを注入して酸素含有量が100ppm以下になるまで空気を排出し、昇温速度3℃/minで600℃まで昇温させ、その後、気相成長のために天然ガスを注入し、流量を5L/minにし、反応時間を4hに制御し、質量割合40wt%の均一な炭素被覆層を形成してシリコン-カーボン負極材を得て、そして、TEMによりシリコン-カーボン負極材をスキャンすると、測定した気相成長炭素源の厚さは150~200nmであった。
【0040】
比較例1
ステップ(1)を実施しない、すなわち、シリコン粉末原料をナノ化しない点以外、その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0041】
比較例2
ステップ(1)において、研磨時間およびビーズ材料比のパラメータを制御してナノシリコンの粒径D50を172nmに調整し、Scherrer式により算出したこの場合のナノシリコンの結晶粒が19.6nmである点は実施例1と異なる。その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0042】
比較例3
ステップ(1)において、研磨時間およびビーズ材料比のパラメータを制御してナノシリコンの粒径D50を458nmに調整し、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒が52.7nmである点は実施例1と異なる。その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0043】
比較例4
ステップ(2)において、ナノシリコンペーストを、噴霧乾燥ではなく、通常の加熱乾燥を行う点以外、その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0044】
比較例5
ステップ(3)において、ナノシリコン乾燥粉末を機械的に成形しない点以外、その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0045】
比較例6
ステップ(4)を実施しない、すなわち、ナノシリコン乾燥粉末を炭素で被覆しない点以外、その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0046】
比較例7
ステップ(4)において、炭素被覆層を気相成長法ではなく、固相混合被覆法で作製する点以外、その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0047】
比較例8
ステップ(1)において、研磨時間を90hに延長する点以外、その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0048】
酸素・窒素・水素分析装置により検出したナノシリコン乾燥粉末における酸素の質量含有量は39%であった。
【0049】
比較例9
ステップ(4)において、気相成長のためのメタンの流量と時間を増やすことにより、被覆層の質量割合を50wt%とする点以外、その他は実施例1と同様であるため、ここでは繰り返して説明しない。
【0050】
実施例1~4および比較例1~9のシリコン-カーボン負極材について、以下の方法で測定を行った。
【0051】
マルバーンレーザー式粒度分布測定機Mastersizer 3000を用いて、材料の粒度範囲を測定した。
【0052】
電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)(JSM-7160)を用いて、材料の形態とパターン処理を分析した。
【0053】
酸素・窒素・水素分析装置(ONH)を用いて、材料における酸素含有量を正確かつ迅速に測定した。
【0054】
材料をXRD回折装置(X’Pert3 Powder)で相分析し、材料の結晶粒サイズを決定した。
【0055】
電界放出型透過電子顕微鏡(TEM)(JEM-F200)を用いて、材料の形態とアモルファスカーボンの状態を分析した。
【0056】
米国マイクロメリティックスの比表面積/細孔分析装置(TriStar II 3020)を用いて、負極材の比表面積を測定した。
【0057】
タップ密度分析装置(Quantachrome Autotap)を用いて、負極材のタップ密度を測定した。
【0058】
クーロメトリック法によるカールフィッシャーモイスチャーアナライザーを用いて、負極材に含まれる水分量を測定した。
【0059】
実施例1~4および比較例1~9で得られたシリコン-カーボン負極材について、負極材、導電剤のカーボンブラック(Super P)、カーボンナノチューブ、LA133接着剤を質量比91:2:2:5で溶媒純水に混合して均質化し、固形分を45%に制御して銅箔電流コレクターに塗布し、真空乾燥して負極板を作製した。アルゴン雰囲気のグローブボックス内でボタン電池を組み立て、使用したセパレーターはCelgard2400、電解液は1mol/LのLiPF6/EC+DMC+EMC(v/v=1:1:1)、対極は金属リチウムシートである。ボタン電池を用いて、電圧範囲5mV~1.5V、電流密度80mA/gで充放電試験を実施した。実施例および比較例におけるシリコン-カーボン負極材の初回可逆容量と効率を測定した。
【0060】
ボタン電池で測定した初回可逆容量に基づいて、実施例および比較例のシリコン-カーボン負極材を同一タイプの安定的な人造黒鉛と混合し、混合粉末を用いて試験したボタン電池の初回可逆容量は420±2mAh/gであった。混合粉末をボタン電池の工程に従って負極板として作製し、既存工程で作製した3元系電極板を正極とし、そして、変わらない絶縁膜、電極液を用い、18650円筒型単電池として組み立てる。18650円筒型単電池の充放電試験を、電圧範囲2.5mV~4.2V、電流密度420mA/gで行い、ボタン電池と18650円筒型単電池の試験装置はいずれも、武漢金諾電子有限公司のLAND電池試験システムである。
【0061】
実施例1~4と比較例1~9のシリコン-カーボン負極材の性能試験結果は、以下のとおりである。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から分かるように、本出願に記載の方法を用いて作製したシリコン-カーボン負極材は、ナノシリコンと気相炭素源を含み、ナノシリコンは複合材料全体に分散し、ナノシリコンの表面の少なくとも一部は、気相成長した炭素源によって覆われる。得られたナノシリコンの粒子サイズをナノシリコン研磨工程で調整することができ、Scherrer式により算出したナノシリコンの結晶粒は10nm以下であった。気相成長炭素源工程により、異なる厚さの炭素源被覆層を得ることができ、複合材料全体をTEMでスキャンし、測定した気相成長炭素源の厚さは10~200nmであった。噴霧乾燥および機械的成形によってシリコンーカーボン複合材料の比表面積、メジアン粒径D50、水分、タップ密度などの物性パラメータを調整することができる。実施例1-4では、ナノシリコンのメジアン粒径、シリコンの結晶粒サイズ、気相成長炭素源の質量比の漸次増大、噴霧乾燥および機械的成形パラメータの調整に伴って、シリコン-カーボン負極材は、比表面積が徐々に減少し(8.9~2.1m/g)、メジアン粒径D50が徐々に大きくなり(3.2~18.3μm)、含水率が徐々に増加し(0.19~0.41wt.%)、タップ密度が徐々に増加し(0.61~0.94g/cm)、初回可逆容量が徐々に減少し(2236.9~1032.7mAh/g)、初回クーロン効率が徐々に低減し(86.3~82.1%)、円筒型電池のサイクル性能が徐々に低減する(87.2~80.8%)傾向がある。
【0064】
比較例1-3では、シリコン-カーボン負極材のシリコン粉末原料をナノ化しない場合、またはナノシリコンのメジアン粒径およびシリコンの結晶粒サイズが実施例1の仕様よりもはるかに大きい場合、得られたシリコン-カーボン負極材は、初回可逆容量、初回クーロン効率およびサイクル性能がいずれも低く、実施例1で作製した負極材と遥かに比べものにならない。比較例4では、ナノシリコンペーストを、噴霧乾燥せずに、通常の加熱乾燥を行い、これにより、得られたシリコン-カーボン負極材の初回可逆容量(1419.3mAh/g)および初回クーロン効率が低く(75.9%)、かつシリコン-カーボン負極材のメジアン粒径D50(21.9μm)および含水率が大きすぎる(1.58wt.%)。比較例5では、ナノシリコン乾燥粉末を機械的成形せずに得られたシリコン-カーボン負極材のメジアン粒径D50(32.4μm)は著しく大きすぎ、初回可逆容量、初回クーロン効率性能およびサイクル性能も劣る。比較例6では、ナノシリコン乾燥粉末を炭素で被覆せずに得られたシリコン-カーボン負極材は比表面積が大きすぎ(47.4m/g)、その初回可逆容量が高いが、初回クーロン効率性能が57.1%と著しく低下し、かつサイクル性能が21.9%と著しく劣化する。比較例7では、炭素被覆層を気相成長法ではなく、固相混合被覆で作製したシリコン-カーボン負極材の初回クーロン効率が82.6%と低く、サイクル性能も81.7%と劣化した。比較例8では、研磨時間を90hに延長し、酸素・窒素・水素分析装置で検出したナノシリコン乾燥粉末における酸素の質量含有量が39%であり、得られたシリコン-カーボン負極材の初回可逆容量および初回クーロン効率が著しく劣化し、電池のサイクル性能にも影響を及ぼした。比較例9では、気相成長のためのメタン流量と時間を増やすことにより、被覆層の質量割合を50wt%にし、得られたシリコン-カーボン負極材は、実施例1と比べて、初回可逆容量が僅かに957.1mAh/gで大幅に低下し、かつサイクル性能も劣化した。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】