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特表2023-522106操作されたキャプシドを有するアデノ随伴ウイルス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】操作されたキャプシドを有するアデノ随伴ウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/35 20060101AFI20230519BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230519BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C12N15/35
C07K14/015 ZNA
C12N7/01
C12N5/10
A61K35/76
A61K48/00
A61P9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563387
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021027979
(87)【国際公開番号】W WO2021216456
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/012,703
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521087782
【氏名又は名称】テナヤ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リード, クリストファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ゼ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA37
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA37
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、操作されたキャプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。特に本開示は、心臓細胞における形質導入効率の増加、細胞型選択性の増加、及び/又は他の望ましい特性を達成する、操作されたAAV9キャプシド、AAV5/9キメラキャプシド、又は組み合わせキャプシドを有するAAV9ビリオンを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親配列のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位のうちの1つ以上でバリアントポリペプチド配列を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシドタンパク質であって、前記親配列が、配列番号463と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む、キャプシドタンパク質。
【請求項2】
前記バリアントポリペプチド配列が、心臓栄養性(cardiotrophic)バリアントポリペプチド配列である、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項3】
前記キャプシドタンパク質が、前記親配列の前記VR-IV部位にバリアントポリペプチドを含む、請求項1又は2に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項4】
前記VR-IV部位の前記バリアントポリペプチドが、配列:
-X-X-X-X-X-X-X-X-X-を有し、
式中、
a)Xは、G、S又はVであり、
b)Xは、Y、Q又はIであり、
c)Xは、H、W、V又はIであり、
d)Xは、K又はNであり、
e)Xは、S、G又はIであり、
f)Xは、G又はRであり、
g)Xは、A、P又はVであり、
h)Xは、A又はRであり、
i)Xは、Q又はDである(配列番号477)、請求項3に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項5】
前記VR-IV部位の前記バリアントポリペプチドが、配列番号6~104から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項6】
前記VR-IV部位の前記バリアントポリペプチドが、GYHKSGAAQ(配列番号6)、VIIKSGAAQ(配列番号7)、GYHKIGAAQ(配列番号8)、SQVNGRPRD(配列番号33)及びGYHKSGVAQ(配列番号9)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項7】
前記VR-IV部位の前記バリアントポリペプチドが、前記アミノ酸配列GYHKSGAAQ(配列番号6)、又はGYHKSGAAQ(配列番号6)に対して最大で1、2、3、若しくは4つのアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項3に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項8】
前記キャプシドタンパク質が、前記親配列の前記VR-V部位にバリアントポリペプチドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項9】
前記VR-V部位の前記バリアントポリペプチドが、配列:
-X-X-X-X-X-X-を有し、
式中、
a)Xは、S、L、H、N、又はAであり、
b)Xは、T、M、K、G、又はNであり、
c)Xは、S、T、M又はIであり、
d)Xは、S、P、F、M、又はNであり、
e)Xは、F、S、P又はLであり、
f)Xは、I、V、又はTである(配列番号474)、請求項8に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項10】
前記VR-V部位の前記バリアントポリペプチドが、配列番号105~203から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項11】
前記VR-V部位の前記バリアントポリペプチドが、LNSMLI(配列番号105)、NGMSFT(配列番号106)、HKTFSI(配列番号107)、及びSMSNFV(配列番号108)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項12】
前記VR-V部位の前記バリアントポリペプチドが、前記アミノ酸配列LNSMLI(配列番号105)、又はLNSMLI(配列番号105)に対して最大で1、2、3、若しくは4つのアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項8に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項13】
前記キャプシドタンパク質が、前記親配列のVR-VII部位にバリアントポリペプチドを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項14】
前記VR-VII部位の前記バリアントポリペプチドが、配列:
-X-X-X-X-X-を有し、
式中、
a)Xは、V、L、Q、C、又はRであり、
b)Xは、S、H、G、C、又はDであり、
c)Xは、Y、S、L、G、又はNであり、
d)Xは、S、L、H、Q、又はNであり、
e)Xは、V、I、又はRである(配列番号475)、請求項13に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項15】
前記VR-VII部位の前記バリアントポリペプチドが、配列番号204~302から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項16】
前記VR-VII部位の前記バリアントポリペプチドが、RGNQV(配列番号204)、VSLNR(配列番号205)、CDYSV(配列番号206)、及びQHGHI(配列番号207)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項17】
前記VR-VII部位の前記バリアントポリペプチドが、前記アミノ酸配列RGNQV(配列番号204)、又はRGNQV(配列番号204)に対して最大で1、2、若しくは3つのアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項13に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項18】
前記キャプシドタンパク質が、前記親配列の前記VR-VII部位にバリアントポリペプチドを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項19】
前記VR-VIII部位の前記バリアントポリペプチドが、配列:
-X-X-X-X-を有し、
式中、
a)Xは、S、N、又はAであり、
b)Xは、V、M、N、又はAであり、
c)Xは、Y、V、S、又はGであり、
d)Xは、Y、T、M、G、又はNである(配列番号476)、請求項18に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項20】
前記VR-VIII部位の前記バリアントポリペプチドが、配列番号303~401から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項21】
前記VR-VIII部位の前記バリアントポリペプチドが、ANYG(配列番号305)、NVSY(配列番号303)、SMVN(配列番号304)、及びNVGT(配列番号306)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項22】
前記VR-VIII部位の前記バリアントポリペプチドが、前記アミノ酸配列ANYG(配列番号305)、又はANYG(配列番号305)に対して最大で1つ若しくは2つのアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項18に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項23】
前記VR-VIII部位の前記バリアントポリペプチドが、前記アミノ酸配列NVSY(配列番号303)、又はNVSY(配列番号303)に対して最大で1つ若しくは2つのアミノ酸置換を含む配列を含む、請求項18に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項24】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号402~410から選択される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項25】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号402と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項26】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号403と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項27】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号404と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項28】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号406と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項29】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号409と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項30】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号483と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項31】
前記キャプシドタンパク質が、AAV5/AAV9キメラキャプシドタンパク質である、請求項1~23のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項32】
前記キャプシドタンパク質が、AAV5キャプシドタンパク質からの少なくとも1つのセグメントを含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項33】
前記キャプシドタンパク質が、
a)配列番号411又は配列番号412と少なくとも95%同一の配列を含む第1のセグメント、
b)配列番号413又は配列番号414と少なくとも95%同一の配列を含む第2のセグメント、
c)配列番号415又は配列番号416と少なくとも95%同一の配列を含む第3のセグメント、
d)配列番号417又は配列番号418と少なくとも95%同一の配列を含む第4のセグメント、
e)配列番号419又は配列番号420と少なくとも95%同一の配列を含む第5のセグメント、を含み、
ここで、少なくとも1つのセグメントがAAV5キャプシドタンパク質由来であり、少なくとも1つのセグメントがAAV9キャプシドタンパク質由来である、請求項31又は32に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項34】
前記キメラキャプシドタンパク質が、配列番号445~462から選択される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項35】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号457と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項36】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号459と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項37】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号445と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項38】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号446と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項39】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号447と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項40】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号448と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項41】
配列番号463と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシドタンパク質。
【請求項42】
バリアントポリペプチド配列が、心臓栄養性バリアントポリペプチド配列である、請求項41に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項43】
前記キャプシドタンパク質が、AAV5キャプシドタンパク質からの少なくとも1つのセグメントを含む、請求項41又は42に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項44】
前記キャプシドタンパク質が、
f)配列番号411又は配列番号412と95%同一の配列を含む第1のセグメント、
g)配列番号413又は配列番号414と95%同一の配列を含む第2のセグメント、
h)配列番号415又は配列番号416と95%同一の配列を含む第3のセグメント、
i)配列番号417又は配列番号418と95%同一の配列を含む第4のセグメント、
j)配列番号419又は配列番号420と95%同一の配列を含む第5のセグメント、を含み、
ここで、少なくとも1つのセグメントが、AAV5キャプシドタンパク質由来であり、少なくとも1つのセグメントが、AAV9キャプシドタンパク質由来である、請求項41~43のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項45】
前記キメラキャプシドタンパク質が、配列番号421~444から選択される配列と少なくとも95%同一の配列を含む、請求項41~44のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項46】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号434と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項45に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項47】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号438と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項45に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項48】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号441と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項45に記載のキャプシドタンパク質。
【請求項49】
a)請求項1~48のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質、及び
b)1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン。
【請求項50】
前記rAAVビリオンが、前記親配列を含むAAVビリオンと比較して、心臓細胞における形質導入効率の増加を示す、請求項49に記載のrAAVビリオン。
【請求項51】
前記rAAVビリオンが、前記親配列を含むAAVビリオンと比較して、人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)細胞において増加した形質導入効率を示す、請求項49又は50に記載のrAAVビリオン。
【請求項52】
前記rAAVビリオンが、前記親配列を含むAAVビリオンと比較して、ヒト心臓線維芽細胞(hCF)細胞において増加した形質導入効率を示す、請求項49~51のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項53】
前記ヒト心臓線維芽細胞が、前記心臓の左心室に位置する、請求項52に記載のrAAVビリオン。
【請求項54】
前記rAAVビリオンが、100,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において少なくとも2倍増加した形質導入効率を示す、請求項51に記載のrAAVビリオン。
【請求項55】
前記rAAVビリオンが、75,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において少なくとも2倍増加した形質導入効率を示す、請求項51に記載のrAAVビリオン。
【請求項56】
前記rAAVビリオンが、C57BL/6Jマウスにおいて、少なくとも2倍増加した心臓形質導入効率を示し、前記マウスが、2.5E+11vg/マウスのビリオン投薬量で注射される、請求項49~55のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項57】
前記rAAVビリオンが、C57BL/6Jマウスにおいて、少なくとも1.5倍増加した心臓形質導入効率を示し、前記マウスが、2E+11vg/マウスのビリオン投薬量で注射される、請求項49~55のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項58】
前記rAAVビリオンが、C57BL/6Jマウスにおいて、少なくとも2倍増加した心臓形質導入効率を示し、前記マウスが、1E+11vg/マウスのビリオン投薬量を注射される、請求項49~55のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項59】
前記rAAVビリオンが、前記親配列を含むAAVビリオンと比較して、肝細胞における減少した形質導入効率を示す、請求項49~58のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項60】
前記rAAVビリオンが、前記親配列を含むAAVビリオンと比較して、改善されたNAb回避を示す、請求項49~59のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項61】
前記rAAVビリオンが、肝細胞よりも心臓細胞に対する前記rAAVビリオンの増加した選択性を示す、請求項49~60のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項62】
前記rAAVビリオンが、肝細胞よりもiPS-CM細胞に対する前記rAAVビリオンの増加した選択性を示す、請求項49~61のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項63】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号404と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む、請求項49~62のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項64】
前記キャプシドタンパク質が、配列番号483と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む、請求項49~62のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項65】
請求項49~64のいずれか一項に記載のrAAVビリオン及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項66】
請求項1~64のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項67】
心臓細胞を形質導入する方法であって、前記心臓細胞を、請求項49~64のいずれか一項に記載のrAAVビリオンと接触させることを含み、前記rAAVビリオンが前記心臓細胞を形質導入する、方法。
【請求項68】
前記心臓細胞が、心筋細胞である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記rAAVビリオンが、AAV9キャプシドタンパク質配列を含むAAVビリオンと比較して、前記細胞において増加した形質導入効率を示す、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記rAAVビリオンが、75,000の感染多重度(MOI)で、AAV9キャプシドタンパク質配列を含むAAVビリオンと比較して、前記細胞において少なくとも2倍増加した形質導入効率を示す、請求項67~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
1つ以上の遺伝子産物を心臓細胞に送達する方法であって、前記心臓細胞を、請求項49~64のいずれか一項に記載のrAAVビリオンと接触させることを含む、方法。
【請求項72】
前記心臓細胞が、心筋細胞である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
心臓病態の治療を必要とする対象における心臓病態を治療する方法であって、治療有効量の請求項49~64のいずれか一項に記載のrAAVビリオン又は請求項61に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記rAAVビリオンが心臓組織を形質導入する、方法。
【請求項74】
前記1つ以上の遺伝子産物が、MYBPC3、DWORF、KCNH2、TRPM4、DSG2、PKP2、及び/又はATP2A2を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記1つ以上の遺伝子産物が、CACNA1C、DMD、DMPK、EPG5、EVC、EVC2、FBN1、NF1、SCN5A、SOS1、NPR1、ERBB4、VIP、MYH7、及び/又はCas9を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記1つ以上の遺伝子産物が、MYOCD、ASCL1、GATA4、MEF2C、TBX5、miR-133、及び/又はMESP1を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
請求項67に記載の医薬組成物及び使用説明書を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月20日に出願された米国仮出願番号第63/012,703号に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、アデノ随伴ウイルスベクターによる遺伝子療法に関する。特に本開示は、操作されたキャプシドタンパク質を有する組換えアデノ随伴ウイルスビリオンに関する。
【0003】
配列表への言及
本出願は、EFS-Webを介して電子的に出願されており、.txt形式の電子的に提出された配列表を含む。.txtファイルには、2021年4月13日に作成された約479キロバイトのサイズの「TENA_019_01WO_SeqList_ST25.txt」という名称の配列表が含まれている。この.txtファイルに含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子療法及びその他の生物医学応用に有望である。特に、AAVは、インビトロ及びインビボの両方で、様々な組織及び細胞に遺伝子産物を送達するために使用することができる。AAVのキャプシドタンパク質は、主にAAVベクターの免疫原性及び指向性を決定する。
【0005】
心臓組織については、全身送達後に心臓を形質導入する能力があるため、AAVサブタイプ9(AAV9)が好ましいAAVベクターである。AAV9は心臓への適度な遺伝子導入を達成できるが、ベクターの大半は肝臓に輸送される。更に、心臓における遺伝子導入の治療レベルを達成するためには、比較的高用量の全身投与が必要であり、全身炎症、ひいては毒性につながる可能性がある。
【0006】
心臓指向性の改善、及び任意選択的には肝臓よりも心臓組織の選択性の改善を達成する、操作されたキャプシドタンパク質を有するアデノ随伴ウイルスの開発に対するニーズがある。本開示は、心臓組織及び/又は細胞型を、野生型AAV9キャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンよりもより効率的及び/又はより選択的に形質導入することができるrAAVビリオンを形成する、AAV9キャプシド及び/又はキメラAAV5/AAV9キャプシドのバリアントを提供するものであり、これは安全で有効な心臓遺伝子療法に使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本開示は、親配列のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位のうちの1つ以上でバリアントポリペプチド配列を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシドタンパク質を提供し、親配列は、配列番号463と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチド配列は、心臓栄養性(cardiotrophic)バリアントポリペプチド配列である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、親配列のVR-IV部位にバリアントポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、VR-IV部位のバリアントポリペプチドは、配列:
-X-X-X-X-X-X-X-X-X-を有し、
式中、Xは、G、S又はVであり、Xは、Y、Q又はIであり、Xは、H、W、V又はIであり、Xは、K又はNであり、Xは、S、G又はIであり、Xは、G又はRであり、Xは、A、P又はVであり、Xは、A又はRであり、Xは、Q又はDである(配列番号477)。いくつかの実施形態では、VR-IV部位のバリアントポリペプチドは、配列番号6~104から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-IV部位のバリアントポリペプチドは、GYHKSGAAQ(配列番号6)、VIIKSGAAQ(配列番号7)、GYHKIGAAQ(配列番号8)、SQVNGRPRD(配列番号33)及びGYHKSGVAQ(配列番号9)から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-IV部位のバリアントポリペプチドは、アミノ酸配列GYHKSGAAQ(配列番号6)、又はGYHKSGAAQ(配列番号6)に対して最大で1、2、3、若しくは4つのアミノ酸置換を含む配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、親配列のVR-V部位にバリアントポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、VR-V部位のバリアントポリペプチドは、配列:
-X-X-X-X-X-X-を有し、
式中、Xは、S、L、H、N、又はAであり、Xは、T、M、K、G、又はNであり、Xは、S、T、M又はIであり、Xは、S、P、F、M、又はNであり、Xは、F、S、P、又はLであり、Xは、I、V、又はTである(配列番号474)。いくつかの実施形態では、VR-V部位のバリアントポリペプチドは、配列番号105~203から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-V部位のバリアントポリペプチドは、LNSMLI(配列番号105)、NGMSFT(配列番号106)、HKTFSI(配列番号107)、及びSMSNFV(配列番号108)から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-V部位のバリアントポリペプチドは、アミノ酸配列LNSMLI(配列番号105)、又はLNSMLI(配列番号105)に対して最大で1、2、3、若しくは4つのアミノ酸置換を含む配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、親配列のVR-VII部位にバリアントポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、VR-VII部位のバリアントポリペプチドは、配列:
-X-X-X-X-X-を有し、
式中、Xは、V、L、Q、C、又はRであり、Xは、S、H、G、C、又はDであり、Xは、Y、S、L、G、又はNであり、Xは、S、L、H、Q、又はNであり、Xは、V、I、又はRである(配列番号475)。いくつかの実施形態では、VR-VII部位のバリアントポリペプチドは、配列番号204~302から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-VII部位のバリアントポリペプチドは、RGNQV(配列番号204)、VSLNR(配列番号205)、CDYSV(配列番号206)、及びQHGHI(配列番号207)から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-VII部位のバリアントポリペプチドは、アミノ酸配列RGNQV(配列番号204)、又はRGNQV(配列番号204)に対して最大で1、2、若しくは3つのアミノ酸置換を含む配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、親配列のVR-VII部位にバリアントポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位のバリアントポリペプチドは、配列:
-X-X-X-X-を有し、
式中、Xは、S、N、又はAであり、Xは、V、M、N、又はAであり、Xは、Y、V、S、又はGであり、Xは、Y、T、M、G、又はNである(配列番号476)。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位のバリアントポリペプチドは、配列番号303~401から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位のバリアントポリペプチドは、ANYG(配列番号305)、NVSY(配列番号303)、SMVN(配列番号304)、及びNVGT(配列番号306)から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位のバリアントポリペプチドは、アミノ酸配列ANYG(配列番号305)、又はANYG(配列番号305)に対して最大で1つ又は2つのアミノ酸置換を含む配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位のバリアントポリペプチドは、アミノ酸配列NVSY(配列番号303)、又はNVSY(配列番号303)に対して最大で1つ又は2つのアミノ酸置換を含む配列を含む。
【0012】
一態様では、本開示は、親配列のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位のうちの1つ以上でバリアントポリペプチド配列を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシドタンパク質を提供し、親配列は、配列番号463と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号402~410から選択される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号402と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号403と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号404と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号406と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号409と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、482と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、483に対して少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、484に対し、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、485に対して少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV5/AAV9キメラキャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV5キャプシドタンパク質からの少なくとも1つのセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質が、a)配列番号411又は配列番号412と95%同一の配列を含む第1のセグメント、b)配列番号413又は配列番号414と95%同一の配列を含む第2のセグメント、c)配列番号415又は配列番号416と95%同一の配列を含む第3のセグメント、d)配列番号417又は配列番号418と95%同一の配列を含む第4のセグメント、e)配列番号419又は配列番号420と95%同一の配列を含む第5のセグメント、を含み、ここで、少なくとも1つのセグメントがAAV5キャプシドタンパク質由来であり、少なくとも1つのセグメントがAAV9キャプシドタンパク質由来である。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質は、配列番号445~462から選択される配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号457と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号459と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号445と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号446と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号447と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号448と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0014】
一態様では、本開示は、配列番号463と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシドタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、バリアントポリペプチド配列は、心臓栄養性バリアントポリペプチド配列である。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV5キャプシドタンパク質からの少なくとも1つのセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、
a)配列番号411又は配列番号412と少なくとも95%同一の配列を含む第1のセグメント、
b)配列番号413又は配列番号414と少なくとも95%同一の配列を含む第2のセグメント、
c)配列番号415又は配列番号416と少なくとも95%同一の配列を含む第3のセグメント、
d)配列番号417又は配列番号418と少なくとも95%同一の配列を含む第4のセグメント、
e)配列番号419又は配列番号420と95%同一の配列を含む第5のセグメント、を含み、
ここで、少なくとも1つのセグメントが、AAV5キャプシドタンパク質由来であり、少なくとも1つのセグメントは、AAV9キャプシドタンパク質由来である。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質は、配列番号421~444から選択される配列と少なくとも95%同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号434と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号438と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号441と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0015】
一態様では、本開示は、本開示のキャプシドタンパク質及び1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、配列番号404と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、キャプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、配列番号483と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、キャプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、心臓細胞において増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、心臓の左心室に位置する。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)細胞において増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、ヒト心臓線維芽細胞(hCF)細胞において増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において少なくとも2倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、75,000の多重性感染(MOI)において、iPS-CM細胞において少なくとも2倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、C57BL/6Jマウスにおいて、少なくとも2倍増加した心臓形質導入効率を示し、マウスは、2.5E+11vg/マウスのビリオン用量を注射される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、C57BL/6Jマウスにおいて、少なくとも1.5倍増加した心臓形質導入効率を示し、マウスは、ビリオン用量の2E+11vg/マウスを注射される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、C57BL/6Jマウスにおいて、少なくとも2倍増加した心臓形質導入効率を示し、マウスは、1E+11vg/マウスのビリオン用量を注射される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、肝細胞における減少した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、改善されたNAb回避を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、肝細胞よりも心臓細胞に対するrAAVビリオンの増加した選択性を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、肝細胞よりもiPS-CM細胞に対するrAAVビリオンの増加した選択性を示す。
【0016】
一態様では、本開示は、本開示のrAAVビリオン及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0017】
一態様では、本開示は、本開示のキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号404と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、キャプシドタンパク質をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号483と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含む、キャプシドタンパク質をコードする配列を含む。
【0018】
一態様では、本開示は、心臓細胞を本開示のrAAVビリオンと接触させることを含む、心臓細胞を形質導入する方法を提供し、rAAVビリオンが心臓細胞を形質導入する。いくつかの実施形態では、心臓細胞は心筋細胞である。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV9キャプシドタンパク質配列を含むAAVビリオンと比較して、細胞において増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、75,000の感染多重度(MOI)で、AAV9キャプシドタンパク質配列を含むAAVビリオン(viron)と比較して、細胞において少なくとも2倍増加した形質導入効率を示す。
【0019】
一態様では、本開示は、1つ以上の遺伝子産物を心臓細胞に送達する方法であって、心臓細胞を本開示のrAAVビリオンと接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、心臓細胞は心筋細胞である。
【0020】
一態様では、本開示は、心臓病態の治療を必要とする対象において心臓病態を治療する方法であって、治療有効量の本開示のrAAVビリオン又は本開示の医薬組成物を対象に投与することを含み、rAAVビリオンが心臓組織を形質導入する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子産物は、MYBPC3、DWORF、KCNH2,TRPM4、DSG2、PKP2、及び/又はATP2A2を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子産物は、CACNA1C、DMD、DMPK、EPG5、EVC、EVC2、FBN1、NF1、SCN5A、SOS1、NPR1、ERBB4、VIP、MYH7、及び/又はCas9を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の遺伝子産物は、MYOCD、ASCL1、GATA4、MEF2C、TBX5、miR-133、及び/又はMESP1を含む。
【0021】
一態様では、本開示は、本開示の医薬組成物及び使用説明書を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】選択されたAAV9可変領域(VR-IV、VR-V、VR-VII、及びVR-VIII部位)中のアミノ酸を強調するAAV9キャプシドを示す。
図2】指向性進化法選択戦略及びバリアント特性評価の概略図を示す。ライブラリの生成後、各ライブラリはhiPSC-CMで1ラウンド、マウスモデルで2ラウンド選択を受けた。各ライブラリからの上位バリアントを、ウイルスの全身送達後のインビトロ形質導入(hiPSC-CM)及びインビボ形質導入(心臓及び肝臓)の評価を通して特徴付けした。上位バリアントを、ヒトNAb阻害を回避する能力についてスクリーニングした。
図3A】3ラウンドのライブラリスクリーニング後のVR改変ライブラリのグラフ表現を示す。親ウイルスライブラリで3ラウンドの選択後におけるVR-IV(図3A)、VR-V(図3B)、VR-VII(図3C)及びVR-VIII(図3D)のライブラリ複雑度のグラフ表現を示し、画像中の各読み取りデータは、画像の中の1ピクセルと相関する。タンパク質配列は、配列の疎水性に基づいて固有の色を与えられ、同じ配列の読み取りデータは一緒にクラスターを形成する。
図3B】同上。
図3C】同上。
図3D】同上。
図4A】指向性進化法の後にVR-IV(図4A)、VR-V(図4B)、VR-VII(図4C)及びVR-VIII(図4D)部位で同定されたタンパク質モチーフを示す。
図4B】同上。
図4C】同上。
図4D】同上。
図5】AAV VR-IV改変バリアントがAAV9と比較して優れたhiPSC-CM形質導入を示すことを示す。ヒトIPSC由来の心筋細胞に、遍在的に発現するGFPレポーターをパッケージングする、AAV9又は様々な進化したキャプシドバリアントを100,000のMOIで感染させた。感染の3日後、フローサイトメトリーによりGFP発現を定量した。CR9-01(129倍)、CR9-07(16倍)、及びCR9-13(9倍)は、AAV9と比較して有意に改善された形質導入を示したが、一方CR9-10、CR9-13、及びCR9-14は形質導入のわずかな増加を示した。図の下半分は、AAV9及び形質導入の劇的な増加を示すCR9-01の代表的な画像を示す。
図6A】新規のAAVバリアントのインビボでの特性評価を示す。AAV9:CAG-GFP又は新規キャプシドにパッケージングされたCAG-GFPを、2.5×1011vg/マウス(群当たりn=2~3マウス)でC57BL/6Jに後眼窩注射した。図6Aは、CR9-07、CR9-10、CR9-13、及びCR9-14が、ELISAにより決定されるとき、AAV9よりも有意に高い心臓形質導入を示したことを示す(p<0.05、一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定)。図6Bは、上位形質導入バリアントの心臓の代表的な断面を示す。図6Cは、CR9-10及びCR9-14が、AAV9と比較して、肝臓指向性が有意に減少したことを示すことを示す(p<0.03、一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定)。図6Dは、上位バリアントの肝臓の代表的なIHC画像を示す。
図6B】同上。
図6C】同上。
図6D】同上。
図7A】プールされたヒトIgGに対するNAb阻害に対する新規のAAVバリアントの感受性を示す。図7Aは、0~600μg/mLの範囲のプールされたヒトIgG(約2000人の患者)の様々な用量での中和抗体の回避を評価するための実験計画の図解である。図7Bは、300μg/mLを超えるIgG濃度でのCR9-07及びCR9-13の中和の減少を示す用量反応曲線を示す。図7Cは、CR9-07及びCR9-13が、AAV9と比較して中和を有意に減少させたことを示す(p<0.0001、一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定)
図7B】同上。
図7C】同上。
図8】DNAシャッフリングによるAAV5/9キメラライブラリ生成の視覚的描写を示す。AAV9は、AAV5との相同性を改善するためにコドン改変され、両方のCap遺伝子は、DNaseI消化によって断片化され、2つのCap遺伝子間の部分的な相同性に基づいてPCRを介して再構築された。
図9】1ラウンドのインビボスクリーニング後に、AAV5/9キメラライブラリのライブラリの複雑度が有意に減少したことを示す。個々のAAVキメラの配列をグラフで示した。
図10A】上位AAV5/9キメラのインビトロ特性評価を示す。図10Aは、75,000のMOIでのhiPSC-CMの形質導入効率を示す。ZC44は、AAV9と比較して、改善されたhiPSC-CM形質導入を示す。図10Bは、1mg/mLのプールされたヒトIgGでの上位AAV5/9キメラのNAb回避の評価を示す。ZC44は、AAV9と比較して、増強されたNAbの回避を示す。
図10B】同上。
図11】キメラAAVバリアントのインビボでの特性評価を示す。AAV9:CAG-GFP又はキメラキャプシドにパッケージングされたCAG-GFPを、2×1011vg/マウス(群当たりn=3マウス)でC57BL/6Jに後眼窩注射した。注射の14日後、心臓(図11A)及び肝臓(図11B)を採取し、トランスフェクション効率及び特異性を評価するためにGFP発現を評価した。ZC40及びZC47は、野生型AAV9と比較して、改善された心臓特異性を示した。
図12】上位のAAV5/9キメラ及びAAV9 VR改変バリアントを組み合わせることによって、組み合わせ(combinatory)AAVバリアントを生成する様子を示す。
図13】VR改変及び組み合わせAAVキャプシドバリアントの製造可能性の評価を示す。AAVキャプシドバリアントの製造可能性を評価するために、中程度のベクター生産を実施した。CR9-07,CR9-10、及びTN40-14は、AAV9と比較して、製造可能性を改善した。
図14】組み合わせAAVバリアントが、hiPSC-CM形質導入を有意に改善していることを示す。ヒトIPSC由来心筋細胞に、遍在的に発現するGFPレポーターをパッケージングする、AAV9又は様々な組み合わせキャプシドバリアントを100,000のMOIで感染させた。感染の5日後、Cytation 5細胞イメージングリーダーを使用して、GFP発現を定量した。TN44-07及びTN47-07は、AAV9と比較して、hiPSC-CMの形質導入を有意に改善した(>15倍)。
図15A】新規のAAVバリアントのインビボ特性評価の結果を示す。AAV9:CAG-GFP又は新規キャプシドにパッケージングされたCAG-GFPを、1×1011vg/マウス(群当たりn=4マウス)でC57BL/6Jタイプを作製するにおいて後眼窩注射した。注射14日後、心臓及び肝臓を採取し、GFPの発現を評価した。図15Aは、心臓における各キャプシドバリアントの形質導入効率を示す。図15Bは、肝臓における各キャプシドバリアントの形質導入効率を示す。図15Cは、心臓における形質導入効率/肝臓における形質導入効率の比を示す。TN44-07及びTN47-10は、AAV9と比較して強化された心臓形質導入を示し、一方TN47-14は肝臓から脱標的化され、AAV9よりも有意に高い心臓対肝臓形質導入比を有した。
図15B】同上。
図15C】同上。
図16】上位組み合わせキャプシドバリアントのヒトNAb回避の評価を示す。全ての組み合わせAAVキャプシドバリアントは、プールされたヒトIgG中の中和抗体からの回避の改善を示し、同時にTN44-07が最もステルスなキャプシドでありAAV9と比較してNAb中和の非常に有意な減少を有する(p=0.0002、t検定、ウェルチ補正)。
図17A】標準的なAAV9キャプシドに対して基準にされたカニクイザルの左心室における、異なる操作されたキャプシドを有するrAAVビリオンの相対的形質導入を示す。2つのキャプシドバリアントTN3及びTN6は、左心室の形質導入において有意な改善を示した。
図17B】肝臓におけるキャプシドバリアントの形質導入プロファイルを示す。キャプシドバリアントの大部分は、AAV9と比較して減少した肝臓指向性を示す。
図17C】AAV9キャプシドに対して正規化された、相対的な心臓対肝臓の形質導入比を示す。TN3は、AAV9と比較して、心臓対肝臓の特異性が5倍増加したことが明らかとなった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。特に、本開示は、操作されたキャプシドタンパク質(キメラキャプシドタンパク質を含む)、それらを同定する方法、及びそれらを使用する方法を提供する。本明細書に開示される新しいキャプシドタンパク質を同定する方法は、キメラキャプシドタンパク質を含む、AAVの任意の血清型に対して広範な適用可能性を有する。更に、これらは、本方法又は他の方法からの変異を有するキャプシドタンパク質を繰り返し改善するために適用できる。一般に、本開示の方法は、cap遺伝子ポリヌクレオチドの形態のAAVキャプシドの無作為化又は半無作為化ライブラリの調製、このようなキャプシドを含むAAVビリオンの調製(cap遺伝子ライブラリをAAVゲノムに組み込むか又はパッケージング系統にトランスフェクトされたプラスミド上などでトランスで(in trans)提供するかのいずれかによって)、AAVビリオンのポジティブ又はネガティブ選択、及びシーケンシングのためのcap遺伝子回収に関する。いくつかの実施形態では、回収及びシーケンシングは、ナノポアシーケンシングを含む。他のハイスループット又は次世代シーケンシング(NGS)法を使用してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、
a)本明細書に記載のキャプシドタンパク質及び
b)1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸、を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるrAAVビリオンは、本明細書に開示されるAAV9キャプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるrAAVビリオンは、本明細書に開示されるキメラAAV5/AAV9キャプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるrAAVビリオンは、本明細書に開示される組み合わせキャプシドタンパク質を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質は、以下に示すように、配列番号1と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の同一性を共有する配列を含む。VP1、VP2、及びVP3、並びにVR部位(VR-IV、VR-V、VR-VII、及びVR-VIII)のN末端残基は、以下の完全長VP1(配列番号1)の配列に示されている。
【化1】

(配列番号1)
【0027】
VR部位におけるバリアントポリペプチド配列を有するキャプシドタンパク質
一態様では、本開示は、AAV9キャプシドタンパク質を提供し、キャプシドタンパク質は、親配列の1つ以上の部位で親配列に関するバリアントポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、親配列の1つ以上の部位はVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位からなる群から選択される。上記の配列番号1で標識されているように、VR-IV部位は、親配列の残基452と460の間にあり(「NGSGQNQQT」、配列番号2)、VR-V部位は、親配列の残基497と502の間にあり(「NNSEFA」、配列番号3)、VR-VII部位は、親配列の残基549と553の間にあり(「GRDNV」配列番号4)、VR-VIII部位は、親配列の残基586と589の間にある(「SAQA」配列番号5)。いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質は、VR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及び/又はVR-VIII部位を除いて配列番号1と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質は、親配列のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位のうちの1つ以上でバリアントポリペプチド配列を含み、親配列は、配列番号463と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む。(配列番号463では、「X」と標識されたアミノ酸残基は、配列同一性の計算から除外される。)
【0028】
いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質は、合理的に設計され、変異誘発によって導入され、又は1つ以上の部位でランダムコドン使用頻度を有する配列のライブラリを生成することによって無作為化される、いずれかのバリアントポリペプチド配列を含む。本開示のキャプシドタンパク質は、実施例に示されるがこれに限定されない、指向性進化法によって富化され、その後にシーケンシングが行われる同定された任意のバリアントポリペプチド配列を含む。任意の特定の置換部位に限定されるものではないが、いくつかの実施形態では、VR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位からなる群から選択される1つ以上の部位は、本明細書に記載されるアミノ酸置換を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、VR-IV部位にバリアントポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-IV部位全体(「NGSGQNQQT」、配列番号2)が、式:
-(X)-のペプチドで置換され、
式中、nは、7~11であり、Xは、20個の標準アミノ酸(配列番号478)のうちのいずれかを表す。
【0030】
いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-X-X-X-X-X-である。
【0031】
いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-X-X-X-X-X-であり、
式中、XはG、S若しくはVであり、XはY、Q若しくはIであり、XはH、W、V、若しくはIであり、XはK若しくはNであり、XはS、G若しくはIであり、XはG若しくはRであり、XはA、P若しくはVであり、XはA若しくはRであり、及び/又はXはQ若しくはDである(配列番号477)。
【0032】
いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、GYHKSGAAQ(配列番号6)、VIIKSGAAQ(配列番号7)、GYHKIGAAQ(配列番号8)、GYHKSGVAQ(配列番号9)、VYHKSGAAQ(配列番号10)、GYHKISAAQ(配列番号11)、TTVPSSSRY(配列番号12)、VIIRVVRLS(配列番号13)、TVLGQNQQT(配列番号14)、IYHKSGAAQ(配列番号15)、TVLDKNQQT(配列番号16)、YSGTDVRYK(配列番号17)、VTASGKEHR(配列番号18)、GYRKSGAAQ(配列番号19)、NRTVSNGSE(配列番号20)、TVLDRINKT(配列番号21)、TGVGHLTSA(配列番号22)、GYHKGGAAQ(配列番号23)、VIAKSGAAQ(配列番号24)、GYHKSGAAH(配列番号25)、FIIKSGAAQ(配列番号26)、GYHKVVRLS(配列番号27)、GATRSAVES(配列番号28)、TVSGQNQQT(配列番号29)、LSHKSGAAQ(配列番号30)、SSSGQNQQT(配列番号31)、SGSGQNQQT(配列番号32)、SQVNGRPRD(配列番号33)、GYHKEWCGS(配列番号34)、VVSSKSLNS(配列番号35)、GYHKSGAAP(配列番号36)、DASSREKVR(配列番号37)、SYHKSGAAQ(配列番号38)、TANGSQKYL(配列番号39)、VIIRVGAAQ(配列番号40)、SSTNKISTA(配列番号41)、TVLDRIQQT(配列番号42)、GYHKSGAVQ(配列番号43)、TVLDQNQQT(配列番号44)、VNMSSPIKT(配列番号45)、AAYNSNSAF(配列番号46)、GYHKSGAAR(配列番号47)、VIIRVVRLQ(配列番号48)、RFWTQNQQT(配列番号49)、SSPRASSAL(配列番号50)、IIIRVVRLS(配列番号51)、KSSNLTAMP(配列番号52)、NLNSDRHSA(配列番号53)、LSLKSGAAQ(配列番号54)、TVLDRNQQT(配列番号55)、GSERVSNSG(配列番号56)、VIAKIGAAQ(配列番号57)、VYHKIGAAQ(配列番号58)、LSYKSGAAQ(配列番号59)、STVSQPVRT(配列番号60)、GHHKSGAAQ(配列番号61)、YAGIDPRYH(配列番号62)、DRSRKSMCD(配列番号63)、VIIRSGAAQ(配列番号64)、GYHKSGGSA(配列番号65)、VIIKIGAAQ(配列番号66)、GYHKVVQLS(配列番号67)、VIIKLVAAQ(配列番号68)、KVSSHSVCD(配列番号69)、GYHKRVRLS(配列番号70)、GYHKSSAAQ(配列番号71)、GYRKIGAAQ(配列番号72)、GYHKSGAAC(配列番号73)、GYRQSGAAQ(配列番号74)、VIIKLIAAQ(配列番号75)、VIIRVVRAQ(配列番号76)、GYHKSGAAW(配列番号77)、GYHKSGAVS(配列番号78)、GYHKEWCSS(配列番号79)、SSSSNRLAD(配列番号80)、SNNSSSAKF(配列番号81)、VKLSSTSSS(配列番号82)、GYHKEWCAQ(配列番号83)、AGSGQNQQT(配列番号84)、NPHGTATYL(配列番号85)、NGSGQNQHT(配列番号86)、GYHKVGAAQ(配列番号87)、VIIRVVRLK(配列番号88)、NSIPSTSKW(配列番号89)、VIIRVVQLQ(配列番号90)、SQVNGRPQD(配列番号91)、NGSGQDQQT(配列番号92)、GLNSSDRRL(配列番号93)、IYHKIGAAQ(配列番号94)、YHKSGAAQL(配列番号95)、YSGTDVQYK(配列番号96)、LGSGQNQQT(配列番号97)、PVSSGADRR(配列番号98)、EHSTKLNAC(配列番号99)、NGSDRINKR(配列番号100)、VIIKGGAAQ(配列番号101)、GYHRVVRLS(配列番号102)、VIIRVVRLL(配列番号103)、及びVILKSGAAQ(配列番号104)から選択される配列を含むか又はそれからなる。
【0033】
いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、配列番号6~104のうちの1つと少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一のペプチド配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0034】
いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、GYHKSGAAQ(配列番号6)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、GYHKSGAAQ(配列番号6)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、GYHKSGAAQ(配列番号6)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、GYHKSGAAQ(配列番号6)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、SQVNGRPRD(配列番号33)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、SQVNGRPRD(配列番号33)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、SQVNGRPRD(配列番号33)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-IV部位におけるバリアントポリペプチド配列は、SQVNGRPRD(配列番号33)である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、VR-V部位にバリアントポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-V部位全体(「NNSEFA」、配列番号3)が、式:
-(X)-のペプチドで置換され、
式中、nは、4~8であり、Xは、20個の標準アミノ酸(配列番号479)のうちのいずれかを表す。
【0037】
いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-X-X-である
【0038】
いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-X-X-である
式中、Xは、S、L、H、N、又はAであり、Xは、T、M、K、G、又はNであり、Xは、S、T、M又はIであり、Xは、S、P、F、M、又はNであり、Xは、F、S、P又はLであり、Xは、I、V、又はTである(配列番号474)。
【0039】
いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、LNSMLI(配列番号105)、NGMSFT(配列番号106)、HKTFSI(配列番号107)、SMSNFV(配列番号108)、ATIPPI(配列番号109)、SSTHFD(配列番号110)、NNQFSY(配列番号111)、NMGHYS(配列番号112)、SKQMFQ(配列番号113)、WPSAGV(配列番号114)、NGGYQC(配列番号115)、STSPIV(配列番号116)、SQSGLW(配列番号117)、VNSQFS(配列番号118)、SGIEFR(配列番号119)、SASKFT(配列番号120)、QLNWTS(配列番号121)、SMGFPV(配列番号122)、SSFMGL(配列番号123)、GSNFHV(配列番号124)、DMTLYA(配列番号125)、MGCLFT(配列番号126)、ALAFNS(配列番号127)、SKFLFA(配列番号128)、QDAGLL(配列番号129)、QDASLL(配列番号130)、RDDMFS(配列番号131)、LSRCFQ(配列番号132)、LSRDFQ(配列番号133)、QGLTPV(配列番号134)、QWDVFT(配列番号135)、PRVSFA(配列番号136)、QSYYNP(配列番号137)、RASHLG(配列番号138)、IILFVP(配列番号139)、IISFSY(配列番号140)、LDSMLI(配列番号141)、NIGHYS(配列番号142)、NRMSFT(配列番号143)、NGMSFA(配列番号144)、IILLLP(配列番号145)、RMRSLL(配列番号146)、RRRCRF(配列番号147)、PKQMFQ(配列番号148)、LMSNFV(配列番号149)、GASHLG(配列番号150)、CASISW(配列番号151)、SMTTFR(配列番号152)、AAIPPI(配列番号153)、PGCESL(配列番号154)、SMGFAC(配列番号155)、FLPSLM(配列番号156)、NGISFT(配列番号157)、ESSRWA(配列番号158)、QLYFVP(配列番号159)、SSNFHV(配列番号160)、LEFMLI(配列番号161)、QFDSFD(配列番号162)、SPVFAC(配列番号163)、VRLIFD(配列番号164)、NGMSFI(配列番号165)、LLFPPI(配列番号166)、GAGVTG(配列番号167)、QWMSFT(配列番号168)、SIGFPV(配列番号169)、RMQSLL(配列番号170)、TSALQV(配列番号171)、SLTHFD(配列番号172)、QELPFL(配列番号173)、LYFLLP(配列番号174)、LSFFFA(配列番号175)、LSRIFQ(配列番号176)、DEVILF(配列番号177)、RAGVAG(配列番号178)、NGMSLP(配列番号179)、PFEDFQ(配列番号180)、QYGSLF(配列番号181)、NYTFVL(配列番号182)、MSGYQC(配列番号183)、NYAFVP(配列番号184)、RAGVTG(配列番号185)、WNSMLI(配列番号186)、IRRFSI(配列番号187)、NGMSFY(配列番号188)、IIQFSY(配列番号189)、NGCLFT(配列番号190)、RDASLL(配列番号191)、ADSMLI(配列番号192)、VDSQFS(配列番号193)、SIGNFV(配列番号194)、NGMSLL(配列番号195)、NYTFVP(配列番号196)、IRRLVF(配列番号197)、PMSNFV(配列番号198)、LWVFPV(配列番号199)、VRLHFD(配列番号200)、SMSNLF(配列番号201)、STSLIV(配列番号202)、及びHKTFGI(配列番号203)から選択される配列を含むか又はそれからなる。
【0040】
いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、配列番号105~203のうちの1つと少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一のペプチド配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0041】
いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、LNSMLI(配列番号105)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、LNSMLI(配列番号105)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、LNSMLI(配列番号105)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-V部位におけるバリアントポリペプチド配列は、LNSMLI(配列番号105)である。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、VR-VII部位にバリアントポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-VII部位全体(「GRDNV」、配列番号4)が、以下の式:
-(X)-のペプチドで置換され、
式中、nは、3~7であり、Xは、20個の標準アミノ酸(配列番号480)のうちのいずれかを表す。
【0043】
いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-X-である
【0044】
いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-X-である
式中、Xは、V、L、Q、C、又はRであり、Xは、S、H、G、C、又はDであり、Xは、Y、S、L、G、又はNであり、Xは、S、L、H、Q、又はNであり、Xは、V、I、又はRである(配列番号475)。
【0045】
いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポピペプチド配列は、RGNQV(配列番号204)、VSLNR(配列番号205)、CDYSV(配列番号206)、QHGHI(配列番号207)、LCSLV(配列番号208)、PTIYV(配列番号209)、DVIHI(配列番号210)、AEFYA(配列番号211)、NSVVC(配列番号212)、VRSNC(配列番号213)、LANNI(配列番号214)、NLQFM(配列番号215)、EFRDL(配列番号216)、DFGSL(配列番号217)、VTNYC(配列番号218)、WNTNA(配列番号219)、TESTC(配列番号220)、SGAAV(配列番号221)、GGCDI(配列番号222)、SGSVV(配列番号223)、SSNAC(配列番号224)、YNTTV(配列番号225)、SKCLA(配列番号226)、SAYTV(配列番号227)、VRDTV(配列番号228)、WRSMV(配列番号229)、AYHGV(配列番号230)、GMNTI(配列番号231)、AETSL(配列番号232)、TLVYV(配列番号233)、NHDWI(配列番号234)、TVGIV(配列番号235)、SLPTV(配列番号236)、TGILC(配列番号237)、TDTYI(配列番号238)、LPVTY(配列番号239)、GDVYI(配列番号240)、LYGTV(配列番号241)、GCEFI(配列番号242)、SAGLL(配列番号243)、IKSNI(配列番号244)、VTTSL(配列番号245)、AVTSV(配列番号246)、RDIHI(配列番号247)、SAISL(配列番号248)、VASTC(配列番号249)、IKGLL(配列番号250)、GSYHT(配列番号251)、RIGFV(配列番号252)、NDIYI(配列番号253)、AVSCV(配列番号254)、QHNLL(配列番号255)、VSSCV(配列番号256)、LNLDV(配列番号257)、LGATI(配列番号258)、PVLCV(配列番号259)、SARHI(配列番号260)、RATLI(配列番号261)、PYNHA(配列番号262)、IGDSI(配列番号263)、SPMLC(配列番号264)、YDSTL(配列番号265)、ALKHV(配列番号266)、ADLLT(配列番号267)、NNGHL(配列番号268)、INSEV(配列番号269)、SNKTT(配列番号270)、GSTGL(配列番号271)、DSDMI(配列番号272)、TSNFI(配列番号273)、RNFTT(配列番号274)、SHKYS(配列番号275)、VSDIV(配列番号276)、RVVQA(配列番号277)、AACAV(配列番号278)、RGRQI(配列番号279)、AVANI(配列番号280)、AGYDL(配列番号281)、LSEAA(配列番号282)、MSNYL(配列番号283)、NFSDN(配列番号284)、SCCDV(配列番号285)、LASSV(配列番号286)、PDHAV(配列番号287)、KFDII(配列番号288)、NSSSA(配列番号289)、HTMHV(配列番号290)、TLSYC(配列番号291)、ADTHR(配列番号292)、SMYSV(配列番号293)、SVNLV(配列番号294)、MSGHL(配列番号295)、KISDT(配列番号296)、TGLLA(配列番号297)、AWTTS(配列番号298)、GGALI(配列番号299)、SCIEV(配列番号300)、PPVIC(配列番号301)、及びGTYNL(配列番号302)から選択される配列を含むか又はそれからなる。
【0046】
いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、配列番号204-302のうちの1つと少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一のペプチド配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0047】
いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、RGNQV(配列番号204)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、RGNQV(配列番号204)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つのアミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、RGNQV(配列番号204)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、RGNQV(配列番号204)である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示のキャプシドタンパク質は、VR-VII部位にバリアントポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位全体(「SAQA」、配列番号5)は、式:
-(X)-のペプチドで置換され、
式中、nは、2~6であり、Xは、20個の標準アミノ酸(配列番号481)のうちのいずれかを表す。
【0049】
いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-である
【0050】
いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、
-X-X-X-X-である
式中、Xは、S、N、又はAであり、Xは、V、M、N、又はAであり、Xは、Y、V、S、又はGであり、Xは、Y、T、M、G、又はN(配列番号476)である。
【0051】
いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、NVSY(配列番号303)、SMVN(配列番号304)、ANYG(配列番号305)、NVGT(配列番号306)、SAYM(配列番号307)、EKVT(配列番号308)、TTPG(配列番号309)、GVYS(配列番号310)、SYVG(配列番号311)、LQYN(配列番号312)、DPAK(配列番号313)、THFS(配列番号314)、IGGV(配列番号315)、SSWN(配列番号316)、SVYV(配列番号317)、TLNG(配列番号318)、NTSN(配列番号319)、VQYA(配列番号320)、DQYR(配列番号321)、MPVS(配列番号322)、SAQA(配列番号323)、MTVA(配列番号324)、TVMG(配列番号325)、FSSI(配列番号326)、SLRL(配列番号327)、SAMG(配列番号328)、YIKL(配列番号329)、LMTM(配列番号330)、QVHL(配列番号331)、YNSV(配列番号332)、CVIS(配列番号333)、RLDG(配列番号334)、AIMV(配列番号335)、GTTG(配列番号336)、ASYT(配列番号337)、LHVG(配列番号338)、LQFA(配列番号339)、VRGD(配列番号340)、NVMI(配列番号341)、SLYG(配列番号342)、GTVG(配列番号343)、FNSV(配列番号344)、TRLG(配列番号345)、LKVL(配列番号346)、SIRV(配列番号347)、KIQG(配列番号348)、QILG(配列番号349)、QRDA(配列番号350)、EAVR(配列番号351)、AITV(配列番号352)、KESI(配列番号353)、LMVN(配列番号354)、INLS(配列番号355)、GQVS(配列番号356)、TSLL(配列番号357)、SSTL(配列番号358)、YEKF(配列番号359)、DGKL(配列番号360)、QVYS(配列番号361)、QKEG(配列番号362)、ARDM(配列番号363)、DNFR(配列番号364)、SHGL(配列番号365)、VSVN(配列番号366)、GLKD(配列番号367)、QPVF(配列番号368)、VYSM(配列番号369)、VMAQ(配列番号370)、FVGM(配列番号371)、WSTP(配列番号372)、SYPV(配列番号373)、TTYS(配列番号374)、TVTT(配列番号375)、KDKT(配列番号376)、YREL(配列番号377)、LSHF(配列番号378)、SPGT(配列番号379)、LMGT(配列番号380)、AASL(配列番号381)、FSNN(配列番号382)、QARL(配列番号383)、YHIA(配列番号384)、ARQD(配列番号385)、VAYT(配列番号386)、TPSY(配列番号387)、MILH(配列番号388)、LGNV(配列番号389)、TSIS(配列番号390)、TMVY(配列番号391)、LVVG(配列番号392)、SPLY(配列番号393)、YKSE(配列番号394)、FTRL(配列番号395)、VSYN(配列番号396)、ERTP(配列番号397)、FRSE(配列番号398)、NYTE(配列番号399)、QTIN(配列番号400)、及びDVHR(配列番号401)から選択される配列を含むか又はそれからなる。
【0052】
いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、配列番号303~401のうちの1つと少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一のペプチド配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0053】
いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、ANYG(配列番号305)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、ANYG(配列番号305)に対して最大で1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、ANYG(配列番号305)に対して最大で1つ、2つ、又は3つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、ANYG(配列番号305)である。
【0054】
いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、NVSY(配列番号303)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、NVSY(配列番号303)に対して最大で1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチドの配列は、NVSY(配列番号303)に対して最大で1つ、2つ、又は3つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、VR-VIII部位におけるバリアントポリペプチド配列は、NVSY(配列番号303)である。
【0055】
いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、配列番号402~410及び464~468のうちの1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一のポリペプチド配列、又はその機能的断片を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【表1】
【0056】
キメラAAV5/AAV9キャプシド
本開示はまた、配列番号463と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシドタンパク質を提供する。(配列番号463では、「X」と標識されたアミノ酸残基は、配列同一性の計算から除外される。)いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV5/AAV9キメラキャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、AAV5/AAV9キメラキャプシドタンパク質配列は、AAV9キャプシドタンパク質配列(配列番号1)と、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%を超えて同一である。いくつかの実施形態では、AAV5/AAV9キメラキャプシドタンパク質配列のC末端500残基は、AAV9キャプシドタンパク質配列(配列番号1)のC末端500残基と、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%同一である。いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質配列(配列番号1)のQ688にあたる位置の残基は、キメラキャプシドタンパク質中のリジン(K)である。
【0057】
いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質は、AAV5キャプシドタンパク質に由来する少なくとも1、2、3、4、5又はそれ以上のポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシドタンパク質に由来する少なくとも1、2、3、4、5又はそれ以上のポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリペプチドセグメントは、AAV5キャプシドタンパク質に由来し、少なくとも1つのポリペプチドセグメントは、AAV9キャプシドタンパク質に由来する。
【0058】
いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のN末端の最初の250残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のN末端の最初の225残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のN末端の最初の200残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のN末端の最初の150残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のN末端の最初の100残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のN末端の最初の50残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントの各々は、対応するAAV5キャプシド配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質の50~250残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質の50~200残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質の50~150残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質の100~250残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質の100~200残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質の150~250残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントの各々は、対応するAAV5キャプシド配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のC末端の最後の100残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質のC末端の最後の50残基は、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントの各々は、対応するAAV5キャプシド配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質は、上述のように、キメラキャプシドタンパク質のN末端又はその近くに1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントと、本段落に記載されるように、キメラキャプシドタンパク質のC末端又はその近くに1つ以上のAAV5キャプシド由来ポリペプチドセグメントと、を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質が、N末端からC末端への順序で、配列番号411と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号412と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第1のポリペプチドセグメント;配列番号413と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号414と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第2のポリペプチドセグメント;配列番号415と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号416と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第3のポリペプチドセグメント;配列番号417と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号418と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第4のポリペプチドセグメント;及び配列番号419と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号420と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第5のポリペプチドセグメントを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリペプチドセグメントは、AAV5キャプシドタンパク質に由来し、少なくとも1つのポリペプチドセグメントは、AAV9キャプシドタンパク質に由来する。
AAV9由来ポリペプチドセグメント1:
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWALKPGAPQPKANQQHQDNARGLVLPGY(配列番号411)
AAV5由来ポリペプチドセグメント1の配列:
MSFVDHPPDWLEEVGEGLREFLGLEAGPPKPKPNQQHQDQARGLVLPGY(配列番号412)
AAV9由来ポリペプチドセグメント2の配列:
KYLGPGNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLK(配列番号413)
AAV5由来ポリペプチドセグメント2の配列:
NYLGPGNGLDRGEPVNRADEVAREHDISYNEQLE(配列番号414)
AAV9由来ポリペプチドセグメント3の配列:
AGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRLLEP(配列番号415)
AAV5由来ポリペプチドセグメント3の配列:
AGDNPYLKYNHADAEFQEKLADDTSFGGNLGKAVFQAKKRVLEP(配列番号416)
AAV9由来ポリペプチドセグメント4の配列:
LGLVEEAAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSAGIGKSGAQPAKKRLNFGQTGDTESVPDPQPIGEPPAAPSGVGSLTMASGGGAPVA(配列番号417)
AAV5由来ポリペプチドセグメント4の配列:
FGLVEEGAKTAPTGKRIDDHFPKRKKARTEEDSKPSTSSDAEAGPSGSQQLQIPAQPASSLGADTMSAGGGGPLG(配列番号418)
AAV9由来ポリペプチドセグメント5の配列:
DNNEGADGVGSSSGNWHCDSQWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNSTSGGSSNDNAYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTDNNGVKTIANNLTSTVQVFTDSDYQLPYVLGSAHEGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNDGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYEFENVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSKTINGSGQNQQTLKFSVAGPSNMAVQGRNYIPGPSYRQQRVSTTVTQNNNSEFAWPGASSWALNGRNSLMNPGPAMASHKEGEDRFFPLSGSLIFGKQGTgrdnvDADKVMITNEEEIKTTNPVATESYGQVATNHQSAQAQAQTGWVQNQGILPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGMKHPPPQILIKNTPVPADPPTAFNKDKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSNNVEFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号419)
Q688K変異を有するAAV9由来ポリペプチドセグメント5の配列:
DNNEGADGVGSSSGNWHCDSQWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNSTSGGSSNDNAYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTDNNGVKTIANNLTSTVQVFTDSDYQLPYVLGSAHEGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNDGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYEFENVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSKTINGSGQNQQTLKFSVAGPSNMAVQGRNYIPGPSYRQQRVSTTVTQNNNSEFAWPGASSWALNGRNSLMNPGPAMASHKEGEDRFFPLSGSLIFGKQGTgrdnvDADKVMITNEEEIKTTNPVATESYGQVATNHQSAQAQAQTGWVQNQGILPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGMKHPPPQILIKNTPVPADPPTAFNKDKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELKKENSKRWNPEIQYTSNYYKSNNVEFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号420)
【0062】
いくつかの実施形態では、キメラキャプシドタンパク質は、配列番号421~444のうちの1つと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一のポリペプチド配列、又はその機能的断片を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【表2】
【0063】
組み合わせキャプシドタンパク質
一態様では、本開示は、組み合わせキャプシドタンパク質を提供する。本明細書で使用される場合、「組み合わせキャプシドタンパク質」は、本開示に記載のAAV5/AAV9キメラキャプシドタンパク質を指し、これは1つ以上の部位でキメラ親配列に関してアミノ酸変異を更に含む。いくつかの実施形態では、キメラ親配列の1つ以上の部位は、AAV9キャプシドタンパク質のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位にあたる部位から選択される。
【0064】
本開示の組み合わせキャプシドタンパク質は、限定されるものではないが、本実施例に示されるように同定された任意のバリアントポリペプチド配列を含む。任意の特定の例に限定されないが、いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質は、キメラAAV5/AAV9キャプシドタンパク質骨格を含み、本明細書に記載されるAAV9キャプシドタンパク質のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位にあたる部位からなる群から選択される1つ以上の部位にバリアントポリペプチド配列を更に含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質が、N末端からC末端への順序で、配列番号411と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号412と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第1のポリペプチドセグメント;配列番号413と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号414と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第2のポリペプチドセグメント;配列番号415と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号416と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第3のポリペプチドセグメント;配列番号417と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号418と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第4のポリペプチドセグメント;及び配列番号419と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列、又は配列番号420と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一の配列を有する第5のポリペプチドセグメントを含む(ここで、AAV9キャプシドタンパク質のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位及びVR-VIII部位にあたる領域は、第5のポリペプチドセグメントの配列同一性計算において除外される)。いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質は、VR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及び親配列のVR-VIII部位のうちの1つ以上でバリアントポリペプチド配列を含み、親配列は、配列番号463と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一の配列を含む。(配列番号463では、「X」と標識されたアミノ酸残基は、配列同一性の計算から除外される。)
【0066】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリペプチドセグメントは、AAV5キャプシドタンパク質に由来し、少なくとも1つのポリペプチドセグメントは、AAV9キャプシドタンパク質に由来する。
【0067】
いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシドタンパク質のVR-IV部位、VR-V部位、VR-VII部位、及びVR-VIII部位にあたる部位から選択される1つ以上の部位にバリアントポリペプチド配列を更に含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシドタンパク質のVR-IV部位にあたる部位にバリアントポリペプチド配列を有し、これは、GYHKSGAAQ(配列番号6)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的なるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質のVR-IV部位にあたる部位におけるバリアントポリペプチドの配列は、GYHKSGAAQ(配列番号6)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的なるか、又はそれからなる。
【0069】
いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシドタンパク質のVR-V部位にあたる部位にバリアントポリペプチド配列を有し、これは、LNSMLI(配列番号105)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的なるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質のVR-V部位にあたる部位におけるバリアントポリペプチドの配列は、LNSMLI(配列番号105)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的なるか、又はそれからなる。
【0070】
いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシドタンパク質のVR-VIII部位にあたる部位にバリアントポリペプチド配列を有し、これは、ANYG(配列番号305)又はNVSY(配列番号303)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は100%同一の配列を含むか、それから本質的なるか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質のVR-VIII部位にあたる部位におけるバリアントポリペプチドの配列は、ANYG(配列番号305)又はNVSY(配列番号303)に対して最大で1つ、2つ、3つ、又は4つの保存的アミノ酸置換からなる配列を含むか、それから本質的なるか、又はそれからなる。
【0071】
いくつかの実施形態では、AAV9キャプシドタンパク質配列(配列番号1)のQ688にあたる位置の残基は、組み合わせキャプシドタンパク質中のリジン(K)である。
【0072】
いくつかの実施形態では、組み合わせキャプシドタンパク質は、配列番号445~462のうちの1つと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは100%同一のポリペプチド配列、又はその機能的断片を含むか、それから本質的なるか、又はそれからなる。
【表3】
【0073】
追加の変異
例えば、形質導入効率又は組織選択性を更に改善するために、追加のアミノ酸置換が組み込まれてもよい。例示的な非限定的な置換としては、限定されるものではないが、AAV5又はAAV9ベースのキャプシドのいずれかにおける、AAV5の配列に対するS651A、T578A又はT582Aが挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV5又はAAV9ベースのキャプシドのいずれかにおいて、AAV5の配列に対してS651A、T578A、T582A、K251R、Y709F、Y693F、又はS485Aから選択される変異を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、AAV5又はAAV9ベースのキャプシドのいずれかにおいて、AAV5の配列に対してK251R、Y709F、Y693F、S485Aから選択される変異を含む。
【0075】
形質導入効率、指向性、及びNAb回避
形質導入効率は、当該技術分野で公知の方法又は実施例に記載される方法を使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を有するrAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、心臓細胞における増加した形質導入効率を示す。
【0076】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、ヒト心臓線維芽細胞(hCF)細胞において増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、ヒト心臓線維芽細胞は、心臓の左心室に位置する。
【0077】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、hCF細胞において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、hCF細胞において、約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、hCF細胞において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、hCF細胞において、約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%増加した形質導入効率を示す。
【0078】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、1,000の感染多重度(MOI)で、hCF細胞において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、1,000の感染多重度(MOI)で、hCF細胞において、約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、1,000の感染多重度(MOI)で、hCF細胞において、約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%増加した形質導入効率を示す。
【0079】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、人工多能性幹細胞由来心筋細胞(iPS-CM)細胞において増加した形質導入効率を示す。
【0080】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、100,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%増加した形質導入効率を示す。
【0081】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、75,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、75,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、75,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%増加した形質導入効率を示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、1,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、1,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、1,000の感染多重度(MOI)で、iPS-CM細胞において、約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%増加した形質導入効率を示す。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、心臓において増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、心臓における形質導入効率は、AAV9:CAG-GFP又は本開示の操作されたキャプシドタンパク質によって封入されたCAG-GFPのいずれかをC57BL/6Jマウスに注射することによってモニターされる。いくつかの実施形態では、注射用量は、2.5E+11vg/マウスである。いくつかの実施形態では、注射用量は、2E+11vg/マウスである。いくつかの実施形態では、注射用量は、1E+11vg/マウスである。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、心臓において少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、心臓において約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍増加した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、心臓において約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%増加した形質導入効率を示す。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、肝細胞における減少した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、肝臓形質導入効率は、AAV9:CAG-GFP又は本開示の操作されたキャプシドタンパク質によって封入されたCAG-GFPのいずれかをC57BL/6Jマウスに注射することによってモニターされる。いくつかの実施形態では、注射用量は、2.5E+11vg/マウスである。いくつかの実施形態では、注射用量は、2E+11vg/マウスである。いくつかの実施形態では、注射用量は、1E+11vg/マウスである。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、肝臓において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍減少した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、肝臓において約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍減少した形質導入効率を示す。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、肝臓において約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、又は約80%~100%減少した形質導入効率を示す。
【0085】
1つの細胞/組織/臓器型の他方に対する形質導入効率の比が、親配列を含むAAVビリオンと比較して本開示の操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンについて増加する場合、細胞型及び/又は組織/臓器型に対する選択性は増加する。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、肝臓細胞よりもiPS-CM細胞に対する選択性の増加を示す。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、インビボで注射された場合、肝臓よりも心臓に対する選択性の増加を示す。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、インビボで注射された場合、肝臓よりも心臓の左心室に対する選択性の増加を示す。
【0086】
いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍増加した、肝臓細胞よりもiPS-CM細胞及び/又は肝臓よりも心臓の選択性を示す。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍増加した、肝臓細胞よりもiPS-CM細胞及び/又は肝臓よりも心臓の選択性を示す。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%増加した、肝臓細胞よりもiPS-CM細胞及び/又は肝臓よりも心臓の選択性を示す。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、親配列を含むAAVビリオンと比較して、ヒトNAb(中和抗体)を回避する改善された能力を示す。いくつかの実施形態では、ヒトNAbを回避する能力は、NAb阻害アッセイを介して測定される。NAb阻害アッセイの非限定的な例は、本開示の実施例のセクションに記載される。いくつかの実施形態では、NAb阻害アッセイは、所定のMOIで標的細胞を処置する前に、プールされたヒトNAb(例えば、IgG)とともにAAVビリオンをインキュベートすることによって行われ、プールされたヒトNAbとともにインキュベートされていないAAVビリオンと比較して形質導入効率の減少を測定する。NAb阻害が少ないことは、ヒトNAbを回避するAAVビリオンの改善された能力を示す。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、又は15倍のヒトNAbを回避する改善された能力を示す。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、約2~約16倍、約2~約14倍、約2~約12倍、約2~約10倍、約2~約8倍、約2~約6倍、約2~約4倍、又は約2~約3倍のヒトNAbを回避する改善された能力を示す。いくつかの実施形態では、操作されたキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンは、約20%~30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~80%、約80%~100%、約100%~125%、約125%~150%、約150%~175%、又は約175%~200%のヒトNAbを回避する改善された能力を示す。
【0088】
キャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、野生型cap遺伝子の天然コドン、又は同じタンパク質をコードするように選択される代替コドンのいずれかを含む配列を含み得る。挿入のコドン使用頻度を変化させることができる。適切なヌクレオチド配列を選択し、本開示の任意のキャプシドタンパク質をコードするための代替的ヌクレオチド配列を導き出することは、当業者の範囲内である。タンパク質配列の逆翻訳は、宿主生物のコドン使用頻度表、すなわちヒトの真核生物コドン使用頻度を使用して実施することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号402~410及び464~468のうちのいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一の配列を含むAAV9由来キャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号421~444のうちのいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一の配列を含むAAV5/AAV9キメラキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号445~462のうちのいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一の配列を含む組み合わせキャプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号402~410、421~462、464~468から選択される改変キャプシドと少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、又は100%同一の配列を含むAAV9、AAV5/AAV9キメラ、又は組み合わせキャプシドタンパク質を提供し、ここで、指定されたパーセントの同一性レベルでのアミノ酸置換、任意選択的に保存的置換が許容される。
【0093】
遺伝子産物
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、MYBPC3、KCNH2、TRPM4、DSG2、ATP2A2、CACNA1C、DMD、DMPK、EPG5、EVC、EVC2、FBN1、NF1、SCN5A、SOS1、NPR1、ERBB4、VIP、MYH7又は、その変異体、バリアント、若しくは断片から選択される1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、ASCL1、MYOCD、MEF2C、及びTBX5から選択される1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、ASCL1、MYOCD、MEF2C、及びTBX5、CCNB1、CCND1、CDK1、CDK4、AURKB、OCT4、BAF60C、ESRRG、GATA4、GATA6、HAND2、IRX4、ISLL、MESP1、MESP2、NKX2.5、SRF、TBX20、ZFPM2、並びにMIR-133から選択される1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、MYBPC3、DWORF、KCNH2、TRPM4、DSG2、PKP2、及びATP2A2から選択される1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、CACNA1C、DMD、DMPK、EPG5、EVC、EVC2、FBN1、NF1、SCN5A、SOS1、NPR1、ERBB4、VIP、MYH7、及びCas9から選択される1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、MYOCD、ASCL1、GATA4、MEF2C、TBX5、miR-133、及びMESP1から選択される1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。
【0098】
定義
文脈が別段の示唆をしない限り、本発明の特徴は、任意の組み合わせで使用することができる。記載された任意の特徴又は特徴の組み合わせを除外又は省略することができる。別個の実施形態に記載される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよい。単一の実施形態に記載される本発明の特徴は、別個に又は任意の適切な部分的な組み合わせで提供されてもよい。実施形態の全ての組み合わせは、各々及び全ての組み合わせが個別に開示されているかのように、本明細書に開示されている。実施形態及び要素の全ての部分的な組み合わせは、あたかも全てのこうした部分的な組み合わせが個別に開示されているかのように、本明細書に開示される。
【0099】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。詳細な説明は、読者の便宜のためにのみセクションに分割され、任意のセクションに見られる開示は、別のセクションの開示と組み合わせることができる。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び材料をこれから説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、その刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び記述するために、参照により組み込まれる。刊行物への言及は、その刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0100】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、「組換えAAVビリオン」への言及は、複数のこのようなビリオンを含み、また「その心臓細胞」への言及は、1つ以上の心臓細胞を含む。
【0101】
接続詞「及び/又は」は、「及び」と「又は」との両方を意味し、「及び/又は」によって接続された列挙は、列挙された項目の1つ以上の全ての可能な組み合わせを包含する。
【0102】
用語「ベクター」は、細胞に送達されるポリヌクレオチド又はタンパク質を含む巨大分子又は分子の複合体を指す。
【0103】
「AAV」はアデノ随伴ウイルスの略語である。この用語は、サブタイプが示されている場合を除き、AAVの全てのサブタイプ、並びに天然型と組換え型の両方を網羅している。略語「rAAV」は、組換えアデノ随伴ウイルスを指す。「AAV」は、AAV又は任意のサブタイプを含む。「AAV5」は、AAVサブタイプ5を指す。「AAV9」は、AAVサブタイプ9を意味する。AAVの様々な血清型のゲノム配列、並びに天然の逆位末端反復配列(ITR)、Repタンパク質、及びキャプシドサブユニットの配列は、文献又はGenBankなどの公開データベースに見出すことができる。例えば、GenBank受託番号NC__002077(AAV1)、AF063497(AAV1)、NC_001401(AAV2)、AF043303(AAV2)、NC_001729(AAV3)、NC_001829(AAV4)、U89790(AAV4)、NC_006152(AAV5)、AF513851(AAV7)、AF513852(AAV8)、NC_006261(AAV8)、及びAY530579(AAV9)を参照されたい。AAVを記載する刊行物には、Srivistava et al.(1983)J.Virol.45:555、Chiorini et al.(1998)J.Virol.71:6823、Chiorini et al.(1999)J.Virol.73:1309、Bantel-Schaal et al.(1999)J.Virol.73:939、Xiao et al.(1999)J.Virol.73:3994、Muramatsu et al.(1996)Virol.221:208、Shade et al.(1986)J.Virol.58:921、Gao et al.(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99:11854、Moris et al.(2004)Virology 33:375-383;国際特許 公開番号WO2018/222503A1、WO2012/145601A2、WO2000/028061A2、WO1999/61601A2、及びWO1998/11244A2;米国特許 出願 第15/782,980号及び第15/433,322号、並びに米国特許第 第10,036,016号、第9,790,472号、第9,737,618号、第9,434,928号、第9,233,131号、第8,906,675号、第7,790,449号、第7,906,111号、第7,718,424号、第7,259,151号、第7,198,951号、第7,105,345号、第6,962,815号、第6,984,517号、及び第6,156,303号が挙げられる。
【0104】
当技術分野で使用される「AAVベクター」又は「rAAVベクター」は、文脈に応じて、rAAVビリオンにパッケージングされたDNA又はrAAVビリオン自体のいずれかを指す。本明細書で使用される場合、文脈から別段のことが明らかでない限り、rAAVベクターは、rAAVビリオンにパッケージングされることができるポリヌクレオチド配列を含む核酸(典型的にはプラスミド)であるが、キャプシド又はrAAVビリオンの他のタンパク質を有するものを指す。一般的には、rAAVベクターは、異種ポリヌクレオチド配列(すなわち、AAV起源ではないポリヌクレオチド)と、異種ポリヌクレオチド配列に隣接する1つ又は2つのAAV末端逆位反復配列(ITR)とを含む。2つのITRのうち1つのみがrAAVにパッケージングされてもよく、その上で、得られたrAAVビリオンの感染力が維持され得る。Wu et al.(2010)Mol Ther.18:80を参照されたい。rAAVベクターは、一本鎖(ssAAV)又は自己相補性(scAAV)のいずれかを生成するように設計されてもよい。McCarty D.(2008)Mo.Ther.16:1648-1656;WO2001/11034、WO2001/92551、WO2010/129021を参照されたい。
【0105】
「rAAVビリオン」は、少なくとも1つのウイルスキャプシドタンパク質(例えば、VP1)及びキャプシドタンパク質を含むキャプシド形成されたrAAVベクター(又はその断片)を含む細胞外ウイルス粒子を指す。
【0106】
簡潔で明確にするために、本開示は、「キャプシドタンパク質」又は「複数のキャプシドタンパク質」を指す。当業者であれば、そのような言及がVP1、VP2、若しくはVP3、又はVP1、VP2、及びVP3の組み合わせを指すことを理解する。野生型AAV及びほとんどの組換え発現系と同様に、VP1、VP2、及びVP3は、同じオープンリーディングフレームから発現されるため、VP3をコードする配列の操作により、必然的にVP1及びVP2のC末端ドメインの配列が変更される。また、異なるオープンリーディングフレームからキャプシドタンパク質を発現させてもよく、その場合、得られたrAAVビリオンのキャプシドは、野生型及び操作されたキャプシドタンパク質の混合物、及び異なる操作されたキャプシドタンパク質の混合物を含有し得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、「末端逆位反復配列」又は「ITR」という用語は、その対称性を理由にそのように命名されたAAVウイルスシスエレメントを指す。これらのエレメントは、AAVゲノムの効率的な増殖に不可欠である理論に拘束されるものではないが、ITR機能に必要不可欠な最小限のエレメントは、Rep結合部位及び末端分離部位(terminal resolution site)に、ヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列を加えたものであると考えられる。本開示は、AAVゲノムを生成する代替的な手段が存在してもよく、又は本開示のキャプシドタンパク質と適合性があるように積極的に開発され得ることを企図する。
【0108】
「ヘルパーウイルス機能」は、AAV複製及びパッケージングを可能にするヘルパーウイルスゲノムにおいてコードされる機能を指す。
【0109】
「パッケージング」は、rAAVベクターのキャプシド形成を含むrAAVビリオンのアセンブリをもたらす一連の細胞内事象を指す。AAV「rep」及び「cap」遺伝子は、アデノ随伴ウイルスの複製タンパク質及びキャプシド形成タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を指す。AAVrep及びcapは、本明細書ではAAV「パッケージング遺伝子」と称される。パッケージングには、ヘルパーウイルス自体、又は組換え系ではより一般的には、ヘルパーフリー系によって供給されるヘルパーウイルス機能(すなわち、1つ以上のヘルパープラスミド)のいずれかを必要とする。
【0110】
AAVの「ヘルパーウイルス」とは、哺乳動物細胞によってAAV(例えば、野生型AAV)を複製し、パッケージングさせるウイルスを意味する。ヘルパーウイルスは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアなどのポックスウイルスであってもよい。
【0111】
「感染性」ビリオン又はウイルス粒子は、コンピテントにアセンブルされたウイルスキャプシドを含み、ビリオンが指向性である細胞内にポリヌクレオチド構成要素を送達することができるものである。この用語は、必ずしもウイルスの複製能力を意味するものではない。
【0112】
「感染性」とは、ビリオンが細胞を変化させる(inflect)能力の測定を指す。感染性は、感染性ウイルス粒子の総ウイルス粒子に対する比として表すことができる。感染性は、特定の細胞型に関して一般的に決定される。これはインビボ又はインビトロの両方で測定することができる。感染性ウイルス粒子の総ウイルス粒子に対する比を決定する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Grainger et al.(2005)Mol.Ther.11:S337(TCID50感染力価アッセイを記載);及びZolotukhin et al.(1999)Gene Ther.6:973を参照されたい。
【0113】
用語「親キャプシド」又は「親配列」は、粒子キャプシド又は配列が由来する参照配列を指す。別段の指定がない限り、親配列は、操作されたキャプシドタンパク質と同じ血清型の野生型キャプシドタンパク質の配列を指す。
【0114】
「複製コンピテント」ウイルス(例えば、複製コンピテントAAV)は、感染性であり、感染した細胞で複製することができる(すなわち、ヘルパーウイルス又はヘルパーウイルス機能の存在下で)ウイルスを指す。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンは、rep遺伝子、又はrep遺伝子及びcap遺伝子の両方を欠くゲノムを含み、したがって複製インコンピテントである。
【0115】
本開示の実践は、別段の示唆がない限り、当業者の範囲内である、組織培養、免疫学、分子生物学、細胞生物学、及び組換えDNAの従来的な技術を使用する。例えば、Sambrook and Russell eds.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition、Ausubel et al.eds.(2007)Current Protocols in Molecular Biology;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.)、MacPherson et al.(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press)、MacPherson et al.(1995)PCR 2:A Practical Approach、Harlow and Lane eds.(1999)Antibodies,A Laboratory Manual、Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,5th edition、Gait ed.(1984) Oligonucleotide Synthesis、米国特許第 4,683,195号、Hames and Higgins eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization、Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization、Hames and Higgins eds.(1984)Transcription and Translation、IRL Press(1986)Immobilized Cells and Enzymes、Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning、Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory)、Makrides ed.(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells、Mayer and Walker eds.(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London)、Herzenberg et al.eds(1996)Weir’s Handbook of Experimental Immunology、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,3rd edition(2002)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Sohail(2004)Gene Silencing by RNA Interference:Technology and Application(CRC Press)、及びSell(2013)Stem Cells Handbookを参照されたい。
【0116】
用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類似体の任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、直鎖核酸及び環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、及びプライマーが挙げられる。別段の指定又は要求が無い限り、ポリヌクレオチドである本明細書に記載の本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態、及び二本鎖形態を構成することが既知であるか、又は予測される2つの相補的な一本鎖形態それぞれの両方を包含する。
【0117】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これには、遺伝子コードされた及び遺伝子コードされないアミノ酸、化学的又は生化学的に改変又は誘導体化されたアミノ酸、及び改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。用語はまた、改変されたアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、又は標識構成要素とのコンジュゲーションを包含する。
【0118】
用語「ペプチド」は、短いポリペプチド、例えば、約4~30アミノ酸残基を有するペプチドを指す。
【0119】
用語「単離された」は、ビリオン、細胞、組織、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質が、通常、自然界で会合している細胞及びその他の構成要素から分離されていることを意味する。例えば、単離された細胞は、異なる表現型若しくは遺伝子型の組織又は細胞から分離された細胞である。
【0120】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は「同一性」は、目的の配列と参照配列との間で同一のアミノ酸の数のパーセンテージを指す。一般に、同一性は、目的の配列を参照配列に整列させることと、整列させた配列間で同一のアミノ酸の数を決定することと、その数を参照配列におけるアミノ酸の総数で割ることと、その結果に100を掛けてパーセンテージ得ることとによって決定される。配列は、ncbi.nlm.nih.govで入手できるBLASTなどの様々なコンピュータープログラムを使用して整列させることができる。アライメントための他の技術は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996);and Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997);J.Mol.Biol.48:44に記載されている。当業者は、配列の長さ、相違、及び参照配列に関する挿入又は欠失の存在又は非存在を含む様々な要因に応じて、適切なアライメント方法を選択することができる。
【0121】
「組換え」はポリヌクレオチドに適用される場合、ポリヌクレオチドが、クローニング、制限又はライゲーションステップ、及び自然界に見出されるポリヌクレオチドとは異なる構築物をもたらす他の手順の様々な組み合わせの産物であるか、又はポリヌクレオチドが合成オリゴヌクレオチドからアセンブルされることを意味する。「組換え」タンパク質は、組換えポリペプチドから産生されたタンパク質である。組換えビリオンは、組換えポリヌクレオチド及び/又は組換えタンパク質、例えば、組換えキャプシドタンパク質を含むビリオンである。
【0122】
「遺伝子」は、転写及び翻訳された後、特定のタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子産物」は、特定の遺伝子の発現から生じる分子である。遺伝子産物には、ポリペプチド、タンパク質、アプタマー、干渉RNA、又はmRNAが含まれるが、これらに限定されない。遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム)は、システムを作製するために必要な1つの遺伝子産物として、又はいくつかの遺伝子産物(例えば、Casタンパク質及びガイドRNA)として記載され得る。
【0123】
「ショートヘアピンRNA」、又はshRNAは、siRNAを発現させるために使用されるポリヌクレオチド構築物である。
【0124】
「制御エレメント」又は「制御配列」は、ポリヌクレオチドの複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、又は分解を含む、ポリヌクレオチドの機能的調節に寄与する分子の相互作用に関与するヌクレオチド配列である。調節は、プロセスの頻度、速度、又は特異性に影響を与えることができ、本質的に増強し得る又は阻害し得る。制御エレメントは、プロモーター及び/又はエンハンサーなどの転写調節配列を含む。
【0125】
「プロモーター」は、ある特定の条件下で、RNAポリメラーゼを結合することが可能で、プロモーターから通常下流(3’方向)に位置するコード領域の転写を開始することが可能なDNA配列である。本明細書で使用される場合、用語「組織特異的プロモーター」は、心臓組織などの特定の臓器又は組織の細胞で操作可能なプロモーターを指す。
【0126】
「作動可能に(Operatively)連結された」又は「動作可能に(Operably)連結された」は、エレメントが予想される様式で作動できる関係にある遺伝子エレメントの並置を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写を開始するのを助ける場合、プロモーターはコード領域に作動可能に連結される。この機能的関係が維持される限り、プロモーターとコード領域との間に介在する残基が存在してもよい。
【0127】
「発現ベクター」は、標的細胞における遺伝子産物の発現に影響を与えるために使用される目的の遺伝子産物をコードするコード配列を含むベクターである。発現ベクターは、遺伝子産物の発現を促進するためにコード配列に作動可能に連結された制御エレメントを含む。
【0128】
用語「発現カセット」は、標的細胞における遺伝子産物の発現に影響を与えるために使用される目的の遺伝子産物をコードするコード配列を含む異種ポリヌクレオチドを指す。別段の指定がない限り、AAVベクターの発現カセットは、ITR間(かつそれを含まない)のポリヌクレオチドを含む。
【0129】
本明細書において使用される場合、用語「遺伝子送達」又は「遺伝子導入」は、外来性核酸配列、例えばDNAを宿主細胞に確実に挿入するための方法又はシステムを指す。こうした方法は、組み込まれていない移入DNAの一過性発現、移入されたレプリコン(例えば、エピソーム)の染色体外複製及び発現、又は移入された遺伝物質の宿主細胞のゲノムDNAへの組み込みをもたらし得る。
【0130】
「異種」とは、それが比較される実体の残りの遺伝子型とは、遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学技術によって、異なる種に由来するプラスミド又はベクターに導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである。その天然コード配列から除去され、それが天然に連結が見出されていないコード配列に作動可能に連結されたプロモーターは、異種プロモーターである。したがって、例えば、異種核酸を含むrAAVは、天然に存在するAAVに通常含まれていない核酸を含むrAAVである。
【0131】
用語「遺伝子変更」及び「遺伝子改変」(及びその文法的バリアント)は、本明細書において互換的に使用され、遺伝子エレメント(例えば、ポリヌクレオチド)が有糸分裂又は減数分裂以外によって細胞に導入されるプロセスを指す。エレメントは、細胞に対して異種であってもよく、又は細胞に既に存在するエレメントの追加のコピー又は改良されたバージョンであってもよい。遺伝子変更は、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、又はポリヌクレオチド-リポソーム複合体との接触などの当技術分野で公知の任意のプロセスを介して、組換えプラスミド又は他のポリヌクレオチドを用いて細胞をトランスフェクトすることによって、影響され得る。遺伝子変更はまた、例えば、形質導入又はベクターによる感染によっても影響を受け得る。
【0132】
細胞は、インビトロでの細胞の長期培養中にその機能を実施するために配列が利用可能な場合、ポリヌクレオチド配列で「安定的」に変更、形質導入、遺伝子改変、又は形質転換されていると言われる。一般的に、そのような細胞は、変更された細胞の子孫によっても遺伝可能である遺伝子変更が導入されるという点で、「遺伝的に」変更される(遺伝子改変される)。
【0133】
用語「トランスフェクション」は、本明細書で使用される場合、細胞による外因性核酸分子の取り込みを指す。外因性核酸が細胞膜内に導入されている場合、細胞は「トランスフェクト」されている。いくつかのトランスフェクション技術は、当技術分野で一般的に公知である。例えば、Graham et al.(1973)Virology,52:456、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、及びChu et al.(1981)Gene 13:197を参照されたい。このような技術を使用して、1つ以上の外因性核酸分子を適切な宿主細胞に導入することができる。
【0134】
用語「形質導入」は、本明細書で使用される場合、野生型ビリオンによる「感染」とは対照的に、組換えビリオンによる細胞への外因性核酸の移入を指す。組換えビリオンに関して感染が使用される場合、用語「形質導入」及び「感染性」は同義であり、したがって「感染力」及び「形質導入効率」は同等であり、類似の方法を使用して決定することができる。
【0135】
別段の指定がない限り、全ての医学用語は、例えば、全ての目的に関して、参照によりその全体が組み込まれるHarrison’s Principles of Internal Medicine,15ed.、特に心臓又は心血管疾患、障害、状態、及び機能障害に関する章におけるように、医療従事者が使用する用語の通常の意味が与えられている。
【0136】
「治療」、「治療すること」、及び「治療する」は、疾患、障害、若しくは状態及び/又はその症状の有害な、又は任意の他の望ましくない作用を低減又は寛解させるために、薬剤を用いて疾患、障害、又は状態に対して作用すると定義される。
【0137】
本発明の組成物に関連して使用される場合の「投与」、「投与すること」などは、直接投与(医療従事者による対象への投与、又は対象による自己投与による)及び/又は間接投与(組成物を患者に処方する)の両方を指す。典型的には、有効量は投与されるが、その量は、当業者によって決定され得る。任意の投与方法を使用してもよい。対象への投与は、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、血管内、又は心筋内送達によって達成され得る。
【0138】
本明細書で使用される場合、組成物の量に関する用語「有効量」などは、所望の生理学的転帰(例えば、細胞の再プログラミング又は疾患の治療)を誘導するのに十分な量を指す。有効量は、1つ以上の投与、適用、又は投薬量で投与することができる。こうした送達は、個々の投薬量単位が使用される期間、組成物の生物学的利用能、投与経路などを含む、多くの変数に依存する。しかしながら、任意の特定の対象に対する組成物の特定の量(例えば、rAAVビリオン)は、使用される特定の薬剤の活性、対象の年齢、体重、全般的健康、性別、及び食事、投与時間、排泄速度、組成物の組み合わせ、治療される特定の疾患の重症度、及び投与形態を含む様々な要因に依存することが理解される。
【0139】
用語「個体」、「対象」、及び「患者」は、本明細書では互換的に使用され、限定されないが、ヒト及びヒト以外の霊長類(例えば、サル)、哺乳動物の競技用動物(例えば、ウマ)、哺乳動物家畜(例えば、ヒツジ、ヤギなど)、哺乳動物ペット(例えば、イヌ、ネコなど)、及び齧歯類(例えばマウス、ラットなど)を含む哺乳動物を指す。
【0140】
用語「心臓病態」又は「心機能障害」は互換的に使用され、心臓のポンプ機能におけるなんらかの欠陥を指す。これには、例えば、収縮性の欠陥、弛緩能力の欠陥(拡張機能障害とも呼ばれる)心臓弁の異常又は不適切な機能、心筋の疾患(心筋症と呼ばれることもある)、心筋への不十分な血液供給を特徴とする狭心症、心筋虚血、及び/又は梗塞などの疾患、アミロイドーシス及びヘモクロマトーシスなどの浸潤性疾患、全般性又は局所性肥大(例えば、ある種の心筋症又は全身性高血圧症で発生する可能性がある)並びに心室間の異常な伝達も挙げられる。
【0141】
本明細書で使用される場合、用語「心筋症」は、心筋に直接影響を与える任意の疾患又は機能障害を指す。疾患又は障害の病因は、例えば、炎症性、代謝性、毒性、浸潤性、線維形成性、血液学的、遺伝的、又は起源不明であり得る。2つの基本形態は、(1)原因不明の心筋疾患からなる1次型、及び(2)既知の原因の心筋疾患、又は他の臓器系に関与する疾患と関連付けられた2次型と認識される。「特定の心筋症」は、ある特定の全身性又は心臓障害に関連する心疾患を指し、例としては、高血圧性及び代謝性心筋症が挙げられる。心筋症には、左心室及び/又は右心室の収縮期ポンプ機能が損なわれ、進行性の心臓肥大につながる障害である拡張型心筋症(DCM)、高血圧又は大動脈狭窄症などの明白な原因のない左心室肥大を特徴とする肥大型心筋症、並びに異常な拡張機能及び心室の充填を妨げる過度に剛直な心室壁を特徴とする拘束型心筋症が含まれる。心筋症にはまた、左心室緻密化障害、不整脈源性右室心筋症、及び不整脈源性右心室異形成症が含まれる。
【0142】
「心不全」は、心臓機能の異常により、代謝組織の要件に見合う速度で血液を送り出すことができないことの原因となり、かつ/又は心臓が、異常に高い拡張期容積に限って送り出すことができる病態を指す。心不全には、収縮期及び拡張期不全が含まれる。心不全患者は、低い心拍出量の患者(典型的には虚血性心疾患、高血圧、拡張型心筋症及び/又は弁膜症若しくは心膜症が続発する)、及び高い心拍出量(典型的には甲状腺機能亢進症、貧血、妊娠、動静脈瘻、脚気、及びパジェット病による)の患者に分類される。心不全には、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、駆出率が保たれた心不全(HFpEF)が含まれる。
【0143】
語句「薬学的に許容可能な」は、本明細書で用いられる場合、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題又は合併症のない、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織と接触しての使用に適した、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0144】
「精製された」という用語は、本明細書で使用される場合、材料が取得される天然材料を含む、無関係な材料、すなわち不純物の存在を低減又は排除する条件下で単離された材料を指す。例えば、精製されたrAAVベクターDNAは、組織培養成分、汚染物などを含む、細胞又は培養成分を実質的に含まないことが好ましい。
【0145】
損傷を受けた心臓組織に関連して本明細書で使用される場合、用語「再生する」、「再生」などは、その通常の意味を与えられ、また例えば、虚血、梗塞、再灌流、又は他の疾患により損傷を受けている心臓又は心臓組織において、新しい心臓組織を成長及び/又は発達させるプロセスも指す。いくつかの実施形態では、心臓組織再生は、心筋細胞の生成を含む。
【0146】
用語「治療遺伝子」は、本明細書で使用される場合、発現された場合、それが存在する細胞若しくは組織、又は遺伝子が発現される哺乳動物に有益な効果を付与する遺伝子を指す。有益な効果の例としては、状態若しくは疾患の徴候若しくは症状の改善、状態若しくは疾患の予防若しくは抑制、又は所望の特徴の付与が挙げられる。治療遺伝子には、細胞又は哺乳動物の遺伝子欠損を部分的又は完全に補正する遺伝子が含まれる。
【0147】
本明細書で使用される場合、用語「機能的心筋細胞」は、電気シグナルを送受信することができる分化した心筋細胞を指す。いくつかの実施形態では、心筋細胞は、活動電位及び/又はCa2+トランジェントなどの電気生理学的特性を呈する場合、機能的心筋細胞であると言われる。
【0148】
本明細書で使用される場合、「分化した非心臓細胞」は、成体生物の全ての細胞型に分化することができず(すなわち、多能性細胞ではない)、かつ心臓系統以外の細胞系統(例えば、ニューロン系統又は結合組織系統)の細胞を指すことができる。分化細胞としては、以下に限定されないが、複能性(multipotent)細胞、少能性(oligopotent)細胞、単能性細胞、前駆細胞、及び最終分化細胞が挙げられる。特定の実施形態では、分化能の低い細胞は、分化能が高い細胞に関して、「分化した」とみなされる。
【0149】
「体細胞」は、生物の体を形成する細胞である。体細胞には、生物の臓器、皮膚、血液、骨、及び結合組織を構成する細胞が含まれるが、生殖細胞には含まれない。
【0150】
本明細書で使用される場合、用語「全能性」は、生物の全ての細胞系統を形成する細胞の能力を意味する。例えば、哺乳動物では、接合体及び第1卵割段階割球のみが全能性である。
【0151】
本明細書で使用される場合、用語「多能性(pluripotent)」は、体又は体細胞の全ての系統を形成する細胞の能力を意味する。例えば、胚性幹細胞は、3つの胚葉である、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉のそれぞれから細胞を形成することができる多能性幹細胞の一種である。多能性細胞は、Nanog及びRex1などのマーカーのそれらの発現によって認識され得る。
【0152】
本明細書で使用される場合、用語「複能性」は、1つの系統の複数の細胞型を形成する成体幹細胞の能力を指す。例えば、造血幹細胞は、血液細胞系統、例えば、リンパ細胞及び骨髄細胞の全ての細胞を形成することができる。
【0153】
本明細書で使用される場合、用語「少能性」は、成体幹細胞が少数の異なる細胞型にのみ分化する能力を指す。例えば、リンパ系幹細胞又は骨髄系幹細胞は、それぞれリンパ系統又は骨髄系統のいずれかの細胞を形成することができる。
【0154】
本明細書で使用される場合、用語「単能性」は、単一細胞型を形成する細胞の能力を意味する。例えば、精原幹細胞は、精子細胞のみを形成することができる。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「再プログラミング」又は「分化転換」は、多能性幹細胞特徴を呈する細胞に細胞を脱分化させる中間プロセスなしに、異なるタイプの細胞(例えば、線維芽細胞)からの、ある特定の系統の細胞(例えば、心臓細胞)の生成を指す。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「心臓細胞」は、心臓収縮又は血液供給などの心臓機能を提供するか、又はそうでなければ心臓の構造を維持するのに役立つ、心臓内に存在する任意の細胞を指す。本明細書で使用される場合、心臓細胞は、心臓の心外膜、心筋、又は心内膜に存在する細胞を包含する。心臓細胞はまた、例えば、心臓の筋細胞又は心筋細胞、及び冠動脈又は静脈の細胞などの心臓血管系の細胞を含む。心臓細胞の他の非限定的な例としては、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞又は前駆細胞、心臓伝導細胞、及び心筋、血管、及び心臓細胞支持構造を構成する心臓ペースメーカー細胞が挙げられる。心臓細胞は、例えば、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞を含む幹細胞に由来し得る。
【0157】
本明細書で使用される場合、「心筋細胞(cardiomyocyte)」又は「複数の心筋細胞(cardiomyocytes)」という用語は、骨格筋細胞とは対照的に、哺乳動物の心臓に天然に存在するサルコメア含有横紋筋細胞を指す。心筋細胞は、例えば、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、心臓α-アクチニンなどの特殊な分子の発現によって特徴付けられる。本明細書で使用される場合、用語「心筋細胞」は、任意の心筋細胞亜集団又は心筋細胞サブタイプ、例えば、心房、心室及びペースメーカー心筋細胞を含む、総称である。
【0158】
用語「心筋細胞様細胞」は、心筋細胞と特徴を共有するが、全ての特徴を共有しなくてもよい細胞を意味することが意図される。例えば、心筋細胞様細胞は、ある特定の心臓遺伝子の発現において心筋細胞とは異なる場合がある。
【0159】
用語「培養」又は「細胞培養」は、人工の、インビトロ環境での細胞の維持を意味する。「細胞培養系」は、本明細書で使用される場合、細胞集団が単層として又は懸濁液中で成長し得る培養条件を指す。「培養培地」は、本明細書で使用される場合、細胞の培養、成長、又は増殖のための栄養溶液を指す。培養培地は、機能的特性、例えば、限定するものではないが、特定の状態での細胞を維持する能力(例えば、多能性状態、静止状態など)、細胞を成熟させる能力、時には特定の系統(例えば、心筋細胞)の細胞への前駆細胞の分化を促進する能力などによって特徴付けすることができる。
【0160】
本明細書で使用される場合、用語「発現」又は「発現する」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、及び/又はその後転写されたmRNAがペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には真核細胞におけるmRNAのスプライシングが含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞又は組織試料中のmRNA又はタンパク質の量を測定することによって決定され得る。
【0161】
用語「誘導心筋細胞」又は略語「iCM」は、心筋細胞(及び/又は心筋細胞様細胞)に形質変換された非心筋細胞(及びその子孫)を指す。本開示の方法は、例えば、他の技術を強化するために、誘導心筋細胞を生成するために、現在公知であるか、又は後で発見される任意の方法と併せて使用することができる。
【0162】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞由来心筋細胞」という用語は、心筋細胞様細胞に分化されたヒト人工多能性幹細胞を指す。調製されたiPS-CM細胞のための例示的な方法は、Karakikes et al.Circ Res.2015 Jun 19;117(1):80-88によって提供される。
【0163】
本明細書で使用される場合、「ヒト心臓線維芽細胞」及び「マウス心臓線維芽細胞」という用語はそれぞれ、ヒト又はマウスの成人心臓の心室から単離され、エクスビボで培養物に維持される初代細胞を指す。
【0164】
本明細書で使用される場合、「非心筋細胞」という用語は、本明細書で定義及び使用される「心筋細胞」の基準を満たしていない細胞調製物中の任意の細胞又は細胞集団を指す。非心筋細胞の非限定的な例としては、体細胞、心臓線維芽細胞、非心臓線維芽細胞、心筋前駆細胞、及び幹細胞が挙げられる。
【0165】
本明細書で使用される場合、「再プログラミング」は、分化転換、脱分化などを含む。
【0166】
本明細書で使用される場合、用語「再プログラミング効率」は、試料中の細胞の総数と比較して、心筋細胞にうまく再プログラムされる、試料中の細胞の数を指す。
【0167】
本明細書で使用される場合、用語「再プログラミング因子」は、1つの細胞型から別の細胞型への細胞の再プログラミングを支援するために、細胞における発現のために導入される因子を含む。例えば、再プログラミング因子は、他の転写因子及び/又は小分子と組み合わせて、心臓線維芽細胞を誘導心筋細胞に再プログラミングすることが可能な転写因子を含み得る。文脈から別途明らかでない限り、リプログラミング因子は、AAV送達ポリヌクレオチドによってコードされ得るポリペプチドを指す。再プログラミング因子はまた、小分子を含んでもよい。
【0168】
用語「幹細胞」は、自己再生能力を有し、及び分化した子孫を生成する能力を有する細胞を指す。用語「多能性幹細胞」は、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)全ての細胞を生じさせることができるが、完全な生物を生じさせる能力を有しない幹細胞を指す。
【0169】
本明細書で使用される場合、ポリペプチド又は核酸配列に関して、「その同等物」という用語は、参照ポリペプチド又は核酸配列とは異なるが、必須の特性(例えば、生物活性)を保持するポリペプチド又は核酸を指す。ポリヌクレオチドの典型的なバリアントは、別の参照ポリヌクレオチドとはヌクレオチド配列が異なる。バリアントのヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更させてもよく、又は変更させなくてもよい。ヌクレオチド変化は、参照配列によってコードされるポリペプチドにおけるアミノ酸置換、欠失、付加、融合及び切断をもたらし得る。一般的に、参照ポリペプチド及びバリアントの配列が全体的に極めて類似し、多くの領域において同一であるように、差異は限定的である。
【0170】
本明細書で使用される場合、用語「前駆細胞」は、特定のタイプの細胞に分化するか、又は特定のタイプの組織を形成することを約束する細胞を指す。幹細胞のような前駆細胞は、更に1つ以上の種類の細胞に分化することができるが、幹細胞よりも成熟しており、それによってより限定された/制限された分化能力を有する。
【0171】
用語「遺伝子改変」は、新規核酸(すなわち、細胞に対し外因性の核酸)の導入後に細胞に誘導される永久的又は一過性の遺伝子変化を指す。遺伝子変化は、心臓細胞のゲノム内に新規核酸を組み込むことによって、又は染色体外エレメントとして新しい核酸の一過性又は安定的な維持によって達成され得る。細胞が真核細胞である場合、細胞のゲノム内に核酸を導入することによって、永続的な遺伝子変化を達成することができる。遺伝子改変の適切な方法には、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクションなどが挙げられる。
【0172】
用語「幹細胞」は、自己再生能力を有し、及び分化した子孫を生成する能力を有する細胞を指す。用語「多能性幹細胞」は、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉、及び外胚葉)全ての細胞を生じさせることができるが、完全な生物を生じさせる能力を有しない幹細胞を指す。いくつかの実施形態では、心筋細胞表現型を誘導するための組成物は、再プログラミングを誘導するための細胞集団に使用することができる。他の実施形態では、組成物は、心筋細胞表現型を誘導する。
【0173】
「人工多能性幹細胞」という用語は、その通常の意味を与えられ、また多能性のうちの少なくとも1つの特徴を示すように再プログラムされた、分化した哺乳動物体細胞(例えば、皮膚などの成体体細胞)も指すものとする。例えば、Takahashi et al.(2007)Cell 131(5):861-872、Kim et al.(2011)Proc.Natl.Acad.Sci.108(19):7838-7843、Sell(2013)Stem Cells Handbookを参照されたい。
【0174】
用語「形質導入効率」は、少なくとも1つのAAVゲノムで形質導入された細胞のパーセンテージを指す。例えば、1x10個の細胞がウイルスに曝露され、0.5x10個の細胞がAAVゲノムの少なくとも1コピーを含有すると判定された場合、形質導入効率は50%である。形質導入効率を決定する例示的な方法は、フローサイトメトリーである。例えば、AAVゲノムが緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするポリヌクレオチドを含む場合、GFP+細胞のパーセンテージは、形質導入効率の尺度である。
【0175】
用語「選択性」は、1つの細胞型の、別の細胞型、又は他の全ての細胞型に対する形質導入効率の比率を指す。
【0176】
用語「感染力」は、AAVビリオンが、細胞、特にインビボ細胞に感染する能力を指す。したがって、感染力は、少なくとも生体内分布及び中和抗体の回避の関数である。
【0177】
別段の記載がない限り、本明細書全体を通して使用される略語は、以下の意味を有する。AAV、アデノ随伴ウイルス、rAAV、組換えアデノ随伴ウイルス;AHCF、成人ヒト心臓線維芽細胞、APCF、成体ブタ心臓線維芽細胞、a-MHC-GFP;アルファ-ミオシン重鎖緑色蛍光タンパク質;CF、心臓線維芽細胞;cm、センチメートル;CO、心拍出量EF、駆出率;FACS 蛍光活性化細胞選別;GFP、緑色蛍光タンパク質;GMT、Gata4、Mef2c及びTbx5;GMTc、Gata4、Mef2c、Tbx5、TGF-βi、WNTi;GO、遺伝子オントロジー;hCF、ヒト心臓線維芽細胞;iCM、誘導心筋細胞;kg、キリグラム(killigram);μg、マイクログラム;μl、マイクロリットル;mg、ミリグラム;ml、ミリリットル;MI、心筋梗塞;msec、ミリ秒;min、分;MyAMT、ミオカルジン、Ascl1、Mef2c及びTbx5;MyA、ミオカルジン及びAscl1;MyMT、ミオカルジン、Mef2c及びTbx5;MyMTc、ミオカルジン、Mef2c、Tbx5、TGF-Bi、WNTi;MRI、磁気共鳴画像法;PBS、リン酸緩衝食塩水;PBST、リン酸緩衝食塩水、triton;PFA、パラホルムアルデヒド;qPCR、定量的ポリメラーゼ連鎖反応;qRT-PCR、定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応;RNA、リボ核酸;RNA-seq、RNAシーケンシング;RT-PCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応;sec、秒;SV、一回拍出量;TGF-β、トランスフォーミング成長因子ベータ;TGF-βi、トランスフォーミング成長因子ベータ阻害剤;WNT、wingless-Int;WNTi、wingless-Int阻害剤、YFP、黄色蛍光タンパク質;4F、Gata4、Mef2c、TBX5、及びミオカルジン;4Fc、Gata4、Mef2c、TBX5、及びミオカルジン+TGF-βi及びWNTi;7F、Gata4、Mef2c、及びTbx5、Essrg、ミオカルジン、Zfpm2、及びMesp1;7Fc、Gata4、Mef2c、及びTbx5、Essrg、ミオカルジン、Zfpm2、及びMesp1+TGF-β及びWNTiを含む。
【0178】
用語「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖の物理的特性を置換されている残基と共有するアミノ酸残基の置換を指す。保存的置換には、極性残基の極性、非極性残基の非極性、疎水性残基の疎水性、小さい残基の小ささ、及び大きい残基の大きさが含まれる。保存的置換は、以下の群内の置換を更に含む:{S、T}、{A、G}、{F、Y}、{R、H、K、N、E}、{S、T、N、Q}、{C、U、G、P、A}、及び{A、V、I、L、M、F、Y、W}。
【0179】
組成物
遺伝子療法に有用な特性を有するキャプシドバリアントを同定する努力には、米国特許 第9,233,131号に記載されるAAV2及びAAV5 cap遺伝子のDNAのシャッフリング、並びに国際特許 出願 番号WO2012/145601A2及びWO2018/222503A1に記載される指向性進化法が含まれる。これらの文書の開示は、全ての目的に関して、特にAAVビリオンを作製及び使用する方法、並びにその中に開示されているポリヌクレオチド配列及び遺伝子産物、並びに心臓疾患又は障害の治療に有用な転写因子の組み合わせに関して、本明細書に組み込まれる。
【0180】
AAVキャプシドは、AAVのcap遺伝子によってコードされ、これは右オープンリーディングフレーム(ORF)とも呼ばれる(左ORF、repと対照的に)。代表的なAAVキャプシドの構造は、Xie et al.(2002)Proc.Natl.Acad.Sci USA 99:10405-1040(AAV2)、Govindasamy et al.(2006)J.Virol.80:11556-11570(AAV4)、Nam et al.(2007)J.Virol.81:12260-12271(AAV8)及びGovindasamy et al.(2013)J.Virol.87:11187-11199(AAV5)を含む様々な刊行物に記載されている。
【0181】
AAVキャプシドは、T=1の正二十面体対称性で配置された、予測される比1:1:10の3つのウイルスタンパク質(VP)、VP1、VP2、及びVP3の60コピー(合計)を含有する。3つのVPは、同じmRNAから翻訳され、VP1は、そのC末端領域にVP2配列全体に加えて、固有のN末端ドメインを含有する。VP2は、そのC末端でVP3に加えて、余分なN末端配列を含有する。ほとんどの結晶構造では、全てのキャプシドタンパク質(約530アミノ酸)に共通するC末端ポリペプチド配列のみが観察される。VP1のN末端固有の領域、VP1-VP2重複領域、及びVP3の最初の14~16個のN末端残基が、主に障害を受けると考えられる。クライオ電子顕微鏡及び画像再構成データは、インタクトAAVキャプシドでは、VP1及びVP2タンパク質のN末端領域がキャプシド内に位置し、受容体及び抗体結合にはアクセスできないことを示唆している。したがって、受容体の付着及び形質導入表現型は、一般的に、VP1、VP2及びVP3の共通のC末端ドメイン内のアミノ酸配列によって決定される
【0182】
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸の挿入、置換、又は欠失は、AAVキャプシドタンパク質のGHループ、又はループIV、例えば、AAVキャプシドタンパク質のGHループ、又はループIV、の溶媒アクセス可能部分にある。AAVキャプシドのGHループ/ループIVについては、例えば、van Vliet et al.(2006)Mol.Ther.14:809、Padron et al.(2005)Virol.79:5047、及びShen et al.(2007)Mol.Ther.15:1955を参照されたい。いくつかの実施形態では、「親」AAVキャプシドタンパク質は、野生型AAV5キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、「親」AAVキャプシドタンパク質は、キメラキャプシドタンパク質である。様々なAAVキャプシドタンパク質のアミノ酸配列は、当該技術分野で公知である。例えば、AAV1についてはGenBank受託番号NP_049542、AAV4についてはGenBank受託番号NP_044927、AAV5についてはGenBank受託番号AAD13756、AAV6についてはGenBank受託番号AAB95450、AAV7についてはGenBank受託番号YP_077178、AAV8についてはGenBank受託番号YP_077180、AAV9についてはGenBank受託番号AAS99264、及びAAV10についてはGenBank受託番号AAT46337を参照されたい。例えば、予測される祖先AAVキャプシドについては、Santiago-Ortiz et al.(2015)Gene Ther.22:934を参照されたい。
【0183】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は複製欠損型パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは約4.7kbの長さであり、2つの145ヌクレオチド末端逆位反復配列(ITR)を含む。AAVには複数の血清型が存在する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は既知である。例えば、AAV5ゲノムは、GenBank受託番号AF085716に提供される。AAVの生活環及び遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)に概説されている。シュードタイプrAAVの産生は、例えば、WO 01/83692に開示されている。キャプシド変異を有するrAAVなど、他の種類のrAAVバリアントもまた企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。例示的なAAVベクターは、US7,105,345、US15/782,980、US7,259,151、US6,962,815、 US7,718,424、US6,984,517、US7,718,424、US6,156,303、US8,524,446、US7,790,449、US7,906,111、US9,737,618、米国出願15/433,322、US7,198,951に提供され、これらの各々が全ての目的に関してその全体が参照により組み込まれる。
【0184】
本開示のrAAVビリオンは、1つ以上の遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。遺伝子産物は、ポリペプチド若しくはRNA、又はその両方であってもよい。遺伝子産物がポリペプチドである場合、ヌクレオチド配列は、任意選択的に1つ以上のイントロンとともに遺伝子産物ポリペプチドに翻訳されるメッセンジャーRNAをコードする。ヌクレオチド配列は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の遺伝子産物をコードしてもよい(ただし、その数は、rAAVビリオンのパッケージング能力、典型的には約5.2kb、によって制限される)。遺伝子産物は、1つのプロモーター(単一の転写単位に対して)又は2つ以上のプロモーターに作動可能に連結されてもよい。複数の遺伝子産物はまた、配列内リボソーム進入シグナル(IRES)又は自己切断ペプチド(例えば、2Aペプチド)を使用して産生されてもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、心筋線維芽細胞の再プログラミングを誘導して、誘導心筋細胞様細胞(iCM)を生成するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、心臓細胞の機能を強化するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、心臓細胞において欠失又は欠損している機能を提供するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチド遺伝子産物は、ゲノム編集エンドヌクレアーゼである。
【0186】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、異種ポリペプチドに融合された融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、細胞内局在性を提供するアミノ酸配列に融合されたゲノム編集ヌクレアーゼを含み、すなわち、融合パートナーは、細胞内局在性配列である(例えば、核を標的化するための1つ以上の核局在化シグナル(NLS)、2つ以上のNLS、3つ以上のNLSなど)。
【0187】
一般に、ウイルスベクターは、ウイルスDNA又はRNA構築物を、「産生細胞」又は「パッケージング細胞」株に導入することによって産生される。パッケージング細胞株には、任意の容易にトランスフェクト可能な細胞株が含まれるが、これらに限定されない。パッケージング細胞株は、HEK291、293T細胞、NIH3T3、COS、HeLa又はSf9細胞株に基づくことができる。パッケージング細胞株の例としては以下が挙げられるが、これに限定されない。Sf9(ATCC(登録商標)CRL-1711(商標))。rAAVビリオンを生成するための例示的パッキング細胞株及び方法は、国際特許 公開 番号WO2017/075627、WO2015/031686、WO2013/063379、WO2011/020710、WO2009/104964、WO2008/024998、WO2003/042361、及びWO1995/013392、米国特許 番号US9441206B2、US8679837、及びUS7091029B2に提供される。
【0188】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は機能的心臓タンパク質である。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、非機能的心臓タンパク質を機能的心臓タンパク質に交換又は修復する、ゲノム編集エンドヌクレアーゼ(任意選択的に、ガイドRNA、シングルガイドRNA、及び/又は修復テンプレートを含む)である。機能的心臓タンパク質としては、これらに限定されないが、心筋トロポニンT;心臓サルコメアタンパク質;β-ミオシン重鎖;心室ミオシン必須軽鎖1(myosin ventricular essential light chain 1);心室ミオシン調節軽鎖2(myosin ventricular regulatory light chain 2);心臓a-アクチン;a-トロポミオシン;心筋トロポニンI;心筋ミオシン結合タンパク質C;4.5LIMタンパク質1(four-and-a-half LIM protein 1);チチン;5’-AMP-活性化プロテインキナーゼサブユニットガンマ-2;トロポニンI 3型、ミオシン軽鎖2、アクチンアルファ心筋1;心臓LIMタンパク質;カベオリン3(CAV3);ガラクトシダーゼアルファ(GLA);リソソーム膜タンパク質2(LAMP2);ミトコンドリア転移RNAグリシン(MTTG);ミトコンドリア転移RNAイソロイシン(MTTI);ミトコンドリア転移RNAリジン(MTTK);ミトコンドリア転移RNAグルタミン(MTTQ);ミオシン軽鎖3(MYL3)、トロポニンC(TNNC1)、トランスサイレチン(TTR);筋小胞体カルシウムATPアーゼ2a(SERCA2a);ストロマ由来因子1(SDF-1)、アデニル酸シクラーゼ-6(AC6)、ベータ-ARKct(β-アドレナリン受容体キナーゼC末端);線維芽細胞成長因子(FGF);血小板由来成長因子(PDGF);血管内皮成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子;低酸素誘導性成長因子、チモシンベータ4(TMSB4X);一酸化窒素シンターゼ-3(NOS3);ウノカルチン(unocartin)3(UCN3);メルシン(melusin);アポリポタンパク質(apoplipoprotein)E(ApoE)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、及びS100A1(低分子カルシウム結合タンパク質;例えば、Ritterhoff and Most(2012)Gene Ther.19:613、Kraus et al.(2009)Mol.Cell.Cardiol.47:445を参照されたい。)が挙げられる。
【0189】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、その発現が、遺伝的障害の原因となる遺伝子の欠損を補う遺伝子産物である。本開示は、例えば限定されないが、括弧内に示される障害に使用するために、又は各々によって引き起こされる他の障害のために、以下のうちの1つ以上をコードするポリヌクレオチドを含むrAAVビリオンを提供する:TAZ(バース症候群)、FXN(フリードライヒ運動失調)、CASQ2(CPVT)、FBN1(マルファン)、RAF1及びSOS1s(ヌーナン)、SCN5A(ブルガダ)、KCNQ1及びKCNH2s(QT延長症候群)、DMPK(筋強直性ジストロフィー1型)、LMNA(肢帯型筋ジストロフィー1B型)、JUP(ナクソス)、TGFBR2(ロイス-ディーツ)、EMD(X-連鎖EDMD)、並びにELN(SV大動脈弁狭窄)。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、心筋トロポニンT(TNNT2);BAGファミリー分子シャペロン調節因子3(BAG3);ミオシン重鎖(MYH7);トロポミオシン1(TPM1);ミオシン結合タンパク質C(MYBPC3);5’-AMP-活性化プロテインキナーゼサブユニットガンマ-2(PRKAG2);トロポニンI 3型(TNNI3);チチン(TTN);ミオシン、軽鎖2(MYL2);アクチン、アルファ心筋1(ACTC1);カリウム電位依存性チャネル、KQT様サブファミリー、メンバー1(KCNQ1);プラコフィリン2(PKP2);筋細胞エンハンサー因子2c(MEF2C);及び心臓LIMタンパク質(CSRP3)のうちの1つ以上をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子産物は、ポリペプチド再プログラミング因子である。再プログラミング因子は、1つの細胞型を別の細胞型に変換する手段として望ましい。非心筋細胞は、当業者に利用可能な任意の方法を使用して、インビトロ又はインビボで心筋細胞に分化させることができる。例えば、Ieda et al.(2010)Cell 142:375-386、Christoforou et al.(2013)PLoS ONE 8:e63577、Addis et al.(2013)J.Mol.Cell Cardiol.60:97-106、Jayawardena et al.(2012)Circ.Res.110:1465-1473、Nam Y et al.(2003)PNAS USA 110:5588-5593、Wada R et al.(2013)PNAS USA 110:12667-12672、及びFu J et al.(2013)Stem Cell Reports 1:235-247に記載される方法を参照されたい。
【0191】
心臓の状況では、再プログラミング因子は、直接、又は中間細胞型のいずれかを介して、心臓線維芽細胞を心臓筋細胞に変換することが可能であり得る。特に、直接再プログラミングが可能であるか、又はまず線維芽細胞を多能性若しくは全能性幹細胞に変換することによって再プログラミングが可能である。このような多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS)細胞と呼ばれる。その後心臓筋細胞(CM)細胞に変換されるiPS細胞は、iPS-CM細胞と呼ばれる。この例では、インビトロで心臓線維芽細胞から誘導されたiPS-CMをインビボで使用して、目的のキャプシドタンパク質を選択する。本開示はまた、本開示のキャプシドタンパク質を使用して、インビトロで、順にiPS-CM細胞を生成することも想定しているが、特にインビボで、治療的遺伝子療法レジメンの一部として使用することを想定している。誘導心筋細胞様(iCM)細胞は、心筋細胞へ直接再プログラミングされた細胞を指す。
【0192】
誘導心筋細胞は、1つ以上の心筋細胞特異的マーカーを発現し、心筋細胞特異的マーカーには、限定されないが、心筋トロポニンI、心筋トロポニンC、トロポミオシン、カベオリン-3、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖-2a、ミオシン軽鎖-2v、リアノジン受容体、サルコメアa-アクチン、Nkx2.5、コネキシン43及び心房性ナトリウム利尿因子が挙げられる。誘導心筋細胞はまた、サルコメア構造を呈することができる。誘導心筋細胞では、心筋細胞特異的遺伝子ACTC1(心臓a-アクチン)、ACTN2(アクチンa2)、MYH6(ア-ミオシン重鎖)、RYR2(リアノジン受容体2)、MYL2(ミオシン調節軽鎖2、心室アイソフォーム)、MYL7(ミオシン調節軽鎖、心房アイソフォーム)、TNNT2(トロポニンT 2型、心臓)、及びNPPA(ナトリウム利尿ペプチド前駆体A型)、PLN(ホスホランバン)の発言の増加を示す。iCMが由来する線維芽細胞と比較して、誘導心筋細胞では、Colla2(コラーゲンla2)などの線維芽細胞マーカーの発現が下方制御される。
【0193】
ポリペプチド再プログラミング因子を伴う再プログラミング方法(場合により、rAAVとともに供給される低分子再プログラミング因子によって補充される)には、US2018/0112282A1、WO2018/005546、WO2017/173137、US2016/0186141、US2016/0251624、US2014/0301991、及びUS2013/0216503A1に記載される方法が含まれ、特に開示される再プログラミング方法及び因子について、その全体が組み込まれる。
【0194】
いくつかの実施形態では、心臓細胞は、目的の1つ以上のポリヌクレオチド又はタンパク質の発現を調節する1つ以上の再プログラミング因子、例えば、Achaete-scuteホモログ1(ASCL1)、ミオカルジン(MYOCD)、筋細胞特異的エンハンサー因子2C(MEF2C)、及び/又はT-ボックス転写因子5(TBX5)を使用して、誘導心筋細胞様(iCM)細胞に再プログラミングされる。いくつかの実施形態では、1つ以上の再プログラミング因子は、目的の1つ以上のポリヌクレオチド又はタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、RNA、mRNA、又はDNAポリヌクレオチド)として提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上の再プログラミング因子は、タンパク質として提供される。
【0195】
いくつかの実施形態では、再プログラミング因子は、マイクロRNA又はマイクロRNAアンタゴニスト、siRNA、又は目的の1つ以上のポリヌクレオチド若しくはタンパク質の発現を増加させることができる低分子である。いくつかの実施形態では、目的のポリヌクレオチド又はタンパク質の発現は、マイクロRNA又はマイクロRNAアンタゴニストの発現によって増加する。例えば、Octポリペプチドの内因性発現は、マイクロRNA-302(miR-302)の導入によって、又はmiR-302の発現の増加によって増加させることができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hu et al.,Stem Cells 31(2):259-68(2013)を参照されたい。したがって、miRNA-302は、内因性Octポリペプチド発現の誘導因子であり得る。miRNA-302は単独で、又はOctポリペプチドをコードする核酸とともに導入することができる。いくつかの実施形態では、好適な核酸遺伝子産物はマイクロRNAである。適切なmicrRNAとしては、例えば、mir-1、mir-133、mir-208、mir-143、mir-145、及びmir-499が挙げられる。
【0196】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、低分子再プログラミング因子の投与の前、最中、又は後に、本開示のrAAVビリオンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、低分子再プログラミング因子は、SB431542、LDN-193189、デキサメタゾン、LY364947、D4476、ミリセチン、IWR1、XAV939、ドコサヘキサエン酸(DHA)、S-ニトロソ-TV-アセチルペニシラミン(SNAP)、Hh-Agl.5、アルプロスタジル、クロマカリム、MNITMT、A769662、レチノイン酸p-ヒドキシアニリド、デカメトニウムジブロミド、ニフェジピン、ピロキシカム、バシトラシン、アズトレオナム、ハルマロール塩酸塩、アミド-C2(A7)、Ph-C12(CIO)、mCF3-C-7(J5)、G856-7272(A473)、5475707、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される低分子である。
【0197】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ASCL1、MYOCD、MEF2C、及びTBX5から選択される対象の1つ以上の目的のタンパク質の発現を調節する再プログラミング因子を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ASCL1、MYOCD、MEF2C、及びTBX5、CCNB1、CCND1、CDK1、CDK4、AURKB、OCT4、BAF60C、ESRRG、GATA4、GATA6、HAND2、IRX4、ISLL、MESP1、MESP2、NKX2.5、SRF、TBX20、ZFPM2、並びにmiR-133から選択される1つ以上の再プログラミング因子を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、GATA4、MEF2C、及びTBX5(すなわち、GMT)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、MYOCD、MEF2C、及びTBX5(すなわち、MyMT)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、MYOCD、ASCL1、MEF2C、及びTBX5(すなわち、MyAMT)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、MYOCD及びASCL1(すなわち、MyA)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、GATA4、MEF2C、TBX5、及びMYOCD(すなわち、4F)を含む。他の実施形態では、遺伝子産物は、GATA4、MEF2C、TBX5、ESSRG、MYOCD、ZFPM2、及びMESP1(すなわち、7F)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ASCL1、MEF2C、GATA4、TBX5、MYOCD、ESRRG、及びMESPLのうちの1つ以上を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、インビトロ又はインビボで心臓筋細胞を生成する。心筋細胞(Cardiomyocyte)又は心臓筋細胞(cardiac myocyte)は、心筋を構成する筋細胞である。各々の心筋細胞は、筋細胞の収縮単位であるサルコメアの長鎖である筋原線維を含有する。心筋細胞は、骨格筋細胞のものと類似した横紋(striation)を示すが、多核骨格細胞とは異なり、それらは1つの核のみを含有する。心筋細胞はミトコンドリア密度が高く、ATPを迅速に産生できるため、疲労に対する強い耐性がある。成熟心筋細胞は、以下の心筋マーカーのうちの1つ以上を発現することができる:α-アクチニン、MLC2v、MY20、cMHC、NKX2-5、GATA4、cTNT、cTNI、MEF2C、MLC2a、又はそれらの任意の組み合わせ。いくつかの実施形態では、成熟心筋細胞は、NKX2-5、MEF2C、又はそれらの組み合わせを発現する。いくつかの実施形態では、心筋前駆細胞は、GATA4、ISL1、又はそれらの組み合わせなどの初期心筋前駆体マーカーを発現する。
【0200】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物はポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、以下に記載されるように、遺伝子産物は、RNAガイドエンドヌクレアーゼに結合することができるガイドRNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、例えば、心臓細胞におけるmRNA及び/又はポリペプチド遺伝子産物のレベルを低減させることができる阻害性核酸である。例えば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド遺伝子産物は、心疾患又は障害を引き起こす対立遺伝子によってコードされる転写物を選択的に不活化することができる干渉RNAである。一例として、対立遺伝子は、肥大型心筋症を引き起こす変異を含むミオシン重鎖7、心筋、ベータ(MYH7)対立遺伝子である。他の例には、例えば、肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)又は左心室緻密化障害(LVNC)を引き起こす対立遺伝子によってコードされる転写物を選択的に不活化する干渉RNAが挙げられ、ここで、対立遺伝子は、MYL3(ミオシン軽鎖3、アルカリ、心室、骨格遅筋(skeletal slow))、MYH7、TNNI3(トロポニンI 3型(心臓))、TNNT2(トロポニンT 2型(心臓))、TPMl(トロポミオシン1(アルファ))又はHCMを引き起こす、DCMを引き起こす若しくはLVNCを引き起こす変異を含むACTCl対立遺伝子である。例えば、心臓疾患を引き起こす変異の例に関しては、例えば米国特許 公開 第2016/0237430号を参照されたい。
【0201】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ポリペプチドをコードするRNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、干渉RNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、アプタマーである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、治療ポリペプチド、例えば、臨床的利益を提供するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンを提供する部位特異的ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、標的核酸の改変を提供するRNAガイドエンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、i)標的核酸の改変を提供するRNA誘導エンドヌクレアーゼ、及びii)標的核酸中の標的配列に結合する第1のセグメント、及びRNAガイドエンドヌクレアーゼに結合する第2のセグメントを含むガイドRNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、i)標的核酸の改変を提供するRNAガイドエンドヌクレアーゼ、ii)標的核酸中の第1の標的配列に結合する第1のセグメント、及びRNAガイドエンドヌクレアーゼに結合する第2のセグメントを含む第1のガイドRNA、及びiii)標的核酸中の第2の標的配列に結合する第1のセグメント、及びガイドRNAに結合する第2のセグメントを含む第1のガイドRNAである。
【0202】
本開示のrAAVビリオン中の異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターに動作可能に連結され得る。例えば、本開示のrAAVビリオン中の異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、構成的プロモーター、調節可能プロモーター、又は心臓細胞特異的プロモーターに動作可能に連結され得る。好適な構成的プロモーターとしては、ヒト伸長因子1αサブユニット(EFlα)プロモーター、β-アクチンプロモーター、α-アクチンプロモーター、β-グルクロニダーゼプロモーター、CAGプロモーター、スーパーコアプロモーター、及びユビキチンプロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオン中の異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列は、心臓特異的転写調節エレメント(TRE)に動作可能に連結され、ここで、心臓特異的TREは、プロモーター及びエンハンサーを含む。適切な心臓特異的TREには、限定されないが、以下の遺伝子に由来するTRE:ミオシン軽鎖-2(MLC-2)、a-ミオシン重鎖(a-MHC)、デスミン、AE3、心筋トロポニンC(cTnC)、及び心臓アクチンが挙げられる。Franz et al.(1997)Cardiovasc.Res.35:560-566、Robbins et al.(1995)Ann.NY.Acad.Sci.752:492-505、Linn et al.(1995)Circ.Res.76:584-591、Parmacek et al.(1994)Mol.Cell.Biol.14:1870-1885、Hunter et al.(1993)Hypertension 22:608-617、及びSartorelli et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4047-4051。同様にPacak et al.(2008)Genet Vaccines Ther.6:13も参照されたい。いくつかの実施形態では、プロモーターは、a-MHCプロモーター、MLC-2プロモーター、又はcTnTプロモーターである。
【0203】
遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、プロモーター及び/又はエンハンサーに動作可能に連結され、遺伝子産物の発現を促進する。利用される宿主/ベクターシステムに応じて、構成的及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、いくつもの適切な転写及び翻訳制御エレメントうちのいずれかを、rAAVビリオンにおいて使用してもよい(例えば、Bitter et al.(1987)Methods in Enzymology,153:516-544)。
【0204】
別個のプロモーター及び/又はエンハンサーを、ポリヌクレオチドの各々に使用することができる。いくつかの実施形態では、同じプロモーター及び/又はエンハンスが、単一のオープンリーディングフレーム内の二つ以上のポリヌクレオチドに使用される。遺伝子エレメントのこの配置を用いるベクターは、「ポリシストロニック」と呼ばれる。ポリシストロニックベクターの例示的な例は、2A領域によって連結された二つ以上のポリヌクレオチドを含む単一のオープンリーディングフレームに作動可能に連結されたエンハンサー及びプロモーターを含み、それによってオープンリーディングフレームの発現は、複数のポリペプチドを同時翻訳で生成される。2A領域は、コドンスキッピングを介して複数のポリペプチド配列の生成を媒介すると考えられているが、本開示は、翻訳後切断を利用して、同じポリヌクレオチドから2つ以上の目的のタンパク質を生成するポリシストロニックベクターにも関連する。例示的2A配列、ベクター、及び関連する方法は、参照により本明細書に組み込まれる、US2004/0265955A1に提供される。
【0205】
適切な真核性プロモーター(真核細胞で機能するプロモーター)の非限定的な例としては、CMV、CMV最初期、HSVチミジンキナーゼ、早期及び後期SV40、レトロウイルス由来の長末端反復(LTR)、及びマウスメタロチオネイン-Iが挙げられる。いくつかの実施形態では、心臓特異的発現を供与することができるプロモーターが使用される。好適な心臓特異的プロモーターの非限定的な例としては、デスミン(Des)、アルファ-ミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、心筋トロポニンT(cTnT)、及び心筋トロポニンC(cTnC)が挙げられる。好適なニューロン特異的プロモーターの非限定的な例としては、シナプシンI(SYN)、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII、テブリンアルファI、ニューロン特異的エノラーゼ、及び血小板由来成長因子ベータ鎖プロモーター、並びにサイトメガロウイルスエンハンサー(E)をそれらのニューロン特異的プロモーターに融合させることによるハイブリッドプロモーターが挙げられる。
【0206】
再プログラミング因子の発現を駆動するための適切なプロモーターの例としては、限定されるものではないが、レトロウイルス長末端反復(LTR)エレメント;構成的プロモーター、例えばCMV、HSV1-TK、SV40、EF-la、β-アクチン、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK);誘導性プロモーター、例えば、Tet-オペレーターエレメントを含むものなど、心臓特異的プロモーター、デスミン(DES)、アルファ-ミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖2(MLC-2)、心筋トロポニンT(cTnT)及び心筋トロポニンC(cTnC);神経特異的プロモーター、例えばネスチン、神経核(NeuN)、微小管結合タンパク質2(MAP2)、ベータIIIチューブリン、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、オリゴデンドロサイト系統(Oligl/2)、及びグリア線維性酸性タンパク質(GFAP);並びに膵臓特異的プロモーター、例えばPax4、Nkx2。2、Ngn3、インスリン、グルカゴン、及びソマトスタチンが挙げられる。
【0207】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞型特異的転写調節エレメント(TRE)に動作可能に連結され、TREはプロモーター及びエンハンサーを含む。適切なTREには、限定されないが、以下の遺伝子に由来するTRE:ミオシン軽鎖-2、a-ミオシン重鎖、AE3、心筋トロポニンC、及び心臓アクチンが含まれる。Franz et al.(1997)Cardiovasc.Res.35:560-566、Robbins et al.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.752:492-505、Linn et al.(1995)Circ.Res.76:584-591、Parmacek et al.(1994)Cell.Biol.14:1870-1885、Hunter et al.(1993)Hypertension 22:608-617、及びSartorelli et al.(1992)PNAS USA 89:4047-4051。
【0208】
プロモーターは、遺伝子又は核酸セグメントと自然に会合するものであってもよい。同様に、RNA(例えば、マイクロRNA)については、プロモーターは、マイクロRNA遺伝子(例えば、miRNA-302遺伝子)と自然に会合するプロモーターであってもよい。こうした自然に会合するプロモーターは、「自然プロモーター」と称することができ、コードセグメント及び/又はエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって取得することができる。同様に、エンハンサーは、核酸配列と自然に会合するものであってもよい。しかしながら、エンハンサーは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置することができる。
【0209】
あるいは、特定の利点は、コード核酸セグメントを、その自然環境において通常核酸と会合しないプロモーターを指す、組換え又は異種プロモーターの制御下に配置することによって得られる。組換えエンハンサー又は異種エンハンサーはまた、その自然環境において核酸配列と通常会合しないエンハンサーも指す。こうしたプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、並びに任意の他の原核細胞、ウイルス細胞、又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、及びプロモーター又はエンハンサーであって、「天然型」ではない、すなわち、異なる転写制御領域の異なるエレメント、及び/又は発現を変化させる変異を含有するプロモーター又はエンハンサーを含み得る。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成的に産生することに加えて、本明細書に開示される組成物に関して、PCR(商標)を含む組換えクローニング及び/又は核酸増幅技術を使用して、配列を産生してもよい(各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照されたい)。
【0210】
使用されるプロモーターは、構成的、誘導性、発生特異的、組織特異的であり得、及び/又は核酸セグメントの高レベルの発現を方向付ける適切な条件下で有用であり得る。例えば、プロモーターは、構成的プロモーター、例えば、CMVプロモーター、CMVサイトメガロウイルスの最初期プロモーター、CAGプロモーター、EF-1αプロモーター、HSV1-TKプロモーター、SV40プロモーター、β-アクチンプロモーター、PGKプロモーター、又はそれらの組み合わせであってもよい。使用できる真核性プロモーターの例としては、以下に限定されないが、構成的プロモーター、例えばCMV、SV40及びRSVプロモーターなどのウイルスプロモーター、並びに調製可能プロモーター例えば、tetプロモーター、hsp70プロモーター、及びCREにより調節される合成プロモーターなどの誘導性又は抑制性プロモーターが挙げられる。特定の実施形態では、細胞型特異的プロモーターは、特定の細胞型における再プログラミング因子の発現を駆動するために使用される。本明細書に記載される方法に有用な好適な細胞型特異的プロモーターの例としては、限定されるものではないが、He et al(2006)、Human Gene Therapy 17:949-959に記載される合成マクロファージ特異的プロモーター、顆粒球及びマクロファージ特異的リゾザイムMプロモーター(例えば、 Faust et al(2000),Blood 96(2):719-726を参照されたい)、及び骨髄特異的CD11bプロモーター(例えば、Dziennis et al(1995),Blood 85(2):319-329を参照されたい)が挙げられる。採用され得るプロモーターの他の例には、ヒトEF1α伸長因子プロモーター、CMVサイトメガロウイルス最初期プロモーター、CAGニワトリアルブミンプロモーター、本明細書に記載されるウイルスベクターのうちのいずれかと関連付けられたウイルスプロモーター、又は本明細書に記載されるプロモーターのうちのいずれかと相同なプロモーター(例えば、別の種からの)が挙げられる。使用され得る原核プロモーターの例としては、限定されるものではないが、SP6、T7、T5、tac、bla、trp、gal、lac、又はマルトースプロモーターが挙げられる。
【0211】
いくつかの実施形態では、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントを使用して、マルチ遺伝子又はポリシストロニックのメッセージを作成できる。IRESエレメントは、5’-メチル化Cap依存的翻訳のリボソームスキャンニングモデルを迂回して、内部部位で翻訳を開始することができる(Pelletier and Sonenberg,Nature 334(6180):320-325(1988))。ピコルナウイルス科の2つのメンバー(ポリオ及び脳心筋炎)からのIRESエレメント(Pelletier及びSonenberg,Nature 334(6180):320-325(1988))、並びに哺乳動物メッセージからのIRES(Macejak&Samow,Nature 353:90-94(1991))が記載されている。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームに連結することができる。IRESによって各々が隔てられた、複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写し、ポリシストロニックメッセージを作成することができる。IRESエレメントにより、各々のオープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームからアクセス可能である。複数の遺伝子を、単一のプロモーター/エンハンサーを使用して効率的に発現して、単一のメッセージを転写することができる(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,925,565号及び第5,935,819号を参照されたい)。
【0212】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、ポリアデニル化配列に動作可能に連結される。適切なポリアデニル化配列には、ウシ成長ホルモンポリAシグナル(bGHpolyA)及び短いポリAシグナルが含まれる。任意選択的に、本開示のrAAVベクターは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドは、いわゆる自己切断ペプチド、例えばP2Aペプチドを含む配列によって結合される。
【0213】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、遺伝子機能の部位特異的ノックダウンを提供する部位特異的エンドヌクレアーゼを含み、例えば、エンドヌクレアーゼは、心疾患又は障害に関連する対立遺伝子をノックアウトする。例えば、優性対立遺伝子が、野生型の場合、心臓構造タンパク質である遺伝子の欠損コピーをコードし、かつ/又は正常な心臓機能を提供する場合、部位特異的エンドヌクレアーゼを欠損対立遺伝子に標的化し、欠損対立遺伝子をノックアウトすることができる。いくつかの実施形態では、部位特異的エンドヌクレアーゼは、RNAガイドエンドヌクレアーゼである。
【0214】
欠損対立遺伝子をノックアウトすることに加えて、部位特異的ヌクレアーゼを使用して、欠損対立遺伝子によってコードされるタンパク質の機能的コピーをコードするドナーDNAとの相同組換えを刺激することもできる。例えば、主題のrAAVビリオンを使用して、欠損対立遺伝子、欠損対立遺伝子(又はその断片)の機能的コピーをノックアウトする部位特異的エンドヌクレアーゼの両方を送達し、その結果、欠損対立遺伝子を修復し、それによって機能的心臓タンパク質の(例えば、機能的トロポニンなど)産生を提供することができる。いくつかの実施形態では、主題のrAAVビリオンは、部位特異的エンドヌクレアーゼをコードする異種ヌクレオチド配列と、欠損対立遺伝子の機能的コピーをコードする異種ヌクレオチド配列を含み、機能的コピーは、機能的心臓タンパク質をコードする。機能的な心臓タンパク質には、例えば、トロポニン、塩素イオンチャネルなどが挙げられる。
【0215】
使用に適した部位特異的エンドヌクレアーゼとしては、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、及び転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が挙げられるが、そのような部位特異的エンドヌクレアーゼは、非天然型であり、特定の遺伝子を標的とするように改変されている。こうした部位特異的ヌクレアーゼは、ゲノム内の特定の位置を切断するように操作することができ、非相同末端結合はその後、いくつかのヌクレオチドを挿入又は欠失させながら切断を修復することができる。そのような部位特異的エンドヌクレアーゼ(「INDEL」とも称される)は、次いでタンパク質をフレームから外し、遺伝子を効果的にノックアウトする。例えば、米国特許 公開 第2011/0301073号を参照されたい。適切な部位特異的エンドヌクレアーゼには、操作されたメガヌクレアーゼ再操作されたホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。適切なエンドヌクレアーゼは、I-Tevlヌクレアーゼを含む。適切なメガヌクレアーゼには、I-Scelが含まれる(例えば、Bellaiche et al.(1999)Genetics 152:1037を参照されたい)、及びI-Crel(例えば、Heath et al.(1997)Nature Sructural Biology 4:468を参照されたい)。使用に適した部位特異的エンドヌクレアーゼには、CRISPRiシステム及びCas9に基づくSAMシステムが含まれる。
【0216】
いくつかの実施形態では、遺伝子産物はRNAガイドエンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、RNAガイドエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、ガイドRNA、例えば、シングルガイドRNAである。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、1)ガイドRNA、及び2)RNAガイドエンドヌクレアーゼである。ガイドRNAは、a)RNAガイドエンドヌクレアーゼに結合するタンパク質結合領域、及びb)標的核酸に結合する領域を含み得る。RNAガイドエンドヌクレアーゼは、本明細書では「ゲノム編集ヌクレアーゼ」とも呼ばれる。
【0217】
適切なゲノム編集ヌクレアーゼの例としては、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、例えばII型、V型、又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ)である。適切なゲノム編集ヌクレアーゼは、CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ、例えばII型、V型、又はVI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ)である。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 V型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cpflタンパク質、C2clタンパク質、又はC2c3タンパク質)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、クラス2 VI型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(例えば、C2c2タンパク質、また「Casl3a」タンパク質とも呼ばれる)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、CasXタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は、CasYタンパク質を含む。
【0218】
使用方法
いくつかの実施形態では、本開示は、標的細胞におけるrAAVビリオンの増加した形質導入効率をもたらすAAVキャプシドタンパク質を同定する方法を提供する。方法は、そのrAAVゲノムが、バリアントAAVキャプシドタンパク質をコードするcapポリヌクレオチドのライブラリを含む、rAAVビリオンの集団を提供することと、任意選択的に、非標的細胞への望ましくないrAAVビリオンを付着させるのに十分な時間、集団を非標的細胞と接触させることと、rAAVビリオンによってcapポリヌクレオチドを標的細胞に形質導入することを可能にするのに十分な時間、集団を標的細胞と接触させることと、標的細胞からのcapポリヌクレオチドをシーケンシングし、それによって、標的細胞における増加した形質導入効率をもたらすAAVキャプシドタンパク質を同定することと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、非標的細胞へのrAAVビリオンの付着を可能にするのに十分な時間、非標的細胞に集団を接触させることによって、rAAVビリオンの集団を枯渇させることを更に含む。このような同定方法の非限定的な例を実施例に提供する。
【0219】
本開示は、rAAVビリオンを使用して、インビトロで心筋細胞及び/又は心筋細胞様細胞を生成するための方法を提供する。選択された開始細胞を、rAAVで形質導入し、任意選択的に、開始細胞を系統及び/又は分化境界を越えて変換して心臓前駆細胞及び/又は心筋細胞を形成するのに十分な時間及び条件下で、低分子再プログラミング因子(形質導入の前、間、又は後)に曝露する。いくつかの実施形態では、開始細胞は、線維芽細胞である。いくつかの実施形態では、開始細胞は、分化表現型を示す1つ以上のマーカーを発現する。開始細胞の心臓前駆細胞及び心筋細胞への変換にかかる時間は、様々である。例えば、心臓又は心筋細胞マーカーが発現するまで、目的の1つ以上のポリヌクレオチド又はタンパク質を用いた処理後に開始細胞をインキュベートすることができる。このような心臓又は心筋細胞細胞マーカーは、以下のマーカーのうちのいずれかを含み得る:α-GATA4、TNNT2、MYH6、RYR2、NKX2-5、MEF2C、ANP、アクチニン、MLC2v、MY20、cMHC、ISL1、cTNT、cTNI、及びMLC2a、又はそれらの任意の組み合わせ。いくつかの実施形態では、誘導された心筋細胞細胞は、1つ以上のニューロン細胞マーカーに対して陰性である。このようなニューロン細胞マーカーは、以下のマーカーのうちのいずれかを含み得る:DCX、TUBB3、MAP2、及びENO2。
【0220】
心臓前駆体マーカーが開始細胞によって発現されるまで、インキュベーションを進行させることができる。こうした心臓前駆体マーカーには、GATA4、TNNT2、MYH6、RYR2、又はそれらの組み合わせが含まれる。GATA4、TNNT2、MYH6、RYR2、又はそれらの組み合わせなどの心臓前駆体マーカーは、本明細書に記載の組成物中で細胞のインキュベーションを開始後約8日までに、又は約9日までに、又は約10日までに、又は約11日までに、又は約12日までに、又は約14日までに、又は約15日までに、又は約16日までに、又は約17日までに、又は約18日までに、又は約19日までに、又は約20日までに発現することができる。細胞の更なるインキュベーションを、NKX2-5、MEF2C又はそれらの組み合わせなどの後期心臓前駆体マーカーの発現が生ずるまで実施することができる。
【0221】
再プログラミング効率は、心筋細胞マーカーの関数として測定され得る。このような多能性マーカーには、限定されないが、心筋細胞マーカータンパク質及びmRNAの発現、心筋細胞形態並びに電気生理学的表現型が含まれる。心筋細胞マーカーの非限定的な例としては、a-サルコグリカン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、骨形成タンパク質4(BMP4)、コネキシン37、コネキシン40、クリプト(crypto)、デスミン、GATA4、GATA6、MEF2C、MYH6、ミオシン重鎖、NKX2.5、TBX5、及びトロポニンTが挙げられる。
【0222】
心筋細胞に特異的な様々なマーカーの発現は、従来の生化学的又は免疫化学的方法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ、免疫組織化学的アッセイなど)によって検出され得る。あるいは、心筋細胞特異的マーカーをコードする核酸の発現を評価することができる。細胞における心筋細胞特異的マーカーコード核酸の発現は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)又はハイブリダイゼーション分析、任意のマーカータンパク質をコードするmRNAを増幅、検出及び分析するためにこれまでに一般的に使用されている分子生物学的方法によって確認することができる。心筋細胞に特異的なマーカーをコードする核酸配列は既知であり、GenBankなどの公開データベースを通して入手可能である。したがって、プライマー又はプローブとしての使用に必要なマーカー特異的配列は、容易に決定される。
【0223】
心筋細胞は、なんらかの心臓特異的な電気生理学的特性を示す。1つの電気的特性は、活動電位であり、これは、各心臓細胞の内部と外部との間の電位の差が、一貫した軌跡に従って上昇及び下降する、短時間の事象である。心筋細胞の別の電気生理学的特徴は、Ca2+トランジェントと呼ばれる、細胞質遊離Ca2+濃度の周期的変動であり、これは、心筋細胞の収縮及び弛緩の調節に使用される。これらの特徴を検出及び評価して、細胞集団が心筋細胞に再プログラミングされたかどうかを評価することができる。
【0224】
本開示は、遺伝子産物を心臓細胞、例えば、心臓線維芽細胞に送達する方法を提供する。方法は、一般に、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)をrAAVビリオンで感染させることを含み、ここで、rAAVビリオンに存在する異種核酸によってコードされる遺伝子産物が、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)で産生される。心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)への遺伝子産物の送達は、心疾患又は障害の治療を提供することができる。心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)への遺伝子産物の送達は、心臓線維芽細胞から誘導心筋細胞様(iCM)細胞の生成を提供することができる。心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)への遺伝子産物の送達は、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)のゲノムの編集を提供することができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)に感染又は形質導入することは、インビトロで実施される。いくつかの実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)に感染又は形質導入することは、インビトロで行われ、感染/形質導入された心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)は、それを必要とする個体に導入され(例えば、輸注される、又は植え込まれる)、例えば、それを必要とする個体の心臓組織に直接導入される。インビトロ形質導入については、細胞に送達される有効量のrAAVビリオンは、rAAVビリオンの約10~約1013個である。他の有効な投薬量は、用量反応曲線を確立する日常的な試験を通して、当業者によって容易に確立され得る。
【0226】
いくつかの実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)に感染させることは、インビボで実施される。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、それを必要とする個体の心臓組織に直接投与される。「有効量」は、実験及び/又は臨床試験を通して決定できる比較的広い範囲に入る。例えば、インビボ注射、すなわち心臓組織に直接注射する場合、治療有効用量は、約10~1015個程度の本開示のrAAVビリオン、例えば、約10~約1012個程度のrAAVビリオンである。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0227】
例えば、本開示のrAAVビリオンの、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約1010 約1010~約1011 約1011まで、約1011~約1012、約1012~約1013、約1013~約1014、約1014~約1015ゲノムコピー、又は1015ゲノムコピーより多くが個体に投与され、例えば、心臓組織に直接投与されるか、又は別の経路を介して投与される。個体に投与されるrAAVビリオンの数は、個体の体重1キログラム(kg)当たりのウイルスゲノム(vg)で表記することができる。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、約10vg/kg~10vg/kg、約10vg/kg~約10vg/kg、約10vg/kg~約10vg/kg、約10vg/kg~約1010vg/kg、約1010vg/kg~約1012vg/kg、約1012vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1016vg/kg、約1016vg/kg~約1018vg/kgであるか、又は1018vg/kgより多い。
【0228】
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0229】
いくつかの実施形態では、所望のレベルの遺伝子発現を達成するために、2回以上の投与(例えば、2回、3回、4回、又はそれより多くの投与)を用いてもよい。いくつかの実施形態では、2回以上の投与は、様々な間隔で、例えば、毎日、毎週、月2回、毎月、3か月毎、6か月毎、毎年などの間隔で投与される。いくつかの実施形態では、複数回投与は、1か月~2か月、2か月~4か月、4か月~8か月、8か月~12か月、1年~2年、2年~5年、又は5年を超える期間にわたって投与される。
【0230】
本開示は、心臓線維芽細胞を再プログラミングして誘導心筋細胞様細胞(iCM)を生成する方法を提供する。本方法は、一般に、本開示のrAAVビリオンで心臓線維芽細胞を感染させることを含み、rAAVビリオンは、1つ以上の再プログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。
【0231】
心筋細胞に特異的な様々なマーカーの発現は、従来の生化学的又は免疫化学的方法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ、免疫組織化学的アッセイなど)によって検出される。あるいは、心筋細胞特異的マーカーをコードする核酸の発現を評価することができる。細胞における心筋細胞特異的マーカーコード核酸の発現は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)又はハイブリダイゼーション分析、任意のマーカータンパク質をコードするmRNAを増幅、検出及び分析するためにこれまでに一般的に使用されている分子生物学的方法によって確認することができる。心筋細胞に特異的なマーカーをコードする核酸配列は既知であり、GenBankなどの公開データベースを通して利用可能であり、したがってプライマー又はプローブとしての使用に必要なマーカー特異的配列は容易に決定される。
【0232】
誘導心筋細胞はまた、自発収縮を呈することができる。誘発心筋細胞が自発収縮を呈するかどうかは、標準的な電気生理学的方法(例えば、パッチクランプ)を使用して決定することができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、誘発心筋細胞は、自発的なCa2+周期変動を呈することができる。Ca2+周期変動は、標準的な方法を使用して、例えば、様々なカルシウム感受性色素のいずれかを使用して検出することができ、細胞内Ca2+イオン検出色素としては、限定されるものではないが、fura-2、bis-fura 2、indo-1、Quin-2、Quin-2 AM、ベンゾチアザ-1、ベンゾチアザ-2、indo-5F、Fura-FF、BTC、Mag-Fura-2、Mag-Fura-5、Mag-Indo-1、fluo-3、rhod-2、rhod-3、fura-4F、fura-5F、fura-6F、fluo-4、fluo-5F、fluo-5N、オレゴングリーン488 BAPTA、カルシウムグリーン、カルセイン、Fura-C18、カルシウムグリーン-C18、カルシウムオレンジ、カルシウムクリムゾン、カルシウムグリーン-5N、マグネシウムグリーン、オレゴングリーン488 BAPTA-1、オレゴングリーン488 BAPTA-2、X-rhod-1、Fura Red、Rhod-5F、Rhod-5N、X-Rhod-5N、Mag-Rhod-2、Mag-X- Rhod-1、Fluo-5N、Fluo-5F、Fluo-4FF、Mag-Fluo-4、エクオリン、デキストランコンジュゲート又はこれらの色素のうちのいずれかの他の誘導体、及びその他(例えば、Molecular Probes、Eugeneのカタログ又はインターネットサイトを参照されたく、同様にNuccitelli,ed.,Methods in Cell Biology,Volume 40:A Practical Guide to the Study of Calcium in Living Cells,Academic Press(1994)、Lambert,ed.,Calcium Signaling Protocols(Methods in Molecular Biology Volume 114),Humana Press(1999)、W.T.Mason,ed.,Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity.A Practical Guide to Technology for Quantitative Real-Time Analysis,Second Ed,Academic Press(1999)、Calcium Signaling Protocols(Methods in Molecular Biology),2005,D.G.Lamber,ed.,Humana Pressを参照されたい)が挙げられる。
【0234】
いくつかの実施形態では、iCMはインビトロで生成され、iCMは個体に導入され、例えば、iCMは、それを必要とする個体の心臓組織に植え込まれる。本開示の方法は、インビトロで心臓線維芽細胞の集団に感染させて、iCMの集団を生成することを含むことができ、iCMの集団は、それを必要とする個体の心臓組織に植え込まれる。
【0235】
いくつかの実施形態では、iCMはインビボで生成される。例えば、いくつかの実施形態では、一つ以上の再プログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む本開示のrAAVビリオンが、個体に投与される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、それを必要とする個体の心臓組織に直接投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の再プログラミング因子をコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む本開示のrAAVビリオンの約10~約10、約10~約10、約10~約1010、約1010~約1011、約1011~約1012、約1012~約1013、約1013~約1014、約1014~約1015ゲノムコピー、又は1015ゲノムコピーより多くが個体に投与され、例えば、個体の心臓組織に直接投与されるか、又は別の投与経路を介して投与される。個体に投与されるrAAVビリオンの数は、個体の体重1キログラム(kg)当たりのウイルスゲノム(vg)で表記することができる。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、約10vg/kg~10vg/kg、約10vg/kg~約10vg/kg、約10vg/kg~約10vg/kg、約10vg/kg~約1010vg/kg、約1010vg/kg~約1012vg/kg、約1012vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1016vg/kgであるか、又は1016vg/kgより多い。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0236】
本開示は、心臓細胞のゲノムを改変する(「編集する」)方法を提供する。本開示は、心臓線維芽細胞のゲノムを改変する(「編集する」)方法を提供する。本開示は、心筋細胞のゲノムを改変(「編集する」)する方法を提供する。方法は一般的に、本開示のrAAVビリオンで心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞又は心筋細胞)を感染させることを含み、rAAVビリオンは、ゲノム編集エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本開示のrAAVビリオンで心臓線維芽細胞又は心筋細胞を感染させることを含み、rAAVビリオンは、RNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本開示のrAAVビリオンで心臓線維芽細胞又は心筋細胞を感染させることを含み、rAAVビリオンは、i)RNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼ、及びii)1つ以上のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、本開示のrAAVビリオンで心臓線維芽細胞又は心筋細胞を感染させることを含み、rAAVビリオンは、i)RNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼ、ii)ガイドRNA、及びiii)ドナー鋳型DNAをコードするヌクレオチド配列を含む異種核酸を含む。好適なRNAガイドゲノム編集エンドヌクレアーゼは上記のとおりである。
【0237】
いくつかの実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞、心筋細胞)を感染させることは、インビトロで実施される。いくつかの実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞、心筋細胞)に感染させることはインビトロで行われ、感染した心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞)は、それを必要とする個体に導入され(例えば、植え込まれる)、例えば、それを必要とする個体の心臓組織に直接導入される。インビトロでの形質導入については、細胞に送達される有効量のrAAVビリオンは、rAAVビリオンの約10~約1013個程度である。他の有効な投薬量は、用量反応曲線を確立する日常的な試験を通して、当業者によって容易に確立され得る。
【0238】
いくつかの実施形態では、心臓細胞(例えば、心臓線維芽細胞、心筋細胞)に感染させることは、インビボで実施される。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、それを必要とする個体の心臓組織に直接投与される。「有効量」は、実験及び/又は臨床試験を通して決定できる比較的広い範囲に入る。例えば、インビボ注射、すなわち心臓組織に直接注射する場合、治療有効用量は、約10~1015個程度の本開示のrAAVビリオン、例えば1011~約1012個程度のrAAVビリオンである。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0239】
例えば、本開示のrAAVビリオンの、約10~約10、約10~約10、約10~約10、約10~約1010、約1010~約1011、約l011~約1012、約1012~約1013、約1013~約1014、約1014~約1015ゲノムコピー、又は1015ゲノムコピーより多くが個体に投与され、例えば、個体の心臓組織に直接投与される。個体に投与されるrAAVビリオンの数は、個体の体重1キログラム(kg)当たりのウイルスゲノム(vg)で表記することができる。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、約10vg/kg~10vg/kg、約10vg/kg~約10vg/kg、約10vg/kg~約10vg/kg、約10vg/kg~約1010vg/kg、約1010vg/kg~約1012vg/kg、約1012vg/kg~約1014vg/kg、約1014vg/kg~約1016vg/kg、約1016vg/kg~約1018vg/kgであるか、又は1018vg/kgより多い。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、心外膜を通しての心筋内注射を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、冠動脈を通しての血管送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、上大静脈を通しての全身送達を介して投与される。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVビリオンの有効量は、末梢静脈を通しての全身送達を介して投与される。
【0240】
いくつかの実施形態では、ゲノム編集は、相同組換え修復(HDR)を含む。いくつかの実施形態では、HDRは、心臓線維芽細胞又は心筋細胞における内因性標的核酸の欠損を修正し、欠損は、心臓線維芽細胞若しくは心筋細胞、又は心臓線維芽細胞若しくは心筋細胞の成分の構造及び/又は機能の欠損に関連するか、又はそれをもたらす。
【0241】
いくつかの実施形態では、ゲノム編集は、非相同末端結合(NHEJ)を含む。いくつかの実施形態では、NHEJは、心臓線維芽細胞又は心筋細胞の内因性標的核酸における欠損を除去し、欠損は、心臓線維芽細胞若しくは心筋細胞、又は心臓線維芽細胞若しくは心筋細胞の成分の構造及び/又は機能の欠損に関連するか、又はそれをもたらす。
【0242】
心臓細胞のゲノムを編集するための本開示の方法を使用して、心疾患又は障害を生じさせる様々な遺伝的欠損のうちのいずれかを修正することができる。目的の変異には、以下の遺伝子のうちの1つ以上における変異が含まれる:心筋トロポニンT(TNNT2);ミオシン重鎖(MYH7);トロポミオシン1(TPM1);ミオシン結合タンパク質C(MYBPC3);5’-AMP-活性化プロテインキナーゼサブユニットガンマ-2(PRKAG2);トロポニンI 3型(TNNI3);チチン(TTN);ミオシン、軽鎖2(MYL2);アクチン、アルファ心筋1(ACTC1);カリウム電位依存性チャネル、KQT様サブファミリー、メンバー1(KCNQ1);プラコフィリン2(PKP2);筋細胞エンハンサー因子2c(MEF2C);及び心臓LIMタンパク質(CSRP3)。目的の特異的変異としては、限定されるものではないが、MYH7 R663H変異、TNNT2 R173W、PKP2 2013delC変異、PKP2 Q617X変異、及びKCNQ1 G269Sミスセンス変異が挙げられる。目的の変異には、以下の遺伝子のうちの1つ以上における変異が含まれる:MYH6、ACTN2、SERCA2、GATA4、TBX5、MYOCD、NKX2-5、NOTCH1、MEF2C、HAND2、及びHAND1。いくつかの実施形態では、目的の変異は、以下の遺伝子における変異が含まれる:MEF2C、TBX5、及びMYOCD。本開示の方法を用いて治療できる心臓疾患及び障害には、冠動脈心疾患、心筋症、心内膜炎、先天性心血管異常、及びうっ血性心不全が含まれる。本開示の化合物で治療され得る心疾患又は心障害には、限定されるものではないが、肥大型心筋症、心臓弁膜症、心筋梗塞、うっ血性心不全、QT延長症候群、心房性不整脈、心室性不整脈、拡張型心不全、収縮型心不全、心臓弁疾患、心臓弁石灰化、左心室心筋緻密化障害、心室中隔欠損症、及び虚血が挙げられる。
【0243】
治療方法
本開示は、治療を必要とする対象において心臓病態を治療する方法であって、治療有効量のrAAVビリオンを含む医薬組成物を対象に投与することを含み、rAAVビリオンは心臓組織を形質導入する、方法を提供する。
【0244】
本開示の組成物及び方法を使用した治療を必要とする対象としては、以下に限定されないが、先天性心臓欠陥を有する個体、変性性筋疾患に罹患している個体、虚血性心臓組織をもたらす状態を罹患している個体(例えば、冠動脈疾患を有する個体)などが挙げられる。いくつかの例では、方法は、変性性筋疾患又は状態(例えば、家族性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、又は結果として生じる虚血性心筋症を伴う冠動脈疾患)を治療するために有用である。いくつかの例では、対象となる方法は、心臓又は心血管の疾患又は障害を有する個体を治療するために有用であり、例えば心臓血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管障害(脳卒中)、脳血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、心筋炎、冠動脈弁疾患(valve disease coronary)、拡張動脈疾患(artery disease dilated)、拡張機能障害、心内膜炎、高血圧(高血圧症)、心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱、心筋梗塞(心臓発作)、又は静脈血栓塞栓症である。
【0245】
本開示の組成物、細胞、及び方法を使用した治療に好適な対象は、虚血性心臓組織をもたらす状態を含むがこれに限定されない心臓状態を有する(例えば冠動脈疾患を有する個体)個体(例えば、哺乳動物対象、例えばヒト、非ヒト霊長類、家畜哺乳動物、マウス、ラットなどの実験的非ヒト哺乳動物対象)が含まれる。
【0246】
いくつかの実施例では、治療に好適な対象は、心臓又は心血管疾患又は状態、例えば、心臓血管疾患、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管事故(脳卒中)、脳血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、心筋炎、冠動脈弁疾患、拡張動脈疾患、拡張機能障害、心内膜炎、高血圧(高血圧症)、心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患、僧帽弁逸脱、心筋梗塞(心臓発作)、又は静脈血栓塞栓症に罹患している。いくつかの例では、本発明の方法による治療に好適な個体は、変性性筋疾患又は状態、例えば、家族性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、又は虚血性心筋症をもたらす冠動脈疾患を有する個体を含む。
【0247】
例えば、心臓病態は、うっ血性心不全、心筋梗塞、心臓虚血、心筋炎、及び不整脈からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病である。いくつかの実施形態では、対象は、非糖尿病である。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病性心筋症に罹患している。
【0248】
治療のために、本開示のrAAVビリオン及び/又はそれらの医薬組成物は、局所的に又は全身的に投与することができる。rAAVビリオンは、注射、カテーテル、植え込み可能なデバイスなどによって導入され得る。rAAVビリオンは、細胞に悪影響を及ぼさない任意の生理学的に許容可能な賦形剤又は担体中で投与することができる。例えば、本開示のrAAVビリオン及び/又はそれらの医薬組成物は、静脈内又は心臓内経路(例えば、心外膜内又は心筋内)を通して投与することができる。本開示のrAAVビリオン及び/又はそれらの医薬組成物を対象に、特にヒト対象を投与する方法は、医薬組成物(例えば、rAAVビリオンを含む組成物)の注射又は注入を含む。注射には、筋肉への直接注射が含まれ得、注入には血管内注入が含まれ得る。rAAVビリオン又は医薬組成物は、対象への注射による導入を容易にする送達デバイスに挿入することができる。こうした送達デバイスは、レシピエント対象の体内に細胞及び流体を注入するための管、例えばカテーテルを含む。管は更に、それを通して本発明の細胞は、所望の位置で対象に導入され得る、針、例えば、注射器を含んでもよい。
【0249】
いくつかの実施形態(embdoiments)では、rAAVビリオンは、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は心臓内注射によって、若しくは心臓内カテーテル挿入によって投与される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、直接心筋内注射又は経血管投与によって投与される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、直接心筋内注射、順行性冠動脈内注射、逆行性注射、経心内膜注射、又は再循環送達を伴う分子心臓手術(molecular cardiac surgery with recirculating delivery)(MCARD)によって投与される。
【0250】
rAAVビリオンは、このような送達デバイス、例えば、シリンジに、様々な形態で挿入することができる。rAAVビリオンは、医薬組成物の形態で供給され得る。そのような組成物は、ヒトでの投与のために十分に滅菌された条件下で調製された等張性賦形剤を含み得る。医薬製剤における一般原則については、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy, and Cellular Immunotherapy,by G.Morstyn&W.Sheridan eds,Cambridge University Press,1996、及びHematopoietic Stem Cell Therapy,E.D.Ball,J.Lister&P.Law,Churchill Livingstone,2000を参照されたい。賦形剤及び組成物の任意の付随成分の選択は、用いられる経路及び/又はデバイスによる投与を最適化するように適合され得る。
【0251】
組換えAAVは、局所的に又は全身的に投与されてもよい。組換えAAVは、本開示の適切なキャプシドタンパク質を選択することによって、特定の細胞型を標的とするように操作され得る。様々な治療投与レジメン及びAAVビリオン組成物の用量の適合性を決定するために、rAAVビリオンをまず適切な動物モデルで試験することができる。あるレベルで、組換えAAVは、インビボで標的細胞を感染させるそれらの能力について評価される。組換えAAVは、標的組織に移行するかどうか、宿主において免疫反応を誘発するかどうかを確認するため、又は投与されるrAAVビリオンの適切な数若しくは投薬量を決定するために評価することもできる。治療される疾患に応じて、組換え型AAVが免疫反応を生成することが望ましい場合、又は望ましくない場合がある。一般に、ビリオンの反復投与が必要な場合、ビリオンが免疫原性でない場合は有利である。試験目的のために、rAAVビリオン組成物は、免疫不全動物(ヌードマウス、又は化学的に又は放射線照射によって免疫不全となった動物など)に投与することができる。標的組織又は細胞を、感染期間後に採取し、組織又は細胞が感染したかどうか、及び標的組織又は細胞に所望の表現型(例えば、誘導心筋細胞)が誘導されたかどうかを決定するために評価され得る。
【0252】
組換えAAVビリオンは、心臓への直接注射又は心臓カテーテル挿入を含むがこれに限定されない様々な経路によって投与することができる。あるいは、rAAVビリオンは、静脈内注入などにより全身的に投与することができる。直接注射を用いる場合、開心手術又は低侵襲手術のいずれかで実施されうる。いくつかの実施形態では、組換えウイルスは、注射又は注入によって心膜腔に送達される。注射又は注入された組換えウイルスは、様々な方法によって追跡することができる。例えば、検出可能な標識(緑色蛍光タンパク質、又はベータガラクトシダーゼなど)で標識された又はそれを発現する組換えAAVを容易に検出することができる。組換えAAVは、標的細胞に、表面発現タンパク質又は蛍光タンパク質などのマーカータンパク質を発現させるように操作されてもよい。あるいは、組換えAAVによる標的細胞の感染は、試験に利用される動物により発現されない細胞マーカー(例えば、実験動物に細胞を注射する場合のヒト特異的抗原)のそれらの発現によって検出され得る。標的細胞の存在及び表現型は、蛍光顕微鏡法(例えば、緑色蛍光タンパク質、又はベータガラクトシダーゼ)、免疫組織化学法(例えば、ヒト抗原に対する抗体を使用する)、ELISA法(ヒト抗原に対する抗体を使用する)、又は心臓表現型を示すRNAに特異的である増幅を引き起こすプライマー及びハイブリダイゼーション条件を使用するRT-PCR分析によって評価することができる。
【0253】
医薬組成物
一態様では、本開示は、本開示のrAAVビリオンを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、及び緩衝剤のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、又は緩衝剤は、ヒトでの使用に適している。こうした賦形剤、担体、希釈剤、及び緩衝剤は、過度の毒性なしに投与することができる任意の医薬品を含む。薬学的に許容可能な賦形剤には、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノールなどの液体が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩は、その中に、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸の塩、及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩が含まれ得る。更に、pH緩衝物質などの補助物質が、このようなビヒクルに存在してもよい。多種多様な薬学的に許容可能な賦形剤が当該技術分野で既知であり、本明細書で詳細に論じる必要はない。薬学的に許容可能な賦形剤は、例えば、A.Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,Lippincott,Williams,&Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7th ed.,Lippincott,Williams,&Wilkins、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assocを含む多様な刊行物において詳細に記載されている。
【0254】
組成物を調製するために、rAAVビリオンを作製し、必要に応じて又は所望により精製する。rAAVは、薬学的に許容可能な担体と混合されてもよく、又はその中に懸濁されてもよい。これらのrAAVは、適切な濃度に調整されてもよく、任意選択的に他の薬剤と組み合わせてもよい。単位用量に含まれるrAAVビリオン及び/又は他の薬剤の濃縮は、大きく変化し得る。用量及び投与数は、当業者によって最適化され得る。例えば、約10~1010のベクターゲノム(vg)を投与してもよい。いくつかの実施形態では、用量は、少なくとも約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、約10vg、又はそれより多くのベクターゲノムである。化合物の1日用量も同様に変化し得る。こうした1日用量は、例えば、少なくとも約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約10vg/日、約1010vg/日、又はより多いベクターゲノム/日の範囲であり得る。
【0255】
特定の実施形態では、治療方法は、1つ以上の抗炎症剤、例えば、抗炎症ステロイド又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の投与によって強化される。
【0256】
本発明で使用するための抗炎症性ステロイドには、コルチコステロイド、特にグルココルチコイド活性を有するもの、例えば、デキサメタゾン及びプレドニゾンが含まれる。本発明で使用する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、一般に、炎症及び疼痛を引き起こすプロスタグランジン、シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)及び/又はシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の産生を遮断することによって作用する。従来のNSAIDは、COX-1及びCOX-2の両方を遮断することによって機能する。COX-2選択阻害剤は、COX-2酵素のみを遮断する。特定の実施形態では、NSAIDは、COX-2選択阻害剤、例えば、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx)、及びバルデコキシブ(B extra)である。特定の実施形態では、抗炎症性は、NSAIDプロスタグランジン阻害剤、例えば、ピロキシカムである。
【0257】
治療に使用するrAAVビリオンの量は、選択された特定の担体だけでなく、投与経路、治療される状態の性質、及び患者の年齢及び状態によっても変化する。最終的に、担当の医療提供者が、適切な用量を決定し得る。医薬組成物は、細胞を含む、又は含まない投与のために単一の単位剤形中の各化合物の適切な比で製剤化され得る。細胞又はベクターは、別個に提供され、化合物組成物の液体溶液と混合されてもよく、又は別個に投与されてもよい。
【0258】
組換えAAVは、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入)のために製剤化されてもよく、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量注入容器、又は保存剤を添加した複数回投与容器で単位剤形中に存在してもよい。医薬組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションの形態を取ることができ、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの配合剤(formulatory agent)を含有し得る。適切な担体には、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、及び当技術分野で一般的に使用される他の材料が含まれる。
【0259】
組成物はまた、心疾患、状態、及び損傷の治療に有用な薬剤などの他の成分を含有してもよく、それらは例えば抗凝固剤(例えば、ダルテパリン(fragmin)、ダナパロイド(orgaran)、エノキサパリン(lovenox)、ヘパリン、チンザパリン(innohep)、及び/又はワーファリン(クマジン)、抗血小板剤(例えば、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、又はジピリダモール)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、ベナゼプリル(Lotensin)、カプトプリル(Capoten)、エナラプリル(Vasotec)、ホシノプリル(Monopril)、リシノプリル(Prinivil、Zestril)、モエキシプリル(Univasc)、ペリンドプリル(Aceon)、キナプリル(Accupril)、ラミプリル(Altace)、及び/又はトランドラプリル(Mavik)、アンジオテンシンII受容体遮断薬(例えば、カンデサルタン(Atacand)、エプロサルタン(Teveten)、イルベサルタン(Avapro)、ロサルタン(Cozaar)、テルミサルタン(Micardis)、及び/又はバルサンタン(Diovan))、ベータ遮断薬(例えば、アセブトロール(Sectral)、アテノロール(Tenormin)、ベタキソロール(Kerlone)、ビソプロロール/ヒドロクロロチアジド(Ziac)、ビソプロロール(Zebeta)、カルテオロール(Cartrol)、メトプロロール(Lopressor、Toprol XL)、ナドロール(Corgard)、プロプラノロール(Inderal)、ソタロール(Betapace)、及び/又はチモロール(Blocadren))、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロジピン(Norvasc、Lotrel)、ベプリジル(Vascor)、ジルチアゼム(Cardizem、Tiazac)、フェロジピン(Plendil)、ニフェジピン(Adalat、Procardia)、ニモジピン(Nimotop)、ニソロジピン(Sular)、ベラパミル(Calan、Isoptin、Verelan)、利尿薬(例えば、アミロライド(Midamor)、ブメタニド(Bumex)、クロロチアジド(Diuril)、クロルタリドン(Hygroton)、フロセミド(Lasix)、ヒドロクロロチアジド(Esidrix、Hydrodiuril)、インダパミド(Lozol)及び/又はスピロノラクトン(Aldactone)、血管拡張剤(例えば、二硝酸イソソルビド(Isordil)、ネシリチド(Natrecor)、ヒドララジン(Apresoline)、硝酸塩及び/又はミノキシジル)、スタチン、ニコチン酸、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、ジゴキシン、ジギトキシン、ラノキシン、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0260】
追加的な薬剤は、抗菌剤、抗微生物剤、抗ウイルス剤、生物学的応答調節剤、成長因子、免疫モジュレーター、モノクローナル抗体、及び/又は保存剤なども含まれ得る。本発明の組成物はまた、他の療法形態とともに使用されてもよい。
【0261】
本明細書に記載されるrAAVビリオンは、疾患又は障害を治療するために対象に投与することができる。このような組成物は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与目的が外傷に対する応答であるか、又はより持続的な治療目的であるか、及び熟練の医師に知られている他の要因に応じて、連続的又は断続的な様式で、単回投与で、複数回投与であり得る。本発明の化合物及び組成物の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、又は一連の間隔を空けて投与されてもよい。局所投与及び全身投与の両方が企図される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンの局所送達が達成される。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンの局所送達を使用して、心臓内の細胞集団を生成する。いくつかの実施形態では、そのような局在化された集団は、心臓に対する「ペースメーカー細胞」として動作する。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、洞房(SA)結節、房室(AV)結節、ヒス束、及び/又はプルキンエ線維のうちの1つ以上を生成、再生、修復、置換、及び/又は若返らせる(rejunevate)ために使用される。
【0262】
張性を制御するために、水性医薬組成物は、ナトリウム塩などの生理学的塩を含み得る。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは1~20mg/mlで存在し得る。存在する可能性のある他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム脱水物(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムが挙げられる。
【0263】
組成物は、1つ以上の緩衝剤を含んでもよい。典型的な緩衝液としては、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、又はクエン酸緩衝剤が挙げられる。緩衝剤は、典型的には、5~20mMの範囲の濃度で含まれる。組成物のpHは、一般的に、5~8、より典型的には、6~8、例えば、6.5~7.5、又は7.0~7.8である。
【0264】
組成物は、無菌であることが好ましい。組成物は、グルテンフリーであることが好ましい。組成物は、好ましくは非発熱性である。
【0265】
いくつかの実施形態では、細胞を含む組成物は、凍結保護剤を含んでもよい。凍結保護剤の非限定的な例としては、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセロール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、スクロース、トレハロース、デキストロース、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0266】
rAAVビリオンを有する組成物中に、以下の化合物の1種以上も存在し得る:WNTアゴニスト、GSK3阻害剤、TGF-ベータシグナル伝達阻害剤、エピジェネティック改変剤、LSD1阻害剤、アデニルシクラーゼアゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせ。
【0267】
キット
本明細書に記載される組成物(例えば、rAAVビリオン)のうちのいずれかを含む、様々なキットが本明細書に記載される。キットは、一緒に混合されるか、又は個別に包装され、乾燥形態又は水和形態のいずれかで、本明細書に記載される組成物のうちのいずれかを含み得る。本明細書に記載されるrAAVビリオン及び/又はその他の薬剤は、別個のバイアル、ボトル又は他の容器に別々に包装され得る。あるいは、本明細書に記載されるrAAVビリオン及び/又は薬剤のうちのいずれかは、単一の組成物として、又は一緒に又は別々に使用され得る二つ以上の組成物として一緒に包装されてもよい。本明細書に記載の化合物及び/又は薬剤は、分化境界を越えて選択された細胞を変換して、心臓前駆細胞及び/又は心筋細胞を形成することを促進するため、適切な比及び/又は量で包装することができる。
【0268】
キットには、これらの組成物、化合物及び/又は薬剤を投与するための説明書を含めることができる。こうした説明書は、本出願全体を通して記載される情報を提供し得る。rAAVビリオン又は医薬組成物は、送達デバイスの形態のキットのうちのいずれか内に提供され得る。あるいは、送達デバイスは、キットに別個に含めることができ、説明書は、対象への投与前に送達デバイスを組み立てる方法を記載することができる。
【0269】
キットのいずれも、シリンジ、カテーテル、メス、試料又は細胞収集のための滅菌容器、希釈剤、薬学的に許容可能な担体なども含み得る。キットは、本出願の前のセクション又は他の部分の組成物に関して本明細書に記述される補足因子又は薬物のうちのいずれかなどの他の因子を提供することができる。
【0270】
以下の非限定的な実施例は、本発明の開発に関与する実験作業のいくつかを説明する。
【実施例
【0271】
実施例1:可変領域改変AAV9キャプシドの同定
ライブラリの生成とAAVの選択
AAV9キャプシドの可変領域(VR-IV、VR-V、VR-VII、及びVR-VIII部位)を図1に示す。図2に示すようにAAV9キャプシドの各部位内の残基をランダムに変更して、形質導入効率及び/又は心臓組織に対する選択性が改善されたAAVバリアントを同定することにより、ライブラリスクリーニング戦略を採用して、非常に多様なライブラリを生成した。簡潔に述べると、各可変領域に対して、全てのVR改変ライブラリの組み合わせからなるライブラリとともに、個々のライブラリが生成された。これらのライブラリは独立して、3回の指向性進化法に供された。ヒト栄養性バリアントを選択するために、第1回進化ラウンドをhiPSC-CMで実施した。指向性進化の残りの2ラウンドは、αMHC-Creマウスのライブラリの全身送達を通じて行われ、全身送達後に心臓の内皮バリアを通して経細胞輸送(transcytose)し、心筋細胞に形質導入できる心臓栄養性バリアントを選択した。3ラウンドの指向性進化法の後、図3A~3D及び4A~4Dに示すように、各ライブラリは様々なレベルの収束を示した。
【0272】
インビトロ及びインビボにおける増加した形質導入効率の確認
各ライブラリの上位バリアントは、最初にインビトロでヒトiPSC-CMを形質導入するそれらの能力について評価した。細胞を、100,000のMOIで、GFPレポーターを遍在的に発現する各バリアントパッケージングで感染させた。VR-IV改変AAVキャプシドは、AAV9と比較して有意に強化されたhiPSC-CM形質導入を示し、CR9-01は形質導入効率の129倍の増加を示した(図5)。その後、バリアントを、全身送達後に心臓に形質導入するそれらの能力についてインビボで評価した。この目的のために、C57BL/6Jマウスに、2.5E+11 vg/マウスで、AAV9:CAG-GFP又は新規のキャプシドバリアントによって封入されたCAG-GFPのいずれかを注射した。注射の7日後、動物を屠殺し、ELISAによるGFP発現解析のために心臓及び肝臓を回収した。各ライブラリのバリアントは、AAV9 と比較して心臓への形質導入の増加を示した(図6A-6B)。心臓への形質導入が増加したほとんどのバリアントは、改善された心臓特異性を有するキャプシドの同定につながる、肝指向性の減少も示した(図6C~6D)。最後に、上位の性能を発揮するAAVキャプシドバリアントを、ヒトNAbを回避するそれらの能力について評価した。バリアントパッケージングCAG-GFPを、プールされたヒトIgGの増加濃度で30分間インキュベートし、その後、100,000のMOIでHEK293T細胞を処理した。感染後48時間で、GFP発現をフローサイトメトリーにより評価した(図7A)。CR9-07及びCR9-13の2つのバリアントは、未改変AAV9と比較して、改善されたNAb回避を呈示した(図7B~7C)。
【0273】
実施例2:AAV5/9キメラキャプシドの同定
キャプシドシャフリングを使用して、改善された心筋細胞指向性を有するAAV5/9キメラタンパク質バリアントを同定した。図8に示すように、AAV5/9キメラライブラリを、AAV5及びAAV9の好ましい特性(肝指向性の減少、低NAb感受性、経細胞輸送性及び/又は心臓形質導入性)を有するキメラを同定するために生成した。インビボ選択の1ラウンドの後、ライブラリの複雑度が劇的に低減し、親ライブラリの全身送達後に心臓に形質導入できるバリアントが100個未満となった(図9)。乗換え事象の大部分は、キャプシドのVP1領域内で発生し、大部分のバリアントはAAV9が有意を占めるVP3領域を有していた。次に、hiPSC-CMをAAV9:CAG-GFP又はキメラAAV5/9キャプシドによって封入されたCAG-GFPのいずれかにより、75,000のMOIで感染させた。感染72時間後、細胞を採取し、フローサイトメトリーを使用して各キャプシドの形質導入効率を評価した(図10A)。ZC44は、AAV9と比較して、hiPSC-CM細胞における形質導入効率の改善を示した。
【0274】
AAV5/9キメラキャプシドを、ヒトNAbを回避するそれらの能力について評価した。ここで、CAG-GFPをパッケージングしているバリアントを1mg/mLのプールされたヒトIgGと30分間インキュベートした後、HEK293T細胞を100,000のMOIで処理した。感染48後、フローサイトメトリーによってGFP発現を評価した。増加した形質導入効率に加えて、ZC44はAAV9と比較してNAbに対する感受性の減少を示した(図10B)。
【0275】
上位のキメラバリアントを、全身送達後に心臓及び肝臓を形質導入するそれらの能力についてインビボで評価した。C57BL/6Jマウスに、2E+11vg/マウスでAAV9:CAG-GFP又は新規のキャプシドバリアントにより封入されたCAG-GFPのいずれかを注射した。注射の14日後、動物を屠殺し、ELISAによるGFP発現解析のために心臓及び肝臓を回収した。ZC47は、AAV9と比較して心臓への増加した形質導入を示した;ZC40、ZC44、及びZC49は、親AAV9と同等の、心臓組織をインビボで形質導入する能力を保持していた(図11A)。Z40、Z41、Z46、及びZ47はそれぞれ、全身送達後の肝臓形質導入の顕著な低下によって証明されるように、肝臓の脱標的化を示した(図11B)。
【0276】
実施例3:組み合わせキャプシドの同定
可変領域改変キャプシド及びキメラキャプシド内の改変を組み合わせて、追加の組み合わせキャプシドバリアントを生成した。AAV5由来のVP1配列と改変可変領域を含有する合計18の組み合わせバリアントを生成した(図12)。AAVキャプシドバリアントの製造可能性を評価するために、中程度のベクター産生を行った(図13)。次いで、hiPSC-CMにおける組み合わせバリアントの形質導入効率を次のように評価した:細胞をAAV9:CAG-GFP又は組み合わせAAVキャプシドパッケージングCAG-GFPのいずれかにより75,000のMOIで感染させた。感染の5日後に細胞を採取し、Cytation 5細胞イメージングリーダーを使用して各キャプシドの形質導入効率を評価した。TN44-07及びTN47-07は、AAV9よりも優れた形質導入を示した(>15倍)(図14)。
【0277】
組み合わせバリアントを、全身送達後に心臓を形質導入するそれらの能力についてインビボで評価した。C57BL/6Jマウスに、1E+11 vg/マウスで、AAV9:CAG-GFP又は同じ導入遺伝子カセットをパッケージングする組み合わせキャプシドバリアントのいずれかを注射した。注射の14日後、動物を屠殺し、ELISAによるGFP発現解析のために、心臓及び肝臓を回収した。TN44-07及びTN47-10は、AAV9と比較して心臓形質導入の改善を示した;TN47-14は、AAV9と同様のレベルで心臓に形質導入された(図15A)。注目すべきことに、TN47-14は、肝臓におけるGFP発現の顕著な減少によって証明されるように、肝臓に対するのほとんど全ての指向性を失っていた(図15B)。TN47-10及びTN47-14の両方とも、全身送達後、AAV9と比較して、心臓の肝臓に対する形質導入の比が改善されている(図15C)。選択された組み合わせキャプシドバリアントは、ヒトNAb回避についても評価された。AAV9又はCAG-GFPをパッケージングしたキャプシドバリアントを、約2500人の患者由来のプールしたヒトIgGの非存在下又は存在下(600ug/mL)で、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、ウイルスを100,000のMOIでHEK293T細胞とインキュベートした。翌日、培地を補充し、細胞を更に24時間インキュベートして、十分にGFP発現させた。フローサイトメトリーによりGFP発現を定量化し、形質導入をIgGなし対照に対し正規化した。これら全ての組み合わせAAVキャプシドバリアント(TN44-07、TN47-07、TN47-10、TN47-13及びTN47-14)は、プールされたヒトIgG中の中和(neturalizing)抗体からの回避の改善を示した。その中で、TN44-07組み合わせキャプシドを含有するビリオンは、最もステルスであり、AAV9と比較してNAb中和の有意な減少(p=0.0002、t検定、ウェルチ補正)を有していた(図16)。
【0278】
実施例4:非ヒト霊長類における試験
操作されたキャプシドのパネルによって媒介される組換えAAVの形質導入は、オスのカニクイザルマカク(cynomolgus macaques)(Macaca fascicularis)で1×1012vg/kgの用量で各キャプシドパッケージングCAG-GFPを静脈内送達した後、評価した(n=3/群)。投与後30日目に、動物を安楽死させ、特定の形質導入の分析のために臓器を採取した。
【0279】
新規操作されたキャプシドバリアントの臓器特異的形質導入プロファイルをハイスループット様式で評価するために、RNAバーコードシーケンシングを使用したアプローチが採用された。各キャプシド(2つの親及び12つの新規バリアント)には、遍在的に発現するGFPカセット(CAG-GFP)の3’-UTRに配置された固有のバーコードが割り当られた。選択された各バーコードは、タンパク質発現/RNA安定性に影響を及ぼさないことが実験的に決定された。バーコードをキャプシドに連結するために、rAAVをキャプシドごとに個別に製造し、全てのrAAV調製物を同じ濃度で一緒にプールした。オスのカニクイザル(生後2~5歳)に、1×1013vg/kgのプールしたウイルスライブラリ(n=3)、又はHBSSで処置した偽物(sham)(n=1)のいずれかを投与した。注射日から30日後、動物を屠殺し、RNA分析のために組織を回収した。各バーコードの相対存在量は、Illumina NextSeq550及びカスタムのpythonスクリプトを使用したGFPバーコード転写物の次世代シーケンシングにより決定された。各組織のバーコードの相対的な発現をAAV9について正規化した。結果を図17に示す。
【0280】
操作されたキャプシドを含有するrAAVの形質導入を、動物の左心室及び肝臓で評価した。TN3及びTN6操作されたキャプシドは、AAV9と比較して、左心室で最も高い形質導入を示した(図17A)。TN6操作されたキャプシドはAAV9に匹敵する肝臓への形質導入を示したが、TN3は、AAV9と比較して肝臓への形質導入が大幅に少なかった(図17B)。各操作されたキャプシドの左心室(LV)対肝臓の形質導入比を図17Cに示す。TN3操作されたキャプシドは、最も好ましい形質導入プロファイルを示す。それは肝臓での低形質導入を維持しながら、高LV形質導入を有する。肝臓におけるオフターゲット形質導入によるrAAV誘発性毒性は、臨床応用では課題となり得、TN3操作されたキャプシドによって示される形質導入プロファイルはこの制限を克服し得る。様々な組織における操作されたキャプシドのパネルによって媒介されるrAAV形質導入を分析することによって、広範囲な形質導入プロファイルが生成された(図17D)。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17A
図17B
図17C
【配列表】
2023522106000001.app
【国際調査報告】