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  • 特表-ポリペプチド切断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ポリペプチド切断方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230519BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230519BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230519BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/00 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563388
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021028249
(87)【国際公開番号】W WO2021216617
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/012,789
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522282793
【氏名又は名称】アブサイ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナスカ, テイラー
(72)【発明者】
【氏名】カーズ, ジョハン
(72)【発明者】
【氏名】ウェインストック, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】スリンド, ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】デルナー, エイミー
(72)【発明者】
【氏名】カンマラータ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウォード, アビゲイル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA20
4B065AA26X
4B065AA26Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
ポリペプチド内の一つ又は複数の特定の位置でのポリペプチドの切断のための方法及び構築物を提供する。本開示は、インテインポリペプチド及び、特定の残基でのポリペプチド及びタンパク質の切断のための、インテインポリペプチドを使用した方法を提供する。本明細書において提供するのは、インテインポリペプチド、インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、発現構築物、アッセイ方法、及び宿主細胞であり、それらを様々な実施形態において組み合わせることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、配列番号15のアミノ酸1~21、配列番号120のアミノ酸105~124、配列番号121のアミノ酸105~124、配列番号122のアミノ酸105~124、配列番号123のアミノ酸105~124、及び配列番号124のアミノ酸105~124からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むインテインポリペプチド;又は、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、配列番号15のアミノ酸1~30、配列番号120のアミノ酸100~129、配列番号121のアミノ酸100~129、配列番号122のアミノ酸100~129、配列番号123のアミノ酸100~129、及び配列番号124のアミノ酸100~129からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むインテインポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、配列番号15のアミノ酸1~21、配列番号120のアミノ酸105~124、配列番号121のアミノ酸105~124、配列番号122のアミノ酸105~124、配列番号123のアミノ酸105~124、及び配列番号124のアミノ酸105~124からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;又は、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、配列番号15のアミノ酸1~30、配列番号120のアミノ酸100~129、配列番号121のアミノ酸100~129、配列番号122のアミノ酸100~129、配列番号123のアミノ酸100~129、及び配列番号124のアミノ酸100~129からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のインテインポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、配列番号15のアミノ酸1~21、配列番号120のアミノ酸105~124、配列番号121のアミノ酸105~124、配列番号122のアミノ酸105~124、配列番号123のアミノ酸105~124、及び配列番号124のアミノ酸105~124からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;又は、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、配列番号15のアミノ酸1~30、配列番号120のアミノ酸100~129、配列番号121のアミノ酸100~129、配列番号122のアミノ酸100~129、配列番号123のアミノ酸100~129、及び配列番号124のアミノ酸100~129からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のインテインポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、配列番号15のアミノ酸1~21、配列番号120のアミノ酸105~124、配列番号121のアミノ酸105~124、配列番号122のアミノ酸105~124、配列番号123のアミノ酸105~124、及び配列番号124のアミノ酸105~124からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む;又は、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、配列番号15のアミノ酸1~30、配列番号120のアミノ酸100~129、配列番号121のアミノ酸100~129、配列番号122のアミノ酸100~129、配列番号123のアミノ酸100~129、及び配列番号124のアミノ酸100~129からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のインテインポリペプチド。
【請求項5】
配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、配列番号15のアミノ酸1~21、配列番号120のアミノ酸105~124、配列番号121のアミノ酸105~124、配列番号122のアミノ酸105~124、配列番号123のアミノ酸105~124、及び配列番号124のアミノ酸105~124からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;又は、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、配列番号15のアミノ酸1~30、配列番号120のアミノ酸100~129、配列番号121のアミノ酸100~129、配列番号122のアミノ酸100~129、配列番号123のアミノ酸100~129、及び配列番号124のアミノ酸100~129からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のインテインポリペプチド。
【請求項6】
前記インテインアミノ酸配列がN末端システイン残基を欠く、請求項1~5のいずれか一項に記載のインテインポリペプチド。
【請求項7】
前記インテインポリペプチドが、実質的なエクステインライゲーション活性を欠く、請求項1~6のいずれか一項に記載のインテインポリペプチド。
【請求項8】
前記インテインポリペプチドがポリヒスチジンタグを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のインテインポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリヒスチジンタグが6xHisタグを含む、請求項8に記載のインテインポリペプチド。
【請求項10】
前記インテインポリペプチドが、プロテアーゼにより切断可能な切断配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のインテインポリペプチド。
【請求項11】
配列番号1、2、4、12、15、及び120~124のいずれか一つのアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のインテインポリペプチド。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載のインテインポリペプチドのアミノ酸配列、及び標的ポリペプチドのアミノ酸配列を含む、インテイン融合ポリペプチド。
【請求項13】
前記標的ポリペプチドのアミノ酸配列のN末端アミノ酸が、標的タンパク質の成熟形態のアミノ酸配列のN末端アミノ酸である、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項14】
前記標的ポリペプチドが、一つ又は複数のジスルフィド結合を形成することができる、請求項13に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項15】
前記標的ポリペプチドが、抗体重鎖、抗体軽鎖、及びそれらのフラグメントからなる群から選択されるポリペプチドを含む、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項16】
前記インテイン融合ポリペプチドがシグナル配列を欠く、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項17】
前記インテインアミノ酸配列がN末端システイン残基を欠く、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項18】
前記インテイン融合ポリペプチドが、実質的なエクステインライゲーション活性を欠く、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項19】
前記インテイン融合ポリペプチドがポリヒスチジンタグを含む、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項20】
前記ポリヒスチジンタグが6xHisタグを含む、請求項19に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項21】
前記インテイン融合ポリペプチドが、プロテアーゼにより切断可能な切断配列を含む、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチド。
【請求項22】
請求項1~5のいずれか一項に記載のインテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項23】
インテインポリペプチドをコードする、及び配列番号24~119からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項24】
二つ以上のインテインをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現構築物であって、各々のインテインをコードするポリヌクレオチド配列が、すべての他のインテインをコードするポリヌクレオチド配列とは異なり、前記インテインをコードするポリヌクレオチド配列によりコードされるすべてのインテインポリペプチドが、同じアミノ酸配列を有する、又は前記インテインをコードするポリヌクレオチド配列によりコードされる前記インテインポリペプチドの少なくとも二つが、異なるアミノ酸配列を有する、発現構築物。
【請求項25】
前記二つ以上のインテインをコードするポリヌクレオチド配列が、配列番号24~119からなる群から選択される、請求項24に記載の発現構築物。
【請求項26】
前記インテインをコードするポリヌクレオチド配列、及びそれらのインテインをコードするポリヌクレオチド配列によりコードされる前記インテインポリペプチドのアミノ酸配列が:
(a)ポリヌクレオチド配列配列番号26及び27、ならびにアミノ酸配列配列番号2;
(b)ポリヌクレオチド配列配列番号24及び25、ならびにアミノ酸配列配列番号1;
(c)ポリヌクレオチド配列配列番号28及び29、ならびにアミノ酸配列配列番号3;
(d)ポリヌクレオチド配列配列番号30及び31、ならびにアミノ酸配列配列番号4;
(e)ポリヌクレオチド配列配列番号32及び33、ならびにアミノ酸配列配列番号5;
(f)ポリヌクレオチド配列配列番号34及び35、ならびにアミノ酸配列配列番号6;
(g)ポリヌクレオチド配列配列番号36及び37、ならびにアミノ酸配列配列番号7;
(h)ポリヌクレオチド配列配列番号38及び39、ならびにアミノ酸配列配列番号8;
(i)ポリヌクレオチド配列配列番号40及び41、ならびにアミノ酸配列配列番号9;
(j)ポリヌクレオチド配列配列番号43及び44、ならびにアミノ酸配列配列番号11;
(k)ポリヌクレオチド配列配列番号45及び46、ならびにアミノ酸配列配列番号12;
(l)ポリヌクレオチド配列配列番号48及び49、ならびにアミノ酸配列配列番号14;
(m)ポリヌクレオチド配列配列番号50及び51、ならびにアミノ酸配列配列番号15;
(n)ポリヌクレオチド配列配列番号53及び54、ならびにアミノ酸配列配列番号17;
(o)ポリヌクレオチド配列配列番号56及び57、ならびにアミノ酸配列配列番号19;
(p)ポリヌクレオチド配列配列番号59及び60、ならびにアミノ酸配列配列番号21;及び
(q)ポリヌクレオチド配列配列番号26、27、61~66、及び79~119の任意の二つ以上、ならびにアミノ酸配列配列番号2、からなる群から選択される、請求項24に記載の発現構築物。
【請求項27】
前記発現構築物が発現ベクターである、請求項24~26のいずれか一項に記載の発現構築物。
【請求項28】
前記発現構築物が二重プロモーター発現ベクターである、請求項27に記載の発現構築物。
【請求項29】
前記二重プロモーター発現ベクターがL-アラビノース誘導性プロモーター及びプロピオン酸誘導性プロモーターを含む、請求項28に記載の発現構築物。
【請求項30】
標的ポリペプチドを産生するための方法であって、前記方法が:
前記インテインアミノ酸配列が、前記インテイン融合ポリペプチドから自己切除し、それにより、前記標的ポリペプチドを産生する、請求項12に記載のインテイン融合ポリペプチドを含む組成物を生成すること;及び
前記組成物から前記標的ポリペプチドを回収することを含む、方法。
【請求項31】
前記組成物を生成することが、宿主細胞中で前記インテイン融合タンパク質を発現させることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物を生成することが、前記宿主細胞を溶解することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、前記宿主細胞を溶解することにより生成されるライセートである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記宿主細胞が、チオレドキシンレダクターゼの機能レベルが低下している、ならびにグルタチオンレダクターゼ及びグルタチオンシンテターゼからなる群から選択されるタンパク質の機能レベルが低下している、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記宿主細胞が、ahpC*、ahpCΔ、V164G、S71F、E173/S71F、E171Ter、及びdup162-169変異からなる群から選択されるAhpCをコードする遺伝子の改変形態を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記宿主細胞が、DsbCの細胞質形態をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記宿主細胞が原核細胞である、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記宿主細胞が大腸菌である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記宿主細胞が大腸菌B株521細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項24~29のいずれか一項に記載の発現構築物を含む宿主細胞であって、前記宿主細胞が、チオレドキシンレダクターゼの機能レベルが低下している、ならびにグルタチオンレダクターゼ及びグルタチオンシンテターゼからなる群から選択されるタンパク質の機能レベルが低下している、宿主細胞。
【請求項41】
前記宿主細胞が、ahpC*、ahpCΔ、V164G、S71F、E173/S71F、E171Ter、及びdup162-169変異からなる群から選択されるAhpCをコードする遺伝子の改変形態を有する、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項42】
前記宿主細胞が、DsbCの細胞質形態をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項40又は請求項41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
前記宿主細胞が原核細胞である、請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項44】
前記宿主細胞が大腸菌である、請求項43に記載の宿主細胞。
【請求項45】
前記宿主細胞が大腸菌B株521細胞である、請求項44に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年4月20日に出願された米国仮特許出願第63/012,789号の利益を主張するものであり、当該仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0002】
本発明は、分子生物学及びバイオテクノロジー製造の一般的な技術分野におけるものである。より具体的には、本発明は、特定の位置でのポリペプチド及びタンパク質の切断のためのバイオテクノロジー方法の技術分野にある。
【背景技術】
【0003】
生物学的材料、例えば治療用タンパク質、免疫原性化合物、又は工業用酵素及び生体材料などのバイオテクノロジー製造(又はバイオマニュファクチャリング)は、複雑な過程である。多くの生物学的材料は、中間体として、例えば、最終的な生物学的産物を形成するためにさらに処理される、製造及び/又は精製において有用なタグ又は他の配列を含むポリペプチドとして製造される。一つのバイオマニュファクチャリング上の課題は、原核宿主細胞の場合における改変「fMet」(N-ホルミルメチオニン)であり得る、N末端メチオニン残基を含む、ポリペプチドのN末端からアミノ酸残基を除去して、そのタンパク質の成熟形態で見出される「天然」N末端アミノ酸残基を有するタンパク質を生成することである。N末端アミノ酸残基の除去のための方法を開発する必要性は、宿主細胞の細胞質中でタンパク質を産生するよう設計された発現系について特に緊急である。なぜなら、膜を横断する転座の間にそのようなタンパク質からのシグナルペプチドの切断はないためである。
【0004】
バイオマニュファクチャリングにおける別の課題は、それらの産生において使用される宿主細胞に毒性のあるポリペプチド及びタンパク質の産生である。特定の残基でポリペプチド及びタンパク質を切断することが可能であり、毒性タンパク質の産生において有用である、改善されたタンパク質発現方法が、明らかに必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、インテインポリペプチド及び、特定の残基でのポリペプチド及びタンパク質の切断のための、インテインポリペプチドを使用した方法を提供する。本明細書において提供するのは、インテインポリペプチド、インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、発現構築物、アッセイ方法、及び宿主細胞であり、それらを様々な実施形態において組み合わせることができる。
【0006】
一部の実施形態では、本明細書において提供するのは、配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、及び配列番号15のアミノ酸1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性(例、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のアミノ酸配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むインテインポリペプチドである。他の実施形態では、本明細書において提供するのは、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、及び配列番号15のアミノ酸1~30からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のアミノ酸配列同一性など)を有するアミノ酸配列を含むインテインポリペプチドである。一部の実施例では、このインテインポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、及び配列番号15のアミノ酸1~21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;又は、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、及び配列番号15のアミノ酸1~30からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、本明細書において提供するのは、配列番号120~124のいずれか一つのアミノ酸105~124のアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性(例、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のアミノ酸配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む、又は配列番号120~124のいずれか一つのアミノ酸100~129のアミノ酸配列に対して少なくとも60%のアミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のアミノ酸配列同一性など)を有するアミノ酸配列を含むインテインポリペプチドである。
【0007】
一部の実施例では、インテインポリペプチドは、N末端システイン残基を欠く、及び/又は実質的なエクステインライゲーション活性を欠く。追加の実施例では、インテインポリペプチドは、ポリヒスチジンタグ(例、6xHisタグ)を含み、及び/又はプロテアーゼにより切断可能な切断配列を含む。特に非限定的な例では、インテインポリペプチドは、配列番号1、2、4、12、15のいずれか一つのアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性(例、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のアミノ酸配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。他の非限定的な例では、インテインポリペプチドは、配列番号120~124のいずれか一つのアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性(例、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のアミノ酸配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。
【0008】
また、本明細書において提供するのは、開示するインテインポリペプチドのアミノ酸配列及び標的ポリペプチドのアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドである。一部の実施形態では、標的ポリペプチドのアミノ酸配列のN末端アミノ酸は、標的タンパク質の成熟形態のアミノ酸配列のN末端アミノ酸である。他の実施形態では、標的ポリペプチドは、一つ又は複数のジスルフィド結合を形成することができる。一部の非限定的な実施例では、標的ポリペプチドは、抗体重鎖、抗体軽鎖、及びそれらのフラグメントからなる群から選択される。追加の実施例では、インテイン融合ポリペプチドはシグナル配列を欠く。他の実施例では、インテインアミノ酸配列は、N末端システイン残基を欠く、及び/又は実質的なエクステインライゲーション活性を欠く。追加の実施例では、インテイン融合ポリペプチドは、ポリヒスチジンタグ(例、6xHisタグ)を含み、及び/又はプロテアーゼにより切断可能な切断配列を含む。
【0009】
また、提供するのは、開示するインテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。特定の実施形態では、インテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号24~119からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0010】
本明細書において開示するのは、二つ以上のインテインをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現構築物であり、各インテインをコードするポリヌクレオチド配列は、すべての他のインテインをコードするポリヌクレオチド配列とは異なる。一部の実施形態では、インテインをコードするポリヌクレオチド配列によりコードされるすべてのインテインポリペプチドは、同じアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、インテインをコードするポリヌクレオチド配列によりコードされるインテインポリペプチドの少なくとも二つは、異なるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、二つ以上のインテインをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号24~119からなる群から選択される。
【0011】
一部の実施例では、このインテインをコードするポリヌクレオチド配列、及びそれらのインテインをコードするポリヌクレオチド配列によってコードされるインテインポリペプチドのアミノ酸配列は、以下からなる群から選択される:(a)ポリヌクレオチド配列配列番号26及び27、ならびにアミノ酸配列配列番号2;(b)ポリヌクレオチド配列配列番号24及び25、ならびにアミノ酸配列配列番号1;(c)ポリヌクレオチド配列配列番号28及び29、ならびにアミノ酸配列配列番号3;(d)ポリヌクレオチド配列配列番号30及び31、ならびにアミノ酸配列配列番号4;(e)ポリヌクレオチド配列配列番号32及び33、ならびにアミノ酸配列配列番号5;(f)ポリヌクレオチド配列配列番号34及び35、ならびにアミノ酸配列配列番号6;(g)ポリヌクレオチド配列配列番号36及び37、ならびにアミノ酸配列配列番号7;(h)ポリヌクレオチド配列配列番号38及び39、ならびにアミノ酸配列配列番号8;(i)ポリヌクレオチド配列配列番号40及び41、ならびにアミノ酸配列配列番号9;(j)ポリヌクレオチド配列配列番号43及び44、ならびにアミノ酸配列配列番号11;(k)ポリヌクレオチド配列配列番号45及び46、ならびにアミノ酸配列配列番号12;(l)ポリヌクレオチド配列配列番号48及び49、ならびにアミノ酸配列配列番号14;(m)ポリヌクレオチド配列配列番号50及び51、ならびにアミノ酸配列配列番号15;(n)ポリヌクレオチド配列配列番号53及び54、ならびにアミノ酸配列配列番号17;(o)ポリヌクレオチド配列配列番号56及び57、ならびにアミノ酸配列配列番号19;(p)ポリヌクレオチド配列配列番号59及び60、ならびにアミノ酸配列配列番号21;及び(q)ポリヌクレオチド配列配列番号26、27、61~66、及び79~119のいずれか二つ以上、ならびに配列番号2のアミノ酸配列。一部の実施例では、この発現構築物は発現ベクターである。追加の実施例では、この発現構築物は、二重プロモーター発現ベクター、例えば、L-アラビノース誘導性プロモーター及びプロピオン酸誘導性プロモーターを含む二重プロモーター発現ベクターである。
【0012】
標的ポリペプチドを産生するための方法も提供する。一部の実施形態では、この方法は、本明細書中に提供するインテイン融合ポリペプチドを含む組成物を生成することを含み、このインテインアミノ酸配列は、インテイン融合ポリペプチドから自己切除し、それにより、標的ポリペプチドを産生し、標的ポリペプチドをこの組成物から回収する。一部の実施形態では、組成物を生成することは、宿主細胞中でインテイン融合ポリペプチドを発現することを含む。この方法は、宿主細胞を溶解することをさらに含み得る。一部の実施例では、宿主細胞を溶解することによって、組成物を生成する。一部の実施形態では、宿主細胞は、チオレドキシンレダクターゼの機能の低下レベル、ならびにグルタチオンレダクターゼ及びグルタチオンシンテターゼからなる群から選択されるタンパク質の機能の低下レベルを有する。例えば、宿主細胞は、ahpC*、ahpCΔ、V164G、S71F、E173/S71F、E171Ter、及びdup162-169変異からなる群から選択されるAhpCをコードする遺伝子の改変形態を有し、及び/又は宿主細胞は、DsbCの細胞質形態をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌細胞(例えば、大腸菌B株521細胞)などである。
【0013】
また、提供するのは、開示する発現構築物を含む宿主細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は、チオレドキシンレダクターゼの機能の低下レベル、ならびにグルタチオンレダクターゼ及びグルタチオンシンテターゼからなる群から選択されるタンパク質の機能の低下レベルを有する。一部の実施例では、宿主細胞は、ahpC*、ahpCΔ、V164G、S71F、E173/S71F、E171Ter、及びdup162-169変異からなる群から選択されるAhpCをコードする遺伝子の改変形態を有し、及び/又は宿主細胞は、DsbCの細胞質形態をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌細胞(例えば、大腸菌B株521細胞)などである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1A及び1Bは、大腸菌宿主細胞中で発現されたインテイン-TRAST-Fab構築物のウェスタンブロットを示す。TRAST-Fab重鎖及び軽鎖は、それらのN末端で重鎖及び軽鎖の各々に付着された様々なインテインポリペプチド配列を伴って発現された;インテインの全てが、エクステインライゲーションを防止するためにN末端システイン残基を欠いた。使用するインテインの型を、各ブロット上に示している。DnaX:シネコシスティスDnaX 6xHis-タグ付きミニインテイン;DnaB:シネコシスティスDnaB 6xHis-タグ付きミニインテイン;D.t.DnaB:デスルホフンドラス・サーモサブテラネウス(Desulfofundulus thermosubterraneus)DSM 16057 DnaBインテイン;gp41-1:プロクロロコッカス シアノファージP-SSM2 gp41-1 6xHis-タグ付きミニインテイン;及びN.p.DnaB:ノストック・パンクチホルム(Nostoc punctiforme)株ATCC 29133/PCC 73102 DnaBミニインテイン。「P」は遠心分離によってペレット化された材料を示す一方で、「S」は可溶性のままであった材料を示す。各ウェルに対応するTRAST-Fabタンパク質サンプルを、非還元条件下(図1A)及び還元条件下(図1B)でポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。これらのゲルから作製されたウェスタンブロットでは、ヒトIgGに結合する一次抗体を利用した。MW(kDa):分子量(質量)マーカー。非切断及び切断タンパク質バンドの位置を、矢印及び記号で示している:パネルA(非還元)、上から:切断インテインを伴うFabヘテロ二量体、両方のポリペプチドから切断されたインテインを伴うFabヘテロ二量体、単量体の切断Fabポリペプチド;パネルB(還元)、上から:非切断インテインを伴う単量体Fabポリペプチド、単量体切断Fabポリペプチド。
図2A図2A~2Cは、コントロールMet-TRAST-Fabと比較した、インテイン切断(しかし、他はインタクトな)インテイン-TRAST-Fabポリペプチドの構造の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)による分析を示す一連のクロマトグラムである。DnaB-TRAST-Fabタンパク質及びgp41-1-TRAST-Fabタンパク質を、図1について記載するように、N末端インテイン配列で発現させた。タンパク質サンプルを、プロテインLを用いた親和性クロマトグラフィーにより精製し、次にTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)で還元し、ギ酸で酸性化した。パネルAは、溶出時間に対してプロットされた強度の任意の単位での吸光度を示し、パネルB及びCは、溶出時間に対してプロットされた1秒当たりの計数(CPS)であり;パネルB及びCに対する説明文における単位ダルトン(「Da」)は、質量/電荷(m/z)を示す。図2A:214nmでのUV光の吸光度は、13分から18分までの溶出を示し、軽鎖及び重鎖の両方の溶出を含む。DnaB-TRAST-Fabは、Met-TRAST-Fabコントロールに対する位置で同等のピークを示した。
図2B図2B:天然N末端を伴うTRAST-Fab軽鎖の予測質量/電荷範囲でのタンパク質についての抽出されたイオンクロマトグラムピーク。Met-TRAST-Fabコントロールサンプルは、DnaB-TRAST-Fabサンプル及びgp41-1-TRAST-Fabサンプルと同じ強度スケールで見た場合に、検出可能な天然N末端軽鎖を含まないが、それら両方とも相当量の天然N末端軽鎖を産生した。
図2C図2C:天然のN末端を伴うTRAST-Fab重鎖についての予測される質量/電荷範囲でのタンパク質についての抽出イオンクロマトグラムピーク。このパネル中に示すTRAST-Fab重鎖の結果は、軽鎖についてパネルBに示されるものと同等であるが、しかし、DnaB-TRAST-Fabサンプルは、gp41-1-TRAST-Fabサンプルよりも高い量の天然N末端重鎖を呈した。
図3A図3A及び3Bは、コントロールMet-TRAST-Fabヘテロ二量体と比較して、インテイン切断された(しかし、他はインタクトの)インテイン-TRAST-Fabヘテロ二量体の構造の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)による分析を示す一連のクロマトグラムである。DnaX-TRAST-Fab、DnaB-TRAST-Fab、及びD.t.DnaB-TRAST-Fabタンパク質を、図1について記載するようにN末端インテイン配列と発現させた。タンパク質サンプルを、プロテインLを伴う親和性クロマトグラフィーにより精製し、次いでギ酸で酸性化し、非還元条件下でLC-MSにより分析した。図3A及び3Bでの単位は、図2A及び2Bと同じである。図3A:280nmでのUV光の吸光度は、TRAST-Fabヘテロ二量体の溶出を含む、11分から24分までの溶出を示す。サンプル、特にDnaB-TRAST-Fab及びD.t.DnaB-TRAST-Fabサンプルは、Met-TRAST-Fabコントロールに同等の位置でピークを示した。
図3B図3B:重鎖及び軽鎖の両方について、天然のN末端を伴うTRAST-Fabヘテロ二量体についての予測される質量/電荷範囲における抽出イオンクロマトグラムピーク。上のクロマトグラムは、コントロールMet-TRAST-Fabサンプルにおいて、検出可能な量の天然N-末端のTRAST-Fabが、宿主細胞内のN末端メチオニン除去により生成されたことを示す。しかし、ピークの強度の比較は、インテイン-TRAST-Fabサンプルが、コントロールMet-TRAST-Fabサンプルよりもはるかに高い量(10~20倍高い)の天然N-末端を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリペプチド及びタンパク質の切断の問題は、本明細書中に記載する方法を提供することによって対処し、特に「天然の」又はそうでなければ望ましいN末端アミノ酸残基を有する、目的のポリペプチド及びタンパク質を産生する目的であり、これらは、本明細書では、「標的」ポリペプチド及びタンパク質として言及する。天然のN末端残基は、完全成熟タンパク質のN末端で見出されるアミノ酸であり、翻訳後修飾によりタンパク質に加えられる任意の残基は考慮しない。
【0016】
インテインポリペプチドは、インテインのアミノ酸配列、又はインテインアミノ酸配列の一つ又は複数のフラグメントを含み、インテインポリペプチドの例として、本明細書中に記載するミニインテイン及び分割インテインを含む。インテインポリペプチドは、エクステインポリペプチドから、又はエクステインポリペプチドから自己切除することが可能であり、また、エクステインポリペプチドを互いにライゲーションすることが可能である。インテイン融合ポリペプチドは、インテインのアミノ酸配列、又はインテインアミノ酸配列の一つ又は複数のフラグメントを含むインテインポリペプチドであり、また、標的ポリペプチドのアミノ酸配列を含む。
【0017】
本明細書中で提供する方法は、切断されるインテイン融合ポリペプチド配列内に含まれるインテイン配列の使用、及び標的ポリペプチド又はタンパク質を生成するためのインテイン融合ポリペプチドからのインテイン配列の自己切除を含む。また、提供するのは、特定のインテインポリペプチド、及びそれらのインテインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0018】
インテイン及びそれらを使用して産生することができるタンパク質を、以下のセクションI~IIに記載する。インテインを含むポリペプチド及びインテインを使用して産生されるタンパク質を産生及び精製する発現構築物、宿主細胞、及び方法を、以下のセクションIII~Vに記載する。
I.インテイン及びインテイン含有発現構築物。
【0019】
インテイン及びミニインテイン。インテインは、そのN末端側及びC末端側のそれぞれでインテイン配列に隣接するN-エクステイン及びC-エクステインからのそれ自体の切除を触媒することが可能なポリペプチドである。インテインは、全ての系統発生界にわたる生物において同定されており、これらの天然インテインについては、インテインの自己切除によって、典型的には、ペプチド結合を通じてN-エクステインとC-エクステインの連結がもたらされる。インテインの自己切除は、同じポリペプチド内のインテイン配列間、又はトランスで作用するインテインポリペプチド間の相互作用をもたらすことができる(以下の分割インテインの説明を参照のこと)。多くのインテインは、インテイン-切除反応について必要のない配列を含み、バイオマニュファクチャリングの目的のために、任意の外部配列が除去された「ミニ」インテインを使用することが好ましい(Derbyshire et al.,“Genetic definition of a protein-splicing domain:functional mini-inteins support structure predictions and a model for intein evolution,”Proc Natl Acad Sci USA 1997 Oct 14;94(21):11466-11471;Erratum in:Proc Natl Acad Sci USA 1998 Jan 20;95(2):762)。ミニインテインは、インタクトなインテインのN末端からの、及びC末端からのアミノ酸配列を含み、また、タグ、例えば6xHisポリヒスチジンタグなど、又はミニインテインの残りのN末端部分とC末端部分の間に配置された他の望ましい配列を含み得る。
【0020】
「非ライゲーション」インテイン。インテインのアミノ酸配列における改変は、エクステイン配列からの自己切除が可能であるが、しかし、C-エクステインへのN-エクステインの連結を触媒しないインテインバリアントを生成することが示されている(Mathys et al.,“Characterization of a self-splicing mini-intein and its conversion into autocatalytic N- and C-terminal cleavage elements:facile production of protein building blocks for protein ligation”,Gene 1999 Apr 29;231(1-2):1-13)。具体的には、アラニン残基が、典型的には、インテイン配列のN末端に存在するシステイン残基に置換される場合、インテインは、エクステインのライゲーションを伴わずに、エクステインから切除することができる。N末端システイン残基を改変又は除去するインテインアミノ酸配列に対する他の変化は、また、エクステインライゲーションが可能ではないインテインをもたらすことができる。このような方法で改変されたインテイン、特にミニインテインを、本明細書中では非ライゲーションインテインとして言及する。インテインがエクステインを自己切除及び/又はライゲーションできる程度を、インテインの切除及びエクステインのライゲーションが生じ得る条件下でインテインポリペプチドを発現させ、次に、産生される異なるポリペプチド産物を定量化することにより、例えば、Mathys et al.1999の図2において示されるようにゲル電気泳動によるポリペプチド産物の分離後に異なるタンパク質バンドを定量化することにより、又は定量的液体クロマトグラフィー方法により決定することができる。「非ライゲーション」インテインポリペプチドは、実質的なエクステインライゲーション活性を欠くインテインポリペプチドであって、同じ条件下で対応する「ライゲーション」インテインポリペプチドにより産生されるポリペプチドと比較して、ライゲーションされたエクステイン産物の25%未満(及び好ましくはライゲーションされたエクステイン産物の10%未満)を産生する。
【0021】
非ライゲーションインテインは、バイオテクノロジー方法により産生されるタンパク質の任意の所望のN末端を生成するために有用である。なぜなら、それらは、所望のN末端アミノ酸残基の直ぐ上流に配置されて、次に、他のアミノ酸を付着することなく自己切除により切断されることができるからである。バイオテクノロジー方法、特に治療用タンパク質により産生される多くのタンパク質について、所望のN末端残基は、タンパク質の天然型において見出される「天然」N末端アミノ酸であり得る。例えば、ポリペプチドの成功裏の発現が、ポリペプチドのC末端で追加の残基の存在を要求する場合、これらの改変された「非ライゲーション」型のインテインを使用して、所望のC末端残基を伴うタンパク質を産生することも可能である。これらの場合では、インテインアミノ酸配列は、所望のC末端残基の直ぐ後に続き、発現のために要求される任意の追加のアミノ酸配列を、ミニインテインの中心に加えることができる、又は発現された際にポリペプチドのC末端でインテイン配列に続いて含まれることができる。
【0022】
「分割」インテインは、インテインのN末端部分及びC末端部分が、トランスで作用して切除反応を、インテインのN末端部分が要求されるシステイン残基を有する場合にはライゲーション反応を達成することができる別々のポリペプチドとして発現されるインテインポリペプチドである。インテインのC末端部分を含むポリペプチドは、例えば、タグポリペプチド又は他の有用なアミノ酸配列をそのN末端領域中に含むこともできる。なぜなら、それらは、上に記載する所望のN末端残基を有する標的タンパク質を産生するために、インテインのN末端部分によるC末端インテインの切断に干渉しないはずであるからである。インテインのN末端部分及びC末端部分を分離することによって、標的タンパク質の、及びインテインのC末端部分(例えば)のアミノ酸配列を含むインテイン融合ポリペプチドがより短くなり、発現される分子当たりより少ない宿主細胞供給源が要求されるという点で、タンパク質のバイオテクノロジー産生の効率を増加させることができる。ポリペプチドの発現におけるインテインのC末端部分の使用に関するこれらの考慮事項は、上に記載するように、タンパク質上に所望のC末端残基を生成するために、インテインのN末端部分の使用にも適用される。
【0023】
分割インテインを使用することによって、除去(及び一部の場合ではライゲーション)反応が、インテインのN末端又はC末端部分を含むポリペプチドの発現から空間的及び/又は時間的に分離されることも可能になる。例えば、トランスで作用するインテインの部分は、宿主細胞の異なる領域又は区画において発現させることができ、それは、宿主細胞を通したインテイン融合ポリペプチドの発現及び移動(例えば転座など)後のインテインの他の部分を含むインテイン融合ポリペプチドと相互作用する、又はそれは、発現されたインテイン融合ポリペプチドのプロセシングにおいてエクスビボで使用されて、標的成熟タンパク質を産生することができる。特定の例として、6xHisポリヒスチジンタグを含む「非ライゲーション」インテインのN末端部分が発現及び精製されて、Ni2+又はCd2+金属イオンを含む固体支持媒体に付着される。標的タンパク質のアミノ酸配列を含み、インテイン融合ポリペプチドのN末端にインテインのC末端部分を有するインテイン融合ポリペプチドは、インテインのN末端部分を含む媒体を通過し、インテイン融合ポリペプチドからのインテインのC末端部分の切断をもたらし、標的タンパク質を放出する。
【0024】
毒性ポリペプチドを産生するためのインテインの使用。インテインの「非ライゲーション」形態を使用することができる場合にはインテインポリペプチドのN末端又はC末端に、あるいは切除及びライゲーションの両方が可能なインテインを使用することができる場合にはインテインポリペプチド配列内に追加のアミノ酸配列を含める能力によって、そうでなければ毒性であるポリペプチドの効率的な発現を可能にすることができる。宿主細胞に対して毒性のある活性を有する目的のポリペプチドは、アミノ酸残基が、例えば、インテイン自己切除反応により除去することができるまで、目的のポリペプチドの活性部位と相互作用し、ポリペプチドの活性及び同時にその毒性を排除又は低下させるアミノ酸配列の、インテイン中での包含により毒性を減らすことができる。
【0025】
インテインアミノ酸配列及びそれらをコードするDNA配列。いくつかの代表的なインテインポリペプチドのアミノ酸配列を、表1中に示すように、配列番号1~21及び120~124として提示する。配列番号1~21及び120~124のインテインポリペプチドの各々は、非ライゲーション型の改変インテインであり、N末端システイン残基を欠く。分割インテインは、表1中に示すように、インテイン及びミニインテインのN末端部分及びC末端部分に対応する。分割インテインは、場合により、追加のアミノ酸配列、例えば、DnaXインテインの、又はDnaBインテインのC末端部分などを含むことができ、それらは、配列番号12及び15にそれぞれ提示されるように、各々が6xHisタグを含む。これらのインテインをコードするDNA配列も表1中に列挙し、さらに実施例1A中に記載している。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0026】
インテインアミノ酸配列のバリアント。表1中に提示するアミノ酸配列のバリアントを有するインテインポリペプチドを、本明細書中に提供する方法において使用することができる。好ましくは、そのようなバリアントインテインポリペプチドは、活性、例えばエクステイン配列をライゲーションする能力及び/又はエクステイン配列から自己切除する能力などを有する。特定の実施形態では、インテインポリペプチドは、表1中に提示する配列の長さの少なくとも50%(又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)にわたって、少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、ここでアミノ酸配列同一性は、実施例3に従って決定される。特定のインテインポリペプチドは、表1中に提示する配列の少なくとも10(又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50)の連続アミノ酸に対し、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性(又は少なくとも90%の同一性、又は少なくとも95%の同一性)を有し、ここでアミノ酸配列同一性は実施例3に従って決定される。本明細書中に提供する特定のインテインポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸93~112、配列番号2のアミノ酸105~124、配列番号4のアミノ酸85~104、配列番号12のアミノ酸1~21、配列番号15のアミノ酸1~21、配列番号120のアミノ酸105~124、配列番号121のアミノ酸105~124、配列番号122のアミノ酸105~124、配列番号123のアミノ酸105~124、及び配列番号124のアミノ酸105~124からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%のアミノ酸配列同一性(又は少なくとも80%の同一性、又は少なくとも90%の同一性を有し、又は少なくとも95%の同一性)を有する;本開示のさらなるインテインポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸88~117、配列番号2のアミノ酸100~129、配列番号4のアミノ酸80~109、配列番号12のアミノ酸1~30、配列番号15のアミノ酸1~30、配列番号120のアミノ酸100~129、配列番号121のアミノ酸100~129、配列番号122のアミノ酸100~129、配列番号123のアミノ酸100~129、及び配列番号124のアミノ酸100~129からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも60%のアミノ酸配列同一性(又は少なくとも70%の同一性、又は少なくとも80%の同一性を有し、又は少なくとも90%の同一性、又は少なくとも95%の同一性)を有し、ここでアミノ酸配列同一性は、実施例3に従って決定される。
【0027】
タグ及びインテインポリペプチドと使用することができる他のアミノ酸配列。
タグ 本明細書中に提供する方法において使用されるインテインポリペプチドは、そのようなインテインポリペプチドの精製及び/又は検出、ならびにそれらを含むインテイン融合ポリペプチドの精製及び/又は検出において助ける分子部分を含むように設計することができる。多くのそのような部分は当該技術分野において公知であり、一例として、インテインポリペプチドは、そのアミノ酸配列内、例えばミニインテインのN末端部分とC末端部分の間など、又はインテインポリペプチドのN又はC末端付近に、ポリヒスチジン「タグ」配列-一連の六つ以上のヒスチジン、好ましくは6~10 のヒスチジン残基、最も好ましくは六つのヒスチジン(「6xHis」)-を含むように設計することができる。ポリペプチド内のポリヒスチジン配列の存在によって、それが、コバルト又はニッケルベースの親和性媒体により結合され、他のポリペプチドから分離されることが可能になる。ポリヒスチジンタグ配列は、エクスペプチダーゼにより除去することができる。タグの別の例は、SpyTagであり、それは、12.3kDaのSpyCatcherタンパク質により結合される13個のアミノ酸のペプチドであり、共有結合的な分子間イソペプチド結合をもたらす。タグのさらなる型は、ビオチンリガーゼによるビオチン化のための標的であるAviTag(商標)ペプチド(Avidity、コロラド州オーロラ)である。追加のタグは、(1)ペスチウイルス、例えば古典的ブタ熱ウイルス(CSFV)とも呼ばれるブタコレラウイルス(アルフォート株)からの、ならびに境界病ウイルス(BDV)及びウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)からのポリタンパク質の自己切断N末端部分(Npro)、ならびにそれらのフラグメント;及び/又は(2)小さなユビキチン関連修飾剤(SUMO)(例、SwissProt P55853.1)を含む。任意のN末端タグは、それ自体を、ポリヒスチジンタグ、例えば6xHisなどでさらにタグ付けしてもよく、ニッケルカラム上でのタグ付きポリペプチドの初期精製を可能にし、タグ、例えばNproなどの自己切断、又はSUMOプロテアーゼによるSUMO N末端タグの酵素的切断、及びカラムからの遊離ポリペプチドの溶出がそれぞれ続く。この方法の一実施形態では、SUMOプロテアーゼポリペプチドはまた、6xHisタグを含む融合タンパク質であって、2工程の精製を可能にする:第1工程では、発現された6xHis-SUMO-タグ付きポリペプチドが、ニッケルカラムへの結合、続くカラムから溶出により精製される。第2工程では、精製ポリペプチド上のSUMOタグが、6xHis-タグ付きSUMOプロテアーゼにより切断され、SUMOプロテアーゼ-ポリペプチド反応混合物が、第2ニッケルカラムを通して実行され、それは、SUMOプロテアーゼを保持するが、しかし、今は非タグ付きであるポリペプチドが流れることを可能にする。
【0028】
リンカー 本明細書中で提供する方法において使用されるインテインポリペプチドは、リンカーを含むことができ、それは、二つの他のポリペプチドを接続するために使用されるポリペプチドである。アルファ-ヘリックスを形成するリンカーポリペプチドの例は、Amet et al.,“Insertion of the designed helical linker led to increased expression of Tf-based fusion proteins,”Pharm Res 2009 Mar;26(3):523-528;doi:10.1007/s11095-008-9767-0;Epub 2008 Nov 11において記載されている。
【0029】
追加の切断配列 切断配列は、化学試薬又は酵素により作用されて、切断配列を含むポリペプチドの切断をもたらすことができる別個のアミノ酸配列である。これらの配列の一つ又は複数を、タグ(例えば)と、インテインポリペプチド内又はその近傍の他のアミノ酸配列の間に導入して、タグ(又は他の型のアミノ酸配列)を切断することができる。エンテロキナーゼ切断配列(DDDDKG、配列番号12及び15のアミノ酸11~16)が、配列番号12及び15の6xHis-タグ付き分割インテインポリペプチド配列中に含まれ、6xHisタグを切断することが可能になる。切断配列のさらなる例は、DPを含むアミノ配列を含み、それは、D(Asp)とP(Pro)の間の結合でのギ酸での処理により切断することができる。追加の例は、プロテアーゼ、例えばTEV(タバコエッチングウイルス)プロテアーゼ及びトロンビンなどにより切断可能なアミノ酸配列である。
【0030】
シグナルペプチド 本明細書中で提供する方法において利用されるインテイン融合ポリペプチドは、シグナルペプチドを有する、又はそれを欠くことができる。特定の実施形態では、インテイン融合ポリペプチドはシグナルペプチドを欠く。なぜなら、そのようなインテイン融合ポリペプチドが宿主細胞の細胞質中に保持されるのに有利であるためである。シグナルペプチド(シグナル配列、リーダー配列、又はリーダーペプチドとも呼ばれる)は、一つのアルファヘリックスを形成する傾向を有する、約5~20アミノ酸長、しばしば約10~15アミノ酸長の疎水性アミノ酸の伸長により構造的に特徴付けられる。この疎水性伸長では、しばしば、正荷電アミノ酸(特にリジン)に富むより短い伸長が直前に先行する。成熟ポリペプチドから切断されるシグナルペプチドは、典型的には、シグナルペプチダーゼにより認識されて、切断されるアミノ酸の伸長で終わる。膜中へのポリペプチドの挿入を方向付けるシグナルペプチドは、シグナルアンカー配列とも呼ばれ、シグナルペプチダーゼにより切断されるアミノ酸配列を欠くことができ、その場合では、ポリペプチド中に保持される。シグナルペプチドは、しばしば、共翻訳的に、又は翻訳後のいずれかで、細胞質から外に、例えば、原核生物の細胞膜(又は大腸菌などのグラム陰性細菌の内膜)を通して、又は真核細胞の小胞体中へのポリペプチドの輸送を方向付ける能力により機能的に特徴付けることができる。シグナルペプチドが、大腸菌などの宿主細胞のペリプラズム空間中にポリペプチドを輸送することを可能にする程度は、例えば、細胞質中に保持されるタンパク質からペリプラズムタンパク質を分離することにより決定することができる(WO2014025663A1の実施例12を参照)。
【0031】
II.本方法により産生されるポリペプチド及びタンパク質。
本明細書中に提供する方法は、切断されるインテイン融合ポリペプチド配列内に含まれるインテインアミノ酸配列の使用、及び標的ポリペプチド又はタンパク質を生成するための、インテイン融合ポリペプチドの残り部分からのインテインアミノ配列の自己切除を含む。本開示の方法を使用して産生することができる標的ポリペプチド及びタンパク質は、以下のいずれか、又は複数を含むことができる:アルファ-1-アンチトリプシン;2C4(HER2に対するモノクローナル抗体);アクチビン;アドレスイン;アルカリホスファターゼ;抗CD11a;抗CD18;抗CD20;抗凝固因子、例えばプロテインCなど;抗HER-2抗体;抗IgE;抗IgG;抗VEGF;抗体及び抗体フラグメント;ErbB2ドメインに対する抗体、例えばErbB2の細胞外ドメイン中の領域(例、ErbB2の残基22前後から残基584前後までの領域中の任意の一つ又は複数の残基)に結合する2C4(WO 01/00245ハイブリドーマATCC HB-12697)など;Apo2 リガンド(Apo2L);心房性ナトリウム利尿因子;BDNF;ベータラクタマーゼ;ボンベシン;骨形成タンパク質(BMP);ボツリヌス毒素;脳 IGF-I;カルシトニン;カーディオトロフィン(心肥大因子)、例えばカーディオトロフィン-1(CT-1)など;CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、及びCD19 など;凝固因子、例えば第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、フォン・ヴィレブランズ因子など;コロニー刺激因子(CSF)、例、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;サイトカイン;崩壊加速因子;des(1-3)-IGF-I(脳 IGF-I);DNアーゼ;エンケファリナーゼ;上皮成長因子(EGF);エリスロポエチン;線維芽細胞増殖因子、例えばaFGF及びbFGFなど;卵胞刺激ホルモン;グルカゴン;gp120;グレリン;ヒト成長ホルモン又はウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;造血成長因子;ホーミング受容体;HSA;IGF-I;IGF-II;免疫毒素;インヒビン;インスリン鎖(インスリンA鎖、インスリンB鎖)又はプロインスリン;インスリン様成長因子結合タンパク質;インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);インテグリン;インターフェロン、例えばインターフェロン-アルファ、-ベータ、-ガンマなど;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10;レプチン;リポタンパク質;肺サーファクタント;黄体形成ホルモン;メトレレプチン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;ミュラー管阻害物質;神経成長因子(NGF);神経栄養因子、例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3、4、5、又は6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)など;骨誘導因子;副甲状腺ホルモン;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼあるいはヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)など;血小板由来成長因子(PDGF);プロリラキシン;プロテインA又はD;ホルモン又は成長因子についての受容体;調節タンパク質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;レニン;リウマチ因子;血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)又はウシ血清アルブミン(BSA)など;スーパーオキシドジスムターゼ;表面膜タンパク質;T細胞受容体;TGF-ベータ;トロンビン;トロンボポエチン;甲状腺刺激ホルモン;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えばTGF-1、TGF-2、TGF-3、TGF-4、又はTGF-5を含むTGF-アルファ及びTGF-ベータなど;輸送タンパク質;腫瘍壊死因子-アルファ及び-ベータ;ウロキナーゼ;血管内皮成長因子(VEGF);ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部など;上のいずれかのフラグメント;ならびに上のタンパク質もしくはそのフラグメント又は機能ドメインの一つ又は複数に共有結合的に結合される上のいずれか又はそのフラグメント、例えば:抗体Fcドメイン、抗体単鎖可変フラグメント(scFv)、酵素活性を伴うドメイン(例えばグリコシド加水分解酵素ドメイン又はキナーゼドメインなど)、EVH1(Ena/Vaspホモログ、又はWH1)ドメイン、PAS(Per-Arnt-Sim)ドメイン、PDZドメイン、POU(Pit-1、Oct、Unc-86)ドメイン、SPR(Spread、Sprouty)ドメイン、VWFC(フォン・ヴィルブランド因子、C型又はVWC)ドメイン、又はジンクフィンガードメイン(例えば、リングフィンガードメイン)。
【0032】
ジスルフィド結合 本明細書中で提供する方法により産生される標的ポリペプチド及びタンパク質は、一部の例では、ジスルフィド結合を形成することができるポリペプチド及びタンパク質である。ジスルフィド結合は、例えば、ポリペプチド中に存在するシステイン残基のチオール基の間に形成される、R-S-S-R’として表される硫黄原子間の共有結合である。ポリペプチド又はタンパク質についてのジスルフィド結合の数は、機能的産物中に存在する場合、そのポリペプチド又はタンパク質により形成される分子内及び分子間ジスルフィド結合の総数である。例えば、ヒトIgG抗体軽鎖及び重鎖が同時発現される場合、抗体軽鎖は、典型的には、三つのジスルフィド結合(二つの分子内結合及び一つの分子間結合)を形成することができ、抗体重鎖は、典型的には、7つのジスルフィド結合(四つの分子内結合及び三つの分子間結合)を形成することができる。特定の実施形態では、本明細書中の方法により産生されるポリペプチド又はタンパク質は、少なくとも一つ及び20未満のジスルフィド結合、又は少なくとも二つ及び17未満のジスルフィド結合、又は少なくとも17及び50未満のジスルフィド結合、又は少なくとも三つ及び10未満のジスルフィド結合、又は少なくとも三つ及び八つ未満のジスルフィド結合を形成することができる、あるいは一、二、三、四、五、六、七、八、及び九つのジスルフィド結合からなる群から選択される多数のジスルフィド結合を形成することができるポリペプチド又はタンパク質である。
【0033】
シャペロン 一部の実施形態では、インテイン融合ポリペプチドは、標的ポリペプチド又はタンパク質の産生に有益である、他の遺伝子産物、例えばシャペロンなどと同時発現される。シャペロンは、他の遺伝子産物のフォールディングもしくはアンフォールディング、及び/又はアセンブリ又は分解を支援する、しかし、構造がそれらの通常の生物学的機能(フォールディング及び/又はアセンブリの過程を完了している)を実施している際、結果として生じる単量体又は多量体遺伝子産物構造中では生じないタンパク質である。チャペロンは、発現構築物内の誘導性プロモーターもしくは構成的プロモーターから発現させることができる、又は宿主細胞染色体から発現させることができる;好ましくは、宿主細胞中のチャペロンタンパク質の発現は、適切に折り畳まれ、及び/又は標的タンパク質に組み立てられ、同時発現された標的ポリペプチドを産生するのに十分に高いレベルにある。大腸菌宿主細胞中に存在するシャペロンの例は、フォールディング因子DnaK/DnaJ/GrpE、DsbC/DsbG、GroEL/GroES、IbpA/IbpB、Skp、Tig(トリガー因子)、及びFkpAがあり、これらは細胞質タンパク質又はペリプラズムタンパク質のタンパク質凝集を防止するために使用されてきた。DnaK/DnaJ/GrpE、GroEL/GroES、及びClpBは、タンパク質フォールディングを支援する際に相乗的に機能することができ、従って、組み合せにおけるこれらのシャペロンの発現は、タンパク質発現のために有益であることが示されている(Makino et al.,“Strain engineering for improved expression of recombinant proteins in bacteria” Microb Cell Fact 2011 May 14;10:32)。原核生物宿主細胞中で真核生物タンパク質を発現させる場合、真核生物シャペロンタンパク質、例えば同じもしくは関連する真核生物種からの、又はフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)からのタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)などが、特定の実施形態において、所望の遺伝子産物と同時発現される、又は誘導的に同時発現される。
【0034】
III.発現構築物
発現構築物は、目的の一つ又は複数の遺伝子産物、例えばインテインアミノ酸配列及び標的ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を含むインテイン融合ポリペプチドなどの発現のために設計されたポリヌクレオチドである。目的の特定の遺伝子産物は、それらが発現される宿主細胞のものとは異なる種から由来する「異種」遺伝子産物であり、及び/又は発現構築物内で利用されるプロモーターから自然に発現されない異種遺伝子産物であり、及び/又はそのような遺伝子産物の天然形態との違いを含むように設計された改変遺伝子産物である。異種及び/もしくは改変遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む、又は異なる種の生物から由来したポリヌクレオチドの組み合わせを含む、又は天然ポリヌクレオチドとは異なるように改変されているポリヌクレオチドを含む発現構築物は、天然分子ではない。発現構築物は、宿主細胞染色体中に組み込むことができ、又は宿主細胞染色体から独立して複製するポリヌクレオチド分子、例えばプラスミドもしくは人工染色体などとして宿主細胞内に維持することができる。発現構築物の例は、宿主細胞染色体中への一つ又は複数のポリヌクレオチド配列の挿入から得られるポリヌクレオチドであり、挿入されたポリヌクレオチド配列は、染色体コード配列の発現を変化させる。発現ベクターは、一つ又は複数の遺伝子産物の発現のために特に使用されるプラスミド発現構築物である。一つ又は複数の発現構築物は、宿主細胞染色体中に組み込む、又は染色体外ポリヌクレオチド、例えばプラスミドもしくは人工染色体などの上に維持することができる。特定の実施形態では、発現構築物は、二重プロモーター発現ベクター、例えばUS2015353940A1及びWO2016205570A1において記載されるものなどである。
【0035】
発現構築物は、特定のポリヌクレオチドエレメント、例えば複製の起点、選択マーカー、プロモーター、例えば構成的又は誘導性プロモーターなど(以下でさらに記載する)、リボソーム結合部位、及び複数のクローニング部位などを含み得る。これらのポリヌクレオチドエレメントの例は、当技術分野において周知であり、それらのさらなる記載は、以下の特許刊行物及び出願において見出すことができ、それらの全てが、参照により本明細書中に明示的に組み入れられる。US9,617,335B2及びWO2014/025663A1、“Inducible Coexpression System”、US2015/353940A1及びWO2016/205570A1、“Vectors for Use in an Inducible Coexpression System”、及び国際出願PCT/US2016/067064、“Cytoplasmic Expression System”。
【0036】
誘導性プロモーター 以下にさらに記載するように、本明細書中に記載する発現システムの一部として発現構築物中に含むことができるいくつかの異なる誘導性プロモーターがある。好ましい誘導性プロモーターは、表2中に記載するものを含む。
【表2】
【0037】
〔注意] Craは、多くの異なるプロモーターのアクチベーター(インデューサーは要求されない)又はリプレッサー(抑制解除のために要求されるインデューサー)として作用する。一部のCra調節プロモーターについては、Craの結合又は抑制解除に加えて、他の転写因子の結合(又はその抑制解除)が発現のために要求される。ここに列挙するプロモーターは、フルクトースの添加が、抑制性糖、例えばグルコースなどの非存在において、Cra抑制解除及びプロモーターの発現をもたらすのに十分であるはずであるプロモーターである。
【0038】
特定の好ましい誘導性プロモーターは、WO2014/025663A1の表1中に定義するように、少なくとも80%のポリヌクレオチド配列同一性(より好ましくは少なくとも90%の同一性、及び最も好ましくは少なくとも95%の同一性)を、プロモーターポリヌクレオチド配列の少なくとも30(より好ましくは少なくとも40、及び最も好ましくは少なくとも50)の連続塩基と共有し、ここで、ポリヌクレオチド配列同一性の割合は、実施例3の方法を使用して決定される。好ましい誘導性プロモーターは、De Mey et al.“Promoter knock-in:a novel rational method for the fine tuning of genes,”BMC Biotechnol 2010 Mar 24;10:26(WO2014/025663A1の実施例8A)の定量的PCR法を使用して決定される、大腸菌K-12亜株MG1655の対応する「野生型」誘導性プロモーターの少なくとも75%(より好ましくは少なくとも100%、最も好ましくは少なくとも110%)の強度を有する。発現構築物内で、誘導性プロモーターが、誘導的に発現される遺伝子産物についてのコード配列に対して5’(又は「その上流」)に配置され、誘導性プロモーターの存在が、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドのコード鎖に対して5’から3’方向に遺伝子産物コード配列の転写を方向付けることとなる。発現構築物内の誘導性プロモーターから発現される遺伝子産物は、これらの誘導性プロモーターから天然に発現される遺伝子産物ではなく、むしろ、それらは異種遺伝子産物であり、誘導性プロモーターから発現される異種遺伝子産物を含む発現構築物は、必然的に自然において見出されない人工構築物であるという結果を伴う。
【0039】
誘導性プロモーター 以下は、遺伝子産物の発現のための発現構築物において使用することができる誘導性プロモーター、ならびにそのような発現構築物を含む宿主細胞に作製することができる遺伝子改変の一部の記載である。これらの誘導性プロモーター及び関連遺伝子の例は、他に特定しない限り、大腸菌(大腸菌)株MG1655(American Type Culture Collection deposit ATCC 700926)から由来するものであり、これは大腸菌K-12(American Type Culture Collection doice ATCC 10798)の亜系である。 国際出願PCT/US13/53562(WO2014/025663A1)の表1は、誘導性プロモーター及び関連遺伝子のこれらの例についてのヌクレオチド配列の大腸菌MG1655におけるゲノム位置を列挙する;WO2014025663A1公開は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。ヌクレオチド及び他の遺伝子配列は、WO2014/025663A1の表1中のゲノム位置により参照され、参照により本明細書中に明示的に組み込まれる。本明細書中に記載する大腸菌プロモーター、遺伝子、及び株に関する追加情報は、ecoliwiki.netのオンラインEcoliWiki リソースを含む、多くの公開リソースにおいて見出すことができる。
【0040】
アラビノースプロモーター (本明細書中で使用するように、「アラビノース」はL-アラビノースを意味する。)アラビノース利用に含まれるいくつかの大腸菌オペロンは、アラビノース―araBAD、araC、araE、及びaraFGH―により誘導可能であるが、しかし、典型的には、用語「アラビノースプロモーター」及び「ara プロモーター」は、araBADプロモーターを指定するために使用される。いくつかの追加の用語が、大腸菌araBADプロモーターを示すために使用されており、例えばPara、ParaB、ParaBAD、及びPBADなどである。「araプロモーター」又は上に与える代替的な用語のいずれかの本明細書中での使用は、大腸菌araBADプロモーターを意味する。別の用語であるaraC-araBADプロモーターの使用から分かるように、araBADプロモーターは双方向性プロモーターの一部とみなされ、一つの方向にaraBADオペロンの発現を制御するaraBADプロモーター、及び他の方向にaraCコード配列の発現を制御する、araBADプロモーターからの反対鎖に近接して、及びその上にaraCプロモーターを伴う。AraCタンパク質は、araBADプロモーターのポジティブ及びネガティブの両方の転写調節因子である。アラビノースの非存在において、AraCタンパク質はPBADからの転写を抑制するが、しかし、アラビノースの存在において、AraCタンパク質は、アラビノース結合時にその立体構造を変化させ、PBADからの転写を可能にするポジティブな調節因子となる。araBADオペロンは、L-アラビノースを、中間体L-リブロース及びL-リブロース-リン酸を通じて、D-キシルロース-5-リン酸に変換することにより代謝するタンパク質をコードする。アラビノース誘導性プロモーターからの発現の誘導を最大化する目的のために、L-リブロースへのL-アラビノースの変換を触媒するAraAの機能を除去又は低下させること、ならびに、場合により、AraB及びAraDの少なくとも一つの機能も除去又は低下させることが有用である。細胞中のアラビノースの有効濃度を減少させる宿主細胞の能力を除去又は低下させることによって、アラビノースを他の糖に変換する細胞の能力を除去又は低下させることにより、より多くのアラビノースをアラビノース誘導性プロモーターの誘導のために利用可能にすることが可能になる。宿主細胞中にアラビノースを移動させるトランスポーターをコードする遺伝子は、低親和性L-アラビノースプロトンシンポーターをコードするaraE、及びABCスーパーファミリー高親和性L-アラビノーストランスポーターのサブユニットをコードするaraFGH オペロンである。L-アラビノースを細胞中に輸送することができる他のタンパク質は、LacYラクトースパーミアーゼの特定の変異体:それぞれ位置177でアラニンの代わりにシステイン又はバリンアミノ酸を有するLacY(A177C)及びLacY(A177V)タンパク質である(Morgan-Kiss et al.,“Long-term and homogeneous regulation of the Escherichia coli araBAD promoter by use of a lactose transporter of relaxed specificity,”Proc Natl Acad Sci USA 2002 May 28;99(11):7373-7377)。アラビノース誘導性プロモーターの均一な誘導を達成するために、アラビノースによる調節に非依存的な細胞中へのアラビノースの輸送を行うのが有用である。これは、AraFGHトランスポータータンパク質の活性を除去又は低下させ、araEの発現を、それが構成的プロモーターからのみ転写されるように変化させることにより達成することができる。araEの構成的発現は、天然araE遺伝子の機能を除去又は低下させ、構成的プロモーターから発現されたAraEタンパク質についてのコード配列を含む発現構築物を細胞中に導入することにより達成することができる。あるいは、AraFGH機能を欠く細胞中では、宿主細胞の染色体araE遺伝子の発現を制御するプロモーターを、アラビノース誘導性プロモーターから構成性プロモーターに変化させることができる。類似の様式において、アラビノース誘導性プロモーターの均一な誘導のための追加の代替として、AraE機能を欠く宿主細胞は、構成的プロモーターから発現された細胞中に存在する任意の機能的AraFGHコード配列を有することができる。別の代替として、天然araE及びaraFGHプロモーターを、宿主染色体中の構成的プロモーターで置換することにより、構成的プロモーターからaraE遺伝子及びaraFGHオペロンの両方を発現させることが可能である。また、AraE及びAraFGHアラビノーストランスポーターの両方の活性を除去又は低下させ、その状況において、このタンパク質がアラビノースを輸送することを可能にするLacYラクトースパーミアーゼ中の変異を使用することも可能である。lacY遺伝子の発現は、通常、アラビノースにより制御されないため、LacY変異体、例えばLacY(A177C)又はLacY(A177V)などの使用は、アラビノース誘導性プロモーターがアラビノースの存在により誘導される場合、「全か無か」の誘導現象に導かない。LacY(A177C)タンパク質は、アラビノースを細胞中に輸送する際により効果的であるように見えるため、LacY(A177C)タンパク質をコードするポリヌクレオチドの使用は、LacY(A177V)タンパク質をコードするポリヌクレオチドの使用よりも好ましい。
【0041】
プロピオン酸プロモーター 「プロピオン酸プロモーター」又は「prpプロモーター」は、大腸菌prpBCDEオペロンのプロモーターであり、また、PprpBと呼ばれる。araプロモーターと同様に、prpプロモーターは双方向性プロモーターの一部であり、一つの方向でprpBCDEオペロンの発現を制御し、他の方向でprpRコード配列の発現を制御するprpRプロモーターを伴う。PrpRタンパク質は、prpプロモーターの転写調節因子であって、PrpRタンパク質が2-メチルクエン酸塩(「2‐MC」)に結合する場合、prpプロモーターからの転写を活性化する。プロピオン酸(また、プロパン酸と呼ばれる)は、プロピオン酸(又はプロパン酸)のイオンCHCHCOOであり、このクラスの分子の特定の特性を共有する一般式H(CHCOOHを有する「脂肪」酸のうちで最も小さく:水から塩分を出し、石鹸状のカリウム塩を有する場合に油性層を産生する。市販のプロピオン酸は、一般的に、プロピオン酸の一価カチオン塩、例えばプロピオン酸ナトリウム(CHCHCOONa)などとして、又は二価カチオン塩、例えばプロピオン酸カルシウム(Ca(CHCHCOO)2)などとして販売される。プロピオン酸は膜透過性であり、PrpE(プロピオニル-CoAシンテターゼ)によるプロピオニル-CoAへのプロピオン酸の変換、及び次に、PrpC(2-メチルシトレートシンターゼ)による2-MCへのプロピオニル-CoAの変換により2-MCに代謝される。prpBCDEオペロンによりコードされる他のタンパク質、PrpD(2-メチルクエン酸デヒドラターゼ)及びPrpB(2-メチルイソクエン酸リアーゼ)は、より小さな産物、例えばピルビン酸及びコハク酸塩などへの2-MCのさらなる異化において含まれる。細胞成長培地に加えられたプロピオン酸によるプロピオン酸誘導性プロモーターの誘導を最大化するために、従って、プロピオン酸を2‐MCに変換するために、PrpC及びPrpE活性を伴うが、しかし、また、除去又は低下されたPrpD活性、及び、場合により、除去又は低下されたPrpB活性も有しており、2‐MCが代謝されることが防止された宿主細胞を有することが望ましい。2‐MC生合成において含まれるタンパク質をコードする別のオペロンは、scpA-argK-scpBCオペロンであり、また、sbm-ygfDGHオペロンと呼ばれる。これらの遺伝子は、プロピオニル-CoAへのコハク酸塩の変換のために要求されるタンパク質をコードし、それは次に、PrpCにより2‐MCに変換することができる。これらのタンパク質の機能の除去又は低下によって、2-MCインデューサーの産生のための平行経路が除去され、このように、プロピオン酸誘導性プロモーターの発現のバックグラウンドレベルが低下し、外因的に供給されたプロピオン酸に対するプロピオン酸誘導性プロモーターの感受性が増加し得る。sbm-ygfD-ygfG-ygfH-ygfIの欠失が、大腸菌BL21(DE3)中に導入され、JSB株が作製され(Lee and Keasling,“A propionate-inducible expression system for enteric bacteria,”Appl Environ Microbiol 2005 Nov;71(11):6856-6862)、外因的に供給されたインデューサーの非存在においてバックグラウンド発現を低下させる際に有用であったが、しかし、この欠失によって、JSB株におけるprpプロモーターからの全体的な発現も低下した。しかし、欠失sbm-ygfD-ygfG-ygfH-ygfIはまた、明らかにygfIに影響を及ぼし、それは機能未知の推定LysRファミリー転写レギュレーターをコードする。遺伝子sbm-ygfDGHは一つのオペロンとして転写され、ygfIは反対の鎖から転写される。ygfH及びygfIコード配列の3’末端は、少数の塩基対により重複し、そのため、sbm-ygfDGHオペロンの全てを取り除く欠失によって、明らかにygfIコード機能も取り除かれた。sbm-ygfDGH遺伝子産物のサブセット、例えばYgfG(また、ScpB、メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼと呼ばれる)などの機能を除去又は低下させる、又は、sbm-ygfDGH (又は scpA-argK-scpBC) オペロンの大部分を欠失させる一方で、ygfH (又は scpC) 遺伝子の3’末端を十分に残して、ygfIの発現に影響が及ぼされないようにすることは、誘導された発現の最大レベルを低下させることなく、プロピオン酸誘導性プロモーターからのバックグラウンド発現を十分に低下させるのに十分であり得る。
【0042】
ラムノースプロモーター (本明細書中で使用する、「ラムノース」はL-ラムノースを意味する。)「ラムノースプロモーター」又は「rhaプロモーター」、又はPrhaSRは、大腸菌rhaSRオペロンのプロモーターである。ara及びprpプロモーターと同様に、rhaプロモーターは、双方向性プロモーターの一部であり、一つの方向にrhaSRオペロンの発現を制御し、他の方向にrhaBADオペロンの発現を制御するrhaBADプロモーターを伴う。rhaプロモーターは、しかし、発現を調節する際に含まれる二つの転写調節因子を有する:RhaR及びRhaS.RhaRタンパク質は、ラムノースの存在においてrhaSRオペロンの発現を活性化させる一方で、RhaSタンパク質は、L-ラムノースの異化オペロン及び輸送オペロンであるrhaBAD及びrhaTの発現をそれぞれ活性化させる(Wickstrum et al.,“The AraC/XylS family activator RhaS negatively autoregulates rhaSR expression by preventing cyclic AMP receptor protein activation,”J Bacteriol 2010 Jan;192(1):225-232)。RhaSタンパク質はまた、rhaSRオペロンの発現を活性化することができるが、実際には、RhaSは、RhaRと、発現をずっとより高いレベルに同時活性化する環状AMP受容体タンパク質(CRP)の能力に干渉することにより、この発現を負に自己調節する。rhaBADオペロンは、L-ラムノースをL-ラムニュロースに変換するラムノース異化タンパク質RhaA (L-ラムノースイソメラーゼ);L-ラムヌロースをリン酸化してL-ラムヌロース-1-Pを形成するRhaB(ラムヌロキナーゼ);ならびに、L-ラムヌロース-1-PをL-ラクトアルデヒド及びDHAP(ジヒドロキシアセトンリン酸)に変換するRhaD (ラムヌロース-1-リン酸アルドラーゼ)をコードする。ランノース誘導性プロモーターからの発現の誘導のために利用可能な細胞中のランノースの量を最大化するために、RhaA、又は、場合により、RhaAならびにRhaB及びRhaDの少なくとも一つを排除又は低下させることにより、触媒により分解されるランノースの量を低下させることが望ましい。大腸菌細胞はまた、rmlBDACX(又はrfbBDACX)オペロンによりコードされるタンパク質RmlA、RmlB、RmlC、及びRmlD(また、それぞれRfbA、RfbB、RfbC、及びRfbDと呼ばれる)の活性を通して、アルファ-D-グルコース-1-PからL-ラムノースを合成することができる。ラムノース誘導性プロモーターからのバックグラウンド発現を低下させ、外因性に供給されるラムノースによるラムノース誘導性プロモーターの誘導の感度を増強するために、RmlA、RmlB、RmlC、及びRmlDタンパク質の一つ又は複数の機能を排除又は低下させることが有用であり得る。L-ラムノースは、RhaT、ラムノースパーミナーゼ又はL-ラムノース:プロトンシンポーターにより細胞中に輸送される。上記のように、RhaTの発現は、転写レギュレーターRhaSにより活性化される。RhaTの発現を、ラムノースによる誘導(RhaSの発現を誘導する)から独立させるために、宿主細胞を、細胞中の全ての機能的RhaTコード配列が構成的プロモーターから発現されるように改変することができる。加えて、RhaSのコード配列は、欠失又は不活化させることができ、機能的RhaSは産生されなくなる。細胞中のRhaSの機能を排除又は低下させることにより、rhaSRプロモーターからの発現のレベルが、RhaSによる負の自己調節の欠如に起因して増加し、ランノース触媒オペロンrhaBADの発現のレベルが低下し、rhaプロモーターから発現を誘導するランノースの能力がさらに増加する。
【0043】
キシロースプロモーター (本明細書中で使用するように、「キシロース」はD-キシロースを意味する。)キシロースプロモーター、又は「xylプロモーター」、又はPxylAは、大腸菌xylABオペロンのためのプロモーターを意味する。キシロースプロモーター領域は、xylABオペロン及びxylFGHRオペロンの両方が、隣接するキシロース誘導性プロモーターから、大腸菌染色体上の反対方向に発現されるという点で、組織化において他の誘導性プロモーターと類似している(Song and Park,“Organization and regulation of the D-xylose operons in Escherichia coli K-12:XylR acts as a transcriptional activator,”J Bacteriol.1997 Nov;179(22):7025-7032)。PxylA及びPxylFプロモーターの両方の転写レギュレーターが、XylRであり、それは、キシロースの存在においてこれらのプロモーターの発現を活性化する。xylR遺伝子は、xylFGHRオペロンの一部として、又はxylH及びxylRタンパク質コード配列の間に位置するキシロースにより誘導されない、それ自体の弱いプロモーターからのいずれかで発現される。D-キシロースは、XylA(D-キシロースイソメラーゼ)により異化され、それはD-キシロースをD-キシロースに変換し、次にXylB(キシルロキナーゼ)によりリン酸化されてD-キシルロース-5-Pを形成する。キシロース誘導性プロモーターからの発現の誘導のために利用可能な細胞中でのキシロースの量を最大化するために、少なくともXylAの、又は、場合により、XylA及びXylBの両方の機能を除去又は低下させることにより、触媒により分解されるキシロースの量を低下させることが望ましい。xylFGHRオペロンは、ABCスーパーファミリー高親和性D-キシローストランスポーターのサブユニットであるXylF、XylG、及びXylHをコードする。大腸菌低親和性キシロース-プロトンシンポーターをコードするxylE遺伝子は、別々のオペロンを表し、その発現はまた、キシロースにより誘導可能である。キシロースによる誘導に非依存的なキシローストランスポーターの発現を作製するために、宿主細胞を改変することができ、全ての機能性キシローストランスポーターを構成的プロモーターから発現させる。例えば、xylFGHRオペロンは、xylFGHコード配列が欠失されるように改変することができ、XylRは、キシロース誘導性PxylFプロモーターから発現される唯一の活性タンパク質として残され、xylEコード配列は、その天然プロモーターではなく、構成的プロモーターから発現される。別の例として、xylRコード配列は、発現構築物中のPxylA又はPxylFプロモーターから発現される一方で、xylFGHRオペロンは欠失され、xylEは構成的に発現される、又は、代わりに、xylFGHオペロン(xylRコード配列を欠く。なぜなら、それが発現構築物中に存在するためである)が、構成的プロモーターから発現され、xylEコード配列は欠失又は改変されて、それが活性タンパク質を産生しないようになる。
【0044】
ラクトースプロモーター 用語「ラクトースプロモーター」は、lacZYAオペロンについてのラクトース誘導性プロモーター、lacZp1とも呼ばれているプロモーターを指す;このラクトースプロモーターは大腸菌K-12亜株MG1655のゲノム配列(NCBI参照配列NC_000913.2、11-JAN-2012)中の約365603~365568に位置付けられる(マイナス鎖、約365603~365598のRNAポリメラーゼ結合(「-35」)部位、365579~365573のプリブノーボックス(「-10」)、及び 365567の転写開始部位を伴う)。一部の実施形態では、発現系は、ラクトース誘導性プロモーター、例えばlacZYAプロモーターなどを含み得る。他の実施形態では、発現系は、ラクトース誘導性プロモーターではない、一つ又は複数の誘導性プロモーターを含む。
【0045】
アルカリホスファターゼプロモーター 用語「アルカリホスファターゼプロモーター」及び「phoAプロモーター」は、phoApsiFオペロンについてのプロモーター、ホスファターゼ飢餓条件下で誘導されるプロモーターを指す。phoAプロモーター領域は、大腸菌K-12亜株MG1655のゲノム配列(NCBI参照配列NC_000913.3、16-DEC-2014)中の約401647~401746に位置付けられる(プラス 鎖、401695~401701のプリブノウボックス(「-10’」)を伴う)(Kikuchi et al.,“The nucleotide sequence of the promoter and the amino-terminal region of alkaline phosphatase structural gene (phoA) of Escherichia coli,”Nucleic Acids Res 1981 Nov 11;9(21):5671-5678)。phoAプロモーターについての転写アクチベーターは、PhoBであり、センサータンパク質PhoRとともに、大腸菌において二成分シグナル伝達系を形成する転写レギュレーターである。PhoB及びPhoRは、大腸菌K-12亜株MG1655のゲノム配列(NCBI参照配列NC_000913.3、16-DEC-2014)中の約417050~419300に位置付けられるphoBRオペロンから転写される(プラス鎖、417,142~417,831のPhoBコード配列及び417,889~419,184のPhoRコード配列を伴う)。phoAプロモーターは、インデューサーの添加ではなく、物質-細胞内リン酸-の欠如により誘導されるという点で、上に記載する誘導性プロモーターとは異なる。このため、phoAプロモーターは一般的に、宿主細胞がリン酸について枯渇する段階、例えば発酵の後期段階で産生される遺伝子産物の転写を指示するために使用される。一部の実施形態では、発現系はphoAプロモーターを含み得る。他の実施形態では、発現系は、phoAプロモーターではない一つ又は複数の誘導性プロモーターを含む。
【0046】
IV.宿主細胞
本明細書中に記載するように使用されるインテイン融合ポリペプチドの産生のために、宿主細胞は、そのようなポリペプチドを発現することが可能な任意の細胞、例えば単細胞生物、培養中で成長させた単離細胞、又は多細胞生物から由来する単離細胞などであり得る。そのようなポリペプチドの効率的な誘導性発現を可能にする宿主細胞の例を提供する。
【0047】
特に適切な宿主細胞は、発酵培養中で高細胞密度での成長が可能であり、高度に制御された誘導性遺伝子発現を通じて宿主細胞の細胞質を酸化する際にインテイン融合ポリペプチドを産生することができる。これら品質を伴う宿主細胞は、以下の特徴の一部又は全てを組み合わせることにより産生される。(1)宿主細胞は、細胞質中の酸化ポリペプチドの発現もしくは機能を増加させることを通じて、及び/又は細胞質中の還元ポリペプチドの発現もしくは機能を減少させることにより、酸化細胞質を有するように遺伝子改変される。システインオキシダーゼDsbA、ジスルフィドイソメラーゼDsbC、又はDsbタンパク質の組み合わせは、それらは全てが通常、ペリプラズム中に輸送されるが、それらの発現を増加させることは、ジスルフィド結合を要求する異種タンパク質の発現において利用されてきた(Makino et al.,“Strain engineering for improved expression of recombinant proteins in bacteria”,Microb Cell Fact 2011 May 14;10:32)。例えば20のアミノ酸のN末端切断を有する、細胞質型DsbC(「cDsbC」)などであるこれらDsbタンパク質の細胞質形態を発現することも可能であり、これらはシグナルペプチドを欠き、従って、細胞質中に輸送されない。細胞質Dsbタンパク質、例えばcDsbCなどは、宿主細胞の細胞質をより酸化させるのに有用であり、このように、細胞質中で産生される異種タンパク質におけるジスルフィド結合の形成にさらに役立つ。宿主細胞の細胞質はまた、チオレドキシン酵素系及びグルタレドキシン/グルタチオン酵素系を直接的に改変することにより、より酸化させることができる:グルタチオンレダクターゼ(gor)又はグルタチオンシンテターゼ(gshB)において欠損がある変異株が、チオレドキシンレダクターゼ(trxB)と一緒に、細胞質酸化を与える。これらの株はリボヌクレオチドを低下させることができず、従って、外因性還元剤、例えばジチオスレイトール(DTT)などの非存在において成長することができない。ペルオキシレドキシンAhpCをコードする遺伝子 ahpCにおけるサプレッサー変異(ahpC*又はahpCΔ)は、それを、還元型グルタチオンを生成するジスルフィドレダクターゼに変換し、酵素リボヌクレオチドレダクターゼ上への電子のチャネリングを可能にし、gor及びtrxBにおいて欠損がある細胞、又はgshB及びtrxBにおいて欠損がある細胞が、DTTの非存在において成長することが可能になる。異なるクラスの変異型のAhpCが、ガンマ-グルタミルシステインシンテターゼ(gshA)の活性において欠損しており、trxBにおいて欠損している株が、DTTの非存在において成長することを可能にさせることができる;これらは、AhpC V164G、AhpC S71F、AhpC E173/S71F、AhpC E171Ter、及びAhpC dup162~169を含む(Faulkner et al.,“Functional plasticity of a peroxidase allows evolution of diverse disulfide-reducing pathways,”Proc Natl Acad Sci USA 2008 May 6;105(18):6735-6740,Epub 2008 May 2)。(2)場合により、宿主細胞はまた、所望の遺伝子産物の産生において補助するシャペロン及び/又は補因子を発現するように、ならびに/あるいはポリペプチド遺伝子産物をグリコシル化するように、遺伝子改変することができる。(3)宿主細胞はまた、発現構築物からの遺伝子産物発現の特定の態様を改善するように設計された追加の遺伝子改変を含み得る。特定の実施形態では、宿主細胞は、(A)少なくとも一つの誘導性プロモーターのインデューサーについてのトランスポータータンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子の遺伝子機能の改変を有し、別の例として、トランスポータータンパク質をコードする遺伝子が、araE、araF、araG、araH、rhaT、xylF、xylG、及びxylHからなる群から選択され、もしくは特にaraEであり、又はより具体的には、遺伝子機能の改変が、構成的プロモーターからのaraEの発現であり、ならびに/あるいは(B)少なくとも一つの誘導性プロモーターのインデューサーを代謝するタンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子の遺伝子機能の低下レベルを有し、及び、さらなる例として、少なくとも一つの誘導性プロモーターのインデューサーを代謝するタンパク質をコードする遺伝子が、araA、araB、araD、prpB、prpD、rhaA、rhaB、rhaD、xylA、及びxylBからなる群から選択され、ならびに/あるいは(C)少なくとも一つの誘導性プロモーターのインデューサーの生合成において含まれるタンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子の遺伝子機能の低下レベルを有し、当該遺伝子は、さらなる実施形態では、scpA/sbm、argK/ygfD、scpB/ygfG、scpC/ygfH、rmlA、rmlB、rmlC、及びrmlDからなる群から選択される。
【0048】
特定の実施形態では、宿主細胞は、微生物細胞、例えば酵母(サッカロマイセス(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)など)など、もしくは細菌細胞であるか、又はグラム陽性細菌もしくはグラム陰性細菌であるか、又は大腸菌であるか、又は大腸菌B株であるか、又は大腸菌B株521細胞であるか、又は大腸菌B株522細胞である。大腸菌521細胞及び大腸菌522細胞は、以下の遺伝子型を有する:
【0049】
大腸菌521:ΔaraBAD fhuA2 [lon] ompT ahpCΔ gal λatt::pNEB3-r1-cDsbC (Spec,lacI) ΔtrxB sulA11 R(mcr-73::miniTn10--Tet)2 [dcm] R(zgb-210::Tn10--Tet) ΔaraEp::J23104 ΔscpA-argK-scpBC endA1 rpsL-Arg43 Δgor Δ(mcrC-mrr)114::IS10
【0050】
大腸菌522:ΔaraBAD fhuA2 prpD [lon] ompT ahpCΔ gal λatt::pNEB3-r1-cDsbC (Spec,lacI) ΔtrxB sulA11 R(mcr-73::miniTn10--Tet)2 [dcm] R(zgb-210::Tn10--Tet) ΔaraEp::J23104 ΔscpA-argK-scpBC endA1 rpsL-Arg43 Δgor Δ(mcrC-mrr)114::IS10。
【0051】
酸化細胞質を有する大腸菌宿主細胞を用いた増殖実験において、酸化細胞質を有する大腸菌B株は、対応する大腸菌K株よりもはるかに高い細胞密度まで増殖することができることが確認された。他の適切な株は、大腸菌B株SHuffle(登録商標)Express(NEBカタログ番号C3028H)及びSHuffle(登録商標)T7 Express(NEBカタログ番号C3029H)、ならびに大腸菌K株SHuffle(登録商標)T7(NEBカタログ番号C3026H)を含む。
【0052】
原核生物宿主細胞 一部の実施形態では、宿主細胞は原核生物宿主細胞である。原核生物宿主細胞は、古細菌(例えばハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus))、グラム陽性細菌(例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、ブレビバチルス・チョウシネンシス(Brevibacillus choshinensis)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、及びストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans))、又はグラム陰性細菌、アルファプロテオバクテリア(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、及びシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)、ベータプロテオバクテリア(アルカリゲネス・ユートロフス(Alcaligenes eutrophus)を含み、及びガンマプロテオバクテリア(アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、アゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びプチダ菌(Pseudomonas putida))を含み得る。好ましい宿主細胞は、腸内細菌科ファミリーのガンマプロテオバクテリア、例えばエンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、大腸菌類 (大腸菌(E.coli)を含む)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)(サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)を含む)、セラチア(Serratia)(セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans)を含む)、及び赤痢菌(Shigella)などを含む。
【0053】
真核生物宿主細胞 多くの追加の種類の宿主細胞を、開示する方法において使用することができ、真核細胞、例えば酵母(カンジダ・シェハタエ(Candida shehatae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クリベロマイセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、他のクリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)としても公知であるサッカロマイセス パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、デッケラ/ブレタノマイセス(Dekkera/Brettanomyces)属、及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)など;他の真菌類(アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム(Penicillium)、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トリコデルマ・レシア(Trichoderma reesia));昆虫細胞株(キイロショウジョウバエSchneider2細胞及びスポドプテラ・フルギペルダSf9細胞);ならびに哺乳動物細胞株、不死化細胞株(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト胚腎臓(HEK,293、又はHEK-293)細胞、及びヒト肝細胞がん細胞(Hep G2))を含む、を含む。上記の宿主細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から入手可能である。
【0054】
V.宿主細胞の成長のための方法。
少容量の成長。インテイン融合ポリペプチドを産生するために使用される宿主細胞は、成長又は誘導条件をテストする目的のために、又は複数の異なる遺伝子産物の産生などのために、少容量で成長させることができる。実施される実験の性質によって、宿主細胞を成長させる容積、例えば1mLから1リットルまで、又は5mLから500mLの間、又は任意の便利な容積などが決定される。特定の実施形態では、宿主細胞が成長する容器は、成長培地を撹拌し、このように、宿主細胞に酸素を提供するために、繰り返し移動させる。宿主細胞は、適切な栄養素、及び抗生物質抵抗性を提供する発現構築物の、宿主細胞による保持について選択するために要求される任意の抗生物質を含む培地中で成長させる。細胞中に存在する誘導性発現構築物の発現を誘導するために使用される適した量のインデューサーを決定するために、実験を、小容積中で、例えばマルチウェルプレート中で成長させた宿主細胞を用いて有利に実施することができる。
【0055】
発酵 組換えタンパク質の産生において含まれる発酵過程では、以下のカテゴリーの一つに該当する操作モードを使用する:(1)不連続(バッチ過程)操作、(2)連続操作、及び(3)半連続(流加)操作。バッチ過程は、特定の反応期間にわたり培養される、過程の開始時での微生物を用いた無菌培養培地(バッチ培地)の播種により特徴付けられる。培養の間に、細胞濃度、基質濃度(炭素源、栄養塩類、ビタミンなど)及び産物濃度が変化する。良好に混合することによって、反応混合物の組成又は温度において局所的な有意差がないことが確実になる。反応は非定常であり、細胞は、成長制限基質(一般的には炭素源)が消費されるまで成長する。
【0056】
連続操作は、新鮮な培養培地(供給培地)が発酵槽に連続的に加えられ、使用済み培地及び細胞が発酵槽から同じ速度で連続的に引き出される点で特徴付けられる。連続操作では、成長速度は培地添加の速度により決定され、成長収率は成長制限基質(例、炭素源)の濃度により決定される。全ての反応変数及び制御パラメータは、時間において一定のままであり、従って、経時的な一定状態が発酵槽中で確立され、一定の生産性及び出力が続く。
【0057】
半連続操作は、バッチ操作及び連続操作の組み合わせとみなすことができる。発酵がバッチ過程として開始され、成長限基質が消費された場合、グルコース及びミネラルを含む連続供給培地が特定の様式で加えられる(流加)。言い換えれば、この操作では、バッチ培地及び供給培地の両方を用いて、細胞成長及び所望のタンパク質の効率的な産生を達成する。細胞が培養期間の間に加えられる、又は取り出されることはなく、従って、発酵槽は微生物が関与する限りバッチで作動する。本開示は、上で言及するものを含む様々な過程において利用することができる一方で、特定の利用は、流加過程と併用される。
【0058】
上の過程の各々において、細胞成長及び産物蓄積を、代謝産物形成ならびに、一部の他の変数、例えば培地pH、光学密度、色、及び滴定酸度などの間の相関を利用することにより間接的にモニターすることができる。例えば、光学密度によって、不溶性細胞粒子の蓄積の指標が提供され、ディスプレイデバイスもしくはレコーダーに接続されたマイクロODユニットを使用して操作中に、又はサンプリングによるオフラインでモニターすることができる。600ナノメートルでの光学密度の読取値(OD600)を、乾燥細胞重量を決定する手段として使用する。
【0059】
高細胞密度発酵は、一般的に、最低>30gの細胞乾燥重量/リットル(OD600>60)の収量で得られ、特定の実施形態では、>40gの細胞乾燥重量/リットル(OD600>80)の収量で得られるそれら過程として記載される。全ての高細胞密度発酵過程では、「流加」過程において発酵槽中に段階的に計量される、濃縮された栄養培地が用いられる。濃縮された栄養供給培地は、供給の間に発酵槽内容物の希釈を最小化するために、高細胞密度過程のために利用される。流加過程が利用されるが、操作者が炭素源の供給を制御することを可能にするためであり、これは重要で、なぜなら、細胞が高細胞密度を生成するのに十分高い炭素源の濃度に曝露された場合に、細胞が阻害性副産物、酢酸イオンの非常に多くを産生し、その成長が停止するからである(Majewski and Domach,“Simple constrained-optimization view of acetate overflow in E.coli,”Biotechnol Bioeng 1990 Mar 25;35(7):732-738)。
【0060】
酢酸及びその脱プロトン化イオンである酢酸イオンは一緒に、バイオリアクター中での細菌成長及び組換えタンパク質産生の主な阻害副産物の一つを表す。pH7では、酢酸が酢酸の最もよく見られる形態である。任意の過剰な炭素エネルギー源が、炭素エネルギー源の量が細菌の処理能力を大きく超える場合に酢酸に変換され得る。研究によって、トリカルボン酸回路及び/又は電子伝達系の飽和が、酢酸蓄積の最も可能性の高い原因であることが示されている。成長培地の選択は、酢酸阻害のレベルに影響を及ぼし得る;定義された培地中で成長した細胞は、複合培地中で成長した細胞よりも酢酸により影響を及ぼされ得る。グリセロールでのグルコースの置換によって、また、産生される酢酸の量が大きく減少し得る。グリセロールは、細胞中へのその輸送速度がグルコースの速度よりもずっと遅いため、グルコースよりも少ない酢酸を産生すると考えられる。しかし、グリセロールはグルコースよりも高価であり、細菌をより遅く成長させ得る。低下した成長温度の使用によって、また、炭素源取り込みのスピード及び成長速度が減少し、このように、酢酸の産生を減少させることができる。細菌は、過剰な炭素エネルギー源の存在において、又は急速な成長の間だけでなく、嫌気性条件下でも酢酸を産生する。細菌、例えば大腸菌などが速く成長しすぎる場合、それらは、バイオリアクターシステムの酸素送達能力を超えることがあり、嫌気性成長条件に導き得る。これを防止するために、より遅い一定の成長速度を、栄養制限を通して維持してもよい。酢酸蓄積を低下させるための他の方法は、酢酸産生を防止するための遺伝子改変、酢酸利用遺伝子の添加、及び低下した酢酸を伴う株の選択を含む。大腸菌BL21(DE3)は、そのグリオキシル酸シャント経路において酢酸を使用するその能力のため、より低いレベルの酢酸を産生することが示されている株の一つである。
【0061】
様々な大型の流加発酵槽を、組換えタンパク質の産生のために利用可能である。より大きな発酵槽は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000~100,000リットルの容量(作業容量)を有し、ヘッドスペースに十分なスペースを残している。これらの発酵槽は、酸素及び栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分配するために、撹拌器インペラ又は他の適切な手段を使用する。小規模発酵は、一般的に、体積容量において約100リットル以下、一部の特定の実施形態では約10リットル以下である、発酵槽中での発酵を指す。
【0062】
組換えタンパク質を産生するために使用される発酵過程のための標準的な反応条件は、一般的に、微生物宿主細胞、例えば大腸菌などについて、約5.0~8.0のpH及び20~50℃の範囲の培養温度の維持を含む。一実施形態では、宿主系として大腸菌を利用するが、発酵は、約7.0の最適pH及び約30℃の最適培養温度で実施する。
【0063】
これら発酵過程における標準的な栄養素培地成分は、一般的に、エネルギーの供給源、炭素、窒素、リン、マグネシウム、ならびに微量の鉄及びカルシウムを含む。また、培地は、成長因子(例えばビタミン及びアミノ酸など)、無機塩、及び産物形成に必須の任意の他の前駆体を含み得る。培地は、輸送可能な有機リン酸、例えばグリセロリン酸など、例えば、アルファ-グリセロリン酸及び/又はベータ-グリセロリン酸、より具体的な例として、グリセロール-2-リン酸及び/又はグリセロール-3-リン酸を含み得る。培養されている宿主細胞の成分組成を使用して、細胞成長をサポートするために要求される各々の成分の割合を算出することができる。成分濃度は、処理が低細胞密度又は高細胞密度のいずれの処理であるかに依存して変動する。例えば、低細胞密度バッチ発酵処理におけるグルコース濃度は、1~5g/Lの範囲である一方で、高細胞密度バッチ処理では、45g/L~75g/Lの範囲のグルコース濃度が使用される。また、成長培地は、中程度の濃度(例えば、0.1~5mM、又は0.25mM、0.5mM、1mM、1.5mM、もしくは2mMの範囲で)の保護的なオスモライト、例えばベタイン、ジメチルスルホニオプロピオン酸、及び/又はコリンなどを含み得る。
【0064】
一つ又は複数のインデューサーを成長培地中に導入して、目的の遺伝子産物の発現を誘導することができる。誘導は、指数関数的な増殖期、例えば、指数関数的な成長期の終わりに向かっているが、しかし、培養が最大細胞密度に達する前などの間に、又は発酵の間のより早期もしくは後期の時点に開始することができる。栄養素、例えばリン酸などの枯渇により誘導可能な一つ又は複数のプロモーターから目的の遺伝子産物を発現する場合、誘導は、その栄養素が成長培地から十分に枯渇した場合に、外因性インデューサーの添加を伴うことなく、生じる。
【0065】
宿主細胞の指数関数的な増殖の間に、代謝速度は、酸素及び炭素/エネルギー源の利用可能性に正比例する;このように、利用可能な酸素もしくは炭素/エネルギー源のレベル又はその両方を低下させることによって、代謝速度が低下する。発酵槽の動作パラメータ、例えば撹拌速度もしくは背圧の操作、又はO圧力を低下させることによって、利用可能な酸素レベルが調節されて、宿主細胞の代謝速度を低下させることができる。炭素/エネルギー源の濃度もしくは送達速度又はその両方を低下させることは、同様の効果を有する。さらに、発現系の性質に依存して、発現の誘導は、宿主細胞代謝速度における減少に導き得る。最後に、最大細胞密度に達した際、成長速度は劇的に停止又は低下する。宿主細胞の代謝速度における低下は、タンパク質のフォールディング及びアセンブリの過程を含む、目的の遺伝子産物のより制御された発現をもたらすことができる。宿主細胞代謝速度は、細胞成長速度であって、特異的成長速度又は瞬時成長速度のいずれかを測定することにより(光学密度(OD)、例えばOD600などを測定することにより、及び/又は、場合により、ODをバイオマスに変換することにより)評価することができる。各々のアッセイ点でのおよそのバイオマス(細胞乾燥重量)を算出する:およそのバイオマス(g)=(OD600÷2)×体積(L)。望ましい成長速度は、特定の実施形態では、0.01~0.7の範囲中に、又は0.05~0.3の範囲中にあり、又は0.1~0.2の範囲中にあり、又はおよそ0.15(0.15プラス又はマイナス10%)であり、又は0.15である。
【0066】
発酵装置 以下は、宿主細胞を成長させるために使用することができる装置の例である;発酵システムの多数の他の構成が市販されている。宿主細胞は、2X Rushtonインペラ及びBioFlo/CelliGen 115発酵槽/バイオリアクタコントローラを備えた1L容器サイズの、New Brunswick BioFlo/CelliGen 115水ジャケット式発酵槽(Eppendorf North America社、ニューヨーク州ホーポージ)中で成長させることができる;温度、pH、及び溶存酸素(DO)がモニターされる。また、四つの60~250mlのDASbox発酵容器を含む、4倍で構成可能なDASGIPシステム(Eppendorf North America社、ニューヨーク州ホーポージ)中で宿主細胞を成長させることも可能であり、各々の容器には2X Rushtonインペラ、DASbox排気コンデンサ、及びDASbox供給・モニターモジュール(温度センサ、pH/酸化還元センサ、及び溶存酸素センサを含む)が含まれる。適切な発酵装置はまた、NLF 22 30L実験室発酵槽(Bioengineering,Inc.社、マサチューセッツ州サマービル)を含み、ステンレス鋼容器中に30-L容量及び20-L最大作業容量、二つのRushtonインペラ、空気のみでのスパージ、ならびにpH、DO、排気O2、排気CO、温度、及び圧力を含むすべての関連パラメータの追跡及び制御を可能にするBioSCADAソフトウェアを実行する制御システムを伴う。
【0067】
インテイン融合ポリペプチド及び標的ポリペプチドの精製。6xHisタグを含むポリペプチドは、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)により精製することができ、例えば、ニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)カラムの使用によって、他の分子が流れている間に目的の6xHisタグ付きポリペプチドを特異的に保持する。IMACでは、ヒスチジン残基と二価金属イオンの間での相互作用を利用し、最も一般的には、Ni2+、Cu2+、Co2+Fe2+、及びZn2+を含む他の金属イオンも、His残基についての親和性を有することが示されている。金属イオンは、典型的には、イミノ二酢酸(IDA)及びより一般的に使用されるニトリロ三酢酸(NTA)を含む、様々な金属キレーターシステムを介してマトリクス上に固定化される。幅広いマトリックスが市販されており、例えばニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)、Niセファロース、及び銅-カルボキシルメチルアスパラギン酸(CO-CMA)などである。カラムは、緩衝液、例えば50mM Tris、3M 尿素、0.5M NaCl、25mM イミダゾール、pH8.0などで平衡化することができる。6xHIsタグ付きポリペプチドの結合後、低濃度のイミダゾール(0mM、又は10~50mM)を含む緩衝液、又は結合緩衝液のpHよりも高い、又は低いpHを伴う緩衝液を用いた洗浄工程を含めて、サンプル装填の間にカラムに弱く結合した非特異的タンパク質を除去することができる。例えば、50mM Tris、100mM NaCl、pH10の洗浄緩衝液を使用することができる。6xHisタグ付きポリペプチドは、少なくとも100mMのイミダゾール、又は250~500mMのイミダゾール、又は500mMのイミダゾールの濃度でイミダゾールを含む緩衝液を使用して、マトリックスから溶出することができる。また、緩衝液pHを下げることにより、及び/又は溶出緩衝液中にキレート剤、例えばEDTAなどを(50~200mM、又は100mMの濃度で)含むことにより、目的のポリペプチドを溶出するが可能である。例えば、50mM Tris、100mM NaCl、100mM イミダゾール、pH10の溶出緩衝液を使用することができる。ポリヒスチジンタグを含む遺伝子産物の精製方法が、Bornhorst and Falke,“Purification of proteins using polyhistidine affinity tags,”Methods Enzymol 2000;326:245-254においてさらに記載されており、それは参照により本明細書中に組み込まれる。可溶性複合体からのIMACによる6xHisタグ付きCPBproプロインスリンタンパク質の精製において、Ni-NTA SuperFlow(QIAgen、メリーランド州ジャーマンタウン)又はHisTrap HP Ni Sepharoseカラム(GE Healthcare、ピッツバーグ、ペンシルバニア州)のいずれかを使用して、この方法によって、90%超の純度までのプロインスリン遺伝子産物の精製が可能になった。
【0068】
6xHisタグを欠くサンプルについて、又はそのようなタグの使用が必要ではない手順については、カチオン又はアニオン交換クロマトグラフィー、例えばDEAE樹脂、及び/又は逆相もしくは高速液体クロマトグラフィー(RPLC又はHPLC)の使用などを用いて、目的のポリペプチドを他の汚染物質から、又は化学処理もしくは酵素処理の望ましくない産物からさらに分離することができる。
【実施例
【0069】
実施例1
天然N末端を伴うTRAST-Fabを産生するためのインテインポリペプチドの使用。
A.宿主細胞中でのインテイン-TRAST-Fabヘテロ二量体の発現。
トラスツズマブは、商品名Herceptin(登録商標)とも言及され、ERBB2とも呼ばれる、HER2抗原を認識する全長ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。TRAST-Fabは、トラスツズマブの抗原結合フラグメントである;TRAST-Fab重鎖(「HC」)及びTRAST-Fab軽鎖(「LC」)のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号22及び23において提示する。TRAST Fabヘテロ二量体内で、重鎖及び軽鎖は、分子間ジスルフィド結合(鎖の各々の内での分子内ジスルフィド結合に加えて)により結合される。
【0070】
発現構築物を作製し、それにおいて、TRAST-Fab重鎖及びTRAST-Fab軽鎖(それぞれ配列番号22及び23)をコードするDNA配列の各々が、それらの5’末端で、インテインをコードするDNA配列を有し、各々の種類の発現構築物についてのインテインアミノ酸配列が、表1中に記載する配列番号1~6の一つである。インテイン-TRAST-FabをコードするDNA配列を、インテイン-TRAST-LCをコードする配列の上流に配置された、インテイン-TRAST-HCをコードする配列とバイシストロン性の配置において、L-アラビノース誘導性プロモーター(ParaBAD又は「araプロモーター」)の下流の二重プロモーターベクター中にクローニングした。
【0071】
単一の発現ベクターから大腸菌中で発現させるために、各々がそのN末端にインテインを含む二つのポリペプチドがあったため、各々のインテインをコードする 二つの異なる DNA 配列を調製したが-インテインコード配列#1及びインテインコード配列#2-、それらは大腸菌についての最適化されたコドン使用を有し、それらの間の組換え事象の可能性を低下させるのに十分なほど異なっていた。配列番号1~9を有するインテインの各々についての二つのインテインコード配列を表1中に列挙しており、配列番号24~41を有する。
【0072】
発現構築物をまた、DnaX(split_C)-TRAST-Fab及びDnaB(split_C)-TRAST-Fabの発現のために、それぞれDnaX(split_N)又はDnaB(split_N)の存在において同様の方法で作製された。分割インテインの6xHisタグ付きC末端部分をコードするDNA配列(DnaX(split_C)については配列番号12及びDnaB(split_C)については配列番号15)を、araプロモーターの下流のバイシストロン性の配置において、TRAST-Fab HC及びTRAST-Fab LCをコードする配列の各々の上流に配置した。これらの構築物は、プロピオン酸誘導性PprpBCDE又は「prpプロモーター」も含む二重プロモーター発現構築物であり、prpプロモーターを使用して、分割インテインのN末端部分(DnaX(split_N)についての配列番号10及びDnaB(split_N)についての配列番号13)を発現させた。インタクトなインテインと同じ様式において、表1中に示すように、二つの異なるDNA配列を使用して、各々の発現構築物中に存在する分割インテインの二つのC末端部分をコードさせた。
【0073】
大腸菌521細胞を、インテイン-TRAST-Fabヘテロ二量体を発現する異なる発現ベクターで形質転換させ、各々が、表1中に記載する配列番号1~5のアミノ酸配列の一つを有するインテインを含む。発現ベクターを用いた形質転換に続いて、宿主細胞サンプルを、カナマイシンを含む固体培地上に播種し、カナマイシン耐性のための遺伝子を保有する発現ベクターを含む、成功した形質転換体について選択した。宿主細胞を培養し、インテイン-TRAST-Fabの発現をL-アラビノースで誘導した。
【0074】
DnaX-TRAST-Fab、DnaB-TRAST-Fab、D.t.DnaB-TRAST-Fab、gp41-1-TRAST-Fab、及びN.p.DnaB-TRAST-Fabをそれぞれ発現する発現ベクターを伴う宿主細胞を、誘導後に採取して、pH 7.4で溶解させた。 DnaB-TRAST-Fabを発現する宿主細胞の二通りのサンプルを、pH6.4で、及びpH8.0で溶解させた。全ての三つのpH条件下での溶解によって、同等の結果がもたらされた。宿主細胞ライセートを遠心分離に供し、可溶性画分を各々のサンプルから収集し、各々のペレットを再懸濁した。可溶性画分(「S」)及び再懸濁ペレット(「P」)を、非還元条件下及び、また、還元条件下でポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。ゲル中のタンパク質を次に、膜に移し、ヒトIgGに結合する一次抗体と接触させ、二次抗体を使用して検出した。結果として得られたウェスタンブロットを図 1A及び1B中に示す。異なるインテイン-TRAST-Fabサンプルの各々について、インテインが、ウェスタンブロット上で検出されたTRAST-Fabポリペプチド種の大多数から切除されていることを見ることができる。
【0075】
大腸菌521細胞を、また、DnaX(split_C)-TRAST-Fab/DnaX(split_N)及びDnaB(split_C)-TRAST-Fab/DnaB(split_N)をコードする発現構築物で形質転換させて;宿主細胞を、カナマイシンを含む培地中で成長させ、インテイン(split_C)-TRAST-Fabポリペプチドの発現をLアラビノースで誘導させ、インテイン(split_N)の発現をプロピオン酸で誘導させた。誘導された宿主細胞を採取し、溶解し、ライセートをポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。インテイン(split_C)-TRAST-Fabポリペプチド及びインテイン(split_N)ポリペプチドの同時発現によって、TRAST-FabポリペプチドのN末端からのインテイン(split_C)が切断をもたらした。
【0076】
B.インテイン-TRAST-Fabヘテロ二量体のLC-MS分析。
【0077】
DnaX-TRAST-Fab、DnaB-TRAST-Fab、D.t.DnaB-TRAST-Fab、及びgp41-1-TRAST-Fabを発現する発現ベクターを含む大腸菌521宿主細胞を、24ウェルプレート中で、バイシストロン性配置においてaraプロモーターの下流のコード配列からコントロールMet-TRAST-Fabヘテロ二量体を発現し、この構築物中のMet-TRAST-LCをコードする配列が、Met-TRAST-HCをコードする配列の上流に配置されている大腸菌521宿主細胞と共に培養した。 コントロールMet-TRAST-Fab及びインテイン-TRAST-Fabの発現を、50マイクログラム/mLのカナマイシン及び様々な濃度、0.0013mM、0.0067mM、0.0333mM、0.1667mM、0.8333mM、及び4.1667mMのL-アラビノースを含む成長培地中で誘導された。Met-TRAST-Fab及びインテイン-TRAST-Fabの発現を16時間にわたり誘導させて、次に三つのサンプルを各々のウェルから収集した。
【0078】
Met-TRAST-Fabサンプル及びインテイン-TRAST-Fabサンプルを、溶解緩衝液(50mM Tris pH 7.4、200mM NaCl、プロテアーゼ阻害剤、ベンゾナーゼ、及びリゾザイムを含む)中で溶解させ、次にプロテインL親和性捕捉により精製した。液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)分析を、28~38%溶媒B(アセトニトリル中の0.085% TFA)の勾配溶出により70℃の一定温度でサンプルをZORBAX RRHD 300Å StableBondジフェニルHPLCカラム(Agilent Technologies、カリフォルニア州サンタクララ)に通すことにより実施した。カラムからの溶出を、214nm及び280nmでのUVにより、及び5600四重極飛行時間型(QTOF)質量分析計(SCIEX、マサチューセッツ州フラミンガム)での600~3000m/zからのMS1スキャンにより検出した。天然N末端アミノ酸を有するTRAST-Fabポリペプチドに関する質量/電荷(m/z)範囲を、データ取り込み後のイオン抽出のために選択し、インテイン-TRAST-Fabポリペプチドのインテイン介在性切断による天然N末端の生成を評価した。
【0079】
LC-MS分析の結果を図2及び3中に提供する。図2は、還元条件下で分析されたサンプルの結果を示し、パネル2B及び2Cは、それぞれ軽鎖及び重鎖の天然N末端に対応するピークの強度を示している。図2A~2Cから見ることができるように、コントロールMet-TRAST-Fabは、天然N末端を伴う(即ち、N末端のMet残基を伴わない)非常に少量の軽鎖又は重鎖を産生したが、しかし、DnaB-TRAST-Fab及びgp41-1-TRAST-Fabは、天然N末端を伴う有意な量のTRAST-Fabポリペプチドを産生した。図3のパネルBでは、非還元条件において分析され、天然N末端を伴うTRAST-Fabヘテロ二量体の量を、Met-TRAST-Fabコントロール、DnaX-TRAST-Fab、DnaB-TRAST-Fab、及びD.t.DnaB-TRAST-Fabの間で比較する。これらのクロマトグラフィーでは、天然N末端(ピーク強度約100)を生成するためのMet-TRAST-FabコントロールからのMet残基の除去により産生されたピークを見ることが可能であるが、インテイン含有構築物の各々により産生された天然N末端TRAST-Fabの量はずっと高かった(ピーク強度1000~2000)。
【0080】
実施例2
高性能インテイン-融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
表1中に列挙し、上の実施例1Aにおいて記載するように、同じインテインアミノ酸配列をコードする二つの異なるポリヌクレオチドを、表1中に列挙するインテインポリペプチドの多くについて調製した。これらのインテインコード配列を、大腸菌中での改善された発現のためにコドン最適化させた。実験を、DnaB-融合ポリペプチドのDnaB(配列番号2)アミノ酸配列部分をコードするポリヌクレオチドを同定するために実施したが、それは、大腸菌宿主細胞中での高レベルの目的の活性タンパク質の発現において有用であった。発現ベクターのライブラリーを構築して、それにおいて、目的のタンパク質の二つのポリペプチド鎖を、TRAST-Fab HC及びLCについて実施例1Aに記載するのと同じ様式でバイシストロン性配置において発現させた;各々のポリペプチド鎖を、融合ポリペプチドのN末端でDnaBを伴うDnaB融合ポリペプチドとして発現させた。各々の融合ポリペプチドのDnaB部分は、配列番号26及び27に関して実施例1Aに記載するように、異なるポリヌクレオチド配列によりコードされた。ライブラリー中の発現ベクターのサブセットは、配列番号26及び27のDnaBコードポリヌクレオチド内のいくつかの位置で、それらの配列のヌクレオチド位置9と30の間で変動して、各々のDnaBコード配列の三番目から十番目のコドンにおいて多くの異なるサイレント変化を産生した。
【0081】
DnaB-融合ポリペプチドをコードする発現ベクターライブラリーを大腸菌宿主細胞中に形質転換し、宿主細胞を培養し、DnaB-融合ポリペプチドの発現をL-アラビノースで誘導した。宿主細胞を、DnaB-融合ポリペプチドから形成された、目的の活性タンパク質の発現レベルについて評価し、高発現宿主細胞の亜群を選択した。高発現宿主細胞の亜集団中に存在する発現ベクターを、次世代シーケンシング(NGS)により配列決定し、高発現宿主細胞の亜集団内に存在する異なるDnaBコードポリヌクレオチドの相対比率を決定した。発現ベクター内の二つのDnaBコード位置の各々で、最大の程度まで濃縮されたポリヌクレオチド配列は、宿主細胞の開始集団を高発現宿主細胞亜集団と比較した場合、配列番号26及び27のDnaBコード配列であった。この結果は、配列番号26及び27のコドン最適化されたDnaBコード配列が、選択された宿主細胞の高発現特性との最も高い平均レベルの相関を有したことを示す。各々のDnaBコード配列の第三から第十のコドンにおけるサイレントコード配列の変化のいずれも、宿主細胞の集団にわたり高レベルの目的の活性タンパク質の発現を選択する場合、配列番号26及び27よりも大きな程度まで濃縮されたDnaBコード配列をもたらさなかった。
【0082】
さらなる実験を、上に記載するように、各々のDnaBコード配列の第三から第十のコドンにおけるサイレントコード配列変化を伴うDnaB融合ポリペプチドをコードする発現ベクターライブラリーを使用して実施した。この実験では、目的の活性タンパク質の高レベルの発現を証明する宿主細胞を選択し、宿主細胞の選択のさらなるラウンドを、産生された目的のタンパク質での特異的活性アッセイ、及び産生された目的の構造的に正確なタンパク質の量のアッセイ、例えば固相抽出質量分析法(SPE-MS)アッセイなどを使用して実施した。これらの基準に基づいて、高性能宿主細胞を選択して、それらが含んでいる発現ベクターを配列決定した。配列番号26及び27を含む元の発現ベクターと比較した場合に目的の活性タンパク質の発現において改善を示す四つの追加のDnaBコード配列をこのようにして同定した;四つのDnaBコード配列は全て配列番号27のバリエーションであり、配列番号61~64として提示する。
【0083】
実施例3
ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の類似性の決定。
ポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の同一性のパーセントは、二つの配列のアライメント中の記号の総数により割った、両方の整列された配列中で同一である整列された記号(例、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数として定義する。二つの配列間の類似性(同一性のパーセント)の程度を、ウェブサイトblast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiを通じて入手可能なNeedleman-Wunsch Global Sequence Alignment Toolにおいて国立生物工学情報センター (NCBI)により実行された、Needleman and Wunsch(J.Mol.Biol.48:443,1970) のグローバルアラインメント方法を使用して配列を整列させることにより決定してもよい。一つの実施形態では、Needleman及びWunschアライメントパラメーターをデフォルト値(それぞれマッチ/ミスマッチスコア2及び-3、ならびに、それぞれ存在及び延長についてのギャップコスト5及び2)に設定する。当業者により使用される配列比較の他のプログラムをまた、配列を整列させるために使用してもよく、例えば、デフォルトパラメータ設定を使用して、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiウェブサイトでNCBIにより実行される、ベーシックローカルアライメント検索ツール又はBLAST(登録商標)プログラム(Altschul et al.,“Basic local alignment search tool,”J Mol Biol 1990 Oct 5;215(3):403-410)などである。BLASTアルゴリズムは複数のオプションパラメータを有し、以下のように使用され得る二つのパラメータを含む:(A)低い組成の複雑度を有するクエリー配列のセグメント、又は短い周期性の内部リピートからなるセグメントをマスクするためのフィルターの含有、これは、利用されていない、又はオフに設定されることが好ましい、及び(B)データベース配列に対する一致を報告するための統計的に有意な閾値、「Expect」又はEスコアと呼ばれる(単に偶然に見出される一致の予想確率;一致に起因する統計的有意性がこのEスコア閾値よりも大きい場合、一致は報告されない)。この「Expect」又はEスコア値がデフォルト値(10)から調整される場合、好ましい閾値は0.5である、又は増加する優先度の順序で、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、0.00001、及び0.000001である。
【0084】
本発明を実践する際、分子生物学、微生物学、及び組み換えDNA技術における多くの従来技術が、場合により使用される。そのような従来技術は、ベクター、宿主細胞、及び組み換え方法に関する。これら技術は周知であり、例えば、Berger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,Volume 152 Academic Press,Mc,San Diego,CA;Sambrook et al.,Molecular Cloning - A Laboratory Manual (3rd Ed.),Vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2000;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2006年を通して補足)において説明されている。例えば、細胞の単離及び培養のための、ならびにその後の核酸又はタンパク質の単離のための他の有用な参考文献は、Freshney (1994) Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,third edition,Wiley-Liss,New York及びそこで引用される文献;Payne et al.(1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons,Inc.New York,NY;Gamborg and Phillips (Eds.) (1995) Plant Cell,Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual,Springer- Verlag (Berlin Heidelberg New York);and Atlas and Parks (Eds.) The Handbook of Microbiological Media (1993) CRC Press,Boca Raton,FL.を含む。核酸を操作及び作製する際に有用な、核酸を作製する方法(例えば、インビトロ増幅、細胞からの精製、又は化学合成による)、核酸を操作する方法(例えば、部位特異的変異誘発、制限酵素での消化、ライゲーションなどによる)、ならびに様々なベクター、細胞株、などが、上記の参考文献において記載されている。また、本質的に任意のポリヌクレオチド(標識された、又はビオチン化されたポリヌクレオチドを含む)は、様々な商業的な供給源のいずれかから注文されたカスタム又は標準であってもよい。
【0085】
本発明は、本発明の実践のための特定の様式を含むことが見出された、又は提案された特定の実施形態に関して記載されている。本開示に照らして、多数の改変及び変更を、本発明の意図する範囲から逸脱することなく、例示する特定の実施形態において行うことができることが、当業者により理解されるであろう。任意の実施形態又は実施形態の特色は、互いに組み合わせることができ、そのような組み合わせは、本発明の範囲内に明示的に包含される。
【0086】
引用する全ての参考文献が、特許刊行物を含め、それらの全体が参照により本明細書中に組み込まれる。ヌクレオチド及び他の遺伝子配列は、公開されたゲノム位置又は他の記載によって言及され、また、参照により本明細書中に明示的に組み込まれる。
【0087】
配列リスト
本明細書中又は添付の配列リスト中に列挙される任意の核酸配列及びアミノ酸配列を、米国特許規則連邦規則法典第37巻(37 C.F.R.)セクション1.822で定義されている、ヌクレオチド塩基及びアミノ酸についての標準的な略語を使用して示す。少なくとも一部の場合において、各々の核酸配列の一つの鎖のみを示しているが、しかし、相補鎖は、呈示する鎖への任意の参照により含まれるとして理解される。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
【配列表】
2023522107000001.app
【国際調査報告】