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特表2023-522108広域反応性コロナウイルスワクチンのエンジニアリング並びに関連する設計及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】広域反応性コロナウイルスワクチンのエンジニアリング並びに関連する設計及び使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20230519BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230519BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/50
C12N15/861 Z
C12N7/01
C12N15/10 200Z
A61K39/215
A61K35/761
A61P31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563395
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021028187
(87)【国際公開番号】W WO2021216569
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/012,360
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522382691
【氏名又は名称】グレフェックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュテルツ, ウーベ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】プレストン, ダニエル エフ.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA45
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB33
(57)【要約】
β-CoV感染を予防するためのワクチンは、β-CoVのSタンパク質をコードするβ-CoV DNA配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターを含む。β-CoV RNA配列は、SARS-2β-CoV DNA配列であり得る。ワクチンは、アデノウイルスに基づくパッケージングプラスミドをさらに含み得る。ウイルスベクター及びパッケージングプラスミドは、パッケージング細胞に含まれ、カプシドにカプシド形成され得る。少なくとも1つのβ-CoVの群からの感染に対して哺乳動物の対象にワクチン接種する方法は、広範なβ-CoVの群を、それらのSタンパク質をコードするβ-CoV RNA配列における類似性に基づいたホモロジー群に分類することと、ホモロジー群の他のすべてのメンバーに対して60%を超える配列同一性を有する各ホモロジー群について少なくとも1つのコンセンサス配列を同定することと、少なくとも1つのホモロジー群からのコンセンサス配列の少なくとも一部を含むウイルスベクターを調製することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-CoV感染を予防するためのワクチンであって、
β-CoVのSタンパク質をコードするβ-CoV DNA配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターを含む、ワクチン。
【請求項2】
ベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
ベクターが、すべての内因性遺伝子を含まない完全欠失アデノウイルスベクターである、請求項2に記載のワクチン。
【請求項4】
β-CoVDNA配列が、SARS-2β-CoV DNA配列である、請求項1~3のいずれかに記載のワクチン。
【請求項5】
SARS-2β-CoV DNA配列が、Sタンパク質をコードする配列全体である、請求項4に記載のワクチン。
【請求項6】
SARS-2β-CoV DNA配列が、Sタンパク質をコードする部分配列である、請求項4に記載のワクチン。
【請求項7】
SARS-2β-CoV DNA配列が、受容体結合ドメインが除去されたSタンパク質をコードする部分配列である、請求項4に記載のワクチン。
【請求項8】
SARS-2β-CoV DNA配列が、受容体結合ドメイン配列がペプチドリンカーをコードするDNAによって置き換えられている、Sタンパク質をコードする部分配列である、請求項4に記載のワクチン。
【請求項9】
Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアデノウイルスに基づくパッケージングプラスミドをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項10】
少なくとも1つのウイルスベクターが、パッケージング細胞に含まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項11】
パッケージング細胞が、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるカプシドにカプシド形成される、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
β-CoV DNA配列が、SARS-2β-CoV DNA配列であり、ウイルスベクターが、SARSrウイルス由来の少なくとも第2のβ-CoV DNA配列を含み、第2のβ-CoV DNA配列が、SARSrウイルスのSタンパク質をコードする、請求項1~11のいずれかに記載のワクチン。
【請求項13】
SARS-2β-CoVのSタンパク質をコードするSARS-2β-CoV DNA配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターと、
Ad2、Ad5、Ad6及びAd36の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアデノウイルスに基づく少なくとも1つのパッキングプラスミドと、
を含む、SARS-2感染を予防するためのワクチンであって、
少なくとも1つのウイルスベクター及び少なくとも1つのパッキングプラスミドが、パッケージング細胞に含有され、
パッケージング細胞が、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるカプシドにカプシド形成される、ワクチン。
【請求項14】
SARS-2β-CoV DNA配列が、SARS-2ウイルスの部分Sタンパク質をコードする、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
β-CoV感染を予防するためのワクチンであって、
β-CoVのSタンパク質をコードする少なくとも1つのβ-CoV RNA配列を含む、ワクチン。
【請求項16】
RNAが、mRNAである、請求項18に記載のワクチン。
【請求項17】
β-CoV RNA配列が、SARS-2β-RNA配列である、請求項15~16のいずれかに記載のワクチン。
【請求項18】
SARS-2β-CoV RNA配列が、Sタンパク質をコードする配列全体である、請求項15~17のいずれかに記載のワクチン。
【請求項19】
SARS-2β-CoV RNA配列が、Sタンパク質をコードする部分配列である、請求項15~16のいずれかに記載のワクチン。
【請求項20】
SARS-2β-CoV RNA配列が、受容体結合ドメインが除去されているSタンパク質をコードする部分配列である、請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
SARS-2β-CoV RNA配列が、受容体結合ドメイン配列がペプチドリンカーをコードするRNAによって置き換えられている、Sタンパク質をコードする部分配列である、請求項19に記載のワクチン。
【請求項22】
β-CoV RNAの遺伝子情報を送達する発現ベクターをさらに含む、請求項15~21のいずれかに記載のワクチン。
【請求項23】
発現ベクターが、エンジニアリングされたウイルスベクターである、請求項18のいずれかに記載のワクチン。
【請求項24】
β-CoV感染を予防するためのワクチンであって、
β-CoVのSタンパク質をコードする少なくとも1つのβ-CoVタンパク質配列を含む、ワクチン。
【請求項25】
β-CoV RNA配列が、SARS-2β-CoVタンパク質配列である、請求項24のいずれかに記載のワクチン。
【請求項26】
SARS-2β-CoVタンパク質配列が、Sタンパク質をコードする配列全体である、請求項24~25のいずれかに記載のワクチン。
【請求項27】
SARS-2β-CoVタンパク質配列が、Sタンパク質をコードする部分配列である、請求項24~25のいずれかに記載のワクチン。
【請求項28】
SARS-2β-CoVタンパク質配列が、受容体結合ドメインが除去されている部分Sタンパク質配列である、請求項27に記載のワクチン。
【請求項29】
SARS-2β-CoVタンパク質配列が、部分Sタンパク質配列であり、受容体結合ドメイン配列がペプチドリンカーによって置き換えられている、請求項27に記載のワクチン。
【請求項30】
少なくとも1つのβ-CoVの群からの感染に対して哺乳動物の対象にワクチン接種する方法であって、
広範なβ-CoVの群を、それらのSタンパク質をコードするβ-CoV RNA配列における類似性に基づいたホモロジー群に分類することと、
ホモロジー群の他のすべてのメンバーに対して60%を超える配列同一性を有する各ホモロジー群について少なくとも1つのコンセンサス配列を同定することと、
少なくとも1つのホモロジー群からのコンセンサス配列の少なくとも一部を含むウイルスベクターを調製することと、
を含む、方法。
【請求項31】
コンセンサス配列が、DNA配列、RNA配列、タンパク質配列及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ウイルスベクターの調製が、2つ以上のホモロジー群からのコンセンサス配列の少なくとも一部を含むことを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ワクチンを哺乳動物の対象に注射することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つのβ-CoVの群からの感染に対して哺乳動物の対象にワクチン接種する方法であって、
広範なβ-CoVの群を、それらのSタンパク質をコードするβ-CoVのDNA、RNA又はタンパク質配列における類似性に基づいたホモロジー群に分類することと、
ホモロジー群の他のすべてのメンバーに対して60%を超える配列同一性を有する各ホモロジー群についてβ-CoVタンパク質配列の少なくとも一部を同定することと、
少なくとも1つのホモロジー群からのβ-CoVタンパク質配列の少なくとも一部を含むDNA、RNA又はタンパク質ワクチンを調製することと、
を含む、方法。
【請求項35】
ワクチンを哺乳動物の対象に注射することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月20日に出願された仮出願第63/012,360号の優先権を主張するものであり、仮出願ではない。本出願は、その全内容が本明細書に参照により援用される。
【0002】
本開示は、コロナウイルスのワクチン、より詳細にはβ-コロナウイルスからの感染から哺乳動物を防御するためのワクチンを開発するためのワクチンプラットフォームに関する。別の実施形態では、本開示は、同定された群の遺伝子配列を使用して、コロナウイルスのワクチンを開発するための方法に関する。
【0003】
配列表の提出
2021年4月20日に作成され、サイズが54である、「Sequence_Listing」という名称のテキストファイルSequence Listingの電子提出物の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
コロナウイルス(CoV)は、アルファ-、ベータ-、ガンマ-及びデルタ-コロナウイルスの4つの属に分類される。β-CoVは、哺乳動物、一般にはコウモリ及びげっ歯類に感染することができるエンベロープ型のプラス鎖RNAウイルスであるが、多くのβ-CoVは同様にヒトに感染することが知られている。ヒト及び動物におけるCoVによる感染は、一般に、短期間の軽度から中等度の上気道疾患を引き起こす。例外は、重症でしばしば致死的な症候を特徴とする重症急性呼吸器症候群(SARS-1)、中東呼吸器症候群(MERS)、及び武漢を起源とするSARS-CoV-2(SARS-2)(COVID-19とも呼ばれる)である。SARS-2感染の最初の症例は2019年12月に見られた。2020年4月16日現在、米国だけで、疾病管理予防センター(CDC)によって報告された推定632,000例の症例及び推定31,000例の死亡があり、4.9%の致死率をもたらした。SARS-2はヒトに対して感染性が高い。世界保健機関(WHO)は、2020年1月30日に、世界規模のSARS-2パンデミックを国際的な医療緊急事態と宣言した。
【0005】
SARS-2のための具体的な治療は得られていないが、調査中である。疾患のさらなる伝播を防ぐための最良の手法は、特定のワクチンの開発である。SARS-2に対する集団免疫は、活性型SARS-2ウイルスによる自然感染ではなく、良性ワクチンによる免疫でより良好に達成される。回復中の患者に見られる低レベルの免疫応答についての1つの説明は、SARS-2による消耗性免疫抑制の機能であり得る。しかしながら、ウイルスの不活性型を使用する伝統的なワクチンを用いた動物研究は、不活性化ウイルスワクチンが疾患の抗体依存性増強(ADE)の誘導を特に受けやすい可能性があることを示唆している。これらのワクチン接種の場合、Th2型疾患増強は抗ヌクレオカプシド(NP)応答によって引き起こされ得る。ワクチンのレシピエントにおいてADEを刺激しないSARS-2ワクチンを開発することが望ましい。
【0006】
対人距離の確保は、SARS-2の活動的な伝播を首尾よく抑制しているが、社会の再開は、短期間での感染の急増、並びに起こり得る季節的発生につながると予想される。いくつかの地域では、変異型のSARS-2ウイルスによる感染の急増が既に見られている。SARS関連β-CoV(SARSr)の全体的な変異率は、世代あたり0.1変異と低く計算されている。最近の変異の出現にもかかわらず、SARS-2ウイルスは同様に安定しているようである。任意のSARS-2ワクチンが、短期の変異体に対する防御も提供することが望ましい。
【0007】
関連するSARS-及びMERS-CoVを用いた多数の動物及び臨床試験は、より一般的な-CoV感染に対して有効なワクチンを産生することができることを示唆している。SARS-2(COVID-19)は、動物宿主からヒトに飛び移った第3の致死性β-CoVである。1,800個のSARSrが動物で既に同定されており、その一部は最終的にヒトに感染する可能性があることを考慮すると、将来のパンデミックを回避するために群に特異的なSARSrワクチンも作成することが望ましい。
【0008】
ワクチンにおける、アデノウイルスに基づくウイルスベクターを含むウイルスベクターの使用は公知である。そのような「adベクター」は、他のワクチン系と比較して、より高くより持続的な免疫原性を繰り返し実証する。ワクチン接種プログラムにおいてadベクターを使用することに関する1つの問題は、標的ウイルスとは対照的に、アデノウイルス自体に対して引き起こされる強い免疫応答である。これらの強い抗アデノウイルス応答を回避するために、すべての内因性アデノウイルス遺伝子を完全に欠失させた(fd)adベクターを開発した。fdアデノウイルスゲノムのパッキング情報は、最初は第2のウイルスコンストラクト-ハイブリッドバキュロウイルス-アデノウイルス又はヘルパーウイルスと共に送達された。残念なことに、これは、adベクター又はヘルパーウイルスの複製要素の混入をもたらした。既存のadベクターワクチンに関するこれらの問題を回避するadベクターワクチン系を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
一実施形態では、本開示は、β-CoV感染を予防するためのワクチンを提供する。本開示の実施形態によれば、β-CoV感染を予防するためのワクチンは、β-CoVのSタンパク質をコードするβ-CoV DNA配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターを含む。
【0010】
一実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。別の実施形態では、ベクターは、すべての内因性遺伝子を含まない完全欠失アデノウイルスベクターである。さらに別の実施形態では、β-CoV DNA配列は、SARS-2β-CoV DNA配列である。さらなる実施形態では、SARS-2β-CoV DNA配列は、Sタンパク質をコードする全配列である。なおさらなる実施形態では、SARS-2β-CoV DNA配列は、Sタンパク質をコードする部分配列である。別の実施形態では、SARS-2β-CoV DNA配列は、受容体結合ドメインが除去されたSタンパク質をコードする部分配列である。さらに別の実施形態では、SARS-2β-CoV DNA配列は、受容体結合ドメイン配列がペプチドリンカーをコードするDNAによって置き換えられている、Sタンパク質をコードする部分配列である。
【0011】
一実施形態では、ワクチンは、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアデノウイルスに基づくパッケージングプラスミドをさらに含む。さらなる実施形態では、少なくとも1つのウイルスベクターは、パッケージング細胞に含まれる。さらに別の実施形態では、パッケージング細胞は、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるカプシドにカプシド形成される。
【0012】
一実施形態では、β-CoV DNA配列は、SARS-2β-CoV DNA配列であり、ウイルスベクターは、SARSrウイルス由来の少なくとも第2のβ-CoV DNA配列を含み、第2のβ-CoV DNA配列は、SARSrウイルスのSタンパク質をコードする。
【0013】
一実施形態では、本開示は、SARS-2感染を予防するためのワクチンを提供する。本開示の実施形態によれば、SARS-2感染を予防するためのワクチンは、SARS-2β-CoVのSタンパク質をコードするSARS-2β-CoV DNA配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターと、Ad2、Ad5、Ad6及びAd36の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアデノウイルスに基づく少なくとも1つのパッキングプラスミドと、を含み、少なくとも1つのウイルスベクター及び少なくとも1つのパッキングプラスミドは、パッケージング細胞に含有され、パッケージング細胞は、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるカプシドにカプシド形成される。
【0014】
一実施形態では、SARS-2β-CoV DNA配列は、SARS-2ウイルスの部分Sタンパク質をコードする。
【0015】
一実施形態では、本開示は、β-CoV感染を予防するためのワクチンを提供する。本開示の実施形態によれば、β-CoV感染を予防するためのワクチンは、β-CoVのSタンパク質をコードする少なくとも1つのβ-CoV RNA配列を含む。
【0016】
一実施形態では、RNAはmRNAである。さらなる実施形態では、β-CoV RNA配列は、SARS-2β-RNA配列である。なおさらなる実施形態では、SARS-2β-CoV RNA配列は、Sタンパク質をコードする配列全体である。さらに別の実施形態では、SARS-2β-CoV RNA配列は、Sタンパク質をコードする部分配列である。さらに別の実施形態では、SARS-2β-CoV RNA配列は、受容体結合ドメインが除去されたSタンパク質をコードする部分配列である。さらなる実施形態では、SARS-2β-CoV RNA配列は、Sタンパク質をコードする部分配列であり、受容体結合ドメイン配列は、ペプチドリンカーをコードするRNAで置き換えられている。
【0017】
一実施形態では、ワクチンは、β-CoV RNAの遺伝子情報を送達する発現ベクターをさらに含む。別の実施形態では、発現ベクターはエンジニアリングされたウイルスベクターである。
【0018】
一実施形態では、本開示は、β-CoV感染を予防するためのワクチンを提供する。本開示の実施形態によれば、β-CoV感染を予防するためのワクチンは、β-CoVのSタンパク質をコードするβ-CoVタンパク質配列を含む少なくとも1つのウイルスベクターを含む。
【0019】
一実施形態では、β-CoV RNA配列は、SARS-2β-CoVタンパク質配列である。別の実施形態では、SARS-2β-CoVタンパク質配列は、Sタンパク質をコードする配列全体である。なおさらなる実施形態では、SARS-2β-CoVタンパク質配列は、Sタンパク質をコードする部分配列である。さらに別の実施形態では、SARS-2β-CoVタンパク質配列は、受容体結合ドメインが除去された部分Sタンパク質配列である。さらに別の実施形態では、SARS-2β-CoVタンパク質配列は、受容体結合ドメイン配列がペプチドリンカーによって置き換えられている部分Sタンパク質配列である。
【0020】
一実施形態では、本開示は、少なくとも1つのβ-CoVの群からの感染に対して哺乳動物の対象にワクチン接種する方法を提供する。本開示の実施形態によれば、少なくとも1つのβ-CoVの群からの感染に対して哺乳動物の対象にワクチン接種する方法であって、該方法は、広範なβ-CoVの群を、それらのSタンパク質をコードするβ-CoV RNA配列における類似性に基づいたホモロジー群に分類することと、ホモロジー群の他のすべてのメンバーに対して60%を超える配列同一性を有する各ホモロジー群について少なくとも1つのコンセンサス配列を同定することと、少なくとも1つのホモロジー群からのコンセンサス配列の少なくとも一部を含むウイルスベクターを調製することと、を含む。
【0021】
一実施形態では、コンセンサス配列は、DNA配列、RNA配列、タンパク質配列及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、ウイルスベクターを調製する工程は、2つ以上のホモロジー群からのコンセンサス配列の少なくとも一部を含むことを含む。
【0023】
一実施形態では、本方法は、ワクチンを哺乳動物の対象に注射することをさらに含む。
【0024】
一実施形態では、本開示は、少なくとも1つのβ-CoVの群からの感染に対して哺乳動物の対象にワクチン接種する方法を提供する。本開示の実施形態によれば、少なくとも1つのβ-CoVの群からの感染に対して哺乳動物の対象にワクチン接種する方法であって、該方法は、広範なβ-CoVの群を、それらのSタンパク質をコードするβ-CoVのDNA、RNA又はタンパク質配列における類似性に基づいたホモロジー群に分類することと、ホモロジー群の他のすべてのメンバーに対して60%を超える配列同一性を有する各ホモロジー群についてβ-CoVタンパク質配列の少なくとも一部を同定することと、少なくとも1つのホモロジー群からのβ-CoVタンパク質配列の少なくとも一部を含むDNA、RNA又はタンパク質ワクチンを調製することと、を含む。
【0025】
別の実施形態では、本方法は、ワクチンを哺乳動物の対象に注射することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】最大の可変性の部分及び最大の免疫応答を誘発する部分と共に、本開示の実施形態による、Sタンパク質をコードするSARS-2β-CoV RNAセグメントの機能的部分を示す概略図である。
図2】本開示の実施形態によるワクチンの要素を示す図である。
図3】本開示のウイルスベクターを利用する鳥インフルエンザワクチンの活性を示す図である。具体的には、図3Aは対象群の生存率を示し、図3Bは対象群の体重を示し、図3Cは血清抗体価を示し、図3Dは肺ウイルス力価を示す。
図4】MERS-CoVワクチンの活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の任意の実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において、以下の説明に記載されるか又は図面に示される構成要素の構成及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではないことが理解される。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」又は「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びその均等物並びに追加の項目を包含することを意味する。本明細書における「本質的に含む(including essentially)」及び「本質的にからなる(consisting essentially of)」及びその変形の使用は、その後に列挙される項目、並びに全体の特性、使用又は製造を本質的に変更しないようにそのような均等物及び追加の項目を提供する均等物及び追加の項目を網羅することを意味する。本明細書における「からなる」及びその変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの項目のみを含むことを意味する。
【0028】
図面を参照すると、全体を通して、同様の番号は同様の要素を指す。第1、第2などの用語は、様々な要素、構成要素、領域、及び/又は部分を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域及び/又は部分を別の要素、構成要素、領域及び/又は部分と区別するためにのみ使用される。したがって、第1の要素、構成要素、領域又は部分は、本開示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域又は部分と呼ぶことができる。
【0029】
本開示における数値範囲は近似値であるため、別途指示がない限り、範囲外の値を含んでもよい。数値範囲は、任意のより低い値と任意のより高い値との間に少なくとも2つの単位の分離があるという条件で、(別途具体的に明記しない限り)1単位の増分で、より低い値及びより高い値からの、及びこれらを含むすべての値を含む。一例として、例えば重量による要素の量などの組成、物理的又は他の特性が10~100である場合、10、11、12などのすべての個々の値、及び10~44、55~70、97~100などの部分範囲が明示的に列挙されることが意図される。明示的な値を含む範囲(例えば、1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。1未満の値を含む範囲又は1より大きい分数を含む範囲(例えば、1.1、1.5など)については、1単位は、適切には0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考えられる。10未満の一桁の数を含む範囲(例えば、1~5)では、1単位は通常0.1であると見なされる。これらは、具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組み合わせは、本開示において明示的に述べられると見なされるべきである。
【0030】
「真下(beneath)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上(above)」、「上方(upper)」などの空間的用語は、本明細書では、図に示すように、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、使用又は例示における向きに応じて異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図中の装置が反転する場合、他の要素又は特徴の「下」又は「真下」にあると記載された要素は、他の要素又は特徴の「上」に配向される。したがって、例示的な「下」という用語は、上下の両方の向きを包含することができる。装置は、他の方向に向けられ(90°又は他の向きに回転され)てもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語はそれに応じて解釈される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。例えば、「A及び/又はB」などの語句で使用される場合、「及び/又は」という語句は、AとBの両方、A又はB、A(単独)、及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の実施形態「A、B、及びC、A、B、又はC、A又はC、A又はB、B又はC、A及びC、A及びB、B及びC、A(単独)、B(単独)、及びC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0032】
一実施形態では、本開示は、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製する方法を提供する。
【0033】
β-CoVの同定
本開示の実施形態によれば、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製する方法は、動物宿主、特に哺乳動物宿主から少なくとも1つのβ-CoVを同定することを含む。特に一実施形態では、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製するための方法は、コウモリ、ラット、ヒト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される哺乳動物宿主から少なくとも1つのβ-CoVを同定することを含む。一実施形態では、少なくとも1つのβ-CoVは、少なくとも1つのSARSrを含む。別の実施形態では、少なくとも1つのβ-CoVは、少なくとも1つのSARS-2β-CoVを含む。
【0034】
ホモロジー群の同定
本開示の実施形態によれば、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製するための方法は、同定されたβ-CoVを、例えば動物宿主から同定されたβ-CoVを、遺伝子配列の類似性に基づいたホモロジー群に分類することと、ホモロジー群ごとに少なくとも1つのコンセンサス配列を調製することとを含む。ホモロジー群は、β-CoV遺伝子配列の全体、β-CoV遺伝子配列の複数の部分、又はβ-CoV遺伝子配列の単一の部分の類似性に基づくことができる。遺伝子配列は、DNA配列、RNA配列、タンパク質配列、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。単一のβ-CoVが同定される場合、それは単一のホモロジー群の唯一のメンバーであることが理解されよう。
【0035】
特定の実施形態では、β-CoVは複数のSARSrを含み、複数のSARSrは、1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つのホモロジー群に分類される。一実施形態では、ホモロジー群は、スパイクタンパク質、SARS受容体結合ドメイン(RBD)、エンベロープタンパク質、核タンパク質、及びそれらの組み合わせに関連する遺伝子配列の少なくとも一部、又は少なくとも2つ以上の部分、又は全部に基づく。
【0036】
さらなる実施形態では、少なくとも1つのSARS-2β-CoVが同定され、少なくとも1つのホモロジー群に分類される。
【0037】
一実施形態では、各ホモロジー群内で、遺伝子配列は、ホモロジー群の他のすべてのメンバーに対して60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する。
【0038】
一実施形態では、各ホモロジー群内で、遺伝子配列は、ホモロジー群の他のすべてのメンバーに対して60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上~90%、又は95%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は100%未満の配列同一性を有する。
【0039】
一実施形態では、各ホモロジー群の遺伝子配列は、ホモロジー群で異なるタンパク質配列を定義する。一実施形態では、異なるタンパク質は、Sタンパク質、エンベロープタンパク質、核タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる実施形態では、異なるタンパク質はSタンパク質である。
【0040】
特定の実施形態では、複数のSARSrが分析され、5つのホモロジー群に分類され、各ホモロジー群内で、遺伝子配列は65%超~99%の配列同一性を有する。
【0041】
ホモロジー群及びコンセンサス配列を同定するための例示的なプロセスがここで提供される。
【0042】
SARS-2β-CoVは、約30kbのプラスセンス一本鎖RNAゲノム及び4つの構造タンパク質を有する。構造タンパク質の1つは、スパイク(S)ペプロマーである。これらのSタンパク質は、SARS-2β-CoVの表面に見出され、細胞受容体結合を媒介し、したがってウイルスの宿主指向性を決定する。Sタンパク質をコードするRNAのタンパク質部分は、図1に示すように、SI鎖10とS2鎖20とがフランカット部位25で隔てられた状態で、SI鎖とS2鎖とに分けられる。RBD 30は、SI鎖10に位置する。RBDの変異は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)へのウイルスの結合に影響を及ぼし、この結合の増強は、動物宿主からヒト宿主へのウイルスの飛び移りを促進することによることが発見された。膜融合部分40は、S2鎖20に位置する。図1には、ヘプタペプチドHR1及びHR2、Sタンパク質の膜貫通TM及び細胞質ドメインがさらに示されている。
【0043】
SARS-1β-CoVなどの他のコロナウイルスとは対照的に、SARS-2β-CoVのSタンパク質は、ウイルス構築中に酵素で切断されない。SARS-2β-CoV Sタンパク質は、プロタンパク質転換酵素フリンによって予め活性化される。したがって、細胞侵入時の標的細胞プロテアーゼへの依存性は減少する。
【0044】
SARS-2β-CoV Sタンパク質は、SI鎖10とS2鎖20とに分割される。S2鎖20のコンフォメーション変化は、宿主細胞内でのウイルスの融合をもたらす。これは、RBDを含むSタンパク質コードRNA配列と組み合わせて、Sタンパク質コードRNA配列を抗SARS-2β-CoVワクチンレジメンで使用するための重要な候補にする。
【0045】
図1はまた、より大きな免疫応答を誘発するSARS-2β-CoVのSタンパク質部分を示す(60)。示されるように、部分60bはRBD 30と重複し、かなりの部分であり、これはRBD 30に関連する有意な免疫応答が存在することを意味する。部分60d及び60eは、可変性の低い膜融合部分40と重なり合っているが、より小さく、したがって、免疫応答をそれほど強く誘発しない。異なるβ-CoV、例えば、SARS-CoV-1及びMERS-CoVに対する免疫応答を分析する際に、これらのコロナウイルスの活性を中和する能力を有する抗体が、Sタンパク質のより保存された領域、すなわち、S2ドメイン20内のSタンパク質ステム領域内にも結合し得ることが観察された。
【0046】
図1にさらに例示されるように、様々なSARSrからのRNAのSタンパク質コード配列をアラインメントすることにより、遺伝子全体にわたって有意な相違が示される(50)。したがって、本発明のSARS-2β-CoV RNAに基づくワクチンは、他のSARSrによって引き起こされる感染から効率的に防御することができない可能性がある。しかし、複数のSARSrからのRNAのSタンパク質コード配列を分析すると、表1に示すように、SARSrをホモロジー群に分類することができる。
【0047】
表1の情報を得るために、ViPR及びNCBIを使用して配列を見出した。全体的なアラインメントは、Clustal Omegaを使用して行った。関連するアラインメント(>92%)を抽出してグループ分けを作成し、これをClustal Omegaを用いてアラインメントし、BLAST多重配列アラインメントを用いて確認した。
【0048】
SARS-CoV群については、元のSARS-CoV-1を網羅するGenBank及びViPRからの1130配列を分析した。いくつかの配列は、ギャップを担う可能性が高いランダムインサートを含んでいたが、少数の変異体はすべて抗体結合を維持していた。SARS-CoV 2群については、新しいクレード20H、201及び20J(南アフリカ、カリフォルニア及び英国の変異体にそれぞれ対応する)を含む3000超の配列を分析した。WIV-1は、コウモリでは顕著なSARSrであるが、ヒト細胞で複製することが示されている。SARS-2β-CoVを生じさせたと考えられるRaTG13株を含む56のWIV-1株を分析した。16株のみが完全CDSを有していた。NCBI保存タンパク質ドメインファミリーcd21477及びCn3Dによって示されるように、構造は変異体間で安定に見えた。YNLF群では、コウモリ、センザンコウ及びラクダから得られた71個の配列(39は完全なCDSである)。これらのSARSr株は、WIV1ファミリーよりもSARS-2β-CoVとの類似性が低いが、特定の領域においてSARS-CoV群及びSARS-CoV 2群とのいくつかの強い類似性を有する。全体的なスパイクアラインメントは並みであるが、RBDアラインメントは強い類似性を示す。Bat2013群では、高い類似性を有する19個の試料を分析した。Bat2013群は、他の群よりも高い分散を示すが、多くの株が同じ抗体に対して交差反応性を示している。
【0049】
コンセンサス配列
本開示の実施形態によれば、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製する方法は、各ホモロジー群について少なくとも1つのコンセンサス配列を同定することを含む。コンセンサス配列は、配列の各位置に統計的に最も高頻度の残基を含む群について開発されたDNA、RNA又はタンパク質配列である。一実施形態では、ホモロジー群についてのコンセンサス配列は、対応するホモロジー群の各メンバーと少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%の共有性を有する。
【0050】
特定の実施形態では、コンセンサス配列は、対応するホモロジー群の他のすべてのメンバーと60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有するDNA配列である。
【0051】
特定の実施形態では、コンセンサス配列は、対応するホモロジー群の他のすべてのメンバーと60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有するRNA配列である。
【0052】
特定の実施形態では、コンセンサス配列は、対応するホモロジー群の他のすべてのメンバーと60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有するタンパク質配列である。
【0053】
一実施形態では、コンセンサス配列を編集して可変ドメインを除去する。例示的な可変ドメインは、図1の324~533の配列として示される。1つ以上の可変ドメインが欠失するような実施形態では、欠失配列は、欠失によって形成されたギャップを架橋するように設計されたより小さいリンカーペプチドによって置き換えられる。
【0054】
一実施形態では、各ホモロジー群のコンセンサス配列は、DNA配列、RNA配列、タンパク質配列、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、ホモロジー群のうちの少なくとも1つのコンセンサス配列はRNAである。さらなる実施形態では、RNAはmRNAである。
【0055】
一実施形態では、分析されるβ-CoVは、SARSrである。さらなる実施形態では、SARSrは、少なくとも1つのホモロジー群に分類された少なくとも1つのSARS-2β-CoVを含み、少なくとも1つのホモロジー群のコンセンサス配列は、DNA配列、RNA配列、又はタンパク質配列である。単一のSARSr、例えば単一のSARS-2β-CoVが同定され、単一のSARSrがホモロジー群の唯一のメンバーである実施形態では、コンセンサス配列はDNA配列であり得、RNA配列又はタンパク質配列は、SARSrと100%の共有性を有することが理解されよう。
【0056】
一実施形態では、コンセンサス配列は、SARS-2β-CoV DNA配列であり、SARS-2β-CoV DNA配列は、Sタンパク質コード配列の少なくとも一部である。さらなる実施形態では、コンセンサス配列は、Sタンパク質コード配列全体を含むSARS-2β-CoV DNAである。
【0057】
一実施形態では、コンセンサス配列は、SARS-2β-CoV RNA配列であり、SARS-2β-CoV RNA配列は、Sタンパク質コード配列の少なくとも一部である。
【0058】
一実施形態では、コンセンサス配列は、SARS-2β-CoVタンパク質配列であり、SARS-2β-CoVタンパク質配列は、Sタンパク質の少なくとも一部である。
【0059】
ウイルスベクター
本開示の実施形態によれば、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製する方法は、少なくとも1つのコンセンサス配列をウイルスベクターに挿入することを含む。一実施形態では、ウイルスベクターはアデノウイルスベクター要素である。
【0060】
既存の及び誘導された干渉抗アデノウイルス免疫応答を最小限に抑えるために、すべての内因性遺伝子が、アデノウイルスベクター要素であるウイルスベクター要素から欠失している。すなわち、一実施形態では、ウイルスベクター要素は、完全欠失(fd)アデノウイルスベクターである。
【0061】
一実施形態では、アデノウイルスベクター70、好ましくはfdアデノウイルスベクターは、図2に示すように、最大33kbの遺伝子コンストラクトを受け入れることができ、逆位末端反復配列(ITR)72、72及びパッケージングシグナル(Y)73を有する。欠失した内因性遺伝子は、サイズを補完するスタッファー75で置き換えられる。示される実施形態では、これらのスタッファー75は、ヒト遺伝子5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ遺伝子(ATIC)の断片から調製される。さらなる実施形態では、限定されるものではないが、ヒトのヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼなどの他のスタッファー配列を使用することができる。
【0062】
図2に示す実施形態では、5つのコンセンサス配列80a、80b、80c、80d、80eは、ウイルスベクター又はアデノウイルスベクター又はfdアデノウイルスベクターによって受け入れられる。しかしながら、さらなる実施形態では、ウイルスベクターは、より多い又はより少ないコンセンサス配列を含み得る。コンセンサス配列は、本明細書で提供される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従う。
【0063】
例示のみを目的として、図2を参照すると、コンセンサス配列80aは、SARS-2β-CoVのみを含有するホモロジー群に由来するSARS-2β-CoV RNA配列である。SARS-2β-CoV RNA配列がウイルスベクターに含まれる唯一のコンセンサス配列である場合、得られたワクチンは、SARS-2β-CoVによる感染からの特異的防御を提供することを意図する。さらなる実施形態では、コンセンサス配列は、より広範なSARS-2β-CoVの集合を含むホモロジー群に由来し得る。なおさらなる実施形態では、ウイルスベクターは、図2に示すように、異なるホモロジー群に由来する追加のコンセンサス配列を含み得る。そのような実施形態では、得られたワクチンは、異なるホモロジー群のウイルスに対してより広範な防御を提供し得る。
【0064】
別の実施形態では、ウイルスベクターは、DNA導入遺伝子などの導入遺伝子を送達するように構成されたウイルスベクターであり得る。導入遺伝子を送達するように構成された例示的なウイルスベクターには、アデノウイルス関連ベクター及びワクシニアウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
パッケージングプラスミド
本開示の実施形態によれば、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製する方法は、少なくとも1つのパッケージングプラスミドを提供することを含む。
【0066】
図2をさらに参照すると、本開示で使用される例示的なプラスミド82は、後期遺伝子及び初期遺伝子などの複数の遺伝子を含む。一実施形態では、プラスミド82は、図2に示すように、複数の後期遺伝子、好ましくは後期領域1、2、3、4及び6を含む。さらなる実施形態では、本開示で使用されるプラスミド82は、複数の初期遺伝子、好ましくは図2に示される初期領域2及び4を含む。
【0067】
一実施形態では、後期遺伝子及び初期遺伝子はトランスで提供される。
【0068】
図2に示されるように、プラスミド82は、主要後期プロモーター(MLP)及び右ITRをさらに含む。しかしながら、本開示で使用されるカプシドは、左ITR、初期遺伝子El及びE3、そのパッキングシグナル、並びにそのタンパク質IX遺伝子を欠いている。
【0069】
特定の実施形態では、プラスミドは、(i)後期領域1、2、3、4、5、(ii)初期領域2及び4、(iii)MLP、及び(iv)右ITRから本質的になる。そのような実施形態では、プラスミドは、左ITF、初期遺伝子El及びE3、パッキングシグナル、並びにタンパク質IX遺伝子を完全に欠いている。
【0070】
一実施形態では、プラスミド82はアデノウイルスに基づく。さらなる実施形態では、プラスミド82は、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35血清型並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるアデノウイルスに基づいており、ヒト血清型Ad2のアデノウイルスカプシドは、pPaC2、pPaC5を有するAd5、pPaC6を有するAd6及びpPaB35を有するAd35でコードされる。トランスフェクション
【0071】
本開示の実施形態によれば、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製するための方法は、パッケージング細胞にウイルスベクター及びパッキングプラスミドをトランスフェクションすることを含む。一実施形態では、パッケージング細胞は、1つ以上のウイルスベクター及び1つ以上のプラスミドを含み得る。好ましい実施形態では、パッケージング細胞は、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上のウイルスベクター及び1つのパッキングプラスミドを含む。
【0072】
さらに図2を参照すると、ウイルスベクター70及びプラスミド82は、コトランスフェクションにより真核生物宿主細胞又はパッケージング細胞85に導入される。示される特定の実施形態では、ウイルスベクター70及びプラスミド82は、最適化され標準化された1週間コトランスフェクションプロトコールを使用してパッケージング細胞85にコトランスフェクトされる。
【0073】
一実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、特にfdアデノウイルスベクターであり、パッケージング細胞は、ヒト胚腎臓細胞(HEK293)及びPerC.6細胞などであるがこれらに限定されない細胞株に由来する。fdアデノウイルスベクターをパッケージングするのに必要なパッケージング細胞は、アデノウイルスベクターのEl領域内にコードされた遺伝子を発現するようにエンジニアリングされなければならない。特定の実施形態では、パッケージング細胞は、アデノウイルスベクターのE1領域内にコードされる遺伝子を発現するようにエンジニアリングされたHEK293由来のQ7パッケージング細胞である。
【0074】
fdアデノウイルスベクターの産生は、エンジニアリングされたアデノウイルスゲノム、パッケージング発現プラスミド及び化学的トランスフェクション試薬の混合物によるパッケージング細胞の化学的トランスフェクションによって開始されることは注目に値する。
【0075】
カプシド
本開示の実施形態によれば、対象、特に哺乳動物の対象、より具体的にはヒトの対象における少なくとも1つのβ-CoV感染を予防するためのワクチンを調製するための方法は、図2に示すように、ウイルスベクター70及びプラスミド82を含有するパッケージング細胞85をカプシドにカプシド形成することを含む。
【0076】
ウイルスベクター70及びプラスミド82を含むパッケージング細胞85は、ワクチン接種されている哺乳動物にはまれなアデノウイルスの血清型のカプシドで送達される。特定の実施形態では、ワクチン接種されている哺乳動物はヒトであり、ウイルスベクターは、ヒトにはまれなアデノウイルスの血清型のカプシドで送達される。一実施形態では、ウイルスベクターは、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型のカプシド、並びにそれらの組み合わせで送達される。一実施形態では、ウイルスベクターはAd6血清型のカプシドで送達される。
【0077】
ワクチンの組成
一実施形態では、本開示は、ワクチン、より具体的にはβ-CoV、好ましくはSARSrからの感染を予防するためのワクチンの組成物を提供する。
【0078】
本開示の実施形態によれば、ワクチンは、少なくとも1つのウイルスベクターに担持された1つ以上のβ-CoV、好ましくは1つ以上のSARSrに由来する1つ以上のコンセンサス配列を含む。コンセンサス配列は、本明細書に記載される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従うことができる。ウイルスベクターは、上記の任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従うことができる。
【0079】
一実施形態では、1つ以上のコンセンサス配列は、β-CoV DNA配列、RNA配列、タンパク質配列、又はそれらの組み合わせ、好ましくはSARSr DNA配列、RNA配列、タンパク質配列、又はそれらの組み合わせである。
【0080】
本開示の実施形態によれば、1つ以上のコンセンサス配列は、少なくとも1つのSARSr DNA又はRNA配列、又は好ましくは少なくとも1つのSARS-2β-CoV DNA又はRNA配列を含む。一実施形態では、SARSr DNAもしくはRNA配列、又はSARS-2β-CoV DNAもしくはRNA配列は、Sタンパク質コード配列の少なくとも一部である。
【0081】
いくつかの実施形態では、1つ以上のコンセンサス配列の1つ以上は、部分的又は完全に除去された可変領域を有する。特定の実施形態では、1つ以上のコンセンサス配列は、少なくとも1つのSARSr DNA又はRNA配列、好ましくは少なくとも1つのSARS-2β-CoV DNA又はRNA配列を含み、これはSタンパク質コード配列の少なくとも一部であり、Sタンパク質コード配列の可変領域の少なくとも一部が除去されている。
【0082】
一実施形態では、コンセンサス配列の発現はプロモーターによって駆動される。プロモーターは、コンセンサス配列、ワクチン接種動物、及びワクチンの特定の組成物に特異的であり得る。一実施形態では、プロモーターは、ヒトのサイトメガロウイルス前初期プロモーター/エンハンサー、ヒト成長遺伝子に由来するポリアデニル化部位、伸長因子1-アルファ、ホスホグリセレートキナーゼ、ユビキチンC、ベータアクチン遺伝子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、プロモーターの活性は、限定されないが、抗生物質などの化学物質によって影響され得る。テトラサイクリンは、プロモーターの活性に影響を及ぼす抗生物質の非限定的な例である。
【0083】
特定の実施形態では、ワクチンは、少なくともSARS-2β-CoVからの感染を予防するように特に設計される。そのような実施形態では、1つ以上のコンセンサス配列は、少なくとも1つのSARS-2β-CoV DNA又はRNA配列を含む。好ましくは、SARS-2β-CoV DNA又はRNA配列は、Sタンパク質をコードするDNA又はRNA配列である。さらなる実施形態では、SARS-2β-CoV DNA又はRNA配列は、(部分的又は全体的に)Sタンパク質をコードする配列であるRNA配列である。
【0084】
コンセンサス配列がSタンパク質を(部分的又は全体的に)コードするSARS-2β-CoV RNA配列である実施形態では、SARS-2β-CoV DNA配列は、ヒトコドンが最適化されており、特異的RNAの発現は、ヒトのサイトメガロウイルス前初期プロモーター/エンハンサー、続いてヒト成長遺伝子に由来するポリアデニル化部位によって駆動される。他の実施形態では、SARS-2β-CoV RNAの発現は、他のプロモーター、例えば限定されないが、伸長因子1-α、ホスホグリセレートキナーゼ、ユビキチンC、βアクチン遺伝子、及びそれらの組み合わせに由来するプロモーターによって駆動される。別の実施形態では、SARS-2β-CoV RNAの発現は、その活性が、限定されないが、抗生物質テトラサイクリンなどの化学物質によって影響され得るプロモーターによって駆動される。
【0085】
さらなる実施形態では、ワクチンは、2つ以上のコンセンサス配列、1つ以上のウイルスベクターを含む。本開示の実施形態によれば、1つのコンセンサス配列は、SARS-2β-CoV DNA又はRNA配列であり、ワクチンは、SARSr DNA、RNA又はタンパク質配列である少なくとも1つの追加のコンセンサス配列を含む。
【0086】
一実施形態では、少なくとも1つのウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、より好ましくはfdアデノウイルスベクターである。
【0087】
さらなる実施形態では、ワクチンは、全部又は一部がSARS-2β-CoV RNA配列、及び少なくとも1つの他のSARSr RNA(全部又は一部)配列を有するウイルスベクターを含むSARSrワクチンである。そのような実施形態では、ウイルスベクターは、同様に、ウイルスベクターに表されるSARSr群のそれぞれについてのヒトコドン最適化Sタンパク質の発現カセットを担持する。ヒトコドン最適化Sタンパク質は、CMV前初期プロモーター/エンハンサー、続いてヒト成長ホルモン由来のポリアデニル化部位によって駆動される。
【0088】
いくつかの実施形態では、SARS-2β-CoV RNA、及び存在する場合、さらなるSARSr RNAは、Sタンパク質コード配列の可変領域を完全に又は部分的に除去した。
【0089】
本開示の実施形態によれば、ワクチンは、パッキングプラスミドをさらに含む。パッキングプラスミドは、本明細書に記載される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従うことができる。
【0090】
一実施形態では、少なくとも1つのコンセンサス配列は、SARSr DNA又はRNA配列、特にSタンパク質コード配列であるSARSr DNA又はRNA配列であり、パッキングプラスミドは、左ITR、初期遺伝子E1及びE3、そのパッキングシグナル、並びにそのタンパク質IX遺伝子を欠いている。特定の実施形態では、少なくとも1つのコンセンサス配列は、SARSr DNA又はRNA配列、特に、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアデノウイルスに基づくウイルスベクター及びパッキングプラスミドに含まれるSタンパク質コード配列であるSARSr DNA又はRNA配列であり、ヒト血清型Ad2のアデノウイルスカプシドは、pPaC2、pPaC5を有するAd5、pPaC6を有するAd6及びpPaB35を有するAd35でコードされ、プラスミドは、左ITR、初期遺伝子E1及びE3、そのパッキングシグナル、並びにそのタンパク質IX遺伝子を含まない。
【0091】
本開示の実施形態によれば、ワクチンは、コンセンサス含有ウイルスベクター及びプラスミドがコトランスフェクトされたパッケージング細胞を含む。パッケージングは、任意の実施形態又は組み合わせ又は本明細書に開示される実施形態に従う。
【0092】
一実施形態では、ウイルスベクター及びプラスミドを、HEK-293由来のQ7パッケージング細胞を使用する最適化され標準化された1週間コトランスフェクションプロトコールを使用して、パッケージング細胞にコトランスフェクトする。例示的な実施形態では、ウイルスベクターは、SARSr DNA又はRNA配列、特にSタンパク質をコードする配列であるSARSr DNA又はRNA配列を含む少なくとも1つのコンセンサス配列を含み、プラスミドは、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアデノウイルスに基づいており、ヒト血清型Ad2のアデノウイルスカプシドは、pPaC2、pPaC5を有するAd5、pPaC6を有するAd6及びpPaB35を有するAd35でコードされ、ウイルスベクター及びプラスミドは、HEK-293由来のQ7パッケージング細胞を使用する最適化され標準化された1週間コトランスフェクションプロトコールを使用して、パッケージング細胞にコトランスフェクトされる。
【0093】
ワクチンは、(ウイルスベクター及びプラスミドと共に)パッケージング細胞がカプシド形成されているカプシドを含む。カプシドは、本明細書に開示される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせによるものであり得る。
【0094】
一実施形態では、カプシドは、Ad2、Ad5、Ad6及びAd35の血清型、並びにそれらの組み合わせのものである。
【0095】
ワクチン接種方法
一実施形態では、本開示は、β-CoVの少なくとも1つの群からの感染に対して動物対象、好ましくは哺乳動物の対象、より好ましくはヒトの対象にワクチン接種する方法を提供する。
【0096】
本開示の実施形態によれば、本方法は、少なくとも1つのβ-CoVコンセンサス配列、好ましくは少なくとも1つのSARSrコンセンサス配列、より好ましくは少なくとも1つのSARS-2β-CoVコンセンサス配列を含む少なくとも1つのウイルスベクター及びプラスミドを含むワクチンを提供することを含み、少なくとも1つのウイルスベクター及びプラスミドはパッケージング細胞にトランスフェクトされ、パッケージング細胞はカプシドにカプシド形成される。
【0097】
一実施形態では、少なくとも1つのβ-CoVコンセンサス配列は、任意の実施形態又は組み合わせ又は本明細書に記載される実施形態に従う。一実施形態では、少なくとも1つのウイルスベクターは、本明細書に記載される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従う。一実施形態では、プラスミドは、本明細書に記載される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従う。一実施形態では、パッケージング細胞は、本明細書に記載される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従う。一実施形態では、カプシドは、本明細書に記載される任意の実施形態又は実施形態の組み合わせに従う。
【0098】
本方法は、動物対象、好ましくは哺乳動物の対象、例えばヒトなどにウイルスベクターを注射することをさらに含む。一実施形態では、単一用量は、少なくとも1つのβ-CoVに対する防御を提供するのに十分なものであり、より具体的には、ワクチンに含まれるコンセンサス配列の少なくとも1つに対して60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する任意のβ-CoVに対する防御を提供する。
【0099】
他の実施形態では、防御を提供するために2回以上の用量が必要とされ得る。特に、2回、又は3回、又は4回の用量は、少なくとも1つのβ-CoVに対する防御、より具体的には、ワクチンに含まれるコンセンサス配列の少なくとも1つに対して、60%以上、又は65%以上、又は70%以上、又は75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の配列同一性を有する任意のβ-CoVに対する防御を提供するのに十分なものである。
【実施例
【0100】
実施例1
本開示の実施形態によるウイルスベクターの効率を示すために、BALB/cマウスに、本開示の実施形態によるウイルスベクターを使用して様々な用量のA/ベトナム/1203/2004(H5N1)ワクチンを投与し、次いで、H5N1ウイルスに曝露した。特に、それぞれ10匹のマウスの4つの群が存在した。第1の対照群(Cl)にプラセボをワクチン接種する。第2の対照群(C2)にはワクチン接種しない。第1の実験群(El)に、ベクター懸濁バッファー(PBS、MgCl2 5mM、EDTA 01.mM、スクロース5%)に懸濁した3×10ゲノム当量のGreFluVieワクチン(H5N1ウイルスと少なくとも60%の共有性を有するコンセンサス配列を含むウイルスベクターを含む)をワクチン接種する。第2の実験群(E2)に、ベクター懸濁バッファーに懸濁した3×10ゲノム当量のGreFluVieワクチンをワクチン接種する。Cl、E1及びE2群は、同じ対照又はワクチン調製物で24日目に追加免疫した。26日目に、Cl、E1及びE2群に、H5N1の半数致死量(LD50)を鼻腔内投与した。それらの群を観察し、それらの体重を毎日測定した。48日目にマウスから採血し、H5N1ウイルスによるMDCK試験細胞(MDCK test sells)の感染を中和する抗体及びウマ赤血球の赤血球凝集を阻害する抗体の存在について試験した。
【0101】
図3に示すように、Cl群は生存率が非常に低く、すべてのマウスが感染後15日前に死亡している。対照的に、E1及びE2の両群は有意に改善された生存率を示し、体重はC2群の傾向を模倣している。E1群及びE2群のうち、E1群は、より高いウイルス中和及びより低い肺ウイルス力価を示す。重要なことに、E1及びE2の両群は、免疫後に感染と戦う能力の有意な改善を示す。
【0102】
実施例2
5匹のマウス(BALB/cマウス)の対照群(C3)にプラセボをワクチン接種する。5匹のマウス(BALB/cマウス)の実験群(E3)に、ベクター懸濁バッファー(PBS、MgCl2 5mM、EDTA 0.1mM、スクロース5%)に懸濁した3×10ゲノム当量のGreMERSflワクチン(EMX/2012 MERS-CoVと少なくとも60%の共有性を有するコンセンサス配列を有するウイルスベクターを含む)をワクチン接種する。コンセンサス配列は、具体的には、MERS-CoVの全長スパイクタンパク質である。C3群及びE3群は、同じ対照又はワクチン調製物で17日目に追加免疫した。19日目に、C3群及びE3群にMERSのLD 50を鼻腔内感染させた。該群を21日目に混合した。血清を、EMX/2012 MERS-CoVによる試験細胞の感染を中和する抗体の存在について試験した。
【0103】
図4に示すように、E3群はウイルス中和に有意な改善を示した。
【0104】
ウイルスベクター及び関連するワクチンの複数の実施形態が本明細書に詳細に記載されているが、それらのエンジニアリング及び変形が可能であり、それらのすべてが本発明の真の趣旨及び範囲内に入ることは明らかである。特に、本ウイルスベクター及びワクチンは、β-CoV、より具体的にはSARS-2及びSARSrウイルスに関して詳細に記載されているが、ウイルスベクター及びワクチンは、例えば、a-CoV、g-CoV、及びd-CoVなどの他のクラスのコロナウイルスに適用するために当業者の技術に従ってエンジニアリングできることが理解されよう。さらに、多数の修正及び変更が当業者には容易に思い浮かぶため、本発明を図示及び説明された正確な構成及び操作に限定することは望ましくなく、したがって、すべての適切な修正及び均等物を用いることができ、本開示の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023522108000001.app
【国際調査報告】