(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】脾臓障害の防止及び/又は処置のためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230519BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/4168 20060101ALI20230519BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20230519BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K31/4168
A61K31/155
A61P7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563403
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021060441
(87)【国際公開番号】W WO2021214175
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511294534
【氏名又は名称】ウニベルシテ カソリーク デ ルーベン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン アインデ,ベノイト
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ジンジン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZB261
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4C206KA01
4C206MA01
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4C206ZA51
(57)【要約】
本発明は、脾臓障害、特に脾腫の防止及び/又は処置におけるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの治療的使用に関する。本発明者らは、クロニジン、グアナベンズ及びロミフィジンが、がん誘発性脾腫、免疫誘発性脾腫又は骨髄線維症によって誘発される脾腫を有する動物モデルの脾臓重量を効率的に低減させることを示した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脾臓障害の防止及び/又は処置における使用のためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト。
【請求項2】
前記脾臓障害が脾腫である、請求項1に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項3】
前記アゴニストが、アミトラズ、アプラクロニジン、ベタニジン、ブリモニジン、ブロモクリプチン、シラゾリン、クロニジン、デトミジン、デクスメデトミジン、ジピベフリン、ドロキシドパ、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、エトミデート、ファドルミジン、グアナベンズ、グアンファシン、グアノキサベンズ、グアネチジン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタンフェタミン、メタラミノール、メトキサミン、dl-メチルエフェドリン、メチルドパ、ミバゼロール、モクソニジン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、ペルゴリド、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、ラセピネフリン、リルメニジン、ロミフィジン、(R)-3-ニトロビフェニリン、シネフリン、タリペキソール、チザニジン、キシラジン、キシロメタゾリン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される、請求項1又は2に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項4】
ブリモニジン、クロニジン、デクスメデトミジン、グアナベンズ、グアンファシン、ロフェキシジン、メチルドパ、ロミフィジン、チザニジン、キシラジン、及びそれらの機能性誘導体、特に、クロニジン、グアナベンズ、ロミフィジン、又はそれらの機能性誘導体からなる群において選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項5】
前記アゴニストが、抗体、抗体断片、脱フコシル化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ナノボディ、及びそれらの類似体からなる群において選択される、請求項1又は2に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項6】
前記アゴニストが血液/脳関門を通過しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項7】
前記アゴニストが、約0.0001mg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲の用量で投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項8】
前記脾臓障害、特に脾腫が、脾機能亢進症、がん、肝障害、嚢胞性線維症、炎症性疾患、微生物感染症、溶血性貧血などからなる群において選択される障害に関連する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項9】
前記脾臓障害、特に脾腫が、血液のがん又は固形がんに関連する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項10】
前記アゴニストが、抗菌剤、抗炎症剤、化学療法、免疫療法、放射線など、及びそれらの組み合わせからなる群において選択される一次又は二次治療と共に投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項11】
前記免疫療法が、免疫細胞の養子移入、チェックポイント阻害剤、ワクチン接種など、及びそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項12】
前記免疫細胞が、T細胞、特にCD8+ T細胞及びCAR T細胞;ナチュラルキラー(NK)細胞、特に、CAR NK細胞など;及びそれらの組み合わせを含む群において選択される、請求項11に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項13】
前記一次又は二次治療が、前記アゴニストと個別に又は同時に投与される、請求項10に記載の使用のためのアゴニスト。
【請求項14】
請求項2~6のいずれか一項に記載のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト、及び薬学的に許容されるビヒクルを含む、脾臓障害の防止及び/又は処置における使用のための医薬組成物。
【請求項15】
(i)アルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト又はアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを含む医薬組成物、及び(ii)抗生物質、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、化学療法剤、免疫療法剤などからなる群において選択される治療剤を含む、脾臓障害の防止及び/又は処置における使用のための組み合わせキット。
【請求項16】
それを必要とする個体における脾臓障害の防止及び/又は処置のための方法であって、治療有効量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの投与を含む方法。
【請求項17】
それを必要とする個体における脾臓の体積及び/又は重量を低減させる方法であって、治療有効量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの投与を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、脾臓障害、特に脾腫の防止及び/又は処置におけるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの治療的使用に関する。特に、クロニジン、グアナベンズ及びロミフィジンの3つのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、がん誘発性脾腫、免疫誘発性脾腫、又は骨髄線維症によって誘発される脾腫を有する個体の脾臓重量を効率的に低減させることが可能である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
脾臓は拳サイズの臓器であり、腹部の左上側、胃の隣、左肋骨の後ろに位置する。脾臓は、例えば、血液中の侵入微生物と戦うことによって、又は血球、すなわち白血球、赤血球及び血小板のレベルを制御することによって免疫系の重要な役割を果たす。加えて、脾臓は血液をろ過し、古い又は損傷した赤血球を除去する。最後に、脾臓は、ストレスの多い状況で交感神経系の構成部分を表し得ることが示唆されている(Bakovicら Journal of Physiology and Pharmacology,2013,64(5)巻,p.649-655)。
【0003】
実際には、損傷した脾臓は、脾臓摘出術と呼ばれる外科的手順として摘出され得る。その場合、肝臓が、摘出された脾臓の多くの機能を補い得る。
【0004】
「肥大した脾臓」としても知られる脾腫は、多くの感染症、腫瘍、及び溶血をもたらす血液の遺伝的又は後天的な病態の結果として起こり得る脾臓の病的な肥大を指すことを意図した医学用語である。正常な脾臓の重さは約200gで、通常は触知できないが、疾患状態では肥大し、最大で約2kgになり得る。肥大した脾臓はまた、過活動になり、非常に多くの血球を貪食し、他の症状をもたらし得る。
【0005】
脾臓は、例えば、がん;肝硬変、門脈圧亢進症、及び脾臓血管系内部の血圧の上昇をもたらす門脈若しくは脾静脈の血栓症又は圧迫などの肝障害;嚢胞性線維症;サイトメガロウイルスなどのウイルス感染症及び腺熱;溶血性貧血:この用語には、重症型サラセミア及び鎌状赤血球貧血などの遺伝性の異常ヘモグロビン症が含まれる;遺伝性球状赤血球症などの赤血球脆弱性障害;並びにグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ異常を含む赤血球酵素欠損;慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病などの骨髄増殖性障害;有毛細胞リンパ腫などのリンパ増殖性障害;マラリア、梅毒、カラアザールなどの慢性感染症;細菌性心内膜炎などの急性感染症などの、様々な病態で肥大し得る。
【0006】
脾腫は、しばしば無症状であり得るが、左下肋部痛、しゃっくり、満腹感及び食欲不振、並びに少し食べた後の早期満腹感ももたらし得る。脾機能亢進の場合には、血球減少症による症状が存在することがある。
【0007】
上記のように、脾腫は通常、ほとんど症状を示さない病態であるが、肥大すると、この状況ではその下部境界が、胸郭の下縁よりも下に下がっているため、触知され得る。このような場合には、超音波又はCTスキャンによるイメージング、及び病因の手がかりを与え得る各細胞型の種類及び数を特定するための末梢血液検査などのさらなる検査が必要であり得る。
【0008】
脾腫の処置は常に、根底にある病態に特異的である。場合によっては、脾臓を摘出しなければならない場合があるが、これはまれである。悪性腫瘍による症例では、化学療法又は放射線療法が必要な場合がある。輸血は、溶血性貧血の患者に必要であり得る。
【0009】
脾腫の処置については、例えば、脾腫の緩和を促進するためのアドレナリンの治療的使用を開示したOkuyamaら(Science Reports of the Research Institutes,1983,30(1-4)巻,p.29-30)、及び肝硬変誘発性脾腫の処置におけるアドレナリンの治療的使用を開示したFerranniniら(Minerva Medica,1947,2(29)巻,p.45-51)を引用することができる。しかし、アドレナリンはベータアドレナリン受容体を含む多くの受容体に結合し、したがって様々な生理学的プロセスに干渉する可能性がある。
【0010】
同様に、Neidhart(Experientia,1996,52(9)巻,p.892-899)は、1mg/kgのブロモクリプチンマイクロカプセル(CBLA)の投与が、アジュバント関節炎のラットモデルにおいて脾腫を低減することを報告し、US10426772は、エルゴタミンが扁形動物誘発性脾腫(住血吸虫症)を低減することを開示した。しかし、ブロモクリプチンとエルゴタミンはいずれもいくつかの受容体に結合し、他の経路に影響を及ぼし得るため、治療的処置は特異的ではあり得ない。
【0011】
CN106619876及びCN108174957は、それぞれ、食欲不振を処置し、脾臓を活性化するための、及び脾臓を正常な状態にするための医薬組成物を開示した。
【0012】
最後に、WO2020050290は、グアナベンズが、脂肪肝などの肥満関連疾患の患者において脾臓の重量減少を促進する能力を有することを説明した。
【0013】
したがって、脾臓障害、特に脾腫を防止及び/又は処置するための代替手段を当技術分野に提供する必要がある。根底にある原因となる病状に関係なく、脾臓障害、特に脾腫を防止及び/又は処置するための手段を当技術分野に提供する必要がある。
【0014】
脾臓摘出術、すなわち罹患した脾臓の摘出の代替手段を当技術分野に提供する必要もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、脾臓障害の防止及び/又は処置に使用するためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストに関する。
【発明の効果】
【0016】
いくつかの実施形態では、前記脾臓障害は脾腫である。ある実施形態では、前記アゴニストは、アミトラズ、アプラクロニジン、ベタニジン、ブリモニジン、ブロモクリプチン、シラゾリン、クロニジン、デトミジン、デクスメデトミジン、ジピベフリン、ドロキシドパ、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、エトミデート、ファドルミジン、グアナベンズ、グアンファシン、グアノキサベンズ、グアネチジン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタンフェタミン、メタラミノール、メトキサミン、dl-メチルエフェドリン、メチルドパ、ミバゼロール、モクソニジン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、ペルゴリド、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、ラセピネフリン、リルメニジン、ロミフィジン、(R)-3-ニトロビフェニリン、シネフリン、タリペキソール、チザニジン、キシラジン、キシロメタゾリン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。ある実施形態では、前記アゴニストは、ブリモニジン、クロニジン、デクスメデトミジン、グアナベンズ、グアンファシン、ロフェキシジン、メチルドパ、チザニジン、キシラジン、及びそれらの機能性誘導体、特に、クロニジン、グアナベンズ、ロミフィジン、又はそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、抗体、抗体断片、脱フコシル化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ナノボディ、及びそれらの類似体からなる群において選択される。ある実施形態では、前記アゴニストは、血液/脳関門を通過しない。いくつかの実施形態では、前記アゴニストは、約0.0001mg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、前記脾臓障害、特に脾腫は、脾機能亢進、がん、肝障害、嚢胞性線維症、炎症性疾患、微生物感染症、溶血性貧血などからなる群より選択される障害に関連する。ある実施形態では、前記脾臓障害、特に脾腫は、血液のがん又は固形がんに関連する。ある実施形態では、前記アゴニストは、抗菌剤、抗炎症剤、化学療法、免疫療法、放射線など、及びそれらの組み合わせからなる群において選択される一次又は二次処置と共に投与され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記免疫療法は、免疫細胞の養子移入、チェックポイント阻害剤、ワクチン接種など、及びそれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、前記免疫細胞は、T細胞、特にCD8+ T細胞及びCAR T細胞;ナチュラルキラー(NK)細胞、特に、CAR NK細胞など;及びそれらの組み合わせを含む群において選択される。一実施形態では、前記一次又は二次処置は、前記アゴニストと別々に又は同時に投与され得る。
【0018】
本発明の別の態様はまた、脾臓障害の防止及び/又は処置における使用のための本発明で定義されるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト、並びに薬学的に許容されるビヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、脾臓障害の防止及び/又は処置での使用のための(i)アルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト又はアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを含む医薬組成物及び(ii)抗生物質、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、化学療法剤、免疫療法剤などからなる群において選択される治療剤を含む組み合わせキットに関する。
【0020】
本発明の一態様はまた、それを必要とする個体における脾臓障害の防止及び/又は処置のための方法であって、治療有効量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを投与することを含む方法にも関する。
【0021】
本発明の別の態様は、それを必要とする個体における脾臓の体積及び/又は重量を低減させる方法であって、治療有効量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの投与を含む方法に関する。
【0022】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する:
-数字の前の「約」は、前記数字の値のプラス若しくはマイナス10%、又はそれ未満を包含する。用語「約」が指す値は、具体的には及び好ましくは開示されるそれ自体でもあることを理解されたい。
【0023】
-「含む(Comprise)」は、「含有する」、「包含する」及び「含む(include)」を意味することを意図している。いくつかの実施形態では、用語「含む」は、用語「からなる」も包含する。
【0024】
-「脾臓障害」は、脾臓の異常な形状、サイズ、重量又は体積、及び/又は異常な機能を伴う障害を指す。本明細書で使用する場合、脾臓障害は、権限のある人によって、その分野で通常使用される任意の適切な手段によって診断され得る。例示的には、完全な血球数の評価を可能にする血液検査;超音波、コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴画像法(MRI)スキャンは、脾臓の大きさ、及びそれが他の臓器を圧迫しているかどうかを評価することを可能にし、脾臓障害に関する貴重な情報を提供し得る。
【0025】
-「脾腫」は、脾臓の異常な肥大を指す。言い換えれば、脾腫は、健康な脾臓と比較して、脾臓の体積及び/又は重量の増加に関する。脾腫は、例えば、重度の肝疾患、白血病、又は単核球症などの根底にある病態の徴候である場合が多い。
【0026】
-「アルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト」は、受容体の結合時にアルファ-2アドレナリン受容体を活性化することが可能である化合物を指す。本発明の範囲内で、用語「アルファ-2アドレナリン受容体を活性化する」は、活性化時に、これらの受容体がシナプス前ニューロンからのノルエピネフリン放出を阻害し、及び/又は青斑核を介した鎮静を中枢的に誘導し、及び/又は膵臓β細胞からのインスリン放出を阻害することが可能であることを意味することを意図する。
【0027】
-「機能性誘導体」は、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを指す場合、同等の生物学的生理学的機能を共有するが類似の構造を有する、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの誘導体を指すことを意図する。用語「類似の構造を有する」は、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの誘導体が、1以上の置換基(複数可)を有するという点で、参照のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストと異なることを意味することを意図する。本明細書で使用する用語「置換基」は、直鎖状又は分枝状の基、特にアルキル基、アリール基、アミン基、アミド基、スルフィド基、ブロミド基、クロリド基及び/又はフルオリド基を含む。本発明の範囲内で、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの機能性誘導体は、アルファ-2受容体のアゴニストである。
【0028】
-「処置すること」又は「処置」又は「緩和」は、その目的が、標的の病的な脾臓の状態又は障害、特に脾腫を防止又は減速(軽減)することである、治療的処置と予防的又は防止的措置の両方を指す。処置を必要とする者には、すでに前記障害を有する者、及び障害を発症する傾向がある者又は障害が予防されるべき者が含まれる。本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの治療量を投与した後に、個体が、前記脾臓障害、特に脾腫に関連する症状の1以上の観察可能及び/若しくは測定可能な低減、又は不在;罹患率及び死亡率の低減、並びに生活の質の問題の改善を示す場合に、個体は、脾臓障害、特に脾腫に関する「処置」が成功している。疾患の処置及び改善の成功を評価するための上記のパラメータは、医師又は権限のある人に馴染みのある日常的な手順によって容易に測定可能である。
【0029】
-「防止すること」は、脾臓障害、特に脾腫の発症の見込み、又は少なくとも1つの有害作用若しくは症状を生じないようにすること、及び/又は低減させることを指す。
【0030】
-「治療有効量」は、標的に顕著な負の又は有害な副作用を引き起こすことなく、(1)脾臓障害、特に脾腫の発症を遅延又は防止すること;(2)脾臓障害、特に脾腫の1以上の症状の進行、憎悪、若しくは悪化を遅らせるか又は停止すること;(3)脾臓障害、特に脾腫の症状の改善をもたらすこと;(4)脾臓障害、特に脾腫の重症度若しくは発生率を低減させること;又は(5)脾臓障害、特に脾腫を治癒することを目的とする活性剤のレベル又は量を指す。治療有効量は、予防作用又は防止作用のために、脾臓障害、特に脾腫の発症前に投与され得る。代替的に、又は追加で、治療有効量は、治療作用のために、脾臓障害、特に脾腫の発症後に投与され得る。一実施形態では、組成物の治療有効量は、脾臓障害、特に脾腫の少なくとも1つの症状を軽減するのに有効である量である。
【0031】
-「薬学的に許容されるビヒクル」は、動物個体、好ましくはヒト個体に投与されたときに、いかなる有害な、アレルギー又は他の望ましくない反応も生じさせないビヒクルを指す。薬学的に許容されるビヒクルには、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。ヒト投与には、調製物は、米国のFDA(食品医薬品局)又は欧州連合のEMA(欧州医薬品庁)などの規制当局が要求する無菌性、発熱性、一般的な安全性、品質及び純度の基準を満たす必要がある。
【0032】
-「個体」は、動物個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体を指すことを意図する。目的の非ヒト哺乳動物個体の中で、イヌ、ネコ、モルモットなどのペット;ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サルなどの経済的に重要な動物を非限定的に挙げることができる。一実施形態では、個体は、医療を受けることを待っている/医療を受けている、又は医療処置の対象であった/対象である/対象になるであろう、又は脾臓の疾患、障害若しくは病態の発症についてモニターされる「患者」、すなわち温血動物、より好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、個体は、成人(例えば18歳以上のヒト対象)である。別の実施形態では、個体は、子供(例えば18歳未満のヒト対象)である。一実施形態では、個体は男性である。別の実施形態では、個体は女性である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
誘発された脾腫のいくつかのモデルを用いて得られたインビボ実験データによって、本発明者らは、驚くべきことに、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストが脾臓障害の処置のための単剤療法として使用できることを本明細書で示した。より具体的には、アルファ-2アドレナリン受容体のアンタゴニストの存在下又はアルファ-2アドレナリン受容体ノックアウトマウスではいかなる治療特性も存在しないことによって実証されるように、脾臓に対する治療効果を観察するために重要であるのはアゴニスト機構である。したがって、本発明者らは、脾臓障害の処置に対する利益を説明するために問題であるのは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの構造ではなく、むしろそれらの機能であることを実証した。加えて、本発明者らは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの脾臓の健康に対する有益な特性が、がん誘発性脾腫、ウイルス媒介性若しくはタンパク質媒介性免疫によって誘発される脾腫、又は骨髄線維症によって誘発される脾腫などの様々な種類の脾臓障害に適用可能であるという証拠を本明細書に提供した。
【0034】
一態様では、本発明は、脾臓障害の防止及び/又は処置に使用するためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストに関する。本発明の別の態様は、脾臓障害の処置に使用するためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストに関する。
【0035】
実際には、脾臓障害、特に脾腫は、当技術分野で公知の任意の適切な方法、又はそれから適合させた方法によって診断され得る。適切な方法の非限定的な例には、全血球計算(赤血球、白血球及び血小板の数)などの血液検査;脾臓の大きさを決定し、脾臓が他の臓器を圧迫させているかどうかを評価するための超音波又はコンピュータ断層撮影(CT)スキャン;脾臓を通る血流を追跡するための磁気共鳴画像法(MRI)が含まれる。
【0036】
実際には、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、脾臓障害の防止及び/又は処置に使用するための活性剤である。いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、脾臓障害の防止及び/又は処置において使用するための唯一の活性剤である。ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、脾臓障害の防止及び/又は処置のための単剤療法として投与され得る。いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、脾臓障害の処置のための単剤療法として投与され得る。
【0037】
本明細書で使用する用語「単剤療法」は、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストが脾臓障害の防止及び/又は処置における使用のための唯一の治療化合物を表すことを意味することを意図する。
【0038】
ある実施形態では、脾臓障害は脾腫である。
【0039】
いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、有機小分子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である。
【0040】
本明細書で使用する用語「有機小分子」は、モル重量が約1,000g/molより低い、好ましくは約750g/molより低い、より好ましくは約600g/molより低い有機分子を指すことを意図する。本発明の範囲内で、表現「約1,000g/molより低い」は、約1,000g/mol、950g/mol、900g/mol、850g/mol、800g/mol、750g/mol、700g/mol、650g/mol、600g/mol、550g/mol、500g/mol、450g/mol、400g/mol、350g/mol、300g/mol、250g/mol及び200g/molを包含する。実際には、分子のモル重量は、当技術分野で認められている任意の適切な方法、又はそこから適合された方法によって決定され得る。適切な方法の非限定的な例には、質量分析、核磁気共鳴(NMR)などが含まれる。
【0041】
本明細書で使用する用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって互いに連結された50アミノ酸残基未満のアミノ酸の線状ポリマーを指し;用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって互いに連結された少なくとも50アミノ酸残基の線状ポリマーを指し;用語「タンパク質」は、具体的には、1以上のペプチド又はポリペプチドから形成される機能的実体を指す。
【0042】
ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは有機小分子である。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記アゴニストは、アミトラズ、アプラクロニジン、ベタニジン、ブリモニジン、ブロモクリプチン、シラゾリン、クロニジン、デトミジン、デクスメデトミジン、ジピベフリン、ドロキシドパ、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、エトミデート、ファドルミジン、グアナベンズ、グアンファシン、グアノキサベンズ、グアネチジン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタンフェタミン、メタラミノール、メトキサミン、dl-メチルエフェドリン、メチルドパ、ミバゼロール、モクソニジン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、ペルゴリド、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、ラセピネフリン、リルメニジン、ロミフィジン、(R)-3-ニトロビフェニリン、シネフリン、タリペキソール、チザニジン、キシラジン、キシロメタゾリン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。
【0044】
本明細書で定義するように、アミトラズ、アプラクロニジン、ベタニジン、ブリモニジン、ブロモクリプチン、シラゾリン、クロニジン、デトミジン、デクスメデトミジン、ジピベフリン、ドロキシドパ、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、エトミデート、ファドルミジン、グアナベンズ、グアンファシン、グアノキサベンズ、グアネチジン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタンフェタミン、メタラミノール、メトキサミン、dl-メチルエフェドリン、メチルドパ、ミバゼロール、モクソニジン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、ペルゴリド、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、ラセピネフリン、リルメニジン、ロミフィジン、(R)-3-ニトロビフェニリン、シネフリン、タリペキソール、チザニジン、キシラジン、キシロメタゾリン、及びそれらの機能性誘導体は、有機小分子であることを理解されたい。
【0045】
ある実施形態では、前記アゴニストは、ブリモニジン、クロニジン、デクスメデトミジン、グアナベンズ、グアンファシン、ロフェキシジン、メチルドパ、ロミフィジン、チザニジン、キシラジン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。ある実施形態では、前記アゴニストは、ブリモニジン、クロニジン、グアファシン、ロフェキシジン、メチルドパ、ロミフィジン、チザニジン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。特に、ある実施形態では、前記アゴニストは、クロニジン、グアナベンズ又はロミフィジン、又はそれらの機能性誘導体である。
【0046】
いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、グアナベンズ、又はその機能性誘導体ではない。ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、ブロモクリプチン、又はその機能性誘導体ではない。いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、エルゴタミン、又はその機能性誘導体ではない。ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、デクスメデトミジン、又はその機能性誘導体ではない。いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、キシラジン、又はその機能性誘導体ではない。ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、dl-メチルエフェドリン、又はその機能性誘導体ではない。ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、シネフリン、又はその機能性誘導体ではない。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記アゴニストは、アミトラズ、アプラクロニジン、ベタニジン、ブリモニジン、ブロモクリプチン、シラゾリン、クロニジン、デトミジン、デクスメデトミジン、ジピベフリン、ドロキシドパ、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、エトミデート、ファドルミジン、グアンファシン、グアネチジン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタンフェタミン、メタラミノール、メトキサミン、dl-メチルエフェドリン、メチルドパ、ミバゼロール、モクソニジン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、ペルゴリド、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、ラセピネフリン、リルメニジン、ロミフィジン、(R)-3-ニトロビフェニリン、シネフリン、タリペキソール、チザニジン、キシラジン、キシロメタゾリン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。ある実施形態では、前記アゴニストは、ブリモニジン、クロニジン、デクスメデトミジン、グアンファシン、ロフェキシジン、メチルドパ、チザニジン、キシラジン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。
【0048】
ある実施形態では、前記アゴニストは、アミトラズ、アプラクロニジン、ベタニジン、ブリモニジン、シラゾリン、クロニジン、デトミジン、ジピベフリン、ドロキシドパ、エピネフリン、エチレフリン、エトミデート、ファドルミジン、グアンファシン、グアネチジン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタンフェタミン、メタラミノール、メトキサミン、メチルドパ、ミバゼロール、モクソニジン、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、ペルゴリド、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、ラセピネフリン、リルメニジン、ロミフィジン、(R)-3-ニトロビフェニリン、タリペキソール、チザニジン、キシロメタゾリン、及びそれらの機能性誘導体からなる群において選択される。
【0049】
特定の一実施形態では、前記アゴニストは、クロニジン又はロミフィジン、又はそれらの機能性誘導体である。特定の一実施形態では、前記アゴニストは、クロニジン又はその機能性誘導体である。
【0050】
ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である。
【0051】
いくつかの実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、抗体、抗体断片、脱フコシル化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ナノボディ、及びそれらの類似体からなる群において選択される。
【0052】
本明細書で使用する「抗体」は、免疫グロブリン(「Ig」と略記される)とも呼ばれ、脊椎動物の血液又は他の体液中に見出されるガンマグロブリンタンパク質を指すことを意図し、細菌及びウイルスなどの異物を特定及び中和するために免疫系によって使用される場合が多い。抗体は、Y字状に配置された重鎖及び軽鎖と呼ばれる2対のポリペプチド鎖からなる。このYの2つの先端は、抗原に結合し、それらを不活性化する領域である。本明細書で使用する用語「抗体」(Ab)には、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片が含まれる。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において「抗体」と互換的に使用される。
【0053】
本明細書で使用する「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号;Zapataら,Protein Eng.1995;8(10):1057-1062参照);一本鎖抗体分子;抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。完全長抗体と共通する定性的生物活性を有する化合物である抗体の「機能性断片又は類似体」を指す場合がある。例えば、抗IgE抗体の機能性断片又は類似体は、そのような分子が高親和性受容体Fc[エプシロン]RIに結合する能力を有するのを防止するか又はそのような能力を実質的に低減させるように、IgE免疫グロブリンに結合することができる断片又は類似体である。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映する呼称である残りの「Fc」断片を生成する。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)と共にL鎖全体と、1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、2価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することができる単一の大きなF(ab’)2断片を生成する。Fab'断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域からの1以上のシステインを含む追加の数残基を有することによってFab断片と異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab'の本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は、もともと、それらの間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生成された。抗体断片の他の化学結合も公知である。
【0054】
本明細書で使用する「脱フコシル化抗体」は、コアフコシル化を欠く抗体を指す。実際のところ、ほとんど全てのIgG型抗体は、そのFc部分においてN-グリコシル化されている。典型的には、フコース残基は、これらの複合型N-グリカンの最初のN-アセチルグルコサミンに結合している。言い換えると、「脱フコシル化抗体」は、N-グリカンを保有していない抗体を指す。
【0055】
本明細書で使用する用語「ダイアボディ」は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間対形成が達成され、2価の断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片を生じるように、VHドメインとVLドメインとの間の短いリンカー(約5~10残基)を有するsFv断片を構築することによって調製された小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP0404097;WO 93/11161;及びHollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1993;90:6444-6448の中でより詳細に説明されている。
【0056】
本明細書で使用する「トリアボディ」は、各々が隣接ポリペプチドからのVLドメインと対を形成した1つのポリペプチドからのVHドメインからなる、3つのFvヘッドを有する抗体を指すことを意図する。
【0057】
本明細書で使用する「ナノボディ」は、重鎖のみからなり、したがって軽鎖を欠く機能性抗体を指す。これらの重鎖のみの抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)及び2つの定常ドメイン(CH2、CH3)を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、アルファ-1アドレナリン受容体のアゴニストではない。ある実施形態では、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、1つのベータアドレナリン受容体、特にベータ-1アドレナリン受容体、ベータ-2アドレナリン受容体及び/又はベータ-3アドレナリン受容体のアゴニストではない。
【0059】
ある実施形態では、前記アゴニストは、血液/脳関門を通過しない。
【0060】
いくつかの実施形態では、血液/脳関門を通過しないアゴニストは、アプラクロニジン、ST-91(N-(2,6-ジエチルフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-アミン塩酸塩とも呼ばれる)、コルバドリン(4-(2-アミノ-1-ヒドロキシプロピル)ベンゼン-1,2-ジオール、又はα-メチルノルエピネフリンとも呼ばれる)、及びナファゾリンからなる群において選択される。
【0061】
実際には、化合物、例えば、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストが血液/脳関門を通過するかどうかを評価することは、当技術分野で認められている任意の適切な方法、又はそこから適合させた方法によって行われ得る。例示的には、この評価は、血液/脳関門透過率の2つのゴールドスタンダード実験手段、すなわち、(1)脳内の化合物の濃度を血液中の濃度で割った値を測定することを意図したlogBB;及び(2)透過率と表面積の積を測定するlogPSのうちの1つによって行われ得る。
【0062】
ある実施形態では、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの機能性誘導体も包含する。
【0063】
本明細書で使用する用語「機能性誘導体」は、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストに言及する場合、参照のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト、すなわち、前記アゴニストがアルファ-2アドレナリン受容体に特異的に結合することを示す実験データが存在するアゴニストに、構造的及び機能的の両方で関係する化合物を指すことを意図する。
【0064】
実際には、本発明によるアゴニストの機能性誘導体は、特にアルキル基、アリール基、アミン基、アミド基、スルフィド基、ブロミド基、クロリド基、フルオリド基、カルボニル(C=0)基、ホルミル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、アルコキシ(O-R)基からなる群から選択される1以上の置換基(複数可)を保有するアゴニストである。他の基には、さらに、アルケニル、アルキニル、カルボキサミド、第1級アミン、R2NH、R3N、R4N+、アジド、アゾ(ジイミド)、ベンジル、炭酸エステル、カルボキシレート、カルボキシル、シアネート、RSCN、ジスルフィド、エーテル、エステル、ヒドロペルオキシ、第一級ケチミン、RC(=NR)R’、RC(=NH)H、RC(=NR’)H、イミド、イソシアニド、イソシアネート、RNCS、ニトレート、ニトリル、ニトロソオキシ、ニトロ、ニトロソ、ペルオキシ、フェニル、ホスフィノ、ホスフェート、ホスホノ、ピリジル、スルホニル、スルホ、スルフィニル、スルフヒドリル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ハロホルミル、カルボアルコキシ、ヘミアセタール、ヘミケタール、アセタール、ケタール、オルトエステル、メチレンジオキシ、オルト炭酸エステル、カルボン酸無水物、イミン、アゾ(ジイミド)、イソニトリル、オキシム、カルバメート、スルフィド、スルフィノ、チオシアネート、イソチオシアネート、カルボノチオイル、カルボチオO酸、チオールエステル、チオノエステル、カルボジチオ酸、カルボジチオ、ボロノ、ボロネート、ボリノ、ボリネート、アルキルリチウム、アルキルマグネシウムハライド、アルキルアルミニウム、シリルエーテル基、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。実際には、R及びR’基は、非限定的には、アルキル、アルケニル、アルキニル基を指す。機能性誘導体は、それ自体がアルファ-2アドレナリン受容体を活性化する能力を有し、したがってアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストであることを理解されたい。
【0065】
いくつかの実施形態では、脾臓障害は、哺乳動物の脾臓障害、特に非ヒト脾臓障害である。いくつかの実施形態では、脾臓障害は、ヒトの脾臓障害である。一態様では、ヒトにおける脾臓障害は脾腫である。
【0066】
ある実施形態では、前記脾臓障害、特に脾腫は、脾機能亢進症、がん、肝障害、嚢胞性線維症、炎症性疾患、微生物感染症、溶血性貧血などからなる群において選択される障害に関連する。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記脾臓障害、特に脾腫は、血液のがん又は固形がんに関連する。
【0068】
本明細書で使用する用語「血液のがん(blood cancer)」は、「血液学のがん(hematologic cancer)」とも称され、血液細胞、特に白血球の制御不能な増殖を伴う任意のがんを包含する。血液のがんには、骨髄線維症などの骨髄がん;白血病;リンパ腫(ホジキン及び非ホジキンリンパ腫);及び骨髄腫が含まれる。
【0069】
ある実施形態では、前記がんは、骨髄線維症、ホジキン病、免疫芽球性リンパ節腫脹、リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性白血病などからなる群において選択される血液のがんである。いくつかの実施形態では、血液のがんは骨髄線維症である。
【0070】
本明細書で使用する用語「固形がん」は、塊を形成することなく組織にびまん性に浸潤するがん(又は悪性腫瘍)とは対照的に、別個の腫瘍塊を形成する任意のがん(悪性腫瘍とも呼ばれる)を包含する。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記固形がんは、副腎がん、胆管がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、消化管間質腫瘍、膠芽腫、頭頸部がん、肝細胞がん、腎臓がん、肺がん、黒色腫、メルケル細胞皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄増殖性障害、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、唾液腺がん、肉腫、扁平上皮癌、精巣がん、甲状腺がん、尿路上皮癌、ブドウ膜黒色腫などからなる群から選択される。ある実施形態では、固形がんは、黒色腫、乳癌、結腸癌、腎癌、副腎皮質癌腫、精巣奇形腫、皮膚肉腫、線維肉腫、肺癌、腺癌、肝臓癌、神経膠芽腫、前立腺癌、膵臓癌などからなる群から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記固形がんは、癌腫、黒色腫、卵巣がんなどからなる群において選択される。
【0073】
ある実施形態では、前記炎症性疾患は、関節リウマチ、狼瘡、サルコイドーシスなどからなる群において選択される。一実施形態では、脾臓障害、特に脾腫は、肝硬変誘発性脾腫ではない。一実施形態では、脾臓障害、特に脾腫は、関節炎誘発性脾腫ではない。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記微生物感染は、マラリア、感染性単核球症などからなる群において選択される。一実施形態では、脾臓障害、特に脾腫は、寄生虫誘発性脾腫ではなく、好ましくは、住血吸虫症誘発性脾腫ではない。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記脾臓障害、特に脾腫は、球状赤血球症、アミロイドーシス、鎌状赤血球症、特発性血小板減少性紫斑病、ヘモグロビン症、ゴーシェ病及びニーマン・ピック病、組織球症などからなる群において選択される障害に関連する。一実施形態では、脾臓障害、特に脾腫は、肥満又は肥満関連疾患に関連しない。一実施形態では、脾臓障害、特に脾腫は、脂肪肝に関連しない。一実施形態では、脾臓障害、特に脾腫は、メタボリック症候群に関連しない。
【0076】
本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの治療的使用は、脾臓障害の防止を含まず、脾臓を活性化及び/又は正常にするための使用を意図するものではないことを理解されたい。本明細書で使用する用語「脾臓を活性化及び/又は正常にする」は、健康な、罹患していない脾臓の生理学的機能を維持又は刺激する作用を指す。
【0077】
実際には、本発明によるアゴニストの総1日用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得る。任意の特定の対象についての具体的な用量は、処置されるべき脾臓障害、特に脾腫の重症度などの様々な要因に依存する。例示的には、これらの要因には、年齢、体重、一般的な健康状態、患者の性別及び食事、並びに医学分野で周知のさらなる要因が含まれる。
【0078】
ある実施形態では、前記アゴニストは、約0.0001mg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲の用量で投与され得る。
【0079】
本発明の範囲内で、用語「約0.0001mg/kg体重~約100mg/kg体重」は、約0.0001、0.0002、0.0003、0.0004、0.0005、0.0006、0.0007、0.0008、0.0009、0.001、0.002、0.0003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95及び100mg/kg体重を包含する。
【0080】
ある実施形態では、用量は、約0.0001mg/kg体重~約30mg/kg体重、好ましくは約0.0001mg/kg体重~約15mg/kg体重、より好ましくは約0.0001mg/kg体重~約7mg/kg体重の範囲である。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg体重~約30mg/kg体重、好ましくは約0.01mg/kg体重~約15mg/kg体重、より好ましくは約0.01mg/kg体重~約7mg/kg体重の範囲である。
【0081】
ある実施形態では、1日用量は、約0.0001mg/日/kg体重~約100mg/日/kg体重、特に約0.001mg/日/kg体重~約30mg/日/kg体重、好ましくは約0.001mg/日/kg体重~約15mg/日/kg体重、より好ましくは約0.001mg/日/kg体重~約7mg/日/kg体重の範囲である。ある実施形態では、1日用量は、約0.01mg/日/kg体重~約100mg/日/kg体重、特に約0.01mg/日/kg体重~約30mg/日/kg体重、好ましくは約0.01mg/日/kg体重~約15mg/日/kg体重、より好ましくは約0.01mg/kg/日の体重~約7mg/kg/日の体重の範囲である。
【0082】
ある実施形態では、本発明によるアゴニストは、経口、全身、非経口、局所、吸入スプレーによって、直腸内、鼻腔内、頬側、膣内、又は埋め込まれた医療デバイスを介して投与され得る又は投与され得る。いくつかの実施形態では、本発明によるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、全身投与され得るか、又は全身投与され得る。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、本発明によるアゴニストは、経口投与に好適な形態で製剤化される。そのため、一実施形態では、前記アゴニストは、例えば粉末、錠剤、カプセルなどの形態で、又は持続放出若しくは徐放用に製剤化された錠剤として対象に経口投与され得る。経口投与に適する形態の非限定的な例には、例えば、液体、ペースト又は固体組成物、より具体的には錠剤、持続放出又は徐放用に製剤化された錠剤、カプセル剤、丸剤、糖衣錠、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁剤が含まれる。
【0084】
別の実施形態によれば、本発明によるアゴニストは、注射に適合した形態にある。例示的には、前記アゴニストは、そのため、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸膜内、皮下、経皮注射又は注入によって対象に注射される。本発明によるアゴニストの滅菌注射形態は、溶液、水性又は油性懸濁液を含み得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて当技術分野で公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、無毒の薬学的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来から採用されている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無味固定油を使用してもよい。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンにおいてオリーブ油又はヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油の溶液又は懸濁液はまた、乳濁液及び懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の製剤において一般的に使用されるカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤などの長鎖アルコール希釈剤又は分散剤を含み得る。薬学的に許容される固体、液体、又は他の剤形の製造において一般的に使用されるTweens、Spansなどの他の一般的に使用される界面活性剤及び他の乳化剤若しくはバイオアベイラビリティーエンハンサーも、製剤化の目的のために使用され得る。
【0085】
別の実施形態によれば、本発明によるアゴニストは、局所投与に適合した形態にある。局所投与に適合した形態の例には、限定されないが、液体、ペースト又は固体組成物、より具体的には水溶液、滴剤、分散液、スプレー、マイクロカプセル、ナノ粒子、微粒子、ポリマーパッチ、又は制御放出パッチなどが含まれる。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記アゴニストは、抗菌剤、抗炎症剤、化学療法、免疫療法、放射線など、及びそれらの組み合わせからなる群において選択される一次又は二次治療と共に投与され得る。
【0087】
本明細書で使用する、抗菌剤には、抗生物質、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤が含まれる。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗生物質であり、特に、例えば、アンピシリン、アモキシシリン及びジクロキサシリンなどのペニシリン;例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、エラバサイクリン、ミノサイクリン、オマダサイクリン及びテトラサイクリンなどのテトラサイクリン、;例えば、セファクロル、セフジニル、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、及びセフロキシムなどのセファロスポリン;例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン及びモキシフロキサシンなどのキノロン;例えば、クリンダマイシン及びリンコマイシンなどのリンコマイシン;例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン及びエリスロマイシンなどのマクロライド;例えば、スルファサラジン、スルファメトキサゾール及びトリメトプリムなどのスルホンアミド;例えば、ダルババンシン、オリタバンシン、テラバンシン及びバンコマイシンなどの糖ペプチド;例えば、アミカシン、ゲンタマイシン及びトブラマイシンなどのアミノグリコシド;例えば、ドリペネム、エルタペネム、メロペネムなどのカルバペネムなどからなる群において選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗菌剤は、抗寄生虫剤であり、特にニタゾキサニド、メラルソプロール、アトバコン、プログアニル、キニーネ、アルテスネート、アルテミシニン、エフロルニチン、メトロニダゾール、チニダゾール、ミルテフォシン、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、チアベンダゾール、ジエチルカルバマジン、イベルメクチン、ニクロサミド、プラジカンテル、アルベンダゾール、プラジカンテル、リファンピン、アンホテリシンB、フマギリンなどからなる群において選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗菌剤は抗ウイルス剤であり、特にアバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アンプリゲン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル(balavir)、バロキサビルマルボキシル、ビクタルビ、ボセプレビル、シドフォビル、コビシスタット、コンビビル、ダクラタスビル、ダルナビル、デラビルジン、デシコビ、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、ドラビリン、エコリエベル(ecoliever)、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エトラビリン、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イバリズマブ、イドクスウリジン、イミキモド、イムノビル、インジナビル、イノシン、インターフェロンI型、インターフェロンII型、インターフェロンIII型、ラミブジン、レテルモビル、ロピナビル、ロビリド、マラビロック、メチサゾン、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ニタゾキサニド、ノルビン、オセルタミビル、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ピラミジン、ラルテグラビル、レムデシビル、リバビリン、リルピビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、シメプレビル、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テルビブジン、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、トルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジンなどからなる群において選択される。
【0091】
抗炎症剤の非限定的な例には、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトリコキシブ、イブプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカムなどが含まれる。
【0092】
本明細書で使用する用語「化学療法」は、急速に増殖する細胞、特にがん細胞を殺滅するために化学物質を使用する薬物処置を指す。
【0093】
化学療法剤の非限定的な例には、アカラブルチニブ、アレクチニブ、アレムツズマブ、アナストロゾール、アバプリチニブ、アベルマブ、ベリノスタット、ベバシズマブ、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ボスチニブ、ブリガチニブ、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、コパンリシブ、シタラビン、ダウノルビシン、デシタビン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンコラフェニブ、エルダフィチニブ、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、ロイプロリド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メトトレキセート、マイトマイシン、ネララビン、パクリタキセル、パミドロネート、パノビノスタット、プララトレキセート、プレドニゾロン、オファツムマブ、リツキシマブ、テモゾロミド、トポテカン、トシツモマブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ビンクリスチン、ボリノスタット、ザヌブルチニブなどが含まれる。
【0094】
本明細書で使用する用語「免疫療法」は、特異的標的に対する、例えば、ウイルス、細菌、真菌若しくは原生動物寄生虫などの感染性病原体に対する、又はがん細胞に対する免疫応答を誘導及び/又は増強することを目的とした療法を指す。本明細書で使用する免疫療法の例には、限定されないが、防止的及び治療的ワクチン接種などのワクチン接種;免疫細胞、特にT細胞(アルファベータ(αβ)T細胞若しくはガンマデルタT細胞など)又はNK細胞の養子移植;チェックポイント阻害剤;チェックポイントアゴニスト;抗体が含まれる。
【0095】
いくつかの実施形態では、免疫療法はがん免疫療法である。本明細書で使用する用語「がん免疫療法」は、がんの処置に使用される免疫療法を指し、前記免疫療法は、がん細胞に対する対象の免疫応答を誘導及び/又は刺激することを目的として対象の免疫応答を調節する。一実施形態では、がん免疫療法は、免疫細胞、特にT細胞(アルファベータ(αβ)T細胞若しくはガンマデルタT細胞など)、NK細胞若しくはNK T細胞の養子移植を含むか、又はそれらからなる。一実施形態では、がん免疫療法は、チェックポイント阻害剤の投与を含むか、又はそれからなる。一実施形態では、がん免疫療法は、チェックポイントアゴニストの投与を含むか、又はそれからなる。一実施形態では、がん免疫療法は、抗体の投与を含むか、又はそれからなる。一実施形態では、がん免疫療法は、治療用抗がんワクチンの投与を含むか、又はそれからなる。
【0096】
ある実施形態では、前記免疫療法は、免疫細胞の養子移入、チェックポイント阻害剤、ワクチン接種など、及びそれらの組み合わせを含む。
【0097】
本明細書で使用する、細胞の養子移入又は養子細胞療法(又はACT)は、対象への免疫細胞の移入、例えば注入として定義される。がんの処置として、対象への免疫細胞の養子移入は、がん細胞に対する対象の免疫応答を増強することを目的とする。
【0098】
一実施形態では、移入される免疫細胞は、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞である。一実施形態では、移入される免疫細胞は、T細胞、特にCD8+ T細胞、及び/又はナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0099】
一実施形態では、移入される免疫細胞は細胞傷害性細胞である。細胞傷害性細胞の例には、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD8+ T細胞、及びナチュラルキラー(NK)T細胞が含まれる。
【0100】
一実施形態では、移入される免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0101】
一実施形態では、移入される免疫細胞は、T細胞、特にエフェクターT細胞である。エフェクターT細胞の例には、CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞が含まれる。一実施形態では、移入される免疫細胞は、アルファベータ(αβ)T細胞である。別の実施形態では、移入される免疫細胞は、ガンマデルタ(γδ)T細胞である。一実施形態では、移入される免疫細胞は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、又はナチュラルキラー(NK)T細胞であり、好ましくは、移入されるT細胞はCD8+ T細胞である。
【0102】
一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、抗原特異的免疫細胞である。一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、抗原特異的免疫細胞であり、前記抗原は、がん細胞によって特異的に及び/又は豊富に発現される。一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、腫瘍特異的免疫細胞であり、言い換えれば、本明細書上記の移入される免疫細胞は、前記がん細胞若しくは腫瘍細胞によって特異的に及び/又は豊富に発現される抗原を介してがん細胞又は腫瘍細胞を特異的に認識する。一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、腫瘍特異的エフェクターT細胞である。一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、腫瘍特異的CD8+エフェクターT細胞、特に腫瘍特異的細胞傷害性CD8+ T細胞である。一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、腫瘍特異的細胞傷害性細胞である。一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、腫瘍特異的NK細胞である。
【0103】
腫瘍特異的抗原、すなわち、がん細胞によって特異的及び/又は豊富に発現する抗原の例には、限定されないが、ネオ抗原(新規抗原又は変異抗原とも呼ばれる)、9D7、ART4、β-カテニン、BING-4、Bcr-abl、BRCA1/2、カルシウム活性化クロライドチャネル2、CDK4、CEA(がん胎児性抗原)、CML66、サイクリンB1、CypB、EBV(Eエプスタイン・バーウイルス)関連抗原(LMP-1、LMP-2、EBNA1及びBARF1など)、EGFRvIII、Ep-CAM、EphA3、フィブロネクチン、Gp100/pmel17、Her2/neu、HPV(ヒトパピローマウイルス)E6、HPV E7、hTERT、IDH1、IDH2、未熟ラミニン受容体、MC1R、Melan-A/MART-1、MART-2、メソセリン、MUC1、MUC2、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NY-ESO-1/LAGE-2、p53、PRAME、前立腺特異抗原(PSA)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、Ras、SAP-1、SART-I、SART-2、SART-3、SSX-2、サバイビン、TAG-72、テロメラーゼ、TGF-βRII、Trp-1/-2、チロシナーゼ、WT1、BAGEファミリーの抗原、CAGEファミリーの抗原、GAGEファミリーの抗原、MAGEファミリーの抗原、SAGEファミリーの抗原、及びXAGEファミリーの抗原が含まれる。
【0104】
本明細書で使用するネオ抗原(新規抗原又は変異抗原とも呼ばれる)は、腫瘍によって獲得された体細胞変異又は遺伝子再構成によって影響を受けるタンパク質に由来する抗原に対応する。ネオ抗原は、個々の対象に特異的であるため、個別化免疫療法を開発するための標的を提供する。ネオ抗原の例には、例えば、限定されないが、CDK4のR24C変異体、CDK4のR24L変異体、コドン12の変異したKRAS、変異p53、BRAFのV600E変異体及びIDH1のR132H変異体が含まれる。
【0105】
一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、CTAのクラス(がん/精巣抗原、MAGE型抗原としても知られる)、ネオ抗原のクラス及びウイルス抗原のクラスを含むか、又はそれらからなる群から選択される腫瘍抗原に特異的である。
【0106】
本明細書で使用するCTAのクラスは、腫瘍細胞では発現されるが、男性生殖細胞系列細胞を除く正常組織では発現されない遺伝子によってコードされる抗原に対応する。CTAの例には、限定されないが、MAGE-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-C2、NY-ESO-1、PRAME及びSSX-2が含まれる。
【0107】
本明細書で使用するウイルス抗原のクラスは、ウイルス発癌性タンパク質に由来する抗原に対応する。ウイルス抗原の例には、限定されないが、E6及びE7などのHPV(ヒトパピローマウイルス)関連抗原、並びにLMP-1、LMP-2、EBNA1及びBARF1などのEBV(エプスタイン-バーウイルス)関連抗原が含まれる。
【0108】
一実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、自己免疫細胞、特に自己T細胞である。別の実施形態では、本明細書上記の移入される免疫細胞は、同種異系(又は同種(allogenous))免疫細胞、特に同種異系NK細胞である。
【0109】
例えば、自己T細胞は、対象から単離された抗原特異的T細胞の増殖によって、又は遺伝子工学による対象のT細胞のリダイレクションのいずれかによってエクスビボで生成され得る。
【0110】
一実施形態では、注入される免疫細胞は、対象に注入される前に、エクスビボで、特にRNA干渉(RNAiとしても知られる)によって改変される。
【0111】
対象からT細胞、特に抗原特異的T細胞、例えば、腫瘍特異的T細胞を単離する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Rosenberg & Restifo,2015,Science 348,62-68;Prickettら,2016,Cancer Immunol Res 4,669-678;又はHinrichs & Rosenberg,2014,Immunol Rev 257,56-71)。T細胞をエクスビボで増大させる方法は、当技術分野において周知である(例えば、Rosenberg & Restifo,2015,Science 348,62-68;Prickettら,2016,Cancer Immunol Res 4,669-678;又はHinrichs & Rosenberg,2014,Immunol Rev 257,56-71)。注入前処置を含む対象におけるT細胞の注入のプロトコールは、当技術分野において周知である(例えば、Rosenberg & Restifo,2015,Science 348,62-68;Prickettら,2016,Cancer Immunol Res 4,669-678;又はHinrichs & Rosenberg,2014,Immunol Rev 257,56-71)。
【0112】
いくつかの実施形態では、前記免疫細胞は、T細胞、特にCD8+ T細胞及びCAR T細胞;ナチュラルキラー(NK)細胞、特にCAR NK細胞など;及びそれらの組み合わせを含む群において選択される。
【0113】
本明細書で使用するCAR免疫細胞療法は、養子細胞療法であり、移入される細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作されたT細胞又はNK細胞などの本明細書上記の免疫細胞である。がんの処置として、対象へのCAR免疫細胞の養子移入は、がん細胞に対する対象の免疫応答を増強することを目的とする。
【0114】
CARは、単一の融合分子又はいくつかの分子中の1以上のシグナル伝達ドメインに関連する標的化部分からなる合成受容体である。一般に、CARの結合部分は、フレキシブルリンカーによって結合されたモノクローナル抗体の軽鎖及び可変断片を含む一本鎖抗体(scFv)の抗原結合ドメインからなる。受容体又はリガンドドメインに基づく結合部分の使用も成功している。第一世代のCARのシグナル伝達ドメインは、通常、CD3ゼータ又はFc受容体ガンマ鎖の細胞質領域に由来する。第一世代のCARは、T細胞細胞傷害性を首尾よくリダイレクトすることが示されているが、インビボでの長期にわたる増大及び抗腫瘍活性を提供することができなかった。そのため、CAR改変T細胞の生存率を増強し、増殖を増加させるために、CD28、OX-40(CD134)、及び4-1BB(CD137)を含む共刺激分子からのシグナル伝達ドメインが単独で(第2世代)又は組み合わされて(第3世代)付加されている。
【0115】
そのため、一実施形態では、本明細書上記の移入されるT細胞は、CAR T細胞である。CARの発現は、がん細胞の表面で発現される抗原などの選択された抗原に対してT細胞がリダイレクトされることを可能にする。一実施形態では、移入されるCAR T細胞は、腫瘍特異的抗原を認識する。
【0116】
別の実施形態では、本明細書上記の移入されるNK細胞は、CAR NK細胞である。CARの発現は、がん細胞の表面で発現される抗原などの選択された抗原に対してNK細胞がリダイレクトされることを可能にする。一実施形態では、移入されるCAR NK細胞は、腫瘍特異的抗原を認識する。
【0117】
腫瘍特異的抗原の例は、本明細書上記で言及される。
【0118】
一実施形態では、移入されるCAR T細胞又はCAR NK細胞は、EGFR及び特に、EGFRvIII、メソセリン、PSMA、PSA、CD47、CD70、CD133、CD171、CEA、FAP、GD2、HER2、IL-13Ra、αvβ6インテグリン、ROR1、MUC1、GPC3、EphA2、CD19、CD21、及びCD20を含むか又はそれらからなる群から選択される腫瘍特異的抗原を認識する。
【0119】
一実施形態では、本明細書上記のCAR免疫細胞は、自己CAR免疫細胞、特に自己CAR T細胞である。別の実施形態では、本明細書上記のCAR免疫細胞は、同種異系(又は同種)CAR免疫細胞、特に同種異系CAR NK細胞である。
【0120】
本明細書で使用するチェックポイント阻害剤療法は、対象への少なくとも1つのチェックポイント阻害剤の投与として定義される。
【0121】
チェックポイント阻害剤(CPI、免疫チェックポイント阻害剤又はICIとも呼ばれることがある)は、T細胞上で発現される抑制性受容体とそれらのリガンドとの間の相互作用を遮断する。がんの処置として、チェックポイント阻害剤療法は、腫瘍細胞が発現するリガンドによってT細胞上で発現される抑制性受容体の活性化を防止することを目的としている。チェックポイント阻害剤療法は、そのため、腫瘍中に存在するT細胞、すなわち、腫瘍浸潤T細胞の阻害を防止し、このように、腫瘍細胞に対する対象の免疫応答を増強することを目的とする。
【0122】
チェックポイント阻害剤の例には、限定されないが、CD279(分化抗原群279)としても知られる細胞表面受容体PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)の阻害剤、CD274(分化抗原群274)又はB7-H1(B7ホモログ1)としても知られるリガンドPD-L1(プログラム死リガンド1)の阻害剤;CD152(分化抗原群152)としても知られる細胞表面受容体CTLA4又はCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)の阻害剤;IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)の阻害剤及びTDO(トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ)の阻害剤;CD223(分化抗原群223)としても知られるLAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)の阻害剤;HAVCR2(A型肝炎ウイルス細胞受容体2)又はCD366(分化抗原群366)としても知られるTIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3)の阻害剤;VSIG9(V-Setと免疫グロブリンドメイン含有タンパク質9)又はVSTM3(V-Setと膜貫通ドメイン含有タンパク質3)としても知られるTIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)の阻害剤;CD272(分化抗原群272)としても知られるBTLA(B及びTリンパ球アテニュエーター)の阻害剤;CD66a(分化抗原群66a)としても知られるCEACAM-1(癌胎児性抗原関連細胞接着分子1)の阻害剤が含まれる。
【0123】
一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、PD-1の阻害剤、PD-L1の阻害剤、CTLA4の阻害剤及びそれらの任意の混合物を含むか又はそれらからなる群から選択される。
【0124】
一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、ABBV-181、JNJ-63723283、BI 754091、MAG012、TSR-042、AGEN2034、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、LY3300054、イピリムマブ、トレメリムマブ、及びそれらの任意の混合物を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0125】
一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、ABBV-181、JNJ-63723283、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、及びそれらの任意の混合物を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0126】
一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、抗PD-1とも呼ばれるPD-1の阻害剤である。PD-1の阻害剤は、PD-1を標的とする抗体、特にモノクローナル抗体、及び小分子阻害剤などの非抗体阻害剤を含み得る。PD-1の阻害剤の例には、限定されないが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、ABBV-181、JNJ-63723283、BI 754091、MAG012、TSR-042、及びAGEN2034が含まれる。ペムブロリズマブは、MK-3475、MK03475、ランブロリズマブ、又はSCH-900475としても知られている。ペムブロリズマブの商品名はKeytruda(登録商標)である。ニボルマブは、ONO-4538、BMS-936558、MDX1106、又はGTPL7335としても知られている。ニボルマブの商品名はOpdivo(登録商標)である。セミプリマブは、REGN2810又はREGN-2810としても知られている。チスレリズマブは、BGB-A317としても知られている。スパルタリズマブは、PDR001又はPDR-001としても知られている。一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、ABBV-181、JNJ-63723283、BI 754091、MAG012、TSR-042、AGEN2034、及びそれらの任意の混合物を含むか、又はそれらからなる群から選択される。一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、ABBV-181、JNJ-63723283、及びそれらの任意の混合物を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0127】
一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、抗PD-L1とも呼ばれるPD-L1の阻害剤である。PD-L1の阻害剤は、PD-L1を標的とする抗体、特にモノクローナル抗体、及び小分子阻害剤などの非抗体阻害剤を含み得る。PD-L1の阻害剤の例には、限定されないが、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びLY3300054が含まれる。アベルマブは、MSB0010718C、MSB-0010718C、MSB0010682、又はMSB-0010682としても知られている。アベルマブの商品名はBavencio(登録商標)である。アテゾリズマブは、MPDL3280A(クローンYW243.55.S70)、MPDL-3280A、RG-7446又はRG7446としても知られている。アテゾリズマブの商品名はTecentriq(登録商標)である。デュルバルマブは、MEDI4736又はMEDI-4736としても知られている。デュルバルマブの商品名はImfinzi(登録商標)である。一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、LY3300054、及びそれらの任意の混合物を含むか、又はそれらからなる群から選択される。一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びそれらの任意の混合物を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0128】
一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4とも呼ばれるCTLA-4の阻害剤である。CTLA-4の阻害剤は、CTLA-4を標的とする抗体、特にモノクローナル抗体、及び小分子阻害剤などの非抗体阻害剤を含み得る。CTLA-4の阻害剤の例には、限定されないが、イピリムマブ及びトレメリムマブが含まれる。イピリムマブは、BMS-734016、MDX-010、又はMDX-101としても知られている。イピリムマブの商品名はYervoy(登録商標)である。トレメリムマブは、チシリムマブ、CP-675、又はCP-675,206としても知られている。一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、及びそれらの任意の混合物を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0129】
一実施形態では、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤は、それぞれ抗IDO又は抗TDOとも呼ばれるIDOの阻害剤又はTDOの阻害剤である。IDOの阻害剤の例には、限定されないが、1-メチル-D-トリプトファン(インドキシモドとしても知られる)、エパカドスタット(INCB24360としても知られる)、ナボキシモド(IDO-IN-7又はGDC-0919としても知られる)、リンロドスタット(BMS-986205としても知られる)、PF-06840003(EOS200271としても知られる)、TPST-8844、及びLY3381916が含まれる。
【0130】
本明細書で使用する抗体療法は、対象への少なくとも1つの抗体の投与として定義される。
【0131】
がんの処置として、抗体療法は、特に、破壊のためにがん細胞を標的化することによって、腫瘍中に存在するT細胞の活性化を刺激することによって、又は腫瘍中に存在するT細胞の阻害を防止することによって、又はがん細胞の増殖若しくは拡散を阻害することによってがん細胞に対する対象の免疫応答を増強することを目的とする。
【0132】
本明細書で使用する「抗体療法」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重鎖抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、抗体断片、抗体ドメイン、抗体模倣体又は二重特異性抗体などの多重特異性抗体の投与を含み得る。
【0133】
一実施形態では、抗体は、破壊のためにがん細胞又は腫瘍細胞を標的化するための抗体であるか又はそれを目的とする。
【0134】
破壊のためにがん細胞又は腫瘍細胞を標的とする抗体、特にモノクローナル抗体の例には、腫瘍特異的抗体、特に腫瘍特異的モノクローナル抗体が含まれる。腫瘍特異的抗体の例には、限定されないが、がん細胞又は腫瘍細胞の細胞表面マーカーを標的とする抗体、がん細胞若しくは腫瘍細胞の増殖又は拡散に関与するタンパク質を標的とする抗体が含まれる。
【0135】
一実施形態では、抗体は、腫瘍内に存在するT細胞の活性化を刺激するための抗体であるか又はそれを目的とする。
【0136】
腫瘍内に存在するT細胞の活性化を刺激する抗体、特にモノクローナル抗体の例には、限定されないが、本明細書上記の抗CD137抗体及び抗OX40抗体が含まれる。
【0137】
一実施形態では、抗体は、腫瘍内に存在するT細胞の阻害を防止するための抗体であるか又はそれを目的とする。
【0138】
腫瘍内に存在するT細胞の阻害を防止する抗体、特にモノクローナル抗体の例には、限定されないが、本明細書上記の抗PD-1抗体(ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、及びスパルタリズマブなど)、抗PD-L1抗体(アベルマブ、アテゾリズマブ、及びデュルバルマブなど)並びに抗CTLA-4抗体(イピリムマブ及びトレメリムマブなど)が含まれる。
【0139】
一実施形態では、抗体は、がん細胞の増殖又は拡散を阻害するための抗体であるか又はそれを目的とする。
【0140】
がん細胞の増殖又は拡散を阻害する抗体の例には、限定されないが、抗HER2抗体(トラスツズマブなど)が含まれる。
【0141】
本明細書で使用する用語「ワクチン接種」は、対象においてがん細胞に対する標的化免疫応答を誘導及び/又は増強することを意味する物質又は物質の群を含む調製物(すなわち、ワクチン)の使用を指す。予防的ワクチン接種は、対象が特定の疾患を有することを防止するために、又はその疾患の軽度の症例のみを有するように使用される。治療的ワクチン接種は、対象における特定の疾患、例えばがんを処置することを意図している。例えば、治療用抗がんワクチンは、腫瘍関連抗原又は複数の腫瘍関連抗原を発現するがん細胞に対する細胞媒介性免疫応答、特にT細胞免疫応答を誘導及び/又は増強することを目的とする腫瘍関連抗原又は複数の腫瘍関連抗原を含み得る。
【0142】
本明細書で使用する「治療用ワクチン」は、少なくとも1つの腫瘍特異的抗原(例えば、合成長鎖ペプチド若しくはSLP)、又は前記腫瘍特異的抗原をコードする核酸の投与;腫瘍細胞に選択的に侵入及び/若しくは腫瘍細胞の中で複製する組換えウイルスベクターの投与;腫瘍細胞の投与;並びに/又は腫瘍特異的抗原を提示し、これらの抗原に対する免疫応答を誘発するように操作された免疫細胞(例えば、樹状細胞)の投与として定義される。
【0143】
がんの処置として、治療用ワクチンは、腫瘍細胞に対する対象の免疫応答を増強することを目的とする。
【0144】
腫瘍細胞に対する対象の免疫応答を増強することを目的とする治療用ワクチンの例には、限定されないが、アデノウイルス(例えば、腫瘍溶解性アデノウイルス)などのウイルスベクターベースの治療ワクチン、ワクシニアウイルス(例えば、改変ワクシニアアンカラ(MVA))、アルファウイルス(例えば、セムリキ森林ウイルス(SFV))、麻疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、及びコクサッキーウイルス;合成長鎖ペプチド(SLP)ワクチン;RNAベースのワクチン、及び樹状細胞ワクチンが含まれる。
【0145】
いくつかの実施形態では、一次又は二次治療は、アルファ-2アドレナリン受容体の発現を、好ましくはRNAレベルで増加させる薬剤の投与を含む。本明細書で使用する表現「アルファ-2アドレナリン受容体の発現を増加させる」は、薬剤がアルファ-2アドレナリン受容体の合成を促進し、前記薬剤の存在下でアルファ-2アドレナリン受容体の数を増加させることを意味することを意図する。例示的には、この増加は、アルファ-2アドレナリン受容体の数の少なくとも約10%の増加を表し得る。
【0146】
本発明の範囲内で、表現「約10%」は、約10%、20%、30%、40%、50%;60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、約1,000%、又はそれ以上を包含する。実際には、アルファ-2アドレナリン受容体の数の増加は、任意の適切な方法、又はそれから適合された方法、特に免疫染色、ウェスタンブロッティングなどによって評価され得る。
【0147】
ある実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体の発現を増加させる薬剤は、活性化RNAであり得る。
【0148】
ある実施形態では、前記一次又は二次治療は、前記アゴニストと別々に又は同時に投与され得る。
【0149】
本発明の別の態様は、脾臓障害の防止及び/又は処置に使用するための、本発明で定義されるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト、及び薬学的に許容されるビヒクルを含む医薬組成物に関する。
【0150】
本発明の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容される賦形剤には、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウムなどの塩又は電解質、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、羊毛脂などが含まれる。
【0151】
本発明はさらに、脾臓障害の防止及び/又は処置に使用するための(i)アルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト又はアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを含む医薬組成物、並びに(ii)抗生物質、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、化学療法剤、免疫療法剤などからなる群において選択される治療剤を含む組み合わせキットに関する。
【0152】
いくつかの態様において、本発明はまた、脾臓障害の防止及び/若しくは処置のための医薬の調製並びに/又は製造のためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの使用にも関する。本発明はさらに、脾臓障害の処置のための医薬の調製及び/又は製造のためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの使用に関する。
【0153】
本発明の別の態様は、脾臓障害の防止及び/又は処置のためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの使用に関する。本発明はまた、脾臓障害の処置のためのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの使用に関する。
【0154】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする個体における脾臓障害の防止及び/又は処置のための方法であって、治療有効量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの投与を含む方法に関する。本発明はさらに、それを必要とする個体における脾臓障害の治療方法であって、治療有効量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの投与を含む方法に関する。
【0155】
本発明の別の態様は、それを必要とする個体における脾臓の体積及び/又は重量を低減させるための方法であって、治療有効量のアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの投与を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【
図1】
図1は、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストのグアナベンズがTiRP担がんマウスにおいて腫瘍誘発性脾腫を逆転させることができることを示すヒストグラムである。TiRP担癌マウス(黒いバーと薄い灰色の棒グラフ)に、腫瘍の大きさが約500mm
3のときに、屠殺日までビヒクル対照(黒い棒グラフ)又はグアナベンズ(5mg/kg、i.p.;薄い灰色の棒グラフ)を毎日注射した。非担癌マウス(濃い灰色の棒グラフ)と比較して、TiRP担癌マウスは、脾臓重量の有意な増加に反映される脾腫を発症した(黒い棒グラフ)。グアナベンズ投与後(薄い灰色の棒グラフ)、肥大した脾臓の重量は減少した。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
【
図2】
図2は、TiRP腫瘍誘発性脾腫が、2つのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストのクロニジン及びロミフィジンによって阻害されることを示すヒストグラムである。TiRP担癌マウスに、腫瘍サイズが約500mm
3のときにクロニジン(5mg/kg、i.p.;クロニジン)、ロミフィジン(5mg/kg、i.p.;ロミフィジン)又はPBS(対照)を毎日注射した。対照群の腫瘍が1,500mm
3に達したときにマウスを屠殺した。脾臓を単離し、重量測定した。腫瘍を有しない同週齢のマウス由来の脾臓を対照として使用した(非腫瘍対照)。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図3A-B】
図3A~Bは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストのグアナベンズが、B16F1担癌マウス(A)及びB16F10担癌マウス(B)において腫瘍誘発性脾腫を逆転させることができることを示すヒストグラムである。マウスに、腫瘍サイズが約100mm
3のときに、屠殺日までグアナベンズ(5mg/kg、i.p.)又はビヒクル対照を毎日注射した。非腫瘍性マウスと比較して、B16F1担癌マウスは、著しい脾臓重量増加に反映される脾腫を発症した。グアナベンズ投与後、肥大した脾臓の重量は減少した(A)。B16F10担癌マウスについても同様の観察が認められた(B)。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
*P<0.05。
【
図4】
図4は、クロニジン処置が担癌マウスの脾臓サイズを低減させ、クロニジンを、アルファ-2アドレナリン受容体アンタゴニストのフェントラミンと併用すると、この効果が減弱されたことを示し、クロニジンがアルファ-2アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を介して脾腫を阻害することを示すヒストグラムである。TiRP担癌マウスに、腫瘍サイズが約500mm
3のときに、屠殺日まで、1,000万個のP1A特異的活性化CD8+ T細胞の養子細胞移入(ACT)を行い、かつビヒクル対照、クロニジン(5mg/kg、i.p.)、又はクロニジン(5mg/kg、i.p.)とフェントラミン(5mg/kg、i.p.)を毎日注射した。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
【
図5】
図5は、クロニジン処置が担癌マウスの脾臓サイズを低減させ、アルファ-2アドレナリン受容体アンタゴニストのフェントラミンと組み合わせるとこの効果が減弱されたことを示し、クロニジンがアルファ-2アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を介して脾腫を阻害することを示すヒストグラムである。対照的に、β-アドレナリン受容体アンタゴニストのプロプラノロールは、脾腫に対するクロニジンの効果を元に戻さなかった。CT26大腸癌を有するBALB/cマウスに、腫瘍サイズが約50mm
3のときに、屠殺日まで、ビヒクル対照、クロニジン(5mg/kg、i.p.)、クロニジン(5mg/kg、i.p.)+フェントラミン(5mg/kg、i.p.)、クロニジン(5mg/kg、i.p.)+プロプラノロール(5mg/kg、i.p.)、フェントラミン(5mg/kg、i.p.)、又はプロプラノロール(5mg/kg、i.p.)を毎日注射した。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
*P<0.05、
***P<0.001。
【
図6】グアナベンズ処置が担癌マウスの脾臓サイズを低減させ、アルファ-2アドレナリン受容体アンタゴニストのフェントラミンと組み合わせるとこの効果が弱まることを示し、グアナベンズがアルファ-2アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を介して脾腫を阻害することを示すヒストグラムである。CT26大腸癌を担持するBALB/cマウスに、腫瘍サイズが約50mm
3のときに、屠殺日まで、ビヒクル対照、フェントラミン(5mg/kg、i.p.)グアナベンズ(5mg/kg、i.p.)、又はグアナベンズ(5mg/kg、i.p.)+フェントラミン(5mg/kg、i.p.)を毎日注射した。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図7】
図7は、グアナベンズがウイルス媒介性(Chadox_li_P1A(初回免疫)、MVA_P1A(追加免疫))免疫化によって誘発される脾腫を阻害することを示すヒストグラムである。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
**P<0.01。
【
図8】
図8は、グアナベンズがタンパク質媒介性(オボアルブミン)免疫化によって誘発される脾腫を阻害することを示すヒストグラムである。脾臓の重量はグラム(g)で表される。
**P<0.01。
【
図9】
図9は、脾臓重量(g)によって測定した場合に、クロニジン又はグアナベンズ投与が骨髄線維症により誘発される(JAK2V617F変異骨髄移植により誘発される)脾腫を有意に防止することを示すヒストグラムである。骨髄移植の1週間後に、マウスをグアナベンズ又はクロニジンで毎日5mg/kg用量で3週間治療した。処置の3週間後、マウスを解剖し、脾臓重量を測定した。骨髄移植又はクロニジン/グアナベンズ処置を受けていない野生型マウスを対照として用いた。
【
図10】
図10は、脾臓重量(g)によって測定した場合に、クロニジン又はグアナベンズ投与が骨髄線維症によって誘発される(JAK2V617F変異骨髄移植によって誘発される)脾腫に対する処置を有意に提供することを示すヒストグラムである。骨髄移植の3週間後、マウスをグアナベンズ又はクロニジンで毎日5mg/kg用量で2週間処置した。処置の2週間後、マウスを解剖し、脾臓重量を測定した。骨髄移植又はクロニジン/グアナベンズ処置を受けていない野生型マウスを対照として用いた。
【
図11】
図11は、脾臓重量(g)によって測定した場合に、クロニジン処置が、ロミプロスチム媒介性骨髄線維症において脾腫を有意に低減させることを示すヒストグラムである。
**P<0.01;ns:有意でない。
【
図12】
図12は、脾臓重量(g)によって測定した場合に、野生型マウスにおいてクロニジン又はグアナベンズが腫瘍誘発性脾腫を阻害することを示すヒストグラムである(黒い棒グラフ)。脾腫の阻害は、Adra2a KOマウスでは消失する(灰色の棒グラフ)。アスタリスクは統計的関連性(P<0.05)を示す。
【0157】
実施例
本発明及び開示を以下の実施例によってさらに説明する。
【0158】
実施例1:材料と方法
1-マウス
TiRPマウスは、チロシナーゼプロモーターによって制御されH-Ras12V及びMAGE型腫瘍抗原P1AをコードするTrap1aの発現を駆動するトランスジェニック構築物を保有するマウスと、Ink4a/Arfflox/floxマウスを交配することによって作製されている;プロモーターは、floxed自己削除型CreERで作られた停止カセットによってコード領域から離れている(Huijbersら,2006,Cancer Res 66,3278-3286)。それらのマウスをB10.D2バックグラウンドに逆交配し、ホモ接合性にするために繁殖した。H-2Ld/P1A35-43特異的TCR導入遺伝子についてヘテロ接合性のTCRP1Aマウスを、B10.D2;Rag1-/-バックグラウンドで保持した(Shankerら,2004,J Immunol 172,5069-5077)。DBA/2マウス及びC57BL/6Jマウスを腫瘍移植及びマウス免疫実験に用いた。この研究で用いた全てのマウスを、ド・デューブ研究所(de Duve Institute)の動物施設で、特定病原体フリー(SPF)の条件下で作製した。動物福祉に関する全ての規則は、2010/63/EU指令に従って尊重されている。全ての手順は、2015/UCL/MD/15を参照しながら、地域の動物倫理委員会の承認を得て実施された。
【0159】
2-4OHタモキシフェンによる腫瘍誘発
4OHタモキシフェン(Imaginechem(登録商標))を100%エタノールと鉱物油(比1:9)に溶解し、続いて30分間超音波処理することによって4OHタモキシフェンの新鮮な溶液を調製し、性別を適合させた7週齢のTiRPマウスの頸部領域に皮下注射した(マウスあたり2mg/200μL)。腫瘍の出現を毎日モニターし、腫瘍を週に3回測定した。腫瘍体積(mm3)を、次の式:体積=幅2×長さ/2によって計算した。
【0160】
3-細胞培養
B16F1、B16F10黒色腫細胞、及びCT26大腸癌細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したIMDM培地で培養した。
【0161】
4-TCRP1A CD8+ T細胞による養子細胞移入
養子細胞移入(ACT)のために、P1A特異的(TCRP1A)CD8+ T細胞を、本明細書上記のTCRP1Aマウスの脾臓及びリンパ節から単離し、L-アルギニン(0.55mM、Merck(登録商標))、L-アスパラギン(0.24mM、Merck(登録商標))、グルタミン(1.5mM、Merck(登録商標))、ベータ-メルカプトエタノール(50μM、Sigma Aldrich(登録商標))、50U/mLのペニシリン及び50mg/mLのストレプトマイシン(Life Technologies(登録商標))を補充した10%ウシ胎児血清含有IMDM(GIBCO(登録商標)中で、放射線照射(10,000rad)したL1210.P1A.B7-1細胞(Gajewskiら,1995,J Immunol 154,5637-5648)と1:2の比(48ウェルプレート中1ウェルあたり0.5×105個のCD8+ T細胞及び105個のL1210.P1A.B7-1細胞)で共培養することによってインビトロで刺激した。4日後、TCRP1A CD8+ T細胞をLymphoprep勾配(StemCell(登録商標))にて精製し、無作為化の日に、200μLのPBS中107個の生細胞をTiRP担癌マウスに静脈内注射した。
【0162】
5-腫瘍誘発性脾腫に対するアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの効果の評価
生後6~8週齢のC57BL/6マウスに、100万個のB16F1又はB16F10黒色腫細胞を皮下注射した。腫瘍サイズが約100mm3のときに、マウスにグアナベンズ(5mg/kg、i.p.)又はPBSを毎日注射した。対照群の腫瘍が1,000mm3に達したときに、マウスを屠殺した。脾臓を単離し、重量測定した。腫瘍移植を行わなかった同週齢のマウス由来の脾臓を対照として用いた。TiRP担癌マウスに、腫瘍サイズが約500mm3のときに、クロニジン(5mg/kg、i.p.)、ロミフィジン(5mg/kg、i.p.)又はPBSを毎日注射した。対照群の腫瘍が1,500mm3に達したときに、マウスを屠殺した。脾臓を単離し、脾臓重量を分析天秤で測定した。腫瘍は有していないが、ACTを行った同週齢のマウスの脾臓を対照として用いた。
【0163】
6-担癌マウスにおけるアルファ-2アドレナリン受容体アゴニスト/アンタゴニストの評価
a)TiRP腫瘍モデル
TiRP担癌マウスに、1,000万個のP1A特異的活性化CD8+ T細胞の養子細胞移入(ACT)を行い、腫瘍サイズが約500mm3のときに、屠殺日までビヒクル対照、クロニジン(5mg/kg、i.p.)、又はフェントラミン(5mg/kg、i.p.)と組み合わせたクロニジン(5mg/kg、i.p.)を毎日注射した。腫瘍サイズを2日ごとにモニターした。対照群の腫瘍が約2,000mm3に達したときに、マウスを屠殺した。脾臓を単離し、脾臓重量を分析天秤で測定した。腫瘍は有していないが、ACTを行った同週齢のマウス由来の脾臓を対照として用いた。
【0164】
b)CT26腫瘍モデル
6~8週齢のC57BL/6マウスに、CT26大腸腫瘍細胞200万個を皮下注射した。クロニジン及びグアナベンズの効果に及ぼすフェントラミンの評価のために、腫瘍サイズが約50mm3に達したときに、マウスを異なる群に無作為化し、グアナベンズ(5mg/kg、i.p.)、フェントラミン(5mg/kg、i.p.)、プロプラノロール(5mg/kg、i.p.)、グアナベンズ(5mg/kg、i.p.)とフェントラミン(5mg/kg、i.p.)の混合物、クロニジン(5mg/kg、i.p.)、クロニジン(5mg/kg、i.p.)とフェントラミン(5mg/kg、i.p.)の混合物(5mg/kg、i.p.)、クロニジン(5mg/kg、i.p.)とプロプラノロール(5mg/kg、i.p.)の混合物又はビヒクル対照を毎日注射した。腫瘍サイズを2日ごとに測定し、対照群の腫瘍が1,000mm3に達したときに、マウスを屠殺した。脾臓を単離し、脾臓重量を分析天秤で測定した。腫瘍のない同週齢のマウス由来の脾臓を対照として用いた。
【0165】
7-アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストの免疫誘発脾腫に及ぼす効果の評価
a)オボアルブミンによる免疫
C57BL/6Jマウスを、アルヒドロゲルアジュバントに吸着させたOVAタンパク質200μg(Sigma Aldrich(登録商標))の腹腔内(i.p.)注射により1回免疫した。これらのマウスに、免疫の2時間前及び免疫後毎日100μg(5mg/kg)のグアナベンズを投与した。免疫していないマウスを陰性対照として含めた。免疫から1週間後にマウスを屠殺し、各マウスの脾臓を収集し、分析天秤で脾臓重量を測定した。
【0166】
b)ウイルスベクターによる免疫
DBA/2マウスを、Chadox_li_P1A(腫瘍抗原P1A用のチンパンジーアデノウイルスベクター組換え体;107IU、初回免疫)の筋肉内(i.m)注射、続いて1週間後に、MVA_P1A(腫瘍抗原P1A用の改変ワクシニアアンカラウイルスベクター組換え体;106IU、追加免疫)によって第2の注射(i.m)を行った。これらのマウスに、免疫の2時間前及び免疫後毎日100μg(5mg/kg)のグアナベンズを投与した。免疫していないマウスを陰性対照として含めた。免疫から2週間後にマウスを屠殺し、各マウスの脾臓を収集し、分析天秤で脾臓重量を測定した。
【0167】
実施例2:TiRP担癌マウスの脾臓の重量に及ぼすグアナベンズ、クロニジン又はロミフィジン処置の効果
図1は、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストのグアナベンズがTiRP担癌マウスにおける腫瘍誘発性脾腫を逆転させることができることを示す。クロニジンとロミフィジンについても同様の観察を行った(
図2)。
【0168】
実施例3:B16F1又はB16F10担癌マウスの脾臓の重量に及ぼすグアナベンズ処置の効果
図3A~Bは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストのグアナベンズが、B16F1担癌マウス(パネルA)及びB16F10担がんマウス(パネルB)において腫瘍誘発性脾腫を逆転させることができることを示す。
【0169】
実施例4:TiRP担癌マウスの脾臓の重量に及ぼす養子細胞導入(ACT)とクロニジンの併用処置の効果
図4は、クロニジン処置が担癌マウスの脾臓サイズを低減させ、クロニジンをアルファ-2アドレナリン受容体アンタゴニストのフェントラミンと併用すると、この効果が減弱されることを示し、クロニジンがアルファ-2アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を介して脾腫を阻害することを示す。
【0170】
実施例5:CT26結腸癌を有するBALB/cマウスの脾臓の重量に対するクロニジン又はグアナベンズ処置の効果
クロニジン処置(
図5)及びグアナベンズ処置(
図6)は、担癌マウスの脾臓サイズを低減させることができる。この効果は、アルファ-2アドレナリン受容体アンタゴニストのフェントラミンと組み合わせると減弱され、クロニジン及びグアナベンズがアルファ-2アドレナリン受容体に対するアゴニスト効果を介して脾腫を阻害することを示す。
【0171】
実施例6:クロニジンは、ウイルス媒介性又はタンパク質媒介性免疫によって誘発される脾腫を阻害する
グアナベンズ処置は、ウイルス媒介性(
図7)又はタンパク質媒介性(
図8)免疫に起因する脾腫を有するマウスの脾臓サイズを効率的に低減させることが可能である。
【0172】
実施例7:クロニジン又はグアナベンズが骨髄線維症により誘発される脾腫を阻害する(第1モデル)
骨髄線維症(MF)は、JAK-STAT活性化ドライバー変異の獲得に起因するクローン性悪性疾患であり、そのうちのJAK2V617Fが最も一般的である。脾腫はMFの主要な臨床症状の1つであり、脾臓髄外造血に直接関連している。
【0173】
JAK2V617F変異マウスからマウス大腿骨及び脛骨を最初に採取し、徹底的に洗浄した。骨髄細胞を、25G針及びシリンジを用いて2%ウシ胎児血清を含有するPBS中に流出させた。次いで、得られた細胞懸濁液を、40μMのセルストレーナーを通して濾過した。レシピエントマウスに、500rad線量を4時間空けて2回放射線照射した。100万個のドナー細胞を、27Gインスリンシリンジを用いる標準的な静脈内注射によって野生型レシピエントに注射した。
【0174】
第1選択肢では、骨髄移植の1週間後に、マウスをグアナベンズ又はクロニジンの5mg/kgの用量によって3週間毎日処置した。処置の3週間後、マウスを解剖し、脾臓重量を測定した。骨髄移植又はクロニジン/グアナベンズ処置を受けていない野生型マウスを対照として用いた。
図9に示すように、クロニジン及びグアナベンズ処置はいずれも、JAK2V617F変異骨髄によって誘発される脾腫を有意に低減させた。
【0175】
第2選択肢では、骨髄移植の3週間後に、マウスをグアナベンズ又はクロニジンの5mg/kgの用量によって2週間毎日処置した。処置の2週間後、マウスを解剖し、脾臓重量を測定した。骨髄移植又はクロニジン/グアナベンズ処置を受けていない野生型マウスを対照として用いた。言い換えれば、脾腫がすでに形成されている骨髄移植後3週間の時点で薬物を投与した。
図10に示すように、クロニジン及びグアナベンズ処置はいずれも、JAK2V617F変異骨髄によって誘発される脾腫を有意に低減させた。これは、薬物が防止のためだけでなく、治療目的のためにも使用することができることを示している。
【0176】
実施例8:クロニジン又はグアナベンズは骨髄線維症により誘発される脾腫を阻害する(第2モデル)
ロミプロスチムは、トロンボポエチン受容体(TPO)リガンドに結合するリガンドである。最近の研究で、トロンボポエチン(TPO)/骨髄増殖性白血病タンパク質(MPL;TPO受容体)シグナル伝達経路が、骨髄線維症(MF)の発症においてある役割を果たすことが明らかになった。骨髄増殖性白血病タンパク質の活性化は、線維細胞の分化を直接誘発して、骨髄線維症を引き起こす。TPOリガンドの投与はMF及び脾腫を誘発した。
【0177】
8週齢の雌性C57BL/6J野生型マウス及びAdra2a KOマウスに、1日目、8日目及び15日目に生理食塩水又は1mg/kgのロミプロスチムを頸部皮膚に皮下注射により投与した。クロニジン又はグアナベンズを、8日目から始めて2週間、毎日5mg/kgの用量でi.p.投与した。22日目にマウスを解剖し、脾臓重量を測定した。屠殺後、心臓穿刺により末梢血を採取し、血小板濃度をセルカウンターアナライザーMS9-5Vにより測定した。
【0178】
図11に示すように、クロニジン処置は、TPO受容体活性化により誘発される脾腫を有意に低減させた。これは野生型マウスでのみ起こるが、Adra2a KOマウスでは起こらず、脾腫の阻害がアドレナリン受容体アルファ-2を介していることを示す。
【0179】
実施例9:クロニジン及びグアナベンズは腫瘍誘発性脾腫を阻害する
C56BL/6野生型又はC56BL/6 Adra2a KOマウスにMC38結腸癌を移植し、腫瘍サイズが約50mm
3のときに、屠殺日までビヒクル対照、グアナベンズ又はクロニジン(5mg/kg、I.P.)を毎日注射した。マウスの解剖時に脾臓重量を測定した。
図12に示すように、クロニジン及びグアナベンズ処置は、腫瘍誘発性脾腫を阻害する。Adra2a KOマウスでは阻害が認められないので、これはアドレナリン受容体アルファ-2を介するものである。
【国際調査報告】