(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】汎用型ヒト化CAR19-DNT細胞を製造する技術およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20230519BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230519BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230519BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230519BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20230519BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230519BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230519BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230519BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230519BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/13 ZNA
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/867 Z
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/705
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563458
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2021087311
(87)【国際公開番号】W WO2021213235
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】202010314336.0
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521230551
【氏名又は名称】ジョージアン ルイジアメイ バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG RUIJIAMEI BIOTECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 807-808,Kechuang Building A,No.586 Xihuan Road, Keqiao Economic Development Park,Keqiao District,Shaoxing,Zhejiang 312000,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 黎明
(72)【発明者】
【氏名】王 丹
(72)【発明者】
【氏名】李 先才
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、汎用型ヒト化CAR19-DNT細胞を製造する技術およびその使用を提供する。具体的に、本発明は、CD19を標的とする汎用型CAR-T細胞であって、外因性のCAR構築物を発現し、当該CAR構築物は式Iで表される構造を有し、L-scFv-H-TM-C-CD3ζ(式I)、式中において、Lはなしか、シグナルペプチド配列で、scFvはCD19を標的とする抗体一本鎖可変領域配列で、Hはなしか、ヒンジ領域で、TMは膜貫通ドメインで、Cは共刺激シグナル分子で、CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列である。本発明によって提供される汎用型ヒト化CAR19-DNT細胞は、免疫原性が低く、遺伝子編集でGvHDを避けることがなく、安全性が高く、特異性が高く、腫瘍殺傷効果が顕著であるといった利点を有し、そして提供される構築方法は大規模生産が実現可能で、生産コストが低い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD19を標的とする汎用型CAR-T細胞であって、外因性のCAR構築物を発現し、前記CAR構築物は式Iで表される構造を有することを特徴とする細胞。
L-scFv-H-TM-C-CD3ζ (式I)
(式中において、
Lはなしか、シグナルペプチド配列であり、
scFvはCD19を標的とする抗体一本鎖可変領域配列であり、
Hはなしか、ヒンジ領域であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
Cは共刺激シグナル分子であり、
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列であり、
各「-」は独立に上記各エレメントを連結する連結ペプチドまたはペプチド結合を表す)。
【請求項2】
前記CD19を標的とする汎用型CAR-T細胞はCD19を標的とする汎用型CAR-二重陰性T細胞(CAR19-DNT細胞)であることを特徴とする請求項1に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞。
【請求項3】
前記汎用型CAR-T細胞におけるTCRがノックアウトされたものであることを特徴とする請求項1に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞。
【請求項4】
前記CAR構築物が配列番号14で示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞。
【請求項5】
請求項1に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞を製造する方法であって、
(i) 式Iで示されるCAR構築物をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを提供する工程、
L-scFv-H-TM-C-CD3ζ (式I)
(式中において、
Lはなしか、シグナルペプチド配列であり、
scFvはCD19を標的とする抗体一本鎖可変領域配列であり、
Hはなしか、ヒンジ領域であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
Cは共刺激シグナル分子であり、
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列であり、
各「-」は独立に上記各エレメントを連結する連結ペプチドまたはペプチド結合を表す)
(ii) 少なくとも一つのDNT細胞を含有するDNT細胞培養液を提供し、工程(i)の発現ベクターで前記DNT細胞に対して形質導入することにより、請求項1に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞を得る工程、ならびに
(iii) 任意の工程(ii)で得られた反応型CAR-DNT細胞を検出する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記発現ベクターはレンチウイルス発現ベクターであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(i)のウイルス発現ベクターに配列番号16で示されるポリヌクレオチド配列が組み込まれていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
薬物組成物であって、
(a) 請求項1または2に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞、および
(b) 薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞の使用であって、癌を予防および/または治療する薬物組成物または製剤を製造するためであることを特徴とする使用。
【請求項10】
前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍免疫細胞治療の技術分野に属し、具体的に、汎用型ヒト化キメラ抗原受容体CART-19細胞を製造する技術方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体T細胞(Chimeric Antigen Receptor T、CART)は、現在、最も将来性のある腫瘍免疫療法の一つで、2017年に既に米国FDAによって許可された2つのCART細胞製品はどちらも腫瘍患者自身から分離された末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cell、PBMC)で、遺伝子工学によって特定の抗原受容体(CAR)を導入することにより、PBMCにおけるT細胞の標的性、殺傷活性および持久性が増強し、腫瘍細胞の表面抗原に対する認識がMHCの制限性に依存しない。よく見られるCARは、細胞外抗原結合領域、膜貫通領域、および細胞内のT細胞受容体のシグナル伝達領域(たとえばCD3ζやCD28)からなる。細胞外抗原結合領域は、モノクローナル抗体の軽鎖(VL)および重鎖(VH)からなり、中間がヒンジによって連結して一本鎖抗体(single chain fragment variable、scFv)になり、特定の腫瘍抗原を認識することができる。CAR-T細胞技術は、既に第三世代まで発展し、第一世代のCARは腫瘍表面抗原を認識する一本鎖抗体(scFv)抗原結合部位および免疫受容体チロシン活性化モチーフからなり、細胞外では、一本鎖抗体(scFv)で腫瘍マーカー分子を認識するが、共刺激シグナルがないため、臨床において、T細胞の体内存続時間が短く、サイトカイン分泌能力が低いといった問題と、効果が良くない。第二世代のCART技術は、共刺激シグナル配列を導入し、T細胞の細胞毒活性、増殖能力および体内生存時間を向上させ、サイトカインの放出を促進することができ、臨床において急性リンパ性白血病の治療に成功した。第三世代のCARTは、細胞質領域で直列にCD28、4-1BBの2種の共刺激分子およびCD3ζ分子が並んでおり、二重共刺激のシグナル配列がより優れた効果を有する。第三世代のCARTの構造概略図を
図1に示す。
【0003】
現在、自家CART細胞は、CD19を標的とするB細胞急性リンパ芽球性白血病(B Acute Lymphoblastic cell Leukemia、B-ALL)の治療に使用され、90%以上と高い完全緩和率が得られた。リンパ腫の治療においても、完全緩和率が64%と高い。CART技術はこの2種の疾患の治療で得られた効果がほかの薬物のいずれにも比べ物にならない。我が国では、急性リンパ性白血病は小児急性白血病の80%を占め、発症率が十万分の一で、すべの成人白血病の発症率の20%を占める。免疫細胞治療は、多くの重病の重要な治療手段で、癌、自家免疫疾患を含め、ひいては重度のウイルス感染でさえ、免疫細胞治療が成功した症例がある。
【0004】
CD19標的CARTは臨床試験における効果が非常に顕著であるが、多くの欠点があり、サイトカインストームなどの重度な副作用以外、4つの大きな問題がある:まず、一部のリンパ球の数が低いか、質が劣る末期患者は、十分な数の自家免疫細胞がないため、CART治療のチャンスを失う;次に、患者の自家細胞で製造されるCART製品を使用する場合、ウイルス遺伝子を末梢血の残存腫瘍細胞に形質導入し、患者の死亡につながったことが報告された;さらに、現在、開発中の汎用型CART細胞製品の大半は、遺伝子編集技術によって移植片対宿主病を起こしうる遺伝子をノックアウトした、たとえば、TCR受容体などであるが、これらの遺伝子のノックアウトには、煩雑な構築過程および大規模シークエンシングが必要で、そしてオフターゲット率が高い;最後に、自家CART細胞製品の製造は1対1の個体化治療で、製造コストが高く、製造プロセスの要求が複雑であるため、製品が高価で、多くの患者は負担できず、社会医療負担を増やす。
【0005】
そのため、本分野では、健常者ドナーの末梢血からの、複雑な遺伝子編集方法で移植片対宿主病を起こすTCR遺伝子をノックアウトする必要がなく、免疫原性が低く(宿主の抗移植片に対する免疫応答を起こさず、体内存続時間が長い)、安全性が高く、殺傷効果が顕著で、そして生産コストが低い汎用(即席)型CART細胞およびその構築方法の開発が切望されている。
【発明の概要】
【0006】
既存の関連技術の一連の問題に鑑みると、本発明は、汎用型キメラ抗原受容体CAR19-DNT細胞を製造する技術方法およびその使用を提供する。
【0007】
本発明の目的は、健常者ドナーの末梢血からの、複雑な遺伝子編集方法で移植片対宿主病を起こすTCR遺伝子をノックアウトする必要がなく、免疫原性が低く(宿主の抗移植片に対する免疫応答を起こさず、体内存続時間が長い)、安全性が高く、殺傷効果が顕著で、そして生産コストが低い汎用(即席)型CART細胞およびその構築方法を提供することである。
【0008】
本発明の第一の側面では、CD19を標的とする汎用型CAR-T細胞であって、外因性のCAR構築物を発現し、前記CAR構築物は式Iで表される構造を有する細胞を提供する。
【0009】
L-scFv-H-TM-C-CD3ζ (式I)
(式中において、
Lはなしか、シグナルペプチド配列である。
scFvはCD19を標的とする抗体一本鎖可変領域配列である。
Hはなしか、ヒンジ領域である。
TMは膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナル分子である。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列である。
各「-」は独立に上記各エレメントを連結する連結ペプチドまたはペプチド結合を表す。)
【0010】
もう一つの好適な例において、前記CD19を標的とする汎用型CAR-T細胞はCD19を標的とする汎用型CAR-二重陰性T細胞(CAR-DNT細胞)である。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記汎用型CAR-T細胞におけるTCRがノックアウトされたものか、ノックアウトされていないものである。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記汎用型CAR-T細胞におけるTCRがノックアウトされたものである。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記のLは、CD8、GM-CSF、CD4、CD137、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のシグナルペプチドである。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記のLは、CD8由来のシグナルペプチドである。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記scFvに配列番号6で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号5で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)が含まれている。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記scFvに、さらに、VHとVLの間の連結ペプチド配列が含まれている。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記の連結ペプチド配列は配列番号7で示されるアミノ配列を有する。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記scFvは、配列番号4で示されるアミノ配列を有する。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記のHは、CD8、CD28、CD137、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のヒンジ領域である。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記のHは、CD8由来のヒンジ領域である。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記のTMは、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の膜貫通領域である。
【0022】
もう一つの好適な例において、TMは、CD8由来の膜貫通領域、および/またはCD28由来の膜貫通領域である。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記のCは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB(CD137)、PD1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)、ICOS (CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の共刺激シグナル分子である。
【0024】
もう一つの好適な例において、Cは、4-1BB由来の共刺激シグナル分子、および/またはC28由来の共刺激シグナル分子である。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記CAR構築物は配列番号14で示されるアミノ配列を有する。
【0026】
本発明の第二の側面では、本発明の第一の側面に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞を製造する方法であって、
(i) 式Iで示されるCAR構築物をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを提供する工程、
L-scFv-H-TM-C-CD3ζ (式I)
(式中において、
Lはなしか、シグナルペプチド配列である。
scFvはCD19を標的とする抗体一本鎖可変領域配列である。
Hはなしか、ヒンジ領域である。
TMは膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナル分子である。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列である。
各「-」は独立に上記各エレメントを連結する連結ペプチドまたはペプチド結合を表す。)
(ii) 少なくとも一つのDNT細胞を含有するDNT細胞培養液を提供し、工程(i)の発現ベクターで前記DNT細胞に対して形質導入することにより、本発明の第一の側面に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞を得る工程、ならびに
(iii) 任意の工程(ii)で得られた反応型CAR-DNT細胞を検出する工程
を含む方法を提供する。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターはDNA、RNA、またはこれらの組み合わせから選ばれる。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターは、プラスミド、ウイルス発現ベクター、トランスポゾン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記ウイルス発現ベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターはウイルス発現ベクターで、そして前記方法は、工程(ii)の前に、さらに、工程(i)のウイルス発現ベクターに対してドウイルスパッケージングを行う工程を含む。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記ウイルス発現ベクターは、レトロウイルス発現ベクター、レンチウイルス発現ベクターで、好ましくはレンチウイルス発現ベクターである。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)のウイルス発現ベクターに配列番号16で示されるポリヌクレオチド配列が組み込まれている。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記工程(ii)は、前記工程(i)におけるウイルス発現ベクターをパッケージングプラスミドpsPAX2、pMD2.0Gとウイルスパッケージング宿主細胞に共形質移入する工程を含む。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)では、前記のポリヌクレオチド配列に配列番号15で示される式(I)におけるscFvをコードするヌクレオチド配列が含まれている。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)では、前記のポリヌクレオチド配列に配列番号8で示される式(I)におけるLをコードするヌクレオチド配列が含まれている。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)では、前記のポリヌクレオチド配列に配列番号9で示される式(I)におけるHをコードするヌクレオチド配列が含まれている。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)では、前記のポリヌクレオチド配列に配列番号10で示される式(I)におけるTMをコードするヌクレオチド配列が含まれている。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)では、前記のポリヌクレオチド配列に配列番号11で示される式(I)におけるCをコードするヌクレオチド配列が含まれている。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記工程(i)では、前記のポリヌクレオチド配列に配列番号12で示される式(I)におけるCD3ζをコードするヌクレオチド配列が含まれている。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記ウイルスパッケージ宿主細胞は哺乳動物細胞、好ましくは293T細胞である。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記工程(ii)の前に、さらに、
(iia)健常者のドナーから末梢血のサンプルを収集する工程、
(iib)末梢血サンプルにおけるCD4+CD8+ T細胞を除去することにより、DNT細胞を得る工程、
(iic)CD3モノクローナル抗体がコーティングされた培養瓶において、適切な培地で(iib)で得られたDNT細胞を培養・増幅することにより、工程(ii)に必要なDNT細胞含有培養系を得る工程
を含む。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記工程(iic)の培地に、ゲンタマイシン、組み換えインターロイキン-2、組み換えインターロイキン-7、組み換えインターロイキン-12、組み換えインターロイキン-15、自家血漿、AB血清、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を添加してある。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記工程(iic)の培地に、組み換えまたは野生型のヒトインターロイキン-4が含まれていない。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記工程(iic)の培地に、AB血清が含まれていない。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記工程(iic)の培地では、前記ゲンタマイシンの濃度が40-80単位/ml(好ましくは60単位/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-2の濃度が150-1000 IU/ml(好ましくは200-250 IU/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-15の濃度が5-20 ng/ml(好ましくは10 ng/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-7の濃度が1-5 ng/ml(好ましくは2 ng/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-12の濃度が5-20 ng/ml(好ましくは10 ng/ml)、前記自家血漿の濃度が3-25 v%(好ましくは10-20 v%)、および/または前記AB血清の濃度が4-8 v%(好ましくは6 v%)である。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記工程(ii)では、前記DNT細胞培養液におけるDNT細胞の濃度が1×106細胞/ml~4×106細胞/ml、好ましくは1×106細胞/ml~2×106細胞/ml、より好ましくは0.5×106細胞/ml~1×106細胞/mlである。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記工程(ii)では、前記ウイルスのMOIが0.1~10、好ましくは0.1~8、より好ましくは5である。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記工程(iii)の検出は、工程(ii)の形質導入後の7-14日目、好ましくは8日目または13日目に行われる。
【0049】
本発明の第三の側面では、
(a) 本発明の第一の側面に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞、および
(b) 薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤
を含む薬物組成物を提供する。
【0050】
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物は液状の薬物組成物である。
【0051】
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物は注射剤である。
【0052】
もう一つの好適な例において、前記薬物組成物では、前記CD19を標的とする汎用型CAR-T細胞の濃度が1×106~5×106細胞/mL、好ましくは1×106~2×106細胞/mLである。
【0053】
本発明の第四の側面では、本発明の第一の側面に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞の使用であって、癌を予防および/または治療する薬物組成物または製剤を製造するための使用を提供する。
【0054】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0055】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は血液腫瘍である。
【0056】
もう一つの好適な例において、前記血液腫瘍は、急性骨髄球性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0057】
もう一つの好適な例において、前記の固形腫瘍は、胃癌、胃癌腹膜転移、肝臓癌、白血病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、リンパ癌、鼻咽頭癌、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、脳膠細胞腫、子宮内膜癌、肺扁平上皮癌、肛門癌、頭頸部腫瘍、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0058】
本発明の第五の側面では、疾患を予防および/または治療する方法であって、必要な対象に本発明の第一の側面に記載のCD19を標的の汎用型CAR-T細胞、または本発明の第三の側面に記載の薬物組成物を施用する工程を含む方法を提供する。
【0059】
もう一つの好適な例において、前記疾患は癌または腫瘍である。
【0060】
もう一つの好適な例において、前記必要な対象は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物である。
【0061】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図2】ヒト化CD19 CAR構築体の構造概略図を示す。
【
図3】CDR1ドメイン(V27G)が突然変異したヒト化CD19三次元モデルを示す。
【
図4】培養の8日目と13日目に、フローサイトメーターによってCD3、CD4、CD8抗体マーカーで同定された培養系におけるDNT細胞の比率、および特異性抗ヒトCD19可変領域抗体マーカーで測定されたDNT細胞の抗体遺伝子担持レンチウイルスに感染される効率、それから計算された細胞製品におけるCART細胞の百分率を示す。
【
図5A】培養の8日目と13日目に、ヒト化CAR19-DNTのHelaとHela-CD19標的細胞それぞれの体外特異的腫瘍殺傷活性の比較を示す。中では、5-Aはエフェクター細胞対標的細胞比が2:1の場合、RTCA(リアルタイム細胞毒性アッセイ、Real-Time Cytotoxicity Assay)でモニタリングされたリアルタイムの殺傷状況を示す。5-Bはエフェクター細胞対標的細胞比が2:1の場合、エフェクター細胞の添加から18時間後、RTCAでモニタリングされたリアルタイムの殺傷状況を示す。
【
図5B】培養の8日目と13日目に、ヒト化CAR19-DNTのHelaとHela-CD19標的細胞それぞれの体外特異的腫瘍殺傷活性の比較を示す。中では、5-Aはエフェクター細胞対標的細胞比が2:1の場合、RTCA(リアルタイム細胞毒性アッセイ、Real-Time Cytotoxicity Assay)でモニタリングされたリアルタイムの殺傷状況を示す。5-Bはエフェクター細胞対標的細胞比が2:1の場合、エフェクター細胞の添加から18時間後、RTCAでモニタリングされたリアルタイムの殺傷状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明者は、幅広く深く研究し、大量のスクリーニングを行ったところ、初めて、汎用型キメラ抗原受容体CAR19-DNT細胞の構築方法を開発した。実験では、本発明によって提供される汎用型キメラ抗原受容体CAR19-DNT細胞は、健常者ドナーの末梢血からの、複雑な遺伝子編集方法で移植片対宿主病を起こすTCR遺伝子をノックアウトする必要がなく、免疫原性が低く(宿主の抗移植片に対する免疫応答を起こさず、体内存続時間が長い)、安全性が高く、特異的にヒトCD19抗原を標的とし、腫瘍殺傷効果が顕著であるという利点があり、殺傷効果が顕著で、そして本発明によって提供される構築方法は大規模生産が実現可能で、生産コストが低い。これに基づき、本発明を完成させた。
【0064】
用語
本開示が理解しやすくなるように、まず、一部の用語を定義する。本願に用いられるように、本明細書で別途に明確に規定しない限り、以下の用語はいずれも下記の意味を有する。
【0065】
本明細書で用いられるように、用語「約」とは当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内にある値または組成で、それによって部分的にどのように値または組成を計量または測定するかというのが決まる。
【0066】
本明細書で用いられるように、用語「投与」、「施用」とは、当業者に既知の様々な方法および送達システムの任意の一つによって本発明の製品を物理的に被験者に導入することで、静脈内、筋肉内、皮下、腹膜内、脊髄またはほかの胃腸外の投与経路、たとえば注射または輸注によるものを含むが、入れ替えて使用することができる。
【0067】
本明細書で用いられるように、用語「DNT細胞」とは二重陰性T細胞(Double Negative T cells)で、表現型が独特なTCRαβ+および/またはTCRγδ+ T細胞で、CD3分子を発現するが、CD4、CD8、NK、iNKTなどの細胞の特徴的表面分子(マーカー)を発現せず、生体免疫系において独特で多様化の生理作用を発揮する。
【0068】
二重陰性T(Double Negative T、DNT)細胞とは、末梢血に正常に存在するCD3+CD4-CD8-成熟Tリンパ球のサブグループで、末梢血の単核球の約1-3%を占める。DNT細胞の表面にCD3分子およびαβ-またはγδ-T細胞受容体(T Cell Receptor、TCR)が発現されるが、CD4およびCD8分子を発現せず、かつインバリアントナチュラルキラーT(invariant Nature Killer T、iNKT)細胞特異的αGalCerに反応しないため、通常のT細胞、NK細胞およびNKT細胞と異なる。DNT細胞は、多くの人体の天然機序を介して細胞毒性、抗原提示機能を発揮すると同時に、サイトカイン/ケモカインを放出し、より幅広い免疫応答を活性化させ、これによって幅広い将来性のある臨床治療薬物の候補になる。
【0069】
DNT細胞の細胞免疫治療薬物の候補としての利点は、以下のものを含む。
DNT細胞は、多くの腫瘍適応症に使用することができ、細胞表面のNKG2DおよびDNAM-1などの受容体を介してAML、リンパ腫、子宮頸癌、肺癌などの多くの血液または固形腫瘍に発現される相応するリガンドを標的とし、そしてTNF-α、IFN-γ、Grazyme B、Peforin、IL-2、IL-4などを分泌して直接および間接的な腫瘍殺傷活性を発揮する。そして、PD-1、CTLA-4などの免疫チェックポイント阻害剤および化学治療薬と併用することができ、協同治療効果がある。
【0070】
DNT細胞は、腫瘍細胞の殺傷がMHC(主要組織適合遺伝子複合体)分子に制限されず、健常者のドナーからの異体DNT細胞を患者体内に注入し、患者体内の正常細胞に殺傷毒性がなく、かつ造血幹細胞の更なる分化に影響せず、移植片対宿主病(Graft versus Host Disease、GvHD)につながらず、宿主対移植片(Host versus Graft)反応がなく、注入される異体DNT細胞が患者体内に長時間持続し、よって腫瘍殺傷活性を発揮する。
【0071】
健常者のドナーのDNT細胞は、1 mlの末梢血から効率的に5×108以上のオーダーに増幅することができ、収集して凍結保存後、複数の患者の治療に供することが可能で、臨床で患者が明確に診断されると治療が実施可能で、自家CART製品に必要な製品の製造などを待つ必要がなく、本当の意味でオフザシェルフ(off-the-shelf)の汎用型(即席)細胞製品になる。DNT細胞が有する上記幅広い抗腫瘍、高安全性、汎用およびほかの免疫療法との併用などの特性と合わせ、本発明では、CD19を標的とする汎用型ヒト化キメラ抗原受容体CART-19製品が設計され、そしてそれからDNT細胞プラットフォームに基づいた一連の遺伝子編集の必要のない汎用性CART細胞製品が開発された。
【0072】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ免疫抗原受容体(Chimeric Antigen Receptors、CARs)は、細胞外抗原認識ドメイン、通常、scFv(single-chain variable Fragment、一本鎖可変断片)、膜貫通領域および細胞内共刺激シグナルドメインからなる。CARの設計は以下の過程を経てきた。第一世代のCARは一つのみの細胞内シグナル成分のCD3ζまたはFcγRI分子を有し、細胞内に一つの活性化ドメインしかないため、短時間のT細胞増殖および少ないサイトカイン分泌しか引き起こせず、長時間のT細胞増殖シグナルおよび持続的な体内抗腫瘍効果を提供することができるため、臨床治療効果が十分に得られない。第二世代のCARは元の構造に基づいて一つの共刺激分子、たとえばCD28、4-1BB、OX40、ICOSが導入され、第一世代のCARよりも機能が大幅に向上し、さらにCAR-T細胞の持続性および腫瘍細胞に対する殺傷能力を強化する。第二世代のCARに基づいて一部の新たな免疫共刺激分子、たとえばCD27、CD134を直列連結すると、第三世代および第四世代のCARに発展してきた。
【0073】
CARの細胞外断片は一つまたは複数の特異的な抗原決定基(epitopes)を認識し、さらに細胞内ドメインによって当該シグナルを伝達し、細胞の活性化・増殖、細胞溶解毒性およびサイトカインの分泌を引き起こし、よって標的細胞を除去する。まず、患者の自家または異体(健常者のドナー)のPBMCを分離し、活性化させて遺伝子改変し、CARの免疫細胞が生成した後、患者の体内に注入し、MHCに制限されずに直接腫瘍細胞の表面抗原を認識して特異的に殺傷する。
【0074】
具体的に、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、標的特異的結合エレメント(抗原結合ドメインとも呼ばれる)を含む。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域および/またはζ鎖部分を含む。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインの一部を含む。共刺激分子は、リンパ球の抗原に対する有効な応答に必要な細胞表面分子で、抗原受容体またはそのリガンドではない。
【0075】
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間、またはCARの細胞内ドメインと膜貫通ドメインの間に、リンカーを導入してもよい。
【0076】
本明細書で用いられるよう、用語「リンカー」、「ヒンジ領域」とは、通常、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外ドメインまたは細胞内ドメインに連結させる作用を果たす任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドをいうが、入れ替えて使用することができる。リンカーは、0~300個のアミノ酸、好ましくは2~100個のアミノ酸、最も好ましくは3~50個のアミノ酸を含んでもよい。
【0077】
本発明のCARが免疫細胞において発現される場合、抗原結合の特異性に基づいて抗原を認識することができる。腫瘍細胞における関連抗原に結合すると、腫瘍細胞の死亡につながり、患者の腫瘍負荷が軽減または解消する。抗原結合ドメインは、共刺激分子および/またはζ鎖から由来する一つまたは複数の細胞内ドメインと融合することが好ましい。好ましくは、抗原結合ドメインはCD28共刺激シグナル分子、4-1BB共刺激シグナル分子およびCD3ζシグナルドメインと組み合わせた細胞内ドメインと融合している。
【0078】
本明細書で用いられるように、本発明に係るキメラ抗原受容体の基本構造は、腫瘍関連抗原結合領域、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含む。腫瘍関連抗原の選択は、直接腫瘍に対する治療効果に影響する。本発明において、本発明のキメラ抗原受容体はCD19を標的とする。
【0079】
CD19は主に早期のB細胞に発現され、95KDa程度のB細胞系に特有の膜貫通糖タンパク質である。CD19は正常と悪性B細胞のいずれにも発現され、B細胞の発育過程におけるカバーする段階の長い、最も信頼できる表面マーカーとされる。
【0080】
本発明の一つの好適な例において、抗CD19の一本鎖抗体を本発明のCARにおけるCD19を標的とする抗原結合ドメインとして選択される。
【0081】
一つの好適な実施形態において、前記scFvのアミノ酸配列は配列番号4で示され、効率的にCD19分子と結合する。
【0082】
本発明において、CD19を標的とする抗原結合ドメインは、さらに前記scFvの保存的変異体を含み、本発明のscFvのアミノ酸配列と比較すると、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下、最も好ましくは3個以下のアミノ酸が類似または近い性質を持つアミノ酸で置換されてなるポリペプチドをいう。本発明において、前記付加、欠失、修飾および/または置換のアミノ酸数は、好ましくは元のアミノ酸配列の合計アミノ酸数の40%以下、より好ましくは35%以下、より好ましくは1~33%、より好ましくは5~30%、より好ましくは10~25%、より好ましくは15~20%である。本発明において、前記付加、欠失、修飾および/または置換のアミノ酸の数は、通常、1、2、3、4または5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個、最も好ましくは1個である。
【0083】
ヒンジ領域と膜貫通領域(膜貫通ドメイン)について、CARはCARの細胞外ドメインに融合した膜貫通ドメインを含むように設計してもよい。一つの実施形態において、天然のCARにおけるドメインの一つと関連する膜貫通ドメインが使用される。一部の例において、膜貫通ドメインを選択するか、アミノ酸置換で修飾することによって、このようなドメインが同様または相異の表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することを避けることで、受容体複合体のほかのメンバーとの相互作用を最小限にする。
【0084】
好ましくは、本発明のCAR構築物は、CD8リード配列-CD19 scFv (VL-リンカー-VH)-CD8ヒンジ領域-CD8 TM-41BB-CD3-ζという構造を有する。
【0085】
一つの好適な実施形態において、本発明のCARのアミノ酸配列は配列番号14の1-489番目で示される。なお、本発明のCD19を標的とするCARのアミノ酸配列において、配列番号14の173番目がグリシン(Gly)に相応する。
【0086】
CD19を標的とする汎用型CAR-T細胞
本明細書で用いられるように、用語「CAR19-DNT細胞」、「CD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞」、「本発明のCAR-T細胞」、「本発明の汎用型CAR-T細胞」は、いずれも本発明の第一の側面に記載の式Iの構造を有する特異的にヒトCD19分子を標的とするキメラ抗原受容体を発現する汎用型二重陰性T細胞をいうが、入れ替えて使用することができる。
【0087】
本発明において、前記のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞内で本発明のCAR構築物が発現される。
【0088】
好ましくは、前記のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞におけるTCRがノックアウトされたものである。
【0089】
製造方法
また、本発明において、本発明のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞を製造する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(i) 本発明のCAR構築物をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを提供する工程、
(ii) 少なくとも一つのDNT細胞を含有するDNT細胞培養液を提供し、工程(i)の発現ベクターで前記DNT細胞に対して形質導入することにより、本発明のCD19を標的とする汎用型CAR-DNT細胞を得る工程、ならびに
(iii) 任意の工程(ii)で得られた反応型CAR-DNT細胞を検出する工程。
【0090】
好ましくは、本発明の製造方法における発現ベクターはウイルス発現ベクターで、特に好ましくは、レンチウイルス発現ベクターである。
【0091】
なお、前記方法の工程(ii)におけるDNT細胞培養液の獲得について、以下の工程が必要である:
(iia)健常者のドナーから末梢血のサンプルを収集する工程、
(iib)末梢血サンプルにおけるCD4+CD8+ T細胞を除去することにより、DNT細胞を得る工程、
(iic)CD3モノクローナル抗体がコーティングされた培養瓶において、適切な培地で(iib)で得られたDNT細胞を培養・増幅することにより、工程(ii)に必要なDNT細胞含有培養系を得る工程。
【0092】
好ましくは、前記工程(iic)の培地に、ゲンタマイシン、組み換えインターロイキン-2、組み換えインターロイキン-7、組み換えインターロイキン-12、組み換えインターロイキン-15、自家血漿、AB血清、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を添加してある。
【0093】
もう一つの好適な例において、前記工程(iic)の培地では、前記ゲンタマイシンの濃度が40-80単位/ml(好ましくは60単位/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-2の濃度が150-100 IU/ml(好ましくは200-250 IU/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-15の濃度が5-20 ng/ml(好ましくは10 ng/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-7の濃度が1-5 ng/ml(好ましくは2 ng/ml)、前記組み換えヒトインターロイキン-12の濃度が5-20 ng/ml(好ましくは10 ng/ml)、前記自家血漿の濃度が3-25 v%(好ましくは10-20 v%)、および/または前記AB血清の濃度が4-8 v%(好ましくは6 v%)である。
【0094】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記工程(iic)の培地に、組み換えまたは野生型のヒトインターロイキン-4が含まれておらず、かつAB血清が含まれていない。
【0095】
薬物組成物
本発明は、本発明の第一の側面に記載のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する製剤を提供する。一つの実施形態において、前記薬物組成物は液体製剤である。好ましくは、前記製剤は注射剤である。好ましくは、前記製剤で、前記CAR-T細胞の濃度が1×105~1×108細胞/mL、より好ましくは1×105~1×106細胞/mLである。
【0096】
一つの実施形態において、前記製剤は、緩衝液、たとえば中性緩衝食塩水、硫酸塩緩衝食塩水など、炭水化物、たとえばブドウ糖、マンノース、ショ糖やデキストラン、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、たとえばグリシン、酸化防止剤、キレート剤、たとえばEDTAやグルタチオン、アジュバント(たとえば、水酸化アルミニウム)、および防腐剤を含んでもよい。本発明の製剤は、静脈内で施用するように調製することが好ましい。
【0097】
治療的使用
また、本発明は、本発明の第一の側面のCD19を標的とする汎用型CAR-T細胞と本発明の第三の側面に記載の薬物組成物の使用であって、癌を予防および/または治療する薬物組成物または製剤を製造するための使用、ならびに癌を治療および/または予防するための使用を提供する。
【0098】
前記の癌は、各進行期の腫瘍を含み、臨床上のI期~IV期の腫瘍を含む。癌は、非固形腫瘍(たとえば血液腫瘍、たとえば白血病やリンパ腫)または固形腫瘍を含んでもよい。本発明のCARで治療する癌の種類は、癌、胚細胞腫瘍や肉腫、および一部の白血病やリンパ性悪性腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、および悪性腫瘍、たとえば肉腫、癌やメラノーマを含むが、これらに限定されない。成人腫瘍/癌および児童腫瘍/癌も含む。
【0099】
血液癌は血液または骨髄の癌である。血液(または血液原性)癌の例は、白血病を含み、それに急性白血病(たとえば急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球型、単核球性や赤白血病)、慢性白血病(たとえば慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髓性白血病や慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンスリンパ腫(無痛および重症の場合)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、H鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病や脊髄形成異常が含まれる。
【0100】
固形腫瘍は、通常、嚢腫や液体領域の組織の腫瘤を含まない。固形腫瘍は良性でも悪性でもよい。異なる種類の固形腫瘍はこれらを形成する細胞の種類によって命名される(たとえば肉腫、癌やリンパ腫)。固形腫瘍は、たとえば肉腫および癌の例は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、中皮腫、リンパ性悪性腫瘍、膵臓癌、卵巣癌を含む。
【0101】
本発明の汎用型CAR-T細胞は哺乳動物に対する体外免疫および/または体内療法のワクチンとしても有用である。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0102】
体外免疫細胞の製造について、i)細胞の増殖、ii)CARをコードする核酸の細胞への導入、および/またはiii)細胞の凍結保存のうちの少なくとも一つが細胞製造細胞を哺乳動物に施用する前に体外で行われる。
【0103】
体外細胞処理プロトコールは本分野では公知で、そして後記でより完全に検討される。簡単に言えば、細胞を哺乳動物(好ましくはヒト)から単離して本明細書で公開されるCARを発現するベクターで上記細胞に対して遺伝子修飾を行う(すなわち体外形質転換または形質導入)。CAR修飾細胞は哺乳動物のレシピエントに施用し、治療の有益な効果を提供することができる。哺乳動物のレシピエントはヒトでもよく、CAR修飾細胞はレシピエントの自家細胞でもよく、同種異系、同系(syngeneic)の細胞でもよい。
【0104】
体外免疫について細胞に基づいたワクチン以外、本発明は、体内で患者における標的抗原に対する免疫応答を増強させるための組成物および方法も提供する。
【0105】
本発明は、腫瘍を治療する方法であって、必要な対象に有効量の本発明の汎用型CAR-T細胞を施用する工程を含む方法を提供する。
【0106】
本発明の汎用型CAR-T細胞は単独で、または薬物組成物として希釈剤および/またはほかの成分、たとえばIL-2、IL-15、IL-17やほかのサイトカインまたは細胞群と合わせて施用することができる。簡単に言えば、本発明の薬物組成物は、本明細書に記載の標的細胞を含み、一つまたは複数の薬学または臨床的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と合わせてもよい。このような組成物は、緩衝液、たとえば中性緩衝食塩水、硫酸塩緩衝食塩水など、炭水化物、たとえばブドウ糖、マンノース、ショ糖やデキストラン、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、たとえばグリシン、酸化防止剤、キレート剤、たとえばEDTAやグルタチオン、アジュバント(たとえば、水酸化アルミニウム)、および防腐剤を含んでもよい。本発明の組成物は、静脈内で施用するように調製することが好ましい。
【0107】
本発明の薬物組成物は、治療(または予防)される疾患に適する形態によって施用することができる。施用の数量および頻度は、患者の病症の特徴、疾患の種類、重篤度のような要素によって決まるが、適切な投与量は臨床試験によって決定する。
【0108】
「免疫学的な有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍抑制有効量」または「治療量」と記載する場合、施用される本発明の組成物の精確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度および病症の個体差を考慮し、医師によって決められる。通常、本明細書に記載のT細胞を含む薬物組成物は、104~109個細胞/kg体重の投与量、好ましくは105~107個細胞/kg体重の投与量(これらの範囲内におけるすべての整数値を含む)で施用することができる。T細胞の組成物はこれらの投与量で数回施用してもよい。細胞は、免疫療法で公知の注入技術(たとえばRosenbergら,New Eng. J. of Med.319:1676,1988)によって施用することができる。具体的な患者対する最適な投与量および治療プランは、患者の疾患の状況をモニタリングすることにより、治療プランは医学分野の技術者によって決定することができる。
【0109】
対象への組成物の施用は噴霧法、注射、経口、輸液、植込みまたは移植を含む任意の便利な手段によって行ってもよい。本明細書に記載の組成物は皮下、皮内、腫瘍内、節内、脊髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射または腹膜内、胸膜内で患者に施用されてもよい。もう一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物はi.v.静脈内注射によって施用することが好ましい。T細胞の組成物は直接腫瘍、リンパ節または感染の箇所に注入してもよい。(CART細胞製品は主に静脈輸液で、直接腫瘍、リンパ節または感染の箇所に注入してもよい)
【0110】
本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載の方法または本分野で既知のほかのT細胞を治療的レベルに増殖させる方法によって活性化および増幅細胞を使用し、任意の数量の関連治療手段と合わせて(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用し、前記治療手段は、抗ウイルス療法、シドフォビル、インターロイキン-2、IFN-γ、アザシチジン(ARA-Cとしても知られる)のようなほかの細胞毒性化学治療薬、チェックポイント阻害剤、たとえば、PD-1抗体、抗CTLA-4抗体およびサイトカインストームを抑制する薬物、たとえば、抗IL-6受容体のトシリズマブなどで治療するほかの治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学治療、放射線、免疫抑制剤、たとえばシクロスポリンA、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチルや、抗体またはほかの免疫治療剤と併用することができる。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、化学治療剤、たとえばフルダラビン、外部光線放射線療法(XRT)、シクロホスファミドと併用して(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用する。たとえば、一つの実施形態において、対象は高投与量の化学治療の後、末梢血幹細胞移植してもよい。一部の実施形態において、移植後、対象は本発明の増幅した免疫細胞の注入を受ける。別の一つの実施形態において、増幅した細胞は外科手術前または外科手術後に施用される。
【0111】
患者に施用する以上の治療の投与量は治療する病症の精確な属性および治療するレシピエントによって変わる。ヒトへ施用する投与量の比率は本分野で許容される実践によって実施することができる。通常、1回の治療または1回の治療クールに、1×106個~1×1010個の本発明の汎用型CAR-DNT細胞を、たとえば静脈輸液の手段によって、患者に施用することができる。
【0112】
本発明の主な利点は以下の通りである。
【0113】
1) 本発明におけるCD19 CARはヒト化のキメラ抗原受容体で、全マウス由来キメラ抗原受容体と比べ、免疫原性が低く、免疫拒絶反応が生じにくいといった利点がある。
【0114】
2) 本発明におけるCAR19-DNT細胞は遺伝子編集なしに製造される汎用型免疫細胞製品で、プロセスが簡単で、安全性が良く、DNT細胞の腫瘍殺傷にTCR分子の関与が不要で、MHC制限性がなく、GvHDおよびHvGが生じず、汎用型免疫細胞製品になり、TCRなどの遺伝子のノックアウトに必要な煩雑な構築過程および大規模のシークエンシングおよびオフターゲット率が高いといった問題が解消される。
【0115】
3) 本発明で提供されるCAR-DNTを構築および増幅する方法は、大規模生産が可能で、生産コストが低下し、1対1の個体化治療と比べ、当該汎用型CAR-DNT細胞製品は、生産コストが大幅に低下し、患者の負担が軽減する。
【0116】
4) 本発明で提供されるCAR-DNT細胞は、患者の由来に制限されず、健常者のドナーからの免疫細胞を大規模で増幅することができ、細胞活性がより良く、かつ即席に患者に治療を提供することができ、現在、自家CART細胞治療過程において腫瘍中末期患者のリンパ球数が少なく、質が劣り、そして数不足といった問題を解消する。
【0117】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0118】
本発明では、第二世代のCD19-CARを使用し、VHのCDR1領域に突然変異V27Gが含まれるヒト化CD19 scFv(クローン11)で、
図2はヒト化のCD19 CAR構築体の構造概略図を示す。以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態に限定されない。
【0119】
実施例1:ヒト化の抗CD19 FMC63 scFv-41BB-CD3ζの構築
本発明は、レンチウイルスベクターのXbaIとEcoRI部位の間にヒト化のCD19-ScFv-CAR構造を挿入し、当該構造はXbaIとEcoRIクローニング部位の間にヒト化CD19 ScFv-41BB-CD3ζの挿入断片が含まれている。
【0120】
1.1 ヒト化CD19抗体:VHとVLとscFvの配列
本発明は、マウスCD19 FMC63 scFvクローンからヒト化のCD19 scFvを獲得し、そのCDR1突然変異体をヒト化のscFv(クローン11)とした。ヒト化CD19 scFvの構造は、VL-連結ペプチド-VHである。連結ペプチド配列は、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号:7)である。
【0121】
ヌクレオチド配列では、太字はヒト化CD19 VLの配列(配列番号1)で、デフォルトのフォントはVHのヌクレオチド配列(配列番号2、太字でコードGの突然変異(ggc)を表示する)で、中間の斜体は(配列番号3)連結ペプチド配列GSTSGSGKGPGSGEGSTKGをコードするヌクレオチド配列(配列番号7)である。
【0122】
ヒト化CD19 scFv(配列番号4):太字はVLで、デフォルトフォントはVHで、下線はCDR領域で、突然変異した位置はVH(配列番号6)の27番目で、大きい斜体のG(VHのV27G)で表示されている。
【0123】
アミノ酸配列では、太字はVLのアミノ酸配列(配列番号5)で、デフォルトフォントはVHのアミノ酸配列(配列番号6)で、斜体は連結ペプチドのアミノ酸配列(配列番号7)である。
【0124】
本発明は三次元モデル(
図3)および抗原抗体結合実験により、ヒト化CD19抗体VHの CDR1領域の突然変異によって抗体とCD19抗原の結合能力が改善できたことが見出された。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC
RASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIY
HTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC
QQGNTLPYTFGGGTKVEIKGSTSGSGKPGSGEGSTKGQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVS
GGSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWIG
VIWGSETTYYNSALKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCA
KHYYYGGSYAMDYWGQGTLVTVSS
(配列番号4)
【0125】
1.2 ヒト化のCD19-CAR配列
ヒト化CD19-CAR構造は
図2に示す。EF1aプロモーターのレンチウイルスベクターでヒト化scFv CAR配列をクローニングした。
【0126】
以下のヌクレオチド配列はヒト化のCD19ScFv-CD8ヒンジ-TM8-41BB-CD3ζのCD8リード配列である。CAR構造は、ヒトCD8シグナルペプチド、ヒト化CD19 scFv(VL-ヒンジ-VH)、CD8ヒンジ、CD8膜貫通、41BB共刺激ドメインおよびCD3ζ活性化ドメインを含む(
図2)。
【0127】
CD8リード配列-CD19 scFv (VL-リンカー-VH)-CD8ヒンジ-CD8 TM-41BB-CD3ζ:
<CD8リード>
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCG (配列番号8)
【0128】
<ヒト化CD19 (VL-リンカー-VH)、クローン11 scFv> (太字で表示されるのはV27Gをコードする突然変異配列ggcである)
gatattcagatgacccagagcccgagcagcctgagcgcgagcgtgggcgatcgcgtgacc
attacctgccgcgcgagccaggatattagcaaatatctgaactggtatcagcagaaaccg
ggcaaagcgccgaaactgctgatttatcataccagccgcctgcatagcggcgtgccgagc
cgctttagcggcagcggcagcggcaccgattttaccctgaccattagcagcctgcagccg
gaagattttgcgacctattattgccagcagggcaacaccctgccgtatacctttggcggc
ggcaccaaagtggaaattaaa
ggctccacctctggatccggcaagcccggatctggcgagggatccaccaagggc
caggtgcagctgcaggaaagcggcccgggcctggtgaaaccgagcgaaaccctgagcctg
acctgcaccgtgagcggcggcagcctgccggattatggcgtgagctggattcgccagccg
ccgggcaaaggcctggaatggattggcgtgatttggggcagcgaaaccacctattataac
agcgcgctgaaaagccgcgtgaccattagcgtggataccagcaaaaaccagtttagcctg
aaactgagcagcgtgaccgcggcggataccgcggtgtattattgcgcgaaacattattat
tatggcggcagctatgcgatggattattggggccagggcaccctggtgaccgtgagcagc
(配列番号15)
【0129】
<CD8ヒンジ>
ACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGAT (配列番号9)
【0130】
<CD8 TM>
ATCTACATCTGGGCGCCCCTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGC (配列番号10)
【0131】
<4-1BB共刺激ドメイン>
AAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTG (配列番号11)
【0132】
<CD3ζ>
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACAAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAATAG (配列番号12)
【0133】
<EcoRI制限部位>
gaattc (配列番号13)
ヒト化CD19-4-1BB-CD3-CARタンパク質のアミノ酸配列は以下の通り(関連構築体の構造は
図3を参照する)で、ここで、CDR1 VH における突然変異は太字・下線で表示する。
MALPVTALLLPLALLLHAARPDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCR
ASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGT
DFTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPYTFGGGTKVEIKGSTSGSG
KPGSGEGSTKGQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSG
GSLPDYG
VSWIRQPPGKGLEWIGVIWGSETTYYNSALKSRVTISVDTSKNQF
SLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTLVTVSST
TTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDI
YIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTT
QEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNEL
NLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKM
AEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALP
PR(配列番号14)
【0134】
ヒト化CD19-4-1BB-CD3-CARタンパク質のヌクレオチド配列は以下の通りである。
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCG
gatattcagatgacccagagcccgagcagcctgagcgcgagcgtgggcgatcgcgtgacc
attacctgccgcgcgagccaggatattagcaaatatctgaactggtatcagcagaaaccg
ggcaaagcgccgaaactgctgatttatcataccagccgcctgcatagcggcgtgccgagc
cgctttagcggcagcggcagcggcaccgattttaccctgaccattagcagcctgcagccg
gaagattttgcgacctattattgccagcagggcaacaccctgccgtatacctttggcggc
ggcaccaaagtggaaattaaa
ggctccacctctggatccggcaagcccggatctggcgagggatccaccaagggc
caggtgcagctgcaggaaagcggcccgggcctggtgaaaccgagcgaaaccctgagcctg
acctgcaccgtgagcggcggcagcctgccggattatggcgtgagctggattcgccagccg
ccgggcaaaggcctggaatggattggcgtgatttggggcagcgaaaccacctattataac
agcgcgctgaaaagccgcgtgaccattagcgtggataccagcaaaaaccagtttagcctg
aaactgagcagcgtgaccgcggcggataccgcggtgtattattgcgcgaaacattattat
tatggcggcagctatgcgatggattattggggccagggcaccctggtgaccgtgagcagc
ACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGAT
ATCTACATCTGGGCGCCCCTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGC
AAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTG
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACAAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAATAG (配列番号16)
【0135】
実施例2:レンチウイルスパッケージング
293T細胞を37℃、5%CO2のインキュベーター内で培養し、培地はDMEM+10% FBSである。2日目に、細胞が90%のコンフルエンスに達したとき、発現プラスミドおよびパッケージングプラスミドpsPAX2、pMD2.0Gで共形質導入し、適切なモル比で混合されたプラスミドを培養容器に入れ、軽く振とうし、均一に混合し、インキュベーターに入れた。48-72時間後、ウイルスを回収し、遠心で浮かんだ死亡した293T細胞を除去した後、ウイルス含有培地をろ過し、濃縮し、精製し、分けて-80℃で凍結保存し、そして力価を測定した。
【0136】
実施例3:CAR-19DNT細胞の製造
3.1 人体末梢血サンプルの採取
健常者のドナーから末梢血を30-400 ml収集してヘパリンナトリウム含有管に入れた。
【0137】
3.2 CAR19-DNT細胞の製造および検出
3.2.1 CAR19-DNT細胞の製造
方法1:
0日に、メーカーの説明書に従い、Rossettsep(R)キット(Stem Cell Technologies Inc)を使用し、RBCとのRosettingでCD4+、CD8+ T細胞を除去した。血液サンプルと抗ヒトCD4およびCD8除去試薬マーカーを室温で20分間インキュベートした後、血液を50 ml遠心管で等体積Ficoll-Hypaqueの密度勾配と層分離させた。2500 rpmで25分間遠心した後、Ficollと血漿の界面ですでにPBMCのうちのCD4+およびCD8+が除去された細胞、すなわち、DNT細胞を収集し、0.9%生理食塩水で1回洗浄した。得られたDNT細胞を75 cm2培養瓶において1-6×106細胞/mlでAIM-V培地で37℃と5%CO2で培養し、前記の培養瓶は抗ヒトCD3モノクローナル抗体(クローンOKT3)(5-20μg/ml)でコーティングされ、前記AIM-V培地はゲンタマイシン(60単位/ml)、組み換えヒトインターロイキン-2(250 IU/ml)、組み換えヒトインターロイキン-15(10 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-7(2 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)、自家血漿(20 v%)を含む。
【0138】
1日目に、製造されたDNT細胞を一晩培養した後、MOIが5のレンチウイルスを入れて一晩感染させた後、細胞の状態によって毎日または1日おきにAIM-V培地を追加した。
【0139】
5日目に、DNT細胞が十分に活性化し、増殖が盛んで、新鮮なAIM-V増殖培地(60単位/mlのゲンタマイシン、500 IU/mlの組み換えヒトインターロイキン-2および組み換えヒトインターロイキン-15(10 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-7(2 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)、自家血漿(10 v%)を含む)でDNT細胞を1-3×106細胞/mlの濃度になるように調整して続いて増幅培養を行った。
【0140】
7日目に、175 cm2培養瓶に継代し、1-3×106細胞/mlでAIM-V培地において続いて3日培養し、前記AIM-V培地はゲンタマイシン(60単位/ml)、組み換えヒトインターロイキン-2(250 IU/ml)、組み換えヒトインターロイキン-15(10 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)および50 ng/mlの抗ヒトCD3モノクローナル抗体を含む。
【0141】
10日目に、175 cm2培養瓶の細胞を培養バッグに継代し、1-3×106細胞/mlでAIM-V培地で14日目まで続いて培養し、前記AIM-V培地はゲンタマイシン(60単位/ml)、組み換えヒトインターロイキン-2(500 IU/ml)、組み換えヒトインターロイキン-15(10 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)および100 ng/mlの抗ヒトCD3モノクローナル抗体を含む。
【0142】
14日目に、CAR-19 DNT細胞を回収し、250 ml円錐底遠心瓶尖で細胞を収集し、900×gで10分間遠心し、さらに2.5%ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(「溶媒」とも呼ばれる)で洗浄した。収集されたCAR-19-DNT細胞を0.1-1×107細胞/mLの濃度で液体窒素において凍結保存し、これをCAR19-DNT細胞製剤の完成品とし、品質チェックに合格した後、臨床における使用に供した。
【0143】
方法2:
0日に、メーカーの説明書に従い、Rossettsep(R)キット(Stem Cell Technologies Inc)を使用し、RBCとのRosettingでCD4+、CD8+ T細胞を除去した。血液サンプルと抗ヒトCD4およびCD8除去試薬マーカーを室温で20分間インキュベートした後、血液を50 ml遠心管で等体積Ficoll-Hypaqueの密度勾配と層分離させた。2500 rpmで25分間遠心した後、Ficollと血漿の界面ですでにPBMCのうちのCD4+およびCD8+が除去された細胞、すなわち、DNT細胞を収集し、0.9%生理食塩水で1回洗浄した。分離して精製されたDNT細胞(磁気ビーズ:DNT細胞=1:1)をCD3/CD28磁気ビーズと均一に混合し、75 cm2培養瓶において1-6×106細胞/mlでAIM-V培地で37℃と5%CO2で培養し、前記AIM-V培地はゲンタマイシン(60単位/ml)、組み換えヒトインターロイキン-2(500 IU/ml)、組み換えヒトインターロイキン-15(2 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-7(2 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)および自家血漿(20 v%)を含む。
【0144】
1日目に、製造されたDNT細胞を一晩培養した後、MOIが5のレンチウイルスを入れて一晩感染させた後、細胞の状態によって毎日または1日おきにAIM-V培地を追加した。
【0145】
5日目に、培養瓶におけるDNT細胞を吹いて均一に混ぜた後、磁気ラックに通させてCD3/CD28磁気ビーズを除去し、新鮮なAIM-V増殖培地(60単位/mlのゲンタマイシン、500 IU/mlの組み換えヒトインターロイキン-2およびヒトインターロイキン-15(10 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-7(2 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)、自家血漿(10 v%)を含む)でDNT細胞を1-3×106細胞/mlの濃度になるように調整して続いて増幅培養を行った。
【0146】
7日目に、175 cm2培養瓶に継代し、1-3×106細胞/mlでAIM-V培地において続いて3日培養し、前記AIM-V培地はゲンタマイシン(60単位/ml)、組み換えヒトインターロイキン-2(500 IU/ml)、組み換えヒトインターロイキン-15(10 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)を含む。
【0147】
10日目に、175 cm2培養瓶の細胞を培養バッグに継代し、1-3×106細胞/mlでAIM-V培地で14日目まで続いて培養し、前記AIM-V培地はゲンタマイシン(60単位/ml)、組み換えヒトインターロイキン-2(500 IU/ml)、組み換えヒトインターロイキン-15(10 ng/ml)、組み換えヒトインターロイキン-12(10 ng/ml)を含む。
【0148】
14日目に、CAR-19 DNT細胞を回収し、250 ml円錐底遠心瓶尖で細胞を収集し、900×gで10分間遠心し、さらに2.5%ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(「溶媒」とも呼ばれる)で洗浄した。収集されたCAR19-DNT細胞を0.1-1×107細胞/mLの濃度で液体窒素において凍結保存し、これをCAR19-DNT細胞製剤の完成品とし、品質チェックに合格した後、臨床における使用に供した。
【0149】
3.2.2 CAR-19 DNT細胞の発現型および陽性率の検出
8日目と13日目にそれぞれDNT発現型およびCAR19-DNT陽性率を検出し、このとき高純度のDNT細胞(純度が85%以上に達し、
図4に示す)およびhCD19-CAR陽性が高いCAR19-DNT細胞を得、フローサイトメーターによって抗ヒトのCD3抗体、CD4抗体、CD8抗体マーカーで培養系におけるDNT細胞を同定し(
図4)、同時に抗ヒト化CD19のFMC63-CD19抗体で標識して形質導入陽性率を検出した(
図4)。
【0150】
実施例4:細胞殺傷実験
レンチウイルス感染の方法によってCD19分子を発現するHela細胞(Hela-CD19の安定細胞系)を標的細胞として構築し、CD19を発現しないHela細胞を標的細胞対照とした。培養の8日目と13日目にそれぞれ収集されたCAR-CD19が形質導入されていないDNT細胞およびヒト化CAR-CD19が形質導入されたCD19CAR-DNT細胞をエフェクター細胞とし、エフェクター細胞対標的細胞比が2:1で、RTCA(Real-Time Cytotoxicity Assay)によってリアルタイムで殺傷状況をモニタリングした。
【0151】
結果は
図5に示すように、CD19-CARが形質導入されていないDNT細胞と比べ、ヒト化CD19CARが形質導入されたCAR19-DNT細胞は特異的にHela-CD19細胞を殺傷し、上記2種の細胞はCD19陰性のHela細胞の殺傷において顕著な差がなかった。これによって、ヒト化CAR19-DNT細胞が特異的にCD19抗原を発現するHela-CD19標的細胞を標的とすることが示された(
図5)。5-Aでは、 エフェクター細胞対標的細胞比が2:1の場合、RTCAによってリアルタイムで動的殺傷状況が示された。最大殺傷時間(18時間)に達した後、RTCAによってモニタリングされたリアルタイム定量殺傷結果を5-Bに示す。定量殺傷結果から、培養の8日目と13日目のCAR19-DNT細胞のHela-CD19に対する特異的殺傷がそれぞれ98.52%と98.10%と高く(
図5-B)、かつ最大殺傷効果が殺傷時間の延長に伴って継続したことが示された(
図5-A)。
【0152】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【配列表】
【国際調査報告】