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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ウイルス核タンパク質及びその製剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/005 20060101AFI20230519BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230519BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/295 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 39/29 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C07K14/005 ZNA
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/08
A61P31/12
A61P31/18
A61P31/16
A61P31/14
A61P31/20
A61K38/16
A61K47/64
A61K45/00
A61K31/7088
A61K9/12
A61P37/04
A61K47/32
A61K47/38
A61K39/12
A61K39/39
A61K39/295
A61K39/215
A61K39/145
A61K39/29
C12N15/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563491
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 CU2021050002
(87)【国際公開番号】W WO2021213558
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】2020-0028
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304012895
【氏名又は名称】セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アギラール ルビド、フリオ カエサル
(72)【発明者】
【氏名】アギラール サンティアゴ、ホルヘ オーガスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン - デ - クルンデルト、マールテン
(72)【発明者】
【氏名】ケーケレ、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シェイク モハンマド、ファズル アクバー
(72)【発明者】
【氏名】アル - マータブ、マムン
(72)【発明者】
【氏名】ギレン ニエト、ジェラルド エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ウディン、ヘラル
(72)【発明者】
【氏名】ティーレ、フランク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA95
4C076BB02
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB25
4C076CC07
4C076CC31
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE07G
4C076EE31G
4C076EE59
4C076FF17
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA01
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC412
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA51
4C085BA55
4C085BA71
4C085BA89
4C085BA92
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB09
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA54
4H045CA02
4H045DA50
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA29
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
リボ核酸(RNA)を含む核タンパク質、及びそのRNA含有量が20%(質量/質量)超であるウイルス核タンパク質。このRNAは、分解から保護するウイルス様構造内に含有される。さらに、この核タンパク質は、TLR3、TLR2、TLR7、TLR8、及びTLR9としての先天性免疫受容体を活性化することが可能である。核タンパク質は、抗感染応答、抗腫瘍応答、または抗アレルギー性の応答を促進し、単独でまたは他の治療もしくは医薬と併用して使用されて、感染性またはアレルギー性のプロセスの予防または治療に好適な先天性免疫を刺激及び訓練する役割を果たす。本発明の核タンパク質は、ワクチンアジュバントまたは担体としても使用され、粘膜投与のためのキットの一部分でもあり得る製剤を製造するために好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボ核酸(RNA)及びウイルス起源のタンパク質を含む核タンパク質であって、前記RNA含有量が20%質量/質量超であり、前記RNAがウイルス様構造内で分解から保護され、この核タンパク質が、先天性免疫のための受容体TLR3、TLR2、TLR7、TLR8、及びTLR9を同時に活性化する、前記核タンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質が、好ましくはB型肝炎、C型肝炎、パピローマウイルス、デング熱、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、及びコロナウイルスのカプシドから、組み換えデオキシリボ核酸(DNA)経路によって得られたウイルス起源のカプシドである、請求項1に記載の核タンパク質。
【請求項3】
前記ウイルス起源のカプシドが、配列番号1で特定されるアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の核タンパク質。
【請求項4】
前記RNAが、20%質量/質量超の前記RNA含有量を維持する、外来性RNA、ワクチン抗原として使用されるメッセンジャーRNA、干渉RNA、または別のRNAタイプ化合物であり得る、請求項1に記載の核タンパク質。
【請求項5】
抗感染応答、抗腫瘍応答、または抗アレルギー応答を促進する医薬の製造のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の核タンパク質の使用。
【請求項6】
前記医薬が抗ウイルスタイプの抗感染応答を促進する、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記抗ウイルスタイプの応答が、急性ウイルス感染、再発性ウイルス感染、または慢性ウイルス感染の治療において使用される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記ウイルス感染が、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、パピローマウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、及びコロナウイルスによって生じる、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記コロナウイルスがSARS-CoV2と呼ばれるウイルスである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬が、腫瘍疾患の患者の先天性免疫の活性化によって抗腫瘍応答を促進する、請求項6に記載の使用。
【請求項11】
前記医薬が、粘膜経路、非経口経路、及び/または腫瘍内経路によって、単剤療法として、または併用療法の一部分として投与される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
感染性またはアレルギー性のプロセスの予防または治療における先天性免疫の活性化及び訓練のための医薬の製造のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の核タンパク質の使用。
【請求項13】
前記医薬が、急性及び再発性の呼吸器ウイルス感染の予防または治療において使用される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬が、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルスによって生成された感染の予防または治療において使用される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記コロナウイルスがSARS-CoV2と呼ばれるウイルスである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記医薬が、胃腸ウイルス感染、泌尿生殖器ウイルス感染、及び全身性ウイルス感染の予防または治療において使用される、請求項12に記載の使用。
【請求項17】
前記医薬が、デング熱ウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルス、及び媒介生物によって伝達される他のウイルス感染によって生成された感染の予防または治療において使用される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
インビボ及びインビトロの腫瘍の治療の間に、腫瘍細胞における及び腫瘍免疫環境における修飾を誘導するための医薬の製造のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の核タンパク質の使用。
【請求項19】
請求項1~4のいずれか1項に記載の核タンパク質の使用であって、前記核タンパク質が同じ治療の過程で他の医薬と同時にまたは逐次的に投与される場合の、腫瘍疾患、アレルギー性疾患、または感染性疾患の治療のための医薬の製造のための、前記使用。
【請求項20】
予防的及び治療的なワクチン接種戦略において使用されるワクチン抗原のアジュバントまたは担体の製造のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の核タンパク質の使用。
【請求項21】
請求項1~4のいずれか1項に記載の核タンパク質及び薬学的に許容される希釈物質または賦形剤を含む、医薬製剤。
【請求項22】
ウイルス起源の少なくとも1つのタンパク質を追加で含み、このタンパク質が同じかまたは別のウイルスからであり得る、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
ウイルス起源の前記タンパク質が、B型肝炎ウイルスの表面上の抗原である、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
粘膜投与のための粘膜接着物質(好ましくはカルボキシビニルポリマー及びセルロース誘導体の群からの)を追加で含む、請求項21に記載の製剤。
【請求項25】
前記核タンパク質中に存在する前記タンパク質が、ペプチドまたはウイルス起源の他の抗原へコンジュゲートされる、請求項21に記載の製剤。
【請求項26】
先天性免疫受容体アゴニストを追加で含む、請求項21に記載の製剤。
【請求項27】
前記先天性免疫アゴニストが、TLRのアゴニスト、CpG領域リッチの配列、RIG-Iのアゴニスト効果の有る化合物(c-ジAMP)、MD5-A、または他の病原体関連分子パターン検出系のアゴニストである、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
合成起源の核酸の複合体及び/またはヌクレオチド化合物(メッセンジャーRNA、DNAワクチン、ミニ遺伝子、または前記核タンパク質と会合するヌクレオチド性質の他の構造等)を追加で含む、請求項21に記載の製剤。
【請求項29】
固形腫瘍の免疫療法において使用される化合物を追加で含む、請求項21に記載の製剤。
【請求項30】
前記固形腫瘍の免疫療法において使用される化合物が、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)である、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
鼻腔内、舌下、腫瘍内、静脈内、及び/または動脈化学塞栓によって投与可能な、請求項21に記載の製剤。
【請求項32】
前記動脈化学塞栓が、固形腫瘍の患者へ、好ましくは肝腫瘍、前立腺腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、頭頸部腫瘍、脳腫瘍、甲状腺腫瘍、乳房の腫瘍、胃腫瘍、及び膵臓腫瘍の患者へ適用される、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
請求項21~27のいずれか1項に記載の製剤、粘膜投与のためにデザインされた粘膜付着性化合物、及びスプレータイプのデバイスを含む、粘膜投与のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、具体的には先天性免疫系の免疫修飾剤及び活性化物質の分野、ならびに感染性アレルギー性疾患及びがんの予防及び治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先天性免疫系は生物体のための最初の防衛線である。先天性免疫は、感染への物理学的及び化学的なバリア、ならびに微生物の広域スペクトラムパターンの認識に寄与する一群の細胞タイプを含む。抗ウイルス防御における初期ステージのうちの1つは、例えば先天性免疫系の細胞(ナチュラルキラー(NK)細胞及び樹状細胞等)の刺激を包含する。免疫応答を特徴づける基本原理は、適応免疫系のT細胞応答の誘導のための必須の前提条件としての先天性免疫系の関与である(Iwasaki A and Medzhitov R.Nat Immunol 2015;16:343-53)。
【0003】
適応免疫(それは先天性免疫応答に続くものである)は、微生物抗原の特異的認識を介して侵入する病原体を排除し、免疫記憶を確立する。しかしながら、T細胞の抗原特異的機能は、先天性免疫系の細胞無しでは発生し得ない(Rothlin CV and Ghosh S.J Immunother Cancer.2020 Apr;8(1).Pii:e000695)。
【0004】
感染性疾患の分野において、対象が先天性免疫応答を生成する能力は、対象間で変動し得る。これらの差異は、感染が任意のもしくは少なくとも実質的な症状無しに解消するかどうか、または対象が感染及びその無数の随伴症状を経験するかどうかを決定し得る。
【0005】
先天性免疫系と関連する複数の受容体は公知であり、その刺激が、抗ウイルス効果の有るサイトカイン応答のパターンを生成する。気道と関連する大部分の細胞において発現される、トール様受容体(TLR)(特にTLR3、TLR7、及びTLR8);ならびにRIG-I及びMDA-5は、リボ核酸(RNA)ウイルス(コロナウイルス、インフルエンザウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス等)を検出する。この検出は、サイトカイン及びインターフェロンの生成を導く事象のカスケードを生じる。感染の発生及び確立における先天性免疫の関連性、ならびにその発達は、気道に影響するウイルス(コロナウイルスが挙げられる)の複数の理解しにくいメカニズムの知識から確認される(Kikkert M.J Innate Immun(2020);12:4-20)。
【0006】
コロナウイルス(及び他のRNAウイルス)は、先天性免疫系のこれらの受容体による当該ウイルスの検出に影響する複数の回避的な戦略を発達させ、これは、高齢者及び免疫系の弱体化した人々において強化される態様である。これらの群において、致死性はより高いレベルであり、免疫系の(特に先天性免疫系の)弱化の現象が観察される。高齢者の症例において、このことは、とりわけこれらの受容体によってウイルスを検出する能力の低減によって説明され、疾患のより高い罹患率/死亡率及びワクチンへの低い応答について説明する(Metcalf et al.Aging Cell(2015)14:421-432)。
【0007】
様々な薬剤(カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、ウイルス及びそれらの構成要素、ならびにTLR及びサイトカインのアゴニスト等)は、「先天性免疫トレーニング」に関与する。この概念は、再発性細菌性の呼吸器及び尿生殖器の疾患の治療においても使用される(Sanchez-Ramon et al.Front Immunol(2020);9:2936)。
【0008】
従来のワクチンが、再発性感染を引き起こす病原体(ヒトにおいて最もよくみられる感染である呼吸器及び尿路の感染症の原因であるもの等)について利用できない特定の条件において、先天性免疫の訓練に基づくワクチンの開発が、従来のワクチンを超える利点を示し得ると現在考えられている(Mizgerd et al.PLoS Med(2006);3:e76)。
【0009】
先天性免疫の刺激は、デング熱ウイルス感染の状況のウイルス感染の治療において成功裡に試験された。デング熱ウイルスによるin vivo感染後のTLR3、TLR7、及びTLR8の同時の活性化が、炎症経路及び体液性経路によって、抗ウイルスメカニズムを増加させ、ウイルス血症の減少及び感染したサルの臨床的改善をもたらすことが、感染させたアカゲザルモデルにおいて実証された(Sariol et al.PLoS ONE(2011):6(4):e19323)。これらの結果は、黄熱ウイルス及びベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルスに感染した霊長動物のモデルを使用する研究における以前の知見を支持する(Stephen et al.J Inf Dis(1977)Vol 136(1):122-126;Stephen et al.J Inf Dis(1979)Vol 139(3):267-272)。
【0010】
TLRアゴニストとしては、リポタンパク質(TLR1、TLR2、及びTLR6によって認識される)、二本鎖RNA(TLR3によって認識される)、リポポリサッカライド(TLR4によって認識される)、フラジェリン(TLR5によって認識される)、一本鎖RNA(TLR7及びTLR8によって認識される)、及びデオキシリボ核酸(DNA、TLR9によって認識される)が挙げられる(Kawai et al.Nature Immunology 2010,11:373-384)。TLRアゴニストは、腫瘍微小環境における先天性免疫応答を活性化し、それが腫瘍に対する適応免疫応答を刺激し得るために使用され得る。これらは、がん免疫療法においてますます使用されている。腫瘍微小環境(一般的に免疫抑制性)は、TLRアゴニストの適用を介して修飾されて、抗腫瘍免疫を回復させ得る(Deng et al.Protein & Cell 2014,5:899-911)。
【0011】
TLRが病原体関連分子パターン(PAMP)を保持する粒子と相互作用し、二次メッセンジャーが活性化された場合に、TLRシグナリングが開始される。すべてのTLR(TLR3を除いて)は、アダプタータンパク質MYD88と相互作用する。TLR3アゴニストは、TRIF(TIRドメイン含有アダプタータンパク質誘導インターフェロン-β)依存性経路を誘発する。
【0012】
BCGは、主としてTLR2及びTLR4を刺激する生弱毒化Mycobacterium bovis調製物である。膀胱癌細胞におけるTLRの刺激は、NF-κBの核移行、ならびにIL-1β、IL-6、及びIL-8の産生を誘発する(Ayari et al.J Urol 2011 185(5):1915-twenty-one)。BCG治療は、尿路上皮癌細胞において、MHCクラスII分子及び共刺激分子(CD86及びICAM-1が挙げられる)の発現をそれぞれもたらす(Bevers et al.Br.J.Cancer 2004,91:607-612)。BCGによる尿路上皮細胞癌腫の刺激は、細胞死を誘導し、分裂増殖及び運動性を低減した。より最近では、Yu及びその共同研究者らは、BCGがTLR7の活性化を直接介して尿路上皮癌における細胞アポトーシスを誘導する能力を主張した。BCGは、TLR7の活性化及び関連するアポトーシス経路を介して尿路上皮癌細胞の細胞死を直接導くことができ(Yu et al.Kaohsiung J Med Sci 2015,31(8):391-397)、BCGのTLRマルチアゴニスト特性を証明する。
【0013】
BCGは、現在、筋層非浸潤性膀胱癌の再発及び進行を予防する、利用可能な治療である。この治療は、膀胱癌の免疫療法のためにUS Food and Drug Administration(FDA)によって承認されたが、それは次善のものであり、より有効な免疫療法アプローチが必要である。
【0014】
インビトロ及びインビボの研究は、応答しない患者に代替オプションを見出すために現在遂行されている。膀胱癌の治療のためのTLRアゴニストについての研究から有望な結果を示された(Ohadian et al.Scand J Immunol 2019,26:e12818)。最近、TLRの発現の減少は、膀胱腫瘍において(特に筋層非浸潤性膀胱癌において)見出された。
【0015】
TLRは、病原体及び危険シグナル条件に応答して免疫系を活性化することだけでなく、抗腫瘍応答においても重要な役割を果たす。ヒト尿路上皮細胞は機能的TLRを発現し、TLR2及びTLR3のアゴニストに応答する。筋層非浸潤性膀胱癌の治療においてBCGを補完するポリ(I:C)(TLR3アゴニスト)の能力は知られており、したがってBCGのこの非存在を補完する(Ayari et al.Cancer Immunol Immunother 2016,65(2):223-34)。ポリ(I:C)/BCGの組み合わせは、マウスモデルにおける腫瘍増殖の低減においてはるかにより有効であった。この結果は、マルチアゴニスト化合物におけるこの効果に集中することが、治療物質を進歩させ得ることを示唆する。現在のところ、このタイプの効果は、それが非常に稀であるので、または複数のTLRと、主にMYD88タンパク質に依存する経路及び依存しない経路においてそのシグナル伝達物質タンパク質が見出されるものとの同時活性化を誘導する能力を有する化合物は恐らくないので、アゴニストの組み合わせを介して調査される。
【0016】
TLR3の発現は、肝細胞癌(HCC)の分野における有益なマーカーであることが示されている。腫瘍TLR3の発現の減少は、HCC患者の腫瘍細胞分裂増殖、血管形成のアップレギュレーション及びアポトーシスの阻害、腫瘍進行、ならびに予後不良に関連することが見出された。複数の著者らは、TLR3発現と、HCCの患者の全生存率または外科的切除後の無再発生存期間との関係性を実証した(Chew et al.Gut 2012,61:427-438;Yuan et al.BMC Cancer 2015,15:245;Bonnin et al.J Hepatol 2019,S0168-8278(19):30351-4)。Yuan及び共同研究者らによる関連の結果は、TLR3活性化の効果に対する、HCC細胞の分裂増殖の阻害、血管形成、及びアポトーシスの誘導に起因していた。これらのタンパク質の発現はHCCの患者の全生存率と関連しており、分析は各々のアダプタータンパク質によって別々に遂行されて、がんの発生におけるTLR3役割の関連性を確認するものである。
【0017】
HCCの患者におけるTLR3のダウンレギュレーションは、予後不良と、及びTLR3が誘発したアポトーシスへの耐性と関連する。これは、免疫応答には関係なく、HCC細胞のアポトーシスを防止し、腫瘍進行を促進する、当該細胞のための逃避メカニズムである。TLR3は、TLRリガンドの使用に基づく治療法に好適な標的と判断される(Bonnin et al.J Hepatol 2019,S0168-8278(19):30351-4)。
【0018】
その一方で、HBcAg核タンパク質が宿主Escherichia coliにおいて異なる短縮の程度で産生される場合の、かかる核タンパク質中に含有されるRNAの免疫修飾特性が、最近記載されている(Sominskaya et al.PLoS One.2013,8(9):e75938)。当該技術分野における非常に関連する研究は、HEK293Tレポーター細胞でのB型肝炎ウイルス(HBV)のカプシドの核タンパク質の研究である。この研究はTLR3発現の刺激を除外したが、強いTLR2刺激を確認し(Vanlandschoot et al.J Immunol 2005,175(10):6253;著者の回答6253-5)、これは他の研究者によって以前に報告されている(Lee et al.J Immunol 2009,182(11):6670-6681)。
【0019】
TLRアゴニストは、免疫系へのサプレッサー細胞の機能を阻害する(Fridman et al.Nat Rev Clin Oncol 2017,14:717-734)。制御性T細胞は、腫瘍関連免疫抑制に寄与する恒常性の維持において必須の役割を果たし、腫瘍中の制御性T細胞の存在から予後不良が予測される(Bourquin et al.Pharmacol Res 2019,2:104192中で概説される)。この効果は、IL6の分泌を介して樹状細胞によって媒介される。TLRの活性化は、制御性T細胞の機能に影響するだけでなく、腫瘍へのそれらの動員も阻害する。
【0020】
したがって、がん、アレルギー、及び感染性疾患における適用のために、先天性免疫の受容体上でマルチアゴニスト効果を発揮する新しい実体を得ることは、依然として関心がもたれる。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、リボ核酸(RNA)及びウイルス起原のタンパク質を含有する核タンパク質であって、RNA含有量が20%質量/質量超であり、RNAがウイルス様構造内で分解から保護され、この核タンパク質が、先天性免疫受容体TLR3、TLR2、TLR7、TLR8、及びTLR9を同時に活性化する、前記核タンパク質の提供によって、前述の問題を解決する。
【0022】
本発明の核タンパク質は、先天性免疫の様々な受容体上でマルチアゴニスト効果を生成すること、MYD88アダプタータンパク質(TLR2、TLR7、TLR8、及びTLR9の受容体)、ならびにTRIF及びIRF3(TLR3受容体)を介してシグナル伝達を同時に活性化することが可能である。この知見の関連性は、両方の経路を同時に活性化するTLRリガンドの組み合わせが、先天性免疫の活性化及びもたらされるT応答の質に対する相乗効果を有することを示す以前の報告から認識され得る(Bagchi et al.J Immunol.2007,178:1164-1171;Zhu et al.Proc Natl Acad Sci US A.2008;105(42):16260-16265;Zhu et al.J Clin Invest.2010;120(2):607-616)。
【0023】
本発明の一実施形態において、核タンパク質中で、タンパク質は、組み換えDNA技術によって得られたウイルス起原のカプシド、好ましくはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、及びコロナウイルスのカプシドである。20%超のRNA対タンパク質の比が、産生プロセスの一部分として当該タンパク質に付随するように、これらのタンパク質は修飾され得る。
【0024】
好ましい実施形態において、核タンパク質中に存在するタンパク質は、初期配列から修飾されており、185アミノ酸からなるアミノ酸配列を有する。ウイルス起原のこのカプシドのアミノ酸配列は、配列番号1として配列表中で同定される。
【0025】
RNA含有量が核タンパク質中で20%質量/質量超で維持される限り、RNAは、外来性RNA、ワクチン抗原として使用されるメッセンジャーRNA、干渉RNA、または別のRNA様化合物であり得る。
【0026】
別の態様において、本発明は、RNA及びウイルス起原のタンパク質を含む核タンパク質であって、RNA含有量が20%質量/質量超であり、RNAがウイルス様構造内で分解から保護される、前記核タンパク質を、抗感染、抗腫瘍、または抗アレルギーの応答を促進する医薬の製造のために使用することを示す。これは、MYD88の依存性経路及び非依存性経路の同時刺激の結果として、抗原提示能力、共刺激分子の増加、炎症促進性メディエーター、及びプロアポトーシス経路の増強を介して起こって、これらのプロセスの制御、予防、及び回復に好都合な先天性免疫応答の増加を容易にする。
【0027】
特定の実施形態において、本発明の核タンパク質により製造された医薬は、抗ウイルスタイプの抗感染応答を促進する。これはインターフェロンの刺激に起因し、治療的及び予防的な状況に、特に血液及び/または粘膜におけるウイルスの持続されたレベルにより起こる慢性疾患、そして急性感染及び再発性感染、実際はB型肝炎ウイルス、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス、パピローマウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、及びコロナウイルスによって引き起こされるがこれらに限定されないウイルス感染の症例の治療において、適用される。好ましい実施形態において、コロナウイルスは、SARS-CoV2と呼ばれるウイルスである。
【0028】
別の特定の実施形態において、本発明の核タンパク質により製造された医薬は、腫瘍疾患の患者の先天性免疫の活性化によって、抗腫瘍応答を促進する。本発明の核タンパク質の目的は、単剤療法で、または確立している治療法への補完物として、粘膜投与もしくは非経口投与を介して、及び/またはその腫瘍内投与を介して、腫瘍疾患の患者の先天性免疫を活性化することである。
【0029】
別の態様において、感染性またはアレルギー性のプロセスの予防または治療における先天性免疫の活性化及び訓練のための医薬の製造のための本発明の核タンパク質の使用が開示される。本発明の一実施形態において、医薬は、急性及び再発性の呼吸器ウイルス感染の予防または治療において使用されるが、その理由は、当該医薬が悪化を予防するか、または臨床症状の消失を容易にし、より迅速な回復相を可能にするからである。特定の実施形態において、医薬は、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、及びライノウイルスによって生じた感染の予防または治療において使用される。好ましい実施形態において、本発明の核タンパク質により予防または治療されるコロナウイルスは、SARS-CoV2と呼ばれるウイルスである。
【0030】
本発明の別の実施形態において、医薬は、胃腸ウイルス感染、泌尿生殖器ウイルス感染、及び全身性ウイルス感染の予防または治療において使用される。特に、本発明の核タンパク質により得られる医薬は、デング熱ウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスによって引き起こされる感染、及びベクターによって伝達される他のウイルス感染の予防または治療において使用される。
【0031】
先天性免疫系の複数の受容体の同時刺激の特性に起因して、本発明の核タンパク質は、インビボ及びインビトロの腫瘍の治療の間に、腫瘍細胞における及び腫瘍免疫環境における修飾を誘導するための医薬の製造においても有用である。
【0032】
組成物が同じ治療の過程で他の医薬と同時にまたは逐次的に投与される場合の、腫瘍疾患、アレルギー性疾患、または感染性疾患の治療のための医薬の製造のための前述の核タンパク質の使用も、本発明の目的である。
【0033】
別の態様において、本発明は、予防的または治療的なワクチン接種戦略において使用されるワクチン抗原のアジュバントまたは担体の製造のための核タンパク質の使用を企図する。ワクチン学の分野において、本発明の核タンパク質の目的物は、その性質によって、ワクチンの状況において先天性免疫を活性化及び/または訓練し得る。
【0034】
本発明は、
1)RNA及びウイルス起原のタンパク質から構成される核タンパク質であって、RNA含有量が20%質量/質量超であり、これがウイルス様構造中で分解から保護される、前記核タンパク質、及び
2)薬学的に許容される希釈物質または賦形剤
を含む医薬製剤も示す。本発明の一実施形態において、医薬製剤は、ウイルス起原の少なくとも1つのタンパク質を追加で含み、かかるタンパク質は同じかまたは別のウイルスからであり得る。好ましい実施形態において、医薬製剤の一部分であるウイルス起原のタンパク質は、HBV表面抗原である。
【0035】
本発明の別の実施形態において、製剤は、粘膜投与のための粘膜接着物質(好ましくはカルボキシビニルポリマー及びセルロース誘導体の群からの)を追加で含む。製剤において、核タンパク質中に存在するタンパク質がペプチドまたはウイルス起原の他の抗原へコンジュゲートされることも可能である。
【0036】
別の実施形態において、製剤は、先天性免疫受容体アゴニストをさらに含む。特定の実施形態において、先天性免疫のアゴニストは、TLRのアゴニスト、CpG領域リッチの配列、RIG-Iのアゴニスト効果の有る化合物(c-ジ-AMP)、MD5-A、または病原体と関連する分子パターンの他の検出系のアゴニストである。
【0037】
別の実施形態において、本発明の核タンパク質を含む製剤は、合成起原の核酸の複合体及び/またはヌクレオチド化合物(メッセンジャーRNA、DNAワクチン、ミニ遺伝子、または核タンパク質と会合するヌクレオチド性質の他の構造等)を追加で含む。
【0038】
別の態様において、本発明の核タンパク質を含む製剤は、固形腫瘍の免疫療法において使用される化合物を追加で含む。本発明の一実施形態において、固形腫瘍免疫療法において使用される化合物は、BCGである。BCGとの併用の事例において、共投与は確立されている一方で、ソラフェニブとの併用治療において、核タンパク質による治療法は、ソラフェニブによる2~8週間の治療後に確立される。
【0039】
本発明において、核タンパク質を含む製剤は、非経口、鼻腔内、腫瘍内、舌下、静脈内で、及び/または動脈化学塞栓によって投与され得る。後者の事例において、この経路は、固形腫瘍の患者において、好ましくは肝腫瘍、前立腺腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、頭頸部腫瘍、脳腫瘍、甲状腺腫瘍、乳房の腫瘍、胃腫瘍、及び膵臓腫瘍の患者において使用される。
【0040】
本発明は、核タンパク質製剤、粘膜付着性化合物、及び粘膜経路によるこの製品の投与のためにデザインされた噴霧デバイスを含む、粘膜投与のためのキットをさらに開示する。かかるキットにおいて、核タンパク質製剤を含む第1のバイアル、粘膜接着物質を含有している第2のバイアル、ならびにあるレベルの粘膜接着及び粘度の有る製品の鼻腔内経路及び舌下粘膜経路を介する生物分散を保証する噴霧デバイスがある。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明の核タンパク質は、先天性免疫受容体(TLR等)の刺激または調節によってHCC及び他の固形腫瘍を治療するために使用される。腫瘍の中への本発明の核タンパク質の投与は、腫瘍内注射もしくは静脈注射によって、または動脈化学塞栓によって、腫瘍細胞を攻撃するようにデザインされたワクチンと同時にまたは連続的に実行され得る。核タンパク質は腫瘍細胞及びプロフェッショナル抗原提示細胞によって取り上げられ、腫瘍細胞及びプロフェッショナル抗原提示細胞におけるMHC分子中でのヌクレオカプシドのタンパク質構成要素に由来するペプチドの提示を導く。したがって、核タンパク質は、核タンパク質のタンパク質構成要素への適応免疫応答を誘導するようにデザインされた治療ワクチンと同時にまたは連続的に適用され得る。本発明の核タンパク質中のRNAのレベルの増加は、TLR3下のシグナリング経路を活性化し、以前に記載されたHBVのカプシド由来核タンパク質調製物(この効果を示すことができない)に比較して、この特性は固有である(Vanlandschoot et al.J Immunol 2005,175(10):6253;著者の応答6253-5)。
【0042】
同様に、本発明の核タンパク質及び本出願によってカバーされる他のものにおける核酸対タンパク質の比は、TLR7遺伝子の発現及び対応するシグナリング経路(MYD88)を刺激する。核タンパク質の免疫刺激特性それ自体を活用することに加えて、本発明は、治療ワクチンの同時のまたは逐次的な投与と併用した核タンパク質の腫瘍内の適用を特にカバーする。この治療ワクチンは、腫瘍抗原またはヌクレオカプシドの誘導体について特異的なT細胞の活性化を誘導するために、鼻腔内の皮下または非経口のヌクレオカプシドの適用からなり得るがこれらに限定されない。
【0043】
腫瘍細胞そして腫瘍微小環境における抗原提示細胞のインサイチューの刺激は、炎症促進性サイトカインの分泌を誘導する。これらのサイトカインはエフェクター細胞(すなわち細胞傷害性T細胞、NK細胞、NKT細胞)を活性化し、したがってそれらの抗腫瘍活性を促進する。同時に、IL6を含むこれらのサイトカインは、Tregs細胞及び骨髄性系統を由来するサプレッサー細胞(MDSC)の免疫抑制機能を負に調節する。
【0044】
HLAクラスI及びIIの発現の増加は、共刺激シグナリング分子と一緒に、腫瘍特異的ペプチドについて特異的であり且つ核タンパク質のタンパク質構成要素に由来する適応免疫細胞による腫瘍細胞の認識を促進する。当該適応免疫細胞は核タンパク質によるワクチン接種によって誘導され、腫瘍特異的抗原を認識するT細胞の誘導を刺激する。抗原特異的適応免疫細胞の復帰は、局所的なケモカイン分泌によって刺激される。肝細胞は、粘膜にもユニークなインテグリンを発現する。したがって、粘膜(すなわち鼻腔内)を介する免疫は、肝臓中のワクチン誘導性T細胞の局在化を促進し、それは、腫瘍内経路によって投与される同じ抗原を含む専用ワクチンの鼻腔内適用を介して、HCCの標的化に役立つ。
【0045】
本発明は、HCCに関連しないがんの治療のための核タンパク質の適用をカバーする。複数のTLRは、多くの腫瘍実質細胞によって発現されることが報告されている。TLR2及びTLR3の刺激は、直接的な抗腫瘍効果を惹起する一方で、TLR4刺激は腫瘍増殖を改善し、したがって好都合ではないことが以前に示された(Kaczanowska et al.J Leukoc Biol 2013,93(6):847-63によって概説される)。複数のTLRアゴニストとしてのBCGに比較して、本発明の核タンパク質によるインキュベーション後に示されるTLR3及びTLR2の最も強力な刺激は、好都合である。BCGはその製剤中に含有されるLPSに起因してTLR4を刺激するが、本発明の核タンパク質は最小量のLPSを含有し、したがってTLR4シグナリングに対して最小効果を有する。しかしながら、本発明の実施形態は、BCGの効果を補完するTLR3の誘導の増加を増進するための、BCGと組み合わせた核タンパク質の使用をカバーする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】最適化したHBVカプシド核タンパク質の異なる濃度により24時間及び48時間インキュベーションしたHepaRG細胞における、TLR遺伝子発現の刺激。遺伝子A)TLR2;B)TLR3;C)TLR7;D)TLR8;E)TLR9の発現の刺激。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05は統計的に有意な差(*);p<0.01は非常に有意な差(**);P<0.001は高度に有意な差(***)と判断された。
図2】最適化したHBVカプシド核タンパク質の異なる濃度により24時間及び48時間インキュベーションしたHepaRG細胞における、TLRシグナル伝達因子またはアダプタータンパク質の遺伝子発現の刺激。遺伝子A)MYD88;B)NFkb;C)TRIF;D)IRF3の発現の刺激。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図3】A)HBVカプシドからのNP-Oの異なる濃度により24時間及び48時間インキュベーションしたHepaRG細胞における、HLA-A遺伝子の遺伝子発現の刺激。B)GusB発現のパーセンテージを参照した、HLA A遺伝子の発現。HLA-A遺伝子発現の基底レベルは通常は高いGusB発現レベルに類似していた。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図4】HBVカプシドからのNP-Oの異なる濃度により24時間及び48時間インキュベーションしたHepaRG細胞における、MHCクラスII遺伝子発現の刺激。A)2つのインキュベーション時間におけるHLA DRB1遺伝子発現の刺激。B)DRB1のGusB発現のパーセンテージであり、DRB1遺伝子の発現の誘導レベルは、通常は高いGusB発現の40%近くに到達する。C)NP-Oによる48時間のインキュベーション後の、3つのMHCクラスII対立遺伝子(DPB1、DQB1、及びDRB1)の刺激。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図5】HBVカプシドからのNP-Oの異なる濃度により24時間及び48時間インキュベーションしたHepaRG細胞における、Bax及びbcl-2遺伝子の遺伝子発現の刺激。グラフA及びB中で、BAX及びBCL2の遺伝子発現の刺激はそれぞれ、アポトーシスに関連する遺伝子として示される。グラフCは、HepaRG細胞におけるNP-Oのアポトーシス効果を遺伝子発現のレベルで特徴づけるために、その関連性に起因して研究されたBAX対BCL2の関係性を示す。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図6】HBVカプシドからのNP-Oの異なる濃度により24時間及び48時間インキュベーションしたHepaRG細胞における、IL6遺伝子の遺伝子発現の刺激。グラフA中で、IL6遺伝子発現の刺激が示され、グラフBは、参照遺伝子としてGusB遺伝子を使用する、発現の相対レベルを示す。すべての非刺激対照細胞は、研究された条件下で検出不可能なレベルの遺伝子発現を生じた。0.1%の値を任意に定義して、遺伝子発現の刺激を分析した。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図7】HBVカプシドからのNP-Oの異なる濃度により24時間及び48時間インキュベーションしたHepaRG細胞における、A)IFNα遺伝子及びB)IFNβ遺伝子の遺伝子発現の刺激。刺激は非常に穏やかなものであったが、培養約10時間後にこの効果がこの細胞株において検証される場合でさえ、特異的条件下で統計的有意差に達した。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図8】HepaRG細胞株における関心のある遺伝子の発現についてのHBVカプシドのNP-O誘導刺激に対するウイルス感染(HBVによる)の効果。HepaRG細胞を、NP-Oの増加用量(10μg/mlまで)により48時間インキュベーションした。2つのTLR遺伝子をMYD88依存性刺激因子及び非依存性刺激因子(それぞれTLR2及びTLR3)として選択し、抗原提示(DRB1)及びサイトカイン機能(IL6)に関連する2つの追加の遺伝子を選択した。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図9】HBVカプシドのNP-O(10μg/mL)、ポリ-IC、及びエンテカビルによりインキュベーションしたHepaRG細胞における、遺伝子A)TLR2;B)TLR3;C)IL6;D)HLAクラスII(DRB1)の遺伝子発現の刺激。すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05、統計的に有意な差(*);p<0.01、非常に有意な差(**);P<0.001、高度に有意な差(***)である。
図10】HBV複製に対する先天性免疫刺激の効果。最適化したHBVカプシド核タンパク質を使用する、インビトロの刺激によって有意に誘導された先天性免疫応答メカニズムの活性化は、感染したHepaRG細胞培養物上清中のHBVの濃度を低減した。この効果は、エンテカビルについて見出されたもののレベルであった。
図11】HBVカプシドのNP-Oを含有している製剤により治療された患者におけるTLR3、7、及び8受容体(RNAウイルス受容体)の遺伝子発現(EG)に対する促進作用の有る患者の頻度。A)TLR3、7、及び8のGAを刺激する患者の頻度。B)TLR3、7、及び8のGAの強力な刺激の有る患者。治療スキーム:3回の鼻腔内投与、毎週の頻度(0、7、及び14日目)及び舌下を経由する14回の投与。統計比較:
【実施例
【0047】
実施例1。最適化した核タンパク質(NP-O)の核酸組成物の特徴評価。
核酸シーケンシングをillumina HiSeqシーケンシング技術を使用して実行した。ウイルス様粒子としてその分子的安定性及び物理的構造を最大化するように最適化したタンパク質のバッチA~Dを選択した。追加で、RNA様核酸を会合する能力の低い他の核タンパク質を研究に入れた。タンパク質単位あたり減少した量のRNAの短縮バリアントの群、そしてバッチA~Dにおいて得られたものよりも低いレベルでのRNA/タンパク質比を含有する4つの核タンパク質バリアントを、研究へ追加した。
【0048】
全RNAサンプルを超音波により断片化した(4℃で30秒の2回のパルス)。第1ストランド相補的なデオキシリボ核酸(cDNA)合成を、N6のランダム化プライマーによりプライミングした。次いでillumina TruSeqシーケンシングアダプターをcDNAの5’末端及び3’末端へライゲーションした。最終的にこれを、試験用読み取り酵素を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。cDNAプールをIllumina HiSeq 2000システムでシーケンスし、読み取り長は100bpであった。
【0049】
最適化した核タンパク質において見出されたRNA/タンパク質比は(表1)、研究された他の核タンパク質(バリアントE~J、表2)と比較して、そして、従来技術の水準において報告された他のバリアント(Riedl et al.J Immunol 2002,168(10):4951-4959)に対して、タンパク質単位あたりのRNA含有量で比較的高かった。バッチA~Dのタンパク質安定化プロセスにより、タンパク質の質量あたりの高レベルのRNA(>20%のRNA/タンパク質、質量:質量)の取り込みが可能になった(表1)。
【0050】
従来技術の水準の他の核タンパク質及び短縮バリアントと比較して、高レベルのRNAを取り入れるかまたは会合するという予想外の特性から、この新しい化合物(タンパク質単位あたりのRNAの高い比があると判断される修飾または最適化した新しい核タンパク質(NP-O))についての生物学的特性の探索への扉が開かれる。185アミノ酸の非短縮バリアントが、ウイルス様構造としての安定性についての探索において、100マイクログラムのタンパク質あたり20マイクログラム(20%質量/質量)を越えるRNAレベルを取り入れるという、能力の増加を呈したので、この知見は完全に偶然であった。このタイプの非短縮核タンパク質を用いて取り組んだ他の著者らは、およそ1%のものを報告し、それを微量レベルであると判断し、たとえそうであっても、関連態様は免疫学的視点から検証された(Riedl et al.J Immunol 2002,168(10):4951-4959)。
【0051】
核タンパク質の全RNA中のmRNAの比率に関連する免疫学的性質は、以前に記載されていた(欧州特許出願公開第3437654(A1)号;特許出願PCT/CU2017/050001号)。しかしながら、本事例において、より高いRNA-タンパク質比(それは他の核タンパク質において現在見出されたレベルを越える)があるので、定量的要素によって以前に記載されたタンパク質とは異なる。得られた結果は、報告されたものと矛盾しない。
【表1】

【表2】
【0052】
実施例2。バッチA-Jからの修飾/最適化した核タンパク質(NP-O)へ対応するタンパク質のアミノ酸配列の決定。
MALDI-MS測定をLTQ Orbitrap XL機器(Thermo Scientific、Germany)で行った。5pMolを含有するペプチド溶液を、0.1%のTFA(v:v)を含有する50%のアセトニトリル/水中の7.5mg/mLのCHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)からなるマトリックス溶液と混合した。この混合物を、平面のステンレス鋼表面を提供するプレート上での空気暴露によって乾燥し、全質量試験は、400~4000のThのm/z範囲についてポジティブモードで捕捉した。FT質量分析器(Orbitrap)を使用する質量の解像力は、60’000であった。10のレーザーショットを各々の分析において使用し、各々は14μJのレーザーエネルギーであった。質量スペクトルをXcalibur(商標)v3.0.63ソフトウェアを使用して処理した。
【0053】
低エネルギースペクトルを、エレクトロスプレーイオン源(Zspray Nanoflow)へカップリングしたWaters(Manchester、UK)QTOF-2質量分析計を使用して捕捉した。飛行時間型(ToF)質量分析器を、広範な質量範囲(m/z 200~2000)にわたって、参照としてセシウム塩及びナトリウム塩(Sigma(USA))の混合物により較正した。ESI-MSスペクトルを、m/z 200~2000の範囲で得た。質量スペクトルの捕捉及び処理のプログラムは、MassLynx 4.1(Micromass UK,Ltd.)であった。15~48eVの衝突エネルギーを適用して、分析されるペプチドの構造解明のための十分な情報を含有する断片化を誘導することによって、ESI-MS-MSスペクトルを得た。
【0054】
表3は、NP-O(バッチA~D)の配列、そしてRNA/タンパク質比(質量/質量)の減少を示す各々の短縮バリアントについて2つのバッチの配列を示す。
【表3】
【0055】
実施例3。異なるウイルスからの修飾/最適化した核タンパク質(NP-O)及び異なるRNA/タンパク質比を使用する、TLR、及び先天性免疫と関連する他の遺伝子の刺激。
異なる核タンパク質により実行された遺伝子発現の刺激研究から、RNA/タンパク質比(RNA/タンパク質の質量:質量比)とTLRタイプの先天性免疫受容体を活性化する能力との間の直接的な関係性が示された。
【0056】
試験された核タンパク質の中でNP-Oの4つの異なるバッチがある(バッチA~D、実施例1において記載され、それは20%超(21~26%)のRNA/タンパク質比を有する)。0.5~15%のRNA/タンパク質の核タンパク質(E~Jバリアント)及び異なる研究室によって供与された異なるウイルス起源の他のNPバリアント(K~Nバリアント)は、減少したレベルのRNA/タンパク質であり、最適化/修飾したそれらのバリアントは、タンパク質に対して20%超のパーセンテージのRNAを含有する。
【0057】
表4中で示された結果によれば、20%よりも低いRNA/タンパク質比を有する試験したNPのどれも、最適化したNPにおいて誘導されたレベルのTLR3受容体の促進作用を示さなかった。有意な効果は、抗原提示(DRB1)、共刺激分子B7.1/B7.2(CD80/CD86)、及び1型インターフェロンに関連する他のタンパク質の、TLR3シグナル伝達因子タンパク質(TRIF/IRF3)における遺伝子発現に対しても観察されなかった。核タンパク質のRNAレベルが20%未満のRNA/タンパク質に低減した場合に、IL6遺伝子発現は有意に低減した(表4)。TLR2遺伝子発現は、RNA/タンパク質比の低減によって有意に影響を受けず、RNA組成に関連しない経路によるこの受容体の活性化と矛盾しない。結果は、この核タンパク質に関する従来技術の水準において報告された知見、特に20%未満のRNA/タンパク質比の核タンパク質におけるTLR3受容体の活性化がないとするものと矛盾しない。しかしながら、TLR3受容体及びTRIF依存性経路(+IRF3)の両方は、この受容体によって検出される刺激の伝達因子から刺激された。
【表4】
【0058】
すべての比較は非刺激対照を参照し、p<0.05は統計的に有意な差(*);p<0.01は非常に有意な差(**);P<0.001は高度に有意な差(***)と判断された。平均値及び統計比較結果を括弧中に示す。
【0059】
実施例4。HBVカプシドに基づくNP-Oを使用する、TLR受容体、それらの伝達因子タンパク質、ならびに抗原提示、アポトーシス、サイトカイン、及び1型インターフェロンと関連する他の遺伝子の刺激。
先天性免疫受容体の遺伝子発現に対するバッチA~Dからの最適化した核タンパク質の効果及びそれらの後続する効果の研究を、分化したHepaRG細胞において遂行した。先天性免疫受容体の活性化物質としてのNP-Oの品質を知るために、抗ウイルス効果、抗発がん効果、及び抗アレルギー効果に関連する遺伝子の群を研究した。関心のある他の遺伝子が、先天性免疫の受容体と一緒にインビトロで刺激されるかどうかを調べるために、異なる濃度でNP-Oを使用する分化したHepaRG株の肝細胞のインビトロの刺激を試験した。
【0060】
EJバッチからの最適化していないタンパク質を使用する本発明者の研究室の以前の試験は、TLR3受容体、またはTRIF及びIRF3を介するシグナリング経路の刺激を示さず、結果は、20%未満のRNA/タンパク質比のHBVカプシドの核タンパク質を使用した他の当業者の結果(Vanlandschoot et al.J Immunol 2005,175(10):6253;著者の回答6253-5)と一致した。
【0061】
本研究は、核タンパク質をバッチA~Dのこれらの研究のために区別なく使用して、HepaRG細胞がNP-O核タンパク質の異なる濃度によりパルス処理された場合の、これらの細胞の遺伝子発現のインビトロの刺激に対するNP-Oの効果を特徴づけることを目的とした。異なる濃度の核タンパク質を使用し(最大の15μg/mLのタンパク質)、2つの異なるインキュベーション時間(24時間及び48時間)を評価した。特に、本発明者らは、先天性免疫系の検出機構、特にTLR、核へのシグナルの伝達を確かにするそれらのアダプタータンパク質の活性化、アポトーシスに関連する細胞抗原性を増加させる遺伝子の活性化、炎症促進性効果、Th1/Th2、及び免疫「訓練」の誘導効果のマーカーサイトカインの発現、そしてこの細胞株を感染することができるウイルス(HBV)のウイルス負荷を抑制する抗ウイルス能力のこの効果の具体的な実現を、妥当に明らかにすることを考慮する。特に、ウイルス複製を抑制し、同時に細胞抗原性に対する効果に関連するマーカーの群(サイトカインの産生)を活性化する、先天性免疫系のこのタイプの刺激の能力、そしてMYD88に依存する遺伝子及び細胞の核へのそれらのシグナル伝達経路におけるアダプタータンパク質MYD88に依存しない遺伝子の活性化が、1週間を超えて先立って確立された刺激効果が感染プロセスの間に維持されるかどうか決定する。この事例において、感染性病原体は関連しないが、むしろ見出された抗ウイルス効果を担うのが先天性免疫応答の活性化であることを示すことを可能にするモデルである。
【0062】
抗原及び製剤
本発明の核タンパク質目的物は、本発明の例2において説明されたアミノ酸配列(バッチA~D)を含み、それは合計で185のアミノ酸を有し、28~32ナノメートルのサイズの類似するウイルス様タンパク質態様としてバクテリアE.coli中で自己集合する。その化学的性質の視点から、それは、タンパク質の質量/質量の単位あたり20%を超えるRNA及びタンパク質の質量/質量の単位あたり2%未満のDNAの割合の存在を特徴とする。
【0063】
HepaRG細胞株及びヒト初代肝細胞
研究室において一般的に使用される不死化肝細胞株のどれもHBV感染を支援しないので、HepaRG細胞株を選択した。これは、感染していないHepaRG細胞、及びまたウイルスが感染した当該細胞(特に本発明者らはモデルとしてHBVを使用する)における遺伝子発現の刺激の研究を可能にする。初代ヒト肝細胞は、長い間HBVの完全な複製周期の研究のための唯一の系であった。しかしながら、この限定は、HepaRGと呼ばれるヒト肝細胞癌細胞株が見出された後に解消された。この培養された細胞株は、DMSO処理後に肝細胞及び胆汁細胞(bile cell)に類似する顆粒細胞へと分化する能力を有する肝臓前駆細胞(HPC)として振る舞う(Gripon et al.Proc Natl Acad Sci USA 2002,99(24):15655-15660)。タウロコール酸ナトリウム共輸送体ポリペプチド(NTCP)(分化後にのみHepaRG細胞中で発現される輸送体のうちの1つ)は、HBVについて特異的な受容体である(Ni et al.Gastroenterology 2014,146(4):1070-1083)。
【0064】
培養における細胞株の分化
細胞分化プロセスを、ルーチンの分化プロセスのために、以前に報告されたもの(Gripon et al.Proc Natl Acad Sci USA 2002,99(24):15655-15660)から適合させ、2ステップの手順を使用した。細胞を最初に増殖培地中で2週間維持した。次いで当該細胞を分化培地中でさらに2週間維持し、それは同じWilliam E培養培地であるが、10%のFCS、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、5μg/mLのインスリン、及びビヒクルとして2%のDMSOによる5×10-5Mのヘミコハク酸ヒドロコルチゾンを補足したものであった。培地を2日または3日毎に更新した。
【0065】
最適化した核タンパク質を使用するHepaRG細胞の刺激
抗原によるインキュベーションを、核タンパク質化合物から構成されるHBcAgタンパク質の0;1.25;2.5;5;10、及び15μg/mLの濃度で、核タンパク質を添加することによって実行した。3つの異なる実験複製を使用した。2つのインキュベーション時間(24時間及び48時間)を試験した。すべての事例において、非刺激細胞を陰性対照として使用した。
【0066】
HBVにより感染させたHepaRG細胞の刺激
分化したHepaRG細胞を、精製したHBV(500ゲノム/細胞当量)により上で記載されるように感染させた。HepaRG細胞を、4%のPEG 8000(Sigma)を補足した培養培地中のHBVにより、37℃で一晩でインキュベーションした。インキュベーションの終わりで、細胞をPBSにより3回洗浄し、1.8%のDMSO及び5×10-5Mのヘミコハク酸ヒドロコルチゾンの存在下において維持した。感染を1週間発達させ、その後に、細胞を核タンパク質またはエンテカビルにより24時間または48時間処理した。
【0067】
リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
qPCR反応は、商業的なSYBR Green反応混合物(QuantiTect SYBR Green PCR Kit、Qiagen、Germany)を使用して、15μLの最終体積へ適合させた。このキットは、偽陽性を回避するためにHot Start Taq Polymeraseを含有する。1反応あたり、以下の試薬の量:7.5μLのSYBR Green混合物(Quantitect SYBR Green PCR kitから、Qiagen)、1μLの2つのオリゴヌクレオチド(10 pMol/μL)の各々、及び0.5mLの水を採用し、組み合わせた。
【0068】
これらの要素を備えた反応混合物を、qPCRにおいて評価されるサンプルの数に基づいて調製した。最終的にこの混合物から、10μLを、次いで事前に希釈した5μLのcDNA(1:10、1:40、及び1:500)を、各々のPCRチューブ(0.2mlの容量)に採取した。陰性対照の事例において、5μlの水を代りに添加して、15μLの全反応体積を作り上げた。
【0069】
特異的なプライマーを、Center for Genetic Engineering and Biotechnology(CIGB、Havana、Cuba)で合成し、10 pMol/μLで使用した。その配列は文献から得られたか、または代替的にプライマーはいくつかの具体的な事例においてデザインされた。
【0070】
サーマルサイクリングを、Rotor Gene 3000 PCRでリアルタイムで(Corbett Research、オーストラリア)遂行した。PCRを、ポリメラーゼ活性化のために95℃で15分間インキュベーション後に開始し、続いて、94℃で15秒間、55℃で30秒間、及び72℃で30秒間の40サイクルであった。
【0071】
統計
結果の精度を改善するために、すべての関心のある遺伝子のqPCR定量を、GusBプライマーにより同時に増幅した非処理細胞の群からのcDNAサンプルの連続希釈物(典型的には1/40、1/80、1/160、1/320)によって作製した標準曲線に比較した。すべてのサンプルを同じ標準曲線に対して定量し、結果を相対的単位で表現した。遺伝子発現の刺激の結果を、3つの重複の平均として提示し、陰性対照についての平均値を1として、及び各々の処理群についての平均値を陰性対照の平均値を超えて何倍であるかとして判断する。
【0072】
統計的比較を、各々の処理群の3つの重複の平均とそれらの3つの対応する陰性対照(時間の一致する非処理細胞)との間で行った。等分散性結果が以前のF検定から与えられたと判断して、両側スチューデントのt検定を適用した。有意性レベルは、p≦0.05で確立された。p<0.01の値は、非常に有意な統計的な差と判断された、p<0.001の事例において高度に有意な統計的な差と判断された。データ分析を、Microsoft Excel及びPrism(バージョン5.0)により遂行した。
【0073】
トール様受容体(TLR)遺伝子発現の核タンパク質刺激
TLR2、TLR3、及びTLR7の遺伝子発現の刺激に対する最適化したヌクレオカプシドの用量を増加させる効果は、他のTLRに比較して最も強力な効果をもたらした(図1)。刺激は、TLR9の事例において弱かった。24時間の刺激後のTLR8の事例において、高レベルの刺激は検出され、それは48時間のインキュベーション後に見出さなかった。TLR2/TLR3遺伝子発現の強力で正の刺激は、複数の実験セットにおいて確認された。それらのうちの3つが、最適化した核タンパク質のみを使用し、それらの製剤は同じ方法である。
【0074】
要約すると、TLR2、TLR3、及びTLR7の刺激は、2つの異なる時間(24時間及び48時間)で、及びHBVに非感染細胞及び感染細胞の培養において確認された(図1)。インビトロの刺激における核タンパク質の異なる濃度の研究から、これらの特異的な遺伝子の遺伝子発現における有意且つ用量依存的な増加が示された。
【0075】
TLR受容体のアダプタータンパク質の遺伝子発現の刺激。
TLR遺伝子発現の刺激を、そのアダプタータンパク質(MYD88、TRIF、IRF3、及びNF-kB)のいくつかの遺伝子刺激の評価によっても研究した。刺激は、インターフェロン調節因子3(IRF3)の事例において24時間後に最も強力であり骨髄分化一次応答遺伝子88(MYD88)の強度が続いた。活性化B細胞のκ-軽鎖のエンハンサーの核内因子(NF-kB)の刺激は、48時間のインキュベーション後に、より大きかった(図2)。研究した4つの遺伝子について、遺伝子発現の刺激は、24時間で、及びTRIFを除いて、陽性であり(陰性対照との有意差が有る)、48時間でもそうであった。
【0076】
主要組織適合系(MHCクラスI及びクラスII)の分子の遺伝子発現の刺激。
最適化した核タンパク質によるHepaRG細胞の刺激は、主要組織適合性複合体(MHCクラスI及びII)の遺伝子の遺伝子発現の強力な増加を示した。HLAクラスI遺伝子の事例において、HLA-Aは、HepaRG細胞のハプロタイプの以前の特徴評価に基づいて選択された。汎ハプロタイプオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用し、PCRの結果として、構成的GusB遺伝子の遺伝子発現の基底レベルに比較して、HLA-A発現の基底レベルは、類似するかまたはより高かったが、発現レベルにおける強力な増加が証明された(図3)。同様に、3つのMHCクラスII対立遺伝子(DRB1、DPB1、及びDQB1)も研究し、遺伝子発現の刺激が示された(図3A~C)。MHCクラスIIの刺激は、すべての3つの対立遺伝子において検証された。これらの遺伝子は、非常に低いベースラインレベルで発現していた。しかしながら、研究された異なる条件下でのNP-Oによる刺激は、構成的に発現されるGusB対照遺伝子に近いレベルまで遺伝子発現のレベルを増加させた(図45B)。
【0077】
アポトーシスに関連するタンパク質の遺伝子発現の刺激
NP-OによるHepaRG細胞の刺激は、BAX遺伝子の発現の増加を実証し(図5A)、比較的わずかな初期の増加後に、BCL-2遺伝子の発現は、NP-Oによる刺激の48時間後におよそ30%抑制された(図5B)。経時的に、これらの2つの遺伝子の挙動は、アポトーシス促進の意味で、BAX/BCL-2遺伝子発現比の増加(図5C)をもたらした。
【0078】
サイトカイン及びインターフェロンの遺伝子発現の刺激
NP-OによるHepaRG細胞の刺激は、IL6遺伝子の発現の増加をもたらした(図6A)。IL6遺伝子刺激のピーク値は、対照GusB遺伝子の遺伝子発現と比べておよそ7%であったが(図6B)、遺伝子発現がベースラインで強く抑制されたという点で注目すべきであった。すべての非刺激対照細胞は、研究された条件下で検出不可能なレベルの遺伝子発現を生じた。0.1%の値を任意に定義して、遺伝子発現の刺激を分析した。
【0079】
NP-OによるHepaRG細胞の刺激は、特異的な条件下でIFN∝及びIFNβの遺伝子発現の増加(図7A及びB)をもたらした。効果は主に非刺激細胞の陰性対照の1.5~2倍であったが、いくつかの事例において、効果は、研究された条件において統計的に有意であった。このタイプの細胞株において、インターフェロンの遺伝子発現に対する効果が10時間のインキュベーションの近くで確認されることは、注目すべきことである。
【0080】
ウイルス感染条件下でのNP-OによるHepaRG細胞の刺激
NP-O誘導性の遺伝子刺激に対するウイルス感染(この事例においてHBV感染をモデルとして使用した)の効果を評価するために、HepaRG細胞を、NP-Oの増加用量(10μg/mlまで)により48時間インキュベーションした。2つのTLR遺伝子を、MYD88の非依存性及び依存性刺激因子として選択し(それぞれTLR2及びTLR3)、2つの追加の遺伝子を、刺激環境におけるHBcAg刺激へ最も良好な応答し、提示(HLAクラスII)及びIL6サイトカイン刺激に関して影響を受けないものから選択した。4つの遺伝子は、遺伝子発現の刺激を示した(図8)。
【0081】
先天性免疫応答の活性化に関連する抗ウイルス効果
HBV感染の状況において最適化した核タンパク質による処理によって誘導された先天性免疫応答の抗ウイルス効果を研究するために、HepaRG細胞をHBVにより感染させ、7日目に、培養培地の1mLあたり10マイクログラムの用量で最適化した核タンパク質により刺激した。対照群として、ポリ(Poli)IC(それはTLR3のアゴニストとしての先天性免疫応答の刺激化合物である)を使用し、追加で、抗ウイルス効果の陽性対照として、エンテカビル(HBVによる慢性感染症の治療の分野における抗ウイルスであると認識された)を使用した。図9中で観察されるように、HBV感染は、両方の経路(MYD88依存性及び非依存性)からのTLR、サイトカインIL6及びHLAクラスII(DRB1)の遺伝子刺激を妨げなかった。
【0082】
結果から、ウイルスに類似する物理学的外観を備えた核タンパク質によって保護されて環境へ投与される場合に、TLR3アゴニスト遺伝子発現の刺激効果の優越性が実証される。透過を増進する物質の存在無しのパルス処理された培地条件におけるポリ(Poli)ICの事例における刺激効果は、限定される。これとは反対に、ウイルス様粒子性質は、最適化した核タンパク質の透過及び複数のアゴニストの存在を容易にし、同じ構造で、両方の経路(MYD88依存性及び非依存性)による刺激を容易にし、それは単純なTLR3アゴニストよりもはるかに大きな刺激を生成し、非処理細胞に対して有意な影響を有する規模で、抗原提示、サイトカイン分泌、及び図10中で示されるように抗ウイルス効果も増加させ、エンテカビル(慢性B型肝炎の治療のためにより低い用量で使用されたものである、認められた評判の良い抗ウイルス薬)によって生成されたものと統計的な有意差は無かった。培養において適応免疫系の他の構成要素がないので、HBV複製の変化が、先天性免疫受容体の活性化、及び本発明において記載される誘発プロセスの結果としてのみで起こる。
【0083】
実施例5。インビトロ及びインビボでの他の病原体に対する抗ウイルス効果。
NP-Oの抗ウイルス活性の第2の分析において、培養した細胞株における他のウイルスの複製に対する先天性免疫の活性化の効果を評価した。追加で、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、及びデング熱ウイルスの似ていない血清型の3つの異なる株により感染させた多様な細胞株のインビトロの培養へ添加した場合に、NP-Oにより刺激されたHepaRG細胞の培養上清を査定し、処理した細胞はウイルスカウントの有意な低減を示すが、非処理細胞において効果を観察することができなかった。非処理のものに比較した、処理した細胞におけるウイルスカウント間の差は、ウイルスの各々のウイルス負荷の少なくとも1対数であった。これらの結果、及び以前に明らかにされたものは、コロナウイルス、ならびに急性感染、慢性感染、及び再発性感染を引き起こす他のウイルスによるウイルス感染の設定における抗ウイルス剤としてのNP-Oの役割と矛盾しない。
【0084】
蚊によって伝達されるウイルス性疾患(特異的にデング熱、ジカ熱、及びチクングニア熱)の患者へのNP-Oを含む製剤の投与は、NP-Oを含む製剤により治療されない患者に対して、NP-Oにより治療された群において、患者のパーセンテージを有意に低下させること、疾患の臨床症状を低減させること、及びより重大な増悪のステージへの進むものの比率を減少させることを可能にした。異なるNP-Oバリアントの使用から、20%のRNA/タンパク質のNP-Oを生成するのに使用されたウイルスカプシドのタイプにかかわらず、類似する結果を誘導することが可能であることが示された。1群あたり100名の患者による有効性研究において、疾患増悪の有る患者は、NP-O製剤を受けなかった患者のみの事例において見出された。一致した手法において、先天性免疫の活性化のマーカーの増加が実証された。
【0085】
実施例6。併用治療の状況における核タンパク質NP-O。
治療の併用は、本発明の化合物目的物による治療の臨床実施における最も頻繁に使用される代替物の1つと見なすことができる。物理化学的な技法を使用して、バッチA~DのNPに、静電相互作用を介して粒子構造に会合する能力を有する1群の化合物を補足した。1つ設定において、本発明のNPを、ワクチンmRNA及び干渉RNAを補足した他のNPと同時に使用した。これらの化合物を、ウイルス剤(HBV、SARS-CoV2コロナウイルス、インフルエンザウイルス、及びデング熱ウイルス等)により感染させた培養中の細胞の処理において、インビボ及びインビトロで区別なく使用した。
【0086】
このタイプの化合物の会合は、20%を超えるRNA/タンパク質比の治療/ワクチン調製物の最終比を維持した。ウイルス培養へのこのタイプの化合物の投与は、各々の事例において1対数を超えてウイルスカウントを低減した。組み合わせが20%質量/質量超のRNA/タンパク質レベルを有しないNPにより作製された場合に、この効果は観察されなかった。
【0087】
組み合わせてまたは会合して使用される他の化合物は、NPとヌクレオチドまたはヌクレオシド性質の化合物(ヌクレオシドまたはヌクレオチド類似体、ポリIC、化合物c-ジAMP、核酸ポリマーNAP、刺激オリゴヌクレオチドCpG、及びヌクレオシドヌクレオチド性質の他の化合物等)の群中のものである。
【0088】
使用したNP-O製剤は、粘膜組織細胞ならびに血液及び肝細胞の両方において、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9、及びTLR2受容体を増加させ、MYD88依存性及び非依存性経路を活性化する能力を実証した。
【0089】
すべての事例において、TLR受容体の増加は証明され、この活性化は、先天性免疫のこの刺激によって媒介される、デング熱、B型肝炎、C型肝炎、HIV、HPVによる感染の設定における抗ウイルス効果に付随した。効果は、インビトロの条件、そしてインビボの条件の両方で見出された。
【0090】
実施例7。呼吸器感染疾患の状況における核タンパク質NP-O。
動物及びボランティアにおけるNP-Oの投与は、先天性免疫受容体(ウイルス病原体に関連する分子パターンの検出に関連するもの(TLR3、7、及び8)を含む)の局所性及び全身性の増加を証明した。
【0091】
具体的には、HBV表面抗原を含有するプロテオリポソームと組み合わせた製剤におけるHBVカプシドからのNP-Oの適用は、これらの受容体に対して局所性(扁桃腺上皮細胞において)及び全身性両方のレベルの刺激効果を生成し、血液中の単球の提示及び活性化の能力を増加させた。
【0092】
NP-Oの使用の実践的な適用を、SARS-CoV2コロナウイルスによる感染の状況において、このウイルスについて疑われる患者及び陽性の患者の両方において実行した。このタイプの治療を、加速スキーム(陽性の患者または疑われる患者)及び先天性免疫系の「訓練」スキームにおいて実行した。
【0093】
NP-Oを含有する製剤を、加速スケジュールで14日間投与した。この研究から、溶液中で、または他の抗原と組み合わせて、10~500マイクログラムのNP-Oの用量を使用する、CoV及び他のRNAウイルスについて疑われる患者及び陽性の患者の先天性防御の活性化が実証された。いくつかの製剤において、鼻腔内経路及び舌下経路を介する分散物による投与、そして滴瓶またはかかる手順のために特異的な滴瓶を使用する液滴での投与のために、デバイスを使用した。
【0094】
TLR3、TLR7、及びTLR8受容体の活性化効果を、鼻腔内投与(週1回の接種、3回)、及び舌下(1日1回の投与、14日間)の臨床試験において同時に評価した。TLR3/7及び8の遺伝子発現(GE)における有意な増加は、産物の投与を開始して4日目から検出され始めた(図11)。
【0095】
産物の適用の結果として、CoV感染及び他の同時の感染と関連する臨床症状の悪化は、同様に検出されなかった。治療された患者は、存在する原因となる感染から独立して、その後の満足な回復を有していた。NP-O製剤により治療された患者の大部分において、コロナウイルスの検出に関与するRNA受容体として一緒に分析される、TLR3、TLR7、TLR8受容体の刺激パターンを観察することができた(図11)。これらの結果は、前臨床研究と矛盾しなかった。
【0096】
第2の治療スキームにおいて、60歳を超えるボランティアの群を、Havana市の老人ホームから動員した。ボランティアは、単一構成要素として、または先天性免疫系を活性化する複数の構成要素の製剤において、10~100マイクログラムの投薬量のNP-Oを受けた。産物の投与は、3日毎または週1回で1~12か月の期間の間1日1回の頻度で鼻腔内及び/または舌下の接種スキームであった。先天性免疫系のこの「訓練」プロセスは、NP-Oを含む製剤を受けたボランティアにおいて、この産物により治療されなかった群に対して、より少ない数の呼吸器疾患を可能にすることが見出された。同様に、感染した人々の臨床症状は有意に低減された。これらの抗原への応答は、TNFα及びIL6の分泌の増加を特徴とする「訓練された」免疫のマーカーパターンの末梢血液単核細胞において反映され、これらのサイトカインはNP-Oにより治療された対象の血清において有意に低減されたが、この効果は血清においてではなく、末梢血リンパ球の刺激のみと関連する。この手法において、産物及びその製剤は、加齢関連免疫不全を持った人々における先天性免疫系の免疫学的訓練に使用された。
【0097】
第3の治療スキームにおいて、HBV及びHCVのカプシドからのNP-Oを、ペプチドをNP-Oへコンジュゲーションするために使用し、補足の特定のバリアントにおいて、遺伝子工学技術によってこれらのタンパク質の配列の中へ挿入した。もたらされたウイルス様粒子を保護及び安定化するために、干渉RNA及びメッセンジャーRNAの配列を使用した。インビトロ及びインビボの結果から、これらのタンパク質エレメント及びワクチンRNAを補足したこれらのNP-Oは、依然として20%を超えるRNA/タンパク質を有し、強力な適応応答及び保護応答を同時に誘導したことが実証された。
【0098】
実施例8。固形腫瘍に関連する腫瘍疾患におけるNP-O核タンパク質の使用。
画像確認により肝臓癌と診断された患者をNP-Oにより治療して、HCCに対する免疫療法効果を研究した。患者はNP-Oの製剤を静脈内に受けた、及び/または腫瘍へ直接適用される動脈化学塞栓手順(TACE)が付随した。別の治療選択肢において、腫瘍内及び腫瘍周囲の投与を、TACE手順が遂行されなかった患者において評価した。この産物は、鼻腔内経路によって投与されるワクチンと併用して投与され、ワクチン抗原の中にNPO抗原を含有する。鼻腔内投与との局所的な腫瘍内または腫瘍周囲の投与の併用は、腫瘍のMDSCの量の著しい減少、そして再循環パターンの血液を通して肝臓腫瘍に到達するリンパ球の数の増加が反映された免疫応答を生成した。この結果として併用治療から、肝実質中に存在する腫瘍塊のサイズ及び数の有意な減少を観察され、それは、このタイプの免疫療法レジメンにおけるNP-Oにより治療されなかった患者の群に比較して、治療された患者のより長い生存と関連した。HBV及びHCVによる感染に由来する肝臓腫瘍の症例において、HBV及びHCVのNP-Oを、類似する抗腫瘍効果に互換的に使用した。これらのNP-Oの製剤を、B型肝炎及びC型肝炎のウイルスの他の表面タンパク質と併用して使用した。
【0099】
NP-Oを含有するワクチンと併用した投与は、NP-Oの髄腔内/またはTACE投与によって誘導されるときのみ相加効果を生成した。患者の生存に対する効果は、他の従来療法(NP-Oと併用した療法無しのTACEによって投与されるソラフェニブまたは産物等)よりも優れていた。
【0100】
それぞれBCG及びソラフェニブと併用した投与の事例として、固形腫瘍の併用療法において、同時に投与される他の化合物と共にまたは連続的に、NP-Oを投与した。この手法において、抗腫瘍効果は、好都合且つ合理的な手法で、併用治療の投与から最適化される。BCGとの併用は、TLR3アゴニストを提供するNP-Oとの併用療法による、この確立している治療(この治療法のために追加の利益を示し、問題になっている治療のパーセント有効性における増加を伴う抗腫瘍療法の影響が反映される態様)の補足を容易にした。
【0101】
非固形腫瘍に対する効果は、細胞の抗原性が増加し、抗原を提示するより大きな能力(共刺激シグナルの増加によって促進される効果)を有するようにNP-Oを使用する、NP-Oの静脈内投与、ならびに樹状細胞及び腫瘍細胞のエクスビボまたはインビトロの治療から検証される。
【0102】
実施例9。感染性疾患、腫瘍学疾患、及びアレルギー性疾患のための予防的及び治療的なワクチン接種におけるNP-O核タンパク質の使用。
舌下経路による反復投与は、NP-Oを含む製剤を受けたアレルギー患者の臨床プロファイルを変化させることができたことを検証することは可能であった。3か月の治療後に、抗ヒスタミン物質を服用することが必要な個体の数の減少を、ダニへのアレルギーの有る患者の間で観察することができた。同じ手法において、アレルギーエピソードが、免疫訓練プロセスにおいて舌下を介して治療した患者で低減し、平行して呼吸器疾患の症状及び頻度が低減したことを検証することは可能であった。この手法において、NP-Oは、アレルゲン単独の部分であり得るか、またはアレルゲンとの組み合わせであり得ることを示した。
【0103】
同様に、ペプチド及び可溶性タンパク質が、NP-Oへのコンジュゲートで投与された場合に、またはこの投与が溶液中で実行された場合に、NP-Oが、ウイルス性及び非ウイルス性の病原体からのペプチド及びタンパク質サブユニットへの免疫応答を刺激する能力を、免疫応答の増加の検出によって検証した。この手法において、「担体」効果は、NP-Oへンジュゲートしたペプチド抗原の免疫原性を増加させることを可能にすることが検証された。NP-Oの検出に関与する先天性免疫系の多数の受容体は、それらがTh1抗ウイルス応答の量及びパターンを越える免疫応答、及び抗原に向けた多機能のT細胞の誘導を、NP-Oの非存在下においてこれらのペプチド抗原、ポリペプチド、及び可溶性タンパク質の投与によって生成された応答に対して有意な差で、抗原に提供することを可能にする。
【0104】
NP-Oを含有するワクチン製剤は、使用した抗原及びNP-Oの使用に依存して、粘膜経路(好ましくは鼻腔内及び舌下)、ならびに皮下、筋肉内、及び場合によっては腫瘍内経路によって、投与される。NP-Oを含む製剤は、粘膜接着物質(カルボキシビニルポリマー、そしてセルロースに基づくかまたはそれに由来する他のものが制限されずに挙げられる)、及び一般にワクチン治療またはNP-Oの治療的効果の標的粘膜においてより高い生物学的利用能を可能にするものの使用により、粘膜経路によって投与され得る。
【0105】
実施例10。エピデミック及びパンデミックの条件下での先天性免疫系の活性化のために最適化した異なる核タンパク質の使用。
B型肝炎、C型肝炎、CoV、及びデング熱ウイルスのカプシド抗原に基づく核タンパク質配列を最適化し、20%を超えるRNA/タンパク質比の増加を達成した。実施形態において、RNA比率が非修飾の最適化した核タンパク質のRNA比率に関して20%を越えた場合の、先天性免疫の刺激効果が検証された。見出された効果の中には、核タンパク質が呼吸器感染症の状況において先天性免疫応答を刺激する能力があり、アポトーシスプロセスの活性化及び腫瘍細胞のより高い抗原性と関連する抗腫瘍応答は、インビボ及びインビトロのモデルにおいて得られ、及び特異的な抗ウイルスサイトカインの産生経路の独自の刺激によって媒介される抗ウイルス効果の存在は、これらの核タンパク質により治療された動物においてウイルス感染を低減し、臨床症状を改善することを実証する。これらの治療の利益は、泌尿生殖系における再発性感染プロセスの低減においても鼻腔内経路及び舌下経路を介して観察された。これらの効果は、NP-Oにより治療された高齢者対象のより長い生存、そして呼吸器感染、胃腸感染、及び泌尿生殖器感染の再発からの必要な抗生物質による治療の有意な低減によって検証された。
【0106】
概して、最適化した核タンパク質は、腫瘍モデル、アレルギーモデル、及び感染モデルにおいて使用され、20%未満のRNA/タンパク質比の核タンパク質に比較して、それらの機能的有効性に関する明らかな優越性をもたらす。先天性免疫応答の刺激は、呼吸系ウイルス(コロナウイルス科のものが挙げられる)、肝臓指向性がある他のものの複製を阻害することができ、概して、それは先天性免疫系のマーカーの活性化と関連した。
【配列表フリーテキスト】
【0107】
配列番号1:<223>人工配列の記載:最適化したB型肝炎ウイルスヌクレオカプシドタンパク質配列
配列番号2:<223>人工配列の記載:最適化したB型肝炎ウイルスヌクレオカプシドタンパク質配列、短縮バリアント
配列番号3:<223>人工配列の記載:最適化したB型肝炎ウイルスヌクレオカプシドタンパク質配列、短縮バリアント
配列番号4:<223>人工配列の記載:最適化したB型肝炎ウイルスヌクレオカプシドタンパク質配列、短縮バリアント
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【配列表】
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【国際調査報告】