(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】複合粒子及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20230519BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230519BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230519BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230519BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230519BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230519BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20230519BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/587
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
H01M4/36 A
H01M4/58
C01B33/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504686
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 AU2021050322
(87)【国際公開番号】W WO2021203169
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522398614
【氏名又は名称】アンテオ エナジー テクノロジー プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルサバウィ,カディジャ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,カイ-アンダース
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チャンイー
(72)【発明者】
【氏名】マエジ,ノブヨシ ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ウィーザー,マヌエル クリストフ
【テーマコード(参考)】
4G072
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072DD05
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4G072GG02
4G072GG03
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4G072UU30
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AK01
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5H029HJ05
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5H050AA14
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5H050BA17
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5H050CA09
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5H050CB11
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5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA05
5H050HA10
(57)【要約】
本発明は、複合粒子を形成する方法、複合粒子前駆体配合物、複合粒子、及び複数の複合粒子を含む複合材料に関する。複合粒子を形成する方法は、活物質粒子、修飾オリゴマー金属配位錯体、及び少なくとも1つのポリマーを接触させ、それによって複合粒子を形成するステップを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合粒子を形成する方法であって、活物質粒子、修飾オリゴマー金属配位錯体、及び少なくとも1つのポリマーを接触させ、それによって複合粒子を形成するステップを含む、方法。
【請求項2】
複合粒子を形成する前記方法は、
(i)活物質粒子、修飾オリゴマー金属配位錯体、少なくとも1つのポリマー、及び液体担体を混合して、混合溶液を提供するステップと、
(ii)前記混合溶液から前記液体担体を少なくとも部分的に除去するステップと、を含み、
それによって複合粒子を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合溶液から前記液体担体を少なくとも部分的に除去する前記ステップは、噴霧乾燥、回転蒸発、又は撹拌下での加熱を伴う蒸発を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複合粒子を形成する前記方法は、
(i)修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆された活物質粒子を含む複数の活性化粒子を提供するステップと、
(ii)前記複数の活性化粒子を、前記修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと接触させるステップと、を含み、
それによって複合粒子を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、活物質粒子及び/又は修飾オリゴマー金属配位錯体及び/又はポリマーの反応pH及び/又は温度及び/又は混合及び/又は相対濃度を、前記3つの成分が互いに曝露されるときに制御するステップを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、修飾オリゴマー金属配位錯体を形成するステップを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記活性化粒子及び前記少なくとも1つのポリマーを、液体及び/又は固体ポロゲンと接触させるステップを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複合粒子前駆体配合物であって、
(i)修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆された活物質粒子を含む複数の活性化粒子と、
(ii)前記修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと、
(iii)前記複数の活性化粒子及び少なくとも1つのポリマーが位置する液体担体と、を含む、複合粒子前駆体配合物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの修飾金属配位錯体は、キャッピングされた金属配位錯体及び/又は3.8未満のpHで形成された金属配位錯体である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項10】
前記キャッピングされた金属配位錯体を形成するために使用されるキャッピング基は、供与結合形成基として窒素、酸素、又は硫黄のうちの1つ以上を含むものから選択される、請求項9に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項11】
前記キャッピング基は、ホルメート、アセテート、プロピオネート、オキサレート、マロネート、スクシネート、マレエート、スルフェート、ホスフェート、及びヒドロキシアセテートからなる群から選択される、請求項10に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの修飾オリゴマー金属配位錯体は、3.8未満のpHでの形成によって修飾されている、請求項9に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項13】
前記オリゴマー金属配位錯体の金属イオンは、クロム、ルテニウム、鉄、コバルト、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ロジウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項14】
前記活物質の表面は、窒素、酸素、硫黄、ヒドロキシル、又はカルボン酸種を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項15】
前記活物質粒子は、金属、金属間化合物、半金属、金属酸化物、粘土、炭素系粒子、及びセラミックからなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項16】
前記活物質は、ケイ素、ケイ素含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、スズ、スズ含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、炭素、並びにグラファイトから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項17】
前記活物質は、硫黄と、LiFePO
4(LFP)と、コバルト、リチウム、ニッケル、鉄及び/又はマンガンを含む混合金属酸化物と、リンと、アルミニウムと、チタンと、炭素と、からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項18】
前記複合粒子は、約10,000nm未満の平均粒径を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項19】
前記活物質粒子は、活物質ナノ粒子であり、前記活性化粒子は、活性化ナノ粒子である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法又は複合粒子前駆体配合物。
【請求項20】
複数の活物質粒子と、ポリマーネットワークと、前記活物質粒子及び前記ポリマーネットワークに配位結合した複数のオリゴマー金属配位錯体と、を含む、複合粒子であって、少なくとも1つの活物質粒子の大部分は、前記複数のオリゴマー金属配位錯体のうちの1つ以上によって前記ポリマーネットワークに連結している、複合粒子。
【請求項21】
大部分とは、少なくとも1つの活物質粒子タイプの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は95%が、少なくとも1つの配位結合を介して前記複合粒子の少なくとも1つのポリマーに連結していることを指す、請求項20に記載の複合粒子。
【請求項22】
複合材料は、電池用途のための電荷コレクタ基板、電極材料、及びセパレータ材料から選択される、請求項20に記載の複合材料。
【請求項23】
請求項20に記載の複数の複合粒子、及び/又は請求項1に記載の方法によって形成された複数の複合粒子、及び/又は請求項8に記載の複合粒子前駆体配合物から形成された複数の複合粒子を含む、複合材料。
【請求項24】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質を含む電気化学セルであって、前記アノード又は前記カソードのうちの少なくとも一方は、請求項20に記載の複数の複合粒子、及び/又は請求項1に記載の方法によって形成された複数の複合粒子、及び/又は請求項8に記載の複合粒子前駆体配合物から形成された複数の複合粒子を含む、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、複合粒子を形成する方法、複合粒子前駆体配合物、複合粒子、及び複数の複合粒子を含む複合材料に関する。一実施形態では、本発明は、制御可能に被覆され、かつ/又はポリマーネットワーク内で相互接続された粒子を含む複合粒子を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における任意の先行技術への言及は、この先行技術が任意の管轄区域における共通の一般知識の一部を形成すること、又はこの先行技術が当業者によって理解され、関連するとみなされ、かつ/又は先行技術の他の部分と組み合わされることが合理的に期待され得ることの承認又は示唆ではない。
【0003】
種々の形状及びサイズの粒子は、多くの工業プロセスの主要な要素である。例えば、一般に「樹脂」と称される粒子は、水処理を含む用途において一般的に遭遇する特定のイオンを除去又は交換するためのイオン交換体として使用される。かかる樹脂は、適切な架橋剤を用いた好適なモノマーの重合(例えば、ジビニルベンゼンを用いたスチレンの重合)に基づいており、その種類は多岐にわたる。モノマーに対する架橋剤の比率に応じて、異なる用途のための異なる樹脂タイプが製造される。低レベルの架橋剤は、高度に可撓性であるゲル/微孔質タイプの樹脂をもたらすことができ、一方、架橋剤の量を増加させると、より剛性のマクロ孔質/マクロ網状樹脂が得られる。後者のシナリオでは、ポロゲンの添加により、種々のサイズの細孔又はチャンネルの形成が可能となり、それによって、異なる弾性、強度、表面積、及び他の望ましい属性の樹脂が得られる。
【0004】
更に詳細には、より大きな複合粒子内により小さな粒子が組み込まれる。かかる複合粒子の一例は、診断用途のためのより大きな磁性粒子を形成するための酸化第二鉄ナノ粒子の使用である。抗菌活性、センサ用途、触媒及び多くの他の使用のために、金、銀及び銅などの異なる金属ナノ粒子をより大きな「凝集」粒子に利用する同様の例が多く存在している。多くの場合、かかるナノ粒子はポリマーマトリックス内に埋め込まれており、マトリックス内又はマトリックスに能動的に結合していない。ナノ粒子の放出を制御することが望まれる場合、より大きな複合構造から必然的に浸出することが望ましいが、多くの用途では、浸出は有害となる。これらの複合粒子が多孔性であることも必要な場合、浸出の問題は非常に大きくなる。
【0005】
かかる多孔質複合粒子が有用な用途の1つに、ケイ素アノードの開発がある。ケイ素系材料をアノードの形成に使用する際の一部の重要な課題は、イオン/電子の導電性が低いことと、サイクル中にリチウムイオンがインターカレーション及びデインターカレーションを起こすため体積変化が大きく、構造的な損傷及びその後の性能低下を招くことである。より大きなミクロンサイズの粒子とは対照的に、より小さなケイ素ナノ粒子を使用することで、かかる問題を軽減することができるが、ケイ素ナノ粒子を大規模に使用するには、製造中の取り扱い、均一な分散の達成、及び安全性の考慮に対する懸念などの面で問題があった。これらの困難に対処するために一部のアプローチが提案されており、中には、ケイ素凝集体構造を製造するものもある。
【0006】
凝集体構造内に多孔性を組み込むことで、ケイ素の膨潤に適応し、複合粒子の応力破壊を低減することができる。先行技術のアプローチとしては、国際公開第2014/031929号に開示されているように、ケイ素材料が内部に配置された多孔質導電性骨格マトリックスを有する複合粒子を含む電池電極組成物が挙げられる。かかる複合粒子はまた、国際公開第2013/192205号に開示されるように、コア構造の周囲に透過シェルを含み得る。かかる凝集体構造は、エネルギー貯蔵及び生成プロセスのみならず、多くの他の用途において価値があるものである。
【0007】
しかしながら、かかる多孔質複合粒子の製造は、簡単な方法ではない。非網羅的な複雑な問題のリストとして、関与する材料の相転移の理解が乏しいこと、媒体から材料を単離することが困難であること、望ましくない複合粒子の凝集、並びに粒子の均一性及び多孔性の適切な制御が挙げられる。したがって、これらの問題の一部を少なくとも改善し、1つ以上の商業的用途において有用な複合粒子を提供する、好適な複合粒子を形成するための更なるアプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、必ずしも最も広い態様ではないが、本発明は、複合粒子を形成する方法であって、活物質粒子、修飾オリゴマー金属配位錯体、及び少なくとも1つのポリマーを接触させ、それによって複合粒子を形成するステップを含む方法を提供する。
【0009】
一実施形態では、第1の態様は、複合粒子を形成する方法であって、
(i)活物質粒子、修飾オリゴマー金属配位錯体、少なくとも1つのポリマー、及び液体担体を混合して、混合溶液を提供するステップと、
(ii)混合溶液から液体担体を少なくとも部分的に除去するステップと、を含み、
それによって複合粒子を形成する方法を提供し得る。
【0010】
第1の態様の一実施形態では、複合粒子を形成する方法であって、
(i)修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆された活物質粒子を含む複数の活性化粒子を提供するステップと、
(ii)複数の活性化粒子を、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと接触させるステップと、を含み、
それによって複合粒子を形成する方法を提供する。
【0011】
第2の態様では、活物質粒子と、オリゴマー金属配位錯体と、少なくとも1つのポリマーと、液体担体とを含む複合粒子前駆体配合物が提供される。
【0012】
第2の態様の一実施形態では、液体担体は、少なくとも1つのキャッピング基を含む。
【0013】
第2の態様の一実施形態では、
(i)修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆された活物質粒子を含む複数の活性化粒子と、
(ii)修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと、
(iii)複数の活性化粒子及び少なくとも1つのポリマーが位置する液体担体と、を含む、複合粒子前駆体配合物が提供される。
【0014】
第3の態様では、複数の活物質粒子と、ポリマーネットワークと、活物質粒子及びポリマーネットワークに配位結合した複数のオリゴマー金属配位錯体と、を含む、複合粒子であって、少なくとも1つの活物質粒子の大部分は、複数のオリゴマー金属配位錯体のうちの1つ以上によってポリマーネットワークに連結している、複合粒子が提供される。
【0015】
第4の態様では、第3の態様の複数の複合粒子及び/又は第1の態様の方法によって形成された複数の複合粒子及び/又は第2の態様の複合粒子前駆体配合物から形成された複数の複合粒子を含む複合材料が提供される。
【0016】
第5の態様では、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された電解質を含む電気化学セルであって、アノード又はカソードのうちの少なくとも一方は、第3の態様の複数の複合粒子及び/又は第1の態様の方法によって形成された複数の複合粒子及び/又は第2の態様の複合粒子前駆体配合物から形成された複数の複合粒子を含む、電気化学セルが提供される。
【0017】
上記の個々のセクションで言及した本発明の種々の特徴及び実施形態は、必要に応じて、必要な変更を加えて他のセクションに適用される。したがって、1つのセクションで特定された特徴は、必要に応じて他のセクションで特定された特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ケイ素ナノ粒子活性化オリゴマー配位錯体のゼータ電位のグラフ表示である(A-pH4.5(未修飾)、B-pH4.5でキャッピングされたアセテート、C-pH3.0、D-pH3.0でキャッピングされたアセテート、及びE-対照)。
【
図2】異なる活性化ナノ粒子のサイズを示す(A-pH4.5、B-pH4.5でキャッピングされたアセテート、C-pH3.0、D-pH3.0でキャッピングされたアセテート、及びE-対照)。
【
図3】PAAで被覆された磁性ナノ粒子及びPAAで被覆されていない磁性ナノ粒子をオリゴマー配位錯体で活性化した場合のゼータ電位のグラフ表示である(A-pH4.5(未修飾)、B-pH2.4でキャッピングされたアセテート、C-pH3.2でキャッピングされたオキサレート、及びD-対照)。
【
図4】異なる活性化ナノ粒子のサイズを示す(A-pH4.5(未修飾)、B-pH2.4でキャッピングされたアセテート、C-pH3.2でキャッピングされたオキサレート、及びD-対照)。
【
図5】超音波処理前(1)及び45分間の図音波処理後(2)の噴霧乾燥粒子の写真を示す。オリゴマー金属配位錯体を使用して粒子を形成した(A-pH4.5(未修飾)、B-pH2.4でキャッピングされたアセテート、C-pH4.2の酢酸クロム)。グリッドは10×10ミクロンである。
【
図6】噴霧乾燥後に前駆体配合物3(未修飾金属錯体を使用)を使用して実施例3で形成された固体の2つのSEM画像(異なる倍率のみ)を示す。
【
図7】スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後に実施例3、前駆体配合物3(
図6による)で形成された固体の2つのSEM画像(異なる倍率のみ)を示す。
【
図8】実施例3、前駆体配合物3で形成され、更なるコインセルアセンブリ及びサイクル後に銅箔上にキャストされた(
図7による)固体の一連のSEM画像を示す。
【
図9】噴霧乾燥後の実施例3、複合粒子前駆体配合物4(修飾金属錯体)で形成された複合粒子の2つのSEM画像(異なる倍率のみ)を示す。
【
図10】スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後に実施例3、複合粒子前駆体配合物4(
図9による)で形成された複合粒子の2つのSEM画像(異なる倍率のみ)を示す。
【
図11】実施例3、複合粒子前駆体配合物4で形成され、
図10のように銅箔上にキャストされた複合粒子の、コインセルアセンブリ及びサイクル後の一連のSEM画像を示す。
【
図12】スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後に実施例3、前駆体配合物1(未修飾金属錯体)で形成された固体のSEM画像を示す。
【
図13】スラリーを調製して銅箔上にキャストした後に実施例3の複合材料前駆体配合物2(修飾金属錯体)で形成された複合粒子のSEM画像である。
【
図14】スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後に実施例3、複合粒子前駆体配合物4(修飾金属錯体)で形成された複合粒子のSEM画像である。
【
図15】スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後に、
図14と同様の方法で形成された複合粒子のSEM画像である(実施例3、複合前駆体配合物4、ただし、2%溶液の代わりに0.5%ポリアクリル酸溶液を使用した)。
【
図16】実施例3、複合粒子前駆体配合物4(修飾金属錯体)で形成された複合粒子のSEM画像である。複合粒子をエポキシ樹脂と混合し、モールドをセットした後、それを研削し、研磨して多孔質構造を露出させた。上の図は粒子のSEMであり、下の図は1つの複合粒子の断面のSEMである。
【
図17】実施例4、多孔質複合前駆体配合物6の調製(ポロゲンを使用)で形成された複合粒子のSEM画像である。
【
図18】スラリー調製及び2つの異なる方法によって形成された銅箔上へのキャスト後の複合粒子のSEM画像である。上のSEM画像は、修飾金属錯体(溶液7)を前駆体配合物プロセスの開始時に添加したときに形成された粒子を示す。下のSEM画像は、修飾金属錯体を噴霧乾燥前の最後のステップとして添加した場合に形成された粒子を示す。
【
図19】製造されたハーフコインセルの0.5C(1C=4,200mAh/g)での100サイクルの充放電後の電気化学的データのグラフを示す。これらのセルは、40サイクル後に安定したサイクル性能を示し、100サイクル後の容量保持率は約84%であった。
【0019】
本発明の更なる態様及び先行する段落に記載された態様の更なる実施形態は、例として与えられ、添付の図面を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、少なくとも部分的に、活物質粒子に強く配位して「活性化」粒子を形成する特定の修飾オリゴマー金属配位錯体が、その後、制御された方法でポリマーと強く配位することができるという発見に基づいている。しかしながら、その結果は、単にポリマー被覆された粒子ではない。むしろ、修飾オリゴマー金属配位錯体との配位反応の制御により、これらの活性化粒子は、ポリマーと架橋クラスターを形成することができ、この点で、それらは、ジビニルベンゼンなどの架橋剤と機能的に類似していると考えることができる。
【0021】
適切な制御が行われなければ、複数の配位(架橋)部位が活性化粒子表面上に形成され、ポリマーとの反応性が制御不能となり、ポリマーゲル型材料又は不均一な複合材料の沈殿物、更には金属錯体が生成する可能性がある。複合粒子を形成し、結合した活性粒子をカプセル化し、形成プロセスを高度に制御することなく、粒子間及び粒子内の比較的緊密な均一性を実現することは、非常に困難である。それにもかかわらず、かかる高度に均一な相互接続された複合粒子が形成される場合、任意のカプセル化された粒子は、供与性共有結合によってポリマー粒子ネットワーク内で強く結合され、複合粒子全体は、強固で高度に安定となり、多くの困難な環境及び商業的用途における使用に好適なものとなる。
【0022】
かかる用途の1つは、Liイオン電池で使用するためのオリゴマー金属配位錯体で配位されたケイ素及び/又はカーボンナノ粒子を含む複合粒子(又は多孔質ポリマー粒子)の製造である。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、修飾オリゴマー金属配位錯体で被覆された活物質粒子(すなわち、活性化粒子)のポリマーへの配位の反応速度を制御することによって、制御されたサイズ、ナノ粒子密度/組成及び多孔性の安定な複合粒子を形成することが可能であると考えている。オリゴマー金属配位錯体の修飾及び使用される反応条件を使用して、反応速度を適切に制御することができる。例として、ポリマーネットワーク骨格内にオリゴマー金属配位錯体で被覆されたケイ素ナノ粒子を含む複合粒子(又は多孔質複合粒子)を形成するためにかかるアプローチを使用する場合、ケイ素ナノ粒子は、複合粒子内に埋め込まれるか又は物理的に捕捉されるだけでなく、むしろそれらはポリマー骨格及び他のケイ素ナノ粒子に結合して、物理的に結合したネットワークを形成する。該ネットワークは、リチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーションによって駆動される膨張及び収縮に適応し、アノード材料に組み込まれると、ケイ素粒子の膨潤によるクラック又は応力に抵抗する。したがって、アノード形成においてケイ素ナノ粒子を直接使用するという製造上の課題に対処して対処する必要はなく、本アプローチは、ケイ素ナノ粒子がより大きな複合粒子内のクラスターとして効果的に生成され、電極製造における取り扱い及び使用に極めて適していることを意味している。
【0023】
第1の態様では、必ずしも最も広い態様ではないが、本発明は、複合粒子を形成する方法であって、活物質粒子(又は少なくとも1つの活物質粒子)、修飾オリゴマー金属配位錯体、及び少なくとも1つのポリマーを接触させ、それによって複合粒子を形成するステップを含む方法を提供する。
【0024】
一実施形態では、少なくとも1つのポリマーは、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することができる。
【0025】
別の実施形態では、接触させるステップは、
(i)修飾オリゴマー金属配位錯体と活物質粒子とを接触させて、活性化粒子を形成することと、
(ii)活性化粒子と少なくとも1つのポリマーとを接触させることと、を含む。
【0026】
更なる実施形態では、接触させるステップは、
(i)活物質粒子をポリマーと接触させることと、
(ii)(i)の生成物を修飾オリゴマー金属配位錯体と接触させることと、を含む。
【0027】
一実施形態では、第1の態様は、複合粒子を形成する方法であって、
(i)活物質粒子、修飾オリゴマー金属配位錯体、少なくとも1つのポリマー、及び液体担体を混合して、混合溶液を提供するステップと、
(ii)混合溶液から液体担体を少なくとも部分的に除去するステップと、を含み、
それによって複合粒子を形成する方法を提供し得る。
【0028】
一実施形態では、混合溶液から液体担体を少なくとも部分的に除去するステップは、噴霧乾燥、回転蒸発、又は撹拌下での加熱を伴う蒸発を含み得る。一実施形態では、混合溶液から液体担体を少なくとも部分的に除去するステップは、混合溶液から液体担体を除去するステップであり得る。一実施形態では、混合溶液から液体担体を少なくとも部分的に除去するステップは、遊離液体担体を少なくとも部分的に除去することを含み得る。「遊離液体担体」という用語は、金属配位錯体、ポリマー、又は活物質粒子などの液体配合物の成分に結合していない液体担体を指す。
【0029】
第1の態様の一実施形態では、複合粒子を形成する方法であって、
(i)修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆された活物質粒子を含む複数の活性化粒子を提供するステップと、
(ii)複数の活性化粒子を、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと接触させるステップと、を含み、
それによって複合粒子を形成する方法を提供する。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprise)」を含むその派生語は、記載された整数の各々を含むが、1つ以上の更なる整数の包含を排除しない。
【0031】
本明細書で使用される「複合粒子」という用語は、より小さいナノサイズ又はミクロンサイズの活物質金属、金属間化合物、半金属、炭素、又はセラミック粒子を含むナノサイズ又はミクロンサイズの離散粒子を包含することが意図され、その大部分は、1つ以上のオリゴマー金属配位錯体によって、互いに又は複合粒子のポリマーネットワークに直接連結される。複合粒子を形成する種々の成分を最初にポリマーと混合して、均一に分散された懸濁液、スラリー又はブレンドを形成した後、最終複合粒子を形成する場合、本明細書では、その混合物を複合前駆体配合物と称する。これらの配合物が最終的な離散粒子に変換される場合、それらは本明細書において複合粒子と称される。複合粒子の形状は特に限定されないが、実質的に球状の複合粒子が好ましい。
【0032】
実施形態では、本明細書の態様のいずれかに記載の複合粒子は、約0.2μm~約100μm、約0.5μm~約80μm、約1.0μm~約50μm、約3.0μm~約40μm、約4.0μm~約12μm、約6.0μm~約9μm、又は約1.0μm~約5μmの平均粒子直径を有し得る。
【0033】
複合粒子の好ましい平均粒径としては、約0.5μm~約60μm、約0.5μm~約50μm、約0.5μm~約40μm、約0.5μm~約30μm、約0.5μm~約20μm、約0.5μm~約10μm、及び約0.5μm~約5μmのものが挙げられる。
【0034】
複合粒子の特に好ましい平均粒径としては、約0.7μm~約40μm、約0.7μm~約30μm、約0.7μm~約20μm、及び約0.7μm~約10μmのものが挙げられる。
【0035】
一実施形態では、複合粒子は、約10,000nm未満、又は約5,000nm未満、又は約2,000nm未満の平均粒径を有する。
【0036】
本明細書で使用される「活物質」という用語は、何らかのより大きな複合材料内でのプロセス又は適用において活性な機能的役割を有する任意の粒子状、好ましくはナノ粒子状の材料を包含することが意図される。1つの非限定的な例では、活物質は、電気化学的充放電反応に関与する電極の構成部分であってもよい。したがって、実施形態では、少なくとも1つの活物質は、複合粒子内に、更に電極材料内に組み込まれたときに、導電性に著しく寄与する。活物質は、特定の実施形態では、インターカレーション材料又は化合物とも称され、これは、電解質イオンのインターカレーション及びデインターカレーションの両方を受けて、充電及び放電サイクルを行うことができる材料又は化合物である。1つの非限定的な例では、活物質は、電極の形成に有用なケイ素及び/又はグラファイト又は他の炭素粒子などの材料であってもよい。
【0037】
「粒子」及び「ナノ粒子」という用語は、活物質に関連して本明細書で使用される場合、ナノサイズ又はミクロンサイズの成分を指し、これは、概して球状の粒子、チューブ、糸、ナノケージ、ナノコンポジット、ナノファブリック、ナノファイバ、ナノフレーク、ナノフラワー、ナノフォーム、ナノメッシュ、箱型、ナノピラー、ナノピンフィルム、ナノプレートレット、ナノリボン、ナノリング、ナノロッド、ナノシート、ナノシェル、ナノチップ、量子ドット、量子ヘテロ構造及び彫刻化薄膜を含む任意の形状であり得る。活物質粒子の形状又は形態が何であれ、少なくとも1つのタイプの当該粒子は、オリゴマー金属配位錯体と配位結合して「活性化」粒子を形成する必要がある。1つの非限定的な例では、活物質粒子は、修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆されて活性化ナノ粒子を形成し得るケイ素及び/又はカーボンナノ粒子などの材料であってもよい。
【0038】
活物質粒子は、約10,000nm未満、又は約5,000nm未満、又は約2,000nm未満の平均直径であってもよい。したがって、活性化粒子は、ほぼ同様のスケールであると考えることができる。
【0039】
本明細書に記載される態様のいずれかの好ましい実施形態では、活物質粒子は、約1,000nm未満の平均直径であってもよく、したがって「活物質ナノ粒子」と称される。したがって、本明細書における「活物質ナノ粒子」及び「活性化ナノ粒子」への言及は、活物質粒子が約1,000nm未満の平均直径である「活物質粒子」及び「活性化粒子」への言及であると考えられることが理解されるであろう。活物質ナノ粒子は、修飾オリゴマー金属配位錯体の全体的な反応性の低下を考慮して最適な反応速度を提供する、修飾オリゴマー金属配位錯体との相互作用のためのはるかに大きな表面積を提示するため、好ましい。
【0040】
実施形態では、活物質の表面は、供与結合を形成するための孤立電子対を有する、窒素、酸素、硫黄、ヒドロキシル、又はカルボン酸種を含む。好ましくは、この表面は酸素種を含む。概して、活物質の表面は容易に酸化されて酸化物層を含み得るか、あるいはすでに酸化物とみなされることがあるため、酸素種が好ましい。したがって、好ましい実施形態では、活物質表面は、酸化物表面であるか、又は酸化物表面になるように適合可能である。
【0041】
一実施形態では、活物質(又は2つ以上が存在する場合は少なくとも1つの活物質)の粒子又はナノ粒子は、金属、金属間化合物、半金属、金属酸化物、粘土、炭素系粒子又はナノ粒子、及びセラミックからなる群から選択される。特定の実施形態では、ケイ素が好ましいメタロイドである。実施形態では、金及びマグネタイトナノ粒子が好ましい金属及び金属酸化物である。実施形態では、金、混合銀/金、銅、酸化亜鉛、スズ及びアルミニウムナノ粒子が好ましい金属及び金属酸化物である。
【0042】
一実施形態では、活物質は、ケイ素、ケイ素含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、スズ、スズ含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、炭素、並びにグラファイトから選択される。複合粒子がアノード製造での使用のために形成される場合、活物質は、典型的には、活物質は、ケイ素、ケイ素含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、スズ、スズ含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有材料(その酸化物、複合体、及び合金)、炭素、並びにグラファイトから選択される。好ましくは、電極がアノードである場合、活物質はケイ素及び/又は炭素を含む。ケイ素は、純粋なケイ素、その種々の酸化物(SiOxとして定義することができ、SiO、SiO2などを含む)、その合金(Si-Al、Si-Sn、Si-Liなど)、及び複合体(Si-C、Si-グラフェンなど)の形態であり得る。炭素は、グラファイト及びその種々の形態及び形態のうちの任意の1つ以上、スーパーPカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンマイクロファイバ、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック(KB)、及び他の炭素系材料の形態であることが好ましい。
【0043】
一実施形態では、活物質はケイ素を含む。本明細書における「ケイ素」への言及は、二酸化ケイ素(SiO2)を含み得る。
【0044】
一実施形態では、活物質は、硫黄と、LiFePO4(LFP)と、コバルト、リチウム、ニッケル、鉄及び/又はマンガンを含む混合金属酸化物と、リンと、アルミニウムと、チタンと、炭素と、を含むものから選択される。複合粒子がカソード製造に使用するために形成される場合、活物質(又は2つ以上が存在する場合は少なくとも1つの活物質)は、硫黄と、LiFePO4(LFP)と、コバルト、リチウム、ニッケル、鉄及び/又はマンガンを含む混合金属酸化物と、リンと、アルミニウムと、チタンと、炭素と、を含むものから選択されてもよい。炭素は、グラファイト、スーパーPカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック(KB)、及び他の炭素系材料から選択される1つ以上の炭素粒子の形態であることが好ましい。
【0045】
複合粒子内に組み込まれた第1及び第2の活物質が存在する実施形態では、両方とも上記で定義した通り、第1の活物質がケイ素を含み、第2の活物質が炭素を含むことが好ましい場合がある。
【0046】
本明細書の開示から、活性化粒子(又はナノ粒子)を形成するための活物質粒子(又はナノ粒子)は特に限定されず、修飾オリゴマー金属配位錯体に結合することができる限り、先行技術で使用される任意のかかる材料が適切であり得ることが理解されるであろう。複合粒子が電極又は他の電池材料に使用するために形成される場合、活物質粒子(又はナノ粒子)は、リチウムイオン二次電池に現在使用されているもの、より具体的にはケイ素系アノードを使用するもののいずれかから選択することができる。
【0047】
活物質粒子がナノ粒子である場合、活物質ナノ粒子は、約1nm~約1000nmの平均粒子直径の数を包含する。好ましくは、数平均粒子直径は少なくとも10nmである。より好ましくは、ナノ粒子は、少なくとも30nmの数平均粒径を有する。更により好ましくは、ナノ粒子は、少なくとも50nmの数平均粒径を有する。最も好ましくは、ナノ粒子は少なくとも70nmの数平均粒子直径を有する。これらの下端直径の各々は、1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、150nm及び100nmから選択される上限を有する平均粒子直径範囲内で対をなしていると考えることができる。
【0048】
一部の実施形態では、活物質粒子は、少なくとも1つの活物質粒子であり得る。例えば、少なくとも1つの活物質粒子は、少なくとも2つ、3つ、4つ若しくは5つの活物質粒子、又は2つ、3つ、4つ若しくは5つの活物質粒子であり得る。
【0049】
複合粒子内に組み込まれた第1及び第2の活物質が存在する実施形態では、それらの第1及び第2の活物質粒子は、異なるサイズであってもよいことが理解されるであろう。例えば、第1の活物質粒子はナノ粒子であってもよく、第2の活物質粒子はミクロンサイズであってもよく、存在する任意の追加の活物質についても同様である。
【0050】
修飾オリゴマー金属配位錯体は、活物質粒子の表面上の任意の電子供与基に配位することができる。電子供与基を有さないとされる活物質粒子であっても、酸素化雰囲気の結果として、かかる基を有することが多い。したがって、活物質粒子は、電子供与基を有する表面を含み、修飾オリゴマー金属配位錯体の金属イオンは、供与結合を介して、活物質粒子のこれらの電子供与基に結合される。好適な電子供与性表面部分としては、酸化物が挙げられる。
【0051】
活物質粒子の表面上に電子供与基がほとんど又は全く存在しない稀少な例では、修飾オリゴマー金属配位錯体の少なくとも一部の配位子は、疎水性配位子(R-X)であり得、ここで、Xは、金属イオンに配位するため、Xは、金属イオンと配位結合を形成することができる任意の電子供与基であり得る。基「R」は、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及びヘテロアラルキルから独立して選択され得、これらの基は、必要に応じて置換される。この実施形態によれば、「R」は、より疎水性の特性を有することが好ましい。更に、R基はまた、リチウムイオン導電性ポリマー、共役ジエン含有基、ポリ芳香族若しくはヘテロ芳香族含有基、窒素含有基、酸素含有基、又は硫黄含有基から選択される部分を組み込んでもよい。
好ましくは、「R」基は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(スチレンブタジエン)、ポリエチレン及びそのコポリマー、ポリプロピレン及びそのコポリマー、並びにポリ塩化ビニルなどのポリマー結合剤のより短いバージョンなどの短いポリマーである。
【0052】
修飾オリゴマー金属配位錯体の少なくとも一部の配位子が疎水性配位子(R-X)である場合、金属錯体の利用可能な配位ポテンシャルに対するR基の比率を選択することが必要である。この選択は、活物質の表面との配位及び疎水性相互作用の両方を可能にするが、依然として残留配位ポテンシャルを提供する。
【0053】
上述したように、疎水性配位子(上記で定義されたR-X)の使用は比較的稀少であり、アノード材料が調製されているときには特に稀少である。したがって、活物質がアノード用途又はカソード用途のいずれかについて上述したものである一実施形態では、オリゴマー金属配位錯体は、相当数の疎水性配位子を含まない。これは、修飾オリゴマー金属配位錯体の可能な配位子結合能の40%、30%、20%又は10%未満が、かかる疎水性配位子によって占められることを意味し得る。一実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体上に疎水性配位子が実質的に存在しなくてもよい。
【0054】
実施形態では、活性化粒子は、修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆される。部分的な被覆は、活性化粒子表面と、修飾オリゴマー金属配位錯体内の複数などの少なくとも一部の金属イオンとの間の配位結合であり得る。一部の実施形態では、活性化粒子は、1つ以上の修飾オリゴマー金属配位錯体によって実質的にカプセル化され得る。
【0055】
ステップ(ii)(複数の活性化粒子を、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと接触させること)の間の混合物の異なる成分の割合は、所望の組成、サイズ及び物理的特性の均質な複合粒子の形成を制御するのに重要であり得る。少なくとも1つのポリマーに対するオリゴマー金属配位錯体の相対濃度を制御することができるが、ある極端な場合には、比較的低い割合の活物質粒子を修飾オリゴマー金属配位錯体によって活性化し、残りは未反応のままとすることができる。他の極端な例では、実質的に全ての活物質粒子が金属錯体によって活性化され得る。したがって、実施形態では、本方法は、修飾オリゴマー金属配位錯体及び活物質ナノ粒子の相対濃度を制御又は調整するステップを含み得る。
【0056】
実施形態では、修飾オリゴマー金属錯体の量は、存在する活物質の重量によって決定される。通常、金属錯体は過剰に添加されるので、活性化の条件(濃度、温度及び時間)、及び未反応のオリゴマー金属錯体の除去(方法、洗浄ステップなど)は、活性化のレベルに著しく影響を及ぼし得る。しかしながら、修飾オリゴマー金属錯体が活物質を活性化する程度が確立されると、活物質の重量が1つの重要な変数となる。
【0057】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体が過剰に添加されない場合、活物質粒子の正味電荷は、ポリマー添加の前に粒子凝集にも寄与するように更に修飾され得る。未修飾オリゴマー金属配位錯体は、通常、金属錯体活性化粒子の電荷-電荷反発を維持するために過剰に添加される。かかる未修飾錯体が過剰に使用されない場合、これは、急速かつ制御不能な凝集につながる可能性がある。対照的に修飾オリゴマー金属配位錯体を使用することで、粒子凝集をより細かく制御できるため、粒子の密度及び分布がより均一になる。これは、2つ以上の異なる粒子を含む複合粒子を形成する必要がある場合に特に重要である。
【0058】
また、活性化粒子とポリマーとの間の結合の程度に対する更なる制御を行い、それによって、形成された複合粒子の特性に影響を与えることは、反応pH、温度、混合へのアプローチ、及びポリマーに対する活性化粒子の相対濃度、及びポリマーに対する活物質粒子上に配位された修飾オリゴマー金属配位錯体の相対濃度の制御によって影響され得ることも理解されるであろう。したがって、実施形態では、本方法は、活物質粒子及び/又は修飾オリゴマー金属配位錯体及び/又はポリマーの反応pH及び/又は温度及び/又は混合及び/又は相対濃度を、3つの成分が互いに曝露されるときに制御するステップを更に含み得る。
【0059】
実施形態では、活物質の設定重量に対するポリマー(又はポリマー結合剤)の量は、40:1、20:1、10:1、8:1、4:1、2:1、1:1、1:2、1:4及び1:10の範囲内である。10:1、8:1、4:1、2:1及び1:1の範囲の比が好ましい場合がある。一実施形態では、活物質の設定重量に対するポリマー結合剤の量は、40:1~1:2、又は20:1~1:2、又は10:1~1:1の範囲である。慣例として、言及される比率は、活性化された活物質1グラム当たりのポリマー結合剤中に配位している配位子の比率(ミリモル)である。ポリマー結合剤の既知の重量に対するモル単位では、配位子数は、ポリアクリル酸、アルギン酸、CMCなどの結合剤間で著しく変化する。更に、配位子の配位ポテンシャルも比率に影響を与える。一例として、カルボン酸基配位子の配位強度は、ヒドロキシル基配位子よりも強い。上記の比率は、カルボン酸系配位子を指し、他の配位子が使用される場合、比率は、配位子の相対配位強度に従って調整することができる。修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)対活物質及びポリマーの割合は、修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属錯体)の種類/反応性に従って変化し得る。
【0060】
修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)が最初に活物質に過剰に添加される実施形態では、混合物を濾過して、結合していない金属配位錯体の大部分を除去することができる。修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)が過剰に添加されていない場合、添加される修飾金属配位錯体の重量による相対量は、ナノ粒子とミクロン粒子活物質との間で劇的に異なり得る。多孔質粒子又は半透過性粒子を含む他の活物質が使用される場合、修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)に対するこれらの成分の相対的な割合に影響を及ぼし得る。また、配位のポテンシャルは、ケイ素粒子の所与のバッチの酸素化度などの製造履歴によっても影響され得ることも理解されるであろう。
【0061】
一実施形態では(特に、修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)が過剰に添加されない場合)、活物質:修飾金属配位錯体の比率は、1000:1、500:1、300:1、150:1、50:1、25:1、10:1、5:1若しくは1:1の範囲、又は360:1、170:1、85:1、50:1、25:1、10:1又は5:1の範囲であってもよい。別の実施形態では(特に、修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)が過剰に添加されない場合)、ポリマー:修飾金属配位錯体の比率は、1000:1、500:1、300:1、150:1、50:1、25:1、10:1、5:1若しくは1:1の範囲、又は360:1、170:1、85:1、50:1、25:1、10:1又は5:1の範囲であってもよい。この段落で使用される場合、記載される比率は、修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)中の1つの金属原子当たりのポリマー中の配位部分の実際の数の比率、又は修飾金属配位錯体(又は修飾オリゴマー金属配位錯体)中の1つの金属原子当たりの活物質中の配位部分の実際の数の比率である。ポリマーの既知の重量に対するモル単位では、配位子数は、結合剤(例えば、ポリアクリル酸、アルギン酸、CMCなど)間で著しく変化する。関連部分(単数又は複数)の配位ポテンシャルもまた、比率に影響を及ぼし得る。一例として、カルボキシル基配位子の配位強度は、ヒドロキシル基配位子よりも強い。上記の比率は、特に、カルボン酸系配位子を指しており、他の配位子が使用される場合、この比率は、配位子の相対配位強度に従って調整することができる。一実施形態では、活物質の存在は、比率の計算のために無視される。
【0062】
同様に、異なる修飾金属錯体(又は修飾オリゴマー金属錯体)の1つの標準重量は、出発物質の分子量、オリゴマー化の程度、キャッピングの種類、(キャッピング基の反応性に影響を及ぼし得る)合成方法などによって変化し得る。
【0063】
更に、修飾の程度、例えば修飾オリゴマー金属配位錯体のキャッピングの程度又は過剰、及び反応のpHは、形成されている複合粒子の形態を修飾するために並行して制御することができる。実験のセクションで示されるように、これらのパラメータの調整は、単独で又は協調して、例えば、粒子のサイズ及び安定性に直接影響を及ぼし得る。
【0064】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体は、特に完全に水和した同じ金属イオン(例えば六水和物)と比較して、反応性が低下したオリゴマー金属配位錯体と定義することができる。
【0065】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体は、そのように修飾されていない同じオリゴマー金属配位錯体、例えば、同じ金属配位錯体であるが、完全に水和した状態(例えば、六水和物の形態)と比較して、その反応性が低減されるように修飾される。一実施形態では、未修飾金属配位錯体は、配位子として非配位アニオン又は弱配位アニオンを有する。
【0066】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体の反応性の低減は、未修飾金属錯体、例えば未修飾オキソ架橋クロム(III)錯体と比較した反応性の低下レベルとして定義され得る。未修飾金属錯体は、完全水和金属錯体であり得る。オキソ架橋クロム(III)錯体は、完全に水和したオキソ架橋クロム(III)錯体であり得る。
【0067】
実施形態では、比較目的で使用される未修飾オキソ架橋クロム(III)錯体は、実施例のセクションの実施例1の「溶液1」で形成されたものであり得る。
【0068】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体は、少なくとも1つのポリマーとの反応性又は結合速度が、そのように修飾されていない同じオリゴマー金属配位錯体と比較して低下するように修飾されている。
【0069】
実施形態では、未修飾オリゴマー金属配位錯体との反応性と比較して低下した反応性を評価するために使用されるポリマーは、PAAである。
【0070】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体の反応性の低下は、対応する未修飾金属錯体、特に、対応する完全水和金属錯体(かかる錯体は、非配位アニオン又は弱配位アニオンを配位子として有する)と比較して、PAAとの反応性の低下レベルと定義してもよい。
【0071】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体の反応性の低下は、オキソ架橋クロム(III)錯体と比較して、PAAとの反応性の低下レベルと定義してもよい。実施形態では、比較目的で使用されるオキソ架橋クロム(III)錯体は、実施例のセクションの実施例1の「溶液1」で形成されたものであり得る。
【0072】
本明細書に記載される態様のいずれかの実施形態では、少なくとも1つの修飾金属配位錯体は、キャッピングされた金属配位錯体及び/又は低pH(例えば、3.8未満のpH)で形成された金属配位錯体である。
【0073】
実施形態では修飾オリゴマー金属配位錯体は、オリゴマー金属配位錯体の金属に配位結合したキャッピング基を示すように修飾されている。キャッピング基は、例えば、単純な対イオンよりも(それらのより大きな相対的な配位能力のために)置換されにくいため、ここで修飾されたオリゴマー金属配位錯体と少なくとも1つのポリマー中の部分との反応速度を変更する。したがって、少なくとも1つのポリマーの部分は、1つの粒子上の複数の金属錯体と反応して粒子をポリマーで単に被覆するのとは対照的に、より活性化された粒子と反応して粒子のクラスターを形成する。このように活性化粒子とポリマーとの間の配位を遅くすることで、形成される複合粒子中の成分のより制御された均一な一体化が可能となる。この反応速度が制御される場合、活性化粒子と複数のポリマーとの間、及び実際には隣接する活性化粒子との間の、はるかに高い程度の均一性、分布及び結合が達成され得ることが理解される。かかる制御された反応性が存在しない場合、配位が高いか又は制御されていないと、複合粒子内で相互接続された活性化粒子のクラスターとは対照的に、多くの個々のポリマー被覆粒子及び個々のポリマー粒子が形成されることになる。
【0074】
実施形態では、本方法は、キャッピング基によって取り込まれるオリゴマー金属配位錯体の全配位能力の相対的な程度を選択又は制御するステップを更に含み得る。すなわち、キャッピング基によって取り込まれるオリゴマー金属配位の金属イオンの総配位能力のパーセンテージ(オリゴマー金属配位錯体自体の形成後に残存する配位能力によって測定される-配位相互作用は可逆的であるので、この割合はキャッピング基によって取り込まれる出発割合である)を選択又は変更することに利益があり得る。例えば、キャッピング基によって占められる総配位能力のパーセンテージは、10%、又は20%、又は30%、又は40%、又は50%より大きくてもよく、これらの値のいずれかを組み合わせて、100%、90%、80%、又は70%未満の最大値を有する範囲を形成してもよい。同様に、100%には、オリゴマー金属錯体の利用可能な配位ポテンシャルを超えるキャッピング基の添加が含まれてもよい。この状況において、競合するより多くのキャッピング基が存在するので、過剰の程度によって、ここで修飾されたオリゴマー金属配位錯体と少なくとも1つのポリマーとの反応速度も変化する。
【0075】
電極及び関連する材料を形成する際の活物質の使用は、本出願人の以前の国際公開第2016/168892号及び同第2017/165916号において説明されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの文献では、ケイ素などの活性化された材料が、電極材料の形成において、金属-配位子錯体及びポリマー結合剤を含む結合剤に曝露されている。しかしながら、このアプローチは、電極材料を形成するために集電体を被覆するのに適したスラリーのみを記載しており、先行技術のものを超えるこの電極材料の性能における有用な進歩、並びにケイ素などの活物質の保護及び電極内の他の材料への改善された接着のための被覆方法を提示したものである。これらの刊行物には、電極及び他の材料の後の形成のために便利に貯蔵され、そして安全に使用され得る別個の複合粒子の形成についての議論はなかった。加えて、複合粒子の形成により明細書に記載されるように提供される、ケイ素などの活性粒子に隣接するマトリックスの多孔性を制御することに関する議論はなかった。より重要なことには、これらの文献の電極スラリーが離散粒子に変換されたとしても、それらは実際には本発明で特許請求される複合粒子にはならなかったであろう。これは、金属-配位子錯体とポリマーとの間の結合速度を制御することの利点が、これらの文献内で実現されなかったためである。記載された金属-配位子錯体は反応性が高いため、形成された電極材料は非常に有用な導電性及び耐膨潤性を提供したが、それらは複合粒子を形成するのに適していなかった。電極自体の寸法のスラリーは、一貫した再現可能な結果をもたらしたが、複合粒子の目標寸法(約0.2μm~約100μmなど)に変換されたときのスラリーの均一性は不十分である。金属-配位子錯体の未修飾の反応性は、相当数のケイ素ナノ粒子がポリマーによって完全にカプセル化され、複合粒子を形成するのに適した適切に活性化されたナノ粒子クラスターの形態ではないことを意味している。重要なことに、金属-配位子錯体はポリマーとの反応性が非常に高いため、ポリマーはケイ素を凌駕しており、その結果、多くのポリマー粒子又はクラスターが、埋め込まれた又はカプセル化されたケイ素を全く有さない金属-配位子錯体によって一緒に保持されることになる。
【0076】
出願人の以前の刊行物のスラリーは、多孔質ポリマーネットワーク内で相互接続された活物質ナノ粒子の別個の均一なクラスターを形成するという点で、均質ではなかったことが理解されるであろう。実際に、本発明者らは、国際公開第2016/168892号のスラリーを、より容易な取り扱い及び使用のために粒子形態に変換すると、安定な複合粒子を形成することができない固体が得られることを見出した。電極被覆の間、又は電極アセンブリ及び充電-放電サイクルの初期段階において、これらの粒子は急速に破壊又は崩壊する。スラリーは、上記の不一致が概して材料全体にわたって一様であると考えられ得る電極材料の形成に適していたが、それらは、電極に正常に組み込まれ得る複合粒子であって、充放電サイクルにおけるリチウムのインターカレーション及びデインターカレーションからの損傷に抵抗する際の電極性能と長期安定性との両方において有効性を示し得る複合粒子の形成には全く不適切であることが証明された。本発明者らは、金属-配位子錯体の反応性は、スラリーからのバルク材料の電極形成において修飾されていない場合には好適であるが、同じ目的のために設計された好適な複合粒子を形成するためには修飾が必要であることを、驚くべきことに、重要な実験の後に初めて見出した。
【0077】
したがって、適切なキャッピング基は、ポリマーとの修飾オリゴマー金属配位錯体の配位を遅くするが、それを妨げないものである。更に、キャッピング基は、活性化粒子(又はナノ粒子)の総電荷値を制御し、それによって、複合粒子の形成と一致するクラスター化の程度を促進することができる。上述した本出願人の先の国際公開のアプローチのように、この制御がなければ、活性化されたケイ素は、主に個々の粒子の形態となる。キャッピング基の置換は、異なるキャッピング剤で修飾され、同じポリマーに曝露されたオリゴマー金属配位錯体の並行反応を実行することによって容易に試験することができる、適切な商業的時間枠で起こるべきである。
【0078】
実施形態では、有用なキャッピング基は、供与結合形成基として窒素、酸素、又は硫黄を含むものであってもよい。より好ましくは、キャッピング剤の供与結合形成基は、酸素又は窒素である。更により好ましくは、キャッピング剤は、酸素含有基である供与結合形成基を含むものである。
【0079】
実施形態では、キャッピング基の酸素含有基は、硫酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸及びホスホン酸からなる群から選択される。
【0080】
実施形態では、キャッピング基は、ホルメート、アセテート、プロピオネート、オキサレート、マロネート、スクシネート、マレエート、スルフェート、ホスフェート、及びヒドロキシアセテートからなる群から選択されてもよい。実施形態では、キャッピング基は、ホルメート、アセテート、プロピオネート、オキサレート、マロネート、スクシネート、マレエート、シトレート、スルフェート、ホスフェート、アミノ酸、ナフタレンアセテート、及びヒドロキシアセテートからなる群から選択されてもよい。
【0081】
実施形態では、キャッピング基は、単座、二座又は多座キャッピング剤である。実施形態では、キャッピング基は、単座又は二座キャッピング剤である。
【0082】
実施形態では、キャッピング基は、それを置換する少なくとも1つのポリマーよりも、オリゴマー金属配位錯体に対してより低い分子質量及び/又はより低い配位強度及び/又はより低い電子密度及び/又はより少ない数の配位子結合部位を有し得る。
【0083】
実施形態では、キャッピング基は、1000ダルトン未満、又は500ダルトン未満、又は400ダルトン未満、又は300ダルトン未満の分子量を有する。これらの値のいずれかを、10、30又は50ダルトンのより低い値と組み合わせて、キャッピング剤の分子量値の範囲、例えば10~1000、10~500、10~400又は10~300ダルトンを形成することができる。
【0084】
実施形態では、キャッピング基は、単にオリゴマー金属配位錯体の対イオンでもなく、塩基によって供与される基でもない。例えば、オリゴマー金属配位錯体を形成する際に、金属錯体を、所望の錯体の形成を単に促進する塩基(エチレンジアミンなど)に曝露することが一般的である。アミン窒素は、形成されたオリゴマー金属配位錯体にわずかに組み込まれ得るが、それは、キャッピング基と考えられるオリゴマー金属配位錯体のその後の反応性に対して顕著に十分な効果を有さない。したがって、一実施形態では、キャッピング基は、エチレンジアミンを含む塩基によって供与されるものではない。
【0085】
実施形態では、キャッピング基は配位性キャッピング基である。すなわち、キャッピング基は、オリゴマー金属配位錯体と少なくとも1つの配位結合を形成する。
【0086】
一実施形態では、修飾金属配位錯体の配位子(又はキャッピング基)及びポリマーは両方とも、同じヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄又は窒素)を有する官能基を含む。一実施形態では、修飾金属配位錯体及びポリマーの配位子(又はキャッピング基)は、両方とも同じ官能基を含む。ポリマーは、配位子(又はキャッピング基)よりも多い数の官能基を含み得る。当該官能基は、例えば、カルボン酸(又はカルボキシレート)、アルコール、スルフェート、チオール、ホスフェート、又はアミドであってよい。例えば、一実施形態では、官能基はカルボン酸(又はカルボキシレート)であってもよい。この実施形態では、キャッピング基は、例えば、アセテート又はオキサレートであってもよく、一方、ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、アルギネート又はポリアクリル酸などのカルボン酸(又はカルボキシレート)を含む。この実施形態では、ポリマーの1つのカルボン酸がキャッピング基と交換されると、ポリマー上の近くのカルボン酸部分が別のキャッピング基と交換される可能性が高まるので、キャッピング基はポリマーと交換されることが予想される。
【0087】
プレキャッピングされたオリゴマー金属配位錯体、すなわちすでに修飾されたオリゴマー金属配位錯体を活物質粒子に配位させて活性化粒子を形成することができるか、又はオリゴマー金属配位錯体が活物質粒子に曝露された後にキャッピング剤を添加することができることが理解されるであろう。いずれにしても、活性化粒子、好ましくは活性化ナノ粒子は、少なくとも1つのポリマーへの曝露の前に形成される。
【0088】
したがって、実施形態では、第1の態様の方法のステップ(i)(修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆された活物質粒子を含む複数の活性化粒子を提供すること)は、ステップ(ii)(複数の活性化粒子を、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと接触させること)が行われる前に完了していなければならない。すなわち、修飾オリゴマー金属配位錯体は、少なくとも1つのポリマーに曝露される前に、活物質粒子に配位結合されなければならない。
【0089】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体は、3.8未満のpHでオリゴマー錯体を形成するように修飾されている。本発明者らは、驚くべきことに、形成されたオリゴマー錯体のサイズ、キャッピング基のタイプ及び使用される過剰量、並びにオリゴマー金属配位錯体溶液のpHの間に複雑な関係があり、その後に導入されるポリマーに対する反応性が改変された錯体をもたらすことを見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、任意のpHにおいて、複合粒子を形成する種々の成分間の金属錯体への配位に関する
競合が変化する。pH3.8を超えるようなより高いpHでは、ケイ素及び/又は炭素粒子(又はナノ粒子)への金属錯体の結合の強度は、次第により強くなり、同様に、ポリマーなどの任意の他の配位子と強く反応するその能力もまたより強くなる。先行技術に記載されているような金属錯体のより高いpH条件は、任意の利用可能なポリマーによる粒子(又はナノ粒子)の被覆を強化する。pH3.8未満などのより低いpHでは、金属錯体活性化粒子(又はナノ粒子)の反応性が低下し、特定の結合強度及び過剰のキャッピング基によって強化されるか否か、及びキャッピング基によって緩衝されて一部の標的pHの安定化を助けるか否かにより、記載されるような複合粒子の形成を可能にする微細な制御が可能になる。
【0090】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体は、3.7未満、又は3.5未満、又は3.5未満、又は3.4未満、又は3.3未満、又は3.2未満、又は3.1未満、又は3.0以下のpHでの形成によって修飾されている。形成時のpHは、上記引用した上限値の全ての例との組み合わせで、1.0より大きくなる。
【0091】
このpHは、金属配位錯体が形成されたと考えられるときの最終pHであり得る。これは、クロム塩などの多くの金属塩が強酸性であり、錯体が形成されると水素イオンを放出するためである。したがって、かかる溶液のpHは、錯体が形成されるにつれて経時的により酸性になり得、最終的なpHが、形成される金属配位錯体の性質、したがってその修飾の程度に重要となる。
【0092】
したがって、実施形態では、本方法は、修飾オリゴマー金属配位錯体を形成するステップを更に含み得る。この形成は、既存のオリゴマー金属配位錯体の修飾であってもよく、又はオリゴマー金属配位錯体の同時形成及びそれが形成する際のその修飾であってもよい。
【0093】
修飾オリゴマー金属配位錯体を形成するステップは、オリゴマー金属配位錯体を、キャッピング基を含む溶液と接触させることを含み得る。あるいは、修飾オリゴマー金属配位錯体を形成するステップは、対応するモノマー金属配位錯体を塩基に曝露し、それによって3.8未満のpHで修飾オリゴマー金属配位錯体を形成することを含んでもよい。あるいは、修飾オリゴマー金属配位錯体を形成するステップは、未修飾金属錯体と活物質との相互作用の後であってもよい。あるいは、修飾されたオリゴマー錯体を形成するステップは、対応するモノマー金属配位錯体とキャッピング基及び塩基とで高温で反応させることを含んでもよい。
【0094】
本方法は、修飾金属配位錯体を含む液体配合物のpHをpH1.5~pH3.8に調整するステップ、及び/又は液体配合物の温度を15~30℃に制御するステップを更に含み得る。
【0095】
実施形態では、pHを調整するステップは、金属配位錯体が形成されている溶液のpHを調整して、所望の程度の修飾を確保することを含み得る。これは、使用される金属塩による水素イオンの放出に起因してpHがより酸性になることを可能にすることを含み得るか、又は、溶液が酸性になりすぎることを防止するために、エチレンジアミン又は金属水酸化物などの塩基を添加して、放出された水素イオンの一部を除去することを含み得る。塩基が添加される場合、その量は、上記で定義されたように、溶液が依然として酸性となるような量である。
【0096】
実施形態では、修飾金属配位錯体は、酢酸などの好適なキャッピング基の存在下で、酸化クロム(VI)を直接還元することによって形成することができる。錯体が合成されたら、pHを必要に応じて調整することができる。
【0097】
実施形態では、オリゴマー金属配位錯体の金属イオンは、修飾の有無に関わらず、クロム、ルテニウム、鉄、コバルト、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、金属配位錯体の金属イオンは、クロム、ルテニウム、チタン、鉄、コバルト、アルミニウム、ジルコニウム、ロジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0098】
実施形態では、金属イオンはクロムである。
【0099】
オリゴマー金属配位錯体の金属イオンは、任意の適用可能な酸化状態で存在し得る。例えば、金属イオンは、必要に応じてI、II、III、IV、V、又はVIからなる群から選択される酸化状態を有することができ、該金属イオンは、それぞれの個々の金属について標準条件下で得ることができる。当業者は、利用可能な各金属についてどの酸化状態が適切であるかを認識しているであろう。
【0100】
金属イオンがクロムイオンである実施形態では、クロムがIIIの酸化状態を有することが好ましい。
【0101】
金属イオンは、金属-配位子配位化学において周知であるような任意の好適な対イオンと会合され得る。
【0102】
特定の実施形態では、異なる金属イオンの混合物を使用して、例えば、複数の異なるオリゴマー金属配位錯体を形成することができる。かかる場合、少なくとも1つの金属イオンがクロムであることが好ましい。
【0103】
金属は、ある範囲のオリゴマー金属配位錯体を形成することが知られている。オリゴマー金属配位錯体を形成するための好ましい配位子は、供与結合形成基として窒素、酸素、又は硫黄を含むものである。より好ましくは、供与結合形成基は酸素又は窒素である。更により好ましくは、供与結合形成基は、オリゴマー錯体を形成するためのオール化を補助する酸素含有基である。実施形態では、酸素含有基は、酸化物、水酸化物、水、硫酸塩、リン酸塩、又はカルボン酸塩からなる群から選択される。
【0104】
実施形態では、オリゴマー金属配位錯体は、クロム(III)オリゴマー金属配位錯体である。実施形態では、オリゴマー金属配位錯体は、オキソ架橋クロム(III)オリゴマー配位錯体である。この錯体は、必要に応じて、1つ以上の架橋カップリング(カルボン酸、スルフェート、ホスフェート及び他の多座配位子など)で更にオリゴマー化され得る。
【0105】
例示的なオキソ架橋クロム構造を以下に提供するが、少なくとも1つのポリマーに対する反応性の任意の適切な改変を示すものではない。
【化1】
【0106】
活物質粒子(又はナノ粒子)への適用時に、オリゴマー金属配位錯体の各々の上の水又はヒドロキシル基(又は存在し得る任意の配位子)のうちの少なくとも1つは、活物質の表面との供与結合によって置換される。これは、以下に例示されており、「X」は、活物質粒子(又はナノ粒子)の表面への供与結合を表す。
【化2】
【0107】
オリゴマー金属配位錯体上に存在する複数の水又はヒドロキシル又は他の配位子は、活物質粒子の表面との供与結合によって置換されてもよく、例えば、オリゴマー金属配位錯体内の少なくとも1つのクロムイオンは、活物質粒子の表面との供与結合を形成してもよいことも理解されるであろう。
【化3】
【0108】
加えて、形成される複合粒子のポリマーネットワークへの活性化粒子の結合に関する上記の議論を考慮すると、存在する水及び/又はヒドロキシル又は他の配位子基は、更なる活物質粒子、追加のポリマー成分又は結合剤などの配合物の追加の成分との供与結合によって置換されてもよいことが理解されるであろう。
【0109】
実施形態では、修飾オリゴマー金属配位錯体は、既存の水及び他の配位子基よりもかなり遅いオン/オフ速度を有する種々のキャッピング基を含むことができ、したがって、更なる活物質粒子、追加のポリマー成分又は結合剤などの配合物の追加の成分との配位に影響を及ぼすことも理解されるであろう。
【0110】
一実施形態では、オリゴマー金属配位錯体を形成する金属は、活物質粒子を形成する金属と同じではない。例えば、クロムオリゴマー金属配位錯体が使用される場合、活物質粒子はクロム金属ではない。
【0111】
好ましい実施形態では、オリゴマー金属配位錯体は、溶融プロセスによって活物質粒子に組み込まれることはない。すなわち、オリゴマー金属配位錯体の金属は、必要とされる活性化粒子の形成をもたらさないので、活物質粒子と一緒に溶融されない。オリゴマー金属配位錯体は、液相中で、すなわち、液相を形成する好適な液体担体又は溶媒の存在下で、活物質に組み込まれることが好ましい。
【0112】
以下、オリゴマー金属配位錯体について、合成アプローチにおける利用可能なバリエーションと、それによって達成される最終生成物の差異の可能性に関して説明する。
【0113】
オリゴマー金属配位錯体は、2つ以上の金属イオンを架橋又は別様で連結若しくは結合するための電子供与基を形成する条件を提供することによって形成することができる。まだ市販されていない場合には、これは、錯体を形成する際に、pH1を超えるpH、好ましくは約1~5、又は約2~5のpHを溶液に提供することによって行うことができる。明らかに、選択されたpHは、オリゴマー金属配位錯体の修飾が達成されるアプローチに依存する。すなわち、オリゴマー金属配位錯体がキャッピング基の使用によって修飾される場合には、オリゴマー金属配位錯体を形成するのに3.8を超えるpHが適切であり得るが、水溶液中で形成されるオリゴマー金属配位錯体には、3.8未満のpHが非常に望ましい。非水溶液では、pHを適切な尺度として使用することができないので、形成される金属配位錯体は、有機反応溶媒中の塩基/酸の量によって決定される。
【0114】
クロムベースのオリゴマー金属配位錯体を形成するために、塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、過塩素酸クロムなどの種々のクロム塩を使用することができる。一部のオリゴマー形態で予め存在し、「そのまま」使用されない限り、これらの塩は、アルカリ溶液(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、重炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムなど)と混合されて、異なる金属配位錯体を形成する。塩基として作用し得る有機試薬(エチレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)ジエチルアミン、ピリジン、イミダゾールなど)もまた、使用され得る。オリゴマー金属配位錯体のサイズ及び構造は、pH、温度、溶媒の選択及び他の条件によって変化し得る。
【0115】
1つの特定の実施形態では、オリゴマー金属配位錯体がクロム金属-配位子錯体である場合、活物質粒子(又はナノ粒子)は、追加の材料としてアルミニウム又は鉄を含まない。
【0116】
実施形態では、複数の活性化粒子と、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーとの間のステップ(ii)(複数の活性化粒子を、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと接触させること)の接触は、液体担体内で生じる。
【0117】
液体担体は、水性若しくは有機溶媒、又はこれらの混合物であってもよく、又は液体担体は、液体の追加の活物質であってもよい。実施形態では、液体担体は、少なくとも一部の水性成分を有する。液体担体は水溶液であってもよい。液体担体は水又はアルコールであってよい。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はブタノールであってもよい。一実施形態では、液体担体は水又はイソプロパノールである。一実施形態では、液体担体は水である。
【0118】
好ましくは、液体担体は水性担体である。
【0119】
一実施形態では、複合粒子は、金属配位錯体の金属と活物質及びポリマーの両方との間に供与結合を含む。
【0120】
実施形態では、本方法は、修飾オリゴマー金属配位錯体を液体担体中の活物質粒子及び少なくとも1つのポリマーに配位結合させ、それらの結合した成分を含む当該液体担体から複合粒子を形成するステップを(又はステップ(iii)として)含み得る。
【0121】
実施形態では、複合粒子は、当該結合された成分を含む液体担体又は溶媒の除去を可能にする任意の方法によって形成され得る。本方法は、安定化された複合粒子を濃縮するために、噴霧乾燥又は撹拌下での加熱を伴う低速蒸発又は回転蒸発を含み得る。かかる粒子は、続いて濾過され得、そしてオーブン中でトレイ乾燥され得る。好適な蒸発方法としては、オープンディッシュ蒸発、減圧蒸発、回転蒸発、フラッシュ蒸発、噴霧乾燥、凍結乾燥、フラッシュ蒸発などが挙げられる。あるいは、前駆体配合物をpH調整し、迅速に濾過するか、又はオーブン乾燥し、次いで粉砕して複合粒子を形成することができる。かかるアプローチのための一般的な機器には、流動床乾燥機、大気圧又は真空パン乾燥機、ドラム乾燥機、凍結乾燥、フラッシュ蒸発機器などの使用が含まれる。
【0122】
記載されるように、少なくとも1つのポリマーは、修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することができる任意の天然又は合成ポリマーであり得る。配位結合の形成は、ポリマーの適切な電子供与基と、利用可能な配位能力を有する修飾オリゴマー金属配位錯体の金属イオンとの間の供与結合であり、自由に利用可能であるか、又はポリマーによる現在の配位子の置換(キャッピング基置換など)によって利用可能となる。複合粒子の最終用途により、修飾オリゴマー金属配位錯体に曝露される第1、第2及び更に別のポリマーが存在し得ることが規定され得ることが理解されるであろう。かかる状況では、活性化粒子(又はナノ粒子)との配位結合を形成するために修飾オリゴマー金属配位錯体とそれぞれが十分に反応する限り、任意のポリマーの組み合わせが適切であり得る。これは、概して、ポリマーが十分な電子供与基を有する限り、常に当てはまる。
【0123】
実施形態では、少なくとも1つのポリマーは、先に定義されたキャッピング基の非存在下又は存在下にかかわらず、修飾オリゴマー金属配位錯体と結合するのに十分な分子量又は電子供与基を有する任意の1つ以上のポリマーであり得る。オリゴマー金属配位錯体が広範囲のポリマーに結合できることは利点である。
【0124】
少なくとも1つのポリマーは、親水性又は部分的に疎水性であり得る。
【0125】
部分的に疎水性である代表的なポリマーは、ポリ(エステルアミド)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(ラクチド)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4-ヒドロキシヘキサノエート)、中鎖ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(チロシン誘導カーボネート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)からなる群から選択され得る。
【0126】
代表的な親水性ポリマーは、ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、ポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)、ポリエチレングリコールメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn-ビニルピロリドン(VP)のポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、ポリアクリル酸(PAA)などのカルボン酸含有モノマー、HEMA、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、及び3-トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)などのヒドロキシル含有モノマー、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアルキレンオキサイド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、マレイン酸無水物コポリマー、ニトロセルロース、デキストラン、デクストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、エラスチン及びチトサン、並びにこれらのポリマーの任意の2つ以上を含む架橋ポリマーからなる群から選択することができる。
【0127】
特定の実施形態では、複合粒子のネットワーク構造の基礎を形成する少なくとも1つのポリマーは、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、無水マレイン酸コポリマー又はそれらの組み合わせであってもよく、又は含んでもよく、異なる分子量範囲、分岐構造、濃度、配合物pHなどを有する変形形態を含む。
【0128】
複合粒子が電池用途のためのものである実施形態では、少なくとも1つのポリマーが結合剤であってもよく、又は追加のポリマー結合剤が含まれる。好ましい結合剤ポリマーは、アクリレート、カルボキシル、ヒドロキシル、及びカルボニル部分から選択される酸素種を含むものである。しかし、これらの基を有さない他のポリマーもまた、特定の基準に依存して有用であり得、例えば、好適なポリマーとしては、スチレンブタジエンゴム及びその誘導体が挙げられる。特に好ましい結合剤は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(エチレン及び無水マレイン酸)コポリマーを含む無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルキトサン、天然多糖、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、アルギネート、及びポリイミドから選択される。最も好ましくは、結合剤はPAA及び/又はアルギン酸塩及び/又はCMCである。
【0129】
実施形態では、本方法は、活性化粒子、好ましくは活性化ナノ粒子、及び少なくとも1つのポリマーを、液体及び/又は固体ポロゲンと接触させるステップを更に含み得る。複合粒子に顕著な多孔性を付加することで、操作において明確な利点が得られる。例えば、アノード材料における用途のために、ポリマーネットワーク内に均一に分散され、相互接続された活性化粒子を含む多孔質複合粒子を使用することで、充放電に基づく材料の膨張及び収縮サイクルに効率的に適応させることができる。複合粒子の多孔性の性質は、活性化粒子とポリマー骨格との間の配位結合とともに、過度の膨張に抵抗し、そしてデインターカレーション後に複合粒子をその静止状態に戻すことに大きく寄与する。
【0130】
好適なポロゲンは、当該技術分野において周知であり、形成される複合粒子に応じて、水溶性ポロゲン及び非水溶性ポロゲンの両方を含み得る。水溶性ポロゲンとしては、水、並びにアルコール、グリコール及びジオールなどの水混和性溶媒が挙げられる。適切であり得るかかるアルコールとしては、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールが挙げられる。他の水溶性ポロゲンは、ポリエーテルなどのポリマー、塩化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムなどの異なる無機塩を含み得る。水溶性ポロゲンは、複合粒子の形成に使用されるが、複合粒子の一部として残存しない試薬を含んでもよい。かかる試薬としては、未反応ポリマー、キャッピング基、オリゴマー金属錯体の対イオンなどが挙げられる。有機溶媒系ポロゲンとしては、トルエン、ヘキサン、又はシクロヘキサノンなどの溶媒、並びにポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、及びポリウレタンなどの小ポリマーが挙げられる。
【0131】
液体及び/又は固体ポロゲンが存在するかかる実施形態では、本方法は、液体担体及び/又はポロゲンを能動的に除去するステップを更に含み得る。
【0132】
一実施形態では、本方法は、活性化粒子と少なくとも1つのポリマーとの組み合わせ混合物を単独で、又は溶媒若しくは溶媒比率の変更、pH条件の変更、並びに望ましくない液体及び/又は固体ポロゲンを除去する手段のうちの1つ以上と組み合わせて攪拌するステップを更に含み得る。
【0133】
攪拌は、振盪、機械的混合、回転、撹拌、遠心分離などであり得る。
【0134】
一実施形態では、本発明の第1の態様の方法は、400℃未満、好ましくは200℃未満、又は180℃未満、又は160℃未満の温度で実施される。一実施形態では、本発明の第1の態様の方法は、150℃未満、又は140℃未満、又は130℃未満、又は120℃未満、又は110℃未満、又は100℃未満の温度で実施される。一実施形態では、本発明の第1の態様の方法は、少なくとも0℃、特に少なくとも5℃、又は少なくとも10℃、又は少なくとも15℃、又は少なくとも20℃の温度で実施される。一実施形態では、第1の態様の方法は、室温以上で実施される。一実施形態では、第1の態様の方法は、0℃~200℃、特に5℃~180℃、又は10℃~160℃の温度で実施される。これらの温度で本方法を実施することにより、有利には、修飾金属配位錯体の金属イオンと配合物の他の成分、例えば活物質粒子及び少なくとも1つのポリマーとの間の供与結合の形成が可能になると考えられる。より高い温度では、金属イオンの酸化物及び他の錯体が形成され得ると考えられる。
【0135】
一実施形態では、本発明の第1の態様の方法は、0.5atm~5atm、又は0.5atm~3atm、又は0.5atm~2atm、又は約1atmの圧力で実施される。
【0136】
第2の態様では、活物質粒子と、オリゴマー金属配位錯体と、少なくとも1つのポリマーと、液体担体とを含む複合粒子前駆体配合物が提供される。
【0137】
第2の態様の一実施形態では、液体担体は、少なくとも1つのキャッピング基を含む。例えば、液体担体は、酢酸イオンを含んでもよい。かかる酢酸イオンは、修飾金属配位錯体に由来し得る。
【0138】
第2の態様の一実施形態では、
(i)修飾オリゴマー金属配位錯体で少なくとも部分的に被覆された活物質粒子を含む複数の活性化粒子と、
(ii)修飾オリゴマー金属配位錯体と配位結合を形成することが可能な少なくとも1つのポリマーと、
(iii)複数の活性化粒子及び少なくとも1つのポリマーが位置する液体担体と、を含む、複合粒子前駆体配合物が提供される。
【0139】
本発明の第2の態様の特徴は、第1の態様について記載した通りであってもよい。
【0140】
一実施形態では、液体担体は、水性又は有機溶媒系液体担体である。液体担体の性質は、本発明の範囲を特に限定するものではなく、種々の液体溶媒が種々の活物質に適している。特定の実施形態では、液体(室温で)のケトン、アルコール、アルデヒド、ハロゲン化溶媒及びエーテルが適切であり得る。1つの好ましい実施形態では、水性、アルコール又は水性/アルコール液体担体が好ましい。適切であり得るかかるアルコールとしては、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールが挙げられる。
【0141】
実施形態では、複合粒子前駆体配合物は、先に定義された液体及び/又は固体ポロゲンを更に含み得る。
【0142】
複合粒子前駆体配合物は、複合粒子を形成するために必要な1つ以上の追加の活物質を含んでもよく、その各追加の活物質は、前述の同一の群及び材料から選択されてもよい。例えば、複合前駆体配合物は、第2の活物質、第3の活物質、第4の活物質、第5の活物質などを更に含んでもよい。これらの各々は、1つ以上の修飾オリゴマー金属配位錯体に結合すると、第2、第3、第4、第5などの活性化粒子を形成する。少なくとも1つ以上が、配合物内の少なくとも1つのポリマーと結合するために適切である。
【0143】
形成される複合粒子を安定化させることに関して、粒子が生命科学用途のためのものである実施形態では、粒子は、多くの場合、かかる用途のために完全に乾燥される必要がないため、室温(標準圧力で21℃など)~60℃の乾燥温度を有することが適切であり得る。電池用途で使用するためには、溶媒を乾燥させることがより重要であるため、真空オーブン中で100℃~200℃の温度が適切であり得る。
【0144】
噴霧乾燥は、170℃~230℃の温度で行うことができ、約210℃が典型的である。焼成は当技術分野で周知であり、焼成温度は約600℃~約1000℃であり得る。
【0145】
第3の態様では、複数の活物質粒子と、ポリマーネットワークと、活物質粒子及びポリマーネットワークに配位結合した複数のオリゴマー金属配位錯体と、を含む、複合粒子であって、少なくとも1つの活物質粒子の大部分は、複数のオリゴマー金属配位錯体の1つ以上によってポリマーネットワークに結合している、複合粒子が提供される。
【0146】
本明細書で使用される場合、「大部分」という用語は、少なくとも1つの活物質粒子タイプの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は95%が、少なくとも1つの配位結合を介して複合粒子の少なくとも1つのポリマーに連結していることを指す。2つ以上の活物質粒子タイプが複合粒子中に存在する場合、それらの活物質粒子のうちの少なくとも1つの(上で定義されたような)大部分は、少なくとも1つの配位結合を介して複合粒子の少なくとも1つのポリマーに連結される。追加の活物質粒子は、同様に連結されてもよく、又はそれらは、マトリックス内に単に物理的に埋め込まれてもよいが、少なくとも1つのポリマーにそのように連結又は結合されなくてもよい。
【0147】
活物質粒子、ポリマーネットワーク及びオリゴマー金属配位錯体は、第1及び第2の態様について前述した通りであってもよい。第3の態様のポリマーネットワークは、第1及び第2の態様について定義されたように、活性化粒子と少なくとも1つのポリマーとの結合から生じることが理解されるであろう。
【0148】
複合粒子が形成されると、オリゴマー金属配位錯体を「修飾された」と称することはもはや適切ではない場合があるため、オリゴマー金属配位錯体は、第3の態様に関してこのようには称されないことが理解されるであろう。すなわち、修飾オリゴマー金属配位錯体への少なくとも1つのポリマーの配位は、オリゴマー金属配位錯体の修飾された性質を少なくとも部分的に除去することができる。ポリマーの配位は、前述のように、キャッピング基をオリゴマー金属配位錯体から解離させるので、これは、修飾がオリゴマー金属配位錯体上のキャッピング基の存在である場合に特に当てはまる。したがって、第3の態様に関する「オリゴマー金属配位錯体」という用語の使用は、第1及び第2の態様の修飾オリゴマー金属配位錯体から得られる錯体であるが、少なくとも1つのポリマーへの曝露前の修飾オリゴマー金属配位錯体と比較した場合、少なくとも、低減又は減少した修飾レベルを有する錯体を指すことが理解されるであろう。
【0149】
第1及び第2の態様に関して定義されたように、第3の態様の複合粒子は、第2、第3、第4、第5などの活性化粒子(したがって活物質粒子)がその中に組み込まれていてもよい。また、複合粒子の物理的特性に影響を与えるために添加される追加の材料を含んでもよい。例えば、マグネタイトナノ粒子の使用を介して迅速な単離を可能にするために添加剤が存在してもよく、又は形成された複合粒子のための標識として異なる色のナノ粒子が含まれてもよい。
【0150】
好ましい活物質は、特に電池用途について記載されているが、複合粒子がイムノアッセイの一部を形成する別の非限定的な実施形態では、少なくとも1つの活物質粒子は、マグネタイト若しくは他の磁性材料及び/又は量子ドット、炭素及び公知の比色ナノ粒子、蛍光ナノ粒子又は化学発光ナノ粒子の1つ以上から選択することができる。
【0151】
実施形態では、第2の活物質粒子及び任意の追加の活物質粒子(又はナノ粒子)はそれぞれ、その総粒子数の大部分が、オリゴマー金属配位錯体を介して他の粒子及び/又はポリマーネットワークに配位結合している。実施形態では、複合粒子中に存在する任意の活物質粒子タイプが、少なくとも大部分において、オリゴマー金属配位錯体に配位結合されることが好ましい場合がある。実施形態では、複合粒子中に存在する活物質粒子タイプの1つだけ、又は2つ以上であるが全てではない活物質粒子タイプが、少なくとも大部分において、オリゴマー金属配位錯体に配位結合していてもよく、一方、残りの活物質粒子タイプは、幾分少ない程度で配位結合しているか、又は単に、形成された複合粒子内に埋め込まれていてもよい。
【0152】
好ましい実施形態では、活物質粒子は、ケイ素及び/又はグラファイト及び/又は他の
炭素系粒子(又はナノ粒子)であり得る。
【0153】
第3の態様の複合粒子は、ポリマーネットワーク内の活性化粒子の分散に関して均一又は均質であり得る。均質という用語は、概して、複合粒子を形成する十分に分散され十分に分布した活性化粒子を説明すること、並びに複合粒子の均一で緊密なサイズ分布を説明することを意図する。
【0154】
一実施形態では、第3の態様の複合粒子は、第1の態様の方法によって形成されたもの、又は第2の態様の複合粒子前駆体配合物から形成されたものである。
【0155】
実施形態では、本明細書の態様のいずれかに記載の乾燥複合粒子は、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約80%又は約50%~約80%の平均多孔率を有し得る。
【0156】
一実施形態では、乾燥複合粒子は実質的に多孔性ではない。
【0157】
実施形態では、本明細書の態様のいずれかに記載される複合粒子は、サイクル中にそれらの通常のサイズの約30%、又は約60%、又は約100%、又は約200%に膨張する能力を有し得る。
【0158】
実施形態では、本明細書の態様のいずれかに記載の複合粒子は、ポリマーネットワークの特性、及び複合粒子が使用される環境、例えば複合粒子が曝露される溶媒に応じて、多孔性及び/又は膨潤能を変化させることができる。
【0159】
第4の態様では、第3の態様の複数の複合粒子及び/又は第1の態様の方法によって形成された複数の複合粒子及び/又は第2の態様の複合粒子前駆体配合物から形成された複数の複合粒子を含む複合材料が提供される。
【0160】
複合材料は、電池用途のための電荷コレクタ基板、電極材料、及びセパレータ材料から選択され得る。
【0161】
1つの好ましい実施形態では、第4の態様の複合材料は電極材料である。
【0162】
電極材料は、アノード又はカソードのいずれかを形成するために適切であり得る。
【0163】
前述のように、例えば、ケイ素及び/又は炭素粒子(又はナノ粒子)を含む複合粒子が電極材料に形成され、電荷コレクタ電極基板上に被覆されて電極を形成する場合、リチウムなどの電解質の周期的インターカレーションの結果としてシステムに課される歪みにもかかわらず、オリゴマー金属配位錯体及び粒子の多孔性は、活物質粒子(又はナノ粒子)の膨張及び収縮に関連する応力及び歪みを緩和するように作用する。これは、材料間の接触の劣化及び破壊を最小限に抑えるか又は防止するのに役立つ。この修飾オリゴマー金属錯体を利用した予想外の効果は、かかる形成された電極材料に長いサイクル寿命を提供し、より高いエネルギー密度及び/又はより速い充電及び/又は放電サイクルを提供することができる。
【0164】
本明細書に記載される複合粒子は、電極内に組み込まれた場合、(i)活物質の安定性を改善又は維持すること、(ii)活物質粒子の出力性能(レート性能)を改善すること、(iii)特定の電極材料の溶解度を減少させること、(iv)電池のサイクル寿命を増加させること、(v)製造中の活物質粒子(又はナノ粒子)の安全性及び取り扱いやすさを改善すること、及び(vi)全体的な電池廃棄物を減少させることに役立つなど、操
作において特定の1つ以上の利点を提供し得ることが理解されるであろう。
【0165】
第5の態様では、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された電解質を含む電気化学セルであって、アノード又はカソードのうちの少なくとも一方は、第3の態様の複数の複合粒子及び/又は第1の態様の方法によって形成された複数の複合粒子及び/又は第2の態様の複合粒子前駆体配合物から形成された複数の複合粒子を含む、電気化学セルが提供される。
【0166】
当該複合粒子の組み込みの結果として、電極は、当該複合粒子を含まない電極と比較して改善された性能を示すことができる。特定の実施形態では、改善された性能とは、より高い第1のサイクル放電容量、より高い第1のサイクル効率、100%の充電深度での50~1000回の深い充電/放電サイクル後のより高い容量からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましくは、改善された性能とは、1000回の深い充電/放電サイクル後のより高い容量である。
【0167】
一実施形態では、本発明の複合粒子を含む電極の100%の放電深度での50~1000回の深い充電/放電サイクル後のフルセルの容量は、かかる複合粒子を含まない同じ一般的組成の電極よりも少なくとも5%大きい、又は少なくとも10%大きい、又は少なくとも20%大きい、又は少なくとも30%大きい、又は少なくとも40%大きい、又は少なくとも50%大きい、又は少なくとも60%大きい、又は少なくとも70%大きい。
【0168】
別の実施形態では、改善された性能は、フルセルにおける200回の深い充電/放電サイクル後のより高い容量であり、更により好ましくは、改善された性能は、フルセルにおける500回の深い充電/放電サイクル後のより高い容量であり、最も好ましくは、改善された性能は、フルセルにおける1000回の深い充電/放電サイクル後のより高い容量である。
【0169】
一実施形態では、本発明の複合粒子を含む電極の100%放電深度での容量の第1のサイクル効率は、かかる複合粒子を含まない同じ一般組成の電極よりも少なくとも1%大きい、又は少なくとも3%大きい、又は少なくとも10%大きい、又は少なくとも20%大きい。好ましくは、改善された第1のサイクル効率は、少なくとも70%超、又は少なくとも80%超、又は少なくとも85%超であり、より好ましくは、第1のサイクル効率は、85%~90%の間であり、最も好ましくは、第1のサイクル効率は、約90%~約94%の間である。
【0170】
一実施形態では、本発明の複合粒子を含有する電極の100%放電深度でのmAh/gでの第1のサイクル比放電容量は、350mAh/gのアノードのみを含有する最先端のグラファイトよりも少なくとも1.1倍(400mAh/g)、又は少なくとも1.3倍(450mAh/g)、又は少なくとも1.4倍(500mAh/g)、又は少なくとも1.7倍(600mAh/g)、又は少なくとも2.0倍(700mAh/g)、又は少なくとも2.6倍(900mAh/g)、又は少なくとも3.4倍(1200mAh/g)、又は少なくとも4.3倍(1500mAh/g)、又は少なくとも5.1倍(1800mAh/g)、又は少なくとも5.7倍(2000mAh/g)大きく、又は少なくとも7.1倍(2500mAh/g)、又は少なくとも8.6倍(3000mAh/g)である。好ましくは、mAh/gでの第1のサイクル比放電容量は、少なくとも500mAh/g超、又は少なくとも600mAh/g超、又は少なくとも800mAh/g超、又は少なくとも1000mAh/g超、又は少なくとも1500mAh/g超、又は少なくとも2000mAh/g超、又は少なくとも2500mAh/g超、又は少なくとも2950mAh/g超であり、より好ましくは、mAh/gでの第1のサイクル比放電容量は、1000~2500mAh/g、又は700~800mAh/gであり、又は第1のサイクル比放電容量は、約1000~約1500mAh/g又は約1000~約1400mAh/gである。
【0171】
本明細書に開示され、定義される本発明は、言及された、又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の全ての代替的な組み合わせに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせは、本発明の種々の代替的な態様を構成する。
【実施例】
【0172】
実施例1:オリゴマー金属配位錯体溶液の調製。
オリゴマー金属配位錯体の異なる溶液を、以下に説明するように形成した。金属イオン、塩、塩基、最終pH、キャッピング基、使用される他の配位子及びその合成方法に応じて、オリゴマー金属配位錯体溶液は、オリゴマー金属配位錯体で活性化される粒子(又はナノ粒子)に合わせて調整可能な異なる結合特性を示す。結果として、それによって形成された活性化粒子(又はナノ粒子)は、ポリマーと配位結合するとき、異なるクラスター化特性及び反応性を有することができる。
【0173】
未修飾オリゴマー金属配位錯体
溶液1
この実施例では、過塩素酸クロム六水和物(45.9g)を480mLの精製水に溶解し、全ての固体が溶解するまで完全に混合した。同様に、8mLのエチレンジアミン溶液を490mLの精製水に添加した。次に、EDA溶液をクロム塩溶液に滴下添加することによって溶液を混合し、得られた混合物を室温で一晩撹拌し、次に、約4.5のpHに平衡させた。この金属配位錯体は、異なる材料に迅速に結合し、修飾されたバージョンの参照として使用される。
【0174】
修飾オリゴマー金属配位錯体
溶液2
上記と同様に、異なる比率の過塩素酸クロム及びエチレンジアミン溶液を使用して、異なるpH(例えば、pH3.0、4.0、pH5.0又は一部の他のpH)を有する溶液を生成することができる。溶液2については、過塩素酸クロム六水和物(103.5g)を1000mLの精製水に溶解し、全ての固体が溶解するまで完全に混合した。8mLのエチレンジアミン溶液を1000mLの精製水に添加し、EDA溶液をクロム塩溶液に滴下添加することによって2つの溶液を混合し、室温で一晩撹拌し、次いで約3.0のpHに平衡させた。より低いpHは、金属配位錯体の反応性を低下させる。
【0175】
溶液3
この実施例では、塩化クロム六水和物(106.6gm)を1000mLの精製水に溶解し、全ての固体が溶解するまで完全に混合した。同様に、34.8mlのエチレンジアミン溶液を1000mLの精製水に添加した。EDA溶液をクロム塩溶液クロム塩溶液に滴下添加することによって混合し、室温で一晩撹拌し、次いで約3.0のpHに平衡させた。
【0176】
溶液4
この実施例では、硫酸クロム六水和物(39.2gm)を460mLの精製水に溶解し、全ての固体が溶解するまで完全に混合した。同様に、3.6gの水酸化リチウムを500mLの精製水に添加し、全ての固体が溶解するまで完全に混合した。LiOH溶液をクロム塩溶液クロム塩溶液に滴下添加することによって混合し、室温で一晩撹拌し、次いで約3.0のpHに平衡させた。
【0177】
溶液5
一例として、500mlの100mM酢酸緩衝液(pH3.6)を500mlの溶液3に撹拌しながら滴下添加し、次いで放置してpHを約3に平衡化する。同様に、溶液1、2、3及び4中で形成された錯体の異なるバージョンに、任意の指定されたpHで異なる過剰量の酢酸緩衝液を添加することができる。これにより、形成される修飾オリゴマー金属配位錯体の調整に大きな柔軟性がもたらされる。
【0178】
溶液6
一例として、500mlの100mMシュウ酸緩衝液(pH3.5)を500mlの溶液3に撹拌しながら滴下添加し、次いで放置してpHを約3.5に平衡化する。同様に、溶液1、2、3及び4中で形成された錯体の異なるバージョンに、任意の指定されたpHで異なる過剰量のシュウ酸緩衝液を添加することができる。
【0179】
溶液7
この実施例では、90.5gの酢酸クロム(三クロム錯体が6個以上の酢酸基を有する場合、例えば[Cr3O(O2CCH3)7(OH)2])を3000mLの精製水に溶解し、全ての固体が溶解するまで完全に混合した。50mM溶液のpHはpH4.2であり、必要に応じてpHを調整可能であった。この実施例は、溶液4の完全にキャッピングされたバージョンと考えることができ、結合活物質及びポリマー結合剤の金属錯体の反応性をより遅くする。しかし、かかる金属錯体の反応性は、他のキャッピング基(例えば、アセテート、オキサレートなど)の添加によって更に減少され得る。
【0180】
溶液8
疎水性キャッピング基はまた、粒子の表面特性を変化させるために、かつ/又は他の粒子を補完するために使用され得る。キャッピング基、溶媒、過剰の塩基及び温度の選択によって、ヒドロキソ又はオキソ相互作用のいずれかを形成して、修飾金属配位錯体のキャッピング基の解離速度を更に操作することができる。この実施例では、100mLのイソプロパノール中の9.3g(50ミリモル)の1-ナフタレン酢酸溶液を、微粉砕した水酸化カリウム(4.6g、82.5ミリモル)に撹拌しながらゆっくりと添加した。溶液を室温で少なくとも10分間撹拌して微細な懸濁液を形成し、次いで、150mLのイソプロパノール中の過塩素酸クロム(51.2g、100ミリモル)を激しく混合しながらゆっくりと添加した。得られた混合物を60分間加熱還流した。溶液を室温に冷却した後、不溶性のカリウム塩を別の50mLのイソプロパノールで濾過して、暗緑色のクロム金属錯体を形成した。
【0181】
実施例2:活物質粒子、特にナノ粒子へのオリゴマー金属配位錯体の結合。
異なるナノ粒子を活性化するオリゴマー金属配位錯体の例を以下に記載する。概して、1gの適切な粒子(又はナノ粒子)材料を、40mlの上記オリゴマー金属配位錯体溶液の1つに分散させ、混合物を、超音波プローブ(Henan Chengyi Laboratory Equipment Co.,Ltd、中国)を利用して、30%の出力及び3秒のオン/オフサイクルで1時間超音波処理した。次いで、混合物を濾過して乾燥させ、約2.5mgの試料を1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、1mlのDI水を添加した。超音波処理後、10μlを抽出し、1mlのDI水で更に希釈し、ボルテックスし、Malvern Nano ZS Zetasizerでの測定のためにゼータ電位キュベットに直ちに移した。対照を製造する方法は、オリゴマー金属配位錯体溶液の代わりに40mlのDI水を使用したことを除いて同じであった。調査した全ての試料において、ナノ粒子とオリゴマー金属配位錯体との反応時にゼータ電位の正電荷へのシフトがあり、配位が成功したことを示すことができた。
【0182】
粒子1
この実施例では、ケイ素ナノ粒子(100nm、SAT nanoTechnolog
y Material Co.Ltd.、中国)をオリゴマー金属配位錯体溶液(溶液1)で処理した。対照には、-39.1mVのゼータ電位測定値を与え、表面が負に帯電していることを示した。オリゴマー金属配位錯体溶液で処理すると、ゼータ電位は+28.2mVにシフトし、これは、ケイ素ナノ粒子表面上の正に帯電したオリゴマー金属配位錯体の存在により、表面がその電荷を変化させたことを示す。
【0183】
粒子2
この実施例では、炭素(C65)ナノ粒子(MTI CORP.、米国)をオリゴマー金属配位錯体溶液(溶液1)で処理した。対照には、-28.6mVのゼータ電位測定値を与え、表面が負に帯電していることを示した。オリゴマー金属配位錯体溶液で処理すると、ゼータ電位は+47.2mVにシフトし、これは、C65表面上の正に帯電したオリゴマー金属配位錯体の存在により、表面がその電荷を変化させたことを示す。
【0184】
粒子3
この実施例では、ケイ素ナノ粒子(100nm、SAT nanoTechnology Material Co.Ltd.、中国)をオリゴマー金属配位錯体溶液(溶液5、pH3.0をベースとするアセテートキャッピングされた過塩素酸クロム)で処理した。対照には、-39.1mVのゼータ電位測定値を与え、表面が負に帯電していることを示した。オリゴマー金属配位錯体溶液で処理すると、ゼータ電位は-7.5mVにシフトし、これは、ケイ素ナノ粒子表面上の正に帯電したオリゴマー金属配位錯体の存在により、表面がその電荷を変化させたことを示す。
【0185】
粒子4
この実施例では、炭素(C65)ナノ粒子(MTI CORP.、米国)を金属配位錯体溶液(溶液5、アセテートキャッピング、過塩素酸クロムベース、pH3.0)で処理した。対照には、-28.6mVのゼータ電位測定値を与え、表面が負に帯電していることを示した。金属配位錯体溶液で処理すると、ゼータ電位は+46.3mVにシフトし、これは、C65表面上の正に帯電した金属配位錯体の存在により、表面がその電荷を変化させたことを示す。
【0186】
比較の目的で、異なるオリゴマー金属配位錯体溶液で処理した場合のケイ素ナノ粒子(100nm、SAT nanoTechnology Material Co.Ltd.、中国)のゼータ電位及び平均サイズを比較した。
図1は、過塩素酸クロム誘導オリゴマー金属配位錯体で活性化されたケイ素のゼータ電位を示している。Aは溶液1につきpH4.5で形成され、BはアセテートキャッピングされているがpH4.5で形成され、CはpH3.0で形成され、DはアセテートキャッピングされているがpH3.0で形成され、Eは対照としての水である。各試料を、濾過及び水への再懸濁後、並びに1回の洗浄、濾過及び水への再懸濁後に、粗生成物として測定した。金属配位錯体のタイプごとに異なる電荷読み取り値が得られたが、全てが正電荷に向かってある程度増加した。Aの結果は、未修飾金属錯体がケイ素に強く結合したことを示し、Bの結果は、同じpHでアセテートでキャッピングされた錯体を用いて同様に強い結合が達成されたことを示している。Cの結果は、pHを制御することで錯体の結合が弱くなる効果を例示している。このことは、洗浄の効果が金属配位錯体の除去に対して更に大きいDの場合にも言える。それにもかかわらず、全ての例では、ゼータ電位を顕著に上昇させるのに十分な金属配位錯体が結合している。C及びDの結果対A及びBの結果は、金属錯体が形成されるpHを選択することによって、それらが更にキャッピングされているか否かにかかわらず、かつ使用されるキャッピング基のタイプを選択することによって、活性化ナノ粒子の反応性に対して更なるレベルの制御を達成することができることを示している。
【0187】
図2は、異なる活性化粒子のサイズをナノメートルで示している。Aは溶液1につきp
H4.5で形成され、BはアセテートキャッピングされているがpH4.5で形成され、CはpH3.0で形成され、DはアセテートキャッピングされているがpH3.0で形成され、Eは対照としての水である。図示のように、より低いpHバージョン(C及びD)では、より大きな粒子サイズ分布が得られ、これは、密接に会合した/相互接続した粒子(又はナノ粒子)の複合粒子を形成する場合に望ましい粒子凝集及び架橋を示している。いずれの場合も、アセテートでキャッピングされたバージョンは、キャッピングしていないものと比べて大きなクラスターを形成した。これは、pH及びキャップが塩基性金属配位錯体に異なる特性を与えていることを示している。説明したように、これは、キャッピング及びpH選択の両方を別々に又は一緒に使用して、オリゴマー金属配位錯体の反応性を適切に改変し、形成される活性化粒子(又はナノ粒子)の性質に影響を及ぼすことができるという点で、本方法において有用な追加の制御レベルを提供するものである。
【0188】
粒子5
この実施例では、磁性ナノ粒子(AllRun 200nm、PM3-020ロット2015011501)を、異なるオリゴマー配位錯体溶液で処理した。Aは溶液1(未修飾)であり、Bは溶液5について示されるようにアセテートキャッピングされているが、pH2.4で形成され、Cは溶液6について示されるようにpH3.2でキャッピングされたオキサレートであり、Dは対照としての水である。それぞれについて、200μLのストック粒子を200μLの水で希釈して5mg/mlの懸濁液を形成し、ボルテックスし、15分間浴超音波処理して粒子を完全に分散させた。磁気分離器を用いてビーズプラグを形成した後、上清を除去した。粒子を400μLの金属配位錯体溶液(10mM濃度)(及び対照については水)に再懸濁し、ボルテックスし、超音波処理し、少なくとも1時間、回転装置上に放置した。ボルテックス及び超音波処理を繰り返した後、ゼータサイザー測定のために試料を水で1:100に希釈した。
【0189】
粒子をポリアクリル酸(100kD、pH5.5)の1%溶液500μLと反応させた。ボルテックス及び超音波処理の後、試料を回転装置上に一晩放置した。ビーズプラグを、磁気分離器を使用して形成し、上清を除去し、そして粒子を400μLの水に再懸濁し、ボルテックス及び超音波処理を繰り返した。この洗浄ステップをもう一度繰り返した後、ゼータサイザー測定のために試料を水で1:100に希釈した。
【0190】
図3及び4は、PAA被覆前及びPAA被覆後の粒子のゼータ電位及びサイズを示している。ポリアクリル酸(PAA)溶液で処理する前に、修飾金属配位錯体(B及びC)から形成された粒子は、これらの磁性ナノ粒子のクラスター化を示すサイズ分布を示した。この実施例では、未修飾金属配位錯体(A)は、わずかな二量体形成を示す。対照(D)はサイズ又はゼータ電位に変化はなかった。粒子濃度並びに使用される金属配位錯体の種類及び濃度に応じて、金属錯体に起因する正味の正電荷を有する、会合/相互接続したナノ粒子の異なるサイズのクラスターが形成される。
【0191】
PAA処理後、修飾金属配位錯体(B及びC)は、ポリアクリル酸(PAA)のカルボキシルアニオンによる正味の負の変化を有する、より小さい複合体を形成した。弱く会合したナノ粒子は、PAA被覆中に複合クラスター内に残留しなかった。この実施例では、修飾されていない金属配位錯体(A)は、PAA層による粒子直径のわずかな増加を示す。対照(D)はサイズ又はゼータ電位に変化はなかった。より高い未修飾金属配位錯体対粒子比率を用いた場合、二量体は形成されなかったが、より低い金属錯体対粒子比率では、制御できない凝集、均一性の悪さ、弱く会合したクラスターが見られた。
【0192】
実施例3:複合前駆体配合物の調製。
ケイ素系アノード用途で使用するための複合前駆体配合物の例を以下に記載する。
【0193】
前駆体配合物1。
この実施例では、50mM(最終濃度)のオリゴマー金属配位錯体(溶液1)を使用した。ナノケイ素粉末(10gm)及び導電性カーボンブラックSuper C65(2.6gm)を、600mlの溶液1中で一緒に活性化した。固体の懸濁液を、より良好な分散のために、Ultrasonic Processor(Henan Chengyi Laboratory Equipment Co.,Ltd、中国)において70%の出力で1時間超音波処理した。次いで、懸濁液を0.2nmのNalgeneフィルタに通して濾過し、得られたウェットケーキを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)を使用して350mlのDI水に再分散させた。褐藻類からのアルギン酸ナトリウム塩、中粘度(Sigma-Aldrich、ドイツ)397gの0.65%DI水溶液を、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)中で激しく撹拌しながら、再分散された活性化ケイ素ナノ粒子-C65懸濁液に添加した。したがって、配合物1は、未修飾オリゴマー金属配位錯体を使用して、アルギネートポリマーを有する環境中でケイ素及び炭素活物質と相互作用する配合物を表す。
【0194】
複合粒子前駆体配合物2。
この実施例では、pH2.3の50mM(最終濃度)のオリゴマー金属配位錯体(溶液5-アセテートキャッピング)を使用した。ナノケイ素粉末(10gm)及び導電性カーボンブラックSuper C65(2.6gm)を、600mlの溶液5中で一緒に活性化した。固体の懸濁液を、より良好な分散のために、Ultrasonic Processor(Henan Chengyi Laboratory Equipment Co.,Ltd、中国)において70%の出力で1時間超音波処理した。次いで、懸濁液を0.2nmのNalgeneフィルタに通して濾過し、得られたウェットケーキを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)を使用して350mlのDI水に再分散させた。褐藻類からのアルギン酸ナトリウム塩、中粘度(Sigma-Aldrich、ドイツ)397gの0.65%DI水溶液を、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)中で激しく撹拌しながら、再分散された活性化ケイ素ナノ粒子-C65懸濁液に添加した。したがって、配合物2は、2つの活性化ナノ粒子タイプが、アルギネートポリマーを有する環境において修飾オリゴマー金属配位錯体を用いて形成される、本発明の1つの配合物を表す。
【0195】
前駆体配合物3。
この実施例では、50mM(最終濃度)のオリゴマー金属配位錯体(溶液1)を使用した。ナノケイ素粉末(10gm)及び導電性カーボンブラックSuper C65(2.6gm)を、600mlの溶液1中で一緒に活性化した。固体の懸濁液を、より良好な分散のために、Ultrasonic Processor(Henan Chengyi Laboratory Equipment Co.,Ltd、中国)において70%の出力で1時間超音波処理した。次いで、懸濁液を0.2nmのNalgeneフィルタに通して濾過し、得られたウェットケーキを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)を使用して350mlのDI水に再分散させた。2%ポリアクリル酸(平均MWt450,000)リチウム塩溶液、pH4.5(Sigma-Aldrich、ドイツ)136gを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)中で激しく撹拌しながら、再分散した活性化ケイ素ナノ粒子-C65懸濁液に添加した。したがって、配合物3は、未修飾オリゴマー金属配位錯体を使用して、PAAポリマーを有する環境中でケイ素及び炭素活物質と相互作用する配合物を表す。
【0196】
複合粒子前駆体配合物4。
この実施例では、pH2.3の50mM(最終濃度)のオリゴマー金属配位錯体(溶液5-アセテートキャッピング)を使用した。ナノケイ素粉末(10gm)及び導電性カーボンブラックSuper C65(2.6gm)を、600mlの溶液5中で一緒に活性
化した。固体の懸濁液を、より良好な分散のために、Ultrasonic Processor(Henan Chengyi Laboratory Equipment Co.,Ltd、中国)において70%の出力で1時間超音波処理した。次いで、懸濁液を0.2nmのNalgeneフィルタに通して濾過し、得られたウェットケーキを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)を使用して350mLのDI水に再分散させた。2%ポリアクリル酸(平均MWt450,000)リチウム塩溶液、pH4.5(Sigma-Aldrich、ドイツ)136gを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)中で激しく撹拌しながら、再分散した活性化ケイ素ナノ粒子-C65懸濁液に添加した。したがって、配合物4は、本発明の1つの配合物を表し、それによって、2つの活性化ナノ粒子タイプが、PAAポリマーを有する環境において修飾オリゴマー金属配位錯体を用いて形成される。
【0197】
複合前駆体配合物5。
この実施例では、pH2.7の50mM(最終濃度)のオリゴマー金属配位錯体(溶液5-アセテートキャッピング)を使用した。ナノケイ素粉末(10gm)及び導電性カーボンブラックSuper C65(2.6gm)を、600mlの溶液5中で一緒に活性化した。固体の懸濁液を、より良好な分散のために、Ultrasonic Processor(Henan Chengyi Laboratory Equipment Co.,Ltd、中国)において70%の出力で1時間超音波処理した。次いで、懸濁液を0.2nmのNalgeneフィルタに通して濾過し、得られたウェットケーキを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)を使用して700mlのDI水に再分散させた。17.4gの5%水分散液NC7000カーボンナノチューブ(Nanocyl、ベルギー)を、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)において22,000rpmで激しく混合しながら懸濁液に添加した。得られた900mlの懸濁液を2つの450ml部分に分け、各部分を295gの0.5%ポリアクリル酸(平均MWt450,000)リチウム塩溶液、pH4.5(Sigma-Aldrich、ドイツ)と混合して、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)中で激しく撹拌しながら、再分散された活性化ケイ素ナノ粒子-C65懸濁液とした。したがって、配合物5は、2つの活性化ナノ粒子タイプが、配合物4と比較してより低い濃度であるPAAポリマーを有する環境において、修飾オリゴマー金属配位錯体を用いて形成される、本発明の1つの配合物を表す。
【0198】
実施例4:電極用の複合粒子の調製。
A.実施例3で形成された複合前駆体配合物は、複合粒子に形成することができる。
加熱及び蒸発。攪拌下で加熱しながらゆっくりと蒸発させて複合粒子を形成するための多くの方法が存在する。一例では、実施例3からの試料を、水の大部分が蒸発するまで、90℃で6時間、300rpmで撹拌した。カメラユニット(Leica ICC50HD)を備えたLeica DM750を使用する顕微鏡分析により、粒子が超音波処理(Bath sonicator-VWRモデル142-0082、周波数35kHz、出力384ワット)で容易に破壊されることが示された。複合粒子を60℃のオーブン中で一晩乾燥させ、次いで水に戻して再構成した場合、粒子はより安定であった。それでも、溶液5(修飾金属錯体、pH2.4でアセテートキャッピング)を使用して形成された複合粒子は、溶液1(未修飾)から形成されたものよりもはるかに安定であった。加熱及び水の除去により、複合粒子の安定性は増加した。
【0199】
噴霧乾燥:粒子を形成するために、関連する複合前駆体配合物の懸濁液を25,000rpmで15分間撹拌し、実験室用噴霧乾燥機(Buchi-290、スイス)を使用して、以下の設定、すなわち入口温度210℃、ガス流35mm、アスピレータ100%、供給速度50%を使用して噴霧乾燥する。得られた乾燥複合粒子を回収し、電極の製造に使用した。
【0200】
噴霧乾燥した粒子の一部も水に再懸濁し、超音波処理して一般的な安定性を評価した。
図5は、金属錯体を使用して形成された、超音波処理前(1)及び超音波処理後(2)の噴霧乾燥粒子の写真を示しており、Aは溶液1(未修飾)、Bは溶液5(アセテートキャッピング、pH2.4)、Cは溶液7(酢酸クロム、pH4.2)である。超音波処理前、噴霧乾燥粒子は同様に見えるが、45分の超音波処理後、溶液1(複合前駆体配合物3)から形成された噴霧乾燥粒子は破壊され、噴霧乾燥粒子の完全性が不十分であることが示された。対照的に、溶液5(複合前駆体配合物4)から形成された噴霧乾燥粒子及び溶液7(複合前駆体配合物6)から形成された噴霧乾燥粒子は、顕微鏡分析によって同じ条件下で破壊されなかった。
【0201】
SEMデータはまた、未修飾金属錯体を使用して形成された噴霧乾燥粒子と、修飾金属錯体を使用して形成された噴霧乾燥粒子との間に視覚的な違いがないことも示している。
図6は、噴霧乾燥後の複合前駆体配合物3(未修飾金属錯体を使用)から形成された複合粒子の異なる倍率での2つのSEM画像を示している。SEM画像は、後述するように、固体が形成されたことを示すが、それらは本発明の複合粒子ではない。
図9は、(上記のように)噴霧乾燥後の複合前駆体配合物4から形成された複合粒子の、異なる倍率での2つのSEM画像(JEOL 7001Fを使用)を示している。SEM画像は、個別の複合粒子が形成されたことを明確に示している。
【0202】
B.複合粒子を使用してスラリーを調製した。
最初に、MTIから供給された0.7gのカルボキシメチルセルロース(CMC、400,000g/mol)を、剪断ミキサーを使用して35gの水中で水和させ、次いで、1.6gのC65をCMC溶液に添加し、剪断ミキサーで分散させる。これに続いて、実施例3の前駆体複合配合物から形成されたケイ素系複合粒子を添加し、オーバーヘッドミキサー(ディスパーマット(Dispermat))で分散させた。次いで、20gの天然グラファイトを、ディスパーマットを使用して混合し、最後に、MTIから供給される0.4gのスチレンブタジエンゴム(SBR)を混合物に添加し、次の10分間混合する。
【0203】
図7は、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後の
図6の複合粒子(前駆体配合物3の噴霧乾燥によって形成された)を表すSEM画像を示している。
図6の粒子は、
図7において、アノード製造条件下で分解したことが分かる。本質的に、未修飾オリゴマー金属配位錯体を使用して形成された粒子は、水性条件下での混合中に単に分解されるため、存在していた可能性のある任意の離散粒子が破壊される。このデータ、並びに上記の超音波処理実験により、かかる未修飾オリゴマー金属配位錯体を用いた方法では、本明細書で定義されるような高度に相互接続された複合粒子を形成できないことが明確に示される。
【0204】
対照的に、
図10は、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後の
図9の複合粒子(複合粒子前駆体配合物4の噴霧乾燥によって形成された)を表すSEM画像を示している。
図7に示される粒子とは異なり、
図9の粒子は、
図10において、アノード製造条件下で明らかにより安定であり、アノード材料へのそれらの組み込みを可能にすることが分かる。このデータ、並びに上記の超音波処理実験により、修飾オリゴマー金属配位錯体を用いた本発明の方法が、本明細書で定義されるように、安定な高度に相互接続された複合粒子を形成することができ、これが、アノード形成におけるその後の使用に好適であることを明らかに示している。このアプローチとの対比が
図7に示されている。
【0205】
C.電極及びコインセルの製造。
スラリーを上述のように銅箔上にキャストし、次いで、真空下で乾燥させ、カレンダー加工し、コインセルアセンブリ用に切断した。リチウム(Li)金属を対電極として使用
し、炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)/炭酸ジエチル(DEC)(3/5/2体積%)+1重量%炭酸ビニレン(VC)+10重量%炭酸フルオロエチレン(FEC)中の1M LiPF6をコインセルアセンブリ用の電解質として使用した。充電/放電サイクル試験のために、コインセルを0.01C(1C=4,200mAh/g)で2サイクル活性化し、次いで、長期安定性試験のために0.5C(1C=4,200mAh/g)でサイクルした。Cレートは、電極中の活物質(Si粒子、グラファイト)の質量に基づいた。充電/放電試験の電圧範囲は、Liに対して0.005~1.50Vであった。充電/放電試験は、コンピュータによって制御されたNewareマルチチャンネル電池テスターで行った。3つの複製セルを作製し、各条件について試験した。
【0206】
代表的なSEM画像が得られ、
図8は、コインセルアセンブリ及びサイクル後に前駆体配合物3を使用して実施例3で形成された固体の異なる倍率でのSEM画像を示している。したがって、
図8は、
図7に示されるスラリーに組み込まれた
図6の固体の使用の結果を表しており、コインアセンブリに組み込まれ、充電サイクルに曝露されている。
図7で、既に
図6の固体の顕著な分解が示されており、したがって、
図8が、コインセルアセンブリ及びサイクル条件下で粒子が更に分解したことを示すことは驚くべきことではない。本出願人の以前の特許公開に記載されているように、複合前駆体配合物3のスラリーから直接形成された電極は使用に適している可能性があるが、これは、かかる配合物が、その後の電極形成に使用される個別の粒子の形成に適切でないことを明らかに示している。形成された固体は、単に物理的に十分に頑丈ではなく、ナノ粒子、オリゴマー金属配位錯体、及びポリマーの相互接続されたネットワークが形成されていないことを明確に示しているため、電気的性能も最適ではない。
【0207】
図11は、複合粒子前駆体配合物4を使用して実施例3で形成された複合粒子の、コインセルアセンブリ及びサイクル後の異なる倍率でのSEM画像を示している。したがって、
図11は、
図10に示されるスラリーに組み込まれた
図9の複合粒子の使用の結果を表しており、コインアセンブリに組み込まれ、充電サイクルに曝露されている。離散した複合粒子は、
図11において依然として観察可能であり、複合粒子が、コインセルアセンブリ及びサイクル条件下でそれらの構造を維持したことを示している。前駆体配合物4は、キャッピング基を使用して、活性化ナノ粒子の形成及びその後の複合粒子形成のための修飾オリゴマー金属配位錯体を作製した。
図9、10及び11の画像は、これが、スラリー混合、電極形成、コインアセンブリへの組み込み、及び重要なことに実際の充電及び放電サイクルに耐えるほど十分に堅牢な個別の粒子が得られることを示している。したがって、かかる修飾された錯体の使用によって達成される差異は明らかである。
【0208】
達成された異なる実験結果を更に比較するために、
図12は、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後に前駆体配合物1を使用して実施例3で形成された固体のSEM画像を示している。固体は、電極スラリー処理後に既に崩壊し始めており、ナノ粒子とポリマーとの間の架橋剤として未修飾金属錯体(溶液1、pH4.5のキャッピングされていない過塩素酸クロム)を有するアルギネートポリマーから得られた不十分な機械的特性を示している。
【0209】
図13は、比較のために、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後の、複合粒子前駆体配合物2を使用して実施例3で形成された本発明の複合粒子のSEM画像を示している。架橋剤としてキャッピングされたオリゴマー金属配位錯体(溶液5、pH2.3のアセテートでキャッピングされた過塩素酸クロム)を有するアルギネートポリマーから得られた複合粒子は、電極スラリー処理中に機械的に安定なままであることが明らかである。
図12に示される固体間の差異は、
図13の粒子と比較した場合、ナノ粒子とポリマーとの間の架橋剤として作用するそれらの形成におけるキャッピングされたpH調整(修飾)オリゴマー金属配位錯体を使用することであることが理解される。
【0210】
図14は、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後の、複合粒子前駆体配合物4を使用して実施例3で形成された本発明の安定な複合粒子のSEM画像を示している。
【0211】
図15は、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後の、複合粒子前駆体配合物5を使用して実施例3で形成された本発明の複合粒子のSEM画像を示している。架橋剤としてキャッピングされたオリゴマー金属配位錯体(溶液5、pH2.3のアセテートでキャッピングされた過塩素酸クロム)を有するPAAポリマーから得られた複合粒子は、電極スラリー処理中に機械的に安定なままであることが明らかである。
図14と比較して、0.5%のPAAポリマー結合剤を使用し、より多くのカーボンナノチューブが導電助剤として添加された。結果は、安定な複合粒子が形成され得ることを示している。
【0212】
実施例5:多孔質複合前駆体配合物の調製
A.多孔質複合前駆体配合物。
この実施例では、オリゴマー金属配位錯体(pH3.0の溶液5)を、5%水分散カーボンナノチューブ(NC7000、Nanocyl、ベルギー)を含めたことを除いて、実施例3の複合前駆体配合物4と同様のプロセスで使用した。噴霧乾燥粒子の多孔性構造を評価するために、粒子をエポキシ樹脂と混合し、モールドの中で一晩放置した。スタブを研削し、研磨して粒子の断面を明らかにした。断面から、多孔質構造及びケイ素系複合粒子成分の均一な分布が明らかである。
図16は、これらの安定な複合粒子の断面のSEM画像を示している。これらの粒子を使用して、前述のようにスラリーを調製し、銅箔上にキャストした。アノード製造条件下での粒子安定性を確認するSEM画像を
図9~11に示している。
【0213】
B.多孔質複合前駆体配合物6(ポロゲンを使用)。
この実施例では、50mM(最終濃度)のオリゴマー金属配位錯体(pH4.2の溶液7)を使用した。ナノケイ素粉末(10g)及び導電性カーボンブラックSuper C65(2.79g)を、600mlの溶液7中で一緒に活性化した。固体の懸濁液を、より良好な分散のために、Ultrasonic Processor(Henan Chengyi Laboratory Equipment Co.,Ltd、中国)において70%の出力で1時間超音波処理した。次いで、懸濁液を0.2nmのNalgeneフィルタに通して濾過し、得られたウェットケーキを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)を使用して300mlのDI水に再分散させた。16.4gの5重量%水分散液NC7000カーボンナノチューブ(Nanocyl、ベルギー)を、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)において22,000rpmで激しく混合しながら懸濁液に添加し、400mlの懸濁液を得た。懸濁液を49.33gの5.65%ポリアクリル酸(平均MWt450,000)リチウム塩溶液、pH4.5(Sigma-Aldrich、ドイツ)と混合し、300mlに希釈した。水性懸濁液中15%の2-プロパノール(Sigma-Aldrich、ドイツ)120mlを、Shear Mixer(IKA T25、ドイツ)中で激しく撹拌しながら、再分散された活性化ケイ素ナノ粒子-C65懸濁液700mlに添加した。したがって、この配合物6は、修飾オリゴマー金属錯体(溶液7)をイソプロパノール(1つのポロゲン)とともに使用して、複合粒子内の粒子安定性及び細孔形成を評価する、本発明の1つの配合物を表している。圧縮窒素下での噴霧乾燥後、これらの複合粒子に対する水銀ポロシメトリー(AutoPore IV9500 V1.9、Particle and Surface Sciences Pty,Ltd,オーストラリア)は、47%の間隙多孔率及び29%の粒子多孔率を示す。これらの複合粒子に関する更なるデータを以下の表に示す。
【表1】
【0214】
スラリーを調製するために、MTIから供給された0.55gのカルボキシメチルセルロース(CMC、400,000g/mol)を、剪断ミキサーを使用して32gの水中で水和させ、次いで、0.55gのC65をCMC溶液に添加し、剪断ミキサーで分散させた。これに続いて、前駆体複合配合物6(上記)から形成された3.96gのケイ素系複合粒子を添加し、オーバーヘッドミキサー(Dispermat)で分散させた。次いで、16.39gの人工グラファイトを、ディスパーマットを使用して混合し、最後に、MTIから供給された1.1gのスチレンブタジエンゴム(SBR)を混合物に添加し、次の10分間混合した。
【0215】
図17は、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後に修飾オリゴマー金属錯体(溶液7)を使用して形成された安定な複合粒子のSEM画像を示している。イソプロパノールなどのポロゲンの使用は、スラリー調製及び銅箔上へのキャスト後の粒子安定性に影響を及ぼさなかった。
【0216】
実施例6。添加の順序
一例では、オリゴマー金属配位錯体(pH4.00の溶液7、600ml)を使用して、最初にナノケイ素粉末(12.25g)及び導電性カーボンブラックSuper C65(3.41g)を混合し、活性化した。固体の懸濁液を超音波処理し、濾過し、前述のように700mlのDI水中に再分散させ、次いで、20.08gの5重量%水分散液NC7000カーボンナノチューブ(Nanocyl、ベルギー)及び97.4gの3.5%ポリアクリル酸(平均MWt450,000)リチウム塩溶液、pH4.7(Sigma-Aldrich、ドイツ)を添加した。この前駆体配合物を、前述のように(しかし圧縮空気下で)噴霧乾燥した。
【0217】
代替例では、オリゴマー金属配位錯体(pH4.00の溶液7)を最後に添加した。最初に、等量(30.8g)の5重量%水分散NC7000カーボンナノチューブを500mLのDI水に懸濁し、マグネチックStirrer-IKA中で導電性カーボンブラックSuper C65(5.24g)と混合した。149.7gの3.5%ポリアクリル酸(平均450,000mwt)リチウム塩溶液、pH4.7(Sigma-Aldrich、ドイツ)を400mLに希釈し、次いで、Shear Mixer中でナノケイ素粉末(18.8g)と混合した。17.8mlの200mM(最終濃度)のオリゴマー金属配位錯体(pH4.00の溶液7)を添加し、最終懸濁液に混合し、前述のように(圧縮空気下で)噴霧乾燥した。
【0218】
スラリーを形成するために、C65をCMC溶液に添加し、剪断ミキサーで分散させ、
その後、前述のように複合粒子を添加した。次いで、人工グラファイトを混合し、最後にスチレンブタジエンゴム(SBR)(0.75gのCMC(400,000g/mol)、剪断ミキサーを使用して39.55gの水中で水和させ、続いて3.93gの複合粒子を添加し、24.12gの人工グラファイトをディスパーマットを使用して混合し、最後に0.9gのスチレンブタジエンゴムを添加した)を混合した。これらのスラリーを銅箔上にキャストした。
図18(上)は、オリゴマー金属錯体が最初にナノケイ素及びSuper C65と混合される前駆体配合物を使用して形成された複合粒子のSEM画像を示している。
図18(下)は、オリゴマー金属錯体が銅箔上にキャストする前の最後の添加剤である前駆体配合物を使用して形成された複合粒子のSEM画像を示している。両方の粒子は、スラリー調製中に機械的安定性を維持し、同様に機能した。
【0219】
実施例7。電気化学的データ
この実施例では、実施例3の複合前駆体配合物4からの複合粒子を使用した。複合粒子(
図9)を使用してスラリーを調製し、銅箔上にキャストし(
図10)、次いで、コインセルアセンブリのために、カレンダー加工し、真空下で110℃まで切断乾燥した。リチウム(Li)金属を対電極として使用し、炭酸エチレン(EC)/炭酸エチルメチル(EMC)/炭酸ジエチル(DEC)(3/5/2体積%)+1重量%炭酸ビニレン(VC)+10重量%炭酸フルオロエチレン(FEC)中の1M LiPF
6をコインセルアセンブリ用の電解質として使用した。充電/放電サイクル試験のために、コインセルを0.01C(1C=4,200mAh/g)で2サイクル活性化し、次いで、長期安定性試験のために0.5C(1C=4,200mAh/g)でサイクルした。Cレートは、電極中の活物質(Si粒子、グラファイト)の質量に基づいた。充電/放電試験の電圧範囲は、Liに対して0.005~1.50Vであった。充電/放電試験は、コンピュータによって制御されたNewareマルチチャンネル電池テスターで行った。3つの複製セルを作製し、各条件について試験した。
【0220】
作製したハーフコインセルを0.5C(1C=4,200mAh/g)で100サイクル充放電した後の安定性試験の電気化学データの例を
図19に示している。電気化学的サイクルデータは、86%の比較的高い初期CE及び500mAh/gの開始容量を示している。これらのセルは、50サイクル後に安定したサイクル性能を示し、100サイクル後の容量保持率は約84%であった。SEM画像を
図11に示している。
【国際調査報告】