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特表2023-522139三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用
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  • 特表-三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用 図1
  • 特表-三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20230522BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230522BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230522BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230522BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563040
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 CN2021099099
(87)【国際公開番号】W WO2022198804
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202110324659.2
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520416026
【氏名又は名称】広東▲凱▼金新能源科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Guangdong Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 302, Unit 2, Building 29, No.4, Keji 10th Road, Songshanhu Park, Dongguan, Guangdong, 523000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鄭 安華
(72)【発明者】
【氏名】余 徳馨
(72)【発明者】
【氏名】仰 永軍
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA17
5H050CB02
5H050CB11
5H050EA08
5H050FA13
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】 三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、リチウム電池の負極材料分野に関し、特に、三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料に関する。前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料は、三次元多孔質骨格と、充填層と、被覆層と、を備え、前記三次元多孔質骨格が三次元多孔質炭素骨格であり、前記充填層はケイ素粒子と、導電性炭素と、を備え、前記ケイ素粒子を前記導電性炭素内に均一に分散して形成され、前記被覆層が炭素被覆層である。本発明は、長サイクル寿命、低膨張の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料であって、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料は、三次元多孔質骨格と、充填層と、被覆層と、を備え、前記三次元多孔質骨格が三次元多孔質炭素骨格であり、前記充填層はケイ素粒子と、導電性炭素と、を備え、前記ケイ素粒子を前記導電性炭素内に均一に分散して形成され、前記被覆層が炭素被覆層であることを特徴とする、三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料。
【請求項2】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の粒子径D50は、2~40μmであり、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の比表面積は0.5~10m/gの範囲であり、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の空隙率は1~30%の範囲であり、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の孔径は0~50nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料。
【請求項3】
前記三次元多孔質骨格の空隙率は、10~90%の範囲、孔径が10~500nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料。
【請求項4】
前記ケイ素粒子は、ナノケイ素又はナノ二酸化ケイ素のうちの1種或いは2種を含み、前記ナノケイ素の粒径D50が1~100nmの範囲、前記ナノケイ素の結晶粒の大きさが1~40nmの範囲であり、前記ナノケイ素が多結晶ナノケイ素又は非結晶ナノケイ素のうちの1種或いは2種であり、前記ナノ二酸化ケイ素SiOのXは、0~0.8の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料。
【請求項5】
前記炭素被覆層は、少なくとも1つの層で、単層の厚さが0.2~1.0μmの範囲であり、高温熱分解炭素被覆又は気相法炭素被覆或いは液相法炭素被覆のうちの1種であることを特徴とする、請求項1に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料。
【請求項6】
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、
三次元多孔質炭素骨格Mを調製する工程と、
三次元多孔質炭素骨格Mを反応器に入れ、保護雰囲気ガス中に0.5~20L/min範囲の速度で、ケイ素粒子及び導電性炭素を同時又は交互に蒸着して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Aを得る工程(前記同時蒸着又は交互蒸着の温度は、400~1000℃の範囲、前記同時蒸着又は交互蒸着の時間は0.5~20時間の範囲である)と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Aを炭素で被覆して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを高温で焼結して、三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする、三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項7】
前記三次元多孔質炭素骨格Mを調製する工程において、前記三次元多孔質炭素骨格Mの調製方法は、多孔質構造を生成できる有機炭素源を熱分解して三次元多孔質炭素骨格Mを得るか、又は有機炭素源が炭素の熱分解と化学的賦活処理を経て三次元多孔質炭素骨格Mを得、前記化学的賦活処理は賦活剤で炭素材料を賦活して細孔を形成することであることを特徴とする、請求項6に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項8】
前記同時蒸着工程は、有機炭素源とケイ素源を比率Aに従って保護雰囲気ガスと混合した後反応器内に導入して蒸着を行い、前記比率Aは有機炭素源とケイ素源の流量比が10:1~1:1の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項9】
前記交互蒸着工程は、まず比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、次に比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って導電性炭素を蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現し、或いはまず比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って導電性炭素を蒸着し、次に比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現し、前記比率Bのケイ素粒子と保護雰囲気ガスの流量比は1:1~1:20の範囲であり、前記比率Cの有機炭素源と保護雰囲気ガスの流量比が1:1~1:20であることを特徴とする、請求項6に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池における請求項6~9のいずれか一項に記載の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法で得られた三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池の負極材料分野に関し、特に、三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ポータブル電子機器内に幅広く活用され、ポータブル電子機器の小型化の進展及び航空、軍事及び自動車産業における二次電池の需要が益々増大するに伴い、電池の容量とエネルギー密度の大幅な増加が急務となっている。現在市販されている負極材料は、主に黒鉛類材料であるが、理論容量が小さい(372mAh/g)ため、市場の需要に応えることができないでいた。近年、新型の高比容量負極材料であるリチウム貯蔵金属及びその酸化物(例えばSn、Si)とリチウム遷移金属リン化物に注目が集まっている。Siは、高い理論的な比容量(4200mAh/g)を備えるため、黒鉛類材料に代替できる最も可能性のある一つとなっているが、Siベースは充放電時の大きな体積変化(~300%)があり、割れ及び微粉化が発生しやすいため、集電体から剥離することにより、サイクル特性が急激に低下する。
【0003】
従来のケイ素-炭素負極材料は、ナノケイ素、黒鉛及び炭素を用いて造粒して複合材料を得ている。ナノケイ素を均一に分散させることが難しいため、必ずナノケイ素の局所的な凝集を引き起こし、ナノケイ素の凝集場所の炭素含有量が比較的低く、比較的低い炭素含有量では、ナノケイ素サイクル過程中の体積膨張を十分に吸収できず、ナノケイ素の凝集場所で局所膨張が大きくなりすぎて、一部の構造損傷が生じ、材料全体の特性にも影響を及ぼす。したがって、どのようにケイ素-炭素複合材料中のナノケイ素の均一な分散を高め、体積膨張による影響を低減し、サイクル特性を改善するかがリチウムイオン電池におけるケイ素ベース材料の応用にとって重要な意義を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、長サイクル寿命、低膨張の三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では次のような技術的手段を講じた。
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料であって、三次元多孔質骨格と、充填層と、被覆層と、を備え、前記三次元多孔質骨格が三次元多孔質炭素骨格であり、前記充填層はケイ素粒子と、導電性炭素と、を備え、前記ケイ素粒子を前記導電性炭素内に均一に分散して形成され、前記被覆層が炭素被覆層である。
【0006】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の粒子径D50は、2~40μmであり、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の比表面積は0.5~10m/gの範囲であり、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の空隙率は1~30%の範囲であり、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の孔径は0~50nmの範囲である。
【0007】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記三次元多孔質骨格の空隙率は、10~90%の範囲、孔径が10~500nmの範囲である。
【0008】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記ケイ素粒子は、ナノケイ素又はナノ二酸化ケイ素のうちの1種或いは2種を含み、前記ナノケイ素の粒径D50が1~100nmの範囲、前記ナノケイ素の結晶粒の大きさが1~40nmの範囲であり、前記ナノケイ素が多結晶ナノケイ素又は非結晶ナノケイ素のうちの1種或いは2種であり、前記ナノ二酸化ケイ素SiOのXは、0~0.8の範囲である。
【0009】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記炭素被覆層は、少なくとも1つの層で、単層の厚さが0.2~1.0μmの範囲であり、高温熱分解炭素被覆又は気相法炭素被覆或いは液相法炭素被覆のうちの1種である。
【0010】
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、
三次元多孔質炭素骨格Mを調製する工程と、
三次元多孔質炭素骨格Mを反応器に入れ、保護雰囲気ガス中に0.5~20L/min範囲の速度で、ケイ素粒子及び導電性炭素を同時又は交互に蒸着して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Aを得る工程(前記同時蒸着又は交互蒸着の温度は、400~1000℃の範囲、前記同時蒸着又は交互蒸着の時間は0.5~20時間の範囲である)と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Aを炭素で被覆して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを得る工程と、
ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを高温で焼結して、三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料を得る工程と、を含む。
【0011】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記三次元多孔質炭素骨格Mを調製する工程において、前記三次元多孔質炭素骨格Mの調製方法は、多孔質構造を生成できる有機炭素源を熱分解して三次元多孔質炭素骨格Mを得るか、又は有機炭素源が炭素の熱分解と化学的賦活処理を経て三次元多孔質炭素骨格Mを得、前記化学的賦活処理は賦活剤で炭素材料を賦活して細孔を形成することである。
【0012】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記同時蒸着工程は、有機炭素源とケイ素源を比率Aに従って保護雰囲気ガスと混合した後反応器内に導入して蒸着を行い、前記比率Aは有機炭素源とケイ素源の流量比が10:1~1:1の範囲である。
【0013】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記交互蒸着工程は、まず比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、次に比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って導電性炭素を蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現し、或いはまず比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って導電性炭素を蒸着し、次に比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現し、前記比率Bのケイ素粒子と保護雰囲気ガスの流量比は1:1~1:20の範囲であり、前記比率Cの有機炭素源と保護雰囲気ガスの流量比が1:1~1:20である。
【0014】
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の応用であって、上記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法で得られた三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料をリチウムイオン電池に応用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の三次元多孔質骨格で形成された導電性ネットワークは、ケイ素ベース材料の導電性を効果的に向上できるだけでなく、三次元多孔質骨格内の多孔質構造がケイ素粒子の充放電時の体積膨張を効果的に緩和できることで、材料がサイクル過程中の微粉化も効果的に防ぐことができる。充填層内の導電性炭素は、材料の導電性を向上すると共にナノケイ素材料の体積膨張を緩和できるだけでなく、サイクル過程中のケイ素粒子と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らすことができる。最外層の炭素被覆層は、ケイ素粒子と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らし、同時にケイ素ベース材料の導電性を効果的に向上できると共に充放電時の体積膨張による影響を効果的に緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例2に係る三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料のFIB-SEM画像である。
図2】本発明の実施例2に係る三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の初回充放電曲線図である。
図3】本発明の実施例3に係る三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料のXRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施例を参照しつつ本発明の実施例における技術的手段を明確かつ完全に説明する。
【0018】
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料であって、前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料は、三次元多孔質骨格と、充填層と、被覆層と、を備え、前記三次元多孔質骨格が三次元多孔質炭素骨格であり、前記充填層はケイ素粒子と、導電性炭素と、を備え、前記ケイ素粒子を前記導電性炭素内に均一に分散して形成され、前記被覆層が炭素被覆層である。ここでケイ素粒子は、ケイ素源の高温熱分解によって形成され、前記導電性炭素が有機炭素源の高温熱分解によって形成される。
【0019】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の粒子径D50は、2~40μmの範囲、より好ましくは2~20μmの範囲、特に好ましくは2~10μmの範囲である。
【0020】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の比表面積は、0.5~10m/gの範囲、より好ましくは0.5~5m/gの範囲、特に好ましくは0.5~3m/gの範囲である。
【0021】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の空隙率は、1~30%の範囲、より好ましくは1~20%の範囲、特に好ましくは1~10%の範囲である。
【0022】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の孔径は、0~50nmの範囲、より好ましくは0~30nmの範囲、特に好ましくは0~20nmの範囲である。
【0023】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料内の酸素含有量は、0~20%の範囲、より好ましくは0~10%の範囲、特に好ましくは0~5%の範囲である。
【0024】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料内の炭素含有量は、20~90%の範囲、より好ましくは20~60%の範囲、特に好ましくは30~50%の範囲である。
【0025】
前記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料内のケイ素含有量は、5~90%の範囲、より好ましくは20~70%の範囲、特に好ましくは30~60%の範囲である。
【0026】
前記三次元多孔質骨格の空隙率は、10~90%の範囲、より好ましくは20~90%の範囲、特に好ましくは40~90%の範囲であり、孔径が10~500nmの範囲である。
【0027】
前記ケイ素粒子は、ナノケイ素又はナノ二酸化ケイ素のうちの1種或いは2種を含み、前記ナノケイ素の粒径D50が1~100nmの範囲、前記ナノケイ素の結晶粒の大きさが1~40nmの範囲であり、前記ナノケイ素が多結晶ナノケイ素又は非結晶ナノケイ素のうちの1種或いは2種であり、前記ナノ二酸化ケイ素SiOのXは、0~0.8の範囲である。
【0028】
前記炭素被覆層は、少なくとも1つの層で、単層の厚さが0.2~1.0μmの範囲であり、高温熱分解炭素被覆又は気相法炭素被覆或いは液相法炭素被覆のうちの1種である。
【0029】
気相法炭素被覆プロセスは、被覆対象物を反応器に入れ、保護雰囲気ガスを吹き込み、400~1000℃まで1~5℃/分で昇温し、0.5~20.0L/分の吹き込み速度で有機炭素源ガスを吹き込み、0.5~20時間保温し、室温まで自然冷却させることで気相被覆品を得ることを含む。
【0030】
液相法炭素被覆プロセスは、有機物炭素源、被覆対象物を溶媒と高速混合して均一に分散させた後スラリーを形成し、スラリーを噴霧乾燥し、更に熱処理を施すことを含む。
【0031】
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、以下の工程を含む。
三次元多孔質炭素骨格Mを調製する工程
三次元多孔質炭素骨格Mを反応器に入れ、保護雰囲気ガス中に0.5~20L/min範囲の速度で、ケイ素粒子及び導電性炭素を同時又は交互に蒸着して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Aを得る工程(前記同時蒸着又は交互蒸着の温度は、400~1000℃の範囲、前記同時蒸着又は交互蒸着の時間は0.5~20時間の範囲である)
[雰囲気ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガス、アルゴン-水素混合ガスのうちの1種又は複数種であり、反応器は回転炉、CVD炉、PECVD炉、流動床のうちの1種又は複数種である。]
ケイ素-炭素複合材料前駆体Aを炭素で被覆して、ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを得る工程
ケイ素-炭素複合材料前駆体Bを高温で焼結して、三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料を得る工程。
[高温焼結の昇温速度は、1~10℃/分の範囲、保持温度が700~1200℃の範囲、温度保持時間が1~10時間の範囲である。]
【0032】
前記三次元多孔質炭素骨格Mを調製する工程において、前記三次元多孔質炭素骨格Mの調製方法は、多孔質構造を生成できる有機炭素源を熱分解して三次元多孔質炭素骨格Mを得るか、又は有機炭素源が炭素の熱分解と化学的賦活処理を経て三次元多孔質炭素骨格Mを得、前記化学的賦活処理は賦活剤で炭素材料を賦活して細孔を形成することである。三次元多孔質炭素骨格Mの調製における有機炭素源は、スクロース、グルコース、クエン酸、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ピッチ、ポリビニルアルコール、ポリピロール、ポリピロリドン、ポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリドーパミン、リグニン、キチンのうちの1種又は複数種であり、賦活剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化亜鉛、リン酸のうちの1種又は複数種である。
【0033】
前記同時蒸着工程は、有機炭素源とケイ素源を比率Aに従って保護雰囲気ガスと混合した後反応器内に吹き込んで蒸着を行い、前記比率Aは有機炭素源とケイ素源の流量比が10:1~1:1の範囲である。
【0034】
前記交互蒸着工程は、まず比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、次に比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って導電性炭素を蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現し、或いはまず比率Cに従って有機炭素源と保護雰囲気ガスを混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って導電性炭素を蒸着し、次に比率Bに従ってケイ素源と保護雰囲気を混合した後で反応器に吹き込み、5~600秒のガス吹き込みを行って超微細ナノケイ素を蒸着し、電磁弁を介して連続的な交互吹き込みを実現し、前記比率Bのケイ素粒子と保護雰囲気ガスの流量比は1:1~1:20の範囲であり、前記比率Cの有機炭素源と保護雰囲気ガスの流量比が1:1~1:20である。
【0035】
同時蒸着又は交互蒸着工程におけるケイ素源は、シラン、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、メチルクロロシラン、クロロエチルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、メチルジシラン、ジメチルジシラン、トリメチルジシラン、テトラメチルジシラン、ヘキサメチルジシランうちの1種又は複数種である。
【0036】
同時蒸着又は交互蒸着工程における有機炭素源は、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ブテン、塩化ビニル、フッ化ビニル、2フッ化ビニリデン、クロロエタン、フルオロエタン、ジフルオロエタン、クロロメタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、メチルアミン、ホルムアルデヒド、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、フェノールのうちの1種又は複数種である。
【0037】
三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の応用であって、上記三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料の調製方法で得られた三次元多孔質ケイ素-炭素複合材料をリチウムイオン電池に応用する。
【0038】
(実施例1)
1、1000gのリグニンと200gのKOHを均一に混合した後、窒素雰囲気下で焼結処理を施し、昇温速度は、1oC/分の範囲、熱処理温度が1150oC、温度保持時間が5時間であり、冷却後に水洗して不純物を除去し、乾燥させて三次元多孔質炭素骨格を得た。
2、1000gの得られた三次元多孔質炭素骨格をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガス体を吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体2を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体2をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0039】
(実施例2)
1、1000gのリグニンと200gのKOHを均一に混合した後、窒素雰囲気下で焼結処理を施し、昇温速度は、1oC/分の範囲、熱処理温度が1150oC、温度保持時間が5時間であり、冷却後に水洗して不純物を除去し、乾燥させて三次元多孔質炭素骨格を得た。
2、1000gの得られた三次元多孔質炭素骨格をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、1.0L/分の速度でメタンガスを吹き込み、0.2L/分の速度でシランガス体を吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体3を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体3をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0040】
(実施例3)
1、1000gのリグニンと200gのKOHを均一に混合した後、窒素雰囲気下で焼結処理を施し、昇温速度は、1oC/分の範囲、熱処理温度が1150oC、温度保持時間が5時間であり、冷却後に水洗して不純物を除去し、乾燥させて三次元多孔質炭素骨格を得た。
2、1000gの得られた三次元多孔質炭素骨格をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、2.0L/分の速度でメタンガスを吹き込み、0.2L/分の速度でシランガス体を吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体3を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体3をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0041】
(実施例4)
1、1000gのリグニンと200gのKOHを均一に混合した後、窒素雰囲気下で焼結処理を施し、昇温速度は、1oC/分の範囲、熱処理温度が1150oC、温度保持時間が5時間であり、冷却後に水洗して不純物を除去し、乾燥させて三次元多孔質炭素骨格を得た。
2、1000gの得られた三次元多孔質炭素骨格をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、3.0L/分の速度でメタンガスを吹き込み、0.5L/分の速度でシランガス体を吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体3を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体3をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0042】
(実施例5)
1、1000gのリグニンと200gのKOHを均一に混合した後、窒素雰囲気下で焼結処理を施し、昇温速度は、1oC/分の範囲、熱処理温度が1150oC、温度保持時間が5時間であり、冷却後に水洗して不純物を除去し、乾燥させて三次元多孔質炭素骨格を得た。
2、1000gの得られた三次元多孔質炭素骨格をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、4.0L/分の速度でメタンガスを吹き込み、0.2L/分の速度でシランガス体を吹き込み、混合ガス吹き込み時間が8時間で、室温まで自然冷却させることで、前駆体3を得た。
3、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体3をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0043】
<比較例>
1、粒子径D50が3~10μmの範囲のミクロンケイ素と無水エタノールを1:10質量比で均一に混合させ、ボールミル法で粒子径D50=100nmのナノケイ素スラリーを得た。
2、1000gのリグニンと200gのKOHを均一に混合した後、窒素雰囲気下で焼結処理を施し、昇温速度は、1oC/分の範囲、熱処理温度が1150oC、温度保持時間が5時間であり、冷却後に水洗して不純物を除去し、乾燥させて三次元多孔質炭素骨格を得た。
3、ナノケイ素スラリーと三次元多孔質炭素骨格を10:1質量比で均一に混合させた後、噴霧造粒してケイ素-炭素前駆体1を得た。
4、1000gの得られたケイ素-炭素前駆体1をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間が4時間であり、室温まで自然冷却させることで、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0044】
以下は、上記実施例及び比較例の試験を行う。
【0045】
【0046】
以下の方法で材料の体積膨張率を試験及び計算した。調製されたケイ素-炭素複合材料と黒鉛複合で調製された容量500mAh/gの複合材料についてサイクル特性を試験し、膨張率=(50サイクル後のポールピースの厚さ~サイクル前のポールピースの厚さ)/(サイクル前のポールピースの厚さ~銅箔の厚さ)×100%。
【0047】
表1は、比較例と実施例の初回サイクル試験結果を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表2は、サイクルの膨張試験結果を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
図1は、実施例2におけるサンプルのFIB~SEM画像である。図1からも分かる通り、材料内部に微細なナノポアがあり、充放電時の体積膨張を緩和でき、導電性ネットワークが材料の導電性を改善でき、材料のサイクル及びレート特性を向上させることができた。
【0052】
図2は、実施例2におけるサンプルの初回充放電曲線である。図2からサンプルの容量は、1888.6mAh/gで、効率が88.1%であることが分かった。表1~2からも分かる通り、本発明で合成された複合材料の初回可逆容量は、1600mAh/g以上であり、50サイクル後の膨張率が45%未満であり、容量維持率が90%を超えた。
【0053】
図3は、実施例3におけるサンプルのXRDパターンである。サンプル内のケイ素は、アモルファスであり、導電性ネットワーク及び導電性炭素内に分散していた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の三次元多孔質骨格で形成された導電性ネットワークは、ケイ素ベース材料の導電性を効果的に向上できるだけでなく、三次元多孔質骨格内の多孔質構造がケイ素粒子の充放電時の体積膨張を効果的に緩和できることで、材料がサイクル過程中の微粉化も効果的に防ぐことができる。充填層内の導電性炭素は、材料の導電性を向上すると共にナノケイ素材料の体積膨張を緩和できるだけでなく、サイクル過程中のケイ素粒子と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らすことができる。最外層の炭素被覆層は、ケイ素粒子と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らし、同時にケイ素ベース材料の導電性を効果的に向上できると共に充放電時の体積膨張による影響を効果的に緩和できる。
【0055】
以上、本発明を詳細に説明したが、以上の述べるものは本発明の好ましい実施例のみであって、これらによって本発明の保護範囲が限定的に解釈されない。当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変形及び改良が可能であり、かかる変形及び改良は本発明の保護範囲に含めることを指摘しておかなければならない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】