(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】医学的使用のための3つのOspA融合タンパク質を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20230522BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230522BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230522BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230522BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230522BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230522BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230522BHJP
C07K 14/20 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
A61K39/00 Z
A61P37/04 ZNA
A61P31/04
A61K39/39
A61K48/00
A61K47/20
A61K39/00 G
C07K19/00
C07K14/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561414
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021026599
(87)【国際公開番号】W WO2021207615
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515004832
【氏名又は名称】バルネバ オーストリア ゲーエムベーハ―
(71)【出願人】
【識別番号】506181531
【氏名又は名称】ファイザー インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ベザイ ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ホッフライター ロマーナ
(72)【発明者】
【氏名】ランドベルク ウルバン
(72)【発明者】
【氏名】ベーリー スティーブン ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン アナリーサ シビル
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン キャスリン ウテ
(72)【発明者】
【氏名】スコット ダニエル アルフレッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC32
4C076DD55
4C076FF04
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB351
4C084ZB352
4C085AA03
4C085AA38
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4C085GG01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA41
4H045CA11
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
(57)【要約】
本発明は、ワクチンにおける使用のための、またはライム病に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法における使用のための、SEQ ID NO: 1のOspA融合タンパク質(LipS1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2のOspA融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3のOspA融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチンにおける使用のための、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物であって、
前記ワクチンが、
- ヒト成人もしくはヒト小児に少なくとも3回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも3回、用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で
投与されることになる、前記組成物。
【請求項2】
ライム病に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法における使用のための、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物であって、
前記方法が、
- ヒト成人もしくはヒト小児に少なくとも3回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも3回、用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で
前記組成物を投与する工程を含む、前記組成物。
【請求項3】
2回目の投与が、1回目の投与後少なくとも6週から多くても3ヶ月までの期間中であり、かつ/または3回目の投与が、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中である、請求項1または2記載の使用のための組成物。
【請求項4】
2回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも50日から多くても70日までの期間中、特に少なくとも55日から多くても60日までの期間中、とりわけ56日であり;かつ/または3回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも170日から多くても190日までの期間中、少なくとも175日から多くても185日までの期間中、とりわけ180日である、請求項1~3のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記組成物の4回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも15ヶ月から多くても21ヶ月までの期間中、特に少なくとも17ヶ月から多くても19ヶ月までの期間中、とりわけ18ヶ月である、請求項1~4のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項6】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人もしくは小児に対して用量当たり135μg~180μgの範囲内、特に用量当たり135μgもしくは180μgであるか、または3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μg~90μgの範囲内、特に用量当たり67.5μgもしくは90μgである、請求項1~5のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項7】
3つの前記融合タンパク質が、前記組成物中のすべてのタンパク質の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは80%を構成する、請求項1~6のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項8】
1:1:1(Lip-S1D1-S2D1 : Lip-S4D1-S3hybD1 : Lip-S5D1-S6D1)の重量比で前記融合タンパク質を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項9】
アジュバントを含む、請求項1~8のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項10】
アルミニウムアジュバント、好ましくは、低い銅含量を有するアルミニウムアジュバント、好ましくは、1.25 ppb未満の銅を有するアルミニウムアジュバントを含む、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項11】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項12】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項13】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項14】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項15】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項16】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項17】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項18】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後である、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項19】
さらなる投与が、3回目の投与後毎年、特に、1年後、2年後、および3年後である、請求項1~18のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項20】
惹起される前記免疫応答が、殺菌活性を有する抗OspA血清型1、抗OspA血清型2、抗OspA血清型3、抗OspA血清型4、抗OspA血清型5、および/または抗OspA血清型6の抗体応答を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項21】
惹起される前記免疫応答が、ボレリア血清型1、2、3、4、5、および6に対する抗体を含む、請求項1~20のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項22】
ボレリア血清型1、2、3、4、5、および6に対する前記免疫応答が、少なくとも約60日間、少なくとも約180日間、少なくとも約365日間、または少なくとも約540日間持続される、請求項1~21のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項23】
1.25 ppb未満の銅または十分な量のL-メチオニンを含む、請求項1~22のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項24】
銅が、特にCu
+またはCu
2+としての、イオンの形態である、請求項1~23のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項25】
L-メチオニンが少なくとも10 mmol/lの濃度で存在する、請求項1~24のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項26】
L-メチオニンのmol/l単位の濃度が、前記組成物中において銅の濃度と少なくとも等価である、請求項23~25のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項27】
反応性化合物をさらに含み、前記反応性化合物が、酸化還元活性化合物、ラジカル構成化合物(radical building compound)、安定化化合物、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択され、とりわけ、前記反応性化合物が、ホルムアルデヒド、エタノール、クロロホルム、トリクロロエチレン、アセトン、triton-X-100、デオキシコラート、ジエチルピロカルボナート、サルファイト、Na
2S
2O
5、β-プロプリオ-ラクトン(beta-proprio-lacton)、ポリソルベート、例えばTween 20(登録商標)、Tween 80(登録商標)、O
2、フェノール、pluronic型コポリマー、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~26のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項28】
前記ヒト成人が、18歳またはそれ以上、例えば18~65歳の対象である、請求項1~27のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項29】
前記ヒト成人が、50歳またはそれ以上である年配の対象である、請求項1~27のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項30】
前記ヒト小児が、5~17歳、例えば12~17歳または5~11歳の対象である、請求項1~27のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項31】
前記ヒト小児が、0~4歳、例えば1~4歳または2~4歳の対象である、請求項1~27のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項32】
ヒト成人または小児に、0.25ミリリットル(ml)~1.0 ml、例えば0.25 ml、0.3 ml、0.4 ml、0.5 ml、0.6 ml、0.7 ml、0.8 ml、0.9 ml、または1.0 mlの体積で投与される、請求項1~31のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項33】
ヒト成人または小児に、0.25 ml、0.5 ml、または1.0 mlの体積で投与される、請求項1~32のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項34】
ヒトにワクチン接種するための使用のための組成物であって、
前記方法が、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を、
- ヒト成人もしくはヒト小児に少なくとも2回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも2回、用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で
投与する工程を含む、前記組成物。
【請求項35】
ライム病に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための使用のための組成物であって、
前記方法が、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を、
- ヒト成人もしくはヒト小児に少なくとも2回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも2回、用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で
投与する工程を含む、前記組成物。
【請求項36】
2回目の投与が、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中である、請求項34または請求項35記載の使用のための組成物。
【請求項37】
2回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも170日から多くても190日までの期間中、少なくとも175日から多くても185日までの期間中、とりわけ180日である、請求項34~36のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項38】
前記組成物の3回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも15ヶ月から多くても21ヶ月までの期間中、特に少なくとも17ヶ月から多くても19ヶ月までの期間中、とりわけ18ヶ月である、請求項34~37のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項39】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人もしくは小児に対して用量当たり135μg~180μgの範囲内、特に用量当たり135μgもしくは180μgであるか、または3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μg~90μgの範囲内、特に用量当たり67.5μgもしくは90μgである、請求項34~38のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項40】
3つの前記融合タンパク質が、前記組成物中のすべてのタンパク質の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%を構成する、請求項34~39のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項41】
1:1:1(Lip-S1D1-S2D1 : Lip-S4D1-S3hybD1 : Lip-S5D1-S6D1)の重量比で前記融合タンパク質を含む、請求項34~40のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項42】
アジュバントを含む、請求項34~41のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項43】
アルミニウムアジュバントを含む、請求項34~42のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項44】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項45】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項46】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項47】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項48】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項49】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項50】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項51】
3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、請求項34~43のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項52】
さらなる投与が、最後の一次免疫処置の後毎年、または各々のダニ季節の初め、特に、1年後、2年後、および3年後などである、請求項34~51のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項53】
惹起される前記免疫応答が、殺菌活性を有する抗OspA血清型1、抗OspA血清型2、抗OspA血清型3、抗OspA血清型4、抗OspA血清型5、および/または抗OspA血清型6の抗体応答を含む、請求項34~52のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項54】
惹起される前記免疫応答が、OspA血清型1、2、3、4、5、および6を発現するスピロヘータに対して殺菌活性を有する抗体を含む、請求項34~53のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項55】
OspA血清型1、2、3、4、5、および6に対する前記免疫応答が、少なくとも約60日間、少なくとも約180日間、少なくとも約365日間、または少なくとも約540日間持続される、請求項34~54のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項56】
1.25 ppb未満の銅または十分な量のL-メチオニンを含む、請求項34~55のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項57】
銅が、特にCu
+またはCu
2+としての、イオンの形態である、請求項34~56のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項58】
L-メチオニンが少なくとも10 mmol/lの濃度で存在する、請求項34~57のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項59】
L-メチオニンのmol/l単位の濃度が、前記組成物中において銅の濃度と少なくとも等価である、請求項56~58のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項60】
反応性化合物をさらに含み、前記反応性化合物が、酸化還元活性化合物、ラジカル構成化合物、安定化化合物、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択され、とりわけ、前記反応性化合物が、ホルムアルデヒド、エタノール、クロロホルム、トリクロロエチレン、アセトン、triton-X-100、デオキシコラート、ジエチルピロカルボナート、サルファイト、Na
2S
2O
5、β-プロプリオ-ラクトン、ポリソルベート、例えばTween 20(登録商標)、Tween 80(登録商標)、O
2、フェノール、pluronic型コポリマー、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項34~59のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項61】
前記ヒト成人が、18歳またはそれ以上、例えば18~65歳の対象である、請求項34~60のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項62】
前記ヒト成人が、50歳またはそれ以上である年配の対象である、請求項34~60のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項63】
前記ヒト小児が、5~17歳、例えば12~17歳または5~11歳の対象である、請求項34~60のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項64】
前記ヒト小児が、0~4歳、例えば1~4歳または2~4歳の対象である、請求項34~60のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項65】
ヒト成人または小児に、0.25ミリリットル(ml)~1.0 ml、例えば0.25 ml、0.3 ml、0.4 ml、0.5 ml、0.6 ml、0.7 ml、0.8 ml、0.9 ml、または1.0 mlの体積で投与される、請求項34~64のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項66】
ヒト成人または小児に、0.25 ml、0.5 ml、または1.0 mlの体積で投与される、請求項34~65のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ワクチンにおける使用のための、またはライム病に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法における使用のための、SEQ ID NO: 1のOspA融合タンパク質(LipS1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2のOspA融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3のOspA融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ライムボレリア症(Lyme borreliosis)(本明細書において「LB」とも称される)は、ライム病(本明細書において「LD」とも称される)とも呼ばれ、スピロヘータである広義のボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi sensu lato (s.l.))のいくつかの遺伝種によって引き起こされる、ダニが媒介する人畜共通感染症の新興疾患である。これは、欧州および北アメリカにおける最も一般的な媒介動物が媒介する疾患である[Mead P. S., Epidemiology of Lyme Disease, Infect Dis Clin N Am 29 (2015) 187-210(非特許文献1)]。欧州においては、1年当たり65,000~85,000症例が通知されているが、一貫性のない症例報告およびLBが多くの場合に診断されないという事実のために、この数は、間違いなく過小評価である[Rizzoli A, et al. Lyme borreliosis in Europe. Euro Surveill 16. (2011)(非特許文献2);Lindgren E, Jaenson TGT, Organization WHO Europe (2006) Lyme borreliosis in Europe: Influences of climate and climate change, epidemiology, ecology and adaptation measures, http://www.euro.who.int/__data/assets/pdf_file/0006/96819/E89522.pdf、最終評価2016年3月(非特許文献3)]。米国疾病管理予防センター(CDC)は、米国において年間約300,000症例を推定しており、その数は、報告されている症例よりもほぼ10倍高い[Hinckley AF, et al. Lyme disease testing by large commercial laboratories in the United States. Clin Infect Dis. 2014 Sep 1;59(5):676-81. doi: 10.1093/cid/ciu397. Epub 2014 May 30(非特許文献4);Nelson CA, et al. Incidence of Clinician-Diagnosed Lyme Disease, United States, 2005-2010. Emerg Infect Dis. 2015 Sep;21(9):1625-31. doi: 10.3201/eid2109.150417(非特許文献5)]。LBの発生率は、年齢に関して二峰性分布を有する。2つの主な標的集団は、年齢5~14歳の小児および年齢50~64歳の成人である[Rizzoli A, et al. 2011年、上記(非特許文献2);http://www.cdc.gov/lyme/stats/graphs.html、最終評価2016年3月(非特許文献6)]。
【0003】
欧州において、ほとんどのヒト感染症は、6つのOspA血清型(ST)を提示する4つのボレリア遺伝種:B.アフゼリ(B. afzelii)(ST2)、B.ガリニイ(B. garinii)(ST3、ST5、およびST6)、狭義のB.ブルグドルフェリ(B. burgdorferi sensu stricto (s.s.))(ST1)、ならびにB.ババリエンシス(B. bavariensis)(ST4)によって引き起こされる。米国においては、B.ブルグドルフェリs.s.(ST1)が、ほぼ100%の症例において見出される。最近、ボレリア・マヨニイ(Borrelia mayonii)という名称の新しい遺伝種が記載されており、これは、米国の北中西部で単離された少数の臨床検体において見出された[Pritt BS, et al. Identification of a novel pathogenic Borrelia species causing Lyme borreliosis with unusually high spirochaetaemia: a descriptive study, Lancet Infect Dis 2016; 16: 556-64(非特許文献7)]。
【0004】
LDの最も一般的な臨床症状発現は、早期の局在性ボレリア感染症の明確な兆候である、遊走性紅斑(EM)と呼ばれる徐々に拡大する紅斑性皮膚発疹である。EMは、ダニに刺された場所で数日から数週間以内に現れ、多くの場合、疲労、発熱、頭痛、軽度の斜頸、関節痛、または筋肉痛の症状を伴う[Mead et al., 2015、上記(非特許文献1)]。LD症例のおよそ70%~80%において、患者はEMを発症する[Stanek G, et al. Lyme borreliosis, Lancet 2012; 379: 461-73(非特許文献8);Wormser GP, et al, The Clinical Assessment, Treatment, and Prevention of Lyme Disease, Human Granulocytic Anaplasmosis, and Babesiosis: Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America, Clinical Infectious Diseases 2006; 43:1089-134(非特許文献9)]。
【0005】
抗生物質で処置されないかまたは不適切に処置された場合には、感染症は、体の他の部分に広まる可能性があり、神経系(顔面神経麻痺、髄膜炎、脊髄炎、および脳炎)、関節(再発性もしくは持続性の大関節滑膜炎)、または心臓(例えば、伝導異常および心臓炎)に影響を及ぼす重篤な後期症状発現を引き起こす可能性がある。
【0006】
患者の約30%において発症するLBの最も一般的な後期臨床症状発現には、ライム関節炎などの筋骨格症状発現が含まれる。ライム関節炎は、ダニに刺された数ヶ月後に発症する、通常は1つまたは少数の関節、最も一般的には膝における、再発性発作または長期にわたる関節腫脹(滑膜炎)を含む。神経系症状発現には、感染の数週間以内に、顔面神経麻痺を伴う、恐らく両側性の関与(両側性ベル麻痺)を伴う頭蓋神経障害として最も一般的に示される、ライム神経ボレリア症が含まれる。成人において、疾患は典型的に、痛い髄膜神経根神経炎(meningoradiculoneuritis)および顔面神経麻痺として現れる。対照的に、小児は、最も頻繁には、髄膜炎による頭痛、および顔面神経麻痺を発症する。小児において、持続する症状はより短く、転帰はより良好である。LDにおける心臓症状発現は、まれのようであり、ライム心臓炎は通常、感染の2ヶ月以内に、急性間欠性房室心臓ブロックを伴う心筋炎として現れる。欧州において、より重度の皮膚症状発現(例えば、慢性萎縮性肢端皮膚炎(ACA)、ボレリアリンパ球腫)は、後期合併症として播種性感染症に起因し得る[Stanek, et al. 2012、上記(非特許文献8)]。
【0007】
外表面タンパク質A(OspA)は、摂食していないダニに存在する場合にボレリア・ブルグドルフェリs.l.によって発現される主要なタンパク質のうちの1つである。ダニの摂食中に、入ってくる血液は、OspA発現の下方制御のシグナルを送り、スピロヘータを、腸上皮に浸透させ、唾液腺におよびさらに宿主の血液中に移動させる[Schwan TG and Piesman J. Temporal changes in outer surface proteins A and C of the Lyme disease-associated spirochete, Borrelia burgdorferi, during the chain of infection in ticks and mice. J Clin Microbiol 2000,38:382-8(非特許文献10)]。OspAベースのLBワクチンは、ダニの腸内でOspAを発現するスピロヘータに作用する抗体を誘導し、スピロヘータの唾液腺への、およびその後の脊椎動物宿主への伝播を遮断する[de Silva AM and Telford SR 3rd, Brunet LR, Barthold SW, Fikrig E., J Exp Med. 1996, 183(1):271-5(非特許文献11)]。
【0008】
B.ブルグドルフェリs.s.由来のOspA(ST1)を含有する2つのワクチンが、ヒトにおいてLBを予防するのに効果的であることが以前に示されている:LYMErix(SmithKline Beecham)[Steere AC, et al., Lyme Disease Vaccine Study Group, Vaccination against Lyme disease with recombinant Borrelia burgdorferi outer-surface lipoprotein A with adjuvant, N Engl J Med. 1998;339(4):209-15(非特許文献12)]およびImuLyme(Pasteur Merieux Connaught)[Sigal LH, et al., A vaccine consisting of recombinant Borrelia burgdorferi outer-surface protein A to prevent Lyme disease, N Engl J Med. 1998;339(4):216-22(非特許文献13)]。LYMErixは、1998~2002年に、認可を受けて顧客が利用可能であり、2002年に、自発的に市場から撤去された。LYMErixの認可後に、ワクチン中のOspA ST1と、自然に感染した患者のサブセットにおいて抗生物質抵抗性ライム関節炎を誘導すると主張されたhLFA-1(ヒト白血球機能関連抗原-1)との部分的な相同性のために、ライムワクチンと関節反応との間の可能性がある関係が仮定された[Gross DM, et al., Identification of LFA-1 as a candidate autoantigen in treatment-resistant Lyme arthritis, Science. 1998 Jul 31;281(5377):703-6(非特許文献14)]。しかし、仮説は証明できなかった。それどころか、ワクチンの認可後の最初の19ヶ月中に、1,400,000を上回る用量が流通した後、ワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System)(VAERS)に報告された関節愁訴の遡及的研究では、そのような愁訴の異常な数は示されなかった[Lathrop SL, et al., Adverse event reports following vaccination for Lyme disease: December 1998-July 2000, Vaccine 20 (2002) 1603-1608(非特許文献15)]。ワクチンのフェーズIII試験において、一過性関節痛の発生率は、ワクチン接種者において有意ではなく増加したが、関節炎の発生率は、プラセボ群と比較して増加しなかった[Steere, et al., 1998、上記(非特許文献12)]。
【0009】
より最近、Baxterは、同様の多価OspAベースのワクチン候補のフェーズI/II試験を実施し、これは、安全であり、良好な耐容性を示し、かつ非常に免疫原性であることを示している[Wressnigg N, et al.; Safety and immunogenicity of a novel multivalent OspA vaccine against Lyme borreliosis in healthy adults: a double-blind, randomised, dose-escalation phase 1/2 trial, Lancet Infect Dis. 2013 Aug;13(8):680-9(非特許文献16);Wressnigg N, et al., A Novel multivalent OspA vaccine against Lyme borreliosis is safe and immunogenic in an adult population previously infected with Borrelia burgdorferi sensu lato, Clin Vaccine Immunol. 2014 Nov;21(11):1490-9(非特許文献17)]。しかし、このワクチンは現在、さらには開発されていない。現在、いかなるLBワクチンも市場になく、いかなる他のLBワクチン候補も、臨床開発中ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Mead P. S., Epidemiology of Lyme Disease, Infect Dis Clin N Am 29 (2015) 187-210
【非特許文献2】Rizzoli A, et al. Lyme borreliosis in Europe. Euro Surveill 16. (2011)
【非特許文献3】Lindgren E, Jaenson TGT, Organization WHO Europe (2006) Lyme borreliosis in Europe: Influences of climate and climate change, epidemiology, ecology and adaptation measures, http://www.euro.who.int/__data/assets/pdf_file/0006/96819/E89522.pdf、最終評価2016年3月
【非特許文献4】Hinckley AF, et al. Lyme disease testing by large commercial laboratories in the United States. Clin Infect Dis. 2014 Sep 1;59(5):676-81. doi: 10.1093/cid/ciu397. Epub 2014 May 30
【非特許文献5】Nelson CA, et al. Incidence of Clinician-Diagnosed Lyme Disease, United States, 2005-2010. Emerg Infect Dis. 2015 Sep;21(9):1625-31. doi: 10.3201/eid2109.150417
【非特許文献6】http://www.cdc.gov/lyme/stats/graphs.html、最終評価2016年3月
【非特許文献7】Pritt BS, et al. Identification of a novel pathogenic Borrelia species causing Lyme borreliosis with unusually high spirochaetaemia: a descriptive study, Lancet Infect Dis 2016; 16: 556-64
【非特許文献8】Stanek G, et al. Lyme borreliosis, Lancet 2012; 379: 461-73
【非特許文献9】Wormser GP, et al, The Clinical Assessment, Treatment, and Prevention of Lyme Disease, Human Granulocytic Anaplasmosis, and Babesiosis: Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America, Clinical Infectious Diseases 2006; 43:1089-134
【非特許文献10】Schwan TG and Piesman J. Temporal changes in outer surface proteins A and C of the Lyme disease-associated spirochete, Borrelia burgdorferi, during the chain of infection in ticks and mice. J Clin Microbiol 2000,38:382-8
【非特許文献11】de Silva AM and Telford SR 3rd, Brunet LR, Barthold SW, Fikrig E., J Exp Med. 1996, 183(1):271-5
【非特許文献12】Steere AC, et al., Lyme Disease Vaccine Study Group, Vaccination against Lyme disease with recombinant Borrelia burgdorferi outer-surface lipoprotein A with adjuvant, N Engl J Med. 1998;339(4):209-15
【非特許文献13】Sigal LH, et al., A vaccine consisting of recombinant Borrelia burgdorferi outer-surface protein A to prevent Lyme disease, N Engl J Med. 1998;339(4):216-22
【非特許文献14】Gross DM, et al., Identification of LFA-1 as a candidate autoantigen in treatment-resistant Lyme arthritis, Science. 1998 Jul 31;281(5377):703-6
【非特許文献15】Lathrop SL, et al., Adverse event reports following vaccination for Lyme disease: December 1998-July 2000, Vaccine 20 (2002) 1603-1608
【非特許文献16】Wressnigg N, et al.; Safety and immunogenicity of a novel multivalent OspA vaccine against Lyme borreliosis in healthy adults: a double-blind, randomised, dose-escalation phase 1/2 trial, Lancet Infect Dis. 2013 Aug;13(8):680-9
【非特許文献17】Wressnigg N, et al., A Novel multivalent OspA vaccine against Lyme borreliosis is safe and immunogenic in an adult population previously infected with Borrelia burgdorferi sensu lato, Clin Vaccine Immunol. 2014 Nov;21(11):1490-9
【発明の概要】
【0011】
本発明の多価ライムボレリア症ワクチンは、欧州(ST1~ST6)および米国(ST1)に存在する6つの最も一般的なOspA血清型の免疫優性C末端部分を含み、ダニの腸内でボレリアを中和し、その宿主への伝播を遮断するために、抗OspA抗体を誘導するように設計されている。多量体ボレリアワクチンは、5つの臨床的に関連するOspA血清型(ST1、ST2、ST4~ST6)を含む4つのボレリア遺伝種(B.ブルグドルフェリs.s.、B.アフゼリ、B.ババリエンシス、およびB.ガリニイ)に対して、感染したダニまたはインビトロで増殖させたスピロヘータのいずれかを攻撃のために用いるマウスモデルにおいて、非常に防御的であることが示されている。
【0012】
OspAベースのワクチンは、過去にヒトにおいて効果的であることを示している。Valnevaの多価ボレリアワクチンは、欧州および米国に存在する最も一般的なB.ブルグドルフェリs.l.およびOspA血清型での感染症を予防することができた。
【0013】
OspAベースのワクチンは、その作用の機序(体の外側)のために、高いかつ持続される抗体価を必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】インビトロ機能アッセイとして用いた血清殺菌アッセイ(材料および方法を参照されたい)。
【
図2】高用量群から選択された対象における13ヶ月でのブースター(ブースター延長)を含む、試験デザイン(ファースト・イン・ヒューマン(First-in-human)フェーズ1試験)。
【
図3】
図3A~3B。フェーズ1データ:各血清型についての、84日目の免疫原性データ、パー・プロトコル(Per-Protocol)(PP)集団(すなわち、プロトコルに従って正確な用量および正確なタイミングで3回の免疫処置すべてを受けた対象)、
図3A)IgG幾何平均力価(GMT)および
図3B)ベースラインから4倍以上のIgG力価の増加に達した対象のパーセンテージとして定義される、セロコンバージョン率。
【
図4】
図4A~4D。フェーズ1データ:
図4A)d84、
図4B)M13、
図4C)M14、および
図4D)M19での、各血清型についての、IgG GMT値、ブースターPP集団(すなわち、ブースター延長段階に登録され、プロトコルに従って正確なタイミングで正確なブースター用量を受けた対象)。
【
図6A】フェーズ1データ:ELISA力価とSBA力価との比較。
図6A)血清型1(ST1)- SBAにおいてはめったに試験で陽性にならなかった、100 U/mLよりも低いELISA力価を有する試料。合計で、116の有効なSBAデータポイントを収集した。ST1 SBAの定量下限(LLOQ)は20に設定し、陰性試料には10の値を与えた。
【
図6B】フェーズ1データ:ELISA力価とSBA力価との比較。
図6B)ST2 - SBAにおいてはめったに試験で陽性にならなかった、200 U/mLよりも低いELISA力価を有する試料。合計で、48の有効なSBAデータポイントを収集した。ST2 SBAのLLOQは20に設定し、陰性試料には10の値を与えた。
【
図6C】フェーズ1データ:ELISA力価とSBA力価との比較。
図6C)ST3 - SBAにおいてはめったに試験で陽性にならなかった、100 U/mLよりも低いELISA力価を有する試料。合計で、122の有効なSBAデータポイントを収集した。ST3 SBAのLLOQは160に設定し、陰性試料には80の値を与えた。
【
図7】1回目のフェーズ2試験:「導入段階(Run-in phase)」において3つのアジュバント添加ワクチンA用量(90μg、135μg、および180μg)、ならびに「主試験段階(Main Study phase)」 において2つの選択された用量群(135μg、180μg)を調査する、本発明の多価ボレリアワクチンについての(1回目のフェーズ2試験の)試験デザイン。
【
図8】2回目のフェーズ2試験:代替の免疫処置スケジュールを調査する、本発明の多価ボレリアワクチンについての2回目のフェーズ2試験の試験デザイン。
【
図9A】ELISA力価とSBA力価との相関、208日目、プールされた多量体ボレリアワクチン処置群、ベースラインSBA血清反応陽性対象を含まないPP集団。(
図9A)スピアマン相関係数:0.7083、p値:<.0001。
【
図9B】ELISA力価とSBA力価との相関、208日目、プールされた多量体ボレリアワクチン処置群、ベースラインSBA血清反応陽性対象を含まないPP集団。(
図9B)スピアマン相関係数:0.8217、p値:<.0001。
【
図9C】ELISA力価とSBA力価との相関、208日目、プールされた多量体ボレリアワクチン処置群、ベースラインSBA血清反応陽性対象を含まないPP集団。(
図9C)スピアマン相関係数:0.9131、p値:<.0001。
【
図9D】ELISA力価とSBA力価との相関、208日目、プールされた多量体ボレリアワクチン処置群、ベースラインSBA血清反応陽性対象を含まないPP集団。(
図9D)スピアマン相関係数:0.6487、p値:<.0001。
【
図9E】ELISA力価とSBA力価との相関、208日目、プールされた多量体ボレリアワクチン処置群、ベースラインSBA血清反応陽性対象を含まないPP集団。(
図9E)スピアマン相関係数:0.6554、p値:<.0001。
【
図9F】ELISA力価とSBA力価との相関、208日目、プールされた多量体ボレリアワクチン処置群、ベースラインSBA血清反応陽性対象を含まないPP集団。(
図9F)スピアマン相関係数:0.7818、p値:<.0001。
【
図10】血清型ごとのOspA特異的IgGのセロコンバージョン率、D85、PP集団。括弧は、群間の有意な差を表す。135μg処置群と180μg処置群との間には、いかなる有意な差も観察されなかった。
【
図11】血清型ごとのOspA特異的IgGのセロコンバージョン率、D208、PP集団。括弧は、群間の有意な差を表す。135μg処置群と180μg処置群との間には、いかなる有意な差も観察されなかった。
【
図12】ELISAについての逆累積分布曲線 - ST1。時間ごとのOspA特異的IgGに対する対象のパーセンテージ。上のパネル:135μg処置群。下のパネル:180μg処置群。
【
図13】ELISAについての逆累積分布曲線 - ST2。時間ごとのOspA特異的IgGに対する対象のパーセンテージ。上のパネル:135μg処置群。下のパネル:180μg処置群。
【
図14】ELISAについての逆累積分布曲線 - ST3。時間ごとのOspA特異的IgGに対する対象のパーセンテージ。上のパネル:135μg処置群。下のパネル:180μg処置群。
【
図15】ELISAについての逆累積分布曲線 - ST4。時間ごとのOspA特異的IgGに対する対象のパーセンテージ。上のパネル:135μg処置群。下のパネル:180μg処置群。
【
図16】ELISAについての逆累積分布曲線 - ST5。時間ごとのOspA特異的IgGに対する対象のパーセンテージ。上のパネル:135μg処置群。下のパネル:180μg処置群。
【
図17】ELISAについての逆累積分布曲線 - ST6。時間ごとのOspA特異的IgGに対する対象のパーセンテージ。上のパネル:135μg処置群。下のパネル:180μg処置群。
【
図18】
図18A~18B。ELISAによる経時的な血清型ごとのOspA特異的IgG抗体(GMT)、PP集団。
図18A)135μg群;
図18B)180μg群。
【
図19】3つの年齢コホートについて年齢が高いものから低いものにずらした様式で行われる3用量または2用量の一次免疫処置スケジュールを調査する、多価ボレリアワクチンのフェーズ2臨床試験のための対象登録。
【
図20】年齢5~65歳の試験集団における、ワクチンの3用量または2用量の一次免疫処置スケジュール、およびブースター用量を調査する、多価ボレリアワクチンのフェーズ2臨床試験の試験デザイン。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
したがって、第1の局面において、本発明は、ワクチンとしての使用のための、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を提供し、前記ワクチンは、i)ヒト成人に少なくとも3回、用量当たり60~200μg、もしくはより好ましくは用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、またはii)ヒト小児に少なくとも3回、用量当たり60~200μg、もしくは用量当たり120~200μg、もしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、投与されることになる。あるいは、本発明は、ワクチンとしての使用のための、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を提供し、前記ワクチンは、i)ヒト成人に少なくとも2回、用量当たり60~200μg、もしくはより好ましくは用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、またはii)ヒト小児に少なくとも2回、用量当たり60~200μg、もしくは用量当たり120~200μg、もしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、投与されることになる。SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む前記組成物は、本明細書において、互換的に「ワクチンA」または多量体ボレリアワクチン(「MBV」)とも称される。
【0016】
上記の融合タンパク質(時にはヘテロ二量体とも称される)は、ボレリア外表面タンパク質A(OspA)に由来する。OspAは、ボレリアがダニ媒介動物の腸にある場合にのみ、ボレリアによって発現される。したがって、ワクチン接種によって産生されたOspA抗体は、体において感染と戦わないが、ダニが血液を摂食した場合にダニの腸に侵入する。そこで、抗体は、スピロヘータを中和し、ボレリアが脊椎動物宿主に侵入する経路である、ダニの中腸から唾液腺への細菌の移動を遮断する可能性がある。したがって、OspA特異的抗体は、ダニ媒介動物からヒト宿主へのボレリアの伝播を予防する。
【0017】
上記のタンパク質は、ハイブリッドC末端OspA断片を含む脂質付加変異体OspA断片融合タンパク質であり、前記ハイブリッド断片は、B.ガリニイPBr株とは異なるボレリア株のOspAに由来する断片、およびB.ガリニイPBr株由来のOspAの第2の断片から構成される、ボレリアのOspAのC末端ドメインからなり、少なくとも、少なくとも1つのジスルフィド結合の導入によって、対応する野生型配列とは異なる。ジスルフィド結合は、システイン残基が183+/-3位および270+/-3位に挿入される、ジスルフィド結合1型である(さらなる詳細については、WO 2015/104396 A1を参照されたい)。S3hybは、B.バライシアナ(B. valaisiana)のアミノ酸125~176と、B.ガリニイPBr株のアミノ酸177~274との融合物を示す。Lipは、脂質付加を意味し、グリセロールおよび脂肪酸残基のN末端付加を示す。「LN1」ペプチドリンカーは、以下の配列:
を有する、 B.ブルグドルフェリs.s.B31株由来のOspAのN末端半分の2つの別々のループ領域の融合物(aa 65-74およびaa 42-53、D53Sの53位のアミノ酸交換を伴う)である。
【0018】
特に、Lip-S1D1-S2D1は、ジスルフィド結合1型を伴う、OspA血清型1とOspA血清型2との融合タンパク質であり、脂質の付加のためのN末端CSS、LN1リンカー配列、およびN末端脂質付加を含む。OspA血清型1のアミノ酸164~174は、非hLFA-1様配列
によって置き換えられている。配列を、以下のSEQ ID NO: 1として示す。
【0019】
Lip-S4D1-S3hybD1は、ジスルフィド結合1型を伴う、B.バライシアナVS116株のアミノ酸125~176およびB.ガリニイPBr株、血清型3のアミノ酸177~274を含む、OspA血清型4とOspA血清型3との融合タンパク質であり、脂質の付加のためのN末端CSS、LN1リンカー配列、およびN末端脂質付加を含む。配列を、以下のSEQ ID NO: 2として示す。
【0020】
Lip-S5D1-S6D1は、ジスルフィド結合1型、脂質の付加のためのN末端CSS、LN1リンカー配列、およびN末端脂質付加を伴う、両方ともOspA血清型6の融合タンパク質である。配列を、以下のSEQ ID NO: 2として示す。
【0021】
上記の融合タンパク質をコードする核酸配列は、以下の通りである。
【0022】
融合タンパク質およびそれらの産生についてのさらなる情報は、WO 2015/104396 A1から引き出すことができ、そこでは、Lip-S1D1-S2D1、Lip-S4D1-S3hybD1、およびLip-S5D1-S6D1は、それぞれ、SEQ ID NO: 29、27、および33に対応する。
【0023】
上記に詳述したように、融合タンパク質は、脂質部分がグリセロール基と共に「Lip」とも称される、脂質付加タンパク質である。本発明によると、Lipは、グリセロールに付加したC
14-20アルキルおよび/またはC
14-20アルケニルなどの1つ~3つの脂質および本発明のポリペプチドのN末端システインのアミノ基を含み、または好ましくは、Lipは、以下の式(I)
の部分であり、式中、R
1、R
2、またはR
3のうちの1つは、C
14-C
20アルキルまたはアルケニルであり、かつ他の各々は独立して、C
14-C
20アルキルまたはC
14-C
20アルケニルであり、かつXは、式(I)に示されるシステイン残基に付加したアミノ酸配列である。より好ましくは、Lip+ポリペプチドのN末端システインは、N-パルミトイル-S-(2RS)-2,3-ビス-(パルミトイルオキシ)プロピルシステイン(本明細書において「Pam
3Cys」と称される)であり、本発明の前記アミノ酸配列にシステインのカルボニルCを介して接続されている。上記の式(I)において、R
1、R
2、およびR
3は、パルミトイル部分であり、かつXは、システイン残基に付加したアミノ酸配列である。
【0024】
融合タンパク質は、組成物に包含される。組成物は、薬学的に許容され、ヒトへの投与を可能にする。それは任意で、任意の薬学的に許容される担体または賦形剤、例えば緩衝物質、安定剤、またはさらなる有効成分、とりわけ、薬学的組成物および/またはワクチンの製造に関連して公知の成分を含有し得る。組成物は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、L-メチオニン、スクロース、およびポリソルベート-20(Tween-20)を、6.7+/-0.2のpHで含み得る。好ましくは、薬学的組成物はまた、水酸化アルミニウムを、好ましくは0.15%の濃度で含む。また、組成物は、5 mM~50 mMのリン酸ナトリウム、100~200 mMの塩化ナトリウム、5 mM~25 mMのL-メチオニン、2.5%~10%のスクロース、0.01%~0.1%のTween 20、および0.1%~0.2%(w/v)の水酸化アルミニウムを含み得る。より好ましくは、製剤は、10 mMリン酸ナトリウム、150 mM塩化ナトリウム、10 mM L-メチオニン、5%スクロース、0.05% Tween20、および0.15%(w/v)水酸化アルミニウムを、pH 6.7±0.2で含む。好ましい態様において、賦形剤は、L-メチオニンである。
【0025】
いくつかの態様において、融合タンパク質を含む組成物は、約0.25ミリリットル(ml)~約1.0 mlまたはそれ以上、例えば0.25 ml、0.3 ml、0.4 ml、0.5 ml、0.6 ml、0.7 ml、0.8 ml、0.9 ml、または1.0 mlの体積で対象に投与される。1つの態様において、対象に投与される体積は、0.25 ml~1.0 ml、または0.25 ml~0.5 ml、または0.5 ml~1.0 mlの範囲内である。1つの態様において、対象に投与される体積は、約0.25 ml、約0.5 ml、または約1.0 mlである。1つの態様において、対象に投与される体積は、0.25 ml、0.5 ml、または1.0 mlである。1つの態様において、対象に投与される体積は、0.25 mlである。1つの態様において、対象に投与される体積は、0.5 mlである。1つの態様において、対象に投与される体積は、1.0 mlである。好ましい態様において、5歳またはそれ以上(例えば5~17歳、5~11歳、12~17歳、18歳もしくはそれ以上、18~65歳、または50歳もしくはそれ以上)である対象に投与される体積は、0.5 mlまたは1.0 mlである。好ましい態様において、5歳またそれ以上(例えば5~17歳、5~11歳、12~17歳、18歳もしくはそれ以上、18~65歳、または50歳もしくはそれ以上)である対象に投与される体積は、1.0 mlである。さらに好ましい態様において、5歳またはそれ以上(例えば5~17歳、5~11歳、12~17歳、18歳もしくはそれ以上、18~65歳、または50歳もしくはそれ以上)である対象に投与される体積は、0.5 mlである。さらに好ましい態様において、0~4歳(例えば1~4歳または2~4歳)である対象に投与される体積は、0.25 mlである。
【0026】
本発明によると、組成物は、特に、ボレリア種、より好ましくは、B.ブルグドルフェリs.s.、B.アフゼリ、B.ババリエンシス、およびB.ガリニイをより好ましくは含む、本明細書に開示されるような病原性ボレリア種、ならびに/または抗原がワクチンに含まれている他の病原体によって引き起こされる感染症に対する、ワクチンとして使用される。好ましくは、ボレリア種は、B.ブルグドルフェリs.s.、B.ガリニイ、B.アフゼリ、B.アンデルソニ(B. andersoni)、B.ババリエンシス、B.ビセッティ(B. bissettii)、B.バライシアナ、B.ルシタニアエ(B. lusitaniae)、B.スピエルマニイ(B. spielmanii)、B.ジャポニカ(B. japonica)、B.タヌキイ(B. tanukii)、B.ツルディ(B. turdi)、またはB.シニカ(B. sinica)の感染、好ましくは、B.ブルグドルフェリs.s.、B.アフゼリ、およびB.ガリニイから選択される。
【0027】
特定の投与スケジュールが、特にすべてのボレリアOspA血清型に対して持続される防御効果を得る際に有利であることが、見出されている。これは、最小の投与数および用量範囲に関する。それによると、ワクチンは、ヒト成人に少なくとも3回、用量当たり60~200μg、もしくはより好ましくは用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、またはヒト小児に少なくとも3回、用量当たり60~200μg、もしくは用量当たり120~200μg、もしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、投与されることになる。いくつかの態様において、ワクチンは、ヒト成人に少なくとも2回、用量当たり60~200μg、もしくはより好ましくは用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、またはヒト小児に少なくとも2回、用量当たり60~200μg、もしくは用量当たり120~200μg、もしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、投与されることになる。
【0028】
最初のデータは、本発明のワクチン、例えば、用量当たり135μgおよび180μgの総タンパク質含量の融合タンパク質の用量でのワクチンAが、90μgの用量よりも有効であったことを実証する(実施例2を参照されたい)。したがって、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量は、ヒト成人に対して用量当たり120~200μgの範囲内である(成人用量)。小児に対しては、上記用量の半分、すなわち60~100μg(半用量)が適用され得るが、成人用量、すなわち120~200μg(成人用量)もまた適切であり得る。半用量を投与する状況において、ヒト小児は、典型的には、誕生から年齢4歳まで(0~4歳)、1~4歳、または2~4歳の幼い小児である。青年(年齢12~17歳)を含む、より高齢の小児(年齢5~17歳)は、成人の用量を受ける。
【0029】
ヒトの体の外側で起こるこのワクチンの作用の特別な様式を考慮すると、ダニの季節を通して常に比較的高い抗体価の必要が、最も重要である。加えて、ボレリアがダニの中腸にあり、抗体後に何とかしてヒト宿主に侵入しない限り、OspAはボレリアの表面にのみ存在するため、自然感染時に存在するOspA特異的抗体に対するいかなる天然のブースト効果も、期待することができない。したがって、高い抗体価が必要とされ、組成物は、少なくとも3回、または代替的に2回投与されることになる。これに従って、組成物は、2回、3回、4回、5回、またはさらにより何度も投与され得る。
【0030】
最初の一次免疫処置は、本明細書において、0-2-6ヶ月免疫処置シリーズと称される。さらなる投与は、ワクチンへの再曝露のためのブースター用量であり、典型的には、一次免疫処置の3回目の免疫処置後、12ヶ月ごとに適用される(すなわち、18ヶ月目に1回目のブースター)。あるいは、最初の一次免疫処置は、本明細書において、0-6ヶ月免疫処置シリーズと称される。さらなる投与は、ワクチンへの再曝露のためのブースター用量であり、典型的には、一次免疫処置の2回目の免疫処置後、12ヶ月ごとに適用される(すなわち、18ヶ月目に1回目のブースター)。ブースター用量は、力価が時間を経て低下した後、免疫を増加させて防御レベルまで戻す(実施例1を参照されたい)。本発明による組成物の場合、防御を付与するのに必要とされる高いOspA抗体レベルを持続するために、ブースターが必要とされることが示されている。
【0031】
ブースター用量は、典型的には、12ヶ月ごとに適用されるが、ブースター用量は、一次免疫処置の最終用量の後、9~15ヶ月などの、12ヶ月のタイミングの数ヶ月以内に(例えば、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、もしくは15 ヶ月で)、またはその後のブースター用量の後(例えば、1回目もしくはその後のブースター用量の9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、もしくは15ヶ月後に)投与することができる。
【0032】
本発明による組成物は、注射可能な組成物として、例えば、好ましくは等張の、滅菌水性分散液として、ヒトに投与され得る。組成物は、全身経路または粘膜経路を介して投与され得る。これらの投与には、筋肉内、腹腔内、皮内、もしくは皮下経路を介した;または口腔/消化管、呼吸器、もしくは尿生殖器管への粘膜投与を介した、注射が含まれ得る。本発明のワクチンは、3つの融合タンパク質の組み合わせとして投与され得るが、その構成要素(すなわち、個々の融合タンパク質)はまた、別々に同時にもしくは連続的に、または単に1つの構成要素のワクチン(すなわち、単にLip-S1D1-S2D1)として、投与され得る。
【0033】
第2の局面において、本発明は、ライムボレリア症に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法における使用のための、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を提供し、前記方法は、ヒトに組成物を、少なくとも3回、ヒト成人もしくは小児に対して用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、またはヒト小児(特に、0~4歳、1~4歳、もしくは2~4歳の幼い小児)の場合には、例えば、少なくとも3回、用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量でなど、用量の半分のみを、投与する工程を含む。あるいは、本発明は、ライムボレリア症に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法における使用のための、SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を提供し、前記方法は、ヒトに組成物を、少なくとも2回、ヒト成人もしくは小児に対して用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量で、またはヒト小児(特に、0~4歳、1~4歳、もしくは2~4歳の幼い小児)の場合には、例えば、少なくとも2回、用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量でなど、用量の半分のみを、投与する工程を含む。
【0034】
本発明の第1の局面に関してなされた上記の定義およびコメントはまた、本発明の第2の局面にも適用される。
【0035】
第2の局面において、組成物は、ボレリア種、より好ましくは、B.ブルグドルフェリs.s.、B.アフゼリ、B.ババリエンシス、およびB.ガリニイをより好ましくは含む、本明細書に開示されるような病原性ボレリア種、ならびに/または抗原が組成物に含まれている他の病原体によって引き起こされるライム病に対して、ヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法において使用される。好ましくは、組成物は、B.ブルグドルフェリs.s.、B.ガリニイ、B.アフゼリ、B.アンデルソニ、B.ババリエンシス、B.ビセッティ、B.バライシアナ、B.ルシタニアエ、B.スピエルマニイ、B.ジャポニカ、B.タヌキイ、B.ツルディ、またはB.シニカの感染、好ましくは、B.ブルグドルフェリs.s.、B.アフゼリ、および/またはB.ガリニイに対する免疫応答を惹起する方法における使用のためのものである。
【0036】
ライムボレリア症、またはライム病は、欧州および北アメリカにおいて最も一般的に報告されているダニが媒介する疾患である。この疾患は、節足動物が媒介するグラム陰性様スピロヘータである、広義のボレリア・ブルグドルフェリ(B.ブルグドルフェリs.l.)での感染によって引き起こされ、複数の臓器または組織に関与し、皮膚障害、心臓障害、筋骨格障害、および神経障害を結果としてもたらす可能性がある。ほとんどの国において、ライムボレリア症は、届出疾患ではない;したがって、年間発生率に関する正確なデータは、入手可能ではない。米国において、原因物質は、狭義のB.ブルグドルフェリ(B.ブルグドルフェリs.s.)であり、ライムボレリア症は、北東部、中部大西洋岸、北中部北部の州に局在している。2010年には、合計で約30,000症例のライムボレリア症が、米国の疾病管理予防センター(CDC)に報告された。他の情報源からの診断データを考慮した、2013年のCDCによる最新の報告では、米国における1年当たりの新たな症例の実際の数は、300,000により近いと推定されている(http://www.cdc.gov/media/releases/2013/p0819-lyme-disease.html)。欧州においては、B.アフゼリおよびB.ガリニイ、ならびに地理的位置に応じてより少ない程度に貢献するB.ブルグドルフェリs.s.およびB.ババリエンシスが、ライムボレリア症の主な原因物質である。ライムボレリア症の有病率は、異なる欧州の国においてかなり変動し、西から東へ、全体的に有病率が増加している。欧州の大部分において、報告されるライムボレリア症の症例の数は、1990年代初頭から増加しており(例えば、チェコ共和国、エストニア、リトアニア;Lyme borreliosis in Europe、2006年のWHO報告を参照されたい)、症例の地理的分布もまた拡大している。
【0037】
上記に詳述したように、一次免疫処置後およびブースター用量後の高い抗体価が、高いOspA抗体レベルを持続するために必要とされる。特に、広い一次免疫処置スケジュール(例えば、0-2-6ヶ月)が、本発明の状況において適していると見出されている(実施例3を参照されたい)。あるいは、2用量の一次免疫処置スケジュール(例えば、0-6ヶ月)が使用されてもよい。
【0038】
したがって、本発明による使用のための上記組成物は、好ましくは、2回目の投与が、1回目の投与後少なくとも4~6週から多くても3ヶ月までの期間中であり、かつ/または3回目の投与が、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中であることを特徴とする。これによると、1回目の投与は、時点ゼロ(1日目)に行われ、2回目の投与は、その後少なくとも6週から多くても3ヶ月までの期間中であり、かつ3回目の投与は、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中である。さらなるブースターは、3回目のワクチン投与後(すなわち、6ヶ月目の免疫処置後)毎年、例えば、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月などであり得る。あるいは、2回目の投与は、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中である。これによると、1回目の投与は、時点ゼロ(1日目)に行われ、2回目の投与は、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中である。さらなるブースターは、2回目のワクチン投与後(すなわち、6ヶ月目の免疫処置後)毎年、例えば、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月などであり得る。したがって、本発明による使用のための組成物は、好ましくは、さらなる投与が、3回目の投与(または代替的に、0-6ヶ月の2用量一次免疫処置スケジュールにおける2回目の投与)後毎年、特に、1年後、2年後、および3年後などであることを特徴とする。前記ブースター用量は、概して、ダニの季節の前に、すなわち、北半球においては2月~6月頃に、および南半球においては9月~12月頃に投与され得る。
【0039】
より好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、2回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも40日から多くても80日までの期間中、特に少なくとも50日から多くても70日までの期間中、より特に少なくとも50日から多くても60日までの期間中、とりわけ56日であることを特徴とする。
【0040】
また、より好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、3回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも120日から多くても240日までの期間中、少なくとも175日から多くても185日までの期間中、とりわけ180日であることを特徴とする。あるいは、本発明による使用のための上記組成物は、2回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも120日から多くても240日までの期間中、少なくとも175日から多くても185日までの期間中、とりわけ180日であることを特徴とする。
【0041】
場合によっては、1つまたは複数のさらなる投与が、必要とされるかまたは望ましいことがある。これによると、組成物の4回目の投与(または代替的に、0-6ヶ月の2用量一次免疫処置スケジュールにおける3回目の投与)は、1回目の投与後、少なくとも15ヶ月から多くても21ヶ月までの期間中、特に少なくとも17ヶ月から多くても19ヶ月までの期間中、とりわけ18ヶ月であり得る。
【0042】
好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、ヒト成人(年齢18~65歳を含む、年齢18歳またはそれ以上)に対して、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、用量当たり135μg~180μgの範囲内、特に用量当たり135μgまたは180μgであることを特徴とする。135μgおよび180μgの総タンパク質含量の3つの前記融合タンパク質の用量は、すべてのボレリアOspA血清型に対して持続的な防御効果をもたらすのに特に適している(実施例2および3を参照されたい)。したがって、効果は、用量当たり135μg~180μgの、3つの前記ヘテロ二量体の総タンパク質含量の完全な範囲にわたって存在すると、結論付けることができる。上記に詳述したように、幼い小児(誕生~4歳)に対しては、用量の半分が適用され得る(が、完全用量がまた適している場合もある)。したがって、ヒト小児(特に、誕生~4歳、例えば、1~4歳または2~4歳の幼い小児)に対して、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量は、用量当たり67.5μg~90μgの範囲内、特に用量当たり67.5μgまたは90μgである。青年(年齢12~17歳)を含む、より高齢の小児(年齢5~17歳)に対しては、用量当たり135μg~180μgの総タンパク質含量の3つの前記ヘテロ二量体の完全用量を、使用することができる。
【0043】
好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、3つの融合タンパク質が、組成物中のすべてのタンパク質の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは80%を構成することを特徴とする。本発明による使用のための組成物はまた、SEQ ID NO: 1、2、および3の融合タンパク質とは異なるさらなるタンパク質も包含し得ることが、当業者に明らかである。しかし、融合タンパク質の比は、重量に基づいて、上記の限界よりも下であるべきではない。他のタンパク質は、例えば、組成物を安定化する際に、機能を有していてもよいか、または不純物であってもよい。
【0044】
1つの態様において、薬学的組成物は、1:2:1、1:3:1、1:1:2、1:1:3、1:2:2、1:2:3、1:3:2、1:3:3、2:1:1、2:1:2、2:1:3、2:2:3、2:2:1、2:3:1、2:3:2、2:3:3、3:1:1、3:1:2、3:1:3、3:2:1、3:2:2、3:2:3、3:3:1、または3:3:2の重量比で3つの融合タンパク質、好ましくは、Lip-S1D1-S2D1(SEQ ID NO: 1)、Lip-S4D1-S3hybD1(SEQ ID NO: 2)、およびLip-S5D1-S6D1(SEQ ID NO: 3)を含む。好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、組成物が、1:1:1(Lip-S1D1-S2D1 : Lip-S4D1-S3hybD1 : Lip-S5D1-S6D1)の重量比で融合タンパク質を含むことを特徴とする。
【0045】
好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、組成物が、アジュバント、より好ましくはアルミニウムアジュバントを含むことを特徴とする。
【0046】
本発明のプロセスを用いてなされる、細菌タンパク質と混合される適しているアジュバントの選択は、当業者の知識内である。適しているアジュバントには、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩が含まれるが、また、カルシウム、マグネシウム、鉄、または亜鉛のものなどの他の金属塩であってもよいか、または、アシル化チロシン、またはアシル化糖、カチオン的にもしくはアニオン的に誘導体化された糖類、またはポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。好ましい態様において、組成物は、水酸化アルミニウムなどのアルミニウムアジュバントがアジュバントとして添加される。さらに好ましい態様において、アルミニウムアジュバントに関連する銅の量は、ワクチン組成物において1.25 ppb未満である。
【0047】
最も好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト対象、特に成人もしくは小児に対して用量当たり135μgであるか、または、ヒト小児(特に、誕生~4歳、1~4歳、もしくは2~4歳の幼い小児)に対して用量当たり67.5μgのみであってもよく、2回目の投与が、1回目の投与の56日(2ヶ月)後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日(6ヶ月)後であり、かつ任意の4回目の投与(1回目のブースター用量)が、1回目の投与の18ヶ月後であることを特徴とする。
【0048】
また最も好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト対象、特に成人もしくは小児に対して用量当たり180μgであるか、または、ヒト小児(特に、誕生~4歳、1~4歳、もしくは2~4歳の幼い小児)に対して用量当たり90μgであってもよく、2回目の投与が、1回目の投与の56日(2ヶ月)後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日(6ヶ月)後であり、かつ任意の4回目の投与(1回目のブースター用量)が、1回目の投与の18ヶ月後であることを特徴とする。
【0049】
あるいは、本発明による使用のための上記組成物は、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト対象、特に成人もしくは小児に対して用量当たり135μgであるか、または、ヒト小児(特に、誕生~4歳、1~4歳、もしくは2~4歳の幼い小児)に対して用量当たり67.5μgのみであってもよく、2回目の投与が、1回目の投与の180日(6ヶ月)後であり、かつ任意の3回目の投与(1回目のブースター用量)が、1回目の投与の18ヶ月後であることを特徴とする。
【0050】
またあるいは、本発明による使用のための上記組成物は、3つの前記融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト対象、特に成人もしくは小児に対して用量当たり180μgであるか、または、ヒト小児(特に、誕生~4歳、1~4歳、もしくは2~4歳の幼い小児)に対して用量当たり90μgのみであってもよく、2回目の投与が、1回目の投与の180日(6ヶ月)後であり、かつ任意の3回目の投与(1回目のブースター用量)が、1回目の投与の18ヶ月後であることを特徴とする。
【0051】
好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、惹起される免疫応答が、殺菌活性を有する抗OspA血清型1、抗OspA血清型2、抗OspA血清型3、抗OspA血清型、抗OspA血清型5、および/または抗OspA血清型6の抗体応答を含むことを特徴とする。
【0052】
好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、惹起される免疫応答が、OspA血清型1、2、3、4、5、および6を発現するスピロヘータに対して殺菌活性を有する抗体を含むことを特徴とする。
【0053】
好ましくは、本発明による使用のための上記組成物は、OspA血清型1、2、3、4、5、および6に対する免疫応答が、少なくとも約60日間、少なくとも約180日間、少なくとも約365日間、または少なくとも約540日間持続されることを特徴とする。持続される免疫応答は、実施例2に記載されるように試験され得る。
【0054】
1つの態様において、本発明の組成物またはワクチンは、少なくとも1つの追加の抗原をさらに含む(本明細書において、総称して「混合ワクチン」と称される)。好ましい態様において、少なくとも1つの追加の抗原は、ライムボレリア症を引き起こすボレリア種に由来する。様々な局面において、少なくとも1つの追加の抗原は、別の病原体、好ましくはダニが媒介する病原体に由来する。さらなる局面において、病原体は、ロッキー山紅斑熱、ヒト顆粒球性エーリキア症(HGE)、腺熱(Sennetsu Fever)、ヒト単球性エーリキア症(HME)、アナプラズマ症、ブトヌーズ熱、リケッチア・パルケリ(Rickettsia parkeri)リケッチア症、南部ダニ関連発疹症(Southern Tick-Associated Rash Illness)(STARI)、ヘルベチカ紅斑熱(Helvetica Spotted fever)、364Dリケッチア症、アフリカ紅斑熱、回帰熱、野兎病、コロラドダニ熱、ダニ媒介性脳炎(TBE;FSMEとしても知られる)、クリミア・コンゴ出血熱、Q熱、オムスク出血熱、キャサヌール森林病、ポワッサン脳炎、ハートランドウイルス病、またはバベシア症を引き起こす。さらなる局面において、疾患は日本脳炎である。さらなる態様において、少なくとも1つの追加の抗原は、媒介動物が媒介する、好ましくはダニが媒介する、ボレリア・ヘルムシイ(Borrelia hermsii)、ボレリア・パルケリ(Borrelia parkeri)、ボレリア・デュットーニ(Borrelia duttoni)、ボレリア・ミヤモトイ(Borrelia miyamotoi)、ボレリア・ツリカタエ(Borrelia turicatae)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、リケッチア・オーストラリス(Rickettsia australis)、リケッチア・コノリ(Rickettsia conori)、リケッチア・ヘルベチカ(Rickettsia helvetica)、野兎病菌(Francisella tularensis)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)、エーリキア・センネツ(Ehrlichia sennetsu)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、ネオエーリキア・ミクレンシス(Neoehrlichia mikurensis)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、およびボレリア・ロネスタリ(Borrelia lonestari)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV、別名はFSMEウイルス)、コロラドダニ熱ウイルス(CTFV)、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)、オムスク出血熱ウイルス(OHFV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ならびにバベシア属(Babesia)の種を含む群から選択される病原体に由来する。
【0055】
1つの態様において、本発明による使用のための組成物は、より若い対象におけるものと同様の免疫原性プロファイルを有する、年配の対象における使用を提供し、前記ヒト成人は、50歳よりも高齢である年配の対象である。本発明は、驚くべきことに、より高齢の成人(年齢群50~65歳)が、より若い成人(年齢群18~49歳)と比較して、統計的に有意な差がなく、同様の免疫応答を示したことを提供する。実験部分を参照されたい。
【0056】
1つの態様において、本発明による使用のための組成物は、1.25 ppb未満の銅または十分な量のL-メチオニンを含む。アルミニウムは、ワクチン接種においてしばしば用いられるアジュバントである。アルミニウムアジュバントは、典型的には、不純物、特に、銅、ニッケル、および鉄などの重金属を含む。これらの、特に銅の存在は、ワクチンにおけるOspAタンパク質の生物学的利用能を低くする。理論に束縛されることなく、OspAタンパク質は、アルミニウムおよび重金属、特に銅に結合し、放出を阻止し、したがって、ワクチンにおけるOspAタンパク質の生物学的利用能を減少させることが想定される。したがって、組成物、および特にアルミニウムアジュバントは、1.25 ppb未満の銅を含む。単位ppb(百万分率)は、多くの場合、不純物を定量するために質量分析の分野で用いられる。水溶液の場合、1 ppbは、1 ngの物質(不純物)が1 gの溶液中に存在することを意味し、これは、1 ppbが1μg/lに等しい(1リットルの溶液が1 kgの重量を有すると想定する)ことを意味する。典型的には、銅は、特にCu+またはCu2+としての、イオンの形態である。好ましい態様において、組成物は、水性組成物の重量に基づいて、1.00 ppb未満、0.75 ppb未満、または0.50 ppb未満の銅を含む。L-メチオニンは、銅に結合できることが知られている。必要とされるL-メチオニンの量は、明らかに、組成物中の銅の量に依存するであろう。当業者は、L-メチオニンの適している量を選択することができるであろう。L-メチオニンは、本発明における使用のための組成物において、過剰な銅と複合体形成するために用いられ得る。組成物中のL-メチオニンの典型的な適している濃度は、少なくとも10 mmol/lである。組成物中の銅の量に応じて、濃度は、さらに高い、例えば少なくとも20 mmol/l、少なくとも30 mmol/l、少なくとも40 mmol/l、もしくは少なくとも50 mmol/lであってもよいか、または、より低い、例えば多くても10 mmol/l、多くても5 mmol/l、もしくは多くても1 mmol/lであってもよい。あるいは、L-メチオニンの濃度は、組成物中の銅の濃度に基づいて決定される。特に、L-メチオニンのmol/l単位の濃度は、組成物中において銅の濃度と少なくとも等価である。あるいは、L-メチオニンのmol/l単位の濃度は、組成物中において銅の濃度の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、またはさらに10倍である。
【0057】
1つの態様において、使用のための組成物は、反応性化合物をさらに含み、前記反応性化合物は、酸化還元活性化合物、ラジカル構成化合物(radical building compound)、安定化化合物、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択される。理論に束縛されることなく、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩中に存在する重金属イオンを含む水性組成物におけるタンパク質ワクチンの抗原分解は、例えば、サルファイトのフリーラジカルなどのフリーラジカルを想定する、根底にある分解経路で説明され得る。重金属により触媒される酸化は、タンパク質の共有結合性修飾を結果としてもたらす分解経路である。酸化/修飾されたタンパク質または抗原の修飾された物理化学的特性は、生物学的活性の喪失を結果としてもたらし得る。酸化還元活性化合物は、この修飾を阻止するのに適している。好ましくは、反応性化合物は、ホルムアルデヒド、エタノール、クロロホルム、トリクロロエチレン、アセトン、triton-X-100、デオキシコラート、ジエチルピロカルボナート、サルファイト、Na2S2O5、β-プロプリオ-ラクトン(beta-proprio-lacton)、ポリソルベート、例えばTween 20(登録商標)、Tween 80(登録商標)、O2、フェノール、pluronic型コポリマー、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0058】
本発明のさらなる態様は、以下の通りである。
1. ヒトにワクチン接種するための方法であって、
SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を、
- ヒト成人に少なくとも3回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも3回、用量当たり120~200μg、もしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で
投与する工程を含む、方法。
2. ライム病に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法であって、
SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を、
- ヒト成人に少なくとも3回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも3回、用量当たり120~200μg、もしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で
投与する工程を含む、方法。
3. 2回目の投与が、1回目の投与後少なくとも6週から多くても3ヶ月までの期間中であり、かつ/または3回目の投与が、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中である、態様1または態様2の方法。
4. 2回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも50日から多くても70日までの期間中、特に少なくとも55日から多くても60日までの期間中、とりわけ56日であり;かつ/または3回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも170日から多くても190日までの期間中、少なくとも175日から多くても185日までの期間中、とりわけ180日である、態様1~3のいずれかの方法。
5. 組成物の4回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも15ヶ月から多くても21ヶ月までの期間中、特に少なくとも17ヶ月から多くても19ヶ月までの期間中、とりわけ18ヶ月である、態様1~4のいずれかの方法。
6. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人もしくは小児に対して用量当たり135μg~180μgの範囲内、特に用量当たり135μgもしくは180μgであるか、または3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μg~90μgの範囲内、特に用量当たり67.5μgもしくは90μgである、態様1~5のいずれかの方法。
7. 3つの融合タンパク質が、組成物中のすべてのタンパク質の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは80%を構成する、態様1~6のいずれかの方法。
8. 組成物が、1:1:1(Lip-S1D1-S2D1 : Lip-S4D1-S3hybD1 : Lip-S5D1-S6D1)の重量比で融合タンパク質を含む、態様1~7のいずれかの方法。
9. 組成物がアジュバントを含む、態様1~8のいずれかの方法。
10. 組成物がアルミニウムアジュバントを含む、態様1~9のいずれかの方法。
11. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
12. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
13. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
14. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の56日後であり、3回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
15. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
16. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
17. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
18. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の2ヶ月後であり、3回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の4回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様1~10のいずれかの方法。
19. さらなる投与が、最後の一次免疫処置の後毎年、または各々のダニ季節の初め、特に、1年後、2年後、および3年後などである、態様1~18のいずれかの方法。
20. 惹起される免疫応答が、殺菌活性を有する抗OspA血清型1、抗OspA血清型2、抗OspA血清型3、抗OspA血清型4、抗OspA血清型5、および/または抗OspA血清型6の抗体応答を含む、態様1~19のいずれかの方法。
21. 惹起される免疫応答が、OspA血清型1、2、3、4、5、および6を発現するスピロヘータに対して殺菌活性を有する抗体を含む、態様1~20のいずれかの方法。
22. OspA血清型1、2、3、4、5、および6に対する免疫応答が、少なくとも約60日間、少なくとも約180日間、少なくとも約365日間、または少なくとも約540日間持続される、態様1~21のいずれかの方法。
23. 組成物が、1.25 ppb未満の銅または十分な量のL-メチオニンを含む、態様1~22のいずれかの方法。
24. 銅が、特にCu+またはCu2+としての、イオンの形態である、態様1~23のいずれかの方法。
25. L-メチオニンが少なくとも10 mmol/lの濃度で存在する、態様1~24のいずれかの方法。
26. L-メチオニンのmol/l単位の濃度が、組成物中において銅の濃度と少なくとも等価である、態様23~25のいずれかの方法。
27. 組成物が反応性化合物をさらに含み、反応性化合物が、酸化還元活性化合物、ラジカル構成化合物、安定化化合物、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択され、とりわけ、反応性化合物が、ホルムアルデヒド、エタノール、クロロホルム、トリクロロエチレン、アセトン、triton-X-100、デオキシコラート、ジエチルピロカルボナート、サルファイト、Na2S2O5、β-プロプリオ-ラクトン、ポリソルベート、例えばTween 20(登録商標)、Tween 80(登録商標)、O2、フェノール、pluronic型コポリマー、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様1~26のいずれかの方法。
28. ヒト成人が、18歳またはそれ以上、例えば18~65歳の対象である、態様1~27のいずれかの方法。
29. ヒト成人が、50歳またはそれ以上である年配の対象である、態様1~27のいずれかの方法。
30. ヒト小児が、5~17歳、例えば12~17歳または5~11歳の対象である、態様1~27のいずれかの方法。
31. ヒト小児が、0~4歳、例えば1~4歳または2~4歳の対象である、態様1~27のいずれかの方法。
32. 組成物がヒト成人または小児に、0.25ミリリットル(ml)~1.0 ml、例えば0.25 ml、0.3 ml、0.4 ml、0.5 ml、0.6 ml、0.7 ml、0.8 ml、0.9 ml、または1.0 mlの体積で投与される、態様1~31のいずれかの方法。
33. 組成物がヒト成人または小児に、0.25 ml、0.5 ml、または1.0 mlの体積で投与される、態様1~32のいずれかの方法。
34. ヒトにワクチン接種するための方法であって、
SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を、
- ヒト成人に少なくとも2回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも2回、用量当たり120~200μgもしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で
投与する工程を含む、方法。
35. ライム病に対してヒトにおいて免疫応答を惹起するための方法であって、
SEQ ID NO: 1の融合タンパク質(Lip-S1D1-S2D1)とSEQ ID NO: 2の融合タンパク質(Lip-S4D1-S3hybD1)とSEQ ID NO: 3の融合タンパク質(Lip-S5D1-S6D1)とを含む組成物を、
- ヒト成人に少なくとも2回、用量当たり120~200μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で;または
- ヒト小児に少なくとも2回、用量当たり120~200μgもしくは用量当たり60~100μgの範囲内の、3つの融合タンパク質の総タンパク質含量で
投与する工程を含む、方法。
36. 2回目の投与が、1回目の投与後少なくとも5ヶ月から多くても7ヶ月までの期間中である、態様34または態様35の方法。
37. 2回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも170日から多くても190日までの期間中、少なくとも175日から多くても185日までの期間中、とりわけ180日である、態様34~36のいずれかの方法。
38. 組成物の3回目の投与が、1回目の投与後、少なくとも15ヶ月から多くても21ヶ月までの期間中、特に少なくとも17ヶ月から多くても19ヶ月までの期間中、とりわけ18ヶ月である、態様34~37のいずれかの方法。
39. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、用量当たり135μg~180μgの範囲内、特に用量当たり135μgもしくは180μgであるか、または3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μg~90μgの範囲内、特に用量当たり67.5μgもしくは90μgである、態様34~38のいずれかの方法。
40. 3つの融合タンパク質が、組成物中のすべてのタンパク質の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%を構成する、態様34~39のいずれかの方法。
41. 組成物が、1:1:1(Lip-S1D1-S2D1 : Lip-S4D1-S3hybD1 : Lip-S5D1-S6D1)の重量比で融合タンパク質を含む、態様34~40のいずれかの方法。
42. 組成物がアジュバントを含む、態様34~41のいずれかの方法。
43. 組成物がアルミニウムアジュバントを含む、態様34~42のいずれかの方法。
44. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
45. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
46. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
47. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の180日後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
48. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり135μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
49. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり67.5μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
50. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、ヒト成人または小児に対して用量当たり180μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
51. 3つの融合タンパク質の総タンパク質含量が、幼い小児に対して用量当たり90μgであり、2回目の投与が、1回目の投与の6ヶ月後であり、かつ、任意の3回目の投与が、1回目の投与の18ヶ月後であり、かつ任意で、その後12ヶ月ごとである、態様34~43のいずれかの方法。
52. さらなる投与が、最後の一次免疫処置の後毎年、または各々のダニ季節の初め、特に、1年後、2年後、および3年後などである、態様34~51のいずれかの方法。
53. 惹起される免疫応答が、殺菌活性を有する抗OspA血清型1、抗OspA血清型2、抗OspA血清型3、抗OspA血清型4、抗OspA血清型5、および/または抗OspA血清型6の抗体応答を含む、態様34~52のいずれかの方法。
54. 惹起される免疫応答が、OspA血清型1、2、3、4、5、および6を発現するスピロヘータに対して殺菌活性を有する抗体を含む、態様34~53のいずれかの方法。
55. OspA血清型1、2、3、4、5、および6に対する免疫応答が、少なくとも約60日間、少なくとも約180日間、少なくとも約365日間、または少なくとも約540日間持続される、態様34~54のいずれかの方法。
56. 組成物が、1.25 ppb未満の銅または十分な量のL-メチオニンを含む、態様34~55のいずれかの方法。
57. 銅が、特にCu+またはCu2+としての、イオンの形態である、態様34~56のいずれかの方法。
58. L-メチオニンが少なくとも10 mmol/lの濃度で存在する、態様34~57のいずれかの方法。
59. L-メチオニンのmol/l単位の濃度が、組成物中において銅の濃度と少なくとも等価である、態様56~58のいずれかの方法。
60. 組成物が反応性化合物をさらに含み、反応性化合物が、酸化還元活性化合物、ラジカル構成化合物、安定化化合物、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択され、とりわけ、反応性化合物が、ホルムアルデヒド、エタノール、クロロホルム、トリクロロエチレン、アセトン、triton-X-100、デオキシコラート、ジエチルピロカルボナート、サルファイト、Na2S2O5、β-プロプリオ-ラクトン、ポリソルベート、例えばTween 20(登録商標)、Tween 80(登録商標)、O2、フェノール、pluronic型コポリマー、および任意のそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様34~59のいずれかの方法。
61. ヒト成人が、18歳またはそれ以上、例えば18~65歳の対象である、態様34~60のいずれかの方法。
62. ヒト成人が、50歳またはそれ以上である年配の対象である、態様34~60のいずれかの方法。
63. ヒト小児が、5~17歳、例えば12~17歳または5~11歳の対象である、態様34~60のいずれかの方法。
64. ヒト小児が、0~4歳、例えば1~4歳または2~4歳の対象である、態様34~60のいずれかの方法。
65. 組成物がヒト成人または小児に、0.25ミリリットル(ml)~1.0 ml、例えば0.25 ml、0.3 ml、0.4 ml、0.5 ml、0.6 ml、0.7 ml、0.8 ml、0.9 ml、または1.0 mlの体積で投与される、態様34~64のいずれかの方法。
66. 組成物がヒト成人または小児に、0.25 ml、0.5 ml、または1.0 mlの体積で投与される、態様34~65のいずれかの方法。
【0059】
本明細書における「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」という用語は、あらゆる場合において、それぞれ、「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」、および「からなる(consists of)」という用語と任意で置換可能であることが、本発明者らによって意図される。「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。したがって、別段文脈が要求しない限り、「含む(comprises)」という単語、ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprising)」などの変形物は、述べられる化合物もしくは組成物(例えば、核酸、ポリペプチド、抗体)もしくは工程、または化合物もしくは工程の群の包含を意味するが、任意の他の化合物、組成物、工程、またはそれらの群の排除は意味しないと理解される。略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語の例えば(exempli gratia)に由来し、非限定的な例を示すために本明細書において用いられる。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」と同義である。
【0060】
別段説明されない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, 発行Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, 発行Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, 発行VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)において見出すことができる。
【0061】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別段文脈が明瞭に示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という単語は、別段文脈が明瞭に示さない限り、「および」を含むように意図される。「複数」という用語は、2つまたはそれ以上を指す。さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられる、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量値は、おおよそであり、説明のために提供されることが理解されるべきである。追加的に、抗原などの物質の濃度またはレベルに関して与えられる数値限界は、おおよそであり得る。
【0062】
本発明は、以下の図、表、および実施例によってさらに例証され、それらから、さらなる特徴、態様、および利点が取得され得る。したがって、議論される具体的な改変は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な等価物が作製され得、様々な変更がなされ得、かつ様々な改変がなされ得ることが、当業者には明らかであり、したがって、そのような等価の態様が本明細書に含まれるべきであることが理解される。
【実施例】
【0063】
材料および方法
ダニ攻撃法 ダニ攻撃法を、ボレリア(例えば、B.アフゼリIS1株)が感染した少なくとも1匹のダニ若虫(例えば、マダニ(I. ricinus))を、本発明の多価ボレリアワクチンで免疫処置したかまたはヒト血清で前処置したマウスに適用すること;およびb)少なくとも1匹の感染したダニ若虫を、緩衝液またはアジュバント単独などの適切なプラセボ(陰性)対照で処置した2匹目のマウスに適用すること;およびc)概して攻撃の4~6週間後に、2匹のマウスにおける感染率を比較することによって実施する。好ましくは、マウスの群(例えば、5~10匹のマウス/群)を、各処置に用いる。感染状態の評価は、WO2014006226に記載されているような、血清に対するVlsE ELISAおよび/もしくは収集した組織に対するqPCRを用いて、または他の適している方法を用いて、行うことができる。
【0064】
針攻撃法 針攻撃法を、所望のボレリア株(例えば、B.ブルグドルフェリN40株)について、ボレリアを感染用量(ID)50 の20~50倍の用量で、本発明の多価ボレリアワクチンで免疫処置したかもしくはヒト血清で前処置した、または緩衝液もしくはアジュバント単独などの適切なプラセボ(陰性)対照で前処置したマウスの皮下に導入すること、および攻撃されたマウスにおける感染率を比較することによって実施する。多数の細菌において測定されているID50は、未処置の攻撃されたマウスの50%が感染する用量として定義される。攻撃用量は、広く変動する可能性があり、株依存性である;したがって、株の毒性を、最初に、ID50の決定のための攻撃実験によって評価しなければならない。針攻撃の4週間後に、感染状態を判定する読み取り法のために、血液および組織を収集する。読み取り法は、例えば、WO2014006226に記載されているような、ボレリアの特定のための血清に対するVlsE ELISAおよび/もしくは収集した組織に対するqPCR、または他の方法であることができる。
【0065】
スピロヘータ抗体結合アッセイ 1×105~1×106のスピロヘータを、等体積の4%パラホルムアルデヒドと混合し、96ウェルプレート(Nunclon 96U, Nunc)において室温で20分間インキュベートする。プレートを、2,000gで5分間遠心分離し、上清を捨てる。細胞を、150μLの2%BSAを含むハンクス平衡塩溶液(HBSS-B)で洗浄し、上記のように遠心分離し、上清を捨てる。血清を、56℃で35分間インキュベートすることによって熱不活性化する。熱不活性化血清を、HBSS-Bにおいて希釈し、Costar spin-X遠心チューブフィルター(0.22μm, Corning, USA)を用いて17,000gで3分間遠心分離することによって、滅菌濾過する。スピロヘータを、100μLの血清に懸濁し、室温で45分間インキュベートする。プレートを、2,000gで5分間遠心分離し、上清を捨てる。細胞を、150μLのHBSS-Bで1回洗浄し、1:150希釈したPEコンジュゲート二次抗体を含む100μL HBSS-Bに再懸濁する。1マイクロリットルの適切な二次抗体(例えば、Beckman Coulter, USAから入手可能なPEコンジュゲート抗マウスまたは抗ヒトIgG)を細胞に添加し、暗所において室温で45分間インキュベートする。スピロヘータを、150μLのHBSS-Bで1回洗浄し、10 ug LDS 751 DNA色素を含有する200μL HBSSに再懸濁し、暗所において室温で10分間インキュベートする。染色されたスピロヘータを、2,000gで5分間遠心分離することによってペレット化し、その後200μL HBSSに再懸濁する。標識されたスピロヘータを、LDS 751陽性イベントにゲーティングして、CytoFlex(Beckman Coulter)フローサイトメーターで測定する。
【0066】
血清殺菌アッセイ(SBA)は、ワクチンにより誘導される抗体の、外因的に添加された補体と組み合わせて細菌を殺滅する能力を測定する(
図1)。ワクチンにより誘導される抗体は、スピロヘータ上の表面に露出した抗原を認識し、主として古典経路を介して活性化される補体を動員して、膜攻撃複合体の形成、溶菌、および最終的には標的細菌の死を結果としてもたらす。血清試料を、BSK-II培地で2 倍連続希釈し、その後、白色96ウェルアッセイプレートにおいてBSK-II培地中で、一晩培養から得られたボレリア、およびモルモットまたは子ウサギの補体(供給源および最終濃度は血清型に依存、1~25%)と混合する。次いで、プレートを、+32℃、5%CO
2で3~6日間(ボレリア血清型に依存)インキュベートする。生きている(代謝的に活性を有する)ボレリアの量を、アッセイの終わりに、ルシフェラーゼベースの反応(BacTiter-Glo, Promega)でATP依存性発光を測定することによって決定する。ヒト血清プールが、陽性品質対照(QC)として働き、市販のナイーブヒト血清が、陰性対照(NC)として働く。試料力価を計算するために、各試料希釈物を、相対光単位が100%に設定されている陰性ヒト血清(NC)の対応する希釈物と比較する。試験試料のSBA力価は、50%以下の生存率を誘導する最高血清希釈度の逆数である。血清型1、2、4、5、6について、SBAの定量限界(力価20)よりも下の値は、力価10によって置き換えられる。血清型3について、SBAの定量限界(力価160)よりも下の値は、力価80によって置き換えられる。
【0067】
OspA血清型特異的ヒト血清IgG酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA) OspA血清型特異的抗体についてのIgG幾何平均力価を、ELISAによって決定した。プレートを、ST1、ST2、ST3、ST4、ST5、またはST6由来の完全長脂質付加OspA でコーティングした。試験血清、参照物質(RS)、およびQC試料の段階希釈物を、ヒト血清プールから調製した。ブランク対照もまた用いた。結合した抗体を、ヒトIgG特異的二次抗体コンジュゲートで検出した。OspA特異的IgG濃度を、SoftMax Pro 5.2 GxPソフトウェアを用いて計算した。平行線解析曲線を、参照物質に対して試験された各試料について個々に作成する。これらの曲線において与えられる相対的効力を、参照物質の濃度曲線と比較した試料のIgG濃度(U/mL)の計算に用いる。フェーズ1試験からフェーズ2試験までに、ELISAアッセイにおいて改変を行った(表A-1を参照されたい)。フェーズ1試験(実施例1)において用いたELISAの定量限界は、20 ELISA単位(EU)/mL(本明細書においてU/mLとも称される)であり;20 EU/mL未満の値は、10 EU/mLの値によって置き換えた。1回目のフェーズ2試験(実施例2)において用いた、わずかに変更されたELISAは、40 EU/mLの定量限界を有し;40 EU/mL未満の値は、20 EU/mLの値によって置き換えた。
【0068】
(表A-1)フェーズ1およびフェーズ2臨床試験におけるIgG測定(ELISA)の差異
【0069】
実施例1. 多価ボレリアワクチンを用いたフェーズ1臨床試験
フェーズ1臨床試験のデザインおよび免疫原性の結果
水酸化アルミニウムを伴うか伴わない、様々な用量の本発明の多量体ボレリアワクチン(「MBV」)の安全性および免疫原性を調査する目的で、ファースト・イン・ヒューマン、観察者盲検、部分的ランダム化、多施設用量漸増フェーズI臨床試験に着手した。試験は、広義のボレリア・ブルグドルフェリについてベースライン血清陰性であった年齢18~39歳の健常成人(すなわち、以前にボレリアに感染していなかった対象)において実施した。試験デザインを
図2に示す。簡潔に述べると、28日の間隔で送達された3回の筋肉内ワクチン接種の安全特性および免疫原性を、179人の健常対象において6つの異なる処置(3つの用量レベル、各々アジュバントを伴うか伴わない)を用いて評価した(すなわち、処置群当たりおよそ30人の対象)。すべての製剤は、OspA断片ポリペプチド(SEQ ID NO: 1、2、および3)の各々を1:1:1の重量比で含有していた(例えば、低用量(12μg)は、SEQ ID NO: 1、2、および3によって定義される脂質付加ポリペプチドの各々4μgを含有していた)。
【0070】
フェーズ1試験用量群(I.M.ワクチン接種、d0、d28、d56)
- 12μg、アラム(Alum)あり(n=29)
- 12μg、アラムなし(n=29)
- 48μg、アラムあり(n=31)
- 48μg、アラムなし(n=29)
- 90μg、アラムあり(n=31)
- 90μg、アラムなし(n=30)
【0071】
免疫原性を、すべての群において0、28、57、84、180、236、および365日目に評価し、ピーク抗体価は、84日目に期待された(すなわち、3回目のワクチン接種の4週間後、主要エンドポイント解析)。84日目の各OspA血清型に対する幾何平均力価を、
図3Aに示す。
図3Bは、各群についてのセロコンバージョン率(すなわち、セロコンバージョンした対象の比率)を示し、ここで、セロコンバージョンは、ベースラインから4倍以上のIgG力価の増加として定義される。
【0072】
ブースター延長段階 84日目の解析からの結果に基づいて、アジュバントを伴うかまたは伴わない48μgおよび90μgの投与量群を選択して、およそ13ヶ月目にブースターワクチン接種を受けさせ、安全性および抗体持続性についてさらに6ヶ月追跡した。投与したブースター用量は、プライミングと同じ用量および製剤であった。この試験のブースター延長部分は、3つの試験場所のうちの1つのみで実施し、ブースター段階においてN=64の対象という実質的により低い対象数につながった。
【0073】
フェーズ1試験ブースター延長用量群(I.M.ブースト、13ヶ月)
- 48μg、アラムあり(n=15)
- 48μg、アラムなし(n=16)
- 90μg、アラムあり(n=16)
- 90μg、アラムなし(n=17)
【0074】
免疫原性を、ブースター延長群において13ヶ月目(ブースト前)、14ヶ月目、および19ヶ月目に評価した。ブースター延長の目的は、一次スケジュールの最後の免疫処置のおよそ1年後に適用されるワクチンAのブースター用量の安全性および免疫原性を、ブースター用量の適用の6ヶ月後まで調査することであった。ブースター延長のもう1つの用途は、機能アッセイの開発および潜在的な概念実証(PoC)研究のために高力価血清を生成することであった。さらに、ブースターにより、臨床開発において早期にブースター用量の安全性および免疫原性のデータの収集が可能になった。
【0075】
84日目ならびに13、14、および19ヶ月目のブースター延長段階の一次解析に含まれる対象(ブースターPP集団)のIgG GMT値を、それぞれ
図4A~D、および以下の表1に示す。ブースター前の時点(13ヶ月)と比較した、および一次ワクチン接種シリーズ(84日)後のピーク力価と比較した、IgG力価の幾何平均上昇倍率(GMFR)、ならびに84日目、13ヶ月目、および14ヶ月目のセロコンバージョン率を、それぞれ表2および表3に提供する。試験全体の期間にわたる6つの血清型の各々に対する免疫応答に関する群の比較のために、ブースター延長段階に含まれる対象(ブースターPP集団、すなわち、ブースター延長段階に登録され、プロトコルに従って正確なタイミングで正確なブースター用量を受けた対象)の、試験の期間にわたるGMT値を、
図5A~Fに提供する。
【0076】
(表1)84日目、M13、M14、およびM19の血清型特異的IgG力価のGMT、ブースターPP集団
【0077】
(表2)13ヶ月目(ブースト前)および84日目(一次免疫処置シリーズ後のピーク抗体力価)と比較した、14ヶ月目および19ヶ月目の血清型特異的IgG力価の幾何平均上昇倍率(GMFR)、ブースターPP集団
【0078】
(表3)84日目、M13、M14、およびM19の、血清型ごとのセロコンバージョン率(SCR)、ブースターPP集団
【0079】
フェーズ1血清試料におけるELISA力価とSBA力価との相関 臨床試料についての防御のインビトロ相関物である血清型特異的血清殺菌アッセイ(SBA - 材料および方法を参照されたい)は、それぞれ
図6A、B、および Cに示すように、個々の対象血清における血清型1、2、および3についてのELISA 値と密接に相関する値を生じた。
【0080】
要約すると、血清型特異的IgG抗体が、フェーズ1において調査したすべての用量および製剤で誘導され、より高い免疫原性が、より高用量の群およびアジュバント添加製剤で観察された。一次ワクチン接種シリーズの終了のおよそ1年後に適用されたブースター用量は、6つのOspA血清型すべてについて、実質的なブースター応答を結果としてもたらし(すなわち、IgG力価は、ブースター用量の4週間後に、一次免疫処置の完了の4週間後と比較して実質的により高かった)、19ヶ月まで、より高いレベルで持続された(表3)。持続される循環抗体レベルは、OspAベースのワクチンの効力に非常に重要であるため、より早い、より高い、かつより永続的な免疫応答を誘導する目的で、さらなる用量増加および代替のスケジュールを、フェーズ2において導入した。
【0081】
実施例2. より高用量のワクチンを調査する、多価ボレリアワクチンを用いたフェーズ2臨床試験
フェーズ2臨床試験のデザイン、および導入段階からの予備的な記述した免疫原性データの要約
年齢18~65歳の健常成人において、水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加した多量体ボレリアワクチンのより高用量の範囲の安全性および免疫原性を調査する目的で、観察者盲検、ランダム化、プラセボ対照、多施設フェーズ2試験が現在進行中である。広義のボレリア・ブルグドルフェリについてベースライン血清陰性であった対象(すなわち、以前にボレリアに感染していなかった対象)、および広義のボレリア・ブルグドルフェリについてベースライン血清陽性であった対象(すなわち、以前にボレリアに感染した対象)を、この試験に登録した。試験は、135μgおよび180μgの2つのより高用量の群で主試験段階(年齢18~65歳、N=450の対象)を開始する前に、最初により小さな集団において、アラムを伴うか伴わない90μg、135μg、および180μgの本発明の多量体ボレリアワクチン(「MBV」)の3つの用量レベルの安全性を調査するための、安全性導入段階(年齢18~40歳、N=120の対象)からなる(
図7を参照されたい)。対象は、1ヶ月の間隔で、3回のI.M.ワクチン接種を受けた(すなわち0-1-2ヶ月)。主試験段階においては、対象を、およそ2:1の比で2つの年齢群(18~49歳および50~65歳)に登録した。フェーズ2試験の主な目的は、年齢18~65歳の健常成人において、ファースト・イン・ヒューマン試験と比較してより高い用量レベルで多量体ボレリアワクチンの免疫原性および安全性を評価すること、ならびにワクチンの最適用量を決定することである。すべての製剤は、OspA断片ポリペプチド(SEQ ID NO: 1、2、および3)の各々を1:1:1の重量比で含有していた(例えば、低用量(90μg)は、SEQ ID NO: 1、2、および3によって定義される脂質付加ポリペプチドの各々30μgを含有し、高用量(180μg)は、SEQ ID NO: 1、2、および3によって定義される脂質付加ポリペプチドの各々60μgを含有していた)。
【0082】
導入段階 年齢18~40歳の合計で120人の健常対象を、以下の4つの処置群に登録することになった(I.M.ワクチン接種、d1、d29、d57):アラムを伴う90μgの本発明の多量体ボレリアワクチン(「MBV」)、アラムを伴う135μgのMBV、アラムを伴う180μgのMBV、プラセボ(PBS)、処置群当たりおよそ30人の対象。データ安全性モニタリング委員会(Data Safety Monitoring Board)(DSMB)による85日目までの安全性データの審査の後、これらの2つのより高用量の群(すなわち、135μgおよび180μg)を、主試験段階における更なる調査のために選択した。血清を、1、29、57、85(一次免疫原性解析)、180、236、および365日目に収集して、ELISAおよびSBAによって免疫原性について評価する(対象の代表的なサブセットにおける選択された時点)。
【0083】
導入段階からの免疫原性データの予備的な記述した解析により、多価ボレリアワクチンは、導入段階で試験されたすべての用量レベルで免疫原性であったことが明らかになった。アラムを伴う90μgの群における予備的なGMT力価(ELISA)は、同じ用量レベルでフェーズ1試験において得られたものに匹敵していた。すべての血清型について、用量反応が観察され、90μg用量群において最低のIgG力価、180μg用量群において最高の力価であった。フェーズ1と比較した用量の増加により、予想されたように、一次免疫処置後のピーク免疫応答の増加が結果としてもたらされた。しかし、抗体レベルは、すべての用量群において実質的に180日目まで相対的に低下した。フェーズ2の導入段階において一次シリーズ後に観察された抗体価の低下を考慮すると、多量体ボレリアワクチンのさらなる開発は、より広い0-2-6ヶ月スケジュールを考えるべきである。他のワクチンでの経験に基づいて、これは、さらにより高いピーク力価、および重要なことに、より良好な持続性を結果としてもたらすことが期待され、かつまた抗体の品質も改善し得る。
【0084】
主段階 年齢18~65歳の合計で450人の健常対象を、以下の3つの処置群に登録することになった(I.Mワクチン接種、D1、d29、d57):アラムを伴う135μg(n=およそ180)、アラムを伴う180μg(n=およそ180)、プラセボ(PBS)(n=およそ90)。主試験段階および導入段階の85日目からのプールされた免疫原性データ(ELISAによるOspA血清型特異的IgGのGMT)を含む、最初のデータ解析を行った。85日目の抗体の機能性は、血清殺菌アッセイ(SBA)を用いて評価した。データにより、一次免疫処置シリーズの完了後のより高い抗体価、すなわち、より高い抗体レベルに関する導入段階の予備的なデータ解析が、85日目に、導入段階において調査した90μg用量群(GMTは74.3[ST1]~267.4[ST3]の範囲)と比較して、135μg用量群(GMTは101.1[ST1]~282.2[ST3]の範囲)および180μg用量群(GMTは115.8[ST1]~308.6[ST3]の範囲)で達成されたことが確認された。データにより、ライム病にかかる高リスク群のうちの1つであるより高齢の成人(年齢群50~65歳)もまた、2つの年齢群間での統計的に有意な差がなく、有望な免疫応答を示していることが明らかになる。免疫原性データの要約については、表4を参照されたい。
【0085】
さらに、上記に示したようなボレリアワクチン(1:1:1の重量比のOspA断片ポリペプチド(SEQ ID NO: 1、2、および3)(例えば、低用量(90μg)は、SEQ ID NO: 1、2、および3によって定義される脂質付加ポリペプチドの各々30μgを含有し、高用量(180μg)は、SEQ ID NO: 1、2、および3によって定義される脂質付加ポリペプチドの各々60μgを含有していた)は、試験されたすべての用量群にわたって免疫原性であった。この試験において用いたより高い用量は、フェーズ1と比較して、すべての血清型にわたってより高い抗体応答を惹起した。最高用量でのセロコンバージョン率(SCR)は、81.5%(ST1)~95.8%(ST2)の範囲であった。フェーズ1で調査した年齢群に匹敵する年齢群(18~49歳)において、SCRは、85.6%~97%の範囲であった(以前の試験:71.4%~96.4%)。ライムワクチンの主な標的群のうちの1つである、より高齢の成人における免疫学的応答は、特に有望である。結果により、ライムへの以前の曝露(血清陽性)が、免疫原性または安全性に対して影響を有することは示されなかった。
【0086】
前記ボレリアワクチンは、概して、試験されたすべての用量および年齢群にわたって安全であった。いかなる関連した重篤な有害事象(SAE)も、この試験でいずれの処置群においても、ボレリアワクチンで観察されなかった。反応原性は、その後のワクチン接種で減少した。
【0087】
全体として、発熱の比率を含む耐容性プロファイルは、他の脂質付加組換えワクチンまたは脂質含有製剤に匹敵するように見えた。
【0088】
(表4)1回目のフェーズ2試験(0-1-2ヶ月スケジュール)の85日目のGMT、PP集団
【0089】
85日目のセロコンバージョン率(SCR)を、表12に示す。90μg用量において、SCRは、65.4%(ST1)~96.2%(ST3)の範囲であり、135μg用量において、SCRは、80.9%(ST1)~98.4%(ST2)の範囲であり、かつ180μg群において、SCRは、81.5%(ST1)~95.8%(ST3)の範囲であった。
【0090】
(表12)1回目のフェーズ2試験(0-1-2ヶ月スケジュール)の85日目のSCR(ELISA)、PP集団
【0091】
抗体の機能性は、血清殺菌アッセイ(SBA、材料および方法を参照されたい)を用いてすべての血清型について実証されている。85日目のGMTを、表13に要約する。
【0092】
(表13)85日目にSBAによって測定した機能的抗体についてのGMT(0-1-2ヶ月スケジュール)
【0093】
図9A~9Fに示したように、ELISA力価は、各OspA血清型および個々の対象血清について、それぞれのSBA力価と有意に相関した。スピアマン相関係数は、血清型4についての0.5737、p値<0.0001から、血清型3についての0.9030、p値<0.0001の範囲であった。
【0094】
実施例3. より高用量のワクチンおよびより広い免疫処置スケジュールを調査する、多価ボレリアワクチンを用いたフェーズ2臨床試験
全体として、年齢18~65歳の246人の健常対象を、代替のより広い免疫処置スケジュールで実施例2において試験されたのと同じ用量群を調査する観察者盲検、ランダム化、プラセボ対照、多施設フェーズ2試験である、この試験に登録した。対象は、0、2、および6ヶ月目に(1-57-180日)、135μgまたは180μgのアラムと共に製剤化された多量体ボレリアワクチン(各々およそ100人の対象)またはプラセボ(およそ50人の対象)の3回のI.M.免疫処置を受けた(すなわち、1:1:1の重量比のOspA断片ポリペプチド(SEQ ID NO: 1、2、および3)(例えば、低用量(135μg)は、SEQ ID NO: 1、2、および3によって定義される脂質付加ポリペプチドの各々45μgを含有し、高用量(180μg)は、SEQ ID NO: 1、2、および3によって定義される脂質付加ポリペプチドの各々60μgを含有していた))。対象を、およそ2:1の比で2つの年齢群(18~49歳および50~65歳)に登録した。また、広義のボレリア・ブルグドルフェリについてベースライン血清陰性であった対象(すなわち、以前にボレリアに感染していなかった対象)、および広義のボレリア・ブルグドルフェリについてベースライン血清陽性であった対象(すなわち、以前にボレリアに感染した対象)を、この試験に登録した。フェーズ2試験の主な目的は、年齢18~65歳の健常成人において、ファースト・イン・ヒューマン試験と比較してより高い用量レベルで、かつ上記の実施例において用いたものよりも広い免疫処置スケジュールを適用して、多量体ボレリアワクチンの免疫原性および安全性を評価することである。実施例2の得られた結果と共に、データを用いて、後期臨床開発のためにワクチンの最適な用量およびスケジュールを決定する。試験デザインを
図8に示す。
【0095】
血清を、1、29、57、85、180、208(一次免疫原性解析)、365、および545日目に収集して、ELISAおよびSBAによって免疫原性について評価する(選択された時点)。
85日目(すなわち、2回目のワクチン接種後)に、135μg用量群における抗体レベル(GMT)は、64.1[ST1]~166.4[ST3]の範囲であり、180μg用量群においては、75.2[ST1]~217.7[ST3]の範囲であった。表10は、2回目のフェーズ2試験についての幾何平均力価(GMT)の概要を提供し、表11、
図10は、2回目のフェーズ2試験について85日目のセロコンバージョン率の概要を提供する。
図12~17もまた参照されたい。
【0096】
全体として、免疫応答の開始は、より高い180μgの用量でいくらかより速いように見られ、すなわち、85日目のGMTは180μg用量群で、135μg群と比較して、より高かった。135μg処置群と180μg処置群との間のGMTの比較については
図18Aおよび18Bを、85日目のGMT値については表10を参照されたい。
【0097】
(表10)2回目のフェーズ2試験(0-2-6ヶ月スケジュール)の85日目のGMT、PP集団
【0098】
(表11)2回目のフェーズ2試験(0-2-6ヶ月スケジュール)の85日目のSCR、PP集団
【0099】
208日目(すなわち、3回目のワクチン接種の1ヶ月後)の免疫原性および安全性データを含む初期データ解析により、抗体価は、より広い免疫処置スケジュール(0-2-6ヶ月スケジュール)を用いてさらに増加したことが明らかになる。135μg用量群における208日目のピーク抗体レベル(GMT)は、276.4[ST1]~539.0[ST2]の範囲であり、180μg用量群においては、274.7[ST1]~596.8[ST3]の範囲であり(表5を参照されたい)、これは、0-1-2ヶ月のワクチン接種スケジュールを用いて同じ処置群で得られたそれぞれの力価と比較して、1.7~2.7倍の力価の増加である(表6を参照されたい)。ELISAデータと一致して、SBA力価についてのGMTもまた、0-2-6ヶ月スケジュールを用いて、0-1-2ヶ月スケジュールと比較して1.4~3.1倍増加した(表14)。表5は、2回目のフェーズ2試験についての幾何平均力価(GMT)の概要を提供し、表6は、異なるワクチン接種スケジュールを用いたGMTの比較である。
【0100】
(表5)2回目のフェーズ2試験(0-2-6ヶ月スケジュール)の208日目のGMT(ELISA)、PP集団
【0101】
表5に示したように、ライムワクチンの主な標的群のうちの1つである、より高齢の成人における免疫学的応答は、特に有望である。また、結果により、ライムへの以前の曝露(血清陽性)が、免疫原性または安全性に対して影響を有することは示されなかった(データは示さない)。
【0102】
(表6)異なる免疫処置スケジュールを用いたGMT(ELISA)の比較
【0103】
1回目のフェーズ2試験におけるように、ライム病にかかる高リスク群のうちの1つである、より高齢の成人(年齢群50~65歳)もまた、2つの年齢群間でのGMTの統計的に有意な差がなく、有望な免疫応答を示している(表5)。
【0104】
208日目のセロコンバージョン率(SCR)を、表7および
図11に示す。135μg用量において、SCRは、89.6%(ST6)~98.7%(ST3)の範囲であり、180μg群において、SCRは、93.8%(ST1)~98.8%(ST2、ST4)の範囲であった。
【0105】
(表7)2回目のフェーズ2試験(0-2-6ヶ月スケジュール)の208日目のSCR(ELISA)、PP集団
【0106】
抗体の機能性は、血清殺菌アッセイ(SBA、材料および方法を参照されたい)を用いてすべての血清型について実証されている。208日目のGMTを、表8に要約する。
【0107】
(表8)208日目にSBAによって測定した機能的抗体についてのGMT
【0108】
図9A~9Fに示したように、ELISA力価は、各OspA血清型および個々の対象血清について、それぞれのSBA力価と有意に相関した。スピアマン相関係数は、血清型4についての0.6487、p値<0.0001から、血清型3についての0.9131、p値<0.0001の範囲であった。
【0109】
(表14)異なる免疫処置スケジュールを用いたGMT(SBA)の比較
【0110】
多量体ボレリアワクチン(「MBA」)は、概して、試験されたすべての用量および年齢群にわたって安全であった。いかなる関連した重篤な有害事象(SAE)も、この試験においてまたはいずれの試験においても観察されなかった。反応原性は、1回目のワクチン接種後に減少した。全体として、発熱の比率を含む耐容性プロファイルは、他の脂質付加組換えワクチンまたは脂質含有製剤に匹敵していた。表9は、前記ワクチンを用いたフェーズ2試験の間の安全性データの比較、および他の脂質付加組換えワクチンまたは脂質含有製剤に対する比較を提供する。
【0111】
(表9)規定された(solicited)局所および全身の有害事象の、他の脂質付加組換えワクチンまたは脂質含有製剤との比較
1処方情報9/2017のTrumenbaハイライト、
2処方情報10/2017のBexseroハイライト、
3PI Lymerix(規定されたAEの比率)。
A「いずれか」は、ワクチン接種の7日以内に「軽度」、「中等度」、または「重度」として反応を報告した対象の累積頻度として定義される。軽度(2.5~5.0 cm);中等度(>5.0~10.0 cm);重度(>10.0 cm)。
【0112】
要約すると、臨床試験により、多量体ボレリアワクチンは、概して、試験されたすべての用量および年齢群にわたって安全であったことが示されている。免疫原性は、より高いワクチン用量(135μg、180μg)および代替の免疫処置スケジュール(0-2-6ヶ月)を用いたフェーズ2において増加した。
【0113】
実施例4:年齢5~65歳の試験集団において、ワクチンの3用量または2用量の一次免疫処置スケジュール、およびブースター用量を調査する、多価ボレリアワクチンを用いたフェーズ2臨床試験
この試験は、年齢5~65歳の健常対象における、ランダム化、観察者盲検、プラセボ対照、多施設フェーズ2試験である。試験は、2つの試験パート(パートA:主試験段階、パートB:ブースター段階)において実施する。試験は、センチネルコホートの年齢順登録で開始する。パートAへの対象の登録は、成人コホートから始まり、これにより、小児コホートが開始される前に適切な安全性データの生成および審査が可能になる。
【0114】
パートA(主試験段階)への対象の登録:
登録を、3つの年齢コホートについて年齢が高いものから低いものにずらした様式で行う(
図19を参照されたい)。
【0115】
登録コホート1(18~65歳):
登録は、年齢18~65歳の30人のセンチネル成人対象(コホート1)から始まる。対象は、水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加した多量体ボレリアワクチン(「MBV」)(群1および2)またはプラセボ(群3)のワクチン接種を受けるように、3つの試験群のうちの1つに1:1:1でランダム化される。これらの30人のセンチネル対象が、1回目のワクチン接種を受けて、7日のeDiaryデータの審査を含む、ワクチン接種7日後の安全性追跡来院(来院1A)を完了した後、安全性データを、独立した内部審査委員会(Internal Review Committee)(IRC)が非盲検様式で審査する。このデータに基づいて、IRCは、青年期年齢コホート(12~17歳、コホート2)の登録を開始できるかどうかについて勧告を行う。コホート1の残りの270人の成人対象の登録は、IRC審査中に制限なく継続する。
【0116】
登録コホート2(12~17歳):
IRCの許可時に、年齢12~17歳の30人のセンチネル青年対象(コホート2)を登録する。対象は、水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加した多量体ボレリアワクチン(群1および2)またはプラセボ(群3)のワクチン接種を受けるように、3つの試験群のうちの1つに1:1:1でランダム化される。再び、これらの対象が、7日のeDiaryデータの審査を含む、1回目のワクチン接種7日後の安全性追跡来院(来院1A)を完了した後、安全性データをIRCが審査する。IRCは、最も若い年齢コホート(5~11歳の年齢)の登録を開始できるかどうかを勧告する。この年齢コホートにおいて、残りの120人の青年対象の登録は、IRCの許可後にのみ開始される。
【0117】
登録コホート3(5~11歳):
IRCの許可時に、年齢5~11歳の30人のセンチネル対象(コホート3)を登録する。対象は、水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加した多量体ボレリアワクチン(群1および2)またはプラセボ(群3)のワクチン接種を受けるように、3つの試験群のうちの1つに1:1:1でランダム化される。再び、これらの30人の対象が、7日のeDiaryデータの審査を含む、1回目のワクチン接種7日後の安全性追跡来院(来院1A)を完了した後、安全性データをIRCが審査する。この年齢コホートにおける残りの120人の対象の登録は、IRCの許可後にのみ開始される。外部の独立したデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)は、生じる安全性データを非盲検様式で、規則的な間隔で審査し、いつでも試験を調整すること、一時停止すること、または中断することを勧告し得る。
【0118】
パートB(ブースター段階)への対象の登録:
多量体ボレリアワクチンブースター(群1または2)
さらなる開発のために選択される一次免疫処置スケジュールに従ってすべての免疫処置を受けた試験群(群1または群2)内のすべての適格な対象(最大200人;表15を参照されたい)は、パートBに進み、18ヶ月目に追加のMBVワクチン接種を受ける。
【0119】
プラセボブースター(群1または2)
代替の一次スケジュール(すなわち、さらなる開発のために選択されていないスケジュール)に従ってすべての免疫処置を受けた、かつブースター段階に適格である試験群(群1または群2)内の対象のおよそ半分(すなわち、2:1:1の年齢階層化を維持する最大100人;表15を参照されたい)は、パートBに進む。この目的で、最初の50人の適格な成人対象(年齢群18~65歳)、最初の25人の適格な青年対象(年齢群12~17)、および最初の25人の適格な対象(年齢群5~11歳)は、来院8/18ヶ月目の来院にいるため、ブースター段階に含まれる。これらの対象は、18ヶ月目にプラセボ注射を受ける。この試験群由来の残りの対象は、中断される。
【0120】
プラセボブースター(群3)
スケジュールに従ってすべての注射を受けた、かつブースター段階に適格であるプラセボ試験群(群3)内の対象のおよそ半分(すなわち、2:1:1の年齢階層化を維持する最大100人;表15を参照されたい)は、パートBに進む。この目的で、最初の50人の適格な成人対象(年齢群18~65歳)、最初の25人の適格な青年対象(年齢群12~17)、および最初の25人の適格な対象(年齢群5~11歳)は、来院8/18ヶ月目の来院にいるため、ブースター段階に含まれる。これらの対象は、18ヶ月目に追加のプラセボ注射を受ける。この試験群由来の残りの対象は、中断される。試験依頼者および試験統計学者は、主要エンドポイント解析の時、すなわち、パートBへの対象の登録の前に非盲検である。登録された適格な対象の数が被験者の数がパートBについて到達すると、電子システムを通して試験場所が通知される。
【0121】
試験デザイン
試験は、2つの試験パート(パートA:主試験段階、パートB:ブースター段階)において実施する。試験デザインについては、
図20を参照されたい。
【0122】
パートA(主試験段階)においては、年齢5~65歳の合計でおよそ600人の対象が、3つの試験群に1:1:1でランダム化される。群1(およそ200人の対象)は、0-2-6ヶ月目に、水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加した多量体ボレリアワクチンの3回のワクチン接種を受ける。群2(およそ200人の対象)は、盲検を保つために、0-6ヶ月目に水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加した多量体ボレリアワクチンの2回のワクチン接種を受け、2ヶ月目にプラセボ注射を受ける。群3(およそ200人の対象)は、0-2-6ヶ月目に3回のプラセボ注射を受ける。各試験群内で、対象は、3つの年齢コホート(18~65歳、12~17歳、および5~11歳)に2:1:1で登録される。
【0123】
パートAにおいて、すべての対象は、0-2-6ヶ月目(すなわち、1-57-180日目)にMBVまたはプラセボのいずれかの3回のI.M.注射を受ける。8日目/来院1A(すなわち、1回目のワクチン接種の7日後)に、安全性来院が行われる(年齢18~65の対象については電話、年齢5~17歳の対象については対面の来院)。対面の来院は、各ワクチン接種の1ヶ月後にすべての年齢コホートについて予定されている。免疫原性評価のための血液試料を、スクリーニング来院である85日目、180日目、194日目(成人対象のサブセット)、208日目、365日目/12ヶ月目、および18ヶ月目に収集する。
【0124】
パートAの208日目/来院6(すなわち、3回目の免疫処置の1ヶ月後)からの安全性および免疫原性のデータに基づいて、データを用いてパートBブースターについての決定を導く。
【0125】
パートB(ブースター段階)においては、パートAにおいて選択された一次スケジュールを受けた群(群1または2のいずれか)からの適格な対象が、18ヶ月目に、水酸化アルミニウムをアジュバントとして添加した多量体ボレリアワクチンのブースター用量を受ける。
【0126】
安全性の比較のために、プラセボ注射が、代替のワクチン接種スケジュールに従ってパートAにおいてワクチン接種された群に登録されたおよそ100人の対象(すなわち、さらなるワクチン開発のために選択されていない一次免疫処置スケジュールに従ってワクチン接種を受けた群1または2のいずれか)に、および群3のおよそ100人の対象に投与される。すべての試験群において、2:1:1の年齢階層化(18~65歳、12~17歳、および5~11歳)を維持することが目標とされる。パート Bに関与するすべての対象を、19、23、26、30、36、42、48、および54ヶ月目の試験来院で、さらに3年間(すなわち、54ヶ月目まで)追跡する。
【0127】
表15は、試験群および処置の概要を示す。投与される処置は、0.5 mlの注射体積を有する。
【0128】
(表15)
試験群およびワクチン接種
*盲検を保つために、群2に割り当てられた対象は、2ヶ月目にプラセボを受ける。
【配列表】
【国際調査報告】