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特表2023-522172感度増強のためのアグリゲーション誘発によるアッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】感度増強のためのアグリゲーション誘発によるアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230522BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20230522BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230522BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230522BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G01N33/543 581A
G01N33/553
G01N33/53 N
G01N33/53 D
G01N33/569 B
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561424
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 US2021026660
(87)【国際公開番号】W WO2021207656
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/007,701
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】519326688
【氏名又は名称】イリティカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ILYTICA LLC
【住所又は居所原語表記】1700 Owens Street, Suite 515, San Francisco, CA 94158 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ,ティ.グローブス
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
(57)【要約】
本明細書には、レポーター粒子のアナライト粒子結合誘発アグリゲーションの迅速且つ正確な測定のためのシステム、デバイス、及び方法が提供される。対象アナライト粒子の存在下では、レポーター粒子は、アナライト濃度の増加に伴って平均粒子サイズが増加するアグリゲートを形成する。サンプルフレームから決定される平均粒子サイズの分析から、アナライトの存在及び/又は濃度を決定可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルと、ディテクターボリューム中のある量の1つ以上のタイプのレポーター粒子とを組み合わせる工程と、
前記ディテクターボリュームの1つ以上のフレームを記録する工程と、
前記1つ以上のフレーム中で、レポーター粒子のアグリゲートに、及び任意に個別非アグリゲートレポーター粒子に対応する粒子の画像を同定する工程と、
1つ以上の物体特性を決定する工程と、
前記物体特性から前記アナライト粒子の存在及び/又は濃度を決定する工程と、
を含み、
アナライト粒子の存在が、各々少なくとも2つの前記レポーター粒子と少なくとも1つのアナライト粒子とを含むアグリゲートの形成を誘発する、前記サンプル中のアナライト粒子の存在又は濃度を決定する方法。
【請求項2】
粒子の前記画像が、レポーター粒子のアグリゲート及び個別非アグリゲートレポーター粒子に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粒子の前記画像がレポーター粒子のアグリゲートに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のフレームの各々がピクセルのアレイからなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
アグリゲートの形成が、前記レポーター粒子上の結合性部位と前記アナライト粒子上の結合性部位との結合により引き起こされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レポーター粒子が2つ以上の結合性部位を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記レポーター粒子が2つ以上の同一結合性部位を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記レポーター粒子が2つ以上の非同一結合性部位を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記アナライト粒子が2つ以上の結合性部位を含有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アナライト粒子が2つ以上の同一結合性部位を含有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アナライト粒子が2つ以上の非同一結合性部位を含有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記物体特性が平均アグリゲートサイズと共に単調増加する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記物体特性が平均アグリゲートサイズに比例して増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記平均アグリゲートサイズが、検量線を利用して前記物体特性から決定可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
検量線を得る工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レポーター粒子が光学シグナルを提供する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記光学シグナルが、UV/Vis吸光度、蛍光放出、及び燐光放出から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
レポーター粒子がアナライト粒子に結合しても前記光学シグナルが実質的に不変である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
バックグラウンドフィーチャーを除去する工程をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
所与のサイズ最大値よりも大きなバックグラウンドフィーチャーを除去する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
所与のサイズ最小値よりも小さなバックグラウンドフィーチャーを除去する工程をさらに含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
画像をエロードする工程と、
画像を再構築する工程と、
画像をダイレートする工程と、
をさらに含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ディテクターボリュームの前記1つ以上のフレームにおける1つ以上のボーダー形成工程をさらに含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記レポーター粒子がナノ粒子又は量子ドットを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記レポーター粒子がナノ粒子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ナノ粒子が、1つ以上の結合性部位で機能化された金ナノ粒子(「GNP」)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記光学シグナルが表面プラズモン共鳴(「SPR」)により引き起こされる、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記表面プラズモン共鳴が局在表面プラズモン共鳴である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記量のレポーター粒子中に存在する前記1つ以上のタイプのレポーター粒子の各々が1つ以上の同一タイプの結合性部位を含有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上のタイプのレポーター粒子が単一タイプのレポーター粒子である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記単一タイプのレポーター粒子が2つ以上のアナライト粒子に同時に結合可能であり、且つ
前記アナライト粒子が2つ以上のレポーター粒子に同時に結合可能である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上のタイプのレポーター粒子が2つのタイプのレポーター粒子である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記2つのタイプのレポーター粒子の各々が、他のタイプのレポーター粒子と異なるタイプの結合性部位を含有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記2つのタイプのレポーター粒子上の前記2つのタイプの異なる結合性部位の各々が、前記アナライト粒子上の異なる結合性部位に結合する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記2つのタイプのレポーター粒子の各々が2つ以上のアナライト粒子に同時に結合可能であり、且つ
前記アナライト粒子が前記2つのタイプのレポーター粒子の各々の1つ以上に同時に結合可能である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記2つのタイプの異なる結合性部位の各々が、前記2つのタイプのレポーター粒子の各々に含有される抗体又はナノボディー上に位置する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記2つのタイプの異なる結合性部位の各々が、前記2つのタイプのレポーター粒子の各々に含有される抗体上に位置する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記2つのタイプの結合性粒子の各々上の前記抗体が、他のタイプの結合性粒子上の抗体とは異なる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記アナライトが抗体である、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体がヒト抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記2つのタイプの異なる結合性部位の1つが抗ヒト抗体を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記アナライトが、ウイルスのウイルスエンベロープ中のバイオ分子に対する抗体である、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスがコロナウイルスである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記バイオ分子が前記ウイルスエンベロープ中のタンパク質である、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルスエンベロープ中の前記タンパク質が、膜タンパク質、エンベロープタンパク質、及びスパイクタンパク質から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ウイルスエンベロープ中の前記タンパク質がスパイクタンパク質である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記2つのタイプの異なる結合性部位の少なくとも1つが、スパイクタンパク質レセプター結合性ドメイン(スパイクRBD)を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記アナライトが血液学的タンパク質である、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記血液学的タンパク質がC反応性タンパク質(「CRP」)である、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
前記2つのタイプの異なる結合性部位が抗C反応性タンパク質抗体を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記2つのタイプの異なる結合性部位がC2抗C反応性タンパク質抗体を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記2つのタイプの異なる結合性部位の1つがC6抗C反応性タンパク質抗体を含む、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記アナライトがウイルスである、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記ウイルスがコロナウイルスである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記結合性部位が前記ウイルスのエンベロープ中のタンパク質に結合する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ウイルスのエンベロープ中の前記タンパク質が、膜タンパク質、エンベロープタンパク質、及びスパイクタンパク質から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記ウイルスのエンベロープ中の前記タンパク質がスパイクタンパク質である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記結合性部位がスパイクナノボディーである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記アナライトが細菌である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記結合性部位が前記細菌上の表面糖タンパク質に結合する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記サンプルが生物学的流体である、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記サンプルが血液である、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記サンプルが生物学的流体に由来する、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記サンプルが血液に由来する、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記サンプルが、濃縮、希釈、及び/又は前処理のいずれかに付された生物学的流体である、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記サンプルがインタクト血液細胞を含有する、請求項64又は66に記載の方法。
【請求項69】
前記サンプルがインタクト赤血球を含有する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記サンプルが、暗視野イメージング能のある顕微鏡で分析される、請求項1~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記顕微鏡が、明視野イメージング能がある、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記顕微鏡が、オートフォーカス機能がある、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記顕微鏡が蛍光イルミネーターを含む、請求項70~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記蛍光イルミネーターがフライアイレンズを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記サンプルがマイクロ流体装置で処理される、請求項70~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
光学路長が0.1mm以下の厚さである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
光学路長が0.05mm以下の厚さである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
光学路長が0.02mm以下の厚さである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
光学路長が0.1mm以下の厚さである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記1つ以上のタイプのレポーター粒子が1つ以上のタイプの光学レポーター粒子である、請求項1~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
・ イメージセンサーと、
・ 画像表示機能のあるスクリーンと、
・ マイクロプロセッサーと、
・ メモリーと、
・ 前記イメージセンサーによりキャプチャーされたデータを解析する機能及びデータをディジタル分類する機能のある、前記メモリーに記憶された且つ前記プロセッサーにより実行可能な画像解析ソフトウェアと、
・ 任意に、通信インターフェースと、
を含む、請求項1~80のいずれか一項に開示される方法を実施するための装置又はシステム。
【請求項82】
前記イメージセンサーが暗視野顕微鏡の一部として操作可能である、請求項81に記載の装置又はシステム。
【請求項83】
前記イメージセンサーが、カメラ及び/又は顕微鏡から選択される、請求項82に記載の装置又はシステム。
【請求項84】
前記イメージセンサーが相補的金属酸化物半導体(CMOS)カメラである、請求項83に記載の装置又はシステム。
【請求項85】
光源又は他の電磁線源を追加的に含む、請求項81~84のいずれか一項に記載の装置又はシステム。
【請求項86】
前記光源又は他の電磁線源が発光ダイオード(LED)を含む、請求項85に記載の装置又はシステム。
【請求項87】
任意に取出し可能なサンプルチャンバーを追加的に含む、請求項81~86のいずれか一項に記載の装置又はシステム。
【請求項88】
・キャプチャーエレメントを用いて機能化されたプラズモンナノ粒子を含む光学レポーター粒子が片側に固着されてガラス又はポリマーで作製されたレポーター表面、及び
・レポーター表面の反対側に接触する暗視野顕微鏡法に好適な導波路
を追加的に含む、請求項87に記載の装置又はシステム。
【請求項89】
各固着光学レポーター分子が空間分解可能である、請求項88に記載の装置又はシステム。
【請求項90】
前記固着光学レポーター粒子がランダムにアレイ化される、請求項89に記載の装置又はシステム。
【請求項91】
前記固着光学レポーター粒子がグリッド状又はその近似形状でアレイ化される、請求項90に記載の装置又はシステム。
【請求項92】
各固着光学レポーター粒子が記録デバイスの1ピクセルとして解像可能である、請求項89に記載の装置又はシステム。
【請求項93】
前記キャプチャーエレメントが、
前記アナライトに結合する1つ以上のナノボディー、
前記アナライトに結合する1つ以上のヌクレオチド配列、及び
前記アナライトに結合する抗体又はそのフラグメント
から選択される、請求項81~92のいずれか一項に記載の装置又はシステム。
【請求項94】
前記アナライトが抗原である、請求項93に記載の装置又はシステム。
【請求項95】
各光学レポーター粒子が、前記キャプチャーエレメントとして抗体又はそのフラグメントを含む、請求項94に記載の装置又はシステム。
【請求項96】
前記アナライトがヌクレオチド配列である、請求項93に記載の装置又はシステム。
【請求項97】
各光学レポーター粒子が、前記キャプチャーエレメントとして前記アナライトヌクレオチド配列に相補的な1つ以上のヌクレオチド配列を含む、請求項96に記載の装置又はシステム。
【請求項98】
前記マイクロプロセッサー、メモリー、イメージセンサー、ソフトウェア、画像を表示可能なスクリーン、及び通信インターフェースがすべて、単一のポータブルデバイス内に含まれる、請求項93に記載の装置又はシステム。
【請求項99】
前記通信機能が無線である、請求項98に記載の装置又はシステム。
【請求項100】
前記単一のポータブルデバイスがスマートフォン及びタブレットコンピューターから選択される、請求項99に記載の装置又はシステム。
【請求項101】
前記単一のポータブルデバイスがスマートフォンである、請求項100に記載の装置又はシステム。
【請求項102】
前記スマートフォンとサンプルチャンバーと光源とを互いに安定にごく近接させて配置するためにケースを追加的に含む、請求項81~101のいずれか一項に記載の装置又はシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月9日出願の米国仮特許出願第63/007,701号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その開示はあたかもその全体が本明細書に記載されるがごとく本出願によって参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポイントオブケア診断及び現場で実施可能な他のアッセイが必要に迫られている。アッセイたとえば診断試験とりわけ血液試験の結果を分析のために専用検査施設に送ることに伴う遅延及び費用を排除できれば、より効率的且つ効果的に反応を行えるであろう。臨床検査施設は、精度の良い卓上機器で生化学的アッセイを実施することにより診断試験の結果を送達する。こうした機器を小型化したり又はその機能をモバイル電子デバイスで再現したりする取組みは困難を伴う。多くの場合、結果は使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
必要とされているのは、安価であるが正確なポイントオブケアアッセイ、たとえば、医師やその患者などに即時の正確な結果を提供する診断試験である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書には、結合イベントのアッセイによるアナライト粒子の迅速且つ正確な測定のためのシステム、デバイス、及び方法が提供される。センサーデバイスは、マクロ分子成分又はナノスケール成分たとえばナノ粒子を含む1つ以上のタイプのレポーター粒子を含有する。レポーター粒子(又は代替的に「レポーター」)は、個別レポーター粒子のイメージングが可能なように十分大きな光学シグナルを生成するとともに、個別に検出可能な物体としてサンプルフレーム内に現れる。対象アナライト(たとえば、分子、ウイルス粒子、又は細菌)の存在下では、レポーター粒子は、複数のレポーター粒子を含有するアグリゲートを形成するので、より大きな物体としてサンプルフレーム内に現れる。アナライト濃度の増加に伴って、アグリゲーション度及びアグリゲートサイズは両方とも増加する。アナライトの存在及び/又は濃度は、たとえば、サンプル画像フレームから決定される平均物体サイズ、外周、形状、色など、画像中の見分け可能なフィーチャーから決定可能である。この検出ストラテジーの鍵は、画像からエラー及びノイズを除去して解析に実用可能な物体を選択してから結果の和をとってアナライト濃度を決定するように設計された画像処理及びフィルタリング手順の適用である。
【0005】
本明細書には、
サンプルとディテクターボリューム中のある量の1つ以上のタイプのレポーター粒子とを組み合わせる工程と、
ディテクターボリュームの1つ以上のフレームを記録する工程と、
1つ以上のフレーム中でレポーター粒子のアグリゲート及び任意に個別非アグリゲートレポーター粒子に対応する物体の画像を同定する工程と、
1つ以上の物体特性を決定する工程と、
物体特性からアナライトの存在及び/又は濃度を決定する工程と、
を含み、
アナライトの存在が、各々少なくとも2つのレポーター粒子と少なくとも1つのアナライト粒子とを含むアグリゲートの形成を誘発する、サンプル中のアナライト粒子の存在又は濃度を決定する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】2つの結合性部位を有するレポーター粒子に対する設計原理を示す。
図2】4つの結合性部位を有するレポーター粒子に対する設計原理を示す。
図3】C2及びC6抗体にコンジュゲートされた金ナノ粒子を用いた抗原の検出を示す。
図4】抗体へのシトレートキャップ金ナノ粒子のコンジュゲーションのための手順を示す。
図5】(a)C2抗体及び(b)C6抗体にコンジュゲートされた金ナノ粒子の吸収スペクトルを示す。(i)ベアGNP(金ナノ粒子)、(ii)GNP-抗体コンジュゲート、(iii)GNP-抗体コンジュゲート+CRP(C反応性タンパク質)。
図6】GNPの暗視野フレームを示す。(a)CRPの不在下のコントロール、(b)アグリゲート形成を示すCRPの添加。
図7】個別クラスターの拡大図を示す。
図8】フレーム処理の例を示す。(a)元のフレーム、(b)アーチファクト除去後、(c)物体セグメンテーション後、(d)クラスターサイズの定量。
図9】フレームクリーニング手順の例を示す。(a)元のフレーム、(b)バックグラウンド、(c)クリーニングされたグレースケール。
図10】ボーダー形成手順の例を示す。(a)クリーニングされたグレースケールフレーム、(b)ボーダーフレーム、(c)B/Wフレーム。
図11】フィーチャー同定手順の例を示す。(a)クリーニングされたグレースケールフレーム、(b)ノイズ除去前のB/Wフレーム、(c)ノイズ除去後のB/Wフレーム。
図12】CRPのタイトレーションを示す。(a)DF検出によるアグリゲーションアッセイ、水平軸=CRP濃度(mg/L)、垂直軸=平均アグリゲートサイズ(μm/クラスター)、(b)従来のプラズモンセンシング、水平軸=CRP濃度(mg/L)、垂直軸=散乱強度(A.U.)。
図13】全血で実施されたアッセイを示す。(a)(i)0.1mm及び(ii)0.05mmの深さのキャピラリー。また(b)0.1mm、(c)0.05mm、及び(d)0.01mmの厚さのキャピラリーでの血液の暗視野画像も示される。
図14】(a)0.11mm、(b)0.05mm、及び(c)0.01mmのイメージング深さを有する全血でのナノ粒子の暗視野イメージングを示す。また(a)0.11mm、(b)0.05mm、及び(c)0.01mmのイメージング深さでの強度(明るさ)プロファイル、水平スケール=粒子の中心からのピクセル単位の距離、垂直スケール=16ビット強度も示される。
図15】全血で実施されたCRPアッセイを示す。水平軸=CRP濃度(mg/dL)、垂直軸=平均クラスターサイズ(ピクセル)。
図16】(iii)として模式的に例示されたSARS-CoV-2抗体の検出のための設計原理を示す。(i)及び(v)は、それぞれ、Auナノ粒子から(ii)抗ヒト抗体及び(iv)SARS-CoV-2スパイクRBDまでのPEGリンカーに対応する。
図17】全血で実施されたSARS-CoV-2アッセイを示す。(a)アグリゲートの顕微鏡観察、(b)検量線:水平軸=SARS-CoV-2抗体(mg/dL)、垂直軸=アグリゲーションサイズ(ピクセル)。
図18】直接ウイルス検出アッセイのための成分を示す。(a)(i)多数のスパイクタンパク質をハイライトしたコロナウイルスの詳細。3パートナノボディー(ii)とスパイクタンパク質(i)との相互作用に対する(b)上面視及び(c)側面視。
図19】SARS-CoV-2ウイルスの検出を示す。(a)設計原理:(i)SARS-CoV-2スパイクナノボディー、(ii)PEGリンカー、(iii)Auナノ粒子。(b)及び(c)各種レベルのウイルス濃度でのアグリゲートの顕微鏡観察。より小さなバイオ分子に対して他の箇所に記載されているアグリゲーション機序は、インタクトウイルスに対して明らかに効果的である。
図20】画像処理のためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、改善されたスピード、確度、精度、及び手頃な価格で生化学的アッセイを実施する方法を目的とする。本方法は、複数のレポーター粒子による対象アナライト粒子の結合によりマクロ分子アセンブリーへのアグリゲーションを誘発して簡単に利用可能な光学デバイスによるダイレクトイメージングを促進するアグリゲーションプロセスを利用する。
【0008】
モバイル電子デバイスで生化学的アッセイを実施する大きな需要が存在する。これは、診断試験のスピード、確度、感度、及び手頃な価格を改善する可能性がある。3次元物体の2次元(X/Y)画像をキャプチャーする実質的技術が存在する。フィルム式カメラから、ビデオカメラ、画像プレート、電荷結合デバイス、及び相補型金属酸化物(「CMOS」)チップまで、技術は進歩してきた。かかる画像は、2次元平面上への3次元物体の投影である。一般に、2次元フレームは、処理及び下流操作のためにピクセルと称されるピクチャー単位に細分割され、これは2座標アドレッシングシステムを介して適宜参照可能である。例として、正方形フレームは、512×512アレイのタイルに細分割可能であり、その各々は、整数(x,y)(ここで、x及びyは両方とも、両端の値を含めて1~512の範囲内でありうる)の順序対によりアドレス可能である。
【0009】
溶液中の通常の「低分子」有機化合物及びより小さなバイオ分子の観察は、2つの理由:(a)ディテクターの空間分解能がこうした低分子のサイズよりもかなり粗いので、各ピクセルが多数の溶質分子からのシグナルをキャプチャーすること、(b)このサイズの個別分子からのシグナルが一般にノイズを超える検出には弱すぎること、で一般に実現可能でない。個別分子のイメージングのための研究が実施されてきたが、これまでの手順は、一般に、低速、厄介、及び/又は高額である。これとは対照的に、ナノメートルスケール以上の溶質のイメージングのための技術は利用可能である。というのは、大きな粒子サイズと、多くの場合こうしたより大きな粒子から得られる増強シグナルと、が兼備されるからである。
【0010】
本開示は、マクロ分子成分又はナノスケール成分たとえばナノ粒子を含むレポーター粒子を利用することにより、アナライト粒子に対する不十分なシグナル対ノイズの問題を解決する。レポーター粒子(又は代替的に「レポーター」)は、個別レポーター粒子のイメージングが可能な程度に十分大きく、いくつかの実施形態では、有限サイズを有する粒子としてサンプルフレーム内に現れる。対象アナライト粒子の存在下では、レポーター粒子は、複数のレポーターを含有するアグリゲートを形成するので、より大きな粒子としてサンプルフレーム内に現れる。アナライト濃度の増加に伴って、アグリゲーション度及びアグリゲートサイズは両方とも増加する。サンプルフレームから決定された平均粒子サイズから、アナライトの存在及び/又は濃度を決定可能である。
【0011】
本明細書に提供される実施形態1:
サンプルとディテクターボリューム中のある量の1つ以上のタイプのレポーター粒子とを組み合わせる工程と、
ディテクターボリュームの1つ以上のフレームを記録する工程と、
1つ以上のフレーム中でレポーター粒子のアグリゲート及び任意に個別非アグリゲートレポーター粒子に対応する物体の画像を同定する工程と、
1つ以上の物体特性を決定する工程と、
物体特性からアナライトの存在及び/又は濃度を決定する工程と、
を含み、
アナライトの存在が、各々少なくとも2つのレポーター粒子と少なくとも1つのアナライト粒子とを含むアグリゲートの形成を誘発する、サンプル中のアナライト粒子の存在又は濃度を決定する方法。
【0012】
また、下記実施形態も提供される。
【0013】
実施形態2:粒子の画像がレポーター粒子のアグリゲート及び個別非アグリゲートレポーター粒子に対応する、実施形態1に記載の方法。
【0014】
実施形態3:粒子の画像がレポーター粒子のアグリゲートに対応する、実施形態1に記載の方法。
【0015】
実施形態4:1つ以上のフレームの各々がピクセルのアレイからなる、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0016】
実施形態5:アグリゲートの形成が、1つ以上のタイプのレポーター粒子の少なくとも1つ上の結合性部位とアナライト粒子上の結合性部位との結合により引き起こされる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
実施形態6:1つ以上のタイプのレポーター粒子の各々がナノ粒子又は量子ドットを含む、実施形態1に記載の方法。
【0018】
実施形態7:1つ以上のタイプのレポーター粒子の各々がナノ粒子を含む、実施形態6に記載の方法。
【0019】
実施形態8:1つ以上のタイプのレポーター粒子の各々が金ナノ粒子(「GNP」)を含む、実施形態7に記載の方法。
【0020】
実施形態9:1つ以上のタイプのレポーター粒子の各々が2つ以上の結合性部位を含有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
実施形態10:1つ以上のタイプのレポーター粒子の各々が2つ以上の同一タイプの結合性部位を含有する、実施形態9に記載の方法。
【0022】
実施形態11:1つ以上のタイプのレポーター粒子の少なくとも1つが2つ以上の非同一結合性部位を含有する、実施形態9に記載の方法。
【0023】
実施形態12:少なくとも1つのタイプの結合性部位が、レポーター粒子に含有される抗体又はナノボディー上に位置する、実施形態10及び11のどちらかに記載の方法。
【0024】
実施形態13:少なくとも1つのタイプの結合性部位が、レポーター粒子に含有される抗体上に位置する、実施形態12に記載の方法。
【0025】
実施形態14:少なくとも1つのタイプの結合性部位が、レポーター粒子に含有されるナノボディー上に位置する、実施形態12及び13のどちらか1つに記載の方法。
【0026】
実施形態15:1つ以上のタイプのレポーター粒子が単一タイプのレポーター粒子である、実施形態9に記載の方法。
【0027】
実施形態16:単一タイプのレポーター粒子が単一タイプの結合性部位を含有する、実施形態15に記載の方法。
【0028】
実施形態17:単一タイプの結合性部位が、単一タイプのレポーター粒子に含有される抗体又はナノボディー上に位置する、実施形態16に記載の方法。
【0029】
実施形態18:単一タイプの結合性部位が、単一タイプのレポーター粒子に含有される抗体上に位置する、実施形態17に記載の方法。
【0030】
実施形態19:単一タイプの結合性部位が、単一タイプのレポーター粒子に含有されるナノボディー上に位置する、実施形態17に記載の方法。
【0031】
実施形態20:単一タイプのレポーター粒子が2つ以上のアナライト粒子に同時に結合可能である、実施形態15~19のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
実施形態21:アナライト粒子が2つ以上のレポーター粒子に同時に結合可能である、実施形態15~20のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
実施形態22:1つ以上のタイプのレポーター粒子が2つのタイプのレポーター粒子である、実施形態9に記載の方法。
【0034】
実施形態23:1つ以上のタイプのレポーター粒子の各々が1つ以上の同一タイプの結合性部位を含有する、実施形態22に記載の方法。
【0035】
実施形態24:2つのタイプのレポーター粒子の各々が、他のタイプのレポーター粒子と異なるタイプの結合性部位を含有する、実施形態23に記載の方法。
【0036】
実施形態25:2つのタイプの異なる結合性部位の各々が、2つのタイプのレポーター粒子の各々に含有される抗体又はナノボディー上に位置する、実施形態24に記載の方法。
【0037】
実施形態26:2つのタイプの異なる結合性部位の少なくとも1つが、2つのタイプのレポーター粒子の1つに含有される抗体上に位置する、実施形態25に記載の方法。
【0038】
実施形態27:2つのタイプの異なる結合性部位が、2つのタイプのレポーター粒子に含有される抗体上に位置する、実施形態26に記載の方法。
【0039】
実施形態28:2つのタイプの異なる結合性部位の少なくとも1つが、2つのタイプのレポーター粒子の1つに含有されるナノボディー上に位置する、実施形態25及び26のどちらか1つに記載の方法。
【0040】
実施形態29:2つのタイプの異なる結合性部位が、2つのタイプのレポーター粒子に含有されるナノボディー上に位置する、実施形態25に記載の方法。
【0041】
実施形態30:2つのタイプのレポーター粒子の各々が2つ以上のアナライト粒子に同時に結合可能である、実施形態22~29のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施形態31:アナライト粒子が2つのタイプのレポーター粒子の各々の1つ以上に同時に結合可能である、実施形態22~30のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
実施形態32:少なくとも1つの結合性部位が、レポーター粒子に含有されるヒト抗体上に位置する、実施形態13、18、及び26のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
実施形態33:少なくとも1つの結合性部位が、レポーター粒子に含有される抗ヒト抗体上に位置する、実施形態13、18、及び26のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
実施形態34:少なくとも1つの結合性部位が、レポーター粒子に含有される抗C反応性タンパク質上に位置する、実施形態13、18、及び26のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
実施形態35:少なくとも1つの結合性部位が、レポーター粒子に含有されるC2抗C反応性タンパク質上に位置する、実施形態34に記載の方法。
【0047】
実施形態36:少なくとも1つの結合性部位が、レポーター粒子に含有されるC6抗C反応性タンパク質上に位置する、実施形態34に記載の方法。
【0048】
実施形態37:少なくとも1つの結合性部位が、レポーター粒子に含有されるバイオ分子上に位置する、実施形態9~36のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
実施形態38:バイオ分子がウイルスのタンパク質ウイルスエンベロープ由来である、実施形態37に記載の方法。
【0050】
実施形態39:バイオ分子が、膜タンパク質、エンベロープタンパク質、及びスパイクタンパク質から選択される、実施形態38に記載の方法。
【0051】
実施形態40:バイオ分子が、ウイルスのタンパク質ウイルスエンベロープ由来のスパイクタンパク質である、実施形態39に記載の方法。
【0052】
実施形態41:ウイルスがコロナウイルスである、実施形態38~40のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態42:ウイルスがSARS-CoV-2である、実施形態41に記載の方法。
【0054】
実施形態43:アナライト粒子が抗体である、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態44:アナライトが、ウイルスのウイルスエンベロープ中のバイオ分子に対する抗体である、実施形態43に記載の方法。
【0056】
実施形態45:アナライトが、膜タンパク質、エンベロープタンパク質、及びスパイクタンパク質から選択されるウイルスのウイルスエンベロープ中のバイオ分子に対する抗体である、実施形態44に記載の方法。
【0057】
実施形態46:アナライトがスパイクタンパク質に対する抗体である、実施形態45に記載の方法。
【0058】
実施形態47:アナライトがSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する抗体である、実施形態46に記載の方法。
【0059】
実施形態48:アナライトが血液学的タンパク質である、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
実施形態49:血液学的タンパク質がC反応性タンパク質(「CRP」)である、実施形態48に記載の方法。
【0061】
実施形態50:アナライトが、ウイルス、古細菌、及び細菌から選択される、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
実施形態51:アナライトがウイルスである、実施形態50に記載の方法。
【0063】
実施形態52:アナライトがコロナウイルスである、実施形態51に記載の方法。
【0064】
実施形態53:アナライトがSARS-CoV-2である、実施形態52に記載の方法。ある特定の実施形態では、結合性部位はスパイクタンパク質に結合する。
【0065】
実施形態54:アナライトが細菌である、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態55:結合性部位が、細菌上の表面糖タンパク質に結合する、実施形態54に記載の方法。
【0067】
実施形態56:アナライト粒子が2つ以上の結合性部位を含有する、実施形態1~55のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態57:アナライト粒子が2つ以上の同一結合性部位を含有する、実施形態56に記載の方法。
【0069】
実施形態58:アナライト粒子が2つ以上の非同一結合性部位を含有する、実施形態56に記載の方法。
【0070】
実施形態59:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、アナライトに対応するシグナルからの、ノイズ、アーチファクト、使用不能画像フィーチャー、及び/又はバックグラウンドの分離を可能にする、実施形態1~58のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態60:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、アナライトに対応するシグナルからのノイズの分離を可能にする、実施形態59に記載の方法。
【0072】
実施形態61:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、アナライトに対応するシグナルからのアーチファクトの分離を可能にする、実施形態59及び60のどちらか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態62:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、アナライトに対応するシグナルからの使用不能画像フィーチャーの分離を可能にする、実施形態59~61のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態63:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、アナライトに対応するシグナルからのバックグラウンドの分離を可能にする、実施形態59~62のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態64:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、非アナライト粒子の1つ以上の画像、1つ以上の使用不能画像、及び/又は1つ以上のバックグラウンドフィーチャーの除去を可能にする、実施形態1~63のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態65:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、非アナライト粒子の1つ以上の画像の除去を可能にする、実施形態64に記載の方法。
【0077】
実施形態66:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、1つ以上の使用不能画像の除去を可能にする、実施形態64及び65のどちらか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態67:物体特性が、物体の画像を処理及びフィルターするために使用されるアルゴリズムでのあらかじめ決められた限界の設定により、1つ以上のバックグラウンドフィーチャーの除去を可能にする、実施形態64~66のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態68:物体特性がアグリゲートサイズと共に単調増加する、実施形態1~67のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態69:物体特性がアグリゲートサイズに比例して増加する、実施形態68に記載の方法。
【0081】
実施形態70:物体特性がアグリゲートのメジアンサイズに関連する、実施形態68及び69のどちらか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態71:物体特性がアグリゲートの平均サイズに関連する、実施形態68及び69のどちらか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態72:物体特性がアグリゲートのRMSサイズに関連する、実施形態68及び69のどちらか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態73:平均アグリゲートサイズが、検量線を利用して物体特性から決定可能である、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態74:方法が、検量線を得る工程をさらに含む、実施形態73に記載の方法。
【0086】
実施形態75:物体特性が、直接観測又は推定されるアグリゲートのサイズ、直接観測又は推定されるアグリゲートの外周、直接観測又は推定されるアグリゲートの面積、アグリゲートの形状、アグリゲートの色、アグリゲートの明るさ、アグリゲートの反射率、アグリゲートの蛍光、及びアグリゲートの燐光から選択される、実施形態1~74のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態76:物体特性が、直接観測又は推定されるアグリゲートのサイズ、直接観測又は推定されるアグリゲートの外周、及び直接観測又は推定されるアグリゲートの面積から選択される、実施形態75に記載の方法。
【0088】
実施形態77:物体特性が、アグリゲートの明るさ、アグリゲートの蛍光、及びアグリゲートの燐光から選択される、実施形態75に記載の方法。
【0089】
実施形態78:物体特性がアグリゲートの明るさである、実施形態77に記載の方法。
【0090】
実施形態79:1つ以上のタイプのレポーター粒子が光学シグナルを提供する、実施形態1~78のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態80:光学シグナルが、UV/Vis吸光度、蛍光放出、及び燐光放出から選択される、実施形態79に記載の方法。
【0092】
実施形態81:光学シグナルが、アナライト粒子へのレポーター粒子の結合により実質的に不変である、実施形態79に記載の方法。
【0093】
実施形態82:光学シグナルが、表面プラズモン共鳴(「SPR」)により生じる、実施形態79に記載の方法。
【0094】
実施形態83:表面プラズモン共鳴が局在表面プラズモン共鳴である、実施形態82に記載の方法。
【0095】
実施形態84:バックグラウンドフィーチャーを除去する工程をさらに含む、実施形態1~83のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態85:所与のサイズ最大値よりも大きなバックグラウンドフィーチャーを除去する工程をさらに含む、実施形態84に記載の方法。
【0097】
実施形態86:所与のサイズ最小値よりも小さなバックグラウンドフィーチャーを除去する工程をさらに含む、実施形態84及び85のどちらか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態87:以下:
画像をエロードする工程と、
画像を再構築する工程と、
画像をダイレートする工程と、
をさらに含む、実施形態1~86のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態88:ディテクターボリュームの1つ以上のフレームでボーダー形成の1つ以上の工程をさらに含む、実施形態1~87のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態89:サンプルが生物学的流体である、実施形態1~88のいずれか1つに記載の方法の方法。
【0101】
実施形態90:サンプルが、希釈、濃縮、及び/又は前処理された生物学的流体である、実施形態89に記載の方法。
【0102】
実施形態91:ある特定の実施形態ではサンプルが血液に由来する、実施形態89及び90のどちらか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態92:サンプルがインタクト血液細胞を含有する、実施形態91に記載の方法。
【0104】
実施形態93:サンプルがインタクト赤血球を含有する、実施形態92に記載の方法。
【0105】
実施形態94:サンプルが顕微鏡で分析される、実施形態1~93のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態95:サンプルが、暗視野イメージング能のある顕微鏡で分析される、実施形態94に記載の方法。
【0107】
実施形態96:顕微鏡に明視野イメージング能がある、実施形態94及び95のどちらか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態97:顕微鏡にオートフォーカス機能がある、実施形態94~96のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態98:顕微鏡が蛍光イルミネーターを含む、実施形態94~97のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態99:蛍光イルミネーターがフライアイレンズを含む、実施形態94~98のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態100:光路長が0.1mm以下の厚さである、実施形態1~99のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態101:光路長が0.05mm以下の厚さである、実施形態100に記載の方法。
【0113】
実施形態102:光路長が0.02mm以下の厚さである、実施形態101に記載の方法。
【0114】
実施形態103:光路長が0.01mm以下の厚さである、実施形態102に記載の方法。
【0115】
実施形態104:サンプルがマイクロ流体装置で処理される、実施形態1~103のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
同様に提供される実施形態105:
・ イメージセンサーと、
・ 画像表示機能のあるスクリーンと、
・ マイクロプロセッサーと、
・ メモリーと、
・ イメージセンサーによりキャプチャーされたデータを解析する機能及びデータをディジタル分類する機能のある、メモリーに記憶されプロセッサーにより実行可能な画像解析ソフトウェアと、
・ 任意に、通信インターフェースと、
を含む、実施形態1~104のいずれか1つに記載の方法を実施するための装置又はシステム。
【0117】
また、下記実施形態も提供される。
【0118】
実施形態106:通信インターフェースをさらに含む、実施形態105に記載の装置。
【0119】
実施形態107:通信機能がワイヤレスである、実施形態106に記載の装置。
【0120】
実施形態108:装置又はシステムが、スマートフォン又はタブレットコンピューターと通信可能である、実施形態106及び107のどちらか1つに記載の装置。
【0121】
実施形態109:装置又はシステムが、コンピューター、スマートフォン、又はタブレットコンピューターと通信可能である、実施形態106及び107のどちらか1つに記載の装置。
【0122】
実施形態110:イメージセンサーが、暗視野顕微鏡の一部として動作することができる、実施形態105~109のいずれか1つに記載の装置。
【0123】
実施形態111:イメージセンサーが、明視野顕微鏡の一部として動作することができる、実施形態105~110のいずれか1つに記載の装置。
【0124】
実施形態112:イメージセンサーがカメラを含む、実施形態105~111のいずれか1つに記載の装置。
【0125】
実施形態113:カメラが相補型金属酸化物半導体(CMOS)カメラである、実施形態112に記載の装置。
【0126】
実施形態114:光源又は他の電磁線源をさらに含む、実施形態105~113のいずれか1つに記載の装置。
【0127】
実施形態115:光源又は他の電磁線源が発光ダイオード(LED)を含む、実施形態114に記載の装置。
【0128】
実施形態116:光源又は他の電磁線源が魚眼レンズを含む、実施形態114及び115のどちらか1つに記載の装置。
【0129】
実施形態117:任意に除去可能なサンプルチャンバーをさらに含む、実施形態105~116のいずれか1つに記載の装置。
【0130】
実施形態118:ガラス又はポリマーで作製されたレポーター表面をさらに含み、その片側にキャプチャーエレメントで機能化されたプラズモンナノ粒子を含むレポーター粒子が固着されている、実施形態105~116のいずれか1つに記載の装置。
【0131】
実施形態119:レポーター表面の反対側に接触する暗視野顕微鏡観察に好適なウェーブガイドをさらに含む、実施形態118に記載の装置。
【0132】
実施形態120:レポーター粒子が光学レポーター粒子である、実施形態118及び119のどちらか1つに記載の装置。
【0133】
実施形態121:各固着光学レポーター粒子が空間分解可能である、実施形態120に記載の装置。
【0134】
実施形態122:固着光学レポーター粒子がランダムアレイ化される、実施形態121に記載の装置。
【0135】
実施形態123:固着光学レポーター粒子がグリッド状又は略グリッド状にアレイ化される、実施形態121に記載の装置。
【0136】
実施形態124:各固着光学レポーター粒子が記録デバイスの1ピクセルとして分解可能である、実施形態121~123のいずれか1つに記載の装置。
【0137】
実施形態125:キャプチャーエレメントが、
アナライトに結合する1つ以上のナノボディー、
アナライトに結合する1つ以上のヌクレオチド配列、及び
アナライトに結合する抗体又はそのフラグメント
から選択される、実施形態118~124のいずれか1つに記載の装置。
【0138】
実施形態126:装置又はシステムが、サンプル中のアナライトの存在又は濃度を決定するための本明細書に記載の方法を実施するために使用可能である、実施形態105~125のいずれか1つに記載の装置。
【0139】
実施形態127:装置又はシステムが、サンプル中のアナライトの存在を決定するための本明細書に記載の方法を実施するために使用可能である、実施形態126に記載の装置。
【0140】
実施形態128:装置又はシステムが、サンプル中のアナライトの濃度を決定するための本明細書に記載の方法を実施するために使用可能である、実施形態126に記載の装置。
【0141】
実施形態129:アナライトが抗体である、実施形態126~128のいずれか1つに記載の装置。
【0142】
実施形態130:アナライトがウイルスに対する抗体である、実施形態129に記載の装置。
【0143】
実施形態131:アナライトがコロナウイルスに対する抗体である、実施形態130に記載の装置。
【0144】
実施形態132:アナライトがSARS-CoV-2に対する抗体である、実施形態131に記載の装置。
【0145】
実施形態133:アナライトが抗原である、実施形態126~128のいずれか1つに記載の装置。
【0146】
実施形態134:アナライトが、ウイルス、古細菌、及び細菌から選択される、実施形態126~128のいずれか1つに記載の装置。
【0147】
実施形態135:アナライトがウイルスである、実施形態134に記載の装置。
【0148】
実施形態136:アナライトがコロナウイルスである、実施形態136に記載の装置。
【0149】
実施形態137:アナライトがSARS-CoV-2である、実施形態135に記載の装置。
【0150】
実施形態138:アナライトがヌクレオチド配列である、実施形態126~128のいずれか1つに記載の装置。
【0151】
実施形態139:
装置又はシステムが、下記:
画像をエロードすること、
画像を再構築すること、及び
画像をダイレートすること、
の1つ以上を実施するために使用可能である、実施形態105~138のいずれか1つに記載の装置。
【0152】
実施形態140:装置又はシステムが、下記:
画像をエロードすること、
画像を再構築すること、及び
画像をダイレートすること、
の2つ以上を実施するために使用可能である、実施形態139に記載の装置。
【0153】
実施形態141:装置又はシステムが、下記:
画像をエロードすること、
画像を再構築すること、及び
画像をダイレートすること、
のすべてを実施するために使用可能である、実施形態140に記載の装置。
【0154】
実施形態142:装置又はシステムが、画像での1つ以上のボーダー形成工程を実施するために使用可能である、実施形態105~141のいずれか1つに記載の装置。
【0155】
実施形態143:装置又はシステムが、単一デバイス内にすべて含まれる、実施形態105~142のいずれか1つに記載の装置。
【0156】
実施形態144:装置又はシステムが、単一ポータブルデバイス内にすべて含まれる、実施形態143に記載の装置。
【0157】
実施形態145:装置又はシステムが、スマートフォン、サンプルチャンバー、及び光源を互いに安定にごく近接させて位置決めするためのケースをさらに含む、実施形態143及び144のどちらか1つに記載の装置。
【0158】
本明細書に開示される実施形態は、組合せが相互排他的でない限り、互いにさらに相互に組合せ可能である。
【0159】
用語及び定義
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。
【0160】
本明細書で用いられる場合、以下の用語は、指定された意味を有する。
【0161】
値の範囲が開示され且つ「n1~n2」という表記が用いられた場合(ただし、n1及びn2は数である)、とくに明記されていない限り、この表記は、数自体及びそれらの間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、端値を含めてそれらの間の整数であってもそれらの間で連続したものであってもよい。例として、炭素は整数単位で現れるので、「2~6個の炭素」という範囲は、2、3、4、5、及び6個の炭素を含むことが意図される。例として、「1~3μM(マイクロモル)」という範囲と比較されたい。この場合、1μM、3μM、及びいずれかの有効桁数までそれらの間のすべて(たとえば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが意図される。
【0162】
「約」という用語は、本明細書で用いられる場合、それにより修飾された数値が誤差の許容範囲内で変動可能な値を表すことを認めることが意図される。データの図又は表に与えられた平均値に対する標準偏差などの特定の誤差の許容範囲が挙げられていない場合、「約」という用語は、挙げられた値を包含する範囲、且つ有効数字を考慮して、その数値の切上げ又は切下げを行うことにより含まれる範囲を意味するものと理解すべきである。
【0163】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「確度」という用語は、真値に対する報告値又は推定値の近似度を意味するものとして用いられる。不正確な測定値、観測値、又は推定値は、真値から外れる。正確な測定値、観測値、又は推定値は、真値から外れない。
【0164】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「アグリゲート」という用語は、少なくとも1つのレポーター粒子と少なくとも1つのアナライト粒子とを含むアセンブリーを記述するために用いられる。いくつかの実施形態では、「アグリゲート」という用語は、5つ以上の全粒子(レポーター粒子及びアナライト粒子)を含むアセンブリーに対して用いられる。いくつかの実施形態では、「アグリゲート」という用語は、10以上の全粒子を含むアセンブリーに対して用いられる。いくつかの実施形態では、「アグリゲート」という用語は、20以上の全粒子を含むアセンブリーに対して用いられる。いくつかの実施形態では、「アグリゲート」という用語は、50以上の全粒子を含むアセンブリーに対して用いられる。
【0165】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「アナライト分子」という用語は、サンプル中の存在若しくは不在又は量が元々未知であり且つサンプル中の存在若しくは不在又は量に関する知見が有用でありうる分子又は粒子を記述するために用いられる。アナライト分子の例としては、バイオ分子、たとえば、ペプチド、タンパク質、サイトカイン、及びプリオン、抗体及びそのフラグメント、核酸(DNA/RNA)及びそれを含有する粒子、たとえば、ヒストン、小さな有機分子及びバイオ無機分子、たとえば、炭水化物、脂質、ホルモン、並びに代謝の中間体及び産物、マクロ分子、たとえば、マクロ環、バイオポリマー(たとえば、オリゴ糖、ポリフェノール、及びプラスチック)、並びにウイルス、ウイルス粒子、ウイルス産物(たとえば、ウイロカイン)が挙げられる。
【0166】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「アナライト粒子」という用語は、サンプル中の存在若しくは不在又は量が元々未知であり且つサンプルに含有される存在若しくは不在又は量を知ることが有用でありうる、以上に記載の「アナライト分子」及びより大きな粒子を包含するように用いられる。アナライト粒子の例としては、ウイルス、原核生物(細菌及び古細菌を含む)、原生生物(アメーバ、襟鞭毛虫、繊毛虫、珪藻、渦鞭毛藻、ジアルジア属(Giardia)、プラスモディウム属(Plasmodium)、及び卵菌を含む)が挙げられる。
【0167】
また、アナライト粒子は、バイオマーカー、すなわち、生物の生物学的状態(たとえば、疾患状態や非疾患状態などの状態)に関連する並びに疾患、傷害、又は細胞若しくは生物の損傷の存在を報告しうる、組成物及び/若しくは分子又は組成物及び/若しくは分子の複合体としてカテゴリー化しうる。かかるマーカーが抗体又はそのフラグメントに結合したとき、それは抗原といいうる。本明細書に開示されアグリゲーションアッセイにより検出されるアナライト粒子の有意(たとえば、正常及び異常)レベルの値は、関連技術分野の当業者に公知であろう。
【0168】
「アナライト」という用語は、コデイン、ロイコトリエン、PSAなどのアナライト粒子で構成されたある特定のタイプの物質を意味しうる。「アナライト」という用語はまた、アナライト粒子の量又は濃度を意味しうる。「アナライト」という用語はまた、いくつかのアナライト粒子を意味しうる。ある特定の用法では、文脈から明らかであろうが、「アナライト」という用語は、単一アナライト粒子を意味しうる。
【0169】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「エリア検出器」という用語は、発生源の画像を記録可能な、すなわち、入射光学シグナル強度だけでなく光学シグナル源も記録可能な記録デバイスを意味する。エリア検出器の通常の例は、テレビカメラ、ディジタルSLRカメラ、及びセルフォンカメラである。
【0170】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「結合」という用語は、レポーター粒子とアナライト粒子との非共有結合相互作用を意味する。いくつかの実施形態では、結合は水素結合による。いくつかの実施形態では、結合はファンデルワールス相互作用による。いくつかの実施形態では、結合は静電及び/又は双極子相互作用による。いくつかの実施形態では、結合は上述した相互作用の1つ以上の組合せによる。いくつかの実施形態では、結合は1mM以下の解離定数に対応する。いくつかの実施形態では、結合は、1μM以下の解離定数に対応する。いくつかの実施形態では、結合は、1nM以下の解離定数に対応する。
【0171】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「結合等温線」という用語は、レポーター粒子/アナライト粒子系の結合挙動を意味する。レポーター粒子及びアナライトの両方が単一結合性部位を有する系では(したがって、この場合にはアグリゲート形成は可能でない)、「結合等温線」という用語は、単に結合レポーター粒子/全レポーター粒子の比を意味する。この比は、アナライト粒子濃度の増加と共に増加し、最終的にはほぼすべてのレポーター粒子がアナライト粒子に結合されるので1に近づくことが、理解されよう。この挙動はまた、レポーター粒子又はアナライトのどちらかが単一結合性部位を有するときに得られるであろう。なぜなら、アグリゲーション(それはレポーター粒子及びアナライト粒子の両方が複数結合を必要とする)が可能ではないからである。レポーター粒子及びアナライト粒子の両方が複数の結合性部位を有するとき、数及び粒子サイズもまた結合等温線に含まれる。
【0172】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「結合性部位」という用語は、結合パートナーとの非共有結合を形成可能であり、そのため、粒子及び結合パートナーを近接して保持する、レポーター粒子又はアナライト粒子のどちらかのフィーチャーを意味する。いくつかの実施形態では、レポーター粒子上の結合性部位は、アナライト粒子上の結合性部位に排他的に結合するであろう。いくつかの実施形態では、アナライト粒子上の結合性部位は、レポーター粒子上の結合性部位に排他的に結合するであろう。ある特定のレポーター粒子及びある特定のアナライト粒子は、単一結合性部位を含有する。ある特定のレポーター粒子及びある特定のアナライト粒子は、2つの結合性部位を含有する。ある特定のレポーター粒子及びある特定のアナライト粒子は、2つ以上の結合性部位を含有する。ある特定のレポーター粒子及びある特定のアナライト粒子は、2つの同一結合性部位を含有する。ある特定のレポーター粒子及びある特定のアナライト粒子は、2つの非同一結合性部位を含有する。ある特定のレポーター粒子及びある特定のアナライト粒子は、2つ以上の同一結合性部位を含有する。ある特定のレポーター粒子及びある特定のアナライト粒子は、2つ以上の非同一結合性部位を含有する。いくつかの実施形態では、レポーター粒子又はアナライトのどちらかは、複数の結合性部位を含有する。いくつかの実施形態では、複数の結合性部位の各々の結合挙動は、結合性部位の残りの各々に相関しない。言い換えれば、パートナーとの非共有結合を形成する1つの結合性部位の可能性は、同一粒子上の他の結合性部位により形成される非共有結合の存在又は不在に影響を受けない。
【0173】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「ビニング」という用語は、2つ以上のピクセルからのシグナルを組み合わせて1つのシグナルにすることに意味する。ビニングは、シグナル対ノイズを改善するために空間分解能を犠牲にできるとき使用可能である。例として、「2×2のビニング」とは、ピクセルを2×2の正方形にグループ化して各正方形に含まれるピクセルからのシグナルの和をとることを意味する。
【0174】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「バイオ分子」という用語は、限定されるものではないがペプチド、タンパク質、核酸、糖、単糖及び多糖、脂質、リポタンパク質、全細胞などを含めて、検出(定性的又は定量的のどちらか)が望まれうるいずれかのタイプの有機分子又はバイオ無機分子を含む。
【0175】
本明細書で用いられる「カメラ」という用語は、ビジュアル画像をたとえばディジタルフレームとして記録するタイプのイメージセンサーを意味する。「メガピクセルカメラ」とは、百万又は何百万ピクセル/フレームを記録可能なカメラのことである。多くのスマートフォンカメラは、10メガピクセル又はそれ以上のカメラを含む。
【0176】
本明細書で用いられる「通信インターフェース」という用語は、本明細書で用いられるデバイス又はシステムから他のデバイス又はシステムにデータを転送するための手段を意味する。たとえば、無線通信インターフェースの例としては、モバイルフォンなどの無線デバイスで使用されるもの、たとえば、セルラー、wi-fi、及びBluetoothの技術が挙げられる。
【0177】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「臨床使用」という用語は、未知濃度のアナライト粒子を含有するサンプルの分析方法を記述するために用いられる。「臨床使用」という用語は、「非臨床使用」と区別することが意図される。臨床使用としては、限定されるものではないが、医療現場での患者におけるアナライト粒子濃度の決定のための使用が挙げられる。本明細書で単独又は組合せで用いられる「非臨床使用」という用語は、既知濃度のアナライト粒子を含有するサンプルの分析方法を記述するために用いられる。非臨床使用としては、限定されるものではないが、明確に定義されたアナライト粒子濃度でのデバイス及び方法の挙動の決定のためのサンプル測定が挙げられる。非臨床使用は、臨床前使用及び臨床後使用の両方を包含する。
【0178】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「濃度」という用語は、単位溶液体積当たりの溶液中溶質量を意味する。濃度は、モル濃度単位、すなわち、溶液1リットル当たりの溶質モル数、又は数濃度、すなわち、溶液1リットル当たりの溶質分子数又は代替的に溶液1リットル当たりの溶質粒子数で特定可能である。モル濃度及び数濃度は、簡単に相互変換可能である。本明細書で用いられる場合、「濃度」という用語は、「溶液」の伝統的定義以外の系、たとえば、固形担体にテザー連結された分子、及び「分子」の伝統的定義以外の粒子、すなわち、ウイルス及び微生物を含有する系を含むように拡張される。
【0179】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「検出する」又は「検出」という用語は、サンプル中のアナライト粒子の実在、存在、又は実態の決定方法を記述するために用いられる。
【0180】
「発散」という用語は、記録デバイスに含まれる垂直からの逸脱を意味する。理想化されたエリア検出器型記録デバイスは、検出器の平面に垂直な光線のみを受け取るであろう。実際のエリア検出器は、垂直からある角度ずれて到達する光線を許容するであろう。この特性はシグナル対ノイズを増加させる可能性があるが(検出器がより多くの光線を受け取るため)、それに加え、許容される発散角の大きさ、及びエリア検出器のピクセルサイズ、及びエリア検出器とサンプル平面との間の距離に依存して、空間分解能を減少させる。
【0181】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「フレーム」という用語は、記録デバイスによりキャプチャーされる画像の実質的に全部を意味する。ある特定のカメラは、ある時点で1つのフレームをキャプチャーする。ある特定のカメラは、ある期間にわたり一連のフレームをキャプチャーする。
【0182】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「画像」という用語は、記録デバイスによりキャプチャーされる特定物体に起因するカメラシグナル中のフィーチャーを意味する。たとえば、月の画像は、望遠鏡に取り付けられたカメラでキャプチャー可能であり、顧客の画像は、ATMカメラでキャプチャー可能である。いくつかの文脈では、「画像」という用語は、シグナルの起源に関係なくカメラシグナルの全部を意味する。用語の意味は、文脈から明らかになるであろう。
【0183】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「インキュベートする」という用語は、アナライト分子を潜在的に含有する可能性のあるサンプルにレポーター粒子を暴露するプロセスを記述するために用いられる。
【0184】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「オブロング」という用語は、等しくない寸法を有するボリュームを記述するために用いられる。オブロングボリュームの例としては、端面間の距離が端面に平行な寸法よりも有意に長いか又は有意に短いかのどちらかであるプリズム又はシリンダーが挙げられる。オブロングボリュームのさらなる例は、1つの軸が他の軸よりも有意に長いか又は有意に短いかのどちらかである楕円体である。
【0185】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「光路」という用語は、レポーター粒子から検出器までの経路を記述するために用いられる。
【0186】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「光学レポーター粒子」又は同義的に「光学レポーター」という用語は、アナライト粒子の存在若しくは不在又は量若しくは濃度を光学シグナルで報告可能なレポーター粒子を記述するために用いられる。光学レポーター粒子に接触するアナライト粒子の存在又は不在(任意に、ある特定のアッセイ方式では他の光学レポーター粒子を併用する)は、光学シグナルの変化を誘発する。アナライト粒子に結合された光学レポーター粒子(「結合光学レポーター粒子」)は、アナライト粒子に結合されない光学レポーター粒子(「非結合光学レポーター粒子」)とは異なるシグナルを発するであろう。
【0187】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「光学シグナル」という用語は、光学レポーター粒子に由来するシグナルを記述するために用いられる。光学シグナルは、スペクトルの可視領域内又はスペクトルの可視領域外に含まれうる。シグナルは、たとえば、
・光の波長、
・シグナルの強度、
・明るさ、
・シグナル又はスペクトルの形状、
・スペクトルバンドの存在又は不在、
・吸収バンドの吸光係数、
・吸収バンドのλmax
・発光バンドの量子収率、又は
・発光バンドの蛍光異方性
でありうる。
【0188】
いくつかの実施形態では、レポーター粒子の光学シグナルは、アナライト粒子が結合すると変化する。いくつかの実施形態では、レポーター粒子の光学シグナルは、アナライト粒子が結合しても不変の状態が保たれる。
【0189】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「ピクセル」という用語は、他のピクセルとは独立してシグナルを測定可能である、イメージセンサーなどのエリア検出器上の領域を意味する。エリア検出器は、通常、エリア検出器製造業者により決定された各ピクセルサイズ及び二方向のピクセル数で2次元グリッドのピクセルに分割される。
【0190】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「精度」という用語は、報告値又は推定値に伴う誤差の推定を意味するものとして用いられる。低精度の測定、観測、又は推定は、実際の値に対するこの数値の近似度が高度の不確実性を伴う。高精度の測定、観測、又は推定は、実際の値に対するこの数値の近似度が低度の不確実性を伴う。精度は、多くの場合、グラフ上のエラーバー又は数値の範囲を用いることにより定量可能である。たとえば、10.5±0.1として報告された推定値は、真値が10.4~10.6である可能性が非常に高く真値がこの範囲外にある可能性がゼロではないが小さいことを示唆する。
【0191】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「オリゴペプチド」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、ペプチド結合により連結一体化された2つ以上のアミノ酸を含むいずれかの組成物を含む。ポリペプチドが20天然アミノ酸と通常いわれる20アミノ酸以外のアミノ酸を含有しうることは、分かるであろう。また、ポリペプチドは、末端アミノ酸を含めて当技術分野で公知の任意の手段により修飾された(天然又は非天然にかかわらず)1つ以上のアミノ酸を含みうる。ポリペプチド修飾の例としては、たとえば、グリコシル化又は他の翻訳後修飾が挙げられる。本開示のポリペプチドに存在しうる修飾としては、限定されるものではないが、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリケーション、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、たとえば、アルギニル化、及びユビキチン化が挙げられる。
【0192】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「定性分析」という用語は、サンプル中のアナライト粒子の不在又は存在の決定方法を記述するために用いられる。いくつかの実施形態では、定性分析法は、サンプル中のアナライトの単一粒子の存在又は不在を報告する。いくつかの実施形態では、定性分析法は、ある特定の閾値未満のレベルでアナライト分子を含有するサンプル中のアナライトの不在を不適正に報告する。いくつかの実施形態では、定性分析法は、ある特定の閾値未満のレベルでアナライト粒子を含有するサンプル中のアナライトの不在を不適正に報告する。
【0193】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「定量分析」という用語は、サンプル中のアナライト粒子の量の決定方法を記述するために用いられる。
【0194】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「記録デバイス」という用語は、光学シグナルを記録するためのデバイスを意味する。ある特定の実施形態では、光学シグナルは電気シグナルに変換される。ある特定の実施形態では、記録デバイスは電荷結合(「CCD」)デバイスである。ある特定の実施形態では、記録デバイスは相補型金属酸化物半導体(「CMOS」)デバイスである。
【0195】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「レポーター粒子」という用語は、対象アナライト粒子に結合するとともにアナライトが結合すると複数のレポーター粒子を含むアグリゲートを形成する分子、超分子粒子、又はナノスケール粒子を記述するために用いられる。
【0196】
「レポーター」という用語は、レポーター粒子で構成される物質のタイプを意味しうる。「レポーター」という用語はまた、レポーター粒子の量又は濃度を意味しうる。ある特定の用法では、文脈から明らかであろうが、「レポーター」という用語は、単一レポーター粒子を意味しうる。
【0197】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「レポーターボリューム」という用語は、レポーター粒子が位置する測定デバイスのボリュームを記述するために用いられる。レポーターボリュームは、サンプルコンパートメントと実質的に同一でありうるか、又はレポーターボリュームはより小さくしうる。ある特定の実施形態では、レポーター粒子に対する光路に平行なレポーターボリュームの寸法は、小さいであろう。ある特定の実施形態では、レポーターボリュームは単層を構成するであろう。
【0198】
本明細書で単独又は組合せで用いられる「サンプル」という用語は、対象アナライト粒子を含有する組成物を記述するために用いられる。サンプルは、多くの場合、流体状態たとえば水性溶液であろう。サンプルは、化学的又は生物学的なものでありうる。試験対象源に由来する血液、血漿、若しくは水、又は植物、動物、若しくはヒトの組織サンプルに由来する抽出物は、生物学的サンプルの例である。化学的サンプルは、生物起源の物質を含有していないもの、たとえば、石油化学廃棄物又は産業廃棄物を含有する水サンプルでありうる。生物から取り出される生物学的サンプルとしては、限定されるものではないが次のもの:血液、血清、血漿、尿、粘液、唾液、痰、糞便、及び他の生理学的分泌物、さらには組織抽出物、及び又は対象標的粒子を含有しうる身体のいずれかの他の構成要素が挙げられうる。他の類似の検体、たとえば、細胞又は組織の培養物又は培養ブロスも対象となる。
【0199】
生物学的サンプルは、新鮮であっても貯蔵されていてもよい(たとえば、血液バンクに貯蔵された血液又は血液画分)。生物学的サンプルは、本発明のアッセイのための特別に得られた体液であっても、本発明のアッセイのためのサブサンプル化しうる他の目的で得られた体液であってもよい。一実施形態では、生物学的サンプルは全血である。全血は、標準的臨床手順を用いて被験者から得られうる。他の一実施形態では、生物学的サンプルは血漿である。血漿は、抗凝固処理血液の遠心分離により全血サンプルから得られうる。かかるプロセスは、白血球成分のバフィーコート及び血漿の上清を提供する。他の一実施形態では、生物学的サンプルは血清である。血清は、抗凝固剤フリーのチューブに採取された全血サンプルの遠心分離により得られうる。血液は、遠心分離前に凝固させてもよい。遠心分離により得られる帯黄帯赤色流体は血清である。他の一実施形態では、サンプルは尿である。サンプルは、所要により適切な緩衝溶液への希釈により前処理したり、ヘパリン処理したり、所望により濃縮したり、又はいくつかの方法のいずれかにより、たとえば、限定されるものではないが超遠心分離、高速液体クロマトグラフィー(FPLC)分画、若しくはデキストラン硫酸によるアポリポタンパク質B含有タンパク質の沈殿、又は他の方法により分画したりしうる。生理pHのいくつかの標準的水性緩衝溶液のいずれか、たとえば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などを使用可能である。
【0200】
結合現象に関して本明細書で用いられる「飽和」という用語は、ほぼすべてのレポーター粒子がアナライト粒子に結合された状態を意味する。飽和状態の特徴は、アナライト粒子の濃度の増加がレポーター粒子の結合度の小さな増加を引き起こすことである。
【0201】
本明細書で用いられる「スマートフォン」という用語は、モバイルオペレーティングシステムと、音声、SMS、及びインターネットデータ通信、典型的にはwi-fiのための統合モバイルブロードバンドセルラーネットワーク接続と、を備えたハンドヘルドパーソナルコンピューターを意味する。
【0202】
本明細書で用いられる「タブレットコンピューター」又は「タブレット」という用語は、典型的には、モバイルオペレーティングシステム、LCDタッチスクリーンディスプレイ、再充電可能電池、及び無線(任意にセルラー)通信インターフェースを備えた薄型でフラットなポータブルパーソナルコンピューターを意味する。
【0203】
アグリゲート形成
アグリゲート形成を促進するために、レポーター粒子は、複数の結合性部位を含み、その各々は、対象アナライト粒子上の複数の結合性部位の1つを認識してそれに結合可能である。レポーター粒子及びアナライトは両方とも、複数の結合性部位を含有するので、両方ともより多くの複数の結合性パートナーに同時に結合して多核アグリゲートを形成可能である。この設計の要件は、(a)単一アナライト粒子が2つ以上のレポーター粒子に同時に結合可能であること、及び(b)単一レポーター粒子が2つ以上のアナライト粒子に同時に結合可能であること、である。
【0204】
この検出システムの原理は、図1(a)~(d)に例示される。対象アナライト粒子は、2つの三角形に装着された卵形として図1(a)に模式的に表される2つの同一結合性部位を含有する。アナライト粒子は、反応矢印の上に描かれた2つのレポーター粒子に暴露され、その各々は、三角形結合性部位を各々含有する。アナライト粒子及び2つのレポーター粒子は、組み合わされて超分子三元1:2アナライト粒子:レポーター粒子複合体を形成する。重要なこととして、2つのレポーター粒子は、超分子アグリゲートの形成により近接状態になる。図1(b)は、類似の系を示す。その差異は、アナライト粒子が2つの異なる結合性部位(三角形及び矩形)を有すること、及び媒体が2つのタイプのレポーター粒子を含有する(三角形及び矩形の結合性部位を含有する)こと、である。
【0205】
図1(c)は、系が2つの同一(三角形)結合性部位を有するレポーター粒子を含有し、その各々がアナライト粒子中の結合性部位に結合可能である、図1(a)の系を詳述する。反応の生成物は、2つのレポーター粒子と2つのアナライト粒子とを含有する。しかしながら、レポーター粒子及びアナライト粒子の両方に遊離結合性部位が存在するため、追加のレポーター粒子及びアナライト粒子が超分子構造にさらに結合可能である。
【0206】
図1(d)は、系が2つの異なる(三角形及び矩形)結合性部位を有するレポーター粒子を含有し、その各々がアナライト粒子中の結合性部位に結合可能であるという点で、図1(b)の系に基づく。図1(c)の系と同様に、開示された生成物は、2つのレポーター粒子と2つのアナライト粒子とを含有し、追加のレポーター粒子及びアナライト粒子が超分子構造にさらに結合する可能である。
【0207】
設計原理の詳細は、図2(a)~(b)に示されている。ここでは、レポーター粒子は、各々4つの結合性部位を有し、2つの結合性部位を有するアナライト粒子に結合することが意図される。図2(a)には、この設計により、各々2つの同一結合性部位を有する4つのアナライト粒子に同時に結合されるレポーター粒子が示される。アナライト粒子の各々は、続いて、追加のレポーター粒子に結合される。これらの4つの追加のレポーター粒子の各々は、続いて、3つの追加のアナライト粒子に結合可能であり、全体で5つのレポーター粒子と8つのアナライト粒子とのアセンブリーを形成することは、明らかであろう。本プロセス(簡潔にするために示されていない)は、さらなるアナライト粒子の結合によりさらに拡大可能である。
【0208】
原理は、異なる結合性部位を有する第2のレポーター粒子の導入により拡大可能である。図2(b)には、2つの異なる結合性部位でアナライト粒子に結合することが意図された、異なる結合性部位を有する非同一レポーター粒子のペアが示される。右側に示されるアセンブリーは、第1のレポーター粒子と各々2つの結合性部位の1つで結合された4つのアナライト粒子との1:4アグリゲートの形成により核形成される。アナライト粒子の各々は、続いて、第2のタイプのレポーター粒子の1つに結合される。前と同様に、これらの4つの追加のレポーター粒子の各々は、続いて、3つの追加のアナライト粒子に結合可能であり、全体で5つのレポーター粒子と(第1のタイプが1つ及び第2のタイプが4つ)と8つのアナライト粒子とのアセンブリーを形成する。本プロセスはまた、さらなるアナライト粒子の結合によりさらに拡大可能である。
【0209】
アナライト粒子の存在は、いくつかのレポーター粒子を含有するアグリゲートのアセンブリーを促進する。単純にするために、レポーター粒子上のクロモフォアは互いに相互作用しないと仮定すると、単一アグリゲート中の複数のレポーター粒子の応答は相加的であろう。すなわち、アセンブリー中の2つのレポーター粒子は、単一レポーター粒子の2倍のスペクトルシグナルを提供するであろう。そのほか、本開示の目的では、2つ以上のレポーター粒子を含有するアセンブリーは、必然的に、単一レポーター粒子の2倍以上のサイズになるであろう。
【0210】
レポーター粒子及びアナライト粒子が各々単一結合性部位を有して1:1複合体のみを形成可能であるより単純な系の結合現象は、化学及びバイオ化学で広範に研究されモデリングされてきた。2つの粒子間の結合度及び1:1複合体の形成は、分子間相互作用の強度により支配される。固定濃度の全レポーター粒子が与えられたとすると、非結合レポーター粒子の濃度は、アナライト粒子濃度の増加に伴って漸近的に0に接近する。
【0211】
レポーター粒子又はアナライト粒子のどちらかが複数の結合性部位を含有する場合、1:1超の化学量論比を有する複合体を形成可能である。複数の結合性部位が独立して動作すると仮定すると、結合挙動の数学的モデリングは依然として管理可能である。たとえば、3つの等価な結合性部位を有するレポーターは、1:1、1:2、及び1:3レポーター:アナライト複合体を形成可能である。さらに、すべてのレポーター結合性部位の90%がアナライト粒子により占有される(及びすべてのレポーター結合性部位の10%がアナライト粒子により占有されない)条件では、レポーター粒子の99%は、少なくとも1つのアナライトに結合するであろう。各レポーター結合性部位の占有率から、各種(すなわち、遊離レポーター粒子、並びに1:1、1:2、及び1:3複合体)の割合を統計により推定可能である。
【0212】
レポーター粒子及びアナライト粒子の両方が複数の結合性部位を含有する場合、各可能な複合体の割合の数学的予測は、より厄介になりそれほど正確でないものになろう。結合挙動は、ある特定の単純化及び仮定を利用することにより予測可能である。より現実的には、既知のアナライト粒子濃度の溶液の分析から検量線を構築可能である。こうした検量線は、プロトタイプデバイス又は当該分野の個別デバイスのどちらかで得ることが可能である。さらに、ある特定の実施形態では、検量線は、デバイスの繰返し使用後又はとくにレポーター粒子が経時的に分解するとき拡張サービス時間後に再決定可能である。
【0213】
レポーター粒子
測定デバイス及びシステムは、レポーター粒子を含み、そして本明細書に開示される方法は、それを利用する。レポーター粒子の要件は、(a)複数のアナライト粒子に結合するための複数の結合性部位、(b)光学シグナルを提供してイメージングを可能にする能力、(c)個別レポーター粒子のイメージングが可能なように十分大きいこと、である。そのため、「レポーター粒子」という用語は、「分子」の代替定義により包含されるよりも大きなものでありうるアセンブリーを包含しうる。レポーター粒子は、アナライト粒子の存在下及び任意に不在下で光学シグナルを提供する。
【0214】
レポーター粒子は、単一レポーター粒子が複数のアナライト粒子に結合できるように複数の結合性部位を含む。ある特定の実施形態では、レポーター粒子は、複数の同一結合性部位を含み、その各々は、アナライト粒子上の複数の同一結合性部位の1つに結合可能である。ある特定の実施形態では、レポーター粒子は、複数の実質的に同一の結合性部位を含み、その各々は、アナライト粒子上の複数の同一又は実質的に同一の結合性部位の1つに結合可能である。ある特定の実施形態では、レポーター粒子は、複数の非同一結合性部位を含み、その各々は、アナライト粒子上の複数の同一、実質的に同一、又は非同一結合性部位に結合可能である。
【0215】
レポーター粒子の結合性部位は、異なるタイプの分子機能性により提供可能である。レポーター粒子は、抗体(又はそのフラグメント)、核酸、タンパク質、及びペプチドを含みうるとともに、それらはいずれも、化学修飾又は生化学修飾されうるうえ、いずれも、アナライト粒子との結合相互作用を提供可能である。現代の免疫化学的方法は、本開示の方法に好適なレポーター粒子の合成を可能にする。抗体は、各種対象アナライト粒子に対して産生可能であり、とりわけより大きなアナライト粒子に対しては、アナライト粒子の異なる領域に結合するとともにアナライト粒子に同時に結合可能な異なる抗体を同定可能である。代替的に、レポーター粒子は、合成モチーフ、たとえば、ある特定のアナライト粒子に結合可能な、ホスト/ゲスト若しくは超分子化学で設計された及び/又は有機化学で合成されたものを含有可能である。
【0216】
レポーター粒子は、結合の存在下及び任意に不在下で光学シグナルを提供する。いくつかの実施形態では、光学シグナルは、紫外-可視(「UV/vis」)吸収により提供される。いくつかの実施形態では、光学シグナルは、蛍光又は燐光放出により提供される。ある特定の実施形態では、レポーター粒子の光学シグナルは、1つ以上のアナライト粒子が結合しても実質的に不変である。ある特定の実施形態では、レポーター粒子の光学シグナルは、単一アナライト粒子が結合しても実質的に不変であり、複数のアナライト粒子が結合すると変化する。ある特定の実施形態では、レポーター粒子の光学シグナルは、1つ以上のアナライト粒子が結合すると変化する。いくつかの実施形態では、光学シグナルの変化は吸光係数の変化である。いくつかの実施形態では、光学シグナルの変化は量子収率の変化である。いくつかの実施形態では、光学シグナルの変化は吸収波長の変化である。いくつかの実施形態では、光学シグナルの変化は放出波長の変化である。いくつかの実施形態では、光学シグナルの変化は蛍光異方性の変化である。
【0217】
レポーター粒子は、クロモフォアを含みうる。ある特定の実施形態では、クロモフォアは、レポーター粒子に共有結合で装着されており、代替的に、それは、官能基化を介してレポーター粒子に、たとえば、量子ドット又はプラズモンナノ粒子の表面に装着しうる。ある特定の実施形態では、クロモフォアは電磁線を吸収する。ある特定の実施形態では、クロモフォアは、可視及び紫外から選択されるスペクトル領域の電磁線を吸収する。代替的に、クロモフォアは電磁線を散乱しうる。ある特定の実施形態では、クロモフォアは発光性である。ある特定の実施形態では、クロモフォアは蛍光性である。ある特定の実施形態では、クロモフォアは燐光性である。
【0218】
いくつかの実施形態では、レポーター粒子は、さらなる修飾を行うことなく個別レポーター粒子のイメージングが可能なように十分なサイズを有する。いくつかの実施形態では、レポーター粒子は、生化学的起源の部分と合成部分とを含むキメラ粒子でありうる。例としては、抗体機能化プラズモンナノ粒子又は量子ドット及びヌクレオチド機能化プラズモンナノ粒子又は量子ドットが挙げられる。合成部分は、個別レポーター粒子のイメージングが可能なように必要とされる光学シグナル及び/又はサイズを提供可能である。いくつかの実施形態では、レポーター粒子は、ナノ粒子又は量子ドットを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子又は量子ドットは、共有結合を介して結合性部位にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子又は量子ドットは、エステル又はアミド結合を介して結合性部位にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子又は量子ドットは、チオエーテル又はチオールエステル結合を介して結合性部位にコンジュゲートされる。
【0219】
物体特性
本開示は、アグリゲーション度に関連する情報を提供可能でひいてはアナライトの存在又は濃度に関連する情報を提供するアグリゲートの特性を測定する。したがって、「物体特性」という用語は、アグリゲートのサイズに関連するアグリゲートの性質を意味する。いくつかの実施形態では、物体特性は、アグリゲートのメジアンサイズに関連する。いくつかの実施形態では、物体特性は、アグリゲートの平均サイズに関連する。いくつかの実施形態では、物体特性は、アグリゲートのRMSサイズに関連する。いくつかの実施形態では、物体特性は、アグリゲートの(メジアン/平均/RMS)サイズに正比例する。いくつかの実施形態では、物体特性は、アグリゲートの(メジアン/平均/RMS)サイズに単調に関連する。いくつかの実施形態では、物体特性とアグリゲートの(メジアン/平均/RMS)サイズとの関係は、検量線を利用して推定可能である。いくつかの実施形態では、物体特性とアグリゲートの(メジアン/平均/RMS)サイズとの関係は、ニュートン・ラフソン最小二乗当てはめ法を利用して推定可能である。いくつかの実施形態では、物体特性は、直接観測又は推定されるアグリゲートの(メジアン/平均/RMS)サイズ、直接観測又は推定されるアグリゲートの(メジアン/平均/RMS)外周、アグリゲートの形状、アグリゲートの色、アグリゲートの明るさ、アグリゲートの反射率、アグリゲートの発光(蛍光/燐光)から選択される。いくつかの実施形態では、粒子サイズ(メジアン/平均/RMS)の推定は、2つ以上のかかる物体特性の組合せから決定される。
【0220】
画像処理
ある特定の実施形態では、ディテクターボリュームのフレームは、さらなる画像処理をなんら伴うことなく「生」で評価される。ある特定の実施形態では、ディテクターボリュームのフレームは、真の粒子アグリゲートからノイズ、エラー、又はバックグラウンドフィーチャーを分離するためにフィルターされる。ある特定の実施形態では、ディテクターボリュームのフレームは、真の粒子アグリゲートからエラーを分離するためにフィルターされる。ある特定の実施形態では、ディテクターボリュームのフレームは、真の粒子アグリゲートからノイズを分離するためにフィルターされる。
【0221】
不活性レポーター粒子
本明細書に記載の方法は、不活性なある特定の分率のレポーター粒子に対処する。すなわち、こうした不活性レポーター粒子からの光学シグナルは、不在であるか又はバルクのレポーター粒子とは実質的に異なるかのどちらかである。この挙動は、(a)レポーター粒子がアナライト粒子に結合できないこと、又は(b)レポーター粒子がアナライト粒子に結合可能であるが光学シグナルを生成しないか若しくはレポーター粒子の残部とは実質的に異なる光学シグナルを生成すること、に起因しうる。
【0222】
両タイプの不活性レポーター粒子の存在は、本開示のアグリゲーションベースのアッセイでは他の各種方法よりも複雑化をもたらさないであろう。第1の場合には、アナライト粒子に結合しないレポーター粒子は、アグリゲート形成プロセスに関与せずにアッセイで単に個別粒子として残留するにすぎないであろう。第2の場合には、アグリゲーションベースのアッセイでは、光学シグナルの役割がアグリゲートのイメージングを行ってそのサイズを推定することであるので、レポーター粒子とアナライト粒子との結合が光学シグナルを撹乱することは避けられる。こうした理由で、アナライト粒子に結合しても光学シグナルが不変の状態を保つレポーター粒子が好ましいこともある。これとは対照的に、光学シグナルの変化がレポーター粒子間で一様でない場合、レポーター/アナライト結合に依拠する多くアッセイは、十分に性能を発揮しないか又はまったく発揮しないであろう。
【0223】
本開示のある特定の実施形態では、不活性レポーター粒子は、アグリゲート化した個別タンパク質(抗体を含む)、正確にフォールディングされなかったペプチド又はタンパク質、不適正残基や欠損クロモフォアを含むペプチド又はタンパク質を含む。
【0224】
不活性レポーター粒子の数は、とくに不活性レポーター粒子が欠損組成を有する場合、測定デバイスの動作寿命の間、実質的に一定に維持可能である。また、レポーター粒子の化学分解、特定的には光源への高強度暴露の繰返しにより引き起こされる光化学分解又はレポーター粒子の一部を形成するタンパク質のアグリゲーションに起因して、不活性粒子の数は、測定デバイスの動作寿命の間、増加する可能性もある。
【0225】
不活性レポーター粒子は、光学挙動の変化、すなわち、アナライト粒子への暴露により光学シグナルを生成できなくなるか又はアナライト粒子への暴露によりバルクのレポーター粒子とは有意に異なる光学シグナルを生成するかのどちらかにより同定可能である。
【0226】
シグナル処理
ある特定の実施形態では、ディテクターボリュームの1つ以上のフレームの各々は、ピクセルのアレイからなる。1つ以上のフレームの各々は、当技術分野で公知の方法を用いてディジタル記録に処理可能である。
【0227】
ある特定の実施形態では、1つ以上の画像の記録は、各ピクセルの強度情報を含有する。いくつかの実施形態では、各ピクセルの強度情報は、ディテクターの各ピクセルで観測された強度情報をディジタル形式に変換するアナログ-ディジタル変換器(「ADC」)により決定される。強度情報のダイナミックレンジは、ADCの性質に相関可能であり、たとえば、12ビットADCの使用は、各ピクセルに対して0~(212-1)又は0~4095の範囲内の強度値を提供する。いくつかの実施形態では、色シグナルが得られる。いくつかの実施形態では、色シグナルはグレースケールに変換される。いくつかの実施形態では、グレースケールシグナルが得られる。
【0228】
コンピューター記録の処理は、偽ノイズを除去する工程を含みうる。ある特定の実施形態では、ユーザー供給閾値よりも小さなコンピューター記録中のフィーチャーは、ノイズとみなされて処理から除去される。ある特定の実施形態では、ユーザー供給閾値よりも大きなコンピューター記録中のフィーチャーは、ノイズとみなされて処理から除去される。ある特定の実施形態では、ユーザー供給閾値ほど強力でないコンピューター記録中のフィーチャーは、ノイズとみなされて処理から除去される。
【0229】
コンピューター記録の処理は、アグリゲートに対応する画像中のフィーチャーを同定する工程を含みうる。コンピューターは、フィーチャーとバックグラウンドとの境界を同定可能である。フレーム中のこうした境界は、(明るい)アグリゲートと(暗い)バックグラウンドとの間の遷移に対応する大きな明-暗勾配を用いてフレーム中の領域を位置決めすることにより同定可能である。
【0230】
コンピューター記録の処理は、フレーム上の各フィーチャーの領域を計算する工程を含みうる。処理は、フレーム上の各フィーチャーに対応する各アグリゲートのサイズを計算する工程をさらに含みうる。
【0231】
コンピューター記録の処理はまた、各アグリゲートのサイズに関する情報を分析する工程を含みうるとともに、この分析からアナライト濃度を推定可能である。いくつかの実施形態では、分析は、レポーター粒子/アナライト粒子ペアの結合等温線の性質に基づきうる。いくつかの実施形態では、分析は、あらかじめ決められた量のレポーター粒子及びアナライト粒子を有するコントロールとの比較に基づきうる。いくつかの実施形態では、比較は、溶液中の平均アグリゲートサイズを用いて行うことが可能である。いくつかの実施形態では、比較は、観測アグリゲートサイズ分布全体を用いて行うことが可能である。いくつかの実施形態では、比較は、最小二乗当てはめを用いて実施される。いくつかの実施形態では、最小二乗当てはめは、各粒子サイズ推定の推定エラーにより加重される。
【0232】
分析実施のためのフローチャートは、図20に提供される。簡潔に述べると、溶液中でディテクター粒子と共にサンプルをインキュベートし、その後、溶液の時間フレームを記録する。個別粒子及びアグリゲートの画像を同定する。特定アッセイに依存する選択基準を用いて、個別画像を保持又は廃棄する。選択画像をマスクして得られたピクセルを全フレームから減算することにより、バックグラウンド減算を達成する。次いで、分析にとくに好適な個別画像を選択し、確立されたアルゴリズムを用いてハードエッジを生成する。次いで、2値画像から粒子サイズを推定する。次いで、いずれのアーチファクトも同定して除去するために、元のフレームにフィードバック分析を適用する。選択及び定量された画像のセットから決定された性質(平均サイズ、外周、カウントなど)から、アナライトの存在及び/又は濃度を決定可能である。
【0233】
用途
本明細書に開示されるアグリゲーションアッセイの方法、システム、及びデバイスは、さまざまな分野及び用途に役立つ。特定的には、アグリゲーションアッセイは、「現場」すなわちポータブル環境で役立つであろう。たとえば、アグリゲーションアッセイは、とくに遠隔地では、すなわち、サービスが不十分又はアクセスが困難な地域(たとえば、暴力的紛争が原因で)、伝染病に侵されている地域、そのほか従来のアッセイ装置及び/又は専門家へのアクセスが制限される地域では、医学的評価及び診断並びに病原体の検出に役立つであろう。また、病院内若しくは診療所内でも又はポイントオブケア若しくはベッドサイドで実施しうる家庭訪問環境でも有用であろう。
【0234】
アグリゲーションアッセイは、獣医診察室であるか、牧場若しくは農場であるか、又は検査を必要とする動物がいるいずれの場所であるかにかかわらず、医学的環境と同様に獣医学的環境でも有用であろう。また、植物若しくは土壌の病原体若しくは共生微生物を試験したり、又は他の対象となる遺伝子型及び表現型を検出したりするために、園芸用途又は農業用途でも使用しうる。
【0235】
アグリゲーションアッセイはまた、たとえば、細菌、藻類、若しくは真菌、又はそれらの毒性産物による、石油又はその製品及び副製品による、並びに産業廃棄物による汚染に関して、水の試験に使用しうる。かかるアッセイは、食品安全性試験及び農業用途、たとえば、病原体、毒素、不純物、汚染物質、及び有害生物に関して、現場又は処理施設の試験に役立つであろう。
【0236】
アッセイ
多くのタイプの生化学的アッセイは、本明細書に開示されるアグリゲーションアッセイ方式に適合可能である。例としては、抗体又はそのフラグメントにより抗原がキャプチャー及び結合されるイムノアッセイ、アナライト粒子をキャプチャーするために対象アナライト粒子DNA/RNAに相補的な1つ以上のDNA又はRNAセグメントが使用されるハイブリダイゼーションアッセイ、及びレセプター、酵素、若しくは他のタンパク質に対する結合パートナー又はその逆のものがパートナーアナライト粒子(たとえば、タンパク質又はその断片)に対するキャプチャー剤として使用されるリガンド結合アッセイが挙げられる。
【0237】
いくつかの実施形態では、2つ以上のタイプのレポーター粒子を利用する不均一アッセイプロトコルが使用される。複数のタイプのレポーター粒子の存在は、合成及びアグリゲーションの課題を単純化しうる。さらに、本方法は、複数のレポーター粒子を含む全アグリゲートのイメージングを行うので、アグリゲートの画像を提供するために、単に単一タイプのレポーター粒子が光学シグナルを提供する必要があるにすぎない。
【0238】
本明細書に開示される方法は、臨床診断された疾患状態に関連する対象となる表現型又は遺伝子型の状態を同定するために使用可能である。かかる疾患状態としては、たとえば、癌、心血管疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経疾患、感染疾患、妊娠関連障害が挙げられる。代替的に、健康状態は、マーカーを用いて検出可能である。
【0239】
癌表現型は、本発明のいくつかの態様に含まれる。本明細書の癌の例としては、限定されるものではないが、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳癌、喉頭癌、胆嚢、膵臓、直腸、上皮小体、甲状腺、副腎、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓、基底細胞癌、潰瘍型及び乳頭型の両方の扁平上皮癌、転移皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、細網細胞肉腫、骨髄腫、巨細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、非小細胞肺癌、胆石、島細胞腫瘍、原発脳腫瘍、急性及び慢性のリンパ球腫瘍及び顆粒球腫瘍、有毛細胞腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸神経節神経腫、過形成角膜神経腫瘍、マルファン症候群様体型腫瘍、ウィルムス腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋腫腫瘍、子宮頸部異形成及びin situ癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟組織肉腫、悪性カルチノイド、局所皮膚病変、菌状息肉症、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨原性及び他の者肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性赤血球増加症、腺癌、多形膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、悪性黒色腫、類表皮癌、並びに他の癌腫及び肉腫が挙げられる。
【0240】
心血管疾患は、本発明の他の適用に含まれうる。心血管疾患の例としては、限定されるものではないが、鬱血性心不全、高血圧、不整脈、アテローム硬化症、コレステロール、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、QT延長症候群、狭心症、頻脈、徐脈、心房細動、心室細動、心筋虚血、心筋梗塞、心タンポナーデ、心筋炎、心膜炎、不整脈原性右室異形成、肥大型心筋症、ウィリアムズ症候群、心臓弁膜症、心内膜炎、細菌病害、肺動脈閉鎖、大動脈弁狭窄、レイノー病、コレステロール塞栓症、ワレンベルグ症候群、ヒッペル・リンダウ病、及び毛細血管拡張症が挙げられる。
【0241】
炎症性疾患及び自己免疫性疾患は、本発明の他の実施形態に含まれうる。炎症性疾患及び自己免疫性疾患の例としては、限定されるものではないが、関節リウマチ、非特異性関節炎、炎症性喉頭疾患、炎症性腸障害、乾癬、甲状腺機能低下(たとえば、橋本甲状腺機能亢進)、結腸炎、1型糖尿病、骨盤内炎症性疾患、炎症性中枢神経系疾患、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、強直性脊椎炎、結節性多発性動脈炎、ライター症候群、強皮症、全身性狼瘡、及びエリテマトーデスが挙げられる。
【0242】
本明細書に開示される組成物及び方法は、ウイルスの検出に有用であろう。他の箇所に示されるように、ウイルスは、細胞内へのウイルスの侵入に関与する表面マクロ分子、一般的にはタンパク質を含む。こうした表面マクロ分子は、侵入される細胞上の対応するフィーチャーと相互作用する認識エレメントを含む。こうした表面マクロ分子の周知の例は、コロナウイルスのスパイクタンパク質である。こうした表面分子は、好適に機能化されたレポーター粒子に対する結合性部位として活用可能である。
【0243】
本発明の方法及び組成物はまた、アデノウイルス、ボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella pertussis)、クラミジア肺炎ウイルス、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、コレラ毒素、コレラ毒素β、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、サイトメガロウイルス、ジフテリア毒素、エプスタイン-バーNA、エプスタイン-バーEA、エプスタイン-バーVCA、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter Pylori)、B型肝炎ウイルス(HBV)コア、B型肝炎ウイルス(HBV)エンベロープ、B型肝炎ウイルス(HBV)表面(Ay)、C型肝炎ウイルス(HCV)コア、C型肝炎ウイルス(HCV)NS3、C型肝炎ウイルス(HCV)NS4、C型肝炎ウイルス(HCV)NS5、A型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス(HEV)orf2 3KD、E型肝炎ウイルス(HEV)orf2 6KD、E型肝炎ウイルス(HEV)orf3 3KD、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1 p24、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1 gp41、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1 gp120、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルスHSV-1/2、単純ヘルペスウイルスHSV-1 gD、単純ヘルペスウイルスHSV-2 gG、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)-1/2、A型インフルエンザウイルス、A型インフルエンザH3N2ウイルス、B型インフルエンザ、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)、ライム病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、M.ニューモニエ(M.pneumoniae)ウイルス、M.ツベルクローシス(M.tuberculosis)、1型パラインフルエンザウイルス、2型パラインフルエンザウイルス、3型パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ストレプトリジンO、破傷風毒素、T.パリデュム(T.pallidum)15kd、T.パリデュム(T.pallidum)p47、T.クルージ(T.cruzi)、トキソプラズマ属(Toxoplasma)及び水痘帯状疱疹ウイルスのマーカーを含む感染性疾患のマーカーに関する検査室情報を提供可能である。
【0244】
また、ウイルスのアグリゲーションベースの検出を可能にする前述の認識フィーチャーは、古細菌、細菌、他の微生物などのより大きな生物に適用可能であることも、分かるであろう。たとえば、細菌は、多くの場合、認識部位として利用可能な表面上の糖タンパク質を含む。
【0245】
本明細書に開示される方法は、遺伝子変異を検出するために使用可能である。本明細書の遺伝子変異としては、限定されるものではないが、ヌクレオチド配列(たとえば、DNA及びRNA)並びにタンパク質(たとえば、ペプチド及びタンパク質)の1つ以上の置換、逆位、挿入、欠失、又は突然変異、1つ以上マイクロ欠失、1つ以上の希少対立遺伝子、多型、単一ヌクレオチド多型(SNP)、大規模遺伝子多型、たとえば、逆位及び転座、1つ以上のヌクレオチド分子(たとえば、DNA)の存在量及び/又はコピー数の差(たとえば、コピー数変異体CNV)、トリソミー、モノソミー、及びゲノム再構成が挙げられうる。いくつかの実施形態では、遺伝子変異は、癌などの疾患の転移、存在、不在、及び/又はリスク、薬動学的変動性、薬剤毒性、有害イベント、再発、及び/又は、被験者における臓器移植拒絶の存在、不在、又はリスクに関連しうる。たとえば、HER2遺伝子のコピー数変化は、乳癌患者がハーセプチン治療に反応するかに影響を及ぼす。同様に、妊娠女性の血液における21番染色体(又は18若しくは13番染色体又は性染色体)のコピー数の増加の検出は、未生子におけるダウン症候群(又はパトー症候群又はエドワーズ症候群)の非侵襲的診断として使用しうる。その他の例は、レシピエントゲノムに存在しない移植臓器の対立遺伝子の検出であり、こうした対立遺伝子の頻度又はコピー数をモニターすることにより潜在的な臓器拒絶の徴候を同定しうる。
【0246】
測定デバイス及びシステム
本明細書に記載のアグリゲーションアッセイ法では、測定デバイス又はシステムが利用され、どちらもサンプルの分析に必要とされる部分を含む。測定デバイスは、対象サンプルの直接添加又はそれ自体が対象サンプルを含有するキュベット若しくはスライドの挿入のどちらかによりサンプルが導入されるサンプルコンパートメントを含有する。サンプルコンパートメントはさらに、対象アナライト粒子に結合してアグリゲートを生成する機能を有するレポーター粒子を含有するコンポーネントを提供する。発光法に依拠する設計では、測定デバイスは、レポーター粒子に含まれるクロモフォアを励起するための照明デバイスを提供する。測定デバイスは、レポーター粒子の光学シグナルを検出及び記録する記録デバイス(たとえば、ディジタルカメラなどのイメージセンサー)を含有する。最後に、測定デバイスは、追加のコンポーネント、たとえば、操作の制御手段、分析結果を表示又は報告するデバイス、及び外部コンピューターとのインターフェースを含有しうる。任意の各種コンポーネント及びそれらの特注品の存在は、測定デバイスの各種設計によって異なりうる。
【0247】
システム又はデバイスは全体として、便利なサンプル添加又は取出しのためにデバイスの向きを変えるマウントを搭載可能である。システムは、モバイルコンピューティングデバイスと連動させうる。モバイルコンピューティングデバイスは、スマートフォン、ハンドヘルドコンピューター、タブレットコンピューター、又は類似のポータブル計算デバイスでありうる。いくつかの例では、モバイルコンピューティングデバイスは、(i)サンプルの導入、(ii)光学励起、(iii)サンプル品質及び最適暴露時間を評価するための任意のサンプルプレスクリーニング、記録デバイスによるフレームの記録、(iv)所要により検出器バイアスの低減、(v)検出器シグナルのディジタル化、(vi)不揮発性メモリーへのディジタルシグナルの記録、(vii)所要により検出器のリサイクル処理、及び(Viii)ディジタルシグナルの処理などの工程を高度に自動化して実施できるようにするために、すべての必要なコンポーネント、たとえば、ディスプレイ、プロセッサー、メモリー、及びメモリーに記憶されプロセッサーにより実行可能なプログラム命令を含む。機能はさらに、アグリゲーションアッセイの結果を決定してその結果を目に見える形でエンドユーザーに伝えることを含みうる。
【0248】
アグリゲーションアッセイ用の検出機器としてスマートフォン又は他のモバイルコンピューティングデバイスを使用すれば、安価でポータブルな多機能のシステムにより現場すなわち検査施設外でアッセイの実施が可能になる。用途としては、中央検査施設へのサンプルの輸送を必要とすることなくウイルス負荷、栄養状態、疾患バイオマーカー、又は環境汚染物質を測定するためのポイントオブケア診断システムが挙げられうる。かかる試験は、私邸、法執行施設、グローバルヘルス施設、及び医療診療所で実施しうる。モバイルコンピューティングデバイスはインターネットに接続可能であるので、センサーデータと患者情報及び地理的位置との組合せが可能になろう。外部計算施設への接続能力は、データ解釈、地理的・デモグラフィックマッピング、データベースの構築及び維持、並びに遠隔地の医療専門家及び関係当局への通知の送達のために提供可能である。コンパクトで現地操作可能なディジタル測定デバイスは、検査施設における熟練技術者の必要性をアッセイから取り除くであろう。その代わりに、こうしたアッセイは、検出システムのサイズ及び手頃な価格のおかげで誰でも実施しうる。
【0249】
サンプルコンパートメント
測定デバイスは、対象サンプルの導入に好適なサンプルコンパートメントを提供する。光学測定技術を利用する測定デバイスは、短い寸法を有するオブロングのサンプルコンパートメントの恩恵を受けるであろう。レポーター粒子から記録デバイスまでの光学シグナルの光路は、短い寸法と平行にアライメントされるであろう。この配置は、より長い光路で問題となるおそれのある光学シグナルの吸収及び分散を最小限に抑えるであろう。この尺度は、角柱状又は円柱状のどちらのサンプルコンパートメントの使用も可能にする。
【0250】
レポーターボリューム
サンプルコンパートメントは、レポーター粒子を含有する、レポーターボリュームと称されるコンポーネントを含む。このコンポーネントは、対象サンプルへのレポーター粒子の添加の必要性を回避し、その代わりに、レポーター粒子のリサイクル処理を可能にするであろう。いくつかの実施形態では、レポーターボリュームは、それ自体内にレポーター粒子を保持する物理エンクロージャーにより規定される。物理エンクロージャーは、アナライトをレポーターボリュームに流入させてレポーター粒子との接触を可能にするために多孔性でありうる。いくつかの実施形態では、レポーターボリュームは、物理エンクロージャーにより規定されない。その代わりに、レポーター粒子をレポーターボリューム内に保持するための他の手段を提供可能である。
【0251】
光路のオーバーラップ度は、レポーター粒子の特定の分布(ランダム、セミランダム、アグリゲート化、秩序化)、レポーター粒子の濃度及び有効サイズ、並びにレポーターボリュームの厚さを含めて、レセプターボリュームを規定する少数のパラメーターから推定可能である。本開示のある特定の実施形態では、レポーター粒子と記録デバイスとの間の光路は実質的にすべて、他のレポーター粒子に遭遇しない。ある特定の実施形態では、レポーター粒子と記録デバイスとの間の光路は実質的にすべて、多くとも1つの他のレポーター粒子に遭遇する。
【0252】
いくつかの実施形態では、レポーターボリュームは、レポーター粒子の単層を可能にするのに十分な程度に薄い。この設計では、すべてのレポーター粒子が光路に垂直且つ記録デバイスに平行な平面内に実質的に存在するので、光路のオーバーラップは不可能である。
【0253】
記録デバイス及び顕微鏡
記録デバイスは、レポーター粒子からの光学シグナルを記録するために提供される。ある特定の実施形態では、レポーター粒子からの光学シグナルは、サンプルコンパートメントの透明ウィンドウを通り抜ける。ある特定の実施形態では、記録デバイスは、カメラなどのイメージセンサーであろう。たとえば、CMOS(相補的金属酸化物半導体)カメラは、各ピクセルを個別に読取り可能であるので有用であり、そのほか、CMOSカメラは、ごくわずかな電力しか消費しないので、現場でデバイスの一部として使用するときより長持ちする。スマートフォンカメラはほとんどすべて、CMOSカメラを有し、10メガピクセルを超える分解能を有するものが多いので、本明細書に開示される方法、システム、及びデバイスに有用である。
【0254】
本開示のある特定の実施形態では、記録デバイスは、サンプルコンパートメントからの1つ以上のシグナルの観察を可能にする。ある特定の実施形態では、複数のシグナルの各々は、サンプルコンパートメントの異なる領域に由来する。ある特定の実施形態では、複数のシグナルの各シグナルは、サンプルコンパートメント全体に広がる規則的幾何学的グリッドの1ピクセルに由来する。
【0255】
ある特定の実施形態では、記録デバイスのピクセルは、長方形又は正方形のアレイで配置される。ある特定の実施形態では、記録デバイスのピクセルは、512×512正方形アレイ、1024×1024正方形アレイ、2048×2048正方形アレイ、又は4096×4096正方形アレイで配置される。ある特定の実施形態では、各ピクセルからのシグナルは、すべての他のピクセルとは独立して記録される。ある特定の実施形態では、ピクセルの2×2セットからのシグナルは、一緒にビニングされる。
【0256】
測定デバイスは、異なる領域の複数のレポーター粒子からの複数のシグナルの観察を可能にしうる。ある特定のさらなる実施形態では、異なる領域の複数のレポーター粒子は、規則的グリッドで配設される。代替的に、実質的にすべてのレポーター粒子からの個別の光学シグナルは、いずれの他のレポーター粒子による干渉も受けることなく観測可能である。
【0257】
拡大レンズとの組合せで使用すると、記録デバイスは、さらに小さなシグナルを検出可能になる。かかるレンズは当技術分野で周知である。ある特定の実施形態では、記録デバイスは、個別ピクセル及び/又は個別レポーター粒子をキャプチャー可能である。キャプチャーエレメントが機能化される基材としてプラズモンナノ粒子/量子ドットを使用すると、この検出が促進される。
【0258】
記録デバイスは、レポーター粒子/アナライト粒子の複合体の検出及び定量を行うために当技術分野で公知のいずれかの技術を使用可能である。記録デバイスは、レポーター粒子設計で対をなす光吸収及び発光の方法を使用可能である。
【0259】
代替的に、光出力は、光源により励起されたレポーター粒子上のフルオロフォア又はレポーター粒子と連動させたフルオロフォアのどちらかからの蛍光発光を含むことができる。次いで、アナライト粒子の存在及び量は、蛍光発光の強度により報告されよう。フルオロフォアは、蛍光発光が増強されるようにフォトニック結晶などの表面に近接させうる。望ましいアウトカムが得られるように多数のフルオロフォアを利用して蛍光シグナルを調整可能である。その場合、光学シグナルは、2つ以上のフルオロフォア間の励起移動により変調可能である。
【0260】
蛍光及び燐光の量子収率、λmaxシフト、及び異方性が本開示で想定される。
異方性測定では、励起又は発光のどちらか又はその両方の光路に偏光子を導入可能である。光源は発光方法と連動させうる。光源は、従来のブロードバンド光源、発光ダイオード、又はレーザーでありうるとともに、直接的か又は励起を最適化するためにグレーティングなどの波長選択デバイスを介するかのどちらかによりサンプルに送達可能である。光は、導波路が組み込まれた且つレポーターボリュームのベースのベースを形成する全内部反射コンポーネントを介して方向付けられ、暗視野励起を提供する。
【0261】
不活性レポーター粒子の同定
本明細書には、「識別法」と称される不活性レポーター粒子を識別する方法が提供される。ある特定のシステムでは、アナライト粒子フリーの第1の溶液と高濃度のアナライト粒子の第2の溶液との2つの溶液が、レポーターボリュームに逐次的に付される。これらの2つの溶液が、レポーター粒子に結合されたアナライト粒子の不在、及びレポーター粒子に結合されたアナライト粒子の略飽和をそれぞれ引き起こすことが分かるであろう。フレームは記録デバイスを用いて記録され、アナライト粒子フリー状態のフレームとアナライト粒子飽和状態のフレームとの間で比較が行われる。選択判定基準を満たさないレポーター粒子は、不活性としてマークされる。
【0262】
ナノ粒子アグリゲーションに起因する不活性化の場合には、不活性レポーター粒子の識別は容易であろう。アグリゲートの形成は、記録デバイスからのフレームの目視検査により明らかになるであろう。また、以上に概説した「アナライト粒子フリー」及び「アナライト粒子飽和」の手順を必要としないであろう。
【0263】
識別法は、測定デバイス中のレポーター粒子の位置の記録を維持する。レポーター粒子の位置は、たとえば、測定デバイス中の適切な幾何学的グリッドを基準にして又はレコーダーデバイス上のピクセル座標を基準にして、x/y座標により参照可能である。不活性レポーター粒子の記録は、不揮発性コンピューターメモリーに維持可能である。
【0264】
識別法は、レポーター粒子に不活性としてタグ付けする判定基準を提供するであろう。判定基準は、挙動不良のレポーター粒子を使用しないように排除することと、一方、測定デバイスの特定の確度及び感度が得られるように十分に多くのレポーター粒子数を維持することと、の間でバランスをとるように設定される。バイアスを排除して自動タグ付けを可能にするために、観測される光学シグナルのタイプに基づいて数値閾値を選択可能である。単なる例にすぎないが、ある特定のレポーター粒子は、アナライト粒子への結合により発光λmaxのシフトを引き起こしうるとともに、この例ではバルクの化合物に対して20ナノメートル(nm)だけλmaxのシフトを引き起こしうる。5nmのシフトの閾値は、この特定の例に対して選択しうる。
【0265】
確度及び感度の要件を満たすために、ある特定の分率のレポーター粒子を排除するように数値閾値を選択可能である。前の例を参照すると、レポーター粒子の95%で12nmのλmaxシフトを観測しうる。その場合、レポーター粒子の95%を活性として維持するとともにレポーター粒子の5%を不活性として廃棄するように、12nmのλmaxの閾値を選択しうる。
【0266】
不活性状態を割り当てるために、さまざまな判定基準を適用可能である。重要なこととして、いずれの判定基準も、レポーター粒子を不活性として割り当てるように選択可能である。いずれの1つのレポーター粒子の結合も他のレポーター粒子のいずれにも依存しないので、活性レポーター粒子のプールからレポーター粒子を排除しても、残りの粒子の挙動に影響を及ぼさない。
【0267】
必要があれば、上記の識別法は、測定デバイスの動作寿命の間、定期的に繰り返しうる。これを実施することは、経時により性能が劣化しやすいレポーターデバイスではとくに有益であろう。理想的には、識別法は、測定デバイスがすべての所要の工程を自動で実施する場合、最小限のオペレーターの介入を必要とするであろう。ナノ粒子ベースのレポーター粒子の場合には、フレームを定期的に記録可能であり、経時により起こりうるいずれのアグリゲーションも、パターンマッチングソフトウェアにより識別可能である。
【0268】
識別法はまた、中間濃度のアナライト粒子を含有する1つ以上の溶液に測定デバイスを暴露する工程を含みうる。これは、ある範囲のレポーター粒子飽和が想定されるアナライト粒子の定量測定にとくに重要となろう。ある範囲のアナライト粒子濃度にわたりいくつかの溶液を用いることにより、光学報告データとアナライト粒子濃度とをより良好にマッチさせるように検量線を構築可能である。
【0269】
レポーター粒子の領域からの空間分解シグナルを使用することの主な利点は、とくに問題となる記録デバイスの領域にそのようなフラグを立てて後続の解析で廃棄することが可能であることである。これには、不活性レポーター粒子、すなわち、不適正にフォールディングされた抗体だけでなく、難題を呈するいずれの領域も含まれる。これには、どんな理由があるにせよ、2つ以上の近くに位置するレポーター粒子のオーバーラップスポット、又は遊離状態と結合状態とが識別不良であるレポーター粒子が含まれうる。各個別のレポーター粒子の結合は他のいずれにも依存しないので、光学シグナルの小さなセットを廃棄しても、感度にごくわずかな影響を与えるだけで確度又は精度を向上させうる。
【0270】
確度/精度/感度
開示されるディジタル測定法の確度は、従来のアナログ法と少なくとも同程度に良好であろうと予想される。ディジタル測定法は、定義によれば低確度源であるいくつかの誤差源を最小化又は排除するであろう。例として、潜在誤差は、不活性なレポーター粒子、すなわち、アナライト粒子に結合しないか又はアナライト粒子に結合するが予想光学シグナルを提供しないかのどちらかから生じる。他の箇所で考察されるように、アナライト粒子に結合しないレポーター粒子の存在は、単にアグリゲートを形成しないある分率のレポーター粒子を表し、既知濃度のアナライトのサンプルに対する検量により考慮に入れることが可能である。さらに、アグリゲーションアッセイ設計では、アナライトが結合しても光学シグナルの撹乱が避けられるので、ゲストの結合に対するクロモフォアの感度が相対的に良くないレポーター粒子を採用可能である。こうした両方の理由で、不活性粒子は、多くの他のホスト/ゲストベースの分析系よりも確度及び精度に対する課題が少ない。
【0271】
開示されるディジタル測定法の精度は、従来のアナログ測定と少なくとも同程度に良好であろうと予想される。レポーター粒子全体からのバルクシグナルを観測する従来の方法は、ほとんどの場合、各種統計法及び数値法を用いて精度の良い推定値を提供可能であるが、必ずしもすべての場合というわけではない。
【0272】
これとは対照的に、アグリゲーションアッセイを用いると、とくに相対的に小さなアグリゲート形成をもたらす系及び条件では、アッセイは、ごく小さな整数のレポーター粒子数で各アグリゲートを構成するという点で「ディジタル」であるとみなすことが可能である。観測粒子サイズ(サンプルボリュームのピクセル間隔や物理的サイズなどで特定される)を、整数のレポーター粒子数を含有する「ディジタル」アグリゲートサイズに帰属可能であろう。いくつかの実施形態では、弱いレポーター粒子/アナライト結合又はサンプルの事前希釈のどちらかにより、小さなアグリゲートを意図的に形成することが好ましいこともある。
【0273】
結合等温線
数及び粒子サイズに基づくアナライト粒子濃度との関係(本明細書では「結合等温線」という)は、複雑且つ間接的である。簡単にいえば、固定レポーター粒子濃度が与えられると、レポーター粒子に基づく結合部位/全結合性部位の比は、全アナライト粒子濃度の増加に伴って漸近的に1まで増加する。より高親和性のレポーター粒子は、いずれの所与のアナライト粒子濃度でもより高い割合のアナライト粒子に結合するであろう。重要なこととして、全レポーター粒子濃度は、活性レポーター粒子のみを対象とする。
【0274】
開示された方法で想定される多くの使用で、臨界値に対応する閾値又はカットオフが確立されている。これらの閾値又はカットオフは、環境法により設定された規制レベルに対応可能であるか、又はある特定の健康状態に対応する重要なバイオマーカーレベルに対応可能である。測定法は、意図された使用に適切な測定条件を提供するために、推奨スキャンパラメーター及び希釈レベルを調整可能である。
【0275】
ある特定の実施形態では、測定デバイスは、サンプルの自動希釈機構を提供可能である。これは、既存のサンプルの画分を取り出して希釈のために溶質を導入することにより達成可能である。これはまた、溶質を用いてあらかじめ希釈された新たなサンプルを導入することにより達成可能である。
【0276】
ある特定の実施形態では、推奨希釈レベルは、測定デバイスを導入されたか又は測定デバイスに接続されたかのどちらかのコンピューティングデバイスにより計算可能である。コンピューティングデバイスは、インターフェース(たとえば、ディスプレイ、プリントアウト、又は合成音声レポート)を介して推奨希釈レベルをオペレーターに提供可能である。コンピューティングデバイスはまた、測定デバイスを直接制御することにより、ユーザー介入を必要とすることなく希釈サンプルを自動解析する必要のあるいずれかの工程を実施可能である。
【0277】
ある特定の実施形態では、閾値又はカットオフは、閾値又はカットオフの変更時に任意に更新可能なファームウェアの形態又はソフトウェアの形態のどちらかで、コンピューティングデバイスによりあらかじめ設定可能である。そのほか、オペレーティングソフトウェアは、測定されるサンプルのさらなる入力をユーザーに促すことが可能である。たとえば、バイオマーカーの測定の場合には、ユーザーは、閾値又はカットオフを変化させうる、したがって、所与の測定に必要とされる精度に影響を及ぼしうる年齢、体重、性別などの被験者の履歴パラメーターを入力可能である。
【0278】
実施例で実証されるであろうが、アグリゲートアッセイでの重要な特徴は、アナライト濃度のある範囲全体にわたり平均粒子サイズが滑らかに増加可能であることである。この挙動は、複数の同時結合相互作用を必要とするより大きなアグリゲートを形成しない可能性が統計的に小さくなることに起因する。この挙動は、アナライト濃度のある狭い範囲全体にわたりシグモイドのオン-オフ挙動を呈することの多い従来の1:1結合挙動とは対照的である。言い換えれば、1:1結合等温線は、あるアナライト濃度範囲の圧倒的大部分でレポーター粒子が実質的に結合されているか又は実質的に結合されていないかのどちらかの状況をもたらす。こうした理由で、従来の1:1結合は、アナライト濃度を決定するには価値が限られる(アナライトの存在/不在とは対照的)。これとは対照的に、アナライト濃度と粒子サイズとの滑らかな関係は、アナライト濃度の精密な決定に十分に役立つ。
【0279】
略号
本開示では下記略号が用いられる。当業者により認識される他の略号もまた、用いられうる。
【0280】
PEG:ポリ(エチレングリコール)、EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、NHS:N-ヒドロキシスクシンイミド、DDI水:二重脱イオン水、PBS:リン酸緩衝生理食塩水、RBD:SARS-CoV-2スパイクタンパク質のレセプター結合性ドメイン
【実施例
【0281】
下記実施例により本発明をさらに例示する。
【0282】
実施例1:カルボキシ官能化ナノ粒子
1mL EtOH中の100nM Auナノ粒子(「GNP」、NanoComposix,San Diego,CA)の懸濁液にEtOH中の3-メルカプトプロピオン酸の1mL溶液(10mM)を添加した。得られた混合物を間欠振盪及び超音波処理しながら遠心分離機チューブ中rtで数hrインキュベートした。混合物を最終超音波処理に付してから約5000RCFで5min又は粒子が十分に沈降するまで遠心分離する。固形ペレットを擾乱しないように注意しながら上清を除去した。以下のようにEtOH濯ぎを実施した。すなわち、EtOH(1mL)を添加し、そして混合物を超音波処理して粒子を再懸濁した。混合物を約5000RCFで5min又は粒子が十分に沈降するまで遠心分離した。EtOH濯ぎをさらに2回繰り返して全体で3回のEtOH濯ぎを行った。EtOHの代わりに水を用いてEtOH濯ぎの手順に従って水濯ぎを実施して全体で3回の水濯ぎを行った。
【0283】
実施例2:C2抗CRP抗体コンジュゲートナノ粒子
カルボキシ官能化ナノ粒子(1mL)の水性懸濁液に、10mg/mL EDCを含有する20μLの水性溶液を添加し、続いて、10mL/mgスルホ-NHSを含有する40μLの水性溶液を添加した。回転しながら混合物を30minインキュベートし、次いで5000RCFで5min遠心分離した。固形ペレットを擾乱しないように注意しながら上清を除去した。ペレットに1mLの0.1×PBSを添加し、ボルテックス及び/又は超音波処理しながら粒子を再懸濁した(<30sec)。懸濁液に20μGのC2抗CRP(C反応性タンパク質)抗体(Abcam,Cambridge,UK)を添加し、混合物をrtで2hrインキュベートし、次いで遠心分離した。固形ペレットを擾乱しないように注意しながら上清を除去した。PBS濯ぎを次のように実施した。すなわち、ペレットに1mLの0.1×PBSを添加し、ボルテックス及び/又は超音波処理しながら粒子を再懸濁した(<30sec)。PBSをさらに2回繰り返し、全体で3回の濯ぎを行った。3回目の最終濯ぎでは、1mLの0.1×PBS+0.5%(v/v)Tween20を使用した。得られた材料を4℃で貯蔵した。
【0284】
実施例3:C6抗CRP抗体コンジュゲートナノ粒子
C2抗CRP抗体の代わりにC6抗CRP抗体(Abcam,Cambridge,UK)を用いて実施例2の手順に従った。
【0285】
実施例4:コンジュゲートの光学吸収試験
図5は、C2抗体(パネル(a))及びC6抗体(パネル(b))にコンジュゲートされたGNP(金ナノ粒子)の懸濁液のUV-Vis吸収スペクトルを示す。各コンジュゲートに対して、ベアGNP(i)からGNP-抗体コンジュゲート(ii)へわずかなレッドシフトが観測される。これは、おそらく、GNPでの誘電性の撹乱が局在表面プラズモン共鳴(LSRP)の変化をもたらすことに起因する。各コンジュゲートに対して、CRPの添加は、光学吸光度のさらなる変化を引き起こすことから(iii)、抗体は、溶液中のCRPをキャプチャーする活性を残存することが確認される。C6抗体(パネル(b)、トレース(iii))では、C2抗体(パネル(a)、トレース(iii))よりも大きな光学吸光度変化が観測された。
【0286】
実施例5:アグリゲーション試験
C2抗体及びC6抗体にコンジュゲートされたGNPは、1:1の比で組み合わされ、PBS+0.05%TWEEN(登録商標)20中に懸濁された。粒子懸濁液を安定化するために界面活性剤を添加した。次いで、CRPの溶液(10μL)とGNP-抗体コンジュゲートの溶液(20μL)とを混合して、ある時間にわたり37℃でインキュベートした。インキュベーション後、15μLのCRP/GNP-抗体コンジュゲート混合物を2枚の顕微鏡ガラス間に挟置して薄い液状膜を形成した。DFモードの正立光学顕微鏡を用いて、典型的には40×対物レンズを用いて、アグリゲーション挙動を観察した。フルサイズDFフレームは、典型的には250mm×200mm領域内に2,000~10,000粒子を含有する。より高濃度の使用は、アグリゲートフレームのオーバーラップ度を増加させてシグナル処理を複雑化すると予想される。
【0287】
図6及び7は、対照及び陽性実験からのDF顕微鏡写真を示す。CRPの不在下では、個別GNPがイメージングされる(図6(a))。CRPの添加は、顕微鏡写真ではっきり分かるGNPクラスターの形成をもたらす(図6(b))。個別クラスターは、図7(a)~7(c)にイメージングされる。
【0288】
典型的実験は、10フレームからなり、20,000~100,000粒子の分析を必要とする。多数の粒子を分析する必要性は、手順を自動化して労力のかかる手動評価を回避する実施例6~9に記載の画像処理方法の開発の原動力となった。シグナル処理のために考慮された因子には、焦点平面外のダスト/デブリに起因するフレーム中の明るい円形欠陥、個別GNPからのより薄暗い光学シグナル、及び不均一形状のアグリゲートが含まれていた。
【0289】
シグナル処理方法の概観は図8に例示される。グレースケールに変換された元のフレーム(パネル(a))は、アーチファクトを除去するために処理される(パネル(b))。この工程の後、フレームは、各々粒子又は粒子アグリゲートに対応する領域にセグメント化される(パネル(c))。次いで、各セグメントのサイズが定量される(パネル(d))。
【0290】
実施例6:シグナルバックグラウンドの減算
下記MATLAB(登録商標)コードは、フレームからバックグラウンドを除去する。コードは、jによりインデックス付けされたフレームIに作用し、ユーザー供給bglvlパラメーターを必要とする。
se=strel(‘disk’,bglvl);% 構造化エレメントを作成する
Ie=imerode(I{j,1},se);% 構造化エレメントを用いて
% 大きなバックグラウンドフィーチャーを同定する
% 次に、バックグラウンドフレームを最適化する一連の関数
Iobr=imreconstruct(Ie,I{j,1});
Iobrd=imdilate(Iobr,se);
Iobrcbr=imreconstruct(imcomplement(Iobrd),imcomplement(Iobr));
Iobrcbr=imcomplement(Iobrcbr);% 最終バックグラウンドフレーム
% バックグラウンドフレームを減算する
i=I{j,1}-Iobrcbr;
【0291】
この手順の効果は図9に見られる。パネル(a)の元のフレームは、バックグラウンドフレーム(パネル(b))を生成するために処理され、このバックグラウンドフレームはバックグラウンド減算パネル(c)を与えるために元のフレームから減算される。
【0292】
実施例7:ボーダー形成
下記MATLAB(登録商標)コードは、個別アグリゲートに対応するB/Wフィーチャーを含有するクリーニングされたグレースケールフレームからフレームを構築する。手順は、高勾配(すなわち、黒色から白色に迅速に移行する)位置にボーダーを作成する。勾配の大きさ閾値は、ユーザー供給パラメーターFudgeFactorにより修正される。ほとんどの分析では、FudgeFactor=1.05の値を利用した。この工程により生成されたボーダーにより完全に包囲されないフィーチャーに適応するために、ボーダーサイズをダイレートする。次いで、ボーダーにより十分に包囲された領域を塗り潰し、ダイレーションを逆転させる。
[~,threshold]=edge(i,‘sobel’);%エッジに対する閾値を見いだす
BWs=edge(i,‘sobel’,threshold*fudgeFactor);
% 物体の周りにボーダーを描く
BWsdil=imdilate(BWs,strel(‘disk’,1));
% ボーダーをダイレートする
% 近くの物体をマージする
% ほとんどのボーダーを接続する
BWdfill=imfill(BWsdil,‘holes’);%包囲された領域を塗り潰す
BWnobord=imclearborder(BWdfill,4);%エッジの物体を除去する
Bwfinal=imerode(Bwnobord,strel(‘disk’,1));
% 前のダイレーションを元に戻す
【0293】
図10は、ボーダー形成手順の例を示す。バックグラウンド減算工程からクリーニングされたパネル(a)に示されるフレームは、ボーダー形成手順に付される。パネル(b)は、このフレーム上の4つのフィーチャーのボーダー同定に成功したものを示す。次いで、ボーダーを塗り潰して、4つのフィーチャーに対応するB/Wフレームを提供する(パネル(c))。
【0294】
実施例8:フィーチャー同定
下記MATLAB(登録商標)コードは、個別アグリゲートに対応するフィーチャーを同定する。フィーチャーのベクトルは、MATLAB(登録商標) bwconncomp関数を用いてB/Wフレームから作成される。ユーザー供給パラメーターTよりも少ないピクセルを有するフィーチャーは、ノイズとみなされてバックグラウンドに逆戻りさせる。
s=size(Bwfinal);
BWfinal=BWfinal(ceil(s(1))/8):(floor(7*s(1)/8)-1),
ceil(s(2))/8):floor(7*s(2)/8-1);% フレーム上のこうした歪んだ領域の
% 最初及び最後の1/8を除去する
CC=bwconncomp(BWfinal,4);% 物体のリストを構築する
numPixels=cellfun(@numel,CC.PixelIdxList);
[~,idx]=find(numPixels<T);%<Tピクセルを有するエレメント
for k=1:length(idx)
BWfinal(CC.PixelIdxList{idx(k)})=0;
end
【0295】
図11は、フィーチャー同定手順の例を示す。パネル(a)は、処理前のクリーニングされたグレースケールフレームである。パネル(b)は、ボーダー形成手順からのB/Wフレームを示す。パネル(c)は、ノイズ除去後のB/Wフレームである。3つのすべてのパネル中の円で囲まれたアーチファクトの除去に成功したことに気付くであろう。
【0296】
実施例9:フレームパディング
下記MATLAB(登録商標)コードは、比較を容易にするためにフレームを同定してその元のサイズにパディングする。各フィーチャーに対応するエレメントでラベルマトリックスを構築する。各フィーチャーの領域を計算して記憶する。
LL=bwlabel(BWfinal,4);% B/Wフレームをラベルフレームに変換する
ss=(s-size(LL))/2;
X.label{j,1}=padarray(LL,floor(ss),0,‘both’);
% アレイを元のサイズに戻す
x=regionprops(X.label{j},‘Area’);
Areas{j.1}=cell2mat({x.Area});
【0297】
実施例10:CRPタイトレーション
図12は、本開示のアグリゲーション法を用いて従来のプラズモンセンシング法と比較してCRPアッセイを例示する。粒子クラスターの多分散性は、アンサンブル平均の分析にノイズの多い応答をもたらす。これとは対照的に、粒子対粒子分析は、粒子アグリゲーションに関する詳細な情報を呈し、改善された感度及びダイナミックレンジをもたらす。パネル(a)は、いくつかのCRP濃度でのクラスターサイズ分布の分析から導出された検量線を示す。平均クラスターサイズとCRP濃度との線形関係は注目に値し、対照的に多くのアッセイに典型的な飽和等温線を呈するパネル(b)に示される従来のプラズモンセンシング法と対比される。重要なこととして、パネル(a)の線形関係は、2~3mg/mLのCRP濃度(心疾患に対するリスク閾値に対応する)及び10mg/mLのCRP濃度(正常レベルに対応する)に対して明確に有意に異なる平均クラスターサイズを呈する。従来のプラズモンセンシング法は、これらの2つのレベルを区別できなかった。
【0298】
実施例11:全血中のC反応性タンパク質(CRP)の検出
全血中の粒子の検出は図13に示される。(i)0.1mm及び(ii)0.05mmの深さのキャピラリーがパネル(a)に示される。0.1mm、0.05mm、及び0.01mmの厚さのキャピラリーを用いた全血中の粒子を示す暗視野画像が、それぞれ、パネル(b)、(c)、及び(d)に示される。
【0299】
各種深さの全血中の個別ナノ粒子のイメージングが図14に示される。ナノ粒子は、パネル(a)、(b)、及び(c)で、それぞれ、0.1mm、0.05mm、及び0.01mmの深さを有する媒体中に描かれる。これらの画像の16ビット強度(明るさ)プロットが、それぞれ、パネル(a)、(b)、及び(c)に示される。
【0300】
全血でのCRPアッセイの性能は、図15のプロットに示される。ここで、水平軸=CRP濃度(mg/dL)及び垂直軸=平均クラスターサイズ(ピクセル)。図12に見られるように、アッセイは、アナライト濃度とアグリゲートサイズとの線形関係の利点を生かす。
【0301】
実施例12:抗ヒト抗体ナノ粒子の合成
抗ヒト抗体で機能化されたAuナノ粒子は、実施例2に記載の方法を用いて調製された。
【0302】
実施例13:RBD連結ナノ粒子の合成
下記プロトコルを用いてインタクトSARS-CoV-2ウイルス検出用のRBD連結Auナノ粒子を調製する。
【0303】
金ナノ粒子 1mL PEG化80nm金ナノ粒子溶液(20 OD=1.3E11粒子/mL)。(Nanocomposix.Bio ready,Carboxyl,20 OD,SKU:AUXR80-5M)必要に応じたスケール。
【0304】
RBD Thermo Fisher Scientific、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(S-RBD)(aa319-541)、His Tag組換えタンパク質。
【0305】
他の化学品 EDC、NHS、DDI水、PBS緩衝液、KHPO、20KDa PEG(推奨)、グリシン(又はTris緩衝液)、Tween20。
【0306】
1~10mgのEDCを水に溶解させることにより、10mg/mLのEDCを含有する溶液を調製した。同様に、1~10mgスルホ-NHSを水に溶解させることにより、10mg/mLのスルホ-NHSを含有する溶液を調製した。両溶液に対して、溶質1mg当たり100μL HOを使用し、使用直前に溶液を調製した。
【0307】
1mLの-COOH末端粒子(DDI水中に懸濁)に7μLのEDC溶液、続いて14μLのスルホ-NHS溶液を添加した。溶液を十分に混合し、次いで、室温で30分間にわたりチューブローテーター上でインキュベートした。溶液を5000RCFで5分間遠心分離した。上清液を注意深く除去し、1mLの反応緩衝液(pH7.4で5mM KHPO+0.5%(v/v)20KDa PEG)を添加した。混合物をボルテックス及び超音波処理(<30秒間)して粒子を再懸濁させた。混合物に20μLの1mg/mL RBDタンパク質を添加し、混合物をボルテックスして混合し、そして室温で2時間インキュベートした。次いで混合物に5μLの飽和グリシン(DDI水中)を添加し、そして内容物を10分間にわたり混合及びインキュベートした。
【0308】
以下のように反応緩衝液で粒子を洗浄した。すなわち、混合物を5000RCFで5分間遠心分離し、上清液を除去し、そして30sec以下の超音波処理を用いて1mL反応緩衝液でペレットを再懸濁させた。反応緩衝液濯ぎをさらに2回繰り返し、全体で3回の濯ぎを行った。3回目の最終濯ぎでは、1mLの0.1×PBS+0.5%(v/v)Tween20中にペレットを再懸濁させた。得られた材料を4℃で貯蔵した。
【0309】
非特異的アグリゲーションを回避するために、下記シーケンスを用いて粒子表面にPEGを再充填した。50mLの0.1×PBS中の2mgのSH-PEG-COOH(MW6000)の溶液を調製した。等体積のこの溶液及びコンジュゲート粒子の溶液及びPEG溶液を混合し、25℃で振盪しながら6時間又は代替的に4℃で一晩インキュベートした。
【0310】
以下のように反応緩衝液で粒子を洗浄した。すなわち、混合物を5000RCFで5分間遠心分離し、上清液を除去し、そして1mL 0.1×PBS+0.5%(v/v)Tween20でペレットを再懸濁させた。反応緩衝液濯ぎをさらに2回繰り返し、全体で3回の濯ぎを行った。得られた材料を4℃で貯蔵した。
【0311】
実施例14:全血中のSARS-CoV-2抗体の検出
SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体を検出及び定量するために下記アッセイを開発した。設計原理は図16に例示される。実施例12のナノ粒子は、PEG(i)を介してナノ粒子に連結された抗ヒト抗体(ii)と共に示される。実施例13のナノ粒子は、PEG(v)を介してナノ粒子に連結されたRBDドメイン(iv)と共に示される。アナライト(iii)、すなわちSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する抗体は、2つのタイプの機能化ナノ粒子に同時に結合可能である。
【0312】
化学品 抗体:SARS-CoV-2スパイクタンパク質S1キメラ組換えヒトモノクローナル抗体(H6)
全血 ZenBio,Inc.,Cat No:SER-WB10ML
【0313】
所望の抗体濃度で全血サンプルを調製した。10μLのRBDコンジュゲート粒子(20 OD=1.3E11粒子/mL)と10μLの0.1×PBS+0.5%(v/v)Tween20溶液を含有する溶液とを調製した。20μLの希釈粒子溶液(10 OD=6.5E10粒子/mL)と5μLの全血サンプルとを混合し、混合物を穏やかにボルテックスし、次いで、25℃で1時間インキュベートした。
【0314】
5μLの溶液を大きなガラススライド(CORNINGカバーガラス、厚さ1.24×50mm、Cat.No.2975-245)に適用し、そして小さなカバーガラス(CORNINGカバーガラス、厚さ1.18×18mm、Cat.No.2845-18)でカバーした。20×対物レンズを用いて暗視野像を記録した。自作画像分析プログラムを用いて画像を処理した。
【0315】
アッセイの結果は図17に例示される。パネル(a)は、アグリゲートの顕微鏡観察を示す。パネル(b)は、検量線:水平軸=SARS-CoV-2抗体(mg/dL)、垂直軸=アグリゲーションサイズ(ピクセル)を提供する。5mg/dL以上の抗体濃度で良好な線形性が観測される。患者血清中のCOVID-19 IgG濃度は、1.4~4200μg/mlに対応する0.14~420mg/dLであることに留意されたい。さらに、10mg/dL(又は100μg/mL)は、回復期血清療法のドナーを認定するカットオフ濃度である。
【0316】
実施例15:インタクトSARS-CoV-2ウイルスの検出
インタクトSARS-CoV-2の検出アッセイに利用される成分が図18に例示される。パネル(a)は、ウイルスの表面をデコレートして細胞侵入に関与する(i)多数のスパイクタンパク質をハイライトしてコロナウイルスの詳細を示す。ナノボディーは、スパイクタンパク質に結合するように他者により設計された。パネル(b)及び(c)は、3パートナノボディー(ii)とスパイクタンパク質(i)との相互作用を描く上面視及び側面視を示す。
【0317】
SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するナノボディーで機能化されたナノ粒子は、実施例2に記載の方法を用いて調製された。SARS-CoV-2の検出の詳細は、SARS-CoV-2ウイルスの検出を示す図19に例示される。パネル(a)は、ナノボディー機能化ナノ粒子:(i)SARS-CoV-2スパイクナノボディー、(ii)PEGリンカー、(iii)Auナノ粒子を示す。パネル(b)及び(c)は、各種レベルのウイルス濃度でのアグリゲートの顕微鏡観察を示す。
【0318】
本出願に引用されている米国又は外国の参照文献、特許、又は出願はすべて、あたかもそれら全体が本明細書に記載されたがごとく本出願をもって参照により組み込まれる。なんらかの矛盾を生じた場合、本明細書に実際に開示されたものが優先する。
【0319】
以上の説明から、当業者であれば、本発明の本質的特性を容易に確認することが可能であり、その趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明に種々の変更及び修正を加えて種々の用途及び条件に適合させることが可能である。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図8
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図12(a)】
図12(b)】
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図14(d)】
図14(e)】
図14(f)】
図15
図16
図17(a)】
図17(b)】
図18(a)】
図18(b)】
図18(c)】
図19(a)】
図19(b)】
図19(c)】
図20
【国際調査報告】