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特表2023-522174熱システムの抵抗キャリブレーションおよびモニタリング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】熱システムの抵抗キャリブレーションおよびモニタリング
(51)【国際特許分類】
   G01K 15/00 20060101AFI20230522BHJP
   H05B 3/12 20060101ALI20230522BHJP
   G01K 7/22 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G01K15/00
H05B3/12 A
G01K7/22 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561435
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 US2021026339
(87)【国際公開番号】W WO2021207465
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/007,272
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルバートソン、デイビッド・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジスタッド、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ブルメル、ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】チャン、サンホン
(72)【発明者】
【氏名】オーセ、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】コス、ピート
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス、オースティン
【テーマコード(参考)】
2F056
3K092
【Fターム(参考)】
2F056XA05
3K092QA04
3K092QB02
3K092VV40
(57)【要約】
キュリー温度の材料を有する抵抗素子の温度をキャリブレーションする方法は、標準抵抗-温度(R-T)曲線の値および前記キュリー温度における変曲点を識別するために、等温条件における前記抵抗素子の前記R-T曲線を生成することと、動作期間にわたって前記抵抗素子の動作R-T曲線を生成することと、前記標準R-T曲線を前記動作R-T曲線と比較することと、前記抵抗素子の温度をキャリブレーションするために前記動作曲線を前記キュリー温度における前記標準R-T曲線に調整することとを具備する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュリー温度の材料を含む抵抗素子の温度をキャリブレーションする方法であって、
標準抵抗-温度(R-T)曲線の値と前記キュリー温度における変曲点とを識別するために、等温条件における前記抵抗素子の前記R-T曲線を生成することと、
動作期間にわたって前記抵抗素子の動作R-T曲線を生成することと、
前記標準R-T曲線を前記動作R-T曲線と比較することと、
前記動作R-T曲線を前記キュリー温度での前記標準曲線に調整することと、を具備する方法。
【請求項2】
前記抵抗素子がヒータ内にある、請求項1の方法。
【請求項3】
前記抵抗素子はジャンクションで電源リードに結合され、前記電源リードは、少なくとも1つの追加のキャリブレーション温度が前記ジャンクションで決定されるような、前記抵抗素子の前記材料とは異なる材料である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記電源リードがNiCr材料であり、前記抵抗素子が少なくとも99%のNi含有量を有するNi材料である、請求項3の方法。
【請求項5】
前記動作R-T曲線の勾配が前記標準R-T曲線の勾配よりも浅い場合に、調整を適用することをさらに具備する、請求項1の方法。
【請求項6】
熱電対であって、
キュリー温度を有する抵抗材料から作られる第1の熱電要素と、
前記第1の熱電要素とは異なる材料から作られる第2の熱電要素と、を具備し、
前記第1の熱電要素の前記キュリー温度は、請求項1の方法による前記熱電対をキャリブレーションするために使用される、熱電対。
【請求項7】
キュリー温度の材料からなる抵抗素子の温度をキャリブレーションする方法であって、前記抵抗素子が、異なる材料を有する電源リードと、少なくとも1つの電源リードが前記抵抗素子に接続されている熱電対ジャンクションとに電気的に結合されており、
標準抵抗-温度(R-T)曲線の値と前記キュリー温度における変曲点とを識別するために、等温条件における前記抵抗素子の前記R-T曲線を生成することと、
動作期間にわたって前記抵抗素子の動作R-T曲線を生成することと、
前記標準R-T曲線を前記動作R-T曲線と比較することと、
前記動作曲線を前記キュリー温度での前記標準R-T曲線に調整することと、
前記ジャンクションにおける温度を計算することと、
前記調整することと、前記ジャンクションにおける前記温度とに基づいて、前記抵抗素子の修正された温度を計算することと、を具備する方法。
【請求項8】
前記電源リードはNiCr材料であり、前記抵抗素子は少なくとも99%のNi含有量を有するNi材料である、請求項7の方法。
【請求項9】
抵抗ヒータであって、
各セグメントが、隣接するセグメントとは異なる材料を規定し、各セグメントがキュリー温度を有する抵抗材料から作られる、複数のセグメントと、
各電源リードがセグメントに接続され、前記電源リードのそれぞれが、前記電源リードが接続された前記セグメントの材料とは異なる材料を画定する、電源から延在する複数の電力リードと、を具備し、
前記セグメントの前記キュリー温度と、および前記電源リードの前記異なる材料は、請求項7の方法による、前記抵抗ヒータをキャリブレーションするために使用される、抵抗ヒータ。
【請求項10】
キュリー温度の材料を含む抵抗素子の温度をキャリブレーションする方法であって、
標準抵抗-温度(R-T)曲線の値と前記キュリー温度における変曲点とを識別するために、等温条件における前記抵抗素子の前記R-T曲線を生成することと、
動作期間にわたって前記抵抗素子の動作R-T曲線を生成することと、
前記R-T曲線の形状の数学的表現を開発することと、
前記数学的表現に基づいて、前記動作R-T曲線を前記キュリー温度における前記標準曲線に調整することと、を具備する方法。
【請求項11】
前記数学的表現は、前記R-T曲線のdR/dTの二次導関数である、請求項10の方法。
【請求項12】
前記二次導関数は、ゲイン調整に使用される、請求項11の方法。
【請求項13】
前記数学的表現は、前記動作R-T曲線と、前記標準R-T曲線との間の標準偏差である、請求項10の方法。
【請求項14】
熱電対であって、
キュリー温度を有する抵抗材料から作られた第1の熱電要素と、
前記第1の熱電要素とは異なる材料から作られた第2の熱電要素と、を具備し、
前記第1の熱電要素の前記キュリー温度は、請求項10の方法に従って、前記熱電対をキャリブレーションするために使用される、熱電対。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2020年4月8日に出願された米国仮出願第63/007,272号に対する優先権および利益を主張する。上記出願の開示は、参照によって、本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、温度測定に関し、より具体的には、抵抗測定に基づいて抵抗ヒータの温度をキャリブレーションすることに関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションの記述は、本開示に関連する背景情報を提供するだけであり、先行技術を構成し得ない。
【0004】
別個の温度センサを使用する代わりに、またはそれに加えて、抵抗ヒータの抵抗測定を用いて温度を計算することが当技術分野で知られている。しかし、抵抗ヒータ内の加熱素子の抵抗は、時間の経過や製造中にシフトすることが多く、実際の温度に対して計算された温度に誤差が生じる。
【0005】
これらの抵抗の変化を補償し、より正確な温度に補正するために、複数の熱電対を使用して計算された温度と測定された温度を比較し、抵抗の計算に適切な補正を適用することを含む、さまざまなキャリブレーション手法が採用され得る。これらのキャリブレーション手法はある程度効果的ですが、複雑さと精度の点で欠点がある。
【0006】
加熱/抵抗素子の制御に関連する他の問題の中でも、経時的な加熱/抵抗素子の抵抗のキャリブレーションに関連するこれらの問題は、本開示によって対処される。
【発明の概要】
【0007】
このセクションは、開示の一般的な概要を提供するものであり、その全ての範囲またはすべての機能の、包括的な開示ではない。
【0008】
一般に、本開示では、抵抗ヒータ(またはセンサ、または他の抵抗素子)が使用されているときのキュリー温度における抵抗-温度(R-T)曲線上の変曲点/面積が使用され、それは、キャリブレーションに使用される既知の温度信号を提供する。以下でより詳細に説明するように、この変曲点またはキャリブレーションされたR-T曲線は、これらに限定されないが、ヒータの残存寿命の予測、ヒータ(またはセンサ、または他の抵抗素子)の長さに沿った温度プロファイルの測定、システムのモデリングと制御を改善するための加熱システムからの熱損失の識別、システムのモデリングと制御を改善するための加熱素子とプロセスとの間の熱経路の識別の改善、熱システムをキャリブレーションするためのコストの削減、加熱システムのセルフキャリブレーション、結合された2ワイヤ抵抗と熱電対電源ピン(TCPP)熱システムにおける精度のレベルの向上、(温度センシング抵抗/リードワイヤを有する他の熱システムを含む)2ワイヤ熱電対ジャンクションシステム、および経時的に変化するセンシングシステムにおけるフィールド再キャリブレーションを含む、さまざまな目的に使用できる。したがって、「電力リード」という用語は、電源ピン、リードワイヤ、または抵抗素子に電力を供給するために抵抗素子に動作可能に接続される他の導電素子を意味すると解釈されるべきである。
【0009】
本開示の範囲内に留まりながら、本明細書における教示は、単独で、または本明細書における本発明の内容の一部であるか、または既知であるかにかかわらず、他のキャリブレーション技術と組み合わせて適用され得ることも理解されるべきである。
【0010】
ある形態において、キュリー温度の材料を有する抵抗素子の温度をキャリブレーションする方法が提供される。この方法は、R-T曲線値とキュリー温度での変曲点を識別するために、等温条件における抵抗素子の標準抵抗-温度(R-T)曲線を生成することと、動作期間にわたって抵抗素子の動作R-T曲線を生成することと、標準R-T曲線を動作R-T曲線と比較し、キュリー温度で動作曲線を標準R-T曲線に(オフセットとゲインの両方で)調整する。
【0011】
ある形態において、抵抗素子はヒータ内にあるが、抵抗素子は、他の抵抗素子の中でも熱電対のような、センサであってもよい。別の形態において、抵抗素子はジャンクションで電源リードに結合され、電源リードは、ジャンクションで第2のキャリブレーション温度が決定されるような、抵抗素子の材料とは異なる材料である。
【0012】
別の形態において、抵抗素子が異なる材料を有する電源リードと熱電対接合部とに電気的に結合され、少なくとも1つの電源リードが抵抗素子に接続される場合に、多点キャリブレーションが達成される。この方法は、R-T曲線の値とキュリー温度での変曲点を識別するために等温条件で抵抗素子の標準抵抗-温度(R-T)曲線を生成することと、動作期間にわたって抵抗素子の動作R-T曲線を生成することと、標準R-T曲線を動作R-T曲線と比較し、キュリー温度で動作曲線を標準R-T曲線に調整し、ジャンクションの温度を計算し、調整ステップとジャンクションの温度に基づいて抵抗素子の修正された温度を計算します。
【0013】
適用可能なさらなる領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。説明および特定の例は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示を十分に理解できるようにするために、例として与えられたその様々な形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0015】
図1図1は、抵抗対温度(R-T)曲線上の抵抗材料のキュリー温度における変曲点を示すグラフである。
【0016】
図2図2は、抵抗における変化(dR/dT)対温度曲線における抵抗材料のキュリー温度における変曲点を示すグラフである。
【0017】
図3図3は、本開示の教示による、抵抗素子の抵抗をキャリブレーションするためにシフトされたR-T曲線を示すグラフである。
【0018】
図4図4は、図3において示された、キャリブレーション前後の誤差を示すグラフである。
【0019】
図5図5は、本開示の教示による、試験で使用された複数の熱電対を有する抵抗ヒータの概略側面図である。
【0020】
図6図6は、図5の抵抗ヒータの長さに沿った、異なる電力レベルでのシミュレートされた温度分布のグラフである。
【0021】
図7図7は、本開示の試験による、標準R-T曲線と比較して、傾きとオフセットの両方を使用してキャリブレーションされた動作R-T曲線のグラフである。
【0022】
図8A図8Aは、異なる温度端条件で、異なる電力レベルにおける図5の抵抗ヒータの長さに沿ったシミュレートされた温度分布のグラフである。
図8B図8Bは、異なる温度端条件で、異なる電力レベルにおける図5の抵抗ヒータの長さに沿ったシミュレートされた温度分布のグラフである。
図8C図8Cは、異なる温度端条件で、異なる電力レベルにおける図5の抵抗ヒータの長さに沿ったシミュレートされた温度分布のグラフである。
【0023】
図9図9は、図8A-8Cの異なる温度端条件についての、計算されたR-T曲線のグラフである。
【0024】
図10図10は、図8A-8Cの異なる温度端条件についての、計算されたdR/dT曲線のグラフである。
【0025】
図11A図11Aは、本開示の試験による、部分的なおよび全体的な浸しの両方についての、等温ソルトバス中の抵抗素子の経時的な抵抗のグラフである。
図11B図11Bは、本開示の試験による、部分的なおよび全体的な浸しの両方についての、等温ソルトバス中の抵抗素子の経時的な抵抗の変化のグラフである。
【0026】
図12A図12Aは、本開示の試験による、加熱サイクル全体にわたる部分的な浸漬ソルトバスの経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
図12B図12Bは、本開示の試験による、加熱ランプにわたる部分的な浸漬ソルトバスの経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
図12C図12Cは、本開示の試験による、冷却ランプにわたる部分的な浸漬ソルトバスの経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
【0027】
図13A図13Aは、本開示の試験による加熱サイクル全体にわたる全体的な浸漬ソルトバスの経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
図13B図13Bは、本開示の試験による加熱ランプにわたる全体的な浸漬ソルトバスの経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
図13C図13Cは、本開示の試験による冷却ランプにわたる全体的な浸漬ソルトバスの経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
【0028】
図14A図14Aは、本開示の試験による、累積期間にわたる、部分的および全体的な浸漬ソルトバスの両方の経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
図14B図14Bは、本開示の試験による、ソルトバスから取り出した後の、累積期間にわたる、部分的および全体的な浸漬ソルトバスの両方の経時的な抵抗の変化を示すグラフである。
【0029】
図15A図15Aは、本開示の教示による、熱電対電源ピン構成を有し、多点キャリブレーションを使用した抵抗素子の別の形態の概略図である。
図15B図15Bは、本開示の教示による、熱電対電源ピン構成を有し、多点キャリブレーションを使用した抵抗素子の別の形態の概略図である。
【0030】
図16A図16Aは、本開示の教示による、等温温度分布および異なる電力レベルを有し、多数のコイルを有する仮想ヒータに沿ったシミュレートされた温度分布を示すグラフである。
図16B図16Bは、本開示の教示による、多数のコイルを有する仮想ヒータに沿ったシミュレートされた温度分布を示すグラフであり、高い端損失、すなわち両端でより低い温度を有する、異なる電力レベルである。
【0031】
図17図17は、本開示の教示による、図16Aおよび16Bに対応する仮想ヒータのdR/dT曲線のグラフである。
【0032】
図18図18は、本開示の教示による、図16Aおよび図16Bに対応するdR/dT対最大ワイヤ温度のグラフである。
【0033】
図19図19は、本開示の教示による、図16Aおよび図16Bに対応する二次導関数dR/dTのグラフである。
【0034】
図20A図20Aは、本開示の教示による、熱電対が2つの異なる位置にあるヒータに沿ったシミュレートされた温度分布を示すグラフである。
【0035】
図20B図20Bは、本開示の教示による、図16Aおよび16Bの仮想ヒータの長さに沿った2つの異なる熱電対の位置に対するdR/dT対ワイヤ温度のグラフである。
【0036】
図21図21は、本開示の教示に従って構成された、抵抗素子用の複数の異なる材料および複数の電源リードセンサを有するヒータの概略図である。
【0037】
図22図22は、本開示の教示に従って構成されたセルフキャリブレーション熱電対の概略図である。
【0038】
本明細書に記載の図面は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、応用、または使用を限定することを意図するものではない。図面を通して、対応する参照番号は、同様または対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0040】
キュリー温度またはキュリー点は、物理学および材料科学において、特定の材料が永久磁気特性を失う温度として知られている。図1に示されるように、キュリー温度は、ニッケル、鉄、コバルトおよびそれらの合金のいくつかを例として含む、いくつかの材料の抵抗-温度(R-T)特性に変曲点を作り出すことが示されている。
【0041】
図2を参照すると、変曲点は、温度による抵抗の変化率(または変曲点を通過するときの時間による変化率)、またはdR/dTを測定することによって、より明確に識別され得る。本発明者らは、製造プロセスおよび使用時間による抵抗のシフトによって、変曲点が、ほとんど影響を受けずに残ることを発見した。換言すれば、変曲点は、動作環境/制約およびヒータ/熱システムの物理的構造に関係なく、一般に同じ温度のままである。したがって、抵抗ヒータ(またはセンサ、または他の抵抗素子)が使用されているときに、変曲点を識別することによって、キャリブレーションに使用できる既知の温度信号が提供される。本明細書で説明されるように、発明者によるこの原理の発見は、より簡単かつより正確に、他の用途の中でも、抵抗素子における、および抵抗素子に沿った、温度を決定するため、熱モデルをキャリブレーションするため、抵抗素子をセルフキャリブレーションするため、抵抗素子の寿命を予測するため、および熱システムへの電力を制御するために、さまざまな場合に適用され得る。
【0042】
ここで図3を参照すると、R-T、標準R-T曲線、または等温条件下で生成される曲線をキャリブレーションするためにキュリー温度を使用する例は、実際に測定された、または誤差を有する動作R-T曲線に沿った、抵抗要素が示されている。キュリー温度での変曲点は変化しないので、抵抗素子のR-T曲線をキャリブレーションするために、キュリー温度における標準のR-T曲線に示されているように、動作R-T曲線は、オフセットまたはシフトアップされ得る。
【0043】
図4で示されるように、R-T曲線のこのシフトは、抵抗測定における誤差を減少させ、温度範囲にわたる抵抗素子の抵抗は、本開示の原理に従って容易かつ正確にキャリブレーションされ得る。
【0044】
図3に戻ると、動作R-T曲線は、一般に、標準R-T曲線よりも「平坦」である。これは、抵抗素子の両端が抵抗要素の中心よりも低い温度にあるために発生し、この温度差のために、より平坦な曲線は、抵抗素子全体の平均温度を示す。変曲点を有するR-T曲線のシフトにより、本開示の教示は、抵抗素子の長さに沿った温度プロファイルを決定することに適用され得る。一例において、キャリブレーションされたR-T曲線では、より低い温度における抵抗は、計算された抵抗よりも実際には低くなり、より高い温度におけるキャリブレーションされた抵抗は、一般に、標準R-T曲線をトラックするが、やや高くなることには注意されたい。より具体的な例および試験については、以下で詳しく説明される。
【0045】
試験/計算。
【0046】
図5および図6を参照すると、71個のコイルを備えた抵抗ワイヤ、ヒータ20の中心に配置された内部熱電対、およびTC1からTC4までのラベル付けされた、図示のようにヒータ20のシース22に取り付けられた4つの追加の熱電対を有する管状ヒータ20に対して試験が実施された。0から600℃の温度範囲にわたる、ヒータ20の長さに沿った温度プロファイルが図6に示されており、温度が上昇するにつれてヒータ20の端部で熱損失が発生することが観察され得る。
【0047】
ここで、図7を参照すると、2つの抵抗素子が試験され、1つは上の破線曲線によって示されるように等温状態であり、もう1つは下の破線曲線によって示されるように外気中である。外気曲線は、曲線を比較できるように、オフセットとゲインが調整されている。最後に、下の実線の曲線は、等温抵抗率データを測定された温度プロファイルに適用した。その結果、下側の破線の曲線と実線の曲線の曲率の類似性は、キャリブレーション技術の有効性を示し、以下に示すように曲線の「平坦性」によって引き起こされるエラーが減少する。
【0048】
一般に、等温R-T曲線と比較した測定R-T曲線の「平坦性」は、抵抗素子の長さに沿った、温度プロファイルに関するキャリブレーション情報を提供し得る。本明細書で使用される「より平坦」という用語は、特徴的でない変曲点または面積を有すること、または曲線が比較的一貫した勾配を有することを意味すると解釈される。「より平坦」という用語は、デカルト平面上でより水平に近いことを意味すると解釈されるべきではない。たとえば、曲線がより平坦であるほど、抵抗素子の両端で発生しやすい熱損失がより大きくなる。キュリー温度における等温R-T曲線をオフセットすることにより、これらの損失を補償でき、これは、時間の経過に伴う抵抗素子の抵抗の製造上のばらつきや変化による損失と同様である。
【0049】
図8A~8C、および図9を参照すると、シミュレートされたデータを使用した、抵抗素子の長さに沿った温度プロファイルのキャリブレーションの原理が、より詳細に示されている。図8A~8Cは、両端に外気損失を有する(図8A)、一端に外気損失を有する(図8B)、および等温温度プロファイルを有する(図8C)、抵抗素子について、上述の個別の熱電対を用いた、いくつかの温度測定値を示す。対応するR-T曲線が図9において示されており、曲線Aは両端での外気損失を表し、曲線Bは一端での外気損失を表し、曲線Cは等温のケースを表す。示されているように、曲線Cにおける等温のケースでは、より多くの抵抗素子が同時に温度に達すると、抵抗がより高くなり、変曲点がより明確になる。この例の端の部分における、熱損失がより大きいほど、変曲点は明確でなくなる(「より平坦」)。
【0050】
ここで、図10を参照すると、温度にわたる抵抗の一時導関数、または、温度変化にわたる抵抗における変化(dR/dT)は、熱端損失を伴うまたは伴わないこれらの違いを強調している。曲線Cによって示されているように、最大dR/dTポイントは、より多くの抵抗素子が同時に変曲点温度に到達すると高くなり、温度が高くなると非常に急速に低下する。曲線BおよびCによって示されているように、最大dR/dTポイントは、同時に変曲点温度に到達する抵抗素子がより少ないほど低く、温度が高いほどゆっくりと減少する、(材料の他の部分が、まだ変曲点の近くにあるため)。特に、これらの違いにもかかわらず、変曲点(またはキュリー温度)は、3つの条件すべてで同じままであるため、さまざまな熱環境における抵抗素子の抵抗のキャリブレーションに定数を提供する。
【0051】
ソルトバス試験。
【0052】
抵抗キャリブレーションにキュリー温度を使用することをさらに実証するため、(等温条件をシミュレートするために)420℃の溶融ソルトバスに抵抗素子を浸して一連の試験が実施された。ソルトバスに部分的に浸された、およびソルトバスに全体的に浸された、両方の抵抗素子と、データとは、これら2つのテスト条件で収集された。
【0053】
図11Aおよび11Bにおいて示されるように、抵抗素子がソルトバスに部分的に浸され、バスから取り出して、室温で冷却した後、ソルトバスに全体的に浸され、室温で冷却した。
【0054】
さらに、図12A~12Cにおいて、部分的な浸しについて示され、図13A~13Cにおいて全体的な浸しについて示され、多くの観察がなされた。まず、dR/dt(時間の変化に対する抵抗の変化、時間=「t」)の大きさは、全体的に浸したテスト条件がより高い。また、dR/dtの大きさは、加熱ランプ/期間と冷却ランプ/期間の両方で、全体的に浸したテスト条件の方が高かった。加熱ランプ/期間中および冷却ランプ/期間中のdR/dtの大きさのこの差は、図14Aおよび図14Bにも示されている。
【0055】
セルフキャリブレーション。
【0056】
本開示の教示のさらに別の用途は、抵抗素子に提供される電源ピンに異なる材料を使用することである。温度センシングまたは「熱電対」電源ピンを形成するために、電源ピンに異なる材料を使用することは、「RESISTIVE HEATER WITH TEMPERATURE SENSING POWER PINS」という名称の米国特許第10,728,956号に記載されており、本出願およびその内容と共通に所有されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
図15Aおよび15Bを参照すると、異なる材料で作られた少なくとも1つの電源リードを有する抵抗要素の2つの例示的な構成が示されている。(この場合、ヒータの抵抗ワイヤである)抵抗素子30は、例えば、例として、Ni含有量が99%であるニッケル201(UNS N02201)など、そのキュリー温度において測定可能な変曲点を有する抵抗材料から作成される。電源リード40は、別の材料であるが、例えば、NiCr合金であり得る抵抗素子30の材料とは異なる。ジャンクション50における温度測定で、ニッケル201のキュリー温度での変曲点そって、多点キャリブレーションが提供され得る。1つのキャリブレーションポイントは、キュリー温度変曲点からのもので、他のキャリブレーションポイントは熱電対の電源リードジャンクション50からのものである。
【0058】
利点として、本開示の教示は、これらに限定されないが、とりわけ、抵抗素子の抵抗のキャリブレーション、加熱システムに沿った熱損失の補償、熱モデルのキャリブレーション、多点キャリブレーション、抵抗素子の寿命予測、および電力制御を含む、様々な目的に使用され得る。
【0059】
本開示の別の形態において、動作R-T曲線の部分ゲイン補正は、dR/dTの二次導関数、またはdR/dT、および他の形態における標準偏差またはdR/dTの形状の他の数学的表現を使用することによって、提供される。一般に、以下でより詳細に説明するように、キュリー変曲点に至るまでおよびキュリー変曲点から離れる動作R-T曲線の形状は、ゲイン調整のための情報を提供する。また、二次導関数を使用したゲイン調整が以下に示され、そして説明されているが、二次導関数は、dR/dTの形状の他の数学的表現とともに、オフセットとゲインのいずれかまたは両方に使用でき、本開示の範囲にある。
【0060】
図16Aおよび16Bを参照すると、異なる電力レベルで複数のコイル(この例では合計70個のコイル)を有するヒータのシミュレートされた温度分布が示され、等温温度分布が図16Aに示されており、高い端損失を伴う場合が図16Bに示されている。等温条件と高い端損失条件の両方は、以下に示すような、dR/dTの形状のさまざまな数学的表現を使用して、さらに分析される。
【0061】
まず、図17において示されるように、等温条件での抵抗は、変曲点でより高く、より明確である。さらに、等温条件でのR-T曲線の下の面積は、高い端損失条件よりも大きくなる。
【0062】
ここで、図18を参照すると、等温条件の最大dR/dTがより高く、標準偏差も高い。各曲線のdR/dT値の平均および標準偏差が計算され、これらの計算に基づくと、等温条件のdR/dTの標準偏差は0.0048であり、高い端損失条件のdR/dTの標準偏差は0.0021である。さらに示されるように、等温条件のdR/dT曲線の傾きは、変曲点に至るよりも変曲点から遠ざかる(高温に向かう)ほど大きくなり、高い端損失条件のdR/dT曲線の勾配は同様である。したがって、この差は、ヒータを等温状態にキャリブレーションするために、高い端損失条件に対して正のゲイン調整が実行されるべきであることを示している。言い換えれば、この情報は、高い端損失のヒータの平均温度が低いことを裏付ける。
【0063】
次に、図19において、二次導関数、またはdR/dTは、等温および高い端損失条件の両方に対して取られ、キュリー変曲点を大きくする。dR/dTの最大値および最小値は、高い端損失条件よりも等温条件の方が明らかに、より高い、およびより低い、ゲイン調整が必要であることを示している。また、上で図示し説明したdR/dTの場合と同様に、変曲点に至るまで、および変曲点から遠ざかるdR/dT曲線の傾きは、ゲイン調整に使用され得る。
【0064】
図20Aおよび20Bを参照すると、上記のキュリー変曲点に基づいた動作R-T曲線の調整に加えて熱電対を使用すると、追加のキャリブレーション情報を提供することができる。例えば、第1の熱電対TC1は、抵抗加熱素子の最も熱い部分の近くに配置され、第2の熱電対TC2は、抵抗加熱素子の最も冷たい部分の近くに配置される。両方の熱電対からの抵抗信号は同じで、2番目の熱電対TC2の温度が低いため、dTの値は小さくなり、dR/dTは大きくなり、最初の熱電対TC1に比べてシフトされる。2番目の熱電対TC2では、その変曲点がキュリー温度を下回っており、より低温の領域にあることを示している。この変曲点は、2番目の熱電対TC2のキャリブレーションに使用され得る。
【0065】
本開示の別の変形例が図21において示されている、これは、マルチコイル(またはマルチセグメント、抵抗素子は図示されているようにコイル形状である必要はない)ヒータ50を含み、各コイル52、54、および56は、異なるキュリー温度を有する異なる材料から作られており、本明細書の教示に従って温度キャリブレーションを提供する。さらに、各コイル52/54/56は、各コイル52/54/56とは異なる材料から作られた電源リード62、64、66を有する電源に接続することができ、したがって、追加のキャリブレーションを目的として、各ジャンクションA/B/Cに温度を提供する。本開示の原理に従って、任意の数のコイル、電源リード、および材料を使用および組み合わせることができ、したがって、本明細書の図は単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0066】
本開示のさらに別の変形例が図22に示されている、これは、セルフキャリブレーション熱電対100である。セルフキャリブレーション熱電要素100は、抵抗を増加させるためのコイルの形態の第1の熱電要素102と、第1の熱電要素102とは異なる材料から作られた第2の熱電要素104とを含む。無機断熱材106は、熱電要素102/104を取り囲み、シース108は、多くの熱電対構造の典型であるように、無機断熱材106を取り囲む。第1の熱電要素102は、セルフキャリブレーション熱電対100の動作温度範囲を超えるキュリー温度を有する材料で作成される。次に、このキュリー温度を使用して、本明細書の教示によるセルフキャリブレーション熱電対100をキャリブレーションすることができる。図示および説明された特定の熱電対構造は単なる例示であり、他の構造は本開示の範囲内にあるとみなされることも理解されたい。例えば、無機断熱材106の代わりにポリマー断熱材を使用することができ、またはシース108内に配置するのではなく、熱電対ジャンクションを露出させることができる。これらおよび他の構造は、本開示の範囲内にあると解釈されるべきである。
【0067】
上述のように、本開示の教示およびキュリー変曲点の使用は、多くの目的のために使用され得る。そのような目的の1つは、図23A-23Fにおいて示されるように、ヒータ(またはセンサ、または他の抵抗素子)の長さに沿った温度プロファイルの測定/計算である。この例において、「第1のケース」は高い端損失の条件であり、第2のケースは等温温度分布である。
【0068】
以下でより詳細に説明されるように、この変曲点またはキャリブレーションされたR-T曲線は、これらに限定されないが、ヒータの残存寿命の予測、ヒータ(またはセンサ、または他の抵抗素子)の長さに沿った温度プロファイルの測定、システムのモデリングと制御を改善するための加熱システムからの熱損失の識別、システムのモデリングと制御を改善するための加熱素子とプロセス間の熱経路の識別の改善、熱システムをキャリブレーションするためのコストの削減、加熱システムのセルフキャリブレーション、結合された2ワイヤ抵抗と熱電対電源ピン(TCPP)熱システム、2ワイヤ熱電対ジャンクションシステム(温度センシング抵抗/リードワイヤを有する他の熱システムを含む)の精度レベルの向上、および時間の経過とともに変化するセンシングシステムのフィールド再キャリブレーションを含む、さまざまな目的に使用され得る。
【0069】
本明細書において使用される、「抵抗素子」という用語は、例えば、ヒータにおいて使用される抵抗素子、熱電対において使用される抵抗ワイヤ、または本開示の教示が適用され得る、経時的に抵抗値が変化する他の抵抗素子、を意味すると解釈されるべきである。さらに、ヒータは、とりわけ、カートリッジヒータ、ケーブルヒータ、層状ヒータ、およびフレキシブルヒータとともに、本明細書において示されるような筒状ヒータ構造を含む、任意の数の形態がとられ得る。
【0070】
本明細書で別段の明示的な指示がない限り、力学的/熱的性質、組成パーセンテージ、寸法および/または公差、または他の特性を示すすべての数値は、本開示の範囲を説明する際に「約」または「おおよそ」という言葉によって修飾されていると理解されるべきである。この修飾は、産業的な慣行、材料、製造、アセンブリ公差、および試験能力を含むさまざまな理由から望まれる。
【0071】
本明細書において使用される、A、B、およびCの少なくとも1つというフレーズは、非排他的な論理ORを使用した、論理(A OR B OR C)を意味すると解釈されるべきであり、「少なくとも1つのA、少なくとも1つのB、および少なくとも1つのC。」を意味すると解釈されるべきではない。
【0072】
本開示の説明は、本質的に単なる例示である、したがって、本開示の内容から逸脱しない変形は、本開示の範囲内にあることが意図される。そのような変形は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
【国際調査報告】