(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】Nectin-4に対する抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230522BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230522BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230522BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230522BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230522BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230522BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230522BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230522BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230522BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230522BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230522BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C07K16/28
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61P35/04
A61P35/00
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563917
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2021088661
(87)【国際公開番号】W WO2021213434
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】202010320420.3
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522261352
【氏名又は名称】▲邁▼威(上海)生物科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】任 紅媛
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲ジェン▼
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲鑑▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲驪▼淳
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲曉▼紅
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 小芳
(72)【発明者】
【氏名】▲畢▼ 建▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】王 晋
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 建
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB19
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085AA26
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ヒトNectin-4又はそのフラグメントに結合する抗体分子を提供する。この抗体は、ハイブリドーマスクリーニング及びヒト化技術によって得られ、癌の予防又は治療に使用され、臨床リード薬物分子として使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号35、配列番号39及び配列番号43に示されるCDR-H1(GYTFTTY)、CDR-H2(YPGNVN)及びCDR-H3(GLYYFDY);並びに配列番号45、配列番号47及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRYT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(2)配列番号36、配列番号40及び配列番号43に示されるCDR-H1(GYTFTTYYIH)、CDR-H2(WIYPGNVNTK)及びCDR-H3(GLYYFDY);並びに配列番号45、配列番号47及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRYT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(3)配列番号37、配列番号41及び配列番号43に示されるCDR-H1(TYYIH)、CDR-H2(WIYPGNVNTKYNEKFKG)及びCDR-H3(GLYYFDY);並びに配列番号45、配列番号47及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRYT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(4)配列番号38、配列番号42及び配列番号44に示されるCDR-H1(TTYYIH)、CDR-H2(WIGWIYPGNVNTK)及びCDR-H3(ARGLYYFD);並びに配列番号46、配列番号48及び配列番号50に示されるCDR-L1(SNDVAWY)、CDR-L2(LLIYYASNRY)及びCDR-L3(QQDYSSPY);
(5)配列番号51、配列番号55及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGDGK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号61、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNSYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(6)配列番号52、配列番号56及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDYGVS)、CDR-H2(VIWGDGKIY)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号61、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNSYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(7)配列番号53、配列番号57及び配列番号59に示されるCDR-H1(DYGVS)、CDR-H2(VIWGDGKIYYNSVLKS)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号61、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNSYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(8)配列番号54、配列番号58及び配列番号60に示されるCDR-H1(IDYGVS)、CDR-H2(WLGVIWGDGKIY)及びCDR-H3(AKQGGLLFYAMD);並びに配列番号62、配列番号64及び配列番号66に示されるCDR-L1(LNSYSQKNYLAWY)、CDR-L2(LLIYFASTRE)及びCDR-L3(QQHYNTPF);
(9)配列番号51、配列番号55及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGDGK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号67、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNTYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(10)配列番号51、配列番号68及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGDAK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号67、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNTYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(11)配列番号51、配列番号69及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGGGK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号67、配列番号63、配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNTYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(12)配列番号70、配列番号74及び配列番号78に示されるCDR-H1(GYTFTSY)、CDR-H2(YPGNAN)及びCDR-H3(SVYYFDY);並びに配列番号45、配列番号80及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRNT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(13)配列番号71、配列番号75及び配列番号78に示されるCDR-H1(GYTFTSYYIH)、CDR-H2(WIYPGNANNK)及びCDR-H3(SVYYFDY);並びに配列番号45、配列番号80及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRNT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(14)配列番号72、配列番号76及び配列番号78に示されるCDR-H1(SYYIH)、CDR-H2(WIYPGNANNKYNENFKG)及びCDR-H3(SVYYFDY);並びに配列番号45、配列番号80及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRNT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(15)配列番号73、配列番号77及び配列番号79に示されるCDR-H1(TSYYIH)、CDR-H2(WIGWIYPGNANNK)及びCDR-H3(ARSVYYFD);並びに配列番号46、配列番号81及び配列番号50に示されるCDR-L1(SNDVAWY)、CDR-L2(LLIYYASNRN)及びCDR-L3(QQDYSSPY);
(16)配列番号82、配列番号86及び配列番号90に示されるCDR-H1(GYSFTDY)、CDR-H2(NPNNGN)及びCDR-H3(EDRYAFAY);並びに配列番号92、配列番号94及び配列番号96に示されるCDR-L1(RASQSVSTSSYTYMH)、CDR-L2(YASNLES)及びCDR-L3(QHTWEIPYT);
(17)配列番号83、配列番号87及び配列番号90に示されるCDR-H1(GYSFTDYYMH)、CDR-H2(RVNPNNGNTL)及びCDR-H3(EDRYAFAY);並びに配列番号92、配列番号94及び配列番号96に示されるCDR-L1(RASQSVSTSSYTYMH)、CDR-L2(YASNLES)及びCDR-L3(QHTWEIPYT);
(18)配列番号84、配列番号88及び配列番号90に示されるCDR-H1(DYYMH)、CDR-H2(RVNPNNGNTLYNQKFRG)及びCDR-H3(EDRYAFAY);並びに配列番号92、配列番号94及び配列番号96に示されるCDR-L1(RASQSVSTSSYTYMH)、CDR-L2(YASNLES)及びCDR-L3(QHTWEIPYT);並びに、
(19)配列番号85、配列番号89及び配列番号91に示されるCDR-H1(TDYYMH)、CDR-H2(WIGRVNPNNGNTL)及びCDR-H3(AREDRYAFA);並びに配列番号93、配列番号95及び配列番号97に示されるCDR-L1(STSSYTYMHWY)、CDR-L2(LLIKYASNLE)及びCDR-L3(QHTWEIPY)、
から選択される重鎖CDR及び軽鎖CDRの組合せを含む、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体分子又はそのフラグメント。
【請求項2】
前記抗体分子又はそのフラグメントにおいて、前記重鎖可変領域が配列番号7、配列番号9若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が配列番号8、配列番号11若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、
前記重鎖可変領域が配列番号13、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21に示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が配列番号14、配列番号22、配列番号23若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、
前記重鎖可変領域が配列番号27、配列番号29若しくは配列番号30に示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が配列番号28、配列番号31若しくは配列番号32に示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、
前記重鎖可変領域が配列番号33に示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が配列番号34に示されるアミノ酸配列、若しくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体分子又はそのフラグメント。
【請求項3】
前記抗体分子又はそのフラグメントにおける前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、以下のようなアミノ酸配列の組合せから選択される、請求項1又は2に記載の抗体分子又はそのフラグメント:
(1)配列番号7に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号8に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(2)配列番号9に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号11に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号9に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号12に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(4)配列番号10に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号11に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(5)配列番号10に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号12に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(6)配列番号13に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号14に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(7)配列番号16に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号22に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(8)配列番号16に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号23に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(9)配列番号16に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(10)配列番号19に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(11)配列番号21に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(12)配列番号27に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号28に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(13)配列番号29に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号32に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(14)配列番号30に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号32に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;又は、
(15)配列番号33に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号34に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号34に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項4】
ポリオウイルス受容体様分子4(Nectin-4)、好ましくは哺乳動物Nectin-4、より好ましくは霊長類Nectin-4、更に好ましくはヒト又はカニクイザルNectin-4、特にヒトNectin-4に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体分子又はそのフラグメント。
【請求項5】
前記抗体分子がマウス抗体、キメラ抗体、又は完全若しくは部分ヒト化抗体であり、前記フラグメントが前記抗体分子の一本鎖可変フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(ジスルフィド安定化Fvフラグメント)
2(dsFv)
2、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)
2フラグメント又は可変フラグメント(Fv)であり、
好ましくは、前記抗体分子がモノクローナル抗体又は一本鎖抗体であり、
好ましくは、前記抗体分子又はそのフラグメントが定常領域、好ましくはマウス又はヒト重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を更に含み、好ましくは、前記抗体分子又はそのフラグメントが重鎖及び軽鎖を含み、
より好ましくは、前記抗体分子又はそのフラグメントがIgG、IgA、IgM、IgD若しくはIgEの重鎖定常領域、及び/又はカッパ型若しくはラムダ型の軽鎖定常領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体分子又はそのフラグメント。
【請求項6】
前記抗体分子がモノクローナル抗体、好ましくはヒト化モノクローナル抗体であり、好ましくは、前記モノクローナル抗体の前記重鎖定常領域がIgG1型のものであり、前記軽鎖定常領域がカッパ型のものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体分子又はそのフラグメント。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子又はそのフラグメントに含まれる重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸分子及び/又は請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞、又は請求項7に記載の核酸分子及び/又は請求項8に記載のベクターで形質転換若しくはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはそのフラグメント、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター又は請求項9に記載の宿主細胞を含む組成物であって、好ましくは、該組成物が医薬組成物であり、任意に薬学的に許容可能な担体、アジュバント又は賦形剤を含む、組成物。
【請求項11】
疾患又は障害の検出又は診断のための作用物質の製造における請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはそのフラグメント、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞又は請求項10に記載の組成物の使用。
【請求項12】
疾患又は障害を検出又は診断する方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはそのフラグメント、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞又は請求項10に記載の組成物を被験体に由来する試料と接触させることを含み、前記被験体が哺乳動物、好ましくは霊長類、より好ましくはヒトである、方法。
【請求項13】
抗体薬物コンジュゲートの調製における請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子又はそのフラグメントの使用。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子又はそのフラグメントを細胞毒性部分にコンジュゲートすることによって形成される抗体薬物コンジュゲートであって、
好ましくは、前記細胞毒性部分がチューブリン阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤又はDNA結合剤であり、
より好ましくは、前記チューブリン阻害剤がメイタンシノイド、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルドラスタチン10、ツブリシン及びその誘導体、クリプトフィシン及びその誘導体、並びにタルトブリンからなる群から選択され、
より好ましくは、前記トポイソメラーゼ阻害剤が、ドキソルビシンの代謝産物であるPNU-159682及びその誘導体、並びにイリノテカン(CPT-11)の代謝産物であるSN38及びその誘導体からなる群から選択され、
より好ましくは、前記DNA結合剤がPBD及びその誘導体、並びにデュオカルマイシン及びその誘導体からなる群から選択される、抗体薬物コンジュゲート。
【請求項15】
疾患又は障害の予防又は治療のための薬剤の製造における請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはそのフラグメント、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、請求項10に記載の組成物又は請求項14に記載の抗体薬物コンジュゲートの使用。
【請求項16】
疾患又は障害を予防又は治療する方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子若しくはそのフラグメント、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、請求項10に記載の組成物又は請求項14に記載の抗体薬物コンジュゲートを、それを必要とする被験体に投与することを含み、前記被験体が哺乳動物、好ましくは霊長類、より好ましくはヒトである、方法。
【請求項17】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体分子又はそのフラグメント、請求項7に記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、請求項10に記載の組成物又は請求項14に記載の抗体薬物コンジュゲートを含むキットであって、好ましくは疾患又は障害の治療、検出又は診断に使用される、キット。
【請求項18】
前記疾患又は障害が、Nectin-4が高度に発現している腫瘍又は癌であり、
好ましくは、前記疾患又は障害が固形腫瘍であり、
好ましくは、前記疾患又は障害が膀胱癌、膵癌、乳癌(トリプルネガティブサブタイプ及び基底サブタイプを含む)、非小細胞肺癌、胃癌、食道癌、卵巣癌等、特に膀胱癌、乳癌、卵巣癌又は肺癌である、請求項11~17のいずれか一項に記載の使用、方法又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年4月21日に出願された中国特許出願第202010320420.3号の優先権を主張し、その特許出願の内容は引用することによりその全体が本明細書に包含される。
【0002】
本開示は、抗体医薬の分野に属し、特にヒトNectin-4に対する抗体及び薬剤の調製における抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
Nectin-4(PVRL4、ポリオウイルス受容体様分子4としても知られる)は、66kDの分子質量を有するI型膜貫通糖タンパク質であり、Igスーパーファミリータンパク質のネクチンファミリーに属する。Nectin-4は、3つの免疫グロブリン様(Ig様)ドメイン(VCC)を有する細胞外領域を有し、カドヘリンとともに接着結合の形成及び維持において役割を果たす。
【0004】
Nectin-4は、様々な腫瘍細胞の生成及び発生と密接に関連している。Nectin-4は、多数の固形腫瘍、特に膀胱癌において発現することが見出されており、腫瘍関連抗原として、Nectin-4は乳癌、卵巣癌及び肺癌において、それぞれ乳癌の50%、卵巣癌の49%及び肺癌の86%に相当する組織発現の検出率を有し、これらの上皮性悪性腫瘍の発生、浸潤及び転移において重要な役割を果たす。したがって、Nectin-4は、複数の固形腫瘍の診断及び治療のための重要な標的となっている。
【0005】
現在、Nectin-4を対象とする主要な薬物は、抗Nectin-4モノクローナル抗体と殺細胞剤モノメチルアウリスタチンE(MMAE)とをコンジュゲートすることによって形成される抗体薬物コンジュゲートであるエンホルツマブベドチンである。エンホルツマブベドチンは、主に膀胱癌、特に尿路上皮癌の治療に使用され、2018年3月にFDA画期的治療薬指定(Breakthrough Therapy Designation)を受けている。加えて、他の研究から、接着因子Nectin-4が乳癌において効果的な予後因子として使用することができるだけでなく、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を有する患者に効果的な治療標的としても使用され得ることが示されている。また、in vitro及びin vivo研究から、抗Nectin-4抗体薬物コンジュゲート(ADC)が限局性及び転移性TNBCに対してより良好な治癒効果を有することが証明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示が解決しようとする技術的課題は、ハイブリドーマスクリーニング及びヒト化を通じて、Nectin-4に特異的に結合する高親和性抗体を得ることであり、ヒト化工学によって完全ヒト抗体配列を得る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような技術的課題に対して、本開示の目的は、Nectin-4、特にヒトNectin-4に特異的に結合する抗体分子又はそのフラグメントを提供し、また、その用途を提供することである。本明細書に記載される抗体の「フラグメント」は、特に、抗体の様々な機能的フラグメント、例えばその抗原結合部分、例えばFab、F(ab’)2又はscFvフラグメントを包含する。
【0008】
本開示は、以下の技術的解決策を提供する。
【0009】
一態様では、本開示は、
(1)配列番号35、配列番号39及び配列番号43に示されるCDR-H1(GYTFTTY)、CDR-H2(YPGNVN)及びCDR-H3(GLYYFDY);並びに配列番号45、配列番号47及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRYT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(2)配列番号36、配列番号40及び配列番号43に示されるCDR-H1(GYTFTTYYIH)、CDR-H2(WIYPGNVNTK)及びCDR-H3(GLYYFDY);並びに配列番号45、配列番号47及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRYT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(3)配列番号37、配列番号41及び配列番号43に示されるCDR-H1(TYYIH)、CDR-H2(WIYPGNVNTKYNEKFKG)及びCDR-H3(GLYYFDY);並びに配列番号45、配列番号47及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRYT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(4)配列番号38、配列番号42及び配列番号44に示されるCDR-H1(TTYYIH)、CDR-H2(WIGWIYPGNVNTK)及びCDR-H3(ARGLYYFD);並びに配列番号46、配列番号48及び配列番号50に示されるCDR-L1(SNDVAWY)、CDR-L2(LLIYYASNRY)及びCDR-L3(QQDYSSPY);
(5)配列番号51、配列番号55及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGDGK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号61、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNSYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(6)配列番号52、配列番号56及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDYGVS)、CDR-H2(VIWGDGKIY)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号61、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNSYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(7)配列番号53、配列番号57及び配列番号59に示されるCDR-H1(DYGVS)、CDR-H2(VIWGDGKIYYNSVLKS)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号61、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNSYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(8)配列番号54、配列番号58及び配列番号60に示されるCDR-H1(IDYGVS)、CDR-H2(WLGVIWGDGKIY)及びCDR-H3(AKQGGLLFYAMD);並びに配列番号62、配列番号64及び配列番号66に示されるCDR-L1(LNSYSQKNYLAWY)、CDR-L2(LLIYFASTRE)及びCDR-L3(QQHYNTPF);
(9)配列番号51、配列番号55及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGDGK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号67、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNTYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(10)配列番号51、配列番号68及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGDAK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号67、配列番号63及び配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNTYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(11)配列番号51、配列番号69及び配列番号59に示されるCDR-H1(GFSLIDY)、CDR-H2(WGGGK)及びCDR-H3(QGGLLFYAMDY);並びに配列番号67、配列番号63、配列番号65に示されるCDR-L1(KSSQSLLNTYSQKNYLA)、CDR-L2(FASTRES)及びCDR-L3(QQHYNTPFT);
(12)配列番号70、配列番号74及び配列番号78に示されるCDR-H1(GYTFTSY)、CDR-H2(YPGNAN)及びCDR-H3(SVYYFDY);並びに配列番号45、配列番号80及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRNT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(13)配列番号71、配列番号75及び配列番号78に示されるCDR-H1(GYTFTSYYIH)、CDR-H2(WIYPGNANNK)及びCDR-H3(SVYYFDY);並びに配列番号45、配列番号80及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRNT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(14)配列番号72、配列番号76及び配列番号78に示されるCDR-H1(SYYIH)、CDR-H2(WIYPGNANNKYNENFKG)及びCDR-H3(SVYYFDY);並びに配列番号45、配列番号80及び配列番号49に示されるCDR-L1(KASQSVSNDVA)、CDR-L2(YASNRNT)及びCDR-L3(QQDYSSPYT);
(15)配列番号73、配列番号77及び配列番号79に示されるCDR-H1(TSYYIH)、CDR-H2(WIGWIYPGNANNK)及びCDR-H3(ARSVYYFD);並びに配列番号46、配列番号81及び配列番号50に示されるCDR-L1(SNDVAWY)、CDR-L2(LLIYYASNRN)及びCDR-L3(QQDYSSPY);
(16)配列番号82、配列番号86及び配列番号90に示されるCDR-H1(GYSFTDY)、CDR-H2(NPNNGN)及びCDR-H3(EDRYAFAY);並びに配列番号92、配列番号94及び配列番号96に示されるCDR-L1(RASQSVSTSSYTYMH)、CDR-L2(YASNLES)及びCDR-L3(QHTWEIPYT);
(17)配列番号83、配列番号87及び配列番号90に示されるCDR-H1(GYSFTDYYMH)、CDR-H2(RVNPNNGNTL)及びCDR-H3(EDRYAFAY);並びに配列番号92、配列番号94及び配列番号96に示されるCDR-L1(RASQSVSTSSYTYMH)、CDR-L2(YASNLES)及びCDR-L3(QHTWEIPYT);
(18)配列番号84、配列番号88及び配列番号90に示されるCDR-H1(DYYMH)、CDR-H2(RVNPNNGNTLYNQKFRG)及びCDR-H3(EDRYAFAY);並びに配列番号92、配列番号94及び配列番号96に示されるCDR-L1(RASQSVSTSSYTYMH)、CDR-L2(YASNLES)及びCDR-L3(QHTWEIPYT);並びに、
(19)配列番号85、配列番号89及び配列番号91に示されるCDR-H1(TDYYMH)、CDR-H2(WIGRVNPNNGNTL)及びCDR-H3(AREDRYAFA);並びに配列番号93、配列番号95及び配列番号97に示されるCDR-L1(STSSYTYMHWY)、CDR-L2(LLIKYASNLE)及びCDR-L3(QHTWEIPY)、
から選択される重鎖CDR及び軽鎖CDRの組合せを含む、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体分子又はそのフラグメントを提供する。
【0010】
本開示の抗体分子又はそのフラグメントにおける重鎖可変領域又は軽鎖可変領域は、当該技術分野で一般に知られる抗体における重鎖可変領域又は軽鎖可変領域のドメイン構成に従って、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(ここで、FRはフレームワーク領域である)としての配置で上記のドメイン構成要素を含む。
【0011】
好ましくは、本開示によって提供される抗体分子又はそのフラグメントにおいて、重鎖可変領域が配列番号7、配列番号9若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号8、配列番号11若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、
重鎖可変領域が配列番号13、配列番号15、配列番号16、配列番号18、配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号14、配列番号22、配列番号23若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、
重鎖可変領域が配列番号27、配列番号29若しくは配列番号30に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号28、配列番号31若しくは配列番号32に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は、
重鎖可変領域が配列番号33に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号34に示されるアミノ酸配列、若しくは示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0012】
本開示の特定の実施の形態によれば、抗体分子又はそのフラグメントにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、以下のようなアミノ酸配列の組合せから選択される:
(1)配列番号7に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号8に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(2)配列番号9に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号11に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号9に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号12に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(4)配列番号10に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号11に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(5)配列番号10に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号12に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(6)配列番号13に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号14に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(7)配列番号16に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号22に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(8)配列番号16に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号23に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(9)配列番号16に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(10)配列番号19に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(11)配列番号21に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号25に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(12)配列番号27に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号28に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(13)配列番号29に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号32に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(14)配列番号30に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号32に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;又は、
(15)配列番号33に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;及び配列番号34に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号34に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0013】
本開示によって提供される重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の上記の特定のアミノ酸配列によると、それに含まれる重鎖CDR及び軽鎖CDRのアミノ酸配列は、当業者によって慣習的に決定することができ、当該技術分野で既知の他の方法によって決定される、得られる重鎖CDR及び軽鎖CDR、並びにそれらの組合せも本開示の範囲に含まれる。
【0014】
本開示によって提供される抗体分子又はそのフラグメントは、ポリオウイルス受容体様分子4(Nectin-4)、好ましくは哺乳動物Nectin-4、より好ましくは霊長類Nectin-4、更に好ましくはヒト又はカニクイザルNectin-4、特にヒトNectin-4に結合する。
【0015】
好ましくは、抗体分子は、マウス抗体、キメラ抗体、又は完全若しくは部分ヒト化抗体であり、フラグメントはNectin-4に特異的に結合可能な抗体分子の任意のフラグメント、例えば、一本鎖可変フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(ジスルフィド安定化Fvフラグメント)2(dsFv)2、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント又は可変フラグメント(Fv)である。
【0016】
好ましくは、抗体分子は、モノクローナル抗体又は一本鎖抗体である。
【0017】
好ましくは、抗体分子又はそのフラグメントは、ヒト又はマウス定常領域、好ましくはマウス又はヒト重鎖定常領域(CH)及び/又は軽鎖定常領域(CL)を更に含み、好ましくは、抗体分子又はそのフラグメントが重鎖及び軽鎖、例えば2つの重鎖及び軽鎖を含む。より好ましくは、抗体分子又はそのフラグメントは、IgG型、IgA型、IgM型、IgD型若しくはIgE型の重鎖定常領域、及び/又はカッパ型若しくはラムダ型の軽鎖定常領域を含む。
【0018】
本開示の特定の実施の形態によれば、本開示によって提供される抗体分子は、モノクローナル抗体、好ましくはヒト化モノクローナル抗体であり、好ましくは、モノクローナル抗体の重鎖定常領域は、IgG1型のものであり、軽鎖定常領域は、カッパ型のものである。例えば、モノクローナル抗体の重鎖定常領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列又は示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、モノクローナル抗体の軽鎖定常領域は、配列番号5に示されるアミノ酸配列又は示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
本開示の文脈において「少なくとも75%の同一性」は、75%~100%の任意の同一性パーセント、例えば75%、80%、85%、90%、更には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性である。
【0020】
別の態様では、本開示は、本開示による抗体分子又はそのフラグメントに含まれる重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖又は軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0021】
本開示による核酸分子は、ベクターにクローニングすることができ、次にこのベクターが宿主細胞をトランスフェクト又は形質転換する。したがって、更に別の態様では、本開示は、本開示による核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは、真核生物発現ベクター、原核生物発現ベクター、人工染色体、ファージベクター等であり得る。
【0022】
本開示のベクター又は核酸分子は、宿主細胞を形質転換若しくはトランスフェクトするために、又は抗体の保存若しくは発現等のために宿主細胞に入るために任意の方法で使用され得る。したがって、更なる態様では、本開示は、本開示による核酸分子及び/又はベクターを含む宿主細胞、又は本開示による核酸分子及び/又はベクターで形質転換若しくはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核生物又は真核生物細胞、例えば細菌若しくは昆虫、真菌、植物又は動物の細胞であり得る。
【0023】
本開示による抗体分子は、当該技術分野で知られている任意の従来の技術を用いて得ることができる。例えば、抗体分子の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖は、本開示によって提供される核酸分子から得ることができ、次いで、抗体分子は、それらを抗体分子の任意の他のドメインと共に集合させることによって得られるか、或いは、本開示によって提供される宿主細胞は、宿主細胞が抗体分子の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域、又は抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖を発現し、それらを抗体に集合させることを可能にする条件下で培養される。任意に、この方法は、産生された抗体分子を回収する工程を更に含み得る。
【0024】
本開示によって提供される抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞又は融合タンパク質は、組成物、より詳しくは、医薬製剤に含有されてもよく、実際に必要に応じて様々な目的に使用される。したがって、更なる態様では、本開示はまた、本開示による抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター及び/又は宿主細胞を含む組成物を提供する。組成物は、任意に薬学的に許容可能な担体、アジュバント又は賦形剤を含む医薬組成物であるのが好ましい。
【0025】
更に別の態様では、本開示はまた、疾患又は障害の検出又は診断のための作用物質の製造における抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞及び/又は組成物の使用を提供する。
【0026】
したがって、本開示は、疾患又は障害を検出又は診断する方法であって、抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞及び/又は組成物を被験体に由来する試料と接触させることを含む、方法を更に提供する。被験体は、哺乳動物、好ましくは霊長類、より好ましくはヒトである。
【0027】
更なる態様では、本開示はまた、抗体薬物コンジュゲートの調製における抗体分子又はそのフラグメントの使用を提供する。
【0028】
したがって、本開示は、本開示による抗体分子又はそのフラグメントを細胞毒性部分にコンジュゲートすることによって形成される抗体薬物コンジュゲートを提供する。
【0029】
好ましくは、細胞毒性部分は、チューブリン阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤又はDNA結合剤である。より好ましくは、チューブリン阻害剤は、メイタンシノイド、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルドラスタチン10、ツブリシン及びその誘導体、クリプトフィシン及びその誘導体、並びにタルトブリンからなる群から選択される。好ましくは、トポイソメラーゼ阻害剤は、ドキソルビシンの代謝産物であるPNU-159682及びその誘導体、並びにイリノテカン(CPT-11)の代謝産物であるSN38及びその誘導体からなる群から選択される。好ましくは、DNA結合剤は、PBD及びその誘導体、並びにデュオカルマイシン及びその誘導体からなる群から選択される。
【0030】
更なる態様では、本開示はまた、疾患又は障害の予防又は治療のための薬剤の製造における抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物及び/又は抗体薬物コンジュゲートの使用を提供する。
【0031】
別の態様では、本開示はまた、疾患又は障害を予防又は治療する方法であって、本開示による抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物及び/又は抗体薬物コンジュゲートを、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法を提供する。被験体は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0032】
したがって、更なる態様では、本開示は、本開示による抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物及び/又は抗体薬物コンジュゲートを含むキットを提供する。キットは、疾患又は障害の治療、検出又は診断等の治療、検出又は診断を目的として使用することができる。
【0033】
本開示によって提供される様々な実施の形態によると、抗体分子若しくはそのフラグメント、核酸分子、ベクター、宿主細胞、組成物及び/又は抗体薬物コンジュゲートは、Nectin-4の高発現に関連する疾患又は障害の予防、治療、検出又は診断に使用することができる。好ましくは、疾患又は障害は、Nectin-4が高度に発現している腫瘍又は癌、特に固形腫瘍である。例えば、疾患又は障害は、膀胱癌、膵癌、乳癌(トリプルネガティブサブタイプ及び基底サブタイプを含む)、非小細胞肺癌、胃癌、食道癌、卵巣癌等、特に膀胱癌、乳癌、卵巣癌又は肺癌である。
【0034】
従来技術と比較して、本開示においては、Nectin-4に特異的に結合する高親和性抗体がハイブリドーマスクリーニング及びヒト化によって得られ、完全ヒト抗体配列がヒト化工学によって得られる。さらに、提供される分子の物理化学的特性及び細胞学的活性に関する研究から、臨床的に有効なリード薬物分子の配列が得られることが確認される。
【0035】
本開示の実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】フローサイトメトリーによる抗原発現細胞株の特定結果を示す図である。パネル1A:HT-1376膀胱癌細胞
【
図1B】フローサイトメトリーによる抗原発現細胞株の特定結果を示す図である。パネル1B:CHO-huNectin4 S8細胞。
【
図2A】FACSアッセイによるハイブリドーマ細胞培養上清の結合活性の検出結果を示す図である。パネル2A:1回目のスクリーニング
【
図2B】FACSアッセイによるハイブリドーマ細胞培養上清の結合活性の検出結果を示す図である。パネル2B:2回目のスクリーニング
【
図2C】FACSアッセイによるハイブリドーマ細胞培養上清の結合活性の検出結果を示す図である。
【
図3A】FACSアッセイによるBT474細胞への抗体の結合の実験結果を示す図である。
【
図3B】FACSアッセイによるBT474細胞への抗体の結合の実験結果を示す図である。
【
図3C】FACSアッセイによるBT474細胞への抗体の結合の実験結果を示す図である。
【
図3D】FACSアッセイによるBT474細胞への抗体の結合の実験結果を示す図である。
【
図4A】BT474細胞における抗体のエンドサイトーシス活性の実験結果を示す図である。
【
図4B】BT474細胞における抗体のエンドサイトーシス活性の実験結果を示す図である。
【
図4C】BT474細胞における抗体のエンドサイトーシス活性の実験結果を示す図である。
【
図4D】BT474細胞における抗体のエンドサイトーシス活性の実験結果を示す図である。
【
図5A】FACSアッセイによるhuNectin4、muNectin4及びcynoNectin4を発現する細胞への抗体の結合の実験結果を示す図である。
【
図5B】FACSアッセイによるhuNectin4、muNectin4及びcynoNectin4を発現する細胞への抗体の結合の実験結果を示す図である。
【
図5C】FACSアッセイによるhuNectin4、muNectin4及びcynoNectin4を発現する細胞への抗体の結合の実験結果を示す図である。
【
図6A】ネクチンファミリーのメンバーへの抗体の結合の実験結果を示す図である。パネル6A:Nectin-1
【
図6B】ネクチンファミリーのメンバーへの抗体の結合の実験結果を示す図である。パネル6B:Nectin-2
【
図6C】ネクチンファミリーのメンバーへの抗体の結合の実験結果を示す図である。パネル6C:Nectin-3
【
図6D】ネクチンファミリーのメンバーへの抗体の結合の実験結果を示す図である。パネル6D:Nectin-4
【
図7A】カニクイザル血清中の抗体の安定性の実験結果を示す図である。パネル7A:対照抗体エンホルツマブ
【
図7B】カニクイザル血清中の抗体の安定性の実験結果を示す図である。パネル7B:42D20 hz10。
【
図8A】マウスにおける抗体のin vivo薬物動態を示す図である。パネル8A:対照抗体エンホルツマブ
【
図8B】マウスにおける抗体のin vivo薬物動態を示す図である。パネル8B:42D20 hz10
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本開示を、具体例を参照して説明する。これらの実施例は本開示の単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を何ら限定するものではないことが当業者には理解されよう。
【0038】
以下の実施例における実験手順は、特に明示がない限り、全て慣用のものである。以下の実施例で用いた原材料及び試薬は、特に明示がない限り、いずれも市販品である。
【0039】
対照抗体エンホルツマブの重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列は、配列番号1及び配列番号2に示される。
【0040】
本開示によって提供される抗体の配列は、別表I~IVに示される。
【0041】
抗原、すなわち組み換えNECTIN4タンパク質(アクセッション番号:NP_002178.2、32aa~349aa)は、配列番号3に示される。
【実施例】
【0042】
実施例1 対照抗体の合成及び発現
エンホルツマブの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする完全合成遺伝子を、真核生物発現ベクターpCDNA3.1のヒトκ軽鎖定常領域及びヒトIgG1重鎖定常領域をコードする遺伝子の上流にそれぞれクローニングし、エンホルツマブの軽鎖発現ベクター及び重鎖発現ベクターを得た。この2つのベクターを増殖のために大腸菌(Escherichia coli)に移植し、エンホルツマブの抗体軽鎖(配列番号2)遺伝子及び重鎖(配列番号1)遺伝子を有する大量のベクターを分離によって得た。HEK293細胞に、ポリエチレンイミン(PEI)と混合した2つのベクターを同時にトランスフェクトし、細胞トランスフェクションの5日後から6日後に培養上清を回収した。Mabselectアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いて発現上清を精製することで抗体エンホルツマブを得た。
【0043】
実施例2 抗原Nectin-4を発現する細胞株の調製
Nectin-4遺伝子のリーディングフレームを、Nectin-4 cDNAを含むベクター(Sino Biological, Inc.、カタログ番号:HG19771-UT)からPCRによってクローニングし、酵素消化によってスクリーニング用のグルタミン合成酵素(GS)遺伝子を含む安定発現ベクターにクローニングした。懸濁培養したCHO-K1細胞をエレクトロトランスフェクトし(Nucleofector IIb、Lonza)、トランスフェクトした細胞を、50μM MSX(Sigma、カタログ番号:M5379)を含むCD CHO AGT(商標)培地(Gibco、カタログ番号:12490-025)に移し、96ウェル細胞培養プレートに接種した。37℃、5%CO2で2週間~3週間置いた後、MSX圧スクリーニングによるプレスクリーニングによって細胞を含む9ウェルを得て、細胞を24ウェル細胞培養プレートにおいて増殖させ、最後に抗原の高発現を有するクローンS8をフローサイトメトリー(FACS)分析によって選択した。クローンのスケールアップ培養を行い、細胞を凍結保存した。
【0044】
高発現クローンS8をCHO-huNectin4 S8と命名した。Nectin-4を内因性発現するHT-1376膀胱癌細胞と比較した細胞の特定結果を
図1に示す。
【0045】
実施例3 ハイブリドーマ細胞のスクリーニング及び特定
1. マウスの免疫化
10匹の8週齢のBalb/cマウスを2つの群に分け、改変CHO-huNectin4 S8細胞株を免疫剤として用いる従来の免疫化手順及び組み換えヒトNectin4タンパク質(Novoprotein Scientific. Incから購入、カタログ番号:CJ19)を免疫剤として用いる急速免疫化手順によってそれぞれ免疫化した。
【0046】
免疫化前にマウスから採取した血液を陰性対照として使用した。2つの免疫剤を腹腔内注射し、2週間の間隔を空けて2回目及び3回目の免疫化を行った。3回目の免疫化の1週間後に血液を採取し、血清の力価を試験した。高力価のマウスを選択し、融合の3日前に最終ブーストを行った。
【0047】
2. 融合及びスクリーニング
SP20骨髄腫細胞を回収し、或る特定の大きさまで増殖させた。融合の1日前に細胞に新鮮培地を供給し、融合に良好な細胞の成長状態を確実にした。融合当日に骨髄腫細胞を回収し、遠心分離し、基礎培地に懸濁し、計数して使用した。
【0048】
マウスの脾臓及びリンパ節をそれぞれ無菌的に摘出し、粉砕して細胞懸濁液を調製した後、細胞フィルターに通して濾過した。赤血球溶解を行い、得られた懸濁液をプールし、その中の細胞を計数した。B細胞及びSP20骨髄腫細胞を1:2の比率で混合し、混合した細胞を遠心分離し、電気融合バッファーで2回洗浄し、再懸濁して、約1×107個/ml~2×107個/mlに調整された細胞密度を得た。細胞懸濁液を融合のために電気ショックカップに入れ、完全培養培地に添加し、37℃、8%CO2のインキュベーターに30分間~240分間入れて回復させた。その後、細胞をHAT培養培地に添加し、384ウェルプレートに入れて培養した。5日目に細胞にHAT培養培地を補充し、7日目にHAT培養培地をHT培養培地に交換した。8日目~10日目に、陽性ハイブリドーマのスクリーニングを以下のように行った。
【0049】
ハイブリドーマ細胞の培養上清を採取し、FACSアッセイによって分析し、細胞が細胞表面上にヒトNectin4抗原を安定発現したCHO-huNectin4 S8細胞に結合することができ、ブランクCHOK1細胞に結合することができない陽性ウェルをスクリーニングした。スクリーニングされた陽性ウェル内の単一細胞を限界希釈によって得て、連続した2回のサブクローニング後に得られた細胞が100%陽性であることが検出された時点でサブクローニング操作を終了した。得られたハイブリドーマ細胞クローンの各々が抗体を1つのみ分泌した。
【0050】
FACSアッセイによるハイブリドーマ細胞培養上清の結合活性の検出結果を
図2及び表1~表3に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
得られたマウスモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞株のIDにちなんで命名した。
【0055】
実施例4 マウスモノクローナル抗体の可変領域配列の特定
抗ヒトNectin-4抗体を分泌するモノクローナルハイブリドーマ細胞を増殖培養に供し、キットに付属する説明書に記載の工程に従ってRNAfast200キット(Shanghai Flytech Biotechnology Co., Ltd.)を用いて細胞の全RNAを抽出し、得られたハイブリドーマ細胞の全RNAを、5×PrimeScript RTマスターミックス(Takara)を用いてcDNAに逆転写させ、抗体軽鎖可変領域IgVL(κ)及び重鎖可変領域VHの配列を、縮重プライマー(Anke Krebber., 1997)及びExtaq PCR試薬(Takara)を用いて増幅した。PCR増幅産物を、PCRクリーンアップゲル抽出キット(Macherey-Nagel GmbH & Co.)を用いて精製し、キットに付属の説明書に従ってpClone007シンプルベクターキット(Tsingke Biotechnology Co., Ltd.)を用いてT-ベクターに連結させ、コンピテント大腸菌細胞に形質転換した。モノクローナル抗体の可変領域配列は、株増幅及びプラスミド抽出後のDNAシーケンシングにより得た。
【0056】
実施例5 キメラ抗体の調製
各マウス抗ヒトNectin-4モノクローナル抗体の重鎖可変領域配列と、公開されたヒトモノクローナル抗体IgG1サブクラスの重鎖定常領域配列(配列番号4)とを共にスプライシングして、哺乳動物細胞発現ベクターへと構築し、また、各マウス抗ヒトNectin-4モノクローナル抗体の軽鎖可変領域配列と、公開されたヒトモノクローナル抗体カッパサブクラスの軽鎖定常領域配列(配列番号5)とを共にスプライシングして、哺乳動物細胞発現ベクターへと構築した。構築された抗ヒトNectin-4キメラ抗体の重鎖ベクターと軽鎖ベクターとをペアで混合し、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてHEK293細胞にベクターをトランスフェクトした。約7日後に細胞上清を回収し、抗ヒトNectin-4キメラ抗体タンパク質をMabSelectによって得た。
【0057】
得られたキメラ抗体を、フォーマット「マウス抗体略語-xiIgG」に従って命名した。
【0058】
実施例6 マウス抗体のヒト化及びヒト化抗体の調製
抗体コードスキームの包括的な分析に基づいて、各マウス抗体の重鎖及び軽鎖の6つの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列領域、並びに保存された三次元立体構造を支持するフレームワーク領域を決定した。続いて、主にIGHV1 | IGHJ4*01等のマウス抗体に類似するヒト抗体の重鎖可変領域配列を、既知のヒト抗体配列について検索した後、配列中のフレームワーク領域配列を鋳型として選択し、マウス抗体の重鎖CDRをヒト抗体のフレームワーク領域と合わせ、最終的にヒト化重鎖可変領域配列を生成した。同様にして、ヒト化軽鎖可変領域配列を生成した。
【0059】
マウスCDRをヒトフレームワーク領域に直接移植した抗体は、しばしば結合活性の劇的な低下を示すため、フレームワーク領域内の個々のアミノ酸をヒトからマウスに戻す変換を必要とする。どの位置を元のマウス残基に戻す必要があるかを決定するため、設計したヒト化抗体配列と元のマウス抗体配列とを比較して、アミノ酸の違いを確認し、それらの異なるアミノ酸が抗体構造を支持する、又は抗原に結合するために重要であるかを確認する必要がある。ヒト化設計によって得られた配列を、N(アスパラギン)グリコシル化部位、N-脱アミド化部位、D(アスパラギン酸)異性化部位等の潜在的な翻訳後修飾部位について確認する必要がある。
【0060】
ヒト化重鎖及び軽鎖可変領域を組み合わせ、キメラ抗体の調製のための実施例5に記載の手順を参照することによってヒト化抗体を得た。ヒト化抗体を、マウス抗体のVH及びVLの改変ヒト化配列の番号(VH_hz及びVL_hz)がそれぞれm及びnであるフォーマット「マウス抗体略語-hzmn」に従って命名した。
【0061】
実施例7 抗体薬物コンジュゲート(ADC)の調製
抗体をPBS(pH7.4)中にて2.0当量~2.6当量のTECPで2時間還元し、vcMMAEを含有するDMAの溶液をTECP還元抗体の溶液に(vcMMAEと抗体とのモル比6:1で)添加した。2℃~8℃で1時間撹拌した後、DMA及び小分子残渣を限外濾過によって除去した。紫外分光光度計を用いてコンジュゲートの248nm~280nmでの吸光度を測定し、コンジュゲートの濃度を算出した。得られたコンジュゲートを-80℃で保存のために凍結管に小分けし(subpackaged)、コンジュゲートのDAR値(4.0±1)をHPLC-HICによって決定した。
【0062】
ADCは、対応する抗体の名称に接尾語「E」を付けたものとして命名した。
【0063】
実施例8 in vitro細胞結合アッセイ
抗ヒトNectin-4対照抗体エンホルツマブ及び本開示の抗体又はADCを初期濃度100nMから勾配で2倍に希釈し、全部で16濃度の各抗体又はADCの溶液を得た。異なる濃度の溶液を384ウェルプレートに1ウェル当たり10μl添加した。
【0064】
細胞表面にNectin-4を発現しているBT474細胞(乳癌細胞)を室温にて100gで5分間遠心分離により回収した後、0.5%BSAを含むPBSで細胞を1回洗浄し、室温にて100gで5分間遠心分離した。細胞を約2×106細胞/mlの密度で再懸濁し、抗体又はADCが添加された384ウェルプレートの各ウェルに10μlを加えた。4℃で1時間インキュベートした後、蛍光標識したヤギ抗ヒトIgG二次抗体を加えた。4℃で1時間のインキュベーションを継続した後、細胞集団の平均蛍光読み取り値をフローサイトメーターで分析した。
【0065】
FACSアッセイによるBT474細胞への本開示のマウス抗体分子の結合の実験結果を
図3のパネル3A並びに表4及び表5に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
FACSアッセイによるBT474細胞への本開示の改変ヒト化分子の結合の実験結果を
図3のパネル3B及びパネル3C並びに表6及び表7に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
FACSアッセイによるBT474細胞への本開示のADCの結合の実験結果を
図3のパネル3D及び表8に示す。
【0072】
【0073】
実施例9 抗体のin vitro細胞診断アッセイ
9.1 BT474細胞におけるエンドサイトーシスアッセイ
1. BT474細胞を1200rpmで8分間遠心分離して回収し、DPBS(Gibco、カタログ番号:14190-136)で2回洗浄した。
2. 1ウェル当たり1E5の細胞を播種し、各抗体又はADCを初期濃度10μg/mlから勾配で2倍に希釈し、全部で7濃度の各抗体又はADCの溶液を得て、最後の1濃度は実際にブランクウェルとして使用した。抗体及びADCの溶液を細胞に添加し、得られた混合物を氷上で1時間インキュベートした。
3. 細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、1200rpmで8分間遠心分離した。次に、L-グルタミン及びHEPESを添加したRPMI 1640培地に細胞を再懸濁し、等量の3つの部分に分け、そのうち1つは37℃で異なる時間インキュベートし、1つは常に氷上に維持してエンドサイトーシスなしの0時点対照として使用し、1つは抗体又はADCを添加せず、NC対照として使用した。
4. 細胞をクエン酸(pH2.7)で3.5分間洗浄し、1M Tris-HCl溶液(pH9.5)で中和し、PBSで2回洗浄し、適量の1%BSA-PBSに再懸濁した後、IQplus機器で検出した。
5. GraphPad Prismソフトウェアを用いてデータを分析及び処理した。
【0074】
BT474細胞における本開示のマウス抗体分子のエンドサイトーシス活性の実験結果を
図4のパネル4A及び表9に示す。
【0075】
【0076】
BT474細胞における本開示の改変ヒト化分子のエンドサイトーシス活性の実験結果を
図4のパネル4B及びパネル4C並びに表10及び表11に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
BT474細胞における本開示のADCのエンドサイトーシス活性の実験結果を
図4のパネル4D及び表12に示す。
【0080】
【0081】
9.2 BT474細胞における増殖阻害アッセイ
Nectin4を発現する乳癌BT474細胞を培養し、トリプシン処理によって採取し、400gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。次いで、細胞を1ウェル当たり4000細胞の密度でプレーティングし、37℃、5%CO2で24時間培養した。1%BSAを含有する培地に試験対象の抗体又はADCを溶解し、それぞれ初期濃度200μg/mlから勾配で3倍に希釈し、ゼロ濃度を含む全部で9濃度の各抗体又はADCの溶液を得た。抗体又はADCの希釈溶液を96ウェルプレートに1ウェル当たり100μl添加した後、抗体又はADCの溶液を含む各ウェルに100μlの細胞培養物を添加し、混合し、37℃、5%CO2で120時間インキュベートした。1%BSAを含有する培地を用いて5μM濃度のCCK-8を調製し、20μlのCCK-8溶液を96ウェルプレートの各ウェルに添加した後、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。最後に、プレートを室温で15分間置いた後、十分に混合した。検出波長として450nmを用いてプレートを読み取った。SoftMax Proを用い、裸抗体又はADCの作用濃度(ng/ml)をX軸にプロットし、測定された吸光度値をY軸にプロットして4パラメータフィッティングを行い、裸抗体及びADCのEC50値を得た。
【0082】
結果を表13、表14及び表15に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
実施例10 抗原に対する抗体の交差結合活性の分析-Facs
細胞:
CHO-huNectin4 S8;
マウスNectin4(NP_082169)を発現するHEK293細胞:HEK-muNectin4;及び、
Cyno Nectin4(配列番号6)を発現するHEK293細胞:HEK-cynoNectin4。
【0087】
本実験は、実施例8に記載される手順を参照して行った。結果を
図5のパネル5A、パネル5B及びパネル5C並びに表16、表17及び表18に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
実施例11 抗体のin vitro結合親和性及び動態のアッセイ
抗体と抗原との間の相互作用は、GEのBIAcore機器S200を用いて測定した。GE Healthcareのビオチン捕捉キットに提供される説明書を参照して、CAPセンサーチップ上の分析チャネル及び対照試料チャネルを最初に抗原、すなわちHisタグ付きヒトNECTIN4と結合させ、次いで、抗体を含む試料(それぞれ初期濃度20nMから3倍に希釈して、全部で8濃度の各抗体の溶液を得て、濃度0.741nMを繰り返すように設定した)を分析チャネルと試料チャネルとの両方に流し、抗体-抗原結合時の光反応を測定した。各抗体の会合定数Kon及び解離定数Koff及び親和性定数KDを、最終的に機器ソフトウェアフィッティング分析(1:1結合モード)により得た。
【0092】
結果を表19に示す。
【0093】
【0094】
実施例12 同じファミリーに属する抗原タンパク質に対する抗体の交差結合活性の検証
抗原:
ヒトNectin-1(C-6His)、Novoproteinカタログ番号C492;
ヒトNectin-2(C-6His)、Novoproteinカタログ番号C440;
ヒトNectin-3(C-6His)、Novoproteinカタログ番号C630;
ヒトNectin-4(C-6His)、Novoproteinカタログ番号CJ19。
抗体(一次抗体):本開示の抗体。
対照抗体:
CD111/Nectin-1/PVRL1抗体、ウサギFab、80244-RP01-100、Sino biologics;
抗Nectin 2抗体(ab233085)、ウサギ抗体、Abcam;
抗Nectin 3抗体(ab137961)、ウサギ抗体、Abcam。
二次抗体:
ヤギ抗ウサギIgG-Fc二次抗体(HRP)カタログ番号SSA003、Jackson Immuno。
【0095】
プレートを1μg/mlの抗原でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次に、段階希釈した抗体をプレートに添加した。最後に、HRP標識二次抗体を添加し、450nmでの吸光度を検出した。結果を
図6のパネル6A、パネル6B、パネル6C及びパネル6Dに示す。
【0096】
この結果から、本開示の抗体が対照抗体と一致する特性を示し、全て抗原Nectin-4を特異的に認識し、用量依存的な結合効果を示し、Nectin-4と同じファミリーに属する他のタンパク質に対して交差結合活性を有しなかったことが分かる。
【0097】
実施例13 カニクイザル血清における抗体のin vitro安定性研究
実験材料:試験対象の抗体、FBS、抗体が結合する抗原、抗huIgG Fabモノクローナル抗体(Sigma、I5260-1ML)及びHRP標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson、コード:109-035-098)。
実験機器:37℃のインキュベーター及びマイクロプレートリーダー。
【0098】
実験手順:
試料の調製:
1)試験対象の抗体の溶液を20μg/mlの濃度に調整し、減菌のために濾過し、250μl/チューブに小分けして使用した。
2)小分けした抗体溶液に同量のカニクイザル血清を添加し、最終濃度50%の血清及び最終濃度10μg/mlの抗体を含有する試料を得た。
3)かかる試料を合計7つ調製し、シールフィルムで密閉し、37℃に置き、プロセス全体を通して試料を滅菌状態に保った。
4)試料をそれぞれ0日目、3日目、7日目、10日目、14日目及び21日目に採取し、試験のために4℃に置き、21日目に採取した試料は、少なくとも1日4℃に置いた。
【0099】
試験方法:
1)2つの96ウェルELISAプレートをPBS中の0.2μg/mlの抗原及びPBS中の抗IgG Fabモノクローナル抗体で、それぞれ1ウェル当たり100μlにて4℃で一晩コーティングした。
2)以下の必要とされる試薬を調製した:
ブロッキングバッファー 5%BSA+PBS
抗体希釈バッファー 5%BSA+PBS+50%FBS
ELISAプレート洗浄バッファー 0.1%Tween+PBS
3)コーティングした2つのELISAプレートを300μl/ウェルのPBSで3回洗浄し、コーティングされていない抗原を洗い流した。
4)1ウェル当たり200μlのブロッキングバッファーを添加し、37℃で1時間プレートをブロッキングした。
5)各試料中の試験対象の抗体を抗体希釈バッファーで2μg/mlに希釈し、更に勾配で3倍に希釈し、全部で8濃度の各抗体の溶液を得た。
6)コーティングした2つのELISAプレート内のブロッキングバッファーを捨て、希釈した抗体溶液をプレートに1ウェル当たり100μl添加した後、37℃で1時間インキュベートした。
7)プレートをPBSTで3回洗浄した。
8)1:5000に希釈した二次抗体を、洗浄したELISAプレートに1ウェル当たり100μl添加した後、RTで40分間インキュベートした。
9)プレートをPBSTで3回洗浄した。
10)TMB基質を1ウェル当たり100μl添加し、暗所で10分間発色させた。
11)50μlの2M HClを添加して反応を停止し、450nmでの吸光度を読み取った。
【0100】
データ処理:
異なる時間にわたって置いた抗体の結合曲線の変化を観察し、抗体の結合活性の安定性を評価するために、ELISA値を用いて結合曲線をプロットした。結果を
図7のパネル7A及びパネル7Bに示す。
【0101】
結果から、本開示の抗体を37℃で21日間インキュベートした後に有効な抗体含量が変化せず、すなわち、抗体が37℃で21日間超にわたって安定に保管され得ることが証明される。
【0102】
実施例14 マウスにおける抗体の薬物動態の分析
実験材料:試験対象の抗体、異なる時点でマウスから採取した血清、抗体が結合するヒトNectin-4抗原、抗huIgG Fabモノクローナル抗体(Sigma、I5260-1ML)及びHRP標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson、コード:109-035-098)。
【0103】
実験手順:
血清の採取:
1)雌性Balb/Cマウスを3匹のマウスの群に分け、200μgの抗体をそれぞれ尾静脈から又は腹腔内に投与した。
2)実験設計に従って異なる時点で尾静脈から血液を採取し、採取した血液試料を室温で30分以上置いた後、血清を4000rpmで15分間の遠心分離によって分離し、-20℃で保管した。最後の血清試料が凍結保存中に蒸発し得ると仮定して、20μlを超える量の最後の血清試料を採取することが望ましい。
3)採取した最後の血清試料は、-20℃で少なくとも24時間凍結保存することが望ましい。
【0104】
試験方法:
1)2つの96ウェルELISAプレートをPBS中の0.2μg/mlの抗原及びPBS中の抗IgG Fabモノクローナル抗体で、それぞれ1ウェル当たり100μlにて4℃で一晩コーティングした。
2)以下の必要とされる試薬を調製した:
ブロッキングバッファー 5%BSA+PBS
抗体希釈バッファー 5%BSA+PBS+50%ブランクマウス血清
ELISAプレート洗浄バッファー 0.1%Tween+PBS
3)コーティングした2つのELISAプレートを300μl/ウェルのPBSで3回洗浄した。
4)1ウェル当たり200μlのブロッキングバッファーを添加し、37℃で1時間プレートをブロッキングした。
5)初めに、各血清試料をブロッキングバッファーで適切な濃度に希釈した後、抗体希釈バッファーで希釈して、適切な濃度範囲にわたって段階希釈物を得た。希釈倍率により血清試料の発色に関する最終測定値が標準の測定値の範囲に入ることが可能となるという条件で、濃度の達成に使用した特定の希釈倍率を予備試験における調整によって決定した。
6)抗体標準を抗体希釈バッファーで希釈した。標準の希釈方法は、標準を用いて線形曲線がフィッティングされ得るように(又は適切なソフトウェアが利用可能な場合にS字曲線がフィッティングされ得るように)予備試験における調整によっても決定した。
7)コーティングした2つのELISAプレート内のブロッキングバッファーを捨て、希釈した抗体標準及び試験対象の血清試料をプレートに1ウェル当たり100μl添加した後、37℃で1時間インキュベートした。
8)プレートをPBSTで3回洗浄した。
9)1:5000に希釈した二次抗体を、洗浄したELISAプレートに1ウェル当たり100μl添加した後、37℃で40分間インキュベートした。
10)プレートをPBSTで3回洗浄した。
11)TMB基質を1ウェル当たり100μl添加し、暗所で10分間発色させた。
12)50μlの2M HClを添加して反応を停止し、450nmでの吸光度を読み取った。
【0105】
結果を
図8のパネル8A及びパネル8B並びに表20に示す。
【0106】
【0107】
本開示の実施形態に関する以上の説明は、本開示を限定することを意図するものではなく、当業者は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で本開示に種々の変更及び修正を加えることができ、これは添付の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【図】
【配列表】
【国際調査報告】