IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イミュニック アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2023-522245ウイルス性疾患の治療又は予防において使用するためのビドフルジムス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】ウイルス性疾患の治療又は予防において使用するためのビドフルジムス
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/196 20060101AFI20230522BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230522BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230522BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230522BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20230522BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230522BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230522BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A61K31/196
A61P31/12
A61P31/14
A61P11/00
A61P11/16
A61P31/04
A61P37/06
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/53
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563985
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021060191
(87)【国際公開番号】W WO2021214033
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】20170729.6
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20184031.1
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21164552.8
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520078237
【氏名又は名称】イミュニック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート グレッペル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ビット
(72)【発明者】
【氏名】ヘラ コールホフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ミューラー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA69
4C076BB01
4C076CC35
4C084AA19
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA47
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB08
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC64
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZB08
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA06
4C206GA31
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB08
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、式(I):
に記載の化合物であって、前記化合物は、ウイルス感染症、好ましくはコロナウイルスが原因のウイルス感染症の治療又は予防において使用するためのジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)を阻害する、化合物又はその塩、溶媒和物及び/若しくは水和物。好ましい例は、コロナウイルス、特にベータコロナウイルス、より特にSARS-CoV-2及びその変異型が原因のウイルス感染症である、化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトなどの哺乳類対象のコロナウイルスによるウイルス感染症が原因の疾病の予防及び/又は治療において使用するための、式(I):
【化1】
に記載の化合物、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形。
【請求項2】
前記ウイルス感染症は、HCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV又はSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスが原因である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記疾病は、呼吸器疾患、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及び有害免疫反応(例えば、サイトカインストーム)、特に前記疾病の中等度から重度の症例から選択され、前記疾病は、好ましくは、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及びサイトカインストームなどの有害免疫反応などのSARS-CoV-2、特にCOVID-19が原因の疾病から選択される、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記予防及び/又は治療は、他のDHODH阻害薬、並びに/若しくは、例えば、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル、ザナミビル)、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン(トリバビリン)、インターフェロンα-2b/全身リバビリン、任意のPEG化製剤を含むインターフェロンα2a若しくは2b、クロロキン若しくはヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンと併用して与えられる)、ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))、ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))、リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))、ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))、ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))、エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))、及びエルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))のうちの少なくとも1つから選択される標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである、請求項1~3の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記標準的抗ウイルス療法(SAT)は、少なくともレムデシビルを含む、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
本特許請求の範囲においてDHODH阻害薬/SATとも呼ぶ、標準的抗ウイルス療法(SAT)の有効量に対するDHODH阻害薬の有効量の比は、0.1~10、0.2~10、0.2~1又は1~10である、請求項4又は5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記化合物を、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、サッシェ剤、再調製可能な(reconstitutable)散剤、乾燥粉末吸入剤及び/又は咀嚼剤など、適切な医薬組成物として提供する、請求項1~6の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記化合物を、例えば、朝の食事の15~60分前、及び夜の何れかの食事の少なくとも2時間後に、22.5mgを1日2回服用して、毎日45mgの有効投与量で前記対象に投与する、請求項1~7の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記化合物を、感染症の検出直後又は感染後5~14日、好ましくは感染後5~11日、より好ましくは感染後7~11日に前記対象に投与する、請求項1~8の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
予防のため、前記化合物を、感染症の検出直後又は感染後8~24日、好ましくは感染後10~20日、より好ましくは感染後12~16日に前記対象に投与する、請求項1~8の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記予防及び/又は治療は、平均ウイルス量、RT PCR試験を用いた鼻咽頭若しくは呼吸サンプルの定性的ウイルス学的クリアランス、Dダイマー、LDH、C反応性タンパク質(CRP)、IL-17、IFN-γ、IL-1β、IL-6、TNFa、抗体陽転、並びにIgM及びIgG中和抗体の群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーを前記対象においてモニターすることを更に含む、請求項1~10の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
ヒトなど、哺乳類対象においてコロナウイルスが原因のウイルス感染症の予防方法及び/又は治療方法であって、前記方法は、式(I):
【化2】
に記載の化合物、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形の有効量を前記哺乳類に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記ウイルス感染症は、HCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV又はSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスが原因である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記予防方法及び/又は治療方法は、他のDHODH阻害薬、並びに/又は、例えば、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル、ザナミビル)、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン(トリバビリン)、インターフェロンα-2b/全身リバビリン、任意のPEG化製剤を含むインターフェロンα2a若しくは2b、クロロキン若しくはヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンと併用して与えられる)、ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))、ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))、リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))、ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))、ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))、エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))、及びエルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))のうちの少なくとも1つから選択される標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記標準的抗ウイルス療法(SAT)は、少なくともレムデシビルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
本特許請求の範囲においてDHODH阻害薬/SATとも呼ぶ、標準的抗ウイルス療法(SAT)の有効量に対するDHODH阻害薬の有効量の比は、0.1~10、0.2~10、0.2~1又は1~10である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物を、例えば、朝の食事の15~60分前、及び夜の何れかの食事の少なくとも2時間後に、22.5mgを1日2回服用して、毎日45mgの有効投与量で前記対象に投与する、請求項12~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物を、感染症の検出直後又は感染後5~14日、好ましくは感染後5~11日、より好ましくは感染後7~11日に前記対象に投与する、請求項12~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
予防のため、前記化合物を、感染症の検出直後又は感染後8~24日、好ましくは感染後10~20日、より好ましくは感染後12~16日に前記対象に投与する、請求項12~17の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)に記載の化合物又はその塩、溶媒和物及び/若しくは水和物であって、前記化合物は、ウイルス感染症、好ましくはコロナウイルスが原因のウイルス感染症の治療又は予防において使用するためのジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)を阻害する、化合物又はその塩、溶媒和及び/若しくは水和物に関する。詳細には、本発明は、コロナウイルス、特にベータコロナウイルス及びその変異型が原因のウイルス感染症に関する。
【背景技術】
【0002】
ベータコロナウイルス(β-CoV又はベータ-CoV)は、ニドウイルス目(Nidovirales)のファミリーコロナウイルス科(Coronaviridae)のサブファミリーオルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)のコロナウイルスの4属のうちの1つである。これらは、動物由来感染症起源のエンベロープを有するプラス・センス一本鎖RNAウイルスである。
【0003】
最近、新規コロナウイルスは、2019年12月に中国の武漢市に現れた。1960年代に記述されているヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)(アルファコロナウイルス(Alphacoronavirus)属に分類される)及びHCoV-OC43(ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)系列2aメンバー)、2003年3月に現れたSARS-CoV-1(ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)系列2bメンバー)、2004年に記述されているHCoV-NL63(アルファコロナウイルス(Alphacoronavirus)系列2aメンバー)、2005年に発見されたHCoV-HKU1((ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)系列2aメンバー)そして、2012年に現れたMERS-CoV(ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)系列2cに分類される)の後に、新規コロナウイルスは、呼吸器感染症の原因となるとして現在まで記述されている7番目のヒトコロナウイルスである。2019新規コロナウイルス(2019-nCoV)と暫定的に呼ばれる新規ベータコロナウイルスによる感染症に患者が罹患したことの証拠が迅速に報告された。徹底的な封じ込め処置にもかかわらず、重篤な急性呼吸促迫症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)として現在公式に知られている2019-nCoVの蔓延は続いている。このウイルスの系統発生解析は、これが異なる(約80%ヌクレオチド同一性)がSARS-CoV-1と関連していることを示した。SARS-CoV-2に特に注目されたコロナウイルスの分類及び体系的分類は、Mavrodiev et al.(doi.org/10.1101/2020.10.17.343749)により記載されている。
【0004】
世界保健機関(WHO)は、2020年3月11日に重篤な急性呼吸促迫症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症(コロナウイルス病2019の原因、COVID-19)パンデミックを宣言した。主要な臨床症状としては、発熱、咳、筋肉痛又は疲労、喀痰、及び呼吸困難が挙げられる。患者の大半は、重篤な症状を経験しないが、1つのメタ解析は、症例の約18%は重症であることを発見した。死亡率は、この時、約0.5~10%であると推定される。
【0005】
COVID-19の異なるが重複する2つの病理学的サブセット、ウイルス自体により引き起こされる第1宿主応答及び第2宿主応答があると思われる。初期ステージは、病気の潜伏期間及び早期確立において起こる。ほとんどの人々に関して、これは、倦怠感、発熱及び乾性咳などの軽症及びしばしば非特異的症状を伴う潜伏期間を含む。このステージにおいて、ウイルスは、上気道中で複製することが報告されている。このステージにおける治療は、症状軽減を主に対象とする。確立された肺疾患の第2ステージでは、肺中のウイルス増殖及び局所炎症は標準的な状態である。このステージの間、患者は、咳、発熱及びおそらく低酸素症を含むウイルス性肺炎を発症する。治療は、対症療法及び利用可能な抗ウイルス治療から主に成るだろう。低酸素症が続いて起きる場合(ステージIIb)、患者は、人工呼吸を必要とする状況に進行するだろう、この状況では、抗炎症治療の使用が有用である可能性がある。COVID-19患者の少数は、第3ステージ及び病気の最も重篤なステージに移行し、肺外全身性過炎症症候群として現れる。このステージでは、サイトカイン及びインターロイキンを含む全身性炎症のマーカーは、上昇すると思われる。このステージでは、ショック、血管麻痺、呼吸不全及び更に心肺虚脱は識別可能である。全身性臓器病変、更に心筋炎は、このステージの間に現れるだろう。ステージIIIのオーダーメード治療は、圧倒的に多臓器不全をもたらす前に全身性炎症を軽減する免疫調節薬の使用に依存する。
【0006】
2020年3月の時点で、ワクチンは入手できず、多数の薬理的介入は臨床研究下であるが、いずれの薬物についても明白な有効性は未だ決定されていない。MERS及びSARS大流行から学んだ教訓に基づいて、汎コロナウイルス抗ウイルス活性の能力がある薬物がないことは、公衆衛生システムの脆弱性を増大して高度に病原性のコロナウイルスパンデミックを招いた(Expert Opin.Drug.Discov.2019;14:397)。
【0007】
新しい作用機序を有する関節リウマチに対する医薬品、レフルノミドは、商品名ARAVAでAventis社により販売された[欧州特許第780128号明細書、国際公開第97/34600号パンフレット]。レフルノミドは、免疫調節並びに抗炎症特性を有する[欧州特許第217206号明細書、独国特許第2524929号明細書]。作用機序は、ジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)、ピリミジン生合成の酵素の阻害に基づく。DHODHを標的とする別の薬物は、レフルノミドの代謝物であるテリフルノミド(AUBAGIO(登録商標))である。テリフルノミドは、いくつかの国において多発性硬化症の治療に関して承認されている。
【0008】
ビドフルジムス(式I)(2-((3-フルオロ-3’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)カルバモイル)シクロペンタ-1-エンカルボン酸)は、レフルノミド及びテリフルノミドを含む他の公知の薬物と構造的に類似していない経口用に入手可能なDHODH阻害薬である。その遊離酸形態及びそのカルシウム塩製剤(ビドフルジムスカルシウム)の両方において、ビドフルジムスは、様々な免疫関連適応症のために臨床治験を行っている。両製剤は、インビボで同じ活性物質(ビドフルジムス)に依存し、したがって、2つの製剤は、同じ作用機序、薬理、及び毒性を共有する。ビドフルジムス及びビドフルジムスカルシウムの両方の安全性は、健康ボランティア及び異なる免疫媒介疾患患者において研究された。
【0009】
【化1】
【0010】
国際公開第2003/006424号パンフレット及び国際公開第2003/006425号パンフレットは、DHODHの阻害において有利である疾病の治療及び予防に有用であると報告されている特定の特異的化合物を記載している。国際公開第2010/128050号パンフレットは、広域性抗ウイルス薬としてこれらの化合物の使用を記載しており、特に、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)及びインフルエンザ、一方、国際公開第2015/154820号パンフレットは、抗ウイルス薬として同様な化合物の使用を記載しており、特に、アデノウイルス、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ワクシニアウイルス又はBKウイルスである。コロナウイルスは、この2つの応用には言及されていなかった。国際公開第2012/001148号パンフレットは、DHODHを阻害する式(I)の化合物のカルシウム塩、及びその製剤を記載している(実施例4)。国際公開第2012/001151号パンフレットは、式(I)に記載の化合物の他の塩を記載している。国際公開第2019/175396号パンフレットは、ビドフルジムスの新しい白色結晶カルシウム塩並びにその溶媒和物及び水和物(「多形A」と呼ぶ)、その製剤方法、これを含む組成物並びに慢性炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の治療のためのその使用を記載している。国際公開第2019/101888号パンフレットは、慢性炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の予防又は治療において使用するためのビドフルジムス(又はその塩)の投与レジメンを開示している。
【0011】
Muehler et al.(Drugs R D2019;19:351)は、RAを有する対象におけるメトトレキサートバックグラウンド治療のプラセボと比較して、ビドフルジムス35mgの有効性、安全性、及び薬物動態を評価するため、関節リウマチ患者におけるフェーズII治験(コンポーネント治験)、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験からビドフルジムスの安全性データを報告している。優先日後、以下のデータが公表された:Muehler et al.(Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.2020;45:557)は、健康な男性対象においてビドフルジムスカルシウムの安全性、認容性及び薬物動態を記載している。Muehler et al.(Mult.Scler.Relat.Disord.2020;43:102129)は、再発寛解型多発性硬化症の治療のためのビドフルジムスカルシウムの使用を記載している。
【0012】
出願後、更なるデータが明らかになった:Kim et al.(Viruses 2020;12:821)は、マンマレナ(mammarena)ウイルスに対するビドフルジムスの抗ウイルス活性を記載している。Hahn et al.(Viruses 2020;12:1394)は、ビドフルジムスの抗SARS-CoV-2及び広域性スペクトル抗ウイルス効果を記載している。
【0013】
De Julian-Ortiz et al.(J.Med.Chem.1999;42:3308)は、シクロペンテン酸部分を有する特定の可能性のある抗ヘルペス化合物を記載している。
【0014】
Xiong et al.(Protein Cell 2020;11:723)は、SARS-CoV-2を含むRNAウイルスを治療するためのDHODHの阻害、更に、他のグループは、同様な結果、例えば、PP-001に関するPanoptes GmbH(プレスリリース)を言及した。しかしながら、ビドフルジムスは、DHODH阻害薬として言及されていなかった。優先日後、DHODH阻害薬に関する更なるデータが明らかになった、例えば、MEDS433に関してCalistri et al.(doi.org/10.1101/2020.12.06.412759)又はPTC299に関してLuban et al.(Virus Res.2021;292:198246)。
【発明の概要】
【0015】
DHODHの阻害により治療/予防することができるウイルス感染症、特にコロナウイルス感染症の予防及び治療のために使用することができる効果的薬剤を提供することが本発明の目的である。他の目的及び利点は、本発明の本明細書を学ぶ場合に当業者に明らかになるだろう。
【0016】
コロナウイルス感染症と戦う最も大きな労力は、ウイルス標的に狙いを定めた薬物及びワクチンに集中しているが、ウイルスの遺伝的浮動(すなわち、変異)に対して依存が少なく及び標準治療抗ウイルス療法と相乗的に作用することができる宿主細胞因子を標的とする更なる治療選択肢を探索することは特に重要である。その点を考慮して、本明細書に提示されているなどのDHODH阻害薬は、3つの相補的機序:a)ヌクレオチドプールの欠乏によるウイルス複製の阻害;b)インターフェロンシグナル伝達に依存しないDHODH阻害による生得的免疫応答の誘導;及びc)「過剰反応」、サイトカイン高産生免疫細胞の阻害により疾病を攻撃することによる非常に有望なアプローチを提示する。
【0017】
ヒト体内では、DHODHは、特に細胞代謝に必要であるピリミジンの合成を触媒する。DHODHの阻害は、代謝的に活性化された細胞内の高感受性遺伝子の転写の遮断をもたらすが、正常な代謝活性を有する細胞は、ピリミジンサルベージ経路の遮断を構築するその必要なピリミジンを得て、正常な転写活性を示す。疾病関連の代謝的に活性化されたリンパ球は、デノボピリジン合成を頼りにし、特に感度よくDHODH阻害に対して反応する。DHODHを阻害するいくつかの物質は、慢性炎症及び自己免疫疾患の治療のための重要な医薬品である。
【0018】
本発明の第1態様では、この目的は、ヒトなどの哺乳類対象のウイルス感染症が原因の疾病の予防及び/又は治療において使用するための、式(I):
【0019】
【化2】
【0020】
に記載の化合物(ビドフルジムス、IMU-838)、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形により解決される。
【0021】
1つの特別な実施形態は、ヒトなどの哺乳類対象のコロナウイルスによるウイルス感染症が原因の疾病の予防及び/又は治療において使用するための、式(I):
【0022】
【化3】
【0023】
に記載の化合物、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形である。
【0024】
薬剤的に許容可能な塩は当業者に公知であり、例えば、P.H.Stahl and C.G.Wermuth(editors),Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA,2002にリストされている。本発明との関連で、薬剤的に許容可能な塩は、生理的に許容可能な塩である。
【0025】
驚くべきことに、DHODH阻害薬として式(I)に記載の化合物(ビドフルジムス、IMU-838)は効果的であり、他の抗ウイルス治療選択肢と比較して多くの利点を示すことが分かった。この化合物は宿主細胞を標的とし、-これは広域スペクトル抗ウイルス活性を提供する-ウイルス複製を遮断し、ウイルス変異原性の可能性に打ち勝つ。加えて、この化合物は、感染細胞のウイルス複製に対して直接的に作用し得る。サイトカインなどの病原性因子の標的化は、後期症例及びより重症例を、特異的に利益を与える。DHODH阻害は、高活性化免疫細胞及び感染細胞に対してのみ選択的であり、したがって、広域に起こらず、代謝拮抗物質及びヌクレオシド類似体で見られる副作用を管理するのが難しい。承認されたDHODH阻害薬レフルノミド及びテリフルノミドと対照的に、式(I)に記載の化合物は、EGFR又はオーロラAキナーゼのような他のオフターゲットに命中しない。したがって、優れた薬物動態プロファイルである非常に良好な安全プロファイルにも基づいて、ビドフルジムスは、特に、ベータコロナウイルス、具体的には中等度~重度のSARS-CoV-2症例のウイルス感染症のための簡便な経口治療選択肢である。特に、ビドフルジムスは、ヒトなどの患者における薬物の有効濃度に迅速に達成することを可能とするヒトにおける30時間の非常に良好な血漿半減期を示した。対照的に、レフルノミドの血漿半減期は16~19日であり、治療トラフ値に達するためのその投与は、ウイルス性感染症の急性疾患に対して実現不可能なことに2ヶ月までかかる可能性がある。
【0026】
本発明との関連で、用語「ビドフルジムス」は、その遊離酸形態の式(I)に記載の化合物、及びカルシウム、カリウム、マグネシウム、コリン又はナトリウム塩など、その薬剤的に許容可能な塩の形態を含むものとする。この用語は、薬剤的に許容可能な溶媒和物、水和物、塩の溶媒和物、結晶及び多形も含むものとする。好ましいのは、ビドフルジムスカルシウム又はビドフルジムスコリンである。
【0027】
「IMU-838」(「ビドフルジムスカルシウム」とも呼ぶ)は、ビドフルジムスのカルシウム塩であり、薬剤的に許容可能な溶媒和物、水和物、結晶及び多形を含む。
【0028】
IMU-838の好ましい構造は、次の構造:
【0029】
【化4】
【0030】
を有する1-シクロペンテン-1-カルボン酸,2-(((3-フルオロ-3’-メトキシ(1,1’-ビフェニル)-4-イル)アミノ)カルボニル)-,カルシウム塩(2:1)である。
【0031】
IMU-838の「多形A」は、国際公開第2019/175396号パンフレットに記載されているように特性決定された式(II)の白色結晶物質である。特別な実施形態では、IMU-838の「多形A」は、5.91°、9.64°、16.78°、17.81°、19.81°及び25.41°の2θ(±0.2°)において特徴的ピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする。特定の特別な実施形態では、IMU-838の「多形A」は、国際公開第2019/175396号パンフレットの図1に要約されているように特性決定されている。
【0032】
好ましくは、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記ウイルス感染症は、RNAウイルスによる。RNAウイルスは、一本鎖又は二本鎖であり得、好ましくは、ヒトなどの哺乳類において疾病の原因となるウイルスを含む。好ましい例は、HIV、HCV、エボラ、ロタウイルス、ジカウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、RSV、狂犬病、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、又はインフルエンザ、特に、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスである。
【0033】
1つの特別な実施形態は、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記ウイルス感染症は、RNAウイルスが原因である。RNAウイルスは、一本鎖又は二本鎖であり得、好ましくは、ヒトなどの哺乳類において疾病の原因となるウイルスを含む。好ましい例は、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスである。
【0034】
1つの特定の特別な実施形態は、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記ウイルス感染症は、HCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV又はSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスが原因である。
【0035】
更により特別な実施形態は、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-2の変異型が原因である。
【0036】
特別な実施形態は、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2の変異型が原因である。
【0037】
より特別な実施形態は、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2の変異型が原因であり、株はB.1.1.7、B.1.351、P.1及びB.1.617から選択される。
【0038】
最も特別な実施形態は、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2が原因である。
【0039】
DHODH阻害薬による抗ウイルス効果は、エボラ、HIV、HCV、hCMV及びインフルエンザなど、いくつかのRNA及びDNAウイルスに関して記載されている。他の抗ウイルス薬は、感染後4時間までウイルス感染症を阻害することができるが、DHODH阻害薬は、インビトロアッセイにおいて感染後12~16時間まで更に効果的であることでさえ示された(Hoffmann et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.2011;108:5777;Wang et al.,J.Virol.2011;85:6548)。直接的並びに間接的抗ウイルス効果は、DHODH阻害薬に関して報告されている。これらの効果いずれも、ピリミジンデノボ合成の遮断と関連する。直接的経路では、ピリミジンネオ合成の還元は、ウイルス転写及び複製を妨げる。
【0040】
しかしながら、Lucas-Hourani et al.(PLoS Pathog.2013;9:e1003678)は、主要な抗ウイルス効果が、むしろ、還元されたピリジン合成のせいでインターフェロン刺激遺伝子の誘導又は増幅による間接的効果であるかも知れないことを報告した。これらの遺伝子の大部分は、ウイルスに対する宿主生得的免疫防御の役割を果たす。興味深いことに、これらの遺伝子は、通常、インターフェロンにより誘導されるが、DHODH阻害薬によるこれらの遺伝子の上方制御は、インターフェロンに依存しない。
【0041】
Xiong et al.(Protein Cell 2020;11:723)は、DHODH阻害薬が、インビトロ細胞試験においてSARS-CoV-2ウイルスに対する強力な活性を発揮することを提示している。試験されたDHODH阻害薬は、レフルノミド/テリフルノミド及びブレキナルであった。しかしながら、好ましくない薬物動態プロファイル(レフルノミド/テリフルノミド)及び毒性(ブレキナル)のせいで、これらの薬物は、急性抗ウイルス治療として適切でないと見做された。興味深いことに、インフルエンザA感染(WSN又は2009パンデミックH1N1ウイルス)マウスにおいて、DHODH阻害薬単独で治療された場合、後期生存率は50%であり、併用療法(DHODH阻害薬+オセルタミビル)で治療された場合、100%であった。
【0042】
本発明によれば、哺乳類対象は、好ましくは、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラクダ、ラマ、乳牛、サル、家畜、スポーツ動物、及びペット、並びにヒトから選択され得る。特別な実施形態では、種は、ヒトである。
【0043】
対象は、ウイルスに感染しているか、ウイルスに暴露されたか又はウイルスに暴露されている危険性があるかのいずれかである。
【0044】
本発明によれば、化合物はウイルス感染症において使用するためであり、したがって、例えば、AIDS、肝炎、エボラ、ポリオ、下痢症、麻疹、流行性耳下腺炎、狂犬病、ラッサ熱、ウイルス性インフルエンザ、呼吸器疾患、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及び有害免疫反応、特に前記疾病の中等度症例から重症例を治療及び/又は予防し、前記疾病は、好ましくは、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及びサイトカインストームなどの有害免疫反応などのSARS-CoV-2、特にCOVID-19が原因の疾病から選択される。
【0045】
前記疾病は、呼吸器疾患、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及び有害免疫反応(例えば、サイトカインストーム)、特に前記疾病の中等度症例から重症例から選択され、前記疾病は、好ましくは、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及びサイトカインストームなどの有害免疫反応などのSARS-CoV-2、特にCOVID-19が原因の疾病から選択される、本発明に記載の使用のための化合物。
【0046】
「治療」又は「治療すること」は、哺乳類において疾病又は障害のいずれの治療も意味し:発症しないように疾病若しくは障害、すなわち、疾病の臨床症状の原因に対して予防若しくは保護すること;疾病を阻害すること、すなわち、臨床症状の発症を抑止若しくは抑制すること;及び/又は疾病、すなわち、臨床症状の退行の原因を軽減することが挙げられる。「寛解」は、状態の予防、軽減若しくは緩和、又は対象の容態の改善を意味し;ストレスの寛解は、ストレスの負の側面の逆反応である。寛解は、ストレスの完全な回復又は完全な予防を含むが、必ずしも必要としない。
【0047】
用語「有機酸誘導体」は、カルボン酸部分が有機酸又はそれ自体生物活性又は不活性であり得るが、体内のその滞留時間中に本発明に記載の化合物に転換される(例えば、代謝又は加水分解)「プロドラッグ」として存在し得ることを意味する。プロドラッグの例は、カルボン酸のエチルエステルである。
【0048】
用語「薬剤的に許容可能な塩」(「生理的に許容可能な塩」とも呼ぶ)は、無機塩基及び有機塩基を含む薬剤的に許容可能な塩基から調製される塩を表す。本開示は、本明細書に記載されているいずれかの化合物の薬剤的に許容可能な塩の使用を提供する。したがって、酸性基を含む本開示の化合物は、これらの基に存在し得、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩として本開示により使用することができる。かかる塩のより詳細な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩又は、アンモニア若しくは、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン若しくはアミノ酸などの有機アミンとの塩が挙げられる。
【0049】
金属塩は、無機塩基が本開示の化合物へ付加することから生じることができる。無機塩基は、例えば、水酸化物、炭酸、炭酸水素又はリン酸などの塩基性対イオンと対となる金属カチオンから成る。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は主族金属であり得る。いくつかの実施形態では、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、セリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、カルシウム、ストロンチウム、コバルト、チタン、アルミニウム、銅又は亜鉛である。
【0050】
場合によっては、金属塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、鉄塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、コバルト塩、チタン塩、アルミニウム塩、銅塩又は亜鉛塩である。
【0051】
アンモニウム塩は、アンモニア又は有機アミンが本開示の化合物へ付加することから生じることができる。いくつかの実施形態では、有機アミンは、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミン、ピペラジン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール又はピラジンである。
【0052】
場合によっては、アンモニウム塩は、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、N-メチルモルホリン塩、ピペリジン塩、N-メチルピペリジン塩、N-エチルピペリジン塩、ジベンジルアミン塩、ピペラジン塩、ピリジン塩、ピラゾール塩、イミダゾール塩又はピラジン塩である。
【0053】
それぞれの塩を、例えば、これらを溶媒若しくは分散剤中有機塩基若しくは無機塩基と接触させること、又は他の塩とのカチオン交換によるなど、当業者に公知の通例の方法により得ることができる。本開示は、低い生理適合性のせいで、医薬における使用に直接的には適していないが、例えば、化学反応の中間体として又は薬剤的に許容可能な塩の調製のために使用することができる本開示の化合物の全ての塩も含む。
【0054】
更に、本開示の化合物は、溶媒和水、又はアルコール、特にエタノールなどの薬剤的に許容可能な溶媒和物として含むものなど、溶媒和物の形態で存在してよい。溶媒の化学量論又は非化学量論量は、非共有結合性分子間力により結合する。溶媒が水である場合、「溶媒和物」は、「水和物」である。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「多形」は、特定の結晶充填構造中、化合物又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物の結晶体を表す。全ての多形は、同じ元素組成を有する。本明細書で使用されるとき、用語「結晶」は、構造単位の秩序正しい配列から成る固体状態を表す。同じ化合物、又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物の異なる結晶体は、固体状態における分子の異なる充填から生じ、異なる結晶対称性及び/又は単位格子パラメータをもたらす。異なる結晶体は、通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬さ、結晶形状、光学及び電気特性、安定性並びに溶解度を有する。
【0056】
用語「有効量」は、投与される場合、治療される障害、疾病、又は病態の症状のうち1つ以上の発症を予防、又はある程度まで軽減するのに充分である化合物の量を含むことが意図される。用語「有効量」は、研究者、獣医師、医師又は臨床医により求められている細胞、組織、系、動物、又はヒトの生物応答又は医学的応答を誘発するのに充分である化合物の量も表す。
【0057】
使用のための化合物に関する本発明による別の重要な態様では、前記予防及び/又は治療は、他のDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)、及び/又は、例えば、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル、ザナミビル)、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン(トリバビリン)、インターフェロンα-2b/全身リバビリン、いずれものPEG化製剤を含むインターフェロンα2a若しくは2b、クロロキン若しくはヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンと併用して与えられる)、ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))、ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))、リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))、ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))、ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))、エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))、及びエルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))のうちの少なくとも1つから選択される標準的抗ウイルス療法(SAT)などの追加の治療薬との組合せである。好ましいのは、レムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキンとの組合せである。
【0058】
本発明に記載の使用のための好ましい組合せは、少なくともレムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキン、より好ましくはIMU-838+レムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキンとのDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)である。
【0059】
特別な実施形態では、組合せは、レムデシビルと一緒にIMU-838の「多形A」である。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示のDHODH阻害薬を、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の阻害薬など、ヌクレオシド三リン酸阻害薬のプロドラッグと併用して投与する。いくつかの実施形態では、プロドラッグは、レムデシビルである。レムデシビルは、フニンウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoV、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ニパウイルス、及びラッサ熱ウイルスを含む複数のウイルス性疾患に対する抗ウイルス活性を示す1’-シアノ置換アデニンC-ヌクレオシドリボース類似体プロドラッグである。レムデシビルの投与及び細胞への侵入時に、レムデシビルを、カルボキシエステラーゼ1(CES1)及びカテプシンA(CTSA)などのエステラーゼにより対応するカルボキシレートに転換することができる。得られたカルボキシレートは、モノホスフェートへ更に分解することができ、次いで、細胞内同化により活性ヌクレオシド三リン酸(NTP)、GS-443902に処理することができる。それから、GS-443902を、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼに組み込むことができ、ウイルスRNA鎖の中途終止をもたらす。主題の組成物及び方法で使用することができる他の例としては、レムデシビル、(2R,3R,4S,5R)-2-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-カルボニトリル(GS-441524)の親ヌクレオシドが挙げられる。
【0061】
使用するための化合物に関する本発明による別の重要な態様では、前記予防及び/又は治療は、他のDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)、及び/又は標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである。
【0062】
好ましいのは、本発明に記載の使用のための他のDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)、及び/又は標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せであり、前記ウイルス感染症は、RNAウイルスが原因である。RNAウイルスは、一本鎖又は二本鎖であり得、好ましくは、ヒトなどの哺乳類において疾病の原因となるウイルスを含む。好ましい例は、HIV、HCV、エボラ、ロタウイルス、ジカウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、RSV、狂犬病、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、又はインフルエンザ、特に、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスである。
【0063】
本発明に記載の使用のための好ましい組合せは、ベータコロナウイルス感染症、特にSARS-CoV-2のための、少なくともレムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキン、より好ましくはIMU-838+少なくともレムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキンとのDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)である。
【0064】
使用、前記予防及び/又は治療のための化合物に関する1つの実施形態は、少なくともレムデシビルを含む標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである。
【0065】
本発明に記載の使用のための1つの実施形態は、ベータコロナウイルス感染症、特にSARS-CoV-2の治療のためのIMU-838とオセルタミビルとの組合せである。特別な実施形態では、組合せは、オセルタミビルと一緒にIMU-838の「多形A」である。
【0066】
本発明の別の態様では、標準的抗ウイルス療法(SAT)との併用において、本発明の記載の使用のため、本明細書ではDHODH阻害薬/SATとも呼ぶ標準的抗ウイルス療法(SAT)の有効量に対するDHODH阻害薬の有効量の比は、0.1~10、0.2~10、0.2~1又は1~10である。
【0067】
本発明の別の態様では、標準的抗ウイルス療法(SAT)との併用において、本発明の記載の使用のため、本明細書ではDHODH阻害薬/SATとも呼ぶ標準的抗ウイルス療法(SAT)の有効量に対するDHODH阻害薬の有効量の比は、0.1~10、より好ましくは0.2~10、より好ましくは0.2~1又は1~10である。IMU-838+少なくともレムデシビルの組合せのためのより好ましい比は、10又は0.2である。
【0068】
本発明の別の態様では、使用のための化合物を、提供することができ、及び/又は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、サッシェ剤、再調製可能な(reconstitutable)散剤、乾燥粉末吸入剤及び/又は咀嚼剤など、適切な医薬組成物として投与する。かかる固体製剤は、適切な量で賦形剤及び他の成分を含んでよい。かかる固体製剤は、例えば、微結晶セルロース、ポリビドン、特にFBポリビドン、ステアリン酸マグネシウム及び同様のものを含んでよい。しかしながら、例えば、坐剤の形態で直腸投与、又は、例えば、注射若しくは点滴の形態で非経口投与、又は、例えば、軟膏剤、クリーム剤若しくはチンキ剤の形態で経皮投与を行うこともできる。
【0069】
本化合物及び/又は本化合物を含む医薬組成物は、ヒト患者に投与する用途である。用語「投与」は、単独の治療薬又は別の治療薬との併用の投与を意味する。したがって、本発明の医薬組成物を、併用療法アプローチ、すなわち、本発明の方法との関連で有益であるかも知れない他の医薬品若しくは薬物及び/又はいずれかの他の治療薬との同時投与で使用することが想定される。それにもかかわらず、他の医薬品若しくは薬物及び/又はいずれかの他の治療薬を、使用のための本化合物と併用して(すなわち、直接的及び/又は間接的に、好ましくは相乗的に)他の医薬品若しくは薬物及び/又はいずれかの他の治療薬が作用する限り、必要に応じて使用するための化合物と別々に投与することができる。
【0070】
したがって、本発明の使用のための化合物を、単独又は他の活性化合物-例えば、前述の疾病の治療のための既知の医薬品と併用して使用することができ、それにより、後者の場合、好ましい付加的、増幅又は好ましくは相乗的効果が認められる。
【0071】
ヒトに投与される本明細書に開示されているDODH阻害薬の適切な量は、5~500mg、特に10mg~100mgの範囲であり得る。例えば、ヒトに投与される本明細書に開示されているDODH阻害薬の治療有効量は、約1mg~約5mg、約5mg~約10mg、約10mg~約15mg、約15mg~約20mg、約15mg~約25mg、約15mg~約30mg、約15mg~約35mg、約15mg~約40mg、約15mg~約45mg、約15mg~約50mg、約15mg~約55mg、約15mg~約60mg、約20mg~約25mg、約20mg~約30mg、約20mg~約35mg、約20mg~約40mg、約20mg~約45mg、約20mg~約50mg、約20mg~約55mg、約20mg~約60mg、約25mg~約30mg、約30mg~約35mg、約35mg~約40mg、約40mg~約45mg、約45mg~約50mg、約50mg~約55mg、約55mg~約60mg、約60mg~約65mg、約65mg~約70mg、約70mg~約75mg、約75mg~約80mg、約80mg~約85mg、約85mg~約90mg、約90mg~約95mg又は約95mg~約100mgであり得る。いくつかの実施形態では、治療有効量は、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg又は約60mgである。
【0072】
使用されるとき医薬組成物は、必要に応じて、薬剤的に許容可能な担体を含んでよい。薬剤的に許容可能な担体又は賦形剤としては、希釈剤(充填剤、増量剤、例えば、ラクトース、結晶セルロース)、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム)、結合剤(例えば、PVP、HPMC)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、流動促進剤(例えば、コロイド状SiO2)、溶媒/共溶媒(例えば、水性媒体、プロピレングリコール、グリセロール)、緩衝剤(例えば、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩)、防腐剤(例えば、安息香酸Na、パラベン(Me、Pr及びBu)、BKC)、酸化防止剤(例えば、BHT、BHA、アスコルビン酸)、湿潤材(例えば、ポリソルベート、ソルビタンエステル)、増粘剤(例えば、メチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース)、甘味料(例えば、ソルビトール、サッカリン、アスパルテーム、アセサルフェーム)、香料(例えば、ペパーミント、レモン油、バタースコッチ、その他)、保水剤(例えば、プロピレン、グリコール、グリセロール、ソルビトール)が挙げられる。他の適切な薬剤的に許容可能な賦形剤は、とりわけ、Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publishing Co.,New Jersey(1991)及びBauer et al.,Pharmazeutische Technologie,5th Ed.,Govi-Verlag Frankfurt(1997)に記載されている。当業者は、ビドフルジムスのための適切な製剤を知っており、例えば、医薬組成物の製剤及び投与に応じて適切な薬剤的に許容可能な担体又は賦形剤を容易に選択することができるだろう。
【0073】
治療薬を、例えば、丸剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質及び軟質ゼラチンカプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤若しくは懸濁剤の形態で又はエアロゾル混合物として経口投与することができる。しかしながら、例えば、坐剤の形態で直腸投与、又は、例えば、注射若しくは点滴の形態で非経口投与、又は、例えば、軟膏剤、クリーム剤若しくはチンキ剤の形態で経皮投与を行うこともできる。特に好ましいのは、その改良された溶解度から静脈内製剤としてビドフルジムスコリンとしてである。
【0074】
本発明による1つの実施形態は、IMU-838の経口又は静脈内投与である。本発明による1つの特別な実施形態は、IMU-838の「多形A」の経口又は静脈内投与である。本発明による1つの特定の実施形態は、IMU-838の経口投与である。本発明による1つの特定の実施形態は、IMU-838の「多形A」の経口投与である。
【0075】
本発明の使用のための前述の化合物に加えて、医薬組成物は、更に通例の通常不活性の担体物質又は賦形剤を含むことができる。かかる担体を使用して、対象により経口摂取するための錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁剤及び同様のものを製剤することができる。したがって、医薬製剤は、例えば、充填剤、増量剤、崩壊剤、結合剤、流動促進剤、湿潤剤、安定化剤、乳剤、防腐剤、甘味料、着色料、香料若しくは芳香剤、緩衝物質などの添加剤、及び更に溶媒若しくは可溶化剤又はデポ効果を得るための薬剤、並びに浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤又は酸化防止剤を含むこともできる。医薬製剤は、本発明の使用のための2つ以上の化合物の前述の塩、更に上記のような治療活性物質を含むこともできる。
【0076】
医薬組成物を、必要に応じて、デポ製剤又は徐放製剤で、例えば、化合物を器官に直接注射することにより、局所的又は全身的に投与することができる。医薬組成物を、速放性製剤の形態、徐放性製剤の形態又は中間放出製剤の形態で提供することができる。速放性の形態は、即時放出を提供することができる。徐放性製剤は、制御された放出又は持続的遅延放出を提供することができる。
【0077】
経口投与のため、医薬組成物を、活性化合物と薬剤的に許容可能な担体又は賦形剤とを組み合わせることにより容易に製剤することができる。
【0078】
経口用途の医薬製剤を、1つ以上の固体賦形剤と本明細書に記載されている化合物の1つ以上とを混合、必要に応じて得られた混合物を粉砕、及び必要なら適切な助剤の添加後、粒剤の混合物を加工して錠剤又は糖衣剤コアを得ることにより得ることができる。コアは、適切なコーティングを備えることができる。この目的のため、濃縮糖溶液を使用することができ、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール又は二酸化チタンなどの賦形剤、ラッカー溶液及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。色素又は顔料を、例えば、識別のため又は活性化合物用量の異なる組合せを明らかにするために、錠剤又は糖衣コーティングに添加することができる。
【0079】
経口的に使用することができる医薬製剤としては、ゼラチン製押込み型カプセル剤、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤製の軟質密封カプセル剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、カプセル剤は、1つ以上の薬剤、ウシ及び植物性ゼラチンのういちの1つ以上を含む硬質ゼラチンカプセル剤を含む。ゼラチンを、アルカリ処理することができる。押込み型カプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤及び安定化剤との混合物中に有効成分を含むことができる。軟質カプセル剤では、活性化合物を、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁することができる。安定化剤を添加することができる。経口投与のための全ての製剤を、かかる投与に適切な投与量で提供する。
【0080】
頬側投与又は舌下投与のため、組成物は、錠剤、トローチ剤又はゲル剤であり得る。非経口注射剤を、ボーラス注入又は持続点滴のために製剤することができる。医薬組成物は、油性又は水性媒体中の滅菌懸濁剤、液剤又は乳剤として非経口注射剤に適した形態であり得、懸濁化剤、安定化剤、又は分散化剤などの製剤用(formulatory)薬剤を含むことができる。非経口投与のための医薬製剤としては、水可溶性形態の活性化合物の水性液剤が挙げられる。活性化合物の懸濁剤を、油性注射用懸濁剤として製剤することができる。適切な親油性溶媒又は媒体としては、ゴマ油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなど、懸濁剤の粘度を増加させる物質を含むことができる。懸濁剤は、適切な安定化剤又は化合物の溶解度を増加させる薬剤を含んで高濃度液剤の製剤を可能とすることもできる。あるいは、有効成分は、適切な媒体、例えば、滅菌発熱性物質除去水を用いて使用前に再調製するための粉末形態であり得る。
【0081】
活性化合物を、局所投与することができ、液剤、懸濁剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤、薬用スティック、鎮静薬、クリーム剤及び軟膏剤など、様々な局所投与可能な組成物に製剤することができる。かかる医薬組成物は、可溶化剤、安定化剤、等張性向上剤、緩衝剤及び防腐剤を含むことができる。
【0082】
活性化合物の経皮投与に適した製剤は、経皮送達デバイス及び経皮送達パッチを使用することができ、ポリマー又は粘着剤中に溶解又は分散された親油性乳剤又は緩衝水性液剤であり得る。かかるパッチ剤を、医薬組成物の連続的、パルス状又はオンデマンド送達用に構成することができる。経皮送達を、イオン泳動的パッチを用いて行うことができる。加えて、経皮パッチ剤は、制御された送達を提供することができる。吸収速度を、速度制御膜の使用又はポリマーマトリックス若しくはゲル内の化合物を捕捉することにより遅延することができる。逆に、吸収向上剤を使用して吸収を増大することができる。吸収向上剤又は担体は、皮膚の通過を補助するように吸収可能な薬剤的に許容可能な溶媒を含むことができる。例えば、経皮デバイスは、裏打ち材を含む絆創膏、化合物及び担体を含むリザーバー、長期間にわたって制御及び所定の速度で対象の皮膚に化合物を送達するための速度制御バリア、並びに皮膚又は眼にデバイスを固定するための粘着剤の形態であり得る。
【0083】
本明細書で提供されている治療方法又は使用方法を実施する際、本明細書に記載されている化合物の治療有効量を、治療しようとする疾病又は病態を有する対象に医薬組成物で投与する。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトなどの哺乳類である。治療有効量は、疾病の重症度、対象の年齢及び相対的健康、使用される化合物の効力並びに他の因子に応じて広範に変わり得る。化合物を、単独で又は混合物の成分として1つ以上の治療薬と併用で使用することができる。
【0084】
医薬組成物を、賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理的に許容可能な担体を用いて製剤することができ、賦形剤及び助剤は、活性化合物の薬剤的に使用することができる製剤への加工を促進する。製剤うぃ、選択される投与経路に応じて修飾することができる。本明細書に記載されている化合物を含む医薬組成物を、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣作製、微粒子化(levigating)、乳化、カプセル化、封入又は加圧方法により製造することができる。
【0085】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬剤的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤及び遊離酸若しくは薬剤的に許容可能な塩の形態として本明細書に記載されている化合物を含むことができる。本明細書に記載されている方法及び医薬組成物は、同種の活性を有するこれらの化合物の結晶体(例えば、「多形A」)及び活性代謝物の使用を含む。
【0086】
本明細書に記載されている化合物を含む組成物の製剤方法は、化合物を、1つ以上の不活性な薬剤的に許容可能な賦形剤又は担体と一緒に製剤して固体、半固体、又は液体組成物を生成することを含む。固体組成物としては、例えば、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤及び坐剤が挙げられる。液体組成物としては、例えば、化合物が溶解した液剤、化合物を含む乳剤、又は本明細書に開示されている化合物を含むリポソーム、ミセル、若しくはナノ粒子を含む液剤が挙げられる。半固体組成物としては、例えば、ゲル剤、懸濁剤及びクリーム剤が挙げられる。組成物は、液体液剤若しくは懸濁剤中、使用前の液体中の液剤若しくは懸濁剤に適した固体の形態、又は乳剤として存在し得る。これらの組成物は、湿潤剤又は乳化剤などの少量の無毒性助剤物質、pH緩衝剤及び他の薬剤的に許容可能な添加剤を含むこともできる。
【0087】
本開示における使用に適した剤形の非限定例としては、飼料、食品、錠剤、トローチ剤、液剤、エリキシル剤、エアロゾル剤、吸入剤、スプレー剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、ジェルタブ剤、ナノ懸濁剤、ナノ粒子剤、マイクロゲル剤、坐薬トローチ剤、水性又は油性懸濁剤、軟膏剤、パッチ剤、ローション剤、歯磨剤、乳剤、クリーム剤、点滴剤、分散性散剤若しくは顆粒剤、硬質若しくは軟質ゲルカプセル中の乳剤、シロップ剤、植物性医薬品、栄養補助食品及びこれらの組合せが挙げられる。
【0088】
好ましいのは、本発明に記載の使用のための化合物であり、前記化合物を、例えば、朝の食事の少なくとも約15分、少なくとも約30分、少なくとも約45分又は少なくとも約60分など約15~60分前に、及び夜の何れかの食事の少なくとも2時間後に22.5mgを1日2回服用して毎日45mgの有効投与量で前記対象に投与する。それにもかかわらず、この好例の投与量は、広い限界内で変わり得、各個々の症例における個々の病態に合わせるべきである。上記使用のため、適切な投与量は、投与の様式、治療しようとする特定の病態及び所望の効果に応じて変わるだろう。しかしながら、総じて、満足される結果は、約1~100mg/動物kg、特にヒトを含む哺乳類の体重、詳細には1~50mg/kgの投与量率で行われる。より大きい哺乳類、例えば、ヒトに対する適切な投与量率は、約10mg~3g/日のオーダーであり得、便利に1回若しくは分割投与で、例えば、1日2~4回、又は徐放性の形態で投与することができる。例えば、本開示のDODH阻害薬の治療有効量を、1日1回の投与、1日2回の投与、1日3回の投与、又は1日4回の投与にわたって投与することができる。いくつかの実施形態では、治療有効量は、約5mgを1日2回、約7.5mgを1日2回、約10mgを1日2回、約12.5mgを1日2回、約15mgを1日2回、約17.5mgを1日2回、約20mgを1日2回、約22.5mgを1日2回、約25mgを1日2回、約27.5mgを1日2回、又は約30mgを1日2回である。
【0089】
化合物(例えば、DODH阻害薬)を、疾病又は病態の発症が検出又は疑われた後現実的直ぐに、及び例えば、約1週間~約3週間など疾病の治療に必要な時間の長さの間投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている化合物を、対象の寿命の間投与する。いくつかの実施形態では、本開示のDODH阻害薬を投与することができる時間の長さは、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週、約2週、約3週、約4週、約1ヶ月、約5週、約6週、約7週、約8週、約2ヶ月、約9週、約10週、約11週、約12週、約3ヶ月、約13週、約14週、約15週、約16週、約4ヶ月、約17週、約18週、約19週又は約20週であり得る。治療の長さは、各対象に対して変わり得る。
【0090】
総じて、経口投与の場合に、ヒト個体当たり約10mg~100mg、特に10~50mgの毎日の投与量が適切である。他の投与形態の場合も、毎日の投与量は同様な範囲内で見られる。0.1~50μMの使用のための化合物の血漿レベルに達することが望ましい。
【0091】
本発明との関連で、DHODH阻害薬は、特に併用治療として宿主細胞因子を標的とするせいか、本発明に記載の使用のための化合物ビドフルジムスは、特にコロナウイルスによるウイルス感染症の予防並びに疾病の後期の治療の両方において特別な利点を示すことが、驚くべきことに見出された。したがって、本明細書に記載されている化合物を、疾病又は病態の発生前、発生中又は発生後に投与することができ、化合物を含む組成物の投与タイミングは変わり得る。例えば、化合物を予防薬として使用することができ、疾病又は病態の発生の可能性を減らす又は低下させるために病態又は疾病になる傾向を有する対象に持続的に投与することができる。化合物及び組成物を、症状の発症中又は発症後可能な限り直ぐに対象に投与することができる。最初の投与は、本明細書に記載されているいずれかの製剤を用いて本明細書に記載されているいずれかの経路によるなど、いずれかの実用的経路により行うことができる。
【0092】
予防的アプローチでは、本明細書に記載の使用のための化合物を、感染の検出直後に対象に投与することができる。
【0093】
予防的アプローチでは、本明細書に記載の使用のための化合物を、「遅くに」対象に投与することができ、例えば、感染後8~24時間、好ましくは感染後10~20時間、より好ましくは感染後12~16時間に投与される場合でもなお効果的である。このレジメンは、驚くほど低いウイルス量をなお提供する。
【0094】
コロナウイルス感染症の場合、感染の正確な時点を決定することが困難であるかも知れないので、本発明に記載の使用のための化合物を、「遅くに」対象に投与することができ、例えば、コロナウイルス又は症状の最初の徴候に対する陽性試験後8~24時間に投与される場合でもなお効果的である。
【0095】
治療的アプローチでは、本明細書に記載の使用のための化合物を、感染直後に対象に投与することができる。
【0096】
治療的アプローチでは、本発明に記載の使用のための化合物を、感染サイクルの「後期に」対象に投与することができ、例えば、感染後5~14日、好ましくは感染後5~11日、より好ましくは感染後7~11日に投与される場合でも、特に(相乗的)併用療法としてなお効果的である。このレジメンは、驚くほど効果的な治療効果を提供し、更に、サイトカインストームの様な過剰免疫反応の制御を助ける。
【0097】
治療的アプローチは、感染後数週間でさえ、「ロングCOVID」症状を治療するためにも適切である。最も一般的に報告されている「ロングCOVID」症状としては、疲労、呼吸困難、咳、関節痛及び胸痛が挙げられる。他の報告された症状としては、認知障害、うつ、筋肉痛、頭痛、発熱及び動悸が挙げられる。「ロングCOVID」症状のバイオマーカーは、例えば、Doykov et al.F1000Research 2021;9:1349に記載されている。
【0098】
本発明による1つの実施形態は、「ロングCOVID」症状の治療のためのIMU-838の経口投与である。本発明による1つの特別な実施形態は、「ロングCOVID」症状の治療のためのIMU-838の「多形A」の経口投与である。
【0099】
自然免疫の活性化は、ウイルス感染細胞内のインターフェロンにより主に誘導されるが、SARS-CoV-2の様なウイルスはウイルスが産生したインターフェロンアンタゴニストによりインターフェロンを遮断することができる。感染細胞及びDHODH治療細胞では、自然免疫応答を誘導する遺伝子の導入は、インターフェロンとは関係ないが、おそらく細胞ストレスシグナルにより誘導される血管拡張性失調症変異(ATM)発現によりインターフェロン転写調節因子(IRF1)に依存する。
【0100】
本発明に記載の使用のための化合物の別の態様では、予防及び/又は治療は、平均ウイルス量、RT PCR試験を用いた鼻咽頭若しくは呼吸サンプルの定性的ウイルス学的クリアランス、Dダイマー、LDH、C反応性タンパク質(CRP)、IL-17、IFN-γ、IL-1β、IL-6、TNFa、抗体陽転、並びにIgM及びIgG中和抗体の群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーを対象においてモニターすることを更に含む。このモニタリングを、通常、哺乳類対象から採取される生物サンプルで行い、広く知られている試験、例えば、抗体ベース、PCRベース、及び同様のものを含む。試験を長い時間をかけて反復し、コントロールサンプル及び/又は哺乳類対象から早期に採取されたサンプルと比較することができる。結果は、通常、治療されるときウイルス性疾患の臨床症状の重症度に基づいて、主治医が治療過程を維持又は修正するのを助ける。
【0101】
本発明に記載の使用のための化合物の別の態様では、「ロングCOVID」症状の予防及び/又は治療は、適切なバイオマーカー、例えば、ペルオキシレドキシン3(PRDX3)、カルバモイルリン酸合成酵素(CPS1)、N-Myc下流調節遺伝子1(NDRG1)、コラーゲン三重ヘリックスリピート含有1(CTHRC1)、シスタチンC(CYTC)又はプログラニュリン(GRN)を有する前記対象におけるモニタリングを更に含む。
【0102】
その別の態様では、本発明は、ヒトなど、哺乳類対象においてウイルス感染症の予防方法及び/又は治療方法であって、前記方法は、式(I):
【0103】
【化5】
【0104】
に記載の化合物(ビドフルジムス、IMU-838)、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形の有効量を前記哺乳類に投与することを含む、方法を提供する。好ましいのは、ビドフルジムスカルシウム又はコリンである。
【0105】
その別の態様では、本発明は、ヒトなど、哺乳類対象においてコロナウイルスが原因のウイルス感染症の予防方法及び/又は治療方法であって、前記方法は、式(I):
【0106】
【化6】
【0107】
に記載の化合物、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形の有効量を前記哺乳類に投与することを含む、方法を提供する。
【0108】
方法は、哺乳類対象におけるウイルス感染症に関連する症状を治療又は寛解することを含み、方法は、薬剤的に有効な量でビドフルジムス(IMU-838)を対象に投与することを含み、前記投与により、AIDS、肝炎、エボラ、ポリオ、下痢症、麻疹流行性耳下腺炎、狂犬病、ラッサ熱、ウイルス性インフルエンザ、呼吸器疾患、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及び有害免疫反応、特に前記疾病の中等度症例から重症例の症状などの前記ウイルス感染症に関連する症状を減少させ、前記疾病は、好ましくは、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及びサイトカインストームなどの有害免疫反応などのSARS-CoV-2、特にCOVID-19が原因の疾病から選択される。
【0109】
好ましくは、前記ウイルス感染症は、本発明に記載の方法であり、RNAウイルスが原因である。RNAウイルスは、一本鎖又は二本鎖であり得、好ましくは、ヒトなどの哺乳類において疾病の原因となるウイルスを含む。好ましい例は、HIV、HCV、エボラ、ロタウイルス、ジカウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、RSV、狂犬病、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、又はインフルエンザ、特に、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスである。
【0110】
1つの特別な実施形態は、本発明に記載の方法であり、前記ウイルス感染症は、RNAウイルスが原因である。RNAウイルスは、一本鎖又は二本鎖であり得、好ましくは、ヒトなどの哺乳類において疾病の原因となるウイルスを含む。好ましい例は、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスである。
【0111】
1つの特定の特別な実施形態は、本発明に記載の方法であり、前記ウイルス感染症は、HCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV又はSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスが原因である。
【0112】
更により特別な実施形態は、本発明に記載の方法であり、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-2の変異型が原因である。
【0113】
最も特別な実施形態は、本発明に記載の方法であり、前記ウイルス感染症は、SARS-CoV-2が原因である。
【0114】
併用療法又は交互療法
本明細書に記載されている化合物又はその薬剤的に許容可能な塩を、COVID患者に対する現在の標準治療に加えて、又は医療提供者が患者に利益を与えると考えるいずれかの他の化合物若しくは治療と併用若しくは交互に投与することができる。併用療法及び/又は交互療法は、治療的、補助的又は対症療法的であり得る。
【0115】
COVID患者は様々な疾病のステージを経験することができ、標準治療は、患者が呈する又は進行する病気が何ステージであるかに基づいて異なり得ることが観察された。COVIDは、免疫系と凝固系との間の「クロストーク」の発生が注目される。疾病が進行するとき、患者は、免疫系により過剰反応を開始することがあり、サイトカインストームを含むいくつかの重篤な影響をもたらし得る。免疫系と凝固系との間のクロストークにより、患者は、呼吸器系、脳、心臓及び他の器官を含む体の様々な領域において凝固を始め得る。体全体を通して複数の血塊は、COVID患者において観察され、抗凝固療法を必要とする。これらの血塊は、治療されない場合、長期ダメージ、又は永久的ダメージさえ引き起こす可能性があり、そして疾病は緩和すると考えられる。
【0116】
より詳細には、COVID-19は、病気の4一般ステージを通じて進むと記載されている:ステージ1(初期感染症)、ステージ2(肺相)、ステージ3(過剰炎症相/サイトカインストーム)及びステージ4(典型的回復期後に持続する長期後遺症)。
【0117】
ステージ1は、非特異的及びしばしば軽度の症状を特徴とする。ウイルス複製が起こっており、本明細書に記載されている化合物及びおそらく別の抗ウイルス療法と併用又は交互に緊急治療を始めることが適切である。インターフェロンβを投与して、ウイルスに対する自然免疫応答を増強してもよい。したがって、1つの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩を、インターフェロンβ及び/又は追加の抗ウイルス薬と併用又は交互に有効量で使用する。亜鉛サプリメント及び/又はビタミンCを、時々、このステージ又は病気進行のときにも投与する。
【0118】
COVID-19のステージ2は、患者が急性低酸素性呼吸不全を経験し得る肺相である。事実、COVID-19の原発性臓器不全は、低酸素性呼吸不全である。ステロイド、例えば、デキサメタゾンによる中程度の免疫抑制は、急性低酸素性呼吸不全患者及び/又は人工呼吸中の患者に対して有益であり得る。1つの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩を、グルココルチコイドであり得る副腎皮質ステロイドと併用して有効量で使用する。非限定例は、ブデソニド、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン酢酸エステル、デオキシコルチコステロン酢酸エステル、アルドステロン、ベクロメタゾン又はデキサメタゾンである。
【0119】
ステージ3、疾病の最終ステージは、進行性播種性血管内凝固(DIC)、小さい血塊が血流の至る所で発達する病態を特徴とする。このステージは、多臓器不全(例えば、血管拡張性ショック、心筋炎)も含み得る。更に、多くの患者が「サイトカインストーム」を含むCOVID-19感染症のこの重篤なステージと付き合うことが観察された。DICとサイトカインストームとの間の双方向性の相乗的関係性があると思われる。DICと戦うために、患者は、抗凝固薬を投与されることが多く、抗凝固薬は、例えば、間接作用型トロンビン阻害薬又は直接作用型経口抗凝固薬(「DOAC」)であってよい。非限定例は、低分子量ヘパリン、ワルファリン、ビバリルジン、リバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバン又はエドキサバンである。1つの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩を、抗凝固療法と併用又は交互に投与する。COVID患者の凝固のいくつかの重症例では、TPAを投与する(組織プラスミノーゲンアクチベーター)。
【0120】
高レベルのサイトカインインターロイキン6(IL-6)は、COVID-19患者における呼吸不全及び死の前兆であることが観察された。サイトカインストームを構成し得る免疫応答のこの急増を治療するため、患者に、IL-6標的モノクローナル抗体、IL-6及び更に分解を媒介するタンパク質と結合する二重特異性化合物などの医薬品阻害薬又はタンパク質分解誘導薬を投与することができる。抗体の例としては、トシリズマブ、サリルマブ、シルツキシマブ、オロキズマブ及び クラザキズマブが挙げられる。1つの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩を、トシリズマブ又はサリルマブと併用又は交互に投与する。過剰反応免疫系を治療するために使用される免疫抑制薬の更なる非限定例としては、ヤヌスキナーゼ阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ);カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン)、タクロリムス、mTOR阻害薬(シロリムス、エベロリムス)及びIMDH阻害薬(アザチオプリン)が挙げられる。更なる抗体及び生物製剤としては、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、イキセキズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、バシリキシマブ及びダクリズマブが挙げられる。
【0121】
IL-1は、IL-6の産生及び他の炎症性サイトカインを遮断する。COVID患者を、高炎症応答を減少させるために抗IL-1療法、例えば、アナキンラの静脈内投与で治療することもある。抗IL-1療法は、総じて、例えば、IL-1及び更に分解を媒介するタンパク質と結合する二重特異性化合物など、標的モノクローナル抗体、医薬品阻害薬又はタンパク質分解誘導薬であってよい。
【0122】
COVID患者は、細菌性肺炎をもたらし得るウイルス性肺炎を発症することが多い。重篤なCOVID-19患者は、敗血症又は「敗血性ショック」にも罹る可能性がある。COVIDに続発する細菌性肺炎又は敗血症に対する治療としては、抗生物質、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、又はロキシスロマイシンを含むマクロライド系抗生物質の投与が挙げられる。更なる抗生物質としては、アモキシシリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、スルファメトキサゾール、アモキシシリン、クラブラン酸又はレボフロキサシンが挙げられる。したがって、1つの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩を、抗生物質、例えば、アジスロマイシンと併用又は交互に投与する。アジスロマイシンなどのこれらの抗生物質のいくつかは、独立した抗炎症性特性を有する。かかる薬物をCOVID患者に対する抗炎症性薬として使用してもよく、かかる薬物は続発性細菌感染症に対する治療効果も有する。
【0123】
COVID-19に感染された患者の治療における固有の負荷は、患者が5日、10日又は更に14日以下又はより長く続くかも知れない人工呼吸を必要とする場合、鎮静作用を比較的長期に必要とする。この治療中の継続中の疼痛に対して、鎮痛薬を連続的に添加することができ、継続中の不安に対して、鎮静薬を連続的に添加することができる。鎮痛薬の非限定例としては、アセトアミノフェン、ケタミン及びPRNオピオイド(ヒドロモルホン、フェンタニル、及びモルヒネ)が挙げられる。鎮静薬の非限定例としては、メラトニン、鎮静優位な特性を有する非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン)、プロポフォール又はデクスメデトミジン、ハロペリドール及びフェノバルビタールが挙げられる。1つの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形を、アセトアミノフェン、ケタミン、ヒドロモルホン、フェンタニル、又はモルヒネなどの鎮痛薬と併用又は交互に投与する。1つの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形を、メラトニン、オランザピン、クエチアピン、プロポフォール、デクスメデトミジン、ハロペリドール又はフェノバルビタールなどの鎮静薬と併用又は交互に投与する。
【0124】
1つの実施形態では、本発明の化合物を、PF-07304814、PF-00835231、PF-07321332、ロピナビル又はリトナビルなどのプロテアーゼ阻害薬と併用して有効量で使用する。
【0125】
1つの実施形態では、本発明の化合物を、N4-ヒドロキシシチジンなどのRNA複製修飾薬と併用して有効量で使用するか又はそのプロドラッグを投与してもよい。1つの特別な実施形態では、RNA複製修飾薬は、国際公開第2019/113462号パンフレットに記載されているN4-ヒドロキシシチジンプロドラッグである。もう1つの特別な実施形態では、RNA複製修飾薬は、モルヌピラビルである。
【0126】
COVID患者の治療において使用してよい更なる薬物としては、アスピリン、コルヒチン、フマル酸ジメチル、アカラブルチニブ、ファビピラビル、フィンゴリモド、メチルプレドニゾロン、ベバシズマブ、トシリズマブ、ウミフェノビル、ロサルタン並びにREGN3048及びREGN3051又はリバビリンのモノクローナル抗体合剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの薬物又はワクチンのいずれかを、そのように罹りやすいウイルス感染症を治療するために本明細書で提供されている活性化合物と併用又は交互に使用することができる。
【0127】
1つの実施形態では、本発明の化合物を、抗コロナウイルスワクチン療法と併用して有効量で使用し、mRNA-1273(Moderna)、AZD-1222(AstraZeneca及びオックスフォード大学)、BNT162b2(BioNTech)、CoronaVac(Sinovac)、NVX-CoV2372(NovoVax)、SCB-2019(Sanofi及びGSK)、ZyCoV-D(Zydus Cadila)及びCoVaxin(Bharat Biotech)が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、本発明の化合物を、受動的抗体又は回復期血漿療法と併用して有効量で使用する。
【0128】
SARS-CoV-2は、絶えず変異し、この多くは病原性及び感染率を増加する。ウイルスの薬物耐性バリアントは、抗ウイルス薬を用いた長期治療後に現れる可能性がある。薬物耐性は、ウイルス複製において使用される酵素をコードする遺伝子の変異により起こり得る。ある場合においてRNAウイルス感染症に対する薬物の有効性を、異なる変異を誘導する又は基本薬の経路と異なる経路を介して作用する別の及びおそらく更に2つ若しくは3つの他の抗ウイルス化合物と併用又は交互に化合物を投与することにより延長、増強又は回復することができる。公知のウイルスのバリアントは、公知のウイルスと比較してウイルスゲノム中1つ以上のヌクレオチド変異、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、60、100、200、300又は更に多くのヌクレオチド変異を保有するウイルスを表すことができる。変異は、ヌクレオチド欠失、挿入、又は置換を表すことができる。場合によっては、バリアントは、公知のウイルスのゲノムと異なる最大でも50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%のウイルスゲノムを有することができる。
【0129】
あるいは、薬物の薬物動態、体内分布、半減期又は他のパラメータを、かかる併用療法(協奏的と考えられる場合交互療法を含んでよい)により変更することができる。
【0130】
別々に、又は同じ医薬組成物のいずれかで投与される式(I)の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物若しくは多形と併用してよい他の治療薬の例としては:
(1)プロテアーゼ阻害薬;
(2)ポリメラーゼ阻害薬;
(3)アロステリックなポリメラーゼ阻害薬;
(4)PEG化さもなければ修飾、及び/若しくはリバビリンであってよい、インターフェロンα-2a;
(5)基質に基づいていない阻害薬;
(6)ヘリカーゼ阻害薬;
(7)プライマーゼ-ヘリカーゼ阻害薬;
(8)アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(S-ODN);
(9)アプタマー;
(10)ヌクレアーゼ耐性リボザイム;
(11)マイクロRNA及びSiRNAを含む、iRNA;
(12)ウイルスに対する抗体、部分抗体若しくはドメイン抗体;
(13)ウイルス抗原若しくは宿主抗体応答を誘導する部分抗原;
(14)NOD含有、LRP含有及びパイリンドメイン含有タンパク質3(NLRP3);又は
(15)他のDHODH阻害薬(例えば、ブレキナル、テリフルノミド、レフルノミド、PTC299、MEDS433、AG-636、ASLAN003、JNJ-74856665、RP7214、PP-001及びBAY2402234)
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
本発明に記載の方法の別の好ましい方法では、前記予防及び/又は治療は、他のDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)、及び/又は、例えば、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル、ザナミビル)、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン(トリバビリン)、インターフェロンα-2b/全身リバビリン、いずれものPEG化製剤を含むインターフェロンα2a若しくは2b、クロロキン若しくはヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンと併用して与えられる)、ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))、ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))、リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))、ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))、ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))、エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))、及びエルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))のうちの少なくとも1つから選択される標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである。好ましいのは、レムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキンとの組合せである。
【0132】
本発明に記載の方法のより好ましい方法は、少なくともレムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキン、より好ましくはIMU-838+レムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキンとのDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)である。
【0133】
予防及び/又は治療の方法に関する1つの実施形態は、少なくともレムデシビルを含む標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである。
【0134】
特別な実施形態では、組合せは、レムデシビルとのIMU-838の「多形A」である。
【0135】
好ましいのは、本発明に記載の使用のための他のDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)、及び/又は標準的抗ウイルス療法(SAT)との組み合わせた方法であり、前記ウイルス感染症は、RNAウイルスが原因である。RNAウイルスは、一本鎖又は二本鎖であり得、好ましくは、ヒトなどの哺乳類において疾病の原因となるウイルスを含む。好ましい例は、HIV、HCV、エボラ、ロタウイルス、ジカウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、RSV、狂犬病、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、又はインフルエンザ、特に、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのベータコロナウイルスである。本発明に記載の使用のための好ましい組合せは、ベータコロナウイルス感染症、特にSARS-CoV-2のための、少なくともレムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキン、より好ましくはIMU-838+少なくともレムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキンとのDHODH阻害薬(例えば、本明細書に記載されているような)である。
【0136】
本発明の別の態様では、標準的抗ウイルス療法(SAT)と組み合わせて用いる好ましい方法において、本明細書ではDHODH阻害薬/SATとも呼ぶ標準的抗ウイルス療法(SAT)の有効量に対するDHODH阻害薬の有効量の比は、0.1~10、より好ましくは0.2~10、より好ましくは0.2~1又は1~10である。IMU-838+少なくともレムデシビルの組合せのためのより好ましい比は、10又は0.2である。
【0137】
方法では、使用するための化合物を、上記適切な医薬組成物として提供することができ及び/又は投与する。化合物を、単独又は他の活性化合物-例えば、前述の疾病の治療のための既知の医薬品と併用して投与することができ、それにより、後者の場合、好ましい付加的、増幅又は好ましくは相乗的効果が認められる。哺乳類、特にヒトに投与しようとする適切な量及び投与量は上記の通りであり、5~500mg、特に10mg~100mgの範囲であり得る。
【0138】
好ましいのは、本発明に記載の方法であり、前記予防方法及び/又は治療方法は、他のDHODH阻害薬、並びに/又は、例えば、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル、ザナミビル)、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン(トリバビリン)、インターフェロンα-2b/全身リバビリン、いずれものPEG化製剤を含むインターフェロンα2a若しくは2b、クロロキン若しくはヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンと併用して与えられる)、ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))、ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))、リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))、ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))、ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))、エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))、及びエルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))との組合せである。好ましいのは、レムデシビル、クロロキン又はヒドロキシクロロキンのうちの少なくとも1つから選択される標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである。
【0139】
本発明に記載の方法の好ましい実施形態では、化合物を、例えば、朝の食事の15~60分前、及び夜の何れかの食事の少なくとも2時間後に、22.5mgを1日2回服用して、毎日45mgの有効投与量で前記対象に投与する。0.1~50μMの使用のための化合物の血漿レベルに達することが望ましい。
【0140】
本発明の方法との関連で、化合物ビドフルジムスは、特に併用治療として、ウイルス感染症の予防並びに疾病の後期の治療の両方において特別な利点を示すことが、驚くべきことに見出された。
【0141】
本発明に記載の方法の予防的アプローチでは、化合物を、感染の検出直後に対象に投与することができる。
【0142】
本発明に記載の方法の予防的アプローチでは、化合物を「遅くに」対象に投与することができ、例えば、感染後8~24時間、好ましくは感染後10~24時間、より好ましくは12~16時間に投与される場合でもなお効果的である。このレジメンは、驚くほど低いウイルス量をなお提供する。
【0143】
本発明に記載の方法の治療的アプローチでは、化合物を、感染直後に対象に投与することができる。
【0144】
本発明に記載の方法の治療的アプローチでは、化合物を、感染サイクルの「後期に」対象に投与することができ、例えば、感染後5~14日、好ましくは感染後5~11日、より好ましくは感染後7~11日に投与される場合でも、特に(相乗的)併用療法としてなお効果的である。このレジメンは、驚くほど効果的な治療効果を提供し、更に、サイトカインストームの様な過剰免疫反応の制御を助ける。
【0145】
予防的アプローチでは、化合物を、コロナウイルス感染症を予防又はコロナウイルスの複製を低減するために予防的に投与することもできる。
【0146】
本発明に記載の方法の更なる実施形態では、化合物を、14日以上の間対象に投与する。
【0147】
本発明に記載の方法の好ましい実施形態では、化合物を、14日間対象に投与する。
【0148】
ここで、本発明を、添付の図を参照して以下の実施例で更に説明するが、本発明はこれらに限定されない。本発明の目的のため、本明細書に引用されている全ての参考文献は、それらの全文の参照により援用される。
【0149】
上記とも関連で、本発明の特定の実施形態は、下記連番の実施形態により表される:
【0150】
実施形態1.
ヒトなどの哺乳類対象におけるウイルス感染症が原因の疾病の予防及び/又は治療において使用するための、式(I):
【0151】
【化7】
【0152】
に記載の化合物、その有機酸誘導体、その生理的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物又は多形。
【0153】
実施形態2.
前記ウイルス感染症は、例えば、HIV、HCV、エボラ、ロタウイルス、ジカウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、RSV、狂犬病、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、又はインフルエンザ、特に、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのRNAウイルスによる、実施形態1に記載の使用のための化合物。
【0154】
実施形態3.
前記疾病は、AIDS、肝炎、エボラ、ポリオ、下痢症、麻疹、流行性耳下腺炎、狂犬病、ラッサ熱、ウイルス性インフルエンザ、呼吸器疾患、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及び有害免疫反応、特に前記疾病の中等度症例から重症例から選択され、前記疾病は、好ましくは、急性呼吸器疾患、敗血症、急性呼吸促迫症候群、及びサイトカインストームなどの有害免疫反応などのSARS-CoV-2、特にCOVID-19が原因の疾病から選択される、実施形態1又は2に記載の使用のための化合物。
【0155】
実施形態4.
前記予防及び/又は治療は、他のDHODH阻害薬、並びに/又は、例えば、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル、ザナミビル)、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン(トリバビリン)、インターフェロンα-2b/全身リバビリン、いずれものPEG化製剤を含むインターフェロンα2a若しくは2b、クロロキン若しくはヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンと併用して与えられる)、ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))、ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))、リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))、ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))、ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))、エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))、及びエルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))のうちの少なくとも1つから選択される標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである、実施形態1~3の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【0156】
実施形態5.
前記標準的抗ウイルス療法(SAT)は、少なくともレムデシビルを含む、実施形態4に記載の使用のための化合物。
【0157】
実施形態6.
本特許請求の範囲においてDHODH阻害薬/SATとも呼ぶ、標準的抗ウイルス療法(SAT)の有効量に対するDHODH阻害薬の有効量の比は、0.1~10、0.2~10、0.2~1又は1~10である、実施形態4又は5に記載の使用のための化合物。
【0158】
実施形態7.
前記化合物を、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、サッシェ剤、再調製可能な(reconstitutable)散剤、乾燥粉末吸入剤及び/又は咀嚼剤など、適切な医薬組成物として提供する、実施形態1~6の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【0159】
実施形態8.
前記化合物を、例えば、朝の食事の15~60分前、及び夜の何れかの食事の少なくとも2時間後に、22.5mgを1日2回服用して、毎日45mgの有効投与量で前記対象に投与する、実施形態1~7の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【0160】
実施形態9.
前記化合物を、感染後5~14日、好ましくは感染後5~11日、より好ましくは感染後7~11日に前記対象に投与する、実施形態1~8の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【0161】
実施形態10.
予防のため、前記化合物を、感染後8~24日、好ましくは感染後10~20日、より好ましくは感染後12~16日に前記対象に投与する、実施形態1~8の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【0162】
実施形態11.
前記予防及び/又は治療は、平均ウイルス量、RT PCR試験を用いた鼻咽頭若しくは呼吸サンプルの定性的ウイルス学的クリアランス、Dダイマー、LDH、C反応性タンパク質(CRP)、IL-17、IFN-γ、IL-1β、IL-6、TNFa、抗体陽転、並びにIgM及びIgG中和抗体の群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーを前記対象においてモニターすることを更に含む、実施形態1~10の何れか一項に記載の使用のための化合物。
【0163】
実施形態12.
ヒトなど、哺乳類対象においてウイルス感染症の予防方法及び/又は治療方法であって、前記方法は、式(I):
【0164】
【化8】
【0165】
に記載の化合物、その有機酸誘導体、その生理的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物又は多形の有効量を前記哺乳類に投与することを含む、方法。
【0166】
実施形態13.
前記ウイルス感染症は、例えば、HIV、HCV、エボラ、ロタウイルス、ジカウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、RSV、狂犬病、狂犬病ウイルス、ハンタウイルス、又はインフルエンザ、特に、HCoV-229E、HCoV-NL63などの一本鎖RNAウイルス、又は特に好ましいHCoV-OC43、SARS-CoV-1、HCoV-HKU1、MERS-CoV若しくはSARS-CoV-2などのRNAウイルスによる、実施形態12に記載の方法。
【0167】
実施形態14.
前記予防方法及び/又は治療方法は、他のDHODH阻害薬、並びに/又は、例えば、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル、ザナミビル)、ファビピラビル、レムデシビル、リバビリン(トリバビリン)、インターフェロンα-2b/全身リバビリン、いずれものPEG化製剤を含むインターフェロンα2a若しくは2b、クロロキン若しくはヒドロキシクロロキン(アジスロマイシンと併用して与えられる)、ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))、ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))、リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))、ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))、ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))、エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))、及びエルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))のうちの少なくとも1つから選択される標準的抗ウイルス療法(SAT)との組合せである、実施形態12又は13に記載の方法。
【0168】
実施形態15.
前記標準的抗ウイルス療法(SAT)は、少なくともレムデシビルを含む、実施形態14に記載の方法。
【0169】
実施形態16.
本特許請求の範囲においてDHODH阻害薬/SATとも呼ぶ、標準的抗ウイルス療法(SAT)の有効量に対するDHODH阻害薬の有効量の比は、0.1~10、0.2~10、0.2~1又は1~10である、実施形態14又は15に記載の方法。
【0170】
実施形態17.
前記化合物を、例えば、朝の食事の15~60分前、及び夜の何れかの食事の少なくとも2時間後に、22.5mgを1日2回服用して、毎日45mgの有効投与量で前記対象に投与する、実施形態12~16の何れか一項に記載の方法。
【0171】
実施形態18.
前記化合物を、感染後5~14日、好ましくは感染後5~11日、より好ましくは感染後7~11日に前記対象に投与する、実施形態12~17の何れか一項に記載の方法。
【0172】
実施形態19.
予防のため、前記化合物を、感染後8~24日、好ましくは感染後10~20日、より好ましくは感染後12~16日に前記対象に投与する、実施形態12~17の何れか一項に記載の方法。
【0173】
実施形態20.
それを必要とする対象のウイルス感染症の治療方法であって、前記方法は、構造:
【0174】
【化9】
【0175】
のDHODH阻害薬、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形の治療有効量を前記対象に投与することを含み、ウイルス感染症はコロナウイルスが原因である、方法。
【0176】
実施形態21.
前記コロナウイルスは、ベータコロナウイルスである、実施形態20に記載の方法。
【0177】
実施形態22.
前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である、実施形態20又は21に記載の方法。
【0178】
実施形態23.
前記DHODH阻害薬は、薬剤的に許容可能な塩であり、前記薬剤的に許容可能な塩は、カルシウム塩である、実施形態20に記載の方法。
【0179】
実施形態24.
前記DHODH阻害薬を、少なくとも2週間1日2回前記対象に投与する、実施形態20~23の何れか一項に記載の方法。
【0180】
実施形態25.
前記DHODH阻害薬を、少なくとも約2週間1日2回前記対象に投与し、前記DHODHを、各投与に対して食事の少なくとも約15分~約60分前に投与する、実施形態20~23の何れか一項に記載の方法。
【0181】
実施形態26.
前記DHODH阻害薬を、前記コロナウイルス感染後約5日~約14日に前記対象に投与する、実施形態20~25の何れか一項に記載の方法。
【0182】
実施形態27.
前記DHODH阻害薬を、経口投与のために製剤する、実施形態20~27の何れか一項に記載の方法。
【0183】
実施形態28.
前記DHODH阻害薬を、錠剤として前記対象に投与する、実施形態20~27の何れか一項に記載の方法。
【0184】
実施形態29.
前記DHODH阻害薬の前記治療有効量は、約20mg~約50mgである、実施形態20~28の何れか一項に記載の方法。
【0185】
実施形態30.
前記DHODH阻害薬の前記治療有効量は、約45mgである、実施形態20~29の何れか一項に記載の方法。
【0186】
実施形態31.
前記DHODH阻害薬の前記治療有効量は、1日2回約22.5mgの前記DHODH阻害薬である、実施形態20~30の何れか一項に記載の方法。
【0187】
実施形態32.
前記ウイルス感染症は、前記対象がサイトカインストームを有する原因となる、実施形態20~31の何れか一項に記載の方法。
【0188】
実施形態33.
前記方法は、追加の治療薬の治療有効量を前記対象に投与することを更に含む、実施形態20~32の何れか一項に記載の方法。
【0189】
実施形態34.
前記追加の治療薬は、レムデシビルである、実施形態33に記載の方法。
【0190】
実施形態35.
それを必要とする対象のウイルス感染症のための治療の提供方法であって、前記方法は、構造:
【0191】
【化10】
【0192】
のDHODH阻害薬、その薬剤的に許容可能な塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、水和物又は多形の治療有効量を前記対象に投与することを含み、ウイルス感染症はコロナウイルスが原因である、方法。
【実施例
【0193】
背景
IMU-838は、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、炎症性腸疾患(IBD)並びに他の慢性炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療のための経口錠剤製剤として開発中の小分子治験薬(ビドフルジムスカルシウム)である。
【0194】
非晶質物質としてIMU-838(ビドフルジムス)の活性部分の遊離酸製剤を用いて最初の臨床治験も行われた。全体として、この臨床治験データは、活性部分を用い手治療された250超の患者を含み、IMU-838の更なる開発を促進する安全データベースを生成する助けとなる。IMU-838の50mg以下の毎日の反復投与の認容性を支持する結果を得た。
【0195】
ウイルス特異的タンパク質及びその構造に関する抗ウイルス効果の独立性を考慮して、DHODH阻害薬は、いくつかのウイルスに広く応用できると思われる。かかる広域性スペクトル抗ウイルス効果は、インフルエンザウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、更にラッサウイルスなどの出血熱を引き起こすウイルスなど、様々なウイルス感染細胞で観察された。したがって、改良された医薬特性を有する化合物を用いた本実施例で考察された結果を、SARS-CoV-2感染症などのRNAウイルスに容易に対して推定することができる。
【0196】
予備的実験(例えば、国際公開第2012/128050号パンフレット又はKim et al.in Viruses 2020;12:821)は、IMU-838が治療患者の血液中で得られた濃度(血漿値10~30μM)において広域性スペクトル抗ウイルス活性を有する。HIV及びC型肝炎ウイルス(HCV)に対するIMU-838の抗ウイルス活性を、細胞培養実験で試験した。IMU-838がウイルス複製を阻害することが分かった。別系列の実験では、HIV及びB型肝炎ウイルスに対して血清陰性のヒト末梢血単核球(PBMC)を、HIV-191US005(向CCR5性、サブタイプB)を用いてインビトロで感染させた。逆転写酵素活性及び特異的HIV抗原p24の出現を、異なるIMU-838濃度において評価した。有効投与量(ED50)中央値は、約2μMである。IMU-838を、安定ルシフェラーゼ(Luc)レポーター及び3細胞培養適応変異を含む表遺伝子型1bのHCVサブゲノムレプリコンを有するHuh7ヒト肝がん細胞株でも評価した。HCVレプリコン値を、IMU-838の異なる濃度における読取りとしてレプリコン由来Luc活性を用いて評価した。ED50中央値は、4.6μMであった。
【0197】
そして、哺乳類アレナウイルス感染症、ラッサ熱の様なヒト出血熱病の原因となるRNAウイルスの細胞A549及びベロモデルでは、IMU-838は、2.8μMのIC50(標的の活性の50%を阻害する薬物の濃度)を有する活性を実証した。加えて、この場合、このウイルス型に対するDHODH阻害薬媒介効果は、IFNシグナル伝達と無関係であることが分かった。
【0198】
【表1】
【0199】
自然免疫応答の二次活性化は、関連下流機序としても記載されている。したがって、DHODH阻害薬は、ウイルス複製を支援する手段としてRNA産生のヒト宿主細胞機序を「乗っ取る」ウイルスの能力を寛解及び遮断する。これは、広いウイルス活性の利点を有する宿主細胞機序であり、ウイルスの耐性又は変異により影響を受けず、ウイルス自体を標的とする他の抗ウイルス薬と組み合わせることができる。
【0200】
試験化合物の調製
特開昭50-121428明細書、国際公開第2012/001148号パンフレット(実施例4)、又はKralik et al.SAR,species specificity,and cellular activity of cyclopentene dicarboxylic acid amides as DHODH inhibitors,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Volume 15,Issue 21,1 November 2005,Pages 4854-4857に記載されている方法など、式(I)の化合物の製造する様々な可能性があり、これらの文献は参照により本明細書に援用される。
【0201】
詳細には、次の合成方法を使用した。
【0202】
方法1:第1工程では、シクロアルケン-1,2-ジカルボン酸を、R.N.Mc Donald and R.R.Reitz,J.Org.Chem. 37,(1972)2418-2422に記載されているように、対応するα,α’-ジブロモアルカンジカルボン酸から得ることができる。シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸を、ピメリン酸から大量に得ることもできる[D.C.Owsley und J.J.Bloomfield,Org.Prep.Proc.Int.3,(1971)61-70;R.Willstatter,J.Chem.Soc.(1926),655-663]。環構造中又は環構造上で置換されているジカルボン酸を、総じてシアンヒドリン合成により合成することもできる[Shwu-Jiuan Lee et.al.,Bull.Inst.Chem.Academia Sinica Number 40,(1993),1-10 or B.R.Baker at al.,J.Org.Chem.13,1948,123-133;and B.R.Baker at al.,J.Org.Chem.12,1947,328-332;L.A.Paquette et.al.,J.Am.Chem.Soc.97,(1975),6124-6134]。それから、ジカルボン酸を、酢酸無水物と反応させることにより対応する酸無水物に転換することができる[P.Singh and S.M.Weinreb,Tetrahedron 32,(1976),2379-2380]。
【0203】
異なる酸無水物の他の調製方法もV.A.Montero at al.,J.Org.Chem.54,(1989),3664-3667;P.ten Haken,J.Heterocycl.Chem.7,(1970),1211-1213;K.Alder,H.Holzrichter,J.Lieb.Annalen d.Chem.524,(1936),145-180;K.Alder,E.Windemuth,J.Lieb.Annalen d.Chem.543,(1940),56-78;及びW.Flaig,J.Lieb.Annalen d.Chem.568,(1950),1-33に記載されている。
【0204】
それから、これらの無水物を、対応するアミンと反応させて、式(I)の所望のアミドに転換してよい。この反応を、J.V.de Julian Ortiz et al.,J.Med.Chem.42,(1999),3308(実施例1の指定経路A)に記載されている反応条件の使用又は4-ジメチルアミノピリジン(実施例1の指定経路B)のいずれかにより実行することができる。
【0205】
方法2:式(I)のアミドを、式(IV)のアミンを、一般式(V)のアリールホウ酸と反応させることにより合成することもできる[M.P.Winters,Tetrahedron Lett.,39,(1998),2933-2936]。ビアリールアニリンを、総じて、パラジウムカップリングにより合成することもできる[G.W.Kabalka et al.,Chem.Commun.,(2001),775;A.Demeter,Tetrahedron Lett.38;(1997),5219-5222;V.Snieckus,Chem.Commun.22,(1999),2259-2260]。
【0206】
方法3:式(I)のアミドを、式(VI)のハロゲン誘導体を、一般式(VII)のアリールホウ酸と反応させることにより合成することもできる[N.E.Leadbeater,S.M.Resouly,Tetrahedron,55,1999,11889-11894]。
【0207】
カルシウム塩の調製:式(I)の化合物のカルシウム塩の合成は、国際公開第2012/001148号パンフレットに詳細に記載されており、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0208】
国際公開第2019/175396号パンフレットは、新規白色結晶カルシウム塩(式(II)、「多形A」と呼ぶ)を記載しており、この文献は参照により本明細書に援用される。2つのカルシウム多形を、そのX線粉末回折(XRPD)パターンにより識別することができる。
(a)国際公開第2012/001148号パンフレットの図5に示されている黄色がかったカルシウム多形;
(b)国際公開第2019/175396号パンフレットの図1に示されている「多形A」と呼ばれる式(II)に記載の白色カルシウム多形。
【0209】
アッセイ及び試験
ヒトT細胞の増殖アッセイ
ヒト末梢血単核球(PBMC)を、健康なボランティアから得て、10%透析されたウシ胎仔血清を含むRPMI1640細胞培養培地に移した。ウェル当たり80,000細胞を、96ウェルプレートにピペットで入れて、植物性血球凝集素(PHA)を20μg/mlの最終濃度までリン酸緩衝食塩水に添加して、T細胞増殖を刺激した。ビドフルジムスを、20nM~50μMの範囲の最終濃度までジメチルスルホキシド(DMSO、最終濃度:0.1体積%)に添加した。48時間のインキュベーション後、細胞増殖を、製造者説明書に従って「細胞増殖ELISA BrdU」(Roche)を用いて定量化した。半最大阻害(IC50)を、4パラメータS字形曲線フィットを用いて算出した。T細胞増殖を、4.1μMのIC50を有するビドフルジムスにより阻害した。
【0210】
バイオアベイラビリティーの決定
ビドフルジムスのカルシウム塩及び有機酸の経口バイオアベイラビリティーを、雄ウィスターラットにおいて比較した。有機酸又はカルシウム塩を、ゼラチンカプセルに充填し、動物は体重キログラム当たり約10mgの有機酸当量の投与レベルで単回投与を受けた。
【0211】
群当たり4匹の雄ウィスターラット(体重範囲:250~275g)を、ビドフルジムス有機酸又はそのカルシウム塩のいずれかで治療した。カプセルを、適用デバイスを用いて動物の食道に投与した。静脈血サンプルを、投与後次の時点:30分;1時間;2時間;4時間;6時間;8時間;24時間;28時間;32時間及び48時間においてイソフルラン麻酔下動物から採取した。Naヘパリンを用いて凝固を阻害し、血液サンプルの遠心分離により血漿を生成した。血漿サンプルをLC-MS/MSによりビドフルジムスについて分析し、薬物動態パラメータを、混合対数線形台形法に従って算出した。
【0212】
カリウム塩を調査するため、6匹雌ルイスラット(体重約200g)を、30mg/kgの投与レベル(遊離酸当量)でビドフルジムス遊離酸又はそのカリウム塩のいずれかで治療した。化合物を、リン酸緩衝食塩水中の0.5%メチルセルロースに製剤し、動物を強制経口投与により治療した。静脈血サンプルを、投与後次の時点:30分;1時間;2時間;4時間;8時間;26時間;33時間;48時間及び72時間においてイソフルラン麻酔下動物から採取した。Naヘパリンを用いて凝固を阻害し、血液サンプルの遠心分離により血漿を生成した。血漿サンプルをLC-MS/MSによりビドフルジムスについて分析し、薬物動態パラメータ(AUC)を、線形台形法に従って算出した。
【0213】
塩の経口バイオアベイラビリティーを、血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)及び塩の投与後のビドフルジムスの最大到達血漿中濃度(Cmax値)を遊離酸の投与後に観察されたものと比較することにより評価した。比を表2に示す。
【0214】
【表2】
【0215】
SARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性についてのIMU-838のインビトロ試験
IMU-838を、ベロ76細胞を用いてSARS-CoV-2に対するインビトロ抗ウイルス活性について試験した。試験培地は、2%FBS及びゲンタマイシンを含むMEMであった。
【0216】
ウイルスを、試験培地中に調製して、5日以内に>80%細胞変性効果(CPE)を得るだろう可能性ある最低感染効率(MOI)を得た。プレートを、下記化合物の調製及び添加前に感染させた。この試験のMOIは、0.002であった。
【0217】
化合物を粉末状で受け、DMSOに溶解して100mM原液を調製した。それから、化合物を、DMSO中に8つの半対数希釈を用いて段階希釈し、そして試験培地中に希釈し、その結果、出発(高)試験濃度は100μMであった。各希釈液を、80~100%コンフルエントな細胞を含む96ウェルプレートの5ウェルに添加した。各希釈液の3ウェルを、ウイルスに感染させて、2ウェルは毒性コントロールとして感染させなかった。6ウェルをウイルスコントロールとして感染させて治療せず、6ウェルを細胞コントロールとして感染させず治療しなかった。M128533(プロテアーゼ阻害薬)を、ポジティブコントロールとして同時に試験した。プレートを、37±2℃、5%CO2でインキュベートした。
【0218】
ウイルス収量低下アッセイのため、各化合物濃度からの上澄液を感染後3日目(プールされた3ウェル)で集め、ウイルス力価を、標準エンドポイント希釈CCID50アッセイ及びリード・ミュンヒ(1948)式を用いた力価算出を用いて定量した。1log10によるウイルス収量の低下に必要な化合物濃度を、回帰分析により算出した。
【0219】
感染後5日目、一旦未治療ウイルスコントロールウェルが最大CPEに達したならば、プレートを、約2時間(±15分)中性赤色染料で染色した。上澄み染料を除去し、ウェルをPBSでリンスし、取り込まれた染料を、>30分間50:50セーレンセンクエン酸バッファ/エタノールに抽出し、光学密度を、540nmにおいて分光光度計で読んだ。光学密度を、細胞コントロールのパーセントに換算し、ウイルスコントロールに対して正規化し、次いで、CPEを50%(EC50)阻害するのに必要な試験化合物濃度を、回帰分析により算出した。ウイルスの非存在下50%細胞死を引き起こすことになる化合物濃度を、同様に算出した(CC50)。選択性指標(SI)は、CC50をEC50により除算する。
【0220】
抗ウイルス結果を表3に示す。IMU-838は、0.32~10μMの濃度においてSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を示した。ポジティブコントロール化合物も、予想通りに機能した。
【0221】
【表3】
【0222】
SARS-CoV-2感染細胞に対するIMU-838の阻害有効性を、いくつかの細胞株及び分化系列において変数リードアウト法を用いて更に検証した(Hahn et al.Viruses 2020;12:1394)。分化系列。SARS-CoV-2感染薬物治療CaCo-2細胞を、プラーク形成の定量化のためベロE6細胞の単層に上澄みを移動するために使用し、このアプローチでは、ウイルスプラークの58倍の低下を、治療設定のために観察した。更に、ベロ76細胞を用いたVYRアッセイを行い、6.2±1.9μMのウイルス特異的EC90を測定し、感染後3日目100μM以下の薬物濃度で細胞傷害性は観察されなかった。表4は概要を示す。
【0223】
【表4】
【0224】
変異SARS-CoV-2株におけるIMU-838の阻害有効性を同様に決定することができる:
上記と同様に行われるウイルス収量低下アッセイにおいて、SARS-CoV-2野生型又は元の武漢株に加えて、懸念すべきバリアントB.1.1.7及びB.1.351において、IMU-838を試験した。ベロE6細胞を、IMU-838の異なる濃度で24時間前処理し、ウイルスを48時間添加し、その後、上澄みを収穫してCCID50を決定した。元の武漢株(10μMにおいて約2対数単位)と比較して、懸念すべきバリアント(10μMにおいて>3対数単位)における更に強力な対数単位低下を有する全3バリアントについて、感染力のIMU-838の用量依存低下が実証された。
【0225】
ヒト患者におけるビドフルジムスの活性及び安全性の試験
急性SARS-CoV-2感染症及び臨床症状を有する患者における14日フェーズ2、2群、多施設、無作為、プラセボ対照、二重盲検臨床治験を行う。プラセボに対するIMU-838を、すなわち、両治療群において利用される標準治療のバックグラウンドで試験する。
群1:2×22.5mg IMU-838+標準治療
群2:2×プラセボ+標準治療
IMU-838及びプラセボを、経口用の小さい(8mm径)白色錠剤として提供する。
【0226】
製剤:22.5mg IMU-838、丸い8mm径サイズ、コーティングされていない錠剤
投与:朝の食事の15~60分前、並びに夜のいずれかの食事の少なくとも2時間後及びいずれかの食事の15~60分前に、1日2回錠剤を服用する。
投与量:45mg(22.5mg1日2回服用)
参照製品:マッチングプラセボ、試験製品のために説明されている通りに投与
【0227】
選択規準は、WHO COVID-19 Therapeutic Trial Synopsis(www.who.int/publications/i/item/covid-19-therapeutic-trial-synopsis)により提案された9カテゴリー順序尺度並びに更なる標準臨床及び実験で評価された臨床状態のカテゴリー3~4を充実する患者である。
【0228】
主要臨床エンドポイントを、試験期間中に侵襲的人工呼吸を必要とする患者の割合により評価する、すなわち、臨床的効果又は退院までの時間に関してCOVID-19に罹患している成人対象におけるプラセボ+SOCに対するIMU-838+標準治療(SOC)の優位性を評価する。
【0229】
更なる副次結果尺度としては、臨床状態の改善までの時間、28日中及び28日後の体外式膜型人工肺(ECMO)又は腎代替療法の必要性、並びにプラセボ+SOCに対するIMU-838+SOCでの治療と比較した集中治療室(ICU)内の患者の治療期間及び必要性;プラセボ+SOCに対するIMU-838+SOCでの治療と比較したこのCOVID-19患者集団における28日総死亡率;並びに有害事象(AE)、重篤有害事象(SAE)及び実験値により決定されるときCOVID-19に罹患している成人対象におけるプラセボ+SOCに対するIMU-838+SOCの安全性及び認容性を評価することが挙げられる。
【0230】
ウイルス力価を調査するため、ウイルス病原性の尺度及び患者の治療中の炎症マーカー、次のバイオマーカーを評価した:
-ウイルス学的尺度としては、時間とともに陽性ウイルスRNA検出された患者の割合及びウイルスRNA力価曲線下面積測定が挙げられる。A)SARS-CoV-2平均ウイルス量-スワブ、痰及び便当たりのlog10複製物、並びにB)鼻咽頭又は呼吸サンプルの定性的ウイルス学的クリアランス(上気道検体のSARS-CoV-2 RT PCR試験の陰性率、2回連続陰性試験)。
-検出及びモニターされた生化学マーカーは、Dダイマー、LDH、C反応性タンパク質(CRP)、IL-17、IFN-γ、IL-1β、IL-6、TNFa、抗体陽転、並びにIgM及びIgG中和抗体である。
【0231】
SOCのため、研究者は、とりわけ標準治療(静脈内輸液、支持療法及び薬物、酸素補充並びにその他)を選択し、自己の裁量により何れかの次の抗ウイルス治療を選択してもよい(ジェネリック又はブランド剤、単剤療法又は固定用量合剤を含む併用治療):
-ノイラミニダーゼ阻害薬(例えば、オセルタミビル及びそのジェネリック剤、ザナミビル)
-ファビピラビル
-レムデシビル
-リバビリン(トリバビリンとしても公知)、そのジェネリック剤(例えば、レベトール、リバスフィル、モデリバ)も含む
-インターフェロンα-2b/全身リバビリン(レベトロン)
-インターフェロンα2a又は2b、何れかのPEG化バージョンを含む
-クロロキン及びヒドロキシクロロキン、アジスロマイシンと併用して与えられる場合
-ドルテグラビル+リルピビリン(JULUCA(登録商標))
-ドルテグラビル+ラミブジン(DOVATO(登録商標))
-リトナビル+ロピナビル(KALETRA(登録商標))
-ビクテグラビル+テノホビルアラフェナミド+エムトリシタビン(BIKTARVY(登録商標))
-ドルテグラビル+アバカビル+ラミブジン(TRIUMEQ(登録商標))
-エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド(GENVOYA(登録商標))
-エルビテグラビル+コビシスタット+エムトリシタビン+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン(STRIBILD(登録商標))。
【0232】
アルビドールは、抗ウイルス治療として承認されていない。サイトカイン放出症候群の疑いのある患者のためのトシリズマブの使用は許可されている。
【0233】
患者の半分がIMU-838+SOCを受けるように、患者を1:1に無作為化し、半分は、14日以下の間マッチングプラセボ+SOCを受ける。二重盲検治療として治療を与え、患者の安全のために緊急事態の非盲検のみを許可する。試験薬を用いた治療の14日後、試験薬を中断するが、全患者は標準治療(必要であれば、抗ウイルス治療を含む)の研究者の選択で自由に継続することができ、併用薬又はSOCとして許可されていない他の抗ウイルス薬の使用に関してもはや制限はない。患者を、試験終了時評価のため28日目に評価する。
【0234】
IMU-838を、223患者と共にフェーズ2治験で試験した。この治験は、次のエンドポイントで中等症のコロナウイルス病2019(COVID-19)入院患者において臨床活動の予備的証拠を示した。
【0235】
臨床的回復までの時間:7日目で臨床的回復に達する患者の割合は、プラセボ群のほんの12.8%(N=10)と比較して、IMU-838治療患者において18.5%(N=15)であった。28日目、プラセボ群のほんの66.7%(N=58)と比較して、IMU-838治療患者の71.3%(N=57)は回復した(最大解析対象集団(FAS))。
【0236】
臨床的効果までの時間:臨床的効果までの時間は、プラセボと比較して、IMU-838治療群においてより短いことが見出され、増分利益は時間と共に増加した(修正最大解析対象集団(mFAS))。
・14日目で臨床的効果(研究者による評価として)に達する患者の割合は、プラセボ群(FAS)におけるほんの38.5%(N=35)と比較して、IMU-838治療患者において42.7%(N=38)であった。28日目、数は、それぞれ、90.9%(N=90)及び87.4%(N=90)であった。効果のない患者の相対的割合は、14日目のIMU-838治療群よりプラセボ群において6.8%大きく、28日目において27.7%大きかった。
・14日目後、IMU-838で治療された患者は、プラセボで治療された患者と比較して、臨床的効果の数的により高い確率(中央で算出)を経験した。例えば、臨床的効果に達する確率75%は、プラセボ(mFAS)と比較して、IMU-838治療患者において2.9日促進された。
・患者の入院期間に関する患者の第3四分位点(75%の患者はより短い入院期間を有し、25%の患者はより長い入院期間を有する)は、プラセボ(mFAS)と比較して、IMU-838治療患者において3.4日短縮された。
・臨床的効果(中央で算出)は、IMU-838をCOVID-19病過程の早期(症状の発症後最初の8日以内、mFAS)に使用する場合、より良好であることが観察された。
【0237】
高リスク患者及び65歳以上の患者は、一般的患者集団よりIMU-838からより実質的治療効果を経験した。
・臨床的効果(研究者の評価に基づいて)に達する確率75%は、プラセボ(FAS)と比較して、IMU-838治療高リスク患者[6]において3.8日促進された。
・臨床的効果(研究者の評価に基づいて)に達する確率75%[5]は、プラセボ(FAS)と比較して、IMU-838治療高齢患者(65歳以上)において4.8日促進された。
・高齢患者(65歳以上)の群では、IMU-838は、プラセボ(mFAS)と比較して、少なくとも2点WHOスコアにおいてより速い効果に寄与した。14日目、高齢患者の36.4%(N=8/22)は、IMU-838の治療後WHOスコアが2点改善を達成したが、高齢患者のほんの22.2%(N=4/18)は14日目にプラセボ治療後かかる改善を達成した。
【0238】
ウイルス負荷並びに生化学炎症及び疾患マーカー:
・SARS-CoV-2に対するIMU-838の抗ウイルス効果を、治療期間の終了時(14日目)及び試験の終了時(28日目)にウイルス力価により観察した。
・IMU-838の抗炎症効果を、プラセボと比較して、C反応性タンパク質(CRP)、血中の炎症に関する周知のマーカーのより効果的な減少に基づいて、IMU-838治療患者において観察した。
・Dダイマー、COVID-19に関する周知の予後疾患マーカーのより効果的な減少を、プラセボと比較して、IMU-838治療患者において観察した。
【0239】
IMU-838は、中等症のCOVID-19を罹患している入院患者において安全及び充分認容性があることが分かった。新しい又はより重篤な有害事象に関する一般的安全シグナルは、プラセボと比較して、この患者集団においてIMU-838に関して観察されなかった。加えて、重篤な有害事象及び治療中断に至る有害事象のIMU-838の割合は、プラセボと比較して、増加しなかった。治験において、プラセボ(12.6%)と比較して、IMU-838治療患者(7.1%)において強度が増強したCOVID-19関連有害事象もほとんど見られず、IMU-838は、COVID-19の血液の影響を増強しなかった。加えて、IMU-838は、プラセボと比較して、COVID-19患者において、感染及び侵襲の割合並びに肝臓のイベントの割合を増加しなかった。
【0240】
過剰活性化免疫細胞内のサイトカイン産生の遮断によるいわゆるサイトカインストームにおける免疫応答のオーバーシュートの阻害
IMU-838を用いたDHODH阻害の主要な利点は、総じて、DHODH阻害に対する特定の免疫細胞の感受性が、その細胞内代謝活性状態と相関し、したがって、免疫系の「正常」細胞に悪影響を与えないが、過剰活性化免疫細胞に対して選択的であることである。
【0241】
試験では、IMU-838は、過剰活性化免疫細胞のT細胞媒介サイトカイン産生を遮断することができた。IMU-838の動物試験では、IMU-838の活性部分の大用量で治療された動物は、骨髄に対する損傷効果を欠き、多くの伝統的免疫抑制薬で定期的に見られる非特異的抗増殖効果の欠如を支持することが分かった。
【0242】
COVID-19との関連で、この効果は、全免疫系を活動停止しないで、COVID-19の重症例において主要な合併症である加熱炎症応答(「サイトカインストーム」)を限定するために有用である。
【0243】
レムデシビルと併用したIMU-838のインビトロ抗ウイルス活性
IMU-838を、単独又はレムデシビルと併用したSARS-CoV-2に対するインビトロ抗ウイルス活性について試験した。ベロ76細胞を用いてアッセイを行い、試験培地は、2%FBS及びゲンタマイシンを含むMEMであった。
【0244】
ウイルスを試験培地中で調製して、5日以内に>80%CPEを得ることになる可能性のある最低MOIを得た。プレートを、下記化合物の添加後に感染させた。この試験のMOIは、0.002であった。
【0245】
化合物を、スポンサーから粉末状で受け取った。化合物をDMSOに溶解して、100mM減益を調製した。レムデシビルを、MedChem Expressから購入した。化合物を、10、5、又は1μMで試験した。各濃度を、単独又は他の化合物の各濃度と組み合わせて試験した。化合物を、80~100%コンフルエントな細胞を含む96ウェルプレートのウェルに添加した。プレートを、37±2℃、5%CO2でインキュベートした。
【0246】
ウイルス収量低下アッセイのため、各化合物濃度からの上澄液を感染後3日目(プールされた3ウェル)で集め、ウイルス力価を、ベロ76細胞のインキュベーション5日後、標準エンドポイント希釈CCID50アッセイ及びリード・ミュンヒ(1948)式を用いた力価算出を用いて定量した。
【0247】
結果:両化合物を含むウェルを含む薬物濃度の何れにおいても毒性は観察されなかった。併用治療の抗ウイルス結果を表5に示す。IMU-838は、SARS-CoV-2の力価を、10μM濃度において>1log10 CCID50減少したが、全ての他の濃度がウイルス力価を減少したわけではなかった。レムデシビルは、ウイルス力価を、10及び5μMの用量において>1log10 CCID50の減少において有効であった。IMU-838とレムデシビルとの組合せは、10μMのIMU-838濃度及び1μMのレムデシビル濃度において相乗効果を有すると思われ、この組合せは、検出レベル未満までウイルス力価を減少した。加えて、1μMのIMU-838は、5μMのレムデシビルとの付加的効果の可能性があると思われる。全体的に見て、SARS-CoV-2に感染されたベロ76細胞においてIMU-838とレムデシビルとの併用治療の有益な効果があると思われる。
【0248】
【表5】
ウイルス力価単位は、50%細胞培養感染量(CCID50)/mlである。
【0249】
より詳細な試験は、その後、Hahn et al.(Viruses 2020;12:1394)により最近発表され、同様な結果になった。
【国際調査報告】