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  • 特表-通過を許可するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】通過を許可するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20230522BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20230522BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B60W40/06
B60W30/10
G08G1/16 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564062
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2021055156
(87)【国際公開番号】W WO2021213715
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】102020111178.9
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ アクセル
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BB48
3D241DC38Z
3D241DC41Z
5H181AA01
5H181CC14
5H181FF27
5H181LL09
5H181LL14
(57)【要約】
本発明は、車両(1)の自動走行モードにおいてトンネル(2)の通過を許可するための方法に関する。本発明によれば、車両(1)の受動的な自動走行モードを伴う手動走行モードにおいて、トンネル(2)が車両(1)の自動走行モードにおける通過に適合するかが検証される。この検証中に、車両(1)の長手方向及び横方向の移動の制御命令がアクチュエータに対して生成されるものの、この制御命令がアクチュエータを使用して実行されない。また、この検証中に克服不能な状況がトンネル(2)内で検出されず、かつ生成された制御命令が、受動的な自動走行モードを伴う手動走行モードにおいて、車両ユーザが行なった介入に関して妥当である場合に、トンネル(2)が自動走行モードに適合すると評価される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の自動走行モードにおいてトンネル(2)の通過を許可するための方法であって、
前記車両(1)の受動的な自動走行モードを伴う手動走行モードにおいて、前記トンネル(2)が前記車両(1)の前記自動走行モードにおける通過に適合するかが検証され、
-前記検証中に、前記車両(1)の長手方向及び横方向の移動の制御命令がアクチュエータに対して生成されるものの、前記制御命令が前記アクチュエータを使用して実行されず、
-前記検証中に克服不能な状況が前記トンネル(2)内で検出されず、かつ生成された前記制御命令が、受動的な自動走行モードを伴う前記手動走行モードにおいて、車両ユーザが行なった介入に関して妥当である場合に、前記トンネル(2)が前記自動走行モードに適合すると評価される
ことを特徴とする、通過を許可するための方法。
【請求項2】
生成された前記制御命令が前記車両ユーザの前記介入と同じ前記車両(1)の応答を生じさせるかが判断され、更に、想定される偏差が規定の許容範囲内にあるかが判断される
ことを特徴とする、請求項1に記載の通過を許可するための方法。
【請求項3】
車線区分線(S)が存在しない状況、並びに/又は、前記トンネル(2)内の車線区分線(S)及び/若しくは物体が十分な水準の質で感知されない状況が検出される場合に、前記トンネル(2)が前記自動走行モードに適合しないと評価される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の通過を許可するための方法。
【請求項4】
前記自動走行モードに対する前記トンネル(2)の適合性又は不適合性が、前記車両(1)に接続された中央演算処理装置(3)に情報として伝送される
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の通過を許可するための方法。
【請求項5】
前記中央演算処理装置(3)を使用して伝送された前記情報が、前記自動走行モードに対する前記トンネル(2)の適合性又は不適合性に関して統計的に審査され、かつ評価される
ことを特徴とする、請求項4に記載の通過を許可するための方法。
【請求項6】
前記自動走行モードに対する前記トンネル(2)の適合性又は不適合性が、実行された頻度分析に基づいて判断される
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の通過を許可するための方法。
【請求項7】
前記トンネル(2)は、適合頻度が不適合頻度を規定量だけ上回る場合に、前記自動走行モードに適合すると評価される
ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の通過を許可するための方法。
【請求項8】
前記自動走行モードにおける通過のための前記トンネル(2)の適合性又は不適合性に関する情報が、前記中央演算処理装置(3)に接続された車両(1)で使用可能とされる
ことを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の通過を許可するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動走行モードにおいてトンネルの通過を許可するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許第10 2014 014 120(A1)号から、前方の走行経路上で車両を自律運転するための方法が公知である。この方法では、前方の走行経路における規定の経路距離のあいだ、以下の条件の1つ又は群が満たされる場合にのみ、車両の自律運転が許可される:車両の現在の車線の少なくとも片側に構造的境界が設けられている、車両の車線が最小車線幅を有している、周囲検出センサの範囲を著しく制限する起伏が存在しない、車線の数が変化しない、トンネルが存在しない、車道上に建築物が存在しない、高速道路のインターチェンジが存在しない、車両の車線の曲率半径が規定の限界値よりも大きい、交通障害がない、危険な状況に関する交通メッセージがない、道路工事が有ることに関する交通メッセージがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、車両の自動走行モードにおいてトンネルの通過を許可するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。
【0005】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
本発明に係る、車両の自動走行モードにおいてトンネルの通過を許可するための方法では、前記車両の受動的な自動走行モードを伴う手動走行モードにおいて、前記トンネルが前記車両の前記自動走行モードにおける通過に適合するかが検証される。そのために、前記検証中に、前記車両の長手方向及び横方向の移動の制御命令がアクチュエータに対して生成されるものの、前記制御命令が前記アクチュエータを使用して実行されない。また、前記検証中に克服不能な状況が前記トンネル内で検出されず、かつ生成された前記制御命令が、受動的な自動走行モードを伴う前記手動走行モードにおいて、車両ユーザが行なった介入に関して妥当である場合に、前記トンネルが前記自動走行モードに適合すると評価される。一方、そうでない場合には、前記トンネルが前記自動走行モードに適合しないと評価される。
【0007】
この記載において、自動走行モードとは、特に、車両ユーザによる介入なしで車両が動作する高度自動走行モードを意味する。このような高度自動走行モードにおいて、車両ユーザは、運転タスクを完全に車両に引き継いでいる。ただし、車両ユーザは、車両から引き継ぎ要求を受けた場合には運転タスクを再度引き継ぐ準備ができていなければならない。
【0008】
本方法を使用すれば、該当するトンネルが自動走行モードにおける通過に適合するか、ひいては自動走行モードの条件が満たされているかを判断できる。これにより、トンネル通過時の安全性を向上させることができ、トンネルが適合する場合には、そのトンネルを自動モードで通過可能である。
【0009】
特に、自動走行モードにおける通過のためのトンネルの適合性又は不適合性(適否)は、自動走行モードの機能を有する複数の車両で検証される。
【0010】
本方法の一実施形態では、生成された前記制御命令が前記車両ユーザの前記介入と同じ前記車両の応答を生じさせるかが判断され、更に、想定される偏差が規定の許容範囲内にあるかが判断される。自動走行モード用の受動的なシステムを伴う手動走行モードの状態では、制御命令を生成するためのアルゴリズムが継続するものの実行されない。このアルゴリズムが継続するため、自動走行モード用のシステムによる対処が想定されていない状況もまた検出される。
【0011】
本方法の発展形態において、車線区分線が存在しない状況、並びに/又は、前記トンネル内の車線区分線及び/若しくは物体が十分な水準の質で感知されない状況が検出される場合に、前記トンネルが前記自動走行モードに適合しないと評価される。これは、システムがこのような状況に対処できないためである。
【0012】
本方法の考えられる発展形態では、前記自動走行モードに対する前記トンネルの適合性又は不適合性が、前記車両に接続された中央演算処理装置に情報として伝送される。これにより、その情報を評価すること及び他の車両からの情報と比較することが可能となり、したがって、その情報を他の車両で使用可能とすることもできる。
【0013】
更なる実施形態では、前記中央演算処理装置が、伝送されたこのような情報を統計的に審査し、適合性又は不適合性に関する評価を行なう。ここで、受動的な自動走行モードを伴う手動走行モードにおいてトンネルを検証した全ての車両の伝送された情報は、中央演算処理装置に伝送される。すなわち、中央演算処理装置が、自動走行モードの複数の車両におけるトンネルの通過可否を特に評価する。
【0014】
特に、考えられる一実施形態では、前記自動走行モードに対する前記トンネルの適合性又は不適合性が、実行された頻度分析に基づいて判断される。自動走行モードに関してトンネルを検証した車両が増加するほど、適合性又は不適合性に関する結果がより有効となる。
【0015】
本方法の一変形例において、前記トンネルは、適合頻度が不適合頻度を規定量だけ上回る場合に、前記自動走行モードに適合すると評価される。規定量が大きいほど、自動走行モードに対するトンネルの適合性又は不適合性に関する有効性が高まる。このようにして、自動走行モードでトンネルを通過する際の安全性を高く又は低く分類できる。
【0016】
更なる変形例では、前記自動走行モードにおける通過のための前記トンネルの適合性又は不適合性に関する情報が、前記中央演算処理装置に接続された車両に提供されるため、トンネルを手動で通過するか又は自動走行モードで通過するかを車両ユーザが判断できる。
【0017】
以下、図面を参照して本発明の代表的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】トンネルに進入する車両の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
唯一の図は、トンネル2に進入する車両1を示している。
【0020】
車両1は、車両1が自身の運転タスクを全て遂行する自動走行モード用のシステムを有しており、更に、車両ユーザによって運転タスクが遂行される手動走行モードにおいても走行可能である。
【0021】
高度自動走行とも称される自動走行モードは、通常、このために認められた道路区間上でのみ許可される。最初に述べた「背景技術」から分かるように、一般にトンネル2が自動走行モードに対して未だ認められていないことは公知である。
【0022】
トンネル2が自動走行モードに対して通常許可されていない理由としては、位置特定用の衛星との接続不良によってトンネル2内で車両1の位置確認が不安定化すること、中央演算処理装置3との車両1の必要なデータ接続がトンネル2内で中断されるリスクがあること、トンネル壁2.1や構造的条件によって車両1の周辺センサシステムのセンサ信号、特にレーダを用いたセンサ信号に多重反射が生じたり車線区分線をセンサでほとんど又は全く認識できなかったりすることで周辺認識が不安定化すること等が挙げられる。
【0023】
車両1の自動走行モードに対してトンネル2を許可するために、以下に記載の方法が企図されている。特に、本方法では、トンネル2が自動走行モードにおける通過に適合することを事前に複数の車両1で確認した場合に、中央演算処理装置3を使用して、自動走行モードがトンネル2に対して許可される。
【0024】
自動走行モードに対するトンネル2の適合性の検証は、車両1が手動走行モード及び受動的な自動走行モードにおいてトンネル2を通過する場合に行なわれる。
【0025】
車両1のこのような状態で、車両1の長手方向及び横方向制御のアクチュエータに対する制御命令を生成するためのアルゴリズムは継続するが、これらの制御命令は、アクチュエータにおいて又はアクチュエータを使用して実行されない。このアルゴリズムが受動的な自動走行モードにおいて継続するため、自動走行モード用のシステムによる対処が想定されていない状況をシステム側で検出できる。そのような状況とは、例えば、車線区分線Sが存在しない状況、並びに/又は、トンネル2内の車線区分線S及び/又は別の物体を要求された水準の質でセンサにより感知できない状況である。
【0026】
同時に、手動走行モードにおけるトンネル2の通過中、車両1の長手方向及び横方向の誘導に関して車両ユーザが行なった介入が記録される。
【0027】
自動走行モード用のシステムがトンネル2の通過時に克服不能な状況を検出せず、かつトンネル2の手動による通過時に車両ユーザが行なった介入に関して制御命令が妥当である場合には、トンネル2が自動走行モードに適合すると評価される。
【0028】
ここで「妥当である」とは、制御命令が、実行されると仮定した場合に、車両ユーザが行なった介入と実質的に同じ応答を生じさせることを意味する。「実質的に同じ応答」という表現は、あらゆる偏差が規定の許容範囲内にあることを意味する。換言すれば、自動走行モード用のシステムは、所定の状況において、車両ユーザがたった今行なった行動と実質的に同じように行動するか否かを検証する。このようにして、システムは、車両ユーザが行なったのと実質的に同じ方法で所定の状況を処理するかを学習する。
【0029】
上に述べたように、トンネル2内に克服不能な状況が存在せず、かつ実行されない制御命令が車両ユーザの行なった介入に関して妥当であることをシステムが検出する場合には、トンネル2が適合すると評価される。そうでない場合には、トンネル2が自動走行モードに不適合であると評価される。適合性又は不適合性に関する情報は、トンネル2の通過後に中央演算処理装置3に伝送される。
【0030】
複数の車両1が自動走行モードに対するこのトンネル2の適合性又は不適合性に関する情報を中央演算処理装置3に伝送する場合は、中央演算処理装置3がトンネル2の適合性又は不適合性の統計的審査のための十分なデータベースを持つこととなる。
【0031】
中央演算処理装置3を使用して、特定のトンネル2について伝送された情報は統計的に審査(評価)され、使用可能な情報に応じて、トンネル2が自動走行モードに対して許可されるべきか又は自動走行モードに対して禁止されたままであるべきかが判断される。
【0032】
統計的審査は、情報に基づいて検出された適合頻度が、情報に基づいて検出された不適合頻度と比較される頻度分析を企図してもよい。
【0033】
適合頻度とは、ここでは、トンネル2が自動走行モードに適合すると評価する車両1からの情報に基づいて、中央演算処理装置3が決定した頻度と理解される。これに対応して、不適合頻度とは、トンネル2が自動走行モードに適合しないと評価する車両1からの情報に基づいて、中央演算処理装置3が決定した頻度と理解される。
【0034】
考えられる一実施形態では、適合頻度が不適合頻度を規定量だけ上回る場合に、中央演算処理装置3を使用してトンネル2が自動走行モードに対して許可される。そうでない場合には、トンネル2は、引き続き車両1の自動走行モードに対して禁止されたままとなる。
【0035】
例えば、中央演算処理装置3に接続された車両1には、自動走行モードにおける通過のためにトンネルの適合性又は不適合性に関する情報が提供されるため、該当する車両ユーザは、車両1のいずれの走行モードでトンネル2を通過するかを自身で判断できる。
図1
【国際調査報告】