(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(54)【発明の名称】印画紙
(51)【国際特許分類】
G03C 1/76 20060101AFI20230522BHJP
G03C 1/79 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G03C1/76
G03C1/79
G03C1/76 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564220
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2021057426
(87)【国際公開番号】W WO2021213762
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509077761
【氏名又は名称】フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】デア キンデレン,ヴィルヘルムス・ヨハネス・マルティヌス
(72)【発明者】
【氏名】デ ムンニク,マティス
(72)【発明者】
【氏名】テルメクツキー,デニス・イムレ・ルーベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ファン リンプト,エリザベス・マリア・ワルテルス
(57)【要約】
少なくとも0.7μmの平均表面粗さ(Sa)を有するベース層と、親水性コロイドバインダーおよびコロイダルシリカを含む最外層とを含む印画紙であって、
(i)最外層におけるコロイダルシリカと親水性コロイドバインダーとの重量比が0.05:1~0.28:1であり;そして
(ii)最外層中に存在するコロイダルシリカの量が8mg/m2~280mg/m2の範囲にある、
前記印画紙。
該印画紙は、「ノイズのない」フォトブックを作製するのに有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.7μmの平均表面粗さ(Sa)を有するベース層と、親水性コロイドバインダーおよびコロイダルシリカを含む最外層とを含む印画紙であって、
(i)最外層におけるコロイダルシリカと親水性コロイドバインダーとの重量比が0.05:1~0.28:1であり;そして
(ii)最外層中に存在するコロイダルシリカの量が8mg/m
2~280mg/m
2の範囲にある、
前記印画紙。
【請求項2】
ベース層が0.9~5μmの表面粗さ(Sa)を有する、請求項1に記載の印画紙。
【請求項3】
ベース層が、JIS Z8741の方法によって60度の角度で測定した場合に、50%未満の鏡面光沢を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の印画紙。
【請求項4】
ベース層が積層紙支持体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の印画紙。
【請求項5】
ベース層が紙基材およびポリマーを含み、該ポリマーが該紙に結合され、その上にテクスチャー処理された表面プロファイルを提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載の印画紙。
【請求項6】
コロイダルシリカが2~70nmの平均粒径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の印画紙。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のシルキー、ラスター、またはマット印画紙。
【請求項8】
少なくとも0.7μmの平均表面粗さ(Sa)を有するベース層および1以上の感光性エマルション層に組成物を施用することを含む、印画紙の作製方法であって、該組成物が、親水性コロイドバインダーおよびコロイダルシリカを0.05:1~0.28:1の重量比で含み;該組成物によって提供されるコロイダルシリカの量が、8mg/m
2~280g/m
2のコロイダルシリカの範囲にある、前記方法。
【請求項9】
組成物が、以下の式を満たす比率(R)で硬化剤および親水性コロイドバインダーをさらに含む、請求項8に記載の方法:
R=(Hmol/HCg)
[式中:
Rは、0.00013より大きく;
Hmolは、組成物中の硬化剤のモル数であり;そして
HCg は、組成物中の親水性コロイドバインダーのグラムでの重量である]。
【請求項10】
組成物が200m/分より速いコーティング速度でベース層に施用される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
組成物が、スライドコーターまたはカーテンコーターを用いてベース層に施用される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
組成物および少なくとも1つの感光性エマルション層を支持体に同時に施用する、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の印画紙を含む1枚以上の写真を含むアルバムブック。
【請求項14】
アルバムブックが閉ているときに写真が対面接触するように配置された少なくとも2枚の前記写真を含む、請求項13に記載のアルバムブック。
【請求項15】
間紙フォイルを含まない、請求項13または14に記載のアルバムブック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印画紙、その作製およびアルバムブックを作るための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、印画紙は、1以上の感光性化学物質層でコーティングされたベース層を含む。カラー写真撮影の場合、紙は、典型的には、フルカラー画像を提供するために、3つの感光性エマルション層(イエロー、マゼンタ、およびシアン)を、所望により他の層と共に含む。
【0003】
製造および保管の間、印画紙は、その最外層の固有の粘着性に起因して、張り付いてしまうという問題を有する可能性がある。
使用中、印画紙は、例えば、カメラフィルム上に得られた画像を使用して、またはデジタル画像を使用してその上に画像を作り出すために、制御された様式で露光される。つぎに、望ましい画像を現像し、得られた望ましい画像を担持する印画紙は、しばしば写真とよばれる。写真は、他の写真と一緒に「背中合わせ」に積み重ねられ、撮影者に手渡されるか、郵送される可能性がある。その後、写真(すなわち、望ましい画像を担持する印画紙)はアルバムブックに包含されることが非常に一般的であり、このアルバムブックで、写真は、向かい合ったページ上にある結果として「対面」様式で互いに接触する。この「対面」接触は、特にアルバムブックが高温および/または湿潤条件下で保管されるときに、問題を引き起こす可能性がある。写真は張り付く傾向があり、アルバムブックのページを開くときに損傷を与え、場合によっては、かけがえのない家族写真を台無しにしてしまう。
【0004】
アルバムブックにおいて写真が互いに張り付かないようにするための1つの方法は、写真の間にバリヤーとして軽い紙のインターフォイル(interfoil)を置くことである。しかしながら、これによりアルバムはより高価になり、インターフォイルは、損傷を受けやすく、2つの開いているページを一度に容易に見ることを妨げる。写真がインターフォイルに張り付く可能性もある。
【0005】
欧州特許第2619628号は、印画紙、特にアルバムブックまたは他の環境で保管された画像を担持する印画紙が張り付いてしまうという問題について対処している。
粗いベース層(すなわち、少なくとも0.7μmの平均表面粗さ(Sa))を含むフォトブックには、ページをめくる、曲げる、および/または動かすときに発生するノイズ(例えば、きしみ音)という問題がある。ノイズの問題は通常、ベース層が滑らかである場合(例えば、グロッシーなフォトブックを生産するために使用されるような)には発生しないが、粗いベース層を用いてシルク仕上げ、ラスター仕上げまたはマット仕上げを有するフォトブックを作製する場合、ページめくり中のノイズは顧客にとって気が散る、嫌なものになる可能性がある。本発明は、グロッシーでないフォトブックにおけるそのようなノイズの音量を低減するか、またはそれらを完全に排除するという課題に対処するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明に従って、少なくとも0.7μmの平均表面粗さ(Sa)を有するベース層と、親水性コロイドバインダーおよびコロイダルシリカを含む最外層とを含む印画紙であって、
(i)最外層におけるコロイダルシリカと親水性コロイドバインダーとの重量比が0.05~0.28であり;そして
(ii)最外層中に存在するコロイダルシリカの量が8mg/m2~280mg/m2の範囲にある、
前記印画紙を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
印画紙の成分は、画像が現像されたか否か、すなわち印画紙が使用されたか否かにある程度依存する。画像が印画紙上に現像される前に、印画紙は、典型的には、ベース層(例えば、ポリエステルまたは樹脂コート紙)と、1以上の感光性エマルション層(例えば、黄色、マゼンタ色またはシアン色を発生させる層)と、1以上の感光性エマルション層の上部の前記最外層とを含む。画像が現像された後、印画紙は、典型的には同じ成分を含むが、望ましい画像を現像するために制御された様式で露光されていて、感光性層がもはや感光性でない点が異なる。
【0009】
コロイダルシリカの平均粒径は、好ましくは2~70nm、より好ましくは2.5~9nm、特に3~7nmの範囲にある。これが好ましいのは、2nm未満の平均粒径を有するコロイダルシリカはコーティング溶液の粘度を上昇させる可能性があり、印画紙の製造時間が長くなるか、または高価な粘度降下剤をコーティング組成物に包含させる要件が生じるためである。
【0010】
最外層は、好ましくは10mg/m2~260mg/m2、より好ましくは40mg/m2~225mg/m2、特に約150mg/m2のコロイダルシリカを含む。
本発明の印画紙は、張り付く傾向が低いか、張り付く傾向がなく、例えばスライドコーターまたはカーテンコーターを用いて、200m/分を超える高速で好都合に作製することができる。
【0011】
本発明の最外層の機能は、フォトブック内の印画紙のページをめくる、曲げる、および/または動かすときに生じるノイズを低減することであるので、最外層は一般にハロゲン化銀を包含しない。
【0012】
コロイダルシリカは、実質的に二酸化ケイ素からなることが好ましい。所望により、コロイダルシリカは、微量成分として、アルミナまたはアルミン酸ナトリウムを、例えば二酸化ケイ素1g当たり0~0.1gの量で含有することができる。コロイダルシリカは、所望により、安定剤として、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムもしくはアンモニア、または有機塩基、例えばテトラエチルアンモニウム塩を含む。
【0013】
コロイダルシリカは、水または有機液体、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチルまたは酢酸ブチルなどの媒体中のシリカ微粒子のコロイド分散液の形態で使用することができる。
【0014】
本発明において好ましいのは、水環境におけるケイ酸塩ゾルまたはケイ酸ゾルの使用である。しかしながら、コロイダルシリカと親水性コロイドバインダーの重量比を計算する際に、他の成分(例えば、水、有機液体など)の重量は考慮に入れない。
【0015】
コロイダルシリカを含む市販品の例としては、H.C. StarckからのLevasilTM 300およびLevasilTM 500が挙げられる。製造業者のカタログによれば、これらの製品は、それぞれ9nmおよび6nmの平均粒径ならびにそれぞれ300g/m2および450g/m2の表面積を有するコロイダルシリカを含有する。BindzilTM 30/360を使用することもできる(7nm)。他の市販のコロイダルシリカとしては、Nyacol Nano Technologies,IncからのNexSilTM 5(6nm)およびNexSilTM 8(8nm)が挙げられる。コロイダルシリカは、必要に応じて表面処理することができる。
【0016】
好ましくは、前記最外層におけるコロイダルシリカと親水性コロイドバインダーとの重量比は、(0.06~0.10)対(0.13~0.27)である。
われわれは、最外層が、担持する画像の物理的外観を損なうことなく、フォトブックで使用したときにはるかにノイズの少ないシルク仕上げ、ラスター仕上げまたはマット仕上げを有する印画紙を提供することを見出した。さらに、上記コロイダルシリカ使用量をもたらすのに要する組成物の粘度は概して高剪断において十分に低いので、1以上の感光性エマルション層を担持するベース層に、多層コーティング法の一工程において、例えば、スライドコーターまたはカーテンコーターを使用して150m/分よりも速い速度で施用することができる。200m/分よりも速い速度(すなわち、例えば、300m/分または350m/分)さえ達成することが可能である。
【0017】
本発明の印画紙はまた、良好な書き込み性(writability)を有する。言い換えれば、紙は、インク、さらには鉛筆での後続のマーキングを受容する。親水性コロイドバインダーは、ゼラチンであるか、ゼラチンを含むことが好ましい。好ましいゼラチンとしては、酸処理ゼラチン、酸処理ゼラチンとアルカリ処理ゼラチンとを含む混合物、および所望により他の親水性バインダーが挙げられる。
【0018】
好ましい酸処理ゼラチンとしては、コラーゲンを塩酸などで処理することによって生産されるゼラチンが挙げられ、写真産業で用いられている典型的なアルカリ処理ゼラチンとは異なる。酸およびアルカリ処理ゼラチンの生産プロセスおよびその特性の詳細は、Arthus Veis, The Macromolecular Chemistry of Gelatin,187~217頁, Academic Press(1964)に記載されている。好ましい酸処理ゼラチンは約6.0~9.5のpHに等電点を有するが、アルカリ処理ゼラチンは典型的には約4.5~5.3のpHに等電点を有する。
【0019】
親水性コロイドバインダーは、好ましくは、酸処理ゼラチンと、酸処理ゼラチン以外のさらなる親水性バインダー、例えば、アルカリ処理ゼラチン、酵素処理ゼラチンまたはゼラチン誘導体とを含む。ゼラチン誘導体は、ゼラチン分子に含有される官能基を、単純な酸およびアルカリ以外の化学物質で処理および修飾することによって調製することができる。例えば、ゼラチン中に通常存在するアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を、そのような官能基と反応することができる基を有する化合物と反応させることができる。ゼラチン誘導体を作製するために、ポリマーまたは別の高分子量材料をゼラチンにグラフトさせてもよい。ゼラチン中の官能基と反応することができる基を有する化合物としては、例えば、例えば米国特許第2614928号に記載のイソシアネート、酸塩化物および酸無水物;米国特許第3118766号に記載の酸無水物;ブロモ酢酸;フェニルグリシジルエーテル;例えば米国特許第3132945号に記載のビニルスルホン化合物;例えば英国特許第861414号に記載のN-アリルビニルスルホンアミド;例えば米国特許第3186846号に記載のマレインイミド化合物;例えば米国特許第2594293号に記載のアクリロニトリル;例えば米国特許第3312553号に記載のポリアルキレンオキシド;エポキシ化合物;例えば米国特許第2763639号に記載の酸エステル;例えば英国特許第1033189号に記載のアルカンスルホン;などが挙げられる。
【0020】
さらに、適した親水性コロイドバインダーとしては、タンパク質、例えばコロイド状アルブミンおよびカゼイン;セルロール誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース;多糖類、例えば、寒天、アルギン酸ナトリウム、デキストラン、アラビアゴムおよびデンプン誘導体;ならびに、合成親水性コロイド、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリアクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸コポリマー、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミド;ならびに、それらの混合物および誘導体が挙げられる。必要に応じて、これらの親水性コロイドバインダーの2種以上を含む相溶性混合物を使用することができる。上記親水性コロイドバインダーの中でも、カルボキシル基またはその塩を有するゼラチン誘導体および合成高分子量材料が特に好ましい。
【0021】
処理ゼラチンと上記の他の親水性コロイドバインダーとの混合比率に特別な制約はないが、とりわけ良好な結果を得るために、親水性コロイドバインダーは、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも40重量%の酸処理ゼラチンを含む。親水性コロイドバインダーが少なくとも20重量%の酸処理ゼラチンを含み、約20重量%未満であり、アルカリ処理ゼラチン、酵素処理ゼラチンまたはゼラチン誘導体が親水性コロイドバインダーの一部として存在しない場合、基材に最外層を施用するために使用される組成物はとりわけ良好に硬化(固化)して、均一で滑らかにコーティングされた表面がもたらされる可能性が上昇する。
【0022】
前記最外層は、好ましくは0.2~1.5g/m2の親水性コロイドバインダーを含む。
本発明の印画紙は、好ましくは4~10g/m2、好ましくは5~8g/m2の親水性コロイドバインダーを含む。
【0023】
所望により、最外層は、1以上のさらなる構成成分、例えば、艶消し剤、硬化剤、潤滑剤、界面活性剤および/またはpH調整剤を含む。
適した艶消し剤の例としては、特定の有機化合物、例えば、水分散性ビニルポリマー、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルおよび/またはポリスチレン、ならびに特定の無機化合物、例えば、ハロゲン化銀、ストロンチウムバリウムスルフェート、酸化マグネシウムおよび/または酸化チタンが挙げられる。
【0024】
特に好ましい態様において、最外層はさらに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、特に3~10ミクロン(例えば4ミクロン)の平均径を有するPMMAを、好ましくは2~50mg/m2(例えば10mg/m2)の量で含む。
【0025】
潤滑剤として、例えば、ワックス、流動パラフィン、高級脂肪酸エステル、ポリフッ素化炭化水素またはその誘導体、ポリアルキルポリシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールポリシロキサンなどのシリコーンおよび/またはそのアルキレンオキシド付加物を使用することができる。
【0026】
一態様において、最外層は1以上の硬化剤を含む。そのような硬化剤は、最外層の物理的強度を高めるために包含させることができる。適した硬化剤の具体例としては、アルデヒド化合物、例えば、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド;ケトン化合物、例えば、ジアセチルおよびシクロペンタンジオン;反応性ハロゲンを含有する化合物、例えば、ビス(2-クロロエチル尿素)および2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン;米国特許第3288775号、同第2732303号、英国特許第974723号および同第1167207号に記載されている化合物;反応性オレフィン化合物、例えば、ジビニルスルホン、5-アセチル-1,3-ジアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンならびに米国特許第3635718号、同第3232763号および英国特許第994869号に記載されている化合物;N-メチロール化合物、例えば、N-ヒドロキシメチルフタルイミドならびに米国特許第2732316号および同第2586168号に記載されている化合物;イソシアネート、例えば、米国特許第3103437号に記載のもの;アジリジン化合物、例えば、米国特許第3017280号および同第2983611号に記載のもの;米国特許第2725294号および同第2725295号に記載の酸誘導体;カルボジイミド化合物、例えば、米国特許第3100704号に記載のもの;エポキシ化合物、例えば、米国特許第3091537号に記載のもの;イソオキサゾール化合物、例えば、米国特許第3321313号および同第3543292号に記載のもの;ハロカルボキシアルデヒド、例えばムコクロル酸;ジオキサン誘導体、例えば、ジヒドロキシジオキサンおよびジクロロジオキサン;ならびに、無機硬化剤、例えば、クロムミョウバンおよび硫酸ジルコニウムが挙げられる。さらに、上記化合物に代えて、アルカリ金属亜硫酸水素塩-アルデヒド付加物、ヒダントインのメチロール誘導体、および第一級脂肪族ニトロアルコールなどの硬化剤前駆体を用いることができる。とりわけ好ましい硬化剤は、1-オキシ-3,5-ジクロロ-s-トリアジンおよびその塩、例えばナトリウム塩である。
【0027】
全親水性コロイドバインダーに対する硬化剤の比率(R)は、以下の式を満たすことが好ましい:
R=(Hmol/HCg)
[式中:
Rは、0.00013より大きく;
Hmolは、硬化剤の全モル数であり;そして
HCg は、親水性コロイドバインダーのグラムでの重量である]。
【0028】
Rについての上記選好(preference)は、とりわけ最外層が硬化剤を含む場合に当てはまる。上記選好は最外層に関して表されているが、全体としての印画紙(すなわち、最外層だけでない)が、上記で定義した親水性コロイドバインダーに対する硬化剤の比率(R)を有することも好ましい。
【0029】
上記式において、親水性コロイドバインダーの重量は、100%固形分ベースでのグラム単位である。例えば、親水性コロイドバインダーが、好ましいものであるゼラチンである場合、グラムでの親水性コロイドバインダーの重量を計算するときに、バインダー中に存在する水の重量は包含されない。100%固形分ベースでの親水性コロイドバインダーの重量は、例えば、乾燥して水または有機溶媒を除去して濃度(strength)を見出し、その濃度と使用量を乗じることによって計算することができる。
【0030】
好ましくは、Rは0.00014~0.00018の値を有する。
Rが上記値を有する場合、得られる印画紙は、対面様式で一緒に保管された後、画像を著しく損なうことなく別の印画紙のシートから剥離される能力が改善されることによって恩恵を受けることが多い。われわれは、これを「改善された剥離挙動」とよぶ。
【0031】
界面活性剤も、個別に、またはそれらの混合物として、例えば、親水性コロイド状バインダー1g当たり約0.5~50mg、好ましくは1~20mgの量で、最外層中に包含されることができる。これらは一般に、コーティングむら等の問題の発生を防止するためのコーティング助剤として用いられるが、例えば、乳化および分散の改善、静電荷の形成の防止など、他の目的に用いられることもある。これらの界面活性剤は、例えばサポニンなどの天然界面活性剤;非イオン性界面活性剤、例えば、アルキレンオキシド、グリセロールおよびグリシドール非イオン性界面活性剤など;カチオン性界面活性剤、例えば、高級アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、ピリジニウムおよび他の複素環式オニウム塩、ホスホニウムおよびスルホニウム;酸基、例えば、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、硫酸エステルまたはリン酸エステル基などを含有するアニオン性界面活性剤;および両性界面活性剤、例えば、アミノ酸、アミノスルホン酸、またはアミノアルコールの硫酸エステルもしくはリン酸エステルなど;として分類することができる。
【0032】
使用できる界面活性剤は、例えば、米国特許第2271623号、同第2240472号、同第3441413号、同第3442654号、同第3475174号および同第3545974号、ドイツ特許出願(OLS)第1942665号および英国特許第1077317号および同第1198450号のほか、Ryohei Oda et al., Synthesis and Applications of Surface Active Agents, Maki Publisher(1964年)、A.M. Schwartz et al., Surface Active Agents, Interscience Publications In.(1958年)、およびJ.P. Sisley et al., Encyclopedia of Surface Active Agents, Vol. 2, Chemical Publishing Company(1964年)に記載されている。
【0033】
本発明の印画紙は、所望により以下の成分を含有し、下記の生産方法により作製することができる。
感光性エマルション層(1以上)のためのハロゲン化銀エマルションは、通常、水溶性銀塩(硝酸銀など)の溶液を、水溶性ハロゲン化物(臭化カリウムまたは塩化ナトリウムなど)の溶液と一緒に、ゼラチンなどの水溶性高分子量材料の溶液の存在下で混合することによって調製される。使用することができるハロゲン化銀としては、塩化銀、臭化銀、ならびに塩臭化銀、臭ヨウ化銀または塩臭ヨウ化銀などの混合ハロゲン化銀が挙げられる。ハロゲン化銀粒子は、従来の方法を用いて調製することができる。言うまでもなく、粒子は、いわゆるシングルまたはダブルジェット法、制御ダブルジェット法などを用いて有利に調製することができる。さらに、別個にに調製された2以上のハロゲン化銀写真エマルションを、必要に応じて混合することができる。
【0034】
ハロゲン化銀粒子の結晶構造は、所望により粒子全体にわたって均一であることができ、内部および外部が異なる層状構造を有することができ、または英国特許第635841号および米国特許622318号に記載されているような、いわゆる変換(conversion)タイプのものであることができる。また、ハロゲン化銀は、潜像が主に粒子の表面に形成されるタイプのものであることができ、または潜像が粒子の内部に形成されるタイプのものであることができる。
【0035】
上記写真エマルションは、例えば、C.E.K. Mees & T.H. James, The Theory of the Photographic Process, 3rd Ed., Macmillan, New York(1966年);P. Grafkides, Chimie Photographique, Paul Montel, Paris(1957年);などに記載されており、アンモニアプロセス、中性プロセスまたは酸性プロセスなど通常使用されるさまざまな方法を用いて調製することができる。
【0036】
特に好ましいのは、米国特許第6949334号において調製および記載されているようなハロゲン化銀粒子である。
ハロゲン化銀粒子は、形成後、水で洗浄して副生成物として生じる水溶性塩(例えば、硝酸銀および臭化カリウムを用いて臭化銀を調製する場合には硝酸カリウム)をシステムから除去した後、化学増感剤、例えばチオ硫酸ナトリウム、N,N,N’-トリメチルチオ尿素、チオシアン酸金(I)錯体、チオ硫酸金(I)錯体、塩化第一スズまたはヘキサメチレンテトラミンの存在下で熱処理して、粒子を粗大化させることなく感度を高めることができる。従来の増感法は、上記MeesおよびJames、ならびに上記Grafkidesに記載されている。
【0037】
ハロゲン化銀のビヒクルとして使用することができる親水性コロイドとしては、ゼラチン、コロイド状アルブミン、カゼイン、セルロール誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、多糖類、例えば、寒天、アルギン酸ナトリウムまたはデンプン誘導体、および合成親水性コロイド、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリアクリル酸コポリマーまたはポリアクリルアミド、およびそれらの誘導体、およびそれらの部分的加水分解生成物が挙げられる。必要に応じて、これらの親水性コロイドの2種以上の相溶性混合物を使用することができる。上記親水性コロイドのうち、ゼラチンがもっとも一般的に使用されるが、ゼラチンは、部分的または完全に、合成高分子量材料で置き換えることができる。さらに、ゼラチンは、例えば上記のように、いわゆるゼラチン誘導体で置き換えることができる。
【0038】
本発明で用いることができる写真エマルション層(1以上)および他の層において、水分散性ビニル化合物ポリマーのラテックスなどの合成ポリマー化合物、とりわけ、写真材料の寸法安定性を向上させる化合物を、それ自体として、または混合物(例えば、異なるポリマーの)として、または透水性を示す親水性コロイドと組み合わせて、組み込むことができる。多くのそのようなポリマーが公知がであり、例えば、米国特許第2375005号、同第3607290号および同第3645740号、英国特許第1186699号および同第1307373号などに記載されている。これらのポリマーのうち、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、メタクリル酸、スルホアルキルアクリレート、スルホアルキルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、アルコキシアルキルアクリレート、アルコキシメタクリレート、スチレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸および無水イタコン酸のコポリマーまたはホモポリマーが、一般に使用される。必要に応じて、このようなビニル化合物を親水性保護コロイド高分子量材料の存在下で乳化重合させることによって調製される、これらのビニル化合物のいわゆるグラフト型乳化重合ラテックスを使用することができる。
【0039】
本発明の印画紙は一般に、最外層とベース層との間に1以上の感光性ハロゲン化銀エマルション層を含有する。ハロゲン化銀エマルション層(1以上)は、従来の方法で増感させることができる。適した化学増感剤としては、例えば、金化合物、例えば、米国特許第2399083号、同第2540085号、同第2597856号、同第2597915号、および同第6949334号に記載されているような塩化金酸塩または三塩化金など;貴金属の塩、例えば、米国特許第2448060号、同第2540086号、同第2566245号、同第2566263号、同第2598079号および同第6949334号に記載されているような白金、パラジウム、イリジウム、ロジウムまたはルテニウムなどの塩、ならびに、例えば米国特許第1574,944号、同第2410689号、同第3189458号、および同第3501313号に記載されているように、銀塩と反応することによって硫化銀を形成することができる硫黄化合物;例えば米国特許第2487850号および同第2518698号に記載されているような第一スズ塩;アミン;ならびに他の還元化合物が挙げられる。好ましい技術は、米国特許第6949334号の12頁に一般式(i)を用いて記載されているような金増感、硫化物および/またはイリジウム増感である。金増感の場合、望ましい場合は、さまざまな無機金化合物または無機配位子を有する金(I)錯体、および有機配位子を有する金(I)化合物を用いることができる。
【0040】
無機金化合物に関しては、例えば、クロロ金酸またはその塩を用いることができる。無機配位子を有する金(I)錯体では、例えば、カリウム金(I)ジチオシアネートなどの金ジチオシアネート化合物、および三ナトリウム金(I)ジチオスルフェートなどの金ジチオスルフェート化合物を用いることができる。
【0041】
さらに、米国特許第3503749号に記載されている金(I)チオレート化合物、特開平8-69074号,特開平8-69075号、および特開平9-269554号、米国特許第5620841号、同第5912112号、同第5620841号、同第5939245号、および同第5912111号に記載されている金化合物も使用することができる。
【0042】
印画紙の生産中、保管中、および処理中の感度低下および曇りの発生を防止するために、さまざまな化合物を印画紙のエマルション層(1以上)に添加することができる。そのような化合物の多くは公知であり、例えば、4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a、7-テトラアザインデン、3-メチルベンゾチアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、5-アリールアミノ-1,2,3,4-チアトリアゾール、ならびに多数の複素環式化合物、水銀含有化合物、メルカプト化合物、金属塩などである。用いることができるそのような化合物の例は、上記C.E.K. Mees & T.H. Jamesおよびそこに引用された元の参考文献、さらには以下の特許文献:米国特許第1758576号、同第2110178号、同第2131038号、同第2173628号、および英国特許第893428号、同第403789号、同第1173609号、および同第1200188号および欧州特許第447647号に記載されている。ハロゲン化銀エマルションの保存性を向上させるために特に好ましいものとして、以下の化合物が本発明でも好ましく用いられる:特開平11-109576号に記載のヒドロキサム酸誘導体、特開平11-327094号に記載の、カルボニル基に隣接する二重結合の両末端がアミノ基またはヒドロキシル基で置換されている環状ケトン(とりわけ、一般式(S1)で表されるもの;段落番号0036~0071の記載は、本明細書に組み込むことができる)、特開平11-143011号に記載のスルホ置換カテコールまたはヒドロキノン(例えば、4,5-ジヒドロキシ-1,3-ベンゼンジスルホン酸、2,5-ヒドロキシ1,4-ベンゼンジスルホン酸、3,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5-トリヒドロキシベンゼンスルホン酸およびこれらの塩)、米国特許第5556741号の明細書において一般式(A)で表されるヒドロキシルアミン(米国特許第556741号の明細書の第4欄、56行~第11欄、22行の記載は、本発明においても好ましく適用することができ、本出願の明細書の一部として組み込むことができる)、および特開平11-102045号において一般式(I)~(III)で表される水溶性還元剤。
【0043】
感光性エマルション層(1以上)は、必要に応じて、シアニン、メロシアニンまたはカルボシアニンなどのシアニン染料を、個別に、もしくは混合して、または例えばスチリル染料と組み合わせて用いて、スペクトル的に増感または超増感させることができる。そのような色増感技術は、当技術分野で公知である。
【0044】
感光性エマルション層は、望ましい場合、硬化剤を用いて硬化することができる。適した硬化剤の例は上記である。
エマルション層(1以上)は、所望により、個別に、または混合して、界面活性剤を含有する。
【0045】
好ましくは、ベース層は、シルキー、ラスター、またはマットな外観を有する。
ベース層は、JIS Z8741の方法によって60度の角度で測定した場合、好ましくは60%未満、より好ましくは20~50%の鏡面光沢を有する。
【0046】
好ましくは、ベース層は、紙、特に積層紙を含む。ベース層は、構造化された積層紙を含むことが好ましい。
ベース層は、複数のピットおよび/またはピークを含むことが好ましい。このようにして、ベース層はグロッシーでない外観(例えば、シルキー、ラスター、またはマットな外観)を有する。適したベース層(例えば、望ましい鏡面光沢、粗さ、ピット、構造または積層を有するベース層)は、例えば、紙ベース層上にポリマーを押出コーティングすることによって得ることができる。典型的には顆粒、粒子または粉末の形態にある押出材料(すなわち、ポリマー)を、押出機中で圧縮、溶融および均質化することができる。次いで、溶融押出材料を、紙ウエブの幅に適合させた押出ダイによって紙基材に施用することができる。紙は、ポリマーとの良好な結合強度を達成するために前処理してもよい。火炎前処理、コロナ処理、オゾンシャワーまたはプライマー施用も、紙へのポリマーの付着を改善するために使用することができる。その後、押し出されたポリマーフィルムは、チルロールによって冷却することができる。このチルロールの表面プロファイルも、得られるベース層の表面に著しい影響を及ぼし、望ましい粗さ、鏡面光沢などを有するベース層を得るために、粗い表面プロファイルを有する表面ローラーを使用することができる。
【0047】
ベース層の表面の構造は、望ましい表面プロファイルを有するチルロールを単に選択することによって、制御された方法で「高度に構造化された」(すなわち、光沢が少なく粗さが大きい)ものにすることができる。得られるベース層の構造化表面は、チルロールの表面の鏡像である。
【0048】
粗い表面プロファイルを有するチルロールは、チルロール本体をクロムめっきした後、クロム表面をサンドブラストして表面粗さを作り出すことによってもたらすことができる。これにより、チルロールの表面上に、通常は非常に微細な多数の凹部が形成される。サンドブラスト材料のタイプおよびサイズ、ならびに処理時間に応じて、シルキー、ラスター、またはマットな表面をもたらすことができる。
【0049】
したがって、ベース層は、好ましくは紙基材およびポリマーを含み、該ポリマーは、紙に結合され、その上にテクスチャー処理された表面プロファイルを提供する。
ベース層は、好ましくは0.9~5μm、より好ましくは1.0~4μm、特に1.1~3.9μmの平均表面粗さ(Sa)を有する。
【0050】
好ましいベース層は、グロッシーな支持体から誘導されたグロッシーな印画紙ではなく、一般に、フォトアルバム内でめくったときにノイズを発生させず、例えば、シルク、ラスターまたはマット仕上げを有する。ベース層には、所望により、アルファ-オレフィン、とりわけ2~10個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンのポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテンコポリマーなどか、または、他の高分子量材料への付着性を改善し、印刷適性を改善するために、表面を粗くしてある合成樹脂フィルムが、コーティングまたは積層されている。必要に応じて、紙上でのポリマーの積層は、同時押出技術を用いて、中間ポリマー層中に顔料を有する多層を介して行われる。
【0051】
好ましいベース層は、所望により片面または両面にポリエチレン樹脂が積層された写真グレードのベース紙であり、上面の樹脂と裏面の樹脂重量の比は、好ましくは0.70:1~1.30:1、さらにより好ましくは0.85:1~1.15:1の範囲である。
【0052】
ベース層は、好ましくは70~250ミクロン(例えば、130または147または160または227ミクロン)の厚さを有する。
ベース層は、必要に応じて、染料または顔料でさらに着色することができる。
【0053】
ベース層と感光性エマルション層(1以上)との間の付着が不十分である場合、これらの要素の両方に対して良好な付着性を有する層を下塗り層として採用することができる。ベース層の付着特性をさらに向上させるために、ベース層の表面にコロナ放電、紫外線照射、オゾン処理、火炎処理などの前処理を施すことができる。
【0054】
必要とされる表面粗さSa(μm)および標準偏差SD(μm)を有するSchoellerから市販されている紙ベース層の例としては、以下の表1に記載するラスター紙、マット紙およびピラミッド紙(Schoellerから得られる)が挙げられる:
【0055】
【0056】
表1において:
Saは、μmでの表面粗さを意味する。
積層上面(g/m2)は、ベース紙上面上に積層されたg/m2でのポリエチレンの量を意味する。
【0057】
積層裏面(g/m2)は、ベース紙上面上に積層されたg/m2でのポリエチレンの量を意味する。
ベース層の平均表面粗さ(Sa)は、ISO 25178-1-2016の方法により、例えば干渉法を用いて測定することができる。Saは、測定点の間にある視野領域のx、y平面におけるすべての高さの値zの絶対値の算術平均を計算することによって決定することができる。それぞれの場合において、3つの測定を実施することができ、個々の測定の平均値はμmで与えられる。平均表面粗さ(Sa)の測定に適した機器は、「Vision 64」ソフトウェアと組み合わせたBruker Contour GT-K 3Dプロフィロメーターである。紙ベース層の2mm×2mmの領域を、10.9倍の倍率で、所望により以下の実施例に記載する条件を使用して、観察することができる。
【0058】
最外層および感光性エマルション層(1以上)は、浸漬コーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、および押出コーティングを含む、任意の適した技術によってベース層に施用することができる。必要に応じて、2以上の層を、米国特許第2761791号、同第3508947号、同第2941898号、および同第3526528号に記載されている技術を用いて同時にコーティングすることができる。
【0059】
最外層および下にある感光性エマルション層(1以上)は、好ましくはスライドコーターまたはカーテンコーターを使用して、好ましくは200m/分より速いコーティング速度で、ベース層に同時に施用することが好ましい。
【0060】
印画紙は、所望により、中間層、フィルター層、下塗り層、ハレーション防止層などをさらに含む。
本発明の印画紙は、露光後、カラー画像を形成するために現像して、しばしば写真とよばれるものをもたらすことができる。現像処理はいくつかの工程(例えば、漂白、定着、漂白定着、安定化、洗浄などの組み合わせ)を包含することができ、約20℃未満の温度、またはより高い温度、および望ましい場合は、約30℃超、好ましくは約32℃~60℃で行うことができる。この場合も、これらの工程は必ずしも同じ温度で実施する必要はなく、より高い温度またはより低い温度で実施することができる。
【0061】
カラー現像液は、酸化生成物が発色剤と反応して染料を形成する化合物を含有する、すなわち、現像液としてp-フェニレンジアミン、例えばN,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン、N,N-ジエチル-3-メチル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-メチル-N-エチル-N-メタンスルホンアミドエチルアニリン、4-アミノ-3-メチル-N-エチル-N-ベータ-ヒドロキシエチルアニリンおよびN-エチル-N-ベータ-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、またはそれらの塩、例えば、それらの塩酸塩、硫酸塩および亜硫酸塩を含有する、アルカリ性水溶液である。該アルカリ性水溶液は、約8より高い、好ましくは9~12のpHを有する。米国特許第2193015号および同第2592364号に記載されているような化合物は、現像主薬としても使用することができる。カラー現像液は、上記現像主薬に加えて、硫酸ナトリウムなどの塩;pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム;緩衝剤、例えば、酢酸もしくはホウ酸などの酸、またはその塩;ならびに、現像促進剤、例えば、米国特許第2648604号および同第3671247号に記載のさまざまなピリジニウム化合物、カチオン性化合物、硝酸カリウムおよび硝酸ナトリウム、米国特許第2533990号、同第2577127号および同第2950970号に記載のポリエチレングリコール縮合物およびその誘導体、英国特許第1020033号および同第1020032号に記載の化合物で代表されるポリチオエーテルなどの非イオン性化合物、米国特許第3068097号に記載の化合物で代表される亜硫酸エステル基を含有するポリマー化合物、ならびにピリジンまたはエタノールアミンなどの有機アミン、ベンジルアルコール、ヒドラジンなど;を含有することができる。さらに、カラー現像液は、防曇剤、例えば、米国特許第2496940号および同第2656271号に記載のアルカリ金属臭化物、アルカリ金属ヨウ化物、ニトロベンゾイミダゾールのほか、メルカプトベンゾイミダゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、米国特許第3113864号、同第3342596号、同第3295976号、同第3615522号および同第3597199号に記載の迅速処理のための化合物、英国特許第972211号に記載のチオスルホニル化合物、フェナジン-N-オキシド、Manual of Scientific Photography,Vol.2,29~47頁に記載の防曇剤など;米国特許第3161513号および同第3161514号ならびに英国特許第1030442号、同第1144481号および同第1251558号に記載の汚染またはスラッジ防止剤;米国特許第3536487号に記載のインターイメージ効果の促進剤;ならびに、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、塩酸ヒドロキシルアミンまたはホルムアルデヒド-亜硫酸アルカノールアミン付加物などの酸化防止剤を含有することができる。
【0062】
上記処理工程のそれぞれについて例示した添加剤のすべておよびその使用量は、カラー写真処理方法の技術分野において公知である。
カラー現像後、印画紙は、通常、漂白され、定着される。漂白と定着を組み合わせてもよく、したがって、漂白定着浴を使用してもよい。多くの化合物を漂白剤として用いることができるが、これらの化合物のうち、一般に、フェリシアン化物塩、重クロム酸塩、水溶性鉄(III)塩、水溶性コバルト(III)塩、水溶性銅(II)塩、水溶性キノン、ニトロソフェノール、有機酸と鉄(III)、コバルト(III)または銅(II)などの多価カチオンとの錯塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸またはN-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、ジグリコール酸、またはジチオグリコール酸、2,6-ジピコリン酸銅錯塩などのアミノポリカルボン酸の金属錯塩)、アルキルペルオキシ酸、過硫酸塩、過マンガン酸塩または過酸化水素などのペルオキシ酸、塩酸塩、塩素、臭素などが、個別に、または適切な組み合わせで使用される。これに加えて、米国特許第3042520号および同第3241966等などに記載されている漂白促進剤も用いることができる。
【0063】
定着工程では、任意の公知の定着液を使用することができる。例えば、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウムまたはチオ硫酸カリウムを、約50~200g/リットルの量で定着剤として用いることができ、加えて、亜硫酸塩またはメタ重亜硫酸塩などの安定剤、カリウムミョウバンなどの硬化剤、酢酸塩またはホウ酸塩などのpH緩衝剤などが、定着液中に存在することができる。定着液は、約3~12のpH、通常は約3~8のpHを有する。
【0064】
適した漂白剤、定着剤および漂白定着浴は、例えば米国特許第3582322号に記載されている。
米国特許第2515121号、同第2518686号、および同第3140177号に記載されているような技術に従って、画像安定化浴を用いることもできる。
【0065】
米国特許第6949334号に記載されているように、レーザー(デジタル)走査による印画紙の露光後12秒以内の短い潜像時間において低い補給速度を利用するような、適切な処理工程も使用することができる。
【0066】
本発明の第2の観点に従って、少なくとも0.7μmの平均表面粗さ(Sa)を有するベース層および1以上の感光性エマルション層に組成物を施用することを含む、印画紙の作製方法であって、該組成物が、親水性コロイドバインダーおよびコロイダルシリカを0.05:1~0.28:1の重量比で含み;該組成物によって提供されるコロイダルシリカの量が、8mg/m2~280g/m2のコロイダルシリカの範囲にある、前記方法を提供する。
【0067】
この方法において、組成物は、好ましくは200m/分より速い、より好ましくは300m/分より速いコーティング速度で、もっとも外側の感光性エマルション層に施用される。
【0068】
組成物は、スライドコーターまたはカーテンコーターを使用して、もっとも外側の感光性エマルション層に施用することが好ましい。好ましい態様では、組成物および少なくとも1つの感光性エマルション層(好ましくは、少なくとも3つの感光性エマルション層)を、所望により上記組成物(最外層を形成するもの)と一緒に、同時にベース層に施用する。
【0069】
組成物は、好ましくは、液体媒体、0.05:1~0.28:1(好ましくは0.06~0.10)対(0.13~0.27)の重量比の親水性コロイドバインダーおよびコロイダルシリカを含み、好ましくは、該コロイダルシリカは2.5~9nmの平均粒径を有する。典型的な液体媒体としては、水、および水と1以上の水混和性有機溶媒とを含む混合物が挙げられる。
【0070】
組成物は、20℃において好ましくは30~75cP、より好ましくは40~60cPの粘度を有する。
一態様において、印画紙はさらに、以下の式を満たす比率(R)で硬化剤および親水性コロイドバインダーを含む:
R=(Hmol/HCg)
[式中:
Rは、0.00013より大きく;
Hmolは、印画紙中の硬化剤の全モル数であり;そして
HCg は、印画紙中の親水性コロイドバインダーのグラムでの重量である]。
【0071】
本方法はさらに、組成物をベース層に施用した後に組成物を乾燥させる工程を含むことが好ましい。
本発明の第3の観点に従って、本発明の第1の観点に従った印画紙を含む1枚以上の写真を含むアルバムブックを提供する。
【0072】
本発明の利点を十分に利用するために、アルバムブックは、アルバムブックが閉じているときに写真が対面接触するように配置された少なくとも2枚の前記写真を含むことが好ましい。通常、写真の面を分離する間紙フォイルを包含する必要はないが、望ましい場合は、そのような間紙フォイルを包含させてもよい。
【実施例】
【0073】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに説明する。本明細書において別段の指示がない限り、すべての部、パーセント、比率などは重量基準である。
実施例において、ベース層の平均表面粗さ(Sa)は、以下のように設定された「Vision 64」ソフトウェアと組み合わせたBruker Contour GT-K 3Dプロフィロメーターを使用して測定した(Ptコーティングは必要なかった):
【0074】
【0075】
平均表面粗さ(Sa)は、上記干渉計およびソフトウエアを用いたフィルタリングによって決定される平均粗さ(μm単位)を意味する。
実施例で使用したベース層は、以下の表2に記載する特性を有していた:
【0076】
【0077】
表2において、Sa、積層上面(g/m2)および積層裏面(g/m2)は、表1に関連して上記した意味を有する。ベース層はすべて、表2の第1および第3列に示した名称でSchoellerから得た。
【0078】
以下の実験では、少なくとも0.7μmの平均表面粗さ(Sa)を有するベース層を「粗い」とみなした。
ノイズの定量化(ノイズ試験)
きしみ音の試験は、以下のようにして行った:
きしみ音の強度は、相対運動における動摩擦係数(COF)の振幅と直接的な関連を有する。
【0079】
このCOFは、摩擦試験機(Thwing-Albert FP-2260)を用いて測定した。
寸法100mm×250mmの第1の被験印画紙片を平面上に置いた。質量0.4Kg、寸法6.4cm×6.4cmの正方形基底で、底面に第2の印画紙片を有する重りを、第1の印画紙片に沿って10mm/分の速度で引きずった。最初の20mmは主に静止摩擦が支配的であり、その後、20mm以降の定常運動は動摩擦係数が支配的であった。したがって、第1の印画紙片(重りの底部に取り付けられている)および第2の印画紙片は、対面接触していた。生じたノイズは動摩擦係数の振幅に関連しており、これは、標準偏差に直接関連する。
【0080】
0.06を超える標準偏差を、「ノイズがある」または「きしむ」とみなした。以下の表4において、0の値は不合格(すなわち、0.06を超える標準偏差に起因してノイズがある)を示し、1の値は合格(すなわち、0.06以下の標準偏差に起因してノイズがない)を示す。
ブロッキング試験評価
以下のブロッキング試験によって、さまざまな印画紙が張り付く程度を評価した。
【0081】
現像された印画紙の試料をそれぞれ3.5cm×3.5cmの正方形に切断し、各現像された印画紙の2つの正方形を互いに重ね合わせた(対面)。200gの重りを印画紙の2つの正方形の上に置き、52℃、相対湿度85%に調整された部屋で24時間保管した。その後、重りをそのままにして、印画紙の正方形を、25℃、相対湿度60%に調整された部屋に1時間置いた。これらの現像された印画紙の正方形から、ブロッキング(すなわち、2つの対面している正方形が張り付いている程度)を以下の手順によって評価した:
現像された印画紙の2つの正方形を引き離し、接触していた面に対する損傷のレベルを、5をもっとも重い損傷、1を検出可能な損傷ではないとして、以下のように採点した:
5: 重度の損傷:現像された印画紙のベース層は完全に裂けて、まったく許容できないレベルの損傷が生じた。
4: 損傷:現像された印画紙のベース層の約50%が裂け、エマルション層は損傷して、非常に不良で許容できない結果が得られた。
3: 現像された印画紙のベース層は、裂けていなかった。しかしながら、エマルション層は可視的な損傷を受け、不十分で許容できない結果が得られた。
2: 現像された印画紙のベース層は、裂けていなかった。エマルション損傷に対する損傷は肉眼では検出できなかったが、顕微鏡を用いると可視であった。これは、良好な結果であるとみなした。
1: 現像された印画紙のベース層は、顕微鏡を使用しても、裂けておらず、エマルション層に対する損傷は検出されなかった。これは、非常に良好な結果であるとみなした。
実施例
上記表2に記載の4つのベース層(LR-ピラミッド、LR-ラスター、LR-マットおよびLR-グロッシー、すべてSchoeller製)を、それぞれ、1工程で、300m/分の速度で操作されるスライドコーターを使用して、7つのエマルション層でコーティングした。最初の6つのエマルション層は各場合で同一であり、以下に記載するとおりであった。しかしながら、最外(第7)層は、本発明による最外層を含む印画紙の性能を、特許請求の範囲の範囲外にある比較印画紙と比較するために、以下の表3に記載するように変動させた。
【0082】
実施例および比較例で使用したシリカは、H.C.Starckから商品名LevasilTMで得たコロイダルシリカであった。
実施例および比較例で使用した硬化剤は、ナトリウム1-オキシ-3,5-ジクロロ-s-トリアジンである。
【0083】
以下の染料(括弧内はコーティング量)を、示されている場合は層に包含させた。
【0084】
【0085】
層の構成
各層の組成を以下に示す。数字はコーティング量(g/m2)を示す。ハロゲン化銀エマルションの場合、コーティング量は銀換算である。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
第7層(最外層)
56種の組成物を、以下の表3に示す構成成分を混合することによって調製した(すなわち、8つの組成物A~Hが、それぞれ独立して、最終行に示す7つのコロイダルシリカのうちの1つを含有し、合計で8×7=56種の組成物になる)。次いで、これら56種の組成物を、得られる最外層が乾燥後に以下の表4に示す量の親水性コロイドバインダーおよびコロイダルシリカ(g/m2単位)を含むように、ベース層のそれぞれの上の上記第6層に施用した。したがって、最外層はそれぞれ、3、9、12、17、34、70または100nmの平均粒径を有するコロイダルシリカを含んでいた。組成物は、40℃で9.5のpHを有していた。
【0093】
【0094】
結果
表3に記載の56種の組成物から誘導された最外層を含むさまざまな印画紙が、フォトブックにおいてめくったとき、曲げたとき、および/または動かしたときにノイズを生じた程度を、上記で「ノイズ試験」として記載した試験において評価した。以下の表4~9に結果を示す。1は「ノイズがない」を示し、0は「ノイズがある」を示す:
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
ブロッキング試験の結果
ブロッキング試験の結果を上記のように1~5で採点した。1はもっとも良い結果(印画紙は損傷しなかった)で、5はもっとも悪い結果である:
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
本明細書で使用した化合物の構造式を以下に提供する:
(ExY-1):黄色発色剤
【0103】
【0104】
(ExM)マゼンタ発色剤
(1)、(2)および(3)の40:40:20(モル基準)混合物:
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【国際調査報告】