(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】3D組織培養用の埋め込み電極を備えた微生物生理学的プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20230523BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20230523BHJP
C12N 5/077 20100101ALN20230523BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20230523BHJP
C12N 5/0793 20100101ALN20230523BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20230523BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20230523BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20230523BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20230523BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M1/42
C12N5/077
C12N5/078
C12N5/0793
C12N5/09
C12N5/0775
C12N5/074
C12N5/0735
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547275
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020017195
(87)【国際公開番号】W WO2021158233
(87)【国際公開日】2021-08-12
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522308163
【氏名又は名称】バロ ヘルス,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522308174
【氏名又は名称】ラディシック,ミリカ
(71)【出願人】
【識別番号】522308185
【氏名又は名称】チャン,ボーヤン
(71)【出願人】
【識別番号】522308196
【氏名又は名称】ジャオ,イム
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラディシック,ミリカ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,イム
(72)【発明者】
【氏名】イエガー,キース
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG10
4B029GA03
4B029GB10
4B065AA90X
4B065BC46
4B065BC50
4B065CA60
(57)【要約】
本明細書に記載の実施形態は、一般的にインビトロで3D組織を成長、維持、および/または使用するための埋め込み電極を有するデバイス、装置、およびシステムに関する。本明細書に記載のデバイス、装置、およびシステムは、スケーラブルで自動化された組織刺激を与えることができる。
【選択図】
図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に少なくとも部分的に埋め込まれた少なくとも1つの電極対であって、前記電極対はギャップによって分離される第1の電極および第2の電極を有する、少なくとも1つの電極対と、
前記基材上に底部、前記第1の電極と接触する第1の端部、および前記第2の電極と接触する第2の端部を有する少なくとも1つのウェルであって、前記ウェルは、そこに播種された細胞から組織を成長させるように構成され、前記電極対は、前記組織に電気刺激を印加するように構成される、少なくとも1つのウェルと、
少なくとも2つの弾性検知要素であって、前記検知要素と前記ウェルの前記底部との間にギャップが存在するように前記ウェルを横切って配置され、前記検知要素は、(a)それらの間に形成される前記組織の付着を可能にし、それにより前記組織を前記ウェルの底部の上方に架け、(b)前記組織によって前記検知要素に及ぼされる前記収縮力に応答して変形し、それにより、前記組織に固有の生理的環境をシミュレートし、および/または前記収縮力の測定を可能にする、ように構成される、少なくとも2つの弾性検知要素と、
を備える、デバイス。
【請求項2】
2つ以上のウェルを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、または96ウェルを備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電極対は前記基材に完全に埋め込まれている、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
電極は、導電性炭素、金、プラチナ、パラジウム、ステンレス鋼、スズ、タングステン、チタン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記導電性炭素は非多孔質である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の電極および前記第2の電極は、1mm~5cmの範囲のギャップによって分離される、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の電極は、前記第2の電極に平行または実質的に平行である、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
2つ以上の電極対を備え、少なくとも1つのウェルが各電極対の間に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
電極のそれぞれは、互いに平行または実質的に平行である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記電極対は刺激装置に接続されており、前記刺激装置は前記電極対の間で電気刺激を加えるように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
2つ以上の電極対を備え、2つ以上のウェルが各電極対の間に配置され、前記刺激装置が、各電極対の間で電気刺激を独立して制御するように構成される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
ウェル当たり2~25の検知要素を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記検知要素はポリマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記ポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸、ポリ(カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキソブチレート、ポリヒドロキシアルカン酸、キトサン、ヒアルロン酸、ハイドロゲル、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリ(オクタメチレンマレイン酸(無水)クエン酸)(POMaC)、クエン酸を含まないPOMaC、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリウレタン、シルク、ナノ加工材料、コポリマー、ブレンドポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ポリマーはPOMaCである、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
ポリマーは、重合反応中に調整可能な機械的特性を有する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
検知要素は多孔質であり、それによって心臓組織への栄養素および成長因子の送達を可能にする、請求項1~17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記検知要素が約20kPa~0.5MPaまでの弾性を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記検知要素はワイヤ形状である、請求項1~19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ウェルは長手方向軸を有するように構成される、請求項1~20のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記検知要素は、前記ウェルの前記長手方向軸に対して垂直、平行、または斜めの方向である、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記基材はポリマーを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記ポリマーは硬質である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記ポリマーはポリスチレンまたはポリカーボネートである、請求項23に記載のデバイス。
【請求項26】
前記細胞はヒドロゲルに播種される、請求項1~25のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記細胞は、心筋細胞、線維芽細胞、骨格筋細胞、肝細胞、腎細胞、軟骨細胞、皮膚細胞、収縮細胞、血液細胞、免疫系細胞、生殖細胞、神経細胞、上皮細胞、ホルモン分泌細胞、骨髄細胞、幹細胞、腫瘍細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、線維芽細胞、脂肪由来幹細胞、間葉系幹細胞、前駆細胞、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1~26のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね、インビトロで三次元(3D)組織を成長させるための埋め込み電極を有するプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤開発コストの増大と心毒性スクリーニングの限界により、ヒト心臓組織の培養を促進し、臨床環境で心毒性を予測する非侵襲的な機能的読み出しを提供できる堅牢なインビトロ3D組織培養プラットフォームを開発することが急務である。ただし、このようなプラットフォームは、一般的に複雑な作製手順を必要とし、高スループットのテストプラットフォームにスケールアップすることは困難である。
【0003】
心毒性は、臨床試験の後期段階における薬剤の失敗の主な原因であり、多くの市販後の中止に関連している。候補薬の安全性を検証し、不適格な候補をできるだけ早く排除することは、創薬のコストを削減し、患者の死亡を防ぐために重要である。不死化細胞株を用いた従来の単層培養は高スループットスクリーニングを可能にするが、それらは、組織レベルの機能および形態学的組織の欠如により天然の心筋との関連性が限られている。ヒト幹細胞由来の心筋細胞からの人工心臓組織は、天然の心筋の筋線維束をより厳密に模倣することが示されており、整列したサルコメア構造および顕著なレベルの収縮力を示す。ただし、再現性のある3D組織を大量に製造するには、複雑な作製プロセスが必要であり、プロセスには機能的な組織形成を促進するために重要な中空または架けられた微細構造体を構築することが含まれる。さらに、心毒性を検出するには、人工心臓組織からの機能的な読み出しも必要である。
【0004】
内蔵センサーは、多くの微生理学的プラットフォームに組み込まれている。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはポリウレタン膜の薄層の上に薄い筋肉膜が作製された。膜の変形は、容易にモデル化され、重ねられた心筋細胞によって生成される収縮力に関連付けることができる。最近、電気回路が3D印刷を使用して薄いポリマー膜に埋め込まれた。この技術は、モデリング技術を使用して、埋め込まれた抵抗器の電気信号を収縮運動に変換することができる。ただし、これらのシステムは、数細胞層の厚さである構造の細胞単層の培養のみを可能にする。広く使用されている2ポストプラットフォームは、力センサーとしてPDMSポストを採用し、3D組織からの収縮力を非侵襲的に報告する。しかし、培養組織はポストから滑り落ちやすく、デバイスの故障につながる。さらに、これらのデバイスは、疎水性のために薬物が吸収されやすいPDMSの使用に依存している。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、基材と、基材に少なくとも部分的に埋め込まれた少なくとも1つの電極対であって、電極対はギャップによって分離される第1の電極および第2の電極を有する、少なくとも1つの電極対と、基材上に底部、第1の電極と接触する第1の端部、および第2の電極と接触する第2の端部を有する少なくとも1つのウェルであって、ウェルは、そこに播種された細胞から組織を成長させるように構成され、電極対は、組織に電気刺激を印加するように構成される、少なくとも1つのウェルと、少なくとも2つの弾性検知要素であって、検知要素とウェルの底部との間にギャップが存在するようにウェルを横切って配置されており、検知要素は、(a)それらの間に形成される組織の付着を可能にし、それにより組織を前記ウェルの底部の上方に架け、(b)組織によって検知要素に及ぼされる収縮力に応答して変形し、それにより、組織に固有の生理的環境をシミュレートし、および/または収縮力の測定を可能にする、ように構成される、少なくとも2つの弾性検知要素と、を備える、デバイスに関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、デバイスは、2つ以上のウェル、例えば6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、または96ウェルを備える。
【0007】
いくつかの実施形態では、電極対は、基材に完全に埋め込まれている。
【0008】
いくつかの実施形態では、電極は、導電性炭素、金、プラチナ、パラジウム、ステンレス鋼、スズ、タングステン、チタン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、導電性炭素は非多孔性である。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、1mm~5cmの範囲のギャップによって分離される。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の電極は、第2の電極に平行または実質的に平行である。
【0012】
いくつかの実施形態では、デバイスは、2つ以上の電極対を備え、少なくとも1つのウェルが各電極対の間に配置される。
【0013】
いくつかの実施形態では、電極のそれぞれは、互いに平行または実質的に平行である。
【0014】
いくつかの実施形態では、電極対は刺激装置に接続されており、刺激装置は電極対の間で電気刺激を印加するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、デバイスは、2つ以上の電極対を備え、2つ以上のウェルが各電極対の間に配置され、刺激装置が、各電極対の間で電気刺激を独立して制御するように構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、デバイスはウェル当たり2~25個の検知要素を備える。
【0017】
いくつかの実施形態では、検知要素はポリマーを備える。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸、ポリ(カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキソブチレート、ポリヒドロキシアルカン酸、キトサン、ヒアルロン酸、ハイドロゲル、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリ(オクタメチレンマレイン酸(無水)クエン酸)(POMaC)、クエン酸を含まないPOMaC、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリウレタン、シルク、ナノ加工材料、コポリマー、ブレンドポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、ポリマーはPOMaCである。
【0018】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、重合反応中に調整可能な機械的特性を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、検知要素は多孔質であり、それにより心臓組織への栄養素および成長因子の送達を可能にする。
【0020】
いくつかの実施形態では、検知要素は、約20kPa~0.5MPaの弾性を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、検知要素はワイヤ形状である。
【0022】
いくつかの実施形態では、ウェルは長手方向軸を有するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、検知要素は、ウェルの長手方向軸に対して垂直、平行、または斜めの方向である。
【0024】
いくつかの実施形態では、基材はポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは硬質である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリスチレンまたはポリカーボネートである。
【0025】
いくつかの実施形態では、細胞はヒドロゲルに播種される。
【0026】
いくつかの実施形態では、細胞は、心筋細胞、線維芽細胞、骨格筋細胞、肝細胞、腎細胞、軟骨細胞、皮膚細胞、収縮細胞、血液細胞、免疫系細胞、生殖細胞、神経細胞、上皮細胞、ホルモン分泌細胞、骨髄細胞、幹細胞、腫瘍細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、線維芽細胞、脂肪由来幹細胞、間葉系幹細胞、前駆細胞、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0027】
本開示の一態様は、プロセッサーによって実行される命令を表すコードを格納する非一時的なプロセッサー可読媒体に関し、命令は、プロセッサーに、ウェル内に播種された細胞から組織を成長させるように構成されるウェルに関連付けられる少なくとも1つの検知要素から一連の測定値を受信することであって、ウェルは、一連の刺激パラメーターに従って組織に電気刺激を印加するように構成される一連の電極を備える、受信することと、一連の測定値と組織に関連する一連の所定の基準との比較に基づいて、一連の刺激パラメーターの一連の値を変化させる量を特定することと、量に基づいて一連の値を調整して、一連の刺激パラメーターの更新された一連の値を形成することと、一連の刺激パラメーターの更新された一連の値に従って、組織に電気刺激を印加するために、一連の電極に刺激信号を送信することと、をさせるためのコードを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、一連の刺激パラメーターは、刺激電圧、刺激頻度、または刺激時間のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの検知要素は、検知要素とウェルの底部との間にギャップが存在するように、ウェルを横切って配置される少なくとも2つの弾性検知要素を備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、一連の刺激パラメーターの初期の一連の値は、所定の刺激プロトコルに基づいて選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、プロセッサーに識別させるコードは、組織の成熟基準を満たす一連の測定値に基づいて刺激電圧を低下させる量をプロセッサーに識別させるコードを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロセッサーに識別させるコードは、組織の興奮基準を満たさない一連の測定値に基づいて刺激電圧を増加させる量をプロセッサーに識別させるコードを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、プロセッサーに一連の測定値を受信させるコードは、プロセッサーに一連の測定値のインスタンスを定期的に受信させ、一連の測定値のインスタンスをメモリに格納させるコードを含む。
【0034】
本開示の一態様は、装置に関し、装置は、メモリと、メモリに動作可能に接続するプロセッサーであって、プロセッサーは、ウェル内に播種された細胞からウェル内のワイヤの周囲で成長している組織の画像を受信し、画像内の複数の画素からの各画素を画素閾値と比較することに基づいて第1の二値画像を形成し、第1の二値画像内のワイヤの第1のエッジおよび第2のエッジを検出して、第1のエッジおよび第2のエッジを表す第2の二値画像を形成し、第2の二値画像の複数の行から各行の第1のエッジと第2のエッジとの間の中点を計算して一連の中点を生成し、一連の中点の多項式回帰に基づいて一連の中点にフィッティングする二次方程式を計算し、二次方程式に基づいてワイヤの撓み点を特定するように構成される、プロセッサーと、を備える。
【0035】
いくつかの実施形態では、ウェルは、一連の刺激パラメーターに従って組織に電気刺激を印加するように構成される一連の電極を備え、プロセッサーは、所定の基準を満たすワイヤの撓み点に基づいて一連の刺激パラメーターの一連の値を調整し、一連の刺激パラメーターの更新された一連の値を形成するように、および一連の刺激パラメーターの更新された一連の値に従って、組織に電気刺激を印加するために、一連の電極に刺激信号を送信するように構成される。
【0036】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、ソーベル演算子を使用して第1のエッジおよび第2のエッジを検出するように構成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、大津の方法を使用して第1の二値画像を形成するように構成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、第1の二値画像内のワイヤの第1のエッジおよび第2のエッジを検出する前に、オープニング演算子を使用して第1の二値画像からアーティファクト画素を除去するように構成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、第1の二値画像内のワイヤの第1のエッジおよび第2のエッジを検出する前に、クロージング演算子を使用して第1の二値画像を平滑化するように構成される。
【0040】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、中点を計算する前に、第2の二値画像内に含まれていない第1のエッジの一部または第2のエッジの一部を完成させるように構成され、そして第2の二値画像の複数の行からの各行が、第1のエッジの一部および第2のエッジの一部を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、撓み点に基づいて、組織によってワイヤに及ぼされる収縮力の量を計算するように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、プロセッサーは、撓み点に基づいて、組織によってワイヤに及ぼされる静止張力の量を計算するように構成される。
【0043】
本開示の一態様は、本明細書に記載の2つ以上のデバイスおよび2つ以上のドライバー基板を有するシステムに関し、各ドライバー基板は、各デバイスの各電極対の間に電気刺激を印加するように構成され、それにより、刺激装置が各電極対の間の電気刺激の印加を独立して制御することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、システムは、ヒンジ付きの蓋を有し、デバイスを刺激装置に電気的に接続するように構成されるインターフェーストレイをさらに備える。
【0045】
いくつかの実施形態では、システムは、各デバイス内の検知要素および/または組織の画像を生成するように構成される光学顕微鏡をさらに備える。
【0046】
いくつかの実施形態では、システムは、顕微鏡に接続し、画像を解析し、および/または刺激装置を制御するように構成されるコンピューティングデバイスをさらに備える。
【0047】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、本明細書に記載の非一時的なプロセッサー可読媒体を備える。
【0048】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、本明細書に記載の装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による埋め込み電極を有するデバイス100である。
【0050】
【
図2A-C】
図2A~2Cは、Biowire96ウェルプレート作製の概略図を示す。
【0051】
【
図2A】
図2Aは、Biowireプレートベースへのカーボン電極の組み込みである。
【0052】
【
図2B】
図2Bは、Biowireプレートベースへのポリマーマイクロワイヤのキャスティングである。
【0053】
【
図2C】
図2Cは、組み立てられたBiowireプレート、およびBiowireチャンバー内で培養され、平行な2本のポリマーワイヤにわたって架けられる心臓組織の代表的な画像である。スケールバーは1mmである。
【0054】
【
図3A-C】
図3A~3Cは、Biowireプレートベースのホットエンボス加工、組み立て、および後処理を示す。
【0055】
【
図3A】
図3Aは、カーボン電極が埋め込まれたホットエンボス加工されたポリスチレンプレートベースである。
【0056】
【
図3B】
図3Bは、カーボン電極が埋め込まれたポリスチレンプレートベースの画像である。カーボン電極のトップ面が露出している。
【0057】
【
図3C】
図3Cは、裏側から見たポリマーワイヤおよびカーボン電極の両方を備える完全に組み立てられたBiowireプレートである。矢印は、カーボン電極および組織チャンバーの位置を示す。
【0058】
【
図4A-D】
図4A~4Dは、96ウェルプレート形式に架けられるポリマーワイヤの高速キャスティングを示す。
【0059】
【
図4A】
図4Aは、ポリマー射出成形、UV架橋形成、ワイヤキャスティング、および離型である。
【0060】
【
図4B】
図4Bは、毛細管力によるポリマー注入であり、ポリマー溶液が、組織チャンバー上方の架けられたマイクロチャネルの至る所に灌流できたことを示す。
【0061】
【
図4C】
図4Cは、型の取り外し後の、組織チャンバーを横切ってうまく架けられたポリマーワイヤである。
【0062】
【
図4D】
図4Dは、蒸留水に浸漬された組み立てられたBiowireプレートの、(1)1分後、(2)24時間後、および(3)空気乾燥後である。スケールバーは1mmである。
【0063】
【
図5A-D】
図5A~5Dは、96ウェルプレートデバイス内のポリマーワイヤのキャラクタリゼーションを示す。
【0064】
【
図5A】
図5Aは、ポリマーワイヤを撓ませて力と変位を関連付けるために使用される力プローブである。
【0065】
【
図5B】
図5B~5Dは、70℃での後処理ベーキングの(
図5B)2日後(n=8)、(
図5C)4日後(n=3)、および(
図5D)6日後(n=7)に得られたPOMaCワイヤの力-変位曲線である。グラフは、個々の力-変位曲線の生データトレースを、平均値付近の95%信頼区間、近似曲線の多項式およびR
2値と共に示している。
【0066】
【
図6A-C】
図6A~6Cは、96ウェルプレートデバイスで培養された心臓組織のキャラクタリゼーションを示す。
【0067】
【
図6A】
図6Aは、Biowire II 96ウェルプレートで培養された心臓組織の明視野像である。最終的な画像は、複数の画像からつなぎ合わされた。
【0068】
【
図6B】
図6Bは、サルコメ-α-アクチニン(緑)およびF-アクチン(赤)が染色された、96ウェルプレートデバイスで培養された心臓組織の蛍光画像である。スケールバーは30μm、(n=3)である。
【0069】
【
図6C】
図6Cは、SpectraMax画像サイトメーターで自動的に撮像された心臓組織の蛍光画像である。画像は、自己蛍光ポリマーワイヤを緑色で明確に示しており、高スループットで時間の経過に伴うワイヤの変位を追跡できる可能性がある。最終的な画像は、複数の画像からつなぎ合わされた。スケールバーは1mm、(n=4)である。
【0070】
【
図7A-H】
図7A~7Hは、内蔵されたカーボン電極による12日間の電気刺激後のヒト人工心臓組織の機能評価およびタプシガルギンに対するそれらの応答である。
図7Aは、(
図7Bの)日々の代表的な画像(n=3)で観察された、7日間の、自己組織化後の安定化された組織寸法を示す。向上した電気的特性は、7日目(電気調整前)および19日目(エンドポイント)を比較した(
図7C)興奮閾値の減少傾向、および(
図7D)最大捕捉率の有意な増加(スチューデントのt検定、n=6)によって示された。96ウェルプレートデバイスは、培養組織の非破壊的な力の読み出しおよび拍動のキャラクタリゼーションを可能にする。(
図7E)静止張力、活動力、(
図7F)収縮時間、弛緩時間、および総持続時間、(
図7G)収縮および弛緩勾配の定量化を、7日目と19日目とで比較した(n=3)。
図7Hは、電気刺激の終点(19日目)におけるタプシガルギンに対する培養組織の応答を示す代表的なトレースである(n=2)。データは平均±標準偏差として提示され、実験群間の差はスチューデントのt検定によって解析された。
*p<0.05は、全ての試験で有意と見なされた。
【0071】
【
図8A-C】
図8A~8Cは、Biowire96ウェルプレート作製の概要および寸法を示す。
【0072】
【
図8A】
図8Aは、Biowire96ウェルプレート作製プロトコルの概略図である。
【0073】
【
図8B】
図8Bは、ポリマーワイヤ灌流のためのPDMSモールドの寸法である(単位はミリメートル)。形体の高さは200μmである。
【0074】
【
図8C】
図8Cは、ポリスチレンプレートベースの寸法である(単位はミリメートル)。形体の高さは200μmである。
【0075】
【
図9A-B】
図9A~9Bは、スパッタされた金電極を有するBiowire96ウェルプレートを示す。
【0076】
【
図9A】
図9Aは、スパッタされた金電極を有するBiowire96ウェルプレートの裏面の画像である。挿入画像は、幅120mmのプレート全体を横切る電極の、異なる位置でのコーティング厚の変化を示している。
【0077】
【
図9B】
図9Bは、ワニ口クランプで電極に接続しようとすることによって生じた引っかき傷の画像である。このような表面の引っかき傷は、電極回路全体の接続を簡単に壊す可能性がある。
【0078】
【0079】
【
図10A】
図10Aは、プレートの異なる行のウェル間の埋め込みカーボン電極全体の電圧降下の割合を示す(n=3)。各行から3つのウェルを測定に使用する。
【0080】
【
図10B】
図10Bは、電圧降下を計算するために使用される数式である。データは平均±標準偏差として示され、実験群間の差は一元配置分散分析によって解析された。p<0.05は、全ての試験で有意と見なされた。
【0081】
【
図11A-C】
図11A~11Cは、96ウェルプレート全体のPOMaCワイヤ特性の一貫性を示す。
【0082】
【
図11A】
図11Aは、各ウェルからのPOMaCワイヤの100μm変位における力である。図およびヒートマップの両方を表示した(n≧4)。各ウェルのワイヤからの変位力は、ヒートマップとして示されている。白い四角は、視覚的に検出可能なワイヤがなくなっているまたは欠損しているウェルを示す。最も外側の2つの列は、エッジでの不均一な圧力による不均一性が見つかったため、意図的に測定から除外された。
【0083】
【
図11B】
図11Bは、50μm、100μmおよび150μmの変位における全てのウェルからのPOMaCワイヤの一貫性を示す(n=70)。
【0084】
【
図11C】
図11Cは、POMaCワイヤの代表的な引張および弛緩曲線である。データは平均±標準偏差として示され、実験群間の差は一元配置分散分析によって解析された。p<0.05は、全ての試験で有意と見なされた。
【0085】
【
図12】
図12は、本開示のいくつかの実施形態による抽象的なシステム構成図である。
【0086】
【
図13】
図13は、本開示のいくつかの実施形態による、3D組織培養を実行するためのシステムの概略図である。
【0087】
【
図14】
図14は、本開示のいくつかの実施形態による、3D組織培養のための画像処理の方法を例示するフローチャートである。
【0088】
【
図15A-15M】
図15A~15Mは、本開示のいくつかの実施形態による、ワイヤを追跡する方法の様々な段階である。
【0089】
【
図16】
図16は、本開示のいくつかの実施形態による、組織培養を操作する方法を例示するフローチャートである。
【0090】
【発明を実施するための形態】
【0091】
本開示は、インビトロで3D組織を成長、維持、および/または使用するための埋め込み電極を有するデバイス、装置、およびシステムを提供する。電極はデバイスの基材に物理的に埋め込まれているため、電極には、刺激装置が埋め込み電極に直接電流を印加するためのリード線が設けられ、そしてデバイス内の組織は、別の皿やデバイスに移動されることなく、培地や栄養素だけでなく、電気刺激を受ける位置に既にある。本明細書に記載のデバイス、装置、およびシステムは、薬物検査を含む様々な用途で使用されることができる。組織を試験薬に曝露することにより、組織の収縮性および/または静止張力の変化を使用して、試験薬の有効性、安全性、および/または毒性を評価することができる。
【0092】
本開示の一態様は、
図1のデバイス100に関する。デバイス100は、基材102、第1の電極104および第2の電極106を含む電極対、第1の検知要素112、第2の検知要素114、およびウェル120を備えることができる。
【0093】
基材102はポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーは硬質であり、光学的透明度が高く、および/または医学的に適合性がある。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリスチレンまたはポリカーボネートを含むことができる。
【0094】
電極対は、基材102に少なくとも部分的に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、電極対は、基材102に完全に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、第1の電極104は、第2の電極106に平行または実質的に平行である。
【0095】
第1の電極104と第2の電極106は、ギャップによって分離されることができる。ギャップは、少なくとも約1mm、少なくとも約1.5mm、少なくとも約2mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約3mm、少なくとも約3.5mm、少なくとも約4mm、少なくとも約4.5mm、少なくとも約5mm、少なくとも約5.5mm、少なくとも約6mm、少なくとも約6.5mm、または少なくとも約7mmの幅を有することができる。ギャップは、約10cm以下、約9.5cm以下、約9cm以下、約8.5cm以下、約8cm以下、約7.5cm以下、約7cm以下、約6.5cm以下、約6cm以下、約5.5cm以下、約5cm以下、約4.5cm以下、約4cm以下、約3.5cm以下、約3cm以下、約2.5cm以下、約2cm以下、約1.5cm以下、または約1cm以下の幅を有することができる。
【0096】
ギャップの幅について上で参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、少なくとも約1mmから約10cm以下、少なくとも約1mmから約5cm以下、または少なくとも約5mmから約1.5cm以下)。
【0097】
各電極は、導電性炭素、金、プラチナ、パラジウム、ステンレス鋼、スズ、タングステン、チタン、またはそれらの組み合わせを含むことができる。組織刺激用の導電性材料の別の例は、Merrillらの「Electrical Stimulation of Excitable Tissue:Design of Efficacious and Safe Protocols」、J.of Neuroscience Methods 2005,141,171-198、Tandonらの「Characterization of Electrical Stimulation Electrodes for Cardiac Tissue Engineering」、Proceedings of the 28th IEEE、ページ845~848にあり、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
いくつかの実施形態では、導電性炭素は非多孔性であり、例えばガラス状炭素である。非多孔性炭素は、試験化合物が炭素に吸収されるのを防止することができる。いくつかの実施形態では、カーボン電極は、エポキシ強化カーボン電極ではない。
【0099】
ウェル120は、基材102上に底部を有し、第1の電極104と接触する第1の端部122と、第2の電極106と接触する第2の端部124とを有する。ウェルは、そこに播種された細胞から組織130を成長させるように構成されることができる。電極対は、組織130に電気刺激を加えるように構成されることができる。
【0100】
ウェル120の形状は特に限定されず、正方形、長方形、円形、楕円形、角が丸みを帯びた長方形、三角形、または形状の任意の組み合わせとすることができる。ウェル120の他の寸法もまた、任意の適切な方法で変化してもよい。例えば、ウェル120の深さ、ウェル120の高さ、およびウェル120の長さ、ならびにウェル120の全体容積は、任意の適切な方法で変更されることができる。
【0101】
例えば、ウェル120の長さ、高さ、または幅は、約0.1~1mm、約0.2~2mm、約0.3~3mm、約0.4~4mm、約0.5~5mm、約0.6~6mm、約0.7~7mm、約0.8~8mm、約0.9~9mm、約1~10mm、約1~100mm、または約10~100mmとすることができる。
【0102】
ウェル120は、長手方向軸によって特徴付けられることができる。長手方向軸は、ウェル120の長さに沿っていることができる。
【0103】
ウェル120の表面は、組織培養プロセスを促進する可能性のある化学的改質(例えば、リガンド、荷電物質、結合剤、成長因子、抗生物質、抗真菌薬など)、または、物理的改質(例えば、スパイク、湾曲部分、折り目、細孔、でこぼこ部分、または様々な形状および形態など)を含む任意の好適な表面処理で改質されてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、ウェル120は、細胞培養ウェル140内に配置されることができる。培地を、組織130を増殖および/または維持するための細胞培養ウェル140に加えることができる。
【0105】
第1の検知要素112および第2の検知要素114は、ウェル120の底部と検知要素112および114との間にギャップが存在するように、ウェル120を横切って配置される。検知要素112および114は、(a)それらの間に形成される組織130の付着を可能にし、それにより組織130をウェル120の底部の上方に架け、(b)組織130によって検知要素112および114に及ぼされる収縮力に応答して変形し、それにより、組織130に固有の生理的環境をシミュレートし、および/または収縮力の測定を可能にするように構成されることができる。
【0106】
検知要素112および114は、ウェル120の長手方向軸に対して垂直または実質的に垂直な向きを有することができる。組織130は、ウェル120の長手方向軸と同じまたは実質的に同じ方向に整列されることができる。
【0107】
デバイス100は、ウェル当たり少なくとも2つの検知要素、ウェル当たり少なくとも3つの検知要素、ウェル当たり少なくとも4つの検知要素、またはウェル当たり少なくとも5つの検知要素を含むことができる。デバイス100は、ウェル当たり25個以下の検知要素、ウェル当たり20個以下の検知素子、ウェル当たり18個以下の検知素子、ウェル当たり15個以下の検知素子、またはウェル当たり10個以下の検知素子を含むことができる。
【0108】
ウェル当たりの検知要素の数について上記範囲の組み合わせも可能である(例えば、ウェル当たり少なくとも2個から25個以下、ウェル当たり少なくとも2個から20個以下、またはウェルあたり少なくとも2個から約10個以下)。組織が各検知要素の周りに形成され、組織がウェルの底部の上方に架けられるようにそれらの間に接合される能力がある限り、ウェル当たり任意の数の検知要素を設けることができる。
【0109】
検知要素はポリマーを含むことができる。ポリマーは、合成または生物学的であることができる。ポリマーは生分解性または非生分解性でもあることができる。
【0110】
検知要素は、その上に支持される組織のヤング率と同様のヤング率を有するポリマーを含むことができる。例えば、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±2000%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±1000%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±500%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±250%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±100%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±50%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±30%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±25%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±20%以内であることができる、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±15%以内であることができる、または、ポリマーのヤング率は、組織のヤング率の±10%以内であることができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、検知要素は、10kPa~800kPaの範囲のヤング率を有するポリマーを含むことができる。例えば、ポリマーは、20kPa~700kPa、20kPa~600kPa、20kPa~500kPa、50kPa~500kPa、または100kPa~500kPaの範囲のヤング率を有することができる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、約150kPa、約200kPa、約250kPa、約300kPa、約350kPa、約400kPa、約450kPa、約500kPa、または約550kPaのヤング率を有することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、検知要素は、異なる架橋エネルギーを使用して重合を制御することにより機械的特性を調整できるポリマーを含むことができる。調整能力はまた、重合反応中のポリマー単位の混合比によっても制御されることができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸、ポリ(カプロラクトン)、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキソブチレート、ポリヒドロキシアルカン酸、キトサン、ヒアルロン酸、ハイドロゲル、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリ(オクタメチレンマレイン酸(無水)クエン酸)(POMaC)、クエン酸を含まないPOMaC、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリウレタン、シルク、ナノ加工材料、コポリマー、ブレンドポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つであることができる。
【0114】
検知要素の形状、厚さ、長さ、向き、および表面の形態特性は、検知要素が、それらの間に連結された組織の収縮作用または活動に応答して、変形、曲げ、あるいは形状の変化が可能であり、およびこのような変形、曲げ、あるいは形状変化を確実に測定することができる限り、多くの好適な方法で変わることができる。いくつかの実施形態では、検知要素は、ワイヤ、例えばポリマーワイヤの形態である。
【0115】
いくつかの実施形態では、検知要素は多孔質であり、それにより組織130への栄養素および成長因子の送達を可能にする。
【0116】
組織130を作製するために、細胞をヒドロゲルに播種することができる。細胞は、心筋細胞、線維芽細胞、骨格筋細胞、肝細胞、腎細胞、軟骨細胞、皮膚細胞、収縮細胞、血液細胞、免疫系細胞、生殖細胞、神経細胞、上皮細胞、ホルモン分泌細胞、骨髄細胞、幹細胞、腫瘍細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、線維芽細胞、脂肪由来幹細胞、間葉系幹細胞、前駆細胞、またはそれらの組み合わせから選択されることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、コラーゲンもしくはコラーゲン誘導体、腸粘膜下組織もしくはその誘導体、セルロースもしくはセルロース誘導体、プロテオグリカン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、ヒアルロン酸、エラスチン、フィブロネクチン、トロンビン、ラミニン、フィブリン、キトサン、アルギン酸、Matrigel(登録商標)、Geltrex(登録商標)、アガロース、脱細胞化細胞外マトリックス、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体、シリコーンもしくはその誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルはMatrigel(登録商標)を含む。
【0118】
本開示はまた、単一の基材(例えば、単一のプレート)上に複数のデバイス100を有するマルチウェルデバイスを提供する。いくつかの実施形態では、マルチウェルデバイスは、複数のウェル、例えば6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、または96ウェルを備えることができる。マルチウェルデバイスは、2つ以上の電極対を備えることができ、少なくとも1つのウェルが各電極対の間に配置される。いくつかの実施形態では、マルチウェルデバイスは、2~20の電極対(例えば、2~20の対、2~10の対、または4~8の対)を備えることができる。いくつかの実施形態では、マルチウェルデバイスは、2つの対、3つの対、4つの対、5つの対、6つの対、7つの対、8つの対、9つの対、またはそれより多くの電極対を備えることができる。いくつかの実施形態では、1~20個のウェル(例えば、1~15個のウェル、2~20個のウェル、2~10個のウェル、または4~8個のウェル)を各電極対の間に配置することができる。いくつかの実施形態では、1ウェル、2ウェル、3ウェル、4ウェル、5ウェル、6ウェル、7ウェル、8ウェル、9ウェル、またはそれより多くのウェルを各電極対の間に配置することができる。いくつかの実施形態では、マルチウェルデバイスは、マルチウェルプレートの形態であることができる。いくつかの実施形態では、マルチウェルプレートは、4x6構成の24ウェルプレートである。4x6構成では、6つの電極対があり、各電極対の間に4つのウェルが配置される。
【0119】
各電極対を使用して、電極対間の全てのウェルに電気刺激を印加することができる。各電極対の動作は、他の電極対から独立していることができ、それにより、各電極対が他の電極対とは異なる刺激パラメーターを有することが可能になる。
【0120】
図2Cは、単一基材上に96個のウェルを有するマルチウェルデバイスを示す。マルチウェルデバイスは12の電極対を備え、各電極は他の電極と平行または実質的に平行である。黒い線は電極を示す。各電極対の間に8つのウェルが配置されている。
【0121】
ホットエンボス加工および射出成形技術を使用して、本明細書に記載のデバイスを製造することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み電極およびチャネルを有するカスタムマルチウェルプレートは、最初に生成されることができ、検知要素をチャネルに配置できる。そして、複数の細胞培養ウェルを有するボトムレスプレートをマルチウェルプレートの一番上に取り付けることができる。取り付け中、マルチウェルプレート上のウェルは、ボトムレスプレートの細胞培養ウェルと位置合わせされ、その結果、各細胞培養ウェルが1つのウェルを含む。
【0122】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の2つ以上のデバイス(例えば、マルチウェルデバイス)、および2つ以上のドライバー基板を有する刺激装置を備えるシステムを提供し、各ドライバー基板は、各デバイスの各電極対の間に電気刺激を印加するように構成され、それにより、刺激装置が各電極対の間の電気刺激の印加を独立して制御することができる。
【0123】
インビトロ組織生成の場合、最新技術には次の、(a)電気刺激の手動プログラミングは、プロセスの全ての工程で必要である、(b)電気機械インターフェースは手作りで、手動で接続されている、(c)手作りのシステムは、堅牢性、安定性、および組み立て/製造の容易性のためには設計されてはいない、という欠点がある。
【0124】
比較すると、本明細書に記載のシステムは、インビトロでの組織の生成、操作、および維持のためのスケーラブルで自動化されたプラットフォームを提供する。このシステムにより、主要なワークフローの全ての工程(例えば、細胞の播種、成熟/刺激、およびエンドポイント試験)を同じ場所で行うことができ、組織をあるチャンバーまたはペトリ皿から別のチャンバーまたはペトリ皿に移す必要がない。各組織は、セルフコンテインド型の単離のバイオリアクターであることができる。いくつかの実施形態では、マルチウェルボトムレスプレートを特注のポリスチレンプレートに取り付けると、各マイクロウェルはプレートの残りの部分から効果的に密閉される。培養プロセス中、組織ごとに培地および栄養素を適用することができる。さらに、電極はすでにプレート中に埋め込まれているため、成熟プロトコルの電気刺激を印加するために組織を移動させる必要はない。各組織が分離されていることを考慮すると、試験(例えば、収縮試験)を実行するための任意の試験化合物を適用するために成熟後にそれらを分離する必要はない。結果として、各組織は、プレート上の他の組織(例えば、異なる用量の試験化合物)とは独立して個別に処理されることができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、刺激装置は、少なくとも2個のドライバー基板、少なくとも3個のドライバー基板、少なくとも4個のドライバー基板、少なくとも5個のドライバー基板、または少なくとも6個のドライバー基板を備えることができる。いくつかの実施形態では、刺激装置は25個以下のドライバー基板、20個以下のドライバー基板、19個以下のドライバー基板、18個以下のドライバー基板、17個以下のドライバー基板、16個以下のドライバー基板、15個以下のドライバー基板、または10個以下のドライバー基板を備えることができる。
【0126】
ドライバー基板の数について上記範囲を組み合わせることも可能である(例えば、少なくとも2個から25個以下、少なくとも5個から約15個以下、または少なくとも5個から10個以下)。いくつかの実施形態では、刺激装置は、約10個のドライバー基板を備えることができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、各ドライバー基板は、最大6個のチャネルを備えることができる。各チャネルは、ドライバー基板から個別に構成可能な出力(例えば、刺激頻度)である。例えば、24ウェルプレートは、1個のドライバー基板によって駆動される6つのチャネルによって刺激されることができる。そのため、各ドライバー基板は、ウェルの列に対して各プレートの刺激パラメーターを制御する機能があり、あるプレートの1つの列が同じプレートの他の列と異なるパラメーターを有することができる。市販の刺激装置では、このレベルの制御を提供することができない。
【0128】
各ドライバー基板を使用して1つのデバイスを制御できるため、ドライバー基板の数はシステム内のデバイスの数に依存する。例えば、システムに5つのマルチウェルデバイスがある場合、少なくとも5個のドライバー基板が存在する可能性があり、システムに10個のマルチウェルデバイスがある場合、少なくとも10個のドライバー基板が存在する可能性がある。
【0129】
いくつかの実施形態では、刺激装置の電子部品の構成を
図17に示す。
【0130】
このシステムは、チャネルの数の拡張を可能にし、各チャネルは独立して構成可能である。このような独立した構成可能性から得られる利点には、(1)より優れた温度調整および制御、(2)別の熱制御なしでインキュベーター内での操作できること、(3)成熟サイクルにわたる刺激パラメーターを自動化できること、(4)各ドライバー基板の記録可能な刺激履歴、が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態では、システムは、デバイスを刺激装置に電気的に接続するように構成されるインターフェーストレイ(例えば、ベースプレート)をさらに備えることができる。インターフェーストレイには、デバイスを固定し、デバイスの底部の電気接点が刺激装置からくるリード線に確実に接続されるように、ヒンジ付きの蓋を備えることができる。ラボのオペレーターがインキュベーターからマルチウェルプレートを取り出す必要がある場合、彼または彼女はヒンジ付きの蓋を持ち上げて、構成部品を抜いたり取り外したりすることなくプレートを取り出し、そしてこれにより、そのプロセスが組織にとってより簡単かつより安全になる。
【0132】
いくつかの実施形態では、システムは、デバイス内で成長した細胞および組織を培養するように構成されるインキュベーターをさらに備えることができる。組織の成熟プロセス中、デバイスは、刺激装置に接続されている間、約37℃の一定温度のインキュベーター内に保持される必要がある。これを達成するために、インキュベーターは、インキュベーター内に複数のマルチウェルプレートを収容するカスタムインキュベーターラックを備えることができる。インキュベーターラック内の各スペースでは、インキュベータートレイのうちの1つがラックの底部に固定され、オペレーターはマルチウェルプレートを所定の位置に固定することができる。刺激装置、インキュベーターラック、およびインターフェーストレイ間の接続は、標準のリボンケーブルと、インキュベーターラックの背面に固定されたカスタムプリント回路基板(PCB)によって管理されることができる。
【0133】
システムは、各デバイスの検知要素および/または組織の画像を生成するように構成される撮像サブシステムをさらに備えることができる。撮像サブシステムは、光学顕微鏡を備えることができる。
【0134】
システムはさらに、撮像サブシステムに接続し、画像を解析するおよび/または刺激装置を制御するように構成されるコンピューティングデバイスを備えることができる。コンピューティングデバイスは、刺激装置と接続し、その設定を制御するためのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を備えることができる。GUIにより、オペレーターは刺激装置の設定を遠隔地から確認および調整し、刺激装置を設定して、事前に決定された刺激プロトコルを自動的に実行することができる。さらに、GUIは、エラー、例えば開回路、過電圧/不足電圧、および(例えば、コントローラーと刺激装置との間の)ネットワーク切断をオペレーターに報告することができる。刺激装置のGUIにより、オペレーターはまた、プロトコル設定または組織が指定されているプロジェクトに応じて、マルチウェルプレートの成熟の進行状況を表示するおよび追跡することができる。
【0135】
刺激装置は、インキュベーターおよび/または撮像サブシステムに電気的に接続することができる。
【0136】
図12は、本開示のいくつかの実施形態による抽象的なシステム構成図である。
図12に示すように、システムには次のサブシステム、(a)成熟およびインキュベーションサブシステム、(b)試験および撮像サブシステム、(c)システムコントローラー、および(d)GUIを実行して動作パラメーターを設定するコンピューター、が含まれる。単一の刺激装置ボックス、成熟インキュベーター、または試験/撮像素子を超える拡張性に対応するために、各サブシステムを有線または無線ネットワーク経由でシステムに接続することができる。
【0137】
成熟すると、組織の薬物検査の準備が整う。検査は、試験および撮像サブシステムで行うことができる。いくつかの実施形態では、このサブシステムには、Nikonの撮像素子、ウェルをカメラの視野内に移動させるためのX/Yステージコントローラー、各ウェルに薬剤を注入するための液体ハンドラー、および刺激装置ボックスを備えることができる。このシステムの目標は、これら4つの構成要素を単一の物理プラットフォームに統合することである。統合すると、試験の編成を自動化するために、薬物検査試験を列ごとに、1つのプレート上で一度に実行できる。各列は、各対の埋め込み電極を表す。試験プロトコルは、同じ刺激パターンの調整も必要である。
【0138】
いくつかの実施形態では、システムは2つ以上の刺激装置を備えることができる。システムコントローラーを使用して、全ての刺激装置を管理することができる。システムが拡張するにつれて、各刺激装置には、システムコントローラーによって固有の識別を割り当てることができる。システムコントローラーは、GUIでパラメーター化された、各列、各プレート、各刺激装置の刺激パラメーターを伝達する役割を有する。また、それは各刺激装置の状態も監視し、刺激装置の状態を確認する(過電流警告条件を確認する)だけでなく、動作パラメーターを定期的に記録してタイムスタンプを押す。
【0139】
ネットワークコンピューターで実行されるブラウザベースのGUIは、システムコントローラーへのインターフェースであることができる。そのコンピューターが同じネットワーク上にある限り、物理的な場所は関係がない。GUIコンピューターは、システムコントローラーにリモートアクセスできる。
【0140】
刺激装置の調整可能なパラメーターには、パルス電圧、パルス周波数、およびパルスの持続時間が含まれるが、これらに限定されない。刺激装置はまた、各対の埋め込み電極に印加される電圧と電流を監視する役割を有する。これらの測定値は、データベースに定期的に記録されることができる。電気刺激は、ネットワークコンピューターで実行されているGUIアプリケーションを介してユーザーが調整可能であることができる。
【0141】
図13は、一実施形態による、3D組織培養を実行するためのシステム300の概略図を示す。システム300は、成長ウェル312および制御ユニット316をさらに備える組織成長デバイス310を備える。いくつかの実施形態では、成長ウェル312は、
図1に示される上記のデバイス100と実質的に同様であることができる。例えば、成長ウェル312は、組織の成長を刺激するように構成される1つまたは複数の埋め込み電極(
図13には図示せず)を備えることができる。さらに、成長ウェル312は、組織の成長を検知するように構成される1つまたは複数のワイヤ(
図13には図示せず)も備える。制御ユニット316は、成長ウェル312の動作を制御するように構成される。いくつかの実施形態では、制御ユニット316は、埋め込み電極に電力を供給するように構成される電源(
図13には図示せず)を備えることができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット316は、外部電源から電力(例えば電気)を受け取るように構成される。いくつかの実施形態では、制御ユニット316は、埋め込み電極に電気信号を提供するように構成される信号発生器(
図13には図示せず)を備える。さらに、制御ユニット316は、1つまたは複数の電気信号の特性、例えば、振幅、周波数、繰り返し率、および/または持続時間等を変更するように構成されることができる。
【0142】
システム300はまた、組織成長デバイス310内の組織の成長を監視するように構成される撮像デバイス320を備える。いくつかの実施形態では、撮像デバイス320は、組織成長デバイス310内の検知ワイヤの形状を監視して、組織の状態を推定するように構成される。撮像デバイス320は、任意の好適なタイプのセンサー、例えば、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイス、フォトダイオード、および/またはフォトトランジスター等を備えることができる。いくつかの実施形態では、撮像デバイス320は、画像取得を容易にするために、光学素子、例えば、レンズ、コリメータ、波長板、偏光子、および/またはフィルター等を備えることができる。いくつかの実施形態では、撮像デバイス320は顕微鏡を備える。
【0143】
処理デバイス330は、撮像デバイス320に動作可能に接続し、撮像デバイス320によって取得される画像を解析するように構成される。処理デバイス330は、メモリ332、プロセッサー334、および通信インターフェース336を備える。メモリ332は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、データベース、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM)、および/またはその他とすることができる。場合によっては、メモリ332は、
図14~16を参照して以下に説明するように、データ収集および/またはデータ処理(画像分類を含む)の1つまたは複数の方法を実行するために使用される一連の命令またはコードを含む。プロセッサー334は、任意の好適なプロセッサー、例えば、汎用プロセッサー(GPP)、中央処理装置(CPU)、加速処理装置(APU)、画像処理装置(GPU)、ネットワークプロセッサー、フロントエンドプロセッサー、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等、とすることができる。したがって、プロセッサー334は、メモリ332に格納された一連の命令、プロセス、モジュール、および/またはコードを実施するおよび/または実行するように構成されることができる。
【0144】
通信インターフェース336は、他のデバイスと通信して処理を行うことができる任意の好適なデバイス、例えばユーザーインターフェース340を実装するデバイス、組織成長デバイス310、および/または任意の好適なデバイスとすることができる。いくつかの実施形態では、通信インターフェース336は、1つまたは複数の有線および/または無線インターフェース、例えば、ネットワークインターフェースカード(NIC)、イーサネットインターフェース、光キャリア(OC)インターフェース、非同期転送モード(ATM)インターフェース、および/または無線インターフェース(例えば、WiFi(登録商標)無線、Bluetooth(登録商標)無線、近距離通信(NFC)無線等を含むことができる。
【0145】
ユーザーインターフェース340は、ユーザーがシステム300の他の部分と対話できるように構成されている。いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、システム300によって実行できる利用可能なプロトコルを表示するように構成され、実行される1つまたは複数のプロトコルをユーザーが選択できるように構成されるいくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、処理デバイス330によって生成される解析結果を表示するように構成される。これらの実施形態では、解析結果は、例えば、撮像デバイス320によって取得される画像(処理ありまたはなし)、組織成長デバイス310内の組織の成長状態、および組織の潜在的な欠陥などを含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、ウェブページ、PCアプリケーション、モバイルアプリケーション等に関連付けられるグラフィックユーザーインターフェース(GUI)を含む。いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、触覚ユーザー入力を受信するように構成されるタッチスクリーンを含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、任意の好適なコンピューティングデバイス、例えば、デスクトップ、ラップトップ、パーソナルコンピューター、サーバー、メインフレームコンピューター、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等によって実装されることができる。
【0146】
図14は、一実施形態による、画像処理のための方法400を例示するフローチャートである。いくつかの実施形態では、方法400は、プロセッサー334によって(例えば、メモリ332に格納された命令を実行することによって)実行されることができる。方法400は、410で、ウェル内に播種された細胞から、ウェル内のワイヤの周りで成長する組織の画像(入力画像とも呼ばれる)を受信することを含む。いくつかの実施形態では、画像は、
図13のシステム300の撮像デバイス320によって取得される。
【0147】
方法400はまた、420で、画像内の複数の画素からの各画素を画素閾値と比較することに基づいて、第1の二値画像を形成することを含む。いくつかの実施形態では、第1の二値画像を生成するために、画素閾値以上の画素値が1に設定され、画素閾値未満の画素値が0に設定される。いくつかの実施形態では、この定義は逆にすることができ、つまり、画素閾値以下の画素値は1に設定され、画素閾値より大きい画素値は0に設定される。いくつかの実施形態では、第1の二値画像は、大津の方法を使用して形成される(以下の
図15A~15Bを参照して詳細を参照のこと)。
【0148】
方法400の430において、第1の二値画像内のワイヤの第1のエッジおよび第2のエッジが検出され、第1のエッジおよび第2のエッジを表す第2の二値画像が形成される。いくつかの実施形態では、第1のエッジおよび第2のエッジは、第1の二値画像内の画素の勾配に基づいて検出される。いくつかの実施形態では、第1のエッジおよび第2のエッジは、Sobel演算子を使用して検出される(以下の
図15Gおよび15Hを参照して詳細を参照のこと)。
【0149】
方法400の440において、第1のエッジと第2のエッジとの間の中点が、第2の二値画像の各行ごとに計算され、それにより一連の中点が得られる。いくつかの実施形態では、第2の二値画像のm番目の行の中点は、二次元(2D)座標(xm,ym)、およびxm=(x1+x2)/2によって特徴付けられ、ここで、(x1,ym)は第1のエッジの画素の座標であり、(x2,ym)は第2のエッジの画素の座標である。いくつかの実施形態では、画像内のワイヤ(第1のエッジおよび第2のエッジを含む)はx方向に沿っている。これらの実施形態では、中点は、第2の二値画像の各列ごとに計算されることができる。
【0150】
方法400はまた、450で、一連の中点の多項式回帰に基づいて一連の中点にフィッティングする二次方程式を計算することを含む。いくつかの実施形態では、二次方程式は、入力画像内のワイヤの輪郭(または形状)を表す。方法400の460では、二次方程式に基づいてワイヤの撓み点が特定される。
【0151】
いくつかの実施形態では、ウェルは、一連の刺激パラメーターに従って組織に電気刺激を印加するように構成される一連の電極を備える。これらの実施形態では、方法400は、所定の基準を満たすワイヤの撓み点(すなわち、460で特定される)に基づいて一連の刺激パラメーターの一連の値を調整して、一連の刺激パラメーターの更新された一連の値を形成することをさらに含む。そして、刺激信号が一連の電極に送信され、一連の刺激パラメーターの更新された一連の値のセットに従って、電気刺激を組織に印加する。換言すれば、460で特定された撓み点は、組織の成長条件を導出するために(例えば、プロセッサー334によって)使用されることができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、方法400はまた、第1の二値画像内のワイヤの第1のエッジおよび第2のエッジを検出する前に、オープニング演算子を使用して第1の二値画像からアーティファクト画素を除去することを含む(以下の
図15Cおよび15Dを参照して詳細を参照のこと)。いくつかの実施形態では、方法400はまた、第1の二値画像内のワイヤの第1のエッジおよび第2のエッジを検出する前に、クロージング演算子を使用して第1の二値画像を平滑化することを含む(以下の
図15Eおよび15Fを参照して詳細を参照のこと)。
【0153】
いくつかの実施形態では、方法400は、440で中点を計算する前に、第2の二値画像内に含まれない第1のエッジの一部または第2のエッジの一部を完了することをさらに含む。このように、第2の二値画像の各行は、第1のエッジの一部および第2のエッジの一部を含む(以下の
図15Kおよび15Lを参照して詳細を参照のこと)。
【0154】
いくつかの実施形態では、460で特定された撓み点を使用して、組織によってワイヤに加えられる収縮力の量を計算することができる。いくつかの実施形態では、460で特定された撓み点を使用して、ワイヤの静止張力を計算することができる。収縮力および/または静止張力は、組織の成長状態(例えば、成熟度)を示すことができるため、フィードバック制御ループを形成するために使用されることができる(
図16を参照して以下の詳細を参照のこと)。
【0155】
図15A~15Mは、いくつかの実施形態による、ワイヤ追跡の方法(ワイヤ追跡方法とも呼ばれる)を示す。一般的に、ワイヤ追跡方法は、各入力画像内のワイヤセンサーのエッジを識別して、一連の2D座標(x
i,y
i)(ここで、i=1、2、3、...、N、およびNは正の整数である)で表される骨格構造を計算するように構成される。次に、骨格の2D座標を2次多項式にフィッティングさせる(例えば、最小二乗フィッティングを使用して)。一般性を失うことなく、2次多項式(放物線とも呼ばれる)は次のように記される。
【0156】
いくつかの実施形態では、ワイヤ追跡方法にはビット変換工程が含まれており、入力画像は8ビット画像(つまり、0から255までのグレースケールを有する画像)に変換される。場合によっては、入力画像の各画素のデータ値は、16ビット整数形式の形式である。このような場合、これらの画像を8ビット画像に変換して、その後の処理をし易くすることは有益である。
【0157】
16ビット値を8ビット値に直接変換すると、特定のデータが失われる可能性があり、特定のフレームにわずかな明るさの勾配がある場合に閾値にも影響する可能性がある。そして閾値への影響は、ベースラインのスパイクにつながる可能性がある。この問題に対処するために、入力画像を16ビットから8ビットに変換する場合に正規化工程を実行することができる。より具体的には、この正規化工程で、範囲の最小値(すなわち、最小画素値)および範囲の最大値(すなわち、最大画素値)がフレームごとに識別される。そして、フレーム内の各画素値がコントラストストレッチングに従って調整され、例えば、範囲の最小値が0に拡張され、範囲の最大値が256に拡張される。最小値と最大値の間の中間値は、最小値から最大値までの範囲内のそれらがある位置に比例して拡張される。次に、8ビットの入力画像は、閾値処理によって二値画像に変換される。いくつかの実施形態では、入力画像の各画素の画素値が閾値と比較される。画素値が閾値以上の場合、画素値は1に設定され、それ以外の場合、画素値は0に設定される。いくつかの実施形態では、定義を逆にすることができる。つまり、画素値は、閾値以上の場合は0に設定され、閾値未満の場合は1に設定される。いくつかの実施形態では、8ビットイメージは、閾値処理の前に反転できる。つまり、ワイヤ部分は黒に設定され、背景部分は白に設定される。
【0158】
いくつかの実施形態では、二値画像は大津の方法を使用して生成される。特定の理論にも動作モードにも縛られることなく、大津の方法は、画像処理における二値化のための適応性がある閾値処理方法である。可能性のある閾値(例えば、0~255)を調べることにより、大津の方法により、入力画像の最適なおよび/または望ましい閾値を見つけることができる。固定閾値を使用する他の閾値処理方法とは異なり、大津の方法は入力画像に基づいて閾値を計算する。これは、大津の方法では、画像ごとに異なる閾値が計算されることを意味する。
【0159】
いくつかの実施形態では、最適なおよび/または望ましい閾値は、クラス内分散V
wを最小化するか、クラス間分散V
bを最大化することによって決定されることができる。所定の閾値Tに対して、入力画像の画素は、T以下の画素値を有する画素のクラス1、およびTより大きい画素値を有する画素のクラス2を含む2つのクラスに分けることができる。場合によっては、クラス1およびクラス2は、それぞれ入力画像の背景および前景と呼ばれる。各クラスのクラス内分散V
wは、次のように計算されることができる。
(式中、μは特定のクラスの画素値の平均値、Nは特定のクラスの画素数、Xiは特定の画像の各画素の画素値である)
【0160】
クラス間分散Vbは、2つのクラス間の分散を特徴付ける。いくつかの実施形態では、クラス間分散Vbは、Vb=Vt-Vw、として計算されることができ、式中、Vtは合計分散、つまり入力画像内の全ての画素の分散である。所定の画像の場合、Vtは通常定数である。したがって、通常、Vwを最小化すると、同時にVbが最大になる。
【0161】
図15Aは、閾値処理前の例示的な入力画像を示す。
図15Bは、大津の方法を使用して閾値処理後の入力画像を示す。さらに、
図15Aの入力画像は、閾値処理の前に反転される。
図15Bの二値画像で分かるように、ワイヤ部分は背景(すなわち、黒)として設定され、画像の残りは前景(すなわち、白)として設定される。
【0162】
閾値処理後に生成される二値画像は、1つまたは複数のモフォロジー処理の対象となる。モルフォロジー処理には、収縮および膨張の2つの処理を含むことができる。どちらの処理も2つの入力、(1)処理される画像、および(2)構造要素(カーネルとも呼ばれる)、を有することができる。2つの入力はそれぞれは、一連の座標で表される。
【0163】
より具体的には、二値画像に対する収縮処理を以下のように実行することができる。Xを入力二値画像に対応する一連のユークリッド座標とし、Kを構造要素に対応する一連の座標とする。さらに、Kxを、構造要素の原点がxにあるようにKを平行移動したものとする。これらの概念を使用すると、KによるXの収縮は一連の全ての点xであり、KxがXの部分集合である。
【0164】
この構造要素Aによる二値入力画像の収縮を計算するために、入力画像の前景画素のそれぞれを順番に考慮することができる。前景画素(入力画素とも呼ばれる)ごとに、構造要素の原点が入力画素座標と一致するように、構造要素が入力画像の上に重ねられる。構造要素内の全ての画素について、その下の二値画像内の対応する画素が前景画素である場合、入力画素はそのまま残される。ただし、画像内の対応する画素のいずれかが背景である場合、入力画素も背景値に設定される。
【0165】
いくつかの実施形態では、構造要素は3x3であり、この構造要素を使用した収縮処理の効果は、(8連結と想定すると)他の白い画素で完全には囲まれていないあらゆる前景画素を削除することである。これらの画素は白い領域のエッジにある可能性があるため、収縮の実際の効果は、前景領域が縮小し、領域内の穴が大きくなることである。
【0166】
二値画像に対する膨張処理を以下のように実行することができる。最初に、Xを入力二値画像に対応する一連のユークリッド座標、Kを構造要素の一連の座標、KxをKの原点がxになるようにKを平行移動したものとする。そして、KによるXの膨張は、KxとXの交点が非空であるように、一連の全ての点xである。より具体的には、構造要素Kによる二値入力画像の膨張を計算するために、入力画像の背景画素のそれぞれを順番に考慮することができる。背景画素(入力画素とも呼ばれる)ごとに、構造要素の原点が入力画素位置と一致するように、構造要素が入力画像の上に重ねられる。構造要素内の少なくとも1つの画素が下の画像の前景画素と一致する場合、入力画素は前景値に設定される。ただし、画像内の対応する全ての画素が背景である場合、入力画素は背景値のままである。
【0167】
いくつかの実施形態では、構造要素は3x3であり、この構造要素を使用する膨張演算の効果は、(8連結を想定すると)隣接する前景画素を有する全ての背景画素を前景色に設定することである。これらの画素は白い領域のエッジにある可能性があるため、膨張演算の実際の効果は、前景領域が拡大し、領域内の穴が縮小することである。
【0168】
本明細書に記載のワイヤ追跡方法では、閾値処理によって生成される二値画像は、オープニングおよびクロージング演算で処理される。モルフォロジーのオープニングおよびクロージングは、本質的に、様々な順序で適用される収縮および膨張演算子である。特定の理論や演算モードに縛られることなく、オープニングは、両方の演算で同じ構造要素を使用する収縮およびそれに続く膨張として定義され、クロージング演算は、両方の演算で同じ構造要素を使用する膨張およびそれに続く収縮として定義される。
【0169】
オープニングの基本的な効果は、前景画素の領域のエッジから前景(つまり、明るい)画素の一部を削除することである。しかし、オープニングは通常は、収縮よりも破壊的ではない。クロージング演算は、画像内の前景(つまり、明るい)領域の境界を拡大する傾向がある(そして、このような領域の背景色の穴を縮小する)が、一般的に膨張よりも破壊的ではない。
【0170】
図15Cは、閾値処理後に生成された二値画像を示し、
図15Dは、
図15Cに示される二値画像に対してオープニング演算を実行した後に生成される二値画像を示す。
図15Eは、クロージング演算前の二値画像を示し、
図15Fは、
図15Eに示す二値画像に対してクロージング演算を行った後に生成される二値画像を示す。
図15C~15Fでは、構造要素は5×5である。いくつかの実施形態では、クロージング演算は、オープニング演算の後に実行される。いくつかの実施形態では、この順序は逆にすることができ、つまり、クロージング演算の後にオープニング演算が実行される。
【0171】
図15C~15Fで分かるように、オープニングおよびクロージングのモルフォロジー演算は、ワイヤのエッジの妨げとなる可能性があるアーティファクトを除去および/または低減するのに役立つ。オープニング演算子は、不要な漂遊画素を削除し、ワイヤのエッジをきれいにするために適用される。一方、クロージング演算子は、空の空間を埋め、(例えば、
図15E~15Fの出力画像に対して入力画像の左側に見られるような)不要な線を削除できる。
【0172】
ワイヤ追跡方法は、入力画像内のワイヤのエッジが識別されるエッジ検出工程も含む。この工程における入力画像は、例えば、上記のモルフォロジー演算後の画像であることができる。いくつかの実施形態では、エッジ検出は、xおよびy方向の両方で画素値の勾配を計算するように構成されるSobel演算子を使用して実行される。Sobel演算子は、カーネルを入力画像で畳み込み、導関数の近似を計算してエッジを検出する。
【0173】
より具体的には、第1のカーネルG
xを入力画像で左から右に畳み込み、第1の方向(例えば、x方向)の勾配を得ることができる。一般性を失うことなく、第1のカーネルは次のように記述されることができる。
【0174】
第2のカーネルG
yを入力画像で上から下まで畳み込み、第2の方向(例えば、y方向)の勾配を得ることができる。一般性を失うことなく、第2のカーネルは次のように記述されることができる。
【0175】
上記の2つの畳み込み工程により、xおよびy方向の画像の勾配を表す2つのベクトルが生成される。したがって、入力画像の各ピクセルの勾配の大きさは、次のように計算されることができる。
【0176】
図15Gは、上記のオープニングおよびクロージング演算後の二値画像を示し、
図15Hは、Sobel演算子を用いたエッジ検出後の二値画像を示す。エッジ検出後の画像(
図15H)は、エッジ検出画像とも呼ばれる。
図15Hで分かるように、ワイヤの2つのエッジ(すなわち、右エッジおよび左エッジ)が検出され、白い線として示されている。
【0177】
いくつかの実施形態では、エッジ検出画像(例えば、
図15Hに示される画像)は、別の二値画像を生成するために、ワイヤ追跡方法における別の閾値処理で処理される。いくつかの実施形態では、この工程での閾値処理は、上記の大津の方法を用いて実行されることができる。
図15Iはエッジ検出画像を示し、
図15Jは大津の方法を用いて閾値処理後に生成された二値画像を示す。
【0178】
いくつかの実施形態では、エッジが検出された画像は、エッジフィリングでさらに処理される(例えば、閾値処理の後)。場合によっては、ワイヤエッジはエッジ検出画像でトリミングされ、エッジフィリングは(例えば、検出されたエッジの上部と下部における)空のエッジを埋めるように構成される。場合によっては、エッジ検出画像のワイヤエッジのトリミングは、エッジ検出プロセスで使用されるカーネルに起因する可能性があり、画像フレームからトリミングされるエッジは検出されない。したがって、各行の左右のエッジは完全には計算されない。
【0179】
本明細書に記載のエッジフィリング技術は、右エッジ点または左エッジ点のいずれかが画像の最後または最初の列である行を検出するまで、エッジ検出画像の中央の行から上下に横切る(すなわち、ワイヤエッジポイントも画像のエッジにある)。そこから上の行は、最後のまたは最初の列として右または左のエッジで埋められる。
【0180】
図15Kは、閾値処理後のエッジ検出画像を示し、
図15Lは、
図15Kに示される画像に対してエッジフィリングを実行することにより得られる画像を示す。エッジフィリング後の画像は、エッジフィル画像とも呼ばれる。
図15Kで分かるように、ワイヤの右エッジの下部は、画像の右エッジに沿って埋められている。
【0181】
ワイヤ追跡方法の次の工程には、中点の計算が含まれる。この工程では、ワイヤの中点がエッジフィル画像の各行に対して計算される。中点は、左エッジを表す第1の座標と右エッジを表す第2の座標との平均を取ることによって計算されることができる。
図15Mは、一連の計算された中点を示す画像の例を示す。
【0182】
中点が計算されると、これらの中点を多項式回帰の入力として使用して、中点に最もフィッティングする二次方程式を生成できる。統計学では、多項式回帰は、独立変数xと従属変数yとの間の関係がxのn次多項式としてモデル化される回帰分析の形式である。より具体的には、本明細書に記載の回帰方法は、最小二乗法を使用して二次多項式にフィッティングする。上記で計算された中点は、対応するxおよびy座標で表される。座標は基本的に行および列番号である。これらのxおよびy値のセットは、多項式回帰法を使用して方程式を計算するために使用される。
【0183】
一般性を失うことなく、回帰方法は、例えば次の式で表すことができる。
(式中、x
iおよびy
iは、各画像フレームについて計算される中点座標である)
【0184】
式(6)は、行列形式で次のように記述されることができる。
またはより簡潔に次のように記述されることができる。
(式中、Yは要素(y
1、y
2、…、y
n)を有するベクトル、Xは計算された中点x
iを含む行列、Aはフィッティングパラメーターa、b、およびcを含むベクトルである)
【0185】
式(8)を解くと、次の式が得られる。
式(9)は、入力画像フレームごとに実行され、フレームごとに二次方程式を生成する。したがって、フィッティングパラメーター(フィッティング係数とも呼ばれる)は、画像フレームごとに計算される。
【0186】
前の工程からの二次方程式のフィッティング係数を使用して、放物線の撓みまたは変位の最大点を検出する。いくつかの実施形態では、撓み点は、式の導関数を利用してxMで最大値を見つけることによって検出されることができる。次に、式(6)のxのその値にxMを代入して、y座標、すなわちyMを得る。このyM値は、ワイヤの変位を表すためにプロットで使用される。
【0187】
上記の撓み点を使用して、検知ワイヤにかかる力を計算できる。一般的に、力の過渡状態の定量化には、力の記録内に各過渡状態の位置の正確な識別が含まれる。いくつかの実施形態では、ピーク解析法を使用して、理論的な力の軌跡(シミュレートされた力の軌跡とも呼ばれる)を実際の力の軌跡と一致させることにより、力の過渡状態を特定できる。実際の力の軌跡は、経時的に測定された力の変化をプロットした結果のグラフである。組織の収縮は、力が経時的に繰り返し増減するにつれて、結果として得られる軌跡に山と谷として現れる。理論的な力の軌跡は、既知の間隔または既知の頻度で人為的な過渡状態で生成される。ピーク分析法には、信号対雑音比(SNR)が低い記録で、または非常に小さな力の過渡状態記録をもたらす化合物に応答して力の過渡状態の振幅が減少した記録で、過渡状態ピークを特定できる利点がある。
【0188】
次に、実際の力の軌跡を多項式関数にフィッティングさせて、生の力の過渡状態軌跡のノイズを減らし、収縮のパラメーターを多項式関数から計算する。これらの収縮パラメーターには、例えば、過渡状態振幅、過渡状態持続時間、過渡状態のピークまでの時間、過渡状態ピークからの時間、力の生成の最大勾配、見せかけの最大勾配などが含まれる。
【0189】
図16は、一実施形態による、組織培養を操作する方法500を例示するフローチャートである。いくつかの実施形態では、方法500は、
図13に例示されるシステム300のプロセッサー334によって実行されることができる。これらの実施形態では、システム300内のメモリ332は、プロセッサー実行可能コードを格納するように構成される非一時的なプロセッサー可読媒体を備える。プロセッサー334は、プロセッサー実行可能コードの実行時に方法500を実行する。
【0190】
方法500は、510で、ウェル内に播種された細胞から組織を成長させるように構成されるウェル(例えば、
図13のウェル312)に関連付けられた少なくとも1つの検知要素から一連の測定値を受信することを含む。ウェルは、一連の刺激パラメーターに従って組織に電気刺激を印加するように構成される一連の電極を備える。方法500はまた、520で、一連の測定値と組織に関連する一連の所定の基準との比較に基づいて、一連の刺激パラメーターの一連の値を変更する量を特定することを含む。そして、一連の刺激パラメーターを変更する量を用いて一連の値を調整し、530で一連の刺激パラメーターの更新された一連の値を形成する。そして、540で刺激信号が一連の電極に送信され、一連の刺激パラメーターの更新された一連の値に従って、電気刺激を組織に印加する。
【0191】
いくつかの実施形態では、一連の刺激パラメーターは、刺激電圧、刺激頻度、および/または刺激時間のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、刺激信号は、プロセッサー334によって、通信インターフェース336を介して組織成長デバイス310の制御ユニット316に送信されることができる。次に、制御ユニット316は、刺激信号で指定された刺激パラメーターによって特徴付けられる電極に電気信号を送ることによって、刺激信号を実行するように構成される。換言すると、プロセッサー334によって送信された刺激信号は、制御ユニット316への命令として機能し、制御ユニット316は命令に基づいて電極の動作を制御する。
【0192】
いくつかの実施形態では、検知要素は、検知要素とウェルの底部との間にギャップが存在するように、ウェルを横切って配置される少なくとも2つの弾性検知要素(例えば、検知ワイヤ)を備える。これらの実施形態では、ウェル内の組織の成長は、弾性検知要素に力を加えることができ、それにより弾性検知要素の形状を変化をさせる。いくつかの実施形態では、システム300内のプロセッサー334は、弾性検知要素の形状(または形状の変化)を解析して、ウェル内の組織の成長状態を判断するように構成される。判断された成長状態に応答して、プロセッサー334は、一連の刺激パラメーターを変更する量を決定するように構成される。
【0193】
いくつかの実施形態では、一連の刺激パラメーターの初期の一連の値は、所定の刺激プロトコルに基づいて選択される。いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、複数の利用可能な刺激プロトコルの中から所定の刺激プロトコルをユーザーに提示するように構成され、ユーザーは所定の刺激プロトコルとして1つの刺激プロトコルを選択することができる。
【0194】
いくつかの実施形態では、組織に関連する所定の基準は、組織の成熟度基準および/または興奮基準を含む。成熟度基準および/または興奮基準を満たす一連の測定値に応答して、刺激電圧をそれに応じて(例えば、プロセッサー334によって)下げることができる。成熟度基準および/または興奮基準を満たさない一連の測定値に応答して、刺激電圧をそれに応じて(例えば、プロセッサー334によって)上げることができる。いくつかの実施形態では、一連の測定値は、検知要素の画像から得られる組織の成熟状態および/または興奮基準を含む。例えば、検知ワイヤからのデータの処理は、ワイヤの撓みが十分には大きくないことを示し(例えば、撓み量の閾値未満)、それにより組織が期待されたほどには成熟していないことを示す場合がある。この場合、刺激電圧を増加させることができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、一連の測定値は、別のセンサー、例えば、埋め込み電極に印加される電圧を測定するように構成される電圧センサーによって得られることができる。閾値電圧(例えば、プロトコルで指定された)未満の測定電圧に応答して、プロセッサーは、制御ユニット316に命令を送信して、電圧を増加させることができる。組織成長デバイス310の他のいずれの操作パラメーターも同様に調整されることができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、方法500は、一連の測定値のインスタンスを定期的に(例えば、プロセッサー334で)受信し、一連の測定値のインスタンスをメモリー(例えば、メモリー332)に記憶することをさらに含む。これらの実施形態では、ウェル内の組織の成長履歴を記録することができる。いくつかの実施形態では、一連の測定値はまた組織成長デバイス310の動作パラメーター、例えば電極に印加される周波数および電圧を含む。いくつかの実施形態では、一連の測定値は、組織に問題が検出された場合に後で解析およびトラブルシューティングを行うために、例えばカンマ区切り値(CSV)形式または他のいずれの好適な形式でメモリに格納される。
【0197】
いくつかの実施形態では、方法500は、予め設定された期間(例えば、約数日から数週間)、人の介入なしにプロセッサーによって実行されることができる。これらの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、いくつかの利用可能なプロトコルをユーザーに提示することができ、ユーザーは実行するために1つを選択する。ユーザーがプロトコルを選択すると、システム300は、別の人の介入なしに、プロトコルを実行する(および方法500で説明したようにフィードバックに基づいてあらゆる刺激パラメーターを更新する)ように構成されることができる。いくつかの実施形態では、ユーザーインターフェース340は、プロトコルの実行が完了すると、成長結果を表示するように構成されることができる。成長結果は、例えば、組織の画像、検知ワイヤの画像、検知ワイヤの解析から得られる組織の成熟状態および/または興奮状態等を含むことができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、一連の測定値を使用して、組織成長の質を評価できる。このような評価は、例えば、組織成長における1つまたは複数の問題を検出することを含むことができる。いくつかの実施形態では、プロセッサー334は、機械学習による一連の測定値に基づいて、組織成長における1つまたは複数の問題(例えば、組織の汚染、残屑、穴等)を検出するように構成されることができる。これらの実施形態では、プロセッサー334は、例えば、画像分類のために構成される人工のニューラルネットワークを実装するように構成されることができる。画像分類では、入力画像をいくつかのカテゴリのうちの1つに分類でき、各カテゴリは組織成長における一般的な問題を表す。入力画像は、組織の画像、検知要素を包み込む組織の画像、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、(例えば、機械学習モデルによって)組織成長における問題の検出に応答して、プロセッサー334は、修復作業、例えば刺激パラメーターの変更をするようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、組織成長における問題の検出に応答して、プロセッサー334は、警報信号を生成するようにさらに構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサー334は、(例えば、通信インターフェース336を介して)警報信号をユーザーに送信するように構成される。警報信号は、例えば、テキストメッセージ、電子メール、ボイスメール、またはリアルタイム通話を含むことができる。いくつかの実施形態では、一般的な問題の各カテゴリにはエラーコードが割り当てられ、ユーザーに送信される警報信号にはエラーコードが含まれる。
【0200】
図13を再び参照すると、いくつかの実施形態では、システム300(またはプロセッサー334)は、エンドツーエンドのデータ解析を実行するように構成されることができる。これらの実施形態では、生データ(例えば、検知ワイヤの生画像)は、最初にワイヤ追跡のためにプロセッサー334に送られ、ワイヤの動きに基づいて経時的な力の値を生成する。例えば、プロセッサー334は、
図14および
図15A~15Mを参照して説明した方法を実行するように構成されることができる。そして、力の値は、定量的な読み出し、例えば、ピーク振幅、ピークまでの時間等を生成するように構成されるピーク分析に使用される。そして、定量的な読み出しは、グラフ表示のプロットに使用される。グラフ表示は、力の軌跡、経時的な最大力の変化、薬物処理前後のピークまでの時間の比較等であることができる。エンドツーエンド解析では、上記の処理は人の介入なしにプロセッサー334(または他のプロセッサー)によって、実行されることができる。例えば、ユーザーは、システム300によって実行されるプロトコルを選択し、そしてプロトコルの完了時にグラフ表示を受信することができる。いくつかの実施形態では、グラフ表示は、ユーザーインターフェース340上に表示されることができる。いくつかの実施形態では、グラフ表示は、ネットワーク(有線または無線)経由でユーザーに送信されることができる。例えば、グラフ表示は、ユーザーに関連付けられたスマートフォンまたはコンピューターに送信されることができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、システム300(またはプロセッサー334)は、組織成長デバイス310を操作するためのスケジューラを実装するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、プロセッサー334は、FPGAを備え、Verilogまたは他の好適な言語を介してスケジューラを実行することができる。いくつかの実施形態では、オペレーターは、ユーザーインターフェース340を使用して、システム300のパルス間隔を設定することができる。ユーザーインターフェース340は、パルス間隔情報をスケジューラに送信するように構成され、そしてスケジューラは、組織成長デバイス310内の特定のウェルが(例えば、刺激のために)いつパルスを受信するかを正確に決定するためのタイムテーブルを生成するように構成される。したがって、スケジューラを使用して、連続的なウェル刺激のための短期偏差がある平均的な正確な刺激タイミングを提供することができる。
【0202】
本明細書で説明するいくつかの実施形態は、方法に関する。このような方法は、コンピューターで実行される方法(例えば、メモリに格納され、プロセッサー上で実行される命令)であることは言うまでもない。上記の方法が特定のイベントが特定の順序で発生することを示している場合、特定のイベントの順序を変更することができる。さらに、特定のイベントは、繰り返し、可能な場合は並列プロセスで同時に、および上記のように順次実行されることもできる。さらに、特定の実施形態は、1つまたは複数の記載されたイベントを省略することができる。
【0203】
本明細書で説明するいくつかの実施形態は、コンピューター可読媒体に関する。コンピューター可読媒体(またはプロセッサー可読媒体)は、一時的な伝播する信号自体(伝送媒体、例えば、空間またはケーブルで情報を運ぶ伝播電磁波)を含まないという意味で非一時的である。媒体およびコンピューターコード(コードとも呼ばれる場合がある)は、特定の目的のために設計および構成されたものである場合がある。非一時的なコンピューター可読媒体の例としては、磁気記憶媒体、例えばハードディスク、フロッピーディスク、および磁気テープ、光ストレージメディア、例えばコンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD-ROM)、およびホログラフィックデバイス、光磁気記憶媒体、例えば光ディスク、搬送波信号処理モジュール、ならびにプログラムコードを格納および実行するように特別に構成されたハードウェアデバイス、例えばASIC、PLD、ROM、およびRAMデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の他の実施形態は、例えば、本明細書に記載の命令および/またはコンピューターコードを含むことができるコンピュータープログラム製品に関する。
【0204】
コンピューターコードの例としては、例えばコンパイラによって生成されるようなマイクロコードまたはマイクロ命令、機械命令、Webサービスを生成するために使用されるコード、およびインタープリターを使用してコンピューターによって実行される高レベルの命令を含むファイルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、実施形態は、Python、R、Java、JavaScript、C++、または他のプログラミング言語および開発ツールを使用して実行されることができる。コンピューターコードの別の例としては、制御信号、暗号化コード、および圧縮コードが挙げられるが、これらに限定されない。
【0205】
本教示は、様々な実施形態および実施例に関連して説明されてきたが、本教示がこのような実施形態または例に限定されることを意図するものではない。それどころか、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、修正物、および均等物を包含する。
【0206】
本明細書では様々な本発明の実施形態が説明および例示されてきたが、当業者は、機能を実行し、ならびに/または結果および/もしくは本明細書に記載の利点の1つまたは複数を取得するための、様々な他の手段および/または構造を容易に想像するであろう。そしてこのような変形および/または修正のそれぞれは、本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載の全てのパラメーター、寸法、材料、および構成は例示を意図しており、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成は本発明の教示が使用される特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の特定の発明の実施形態の多くの等価物を認識するであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載されたおよび請求された以外の方法で実施できることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載の個々の機能、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。さらに、このような機能、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾していない場合、2つ以上のこのような機能、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0207】
本明細書で定義および使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味を制御するものと理解されるべきである。
【0208】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。本明細書で引用される範囲は両端の値を含む。
【0209】
本明細書および特許請求の範囲全体で使用される用語「実質的に」、「およそ」、および「約」は、一般的に、記載された値のプラスまたはマイナス10%を意味し、例えば、約100には90~110が含まれる。
【0210】
本明細書で使用する場合、用語「POMaC」は、ポリ(オクタメチレンマレエート(無水)シトレート)(POMaC)、または1,8-オクタンジオール、クエン酸、および無水マレイン酸の混合物を含むPOMaCプレポリマーを指す。Tranらの「Synthesis and characterization of a biodegradable elastomer featuring a dual crosslinking mechanism」、Soft Matter、2010年1月1日6巻11号、2449-2461を参照することができ、その全体が参照によりここに組み込まれる。
【0211】
本明細書および特許請求の範囲で使用される語句「および/または」は、そのように結合される要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で記載される複数の要素は、同様に、つまり、そのように結合される要素のうちの「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」の句によって具体的に識別される要素以外の他の要素は、特に識別されるそれらの要素に関連するかどうかに関係なく、必要に応じて存在することができる。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、オープンエンド文言、例えば「含む」と組み合わせて使用される場合、一実施形態ではAのみを(場合によっては、B以外の要素を含む)、別の実施形態ではBのみを(場合によっては、A以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方を(場合によっては他の要素を含む)、等を指す場合がある。
【0212】
本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、上記で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は包括的であり、すなわち、いくつかの要素またはリストの要素、および場合によってはリストに載っていない別の項目、のうちの少なくとも1つを含むのみならず、のうちの2つ以上を含むと解釈される。反対に、明確に示される用語だけ、例えば「のうちの1つだけ」もしくは「のうちの正確に1つ」、または、特許請求の範囲で使用される場合の「からなる」は、いくつかの要素またはリストの要素のうちの正確に1つの要素を含むことを意味する。一般的に、本明細書で使用する用語「または」は、排他性の用語、例えば「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、「のうちの正確に1つ」が前にある場合、排他的な選択肢を示すものとしてのみ解釈されるものとする(つまり、「一方または他方であり、両方ではない」)。特許請求の範囲で使用する場合、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0213】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、1つまたは複数の要素のリストに関連して語句「少なくとも1つの」は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであり、要素のリスト内に具体的にリストされている各々のおよび全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、かつ要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外する必要はない。この定義により、具体的に特定される要素に関連するかどうかに関係なく、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内に、具体的に特定される要素以外の要素が場合によっては存在することもできる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、もしくは同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bは存在せず(および場合によってはB以外の要素を含む)、少なくとも1つのA、場合によっては2つ以上のAを含むことを、別の実施形態では、Aは存在せず(および場合によってはA以外の要素を含む)、少なくとも1つのB、場合によっては2つ以上のBを含むことを、さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA、場合によっては2つ以上のAを含み、かつ少なくとも1つのB、場合によっては2つ以上のBを含む(および場合によっては他の要素を含む)こと等を指すことができる。
【0214】
上記の明細書と同様に、特許請求の範囲において、全ての移行句、例えば、「備える」、「含む」、「運ぶ」、「有する」、「含有する」、「関与する」、「保持する」、「から構成される」等はオープンエンドである、すなわち含むが、限定はされないことを意味すると理解されるべきである。米国特許庁の特許審査手順マニュアル、セクション2111.03に記載されているように、移行句「からなる」および「本質的にからなる」のみが、それぞれ排他的または準排他的移行句となる。
【0215】
特許請求の範囲は、記載された順序または要素に、その趣旨で記載されていない限り限定されるものとして読まれるべきではない。添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって形態および詳細における様々な変更を行うことができることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲およびその均等物の趣旨および範囲内に入る全ての実施形態が特許請求される。
【実施例】
【0216】
実施例1
ここでは、スケーラブルで機能的なプラットフォームへの革新的なマルチマテリアル処理が96ウェルプレートの形式で提案されている。3つのクラスの材料がプラットフォームに統合されている。軟質弾性マイクロワイヤのアレイは、組織形成のアンカーとしてだけでなく、組織収縮を記録するためのセンサーとしても使用される。導電性カーボン電極がプレートに埋め込まれており、組織の成熟のための電気刺激を駆動し、薬物検査中に組織の収縮を調整する。デバイスの大部分は、薬物吸収性ポリジメチルシロキサン(PDMS)を排除するために硬質ポリスチレンプラスチックでできている。このプラットフォームは、現在の最先端のデバイスよりもスループットがより高く、製造コストと組織生産コストが大幅に削減される。
【0217】
当社の組織培養プラットフォーム(ここではBiowire IIプレートと呼ばれる)は組織培養プラスチック(ポリスチレン)でできており、PDMSを含まない最終製品が得られ、薬物の吸収が最小限に抑える。このプラットフォームは、標準の96ウェルプレートの設置面積に基づいており、広く使用されているプレートリーダーと互換性がある。デバイスは、4つの構成要素、1)プレートキャップ、2)ボトムレス96ウェルプレート、3)ポリマーワイヤアレイ、および4)パターン形成されたポリスチレンベース(
図2A~2C)から組み立てられた。プレートキャップおよびボトムレス96ウェルプレートは、市販の構成要素である。ポリスチレンプレートベースは、96ウェルプレート形式に合わせてカスタマイズされ、1つのマイクロウェル(LxWxH:5x1x0.2mm)が各ボトムレスウェルの中心に位置合わせされる(
図2A)。ヒト多能性幹細胞由来の心筋細胞(hCM)およびヒト心臓線維芽細胞(比率10:1)をヒドロゲルマトリックス(3.0mg mL
-1コラーゲンおよび15%(v/v)マトリゲル)でマイクロウェルに入れた。組織のリモデリングと圧縮のための固定点を設けるために、平行に配置される2つの弾性マイクロワイヤ(直径:0.1mm)をマイクロウェル全体にキャスティングした(
図2B)。経時的に、マイクロウェルに播種されたhCM/線維芽細胞/ヒドロゲル混合物は、2本の平行なワイヤにわたって架けられ固定される3D組織に自己組織化される(
図2C)。1週間以内に、組織が収縮し始め、弾性ポリマーワイヤが曲がった。標準的な力センサー(MicroSquishier、CellScale)によって生成された較正曲線を使用して、ポリマーワイヤの変位を組織の収縮力と関連付けることができた。
【0218】
デバイス製造プロセス全体に最大6日かかる場合があるが、手動操作を含むほとんどの工程は短く、複数のプレートを並行して作製できる(
図8A)。ポリマーワイヤおよびベースプレートの作製は同時である。これらの構成要素について、
図8Bおよび
図8Cに示される仕様に従って、標準的なソフトリソグラフィー技術を使用して、SU-8マスターモールドが設計および作製された。次に、PDMSをSU-8マスターに入れて、PDMSを室温で48時間架橋することによりPDMSモールドを作製した。その後、PDMSモールドを使用してポリマーワイヤを製造し、ポリスチレンベースプレートをホットエンボス加工できるようにした。熱膨張の影響を最小限に抑えるために、加熱ではなく室温でPDMSモールドを架橋することを選択した。したがって、得られたPDMSモールドは、広い表面積、例えば96ウェルプレートの設置面積にわたって設計された寸法を保持する。ただし、ベースプレートのホットエンボス加工中には、依然として熱膨張が発生する。当初、この大きな設置面積全体で収縮することなく、事前に決定されたプレートの寸法を維持することは困難であることがわかった。長さ100mmで0.1mmの収縮でさえ、ワイヤとマイクロウェルの間に大きな位置ずれが生じる可能性がある。したがって、ホットエンボス加工後の収縮の程度を経験的に決定し、ワイヤアレイの寸法を再調整して、プレートベースの最終寸法に一致させた(
図8B)。
【0219】
ホットエンボス加工用のPDMSベースのマスターモールド
【0220】
ポリスチレン製のベースプレートを作製するために、ベースプレートのPDMSモールドの背面を、プラズマボンディングまたはコロナエッチング法で6インチのシリコンウェーハに接着した。シリコンウェーハへ結合後、PDMSマスターの機械的特性は、150℃に30分間さらすことでさらに強化された。ポリスチレンシートは、ホットエンボッサーでPDMSマスターに押し当てられて成形され、カスタマイズされたポリスチレンプレートベースが得られた。ホットエンボス加工用のPDMSマスターの作製は、マスターを作成するための従来の金属エッチング方法よりも非常に安価である。PDMSは金属よりも柔らかいため、ホットエンボス加工中に形体の歪みが生じる可能性があるが、この問題はエンボス加工中に高温で低い圧縮力を使用することで回避できることがわかった。金属ベースのマスターに対するPDMSの重要な利点の1つは、エンボス加工されたポリスチレンシートをマスターから簡単に解放できる、一時的な歪みに対する能力である。これは、硬質材料(ポリスチレン)が別の硬質材料(金属マスター)に押し当ててエンボス加工されている場合に、2つの硬質材料がかみ合うのを防ぐために、微細要素が厳密に垂直壁を所有しなければならないという大きな課題である。
【0221】
プレートには、各組織全体に局所的な電場を生成するために、全てのマイクロウェルの周りに一対の内蔵カーボン電極が組み込まれている。外部電極で心臓組織をペーシングすると、時間の経過とともに組織を成熟させる、および拍動周波数を標準化させるの両方で、薬物検査の一貫性が確保されることが示される。ウェルの各列ごとに、ウェルの垂直方向の境界に沿って2つの長いカーボン電極を配置した。
図8Cは、ベースプレートの設計を示す。マイクロウェルの周りの長方形のポストは、ホットエンボス加工の前にカーボン電極をPDMSマスターモールドに保持するように設計された(
図3A)。カーボン電極を、ホットエンボス加工中にポリスチレンシート内に埋め込み、マイクロウェルを構成するプレート表面および側壁に露出させた(
図3B、
図3C)。これらの露出した表面は、組織にできるだけ近くなるように考えられて配置され、組織の長さに沿って電場を生成するのに十分であった。ポリスチレンベース内に厚さ400μmの電極を埋め込むことで、最小限の抵抗で電流を流すことができた。これは、ナノメートルスケールの厚さを有する薄い導電性表面をもたらしたスパッタリング(例えば、スパッタリングされた金電極)を用いた我々の最初の試験を含む他の方法とは対照的に有益である(
図9A)。このような導電性表面は、広い表面積全体に均一にコーティングすることが困難であり、引っかき傷によって容易に損傷を受け、電気抵抗が高くなり、層間剥離のために長期安定性に欠けることが分かった(
図9B)。電源から印加された電圧と比較して、埋め込みカーボン電極全体の電圧降下の割合は無視でき、かつウェルプレート全体で一貫していた(
図10A)。
【0222】
マイクロウェル上の急速ワイヤキャスティング
【0223】
スケーラブルに、微細構造体のアレイを横切って架けられる軟質弾性ポリマーマイクロワイヤのキャスティングをすることは、困難である場合がある。これを回避するために、ポリスチレンベースのマイクロウェル構造上にポリマーワイヤを直接成形および架橋する方法を開発した。これを行うために、ワイヤアレイのPDMSモールドを、モールド上のマイクロチャネルがプレートに面するように、ベースプレートの上にかぶせた(
図4A)。UV光または熱エネルギーで架橋できるクエン酸ベースのポリエステルであるポリ(オクタメチレンマレイン酸(無水物)クエン酸)(POMaC)プレポリマーをチャネル入口に堆積させた。プレポリマー溶液は、毛細管作用によってマイクロチャネルに引き込まれた。特に、プレポリマー溶液は、マイクロチャネルの断面が完全には閉じていなくても、マイクロウェル上のチャネルを連続的に満たした(
図4B)。完全な灌流に続いて、POMaCプレポリマーをUV光にさらして架橋エラストマーワイヤのアレイを生成し、その後PDMSモールドを取り外した。UV架橋ポリマーワイヤの機械的剛性に対するバルクポリマー溶液のバッチ間の変動の影響を軽減するために、UV架橋エネルギーは、架橋後のバルクポリマーのヤング率(説明したようにミオグラフで測定された)が33±3kPaであるように、ポリマーのバッチごとに調整された。UV架橋されたPOMaCワイヤは、一貫してポリスチレンベースに付着し、プレート全体にわたって複数のマイクロワイヤがキャスティングされ、96個のマイクロウェルを横切って架けられた(
図4C)。この方法により、単一工程で96個のマイクロウェルを横切って掛けられる24本のワイヤを取り付けることができた。マイクロワイヤでキャスティングされたプレートベースは、ホットエンボッサーでの熱接着工程で完全に組み立てられ、ポリマーマイクロワイヤでキャストされたポリスチレンプレートベース上にボトムレス96ウェルプレートを融合させた。次に、組み立てられたプレートは、蒸留水で一晩洗浄、空気乾燥、パッケージング、およびガンマ線滅菌を含むいくつかの後処理工程を行った。マイクロワイヤの弾性は、プレート全体を70℃で数日間ベークすることにより、別の熱架橋によりさらに微調整することができる。プレートは、使用前に不必要な熱と光への露出を最小限にするために、使用前に4℃で保存され、光から保護された。
【0224】
プレートのキャラクタリゼーションおよび使用方法
【0225】
プレート内のキャスティングされたポリマーワイヤは、組織の固定点、および収縮の変化を監視する力センサーの両方として使用された。そうするために、ワイヤの変位と力の発生との相関関係を特徴付けた。本発明者らは、市販のマイクロスケール機械試験システム、MicroSquisher(CellScale)を使用して、力-変位較正曲線を作成した(
図5A~5D)。プローブチップは、ポリマーワイヤへの組織の付着と同様な曲率でカスタマイズされた。ポリマーワイヤの中心点において、プローブチップをポリマーワイヤに対して移動させて力と変位の両方をMicroSquisherで記録し、力-変位曲線を作成した(
図5A)。ポリマーワイヤの機械的特性は、熱架橋形成による後処理でさらに微調整できる。2、4、および6日間の熱架橋形成の後の、力-変位曲線およびフィッティングさせた多項式を
図5B~5Dに示す。POMaCワイヤの機械的一貫性は、96ウェルプレート全体で示された。100μmのワイヤの変位における力を別の列のウェル間で比較した場合、有意差はなかった(
図11C)。ワイヤを50、100、および150μm変位させるのに必要な力も、全てのウェル間で再現性があった(
図11B)。さらに、代表的なポリマーワイヤの引張および弛緩曲線は、最小のヒステリシスを示した(
図11C)。各96ウェルプレートで培養された微小組織は、ワイヤをつかむことができた(
図6A)。心臓組織はまた、サルコメアα-アクチニン(緑)およびF-アクチン(赤)が染色された場合、よく整列したサルコメア構造を示した(
図6B)。96ウェルプレートは広く採用されている組織培養形式であるため、Biowireプレートはまた、市販の機器、例えば自動撮像および解析用のSpectraMax画像サイトメーターに対応することを示した(
図6C)。
【0226】
電気刺激による長期組織培養および薬物検査
【0227】
次に、その場測定(例えば、力-変位)のためのプラットフォームの有用性のキャラクタリゼーションを行い、および原理実証明試験を実施して、プラットフォームがBiowire Iと同様の方法で心臓組織の長期培養をサポートできることを示すために、電気刺激および臨床的に関連する薬物による治療の下で、プラットフォーム上で培養された心臓組織の機能的反応を追跡した。心臓組織を生成するために、ヒト心臓線維芽細胞と共培養したヒトiPSC由来の心筋細胞を、96ウェルプレートデバイスにヒドロゲルで播種した。最初の7日間で組織の圧縮が観察され(
図7A、
図7B)、最初の2日間で劇的な変化が見られ、3日後には安定化が続いた。心臓組織の電場刺激は7日目に開始され、さらに12日間継続された。この期間中、組織の電気的機能は、有意に増加した最大捕捉率によって観察されるように改善された(
図7C、
図7D)。プレートは、組織収縮運動の非破壊評価を容易にし、評価は静止張力、活動力、収縮および弛緩時間が、12日間の電気刺激後も安定したままであることを示した(
図7E~7G)。心筋細胞における筋小胞体機能の阻害剤であるタプシガルギン(50×10
-6m)を、電気ペーシング(1.5Hz)の存在下で加えると、組織の収縮および弛緩時間が延長された(
図7H)。さらに、一定の刺激頻度にもかかわらず、薬物適用時に組織の拍動の頻度が半減した(
図7H)。
【0228】
考察
【0229】
この研究では、微細加工された形体(例えば、マイクロウェル)のアレイ上に、架けられた弾性微細構造体(例えば、ワイヤ)を迅速にキャスティングする新しい方法を開発した。ホットエンボッサーによる熱接合により、プレートの複数の部分を融合させ、カーボン電極およびポリマーワイヤの両方をプラットフォームに埋め込んで、組織の周囲に制御された微小環境を作り出すことができた。組織の機能と反応は、電気刺激で操作でき、内蔵された力センサーで追跡できる。このマルチウェルプレート形式では、各組織を個別に培養および解析した。製造プロセス全体で製造から保管までに6日かかるが、プレート内のウェルの数が増えても製造作業負荷が増加しないため、プロセス全体はスケーラブルである。これは、6ウェル、24ウェル、96ウェル、さらには386ウェルプレートを作成するために、同じプロセスを適用できることを意味する。さらに、複数のプレートを並行して作製して、工業生産プロセスと互換性のある、より高い生産スループットを実現できる。1枚のプレートで最大96個の組織を培養でき、実験のスループットは、多くの従来の生体機能チッププラットフォームよりも大幅に高くなっている。さらに、心臓組織の形成には100,000個の細胞しか必要としない。現在、細胞播種は依然としてハイスループット組織生産の律速段階である。しかし、オープンウェル設計により、製薬業界で広く利用されている自動細胞ディスペンサーを使用して、このマルチウェルプレートプラットフォームの細胞播種および操作をスケールアップすることができる。
【0230】
プレート組立後の材料の後処理により、このシステムの撓み-力のプロファイルを調整することもできた。弾性マイクロワイヤの機械的特性のキャラクタリゼーションを行うことにより、組織の収縮運動の機能の読み出しを推測することができる。POMaCワイヤの機械的特性は、96ウェルプレートの全てのウェル間で再現可能であり、これは、このキャスティング方法の信頼性を示している。ポリマーワイヤは常に同じ高さに配置されるため、組織の垂直位置が不均一であるポストベースのプラットフォームとは対照的に、組織の高さは常に一定であり、簡単に監視できる。非破壊的な機能の読み出しは、長期にわたる慢性的な薬物研究にとって重要である。われわれの出願では、心臓組織培養を目的とした軟質弾性マイクロワイヤの迅速なキャスティングを示した。しかし、より複雑な架けられた微細構造体をキャスティングして、同じ方法でより複雑な組織構造の形成を可能にすることができる。このプラットフォームには、組織の成熟を支援するために少なくとも12日間継続的に組織を刺激できる内蔵電極も組み込まれている。導電性の高いカーボン電極は、電源から電極までの電圧降下を最小限にし、それによって培養および試験環境の正確な制御を容易にする。電極の存在は、薬物応答の厳密な調査において重要な役割を果たす。例えば、急性または慢性の形式で薬物を試験する場合、生理学的に関連する頻度で組織を刺激することにより、薬物の変時効果を変力効果から分離できる。タプシガルギン治療により、組織の収縮および弛緩が遅くなり、ペーシング頻度が固定されているにもかかわらず、頻度が減少した。これは、組織の弛緩が遅すぎて、前の収縮サイクルの弛緩が終了するまで次の脱分極を開始できないことを意味し、したがって、頻度は半分に減少する。したがって、われわれのプラットフォームは、この化合物の既知の生体内の効果を再現することができ、関連する生体内のスクリーニングプラットフォームとしての応用を示唆している。
【0231】
ここでは、96ウェルプレート形式でスケーラブルな3D心臓組織培養および収縮力の読み出しのための弾性マイクロワイヤのアレイを製造するための簡単な方法を説明した。このアレイ化された組織培養プレートは、最小数の細胞でマイクロスケールの組織培養を促進し、内蔵されたカーボン電極で心筋細胞の成熟を促進し、および心毒性予測のために非侵襲的に機能評価をすることができる。作製の容易さおよび高いスループット、ならびに高忠実度の心臓組織の可用性に基づいて、特徴のあるプラットフォームは、薬理学的化合物の組織応答を評価するための有益なツールを提供する。
【0232】
実験手順
【0233】
POMaCプレポリマー溶液の調製POMaCを使用して、内蔵ポリマーセンサーを準備した。POMaCは、最初に重縮合反応によってプレポリマーゲルを調製することによって合成された。クエン酸(Caledon、A00019)、無水マレイン酸(Sigma、63200)、および1,8-オクタンジオール(Sigma、03303)を、アルコール(1,8-オクタンジオール)官能基に対して等モル量のカルボン酸(クエン酸+無水マレイン酸)、およびクエン酸の無水マレイン酸に対する比が1:4で、3口の250mL丸底フラスコで合わせた。反応溶液を加熱して溶融重合溶液を生成し、窒素気流下、200rpmで5時間攪拌しながら150℃で行った。得られたゲルを1,4-ジオキサン(Sigma、D201863)に溶解し、続いて脱イオン水中で滴下沈殿させて、未反応モノマーまたは短鎖オリゴマーを除去した。次に、水相を注ぎ出し、未溶解のプレポリマーを集めて濃縮した。精製されたプレポリマーは、6:4(w:w)の比率で、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(PEGDM Mw~500)(Sigma、445886)と、および5(w/w)%の光開始剤、2-ヒドロキシ-1-[4(ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパン(Sigma、410896)と混合された。得られた溶液は、センサーキャスティングで使用するまで4℃で保存された。
【0234】
内蔵カーボン電極を有するベースプレートの作製
【0235】
長方形のマイクロウェル(5x1mm、LxW)および長方形のノッチ(1x0.5mm、LxW)からなる繰り返しパターンは、AutoCADで設計された。隣接するマイクロウェルからの間隔(全方向)は、従来の96ウェル組織培養プレートとの互換性を達成するために9mmであった。ソフトリソグラフィーを用いて、SU-8フォトレジストマスターモールドは、コンピューターモデルから得られたフォトマスクを使用して生成され、形体の高さが200μmのネガのPDMS(Sylgard 184シリコーンエラストマーキット、Dow Coming、01064291)マスターモールドを作製するのに使用された。簡潔に述べると、シリコーンエラストマーベースおよび硬化剤をカップ内で5:1(w:w)の比率で激しく混合し、混合物をSU-8マスターモールドに注いで室温で硬化させた。そして、PDMSマスターモールドは、プラズマボンディングまたはコロナエッチングによってシリコンウェーハに固定された。電極をポリスチレン製のベースプレート内に埋め込むために、最初にカーボン電極をPDMSモールド上に配置し、長方形のノッチの間に固定した。カーボン電極は、Ohio Carbon Blankで機械加工されたカスタムコンピューター数値制御(CNC)であった。電極は、静水圧プレスされたカーボン/グラファイト(カタログ番号AR-14、Ohio Carbon Blank)であった。そして、ブランクのポリスチレンシートおよびシリコンウェーハを上に配置し、EVG 520 Hot Embosserに入れた。温度および加圧力を190℃および3000Nまで徐々に上げ、内圧を5x10-3mbarにした。温度および圧力が周囲条件に戻った後、得られたカーボン電極が埋め込まれたパターン化されたポリスチレンベースがPDMSモールドから取り外された。エッジがトリミングされ、使用できるようになった、
【0236】
一括でのPDMSモールドの作製およびワイヤの取り付け
【0237】
POMaCワイヤを製造するために、並列に配置された24個のマイクロチャネル(断面:100x100μm)を備えるPDMSモールドを、前記のようにSU-8マスターモールドから作製した。シリコーンエラストマーベースおよび硬化剤をカップ内で15:1(w:w)の比率で激しく混合し、混合物15gをSU-8マスターモールドに注いで室温で硬化させた。エッジトリミングでチャネルの端部を垂直に開き、PDMSモールドのチャネル側を透明なテープでクリーニングして、ほこりの微粒子を除去した。PDMSモールドは、チャネルの位置および方向ならびにポリマーワイヤの位置をマイクロウェルに位置合わせするための位置を調整して、エンボス加工されたポリスチレンシートの上に静かに押し付けられた。POMaCプレポリマー溶液をシリンジでPDMSモールドのトップ縁部に分注し、室温で48時間暗所で毛細管作用によりプレポリマーを灌流させた。灌流後、ポリマーをUV光(1500mJcm-2)下で架橋させ、エラストマー材料ネットワークが生成された。過剰な非灌流POMaCポリマーを除去し、PDMSモールドをプレートベースからゆっくりと剥がし、ポリスチレンシートに付着したままのポリマーワイヤを残しておいた。
【0238】
ボトムレス96ウェルプレートへのベースの熱接合
【0239】
ボトムレス96ウェルプレートを底部を上にして平らな表面に配置して、ワイヤおよび電極を備えるベースプレートをそれに面するように配置し、ポリマーワイヤの対を個々のウェルの中央に配置した。ベースとプレートとの間のプレートの角にアセトンを一滴垂らして、プラスチック層を一時的に接着し、その後、ホットエンボス加工によって組み合わせを完全に接着させた。底面は700Nの加圧力と5x10-3mbarの内圧で184℃まで徐々に加熱され、トップの加熱面は96℃に維持された。
【0240】
組み立て後加工
【0241】
エンボス加工後、接合プレートのウェルを蒸留水で満たし、一晩(37℃、5%CO2)恒温放置した。次に水を除去し、無菌状態下でプレートを風乾した。その後、プレートを6日間ベーク(70℃)し、ガンマ線滅菌を行った。滅菌後、プレートを遮光して4℃で保存した。
【0242】
プレートのキャラクタリゼーション
【0243】
バルクポリマーのヤング率を測定するために、機械的ストレッチャーと力変換器で構成されるミオグラフ装置(Kent Scientific)を使用して、PBS溶液中のUV光(1500mJcm-2)で架橋したPOMaCポリマーのストリップ(0.3x1x10mm)を伸張した。得られた応力-ひずみ曲線の勾配を使用してヤング率を計算した。ウェル内のポリマーワイヤ力/変位曲線は、市販のマイクロメカニカルテスター、MicroSquisher(CellScale)を使用して特徴付けられた。テストプローブ(直径=0.1524mm)は、ソフトリソグラフィーによってSU-8マスターから作製されたカスタマイズされたチップ(半楕円、0.5、0.7、および0.8mmの長径と直径の比4:1)で修正され、接着剤(T-GSG-01 Titan Gel)を使用して提供されたタングステンプローブに取り付けられた。ポリマーワイヤは、試験前に7日間、培地に浸された。テストチップをマイクロウェルの中央に配置し、次にポリマーワイヤをワイヤの長軸に対して垂直に移動するプローブチップを使用して中央で変位させ、対応する力の出力(n≧12)を記録した。各カスタムチップの実験データを3次多項式にフィッティングさせ、各カスタムプローブの標準力曲線を生成した。プレート全体の一貫性を保つために、100mmの変位で測定された力を各ウェルの正しいワイヤ間で比較した。エッジの圧力によって最も外側の2つの列に不均一性が生じることが分かったため、最も外側の2つの列は意図的に測定から除外された。
【0244】
電極に沿った電圧降下
【0245】
プレートの組み立て後、列に沿ったカーボン電極を電圧源(9Vバッテリー)に接続した。携帯用マルチスコープ(Extech、381275)を使用して、異なるウェル(行あたりn=3ウェル)内のカーボン電極の各対間の電圧差を測定した。電圧降下は、カーボン電極と電圧源との間の電圧の差を電圧源からの電圧で割って計算された。
【0246】
ヒドロゲルの調製
【0247】
コラーゲンヒドロゲル(500μL)は、高濃度のラット尾部コラーゲン(9.82mg mL-1で153μL、Corning)を、15%(v/v)マトリゲル(75μL、BD Biosciences)、NaHCCb(2.3mMで50μL、Sigma)、NaOH(10mMで5μL、Sigma)、脱イオン滅菌H2O(167μL)、および1xM199(50μL、Sigma)と組み合わせて調製し、最終コラーゲン濃度3.0mgmL-1を得た。
【0248】
心筋細胞の調製および人工心臓組織の生成
【0249】
主に心室心筋細胞(CM)は、前記のモノレイヤー分化プロトコルを使用する、hiPSC系統BJ1Dに由来した。分化の21日目に、心筋細胞は、以前に確立された方法で単一細胞に分離された。簡潔に述べると、ハンクス平衡塩類溶液中のコラゲナーゼタイプII(Worthington、LS004205)1mg mL-1をモノレイヤー心筋細胞培養に加え、室温で一晩恒温放置した。分離した細胞を心臓線維芽細胞(Lonza、NHCF-V)と10:1の細胞数比で混合した。混合細胞をペレット化し、5.5x107細胞mL-1でコラーゲンヒドロゲルに再混合した。細胞とゲルの混合物を、マイクロウェルあたり2mLで播種した。ゲル化が完了するまで水分を保つために、培地の液滴をウェルの壁上に置いた。プレートを37℃、5%CO2で10分間恒温放置した後、培地を添加した。播種後(0日目)、組織を、POMaCワイヤの周囲でリモデルさせるために7日間培養した。組織の形態を監視するために、組織の明視野画像を毎日撮影した。7日目までに、組織は同期して収縮し、収縮するたびにPOMaCワイヤを曲げた。
【0250】
組織形態の一括画像化
【0251】
SpectraMax MiniMax 300 Imaging Cytometerを使用して、ウェルプレート内の組織を画像化し、組織の毎日の形態変化を監視した。96ウェルプレートの各ウェルで9枚の写真を撮影し、自動的につなぎ合わせてウェルの全体像を示す。4’,6-ジアミノジノ-2-フェニルインドール(DAPI)チャネル画像化による収縮解析および明視野顕微鏡(4倍の対物レンズ)を使用して、自発収縮とペーシング(1Hz)収縮を画像化した。青色のチャネル(10倍の対物レンズ、λex=350nm、λem=470nm、100フレームs-1、5ms露出)を使用して、組織の収縮挙動を記録および解析し、ワイヤの変位を追跡するためにカスタムMATLABコードを使用してデータを出力した。平均組織幅および組織の幅(Tw)、ポリマーセンサーへの付着サイトは、弛緩状態での明視野像を使用して測定された。ポリマーセンサーの受動的な変位は、青色のチャネルで評価された。ポリマーセンサーの総撓みおよび受動的撓み(mm)は、プレートのキャラクタリゼーションの節で記載したように生成された較正曲線を使用して、力(mN)に変換された。総力および受動的な力の最終的な読み取り値は、Twおよびカスタムチップサイズに従って補間された。活動力は、総力と受動的な力との差であった。カスタムMATLABコードを使用して、受動的な力、活動力、収縮、および弛緩時間を計算した。
【0252】
免疫染色および共焦点顕微鏡
【0253】
組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.2%Tween20で透過処理し、10%ウシ胎児血清でブロックした。以下の抗体、マウス抗αアクチニン(Abcam;1:200)およびロバ抗マウス-Alexa Fluor 488(Abcam;1:400)を用いて免疫染色を行った。Phalloidin-Alexa Fluor 660(Invitrogen;1:200)を使用して、F-アクチン繊維を染色した。共焦点顕微鏡画像は、Olympus FluoView 1000レーザー走査型共焦点顕微鏡(Olympus Corporation)を使用して取得した。
【0254】
電気刺激による組織維持および薬物検査
【0255】
96ウェルプレートの各ウェルには300mLの培地が含まれており、24時間ごとに交換された。内蔵の力センサーおよび電極により、組織はその収縮運動および薬物応答に関してその場で評価されることができた。検査前に、組織の明視野ビデオを撮影して、力の計算に必要な測定値を取得した。検査中、ペーシング電圧は興奮閾値の110%まで増加した。1本のポリマーワイヤ(青色チャネル、倍率10倍)は、比較のために一貫して画像化された。ベースラインビデオを撮影したら、0.3μLのタプシガルギン(DMSO中50x10-3m)をゲル充填グピペットチップを使用してウェルに加えた。15分後、タプシガルギンが有効になった後、ビデオが再び撮影された。ビデオは、カスタムMATLABソフトウェアを使用して解析された。
【0256】
統計解析
【0257】
統計解析は、Sigma Plot 12.0またはPrism 6.0を用いて実行された。実験グループ間の違いは、スチューデントのt検定または一元配置分散分析によって解析された。一元配置分散分析には、正規性検定(Shapiro-Wilk)とペアワイズ多重比較手順(TukeyまたはHolm-Sidak法)が用いられた。p<0.05は、全ての統計検定で有意と見なされた。全てのデータは、平均±標準偏差として示された。各統計解析のサンプルサイズ(n)は、図の説明に記載された。
【0258】
先行技術文献
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