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特表2023-522320滑らかな融合フィルムを有する口腔内フィルム製剤
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  • 特表-滑らかな融合フィルムを有する口腔内フィルム製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】滑らかな融合フィルムを有する口腔内フィルム製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20230523BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230523BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20230523BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/10
A61K45/00
A61P25/00
A61P25/04
A61P43/00
A61P5/00
A61P29/00
A61K31/57
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562661
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2021059596
(87)【国際公開番号】W WO2021209472
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20169697.8
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・リン
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ・ヴァルヌス
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア・ノレッリ
(72)【発明者】
【氏名】マーリオ・フィッカー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA89
4C076BB22
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD61
4C076EE23A
4C084AA17
4C084NA03
4C084NA10
4C084NA20
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC031
4C084ZC032
4C084ZC421
4C084ZC422
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA57
4C086NA03
4C086NA10
4C086NA20
4C086ZC11
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206DA25
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA77
4C206NA03
4C206NA10
4C206NA20
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、ポリマーマトリックスおよびポリマーマトリックス中に分散された少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分を含む口腔内フィルム製剤であって、マトリックスポリマーは、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)であり、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、少なくとも40重量%であり、口腔内フィルム製剤は、以下の工程:a)マトリックスポリマー、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分、ならびに水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物である溶媒を含む懸濁液を製造する工程、b)得られた懸濁液を、支持体上にまたは鋳型中にキャスティングする工程、およびc)ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度より高い温度で懸濁液を乾燥させる工程、を含むプロセスによって得られる、口腔内フィルム製剤に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスおよびポリマーマトリックス中に分散された少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分を含む口腔内フィルム製剤であって、マトリックスポリマーは、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)であり、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、少なくとも40重量%であり、該口腔内フィルム製剤は、以下の工程:
a)マトリックスポリマー、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分、ならびに水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物である溶媒を含む懸濁液を製造する工程、
b)得られた懸濁液を、支持体、コーティングライナー上にまたは鋳型中にキャスティングまたはコーティングする工程、ならびに
c)ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度より高い温度で懸濁液を乾燥させることで、口腔内フィルム製剤を得る工程
を含むプロセスによって得られる、前記口腔内フィルム製剤。
【請求項2】
少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分は、ホルモン、オピオイド、非ステロイド系抗炎症薬、ドーパミン受容体アゴニスト、抗精神病薬、抗コリン薬、合成オピオイド、テルペン、ホルモン類似体および/またはイミダゾリンから選択される、請求項1に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項3】
少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分は、ウリプリスタル酢酸エステル、イブプロフェンまたはケトプロフェンから選択される、請求項1または2に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項4】
少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、8重量%から60重量%、好ましくは15重量%から40重量%である、請求項1から3のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項5】
少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)は、50,000ダルトンから180,000ダルトン、好ましくは75,000ダルトンから150,000ダルトンの範囲における分子量を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項6】
少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)は、ポリ(エチレンオキシド)WSR N-10である、請求項1から5のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項7】
少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、40重量%から85重量%、好ましくは55重量%から82重量%である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項8】
マトリックスポリマー対少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分(PEO/API)の重量比は、1/1から10/1、好ましくは1.6/1から2.8/1、より好ましくは1.8/1から2.4/1の範囲である、請求項1から7のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項9】
1種またはそれ以上の可塑剤、好ましくはグリセリンおよび/またはトリアセチンをさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項10】
1種またはそれ以上の可塑剤、好ましくはグリセリンおよび/またはトリアセチンの量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、0.5重量%から20重量%、好ましくは3重量%から7重量%である、請求項9に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項11】
溶媒は、水およびアルコール、好ましくはエタノールの混合物であり、ここで、水対有機溶媒、好ましくはエタノールの重量比は、好ましくは95/5から30/70の範囲である、請求項1から10のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項12】
懸濁液は、ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度よりも少なくとも2℃高い、好ましくは少なくとも4℃高い温度で乾燥される、および/または
懸濁液は、ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度よりも30℃以下高い、好ましくは20℃以下高い温度で乾燥される、および/または
懸濁液は、60℃から80℃、好ましくは65℃から75℃の範囲における温度で乾燥される、
請求項1から11のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項13】
懸濁液は、工程b)の前にガスで発泡される、請求項1から12のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項14】
口腔内フィルム製剤の両側の表面粗さRaは、1μm未満、好ましくは0.8μm未満、より好ましくは0.4μm未満である、および/または
口腔内フィルム製剤の少なくとも片側の表面粗さRaは、0.3μm未満である、
請求項1から13のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【請求項15】
ポリマーマトリックスおよびポリマーマトリックス中に分散された少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分を含む口腔内フィルム製剤を製造するための方法であって、マトリックスポリマーは、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)であり、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、少なくとも40重量%であり、該方法は、以下の工程:
a)マトリックスポリマー、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分、ならびに水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物である溶媒を含む懸濁液を製造する工程、
b)得られた懸濁液を、支持体、コーティングライナー上にまたは鋳型中にキャスティングまたはコーティングする工程、ならびに
c)ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度より高い温度で懸濁液を乾燥させることで、口腔内フィルム製剤を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項16】
口腔内フィルム製剤および/または方法工程は、請求項1から14に定義されている通りである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
医薬としての使用のための、請求項1から14のいずれか1項に記載の口腔内フィルム製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与のための医薬として適当な水不溶性粒子状医薬活性成分を含む口腔内フィルム製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内フィルム製剤(OTF)は、ポリマーマトリックスに基づく薄い可撓性フィルムであり、薬物送達のための活性物質が負荷されている。口腔内フィルム製剤は経口的に摂取され、口の中で直ちに溶解するまたは粘膜に適用される。それらは、舌の上もしくは下、または頬側に置かれ、そこで、それらは次いで溶解または崩解する。
【0003】
薬物の一般的な剤形は、錠剤である。例えば、ウリプリスタル酢酸エステルは、よく知られている緊急避妊薬(「モーニングアフターピル」)であり、これは、30mgの微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステル、ならびにさらなる成分としてラクトース一水和物、ポビドン、クロスカルメロースナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを含有する錠剤(「EllaOne(登録商標)」)として投与される。EllaOne(登録商標)は、2009年に欧州連合において承認された。特許文献1は、医薬活性成分ウリプリスタル酢酸エステルを開示している。
【0004】
EllaOne(登録商標)のような錠剤は、通常、嚥下を簡便にするために水とともに摂取される。清浄な飲料水への迅速なアクセスがない場所において、錠剤を摂取することは、したがって、殊に医薬品を嚥下するのに困難を有する、即ち嚥下困難を患うある特定の患者群にとって難しいことがある。口腔における適用で迅速に溶解する口腔内フィルム製剤の投与は、追加の水を必要とせず、そのため有利である。
【0005】
特許文献2は、高い量の医薬剤およびポリマーを組み込むフィルム、ならびにそれの製造のための方法に関する。ポリマーについて記述されている例としては、とりわけ、酸化ポリエチレンが挙げられる。該フィルムは、フィルムの均一性を実現するために、制御された乾燥プロセスによって形成することができる。望ましくは、該フィルムは、フィルムの単位面積あたり10%変動以下の活性薬剤で薬学的活性薬剤を含有する。該実施例において、穀物っぽい味を有するフィルムが得られる。
【0006】
口腔内フィルム製剤の投与のための高い患者コンプライアンスを実現するため、医薬活性成分(例えばウリプリスタル酢酸エステル)を結合し、投与の際口腔中に心地よい感覚(心地よい「口当たり」)を作り出し、粘膜によく付着するポリマーマトリックスが必要である。
【0007】
医薬活性成分は、しばしば、環境条件に対し感度が高いので、ある種の保護または安定化も望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP422100B1
【特許文献2】WO2008/089151A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、医薬活性成分を安定して封入し、異物感覚がないまたは少ししかない良好な口当たりを作り出す口腔内フィルム製剤を提供することであった。加えて、口腔内フィルム製剤は、口腔粘膜によく付着するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に定義されている通りの口腔内フィルム製剤は、この目的を実現することができる。したがって、本発明は、ポリマーマトリックスおよびポリマーマトリックス中に分散された少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分を含む口腔内フィルム製剤であって、マトリックスポリマーは、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)であり、少なくとも55℃の融点(DSC融点(ピーク)温度)を有するポリ(エチレンオキシド)の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて少なくとも40重量%であり、口腔内フィルム製剤は、以下の工程:
a)マトリックスポリマー、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分、ならびに水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物である溶媒を含む懸濁液を製造する工程、
b)得られた懸濁液を、支持体、コーティングライナー上にまたは鋳型中にキャスティングまたはコーティングする工程、ならびに
c)ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度より高い温度で懸濁液を乾燥させることで、口腔内フィルム製剤を得る工程
を含むプロセスによって得られる、口腔内フィルム製剤に関する。
【0011】
ポリ(エチレンオキシド)マトリックスポリマーおよび該医薬活性成分を含有する懸濁液の乾燥は、ポリマー中に分散された医薬活性成分とともに乾燥期間中ポリマーの短期溶融を導くことが見出された。結果として、医薬活性成分(例えばウリプリスタル酢酸エステル)は、ポリマーマトリックス中に密に包埋され、外部の影響に対して保護される。
【0012】
さらに、こうしたプロセスは、非常に滑らか(滑らかなプラスチック箔と同様)である口腔内フィルム製剤の表面を作り出し、これが、口腔における摂取で良好な口当たりを提供する。同時に、該口腔内フィルム製剤は、ポリ(エチレンオキシド)の低いガラス転移温度により粘膜によく付着する。
【0013】
APIは、医薬活性成分のための共通の略語である。示されている通り、口腔内フィルム製剤は、一般に知られており、OTFと省略される。口腔中で容易に溶解する口腔内フィルム製剤は、その上、口内分散性フィルムとして共通して参照される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のOTFは、例えば、0.3cmから20cm、好ましくは1cmから10cmの範囲におけるサイズを有する。OTFの厚みは、例えば10μmから1000μm、好ましくは40μmから400μmの範囲であってよい。本発明のOTFは、単一層フィルムまたは多層フィルムの形態をとることができ、単一層フィルムが好ましい。
【0015】
本発明のOTFは、ポリマーマトリックスおよびポリマーマトリックス中に分散された少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分を含む。
【0016】
本明細書において、水不溶性APIは、25℃の温度で1.0g/L以下、好ましくは0.3g/L以下の水中可溶性を有するAPIを指す。
【0017】
一般に、APIは、親油性APIである。本明細書において、親油性APIは、25℃の温度で1.5超、好ましくは2.5超のlog P(n-オクタノール/水分配係数)を有するAPIを指す。
【0018】
適当なAPIは、その結果として、とりわけ、感染を処置するための薬剤;ウイルス増殖抑制剤;フェンタニル、スフェンタニル、ブプレノルフィンなどの鎮痛薬;麻酔薬;食欲低下薬;テルブタリンなど、関節炎および喘息の処置のための活性成分;抗けいれん薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;抗ヒスタミン薬;抗下痢薬;片頭痛、そう痒、病的状態および悪心に対する薬剤;スコポラミンおよびオンダンセトロンなどの酔い止め;パーキンソン薬;抗精神病薬;解熱薬、鎮痙薬、抗コリン薬、ラニチジンなど潰瘍に対する薬剤;交感神経刺激薬;ニフェジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬;ベータ遮断薬;ドブタミンなどのベータアゴニスト;抗不整脈薬;抗高張薬;ACE阻害剤;フルマゼニルなどのベンゾジアゼピンアゴニスト;冠動脈、末梢および大脳の血管拡張薬;中枢神経系のための刺激;ホルモン;催眠薬;免疫抑制薬;筋弛緩薬;N-メチルDアスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト;副交感神経遮断薬;副交感神経刺激薬;プロスタグランジン;精神刺激薬;鎮静薬;トランキライザー;デキストロメトルファンなどの鎮咳薬である。
【0019】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の水不溶性粒子状APIは、ホルモン、テルペン、ホルモン類似体、オピオイド、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)、ドーパミン受容体アゴニスト、抗精神病薬、抗コリン薬、合成オピオイドおよび/またはイミダゾリン、好ましくはホルモンから選択される。
【0020】
適当なホルモンの例は、ステロイドホルモンまたはプロスタグランジンである。NSAIDSについての例は、イブプロフェンおよびケトプロフェンである。
【0021】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分は、ウリプリスタル酢酸エステル、イブプロフェンまたはケトプロフェンから選択される。特に好ましい実施形態において、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分は、ウリプリスタル酢酸エステルである。ウリプリスタル酢酸エステルは、好ましくは、微粒子化されたウリプリスタル酢酸エステルである。
【0022】
ウリプリスタル酢酸エステルは、以下の化学式を有する17α-アセトキシ-11α-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-19-ノルプレグナ-4,9-ジエン-3,20-ジオン)である:
【化1】
【0023】
粒子状水不溶性APIは、ポリマーマトリックス中に分散される。APIは、好ましくは結晶性形態である。粒子は、ポリマーマトリックスに堅く付着されている。光学評価によると、ウリプリスタル酢酸エステルなどのAPIは、均質のOTFが得られるようなやり方でマトリックス中に包埋される(「API小片」でない)。
【0024】
口腔内フィルム製剤における少なくとも1種の水不溶性粒子状APIの量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、好ましくは8重量%から60重量%、より好ましくは15重量%から40重量%である。
【0025】
口腔内フィルム製剤のマトリックスのポリマーは、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)である。ポリ(エチレンオキシド)は、水溶性ポリマーである。1つ、2つまたはそれ以上の型のポリ(エチレンオキシド)を使用することができるが、好ましくは、1つの型のポリ(エチレンオキシド)が使用される。一般に、適当なポリ(エチレンオキシド)は、55℃から75℃の範囲における融点を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合の融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される通りの溶融ピーク温度として定義される。アルミニウムるつぼにおいて窒素雰囲気(20ml/minの窒素)下で10K/minの加熱速度(2つの加熱サイクル)を用いて、-60℃の出発温度から+210℃の最終温度を適用するDSC 204 FI Phoenix(登録商標)(Netzsch)上で、DSCを行った。
【0027】
水溶性ポリマーとして使用されるポリ(エチレンオキシド)は、好ましくは、50,000ダルトンから180,000ダルトン、好ましくは75,000ダルトンから150,000ダルトンの範囲における分子量を有する。特に好ましいポリ(エチレンオキシド)は、約100,000ダルトンの分子量および約65℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)WSR N-10(PEO WSR N-10)である。PEO WSR N-10は、Polyox(登録商標)WSR N-10またはPolyox(登録商標)WSR N-10 NFとして、それぞれDow Chemical Companyから市販されている。
【0028】
少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)、好ましくはPEO WSR N-10の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、少なくとも40重量%であり、該量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、好ましくは40重量%から85重量%、または50重量%から85重量%、より好ましくは55重量%から82重量%である。
【0029】
好ましい実施形態において、マトリックスポリマー対少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分(PEO/API)の重量比は、1/1から10/1、好ましくは1.6/1から2.8/1、より好ましくは1.8/1から2.4/1の範囲である。
【0030】
ポリマーマトリックスの融点より高い温度での乾燥工程と一緒に、本発明による口腔内フィルム製剤におけるポリ(エチレンオキシド)マトリックスの高い割合および高いPEO/API比は、それぞれ、APIがポリマーマトリックス中に密に包埋されることで、外部の影響に対するAPIの保護の改善が実現されるのを可能にする。これは、それぞれ貯蔵安定性および分解反応の阻害の点から見て有利である。
【0031】
特に好ましい実施形態において、口腔薄層は、1種またはそれ以上の可塑剤をさらに含む。適当な可塑剤についての例は、ポリオール、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、または脂肪酸とのグリセリンモノエステル、およびグリセリントリエステル、例えば、トリアセチン、クエン酸のエステル、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、水、エタノール、α-トコフェロール安息香酸ベンジル、ステアリン酸ブチル、クロロブタノール、フタル酸ジプチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ステアリン酸、トリカプリリンである。可塑剤は、好ましくは、グリセリンおよび/またはトリアセチンである。
【0032】
可塑剤は、主に、融点を低下させることおよびガラス転移温度を低減することに寄与する。可塑剤の添加は、口腔内フィルム製剤の粘膜付着特性を増強する。さらなる利益は、触覚的に可撓性のOTFが可塑剤の添加によって得ることができることである。
【0033】
存在するならば、可塑剤、好ましくはグリセリンおよび/またはトリアセチンの総量は、通常、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、0.5重量%から20重量%、好ましくは3重量%から7重量%の範囲である。
【0034】
口腔薄層は、この技術分野において共通である1種またはそれ以上のさらなる賦形剤をさらに含むことができる。適当な賦形剤についての例は、矯味剤、甘味剤、香味剤、滑沢剤、顔料、着色剤、安定剤、充填剤、唾液刺激剤、乳化剤、界面活性剤、増強剤、pH調節剤、緩衝液、緩衝剤、放出調整剤、軟化剤、保湿剤、鋳型離型剤、接着剤、抗付着剤および抗酸化剤である。好ましくは、1種またはそれ以上の甘味剤は、口腔内フィルム製剤中で使用される。甘味剤についての例は、サッカリンナトリウムおよびスクラロースである。
【0035】
甘味剤など任意選択のさらなる賦形剤の総量は、通常、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、15重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0036】
抗酸化剤についての例は、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、トコフェロールである。
【0037】
得られた口腔内フィルム製剤における、即ち乾燥工程c)後の残留溶媒含有量は、好ましくは、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、0.2重量%から10重量%、好ましくは0.8重量%から6重量%の範囲である。含有される残留溶媒は、水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒であり得る。
【0038】
口腔内フィルム製剤は、以下の工程:
a)マトリックスポリマー、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分、ならびに水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物である溶媒を含む懸濁液を製造する工程、
b)得られた懸濁液を、支持体、コーティングライナー上にまたは鋳型中にキャスティングまたはコーティングする工程、ならびに
c)ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度より高い温度で懸濁液を乾燥させることで、口腔内フィルム製剤を得る工程
を含むプロセスによって得られる。
【0039】
製造されるべき口腔内フィルム製剤の材料およびその適当な割合は、上記で考察されており、これが参照される。
【0040】
最初に、マトリックスポリマー、少なくとも1種の水不溶性粒子状API、ならびに水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物である溶媒を含む懸濁液が製造される。懸濁液において、少なくとも1種の水不溶性粒子状APIは、溶媒中に懸濁される。マトリックスポリマーは、一般に、溶媒中に溶解される。
【0041】
使用される溶媒は、水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物であり、ここで、水の使用が好ましい。適当な有機溶媒についての例は、水と混和性である有機溶媒、例えば、アルコール、特にエタノールおよびエチレングリコール、またはケトン、特にアセトン、またはエーテル、特にテトラヒドロフランおよび1,4-ジオキサンである。水および1種またはそれ以上の有機溶媒の混合物が使用される場合において、水対有機溶媒、好ましくはエタノールの重量比は、例えば、95/5から30/70の範囲であり得る。
【0042】
好ましい実施形態において、1種またはそれ以上の可塑剤、好ましくはグリセリンおよび/またはトリアセチンは、懸濁液に組み込まれる。場合により、甘味剤など1種またはそれ以上のさらなる賦形剤は、任意の順序で添加することができる。
【0043】
懸濁液を製造するための成分を組み合わせるための、いかなる順序も適当である。例えば、マトリックスポリマーが溶媒中に溶解され、次いで、少なくとも1種の水不溶性粒子状APIが添加されることで、懸濁液を製造することができる。1種もしくはそれ以上の可塑剤および/または1種もしくはそれ以上のさらなる賦形剤は、少なくとも1種のAPIの添加前、添加中または添加後に添加することができる。
【0044】
本発明のOTFは、非発泡フィルムまたは非多孔質フィルムであってよい。代わりに、OTFは、ガス、ガス混合物、液体または液体混合物で充填される空間または空洞を有する固化された泡の形態で存在するマトリックスを含むことができる。こうしたOTFは、共通して、「泡-OTF」と称される。
【0045】
泡OTF(発泡フィルム)を製造する場合において、懸濁液は、一般に、ガスで発泡される。発泡は、一般に、キャスティング工程b)の前に実施される。発泡するための適当なガスについての例は、空気、アルゴン、NまたはCOである。
【0046】
得られた懸濁液は、支持体、コーティングライナー上にまたは鋳型中にキャスティングまたはコーティングされる。懸濁液は、それ自体で拡散することができる、および/または懸濁液は、所望の湿潤厚に拡散される。懸濁液の製造およびキャスティングまたはコーティングおよび任意選択の拡散は、当業者によって知られている共通のプロセス工程である。
【0047】
支持体上にまたは鋳型中にキャスティングされ、場合により拡散される懸濁液は、ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度より高い温度で乾燥される。乾燥工程において、溶媒が蒸発されることで、口腔内フィルム製剤を得る。得られたフィルムは、所望の寸法の断片にカットすることができる。
【0048】
好ましい実施形態において、懸濁液は、ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度よりも少なくとも2℃高い、好ましくは少なくとも4℃高い温度で乾燥される。代わりにまたは加えて、懸濁液は、ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度よりも30℃以下高い、好ましくは20℃以下高い温度で乾燥されることが好ましい。懸濁液は、好ましくは、60℃から80℃、好ましくは65℃から75℃の範囲における温度で乾燥される。
【0049】
懸濁液を乾燥させるための熱処理は、例えば4分間から60分間、好ましくは8分間から30分間実施することができる。
【0050】
例えば、およそ65℃の融点を有するPEO WSR N10(Polyox(登録商標)WSR N10)が使用される好ましい実施形態において、約70℃の温度で懸濁液を乾燥させるのが適当である。
【0051】
本発明において、融点が懸濁液の乾燥温度より低いポリ(エチレンオキシド)を使用した。これは、乾燥中のフィルムマトリックスの短時間の融合を確実にした。これの結果として、API、例えばウリプリスタル酢酸エステルを安定して封入する非常に滑らかなフィルムが生成される。非常に滑らかな表面(滑らかなプラスチック箔と同様)を有する生成された口腔内フィルム製剤は、経口投与で良好な口当たりを提供する。APIは、ポリマーマトリックスの溶融中に懸濁されるので、固化の後に外部の影響に対するAPIに対する保護の増強をもたらす、ポリマーマトリックス中へのAPIの密な内包が実現される。
【0052】
したがって、口腔内フィルム製剤の両側の表面粗さRaは、1μm未満、好ましくは0.8μm未満、より好ましくは0.4μm未満である、および/または口腔内フィルム製剤の少なくとも片側の表面粗さRaは、0.3μm未満であることが好ましい。
【0053】
さらに、使用されるポリ(エチレンオキシド)は、口腔中の良好な接着を確実にする、体温(<37℃)より低いガラス転移温度を有する。口腔内フィルム製剤は、粘膜への良好な接着を提供する。
【0054】
本発明は、ポリマーマトリックスおよびポリマーマトリックス中に分散された少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分を含む本発明による口腔内フィルム製剤を製造するための方法であって、マトリックスポリマーは、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)であり、少なくとも55℃の融点を有するポリ(エチレンオキシド)の量は、口腔内フィルム製剤の総重量に基づいて、少なくとも40重量%であり、該方法は、以下の工程:
a)マトリックスポリマー、少なくとも1種の水不溶性粒子状医薬活性成分、ならびに水または水および1種もしくはそれ以上の有機溶媒の混合物である溶媒を含む懸濁液を製造する工程、
b)得られた懸濁液を、支持体、コーティングライナー上にまたは鋳型中にキャスティングまたはコーティングする工程、ならびに
c)ポリ(エチレンオキシド)の溶融温度より高い温度で懸濁液を乾燥させることで、口腔内フィルム製剤を得る工程
を含む、方法にも関する。
【0055】
使用される材料、その適当な割合およびプロセス工程に関する詳細は、上記で考察されているので、それが参照される。
【0056】
本発明は、医薬として使用のための、上記の本発明による口腔内フィルム製剤にも関する。APIがウリプリスタル酢酸エステルを含むならば、口腔内フィルム製剤は、緊急避妊薬としての使用に、即ち、性交後の、特に、保護されていない性交後の妊娠の防止における使用に適当である。
【0057】
口腔フィルムは、口腔中に投与され、ここで、APIの放出とともにフィルムの早い崩解が実現される。飲料水の添加は必要でない。
【0058】
本発明は、ここで、以下の実施例を参照して、より具体的に説明されるが、それらは、この発明の例示のために示され、それらについて限定することは意図されない。
【実施例
【0059】
APIとしてウリプリスタル酢酸エステルを用いる全ての実施例において、以下の粒子径分布を有するウリプリスタル酢酸エステルを使用した:
10=1.48μm±11.20%;d50=3.64μm±8.71%;d90=6.73μm±10.40%;d95=7.86μm±11.08%;d99=10.52μm±16.30%。
【0060】
実施例1
APIとしてウリプリスタル酢酸エステルを用いるPEOベースのOTF
OTF積層体を標準的な実験室的方法(攪拌機、ガラス容器、コーティングツール、乾燥オーブン)によって製造した。適当な時間の間プロセス溶媒(水)中でAPI、マトリックスポリマーおよび賦形剤を混合すること、次いで、製造された塊を適当なライナー上にコーティングすること、続いて、乾燥オーブン中で乾燥させることによって、製剤を懸濁製剤として製造した。このプロセスは、積層片をもたらし、それらを適当なサイズのOTFに抜き出した。Polyox WSR N10を予備溶液(Polyox WSR N10:水中21%)として使用した。
【0061】
以下の製剤(乾量基準として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分30%)として水および70℃の乾燥温度を用いて懸濁製剤として製造した:
【表1】
【0062】
断裂抵抗性口腔内フィルム製剤を実現した。得られたOTFの触覚的および光学的判定は、非常に滑らかなフィルム表面、およびポリマーマトリックス中のAPIの良好な包埋を明らかにした。
【0063】
実施例2
APIとしてウリプリスタル酢酸エステル、代替プロセス溶媒混合物を用いるPEOベースのOTF
OTF積層体を標準的な実験室的方法(攪拌機、ガラス容器、コーティングツール、乾燥オーブン)によって製造した。適当な時間の間プロセス溶媒(エタノール/水 10%/90%混合物)中でAPI、マトリックスポリマーおよび賦形剤を混合すること、次いで、製造された塊を適当なライナー上にコーティングすること、続いて、乾燥オーブン中で乾燥させることによって、製剤を懸濁製剤として製造した。このプロセスは、積層片をもたらし、それらを適当なサイズのOTFに抜き出した。
【0064】
以下の製剤(乾燥組成物として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分30%)として水および70℃の乾燥温度を用いて懸濁製剤として製造した:
【表2】
【0065】
断裂抵抗性口腔内フィルム製剤を実現した。得られたOTFの触覚的および光学的判定は、非常に滑らかなフィルム表面、およびポリマーマトリックス中のAPIの良好な包埋を明らかにした。
【0066】
以下の表は、実施例1からのOTF試料の融点(ピーク温度)を示す(3つの測定)。フィルム中に残留の水分および/または残留の可塑剤が依然としてある。これは、純粋なポリマーと比較して融点を低下させることがある(融点低下)。
【0067】
【表3】
【0068】
図1は、Polyox WSR N10マトリックスポリマーの溶融ピーク(ピーク1)およびAPIウリプリスタル酢酸エステルの溶融ピーク(ピーク2)を示す実施例1のOTFのDSCを示す。上に記述されている通り、融点低下は、水分/可塑剤残留物により起こりうる。
【0069】
実施例3
APIとしてイブプロフェンを用いるPEOベースのOTF
OTF積層体を標準的な実験室的方法(攪拌機、ガラス容器、コーティングツール、乾燥オーブン)によって製造した。適当な時間の間プロセス溶媒中でAPI、マトリックスポリマーおよび賦形剤を混合すること、次いで、製造された塊を適当なライナー上にコーティングすること、続いて、乾燥オーブン中で乾燥させることによって、製剤を懸濁製剤として製造した。このプロセスは、積層片をもたらし、それらを適当なサイズのOTFに抜き出した。Polyox WSR N10を予備溶液(Polyox WSR N10:水中21%)として使用した。
【0070】
以下の製剤(乾燥組成物として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分24%)として水および70℃の乾燥温度を用いて懸濁製剤として製造した:
【表4】
【0071】
断裂抵抗性口腔内フィルム製剤を実現した。得られたOTFの触覚的および光学的判定は、非常に滑らかなフィルム表面、およびポリマーマトリックス中のAPIの良好な包埋を明らかにした。
【0072】
実施例4
APIとしてケトプロフェンを用いるPEOベースのOTF
OTF積層体を標準的な実験室的方法(攪拌機、ガラス容器、コーティングツール、乾燥オーブン)によって製造した。適当な時間の間プロセス溶媒中でAPI、マトリックスポリマーおよび賦形剤を混合すること、次いで、製造された塊を適当なライナー上にコーティングすること、続いて、乾燥オーブン中で乾燥させることによって、製剤を懸濁製剤として製造した。このプロセスは、積層片をもたらし、それらを適当なサイズのOTFに抜き出した。Polyox WSR N10を予備溶液(Polyox WSR N10:水中21%)として使用した。
【0073】
以下の製剤(乾燥組成物として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分35%)として水および70℃の乾燥温度を用いて懸濁製剤として製造した:
【表5】
【0074】
断裂抵抗性口腔内フィルム製剤を実現した。得られたOTFの触覚的および光学的判定は、非常に滑らかなフィルム表面、およびポリマーマトリックス中のAPIの良好な内包を明らかにした。
【0075】
実施例5
表面形態測定
2μmの触針先端半径を用いるKLA Tencor P15表面プロファイラーで、表面形態測定を行った。実施例1のOTFの両側で、表面スキャンを2mm×2mmの部域に行った。この部域上で、3つの異なる線スキャンを測定し、表面粗さについてRa(判定されたプロファイルの算術平均偏差)、Rq(二乗平均平方根)、Rp(最大ピーク高さ)およびRv(最大谷深さ)振幅パラメータを決定し、下記の表Aおよび表Bに図示した。値は、2つの側が両方とも非常に滑らかであることを示し、Ra値は、磨かれた鋼など非常に滑らかな材料に匹敵する。
【0076】
OTFサイドA:
【表6】
【0077】
OTFサイドB:
【表7】
【0078】
比較例1-PVAベースのOTF
以下の製剤(乾燥組成物として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分40%)として水を用いて懸濁製剤として製造し、発泡するために空気を使用し、乾燥させるために70℃の温度を適用した。使用されたポリマーは、PVA 4-88(水溶性ポリマー、分子量約31,000ダルトン、加水分解度約86.7~88.7mol%、180℃より高い融点/分解)であった。PVA 4-88を予備溶液(PVA 4-88:水中35%)として使用した。
【0079】
【表8】
【0080】
得られたOTFの触覚的および光学的判定は、粗いフィルム表面を明らかにした。
【0081】
OTFサイドA:
【表9】
【0082】
OTFサイドB:
【表10】
【0083】
比較例2-Kollicoat(登録商標)IRベースの製剤
以下の製剤(乾燥組成物として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分33.7%)として水および70℃の乾燥温度を用いて懸濁製剤として製造した。使用されたポリマーは、Kollicoat(登録商標)IR(BASFから、水溶性ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールコポリマー(融点およそ208℃))である。
【0084】
【表11】
【0085】
脆性口腔内フィルム製剤を実現した。得られたOTFの触覚的および光学的判定は、でこぼこしたおよび非連続的なフィルム表面、ならびにポリマーマトリックス中のAPIの不十分な包埋を明らかにした。
【0086】
比較例3-融点未満で乾燥させた、APIとしてウリプリスタル酢酸エステルを用いるPEOベースのOTF
OTF積層体を標準的な実験室的方法(攪拌機、ガラス容器、コーティングツール、乾燥オーブン)によって製造した。適当な時間の間プロセス溶媒(水)中でAPI、マトリックスポリマーおよび賦形剤を混合すること、次いで、製造された塊を適当なライナー上にコーティングすること、続いて、乾燥オーブン中で乾燥させることによって、製剤を懸濁製剤として製造した。このプロセスは、積層片をもたらし、それらを適当なサイズのOTFに抜き出した。Polyox WSR N10を予備溶液(Polyox WSR N10:水中33%)として使用した。
【0087】
以下の製剤(乾量基準として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分30%)として水および50℃(Polyox WSR N10の融点より低い)の乾燥温度を用いて懸濁製剤として製造した:
【表12】
【0088】
断裂抵抗性口腔内フィルム製剤を実現した。得られたOTFの触覚的および光学的判定は、集塊化されたAPIを有するマットフィルム表面を明らかにした。
【0089】
得られたOTFの触覚的および光学的判定は、片側(サイドB)の滑らかな表面、ならびに他の側(サイドA)の粗いおよびマットフィルム表面を明らかにした。
【0090】
OTFサイドA:
【表13】
【0091】
OTFサイドB:
【表14】
【0092】
比較例4-融点未満で乾燥させた、APIとしてウリプリスタル酢酸エステルを有するHPMCベースのOTF
OTF積層体を標準的な実験室的方法(攪拌機、ガラス容器、コーティングツール、乾燥オーブン)によって製造した。適当な時間の間プロセス溶媒(水)中でAPI、マトリックスポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)603およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)60SH50)および賦形剤を混合すること、次いで、製造された塊を適当なライナー上にコーティングすること、続いて、乾燥オーブン中で乾燥させることによって、製剤を懸濁製剤として製造した。このプロセスは、積層片をもたらし、これを適当なサイズのOTFに抜き出した。
【0093】
以下の製剤(乾量基準として明記されている)を有する口腔内フィルム製剤を、プロセス溶媒(固形分32%)として水、および70℃(Polyox WSR N10の融点より低い)の乾燥温度を用いて懸濁製剤として製造した:
【表15】
【0094】
断裂抵抗性口腔内フィルム製剤を実現した。得られたOTFの触覚的および光学的判定は、集塊化されたAPIを有するマットフィルム表面を明らかにした。
【0095】
得られたOTFの触覚的および光学的判定は、片側(サイドA)のマット表面および他の側(サイドB)の粗いフィルム表面を明らかにした。
【0096】
OTFサイドA:
【表16】
【0097】
OTFサイドB:
【表17】
【0098】
実施例2
安定性試験
OTFの試料を40℃の温度および75%の相対湿度で貯蔵することによって、実施例1および比較例1のOTFに対する安定性試験を実施した。貯蔵後、試料をウリプリスタル酢酸エステルの分解生成物についてHPLCによって試験した。検出された主な分解生成物は、N-デメチルウリプリスタルアセテート(DMUA)であった。以下の表1および2は、貯蔵前のOTF中のウリプリスタル酢酸エステルの初期量に基づき重量%でDMUAの量および検出された分解生成物の総量(合計)を示す。
【0099】
N-デメチルウリプリスタルアセテート(DMUA)は、以下の式を有する:
【化2】
【0100】
実施例1の製剤は、比較例1の製剤よりも安定であると見出された。これは、マトリックスポリマーとしてのPEOの利益をもたらす影響を示し、ここで、APIは製造プロセスにより密に包埋された。
【0101】
【表18】
【0102】
【表19】
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1図1は、Polyox WSR N10マトリックスポリマーの溶融ピーク(ピーク1)およびAPIウリプリスタル酢酸エステルの溶融ピーク(ピーク2)を示す実施例1のOTFのDSCを示す。
図1
【国際調査報告】