(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】膜ファウリング制御用カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤、ならびに、添加剤を用いる膜ファウリング制御用システムおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
B01D 65/06 20060101AFI20230523BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230523BHJP
【FI】
B01D65/06
C02F1/44 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563929
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2021060756
(87)【国際公開番号】W WO2021214333
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522409356
【氏名又は名称】エス. アー. ローイスト ルシェルシュ エ デヴロプマン
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タバタバイ エス.アシャー アー.
(72)【発明者】
【氏名】ガートナー ロバート セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】カラマジャティ ナラハーイ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ペシャウ シャビール
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA42
4D006HA61
4D006KC03
4D006KC16
4D006KD30
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MC03
4D006MC09
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB03
4D006PB08
(57)【要約】
膜ファウリング制御用カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤であって、膜(1)を流過する液体に添加された場合に、膜(1)のファウリング制御のために、膜(1)に流動性保護層(7)を形成する粒子(6)を特に含み、粒子(6)は、超微細合成無機沈降粒子および極微細合成無機沈降粒子から選択されるカルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子を含むことを特徴とする膜ファウリング制御用カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤、プロセス、ならびに、膜ファウリング制御用システムが提供されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜ファウリング制御用カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤であって、膜(1)を流過する液体に添加された場合に、前記膜(1)のファウリング制御のために、前記膜(1)に流動性保護層(7)を形成する粒子(6)を特に含み、粒子(6)は、超微細合成無機沈降粒子および極微細合成無機沈降粒子から選択されるカルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子を含むことを特徴とし、ここで、前記超微細合成無機沈降粒子は、1μm以下のd
50、10μm以下のd
90、および、50nm~500nmのd
10の粒径分布を有するカルシウムおよび/またはマグネシウムに基づいており、また、ここで、前記極微細合成無機沈降粒子は、5μm以下のd
50、15μm以下のd
90、および、200nm~3μmのd
10の粒径分布を有するカルシウムおよび/またはマグネシウムに基づいている、膜ファウリング制御用カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤。
【請求項2】
前記カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は、沈降炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は、沈降水菱苦土石を含む、請求項1または2に記載の添加剤。
【請求項4】
前記カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は、カルシウム、好ましくは沈降炭酸カルシウムに基づく第1の無機物と、マグネシウム、好ましくは水菱苦土石に基づく第2の無機物とを含む複合粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項5】
前記複合粒子は、前記第1の無機物のコアおよび前記第2の無機物のシェルを含む、請求項4に記載の添加剤。
【請求項6】
前記カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は、反応性であるか、または、官能基化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項7】
前記カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は不活性である、請求項1~6のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項8】
前記カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は、0.1以上および1.5以下の個数基準分布から得られる多分散性値を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項9】
前記カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は、50mV以下、好ましくは45mV以下、より好ましくは40mV以下のゼータ電位の絶対値を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項10】
前記合成無機沈降粒子は、窒素吸着マノメトリにより計測され、および、BET法に従って算出される、15m
2/g以上の比表面積を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項11】
前記添加剤は、1.5重量%~15重量%の合成無機沈降粒子含有量を有するスラリーの形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項12】
前記添加剤は粉末の形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項13】
前記超微細粒子は、好ましくは0.8μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、および、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上の平均粒径分布d
50を有する限外ろ過ファウリング制御粒子である、請求項1~12のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項14】
前記極微細粒子は、好ましくは5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、および、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1.2μm以上の平均粒径分布d
50を有する精密ろ過ファウリング制御粒子である、請求項1~12のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項15】
膜ファウリング制御用プロセスであって:
・被ろ過液体を膜(1)を通して案内するステップ;
・前記膜(1)の上流で、ファウリング制御粒子(6)を含む膜ファウリング制御添加剤を前記被ろ過液体に添加するステップであって、前記被ろ過液体に添加される前記ファウリング制御粒子(6)は前記膜(1)に流動性保護層(7)を形成するものであり、ここで、前記被ろ過液体がファウリング物質(10)を含有する場合、前記液体が前記膜(1)を通して案内される前に、前記ファウリング物質(10)は前記流動性保護層(7)中に保持されるステップ
を含み、
前記膜ファウリング制御添加剤は、請求項1~14のいずれか一項に記載のカルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤であることを特徴とする、膜ファウリング制御用プロセス。
【請求項16】
前記添加剤を前記液体に添加するステップの前に、水酸化カルシウムおよび/または水酸化マグネシウムの炭酸塩化により前記添加剤をインサイチュで形成するステップをさらに含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
膜ファウリング制御用システムであって:
・第1の案内部(2);
・第2の案内部(3);
・前記第1の案内部(2)と前記第2の案内部(3)との間に配置されて、前記第1の案内部(2)から前記第2の案内部(3)に液体を案内することにより液体をろ過する膜(1);ならびに
・ファウリング制御粒子(6)を含む膜ファウリング制御添加剤が充填され、および、前記ファウリング制御粒子(6)により前記膜(1)に流動性保護層(7)が形成されて、前記膜(1)がファウリング物質(10)から保護されるよう、前記膜ファウリング制御添加剤を前記第1の案内部(2)に添加するよう構成されているファウリング制御手段(4)
を備え、前記膜ファウリング制御添加剤は、請求項1~14のいずれか一項に記載の膜ファウリング制御添加剤であることを特徴とする、膜ファウリング制御用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜ファウリング制御用システムおよびプロセス、ならびに、膜ファウリング制御用カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
膜は、公共飲用水の供給および排水処理、食品および飲料プロセス、製薬、石油およびガス、ならびに、さらに多くを含む、多数の産業における水処理に用いられる。
【0003】
膜ろ過に係る主な操作上の問題はファウリングである。被ろ過液体に含まれるファウリング物質が膜に付着することで、膜性能の劣化がもたらされてしまう。異なる種のファウリングが存在する。コロイド状/粒子状のファウリングは、ファウリング物質が膜表面上および孔の内部に蓄積することで形成され、これにより、膜の透水性が低下してしまう。有機ファウリングは、原液に由来する天然または合成有機物によって引き起こされる。バイオファウリングは、膜表面上にコロニーを形成してバイオファウリングを引き起こすことが可能であるバクテリアまたは藻類などの水生生物に起因する。無機ファウリングまたはスケーリングは、難溶性塩の過飽和限界の超過に伴う、膜表面における硬質の鉱物の堆積物の形成である。従って、ほとんどの膜用途において、膜の操作/耐用年数に対するファウリングの悪影響を最低限とするために、ファウリング制御処置が求められている。
【0004】
各用途におけるファウリングは、供給水の質、膜および操作条件に大きく依存することが見出された。それ故、用途に応じて、すなわち、被ろ過液体中におけるファウリング物質の種類に応じて、膜および操作条件を正しく選択することがファウリングを最低限とするための一つの方策である。しかしながら、多種多様な異なるファウリング状況に対応するために多種多様な膜フィルタが必要となる。個々の用途はわずかに異なっているために、フィルタ用途の想定が困難となっている。
【0005】
ファウリングに対する他の解決策は、膜の定期的な洗浄である。これは、物理的洗浄、生物学的洗浄または化学的洗浄によって達成可能である。物理的洗浄は、ガス洗浄、スポンジ、ウォータージェットまたは浸透液を用いた逆洗であり得る。物理的洗浄はまた、被ろ過液体に添加されるいくらかの研磨洗浄剤を含んでいることが可能である。化学的洗浄では、ファウリング物質および不純物を除去するための、例えば酸、塩基、酸化剤、酵素成分、界面活性剤、錯化剤および配合洗剤といった薬品が使用される。化学的洗浄は通常、物理的洗浄では除去できないファウリングの除去により効果的である。しかしながら、化学的洗浄では廃棄物が増大し、それ故、環境に悪影響を及ぼしてしまう。物理的洗浄は環境には優しいが、より頻繁に行う必要があり、または、時には、膜からのファウリング物質の除去には不十分であり得る。上記の膜洗浄は膜の回復とも呼ばれ、すなわち、ファウリング後における膜の機能を復旧させる方策である。
【0006】
物理的洗浄と化学的洗浄とを組み合わせることも可能である。とりわけ、不水溶性炭酸カルシウムを用いる欧州特許第1920821号明細書に一例を見出すことが可能である。
【0007】
さらなる解決策は、被ろ過水の前処理である。前処理は、被ろ過水が膜に到達する前に含まれるファウリング物質を低減させるか、または、膜材料および構造との相互作用が低減するかもしくは制限されるようファウリング物質の特性を変化させる。前処理の例は、凝析、吸着、酸化、磁性イオン交換(MIEX)、生物学的処理またはいくつかの統合された前処理である。通常、これは、ファウリング制御添加剤を被ろ過水に添加して、被ろ過水をコンディショニング、すなわち、被ろ過水が膜に達する前に含まれるファウリング物質の量を変更または低減させることにより達成される。しかしながら、水の前処理に係る効率は、薬剤の種類(凝析剤、吸着媒、凝集剤、酸化性物質等)、投与量、投与形態(連続的または断続的)、投与点、混合効率、温度、ファウリング物質の特性(疎水性、電荷密度、分子量および分子サイズ)および膜の特徴(膜電荷、疎水性および表面形態学)といった多くの要因に応じる。従って、前処理方法は用途条件に対して非常に影響されやすく、個々に計画、最適化および監視が必要となる。
【0008】
凝析/凝集によるコンディショニングは通例、従来のろ過技術(例えば、媒体ろ過)において用いられている。コンディショニングは、特に、媒体床の目詰まりおよび表面ケーキの形成またはフィルタの目詰まりといった問題を排除することにより、媒体ろ過器具が正しく機能可能であるよう被ろ過液体を準備することを目的とする。
【0009】
膜技術は本来、従来のろ過技術に代わる、高性能であると共に薬品を使用しないものとして設計されたが、実際の経験から、安定な膜の操作を確保するためには、種々の前処理プロセス(物理化学的プロセスを含む)が必要とされ得ることが分かっている。従って、膜により被ろ過水の前処理に、凝析がファウリング制御として適応された。凝析添加剤を被ろ過水に添加することで、ファウリング物質のより大きなフロックへの集合が促進されて、膜孔の閉塞が低減または排除される。しかしながら、膜孔は、従来のろ過技術における孔よりも2~3桁小さいために、微小なフロックで十分であるとみなされた。凝析剤は、有機物であることも、無機物であることも可能である。無機凝析剤は、例えばアルミニウムまたは鉄塩である。凝析は、現在、膜による水処理システムにおいてもっとも広範に用いられているファウリング制御薬品である。ここで、凝析剤はファウリング制御添加剤として作用する。
【0010】
凝析剤に係る一つの問題は、未反応の凝析剤が膜に達して、膜の表面または膜の多孔性構造中において反応する可能性があることである。膜では、多量の凝析剤の使用による繊維の目詰まり、または、加水分解性金属凝析剤のより小さな単量体、二量体および三量体による孔の閉塞が生じ得る。つまり、凝析剤は、ファウリングを解決するのではなく、ファウリングの原因となってしまう可能性があった。低品質の凝析剤では、Fe2+およびMn2+によるファウリングもまた生じ得る。鉄によるファウリングに対しては、透水性を回復させるために、特別に調整された徹底的な洗浄プロトコルが必要とされる。加えて、定期的な膜洗浄によって生じる、使用済みの凝析剤を含有する水は、適切な処理をすることなく直接環境に廃棄すると、環境に対して影響を及ぼしてしまう可能性がある。
【0011】
上記の前処理による対策は被ろ過水をコンディショニングしてファウリングを制御する一方で、膜のコンディショニングもまた公知である。例えば、国際公開第2001027036A1号パンフレット、および、国際公開第2002044091A2号パンフレットには、各フィルタサイクルにおいて、膜をコンディショニングするために被ろ過水に添加するろ過助剤が開示されている。被ろ過水に添加されるこのろ過助剤は、浸透液のフラックスにより膜上に堆積物層を形成するファウリング制御粒子を含有している。堆積物層は、堆積物層中にファウリング物質を保持することにより、ファウリングから膜を保護する。各洗浄サイクルの終わりに、保持されたファウリング物質を伴う堆積物層は、例えば逆洗によって膜から洗浄される。水酸化鉄、酸化アルミニウムおよび水酸化アルミニウム、焼結酸化鉄粒子、粉砕活性炭、クレイ粒子および他の無機粒子のイオン交換樹脂粒子および懸濁液が、膜ファウリング制御添加剤として提案されている。0.5~20マイクロメートル(μm)の大きさのファウリング制御粒子を用いることが提案されている。しかしながら、ファウリング制御粒子として提案されているすべての材料は、反応性であり、研磨性であり、有害性であり、または、環境的に望ましくなく、膜、ポンプに損傷を与えたり、および/または、洗浄により生じる排水の扱いで問題が生じるといった大きな副次的作用を有していた。従って、この技術は、工業規模での用途が見出されていない。
【0012】
既述の膜ファウリング制御添加剤と同様のシステムが、国際公開第2017009792A1号パンフレットにおいても記載されている。加えて、洗浄ステップ中においても、刺激応答層で刺激が形成されてファウリング制御粒子が除去されるまで、ファウリング制御粒子により形成された流動性保護層が刺激応答層に結合したままとなるよう、膜および反応性ファウリング制御粒子は刺激応答層を有することが提案されている。1μmよりも小さく、好ましくは100~200ナノメートルである粒径を有するファウリング制御粒子を用いることが提案されている。この技術により、必要とされるファウリング制御粒子の量がいくらか低減され得る。しかしながら、反応性であり、および/または、研磨性であり、および/または、環境的に望ましくないといった示唆されているファウリング制御粒子に係る問題は解決されなかった。刺激応答層では、廃棄物と取り扱いおよび廃棄を含む、高いコストおよび提案された解決策の複雑さに付随する追加のプロセスステップが生じてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、従来技術に係る欠点を回避し、および/または、容易で効率的な膜ファウリング制御を達成する、膜ファウリング制御システムおよびプロセス、ならびに、ファウリング制御添加剤としてのカルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、膜ファウリング制御用プロセスであって:膜を通って被ろ過液体を案内/ろ過するステップ;ならびに、膜の上流に、および/または、被ろ過液体にファウリング制御粒子を添加して、膜上に流動性保護層を形成するステップを含む膜ファウリング制御用プロセスによって解決される。本プロセスは、後述する実施形態の1つ以上によって特徴付けられる。
【0015】
さらに、本発明によれば、この目的はまた:第1の案内部;第2の案内部;第1の案内部と第2の案内部との間に配置され、および/または、第1の案内部から第2の案内部に液体を案内することにより液体をろ過するよう構成されている膜;ならびに、ファウリング制御粒子が充填され、および/または、ファウリング制御粒子を第1の案内部に添加するよう構成されているファウリング制御手段を備える膜ファウリング制御用システムにより解決され、ここで、ファウリング制御粒子および/またはファウリング制御手段は、膜をファウリング物質から保護するために、ファウリング制御手段により添加されたファウリング制御粒子により膜に流動性保護層が形成されるよう構成されている。このシステムは、以下の実施形態の1つ以上によって特徴付けられている。
【0016】
本発明によれば、この目的はさらに、カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤(膜ファウリング制御用)であって、好ましくは、膜を流過する液体に添加された場合に、膜のファウリング制御のために、膜に流動性保護層を形成する粒子を含むカルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤(膜ファウリング制御用)によって解決される。
【0017】
カルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤(膜ファウリング制御用)は、粒子が、1μm以下のd50、10μm以下のd90、および、50nm~500nmのd10の粒径分布を有するカルシウムおよび/またはマグネシウム系超微細合成無機沈降粒子、ならびに、5μm以下のd50、15μm以下のd90、および、200nm~3μmのd10の粒径分布を有するカルシウムおよび/またはマグネシウム系極微細合成無機沈降粒子から選択されるカルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子を含むことを特徴とする。
【0018】
従って、本発明に係る添加剤は、厳密に制御された粒径分布を有するカルシウムおよび/またはマグネシウムに基づく合成無機沈降物であって、膜に損害をもたらすことなく、流動性保護層を洗浄する度に膜透水性が略完全に回復したという、膜ファウリング制御用途に適性を示す。本発明に係るカルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤は、高い初期液体流を許容し、ファウリング物質を捕獲して収容する孔空隙をもたらすことが可能であり、ならびに、特に、カルシウムおよび/またはマグネシウムに基づく合成無機沈降物の粒径分布を調整して、膜を通過する最大の流速をもたらすが、層レベルで特性を有するコーティング層が形成されることから、膜透水性に悪影響が及ぼされない。
【0019】
本発明によれば、粒径分布(PSD)は、規格ISO13320:2020(E)、項目5に従って、水中に分散されたカルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤のレーザ光散乱(通例、レーザ回折とも呼ばれる)によって計測される。好ましくは、PSDは、0.4μmより小さい範囲については、各波長について2つの偏光を有する450nm、600nm、900nmの光を用いるレーザ光散乱によって、また、0.4μm以上の範囲については、波長780nmのレーザにより分析/計測される。PSDは、規格ISO13320:2020(E)、項目5に従って、ミー散乱モデルにより生成される。水が分散液体として用いられる。レーザ回折による計測の前に、超音波処理を用いて、水中におけるカルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤の完全な分散体が得られる。0.4μm未満のPSDを得るために用いられる計測方法においては、白色発光ダイオード(LED)が、450nm、600nm、900nmの3つの波長で光計測値を得るために3種の異なるフィルタを伴って用いられ、また、3つの波長の各々について、2つの(直交する)偏光(合計で6つの光計測値がもたらされる)を得るために2つの偏光子を伴って用いられる。0.4μm以上ののPSDを得るために用いられる計測方法においては、780nmのレーザ光(赤色レーザ)が用いられる。赤色レーザについては、偏光子は用いられない。0.4μm未満の範囲について、PSDは、各々が2つの直交する偏光を伴って計測される450nm、600nm、900nmでの3つの波長計測から得られる6つの計測値に基づくミー分散モデルにより生成される。0.4μm以上の範囲について、PSDは、赤色レーザによる計測に基づくミー分散モデルにより生成される。
【0020】
以下に説明されているとおり、粒径分布の値dyとは、分布のy%が径dy未満であるサイズを指す。この用途における値dyは、粒子の個数のy%がdy未満であり、および/または、粒子の個数の(100%-y%)がdy超である(ちょうどdyである粒子は無視する)ことを意味する個数基準粒径分布を指す。粒径分布の値dyは、上記のレーザ光散乱によるPSD判定から判定される。
【0021】
カルシウムおよび/またはマグネシウムに基づく合成無機沈降物は、粒径分布、BJH間隙率およびBET比表面積などの合成沈降物に係る特定の特徴を実現するために、その製造が制御された無機沈降物である。結晶化が制約下に行われておらず、ほとんどの場合遅いために天然無機沈降物は典型的には非常に幅広い粒径分布を有する一方で、このような合成無機沈降物は、製造プロセスの最中に適用される制約によって天然無機沈降物とは典型的に区別され、製造プロセスが制御されているために粒径分布がより狭い合成無機沈降物が典型的にもたらされる。
【0022】
合成無機沈降粒子は、例えば、米国特許出願公開第20150044469号明細書または米国特許出願公開第20180170765号明細書に開示されている。
【0023】
このプロセス、システムおよび/または添加剤は、以下の実施形態の1つ以上によって特徴付けられている。
【0024】
一実施形態において、ファウリング制御粒子は、沈降物、好ましくは無機または金属沈降物である。沈降粒子、特に無機沈降粒子および金属沈降粒子の分類では、その径または径分布といったファウリング制御粒子の特性を製造の最中に調整することが可能である。
【0025】
一実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子は、カルシウムおよび/または炭酸マグネシウム系の合成無機沈降物である/を含む。この分類の好ましい例は、沈降炭酸カルシウムおよび沈降水菱苦土石である。これは、形態学、粒径および多分散性の点で調整されて、異なる用途に対する一連の機能が提供可能である汎用性の高い無機系材料である。膜ファウリング制御の目的に関して、本発明者らは、この材料について、流動性保護層を洗浄する度に膜透水性が略完全に回復するという意外な程に良好な効果を見出した。加えて、この材料は、膜材料または他のシステム構成要素に損害を与えず(研磨性でなく、腐食性)、また、環境に害を及ぼさない(最低限の処理で廃棄が可能)。超微細および/または極微細沈降炭酸カルシウムまたは/および沈降水菱苦土石は、化学的に不活性であり、ならびに、高い初期液体流を許容し、ファウリング物質を捕獲して収容する孔空隙をもたらし、および、膜透水性に悪影響を及ぼさない多孔性フィルタケーキを形成可能である。この材料の沈降物の粒径分布は、膜を通過する最大の流速をもたらすコーティング層が形成されるよう調整可能である。
【0026】
一実施形態において、ファウリング制御粒子は、第1の材料と第2の材料との複合粒子(組成物からなる)である。複合粒子は、第1の材料のコアと第2の材料のシェルとを含むことが好ましい。第1の材料は、好ましくは無機物および/または無機沈降物であり、好ましくはカルシウム系無機物(沈降物)、好ましくは炭酸カルシウム、好ましくは主に方解石を主とし微量のアラゴナイトを含むものである。第2の材料は、好ましくは無機物および/または無機沈降物であり、好ましくはマグネシウム系無機物(沈降物)、好ましくは水菱苦土石、好ましくは、(いくらか微量の)ネスケホナイトを含む水菱苦土石である。これらの複合粒子は、コアの材料および/または第1の材料に基づいてサイズを容易に調整が可能であり、および/または、シェルの材料および/または第2の材料に基づいて容易に官能基化が可能である。これにより、例えば流動性保護層に対するファウリング物質の付着性を高めるために流動性保護層の官能基化が可能であり、それ故、流動性保護層のろ過機能のさらなる改善が可能となる。好ましくは、シェル材料はコア材料とは異なる特性を有しており、異なる種類のファウリング物質、異なる表面に吸着する。加えて、シェル材料は、多孔性であることが可能であり、孔への吸収が可能となり、これにより、粒子間の空隙(孔)を開いたままとすることが可能である。他方で、このグループの複合粒子は、従来技術において用いられている反応性ファウリング制御粒子よりも環境的にはるかに適合している。
【0027】
一実施形態において、ファウリング制御粒子は不活性である。本発明に係る意味の範囲内において、「不活性」という用語は、ファウリング制御粒子は、操作モードの最中において、膜上の流動性保護層でその特性が変わらないことを意味する。従来技術においては、反応性ファウリング制御粒子のみがファウリング物質と反応すると示唆されていた。これにより、環境に対して負の影響を有すると共に、特別な廃棄処理が要求される。度々、反応性ファウリング制御粒子は、例えば研磨性または腐食性であって、膜、および、ポンプといった他のシステム器具に損害を与える。
【0028】
一実施形態において、ファウリング制御粒子は、反応性であるか、または、官能基化されている。本発明に係る意味の範囲内において、「反応性であるか、または、官能基化されている粒子」という用語は、好ましくは、ファウリング制御粒子の表面は、ファウリング物質を吸収し、および/または、膜表面に結合する特定の電荷または基を有することを意味する。
【0029】
一実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子は、0.1以上および/または1.5以下の多分散性値を有する。好ましくは、多分散性値は、0.2以上、好ましくは0.3以上、好ましくは0.4以上、好ましくは0.5以上である。好ましくは、多分散性値は、1.4以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下である。好ましくは、超微細合成無機粒子は、0.3~1.2、好ましくは0.5~1.0の範囲内の多分散性値を有する。好ましくは、極微細合成無機粒子は、0.7~1.5、好ましくは0.9~1.3の範囲内の多分散性値を有する。本発明に係る合成無機沈降粒子の多分散性値で分布幅の特徴付けが可能であり(度々、無機沈降粒子における粒子群に係る一定の多分散性とも称される)、粒径d90~d10をd50粒径で除したものとみなされ、好ましくは0.1以上、好ましくは0.15以上、好ましくは0.2以上である。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の多分散性値は、好ましくは1.5以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.8以下、好ましくは0.6以下、好ましくは0.4以下、好ましくは0.35以下、好ましくは0.3以下、好ましくは0.25以下である。「多分散性値」という用語は、本発明に係る意味の範囲内において、d90~d10をd50で除したものにおける分布幅を意味する。多分散性値は、以下の式に従って算出される。
【0030】
【0031】
式中、d90、d10、d50値は、カルシウムおよび/またはマグネシウム系合成無機沈降粒子のd90、d10、d50である。上記に定義されているとおり、d90、d10、d50は、個数基準分布から得られる。個数基準分布から得られるこのような多分散性値は、本発明に係る合成無機沈降粒子の狭い粒径分布の特徴付けに用いられ、文献中に開示されている。多分散性値を体積基準分布から得ることが可能であっても、本発明により算出される多分散性値は、個数基準分布から得られる。一方では、過度に小さいファウリング制御粒子による孔の閉塞の恐れのために、他方では、大きなファウリング制御粒子によって膜の被覆が不良で不均一となるために、ファウリング制御粒子による流動性保護層の形成において、多分散性値は重要な役割を果たすことが実際に認識されている。
【0032】
一実施形態において、ファウリング制御粒子は、50mV未満、好ましくは45mV未満、好ましくは40mV未満のゼータ電位の絶対値を有する。これは、ファウリング制御粒子は、犠牲層、すなわち、膜から容易に剥離可能である層を形成することが可能であるという利点を有する。一実施形態において、粒子は、50mV以下、好ましくは45mV以下、好ましくは40mV以下の正のゼータ電位を有する。他の実施形態において、粒子は、-50mV超、好ましくは-45mV以上、好ましくは-40mV以上の負のゼータ電位を有する。
【0033】
本発明によれば、粒子のゼータ電位は、以下の実験の手法に従って計測された。合成無機沈降粒子の懸濁液を、各ゼータ電位計測の前に、30分間磁気撹拌に供した。次いで、懸濁液を、超音波処理プローブHielscher-UP4005(50%の振幅および0.5のサイクル)で30秒間の分散ステップに供し、続いて、30分間のさらなる磁気撹拌に供し、その後、新たに一連の計測を行った。ゼータ電位の計測は、電気音響式スペクトロメターDT-1200(Dispersion Technology)で行った。ゼータ電位を計測するための電気音響式プローブは、-38(±1)mVのゼータ電位を示すコロイダルシリカ懸濁液で較正した。各サンプルについて、5回のゼータ電位の計測を行う。
【0034】
一実施形態において、ファウリング制御粒子は、窒素吸着マノメトリによって計測され、BET法に従って算出される、10m2/g超、好ましくは15m2/g超、好ましくは20m2/g以上の比表面積を有する。これにより、膜表面上へのより良好な堆積、ならびに、被ろ過液体から補足するためのファウリング物質に対するより高い親和性がもたらされる。
【0035】
一実施形態において、ファウリング制御粒子のシェラー直径は、20nm超、好ましくは30nm超、好ましくは40nm超、好ましくは50nm超、好ましくは60nm超である。一実施形態においては、ファウリング制御粒子のシェラー直径は、150nm未満、好ましくは140nm未満、好ましくは130nm未満、好ましくは120nm未満、好ましくは110nm未満、好ましくは100nm未満である。好ましくは、ファウリング制御粒子のシェラー直径は、50nm~100nmである。シェラー直径は、秩序型(結晶)ドメインの平均径を示すと共に、シェラー式に従い、好ましくはX線回折による計測値に基づいて算出される。
【0036】
粉末X線回折(XRD)は、結晶性材料の相同定および結晶サイズ(シェラー直径)に用いられる分析技術である。回折は、X線管中におけるX線の発生に基づく。これらのX線はフィルターにかけられ、サンプルに照射される集中的な単色放射線を発生するために平行化される。この分析は、Bruker-D8 advance機器を用いて行われる。銅K-αは、実験室規模のX線機器で頻繁に用いられるX線エネルギーである。エネルギーは8.04keVであり、これは、1.5406ÅのX線波長に相当する。
【0037】
結晶性材料において、散乱されたX線は、強め合い干渉および弱め合い干渉を受ける。この回折プロセスは、ブラッグの式(nλ=2d sinθ)により表される。回折されたX線は、検出、処理およびカウントされる。
【0038】
可能な回折方向はサンプルを組成する結晶のサイズおよび形状に依存し、および、回折波の強度は結晶構造中における原子の種類および配置に依存するため、この方法では、サンプルの化学的組成の判定が可能となる。シェラーの式を結晶構造のピーク幅に適用することにより、サンプル中における結晶のサイズを判定することも可能である。
【0039】
典型的には、本発明者らはシェラー直径の算出にローレンツフィット(回折ピーク用)を用いるが、本発明者らは、回折パターンの約29.45°、39.46°および43.21°でピークにこれを適用する。
【0040】
一実施形態において、ファウリング制御粒子および/または添加剤は、好ましくは20重量%以下、好ましくは15重量%以下、好ましくは12重量%以下、好ましくは11重量%以下、好ましくは10重量%以下の固形分含有量および/またはファウリング制御粒子含有量を有するスラリーの形態下にある。一実施形態において、ファウリング制御粒子および/または添加剤は、好ましくは1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、好ましくは3重量%以上、好ましくは5重量%以上、好ましくは6重量%以上、好ましくは7重量%以上の固形分含有量および/またはファウリング制御粒子含有量を有するスラリー形態である。ファウリング制御粒子の固体含有量が高いほど、保管および輸送に必要とされる添加剤および/またはファウリング制御粒子の体積および重量が低減される。
【0041】
一実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム系超微細合成無機沈降粒子は、1μm以下のd50、10μm以下のd90、および、50nm~500nmのd10の粒径分布を有する。本発明に係る超微細無機沈降粒子は、限外ろ過に特に好適である。
【0042】
一実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム系極微細合成無機沈降粒子は、5μm以下のd50、15μm以下のd90、および、200nm~3μmのd10の粒径分布を有する。本発明に係る極微細無機沈降粒子は精密ろ過に特に好適である。
【0043】
典型的には、本発明によれば、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、膜の規定の孔径よりも大きい。好ましくは、ファウリング制御粒子の径分布のd10は、規定の孔径よりも、3倍、好ましくは5倍、好ましくは7倍、好ましくは9倍、好ましくは10倍大きい。膜の規定の孔径に応じるカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径の下限の選択は、ファウリング制御方法の性能を大幅に向上させることが示されている。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子が膜の規定の孔径よりも大きく選択されることで、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子が膜に進入不可能となり、膜の孔が狭くなることが回避される。おそらくは、これによりこの処置の正の効果が説明される。従来技術においては、平均粒径のみが制御されており、膜の規定の孔径に応じて平均粒径は選択されていなかった。これにより、従来技術に係る膜に流動性保護層を形成するファウリング制御粒子による膜ファウリング制御の有効性が限定的であることが説明される。加えて、従来技術のファウリング制御粒子において平均粒径のみが制御されるという事実は、多くの場合におけるこれらの小さい寸法におけるファウリング制御粒子の非常に広い径分布を無視しており、これは、規定の孔径を超える平均粒径については、依然として規定の孔径よりも小さい多量のファウリング制御粒子をもたらすこととなり、従って、孔が狭くなってしまう。この処置は、以下の実施形態において特に有利である。
【0044】
一実施形態においては、精密ろ過膜に応じて、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布のd90は、15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは5μm以下、好ましくは1μm以下、好ましくは0.7μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
【0045】
一実施形態において、限外ろ過膜に応じて、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布のd90は、10μm以下、好ましくは5μm以下、好ましくは1μm以下、好ましくは0.7μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
【0046】
ファウリング制御法の性能に対するカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径の上限の主な影響は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の堆積の均質性であることが示されている。均質性は、絶対粒径に主に依存するものであり、依存関係において、膜の規定の孔径への依存は少ない。上記の径の上限により、堆積されるカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の不均一性が大きく低減され、それ故、高い性能の流動性保護層が膜にもたらされることが証明されている。既述のとおり、平均粒径を選択することのみが重要なのではなく、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布のd90を選択することがより重要であることがさらに見い出された。孔の完全な閉塞のように、規定の孔径に依存する粒径の上限の影響もいくらか存在し得る。しかしながら、これらの規定の孔径に依存する影響は、粒子の絶対径に依存する既述の均質性と比して、影響は小さいことが示された。
【0047】
好ましい実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は規定の孔径に依存して選択されるが、一方で、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布のd90は絶対値として選択される。この組み合わせは、従来技術において公知のもの比して、膜ファウリング制御の性能を顕著に向上した。
【0048】
一実施形態において、限外ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、50nm以上、好ましくは70nm以上、好ましくは100nm以上、好ましくは200nm以上である。
【0049】
一実施形態において、限外ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、500nm以下、好ましくは400nm以下、好ましくは350nm以下、好ましくは320nm以上である。
【0050】
一実施形態において、精密ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、200nm以上、好ましくは250nm以上、好ましくは300nm以上、好ましくは500nm以上である。
【0051】
一実施形態において、精密ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、1000nm以下、好ましくは900nm以下、好ましくは800nm以下、好ましくは750nm以下である。
【0052】
一実施形態において、本プロセスは、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子をインサイチュで形成するさらなるステップを含み、ならびに/または、ファウリング制御手段は、ファウリング制御粒子をインサイチュで、または、ファウリング制御手段中において形成するためのファウリング制御粒子形成手段を備える。ファウリング制御粒子は、ファウリング制御粒子を被ろ過液体に添加する前に形成されることが好ましい。
【0053】
カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子は、物理的作用および/または化学反応により形成されることが好ましい。化学反応では、好ましくは少なくとも1種の原料または物質、好ましくは少なくとも2種の原料または物質を用いて、化学反応により、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子が得られる。化学反応は、沈降であることが好ましい。化学反応は、好ましくは炭酸塩化、好ましくは水酸化カルシウムおよび/または水酸化マグネシウムの炭酸塩化である。好ましくは、沈降炭酸カルシウムが化学反応により得られる。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子をインサイチュで生成することにより、いくつかのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布に係るいくつかの安定性に係る問題を減らすことが可能であり、化学反応に用いる原料は、取り扱いおよび処理がより容易であり得る。物理的作用は、サイズ低減作用および/または分類であることが可能である。
【0054】
一実施形態において、本発明に係るプロセスにおいては、流動性保護層は、膜に対して直接形成される。
【0055】
一実施形態において、本発明に係るプロセスにおいては、膜に形成される流動性保護層は、液体による膜の通過を可能とし、および、ファウリング物質を保持する多孔性層である。
【0056】
一実施形態において、本発明に係るプロセスにおいては、流動性保護層は、被ろ過液体を膜を通して案内することで膜を介して発生される膜貫通圧により、および/または、浸透液フラックスにより、すなわち、透過抵抗もしくは粒子を膜表面に運ぶ液圧により、膜上に形成および/または維持される。
【0057】
一実施形態において、本発明に係るプロセスは、ろ過/保持されたファウリング物質と共に流動性保護層を膜から洗浄するさらなるステップを含み、および/または、本発明に係るシステムは、これが達成されるよう構成されている。
【0058】
一実施形態において、本発明に係るプロセスは、複数のろ過サイクルを行い、および/または、本発明に係るシステムは、複数のろ過サイクルを行うよう構成されている。複数のろ過サイクルにおける1回以上またはすべてのろ過サイクルは:
・膜に流動性保護層を形成するために、ファウリング制御粒子を被ろ過液体に添加するステップ;
・ファウリング物質を流動性保護層により保持しながら、膜を通して案内された被ろ過液体をろ過するステップ;および
・保持されたファウリング物質と共に流動性保護層を膜から洗浄するステップ
を含む。
【0059】
本発明に係るプロセスにおいて、膜ファウリング制御添加剤は、上記のカルシウムおよび/またはマグネシウム添加剤である。
【0060】
一実施形態において、本発明に係るプロセスおよび/または本発明に係るシステムの膜は、精密ろ過膜または限外ろ過膜である。
【0061】
一実施形態において、本発明に係るプロセスにおいては、膜を通して案内される前記液体は、水性液体、好ましくは公共排水、海水、産業プロセス水および産業排水、公共飲用水用の源水、汽水、地下淡水、表流淡水である。
【0062】
一実施形態において、本発明に係るプロセスにおいては、被ろ過液体に添加されるカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子は、被ろ過液体がファウリング物質を含む場合、被ろ過液体が膜を通して案内される前に、ファウリング物質が流動性保護層に保持されるよう、膜上に流動性保護層を形成する。
【0063】
本発明に係る他の実施形態は、添付の特許請求の範囲、以下の図面の簡単な説明に係る記載において記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、ファウリング制御用システムを示す。
【
図2】
図2は、被ろ過液体中に膜ファウリング制御添加剤を導入するファウリング制御に係る方法のステップを示す。
【
図3】
図3は、膜に流動性保護層を形成するファウリング制御に係る方法のステップを示す。
【
図4】
図4は、流動性保護層中にファウリング物質を保持するファウリング制御に係る方法のステップを示す。
【
図5】
図5は、膜から流動性保護層を洗浄するファウリング制御に係る方法のステップを示す。
【
図6】
図6は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布に係る実施形態を示す。
【
図7】
図7は、第1の径のファウリング制御粒子を伴う理想膜を示す。
【
図8】
図8は、第2の径のファウリング制御粒子を伴う理想膜を示す。
【
図9】
図9は、凝析剤を用いる膜ファウリング制御に対する、異なるろ過サイクルにわたる圧力を示す。
【
図10】
図10は、ファウリング制御粒子として沈降炭酸カルシウムを用いる膜ファウリング制御に対する、異なるろ過サイクルにわたる圧力を示す。
【
図11】
図11は、規定の孔径およびMWCOの変換表を示す。
【
図12】
図12は、ファウリング制御粒子として沈降炭酸カルシウムを用いた場合と、ファウリング制御粒子を用いなかった場合との膜ファウリング制御に対する異なるろ過サイクルにわたる圧力を示す。
【0065】
図面において、同一または類似の構成要素については、同一の符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明に係る他の特徴および利点は、図面および実施例を参照することにより、非限定的な以下の記載から導きされるであろう。
【0067】
図1は、膜1、第1の案内部2、第2の案内部3およびファウリング制御手段4を備える膜ファウリング制御用システムを示す。好ましくは、このシステムは、洗浄用流出口9および/または洗浄用流出口制御手段をさらに備える。
【0068】
膜ファウリング制御用システムは、膜1のファウリングを制御しつつも、被ろ過液体を膜1でろ過してろ液が得られるよう構成されている。膜ファウリング制御用システムの用途は、公共飲用水のための用途、公共排水のための用途、水の脱塩または再生のための用途、油水、汚泥、化学物質を含む水といった産業排水のための用途等であることが可能である。しかしながら、飲料産業といったものにおける産業プロセス水についても本システムを適用することが可能である。
【0069】
被ろ過液体は、第1の案内部2中の液体、または、操作モードにおいて膜1の上流にある液体である。ろ液は、第2の案内部3中の液体、または、操作モードにおいて膜1の下流にある液体である。膜1を通して案内された被ろ過液体により得られるろ液は、浸透液とも呼ばれる。被ろ過液体およびろ液は通常、水系液体(水性液体)である。しかしながら、被ろ過液体が水系液体ではなく、他の液体であることも可能である。
【0070】
被ろ過液体は通常、汚染物を含む液体(汚染液体)である。汚染物は、膜1によりろ出されることが意図されている。ろ液は汚染物の量が低減した液体であって、好ましくは実質的に汚染物が枯渇しているものである。当然、被ろ過液体は、清浄な液体、すなわち、汚染物を含まない液体であることも可能である。一定の操作モードのためであるか、または、単にろ過液体が常に汚染されている訳ではないためである。被ろ過液体は通常水系液体(水性液体)、すなわち、汚染水または汚染物を含む水であり、また、ろ液は通常、清浄な水または汚染物の量が低減した水、好ましくは汚染物を含まない水である。汚染水は公共飲用水の水源であることが可能であり、および/または、ろ液は、公共飲用水または前処理された公共飲用水であることが可能である。汚染水は、生物学的汚染物もしくは他の汚染物を含む公共排水または薬品、無機物もしくは他の汚染物を含む産業排水といった排水、または、汚泥といった排水であることが可能であり、および/または、ろ過水は、ろ過排水または清浄な水であることが可能である。汚染水は塩または海水であることが可能であり、ここで、汚染物は、塩、無機物および/または生物学的汚染物である。汚染水は産業プロセス水であることが可能である。
【0071】
汚染物は通常被ろ過液体中の望ましくない粒子であり、ろ液(浸透液とも呼ばれる)は膜プロセスによる所望される生成物である。しかしながら、いくつかの用途においては、膜1により保持される汚染物、または、濃縮水、すなわち、保持された汚染物を含む液体が、プロセスの所望される生成物であることが可能である。汚染物は、膜1により保持可能であるか、および/または、保持されるべき粒子であることが好ましい。
【0072】
被ろ過液体はファウリング物質10をさらに含む。ファウリング物質は膜ファウリングを形成する汚染物である。ファウリング物質は、被ろ過液体中の固体形態(ファウリング粒子)であることが可能であり、および/または、被ろ過液体中に溶解形態であることが可能である。異なる種類のファウリング物質10および異なる種類の膜ファウリングが既に導入部において記載されおり、ここでは繰り返さない。ファウリング物質10のすべてまたはいくつかは汚染物であることが可能である。汚染物のすべてまたはいくつかはファウリング物質10であることが可能である。これは、用途、被ろ過液体、膜1およびプロセス条件に応じる。以下の記載は主に、ファウリング物質が汚染物であるか否かを特定せずに、ファウリング物質10に焦点を当てている。
【0073】
膜1は、被ろ過液体が膜1を通過した際に、被ろ過液体から汚染物をろ出して、ろ液が得られるよう構成されている。汚染物のろ過とは、ろ液中の汚染物の量が被ろ過液体中の汚染物の量よりも少なく、好ましくは50%超、好ましくは60%超、好ましくは80%超、好ましくは90%超低減していることを意味する。被ろ過液体が膜1を通過した際に、膜1によりすべての汚染物が保持されることがもっとも好ましい。膜1は、第1の側面1.1および第2の側面1.2を有する。第1の側面1.1は膜1の孔5を介して第2の側面1.2とつながっている。第1の側面1.1は膜1の膜表面をもたらす。第1の側面1.1または膜表面は、管、中空繊維または他の形状寸法による膜1の設計に応じて設けられる。
【0074】
膜1は、膜1の保持能を決定する規定の孔径を有することが好ましい。規定の孔径は、膜1の孔に係る孔径分布から得られる値、および/または、該当する粒径を有する粒子が一定の割合X%で保持されるような粒径から得られる値である。孔径分布から得られる孔径の一例は、分布中においてもっとも多い孔径、または、平均孔径、または、孔径分布のd
90である。径分布のd
zとは、分布のz%が径d
z未満であるような径を指す。いくつかの膜1において、膜1の規定の孔径とは、粒子が膜1に保持される(一定の可能性で)粒径を指す。膜1の規定の孔径とは、好ましくは、この粒径を有する粒子のX%が保持される粒径を指す。割合Xは、好ましくは、50%以上、好ましくは60%超、好ましくは70%超、好ましくは80%超である。規定の孔径の好ましい定義は、Xは90%である。いくつかの膜1は、単位がダルトン(Da)である分画分子量(MWCO)として規定の孔径を定義する。これは、膜1により90%で保持される球状分子の最低分子量として定義される。MWCOは、本発明の目的のために、
図11に示す表に従って規定の孔径に変換可能である。二列目はキロダルトン(kDA)でのMWCOを示し、および、一列目は、ナノメートル(nm)に変換された対応する規定の孔径を示す。三列目は、対応する膜の種類:逆浸透法、ナノろ過、限外ろ過および精密ろ過を示す。膜1のいずれのMWCO値も、次に大きいMWCO値と次に小さいMWCO値との一次補間によって、本発明に係る膜1のその対応する規定の孔径に変換可能である。この変換法は必ずしも常に正確ではないかもしれないが、膜1が孔径ではなくそのMWCO値によって定義されている場合、そのMWCO値に基づいて膜1の規定の孔径を明確に定義ために、本発明については十分である。
【0075】
本発明は、5nm超、好ましくは10nm超、好ましくは50nm超の孔径を、いくつかの実施形態においては、100nm超の孔径を有する膜1が特に有利である。本発明は、50μm未満、好ましくは20μm未満の孔径を有する膜1が特に有利である。膜1は、精密ろ過膜または限外ろ過膜であることが好ましい。精密ろ過膜は、150nm~20μmの孔径を有する膜とみなされる。限外ろ過膜は、5nm~150nmの孔径を有する膜とみなされる。しかしながら、本発明はこれらの孔径に限定はされず、他の膜種にも適用可能であり、より大きなナノろ過膜孔径であってもよい。好ましい実施形態において、膜1は、一価および/または二価イオンの除去には好適ではない。
【0076】
膜1は、モノリス、管、フラットシート(プレート、フレームまたは渦巻き型)、中空繊維またはいずれかの他の膜種といったいずれかの膜種であることが可能である。膜1は、セラミック、ポリマーまたは他のものといったいずれかの材料製であることが可能である。
図1に示す膜1は、デッドエンド構成に配置されている。しかしながら、膜1はクロスフローろ過構成に配置することも可能である。この膜は、低圧膜技術で作用することが好ましい。
【0077】
第1の案内部2は、被ろ過液体を膜1を通して案内可能であるよう、被ろ過液体を貯留または案内するよう構成されている。第1の案内部2は従って、膜1の第1の側面1.1との接触面を有する。第1の案内部2は、容器、管、タンクまたはいずれかの他の液体の貯留または案内手段であることが可能である。第1の案内部2は、膜1の第1の側面1.1と膜2の第2の側面1.2との間に膜貫通圧を形成し、および/または、被ろ過液体を膜1に送り、および/または、被ろ過液体を膜表面に送る液圧を形成するためのポンプを備えていることが可能である。形成された液体流は、膜表面と直角であることが好ましい。膜貫通圧は、ダルシーの法則に従って膜を通過する流れからシステム中において形成されて得られた圧力である。第1の側面1.1および膜1の第2の側面1.2は、必ずしも膜1の幾何学的観点ではなく、むしろ、機能的観点によるものである。
【0078】
第2の案内部3は、ろ液を貯留または案内するよう構成されている。それ故、被ろ過液体は膜1を通過してろ液となり、第2の案内部3に流入する。従って、第2の案内部3は膜1の第2の側面1.2との接触面を有する。第2の案内部3は、容器、管、タンクまたはいずれかの他の液体の貯留または案内手段であることが可能である。第2の案内部3は、ろ液を膜1から離れる方向に送り、および/または、膜1の第1の側面1.1と膜1の第2の側面1.2との間に膜貫通圧を形成するポンプを備えていることが可能である。
【0079】
システムまたは第1の案内部2、膜1および/または第2の案内部3は(操作モードにおいて)、被ろ過液体を第1の案内部2から膜1を通って第2の案内部3に案内してろ液とする膜貫通圧または液体流を形成するよう構成されていることが好ましい。膜貫通圧は、第1の案内部2または第2の案内部3におけるポンプによって達成可能である。膜貫通圧または液体流はまた、重力によって、または、液体に対するいずれかの他の力によって形成可能である。いくつかの実施形態において、システムまたは第1の案内部2、膜1および/または第2の案内部3は(例えば洗浄モードにおいて)、第2の案内部2中のろ液または液体を膜1を通して第1の案内部2に案内する逆膜貫通圧または逆液体流を形成するよう構成されていることが好ましい。この逆膜貫通圧または逆液体流は、洗浄モードにおいて適用されて、膜1の逆洗を生じさせ、流動性保護層7、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6および/またはファウリング物質から膜1をクリーニングすることが可能である。
【0080】
ファウリング制御手段4は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6および/または膜ファウリング制御添加剤を、ろ過液体および/または第1の案内部2に添加するよう構成されている。ファウリング制御手段4は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6および/または膜ファウリング制御添加剤を保管しておくコンテナまたは容器を備えていることが好ましい。ファウリング制御手段4は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6および/または膜ファウリング制御添加剤を被ろ過液体および/または第1の案内部2に添加するために、第1の案内部2に対する開口または接続部を備えている。開口または接続部は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6および/または膜ファウリング制御添加剤を添加するための第1の案内部2に対する開口量または接続量を制御するために、開閉可能であることが好ましい。好ましくは、ファウリング制御手段4は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6および/または膜ファウリング制御添加剤を含有する。
【0081】
膜ファウリング制御添加剤は、膜をコンディショニングすることにより、特に、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の流動性保護層7を膜1に形成することにより膜ファウリングを防止または制御する添加剤である。この膜ファウリング制御添加剤は、システム/方法の操作モード中に(洗浄モード中ではなく)添加される添加剤である。膜ファウリング制御添加剤は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を含む。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が被ろ過液体に添加された場合に、膜1に流動性保護層7を形成するよう構成されている。
【0082】
膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6は、スラリーの形態であることが好ましい。このスラリーは、好ましくは、液体、好ましくは水、および固体粒子(固形分)を含有する。固形分は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を含み、好ましくは、少なくとも50重量%のカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子からなり、好ましくは少なくとも60重量%のカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子からなり、好ましくは少なくとも70重量%のカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子からなり、好ましくは少なくとも80重量%のカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子からなり、好ましくは少なくとも90重量%のカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子からなる。もっとも好ましくは、固形分は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6である。スラリーの固形分含有量ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6含有量は、好ましくは、20重量パーセント(重量%)未満、好ましくは15重量%未満、好ましくは12重量%未満である。スラリーの固形分含有量ならびに/またはカルシウムならびに/またはマグネシウム粒子6含有量は、好ましくは、1重量%超、好ましくは2重量%超、好ましくは4重量%超、好ましくは5重量%超、好ましくは6重量%超、好ましくは7重量%超である。
【0083】
代替的な実施形態において、膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムならびに/またはマグネシウム粒子6は、ファウリング制御手段4に運ばれ、ファウリング制御手段4に充填され、ファウリング制御手段4において保管され、および/または、第1の案内部2および/または被ろ過液体に乾燥配合物、すなわち、粉末として添加される。膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6を、スラリーとして第1の案内部2および/または被ろ過液体に添加するために、例えば粉末をファウリング制御手段4に充填する前またはその際といった上記のステップ間において、粉末を液体と混合してスラリーを得ることも可能である。
【0084】
上記の実施形態において、膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6は、第1の案内部2および/または被ろ過液体に進入する時と同じ形態で、ファウリング制御手段4に充填される。代替的な実施形態においては、第1の案内部2および/または被ろ過液体に進入するに伴って膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6が得られるよう、1種以上の原料がファウリング制御手段4に添加される。これは単に、例えば粉末としての膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6を液体と混合して、スラリーとしての上記の膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6を得るための混合ステップであることが可能である。
【0085】
一実施形態において、膜ファウリング制御添加剤は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6および分散剤を含有する。分散剤は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が凝集しないようにするものである。分散剤は、ポリエーテル-ポリカルボキシレート分散剤、ポリアクリレート分散剤または他の分散剤であることが可能である。
【0086】
一実施形態において、ファウリング制御手段4は、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6または膜ファウリング制御添加剤を、化学反応によりインサイチュで形成するために、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子製造装置を備えている。それ故、1種以上の原料がファウリング制御手段4、特に、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子製造装置に入れられて、化学反応により、インサイチュで、膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6が得られる。膜ファウリング制御添加剤ならびに/またはカルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6は、第1の案内部2および/または被ろ過液体にさらに供給される。好ましくは、化学反応は、気液反応を含む。好ましくは、化学反応は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子として合成沈降粒子を得るための沈降を含む。
【0087】
好ましくは、化学反応および/または沈降は炭酸塩化である。炭酸塩化により合成無機沈降物が得られることが好ましい。好ましくは、化学反応は、カルシウム/マグネシウム水和物の懸濁液に制御された条件下で気体の二酸化炭素を導入して、最終的なカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子を得ることにより実現される。このように、合成無機沈降物を製造可能である。制御された条件は、二酸化炭素の流速、温度、圧力および/または他の条件を含む。カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/または添加剤は、被ろ過流体に添加される前に製造可能である。
【0088】
例えば沈降炭酸カルシウムをインサイチュで製造する一実施形態を説明する。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子製造装置において、1~15重量%の固体含有量を有する石灰乳(消石灰またはカルシウム二水和物)を、0~20℃の温度とする。5~40体積%の体積率で気体の二酸化炭素を含有するガス混合物を、0.1~0.5MPaの加圧下に、1~5(通常)リットルのCO2/min/1リットルの懸濁液のガス流速で注入する。pHが8.3以下となったら気体の二酸化炭素の供給を停止する。得られる懸濁液は、スラリーの総重量に対して5~20重量%の少なくとも沈降炭酸カルシウム含有量を含み、および、95重量%の総固体含有量に対する沈降炭酸カルシウム含有量を含む。得られる懸濁液は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子のスラリーであり、これが、次いで、第1の流路2にさらに供給される。
【0089】
システムは、異なるモードで操作されるよう構成されていることが好ましい。
【0090】
操作モードにおいては、膜1を超えて膜貫通圧が形成され、および/または、第1の案内部2から膜1を介して第2の案内部3に被ろ過液体の液体流が形成されて、ろ液が得られる。
【0091】
洗浄モードにおいては、流動性保護層7、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/またはファウリング物質10から膜1がクリーニングされる。好ましくは、洗浄は、逆洗(バックフラッシュとも呼ばれる)により、すなわち、膜1をまたいだ膜貫通圧および/または流れ方向が反転されることにより実現される。好ましくは、ろ液が膜1を通して案内し戻されて、膜1がクリーニングされる。しかしながら、流動性保護層7、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/またはファウリング物質10から膜1を洗浄するために異なる洗浄メカニズムを用いることも可能である。これは、導入部に記載のものなどの他の洗浄メカニズムであることが可能である。好ましくは、洗浄用流出口9が洗浄モード中に開かれて、流動性保護層7、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/またはファウリング物質10を含む洗浄液を洗浄用流出口9を介して案内して第1の案内部2から流出させる。洗浄用流出口制御手段は、被ろ過液体がさらに汚染されることがないよう、被ろ過液体の供給源から膜1を閉止することが好ましい。洗浄用流出口制御手段は、操作モード中は洗浄用流出口9を閉じるよう構成されていることが好ましい。しかしながら、他の実施形態においては、洗浄モードにおいて、洗浄液を第1の案内部2に案内し戻すことも可能である。この場合、洗浄用流出口9および洗浄用流出口制御手段は不要である。
【0092】
システムは、異なるろ過サイクルを行うよう構成されていることが好ましい。各ろ過サイクルは操作モードおよび洗浄モードを含む。
【0093】
以下、膜ファウリング制御用プロセスを、一つの例示的なろ過サイクルを表す
図2~5に示す例示ステップで説明する。以下において、簡潔さのために、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6ならびに膜ファウリング制御添加剤はその都度選択肢として明示しないが、以下の文章において、これらは常に同義であることは明らかである。
【0094】
図2は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を第1の案内部2および/または被ろ過液体に添加するステップを示す。このステップの間、システムは操作モードにあることが好ましい。このステップの間、被ろ過液体は膜1を通して案内されることが好ましい。このステップの間、第1の案内部2中の液体は、膜1を通して第2の案内部3に案内されることが好ましい。好ましくは、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、膜1に到達した時に、被ろ過液体中に十分に分散しているよう、好ましくは均等に分散しているよう添加される。これは、例えばポンプ中もしくはその近くといった層流が形成されていない場所、または、乱流が存在している場所でカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を添加することで達成可能である。上記のとおり、好ましくはカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、操作モードで添加され、すなわち、被ろ過液体が膜1を通して案内されている時に添加される。しかしながら、膜1を通過する流れが開始される前に、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を部分的または完全に添加することも可能であり得る。好ましくは、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、ファウリング物質が必要以上に膜1に接触可能となる前に、膜1に流動性保護層7がすぐに形成されるよう、ろ過サイクルの初め、好ましくは、操作モードの初めに添加される。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、好ましくは、ろ過サイクルの最初の120秒間(sec)、好ましくは最初の90sec、好ましくは最初の60secの間に添加される。好ましくは、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/または膜ファウリング制御添加剤の添加は、流動性保護層7の形成に十分な量のカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が添加された後に中断される。例えば、被ろ過液体に添加されるカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の濃度に応じて、30~120sec後である。いくつかの用途については、添加をしばらく中断した後(図示せず)、例えば操作モードの終了時に、操作モードでカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の添加を再度開始することが有利であることが示された。これは、いくつかの用途において、洗浄モードにおける膜1からの流動性保護層7の除去に役立った。いくつかの用途においては、操作モード中全体を通してカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を連続的に添加することが有益であることが示された。
【0095】
図3は、膜7に流動性保護層7を形成するステップを示す。流動性保護層7は、被ろ過液体に添加されたカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6によって形成される。ろ過ケーキと同様にカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が流動性保護層7を形成するようカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を保持する膜1に、被ろ過液体の流れがカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を送る(
図8も参照のこと)。膜1を通過する被ろ過液体の流れによって形成される膜貫通圧によって、流動性保護層7が形成され、および/または、その位置保持される。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、被ろ過液体が継続して膜1まで流動性保護層7を流過し、次いで、膜1を通過して流れることが可能であるよう、多孔性の流動性保護層7を膜1上に形成するよう構成されている。
【0096】
カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を添加するステップ、ならびに、流動性保護層7を形成するステップは、少なくとも部分的に重複して生じることが好ましい。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が被ろ過液体の流れに添加される間に、液体流および/または膜貫通圧によって膜1上に流動性保護層7が形成される。流動性保護層7は膜1の第1の側面1.1上に形成される。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が添加される時間と流動性保護層7が形成される時間とは、3つの時間に分割可能である。第1の時間では、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が被ろ過液体に添加され、ならびに、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が膜1に送られる。第2の時間では、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が被ろ過液体に継続して添加され、ならびに、膜1に到達するカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6によって膜1上に流動性保護層7が形成され始める。この第2の時間においては、流動性保護層7は、新たに添加されるカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6によって継続して成長する。第3の時間では、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の添加が停止され、ならびに、被ろ過液体中に残存するカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を膜1に送って、流動性保護層7上に堆積させながら流動性保護層7の形成が終了する。操作モード中全体を通してカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が連続的に添加される場合には、この第3の時間が省略されることは明白である。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、膜1上だけではなく、第1の案内部2の壁にも堆積し得ることも理解される。しかしながら、どのようにして、最適に、これが回避可能であり、または、低減可能であるかについては、以下に記載されている。
【0097】
カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が添加される第1の案内部2中の被ろ過液体および/または液体は、ファウリング物質、および/または、
図4に示すステップにおいてろ過された汚染物を含有する同一の被ろ過液体であることが好ましい。これは、流動性保護層7の堆積/形成のために清浄な液体を廃棄する必要がないという利点を有する。しかしながら、絶対に膜1に接触させるべきではない非常に実害が大きい汚染物および/またはファウリング物質といった一定の事例については、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6を添加するステップ、ならびに/または、流動性保護層7を膜1に形成するステップにおいて/その最中に、被ろ過液体として、
図4に示す被ろ過液体をろ過するステップとは異なる液体を用いることも可能である。これは、間にファウリング物質および/または汚染物のいずれも含むことなく非常に清浄な流動性保護層7を形成することが可能であるという利点を有する。しかしながら、これにより膜ファウリング制御用システムがより複雑となり、清浄な液体の廃棄物が増加し、それ故、多くの事例において、プロセスによって生成される清浄な液体の量が低減してしまう。
【0098】
図4は、膜1を通して被ろ過液体をろ過してろ液を得るステップ、および/または、被ろ過液体を第1の案内部2から膜2を通して第2の案内部3に案内するステップを示す。被ろ過液体は、膜1を通過する前に、先ず流動性保護層7を通過する必要がある。被ろ過液体中のファウリング物質10は膜1に達する前に流動性保護層7により保持され、それ故、膜1の膜ファウリングが防止される。一定の割合のファウリング物質10が流動性保護層7を通過する可能性があることが明らかであり得るが、いずれの事例においても、膜1に達するファウリング物質は顕著に低減し、従って、膜ファウリングが低減されるか、または、防止される。流動性保護層7はまた、液体の汚染物を保持可能である。それ故、流動性保護層7は、膜1を補助して被ろ過液体をろ過するろ過補助と考えることが可能である。操作モードが長くなるほど、さらなる量のファウリング物質10および/または汚染物が流動性保護層7に保持される。それ故、流動性保護層17、ファウリング物質10および/または汚染物により形成されるろ過ケーキは、時間の経過と共に大きくなる。これにより、膜1を通るろ過液体の流速が低減し、および/または、同一の流速を維持するために必要なエネルギー量が増加してしまう。
【0099】
図5は、流動性保護層7を保持されたファウリング物質10および/または汚染物と共にクリーニングする洗浄ステップを示す。洗浄ステップでは、流動性保護層17、ファウリング物質10および/または汚染物により形成されたろ過ケーキが除去/クリーニングされる。好ましくは、洗浄ステップでは、第1の案内部2中の液体の洗浄流を形成して、ろ過ケーキを第1の案内部2から洗浄用流出口9に送り出す。この洗浄流は、
図5に示されている逆洗または逆洗操作により達成されることが好ましく、ここでは、ろ液が第2の案内部3から膜1を通して第1の案内部2に案内し戻される。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6に係る1つの選択判断基準は、膜1からの容易なクリーニング性である。好ましくは、洗浄操作は、逆洗のような物理的洗浄により行われる。しかしながら、化学的洗浄ステップを用いることも可能である。もっとも好ましくは、ろ過サイクルの洗浄ステップが物理的洗浄ステップであり、適時に化学的洗浄ステップを用いて、流動性保護層7にもかかわらず形成されたなんらかの不可逆的なファウリングが除去される。洗浄ステップ/モードを開始する前に、操作モードを終了して、被ろ過液体を第1の案内部2から第2の案内部3にこれ以上案内しないことが好ましい。洗浄ステップ/モードが終了した後に、洗浄用流出口9が閉じられる。他の好ましさに劣る実施形態においては、洗浄用流出口9に送り出す代わりに、ろ過ケーキを第1の案内部2に案内し戻すことも可能である。この場合、洗浄用流出口9が不要となるが、第1の案内部2中の被ろ過液体の質が悪化してしまう。洗浄ステップ/モードの後、新たなろ過サイクルを開始可能である。
【0100】
好ましくは、システムまたはプロセスは、上記のとおり、複数の後続のろ過サイクルを含んでいる。
【0101】
一実施形態において、プロセスは、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子をインサイチュで形成する任意のステップを、これらを被ろ過液体に添加する前に含んでいることが可能である。これは、上記においてより詳細に説明されているとおり、化学反応により達成可能である。
【0102】
一実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム系超微細合成無機沈降粒子は、1μm以下のd50、10μm以下のd90、および、50nm~500nmのd10の粒径分布を有する。本発明に係る超微細無機沈降粒子は、限外ろ過に特に好適である。
【0103】
一実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム系極微細合成無機沈降粒子は、5μm以下のd50、15μm以下のd90、および、200nm~3μmのd10の粒径分布を有する。本発明に係る極微細無機沈降粒子は精密ろ過に特に好適である。
【0104】
一実施形態において、限外ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、50nm以上、好ましくは70nm以上、好ましくは100nm以上、好ましくは200nm以上である。
【0105】
一実施形態において、限外ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、500nm以下、好ましくは400nm以下、好ましくは350nm以下、好ましくは320nm以上である。
【0106】
一実施形態において、精密ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、200nm以上、好ましくは250nm以上、好ましくは300nm以上、好ましくは500nm以上である。
【0107】
一実施形態において、精密ろ過のためのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の粒径分布のd10は、1000nm以下、好ましくは900nm以下、好ましくは800nm以下、好ましくは750nm以下である。
【0108】
粒子が小さいほど、流動性保護層7を形成するカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の堆積はより均質となる。好ましくは、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の平均粒径は、0.05μm超、好ましくは0.1μm超、好ましくは0.15μm超である。しかしながら、平均粒径は実際には、d
10およびd
90といった径分布の境界よりも重要度が低いことが分かった。これは、この平均径寸法で粒子はきわめて広い径分布を有する傾向にあるからである。径分布を制御しないと、平均粒径は、目標平均径の機能の達成を補助しない場合がある。
図6は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6に係るd
10およびd
90の例示的な径分布を示す。
【0109】
カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、膜1の規定の孔径よりも大きい、好ましくは膜1の規定の孔径の2倍、好ましくは膜1の規定の孔径の3倍、好ましくは膜1の規定の孔径の5倍、好ましくは膜1の規定の孔径の7倍、好ましくは膜1の規定の孔径の9倍、好ましくは膜1の規定の孔径の10倍大きいd
10を有する径分布を有することが好ましい。
図7および8は、例示を目的として、概略的な膜1を、それぞれ、単一の規定の孔径、および、単一のファウリング制御粒子6径と共に、すなわち、孔径のディラック分布、および、ファウリング制御粒径のディラック分布と共に示す。
図7においては、ファウリング制御粒子6径が規定の孔径よりも小さい場合に何が生じるかが示されている。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は膜1の孔5に進入し、孔5の中において堆積する。これにより膜1の孔5が狭くなってしまい、膜1を通過する被ろ過液体の流れに負の影響を与える。これは、膜技術において標準的な閉塞とも呼ばれる。
図8は、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が孔5中における標準閉塞をもたらさないために、孔5を閉塞しない膜1上の流動性保護層7を概略的に示す。
【0110】
カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、10μm未満、好ましくは5μm未満、好ましくは1μm未満、好ましくは0.5μm未満のd90を有する径分布を有することが好ましい。
【0111】
より好ましくは、一実施形態においては、精密ろ過膜に応じて、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布のd90は、15μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは5μm以下、好ましくは1μm以下、好ましくは0.7μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
【0112】
一実施形態において、限外ろ過膜に応じて、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布のd90は、10μm以下、好ましくは5μm以下、好ましくは1μm以下、好ましくは0.7μm以下、好ましくは0.5μm以下である。
【0113】
これにより、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が、膜表面上に均一な流動性保護層7を形成することの保証が補助される。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6のd90が大きくなりすぎると、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の堆積は不均一になりすぎてしまう。これは流動性保護層7の機能を乱し、有効な膜表面が低減してしまう可能性がある。例えば、中空繊維膜1または管状膜1は、繊維または管壁中に孔5を有する長く延びる中空繊維または管中に膜表面1.1をもたらす。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6が上記のものよりも大きなd90を有する場合、より大きな粒子が主に管または繊維の終点部に集中してしまい、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の不均質堆積がもたらされる。このため、管または繊維の始点部で効果的なファウリング制御のための流動性保護層7が十分に形成されず、管または繊維の終点部における流動性保護層7は過度に厚く、管または繊維を通る流れ、および/または、流動性保護層7を通って孔5に至る流れが遮断されてしまう。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の平均粒径が小さいということのみによっては、均質な堆積は保証されない。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子が広い径分布または大きなd90を有している場合、これらは、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の不均一な堆積をもたらす傾向にある。不均質に堆積されたカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6により形成された流動性保護層7は膜1の孔5を閉塞して、ファウリング制御の効率を低下させてしまう。従って、上記の値よりも小さいd90を有するカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、膜1の膜ファウリング制御のための流動性保護層7の質および性能を顕著に向上させることとなる。
【0114】
カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6は、合成沈降粒子であることが好ましい。合成沈降粒子は、径、熱安定性、機械的安定性、多分散性指数、ゼータ電位、BET表面といった特徴を、および/または、おそらくは他のものを、その製造時に十分に制御可能であるという利点を有する。
【0115】
好ましくは、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/または合成沈降粒子は、金属沈降粒子および/または無機沈降粒子である/を含む。好ましくは、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/または合成無機沈降粒子は、カルシウムおよび/またはマグネシウムに基づくものである。この無機沈降物の分類では、調整可能、および、環境的に適合性の粒子がもたらされる。
【0116】
一実施形態において、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/または合成無機沈降粒子は、沈降炭酸カルシウム(PCC)である/を含む。
【0117】
一実施形態において、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/または合成無機沈降粒子は、沈降水菱苦土石である/を含む。
【0118】
一実施形態において、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム粒子6ならびに/または合成無機沈降粒子は、2種の無機物、好ましくはカルシウムおよびマグネシウム、好ましくは合成炭酸カルシウムおよび合成炭酸マグネシウム、好ましくは(合成沈降)炭酸カルシウムおよび(合成)水菱苦土石の混合固体相を含有する無機複合粒子である/を含む。
【0119】
合成カルシウム/炭酸マグネシウムは、か焼されて、か焼の最中にCO2を除去することによりカルシウム/酸化マグネシウムを生成する天然のカルシウム/炭酸マグネシウムからもたらされる。天然の炭酸カルシウムは一般に石灰岩と呼ばれる。天然の炭酸マグネシウムは一般に菱苦土石と呼ばれるが、数々の水和物形態で存在していることが可能である。天然のカルシウム-炭酸マグネシウムは一般に苦灰石と呼ばれる。カルシウム/酸化マグネシウムをか焼により生成する場合、これは、さらに水和化されて水和物形態または消石灰形態を形成し得、これがさらに炭酸化されてカルシウム/炭酸マグネシウムの沈降物を形成し得る(加圧下または非加圧下)。典型的には、天然の苦灰石中におけるカルシウム対マグネシウムのモル比は、0.8~1.2である。この比は、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムの存在下における酸化物の消和により、約0.1~10に変更可能である。
【0120】
沈降カルシウム/炭酸マグネシウムはまた、天然形態に由来する不純物を含有していることが可能である。これらの不純物は特に、アルミノケイ酸種のクレイ、シリカ、鉄またはマンガン系不純物などの天然の石灰石および苦灰石中に見られるすべてのものを、最大で10重量%、好ましくは最大で5重量%、好ましくは最大で1重量%の量で含む。
【0121】
一般に、カルシウム-マグネシウム化合物中におけるCaCO3、MgCO3、Ca(OH)2およびMg(OH)2含有量は、従来の方法で容易に判定し得る。
【0122】
複合粒子は、第1の無機材料のコア、および/または、第2の材料のシェルを備えていることが好ましい。好ましくは、第1の無機材料は、無機沈降物、好ましくはカルシウム系無機物、好ましくはPCCである。
【0123】
PCCコアは、方解石を主に含むと共に微量のアラゴナイトを含むことが好ましい。方解石およびアラゴナイトは、炭酸カルシウムCaCO3の2種の結晶構造である。
【0124】
本発明の他の実施形態において、PCCコアはさらに、水酸化カルシウムCa(OH)2を、例えばポルトランダイト形態で含有し得る。PCCコアでは常に、方解石、アラゴナイトまたはその両方の混合物が重量割合で半分以上を占めることに注意すべきである。
【0125】
PCCは、既述のとおり生石灰の制御された炭酸塩化により得ることが可能であり、文献中にも、例えば製紙用など、添加剤の存在下における石灰乳の炭酸塩化がいくつか報告されている(米国特許出願公開第20189170765号明細書を参照のこと)。
【0126】
好ましくは、第2の無機材料はマグネシウム系材料であり、好ましくは水菱苦土石、好ましくは微量のネスケホナイトを伴う水菱苦土石を含む。塩基性炭酸マグネシウムとも呼ばれる水菱苦土石は、式Mg5(CO3)4(OH)2・4H2Oまたは4MgCO3・Mg(OH)2・4H2Oを有する。国際回折データセンター(ICDD)においては、水菱苦土石は、レファレンス00-025-0513(単斜晶系)または01-070-1177(斜方晶系)を有するデータシートに相当する。一実施形態においては、単斜晶系水菱苦土石が用いられる。他の実施形態においては、斜方晶系水菱苦土石が用いられる。水菱苦土石は、本発明では避けるべきである、式MgCO3の炭酸マグネシウムである菱苦土石、または、式MgCO3.3H2Oの水和炭酸マグネシウムであるネスケホナイトと混同してはならない。
【0127】
本発明の一実施形態において、第2の無機材料は、ペリクレースMgOおよび/またはブルーサイトMg(OH)2をさらに含有し得る。合成炭酸カルシウムおよび水菱苦土石に加えて、本発明の第2の無機材料におけるこれらの異なる構成要素の割合は、以下に記載の本発明に係る第2の無機材料中における混合固体相の取得を可能とする、炭酸塩化法に用いられる操作条件および水和苦灰石の特性に関連していることが可能である。完全水和苦灰石(水和苦灰石中におけるMgOの残存する存在を防止するために加圧下で水和)では、本発明に係る第2の無機材料の混合固体相におけるMg(OH)2の含有量は、部分水和苦灰石が用いられた場合よりも高くなり、後者は恐らく、本発明に係る第2の無機材料の混合固体相におけるMgOの存在をもたらす。
【0128】
炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの混合固体相を含有する無機組成物粒子を生成する方法に関する一例が、参照により本願明細書に援用される、国際公開第2013/139957号パンフレット、および、国際公開第2015/039994号パンフレットにおいて詳述されている。これらの先行文献によれば、合成無機沈降物は合成無機沈降物を膜のファウリング制御に好適とし、前述の利点をもたらす粒径分布を示さない。しかしながら、本発明によれば、本製造プロセスは、d50<5μm、d90<15μmおよび200nm~3μmのd10により特徴付けられる粒径分布が示されるように炭酸カルシウムの混合固体相の成長を制御することにより適合されている。任意により粉砕またはふるい分けステップを行って、大きすぎる粒子を除去したり、または、きわめて微細な粒子に濃縮することが可能である。
【0129】
好ましくは、(炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの)の混合固体相を含有するカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子は、2種の無機物の1種、または、2種の無機物の一方としてPCCを含む。
【0130】
好ましくは、(炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの)の混合固体相を含有するカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子は、2種の無機物の1種、または、2種の無機物の他方として水菱苦土石を含む。
【0131】
このような混合固体相は、4~15m2/g程度の比表面積を有する通常の合成炭酸カルシウムよりも大きな比表面積を有するというさらなる予期しない利点を有する。本発明の一つの有利な実施形態において、混合固体相は、15m2/g以上、より具体的には20m2/g超、および、好ましくは25m2/g以上、場合により35m2/gに達する比表面積を有する。本発明において用いられる「比表面積」とは、190℃で脱気した後に、マノメトリック窒素吸着によって計測され、ブルナウアー、エメットおよびテラーモデル(BET法)を用いて算出される比表面積を意味する。
【0132】
混合固体相は、規格EN459.2に準拠した計測で、250kg/m3以下、および、80kg/m3以上の嵩密度で存在していることが好ましい。
【0133】
カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子は、一実施形態においては、PCCもしくは沈降水菱苦土石、または、他の不活性無機沈降物のように不活性である。他の実施形態において、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子は、反応性であるかまたは官能基化されている。既述の複合粒は官能基化されていることが好ましい。
【0134】
提案されている解決策は、各ろ過サイクルで、好ましくはその開始時に膜1の表面に流動性保護層を適用することにより、膜1の水理学的性能および阻止能を高めることを目標とする。流動性保護層は、ろ過の補助として作用して、膜を通る流れの制御を助けるものである。流動性保護層は、超微細沈降炭酸カルシウムの粒子(すなわち、ナノ-PCC)から構成されていることが好ましい。流動性保護層は、膜表面に多孔性層を形成して、固形分を捕獲すると共にこれらによる膜表面と孔とのファウリングを防止するろ過媒体となる。流動性保護層ろ過は、主に機械的性質であって化学的性質のものではなく、粒子が組み合わさって重なり合い、水の流れを許容することが可能である間隙空間の大きなネットワークをもたらすものである。
【0135】
提案されている膜前処理の発明を、凝析による解決策に基づく水前処理(すなわち、被ろ過液体の前処理にFeCl
3を使用)に対してテストを行った。すべての実験について、Arquennesで採集した運河の水を被ろ過液体として用いた。限外ろ過膜1に基づく実験室規模の膜モジュールをテストに用いた。用いた膜1の分画分子量(MWCO)は、150kDa、すなわち、0.02μmの規定の孔径であった。ろ過の表面積はおよそ0.08m
2であった。ろ過は、デッドエンドモードで、ろ過および逆洗の10回の連続サイクルで行った。ろ過フラックスは、15分間/サイクルについて、190dm
3/(m
2.h)(dm
3/平方メートル/時間)の一定速度に設定した。各ろ過サイクルの後、逆洗ステップを、250dm
3/(m
2.h)のフラックスで1分間行った。
図9は凝析による解決策の結果を示し、一方で、
図10は、本発明により提案されている解決策の結果を示す。膜貫通圧(TMP)を連続するサイクル全体を通して、膜性能の操作指標として記録し、これが
図9および10にプロットされている。右側の第2のY軸は、TMPをbarで示す(下方の曲線)。ろ過および逆洗の10回の連続するサイクルが終了したら、化学的強化逆洗ステップを苛性ソーダ、酸化剤および酸を用いて行い、続いて、脱塩水ですすいだ。各薬品は、膜システムに250dm
3/(m
2.h)で1分間かけて導入し、続いて、10分間液浸し、脱塩水で1分間すすいだ。左側の第1のY軸は、dm
3/hでの供給体積/時間を示す(または、リットル/時間-l/h 上方の曲線)。
【0136】
凝析による解決策は、等しい濃度の1mg Fe
3+/dm
3で被ろ過液体を処理することにより達成した。凝析剤を供給タンクに入れ、350rpmで1分間混合して、凝析剤を高速分散し、被ろ過液体中のコロイド/粒状物質を不安定化した。その後、テスト期間の残りの時間中は50rpmのゆっくりとした混合強度を適用した。結果を
図10に示す。TMPは実験の開始時に0.35barで開始し、ろ過の10回の連続するサイクルおよび逆洗後に0.85barの値まで上昇した。液圧逆洗は、各サイクルの終了時にTMPを回復するのには十分ではない。
【0137】
本発明に係る解決策に基づく実験を、カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6として、0.08μmのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子の径分布のd
10、および、0.15μmのカルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6の径分布のd
90の超微細PCCを用いて行った。PCCストック溶液を0.5%の固形分濃度に希釈し、50rpmで連続的に撹拌して沈降を回避した。カルシウムおよび/またはマグネシウム粒子6を、各ろ過サイクルの開始時に供給ラインを介して被ろ過液体に導入した。その後、運河の水を膜を通して15分間ろ過し、逆洗でPCC流動性保護層7およびファウリング物質10を除去することによりサイクルを終了した。化学強化逆洗を10回のろ過サイクル後に行った。結果を
図10に示す。TMPは、実験期間中を通して0.45barで略一定である。ろ過サイクルの最中の圧力上昇は最低限であり、透水性は、サイクルの終了時にほぼ完全に回復可能である。これにより、ろ過サイクルをきわめて長くすることが可能であり、また、化学的洗浄が必要となる前における物理的洗浄によるろ過サイクルの回数を著しく増やすことが可能である。これにより、TMPを確立するために必要な電力が低減し、膜1の操作時間が長くなり、洗浄に必要とされる薬品の量が減る。
【0138】
他の実験を以下の実験プロトコルで実施した。表面水膜ろ過実験を、供給、浸透液、濃縮水および逆洗バルブおよびポンプが自動的に切替えられる自動化パイロットで実施した。流速および圧力の連続的な読取りを行った。0.8m2の総面積を有する限外ろ過膜モジュールを、30nmの規定の孔径で、これらの実験に用いた。用いた表面水の質は、8のpH、670μS/cmの導電度、9mg/LのDOC、12mg/LのTOC、97mg/LのCa2+、10mg/LのMg2+、および、5mmol/Lのアルカリ度により特徴付けた。PCC生成物当り合計で7回のサイクル(315分間)を行った。圧力読取り値から、膜貫通圧(TMP)、ならびに、透水性K(これらの実験については、フラックス=82.5L/m2.h)を算出した。テスト中における透水性の変化(dK/dt)を、サイクル1および7の開始時の透水性を使用して、6回のサイクル(270分間)の間で計測した。各ろ過サイクルは、約45分間の操作モードと、その後の洗浄モードとを含む。臨界透水性値(K臨界)(この値未満では、操作を継続するには、化学的逆洗が必要)を150L/m2hとし、化学強化逆洗頻度(CEBF)を算出した。この値が高いほど、ろ過性能が向上する。
【0139】
【0140】
これらのパラメータを以下の4つの計測に用いた。
【0141】
第1の計測において、0.6重量%の固体含有量のPCC懸濁液を調製し、撹拌し、ろ過サイクルの操作モードの開始時に25mgの固形分/1Lのろ過水の量で膜表面に注入し、0.58μmの厚さのPCC流動性保護層7を得た(操作モードの前半部分)。これに続いて、45分間の表面水ろ過サイクルを行い(操作モードの後半部分)、この終了時に、膜を浸透水で逆洗した(洗浄モード)。この時点で、PCC層(犠牲層)を、すべての汚染物と一緒に洗浄した。用いたPCC粒子は、0.05μmのd10、0.07μmのd50、および、0.12μmのd90を有していた。
【0142】
第2の計測においては、凝析または供給水のコンディショニング(図示せず)の目的のために従来技術で行われているように、操作モード全体にわたって低濃度、かつ、より連続的に、添加された膜ファウリング制御添加剤と同じ量に対応して、供給水に、同一のPCC懸濁液を開始時に混合した。
【0143】
第3の計測において、ファウリング制御粒子を添加することなく、同じ実験を行った。
【0144】
第4の計測において、従来技術のPCCを、第1の計測と同様に膜1に注入した(図示せず)。
【0145】
図12は、第1の計測に対する経時的なTMP16、および、第3の計測に対する経時的なTMP15を示す。PCC流動性保護層7無しでは、第3の計測のTMP15は、各サイクルにおいて、流動性保護層7に伴う第1の計測のTMP16よりも大きく増加することを明らかに分かる。CEB
F頻度を計測16については、29時間と算出されたが、一方で第3の計測15については8~9時間であった。また、第2の計測に対するCEB
Fはわずかに15時間であった。これは、ファウリング制御粒子の連続的な注入では、操作モードの開始時における濃縮した注入と比して、効果が低減していたことを意味する。従来のPCCはわずかに11時間のCEB
Fを示したが、それ故、本発明に係る粒子分布の値範囲内におけるPCCよりもはるかに悪化していた。
【0146】
本発明が記載の実施形態に限定されることはなく、また、特許請求の範囲から逸脱することなく変更を適用可能であることが理解されるべきである。
【国際調査報告】