(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】二液型製剤を備える消毒溶液
(51)【国際特許分類】
A01N 37/16 20060101AFI20230523BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20230523BHJP
C11D 7/38 20060101ALI20230523BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20230523BHJP
C11D 7/36 20060101ALI20230523BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20230523BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230523BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230523BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
A01N37/16
C11D17/04
C11D7/38
C11D3/48
C11D7/36
A61L2/18 102
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564291
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2021053059
(87)【国際公開番号】W WO2021214598
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520395938
【氏名又は名称】エイエスピー・グローバル・マニュファクチャリング・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ファービッド・ショク・サダト
(72)【発明者】
【氏名】オミドバフシュ・ナビド
【テーマコード(参考)】
4C058
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058AA16
4C058JJ08
4H003AC08
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4H011AA02
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4H011BC04
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC18
4H011DA13
(57)【要約】
除染溶液を作るための二液型製剤は、過酸(例えば、過酢酸(PAA)、酢酸、過酸化水素)を含む第1剤と、pH調整剤(例えば、エタノールアミンまたはリン酸二ナトリウムなどのpH修飾剤)を含む第2剤と、を含むことができ、第1剤および第2剤は、互いに別々に維持される。第1剤および第2剤が硬水を含む水と混合された後で溶液の安定性を高めるのを助けるため、第1剤および第2剤は、溶液の安定性を低下させ得るいかなるキレート剤も欠いていなければならない。安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液型製剤であって、
過酸を含む第1剤と、
pH調整剤を含む第2剤と、
を含み、
前記第1剤および前記第2剤は、互いに別々に維持され、
前記第2剤は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、二液型製剤。
【請求項2】
前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、請求項1に記載の二液型製剤。
【請求項3】
前記第1剤は、耐酸化性安定剤を含む、請求項1または2に記載の二液型製剤。
【請求項4】
前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、請求項3に記載の二液型製剤。
【請求項5】
前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーの耐酸化性キレート剤を含む、請求項4に記載の二液型製剤。
【請求項6】
前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸からなる群から選択されている、請求項4に記載の二液型製剤。
【請求項7】
前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の二液型製剤。
【請求項8】
前記pH調整剤は、pH修飾剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の二液型製剤。
【請求項9】
前記pH修飾剤は、エタノールアミンを含む、請求項8に記載の二液型製剤。
【請求項10】
前記pH修飾剤は、リン酸二ナトリウムを含む、請求項8に記載の二液型製剤。
【請求項11】
前記第2剤は、界面活性剤をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の二液型製剤。
【請求項12】
前記第2剤は、溶媒をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の二液型製剤。
【請求項13】
前記溶媒は、グリコールエーテル、プロピレングリコール、またはそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の二液型製剤。
【請求項14】
前記第1剤は、第1の容器に収容され、前記第2剤は、第2の容器に収容されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の二液型製剤。
【請求項15】
前記第2剤は、いかなるキレート剤も欠いている、請求項1から13のいずれか一項に記載の二液型製剤。
【請求項16】
使用準備済の除染溶液であって、
過酸と、
pH調整剤と、
水と、
を含み、
前記使用準備済の除染溶液は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、使用準備済の除染溶液。
【請求項17】
前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、請求項16に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項18】
耐酸化性安定剤をさらに含む、請求項16または17に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項19】
前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、請求項18に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項20】
前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーからの耐酸化性キレート剤を含む、請求項19に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項21】
前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸)からなる群から選択されている、請求項19に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項22】
前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、請求項16から21のいずれか一項に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項23】
前記使用準備済の除染溶液は、約0.10%~約0.50%のPAA濃度で前記PAAを含む、請求項22に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項24】
前記使用準備済の除染溶液は、約0.35%のPAA濃度で前記PAAを含む、請求項23に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項25】
前記使用準備済の除染溶液の特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約30%未満だけ低下することである、請求項16から24のいずれか一項に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項26】
前記使用準備済の除染溶液の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約15%未満だけ低下することである、請求項25に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項27】
前記使用準備済の除染溶液の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約5%だけ低下することである、請求項26に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項28】
前記使用準備済の除染溶液は、約3~約7のpHを有する、請求項16から27のいずれか一項に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項29】
前記使用準備済の除染溶液は、約3.7~約4.3のpHを有する、請求項28に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項30】
前記使用準備済の除染溶液は、約5のpHを有する、請求項28に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項31】
前記水は、水道水を含む、請求項16から30のいずれか一項に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項32】
前記水は、硬水を含む、請求項31に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項33】
前記硬水は、約100ppm~400ppmの金属イオン濃度を有する、請求項32に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項34】
前記金属イオン濃度は、約200ppmである、請求項33に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項35】
除染溶液を調製する方法であって、
二液型製剤を受け取ることを含み、前記二液型製剤は、
過酸を含む第1剤と、
pH調整剤を含む第2剤と、
を含み、
前記第1剤および前記第2剤は、互いに別々に維持され、
前記第2剤は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、方法。
【請求項36】
前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1剤は、耐酸化性安定剤を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーからの耐酸化性キレート剤を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、請求項35から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記使用準備済の除染溶液は、約0.10%~約0.50%のPAA濃度で前記PAAを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記使用準備済の除染溶液は、約0.35%のPAA濃度で前記PAAを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記使用準備済の除染の特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約30%未満だけ低下することである、請求項35から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記使用準備済の除染の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約15%未満だけ低下することである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記使用準備済の除染の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約5%だけ低下することである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記pH調整剤は、pH修飾剤を含む、請求項35から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記pH修飾剤は、エタノールアミンを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記pH修飾剤は、リン酸二ナトリウムを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記第2剤は、界面活性剤をさらに含む、請求項35から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記第2剤は、溶媒をさらに含む、請求項35から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記溶媒は、グリコールエーテルを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第1剤および前記第2剤を、ある体積の水と組み合わせて前記使用準備済の除染溶液を作ることをさらに含む、請求項35から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記使用準備済の除染溶液は、約3~約7のpHを有する、請求項35から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記使用準備済の除染溶液は、約3.7~約4.3のpHを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記使用準備済の除染溶液は、約5のpHを有する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記ある体積の水は、水道水を含む、請求項35から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記ある体積の水は、硬水を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記硬水は、約100ppm~400ppmの金属イオン濃度を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記金属イオン濃度は、約200ppmである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第2剤は、いかなるキレート剤も欠いている、請求項35から60のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、自動再処理システムで使用されるのに適した、医療装置の除染を助けるのに使用され得る液体、特に、除染液、例えば、消毒液および滅菌液に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな医療装置が、医療分野において多くの処置で使用される。これらの装置は、処置自体と同様に多様である。したがって、これらの装置の適切なケアは、適用の効率およびそれに対応する患者の適切な治療にとって、重要である。
【0003】
感熱式可撓性内視鏡などの医療装置が使用された後、医療装置は、次の使用に備えて医療装置の準備をするために、クリーニングおよび除染(すなわち、消毒または滅菌)される。クリーニングおよび除染は、コネクタ(チューブ、取り付け具など)を使用して、医療装置を再処理機、例えば自動内視鏡再処理装置(AER)に取り付けることを含み得る。医療装置をクリーニングおよび除染するために、AERは、とりわけ、液体ポンプを用いて医療装置の内腔を通して液体を循環させることができる。
【0004】
ある特定の酸、例えば、過酢酸(「PAA」)などの過酸を含む、過酸素化合物(peroxygen compounds)は、医療装置の除染を助けるのに使用され得る。しかしながら、使用準備済の形態では、例えば、pHを調節された、溶液、典型的には水溶液中では、安定性が低い。これは、溶液形態で使用される、過酸素系に基づく除染剤(peroxygen-based based decontaminants)、特に過酸系除染剤が、使用準備済でない形態で、例えば、A剤(Part A)およびB剤(Part B)を含む二液型キットとして、ヘルスケア提供者に提供される、1つの理由である。A剤は、酢酸、ペルオキシ酢酸、過酸化水素、安定剤、および硫酸を含み得る。B剤は、キレート化剤(例えば、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、L-グルタミン酸N,N-二酢酸(GLDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)))、腐食抑制剤(例えば、1H-ベンゾトリアゾール、サリチル酸ナトリウム)、およびpH緩衝剤またはpH調整剤の混合物を含み得る。A剤およびB剤は、除染のためのpH調整された使用準備済の溶液を作るため、水と混合され得る。
【0005】
B剤のキレート化剤は、水の中に一般的に見られるもの、例えば、カルシウムおよびマグネシウムイオンを含む、金属イオンを結合することができる、化合物である。これらの金属イオンは、使用準備済の溶液の低安定性の一因となる要因であることが、当技術分野で一般的に理解されており、それは、これらが過酸化物の分解を触媒し得るためである。キレート剤は、カルシウムおよびマグネシウムイオンを水から除去するのに使用され得るので、使用準備済のPAA溶液の安定性を高めると共に、消毒および滅菌性能を改善することが、理解される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある特定の除染溶液、特に過酸を含むものは、短い安定期間を有し得る。したがって、これらの溶液を作るための成分は、非溶液形態で提供され得る。例えば、成分は、二液型製剤で提供され得、これは、溶液を使用するときがきたら混ぜ合わせられて溶液を作る。二液型製剤は、過酸(例えば、過酢酸(PAA)、酢酸、過酸化水素)を含む第1剤と、pH調整剤(例えば、エタノールアミンまたはリン酸二ナトリウムなどのpH修飾剤)を含む第2剤と、を含み得、第1剤および第2剤は、互いに別々に維持される(例えば、第1剤は第1の容器内で維持され、第2剤は第2の容器内で維持される)。第1剤と第2剤が混合された後で溶液の安定性を高めるのを助けるため、第1剤および第2剤は、溶液の安定性を低下させ得るいかなるキレート剤、すなわち「安定性低下キレート剤」も欠いていなければならない。安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含み得る。
【0007】
しかしながら、第1剤の安定性は、ある特定の耐酸化性キレート剤を含み得る、耐酸化性安定剤を第1剤に含めることにより、高められ得る。同様に、溶液の安定性は、ある特定のキレート剤を含み得る、耐酸化性安定剤を第1剤または第2剤に含めることにより、高められ得る。例えば、耐酸化性安定剤は、ホスホネートファミリー(phosphonate family)からのキレート剤、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含み得る。過酸は、過酢酸、過乳酸(perlactic acid)、過クエン酸(percitric acid)、過オクタン酸(peroctanoic acid)、過グリコール酸(perglycolic acid)、過プロピオン酸(perpropionic acid)、過グルタル酸(perglutaric acid)、および過コハク酸(persuccinic acid)を含むがこれらに制限されない、任意の過カルボン酸から選択され得る。
【0008】
第2剤は、水およびアルカリ溶液で作られた塩基性水溶液(ここでは、pH修飾剤とも呼ばれる)、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、またはエタノールアミンとすることができる。さらに、第2剤は、他の成分、例えば界面活性剤または溶媒(例えば、グリコールエーテル、プロピレングリコール、もしくは両方)を含み得る。第1剤、第2剤、および水は、組み合わせられるか、または混合されて、使用準備済の除染溶液を作ることができる。したがって、この溶液は、PAAおよび耐酸化性キレート剤を含むと共に、いかなる安定性低下キレート剤も欠いていてよい。PAAは、約0.10%~約0.50%、例えば約0.35%の濃度で、溶液中にあってよい。溶液は、約56℃で約1時間維持されたときにPAA濃度が約30%未満(例えば、約15%未満、例えば約5%)だけ低下する、特性を有し得る。さらに、溶液は、約3~約7、例えば約5のpHを有し得る。溶液を作るために使用される水は、金属イオン濃度が約100ppm~400ppm、例えば200ppmの硬水であってよい、水道水を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面では、異なる図面における同様の要素に同一の符号が付けられている。図面は、必ずしも一定の比率に縮小されているわけではないが、選択された実施形態を描いており、発明の範囲を制限することは意図されていない。詳細な説明は、発明の原理を、制限する目的ではなく、例として説明している。この説明は、当業者が本発明を製造および使用することを明らかに可能にし、本発明を実施する最良の形態であると現在考えられているものを含め、本発明のいくつかの実施形態、改作物、変形例、代替案、および使用を説明するものである。
【0010】
本明細書で使用される場合、任意の数値または範囲に関する用語「約」または「およそ」は、構成要素の一部または集合が本明細書に記載されるような意図する目的のために機能するのを可能にする、適切な寸法公差を示す。さらに具体的には、「約」または「およそ」は、記載した値の±10%の値の範囲を指すことができ、例えば、「約90%」は、81%~99%の値の範囲を指し得る。さらに、本明細書で使用される場合、用語「患者」、「宿主」、「ユーザ」、および「被験者」は、任意のヒトまたは動物の被験者を指し、システムまたは方法をヒト使用に限定することを意図していないが、ヒト患者における本発明の使用が、好適な実施形態である。
【0011】
前述したように、過酸素化合物などの酸を含む使用準備済の除染溶液は、低い安定性を有し得る。これは、酸が過酸を含む場合に特にそうなる。本開示は、これらの溶液の安定性を長引かせることに関する研究努力の間に発明者らによってなされた驚くべき発見に基づく。発明者らは、いくつかのキレート化剤(本明細書では交換可能に「キレート剤」とも呼ばれる)が、これらの溶液の、安定性を、よって、消毒および滅菌の効力を低下させることを発見した。この発見は、キレート剤が金属イオンを溶液から除去することによって使用準備済の除染溶液の安定性を高めるという、容認されている意見と相容れない。この容認されている意見は、例えば、国際公開第WO2016/082897号に開示されており、これは、キレート剤を組成物中で使用することで、貯蔵寿命を改善することを記載している。この容認されている意見は、キレート剤の四ナトリウムEDTAを含む、Sterisにより製造されたS40(商標)Sterilant Concentrateにおいても具体化されている。
【0012】
発明者らは、少なくともいくつかのキレート剤が、pH調整された使用準備済の除染溶液の安定性を、硬水を含む溶液中でさえ低下させるという発見を確認するために、さまざまな研究を行った。これらの研究では、過酢酸(PAA)が200百万分率(「ppm」)の水の硬度を有する硬水と組み合わせられ、結果として得られた溶液が0.35%濃度のPAAを含んでいた。溶液のpHは、pH修飾剤を使用して5に調整された。溶液の第1のバッチでは、使用したpH修飾剤はエタノールアミンであった。溶液の第2のバッチでは、使用したpH修飾剤はリン酸二ナトリウムであった。これらの2つのバッチからの試験試料は、キレート剤をこれに個別添加することにより、作られた。これらの研究に使用したキレート剤は、イオン(例えば、カルシウムおよびマグネシウム)を硬水から除去するために使用されるものであり、四ナトリウムEDTA、TRILON(登録商標) M(メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩(MGDA-Na3))、TRILON(登録商標) C(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(DTPA-Na5))、クエン酸ナトリウム、およびDISSOLVINE(登録商標) GL(グルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩(GLDA-Na4))を含んだ。そのようないかなるキレート剤も欠いている試験試料も、これら2つのバッチから作られた。場合によっては、試験試料は、これらのキレート剤のうちいくつかの濃度を変えて作られた。表1は、溶液の第1のバッチから作られた試験試料を表す。表2は、溶液の第2のバッチから作られた試験試料を表す。これらの表はまた、各試料中の各キレート剤の濃度をパーセンテージとして表す。各試料は、56℃で1時間加熱された。その時間の終わりに、PAA濃度が決定された。PAAの最終濃度が、表1および表2中、時間の終わりに決定されたPAA濃度の変化(「Δ PAA%」)と並んで記載されている。
表1
PAAの初期濃度=0.35%。水の硬度=200ppm。PAA溶液のpHはエタノールアミンで5に調整された。使用準備済のPAA溶液は1時間にわたり56℃の熱に曝露された。
【表1】
表2
PAAの初期濃度=0.35%。水の硬度=200ppm。PAA溶液のpHはリン酸二ナトリウムで5に調整された。使用準備済のPAA溶液は1時間にわたり56℃の熱に曝露された。
【表2】
【0013】
表1および表2に表すように、溶液の各試料中のPAA濃度は、0.35%の開始濃度から低下した。この低下は、いかなるキレート剤も欠いていた2つの試料で最小であった。具体的には、pHがエタノールアミンを使用して調整された場合、いかなるキレート剤も欠いている試料中のPAA濃度は、約29%だけ低下したが、キレート剤が含まれている場合には、PAA濃度は、最大で60%だけ低下した。さらに、pHがリン酸二ナトリウムを使用して調整された場合、いかなるキレート剤も欠いている試料中のPAA濃度は、約9%だけ低下したが、キレート剤が含まれている場合には、PAA濃度は、最大で49%だけ低下した。この発見は、キレート剤が金属イオンを溶液から除去することにより使用準備済の溶液の安定性を高めるという、容認されている意見を考慮すると、驚くべきものであった。硬水から作られた、pH調整された使用準備済の溶液の試料でも、表1および表2で提供されるような、発明者らが収集したデータは、この容認されている意見を裏付けるものではない。
【0014】
発明者らの発見の具体的な適用は、例えば、前述した試験などの試験により決定されるような使用準備済の溶液の安定性を低下させるであろういかなるキレート剤も欠いている製品およびpH調整溶液を製造することを含む。過酸素化合物を含有する溶液の安定性を低下させることが示され得る、任意のキレート剤は、本明細書ではまとめて「安定性低下キレート剤」と呼ばれる。このような安定性低下キレート剤の例は、前述したもの、および、他のもの、例えば:a)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、b)四ナトリウムEDTA、TRILON(登録商標) M(メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩(MGDA-Na3))、c)TRILON(登録商標) C(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(DTPA-Na5))、d)クエン酸ナトリウム、e)NTA(ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩)、およびf)DISSOLVINE(登録商標) GL(グルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩(GLDA-Na4))を含む。
【0015】
1つのそのような適用では、A剤(すなわち、第1剤)およびB剤(すなわち、第2剤)を含む、除染(消毒および滅菌など)のための二液型製剤が提供され得る。A剤は、PAA、酢酸、過酸化水素、安定剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む過酸で構成され得る。A剤中のPAAは、過酸化水素と酢酸とを組み合わせることによって形成され得る。さらに、A剤は、ある特定のキレート剤を含み得る、酸化に耐性がある安定剤を含有し得る。例えば、この安定剤は、ホスホネートファミリーからのキレート化剤を含み得、それは、これらのキレート化剤がPAAなどの過酸素化合物と反応せず、よって、このようなキレート化剤がA剤中のPAAの安定性を高めるためである。このような酸化低下キレート剤の具体的な例は、例えば、a)アミノトリメチレンホスホン酸、b)ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、c)2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、d)エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、およびe)1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸などの、ホスホン酸/ホスホネートファミリーからのキレート化剤を含むが、これらに制限されない。さらに、または代わりに、Italmatch Chemicalsにより商用名DEQUEST(登録商標)で販売されているホスホン酸が、A剤に含まれ得る。例としては、DEQUEST(登録商標) 2000、2010、2060、2070、および2090が含まれる。
【0016】
B剤は、使用準備済の溶液の所望のpHを達成するために、pH緩衝剤またはpH修飾剤(例えば、エタノールアミン、リン酸二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)などのpH調整剤で構成され得る。B剤は、界面活性剤、好ましくは低発泡界面活性剤(例えば、脂肪アルコールエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー誘導体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、溶媒(例えば、グリコールエーテルおよびプロピレングリコール)、ならびに腐食抑制剤(例えば、1H-ベンゾトリアゾール、サリチル酸ナトリウム)をさらに含み得る。
【0017】
発明者らの発見に基づくと、B剤は、いかなる安定性低下キレート剤も含有すべきではない。好ましくは、B剤は、いかなるキレート剤も欠いている。それにもかかわらず、前述したようにA剤に含まれ得るものなどの、安定性低下キレート剤ではないキレート剤が、B剤に含まれ得る。しかしながら、B剤に任意のそのようなキレート剤を含むことは、使用準備済の溶液の正しいpHが達成されるように、追加の緩衝剤または他の化学物質をB剤に添加することを必要とし得る。これらの緩衝剤または他の化学物質の添加は、B剤が単にいかなるキレート剤も欠いている場合よりも、器具(例えば、可撓性内視鏡)上での溶液の細胞毒性効果(cytotocitiy effect)を潜在的に高め得る。
【0018】
A剤およびB剤は、別々の容器を含むキット内、または単一の容器の別々の区画内などで、例えば、未混合状態で、互いに別々に維持され、提供され、保管されなければならない。すなわち、A剤は、第1の容器に収容され得、B剤は、第2の容器に収容され得る。A剤およびB剤は、硬水道水(hard tap water)(約100ppm~約400ppm未満、例えば200ppmの金属イオンを有する)を含む水などの、別の液体と組み合わせられ、約3~約7、例えば約3.7~約4.3、または約5のpHを有し得る、pH調整された使用準備済の溶液を作ることができる。使用準備済の溶液は、約0.10%~約0.5%、例えば約0.35%の濃度でPAAを含み得る。表1および表2のデータに基づくと、pH調整された使用準備済の溶液は、約56℃で約1時間維持された後、約30%未満、例えば約15%未満、例えば約5%のPAA濃度の低下を示す。
【0019】
水道水は豊富なので、過酸溶液を希釈するのに使用され得る。水道水の硬度が過度である場合、システムに入る前に水の硬度を低下させるため、より軟らかい水で処理することが必要となり得る。そのような処理は、それでもなお、脱イオン水または滅菌水を使用する場合よりも費用がかからず、複雑でないはずである。さらに、水道水は、粒子および微生物(例えば、細菌)を捕捉するために、フィルタまたは一連のフィルタ(例えば、0.1~0.4μm)を通過することができる。したがって、安定性低下キレート剤のいずれも欠いているPAA溶液の使用は、安定性を改善するだけでなく、使用準備済の溶液を作るために蛇口以外の供給源からの水を使用することに関連する関連費用も低減するはずである。
【0020】
したがって、A剤およびB剤は、別々の容器、例えばカップに入れて提供されて、ヘルスケア提供者によって、例えば、脱イオン水または硬水道水と混合され得る。表3は、過酢酸が酢酸および過酸化水素を反応させ平衡にすることにより形成された、A剤の例示的な製剤を表す。表4は、B剤の3つの例示的な製剤を表す。表5は、表3のA剤を、表4の、B剤の3つの異なる製剤、およびその異なる質量のそれぞれと、脱イオン水と、混合することにより得られる、3つの使用準備済の溶液の特性を表す。表5は、混合直後の溶液のpH、混合直後のPAAのパーセンテージ、混合後に溶液を約56℃で約60分の間維持した後のPAAのパーセンテージ、およびPAA損失パーセンテージ(percentage loss)も表す。
表3
例示的なA剤の製剤
【表3】
表4
例示的なB剤の製剤
【表4】
表5
A剤+B剤+硬水の製剤。A剤およびB剤は、200ppmの硬水中で混合され、その後、56℃に予熱された。
【表5】
【0021】
本明細書中で例示および説明される実施形態により、出願人は、硬水道水を含む水を使用して、pH調整された使用準備済のPAA溶液を調製するための方法およびその変形例を考案した。方法およびその変形例は、本明細書に記載されるA剤およびB剤のいずれかを、ある体積の水と混合するステップを含む。水は、精製水、脱イオン水、または水道水とすることができる。水道水が使用される変形例では、水道水は、約100ppm~約400ppm、例えば200ppmの硬度を有し得る。使用準備済の溶液がPAAを含む場合、溶液は、約56℃で約1時間維持された後で、PAA濃度が30%未満、例えば約15%未満、例えば約5%だけ低下する、特性を示す。
【0022】
したがって、使用準備済の溶液は、以下の方法および変形例に従って医療装置を除染するのに使用され得る。第一に、A剤およびB剤が、ユーザ、例えばヘルスケア提供者またはその従業員によって受け取られ得る。方法のいくつかの変形例では、A剤を収容する第1の容器およびB剤を収容する第2の容器が、ユーザによって受け取られ得る。他の変形例では、1つはA剤を収容し、1つはB剤を収容する、別々の区画を含む単一の容器が、ユーザによって受け取られ得る。第二に、これらの変形例すべてにおいて、ユーザは、1つまたは複数の容器を開封し得る。第三に、先行する段落で説明したように、ユーザは、A剤と、B剤と、硬水を含む水とを組み合わせることによって、使用準備済の溶液を調製することができる。A剤がPAAを含む変形例では、使用準備済のPAA溶液は、約56℃で約1時間維持された後、溶液中のPAA濃度が30%未満、例えば約15%未満または約10%未満、例えば約5%以下だけ低下する、特性を示す。第四に、ユーザは、除染システム、例えば自動内視鏡再処理装置、のリザーバを、使用準備済の溶液PAA溶液で満たすか、またはA剤、B剤、および水で満たして使用準備済のPAA溶液を作ることができる。第五に、ユーザは、内視鏡などの医療装置を、除染システムの除染エリア、例えばたらいの中に入れることができる。第六に、ユーザはシステムを起動することができる。最後に、ユーザは、除染された状態の医療装置をシステムから取り出すことができる。
【0023】
本明細書に記載される実施例または実施形態のいずれも、前述したものに加えて、またはその代わりに、さまざまな他の特徴を含み得る。本明細書に記載される教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して分離して見るべきではない。本明細書の教示が組み合わせられ得るさまざまな適切な方法は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかなはずである。
【0024】
本明細書に含まれる主題の例示的な実施形態を図示および説明してきたが、本明細書に記載される方法およびシステムのさらなる改作物が、特許請求の範囲から逸脱せずに、適切な改変により達成され得る。さらに、前述した方法およびステップがある特定の順序で起こるある特定の事象を示す場合、ある特定のステップは、記載された順序で実施される必要はなく、ステップにより実施形態がその意図された目的で機能する限り、任意の順序でよいことが意図されている。したがって、本開示の趣旨または特許請求の範囲で見られる発明の等価物の範囲内にある、発明の変形例がある範囲で、本特許はそれらの変形例もカバーすることが意図される。いくつかのそのような改変は、当業者には明らかなはずである。例えば、前述した実施例、実施形態、幾何学的特徴、材料、寸法、比率、ステップなどは、例示的なものである。したがって、特許請求の範囲は、書面の説明および図面に記載された構造および動作の具体的な詳細に限定すべきではない。
【0025】
〔実施の態様〕
(1) 二液型製剤であって、
過酸を含む第1剤と、
pH調整剤を含む第2剤と、
を含み、
前記第1剤および前記第2剤は、互いに別々に維持され、
前記第2剤は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、二液型製剤。
(2) 前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、実施態様1に記載の二液型製剤。
(3) 前記第1剤は、耐酸化性安定剤を含む、実施態様1または2に記載の二液型製剤。
(4) 前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、実施態様3に記載の二液型製剤。
(5) 前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーの耐酸化性キレート剤を含む、実施態様4に記載の二液型製剤。
【0026】
(6) 前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸からなる群から選択されている、実施態様4に記載の二液型製剤。
(7) 前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、実施態様1から6のいずれかに記載の二液型製剤。
(8) 前記pH調整剤は、pH修飾剤を含む、実施態様1から6のいずれかに記載の二液型製剤。
(9) 前記pH修飾剤は、エタノールアミンを含む、実施態様8に記載の二液型製剤。
(10) 前記pH修飾剤は、リン酸二ナトリウムを含む、実施態様8に記載の二液型製剤。
【0027】
(11) 前記第2剤は、界面活性剤をさらに含む、実施態様1から10のいずれかに記載の二液型製剤。
(12) 前記第2剤は、溶媒をさらに含む、実施態様1から11のいずれかに記載の二液型製剤。
(13) 前記溶媒は、グリコールエーテル、プロピレングリコール、またはそれらの組み合わせを含む、実施態様12に記載の二液型製剤。
(14) 前記第1剤は、第1の容器に収容され、前記第2剤は、第2の容器に収容されている、実施態様1から13のいずれかに記載の二液型製剤。
(15) 前記第2剤は、いかなるキレート剤も欠いている、実施態様1から13のいずれかに記載の二液型製剤。
【0028】
(16) 使用準備済の除染溶液であって、
過酸と、
pH調整剤と、
水と、
を含み、
前記使用準備済の除染溶液は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、使用準備済の除染溶液。
(17) 前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、実施態様16に記載の使用準備済の除染溶液。
(18) 耐酸化性安定剤をさらに含む、実施態様16または17に記載の使用準備済の除染溶液。
(19) 前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、実施態様18に記載の使用準備済の除染溶液。
(20) 前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーからの耐酸化性キレート剤を含む、実施態様19に記載の使用準備済の除染溶液。
【0029】
(21) 前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸)からなる群から選択されている、実施態様19に記載の使用準備済の除染溶液。
(22) 前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、実施態様16から21のいずれかに記載の使用準備済の除染溶液。
(23) 前記使用準備済の除染溶液は、約0.10%~約0.50%のPAA濃度で前記PAAを含む、実施態様22に記載の使用準備済の除染溶液。
(24) 前記使用準備済の除染溶液は、約0.35%のPAA濃度で前記PAAを含む、実施態様23に記載の使用準備済の除染溶液。
(25) 前記使用準備済の除染溶液の特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約30%未満だけ低下することである、実施態様16から24のいずれかに記載の使用準備済の除染溶液。
【0030】
(26) 前記使用準備済の除染溶液の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約15%未満だけ低下することである、実施態様25に記載の使用準備済の除染溶液。
(27) 前記使用準備済の除染溶液の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約5%だけ低下することである、実施態様26に記載の使用準備済の除染溶液。
(28) 前記使用準備済の除染溶液は、約3~約7のpHを有する、実施態様16から27のいずれかに記載の使用準備済の除染溶液。
(29) 前記使用準備済の除染溶液は、約3.7~約4.3のpHを有する、実施態様28に記載の使用準備済の除染溶液。
(30) 前記使用準備済の除染溶液は、約5のpHを有する、実施態様28に記載の使用準備済の除染溶液。
【0031】
(31) 前記水は、水道水を含む、実施態様16から30のいずれかに記載の使用準備済の除染溶液。
(32) 前記水は、硬水を含む、実施態様31に記載の使用準備済の除染溶液。
(33) 前記硬水は、約100ppm~400ppmの金属イオン濃度を有する、実施態様32に記載の使用準備済の除染溶液。
(34) 前記金属イオン濃度は、約200ppmである、実施態様33に記載の使用準備済の除染溶液。
(35) 除染溶液を調製する方法であって、
二液型製剤を受け取ることを含み、前記二液型製剤は、
過酸を含む第1剤と、
pH調整剤を含む第2剤と、
を含み、
前記第1剤および前記第2剤は、互いに別々に維持され、
前記第2剤は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、方法。
【0032】
(36) 前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、実施態様35に記載の方法。
(37) 前記第1剤は、耐酸化性安定剤を含む、実施態様35または36に記載の方法。
(38) 前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、実施態様37に記載の方法。
(39) 前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーからの耐酸化性キレート剤を含む、実施態様38に記載の方法。
(40) 前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸からなる群から選択される、実施態様38に記載の方法。
【0033】
(41) 前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、実施態様35から40のいずれかに記載の方法。
(42) 前記使用準備済の除染溶液は、約0.10%~約0.50%のPAA濃度で前記PAAを含む、実施態様41に記載の方法。
(43) 前記使用準備済の除染溶液は、約0.35%のPAA濃度で前記PAAを含む、実施態様42に記載の方法。
(44) 前記使用準備済の除染の特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約30%未満だけ低下することである、実施態様35から43のいずれかに記載の方法。
(45) 前記使用準備済の除染の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約15%未満だけ低下することである、実施態様44に記載の方法。
【0034】
(46) 前記使用準備済の除染の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約5%だけ低下することである、実施態様45に記載の方法。
(47) 前記pH調整剤は、pH修飾剤を含む、実施態様35から46のいずれかに記載の方法。
(48) 前記pH修飾剤は、エタノールアミンを含む、実施態様47に記載の方法。
(49) 前記pH修飾剤は、リン酸二ナトリウムを含む、実施態様47に記載の方法。
(50) 前記第2剤は、界面活性剤をさらに含む、実施態様35から49のいずれかに記載の方法。
【0035】
(51) 前記第2剤は、溶媒をさらに含む、実施態様35から50のいずれかに記載の方法。
(52) 前記溶媒は、グリコールエーテルを含む、実施態様51に記載の方法。
(53) 前記第1剤および前記第2剤を、ある体積の水と組み合わせて前記使用準備済の除染溶液を作ることをさらに含む、実施態様35から52のいずれかに記載の方法。
(54) 前記使用準備済の除染溶液は、約3~約7のpHを有する、実施態様35から53のいずれかに記載の方法。
(55) 前記使用準備済の除染溶液は、約3.7~約4.3のpHを有する、実施態様54に記載の方法。
【0036】
(56) 前記使用準備済の除染溶液は、約5のpHを有する、実施態様54に記載の方法。
(57) 前記ある体積の水は、水道水を含む、実施態様35から56のいずれかに記載の方法。
(58) 前記ある体積の水は、硬水を含む、実施態様57に記載の方法。
(59) 前記硬水は、約100ppm~400ppmの金属イオン濃度を有する、実施態様58に記載の方法。
(60) 前記金属イオン濃度は、約200ppmである、実施態様59に記載の方法。
【0037】
(61) 前記第2剤は、いかなるキレート剤も欠いている、実施態様35から60のいずれかに記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液型製剤であって、
過酸を含む第1剤と、
pH調整剤を含む第2剤と、
を含み、
前記第1剤および前記第2剤は、互いに別々に維持され、
前記第2剤は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、二液型製剤。
【請求項2】
前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、請求項1に記載の二液型製剤。
【請求項3】
前記第1剤は、耐酸化性安定剤を含む、請求
項2に記載の二液型製剤。
【請求項4】
前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、請求項3に記載の二液型製剤。
【請求項5】
前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーの耐酸化性キレート剤を含む、請求項4に記載の二液型製剤。
【請求項6】
前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸からなる群から選択されている、請求項4に記載の二液型製剤。
【請求項7】
前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、請求項
5に記載の二液型製剤。
【請求項8】
前記pH調整剤は、pH修飾剤を含む、請求項
5に記載の二液型製剤。
【請求項9】
使用準備済の除染溶液であって、
過酸と、
pH調整剤と、
水と、
を含み、
前記使用準備済の除染溶液は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、使用準備済の除染溶液。
【請求項10】
前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、請求項
9に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項11】
耐酸化性安定剤をさらに含む、請求項
10に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項12】
前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、請求項
11に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項13】
前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーからの耐酸化性キレート剤を含む、請求項
12に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項14】
前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン
酸からなる群から選択されている、請求項
12に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項15】
前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、請求項
13に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項16】
前記使用準備済の除染溶液は、約0.10%~約0.50%のPAA濃度で前記PAAを含
み、
前記使用準備済の除染溶液の特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約30%未満だけ低下することである、請求項
15に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項17】
前記使用準備済の除染溶液の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約15%未満だけ低下することである、請求項
16に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項18】
前記使用準備済の除染溶液の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約5%だけ低下することである、請求項
17に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項19】
前記水は、
約100ppm~400ppmの金属イオン濃度を有する硬水を含む、請求項
16に記載の使用準備済の除染溶液。
【請求項20】
除染溶液を調製する方法であって、
二液型製剤を受け取ることを含み、前記二液型製剤は、
過酸を含む第1剤と、
pH調整剤を含む第2剤と、
を含み、
前記第1剤および前記第2剤は、互いに別々に維持され、
前記第2剤は、いかなる安定性低下キレート剤も欠いている、方法。
【請求項21】
前記安定性低下キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、四ナトリウムEDTA、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸三ナトリウム塩、およびグルタミン酸二酢酸四ナトリウム塩を含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1剤は、耐酸化性安定剤を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記耐酸化性安定剤は、耐酸化性キレート剤を含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記耐酸化性キレート剤は、ホスホネートファミリーからの耐酸化性キレート剤を含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記耐酸化性キレート剤は、アミノトリメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ヒドロキシエチル(アミノ)ビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸からなる群から選択される、請求項
23に記載の方法。
【請求項26】
前記過酸は、過酢酸(PAA)を含む、請求項
24に記載の方法。
【請求項27】
前記使用準備済の除染溶液は、約0.10%~約0.50%のPAA濃度で前記PAAを含
み、
前記使用準備済の除染溶液の特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約30%未満だけ低下することである、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記使用準備済の除染
溶液の前記特性は、約56℃で約1時間維持されると前記PAA濃度が約15%未満だけ低下することである、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1剤および前記第2剤を、ある体積の水と組み合わせて前記使用準備済の除染溶液を作ることをさらに含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項30】
前記ある体積の水は、
約100ppm~400ppmの金属イオン濃度を有する硬水を含む、請求項
29に記載の方法。
【国際調査報告】