(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】トレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット及びその調整方法
(51)【国際特許分類】
B60B 35/10 20060101AFI20230523BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B60B35/10 B
A01M7/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564373
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2021085757
(87)【国際公開番号】W WO2021238421
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202010460878.9
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520193507
【氏名又は名称】農業農村部南京農業機械化研究所
【氏名又は名称原語表記】NANJING INSTITUTE OF AGRICULTURAL MECHANIZATION, MINISTRY OF AGRICULTURE AND RURAL AFFAIRS
【住所又は居所原語表記】No.100 Liuying, Xuanwu District, Nanjing, Jiangsu 210014 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 龍飛
(72)【発明者】
【氏名】薛 新宇
(72)【発明者】
【氏名】▲楽▼ 飛翔
(72)【発明者】
【氏名】孫 涛
(72)【発明者】
【氏名】陳 晨
(72)【発明者】
【氏名】張 宋超
(72)【発明者】
【氏名】孫 竹
(72)【発明者】
【氏名】徐 陽
(72)【発明者】
【氏名】顧 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】丁 素明
(72)【発明者】
【氏名】金 永奎
(72)【発明者】
【氏名】張 玲
(72)【発明者】
【氏名】周 立新
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121CB03
2B121CB25
2B121CB33
2B121CB42
2B121CB47
2B121CB61
2B121CC02
2B121CC03
2B121EA26
2B121FA04
2B121FA11
(57)【要約】
トレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット及びその調整方法を提供する。車輪型農業ロボットは、制御システムと、4本の駆動輪脚が設けられた車体(3)と、トレッド調整アクチュエータと、を備え、車輪トレッドの同期調整、2輪個別調整及び4輪個別調整等の調整モードにより、作物の列間及び地形の変化に基づき、トレッドを適応的に調整し、苗押えを低減させ、シャーシが障害物、狭い道路等の複雑な地形を順調に通過できることを確保し、それにより作業効率を向上させ、作業コストを低減させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムと、4本の駆動輪脚が設けられた車体(3)と、を備えるトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボットであって、
トレッド調整アクチュエータがさらに設けられ、
車体(3)の4つの駆動輪脚はそれぞれ対応するロッカーアーム(7)を介してシャーシフレームに接続され、前記駆動輪脚は車輪(10)とステアリング装置(8)を備え、各車輪(10)はいずれも個別のインホイールモータ(14)によって駆動され、インホイールモータ(14)の駆動回路は制御システムに接続され、
前記ステアリング装置(8)は、車輪(10)のステアリングを制御するステアリングモータと、モータ取付座と、を備え、前記モータ取付座は輪脚ブラケット(9)を介して下方の車輪(10)に接続され、ロッカーアーム(7)の外側の一端はモータ取付座に固定接続され、内側の一端はロッカーアーム回転軸(12)を含む回転対偶を介してシャーシフレームに接続され、これによりロッカーアーム(7)は、ロッカーアーム回転軸(12)を中心として、車体の縦軸線に対して横方向に揺動し、対応する車輪の車体の縦軸線からの距離を変更可能であり、
前記トレッド調整アクチュエータは、駆動装置(18)と、第1電磁クラッチ(17-1)と、第2電磁クラッチ(17-2)と、前後2つの直線スライドレール装置と、を備え、2つの直線スライドレール装置は車体の縦軸線に沿ってシャーシフレームに敷設して取り付けられ、そのスライダはいずれも前記駆動装置(18)によって伝動機構を介して駆動され、前記駆動装置(18)は第1電磁クラッチ(17-1)を介して前直線スライドレール装置のスライダに動力を伝達し、第2電磁クラッチ(17-2)を介して後直線スライドレール装置のスライダに動力を伝達し、前記駆動装置(18)及び2つの電磁クラッチは、制御信号入力端が制御システムにそれぞれ接続され、制御システムによって発停とオンオフを制御され、
車体前部の左右駆動輪脚はそれぞれ1対のリンク構造を介して前直線スライドレール装置のスライダに接続され、車体後部の左右駆動輪脚は1対のリンク構造を介して後直線スライドレール装置のスライダにそれぞれ接続され、前記リンク構造は駆動リンク(13-1)とロッカーアーム延長ロッド(13-2)で構成され、両者の一端は回転対偶を介してセルフロックコネクタに接続されるとともに、前記ロッカーアーム延長ロッド(13-1)の他端はロッカーアーム(7)に固定接続され、ロッカーアーム(7)を駆動して回転させることに用いられ、前記駆動リンク(13-1)の他端は回転対偶を介して対応するスライダにヒンジ連結され、スライダの直線移動を、ロッカーアーム延長ロッド(13-2)を駆動してロッカーアーム回転軸(12)を中心として回転させる回転移動に変換し、
前記セルフロックコネクタは、第1接続ブロック(13-3)、第2接続ブロック(13-5)及び位置決めピン電磁石(13-4)で構成され、その接続ブロックの一方にロック電磁石(13-5-3)が取り付けられ、ロック電磁石(13-5-3)が通電すると、2つの接続ブロックは磁力吸着によって強固に接続され、セルフロックコネクタは結合状態にあり、前記第1接続ブロック(13-3)はロッカーアーム延長ロッド(13-2)の端部に固定して取り付けられ、第2接続ブロック(13-5)は回転対偶を介して駆動リンク(13-1)に接続され、前記第2接続ブロック(13-5)にストッパ孔(13-5-2)が設けられ、位置決めピン電磁石(13-4)は駆動リンク(13-1)に取り付けられ、ロック電磁石(13-5-3)への通電を停止すると、第1接続ブロック、第2接続ブロックが磁力拘束を失って、セルフロックコネクタがオフになり、制御システムは位置決めピン電磁石(13-4)が同時に動作するように制御し、第2接続ブロック(13-5)の自由回転を防止するように、それから延出するピンロッドを第2接続ブロック(13-5)のストッパ孔(13-5-2)に挿入し、
前記車輪型農業ロボットは、
第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチ及び各セルフロックコネクタはいずれも結合状態にあり、駆動装置(18)は2つの直線スライドレール装置を介して前後車輪のトレッドを同期調整する4輪トレッド同期調整モードA)、
第1電磁クラッチ、各セルフロックコネクタは結合状態にあり、第2電磁クラッチはオフになり、駆動装置(18)は前直線スライドレール装置を介して前部車輪のトレッドを調整する前輪トレッド個別調整モードB)、
第2電磁クラッチ、各セルフロックコネクタは結合状態にあり、第1電磁クラッチはオフになり、駆動装置(18)は後直線スライドレール装置を介して後部車輪のトレッドを調整する後輪トレッド個別調整モードC)、
第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチ及び各セルフロックコネクタはいずれもオフ状態にあり、4つの車輪の車体の縦軸線からの距離は互いに干渉せずに個別調整できる4輪位置個別調整モードD)という4種のトレッド調整モードを含み、
A)、B)、C)はアクティブ調整モードであり、駆動装置(18)を制御することによりロッカーアーム(7)を駆動して横方向に揺動させ、D)はパッシブ調整モードであり、インホイールモータの回転を個別に制御することにより、対応する車輪を駆動して前進又は後退させることで、ロッカーアーム(7)を駆動して横方向に揺動させ、該車輪の車体の縦軸線からの距離を変更することを特徴とする車輪型農業ロボット。
【請求項2】
前記第2接続ブロック(13-5)は凸状ブロックであり、第1接続ブロック(13-3)に突き合わせる面に突起構造が設けられ、第1接続ブロック(13-3)は凹状ブロックであり、その突き合わせ面に前記突起構造の形状に適合する凹溝構造が設けられ、前記凹溝構造内に圧力センサ(19)とストロークスイッチ(20)が設けられ、前記圧力センサ(19)とストロークスイッチ(20)の信号出力端は制御システムに接続され、第1接続ブロック、第2接続ブロックが吸着する時、突起構造は凹溝構造に嵌入され、前記圧力センサ(19)とストロークスイッチ(20)に接触し、圧力センサからフィードバックされた信号が予め設定された閾値以上である場合、制御システムは前記リンク構造が強固に固定されるとし、モードA)~C)から適切なアクティブ調整モードを選択して対応するスライダを起動することを特徴とする請求項1に記載のトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット。
【請求項3】
前記第1接続ブロック(13-3)に2枚の挿入板(13-3-2)が設けられ、2つの挿入板(13-3-2)は、前記凹溝構造の左右両側に位置し、第1接続ブロック(13-3)の突き合わせ面から突出し、第2接続ブロック(13-5)の対応する位置に適合するスロットが設けられ、
第1接続ブロック(13-3)と第2接続ブロック(13-5)が磁力によって吸着する時、第1接続ブロック(13-3)の挿入板(13-3-2)は第2接続ブロック(13-5)のスロットに係止され、且つ、2つの挿入板(13-3-2)の内側に前記突起構造に向かう面取り斜面(13-3-2)が設けられることを特徴とする請求項2に記載のトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット。
【請求項4】
前記駆動装置(18)はサーボモータであり、前記直線スライドレール装置はスクリュー電動スライドレール装置を採用し、サーボモータはシャーシフレームの中央部に取り付けられ、2つのスクリュー電動スライドレール装置の間に位置し、2つの電磁クラッチはそれぞれ、2つのスクリュー電動スライドレール装置のシャーシ中心位置に近い動力入力端に取り付けられ、サーボモータの出力軸は伝動機構を介して2つの電磁クラッチの入力軸に接続され、即ち2つの電磁クラッチを介して前後2つのスクリュー電動スライドレール装置に動力をそれぞれ伝達することを特徴とする請求項1に記載のトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット。
【請求項5】
前記直線スライドレール装置の側方には、制御システムに接続され、スライダのレールにおけるストロークを測定するための格子スケール(16)が設けられ、制御システムはスライダのストロークを制御することによってトレッドに対する正確な制御を実現することを特徴とする請求項1に記載のトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット。
【請求項6】
ナビゲーションシステムが設けられ、制御システムは、ナビゲーションシステムからフィードバックされた信号に基づき、トレッド調整アクチュエータの動作を制御し、
前記ナビゲーションシステムは、地形検出センサ(6)と、衛星測位受信機(5)と、慣性センサと、を備え、制御システムは、地形検出センサによって検知された地形情報、衛星測位受信機によって受信された車体位置情報、及び慣性センサからフィードバックされた車体姿勢情報に基づき、車体前方の作物列の位置と列間を分析し、それに適応するトレッド調整量を算出し、トレッド調整アクチュエータに対応する制御信号を出力することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット。
【請求項7】
パッシブ調整モードDで適用され、車体非走行状態で行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の車輪型農業ロボットに基づくトレッド手動調整方法であって、
操作者は、車体前方の地形又は作物の列間に基づき、各駆動輪脚の車輪トレッド調整量を事前に計画し、前記トレッド調整量に基づき、遠隔制御端末を介してロボットの制御システムに調整命令を送信するステップ1)と、
制御システムは、調整命令を受信すると、まず各ロックコネクタをオフにするように制御し、続いて、トレッド調整アクチュエータの駆動装置を起動するように制御し、各直線スライドレール装置のスライダを押して初期位置に復帰させ、次に、第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチが同時にオフになるように制御し、最後に、インホイールモータ(14)とステアリングモータに対応する制御命令を出力し、車輪(10)を駆動して前記ロッカーアーム回転軸(12)を中心に前方又は後方に移動させ、車輪と車体の縦軸線との垂直距離を変更し、車輪が所定位置に調整された後、インホイールモータ(14)を停止するように制御し、ロッカーアーム回転軸箇所の電動ブレーキ(21)が直ちに動作するように制御し、ロッカーアームを固定するステップ2)と、を含むことを特徴とするトレッド手動調整方法。
【請求項8】
前記アクティブ調整モードA)、B)又はC)で適用される請求項6に記載の車輪型農業ロボットに基づくトレッド自動調整方法であって、
3次元レーザレーダを地形検出センサとして車体前部に取り付け、農業ロボットは走行中に3次元レーザレーダを利用して前方の地面及び作物を走査し、衛星測位システムから送信された車体地理的位置データ及び慣性センサからフィードバックされたシャーシフレーム姿勢データを利用し、車体に基づく圃場シーンの3次元点群マップを構築し、圃場シーンの3次元点群マップを大地座標系OZFZに基づく点群マップに変換し、鉛直上向きのZ座標は3次元点の地上高を示し、X方向は水平面の縦方向、すなわちロボットの走行方向を示し、Y方向は水平面におけるX方向に垂直な横方向を示すステップ1)と、
作物の種類及びその成長段階に基づき、適切な作物高さ閾値を設定し、圃場シーンの3次元点群マップにおける高さ座標が前記高さ閾値より大きい点が作物列クラスタの点であると判定し、それにより作物列クラスタ点群を前記3次元点群マップから分離し、続いて各作物列クラスタの中点を算出し、中点の縦方向結線を作物列の中心線とするステップ2)と、
各作物列の中心線を取得した後、ロボット車体の現在位置に基づき、車体前方の作物の列間をリアルタイムで算出し、車体の左右車輪が位置する列間の位置又は跨る列数を参照し、前後2組の車輪の理論幅、即ちトレッド調整の目標幅を算出するステップ3)と、
トレッドの実際の幅を取得し、トレッドの実際の幅とトレッド調整の目標幅との差を算出し、制御システムは作物列に応じたトレッド変化の制御ポリシーに基づき、直線スライドレール装置に対応する制御命令を出力し、スライダの移動によってロッカーアームを駆動して一定のヨー角度だけ回転させ、車体前方の作物の列間に適合するように前部及び/又は後部車輪の車体の縦軸線からの距離を調整するステップ4)と、を含むことを特徴とするトレッド自動調整方法。
【請求項9】
ステップ1)において、前記圃場シーンの3次元点群マップを基に、RANSACアルゴリズムでHessian平面方程式をフィッティングし、最小2乗フィッティングによって検出対象地面を細分化、再構築することを特徴とする請求項8に記載のトレッド自動調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業機械の技術分野に属し、具体的には、トレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット及びその調整方法である。
【背景技術】
【0002】
人口が日増しに増加し、農業生産における水資源・土壌資源や労働力の不足との矛盾が日増しに顕在化するにつれて、農業生産効率の向上が切望されている。農業ロボットを使用して全部又は一部の人の代わりに複雑なタスクを効率的で、安全で、確実に行うことは、農業機械化の発展にとって必然的な傾向となっている。
【0003】
例えば、中国では、農作物の病気、害虫、雑草の防除は、今まで、農業生産時に最も労働力が必要であり、作業負荷が最大で、回数が最も多い作業段階であり、且つ、殺虫剤、除草剤などの農薬及び液体化学肥料を散布する時に、無駄が多いだけでなく、環境に深刻な危害を与えるため、スマート圃場管理ロボットが業界で研究のホットスポットとなっており、ロボットによって投薬、施肥、除草及び作物情報収集などの圃場の精細化管理作業を展開することができる。投薬/施肥に関しては、スマート圃場管理ロボットは精確に散布する概念を採用し、コンピュータビジョン技術を利用して雑草を検出し、続いて除草剤を指向的に散布し、作物の成長に使用される除草剤の量を顕著に削減することができる。
【0004】
しかし、中国の耕作地には丘や山が多く、機械で播種したり移植したりする作物を栽培する場合、機械設備の精度や地面の不平坦さなどのため、栽培の列間が一致しなくなる。有人運転ブームスプレーヤー、中耕除草機、及び従来の自律運転型農業ロボットには、すべて車輪の苗押えが存在する。多くの場合、運転者は作物列に沿って作業機を運転し、自律ナビゲーションロボットは作物列に基づいてシャーシの方向をリアルタイムで調整するが、これらの圃場管理機はトレッド適応調整の機能を備えず、突起物、ピットなどの地面障害によってシャーシが揺れたり、小型農業ロボットが通過できなかったりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ロボットのトレッドが作物のトレッドに応じて適応調整でき、作業中の苗押えを大幅に低減させるとともに、障害物、狭い道路区間に遭遇すれば、シャーシが円滑に通過することも確保するためにトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボット及びその調整方法を提供することを技術的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的目的を達成するために、本発明に係る技術的解決手段は以下のとおりである。
【0007】
制御システムと、4本の駆動輪脚が設けられた車体と、を備えるトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボットであって、
トレッド調整アクチュエータがさらに設けられ、
車体の4つの駆動輪脚はそれぞれ対応するロッカーアームを介してシャーシフレームに接続され、前記駆動輪脚は車輪とステアリング装置を備え、各車輪はいずれも個別のインホイールモータによって駆動され、インホイールモータの駆動回路は制御システムに接続され、
前記ステアリング装置は、車輪のステアリングを制御するステアリングモータと、モータ取付座と、を備え、前記モータ取付座は輪脚ブラケットを介して下方の車輪に接続され、ロッカーアームの外側の一端はモータ取付座に固定接続され、内側の一端はロッカーアーム回転軸を含む回転対偶を介してシャーシフレームに接続され、これによりロッカーアームは、ロッカーアーム回転軸を中心として、車体の縦軸線に対して横方向に揺動し、対応する車輪の車体の縦軸線からの距離を変更可能であり、
前記トレッド調整アクチュエータは、駆動装置と、第1電磁クラッチと、第2電磁クラッチと、前後2つの直線スライドレール装置と、を備え、2つの直線スライドレール装置は車体の縦軸線に沿ってシャーシフレームに敷設して取り付けられ、そのスライダはいずれも前記駆動装置によって伝動機構を介して駆動され、前記駆動装置は第1電磁クラッチを介して前直線スライドレール装置のスライダに動力を伝達し、第2電磁クラッチを介して後直線スライドレール装置のスライダに動力を伝達し、前記駆動装置及び2つの電磁クラッチは、制御信号入力端が制御システムにそれぞれ接続され、制御システムによって発停とオンオフを制御され、
車体前部の左右駆動輪脚はそれぞれ1対のリンク構造を介して前直線スライドレール装置のスライダに接続され、車体後部の左右駆動輪脚は1対のリンク構造を介して後直線スライドレール装置のスライダにそれぞれ接続され、前記リンク構造は駆動リンクとロッカーアーム延長ロッドで構成され、両者の一端は回転対偶を介してセルフロックコネクタに接続されるとともに、前記ロッカーアーム延長ロッドの他端はロッカーアームに固定接続され、ロッカーアームを駆動して回転させることに用いられ、前記駆動リンクの他端は回転対偶を介して対応するスライダにヒンジ連結され、スライダの直線移動を、ロッカーアーム延長ロッドを駆動してロッカーアーム回転軸を中心として回転させる回転移動に変換し、
前記セルフロックコネクタは、第1接続ブロック、第2接続ブロック及び位置決めピン電磁石で構成され、その接続ブロックの一方にロック電磁石が取り付けられ、ロック電磁石が通電すると、2つの接続ブロックは磁力吸着によって強固に接続され、セルフロックコネクタは結合状態にあり、前記第1接続ブロックはロッカーアーム延長ロッドの端部に固定して取り付けられ、第2接続ブロックは回転対偶を介して駆動リンクに接続され、前記第2接続ブロックにストッパ孔が設けられ、位置決めピン電磁石は駆動リンクに取り付けられ、ロック電磁石への通電を停止すると、第1接続ブロック、第2接続ブロックが磁力拘束を失って、セルフロックコネクタがオフになり、制御システムは位置決めピン電磁石が同時に動作するように制御し、第2接続ブロックの自由回転を防止するように、それから延出するピンロッドを第2接続ブロックのストッパ孔に挿入し、
前記車輪型農業ロボットは、
第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチ及び各セルフロックコネクタはいずれも結合状態にあり、駆動装置は2つの直線スライドレール装置を介して前後車輪のトレッドを同期調整する4輪トレッド同期調整モードA)、
第1電磁クラッチ、各セルフロックコネクタは結合状態にあり、第2電磁クラッチはオフになり、駆動装置は前直線スライドレール装置を介して前部車輪のトレッドを調整する前輪トレッド個別調整モードB)、
第2電磁クラッチ、各セルフロックコネクタは結合状態にあり、第1電磁クラッチはオフになり、駆動装置は後直線スライドレール装置を介して後部車輪のトレッドを調整する後輪トレッド個別調整モードC)、
第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチ及び各セルフロックコネクタはいずれもオフ状態にあり、4つの車輪の車体の縦軸線からの距離を互いに干渉せずに個別で調整できる4輪位置個別調整モードD)という4種のトレッド調整モードを含み、
A)、B)、C)はアクティブ調整モードであり、駆動装置を制御することによりロッカーアームを駆動して横方向に揺動させ、D)はパッシブ調整モードであり、インホイールモータの回転を個別に制御することにより、対応する車輪を駆動して前進又は後退させることで、ロッカーアームを駆動して横方向に揺動させ、該車輪の車体の縦軸線からの距離を変更することを特徴とする車輪型農業ロボット。
【0008】
上記解決手段を基に、さらに改良された解決手段又は好ましい解決手段はさらに以下を含む。
【0009】
さらに、前記第2接続ブロックは凸状ブロックであり、第1接続ブロックに突き合わせる面に突起構造が設けられ、第1接続ブロックは凹状ブロックであり、その突き合わせ面に前記突起構造の形状に適合する凹溝構造が設けられ、前記凹溝構造内に圧力センサとストロークスイッチが設けられ、前記圧力センサとストロークスイッチの信号出力端は制御システムに接続され、第1接続ブロック、第2接続ブロックが吸着する時、突起構造は凹溝構造に嵌入され、前記圧力センサとストロークスイッチに接触し、圧力センサからフィードバックされた信号が予め設定された閾値以上である場合、制御システムは前記リンク構造が強固に固定されるとし、モードA)~C)から適切なアクティブ調整モードを選択して対応するスライダを起動する。
【0010】
さらに、前記第1接続ブロックに2枚の挿入板が設けられ、2つの挿入板は、前記凹溝構造の左右両側に位置し、第1接続ブロックの突き合わせ面から突出し、第2接続ブロックの対応する位置に適合するスロットが設けられ、
第1接続ブロックと第2接続ブロックが磁力によって吸着する時、第1接続ブロックの挿入板は第2接続ブロックのスロットに係止され、且つ、2つの挿入板の内側に前記突起構造に向かう面取り斜面が設けられる。
【0011】
好ましくは、前記駆動装置はサーボモータであり、前記直線スライドレール装置はスクリュー電動スライドレール装置を採用し、サーボモータはシャーシフレームの中央部に取り付けられ、2つのスクリュー電動スライドレール装置の間に位置し、2つの電磁クラッチはそれぞれ、2つのスクリュー電動スライドレール装置のシャーシ中心位置に近い動力入力端に取り付けられ、サーボモータの出力軸は伝動機構を介して2つの電磁クラッチの入力軸に接続され、即ち2つの電磁クラッチを介して前後2つのスクリュー電動スライドレール装置に動力をそれぞれ伝達する。
【0012】
さらに、前記直線スライドレール装置の側方には、制御システムに接続され、スライダのレールにおけるストロークを測定するための格子スケールが設けられ、制御システムはスライダのストロークを制御することによってトレッドに対する正確な制御を実現する。
【0013】
さらに、前記車輪型農業ロボットはナビゲーションシステムが設けられ、制御システムは、ナビゲーションシステムからフィードバックされた信号に基づき、トレッド調整アクチュエータの動作を制御し、
前記ナビゲーションシステムは、地形検出センサと、衛星測位受信機と、慣性センサと、を備え、制御システムは、地形検出センサによって検知された地形情報、衛星測位受信機によって受信された車体位置情報、及び慣性センサからフィードバックされた車体姿勢情報に基づき、車体前方の作物列の位置と列間を分析し、それに適応するトレッド調整量を算出し、トレッド調整アクチュエータに対応する制御信号を出力する。
【0014】
パッシブ調整モードDで適用され、車体非走行状態で行われる前記車輪型農業ロボットに基づくトレッド手動調整方法であって、
操作者は、車体前方の地形又は作物の列間に基づき、各駆動輪脚の車輪トレッド調整量を事前に計画し、前記トレッド調整量に基づき、遠隔制御端末を介してロボットの制御システムに調整命令を送信するステップ1)と、
制御システムは、調整命令を受信すると、まず各ロックコネクタをオフにするように制御し、続いて、トレッド調整アクチュエータの駆動装置を起動するように制御し、各直線スライドレール装置のスライダを押して初期位置に復帰させ、次に、第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチが同時にオフになるように制御し、最後に、インホイールモータとステアリングモータに対応する制御命令を出力し、車輪を駆動して前記ロッカーアーム回転軸を中心に前方又は後方に移動させ、車輪と車体の縦軸線との垂直距離を変更し、車輪が十分に調整された後、インホイールモータを停止するように制御し、ロッカーアーム回転軸箇所の電動ブレーキが直ちに動作するように制御し、ロッカーアームを固定するステップ2)と、を含むことを特徴とする手動トレッド調整方法。
【0015】
前記アクティブ調整モードA)、B)又はC)で適用される車輪型農業ロボットに基づくトレッド自動調整方法であって、
3次元レーザレーダを地形検出センサとして車体前部に取り付け、農業ロボットは走行中に3次元レーザレーダを利用して前方の地面及び作物を走査し、衛星測位システムから送信された車体地理的位置データ及び慣性センサからフィードバックされたシャーシフレーム姿勢データを利用し、車体に基づく圃場シーンの3次元点群マップを構築し、圃場シーンの3次元点群マップを大地座標系OZFZに基づく点群マップに変換し、鉛直上向きのZ座標は3次元点の地上高を示し、X方向は水平面の縦方向、すなわちロボットの走行方向を示し、Y方向は水平面におけるX方向に垂直な横方向を示すステップ1)と、
作物の種類及びその成長段階に基づき、適切な作物高さ閾値を設定し、圃場シーンの3次元点群マップにおける高さ座標が前記高さ閾値より大きい点が作物列クラスタの点であると判定し、それにより作物列クラスタ点群を前記3次元点群マップから分離し、続いて各作物列クラスタの中点を算出し、中点の縦方向結線を作物列の中心線とするステップ2)と、
各作物列の中心線を取得した後、ロボット車体の現在位置に基づき、車体前方の作物の列間をリアルタイムで算出し、車体の左右車輪が位置する列間の位置又は跨る列数を参照し、前後2組の車輪の理論幅、即ちトレッド調整の目標幅を算出するステップ3)と、
トレッドの実際の幅を取得し、トレッドの実際の幅とトレッド調整の目標幅との差を算出し、制御システムは作物列に応じたトレッド変化の制御ポリシーに基づき、直線スライドレール装置に対応する制御命令を出力し、スライダの移動によってロッカーアームを駆動して一定のヨー角度だけ回転させ、車体前方の作物の列間に適合するように前部及び/又は後部車輪の車体の縦軸線からの距離を調整するステップ4)と、を含むことを特徴とするトレッド自動調整方法。
【0016】
さらに、ステップ1)において、前記圃場シーンの3次元点群マップを基に、RANSACアルゴリズムでHessian平面方程式をフィッティングし、最小2乗フィッティングによって検出対象地面を細分化、再構築する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車輪型農業ロボットは、作物の列間及び地形の変化に基づき、トレッドに対して適応性の調整を行うことができ、苗押えの発生を大幅に低減させ、農業ロボットによる作業に適する地形の範囲を広げ、作業効率を向上させ、作業コストを低減させ、且つ、本発明は、車輪トレッドの同期調整、2輪個別調整及び4輪個別調整などの複数の調整モードを有し、障害物、狭い道路などの複雑な地形に遭遇すれば、シャーシが円滑に通過することを確保することができ、構造計画が合理的で、操作やメンテナンスが容易で、普及や使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の農業ロボットの具体的な一実施例の全体構造の概略図である。
【
図2】
図1における農業ロボットの駆動輪脚の構造概略図である。
【
図4】トレッド調整アクチュエータの構造概略図である。
【
図5】
図1における実施例の農業ロボットがトレッドの自動調整を実現するトポロジー構造図である。
【
図8】セルフロックコネクタの構造概略
図1である。
【
図9】セルフロックコネクタの構造概略
図2である。
【
図12】圧力センサとストロークスイッチの取り付けの概略図である。
【
図14】トレッド調整アクチュエータと駆動輪脚の構造概略
図1である。
【
図15】トレッド調整アクチュエータと駆動輪脚の構造概略
図2である。
【
図16】トレッド調整アクチュエータと駆動輪脚の部分構造概略図である。
【
図17】トレッド調整アクチュエータ、シャーシフレーム及び駆動輪脚の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の技術的解決手段を詳細に説明するために、以下は図面及び具体的な実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0020】
図1に示すようなトレッド適応調整機能を有する車輪型農業ロボットは、車体3、制御システム、ナビゲーションシステム、トレッド調整アクチュエータ、及び投薬システムを備える。前記車体3に前後左右の4本の駆動輪脚が設けられ、各駆動輪脚の車輪10はいずれも個別のインホイールモータ14によって駆動され、4輪差動を実現することができ、且つ、各車輪10はいずれも個別のステアリング装置8を有する。前記ナビゲーションシステム、トレッド調整アクチュエータ、投薬システム、インホイールモータ10及びステアリング装置8は制御システムにそれぞれ接続され、制御システムによって発停を制御される。
【0021】
前記投薬システムは、薬箱4、噴霧ロッド1及び輸液パイプラインを備え、薬箱4は車体3に取り付けられ、噴霧1ロッドはセルバランス噴霧ロッドサスペンション2によって車体3の尾部に掛けられる。
【0022】
前記ナビゲーションシステムは、地形検出センサ6、衛星測位受信機4、慣性センサ及び車輪走行距離計などのコンポーネントを備える。前記地形検出センサ6は車体前部に取り付けられ、地面と作物を含む地形情報を検出することに用いられ、好ましくは3次元レーザレーダ(3次元走査レーザセンサ)を採用し、前記衛星測位受信機4は衛星測位システムに接続され、車体3の走行位置情報をリアルタイムで提供することに用いられ、慣性センサは車体に取り付けられ、ピッチ角、ロール角などのデータを含め、車体又は車体シャーシフレームの姿勢を検出することに用いられ、車輪走行距離計はロータリーエンコーダであってもよく、車輪の回転角及び回転数を測定することに用いられ、さらに各車輪の走行距離を算出することができ、ロボットは、圃場を走行して圃場シーンを検知し、方位参照軌跡を生成する必要があり、次に、方位参照軌跡から4つの車輪のインホイールモータの目標回転数を算出し、制御システムは4つの車輪のインホイールモータの回転数が目標回転数を追跡するようにリアルタイムで制御し、車輪走行距離計は車輪の回転数を測定して制御システムのフィードバック入力とし、このようにリアルタイムな閉ループ制御を行う。
【0023】
制御システムは、ナビゲーションシステムからフィードバックされたデータに基づき、車体3の前方の作物列の位置と列間を分析し、適切なトレッド調整量を算出し、トレッド調整アクチュエータに対応する制御信号を出力する。
【0024】
前記車体3の4つの駆動輪脚は、それぞれロッカーアーム7を介してシャーシフレームに接続される。各駆動輪脚は、いずれも、車輪10と、この車輪10を個別に制御するステアリング装置8を備える。前記ステアリング装置8はステアリングモータとモータ取付座で構成される。前記モータ取付座は輪脚ブラケット9の上方に設けられ、輪脚ブラケット9の上部は立設されたブラケット回転軸を介してモータ取付座に接続され、ステアリングモータを起動することにより、輪脚ブラケット9と車輪10は駆動されてステアリングを行う。前記ロッカーアーム7の外側の一端はモータ取付座に固定接続され、内側の一端は第1回転対偶を介してシャーシフレームに接続される。前記第1回転対偶の回転軸は、ロッカーアーム回転軸12であり、シャーシフレームに垂直に取り付けられ、ロッカーアーム12に固定接続される。ロッカーアーム7は、ロッカーアーム回転軸12を中心として回転する時、駆動輪脚を駆動して横方向に揺動させ、車輪10の車体の縦軸線からの距離を変更する。また、前記ロッカーアーム回転軸12又はシャーシフレームにロッカーアーム回転軸12の回転角度を検出する角度センサ11が取り付けられ、前記角度センサ11は制御システムに接続され、ロッカーアームのヨー角度をフィードバックすることに用いられ、好ましくはロータリーエンコーダを用いる。
【0025】
前記トレッド調整アクチュエータは、第1電磁クラッチ17-1、第2電磁クラッチ17-2、駆動装置18、歯車減速ボックス、及び前後2つの直線スライドレール装置を備える。
【0026】
2段の直線スライドレールは装置車体の縦軸線に沿ってシャーシフレームに敷設して取り付けられ、本実施例において、前記駆動装置18はサーボモータを採用し、直線スライドレール装置はスクリュー電動スライドレール装置を採用する。
【0027】
前記スクリュー電動スライドレール装置は、スクリュー15-1、ガイドレール15-2及びスライダ15-3などのコンポーネントで構成される。2つのガイドレール15-2は、それぞれ、スクリュー15-1の左右両側に設けられ、スクリューに平行であり、スライダ15-3は2つのガイドレール15-2に取り付けられ、スクリューナットに接続され、スクリューがサーボモータに回転駆動されると、スクリューナットはスライダ15-3を駆動してガイドレールに沿って直線往復移動させる。
【0028】
前記サーボモータは、制御信号入力端が制御システムに接続され、制御システムによって発停を制御される。
図4に示すように、サーボモータは、シャーシフレームの中央部に取り付けられ、2つのスクリュー電動スライドレール装置の間に位置する。2つの電磁クラッチ17-1と17-2は、それぞれ、2つのスクリュー電動スライドレール装置のシャーシ中心位置に近い動力入力端に取り付けられる。前記歯車減速ボックスに1つの動力入力端(駆動円錐歯車)と2つの動力出力端(従動円錐歯車)が設けられ、サーボモータの出力軸は歯車減速ボックスの動力入力端に接続され、歯車減速ボックスの2つの動力出力端はそれぞれ2つの電磁クラッチの動力入力端に接続され、2つの電磁クラッチの動力出力端は対応するスクリュー軸に接続される。サーボモータの出力軸がリードスクリュー方向と垂直であることを考慮し、歯車減速ボックスは傘歯車を採用して動力を伝達する。2つの電磁クラッチは、制御信号入力端が制御システムに接続され、それぞれ制御システムによってオンオフを制御され、すなわち、第1/第2電磁クラッチがオフになる場合、サーボモータの動力は後方/前方スクリューのみに伝達され、後部/前部の2つの駆動輪脚に対して2輪個別調整を実行し、2つの電磁クラッチがいずれもオンになる場合、4輪同期調整を実行する。
【0029】
前後スクリュー電動スライドレール装置のいずれの側方にも、制御システムに接続され、それぞれのスライダのレールにおけるストロークを測定するための格子スケールが設けられ、車体シャーシの現在のトレッドを示す。
【0030】
前記車体3の前部の左右駆動輪脚は、それぞれ、1対のリンク構造を介して前スクリュー電動スライドレール装置のスライダに接続され、車体後部の左右駆動輪脚は、それぞれ、1対のリンク構造を介して後スクリュー電動スライドレール装置のスライダに接続される。
図4、
図14、
図17に示すように、前記のリンク構造はロッカーアーム延長ロッド13-1と駆動リンク13-2で構成され、両者の一端は第2回転対偶を介してセルフロックコネクタに接続され、前記ロッカーアーム延長ロッド13-1の他端はロッカーアーム7に固定接続され、ロッカーアーム7を駆動してロッカーアーム回転軸12を中心として回転させることに用いられ、前記駆動リンク13-2の他端は第3回転対偶を介して対応するスライダにヒンジ連結され、スライダの直線移動を、ロッカーアーム延長ロッド13-1を駆動してロッカーアーム回転軸12を中心として回転させる回転移動に変換する。
【0031】
図7~
図13に示すように、前記セルフロックコネクタは、第1接続ブロック13-3、第2接続ブロック13-5、及び位置決めピン電磁石13-4などのコンポーネントを備える。前記第2接続ブロック13-5にロック電磁石13-5-3が取り付けられ、ロック電磁石13-5-3が通電すると、2つの接続ブロックは磁力吸着によって接続される。前記第1接続ブロック13-3はロッカーアーム延長ロッド13-2の端部に固定して取り付けられ、第2接続ブロック13-5は前記第2回転対偶を介して駆動リンク13-1にヒンジ連結され、前記第2接続ブロック13-5に長円状のストッパ孔13-5-2が設けられ、位置決めピン電磁石13-4は駆動リンク13-1の端部に取り付けられ、前記駆動リンク13-1の端部に均等に分布されるピン孔が一回り設けられ、ロック電磁石13-5-3への通電を停止すると、制御システムは位置決めピン電磁石13-4が動作するように制御し、それから延出するピンロッドは駆動リンク13-1のピン孔を貫通し、第2接続ブロック13-5のストッパ孔13-5-2に挿入され、これにより、第2接続ブロック13-5の自由回転を防止することができる。
【0032】
ロック電磁石13-5-3への通電を停止すると、セルフロックコネクタがオフになり、駆動リンク13-1とロッカーアーム延長ロッド13-2の接続が切断され、このように、4つの車輪の車体の縦軸線からのトレッドの個別調整が可能になる。
【0033】
前記第2接続ブロック13-5は凸状ブロックであり、
図10に示すように、第1接続ブロックに突き合わせる面に突起構造が設けられ、前記突起構造は上部の半円柱体と下部の半円錐体で構成され、第2回転対偶の回転軸13-5-1は第2接続ブロック13-5に取り付けられる。前記第1接続ブロック13-3は凹状ブロックであり、その突き合わせ面に前記突起構造の形状に適合する凹溝構造が設けられ、
図11に示すように、前記第1接続ブロック13-3に2枚の挿入板13-3-2がさらに設けられ、2つの挿入板13-3-2は前記凹溝構造の左右両側に位置し、第1接続ブロック13-3の突き合わせ面から突出し、第2接続ブロック13-5の対応する位置に適合する2つのスロットが設けられる。第1接続ブロック13-3と第2接続ブロック13-5が磁力によって吸着する時、前記突起構造は凹溝構造に嵌入され、挿入板13-3-2は前記スロット内に挿入される。前記凹凸構造及び挿入板、スロット構造によって、2つの接続ブロックは、吸着状態である場合においても、磁力に垂直な方向にずれにくい。2つの挿入板13-3-2の内側角部に面取りが設けられ、面取り斜面13-3-3が前記突起構造に向かうことにより、突き合わせる際に2つの接続ブロックを迅速で正確に位置決めすることができる。
【0034】
また、前記凹溝構造内に圧力センサ19及びストロークスイッチ20が設けられ、前記ストロークスイッチ20は、第1接続ブロック、第2接続ブロックが所定位置に接続されたか否かを判断することに用いられ、圧力センサ19は両者の接続の強固さを判断することに用いられる。前記圧力センサ19とストロークスイッチ20の信号出力端は制御システムに接続され、第1接続ブロック、第2接続ブロックが吸着する時、前記突起構造は前記溝構造に嵌入され、前記圧力センサ19とストロークスイッチ20に接触することができる。制御システムは、ストロークスイッチ20と圧力センサ19から送信された信号を受信した後、電磁クラッチを結合するように制御し、圧力センサ19からフィードバックされたデータが予め設定された閾値を超えると、制御システムは、前記リンク構造が確実に固定され、サーボモータを起動してスライダを駆動可能にする。
【0035】
本実施例の車輪型農業ロボットは、
第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチ及び各セルフロックコネクタはいずれも結合状態にあり、駆動装置(18)は2つの直線スライドレール装置を介して前後車輪のトレッドを同期調整する4輪トレッド同期調整モードA)、
第1電磁クラッチ、各セルフロックコネクタは結合状態にあり、第2電磁クラッチはオフになり、駆動装置(18)は前直線スライドレール装置を介して前部車輪のトレッドを調整する前輪トレッド個別調整モードB)、
第2電磁クラッチ、各セルフロックコネクタは結合状態にあり、第1電磁クラッチはオフになり、駆動装置(18)は後直線スライドレール装置を介して前部車輪のトレッドを調整する後輪トレッド個別調整モードC)、
第1電磁クラッチ、第2電磁クラッチ及び各セルフロックコネクタはいずれもオフ状態にあり、4つの車輪の車体の縦軸線からの距離を個別に調整する4輪位置個別調整モードD)という4種のトレッド調整モードを含み、
A)、B)、C)はアクティブ調整モードであり、D)はパッシブ調整モードであり、且つA)、B)、C)、D)の4種モードは閉ループの自動制御であってもよく、開ループの手動制御であってもよい。
【0036】
好ましくは、本実施例の農業ロボットは走行中に自動制御のアクティブ調整モードを起動してもよく、そのトレッド自動調整方法は、具体的には、以下のステップを含む。
【0037】
1)ロボットが圃場を走行中に、3次元レーザレーダを利用して前方の地面及び作物を走査し、衛星測位システムから送信された車体地理的位置データ及び慣性センサからフィードバックされたシャーシフレーム姿勢データを利用し、大地座標系OZFZに基づく圃場シーンの3次元点群マップを構築し、RANSACアルゴリズムでHessian平面方程式をフィッティングし、最小2乗フィッティングによって検出対象地面を細分化、再構築する。
【0038】
大地座標系において、鉛直上向きのZ座標は3次元点の地上高を示し、X方向は水平面の縦方向、すなわちロボットの走行方向を示し、Y方向は水平面の横方向を示し、X方向に垂直である。
【0039】
2)作物の種類及びその成長段階に基づき、制御システムで適切な作物高さ閾値を設定し、圃場シーンの3次元点群マップにおける高さ座標(Z座標)が前記高さ閾値より大きい点が作物列クラスタの点であると判定し、それにより作物列クラスタ点群を前記3次元点群マップから分離し、各作物列クラスタの中点を算出し、中点の縦方向結線を作物列の中心線とする。
【0040】
3)各作物列の中心線を取得した後、ロボット車体の現在の走行位置に基づき、車体前方の作物の列間をリアルタイムで算出し、車体の左右車輪が位置する列間の位置又は跨る列数を参照し、前後2組の車輪の理論幅、即ちトレッド調整の目標幅を算出する。
【0041】
4)トレッドの実際の幅を取得し、トレッドの実際の幅とトレッド調整の目標幅との差を算出し、制御システムは作物列に応じたトレッド変化の制御ポリシー(最適制御方法又は比例積分微分制御方法PID)に基づき、直線スライドレール装置に対応する制御命令を出力し、スライダの移動によってロッカーアームを駆動して一定のヨー角度だけ回転させ、車体前方の作物の列間に適合するように車輪の車体の縦軸線からの距離を調整する。ロッカーアームのヨー角度が十分に調整された後、ロッカーアーム回転軸箇所の電動ブレーキ21が動作するように制御し、ロッカーアーム回転軸がシャーシフレームに対して回転できないようにし、トレッドを固定する。
【0042】
前記トレッド自動調整方法を実施する前に、トレッド調整閾値を設定する必要があり、調整の過程では、調整を必要とする目標トレッド幅が閾値を超えると、安全性を考慮して、ロボットは移動を停止し、トレッドの調整は前進を停止した後に行われる。これにより、ロッカーアームとロボット車体との間の接続応力をできる限りに低減することができる。
【0043】
パッシブ調整モードD)について、本実施例の農業ロボットは開ループのトレッド手動調整方法を採用することが好ましく、具体的には、以下のステップを含む。
1)操作者は、車体前方の地形又は作物の列間に基づき、調整対象の駆動輪脚のトレッド調整量を事前に計画し、前記トレッド調整量に基づき、遠隔制御端末を介してロボットの制御システムに調整命令を送信し、
前記遠隔制御端末には、操作者が調整モードを選択し、トレッド調整量命令を入力するためのユーザインタフェースが設けられ、
2)調整命令を送信した後、制御システムは、調整対象の駆動輪脚に対し、まず、それに対応するロックコネクタのロック電磁石への通電を停止するように制御し、その第1接続ブロック13-3と第2接続ブロック13-5が磁気吸引力による拘束を失って、駆動リンク13-1とロッカーアーム延長ロッド13-2の接続を切断し、ロック電磁石13-5-3への通電を停止するとともに、位置決めピン電磁石13-4が動作するように制御し、それから延出するピンロッドを第2接続ブロックのストッパ孔に挿入し、第2接続ブロックの自由度を制限し、スライダを応用してトレッドを調整する時に、2つの接続ブロックがタイムリーで正確に突き合わせることができないことを回避し、
続いて、制御システムはサーボモータが回転するように制御し、各リードスクリュー電動スライドレール装置のスライダを初期位置に移動させ、その駆動リンクをリードスクリューと平行な状態に復帰させ、駆動リンクと他の部品との接触を回避する。
次に、制御システムは第1電磁クラッチと第2電磁クラッチが同時にオフになり、トレッドの調整に関与しないように制御し、
最後に、制御システムは、インホイールモータ14及びステアリングモータ8に対応する制御命令を出力し、車輪10を駆動して前記ロッカーアーム回転軸12を中心に移動させ、車輪10の前進又は後退によりロッカーアームのヨー回転を駆動し、操作者は制御端末のメーターによってロッカーアームが回転した角度、又は他のセンサ装置によって収集された車輪中心の車体の縦軸線からの垂直距離を観察することができ、ユーザインタフェースは4つの車輪の距離パラメーターの変化をリアルタイムで表示し、ロッカーアームのヨー角度が十分に調整されると、インホイールモータ14が停止し、電動ブレーキが直ちにロッカーアームの動作をロックし、ロッカーアームの回転軸を特定の角度に固定し、このように、該車輪10のトレッドに対する個別調整を実現する(車体が起動した後、ステアリングモータ8を利用して、次の走行方向に基づいて超信地旋回を行うように車輪を制御する)。
【0044】
パッシブ調整モードD)は、複雑な道路状況に適用し、圃場に水溝、障害物があり、又は細長い通路を通過する時、ロボットが円滑に通過できるようにする。パッシブ調整モードを実行中に、ユーザは車輪の回転を制御する前に、制御システムを操作することができ、4つの駆動輪脚の個別調整は、対応する電磁クラッチ及びロック電磁石のオンオフ制御と組み合わせると、サーボモータ及びスクリュー電動スライドレール装置を利用して実現することもできるが、上記トレッド手動調整方法を採用して操作すること、車体の停止状態で操作することが好ましい。
【0045】
各調整モードにおいて、シャーシトレッドの制御原理は以下のとおりである。
【0046】
図18に示すように、トレッド調整用の4つのロッカーアーム回転軸には、車体の前後軸に対するロッカーアームの回転角α1、α2、α3、α4を測定するための絶対値エンコーダがそれぞれ取り付けられている。図に示すように、左右ロッカーアーム回転軸の中心距離はW1、前後ロッカーアーム回転軸の中心距離はL1、トレッド調整ロッカーアームの長さはD(ロッカーアーム主軸の輪脚ブラケットの上部回転軸からの水平距離)であり、ロータリーエンコーダがリアルタイムで測定した角度から、対応する前輪トレッドW2と後輪トレッドW3を得ることができ、計算式は、
W2=W1+D・sin(α1)+D・sin(α2)
W3=W1+D・sin(α3)+D・sin(α4)である。
対応する前輪トレッド12と前輪トレッド13の計算式は、
L2=L1+D・cos(α1)+D・cos(α2)
L3=L1+D・cos(α3)+D・cos(α4)である。
【0047】
4輪同期制御モードでは、車体の縦軸線に対するロッカーアームの回転角は等しく、すなわちα1=α2=α3=α4、W2=W3である。
【0048】
前輪トレッド個別調整モード又は後輪トレッド個別調整モードでは、2つの前輪ロッカーアームの車体の縦軸線に対する回転角が等しく、2つの後輪ロッカーアームの車体の縦軸線に対する回転角が等しく、即ちα1=α2、α3=α4である。
【0049】
特別な場合、4輪位置個別調整モードでは、ロッカーアームの車体の縦軸線に対する回転角が等しくない。
【0050】
アクティブ調整モードを例とし、農業ロボットは、3次元レーザレーダによって車両前方の作物、大地等の点群データを測定し、慣性姿勢センサ及び衛星測位システムによって点群を大地座標系に換算し、ロボットシャーシの進行位置座標に基づいて適応トレッド調整を行い、制御システムは、点群データに基づいてシャーシの左右車輪に最も近い2つの作物列の列間Wdを抽出し、さらに、W2とWdとの差分、W3とWdとの差分を制御システムの入力とする。制御系の出力は、サーボモータの回転数制御命令と2つの電磁クラッチの開閉命令である。トレッドが十分に調整されると、ロッカーアーム回転軸箇所の電動ブレーキ21がロックされる。
【0051】
本発明の農業ロボットの制御システムは、モータコントローラ、ナビゲーション制御ユニット及び作業機械制御ユニット等を備える複数の専用制御ユニットを備え、モータコントローラはCANバスを介して接続される以外、異なるセンサ、各機能制御ユニットはいずれもイーサネットを介して接続され、TCP/IPを用いて通信する。
【0052】
以上は本発明の基本的な原理、主要な特徴及び本発明の利点を例示的に説明した。当業者であれば理解されるように、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、上記実施例及び明細書に記載されたのは本発明の原理を説明するためのものに過ぎず、本発明の精神及び範囲から逸脱せず、本発明はさらに様々な変更や改良を有し、本発明の特許範囲は添付の特許請求の範囲、明細書及びその等価物によって定義される。
【国際調査報告】