IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘクセル ランフォルセマンの特許一覧

特表2023-522439中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品
<>
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図1
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図2
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図3
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図4
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図5
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図6A
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図6B
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図6C
  • 特表-中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】中間複合要素、その製造のためのプロセス及び複合部品
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20230523BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B32B5/28 Z
B32B5/28 101
B29C70/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564391
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2021050691
(87)【国際公開番号】W WO2021214410
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】2004026
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515306965
【氏名又は名称】ヘクセル ランフォルセマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポーロ―、パスカル
(72)【発明者】
【氏名】デュクロ、マイユール
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラランド、シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ぺリラ コロンブ、パスカル
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AD00B
4F100AD00C
4F100AD11B
4F100AD11C
4F100AG00B
4F100AG00C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK47B
4F100AK47C
4F100AK53A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA22B
4F100BA22C
4F100DB02
4F100DE01D
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG03A
4F100DG11B
4F100DG11C
4F100DG11D
4F100DG15D
4F100DJ00D
4F100EC08
4F100EH31
4F100EH36
4F100EJ05
4F100EJ24
4F100EJ50
4F100EJ82
4F100GB31
4F100GB32
4F100JB13A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F205AA36
4F205AD16
4F205AG03
4F205AG28
4F205HA08
4F205HA12
4F205HA14
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA44
4F205HB01
4F205HF05
(57)【要約】
本発明は、-熱硬化性ポリマーマトリックスに組み込まれた強化繊維の集合体を含む少なくとも1つの成形部分(300)と、-2つの連続する強化繊維層の間に挿入された少なくとも1つのポリマー多孔質層を含む、強化繊維層の少なくとも1つのドライスタック(400)とを含む中間複合要素(200)であって、成形部分(300)は、スタックの表面に貼付され、スタックに接合されており、熱硬化性ポリマーは、成形部分(300)が貼付されたドライスタック(400)の表面からドライスタック(400)の厚みの一部に浸透し、それによってドライスタック(400)と成形部分(300)との間に接合を提供することを特徴とする、中間複合要素に関する。本発明はまた、その製造のためのプロセス、そのような要素を使用して複合部品を製造するプロセス、及び得られる複合部品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間複合要素(2、200、201、202)であって、
-熱硬化性ポリマーマトリックスに埋め込まれた強化繊維の集合体を含む少なくとも1つの成形部分(3、300、301、310)と、
-2つの連続する強化繊維層(5)の間に挿入された少なくとも1つの多孔質ポリマー層を含む、強化繊維層(5)の少なくとも1つのドライスタック(4、400、401、410)と
を含み、
前記成形部分(3、300、301、310)は、前記スタックの表面に貼付されて接合され、前記熱硬化性ポリマーが、前記成形部分(3、300、301、310)が貼付された前記ドライスタック(4、400、401、410)の前記表面から、前記ドライスタック(4、400、401、410)の厚みに部分的に浸透し、それによって前記ドライスタック(4、400、401、410)と前記成形部分(3、300、301、310)との間に接合を提供することを特徴とする、中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項2】
強化繊維層(5)の前記ドライスタック(4、400、401、410)が、少なくとも5mmの平均厚みを有し、前記熱硬化性ポリマーが、前記スタック表面から少なくとも2mmの平均浸透深さまで前記スタックの前記厚みに部分的に浸透することを特徴とする、請求項1に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項3】
前記ドライスタック(4、400、401、410)は、前記スタックの総重量の最大で10%、好ましくは前記スタックの総重量の0.5%~10%、より好ましくは前記スタックの総重量の2%~6%を占めるポリマー部分を含み、前記ポリマー部分が前記スタックの凝集に少なくとも部分的に寄与することを特徴とする、請求項1又は2に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項4】
前記ポリマー部分が、熱可塑性ポリマー、熱可塑性部を含むポリマー、又はそのようなポリマーの混合物であることを特徴とする、請求項3に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項5】
前記強化繊維層(5)が布地であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項6】
前記強化繊維層(5)が、少なくとも2つの異なる方向に配向された強化繊維の一方向性シートであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項7】
前記ドライスタック(4、400、401、410)が、1つ以上のノンクリンプ布地(NCF)から形成され、各NCFが、縫製又は編成によって接合された、少なくとも2つの異なる方向に配向された複数の強化繊維の一方向性シートの集合体であることを特徴とする、請求項6に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項8】
前記ドライスタック(4、400、401、410)が、1つ以上のNCFから形成され、各NCFが、少なくとも2つの異なる方向に配向された複数の強化繊維の一方向性シートの集合体であり、1つ以上の多孔質ポリマー層が前記表面上に存在するかまたは存在せず、前記集合体が縫製又は編成によって接合されることを特徴とする、請求項6に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項9】
存在する前記多孔質ポリマー層が、多孔質フィルム、格子、粉体コーティング、布地、又は好ましくは不織布若しくはベールであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項10】
前記ドライスタック(4、400、401、410)の前記凝集が、少なくとも部分的に、2つの強化繊維層(5)の間に存在する前記多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果として得られることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項11】
前記ドライスタック(4、400、401、410)及び/又は前記成形部分(3、300、301、310)の前記強化繊維が、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましいことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項12】
前記成形部分(3、300、301、310)が、熱硬化性樹脂を含浸させた一方向性繊維のチップを成形し、好ましくは前記チップがランダムに配置された中間マットを形成することによって得られることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項13】
前記チップが長方形又は実質的に長方形であり、好ましくは1cm~10cmの長さ、2mm~2cmの幅、及び0.02mm~0.50mmの厚みを有することを特徴とする、請求項12に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項14】
前記成形部分(3、300、301、310)の前記熱硬化性ポリマーがエポキシであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項15】
前記熱硬化性ポリマーが、前記成形部分(3、300、301、310)の少なくとも25重量%、好ましくは前記成形部分(3、300、301、310)の25%~55重量%であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項16】
前記ドライスタック(4、400、401、410)が、4~20の強化繊維層(5)、好ましくは8~16の強化繊維層(5)を含み、有利には前記ドライスタック(4、400、401、410)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの強化繊維層(5)が、前記成形部分(3、300、301、310)から浸透した熱硬化性ポリマーを含有しないことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項17】
前記成形部分(3、300、301、310)が、前記スタックの形状と比較して複雑な形状を有することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項18】
前記成形部分(3、300、301、310)が、ヒンジ、取り付け点、リブ、リブ付き梁、支持体、ブラケット、チャネル、タイ、クレビス、補強材、ハッチフレーム、ドアフレーム、レバーアーム、ベース、フィッティング、ジョイント、ソケット、又はピボットの形状を有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)。
【請求項19】
-熱硬化性ポリマーマトリックスに埋め込まれた強化繊維の集合体を含む少なくとも1つの成形部分(3、300、301、310)と、
-2つの連続する強化繊維層(5)の間に挿入された少なくとも1つのポリマー多孔質層を含む、強化繊維層(5)の少なくとも1つのドライスタック(4、400、401、410)であって、前記成形部分(3、300、301、310)は、前記スタックの表面に貼付されて接合される、少なくとも1つのドライスタック(4、400、401、410)と
を含む中間複合要素(2、200、201、202)の製造のためのプロセスであって、以下の連続するステップ:
a-2つの連続する強化繊維層(50)の間に挿入された少なくとも1つのポリマー多孔質層を含む、強化繊維プライ(50)の初期ドライスタック(40)の表面領域(70)上に、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の少なくとも1つの集合体(60)を貼付するステップと、
b-モールド内で、強化繊維プライ(50)の前記初期ドライスタック(40)上に堆積させた、前記熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の前記集合体(60)の熱間圧縮成形操作を実行して、前記熱硬化性ポリマーの架橋及び前記スタックの厚みへのその部分的浸透をもたらすステップと、
c-冷却操作を実行して、前記熱硬化性ポリマーに埋め込まれた強化繊維の前記集合体を含む成形部分(3、300、301、310)をもたらし、前記成形部分(3、300、301、310)が貼付される表面から前記ドライスタック(4、400、401、410)の厚みへの前記熱硬化性ポリマーの部分的浸透によりマトリックスを形成し、前記熱硬化性ポリマーのこの浸透の結果として、前記成形部分(3、300、301、310)を、それによって得られた強化繊維層(5)の前記ドライスタック(4、400、401、410)に接合するステップ
とを含む、プロセス。
【請求項20】
ステップaで貼付された、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の前記集合体(60)が、前記所望の成形部分(3、300、301、310)のプリフォームの形態であることを特徴とする、請求項19に記載の製造プロセス。
【請求項21】
ステップaで使用される前記初期ドライスタック(40)を形成する前記強化繊維プライが、その面の少なくとも一方で多孔質ポリマー層と結合された強化繊維の一方向性シートであり、前記プライ内に存在する前記多孔質ポリマー層が、前記プライの総重量の最大10%、好ましくは前記プライの総重量の0.5%~10%、より好ましくは前記プライの総重量の2%~6%を占め、少なくとも1つの多孔質ポリマー層が、2つの連続する強化繊維の一方向性層の間に挿入されることを特徴とする、請求項19又は20に記載の製造プロセス。
【請求項22】
ステップaで使用される前記初期ドライスタック(40)を形成する前記強化繊維プライ(50)が、その両面で多孔質ポリマー層と結合された強化繊維の一方向性シートからなり、前記強化繊維の一方向性シートの各面の前記多孔質ポリマー層が同一であることを特徴とする、請求項21に記載の製造プロセス。
【請求項23】
前記初期ドライスタック(40)を形成する前記強化繊維プライ(50)が、その面の少なくとも一方で多孔質ポリマー層と結合された強化繊維で作製された布地であり、前記プライ内に存在する前記多孔質ポリマー層は、前記プライの総重量の最大10%、好ましくは前記プライの総重量の0.5%~10%、より好ましくは前記プライの総重量の2%~6%を占め、少なくとも1つの多孔質ポリマー層が2つの連続する布地の間に挿入されていることを特徴とする、請求項19又は20に記載の製造プロセス。
【請求項24】
前記プライ内に存在する前記多孔質ポリマー層がホットタック特性を示し、前もって得られたプライからなる前記少なくとも1つの多孔質ポリマー層と前記一方向性シート又は前記布地との結合が、前記多孔質ポリマー層の前記ホットタック特性の結果であることを特徴とする、請求項20から23のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項25】
ステップaで使用される強化繊維プライ(50)の前記初期ドライスタック(40)が、存在する前記多孔質ポリマー層の前記ホットタック特性の結果として得られる凝集力を有することを特徴とする、請求項20から24のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項26】
ステップaで使用される強化繊維プライ(50)の前記初期ドライスタック(40)が予め形成されることを特徴とする、請求項25に記載の製造プロセス。
【請求項27】
ステップaで使用される強化繊維プライ(50)の前記初期ドライスタック(40)が凝集性ではなく、その凝集性はステップbの終わりに、存在する前記多孔質ポリマー層の前記ホットタック特性の結果として得られることを特徴とする、請求項20から24のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項28】
ステップaで使用される前記初期ドライスタック(40)の前記プライ(50)内に存在する前記多孔質ポリマー層が、熱可塑性ポリマー若しくは熱可塑性部分を含むポリマーを含むか、又はそれからなることを特徴とする、請求項20から27のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項29】
ステップaで使用される前記初期ドライスタック(40)の前記プライ(50)内に存在する前記多孔質ポリマー層が、多孔質フィルム、格子、粉体コーティング、布地、又は、好ましくは不織布若しくはベールであることを特徴とする、請求項20から28のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項30】
前記初期ドライスタック(40)を形成する前記強化繊維プライ(50)が、縫製又は編成によって接合された、少なくとも2つの異なる方向に配向された強化繊維の一方向性シートであることを特徴とする、請求項19又は20に記載の製造プロセス。
【請求項31】
前記初期ドライスタック(40)が、複数のNCFから形成され、各NCFが、少なくとも2つの異なる方向に配向された複数の一方向性シートの集合体であり、1つ以上の多孔質ポリマー層が前記表面上に存在することが可能であり、前記集合体は縫製又は編成によって接合されることを特徴とする、請求項30に記載の製造プロセス。
【請求項32】
前記縫製又は編成が、ガラス、炭素、玄武岩、シリカ、又はポリエステル糸若しくは熱可塑性ポリマー糸、特に5dTex~150dTexの範囲、好ましくは5dTex~30dTexの範囲の力価を有する熱可塑性ポリマーで作製された糸を使用することを特徴とする、請求項30又は31に記載の製造プロセス。
【請求項33】
前記初期ドライスタック(40)及び/又は予め含浸された強化繊維の前記集合体(60)の前記強化繊維プライ(50)の前記繊維が、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましいことを特徴とする、請求項19から32のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項34】
前記成形部分(3、300、301、310)を形成するために使用される前記集合体(60)を形成する熱硬化性ポリマーを予め含浸させた前記強化繊維が、前記チップがランダムに配置された中間マットを好ましくは形成する、熱硬化性ポリマーを含浸させた一方向性繊維のチップであることを特徴とする、請求項19から33のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項35】
前記チップが長方形又は実質的に長方形であり、好ましくは1cm~10cmの長さ、2mm~2cmの幅、及び0.02mm~0.50mmの厚みを有することを特徴とする、請求項34に記載の製造プロセス。
【請求項36】
前記成形部分(3、300、301、310)を形成するために使用される前記集合体(60)の前記熱硬化性ポリマーがエポキシであることを特徴とする、請求項19から35のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項37】
前記成形部分(3、300、301、310)を形成するために使用される前記集合体の前記熱硬化性ポリマーが、前記集合体の少なくとも25重量%、好ましくは前記集合体の25%~55重量%を占めることを特徴とする、請求項19から36のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項38】
圧縮成形のステップbが、前記熱硬化性ポリマーの拡散をもたらし、前記熱硬化性ポリマーが、その熱硬化状態において、最終的に前記成形部分(3、300、301、310)との界面の領域で前記スタックの厚みに部分的に浸透し、得られた強化繊維層(5)の前記ドライスタックは、少なくとも5mmの平均厚みを有し、前記熱硬化性ポリマーは、前記スタックの表面から少なくとも2mmの平均浸透深さまで前記スタックの前記厚みに部分的に浸透することを特徴とする、請求項19から37のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項39】
ステップaにおいて、強化繊維プライの前記初期ドライスタック(40)は、4~20のプライ、好ましくは8~16のプライを含み、有利には、ステップbの終わりに、前記ドライスタック(4、400、401、410)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの強化繊維層(5)は、前記成形部分(3、300、301、310)から浸透した熱硬化性ポリマーを含有しないことを特徴とする、請求項19から38のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項40】
ステップaで使用される初期ドライスタック(40)が、少なくとも熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の前記集合体(60)が貼付される表面に切り欠き又は穿孔を有することを特徴とする、請求項19から39のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項41】
適切な形状のモールドをステップbにおいて使用して、前記スタックの形状と比較して複雑な形状を有する成形部分(3、300、301、310)を得ることを特徴とする、請求項19から40のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項42】
得られた前記中間複合要素(2、200、201、202)が、ヒンジ、取り付け点、リブ、リブ付き梁、支持体、ブラケット、チャネル、タイ、クレビス、補強材、ハッチフレーム、ドアフレーム、レバーアーム、ベース、フィッティング、ジョイント、ソケット、又はピボットを形成するために使用されることを特徴とする、請求項19から41のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項43】
熱硬化性樹脂(10)、熱可塑性樹脂、又はそのような樹脂の混合物と組み合わせた複合部品(1、100、101)を製造するための、請求項1から18のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)又は請求項19から42のいずれか一項に記載のプロセスによって得られた中間複合要素(2、200、201、202)の使用であって、前記熱硬化性樹脂(10)、熱可塑性樹脂、又はそのような樹脂の混合物は、前記中間複合要素(2、200、201、202)の前記ドライスタック(4、400、401、410)に、熱硬化性樹脂(10)が使用される場合はその架橋をもたらす条件下で注入又は射出され、前記注入又は射出に続いて冷却され、熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の混合物の使用が好ましい、使用。
【請求項44】
複合部品(100、101)の製造のためのプロセスであって、
A1-請求項1から18のいずれか一項に記載の中間複合要素(2、200、201、202)、又は請求項19から42のいずれか一項に記載のプロセスによって得られた中間複合要素(2、200、201、202)を提供するステップと、
A2-前記中間複合要素(2、200、201、202)を、追加のドライスタック(700、702)と呼ばれる強化繊維プライのドライスタックの表面の少なくとも一部分に貼付し、前記中間複合要素(2、200、202)の前記ドライスタック(4、400、410)を前記追加のドライスタック(700、702)に当接させるステップと、
A3-熱硬化性樹脂(10)が使用される場合には架橋をもたらす条件下で、前記中間複合要素(2、200、202)の前記ドライスタック(4、400、410)及び前記追加のドライスタック(700、702)の両方に熱硬化性、熱可塑性樹脂(10)又はそのような樹脂の混合物を注入又は射出し、前記注入又は射出に続いて冷却することにより、所望の最終複合部品(100、101)を得ることを可能にするステップと
を含む、製造のためのプロセス。
【請求項45】
前記追加のドライスタック(700、702)を形成する前記強化繊維プライが、前記中間複合要素(2、200、202)の前記ドライスタック(4、400、410)を構成するものと構造的に同一であることを特徴とする、請求項44に記載の複合部品(100、101)の製造のためのプロセス。
【請求項46】
前記追加のドライスタック(700、702)が、前記中間複合要素(2、200、201、202)が貼付される面積の少なくとも10倍の面積を有することを特徴とする、請求項44又は45に記載の複合部品(100、101)の製造のためのプロセス。
【請求項47】
ステップA2で使用される前記追加のドライスタック(700、702)が予め形成されることを特徴とする、請求項44から46のいずれか一項に記載の複合部品(100、101)の製造のためのプロセス。
【請求項48】
前記中間複合要素(2、200、202)が貼付される前記追加のドライスタック(700、702)の前記表面が、リブ又は突出タイプの1つ以上の表面凹凸(710)を有することを特徴とする、請求項44から47のいずれか一項に記載の複合部品(100、101)の製造のためのプロセス。
【請求項49】
熱硬化性樹脂(10)、特にエポキシ樹脂が、ステップA3において射出又は注入されることを特徴とする、請求項44から48のいずれか一項に記載の複合部品(100、101)の製造のためのプロセス。
【請求項50】
ステップA3が、注入によって、好ましくはオープンモールドで、例えば真空バッグ注入によって実行されることを特徴とする、請求項44から49のいずれか一項に記載の複合部品(100、101)の製造のためのプロセス。
【請求項51】
請求項44から50のいずれか一項に記載の製造プロセスによって得られる複合部品(100、101)。
【請求項52】
航空、自動車、宇宙、防衛、産業、又はエネルギーの分野で使用される、請求項51に記載の複合部品(100、101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品の作製に適した強化材料の技術分野に関する。より具体的には、本発明は、射出又は注入された樹脂と結合した、複合部品の製造に適した強化材料の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
1種以上の繊維強化材だけでなくマトリックス(典型的には、主に熱硬化型であり、1種以上の熱可塑性物質を含み得る)も含む複合部品は、軽量性、機械的特性、及び耐食性を組み合わせるため、金属部品の代替として、特に航空、自動車、及びエネルギー分野で一層使用されている。
【0003】
複合部品又は物品の製造は、いわゆる「間接」プロセスと、いわゆる「直接」又は「液体複合成形」(LCM)プロセスとの2つのタイプのプロセスによって実行することができる。
【0004】
間接プロセスは、ポリマー樹脂を予め含浸させた繊維材料を利用し、次いで、圧縮成形操作によって所望の複合部品を製造するように造形される。繊維プリプレグ材料は、最終的な複合部品のための所望の量の樹脂を含む。圧縮成形の主な製造プロセスは以下の通りである:
-プリプレグのシートがスタックの形態で位置決めされる、「シート成形コンパウンド」(SMC)プロセス、
-樹脂と混合された切断繊維が圧縮成形操作で結合される、「バルク成形コンパウンド」(BMC)プロセス。
【0005】
従来技術は、含浸一方向性繊維の集合体からなるチップ、特に長方形のチップを使用することを提案しており、これは、モールド内にランダムに直接位置決めすることができるか、又はチップが実質的にシートの平面内に延在するようにランダムに配置されているシート材料を中間的に形成するために使用することができる。これにより得られた中間シート材料をモールドの大きさに切断し、モールド内に積層した後、圧縮成形する。これらのタイプの材料は、成形操作中に流動し、使用されるモールドのすべての部分を充填することができる。Hexcel Corporation(Stamford USA)は、HexMC(登録商標)という名称で市販されているこの種のシート材料を提供する。
【0006】
そのような圧縮成形プロセスは、複雑な形状を有する三次元部品の製造に特に適しているが、それにもかかわらず、大型部品の製造には限界がある。
【0007】
直接プロセスは、1種以上の繊維強化材が「乾燥」状態で(すなわち、最終マトリックスを用いずに)利用され、マトリックスとして使用される樹脂は別々に調製されて、例えば、繊維強化材を含有するモールドへの射出(樹脂トランスファー成形(RTM)プロセス)、繊維強化材の厚みを通じた注入(液体樹脂注入(LRI)プロセス若しくは樹脂フィルム注入(RFI)プロセス)、又は繊維強化材の単一層のそれぞれの上への、連続的に形態に適用されるローラー若しくはブラシによる手動コーティング/含浸によるものと定義される。
【0008】
RTM、LRI、又はRFIプロセスでは、一般に、所望の完成品の形態の繊維プリフォーム又はスタックを最初に製造し、次いでこのプリフォーム又はスタックに樹脂を含浸させてマトリックスを形成することが必要となる。樹脂は、温度で圧力差によって射出又は注入され、次いで、必要量の樹脂の全体がプリフォームに含有された後、集合体をより高い温度にして重合/架橋サイクルを完了させ、それによってその硬化をもたらす。
【0009】
直接プロセスに適した材料の例としては、繊維強化材が挙げられ、繊維強化材では、強化繊維、特に炭素の一方向性シートが、一方向性シートの両面に接合された熱可塑性繊維の2つのベールと結合している。そのような材料は、出願EP1,125,728、US6,828,016、WO00/58083、WO2007/015706、WO2006/121961、US6,503,856、US2008/7435693、WO2010/046609、WO2010/061114、EP2,547,816、US2008/0289743、US2007/8361262、US2011/9371604、及びWO2011/048340に特に記載されている。
【0010】
一般に「ノンクリンプ布地」(NCF)と呼ばれる多軸強化材も、直接プロセスに理想的に適している。そのような多軸強化材は、いくつかの配向に配置され、互いに縫い付けられた強化繊維(特に、炭素、ガラス、又はアラミド)のいくつかの一方向性層のスタックからなり、出願EP2547816及びWO2010/067003に特に記載されている。
【0011】
したがって、直接プロセス及び間接プロセスは、様々な材料、装置、及びプロセスを利用する。
【0012】
従来技術では、特に、大なり小なり複雑な形状を有する三次元部品の製造のために、様々なプロセス又は装置が提案されている。
【0013】
出願WO2016/207309は、成形中に、成形される成形材料の流れを圧縮モールドのキャビティ内に導くガイドを含む成形材料の少なくとも1つのブランクを使用し、それにより、表面リブを有する複雑な形状を得ることができるプリプレグ成形プロセスを提案している。強化繊維材料は、HexMC(登録商標)又はプリプレグ型である。繊維材料層を形成するように準等方性配置で構成された、熱硬化性樹脂を含浸させた一方向性テープのチップからなるHexMC(登録商標)材料は、三次元配置に容易に熱成形することができる。
【0014】
出願WO2017/029121には、インサートの寸法を増大又は減少させるために独立して移動させることができる壁を有する内側インサートを含む、圧縮成形によって複合部品を製造するためのモールドからなる代替的な解決策が記載されている。
【0015】
様々な材料又は中間要素を組み合わせて特定の部品を製造することも提案されており、特に、これらの部品は、様々な形状又は複雑さの部分、又は様々な応力を受ける部分さえ有する。
【0016】
特に、従来技術では、2つの成形部品を接着又はリベット留めによって互いに接合することが提案されており、これは界面において脆性を引き起こす可能性があり、追加の組み立てステップを必要とする。特に、リブ又は突起を形成する成形複合部品は、そのような技術を使用して、別の成形複合部品に取り付けることができる。それにもかかわらず、単純な接着では、一般に、特に航空部品には不十分であると考えられ、適切な工具の使用及び追加の接合ステップを必要とするリベット留めなどの機械的接合によって補う必要がある(特に、2009年8月9日付けの米国運輸省連邦航空局のアドバイザリーサーキュラー20-107及び14CFR§23.573(a)を参照)。
【0017】
しかしながら、出願WO2014/168701は、様々な材料:HexMC(登録商標)型の熱硬化性樹脂を予め含浸させた一方向性テープのチップからなる複雑な幾何学的形状を有する成形可能構成要素、及び熱硬化性樹脂を予め含浸させた一方向性繊維からなる構造構成要素から、これらを結合させ、次いで熱硬化性樹脂を硬化させることによって単一工程で成形する、多構成要素の構造を製造することを提案している。構造的構成要素及び成形可能な構成要素の熱膨張係数を選択することによって、高温成形中の2つの構成要素間の界面における微小亀裂が最小限に抑えられる。このため、様々な方向に配向された連続繊維を構造構成要素に一体化することが提案されている。各構成要素は、25重量%~45重量%の熱硬化性樹脂を含む。
【0018】
他の文献は、非常に特定の部品の製造に適したプロセスを提案しており、文献US2019/338881は、強化繊維及び実質的に完全に硬化された樹脂組成物からなる第1の部分と、樹脂組成物が浸透する第2の部分とを含むライナーを有するパイプラインの修復のための筒状ファスナを記載しており、この第2の部分は乾燥繊維、特にフェルトからなる。一方、文献DE102014009446は、繊維層11が挿入される熱可塑性成形部品を含む取り付け要素を記載している。この繊維層は、2種の部品:成形部品に完全に埋め込まれた部品、及び成形部品の外側に延在する、熱可塑性物質が含浸していない2つの乾燥部品11.1を有する。次いで、この取り付け点を含む複合部品が、乾燥部品に熱硬化性樹脂を含浸させることによって得られる。
【0019】
これに関連して、本発明は、特定の場所で利用可能な直接的又は間接的な装置に応じて、様々な形状及び寸法の部品の製造により適している、適合のためのより多くの選択肢を提供し、新しい中間複合要素(中間体である複合体要素)、その製造のためのプロセス、及び複合部品の製造のためのプロセスにおける実施態様を提案する。特に、本発明は、リブ又は突起を含む部品などの複雑な形状を有する複合部品の製造に理想的に適している。本発明によるプロセスは、様々なタイプの複合部品に容易に適合させることができ、機械的応力に対して良好な耐性を有する複合部品をもたらすことができる。特に、本発明は、中間複合要素と、前記中間複合要素を含む複合部品を作製し、次いで2つの部分の間の連接部における満足のいく接続によりそれらを組み立てるのに必要な様々な部分を使用するプロセスとを提案する。
【発明の概要】
【0020】
第1に、本発明は、
-熱硬化性ポリマーマトリックスに埋め込まれた強化繊維の集合体を含む少なくとも1つの成形部分と、
-強化繊維層の少なくとも1つのドライスタックであって、特に、2つの連続する強化繊維層の間に挿入された少なくとも1つの多孔質ポリマー層を含み、成形部分はドライスタックの表面に貼付され、かつドライスタックに接合される、少なくとも1つのドライスタックと
を含む中間複合要素であって、熱硬化性ポリマーは、成形部分が貼付されたドライスタックの表面からドライスタックの厚みに部分的に浸透し、それによってドライスタックと成形部品との間に接合を形成することを特徴とする、中間複合要素に関する。
【0021】
本発明の文脈において、成形部分のポリマーマトリックスを形成する熱硬化性ポリマーはまた、ドライスタックの厚みにも浸透する。この浸透により、成形部分とドライスタックとの間に強い接合を形成することができる。したがって、この接合を追加の機械的接合で補う必要はなくなる。また、有利には、本発明の文脈において、成形部分とドライスタックとの間の接合は、リベット、ねじなどの機械的締結装置によっては提供されない。さらに、そのような中間複合要素は、直接プロセスによって、特にドライスタックに浸透する射出又は注入樹脂と組み合わせた、複雑な複合部品の製造に理想的に適している。実際、熱硬化性ポリマーはスタックの厚みに部分的にしか浸透しないため、続いて、複合部品の製造中にポリマーマトリックスを添加することによってこのドライスタックを補う必要がある。特に、ドライスタックは、4~20の強化繊維層、好ましくは8~16の強化繊維層を含み、ドライスタックの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの強化繊維層は、成形部品から浸透した熱硬化性ポリマーを含有しない。これらの層は、成形部品に接続された表面の反対側の、スタックの外部部分に配置される。
【0022】
有利には、中間複合要素では、強化繊維層のドライスタックは、少なくとも5mmの平均厚みを有し、熱硬化性ポリマーは、少なくとも2mmの平均浸透深さで、スタックの表面からスタックの厚みに部分的に浸透する。そのような浸透により、ドライスタックの厚みにかかわらず、ドライスタックと成形部分との間の接合は良好になり、中間複合要素から得られる最終複合部品の界面において良好な剪断抵抗特性を得ることができる。本発明の文脈において、スタックの平均厚み及び平均浸透深さは、成形部分とドライスタックとの間の界面の平面に垂直に10回の測定を行い、次いでこれらの測定値の算術平均を計算することによって測定することができる。そのような測定は、実施例に説明されているように、中間複合要素を切断することによって行ってもよい。熱硬化性ポリマーの浸透を特徴付ける別の方法は、上述のように、熱硬化性ポリマーが浸透したドライスタックの強化繊維層数を観察することである。
【0023】
本発明の文脈において、ドライスタックはスタックの総重量の最大10%、好ましくはスタックの総重量の0.5%~10%、より好ましくはスタックの総重量の2%~6%を占めるポリマー部分を含み、前記ポリマー部分がスタックの凝集に少なくとも部分的に寄与するため、ドライスタックは「ドライ」と呼ばれる。このポリマー部分は、ドライスタックに浸透した熱硬化性ポリマーの量を含まない。
【0024】
このポリマー部分は、特に、熱可塑性ポリマー、熱可塑性部分を含むポリマー、又はそのようなポリマーの混合物であってもよい。
【0025】
本発明による中間複合要素は、一体的で凝集性の特徴を有する。これにより、成形部分とドライスタックとが互いに接合されるだけでなく、ドライスタックも固着部分を形成する、すなわちドライスタックの強化繊維層(繊維層とも呼ばれる)同士が接合される。そのような接合は、以下に説明されるように、縫製若しくは編成(knitting)などの機械的接合によって、又はドライスタックに含有されるポリマー部分によって達成することができる。
【0026】
一実施形態によれば、強化繊維層は布地である。
【0027】
好ましい実施形態によれば、強化繊維層は、好ましくは少なくとも2つの異なる方向に配向された強化繊維の一方向性シートである。
【0028】
一実施形態によれば、ドライスタックは、1つ以上のノンクリンプ布地(NCF)から形成され、各NCFは、縫製又は編成によって接合された、少なくとも2つの異なる方向に配向された複数の強化繊維の一方向性シートの集合体である。この場合、ドライスタックは、1つ以上のNCFから形成されてもよく、各NCFは、少なくとも2つの異なる方向に配向されたいくつかの強化繊維の一方向性シートの集合体であり、1つ以上の多孔質ポリマー層が一方向性層の表面上又は間に存在してもよく、前記集合体は、縫製又は編成によって接合される。
【0029】
繊維層が布地又は好ましくは強化繊維の一方向性シートである場合、これらがNCFの形態であるかどうかにかかわらず、少なくとも1つの多孔質ポリマー層が2つの連続する布地又は2つの連続する強化繊維の一方向性シートの間に挿入される。これにより、得られる複合部品の機械的特性を最適化することが可能になる。
【0030】
特に、本発明を実施する方法が何であれ、ドライスタック内に存在する多孔質ポリマー層は、多孔質フィルム、格子、粉体コーティング、布地、又は好ましくは不織布若しくはベールである。
【0031】
そのような多孔質ポリマー層を使用すると、ドライスタックは、少なくとも部分的に、2つの繊維層の間に存在する多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果として、凝集特性を有することができる。
【0032】
一般に、ドライスタック及び/又は成形部分の強化繊維は、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましい。
【0033】
複雑な成形部品の製造に特に適した好ましい実施形態によれば、成形部分は、熱硬化性樹脂を含浸させた一方向性繊維のチップを成形することによって得られ、好ましくはチップがランダムに配置された中間マットを形成する。特に、これらのチップは、長方形又は実質的に長方形であり、好ましくは、1cm~10cmの長さ、2mm~2cmの幅、及び0.02mm~0.50mmの厚みを有する。
【0034】
本発明の文脈において、「複雑な部品」、したがって特に、「複雑な成形部品」は、特に、その部品が少なくとも1つの展開不可能な表面を有することを意味し、展開可能な表面とは線織面(regulated surface)に対応する、すなわち、その接平面が母線に沿って同じであるものである。例としては、一定でない厚み又はT字形部分を有する部品、又はT字形の部品が挙げられる。そのような成形部品は、特に従来の圧縮成形技術によって得ることができる。
【0035】
特に、本発明による中間複合要素では、成形部分の熱硬化性ポリマーはエポキシである。
【0036】
一般に、熱硬化性ポリマーは、成形部品の少なくとも25重量%、好ましくは成形部品の25%~55重量%を構成する。
【0037】
有利には、本発明による中間複合要素では、ドライスタックは、4~20の強化繊維層、好ましくは8~16の強化繊維層を含む。
【0038】
本発明の特定の実施形態によれば、成形部分は、スタックの形状と比較して複雑な形状を有する。特に、成形部分は、ヒンジ、取り付け点、リブ、リブ付き梁、支持体、ブラケット、チャネル、ブラケット、クレビス、補強材、ハッチフレーム、ドアフレーム、レバーアーム、ベース、フィッティング、ジョイント、ソケット、又はピボットの形状を有する。
【0039】
本発明の別の特徴は、
-熱硬化性ポリマーマトリックスに埋め込まれた強化繊維の集合体を含む少なくとも1つの成形部分と、
-特に、2つの連続する強化繊維層の間に挿入された少なくとも1つの多孔性ポリマー層を特に含む、強化繊維層の少なくとも1つのドライスタックであって、前記成形部分は前記スタックの表面に貼付されて接合される、少なくとも1つのドライスタックと
を含む中間複合要素の製造のためのプロセスであって、以下の連続するステップ:
a-2つの連続する強化繊維層の間に挿入された少なくとも1つの多孔性ポリマー層を特に含み、2つの連続する強化繊維層の間に挿入された少なくとも1つの多孔性ポリマー層を特に含む、強化繊維プライの初期ドライスタックの表面領域上に、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の少なくとも1つの集合体を貼付するステップと、
b-モールド内で、強化繊維プライの初期ドライスタック上に堆積された、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の集合体の熱間圧縮成形操作を実行し、それにより、熱硬化性ポリマーの架橋及びスタックの厚みへの熱硬化性ポリマーの部分的浸透をもたらすステップと、
c-冷却により、熱硬化性ポリマーに埋め込まれた強化繊維の集合体を含む成形部分を生成し、マトリックスを形成し、成形部分が貼付したスタックの表面からスタックの厚みに熱硬化性ポリマーを部分的に浸透させ、熱硬化性ポリマーのこの浸透の結果として、それにより得られた強化繊維層のスタックに前記成形部分を接合するステップと
を含む、プロセスに関する。
【0040】
そのようなプロセスは、複雑な形状の要素の製造に特に適した加熱を伴う圧縮成形プロセスによって、本発明による中間複合要素、特に複雑な形状の中間複合要素を製造することを可能にする。したがって、製造プロセスの特徴は、本発明による中間複合要素を得るために選択され、これにより、本発明の特徴に適合される。
【0041】
この製造プロセスでは、ステップaで貼付された、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の集合体が、所望の成形部品のプリフォームの形態であることが可能である。
【0042】
一実施形態によれば、ステップaで使用される初期ドライスタックを形成する強化繊維のプライは、少なくとも片面が多孔質ポリマー層と結合された強化繊維布地であり、前記プライに存在する多孔質ポリマー層は、前記プライの総重量の最大10%、好ましくは前記プライの総重量の0.5%~10%、より好ましくは前記プライの総重量の2%~6%を占め、少なくとも1つの多孔質ポリマー層が2つの連続する布地の間に挿入されている。
【0043】
好ましい実施形態によれば、ステップaで使用される初期ドライスタックを形成する強化繊維のプライは、その面の少なくとも1つが多孔質ポリマー層と結合した強化繊維の一方向性シートであり、前記プライに存在する多孔質ポリマー層は、前記プライの総重量の最大10%、好ましくは前記プライの総重量の0.5%~10%、より好ましくは前記プライの総重量の2%~6%を占め、少なくとも1つの多孔質ポリマー層が2つの連続する強化繊維の一方向性層の間に挿入される。
【0044】
そのような場合、特に好ましくは、ステップaで使用される初期ドライスタックを形成する強化繊維のプライは、その両面で多孔質ポリマー層と結合した、強化繊維の一方向性シートからなってもよく、強化繊維の一方向性シートの両面に存在する多孔質ポリマー層は同一である。
【0045】
前記プライ内に存在する多孔質ポリマー層は、ホットタック特性を有してもよく、一方向性シート又は布地と前記少なくとも1つの多孔質ポリマー層とを結合させて、多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果として前もって得られたプライを形成する。そのようなプライは、先行技術では乾式強化の手段として従来から利用されている。
【0046】
ステップaで利用される強化繊維のプライの初期ドライスタックが、存在する多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果として凝集特性を有することも可能である。そのような凝集は、その取り扱い及び製造プロセス中のその実施を容易にする。この場合、特にこのドライスタックが単なる平板ではない場合、ステップaで利用される強化繊維のプライの初期ドライスタックを予め形成することも可能である。
【0047】
別の変形形態は、ステップbの終わりに、存在する多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果としてその凝集が得られるため、ステップaで利用される強化繊維のプライの初期ドライスタックが凝集性ではないものである。
【0048】
有利には、ステップaで使用される初期ドライスタックの前記プライ内に任意選択的に存在する多孔質ポリマー層は、熱可塑性ポリマー若しくは熱可塑性部分を含むポリマーを含むか又はそれらからなる。
【0049】
特に、ステップaで使用される初期ドライスタックの前記プライに存在する多孔質ポリマー層は、多孔質フィルム、グリッド、粉体コーティング、布地、又は好ましくは不織布若しくはベールである。
【0050】
別の変形形態によれば、初期ドライスタックを形成する強化繊維のプライは、縫製又は編成によって接合された、少なくとも2つの異なる方向に配向された強化繊維の一方向性シートである。この場合、ドライスタックは、複数のNCFから形成されてもよく、各NCFは、少なくとも2つの異なる方向に配向された複数の一方向性シートの集合体であり、1つ以上の多孔質ポリマー層が一方向性シートの表面上又は間に存在してもよく、前記集合体は縫製又は編成によって接合される。従来、NCFの分野では、ガラス、炭素、玄武岩、シリカ又はポリエステル糸若しくは熱可塑性ポリマーで作製された糸、特に5dTex~150dTexの範囲、好ましくは5dTex~30dTexの範囲の力価を有する熱可塑性ポリマーで作製された糸を用いて、縫製又は編成を実行することができる。
【0051】
本発明による製造プロセスでは、ドライスタック及び/又はプリプレグ強化繊維の集合体の強化繊維プライは、一般に、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましい。
【0052】
一実施形態によれば、特に複雑な形状の成形要素の製造に理想的に適したものであり、成形部分を形成するために使用される、集合体を形成する熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維は、熱硬化性ポリマーを含浸させた一方向性繊維のチップであり、好ましくはチップがランダムに配置された中間マットを形成する。有利には、チップは、長方形又は実質的に長方形であり、好ましくは、1cm~10cmの長さ、2mm~2cmの幅、及び0.02mm~0.50mmの厚みを有する。
【0053】
好ましくは、成形部分を形成するために使用される集合体の熱硬化性ポリマーはエポキシである。一般に、成形部分を形成するために使用される集合体の熱硬化性ポリマーは、前記集合体の少なくとも25重量%、好ましくは前記集合体の25重量%~55重量%を占める。
【0054】
本発明の文脈において、圧縮成形のステップbは、熱硬化性ポリマーの拡散をもたらし、熱硬化性ポリマーは、その最終的な熱硬化状態において、成形部品との界面の領域のスタックの厚みに部分的に浸透する。ほとんどの場合、結果として得られる強化繊維層のドライスタックは、少なくとも5mmの平均厚みを有し、熱硬化性ポリマーは、少なくとも2mmの平均浸透深さで、スタックの表面からスタックの厚みに部分的に浸透する。そのような浸透を達成するためには、成形操作の条件、特に圧力、温度及び時間を当業者が調整する必要がある。
【0055】
一般に、ステップaにおいて、強化繊維プライの初期ドライスタックは、4~20のプライ、好ましくは8~16のプライを含み、有利には、ステップbの後、得られたドライスタックの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの強化繊維層は、成形部品から浸透した熱硬化性ポリマーを含有しない。
【0056】
特定の実施形態によれば、ステップaで使用されるドライスタックは少なくとも、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の集合体が貼付される表面の領域に切り欠き又は穿孔を有する。そのような切り欠き又は穿孔は、予め含浸された強化繊維の集合体のドライスタックへの凝着、及び最終的には、得られる最終的な中間複合要素を形成する2つの部品間の接合に有利である。
【0057】
特定の実施形態では、製造プロセスの代替的な実施形態に関係なく適用可能であるが、適切な形状のモールドがステップbで使用されて、スタックの形状と比較して複雑な形状を有する成形部分が得られる。
【0058】
特に、本発明の文脈において、得られた中間複合要素は、ヒンジ、取り付け点、リブ、リブ付き梁、支持体、ブラケット、チャネル、ファスナ、クレビス、補強材、ハッチフレーム、ドアフレーム、レバーアーム、ベース、フィッティング、ジョイント、ソケット、又はピボットを形成するために使用される。
【0059】
本発明はまた、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそのような樹脂の混合物と組み合わせて複合部品を製造するための、本発明による中間複合要素又は本発明の文脈で説明した製造プロセスによって得られた中間複合要素の使用に関する。そのようなプロセスは、直接プロセスと呼ばれる。樹脂又は樹脂の混合物は、中間複合要素のドライスタックに注入又は射出され、前記注入又は射出の後に冷却され、熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の混合物の使用が好ましい。熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を含有する混合物を使用する場合、射出又は注入は、熱硬化性樹脂が架橋する条件で実行する。
【0060】
したがって、本発明はまた、本発明の文脈で説明した中間複合要素を使用して複合部品を製造するための、いわゆる直接プロセスに関する。
【0061】
そのようなプロセスでは、中間複合要素は、他の乾式強化材と共に有利に使用される。第1の好ましい変形形態によれば、本発明は、以下のステップ:
A1-本発明による中間複合要素、又は本発明による製造プロセスによって製造された中間複合要素を提供するステップと、
A2-追加のドライスタックと呼ばれる強化繊維プライのドライスタックの表面の少なくとも一部分に、前記中間複合要素を貼付し、それにより、中間複合要素のドライスタックを追加のドライスタックに当接させるステップと、
A3-熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそのような樹脂の混合物を、熱硬化性樹脂が使用される場合はその架橋をもたらす条件下で、中間複合要素のドライスタック及び追加のドライスタックの両方に注入又は射出し、前記注入又は射出の後に冷却して所望の最終複合部品を得るステップと
を含む、複合部品の製造のためのプロセスに関する。
【0062】
本発明の文脈では、中間複合要素と追加のドライスタックとの間に非常に良好な接合があり、これは、この接合は同じタイプであり、中間複合要素のドライスタック及び追加のドライスタックの両方に注入/射出される樹脂によって提供されるためである。この接合は、追加のドライスタックと接触して、中間複合要素の表面全体に提供される。これは、成形部分を形成するポリマーが中間複合要素のドライスタック内に浸透することによって得られる接合に加えて、それを形成する様々な部品の界面で良好な接合を有する部品をもたらす。したがって、これらの接合を追加の機械的接合で補う必要はなくなる。また、有利には、本発明の文脈内で、最終複合部品において、成形部分に対応する部品の要素と中間複合要素のドライスタックとの間の接合、及び中間複合要素と追加のドライスタックとの間の接合は、ある種のリベット、ねじなどの機械的締結部材によっては提供されない。
【0063】
追加のドライスタックを形成する強化繊維プライは、中間複合要素のドライスタックを形成するものと構造的に同一であることが可能である。そのような選択は、追加のドライスタックと中間複合要素との間の適合性に好ましく作用し、界面での接合を促進することができるが、必須ではない。実際、樹脂の注入/射出によって接合された様々なタイプの乾燥強化材の使用は、一般に、2つのタイプの強化材の界面で非常に良好な凝集/接合をもたらす。
【0064】
さらに、本発明によるプロセスは、いわゆる間接的技術によって、特に圧縮成形によって、より小さいサイズ及びより複雑な形状を有する中間複合要素を製造し、この部品をより大きいサイズを有する追加のドライスタックに貼付し、次いで、例えば真空バッグタイプの別の装置を必要とする、いわゆる直接プロセスを実施して最終複合部品を製造することを可能にするので、特に有利である。
【0065】
また、本発明の特定の実施形態によれば、中間複合要素は、追加のドライスタックの形状と比較して複雑な形状を有する。特に、中間複合要素は、得られた最終複合部品において、ヒンジ、取り付け点、リブ、リブ付き梁、支持体、ブラケット、チャネル、タイ、クレビス、補強材、ハッチフレーム、ドアフレーム、レバーアーム、ベース、フィッティング、ジョイント、ソケット、又はピボットを形成する。
【0066】
有利には、追加のドライスタックは、中間複合要素の少なくとも1つの寸法よりも大きい少なくとも1つの寸法、特に中間複合要素の少なくとも1つの寸法の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍のサイズを有する。特に、追加のドライスタックは、中間複合要素が貼付される領域のサイズの少なくとも10倍の領域を有する。
【0067】
本発明の文脈において、ステップA2で使用される追加のドライスタックは予め形成されてもよい。
【0068】
さらに、有利には、中間複合要素が貼付される追加のドライスタックの表面は、特に追加のドライスタックを事前に予め形成することによって得ることができる、リブ又は突起などの1つ以上の表面凹凸を有する。この場合、追加のドライスタックとの界面に中間複合要素のドライスタックが存在することは、成形部品よりも大きな変形能力を有し、中間複合要素と追加のドライスタックとの相対位置の制限が少ない調整を可能にする。制約の少ない設定、したがって成形部分との直接組み立ての場合よりも迅速な係合を利用することができる。これにより、これら2つの要素の結合/組み立てが容易になる。
【0069】
本発明の好ましい変形形態ではないが、中間複合要素を、追加の強化要素を使用せずに、直接プロセスで使用することも可能である。したがって、本発明はまた、複合部品の製造のためのプロセスであって、以下のステップ:
B1-本発明による中間複合要素、又は本発明の文脈で説明されたプロセスによって得られた中間複合要素を提供するステップと、
B2-熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそのような樹脂の混合物を、熱硬化性樹脂が使用される場合は架橋をもたらす条件下で、中間複合要素のドライスタックに注入又は射出し、続いて冷却して所望の最終複合部品を得るステップと
を含む、プロセスに関する。
【0070】
本発明による複合部品の製造のためのプロセスにおいて、中間複合要素又はその製造のためのプロセスに関連して説明したものと同じ特徴が、好ましくは、特に成形部品及び/又はドライスタックに実施されることが理解される。
【0071】
熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂は、複合部品の製造のためのプロセスのステップA3又はB2において、それぞれ有利に注入又は射出される。
【0072】
当業者に周知の従来技術を使用して、ステップA3又はB2はそれぞれ、注入によって、好ましくはオープンモールド内で、例えば真空バッグ注入技術によって実施することができる。
【0073】
本発明はまた、本発明の文脈で説明した複合部品を製造するためのプロセスの1つによって得ることができる複合部品に関する。
【0074】
そのような部品は、特に、航空、自動車、宇宙、防衛、産業、又はエネルギー分野で利用される複合部品に対応する。本発明は、複雑な形状の三次元部品の製造に特に適合している。
【0075】
本発明は、添付の図面を参照することによって、以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。本明細書で引用される文献は、参照のために添付される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明による中間複合要素の概略断面図である。
【0077】
図2】本発明による複合部品の概略断面図である。
【0078】
図3】本発明による中間複合要素の製造に関与するステップの概略図である。
【0079】
図4】本発明による複合部品の製造のためのプロセスの第1の変形形態による、本発明による中間複合要素からの複合部品の製造に関与するステップの概略図である。
【0080】
図5】本発明による複合部品の製造のためのプロセスの第2の変形形態による、本発明による中間複合要素からの複合部品の製造に関与するステップの概略図である。
【0081】
図6A】一連のリブを有するように造形された、複雑な形状の中間複合要素及び追加のドライスタック(部分的にのみ示されている)の概略斜視図である。
【0082】
図6B】最終部品を形成するために樹脂を添加する前の、追加のドライスタックに貼付された中間複合要素を有する同じ2つの要素を示す図である。
【0083】
図6C】成形部分とドライスタックとの間の界面、及び成形部分のマトリックスも形成する、熱硬化性ポリマーのドライスタックの厚みへの部分的浸透を示す中間複合要素の一部の拡大図である。
【0084】
図7】成形部品のマトリックスを形成するポリマーのドライスタックへの浸透を示す、中間複合要素の部分断面図に対応する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
中間複合要素
第1の特徴によれば、本発明は、射出又は注入された樹脂と組み合わせた複合部品の製造に利用される中間複合要素に関する。本発明による中間複合要素2は、図1に概略的に示されており、少なくとも1つの成形部分、図示の例では単一の成形部分3と、少なくとも1つのドライスタック、図示の例では繊維層5の単一のドライスタック4とを含み、成形部分3とドライスタック4とは互いに接合されている。成形部分3は、ドライ繊維スタック4の大きな面の1つに位置決めされ、成形部分3とドライスタック4との間の接合領域に対応する界面6は、図1に示す例のように、成形部分3が設置されるドライスタック4の面の全表面に対応してもよいが、この表面の一部のみに対応してもよい。
【0086】
成形部分3は、強化繊維が分布している1つ以上の熱硬化性ポリマーのマトリックスからなる。本発明の文脈において、「熱硬化性ポリマー」という用語は、完全に熱硬化性のポリマー、又は完全に熱硬化性ではない熱硬化性ポリマーさえも意味するために使用される。特に、熱硬化率は100%未満であるが、一般に70%を超える可能性がある。また、成形部品において、熱硬化性ポリマーはいくつかの熱架橋性官能基を含有し得るが、ポリマーは熱硬化特性を保持する、すなわち、加熱に供しても元の液体又はペースト形態に戻ることはできない。
【0087】
熱硬化性ポリマーマトリックスは、熱硬化性ポリマー又は熱硬化性ポリマーの混合物を重合/架橋することによって得られる。この成形部分は、熱硬化性ポリマー又は熱硬化性ポリマーの混合物を予め含浸させた強化繊維の集合体を圧縮成形することによって得られる。強化繊維は、従来、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましい。強化繊維は、当業者に周知で、成形複合部品の製造に使用される任意のタイプの構成に見出すことができる。それらは、繊維の織布、不織布、一方向性シート、又は好ましくは一方向性繊維で作製された切断繊維若しくはチップであってもよい。特に、熱硬化性ポリマーを含浸させた一方向性繊維のチップを使用して、成形部品を作製することができる。そのようなチップを使用すると、良好なクリープが可能になり、複雑な成形部品の製造に特に適している。特に、成形部分は、好ましくは1cm~10cmの長さ、2mm~2cmの幅、及び0.02mm~0.50mmの厚みを有する長方形又は実質的に長方形のチップから作製することができる。熱硬化性ポリマーを含浸させたそのような一方向性繊維のチップは、特に、一方向性繊維ロービングに含浸させてから切断することによって、又は一方向性繊維を含浸させたシートを切断することによって得られる。次いで、そのようなチップを無作為に平らに置き、シートにプレスして中間マットを形成することができる。含浸一方向性繊維のチップから調製されるそのような中間マットは、例えば、Hexcel Corporation(Stamford USA)によって市販されているHexMC(登録商標)材料に対応する。一方向性繊維からなるチップが使用される場合、成形部品内で、チップを形成する一方向強化繊維は、チップが圧縮成形操作前にランダムに配置されている場合には3次元にランダムに配向され、チップが中間マットとして配置され、中間マットが積層されて圧縮成形操作を受ける場合には2次元のみにランダムに配向される。
【0088】
熱硬化性マトリックスは、熱硬化状態の任意のタイプの熱硬化性ポリマー、すなわちエポキシ、フェノール、ビスマレイミド、若しくはシアナート樹脂、又はそのような樹脂の混合物に対応することができ、エポキシ樹脂が好ましい。成形部分は、最終複合部品中に所望の量の熱硬化性ポリマーを含有する。特に、熱硬化性ポリマーマトリックスは、成形部品の少なくとも25重量%、好ましくは成形部品の25重量%~55重量%を占める。
【0089】
一方、ドライスタック4は、強化繊維層5の集合体からなり、前記層は互いに重なって位置決めされている。ドライスタック4は凝集性である、すなわち、ドライスタック4を構成する強化繊維層5は互いに接合されている。複合部品の製造のために、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂、又はそのような樹脂の混合物、特に熱硬化性樹脂と結合させる必要があるため、スタックは「ドライ」と説明される。それにもかかわらず、ドライスタックは、ポリマー部分を含んでもよいが、このポリマー部分は、ドライスタックの総重量の最大15%、好ましくは最大10%、より好ましくはドライスタックの総重量の0.5%~10%、好ましくは2%~6%を占める。このポリマー部分は、熱硬化性ポリマー、特にエポキシ、熱可塑性ポリマー、熱可塑性部分を含むポリマー、又はそのようなポリマーの混合物であってもよい。ポリマー部分は、特に、2つの強化繊維層5の間に挿入された1つ以上の多孔質層の形態である。また、これは、ドライスタック4の表面及び/又は縫製糸若しくは編成糸に位置決めされた1つ以上の多孔質層を含んでもよい。有利には、ドライスタック4は、強化繊維層5の凝集を確実にすることを可能にし、ドライスタック4にその一体的な特徴を与えるポリマー部分を含有する。
【0090】
ドライスタック4の繊維層5は、直接プロセスによる複合部品の製造に適した任意のタイプの強化繊維層、特に布地、不織布、又は一方向性シートとすることができる。好ましくは、ドライスタック4を形成する強化繊維層5は、すべて強化繊維布地であり、又はさらにより好ましくは、すべて強化繊維の一方向性層である。
【0091】
ドライスタック4内で、繊維層5は様々であってもよく、又は好ましくはすべて同一である。ここでも、繊維層5の強化繊維は、従来、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましい。本発明の文脈において、ドライスタック4は、特に前記ポリマーのホットタック特性の結果としてスタックの凝集を確実にするために、強化繊維層5の間に挿入される1つ以上の多孔質ポリマー層を含む。糸を縫製又は編成して、スタックの様々な繊維層又はそれらの少なくともいくつかを互いに接合することによって、スタックの凝集を確実にするか又は部分的に確実にすることも可能である。
【0092】
「多孔質層」は、複合部品が形成されるときに、透過層を含有するスタックを通して射出又は注入される樹脂などの液体の通過を可能にする透過層を意味する。特に、出願WO2011/086266に記載されているプロセスに従って決定されるそのような層の開放性係数は、1%~70%の範囲、好ましくは30%~60%の範囲である。多孔質層の例には、多孔質フィルム、交絡糸によって作製されたグリッド、粉体コーティング層、布地、及び不織布がある。多孔質層は、ポリマー又はポリマーの混合物から構成されるので、ポリマー性と呼ばれる。特に、多孔質ポリマー層は、1種以上の熱可塑性ポリマー、1種以上の熱硬化性ポリマー、又は熱硬化性ポリマー若しくは熱可塑性ポリマーの混合物で作製されてもよい。ドライスタックで従来使用されている(したがって、存在する多孔質層の形成のための)熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアミド(例えば、PA:PA6、PA12、PA11、PA6.6、PA6.10、PA6.12)、コポリアミド(CoPA)、ポリアミド-エーテル又はエステルブロック(PEBAX、PEBA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(例えば、PET)、ポリブチレンテレフタレート(例えば、PBT)、コポリエステル(CoPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアセタール(例えば、POM)、ポリオレフィン(例えば、PP、HDPE、LDPE、LLDPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(例えば、PSU)、ポリフェニレンスルホン(例えば、PPSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フェノキシ、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリラート(SBM)コポリマーなどのブロックコポリマー、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル(MAM)コポリマー、及びそれらの混合物の中から選択されるものが挙げられる。出願WO2019/102136に記載されているように、多孔質ポリマー層が、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーからなるか又はそれを含有することも可能である。ドライスタックのポリマー部分の構成ポリマーの選択は、複合部品のその後の製造中に射出又は注入される樹脂の選択に基づいて、当業者によって変更することができる。有利には、ドライスタックのポリマー部分(したがって、その中に存在する多孔質ポリマー層)は、熱可塑性ポリマー若しくは熱可塑性部分を含むポリマー又はそのようなポリマーの混合物を含むか又はそれからなる。
【0093】
中間複合要素2を形成するために、成形部分3とドライスタック4とが互いに接合される。成形部分3とドライスタック4との間の界面6では、ドライスタック4に浸透する熱硬化性マトリックスによって接合が形成される。界面6にも存在し得る、ドライスタック内に存在するポリマー部分もまた、この接合の形成に寄与する場合がある。
【0094】
本発明の文脈において、成形部分3とドライスタック4との間の接合は、成形部分が貼付されているスタックの表面6からスタックの厚みへの熱硬化性マトリックスの部分的浸透によって強化され、それによってスタックと成形部品との間の接合を強化する。この浸透は、以下に説明するように、中間複合要素2の製造中に起こる。
【0095】
有利には、中間複合要素では、ドライスタック4は少なくとも2つの強化繊維層5を含み、熱硬化性ポリマーはドライスタック4の少なくとも2つの強化繊維層5に浸透する。特に、ドライスタック4は、4~20の強化繊維層5、好ましくは8~16の強化繊維層5を含み、熱硬化性ポリマーは、ドライスタック4の少なくとも2つの強化繊維層5、好ましくはドライスタック4の少なくとも4つの強化繊維層5に浸透する。
【0096】
中間複合要素の製造のためのプロセス
本発明による中間複合要素の製造のためのプロセスは、図3に例示されており、以下の連続するステップ:
a-熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の少なくとも1つの集合体60を、強化繊維プライ50の初期ドライスタック40の表面領域70に貼付するステップと、
b-モールド80内で、強化繊維プライのドライスタック40上に堆積された、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の集合体60の熱間圧縮成形操作を実行して、熱硬化性ポリマーの架橋及びスタックの厚みへの部分的な浸透をもたらすステップと、
c-冷却により、熱硬化後の熱硬化性ポリマーに対応する、マトリックスに埋め込まれた強化繊維の集合体を含む成形部分300を生成し、次いで、浸透した熱硬化性ポリマーによって、前記成形部分をこのようにして得られた強化繊維層のスタック400にも接合するステップと
を含む。
【0097】
成形操作は、当業者に周知のいずれかの従来技術を使用して実行することができる。様々な要素には、図3に示すように、熱硬化性ポリマーを含浸させた強化繊維の集合体60と、強化繊維プライ50の初期ドライスタック40とがすべて圧縮成形操作を受けることが含まれる。
【0098】
この目的のために、個々の要素は、従来、オープンモールド20又はオープンモールドの一部に位置決めされる。強化繊維プライ50の初期ドライスタック40を、個々のプライを堆積させることによってモールド内に直接形成すること、又は初期ドライスタック40を事前に形成し、一度の操作でモールド内に堆積させることが可能である。
【0099】
同様に、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の集合体60を、選択されたプリプレグを初期ドライスタック40上に堆積させることによってモールド内に直接形成してもよく、又は熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の集合体60を、プリフォームの形態で事前に形成し、モールド20内に既に存在する初期ドライスタック40上に単一の操作で堆積させてもよい。
【0100】
例えば、プリプレグ強化繊維の集合体60は、強化繊維プリプレグ材料のシートの形態、特にプリプレグ布地又はプリプレグ一方向性シートの形態のプリプレグ材料のスタック、BMC(バルク成形コンパウンド)、又はSMC(シート成形コンパウンド)を含む、長繊維、短繊維、又はステープル繊維のプリプレグ集合体に対応することができる。特に、HexPly(登録商標)の範囲のプリプレグ布地及びプリプレグ一方向性シートは、Hexcel Corporation(Stamford USA)から入手可能である。
【0101】
有利には、プリプレグ強化繊維の熱硬化性ポリマー集合体60は、好ましくは1cm~10cmの長さ、2mm~2cmの幅、及び0.02mm~0.50mmの厚みを有する長方形又は実質的に長方形のチップから製造することができる。熱硬化性ポリマーを含浸させたそのような一方向性繊維のチップは、特に、一方向性繊維ロービングに含浸させてから切断することによって、又は一方向性繊維を含浸させたシートを切断することによって得られる。次いで、そのようなチップを無作為に平らに置き、シートにプレスして中間マットを形成することができる。含浸一方向性繊維のチップから調製されるそのような中間マットは、例えば、Hexcel Corporation(Stamford USA)によって市販されているHexMc(登録商標)材料に対応する。一方向性繊維からなるチップが利用される場合、成形部品内で、チップを形成する一方向強化繊維は、チップが圧縮成形操作前にランダムに配置されている場合には3次元にランダムに配向され、チップが中間マットとして配置され、中間マットが積層されて圧縮成形操作を受ける場合には2次元のみにランダムに配向される。この種の材料に適した熱圧縮条件及び焼成サイクルは、例えば、さらなる詳細について参照され得る出願WO2016/207309に記載されている。
【0102】
「繊維強化プライ」は、1つ以上の層からなる材料を意味し、前記材料は、単一の特徴、又は凝集性の特徴、すなわち、様々な層が互いに接合されているという特徴を有する。繊維強化プライ50内には、強化繊維の少なくとも1つの層が存在する。そのような強化繊維層は、強化繊維で作製された布地、一方向性シート、不織布の形態であってもよい。好ましい実施形態によれば、各プライは強化繊維の一方向性シートを含み、強化繊維のこれらの様々な一方向性シートは、当分野で従来のように、ドライスタック40内で異なる方向に配向される。
【0103】
また、強化繊維層が布地であるプライを使用することもできる。
【0104】
ドライスタック40は、中間複合要素2においてドライスタック4に対応し、したがって、ドライスタック4の前駆体スタックと考えることができる。したがって、繊維強化プライ50の初期ドライスタック40は、2つの強化繊維層の間に挿入された少なくとも1つの多孔質ポリマー層を含む。
【0105】
強化繊維は、特に、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましい。繊維強化プライ50はまた、ポリマー部分を含有することができるが、初期ドライスタック40の乾燥特性を維持するために少量である。特に、繊維強化プライがポリマー部分を有する場合、ポリマー部分は、繊維強化プライの総重量の最大15%、好ましくは最大10%を占め、好ましくは繊維強化プライの総重量の0.5%~10%、より好ましくは2%~6%を占める。この場合、繊維強化プライは、特に、互いに一体である(会合している)強化繊維層及び多孔質ポリマー層を含むことができる。ポリマー部分が繊維強化材に接合されている場合、それは繊維強化プライの一部であると考えられる。ポリマー部分が繊維強化プライに接合されていない場合、それは明らかに初期ドライスタック40の一部であるが、繊維強化プライ上に堆積されているか、又は2つの繊維強化プライの間に挿入されているとも考えられる。したがって、ドライスタック40は、ドライスタック40内で、2つの連続するプライ50の間に挿入された少なくとも1つの多孔質ポリマー層、又は一方のプライ50に属し、別のプライ50と接触するように位置決めされた少なくとも1つの多孔質ポリマー層のいずれかを含む。しかしながら、最終的に、初期ドライスタック40は、繊維強化プライの総重量の最大15%、好ましくは最大10%を占め、好ましくはその総重量の0.5%~10%、より好ましくは2%~6%を占めるポリマー部分を含む。
【0106】
第1の代替的な実施形態によれば、初期ドライスタック40を形成する強化繊維プライ50は、繊維強化材、特に強化繊維の一方向性シートであり、それらの面の少なくとも一方で1つ以上の多孔質ポリマー層と結合し、前記プライ内に存在する多孔質ポリマー層は、前記プライの総重量の最大10%、好ましくは前記プライの総重量の0.5%~10%、より好ましくは前記プライの総重量の2%~6%を占め、少なくとも1つの多孔質ポリマー層が、2つの連続する繊維強化材、特に2つの連続する強化繊維の一方向性シートの間に挿入されている。
【0107】
初期ドライスタック40を形成する強化繊維プライ50が、その面の少なくとも一方において多孔質ポリマー層と結合した強化繊維布地であり、前記プライに存在する1つ以上の多孔質ポリマー層が、前記プライの総重量の最大10%、好ましくは前記プライの総重量の0.5%~10%、より好ましくは前記プライの総重量の2%~6%を占め、少なくとも1つの多孔質ポリマー層が2つの連続する布地の間に挿入されていることも可能である。
【0108】
「その面の少なくとも一方において多孔質層と結合した繊維強化材」とは、繊維強化材が、その面の一方に貼付された少なくとも1つの多孔質層に接合されていることを意味する。そのような接合は、特に、接着によって、特に多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果として行われる。特に、いくつかの繊維強化材及びいくつかの多孔質ポリマー層を含むスタックの場合、この接合を、縫製又は編成のタイプの機械的接合によって、又は任意の他の物理的手段(針接合など)によって補う、又は置き換えることも可能である。
【0109】
特に、多孔質ポリマー層は不織布である。用語「不織布」及び同等の用語「ベール」は、従来、連続的又は短くランダムに配置された繊維の集合体を意味する。これらの不織布又はベールは、例えば、当業者に周知の、乾式プロセス(「ドライレイド(Drylaid)」)、湿式プロセス(「ウェットレイド(Wetlaid)」)、溶融(「スパンレイド(Spunlaid)」)、例えば押出(「スパンボンド(Spunbond)」)、押出ブロー成形(「メルトブロウン(Meltblown)」)、溶融噴霧(「繊維化スプレーアプリケータ」)、又は溶媒紡糸(「エレクトロスピニング(electrospinning)」、「フラッシュスピニング(Flashspinning)」、「フォーススピニング(Forcespinning)」)によって製造することができる。特に、不織布を形成する繊維は、0.5μm~70μmの範囲、好ましくは0.5μm~20μmの範囲の平均直径を有する。不織布は、短繊維又は好ましくは連続繊維から形成することができる。短繊維の不織布の場合、繊維は、例えば、1mm~100mmの長さを有することができる。不織布は、ランダムで好ましくは等方性の被覆率を提供する。
【0110】
有利には、初期ドライスタック40に存在する不織布は、0.2g/m~20g/mの範囲の単位面積当たりの重量を有する。本発明による強化材料中の不織布の厚みは、繊維強化材との結合の性質に基づいて変化する場合がある。好ましくは、初期ドライスタック40に存在する不織布又は不織布のそれぞれは、熱及び圧力を加えることによって結合が達成される場合、不織布のホットタック特性を利用するために、繊維強化材と結合した後に0.5μm~50μm、好ましくは3μm~35μmの厚みを有する。結合が、縫製、編成、又は針接合などの機械的手段によって達成される場合、不織布の厚みは、50μmより大きくてもよく、特に50μm~200μmの範囲であってもよい。そのような不織布の特性は、出願WO2010/046609に記載されている方法によって測定することができる。
【0111】
粉体又はポリマーベールを有するドライ布地は、HexcelからHexForce(登録商標)の範囲で入手可能であり、G0926粉体布地及び48302ベール布地さえ存在する。
【0112】
好ましくは、強化繊維プライ50としての能力において、繊維強化材に対応する強化繊維の一方向性シートからなるものが使用され、本発明の文脈で提供されるように、その面の少なくとも一方において多孔質層と結合する。対称的な材料を有するために、繊維強化材、特に強化繊維の一方向性シートは、本発明の文脈内で提供されるように、その両面で多孔質層と結合し、強化繊維の一方向性シートの両面に存在する多孔質層は、好ましくは同一である。本発明の文脈において、多孔質層は、有利には、熱凝着特性を有し、繊維強化材と多孔質層との結合は、多孔質層のホットタック特性の結果として達成され、それにより、単一のプライを形成する。これらのホットタック特性は、多孔質層を構成するポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマー、若しくは熱可塑性部分を含むポリマー、又はそのようなポリマーの混合物に起因する。単一の強化繊維プライ50が事前に積層され、モールド内に位置決めされる前にプリフォームの形態で結合する場合、この凝着特性はまた、このようにして得られたドライスタックに凝集特性を与える。
【0113】
そのような強化繊維プライ50は、WO2010/046609、WO2010/061114、US2008/7435693、US2010/003881、EP1125728、WO2007/015706、WO2006/121961及びUS6503856に記載されており、これらはさらなる詳細について参照することができる。これらの文献のように、一方向性シートを構成する構成強化糸は、無撚りであってもよい。一方向性シートの形成のために撚り強化糸、有利には3~15ターン/m、好ましくは6~12ターン/mの撚りで個々に撚り合わせた糸を使用することができる。
【0114】
第2の代替的な実施形態では、初期ドライスタック40を形成する強化繊維プライ50は、異なる方向に配向され、縫製又は編成によって接合されたいくつかの強化繊維の一方向性層を含む。特に、強化繊維プライ50は、異なる方向に配向された一方向強化繊維層のスタックからなり、好ましくは前述のように、2つの強化繊維の一方向性シートの間に挿入された、又はさらにはスタックの表面上の少なくとも1つの多孔質ポリマー層を有する。この第2の変形形態の第1の実施形態によれば、そのような繊維強化プライは、シーケンス(CM/R)に対応するスタックから作製することができ、CMは、本発明の文脈内で提供されるような多孔質ポリマー層を示し、Rは、本発明の文脈で説明されるような繊維強化材を示し、nは、整数、特に1、2又は3を示し、好ましくはすべてのCM層は、同程度又はさらには同一の重量を有する。
【0115】
この第2の代替的な実施形態の第2の実施形態では、そのような繊維強化プライは、(CM/R)/CMシーケンスに対応するスタックから作製することができ、CMは、本発明の文脈で提供されるような多孔質ポリマー層を示し、Rは、本発明の文脈で説明されるような繊維強化材を示し、nは、整数、特に1、2又は3を示し、好ましくはすべての多孔質CM層は、同程度若しくはさらには同一の重量を有するか、又は外側多孔質層は、内側多孔質ポリマー層のそれぞれの重量の半分に等しい重量を有する。
【0116】
特に、そのようなスタックでは、繊維強化材Rは、強化繊維、特に炭素繊維の一方向性シートであり、好ましくは同一の重量を有する。そのような材料は、NCF(ノンクリンプ布地)として説明される。従来、NCF分野では、強化繊維の一方向性層を互いに、及び存在する多孔質層と結合させることは、縫製又は編成によって達成される。当然のことながら、この結合を、縫製又は編成によって、好ましくは熱可塑性ポリマー、若しくは熱可塑性部分を含むポリマー、若しくはそのようなポリマーの混合物で作製される多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果として達成される凝着によって、又は物理的接合タイプの任意の他の手段(例えば、針接合)によって、置き換える、又はさらには補うための対策がなされてもよい。
【0117】
特に、NCFの場合、本発明による繊維強化プライは、角度0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°から選択される様々な配向で延びる一方向性シートから構成される。すべてのシート又は一部のみが異なる配向を有していてもよい。一例として、本発明による繊維強化プライは、以下のスタックで作製することができる:0°/90°、90°/0°、45°/135°、135/45°、90°/0°/90°、0°/90°/0°、135°/45°/135°、45°/135°/45°、0°/45°/90°、90°/45°/0°、45°/0°/90°、90°/0°/45°、0°/135°/90°、90°/135°/0°、135°/0°/90°、90°/0°/135°、45°/0°/135°、135°/0°/45°、45°/135°/0°、0°/135°/45°、45°/135°/90°、90°/135°/45°、135°/45°/0°、0°/45°/135°、135°/45°/90°、90°/45°/135°、60°/0°/120°、120°/0°/60°、30°/0°/150°、150°/0°/30°、135°/0°/45°/90°、90°/45°/0°/135°、45°/135°/0°/90°、90°/0°/135°/45°、0°/45°/135°/90°、90°/135°/45°/90°、90°/135°/0°/45°、45°/0°/135°/90°、ここで、0°は、本発明による強化材料を製造するための機械の進行方向に対応する。縫製又は編成によって実施される結合の場合、縫製又は編成糸の全般的な方向もまた、全般に0°に対応する。そのような多軸の製造は周知であり、例えば、Tsu Wei Chou&Franck K.Koによる書籍「Textile Structural Composites,Composite Materials Series Volume 3」、ISBN 0-444-42992-1、Elsevier Science Publishers B.V.、1989の第5章、3.3段落、又は多軸繊維シートの製造のためのプロセス及び装置を記載する特許FR2761380に記載されているような従来の技術を使用する。特に、一方向性シートは、多軸が形成される時点の前に形成されてもよく、又はインラインで適用されてもよい。個々の一方向性シート間の縫製又は編成の接合は、互いに平行な線で延びる縫製又は編成ステッチによって行うことができる。特に、縫製又は編成ステッチは、好ましくは同一の、1mm~20mm、好ましくは2mm~12mmのピッチで同一線内で離間される。同様に、2つの連続する縫製又は編成線は、例えば、2mm~50mm、好ましくは5mm~15mmだけ互いに離間している。好ましくは、互いに平行な一連の線のすべての連続する縫製線は、等間隔でなければならない。本発明の文脈において特に適切な縫製糸を構成する材料の例の中には、ガラス、炭素、玄武岩、シリカ、熱可塑性糸、特にポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、ポリケトン、ポリアミド、及びそれらの混合物の中から選択されるポリマーで作製された熱可塑性糸がある。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸及びそれらの共重合体が使用できるポリエステルの例である。糸は、例えば、EN ISO 2060に従って測定して、5dTex~150dTexの範囲、特に30dTex未満の力価を有する。NCFタイプの材料で使用され得る特定の構造に関するさらなる詳細は、文献EP2547816又はWO2010/067003に特に見出すことができる。
【0118】
NCFの例は、文献US8,361,262、US9,371,604、WO2011/113751及びEP第2491175に記載されており、これらはさらなる詳細について参照することができる。ここでも、構成強化糸は、無撚りであってもよい。一方向性シートの形成のために撚り強化糸、有利には3~15ターン/m、好ましくは6~12ターン/mの撚りで個々に撚り合わせた糸を使用することができる。
【0119】
個々の構成要素がモールド内に位置決めされると、当業者に周知の任意の適切な技術を使用して、熱間圧縮成形操作bが実行される。この操作の目的は、まず、成形部分300を形成して固化(圧密化)し、その後冷却することである。成形部分300について得られた形状は、最終成形部品100におけるその最終形状である所望の形状に対応する。したがって、モールド80の形状はそれに応じて調整される。圧縮成形は、圧力と熱を加えることによって実行される。従来、温度、圧力、熱サイクル及び硬化時間は、プリプレグ強化繊維の集合体60中に存在する熱硬化性ポリマーの量及び特性の関数として当業者によって選択される。一例として、使用可能なプロセス及び熱硬化性ポリマーに関するすべての必要な詳細について、出願WO2016/207309を参照することができる。特に、プリプレグ強化繊維の集合体中に存在する熱硬化性ポリマーは、エポキシ、フェノール、ビスマレイミド、若しくはシアナート樹脂、又はそのような樹脂の混合物であり、エポキシ樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、架橋/硬化を達成するのに適した硬化剤を含有する。特に、熱硬化性ポリマーは、プリプレグ強化繊維の集合体の少なくとも25重量%、好ましくは強化繊維のプリプレグ集合体の25重量%~55重量%を占める。
【0120】
典型的には、圧縮成形は、例えば、100℃~400℃の範囲の温度で、0.2MPa~2000MPaの範囲の圧力で、15秒~2時間の期間を含めて実行される。これらのパラメータの選択は、特に熱硬化性ポリマーの特性及びその量に従って当業者によって変更することができ、量はモールドのサイズの関数である。
【0121】
初期ドライスタック40が熱可塑性部分を含む場合、圧縮成形のステップbも熱可塑性部分に影響を及ぼす。特に、存在する多孔質ポリマー層の溶融又は架橋さえも引き起こすことができる。それにもかかわらず、そのような変形は、それによって得られるドライスタック400内がポリマー部分に占める量の少なさを考えると、複合部品の製造に必要な射出又は注入による樹脂のその後の拡散を決して妨げない。
【0122】
圧縮成形のステップbはまた、冷却後に、結果として得られるドライスタック400と成形部分300との間の接合、及び成形中と同様の中間複合要素200の形成を可能にし、熱硬化性ポリマーはまた、ドライスタック400との界面600で拡散し、冷却後に硬化し、したがって界面に2つの部品を固着する。実際、圧力及び熱を加えた後、圧縮成形操作中、ポリマーはドライスタック400の厚みに部分的に浸透する。さらに、図3に示すように、プリプレグ強化繊維の集合体60が一方向性繊維のチップを含む短繊維を含む場合、強化繊維及びプリプレグ強化繊維の集合体60のポリマーのクリープが生じることがあり得、したがって、得られた成形部分とドライスタックとの間の接触面積600は、プリプレグ強化繊維の集合体60が堆積したドライスタック40の表面に対応する初期接触面積70よりも大きくなる。このクリープはまた、プリプレグ強化繊維の集合体60がモールド80の内壁に完全に適合し、それによって複雑な形状を有する成形部分300を得ることを可能にする。
【0123】
冷却ステップcは、通常、モールドの外部で実行される。しかしながら、通常は、モールドに加えられる圧力を維持することによって、モールド内で冷却を実行することもできる。
【0124】
本発明の利点の1つは、圧縮成形のステップbにより、界面600から、プリプレグ強化繊維の集合体60中に存在する熱硬化性ポリマーの一部が初期ドライスタック40にも拡散することである。したがって、圧縮成形のステップbの終わりに、樹脂が熱硬化状態にあるとき、熱硬化性樹脂は、成形部分300との界面600でドライスタック400の厚みに部分的に浸透し、それにより、ドライスタック400と得られた成形部分300との間の接合を強化する。特に、そのような拡散は、界面600から少なくとも2mmの厚みにわたって起こる。一般に、初期ドライスタック40は、4~20の強化繊維プライ、好ましくは8~16の強化繊維プライ50を含み、熱硬化性ポリマーは、ドライスタックの少なくとも2つの強化繊維プライ50、特に、成形操作の終了時に得られる中間複合要素200に存在するドライスタック400(強化繊維層を含む)の少なくとも4つの強化繊維プライに浸透する。これは、図7に示す、本発明による中間強化材料の断面図である、ZEISS Axio Imager M2m光学顕微鏡によって撮影された写真から明らかである。境界線aは、成形部分(上)とドライスタック(下)との間の界面に対応する。封入用樹脂は、熱硬化性ポリマーが前もって含浸したドライスタックの領域を強調することができるように、ドライスタックに添加されている。モールドに入れられたサンプルの写真を撮影し、次いで、それを適所に保持するために封入用樹脂で覆った。Struers Tegramin-25によって実行される自動研磨シーケンスは、顕微鏡観察のための平坦で傷のない表面を提供する。境界線bは、封入用樹脂c/熱硬化性ポリマーを含浸させたドライスタックの領域界面に対応する。線bは線aの十分下にあり、これらの2本の線の間の距離は、成形部品にも存在する熱硬化性ポリマーが浸透したドライスタックの厚みに対応することが分かる。それにもかかわらず、成形部分からのポリマーが浸透していない強化繊維プライが、ドライスタック内に残る。特に、中間複合要素200に存在するドライスタック400において、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの強化繊維プライは、成形部品300から浸透した熱硬化性ポリマーを含有しない。
【0125】
プリプレグ強化繊維の集合体60のドライスタックへの凝着、及び最後には、得られる最終的な中間複合要素200を構成する2つの部品間の接合を促進するために、このプロセスに特定の変更を加えてもよい。特に、熱硬化性ポリマーを予め含浸させた強化繊維の集合体60が貼付される表面70の領域に、切り欠き又は穿孔を作製してもよい。例として、そのような切り欠き又は穿孔は、2mm~150mmの最大寸法を有することができる。
【0126】
ステップbの終わりに、中間複合要素を脱型し、直接プロセスによって複合部品を製造するのに適した別の装置に移送することができる。
【0127】
複合部品の製造のためのプロセス及び複合部品
図4に示す第1の変形形態によれば、本発明は、以下のステップ:
A1-本発明による中間複合要素200、又は本発明にて説明される中間複合要素の製造のためのプロセスに従って得られた中間複合要素を提供するステップと、
A2-前記中間複合要素200を、追加のドライスタック700として知られる強化繊維プライのドライスタックの表面の少なくとも一部分に貼付し、それによって、中間複合要素200のドライスタック400を追加のドライスタック700に当接させるステップと、
A3-熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はそのような樹脂の混合物を、中間複合要素200のドライスタック400及び追加のドライスタック700の両方に注入又は射出し、前記注入又は射出に続いて冷却して、所望の最終複合部品100を得るステップと
を含む、複合部品100の製造のためのプロセスに関する。
樹脂が熱硬化性樹脂であるか、又は熱硬化性樹脂を含む場合、注入又は射出は、熱硬化性樹脂の架橋をもたらす条件下で実行され、これは従来、適切な硬化サイクルによって達成される。
【0128】
本発明の文脈において、追加のドライスタック700上に位置決めされたドライスタック400の部分は、熱硬化性ポリマーを含有せず、したがって、それが貼付される追加のドライスタックの表面に適合するという点で一定の柔軟性を有する。ステップA3において、樹脂は、次いで、追加のドライスタック700内への拡散に加えて、そのような拡散に利用可能なドライスタック400の部分内に拡散される。温度プロセスサイクルがステップA3で実施され、冷却後、集合体及び最終部品100の固化(圧密化)がもたらされる。
【0129】
ここでも、複合部品の製造のために、場合によっては混合された熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂、又は特に熱硬化性樹脂と組み合わせる必要があるため、追加のドライスタック700は「ドライ」と説明される。したがって、追加のドライスタック700はポリマー部分を含んでもよいが、このポリマー部分は、追加のドライスタック700の総重量の最大15%、好ましくは最大10%を占め、好ましくは追加のドライスタック700の総重量の0.5%~10%、より好ましくは2%~6%を占める。ポリマー部分は、特に、繊維強化プライに埋め込まれた1つ以上の層の形態、2つの強化繊維プライの間に挿入された、及び/若しくは追加のドライスタック700の表面に位置決めされた形態、又は縫製糸若しくは編成糸の形態であってもよい。特に、ドライスタック700は、2つの連続する繊維強化プライの間に挿入された少なくとも1つの多孔質ポリマー層、又はドライスタック700内の別の繊維強化プライに対向して位置決めされた少なくとも1つのポリマー多孔質層を含む繊維強化プライのいずれかを含む。
【0130】
中間複合要素200と追加のドライスタック700との間の界面900は、ドライスタック400を介して作製される。ドライスタックのこの部分は、成形部分から、追加のドライスタック700に貼付されるドライスタックの厚みへと浸透した熱硬化性ポリマーを含まない。したがって、界面900には、射出/注入された樹脂がステップA3の間に浸透及び硬化し得る2つの乾燥材料間の界面がある。
【0131】
初期ドライスタック40について上述した任意の繊維強化プライは、追加のドライスタック700に適している。追加のドライスタック700を構成する強化繊維プライ800は、中間複合要素200を形成するために使用される初期ドライスタック40を構成するものと構造的に同一であってもよく、又は構造的に異なっていてもよい。例えば、追加のドライスタック700にNCFタイプのプライを利用することが可能であるが、中間複合要素200のドライスタック400は、ポリマーインターレイヤによってのみ接合された布地又は一方向性シートから構成される。
【0132】
この第1の変形形態は、直接及び間接プロセスの両方が組み合わせられた利点を備えるので特に有利である。複雑な成形部分は、間接的なプロセスによって作製され、その後、より単純であるがより大きな部品と結合され、次いで直接プロセスによって固化(圧密化)する。中間複合要素200のドライスタック400と成形部分300との間の中間接合は、2つの部分の間に特に強い接合を提供する。特に、リブ又は突起を形成するために使用される1つ以上の中間複合要素を、最終複合部品の大部分を形成するために追加のドライスタックの表面に貼付してもよい。
【0133】
強化繊維プライの追加のドライスタック700は、プライを個別に堆積させることによって、直接プロセスに適合した機器内で直接形成することが可能であり、又は、スタックは事前に形成され、次いで樹脂10が注入又は射出される装置内で単一の操作で堆積される。第2の場合では、追加のドライスタック700は、最終複合部品100の所望の形状に調整されたプリフォームの形態であってもよい。
【0134】
プライ設置及びプリフォーム製造のためのプロセスは、当業者に周知である。
【0135】
図6A図6Bはそのような場合を示す。図6Aは、追加のドライスタック702、より正確には、中間複合要素202を貼付させる表面を有するこの追加のドライスタックの一部を示す。追加のドライスタック702は予め形成され、一連のリブ710を有する。中間複合要素202に関しては、複雑な形状を有し、座部210と把持面220とを含む。座部210はまた、リブ710を挿入することができる一連のレール230を有する。図6Bに示すように、各々に貼付された2つの要素の集合体への樹脂の注入/射出後に得られる最終複合部品は、特に航空機着陸装置の構築に使用することができる。
【0136】
図6Cは、図6Aの中間複合要素202の一部を拡大して示し、座部210中の成形部分310及びドライスタック410を示す。成形部分310から延びるドライスタック410の領域420には、成形中に拡散し、成形部分から広がってドライスタック410に部分的に含浸した熱硬化性ポリマーの浸透がある。スタック410の残りの部分は、乾燥しており、熱硬化性ポリマーを含まず、造形された追加のドライスタック702の表面に、特にリブ710の領域に適合するためにより大きな可撓性を有する。
【0137】
従来、複合部品を製造するための直接プロセスでは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物がドライスタックに射出又は注入される。
【0138】
本発明の文脈において、熱可塑性部分が追加のドライスタック700に存在する多孔質ポリマー層に存在する場合、樹脂の注入又は射出の前に、存在する少なくとも1つの多孔質ポリマー層のホットタック特性の結果として堆積又は造形が実施されてもよい。有利には、この場合、本プロセスは、追加のドライスタック700を構成する事前ステップと、使用される強化繊維プライを堆積又は造形して前記スタックを形成するステップとを含み、ここで、多孔質ポリマー層は、本発明の文脈で定義される多孔質層の少なくとも部分的な溶融をもたらす温度まで、特に80℃~130℃の範囲、好ましくは80℃~120℃の範囲の温度まで加熱される。
【0139】
樹脂の注入又は射出のために、又は平坦なプリフォーム、若しくはさらには所望の三次元形状のプリフォームの製造のために、その後使用される機器内で直接スタックを形成するために使用することができる堆積プロセスは、当業者に周知である。
【0140】
図5に示される第2の代替的な実施形態によると、好ましくはないが、本発明は、以下のステップ:
B1-本発明による、又は本発明の文脈で説明されたプロセスによって得られた中間複合部品201を提供するステップと、
B2-熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂10、又はそのような樹脂の混合物を、熱硬化性樹脂が使用される場合は架橋をもたらす条件下で、中間複合要素のドライスタックに注入又は射出し、続いて冷却して所望の最終複合部品101を得るステップと
を含む、複合101部品の製造のためのプロセスに関する。
【0141】
この場合、成形部分301のポリマーマトリックスを形成する熱硬化性ポリマーがドライスタック401の厚みに部分的に浸透することによって互いに接合された成形部分301及びドライスタック401からなる中間複合要素201のみが直接プロセスに供される。図示の例では、樹脂10は、真空バッグタイプの装置30を使用して射出される。次いで、樹脂は、そのような拡散に利用可能なドライスタック401の部分に拡散される。
【0142】
複合部品の製造に利用されるプロセスに関係なく、直接プロセスによる複合部品の製造は、最終ステップとして、存在するドライスタック内の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物の注入又は射出による拡散ステップと、その後の、圧力下の温度の規定サイクルに従って重合/架橋ステップによって所望の部品を固化(圧密化)するステップと、冷却ステップとを伴う。本発明に関して説明したすべての代替的な実施形態にさらに適合した特定の実施形態によれば、拡散、固化及び冷却工程は、例えば真空バッグ注入技術によって、オープンモールド又はクローズドモールド、特にオープンモールドで実行される。
【0143】
特に、拡散樹脂は、熱可塑性型、又は好ましくは熱硬化性型であってもよく、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物からなってもよい。熱可塑性樹脂の例には、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメチルメタクリラート、芳香族ポリエーテルなどがある。使用することができる熱硬化性樹脂は、特に、以下:エポキシド、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、ベンゾオキサジン、シアナートエステル、及びそれらの混合物の中から選択される。そのような樹脂はまた、選択された熱硬化性ポリマーと共に使用するための当業者に周知の1種以上の硬化剤を含んでもよい。好ましくは、本発明は、注入又は射出ステップ中に熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂を用いて実施される。ポリマーマトリックスが既に架橋されている成形部分との機械的接合が既に存在する。しかしながら、成形部品に存在するものと同じ化学族に属する注入又は射出された樹脂、又はドライスタックに存在するポリマー部分さえも使用することが好ましい場合がある。これにより、同じタイプの構造特性を得ることが容易になる。
【0144】
本発明は、好ましくは、複合部品の製造のために、減圧下、特に大気圧未満、特に100kPa未満、好ましくは10kPa~100kPaの圧力下での熱硬化性樹脂の注入を利用する。注入は、好ましくは、例えば真空バッグ注入技術によって、オープンモールドで実行される。
【0145】
複合部品は、熱処理工程後に最終的に得られる。特に、複合部品は、一般に、これらのポリマーの供給業者によって推奨され、当業者に公知の熱処理を実行することによって、関与するポリマーの従来の固化(圧密化)サイクルによって得られる。所望の複合部品のこの固化ステップは、所定の温度及び圧力サイクルに従って重合/架橋し、続いて冷却することによって実施される。熱硬化性樹脂の場合、通常、樹脂が硬化する前にゲル化ステップがある。プロセスサイクル中に加えられる圧力は、減圧下で注入する場合は低く、RTMモールドに射出する場合はより高い。
【0146】
本発明の文脈において、中間複合部品は第1の圧縮成形プロセスによって製造され、最終複合部品は樹脂注入/射出によって製造される。したがって、異なる機器を必要とするこれら2つの製造ステップは、同じ製造現場で実行してもよく、単一の製造ラインに統合してもよく、又は技術的制約及び利用可能なリソースに基づいて2つの異なる現場で実行してもよい。
【0147】
このようにして得られた複合部品は、本発明の全体を構成する部品である。図2は、そのような複合部品1を概略的に示す。この複合部品は、成形部分3と、直接プロセスの実施から生じる、熱可塑性マトリックス又は熱硬化性マトリックス(図示せず)を含浸させた強化繊維層8を含む部分7とを含む。
【0148】
成形部分との界面9にて、成形部分を形成する熱硬化性ポリマーの浸透が存在する。そのような部品は、図4に説明されるプロセスに従って、図1に示す中間複合要素2から得ることが可能であり、この場合、部分7を形成する強化繊維層8の一部は、ドライスタックを形成した強化繊維層5に対応する。
【0149】
本発明は、航空、自動車、宇宙、防衛、産業、又はエネルギー分野における多種多様な複合部品の製造に適している。そのような部品の例は、翼パネル、胴体、着陸装置ドア、可動パネル、ドア、翼ボックス、ナセル、胴体パネル、垂直又は水平テール、自己補強パネル、床、カウリング、単胴シャーシなどである。
【実施例
【0150】

以下に説明される例は、本発明を例示するのに役立つが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0151】
様々な中間複合要素を製造した。成形部品の製造には、Hexcel Corporation(Stamford USA)によって市販されているHexMC(登録商標)材料、又はHexPly(登録商標)M81と呼ばれる、熱硬化性樹脂を予め含浸させた布地のいずれかを使用した。HexMC(登録商標)は、複雑な形状の部品の製造に使用される高性能の圧縮成形材料である。これは長尺の炭素繊維(50mm)から作製され、38重量%の熱硬化性樹脂を含む。HexPly(登録商標)M81は、42重量%のエポキシ樹脂を含浸させた200g/mのプリプレグ布地である。
【0152】
ドライスタックの製造のために、中間複合材料中に存在するものに対応するか、又は最終複合部品を製造するために使用される追加のドライスタックに対応するかどうかにかかわらず、炭素繊維の一方向性層であるHexcel製IMA 12K繊維は、その両面において、Protechnic製の4g/mコポリアミドベール型1R8ポリマーバインダーと結合した。一方向性シートとベールとを結合させることは、ベールのホットタック特性の結果として達成された。ポリマーバインダーは、出願WO2010/046609に記載されているように炭素と結合する。以下では、この一方向性ベール/一方向性シートの結合を、「ドライプライ」(又は以下の表1及び表2では「プライ」)と称する。そのようなドライプライは、特に、出願EP2342073に記載されている。
【0153】
射出成形には、Hexcel Corporation(Stamford USA)によって参照名HexFlow(登録商標)RTM6で市販されている一次及び二次航空構造に使用するためのエポキシ樹脂を使用した。
【0154】
以下の表1及び表2は、製造された、本発明による様々な中間複合材料及び部品を要約する。
【表1】

【表2】
【0155】
HexMC(登録商標)の3枚の180mm×180mmプライを、ダイカットプレスを使用して幅460mmのロールから切断し、180℃のオーブンに10分間入れ、次いで室温(22℃)に冷却した。乾燥した200mm×200mmプライ及びHexMC(登録商標)又はHexPly(登録商標)のプライを重ね、次いで180℃に予熱したモールドに導入した。プリプレグ集合体とドライスタックとの間の界面は、ドライスタックの上面の80%を占めていた。プレスを使用してモールドを閉じ、100barの圧力を180℃で20分間加えた。モールドを事前に冷却することなく、中間複合要素を回収した。モールドの外側で冷却を行った。
【0156】
樹脂の封入後、ZEISS Axio Imager M2m光学顕微鏡を使用して、HexMC(登録商標)で得られた成形部分とドライスタックとの界面において、得られた中間複合要素を観察した。得られた中間複合要素のサンプルをモールドに入れ、次いで封入用樹脂で覆って所定の位置に保持して、画像を撮影した。Struers Tegramin-25を使用して自動研磨シーケンスを実行し、顕微鏡観察のための平坦で傷のない表面を得た。これらの観察は、HexMC(登録商標)によって提供された熱硬化性ポリマーの界面でのドライスタックへの浸透を明確に実証した。この浸透は、表1に示す中間複合要素2の場合の界面で撮影された写真である図7に見ることができる。図7の観察は、浸透が2mmの深さまで起こり、ドライスタックの3~5プライに達することを示している。
【0157】
それによって得られた中間複合要素を、単独のモールド(複合部品I)又は追加のドライスタック(複合部品II~IV)のいずれかに設置して、表2による部品を形成した。HexcelによってHexFlow RTM6として市販されているエポキシ樹脂を、真空注入システムを備えたモールドに1bar下、80℃で注入し、120℃の温度に保持した。次いで、モールドをエポキシ樹脂で満たし、次いで、真空バッグ注入システムをモールド内に設置した。プリフォームが充填され、樹脂がモールドから出てきたら、出口パイプを閉じ、硬化サイクルを開始した(3℃/分で180℃まで上昇させ、続いて180℃で2時間、後硬化させ、5℃/分で冷却する)。
【0158】
次いで、試験片を、ASTM D 2344に従って樹脂マトリックス中の成形部分/ドライスタック界面に対応する平面で剪断試験を実施するための適切な寸法に切断した。試験片を、試験片の厚みの4倍に等しい距離で離間した2つの支持点(先端半径1.5mm)上に位置決めし、パンチ(先端半径1.5mm)を2つの支持点の中点で試験片の反対側に設置した。構成の関数として41MPa~56MPaの値が得られ、これは完全に満足できるものである。部品I及びIIの剪断強度データに有意差は見られず、これは、追加のドライスタックを追加して直接プロセスを実行しても、得られる部品の層間剪断強度に影響を及ぼさないことを実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
【国際調査報告】