(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】プラスチック製ツインジェットピストン冷却ノズル
(51)【国際特許分類】
F01P 3/08 20060101AFI20230523BHJP
F01M 1/08 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
F01P3/08 B
F01M1/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564433
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 FR2021050692
(87)【国際公開番号】W WO2021214411
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514062530
【氏名又は名称】ボンタズ・サントル・エール・アンド・デ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・パスカル・ペロト
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・シクスト
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・ソラン
【テーマコード(参考)】
3G313
【Fターム(参考)】
3G313BA02
3G313CA01
3G313CA04
3G313CA06
3G313CA25
3G313FA02
(57)【要約】
特にエンジンピストン冷却流体用の流体ノズルであって、流体排出用の排出ポート(17a、17b)を備えた排出端部を形成する自由端部(15.2)を備えた導管構造(15)に接続された中空供給体(11)を含む。 供給本体、および導管構造は、単一のプラスチック材料ブロックを形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給本体(11)を有する流体ノズル部材であって、前記供給本体(11)は、取付面(11b)および前記取付面の反対側の支持面(11a)と、前記取付面および前記支持面の間の軸方向通路(12)とを含み、前記軸方向通路(12)は、前記供給本体に設けられた横方向開口部(13)に連通し、前記ノズルは、前記横方向開口部(13)に連通する導管構造(15)をさらに含み、前記導管構造は、第1の端部によって前記供給本体に接続され、前記導管構造は、前記供給本体に対して横方向に延在し、かつ流体を排出するための1または複数の排出ポート(17a,17b)が取り付けられた排出端部を形成する自由端部(15.2)を含み、
前記供給本体および前記導管構造は、プラスチック材料またはポリマー材料のブロックで形成されている、流体ノズル部材。
【請求項2】
前記軸方向通路(12)内に収容された金属インサート(30)をさらに備え、前記金属インサートは、前記供給本体の内壁(121)に当接する外面を含み、前記金属インサートには、前記横方向開口部(13)と連通する貫通する側孔(32)が設けられている、請求項1に記載の流体ノズル部材。
【請求項3】
前記金属インサート(30)には、前記本体の位置決め部材、特に前記内壁の平坦なゾーン(121a)に配置されるよう構成された、特に平坦な、位置決め構造(31)が取り付けられている、請求項2に記載の流体ノズル部材。
【請求項4】
金属材料および/または前記プラスチック材料よりも高い剛性で作られた取付プレート(50)をさらに備え、前記取付プレート(50)は、前記供給本体(11)の前記取付面(11b)に組付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の流体ノズル部材。
【請求項5】
前記導管構造(15)は、前記横方向開口部(13)に連通する一端部、および複数の流体排出ポート(17a,17b)に連通する他端部を有する流体チャネル(16)を含み、前記ポート(17a,17b)は、異なる向きを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の流体ノズル部材。
【請求項6】
前記1または複数の流体排出ポート(17a,17b)が多角形の横断面、または閉じた輪郭を形成する一連の湾曲部分の形の断面を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の流体ノズル部材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の流体ノズル部材と、
前記ノズルの前記供給本体(11)を流体供給装置に取り付けるための少なくとも1つの取付部材(20)と、
を備える流体ノズルアセンブリ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の流体ノズル部材と、
前記導管構造(15)への流体アクセスを調整するための調整部材(25)と、を備える、流体ノズル。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の流体ノズル部材と、
前記軸方向通路(12)内に収容されたフラップネジ(20)と、
を備える、流体ノズル。
【請求項10】
前記フラップネジ(20)には、金属材料および/または前記プラスチック材料よりも高い剛性で作られた取付プレート(50)に当接するよう構成された肩部(223)が設けられ、前記取付プレート(50)は、前記供給本体(11)の前記取付面(11b)に組付けられる、請求項9に記載の流体ノズル。
【請求項11】
前記フラップネジ(20)のヘッド(21)および前記供給本体(11)の前記支持面(11a)の間に介在するシール(60)をさらに備える、請求項9または10に記載の流体ノズル。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の流体ノズルを備える内燃機関のピストン冷却装置。
【請求項13】
エンジンブロックおよび前記エンジンブロックに摺動可能に取り付けられたピストンと、
請求項12に記載の冷却装置と、
を含む内燃機関。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の流体ノズル部材の製造方法であって、前記プラスチック材料のブロックの成型ステップ、特に射出成型ステップを備える、方法。
【請求項15】
成型ステップは、前記取付面に接触する金属プレート(50)に前記プラスチックブロックをオーバーモールドするように実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記導管構造は、金型(180)、シャンク(182)、および1または複数のシャフト(181a,181b)を備える成型装置を使用して、成型ステップ中に同時に形成されるチャネル(16)および排出ポート(17a,17b)を備える、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にエンジン用の冷却装置における流体ノズルの分野に関し、改良されたノズルと、そのようなノズルを製造する方法とを提供する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のピストン冷却ノズルにより、オイルなどの冷却流体をピストンの少なくとも1つの適切なゾーンに噴霧することができる。
【0003】
ピストン冷却ノズルは、通常、クランクケースに取り付けられ、冷却流体供給ポートと連通するインサートによって形成される。冷却ノズルの位置は、ピストントップの正確なゾーンまたはピストンギャラリ入口に向けられた冷却流体のジェットを提供するように正確に決定されている。
【0004】
出願人によって実施されたピストン冷却ノズルが
図1A、
図1B、
図1Cに示されている(2つの別個の平行な断面からの部品の図を示している)。
【0005】
それは、中空の金属供給本体1と、金属チューブ2とからなり、金属チューブ2は、典型的には鋼で作られ、中空体1に嵌合し、中空体1内に作られた流体通路4と連通する。チューブ2は、金属エンドキャップ3で終端する。エンドキャップ3には、油抜き用の穴6がある。
【0006】
供給本体1、チューブ2、およびエンドキャップ3は通常、鋼でできているため、機械加工が難しく、重量の問題が生じる可能性がある。
【0007】
通常、チューブ2は、はんだ付けによって中空体1に組み付けられる。エンドキャップ3も焼きばめされ、金属管2にハンダ付けで組み付けられる。
【0008】
ノズルのサイズと動作の均一性を確保するための組み立ての再現性には問題がある。また、はんだ付けによる組み立ては、高価になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の欠点の少なくとも1つに関して改善された新しいノズル構造を作るという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、流体ノズル部品または部材、特に冷却流体ノズルを提供し、前記部品または部材は、いわゆる「取付」面および取付面の反対側のいわゆる「支持」面、ならびに前記取付面と前記支持面との間の軸方向通路を備えた供給本体を含み、前記軸方向通路は、前記供給本体に設けられた横方向開口部と連通し、前記部材または前記部品は、前記横方向開口部と連通する導管構造をさらに含み、導管構造は、第1の端部によって前記供給本体に接続され、前記導管構造は、前記供給本体に対して横方向に延在し、前記流体を排出するための1つまたは複数の排出ポートが取り付けられた排出端を形成する自由端を含み、前記供給本体および前記導管構造は、前記プラスチック材料および/またはポリマーに基づく単一のブロックで形成される。
【0011】
このような部品は、機械的に溶接されたノズルと比較して、重量とコストが削減される。ノズルの組立部品点数を削減することができる。
【0012】
供給本体と導管構造をプラスチック材料の単一ブロックで作ることにより、特に正しい方向を制御する必要があるチューブに組み立てられ、ろう付けされたエンドキャップによって排出が保証されるノズルと比較して、部品の正確な寸法と、部品内の流体排出ポートの正確な位置決めを得ることができる。
【0013】
通常、流体ノズルは、エンジン、特に内燃エンジン用の冷却ノズルである。
【0014】
有利には、ノズルは、前記供給本体を流体供給装置に取り付けるように構成された少なくとも1つの取付部材をさらに備えることができる。
【0015】
ノズルには、バルブおよび/またはフラップなど、前記導管構造内の流体アクセスを調整するための調整部材を設けることができる。
【0016】
特に有利には、取付部材および調節部材は、前記軸方向通路に収容されたフラップネジによって達成される。
【0017】
1つの特定の実施形態によれば、フラップネジと前記供給本体との間に、前記軸方向通路に収容された金属インサートが設けられ、前記金属インサートは、前記供給本体の内壁に当接する外面を含み、前記金属インサートには、前記横方向開口部と連通する側面貫通孔が設けられている。
【0018】
1つの有利な実施形態によれば、金属インサートは、供給本体の内壁の位置決め部材上に配置されるように構成された位置決め構造、特に平坦部を備えていてもよい。位置決め部材は、インサートの位置決め構造と類似していてもよいし、インサートの位置決め構造を補完していてもよい。
【0019】
1つの可能な実施形態によれば、ノズルは、金属材料および/または前記プラスチック材料よりも高い剛性で作られた取付プレートを備えてもよく、前記取付プレートは、前記供給本体の前記取付面に配置される。
【0020】
取付部材、例えば、肩部が設けられた中空ネジまたはフラップネジを使用することができる。有利には、この肩部は、取付プレートに当接するように構成されている。
【0021】
ノズルの1つの可能な実施形態によれば、後者はさらに、前記フラップネジまたは中空ネジの頭部と前記供給本体の前記支持面との間に介在するシールを備えることができる。
【0022】
導管構造には、前記横方向開口部と連通する一端と、異なる向きを有するいくつかの流体排出ポートと連通する他端とを有する流体チャネルを設けることができる。
【0023】
導管構造をプラスチック材料で作ると、さまざまな形状のポートを簡単に実現することができ、これにより、流体ジェットの性能が向上し、特に有効な流量と噴霧精度が向上する。
【0024】
有利には、前記1つまたは複数の流体排出ポートは、多角形の横断面、または閉じた輪郭を形成する一連の湾曲部分の形の断面を有する。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、先に定義した流体ノズルを備える内燃機関のピストン冷却装置に関する。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、
-エンジンブロック、および前記エンジンブロックに摺動可能に取り付けられたピストンと、
-上記で定義した冷却装置と
を含む内燃機関に関する。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、上記の流体ノズル部材を製造する方法に関し、この方法は、プラスチックおよび/またはポリマー材料の前記ブロックを成形するステップ、特に射出成形工程を含む。
【0028】
このような方法により、供給本体と導管を形成する部品の寸法再現性がよく、ノズルを迅速に製造することができ、機械的に溶接されたノズルと比較して組立作業の数を制限することができ、金属部品よりも流体出口をより複雑な形状にすることができる。
【0029】
1つの特定の実施形態によれば、成形は、前記取付面上の金属プレート上に前記プラスチックブロックをオーバーモールドするような方法で行うことができる。
【0030】
この方法の有利な態様によれば、成形ステップで使用される金型には、排出ポートおよび導管構造内のチャネルにそれぞれ相補的な形状のシャンクおよび1つまたは複数のシャフトが設けられる。
【0031】
別の態様によれば、本発明は、上で定義した流体ノズルを製造する方法に関する。
【0032】
本発明は、以下の説明および添付の図面を使用してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】はんだ付けによって金属片を組み立てることによって形成された従来の金属ノズルの斜視図を示す。
【
図1B】はんだ付けによって金属片を組み立てることによって形成された従来の金属ノズルの斜視図を示す。
【
図1C】はんだ付けによって金属片を組み立てることによって形成された従来の金属ノズルの断面図を示す。
【
図2A】本発明によるノズルの供給本体および排出導管を形成するプラスチック材料製の部品の斜視図を示す。
【
図2B】本発明によるノズルの供給本体および排出導管を形成するプラスチック材料製の部品の底面図を示す。
【
図3】プラスチック部にとフラップネジとの組立体の断面図である。
【
図4A】金属インサートがプラスチック材料製の部品に取り付けられたノズルの特定の例示的な実施形態の斜視図を示す。
【
図4B】金属インサートがプラスチック材料製の部品に取り付けられたノズルの特定の例示的な実施形態の底面図を示す。
【
図5】取付部材のヘッドとプラスチック材料製の部品の面との間にシールが設けられたノズルの特定の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図6A】プラスチック部品が剛性取付プレート上にオーバーモールドされたノズルの例示的な実施形態の断面図を示す。
【
図6B】プラスチック部品が剛性取付プレート上にオーバーモールドされたノズルの例示的な実施形態の取付プレートのみの斜視図を示す。
【
図7A】ノズルの供給本体および排出導管を形成するプラスチック部品に設けられた流体排出ポートの異なる形状を示す。
【
図7B】ノズルの供給本体および排出導管を形成するプラスチック部品に設けられた流体排出ポートの異なる形状を示す。
【
図7C】ノズルの供給本体および排出導管を形成するプラスチック部品に設けられた流体排出ポートの異なる形状を示す。
【
図7D】ノズルの供給本体および排出導管を形成するプラスチック部品に設けられた流体排出ポートの異なる形状を示す。
【
図7E】ノズルの供給本体および排出導管を形成するプラスチック部品に設けられた流体排出ポートの異なる形状を示す。
【
図8】ノズルプラスチック部品を成形するための装置の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図をより読みやすくするために、図に示されているさまざまな部分は、必ずしも均一な縮尺で表されているわけではない。
【0035】
なお、以下の説明において、「前」、「上」、「後」、「下」、「側面」等の構造の向きに依存する用語は、構造が図に示す向きであると考えて適用される。
【0036】
図2A~
図2B(それぞれ3次元図および底面図を示す)には、本発明の一実施形態による流体ノズルの部品10の例示的な実施形態が示されている。
【0037】
ノズルは、特に、オイルなどの冷却流体用のノズルであり、この流体を燃焼機関の1つまたは複数のピストンゾーンに噴霧することを意図している。
【0038】
部品10は、流体供給装置(図示せず)に接続される、この例では「供給本体」と呼ばれる平行六面体形状の部分11を含む。したがって、いわゆる「取付」面11bを、この流体供給装置に対して、例えば冷却流体を送ることを意図したクランクケースに対して追加することができる。
【0039】
供給本体11は中空であり、ここでは取付面11bから取付面11bとは反対側のいわゆる「支持」面11aまで延びる内側軸方向通路12を含む。供給本体10の少なくとも1つの内壁121によって区切られた軸方向通路12は、この内壁121に作られた横方向開口部13と連通している。流体は、供給本体11の取付面11b側の部品10に入り、軸方向通路12を通過し、横方向開口部13を通過する。
【0040】
部品10には、「導管構造」と呼ばれる別の細長い、または長方形の部分15が設けられ、第1の端部15.1によって供給本体に接続され、供給本体の側面から流体排出を形成する自由端部15.2まで延在する。流体は、導管構造の自由端部15.2に設けられた少なくとも1つの流体排出ポートを通して排出される。
【0041】
部品10は、単一部品で形成された導管構造および供給本体を備えた、一体型であるという特徴を有する。一体型設計は、いくつかの構成部材、通常は供給本体と流体チューブのアセンブリであり、それに排出エンドキャップが追加されるノズルに比べて、寸法および機能の再現性の点で利点がある。
【0042】
部品10は、通常、少なくとも1つのプラスチック材料または少なくとも1つのポリマー材料から作られ、経済的であり、重量を節約し、例えば成形によるワンステップ生産を容易にする。ガラス繊維入りポリマーや補強材も使用することができる。
【0043】
好ましくは、プラスチック材料は、-40℃から140℃の間の熱サイクルに耐えるように選択される。プラスチック材料は、例えば、PA66またはPA6-6Tなどのポリアミド、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)であり得る。
【0044】
もう1つの基準は、使用する流体との適合性である。例えば、この流体が冷却油の場合、この油に対して化学的に耐性のあるプラスチック材料が選択される。
【0045】
例えば、異なるプラスチック材料で作られた別のゾーンよりも柔らかいプラスチック材料で作られたゾーンを有する多材料プラスチック部品10を提供することもできる。
【0046】
一体型のプラスチック部品10を用いると、供給本体、流体管、および場合によっては排出エンドキャップを組み立てることによって従来技術に従ってノズルを製造する場合のような1回または複数回のはんだ付け作業がさらに回避される。
【0047】
部品10のより良い耐久性を得るために、柔軟なプラスチック材料を使用できることが有利である。この場合、材質が無充填ガラス繊維ポリマーの場合がある。
【0048】
図示の例では、導管構造15は、横方向開口部13と連通し、いくつかの流体排出ポート17a、17bに通じるチャネル16を含む。流体は、供給本体11、横方向開口部13を通過した後、チャネルを通過し、ポート17a、17bを通り部品10から排出される。
【0049】
図2Aに示される1つの可能な実施形態によれば、導管構造は、Y1Y2方向に延在し、90°とは異なる角度α、例えば、通路12の主軸X1X2に対して90°より大きい角度αを形成する直線チャネル16を備えることができる。軸X1X2は、この特定の例では取付面11bに垂直である。
【0050】
ポート17a、17bは、有利には、互いに、およびチャネル16に対して異なる向きを有する。これにより、流体を別々のターゲットに排出することができる。例えば冷却ノズルの場合、ピストン機構の各ゾーンを冷却することができる。ピストン冷却ノズルは、例えば、ピストンギャラリによるピストン冷却と、ピストン/連結ロッド軸への注油という2つの機能を発揮するように設計することができる。
【0051】
さらに、部品10を作るためにプラスチック材料を使用することは、排出ポート17a、17bおよび/またはチャネル16の異なる構成および形状を容易に提供する可能性を提供する。
取
【0052】
付部材(
図2A~
図2Bには示されていない)は、軸方向通路12に挿入されることが意図されている。例えば、中空ネジまたはフラップネジによって形成されるこの取付部材は、典型的には、軸方向通路12から横方向開口部13への流体の流れを可能にしながら、供給本体11を流体供給装置(図示せず)に取り付けるように構成される。特に、取付部材は、部品10の取付面11bを流体供給装置(図示せず)に対して、または流体供給装置に対して配置されたブラケット自体に対して保持するために設けられてもよい。
【0053】
図3に示される特定の実施形態では、取付部材は、部品10の支持面11bに対して配置および接触するヘッド21を含む中空ネジ20である。ネジ20は、ヘッド21の延長部として、軸方向通路12に収容された中空のネジ付きシャンク22を含む。中空シャンク22は、取付面11bから突出する部分22.1を含む。この部分22.1は、たとえば、エンジンブロックのパイプまたは油受などの流体供給装置のボアに係合するように意図されている場合がある。この部分22.1は、任意である。
【0054】
流体の通過を可能にするために、シャンク22内に延在する少なくとも1つの軸方向キャビティ24aが、一端で流体供給装置に開口している。軸方向キャビティ24aの延長として、ネジ20のシャンク22は、部品10の横方向開口部13と連通する可能性のある半径方向キャビティ24bを含む。
【0055】
図3に示される特定の例示的な実施形態では、部品10の導管構造15への流体のアクセスを調節する機能をさらに提供するフラップネジ20が有利に使用される。部品10の導管構造15への流体アクセスを交互にブロックし、流体圧力に応じて部品10の導管構造15への流体アクセスを可能にするように構成された感圧遮断フラップ25が、ここではネジ20の中空部分に設けられている。
【0056】
図3に示される特定の例では、フラップ25は、例えば軸方向キャビティ22aのセクションを閉じることができるボールの形態の少なくとも1つの閉鎖部材25.1から形成され得る。閉鎖部材25.1は、カバー25.3を支持するバネ25.2に対して配置され、軸方向キャビティ22aの別のセクションを閉鎖し、特に流体圧力が所定の圧力しきい値を下回る限り、部品10の横方向開口部13への流体通路を遮断するために設けられる。他のタイプのフラップネジ、たとえば、閉鎖部材としてピストンを含むフラップネジを使用することもできる。
【0057】
ノズルの動作は、次のようになる。特定の流体圧力下で、たとえばエンジンオイル圧力が所定のしきい値を超えると、ボール25.1の変位によってバルブが開位置に移動する。流体は、部品10の横方向開口部13と連通する半径方向キャビティ24bを通り、この部品10の主チャネル16に出て、最終的に、導管構造15の自由端部15.2にある出口ポート17a、17bを通って出る。
【0058】
図3は、導管構造15内の流体の流れを防止するフラップの閉鎖位置を示すが、このフラップが開位置にある場合に採用される流体経路は、矢印F1で概略的に表されている。
【0059】
図3に示した例の代替として、一体化された閉鎖部材またはフラップを必ずしも設けることなく、流体が通過するように意図された中空ネジタイプの取付部材をノズルに設けることが可能である。この場合、導管構造15内の流体入口の制御は、別の構造、たとえばネジと部品10の外部にあるソレノイドバルブを介して、部品10からオフセットすることができる。別法として、用途によっては、流体供給装置から導管構造15への流体の流れを防止することができる閉鎖手段のないノズルを設けることができる。
【0060】
少なくとも部分的に金属製の取付部材によるプラスチック材料製の部品10の取付を改善するために、例えば鋼製の金属インサート30を内壁12.1に対して通路12に設けることができ、この内壁121と取付部材との間に配置される。インサート30は、ネジ頭が中心にあり、ノズルが正しく配置されていることも保証する。
【0061】
取付部材のない部品10の3次元図および底面図をそれぞれ示す
図4A~
図4Bでは、金属インサート30が軸方向通路12内に収容されているのを見ることができる。この例では、インサートは、円筒形のチューブの外観をしている。チャネル16への流体通路を可能にするために、軸方向通路に収容された金属インサート30は、その壁を貫通し、横方向開口部13と連通する側孔32を含む。チャネル16に通じる横方向開口部13を有するインサート側孔32の適切な向きを確保するために、インサート30に位置決め構造を設けることができる。位置決め構造は、供給本体11の内壁121の位置決め部材上に配置されてもよい。図示の例では、位置決め構造は、供給本体11の内壁121の対応する平坦部121aまたは対応する平面ゾーン121aに対して配置された平坦部31である。平坦部は、横方向開口部13に対する孔32の向きを確保する簡単な手段であり、したがって、孔32と横方向開口部13が完全に連通して、制御された直径のゾーン内の流体通路を確保する。代替として、軸X1X2に平行な軸に沿った溝または六角形の断面など、回転を防止できるようにする他の手段を設けてもよい。
【0062】
図4Cで分離して見ることができるインサート30は、通常、プラスチック本体11の通路12に圧入される。
【0063】
部品10の改良された取り付けを可能にする実施形態のさらなる例が、
図5および
図6A~
図6Bに示されている。
【0064】
部品10が取り付けられる流体供給装置に取付部材によって加えられる接触圧力を制限するために、供給本体11の取付面10bに対して配置される剛性透かし彫り取付プレート50を設けることができる。この取付プレート50は、部品10の構成材料より剛性の高い材料で作られている。典型的には、取付プレート50は、金属、例えば鋼でできている。
【0065】
この場合、取付部材、特に、プレート50の穴51を通過するネジまたはフラップネジ20には、取付プレート50に当接するように構成された肩部223を設けることができる。その後、締め付け力は、流体供給装置またはエンジンブロックではなく、プレート50に適用される。
【0066】
剛性のプレート50はまた、ノズルの互換性を確保し、ノズルを流体供給装置の金属ブラケットに取り付けることを可能にするために、プラスチック部品10に追加されてもよい。
【0067】
例えば、そのようなプレート50は、金属ノズルが通常取り付けられるアルミニウム合金などの延性材料で作られたエンジンブロックにプラスチック部品10を取り付けることを可能にすることができる。このような材質のエンジンブロックでは、ネジを締めたときの接触圧が高すぎると、ネジと接触する部分に避けるべき塑性変形が生じることがある。ネジ20の肩部223とエンジンブロック(図示せず)の間に追加されたプレート50により、締め付け力をより大きな表面積に分散させることが可能になり、接触圧力が減少し、最終的にエンジンにノズルを組み立てる際のエンジンブロックの変形が回避される。
【0068】
取付部材を通すための開口部に加えて、供給本体11との組み立てをより頑丈にするために、プレート50に少なくとも1つの穴またはピンなどの少なくとも1つの突出部材を設けることができ、供給本体には、対応するピンまたは対応する穴が設けられている。
【0069】
プレート50には、流体供給装置またはエンジンブロックに対してノズルを正しく配向できるようにするために、少なくとも1つの穴またはピンなどの少なくとも1つの突出部材を設けることもできる。
【0070】
さらに、
図5および
図6Aに示すように、組立てを改善するために、例えば平らな透かし彫りディスクの形態のシール60を、ネジ20のヘッド21と本体11の支持面11aとの間に設けることができる。シール60は、例えばフルオロカーボンエラストマーであってもよい。
【0071】
ノズルが高い熱応力を受けると、シール60は、プラスチック製の本体11と、典型的には金属製のネジ20との間の膨張の差を補償することもできる。これにより、流体チャネルの機能も果たす取付部材の正しい位置決めが保証される。シール60で確実な気密性も確保できる。特に、ネジ20のヘッドの下に追加されたシール60により、ノズルの使用温度範囲全体にわたるシールを保証することができまる。
【0072】
図5および6Aに示される特定の実施形態では、アセンブリは、取付プレート50を備えているが、インサートを備えていないため、ノズルのコストを削減することができる。
図6Bは、分離したプレート50の図を示す。
【0073】
別の方法として、特に一定レベルの堅牢性を保証するために、上述の取付プレート50と金属インサート30の両方を備えたアセンブリを作成することができる。
【0074】
別の代替案によれば、
図6Aに示すように、取付プレート50を使用せずに肩部223を含むネジを使用してアセンブリを作成することができる。
【0075】
プラスチック材料を使用して上述の導管構造を作成し、ノズルから流体を排出するための少なくとも1つの排出ポート17aを設けることにより、異なるポート形状を実現することも容易になる(
図7A~
図7E)。
【0076】
図7Aに示す円形断面175を有するポートとは別に、多角形の横断面またはいくつかの曲面を有するポートを設けることができる。この断面は、ノズル出口での望ましいジェット品質とジェット速度に影響する。また、冷却するピストンなどのターゲットゾーンに噴霧することを目的とした、有効流量とも呼ばれる、一定時間の流体の量に応じて調整することもできる。
【0077】
図7Bに示す例では、ポート17aの横断面171は、一連の湾曲部分、例えば円形によって形成され、閉じた輪郭を形成する。
図7Cでは、ポート17aは、多角形、特に六角形の断面172を有し、一方、
図7Dおよび
図7Eに示される排出ポート17aには、三角形173または長方形174、特に正方形断面が設けられている。流体ジェットを加速するためのゾーンを作成するためのこのような形状が提供されてもよい。
【0078】
次に、本発明による流体ノズルを製造する例示的な方法について説明する。
【0079】
第1のステップでは、
図2A~
図2Bに示される部品10が、例えばプラスチックまたはポリマー材料の成形によって形成される。供給本体と導管構造は、単一部品で、1 回の動作で作成される。特に、射出成形法が実施される場合がある。
【0080】
例えばPA66、またはPA6-6T、またはPPA、またはPPSなどの少なくとも1つの熱成形可能なポリマーベースの材料を使用することができる。この材料を熱を加えて軟化させた後、金型に流し込み冷却する。例えば、
図8に示すような金型180を使用することができる。
【0081】
部品10の流体排出ポート17a、17b、横方向開口部13、およびチャネル16を単一の動作で形成できるようにするために、金型には、特に、流体排出ポート17a、17bの形状に相補的な形状のシャフト181a、181b、および構造化される材料に貫通する、チャネル16の形状と相補的な形状のシャンク182を設けることができる。通路12は通常、この同じ動作で作られる。
【0082】
有利なことに、いくつかのポリマーまたはプラスチック材料の成形を実行して、ノズル部品を作成することができる。
【0083】
ノズル10に
図6Aおよび
図6Bに示すような取付プレート50が設けられている場合、部品10は、成形作業中にこのプレート50上にオーバーモールドすることができる。このように、プラスチック部品10と、例えば鋼などの異なる材料で作られた取付プレートとの間で堅固な組立を達成することができる。
【0084】
部品10が形成されると、
図4A~
図4Bに示されるようなインサート60が提供される場合、このインサートは、供給本体の通路12に圧入される。
【0085】
次いで、流体供給装置へのノズルの組立ては、取付部材、典型的には中空ネジまたはフラップネジを通路12に導入することによって達成される。
【0086】
先に示したように、プラスチック材料で作られた部品10および上述の様々なアセンブリは、オイルなどの冷却流体をエンジンのピストン機構の1つまたは複数のターゲットゾーンに噴霧するためのエンジン冷却装置を形成することを特に意図している。
【0087】
このような部品およびこのようなアセンブリは、他のタイプの装置、例えば、自動車の油圧装置または空圧装置、特に内燃機関の油圧回路、または例えばチェーンに潤滑油をスプレーするため、または電気自動車の電気モーターの冷却ノズルのために用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
10 部品
11 供給本体
11b 取付面
11a 支持面
12 軸方向通路
13 横方向開口部
15 導管構造
15.1 第1の端部
15.2自由端部
16 流体チャネル
17a,17b 排出ポート
20 取付部材、フラップネジ、中空ネジ
21 ヘッド
22 シャンク
24a 軸方向キャビティ
24b 半径方向キャビティ
25 調整部材、フラップ
25.1 閉鎖部材
25.2 バネ
25.3 カバー
30 金属インサート
31 位置決め構造
32 側孔
50 取付プレート
60 シール
121 内壁
121a 平坦なゾーン
223 肩部
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給本体(11)を有する流体ノズル部材であって、前記供給本体(11)は、取付面(11b)および前記取付面の反対側の支持面(11a)と、前記取付面および前記支持面の間の軸方向通路(12)とを含み、前記軸方向通路(12)は、前記供給本体に設けられた横方向開口部(13)に連通し、前記ノズルは、前記横方向開口部(13)に連通する導管構造(15)をさらに含み、前記導管構造は、第1の端部によって前記供給本体に接続され、前記導管構造は、前記供給本体に対して横方向に延在し、かつ流体を排出するための1または複数の排出ポート(17a,17b)が取り付けられた排出端部を形成する自由端部(15.2)を含み、
前記供給本体および前記導管構造は、プラスチック材料またはポリマー材料のブロックで形成され、
前記流体ノズル部材は、金属材料および/または前記プラスチック材料よりも高い剛性で作られた取付プレート(50)をさらに備え、前記取付プレート(50)は、前記供給本体(11)の前記取付面(11b)に組付けられる、流体ノズル部材。
【請求項2】
前記軸方向通路(12)内に収容された金属インサート(30)をさらに備え、前記金属インサートは、前記供給本体の内壁(121)に当接する外面を含み、前記金属インサートには、前記横方向開口部(13)と連通する貫通する側孔(32)が設けられている、請求項1に記載の流体ノズル部材。
【請求項3】
前記金属インサート(30)には、前記本体の位置決め部材、特に前記内壁の平坦なゾーン(121a)に配置されるよう構成された、特に平坦な、位置決め構造(31)が取り付けられている、請求項2に記載の流体ノズル部材。
【請求項4】
前記導管構造(15)は、前記横方向開口部(13)に連通する一端部、および複数の流体排出ポート(17a,17b)に連通する他端部を有する流体チャネル(16)を含み、前記ポート(17a,17b)は、異なる向きを有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の流体ノズル部材。
【請求項5】
前記1または複数の流体排出ポート(17a,17b)が多角形の横断面、または閉じた輪郭を形成する一連の湾曲部分の形の断面を有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の流体ノズル部材。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の流体ノズル部材と、
前記ノズルの前記供給本体(11)を流体供給装置に取り付けるための少なくとも1つの取付部材(20)と、
を備える流体ノズルアセンブリ。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の流体ノズル部材と、
前記導管構造(15)への流体アクセスを調整するための調整部材(25)と、を備える、流体ノズル。
【請求項8】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の流体ノズル部材と、
前記軸方向通路(12)内に収容されたフラップネジ(20)と、
を備える、流体ノズル。
【請求項9】
前記フラップネジ(20)には、金属材料および/または前記プラスチック材料よりも高い剛性で作られた取付プレート(50)に当接するよう構成された肩部(223)が設けられ、前記取付プレート(50)は、前記供給本体(11)の前記取付面(11b)に組付けられる、請求項
8に記載の流体ノズル。
【請求項10】
前記フラップネジ(20)のヘッド(21)および前記供給本体(11)の前記支持面(11a)の間に介在するシール(60)をさらに備える、請求項
8または
9に記載の流体ノズル。
【請求項11】
請求項
7~
10のいずれか一項に記載の流体ノズルを備える内燃機関のピストン冷却装置。
【請求項12】
エンジンブロックおよび前記エンジンブロックに摺動可能に取り付けられたピストンと、
請求項
11に記載の冷却装置と、
を含む内燃機関。
【請求項13】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の流体ノズル部材の製造方法であって、前記プラスチック材料のブロックの成型ステップ、特に射出成型ステップを備える、方法。
【請求項14】
成型ステップは、前記取付面に接触する金属プレート(50)に前記プラスチックブロックをオーバーモールドするように実行される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記導管構造は、金型(180)、シャンク(182)、および1または複数のシャフト(181a,181b)を備える成型装置を使用して、成型ステップ中に同時に形成されるチャネル(16)および排出ポート(17a,17b)を備える、請求項
13または
14に記載の方法。
【請求項16】
供給本体(11)を有する流体ノズル部材であって、前記供給本体(11)は、取付面(11b)および前記取付面の反対側の支持面(11a)と、前記取付面および前記支持面の間の軸方向通路(12)とを含み、前記軸方向通路(12)は、前記供給本体に設けられた横方向開口部(13)に連通し、前記ノズルは、前記横方向開口部(13)に連通する導管構造(15)をさらに含み、前記導管構造は、第1の端部によって前記供給本体に接続され、前記導管構造は、前記供給本体に対して横方向に延在し、かつ流体を排出するための1または複数の排出ポート(17a,17b)が取り付けられた排出端部を形成する自由端部(15.2)を含み、
前記供給本体および前記導管構造は、プラスチック材料またはポリマー材料の単一のブロックで形成され、
前記1または複数の流体排出ポート(17a,17b)が多角形の横断面、または閉じた輪郭を形成する一連の湾曲部分の形の断面を有する、流体ノズル部材。
【国際調査報告】