(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電源およびその製造のための方法
(51)【国際特許分類】
H01B 12/16 20060101AFI20230523BHJP
F25B 9/02 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H01B12/16
F25B9/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564471
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2021060522
(87)【国際公開番号】W WO2021214213
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】102020205184.4
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511310524
【氏名又は名称】カールスルーエ インスティテュート フュア テクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロホマン、シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】シャバジン、オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】ゴムセ、ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ラムバッハ、ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ラブシュ、ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】ジートゼルト、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スタム、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ショルレ、コルネリア
【テーマコード(参考)】
5G321
【Fターム(参考)】
5G321BA01
5G321CB01
(57)【要約】
本発明は、エネルギー源(144)からアプリケーション(148)への、またはアプリケーション(148)からエネルギー源(144)への、電気エネルギーの輸送のための電源(110、110’ ...)に関し、エネルギー源(144)からアプリケーション(148)への、またはアプリケーション(148)からエネルギー源(144)への、電気エネルギーの輸送のための電源(110、110’ ...)であって、エネルギー源(144)が、温暖領域(142)に配置され、アプリケーション(148)が、低温領域(146)に配置され、電源(110、110’)が、少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を備えるスタック(118)を有し、各ホイル(120、120’ ...)が、電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含み、各ホイル(120、120’ ...)が、電気エネルギーを受容するか、または電気エネルギーを放出するように構成される電気端子を有し、各ホイル(120、120’ ...)が、流体の流れを案内するための複数のフローダクト(128)を備え、流体の流れが、冷却剤混合物、または、冷却されるガス流もしくは液化されるガス流を含み、スタック(118)に含まれるホイル(120、120’ ...)が、温暖領域(142)から高圧レベルで流体の流れを受容するように構成される、フローダクト(128)を通る第1の流路(134)と、低温領域(146)から低圧レベルで流体の流れを受容するように構成される、フローダクト(128)を通る第2の流路(134’)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー源(144)からアプリケーション(148)への、または前記アプリケーション(148)から前記エネルギー源(144)への、電気エネルギーの輸送のための電源(110、110’ ...)であって、
前記エネルギー源(144)が、温暖領域(142)に配置され、
前記アプリケーション(148)が、低温領域(146)に配置され、
前記電源(110、110’)が、少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を備えるスタック(118)を有し、
各ホイル(120、120’ ...)が、前記電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含み、
各ホイル(120、120’ ...)が、前記電気エネルギーを受容するか、または前記電気エネルギーを放出するように構成される電気端子を有し、
各ホイル(120、120’ ...)が、流体の流れを案内するための複数のフローダクト(128)を備え、
前記流体の流れが、冷却剤混合物、または、冷却されるガス流もしくは液化されるガス流を含み、
前記スタック(118)に含まれる前記ホイル(120、120’ ...)が、前記温暖領域(142)から高圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第1の流路(134)と、前記低温領域(146)から低圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第2の流路(134’)を有する、
電源(110、110’ ...)。
【請求項2】
前記ホイル(120、120’ ...)は、
前記低温領域(146)から低圧レベルで前記冷却剤混合物の蒸気相を受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第3の流路(134’’)と、
前記温暖領域(142)から前記冷却されるガス流または前記液化されるガス流を受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第4の流路(134’’’)と
から選択される少なくとも1つのさらなる流路(134’’、134’’’)を有する、
請求項1記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項3】
スタック(118)の各ホイル(120、120’ ...)におけるすべてのフローダクト(128)は、前記温暖領域(142)から前記流体の流れを受容するか、または前記低温領域(146)から低圧レベルで前記流体の流れを受容するかのいずれか一方であるように構成される、
請求項1または2に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項4】
前記スタック(118)において隣接して積み重ねられるホイル(120、120’ ...)のフローダクト(128)が、高圧レベルで前記流体の流れを受容し、低圧レベルで前記流体の流れを受容するように交互に構成されるか、
または
前記スタック(118)において2つ以下の隣接して積み重ねられるホイル(120’、120’’)のフローダクト(128)が、高圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成され、隣接するさらなるホイル(120、120’’’)が、低圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成されるか、
または
前記スタック(118)において2つ以下の隣接して積み重ねられるホイル(120、120’ ...)のフローダクト(128)が、低圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成され、隣接するさらなるホイル(120、120’’’)が、高圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項5】
前記フローダクト(128)はそれぞれ、各ホイル(120、120’ ...)の一方側に導入され、
隣接して積み重ねられるホイル(120、120’ ...)は、前記フローダクト(128)における開口部が互いに離れて向いて配置されるように前記スタック(118)に導入される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項6】
各ホイル(120、120’ ...)は、前記フローダクト(128)のための入口領域(130)および出口領域(130’)を有し、
少なくとも前記入口領域(130)または前記出口領域(130’)は、前記流体の流れを前記ホイル(120、120’ ...)の前記フローダクト(128)間において分割するように構成される分配器要素(132、132’、132’’、132’’’)を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項7】
前記スタック(118)の少なくとも一方側に、カバープレート(112、116)が設けられ、
各ケースにおける前記カバープレートの少なくとも1つ(112)は、前記流体の流れを供給するための少なくとも1つの供給部、および前記流体の流れを取り除くためのドレインを有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項8】
前記導電性材料は、銅、アルミニウム、または真鍮から選択される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項9】
極低温の生成のため、およびエネルギー源(144)からアプリケーション(148)への電気エネルギーの輸送、または前記アプリケーション(148)から前記エネルギー源(144)へのエネルギーの輸送のための装置(140)であって、
温暖領域(142)および低温領域(146)を有する少なくとも1つの冷却ステージを含み、
前記冷却ステージのために構成される冷却剤混合物および前記エネルギー源(144)が前記温暖領域(142)に提供され、
前記冷却剤混合物が、異なる沸点温度を有する少なくとも2つの成分を含み、
前記少なくとも1つの冷却ステージの前記低温領域(146)が、
請求項1~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電源(110、110’ ...)であって、前記少なくとも1つの電源(110、110’ ...)が、第1の熱交換器(158、158’、158’’、158’’’)として同時に具現化される、少なくとも1つの電源(110、110’ ...)と、
前記冷却剤混合物を膨張させ、前記冷却剤混合物を低圧レベルに冷却するように構成される、少なくとも1つの第1の膨張ユニット(166、166’、166’’、166’’’)と、
前記電気エネルギーを受容する、および/または、前記電気エネルギーを放出するように構成される、アプリケーション(148)と
を備える、
装置(140)。
【請求項10】
前記アプリケーション(148)を冷却するように構成される第2の熱交換器(170、170’ ...)をさらに備える、
請求項9記載の装置(140)。
【請求項11】
15K~90Kの温度での高温超伝導体(168、168’)の冷却のため、および動作のための請求項9または10に記載の装置(140)の使用。
【請求項12】
電源(110、110’ ...)に関する請求項1~8のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)を製造する方法であって、
前記電源(110、110’ ...)が、電気エネルギーをエネルギー源(144)からアプリケーション(148)に、または前記アプリケーション(148)から前記エネルギー源(144)に、輸送するように構成され、
前記エネルギー源(144)が、温暖領域(142)に配置され、
前記アプリケーションが(148)が、低温領域(146)に配置され、
前記方法は、
a)少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を用意するステップであって、各ホイル(120、120’ ...)が、電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含み、各ホイル(120、120’ ...)が、各端部に、電気エネルギーを受容するか、または前記電気エネルギーを放出するように構成される電気端子を有する、少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を提供するステップと、
b)前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)への流体の流れを受容するように構成される複数のフローダクト(128)を導入するステップと、
c)前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)をスタック(118)の形態で配置し、前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を拡散溶接するステップであって、前記低温領域(146)における各ホイル(120、120’ ...)の前記電気端子が溶接されないままでである、前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を配置および拡散溶接するステップと
を含む、
方法。
【請求項13】
前記複数のフローダクト(128)は、エッチング法によるか、またはマイクロエッチングによって、前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)に導入される、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記スタック(118)の形態で前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を配置することは、前記スタック(118)の少なくとも一方側上に少なくとも1つのカバープレート(112、116)を配置することを含み、
前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を拡散溶接することは、前記少なくとも1つのカバープレート(112、116)を含み、
前記方法が、
d)各ケースにおいて、前記流体の流れを前記カバープレート(112、116)の少なくとも1つに供給する、および/または、前記カバープレート(112、116)の少なくとも1つから取り除くように構成される、少なくとも1つのポート(114、114’、114’’、114’’’)を導入するステップ
をさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、
e)前記アプリケーション(148)に前記電気エネルギーを放出するか、または前記アプリケーション(148)から前記電気エネルギーを受容するように構成される、前記ホイル(120、120’ ...)の前記電気端子上に、少なくとも1つの高温超伝導体(168、168’)を配置するステップ
をさらに含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源およびその製造のための方法に関する。本発明はさらに、極低温の生成および電気エネルギーの輸送のための少なくとも1つのそのような電源を備える装置、特に、15K~90Kの極低温での高温超伝導体の冷却および動作のためのその使用に関する。しかし、他の用途も可能である。
【背景技術】
【0002】
15K~90Kの極低温への閉回路冷却は、特に、高温超伝導用途の電源の、エネルギー技術における多くの用途に非常に重要である。T. Kochenburger, Kryogene Gemischkaelte-kreislaeufe fuer Hochtemperatursupraleiter-Anwendungen [Cryogenic Mixed Refrigerant Circuits for High-Temperature Superconducting Applications]、博士論文、Karlsruhe Institute of Technology, 2019, ISBN 978-3-8439-3987-4で詳細に説明されているように、この目的のために、極低温で混合した冷媒回路を使用することが優先されている。特に、リンデ-ハンプソンサイクルプロセスによって、120K未満の極低温を達成することが可能である。この場合、所望の冷却は、実際の流体の断熱などのエンタルピー膨張の場合の温度の変化について記述するジュール-トムソン効果によって達成される。冷却が達成されるためには、式(1)によって定義されるジュール-トムソン係数が用いられる。
【0003】
【0004】
式中、
は、一定のエンタルピーHでの圧力pに対する温度Tの偏導関数、したがって、膨張を表し、正の値を有する。この条件は、多くの流体の幅広い状態にわたって満たされるか、または流体の予冷却によって達成され得る。圧力差が大きい場合でも、実際には効率が低い場合にのみ、100Kを超える温度低下が達成可能であるため、120K未満の極低温は、膨張前に内部向流式熱交換器(レキュペレータ)によって流体を予冷却することによって達成される。
【0005】
リンデ-ハンプソンサイクルプロセスは、流体冷却剤が高圧に圧縮される圧縮機において開始し、ここで下流の冷却器で発生する圧縮のエネルギーが圧縮機の環境に放出される。続いて、冷却剤は、向流式熱交換器で冷却される。好ましくは、膨張弁、スロットルキャピラリ、ダイアフラム、および焼結要素から選択される膨張ユニットにおいて、冷却剤は、低圧レベルまで断熱的に膨張し、正のジュール-トムソン係数μJTが与えられると、ジュール-トムソン効果によってさらに冷却される。続いて、蒸発器において、冷却されるアプリケーション、特に、高温超伝導体から熱流を吸収することが可能である。最後に、冷却剤は、向流式熱交換器で再び周囲温度に加熱された後、圧縮機の方に流されて戻される。このサイクルプロセスが、電源の冷却、または低沸点流体、たとえば水素の液化に使用される場合、冷却剤によって電源または冷却される流体から向流式熱交換器内に熱流も吸収される。
【0006】
リンデ-ハンプソンサイクルプロセスの効率を向上させるために、サイクルプロセスにおいて、たとえば多段圧縮、多段熱交換器または膨張用タービンの使用を変更することによって、結果として生じるエントロピーの生成は減少され得る。代替的または付加的に、上記冷却剤とは異なる沸点を有する少なくとも1つのさらなる冷却剤を添加することによって、冷却剤の熱力学的特性を変更することが可能である。いわゆる「極低温で混合した冷媒回路」では、リンデ-ハンプソンサイクルプロセスは、純粋な物質ではなく、冷媒として広い沸点範囲を有する多成分混合物を用いて実施され、この場合、サイクルプロセスは、主に混合物の二相性領域で行われる。サイクルプロセスが少なくとも2つの冷却ステージの形態で実行される場合、各冷却ステージは、好ましくは、広い沸点範囲を有する専用の多成分混合物を有し得ることで、各冷却ステージにおけるサイクルプロセスが、主にそれぞれの冷却剤混合物の二相性領域で行われる。結果として、冷却剤混合物は、たとえば第1の冷却ステージにおける周囲温度に近づいて、その冷却ステージの暖端でも露点に達することができ、その後、冷却操作中に徐々に凝縮され、沸点を超えた後に、さらに過冷却される。したがって、ジュール-トムソン膨張は、部分的に高い液相率で、部分的に過冷却された形態で行われる。冷却ステージの冷却剤混合物の組成の選択によって、ここで、好ましくは、向流式熱交換器の流動長全体にわたって、好ましくは、少なくとも1つのさらなる冷却ステージでの冷却剤混合物に対して、または液化または冷却されるガス流に対して、冷却ステージの冷却剤流間の両方で温度差を最小に縮小することによって、当該冷却ステージの冷却剤流の有効熱容量を対向流式熱交換器で制御することが可能である。さらなる特徴は、いくつかの冷却剤混合物で発生する2つの液相への流体の分解であり得る。ここでは、極性、フッ素化のレベル、またはそれらの成分の鎖長の点で、2つの液相を区別することが可能である。
【0007】
効率的な冷却を達成するために、冷却ステージで使用される冷却剤混合物の熱力学的特性をそれに応じて調整することが可能である。効率的な冷却剤混合物は、高圧レベルで当該冷却ステージの再冷却温度に近い露点を有する。第1の冷却ステージでの再冷却温度は典型的に、周囲温度の領域にあるが、多ステージプロセスでの冷却ステージの再冷却温度は、上流の冷却ステージの等エンタルピー膨張によって生成される冷却剤温度の領域にある。冷却ステージの露点温度は、特に、当該冷却ステージの高沸点成分の選択および分率によって影響を受け得る。冷却ステージでの冷却剤混合物の沸点温度は、膨張ユニットでの膨張の高い液相率によってエントロピーの生成を最小限に抑えるために、好ましくは、低圧レベルで冷却温度直下であるべきである。低沸点成分の選択および分率は、ここで、沸点温度に相当な影響を与える。したがって、上記温度範囲での各ケースにおいて、所望の高い効率を達成するために、冷却ステージの冷却剤混合物は、高沸点成分と低沸点成分の両方を含み、その結果、冷却ステージの冷却剤混合物は全体的に沸点範囲が広くなる。そのため、実際に、第1のステージの冷却剤混合物は、より高い沸点およびより低い沸点を有する約4~5の冷却剤を含み、好ましくは、意図した用途に適合する比率で混合される炭化水素およびフッ素化炭化水素から選択され、好ましくは、特に、酸素、窒素、アルゴン、ネオン、水素、およびヘリウムから選択される。さらなる冷却ステージのために使用され、上流の冷却ステージで過冷却される冷却剤混合物は、実際に、より高い沸点およびより低い沸点を有する約2~4の冷却剤を含む場合があり、意図した用途に適合する比率で混合され、ここで、当該冷却ステージの温度で凍結することができる成分は、各ケースで選択されない。
【0008】
したがって、広い沸点範囲を有する冷却剤混合物の使用によって、向流式熱交換器の高圧側での冷却剤混合物のステージ的で部分的な凝縮が可能になり、一方で、冷却剤混合物は、逆流熱交換器の低圧側で段階的かつ部分的に蒸発する。したがって、冷却剤混合物の成分の選択およびそれらの濃度の調節によって、向流式熱交換器の高圧側および低圧側での容量流量の有利な適合が可能になる。温度範囲全体にわたる熱伝達を物質の流れ間の最小の温度差ΔTで有効にすることができる程度まで、冷却剤混合物の組成の最適化が可能であり、これにより、効率の大幅な向上を達成することができる。
【0009】
冷却ステージの高温側から低温側への
の伝達は、式(2)による熱伝達速度論に基づいて行われる。
【0010】
【0011】
式中、αは熱伝達の係数であり、温度差ΔTが最小であるため、伝達面積Aが非常に大きい向流式熱交換器が好ましいと推測することが可能である。そのため、最大の伝達面積Aを有する向流式熱交換器を特定することに有利であるだろう。
【0012】
さらに、特に、室温での、冷却ステージの温暖領域におけるエネルギー源から特に15K~90Kの極低温での低温領域に配置されるアプリケーションまで、電気エネルギーを、特に、電流の形態で輸送するために使用される電源が、先行技術から知られている。ここでは、使用する冷却方法に応じて、オフガス冷却または動力冷却の方式で電源を実装することが可能である。動力冷却方式の電源では、冷却は、概して、特に、極低温冷却器または低沸点液体によって、単純ではあるが非効率的な方法で低温端でのみ有効にされる。多段冷却の使用によって、段階的に効率を上げることが可能であるが、同時に技術的な複雑さも増す。さらに、特に、ペルティエ素子を使用する、冷却のさらなるモードが知られている。たとえば、S. Yamaguchi, M. Emoto, T. Kawahara, M. Hamabe, H. Watanabe, Y. Ivanov, Jian Sun, N. Yamamoto, A. Iiyoshi, A Proposal of Multi-stage current lead for reduction of heat leak, Physics Procedia 27 (2012) 448-451を参照。
【0013】
E. Shabagin and S. Grohmann, Development of 10 kA Current Leads Cooled by a Cryogenic Mixed-Refrigerant Cycle, IOP Conf. Series: Materials Science and Engineering 502 (2019) 012138, doi:10.1088/1757-899X/502/1/012138では、1.2mを超える長さの銅コアの周囲に巻き付けられたマルチチューブインチューブの向流式熱交換器が記載されている。超伝導体アプリケーションの約80Kの温度レベルまで冷却するために、低温端は、極低温冷却器または液体窒素にさらに導入される。低温端への接続がより短いと、結果として温度が低下し、冷却剤混合物の望ましくない凍結に至り得る。
【0014】
Dmitri Goloubev, Kuehlung eines resistiven HTSL-Kurzschlussstrombegrenzers mit einer Gemisch-Joule-Thomson-Kaeltemaschine [Cooling of a Resistive HTSL Short-Circuit Current Limiter with a Mixed Joule-Thomson Cooling Unit]、論文、Technical University of Dresden, 2003は、分析および電源の液体窒素温度レベルへの最適化の後の、主に抵抗型HTSL電流制限器用の冷却剤供給システムとしての混合窒素カスケードの研究に関するものである。要約では、電源と可燃性成分を含む混合冷媒流との直接的な接触を避けること、および混合冷却ユニットの低圧側での圧力降下を低減することを提案している。発見された最適な組み合わせは、比較的長い電源と、電源の低温端で約15%の比較的低い液体含有量を有する窒素冷却流との組み合わせである。
【0015】
D. Gomse, A. Reiner, G. Rabsch, T. Gietzelt, J.J. Brandner, S. Grohmann, Micro-structured heat exchanger for cryogenic mixed refrigerant cycles, IOP Conf. Series: Materials Science and Engineering 278 (2017) 012061, doi:10.1088/1757-899X/278/1/012061では、拡散溶接によってスタックの形態で結合される60枚の薄いステンレス鋼プレートを備える微細構造化される向流式熱交換器が記載されている。エッチング法によって、各ケースにおいて、400μmのチャネル幅、200μmのチャネル深さ、および20cmのチャネル長を有する50個の平行フローダクトが、各プレートに導入されており、直径が400μmの丸型のフローダクトを形成するような方法で、2枚ごとに対向するプレートが配置されている。さらに、各プレートは、プレートの位置合わせのための4つの位置決め穴と、頂線を形成する4つのカットアウト領域とを有している。
【0016】
独国特許出願公開第102016011311号明細書は、極低温ガスで消費者向け電源を冷却する方法を開示し、ここで、電源はプレート熱交換器として設計され、極低温ガスは、プレート熱交換器を介して冷却剤として案内される。また、プレート熱交換器として設計されるガス冷却電源の構成についても記載されている。
【0017】
独国特許出願公開第102005005780号明細書は、低温導体用の電源ユニットを開示しており、低温導体は、低温導体に接続される温暖接触側および低温接触側を有する少なくとも1つの導電体を有し、少なくとも一方側に導体によって境界付けられる冷却剤ダクトを有している。提案されているのは、冷却剤ダクトがガイド要素を有し、ガイド要素により、冷却剤ダクトにおける低温接触部分から温暖接触部分への冷却剤の対流の方向付けが強いられ、冷却剤の速度が局所的に調整され得ることである。
【0018】
独国特許19904822号明細書は、方法において、極低温ガスが第1の回路内で第1の冷却剤として案内されること、および極低温ガスの助けを得て、電源に沿って入ってくる熱に対する向流での極低温ガスの案内および第2の冷却剤での第1の冷却剤の冷却を伴って、電源または電源を有するコンシューマが直接冷却され、第2の冷却剤が第2の別個の回路に案内されることを開示している。
【0019】
独国特許第2163270号明細書は、極低温に冷却される導体を有する電気ユニット用の電源を開示しており、その端部は蒸発した冷却媒体のガス流に配置される通常の導体に接続され、ここで、蒸発した冷却媒体のガス流は個々の流れに分割され、それらそれぞれは、電気絶縁材料の少なくとも2つの壁で境界付けられたフローダクトを通って流れ、その分離は30mm以下である。
【0020】
米国特許第4992623号明細書は、システム内のさまざまな点に低温用のコンポーネントを有する電子システムを開示しており、ここで、極低温の流体および電力が同じ導管によって分配される。導管は、供給セクションおよび再循環セクションからなり、各セクションは、電力の移送のための超伝導壁を備えた極低温流体の移送のためのダクトを備える。代替的に、導管は、極低温流体の輸送のためにダクトが内部に形成される銅バーと超伝導材料のバーを収容するダクトとを備えてもよい。超伝導バーは、冷却目的のためのその意図された部位での極低温流体のさらなる使用により、極低温流体によって冷却されている間にサブシステムに電流を伝導する。さらに代替的に、極低温流体は、一対の同心導管によって輸送することができ、この場合、各導管の壁は、極低温流体を使用するサブシステムに電力を同時に提供するための超伝導材料を含む。
【0021】
国際公開第2003/081104号は、高温マルチフィラメント超伝導体ケーブル用のジャケットを製造する方法を開示している。ジャケットは、少なくとも2つの同心円筒を備えた円筒ブランクの共押出によって製造される。さらに、高温マルチフィラメント超伝導ケーブル用のシェルが提案され、これは前述の方法によって製造される。ジャケットは、純銀の内層と少なくとも1つの第2の銀ベースの合金層とを含む多層壁を備えるチューブで構成される。
【0022】
そこから前進して、本発明の目的は、電源およびその製造方法、ならびに極低温の生成のための、および電気エネルギーの輸送およびその使用のための装置を提供することであり、これらによって、詳述された欠点および先行技術の限界が少なくとも部分的に克服される。
【0023】
特に、先行技術と比較して、著しくよりコンパクトでより効率的な電源が提供され、これによって、熱に変換することができる部位での可能な限り直接的な電力損失の放散が可能になる。ここで、各ケースで最も高い温度レベルで可能な限り遠く熱を放散させることが可能であり、それにより、先行技術と比較して熱力学的に高まった効率で到達し、それによって、電源は、その低温端のみで、またはガス流に相対したより高い温度差で冷却される。
【発明の概要】
【0024】
本発明の目的は、独立請求項の特徴に応じて、電源およびその製造方法によって、ならびに極低温の生成および電気エネルギーの輸送のための装置およびその使用によって達成される。個々にまたは任意の組み合わせで実施可能である有利な実施形態が、従属請求項に記載されている。
【0025】
「有する」、「備える」、「含む」との用語、またはそれらの文法上の変形は、非排他的な方法で以下に使用される。したがって、これらの用語は、これらの単語によって導入される特徴以外にさらなる特徴が存在しない状況および1つまたは複数のさらなる特徴が存在する状況の両方に関連し得る。たとえば、「AはBを有する」、「AはBを備える」、または「AはBを含む」との表現は、B以外に、Aにさらなる要素が存在しない状況(すなわち、AがBのみからなる状況)、および、Bに加えて、1つまたは複数の要素、たとえば要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素がAに存在する状況の両方に関連し得る。
【0026】
さらに、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」との表現、ならびにこれらの表現の文法上の変形は、1つまたは複数の要素または特徴に関連して使用され、要素または特徴が1回または1回を超えて提供され得るという事実を表現するように意図される場合に、概して、1回のみ、たとえば特徴または要素の第1の導入時に使用されることが指摘される。特徴または要素の任意の続く新しい言及において、対応する「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」との表現は、概して、再び使用されないが、これは、特徴または要素が1回または1回を超えて提供され得る可能性を制限するものではない。
【0027】
さらに、「好ましくは」、「特に」、「たとえば」との表現、または同様の表現は、代替実施形態を制限することなく、随意の特徴と併せて以下で使用される。たとえば、これらの表現によって導入される特徴は随意の特徴であり、これらの特徴によって、請求項、特に、独立請求項の保護範囲を制限する意図はない。たとえば、本発明は、当業者が理解するように、さまざまな構成を使用して実施することもできる。同様に、「本発明の一実施形態では」または「本発明の一実施例では」によって導入される特徴は、随意の特徴であると理解され、それによって代替構成または独立請求項の保護範囲が制限されることはない。さらに、これらの導入表現は、随意の特徴または随意でない特徴であるかにかかわらず、それによって導入される特徴を他の特徴と組み合わせるオプションのいずれにも影響を与えるものではない。
【0028】
第1の態様では、本発明は、エネルギー源からアプリケーションへの、またはアプリケーションからエネルギー源への電気エネルギーの輸送のための電源に関し、エネルギー源が、温暖領域に配置され、アプリケーションが、低温領域に配置され、
少なくとも2つのホイルを備えるスタックを有し、
各ホイルが、電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含み、
各ホイルが、電気エネルギーを受容するか、または電気エネルギーを放出するように構成される電気端子を有し、
各ホイルが、流体の流れを案内するための複数のフローダクトを備える。
【0029】
ここでの「電源」との表現は、少なくとも1つのエネルギー源から少なくとも1つのアプリケーションへの、または少なくとも1つのアプリケーションから少なくとも1つのエネルギー源への、特に、電流の形態での電気エネルギーの輸送のために構成される装置に関する。本発明に関連して、電源は、好ましくは、少なくとも1つの超伝導体における最小の損失での電流のさらなる輸送を可能にするために、少なくとも1つの超伝導体、特に、高温超伝導体を備える正規回路に電流を輸送するように構成される。しかし、他のタイプの用途も考えられる。
【0030】
本発明によれば、エネルギー源は、「冷却システム」とも呼ばれ得る、極低温の生成のための装置の冷却ステージの温暖領域にあり、一方で、アプリケーションは、低温領域に配置される。原則として、極低温の生成のための各装置は、各ケースで低温領域および温暖領域を有する少なくとも1つの冷却ステージを含む。これに関連して、「温暖領域」は、低温領域と比較してより高い温度を有する装置の第1のサブ領域を指す。少なくとも2つの冷却ステージの場合、装置は、それぞれの下流の冷却ステージの温暖領域の少なくとも一部がそれぞれの上流のステージの低温領域に対応し得るように設計され得る。好ましくは、「予冷却ステージ」とも呼ばれる第1の冷却ステージの温暖領域は、周囲温度用に構成され、典型的に、少なくとも周囲温度に保たれるが、たとえば150℃までの、より高い温度が、特に、圧縮機で発生し得る。「周囲温度」との表現は、ここでは、273K、好ましくは、288K、より好ましくは、293K、313Kまで、好ましくは、303Kまで、より好ましくは、298Kまでの温度に関する。
【0031】
対照的に、「低温領域」は、極低温用に構成され、それぞれの極低温を生成する役割を果たすように意図される装置内の当該冷却ステージのさらなるサブ領域を指す。「極低温」との表現は、ここでは、10K、好ましくは、15K、120Kまで、好ましくは、90Kまでの温度を包含する。特に、低温領域を極低温にし、それを極低温で維持するために、低温領域は、クリオスタット、好ましくは、真空断熱クリオスタットに導入される。しかし、複数のタイプのクリオスタットも可能である。
【0032】
本発明によれば、電源は、少なくとも2つのホイルを備えるスタックを有する。「ホイル」との用語は、ここでは、電気エネルギーの輸送のために構成される導電性材料の薄く広がった本体に関する。ホイルは、好ましくは、ホイルの長さおよびホイルの幅を含む横方向の範囲の形態の表面を有し得、ここで、ホイルの幅は、横方向の範囲に垂直なホイルの厚さを、少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも25倍、より好ましくは、少なくとも50倍、特に、少なくとも100倍超え得る。ホイルは、好ましくは、
少なくとも5cm、好ましくは、少なくとも10cm、特に、20cm~25cm、最大で1m、好ましくは、最大で50cmまでのホイルの長さと、
少なくとも2cm、好ましくは、少なくとも5cm、特に、10cm~20cm、最大で50cm、好ましくは、最大で25cmまでのホイルの幅と、
少なくとも200μm、好ましくは、少なくとも250μm、特に、400μm~500μm、最大2mm、好ましくは、最大1mmまでのホイルの厚さと
を有し得る。
特に、ホイルの厚さを選択する場合、有利には、これらは、以下で詳細に説明されるように、拡散溶接によって互いに結合され、したがって、損傷または破壊さえもなしで任意の関連するエネルギー入力に耐えることができるように構成されることが留意されるべきである。しかし、原則として、ホイルの長さ、ホイルの幅、およびホイルの厚さに関する他の値も考えられるが、ホイルの厚さが1mmの規定値を超えない場合に特に有利であり、超える場合、むしろ「プレート厚さ」と呼ばれるべきである。
【0033】
「スタック」との用語は、それぞれが、横方向の範囲に、それらの表面に、平行に互いに重ねて配置され、好ましくは、拡散溶接によって互いに結合される、少なくとも2つのホイルを備える構成に関する。特に、スタックにおいて隣接して配置されるホイル間で過剰になることを回避するために、スタックのすべてのホイルは、好ましくは、同じホイルの長さおよび同じホイルの厚さを有し得る。順に、以下で詳細に説明されるように、スタックにおける最大数のホイルにわたるキルヒホッフの法則に応じて、電流の分布の最大の均一性を可能にするために、スタックにおけるすべてのホイルが、好ましくは、同じホイルの厚さを有することがさらに可能である。スタックは、少なくとも2つのホイル、好ましくは、少なくとも10のホイル、より好ましくは、少なくとも25のホイル、特に、50~60のホイル、250までのホイル、好ましくは、200までのホイル、より好ましくは、100までのホイルを含み得る。しかし、スタックにおけるホイル数に関する異なる値も可能である。このようにして、特に、ホイルの数、ホイルの長さ、ホイルの幅、およびホイルの厚さを、電源、特に、予期される電流によって輸送される電気エネルギーの大きさに対して調整することが可能である。
【0034】
既に述べたように、各ホイルは、電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含む。材料は、電気エネルギー、特に、その材料を介する電流の形態での電荷キャリアの輸送を可能にする場合に、「導電性」である。特に好ましい構成では、導電性材料は、金属、特に、少なくとも106S/m、好ましくは、少なくとも107S/m、好ましくは、少なくとも2・107S/mの導電率σを有する高導電性金属を含む。これらの金属には、特に、銅(σ≒5.8・107S/m)、アルミニウム(σ≒3.7・107S/m)、真鍮(σ≒2.4・107S/m)が含まれ、特に、銅およびアルミニウムが優先される。ステンレス鋼は、導電率がσ<107S/mと低いため、それほど好ましくない。
【0035】
さらに、銅ホイルから製造される電源が、1000m2/m3を超えて最大10,000m2/m3までの比表面積を有し、一方で、アルミニウム板の比表面積が、100m2/m3から最大1000m2/m3までしかないため、アルミニウムよりも銅が特に好ましい。
【0036】
エネルギー源からの電気エネルギーの受容、およびアプリケーションへの電気エネルギーの放出を可能にするために、各ホイルは電気端子を有する。「電気端子」との表現は、ここでは、ホイルへの電気エネルギーの受容および/またはホイルからの電気エネルギーの放出のために構成されるホイル上の装置に関する。特に、専用の電気端子がホイルの各横側に取り付けられるため、電気エネルギーをエネルギー源から受容するか、または電気エネルギーをホイルの一方の横側のエネルギー源に放出することが可能であり、電気エネルギーをアプリケーションに放出するか、または電気エネルギーをアプリケーションからホイルの他方の横側で受容することが可能である。好ましくは、電気端子は、導電端子ラグの形態でホイルの横側の少なくとも一方、最も好ましくは、両方の横側に構成され得る。本発明に関連する「端子ラグ」との表現は、各ケースにおいて、好ましくは、可動形態、より好ましくは、先細ったおよび/または円錐形に先細る形態である、当該ホイルの横側の導電端子部分を指し、ここで、端子部分は、好ましくは、それぞれのホイルによって取り囲まれている。「導電」との表現に関しては、上記の定義が参照される。したがって、有利な方法では、スタックにおける最大数のホイルにわたるキルヒホッフの法則に従う電流の分布の最大の均一性を可能にするために、スタックにおいて各ホイルを個別に接触させることが可能である。しかし、電気端子の構成の他のモードも考えられる。
【0037】
好ましい構成では、低温領域でアプリケーションと対向するホイルの電気端子は、高温超伝導体への導電接続を有し得、高温超伝導体は、電源の電気端子とアプリケーションとの間に配置される。ここで、高温超伝導体は、特に、ストリップまたはケーブルとして構成され得る。このようにして、電源とアプリケーションとの間の導電接続は、電源からアプリケーションへのまたはアプリケーションから電源への最小限の損失での電流のさらなる輸送を可能にするために、特に、高温超伝導体の形態で、超伝導になるように構成され得る。「高温超伝導体ストリップ」との用語は、ここでは、少なくとも部分的に高温超伝導体を含む、ストリップ形態で構成される導電体を指す。「高温超伝導体ケーブル」との表現は、ここでは、少なくとも部分的に高温超伝導体を含む、ケーブル形態での導電体を指す。高温超伝導体ケーブルは、個々にまたはグループで、ホイルに、または複数のホイルに、導電的に接続され得る複数のフィラメントを備え得る。
【0038】
本発明によれば、各ホイルは、流体の流れを案内するための複数のフローダクトをさらに備える。ここで、流体の流れは、好ましくは、冷却される冷却剤混合物またはガス流または液化されるガス流であり得る。ここで、ガス流は、ガスまたは少なくとも2つのガスの任意の混合物を含む場合があり、ここで、ガスは、特に、酸素、窒素、アルゴン、ネオン、水素、およびヘリウムから選択され得る。最初に述べたように、「冷却剤混合物」との用語は、冷却剤の少なくとも2つの成分の混合物を指し、ここで、成分の少なくとも2つは異なる沸点温度を有する。本発明に関連して、「冷却剤」との用語は、各ケースにおいて、当該冷却ステージの低温領域に入ると、正のジュール-トムソン係数μJT>0を有し、したがって、リンデ-ハンプソンサイクルプロセスの冷却ステージで極低温を生成する手段としての使用に適する、好ましくは、不活性な流体に関する。特に、約300Kから下がって15K~90Kの上述の温度範囲で冷却する場合に高い効率を達成することができるように、各ケースにおけるそれぞれの冷却ステージのための冷却剤混合物は、高沸点成分および低沸点成分の両方を含み、その結果として、冷却剤混合物は、全体的に「広沸点」と説明され得る。したがって、好ましくは、各冷却ステージの冷却剤混合物は、少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、より好ましくは、少なくとも4つ、最大8つ、好ましくは、最大6つ、好ましくは、最大5つの冷却剤を含み、ここで、冷却剤の少なくとも1つは高沸点成分であり、少なくとも1つのさらなる冷却剤は低沸点成分である。「高沸点」との用語は、それぞれの冷却ステージの低温領域に入ったときの温度である沸点を有する流体に関する。「低温領域」との表現については、上記の定義が参照される。「低沸点」との用語は、それぞれの冷却ステージでの高沸点成分の温度よりも低い温度である沸点を有する流体に関する。それぞれの冷却ステージでの冷却剤混合物の最低沸点成分は、それぞれの冷却ステージの等エンタルピー膨張後の温度よりも低い沸点温度を有し、したがって、特に、極低温であり得る。「極低温」との表現については、上記の定義が参照される。特に、予冷却ステージでは、少なくとも1つの高沸点成分を好ましくは炭化水素およびフッ素化炭化水素から選択することがここで可能であり、一方で、少なくとも1つの低沸点成分は、好ましくは、酸素、窒素、アルゴン、ネオン、水素、およびヘリウムから選択され得る。先行する予冷却ステージによって予冷却されるさらなる冷却ステージのための冷却剤混合物は、好ましくは、酸素、窒素、アルゴン、ネオン、水素、およびヘリウムから選択される冷却剤を含む場合があり、これらは、好ましくは、意図した用途に適合する比率で混合され、各ケースにおけるこれらの成分が当該冷却ステージの温度で凍結し得ることが回避されることが好ましい。他のタイプの冷却剤も可能である。
【0039】
既に述べたように、各ホイルは、流体の流れの案内のための複数のフローダクトを備える。「フローダクト」との表現は、ここでは、特に、少なくとも1つの入口領域および少なくとも1つの出口領域を差し引いた、当該ホイルのホイル長さ全体にわたって、特に、伸長し得、そのため、冷却ステージの温暖領域または低温領域から選択される第1の領域から流体の流れを受容し、流体の流れをホイル上に案内し、流体の流れを当該冷却ステージのそれぞれの他の領域から選択される第2の領域に放出するように構成される、それぞれのホイルに導入される細長い窪みを指す。より好ましくは、ここで、流体の流れが、ホイル内の複数のフローダクトを通って、可能な限り遠く層流で流れるように、フローダクトの数、形状および構成を選択することが可能である。
【0040】
複数のフローダクトは、好ましくは、特に、エッチング法またはマイクロエッチングから選択されるサブトラクティブ法によって、それぞれのホイルに導入され、その結果として、当該ホイルは、「微細構造化ホイル」とも呼ばれ得る。ここで、各フローダクトは、原則として、ホイルの表面に向かって開口部を有する任意のダクト断面を有することが可能である。特に、エッチング法が使用されると、製造の結果として、半円形のダクト断面が作成され、一方で、マイクロエッチングの場合には他の種類のダクト断面も可能であるが、マイクロエッチングによるフローダクトの製造は、エッチング法に比べてより時間がかかる。
【0041】
ここで、各ホイルは、少なくとも10のフローダクト、好ましくは、少なくとも20のフローダクト、より好ましくは、少なくとも25のフローダクト、特に、50~100のフローダクト、500までのフローダクト、好ましくは、250までのフローダクト、より好ましくは、200までのフローダクトを備え得る。しかし、ホイル内の異なる数のフローダクトも可能である。特に、フローダクトの製造を簡単にするために、ここでは、1つのホイル内、好ましくは、各ホイル内のすべてのフローダクトが、好ましくは、同じダクト長さ、ダクト幅、ダクト深さ、およびランド幅を有し、ホイル内で周期的な順序で互いに平行に配置されることが可能であり、
ダクト長さは、好ましくは、特に、少なくとも1つの入口領域および少なくとも1つの出口領域を差し引いた、対応するホイルのホイル長さに対応する場合があり、
ダクト幅は、少なくとも100μm、好ましくは、少なくとも250μm、特に、400μm~500μm、最大2mm、好ましくは、最大1mmである場合があり、ここで、隣接するフローダクトが互いに取り外されるランド幅は、フローダクトのダクト幅の少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも1.0、特に、1.0~2.0、最大5.0、好ましくは、最大2.5である場合があり、
ダクト深さは、少なくとも50μm、好ましくは、少なくとも100μmから、特に、200μm~250μm、最大1mm、好ましくは、最大500μmであり得るが、ホイル厚さよりも小さく、好ましくは、ホイル厚さの75%未満、より好ましくは、50%未満である場合があり、それにより、ホイルの十分な床厚さを維持する場合があり、
ここで、ダクト幅とダクト深さの比率は、特にエッチング法を使用する場合、好ましくは、1.0~3.0、特に、約2.0であり得るが、マイクロエッチングを使用する場合には他の値も可能である。しかし、フローダクトのダクト長さ、ダクト幅、およびダクト深さの他の値も考えられる。
【0042】
既に上述したように、ホイルが、拡散溶接によって互いに結合され、したがって、特に、十分な床厚さおよびランド幅を有し、それにより、ホイルは、損傷または破壊さえもなしで、関連するエネルギー入力に耐え得ることに留意することも有利であり得る。さらに、拡散溶接には、結果として、ホイルのスタックが均一な材料のみを含み、特に、結果として、スタックにおけるさらなる材料として任意のはんだを省くことが可能であるという有利な点を有している。このようにして、モノリシック設計を提供することが可能であり、これを用いて、電源の動作中に漏れにつながりかねない熱応力を効果的に防止され得る。
【0043】
フローダクトの構成の方法に関係なく、フローダクトは、好ましくは、それぞれがホイルの表面の片面のみに導入される。したがって、隣接するホイル、特に、異なる流路に割り当てられたホイルを、ホイルの表面上のフローダクトの開口部が互いに反対側を向くべく配置されるように、スタックに導入することが可能である。したがって、互いに向かい合うように配置される、隣接するホイルのフローダクト間のGomse et al.(上記参照)に記載されるオフセットを回避することが可能である。「スタッキング」とも呼ばれ得るスタックにおけるホイルの配置のさらなる詳細については、実施例が参照される。しかし、原則として、ホイルの両側のフローダクトの配置を含む、個々のまたはすべてのホイル内のフローダクトの任意の他の配置も考えられるが、これは、概してオフセットまたはより高い製造の複雑さが伴う欠点に概して関連付けられる。
【0044】
スタックに含まれるホイルは、
冷却ステージの温暖領域から高圧レベルで冷却剤混合物を受容するように構成されるフローダクトを通る第1の流路と、
冷却ステージの低温領域から低圧レベルで冷却剤混合物を受容するか、または冷却ステージの低温領域から低圧レベルで冷却剤混合物の液相を受容するように構成されるフローダクトを通る第2の流路と
を有する。
既知の先行技術とは対照的に、当該装置は、冷却媒体の高圧流および低圧流を有する向流式熱交換器であり、ここで、高圧流は、電流の流れ方向で温暖領域から低温領域へと流れる一方で、低圧流は、低温領域から温暖地域へと反対方向に流れる。
【0045】
さらに、スタックに含まれるホイルは、好ましくは、
冷却ステージの低温領域から低圧レベルで冷却剤混合物の蒸気相を受容するように構成されるフローダクトを通る第3の流路と、
冷却ステージの温暖領域から冷却されるガス流または液化されるガス流を受容するように構成されるフローダクトを通る第4の流路と
から選択される少なくとも1つのさらなる流路を有し得る。
この構成では、好ましくは、冷却剤混合物の気相と液相とを別々に受容することが可能である。
【0046】
好ましい構成では、ここで、各ホイルのフローダクトを、温暖領域から高圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第1の流路として、低温領域から低圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第2または第3の流路として、または冷却ステージの温暖領域からの冷却または液化されるガス流を受容するための第4の流路として設けることが可能である。フローダクトの幾何学的形状および/または第1の流路を備えるホイルの数と第2、第3、または第4の流路を備えるホイルの数との比率を調整することによって、簡単な方法で圧力降下および伝熱面積を調整することが可能である。
【0047】
スタックにおけるホイルの配置の順序に関して、以下の構成が特に好ましくなり得る。
スタックにおける隣接して積み重ねられるホイルのフローダクトは、高圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第1の流路として、および低圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第2の流路として交互に具現化され得る。
スタックにおける最大で2つの隣接して積み重ねられるホイルのフローダクトは、高圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第1の流路として具現化され得るが、これらに隣接するさらなるホイルが、各ケースにおいて、低圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第2または第3の流路を有する。
スタックにおける最大で2つの隣接して積み重ねられるホイルのフローダクトは、低圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第2または第3の流路として具現化され得るが、これらに隣接するさらなるホイルが、各ケースにおいて、高圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第1の流路において、または冷却ステージの温暖領域から冷却または液化されるガス流を受容するための第4の流路においてフローダクトを有する。
スタックにおける最大で2つの隣接して積み重ねられるホイルのフローダクトは、冷却ステージの温暖領域から冷却または液化されるガス流を受容するための第4の流路として具体化され得るが、隣接するさらなるホイルが、高圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第1の流路において、または低圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第2または第3の流路においてフローダクトを有する。
しかし、スタックにおけるホイルの配置のさらなる構成も可能である。したがって、そのような層状のセットアップ、または第1および第2の流路に対する、ならびに随意に第3の流路および/または第4の流路に対する間隔で交互になるセットアップは、スタックを通る向流を達成し得る。
【0048】
各ホイルは、フローダクトのための入口領域および出口領域を有し、「入口領域」が、フローダクトの第1の領域に隣接し、フローダクトへの流体の流れの進入のために構成されるホイルの第1のセクションを指し、一方で、「出口領域」は、フローダクトの第2の領域に隣接し、フローダクトからの流体の流れの排出のために構成されるホイルの第2のセクションを指す。好ましい構成では、入口領域および/または出口領域は、好ましくは、平行に配置されるホイルのフローダクト間で流体の流れを分割するように構成される分配器要素を有し得る。特に、フローダクト間の流体の流れの均等な分配を達成するために、分配器要素は、好ましくは、複数の周期的に配置される隆起および窪みを間に有し得る。ここで、隆起は、好ましくは、ホイルの表面と同じレベルを想定する場合があり、窪みは、好ましくは、フローダクトと同じダクト深さを有し得る。分配器要素は、有利には、複数の平行なフローダクト間で流体の流れを分配する間の動作時の流れの不正確な分配を防止するのに特に役立ち得る。分配器要素は、フローダクトをホイルに導入するのと一緒に導入され得る。
【0049】
本発明の好ましい構成では、スタックの片面、好ましくは、両面にカバープレートが設けられ得る。ここで、カバープレートの少なくとも1つが、スタックのフローダクトに流体の流れを供給するための少なくとも1つの供給部と、スタックのフローダクトから流体の流れを取り除くためのドレインとを有することが可能である。供給部および/またはドレインの作製のために、カバープレートは、電源における使用の前に、まず、単独で対応するポートを有する場合があり、そこに供給部および/またはドレインが固定される。ここで、好ましくは、特に、圧縮リングシールまたはクランプリングシール、または溶接接合によって、パイプセクションへの硬質のはんだ接合および後続のパイプ接続を使用することが可能である。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、極低温の生成のための、およびエネルギー源からアプリケーションへか、またはアプリケーションからエネルギー源への電気エネルギーの輸送のための装置に関し、当該装置は、温暖領域および低温領域を有する少なくとも1つの冷却ステージを含み、冷却ステージのためにそれぞれ構成される冷却剤混合物およびエネルギー源が温暖領域に提供され、冷却剤混合物は異なる沸点温度を有する少なくとも2つの成分を含み、少なくとも1つの冷却ステージの低温領域は、
上記または下記の少なくとも1つの電源であって、冷却ステージの温暖領域から高圧レベルで冷却剤混合物を受容するための少なくとも1つの第1の流路および冷却ステージの低温領域から低圧レベルで冷却剤混合物を受容するための少なくとも1つの第2の流路を有し、第1の熱交換器として同時に具現化される、少なくとも1つの電源と、
冷却剤混合物を低圧レベルまで膨張および冷却するように構成される少なくとも1つの膨張ユニットと、
電気エネルギーを受容するおよび/または電気エネルギーを放出するように構成されるアプリケーションとを含む。
【0051】
ここで、好ましくは、極低温のために構成され、極低温を生成する役割を果たすように意図される少なくとも1つの冷却ステージの低温領域を、クリオスタットに、特に、真空断熱クリオスタットに導入することが可能である。
【0052】
まず、当該冷却ステージの低温領域は、特に、向流式熱交換器として設計される第1の熱交換器として同時に構成される、上または下で詳細に説明される少なくとも1つの電源を含む。「熱交換器」との用語は、物質の少なくとも1つの高圧流から物質の少なくとも1つの低圧流への熱エネルギーの伝達をもたらすように構成される任意の構成のユニットを指す。「熱エネルギー」との用語は、ここでは、それぞれの物質の流れにおけるエネルギーに関し、これは、特に、当該物質の流れの関数として記述され得る。本発明に関連して、物質の少なくとも1つの高圧流および物質の少なくとも1つの低圧流の両方は、それぞれの冷却ステージのためにここで使用される冷却剤混合物を含み、ここで、物質の流れは、(1つまたは複数の)冷却剤混合物の温度が互いに異なる。さらに、物質の少なくとも1つの高圧流は、冷却されるガス流または液化されるガス流を含み得る。最低レベルでの物質の少なくとも1つの低圧流は、各ケースにおいて、熱交換器の各セクションで最も低い温度を有し、その後、予冷却のための随意の上流ステージの物質の少なくとも1つの低圧流の温度を有する。物質の少なくとも1つの高圧流は、熱交換器の各セクションにおいて物質の少なくとも1つの低圧流の温度よりも高い温度を有する。また、「向流式熱交換器」との用語は、物質の高圧流が物質の低圧流の方向とは反対の方向を想定する、特定のタイプの熱交換器に関する。したがって、有利には、物質の特に低温の流れが、物質の特に温暖の流れと交わることが可能であり、それによって、物質の少なくとも1つの高圧流から物質の少なくとも1つの低圧流への熱エネルギーの伝達が、最大効率でなされ得る。
【0053】
したがって、当該冷却ステージの低温領域によって本発明に従って包含される第1の熱交換器は、「高圧側」と呼ばれる第1のサブ領域および「低圧側」と呼ばれる第2のサブ領域を有し、高圧側は、当該冷却ステージの温暖領域から冷却剤混合物および随意にガス流を受容するように構成され、当該冷却ステージの温暖領域に冷却剤混合物を放出するように構成される。したがって、関連する温暖領域から高圧側に供給される冷却剤混合物は、関連する温暖領域への放出のために低圧側に供給される冷却剤混合物と比較して、より高い温度を有する。結果として、低圧側に供給される冷却剤混合物は、関連する温暖領域から高圧側に供給される冷却剤混合物および随意に供給されるガス流の冷却に大きく寄与し、優先的に使用される向流式熱交換器を介する熱エネルギーの伝達は、より効率的になされ得る。当該ステージの高圧側からの熱エネルギーに加えて、当該ステージの低圧側の冷却剤混合物は、物質のさらなる流れから、たとえば下流の冷却ステージの高圧側から、または冷却または液化されるガス流の冷却または液化から熱エネルギーを吸収し得る。
【0054】
冷却剤混合物は、高圧側において高圧レベルで第1の熱交換器に入り、一方で、冷却剤混合物は、低圧側において低圧レベルで提供される。「高圧レベル」との表現は、ここでは、付随する冷却剤混合物がさらされる圧力レベルを指し、その圧力は、低圧側に供給される冷却剤混合物がさらされる圧力値を超える値を有する。特に、ここでの冷却ステージの高圧レベルは、1バール、好ましくは、10バール、より好ましくは、25バール、最大150バールまで、好ましくは、25バールまで、より好ましくは、20バールまでの絶対圧力を有する場合があり、一方で、冷却ステージの低圧レベルは、100ミリバール、好ましくは、1バール、より好ましくは、2バール、最大50バールまで、好ましくは、10バールまで、より好ましくは、5バールまでの絶対圧力を有し得る。しかし、特に、それぞれの冷却ステージに使用される冷却剤混合物に応じて、高圧レベルと低圧レベルの両方について他の値も可能である。
【0055】
さらに、当該冷却ステージの低温領域は、低圧レベルまでの冷却剤混合物の膨張および冷却のために構成される少なくとも1つの膨張ユニットを含む。ここで、正の値を仮定した式(1)によって定義される冷却剤混合物のジュール-トムソン係数μJTを用いた、好ましくは、ジュール-トムソン効果を介する冷却剤混合物の所望の冷却を達成することが可能である。したがって、少なくとも1つの膨張ユニットの効果は、第1に、高圧レベルから低圧レベルへの、冷却剤混合物がさらされる圧力の低下であり、第2に、冷却剤混合物の所望のさらなる冷却である。ここで、少なくとも1つの膨張ユニットは、好ましくは、膨張弁、スロットルキャピラリ、ダイアフラム、および焼結体から選択され得る。しかし、異なる膨張ユニットの使用も考えられる。
【0056】
さらに、少なくとも1つの冷却ステージの低温領域は、好ましくは、低温領域に配置されるアプリケーション、好ましくは、超伝導体アプリケーションを冷却するように構成される少なくとも1つの第2の熱交換器を含み得る。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、エネルギー源からアプリケーションにまたはアプリケーションからエネルギー源に電気エネルギーを輸送するように構成される、電源、特に、上記または下記の電源を製造する方法に関し、ここで、エネルギー源は温暖領域に配置され、アプリケーションは低温領域に配置され、当該方法は、
a)少なくとも2つのホイルを用意するステップであって、各ホイルが電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含み、各ホイルが、各端部に、エネルギー源から電気エネルギーを受容するか、または電気エネルギーをアプリケーションに放出するように構成される電気端子を有する、少なくとも2つのホイルを用意するステップと、
b)少なくとも2つのホイルへの流体の流れを受容するように構成される複数のフローダクトを導入するステップと、
c)少なくとも2つのホイルをスタックの形態で配置し、少なくとも2つのホイルを拡散溶接するステップであって、低温領域における各ホイルの電気端子が溶接されないままである、少なくとも2つのホイルを配置および拡散溶接するステップとを含む。
【0058】
ここで、複数のフローダクトは、ステップb)において、好ましくは、エッチング法によるか、またはマイクロエッチングによって、少なくとも2つのホイルに導入され得る。上述のように、流体の流れは、好ましくは、冷却剤混合物または冷却されるガス流または液化されるガス流を含み得る。
【0059】
温暖領域のホイルの電気端子は、互いに溶接され得るが、対照的に、低温領域のホイルの電気端子は溶接されないままであるため、前述のように、高温超伝導体が、有利な方法で、個別に接触され得る。
【0060】
ここで、ステップc)におけるスタックの形態での少なくとも2つのホイルの配置は、好ましくは、スタックの少なくとも一方側での少なくとも1つのカバープレートの、好ましくは、スタックの各側でのカバープレートのそれぞれの取り付けを含む場合があり、ここで、少なくとも2つのホイルの拡散溶接は、少なくとも1つのカバープレート、好ましくは、2つのカバープレートも含み、当該方法は、
d)各ケースにおいて、流体の流れを供給するように構成される少なくとも1つの供給部、および流体の流れをカバープレートの少なくとも1つに排出するように構成される少なくとも1つのドレインを導入するステップをさらに含む。
【0061】
さらに、本発明の方法は、好ましくは、
e)アプリケーションに電気エネルギーを放出するように構成される低温端で、ホイルの電気端子上に、少なくとも1つの高温超伝導体を配置するステップをさらに有し得る。
高温超伝導体は、特に、ここではストリップまたはケーブルとして構成され得る。
【0062】
本発明の方法および本明細書で使用される用語に関連するさらなる詳細については、本発明の電源の説明が参照される。
【0063】
さらなる態様では、本発明は、極低温の生成、冷却用の電気エネルギーの輸送、および15K~90Kの温度での高温超伝導体の操作のための装置の使用に関する。
【0064】
本発明の使用に関連するさらなる詳細については、本発明の装置の説明が参照される。
【0065】
本発明の電源、その製造のための方法、および極低温の生成およびエネルギー源からの電気エネルギーの輸送のための装置、ならびにその使用は、既知の電源、付随する方法、および対応する装置に勝る多くの有利な点を有する。本明細書で提案される電源は、均一なコンポーネントとして、電力供給および熱伝達を同時に含む二重の機能を担っている。したがって、特に、先行技術と比較して、直接的に熱に変換され得る場所での結果として生じる電力の損失を避けることを可能にする、著しくよりコンパクトでより効率的な電源を提供することが可能である。ここでは、各ケースにおいて可能な限り高い温度レベルで熱を取り除くことが可能であり、それにより、電源の低温端での排他的冷却、段階的冷却、またはガス流による冷却と比較して、効率が向上する。
【0066】
本発明のさらなる詳細および特徴は、特に、従属請求項と併せて、以下の好ましい実施例の説明から明らかになる。ここでは、それぞれの特徴を、単独で、または2つまたはそれ以上を組み合わせて実施することが可能である。しかし、本発明は、実施例に限定されない。実施例は、以下の図面に概略的に示されている。これに関連して、図面中の同一の参照番号は、同じであるか、もしくは同じ機能を有する要素、またはそれらの機能に関して互いに対応する要素を示している。
【0067】
個々の図面は、以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1a】本発明の電源の好ましい実施例の概略図である。
【
図1b】本発明の電源の好ましい実施例の概略図である。
【
図2a】本発明の電源のスタック内のホイルの配置の好ましい実施例の概略図である。
【
図2b】本発明の電源のスタック内のホイルの配置の好ましい実施例の概略図である。
【
図3a】本発明の電源のホイルのうちの1つにおけるフローダクト間の冷却剤混合物の分割のための入口領域または出口領域における分配器要素の好ましい実施例の概略図である。
【
図3b】本発明の電源のホイルのうちの1つにおけるフローダクト間の冷却剤混合物の分割のための入口領域または出口領域における分配器要素の好ましい実施例の概略図である。
【
図3c】本発明の電源のホイルのうちの1つにおけるフローダクト間の冷却剤混合物の分割のための入口領域または出口領域における分配器要素の好ましい実施例の概略図である。
【
図4a】極低温の生成および電気エネルギーの輸送のための1ステージ装置の好ましい実施例の概略図であり、装置は、本発明による電源を備える。
【
図4b】極低温の生成および電気エネルギーの輸送のための1ステージ装置の好ましい実施例の概略図であり、装置は、本発明による電源を備える。
【
図4c】極低温の生成および電気エネルギーの輸送のための1ステージ装置の好ましい実施例の概略図であり、装置は、本発明による電源を備える。
【
図5a】極低温の生成および電気エネルギーの輸送のための2ステージ装置の好ましい実施例の概略図であり、装置は、本発明による電源を備える。
【
図5b】極低温の生成および電気エネルギーの輸送のための2ステージ装置の好ましい実施例の概略図であり、装置は、本発明による電源を備える。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1aおよび1bはそれぞれ、本発明の電源110の好ましい実施例の概略図を分解図の形態で示している。ここで、各ケースにおいて、冷却剤混合物のための供給部および/またはドレインの接続のために設けられた4つのポート114、114’、114’’、114’’’を有する上部カバープレート112と下部カバープレート116との間に、スタック118への組み込みのために同様に構成される、複数のホイル120、および2つの個別のホイル120’、120’’(
図1a)または3つの個別のホイル120’、120’’、120’’’を含むスタック118が描かれている。
【0070】
図1aおよび1bから明らかなように、ホイル120はそれぞれ、横方向の範囲に、それらの表面に、平行に互いに重ねて配置され、好ましくは、拡散溶接によって互いに結合され得る。特に、スタック118のすべてのホイル120は、好ましくは、スタック118において隣接して配置されるホイル120間で過剰になるのを回避するために、同じホイル長さおよび同じホイル幅を有し得る。また、スタック118において最大数のホイル120にわたって最大の均一性で電気エネルギーの流れを分配するために、スタック118におけるすべてのホイル120が好ましくは同じホイル厚さを有することがさらに可能である。好ましくは、ホイル120の数、ホイル長さ、ホイル幅、およびホイル厚さを、電源110によって輸送される電気エネルギーのレベルに調整することが可能である。上述のように、スタック118は、特に、10~100のホイル120を含み得るが、スタック118におけるホイル120の数に対する別の値も可能である。
【0071】
各ホイル120、120’、120’’、120’’’は、電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を有している。「導電性」との表現に関しては、上記の定義が参照される。この目的のために、導電性材料は、好ましくは、銅を含むが、他の導電性材料も同様に考えられ、各ホイル120、120’、120’’、120’’’の各横側に専用の電気端子を含んでいる。
図1aおよび1bによって示されるように、各ホイル120、120’、120’’、120’’’の第1の横側は、各ケースにおいて、エネルギー源から電気エネルギーを受容するための第1の電気端子122、122’、122’’、122’’’を有する場合があり、ホイル120、120’、120’’、120’’’の他方の横側は、各ケースにおいて、冷却されるアプリケーションに電気エネルギーを放出するための第2の電気端子124、124’、124’’、124’’’を有する場合があり、これは、このように提供される電気エネルギーを受容するように構成されており、ここで、各第1の電気端子122、122’、122’’、122’’’および各第2の電気端子124、124’、124’’、124’’’は、当該ホイルに包含されている。
【0072】
また、
図1aおよび1bに示されるように、電気端子はそれぞれ、導電端子ラグの形態で構成される場合があるため、各ホイル120、120’、120’’、120’’’の第1の電気端子122、122’、122’’、122’’’および第2の電気端子124、124’、124’’、124’’’の両方は、ホイル120、120’、120’’、120’’’の本体の残りの部分と比較して、好ましくは、可動であり、少なくとも部分的に先細る構成を有する導電端子部分を有している。しかし、ホイル120、120’、120’’、120’’’の電気端子の配置および構成の他のモードも考えられる。
【0073】
図1aおよび1bのダイアグラムから例示的なホイル120’、120’’において特に容易に明らかなように、各ホイル120、120’、120’’、120’’’は、それぞれの個別のホイル120、120’、120’’、120’’’において冷却剤混合物を供給および/または排出するように構成される上部カバープレート112の4つのポート114、114’、114’’、114’’’の下に配置される通路126、126’、126’’を有している。ホイル120’における通路126’と126’’’との間およびホイル120’’における通路126と126’’との間の両方に、好ましくは、複数のフローダクト128が平行に配置され、好ましくは、ホイル120、120’、120’’、120’’’のホイル長さに沿って、表面の横方向の範囲にわたって、冷却剤混合物を間に案内するための複数の周期的に配置される窪みおよび隆起が、各ホイル120、120’、120’’、120’’’に導入される。フローダクト128の配置および構成の詳細については、上記の説明および
図2aおよび2bにおける表示が参照される。
【0074】
また
図1aおよび1bに示されるように、通路126’と126’’’との間、および通路126と126’’との間、およびそれぞれの付随する複数のフローダクト128間には、各ケースにおいて、フローダクト128のための入口領域130および出口領域130’があり、ホイル120、120’、120’’、120’’’における入口領域130および出口領域130’の配置の選択は、電源110の動作の際に選択される複数のフローダクト128を通る冷却剤混合物の流れ方向に依存する。
図1aおよび1bによるダイアグラムでは、入口領域130および出口領域130’の両方はそれぞれ、ホイル120、120’、120’’、120’’’のフローダクト128間の通路126、126’、126’’、126’’’の少なくとも1つによって提供される冷却剤混合物の分割、好ましくは、均一な分割のために構成される分配器要素132、132’を有している。分配器要素132、132’の配置および構成に関連する詳細については、上記の説明ならびに
図3aおよび3bにおける表示が参照される。
【0075】
図2aおよび2bは、本発明の電源110のスタック118内のホイル120、120’、120’’、120’’’およびフローダクト128の配置の好ましい実施例の概略図を示している。ここで示されているように、スタック118に含まれるホイル120、120’、120’’、120’’’は、好ましくは、冷却ステージの温暖領域から高圧レベルで冷却剤混合物を受容するように構成される第1の流路134、および冷却ステージの低温領域から低圧レベルで冷却剤混合物を受容するように構成される第2の流路134’を含んでいる。
【0076】
図2aは、スタック118におけるホイル120、120’、120’’、120’’’の配置の第1の好ましい順序の概略図を示している。この配置では、スタック118における隣接して積み重ねられるホイル120、120’’または120’、120’’’のフローダクト128は、第1の流路134および第2の流路134’として交互に具現化されている。
【0077】
図2bは、スタック118におけるホイル120、120’、120’’、120’’’の配置のさらに好ましい順序の概略図を示している。この交互の配置では、スタック118における2つの隣接して積み重ねられるホイル120’、120’’のフローダクト128が、低圧レベルで冷却剤混合物の蒸気相および液相を別々に受容するための第2の流路134’および第3の流路134’’として具現化され、一方で、それぞれの隣接するさらなるホイル120、120’’’は、高圧レベル範囲で冷却剤混合物を受容するための第1の流路134を有している。それに隣接して、スタック118が、対応するようにさらに構成され得るか、または
図2による実施例に従って継続し得る。
【0078】
スタック118におけるホイル120、120’、120’’、120’’’の配置のさらに好ましい順序(図示せず)では、スタック118における2つの隣接して積み重ねられるホイル120’、120’’のフローダクト128が、高圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第1の流路134として具現化され得、一方で、それぞれの隣接するさらなるホイル120、120’’’が、低圧レベルで冷却剤混合物を受容するための第2の流路134’を有し得る。さらに、スタック118におけるホイル120、120’、120’’、120’’’の配置のさらなる構成が考えられる。
【0079】
図3a~3cは、本発明の電源110のホイル120のうちの1つにおけるフローダクト128間で冷却剤混合物を分割するための入口領域130または出口領域130’における分配器要素132に対する好ましい実施例の概略図を示している。特に、ホイル120内のフローダクト128間の入口領域130における冷却剤混合物の均等な分配を達成するために、図示されるように、分配器要素132は、好ましくは、複数の周期的に配置される隆起136および窪み138を間に有し得る。好ましくは、隆起136が、ここでは、ホイル120の表面と同じレベルを呈し得、一方で、窪み138が、好ましくは、フローダクト128と同じダクト深さを有し得る。分配器要素132、132’は、有利には、特に、複数の平行なフローダクト128間の流れの分配中の動作時に流れの不正確な分配を防止する役割を果たし得る。
【0080】
図4a~4cはそれぞれ、極低温の生成および装置140の温暖領域142に配置されるエネルギー源142から装置140の低温領域146に設置されるアプリケーション148への電気エネルギーの輸送のための1ステージ装置140の好ましい実施例の概略図を示し、これは、特に、少なくとも1つの高温超伝導体150または少なくとも1つの高温超伝導体150を含むコンポーネントを有している。温暖領域142は、好ましくは、周囲温度のために構成され、典型的に周囲温度に保たれるが、装置140の動作中に、低温領域146には典型的に極低温が存在している。「周囲温度」および「極低温」との用語については、上記の定義が参照される。
【0081】
温暖領域142では、冷却器152が、装置140のために構成される冷却剤の少なくとも2つの成分の混合物を含む冷却剤混合物を提供し、ここで、成分の少なくとも2つは、異なる沸点温度を有している。周囲温度から極低温への冷却剤混合物の冷却において最大効率を達成するために、少なくとも1つの高沸点成分および少なくとも1つの低沸点成分の両方を含む広沸点冷却剤混合物が使用される。上述したように、少なくとも1つの高沸点成分は、好ましくは、炭化水素およびフッ素化炭化水素から選択される場合があり、一方で、少なくとも1つの低沸点成分は、好ましくは、酸素、窒素、アルゴン、ネオン、水素、およびヘリウムから選択され得る。しかし、他の物質も可能である。
【0082】
図4a~4cに示されるように、本発明の装置140は、
図1~3cについてより具体的に上記したように、低温領域146に配置される2つの電源110、110’を備えている。温暖領域142から低温領域146への温暖冷却剤混合物の導入は、
図4a~4cによる説明図において、向流式熱交換器として設計され、同時に、第1の熱交換器158、158’としてそれぞれ具現化される電源110、110’の高圧側156、156’へと各ケースにおいて開口する、各ケースにおける少なくとも1つの供給部154、154’によって高圧レベルでもたらされる。さらに、各それぞれの第1の熱交換器158、158’は、各ケースにおいてドレイン162、162’によって、低温冷却剤混合物を温暖領域142に放出するように設計される低圧側160、160’を有している。したがって、各高圧側156、156’の温暖領域142から中に供給される温暖冷却剤混合物は、温暖領域142への放出のために各低圧側160、160’に提供される冷却剤混合物と比較して、より高い温度を有している。その結果、各低圧側160、160’に提供される低温冷却剤混合物は、各高圧側156、156’の温暖領域142から中に供給される温暖冷却剤混合物の冷却に大きく寄与し、向流式熱交換器を介する熱エネルギーの伝達は、温暖領域124からの各高圧側156、156’の温暖冷却剤混合物が、各低圧側160、160’に提供される低温冷却剤混合物の方向と反対の方向に流れるという点で、より効率的になされ得る。
【0083】
既に各第1の熱交換器158、158’において各高圧側156、156’で部分的に冷却された、温暖領域142から最初に中に供給される冷却剤混合物は、続いて、それぞれのさらなる導管164、164’を通って、ここでは膨張弁として設計されるそれぞれの膨張ユニット166、166’に進む。しかし、スロットルキャピラリ、ダイアフラム、または焼結要素としての膨張ユニット166、166’の代替的な設計も可能である。膨張ユニット166、166’は、同様に低温領域146にもあり、冷却剤混合物を低圧レベルまで冷却するように構成されている。ここで、式(1)によって定義される冷却剤混合物のジュール-トムソン係数μJTが、装置146の低温側146の温度で正の値を有するように、冷却剤混合物が調整されているので、膨張ユニット166、166’は、好ましくは、ジュール-トムソン効果によって冷却剤混合物の所望の冷却を達成するように構成され得る。したがって、膨張ユニット166、166’の効果は、第1に、高圧レベルから低圧レベルまでの冷却剤混合物が曝される圧力の低下であり、第2に、冷却剤混合物の所望のさらなる冷却である。
【0084】
図1aおよび1bに関連して既に上述したように、電源110は、エネルギー源144から電流I+の形態で電気エネルギーを受容するための第1の電気端子122と、電気エネルギーをアプリケーション148に電流I+の形態で放出するための第2の電気端子124とを備え、このようにして提供される電気エネルギーを受容するように構成されている。
図4a~4cによる好ましい実施形態では、低温領域146でアプリケーション148と対向する電源110の第2の電気端子124は、高温超伝導体168に導電的に接続されている。高温超伝導体168は、有利には、ここでは、電源110の第2の電気端子124とアプリケーション148との間に配置されるので、電源110からアプリケーション148への電気エネルギーのさらなる輸送が、最小の損失で可能となる。高温超伝導体168は、特に、ここでは、ストリップまたはケーブルとして構成され得る。
【0085】
最終的に閉回路を得るために、類似した方法で、電気エネルギーは、低温領域146でアプリケーション148と対向する電源110’の第2の電気端子124’に導電的に接続される対応する高温超伝導体168’を介して、アプリケーション148から電源110’まで電流I-の形態で最小の損失でさらに輸送される。さらに、電源110’は、アプリケーション148から電源110’を介して、エネルギー源144に電流I-の形態で電気エネルギーを放出するように構成される第1の電気端子122’を備えている。
【0086】
図4aによる実施例と比較して、
図4bによる装置140の実施例は、低温領域146でアプリケーション148を冷却するように、それぞれが構成される2つの第2の熱交換器170、170’を有している。
図4bに示されるように、この目的のために、既に各高圧側156、156’で各第1の熱交換器158、158’において部分的に冷却された冷却剤混合物は、それぞれのさらなる導管164、164’およびそれぞれの膨張ユニット166、166’を介して、それぞれの第2の熱交換器170、170’に至る。
【0087】
図4bによる実施例と比較して、
図4cによる装置140の実施例は、低温領域146に配置されるアプリケーション148を冷却するように構成される単一の第2の熱交換器170を有している。この目的のために、既に各高圧側156、156’で各第1の熱交換器158、158’において部分的に冷却された冷却剤混合物は、部分的に共有されるさらなる導管164を介して組み合わされ、唯一の膨張ユニット166を介して、唯一の第2の熱交換器170に案内される。類似した方法で、唯一の第2の熱交換器170からの冷却剤混合物は、第1の熱交換器158、158’の2つの低圧側160、160’間で分割され、したがって、温暖領域142に供給されて戻される。
【0088】
図5aおよび5bはそれぞれ、それぞれの装置140が、極低温の生成および装置140の温暖領域142に配置されるエネルギー源142から装置140の低温領域146に設置されるアプリケーション148への電気エネルギーの輸送のための2ステージ構成を有する、好ましい実施例の概略図を示している。
【0089】
図4aによる実施例と比較して、
図5aによる装置140の実施例は、温暖領域142において、予冷却のために構成される冷却剤の少なくとも2つの成分の混合物を含むさらなる広沸点冷却剤混合物を提供する予冷器172を有し、ここで、成分の少なくとも2つは、異なる沸点温度を有している。温暖領域142から低温領域146へのさらなる冷却剤混合物の導入は、同時に第1の熱交換器158、158’としてそれぞれ具現化される電源110、110’の高圧側156、156’へと各ケースにおいて開口する、各ケースにおけるさらなる供給部174、174’によって高圧レベルでもたらされる。結果として既に部分的に冷却されたさらなる冷却剤混合物は、続いて、それぞれのさらなる導管176、176’を通ってそれぞれのさらなる膨張ユニット178、178’に至る。温暖領域142への低温冷却剤混合物の放出は、それぞれのさらなるドレイン180、180’によって第1の熱交換器158、158’のそれぞれの低圧側160、160’を介してもたらされる。さらに、
図5aによる装置140の実施例は、
図4aによる実施例と比較して、低温領域146において、特に、それぞれの電源110’’、110’’’をさらに冷却するために、さらなる第1の熱交換器158’’、158’’’として同時に使用されるさらなる電源110’’、110’’’を有している。
【0090】
図5aによる実施例と比較して、
図5bによる同様の2ステージ装置140の実施例は、低温領域146でアプリケーション148を冷却するように、それぞれが構成される2つの第2の熱交換器170、170’を有している。この目的のために、既に各第1の熱交換器158、158’、158’’、158’’’において部分的に冷却された冷却剤混合物は、それぞれのさらなる導管164、164’およびそれぞれの膨張ユニット166、166’を介して、それぞれの第2の熱交換器170、170’に至る。
【符号の説明】
【0091】
110、110’... 電源
112 上部カバープレート
114、114’... ポート
116 下部カバープレート
118 スタック
120、120’... ホイル
122、122’... 第1の電気端子
124、124... 第2の電気端子
126、126’... 通路
128 フローダクト
130 入口領域
130’ 出口領域
132、132’ 分配器要素
134 第1の流路
134’ 第2の流路
134’’ 第3の流路
134’’’ 第4の流路
136 隆起
138 窪み
140 装置
142 温暖領域
144 エネルギー源
146 低温領域
148 アプリケーション
150 高温超伝導体
152 冷却器
154、154’ 供給部
156、156’ 高圧側
158、158’... 第1の熱交換器
160、160’ 低圧側
162、162’ ドレイン
164、164’ さらなる導管
166、166’ 第1の膨張ユニット
168、168’ 高温超伝導体
170 第2の熱交換器
172 予冷器
174、174’ さらなる供給部
176、176’ さらなる導管
178、178’ さらなる膨張ユニット
180、180’ さらなるドレイン
【手続補正書】
【提出日】2022-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー源(144)からアプリケーション(148)への、または前記アプリケーション(148)から前記エネルギー源(144)への、電気エネルギーの輸送のための電源(110、110’ ...)であって、
前記エネルギー源(144)が、温暖領域(142)に配置され、
前記アプリケーション(148)が、低温領域(146)に配置され、
前記電源(110、110’)が、少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を備えるスタック(118)を有し、
各ホイル(120、120’ ...)が、前記電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含み、
各ホイル(120、120’ ...)が、前記電気エネルギーを受容するか、または前記電気エネルギーを放出するように構成される電気端子を有し、
各ホイル(120、120’ ...)が、流体の流れを案内するための複数のフローダクト(128)を備え、
前記流体の流れが、冷却剤混合物、または、冷却されるガス流もしくは液化されるガス流を含み、
前記スタック(118)に含まれる前記ホイル(120、120’ ...)が、前記温暖領域(142)から高圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第1の流路(134)と、前記低温領域(146)から低圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第2の流路(134’)を有する、
電源(110、110’ ...)。
【請求項2】
前記ホイル(120、120’ ...)は、
前記低温領域(146)から低圧レベルで前記冷却剤混合物の蒸気相を受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第3の流路(134’’)と、
前記温暖領域(142)から前記冷却されるガス流または前記液化されるガス流を受容するように構成される、前記フローダクト(128)を通る第4の流路(134’’’)と
から選択される少なくとも1つのさらなる流路(134’’、134’’’)を有する、
請求項1記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項3】
スタック(118)の各ホイル(120、120’ ...)におけるすべてのフローダクト(128)は、前記温暖領域(142)から前記流体の流れを受容するか、または前記低温領域(146)から低圧レベルで前記流体の流れを受容するかのいずれか一方であるように構成される、
請求項1または2に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項4】
前記スタック(118)において隣接して積み重ねられるホイル(120、120’ ...)のフローダクト(128)が、高圧レベルで前記流体の流れを受容し、低圧レベルで前記流体の流れを受容するように交互に構成されるか、
または
前記スタック(118)において2つ以下の隣接して積み重ねられるホイル(120’、120’’)のフローダクト(128)が、高圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成され、隣接するさらなるホイル(120、120’’’)が、低圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成されるか、
または
前記スタック(118)において2つ以下の隣接して積み重ねられるホイル(120、120’ ...)のフローダクト(128)が、低圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成され、隣接するさらなるホイル(120、120’’’)が、高圧レベルで前記流体の流れを受容するように構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項5】
前記フローダクト(128)はそれぞれ、各ホイル(120、120’ ...)の一方側に導入され、
隣接して積み重ねられるホイル(120、120’ ...)は、前記フローダクト(128)における開口部が互いに離れて向いて配置されるように前記スタック(118)に導入される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項6】
各ホイル(120、120’ ...)は、前記フローダクト(128)のための入口領域(130)および出口領域(130’)を有し、
少なくとも前記入口領域(130)または前記出口領域(130’)は、前記流体の流れを前記ホイル(120、120’ ...)の前記フローダクト(128)間において分割するように構成される分配器要素(132、132’、132’’、132’’’)を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項7】
前記スタック(118)の少なくとも一方側に、カバープレート(112、116)が設けられ、
各ケースにおける前記カバープレートの少なくとも1つ(112)は、前記流体の流れを供給するための少なくとも1つの供給部、および前記流体の流れを取り除くためのドレインを有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項8】
前記導電性材料は、銅、アルミニウム、または真鍮から選択される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)。
【請求項9】
極低温の生成のため、およびエネルギー源(144)からアプリケーション(148)への電気エネルギーの輸送、または前記アプリケーション(148)から前記エネルギー源(144)へのエネルギーの輸送のための装置(140)であって、
温暖領域(142)および低温領域(146)を有する少なくとも1つの冷却ステージを含み、
前記冷却ステージのために構成される冷却剤混合物および前記エネルギー源(144)が前記温暖領域(142)に提供され、
前記冷却剤混合物が、異なる沸点温度を有する少なくとも2つの成分を含み、
前記少なくとも1つの冷却ステージの前記低温領域(146)が、
請求項1~8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電源(110、110’ ...)であって、前記少なくとも1つの電源(110、110’ ...)が、第1の熱交換器(158、158’、158’’、158’’’)として同時に具現化される、少なくとも1つの電源(110、110’ ...)と、
前記冷却剤混合物を膨張させ、前記冷却剤混合物を低圧レベルに冷却するように構成される、少なくとも1つの第1の膨張ユニット(166、166’、166’’、166’’’)と、
前記電気エネルギーを受容する
こと、または、前記電気エネルギーを放出する
ことの少なくとも1つを行うように構成される、アプリケーション(148)と
を備える、
装置(140)。
【請求項10】
前記アプリケーション(148)を冷却するように構成される第2の熱交換器(170、170’ ...)をさらに備える、
請求項9記載の装置(140)。
【請求項11】
15K~90Kの温度での高温超伝導体(168、168’)の冷却のため、および動作のための請求項9または10に記載の装置(140)の使用。
【請求項12】
電源(110、110’ ...)に関する請求項1~8のいずれか1項に記載の電源(110、110’ ...)を製造する方法であって、
前記電源(110、110’ ...)が、電気エネルギーをエネルギー源(144)からアプリケーション(148)に、または前記アプリケーション(148)から前記エネルギー源(144)に、輸送するように構成され、
前記エネルギー源(144)が、温暖領域(142)に配置され、
前記アプリケーションが(148)が、低温領域(146)に配置され、
前記方法は、
a)少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を用意するステップであって、各ホイル(120、120’ ...)が、電気エネルギーを輸送するように構成される導電性材料を含み、各ホイル(120、120’ ...)が、各端部に、電気エネルギーを受容するか、または前記電気エネルギーを放出するように構成される電気端子を有する、少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を提供するステップと、
b)前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)への流体の流れを受容するように構成される複数のフローダクト(128)を導入するステップと、
c)前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)をスタック(118)の形態で配置し、前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を拡散溶接するステップであって、前記低温領域(146)における各ホイル(120、120’ ...)の前記電気端子が溶接されないままでである、前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を配置および拡散溶接するステップと
を含む、
方法。
【請求項13】
前記複数のフローダクト(128)は、エッチング法によるか、またはマイクロエッチングによって、前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)に導入される、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記スタック(118)の形態で前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を配置することは、前記スタック(118)の少なくとも一方側上に少なくとも1つのカバープレート(112、116)を配置することを含み、
前記少なくとも2つのホイル(120、120’ ...)を拡散溶接することは、前記少なくとも1つのカバープレート(112、116)を含み、
前記方法が、
d)各ケースにおいて、前記流体の流れを前記カバープレート(112、116)の少なくとも1つに供給する
こと、または、前記カバープレート(112、116)の少なくとも1つから取り除く
ことの少なくとも1つを行うように構成される、少なくとも1つのポート(114、114’、114’’、114’’’)を導入するステップ
をさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、
e)前記アプリケーション(148)に前記電気エネルギーを放出するか、または前記アプリケーション(148)から前記電気エネルギーを受容するように構成される、前記ホイル(120、120’ ...)の前記電気端子上に、少なくとも1つの高温超伝導体(168、168’)を配置するステップ
をさらに含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】