(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(54)【発明の名称】微生物の識別及び分類
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20230523BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230523BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230523BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G01N27/62 V
C12Q1/04
C12M1/34 B
G01N1/00 101G
G01N27/62 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565534
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021029308
(87)【国際公開番号】W WO2021222182
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】シアビナート エバーリン,リビア
(72)【発明者】
【氏名】ポヴィライティス,シドニー
(72)【発明者】
【氏名】サンズ エスコフェ,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ジアリン
(72)【発明者】
【氏名】カークパトリック,リンジー エム.
【テーマコード(参考)】
2G041
2G052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA03
2G041FA10
2G041FA12
2G041GA09
2G041GA19
2G041LA06
2G041LA12
2G052AA36
2G052AD29
2G052CA02
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2G052GA29
2G052JA07
4B029AA07
4B029BB01
4B029BB02
4B029FA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ05
4B063QQ06
4B063QS10
4B063QS14
4B063QX10
(57)【要約】
一般的な態様では、微生物(例えば、細菌など)が識別及び検出される。いくつかの例では、液体溶媒が、サンプリングプローブの第1のチャネルを通してサンプリングプローブの内部リザーバに供給され、内部リザーバ内の一定体積の液体溶媒が、ある期間にわたって、サンプル表面と直接接触して保持されて、液体分析物を形成し、ガスがサンプリングプローブの第2のチャネルを通して内部リザーバに供給され、液体分析物がサンプリングプローブの第3のチャネルを通して内部リザーバから抽出され、液体分析物が質量分析計に移送され、質量分析計が液体分析物を処理して、質量分析データを生成し、質量分析データが分析されて、サンプル表面に存在する微生物(例えば、細菌、真菌、又は他のタイプの微生物)を検出及び識別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
サンプリングプローブの第1のチャネルを通して、液体溶媒を前記サンプリングプローブの内部リザーバに供給することと、
前記内部リザーバ内の一定体積の液体溶媒を、ある時間にわたって、サンプル表面と直接接触させて保持して、前記サンプリングプローブ内に液体分析物を形成することと、
前記サンプリングプローブの第2のチャネルを通して、ガスを前記サンプリングプローブの前記内部リザーバに供給することと、
前記サンプリングプローブの第3のチャネルを通して、前記内部リザーバから前記液体分析物を抽出することと、
前記サンプリングプローブから質量分析計に前記液体分析物を移送することと、
前記質量分析計の動作により、前記液体分析物を処理して、質量分析データを生成することと、
前記質量分析データを分析して、前記サンプル表面に存在する微生物を検出及び識別することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記質量分析データ及び統計モデルを使用して、前記微生物を分類することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のチャネルが、第1の移送管を通して、外部容器から前記液体溶媒を受容し、前記液体分析物が、第2の移送管を通して、前記サンプリングプローブから前記質量分析計に移送され、前記第2のチャネルが、前記サンプリングプローブの雰囲気から空気を受容する開口ポートを通して、前記ガスを受容する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記質量分析データを分析することが、前記サンプル表面に存在する細菌を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるStreptococcus(Str.)agalactiae菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるStr.pyogenes菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるStaphylococcus(S.)aureus菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるS.epidermidis菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるPseudomonas(P.)aeruginosa菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるSalmonella enterica菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるEscherichia coli菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるKingella(K.)kingae菌の存在を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記液体分析物が、前記サンプル表面の開放環境において、微小液滴又はエアロゾルを生成することなく形成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプリングプローブの前記第3のチャネルが、移送管によって前記質量分析計に結合され、前記内部リザーバから前記液体分析物を抽出することが、前記質量分析計に低圧を作成することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプリングプローブが、ハンドヘルドサンプリングプローブである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル表面が、組織部位を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル表面が、感染組織標本を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプル表面が、エクスビボ組織部位を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記サンプル表面が、インビボ組織部位を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
医療処置中に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項21】
外科的処置中に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項22】
前記組織部位が、患者に関連付けられており、前記方法が、前記質量分析データの前記分析から識別された前記微生物に基づいて、前記患者に対する治療を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記患者に前記治療を施すことを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
システムであって、
液体溶媒を含む容器と、
液体分析物を処理することによって、質量分析データを生成するように構成されている、質量分析計システムと、
前記質量分析データを分析して、サンプル表面に存在する微生物を検出及び識別するように構成されている、コンピュータシステムと、
サンプリングプローブであって、
一定体積の液体溶媒を、ある期間にわたって、前記サンプル表面に直接接触させて保持して、前記サンプリングプローブ内に前記液体分析物を形成するように構成されている、内部リザーバ、
前記液体溶媒を内部リザーバ内に連通させるように構成されている、第1のチャネル、
ガスを前記内部リザーバ内に連通させるように構成されている、第2のチャネル、及び
前記内部リザーバから前記液体分析物を連通させるように構成されている、第3のチャネル、を備える、サンプリングプローブと、
制御システムであって、
サンプリングプローブの前記第1のチャネルを通して、前記液体溶媒を前記内部リザーバに供給することと、
前記サンプリングプローブの前記第3のチャネルを通して、前記内部リザーバから前記液体分析物を抽出することと、
前記サンプリングプローブから前記質量分析計システムに前記液体分析物を移送することと、を含む動作を行うように構成されている、制御システムと、を備える、システム。
【請求項25】
前記コンピュータシステムが、前記質量分析データ及び統計モデルを使用して前記微生物を分類するように構成されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記容器から前記第1のチャネルに前記液体溶媒を連通させる第1の移送管と、
前記サンプリングプローブからの前記質量分析計に前記液体分析物を連通させる第2の移送管と、を備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記第2のチャネルが、前記サンプリングプローブの雰囲気から空気を受容する開放端部を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記一定体積が、前記内部リザーバの体積によって画定される、請求項24に記載のシステム。
【請求項29】
前記質量分析データを分析することが、前記サンプル表面に存在する細菌を識別することを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項30】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるStreptococcus(Str.)agalactiae菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるStr.pyogenes菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるStaphylococcus(S.)aureus菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるS.epidermidis菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項34】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるPseudomonas(P.)aeruginosa菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項35】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるSalmonella enterica菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項36】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるEscherichia coli菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項37】
前記サンプル表面に存在する細菌を識別することが、前記サンプル表面におけるKingella(K.)kingae菌の存在を識別することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項38】
前記プローブが、前記サンプル表面の開放環境において微小液滴又はエアロゾルを生成することなく前記液体分析物を形成するように構成されている、請求項24~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記サンプリングプローブから前記質量分析計に前記液体分析物を連通させる移送管を備え、前記内部リザーバから前記液体分析物を抽出することが、前記質量分析計に低圧を作成することを含む、請求項24~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記サンプリングプローブが、ハンドヘルドサンプリングプローブである、請求項24~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記ハンドヘルドサンプリングプローブが、幾何学的又は空間的制約なしに使用を可能にするように構成されている、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記サンプル表面が、組織部位を含む、請求項24~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記サンプル表面が、感染組織標本を含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記サンプル表面が、エクスビボ組織部位を含む、請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
前記サンプル表面が、インビボ組織部位を含む、請求項42に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Identifying and Classifying Microorganisms」と題する、2020年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/016,129号、及び「Identifying and Classifying Microorganisms」と題する、2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/032,394号の優先権を主張する。上記参照の優先権文書の各々は、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
以下の説明は、微生物の識別及び分類に関する。
【0003】
微生物の識別は、例えば、環境汚染物質の検出、疾病サーベイランス、及び適切な医療の提供のために、多くの状況において重要である。例えば、微生物の識別は、薬剤耐性(AMR)の拡大を防止しながら、患者の良好な転帰を促進するために抗生物質の処方を最適化する抗菌剤管理プログラムを実施するために重要である可能性がある。急性感染の患者は、広域スペクトルの抗生物質を受容することが多いが、これは効果がなく、かつAMRを促進する可能性があり、より重症度の低い疾患の患者は、標的の抗生物質療法を受容することができるまで最長72時間待つことがある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】例示的な微生物識別システムの概略図である。
【
図2】例示的な微生物識別システムの態様を示す概略図である。
【
図3】例示的な微生物識別システムにおけるサンプリングプローブの態様を示す概略図である。
【
図4A】8タイプの細菌の例示的な質量スペクトルである。
【
図5A】例示的な統計モデルの予測性能を示す概略図である。
【
図6A】例示的な統計モデルにおける分子イオンピーク及び分子イオンピークに関連付けられた統計的重みを示すプロットである。
【
図7A】類似性に基づくサンプルのクラスターを示す主成分分析散布図である。
【
図7D】それぞれの主成分に対する分子的特徴の影響力を示すローディングプロットである。
【
図8A】細菌サンプルにおいて識別された様々な分子の例示的なタンデム質量スペクトル及び構築された分子構造である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に説明されているもののいくつかの態様では、微生物の識別及び分類のための微生物識別システムは、サンプリングプローブ、制御システム、及び質量分析計を含む。サンプリングプローブは、制御システムから液体溶媒を受容して、分析物(サンプル表面から微生物の少なくとも一部を含み得る)を形成し、分析物を質量分析計に移送するために、サンプル表面(対象微生物を含むことができる)上に位置決めされ得る。サンプリングプローブから受容された分析物は質量分析計によって処理することができる。いくつかの実例では、統計モデルを用いて、サンプル表面に含まれる微生物を識別し、分類することができる。
【0006】
いくつかの実装態様では、本明細書に開示された方法及びシステムは、従来の技術に比べて技術的な利点及び改良を提供し得る。いくつかの実例では、本明細書に説明されている方法及びシステムは、多様なサンプリング及び微生物の直接的識別を提供し得る。いくつかの実例では、本明細書に説明されている方法及びシステムは、標的の抗生物質の開発を加速し得る。いくつかの実例では、本明細書に説明されている方法及びシステムは、臨床ケアにおける患者のための適切な標的の抗生物質の選択を加速し、可能にし得る。いくつかの実装態様では、本明細書に説明されている方法及びシステムは、患者の転帰を改善し、抗菌剤耐性の拡大を防止し得る。追加的に又は代替的に、経験豊富な専門家がこのような分析を行う必要なく、簡略化された動作ステップ及びシステム設計を利用し得る。いくつかの場合では、本明細書に説明されている方法及びシステムは、従来の技術に関連付けられたバイオハザードリスクを低減することができる。例えば、代替的な環境サンプリング質量分析(MS)技術(例えば、脱着エレクトロスプレーイオン化(DESI)MS、紙スプレーイオン化(PSI)MS及び急速蒸発イオン化(REI)MS)は、開放環境で感染性物質を含む微小滴又はエアロゾルを生成し、これは、分析者に重大なバイオハザードリスクをもたらすことがある。いくつかの場合では、これら及び潜在的な他の利点及び改良の組み合わせが取得され得る。
【0007】
いくつかの実装態様では、本明細書に説明されているシステム及び技術は、最小限のサンプル調製で迅速なタイムスケールで微生物の分子ベースの識別を可能にし、これは、病原性細菌の識別を促進し、従来の技術よりも他の利点を提供することができる。感染性病原体の迅速かつ正確な識別は、特異的及び標的の治療オプションの選択を可能にし、細菌感染の患者の転帰を改善するために重要である。広域スペクトル抗生物質による非特異的療法レジメンは、アレルギー反応、抗生物質関連下痢、細菌耐性の可能性、及びクロストリジウム・ディフィシレ大腸炎を含む、患者に対する多くの短期及び長期の副作用をもたらす可能性がある。標的の病原体特異的抗生物質は、より良好な患者転帰をもたらし、広域スペクトル抗生物質療法の否定的な結果の多くを避けるのに役立つことが多い。グラム型、属、種、及び株レベルでの識別は、より標的の抗生物質の選択を通知し、広域スペクトルの抗生物質の過剰使用を防止し得る。例えば、ほとんどの場合、グラム型の識別は中スペクトルのリンコサミド系抗生物質を処方するのに十分であるが、多くの狭域スペクトル抗生物質が、Staphylococcus aureusに対しては特異的に活性であるが、Staphylococcus epidermidis又はStreptococcus種に対しては活性でないアミノグリコシド系抗生物質のように、いくつかの種に対してのみ活性を有し得るため、種レベルの識別が最も有益である。更に、病原性細菌の株レベルの特徴付けは、菌力、抗菌剤耐性に関する洞察を提供することがあり、公衆衛生サーベイランスに特に有用である。臨床現場では、患者標本から細菌を分離し、少なくとも24時間培養した後、識別にいくつかの方法を使用することができる。従来、細菌識別のためのゴールドスタンダードは、一連の選択的増殖条件及び培地を使用して表現型に基づいて細菌を識別する培養及び血清学的アッセイである。これらの方法はかなりの専門知識を必要とし、時間及び労力を要し、標的の抗生物質を数日遅らせる可能性があり、その結果、多くの感染症が経験的に、又は広域スペクトル抗生物質で日常的に治療される。16SリボソームRNA配列に基づいて細菌を識別するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む分子ベースの方法は、細菌識別に必要な時間を数時間に短縮している。PCRは細菌識別のための興味深い代替案を提供するが、この方法は、ユーザの専門知識及び特異的で高価な試薬を必要とするため、依然として資源集約的である。したがって、細菌及び他の微生物の迅速な検出及び識別を提供するシステム及び方法は、これらの従来のアプローチよりも重要な利点を提供することができる。
【0008】
いくつかの実装態様では、サンプリングプローブは、プローブ先端部及びハウジングを含み得る。いくつかの実装態様では、プローブ先端部、例えば、
図3に示されるプローブ先端部302は、1つのマンドレル端部及び1つの円筒形端部を含み得る。例えば、テーパ付き円筒形形状のマンドレル端部を、細菌のような微生物を含有し得るサンプル表面に接触させるために使用し得る。例えば、円筒形端部を使用して、ハウジングの受容端部と係合させ得る。いくつかの実装態様では、プローブ先端部は、3つの内部経路及び内部リザーバを作成する3つの内部チャネルを含み得る。いくつかの例では、プローブ先端部は、液体供給チャネル(例えば、液体供給チャネル312)、液体抽出チャネル(例えば、液体抽出チャネル314)、及びガスチャネル(例えば、ガスチャネル316)を含み得る。いくつかの実装態様では、液体供給及び抽出チャネルは、制御システム及び質量分析計と流体連通を提供するように構成され得る。
【0009】
いくつかの実装態様では、液体供給チャネルは、外部容器から液体溶媒を受容し、液体溶媒をプローブ先端部で内部リザーバに案内し(液体溶媒は、開口部を通してサンプル表面に直接接触し得る)、内部リザーバの少なくとも一部を液体溶媒で満たすように構成されている。いくつかの実装態様では、液体抽出チャネルは、懸濁微生物を担持する液体溶媒の少なくとも一部を抽出することによって内部リザーバから分析物を得て、分析物を移送管に案内するように構成されている。
【0010】
いくつかの実装態様では、一定体積の液体溶媒がプローブ先端部に連通される。一定量の流体は、制御された時間にわたって、サンプル表面と直接接触しながら、内部リザーバ内に保持され、サンプル表面から分子を含む液体分析物を形成することができる。次いで、液体分析物は、分析のために、内部リザーバから液体抽出チャネルを通して(例えば、流体の単一の個別の液滴として)抽出され得る。いくつかの実例では、液体分析物は、サンプル表面を損傷しない非破壊的方法で、サンプリングプローブによって生成される。例えば、プローブは、組織に対する検出可能な損傷又は破壊を引き起こすことなく、組織部位又は組織サンプルから液体分析物を抽出し得る。
【0011】
いくつかの実装態様では、微生物識別システムは、細菌の分化及び識別のための微生物の分子プロファイルを含むことができる質量スペクトルデータを生成する質量分析計を含む。いくつかの実装態様では、微生物識別システムは、分子プロファイルに従って、属及び種レベルでのグループの分離を提供するための統計モデルを含む。いくつかの実例では、統計モデル、例えば、多重レベルLASSOモデルは、微生物識別システムと共に、グラム型、属、及び種レベルでの分離株の識別を可能にし得る。いくつかの実装態様では、微生物識別システムは、ヒトの膿液、脳脊髄液、感染骨組織又は他の生物学的標本から感染性病原体を直接識別するために使用され得る。
【0012】
図1は、例示的な微生物識別システム100の概略図である。
図1に示されるように、例示的なシステム100は、コンピュータシステム102、サンプリングプローブ104、制御システム106、及び質量分析計108を含む。いくつかの実装態様では、例示的なシステム100は、微生物、例えば、細菌、真菌、ウイルス、藻類、及び原虫の定性的及び定量的な識別及び分類のために使用され得る。いくつかの例では、例示的なシステム100は、追加の又は異なる構成要素を含み得、構成要素は、図示のように又は別の方法で配置され得る。
【0013】
いくつかの実装態様では、システム100は、生物学的サンプル(例えば、インビボ又はエクスビボ組織サンプル)、医療用具、産業機器及び施設、農業環境、又は他のタイプの材料又は機器を評価するために使用される。いくつかの場合では、システム100は、例えば、外科的処置中に、インビボ組織部位に存在する微生物を識別及び分類するために、医療環境において使用される。いくつかの場合では、システム100は、実験室環境で使用されて、例えば、被験体から収集されたエクスビボ組織サンプルを評価する。システムは、微生物の存在を識別するために、他の環境、例えば、食品又は薬物調製施設で使用され得る。
【0014】
図1に示す例では、コンピュータシステム102は、プロセッサ120、メモリ122、通信インターフェース128、表示デバイス130、及び入力デバイス132を含む。いくつかの実装態様では、コンピュータシステム102は、例えば、入力/出力コントローラ、通信リンク、電力などのような追加の構成要素を含み得る。いくつかの実例では、コンピュータシステム102は、制御システム106及び質量分析計108の動作パラメータを制御し、それらからデータを受信するように構成され得る。コンピュータシステム102は、液体溶媒をサンプリングプローブ104に送達するために、及び抽出された生体分子及び懸濁微生物を含む分析物のサンプリングプローブ102からの抽出を制御するために、制御システム106を制御するために使用することができる。いくつかの実装態様では、コンピュータシステム102は、
図2及び3に関して説明されているシステム及びプロセスのうちの1つ以上の態様を実装するために使用され、又は別のタイプの動作を行うために使用され得る。いくつかの実装態様では、コンピュータシステム102は、制御システム106に関連付けられ、これに特定の制御機能を提供する別個の制御ユニットを含む。いくつかの実例では、制御ユニットは、制御ユニット204として、又は別の方法で実装され得る。
【0015】
いくつかの実装態様では、コンピュータシステム102は、単一のコンピューティングデバイス、又は例示的なシステム100の残りの部分(例えば、制御システム106及び質量分析計108)に近接して動作する複数のコンピュータを含み得る。いくつかの実装態様では、コンピュータシステム102は、通信ネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネットワーク(例えば、インターネット)、衛星リンクを含むネットワーク、及びピアツーピアネットワーク(例えば、アドホックピアツーピアネットワーク)を通して通信インターフェース128を通して、例示のシステム100の残りの部分と通信し得る。
【0016】
いくつかの実装態様では、サンプリングプローブ104は、移送管を通して、制御システム106及び質量分析計108と流体連通を提供するように構成され得る。いくつかの実例では、サンプリングプローブ104は、制御システム106から液体溶媒を受容し、液体溶媒を微生物を有するサンプル表面に案内し、液体溶媒の少なくとも一部を抽出することによって分析物を得て、懸濁微生物を含む分析物を質量分析計108に送達し得る。いくつかの実装態様では、サンプリングプローブ104は、複数の内部液体/ガスチャネル及び内部リザーバ、例えば、
図3に示すようなチャネル312、314、316及び内部リザーバ318を含み得るプローブ先端部を含み得る。いくつかの実装態様では、サンプリングプローブ104は、生物学的に適合しており、使用される化学物質に対して耐性がある合成ポリマーのような材料で構成され得る。いくつかの例では、サンプリングプローブ104は、
図2~3に示されるように、又は別の方法でサンプリングプローブ202、300として実装され得る。
【0017】
例示的な制御システム106は、システム100内の流体の移動を制御する。いくつかの実装態様では、制御システム106は、機械的ポンピングシステム及び1つ以上の機械的弁を含み得る。いくつかの実例では、機械的ポンピングシステムは、コンピュータシステム102によって制御される機械的ポンプを含む。例えば、機械的ポンピングシステムは、
図2に示されるように、又は別の方法で機械的ポンピングシステム228として実装され得る。いくつかの実例では、制御システム106は、サンプリングプローブ104の内部リザーバへの液体溶媒の高精度のマイクロ流体分配を提供し得る。いくつかの実例では、制御システム106の制御ユニット(例えば、
図2の制御ユニット224)は、機械的ポンピングシステム及び1つ以上の機械的弁を制御することによって、サンプリングプロセスをトリガ及び制御するように構成され得る。いくつかの実例では、制御システム106の制御ユニットは、質量分析計108によるデータ収集プロセスを同時にトリガするように構成され得る。いくつかの実装態様では、液体溶媒は、滅菌水、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、イソプロピルアルコール、又は組み合わせを含み得る。いくつかの実装態様では、液体溶媒は、微生物細胞壁及び膜構造を破壊するための溶菌酵素又は他の化合物、若しくはイオン化促進のための酸若しくは塩基のような他の溶媒添加物、又は感受性試験のための抗生物質を含み得る。
【0018】
いくつかの実装態様では、懸濁微生物及び微生物から抽出された分子を担持する分析物は、質量分析計108によって受容され得る。いくつかの実装態様では、分析物は、質量分析計108内に低圧を作成することによって、サンプリングプローブ202から抽出され得る。例えば、質量分析計108に取り付けられた真空ポンプによって、低圧を作成することができる。いくつかの実装態様では、質量分析計の前に、分析物を収集し、イオン光学システムに送達し得る。いくつかの実例では、イオン光学システムは、分析物中の中性種を濾過し、イオンが通過することを可能にし、質量分析計108の汚染を除去するように構成され得る。いくつかの実装態様では、質量分析計108は、質量セレクタ及び質量分析計を含み得、これらは、イオン化された分析物中のイオン化生成物を、それらの質量電荷(m/z)比に従って分離し、識別するように構成されている。いくつかの実装態様では、質量分析計108は、質量スペクトルのセット(例えば、イオン化された生成物の強度とm/z比)をコンピュータシステム102に出力し得、これは、メモリ122に記憶され、プログラム126を動作させることによって分析され、結果は、ディスプレイ130上に更に表示され得る。いくつかの実装態様では、質量分析計108は、
図2に示されるように、又は異なる方法で質量分析計230として実装され得る。
【0019】
いくつかの実装態様では、本明細書に説明されているプロセス及び論理フローのいくつかは、例えば、1つ以上のプログラマブルプロセッサ、例えば、プロセッサ120によって自動的に実行され、1つ以上のコンピュータプログラムを実行して、入力データ上で動作し、出力を生成することによってアクションを行うことができる。例えば、プロセッサ120は、プログラム126に含まれるスクリプト、関数、実行可能なもの、又は他のモジュールを実行又は解釈することによって、プログラム126を動作させることができる。いくつかの実装態様では、プロセッサ120は、例えば、
図5に関して説明されている動作の1つ以上を行い得る。
【0020】
いくつかの実装態様では、プロセッサ120は、例として、プログラマブルデータプロセッサ、システムオンチップ、又は前述のものの複数若しくは組み合わせを含む、データを処理するための様々な種類の装置、デバイス、及び機械を含むことができる。特定の実例では、プロセッサ120は、ディープラーニングアルゴリズムを動作させるための例えば、アルデュイーノボード、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、又はグラフィック処理ユニット(GPU)などの特殊目的論理回路を含み得る。いくつかの実例では、プロセッサ120は、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムに対する実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームのランタイム環境、仮想マシン、又はそれらの1つ以上の組み合わせを構成するコードを含み得る。いくつかの例では、プロセッサ120は、例として、汎用及び特殊目的のマイクロプロセッサの両方、及び任意の種類のデジタルコンピュータのプロセッサを含み得る。
【0021】
いくつかの実装態様では、プロセッサ120は、汎用及び特殊目的のマイクロプロセッサの両方、及び任意の種類の量子又は古典的コンピュータのプロセッサを含み得る。一般に、プロセッサ120は、読み出し専用メモリ若しくはランダムアクセスメモリ、又はその両方、例えばメモリ122から命令及びデータを受信する。いくつかの実装態様では、メモリ122は、例として、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイスなど)、磁気ディスク(例えば、内部ハードディスク、リムーバブルディスクなど)、磁気光ディスク、並びにCD-ROM及びDVD-ROMディスクを含む、全ての形態の不揮発性メモリ、媒体及びメモリデバイスを含み得る。いくつかの場合では、プロセッサ120及びメモリ122を、特殊目的論理回路によって補足するか、又は特殊目的論理回路に組み込むことができる。
【0022】
いくつかの実装態様では、メモリ122に記憶されたデータ124は、動作パラメータ、標準参照データベース及び出力データを含み得る。いくつかの実例では、標準参照データベースは、不明な微生物の識別に使用され得る質量スペクトル参照ライブラリを含む。いくつかの実装態様では、プログラム126は、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、プログラム、関数、実行可能なもの、又はプロセッサ120によって解釈又は実行される他のモジュールを含むことができる。いくつかの実装態様では、プログラム126は、ディープラーニングアルゴリズムを行うための機械可読命令を含み得る。いくつかの実例では、プログラム126は、液体溶媒をサンプリングプローブに送達し、サンプリングプローブから分析物を収集するための機械可読命令を含み得る。いくつかの実例では、プログラム126は、メモリ122、別のローカルソース、又は1つ以上の遠隔ソースから(例えば、通信リンクを介して)入力データを取得し得る。いくつかの実例では、プログラム126は、出力データを生成し、出力データをメモリ122、別のローカル媒体、又は1つ以上のリモートデバイスに記憶し得る(例えば、通信ネットワーク106を介して出力データを送信することによって)。いくつかの例では、プログラム126(ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしても既知である)は、コンパイル型又はインタープリタ型言語、宣言型又は手続き型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書くことができる。いくつかの実装態様では、プログラム126は、コンピュータシステム102上で実行されるように展開することができる。
【0023】
いくつかの実装態様では、通信インターフェース128は、任意のタイプの通信チャネル、コネクタ、データ通信ネットワーク、又は他のリンクを含み得る通信ネットワークに接続され得る。いくつかの実例では、通信インターフェース128は、他のシステム又はデバイスとの通信を提供し得る。いくつかの実例では、通信インターフェース128は、様々な無線プロトコル、例えば、とりわけ、Bluetooth、Wi-Fi、近接場通信(NFC)、GSM音声コール、SMS、EMS、又はMMSメッセージング、無線標準(例えば、CDMA、TDMA、PDC、WCDMA、CDMA2000、GPRS)の下で無線通信を提供する無線通信インターフェースを含み得る。いくつかの例では、そのような通信は、例えば、無線周波数トランシーバ又は別のタイプの構成要素を通して発生し得る。いくつかの実例では、通信インターフェース128は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、スキャナなどの1つ以上の入力/出力デバイス又は、例えば、ネットワークアダプタを通してスイッチ又はルータなどのネットワーキングデバイスに接続することができる有線通信インターフェース(例えば、USB、Ethernet)を含み得る。
【0024】
いくつかの実装態様では、通信インターフェース128を、入力デバイス及び出力デバイス(例えば、表示デバイス130、入力デバイス132、又は他のデバイス)及び1つ以上の通信リンクに結合することができる。図示の例では、表示デバイス130は、ユーザ又は別のタイプの表示デバイスに情報を表示するためのコンピュータモニタである。いくつかの実装態様では、入力デバイス132は、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、マウス、トラックボール、タブレット、及びタッチセンシティブスクリーン)、又は別のタイプの入力デバイスであり、それによって、ユーザは、コンピュータシステム102に入力を提供することができる。いくつかの例では、コンピュータシステム102は、他のタイプの入力デバイス、出力デバイス、又はその両方(例えば、マウス、タッチパッド、タッチスクリーン、マイクロホン、モーションセンサなど)を含み得る。入力デバイス及び出力デバイスは、有線リンク(例えば、USBなど)、無線リンク(例えば、Bluetooth、NFC、赤外線、高周波など)、又は別のタイプのリンクなどの通信リンクを介して、アナログ又はデジタル形態でデータを送信及び受信することができる。
【0025】
いくつかの実装態様では、ユーザとの相互作用も提供するために他の種類のデバイスが使用され得、例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、任意の形態の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバックとすることができ、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力、又は触覚入力を含む任意の形態で受信することができる。例えば、サンプリングプローブ104は、検出プロセス(例えば、
図2に示すようなペダル226)を開始、中断、再開、又は終了するためのコントローラとして使用され得る制御要素(例えば、ボタン、ペダルなど)を含み得る。いくつかの実例では、グラフィックユーザインターフェース(GUI)を使用して、ユーザと微生物識別システム100との間の相互作用を提供し得る。特定の実例では、GUIは、コンピュータシステム102に通信可能に結合され得る。例えば、制御システム106が(例えば、
図2のペダル226を押すことによって)作動されるときに、GUIは、質量分析計108における分析プロセスを開始することができる。例えば、分析プロセスが完了すると、GUIは分析結果を有するレポートを出力することができる。
【0026】
図2は、例示的な微生物識別システム200の態様を示す概略図である。
図2に示す例では、例示的なシステム200は、サンプリングプローブ202、制御システム204、及び質量分析計230を含む。
図2に示されるように、サンプリングプローブ202は、移送管206A、206Bを通して、制御システム204と質量分析計230との間に結合される。いくつかの例では、例示的なシステム200は、追加の又は異なる構成要素を含み得、構成要素は、図示のように又は別の方法で配置され得る。
【0027】
図2に示す例では、サンプリングプローブ202は、ハウジング208A及びプローブ先端部208Bを含む。いくつかの実装態様では、ハウジング208Aは、ハンドヘルドサンプリングプローブとして使用されるためのグリップを提供し得る。いくつかの実装態様では、ハウジング208Aは、制御要素、例えばトリガ又はボタンを含み得る。例えば、制御要素は、サンプリングプローブ202を通して移送される液体溶媒を制御するために使用され得る。いくつかの実例では、制御要素は、例えば、フットペダルとして構成されているハウジング208Aから分離され得る。別の例では、制御要素は、プローブ先端部208Bを射出するために使用され得る機構に結合され得る。いくつかの実装態様では、サンプリングプローブ202は、生物学的に適合しており、測定に使用される化学物質に対して耐性がある合成ポリマーのような材料で構成され得る。例えば、サンプリングプローブ202のための材料は、分析物を抽出し、質量分析計230に搬送するために使用される様々な液体溶媒(例えば、極性又は非極性)と適合可能であり得る。いくつかの例では、サンプリングプローブ202を製造するために使用され得る合成ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含み得る。いくつかの実装態様では、プローブ先端部208Bは、ハウジング208Aと同じ材料、異なる材料、又は異なる組成を使用し得る。
【0028】
いくつかの実装態様では、サンプリングプローブ202は、3D印刷プロセス、機械加工プロセス、又は別のプロセスを使用して製造され得る。いくつかの実装態様では、サンプリングプローブ202のハウジング208Aは、それぞれの移送管206A、206B及びプローブ先端部208B内のそれぞれのチャネルと流体的に結合された2つの内部チャネルを含み得る。いくつかの実装態様では、移送管206A、206Bは、制御システム204からプローブ先端部208Bに液体溶媒を供給し、プローブ先端部208Bから懸濁微生物を有する液体溶媒の少なくとも一部を収集することによって分析物を取得するように構成されている。また、サンプリングプローブ202は、液体をサンプリングプローブ202から、例えば、使用の間又は他の実例で、液体をフラッシュすることを可能にするガスチャネル(例えば、周囲の雰囲気から空気を受容する開口ポート)を含み得る。
【0029】
いくつかの実装態様では、プローブ先端部208Bは、ハウジング208Aから取り外し可能であり得、これは、例えば、所定の数(例えば、1回以上)の通常の使用の後、又は異なるサンプル間の切り替えのときに、汚染されている場合に配設及び交換することができる。いくつかの場合では、プローブ先端部208Bは、ハウジング208A内のそれぞれのチャネルに、更にそれぞれの移送管206A、206Bに流体的に結合された内部チャネルを含み得る。いくつかの実装態様では、プローブ先端部208Bは、モノリシック構造としてハウジング208Aと一体化され得る。いくつかの実装態様では、プローブ先端部208Bは、
図3に示されるように、又は別の方法でプローブ先端部302として実装され得る。
【0030】
図2に示す例示的なサンプリングプローブ202は、バイオハザードエアロゾル又は微小液滴を形成することなく、生物標本を直接サンプリングすることができる。例えば、サンプルプローブ202は、サンプル表面に電圧を印加することなく、また、任意の他の方法で表面にエネルギーを加えることなく(例えば、電気的、光学的、機械的、振動又は他のエネルギー源を使用してサンプル表面にエネルギーを加えることなく)、サンプル表面上に液体分析物を形成し、サンプル表面から液体分析物を抽出することができる。したがって、サンプル表面及びサンプリングプローブ202の周囲の雰囲気又は開放環境中に微小液滴又はエアロゾルを生成することなく、液体分析物が形成され、収集される。
【0031】
図2に示す例示的なサンプリングプローブ202は、微生物の迅速かつ直接分析のために使用することができる。例えば、いくつかの実験では、サンプリングプローブ202は、30秒未満で、高い正確度で最小限のサンプル調製で、複数の臨床的に関連する細菌種を識別することができた。これらの実験では、統計的分類器を、訓練及び検証セットにおいてグラム型、属、及び種の平均正確度93.3%の最小絶対収縮及び選択オペレータを使用して生成した。これらの結果は、サンプリングプローブ202が、サンプル調製なしで、異なる分類学的レベルで細菌を迅速に区別する能力を実証している。
【0032】
図2に示す例示的なサンプリングプローブ202は、微生物を検出及び識別するためのサンプル調整、過酷な溶媒、又は印加電圧を必要としない。例えば、サンプル調製、過酷な溶媒、又は印加電圧なしは、グラム型から8つ細菌種、すなわち、Staphylococcus aureus(S.aureus)、Staphylococcus epidermidis(S.epidermidis)、Streptococcus pyogenes(A群Strep.)、Streptococcus agalactiae(B群Strep.)、Kingella kingae(K.kingae)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、Escherichia coli(E.coli)、及びSalmonella enterica(S.enterica)の種レベルへの迅速な区別には使用されなかった。
【0033】
いくつかの実装態様では、制御システム204は、溶媒容器及び機械的ポンピングシステム228を含み得る。いくつかの実例では、機械的ポンピングシステム228は、1つ以上の機械的ポンプを含み得る。いくつかの実例では、1つ以上の機械的ポンプは、プログラマブルであり得る。特定の例では、1つ以上の機械的ポンプは、コンピュータシステム、例えば、
図1のコンピュータシステム102によって制御され得る。いくつかの実装態様では、機械的ポンプは、シリンジポンプ、ペリスタティックポンプ、又は他のタイプのポンプであり得、これは、液体溶媒の高精度の微小流体分配をプローブ先端部208B、例えば、
図3に示すようなプローブ先端部302の内部リザーバ318に提供することができる。いくつかの実装態様では、1つ以上の機械的ポンプの各々は、異なるタイプの液体溶媒を含む別々の溶媒容器を備えることができる。いくつかの実例では、微生物のタイプ及び初期測定結果に従って、異なるタイプの液体溶媒が選択又は混合され得る。例えば、溶菌酵素は、細胞溶解及び細胞間分子の抽出のために液体溶媒に添加され、混合され得る。別の例では、溶菌酵素は、液体溶媒中に懸濁される前に、サンプル表面上の微生物に適用され得る。
図2に示す例では、容器(例えば、シリンジ)中の液体溶媒は、第1の移送管206Aを通してサンプリングプローブ202に送達することができる。いくつかの実装態様では、制御システム204は、プローブ先端部208Bの設計、例えば、
図3に示すような内部リザーバ318の体積に従って、制御された流量で、制御された体積の液体溶媒をサンプリングプローブ202に供給し得る。
【0034】
図2に示されるように、制御システム204は、移送管206A、206B上に1つ以上の弁を更に含む。いくつかの実装態様では、1つ以上の弁の各々は、それぞれの移送管における流体の流れを制御する(例えば、流体の流れを開始又は停止する)ように構成されている。いくつかの実装態様では、1つ以上の弁の各々は、コンピュータシステム、例えば、
図1に示すようなコンピュータシステム102によって機械的に作動され、電気的に制御され得る。いくつかの例では、1つ以上の弁210は、ピンチ弁、スクイーズ弁、他のタイプの弁、又は組み合わせを含み得る。いくつかの実例では、第2の移送管206B上の弁210は、イオン化システム220への分析物の吸引及び抽出を制御するための高速作動ピンチ弁である。いくつかの実例では、制御システム204は、制御ユニット224と通信可能に結合される。いくつかの実例では、制御ユニット224は、機械的ポンピングシステム228及び1つ以上の弁210の動作を制御するアルデュイーノボードを含み得る。図示のように、制御ユニット224は、ペダル226を押すことによって作動させ、ペダル226を解放することによって作動を停止させることができる。いくつかの実例では、制御ユニット224はまた、作動させるときに、質量分析計230によって行われるデータ収集プロセスを開始し得る。
【0035】
いくつかの実装態様では、移送管206A、206Bは、0.8mmの内径を有し得、生体適合性合成ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作製され得る。いくつかの実装態様では、移送管206A、206Bは、幾何学的又は空間的制約なしに、オペレータによるサンプリングプローブ202の自由ハンドヘルドの使用を可能にするために、約半メートルから1メートル以上の範囲の長さ(例えば、約0.5m~1.5mの範囲の長さ、又は別の範囲の長さ)を有し得る。
【0036】
いくつかの実装態様では、分析物は、質量分析計230の前に、収集され、イオン光学システムに送達され得る。いくつかの実例では、イオン光学システムは、分析物中の中性種を濾過し、イオンが通過することを可能にし、質量分析計230に汚染を除去するように構成され得る。
【0037】
いくつかの実装態様では、質量分析計230は、質量セレクタ及び質量分析器を含み得る。いくつかの実装態様では、質量セレクタは、真空中の電場及び磁場中の荷電粒子の動力学に基づいて、それらの質量電荷(m/z)比に従って、微生物から抽出された荷電生体分子を分離し得る。質量分析器は、電場を使用して荷電分子をトラップする電極のセットを含み得る。質量分析器は、振動経路を制御するために電場を使用し得る。この振動経路は、検出され、荷電生体分子の質量に対する電荷の比を計算するために使用され得る。いくつかの例では、質量分析器は、データ分析のために質量スペクトルのセット(又は別のフォーマットの質量分析データ)を出力し得る。
【0038】
いくつかの実装態様では、質量分析計230によって分析が完了すると、質量分析計230は、識別された微生物のタイプを含む分析結果を有するレポートを作成し得る。したがって、質量分析計からのデータは、サンプル表面に存在する(例えば、サンプル表面の外側又はサンプル内に存在する)微生物を検出、識別及び分類するために分析され得る。分析結果は、臨床ケア、例えば抗生物質療法を案内するために使用され得る。いくつかの実例では、質量分析計230によって生成されたデータが分析され得、分析の結果が、患者に対する適切な治療を決定するために使用することができる。例えば、データベースが、質量分析計のデータから識別された微生物のレベル又はタイプに基づいて、投与される可能性のある抗生物質(例えば、タイプ及び用量)を識別するために使用され得る。いくつかの場合では、治療は、進行中の医療処置の間に患者に投与することができる。
【0039】
図3は、例示的な微生物識別システムにおけるサンプリングプローブ300の態様を示す概略図である。
図3に示されるように、サンプリングプローブ300は、プローブ先端部302及びハウジング304を含む。例示的なプローブ先端部302は、サンプル表面320と接触するために使用されるテーパ付き円筒形形状の1つのマンドレル端部306と、ハウジング304の受容端部と係合するために使用される1つの円筒形端部308と、を含む。いくつかの実装態様では、円筒形端部308は、ハウジング304の受容端部と気密シールを形成し得る。いくつかの例では、プローブ先端部302は、追加の又は異なる構成要素を含み得、構成要素は、図示のように又は別の方法で配置され得る。
【0040】
図3のプローブ先端部302の断面図に示されるように、プローブ先端部302は、液体供給チャネル312、液体抽出チャネル314、及びガスチャネル316を含む、3つの別個の内部チャネルを含む。いくつかの実装態様では、3つの内部チャネル312、314、316は、ハウジング304の受容端部においてそれぞれの内部チャネル(図示せず)と位置合わせされ、移送管との流体連通を提供する。いくつかの実例では、移送管は、
図2に示されるように、又は別の方法で、移送管206A、206Bとして実装され得る。いくつかの実装態様では、3つの内部チャネル312、314、316は、ハウジング304の受容端部とは反対側の端部からその受容端部まで、ハウジング304を通して延在する、移送管と直接結合され得るか、又は液体及びガスの流れを可能にするために他の方法で、移送管と結合され得る。
【0041】
いくつかの実装態様では、ハウジング304は、
図2に示されるように、それぞれの移送管、例えば移送管206A、206Bを通して、制御システム及び質量分析計との流体連通を提供するように構成されている。いくつかの実装態様では、ハウジング304及びプローブ先端部302は、生物学的に適合性のある合成ポリマーで構成され得る。いくつかの実装態様では、ハウジング304及びプローブ先端部302は、3D印刷プロセス、機械加工プロセス又は別のタイプの製造プロセスを使用して製造され得る。
【0042】
いくつかの実装態様では、サンプル表面320は、固体基板の表面であり得る。例えば、サンプル表面320は、スライドガラス、ペトリ皿、又は寒天プレートであり得る。いくつかの実装態様では、サンプル表面320は、内部リザーバ318からの液体溶媒の漏れを防止するために、プローブ先端部302のマンドレル端部306と液密シールを形成し得る。いくつかの実装態様では、サンプル表面320は、対象微生物を含み得る。いくつかの場合では、サンプル表面320は、対象微生物を潜在的に含むことが既知であり、プローブは、サンプル表面320が対象微生物を含むかどうかを判定するためにサンプルを収集するために使用される。
【0043】
いくつかの実装態様では、サンプル表面320は、組織サンプル、骨サンプル、又は別のタイプの生物学的サンプルの表面とすることができるか、又はそれを含むことができる。例えば、サンプル表面320は、インビボ又はエクスビボ組織部位とすることができる。いくつかの場合では、サンプリングプローブ300は、被験体のサンプル部位を評価するために医療処置中(例えば、手術中)に使用される。手術環境では、溶媒は、水、水と混合されたエタノール、又は別のタイプの溶媒とすることができるか、又はそれらを含むことができる。サンプリングプローブ300は、組織部位に細菌又は別の微生物が存在するかどうかを判定するために、外科的処置中に露出した組織からサンプルを収集し得る。プローブ300によって取得されたサンプルは、質量分析計によって分析されて、細菌を識別及び分類し、これは、治療又は療法を処方するために使用され得る。
【0044】
動作のいくつかの態様では、液体供給チャネル312は、外部容器から液体溶媒を受容し、液体溶媒をプローブ先端部302において内部リザーバ318に案内し、液体溶媒は、サンプル表面320と直接接触し得、内部リザーバ318の少なくとも一部を液体溶媒で満たす。液体供給チャネル312は、プローブ先端部において第1の内部経路332を提供し得る。いくつかの実装態様では、液体溶媒は、制御システムの一部、例えば、
図2に示すようなシリンジポンプ又は別のタイプの機械的ポンピングシステムとして外部容器から受容され得る。
【0045】
いくつかの実装態様では、内部リザーバ318は、円筒形の形状を有し、液体供給チャネル312に結合され得る。特定の例では、内部リザーバ318内の液体供給チャネル312から受容された液体溶媒は、サンプル表面320と直接接触する。サンプル表面320は、内部リザーバ318内の流体に直接露出される外側表面を含み得、サンプル表面320は、追加の層又は外側表面の下の他の材料を含み得、外側表面又は外側表面の下の材料からの生体分子は、内部リザーバ318内の流体に抽出され得る。いくつかの実例では、サンプル表面320からの微生物細胞の少なくとも一部が懸濁され得、微生物細胞からの生体分子が液体溶媒中に抽出されて、液体分析物を形成し得る。いくつかの実装態様では、内部リザーバ318の直径322は、例えば、サンプル表面320のサイズ及びサンプル表面320上の微生物の量によって判定される。いくつかの実例では、内部リザーバ318の直径322及び高さ324は、サンプル表面320に露出された液体溶媒の堆積、並びに化学測定システムの性能面、例えば、空間分解能、検出限界、及び正確度を判定し得る。いくつかの実例では、プローブ先端部302の内部リザーバ318の直径は、1.5~5.0mmの範囲であり得る。例えば、内部リザーバの直径322が2.77mmで、内部リザーバ318の高さ324が1.7mmであるときに、内部リザーバ318に含まれる液体溶媒の体積は、10マイクロリットル(μL)である。別の例では、内部リザーバ318の直径が1.5mmで、高さ324が2.5mmであるときに、内部リザーバ318に含まれる液体溶媒の体積は、4.4μLである。内部リザーバ318は、異なる形状、アスペクト比、サイズ又は寸法を有し得る。
【0046】
いくつかの実例では、液体抽出チャネル314は、プローブ先端部302内に第2の別個の内部経路334を提供する。動作のいくつかの態様では、液体抽出チャネル314は、懸濁細胞又は抽出された生体分子を担持する液体溶媒の少なくとも一部を内部リザーバ318から抽出することによって分析物を取得し、質量分析計に結合された移送管に分析物を案内する。いくつかの実装態様では、内部リザーバ318からの分析物は、質量分析計(例えば、
図2に示すような質量分析計230)に結合された真空ポンプによって抽出され得る。いくつかの実装態様では、移送管の一端部に作成された低圧は、液体吸引を促進して、分析物を内部リザーバ318から液体抽出チャネル314を通して質量分析計に駆動し得る。
【0047】
いくつかの実装態様では、ガスチャネル316は、プローブ先端部302内の第3の別個の内部経路336を提供する。いくつかの実例では、ガスチャネル316は、抽出中のサンプリングプローブ、移送管、及び制御システムの崩壊を防止するように構成されている。いくつかの実例では、ガスチャネル316は、大気(例えば、空気)に対して開口している。いくつかの実例では、液体供給チャネル312、液体抽出チャネル314及びガスチャネル316の直径は、0.8mmに等しくあり得る。ガスチャネル316からのガスを使用して、液体を液体抽出チャネル314から質量分析計に押し出し得る。
【0048】
図4A~4Bは、8タイプの細菌の例示的な質量スペクトル400である。
図4A~4Cに示されるように、8タイプの細菌は、Streptococcus(Str.)agalactiae(n
strain=5)、Str.pyogenes(n
strain=5)、Staphylococcus(S.)aureus(n
strain=6)、S.epidermidis(n
strain=4)、Pseudomonas(P.)aeruginosa(n
strain=6)、Escherichia(E.)coli(n
strain=7)、Salmonella(S.)enterica(n
strain=6)、及びKingella(K.)kingae(n
strain=3)を含む。
図4A~4Bに示す例では、質量スペクトルは、微生物識別システムによって収集され得る。いくつかの実装態様では、微生物識別システムは、分子プロファイルに基づいて細菌を分類及び識別するために使用され得る。
【0049】
いくつかの実装態様では、標準参照細菌サンプルは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection、ATCC)及びBEI Resourcesから取得され得る。いくつかの実例では、標本が血液寒天プレート上に画線されるか、又は別の方法で行われ得る。いくつかの例において、標本は、インキュベーター中で37℃の温度で一晩更に培養され得る。血液寒天プレート上には、培養された細菌の多数のコロニーを形成することができる。次いで、複数のコロニーの各々を血液寒天プレートから取り出し、無菌接種ループを使用してマルチウェルPTFEコーティングガラススライド上に拡散させ、微生物識別システムを使用して分析する。微生物識別システムは、
図1~2に示されるように、微生物識別システムとして実装され得る。いくつかの例では、微生物識別システムは、サンプリングプローブを含み得る。いくつかの実例では、サンプリングプローブは、
図3に示されるように、サンプリングプローブ300として構成され得る。サンプリングプローブのプローブ先端部は、2.7mmの直径を有する内部リザーバを有する。
【0050】
いくつかの実例では、
図3に示されるように、サンプリングプローブのプローブ先端部がスライドガラスに対して位置決めされた後、生体分子を抽出するための一定体積の液体溶媒、例えば水が、サンプリングプローブの内部リザーバに送達される。いくつかの実例では、内部リザーバ中の一定体積の液体溶媒は、ある期間、例えば3秒又は別の期間にわたって、細菌塗抹標本と直接接触するように保たれて、微生物細胞から生体分子を抽出する。最初の期間の後、分析のために分析物を内部リザーバから質量分析計に移送される。いくつかの実装態様では、微生物識別システムの質量分析計は、120,000の分解能を有する質量電荷(m/z)比100~1200の範囲の正及び負イオンモードで動作するThermoFisher Q Exactive HF Hybrid Quadrupole-Orbitrap質量分析計を含み得る。
【0051】
いくつかの実装態様では、複数のコロニーは、バッチ効果を最小限にするためにランダムな順序で分析され得る。いくつかの実装態様では、同じ株からのコロニーの分析は、これらのコロニーが同じ遺伝物質をもつため、複製として扱われる。特定の実例では、同じ種からの異なる株の分析は、種が関連した異なるクローン株のグループとして定義されるため、異なるサンプルとして扱われる。
【0052】
いくつかの実装態様では、細菌細胞から抽出された生体分子に対応する質量スペクトルにおける様々な分子的特徴が、細菌を検出、区別、及び分類するために使用され得る。例えば、細菌細胞から抽出された生体分子は、アミノ酸、ジペプチド、クオラムセンシング分子、脂肪酸、及び脂質を含み得る。いくつかの実例では、ホスファチジルグリセロール34:1[M-H]-に対応するm/z=747.519における質量スペクトルのピーク及びホスファチジルグリセロール32:1[M-H]-に対応するm/z=719.488における質量スペクトルにおけるピークもまた、細菌の識別及び分類のための分子的特徴として使用され得る。
【0053】
図4A~4Bに示されるように、これらの種の分子プロファイルの定性的な相違が、質量スペクトルにおいて観察され得る。例えば、Pseudomonasクオラムセンシングシグナル(PQS)[M+Cl]-(m/z 294.127)、ヘプチル-キノロン[M-H]-(m/z 242.115)、及びウンデシルキノロン(UDQ)[M-H]-(m/z 298.127)を含むP.aeruginosaにおいて、12の暫定的に識別されたアルキルキノロンクオラムセンシング分子が観察された。暫定的に識別されたLPG 14:1[M-H]-(m/z 455.241)、PE 28:1[M-H]-(m/z 632.430)、PE 28:0[M-H]-(m/z 634.446)など、いくつかの暫定的に識別されたリン脂質がK.kingaeにおいて排他的に観察された。アセチルメチオニン[M-H]-(m/z 190.052)、PE 16:0_17:1(m/z 702.509)、PG 16:0_17:1(m/z 733.503)として暫定的に識別されたイオンが、腸内細菌E.coli及びS.entericaにおいて観察されたが、他のグラム陰性種では観察されなかった。Streptococcus種Str.agalactiaeとStr.pyogenesとの間で相対存在量が異なる分子は、グルタチオンとの間で存在量が異なる分子としては、グルタチオン[M-H]-(m/z 306.077)及びトリペプチドGly-Ser-Glu[M-H]-(m/z 272.089)を含む。更に、Staphylococcus種S.aureusとS.epidermidisとの間で相対存在量が異なる分子としては、S.epidermidisでは相対存在量が顕著に高いアセチルアスパラギン酸[M-H]-(m/z 174.040)及びアセチルチロシン[M-H]-(m/z 222.076)、S.aureusでは相対存在量が顕著に高いリン酸ペントース[M-H]-(m/z 421.075)、ヒドロキシメチルピリジンジカルボン酸[M-H]-(m/z 196.025)を含む。いくつかの実装形態では、いくつかのPG脂質の存在量は、細菌におけるグラム陽性外膜のインジケーターとして使用され得、PEの存在量(例えば、PE 14:0(m/z=634.446))は、細菌におけるグラム陰性外膜のインジケーターとして使用され得る。
【0054】
図5A~5Eは、例示的な統計モデルの予測性能を示す概略
図500、510、520、530、540、及び550である。
【0055】
図5Aに示されるように、統計モデルは、グラム型、例えば、グラム陰性(G-)及びグラム陽性(G+)細菌に基づいて、細菌を区別するように訓練される。細菌サンプルは、2セット、例えば、163質量スペクトル(n
total=163)及び28株(n
strain=28)を有する訓練セット、並びに74質量スペクトル(n
total=74)及び15株(n
strain=15)を有する検証セットに分割される。いくつかの実装態様では、質量分析データが、
図4A~4Bに説明されている処理に関して、又は別の方法で取得及び処理される。この統計モデルは、訓練セットにおいて、G-及びG+細菌に対してそれぞれ97.1%及び93.2%の再現率(例えば、タイプごとの正確度)、95.7%の全体正確度であり、検証セットにおいて、G-及びG+細菌に対してそれぞれ95.0%及び97.1%の再現率、95.9%の全体正確度で行われる。
【0056】
図5Bに示されるように、例示的な統計モデルは、細菌種、例えば、Staphylococcus(Staph.)とStreptococcus(Strep.)を区別するために訓練される。細菌サンプルは、2セット、例えば、105分析(n
total=105)及び15株(n
strain=15)を有する訓練セット、並びに43分析(n
total=43)及び5株(n
strain=5)を有する検証セットに分割される。いくつかの実装態様では、質量分析データが、
図4A~4Bに説明されている処理に関して、又は別の方法で取得及び処理される。この統計モデルは、訓練セットにおいて、Staph.及びStrep.に対してそれぞれ94.5%及び90.0%の再現率(例えば、タイプごとの正確度)、92.4%の全体正確度であり、検証セットにおいて、Staph.及びStrep.に対してそれぞれ100%及び100%の再現率、100%の全体正確度で行われる。
【0057】
図5A、5Bに示すグラム型、及びStaph.とStrepを区別するための例示的な統計モデルの場合、Streptococcus gordoniiの4つの分析を、独立した試験セットとして使用して、訓練セットに存在しなかった種についてのモデルの性能を評価した。訓練セットにこの種を表したものがないにもかかわらず、この例示的な統計モデルによるStreptococcus gordoniiの正しい分類は、統計モデルが、訓練セットにない他の種に対して一般化可能とすることができることを示す。いくつかの実例では、ここに提示された方法及び技術は、統計モデルの作成の負担及び進化する生命体/新株の複雑さを低減することができる。
【0058】
図5Cに示されるように、例示的な統計モデルは、Streptococcusの異なる群、例えばA群とB群Streptococcusを区別するために訓練される。細菌サンプルは、2セット、例えば、35分析(n
total=35)及び5株(n
strain=5)を有する訓練セット、並びに32分析(n
total=32)及び5株(n
strain=5)を有する検証セットに分割される。いくつかの実装態様では、質量分析データが、
図4A~4Bに説明されている処理に関して、又は別の方法で取得及び処理される。この統計モデルは、訓練セットにおいて、A群及びB群に対してそれぞれ100%及び95.0%の再現率(例えば、タイプごとの正確度)、97.1%の全体正確度であり、検証セットにおいて、A群及びB群に対してそれぞれ100%及び64.3%の再現率、84.8%の全体正確度で行われる。
【0059】
図5Dに示されるように、例示的な統計モデルは、異なるStaphylococcus種、例えばS.aureusとS.epidermidisを区別するために訓練される。細菌サンプルは、2セット、例えば、35分析(n
total=35)及び5株(n
strain=5)を有する訓練セット、並びに35分析(n
total=35)及び5株(n
strain=5)を有する検証セットに分割される。いくつかの実装態様では、質量分析データが、
図4A~4Bに説明されている処理に関して、又は別の方法で取得及び処理される。この統計モデルは、訓練セットにおいて、S.aureus及びS.epidermidisに対してそれぞれ85.7%及び96.4%の再現率(例えば、タイプごとの正確度)、94.3%の全体正確度であり、検証セットにおいて、S.aureus及びS.epidermidisに対してそれぞれ100%及び93.8%の再現率、97.1%の全体正確度で行われる。
【0060】
図5Eに示されるように、この例示的な統計モデルは、異なるグラム陰性種、例えば、K.kingae、P.aeruginosa、S.enterica及びE.coliを区別するために訓練される。細菌サンプルは、2セット、例えば、77分析(n
total=77)及び17株(n
strain=17)を有する訓練セット、並びに24分析(n
total=24)及び6株(n
strain=6)を有する検証セットに分割される。いくつかの実装態様では、質量分析データが、
図4A~4Bに説明されている処理に関して、又は別の方法で取得及び処理される。この統計モデルは、訓練セットにおいて、K.kingae、P.aeruginosa、S.enterica及びE.coliに対してそれぞれ75.0%、93.3%、70.0%及び95.8%の再現率(例えば、タイプごとの正確度)、84.0%の全体正確度であり、検証セットにおいて、K.kingae、P.aeruginosa、S.enterica及びE.coliに対してそれぞれ100%、87.5%、87.5%、及び100%の再現率、91.7%の全体正確度で行われる。
【0061】
図6A~6Eは、例示的な統計モデルにおける分子イオンピーク及び分子イオンピークに関連付けられた統計的重みを示すプロット600、610、620、630、640、及び650である。
【0062】
図6Aに示されるように、統計モデルは、グラム型、例えば、グラム陰性(G-)及びグラム陽性(G+)細菌に基づいて、細菌を区別するように訓練される。いくつかの実例では、分子イオンピーク及びそれぞれの統計的重みは、バンク化された組織サンプルの訓練セットから収集された質量分析プロファイルに基づいて統計モデルによって選択される。統計モデルで選択された34の予測特徴としては、暫定的に識別された小代謝産物及びリン脂質を含む。統計モデルによって選択されるG-細菌の分類に偏る分子イオンピークは、m/z=168.019、197.022、237.055、269.174、270.186、272.166、273.121、288.12、289.219、290.136、291.197、294.127、298.97、449.312、453.226、455.241、477.172、554.331、633.433、633.424、663.481、666.444、714.508、717.527、719.488、及び864.07に位置する。統計モデルによって選択されるG+細菌の分類に偏る分子イオンピークは、m/z=165.055、249.032、285.052、287.051、294.07、333.126、345.029、及び721.496に位置する。
【0063】
G-細菌に偏る暫定的に識別された特徴としては、ウレドグリシン[M+Cl]-(m/z 168.020)、デオキシシチジンリン酸(dCDP)[M-H]-(m/z 386.017)、リン脂質リゾPG 14:1[M-H]-(m/z 455.241)、PG 14:0_14:1/12:0_16:1[M-H]-(m/z 663.424)、及びPE 16:1_18:1[M-H]-(m/z 714.508)を含む。G+細菌に偏る暫定的に識別された特徴としては、ホスホコリン[M-H2O-H]-(m/z 165.055)、オロチジン[M-H]-(m/z 287.051)、及びグリシンアミデリボチド(GAR)[M-H]-(m/z 285.052)を含む。
【0064】
いくつかの実装態様では、異なる組織タイプを示すそれぞれの分子イオンピークの統計的重みは、統計モデルにおいて異なる符号を有し得る。例えば、負の値を有する統計的重みはG+細菌を示し、正の値を有する統計的重みはG-細菌を示す。いくつかの実装態様では、統計的重みは、統計モデルに従って別の方法で構成され得る。本明細書で提示した方法及びシステムは、グラム型評価又は別の用途に使用することをできる。
【0065】
図6Bに示されるように、例示的な統計モデルは、細菌種、例えば、Staphylococcus(Staph.)とStreptococcus(Strep.)を区別するために訓練される。いくつかの実例では、分子イオンピーク及びそれぞれの統計的重みは、訓練セットから収集された質量分析プロファイルに基づいて統計モデルによって選択される。統計モデルで選択された17の予測特徴としては、暫定的に識別された小代謝産物及びリン脂質を含む。統計モデルによって選択されるStreptococcus(Strep.)の分類に偏る分子イオンピークは、m/z=152.534、206.967、232.046、249.056、306.077、352.149、584.66、及び747.519に位置する。統計モデルによって選択されるStaphylococcus(Staph.)の分類に偏る分子イオンピークは、m/z=124.006、154.974、196.025、204.069、236.03、271.092、285.052、294.078、及び356.144に位置する。
【0066】
Staphylococcus(Staph.)に偏る暫定的に識別された特徴としては、暫定的に識別されたタウン[M-H]-(m/z124.006)、グリセロホスホエタノールアミン[M-2H+Na]-(m/z 236.030)、及びトリペプチドX[M-H2O-H]-(m/z 356.144)を含む。Streptococcus(Strep.)に偏る暫定的に識別された特徴としては、ホスホグリセリン酸[M-2H+Na]-(m/z 206.967)、グルタチオン[M-H]-(m/z 306.077)、トリペプチドX[M-H]-(m/z 352.149)、及びPG 16:0_18:1[M-H]-(m/z 747.519)を含む。
【0067】
いくつかの実装態様では、異なる組織タイプを示すそれぞれの分子イオンピークの統計的重みは、統計モデルにおいて異なる符号を有し得る。例えば、負の値を有する統計的重みはStreptococcus(Strep.)を示し、正の値を有する統計的重みは、Staphylococcus(Staph.)を示す。いくつかの実装態様では、統計的重みは、統計モデルに従って別の方法で構成され得る。
【0068】
図6Cに示されるように、この例示的な統計モデルは、異なるグラム陰性種、例えば、K.kingae、P.aeruginosa、S.enterica及びE.coliを区別するために訓練される。プロット620に示されるように、分子イオンピーク及びそれぞれの統計的重みは、訓練セットから収集された質量分析プロファイルに基づいて統計モデルによって選択される。このモデルに対して、暫定的に識別された27の特徴を含む44の特徴が選択された。
【0069】
統計モデルによって選択されるP.aeruginosaの分類に偏る分子イオンピークは、m/z=134.06、270.186、298.217、323.047、531.354、580.347、582.363、740.383、924.485、及び925.49に位置する。統計モデルによって選択されるE.coliの分類に偏る分子イオンピークは、m/z=132.048、152.534、165.054、190.052、232.119、281.02、298.97、464.278、531.269、705.472、719.488、及び734.507に位置する。統計モデルによって選択されるS.entericaの分類に偏る分子イオンピークは、m/z=145.028、193.082、244.2、289.07、346.138、702.509、743.544、及び747.519に位置する。統計モデルによって選択されるK.kingaeの分類に偏る分子イオンピークは、m/z=146.996、453.226、665.441、691.456、及び837.435に位置する。
【0070】
P.aeruginosaに偏る暫定的に識別された特徴としては、クオラムセンシング分子PQS[M+Cl]-(m/z 294.127)、UDQ[M-H]-(m/z 298.128)、ピオケリン[M-H]-(m/z 323.053)、及びRha-C12-C10[M-H]-(m/z 531.534)を含む。K.kingaeに偏る暫定的に識別された特徴としては、リン脂質PE 12:0_16:0/PE 14:0_14:0[M-H]-(m/z 634.446)及びPG 14:0_14:0[M-H]-(m/z 665.441)を含む。S.entericaに偏る暫定的に識別された特徴としては、ヘキソサミン[M-H]-(m/z 178.071)、トリペプチドX[M-H]-(m/z 346.142)、及びリン脂質PE 16:0_17:1[M-H]-(m/z 702.509)、及びPG 16:0_18:1[M-H]-(m/z 747.519)を含む。E.coli.に偏る暫定的に識別された特徴としては、リゾリン脂質LPE 17:1[M-H]-(m/z 464.278)及びLPG 20:4[M-H]-(m/z 455.241)、アセチルメチオニン[M-H]-(m/z 190.052)、及びPG 14:0_18:1/16:0_16:1[M-H]-(m/z 719.488)を含む。これらの予測特徴のための統計的重みは正の値を有する。
【0071】
図6Dに示されるように、例示的な統計モデルは、異なるStaphylococcus種、例えばS.aureusとS.epidermidisを区別するために訓練される。プロット630に示されるように、分子イオンピーク及びそれぞれの統計的重みは、訓練セットから収集された質量分析プロファイルに基づいて統計モデルによって選択される。統計モデルにより、m/z=175.085、178.071、276.156、421.075、744.369、及び749.526に位置する6つの予測特徴が選択されて、全てS.aureusに偏った。予測特徴のうちの3つは、小代謝産物、及び、ヘキソサミン[M-H]
-(m/z 178.010)、リン酸ペントース[M-H]
-(m/z 421.075)、及びPG 16:0_18:1[M-H]
-(m/z 749.526)のC13同位体を含むグリセロリン脂質として暫定的に識別されている。これらの予測特徴のための統計的重みは正の値を有する。
【0072】
図6Eに示されるように、例示的な統計モデルは、Streptococcusの異なる群、例えばA群とB群Streptococcusを区別するために訓練される。プロット640に示されるように、分子イオンピーク及びそれぞれの統計的重みは、訓練セットから収集された質量分析プロファイルに基づいて統計モデルによって選択される。統計モデルで選択された3の予測特徴としては、暫定的に識別された小代謝産物及びリン脂質を含む。B群Strep.に偏る特徴は、フマリカルニチン[M+Cl]
-(m/z 294.070)、グルタチオン[M-H]
-(m/z 306.077)、及びジペプチドLys-Pro[M+Cl]
-(又はグルタチオン+Na-2H)
-(m/z 328.059)として暫定的に識別されたものを含む。これらの予測特徴のための統計的重みは、負の値を有する。
【0073】
図7A~7Cは、類似性に基づくサンプルのクラスターを示す、主成分分析散布
図700、710、720である。主成分分析(PCA)は、データセットにおける分散を考慮するために分子的特徴を組み合わせることにより独立した「主成分」(PC)変数を作成する次元低減統計的手法である。いくつかの実装態様では、PCAは、種を区別するための観察された分子的特徴の能力を査定するために使用され得る。
【0074】
いくつかの実装態様では、質量スペクトルデータは、市販の統計分析ソフトウェア、例えば、RStudioにインポートされ得る。いくつかの実例では、インポート後、質量スペクトルデータをm/z=0.01にビニングし、全イオン電流に正規化し得る。いくつかの実例では、液体溶媒及び栄養血液寒天に由来する分子的特徴を含むバックグラウンドは、質量スペクトルデータから差し引かれ得る。いくつかの実装態様では、処理された質量スペクトルデータに対して主成分分析を行い、分類を含む結果を返すことができる。例えば、RStudioにおけるprcomp関数が使用される。いくつかの実装形態では、結果は、分子的特徴及び類似性に基づいてサンプルのグループ分けを可視化するために、PCAプロットでプロットされ得る。
【0075】
図7Aに示されるように、PC2及びPC4の異なる線形組み合わせ(例えば、クラスター)は、異なるA群Strep.株を分離することができる。例えば、第1のクラスター702Aは、A群Strep.株12344に対応し、第2のクラスター702Bは、A群Strep.株14289に対応し、第3のクラスター702Cは、A群Strep.株19615に対応し、第4のクラスター702Dは、A群Strep.株49399に対応し、第5のクラスター702Eは、A群Strep.株51339に対応する。A群Strep.は、最も高い分離度を示した。A群Strep.株12344、49399、及び14289の90%信頼区間は、PCA散布
図700で完全に分離された。この分離に寄与するイオンは、PG 32:0(m/z 721.501)[M-H]
-、ペントースリン酸(m/z 421.076)[M-H]
-、及びアセチルアスパラギン酸(m/z 174.041)[M-H]
-を含む。
【0076】
図7Bに示されるように、PC2及びPC5の異なる線形組み合わせ(例えば、クラスター)は、異なるSalmonella enterica株を分離することができる。例えば、第1のクラスター712Aは、Salmonella enterica株13555に対応し、第2のクラスター712Bは、Salmonella enterica株170に対応し、第3のクラスター712Cは、Salmonella enterica株20740に対応し、第4のクラスター712Dは、Salmonella enterica株20742に対応し、第5のクラスター712Eは、Salmonella enterica株20741に対応し、第6のクラスター712Fは、Salmonella enterica株28787に対応し、第7のクラスター712Gは、Salmonella enterica株28788に対応する。Salmonella enterica(b,e)株170、20742、及び13555は、90%信頼区間で区別できる。S.enterica株の分離に寄与するm/z特徴は、グルタミン酸(m/z 174.041)[M-H]
-、PE 34:2(m/z 714.504)[M-H]
-、及びPE 34:1(m/z 716.524)[M-H]を含む。
【0077】
図7Cに示されるように、PC3及びPC4の異なる線形組み合わせ(例えば、クラスター)は、異なるE.coli株を分離することができる。例えば、第1のクラスター722Aは、E.coli株17638に対応し、第2のクラスター722Bは、E.coli17639に対応し、第3のクラスター722Cは、E.coli株17661に対応し、第4のクラスター722Dは、E.coli株17680に対応し、第5のクラスター722Eは、E.coli株20450に対応し、第6のクラスター722Fは、E.coli株48983に対応し、第7のクラスター722Gは、E.coli株9に対応する。E.coli株17638、9及び48983は、90%信頼区間によって区別することができる。E.coli株の分離に寄与するm/z特徴は、グルタミン酸(m/z 174.041)[M-H]
-、PE 34:2(m/z 714.504)[M-H]
-、PE 34:1(m/z 716.524)[M-H]を含む。
【0078】
図7D~7Fは、それぞれの主成分に対する分子的特徴の影響力を示すローディングプロット730、740、750である。A群Strep.株の分離に寄与する上位20m/zの特徴は、
図7Dに含まれる。S.enterica株の分離に寄与する上位20m/zの特徴は、
図7Eに含まれる。S.enterica株の分離に寄与する上位20m/zの特徴は、
図7Eに含まれる。
【0079】
図8A~8Dは、細菌サンプルにおいて識別された様々な分子の例示的なタンデム質量スペクトル及び構築された分子構造である。図示の例では、タンデム質量分析からのタンデム質量スペクトルを使用して、同一性を確認し、それぞれの分子の分子構造を再構成する。いくつかの実例では、タンデム質量スペクトルを使用して、同じ質量を有する分子を区別するために使用することができ、又は別の方法で使用され得る。いくつかの実例では、単一の分子が選択され、ピースに断片化され、質量分析計によって分析される。
図8A~8Dに表される例示的なタンデム質量分析は、微生物識別システム、例えば、
図1~2に示される微生物システムを使用して行われる。細菌サンプルは、溶媒として水を用いたサンプリングプローブ(例えば、
図3に示すようなサンプリングプローブ300)及び衝突誘起解離(CID)を使用したQExactive HF(ThermoFisher)上での3~10秒の抽出時間を使用して、
図4に説明されているように調製及び測定される。
【0080】
図8Aは、m/z=634.446及びm/z=227.201における2つの顕著なピークを有するグリセロホスホエタノールアミン(PE)(14:0/14:0)の第1のタンデム質量スペクトル802及び第1の分子構造804を示す。
図8Bは、m/z=152.995、m/z=187.108、m/z=218.187、及びm/z=245.043における4つの顕著なピークを有するグリセロホスホグリセロール(PG)の第2のタンデム質量スペクトル812及び第2の分子構造814を示す。
図8Cは、m/z=241.217、m/z=283.264、及びm/z=731.518における3つの顕著なピークを有する、PG(15:0/18:0)の第3のタンデム質量スペクトル822及び第3の分子構造824を示す。
図8Dは、m/z=143.045、m/z=217.128、m/z=254.078、m/z=272.089、及びm/z=306.077における5つの顕著なピークを有するグルタチオンの第4のタンデム質量スペクトル832及び第4の分子構造834を示す。
【0081】
本明細書に説明されている主題及び動作のいくつかは、デジタル電子回路、又は本明細書に開示された構造及びそれらの構造的等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、若しくはハードウェア、又はそれらの1つ以上の組み合わせで実現することができる。本明細書に説明されている主題のいくつかは、1つ以上のコンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置によって実行されるか、又はデータ処理装置の動作を制御するために、コンピュータ記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令のうちの1つ以上のモジュールとして実装することができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶デバイス、コンピュータ可読記憶基板、ランダム若しくはシリアルアクセスメモリアレイ若しくはデバイス、又はそれらの1つ以上の組み合わせとすることができるか、又はそれらに含めることができる。更に、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成された伝搬信号に符号化されたコンピュータプログラム命令のソース又は宛先とすることができる。また、コンピュータ記憶媒体は、1つ以上の別個の物理的構成要素又は媒体とすることができるか、又はそれらに含めることができる。
【0082】
本明細書に説明されている動作のいくつかは、1つ以上のコンピュータ可読記憶デバイスに記憶された、又は他のソースから受信したデータに対するデータ処理装置によって行われる動作として実装することができる。
【0083】
「データ処理装置」という用語は、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、システムオンチップ、又は前述のものの複数若しくは組み合わせを含む、データを処理するための全ての種類の装置、デバイス、及び機械を包含する。装置は、例えば、アルデュイーノボード、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)のような特殊目的の論理回路を含むことができる。装置は、ハードウェアに加えて、コンピュータプログラムに対する実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームのランタイム環境、仮想マシン、又はそれらの1つ以上の組み合わせを構成するコードを含み得る。
【0084】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしても既知である)は、コンパイル型又はインタープリタ型言語、宣言型又は手続き型言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書くことができ、独立型プログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン、オブジェクト、又は他のユニットとして含む、任意の形態で展開することができる。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応し得るが、それは必要ではない。プログラムは、他のプログラム若しくはデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語文書に記憶される1つ以上のスクリプト)、プログラム専用の単一ファイル、又は複数の協調ファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部を記憶するファイル)に記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ又は1つのサイトに位置するか、又は複数のサイトに分散され、かつ通信ネットワークによって相互接続される複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0085】
本明細書に説明されているプロセス及び論理フローのいくつかは、例えば、1つ以上のプログラマブルプロセッサによって実行され、1つ以上のコンピュータプログラムを実行して、入力データ上で動作し、出力を生成することによってアクションを行うことができる。プロセス及び論理フローはまた、特殊目的論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって実行することができ、装置はまた、これらとして実装することができる。
【0086】
上で説明されるものの一般的な態様では、微生物が識別及び分類される。
【0087】
第1の例では、液体溶媒は、制御システムの動作によって、サンプリングプローブの第1のチャネルを介してサンプル表面に供給される。液体溶媒は、サンプル表面と相互作用して、サンプリングプローブ内に分析物を形成する。分析物は、サンプリングプローブの第2のチャネルを介してサンプリングプローブから移送される。分析物は、質量分析計に移送され、質量分析計は、分析物を処理して、質量分析データを生成する。質量分析データは、分析されて、分析物中の微生物を検出する(例えば、微生物の存在又はレベルを検出する)。微生物は、例えば、質量分析データ及び統計モデルを使用して識別及び分類され得る。
【0088】
第1の例の実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。液体溶媒は、第1のチャネルを介してサンプリングプローブの内部リザーバに供給され、分析物は、第2のチャネルを介して内部リザーバから連通される。サンプリングプローブは、ガス(例えば、空気)を内部リザーバに連通することができるガスチャネルを含む。内部リザーバは、サンプル表面とインターフェース接続し、内部リザーバ内の液体溶媒は、内部リザーバの開口部を介してサンプル表面に接触する。サンプル表面は、細菌を含み得、質量分析データは、分析されて、細菌を検出し得る。分析は、細菌を識別及び分類することを含み得る。サンプル表面は、感染性組織標本又は別のタイプの生物学的標本を含み得る。液体溶媒は、水又は別のタイプの溶媒であり得る。液体溶媒は、溶菌酵素又は他の溶媒添加剤を含み得る。細胞間生体分子は、溶菌酵素によって抽出され得る。統計モデルは、質量分析計によって生成された質量スペクトルデータの分子特性に基づいて訓練することができる。
【0089】
第2の例では、液体溶媒は、サンプリングプローブの第1のチャネルを通してサンプリングプローブの内部リザーバに供給される。内部リザーバ内の一定体積の液体溶媒を、ある期間にわたって、サンプル表面と直接接触させて保持して、サンプリングプローブ内に液体分析物を形成する。サンプリングプローブの第2のチャネルを通してサンプリングプローブの内部リザーバにガスが供給される。液体分析物は、サンプリングプローブの第3のチャネルを通して内部リザーバから抽出される。液体分析物は、サンプリングプローブから質量分析計に移送される。質量分析計の動作により、液体分析物を処理して質量分析データを生成する。質量分析データを分析して、サンプル表面に存在する微生物を検出及び識別する。
【0090】
第2の例の実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。サンプル表面に存在する微生物を検出及び識別することは、サンプル表面の外側又はサンプル表面内(例えば、サンプル表面の最も外側部分の下)の微生物を検出及び識別することを含み得る。微生物は、質量分析データ及び統計モデルを使用して分類される。第1のチャネルが、第1の移送管を通して、外部容器から液体溶媒を受容し、液体分析物が、第2の移送管を通して、サンプリングプローブから質量分析計に移送され、第2のチャネルが、サンプリングプローブの雰囲気から空気を受容する開口ポートを通して、ガスを受容する。質量分析データが分析されるときに、サンプル表面に存在する細菌が識別される。
【0091】
第2の例の実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるStreptococcus(Str.)agalactiae菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるStr.pyogenes菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるStaphylococcus(S.)aureus菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるS.epidermidis菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるPseudomonas(P.)aeruginosa菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるSalmonella enterica菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるEscherichia coli菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるKingella(K.)kingae菌の存在が識別される。
【0092】
第2の例の実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。液体分析物が、サンプル表面の開放環境において、微小液滴又はエアロゾルを生成することなく形成される。サンプリングプローブの第3のチャネルは、移送管によって質量分析計に結合される。内部リザーバから液体分析物が抽出されるときに、低圧が質量分析計に作成される。サンプリングプローブは、ハンドヘルドサンプリングプローブである。サンプル表面は、組織部位を含む。サンプル表面は、感染組織標本を含む。サンプル表面は、エクスビボ組織部位を含む。サンプル表面は、インビボ組織部位を含む。この方法は、医療処置中に行われる。この方法は、外科的処置中に行われる。組織部位は、患者と関連付けられており、患者に対する治療は、質量分析データの分析から識別された微生物に基づいて決定される。治療は、患者に投与される。
【0093】
第3の例では、システムは、容器、質量分析計システム、コンピュータシステム、サンプリングプローブ、及び制御システムを含む。容器は、液体溶媒を含む。質量分析計システムは、液体分析物を処理することによって質量分析データを生成するように構成されている。コンピュータシステムは、質量分析データを分析して、サンプル表面に存在する微生物を検出及び識別するように構成されており、サンプリングプローブは、内部リザーバ、第1のチャネル、第2のチャネル、第3のチャネルを含む。内部リザーバは、ある時間にわたって、一定体積の液体溶媒をサンプル表面に直接接触させて保持して、サンプリングプローブ内に液体分析物を形成するように構成されている。第1のチャネルは、液体溶媒を内部リザーバ内に連通させるように構成されている。第2のチャネルは、ガスを内部リザーバ内に連通させるように構成されている。第3のチャネルは、内部リザーバから液体分析物を通信するように構成されている。制御システムは、サンプリングプローブの第1のチャネルを通して、液体溶媒を内部リザーバに供給することと、サンプリングプローブの第3のチャネルを通して、内部リザーバから液体分析物を抽出することと、サンプリングプローブから質量分析計システムに液体分析物を移送することと、を含む動作を行うように構成されている。
【0094】
第3の例の実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。コンピュータシステムが、質量分析データ及び統計モデルを使用して微生物を分類するように構成されている。システムは、容器から第1のチャネルに液体溶媒を連通させる第1の移送管と、
サンプリングプローブからの質量分析計に液体分析物を連通させる第2の移送管と、を含む。第2のチャネルは、サンプリングプローブの雰囲気から空気を受容する開放端部を含む。一定体積は、内部リザーバの体積によって画定される。質量分析データが分析されるときに、サンプル表面に存在する細菌が識別される。
【0095】
第3の例の実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるStreptococcus(Str.)agalactiae菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるStr.pyogenes菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるStaphylococcus(S.)aureus菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるS.epidermidis菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるPseudomonas(P.)aeruginosa菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるSalmonella enterica菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるEscherichia coli菌の存在が識別される。サンプル表面に存在する細菌が識別されるときに、サンプル表面におけるKingella(K.)kingae菌の存在が識別される。
【0096】
第3の例の実装態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。プローブは、サンプル表面の開放環境において微小液滴又はエアロゾルを生成することなく液体分析物を形成するように構成されている。システムは、サンプリングプローブから質量分析計に液体分析物を連通させる移送管を含む。内部リザーバから液体分析物が抽出されるときに、低圧が質量分析計に作成される。サンプリングプローブは、ハンドヘルドサンプリングプローブである。ハンドヘルドサンプリングプローブは、幾何学的又は空間的制約なしに使用を可能にするように構成されている。サンプル表面は、組織部位を含む。サンプル表面は、感染組織標本を含む。サンプル表面は、エクスビボ組織部位を含む。サンプル表面は、インビボ組織部位を含む。
【0097】
本明細書は多くの詳細を含んでいるが、これらは、特許請求の範囲の範囲を限定するものではなく、むしろ特定の例に特有の特徴の説明として理解されるべきである。本明細書に説明されている、又は別々の実装態様の文脈において図面に示されている特定の特徴も、組み合わせることができる。逆に、単一の実装形態の文脈において説明又は図示された様々な特徴は、複数の実装形態で別々に、又は任意の好適なサブ組み合わせで実装することもできる。
【0098】
同様に、図面には特定の順序で動作が描写されているが、これは、所望の結果を達成するために、このような動作を図示された特定の順序で若しくは逐次的な順序で実行すること、又は例示された全ての動作を実行することを要求するものとして理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスク及び並列処理が有利であり得る。更に、上で説明される実装態様における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実装態様においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明されるプログラム構成要素及びシステムは、一般的に単一の製品内に一体化され得るか、又は複数の製品内にパッケージされ得ると理解されるべきである。
【0099】
多数の実施形態が説明されている。それにもかかわらず、様々な修正を行うことができることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、本開示の範囲内である。
【国際調査報告】