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特表2023-522533遠視の周辺焦点ぼけを低減するための複合マイクロレンズの設計
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】遠視の周辺焦点ぼけを低減するための複合マイクロレンズの設計
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
G02C7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546101
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2021059455
(87)【国際公開番号】W WO2021209394
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20315164.2
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ズビグニエフ・トカルスキー
(72)【発明者】
【氏名】アーメド・ドラメー
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD01
(57)【要約】
パターンに配置された複合マイクロレンズを含む眼鏡レンズが開示されている。複合マイクロレンズは、軸上マイクロレンズレットと、軸上マイクロレンズレット上に配置された軸外サブレンズレットと、を含む。軸外サブレンズレットは、軸上マイクロレンズレットとは異なる光学機能を有する。適切な複合マイクロレンズ設計を選択することにより、主構造の周辺部にサブレンズレットを備えたマイクロレンズレットの追加することで、近視予防、めまい予防、又は任意の他の視覚関連状態のための眼鏡レンズを最適化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズであって、
パターンに配置された複数の複合マイクロレンズと、
軸上マイクロレンズレット、及び、前記軸上マイクロレンズレット上に配置された少なくとも1つの軸外サブレンズレットを含む、複数のマイクロレンズの少なくとも1つの複合マイクロレンズと、
を備え、
前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、前記軸上マイクロレンズレットとは異なる光学機能を有する、眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、前記軸上マイクロレンズレットとは異なる形状を有する、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記軸上マイクロレンズレットの中央部分が、光学屈折力を提供し、前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、周辺焦点ぼけを提供する、請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記軸上マイクロレンズレットが球面であり、前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットが球面である、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記軸上マイクロレンズレットの高さが2ミクロン以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットの2つのサブレンズレットが、前記軸上マイクロレンズレット上の2つの異なる位置にそれぞれ配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットの3つのサブレンズレットが、前記軸上マイクロレンズレットの周囲の三角形配置の頂点に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットの4つのサブレンズレットが、前記軸上マイクロレンズレットの周囲の異なる反対側上に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
前記軸上マイクロレンズレットが球面であり、前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットが凹球面である、請求項1~8のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項10】
前記軸上マイクロレンズレットが、球面、非球面、角柱形、円筒形、円環形、半球面、半円筒形のうちの1つである、請求項1~9のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、凸球面、凹球面、及びプリズム形のうちの1つである、請求項1~10のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項12】
複数の前記少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、異なる形状を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項13】
前記複数の複合マイクロレンズレットが、前記眼鏡レンズの4つの象限のうちの1つの象限に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項14】
前記複数の複合マイクロレンズが、前記パターンがリングパターンであるように配置されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項15】
前記リングパターンが、複数の同心リングである、請求項14に記載の眼鏡レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、近視の制御及び予防、反射防止、並びに人間の眼の他の視覚障害の矯正のための眼鏡レンズを対象とする。より具体的には、光学基材は、マイクロレンズレット及び軸外サブレンズレットを含む複合マイクロレンズに組み込まれ得、軸外サブレンズレットはマイクロレンズレットとは異なる光学機能を有する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で提供される「背景」の説明は、本開示の文脈を全般的に示すためのものである。目下記載してある発明者の研究は、出願時にさもなければ先行技術としての資格を有し得ない説明の態様と同様に、この背景の節の中で記載する限りにおいて本発明に対する先行技術として明示的にも又は黙示的にも認められない。
【0003】
近視に向かう眼の進展は、正視化として知られるカテゴリーに当てはまる。このプロセスは視覚入力によって導かれ、このプロセスを調整するメカニズムは完全には理解されていない。正視化は、焦点ぼけが眼の成長を促進する能動的なメカニズムを介して生じ、遺伝的要因及び正視化の両方が眼の軸の成長に影響を及ぼすと考えられている。図1は、眼の遠視焦点ぼけを示している。矯正眼鏡を装着することが幼児の正視化のプロセスを妨げる可能性があり得ると長い間考えられてきたが、この仮定は、特に動物研究によっても裏付けられている。とはいえ、人間の近視の矯正不足は、近視の進行速度を増大させることが示されている。しかしながら、存在する場合、どの患者グループに対して、幼児期に矯正眼鏡を装着することが実際に正視化を妨げるのかはまだ完全には理解されていない。
【0004】
近視の進展に関与する原因因子に関するいくつかの研究が存在している。特に、統計によれば、長時間の近視作業が近視の進展と相関しているが、因果関係が存在するかどうかは依然として不明である。近視の性質及び発症及び一定の進展を説明する多くの仮説が存在し、特に、あるものは、周辺部の焦点ぼけに対処している。図2は、眼の周辺焦点ぼけを示している。特に、この仮説は、眼の周辺視野における局所的な遠視焦点ぼけが眼の伸長又は成長につながると述べている。この現象は、単一視力レンズデバイスを用いて眼を矯正した後ですら生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第9,442,308号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の1つの目的は、近視の進展に対処する能力及び柔軟性を促進し、特に眼の伸長又は成長につながる周辺部の焦点ぼけに対処するマイクロレンズの設計を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、パターンに配置された複数の複合マイクロレンズを含む眼鏡レンズであり、複数のマイクロレンズの少なくとも1つの複合マイクロレンズは、軸上マイクロレンズレット、及び軸上マイクロレンズレット上に配置された少なくとも1つの軸外サブレンズレットを含み、少なくとも1つの軸外サブレンズレットは、軸上マイクロレンズレットとは異なる光学機能を有する。
【0008】
複合マイクロレンズ設計には、軸上マイクロレンズレット用のある設計と、軸外サブレンズレット用のいくつかの異なる設計があり得る。軸は、軸上及び軸外という用語の基準となる、マイクロレンズの光学中心を通過する線又は光軸である。マイクロレンズの光学中心は、光線が偏移することなく通過できる点である。
【0009】
第2の態様では、少なくとも1つの軸外サブレンズレットは、軸上マイクロレンズレットとは異なる形状を有する。
【0010】
第3の態様では、軸上マイクロレンズレットの中央部分が光学屈折力を提供し、少なくとも1つの軸外サブレンズレットが周辺焦点ぼけを提供する。
【0011】
第4の態様では、軸上マイクロレンズレットは球面であり、少なくとも1つの軸外サブレンズレットは球面である。
【0012】
第5の態様では、軸上マイクロレンズレットの高さは、2ミクロン以下である。
【0013】
第6の態様では、少なくとも1つの軸外サブレンズレットの2つのサブレンズレットが、軸上マイクロレンズレットの左側部分及び右側部分にそれぞれ配置されている。
【0014】
第7の態様では、少なくとも1つの軸外サブレンズレットの3つのサブレンズレットが、軸上マイクロレンズレットの周囲の三角形配置の頂点に配置されている。
【0015】
第8の態様では、少なくとも1つの軸外サブレンズレットの4つのサブレンズレットが、軸上マイクロレンズレットの周囲の異なる反対側上に配置されている。
【0016】
第9の態様では、軸上マイクロレンズレットは球面形であり、少なくとも1つの軸外サブレンズレットは凹球面である。
【0017】
第10の態様では、軸上マイクロレンズレットは、球面形、非球面形、角柱形、円筒形、円環形、半球面形、半円筒形のうちの1つである。
【0018】
第11の態様では、少なくとも1つの軸外サブレンズレットは、凸球面、凹球面、及びプリズム形のうちの1つである。
【0019】
第12の態様では、複数の少なくとも1つの軸外サブレンズレットは、異なる形状を有する。
【0020】
第13の態様では、複数の複合マイクロレンズレットが、眼鏡レンズの4つの象限のうちの1つの象限に配置されている。
【0021】
第14の態様では、パターンがリングパターンであるように、複数の複合マイクロレンズが配置されている。
【0022】
第15の態様では、リングパターンは、複数の同心リングである。
【0023】
例示的な実施形態の前述の一般的な説明、及びその以下の詳細な説明は、本開示の教示の単なる例示的な態様に過ぎず、限定的なものではない。
【0024】
本開示及び本開示に付随する利点の多くについてのより完全な理解は、添付図面に関連して検討する際に以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるようになるときに容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】眼の遠視焦点ぼけを示す図である。
図2】眼の周辺焦点ぼけを示す図である。
図3A】単一視力眼鏡レンズ上に配列されたマイクロレンズを示す図である。
図3B】単一視力眼鏡レンズ上に配列されたマイクロレンズを示す図である。
図4】本開示の例示的な態様による複合マイクロレンズの形状を示す図である。
図5】本開示の例示的な態様による軸上マイクロレンズレットのプロファイル図を示す。
図6】本開示の例示的な態様による軸外サブレンズレットのプロファイル図を示す。
図7A】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7B】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7C】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7D】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7E】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7F】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7G】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7H】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図7I】本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示す。
図8A】本開示の例示的な態様による複合マイクロレンズの例を示す図である。
図8B】本開示の例示的な態様による複合マイクロレンズの例を示す図である。
図8C】本開示の例示的な態様による複合マイクロレンズの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面では、同様の参照番号は、いくつかの図を通して同一又は対応する部分を示している。更に、本明細書で使用される場合、「a」、「an」などの単語は、特に明記されていない限り、一般に「1つ又は複数」の意味を伝える。図面は、特に明記されていない限り、又は概略的な構造若しくはフローチャートを示していない限り、一般に、縮尺どおりに描かれている。
【0027】
更に、「おおよそに」、「おおよその」、「約」という用語、及び同様の用語は、一般に、20%、10%、又は好ましくは5%のマージン内の指定された値、及びそれらの間の任意の値を含む範囲を指す。
【0028】
本開示は、光学レンズ(度数なし又は度数あり)を含む非マイクロ構造に組み込まれた、マルチセグメント化されたマイクロ構造スケール特徴部を含む複合マイクロレンズの設計に関する。これらの複合マイクロレンズレットは、光学レンズ基材の表面上に直接組み込むことができ、単一フィルム上に組み込むことができ、又は光学レンズ上のウェーハとして組み込まれることになるマルチフィルムベースのラミネート構造内に組み込むことができる。ウェーハは、いくつかの光学レンズ基材材料で使用することができる単一の設計及び材料であり得る。本開示は、異なる屈折力関数を有し得るマイクロレンズレットの主中心軸に対して両側上で異なる、光学(焦点、焦点ぼけ、収束屈折力、発散屈折力、プリズム)機能を有する光学レンズ上に配列された軸外微細構造サブレンズレットの使用を伴う。
【0029】
複合マイクロレンズ設計には、軸上マイクロレンズレット用のある設計と、軸外サブレンズレット用のいくつかの異なる設計があり得る。軸は、軸上及び軸外という用語の基準となる、マイクロレンズの光学中心を通過する線又は光軸である。マイクロレンズの光学中心は、光線が偏移することなく通過できる点である。図8Aに示される例では、軸上マイクロレンズレット801は、マイクロレンズレット801の中央にあるドットによって表されるマイクロレンズの軸上にある。軸外レンズレット803は、マイクロレンズの軸からオフセットされている。
【0030】
本開示は、近視の制御及び予防、反射防止表面、並びに他の視覚関連健康障害に対処する用途における微細構造に関連するような、光学フィルムの光管理に関する。本開示は、基材の表面上、フィルム上、又はラミネート構造内の微細構造設計の様々な配置に関する。
【0031】
微細構造及び基材は、同じ材料又は互いに適合性のある材料のいずれかで作成されて、微細構造/基材界面の良好な接合及び光学透明性を保証することができる。同じ材料の例には、ポリカーボネート(PC)、脂環式ポリカーボネートコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリアミド(PA)、コポリエステル、ポリエステルテラフタレート(PET)、セルローストリアセテート(TAC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、及び環状オレフィンコポリマー(COC)が含まれるが、これらに限定されない。不適切なフィラメント/キャリアのペアの例には、PMMA/PC、コポリエステル/PC、ポリエステル合金/PC、及びアリサイクリックポリカーボネート/PCが含まれるが、これらに限定されない。PMMAの非限定的な例には、EvonikACRYLITE(登録商標)、ArkemaAltuglas(登録商標)、及びChiMeiACRYREX(登録商標)が含まれる。コポリエステルの非限定的な例には、EastmanTRITAN(商標)及びSKChemicalEcozen(登録商標)が含まれる。ポリエステル合金の非限定的な例には、SabicXYLEX(商標)が含まれる。アリサイクリックポリカーボネートの非限定的な例には、Mitsubishi Chemical CorporationのDURABIO(商標)、及びTeijinのPlanext(登録商標)が含まれる。PCの非限定的な例には、Sabic Lexan(商標)、Teijin Panlite(登録商標)、及びCovestro Makrolon(登録商標)が含まれる。
【0032】
ラミネートの典型的な例には、PC/PVA/PC、PC/PET/PC、並びにTAC/PVA/TAC偏光ラミネート、PC/PU/PC及びPC/TPU/PCフォトクロミックラミネート、PC/MOF(多層光学フィルム)/PC偏光、並びに/又はブルーカット及び/又はミラーラミネートが含まれる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ラミネート構造は、複数の層の偏光ラミネートであり、層のうちの2つ以上は異なる材料である。偏光ラミネートには、ポリカーボネート(PC)/ポリビニルアルコール(PVA)/PC、ポリカーボネート(PC)/ポリエステルテラフタレート(PET)/PC、セルローストリアセテート(TAC)/PVA/TAC、ポリアミド(PA)/PVA/PA、環状オレフィンコポリマー(COC)/PVA/COC、熱可塑性ポリウレタン(TPU)/PVA/TPU、及びPC/多層光学フィルム(MOF)/PCが含まれるが、これらに限定されない。ラミネートは対称として示されているが、非対称のラミネートもまた使用され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、ラミネート構造は、複数の層のフォトクロミックラミネートであり、層のうちの2つ以上は異なる材料である。フォトクロマチックラミネートには、ポリカーボネート(PC)、/ポリウレタン(PU)/PC、PC/ポリエーテルブロックアミド(PEBA)/PC、三酢酸セルロース(TAC)/PU/TAC、TAC/PEBA/TAC、ポリアミド(PA)/PU/PA、PA/PEBA/PA、環状オレフィンコポリマー(COC)/PU/COC、COC/PEBA/COC、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)/PU/TPU、及びTPU/PEBA/TPUが含まれるが、これらに限定されない。ラミネートは対称として示されているが、非対称のラミネートもまた使用され得る。
【0035】
本開示の文脈において、用語「レンズ」は未切断の光学レンズ、又は特定の眼鏡フレームに合わせて削られた眼鏡レンズ、或いは眼科レンズ及び当該眼科レンズに配置されるべく適合された光学デバイスを指す場合がある。光学デバイスは、眼鏡レンズの前面又は背面に配置されていてもよい。光学デバイスは光学パッチであってもよい。光学デバイスは、例えば眼科レンズを含む眼鏡フレームにクリップ留めするように構成されたクリップオンサングラス等、眼科レンズに着脱自在に配置すべく適合されていてもよい。
【0036】
Minghua Daiの特許文献1は、近視及び遠視の予防及び治療のための焦点ぼけ及び視度を制御するための多要素レンズを記載している。Daiによれば、人間の眼の内部の全視野領域は、中央視野領域、赤道視野領域、及び2つの他の領域間の部分周辺視野領域に分割され得る。中央視野は人間の眼の鮮明な視力を決定し、赤道視野領域は人間の眼の鮮明な視力にほとんど影響を及ぼさないが、この領域での眼の成長及び変化は眼軸のサイズに最も重要な影響を及ぼす。その後、Daiの発明は、多要素レンズを設計するために光学焦点ぼけの方法を使用する。
【0037】
遠視の完全な矯正又は過度でない矯正を確実にするために、Daiは、眼の中央視野領域の焦点ぼけ又は焦点が小さく、赤道視野領域の補正度よりも小さな程度で凸レンズの焦点ぼけが大きく、且つ他の周辺視野領域の焦点ぼけが中程度であることで、光学遠視焦点ぼけを作成する設計について記載している。
【0038】
多要素レンズは、大きな焦点ぼけを生成するための大きな単位の凸レンズ、大きな単位の凸レンズ上に提供され得る1つの小さな単位の凹レンズ、及び複数のサブ単位の凹レンズを含む。人間の眼の視領域に対して光の影響を及ぼすことにより、眼軸の成長を効果的に制御することができ、これにより、近視及び遠視の予防及び治療に良好な特性を達成する。場合によっては、ユーザの視力が安定したときに眼鏡の使用を停止してもよい。
【0039】
近視の進行を抑制するためのレンズを形成する際、第2の屈折領域は、眼の網膜の前の点に画像を集束させる機能を有する材料で作成され得る。したがって、患者が近視の進行を抑制するレンズを使用して物体を観察すると、網膜上に物体の画像が形成され、一方で、網膜の前に画像が形成される。すなわち、このレンズは、第1の屈折力によって形成された物体の画像を視覚的に認識している間に、第1の屈折力以外の屈折力によって得られる作用である、網膜の前の像によって近視の進行を抑制する作用を有する。図3A及び3Bは、単一視力眼鏡レンズ上に配列されたマイクロレンズを示している。特定の眼鏡レンズは、近視を矯正するための処方に基づく第1の屈折力を有する第1の屈折領域301と、レンズの中央部分の近傍に複数のそれぞれ独立した島形領域として形成された第2の屈折領域303と、を有する。
【0040】
このレンズの代替実施形態は、近視又は遠視などの眼の異常屈折の進行を抑制又は低減するために人の眼の前に装着されることを意図したレンズ要素を論じている、国際公開第2019/166659号パンフレットに示されている。本開示は、その幾何学的形状全体にわたって等方性屈折力を有する単純なマイクロレンズ設計(例えば、球面、非球面、プリズム)を使用する現在のアプローチを超えて、複雑なマイクロレンズレット設計、並びに主光学レンズ上のサイズ、配置、及び密度に基づいて光学機能を最適化するアプローチに及ぶ。例えば、1つのサブレンズレット内に可変屈折力を有することにより、調節ラグ距離が短くして、思春期の眼の急激な伸長を防ぐことができる(近視予防)。
【0041】
本開示は、中央の軸上マイクロレンズレットに対して軸外側上で異なる光学機能を有する光学レンズの表面上に配列された、複合マイクロレンズの使用に関する。複合マイクロレンズは、複数の光学機能を有することができ、例えば、中央のマイクロレンズレット部分の光学屈折力及びマイクロレンズの軸外部分は、周辺焦点ぼけを提供する。
【0042】
サブレンズレット設計により、軸外光を独立制御して、眼の後方の形状に対して光を収束又は発散させることのいずれかが可能になる。一方、レンズの軸上部分は、精細部を見る役割を担う眼の黄斑部分(網膜中央部)に光を収束させる。
【0043】
マイクロレンズレットの形状、サブレンズレットの形状、及びマイクロレンズレットの軸の周囲の1つ又は複数のサブレンズレットの配置は、非対称であり得る。有利にも、これらの特徴により、レンズの各部分を通過して来る光を正確にカスタマイズして非対称制御することが可能になる。
【0044】
通常の状況下では、すでに近視の眼は平均で約0.8ジオプタの遠視焦点ぼけに苦しんでいる。この値は、その元の位置とは対照的に、すでに細長い眼球の位置の間の不一致を表す。この焦点ぼけの結果として、眼は、大きな調節の遅れに苦しんでいる。設計上、周辺部にマイクロレンズを追加することにより、矯正単眼視(SV)レンズを装着しているすでに近視の眼が苦しんでいる調節ラグの大きな距離を低減することを支援する。マイクロレンズの周辺部の軸外領域により多くのマイクロレンズを追加し、調整可能な屈折力を(+1ジオプタ~+3.5ジオプタまでの)間のどこかで追加することによって、ラグ距離を更に低減することができる。このラグにおける更なる低減により、画像を眼の網膜に更に近づけるのに役立ち、最終的には、通常の状況下で近視の進行を悪化させる物体を適用するために眼を更に伸長する必要を妨げる。
【0045】
現在のイノベーションは、同じ微細構造内に多数の光学屈折力を有するためのより大きな自由度を提供し、その潜在的な有効性及び効力を拡大する。
【0046】
主軸外微細構造化サブレンズレットを組み込んだ複合マイクロレンズの例が、図4に示されている(ブーメラン401及び複眼403)。図4に示されるように、軸外サブレンズレットは、それぞれのマイクロレンズレット411、421の表面上で、凹面413、又は凸面423、又は平坦であり得る。
【0047】
複合マイクロレンズ設計には、軸上マイクロレンズレット用のある設計と、軸外サブレンズレット用のいくつかの異なる設計があり得る。
【0048】
図5は、本開示の例示的な態様による軸上マイクロレンズレットのプロファイル図を示している。軸上マイクロレンズレット設計は、次のいずれかの形状、すなわち、球面501、503、非球面、プリズム(湾曲)505、(従来型)507、円筒、円環、球面円環、又は他の既知の光学設計、のうちの1つであり得る。図6は、本開示の例示的な態様による軸外サブレンズレットのプロファイル図を示している。軸外サブレンズレット423は、マイクロレンズレットの任意の形状、すなわち、球面601、角度付き球面603、湾曲プリズム605、球面プリズム607、従来のプリズム609、のうちの1つであり得る。しかしながら、軸外サブレンズレットは、i)軸上形状の周囲の位置(画像を見ている視認者の視点からの軸上マイクロレンズレットの左、右、上、下の部分)、ii)形状のサイズ、iii)曲率半径、iv)プリズムの傾斜、v)眼のレンズ全体の象限、及び他の位置において変化する。サブレンズレットは任意の数であってもよく、サブレンズレットは、ペアで(例えば、2、4、6など)又は独立して(例えば、1、3、5、7など)構成され得る。サブレンズレットは、マイクロレンズレット上で、パターンで又はランダムに、互いに向かい合って配置され得る。
【0049】
図7A図7Iは、本開示の例示的な態様による、軸上マイクロレンズレット又は軸外サブレンズレットの3次元斜視図を示している。軸上マイクロレンズレット設計又は軸外サブレンズレットは、以下のいずれかの形状、すなわち、図7Aの球面701、図7Bの部分円筒703、図7Cの非球面705、図7Hの非球面717、図7Iの非球面719、図7Dのプリズム(湾曲)707、図7Eのプリズム(従来型)709、図7Fの四分円筒711、図7Gの円環又は他の既知の光学設計715、のうちの1つであり得る。マイクロレンズレットは、直径が約0.25mm~2mm以下、高さが約1~5ミクロンの範囲にあり得る。
【0050】
図8A図8B図8Cは、本開示の例示的な態様による複合マイクロレンズの例を示す図である。図8Aの複合マイクロレンズの例は、中央の軸上形状801は球面であり、サブレンズレット形状803もまた球面である。このマイクロレンズの断面を見ると、軸外サブレンズレット構造803は、凸球面、凹球面、プリズム、又は球面、円筒、円環、プリズム、又は平坦プリズムを含む他の一般的な光学形状、並びに例えば、放物線、双曲線、疑似球面、及びトラクトリコイド円錐である他の幾何学的形状であり得る。
【0051】
内耳感染症、片頭痛、メニエール病、BPPVなどを含むめまいを引き起こす多くの潜在的な原因が存在する。アイケアの専門家は、視覚に関連する多くの健康問題を調査し始めたばかりであり、例えば、特定の遮光レンズは、片頭痛(一般的に)及び片頭痛関連めまいを軽減するのに役立つ。また、視野の移動、傾斜、多用、及び方向感覚の喪失を含む視覚刺激によって引き起こされるめまいを有する患者は、めまいをトリガする視覚刺激を低減/排除することができる特別に適合されたレンズ(例えば、周辺光の遮断、方向転換、又は焦点ぼけ)によって助けられる場合がある。
【0052】
適切な複合マイクロレンズ設計を選択することにより、主構造の周辺部に微細構造を追加することで、近視予防、めまい予防、又は任意の他の視覚健康関連状態のメカニズムを最適化することができる。
【0053】
複合マイクロレンズは、主軸外微細構造サブレンズ設計を組み込んだ複合マイクロレンズを変更し、且つそれらをカスタムアイウェア上に配置することによって、装着者ごとにカスタマイズされたレンズ設計を作成するために使用され得る。
【0054】
(1)パターンに配置された複数の複合マイクロレンズを含む眼鏡レンズであって、複数のマイクロレンズの少なくとも1つの複合マイクロレンズが、軸上マイクロレンズレット、及び軸上マイクロレンズレット上に配置された少なくとも1つの軸外サブレンズレットを含み、少なくとも1つの軸外サブレンズレットは、軸上マイクロレンズレットとは異なる光学機能を有する、眼鏡レンズ。
【0055】
(2)少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、軸上マイクロレンズレットとは異なる形状を有する、(1)に記載の眼鏡レンズ。
【0056】
(3)軸上マイクロレンズレットの中央部分が、光学屈折力を提供し、少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、周辺焦点ぼけを提供する、(1)又は(2)に記載の眼鏡レンズ。
【0057】
(4)軸上マイクロレンズレットが球面であり、少なくとも1つの軸外サブレンズレットが球面である、(1)~(3)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0058】
(5)軸上マイクロレンズレットの高さが2ミクロン以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0059】
(6)少なくとも1つの軸外サブレンズレットの2つのサブレンズレットが、軸上マイクロレンズレットの左側部分及び右側部分にそれぞれ配置されている、(1)~(5)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0060】
(7)少なくとも1つの軸外サブレンズレットの3つのサブレンズレットが、軸上マイクロレンズレットの周囲の三角形配置の頂点に配置されている、(1)~(6)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0061】
(8)少なくとも1つの軸外サブレンズレットの4つのサブレンズレットが、軸上マイクロレンズレットの周囲の異なる反対側上に配置されている、(1)~(7)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0062】
(9)軸上マイクロレンズレットが球面であり、少なくとも1つの軸外サブレンズレットが凹球面である、(1)~(8)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0063】
(10)軸上マイクロレンズレットが、球面、非球面、角柱形、円筒形、円環形、半球面、半円筒形のうちの1つである、(1)~(9)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0064】
(11)少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、凸球面、凹球面、及びプリズム形のうちの1つである、(1)~(10)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0065】
(12)複数の少なくとも1つの軸外サブレンズレットが、異なる形状を有する、(1)~(11)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0066】
(13)複数の複合マイクロレンズレットが、眼鏡レンズの4つの象限のうちの1つの象限に配置されている、(1)~(12)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0067】
(14)複数の複合マイクロレンズが、前記パターンがリングパターンであるように配置されている、(1)~(13)のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
【0068】
(15)リングパターンが、複数の同心リングである、(14)に記載の眼鏡レンズ。
【0069】
上記の教示に照らして、本発明の多数の修正及び変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本明細書に特に説明した以外の方法で本発明を実施してもよいことを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】