(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】染色体外DNAの電気泳動抽出および富化のためのシステム、デバイス、および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230524BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20230524BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALN20230524BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20230524BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
C12M1/26
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551643
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 US2021028922
(87)【国際公開番号】W WO2021217052
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511087383
【氏名又は名称】セージ サイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ボルズ, ティー. クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB20
4B029FA03
4B063QA13
4B063QQ03
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QS16
4B063QS25
(57)【要約】
本開示の実施形態は、染色体外DNA抽出のための、ならびに、いくつかの実施形態では、そこからのDNAの単離、ならびに/あるいは、いくつかの実施形態ではecDNAを含む抽出および/または単離されたDNAの分析のための、方法、システム、およびデバイスを提示している。比較的ごく近接して配置された液体試料を保持するための、かつ本開示の1つまたは方法を可能にするまたは実行するように構成された、少なくとも2つのウェル/キャビティ/区画を含むアガロースゲルカセットおよび/またはシステムもまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色体外DNA(ecDNA)の抽出および単離方法であって、
DNA電気泳動用に構成されたアガロースゲルカラムを提供することであって、前記ゲルカラムが、少なくとも2つの区画を含むように、または少なくとも2つの区画に含まれるように構成されていること;
複数の細胞を含む細胞懸濁物を含む試料を、前記少なくとも2つの区画のうちの、第1の正に帯電した電極に対して近位に配置された第1の区画内に置くことであって、前記正に帯電した電極は、電気泳動中に負に帯電した界面活性剤およびDNAを誘引するよう構成されていること;
少なくとも1つの負に帯電した界面活性剤を含む溶解試薬を、前記少なくとも2つの区画の第2の区画内に置くことであって、前記第2の区画は、第2の負に帯電した電極に対して近位に配置されていること;
前記第1の電極および前記第2の電極を介して第1の電気泳動場を印加し、その結果、前記負に帯電した界面活性剤が前記細胞懸濁物を含む前記第1の区画に移動し、その中に入り、またはその中を通り、その結果、前記第1の区画内の細胞が液体混合による粘性せん断なしに実質的に溶解されるようにすること;
第2の電気泳動場を印加するか、または前記第1の電気泳動場を継続して、所望のecDNAのサイズ選択に適した条件下で電気泳動を行うようにし、その結果、前記ecDNAがより大きな染色体DNA分子から分離されて前記ゲルカラムを移動すること;および
前記ゲルカラムから前記サイズ選択されたecDNAを単離すること
を含む方法。
【請求項2】
電気泳動により、3Mbよりも大きなサイズの前記DNAが前記アガロースゲルに固定化されることになる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気泳動により、3Mbよりも大きな前記DNAが前記第1の区画の壁に固定化されることになる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電気泳動により、3Mb未満のサイズを有するDNAが前記ゲルカラムを移動することになる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
3Mb未満のサイズを有する前記DNAが電気溶出により単離される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
電気溶出により、3Mb未満のサイズのサイズ画分の前記DNAが、溶出カセットのうちの1またはそれより多くの溶出モジュールに溶出されることになる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
3Mb未満の前記DNAがecDNAを含む、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
電気泳動が完了するまでの期間が、前記ecDNAのサイズに対応する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電気泳動が2~9時間の間行われる、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記単離されたecDNAの少なくとも1つの特性を分析することをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記単離されたecDNAの少なくとも1つの特性を分析することをさらに含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記ecDNAを富化することを含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記複数の細胞が、動物細胞、哺乳動物細胞、およびヒト細胞のいずれかを含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記複数の細胞が、細胞壁を除去するために酵素処理された真菌細胞を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記複数の細胞が、植物細胞を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記複数の細胞が、そうでなければアニオン性界面活性剤による細胞溶解を妨げる細胞壁を除去するために酵素処理された植物細胞を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記複数の細胞が細菌細胞を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記複数の細胞が、そうでなければアニオン性界面活性剤による細胞溶解を妨げる細胞壁を除去するために酵素処理された細菌細胞を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記細胞懸濁物中の前記細胞が均一に分散している、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの区画が互いに近接して配置されている、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ゲルカラムからサイズ選択されたecDNAを単離することが、電気溶出を経由する、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記第2の電気泳動場または前記第1の電気泳動場の継続が、所望のecDNAのサイズ選択に適した条件下で電気泳動を行うように適用され、その結果、前記ecDNAがより大きな染色体DNA分子から分離される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ゲルカラムから前記サイズ選択されたecDNAを単離することが、電気溶出を介する、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの特性が、サイズ、トポロジー、および配列内容からなる群から選択される、請求項10~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記ecDNAのDNA配列を決定することをさらに含む、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記ecDNAを画像化することをさらに含む、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
画像化が、光学的、電子顕微鏡的、原子間力顕微鏡法のうちの少なくとも1つを介する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
本明細書に開示される、前記方法の実施形態のいずれか1つもしくはそれより多く、および/またはその1つもしくはそれより多くのステップに従う方法。
【請求項29】
本明細書に開示される方法の1つまたはそれより多くを実行するように構成されたシステムおよびデバイスのうちの少なくとも1つ。
【請求項30】
比較的ごく近接して配置された液体試料を保持するための、かつ本開示の1つまたは方法を可能にするまたは実行するように構成された、少なくとも2つのウェル/キャビティ/区画を含むアガロースゲルカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年4月24日に出願された米国仮特許出願第63/015,288号の利益および優先権を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの原核生物および真核生物において、細胞およびその小器官の遺伝的構成を構成するDNAは、サイズおよびトポロジーにおいて劇的に異なることがある。哺乳動物では、核染色体DNAは線状であり、サイズは数十から数百メガベース(Mbs)の範囲である。染色体DNAに加えて、各哺乳動物細胞は、一般に、1細胞あたり数千コピーの環状16キロベース(kb)DNAをミトコンドリア内に持つ(Vetriら、1990)。
【0003】
最近の研究により、真核細胞はまた、核DNAに由来する染色体外DNA(ecDNA)サークルも含んでいることが示されている。正常細胞では、これらのDNAは小さく、一般に20kb未満のサイズであり、頻繁に反復染色体配列に関連している(Moller, et al.、2018)。しかし、がん細胞では、増幅されたがん遺伝子や薬剤耐性遺伝子を持つ、10数kbの大きさから数Mbの範囲の大きさの、より大きな環状ecDNAもまた見られる(Verhaak, et al.のレビュー、2019年)。
【0004】
同様に、細菌細胞では、平均サイズが約4Mbの大きな環状染色体が頻繁に存在し(細菌の染色体サイズは、100~200(low hundred)kbから10代前半のMbの範囲である)、細菌はまた、一般にプラスミドと呼ばれるより小さな環状ecDNAを持つ(Franciaら、,2004、Sherratt,1974)。これらのプラスミドは、典型的には、1kbから100~200kbの大きさの範囲である。病原性細菌では、このようなプラスミドは、ビルレンス(virulence)、宿主範囲、および薬剤耐性に影響を与える遺伝子を頻繁に持つ(Pilla and Tang,2018; Rozwandowicz et al,2018)。
【0005】
細菌および哺乳動物細胞において、染色体外DNAは通常、全細胞DNAの一部を構成している。現在、染色体外DNAのほとんどの分子的特徴づけは、全ゲノム配列データとde novo配列アセンブリアルゴリズムを用いてバイオインフォマティックに実施されている。高カバレッジの全ゲノム配列データを用いると、ecDNA配列を単一の環状コンティグにアセンブルすることが可能な場合が多い。しかし、ecDNAが染色体DNA配列と密接に関連している場合、そしてそれらが顕著なレベルの転位を有する場合、ecDNAのアセンブリは困難となる(Wu et al.,2019)。
ecDNAはヒトの疾患において重要な役割を担っているため、それを解析するための新しく費用対効果の高い方法を開発することが重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Veltri KL, Espiritu M, Singh G. Distinct genomic copy number in mitochondria of different mammalian organs. J Cell Physiol. 1990 Apr;143(1):160-4. doi: 10.1002/jcp.1041430122. PMID: 2318903.
【非特許文献2】Moller HD, Mohiyuddin M, Prada-Luengo I, Sailani MR, Halling JF, Plomgaard P, Maretty L, Hansen AJ, Snyder MP, Pilegaard H, Lam HYK, Regenberg B. Circular DNA elements of chromosomal origin are common in healthy human somatic tissue. Nat Commun. 2018 Mar 14;9(1):1069. doi: 10.1038/s41467-018-03369-8. PMID: 29540679; PMCID: PMC5852086.
【非特許文献3】Verhaak RGW, Bafna V, Mischel PS. Extrachromosomal oncogene amplification in tumour pathogenesis and evolution. Nat Rev Cancer. 2019;19(5):283-288. doi:10.1038/s41568-019-0128-6.
【非特許文献4】Francia MV, Varsaki A, Garcillan-Barcia MP, Latorre A, Drainas C, de la Cruz F. A classification scheme for mobilization regions of bacterial plasmids. FEMS Microbiol Rev. 2004 Feb;28(1):79-100. doi: 10.1016/j.femsre.2003.09.001. PMID: 14975531.
【非特許文献5】Sherratt DJ. Bacterial plasmids. Cell. 1974 Nov;3(3):189-95. doi: 10.1016/0092-8674(74)90130-5. PMID: 4373170
【非特許文献6】Pilla G, Tang CM. Going around in circles: virulence plasmids in enteric pathogens. Nat Rev Microbiol. 2018 Aug;16(8):484-495. doi: 10.1038/s41579-018-0031-2. PMID: 29855597.
【非特許文献7】Rozwandowicz M, Brouwer MSM, Fischer J, Wagenaar JA, Gonzalez-Zorn B, Guerra B, Mevius DJ, Hordijk J. Plasmids carrying antimicrobial resistance genes in Enterobacteriaceae. J Antimicrob Chemother. 2018 May 1;73(5):1121-1137. doi: 10.1093/jac/dkx488. PMID: 29370371.
【非特許文献8】Wu S, Turner KM, Nguyen N, Raviram R, Erb M, Santini J, Luebeck J, Rajkumar U, Diao Y, Li B, Zhang W, Jameson N, Corces MR, Granja JM, Chen X, Coruh C, Abnousi A, Houston J, Ye Z, Hu R, Yu M, Kim H, Law JA, Verhaak RGW, Hu M, Furnari FB, Chang HY, Ren B, Bafna V, Mischel PS. Circular ecDNA promotes accessible chromatin and high oncogene expression. Nature. 2019 Nov;575(7784):699-703. doi: 10.1038/s41586-019-1763-5. Epub 2019 Nov 20. PMID: 31748743; PMCID: PMC7094777.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示の実施形態は、染色体外DNA抽出のための、ならびにいくつかの実施形態では、そこからのDNAの単離、ならびに/あるいは、抽出および/もしくは単離されたDNAの分析のための、方法、システム、およびデバイスを提示する。
【0008】
したがって、いくつかの実施形態では、染色体外DNA(ecDNA)の抽出および分離方法が提供され、これは、DNA電気泳動用に構成されたアガロースゲルカラムを提供することであって、ゲルカラムが、(本開示を通してキャビティまたはウェルとも言われ得る)少なくとも2つの区画を含むように、または少なくとも2つの区画に含まれるように構成されていること、複数の細胞を含む細胞懸濁物を含む試料を、少なくとも2つの区画のうちの、第1の正に帯電した電極に対して近位に配置された第1の区画内に置くことであって、正に帯電した電極は、電気泳動中に負に帯電した界面活性剤およびDNAを誘引するよう構成されていること、少なくとも1つの負に帯電した界面活性剤を含む溶解試薬を、少なくとも2つの区画の第2の区画内に置くことであって、第2の区画は、第2の負に帯電した電極に対して近位に配置されていること、第1の電極および第2の電極を介して第1の電気泳動場を印加し、その結果、負に帯電した界面活性剤が細胞懸濁物を含む第1の区画に移動し、その中に入り、またはその中を通り、その結果、第1の区画内の細胞が液体混合による粘性せん断なしに実質的に溶解されるようにすること、第2の電気泳動場を印加するか、または第1の電気泳動場を継続して、所望のecDNAのサイズ選択に適した条件下で電気泳動を行うようにし、その結果、ecDNAがより大きな染色体DNA分子から分離されてゲルカラムを移動すること、およびゲルカラムからサイズ選択されたecDNAを単離することを含む。
【0009】
そのような実施形態は、以下の特徴、機能、構造、ステップ、プロセス、目的、利点、および明確化のうちの1つおよび/または別のもの(およびいくつかの実施形態では、そのうちの複数のもの、およびいくつかの実施形態では、そのうちの大多数のもの、そしてなお他の実施形態では、実質的に全てもしくは全て)を含むことができ、本開示のさらに別の実施形態をもたらす:
-電気泳動により、3Mbよりも大きなサイズのDNAがアガロースゲルに固定化されることになる;
-電気泳動により、3Mbよりも大きなDNAが第1の区画の壁に固定化されることになる;
-電気泳動により、3Mb未満のサイズを有するDNAがゲルカラムを移動することになる;
-3Mb未満のサイズを有するDNAが電気溶出により単離される;
-電気溶出により、3Mb未満のサイズのサイズ画分のDNAが、溶出カセットのうちの1またはそれより多くの溶出モジュールに溶出されることになる;
-3Mb未満のDNAがecDNAを含む;
-電気泳動が完了するまでの期間が、ecDNAのサイズに対応する;
-電気泳動が2~9時間の間行われる;
-ecDNAを分析する;
-単離されたecDNAの少なくとも1つの特性を分析する、ここで、少なくとも1つの特性は、サイズ、トポロジー、および配列内容からなる群から選択され得る;
-ecDNAを富化する;
-複数の細胞が、動物細胞を含む;
-複数の細胞が、哺乳動物細胞を含む;
-複数の細胞が、ヒト細胞を含む;
-複数の細胞が、真菌細胞を含む;
-複数の細胞が、細胞壁を除去するために酵素処理された真菌細胞を含む;
-複数の細胞が、植物細胞を含む;
-複数の細胞が、そうでなければアニオン性界面活性剤による細胞溶解を妨げる細胞壁を除去するために酵素処理された植物細胞を含む;
-複数の細胞が細菌細胞を含む;
-複数の細胞が、そうでなければアニオン性界面活性剤による細胞溶解を妨げる細胞壁を除去するために酵素処理された細菌細胞を含む;
-細胞懸濁物中の細胞が均一に分散している;
-少なくとも2つの区画が互いに近接して配置されている(arranged proximate);
-ゲルカラムからサイズ選択されたecDNAを単離することが、電気溶出を経由する;
-第2の電気泳動場および/または第1の電気泳動場の継続が、所望のecDNAのサイズ選択に適した条件下で電気泳動を行うように適用され、その結果、ecDNAがより大きな染色体DNA分子から分離される;
-ゲルカラムからサイズ選択されたecDNAを単離することが、電気溶出を介する;
-ecDNAのDNA配列を決定する;ならびに
-ecDNAを画像化する、ここで、画像化が、光学的、電子顕微鏡的、原子間力顕微鏡法のうちの少なくとも1つを介し得る。
【0010】
比較的ごく近接して配置された液体試料を保持するための、かつ本開示の1つまたは方法を可能にするまたは実行するように構成された、少なくとも2つのウェル/キャビティ/区画を含むアガロースゲルカセットおよび/またはシステム。
【0011】
本開示のこれらおよび他の実施形態、利点、および目的は、添付図、以下に提供する簡単な説明および以下に続く詳細な説明を参照することにより、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1aは、本開示のいくつかの実施形態による、アガロースゲルカセットの斜視分解図である。
【0013】
【
図1B】
図1bは、本開示のいくつかの実施形態による、
図1aのアガロースゲルカセットの斜視図である。
【0014】
【
図2A】
図2aは、本開示のいくつかの実施形態による、トップカバーを有する、アセンブルされたカセットの上面図を示す。
【0015】
【
図2B】
図2bは、本開示のいくつかの実施形態による、トップカバーが取り外された
図2aのアセンブルされたカセットの上面図を示す。
【0016】
【
図3】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による方法の模式図である。
【0017】
【
図4A】
図4aおよび
図4bは、本開示のいくつかの実施形態による、qPCRの結果(実施例1に関する)を示すグラフである。
【
図4B】
図4aおよび
図4bは、本開示のいくつかの実施形態による、qPCRの結果(実施例1に関する)を示すグラフである。
【0018】
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による方法を実行する際のmtDNA抽出を示す結果グラフである。
【0019】
【
図6】
図6~7は、Miseq mtDNAカバレッジ、特定の遺伝子に関するリードを示す結果チャートである。
【
図7】
図6~7は、Miseq mtDNAカバレッジ、特定の遺伝子に関するリードを示す結果チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本開示の実施形態は、例えばDNA配列決定、および例えば光学マッピング、電子顕微鏡、および原子間力顕微鏡によるイメージングによる下流の分子分析のために染色体DNAからecDNAを分離しつつ、ecDNAを抽出する(およびいくつかの実施形態では、単離/抽出されたecDNAを富化する)方法、システム、およびデバイスに向けられている。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示の方法が実行され得る(またはそれを用いて実行される)システムおよび/またはデバイスとしては、特に、一般的な形態の、例えばUS10131901B2の
図11~13、および
図15ならびに関連特許および出願(全てその全体が参考として本明細書に援用される)に示されるゲル電気泳動装置および消耗品を含む。いくつかの実施形態において、および
図1a~bに示されるように、消耗品は、比較的ごく近接して(好ましくは1~5mm離して、より好ましくは1~3mm離して)配置された液体試料を保持するための、2つのウェル/キャビティ/区画(このような用語は本開示において交換可能に用いられる)を有するアガロースゲルカセットである。ゲルは、DNA電気泳動に適したバッファー中に形成される。ゲルは、アガロース濃度(100mlあたりの重量%グラム)が好ましくは0.3%~3%、より好ましくは0.75%~1.5%である。
【0022】
したがって、
図1aにおいて、これは、(いくつかの実施形態による)カセットの展開図であり、上部(1)、底部(2)、および溶出モジュールアセンブリ(3)を含む。カセット上部および底部は、接着するかまたは他の方法で一緒に貼り付けることができる。溶出モジュールの左面は、DNA透過性フィルター材料に結合することができ、右面は、DNA不透過性限外ろ過膜に結合することができる。カセット上部と下部をアセンブルした後、溶出モジュールをカセット上部のスロット(13)に接着またはその他の方法で貼り付けることができる。カセットに挿入した後、溶出モジュールの左側面はゲルカラムの右側境界を形成するように構成されている。
【0023】
各カセットは、カセットの中央領域に位置する溶出電極チャネル(9)および(10)の間のカセット上部(2)の内側から沿って延びる壁によって左右に分離された、2つの独立した試料処理ゾーンを含むことができる(図では見えない)。カセット上部には、負分離電極用ポート(11)、および正分離電極用ポート(12)が含まれる。分離電極は、負に帯電した分子をゲルカラムの軸に沿って移動させる電気泳動場を提供するように構成される。また、負溶出電極用ポート(9)と正溶出電極用ポート(10)も示されており、左から右へゲルからバッファーを満たした溶出モジュールに負に帯電した分子を電気溶出するために使用することができる。試料ウェル用ポート(8)と試薬ウェル用ポート(7)も表示されている。
【0024】
図1bは、カセット上部を取り外してカセット内のゲルカラム(4)の位置を示す図である。いくつかの実施形態では、そして示されるように、ゲルは、その境界がカセット上部の下側の壁によって規定されるので、いくつかの側面で支持されていないように見える。試料ウェル(6)および試薬ウェル(5)の位置が示されている。
図2aはアセンブルされたカセットの上面図、
図2bは上面カバーを取り外したアセンブルされたカセットの上面図である。すべてのラベルは
図1aおよび
図1bと同じである。
【0025】
いくつかの実施形態において、好適な試料は、ドデシル硫酸ナトリウムなどの陰イオン(負に帯電した)界面活性剤によって溶解されることができる均一な細胞懸濁物であり得る。細胞壁を有しない真核細胞は、好適な細胞の例である。細菌、真菌、および植物細胞は、本開示による抽出方法で使用する前に、細胞がその細胞壁を分解する適切な酵素で処理される場合、試料として使用することができる。
【0026】
いくつかの実施形態による方法の概略図を、その方法を実行するためのカセット(300)/溶出モジュール(305)のブロック表現と共に
図3に示す(例えば、
図1a~2bを参照)。
図3の「I」の識別番号は、
図3の「II」および「III」にも適用されることに注意されたい。したがって、均一に分散された細胞懸濁物を含む試料は、正に帯電した電極(306)(すなわち、電気泳動中に負に帯電した界面活性剤およびDNAが移動する空洞)に対して近位のウェル(302)に入れられる。少なくとも1つの負に帯電した界面活性剤を含む溶解試薬は、負に帯電した電極(304)に対して近位のウェル(303)に入れられる。次に電場が電極を介して印加され、負に帯電した界面活性剤がウェル(303)の外から細胞懸濁物を含む試料ウェル(302)内に/試料ウェル(302)を通過して移動し、試料ウェル内の細胞は液体混合による粘性せん断なしに穏やかに溶解されるようにする。小さな細胞成分およびヌクレアーゼは、変性され、界面活性剤によって被覆され、正電極(306)に向かって運ばれる。したがって、いくつかの実施形態では、長さが概ね3~400万塩基対(Mb)より大きい細胞DNAは、試料ウェル壁(「II」の「HMW DNA」、すなわち
図3の中央部分を参照)内に移動されるが、すぐにウェル壁の/近くのゲルに絡まり、そこに固定化される。しかし、ecDNAを含むより小さなDNA分子(<概ね3~4Mb)は、試料ウェル壁に固定化されず、ゲルカラム(301)の下方へと移動する(例えば、「II」の「ecDNA」を参照)。より小さいecDNAは、適切なゲル電気泳動条件を使用してゲル内でサイズ分離され、ゲルカラムに隣接して配置される、バッファーを充填した溶出モジュール(
図3の「III」を参照)へゲルから電気溶出され得る(例えば、US10131901 B2において引用されたものに基づく装置を使用して;かかる装置はSageHLSシステム、Sage Science、Inc、Beverly、MA;https://sagescience.com/products/sagehls/として商業的に入手可能である)。
【0027】
溶出後、標準的なマニュアルまたは自動化液体処理方法を使用して、溶出モジュールからecDNA生成物を回収することができる。DNAが50kbを超えるサイズである場合、生成物のせん断破壊を避けるように、ワイドボアピペットチップおよび遅いピペッティング速度が提案される。この電気泳動ecDNA精製方法(いくつかの実施形態による)は、特に前のセクションで議論した非電気泳動方法と比較して、単純かつ高速である(いくつかの実施形態では、ecDNAのサイズに依存して、2~9時間の合計電気泳動時間である)。
【0028】
いくつかの実施形態による、溶解試薬のための例示的な界面活性剤は、約0.1%~約10%(w/v)の間の濃度のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびN-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム(サルコシル)を含む。1つの好ましい溶解試薬は、2%~5%の間の濃度のSDSである。
【0029】
回収後、富化されたecDNA生成物は、定量的PCR、DNA配列決定、光学イメージング、電子顕微鏡(EM)、および原子間力顕微鏡(AFM)を含む異なる方法によって分析することができる。定量的PCRは、ecDNA上に担持された特定の既知の配列要素のコピー数および溶出位置を同定するのに有用である。また、電気泳動条件の所定のセット下での溶出位置から、qPCRによって同定されたecDNAのサイズについてのある程度の推定を提供する。光学イメージング、EM、およびAFMは、ecDNAのサイズおよびトポロジーについてより直接的な測定を提供することができる(Cai et al.,1998;Boles et al.,1990;Mikheikin et al.,2017)。さらに、光学イメージングおよびAFM法は、特定のDNA配列要素の長距離マップも提供でき、これはecDNA配列決定データの確認および修正に有用な足場を提供し得る(Cai et al., 1998; Wu et al., 2017; Mikheikin et al., 2017)。
【0030】
富化されたecDNA産物は、ショートリードIlluminaペアエンドシーケンス、PacBioまたはOxford Nanoporeシーケンシングなどのロングリード法、またはリンクリードシーケンス(10x Genomics, Universal Sequencing Technologies’ TELL-seq, Chen et al, 2019)などの組み合わせアプローチを含むすべての標準配列決定法で配列決定することができる。
【0031】
いくつかの実施形態による、本方法によって産生された富化されたecDNAは、抽出中にゲルから完全に除去することが困難であってecDNAと共溶出する低量のSDSによって汚染されることがある。小さなecDNA(概ね20kb未満)は、SDSを除去するために固相可逆的固定化法(DeAngelis et al.,1995)を使用して精製することができる。より長いecDNAはSPRI法で壊れる可能性があり、そのような場合、少量のecDNAの効率的な沈殿を確保するために、必要に応じて不活性キャリアポリマー(グリコーゲンまたは線状ポリアクリルアミド)を用いてエタノール沈殿によりDNAを濃縮して、SDSを除去することが好ましいものであり得る(Fregel et al.,2010)。
【実施例】
【0032】
実施例では、SageHLSカセットのゲルとリザーバーバッファーで0.5×強度で使用される電気泳動バッファーKに対する参照がなされている。1× Kバッファーは、102mM Tris塩基、57mM N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸、[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸(TAPS)、0.16mM EDTA酸、pH8.7である。
【0033】
実施例1:E.coli W(ATCC 9637)由来のプラスミドの抽出および精製。
【0034】
E.coli Wは、2つのプラスミド、pRK1(102,536bp)およびpRK2(5,360bp)を保有している(Archerら、2011年)。E.coli Wの新鮮な一晩培養液をLBブロスで37℃に振盪しながら調製した。細胞を、洗浄バッファー(10mM,Tris-HCl pH7.5、5mM EDTA,20% スクロース wt/v)で再懸濁と遠心分離(12,000xg,2分)により2回洗浄し、スフェロプラストバッファー(10mM Tris-HCl pH7.5,5 mM EDTA,100mM NaCl,20% スクロース)に再懸濁した。次に、細胞をReady-Lyseリゾチーム(Epicentre/Lucigen)で、5600ユニット/mlの最終反応濃度で、室温で30分間消化した。
【0035】
スフェロプラスト懸濁物の全DNA濃度を、迅速なSDS溶解手順によって決定した。二重のアリコートを以下のように処理した。10マイクロリットルの試料を、200マイクロリットルのQ溶解バッファー(0.5× Kバッファー、1%SDS、5mM EDTA、50mM NaCl)と直ちに激しく混合した。得られたライセートを600マイクロリットルのTEバッファー(10mM Tris-HCl pH8, 1mM EDTA)で希釈し、少なくとも30秒間激しくボルテックスした。この最終の5μlアリコートを、Qubit HS試薬キット(Thermo Invitrogen)を用いてDNA含量をアッセイした。
【0036】
ecDNA抽出を行うために、E.coli Wスフェロプラストを洗浄バッファーで希釈して、70マイクロリットル当たり2.5マイクログラムの最終DNA濃度とした。希釈したスフェロプラスト調製物の70μlアリコートを0.75%アガロースSageHLSカセットの試料ウェルへロードした。HLS溶解バッファー(1x Kバッファー,2% グリセロール(wt/v),3% SDS,10mM EDTA)の200マイクロリットルのアリコートを試薬ウェルにロードし、ウェルポートをテープで密封し、直ちに抽出電気泳動を開始した。
【0037】
2つのプラスミド間のサイズに大きな差があるため、2つの異なる抽出電気泳動条件を使用した。より小さい5.3kbプラスミドを富化するために設計された手順では、抽出電気泳動を50Vで30分間行った後、電気泳動を50Vで45分間横方向に行った。102kbのより大きなプラスミドについては、抽出電気泳動をパルス電界プログラムを用いて55Vで8時間行い、その後50Vで1.5時間横方向に電気泳動を行った。パルス電界プログラムは、24回のパルス電界サイクルにわたってパルス期間を直線的にインクリメントさせた順方向および逆方向期間を使用した。初期値は順方向3秒、逆方向1秒で、その後のF-Rサイクルごとに順方向パルスは2.55秒、逆方向パルスは0.85秒増加させた。24回のF-Rサイクルの間インクリメントを続け、その後パルス時間を初期状態(F3秒、R1秒)に戻し、インクリメントサイクルを再開した。
【0038】
電気泳動の完了後、溶出産物をプラスミドについてSYBRグリーンqPCRによりアッセイした。溶出産物中の染色体DNAをアッセイするために、recA遺伝子のqPCRアッセイも行った。溶出産物中の微量のSDSによるPCR阻害を抑制するために、SDSと結合する非イオン性界面活性剤ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(bCD)を0.1%(wt/v)で反応物に含めた。qPCR反応物(20マイクロリットル)にはSYBR green master mix(PowerUp SYBR Green Master Mix,Thermo ABI)、0.5マイクロモルの各プライマー、0.1% bCD、および2マイクロリットルの溶出産物のDNAを含めた。qPCRは、QuantStudio 3装置(Thermo ABI)で、標準的なSYBR Green条件(95℃で10分間の初期保持、その後95℃で15秒間、60℃で1分間の40サイクル)を用いて実施した。使用したプライマーは以下の通り。
pRK1:
trbA-1F TCTTTCCAGGACGTTAAAGG
trbA-1R GTCGAACAGCATACTCTCAT
pRK2:
mobA-1F GAAAATGCTGAACGACGAAT
mobA-1R GATTTTCGTCTCGTTTGAGG
recA:
recA-1F TATCAACTTCTACGGCGAAC
recA-1R CTTTACCCTGACCGATCTTC
【0039】
qPCRの結果を
図4aおよび
図4bに示す。
図4aは、より大きなpRK1プラスミド(102kb)が、使用したパルス電界条件下でSageHLSカセットの溶出画分5中に溶出したことを示す。
図4bに示すように、より小さいプラスミドは、非常に短い30分の抽出電気泳動時間を用いて溶出画分2に見出された。いずれの抽出物においても、プラスミドを含む画分に染色体DNAはほとんど見られず(pRK1/recAコピー比は16、pRK2/recAコピー比は50)、プラスミドDNAの富化が確認された。
【0040】
実施例2:ヒト白血球(WBC)からのミトコンドリアDNA(mtDNA)の抽出と富化
【0041】
ヒト白血球(WBC)を、赤血球溶解バッファー(155mM NH4Cl、10mM NaHCO3、10mM EDTA)での3回の遠心洗浄によってACD全血試料から分離し、懸濁バッファー(8%スクロース wt/v、10mM EDTA、15%Ficoll400 wt/v、0.25×Kバッファー)中に再懸濁した。WBCを、上記実施例1に記載の迅速なSDS溶解手順と、その後のQubit HSキット(Thermo Life Invitrogen)を用いたDNA定量を用いて、ゲノムDNA含量から定量した。mtDNA抽出のために、試料ウェルに、70ulの懸濁バッファー中の120万個のWBCをロードした。HLSのワークフローには、50Vの電気泳動で1.25時間の抽出およびサイズ選択と、その後の、HLSカセットの溶出モジュールにmtDNAを採取するための50Vで1.5時間の電気溶出を含めた。mtDNA産物の溶出位置を、qPCR(Thermo Life ABI Taqman Gene Expression Assay ID:Hs0259874-g1 for gene MT-ND2,ABI QuantStudio 3装置)により決定した。
図3に示すように、mtDNAは画分3および4に溶出された。染色体DNAはどの画分にもほとんど溶出されず、qPCRによる見かけ上のmtDNAの富化度は>1000倍であった。
【0042】
実施例3:本発明の方法で抽出したecDNAの配列決定。
【0043】
ヒトWBCの2つのアリコートから、mtDNAを、上記の実施例2に記載したように抽出した。qPCRを、mtDNAを含む溶出画分を見つけるために実施した。一方のレーンからの溶出産物を、Minion上でのOxford Nanoporeシーケンシングに使用した。もう一方のレーンからの溶出産物を、Illumina Miseqでのペアエンドシーケンシングに使用した。
【0044】
両方のライブラリーについて、HLSの溶出画分4のDNAは、概ね0.7ナノグラムの全DNAを含んでいた(約80ul総量)。このDNAをエタノール沈殿により濃縮した。
【0045】
IlluminaシーケンシングライブラリーをNextera Flexキットで生成し、Miseq 2X150 bpペアエンドプロトコルを使用して配列決定した。Illuminaショートリードデータを、BWA-MEM(vs.0.7.17-r1188、https://github.com/lh3/bwa)によりhg38参照ゲノム(ftp://ftp.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/all/GCA/000/001/405/GCA_000001405.15_GRCh38/seqs_for_alignment_pipelines.ucsc_ids/GCA_000001405.15_GRCh38_no_alt_analysis_set.fna.gzを参照のこと)にアラインし、Samtools(vs.1.9、https://github.com/samtools/samtools)によりソートおよびデュプリケートした。mtDNAのカバレッジはIGV(Linux(登録商標)vs.2.6.2,https://software.broadinstitute.org/software/igv/)を用いて視覚的に評価した。
【0046】
Oxford Nanopore Minionシーケンシングを、Minion R9.4.1フローセルを用いたRapid Libraryキット(RAD004)を使用して実施した。Minionライブラリー構築のために、50ngのHMW E.coliゲノムDNAをmtDNA富化HLS溶出産物に加え、ライブラリー構築中のキャリアとした。Oxford NanoporeのMinionデータを、guppyソフトウェア(Oxford Nanopore)を用いて高精度モードでベースコールポストランし、得られたfastqデータファイルをminimap2(vs.2.17_x64-linux,https://github.com/lh3/minimap2)を用いてhg38参照にアラインし、Samtoolsでソートした。NanoPlot(vs.1.24.0,https://github.com/wdecoster/NanoPlot)を用いてリードの長さ分布を解析し、IGVを用いてカバレッジを視覚的に評価した。
【0047】
Minionシーケンスのカバレッジは概ね60倍(
図5)、Miseqランのカバレッジは概ね12,000倍(approximately ~12,000-fold;
図4b)であった。Minionのカバレッジは、非増幅ロングリードライブラリーから予想されるように、mtDNAゲノム全体にわたって著しく均一であった。トランスポザーゼにより生成されたRapidライブラリーは15,940bpのN50リード長を有し、リードの概ね50%が、ほぼ完全な長さの約16,500のリードであったことから、無傷のmtDNAサークルにトランスポザーゼが1つ挿入された結果であることが明らかであった。ベースコーリングは、Minionランの方がMiseqよりも著しくノイズが多かった。Miseqデータで同定されたSNPのほとんどがMinionデータでも確認できたのに対し、Minionデータは潜在的なSNPを著しく多く有し、複数のベースコールを有する部位をより多く有した。例えば、
図6および
図7を参照。
【0048】
開示に関するその他の留意点
本明細書において様々な発明的実施形態が記載および図示されてきたが、当業者であれば、本明細書において開示される機能性を実行するため、ならびに/または本明細書において記載される結果および/もしくは1つまたはそれより多くの利点を得るための様々な他の手段、機能性、ステップ、および/または構造(ソフトウェアコードを含む)を容易に想定し、かかる変形および/または改変の各々は、本明細書に記載される発明的実施形態の範囲内にあると考えられる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載された全てのパラメータ、および構成が例示的であることを意図しており、実際のパラメータ、および構成が、本発明の教示が用いられる特定の用途(単数または複数)に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載された特定の発明的実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または日常的な実験以上のものを使用せずに確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例示としてのみ提示され、本開示およびその均等物によって支持される任意の請求項の範囲内で、発明的実施形態は、具体的に記載され請求されるものとは異なる方法で実施され得ることを理解されたい。本開示の発明的実施形態は、本明細書に記載された任意のおよび個々の特徴、構造、システム、装置、デバイス、ステップ、コード、機能性、および方法も対象とする。さらに、2つまたはそれより多くのそのような特徴、構造、システム、装置、デバイス、ステップ、コード、機能性、および方法の任意の組み合わせは、特徴、構造、システム、装置、デバイス、ステップ、コード、機能性、および方法の任意のそのような組み合わせが相互に矛盾しない場合、本開示の発明範囲に含まれる。さらなる実施形態は、1つまたはそれより多くの特徴、構造、ステップ、および/または機能性を具体的に欠くことによって、先行技術よりも特許性が高い場合がある(すなわち、そのような実施形態を対象とした請求項は、そのような請求項を先行技術と区別するために1つまたはそれより多くの否定的制限を含む場合がある)。
【0049】
本開示の上述した実施形態は、多数の方法のいずれかで実施され得る。例えば、いくつかの実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを使用して(例えば、開示されたプロセスの1つまたはそれより多くのステップを実行するための機器の制御において)実装され得る(例えば、前述のように)。実施形態の任意の態様が少なくとも部分的にソフトウェアで実装される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに設けられているか、複数のコンピュータに分散されているかどうかにかかわらず、任意の適切なプロセッサまたはプロセッサの集合体、サーバなどで実行され得る。
【0050】
本願のどこかに提示された、特許、特許出願、論文、ウェブページ、書籍などを含むがこれらに限定されない出版物または他の文書への任意のおよびすべての参照は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書で定義され使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、および/または定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0051】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0052】
用語「できる(can)」および「し得る(may)」は、本開示において交換可能に使用され、言及された要素、構成要素、構造、機能、機能性、目的、利点、動作、ステップ、プロセス、装置、システム、デバイス、結果、または明確化が、言及されたそれぞれの実施形態(単数または複数)に従って、用語が使用(または言及)される文において示される命題を使用、含む、または生成する、またはその他の方法で表わす能力を有することを示す。
【0053】
本明細書および特許請求の範囲で使用される語句「および/または」は、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には非接続的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は、同じ方法で、すなわち、そのように結合された要素の「1つまたはそれより多く」と解釈されるべきである。他の要素は、「および/または」節によって具体的に特定された要素以外に、具体的に特定された要素に関連するか否かに関わらず、必要に応じて存在することができる。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンドの言語と組み合わせて使用される場合、ある実施形態では、Aのみ(必要に応じてB以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみ(必要に応じてA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(必要に応じてその他の要素含む);等を指すことができる。
【0054】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は、包括的であること、すなわち、多数の要素または要素のリストのうち少なくとも1つを含むが、1つより多くを含むこと、および、必要に応じて、追加のリストにない項目を含むことと解釈されるものとする。「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」のような明確に反対を示す用語、または特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」は、多数の要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを意味することになる。一般に、本明細書で使用される用語「または」は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、「のうちの正確に1つ」などの排他的用語に先行された場合にのみ排他的選択肢(すなわち「どちらか一方だが両方ではない」)を示すものとして解釈するものとする。特許請求の範囲において使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0055】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つまたはそれより多くの要素のリストに言及する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の任意の1つまたはそれより多くの要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙された各々および全ての要素の少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しないものとする。この定義はまた、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、必要に応じて存在することができることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または、同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つのA、必要に応じて複数のAを含み、Bが存在しないこと(および、必要に応じてB以外の要素を含む);別の実施形態では、少なくとも1つのB、必要に応じて1つより多くのBを含み、Aが存在しないこと(および必要に応じてA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA、必要に応じて1つより多くののA、および少なくとも1つのB、必要に応じて1つより多くのBを含むこと(および必要に応じて他の要素を含む);などを指す。
【0056】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「構成される(composed of)」等のすべての移行句は、オープンエンド、すなわち、含むが限定されないという意味に理解されるものとする。移行句である「からなる」および「から本質的になる」のみは、米国特許庁特許審査手続要覧第2111.03条に規定されるように、それぞれクローズドまたはセミクローズドの移行句でなければならない。
【0057】
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【国際調査報告】