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特表2023-522574リウマチ性関節炎治療用アフェレシスカラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】リウマチ性関節炎治療用アフェレシスカラム
(51)【国際特許分類】
   C07K 17/04 20060101AFI20230524BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230524BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20230524BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C07K17/04
C07K7/08 ZNA
C07K1/22
A61M1/36 165
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557717
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2021057849
(87)【国際公開番号】W WO2021191396
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2002992
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511307616
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ トゥールーズ トロワジェーム-ポール サバティエ
【住所又は居所原語表記】118,ROUTE DE NARBONNE,F‐31400 TOULOUSE,FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】515034781
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニヴェルシテール・ドゥ・トゥールーズ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE TOULOUSE
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】522373437
【氏名又は名称】アシスタンス パブリク-オピタウ ドゥ マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE-HOPITAUX DE MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】CENTRE HOSPITALIER REGIONAL DE MARSEILLE,80 Rue Brochier,13005 MARSEILLE(FR)
(71)【出願人】
【識別番号】522373448
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ エクス マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo,58 Boulevard Charles Livon,13007 MARSEILLE(FR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セール,ギー
(72)【発明者】
【氏名】オッフェル,ジェラルディン
(72)【発明者】
【氏名】シャボ,マリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】パンカルテ,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ルディエ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】バランドロー,ナタリー
【テーマコード(参考)】
4C077
4H045
【Fターム(参考)】
4C077AA30
4C077BB03
4C077EE01
4C077KK13
4C077MM03
4C077PP01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA60
4H045EA34
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)のα171-185citペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)のα621-635Citペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)のβ60-74Cit-NH2ペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、並びに-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-a36-50crtペプチドと呼ばれるペプチドであって、N末端で残基Gがアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)のα36-50Citペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む組成物を含む固体支持体がロードされたアフェレシスカラムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)を有するα171-185Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)を有するα621-635Citと呼ばれるペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)を有するβ60-74Cit-NH2と呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキシル基の代わりにカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、
-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-α36-50Citと呼ばれるペプチドであって、N末端G残基がアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表す、ペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)を有するα36-50Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド
からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む組成物を含む固体支持体がロードされたアフェレシスカラムであって、
その1つ又は複数のペプチドが、前記支持体上に直接的又は間接的に固定化される、アフェレシスカラム。
【請求項2】
α36-50CitAc-α36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2からなる群から選択される少なくとも2つのペプチドを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアフェレシスカラム。
【請求項3】
α171-185Cit、α621-635Cit、β60-74Cit-NH2ペプチド、並びにα36-50Cit及び/又はAc-α36-50Citペプチドを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアフェレシスカラム。
【請求項4】
アミノ酸配列SGIGTLDGFXHXHPD(配列番号10)のα501-515Citペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチドを更に含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のアフェレシスカラム。
【請求項5】
-α171-185Cit、α621-635Cit、及びβ60-74Cit-NH2並びに場合によりα501-515Citペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のペプチドは、それらのN末端によって前記固体支持体上に直接的又は間接的に固定化され、及び/又は
Ac-α36-50Cit及び/又はα36-50Citペプチドは、それらのC末端によって前記固体支持体上に直接的又は間接的に固定化されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のアフェレシスカラム。
【請求項6】
前記1つ又は複数のペプチドが、1つ又は複数の中間化合物によって前記固体支持体上に間接的に固定化されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のアフェレシスカラム。
【請求項7】
-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)を有するα171-185Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)を有するα621-635Citと呼ばれるペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)を有するβ60-74Cit-NH2と呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキシル基の代わりにカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、
-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-α36-50Citと呼ばれるペプチドであって、N末端G残基がアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)を有するα36-50Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド
からなる群から選択される少なくとも2つのペプチドを含む組成物。
【請求項8】
アフェレシスカラムの製造における、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
前記組成物の前記1つ又は複数のペプチドが固体支持体上に固定化されている、抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患を治療又は予防するために使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
抗シトルリン化タンパク質自己抗体による前記自己免疫疾患が、シェーグレン症候群、若年性特発性関節炎及び関節リウマチの群から選択され、好ましくは関節リウマチであることを特徴とする、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記処置された対象が、高力価の抗シトルリン化タンパク質自己抗体(ACPA)を有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数のシトルリン化ペプチドを含む組成物、シトルリン化ペプチド組成物を含む固体支持体を有するアフェレシスカラム、及びシトルリン化ペプチド組成物又は組成物を含むアフェレシスカラムを使用して抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、最も一般的なヒト自己免疫疾患及び最も一般的な慢性炎症性リウマチである。これは先進国の人口の0.5から1%が罹患しており、関節の慢性及び破壊性炎症を特徴とする。関節リウマチは、「リウマチ因子」と呼ばれる抗免疫グロブリン抗体、並びに抗シトルリン化ペプチド/タンパク質抗体(ACPA)の産生を伴う。ACPAは発症の数年前に現れることが多く(非特許文献1)、発症したRAの70~80%に認められる(非特許文献2)。ACPAは特異性が高く、病気の初期に存在するため、診断的価値が高い。ACPAはより重度の発展に関連することが多く、相対的な予後値を有する。最後に、また、RAへの未分化関節炎の進化を予測することができるので、予測値を有する。ACPAは、様々なELISA試験(酵素結合免疫吸着アッセイであり、マイクロタイタープレートでの免疫酵素試験)によって検出することができる。医療行為で古典的に使用される試験は、抗CCP(抗環状シトルリン化ペプチド)と呼ばれる市販の試験である。本発明者らによって開発及び使用された試験は、シトルリン化フィブリノーゲンを認識する抗体を検出するAhFibA試験(抗ヒトフィブリノーゲン抗体)である。AhFibA及び抗CCP試験の結果は概ね一貫しているが、患者の5~10%において不一致である。
【0003】
疾患が診断されるとすぐに、不可逆的な関節損傷への進行のリスクを低減するために、多かれ少なかれ特定の様々な治療が処方される。
【0004】
コルチコステロイドの後、免疫抑制薬は大部分の患者に処方される第一選択の治療となっている。これらの治療に耐性の形態では、抗TNF-α、抗IL6R、抗CD20などの様々な生物療法が、時には連続的に開始される。これらの治療の全ては、慢性的に継続されなければならず、常に有効であるとは限らず、又は限られた時間のみ有効であり、更に、全てが多かれ少なかれ重篤な副作用を有する。最後に、一部の患者では、この治療法を実施したにもかかわらず、疾患は抵抗性であり、進行する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rantapaa-Dahlqvist S,et al.Arthritis Rheum.2003 Oct;48(10):2741-9、Nielen MM,et al.Arthritis Rheum.2004 Feb;50(2):380-6
【非特許文献2】De Rycke L,et al.Ann.Rheum.Dis.(2004 63:12,1587-1593,2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、有効性が高く、患者に障害をもたらすような副作用を引き起こさない、RAを処置するための新しい方法を見出すことが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
近年、本発明者らによって実証されたように、患者の関節に存在するシトルリン化フィブリノーゲンとの免疫複合体の形成を介した関節炎の発症及び維持におけるACPAの役割は、国際社会によって広く認識されている。これらの免疫複合体は、様々なエフェクター機構を介して、炎症促進性サイトカイン、特にTNF-αの分泌を誘導し、関節炎症及びACPAの合成を誘発し維持する。
【0008】
本発明者らは、シトルリン化ヒトフィブリンから、免疫優性と呼ばれる、ACPAの優先的標的であり、したがってそれらに特異的に結合することができるシトルリン化ペプチドを同定した。本発明者らは、これらのペプチドにより、患者の身体から病原性ACPAを取り除くことを思いついた。本発明者らは、所与のシトルリン化ペプチドが固定化されているカラムを使用することによって、患者血漿からACPAを100%に近い精製率で得られることを見出した。次いで、本発明者らは、関節リウマチなどの抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患を治療するための新しい装置を設計した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、
-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)を有するα171-185Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)を有するα621-635Citと呼ばれるペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)を有するβ60-74Cit-NH2と呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキシル基の代わりにカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、
-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-α36-50Citと呼ばれるペプチドであって、N末端G残基がアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表す、ペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)を有するα36-50Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む組成物を含む固体支持体がロードされたアフェレシスカラムであって、
その1つ又は複数のペプチドが、支持体上に直接的又は間接的に固定化される、アフェレシスカラムに関する。
【0010】
本発明はまた、
-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)を有するα171-185Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)を有するα621-635Citと呼ばれるペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)を有するβ60-74Cit-NH2と呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキシル基の代わりにカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、
-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-α36-50Citと呼ばれるペプチドであって、N末端G残基がアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)を有するα36-50Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチドからなる群から選択される少なくとも2つのペプチドを含む組成物に関する。
【0011】
本発明はまた、アフェレシスカラム、好ましくは関節リウマチなどの、抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患を治療するためのアフェレシスカラムの製造における本発明による組成物の使用に関する。
【0012】
本発明はまた、抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患、特に関節リウマチの治療又は予防、好ましくはアフェレシスによる治療又は予防において、その使用のための本発明による組成物であって、組成物の1つ又は複数のペプチドが固体支持体上に固定化されている組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
組成物
本発明は、
-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)を有するα171-185Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)を有するα621-635Citと呼ばれるペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)を有するβ60-74Cit-NH2と呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキシル基の代わりにカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、
-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-α36-50Citと呼ばれるペプチドであって、N末端G残基がアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)を有するα36-50Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む組成物に関する。
【0014】
様々な配列を以下の表1に要約する。
【表1】

【0015】
本発明による組成物はまた、上で定義したペプチドの誘導体又は断片を含む。これらのペプチドの誘導体は、例えば、それらの合成を容易にする及び/又はそれらの安定性を改善することを意図した修飾を有することができる。
【0016】
そのような誘導体の例は、カルボキシル基がエステル化又はアミド基に変換されたアミノ酸を含むペプチドである。β60-74Cit-NH2ペプチドの場合、後者の誘導体は、C末端シトルリル残基がアミド化されていない配列番号14のアミノ酸配列のβ60-74Citと呼ばれるペプチドであってもよい。
【0017】
本発明によるペプチドの誘導体はまた、アミノ基が例えばメチル化、ホモシトルリン化、カルバミル化又はアセチル化されているアミノ酸を含むペプチドを含むことができる。
【0018】
一例は、α36-50CitペプチドのN末端アセチル化誘導体であるAc-α36-50Citペプチドである。ペプチドα36-50Cit又はAc-α36-50Citは、本発明において互いに変異体として使用することができる。しかし、Ac-α36-50Citペプチドが好ましい。
【0019】
本発明による組成物は、α171-185Cit、α621-635Cit、β60-74Cit-NH2及びAc-α36-50Cit及び/又はα36-50Citからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4又は5種のペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含むことができる。
【0020】
好ましくは、本発明による組成物は、Ac-α36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2からなる群から選択される少なくとも1、2、3又は4種のペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含むことができる。
【0021】
本発明による組成物は、α171-185Cit、α621-635Cit、β60-74Cit-NH2及びα36-50Cit及び/又はAc-α36-50Citからなる群から選択される1、2、3、4又は5種のペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含むことができる。
【0022】
好ましくは、本発明による組成物は、Ac-α36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2からなる群から選択される1、2、3、4又は5種のペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含む。
【0023】
より好ましくは、本発明による組成物は、4種のペプチドであるAc-α36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2を含む。
【0024】
更により好ましくは、本発明による組成物は、Ac-α36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2からなる。
【0025】
本発明による組成物はまた、Ac-α36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2からなる群から選択される1、2、3又は4種のペプチド、又はその誘導体若しくは断片からなってもよい。
【0026】
本発明による組成物は、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すアミノ酸配列SGIGTLDGFXHXHPD(配列番号10)を有するα501-515Citと呼ばれるペプチド、又はその誘導体若しくは断片を更に含むことができる。また、一実施形態によれば、組成物は、Ac-α36-50Cit及び/又はα36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Ci、β60-74Cit-NH2及び
【0027】
α501~515Citからなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5若しくは6種のペプチド又は1、2、3、4、5若しくは6種のペプチドのペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含む及び/又はそれらからなる。
【0028】
ACPAの反応性プロファイルは患者によって異なる。したがって、本発明者らは、試験した血漿のほとんどが、1つ又は複数のβ60-74Cit-NH2及び/又はAc-α36-50Citペプチドに対して反応性であることを示した。
【0029】
また、一実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくともβ60-74Cit-NH2及び/又はAc-α36-50Citペプチド(又は代替的にα36-50Cit)を含む。
【0030】
しかし、これらのペプチドに対して反応性ではないが、本発明の他のペプチドに対して反応性である血漿が存在する。したがって、血漿の反応性プロファイルのタイプの最大数をカバーするために、できる限り多くのペプチドを組み合わせることが好ましい。
【0031】
したがって、好ましくは、本発明による組成物は、少なくともα171-185Cit、α621-635Cit、β60-74Cit-NH2及びAc-α36-50Citペプチド(又は代替的にα36-50Cit)を含む。より好ましくは、組成物は、α171-185Cit、α621-635Cit、β60-74Cit-NH2及びAc-α36-50Citペプチド(又は代替的にα36-50Cit)及び場合によりα501-515Citペプチドを含む。
【0032】
本発明はまた、アフェレシスカラム、好ましくは任意の抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患を治療又は予防するためのアフェレシスカラムの製造における上記で定義した組成物の使用に関する。抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患は、シェーグレン症候群、若年性特発性関節炎及び関節リウマチからなる群から選択することができる。抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患は、好ましくは関節リウマチである。
【0033】
アフェレシスカラム
本発明はまた、1つ又は複数のペプチドが支持体上に直接的又は間接的に固定化されている上記定義の組成物を含む固体支持体がロードされたアフェレシスカラムに関する。
【0034】
「ロード」という用語は、血液又は血液製剤などの液体が固体支持体と接触してカラムを通って流れることができるように、カラムが固体支持体を担持又は含有することを意味する。
【0035】
一般的に言えば、アフェレシスは、対象からの血液又は血液製剤が、対象に再注射する前に1つ又は複数の成分を添加、除去及び/又は置換することによって後者を改変する医療機器を介して生体外(体外)で循環される技術である。より具体的には、プラスマフェレーシスは、アフェレシスによって処理された生成物が血漿である場合である。特に、プラスマフェレーシスは、ABO不適合腎移植候補物を脱感作することが記載されており、これらの候補は、ABO不適合移植片の寛容性を損なう抗ABO抗体を有していた(L.Rostaing et al.,Treatment of large plasma volumes using specific immunoadsorption to desensitize ABO-incompatible kidney transplant candidates,J.Nephropathology.2016;5(3):90-97)。
【0036】
したがって、本発明によるアフェレシスカラムは、対象の血液、又は血漿などの血液製剤からのACPAの除去を可能にする。
【0037】
従来のアフェレシス法では、血液は、対象の静脈又は動脈のレベルで直接採取される。いくつかの実施形態では、血液は、1つ又は複数の血液製剤(例えば、赤血球及び白血球、血小板を含む固体画分、並びに血漿などの液体画分)に分離される。成分(例えば自己抗体)は、血液製剤(例えば、血漿)の1つから除去される。最終的に、血液製剤が組み合わされる。次いで、血液を対象の静脈又は動脈に再注入することができる。
【0038】
本発明は、特に、
-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)を有するα171-185Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)を有するα621-635Citと呼ばれるペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)を有するβ60-74Cit-NH2と呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキシル基の代わりにカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、
-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-α36-50Citと呼ばれるペプチドであって、N末端G残基がアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表す、ペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)を有するα36-50Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチドからなる群から選択される少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種又は少なくとも5種、又は1、2、3、4若しくは5種のペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含む組成物を含む固体支持体がロードされたアフェレシスカラムであって、
その1つ又は複数のペプチドが、支持体上に直接的又は間接的に固定化される、アフェレシスカラムに関する。
【0039】
アフェレシスカラムの固体支持体はまた、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すアミノ酸配列SGIGTLDGFXHXHPD(配列番号10)を有するα501-515Citと呼ばれるペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含むことができる。
【0040】
より好ましくは、アフェレシスカラムの固体支持体は、4種のペプチドであるAc-α36-50Cit、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2を含む。
【0041】
本発明はまた、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種又は少なくとも5種、又は1、2、3、4若しくは5種のアフェレシスカラムを含むカラムのアセンブリに関し、各アフェレシスカラムは、
-アミノ酸配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号8)を有するα171-185Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)を有するα621-635Citと呼ばれるペプチドであって、X、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチド、
-アミノ酸配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号15)を有するβ60-74Cit-NH2と呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表し、Xがカルボキシル基の代わりにカルボキサミド基を有するシトルリル誘導体を表すペプチド、
-アミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号6)を有するAc-α36-50Citと呼ばれるペプチドであって、N末端G残基がアセチル化されており、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表す、ペプチド、及び/又はアミノ酸配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号5)を有するα36-50Citと呼ばれるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基を表すペプチドからなる群から選択されるペプチド、又はその誘導体若しくは断片を含む固体支持体でロードされ、
その1つ又は複数のペプチドは、支持体上に直接的又は間接的に固定化される。
【0042】
一実施形態によれば、アフェレシスカラムのアセンブリは、それぞれAc-α36-50Citペプチド、α171-185Citペプチド、α621-635Citペプチド及びβ60-74Cit-NH2ペプチドを含む固体支持体がロードされた4種のアフェレシスカラムを含む。一実施形態によれば、アフェレシスカラムのアセンブリは、α501-515Citペプチドを更に含むことができる。
【0043】
本発明によるペプチドは、好ましくは合成ペプチドである。
【0044】
本発明によるペプチドは、先行技術において公知の方法によってビオチン化することができる。特定の実施形態では、1つ又は複数のペプチドは、スペーサ基を介してビオチン化される。スペーサは、シトルリン化ペプチドを固体支持体から離すことを可能にし、ACPAによるその認識を容易にする。ACPAに対する本発明によるペプチドの結合特性を維持することを可能にする任意の適切なスペーサを本発明で使用することができる。特定の実施形態では、スペーサは、ポリエチレングリコール(PEG)又はアミノヘキサン酸(AHX)である。
【0045】
本発明のペプチドを固定化するための固体支持体は、先行技術において公知である。固体支持体は、血球を活性化しない材料から作製されることが好ましい。抗凝固剤で処理された支持体、例えばヘパリン処理された支持体を使用することが好ましい。或いは、患者の血液は、支持体への適用前に、ヘパリンなどの抗凝固剤で処理することができる。
【0046】
固体支持体は、多糖類、好ましくは高分子量、例えば100kDa以上のポリマー、例えばアガロース又はセルロースから作製することができる。支持体の多糖は、架橋されていてもよいし、架橋されていなくてもよい。カルボキシル化ポリスチレンなどの他のポリマーを使用することができる。固体支持体は、磁気ビーズ又はガラスの形態であってもよい。
【0047】
固体支持体は、多孔性又は非多孔性であってもよい。固体支持体は、球形であっても不規則であってもよい粒子の形態であってもよい。平均粒径は、10μm~2mm、好ましくは30μm~100μmの範囲であってもよい。
【0048】
支持体は、ヘパリンなどの抗凝固剤で処理することができる。
【0049】
ペプチドを固体支持体上に固定化するための方法は公知である。したがって、本発明によるペプチドは、支持体上に直接的又は間接的に固定化することができる。
【0050】
有利には、α171-185Cit、α621-635Cit、及びβ60-74Cit-NH2並びに場合によりα501-515Citペプチドからなる群から選択される1つ又は複数のペプチドは、それらのN末端によって固体支持体上に直接的又は間接的に固定化され、及び/又は
Ac-α36-50Cit及び/又はα36-50Citペプチドは、それらのC末端によって固体支持体上に直接的又は間接的に固定化される。
【0051】
好ましくは、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2中のペプチド、並びに場合によりα501-515Citペプチドは、それらのN末端によって固体支持体上に直接的又は間接的に固定化され、Ac-α36-50Citペプチド(又は代替的にα36-50Cit)は、そのC末端を介して固体支持体上に直接的又は間接的に固定化される。
【0052】
間接的な固定化は、適切な中間化合物によって行うことができる。ペプチドを間接的に固定化するための好ましい方法は、ビオチンと、アビジン又はストレプトアビジンなどの中間化合物との間の相互作用に基づく。したがって、ペプチドのビオチン化及び固体支持体上に固定化されたアビジン又はストレプトアビジンの使用は、ペプチドを固体支持体に確実に付着させることができる。具体的には、この方法は、本発明によるペプチドをビオチン化形態で提供すること、ストレプトアビジン(又は代替的にアビジン)が表面に固定化された固体支持体を提供すること、本発明による1つ又は複数のビオチン化ペプチドの水溶液と支持体を接触させること、及び支持体を水性溶媒ですすぐことを含むことができる。
【0053】
また、好ましい実施形態では、固体支持体は、その上に直接固定化されたストレプトアビジン又はアビジンを含む。1つ又は複数のAc-α36-50Citペプチド(又は代替的にα36-50Cit)、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2、並びに場合によりα501-515Citペプチドをビオチン化し、ストレプトアビジン(又はアビジン)に連結する。シトルリン化ペプチドは、C末端又はN末端においてビオチン化することができる。好ましくは、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2ペプチド、並びに場合によりα501-515Citペプチドは、N末端においてビオチン化され、Ac-α36-50Citペプチド(又は代替的にα36-50Cit)は、C末端においてビオチン化される。Ac-α36-50Citペプチド(又は代替的にα36-50Cit)、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2、並びに場合によりα501-515Citペプチドは、スペーサ基、例えばアミノヘキサン酸(AHX)又は代替的にPEGを介してビオチン化することができる。ビオチンとアビジン又はストレプトアビジンとの間の親和性に加えて、抗体-抗原相互作用もまた、支持体上へのペプチドの間接的固定化に使用することができる。
【0054】
或いは、例えば、臭化シアンで活性化された固体支持体へのペプチドの一次配列中のアミノ官能基を介したペプチドの直接固定化、又は活性化エポキシドを含有する固体支持体へのペプチドの一次配列中のカルボキシル官能基を介したペプチドの直接固定化などのバイオコンジュゲーション技術を使用して、ペプチドを固体支持体上に直接固定化することができる。或いは、「クリック」化学反応を使用して、ペプチドを固体支持体上に固定化することができ、ペプチド及び支持体は、適切な相互反応性化学官能基(アジド及びアルキン)で修飾されている。他の実施形態では、シュタウディンガーライゲーション化学反応を使用して、適切な誘導体固体支持体上に適切に修飾されたペプチドを固定化することができる。
【0055】
処理方法
本発明はまた、アフェレシスカラム、好ましくは抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患を治療又は予防するためのアフェレシスカラムで使用するために定義される上記の組成物に関する。
【0056】
抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患は、ある人の身体に、同じ人のシトルリン化タンパク質に対する抗体を発現する疾患である。抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患は、特にシェーグレン症候群、若年性特発性関節炎及び関節リウマチからなる群から選択することができる。好ましくは、抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患は、関節リウマチである。
【0057】
本発明はまた、抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患、好ましくは関節リウマチの治療又は予防、好ましくはアフェレシスによる治療又は予防において使用するために本明細書中上記で定義されるような組成物であって、組成物の1つ又は複数のペプチドが固体支持体上に固定化されている組成物に関する。
【0058】
好ましくは、固体支持体はアフェレシスカラムにロードされる。
【0059】
好ましくは、抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患の治療又は予防は、当該自己免疫疾患に罹患している患者の血液を、本明細書中上記で定義されるような組成物を含む固体支持体がロードされたアフェレシスカラムを用いてインビトロで処置することを含む。
【0060】
本発明はまた、アフェレシスカラム、好ましくは関節リウマチの治療のためのアフェレシスカラムで使用するために上記で定義される組成物に関する。
【0061】
本発明はまた、上記で定義したアフェレシスカラムの使用、特に抗シトルリン化タンパク質自己抗体による自己免疫疾患、より好ましくは関節リウマチを治療又は予防するこのアフェレシスカラムの使用に関する。
【0062】
本発明はまた、アフェレシスを必要とする対象におけるアフェレシスによる治療又は予防のための方法であって、上記で定義したアフェレシスカラムが使用される方法に関する。
【0063】
本発明はまた、対象の血液又は血液製剤から抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)を精製する方法に関し、
-上記で定義したアフェレシスカラムを提供すること、
-対象の血液又は血液製剤をACPAから枯渇させるように、このカラムを対象の血液又は血液製剤と接触させることを含む。
【0064】
本発明の対象は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明により治療される対象は、重度の形態の関節リウマチを有する対象である。対象はまた、高力価の抗シトルリン化タンパク質/ペプチド抗体(ACPA)を有する対象であってもよい。高力価ACPA対象は、AhFibA試験によるACPAの投与においてOD≧0.9を有する対象として定義される。AhFibA試験におけるOD≧0.9は、ACPAの割合が最も高い40%の関節リウマチ患者に対応する(図1)。
【0066】
本発明を以下の図及び実施例によって更に説明する。しかし、これらの実施例及び図は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】202人のAhFibA陽性関節リウマチ患者の血清試料で測定されたAhFibA力価の分布を示す図である。四分位を分離する光学密度の閾値(補正ODは力価を定義する)を記した。
図2】202人のAhFibA陽性関節リウマチ患者由来の血清中の、4種の ペプチドβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドに対するELISA反応性血清の割合を示す図である。
図3】4種のペプチドβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドに対する反応性プロファイルによる、202人の関節リウマチ患者由来のAhFibA陽性血清の分布を示す図である。
図4】試験した202人の血清についての、4種のペプチドβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドに対する抗体の力価間の相関を示す図である。各交点において、スピアマン係数及び相関の(p)が記録される。
図5】抗β60-74Cit-NH2、抗Ac-α36-50Cit、抗α621-635Cit及び抗α171-185Cit抗体を同時に精製するために、2種類のクロマトグラフィーである直列に接続された4つのモノペプチドカラム(A)又は4つのモノペプチドマトリックスのバランスのとれた混合物を含有する単一カラム(B)のいずれかを使用した。
図6】それぞれβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドがロードされた4つの連続的に取り付けられたカラム(左のヒストグラム)、又は4つのペプチドの混合物を含有するカラム(右のヒストグラム)のいずれかで、RA患者由来の血清のプールに対して行われたクロマトグラフィーを示す図である。プール97は、RA患者集団に見られる代表的なACPA力価の上昇した患者由来の同じ体積の97個の血清試料からなり、プール27は、ACPA力価の高い(OD≧1.5)患者由来の同じ体積の27個の血清試料からなった。プール(開始血清:SD-黒色バー)、非保持画分(FNR-白色バー)及び溶出液(灰色バー)をAhFibA ELISAで分析し(n≧4)、結果を補正ODとして表す。
図7】クロマトグラフィー後の血清の精製率の算出方法を示す図である。非保持画分をAhFibA ELISAで分析し、得られたODを開始血清の段階的希釈から得られたものと比較する(参照曲線)。希釈の比により、精製速度を決定することが可能になる。この例では、1/50対1/400:FNR中の抗体が8倍少なく、すなわち、開始血清中に存在する抗体の12.5%である。したがって、ACPAの87.5%を精製した。
図8】直列に取り付けられたβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit、α171-185Citペプチドをそれぞれロードした4本のカラムでのクロマトグラフィー後の血清(番号41)のACPA精製率の計算を示す図である。非保持画分をAhFibA ELISAで分析し、ODを開始血清の希釈から得られたものと比較して得た(参照曲線)。1/50~1/1718希釈の比により、精製速度を決定することが可能になる。ACPAの98%が精製されている。
図9】β60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドをそれぞれロードし、直列に取り付けられた4つのカラムで、RA患者由来のプール97、プール27及び10の個別血清から作成したクロマトグラフィーを示す図である。各プール及び個々の血清について、開始血清(SD-黒色バー)及び非保持画分(FNR-白色バー)をAhFibA ELISA(n≧4)で分析し、それらの力価を補正ODとして表す。クロマトグラフィーにかけた全ての試料(灰色のバー)について、精製率(%)を計算した。
図10】開始血清(クロマトグラフィー前)のACPA(AhFibA ELISA)における力価と、β60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドをそれぞれロードした直列4カラムでのクロマトグラフィー後に得られた精製率との相関を示す図である。相関は非常に有意であり(p=0.014)、血清のACPA力価が高いほど、精製が効率的である。
【実施例
【0068】
材料及び方法
【0069】
血清試料
血清試料は、シトルリン化ヒトフィブリノーゲンを免疫吸着剤として使用してACPAを検出し、力価測定することを可能にする「AhFibA」ELISA試験が陽性の202人の関節リウマチ患者から得た。
【0070】
合成ペプチド
ヒトフィブリノーゲンのα鎖の残基36~50、171~185及び621~635(NP_068657-アイソフォーム2)及びβ鎖の残基60~74(AAA18024)に対応するペプチドを合成した。
【0071】
ペプチドを、それらのシトルリン化形態(全てのアルギニル残基をシトルリル残基で系統的に置換することによる)又はそれらの天然の非シトルリン化形態(アルギニル残基)で合成した。
【0072】
β60-74及びβ60-74Citペプチドを、末端カルボキシル基の代わりにカルボキサミドを用いて合成して、β60-74NH2及びβ60-74Cit-NH2ペプチドを得た。
【0073】
アセチルを用いてα36-50及びα36-50CitペプチドをN末端側に合成し、Ac-α36-50及びAc-α36-50Citペプチドを得た。
【0074】
ペプチドを、Ac-α36-50CitペプチドについてはアミノヘキサノイルスペーサのC末端で、α171-185Cit、α621-635Cit及びβ60-74Cit-NH2ペプチドについては同じスペーサのN末端でビオチン化した。
【0075】
試験ELISA
5及び10μg/mLの濃度でPBS(1.5mM KHPO4 SIGMA 795488、7mM KHPO SIGMA P3786、0.15M NaCl SIGMA 31434、pH7.2)に可溶化した抗原又は免疫吸着剤(シトルリン化フィブリノーゲン又はシトルリン化ペプチド及び非シトルリン化ペプチド)を、4℃で一晩インキュベートすることによってマイクロタイタープレートウェル(MAXISORP NUNC 2023-09)に吸着させるか、又はPBS中のアビジン5μg/mLを4℃で一晩インキュベートし、次いで、洗浄後に、PBS中の10μg/mLで、4℃で1時間インキュベートしたビオチニル化ペプチドを添加する、アビジン-ビオチン系で使用する。PBS 2% BSA(Sigma A3059)中、4℃で1時間ブロッキングし、PBS 0.1% Tween(登録商標)20(SIGMA P1379)中で洗浄した後、試験する試料を、PBS 2% BSA 2M NaCl中で1:50(アビジン-ビオチン系では1:100)又は同等の補正希釈で沈殿させる。洗浄後、二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼにカップリングされたヤギ抗ヒトIgG Fc断片、Southern Biotech 2040-05)を4℃で1時間インキュベートする。洗浄後、クエン酸/HPO緩衝液pH5(0.05Mクエン酸Sigma C0759、0.1M Na2HPO4 Prolabo 28026292)中のオルト-フェニレンジアミン二塩酸塩(Sigma P2788)、0.03% H(Sigma H1009)の溶液を用いて室温で5分間顕色を行い、次いで6NのHSO溶液(Sigma 07208)で停止させる。Multiskan Fcプレートリーダ(ThermoScientific)を用いて光学濃度(OD)を492nmで読み取る。
【0076】
ELISA試験の実施条件
【表2】

【0077】
ELISA試験結果の表現:ペプチドについて、シトルリン化ペプチドの反応性と非シトルリン化ペプチドの反応性との間のODの変動が考慮され、各反応性をあらかじめブランク(試料の非存在下でのOD)から減算しておく。これにより、以下の式が得られる。
【0078】
【数1】

【0079】
なお、フィブリノーゲンについては、非シトルリン化体は反応性を示さないため、評価する必要はない。したがって、AhFibA試験では、そのブランクからOD値を単純に減算する(試料の非存在下でのOD)。
【0080】
ペプチドのΔDO及びシトルリン化フィブリノーゲンのODは、試験した試料の力価を表すと考えられる。
【0081】
アッセイ間の変動は、各マイクロタイタープレートで試験された患者血清のプールの希釈の範囲を使用することによって補正される。P97と命名されたこの参照プールは、ACPA力価が高い97人の患者からの同じ体積の97個の試料で構成されていた。この内部範囲のOD値は、範囲内の各点がこの同じプールから以前に行われた30回の測定の平均である基準値のOD値と比較される。次いで、最小二乗法により、対応するプレート上で得られた全てのOD値に適用される補正係数を得ることができる。この補正ODは、試料の力価に対応する。
【0082】
【数2】


式中、Xは内部値、Yは基準値である。
【0083】
クロマトグラフィーカラムの構築
4つの1mL HiTrapストレプトアビジンHPカラム(GE、29-0513-24)に、4つのビオチン化β60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドのそれぞれを独立してロードする。PBSでのカラムの平衡化後、ビオチン化ペプチドの飽和溶液のカラム体積(1mL)を0.2mL/分で注入し、15分間インキュベートし、次いでカラムから回収し、凍結乾燥する。
【0084】
凍結乾燥画分中に残存するペプチドの量は、高速液体クロマトグラフィー(UPLC)によって決定され、この量を開始量から差し引いて、カラム内に結合したペプチドの量を推定する。
【0085】
【表3】

【0086】
4つのカラムに、上記の表に示されるペプチドのそれぞれの量をロードした。
連続精製試験に使用した後、β60-74Cit-NH2、α36Ac-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドをロードしたカラムの4つのマトリックスを回収し、混合し、次いで、容量アダプター(GE、AC10)を有する空の10mLカラム(GE、C10/10)に充填して、最終容量4mLの4つの混合ペプチドをロードしたカラムを形成した。
【0087】
精製
2つの代表的なプールであるP97(前述)及びP27、1.5を超えるACPA力価を有する27人の患者血清のプール、並びに4β60-74Cit-NH2、α36Ac-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドに対するそれらの反応性に基づいて選択された個々の血清を、クロマトグラフィー前にPBSで1/4に希釈した。
【0088】
0.5mL/分の流速でPBSでのカラムの平衡化後、このように希釈した6mLの体積のプール又は血清を、以下のβ60-74Cit-NH2ペプチド、次いでα36Ac-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citをロードしたカラム、続いて4つのペプチドを含むカラムの順序で直列に取り付けられた4つのカラムに注入した。保持されていない画分を回収した。PBSで洗浄した後、pH3の0.2Mグリシン-HCl緩衝液(インビトロジェン、15527-013)を用いて、4つのペプチドに特異的な抗体の溶出を行った。溶出画分を回収し、2M Tris溶液(Euromedex、77-86-1)でpH7にした。次いで、開始血清、非保持画分及び溶出液を、クロマトグラフィーによって誘導された希釈係数の補正後にELISAで試験した。
【0089】
精製の割合又は速度の決定
処理した各プール又は血清について、精製された非保持画分のACPA中の残留免疫反応性(AhFibA ELISA試験)及び対応するプール又は開始血清の希釈の範囲から精製の割合を計算した。
【0090】
【数3】

【0091】
精製率の計算の架空の例を図7に示し、(クロマトグラフィー希釈の補正後に1/50で試験した)非保持画分のODと同等のODを得るためには、開始血清を1/400に希釈しなければならない。したがって、非保持画分中のACPAの濃度は、開始血清中の濃度の1/8である。開始血清中のACPAの1/8、すなわち12.5%が非保持画分中に存在するため、精製されていない。開始血清中のACPAの7/8、すなわち87.5%が精製されたと推定することができ、これが精製率である。
【0092】
血清試料の反応性プロファイル
シトルリン化フィブリノーゲン及び4つのシトルリン化ペプチドに対する患者血清の202個の試料の反応性プロファイルを、それぞれ二連で行われる少なくとも2つの独立したアッセイにおいてELISAによって決定した。再現性のために、その内部範囲が基準範囲に対して0.5~2の間の補正係数の適用を必要とするマイクロタイタープレートのみを考慮した。
【0093】
結果
シトルリン化フィブリノーゲン(AhFibA試験)及び4つの免疫優性ペプチドに関する関節リウマチ(RA)患者由来の血清のELISA反応性プロファイル。
【0094】
RA患者由来の202個の血清をAhFibAで試験し、反応性(OD又は力価)が高い順にランク付けした(図1)。それらの力価に従って、患者を以下の低(OD=[0.056~0.615])、中(OD=[0.615~1.161])、高(OD=[1.161~1.876])及び非常に高い(OD≧1.876)力価の四分位に分けた。
【0095】
図2は、4つのペプチドのそれぞれに対して反応性であるRA血清の割合を示す。76%がβ60-74Cit-NH2ペプチドについて陽性であり、最も免疫優性度が高いことが確認された。
【0096】
4つのペプチドに対する血清の個々の反応性は非常に可変的であり、多数の反応性プロファイルの定義が可能になる。観察された異なるプロファイルの頻度を図3に示す。これら202個の血清のうち、78%は4種のペプチドの少なくとも2種に対して反応性であり、95%は4種のペプチドの少なくとも1種と反応する。これらの結果は、クロマトグラフィーにおける4種のペプチドの組み合わせの使用が、非常に広いスペクトルの患者を標的とすることを可能にすべきであることを示している。
【0097】
様々なペプチドに対する血清の反応性間の相関の探索により、β60-74Cit-NH2、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドの間の有意な相関が明らかになり、これらの相関は、これらのペプチド間のある程度の交差反応性を反映するが、それらの相対的な弱点は、各ペプチドがそれ自体の反応性を有することを示す。しかし、α36Ac-50Citと他の3種のペプチドとの間に相関は見られなかった。図4の二重入力表は、比較した全てのペプチド対について計算されたスピアマン係数及びそれらが有意であるか否かを示す。これらの結果は、可能な限り多くの患者に対してACPA全体を標的とする精製システムを開発するためには、4種のペプチド全てを一緒に使用する必要があるという考えを裏付けている。したがって、最終的には、これが行われる選択である。
【0098】
それぞれβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドをロードし、直列に取り付けられた4つのクロマトグラフィーカラム、又は4種のペプチドの混合物を含むカラムでのRA患者からの血清プールの精製。
【0099】
図5に示す2つのクロマトグラフィーシステムを考案して、4種のペプチドを使用して患者の血清に含まれるACPAを精製した。第1のシステムは、4種のβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Cit(A)ペプチドの1つをそれぞれロードした4つのカラムを直列に接続することからなり、第2のシステムは、4つのモノペプチドマトリックスを等量で混合し、それらを単一カラムにロードすることからなる(B)。
【0100】
RA患者由来の血清の2つのプールを使用して、2つのシステムの有効性を比較した。これらの条件は、個々の血清を試験するための条件よりも要求が厳しいために選択された。実際、異なる反応性プロファイルを有する多くの血清を含むプールにおいて、ACPAの混合物は高度にポリクローナルであり、異なる抗原特異性のACPAから構成される。
第1のプールP97は、RA患者の一般集団を代表するAhFibA力価の分布を有する97個の血清からなる。第2のプールP27は、AhFibA力価が高い(OD>1.5)患者由来の27個の血清からなる。
【0101】
図6は、それぞれβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドがロードされた4つの直列に取り付けられたカラム、又は4つのペプチドの混合物を含むカラムのいずれかで、これらのプールに対して行われたクロマトグラフィーの結果を示す。かなりの割合のACPAがカラムに吸収され、カラムから溶出することができるが、吸収されていない別の部分は、カラムによって保持されていない画分に見られる。両方のクロマトグラフィーシステムは、プールに含まれるACPAの大部分を精製するのに有効であり、異なる結果はほとんど得られないようである。
【0102】
更に、4種のβ60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドに対する反応性プロファイルに基づいて、10個のACPA陽性血清を選択した(以下の表4)。
【0103】
【表4】

【0104】
これらの血清並びに2つのプールP97及びP27を、それぞれ4β60-74Cit-NH2Ac-α36-50Cit、α621-635Cit及びα171-185Citペプチドをロードした4つの直列カラムで実行した。全ての試料について、ACPA力価はカラムを通過した後に急激に減少した(図9)。
【0105】
異なるクロマトグラフィー法と試料との間の結果を比較するために、精製の効率指標が必要であった。ELISAにおける試料の光学密度は、この試料に含まれるACPAの量と直線的ではなく指数関数的に相関するので、開始血清の力価とカラムに保持されていない画分の力価との間の光学密度の単純な比は、精製速度を計算することができなかった。
【0106】
したがって、本発明者らは、AhFibA ELISAにおいて開始血清の一連の希釈物のODを決定し、参照曲線を確立することを可能にすることからなるグラフ法を使用した。クロマトグラフィー関連希釈係数の補正後に、非保持画分のODを同様に決定する。参照曲線上のグラフ読み取り値は、非保持画分のODが開始血清のどの希釈度に対応するかを示す。精製の割合は、非保持画分の実験的希釈と開始血清の対応する希釈との間の比から計算された結果である。
【0107】
精製速度を決定するこのグラフによる方法を図7に示す。処理された血清の1つ(血清番号41)についてのこの割合の計算の一例を図8に示す。
【0108】
2つのプールと、カラムを1回通過した後の10個の個々の血清について計算された精製率は全て65%超であり、2つのプールを含む12個のうち7個が85%超である。血清番号41の場合、この割合は98%に達する。
【0109】
開始血清のACPA力価と、直列に取り付けられた4つのカラムを通過した後に得られた精製率との関係を調べた。図10は、これらの2つのパラメータ間に強い有意な相関(スピアマンのr:0.70、p=0.014)があることを示す。血清のACPAの力価が高いほど、精製が効率的である。この直感に反する結果は、高力価のACPAは親和性が高いため、より効率的に抗原に結合するという事実に起因する。
【0110】
参考文献
本出願を通して、様々な参考文献は、本発明が属する先行技術を記載している。これらの参考文献の開示は、参照により本出願に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023522574000001.app
【国際調査報告】