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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】血漿/細胞濃縮器装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20230524BHJP
【FI】
A61M1/02 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559443
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 US2021018702
(87)【国際公開番号】W WO2021216177
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/014,291
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516353294
【氏名又は名称】ハヌマン ペリカン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ドリアン,ランディー
(72)【発明者】
【氏名】リーチ,マイケル,デー.
(72)【発明者】
【氏名】ストーズ,リチャード,ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA12
4C077BB05
4C077CC04
4C077DD12
4C077DD22
4C077DD26
4C077EE01
4C077KK23
4C077NN03
4C077PP07
(57)【要約】
流体から成分を濃縮するための血漿/細胞濃縮装置および方法について説明する。一般に、所定量の流体が、流体チャネルを介して第1のリザーバーから第2のリザーバーに押し流され、流体と混合するための所定量の乾燥剤が、混合物を生成するために導入可能である。この流体と乾燥剤との混合物に、流体から1つ以上の成分が乾燥剤に吸収されるまで、第1のリザーバーと第2のリザーバーとの間を通過させることができる。混合後、乾燥剤が取り出しチャネル内に移動することを防止するとともに、流体チャネルと流体連通する取り出しチャネルから流体を取り出してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体チャネルを介して接続された第1のポートおよび第2のポートを有するコネクターと、
前記第1のポートに取り付け可能な可変圧力を有する第1のリザーバーと、
前記第2のポートに取り付け可能な可変圧力を有する第2のリザーバーと、
前記流体チャネルと流体連通している取り出しチャネルと、
前記流体チャネルから前記取り出しチャネルへの乾燥剤の通過を防止するように位置決めされたフィルターと、
を備える、流体から成分を濃縮する装置。
【請求項2】
前記コネクターがマニホールド本体からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のリザーバーおよび前記第2のリザーバーがそれぞれ、プランジャーを有するシリンジからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記取り出しチャネルと連通する弁をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記フィルターがフリットからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のリザーバーまたは前記第2のリザーバー内に導入するための所定量の乾燥剤ビーズをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2のリザーバーが、前記第2のリザーバー内のプランジャーに対して圧力を加えるように配置された付勢要素をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1のリザーバーが、真空力を生成するために前記第1のリザーバー内のプランジャーの位置を維持するように構成されたロック機構をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
流体チャネルを通して第1のリザーバーから第2のリザーバーに所定量の流体を送り込むステップと、
前記流体からの1つ以上の成分が乾燥剤に吸収されるまで、前記流体および所定量の前記乾燥剤を前記第1のリザーバーと前記第2のリザーバーとの間で通過させるステップと、
前記流体チャネルと流体連通している取り出しチャネル内に前記乾燥剤が移動することを防止するとともに前記取り出しチャネルから前記流体を取り出すステップと、
を含む、流体から成分を濃縮する方法。
【請求項10】
前記所定量の流体が血漿またはPRPからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所定量の流体を送り込むステップが、マニホールドを介して形成された前記流体チャネルを介して第1のシリンジから第2のシリンジに前記所定量の流体を移動させるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記流体および前記所定量の乾燥剤を通過させるステップが、乾燥剤ビーズを導入するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記流体および前記所定量の乾燥剤を通過させるステップが、30秒乃至2分の間、流体を通過させるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記流体を取り出すステップが、前記取り出しチャネルが前記流体チャネルと流体連通するように弁を解放するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記乾燥剤の移動を防止するステップが、前記乾燥剤が前記取り出しチャネル内に入ることを抑制するように、流体にフィルターまたはフリットを通過させるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
回収シリンジを介して前記取り出しチャネルから前記流体を収集するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記流体を取り出すステップが、前記流体および前記乾燥剤が前記第1のリザーバーと前記第2のリザーバーとの間を通過している間に、前記取り出しチャネルから取り出すステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記流体を取り出すステップが、前記第1のリザーバーおよび前記第2のリザーバーの各々に圧力を誘導することによって、前記取り出しチャネルから取り出すステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のリザーバーが、前記第2のリザーバー内のプランジャーに対して付勢力を加える、内部に含まれる付勢部材を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記所定量の流体を送り出すステップが、前記第2のリザーバー内に真空を誘導して前記所定量の流体を前記第1のリザーバー内に引き込むステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記所定量の流体を送り出すステップが、前記第1のリザーバーと前記第2のリザーバーとの間で前記流体および前記所定量の乾燥剤を移動させるに先だって、前記第1のリザーバーと前記第2のリザーバーとの間に設けられるマニホールド内に前記乾燥剤を保持するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記所定量の流体を送り出すステップが、前記第1のリザーバーと前記第2のリザーバーとの間で前記流体および前記所定量の乾燥剤を移動させるに先だって、前記第1のリザーバーまたは前記第2のリザーバー内に前記乾燥剤を保持するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
内部に第1の部分および第2の部分が設けられたハウジングと、
前記ハウジング内に配置されるとともに前記第1の部分と前記第2の部分とを分離するフィルターと、
前記第1の部分と流体連通している第1のポートと、
前記第2の部分と流体連通している第2のポートと、
を備え、
前記第1の部分が、流体および乾燥剤からなる混合物を前記第1のポートを通して受承するように構成され、これにより、前記ハウジングに遠心力を加えることで、前記混合物が前記フィルターを通って前記第2の部分に押し流され、
前記流体から吸収された1つ以上の成分を有する前記乾燥剤が前記フィルターによって保持され、濃縮された流体が前記第2の部分に押し流される、流体から成分を濃縮する装置。
【請求項24】
前記第1の部分は、前記ハウジング内の上部からなり、前記第2の部分は、前記ハウジング内の下部からなる、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記フィルターが前記乾燥剤を保持するように構成されたフリットからなる、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
流体および乾燥剤からなる混合物をハウジングの第1の部分に導入するステップと、
前記混合物が前記ハウジングの前記第1の部分と第2の部分との間に配置されたフィルターを押し流されて通過するように、前記ハウジングに遠心力を加えるステップと、
濃縮された流体を前記第2の部分内に受承するステップであって、前記流体から吸収された1つ以上の成分を有する前記乾燥剤が前記フィルターによって保持される、受承ステップと、
を含む、流体から成分を濃縮する方法。
【請求項27】
前記第2の部分と流体連通している取り出しポートを介して前記濃縮された流体を取り出すステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記混合物を導入するステップが、前記第1の部分と流体連通している入口ポートを介して前記混合物を導入するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記混合物が、フリットからなるフィルターを通過するように押し流される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分を濃縮する装置および方法に関するものである。より詳細には、本発明は、白血球を含むまたは含まない血漿または血小板に富む血漿から、遠心分離を必要とすることなく高分子血漿成分および/または細胞を効率的に濃縮する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液は分画され、異なる医療ニーズに対して血液の異なる分画が使用され得る。例えば、貧血(赤血球の量が少ない)は、赤血球の輸液で治療することができる。血小板減少症(血小板濃度の低下)は、血小板濃縮液の輸液で治療することができる。
【0003】
様々な血球および血漿の堆積は、細胞の比重および媒体の粘性の違いに基づいて行われる。堆積して平衡状態になると、比重(濃度)のもっとも大きいものが最終的に底部に堆積し、もっとも軽いものが上に上がってくる。重力や遠心力の影響を受けて、血液は自然に3つの層に堆積する。平衡状態では、一番上の低密度の層は血漿と呼ばれる麦わら色の透明な流体である。血漿は、塩類、代謝物、ペプチド、および小さなもの(インスリン)から非常に大きなもの(補体成分)までの多くのタンパク質が含まれる水溶液である。血漿自体は医療での使用が制限されるが、さらに分画されて、例えば血友病の治療(第VIII因子)または止血剤(フィブリノーゲン)として使用されるタンパク質が得られる。全血中の血漿タンパク質および血小板のほとんどが、緩慢に遠心分離した後の血漿中にあるため、血漿中の血小板の濃度が上昇し、上澄みの血漿中に浮遊していることから、この成分を多血小板血漿PRP(Platelet Rich Plasma)と呼んでいる。遠心分離後の最上層は、一般的に血漿タンパク質のみを含み、「ハードスピン」の結果として血小板が存在しない、または数が少ないことから、一般的に乏血小板血漿PPP(Platelet-Poor Plasma)と呼ばれている。
【0004】
最下層の高濃度層は、酸素運搬に特化した核赤血球(RBC)からなる深紅の粘性流体である。赤色は、赤血球の高比重の原因となる高濃度のキレート鉄またはヘムによるものである。血液型に適合したパックされた赤血球は、出血などによる貧血の治療に有用である。全血中の赤血球の相対的な量をヘマトクリット値と呼び、正常なヒトでは約38%乃至約54%となっている。
【0005】
中間層は最も小さい層で、赤血球層の上と血漿の下に薄い白色の帯状に現れ、バフィーコートと呼ばれている。バフィーコート自体は、核を有する白血球、および血小板と呼ばれる無核小体の2つの主要な成分を有する。白血球は免疫力を付与し、デブリーの回収にも貢献する。血小板は、血管の破れ目をシールして止血し、成長因子および創傷治癒因子を創傷部位に送り込む。バフィーコートは、血液を「ハードスピン」することで全血から分離することができる。「ハードスピン」では、全血を十分に強く、長く回転させることで、血漿から赤血球パックに血小板が堆積し、白血球が赤血球パックを通って赤血球と血漿との界面まで浸透していく。
【0006】
所定量の血液を構成する成分に分離するためには、一般的に遠心分離装置を用いて成分を分離および濃縮することが必要である。血液成分、特に血漿高分子成分、および/または血小板、および/または白血球を濃縮する他の方法として、血漿またはPRPから水および低分子量溶質を除去する清掃中空糸ろ過を採用した装置がある。また、乾燥したサイズ排除クロマトグラフィービーズを使用して、遠心分離管内で水および低分子量溶質を吸着させる装置もある。これらの装置は、濃縮中に血漿/ビーズ混合物を撹拌するためのパドルまたはレーキを含み、次いで、濃縮生成物を通過させながら膨潤したビーズを保持するフリット(例えば、ガラス、セラミック等の焼結粒子からなる周知の多孔性を有するフィルター)を通して遠心分離管(またはドラム)の下部または遠位区画内に遠心分離でビーズの除去が行われる。
【0007】
さらなる別の方法として、シリンジ内に含まれるビーズと、ビーズと血漿との混合を促進するための1つ以上の金属BBなどの撹拌機とを併用する装置が挙げられ、混合に次いで、ビーズ保持フリットを通した濃縮生成物の圧搾またはビーズ保持フリットを通した遠心分離が行われる。
【0008】
これらの方法のいずれにおいても、ビーズや繊維の表面上にゲル分極膜が形成されることを防止するために、通常、何らかの掃引や撹拌の手段が必要である。中空糸の場合、ろ過時に中空糸を通して血漿を循環させ、膜面を掃除する。遠心分離機の場合は、パドルやレーキで攪拌する。ビーズ装填シリンジの場合に、BBがビーズ/血漿懸濁液を撹拌できるようにシリンジを振ることで撹拌を実現する。
【0009】
中空糸膜カートリッジは一般的に高価であり、中空糸膜カートリッジを使用する方法では、循環ポンプおよびチューブ回路が必要となる。クロマトグラフィービーズを使用する場合に、ビーズ表面上に大きな分子を堆積させるとともにビーズの孔を詰まらせる可能性のあるゲル分極を防止するために、また、ビーズ表面上に高濃度のタンパク質が蓄積することによりビーズが凝集することを防止するために、ビーズは血漿と接触した後に迅速に混合する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、遠心分離を必要とすることなく、白血球を含むまたは含まない血漿またはPRPから高分子血漿成分および/または細胞を効果的に濃縮する単純かつ効果的な方法および装置に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、白血球を含むかまたは含まない血漿またはPRPから、遠心分離を必要とすることなく高分子血漿成分および細胞のうちの少なくともいずれか一方を効率的に濃縮する装置および方法に関するものである。本装置の一態様として、マニホールドを介して第2のシリンジと流体的に結合された第1のシリンジを利用することができる。マニホールドには、それぞれのシリンジの先端を一時的または永久的に固定するための受承チャネルも設けられている。各シリンジはマニホールドと直接一体的に設けられるか、任意により非標準の結合部を取り付け、シリンジの一方または両者が不用意に不適切なポートに確実に脱着できないようにすることができる。
【0012】
流体チャネルはマニホールドを貫通して延びて、第1のシリンジの開口部と第2のシリンジの開口部とを流体的に結合し、取り出しチャネルはマニホールドを貫通して延び、流体チャネルに流体的に結合してもよい。流体チャネルからの流体の放出を防止するために、開放形態と閉鎖形態との間で構成可能な、例えば、自動でまたはコックの栓を介して手動で構成可能な作動可能な弁を、取り出しチャネルに組み込んでもよい。また、フィルターまたはフリットを取り出しチャネルの入口でマニホールドに組み込み、流体チャネルから取り出しチャネルへの通過の選択成分をろ過することもできる。
【0013】
流体チャネルには、流体が流体チャネルを通過する際に効果的に混合されることが促進されるように、ベーン、スパイク、十字線などの複数の突起または要素を任意に組み込むことができる。加えて、所定量の乾燥ビーズまたは要素も、流体チャネル内またはシリンジの一方または両者に直接加えることができる。
【0014】
濃縮される所定量の血漿またはPRPは、第1のシリンジまたは第2のシリンジ(またはその両者)内に導入されてもよく、シリンジは、それらの開口部が流体チャネルの各端部に配置されるように、マニホールド内の対応する端部に結合されてもよい。所定量の乾燥ビーズを、流体チャネル内に保持し、かつ/またはシリンジの一方または両者内に保持した状態で、それぞれのプランジャーを交互に作動させ、血漿またはPRPを流体チャネルを通してシリンジ間で押圧して往復させることができる。血漿またはPRPをシリンジ間で循環させる際に、流体チャネルからの漏れを防止するために、取り出しチャネルを閉鎖した状態に保持しておくことができる。血漿またはPRPが流体チャネルを介してシリンジ間を循環する際に、所定量のビーズが血漿またはPRPと十分に混合し、水、電解質、および小さなタンパク質などの血漿またはPRP内の様々な成分を吸収するため、血漿またはPRPは濃縮され、血小板の豊富な血漿の濃縮物を残すことができる。ビーズと血漿またはPRPとの混合物はシリンジ間で往復するように循環するので、マニホールドへのシリンジ接続は、液密な接続を確保するために一体的であってもよく、シリンジ結合部の内径は、ゲル分極によって形成される可能性があるビーズの塊による詰まりの可能性を低減するために結合部の近位端で内部に先端ほど細くなっていてもよい。
【0015】
一旦血漿またはPRPが十分に濃縮されたら、取り出しチャネルに沿った弁を開放して、流体チャネルを通過する濃縮生成物を取り出すことができるようにしてもよい。フィルターまたはフリットは、ビーズや他の成分が取り出しチャネルに入ることを防止するので、濃縮生成物のみが取り出しチャネルを通り、回収シリンジなどのリザーバーに入るようにすることができる。ビーズと血漿またはPRPとの混合物が流体チャネルによる循環を継続するので、濃縮生成物の除去を可能にするために、取り出しチャネルを開放することができる。これにより、確実に混合物から濃縮生成物を一様に採取することができる。また、生成物抽出時にビーズ表面を掃引することで、ビーズがまだ完全に飽和していない場合に、残留する吸水がゲルの分極および高分子成分の損失、または凝集をさらに確実に引き起こさないようにすることができる。
【0016】
これに代えて、それぞれのシリンジにおけるプランジャーの両者を同時に押圧して圧力を発生させ、シリンジの両者から濃縮生成物を強制的に排出し、弁を開放した状態で回収するための取り出しチャネルを通してもよい。いずれの場合も、フィルターまたはフリットは、ビーズが取り出しチャネル内に移動することを防止し、濃縮生成物のみが通過できるようにしてもよい。
【0017】
代替案として、フィルターまたはフリットを通さずに材料を導入できるように、追加の取り出しチャネルおよびポートを設けてもよい。材料がマニホールドから導入されると、マニホールド内のビーズと混合し、ビーズがシリンジの一方または両者に掃き寄せられ、それぞれのプランジャーが部分的に延びるようにしてもよい。
【0018】
これらのビーズは、血漿またはPRPと接触し混合する際に濃縮器として機能し、水、電解質、小さなタンパク質などの特定の成分を選択的に吸収するように構成された任意の数の材料からなり、回収のために濃縮生成物を残すことができる。ビーズを形成可能な様々な材料の例としては、様々なポリマー、金属、鉱物、多糖類、シリカゲル、セラミック、ガラスなど、生体材料を処理するのに適した任意の材料が挙げられ得る。
【0019】
別の態様では、マニホールドはマニホールド本体を含み、マニホールド本体は、マニホールド本体の対向する両端部に配置されたポートを含み、それぞれのポートは、マニホールド本体を通ってポート間に延びる流体チャネルを介して互いに流体的に接続することができる。取り出しチャネルは、ビーズや他の成分が取り出しチャネルを通過するのを防止または抑制するように配置されたフィルターまたはフリットを通して流体チャネルから延びることができる。
【0020】
例えば、2つのインラインシリンジの一方にバネのような付勢要素を取り付け、一方のシリンジのみに交互に圧力を加えたり解放したりすることで混合を行うなど、複数の任意の構成が可能である。2つのシリンジは平行である必要はなく、任意の角度をなすように、隣接する接続マニホールドを介して互いに接続されてもよい。第2の改良型シリンジは、プランジャーを有するのではなく、マニホールド本体の対向するポートに結合されてもよく、第2のシリンジは、可動プランジャーとシリンジの本体に対して堅固に配置され得るアンカープラットフォームとの間にアンカー固定された付勢要素を内部に含んでもよい。
【0021】
さらなる別例では、所定量の血漿またはPRPは、フィルターまたはフリットを含むマニホールドを介して第1のシリンジを第2のシリンジに接続することによって濃縮されてもよく、第1のシリンジは任意で所定量のビーズを予め装填してもよく、第2のシリンジは濃縮されるべき所定量の血漿またはPRPを含んでもよい。別の態様において、これに代えて、所定量のビーズをマニホールド自体内に予め充填しておくことも可能である。マニホールドまたは第2のシリンジは、マニホールドに最初に結合されたときに、第1のシリンジと第2のシリンジとの間の連通を防止するために最初に閉鎖されるストップコックのような弁を含んでもよい。
【0022】
第1のシリンジのプランジャーが最初に完全に押された状態で、弁が閉じた状態でプランジャーを近位側に引き寄せ、第1のプランジャー内に真空力を発生させることができる。これにより、第2のシリンジ内に含まれる流体と接触する前に、内包された所定量のビーズをシリンジ内で分散させることもできる。第1のプランジャーはロック機構によりその格納位置にロックされ、弁は第1のシリンジ内の真空が第2のシリンジからマニホールドを介して流体を引き込むように開放されてもよい。このように流体が突然第1のシリンジ内に拡散することで、最初の流体接触時に第1のシリンジ内でビーズが凝集する可能性を最小限に抑えることが支援され、また弁開放後の流体の急速な導入を促進することも可能である。一旦第1のシリンジに流体が導入されると、ロック機構が解除され(例えば、プランジャーロッドをシリンジ本体に対してひねることにより)、2つのシリンジ間でスラリーの循環が行われることになる。
【0023】
代替的なマニホールド本体は、第1のポートおよび第2のポートを有し、その両者が互いに近接し、湾曲したまたは角度をなす流体チャネルを介して流体的に接続されるように、マニホールドの第1の表面に沿って配置されてもよい。任意のチャンバーを、シリンジ間の初期混合段階において所定量のビーズを保持するために流体チャネルの間に組み込むことができる。加えて、チャンバー内のフリットを保持し、また、マニホールド本体に取り出しシリンジを結合できるようにするために、チャンバーから延びるようにフィルターまたはフリットウェルをさらに構成してもよい。ポートがマニホールド本体の共通面に沿って配置されているため、シリンジは互いに対して、またマニホールド本体に対して、任意の数の角度をなすことができる。さらに、本態様は、本明細書に記載された装置および方法のいずれにも利用することができる。
【0024】
所定量の濃縮生成物を回収するためのさらなる別の態様では、マニホールドから直接濃縮生成物を取り出すのではなく、結合部を遠心分離機と組み合わせて使用することができる。結合部は、混合スラリーが導入される導入ポートがハウジングの上部に配置されたハウジングを有することができる。取り出しポートはハウジングの下部に配置され、フリットはハウジング内に配置され、内部容積を上部と下部とに分離することができる。
【0025】
混合スラリーがポートを通ってハウジングの上部に導入されると、両方のポートがキャップされるか閉じられ、結合部全体が遠心分離を受け、流体が上部からフリットを通り、ハウジングの下部に駆動されてもよい。一旦全ての濃縮生成物が下部と、フリットの上の上部内に残っているビーズとに分離されたら、濃縮生成物をハウジングから取り出すために、取り出しポートを開放してもよい。
【0026】
流体から成分を濃縮するための方法の一態様では、方法は、概して、所定量の流体を第1のリザーバーから流体チャネルを通して第2のリザーバーに押し流すことと、流体と混合するために所定量の乾燥剤を導入することとを含むことができる。この流体と乾燥剤との混合物に、流体から1つ以上の成分が乾燥剤に吸収されるまで、第1のリザーバーと第2のリザーバーとの間を通過させることができる。混合後、乾燥剤が取り出しチャネル内に移動することを防止しながら、流体チャネルと流体連通している取り出しチャネルを介して流体を取り出すことができる。
【0027】
流体から成分を濃縮するための装置の一態様では、装置は一般に、流体チャネルを介して接続された第1のポートおよび第2のポートを有するコネクターと、第1のポートに取り付け可能な可変圧力を有する第1のリザーバーと、第2のポートに取り付け可能な可変圧力を有する第2のリザーバーとを備えることができる。取り出しチャネルは、流体チャネルと流体連通していてもよく、フィルターは、流体チャネルから取り出しチャネルへの乾燥剤の通過を防止するように配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、遠心分離を必要とすることなく血漿成分および細胞のうちの少なくともいずれか一方を効果的に濃縮するために使用される装置を示す斜視図である。
図2A図2Aは、従来のシリンジまたは改良型シリンジと組み合わせて使用可能な別の態様によるマニホールドを示す斜視図である。
図2B図2Bは、従来のシリンジまたは改良型シリンジと組み合わせて使用可能な別の態様によるマニホールドを示す側面図である。
図2C図2Cは、従来のシリンジまたは改良型シリンジと組み合わせて使用可能な別の態様によるマニホールドを示す底面図である。
図2D図2Dは、従来のシリンジまたは改良型シリンジと組み合わせて使用可能な別の態様によるマニホールドを示す頂面図である。
図3A図3A乃至3Eは、血漿またはPRPを濃縮するための一例を示す斜視図である。
図3B図3A乃至3Eは、血漿またはPRPを濃縮するための一例を示す斜視図である。
図3C図3A乃至3Eは、血漿またはPRPを濃縮するための一例を示す斜視図である。
図3D図3A乃至3Eは、血漿またはPRPを濃縮するための一例を示す斜視図である。
図3E図3A乃至3Eは、血漿またはPRPを濃縮するための一例を示す斜視図である。
図4A図4A乃至4Dは、所定量のバフィーコートを濃縮するための別例を示す斜視図である。
図4B図4A乃至4Dは、所定量のバフィーコートを濃縮するための別例を示す斜視図である。
図4C図4A乃至4Dは、所定量のバフィーコートを濃縮するための別例を示す斜視図である。
図4D図4A乃至4Dは、所定量のバフィーコートを濃縮するための別例を示す斜視図である。
図5図5は、1本のシリンジで圧力を加えたり解放したりする別例による装置を示す斜視図である。
図6図6は、ビーズを血漿またはPRPと迅速に混合するために、注射器の1つに生じる真空力を利用可能な別例による装置を示す斜視図である。
図7A図7Aは、2つのシリンジを様々な角度で互いに流体的に結合させることができるマニホールドを示す部分断面側面図である。
図7B図7Bは、2つのシリンジを様々な角度で互いに流体的に結合させることができるマニホールドを示す部分断面斜視図である。
図8図8は、遠心分離機と組み合わせて使用することができる結合部を示す斜視図である。
図9A図9A乃至9Cは、所定量の血漿またはPRPを乾燥剤と混合し、遠心分離して濃縮生成物を得る方法の一例を示す図である。
図9B図9A乃至9Cは、所定量の血漿またはPRPを乾燥剤と混合し、遠心分離して濃縮生成物を得る方法の一例を示す図である。
図9C図9A乃至9Cは、所定量の血漿またはPRPを乾燥剤と混合し、遠心分離して濃縮生成物を得る方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1の斜視図に一態様による装置を示し、遠心分離を必要とすることなく血漿またはPRPから1つ以上の血漿成分および細胞のうちの少なくともいずれか一方を効果的に濃縮するために使用することができるアセンブリー10を示す。アセンブリー10は、白血球を含むかまたは含まない成分および細胞のうちの少なくともいずれか一方を濃縮してもよい。図示のように、第1のリザーバーまたはシリンジ22は、マニホールド12を介して第2のリザーバーまたはシリンジ26に流体的に結合され、マニホールド12には、マニホールド12に対応するシリンジ22、26の先端を一時的または恒久的に固定する受承チャネルも設けられる。シリンジが示され、説明されているが、これに代えて代替的な流体容器またはリザーバー構造体が使用されてもよい。各シリンジ22、26は、マニホールド12と直接一体的に設けられるか、または任意により非標準の結合部に装着され、シリンジ22、26の一方または両者が不用意に誤ったポートに脱着できないようにする。
【0030】
流体チャネル16は、マニホールド12を通って延びて、第1のシリンジ22および第2のシリンジ26の開口部を流体的に結合してもよく、取り出しチャネル18は、マニホールド12を通って延びて、例えば5mmの直径を有してよいが例えば3乃至10mmの範囲であってもよい流体チャネル16に流体的に結合してもよい。開閉可能な弁20は、例えば、自動またはストップコックを介して手動で開閉形態に構成可能であり、流体チャネル16からの流体の放出を防止するために、取り出しチャネル18と一体的に組み込んでよい。フィルターまたはフリット14を、流体チャネル16から取り出しチャネル18に通過する選択成分をフィルタリングするために、取り出しチャネル18の入口でマニホールド12に組み込むこともできる。
【0031】
流体チャネル16には、流体が流体チャネル16を通過する際に効果的に混合されることが促進されるように、ベーン、スパイク、十字線などの複数の突起または要素を任意に組み込むことができる。加えて、所定量の乾燥ビーズまたは要素も、流体チャネル16内またはシリンジ22、26の一方または両者に直接加えることができる。所定量の乾燥ビーズまたは要素が流体チャネル16内またはシリンジの一方または両者内に直接含まれる状態で、濃縮される材料を導入する前に、接続チャネル16の底部上またはシリンジ22、26内の所定量の乾燥ビーズの分散を促進するために、水平形態に保持しながら装置を任意に叩いたり振ったりなどして動かすことができる。そうすることで、血漿やPRPをビーズに接触させるように導入する直後に塊が形成される可能性を低減することができる。
【0032】
濃縮される所定量の血漿またはPRPは、第1のシリンジ22または第2のシリンジ26(またはその両者)内に導入されてもよく、シリンジ22、26は、それらの開口部が流体チャネル16の各端部に配置されるように、マニホールド12内の対応する端部に結合されてもよい。所定量の乾燥ビーズを、流体チャネル16内に保持し、かつ/またはシリンジ22、26の一方または両者内に保持した状態で、それぞれのプランジャー24、28を交互に作動させ、血漿またはPRPを流体チャネル16を通してシリンジ22とシリンジ26との間で押圧して往復させることができる。血漿またはPRPがシリンジ22とシリンジ26との間で循環されるとき、取り出しチャネル18は、流体チャネル16からの漏出を防止するために閉鎖した状態に保持しておくことができる。血漿またはPRPが流体チャネル16を介してシリンジ22とシリンジ26との間を循環する際に、所定量のビーズが血漿またはPRPと十分に混合し、水、電解質、および小さなタンパク質などの血漿またはPRP内の様々な成分を吸収するため、血漿またはPRPは濃縮され、血小板の豊富な血漿の濃縮物を残すことができる。ビーズと血漿またはPRPとの混合物はシリンジ22とシリンジ26との間で往復するように循環するので、マニホールド12へのシリンジ接続は、液密な接続を確保するために一体的であってもよく、シリンジ結合部の内径は、ゲル分極によって形成される可能性があるビーズの塊による詰まりの可能性を低減するために、結合部の近位端で内部に先端ほど細くなっていてもよく、例えば、シリンジ内径よりも比較的小さいが標準シリンジ内径よりも比較的大きい直径(2乃至6mm)にすることができる。
【0033】
一旦血漿またはPRPが十分に濃縮されたら、取り出しチャネル18に沿った弁20を開放して、流体チャネル16を通過する濃縮生成物を取り出すことができるようにしてもよい。フィルターまたはフリット12は、ビーズや他の成分が取り出しチャネル18に入ることを防止するので、濃縮生成物のみが取り出しチャネル18を通り、回収シリンジなどのリザーバーに入るようにすることができる。ビーズと血漿またはPRPとの混合物が流体チャネル16による循環を継続するので、濃縮生成物の除去を可能にするために、取り出しチャネル18を開放することができる。これにより、確実に混合物から濃縮生成物を一様に採取することができる。また、生成物抽出時にビーズ表面を掃引することで、ビーズがまだ完全に飽和していない場合に、残留する吸水がゲルの分極および高分子成分の損失、または凝集をさらに確実に引き起こさないようにすることができる。
【0034】
これに代えて、各シリンジ22、26の両者の対応するプランジャー24、28を同時に押圧して圧力を発生させ、弁20を開放した状態で、濃縮生成物をシリンジ22、26の両者から、回収のために取り出しチャネル18を通して強制的に取り出すようにしてもよい。いずれの場合も、フィルターまたはフリット14は、ビーズが取り出しチャネル18内に移動することを防止し、濃縮生成物のみが通過できるようにしてもよい。
【0035】
代替案として、フィルターまたはフリット14を通さずに材料を導入できるように、追加の取り出しチャネルおよびポートを設けてもよい。材料がマニホールド12を通って導入されると、中に含まれるビーズと混合し、対応するプランジャー24、28を強制的に部分的に拡張させるためにシリンジ22、26の一方または両者に掃き入れることができる。
【0036】
これらのビーズは、血漿またはPRPと接触し混合する際に濃縮器として機能し、水、電解質、小さなタンパク質などの特定の成分を選択的に吸収するように構成された任意の数の材料からなり、回収のために濃縮生成物を残すことができる。ビーズを形成可能な様々な材料の例としては、様々なポリマー、金属、鉱物、多糖類、シリカゲル、セラミック、ガラスなど、生体材料を処理するのに適した任意の材料が挙げられ得る。
【0037】
ポリマーの様々な例としては、例えば、デキストラノマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。金属の様々な例としては、例えば、チタンなどを挙げることができ、鉱物の様々な例としては、例えば、ゼオライト、コランダム、クォーツなどを挙げることができる。多糖類の様々な例としては、例えば、アルギン酸ゲル、デンプン、デキストラン、アガロースなどを挙げることができる。
【0038】
いくつかの変形例では、ビーズは、免疫グロブリンgなどの抗体などの活性化物質と共役にされていてもよい。
【0039】
ビーズは生体物質の変化を誘発して血漿またはPRPを濃縮するために使用されるものであるため、使用するビーズの材質および濃縮する生体物質に応じて、ビーズの大きさおよび組成を変えることができる。一例では、ビーズは、ポリアクリルアミド材料(例えば、1000乃至6000の公称分画分子量(NMWL)を有するバイオラッドP6クロマトグラフィービーズ)で構成されてもよく、それぞれが、例えば、45乃至90マイクロメートルの乾燥ビーズ直径を有する大きさとすることができる。したがって、濃縮される約10mlなどの所定量の血漿またはPRPに関して、容量は、例えば、5乃至30mlまでの任意の範囲であってもよく、使用されるビーズの重量は、約200乃至5,000mgの範囲のうち任意のものであり得るが、例えば、約1,000mgであってもよく、ビーズと血漿またはPRPとの比率は例えば0.04乃至0.15の範囲のうち任意のものであり得るが、約0.1であってもよく、所望の成分を効果的に分離することができる。
【0040】
さらに、ビーズおよび濃縮する生体物質に応じて、シリンジ22とシリンジ26との間の往復回数を変えることができる。一態様では、血漿またはPRPは、ビーズを血漿またはPRPと十分に混合するために、例えば、10乃至50サイクル、循環させることができる。これに代えて、循環は十分な混合を可能にするために時間を設定してもよく、例えば、30秒乃至2分またはそれ以上の範囲とすることができる。加えて、流体チャネル16の直径がビーズの大きさに比べて比較的小さいため、不完全な混合によって形成された塊は、塊が流体チャネル16を通る際に乱流および剪断によってばらばらに破壊され得る。さらに、シリンジ22とシリンジ26との間を往復するように循環させることで、ビーズと血漿またはPRPとを効率的に混合することが促進され、泡立ちが比較的少なく、より一様なスラリーを生成することができる。
【0041】
図2A乃至2Dは、それぞれ、従来のシリンジまたは改良型シリンジと組み合わせて使用され得る別の態様によるマニホールドを示す斜視図、側面図、底面図、および頂面図である。マニホールド30はマニホールド本体32を含み、マニホールド本体32は、マニホールド本体32の対向する両端部に配置されたポート34、36を含み、それぞれのポート34、36は、マニホールド本体32を通ってポート34とポート36との間に延びる流体チャネル38を介して互いに流体的に接続することができる。取り出しチャネル40は、流体チャネル38から、ビーズまたは他の成分が取り出しチャネル40を通過し、取り出しチャネル40に入ることを防止または抑制するように配置されたフィルターまたはフリット42を通って延びてもよい。
【0042】
取り出しチャネル40は、流体チャネル38に対して横方向に延びるように示されているが、これに代えて取り出しチャネル40が流体チャネル38に対して非標準の角度で傾斜していてもよい。さらに、アセンブリー30は従来のシリンジと組み合わせて使用することができるが、他の態様ではポート34、36は特殊な構成のシリンジと一時的または恒久的に係合するように調整または修正が可能である。
【0043】
実施例1
【0044】
実施された試験の一例では、図3Aの斜視図に示すように、第1の容量50Aのクエン酸化したウシPRPが、ポート36に結合された第1のシリンジ22に直接導入され、取り出しチャネル40の出口はキャップにより密閉された。そのプランジャー28が完全に押し下げられた第2のシリンジ26がポート34に結合され、PRPが装填された第1のシリンジ22を取り付ける前に、所定量の濃縮ビーズ52が、マニホールド本体32内に含まれる流体チャネル38に予め装填された。
【0045】
第1のプランジャー24が押し下げられることにより、第1の容量50AのPRPが流体チャネル38内に強制的に押し込まれ、中に含まれるビーズ52と接触させられた。第1の容量50Aがさらに導入されると、図3Bの斜視図に示すように、PRPおよびビーズは、対向する第2のシリンジ26に押し流されることで混合を開始し、第2のプランジャー28を強制的に拡張させながら第2の容量50Bを取り込むことができる。
【0046】
マニホールド本体32を介してシリンジ22とシリンジ26との間でPRPを緩やかに往復させる工程は、ビーズ52が血漿から水分を十分に吸収できるように、一定時間、例えば、約30秒間維持することができる。一旦混合が完了すると、濃縮された混合物は、ビーズの塊が視認できない、一様なスラリーとして現出し得る。図3Cの斜視図に示すように、キャップ(ある場合は弁)を外し、回収シリンジ54を、そのプランジャーを完全に押し込んだ状態で取り出しポート40に装着してもよい。この循環は、第1のシリンジ22と第2のシリンジ26との間で継続されてもよく、その間、濃縮生成物56は、ビーズの通過を妨げるフィルターまたはフリット42を、シリンジ22、26の流量制限および抵抗によって発生する適度な圧力によって強制的に通過させられる。この圧力により、図3Dの斜視図に示すように、濃縮されたPRPを、ビーズ保持フィルターまたはフリット42を通して、回収シリンジ54内に強制的に押し込むことができる。
【0047】
濃縮流体56の大部分がフィルターまたはフリット42を通って回収シリンジ54内に圧搾されていたときに、残りのビーズパック52は、図3Eの斜視図に示すように、一様かつ白色に現れ、これは、混合および採取によりスラリーの一様性が維持されたこと、および濃縮流体56が略完全に回収シリンジ54に移されたことを示す。
【0048】
実施例2
【0049】
実施された試験の別例では、血漿、血小板、白血球、および少量の赤血球からなる所定量のバフィーコート60Aが、図4Aの斜視図に示すように、そのプランジャー28が完全に押し下げられた状態でポート34に結合された第2のシリンジ26と反対側のポート36に結合された第1のシリンジ22内に導入された。
【0050】
所定量のビーズ52が、所定量のバフィーコート60Aとともに第1のシリンジ22に予め装填されたが、ビーズ52は、代替的にマニホールド本体32の流体チャネル38内に予め装填されてもよい。図4Bの斜視図に示すように、続いて所定量のバフィーコートを、流体チャネル38を介してシリンジ22、26間で循環させ、所定量の容量60A、60B間でビーズ52を十分に混合させることができた。ビーズ52の塊化(例えば、流体と最初に接触したときなど)を防止するために、特にビーズ52がシリンジのうちの1つの中に直接予め装填されるときに、シリンジ22とシリンジ26との間で容量を迅速に循環させることができる。
【0051】
シリンジ22とシリンジ26との間で混合スラリーを往復するように循環させる時間、例えば約30秒の後に、回収シリンジ62を出口ポート40に取り付け、図4Cの斜視図に示すように、インラインシリンジ22とインラインシリンジ26との間でスラリーを往復させ続けることによって、ビーズ保持フィルターまたはフリット42を経て回収シリンジ62内に濃縮生成物64が圧搾された。
【0052】
濃縮生成物64が回収された後に、残りのビーズパック52は、パックされたビーズ52の間の僅かな残量の間質液の中の赤血球の痕跡から、一様かつ僅かにピンク色に現れ得る。図4Dは、ビーズ52が第1のシリンジ22および/または第2のシリンジ26内に保持されるとともに、濃縮生成物64がどのように回収されるかを示す斜視図である。
【0053】
上記両実施例で示したように、PRPおよびバフィーコートの濃縮において、初期投入量に対する回収量の比率は、採用した量のビーズ52によって吸収されると考えられる水分量と一致した。これは、細胞および高分子が効果的に濃縮されていることを示している。また、別の予備の試験では、セルのカウントを行い、比較的高いセル回収率を確認した。
【0054】
別例による形態
【0055】
例えば、2つのインラインシリンジの一方にバネのような付勢要素を取り付け、一方のシリンジのみに交互に圧力を加えたり解放したりすることで混合を行うなど、複数の任意の構成が可能である。2つのシリンジは平行である必要はなく、任意の角度をなすように、隣接する接続マニホールドを介して互いに接続されてもよい。図5の斜視図は、フィルターまたはフリット72を含むマニホールド本体70に結合されたシリンジ22を示している。第2の改良型シリンジ78は、プランジャーを有するのではなく、マニホールド本体70の対向するポートに結合されてもよく、第2のシリンジ78は、可動プランジャーとシリンジ78の本体に対して堅固に配置され得るアンカープラットフォーム82との間にアンカー固定された付勢要素80を内部に含んでもよい。
【0056】
付勢要素80は、プランジャーがアンカープラットフォーム80から離間する方向に押圧するように付勢されるように、プランジャーを圧縮状態に維持してもよい。この構成では、図示のように、第1のシリンジ22にビーズ52を収納してもよいし、マニホールド本体70にビーズ52を収納してもよい。いずれの場合も、血漿またはPRPを第1のシリンジ22内に導入し、プランジャー24を押し下げて、ビーズ52と血漿またはPRPとの混合物をマニホールド本体70の流体チャネルを通して、第2のシリンジ78内に強制的に導入してもよい。第1のシリンジ22のプランジャー24は、付勢要素80が第2のシリンジ78内のプランジャーを自動的に押圧して、混合物をマニホールド本体70を通って第1のシリンジ22内に戻すようにするために解放されてもよい。この工程は、本明細書で説明するように、流体が十分に濃縮されるまで繰り返すことができる。ストップコック76または弁(設けられる場合)は、濃縮生成物がフィルターまたはフリット72を通過し、取り出しチャネル74を通って、取り付けられた回収シリンジ86に入ることができるように開放されてもよい。
【0057】
図6の斜視図に示すように、さらなる別の実施形態では、上述したように、第1のシリンジ22を、フィルターまたはフリット72を含むマニホールド70を通して第2のシリンジ88に接続することによって、所定量の血漿またはPRPを濃縮してもよい。第1のシリンジ22には任意により所定量のビーズ52を予め装填しておき、第2のシリンジ88には濃縮する所定量の血漿またはPRP89を入れることができる。別の態様において、これに代えて、所定量のビーズ52をマニホールド70自体内に予め充填しておくことも可能である。マニホールド70または第2のシリンジ88は、マニホールド70に最初に結合されたときに第1のシリンジ22と第2のシリンジ88との間の連通を防止するために最初に閉鎖されるストップコックなどの弁91を含んでもよい。
【0058】
第1のシリンジ22のプランジャーが最初に完全に押し下げられた状態で、第1のプランジャー22内に真空力が生じるように、弁91を閉じた状態でプランジャーを近位側に引いてもよい。これにより、第2のシリンジ88内に含まれる流体と接触する前に、内包された所定量のビーズ52をシリンジ22内で分散させることもできる。第1のプランジャーはロック機構93によりその格納位置にロックされ、弁91は第1のシリンジ22内の真空が第2のシリンジ88からマニホールド70を介して流体89を引き込むように開放されてもよい。このように流体89が突然第1のシリンジ22内に拡散することで、最初の流体接触時に第1のシリンジ22内でビーズ52が凝集する可能性を最小限に抑えることが支援され、また弁91開放後の流体89の急速な導入を促進することも可能である。
【0059】
一旦第1のシリンジ22内に流体89が導入されると、ロック機構93が解除され(例えば、プランジャーロッドをシリンジ本体に対してひねることにより)、2つのシリンジ22、88の間でスラリーの循環が行われることになる。上述したように、続いて回収シリンジをマニホールド70に結合して、採取することができる。同様に、シリンジ22、88は、直線的なコネクター、または2つのシリンジを互いに任意の角度をなすように隣接させるコネクターを介して取り付けることができる。
【0060】
図7Aおよび図7Bは、2つのシリンジを様々な角度で互いに流体的に結合させることができるマニホールド90を示す部分断面側面図および斜視図である。図示のように、マニホールド本体92は、第1のポート96および第2のポート98を有し、その両者が互いに近接し、湾曲したまたは角度をなす流体チャネル100、102を介して流体的に接続されるように、マニホールド92の第1の表面に沿って配置されてもよい。任意のチャンバー94を、シリンジ間の初期混合段階において所定量のビーズ52を保持するために流体チャネル100と流体チャネル102との間に組み込むことができる。加えて、チャンバー94内のフリットを保持し、また、マニホールド本体92に取り出しシリンジを結合できるようにするために、チャンバー94から延びるようにフィルターまたはフリットウェル104をさらに構成してもよい。
【0061】
ポート96、98は、マニホールド本体92の共通の表面に沿って配置されているため、シリンジは、互いに対して、またマニホールド本体92に対して、任意の数の角度をなすことができる。さらに、本態様は、本明細書に記載された装置および方法のいずれにも利用することができる。
【0062】
加えて、本明細書に記載されるこれらの態様のいずれにおいても、生成物回収シリンジ(または、受承空間の遠位側の上でフリットと一体的に設けられる遠心分離管などの他の回収容器)は、遠心分離に供されて、フリットを介して濃縮物を遠心分離し、ビーズパックから分離し得る。これは、ビーズ間の間質液をすべてビーズパックから追い出すことで、容量回収率を向上させることができるという利点がある可能性があるが、そのためには余分な移送ステップおよび遠心分離が必要になる。
【0063】
濃縮生成物を回収するためにスラリーに加える圧力に代わるさらなる別の方法として、例えば、空気の蒸気でフリットを介してビーズパックから濃縮生成物を吹き出すことができる。このため、良好な容量回収を行うには、加圧された空気源が必要である。さらに、注意深く行わないと泡立ちが起こり、細胞および血漿タンパク質に損傷を与える可能性もある。
【0064】
量回復に関しては、ビーズを密に充填した場合、パック全体の体積の約1/3が間質性空間であることに留意する必要がある。濃縮液を加圧して絞り出すと、この量が回収できない場合がある。濃縮液の回収に用いる方法(圧力または遠心分離)にかかわらず、(完全に膨潤した)ビーズと残留間質液の容積比が2よりも大きいスラリーを効果的に混合することが困難であるため、倍率は約3倍までに制限され得る。圧力によって採取される生成物の合理的な容積回収率は、例えば1.5倍乃至2倍の順になり得る。
【0065】
所定量の濃縮生成物を回収するためのさらなる別の態様では、マニホールドから直接濃縮生成物を取り出すのではなく、図8に示す結合部110を遠心分離機と組み合わせて使用することができる。結合部110は、混合スラリーが導入されるルアーコネクターなどの導入ポート114がハウジング112の上部に配置されたハウジング112を有することができる。ルアーコネクタなどの取り出しポート116は、ハウジング112の下部に配置されてもよく、フリット118は、内部容積を上部120と下部122とに分離するようにハウジング112内に配置されてもよい。
【0066】
混合スラリーがポート114を通ってハウジング112の上部120内に導入されると、両方のポート114、116がキャップされるか閉じられ、結合部110全体が遠心分離を受け、流体が上部120からフリット118を通り、ハウジング112の下部122に駆動されてもよい。一旦全ての濃縮生成物が下部122と、フリット118の上の上部120内に残っているビーズとに分離されたら、濃縮生成物をハウジング112から取り出すために、取り出しポートを開放してもよい。
【0067】
ハウジング120の一使用例では、マニホールド12を各シリンジ 22、26に結合し、所定量の血漿またはPRPを所定量の乾燥ビーズと初期混合してもよく、この乾燥ビーズは、上述のように、また図9Aに示すように、シリンジ22とシリンジ26との間を通過するときに所定量の血漿またはPRPと自由に相互混合し得る。得られた血漿またはPRPおよび乾燥ビーズのスラリーまたは混合物130は、マニホールド12から切り離すことができ、続いて導入ポート114に流体的に結合させることできる1つのシリンジ26に移送されてもよい。図9Bに示すように、シリンジ26からのスラリーまたは混合物130は、続いて導入ポート114を通って、ハウジング112の上部120内に移送することができる。
【0068】
一旦スラリーまたは混合物130が十分に移動したら、シリンジ26を導入ポートから切り離し、ハウジング112を遠心分離してスラリーまたは混合物130を上部120から駆動し、フリット118を通して、ハウジング112の下部122に入るようにしてもよい。フリット118は、血漿またはPRPから1つ以上の成分を吸収した乾燥ビーズを保持することができ、これにより、得られた濃縮生成物134を下部122内に保持することができる。追加シリンジ132は、図9Cに示すように、濃縮生成物134を下部122から追加シリンジ132内に取り出すための取り出しポート116と流体的に結合することができる。
【0069】
上記に開示されている装置および方法は、図示または説明されている個別の実施形態に限定されるものではなく、異なる変形の間で個別の特徴を取り入れた組み合わせを含むことができる。本発明を実施するための上述したアセンブリおよび方法の変更、実行可能な異なる態様間の組み合わせ、および当業者にとって明白な本発明の態様の変形例は、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】