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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】止血用組成物及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 26/00 20060101AFI20230524BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 31/722 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230524BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20230524BHJP
   B01J 2/06 20060101ALI20230524BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A61L26/00
A61P7/04
A61K31/722
A61K9/19
C08B37/08 A
B01J2/06
A61J3/00 301
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562426
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021027753
(87)【国際公開番号】W WO2021212017
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/011,492
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ライデッカー、ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ラジグル、プールヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフマン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラウサ、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C081
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C047BB11
4C047CC04
4C047CC14
4C047GG11
4C076AA11
4C076AA30
4C076BB21
4C076BB31
4C076CC14
4C076DD26
4C076EE37
4C076EE47
4C076FF11
4C076FF68
4C081AA12
4C081AC06
4C081BA11
4C081BB09
4C081CC05
4C081CD091
4C081DA11
4C081DA13
4C081DA14
4C081DA15
4C081DB02
4C081DB03
4C081EA01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA23
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA44
4C086MA63
4C086MA65
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA53
4C090AA03
4C090AA09
4C090BA47
4C090BB05
4C090BB17
4C090BB36
4C090BB53
4C090BD08
4C090BD24
4C090BD25
4C090DA09
4C090DA22
4C090DA23
(57)【要約】
キトサン塩から調製されうる複数の粒子を含む組成物及びその調製方法。複数の粒子は、約100μm~約750μm、たとえば、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、約30~約90の範囲内のスティープネス値、及び0.6超の平均アスペクト比を有しうる。複数の粒子は、たとえば、実質的に球状でありうる。調製方法は、ニードルを介してキトサン塩溶液をエレクトロスプレーすることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサンと架橋剤とを含む複数の粒子を含む組成物であって、前記複数の粒子がキトサン塩から調製され、前記複数の粒子が、
約100μm~約750μmの範囲内の平均直径、及び
0.6超の平均アスペクト比
を有する、組成物。
【請求項2】
前記複数の粒子の平均直径が約150μm~約500μmの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複数の粒子の平均直径が約400μm~約600μmの範囲内である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記複数の粒子が0.7超の平均アスペクト比を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記複数の粒子が0.8超の平均アスペクト比を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記複数の粒子が約30~約90の範囲内のスティープネス値を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記複数の粒子が約70~約90の範囲内のスティープネス値を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記複数の粒子の最大距離の平均が約500μm~約700μmの範囲内である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記複数の粒子がほぼ球状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記複数の粒子の嵩密度が約0.1g/mL~約0.7g/mLの範囲内である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記複数の粒子の嵩密度が約0.2g/mL~約0.7g/mLの範囲内である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記複数の粒子の嵩密度が約0.3g/mL~約0.5g/mLの範囲内である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記複数の粒子の嵩密度が約0.1g/mL~約0.2g/mLの範囲内である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記複数の粒子が、水銀圧入ポロシメトリーにより測定される80%超の多孔度を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記複数の粒子が、水銀圧入ポロシメトリーにより測定される約85%~約95%の範囲内の多孔度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記粒子を調製するために使用される前記キトサン塩が、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサングルタミン酸塩、キトサングリコール酸塩、又はキトサンクエン酸塩である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記架橋剤がトリポリリン酸塩を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が液体をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法であって、ニードルを介してキトサン塩溶液をエレクトロスプレーすることを含む、方法。
【請求項20】
前記キトサン塩溶液が25℃で約1,500cPs~約8,000cPsの範囲内の粘度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記キトサン塩溶液が25℃で約1,500cPs~約3,000cPsの範囲内の粘度を有する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記キトサン塩溶液が前記溶液の体積を基準にした重量で約0.5%~約10%のキトサンを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記エレクトロスプレーすることが、前記ニードルに約9kV~約25kVの電圧を印加することを含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記エレクトロスプレーすることが、前記ニードルに約10kV~約30kVの電圧を印加することを含む、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ニードルが、21ゲージニードル、22ゲージニードル、又は23ゲージニードルである、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記キトサン塩溶液が、前記架橋剤を含む水性溶液中にエレクトロスプレーされ、任意に前記架橋剤がトリポリリン酸塩を含む、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、前記複数の粒子を凍結乾燥することをさらに含む、請求項19~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記凍結乾燥することが、30分間~48時間の範囲内の時間帯で実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記凍結乾燥することが、2時間~12時間の範囲内の時間帯で実施される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記凍結乾燥することが、4時間~6時間の範囲内の期間にわたって実施される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、エレクトロスプレーした後、及び凍結乾燥する前のうちの少なくともいずれか一方において、液体で前記複数の粒子を濯ぐことをさらに含む、請求項19~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記液体が、水、アルコール、又はそれらの混合物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
止血剤として、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用材料並びに関連する調製方法及び治療方法に関する。より詳細には、本発明は、組織を治療するための止血用材料を含む。
【背景技術】
【0002】
止血剤は、血液損失や感染などの医学的問題を回避するために内傷及び外傷の出血を治療することを目的として使用される。胃腸出血などの体内の傷を治療するために、止血剤は、適切な医療装置を介して適用されうる。しかしながら、体内の標的部位へのかかる薬剤の送達には、課題がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、治療用材料並びにその調製方法及び治療方法を含む。たとえば、本発明は、キトサン塩などの多糖塩から調製されうる複数の粒子を含有する組成物を含む。そのため、たとえば、複数の粒子はキトサンを含有しうる。粒子のキトサンは、たとえば、架橋剤(たとえば、キトサン用の架橋剤)を含むキトサン、及び/又はキトサン塩を含むか、あるいは、その形態をなす。いくつかの態様によれば、複数の粒子は、キトサンと架橋剤とを含み、複数の粒子は、キトサン塩から調製されうる。複数の粒子は、約100μm~約1mm、たとえば、約100μm~約750μm、約150μm~約500μm、約250μm~約900μm、約250μm~約500μm、約400μm~約600μm、約550μm~約750μm、又は約300μm~約450μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)を有しうる。複数の粒子は、約30~約90、たとえば、約50~約80、約70~約90、又は約60~約80の範囲内のスティープネス値を有しうる。追加的又は代替的に、複数の粒子は、0.6超、0.7超、又は0.8超の平均アスペクト比を有しうる。たとえば、複数の粒子は、ほぼ球状をなし得る。複数の粒子の最大距離の平均は、たとえば、約500μm~約700μmの範囲内でありうる。
【0004】
本発明のいくつかの態様によれば、複数の粒子は、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、及び0.6超の平均アスペクト比、及び任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値を有しうる。たとえば、複数の粒子は、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、及び0.7超の平均アスペクト比、及び任意に約50~約80の範囲内のスティープネス値を有しうる。さらに、たとえば、複数の粒子は、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、及び0.6超の平均アスペクト比、及び任意に約60~約80の範囲内のスティープネス値を有しうる。少なくとも一例では、複数の粒子は、約300μm~約450μmの範囲内の平均直径、及び0.6超の平均アスペクト比、及び任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値を有する。さらに、たとえば、複数の粒子は、約300μm~約450μmの範囲内の平均直径、及び0.7超の平均アスペクト比、及び任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値を有しうる。少なくとも一例では、複数の粒子は、約300μm~約450μmの範囲内の平均直径、及び0.7超の平均アスペクト比、及び任意に約50~約80の範囲内のスティープネス値を有する。さらに、たとえば、複数の粒子は、約300μm~約450μmの範囲内の平均直径、及び0.8超の平均アスペクト比、及び任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値を有しうる。
【0005】
複数の粒子の嵩密度は、約0.05g/mL~約0.7g/mL、たとえば、約0.1g/mL~約0.7g/mL、約0.2g/mL~約0.7g/mL、約0.05g/mL~約0.4g/mL、約0.3g/mL~約0.5g/mL、又は約0.1g/mL~約0.2g/mLの範囲内でありうる。たとえば、複数の粒子は、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、及び0.6超の平均アスペクト比、任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値、及び約0.1g/mL~約0.7g/mLの範囲内の嵩密度を有しうる。さらに、たとえば、複数の粒子は、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、及び0.7超の平均アスペクト比、任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値、及び約0.3g/mL~約0.5g/mLの範囲内の嵩密度を有しうる。複数の粒子は、水銀圧入ポロシメトリーにより測定したときに80%超の多孔度、たとえば、約85%~約95%の範囲内の多孔度を有しうる。本明細書のいくつかの例では、複数の粒子は、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、0.6超の平均アスペクト比、及び任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値、約0.1g/mL~約0.7g/mLの範囲内の嵩密度、及び水銀圧入ポロシメトリーにより測定したときに80%超の多孔度を有する。たとえば、複数の粒子は、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径、0.7超の平均アスペクト比、及び任意に約30~約90の範囲内のスティープネス値、約0.1g/mL~約0.7g/mLの範囲内の嵩密度、及び水銀圧入ポロシメトリーにより測定したときに約85%~約95%の範囲内の多孔度を有しうる。
【0006】
いくつかの例では、粒子を調製するために使用可能なキトサン塩は、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサングルタミン酸塩、キトサングリコール酸塩、又はキトサンクエン酸塩である。本明細書の組成物は、キトサンと架橋剤とを含む複数の粒子を含みうるとともに、任意に架橋剤は、トリポリリン酸ナトリウムなどのトリポリリン酸塩を含む。そのほか、組成物は、液体などの流体をさらに含みうる。追加的又は代替的に、組成物は、粉末の形態でありうる。
【0007】
本明細書では、止血剤としての組成物の使用も開示されている。この組成物は、上記組成物及び/又は本明細書の他の箇所に記載の組成物でありうる。
本発明はまた、上記組成物及び/又は本明細書の他の箇所に記載の組成物の調製方法を含み、この方法は、ニードルを介してキトサン塩溶液をエレクトロスプレーすることを含む。ニードルを介してキトサン塩溶液をエレクトロスプレーすることにより、キトサンを含有する複数の粒子を生成しうる。たとえば、ニードルを介して架橋剤を含む水性溶液中にキトサン塩溶液をエレクトロスプレーすることにより、キトサンと架橋剤とを含む複数の粒子を生成しうる。粒子の調製に使用されるキトサン塩溶液は、約1,500mPa・s(1,500cPs)~約8,000mPa・s(8,000cPs)、たとえば、約1,500mPa・s(1,500cPs)~約3,000mPa・s(3,000cPs)の範囲内の25℃での粘度を有しうるとともに、追加的又は代替的に、溶液の体積を基準にして約0.5重量%~約10重量%のキトサンを含みうる。エレクトロスプレーすることは、約9kV~約25kV又は約10kV~約30kVの電圧をニードルに印加することを含みうる。ニードルは、たとえば、21ゲージニードル、22ゲージニードル、又は23ゲージニードルでありうる。本方法は、トリポリリン酸ナトリウムなどの架橋剤を含む水性溶液中にキトサン塩溶液をエレクトロスプレーすることと、複数の粒子を凍結乾燥することであって、凍結乾燥することが、30分間~48時間、たとえば、2時間~12時間又は4時間~6時間の範囲内の時間帯で実施されうることと、エレクトロスプレーした後及び/又は凍結乾燥する前に液体で複数の粒子を濯ぐこととを含みうる。いくつかの例では、液体は、水、アルコール、又はそれらの混合物を含みうる。
【0008】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は、各種の例示的実施形態を示すとともに、詳細な説明と合わせて本発明の実施形態の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のいくつかの態様に係るエレクトロスプレーシステムを示す例示的模式図。
図2】実施例2で説明する、異なる乾燥処理を受けたキトサン粒子を示す画像。
図3】実施例2で説明する、異なる乾燥処理を受けたキトサン粒子を示す画像。
図4】実施例2で説明する、異なる乾燥処理を受けたキトサン粒子を示す画像。
図5】実施例3で説明する、本発明のいくつかの態様に係るキトサン粒子を示す画像。
図6】実施例3で説明察する、本発明のいくつかの態様に係るキトサン粒子を示す画像。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特定態様について、より詳細に以下に説明する。参照により組み込まれる用語及び/又は定義と矛盾する場合、本明細書に提供される用語及び定義が優先する。
本明細書で用いられる場合、「comprises(~を含む)」、「comprising(~を含む)」という用語、又はそれらのいずれの他の変化形も、非排他的組込みを対象とすることが意図されているため、要素のリストを含む処理、方法、組成物、物品、又は装置は、そうした要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない又はかかる処理、方法、組成物、物品、若しくは装置に固有の他の要素を含みうる。「例示的」という用語は、「理想」ではなく「例」という意味で用いられる。
【0011】
本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上とくに規定されない限り、複数形の参照を含む。「おおよそ」及び「約」という用語は、参照された数又は値とほぼ同一であることを意味する。本明細書で用いられる場合、「おおよそ」及び「約」という用語は、特定の量又は値±5%を包含することが理解されるべきである。
【0012】
本発明の実施形態は、止血剤又はその組成物を調製する材料及び関連方法を含む。本明細書の止血剤は、生体適合性材料及び/又は生物学的材料に由来する1種以上の生体材料を含めて、1種以上の化合物を含みうる。
【0013】
本明細書の止血剤は、制御されたサイズ及び/又は形状を有する粒子などの粒子を含みうる。粒子は、所望の特性を有する粒子が得られるように選択されたパラメータを用いてカスタマイズ(修正)されたエレクトロスプレーイング処理により調製されうる。エレクトロスプレーイングとは、一般に、静電帯電を介して微細液状エアロゾルから液滴を発生させる技術を意味する。本発明にかかる修正エレクトロスプレーイング処理では、電界によりニードルから液体(たとえば、キトサン塩溶液)に力を加えることにより、液体の流れを分断して個別液滴を形成する。そのため、たとえば、本発明の態様は、従来のエレクトロスプレーイング処理のようなエアロゾルを発生しない。エレクトロスプレーイングにより粒子が形成された時点で、それを即時使用又は将来の使用のために乾燥させてもよい。エレクトロスプレーイングに使用されるパラメータ及び/又は乾燥方法は、他の方法により調製された粒子と比較して制御されたサイズ及び/又は形状を有する粒子を形成しうる。たとえば、本明細書の止血剤は、相対的に狭いサイズ分布を有してほぼ球状の粒子を含みうる。
【0014】
本明細書の組成物は、組織の出血を低減、停止、及び/又は防止する止血剤として作用する能力を有する天然ポリマーなどの天然材料を含みうる。いくつかの微粒子状材料は、良好な機械的バリアであるとともに凝集剤として作用しうるが、それらの粒子のサイズ及び形状は、かかる化合物及びその組成物の送達に悪影響を及ぼすおそれがある。たとえば、相対的に大きな粒子サイズ及び/又は断片化した粒子形状を有する化合物は、医療装置を目詰まりさせて標的部位への止血剤の送達を困難にするおそれがある。
【0015】
理論により拘束されるものではないが、エレクトロスプレーイング、及び本発明にかかる修正エレクトロスプレーイング処理の所望のパラメータの選択、及び/又はエレクトロスプレーイング後の粒子のさらなる処理は、効果的止血治療のために、所望の特性、たとえば、粒子サイズ、嵩密度、及び/又は形状を有する粒子を生成して標的部位への送達を促進しうると考えられる。
【0016】
本明細書の組成物は、止血剤の働きをする1種以上の材料を含みうる。止血剤は、天然材料又は天然材料から派生したものであり得る。少なくとも一例では、止血剤は、カチオン性などに荷電されていてもよい。たとえば、止血剤は、1種以上の多糖、たとえば、限定されるものではないが、チオール化キトサン、PEG化キトサン、カテコール修飾キトサン、及びカルボキシメチルキトサンをはじめとするキトサン及び/又はその誘導体、デンプン(たとえば、ジャガイモデンプン若しくは他の植物デンプン)、セルロース、アルギネート、又はそれらの組合せを含みうる。本明細書のいくつかの例では、止血剤は、任意に1種以上の他の止血剤との組合せでキトサン又はその誘導体を含む。
【0017】
キトサンは、甲殻類外骨格の構造成分であるキチンに由来するグルコサミン単位から形成される線状多糖:
【0018】
【化1】
である。キトサンは、典型的には、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性試薬を用いてキチンを脱アセチル化して水溶性材料を生成することにより調製される。キトサンは、抗微生物性及びカチオン性であり、粘膜などの負に荷電された表面及び赤血球などの濃縮血液成分に結合して凝集の促進を可能にする天然生体接着性を有する。本明細書の止血用組成物は、キトサンを含みうる。たとえば、組成物は、架橋剤を含むキトサン(たとえば、架橋キトサンを含有する組成物の粒子)及び/又は生体適合性塩の形態のキトサンを含みうる。キトサンに対する例示的架橋剤としては、たとえば、ナトリウムトリポリリン酸塩(TPP)などのトリポリリン酸塩が挙げられる。理論により拘束されるものではないが、イオン性相互作用によるキトサンとトリポリリン酸塩との架橋では、キトサンの正に荷電されたアミン基(たとえば、プロトン化アミン基)がトリポリリン酸塩の負に荷電されたリン酸基と相互作用して架橋構造を形成すると考えられる。本明細書の組成物の例示的キトサン塩及び/又は本明細書のエレクトロスプレーイング処理で調製され使用されうる組成物の例示的キトサン塩としては、限定されるものではないが、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサングルタミン酸塩、キトサングリコール酸塩、及びキトサンクエン酸塩が挙げられる。
【0019】
本明細書の止血剤の粒子は、カテーテルや内視鏡送達用の他の適切な医療装置などを介して内出血部位への投与を促進するために所望の粒子サイズを有するように調製されうる。以下に説明するように、本明細書の調製方法は、好適な流体媒体(たとえば、水、生理食塩水溶液、他の水性溶液などの液体、又は空気、窒素、酸素などの気体)を介して粒子の制御された流れを促進するために相対的に狭いサイズ分布を有する粒子を提供しうる。
【0020】
サイズパラメータをはじめとする粒子特性は、形態解析により、たとえば、光学顕微鏡法の使用などのイメージングにより、特徴付けられうる。複数の粒子の統計解析は、光学顕微鏡を用いて静的自動イメージングにより実施されうる。たとえば、光学顕微鏡法により静的自動イメージングを利用して各種粒子パラメータを解析するために、マルバーン・モフォロギ4(Malvern Morphologi 4)装置を使用しうる。光学顕微鏡法により決定されうるかかる粒子特性としては、円相当(CE)直径、長さ、幅、外周、面積、最大距離、球相当(SE)体積、及びアスペクト比が挙げられる。平均値及び粒子分布データをはじめとする複数の粒子の特性は、粒子の個々の値から計算されうる(たとえば、平均CE直径、平均最大距離、平均アスペクト比など)。
【0021】
本明細書で用いられる場合及び本発明の目的に対してのみ、「平均粒子直径」及び「平均直径」という用語は、複数の粒子の平均CE直径を意味し、CE直径は、粒子と同一面積を有する円の直径として定義される。本明細書のいくつかの例によれば、止血剤の粒子は、約100μm~約1mm、たとえば、約100μm~約750μm、約150μm~約500μm、約250μm~約900μm、約200μm~約450μm、約250μm~約500μm、約250μm~約450μm、約250μm~約400μm、約300μm~約500μm、約300μm~約450μm、約550μm~約750μm、又は約350μm~約450μmの範囲内の平均粒子直径を有しうる。本明細書のいくつかの例では、平均粒子直径は、約250μm±60μm、約300μm±60μm、約350μm±60μm、又は約450μm±60μmでありうる。さらに、たとえば、本明細書の粒子は、約100μm~約1.2mm、たとえば、約150μm~約1mm、約200μm~約550μm、約275μm~約950μm、約250μm~約500μm、約275μm~約550μm、約300μm~約700μm、約350μm~約550μm、約500μm~約700μm、又は約400μm~約650μmの範囲内の最大距離を有しうる。本発明で用いられる粒子の「最大距離」という用語は、粒子の外周のいずれか2点間のすべての線形距離のセットの中の最大距離を意味する。本発明のいくつかの態様によれば、複数の粒子の最大距離の平均は、約400μm~約800μm、たとえば、約450μm~約700μm、約500μm~約650μmの範囲内でありうる。混同を回避するために、複数の粒子の各個別粒子は、CE直径及び最大距離を有し、複数の粒子の「平均粒子直径」又は「平均直径」とは、粒子のCE直径の平均を意味し、複数の粒子の「最大距離の平均」とは、複数の粒子の複数の最大距離の平均を意味する。
【0022】
少なくとも一例では、複数の粒子は、約400μm~約600μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)を有し、粒子の最大距離の平均は、約500μm~約700μmの範囲内である。少なくとも一例では、複数の粒子は、約450μm~約550μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)を有し、粒子の最大距離の平均は、約500μm~約650μmの範囲内である。
【0023】
50値は、粒子の50%がそれよりも小さなCE直径を有する粒子CE直径である(粒子サイズ分布の粒子直径の中央値に対応する)。同様に、d10値は、粒子の10%がそれよりも小さなCE直径を有する粒子CE直径であり、d30値は、粒子の30%がそれよりも小さなCE直径を有する粒子CE直径であり、d70値は、粒子の70%がそれよりも小さなCE直径を有する粒子CE直径であり、且つd90値は、粒子の90%がそれよりも小さなCE直径を有する粒子CE直径である。本明細書のいくつかの例によれば、複数の粒子は、約450μm~約850μm、たとえば、約500μm~約750μm、若しくは約600μm~約700μmの範囲内のd50値、及び/又は約300μm~約600μm、たとえば、約400μm~約550μm、若しくは約450μm~約500μmの範囲内のd10値、及び/又は約500μm~約1mm、たとえば、約650μm~約950μm、若しくは約800μm~約900μmの範囲内のd90値を有する。
【0024】
粒子サイズの範囲に関する情報は、比d30/d70×100として定義される粒子サイズ分布のスティープネスから得られうる。この比は、粒子サイズ分布のd30及びd70の値から計算されうる。より高いスティープネス値は、平均粒子サイズからの偏差がより少ないことを示唆する。本明細書の粒子は、相対的に狭いサイズ分布の指標となる相対的に高いスティープネス値、たとえば、約30~約90、たとえば、約50~約80、約60~約90、約70~約90、約80~約90、約75~約85、又は約60~約80の範囲内のスティープネス値を有しうる。
【0025】
粒子のアスペクト比(ρ)は、その形状に関する情報を与え、2つの寸法のアスペクト比は、粒子の幅に沿った長さを長さで除算した値として定義され、粒子の長軸及び短軸に基づいて決定されうる。長軸は、形状の最小回転エネルギーに対応する配向で粒子の質量中心を通る軸である。短軸は、長軸に対して直角をなして粒子の質量中心を通る軸である。粒子の長さを決定するために、粒子の外周上のすべて点からの線は、長軸上に投影される(投影される線は、互いに平行をなし、且つ長軸に対して直交する)。これらの線の投影の2つが長軸と交わる点間の最長距離が長さである。同様に、粒子の幅を決定するために、粒子の外周上のすべて点からの線は、短軸上に投影される(投影される線は、互いに平行をなし、且つ短軸に対して直交する)。これらの投影される線の2つが短軸と交わる点間の最長距離が幅である。アスペクト比が1に近づくことは、より一様な丸形粒子であることを示唆し、球の断面はいずれも、1のアスペクト比を有する。粒子のアスペクト比は、イメージング(たとえば、光学顕微鏡法)により、並びに各粒子の短軸、長軸、幅、及び長さを決定する能力のあるソフトウェアにより決定されうる。複数の粒子の平均アスペクト比は、静的自動イメージングなどで粒子のアスペクト比を平均することにより決定されうる。
【0026】
本明細書の粒子は、送達装置内の流体媒体を介する流動を促進する丸形球形状を有しうる。いくつかの例では、粒子は、0.6超、0.7超、又は0.8超、たとえば、約0.6~1.0、約0.7~1.0、又は約0.8~1.0の範囲内の平均アスペクト比を有しうる。たとえば、平均アスペクト比は、約0.7~約0.98、約0.8~約0.95、又は約0.85~約0.95の範囲内でありうる。本発明の目的では、「ほぼ球状」という用語は、球の一般的形状を有する丸形3次元形状を意味する。たとえば、ほぼ球状の粒子の中心点を通る断面寸法はいずれも、粒子の中心点を通るいずれの他の断面寸法と比較しても10%未満で変動する。換言すれば、ほぼ球状の粒子の最長断面寸法は、最短断面寸法と比較して10%未満の変動である。
【0027】
少なくとも一例では、複数の粒子は、約400μm~約600μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)を有し、最大距離の平均は、約500μm~約700μmの範囲内であり、及び/又は平均アスペクト比は、約0.7~約0.9の範囲内である。少なくとも一例では、複数の粒子は、約450μm~約550μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)を有し、最大距離の平均は、約500μm~約650μmの範囲内であり、及び/又は平均アスペクト比は、約0.7~約0.9の範囲内である。これらの例では、粒子は、ほぼ球状でありうる。
【0028】
少なくとも一例では、複数の粒子は、約400μm~約600μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)、及び約0.7~約0.9の範囲内の平均アスペクト比、及び/又は約60~約90の範囲内のスティープネス値を有する。少なくとも一例では、複数の粒子は、約400μm~約600μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)、及び約0.7~約0.9の範囲内の平均アスペクト比、及び/又は約70~約80の範囲内のスティープネス値を有する。少なくとも一例では、複数の粒子は、約450μm~約550μmの範囲内の平均直径(平均CE直径)、及び約0.7~約0.9の範囲内の平均アスペクト比、及び/又は約70~約80の範囲内のスティープネス値を有する。これらの例では、粒子は、ほぼ球状でありうる。
【0029】
本明細書の粒子はまた、標的部位への送達を促進するために好適な嵩密度を有しうる。嵩密度が低いほど、一般に、効果的送達に望ましいものでありうるより綿毛状の粒子となる。しかしながら、嵩密度が低すぎると、送達を妨害する静的状態となりうる。それゆえ、本明細書の粒子は、標的部位への送達を促進するために、低すぎて静的状態を引き起こすことがないように相対的に低い嵩密度を有しうる。いくつかの例では、粒子の嵩密度は、0.7g/L未満、たとえば、約0.05g/mL~約0.7g/L、約0.08g/mL~約0.126g/mL、約0.1g/mL~約0.7g/L、約0.2g/mL~約0.7g/mL、約0.05g/mL~約0.6g/mL、約0.2g/mL~約0.5g/mL、約0.05g/mL~約0.5g/mL、約0.3g/mL~約0.6g/mL、約0.3g/mL~約0.5g/mL、約0.05g/mL~約0.4g/mL、約0.05g/mL~約0.3g/mL、約0.05g/mL~約0.2g/mL、約0.1g/mL~約0.2g/mL、又は約0.2g/mL~約0.3g/mLの範囲内でありうる。嵩密度は、粒子で既知の体積を満たすとともにその粉末を秤量して(材料を圧縮することなく)g/mL単位で嵩密度を計算することにより測定されうる。
【0030】
図1を参照して本明細書の粒子の例示的な調製方法を以下に説明する。本明細書の粒子の調製方法は、溶液を調製すること、溶液をエレクトロスプレーして粒子を生成すること、得られた粒子を洗浄すること、及び/又は粒子を乾燥することを含みうる。これらの工程の1つ以上は、省略されうると理解される。たとえば、本方法は、溶液を調製すること、溶液をエレクトロスプレーして粒子を生成すること、得られた粒子を乾燥すること(たとえば、任意に粒子を洗浄すること)、又は溶液をエレクトロスプレーして粒子を生成すること、及び、得られた粒子を洗浄及び/又は乾燥することを含みうる。
【0031】
溶液を調製することは、止血剤、たとえば、キトサンと、好適な酸、たとえば、1種以上の有機酸、たとえば、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタミン酸、グリコール酸、クエン酸、又はそれらの組合せと、を組み合わせることを含みうる。少なくとも一例では、溶液を調製することは、キトサンと、クエン酸及び/又は酢酸と、を組み合わせる工程を含む。いくつかの例では、溶液は、溶液の合計重量又は合計体積を基準にして10重量%までのキトサン、たとえば、溶液の合計重量又は合計体積を基準にして約0.5重量%~約10.0重量%のキトサン又は約0.5重量%~約3.0重量%のキトサンを含みうる。たとえば、溶液は、溶液の合計重量又は合計体積を基準にして約0.5%~約7.5%、約1.0%~約6.0%、約2.5%~約5.5%、約3.0%~約6.5%、約5.5%~約9.5%、約4.5%~約7.0%、約0.5%~約2.5%、約1.0%~約2.0%、約1.0%~約3.0%、約2.0%~約3.0%、又は約2.5重量%~約4.5重量%のキトサンを含みうる。いくつかの例では、溶液は、キトサンの合計重量を基準にして約5重量%まで、たとえば、約0.5重量%~約5.0重量%、又は約1.0重量%~約2.5重量%の有機酸を含みうる。たとえば、溶液は、キトサンの合計重量を基準にして約0.5%~約7.0%、約1.0%~約5.0%、約0.5%~約3.0%、又は約1.0重量%~約2.0重量%の有機酸(たとえば、クエン酸及び/又は酢酸)を含みうる。有機酸は、水性溶液、たとえば、クエン酸溶液、酢酸溶液などとして存在しうる。少なくとも一例では、キトサンは、クエン酸と酢酸と水とを含む溶液(たとえば、水性酢酸溶液に添加されたクエン酸)と組み合わされる。キトサン/有機酸溶液(又は本開示に係る他のキトサン塩溶液)は、10,000cPs未満、たとえば、8,000cPs未満、5,000cPs未満、3,500cPs未満、3,200cPs未満、3,000cPs未満、2,800cPs未満、2,500cPs未満、2,200cPs未満、2,000cPs未満、1,800cPs未満の、又は1,500cPs未満の25℃での粘度、たとえば、約1,000cPs~約10,000cPs、約1,500cPs~約8,000cPs、約1,500cPs~約7,500cPs、約2,000cPs~約5,000cPs、約3,000cPs~約7,000cPs、約1,000cPs~約4,000cPs、約2,500cPs~約5,500cPs、約1,000cPs~約3,200cPs、約1,200cPs~約1,500cPs、約1,200cPs~約2,000cPs、約1,400cPs~約1,800cPs、約1,500cPs~約3,000cPs、約1,500cPs~約2,500cPs、又は約2,000cPs~約2,500cPsの範囲内の25℃での粘度を有しうる。粘度は、粘度計で測定されうる。たとえば、25℃での粘度は、25℃の循環水温度、50RPM(回転/分)のスピードを利用して、8分間の合計試験時間で12mLサンプルを試験して、粘度計で測定されうるとともに、粘度は、合計試験時間の最後の3分間で測定された粘度の平均として報告される。粘度を測定する例示的装置は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計DV2T Extraである。より高い粘度は、粒子を調製するための時間を増加させると予想されうる。少なくともいくつかの場合には、粘度に依存して、粘度が高いほど、エレクトロスプレーイング時に一貫性のある一様な流れを達成することがより困難になりうる。さらに、いくつかの場合には、粘度は、経時的に減少して、たとえば、エレクトロスプレーイングを促進しうる。
【0032】
次いで、キトサン/有機酸溶液(又は本開示に係る他のキトサン塩溶液)は、エレクトロスプレーイングシステムを通過させられうる。図1は、例示的エレクトロスプレーイングシステムを例示する。ここでは、溶液を含有するシリンジ130は、ポンプ120(たとえば、任意に自動注入システムの一部)に接続される。ポンプ120は、たとえば、機械式ポンプ又は蠕動ポンプでありうる。ポンプ120を作動させると、溶液は、たとえば、接続供給チューブを介してシリンジ130からエレクトロスプレーイング装置に送られ、その結果、溶液は、装置のニードル140を介して吐出され、ニードル140は、ノズルとして機能する。図1は、1つのシリンジ130及び1つのエレクトロスプレーニードル140を例示するが、システムは、液滴の量及び生成される粒子の体積を増加させるために、2つ以上のシリンジ及び/又は2つ以上のエレクトロスプレーニードルを含みうる(たとえば、各シリンジは、対応するニードルに連結され、2つ以上のシリンジは、1個のニードルに連結され、1つのシリンジは、平行に又は直列に2つ以上のニードルに連結されるなど)。液滴の量はまた、シリンジを圧力ポットに置き換えることにより、加圧システムを用いて溶液をエレクトロスプレーイング装置にポンプ移送することにより増加させうる(たとえば、機械式ポンプ又は蠕動ポンプを用いて)。
【0033】
ニードル140は帯電されるため、ニードル140から吐出されるとき、溶液は、捕集ユニット150に向かって電界の中を通過する。電界は、電源110からの印加電圧及び捕集ユニット150からニードル140までの距離で生成される。電極190aは、電源110をニードル140に接続し、電極190bは、電源110を捕集ユニット150に接続する。溶液もまた、たとえば、溶液中の止血剤の正電荷に起因して正電荷を有するように帯電されうる。ノズルとして機能するニードル140を介して溶液が流れるとき、溶液は、個々の帯電液滴に分散する。本明細書のいくつかの例によれば、電圧量により、不安定な液滴が形成されうる。たとえば、帯電した液滴は、いくらかテイラーコーンに類似して略円錐形状領域160を呈しうるが、従来のエレクトロスプレーイング処理において特徴付けられる安定テイラーコーンを形成しない。そのため、たとえば、電界は、捕集ユニット150に向かって不安定な液滴をガイドしうるとともに、ニードル140上の液体の表面張力を破りうる。領域160の先端では、液滴(たとえば、不安定液滴)は、微細ジェットスプレーを形成する。このジェットスプレーも同様に不安定になり、プルーム170として表される微細液滴のミストに分断される。液滴は、互いに反撥し、捕集ユニット150により提供された接地媒体に向かって移動する。こうして生成された粒子は、捕集ユニット150により受け取られる。
【0034】
上記のように、本明細書の修正エレクトロスプレーイング処理のパラメータは、所望のサイズ及び形状の粒子を生成するように選択されうる。粒子サイズ分布を変化させるために、たとえば、印加電圧を増加させて、ニードル140の先端内を通過する溶液の流れ(溶液の液滴速度)を加速しうる。これは、液滴の安定性に影響を及ぼし(たとえば、安定テイラーコーンを欠くため)、結果として、液滴のサイズを変化させる。表面張力がもはや所定の位置に滴を保持できないとき、ニードル140の先端で溶液の滴が生成されて落下しうる。液滴がニードル140を離れて捕集ユニット150に捕集された粒子を形成する際に、電界は、少なくとも部分的に液滴のサイズを決定する。本発明に係る例示的電圧は、約10kV~約30kV、又は約9kV~約25kVの範囲内でありうる。電圧は、止血剤に損傷を引き起こすと予想される閾値未満になるように選択されうる。たとえば、キトサンの場合、多糖構造は、約50℃超の温度で壊れることが予想される。それゆえ、溶液中のキトサンの損傷を回避するために、25kV未満の電圧が使用されうる。
【0035】
本明細書のエレクトロスプレーイングシステムの別の態様は、所望の特性、たとえば、サイズ及び/又は形状を有する粒子を生成するように選択されうる。たとえば、エレクトロスプレーイングニードルのサイズ、ニードルの先端(すなわち、ノズル)から接地媒体(捕集ユニット)までの距離などである。いくつかの例では、ニードルは、16~23又は16~22の範囲内のゲージサイズ、たとえば、16、18、20、21、22、又は23のニードルゲージを有しうる。異なるゲージサイズは、液滴サイズを変化させうる。たとえば、より大きなゲージサイズは、より大きな液滴、ひいてはより大きな粒子を生成しうるとともに、より小さなゲージサイズは、より小さな液滴、ひいてはより小さな粒子を生成しうる。さらに、たとえば、エレクトロスプレーイングニードル先端から捕集ユニットまでの距離は、約5cm~約15cmの範囲内でありうる。
【0036】
本発明のいくつかの態様によれば、約10kV~約30kVの範囲内の電圧及び23mmのニードルゲージ、又は約15kV~約23kVの範囲内の電圧及び22mmのニードルゲージは、約200μm~約800μmの範囲内の平均直径を有する粒子を生成するために使用されうる。
【0037】
接地媒体は、粒子を受け取るのに適切な液体を含みうる。たとえば、キトサンなどの水溶性天然ポリマーの場合、水性溶液が使用されうる。アルコールなどの揮発性溶媒は、水溶性ポリマーが媒体全体に分布した状態を維持する可能性が低く、凝集して一体化するおそれがあるため、それほど適切ではない。いくつかの例では、捕集ユニット150は、イオン性クロスリンカー(架橋剤)、たとえば、可逆イオン性クロスリンカー(架橋剤)を含む水性溶液を含みうる。本明細書の方法に好適な例示的クロスリンカー(本明細書では架橋剤ともいう)としては、限定されるものではないが、トリポリリン酸ナトリウムなどのトリポリリン酸塩(TPP)、エタノール、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。いくつかの例では、クロスリンカー(架橋剤)、たとえば、TPPは、溶液の合計重量又は合計体積を基準にして約1重量%~約15重量%、たとえば、約3重量%~約15重量%、たとえば、約5重量%~約10重量%、又は約5重量%~約7重量%の範囲内の量で溶液中に存在しうる。理論により拘束されるものではないが、クロスリンカー(架橋剤)は、それが捕集ユニット150の水性溶液に入る際に、粒子液滴の周囲に球状複合体を生成すると考えられる。たとえば、複合体は、たとえば、TPP複合体は、粒子が凝集したり又は他の形で固着一体化したりするのを防止する助けとなりうる。さらに、クロスリンカー(架橋剤)は、上記キトサンの官能基(たとえば、アミン基)と架橋しうる。そのため、たとえば、クロスリンカー(架橋剤)としてのTPPは、キトサンのアミン基(たとえば、プロトン化アミン基)と架橋してキトサン-TPP架橋粒子を生成しうる。それゆえ、クロスリンカー(架橋剤)は、粒子が多孔性構造、その丸形形状、及び相対的に一様なサイズを維持するように、凝集を回避しつつ粒子形成を支援しうる。
【0038】
エレクトロスプレーイングが完了し、又は粒子の所望の量が捕集ユニット150に捕集されたら、粒子は、任意の適切な技術、たとえば、濾過、漏斗などを介して溶液から分離されうる。粒子は、任意に、残留クロスリンカー(架橋剤)溶液及び粒子周囲の過剰クロスリンカー(架橋剤)複合体を除去するために、濯ぎ又は洗浄されうる。たとえば、粒子は、水(たとえば、脱イオン水)、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール、又はそれらの混合物で濯ぎ又は洗浄されうる。粒子は、1回又は残留クロスリンカー(架橋剤)を除去するのに十分ないずれかの回数で濯ぎ/洗浄されうる。いくつかの例では、粒子は、濯ぎも洗浄もされない。本開示のいくつかの態様によれば、濯ぎ/洗浄された粒子は、粒子を互いに分離するために、シーブ上に配置され、1つの薄層に展延されうる。粒子は、任意に、水(たとえば、脱イオン水)、アルコール(たとえば、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくは他のアルコール)、又はそれらの混合物でさらに濯ぎ/洗浄されうる。
【0039】
本明細書の方法は、たとえば、所望のサイズ及び粒子の形状をさらに維持するために、粒子を乾燥することを含む。本明細書の修正エレクトロスプレーイング処理に使用される水性溶液及び接地媒体は、アルコールなどのいくつかの他の液体ほど揮発性でないため、濯ぎ/洗浄が行われた粒子は、残留水を含みうる。この湿分は、粒子を凝集させて、医学的手順で標的部位に送達するのがより困難なより大きな不規則形状粒子の形成を引き起こすおそれがある。
【0040】
それゆえ、粒子は、少なくとも1回の乾燥処理を受けうる。各種の乾燥処理は、粒子の形状、サイズ、及び/又は多孔度に影響を及ぼしうる。本明細書の方法では、乾燥処理は、凍結、減圧(たとえば、真空圧力)への暴露、温和な加熱、又はそれらの組合せを含みうる。本発明に対するいくつかの態様によれば、粒子は凍結乾燥される。たとえば、粒子は、凍結するまで冷却され、その後固形氷晶を昇華させるために真空チャンバー内に配置される。昇華は、粒子が液状水を含んでいるときに観察される実質的凝集体を回避しうる。以下の実施例2を参照されたい。上記のように、粒子上に存在する過剰の水は、相対的に大きな凝集した不規則な形状を有する粒子をもたらしうる。粒子中に存在する水の昇華は、粒子の凝集やいびつな形状の粒子の形成を低減しうる。
【0041】
いくつかの例では、粒子は、約-5℃~約-30℃、たとえば、約-10℃~約-20℃の範囲内の温度まで又はその温度で凍結されうるとともに、温度は、数分間から数時間にわたり室温(約22℃)から目標温度まで徐々に低下させうる。本明細書のいくつかの例によれば、粒子は、動的凍結乾燥システムを用いて、たとえば、回転ドラム装置を用いて乾燥しうる。たとえば、粒子は、凍結されて、内側ドラムを回転させつつ、凍結温度(たとえば、約-55℃)に維持されうる。外側ドラムもまた、高温(-20℃)で循環させて、乾燥機を中心に回転しながら粒子の一様乾燥を促進しうる。動的凍結乾燥システムは、減圧で操作しうる。
【0042】
凍結時点で及び/又は凍結処理の一部として、昇華のために真空チャンバー内に粒子を配置しうる。たとえば、真空チャンバーは、150Pa(1.13mmHg)未満の圧力、たとえば、約5Pa~約150Pa(0.038~1.13mmHg)、又は約50Pa~約150Pa(0.38~1.13mmHg)の範囲内の圧力、たとえば、約5Pa、約10Pa、約50Pa、約75Pa、又は約100Paの圧力に維持されうる。本発明のいくつかの態様によれば、真空チャンバー内の圧力は、数分間から数時間の期間にわたり、たとえば、約10分間~約4時間、約30分間~約3時間、約1時間~約2時間の範囲内の期間にわたり、大気圧から低減されうる。真空チャンバー内の持続時間は、2、3時間~2、3日間の範囲内でありうる。たとえば、粒子は、約30分間~約4日間、たとえば、1時間~約48時間、約1時間~約24時間、約1.5時間~約12時間、約1時間~約4時間、約2時間~約10時間、約4時間~約8時間、約6時間~約12時間、約12時間~約18時間、約12時間~約24時間、又は約24時間~約48時間の範囲内の持続時間で真空チャンバー内に配置されうる。任意に、真空チャンバーは、穏やかに加熱されうる。
【0043】
本発明に従って生成される粒子は、多孔性でありうる。たとえば、粒子は、80%超、たとえば、約85%~約95%、又は約87%~約97%の範囲内の多孔度を有しうる。多孔度は、約413.6MPa(60,000psia)の圧力で水銀圧入ポロシメトリーにより測定されうる。本明細書の粒子の多孔度の測定に好適な例示的な水銀圧入ポロシメータは、細孔直径3nm~1100μmを測定可能なマイクロメリティックス(Micromeritics)(登録商標)製オートポア(AutoPore)Vである。所望の多孔度値を達成するために、キトサン塩溶液中のキトサン濃度、捕集浴中のTPP濃度、及びフリージング時間の量をはじめとする製造処理のさまざまな因子を調整しうる。たとえば、キトサン及びTPPの濃度が低くなると、架橋密度が低くなり、粒子がより多孔性になると予想される。さらに、たとえば、凍結時間を長くすると、乾燥処理時に凝集や細孔構造の潰れを生じることなく粒子構造の保持が促進されると予想される。得られる粒子中においてさまざまな細孔構造を形成するために、さまざまな温度ランピング技術を実現可能である。
【0044】
上記の修正エレクトロスプレーイング及び乾燥処理は、所望のサイズのほぼ球状の粒子を調製するために使用されうるが、粒子は、任意に1つ以上のさらなる処理工程を受けうる。いくつかの例では、乾燥粒子は、粒子サイズをさらに低減するためにミル処理又は粉砕されうる。粒子は、いずれかの適切な方法又は装置、たとえば、乳棒又はグラインダーによりミル処理又は粉砕されうる。
【0045】
(実施例)
下記の実施例は、本発明を例示することを意図したものであるが、本質的に限定するものではない。本発明は、上記説明及び下記実施例に一致するそのほかの態様及び実施形態を包含するものと理解される。
【0046】
実施例1
キトサン酢酸塩は、1%酢酸/水溶液(溶液の体積を基準にした重量で)中で固形分2%のキトサン(溶液の体積を基準にした重量で)、1%のクエン酸(キトサンの重量を基準にした重量で)を用いて混合した。混合したキトサンは、次いで、本明細書に記載の修正エレクトロスプレーイング処理で、22ゲージニードル内、および20~25kVの印加電圧により生成された電界内を通過させた。粒子は、水と7%トリポリリン酸ナトリウム(TPP)とで構成された捕集浴中に落下させた。キトサンの選択された体積がエレクトロスプレーされたら、粒子を捕集浴から静かに移して、過剰の溶液(塩及び未架橋TPP)を除去するために脱イオン水を用いて複数回洗浄した。清浄化された粒子を単層のシーブ上に配置して、噴射ボトルを介して脱イオン水を用いて再び清浄化し、次いでイソプロピルアルコールを用いて清浄化した。アルコールで粒子の水を置き換え、塩結晶を除去した。次いで、シーブをフリーザ内に配置した(たとえば、-80℃~-20℃の範囲内の温度で)。凍結されたら、粒子を真空チャンバ内に配置し、低速度で水を昇華除去した。得られたキトサン-TPP架橋粒子は、300~500μmの平均直径を有するとともに、ほぼ0.3~0.7g/mLの嵩密度及び0.6超の平均アスペクト比を有していた。
【0047】
実施例2
実施例1の修正エレクトロスプレーイング法に従って調製したキトサン粒子の3つの異なるバッチを異なる方法に従って乾燥させ、粒子サイズ及び形状に及ぼす影響を調べた。
【0048】
キトサン粒子の第1の群を開放空気中で空気乾燥させた。粒子は、約100μm~約900μmの範囲内のCE直径を有していた。図2に示すように、乾燥粒子は、楕円形破片として現れた。図2のサイズバーは500μmである。
【0049】
キトサン粒子の第2の群を真空チャンバー内に約96時間配置して乾燥させた。粒子は、約200μm~約400μmの範囲内の平均直径及び約0.7g/mLの嵩密度を有していた。図3に示すように、粒子は、より球状であったが、いくらか凝集していた。図3のサイズバーは500μmである。
【0050】
キトサン粒子の第3の群を約-20℃の温度で凍結し、次いで真空チャンバー内に配置し、そして2~5時間にわたって0.7mmHgの圧力まで排気した。次いで、温度を35℃で2時間維持し、昇華を介して粒子を乾燥させた。粒子は、約200μm~約425μmの範囲内の平均直径及び約0.2g/mL~約0.3g/mLの嵩密度を有していた。図4に示すように、粒子は、図3に示す粒子と比較してより球状をなすとともに分離されていた。図4のサイズバーは1000μmである。
【0051】
実施例3
実施例1の修正エレクトロスプレーイング法に従ってキトサン粒子を調製した。この実施例では、内側ドラムを回転させつつ約-55℃の凍結温度で粒子を凍結して維持する動的凍結乾燥システムを用いて粒子を乾燥した。外側ドラムも、約-20℃の高温で循環して、乾燥機を中心に粒子を回転させながら粒子を一様に乾燥した。得られた材料は、高多孔性で、粒子の形態及び密度がより一様且つより均一な集団であった。粒子を、図5(光学顕微鏡法)及び図6(走査電子顕微鏡法)に示す。図5のサイズバーは1000μmであり、図6のサイズバーは200μmである。
【0052】
本発明の態様は、下記番号付きの例示的な実施形態を含む。
1.架橋剤を含むキトサン、及びキトサン塩のうちの少なくともいずれか一方などのキトサンの複数の粒子を含む組成物であって、複数の粒子が、約150μm~約500μm、たとえば、約300μm~約450μmの範囲内の平均直径を有し、任意に、複数の粒子が、約30~約90、たとえば、約50~約80、又は約60~約80の範囲内のスティープネス値を有するとともに、0.6超、0.7超、又は0.8超の平均アスペクト比を有し、複数の粒子が、ほぼ球状の形状である、組成物。
【0053】
2.複数の粒子の嵩密度が、約0.2g/mL~約0.7g/mL、たとえば、約0.3g/mL~約0.5g/mLの範囲内である、実施形態1に記載の組成物。
3.キトサン塩が、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサングルタミン酸塩、キトサングリコール酸塩、又はキトサンクエン酸塩である、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0054】
4.組成物が液体をさらに含む、実施形態1~3のいずれか一つに記載の組成物。
5.実施形態1~4のいずれか一つに記載の組成物を調製する方法であって、ニードルを介してキトサン塩溶液をエレクトロスプレーすることを含む、方法。
【0055】
6.キトサン塩溶液が約1,500cPs~約3,000cPsの範囲内の粘度を有する、実施形態5に記載の方法。
7.キトサン塩溶液が約0.5重量%~約10重量%のキトサンを含む、実施形態5又は6に記載の方法。
【0056】
8.エレクトロスプレーすることがニードルに約9kV~約25kVの電圧を印加することを含む、実施形態5~7のいずれか一つに記載の方法。
9.ニードルが21ゲージニードル又は22ゲージニードルである、実施形態5~8のいずれか一つに記載の方法。
【0057】
10.キトサン塩溶液が、トリポリリン酸ナトリウムなどの架橋剤を含む水性溶液中にエレクトロスプレーされる、実施形態5~9のいずれか一つに記載の方法。
11.方法が、複数の粒子を凍結乾燥することをさらに含む、実施形態5~10のいずれか一つに記載の方法。
【0058】
12.凍結乾燥することが、30分間~48時間、たとえば、2時間~12時間、又は4時間~6時間にわたり実施される、実施形態11に記載の方法。
13.方法が、エレクトロスプレーした後及び/又は凍結乾燥する前に液体で複数の粒子を濯ぐことをさらに含む、実施形態5~12のいずれか一つに記載の方法。
【0059】
14.液体が、水、アルコール、又はそれらの混合物を含む、実施形態13に記載の方法。
15.止血剤として、実施形態1~4のいずれか一つに記載の組成物を使用する方法。
【0060】
16.組成物を調製する方法であって、方法が、ニードルを介してキトサン塩溶液をエレクトロスプレーして、架橋剤を含むキトサン及び/又はキトサン塩などのキトサンの複数の粒子を生成することと、複数の粒子を凍結乾燥することとを含み、複数の粒子が、約150μm~約500μmの範囲内の平均直径及び0.6超の平均アスペクト比を有し、複数の粒子が、実質的に球状の形状である、方法。
【0061】
17.キトサン塩が、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサングルタミン酸塩、キトサングリコール酸塩、又はキトサンクエン酸塩を含む、実施形態16に記載の方法。
【0062】
18.複数の粒子の平均直径が、約300μm~約450μmの範囲内である、実施形態16に記載の方法。
19.複数の粒子の平均アスペクト比が0.8超である、実施形態16に記載の方法。
【0063】
20.複数の粒子が、約50~約80の範囲内のスティープネス値を有する、実施形態16に記載の方法。
21.キトサン塩溶液が、架橋剤を含む水性溶液中にエレクトロスプレーされる、実施形態16に記載の方法。
【0064】
22.架橋剤がトリポリリン酸ナトリウムを含む、実施形態21に記載の方法。
23.組成物を調製する方法であって、方法が、ニードルを介してキトサン塩溶液をエレクトロスプレーして、架橋剤を含むキトサン及び/又はキトサン塩などのキトサンの複数の粒子を生成することと、複数の粒子を凍結乾燥することと、を含み、複数の粒子が、約300μm~約500μmの範囲内の平均直径、0.6超の平均アスペクト比(複数の粒子は実質的に球状の形状である)、及び約0.2g/mL~約0.7g/mLの範囲内の嵩密度を有する、方法。
【0065】
24.キトサン塩溶液が、約0.5重量%~約10重量%のキトサンを含む、実施形態23に記載の方法。
25.キトサン塩溶液が、約1,500cPs~約3,000cPsの範囲内の粘度を有する、実施形態23に記載の方法。
【0066】
26.エレクトロスプレーすることが、ニードルに約9kV~約25kVの電圧を印加することを含む、実施形態23に記載の方法。
27.ニードルが、21ゲージニードル又は22ゲージニードルである、実施形態23に記載の方法。
【0067】
28.凍結乾燥することが、30分間~48時間の範囲内の時間帯で実施される、実施形態23に記載の方法。
29.方法が、エレクトロスプレーした後及び凍結乾燥する前に液体で複数の粒子を濯ぐことをさらに含む、実施形態23に記載の方法。
【0068】
30.液体が、水、アルコール、又はそれらの混合物を含む、実施形態29に記載の方法。
31.架橋剤を含むキトサン及び/又はキトサン塩などのキトサンの複数の粒子を含む組成物であって、複数の粒子が、約250μm~約500μmの範囲内の平均直径、0.6超の平均アスペクト比(複数の粒子は形状が実質的に球状である)、及び約0.2g/mL~約0.7g/mLの範囲内の平均嵩密度を有する、組成物。
【0069】
32.キトサン塩が、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサングルタミン酸塩、キトサングリコール酸塩、又はキトサンクエン酸塩を含む、実施形態31に記載の組成物。
【0070】
33.組成物が粉末の形態である、実施形態31に記載の組成物。
34.複数の粒子が、約50~約80の範囲内のスティープネス値を有する、実施形態31に記載の組成物。
【0071】
35.嵩密度が、約0.3m/mL~約0.5g/mLの範囲内である、実施形態31に記載の組成物。
本発明の他の態様は、本明細書及び本明細書に開示される実施例の実践を考慮して、当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、単に例示的なものとみなされ、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲により示されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】