(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】サイトカイン放出症候群を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20230524BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562427
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 CA2021050483
(87)【国際公開番号】W WO2021207828
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ,マーク・アール
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,ジャクリーン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シン
(72)【発明者】
【氏名】ダンカン,ゴードン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB29
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB11
(57)【要約】
疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を有するまたは疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象を治療する方法が本明細書で開示される。方法は、対象に有効量の構造式(I):
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。構造式(I)中の可変因子は本明細書に記載の通りである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を有するか、又は疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象を治療する方法であって、対象に有効量の以下の構造式:
【化1】
(式中、
X
1、X
2、およびX
3の1つはSであり、他の2つはそれぞれ独立してCRであり、
RはH、-F、-Cl、-Br、-OH、-(C
1~C
4)アルキル、-(C
1~C
4)ハロアルキル、-(C
1~C
4)アルコキシ、-(C
1~C
4)アルキレン-OHまたは-F、-Cl、-Br、-OH、-(C
1~C
4)アルキル、-(C
1~C
4)ハロアルキル、-(C
1~C
4)アルコキシ、もしくは-CO
2-(C
1~C
4)アルキルから選択される1~3つの基で任意選択で置換されている4~7員単環式ヘテロシクリルであり、
R
1は-NR
aR
bまたは-OR
a1であり、
R
aは各出現につき独立して、-H、-(C
1~C
6)アルキル、-(CH
2)
n-(C
3~C
7)シクロアルキル、-(CH
2)
n-3~7員単環式ヘテロシクリル、-(CH
2)
n-架橋(C
6~C
12)シクロアルキル、任意選択で置換されている-(CH
2)
n-5~10員ヘテロアリール、もしくは-(CH
2)
n-6~12員架橋ヘテロシクリルであり、-(C
1~C
6)アルキル、-(CH
2)
n-(C
3~C
7)シクロアルキル、-(CH
2)
n-3~7員単環式ヘテロシクリル、-(CH
2)
n-架橋(C
6~C
12)シクロアルキル、-(CH
2)
n-5~10員ヘテロアリール、もしくは-(CH
2)
n-6~12員架橋ヘテロシクリルは、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH
2、-OH、オキソ、-(C
1~C
4)アルキル、-(C
1~C
4)ハロアルキル、-(C
1~C
4)アルコキシ、-(C
1~C
4)ハロアルコキシ、-(C
1~C
4)アルキレン-OH、もしくは-(C
1~C
4)アルキレン-NH
2から選択される1~3つの基で任意選択で置換されており、
R
bは各出現につき独立して、-Hもしくは-(C
1~C
6)アルキルであるか、または
R
aおよびR
bは、それらが結合している窒素と一緒になって-(C
3~C
10)ヘテロシクリルを形成し、
R
a1は各出現につき独立して、-H、(C
1~C
6)アルキル、(C
3~C
10)シクロアルキル、3~10員ヘテロシクリル、(C
6~C
10)アリール、または3~10員ヘテロアリールであり、
R
2およびR
3は独立して、Hまたは-(C
1~C
4)アルキルであり、
R
4およびR
5は、それらが結合している窒素と一緒になって4~7員単環式ヘテロシクリルまたは6~12員架橋ヘテロシクリルを形成し、4~7員単環式ヘテロシクリルまたは6~12員架橋ヘテロシクリルは、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH
2、-OH、オキソ、-(C
1~C
4)アルキル、-(C
1~C
4)ハロアルキル、-(C
1~C
4)アルコキシ、-(C
1~C
4)ハロアルコキシ、-(C
1~C
4)アルキレン-OH、または-(C
1~C
4)アルキレン-NH
2から選択される1~3つの基で任意選択で置換されており、
R
6は各出現につき独立して、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH
2、-OH、-(C
1~C
6)アルキル、-(C
1~C
6)ハロアルキル、-(C
2~C
6)アルケニル、-(C
2~C
6)アルキニル、(C
3~C
6)シクロアルキル、-(C
1~C
6)アルコキシ、-(C
1~C
6)ハロアルコキシ、-(C
1~C
6)アルキレン-OH、または-(C
1~C
6)アルキレン-NH
2であり、
mは0、1、2、または3であり、
nは0、1、または2である)
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項2】
対象が疾患又は状態に由来する異常なサイトカイン放出を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象が疾患又は状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
異常なサイトカイン放出がサイトカイン放出症候群またはサイトカインストーム症候群である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象が、活性化T細胞、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞、活性化樹状細胞、活性化マクロファージ、活性化B細胞、又は抗腫瘍細胞療法に由来する異常なサイトカイン放出を有する又は異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対象が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、操作されたT細胞受容体(TCR)療法、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法およびNK細胞などの他の免疫細胞を組み込む療法を使用する養子免疫細胞療法に由来する異常なサイトカイン放出を有する又は異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対象が、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法に由来する異常なサイトカイン放出を有する又は異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
CAR T細胞療法がチサゲンレクロイセル又はアキシカブタジンシロルーセルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対象が、抗体による療法に由来する異常なサイトカイン放出を有する又は異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抗体が、モノクローナル抗体、抗体断片、Fc融合タンパク質又は二重特異性抗体(例えば、二重特異性T細胞エンゲージャーまたはBiTE)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
抗体が、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗CD28抗体、抗CD52抗体及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG)から選択されるモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
抗体が、ニボルマブ、ムロモナブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セラリズマブ、アレムツズマブ、オビヌツズマブ、ダセツズマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ及びイピリムマブから選択されるモノクローナル抗体である、又は抗体がブリナツモマブ(Blincyto)から選択される二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
対象が、オキサリプラチン及びレナリドミドなどの非タンパク質ベースがん薬による療法に由来する異常なサイトカイン放出を有する又は異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
疾患又は状態が感染性疾患である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
感染性疾患が、ウイルス性、細菌性、真菌性、蠕虫性、原虫又は出血性である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
感染性疾患が、インフルエンザ、Arenaviridae、Filoviridae、Bunyaviridae、Flaviviridae、Rhabdoviridae及びCoronaviridaeから選択されるウイルス感染である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
感染性疾患が、エプスタイン・バールウイルス、天然痘、エボラ、マールブルグ、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)、南米出血熱、デング熱、黄熱、リフトバレー熱、オムスク出血熱ウイルス、キャサヌル森林、フニン、マチュポ、サビア、グアナリト、ガリッサ、イレシャ及びラッサから選択されるウイルス感染である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ウイルス感染がCoronaviridaeである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
Coronaviridaeによる感染がSARS、SARS-CoV-2、MERS、229E、NL63、OC43、及びHKUlから選択されるウイルスに由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Coronaviridae感染がSARSウイルス感染である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
Coronaviridae感染がSARS-CoV-2ウイルス感染である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
Coronaviridae感染がMERSウイルス感染である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
感染性疾患がインフルエンザウイルス感染である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
疾患または状態が自己炎症性疾患又は自己免疫疾患である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
自己免疫疾患又は自己炎症性疾患が、1型糖尿病、2型糖尿病、リウマチ様関節炎(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、乾癬、喘息、家族性地中海熱(FMF)、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、メバロン酸キナーゼ欠損症/高免疫グロブリンD症候群(MKD/HIDS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)、周期熱、アフタ性口内炎、咽頭炎及びリンパ節炎(PFAPA症候群)、化膿性無菌性関節炎、壊疽性膿皮症、座瘡(PAPA)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、ベーチェット病、マジード症候群、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、シュニッツラー症候群ならびにブラウ症候群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
疾患又は状態が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、家族性(原発性)血球貪食性リンパ組織球症(FHL)、孤発性HLH、マクロファージ活性化症候群(MAS)、慢性関節炎、全身性若年性特発性関節炎(sJIA)、スチル病、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群、NLRP3遺伝子における遺伝性又は新規機能獲得変異を含むクライオピリノパチー、遺伝性自己炎症性障害、急性膵炎、重度の熱傷、急性放射線症候群、外傷、急性呼吸促迫症候群、全身性炎症反応症候群、及び腫瘍崩壊症候群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
疾患又は状態が、悪液質、慢性炎症反応、敗血症、敗血症性ショック症候群、外傷性脳傷害、脳サイトカインストーム、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫疾患、多発性硬化症、急性膵炎、又は肝炎から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
疾患又は状態が、心筋炎、1型糖尿病、2型糖尿病、甲状腺炎、ぶどう膜炎、脳脊髄炎、関節炎(例えばリウマチ様)、エリテマトーデス、筋炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群及び心不全から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
対象が、ハプロタイプ一致ドナー幹細胞移植に由来する異常なサイトカイン放出を有する又は異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
化合物が、
【化2】
から選択される構造式で表される、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
RがH、-(C
1~C
4)アルキル、-(C
1~C
4)アルコキシ、-CO
2-(C
1~C
4)アルキルで任意選択で置換されているN-ピペラジニルであり、
R
4およびR
5が、それらが結合している窒素と一緒になって-N-アルキル-ピペラジニルまたはモルホリニルを形成し、ピペラジニルまたはモルホリニルが-F、-Cl、-Br、-OH、-(C
1~C
4)アルキル、-(C
1~C
4)ハロアルキル、または-(C
1~C
4)アルコキシから選択される1~2つの基で任意選択で置換されており、
R
aが各出現につき独立して、-H、-(CH
2)
n-(C
3~C
6)シクロアルキル、-(CH
2)
n-3~6員単環式ヘテロシクリルであり、-(CH
2)
n-(C
3~C
6)シクロアルキルまたは-(CH
2)
n-3~6員単環式ヘテロシクリルが、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH
2、-OH、-(C
1~C
4)アルキル、または-(C
1~C
4)アルコキシから選択される1~3つの基で任意選択で置換されており、
nが0または1である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
RがHであり、
R
4およびR
5が、それらが結合している窒素と一緒になって-N-メチル-ピペラジニルまたはモルホリニルを形成し、これらの両方が1つまたは2つのメチルで任意選択で置換されており、
R
aが各出現につき独立して、-H;-OHで任意選択で置換されている-(C
3~C
6)シクロアルキル;-(CH
2)
n-テトラヒドロ-2H-ピラン;モルホリニル;-F、-OHもしくはメチルで任意選択で置換されているピペリジニル;またはテトラヒドロフラニルであり、
nが0または1である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
化合物が、以下の構造式:
【化3】
で表される、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
化合物が以下の構造式:
【化4】
で表される、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
対象に請求項1または31~35のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を有する対象または疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を発症するリスクがある対象を治療する方法。
【請求項37】
疾患または状態が請求項5~30のいずれか1項に記載の通りである、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2020年4月13日に出願された米国仮出願第63/009,059号および2020年5月11日に出願された米国仮出願第63/022,956号の優先権を主張する。前記出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
サイトカイン放出症候群は、感染およびある特定の薬物などの様々な因子によって引き起こされ得る全身性炎症反応である。重度の症例は「サイトカインストーム症候群」と呼ばれている。症状は、発熱、倦怠感、食欲不振、筋肉および関節痛、悪心、嘔吐、下痢、発疹、頻呼吸、頻拍、低血圧、発作、頭痛、錯乱、せん妄、幻覚、振戦ならびに協調運動喪失を含む。臨床検査および臨床モニタリングは、低い血中酸素、脈圧拡大、心拍出量増加(初期)、心拍出量の潜在的減少(後期)、血液中の高レベル窒素化合物、D-ダイマー上昇、トランスアミナーゼ上昇、第I因子欠乏症および大量出血ならびに正常レベルより高いビリルビンを示す。
【0003】
サイトカイン放出症候群は、多数の白血球が活性化され、炎症性サイトカインを放出し、これが次にさらに多くの白血球を病原性炎症の正のフィードバックループにおいて活性化する場合に生じる。免疫細胞によって産生されるサイトカインがT細胞および炎症性単球(マクロファージに分化する)などのより多くのエフェクター免疫細胞を炎症または感染部位に動員するので、これは免疫系が病原体と闘っているときに生じ得る。加えて、免疫細胞上のそれらの同族受容体に結合している炎症促進性サイトカインは、さらなるサイトカイン産生の活性化および刺激をもたらす。このプロセスは、調節不全になると、全身性過剰炎症、低血圧性ショック、および多臓器不全により生命を脅かし得る。
【0004】
用語「サイトカイン放出症候群」は、抗T細胞抗体ムロモナブ-CD3(OKT3)が、実質臓器移植のための免疫抑制治療として臨床に導入された90年代初期に初めて造られた[Chatenoud Lら、N Engl J Med. 1989;320:1420~1421;Chatenoud Lら、Transplantation. 1990;49:697~702]。その後サイトカイン放出症候群は、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)[Pihusch Rら、Bone Marrow Transplant. 2002;30:347~354]、CD28スーパーアゴニストTGN1412[Suntharalingam Gら、N Engl J Med. 2006;355:1018~1028]、リツキシマブ[Winkler Uら、Blood. 1999;94]、オビヌツズマブ[Freeman CLら、Blood. 2015;126]、アレムツズマブ[Wing MGら、J Clin Invest. 1996;98:2819~2826]、ブレンツキシマブ[Alig SKら、Eur J Haematol. 2015;94:554~557]、ダセツズマブ[de Vos Sら、J Hematol Oncol. 2014;7:44]、およびニボルマブ[1Rotz SJら、Pediatr Blood Cancer. 2017;64:e26642]などのいくつかの抗体ベース療法の注入後に記載されている。サイトカイン放出症候群は、オキサリプラチン[Tonini Gら、J Biol Regul Homeost Agents. 2002;16:105~109]およびレナリドミド[Aue Gら、Haematologica. 2009;94:1266~1273]などの非タンパク質ベースがん薬の投与後にも観察されている。さらに、サイトカイン放出症候群はハプロタイプ一致ドナー幹細胞移植の状況および移植片対宿主病(GVHD)において報告された[Abboud Rら、Biol Blood Marrow Transplant. 2016;22:1851~1860、Cho Cら、Bone Marrow Transplant. 2016;51:1620~1621]。大規模なT細胞刺激によるサイトカインストームも、インフルエンザなどのウイルス感染の提案される病理機序である[Tisoncik JRら、Microbiol Mol Biol Rev. 2012;76:16~32、de Jong MDら、Nat Med. 2006;12:1203~1207]。
【0005】
最近、最新のT細胞エンゲージング免疫療法剤の成功により、サイトカイン放出症候群への関心が高まっており、それはサイトカイン放出症候群が、これらの療法の最もよくみられる重篤な有害作用の1つを代表するからである。例えばブリナツモマブ[Teachey DTら、Blood. 2013;121:5154~5157]およびCD19標的化CAR T細胞[Morgan RAら、ERBB2. Mol Ther. 2010;18:843~851;Brudno JN、Kochenderfer JN. Blood. 2016;127(26):3321~30;およびPorter DLら、N Engl J Med. 2011;365:725~733]を用いた研究は、サイトカイン放出症候群が、CD19標的化CAR T細胞試験において最大100%の頻度を有し、致命的な転帰を有することがあるこれらの療法の最も重要な有害事象であることを明らかにした。
【0006】
サイトカイン放出症候群はコロナウイルス疾患2019(COVID-19)にも関連する。2020年4月12日時点で、コロナウイルス疾患2019は、全世界の1,696,588人に確認され、およそ6.2%の死亡率を有する(Coronavirus disease 2019(COVID-19)situation report-52. 2020年4月12日)。累積証拠は、重度のCOVID-19を有する患者の亜群はサイトカインストーム症候群を発症し、これがこの患者の亜群における高い死亡率の一因であることを示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、とりわけコロナウイルスおよびインフルエンザウイルスによって引き起こされる健康上の緊急事態ゆえに、およびT細胞エンゲージング免疫療法剤の使用の増加により、有効な療法を開発する緊急の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で示される化合物がサイトカインの異常な放出を阻害することが今回見出された。例えば化合物1は、サイトカイン放出症候群のある特定の態様を模擬するin vitroアッセイにおいて、ヒト免疫細胞活性化、増殖およびサイトカイン産生を抑制する。例えば、末梢血単核細胞の化合物1処理は、抗CD3および抗CD28抗体、フィトヘマグルチニンならびにスーパー抗原ブドウ球菌エンテロトキシンBを含むいくつかの刺激によって誘導されるCD4+およびCD8+T細胞活性化および増殖を阻害し(実施例1);末梢血単核細胞の化合物1処理は、同種異系混合リンパ球反応においてリンパ球増殖を阻害し(実施例2);末梢血単核細胞の化合物1処理は、IL-2、IL-6、IFNγおよびTNFαを含むサイトカインの抗CD3抗体および抗CD28抗体刺激放出を抑制し(実施例3);化合物1は、マウス初代がん関連線維芽細胞によるTGFβサイトカイン産生を阻害し(実施例3);化合物1処理は休止しているCD14+単球の細胞生存率の低下を促進し(実施例4);化合物1は刺激されていない全血におけるサイトカイン産生を引き起こさず、したがって、患者においてサイトカイン放出症候群を引き起こすことが予期されない(実施例6)。加えて、化合物2は、多発性硬化症の動物モデル[すなわち実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)]において疾患進行を妨げる(実施例6)。これらの結果に一部基づいて、対象における異常なサイトカイン放出および全身性炎症を阻害する方法が本明細書で開示される。
【0009】
本発明は、疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を有するまたは疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象を治療する方法である。方法は、対象に有効量の構造式(I):
【0010】
【0011】
(式中、
X1、X2、およびX3の1つはSであり、他の2つはそれぞれ独立してCRであり、
RはH、-F、-Cl、-Br、-OH、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシ、-(C1~C4)アルキレン-OHまたは-F、-Cl、-Br、-OH、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシ、もしくは-CO2-(C1~C4)アルキルから選択される1~3つの基で任意選択で置換されている4~7員単環式ヘテロシクリルであり、
R1は-NRaRbまたは-ORa1であり、
Raは各出現につき独立して、-H、-(C1~C6)アルキル、-(CH2)n-(C3~C7)シクロアルキル、-(CH2)n-3~7員単環式ヘテロシクリル、-(CH2)n-架橋(C6~C12)シクロアルキル、任意選択で置換されている-(CH2)n-5~10員ヘテロアリール、もしくは-(CH2)n-6~12員架橋ヘテロシクリルであり、-(C1~C6)アルキル、-(CH2)n-(C3~C7)シクロアルキル、-(CH2)n-3~7員単環式ヘテロシクリル、-(CH2)n-架橋(C6~C12)シクロアルキル、-(CH2)n-5~10員ヘテロアリール、もしくは-(CH2)n-6~12員架橋ヘテロシクリルは、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH2、-OH、オキソ、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシ、-(C1~C4)ハロアルコキシ、-(C1~C4)アルキレン-OH、もしくは-(C1~C4)アルキレン-NH2から選択される1~3つの基で任意選択で置換されており、
Rbは各出現につき独立して、-Hもしくは-(C1~C6)アルキルであるか、または
RaおよびRbは、それらが結合している窒素と一緒になって-(C3~C10)ヘテロシクリルを形成し、
Ra1は各出現につき独立して、-H、(C1~C6)アルキル、(C3~C10)シクロアルキル、3~10員ヘテロシクリル、(C6~C10)アリール、または3~10員ヘテロアリールであり、
R2およびR3は独立して、Hまたは-(C1~C4)アルキルであり、
R4およびR5は、それらが結合している窒素と一緒になって4~7員単環式ヘテロシクリルまたは6~12員架橋ヘテロシクリルを形成し、4~7員単環式ヘテロシクリルまたは6~12員架橋ヘテロシクリルは、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH2、-OH、オキソ、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)ハロアルキル、-(C1~C4)アルコキシ、-(C1~C4)ハロアルコキシ、-(C1~C4)アルキレン-OH、または-(C1~C4)アルキレン-NH2から選択される1~3つの基で任意選択で置換されており、
R6は各出現につき独立して、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH2、-OH、-(C1~C6)アルキル、-(C1~C6)ハロアルキル、-(C2~C6)アルケニル、-(C2~C6)アルキニル、(C3~C6)シクロアルキル、-(C1~C6)アルコキシ、-(C1~C6)ハロアルコキシ、-(C1~C6)アルキレン-OH、または-(C1~C6)アルキレン-NH2であり、
mは0、1、2、または3であり、
nは0、1、または2である)
で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。
【0012】
本発明の別の実施形態は、対象に構造式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を有する対象または疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を発症するリスクがある対象を治療する方法である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を有するまたは疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象を治療するための本明細書に開示される化合物(例えば、構造式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩)である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を有する対象または疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を発症するリスクがある対象を治療するための本明細書に開示される化合物(例えば、構造式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩)である。
【0015】
疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を有するまたは疾患もしくは状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象を治療するための医薬の製造のための本明細書に開示される化合物(例えば、構造式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩)の使用も開示される。
【0016】
疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を有する対象または疾患もしくは状態に由来する全身性炎症反応を発症するリスクがある対象を治療するための医薬の製造のための本明細書に開示される化合物(例えば、構造式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩)の使用も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1Aは、CD25(IL-2受容体アルファ鎖)およびCD69(II型C-レクチン受容体)の細胞表面発現の減少、ならびにCD62L(L-セレクチン)の脱落の減少によって示されるように、末梢血単核細胞(PBMC)の化合物1処理が抗CD3および抗CD28抗体、フィトヘマグルチニン(PHA)またはブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)によるCD4
+およびCD8
+T細胞活性化の滴定可能な阻害をもたらしたことを示す図である。
図1Bは、抗CD3抗体および抗CD28抗体、PHAまたはSEB活性化リンパ球の増殖が化合物1処理によって阻害されたことを示す図である。
【
図2】
図2Aは化合物1が同種異系混合リンパ球反応(MLR)においてリンパ球の増殖を用量依存的に阻害することを示す図である。
図2Bは、化合物1が同種異系混合リンパ球反応(MLR)においてリンパ球の増殖を用量依存的に阻害することを示す図である。
図2Cは、化合物1が同種異系混合リンパ球反応(MLR)においてリンパ球の増殖を用量依存的に阻害することを示す図である。
【
図3】
図3Aは、IL-2、IL-6、IFNγおよびTNFαを含む全ての測定されたサイトカインのレベルが、化合物1の存在下で抗CD3抗体および抗CD28抗体活性化PBMCにおいて低下したことを示す図である。
図3Bは、化合物1がマウス初代がん関連線維芽細胞(CAF)によるTGFβサイトカイン産生を阻害したことを示す図である。
【
図4】化合物1処理が、休止しているCD14
+単球の細胞生存率の用量依存的低下をもたらしたが、高濃度(30μM)を除いて、休止しているCD4
+およびCD8
+T細胞の細胞生存率に対する著しい効果を有しなかったことを示す図である。
【
図5】化合物2がマウスにおいて実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)疾患進行を妨げることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出を有する対象を治療することを対象とする。本発明は、疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象を治療する方法も対象とする。サイトカイン放出によって媒介される、炎症および/または免疫反応が関与する多くの疾患および状態がある。炎症および/または自己免疫反応は、例えば病原体による感染に対する健康的で望ましい防御機構であり、免疫系による炎症反応は病原体を根絶しようとする。病原体が根絶されると、免疫反応は後退し、患者は回復する。
【0019】
一部の事例では、対象は免疫反応中にサイトカインの異常な放出、すなわち慢性炎症状態をもたらす、持続時間が長すぎるサイトカイン放出、または急性炎症状態をもたらす、程度が強すぎるサイトカイン放出を経験する。異常なサイトカイン放出の結果は制御不能な免疫系である。このようなことは、例えば重度の症状を経験するCOVID-19患者の亜群において、ウイルス感染に反応しようと試みて免疫系が過剰に反応し、重度の病気、さらには死亡に至る症例であると考えられる。別の例は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法で生じることがある過剰な免疫反応、すなわちサイトカインの大量放出に起因する重度の潜在的に生命を脅かす状態である。サイトカインのこれらの異常な放出は、特に過剰炎症を特徴とする症状をもたらす場合、「サイトカイン放出症候群」と呼ばれることが多い。したがって、本発明は、疾患もしくは状態に由来する過剰炎症もしくは全身性炎症を有するまたは疾患もしくは状態に由来する過剰炎症もしくは全身性炎症を発症するリスクがある対象を治療することを対象とする。
【0020】
「サイトカイン放出症候群」は、サイトカインと免疫細胞の不適切な積極的シグナル伝達に起因する全身性炎症反応および最終的にサイトカイン放出の過剰なレベルを指す。それは多数の白血球が活性化され、炎症性サイトカインを放出し、これが次にさらに多くの白血球を病原性炎症の正のフィードバックループにおいて活性化する場合に生じる。免疫細胞によって産生されるサイトカインは、T細胞および炎症性単球(マクロファージに分化する)などのより多くのエフェクター免疫細胞を炎症または感染部位に動員する。加えて、免疫細胞上のそれらの同族受容体に結合している炎症促進性サイトカインは、さらなるサイトカイン産生の活性化および刺激をもたらす。患者において、これは高熱、腫れおよび発赤、極度の倦怠感、悪心をもたらし、一部の事例では致命的である。IL-Ιβ、TNFα、IL-6、IL-8(CXCL8)、IL-2、IL-10、IFNγ、IL-12p70およびGM-CSFを含む150種を超える既知の炎症メディエーターが、サイトカイン放出症候群中に放出されると考えられる。
【0021】
「サイトカインストーム症候群」はサイトカイン放出症候群の重度の症例である。
「疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象」を治療することは、亜群が典型的には異常なサイトカイン放出(またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストーム症候群)を発症することが知られている、疾患または状態を有する患者の治療を意味する。一部の事例では、リスクがある亜群中の個体を特定し、リスクがある対象だけを治療することが可能であり得る。他の事例では、リスクがある亜群中の対象を特定することは可能でも、現実的でもないことがあり、その場合、群全体の対象が治療される、すなわち本発明は、サイトカインの異常な放出を経験したことがないかもしれない一部の対象を治療することを企図する。疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象は、好ましくは異常なサイトカイン放出が生じる前、例えば異常なサイトカイン放出に由来する症状の開始が生じる前に治療され、発症している場合は症状の重症度を減少させる、または症状の開始を遅延させる。
【0022】
異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る状態は、活性化T細胞による療法、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞による療法、活性化樹状細胞による療法、活性化マクロファージによる療法、活性化B細胞による療法、および抗腫瘍細胞療法に起因する状態を含む。異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る他の状態は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、操作されたT細胞受容体(TCR)療法、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法およびNK細胞などの他の免疫細胞を組み込む療法を使用する養子免疫細胞療法に起因する状態を含む。一実施形態では、状態は、例えばチサゲンレクロイセルまたはアキシカブタジンシロルーセルによるCAR T細胞療法に起因する。これらの状態を有する対象は、症状および/または異常なサイトカイン放出の開始後に、開示される方法に従って治療され得る。代替的に、異常なサイトカイン放出のリスクがあるこれらの状態を有する対象は、症状の開始前および/または異常なサイトカイン放出前に治療され得る。
【0023】
CAR T療法は、免疫療法で使用するために人工的なT細胞受容体を産生するように遺伝子操作されたT細胞を含む。人工的な受容体は、抗原結合性機能とT細胞活性化機能の両方を単一の受容体に統合するように操作された受容体タンパク質である。T細胞は、患者または健康なドナーから採取され、特定のCARを発現するように遺伝子改変され、次いで注入される。このように、それらは腫瘍の表面に存在し、健康な細胞上で発現されない抗原を標的化するようにプログラムされる。CAR T細胞が患者に注入された後、CAR T細胞はそれらの標的化細胞に結合し、活性化し、次いで増殖し、細胞傷害性になる。CAR T細胞は、広範囲の刺激された細胞増殖、それらが他の生細胞に毒性である程度(細胞傷害性)を増加させること、ならびにサイトカイン、インターロイキンおよび成長因子などの他の細胞に影響を及ぼし得る因子の分泌増加を引き起こすことによるなどいくつかの機序により細胞を破壊する。
【0024】
異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る他の状態は、抗体による療法に起因する状態を含む。抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片、Fc融合タンパク質または二重特異性抗体(例えば、二重特異性T細胞エンゲージャーまたはBiTE)であり得る。これらの状態を有する対象は、症状および/または異常なサイトカイン放出の開始後に、開示される方法に従って治療され得る。代替的に、異常なサイトカイン放出のリスクがあるこれらの状態を有する対象は、症状の開始前および/または異常なサイトカイン放出前に治療され得る。
【0025】
特定の実施形態では、異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る状態は、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗CD28抗体、抗CD52抗体および抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を含むモノクローナル抗体による療法に起因する状態を含む。具体例はニボルマブ、ムロモナブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セラリズマブ、アレムツズマブ、オビヌツズマブ、ダセツズマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブおよびイピリムマブを含む。特定の実施形態では、異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る状態は、ブリナツモマブ(Blincyto)を含む二重特異性T細胞エンゲージャーによる療法に起因する状態を含む。これらの状態を有する対象は、症状および/または異常なサイトカイン放出の開始後に、開示される方法に従って治療され得る。代替的に、異常なサイトカイン放出のリスクがあるこれらの状態を有する対象は、症状の開始前および/または異常なサイトカイン放出前に治療され得る。
【0026】
異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る他の状態は、オキサリプラチンおよびレナリドミドなどの非タンパク質ベースがん薬による療法に起因する状態を含む。これらの状態を有する対象は、症状および/または異常なサイトカイン放出の開始後に、開示される方法に従って治療され得る。代替的に、異常なサイトカイン放出のリスクがあるこれらの状態を有する対象は、症状の開始前および/または異常なサイトカイン放出前に治療され得る。
【0027】
異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る他の状態は、ハプロタイプ一致ドナー幹細胞移植に起因する状態を含む。これらの状態を有する対象は、症状および/または異常なサイトカイン放出の開始後に、開示される方法に従って治療され得る。代替的に、異常なサイトカイン放出のリスクがあるこれらの状態を有する対象は、症状の開始前および/または異常なサイトカイン放出前に治療され得る。
【0028】
異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る疾患は感染性疾患を含む。感染性疾患は、ウイルス性、細菌性、真菌性、蠕虫性、原虫、または出血性であり得る。一特定の実施形態では、感染は、インフルエンザ、Arenaviridae、Filoviridae、Bunyaviridae、Flaviviridae、RhabdoviridaeおよびCornaviridaeから選択されるウイルス性疾患である。代替的に、感染はエプスタイン・バールウイルス、天然痘、エボラ、マールブルグ、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)、南米出血熱、デング熱、黄熱、リフトバレー熱、オムスク出血熱ウイルス、キャサヌル森林、フニン、マチュポ、サビア、グアナリト、ガリッサ、イレシャおよびラッサから選択されるウイルス性疾患である。
【0029】
Cornaviridaeまたはインフルエンザウイルス感染を有する対象の小さい亜群は、過剰炎症を特徴とする重度の症状、すなわちサイトカインストーム症候群を経験し、これは呼吸不全、さらには死亡に至ることがある。SARS、SARS-CoV-2、MERS、229E、NL63、OC43、およびHKUlに由来するCornaviridaeウイルス感染が含まれる。これらのウイルス感染を有する対象は、症状および/または異常なサイトカイン放出の開始後に、開示される方法に従って治療され得る。代替的に、異常なサイトカイン放出のリスクがあるこれらのウイルス性疾患を有する対象は、症状の開始前および/または異常なサイトカイン放出前に治療され得る。特定の実施形態では、特に異常なサイトカイン放出を発症するリスクがある対象は、基礎状態、例えば、糖尿病、心血管疾患(例えば高血圧)、慢性肺疾患(例えば、重度の喘息、慢性閉塞性肺疾患または気腫)、65歳超、ボディマスインデックス40以上、免疫抑制、慢性腎臓疾患、肝臓疾患および喫煙による肺損傷を有する対象である。特にリスクがある対象は150、160、170または180を超えるHScoreを有する。HScoreは、対象が異常なサイトカイン放出を発症する可能性の重要な指標をスコア化し、各スコアを合計して、異常なサイトカイン放出の発症を予測する総合スコアを得ることによって得られる。Fardet Lら、Arthritis Rheumatol2014;66:2613~20、およびHScore計算機についてのhttp://saintantoine.aphp.fr/score/を参照されたい。正常より2、2.5、2.75、3.0または3.5高い、対象におけるIL-6レベルも、異常なサイトカイン放出を発症するリスクがより高い対象を予測する。
【0030】
異常なサイトカイン放出を特徴とし、開示される方法で治療され得る疾患は、自己炎症性疾患または自己免疫疾患を含む。例は1型糖尿病、2型糖尿病、リウマチ様関節炎(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、乾癬、喘息、家族性地中海熱(FMF)、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、メバロン酸キナーゼ欠損症/高免疫グロブリンD症候群(MKD/HIDS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)、周期熱、アフタ性口内炎、咽頭炎およびリンパ節炎(PFAPA症候群)、化膿性無菌性関節炎、壊疽性膿皮症、座瘡(PAPA)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)、ベーチェット病、マジード症候群、慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)、シュニッツラー症候群ならびにブラウ症候群を含む。他の例は血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、家族性(原発性)血球貪食性リンパ組織球症(FHL)、孤発性HLH、マクロファージ活性化症候群(MAS)、慢性関節炎、全身性若年性特発性関節炎(sJIA)、スチル病、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節(CINCA)症候群、NLRP3遺伝子における遺伝性または新規機能獲得変異を含むクライオピリノパチー、遺伝性自己炎症性障害、急性膵炎、重度の熱傷、急性放射線症候群、外傷、急性呼吸促迫症候群、全身性炎症反応症候群、および腫瘍崩壊症候群を含む。他の例は悪液質、慢性炎症反応、敗血症、敗血症性ショック症候群、外傷性脳傷害、脳サイトカインストーム、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫疾患、多発性硬化症(MS)、急性膵炎、または肝炎を含む。さらに他の例は心筋炎、I型糖尿病、2型糖尿病、甲状腺炎、ぶどう膜炎、脳脊髄炎、関節炎(例えばリウマチ様)、エリテマトーデス、筋炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群および心不全を含む。これらの状態を有する対象は、症状および/または異常なサイトカイン放出の開始後に、開示される方法に従って治療され得る、または異常なサイトカイン放出のリスクがある対象中にいることがある。
【0031】
代替的に、開示される方法において使用される化合物は構造式(II-A)、(II-B)および(II-C):
【0032】
【0033】
で表される、またはその薬学的に許容される塩である。構造式(II-A)、(II-B)または(II-C)における可変因子は構造式(I)について記載されている通りである。
【0034】
第1の実施形態では、開示される方法において使用される化合物は構造式(II-A)、(II-B)もしくは(II-C)で表され、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、RはH、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルコキシ、-CO2-(C1~C4)アルキルで任意選択で置換されているN-ピペラジニルであり;R4およびR5は、それらが結合している窒素と一緒になって-N-アルキル-ピペラジニルまたはモルホリニルを形成し、ピペラジニルまたはモルホリニルは、-F、-Cl、-Br、-OH、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)ハロアルキル、または-(C1~C4)アルコキシから選択される1~2つの基で任意選択で置換されており;Raは各出現につき独立して、-H、-(CH2)n-(C3~C6)シクロアルキル、-(CH2)n-3~6員単環式ヘテロシクリルであり、-(CH2)n-(C3~C6)シクロアルキルまたは-(CH2)n-3~6員単環式ヘテロシクリルは、-F、-Cl、-Br、-CN、-NH2、-OH、-(C1~C4)アルキル、または-(C1~C4)アルコキシから選択される1~3つの基で任意選択で置換されており;nは0または1である。
【0035】
第2の実施形態では、開示される方法において使用される化合物は構造式(II-A)、(II-B)もしくは(II-C)で表され、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、RはHであり;R4およびR5は、それらが結合している窒素と一緒になって-N-メチル-ピペラジニルまたはモルホリニルを形成し、これらの両方が1つまたは2つのメチルで任意選択で置換されており;Raは各出現につき独立して、-H;-OHで任意選択で置換されている-(C3~C6)シクロアルキル;-(CH2)n-テトラヒドロ-2H-ピラン;モルホリニル;-F、-OHもしくはメチルで任意選択で置換されているピペリジニル;またはテトラヒドロフランであり;nは0または1である。
【0036】
下に示される化合物およびその薬学的に許容される塩も開示される方法において使用され得る。開示される方法において使用される化合物は、その教示全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2016/205942に開示されている手順に従って調製され得る。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
「薬学的に許容される塩」は、この開示の化合物の非毒性塩形態を指す。開示される方法において使用される化合物の薬学的に許容される塩は、適切な無機酸および有機酸に由来するものを含む。薬学的に許容される塩は当技術分野で周知である。適切な薬学的に許容される塩は、例えばBerge,S.M.ら、J. Pharma. Sci. 66:1~19(1977)に開示されているものである。その論文に開示されている薬学的に許容される塩の非限定的な例は、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トリエチオジド、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、および亜鉛を含む。
【0043】
適当な酸に由来する薬学的に許容される塩の非限定的な例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、または過塩素酸などの無機酸で形成される塩;酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸などの有機酸で形成される塩;およびイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することによって形成される塩を含む。薬学的に許容される塩の追加の非限定的な例は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、および吉草酸塩を含む。一実施形態では、開示される方法において使用される化合物は、化合物1のモノHCl塩である。一実施形態では、開示される方法において使用される化合物は、化合物1の二HCl塩である。一実施形態では、開示される方法において使用される化合物は、1:1の化合物1の酒石酸塩であり、化合物1と酒石酸のモル比が1:1である。一実施形態では、開示される方法において使用される化合物は、1:1の化合物1のマレイン酸塩である。一実施形態では、開示される方法において使用される化合物は、1:1の化合物1のメシル酸塩である。一実施形態では、開示される方法において使用される化合物は、1:1の化合物1の酒石酸塩であり、化合物1と酒石酸のモル比が1:1であり、塩は2θ11.9°、15.4°、16.9°、および17.2°±0.2におけるXRPDピークを特徴とする多形の形態である。多形は、酢酸水溶液およびL-(+)-酒石酸の水溶液の混合物中での化合物1の結晶化によって調製することができ、このことは、その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる2020年5月11日に出願された米国仮出願第63/022,867号に開示されている。
【0044】
単独で、または「アルコキシ」もしくは「ハロアルキル」などのより大きな部分の一部として使用される用語「アルキル」は、飽和脂肪族直鎖状または分岐状一価炭化水素基を意味する。特に指定されない限り、アルキル基は、典型的には1~6つの炭素原子を有し、すなわち(C1~C6)アルキルである。本明細書で使用される場合、「(C1~C6)アルキル」基は、直鎖状または分岐状配置で1~6つの炭素原子を有する基を意味する。例はメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピルなどを含む。
【0045】
「アルキレン」は、典型的には1~6つの炭素原子を有する二価の直鎖状または分岐状アルキル基、例えば-(CH2)n-(式中、nは1~6の整数である)を指す。
「アルコキシ」は、-O-アルキルで表される、酸素連結原子により結合したアルキル基を意味する。例えば「(C1~C4)アルコキシ」はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびブトキシを含む。
【0046】
用語「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」は、場合により1つまたは複数のハロゲン原子で置換されているアルキルまたはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」はF、Cl、BrまたはIを意味する。好ましくは、ハロアルキルまたはハロアルコキシにおけるハロゲンはFである。
【0047】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含有する分岐状または直鎖状一価炭化水素基を意味する。アルケニルは一不飽和または多価不飽和であってもよく、EまたはZ立体配置で存在し得る。特に指定されない限り、アルケニル基は、典型的には2~6つの炭素原子を有し、すなわち(C2~C6)アルケニルである。例えば「(C2~C6)アルケニル」は、直鎖状または分岐状配置で2~6つの炭素原子を有する基を意味する。
【0048】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含有する分岐状または直鎖状一価炭化水素基を意味する。特に指定されない限り、アルキニル基は、典型的には2~6つの炭素原子を有し、すなわち(C2~C6)アルキニルである。例えば「(C2~C6)アルキニル」は、直鎖状または分岐状配置で2~6つの炭素原子を有する基を意味する。
【0049】
「シクロアルキル」は、典型的には3~8つの環炭素原子を含有する飽和脂肪族環式炭化水素基、すなわち(C3~C8)シクロアルキルを意味する。(C3~C8)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含むが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される場合、単独で、または「架橋シクロアルキル」もしくは「架橋ヘテロシクリル」のようにより大きな部分の一部として使用される用語「架橋」は、少なくとも3つの隣接する環原子を共有する2つの環を含む環系を指す。架橋シクロアルキルは、典型的には6~12個の環炭素原子を含有する。架橋ヘテロシクリルは典型的には、炭素および少なくとも1つ(典型的には1~4つ、より典型的には1つまたは2つ)のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素または硫黄)から選択される6~12個の環原子を有する。
【0051】
単独で、または「アリールアルキル」、「アリールアルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」のようにより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は炭素環式芳香族環を意味する。それはシクロアルキル基と縮合したフェニル環も含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」、「炭素環式芳香族環」、「アリール基」および「炭素環式芳香族基」と互換的に使用され得る。アリール基は、典型的には6~14個の環原子を有する。例はフェニル、ナフチル、アントラセニル、1,2-ジヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インダニル、インデニルなどを含む。「置換アリール基」は、水素に結合した環炭素原子である任意の1つまたは複数の置換可能な環原子において置換されている。
【0052】
用語「ヘテロアリール」、「複素芳香族」、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、「芳香族複素環」、および「複素芳香族基」は、本明細書において互換的に使用される。「ヘテロアリール」は、単独で、または「ヘテロアリールアルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」のようにより大きな部分の一部として使用される場合、炭素および少なくとも1つ(典型的には1~4つ、より典型的には1つまたは2つ)のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素または硫黄)から選択される5~14個の環原子を有する芳香族環基を指す。「ヘテロアリール」は、単環式芳香族複素環が1つまたは複数の他のアリール環、ヘテロシクリル環または芳香族複素環に縮合した単環式環および多環式環を含む。このように、「5~14員ヘテロアリール」は単環式、二環式または三環式環系を含む。
【0053】
単環式5~6員ヘテロアリール基の例は、フラニル(例えば、2-フラニル、3-フラニル)、イミダゾリル(例えば、N-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例えば、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル)、オキサジアゾリル(例えば、2-オキサジアゾリル、5-オキサジアゾリル)、オキサゾリル(例えば、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、ピラゾリル(例えば、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、ピロリル(例えば、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、ピリジル(例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリミジニル(例えば、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、ピリダジニル(例えば3-ピリダジニル)、チアゾリル(例えば、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、イソチアゾリル、トリアゾリル(例えば、2-トリアゾリル、5-トリアゾリル)、テトラゾリル(例えばテトラゾリル)、およびチエニル(例えば、2-チエニル、3-チエニル)を含む。多環式芳香族ヘテロアリール基の例は、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インダゾリル、イソインドリル、アクリジニル、またはベンゾイソオキサゾリルを含む。「置換ヘテロアリール基」は、水素に結合した環炭素または環窒素原子である任意の1つまたは複数の置換可能な環原子において置換されている。
【0054】
「ヘテロシクリル」は、任意選択で1つまたは複数の二重結合を含有する飽和または不飽和非芳香族3~12員環基を意味する。それは単環式、二環式、三環式であってもよく、または縮合していてもよい。ヘテロシクロアルキルは、N、OまたはSから選択される、同じであっても異なっていてもよい1~4つのヘテロ原子を含有する。ヘテロシクリル環は、任意選択で1つもしくは複数の二重結合を含有する、および/または任意選択で1つもしくは複数の芳香族環(例えばフェニル環)と縮合する。用語「ヘテロシクリル」は、全ての可能な異性体型を含むことが意図される。ヘテロシクロアルキルの例は、アゼチジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、ジヒドロイミダゾール、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロイミダゾール、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、およびテトラヒドロチオピラニルを含むが、これらに限定されない。多環式ヘテロシクロアルキル基の例は、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ジヒドロベンゾトリアゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロインダゾリル、ジヒドロアクリジニル、テトラヒドロアクリジニル、ジヒドロベンゾイソオキサゾリル、クロマン、クロメン、イソクロマンおよびイソクロメンを含む。
【0055】
「対象」は哺乳動物、好ましくはヒトであるが、獣医治療を必要とする動物、例えば、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)であってもよい。
【0056】
「治療する」、「治療すること」、または「治療」は、疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出を有する対象に関連して使用される場合、疾患または疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出の影響または症状を好転させること、例えば、異常なサイトカイン放出の影響を軽減する、減少させる、調節する、改善する、および/または排除することを含む。「治療する」、「治療すること」、または「治療」は、疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出のリスクがある対象に関連して使用される場合、発症している場合は異常なサイトカイン放出の症状の重症度を減少させること、または症状の開始を遅延させることを含む。異常なサイトカイン放出を発症する「リスクがある」対象は、対象の亜群において異常なサイトカイン放出(またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストーム)を発症することが知られている疾患または状態を有する。治療は好ましくは異常なサイトカイン放出の開始前である。障害または状態の任意の症状の重症度の好転または軽減は、当技術分野で公知の標準的方法および技術に従って容易に判定され得る。
【0057】
「有効量」は、対象に投与された場合、疾患または疾患または状態に由来する異常なサイトカイン放出の影響または症状を軽減することを含む有益なまたは所望の結果をもたらし、その好転をもたらす量を意味する。異常なサイトカイン放出を発症する「リスクがある」対象に投与される場合、「有効量」は、発症している場合は異常なサイトカイン放出の症状の重症度を減少させること、または症状の開始を遅延させることを含む、有益なまたは所望の結果をもたらす量を意味する。
【0058】
「有効量」を対象に提供するために投与される化合物の正確な量は、投与の様式、疾患または状態の種類および重症度、ならびに対象の特徴、例えば、全体的な健康、年齢、性別、体重、および薬物に対する忍容性に依存する。当業者は、これらのおよび他の因子に依存して適当な投与量を決定することができる。適切な投与量は、承認された治療剤について知られており、対象の状態、治療される状態の種類ならびに例えば、文献に報告されており、Physician’s Desk Reference(第57版、2003)で推奨されている投与量に倣うことによって使用される本発明の化合物の量に従って、当業者によって調整され得る。例えば有効量は単位剤形で与えられ得る(例えば、1日当たり0.1mg~約50g、代替的に1日当たり1mg~約5グラム、さらに代替的に1日当たり10mg~1グラム)。
【0059】
開示される方法において使用される化合物は、当業者によって理解されるように、選択された投与経路に依存して様々な形態で患者に投与され得る。本教示の化合物は、例えば、経口、非経口、口腔、舌下、鼻、直腸、貼付、ポンプまたは経皮投与およびそれに応じて製剤化された医薬組成物で投与され得る。非経口投与は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻、肺内、髄腔内、直腸および局所投与様式を含む。非経口投与は、選択された期間にわたる持続注入であってもよい。
【0060】
開示される方法において使用される化合物は、対象への投与のための医薬組成物に適切に製剤化され得る。これらの医薬組成物は任意選択で、そのための1種または複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤、例えば、ラクトース、デンプン、セルロースおよびデキストロースを含む。他の賦形剤、例えば、香味剤、甘味料、ならびに保存剤、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルパラベンも含まれ得る。適切な賦形剤のより完全な一覧表はHandbook of Pharmaceutical Excipients(第5版、Pharmaceutical Press(2005))で見つけることができる。当業者は、様々な種類の投与経路に適した製剤をどのように調製するかを知っている。適切な製剤の選択および調製のための従来の手順および成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2003-第20版)および1999年に出版されたThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 24 NF19)に記載されている。担体、希釈剤および/または賦形剤は、医薬組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害でないという意味で「許容される」。
【0061】
典型的には、経口治療投与について、開示される方法において使用される化合物は、賦形剤と共に組み込むことができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、ウェーファーなどの形態で使用され得る。
【0062】
典型的には、非経口投与について、開示される方法において使用される化合物の溶液は一般的に、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散液もアルコールを含むまたは含まないグリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSOおよびこれらの混合物中で、ならびに油中で調製され得る。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防止するために保存剤を含有する。
【0063】
典型的には、注射使用には、無菌注射溶液または分散液の即時調製のための本明細書に記載の化合物の無菌水溶液または分散液および無菌粉末が適当である。
鼻投与について、開示される方法において使用される化合物は、エアゾール剤、滴下剤、ゲル剤および散剤として製剤化され得る。エアゾール製剤は典型的には、生理学的に許容される水性または非水性溶媒中の活性物質の溶液または微細懸濁液を含み、通常、噴霧化デバイスと共に使用するためのカートリッジまたはリフィルの形態をとり得る密閉容器中の無菌形態で、単一または複数用量の分量で提供される。代替的に、密閉容器は、単一用量鼻吸入器または使用後の廃棄が意図された定量バルブが取り付けられたエアゾールディスペンサーなどの単位分注デバイスであり得る。剤形がエアゾールディスペンサーを含む場合、それは圧縮空気などの圧縮ガスまたはフルオロクロロヒドロカーボンなどの有機噴射剤であり得る噴射剤を含有する。エアゾール剤形は、ポンプ噴霧器の形態もとり得る。
【0064】
口腔または舌下投与について、開示される方法において使用される化合物は、糖、アラビアゴム、トラガント、またはゼラチンおよびグリセリンなどの担体と共に、錠剤、ロゼンジ剤またはパステル剤として製剤化され得る。
【0065】
直腸投与について、開示される方法において使用される化合物は、カカオ脂などの従来の坐剤基剤を含有する坐剤の形態で製剤化され得る。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、例示を意図しており、決して本開示の範囲を限定することを目的としていない。
以下の化合物を実施例1~6において使用した:
【0067】
【0068】
実施例1.化合物1はヒト免疫細胞の活性化および増殖を抑制する。
健康なヒトドナーからの末梢血をUniversity Health NetworkのHematology Malignancy Tissue Bankから得た。製造業者の指示書(GE Healthcare Life Sciences)によりFicoll-Paque PLUSを使用する密度勾配遠心分離でPBMCを血液から調製した。PBMCを90%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)および10%ジメチルスルホキシド(DMSO)中で20×10
6細胞/バイアルで凍結し、使用まで液体窒素中で保存した。10%熱不活性化FBS、2-メルカプトエタノールおよびペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI1640培地において、37℃、5%CO
2、および100%湿度で、PBMC(2×10
5細胞)を化合物1またはDMSOのいずれか、ならびに抗CD3(クローンOKT3、1ng/ml)および抗CD28(クローンCD28.2、100ng/ml)抗体、フィトヘマグルチニン(PHA)(3μg/ml)またはスーパー抗原ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)(1μg/ml)で処理した。24または48時間後、フローサイトメトリーによる測定のために細胞を示された細胞サブセットおよび活性化マーカーに特異的な抗体で染色した。結果を
図1Aに示す:上部、プロットはゲーティングしたCD3
+CD4
+T細胞によるCD25、CD69およびCD62L発現を示す。下部、プロットはゲーティングしたCD3
+CD8
+T細胞によるCD25、CD69およびCD62L発現を示す。活性化後、T細胞は活性化マーカーの細胞表面発現を調節し、迅速に増殖し、エフェクター機能を獲得する。CD25(IL-2受容体アルファ鎖)およびCD69(II型C-レクチン受容体)の細胞表面発現の減少、ならびにCD62L(L-セレクチン)の脱落の減少によって示されるように、PBMCの化合物1処理は、抗CD3および抗CD28抗体、PHAまたはSEBによるCD4
+およびCD8
+T細胞活性化の滴定可能な阻害をもたらした。データは、異なるPBMC試料を利用するいくつかの独立した実験の代表であり、2連のウェルの平均蛍光強度(MFI)±標準偏差(SD)として報告される。
【0069】
10%熱不活性化FBS、2-メルカプトエタノールおよびペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI1640培地において、37℃、5%CO
2、および100%湿度で、PBMC(2×10
5細胞)を化合物1またはDMSOのいずれか、ならびに抗CD3および抗CD28抗体、PHAまたはSEBで処理した。24時間後、細胞を
3H-チミジンでさらに18時間標識し、液体シンチレーションカウントでリンパ球増殖を測定した。
図1Bに示されるように、抗CD3抗体および抗CD28抗体、PHAまたはSEB活性化リンパ球の増殖は、化合物1処理によって阻害された。同様のデータが48時間で得られた(データは示されない)。データは、異なるPBMC試料を利用するいくつかの独立した実験の代表であり、2連のウェルの1分当たりの平均カウント数(CPM)±標準偏差(SD)として報告される。
【0070】
実施例2.化合物1は同種異系混合リンパ球反応(MLR)においてリンパ球増殖を阻害する。
同種異系MLRは、リンパ球のある集団(エフェクター細胞)を、非増殖性にしたリンパ球の別の遺伝的に異なる集団(刺激因子細胞)によって刺激して増殖させる細胞増殖アッセイである。10%熱不活性化FBS、2-メルカプトエタノールおよびペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI1640培地において、37℃、5%CO
2、および100%湿度で、PBMC[2×10
5細胞、エフェクター(E)集団]および照射した(IR)同種異系PBMC[1×10
5細胞、刺激因子(S)集団]を化合物1またはDMSOのいずれかで処理した。4日後、細胞を
3H-チミジンでさらに18時間標識し、液体シンチレーションカウントでリンパ球増殖を測定した。2つのPBMC試料の混合はリンパ球増殖を刺激したが、化合物1処理はリンパ球増殖の用量依存的阻害をもたらした。異なるエフェクター/刺激因子ペアを利用する複数の独立した実験を行った。
図2A~2Cを参照されたい。データは、3連のウェルの1分当たりの平均カウント数(CPM)±標準偏差(SD)として報告される。
【0071】
実施例3.化合物1はエフェクターサイトカイン分泌を抑制する。
10%熱不活性化FBS、2-メルカプトエタノールおよびペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI1640培地において、37℃、5%CO
2、および100%湿度で、PBMC(2×10
5細胞)を化合物1またはDMSOのいずれか、ならびに抗CD3および抗CD28抗体で処理した。24時間後、培養上清中のサイトカインレベルを製造業者の指示書(BioLegend,Inc.)によりLEGENDplex Human Th Cytokine Panelで決定した。化合物1の存在下、IL-2、IL-6、IFNγおよびTNFαを含む全ての測定されたサイトカインのレベルは低下した。
図3Aを参照されたい。データは、異なるヒトPBMC試料を利用するいくつかの独立した実験の代表であり、2連のウェルのDMSO対照に対する化合物1の変化倍率として報告される。
【0072】
がん関連線維芽細胞(CAF)をモデルシステムとして使用して、TGFβサイトカイン産生を調べた。C57BL/6マウスをThe Jackson Laboratoryから得た。University Health NetworkのInstitutional Animal Care and Use Committeeは全ての動物手順を承認した。MC38-CEAマウス結腸癌異種移植片を皮下で、従来の様式で成長させることによって、CAFをC57BL/6マウスから得た。腫瘍がおよそ1000mm
3のサイズに達したら、切除および脱凝集し、CAFをTumor-Associated Fibroblast Isolation Kit(Miltenyi Biotec)で単離した。単離したCAFをMesenCult Expansion Kit(STEMCELL Technologies,Inc.)で、37℃、5%CO
2、3%O
2、および100%相対湿度で成長させた。化合物1またはDMSOのいずれかによる処理の24時間前に、96ウェルプレート中10%FBSを含有するDMEM培地にCAFを播種した。3日後、潜在型TGFβを製造業者の指示書(BioLegend,Inc.)によりMouse Latent TGFβ Legend Max kitで決定した。化合物1は、マウス初代CAFによるTGFβ産生を阻害した。
図3Bを参照されたい。データはいくつかの独立した実験の代表であり、2連のウェルのDMSO対照に対する化合物1の変化倍率として報告される。
【0073】
実施例4.T細胞および単球生存率に対する化合物1の効果。
Human CD3 MicroBeadsおよびHuman CD14 MicroBeads(Miltenyi Biotech)をそれぞれ使用して、CD3
+T細胞およびCD14
+単球をPBMCから精製した。10%熱不活性化FBS、2-メルカプトエタノールおよびペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質を含有するRPMI1640培地において、37℃、5%CO
2、および100%湿度で、精製したCD3
+T細胞(2×10
5細胞)またはCD14
+単球(2×10
5細胞)を化合物1またはDMSOのいずれかで処理した。48時間後、フローサイトメトリーによる測定のために細胞を示された細胞サブセットに特異的な抗体、ならびにアネキシンVおよび7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)細胞生存率色素で染色した。化合物1処理は、高濃度(30μM)を除いて、休止しているCD4
+およびCD8
+T細胞の生存率に対する著しい効果を有しなかった。化合物1処理は休止しているCD14
+単球の生存率の用量依存的低下をもたらした。
図4を参照されたい。同様のデータが24および72時間で得られた(データは示さない)。データは、異なるヒトPBMC試料を利用するいくつかの独立した実験の代表であり、2連のウェルのパーセント生存率のΔ低下として報告される[平均±標準偏差(SD)]。
【0074】
実施例5.化合物2は実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)疾患進行を妨げる。
EAEは多発性硬化症(MS)の動物モデルである。EAEにおいて、サイトカインは自己抗原指向性免疫反応および中枢神経系内の炎症の発生に決定的に関与する。C57BL/6マウスをThe Jackson Laboratoryから得た。University Health NetworkのInstitutional Animal Care and Use Committeeは全ての動物手順を承認した。Mycobacterium tuberculosisを補充した完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化したMOG35-55ペプチドでマウスを皮下で免疫した。免疫後0日目および2日目に、マウスに百日咳毒素を腹腔内注射した。EAEの臨床徴候を以下の基準に従って毎日モニタリングした:0、疾患なし;1、尾の緊張低下;2、後肢脱力または部分麻痺;3、完全後肢麻痺;4、前および後肢麻痺;5、瀕死状態。EAE誘導中に、マウスに化合物2を経口(PO)50mg/kg(n=4)で、または水(ビヒクル対照;n=5)を毎日(QD)与えた。化合物2がEAE疾患進行を妨げることが示される。
図5を参照されたい。データは平均スコア±平均の標準誤差(SEM)として報告される。
【0075】
実施例6.化合物1は刺激されていない全血においてサイトカイン産生を引き起こさない。
化合物1で治療される患者におけるサイトカイン放出症候群の可能性を、全血サイトカイン放出アッセイ(CRA)を使用して評価した。健康なヒトドナーからの新鮮な全血をRPMI1640培地で4:1に希釈し、化合物1またはDMSOの存在下で4時間培養した。リポ多糖(LPS)(1μg/mL)を陽性対照として使用した。血清試料中のサイトカインレベルを、製造業者の指示書(BioLegend,Inc.)によりLEGENDplex Human Th Cytokine Panelで決定した。化合物1は、in vivoでサイトカイン放出症候群を予測させるサイトカインのレベルを誘導しなかった。下の表1に記載のデータは、いくつかの独立した実験の代表であり、2連のウェルのDMSO対照に対する化合物1の平均変化倍率として報告される。
【0076】
表1に記載されているデータは、化合物1が刺激されていない全血からのサイトカインの放出を引き起こさないことを示す。
【0077】
【国際調査報告】