(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】TDP-43及びFUS凝集を抑制するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230524BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230524BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230524BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230524BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230524BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20230524BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230524BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230524BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230524BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230524BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230524BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230524BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230524BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230524BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230524BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230524BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230524BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230524BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230524BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230524BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230524BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/85 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
A61P25/00
A61P21/00
A61P25/28
A61P25/14
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K31/713
A61K31/7105
A61K9/127
A61K47/68
A61K47/54
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562431
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 CA2021050521
(87)【国際公開番号】W WO2021207854
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キャッシュマン,ニール アール.
(72)【発明者】
【氏名】プロトキン,スティーブン エス.
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,ベイベイ
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,チン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】コーワン,キャサリン エム.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB12
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC26
4C076DD66
4C076DD70
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C084AA13
4C084MA24
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB211
4C084ZB212
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA94
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA22
4C087ZA94
4C087ZB21
(57)【要約】
ヒトRACK1をノックダウンするためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA及びshRNAなどのオリゴマー化合物及び組成物、並びにそれを必要とする対象において筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP-43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を治療するため、又は細胞内のTDP-43及び/又はFUS凝集を低下させるための方法であって、RACK1を標的とする1以上のアンチセンス分子、任意に本明細書に開示される1以上のオリゴマー化合物を、それを必要とする対象に投与するか又は細胞内に導入することを含む方法が本明細書に開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~16、49~51及び289~499のうちのいずれか1つから選択される核酸標的配列の少なくとも一部に相補的な部分を含むオリゴマー化合物であって、好ましくは前記核酸標的配列が、配列番号292、297、298、2及び3のうちのいずれか1つから選択される、オリゴマー化合物。
【請求項2】
前記オリゴマー化合物が14~40ヌクレオチド長である、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項3】
前記核酸標的配列が、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~489のうちのいずれか1つから選択される、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項4】
前記核酸標的配列が、配列番号2~6、8、10~16、292~294及び296~298のうちのいずれか1つから選択される、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項5】
前記核酸標的配列が、配列番号2、3、292、297及び298のうちのいずれか1つから選択される、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項6】
前記部分が前記核酸標的配列と相補的であり、前記核酸標的配列が、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~489のうちのいずれか1つから選択される配列であるか、又はそれを含む、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項7】
前記部分が前記核酸標的配列と相補的であり、前記核酸標的配列が、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~298のうちのいずれか1つから選択される配列であるか、又はそれを含む、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項8】
前記部分が前記核酸標的配列と相補的であり、前記核酸標的配列が、配列番号2、3、292、297及び298のうちのいずれか1つであるか、又はそれを含む、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項9】
前記オリゴマー化合物がRNA、DNA又はDNA/RNAの混合物を含むか、又はそれである、請求項1~8のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項10】
1以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項11】
複数の修飾ヌクレオチドを含み、任意に前記部分の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである、請求項9のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項12】
前記修飾が、前記リボース糖の2’位における化学修飾である、請求項10又は11に記載のオリゴマー化合物。
【請求項13】
前記化学修飾が、2’O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’O-MOE)、2’フルオロ(2’F)及び2’-O,4’-Cメチレン架橋から選択される、請求項12に記載のオリゴマー化合物。
【請求項14】
前記オリゴマー化合物が、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項15】
前記修飾ヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合又はホスホロアミダート結合である、請求項14に記載のオリゴマー化合物。
【請求項16】
前記オリゴマー化合物が、複数のロック核酸モノマー(LNAM)を含む、請求項10~15のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項17】
前記オリゴマー化合物が、一本鎖DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドである、請求項1~16のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項18】
前記オリゴマー化合物が、二本鎖DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドである、請求項1~16のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項19】
前記オリゴマー化合物が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗RACK1低分子干渉RNA(siRNA)又はショートヘアピンRNA(shRNA)構築物である、請求項1~18のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項20】
前記部分が、配列番号17~32、52~54及び78~288のいずれか一項に記載の配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項21】
前記部分が、配列番号18~22、24、26~32、52~54及び78~288のいずれか一項に記載の配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項22】
前記部分が、配列番号18~22、24、26~32、52~54、81~83及び85~87のいずれか一項に記載の配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項23】
前記部分が、配列番号18、19、81、86及び87のいずれか一項に記載の配列を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項24】
前記オリゴマー化合物がアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項19~23のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項25】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ロック核酸(LNA)、モルホリノオリゴヌクレオチド、ギャップマー又はミックスマー、任意にLNA/RNAミックスマーである、請求項24に記載のオリゴマー化合物。
【請求項26】
前記部分が配列番号78~288のいずれか一項に記載の配列を含む、請求項25に記載のオリゴマー化合物。
【請求項27】
前記部分が、配列番号81~83及び85~288のいずれか一項に記載の配列を含む、請求項28に記載のオリゴマー化合物。
【請求項28】
前記部分が、配列番号81、86及び87のうちのいずれか1つの配列を含む、請求項30に記載のオリゴマー化合物。
【請求項29】
前記部分が配列番号81を含むか、又はそれである、請求項28に記載のオリゴマー化合物。
【請求項30】
前記部分が配列番号86を含むか、又はそれである、請求項28に記載のオリゴマー化合物。
【請求項31】
前記部分が配列番号87を含むか、又はそれである、請求項28に記載のオリゴマー化合物。
【請求項32】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、複数のRNAヌクレオチドが隣接する複数のDNAヌクレオチドを含むギャップマーである、請求項24~31のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項33】
前記ギャップマーが、両側に5個のRNAヌクレオチドが隣接する10個のDNAヌクレオチドを含む、請求項32に記載のオリゴマー化合物。
【請求項34】
前記RNAヌクレオチドの1以上が2’O-MOE修飾を含み、任意に前記RNAヌクレオチドの全てが2’O-MOE修飾を含む、請求項32に記載のオリゴマー化合物。
【請求項35】
前記部分が、1以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含み、任意に、全てのヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項24~34のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項36】
前記オリゴマー化合物が、低分子干渉RNA(siRNA)であり、前記部分がガイド鎖である、請求項19~23のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項37】
前記ガイド鎖が、配列番号17~32及び52~54のうちのいずれか1つの配列を含む、請求項36に記載のオリゴマー化合物。
【請求項38】
前記核酸標的配列が、RACK1標的配列の2以上の追加の連続残基、任意に19~30個のRACK1標的配列残基又はその間の任意の数を含む、請求項36又は37に記載のオリゴマー化合物。
【請求項39】
前記ガイド鎖が2以上の追加の非標的残基を含む、請求項36~38のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項40】
前記ガイド鎖が、3’AUオーバーハングを有する配列番号18、3’ACオーバーハングを有する配列番号19又は3’guオーバーハングを有する配列番号19の配列を含む、請求項37に記載のオリゴマー化合物。
【請求項41】
前記オリゴマー化合物が二本鎖であり、3’auオーバーハングを有する配列番号40及び3’AUオーバーハングを有する配列番号18の配列を含む、請求項40に記載のオリゴマー化合物。
【請求項42】
前記オリゴマー化合物が、二本鎖であり、3’guオーバーハングを有する配列番号35及び3’guオーバーハングを有する配列番号19の配列を含む、請求項40に記載のオリゴマー化合物。
【請求項43】
前記ガイド鎖が21~25残基であり、任意に前記オリゴマー化合物が、前記ガイド鎖に相補的なパッセンジャー鎖を含む、請求項36~42のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項44】
前記オリゴマー化合物がshRNAである、請求項19~23のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項45】
前記shRNAが、5’~3’:GAACUGAAGCAAGAAGUUAUC(配列番号34)(ループ)GAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)又は5’-3’:CUCUGGAUCUCGAGAUAAA(配列番号35)(ループ)UUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号19)を含む配列を含む、請求項44に記載のオリゴマー化合物。
【請求項46】
1以上の細胞透過性部分をさらに含む、請求項1~46のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項47】
前記1以上の細胞透過性部分が、糖、好ましくはN-アセチルガラクトサミン、脂質、好ましくはコレステロール、抗体又はその断片、好ましくはFab断片、アプタマー又はペプチドである、請求項47に記載のオリゴマー化合物。
【請求項48】
前記オリゴマー化合物が、ベクター、例えば、プラスミド、又はレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターに含まれる、請求項1~46のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項49】
請求項1~45のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物を含むベクター。
【請求項50】
前記ベクターが、プラスミド及びウイルスベクター、任意にアデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、又はγ-レトロウイルスベクターから選択される、請求項49に記載のベクター。
【請求項51】
請求項1~48のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物、又は請求項49若しくは50に記載のベクターを含み、任意に希釈剤を含む組成物。
【請求項52】
リポソーム、ナノ粒子又はナノソームなどの脂質粒子を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
複数のオリゴマー化合物、例えば、2、3、4又はそれ以上を含む、請求項51又は52に記載の組成物。
【請求項54】
RACKを標的とするための他のアンチセンス分子をさらに含む、請求項51~53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基球性包接体疾患(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象のニューロン、アストロサイト細胞又はミクログリア細胞においてRACK1をノックダウンすることを含む方法。
【請求項56】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基球性包接体疾患(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を治療する方法であって、RACK1を標的とする有効量の1以上のアンチセンス分子を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項57】
前記1以上のアンチセンス分子が、髄腔内、脳室内、鼻腔内、血管内又は実質内投与、好ましくは髄腔内投与によって投与される、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
TDP-43及び/若しくはFUS凝集を含む疾患細胞などの細胞におけるTDP-43及び/若しくはFUS凝集を低下又は阻害する方法であって、前記細胞内のRACK1レベルを低下させるのに十分な量及び十分な時間、RACK1を標的とする1以上のアンチセンス分子を前記細胞に投与するか、又は前記細胞内に導入することを含む方法。
【請求項59】
前記量及び/又は時間が、TDP-43凝集を低下させ、かつ/又は核内TDP-43を回復させるのに十分である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記量及び/又は時間が、FUS凝集を低下させ、かつ/又は核内FUSを回復させるのに十分である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記1以上のアンチセンス分子が、請求項1~48のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物のうちの1以上であるか又はそれを含み、任意に前記1以上の各々が請求項49又は50に記載のベクターに含まれる、請求項55~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記1以上のアンチセンス分子が、表1に列挙される核酸標的配列を標的とする、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記1以上のアンチセンス分子が、請求項51~54に記載の前述の組成物を介して導入される、請求項55~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記アンチセンス分子及び/又は組成物が、輸送試薬と共に、又は前記アンチセンス分子を発現する組換えプラスミド若しくはウイルスベクターとして、ネイキッド細胞内に投与又は導入される、請求項55~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記輸送試薬が、リポソーム、ナノ粒子、又はナノソームなどの脂質粒子を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記中枢神経系の細胞、任意にニューロン、アストロサイト又はミクログリア細胞である、請求項58~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が、TDP-43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を有する対象に存在する、請求項58~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記TDP43-opathy神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記FUS-opathy神経変性疾患が、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)又は好塩基性封入体病(BIBD)である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
それを必要とする対象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)を治療するため、又はニューロン、アストロサイト若しくはミクログリア細胞などの細胞におけるTDP-43及び/若しくはFUS凝集を低下又は阻害するための1以上のアンチセンス分子、任意に請求項1~48のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物、請求項49若しくは50に記載のベクターの使用、及び/又は請求項55~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患の治療に使用するためのアンチセンス分子、請求項1~48のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物、請求項49~50に記載のベクター又は請求項51~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項72】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患の治療薬の製造のためのアンチセンス分子、請求項1~48のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物、請求項49~50に記載のベクター又は請求項51~54のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2020年4月17日出願の米国仮特許出願第63/011,786号の優先権に基づいて米国特許法第119条の利益を主張する特許協力条約出願である。
【0002】
配列表の組み込み
2021年4月16日に作成され、EFS-WEBを介して提出される配列表「P61012PC00配列表_ST25」(89,532バイト)」のコンピュータ読み取り可能な形態が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、RACK1の遺伝子調節において使用するためのオリゴマーアンチセンス化合物、並びに疾患細胞におけるTDP-43及びFUS凝集を低下させるための方法に関する。具体的には、本開示は、TDP-43-opathy及びFUS-opathy神経変性疾患を治療するためのオリゴマーアンチセンス化合物並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
RACK1(活性化Cキナーゼ1の受容体)は、PKC形質導入、miRNA調節、及び真核生物の小(40S)リボソームサブユニット(1)への結合によるタンパク質翻訳を含む多くの正常な機能を有する高度に保存された足場タンパク質である。細胞RACK1は、TDP43又はタウ病理を示す細胞において凝集することが報告されている(2,3)。
【0005】
RACK1は、7枚羽根のβプロペラ構造をしているトリプトファン、アスパラギン酸リピート(WDリピート)タンパク質である。RACK1は、真核生物40Sリボソームサブユニットのコアリボソームタンパク質であり、足場タンパク質は100超のタンパク質と相互作用し、それによって細胞増殖、転写、タンパク質合成、及びニューロン機能に重要な様々なシグナル伝達経路を制御し;翻訳制御及びリボソーム品質管理に関与し;サイトゾル、小胞体(ER)、及び核内で発現する。RACK1は、進化を通して高度に保存されている。ホモサピエンスRACK1のアミノ酸配列同一性は、マウス(Mus musculus)に対しては100%であり、ラット(Rattus norvegicus)に対しては100%であり、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)に対しては76%であり、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に対しては64%であり、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に対しては53%である(4)。
【0006】
RACK1が、ハンチントン病と関連付けられる遺伝子の野生型及び変異型のハンチンチン(HTT)と相互作用することが報告されている(10)。
【0007】
TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)は、ALS及び前頭側頭葉型認知症(FTLD)の病因に関与する周知のRNA/DNA結合タンパク質である(5)。TDP-43は、主に核に局在し、RNAの発現とスプライシングに関与するが、細胞質にある場合、その機能は特異的mRNAの輸送から翻訳まで様々である(6)。TDP-43の翻訳機構への結合は、RACK1との相互作用によって媒介され、細胞質TDP-43の増加はグローバルタンパク質合成を抑制し、その作用は、野生型RACK1の過剰発現によって救済される(2)。TDP-43は、翻訳全体のリプレッサーの代表であり、RACK1を介したポリリボソームへの結合は、細胞質封入体の形成を促進し得る(2)。リボソーム結合欠損変異型(DE-RACK1)タンパク質の存在下で、核局在シグナル欠損(dNLS)TDP-43タンパク質の凝集が低下し、翻訳機構との関連が少なくなり、dNLS TDP-43によるグローバルな翻訳抑制が緩和される(2)。
【0008】
肉腫内で融合し/肉腫内で転座する(Fused in Sarcoma/Translocated in Sarcoma(FUS/TLS)FUSは、主にほとんどの細胞型の核に局在するRNA/DNA結合タンパク質である(6)。FUSの細胞質凝集は、FUS変異を有するALS患者の脳及び脊髄ニューロン(6)、及び変異がない(すなわち、野生型タンパク質)FTLDの約10%(11)において報告されている。
【0009】
RACK1発現を増減させる分子について説明されている。
【0010】
PCT/GB2007/003447は、疾患のマーカーとしてのドーパミン受容体相互作用タンパク質について説明し、GNB2L1(RACK1)遺伝子に含まれる1以上の核酸配列のバリアント型の有無を決定すること、その変異型の存在は疾患又は疾患に対する感受性の指標であることを説明している。
【0011】
US8916530特許は、個別化癌治療のための方法を説明し、癌の治療に対して上方制御されたRACK1遺伝子発現をノックダウンする際に使用するための特異的アンチセンス/shRNA/siRNA配列に言及している。
【0012】
US15/844601は、癌治療薬として薬剤を投与することによって、GNB2L1を含む遺伝子の発現レベルを増加させる方法について説明している。
【0013】
PCT/EP2019/065116は、エキソソームなどの薬物負荷細胞外小胞の親和性ベースの単離及び精製について説明しており、エキソソームは、親和性精製を可能にするように操作されている。
【0014】
CN101985037は、腫瘍の治療のためのRACK1遺伝子を阻害するための特異的siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用について説明している。
【0015】
TDP-43-opathy又はFUS-opathyに対する追加の治療が望ましい。
【発明の概要】
【0016】
第1の態様において本明細書に開示されるのは、配列番号1~16、49~51又は289~499のいずれか1つから選択される核酸標的の少なくとも一部に相補的である部分を含むオリゴマー化合物である。
【0017】
一実施形態において、該オリゴマー化合物は、長さが14~40ヌクレオチドである。
【0018】
一実施形態において、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~499のうちのいずれか1つから選択される。一実施形態において、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~298のうちのいずれか1つから選択される。一実施形態において、該核酸標的は、配列番号2、3、292、297及び298のうちのいずれか1つから選択される配列である。
【0019】
該標的配列は、RACK1 mRNA又はプレmRNAに存在する。ヒトRACK1 mRNAの配列は、例えばNCBI参照配列アクセッションコードNM_006098.5で提供され、配列番号500を有している。ヒトRACK1プレmRNAの配列は、例えばアクセッションコードNC_000005.10配列インデックス181236897~181248096で提供される。
【0020】
一実施形態において、該部分は核酸標的配列と相補的であり、該核酸標的配列は、配列番号1~16、49~51及び289~499のうちのいずれか1つから選択される配列であるか、又はそれを含む。一実施形態において、該部分は核酸標的配列と相補的であり、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~499のうちのいずれか1つから選択される配列であるか、又はそれを含む。一実施形態において、該部分は核酸標的配列と相補的であり、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~298のうちのいずれか1つから選択される配列であるか、又はそれを含む。一実施形態において、該部分は核酸標的配列と相補的であり、該核酸標的配列は、配列番号2、3、292、297及び298のうちのいずれか1つであるか、又はそれを含む。
【0021】
該オリゴマー化合物は、天然の若しくは修飾されたモノマー又はそれらの組み合わせで構成され得る。該オリゴマー化合物は、一本鎖又は二本鎖であり得、RNA、DNA、又はDNA/RNAハイブリッド(例えば、一本鎖又は二本鎖)であり得る。
【0022】
該オリゴマー化合物は、例えば、配列番号78~288のうちのいずれか1つ、好ましくは配列番号81~83及び85~87のうちのいずれか1つ、より好ましくは配列番号81、86及び87のうちのいずれか1つの配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0023】
該オリゴマー化合物は、核酸標的の1つを標的とし、天然又は非天然のオーバーハング配列を含むsiRNA化合物であり得る。
【0024】
一実施形態において、siRNAは、配列番号17~32及び52~54のうちのいずれか1つの配列を含むガイド鎖を含む。
【0025】
siRNA配列などの二本鎖オリゴマー化合物は、同一の3'-オーバーハング配列又は同一でない3'-オーバーハング配列を有することができる。1つはネイティブで、もう1つはネイティブでなくてもよい。
【0026】
該オリゴマー化合物は、shRNAであってよい。一実施形態において、該オリゴマー化合物は、1以上の細胞透過性部分を含む。
【0027】
さらなる態様において、本明細書に開示されるオリゴマー化合物を含むベクターが開示される。
【0028】
さらなる態様において、前記オリゴマー化合物又はベクターと希釈剤とを含む組成物が開示される。
【0029】
本明細書に開示される態様は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象の中枢神経系の細胞、特に、ニューロン及び/又はアストロサイト細胞内のRACK1 RNA、任意にRACK1 mRNA及び/又はRACK1プレmRNAをノックダウンすることを含む方法に関する。
【0030】
本明細書に開示される別の態様は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、1以上のアンチセンス分子、任意に本明細書に開示される前記オリゴマー化合物のうちの1以上を投与することを含む方法である。
【0031】
別の態様は、細胞内のTDP-43及び/若しくはFUS凝集を低下又は阻害する方法であって、細胞内のRACK1レベルを低下させるのに十分な量及び十分な時間、1以上のアンチセンス分子、任意にRACK1を標的とする前記オリゴマー化合物のうちの1以上、本明細書に開示される組成物及び/又はベクターを細胞内に導入することを含む方法である。
【0032】
さらなる態様は、それを必要とする対象において、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)例えば、TDP-43型FTLD又はFUS型FTLD、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP-43-opathyを治療するための、又は細胞におけるTDP-43及び/若しくはFUS凝集を低下又は阻害するための本明細書に記載の1以上のアンチセンス分子、組成物、ベクター及び/又は方法の使用である。
【0033】
一態様において、それを必要とする対象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP-43-opathyの治療に使用するための本明細書に記載の1以上のアンチセンス分子、組成物、ベクター及び/又は方法も提供される。
【0034】
さらに、態様は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基球性包接体疾患(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP-43-opathyの治療のための医薬の調製のための、本明細書に記載の1以上のアンチセンス分子、組成物、ベクター及び/又は方法の使用を含む。
【0035】
一実施形態において、該アンチセンス分子、任意にオリゴマー化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA又はshRNAである。
【0036】
本開示の実施形態を、これから、以下の図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、野生型及びdNLS TDP-43(HA)及びRACK1について染色した細胞の一連の画像である。
【
図2】
図2は、野生型及びFUS(HA)とRACK1の異なる変異型について染色した細胞の一連の画像である。
【
図3】
図3は、SOD1(SOD100)及びRACK1の異なる変異型について染色した細胞の一連の画像である。
【
図4】
図4は、DE-RACK1、R495x-FUS、及びRACK1について染色した細胞の一連の画像である。
【
図5】
図5は、DE-RACK1、P525L-FUS、及びRACK1について染色した細胞の一連の画像である。
【
図6】
図6Aは、新たに合成されたタンパク質(SUnSET)にタグを付けるためにピューロマイシンを用いる翻訳の表面センシングのためのゲル電気泳動ウェスタンブロッティングの結果を示す。
図6Bは、a-チューブリンに正規化された全体的な翻訳レベルを示すグラフを示す。
図6Cは、全体的な翻訳レベル±RACK1 siRNAの比を示すグラフを示す。
【
図7】
図7は、R495x-FUS、ピューロマイシン(PMY)、及び核(DAPI)について染色した細胞の一連の画像である。
【
図8】
図8は、dNLS TDP-43、ピューロマイシン(PMY)、及び核(DAPI)について染色した細胞の一連の画像である。
【
図9】
図9は、RACK1及びdNLS TDP-43±siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図10】
図10は、RACK1及びPan TDP-43±siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図11】
図11は、RACK1及びR495x-FUS±siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図12】
図12は、RACK1及びP525L-FUS±siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図13】
図13は、RACK1及びR495x-FUS+siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図14】
図14は、RACK1及びPan FUS±siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図15】
図15は、RACK1、DAPI、40Sリボソームサブユニット(Rps6)、及びdNLS TDP-43について染色した細胞の一連の画像である。
【
図16】
図16は、RACK1、DAPI、40Sリボソームサブユニット(Rps6)、及びR495x-FUSについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図17】
図17は、RACK1、DAPI、40Sリボソームサブユニット、及びP525L-FUSについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図18】
図18は、RACK1、DAPI、60Sリボソームサブユニット(RPL14)、及びdNLS TDP-43について染色した細胞の一連の画像である。
【
図19】
図19は、RACK1、DAPI、60Sリボソームサブユニット(RPL14)、及びR495x-FUSについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図20】
図20は、RACK1、DAPI、60Sリボソームサブユニット(RPL14)、及びP525L-FUSについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図21】
図21Aは、RACK1、40Sリボソームサブユニット(Rps6)、及びdNLS TDP-43+RACK1 siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
図21Bは、RACK1、60Sリボソームサブユニット(RPL14)、及びdNLS TDP-43+RACK1 siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図22】
図22Aは、RACK1、40Sリボソームサブユニット(Rps6)、及びP525L-FUS+RACK1 siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
図22Bは、RACK1、60Sリボソームサブユニット(RPL14)、及びP525L-FUS+RACK1 siRNAについて染色した細胞の一連の画像である。
【
図23】
図23は、RACK1ノックダウンによる全体的な翻訳の救済モデルである。
【
図24】
図24は、RACK1 mRNAに対するsiRNA予測のホットスポットスコアのプロットである。円のマーカーは、ホットスポットスコアのピークであり、siRNAによって標的化される可能性のある領域に対応する。プラスマーカーは、文献からの既存の有効なsiRNAの位置を示す(表1)。星のマーカーは、本明細書で作製及び試験したsiRNA(表2)に対応する。三角のマーカーは、予測の陰性対照である(表5)。
【
図25】
図25は、RACK1 プレmRNA上のsiRNA予測のホットスポットスコア(HS)を示す一連のプロットである。ここには8つのエクソン領域が抽出されており、イントロン/エクソン境界が示されている。位置4406、5750及び10382は、潜在的なスプライスブロッキングsiRNAデザインである(表4)。
【
図26】
図26は、RACK1をノックダウンする際の有効性について表2のsiRNAを試験するウェスタンブロットの画像である。サンタクルーズバイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology)は、陽性対照であり、[7]と同じ配列を有する。
【
図27】
図27は、RACK1-RNAiの有無にかかわらず、野生型若しくは変異型のhTDP43のいずれかを発現するか、又は発現しないハエを生成するために使用されるUAS-Gal4発現系の模式図である。
【
図28】
図28A~28Lは、様々な遺伝子型のハエの眼の代表的な写真である。GMRは、A1(
図28A~28D)又はA6(
図28E~28H、28K、28L)に示される導入遺伝子の発現を促進する。非促進対照がA6に示されている(
図28I、28J)。
【
図29】
図29は、変性スコアが1にとどまるハエの割合を示すグラフである。
【
図30】
図30は、異なるASOで処理したHeLa細胞におけるRACK1の検出のためのウェスタンブロッティング結果を示す。レーンのローディング対照:チューブリン。
【
図31】
図31は、1に設定し、上点線で表した、未処理(UT)細胞に対するASO処理HeLa細胞におけるRACK1タンパク質発現を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
特に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。例えば、用語「細胞」は、単一の細胞並びに複数の細胞又は細胞の集団を含む。一般に、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法は、当技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである(例えば、Green and Sambrook,2012を参照されたい)。
【0039】
本明細書で使用される用語「投与」は、髄腔内、脳室内、実質内又は鼻腔内投与経路などの任意の有効な経路によって、アンチセンス分子、任意に本明細書に開示されるオリゴマー化合物若しくはアンチセンス分子を含むベクター、例えば、shRNAを含む組成物などの化合物若しくは分子を対象に提供するか又は与えることを意味する。
【0040】
本明細書で使用される用語「有効量」は、RACK1タンパク質、TDP-43凝集及び/又はFUS凝集を低減若しくは排除するため、又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)などのTDP43-opathy若しくはFUS-opathy神経変性疾患を治療するためなどの、所望の応答を生成するのに十分な、アンチセンス分子、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド若しくは抗RACK1 siRNAなどの化合物又は分子の量を指す。
【0041】
本明細書で使用される用語「治療する」又は「治療」は、当技術分野で十分に理解されるように、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益又は所望の臨床結果には、限定されないが、1以上の症状若しくは状態の軽減又は改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち悪化しない)、疾患の広がりの防止、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、疾患の再発の減少、並びに寛解(部分的又は全体的を問わず)、検出可能か検出不能かどうかが含まれ得る。「治療する」及び「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して長い生存期間を意味することができる。例えば、初期段階のALS又はFTLDを有する対象は、疾患進行を防止するために、例えば、神経変性の悪化を防ぐために、本明細書に記載のオリゴマー化合物などのアンチセンス分子(複数可)で治療することができる。
【0042】
本明細書で使用される用語「希釈剤」は、投与される活性化合物の生理活性又は特性を阻害せず、対象を刺激せず、投与される化合物の生物学的活性及び特性を損なわない医薬として許容される担体を指す。希釈剤には、当業者に周知の任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤、塩、防腐剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、そのような材料及びそれらの組み合わせが含まれる(例えば、参照により本明細書に組み込まれるレミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第18版、Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329)。任意の従来の担体が活性成分と不適合である限りを除いて、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0043】
本明細書で使用される用語「相補性」又は「相補的」は、本明細書に開示されるオリゴマー化合物、又はその一部などのアンチセンス分子が、RACK1 RNA、例えば、RACK1 mRNA及び/又はRACK1 プレmRNAの標的配列にハイブリダイズし、それによってRACK1を「ノックダウン」する(例えば、RACK1 mRNA及び/又はプレmRNAを少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%又は95%又はそれ以上低下させる)能力を意味する。アンチセンス分子と標的RNAとの間の相補性は、完全(100%相補的)であり得るが、いくつかのミスマッチは許容される。例えば、アンチセンス分子は、標的RNAに対して70%、80%、85%、90%若しくは95%相補的であり得るか、又は任意の10個のモノマーストレッチにおいて最大1、2又は3個のミスマッチを含むことができる。
【0044】
本明細書で使用される用語「逆相補体」は、その5'末端から3'末端の方向の核酸配列の相補鎖を意味する。例えば、5'から3'方向の配列がTCCAGAGACAATCTGCCGGT(配列番号81)である場合、その逆相補体はACCGGCAGATTGTCTCTGGA(配列番号292)である。
【0045】
本明細書で使用する「少なくとも一部に相補的」は、例えば、インビトロアッセイで測定した場合、RACK1レベルを低下させるのに十分な、RACK1 mRNA又はRACK1プレmRNAなどのRACK1 RNAに対する相補性を有する、本明細書に開示されるオリゴマー化合物などのアンチセンス分子を指す。「少なくとも一部に相補的」は、例えば、RACK1 RNAの少なくとも14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25個の連続ヌクレオチドに相補的を含む。
【0046】
例えば、本明細書に開示されるオリゴマー化合物のうちのいずれか1つを含む、本明細書で使用される用語「アンチセンス分子」は、その少なくとも一部が核酸である化合物を含み、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む分子、siRNA及びsiRNAを含む分子を含む。用語アンチセンス分子は、例えば、典型的には一本鎖であるアンチセンスオリゴヌクレオチド、並びに典型的には二本鎖であるsiRNA化合物並びにshRNA分子を含む。アンチセンス分子は、RACK1 mRNA又はプレmRNA転写物の少なくとも一部に相補的である抗RACK1アンチセンス分子である。
【0047】
本明細書で使用される用語「オリゴマー化合物」は、オリゴヌクレオチドを含む本明細書に開示される化合物に関し、その少なくとも一部は、RACK1 mRNA若しくはRACK1プレmRNAなどのRACK1 RNA、又はその一部に相補的である。該オリゴマー化合物は、DNA、RNA、又はDNA/RNAのハイブリッドを含むことができ、1以上の修飾(すなわち非天然の)モノマーを含むことができる。「オリゴマー化合物」は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA及びshRNA構築物を含む。該オリゴマー化合物は、RACK1 RNAに相補的である部分からなることができるが、追加の1以上の追加の分子、グループ又は部分(例えば、細胞透過性部分)を含むこともできる。
【0048】
本明細書で使用される用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「ASO」は、RACK1 mRNA又はRACK1プレmRNAなどのRACK1 RNAの少なくとも一部に相補的で、限定されないが、ミックスマー、ギャップマー、テイルマー、ヘッドマー及びブロックマー、モルホリノ、ペプチド核酸(PNA)、2'-O-置換アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、2'-O-メチルホスホロチオエート、2'-O-メトキシエチルホスホロチオエート)、ロック核酸(LNA)などを含むヌクレオチド配列を含む核酸、例えば、一本鎖核酸である。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、センス核酸に水素結合することができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAに結合するDNA、RNA、及び/又は化学類似体(すなわち、修飾塩基)を含むことができる。
【0049】
本明細書で使用される用語「siRNA」は、RACK1 mRNA又はプレmRNA転写物の少なくとも一部に相補的であるガイド鎖を含むsiRNAを指す。
【0050】
本明細書で使用される用語「ガイド鎖」は、それが結合のために標的とするRNA配列に相補的である二本鎖siRNAなどのアンチセンス分子の部分又は鎖を指す。それは、天然の及び/又は修飾された塩基を含むことができる。「ガイド鎖」は、siRNAを指す場合に使用することができ、「部分」はアンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又は他のアンチセンス分子を指す場合に使用することができる。
【0051】
本明細書で使用される用語「shRNA構築物」は、発現時に、RACK1の発現をノックダウンすることができるベクター及びshDNAインサートを含む構築物を指し、該ベクターは、レンチウイルス及び非ウイルスベクターなどのウイルスベクターを含み、shDNAは、RACK1 mRNA又はプレmRNA転写物の少なくとも一部に相補的であるガイド鎖を含むショートヘアピンRNAを生成するように発現され得る。本明細書で使用される用語「ガイド鎖」は、それが結合するために標的とするRNA配列に相補的である、発現される二本鎖shRNAの鎖を指す。
【0052】
本明細書で使用される用語「ロック核酸」又は「LNA」は、2'-O,4'-Cメチレン架橋の導入によってリボースがC3'エンド立体構造でロックされる二環式RNA類似体を指す。望ましいLNAモノマー及びそれらの合成方法は、米国特許第6,043,060号、同第6,268,490号、PCT公開WO01/07455、WO01/00641、WO98/39352、WO00/56746、WO00/56748及びWO00/66604並びに以下の論文:Moritaら,Bioorg.Med.Chem.Lett.12(1):73-76,2002;Hakanssonら,Bioorg.Med.Chem.Lett.11(7):935-938,2001;Koshkinら,J.Org.Chem.66(25):8504-8512,2001;Kvaernoら,J.Org.Chem.66(16):5498-5503,2001;Halkanssonら,J.Org.Chem.65(17):5161-5166,2000;Kvaernoら,J.Org.Chem.65(17):5167-5176,2000;Pfundhellerら,Nucleosides Nucleotides 18(9):2017-2030,1999;及びKumarら Bioorg.Med.Chem.Lett.8(16):2219-2222,1998にも開示されており、それらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
用語「ミックスマー」は、天然のヌクレオチドと非天然のヌクレオチドの両方を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。しかし、ギャップマー、テイルマー、ヘッドマー及びブロックマーとは異なり、6以上の天然のヌクレオチドの連続配列はない。
【0054】
本明細書で使用される用語「ギャップマー」は、例えば、RNase H切断を支持する複数のヌクレオシドを有する内部DNAベース領域(例えば、「ギャップ」)に、標的結合を促進する1以上のRNAベースヌクレオシド(例えば、5'及び3'「ウイング」)が隣接するアンチセンスオリゴヌクレオチドを指す。ギャップヌクレオシドは、ウイングヌクレオシドとは異なる。非限定的な例において、ギャップマーは、表8に記載の2-MOE修飾RNA残基が隣接するDNA残基を含む。5'ウイングと3'ウイングは同じ化学修飾を有してよいが、5'ウイングと3'ウイングの間に異なる修飾が企図され、ヌクレオチド長の違いも企図される。
【0055】
本明細書で使用される用語「モルホリノオリゴヌクレオチド」は、リボース又はデオキシリボースの糖部分を置換するメチレンモルホリン環などのモルホリノモノマー、並びにDNA及びRNAのアニオン性リン酸塩を置換する非イオン性ホスホロジアミデート結合を含む非天然オリゴヌクレオチドを指す。例えば、イントロンエレメントを標的とするアンチセンスモルホリノオリゴヌクレオチドは、RNAスプライシングを調節することができる(12)。モルホリノオリゴヌクレオチドは、約25個のモルホリノモノマーの短鎖であり得る。各モルホリノオリゴヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)の塩基対合表面の小さな(約25塩基)領域をブロックする。用語「モルホリノモノマー」は、核酸塩基、6員モルホリン環及び非イオン性ホスホロジアミデートサブユニット間結合を含むサブユニットを指す。
【0056】
本明細書で使用される用語「細胞透過性部分」は、本明細書に開示されるオリゴマー化合物などの化合物又は化合物の細胞外空間から細胞内への移動を媒介する官能基を指す。
【0057】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その」は、内容が特に明確に指示をしない限り、複数の参照を含む。そのため、例えば、「化合物」を含有する組成物は、2種以上の化合物の混合物を含む。用語「又は」は、内容が特に明確に指示をしない限り、「及び/又は」を含む意味で一般的に使用されることにも留意すべきである。
【0058】
本願及び請求項(複数可)で使用される単語「からなる」及びその派生語は、述べられた特徴、要素、成分、グループ、整数、及び/又は工程の存在を特定するクローズエンド用語であり、また、他の述べられていない特徴、要素、成分、グループ、整数及び/又は工程の存在を除外することを意図している。
【0059】
本明細書における端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数値及び小数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、及び5を含む)。また、全ての数及びその小数は、用語「約」によって修飾されると推定されることも理解されたい。
【0060】
本明細書で使用される用語「約」、「実質的に」及び「およそ」は、最終結果が著しく変化しないように、修飾された用語の合理的な量の偏差を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が修飾する単語の意味を否定しない場合、修飾された用語の少なくとも±5%又は少なくとも±10%の偏差を含むものとして解釈されるべきである。
【0061】
特定の節に記載される定義及び実施形態は、当業者によって理解されるように、それらが適切であると本明細書に記載の他の実施形態に適用可能であることを意図する。
【0062】
本明細書で実証されるように、RACK1は、変異型FUS及びSOD1と共凝集し、変異型TDP43と共に、例えば、ALSにおけるこれらの変異検証済み封入体の毒性について共通の経路を構成し得る。
【0063】
また、培養細胞におけるRACK1のノックダウンが、おそらく脱凝集タンパク質の核内への拡散による、核局在配列を欠く変異タンパク質の部分的な核送還を伴いながら[Pinarbasiら,2018]、FUS若しくはTDP43封入体の形成を低下又は阻害し得ることも本明細書で実証されている。理論に拘束されることを望まないが、RACK1共凝集体へのポリリボソームの動員は、ミスフォールディングにおける毒性の機能獲得、及びPFARを有する60sリボソームサブユニットの動員によるALS/FTLD関係タンパク質の増加に寄与し得る。本明細書に記載のデータは、RACK1と変異型TDP-43又はFUSとの共凝集がリボソームサブユニットの隔離によって全体的な翻訳を抑制し、RACK1のsiRNAノックダウンが全体的な翻訳及び60sリボソームPFARの可能性のある病理学的シャペロン活性を救出できることを示している。
【0064】
タンパク質凝集体に動員されるRACK1の神経毒性は、正常なRACK1活性に対する機能喪失を含む多くの要因に起因し得る。しかし、凝集したRACK1の毒性機能獲得は、ALS及び他のTDP-43タンパク質症(すなわち、TDP-43-opathy)において観察されるタンパク質翻訳欠損の原因の1つであり得る。
【0065】
また、RACK1の細胞特異的インビボノックダウンが、野生型又は変異型ヒトTDP-43のトランスジェニック過剰発現によって引き起こされる神経変性を改善することも本明細書で実証される。
【0066】
したがって、一態様において、配列番号1~16、49~51及び289~499のうちのいずれか1つから選択される核酸標的配列の少なくとも一部に相補的である部分を含むオリゴマー化合物が提供される。
【0067】
該核酸標的配列の少なくとも一部に相補的であるオリゴマー化合物の部分は、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチド長であり得る。一実施形態において、該該オリゴマー化合物は、長さが14~60ヌクレオチドである。一実施形態において、該オリゴマー化合物は、長さが14~50ヌクレオチドである。一実施形態において、該オリゴマー化合物は、長さが14~40ヌクレオチドである。一実施形態において、該オリゴマー化合物は、標的配列の少なくとも一部に相補的な部分に対応し、長さが14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドを含む。別の実施形態において、該オリゴマー化合物は、標的配列に相補的な部分の5'方向及び/又は3'方向に1以上の追加のヌクレオチドを含む。例えば、該オリゴマー化合物は、部分の上流及び下流に最大15又は最大20ヌクレオチドを含むことができる。一実施形態において、該オリゴマー化合物は、長さが14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドである。
【0068】
核酸標的配列は、表2、3、4若しくは8の配列又はその中の配列のうちのいずれかの一部であり得る。一実施形態において、該核酸標的配列は、表1からの核酸標的配列と同じ配列を有していない。一実施形態において、該核酸標的配列は、表5からの核酸標的配列と同じ配列を有していない。該オリゴマー化合物は、表2、3、4若しくは8のうちのいずれかにおける配列の逆相補体、若しくはその一部であるか、又それを含むことができる。
【0069】
一実施形態において、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~499のうちのいずれか1つから選択される。
【0070】
一実施形態において、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~298のうちのいずれか1つから選択される。
【0071】
一実施形態において、該核酸標的配列は、配列番号2、3、292、297及び298のうちのいずれか1つから選択される。
【0072】
一実施形態において、該部分は該核酸標的配列と相補的であり、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~499のうちのいずれか1つから選択される配列であるか、又はそれを含む。
【0073】
一実施形態において、該部分は核酸標的配列と相補的であり、該核酸標的配列は、配列番号2~6、8、10~16、49~51、292~294及び296~298のうちのいずれか1つから選択される配列であるか、又はそれを含む。
【0074】
一実施形態において、該部分は核酸標的配列と相補的であり、該核酸標的配列は、配列番号2、3、292、297及び298のうちのいずれか1つであるか、又はそれを含む。
【0075】
一実施形態において、該部分は、GAACTGAAGCAAGAAGTTATC(配列番号2)又はCTCTGGATCTCGAGATAAA(配列番号3)に相補的である。好ましい実施形態において、該部分はGAACTGAAGCAAGAAGTTATC(配列番号2)に相補的である。好ましい実施形態において、該部分はCTCTGGATCTCGAGATAAA(配列番号3)に相補的である。好ましい実施形態において、該部分は配列番号81に相補的である。好ましい実施形態において、該部分は配列番号86に相補的である。好ましい実施形態において、該部分は配列番号87に相補的である。
【0076】
該オリゴマー化合物は、任意に1以上の修飾残基を含むRNA若しくはDNA又はそれらのハイブリッドであり得る。標的はRNAである。標的は本明細書においてDNAとして表されてもよいが、当業者は、配列内のチミジン(T)がウラシル(U)と置換されることを認識する。同様に、該オリゴマー化合物は本明細書においてRNAとして表されてもよいが、当業者は、DNA化合物がウラシル(U)の代わりにチミジン(T)を含むことを認識する。
【0077】
アンチセンス分子は、分子の生物学的安定性を増大させるか、又は標的RNA若しくはDNAと共に形成される二重鎖の物理的安定性を増大させるように設計された、天然のヌクレオチド及び/又は様々に修飾された(非天然の)ヌクレオチドを用いて化学的に合成され得る。ホスホロチオエート誘導体などの誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドが使用できる。修飾ヌクレオチドの他の例には、N3’-P5’ホスホロアミダート、2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-D-アラビノ核酸類似体(FANA)、モルホリノモノマーを用いたもの、並びにシクロヘキセン核酸(CeNA)(すなわち、シクロヘキセン環で置換されたDNAのフラノース部分)及びトリシクロDNA(tcDNA)(すなわち、シクロプロパン単位が融合したヌクレオシドの中心C(3’)及びC(5’)の間の追加のエチレン架橋を含むヌクレオチド)、ペプチド核酸(PNA)(すなわち、N-(2-アミノエチル)-グリシン単位)に見出されるものを含み得、かつ/又はロック核酸(LNA)であり得る。アンチセンス分子は、標的鎖に対して、又はその一部に対してのみ相補的であり得る。
【0078】
アンチセンス分子は、非修飾オリゴヌクレオチドと同様に機能し得る少なくとも1つの非天然型モノマーを含むことができる。化学修飾は、例えば、ロック核酸(LNA)に見られるものであり得るか、又は2'-フルオロ(2'-F)、2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)又は2'-O-メチル(2'-O-Me)であり得、これらは、リン酸基中の非架橋酸素原子の1つが硫黄で置換されている糖部分若しくはホスホロチオエート(PS)結合が6員モルホリン環で置換されているリボース部分又はモルホリノモノマーの2’位で修飾されている。ホスホロチオエート及びホスホロアミダート結合は、上述のアンチセンス分子のうちのいずれかに組み込むことができる。他のヌクレオシド間結合には、例えば、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、シロキサン、カーボネート、カルボアルコキシ、アセトアミダート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホロアミダート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート、及びスルホンヌクレオシド間結合が含まれる。そのような修飾又は置換された核酸は、ヌクレアーゼの存在下での安定性の増加などの特性のために天然の形態よりも好ましい場合がある。この用語はまた、2以上の化学的に別個の領域を含むキメラ核酸を含む。例えば、キメラ核酸は、有益な特性(例えば、ヌクレアーゼ耐性の増加、細胞への取り込みの増加)を付与する修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの領域を含んでいてもよく、又は本開示の2以上の核酸が結合してキメラ核酸を形成してもよい。
【0079】
アンチセンス分子は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるAgrawal S.& Gait M.J.(2019) 核酸医薬におけるヌクレオチド類似体の歴史と開発(History and Development of Nucleotide Analogues in Nucleic Acid Drugs) Advances in Nucleic Acid Therapeutics,(pp1-21).Royal Society of Chemistryに記載の様々な方法を用いて精製することができる。アンチセンス分子又はその核酸成分は、例えば、アンチセンス配列が高効率調節領域の制御下で生成され、その活性が、ベクターが導入される細胞型によって決定され得る組換えプラスミド、ファージミド又は弱毒化ウイルスの形態で細胞に導入される発現ベクターを用いて生物学的に生成することができる。さらに、アンチセンス分子、例えば、siRNAは、製造業者、例えば、Santa Cruz Biotechnology(Dallas,TX,USA)から購入することができる。
【0080】
別の実施形態において、該オリゴマー化合物は、修飾されていないRNA、DNA又はDNA/RNAの混合物を含む。
【0081】
一実施形態において、該オリゴマー化合物は、修飾されたRNA、DNA、又はDNA/RNAの混合物を含む。
【0082】
さらなる実施形態において、該オリゴマー化合物は、化学修飾された1以上のヌクレオチドモノマーを含む。さらなる実施形態において、化学修飾は2’位に修飾を含む。別の実施形態において、化学修飾は、2’Oメチル(2’)-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’O-MOE)、2’フルオロ(2’F)及び2’-O,4’-Cメチレン架橋、すなわちロック核酸モノマー(LNAM)から選択される。
【0083】
該オリゴマー化合物は、修飾骨格を含むことができる。一実施形態において、該オリゴマー化合物は、少なくとも1つの修飾が生じたヌクレオシド間結合を含む。一実施形態において、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一実施形態において、少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、ホスホロアミダート結合である。例えば、全てのヌクレオシド間結合は、例えば、実施例4に記載のホスホロチオエート修飾されている。ホスホロチオエート結合は、RpとSpの混合鏡像異性体であってよく、又はそれらがRp若しくはSpのいずれかの形態で立体規則的又は実質的に立体規則的に作られてよい。
【0084】
さらなる実施形態において、該オリゴマー化合物は、複数のヌクレオチドモノマーの修飾を含む。別の実施形態において、ヌクレオチドモノマーの全てが修飾される。例えば、表8を参照すると、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、全ての塩基の間にホスホロチオエート結合を有し、中央DNA塩基に隣接するRNA塩基は2’-MOE修飾されている。
【0085】
本明細書に記載のように、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、インビボでRACK1レベルを低下させることが見出された。
【0086】
一実施形態において、該オリゴマー化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0087】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、又はそれらのDNA/RNAハイブリッド、例えば、DNAとRNAの混合物であり得、1以上の修飾ヌクレオチドを含むことができる。
【0088】
さらなる実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、複数のロック核酸モノマー(LNAM)を含む。
【0089】
さらなる実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ロック核酸(LNA)、LNA/DNAミックスマー又はLNA/RNAミックスマーである。
【0090】
別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、複数のRNAヌクレオチド、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のRNAヌクレオチドが隣接する例えば、複数のDNAヌクレオチド、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のDNAヌクレオチドを含むギャップマー、例えば、実施例4に記載のギャップマーである(表8)。
【0091】
一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号78~288のうちのいずれか1つの配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号81~83又は85~288のうちのいずれか1つの配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号81~83又は85~87のうちのいずれか1つの配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号81の配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号82の配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号83の配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号85の配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号86の配列を含むか、又はその配列である。一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号87の配列を含むか、又はその配列である。
【0092】
一実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、モルホリノオリゴヌクレオチドである。
【0093】
本明細書で実証されるように、siRNA配列はRACK1のノックダウンに成功した。
【0094】
一実施形態において、該オリゴマー化合物は、低分子干渉RNA(siRNA)である。
【0095】
siRNAは、表2、3、4、若しくは8のうちのいずれかにおける配列の逆相補体、その一部又はRACK1 mRNAにおいて5’若しくは3’に延びるより長い配列を含むガイド鎖を含むことができる。例えば、表2、3又は4を参照して、ガイド鎖は、括弧内に示されるヌクレオチドの逆相補体を含むことができる。siRNAなどの二本鎖アンチセンス分子は、例えば、表2、3及び4の括弧内に示されるヌクレオチドなどの天然配列に対応する一本鎖オーバーハング残基、又は非天然オーバーハング残基を含むことができる。したがって、siRNAは、括弧内に示される配列を含んでも、含まなくてもよいか、又はtt又はRNAの状況ではuuなどの非天然ヌクレオチドで置換することができる。
【0096】
標的は、RACK1標的配列の上流又は下流に追加のヌクレオチドを含むことができる。例えば、標的配列は、列挙されたRACK1標的配列に対して5’側に2個のヌクレオチド、例えば、それぞれ、5’GAオーバーハングを有するTTTAGAGGGAAAGATCATT(配列番号1)、5’ATオーバーハングを有するGAACTGAAGCAAGAAGTTATC(配列番号2)、5’GTオーバーハングを有するCTCTGGATCTCGAGATAAA(配列番号3)、5’TGオーバーハングを有するGCTAACTGCAAGCTGAAGA(配列番号4)、5’GGオーバーハングを有するGACAAGCTGGTCAAGGTAT(配列番号5)、5’AAオーバーハングを有するGGATGGCCAGGCCATGTTA(配列番号6)、5’AAオーバーハングを有するACACCTTTACACGCTAGAT(配列番号7)、5’GGオーバーハングを有するCTATCTGAACACGGTGACT(配列番号8)、5’ACオーバーハングを有するCAGGGATGAGACCAACTAT(配列番号9)、5’GCオーバーハングを有するCCAACAGCAGCAACCCTAT(配列番号10)、5’CAオーバーハングを有するCTTTGTTAGTGATGTGGTT(配列番号11)、5’TAオーバーハングを有するCCCTGGGTGTGTGCAAATA(配列番号12)、5’CTオーバーハングを有するGCTGATGGCCAGACTCTGT(配列番号13)、5’GCオーバーハングを有するGATTTGTGGGCCATACCAA(配列番号14)、5’GGオーバーハングを有するGTAACCCAGATCGCTACTA(配列番号15)、5’CGオーバーハングを有するCGCAGTTCCCGGACATGAT(配列番号16)5’AGオーバーハングを有するGTACGGACTAAGGTAGATT(配列番号49)、5’TGオーバーハングを有するTTTTACCTCCTTTAGATAA(配列番号50)、5’CCオーバーハングを有するTGTTCCCCAGGATTTAGAG(配列番号51)を含むことができる。オーバーハングを含むオリゴマー化合物において、オーバーハングは、括弧内の残基の逆相補体に対応してよく、又はttなどの非標的残基であり得、下線のついた配列は非天然であることを示す。
【0097】
別の実施形態において、ガイド鎖は、5’ATオーバーハングを有するGAACTGAAGCAAGAAGTTATC(配列番号2)、又は5’GTオーバーハングを有するCTCTGGATCTCGAGATAAA(配列番号3)に相補的である。好ましい実施形態において、ガイド鎖は、5’ATオーバーハングを有するGAACTGAAGCAAGAAGTTATC(配列番号2)に相補的である。好ましい実施形態において、ガイド鎖は、5’GTオーバーハングを有するCTCTGGATCTCGAGATAAA(配列番号3)に相補的である。
【0098】
オーバーハングは、例えば、A、U、C、G、dA、dT、dC、dG及び修飾塩基からの任意の2つのヌクレオチドの組合せであり得る。
【0099】
一実施形態において、siRNAは、配列5’-3’GAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)を含むガイド鎖であるか又はそれを含む。別の実施形態において、該配列は、5’-3’UUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号19)である。
【0100】
一実施形態において、siRNAは、3’(AU)オーバーハング(すなわち3’末端にさらなるAUヌクレオチド)を有する配列5’~3’GAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)を含むガイド鎖であるか又はそれを含む。別の実施形態において、該配列は、3’(AC)オーバーハングを有する5’-3’UUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号19)である。
【0101】
別の実施形態において、siRNAは、3’(AU)オーバーハングを有する5’-3’GAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)、及び/又は3’(gu)オーバーハングを有するUUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号19)の配列を含むガイド鎖であるか又はそれを含む。さらなる実施形態において、該配列は、3’(AU)オーバーハングを有する5’-3’GAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)である。別の実施形態において、該配列は、3’(gu)オーバーハングを有する5’-3’UUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号19)である。
【0102】
一実施形態において、ガイド鎖は、3’(AU)オーバーハングを有するGAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)、又は3’(gu)オーバーハングを有するUUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号19)を含む。
【0103】
該siRNAは、例えば、一本鎖又は二本鎖であり得る。該オリゴマー化合物は、例えば、3’(au)オーバーハングを有するss5’-3’GAACUGAAGCAAGAAGUUAUC(配列番号34)、及び3’(AU)オーバーハングを有するas5’-3’GAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)を有する二本鎖であり得、「ss」はセンス鎖又はパッセンジャー鎖を指し、「as」はガイド鎖となり得るアンチセンス鎖を指す。ガイド鎖は、その一部であるか、又は追加の残基を含むこともできる。
【0104】
siRNAは、例えば、3’(gu)オーバーハングを有するss5’-3’CUCUGGAUCUCGAGAUAAA(配列番号35);及び3’(gu)オーバーハングを有するas5’-3’UUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号19)を有する二本鎖であり得、「ss」はセンス鎖を指し、「as」はアンチセンス鎖を指す。
【0105】
一実施形態において、siRNAは約21~25残基及び任意に二本鎖である。一実施形態において、siRNAは、長さが21残基である。一実施形態において、siRNAは、長さが22残基である。一実施形態において、siRNAは、長さが23残基である。一実施形態において、siRNAは、長さが24残基である。一実施形態において、siRNAは、長さが25残基である。
【0106】
一実施形態において、該オリゴマー化合物は、ショートヘアピンRNA(shRNA)である。siR-2及びsiR-3の非限定的な例を用いて、shRNAは、例えば;
siR-2 5’-3’:GAACUGAAGCAAGAAGUUAUC(配列番号34)(ループ)GAUAACUUCUUGCUUCAGUUC(配列番号18)
siR-3 5’-3’:CUCUGGAUCUCGAGAUAAA(配列番号35)(ループ)UUUAUCUCGAGAUCCAGAG(配列番号35)
を含むことができる。
【0107】
一実施形態において、該アンチセンス分子は、ベクター、例えば、プラスミド、又はレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター若しくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターに含まれる。
【0108】
shRNAの状況において、ループ領域は、安定なループを形成し得るヌクレオチドの任意の組み合わせであり得、通常、5~10ntで構成される。shRNAの末端は、化学修飾することができ、かつ/又はさらなるオーバーハングヌクレオチドを含むことができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、標的は、本明細書で特定される配列の一部である。例えば、標的は、長さが19~30ヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態において、標的配列の少なくとも一部に相補的であるオリゴマー化合物の部分は、1以上の代替ヌクレオチドを含む。例えば、該部分は、化合物の3’半分に1以上の代替ヌクレオチド、特に3’オーバーハングを含んでよい。例えば、アンチセンスsiRNAの5’末端と中間との間の配列がmRNAを認識するのに関与し、中間残基(nt10~11)は、典型的には切断部位認識であることが判明した。
【0110】
該オリゴマー化合物は、輸送試薬、又はオリゴマー化合物若しくは複数のオリゴマー化合物を発現するベクター例えば、組換えプラスミド若しくはウイルスベクターに含まれる細胞透過性部分を含むことができる。
【0111】
一実施形態において、該オリゴマー化合物は、1以上の細胞透過性部分を含む。細胞内取り込みを促進する細胞透過性部分(又は細胞付着部分)の非限定的な例には、ペプチド、例えば、ペネトリン、Pip’s(PMO/PNA内部移行ペプチド)、糖類、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、抗体、例えば、Fab断片、炭水化物、脂質、例えば、コレステロール、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が含まれる。該細胞透過性部分は、標的配列に相補的であるオリゴマー化合物の部分の5’末端、3’末端及び/又は内部ヌクレオチドに作用可能に連結又はコンジュゲートすることができる。一実施形態において、該細胞透過性部分は、5’末端及び/又は3’末端にコンジュゲートされる。二本鎖siRNAの状況において、該細胞透過性部分は、好ましくは、例えば、3’末端でパッセンジャー鎖に結合される。該オリゴマー化合物は、様々な方法を用いて該細胞透過性部分に連結させることができる。例えば、該オリゴマー化合物は、例えば、Langelらの国際特許出願公開WO2008/063113及びTroyらの米国特許出願公開第US2005/0260756号に記載されているように、該部分に共有結合させることができる。該部分は、例えば、TroyらのWO2008/033285及びAlluisらのWO2007/069068に記載されているように、化学的リンカーを介して該オリゴマー化合物に連結することもできる。
【0112】
別の態様は、標的配列の少なくとも一部に相補的であるオリゴマー化合物又はその一部を含むベクターである。例えば、該オリゴマー化合物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、又はγ-レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターに含まれる。該ベクターは、任意に構成的発現を提供するための組み込みベクターであり得るか、又は任意に一過性発現のための核外ベクターであり得る。
【0113】
別の態様は、オリゴマー化合物、任意に抗RACK1 siRNA、抗RACK1 shRNA構築物、又はアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、抗RACK1ギャップマー若しくはモルホリノオリゴヌクレオチド)及び希釈剤を含む組成物である。希釈剤は、例えば、RNaseを含まない水又は生理食塩水であり、任意に無菌であり得る。
【0114】
該組成物は、該アンチセンス分子を送達するためのリポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、又はナノソームなどの脂質粒子を含むことができる。
【0115】
上述のように、該アンチセンス分子は、ベクター中に含めることができる。ベクターは、例えば、プラスミドベクター、細菌ベクター又はレンチウイルス粒子若しくはAAVなどのウイルスベクターであり得る。該組成物は、例えば、RACK1を標的とするための複数のオリゴマー化合物及び/又は他のアンチセンス分子を含むことができる。
【0116】
本明細書に記載の組成物は、有効量の活性物質が医薬として許容されるビヒクルとの混合物中で組み合わされるように、任意にワクチンとして対象に投与することができる医薬として許容される組成物の調製のためのそれ自体公知の方法によって調製することができる。
【0117】
該医薬組成物は、限定されないが、凍結乾燥粉末又は水性若しくは非水性の無菌注入用溶液又は懸濁液を含み、これらは、組成物を意図されたレシピエントの組織又は血液と実質的に適合させる抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び溶質をさらに含有し得る。このような組成物中に存在し得る他の成分には、例えば、水、界面活性剤(Tweenなど)、アルコール、ポリオール、グリセリン及び植物油が含まれる。即時注入溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、錠剤、又は濃縮された溶液若しくは懸濁液から調製され得る。該組成物は、例えば、限定されないが、対象への投与前に滅菌水又は生理食塩水で再構成される凍結乾燥粉末として供給され得る。
【0118】
該組成物は、医薬として許容される塩の形態であってよく、これには、限定されないが、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基で形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール(2-ethylarnino)などに由来するものなどの遊離カルボキシル基で形成されるものが含まれる。
【0119】
本明細書に記載の組成物、オリゴマー化合物及びベクターは、例えば、髄腔内、脳室内、頭蓋内、脊髄内、眼窩内、眼、大槽内、実質内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾル又は経口投与用に製剤化することができる。好ましい実施形態において、組成物、オリゴマー化合物及びベクターは、髄腔内投与用に製剤化される。
【0120】
また、別の態様において提供されるのは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象のニューロン及び/又はアストロサイト細胞などの中枢神経系の細胞中のRACK1をノックダウンすることを含む方法である。
【0121】
「ノックダウン」は、RACK1 mRNA及び/又はプレmRNAを標的とする、本明細書に記載のオリゴマー化合物などのアンチセンス分子を用いて達成することができる。
【0122】
また別の態様において提供されるのは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から任意に選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に1以上のアンチセンス分子、例えば、本明細書に開示される1以上のオリゴマー化合物を投与することを含む方法である。
【0123】
また、別の態様において提供されるのは、TDP-43及び/又はFUS凝集を含む疾患細胞などの細胞におけるTDP-43及び/若しくはFUS凝集を低減又は阻害する方法であって、細胞内のRACK1レベルを低下させるのに十分な量及び十分な時間、RACK1を標的とする1以上のアンチセンス分子を細胞に投与するか、又は細胞内に導入することを含む方法である。一実施形態において、該量及び/又は時間は、TDP-43凝集を低下させ、かつ/又は核内TDP-43を部分的に回復させるのに十分である。一実施形態において、該量及び/又は時間は、FUS凝集を低下させ、かつ/又は核内FUSを部分的に回復させるのに十分である。
【0124】
アンチセンス分子、例えば、本開示のオリゴマー化合物は、ネイキッドアンチセンス分子として単独で投与され得る。本明細書で使用する「ネイキッド」は、アンチセンス分子が送達ビヒクル(例えば、ウイルスベクター)又は送達物質(例えば、リポソーム)、例えば、ウイルスベクター、輸送試薬を用いて投与されないことを意味する。
【0125】
一実施形態において、該アンチセンス分子(複数可)は、輸送試薬と共に、組換えプラスミドとして、又はアンチセンス分子(複数可)を発現するウイルスベクターとして細胞に投与及び/又は細胞内に導入される。さらなる実施形態において、該アンチセンス分子(複数可)は、エレクトロポレーションを介して細胞内に導入される。
【0126】
別の実施形態において、該アンチセンス分子(複数可)は、1以上の細胞透過性部分を含む。このような文脈において、該アンチセンス分子は、単独で、すなわちネイキッドで、例えば、髄腔内に注入することができ、アンチセンス分子の他の要素は、例えば、細胞内への送達を容易にする化学修飾(複数可)に依存する。別の実施形態において、1以上のアンチセンス分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、又はshRNA構築物である。別の実施形態において、該アンチセンス分子(複数可)は、前述のオリゴマー化合物のうちの1以上である。
【0127】
他の実施形態において、1以上のアンチセンス分子はさらに、表1に列挙される核酸標的配列を標的とする。
【0128】
例えば、1以上のアンチセンス分子は、例えば、配列番号81、86又は87のうちのいずれか1つを含むか又はそれらからなる本明細書に開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチド分子である。
【0129】
例えば、1以上のアンチセンス分子は、例えば、3’ttオーバーハングを有するセンス5’-CCUUUACACGCUAGAUGGU(配列番号501)及びCCTTTACACGCTAGATGGT(配列番号75)を標的とする3’-tgを有するアンチセンス5’-ACCAUCUAGCGUGUAMGG(配列番号502)を含むsiRNA分子であり得る。
【0130】
別の実施形態において、1以上のアンチセンス分子は、前述の組成物を介して導入される。
【0131】
一実施形態において、細胞は罹患細胞である。一実施形態において、細胞は、ニューロン又はアストロサイトなどの中枢神経系の細胞である。一実施形態において、細胞は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)タンパク質症などのTDP43-opathy若しくはFUS-opathy神経変性疾患、又は疾患タンパク質がRACK1と相互作用するタンパク質フォールディング疾患を有する対象に存在する。例えば、TDP43-opathyは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉性認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)である。別の実施形態において、FUS-opathy神経変性疾患は、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)又は好塩基性封入体病(BIBD)である。
【0132】
別の実施形態において、1以上のアンチセンス分子は、前述のオリゴマー化合物であり、かつ/又は前述の組成物に含まれる。一実施形態において、該アンチセンス分子及び/又は組成物は、輸送試薬と共に、又はアンチセンス分子を発現する組換えプラスミド若しくはウイルスベクターとして細胞内に投与又は導入される。輸送試薬は、リポソームなどの脂質粒子、ナノ粒子、又はナノソームであり得る。一実施形態において、輸送試薬はリポソームである。
【0133】
別の実施形態において、該アンチセンス分子及び/又は組成物は、鼻腔内、粘膜、経口、舌下、経皮、局所、吸入、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃による、皮膚パッチ、点眼剤若しくはマウスウォッシュの形態又は血管内投与を含む適切な非経口又は経腸投与経路;特に髄腔内、脳室内、実質内又は脳室内投与;例えば、カテーテル又は例えば、出口カテーテルを介して脳又は脊髄内の室に接続される移植リザーバを使用する他の配置装置で投与される。
【0134】
他の実施形態において、該医薬組成物は、脳又はCNSの他の部分に直接投与される。例えば、そのような方法には、埋め込み型カテーテル及びポンプの使用が含まれ、これはカテーテルを通して注入部位に予め決定された用量を排出するのに役立つ。当業者はさらに、脳内の所望の投与部位又は注入部位に隣接してカテーテルを位置付けるために、カテーテルの視覚化を可能にする外科的技術によってカテーテルが移植され得ることを認識する。そのような技術は、参照により本明細書に組み込まれるElsberryらの米国特許第5,814,014号の「脳注入による神経変性障害を治療する技術(Techniques of Treating Neurodegenerative Disorders by Brain Infusion)」に記載されている。また、米国特許出願20060129126(Kaplitt及びDuring 「患者の脳に物質を注入するための注入装置及び方法(Infusion device and method for infusing material into the brain of A patient)」)に記載されているものなどの方法も企図される。脳及びCNSの他の部分に薬物を送達するための装置が市販されている(例えば、SynchroMed(登録商標) EL注入システム;Medtronic,Minneapolis,Minnesota)。
【0135】
別の実施形態において、該医薬組成物は、血液脳関門を横切る受容体媒介輸送を可能にするために、投与される化合物を改変するなどの方法を用いて脳に投与される。
【0136】
他の実施形態は、アンチセンス分子と、血液脳関門を横切る輸送を促進することが知られている生物活性のある分子との同時投与を企図する。
【0137】
特定の実施形態において、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7012061号 「血液脳関門の透過性を増加させる方法(Method for increasing the permeability of the blood brain barrier)」に記載されているような血液脳関門の透過性を一過的に増加させることを対象とする方法などの、血液脳関門を横切って本明細書に記載のアンチセンス分子を投与する方法も企図される。
【0138】
投与経路が経口である場合、該医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、溶液又はエリキシル剤の形態であり得る。錠剤形態で投与する場合、該医薬組成物は、ゼラチン又はアジュバントなどの固体担体をさらに含有し得る。錠剤、カプセル剤、及び粉末は、約5~95%のアンチセンス分子、及び好ましくは約25~90%のアンチセンス分子を含有する。液体形態で投与する場合、水、石油、落花生油、鉱油、大豆油、ゴマ油などの動植物起源の油、又は合成油などの液体担体を添加してもよい。医薬組成物の液体形態は、生理食塩水、デキストロース又は他の糖類溶液又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなどのグリコールをさらに含有し得る。液体形態で投与する場合、該医薬組成物は、約0.5~90重量%のアンチセンス分子又は約1~50%のアンチセンス分子を含有する。
【0139】
投与が、非経口、粘膜送達、経口、舌下、経皮、局所、吸入、鼻腔内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、膣内、遺伝子銃による、皮膚パッチ、又は点眼剤若しくはマウスウォッシュ形態の投与である場合、アンチセンス分子は、発熱物質を含まない、非経口的に許容される水溶液の形態であり得、アンチセンス分子(複数可)に加えて、塩化ナトリウム注入剤、リンゲル注入剤、デキストロース注入剤、デキストロースと塩化ナトリウム注入剤、乳酸リンゲル注入剤などの等張ビヒクル、又は当技術分野で知られている他のビヒクルを含有し得る。該医薬組成物はまた、安定剤、防腐剤、緩衝剤、抗酸化剤又は当業者に公知の他の添加剤も含有し得る。
【0140】
該医薬組成物中のアンチセンス分子の量は、治療されている病態の性質及び重症度、並びに対象が受けた、又は受けている前の治療及び同時治療の性質に依存する。本開示の方法を実施するために使用される様々な医薬組成物は、1日あたり体重kgあたり約1マイクログラム~約50mgのアンチセンス分子を含み得ることが企図される。本明細書に開示される医薬組成物による治療期間は、疾患、疾患の重症度及び各個々の対象の病態及び潜在的な特異体質の応答に応じて変化する。
【0141】
別の実施形態において、TDP-43-opathy神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)若しくは前頭側頭葉型認知症(FTLD)、又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)である。別の実施形態において、FUS-opathy神経変性疾患は、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)又は好塩基性封入体病(BIBD)である。
【0142】
別の実施形態において、対象はヒトである。
【0143】
別の態様は、それを必要とする対象において筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)若しくはハンチントン病(HD)を治療するための、又は疾患細胞などの細胞においてTDP-43及び/若しくはFUSを低下及び/又は脱凝集させるための1以上のアンチセンス分子、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド(複数可)若しくはsiRNA分子(複数可)などの前述のオリゴマー化合物の使用、及び/又は方法である。
【0144】
別の態様は、任意に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭葉型認知症(FTLD)、ハンチントン病(HD)、神経細胞性中間径フィラメント封入体病(NIFID)、好塩基性封入体病(BIBD)又は大脳辺縁系優位型老年期TDP-43脳症(LATE)から選択されるTDP43-opathy又はFUS-opathy神経変性疾患の治療に使用するための1以上のアンチセンス分子、例えば、本明細書に開示されるオリゴマー化合物である。
【0145】
一実施形態において、医薬の製造における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴマー化合物、siRNA分子(複数可)及び/又は組成物を含む上述の抗RACK1アンチセンス分子の使用である。
【0146】
さらに、特定の節に記載される定義及び実施形態は、当業者によって理解されるように、それらが適切である本明細書に記載の他の実施形態に適用可能であることが意図される。例えば、以下の節において、本開示の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、明確に反対のことが示されない限り、他の任意の態様又は複数の態様と組み合わせてもよい。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせてよい。
【0147】
上記開示は、一般に、本出願について説明する。より完全な理解は、以下の具体例を参照することによって得ることができる。これらの実施例は、例示のみを目的として記載されており、適用の範囲を限定することを意図するものではない。形式の変更及び同等物の置換は、状況が示唆又は好都合になる可能性があるので考慮される。特異的用語が本明細書で使用されているが、そのような用語は説明的な意味で意図されており、限定のためではない。
【0148】
以下の非限定的な実施例は、本開示の例示である。
【0149】
実施例
培養細胞におけるRACK1のノックダウンは、FUS及びTDP43変異型の凝集を減少させるか又は阻害することができ、これは、核局在化配列を欠く変異タンパク質の部分的な核送還を伴う。
【0150】
RACK1とTDP43又はFUSとの共凝集がリボソームサブユニットの隔離による全体的な翻訳を抑制し、RACK1のsiRNAノックダウンが全体的な翻訳を救済し、TDP-43媒介性神経変性を防止できることを示すデータが本明細書にある。
【0151】
実施例1
ヒト胚性腎臓293T(HEK293T)細胞株をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Rockville,MD)から購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)、GlutaMax(商標)-1(2mM)及び抗生物質(50U/mlペニシリン及び50mg/mlストレプトマイシン)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で、5%CO2、37℃で維持した。HEK293T細胞を、製造業者の指示に従って、リポフェクタミンLTX試薬(ThermoFisher Scientific)を用いて、HAタグ付きdNLS TDP-43、R495x-FUS、又はP525L-FUS cDNAプラスミドでトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に細胞を分析した。
【0152】
RACK1ノックダウンは、製造業者の指示に従ってヒトRACK1(Santa Cruz Biotechnology、sc-36354)を特異的に標的とする3つの19~25ヌクレオチドsiRNAプールをリポフェクタミンRNAiMAXトランスフェクション試薬(ThermoFisher Scientific)を用いて導入し、72時間インキュベートし、続いて上記のHAタグ付きdNLS TDP-43、R495-FUS、又はP525L-FUSのcDNAプラスミドをトランスフェクションすることによって達成した。
【0153】
翻訳の表面センシング(Surface Sensing of Translation)(SUnSET)を、全体的な翻訳を監視するために行った。cDNAトランスフェクションの48時間後に、細胞を5μg/mlのピューロマイシン(ThermoFisher Scientific)と馴化培地中で、37℃で10分間インキュベートし、その後直ちに免疫細胞化学的又は生化学的手順を行った。
【0154】
HAタグ付きdNLS TDP-43、R495x-FUS、P525L-FUS、SOD1変異型、RACK1、及び全体的なタンパク質翻訳の発現を視覚化するために免疫細胞化学(ICC)を行った。細胞をリン酸生理食塩水緩衝液(PBS)で2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で、室温(RT)で15分間固定し、続いて20mMグリシンで一定の揺動によりRTで10分間洗浄した。次いで、細胞を、PBS、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、10%正常ヤギ血清、及び0.1%Triton-X-100を含むブロッキング緩衝液とRTで30分間インキュベートした。以下の一次抗体:ウサギポリクローナル抗HA(Abcam,ab9110,1:1000)、ニワトリポリクローナル抗HA(Abcam,ab9111,1:8,000)、マウスモノクローナル抗RACK1(BD Biosciences,610178,1:500)、及びマウスモノクローナル抗ピューロマイシン(ThermoFisher Scientific,クローン 12D10,1:1000)とRTで1時間、又は4℃で一晩インキュベートした。次いで、細胞をPBS/0.1%Triton-X-100で一定の揺動により10分間、3回洗浄し、続いてAlexa Fluor(登録商標)ヤギ抗ウサギ、マウス、又はニワトリの二次抗体(ThermoFisher Scientific、1:1000)と暗所で、RTで30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBS/0.1%Triton-X-100で10分間、3回洗浄し、5%PBSに浸漬し、DAPIを有するProLong Gold Anti-fading Mount培地(ThermoFisher Scientific、P36931)でマウントした。細胞を共焦点顕微鏡(Leica TCS SP8 MP)により分析した。
【0155】
全体的な翻訳レベルを定量するために、上記のSUnSET後に、細胞を冷PBSで2回洗浄し、2%SDSに溶解し、続いて30%パワーで15秒間超音波処理して、総タンパク質を抽出した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(ThermoFisher Scientific)により決定した。各トランスフェクションから10μgのタンパク質を、4~12% NuPage SDS PAGE(ThermoFisher Scientific)で分離し、PVDF膜上に移し、5%スキムミルクと0.1% Tween-20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)で、RTで1時間ブロッキングした。以下の一次抗体:ウサギ抗HA(Abcam,ab9110,1:1000)、マウス抗RACK1(BD Biosciences,610178,1:2000)、マウス抗ピューロマイシン(ThermoFisher Scientific,クローン12D10,1:10,000)、マウス抗aチューブリン(ProteinTech,66031-1-Ig,1:20,000)と4℃で一晩インキュベートした。膜を、一定の揺動によりTBS/0.1%Tween(TBST)で10分間、RTで3回洗浄し、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗マウス又は抗ウサギ二次抗体(GE、1:5000)とRTで30分間インキュベートした。次いで、膜をTBSTで10分間、3回洗浄し、SuperSignal(商標)West Femto Maximum Sensitivity Substrate(ThermoFisher Scientific)で発色した。
【0156】
結果
本明細書に記載の方法を用いて、dNLS TDP-43の細胞質凝集体がRACK1凝集及び共凝集を誘導し(
図1)、dNLS TDP-43凝集体がトランスフェクト細胞における全体的な翻訳を抑制することが実証される(
図8)。さらに、変異型SOD1の細胞質凝集体がRACK1凝集及び共凝集を誘導することが実証される(
図3)。
【0157】
dNLS FUS、R495x-FUSとP525L-FUSの細胞質凝集体が、RACK1凝集及び共凝集を誘導する(
図2)ことが実証され、dNLS-FUSでトランスフェクトされた個々の細胞が全体的な翻訳抑制を実証する(
図7)。リボソーム結合欠損変異型(DE-RACK1)が変異FUS、R495x-FUSとRACK1の共凝集を破壊し(
図4)、P525L-FUSとRACK1の共凝集を部分的に破壊することも実証される(
図5)。さらに、変異FUSが全体的な翻訳を抑制し、これはRACK1ノックダウンによって救済することができることが実証される(
図6A、6B、及び6C)。
【0158】
RACK1を標的とするsiRNA(RACK1 siRNA)は、RACK1をノックダウンし、細胞質におけるdNLS TDP-43凝集を減弱させ、核発現を部分的に回復させる(
図9)が、空ベクターをトランスフェクトした細胞における内因性核内TDP43発現には影響しない(
図10)。
【0159】
RACK1 siRNAは、細胞質における変異FUS、R495x-FUS(
図11)及びP525L-FUS(
図12)の凝集を減弱させ、変異FUS、R495x-FUSの核内発現を部分的に回復させる(
図13)。RACK1 siRNAは、空ベクターをトランスフェクトした細胞における内因性核内FUS発現に影響を及ぼさない(
図14)。
【0160】
dNLS TDP-43、RACK1と40S(マーカーとしてのリボソーム小サブユニット、Rps6)は共凝集し(
図15)、dNLS R495x-FUS、RACK1と40Sは共凝集し(
図16)、dNLS P525L-FUS、RACK1と40Sは共凝集する(
図17)。さらに、dNLS TDP-43、RACK1と60S(マーカーとしてのリボソーム大サブユニット、RPL14)は共凝集し(
図18)、dNLS R495x-FUS、RACK1と60Sは共凝集し(
図19)、dNLS、P525L-FUS、RACK1と60Sは共凝集する(
図20)。
【0161】
RACK1ノックダウン時に、「救済された」核dNLS TDP-43(
図21A及び21B)又はdNLS FUS、P25L-FUS(
図22A及び22B)は、いずれのリボソームサブユニットとも会合しない。dNLS TDP-43(
図21A及び21B)又はdNLS FUS、P525L-FUS(
図22A及び22B)が細胞質内に残存する場合、典型的な大きな凝集体とは対照的に、より拡散したパターンを示すことが多く、リボソームと相互作用したままである。
【0162】
dNLS FUS又はTDP-43とRACK1共凝集体がポリリボソーム40S及び60Sサブユニットを補足し、全体的な翻訳抑制をもたらす(
図15~20)。RACK1ノックダウンは、dNLS FUS又はTDP-43凝集体を細胞質内に分散させるか、又は細胞の一部でそれらの核発現を回復させ、その結果、凝集体からポリリボソームを放出し、全体的な翻訳を救済する(
図21~23)。SUnSET ICCは、dNLS TDP-43凝集体とは異なり、フィラメント状/散在性のdNLS TDP-43発現細胞が正常な全体的な翻訳を示すことを示す(
図8)。このデータは、RACK1をノックダウンすることが、内因性核内TDP-43に影響を与えることなく病理学的TDP-43/FUS凝集体及び翻訳機構の機能を正常化する大きな可能性を提示し、RACK1をALS及びFTLDにとって非常に魅力的な治療標的にすることを示唆する。
【0163】
実施例2
以下の方法を用いてRACK1 mRNAを標的とするsiRNAsを設計した。
【0164】
工程1.siRNAメタ予測結果を5つのサーバー(下に列挙した)から収集した。候補siRNAの開始位置について、5つのサーバーについてサーバベースの予測スコアを記録する。各サーバーのスコア定義は異なり、次のように定義する。
Thermo FisherのBLOCK-It(商標)RNAiデザイナーツール:半分の星の間隔で0から5個の星(0~5)の予測品質を与える(リンク:https://rnaidesigner.thermofisher.com/rnaiexpress/setOption.do?designOption=sirna)。スコアを、0.1間隔で最大スコア1に正規化した。
siDirectのRNAi設計ツール:このサーバーは、配列内の各開始位置に対して1又は0のスコアが与えられるはい/いいえのバイナリ予測を与える。(リンク:http://sidirect2.rnai.jp/design.cgi)。
ロチェスター大学医療センターのMathews研究室のOligoWalk siRNAデザインツール:このサーバーは、効率的なsiRNAであるために、所与の配列に0~1の連続確率を与える(リンク:http://rna.urmc.rochester.edu/cgi-bin/server_exe/oligowalk/oligowalk_form.cgi)。この確率は、スコアに直接変換される。
InvivogenのsiRNAウィザードデザインツール:このサーバーは、予測が行われていない場合、予測を有効なsiRNA、中程度のsiRNA、又は効果のないsiRNAのうちのいずれかに分類する(リンク:https://www.invivogen.com/sirnawizard/design_advanced.php)。これらのカテゴリーは、それぞれ1、0.5、又は0のスコアに変換される。
GenescriptのsiRNAターゲットファインダー:このサーバーは、各予測に対して正規化されていないスコアを与える(リンク:https://www.genscript.com/tools/sirna-target-finder)。スコア値は、その後、最大予測スコアで割ることによって1に正規化した。
【0165】
工程2.正規化後、5つのサーバーからのスコアを合計し、合計S(x)を得た。S(x)は、各塩基対にスコアが割り当てられているか、ゼロである可能性があるため、サイト間で非常に変動する、すなわちバラバラである。S(x)のバラバラな分布を平滑化するために、sigma=8bpでGaussianフィルタを適用すると、平滑化されたホットスポットスコアHS(x)が得られる(
図24はスプライシング後のRACK1エクソンmRNAのHS(x)を示し、
図25はスプライシング前のRACK1 mRNAの8つのイントロン領域のHS(x)を示す)。
【0166】
工程3.HS(x)のピークは、効果的なsiRNA予測を与えると予測されるRNA配列のゾーンを示す。
【0167】
既知のsiRNA/shRNAを表1に提供し、それらの開始位置を
図24にプラス記号としてラベルする。Santa CruzのsiRNAは、246、631及び892から始まる位置から始まるmRNAに結合する3つの配列の混合物である。下段の括弧内に示される配列「(aa)」は、標的配列ではないが、アンチセンス分子がsiRNAである場合に組み込むことができるオーバーハング配列である。
【0168】
【0169】
RACK1 mRNAに対する合成siRNAを表2に提供する。それらに対応するピークは、
図24において星のマーカーとしてラベル付けされている。
【表2】
【表3】
【0170】
mRNAを標的とするsiRNA:コード領域(配列108~1059)内で、
図24中の他の重要なピークは、位置887、909、474、212、646、618、748、779、685、242、584、295、508、988、405、160及び178を含む。それらの対応する標的化配列を表3に列挙する。配列は、高いHS(x)から低いHS(x)の順に列挙されている。
【表4】
【表5】
【0171】
プレmRNA(スプライスブロッキングsiRNA)を標的とするsiRNA:スプライスブロッキングsiRNAは、RACK1プレmRNAのイントロンとエクストロン領域の境界に結合するように設計されている。ホットスポットスコアHS(x)をmRNAと同じ方法で構築する。エクストロン-イントロン境界のホットスポットスコアを抽出し、
図25に示す。提案する標的配列を表4に示す。配列は、タンパク質翻訳の5’から3’まで、又はN末端からC末端まで列挙されている。
【0172】
【0173】
陰性対照siRNA:予測方法の有効性を試験するために、低いHS(x)スコア領域を陰性対照として用いた。
図24における各ゼロスコア領域の中央を、
図24のより広いゼロスコア領域からより狭いゼロスコア領域の順に表5に列挙する。
【表8】
【表9】
【0174】
結果
siR-2及びsiR-3 siRNA配列はRACK1のノックダウンに成功した(
図26)。HEK293T細胞を、siRNAトランスフェクションの前日に、1ウェルあたり250,000細胞の密度で6ウェルプレート(ThermoFisher Scientific)上に播種した。10μMストックの陰性対照又はRACK1 siRNAを、製造業者の指示に従ってリポフェクタミンRNAiMAXトランスフェクション試薬(ThermoFisher Scientific)を使用して細胞に導入し、1ウェルあたり25pmol(又は10,000細胞あたり1pmol)の最終濃度を達成した。トランスフェクション後72時間の時点で、細胞を2%SDSで溶解し、続いて30%パワーで15秒間超音波処理して、総タンパク質を抽出した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(ThermoFisher Scientific)により決定した。各試料から10μgのタンパク質を4~12%のNuPAGE SDS-PAGE(ThermoFisher Scientific)上で分離し、PVDF膜上に移し、上記のようにRACK1及びローディング対照α-チューブリンについてウェスタンブロットした。ウェスタンブロットバンド強度を、ImageJを用いて定量化した。RACK1強度を、各レーンにおける対応するαチューブリン強度に正規化した。次いで、各トランスフェクションの正規化したRACK1強度を、トランスフェクトしていない(UT)細胞と比較した。
【0175】
実施例3:RACK1のノックダウンは、インビボでのhTDP-43誘導性神経変性を防止する
実施例1に示すように、培養細胞内でのRACK1ノックダウンは、凝集を低下させること;核の局在化を回復すること;及びTDP-43誘導性タンパク質合成抑制を緩和することを含む多くの方法でhTDP-43発現によって引き起こされる表現型を改善する。これらの知見を拡張するために、RACK1ノックダウンによるhTDP43誘導毒性の低下が、ニューロンにおいてもインビボで生じ、生体ネットワーク内で機能することが本明細書でさらに実証された。
【0176】
モジュール標的発現を可能にするキイロショウジョウバエ発現系を用いた。UAS-Gal4発現系(Rodriguezら,2012;
図27A及び27Bで説明)を用いて、目的の対立遺伝子の発現をGMRプロモーターによって促進し、ひいてはニューロン変性の読み出し情報に広く使用される細胞集団の網膜ニューロンに大幅に発現を制限した。ヒトTDP43対立遺伝子の野生型(WT)及びALS関連点変異(Q331K)(Eldenら 2010)を使用した。RACK1-RNAiの有無にかかわらず、網膜ニューロン内でhTDP43のWT又はQ331Kのいずれかを発現するハエを作製した(
図27B)。
【0177】
図27Aを参照すると、一般に、ハエの1系統は、タンパク質Gal4の発現を促進する選択した細胞集団に特異的なプロモーターからなる導入遺伝子を保有する。別の安定なハエの系統は、タンパク質コード又はRNAiであり得る目的の配列の発現を促進するために、上流活性化配列(UAS)を有する導入遺伝子を保有する。UASが活性ではないと、これらのハエは導入遺伝子を発現しない。しかし、これらの2系統のハエを交配し、各導入遺伝子の1つのコピーを有する子孫を生成すると、F1ハエは目的の細胞内でのみGal4タンパク質を生成し、次いでUASに結合して活性化し、目的の遺伝子/標的の生成をオンにする(Rodriguezら,2012)。
図27Bを参照して、網膜ニューロンでGal4を発現するGMR-Gal4ドライバー系統(Bloomington Drosophila Stock Centre(BDSC)系統#9146から入手)を使用し、5つのUAS系統:
1)UAS-hTDP43
WT(Eldenら,2010;BDSC #79587より入手)
2)UAS-hTDP43
Q331K(Eldenら,2010;BDSC #79590より入手)
3)UAS-RACK1-RNAi(Perkinsら,2015;BDSC #60399より入手)
4)同じ染色体上で3と組換えた1
5)同じ染色体上で3と組換えた2
のうちの1つと交配させた。
【0178】
これらの交配により、RACK1-RNAiの有無にかかわらず、網膜ニューロンにおいて野生型又は変異型hTDP43のいずれかを発現するハエを生成する。RNAiを調製するために用いられるショートヘアピンRNAは、ヘアピンID# SH047-D12を有し;フォワードオリゴはCAAGACCATCAAGCTGTGGAA(配列番号76)であり、リバースオリゴはTTCCACAGCTTGATGGTCTTG(配列番号77)である。親系統は各導入遺伝子についてヘテロ接合性であり、マーカーを有するバランサー染色体も有するので、ドライバーのみ又は非促進UAS導入遺伝子のみを保有する実験ハエの同胞も生成される。これらのハエは対照として使用する。
【0179】
各遺伝子型のハエのコホートを成体期の最初の6日間(A1~A6)監視し、網膜ニューロン変性について毎日スコア化した。様々な遺伝子型の対照ハエは、正常な眼形態のベースラインを提供する。代表的な写真を
図28A~28Lに提供し、統計解析と共に詳細な数値を
図29並びに以下の表6及び表7に示す。軽度の変性を示す眼では、単眼は腹側縁(矢印)から欠損する場合が多く、この縁が明らかに無傷である変性のない目とは対照的である。さらに、死にかけている単眼の暗い点が観察できる。
【0180】
図28A、28E、28I(左列)に示すように、hTDP43
WTはA1(
図28A)で軽度の神経変性を引き起こし、これはA6まで持続し(
図28E)、対照には存在しない(
図28I)。
図28B、28F、28J(第2カラム)に示すように、hTDP43
WTとRACK1-RNAiを共発現するハエは、A1(
図28B)又はA6(
図28F)で変性はなく、対照(
図28J)と区別がつかない。
図28C、28G、28K(第3カラム)に示すように、hTDP43
Q331KはA1では軽度(
図28C)の変性を引き起こすが、時間の経過とともに悪化し、A6では一部は軽度(
図28G)で、一部は中等度(
図28K)の症例をもたらす。RACK1-RNAiをhTDP43
Q331Kと共発現させると、変性はA1(
図28D)からA6(
図28H)まで軽度のままである。
図28Lは、RACK1-RNAiのみのGMR発現が表現型を引き起こさないことを示すさらなる対照である。Liら、2010によって公表されたシステム:0=正常;1=25%未満の単眼喪失;2=25~50%の単眼喪失;3=壊死の小さな領域(黒い斑点)を伴う50~75%の単眼喪失;4=壊死の大きな領域を伴う75%超の単眼喪失に従ってハエをスコア化した。各パネルでは、右上の数字は、その目に与えられたスコアを示す。
【0181】
網膜変性の定量化を
図29に示す。表6は、ハエの眼についての神経変性スコアの結果を示す。
【表10】
遺伝子型あたり約50匹のハエを毎日スコア化した。実験ハエについて、3行は、A1~A6の各日に0、1又は2のスコアが付与されたハエの割合を示す。GMR>hTDP43
WTの100%に1のスコアを毎日付与し、GMR>hTDP43
WTRACK1-RNAiの100%に0のスコアを毎日付与した。GMR>hTDP43
Q331Kハエ全てにはA1とA2に1のスコアを付与したが、その後に悪化した割合が増加し、2のスコアを付与した。GMR>hTDP43
Q331KRACK1-RNAi全てにA1~A6で1のスコアを付与した。様々な対照には、全ての齢で0のスコアを付与した。表7に示すように、カイ二乗検定をペアごとの比較として行い、極端に低いp値は、示したコホートの全てのペアが互いに有意に異なっていたことを示す:hTDP43
WTは対照とは異なり(1行目);変異型TDP43はWTと異なり(3行目);RACK1-RNAiの添加は、両方のhTDP43
WT(2行目)及びhTDP43
Q331K(4行目)に有意差をもたらす。
図29で、GMR>hTDP43
Q331K(齢とともに悪化する唯一の遺伝子型)のカプラン・マイヤー曲線は、どの所定の日にもスコアが1のままである(2に低下するのではなく)ハエの割合を示す。これは、非常に有意に異なるGMR>hTDP43
Q331KRACK1-RNAiと比較して示されている(ログランク検定:p=0.002。エラーバーは95%信頼区間である)。
【0182】
【0183】
網膜ニューロンでhTDP-43
WTを発現する全てのハエが、軽度の神経変性を示し、公表された知見(Eldenら,2010)を再現したことが判明した。これはA1で明らかであり(
図28A)、続く5日間にわたって変化しなかった(
図28E、並びに表6及び7、上段)。際立って対照的に、RACK1-RNAiとhTDP-43
WTを共発現するハエの100%が、全ての齢において、変性のない正常な眼形態を示した(
図28B、28F、表6及び7、2行目)。そのため、RACK1ノックダウンはhTDP-43
WT誘導変性を完全に救済する。変異型hTDP-43
Q331Kの発現はまた、ハエの100%において網膜ニューロン変性を引き起こした(
図28C、28G、28K)。これは、hTDP-43
WT発現によって引き起こされるものよりも重篤であり、また時間の経過とともに顕著に悪化し(表6及び7、3行目、
図29)、そのため、疾患の2つの特徴を具現化した。対照的に、RACK1-RNAiとhTDP-43
Q331Kを共発現するハエは、軽度の変性を示し、A1からA6まで軽度のままであった。(
図2D、2H、表6及び7、4行目、
図29)。そのため、RACK1ノックダウンは、hTDP-43
Q331Kによって引き起こされる経時的な神経変性の悪化を完全に防止する。
【0184】
実施例4:アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)結合ヒトRACK1 mRNAを作製し、表8で詳述する。塩基への修飾は以下のとおりである。ASOは、全ての塩基間にホスホロチオエート結合を有する。2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)修飾を、中央の10個のDNA塩基と共に各末端の5つのRNA塩基に使用し、「ギャップマー」構造を形成する。ASO配列がRACK1に結合するmRNA開始位置が示されている。ASO配列をDNAとして表してもよいが、チミジン(T)がウラシル(U)であるRNAも企図される。
【0185】
【0186】
実施例5:アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビトロ及びインビボ研究
細胞培養
実施例4に記載のASO#1~#10をヒト由来野生型HeLa細胞で試験した。10%ウシ胎児血清、GlutaMax(商標)-1(2mM)、ペニシリン(50U/ml)、及びストレプトマイシン(50mg/ml)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%CO2で細胞を培養した。ASO処理の1日前に、ナイーブ細胞を12ウェルプレート(Corning(商標)Costar(商標)平底細胞培養プレート、ThermoFisher Scientific)に1ml培地中75,000細胞/ウェルの密度で播種し、20~30%培養密度に達するまで一晩増殖させた。
【0187】
ASO処理
実施例4に記載の250nM、500nM、又は1μMのASO#1~#10を、リポフェクタミンRNAiMAXトランスフェクション試薬(ThermoFisher Scientific)を用いて、1μMのASOあたり5μlのRNAiMAXの割合で細胞に導入した。細胞を、ASO/RNAiMAX複合体を含む新鮮な培地で、溶解するまで72時間インキュベートした。
【0188】
タンパク質抽出及びイムノブロッティング
細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、2%SDSで溶解し、25%振幅で10秒間超音波処理した。溶解物を14,000 RPMで10分間遠心分離することによって清澄化し、タンパク質濃度をBCA(ThermoFisher Scientific)によって測定した。各試料3~5μgを4~12%NuPAGEBis-Tris SDSPAGE(ThermoFisher Scientific)上で分離し、PVDF膜上に移し、続いて標準的な手順に従ってウェスタンブロッティングを行った。以下の一次抗体:RACK1(BD Biosciences、1:1,000)及びローディング対照αチューブリン(Protein Tech、1:20,000)をウェスタンブロッティングに使用した。バンド強度を、ImageJを用いて定量化した。結果を
図30及び
図31に示す。図からわかるように、RACK1発現の減少は、未処理細胞と比較してASO処理細胞において、特にASO #4、#9又は#10で処理した細胞において見られる。ASO #4は、低用量(0.25μM)でのRACK1発現の減少に有効であったため、より高用量(0.5μM又は1μM)では調査しなかった。
【0189】
インビボ研究
ASO #9及び#10を研究のために選択した。1.0μL容量中200μMのASOを、各ASOについて2匹、すなわちASO #9又はASO #10、又は陰性対照ASOの6匹のマウスの右線条体に直接片側に注入し、各マウス脳の左線条体は非注入対照として機能した。注入の7日後に、線条体をマイクロ解剖し、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo)を補充した200μLのラジオイムノ沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(50mMのTris pH7.5;150mMのNaCl;1%のTriton-X-100;1%のデオキシコール酸;0.1%のSDS;1mMのEDTA))中でスタンドアップホモジナイザーを用いてホモジナイズした。試料を4℃で14,000rpmで5分間遠心分離し、上清のタンパク質濃度をBCAにより推定した。各試料の25μgを4~12%NuPAGE SDS-PAGE上で分離した。ウェスタンブロッティング分析では、以下の抗体:RACK1(BD Biosciences、1:1,000)、aチューブリン(ローディング対照、Protein Tech、1:50,000)を使用した。ImageJを用いて、バンド強度を定量した。
【0190】
ウェスタンブロットによって測定し、チューブリン発現に正規化すると、右線条体におけるASO #9又はASO #10の注入は、対照ASOの注入と比較して、RACK1をより少なくした。
【0191】
本出願は、現在好ましい例であると考えられているものを参照して説明されているが、開示した実施例に限定されないことを理解されたい。それとは反対に、本願は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な改変及び同等のアレンジメントを包含することが意図される。
【0192】
全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照によりその全体が組み込まれることを具体的かつ個々に示される場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、例えば、表又は他の場所に提供される登録番号及び/又はバイオマーカー配列(例えば、タンパク質及び/又は核酸)を含む本明細書に提供される各登録番号に関連付けられる配列は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0193】
特許請求の範囲は、好ましい実施形態及び実施例によって限定されるべきではなく、全体としての記載と一致する最も広い解釈を与えられるべきである。
参考文献
【化1】
【手続補正書】
【提出日】2022-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】