(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】直交部分最小二乗によるクロマトグラフィ性能の紫外線モニタリング
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20230524BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230524BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20230524BHJP
C07K 1/16 20060101ALN20230524BHJP
【FI】
G01N30/86 V
G01N30/88 J
G01N30/74 E
C07K1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562434
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 US2021027043
(87)【国際公開番号】W WO2021211550
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エリック・シャーリー
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ブレナン
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・マオ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045AA40
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045FA74
4H045GA20
4H045GA26
(57)【要約】
カラムクロマトグラフィ性能をモニタリングするための方法が開示される。この方法は、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得することと、直交部分最小二乗(OPLS)モデルで1つ以上の取得されたクロマトグラムUVトレースを分析し、それによって、カラムの不調の前のカラムの劣化の検出及び1つ以上のクロマトグラムUVトレースにおけるUVシグナルの定量分析を可能にすることと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラムクロマトグラフィ性能をモニタリングする方法であって、
試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得することと、
直交部分最小二乗(OPLS)モデルで前記1つ以上の取得されたクロマトグラムUVトレースを分析し、それによって、カラムの不調の前のカラムの劣化の検出及び前記1つ以上のクロマトグラムUVトレースにおけるUVシグナルの定量分析を可能にすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記OPLSモデルを作成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記OPLSモデルを作成することが、
前記OPLSモデルのプロセス又は単位操作を選択することと、
前記選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することと、
前記収集された生データを正規化及び整列することと、
任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することと、
多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットすることと、
分類及びフォーマットされたデータを前記多変量ツールにインポートして、訓練セットを生成することと、
前記OPLSモデルを生成することと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生成されたOPLSモデルを最適化することと、前記最適化されたOPLSモデルを検証及び試験することと、を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プロセス又は単位操作が、単一分子に対するクロマトグラフィ単位操作である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセス又は単位操作が、前記単一分子に対するタンパク質親和性クロマトグラフィステップである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することが、前記1つ以上のサイクル/ロット/実行のための対応するカラム体積でのUV吸光度値を収集することを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記収集された生データを正規化及び整列することが、UV吸光度値を正規化及び整列することと、カラム体積を整列することと、を含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
UV吸光度値を正規化することが、UV生シグナルの大きさの差の変動を除去することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することは、1つ以上の許容されないUVクロマトグラムトレースが利用可能ではない場合、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することを含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された前記1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得する前に、試料を前記クロマトグラフィシステムに提供することを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記クロマトグラフィシステムが、液体クロマトグラフィシステムである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、タンパク質を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が、抗体、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体が、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
クロマトグラフィカラム性能のUVモニタリングのための直交部分最小二乗(OPLS)モデルを作成する方法であって、
前記OPLSモデルのプロセス又は単位操作を選択することと、
前記選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行の紫外線(UV)クロマトグラムトレースについての生データを収集することと、
前記収集された生データを正規化及び整列することと、
任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することと、
多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットすることと、
分類及びフォーマットされたデータを前記多変量ツールにインポートして、訓練セットを生成することと、
前記OPLSモデルを生成することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記生成されたOPLSモデルを最適化することと、前記OPLSモデルを検証することと、前記最適化されたOPLSモデルを試験することと、前記最適化されたOPLSモデルを将来の操作に適用して、クロマトグラフィカラム性能をモニタリングすることと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プロセス又は単位操作が、単一分子に対するクロマトグラフィ単位操作である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロセス又は単位操作が、前記単一分子に対するタンパク質親和性クロマトグラフィステップである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVクロマトグラムトレースについての生データを収集することが、前記1つ以上のサイクル/ロット/実行のための対応するカラム体積でのUV吸光度値を収集することを含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記収集された生データを正規化及び整列することが、UV吸光度値を正規化及び整列することと、カラム体積を整列することと、を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
UV吸光度値を正規化することが、UV生シグナルの大きさの差の変動を除去することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することは、1つ以上の許容されないUVクロマトグラムトレースが利用可能ではない場合、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することを含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上のUVクロマトグラムトレースが、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のUVクロマトグラムトレースである、17~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
前記クロマトグラフィシステムが、液体クロマトグラフィシステムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記試料が、タンパク質を含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質が、抗体、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの組み合わせである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記モノクローナル抗体が、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
カラムクロマトグラフィ性能をモニタリングするための実行可能なプログラムが記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記プログラムが、マイクロプロセッサに、
試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得するステップと、
直交部分最小二乗(OPLS)モデルで前記1つ以上の取得されたクロマトグラムUVトレースを分析し、それによって、カラムの不調の前のカラムの劣化の検出及び前記1つ以上のクロマトグラムUVトレースにおけるUVシグナルの定量分析を可能にするステップと、を実行するように命令する、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項32】
前記OPLSモデルを作成するための命令を更に含む、請求項31に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項33】
前記OPLSモデルを作成することが、
前記OPLSモデルのプロセス又は単位操作を選択することと、
選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することと、
前記収集された生データを正規化及び整列することと、
任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することと、
多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットすることと、
分類及びフォーマットされたデータを前記多変量ツールにインポートして、訓練セットを生成することと、
前記OPLSモデルを生成することと、を含む、請求項32に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項34】
前記生成されたOPLSモデルを最適化することと、前記最適化されたOPLSモデルを検証及び試験することと、を更に含む、請求項33に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項35】
前記プロセス又は単位操作が、単一分子に対するクロマトグラフィ単位操作である、請求項33又は34に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項36】
前記プロセス又は単位操作が、前記単一分子に対するタンパク質親和性クロマトグラフィステップである、請求項35に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項37】
前記選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することが、前記1つ以上のサイクル/ロット/実行のための対応するカラム体積でのUV吸光度値を収集することを含む、請求項33~36のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項38】
前記収集された生データを正規化及び整列することが、UV吸光度値を正規化及び整列することと、カラム体積を整列することと、を含む、請求項33~37のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項39】
UV吸光度値を正規化することが、UV生シグナルの大きさの差の変動を除去することを含む、請求項38に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項40】
任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することは、1つ以上の許容されないUVクロマトグラムトレースが利用可能ではない場合、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することを含む、請求項33~39のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項41】
試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された前記1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得する前に、試料を前記クロマトグラフィシステムに提供することを更に含む、請求項31~40のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項42】
前記クロマトグラフィシステムが、液体クロマトグラフィシステムである、請求項31~41のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項43】
前記試料が、タンパク質を含む、請求項31~42のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項44】
前記タンパク質が、抗体、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの組み合わせである、請求項43に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項45】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項44に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項46】
前記モノクローナル抗体が、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である、請求項45に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィに関し、具体的には、例えば、直交部分最小二乗(orthogonal partial least squares、OPLS)モデルの使用による、クロマトグラフィ性能の紫外線(ultraviolet、UV)モニタリングのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィは、バイオ医薬品産業において抗体を含むタンパク質を精製するために使用される分離技術である。クロマトグラフィは、生成物(所望のタンパク質)と相互作用する小さい粒子(樹脂)を充填したカラムを使用して、生成物を不純物から分離する。クロマトグラムは、クロマトグラフィの実行中に、UV吸光度、電導度、及びpHなどのパラメータが、どのように経時的に変化するのかを確認するためのクロマトグラフ分離の時間ベースのグラフィカルな記録である。クロマトグラフィカラム中の樹脂の充填層は、経時的に劣化し得、これはクロマトグラフィ分離の効率に影響を及ぼし、製品品質に影響を与える可能性がある。
【0003】
クロマトグラフィカラムがいつ劣化し始めたかを知ることは有益であり、製品品質に影響を与え得るほどカラムが劣化する前に、カラムを再充填することができる。カラムの劣化の兆候は、クロマトグラムのUV吸光度のトレースに現れることが多いが、劣化の特徴は、視覚的に特定することが難しい場合がある。クロマトグラフィベースのタンパク質分析は、カラムの劣化を検出及びモニタリングする改善された方法から恩恵を得ることができ、その後、改善された抗体の精製を含む、改善されたタンパク質の精製につながり得る。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本発明は、カラムクロマトグラフィの性能をモニタリングする方法を提供し、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得することと、直交部分最小二乗(OPLS)モデルで1つ以上の取得されたクロマトグラムUVトレースを分析し、それによって、カラムの不調の前のカラムの劣化の検出及び1つ以上のクロマトグラムUVトレースにおけるUVシグナルの定量分析を可能にすることと、を含む。
【0005】
一部の実施形態では、本方法は、OPLSモデルを作成することを更に含む。
【0006】
一部の実施形態では、OPLSモデルを作成することは、OPLSモデルのプロセス又は単位操作を選択することと、選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することと、収集された生データを正規化及び整列することと、任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することと、多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットすることと、分類及びフォーマットされたデータを多変量ツールにインポートして、訓練セットを生成することと、OPLSモデルを生成することと、を含む。
【0007】
一部の実施形態では、本方法は、生成されたOPLSモデルを最適化することと、最適化されたOPLSモデルを検証及び試験することと、を更に含む。
【0008】
一部の実施形態では、プロセス又は単位操作は、単一分子に対するクロマトグラフィ単位操作である。
【0009】
一部の実施形態では、プロセス又は単位操作は、単一分子に対するタンパク質親和性クロマトグラフィステップである。
【0010】
一部の実施形態では、選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することは、1つ以上のサイクル/ロット/実行のための対応するカラム体積でのUV吸光度値を収集することを含む。
【0011】
一部の実施形態では、収集された生データを正規化及び整列することは、UV吸光度値を正規化及び整列することと、カラム体積を整列することと、を含む。
【0012】
一部の実施形態では、UV吸光度値を正規化することは、UV生シグナルの大きさの差の変動を除去することを含む。
【0013】
一部の実施形態では、任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することは、1つ以上の許容されないUVクロマトグラムトレースが利用可能ではない場合、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することを含む。
【0014】
一部の実施形態では、本方法は、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得する前に、試料をクロマトグラフィシステムに提供することを更に含む。
【0015】
一部の実施形態では、クロマトグラフィシステムは、液体クロマトグラフィシステムである。
【0016】
一部の実施形態では、試料は、タンパク質を含む。
【0017】
一部の実施形態では、タンパク質は、抗体、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの組み合わせである。
【0018】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体を含む。
【0019】
一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である。
【0020】
また、クロマトグラフィカラム性能のUVモニタリングのための直交部分最小二乗(OPLS)モデルを作成する方法が開示され、OPLSモデルのプロセス又は単位操作を選択することと、選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行の紫外線(UV)クロマトグラムトレースについての生データを収集することと、収集された生データを正規化及び整列することと、任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することと、多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットすることと、分類及びフォーマットされたデータを多変量ツールにインポートして、訓練セットを生成することと、OPLSモデルを生成することと、を含む。
【0021】
一部の実施形態では、本方法は、生成されたOPLSモデルを最適化することと、最適化されたOPLSモデルを検証及び試験することと、を更に含む。
【0022】
一部の実施形態では、プロセス又は単位操作は、単一分子に対するクロマトグラフィ単位操作である。
【0023】
一部の実施形態では、プロセス又は単位操作は、単一分子に対するタンパク質親和性クロマトグラフィステップである。
【0024】
一部の実施形態では、選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することは、1つ以上のサイクル/ロット/実行のための対応するカラム体積でのUV吸光度値を収集することを含む。
【0025】
一部の実施形態では、収集された生データを正規化及び整列することは、UV吸光度値を正規化及び整列することと、カラム体積を整列することと、を含む。
【0026】
一部の実施形態では、UV吸光度値を正規化することは、UV生シグナルの大きさの差の変動を除去することを含む。
【0027】
一部の実施形態では、任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することは、1つ以上の許容されないUVクロマトグラムトレースが利用可能ではない場合、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することを含む。
【0028】
一部の実施形態では、本方法は、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得する前に、試料をクロマトグラフィシステムに提供することを更に含む。
【0029】
一部の実施形態では、クロマトグラフィシステムは、液体クロマトグラフィシステムである。
【0030】
一部の実施形態では、試料は、タンパク質を含む。
【0031】
一部の実施形態では、タンパク質は、抗体、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの組み合わせである。
【0032】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体を含む。
【0033】
一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である。
【0034】
実施形態では、カラムクロマトグラフィ性能をモニタリングするための実行可能なプログラムが記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、プログラムが、マイクロプロセッサに、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得するステップと、直交部分最小二乗(OPLS)モデルで1つ以上の取得されたクロマトグラムUVトレースを分析し、それによって、カラムの不調の前のカラムの劣化の検出及び1つ以上のクロマトグラムUVトレースにおけるUVシグナルの定量分析を可能にするステップと、を実行するように命令する、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0035】
一部の実施形態では、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、OPLSモデルを作成するための命令を更に含む。
【0036】
一部の実施形態では、OPLSモデルを作成することは、OPLSモデルのプロセス又は単位操作を選択することと、選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することと、収集された生データを正規化及び整列することと、任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することと、多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットすることと、分類及びフォーマットされたデータを多変量ツールにインポートして、訓練セットを生成することと、OPLSモデルを生成することと、を含む。
【0037】
一部の実施形態では、本方法は、生成されたOPLSモデルを最適化することと、最適化されたOPLSモデルを検証及び試験することと、を更に含む。
【0038】
一部の実施形態では、プロセス又は単位操作は、単一分子に対するクロマトグラフィ単位操作である。
【0039】
一部の実施形態では、プロセス又は単位操作は、単一分子に対するタンパク質親和性クロマトグラフィステップである。
【0040】
一部の実施形態では、選択されたプロセス又は単位操作のための1つ以上のカラムサイクル/ロット/実行のUVトレースについての生データを収集することは、1つ以上のサイクル/ロット/実行のための対応するカラム体積でのUV吸光度値を収集することを含む。
【0041】
一部の実施形態では、収集された生データを正規化及び整列することは、UV吸光度値を正規化及び整列することと、カラム体積を整列することと、を含む。
【0042】
一部の実施形態では、UV吸光度値を正規化することは、UV生シグナルの大きさの差の変動を除去することを含む。
【0043】
一部の実施形態では、任意選択的に、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することは、1つ以上の許容されないUVクロマトグラムトレースが利用可能ではない場合、正規化された生データから人為的に作成される曲線を生成することを含む。
【0044】
一部の実施形態では、本方法は、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得する前に、試料をクロマトグラフィシステムに提供することを更に含む。
【0045】
一部の実施形態では、クロマトグラフィシステムは、液体クロマトグラフィシステムである。
【0046】
一部の実施形態では、試料は、タンパク質を含む。
【0047】
一部の実施形態では、タンパク質は、抗体、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの組み合わせである。
【0048】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体を含む。
【0049】
一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体である。
【0050】
様々な実施形態では、上記又は本明細書で考察される実施形態の特徴又は構成要素のうちのいずれも組み合わされ得、かかる組み合わせは本開示の範囲内に包含される。上記又は本明細書で考察されるいずれの特定の値も、上記又は本明細書で考察される別の関連する値と組み合わされて、それらの値が範囲の上限及び下限を表す範囲を列挙することができ、かかる範囲及びかかる範囲内にある全ての値は本開示の範囲内に包含される。上記又は本明細書で考察される値のうちの各々は、1%、5%、10%、又は20%の変動で表され得る。他の実施形態は、後述の発明を実施するための形態の精査から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1A】本明細書に開示される実施形態による例示的なプロセスワークフローを示す。
【
図1D】UV OPLSモデルを作成する例示的な方法を示すフローチャートを示す。
【
図2】例示的な結合・溶出クロマトグラムを示し、溶出ブロックが強調表示されている。
【
図3】例示的なフロースルークロマトグラムを示し、UVリフトオフが強調表示されている。
【
図4】本明細書に開示される実施形態に従って生成された例示的なエクスポートされた生データを示す。
【
図5-1】本明細書に開示される実施形態によるデータの例示的な正規化を示す。
【
図5-2】本明細書に開示される実施形態によるデータの例示的な正規化を示す。
【
図6-1】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図6-2】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図6-3】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図7】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図8】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図9-1】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図9-2】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図10-1】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図10-2】本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【
図11-1】本明細書に開示される実施形態による、Simcaインポートのための例示的なデータの分類及びフォーマットを示す。
【
図11-2】本明細書に開示される実施形態による、Simcaインポートのための例示的なデータの分類及びフォーマットを示す。
【
図12A】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図12B】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図13A】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図13B-1】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図13B-2】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図14A】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図14B】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図15A】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図15B-1】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図15B-2】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図16】本明細書に開示される実施形態による、多変量ツールへの例示的なデータのインポートを示す。
【
図17】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な生成を示す。
【
図18】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な生成を示す。
【
図19】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な生成を示す。
【
図20】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な生成を示す。
【
図21】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図22A】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図22B】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図23A】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図23B】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図24A】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図24B】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図25-1】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図25-2】本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。
【
図26A】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図26B】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図27A】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図27B】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図28】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図29-1】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図29-2】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図30】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図31-1】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図31-2】本明細書に開示される実施形態に従って、新しいクロマトグラムを許容されるか又は許容されないものとして分類するために作成されたOPLSモデルの例示的な適用を示す。
【
図32-1】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図32-2】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図33】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図34】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図35】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図36】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図37】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図38A】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図38B】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図39A】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図39B】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図40】本明細書に開示される実施形態によるOPLSモデルを使用することによって生成された結果を示す。
【
図41】本明細書に開示される方法の態様を実行するための例示的な計算環境の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明が記載される前に、記載される特定の方法及び実験条件が異なり得るため、本発明がかかる方法及び条件に限定されないことを、理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するようには意図されていないことも、理解されたい。いずれの実施形態又は実施形態の特徴も、互いに組み合わせることができ、かかる組み合わせは、本発明の範囲内に明示的に包含される。
【0053】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して使用されるとき、その値が列挙された値から1%以下だけ変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99及び101並びにそれらの間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0054】
様々な操作は、実施形態を理解するのに役立ち得るような様式で、複数の個別の操作として説明され得る。しかしながら、説明の順序は、これらの動作が順序に依存することを意味するものと解釈されるべきではない。
【0055】
「結合された」及び「接続された」という用語は、それらの派生語と共に使用され得る。これらの用語は、互いに同義語として意図されていない。むしろ、態様、「接続された」は、2つ以上の要素が互いに、物理的又は電気的に直接接触していることを示すために使用され得る。「結合された」は、2つ以上の要素が、物理的又は電気的に直接接触していることを意味し得る。しかしながら、「結合された」はまた、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、依然として協同するか、又は互いに相互作用することを意味し得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」という用語は、非限定的であることを意味し、それぞれ、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」を意味すると理解される。
【0057】
本明細書に記載されるものと同様又は同等のいずれの方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料をこれから説明する。本明細書において言及される全ての特許、出願及び非特許刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本明細書で使用される略語
CHO:チャイニーズハムスター卵巣
CV:カラム体積
DDA:データ依存的取得
EIC:抽出イオンクロマトグラフ
HC:重鎖
HIC:疎水性相互作用クロマトグラフィ
HILIC:親水性相互作用液体クロマトグラフィ
HMW:高分子量
IgG:免疫グロブリンG
IPA:イソプロパノール
LC:軽鎖
LMW:低分子量
mAb:モノクローナル抗体
MW:分子量
OPLS:直交部分最小二乗
PK:薬物動態
RMSE:平均二乗誤差平方根
RP-LC:逆相液体クロマトグラフィ
SME:対象分野の専門家
SIM:選択イオンモニタリング
UV:紫外線
【0059】
定義
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、共有結合したアミド結合を有する任意のアミノ酸ポリマーを含む。タンパク質は、「ポリペプチド」として当該技術分野で一般に知られている1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。「ポリペプチド」は、アミノ酸残基、関連する天然に存在する構造バリアント、並びにペプチド結合、関連する天然に存在する構造バリアント、及びそれらの天然に存在しない合成類似体を介して連結されたそれらの非天然に存在しない合成類似体からなるポリマーを指す。「合成ペプチド又はポリペプチド」は、天然に存在しないペプチド又はポリペプチドを指す。合成ペプチド又はポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成器を使用して合成することができる。様々な固相ペプチド合成法が、当業者に既知である。タンパク質は、1つ又は複数のポリペプチドを含有して、単一の機能的生体分子を形成することができる。タンパク質は、バイオ治療用タンパク質、研究若しくは療法に使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質及び他のキメラ受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、並びに二重特異性抗体のうちのいずれかを含み得る。別の例示的な態様では、タンパク質は、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含み得る。タンパク質は、昆虫バキュロウイルスシステム、酵母システム(例えば、Pichia種)、哺乳動物システム(例えば、CHO細胞及びCHO-K1細胞のようなCHO派生物)などの組換え細胞ベースの生産システムを使用して産生され得る。バイオ治療用タンパク質及びそれらの産生を考察する最近の概説については、Ghaderi et al.,”Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,”(Biotechnol.Genet.Eng.Rev.(2012)147-75)を参照されたい。一部の実施形態では、タンパク質は、修飾、付加物、及び他の共有結合された部分を含む。これらの修飾、付加物、及び部分には、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、グリカン(例えば、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、ノイラミン酸、N-アセチルグルコサミン、フコース、マンノース、及び他の単糖類)、PEG、ポリヒスチジン、FLAGタグ、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein、MBP)、キチン結合タンパク質(chitin binding protein、CBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)、myc-エピトープ、蛍光標識、並びに他の色素などが含まれる。タンパク質は、組成物及び溶解度に基づいて分類することができ、したがって、単純タンパク質(例えば、球状タンパク質及び繊維状タンパク質)、複合タンパク質(例えば、ヌクレオタンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、色素タンパク質、リン酸化タンパク質、金属タンパク質、及びリポタンパク質)、並びに誘導タンパク質(例えば、一次誘導タンパク質及び二次誘導タンパク質)を含み得る。
【0060】
本明細書で使用される「バリアントタンパク質」又は「タンパク質バリアント」、又は「バリアント」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって標的タンパク質とは異なるタンパク質を含み得る。タンパク質バリアントは、タンパク質自体、タンパク質を含む組成物、又はそれをコードするアミノ配列を指し得る。好ましくは、タンパク質バリアントは、親タンパク質と比較して、少なくとも1つのアミノ酸修飾を有し、例えば、親と比較して、約1~約10個のアミノ酸修飾、好ましくは約1~約5個のアミノ酸修飾を有する。本明細書のタンパク質バリアント配列は、好ましくは、親タンパク質配列と少なくとも約80%の相同性、最も好ましくは、少なくとも約90%の相同性、より好ましくは、少なくとも約95%の相同性を有する。一部の例示的な実施形態では、タンパク質は、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0061】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖(ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖)から構成される免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)、並びにこれらの多量体(例えば、IgM)又はその抗原結合断片を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR、heavy chain variable region」又は「VH」)及び重鎖定常領域(CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインからなる)からなる。様々な実施形態では、重鎖は、IgGアイソタイプであり得る。場合によっては、重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4から選択される。一部の実施形態では、重鎖は、アイソタイプIgG1又はIgG4であり、任意選択的に、アイソタイプIgG1/IgG2又はIgG4/IgG2のキメラヒンジ領域を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR、light chain variable region又は「VL」)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)と称される、より保存された領域が点在する相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と称される超可変領域へと更に細分することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプ又はサブクラスの、グリコシル化免疫グロブリン及び非グリコシル化免疫グロブリンの両方への言及を含む。「抗体」という用語は、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体などの組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離された抗体分子を含む。抗体構造に関する概説については、Lefranc et al.,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,27(1)Dev.Comp.Immunol.55-77(2003)、及びM.Potter,Structural correlates of immunoglobulin diversity,2(1)Surv.Immunol.Res.27-42(1983)を参照されたい。
【0062】
抗体という用語はまた、2つ以上の異なるエピトープに結合することができるヘテロ四量体免疫グロブリンを含む「二重特異性抗体」を包含する。単一の重鎖及び単一の軽鎖及び6つのCDRを含む二重特異性抗体の半分は、1つの抗原又はエピトープに結合し、抗体の他の半分は、異なる抗原又はエピトープに結合する。場合によっては、二重特異性抗体は、同じ抗原に結合することができるが、異なるエピトープ又は非重複エピトープに結合することができる。場合によっては、二重特異性抗体の両方の半分は、二重特異性を保持しながら同一の軽鎖を有する。二重特異性抗体は、概して、米国特許出願公開第2010/0331527号(2010年12月30日)に記載されている。
【0063】
抗体(又は「抗体断片」)の「抗原結合部分」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片(VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片)、(iii)Fd断片(VH及びCH1ドメインからなる)、(iv)Fv断片(抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなる)、(v)dAb断片(VHドメインからなる、Ward et al.(1989)Nature 241:544-546)、(vi)単離されたCDR、並びに(vii)scFv(単一のタンパク質鎖を形成するように合成リンカーによって連結され、VL領域及びVH領域の対が一価の分子を形成する、Fv断片の2つのドメイン(VL及びVH)からなる)が挙げられる。ダイアボディなどの他の形態の単鎖抗体もまた、「抗体」という用語に包含される(例えば、Holliger et al.(1993)90 PNAS U.S.A.6444-6448、及びPoljak et al.(1994)2 Structure 1121-1123)を参照されたい)。
【0064】
更に、抗体及びその抗原結合断片は、当該技術分野で一般的に知られている標準的な組換えDNA技術を使用して、得ることができる(Sambrook et al.,1989を参照されたい)。トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するための方法はまた、当該技術分野で知られている。例えば、モノクローナル抗体を生成するためにVELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US6,596,541,Regeneron Pharmaceuticals,VELOCIMMUNE(登録商標)を参照されたい)又は任意の他の既知の方法を使用して、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、所望の抗原に対する高親和性キメラ抗体がまず単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に対する応答においてヒト可変領域と、マウス定常領域と、を含む、抗体を生成するように、ヒト重鎖可変領域と、ヒト軽鎖可変領域と、を含む、ゲノムが内在性マウス定常領域座に動作可能に連結されたトランスジェニックマウスの生成を包含する。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域及びヒト軽鎖定常領域をコードするDNAに動作可能に連結する。次いで、完全ヒト抗体を発現することができる細胞において、DNAを発現させる。
【0065】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒトmAbは、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発によって又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトFR配列へと移植されたmAbを含むことは企図されない。この用語は、非ヒト哺乳類において、又は非ヒト哺乳類の細胞において組換え産生された抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離された、又はヒト対象において産生された抗体を含むことを意図するものではない。
【0066】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、バイオ医薬品中に存在する任意の望ましくないタンパク質を含み得る。不純物は、プロセス及び生成物に関連する不純物を含み得る。不純物は、更に、構造が既知のもの、部分的に特徴付けられたもの、又は特定されていないものであり得る。プロセスに関連する不純物は、製造プロセスに由来し得、3つの主要なカテゴリ:細胞基質由来、細胞培養由来、及び下流由来のものを含み得る。細胞基質由来の不純物には、宿主生物及び核酸(宿主細胞ゲノム、ベクター、又は全DNA)由来のタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。細胞培養由来の不純物には、誘導剤、抗生物質、血清、及び他の培地成分が含まれるが、これらに限定されない。下流に由来する不純物には、酵素、化学的及び生化学的処理試薬(例えば、臭化シアン、グアニジン、酸化剤、及び還元剤)、無機塩(例えば、重金属、ヒ素、非金属イオン)、溶媒、担体、リガンド(例えば、モノクローナル抗体)、並びに他の浸出物が含まれるが、これらに限定されない。生成物に関連する不純物(例えば、前駆体、特定の分解生成物)は、活性、有効性、及び安全性に関して所望の生成物の特性と同等な特性を有さない、製造中及び/又は保存中に生じる分子バリアントであり得る。かかるバリアントは、修飾のタイプを特定するには、単離及び特徴付けにかなりの努力を必要とし得る。生成物に関連する不純物は、切断型、修飾形態、及び凝集体を含み得る。切断型は、ペプチド結合の切断を触媒する加水分解酵素又は化学物質によって形成される。修飾形態としては、脱アミド化、異性化、不一致S-S結合、酸化、又は変化した結合形態(例えば、グリコシル化、リン酸化)が挙げられるが、これらに限定されない。修飾形態はまた、任意の翻訳後修飾形態を含み得る。凝集体は、所望の生成物の二量体及び多量体(higher multiples)を含む(Q6B Specifications:Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products,ICH August 1999,U.S.Dept.of Health and Humans Services)。
【0067】
「低分子量(low molecular weight、LMW)タンパク質薬物不純物」という用語には、前駆体、分解生成物、切断種、タンパク質分解断片(Fab断片、Fc又は重鎖断片、リガンド又は受容体断片、H2L(2重鎖及び1軽鎖)、H2(2重鎖)、HL(1重鎖及び1軽鎖)、HC(1重鎖)、及びLC(1軽鎖)種を含む)が含まれるが、これらに限定されない。LMWタンパク質薬物不純物は、多量体タンパク質の1つ以上の成分などのタンパク質製品の不完全なバージョンである任意のバリアントであり得る。タンパク質薬物不純物、薬物不純物、又は生成物不純物は、本明細書全体を通して互換的に使用され得る用語である。LMW薬物又は生成物不純物は、一般に、所望の医薬品のものとは異なり得る活性、有効性、及び安全性などの特性を有する分子バリアントとみなされる。
【0068】
タンパク質生成物の分解は、細胞培養システムにおけるタンパク質医薬品の産生中に問題となる。例えば、タンパク質生成物のタンパク質分解は、細胞培養培地中のプロテアーゼの放出によって起こり得る。メタロプロテアーゼ又はセリン及びシステインプロテアーゼ阻害剤を阻害するために添加される可溶性鉄源などの培地添加剤は、分解を防止するために細胞培養で実施されている(Clincke,M.-F.,et al,BMC Proc.2011,5,P115)。C末端断片は、細胞培養物中のカルボキシルペプチダーゼによって、産生中に切断され得る(Dick,LW et al,Biotechnol Bioeng 2008;100:1132-43)。
【0069】
「高分子量(high molecular weight、HMW)タンパク質薬物不純物」という用語は、mAb三量体及びmAb二量体を含むが、これらに限定されない。HMW種は、2つのグループ:1)余分な軽鎖を有する単量体(H2L3及びH2L4種)及び2)単量体とFab断片の複合体、に分けることができる。更に、IdeS酵素消化による処理後、異なる二量体化断片(Fab2-Fab2、Fc-Fc、及びFab2-Fc)が形成される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「糖ペプチド/糖タンパク質」という用語は、それらの合成中又は合成後に、共有結合された炭水化物又はグリカンを有する、修飾されたペプチド/タンパク質である。特定の実施形態では、糖ペプチドは、モノクローナル抗体から(例えば、モノクローナル抗体のプロテアーゼ消化物から)得られる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「グリカン」は、1つ以上の糖単位を含む化合物であり、一般に、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、フコース(Fuc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、及びN-アセチルノイラミン酸(NeuNAc)を含む(Frank Kjeldsen,et al.Anal.Chem.2003,75,2355-2361)。モノクローナル抗体などの糖タンパク質中のグリカン部分は、その機能又は細胞位置を特定するための重要な特徴である。例えば、特定のモノクローナル抗体は、特定のグリカン部分で修飾されている。
【0072】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、少なくとも分析物分子(例えば、モノクローナル抗体から得られるような糖ペプチド)を含み、これらは、例えば、分離、分析、抽出、濃縮、又はプロファイリングを含む、本発明の方法に従って操作される。
【0073】
本明細書で使用される「分析」又は「分析する」という用語は、互換的に使用され、目的の分子を分離、検出、単離、精製、可溶化、検出、及び/又は特徴付ける様々な方法のうちのいずれかを指す。例としては、クロマトグラフィ、固相抽出、固相マイクロ抽出、電気泳動、質量分析(例えば、液体クロマトグラフィ、例えば、高性能、例えば、逆相、順相、若しくはサイズ排除、イオン対液体クロマトグラフィ、液体-液体抽出、例えば、加速流体抽出、超臨界流体抽出、マイクロ波支援抽出、膜抽出、ソックスレー抽出、沈殿、清澄、電気化学的検出、染色、元素分析、Edmund分解、核磁気共鳴、赤外線分析、フローインジェクション分析、キャピラリー電気クロマトグラフィ、紫外線検出、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される場合、「プロファイリング」という用語は、タンパク質などの化合物の含有量、組成、又は特性比を提供するために組み合わせて使用される、様々な分析方法のうちのいずれかを指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「消化」という用語は、タンパク質の1つ以上のペプチド結合の加水分解を指す。適切な加水分解剤(例えば、酵素消化又は非酵素消化)を使用して、試料中のタンパク質の消化を実行するためのいくつかのアプローチがある。本明細書で使用される場合、「加水分解剤」という用語は、タンパク質の消化を実行することができる多数の異なる薬剤のうちのいずれか1つ又は組み合わせを指す。酵素消化を実行することができる加水分解剤の非限定的な例としては、アスペルギルスSaitoiからのトリプシン、エンドプロテイナーゼArg-C、エンドプロテイナーゼAsp-N、エンドプロテイナーゼGlu-C、外膜プロテアーゼT(outer membrane protease T、OmpT)、Streptococcus pyogenesの免疫グロブリン分解酵素(immunoglobulin-degrading enzyme of Streptococcus pyogene、IdeS)、キモトリプシン、ペプシン、サーモリシン、パパイン、プロナーゼ、及びAspergillus Saitoi由来プロテアーゼが挙げられる。非酵素消化を実行することができる加水分解剤の非限定的な例としては、高温、マイクロ波、超音波、高圧、赤外線、溶媒(非限定的な例は、エタノール及びアセトニトリルである)、固定化酵素消化(immobilized enzyme digestion、IMER)、磁性粒子固定化酵素、及びオンチップ固定化酵素の使用が挙げられる。タンパク質消化のための利用可能な技術を考察している最近の概説については、Switazar et al.,”Protein Digestion:An Overview of the Available Techniques and Recent Developments”(J.Proteome Research 2013,12,1067-1077)を参照されたい。加水分解剤の1つ又は組み合わせは、タンパク質又はポリペプチド中のペプチド結合を配列特異的な様式で切断することができ、より短いペプチドの予測可能な収集物を生成する。
【0076】
タンパク質を消化するために使用することができるいくつかのアプローチが利用可能である。試料中のタンパク質を消化するための広く認められている方法のうちの1つは、プロテアーゼの使用を伴う。多くのプロテアーゼが利用可能であり、それらの各々は、特異性、効率、及び最適な消化条件に関して独自の特徴を有する。プロテアーゼは、プロテアーゼがペプチド内の非末端又は末端アミノ酸で切断する能力に基づいて分類されるように、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼの両方を指す。代替的に、プロテアーゼはまた、触媒のメカニズムに関して分類されるように、6つの異なるクラス-アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、及びメタロプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、及びスレオニンプロテアーゼを指す。「プロテアーゼ」及び「ペプチダーゼ」という用語は、互換的に使用され、ペプチド結合を加水分解する酵素を指す。プロテアーゼはまた、特異的及び非特異的プロテアーゼに分類され得る。本明細書で使用される場合、「特異的プロテアーゼ」という用語は、ペプチドの特定のアミノ酸側鎖でペプチド基質を切断する能力を有するプロテアーゼを指す。本明細書で使用される場合、「非特異的プロテアーゼ」という用語は、ペプチドの特定のアミノ酸側鎖でペプチド基質を切断する能力が低下したプロテアーゼを指す。切断嗜好性は、切断の部位としての特定のアミノ酸の数と、タンパク質配列中の切断アミノ酸の総数の比に基づいて決定され得る。
【0077】
タンパク質は、特徴付けの前に任意選択的に調製することができる。一部の例示的な実施形態では、タンパク質調製物は、タンパク質消化のステップを含む。一部の特定の例示的な実施形態では、タンパク質調製物は、タンパク質消化のステップを含み、タンパク質消化は、トリプシンを使用して実行され得る。
【0078】
一部の例示的な実施形態では、タンパク質の調製は、タンパク質を消化するステップの前に、タンパク質を変性させ、タンパク質を還元し、タンパク質を緩衝し、かつ/又は試料を脱塩するステップを含み得る。これらのステップは、必要に応じて任意の好適な様式で達成することができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「クロマトグラフィ」という用語は、移動相と呼ばれる移動する流体の流れと連続する固定相との間に分布する各溶質の相対量に基づいて、混合物の成分又は溶質を分離するためのプロセス技術を指す。移動相は、液体又は気体のいずれかであり得、一方、固定相は、固体又は液体のいずれかである。
【0080】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィ」という用語は、液体によって運ばれる化学混合物が、静止した液相又は固相の周り又は上を流れるときの化学物質の差次的分布の結果として成分に分離され得るプロセスを指す。液体クロマトグラフィの非限定的な例としては、逆相液体クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、及び疎水性クロマトグラフィが挙げられる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「多変量ツール」という用語は、複数の変数を使用して結果を予測する統計ツールを指す。多変量ツールは、データを探索、分析、及び/又は解釈することを可能にすることができる。このツールは、傾向及びクラスタを明らかにし、プロセスの変動を分析し、パラメータを特定し、かつ/又は最終結果の品質を予測することによって、データダイビングを容易にすることができる。いくつかの例では、多変量ツールは、SIMCA(umetrics,Umea,Sweden)などの市販されているツールである。
【0082】
本明細書で使用される場合、「タンパク質配列カバレッジ」という用語は、特定されたペプチドによってカバーされるタンパク質配列のパーセンテージを指す。カバー率は、見出された全てのペプチドのアミノ酸の数を、タンパク質配列全体のアミノ酸の総数で割ることによって計算することができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「データベース」という用語は、データベース内の全ての可能な配列に対して、未解釈のMS-MSスペクトルを検索する可能性を提供する、バイオインフォマティクスツールを指す。かかるツールの非限定的な例は、Mascot(www.matrixscience.com)、Spectrum Mill(www.chem.agilent.com)、PLGS(www.waters.com)、PEAKS(www.bioinformaticssolutions.com)、Proteinpilot(download.appliedbiosystems.com//proteinpilot)、Phenyx(http://www.phenyx-ms.com)、Sorcerer(www.sagenresearch.com)、OMSSA(www.pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/omssa/)、X!Tandem(www.thegpm.org/TANDEM/)、Protein Prospector(www.http://prospector.ucsf.edu/prospector/mshome.htm)、Byonic(www.proteinmetrics.com/products/byonic)、又はSequest(fields.scripps.edu/sequest)である。
【0084】
一般的な説明
上記から、抗体精製を含む、タンパク質精製を改善するための改善された方法及びシステムの必要性が存在することが理解されよう。開示された発明は、その必要性を満たす。本明細書において、UV、赤外線(infrared、IR)、又はRamenトレースなどの許容される(劣化なし)及び許容されない(劣化)クロマトグラムUVトレースの例を含むOPLSモデリングを利用して、カラム不調の早期検出及びクロマトグラムにおけるUVシグナルの定量分析を提供する方法が、開示される。一部の実施形態では、本方法は、UV OPLSモデリングを利用する。開示される方法は、対象分野の専門家(subject matter experts、SME)によって得られたプロセス知識を方程式及び手順と組み合わせて、クロマトグラムを作成して、堅牢なものから、許容されるもの、漸進的な不調、壊滅的なものまでの範囲の包括的なデータセットを作成する(
図1Aを参照)。開示される方法は、OPLSを利用して、これまで不可能であった自動化及び包括的なデータ評価などの多くの課題に対処する。開示される方法は、カラムの不調を予測するための多変量ツール(例えば、SIMCA)の使用によるプロセスモニタリングを達成する。開示されるOPLSモデルは、過去にカラムの不調がなくても構築することができ、オーバーレイ及び分析を実行するために手動プロセスを排除する(例えば、Pythonスクリプトを利用することによって)自動化することができる。数式及びプロトコルを使用することによって手順的に生成された動作不調は、不調を含まない限定された過去のデータセットの弱点を克服する。開示される方法は、クロマトグラム及びカラム性能の定量的測定を提供することができ、変動の動的特定を可能にする。したがって、開示される方法は、現在の方法に関連する欠点を排除しながら、プロセスの一貫性及び堅牢性、並びに一貫した機器の性能を確保する。
【0085】
実施形態では、開示される方法は、OPLSを利用する。OPLS回帰は、主成分分析(Principle Component Analysis、PCA)の回帰拡張によってデータの2つのブロック間の関係を分析する。例えば、X及びYマトリックスのデータ空間が構築される。第1の成分は、X及びYの空間のラインに適合するため、X及びYの射影の間の相関が最大化される。第2の成分は、X空間内の第1の成分に直交する。第1の成分は、予測的であり、XとYとの間の共分散を最大化し、一方、第2の成分以降は直交し、Yに関連しないXの構造化された変動を表す(
図1B)。OPLS-DAは、質的カテゴリ変数(例えば、良好/十分又は不良/不十分)に定量値が割り当てられて、OPLSモデルが構築され得るモデルである。
図1Cは、OPLS予測を示す概略図を示す。
【0086】
実施形態では、カラムクロマトグラフィ性能をモニタリングする方法は、試料精製及び/若しくは分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラム紫外線(UV)トレースを取得すること、並びに/又はOPLSモデルで1つ以上のクロマトグラムUVトレースを分析し、それによって、カラムの不調の前のカラムの劣化の検出及び1つ以上のクロマトグラムUVトレースにおけるUVシグナルの定量分析を可能にすること、を含む。
【0087】
実施形態では、カラムクロマトグラフィ性能をモニタリングする方法は、UV OPLSモデルを作成することを含む。
図1Dは、UV OPLSモデルを作成するための例示的なプロトコルを示すフローチャートを提供する。
図1Dに示されているように、UV OPLSモデルを作成することは、ステップ102を含み、プロセス又は単位操作が特定され、UV OPLSモデルが構築される。一部の実施形態では、これは、特定の生成物/分子に対する特定のクロマトグラフィ単位操作であり、例えば、特定の分子に対する結合及び溶出又はフロースルー設計のいずれかにおける、タンパク質親和性、イオン交換、疎水性相互作用、又はサイズ排除クロマトグラフィステップである。実施形態では、クロマトグラムにおけるUVシグナルの少なくとも一部分がモデルに供給される。クロマトグラムのいくつかの部分は、カラムの完全性を決定するのに役立たない。例えば、クロマトグラムの少なくとも1つのブロック又はセクションが使用される。一部の実施形態では、単位操作カラムモダリティが結合及び溶出である場合、溶出ブロックが分析に使用される(例えば、結合した生成物がカラムから溶出される)。
図2は、結合・溶出クロマトグラムの例を提供し、溶出ブロックが強調表示されている。一部の実施形態では、単位操作カラムモダリティがフロースルーである場合、UVシグナルのリフトオフ中に収集が開始するポイントが分析される。
図3は、フロースルークロマトグラムの例を提供し、UVリフトオフが強調表示されている。
【0088】
UV OPLSモデルを作成するための
図1Dに示される方法は、ステップ200を更に含み、UVトレースについての生データを収集する。一部の実施形態では、UVトレースについての生データを収集することは、選択された単位操作のための複数のサイクル、ロット、及び/又は実行の生データ(例えば、対応する体積でのUV吸光度値)を収集することを含む。例えば、クロマトグラフィソフトウェア(例えば、Unicorn)からのUVの生データ及びログブックは、電子記憶ファイル(例えば、Microsoft Excelファイル)にエクスポートされる。ログブックは、クロマトグラム中にどの量でどのイベントが発生したかを特定し、モデルに入力するデータのブロックを取得する場所(溶出ブロックなど) を特定するトラッカーである。次いで、クロマトグラフィステップの各実行/サイクルについて、プロセスを繰り返すことができる。
図4に示されているように、実施形態では、生データの実行/サイクルは、別個のファイル(例えば、別個のMicrosoft Excelファイル)などに記憶される。
【0089】
実施形態では、例示的な方法は、ステップ106を含み、生データを正規化及び調整する(例えば、UV値を正規化し、量を整列する)。例えば、データを正規化して、生シグナルにおける(UVメータの機能性からの)大きさの差の任意の変動を除去する。実施形態では、インポートされた生のUVデータ及びログブックデータは、マクロの使用などによって、多変量ツール(例えば、SIMCA)へのインポートのために正規化及びフォーマットされる。実施形態では、マクロによって実行されるステップは、
1. マクロが、最初に、マクロを実行するファイル(例えば、モデルを構築するためにどの実行が与えられるか)を選択するように求めることと、
2. 次に、マクロが、モデル(例えば、溶出ブロック)によって分析されるクロマトグラムのセクションを検索することと、
3. マクロが、最大及び最小のUV値を検索し、-1~1にUV値を正規化することと、
4. マクロが、カラム体積(Column Volume、CV)に関して量を正規化することと、
5. 全てのUVデータが整列する(例えば、溶出ブロックで0.02CVごとにUVシグナル値を取得する)ように、マクロが、指定されたCV間隔で正規化されたUVデータを取得することと、
6. マクロが、正規化されたデータを、Simcaインポート用にフォーマットされたテーブルに貼り付けることと、
7. 2回以上の実行が選択された場合、マクロが、ステップ2~6を繰り返すことと、を含み得る。
【0090】
実施形態では、カラム体積(CV)は、データ解像度を最大化し、必要な計算リソースを最小化するために、量間隔として最適化される。一実施形態では、0.02CVが使用される。
図5-1及び
図5-2は、本明細書に開示される実施形態に従ってデータを正規化する例を提供する。
【0091】
実施形態では、本方法は、曲線を生成する前に、データにおいてカラムの不調の発生を評価することを含む。例えば、失敗したクロマトグラムの経験的な例がある場合、人為的に生成されたクロマトグラムは必要ない場合がある。失敗したクロマトグラムの十分な数(例えば、7以上、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15以上)の例がある場合、これらのクロマトグラムは、許容されないデータセットとして機能し、人為的な曲線の生成は必要とされない。
【0092】
実施形態では、本方法は、任意選択的に、ステップ108を含み、正規化されたデータから人為的に生成された曲線を作成して、望ましくないクロマトグラムのOPLSモデルの例を提供する。例えば、ステップ108は、許容されないクロマトグラムの例がない場合に実行される。実施形態では、クロマトグラムが結合・溶出カラム用である場合、溶出ピークジェネレータMicrosoft Excelツールなどの溶出ピークジェネレータツールが使用される。実施形態では、クロマトグラムがフロースルーカラム用である場合、フロースルー曲線ジェネレータexcelツールが使用される。
【0093】
一部の実施形態では、人為的に生成される曲線を作成することは、どの実行を使用して曲線を生成するかを決定することを含む。例えば、概して約10~15回の実行は、評価するのに十分な数のクロマトグラムである。データセットが大きい(例えば、100回の実行を超える)場合、プロセスにおける変動が捕捉されるように、実行が選択される(例えば、許容されるクロマトグラムのみが選択される)。実施形態では、人為的に生成される曲線を作成することは、データを、F-Q下の生成タブにコピーし、実行のうちの1回についてのデータを、列Eにコピーすることを更に含む(例えば、チャートは、クロマトグラムがデータの隣の図に最初の色(例えば、青色)で表示されるが、数学的に生成されたクロマトグラムは、第2の色(例えば、赤色)で表示される。一部の実施形態では、人為的に生成される曲線を作成する方法は、モデルから生成される曲線を実際の実行データに整列することを含む。例えば、セルX1の平均二乗誤差平方根(root mean square error、RMSE)値の減少が止まるまで(これは、モデルがクロマトグラムに適合されたことを示す)、整列を実行し続けることができる。曲線の方程式パラメータデータをコピーし、かかる値を使用して、新しいクロマトグラムを手順的に生成する。選択された実行データに対して、以前のアクションのうちの1つ以上を繰り返すことができる。例えば、変動性を有する実行は、それらが比較的鏡像である場合、複数の実行を適合させる必要がないため、選択される。
【0094】
実施形態では、正規化されたデータの人為的に生成される曲線を作成することは、劣化を表すクロマトグラムを生成することを含む。例えば、これは、各方程式パラメータの平均値及び標準偏差値を、テーブルの行X及びYにコピーするMicrosoft Excelなどのコンピュータプログラムを使用することによって行うことができる。実施形態では、溶出ピークジェネレータでは、次の4つの用語が数学モデルで利用される:(1)Tm1:ピークリフトオフが発生する場所を決定する(例えば、tm1を減少させると、ピーク開始が左にシフトし得、それを増加させると、ピーク開始が右にシフトし得る);(2)S1:ピークリフトオフがどの程度急であるかを決定する(例えば、s1を減少させると、ピークリフトオフがより鋭くなり、一方、それを増加させると、ピークリフトオフがより幅広くなる);(3)Tm2:ピークエンドが発生する場所を決定する(例えば、tm2を減少させると、ピークエンドが左にシフトし、tm2を増加させると、ピークエンドが右にシフトする);及びS2:ピークドロップダウンがどれくらい急であるかを決定する(例えば、s2を減少させると、ピークエンドがより鋭くなり、s2を増加させると、ピークエンドがより幅広くなる)。実施形態では、例えば、溶出ピークの上部が平坦ではないか、又は利用するUVセンサが追加の入力を必要とする場合など、ピーク最大を適合させるための追加の用語を利用することができる。実施形態では、方程式パラメータは、最初に、生成タブからの平均パラメータ値及び最初に0に設定されている標準偏差(standard deviation、SD)値に設定される。これらの値を変更することにより、セルに入力された標準偏差の数によって、対応する方程式パラメータが変化するであろう(例えば、s1の隣のSDセルに3を入力すると、s1の値が3SD分増加する)。実施形態では、各パラメータがアクセスされ、SD値が増加又は減少すると、劣化の指標となる溶出ピークが作成される。例えば、ピークの広がり(tm2の増加)及びテーリング(s2の増加)、並びにフロンティング及び/又は二峰性は、同様にモデル化され得る他の共通の劣化指標である。アクションが実行されると、軽度、中程度、及び/又は主要な変動の例が作成される。一部の実施形態では、10~15の望ましくないクロマトグラムは、前述のプロセス、例えば、1つ以上の軽度の偏差、1つ以上の中程度の変動、及び1つ以上の主要な変動例を使用して作成される。実施形態では、望ましくないクロマトグラムは、中程度及び主要な偏差の例と比較して、より多数の軽度の偏差の例を含む。実施形態では、望ましくないクロマトグラムは、主要な偏差の例と比較して、より多数の中程度の偏差の例を含む。例えば、一実施形態では、生成される望ましくないクロマトグラムは、7つの軽度の偏差、5つの中程度の偏差、及び3つの主要な偏差の例を含む。
図6-1、
図6-2、
図6-3、
図7、
図8、
図9-1、
図9-2、
図10-1、及び
図10-2は、本明細書に開示される実施形態による、正規化されたデータから人為的に生成された曲線の作成を示す。
【0095】
実施形態では、本方法は、ステップ110を更に含み、SIMCAなどの多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットして、モデルを訓練するために、どのデータが許容され、どのデータが許容されないかを決定する。
図11-1及び
図11-2は、本明細書に開示される実施形態による、SIMCAインポートのための例示的なデータの分類及びフォーマットを示す。例えば、一部の実施形態では、多変量ツールにインポートするためのデータを分類及びフォーマットすることは、(1)データを正規化するために利用されるファイルにアクセスすることと、(2)データが既にインポートされた後、人為的に生成された良好な曲線及び不良な曲線のデータをコピーすることと、(3)各実行/サイクルを2つのグループ(カラムの劣化の兆候を示さないクロマトグラムを含む許容される又は「良好」のグループと、カラムの劣化(例えば、テーリング、ピークの広がり、若しくはカラムの劣化を示す当業者に既知の他の指標)を示すクロマトグラムを含む許容されない又は「不良」のグループ)に分類することと、(4)SIMCAなどの多変量ツールを用いてデータを整理及び読み取る能力を促進する、実行を分類するための追加のカテゴリ(例えば、樹脂サイクル数のカラム充填数)を提供することと(例えば、生成されたグループが色分され、SIMCAで選別され得る)、を含む。
【0096】
【0097】
OPLSモデルを生成した後、本方法は、OPLSモデルを最適化することと(ステップ116)、検証及び試験することと(ステップ118)、モデルを適用することと(ステップ120)、を含む。一部の実施形態では、モデルの適用は、新しいデータを許容されるか又は許容されないものとして分類することを含み得る。実施形態では、得られる最適化されたOPLSモデルは、例えば、数学的に生成されたクロマトグラムの入力の数及び/又は内容を、増加、減少、及び/又は修正することによって、更に増強される。例えば、OPLS設定を最適化した後、OPLSモデルが満足いかない場合、数学的に生成されたクロマトグラムの入力の数及び/又は内容を、増加、減少、及び/又は変更することによって、更に増強させる。実施形態では、OPLSモデルの最適化は、本明細書に記載の数学的に生成されたクロマトグラムの不調例を用いて反復される。
図21、
図22A、
図22B、
図23A、
図23B、
図24A、
図24B、
図25-1、及び
図25-2は、本明細書に開示される実施形態による、OPLSモデルの例示的な最適化を示す。実施形態では、OPLSを最適化することは、データにより優れたモデルに適合するパラメータを作成する別のモデルのセットがあるかどうかを判定することを含む。Q
2値は、モデルの予測力を表す(例えば、Q
2が高いほど、モデルの予測力が高くなる)。実施形態では、0.7以上のQ
2値が、許容されるとみなされる。一部の実施形態では、Q
2値を比較することによって、追加のモデルが作成されて、どのモデルがより良く新しいデータを予測することができるかを決定する。更に、追加のデータ変換は、インポートされたデータの導出又は変換されたバージョンを分析するために、SIMCAなどの多変量ツールを用いて実行することができる。実施形態では、追加のOPLSモデルを作成するために、以下のパラメータのうちの1つ以上が、調整される:(1)導関数レベル(例えば、0又は非導関数データ、1又は一次導関数、2又は二次導関数など)、(2)平滑化レベル(例えば、導関数を取得する場合、又は追加のデータ平滑化のため)、及び/又は(3)観測値の除外(例えば、クロマトグラムにおけるUVメータの誤動作)。
【0098】
実施形態では、最適化されたUV OPLSモデルを分析して、モデルの予測能力を決定する。例えば、SIMCAなどの多変量ツールを使用して、最適化されたUV OPLSモデルの予測能力を試験する。実施形態では、Y変数の並べ替え検定からのR2及びQ2値の参照分布を見つけることによって、R2及びQ2値の統計的有意性を示す並べ替えが決定される。モデルが満足のいくモデルである場合、参照R2及びQ2値は、モデルの値よりも低い値を有する。実施形態では、CVスコアプロットが生成され、これは、通常のスコアプロットに対して交差検証された成分を示す。通常のスコアプロットとほぼ一致するCVスコアプロットは、モデルが満足のいくものであることを示す。
【0099】
【0100】
実施形態では、本方法は、試料精製及び/又は分離中にクロマトグラフィシステムによって生成された1つ以上のクロマトグラムUVトレースを取得する前に、試料をクロマトグラフィシステムに提供することを更に含む。
【0101】
本明細書の説明は、UV分光光度測定を用いて開示されるOPLSモデルの使用を詳細に説明するが、開示されるモデル及び方法は、溶出液のカラムの出口をモニタリングする任意の形態の分光光度測定(RAMAN又はIRを含むが、これらに限定されない)を用いて使用され得ることが企図される。
【0102】
一部の実施形態では、試料成分を精製及び/又は分離するために、試料を分離することができるクロマトグラフィシステムは、液体クロマトグラフィシステムを含む。一部の実施形態では、システムは、クロマトグラフィシステムである、疎水性クロマトグラフィシステム、逆相液体クロマトグラフィシステム、イオン交換クロマトグラフィシステム、サイズ排除クロマトグラフィシステム、親和性クロマトグラフィシステム、又は親水性相互作用クロマトグラフィシステムである。
【0103】
一部の実施形態では、クロマトグラフィのカラム温度は、例えば市販のカラムヒーターを使用して、クロマトグラフィ実行全体を通して一定温度に維持することができる。一部の実施形態では、カラムは、約18℃~約70℃の温度で維持され、例えば、約30℃~約60℃、約40℃~約50℃、例えば、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、又は約70℃である。一部の実施形態では、カラム温度は、約40℃である。一部の実施形態では、実行時間は、約15~約240分、例えば、約20~約70分、約30~約60分、約40~約90分、約50分~約100分、約60~約120分、約50~約80分であり得る。
【0104】
一部の実施形態では、移動相は、水性移動相である。代表的な水性移動相は、208mMの酢酸ナトリウム及び10mM重炭酸アンモニウムを含有する。UVトレースは、典型的には、215及び280nmで記録される。
【0105】
一部の例示的な実施形態では、タンパク質を溶出するために使用される移動相は、質量分析計に適合する移動相であり得る。
【0106】
一部の例示的な実施形態では、液体クロマトグラフィデバイスで使用される移動相は、水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、ギ酸、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0107】
一部の例示的な実施形態では、製造操作のための移動相は、操作内及び操作間で変化する60L/時間~1800L/時間の流速を有し得る。
【0108】
一部の実施形態では、試料は、タンパク質又はタンパク質を含む細胞培養培地であり、例示的なタンパク質としては、抗体、融合タンパク質、組換えタンパク質、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
一部の実施形態では、抗体は、二重特異性抗体、抗体断片、又は多重特異性抗体である。
【0110】
一部の例示的な実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体であり、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は混合アイソタイプのモノクローナル抗体であるが、これらに限定されない。
【0111】
一部の例示的な実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質である。
【0112】
一部の例示的な実施形態では、タンパク質は、免疫グロブリンタンパク質であり得る。
【0113】
例示的な一実施形態では、タンパク質は、タンパク質バリアントであり得る。
【0114】
例示的な一実施形態では、タンパク質は、翻訳後修飾タンパク質であり得る。
【0115】
例示的な一実施形態では、翻訳後修飾タンパク質は、切断、N末端伸長、タンパク質分解、N末端のアシル化、ビオチン化、アミド化、C末端のアミド化、酸化、グリコシル化、ヨウ素化、補欠分子族の共有結合、アセチル化、アルキル化、メチル化、アデニル化、ADPリボシル化、ポリペプチド鎖内若しくはポリペプチド鎖間の共有結合架橋、スルホン化、プレニル化、ビタミンC依存性修飾、ビタミンK依存性修飾、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、脱グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイニル化、リン酸化、硫酸化、シトルリン化、脱アミド化、ジスルフィド架橋の形成、タンパク質分解的切断、ISG化、SUMO化、又はユビキチン化(タンパク質ユビキチンへの共有結合)によって形成され得る。
【0116】
例示的な一実施形態では、翻訳後修飾タンパク質は、タンパク質の酸化で形成され得る。
【0117】
実施形態では、開示される方法は、カラム充填状態の変化、汚染成分の蓄積、カラムを通るチャネリング、微粒子閉塞、固相からの脱着、又はそれらの組み合わせによるカラムの劣化をモニタリングするために使用される。実施形態では、開示される方法は、カラムの不調前に、カラムの劣化を検出する。実施形態では、開示される方法は、カラム圧力の上昇、理論段数の減少、保持時間の短縮、ピーク形状の悪化、及び/又は分離度の減少など、カラムの劣化の兆候が明らかになる前に、差し迫ったカラムの劣化を検出する。
【0118】
本明細書に記載の方法は、1つ以上の計算デバイスなどの計算環境のソフトウェア、ハードウェア、又はその両方によって実行され得ることが企図される。例えば、計算デバイスは、サーバコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、ハンドヘルドデバイス、ネットブック、タブレットデバイス、モバイルデバイス、及び他のタイプの計算デバイスを含む。
【0119】
図41は、本明細書に開示される方法の様々な態様を実装するための例示的な計算環境200を示し、クロマトグラフィ性能をモニタリングする方法をモニタリングするためのOPLSを作成及び/又は利用することを含む。計算環境200は、技術が多様な汎用又は専用の計算環境で実装され得るため、使用又は機能の範囲に関するいかなる限定を示唆することを意図するものではない。例えば、開示される技術は、本明細書に開示される方法を実装するコンピュータ実行可能命令を記憶する、処理ユニット、メモリ、及び記憶装置を含む計算デバイスを使用して実施され得る。開示される技術はまた、他のコンピュータシステム構成で実装され得、それには、ハンドヘルドデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラム可能な家電、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、クライアント/サーバシステムのコレクションなどが含まれる。開示される技術はまた、分散計算環境で実施され得、通信ネットワークを介してリンクされたリモート処理デバイスによってタスクが実行される。分散計算環境では、プログラムモジュールは、ローカル及びリモートメモリ記憶デバイスの両方に配置され得る。
【0120】
図41を参照すると、計算環境200は、メモリ220に結合された少なくとも1つの処理ユニット210を含む。
図41では、この基本構成230は、破線内に含まれている。処理ユニット210は、コンピュータ実行可能命令を実行し、実際又は仮想のプロセッサであり得る。マルチ処理システムでは、複数の処理ユニットが、コンピュータ実行可能命令を実行して、処理能力を増加させる。メモリ220は、揮発性メモリ(例えば、レジスタ、キャッシュ、RAM)、不揮発性メモリ(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリなど)、又はこれら2つの何らかの組み合わせであり得る。メモリ220は、本明細書に記載の技術のうちのいずれかを実装するソフトウェア280を記憶することができる。
【0121】
計算環境は、追加の特徴を有し得る。例えば、計算環境200は、記憶装置240、1つ以上の入力デバイス250、1つ以上の出力デバイス260、及び1つ以上の通信接続270を含む。バス、コントローラ、又はネットワークなどの相互接続機構(図示せず)は、計算環境200のコンポーネントを相互接続する。典型的には、オペレーティングシステムソフトウェア(図示せず)は、計算環境200内で実行される他のソフトウェア、及び計算環境200のコンポーネントのアクティビティを調整するための動作環境を提供する。
【0122】
記憶装置240は、取り外し可能又は取り外し不可能であり得、磁気ディスク、磁気テープ若しくは磁気カセット、CD-ROM、CD-RW、DVD、又は情報を記憶するために使用され得、かつ計算環境200内でアクセスされ得る任意の他のコンピュータ可読媒体を含む。記憶装置240は、ソフトウェア280を格納することができ、本明細書に記載の技術のうちのいずれかのための命令が含まれる。
【0123】
入力デバイス250は、キーボード、マウス、ペン、若しくはトラックボール、音声入力デバイス、スキャンデバイス、又は計算環境200への入力を提供する別のデバイスなどの、タッチ入力デバイスであり得る。オーディオの場合、入力デバイス250は、アナログ形式又はデジタル形式でオーディオ入力を受け入れるサウンドカード若しくは同様のデバイス、又は計算環境にオーディオサンプルを提供するCD-ROMリーダであり得る。出力デバイス260は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、CDライタ、又は計算環境200からの出力を提供する別のデバイスであり得る。
【0124】
通信接続270は、通信機構を介した別の計算実体への通信を可能にする。通信機構は、コンピュータ実行可能命令、オーディオ/ビデオ、又は他の情報若しくは他のデータなどの情報を伝達する。限定ではなく例として、通信機構は、有線又は無線技術を含み、電気、光学、RF、赤外線、音響、又は他のキャリアで実装される。
【0125】
本明細書の技術は、プログラムモジュールに含まれるものなどのコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で説明され得、標的の実際又は仮想のプロセッサ上の計算環境で実行される。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか、又は特定の抽象データタイプを実装するルーチン、プログラム、ライブラリ、オブジェクト、クラス、コンポーネント、データ構造などを含む。プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態で所望されるプログラムモジュール間で組み合わされるか、又は分割され得る。プログラムモジュールのコンピュータ実行可能命令は、ローカル又は分散計算環境内で実行され得る。
【0126】
開示される方法のいずれかは、コンピュータ実行可能命令又は1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、DVD若しくはCDなどの1つ以上の光学媒体ディスクなどの非一時的コンピュータ可読媒体、揮発性メモリコンポーネント(例えば、DRAM若しくはSRAM、又はハードドライブなどの不揮発性メモリコンポーネント)上に記憶され、かつコンピュータ(例えば、スマートフォン又は計算ハードウェアを含む他のモバイルデバイスを含む任意の市販のコンピュータ)上で実行される、コンピュータ実行可能命令又はコンピュータプログラム製品として実装することができる。コンピュータ可読媒体は、伝播シグナルを含まない。開示される方法を実装するためのいずれかのコンピュータ実行可能命令、並びに開示される実施形態の実装中に作成及び使用される任意のデータを、1つ以上のコンピュータ可読媒体(例えば、非一時的コンピュータ可読媒体)に記憶することができる。
【0127】
コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体のシステム、装置、デバイス、又は伝播媒体であり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)は、以下を含む:1つ以上のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み取り専用メモリ(read-only memory、ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(erasable programmable read-only memory、EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(compact disc read-only memory、CD-ROM)、光記憶装置、インターネット若しくはイントラネットをサポートするものなどの伝送媒体、又は磁気記憶装置。プログラムが、例えば、紙若しくは他の媒体を光学スキャンし、次いで、必要に応じて、好適な様式で加工され、次いで、コンピュータメモリに記憶され得るように、プログラムが電子的に捕捉され得るため、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷される紙又は別の好適な媒体でさえあり得ることに留意されたい。本文書の文脈において、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、若しくはデバイスによって、又はそれに関連したプログラムを、含有、記憶、通信、伝搬、又は伝送することができる任意の媒体であり得る。コンピュータ使用可能媒体は、ベースバンドで又は搬送波の一部としてのいずれかで、それによって具現化されたコンピュータ使用可能プログラムコードを有する伝搬データシグナルを含み得る。コンピュータ使用可能プログラムコードは、任意の適切な媒体を使用して送信され得、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなどを含むがこれらに限定されない。
【0128】
コンピュータ実行可能命令は、例えば、専用ソフトウェアアプリケーション、又はウェブブラウザ若しくは他のソフトウェアアプリケーション(リモート計算アプリケーションなど)を介してアクセス若しくはダウンロードされるソフトウェアアプリケーションの一部であり得る。かかるソフトウェアは、例えば、単一のローカルコンピュータ(例えば、任意の好適な市販のコンピュータ)上で、又はネットワーク環境(例えば、インターネットを介して、ワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、クライアントサーバネットワーク(クラウド計算ネットワークなど)、若しくは1つ以上のネットワークコンピュータを使用して他のかかるネットワークにおいて、実行することができる。
【0129】
明確にするために、ソフトウェアベースの実装の特定の選択された態様のみが記載されている。当該技術分野で周知の他の詳細は省略されている。例えば、開示される技術は、任意の特定のコンピュータ言語又はプログラムに限定されないことを理解されたい。例えば、開示される技術は、C++、Java、Perl、JavaScript、Adobe Flash、Phython、又は任意の他の好適なプログラミング言語で書かれたソフトウェアによって実装され得る。同様に、開示される技術は、任意の特定のコンピュータ又はハードウェアのタイプに限定されない。
【0130】
更に、例示的な実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又はそれらの任意の組み合わせによって実装され得る。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、又はマイクロコードに実装される場合、必要なタスクを実行するためのプログラムコード又はコードセグメントは、機械若しくはコンピュータ可読媒体に記憶され得る。コードセグメントは、処置、機能、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、プログラムコード、ソフトウェアパッケージ、クラス、又は命令、データ構造、プログラム文などの任意の組み合わせを表すことができる。
【0131】
実施形態では、(例えば、コンピュータに、開示される方法のいずれかを実行させるためのコンピュータ実行可能命令を含む)ソフトウェアベースの実施形態のいずれかは、好適な通信手段を通してアップロード、ダウンロード、又はリモートアクセスすることができる。かかる好適な通信手段は、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネット、ケーブル(光ファイバケーブルを含む)、磁気通信、電磁通信(RF、マイクロ波、及び赤外線通信を含む)、電子通信、又は他のかかる通信手段を含む。
【0132】
様々な実施形態では、製造物品を用いて、本明細書に開示される1つ以上の方法を実装することができる。製造物品は、コンピュータ可読非一時的記憶媒体及び記憶媒体を含み得る。記憶媒体は、計算デバイスを使用して、本開示の実施形態よる、開示される方法の一部又は全ての態様を装置に実施させるように構成されたプログラミング命令を含み得る。記憶媒体は、当該技術分野で既知の幅広い永続的記憶媒体を表すことができ、フラッシュメモリ、光学ディスク、又は磁気ディスクが含まれるが、これらに限定されない。このプログラミング命令は、特に、装置によるそれらの実行に応答して、装置が本明細書に記載の様々な操作を実行することを可能にし得る。例えば、記憶媒体は、本開示の実施形態による、カラムクロマトグラフィ性能をモニタリングする方法(OPLSモデルを作成することを含む)などの、開示される方法の一部又は全ての態様を装置に実施させるように構成されたプログラミング命令を含み得る。
【0133】
本明細書に記載されている様々な例示的な方法、装置、システム、及び製造物品が本明細書に記載されているが、本開示の適用範囲は、それらに限定されない。反対に、本開示は、添付の特許請求の範囲の範囲内に、文字通り又は均等論の下でのいずれかで、かなり含まれる全ての方法、装置、及び製造物品をカバーする。例えば、上記は、ハードウェア上で実行される他のコンポーネント、ソフトウェア、又はファームウェアを含む例示的なシステムを開示しているが、かかるシステムは単なる例示であり、限定とみなされるべきではないことに留意されたい。特に、開示されるハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアコンポーネントのうちのいずれか又は全ては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、ファームウェアのみ、又はハードウェア、ソフトウェア、及び/若しくはファームウェアのいくつかの組み合わせで具現化され得ることが企図される。
【実施例】
【0134】
以下の実施例は、本発明の方法をどのように作製及び使用するかに関する完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を限定することを企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はしてきたが、いくつかの実験上の誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段に示されない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、圧力は大気圧又はそれに近い圧力である。
【0135】
実施例1:事例研究:UV OPLSモデル
本明細書に開示される方法を使用して、UV OPLSモデルを生成した。
図32-1及び
図32-2に示されているように、生成されたOPLSモデルは、良好/十分なロット(左側の円)と不良/不十分なロット(右側の円)とを区別することができた。生成されたモデルは、過去のオーバーレイ又は遷移分析から容易に明らかになる前に、カラムの劣化を識別することができた。
図33は、カラムパック1122600028に関してOPLSモデルを使用して生成されたプロットである。このモデルは、目視観察により明らかになる前に、カラムの劣化を検出することができた(カラムデータは訓練セットにはなかった)。
図34は、カラムパック1122600018から生成されたプロットである。このカラムは、良好/十分の範囲内にあることをモデルが示すように、劣化していなかった(左側)。カラムは堅牢なままであり、モデルが機能していることを示す。
【0136】
実施例2:OPLSモデルの適用の拡張-手順的に生成されたクロマトグラム(例えば、実際の実験データではなく、人為的に生成されたクロマトグラム)
この実施例は、カラムの劣化が観察されたロットを使用することなく満足できるUV OPLSモデルを作成することができることを示す。フロースルーカラムの場合、収集開始時の初期UVリフトオフは、カラムベッドが劣化するにつれて広がると予想される。リフトオフは、ロジスティック成長の方程式によってモデル化することができる。データの半分を選択し、カラムを較正することを可能にする手順的に生成された曲線で増強した。
図35は、生成された曲線を示し、青色は実際のデータであり、緑色は予測に基づいて情報を与えた。
【0137】
図36は、実際に許容される過去のデータの試料セット及び劣化を表す手順的に生成された曲線(例えば、実際のデータから生成されないクロマトグラム曲線)を使用して構築されたOPLSモデルの結果を示し、そこでモデルをより保守的に作成するために使用される許容されるロットの最高値として設定された。より高い値は、より多くのカラムの劣化(手順的に生成された不調を示さない)を示した。
【0138】
図37は、モデルがカラムの不調前に約10ロットの劣化を予測することができたカラムパック1194400001の性能を予測するために使用されたモデルを示す。この実施例は、OPLSモデリングをクロマトグラフィのUVシグナリングに適用して、カラム性能におけるわずかではあるが重要な変化を検出することができることを示す。更に、開示されたモデルによる包括的な訓練セットの代わりに、手順的に生成されたデータを使用することができ、それでもカラムの劣化をモデル化することができる。
【0139】
実施例3:OPLSモデル予測
この実施例は、開示された方法によって生成された例示的なOPLSモデル予測データを提供する。
図38A及び
図38Bは、カラムパック1122600011のモデル予測を示す。TAは、劣化の発生を明確に示さなかった。分岐は、第1のロットがx=4を超えた後の次のロットに存在した。操作は、PS再充填の推奨事項よりも優先された。SME生成クロマトグラムを使用して疎水性相互作用クロマトグラフィ(hydrophobic interaction chromatography、HIC)のOPLSモデルを構築した。2点で許容される曲線の試料セットの値の標準偏差に基づいて曲線を作成するための手順を開発した。その結果が、
図39A及び
図39Bに示されている(x=-2.46を上限(許容されるロットの最高値)として設定した)。
図40は、生成されたOPLSモデルが、過去の不調からデータを使用することなく、カラムパック20及び21の劣化を予測することができたことを示している。この実施例は、手順的に生成された曲線を利用してOPLSモデルを成功裏に作成することができ、カラムの劣化をモニタリングするために使用される開示された方法には、包括的な訓練セットが必要ではないことを確認する。
【0140】
全体として、開示された方法は、カラムの劣化をモニタリングするための堅牢で感度の高い方法を提供し、これは、抗体プロセスの開発を含むタンパク質プロセスの開発を改善するために使用され得る。
【0141】
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更は、前述の明細書及び添付の図から当業者には明らかになるであろう。かかる変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】