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▶ レ ラボラトワール セルヴィエの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】抗FLT3抗体及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230524BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230524BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230524BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/46
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P37/02
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562446
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2021059646
(87)【国際公開番号】W WO2021209495
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/009,578
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】リンドステット,トリーネ
(72)【発明者】
【氏名】メランデル,エヴァ・マリア・カールセン
(72)【発明者】
【氏名】リーヴァ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン,ミッケル・ワンダール
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ランディ・ウェスト
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗FLT3抗体、ならびにそれを必要とする患者において免疫を増強する際において、及びがんを処置する際においてそれらの使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗FLT3抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗体が、
a)配列番号3及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)ならびに配列番号4及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号13及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号14及び76のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号23及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号24及び76のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号33及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号34及び76のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号43及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号44及び76のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号53及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号54及び76のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号63及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号64及び76のアミノ酸配列を含むLC;又は
h)配列番号73及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号74及び76のアミノ酸配列を含むLCを含む抗体と同じヒトFLT3のエピトープに結合する
抗FLT3抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号5~7のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号3及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号8~10のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号4のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号4及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項3】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号15~17のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号13及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号18~20のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号14及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項4】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号25~27のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号23及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号24及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項5】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号35~37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号33及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号38~40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号34のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号34及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項6】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号45~47のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号43及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号48~50のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号44のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号44及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項7】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号55~57のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号53のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号53及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号58~60のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号54のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号54のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号54及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項8】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号65~67のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号63及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号68~70のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号64のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号64及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項9】
請求項1に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、
a)前記抗FLT3抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号25~27のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号73のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号73のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号73及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含み;ならびに
b)前記抗FLT3抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号74のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号74のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号74及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項10】
抗FLT3抗体又はその抗原結合部分であって、前記抗体が、
a)それぞれ配列番号5~10;
b)それぞれ配列番号15~20;
c)それぞれ配列番号25~30;
d)それぞれ配列番号35-40;
e)それぞれ配列番号45-50;
f)それぞれ配列番号55~60;又は
g)それぞれ配列番号65~70のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む
抗FLT3抗体又はその抗原結合部分。
【請求項11】
請求項10に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、前記抗体が、
a)それぞれ配列番号3及び4;
b)それぞれ配列番号13及び14;
c)それぞれ配列番号23及び24;
d)それぞれ配列番号33及び34;
e)それぞれ配列番号43及び44;
f)それぞれ配列番号53及び54;
g)それぞれ配列番号63及び64;又は
h)それぞれ配列番号73及び74のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項12】
請求項10に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、前記抗体が、
a)それぞれ配列番号3及び4;
b)それぞれ配列番号13及び14;
c)それぞれ配列番号23及び24;
d)それぞれ配列番号33及び34;
e)それぞれ配列番号43及び44;
f)それぞれ配列番号53及び54;
g)それぞれ配列番号63及び64;又は
h)それぞれ配列番号73及び74のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項13】
IgGである、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体。
【請求項14】
IgGである、請求項13に記載の抗FLT3抗体。
【請求項15】
Fc領域中に少なくとも1つの変異を含む、請求項1~14のいずれか一項記載の抗FLT3抗体。
【請求項16】
IgGであり、IMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従って番号付けされた重鎖アミノ酸234位及び235位の1つ以上において変異を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体。
【請求項17】
234位及び235位のアミノ酸残基の一方又は両方がLeuからAlaに変異している、請求項16に記載の抗FLT3抗体。
【請求項18】
a)配列番号3及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)ならびに配列番号4及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号13及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号14及び76のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号23及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号24及び76のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号33及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号34及び76のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号43及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号44及び76のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号53及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号54及び76のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号63及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号64及び76のアミノ酸配列を含むLC;又は
h)配列番号73及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号74及び76のアミノ酸配列を含むLC
を含む抗FLT3抗体。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分であって、前記抗体又は抗原結合部分が、
a)インビトロでEOL-1細胞の増殖を刺激する;
b)インビトロでOCI-AML5細胞の増殖を刺激する;
c)20nM以下のKでヒトFLT3に結合する;
d)カニクイザルFLT3に特異的に結合する;
e)マウスFLT3に特異的に結合する;
f)インビトロでヒトFLT3に結合するFLT3リガンドを遮断しない;
g)インビトロで、細胞に提示されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質へのFLT3L-Fcの結合を遮断しない;
h)初代ヒトCD34幹細胞の増殖を刺激する;
i)初代ヒトCD34幹細胞の分化を刺激する;
j)Balb/cマウスにおいてインビボで樹状細胞動員を誘導する;及び
k)ヒトCD34幹細胞で再構成された免疫不全マウスにおいてインビボで樹状細胞動員を誘導する、より選択される少なくとも1つの特性を有する
抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項20】
前記特性の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は全てを有する、請求項19に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分及び医薬的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項22】
免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗悪性腫瘍剤、抗血管新生剤、又はチロシンキナーゼ阻害剤をさらに含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体の重鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又は軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、あるいはそれらの両方を含む、単離された核酸分子。
【請求項24】
配列番号1、2、11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62、71、及び72のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の単離された核酸分子。
【請求項25】
発現制御配列をさらに含む、請求項23又は24に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体の、重鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、及び軽鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項26に記載の宿主細胞を提供すること、抗体又は部分の発現のために適切な条件下で前記宿主細胞を培養すること、及び結果として得られた抗体又は部分を単離することを含む、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を産生するための方法。
【請求項28】
請求項1~20のいずれか一項に記載の1つ又は2つの別の抗FLT3抗体の抗原結合ドメインを含む二重特異性結合分子。
【請求項29】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分、請求項21又は22に記載の医薬組成物、あるいは請求項28に記載の二重特異性結合分子を診断過程において使用する方法。
【請求項30】
それを必要とする患者において免疫活性を増強するための方法であって、前記患者に、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分、請求項21又は22に記載の医薬組成物、あるいは請求項28に記載の二重特異性結合分子の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項31】
患者においてがんを処置するための方法であって、前記患者に、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分、請求項21又は22に記載の医薬組成物、あるいは請求項28に記載の二重特異性結合分子の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項32】
がんが、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、骨、膀胱、乳房、胃、子宮、子宮頸部、及び膵臓からなる群より選択される組織中にある、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
患者が、黒色腫、神経膠腫、多形性神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮がん、乳がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、腎細胞がん、腎臓がん、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、形質細胞新生物、骨髄異形成疾患、又は骨髄増殖性疾患を有する、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
患者に、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗悪性腫瘍剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、又は放射線治療を投与することをさらに含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
それを必要とする患者において免疫障害を処置するための方法であって、前記患者に、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分、請求項21又は22に記載の医薬組成物、あるいは請求項28に記載の二重特異的結合分子の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項36】
請求項30~35のいずれか一項に記載の方法に従って、
a)患者において免疫活性を増強する;
b)患者においてがんを処置する;又は
c)患者において免疫障害を処置するための医薬の製造のための、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗FLT3抗体又は抗原結合部分、請求項21又は22に記載の医薬組成物、あるいは請求項28に記載の二重特異性結合分子の使用。
【請求項37】
請求項30~35のいずれか一項に記載の方法に従って、
a)患者において免疫活性を増強する;
b)患者においてがんを処置する;又は
c)患者において免疫障害を処置する際における使用のための、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合部分、請求項21又は22に記載の医薬組成物、あるいは請求項28に記載の二重特異性結合分子。
【請求項38】
患者がヒトである、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法、請求項36に記載の使用、あるいは請求項37に記載の使用のための抗体もしくは抗原結合部分、使用のための医薬組成物、又は使用のための二重特異性結合分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年4月14日に出願された米国仮特許出願第63/009,578号からの優先権を主張する。その優先権出願の開示は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII書式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。配列表の電子コピーは、2021年4月9日に作成されており、022675_WO047_SL.txtという名称で、サイズは53,293バイトである。
【0003】
発明の背景
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、又はCD135は、免疫系の発生において重要な役割を果たす初期造血前駆細胞の表面上に発現されるクラスIII受容体チロシンキナーゼである。サイトカインFLT3リガンド(FLT3L)への結合時に、FLT3は二量体化し、細胞の分化、増殖、及び生存を制御する複数のシグナル伝達経路を活性化する。
【0004】
FLT3はまた、樹状細胞(DC)(専門の抗原提示細胞のクラス)により発現されることが見出されている。抗原との接触時に、樹状細胞は抗原を内在化して処理し、それをMHCクラスII複合体との会合においてT細胞に提示し、T細胞の活性化に導く。FLT3シグナル伝達は、樹状細胞の分化及び増殖において主要な役割を果たす。FLT3又はFLT3リガンド(FLT3L)における欠損を伴うマウスは、低下したDC数を示す一方で、FLT3Lで処置されたマウスは増加したDC数を示す。これらの観察は、定常状態のDC発生におけるFLT3の重要な役割を示す。
【0005】
発明の概要
本開示は、樹状細胞の活性を刺激することができる抗FTL3抗体を提供する。抗体は、それを必要とする患者、例えば、がん又は免疫不全を有する患者の免疫応答を増強するために使用することができる。また、提供するのは、これらの抗体の1つ以上を含む医薬組成物、ならびにがんの処置のための抗体及び医薬組成物の使用である。本明細書中に記載する抗体及び組成物は、患者においてがんを処置のための方法において使用してもよい;患者においてがんを処置するための医薬品の製造において使用してもよい;又は患者においてがんを処置する際における使用のためでありうる。そのようながんのための現在利用可能な処置(抗体処置を含む)と比較し、本明細書中に記載する抗体及び組成物は、単独、又は別のがん治療薬との組み合わせのいずれかで、優れた臨床応答を提供しうることが企図される。
【0006】
一部の実施形態では、本開示は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、又は17497と同じヒトFLT3のエピトープとの結合について競合又は交差競合する、あるいはそれに結合する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供する。特定の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、前記抗体の6つのCDR、重鎖及び軽鎖可変ドメイン、又は重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列により定義される。
【0007】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号5~7のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)-1~3;
ii)配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号3及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC);ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号8~10のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)-1~3;
ii)配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号4のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号4及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号15~17のアミノ酸配列を含むH-CDR-1~3;
ii)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH;
iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号13及び75のアミノ酸配列を含むHC;ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号18~20のアミノ酸配列を含むL-CDR-1~3;
ii)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVL;
iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号14及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0009】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号25~27のアミノ酸配列を含むH-CDR-1~3;
ii)配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH;
iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号23及び75のアミノ酸配列を含むHC;ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を含むL-CDR-1~3;
ii)配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVL;
iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号24及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号35~37のアミノ酸配列を含むH-CDR-1~3;
ii)配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH;
iii)配列番号33のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号33及び75のアミノ酸配列を含むHC;ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号38~40のアミノ酸配列を含むL-CDR-1~3;
ii)配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVL;
iii)配列番号34のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号34及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号45~47のアミノ酸配列を含むH-CDR-1~3;
ii)配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH;
iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号43及び75のアミノ酸配列を含むHC;ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号48~50のアミノ酸配列を含むL-CDR-1~3;
ii)配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVL;
iii)配列番号44のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号44及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号55~57のアミノ酸配列を含むH-CDR-1~3;
ii)配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH;
iii)配列番号53のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号53及び75のアミノ酸配列を含むHC;ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号58~60のアミノ酸配列を含むL-CDR-1~3;
ii)配列番号54のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVL;
iii)配列番号54のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号54及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号65~67のアミノ酸配列を含むH-CDR-1~3;
ii)配列番号63のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH;
iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号63及び75のアミノ酸配列を含むHC;ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号68~70のアミノ酸配列を含むL-CDR-1~3;
ii)配列番号64のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVL;
iii)配列番号64のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号64及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供し:
a)前記抗体の重鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号25~27のアミノ酸配列を含むH-CDR-1~3;
ii)配列番号73のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH;
iii)配列番号73のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号73及び75のアミノ酸配列を含むHC;ならびに
b)前記抗体の軽鎖は以下を含む:
i)それぞれ配列番号28~30のアミノ酸配列を含むL-CDR-1~3;
ii)配列番号74のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVL;
iii)配列番号74のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号74及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0015】
本開示はまた、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分の重鎖又はその抗原結合部分、軽鎖又はその抗原結合部分、あるいは両方をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子、ベクター、及び宿主細胞を提供する。さらに、本開示は、前記宿主細胞を培養することにより本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分を産生するための方法、ならびに本明細書中に記載する抗体又は抗原結合部分を混合することにより抗体組成物を産生するための方法を提供する。
【0016】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、続く詳細な説明において明らかである。しかし、詳細な説明は、本発明の実施形態及び態様を示している一方で、限定ではなく、例証としてだけ与えられていることを理解すべきである。本発明の範囲内での種々の変更及び修正が、詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、示した抗FLT3抗体での処理後のEOL-1細胞の増殖を示すグラフである。データは未処理コントロールに対して標準化され、各々のバーは平均値±SEM(n=3)を表す。
図2図2は、CHO-S細胞上に発現されたヒト(左上)、カニクイザル(左下)、又はマウス(右上)FLT3に対する、示した抗FLT3抗体又はコントロールの結合を示す一連のグラフである。モックトランスフェクトCHO-S細胞(右下)を陰性コントロールとして使用した。データを平均値±SEMとして提示する。
図3図3は、示した抗FLT3抗体のFLT3L遮断特性を示すセンサーグラムである。Hisタグ付きFLT3(FLT3-his)をpenta-hisバイオセンサー(配列番号79として開示する「penta-his」)上に固定し、FLT3L及び抗体(FLT3L+mAb)の結合の前に、抗FLT3抗体(mAb)を関連付けた。FLT3への総FLT3L結合を並行して測定した(FLT3Lのみ)。
図4図4は、CHO-S細胞上に発現されたヒト(左上)、カニクイザル(右上)、又はマウス(下)FLT3へのFLT3L-Fcの結合を遮断する、示した抗FLT3抗体の能力を示す一連のグラフである。データを平均値±SEMとして提示する。
図5図5は、示した抗体又はFLT3リガンドで処理されたEOL-1細胞の増殖を示すグラフである。「コントロールmAb」は、IgG-LALAフォーマットにおける無関係なタンパク質に対する抗体である。データを未処理コントロールに対して標準化し、曲線上の各々のデータポイントは平均値±SEM(n=3)を表す。
図6A図6A及び6Bは、示した抗体で処理されたEOL-1細胞(図6A)又はOCI-AML5細胞(図6B)の増殖を示すグラフである。データを未処理コントロールに対して標準化し、曲線上の各々のデータポイントは平均値±SEM(n=3)を表す。
図6B図6A及び6Bは、示した抗体で処理されたEOL-1細胞(図6A)又はOCI-AML5細胞(図6B)の増殖を示すグラフである。データを未処理コントロールに対して標準化し、曲線上の各々のデータポイントは平均値±SEM(n=3)を表す。
図7図7は、示した抗体又はFLT3リガンドで処理されたヒト初代CD34幹細胞の増殖を示すグラフである。左パネルは、IgG-LALAフォーマットにおける示した抗体の効果を示し、右パネルは、IgG-LALA又はIgGフォーマットにおける示した抗体の効果を示す。「コントロールmAb」は、IgG-LALAフォーマットにおける無関係なタンパク質に対する抗体である。データを平均値±SEM(n=4)として提示する。
図8A図8A~8Cは、示した抗体又はFLT3リガンドで処理された2人のドナーからのヒト初代CD34幹細胞の分化を示す一連のグラフである。データを、未処理コントロールと比較した、CD14細胞(図8A)及びCD1c細胞(図8B)ならびに樹状細胞亜集団(図8C)の頻度として提示する。
図8B図8A~8Cは、示した抗体又はFLT3リガンドで処理された2人のドナーからのヒト初代CD34幹細胞の分化を示す一連のグラフである。データを、未処理コントロールと比較した、CD14細胞(図8A)及びCD1c細胞(図8B)ならびに樹状細胞亜集団(図8C)の頻度として提示する。
図8C図8A~8Cは、示した抗体又はFLT3リガンドで処理された2人のドナーからのヒト初代CD34幹細胞の分化を示す一連のグラフである。データを、未処理コントロールと比較した、CD14細胞(図8A)及びCD1c細胞(図8B)ならびに樹状細胞亜集団(図8C)の頻度として提示する。
図9A図9A及び9Bは、ビヒクルと比較した、示した抗体又はFLT3Lでの処置後のBalb/cマウスにおける脾臓樹状細胞サブセットの絶対細胞数における倍数増加を示す一連のグラフである。図9A、左パネル:cDC;右パネル:cDC1。図9B、左パネル:cDC2;右パネル:pDC。抗体処理は、各々の抗体について0.1mg/kg、1mg/kg、又は10mg/kgの用量で投与した(n=5/群)。Dunnの多重比較検定を用いたKruskal-Wallisを適用した。データを平均値±SEM(p<0.05)として提示する。
図9B図9A及び9Bは、ビヒクルと比較した、示した抗体又はFLT3Lでの処置後のBalb/cマウスにおける脾臓樹状細胞サブセットの絶対細胞数における倍数増加を示す一連のグラフである。図9A、左パネル:cDC;右パネル:cDC1。図9B、左パネル:cDC2;右パネル:pDC。抗体処理は、各々の抗体について0.1mg/kg、1mg/kg、又は10mg/kgの用量で投与した(n=5/群)。Dunnの多重比較検定を用いたKruskal-Wallisを適用した。データを平均値±SEM(p<0.05)として提示する。
図10A図10A~10Dは、CD34ヒト化NCGマウスにおける、ビヒクルと比較した、IgG-LALAもしくはIgGフォーマット又はFLT3Lにおける抗FLT3抗体での処理後の絶対細胞数における増加倍率として、脾臓(図10A及び10B)及び骨髄(図10C及び10D)DCサブセットに対する効果を示す一連のグラフである。抗体処置を、各々の抗体について1mg/kg又は10mg/kgの用量で投与した(n=5~6/群)。
図10B図10A~10Dは、CD34ヒト化NCGマウスにおける、ビヒクルと比較した、IgG-LALAもしくはIgGフォーマット又はFLT3Lにおける抗FLT3抗体での処理後の絶対細胞数における増加倍率として、脾臓(図10A及び10B)及び骨髄(図10C及び10D)DCサブセットに対する効果を示す一連のグラフである。抗体処置を、各々の抗体について1mg/kg又は10mg/kgの用量で投与した(n=5~6/群)。
図10C図10A~10Dは、CD34ヒト化NCGマウスにおける、ビヒクルと比較した、IgG-LALAもしくはIgGフォーマット又はFLT3Lにおける抗FLT3抗体での処理後の絶対細胞数における増加倍率として、脾臓(図10A及び10B)及び骨髄(図10C及び10D)DCサブセットに対する効果を示す一連のグラフである。抗体処置を、各々の抗体について1mg/kg又は10mg/kgの用量で投与した(n=5~6/群)。
図10D図10A~10Dは、CD34ヒト化NCGマウスにおける、ビヒクルと比較した、IgG-LALAもしくはIgGフォーマット又はFLT3Lにおける抗FLT3抗体での処理後の絶対細胞数における増加倍率として、脾臓(図10A及び10B)及び骨髄(図10C及び10D)DCサブセットに対する効果を示す一連のグラフである。抗体処置を、各々の抗体について1mg/kg又は10mg/kgの用量で投与した(n=5~6/群)。
図11図11は、IgG-LALAフォーマット(左パネル)又はIgGフォーマット(右パネル)における示した抗体、又はFLT3リガンドで処理されたヒト初代CD34幹細胞における遺伝子発現における変化の間の相関を示す一対のグラフである。データを、陰性コントロール抗体と比較した遺伝子発現におけるlog2倍変化として提示する。
図12図12は、示した抗FLT3抗体についての競合パターン及びエピトープビンを示す概略図である。黒色線を接続することによって、交差遮断活性が示される。丸は両方向でテストされた抗体を表し、四角は一方向でのテストを表す。抗体は、他の抗FLT3抗体との競合パターンに従ってグループ化する。
図13図13は、FLT3リガンド受容体複合体(PDBエントリー:3QS9)の構造上にマッピングされた抗体17566(パネルA)及び17497(パネルB)の結合エピトープを示す一連の構造である。2つのFLT3受容体(薄い灰色)及びFLT3リガンド(白色)を漫画として表す。FLT3のドメイン1は、表面表示(濃い灰色)として示す。線状エピトープを白色として、接触残基を黒色として示す。構造は、示すように、異なる方向で見られる。FLT3受容体のN末端上部から見ると、エピトープ間の距離は約90Å(17566)及び120Å(17497)である。
【0018】
発明の詳細な説明
本開示は、患者、例えばがん患者などにおいてFLT3活性を刺激するために使用することができる新たなアゴニスト抗ヒトFLT3抗体を提供する。他に明記しない限り、本明細書中で使用するように、「FLT3」はヒトFLT3を指す。ヒトFLT3ポリペプチド配列は、以下に示すように、UniProtアクセッション番号P36888(FLT3_HUMAN)(配列番号77)の下で入手可能である:
【化1】
【0019】
用語「抗体」(Ab)又は「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書中で使用するように、ジスルフィド結合により相互接続された、2つの重(H)鎖(約50~70kDa)及び2つの軽(L)鎖(約25kDa)を含む四量体を指す。各々の重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)及び重鎖定常領域(CH)で構成される。各々の軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)及び軽鎖定常領域(CL)で構成される。VH及びVLドメインは、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された領域に散在する、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化することができる。各々のVH及びVLは、3つのCDR(本明細書中のH-CDRは重鎖からのCDRを示す;及びL-CDRは軽鎖からのCDRを示す)及び4つのFRで構成され、以下の順序で、アミノ末端からカルボキシル末端まで配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖又は軽鎖におけるアミノ酸番号、ならびにFR及びCDR領域の割り当ては、IMGT(登録商標)の定義(Euナンバリング;Lefranc et al., Dev Comp Immunol (2003) 27(1):55-77);又はKabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, MD (1987 and 1991));Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. (1987) 196:901-17;Chothia et al., Nature (1989) 342:878-83;MacCallum et al., J. Mol. Biol. (1996) 262:732-45;又はHonegger and Pluckthun, J. Mol. Biol. (2001) 309(3):657-70の定義に従いうる。
【0020】
用語「組換え抗体」は、抗体をコードするヌクレオチド配列を含む細胞又は細胞株から発現される抗体を指し、前記ヌクレオチド配列は天然では細胞に関連付けられない。
【0021】
用語「単離されたタンパク質」、「単離されたポリペプチド」、又は「単離された抗体」は、その起源又は派生源により、(1)その天然状態でそれに付随する天然に関連する成分に関連付けられない、(2)同じ種からの他のタンパク質を含まない、(3)異なる種からの細胞により発現される、及び/又は(4)自然において生じないタンパク質、ポリペプチド、又は抗体を指す。このように、化学的に合成される、又はそれが天然に由来する細胞とは異なる細胞系において合成されるポリペプチドは、その天然に関連付けられる成分から「単離」される。タンパク質はまた、当技術分野において周知のタンパク質精製技術を使用して、単離により、天然に関連付けられる成分を実質的に含まないようにしてもよい。
【0022】
用語「親和性」は、抗原と抗体の間での引力の尺度を指す。抗原についての抗体の固有の引力は、典型的には、特定の抗体-抗原相互作用の結合親和性平衡定数(K)として表現される。抗体は、Kが≦1mM、例えば、≦1μM、≦100nM、又は≦10nMである場合、抗原に特異的に結合すると言われる。K結合親和性定数を、例えば、IBIS TechnologiesからのIBIS MX96 SPRシステム又はCarterra LSA SPRプラットフォームを使用した、例えば、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore(商標))により、あるいは、例えば、ForteBioのOctet(商標)システムを使用した、例えば、生体層干渉法により測定することができる。
【0023】
本明細書中で使用する用語「エピトープ」は、抗体、又は関連分子、例えば二重特異性結合分子などに特異的に結合する抗原の部分(決定基)を指す。エピトープ決定基は、一般的に、分子、例えばアミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖などの化学的に活性な表面グループで構成され、一般的に特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。エピトープは「線状」又は「立体構造」でありうる。線状エピトープでは、タンパク質(例、抗原)と、相互作用する分子(例、抗体)の間での相互作用の点の全てが、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に生じる。立体構造エピトープでは、相互作用の点が、一次アミノ酸配列において互いに分離されているタンパク質上のアミノ酸残基にわたって生じる。一度、抗原上の所望のエピトープが決定されると、当技術分野において周知の技術を使用して、そのエピトープに対する抗体を生成することが可能である。例えば、線状エピトープに対する抗体が、例えば、線状エピトープのアミノ酸残基を有するペプチドで動物を免疫化することにより生成されうる。立体構造エピトープに対する抗体が、例えば、立体構造エピトープの関連アミノ酸残基を含むミニドメインで動物を免疫化することにより生成されうる。特定のエピトープに対する抗体はまた、例えば、対象の標的分子(例、FLT3)又はその関連部分で動物を免疫化し、次にエピトープへの結合についてスクリーニングすることにより生成することができる。
【0024】
抗体が、本開示の抗FLT3抗体と同じエピトープに結合するか、又はそれとの結合について競合するかを、当技術分野において公知の方法(競合アッセイ、エピトープビニング、及びアラニンスキャニングを含むが、これらに限定されない)を使用することにより決定することができる。一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体が飽和条件下でFLT3に結合することを可能にし、次にFLT3に結合するテスト抗体の能力を測定する。テスト抗体が参照抗FLT3抗体と同時にFLT3に結合できる場合、次にテスト抗体は参照抗FLT3抗体とは異なるエピトープに結合する。しかし、テスト抗体がFLT3に同時に結合できない場合、次にテスト抗体は、同じエピトープ、重複するエピトープ、又は本開示の抗FLT3抗体により結合されるエピトープに近接しているエピトープに結合する。この実験は、例えば、ELISA、RIA、BIACORE(商標)、SPR、生体層干渉法、又はフローサイトメトリーを使用して実施することができる。抗FLT3抗体が別の抗FLT3抗体と交差競合するか否かをテストするために、上に記載する競合方法を2方向で使用してもよく、即ち、公知の抗体がテスト抗体を遮断するか否か、及びその逆を決定してもよい。そのような交差競合実験は、例えば、IBIS MX96又はCarterra LSA SPR機器又はOctet(商標)システムを使用して実施してもよい。
【0025】
用語「ヒト抗体」は、可変ドメイン配列及び定常領域配列がヒト配列から由来する抗体を指す。この用語は、ヒト遺伝子から由来するが、しかし、例えば、免疫原性を減少させ、親和性を増加させ、及び/又は安定性を増加させるために改変された配列を伴う抗体を包含する。さらに、この用語は、非ヒト細胞において組換え的に産生された抗体を包含し、それによって、ヒト細胞に典型的ではないグリコシル化が付与されうる。この用語はまた、ヒト抗体遺伝子を伴うトランスジェニック非ヒト生物(例、OmniRat(登録商標)ラット)において産生された抗体を包含する。
【0026】
用語 抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)は、本明細書中で使用するように、抗原(例、ヒトFLT3、又はその一部)に特異的に結合するための能力を保持した抗体の1つ以上の部分又はフラグメントを指す。全長抗体の特定のフラグメントは、抗体の抗原結合機能を実施することができることが示されている。用語「抗原結合部分」内に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント:VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント:ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント;ならびに(vi)抗原に特異的に結合することが可能な単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え方法を使用して、それらを単一のタンパク質鎖(それにおいてVL及びVHドメインは対合して一価分子を形成する(単一鎖Fv(scFv)として公知である)として作製することを可能にする合成リンカーにより結合することができる。また、本開示内には、VH及び/又はVLを含む抗原結合分子がある。VHの場合では、分子はまた、CH1、ヒンジ、CH2、又はCH3領域の1つ以上を含みうる。そのような一本鎖抗体はまた、用語 抗体の「抗原結合部分」内に包含されることを意図している。一本鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディなども包含される。ダイアボディは、二価の二重特異性抗体であり、該抗体において、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、しかし、短すぎて同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にすることができないリンカーを使用し、それにより、ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対合することを強制することで、2つの抗原結合部位を作成する。
【0027】
抗体部分、例えばFab及びF(ab’)フラグメントなどは、従来の技術、例えば全抗体のパパイン又はペプシン消化などを使用して、全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分、及びイムノアドヘシン分子は、例えば本明細書中に記載されているように、標準的な組換えDNA技術を使用して得ることができる。
【0028】
抗FLT3抗体のクラス(アイソタイプ)及びサブクラスは、当技術分野において公知の任意の方法により決定することができる。一般的に、抗体のクラス及びサブクラスは、抗体の特定のクラス及びサブクラスについて特異的である抗体を使用して決定されうる。そのような抗体は商業的に入手可能である。クラス及びサブクラスは、ELISA又はウェスタンブロットならびに他の技術により決定することができる。あるいは、クラス及びサブクラスは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の定常領域の全部又は一部を配列決定し、それらのアミノ酸配列を、免疫グロブリンの種々のクラス及びサブクラスの公知のアミノ酸配列と比較し、抗体のクラスとサブクラスを決定することにより決定されうる。
【0029】
他に示さない限り、本開示中で言及する全ての抗体アミノ酸残基番号は、IMGT(登録商標)ナンバリングスキーム(Euナンバリング)下のものである。
【0030】
抗FLT3抗体
本開示は、FLT3に対して向けられた抗体、及びその抗原結合部分を提供する。特定の実施形態では、本明細書中に開示する抗体は、再構成されたヒト抗体遺伝子によりコードされる抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例、ラット)から生成されるヒト抗体である。特定の実施形態では、ヒト抗体は、例えば、プライマー由来の変異を生殖系列配列に戻して変化させるために、特定の変異を含んでもよい(例、表1中の「シンプレックス修正」バリアント配列を参照のこと)。
【0031】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体は、Fc領域に「LALA」変異(L234A/L235A)を有する。これらの変異は、ヒトFcγR(Fcガンマ受容体)への抗体の結合を妨げる。そのような抗体は有利である。なぜなら、それらは、二次エフェクター機能の低いレベルを有し、それ故に、エフェクターT細胞を枯渇させない、又は他の非悪性細胞を標的化しないためである。
【0032】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトFLT3への結合について、以下を含む抗体と競合又は交差競合する、あるいはそれと同じヒトFLT3のエピトープに結合する:
a)配列番号3及び75のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)ならびに配列番号4及び76のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号13及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号14及び76のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号23及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号24及び76のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号33及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号34及び76のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号43及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号44及び76のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号53及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号54及び76のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号63及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号64及び76のアミノ酸配列を含むLC;又は
h)配列番号73及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号74及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0033】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号7、17、27、37、47、57、又は67の重鎖CDR3(H-CDR3)アミノ酸配列を有する。
【0034】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号5~7、15~17、25~27、35~37、45~47、55~57、又は65~67のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3(H-CDR1~3)を有する。
【0035】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号3、13、23、33、43、53、63、又は73のアミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を有する。
【0036】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号3、13、23、33、43、53、63、又は73のアミノ酸配列を含むVHを有する。
【0037】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体は、配列番号3、13、23、33、43、53、63、又は73のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)VHアミノ酸配列;及び配列番号75のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)重鎖定常領域アミノ酸配列を有する。
【0038】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体は、配列番号3、13、23、33、43、53、63、又は73のVHアミノ酸配列及び配列番号75の重鎖定常領域アミノ酸配列を含む。
【0039】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号10、20、30、40、50、60、又は70の軽鎖CDR3(L-CDR3)アミノ酸配列を有する。
【0040】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号8~10、18~20、28~30、38~40、48~50、58~60、又は68~70のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3(L-CDR1~3)を有する。
【0041】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号4、14、24、34、44、54、64、又は74のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を有する。
【0042】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、配列番号4、14、24、34、44、54、64、又は74のアミノ酸配列を含むVLを有する。
【0043】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体は、配列番号4、14、24、34、44、54、64、又は74のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例えば、少なくとも90%同一である)VLアミノ酸配列;及び配列番号76のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)軽鎖定常領域アミノ酸配列を有する。
【0044】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体は、配列番号4、14、24、34、44、54、64、又は74のVLアミノ酸配列及び配列番号76の軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む。
【0045】
特定の実施形態では、抗FLT3抗体は、上に記載する重鎖のいずれか1つ及び上に記載する軽鎖のいずれか1つを含む。
【0046】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、以下のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む:
a)それぞれ配列番号5~10;
b)それぞれ配列番号15~20;
c)それぞれ配列番号25~30;
d)それぞれ配列番号35~40;
e)それぞれ配列番号45~50;
f)それぞれ配列番号55~60;又は
g)それぞれ配列番号65~70。
【0047】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、以下のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)VH及びVLを含む:
a)それぞれ配列番号3及び4;
b)それぞれ配列番号13及び14;
c)それぞれ配列番号23及び24;
d)それぞれ配列番号33及び34;
e)それぞれ配列番号43及び44;
f)それぞれ配列番号53及び54;
g)それぞれ配列番号63及び64;又は
h)それぞれ配列番号73及び74。
【0048】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、以下のアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む:
a)それぞれ配列番号3及び4;
b)それぞれ配列番号13及び14;
c)それぞれ配列番号23及び24;
d)それぞれ配列番号33及び34;
e)それぞれ配列番号43及び44;
f)それぞれ配列番号53及び54;
g)それぞれ配列番号63及び64;又は
h)それぞれ配列番号73及び74。
【0049】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体は以下を含む:
a)配列番号3及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号4及び76のアミノ酸配列を含むLC;
b)配列番号13及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号14及び76のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号23及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号24及び76のアミノ酸配列を含むLC;
d)配列番号33及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号34及び76のアミノ酸配列を含むLC;
e)配列番号43及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号44及び76のアミノ酸配列を含むLC;
f)配列番号53及び75のアミノ酸配列を含むHCならびに配列番号54及び76のアミノ酸配列を含むLC;
g)配列番号63及び75のアミノ酸配列を含むHC、ならびに配列番号64及び76のアミノ酸配列を含むLC;又は
h)配列番号73及び75のアミノ酸配列を含むHC、ならびに配列番号74及び76のアミノ酸配列を含むLC。
【0050】
本開示はまた、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、又は17497と結合について競合又は交差競合する、あるいはそれと同じエピトープに結合する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0051】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、又は17497のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む。
【0052】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、又は17497のVH及びVLとそれぞれアミノ酸配列において少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)VH及びVLを含む。
【0053】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、又は17497のそれぞれVH及びVLであるVH及びVLを含む。
【0054】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、又は17497であるか、あるいは前記抗体と同じアミノ酸配列を伴う抗体である。
【0055】
本明細書中に記載する方法により得られる抗FLT3抗体のクラスは、別のクラス又はサブクラスに変化又はスイッチさせてもよい。本開示の一部の実施形態では、VL又はVHをコードする核酸分子は、CL又はCHをそれぞれコードする核酸配列を含まないように、当技術分野において周知の方法を使用して単離される。VL又はVHをコードする核酸分子を次に、異なるクラスの免疫グロブリン分子からのCL又はCHをそれぞれコードする核酸配列に操作的に連結させる。これは、上に記載するように、CL又はCH配列を含むベクター又は核酸分子を使用して達成することができる。例えば、本来はIgMであった抗FLT3抗体はIgGにクラススイッチされうる。さらに、クラススイッチングを使用し、1つのIgGサブクラスを別のものに、例えばIgGからIgGに変換してもよい。κ軽鎖定常領域は、例えば、λ軽鎖定常領域に変化させることができ、又はその逆も同じである。所望のIgアイソタイプを伴う、本開示の抗体を産生するための例示的な方法は、抗FLT3抗体の重鎖をコードする核酸分子及び抗FLT3抗体の軽鎖をコードする核酸分子を単離する工程、重鎖の可変ドメインを得る工程、重鎖の可変ドメインについてのコード配列を、所望のアイソタイプの重鎖の定常領域についてコード配列とライゲーションする工程、細胞中のライゲーションされた配列によりコードされる軽鎖及び重鎖を発現させる工程、ならびに所望のアイソタイプを伴う抗FLT3抗体を収集する工程を含む。
【0056】
本開示の抗FLT3抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、又はIgD分子でありうるが、しかし、典型的には、IgGアイソタイプ、例えば、IgGサブクラスIgG、IgG2aもしくはIgG2b、IgG、又はIgGである。一部の実施形態では、抗体はアイソタイプサブクラスIgGである。
【0057】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体は、Fc領域中に少なくとも1つの変異を含みうる。多くの異なるFc変異が公知であり、これらの変異は抗体のエフェクター機能を変化させる。例えば、一部の実施形態では、抗FLT3抗体は、エフェクター機能を低下させる、Fc領域中の少なくとも1つの変異、例えば、228位、233位、234位、及び235位の1つ以上での変異を含み、ここで、アミノ酸位置は、IMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従って番号付けされる。
【0058】
一部の実施形態では、例えば、抗体がIgGサブクラスである場合、234位及び235位でのアミノ酸残基の1つ又は両方が、例えばLeuからAla(L234A/L235A)に変異されうる。これらの変異は、IgG抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させる。アミノ酸位置は、IMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従って番号付けされる。
【0059】
一部の実施形態では、例えば、抗体がIgG4サブクラスである場合、それは変異S228Pを含みうるが、このアミノ酸位置はIMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従って番号付けされる。この変異は、望ましくないFabアーム交換を低下させることが公知である。
【0060】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分はアゴニストである。
【0061】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、インビトロでEOL-1細胞の増殖を刺激する(例、5、10、15、20、25、30、35、40、45、あるいは50μg/mL以下の濃度で、例えば25μg/mL以下の濃度などで)。
【0062】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、インビトロでOCI-AML5細胞の増殖を刺激する(例、5、10、15、20、25、30、35、40、45、あるいは50μg/mL以下の濃度で、例えば25μg/mL以下の濃度などで)。
【0063】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトFLT3に及びカニクイザルFLT3(例、CHO-S細胞上で発現される)に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトFLT3、カニクイザルFLT3、及びマウスFLT3(例、CHO-S細胞上で発現される)に特異的に結合する。
【0064】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、インビトロでヒトFLT3へのFLT3L結合を遮断しない。特定の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、飽和条件で固定化FLT3へのFLT3L結合を遮断しない。
【0065】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、インビトロで、細胞に提示されたヒト、カニクイザル、及び/又はマウスFLT3タンパク質へのFLT3L-Fcの結合を遮断しない(例、少なくとも0.1、0.5、1、5、10、30、50、又は100μg/mLの濃度で、例えば少なくとも30μg/mLの濃度などで)。
【0066】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、初代ヒトCD34幹細胞の増殖を刺激する(例、5、10、15、20、25、30、35、40、45、あるいは50μg/mL以下の濃度で、例えば25μg/mL以下の濃度などで)。
【0067】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、初代ヒトCD34幹細胞の分化を刺激する(例、5、10、15、20、25、30、35、40、45、あるいは50μg/mL以下の濃度で、例えば25μg/mL以下の濃度などで)。
【0068】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、樹状細胞亜集団、例えばCD14細胞、CD1c細胞、pDC細胞、cDC細胞、cDC1細胞、もしくはcDC2細胞、又はそれらの任意の組み合わせなどを増加させる(例、5、10、15、20、25、30、35、40、45、あるいは50μg/mL以下の濃度で、例えば25μg/mL以下の濃度などで)。
【0069】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、免疫適格性マウス、例えばBalb/cマウスなどにおいて樹状細胞の増殖及び/又は動員を誘導する(例、0.1、1、あるいは10mg/kg以下の用量で週2回以下)。
【0070】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトCD34幹細胞で再構成された免疫不全マウスにおいて樹状細胞の増殖及び/又は動員を誘導する(例、1あるいは10mg/kg以下の用量で週2回)。特定の実施形態では、樹状細胞の増殖及び/又は動員は、マウスの脾臓、骨髄、又はその両方において誘導される。
【0071】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、約20、15、10、9、8、7、6、5、4、あるいは3nM以下(例、9nM以下)のKでヒトFLT3に結合する。
【0072】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトFLT3の細胞外ドメイン(ECD)のドメイン1(D1)に結合する。特定の実施形態では、抗体又は部分は、D1のC末端(例、FLT3リガンドに対するD1の内面上)の残基に結合する。特定の実施形態では、抗体又は部分は、FLT3リガンドに対するD1の外表面上の残基に結合する。特定の実施形態では、FLT3リガンド/受容体複合体における各々のD1上の2つのエピトープ間の距離は、90~120Åである。
【0073】
一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトFLT3アミノ酸配列の残基78~87、78~97、又は138~147を含む線状エピトープに結合する。一部の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトFLT3アミノ酸配列の残基A80及び/又はV81との組み合わせにおいて、残基A79を含むエピトープに結合する。特定の実施形態では、抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、ヒトFLT3アミノ酸配列の以下の残基を含むエピトープに結合する:
a)A79、A80、V81、T157、R161;
b)A79、A80、V81、I89、T90、R161;
c)A79、V81;
d)A79、V81、V83、A87、I89、V125、T157;又は
e)N100、L104-V106、H109-S111、E140、L142、N151、T153。
抗体又は抗原結合部分は、例えば、表8中の抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、又は17497について示すエピトープに結合しうる。特定の実施形態では、抗体又は結合部分は、抗体IMC-EB10と同じエピトープには結合しない。
【0074】
本開示では、また、上の特性の任意の組み合わせを伴う、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分が企図される。
【0075】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、以下の特性の少なくとも1つ(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11全て)を有する:
a)インビトロでEOL-1細胞の増殖を刺激する;
b)インビトロでOCI-AML5細胞の増殖を刺激する;
c)20nM以下のKでヒトFLT3に結合する;
d)カニクイザルFLT3に特異的に結合する;
e)マウスFLT3に特異的に結合する;
f)インビトロでヒトFLT3へのFLT3リガンド結合を遮断しない;
g)インビトロで、細胞に提示されたヒト、カニクイザル、又はマウスのFLT3タンパク質へのFLT3L-Fcの結合を遮断しない;
h)初代ヒトCD34幹細胞の増殖を刺激する;
i)初代ヒトCD34幹細胞の分化を刺激する;
j)Balb/cマウスにおいてインビボで樹状細胞動員を誘導する;及び
k)ヒトCD34幹細胞で再構成された免疫不全マウスにおいて、インビボで樹状細胞動員を誘導する。
例えば、特定の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、特性a)及びc)~h);a)、c)、d)、及びf)~i);a)、c)、d)、及びf)~h);a)、c)、及びf)~h);a)~c)、h)、i)、及びk);a)~c)、h)、及びi);又はa)~c)及びj)を有しうる。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、患者における樹状細胞の増殖及び/又は活性化を増加させうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、腫瘍抗原を取り込む樹状細胞の能力を増強する。
【0077】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、インビボで腫瘍成長を阻害しうる及び/又は腫瘍成長退縮を誘導しうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、がん患者における転移を遅らせうる又は逆転させうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分は、がん患者の生存を延長しうる。上の特性の任意の組み合わせも企図される。
【0078】
特定の実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、抗体又は抗体部分と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合的な又は非共有結合的な会合により形成される、より大きなイムノアドヘシン分子の一部でありうる。そのようなイムノアドヘシン分子の例は、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al., Human Antibodies and Hybridomas (1995) 6:93-101)、ならびに二価のビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド、及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al., Mol. Immunol. (1994) 31:1047-58)を含む。他の例は、抗体からの1つ以上のCDRが、共有結合的又は非共有結合的のいずれかで分子中に組み込まれ、それを、目的の抗原に特異的に結合するイムノアドヘシンを作製する場合が含まれる。そのような実施形態では、CDRは、より大きなポリペプチド鎖の一部として組み込まれうる、別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結されうる、又は非共有結合的に組み込まれうる。
【0079】
別の実施形態では、別のポリペプチドに連結された、本開示の抗FLT3抗体の全部又は一部を含む融合抗体又はイムノアドヘシンを作製してもよい。特定の実施形態では、抗FLT3抗体の可変ドメインだけがポリペプチドに連結される。特定の実施形態では、抗FLT3抗体のVHドメインは第1のポリペプチドに連結される一方で、抗FLT3抗体のVLドメインは、VH及びVLドメインが互いに相互作用し、抗原結合部位を形成することができる様式において第1のポリペプチドに会合する第2のポリペプチドに連結される。一部の実施形態では、VHドメインは、VH及びVLドメインが互いに相互作用できるように、リンカーによりVLドメインから分離される(例、一本鎖抗体)。VH-リンカー-VL抗体を次に、目的のポリペプチドに連結させる。また、2つ(又はそれ以上)の一本鎖抗体が互いに連結された融合抗体を作製することができる。これは、単一のポリペプチド鎖上で二価又は多価抗体を作製したい場合に、又は二重特異性抗体を作製したい場合に有用である。
【0080】
一本鎖抗体(scFv)を作製するために、VH及びVLをコードするDNAフラグメントを、例えば、アミノ酸配列(Gly-Ser)(配列番号78)をコードする可動性リンカーをコードする別のフラグメントに操作的に連結し、VL及びVHドメインが可動性リンカーにより連結され、VH及びVL配列を連続した単鎖タンパク質として発現できるようにする。例えば、Bird et al., Science (1988) 242:423-6;Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85:5879 83;及びMcCafferty et al., Nature (1990) 348:552 4を参照のこと。一本鎖抗体は、1つのVH及びVLだけが使用される場合には一価;2つのVH及びVLが使用される場合は二価;又は、2を上回るVH及びVLが使用される場合は多価でありうる。例えば、ヒトFLT3及び別の分子に特異的に結合する二重特異性又は多価抗体を生成してもよい。
【0081】
他の実施形態では、他の修飾抗体を、抗FLT3抗体をコードする核酸分子を使用して調製してもよい。例えば、「カッパボディ」(Ill et al., Protein Eng. (1997) 10:949-57)、「ミニボディ」(Martin et al., EMBO J. (1994) 13:5303-9)、「ダイアボディ」(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:6444-8)、又は「ヤヌシン(Janusins)」(Traunecker et al., EMBO J. (1991) 10:3655-9及びTraunecker et al., Int. J. Cancer (Suppl.) (1992) 7:51-2)を、本明細書の教示に従って標準的な分子生物学的技術を使用して調製してもよい。
【0082】
本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分を誘導体化する、又は別の分子(例、別のペプチド又はタンパク質)に連結することができる。一般的に、抗体又はその部分は、FLT3結合が誘導体化又は標識により有害な影響を受けないように誘導体化される。したがって、本開示の抗体及び抗体部分は、本明細書中に記載するヒト抗FLT3抗体のインタクトな形態及び改変された形態の両方を含むことを意図する。例えば、本開示の抗体又は抗体部分は、1つ以上の他の分子実体、例えば別の抗体(例、二重特異性抗体又はダイアボディ)、検出薬剤、医薬的薬剤、及び/又は抗体もしくは抗体部分と別の分子との会合を媒介することができるタンパク質もしくはペプチド(例えばストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)に(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合又は他により)機能的に連結することができる。
【0083】
誘導体化抗体の1つの型は、(例えば、二重特異性抗体を作製するための、同じ型又は異なる型の)2つ又はそれ以上の抗体を架橋することにより産生される。適切なクロスリンカーは、ヘテロ二官能性であり、適したスペーサーにより分離された2つの明確な反応性の基を有するもの(例、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性のもの(例、スベリン酸ジスクシンイミジル)を含む。そのようなリンカーは、例えば、Pierce Chemical Company(イリノイ州ロックフィールド)から入手可能である。
【0084】
抗FLT3抗体又は抗原結合部分はまた、化学基、例えばポリエチレングリコール(PEG)、メチル基もしくはエチル基、又は炭水化物基などで誘導体化することができる。これらの基は、抗体の生物学的特徴を改善するために、例えば、血清半減期を増加させるために有用でありうる。
【0085】
本開示に従った抗体又は抗原結合部分も標識されうる。本明細書中で使用するように、用語「標識」又は「標識された」は、抗体中での別の分子の組み込みを指す。一部の実施形態では、この標識は検出可能なマーカーであり、例えば、放射性標識アミノ酸の組み込み、又はマークされたアビジン(例、光学方法又は比色方法により検出することができる蛍光マーカー又は酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの付加である。一部の実施形態では、標識又はマーカーは、治療薬、例えば、薬物コンジュゲート又は毒素でありうる。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する種々の方法が当技術分野において公知であり、これらを使用してもよい。ポリペプチドについての標識の例は、以下を含むが、これらに限定されない:放射性同位体又は放射性核種(例、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体についての結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁性薬剤、例えばガドリニウムキレートなど、毒素、例えば百日咳毒素など、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシンならびにそれらの類似体又は同族体。一部の実施形態では、標識は、潜在的な立体障害を低下させるために、種々の長さのスペーサーアームにより付加される。
【0086】
一部の実施形態では、本開示に従った抗体又は抗原結合部分は、イムノコンジュゲートを形成するために細胞毒性薬剤にコンジュゲートされうる。一部の実施形態では、本開示に従った抗体又は抗原結合部分は、放射性同位体にコンジュゲートされうる。
【0087】
特定の実施形態では、本開示の抗体は、中性形態(両性イオン形態を含む)において、又は正もしくは負荷電種として存在しうる。一部の実施形態では、抗体は、対イオンと複合体化し、医薬的に許容可能な塩を形成しうる。
【0088】
抗FLT3抗体組成物
本開示はまた、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分の1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を含む併用治療(例、組成物)を提供する。特定の実施形態では、併用治療(例、組成物)は、抗FLT3抗体又は抗原結合部分の2つを含む。併用治療は、例えば、前記の抗体又は抗原結合部分、あるいは前記の抗体又は抗原結合部分を含む医薬組成物を使用した処置の方法の形態をとりうる。
【0089】
一部の実施形態では、本開示は、第1の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分及び第2の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を含む組成物を提供し、第1及び第2の抗体は以下である:
- それぞれ抗体17566及び17526;
- それぞれ抗体17566及び17667(又は17667-0);
- それぞれ抗体17566及び17679;
- それぞれ抗体17566及び17494;
- それぞれ抗体17566及び17543;
- それぞれ抗体17566及び17497;
- それぞれ抗体17526及び17667(又は17667-0);
- それぞれ抗体17526及び17679;
- それぞれ抗体17526及び17494;
- それぞれ抗体17526及び17543;
- それぞれ抗体17526及び17497;
- それぞれ抗体17667(又は17667-0)及び17679;
- それぞれ抗体17667(又は17667-0)及び17494;
- それぞれ抗体17667(又は17667-0)及び17543;
- それぞれ抗体17667(又は17667-0)及び17497;
- それぞれ抗体17679及び17494;
- それぞれ抗体17679及び17543;
- それぞれ抗体17679及び17497;
- それぞれ抗体17494及び17543;
- それぞれ抗体17494及び17497;
- それぞれ抗体17543及び17497;又は
- それぞれ抗体17667及び17667-0。
【0090】
一部の実施形態では、組成物は、前記第1及び第2の抗体と同じエピトープに結合する、又はそれと結合について競合する抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0091】
一部の実施形態では、この組成物は、前記第1抗体のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分、ならびに前記第2抗体のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0092】
一部の実施形態では、この組成物は、前記第1抗体のVH及びVLアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)アミノ酸配列を伴うVH及びVLを含む抗体又はその抗原結合部分、ならびに前記第2抗体のVH及びVLアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である(例、少なくとも90%同一である)アミノ酸配列を伴うVH及びVLを含む抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0093】
一部の実施形態では、この組成物は、前記第1抗体のVH及びVLアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分、ならびに前記第2抗体のVH及びVLアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0094】
一部の実施形態では、この組成物は、前記第1抗体のHC及びLCアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分、ならびに前記第2抗体のHC及びLCアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0095】
特定の実施形態では、前記組成物は、以下からなる群より選択される1、2、又はそれ以上の抗体又はその抗原結合部分を含みうる:
a)配列番号5~7、15~17、25~27、35~37、45~47、55~57、又は65~67のアミノ酸配列をそれぞれ含むH-CDR1~3を含む抗体;
b)VHが配列番号3、13、23、33、43、53、63、又は73のアミノ酸配列と配列において少なくとも90%同一である抗体;
c)VHが配列番号3、13、23、33、43、53、63、又は73のアミノ酸配列を含む抗体;
d)HCが配列番号3及び75、13及び75、23及び75、33及び75、43及び75、53及び75、63及び75、又は73及び75のアミノ酸配列を含む抗体;
e)配列番号8~10、18~20、28~30、38~40、48~50、58~60、又は68~70のアミノ酸配列をそれぞれ含むL-CDR1~3を含む抗体;
f)VLが配列番号4、14、24、34、44、54、64、又は74のアミノ酸配列と配列において少なくとも90%同一である抗体;
g)VLが配列番号4、14、24、34、44、54、64、又は74のアミノ酸配列を含む抗体;
h)LCが配列番号4及び76、14及び76、24及び76、34及び76、44及び76、54及び76、64及び76、又は74及び76のアミノ酸配列を含む抗体;
i)H-CDR1~3及びL-CDR1~3が配列番号5~10、15~20、25~30、35~40、45~50、55~60、又は65~70のアミノ酸配列をそれぞれ含む抗体;
j)配列番号3及び4、13及び14、23及び24、33及び34、43及び44、53及び54、63及び64、又は73及び74のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH及びVLを含む抗体;
k)配列番号3及び4、13及び14、23及び24、33及び34、43及び44、53及び54、63及び64、又は73及び74のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH及びVLを含む抗体;
l)3及び75、ならびに4及び76;13及び75、ならびに14及び76;23及び75、ならびに24及び76;33及び75、ならびに34及び76;43及び75、ならびに44及び76;53及び75、ならびに54及び76;63及び75、ならびに64及び76;又は73及び75、ならびに74及び76のアミノ酸配列をそれぞれ含むHC及びLCを含む抗体。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体組成物は、インビボで腫瘍成長を阻害しうる、及び/又は腫瘍成長退行を誘導しうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体組成物は、がん患者における転移を遅くしうる又は逆転させうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体組成物は、がん患者の生存を延長しうる。
【0097】
本開示はまた、本明細書中に記載する抗FLT3抗体組成物を産生するための方法を提供し、該方法は、第1の抗FLT3抗体又は抗原結合部分及び第2の抗FLT3抗体又は抗原結合部分を提供すること、ならびに2つの抗体又は部分を混合することを含む。
【0098】
二重特異性結合分子
本開示はまた、本明細書中に記載する抗FLT3抗体の結合特異性を有する(例、抗原結合部分、例えば6つのCDR又はVH及びVLなどを含む)二重特異性結合分子を提供する。一部の実施形態では、二重特異性結合分子は、加えて、別の、別個の抗FLT3抗体(例、本明細書中に記載する別の抗FLT3抗体)又は異なるタンパク質、例えばがん抗原もしくはその活性が疾患状態、例えばがんなどを媒介する別の細胞表面分子などを標的化する抗体の結合特異性を有する。そのような二重特異性結合分子は当技術分野において公知であり、異なる型の二重特異性結合分子の例を、本明細書中の他の場所に与える。
【0099】
核酸分子及びベクター
本開示はまた、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子及び配列を提供する。一部の実施形態では、異なる核酸分子が、抗FLT3抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする。他の実施形態では、同じ核酸分子が、抗FLT3抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする。
【0100】
ヌクレオチド配列への言及は、他に特定しない限り、その相補体を包含する。したがって、特別な配列を有する核酸への言及は、その相補配列を伴う、その相補鎖を包含すると理解すべきである。本明細書中で言及する用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれか、又はヌクレオチドのいずれかの型の修飾形態の、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドの高分子形態を意味する。この用語は、一本鎖及び二本鎖の形態を含む。
【0101】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書中に記載する抗FLT3抗体もしくはその抗原結合部分の、重鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又は軽鎖もしくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又はその両方を含む核酸分子を提供する。
【0102】
本開示はまた、本明細書中に列挙する1つ以上のヌクレオチド配列と、例えば、配列番号1、2、11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62、71、及び72からなる群より選択されるヌクレオチド配列と、又は配列番号3、4、13、14、23、24、33、34、43、44、53、54、63、64、73、及び74からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一である(例えば、少なくとも90%同一である)ヌクレオチド配列を提供する。核酸配列の文脈における用語「パーセント配列同一性」は、最大対応のために整列させた場合に同じである2つの配列中の残基に言及する。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約18ヌクレオチド、より通常は少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、及び好ましくは少なくとも約36、48又はそれ以上のヌクレオチドの長さにわたりうる。ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用できる、当技術分野において公知の多数の異なるアルゴリズムがある。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)(ウィスコンシン州マジソン)におけるプログラムであるFASTA、Gap、又はBestfitを使用して比較することができる。FASTAは、例えば、プログラムFASTA2及びFASTA3を含み、クエリ配列と検索配列との間の最良のオーバーラップの領域のアラインメント及びパーセント配列同一性を提供する(例、Pearson, Methods Enzymol. (1990) 183:63-98;Pearson, Methods Mol. Biol. (2000) 132:185-219;Pearson, Methods Enzymol. (1996) 266:227-58;及びPearson, J. Mol. Biol. (1998) 276:71-84;参照により本明細書中に組み込まれる)。他に特定しない限り、特定のプログラム又はアルゴリズム用のデフォルトパラメータが使用される。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、FASTAをそのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスについてのNOPAM係数)で使用して、又はGapをそのデフォルトパラメータで使用して、GCGバージョン6.1で提供されるように決定することができる(参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0103】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号1、2、11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62、71、及び72からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。特定の実施形態では、核酸分子は、配列番号1及び2、11及び12、21及び22、31及び32、41及び42、51及び52、61及び62、又は71及び72のヌクレオチド配列を含む。
【0104】
上の実施形態のいずれにおいても、核酸分子は単離されうる。本明細書中で「単離された」又は「精製された」として言及する核酸分子は、(1)それらの供給源のゲノムDNAもしくは細胞RNAの核酸から分離された、及び/又は(2)自然において生じない核酸である。
【0105】
さらなる実施形態では、本開示は、本明細書中に記載する抗体又はその抗原結合部分の鎖の一方又は両方を発現させるために適切なベクターを提供する。用語「ベクター」は、本明細書中で使用するように、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味する。一部の実施形態では、ベクターはプラスミド、即ち、追加のDNAセグメントがライゲーションされうるDNAの環状二本鎖片である。さらに、特定のベクターは、操作的に連結された遺伝子の発現を方向付けることが可能である。そのようなベクターは、本明細書中では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)として言及する。
【0106】
本開示は、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又は重鎖及び軽鎖の両方をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。特定の実施形態では、本開示のベクターは、本明細書中に記載する核酸分子を含む。本開示はさらに、融合タンパク質、改変抗体、抗体フラグメント、及びそれらのプローブをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは、発現制御配列をさらに含みうる。
【0107】
本明細書中で使用する用語「発現制御配列」は、それらがライゲーションされるコード配列の発現及びプロセシングをもたらすために必要であるポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列は、適した転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、及びエンハンサー配列;効率的なRNA処理シグナル、例えばスプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナルなど;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強させる配列(即ち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;ならびに、所望の場合、タンパク質分泌を増強する配列を含む。そのような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なり;原核生物では、そのような制御配列は、一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含み;真核生物では、一般的に、そのような制御配列はプロモーター及び転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、最低限、その存在が発現及びプロセシングのために必須である全ての成分を含むことを意図しており、また、その存在が有利である追加の成分、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列を含むことができる。
【0108】
一部の実施形態では、本明細書中に記載する核酸分子は、任意の供給源からの重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結された、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分からのVHドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。同様に、本明細書中に記載する核酸分子は、任意の供給源からの軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結された、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分からのVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。
【0109】
本開示のさらなる実施形態では、VH及び/又はVLをコードする核酸分子は、全長抗体遺伝子に「変換」されうる。一部の実施形態では、VH又はVLドメインをコードする核酸分子は、それぞれ重鎖定常(CH)領域又は軽鎖定常(CL)領域を既にコードする発現ベクター中への挿入により、全長抗体遺伝子に変換されて、VHセグメントが、ベクター内のCHセグメントに操作的に連結され、及び/又はVLセグメントが、ベクター内のCLセグメントに操作的に連結される。別の実施形態では、VH及び/又はVLドメインをコードする核酸分子は、VH及び/又はVLドメインをコードする核酸分子を、標準的な分子生物学的技術を使用して、CH及び/又はCL領域をコードする核酸分子に連結、例えば、ライゲーションすることにより全長抗体遺伝子に変換される。全長重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を次に、それらが導入された細胞から発現させ、抗FLT3抗体を単離してもよい。
【0110】
一部の実施形態では、結果として得られるフレームワーク領域が、対応する生殖細胞系遺伝子のアミノ酸配列を有するように、フレームワーク領域は変異される。変異を、例えば、抗FLT3抗体の半減期を増加させるために、フレームワーク領域又は定常領域において作成してもよい。例えば、PCT公開WO00/09560を参照のこと。フレームワーク領域又は定常領域中の変異はまた、抗体の免疫原性を改変するために、及び/又は別の分子への共有結合的又は非共有結合的な結合のための部位を提供するために作成してもよい。本開示によれば、抗体は、可変ドメインのCDR又はフレームワーク領域のいずれか1つ以上において、あるいは定常領域において変異を有しうる。
【0111】
宿主細胞ならびに抗体及び抗体組成物産生の方法
本開示はまた、本明細書中に記載する抗体組成物ならびに抗体及びそれらの抗原結合部分を産生するための方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分を産生するための方法に関し、該方法は、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分の重鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、及び軽鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞(例、組換え宿主細胞)を提供すること;抗体又は抗原結合部分の発現のために適切な条件下で前記宿主細胞を培養すること;ならびに、結果として得られた抗体又は抗原結合部分を単離することを含む。そのような組換え宿主細胞におけるそのような発現により産生される抗体又は抗原結合部分は、本明細書において「組換え」抗体又は抗原結合部分として言及する。本開示はまた、そのような宿主細胞の子孫細胞、及び同により産生される抗体又は抗原結合部分を提供する。
【0112】
用語「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)は、本明細書中で使用するように、組換え発現ベクターが導入された細胞を意味する。定義により、組換え宿主細胞は自然において生じない。本開示は、例えば、本明細書中に記載するベクターを含みうる宿主細胞を提供する。本開示はまた、例えば、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分の重鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、あるいはその両方を含む宿主細胞を提供する。「組換え宿主細胞」及び「宿主細胞」は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も意味することを理解すべきである。特定の改変が、変異又は環境の影響のいずれかに起因して後続の世代において生じうるため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではないことがあるが、しかし、依然として本明細書中で使用する用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0113】
抗FLT3抗体及びその抗原結合部分をコードする核酸分子、ならびにこれらの核酸分子を含むベクターは、適切な哺乳動物、植物、細菌又は酵母宿主細胞のトランスフェクションのために使用することができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための任意の公知の方法によることができる。哺乳動物細胞中への異種ポリヌクレオチドの導入のための方法は、当技術分野において周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中でのポリヌクレオチドのカプセル化、及び核中へのDNAの直接マイクロインジェクションを含む。また、核酸分子を、ウイルスベクターにより哺乳動物細胞中に導入してもよい。
【0114】
異なる細胞株により、又はトランスジェニック動物において発現される抗体は、互いに異なるグリコシル化パターンを有する可能性が高い。しかし、本明細書中で提供する核酸分子によりコードされる、又は本明細書中で提供するアミノ酸配列を含む全ての抗体が、抗体のグリコシル化状態に関係なく、より一般的には、翻訳後修飾の存在又は非存在に関係なく、本開示の一部である。
【0115】
医薬組成物
本開示の別の実施形態は、活性成分として(又は唯一の活性成分として)、本開示の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子を含む医薬組成物である。医薬組成物は、加えて、医薬的に許容可能な賦形剤を含んでもよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、がん、例えば、本明細書中に記載するがんの寛解、予防、及び/又は処置について意図する。特定の実施形態では、がんは、組織、例えば皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、骨、膀胱、乳房、胃、子宮、子宮頸部、及び膵臓などにある。
【0116】
本開示の医薬組成物は、本開示の1つ以上の抗FLT3抗体、抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子、例えば、1つ又は2つの抗FLT3抗体、抗原結合部分、又は二重特異性結合分子を含みうる。一部の実施形態では、組成物は、本開示の単一の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を含む。別の実施形態では、組成物は、本開示の2つの別の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0117】
一部の実施形態では、医薬組成物は、本開示の少なくとも1つの抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、例えば、1つの抗FLT3抗体又は部分、及び1つ以上の関連する細胞表面受容体、例えば、1つ以上のがん関連受容体を標的化する1つ以上の追加の抗体を含みうる。
【0118】
一部の実施形態では、医薬組成物は、本開示の少なくとも1つの抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、例えば、1つの抗FLT3抗体又は部分、ならびに、例えば、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗悪性腫瘍剤、抗血管新生剤、及びチロシンキナーゼ阻害剤より選択される1つ以上の追加の薬剤を含みうる。
【0119】
一般的に、本開示の抗体、抗原結合部分、及び二重特異性結合分子は、例えば、以下に記載するように、1つ以上の医薬的に許容可能な賦形剤との関連における製剤として投与するのに適切である。
【0120】
用語「賦形剤」は、本開示の化合物以外の任意の成分を記載するために本明細書中で使用される。賦形剤の選択は、要因、例えば特定の投与様式、溶解性及び安定性に対する賦形剤の効果、ならびに投与形態の性質などに大きく依存しうる。本明細書中で使用するように、「医薬的に許容可能な賦形剤」は、生理学的に適合する任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。医薬的に許容可能な賦形剤の一部の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせである。多くの場合では、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトールなど、又は塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましいであろう。医薬的に許容可能な物質の追加の例は、湿潤剤あるいは少量の補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝剤などであり、それらによって抗体の有効期間又は有効性が増強される。
【0121】
本開示の医薬組成物及びそれらの調製のための方法は、当業者には容易に明らかであろう。そのような組成物及びそれらの調製のための方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition(Mack Publishing Company, 1995)において見出されうる。医薬組成物は、好ましくは、GMP(適正製造規範)条件下で製造される。
【0122】
本開示の医薬組成物は、単一の単位用量として、又は複数の単一の単位用量として、調製、包装、又は大量に販売されうる。本明細書中で使用するように、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の別々の量である。活性成分の量は、一般的に、対象に投与されうる活性成分の投与量、又はそのような投与量の都合のよい割合、例えば、そのような投与量の半分又は3分の1に等しい。
【0123】
非経口投与のための適切な医薬組成物の製剤は、典型的には、医薬的に許容可能な担体、例えば滅菌水又は滅菌等張生理食塩水などと組み合わされた活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与のために又は連続投与のために適切な形態で調製、包装、又は販売されうる。注射用製剤は、単位投与形態において、例えば保存剤を含むアンプル中又は複数用量容器中などで調製、包装、又は販売されうる。非経口投与用の製剤は、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルジョン、ペーストなどを含むが、これらに限定されない。そのような製剤は、1つ以上の追加の成分(懸濁剤、安定剤、又は分散剤を含むが、これらに限定されない)をさらに含みうる。非経口投与用の製剤の一部の実施形態では、活性成分は、再構成された組成物の非経口投与の前に、適切なビヒクル(例、無菌の発熱物質不含水)での再構成のための乾燥(即ち、粉末又は顆粒)形態で提供される。非経口製剤はまた、賦形剤、例えば塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくは、pH3~9まで)などを含みうる水溶液を含むが、しかし、一部の適用については、それらは、無菌の非水溶液として、又は適切なビヒクル、例えば無菌の発熱物質不含水などとの併用において使用される乾燥形態としてより適切に製剤化されうる。例示的な非経口投与形態は、無菌水溶液、例えば、水性プロピレングリコール又はデキストロース溶液における溶液又は懸濁液を含む。そのような投与形態は、所望の場合、適切に緩衝化することができる。有用である他の非経口投与可能な製剤は、活性成分を微結晶形態で又はリポソーム製剤で含む製剤を含む。
【0124】
本開示の抗体及び組成物の治療的な使用
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体及びその抗原結合部分、抗FLT3抗体組成物、及び二重特異性結合分子は、例えば、FLT3活性を刺激することにより、それを必要とする患者(例、哺乳動物、例えばヒトなど)において免疫系を増強又は活性化するために使用される。特定の実施形態では、患者は免疫抑制されている。特定の実施形態では、医師は、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子を投与することにより、患者自身の免疫系の抗がん活性を強化することができる。例えば、医師は、本開示の抗FLT3抗体又は抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子を単独で、又は他の治療薬剤との組み合わせにおいて(連続的に又は同時に)投与することにより、患者において抗腫瘍活性を強化することができる。
【0125】
特定の実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合部分、組成物、及び二重特異性結合分子は、がん、例えば、FLT3陽性がんの処置における使用のためである。がんは、1つ以上の組織、例えば皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、骨、膀胱、乳房、胃、子宮、子宮頸部、及び膵臓などにありうる。一部の実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子は、低い免疫細胞浸潤(例、樹状細胞浸潤)を伴う腫瘍を処置する際における使用のためである。
【0126】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体、抗原結合部分、組成物、及び二重特異性結合分子により処置されるがんは、例えば、黒色腫(例、皮膚、粘膜、又は眼の黒色腫;進行性又は転移性黒色腫)、皮膚基底細胞がん、神経膠芽腫、神経膠腫、神経膠肉腫、星細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、副腎皮質がん、頭頸部扁平上皮がん、口腔がん、唾液腺がん、鼻咽頭がん、乳がん、肺がん(例、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん、及び扁平上皮肺がん)、食道がん、胃食道接合部がん、胃がん、胃腸がん、原発性腹膜がん、肝臓がん、肝細胞がん、胆道がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、卵巣がん、卵管がん、膀胱がん、上部尿路がん、尿路上皮がん、腎細胞がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、子宮頸がん、前立腺がん、線維肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、組織球腫、膵臓がん、子宮内膜がん、虫垂がん、進行メルケル細胞がん、多発性骨髄腫、肉腫、絨毛がん、赤白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、肥満細胞性白血病、小リンパ球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、単球性リンパ腫、HTLV関連T細胞性白血病/リンパ腫、中皮腫、及び固形腫瘍を含みうる。がんは、例えば、早期、中間、後期、局所進行、又は転移段階でありうるが、再発性であるか、又は他の治療薬(例、他の抗FLT3治療薬又はチェックポイント阻害剤)に対して難治性でありうる、あるいは利用可能な標準治療がないことがある。
【0127】
一部の実施形態では、本開示の抗FLT3抗体、抗原結合部分、組成物、及び二重特異性結合分子により処置される状態は、例えば、黒色腫(例、皮膚、粘膜、又は眼の黒色腫)、神経膠腫、多形性膠芽腫、頭頸部扁平上皮がん、乳がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、腎細胞がん、腎臓がん、リンパ腫(例、B細胞リンパ腫又は非ホジキンリンパ腫)、白血病(例、急性骨髄性白血病)、多発性骨髄腫、形質細胞腫瘍、ならびに骨髄異形成疾患及び/又は骨髄増殖性疾患を含みうる。
【0128】
一部の実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子は、免疫障害の処置における使用のためである。
【0129】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子を使用して、免疫不全(例、化学療法又は放射線治療に起因する)である、又は免疫不全になるリスクがある患者を処置してもよい。一部の実施形態では、抗体又は抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子を使用して、幹細胞移植後の患者において幹細胞を増殖させてもよい。
【0130】
一部の実施形態では、抗体又は抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子は、ウイルス感染及び/又は寄生虫感染を処置する際、例えば、病原体が宿主免疫応答を阻害する場合での使用のためである。病原体は、例えば、HIV、肝炎(A、B、又はC)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ性脈絡膜髄膜炎ウイルス(LCMV)、アデノウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、デングウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ジョン・カニンガム(JC)ウイルス、アルボウイルス脳炎ウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌、結核菌、又は緑膿菌でありうる。
【0131】
「処置する」、「処置すること」、及び「処置」は、生物学的障害及び/又はその付随する症状の少なくとも1つを軽減又は抑止する方法を指す。本明細書中で使用するように、疾患、障害、又は状態を「軽減する」は、疾患、障害、又は状態の症状の重症度及び/又は発生頻度を低下させることを意味する。さらに、本明細書中での「処置」への言及は、治癒的、緩和的、及び予防的処置への言及を含む。
【0132】
「治療有効量」は、処置されている障害の症状の1つ以上をある程度軽減する、投与されている治療薬剤の量を指す。治療有効量の抗がん治療薬は、例えば、腫瘍成長の遅延、腫瘍の縮小、生存率の増加、がん細胞の排除、遅い又は減少した疾患進行、転移の逆転、又は医療従事者により望まれる他の臨床的エンドポイントをもたらしうる。
【0133】
本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子は、単独で、あるいは1つ以上の他の薬物又は抗体との組み合わせにおいて(又はそれらの任意の組み合わせとして)投与されうる。したがって、本明細書中に記載する医薬組成物、方法、及び使用は、以下に詳述するように、他の活性薬剤との組み合わせ(同時投与)の実施形態も包含する。
【0134】
本明細書中で使用するように、用語「同時投与」、「同時投与された」、及び「との組み合わせにおいて」は、1つ以上の他の治療薬を伴う、本開示の抗FLT3抗体及びその抗原結合部分、抗体組成物、ならびに二重特異性結合分子を指し、以下を意味することを意図し、以下に言及し、以下を含む:
a)処置を必要とする患者への、本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子及び治療薬のそのような組み合わせの同時投与であって、そのような成分が、実質的に同時に前記患者に前記成分を放出する単一投与形態中に一緒に製剤化される場合、
b)処置を必要とする患者への、本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子及び治療薬のそのような組み合わせの実質的に同時の投与であって、そのような成分が、前記患者により実質的に同時に摂取される別々の投与形態中に互いに別々に製剤化される場合、その際、前記成分が実質的に同時に前記患者に放出される、
c)処置を必要とする患者への、本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子及び治療薬のそのような組み合わせの連続投与であって、そのような成分が、各々の投与の間に有意な時間間隔を伴って前記患者により連続的な時間に摂取される別々の投与形態中に互いに別々に製剤化される場合、その際、前記成分は実質的に異なる時間に前記患者に放出される;及び
d)処置を必要とする患者への、本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子及び治療薬のそのような組み合わせの連続投与であって、そのような成分が、制御された様式で前記成分を放出する単一投与形態中に一緒に製剤化される場合、その際、それらは同時に、連続的に、及び/又は重複して、同じ及び/又は異なる時間に前記患者に放出され、各々の部分は同じ又は異なる経路のいずれかにより投与されうる。
【0135】
本開示の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子は、追加の治療的処置を伴うことなく、即ち、独立治療(単剤療法)として投与してもよい。あるいは、本開示の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子での処置は、少なくとも1つの追加の治療的処置(併用治療)、例えば、別の免疫刺激薬剤、抗がん薬剤(例、化学療法剤、抗悪性腫瘍剤、抗血管新生剤、又はチロシンキナーゼ阻害剤)、又はワクチン(例、腫瘍ワクチン)を含みうる。
【0136】
一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子は、がんの処置のための別の医薬/薬物と同時投与又は製剤化されうる。追加の治療的処置は、例えば、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗悪性腫瘍剤、又は抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及び/又は放射線治療を含みうる。一部の実施形態では、追加の治療的処置は、異なる抗がん抗体を含みうる。
【0137】
本明細書に記載の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子、及び少なくとも1つの他の薬剤(例、化学療法剤、抗悪性腫瘍剤、又は抗血管形成剤)を含む医薬的物品は、がん治療における同時の、別々の又は連続的な投与のための併用処置として使用されうる。他の薬剤は、問題の特定のがんの処置のために適切な任意の薬剤、例えば、アルキル化剤、例えば、白金誘導体、例えばシスプラチン、カルボプラチン、及び/又はオキサリプラチンなど;植物アルコイド、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル及び/又はイリノテカン;抗腫瘍抗生物質、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンミトキサントロン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、ルテオマイシン、及び/又はマイトマイシン;トポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポテカンなど;代謝拮抗物質、例えば、フルオロウラシル及び/又は他のフルオロピリミジン;FOLFOX;オシメルチニブ;シクロホスファミド;アントラサイクリン;ダカルバジン;ゲムシタビン;又はそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される薬剤でありうる。一部の実施形態では、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子によって、他の薬剤に対する応答性が再確立される。
【0138】
本開示の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子はまた、他の抗がん治療、例えばワクチン、サイトカイン、酵素阻害剤、免疫刺激化合物、及びT細胞治療などとの組み合わせにおいて使用してもよい。ワクチンの場合では、それは、例えば、処置されているがんについて関連する1つ以上の抗原を含むタンパク質、ペプチド、もしくはDNAワクチン、又は抗原とともに樹状細胞を含むワクチンでありうる。適切なサイトカインは、例えば、IL-2、IFN-ガンマ、及びGM-CSFを含む。抗がん活性を有する酵素阻害剤の型の例は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、例えば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MT)である。また、企図するのは、養子T細胞治療であって、それは、患者自身のT細胞を増殖又は操作して、彼らの腫瘍を認識及び攻撃することを含む、種々の免疫療法技術を指す。
【0139】
本開示の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子は、チロシンキナーゼ阻害剤との関連における補助治療において使用されうることも企図される。これらは合成の、主にキナゾリン由来の低分子量分子であって、受容体の細胞内チロシンキナーゼドメインと相互作用し、例えば、細胞内Mg-ATP結合部位について競合することにより、リガンド誘導受容体リン酸化を阻害する。
【0140】
一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子は、免疫系の活性化を媒介する医薬/薬物(A2AR、A1AR、A2BR、A3AR、ADA、ALP、AXL、BTLA、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、CD116、CD123、CD27、CD28、CD39、CD40、CD47、CD55、CD73、CD122、CD137、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、CTLA-3、CEACAM(例、CEACAM-1及び/又はCEACAM-5など)、EGFR、FLT3、FLT3L、GAL9、GITR、HVEM、LAG-3、LILRB1、LY108、LAIR1、ICOS、IDO、IL2R、IL4R、KIR、LAIR1、MET、NKG2A、PAP、PD-1/PD-L1/PD-L2、OX40、STING、TIGIT、TIM-3、TGFR-ベータ、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9及びTLR10、TNFR2、VEGF、VEGFR、VISTA、LILRB2、CMTM6及び/又は2B4の発現又は活性を調節する薬剤を含むが、これらに限定されない)との組み合わせにおいて使用されうる。一部の実施形態では、薬剤によって、樹状細胞の活性、分化、増殖、又は動員が増強される。特定の実施形態では、薬剤は小分子阻害剤である。特定の実施形態では、薬剤は、上の分子の1つに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである。本開示の抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子をサイトカイン(例、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15、又はIL-21)、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤などとの組み合わせにおいて使用してもよい。
【0141】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子をFLT3L、CD40、AXL、TLR、又はPD-1の発現又は活性を調節する薬剤との組み合わせにおいて使用してもよい。
【0142】
本開示はまた、CAR-T技術における使用のためでありうる、キメラ抗原受容体の調製における、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又は抗原結合部分の配列(例、6つのCDR又はVH及びVL配列)の使用を企図する。
【0143】
本開示の抗体及びその抗原結合部分、抗体組成物、ならびに二重特異性結合分子は、本明細書中に記載する処置の方法において使用してもよく、本明細書中に記載する処置における使用のためでありうる、及び/又は本明細書中に記載する処置のための医薬の製造における使用のためでありうる。
【0144】
用量及び投与経路
本開示の抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子は、問題の状態の処置のための有効量で、即ち、所望の結果を達成するために必要な投与量及び期間で投与されうる。治療有効量は、要因、例えば処置されている特定の状態、患者の年齢、性別、体重、及び抗体など、ならびに抗体が、単独処置として、あるいは1つ以上の追加の抗がん処置との組み合わせにおいて投与されているか否かに従って変動しうる。
【0145】
投薬レジメンは、最適な所望の応答を提供するように調整されうる。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、又は用量を、治療状況の緊急性により示されるように、比例的に低下又は増加させてもよい。投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を投与単位形態において製剤化することが特に有利である。投与単位形態は、本明細書中で使用するように、処置される患者/対象のための単位投与量として適した物理的に別々の単位を指す;各々の単位は、要求される医薬的担体との関連において所望の治療効果を産生するように算出された所定量の活性化合物を含む。本開示の投与単位形態についての仕様は、一般的に、(a)治療薬剤の特有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果又は予防効果、ならびに(b)個人における過敏症の処置のためにそのような活性化合物を調合する当技術分野において固有の限界により決定され、これらに直接的に依存する。
【0146】
このように、当業者は、本明細書中で提供される開示に基づいて、用量及び投与レジメンが治療技術分野において周知の方法に従って調整されることを理解するであろう。すなわち、最大耐用量を容易に確立することができ、検出可能な治療上の利益を患者に提供する有効量を、検出可能な治療上の利益を患者に提供するために各々の薬剤を投与するための時間的要件と同様に決定することができる。したがって、特定の用量及び投与レジメンを本明細書中に例示している一方で、これらの例によって、本開示の実行において患者に提供されうる用量及び投与レジメンは決して限定されない。
【0147】
投与量の値は、軽減される状態の種類及び重症度で変動しうるが、単回又は複数用量を含みうることに注意すべきである。任意の特定の対象について、特定の投与レジメンを、個人の必要性及び組成物を投与している又は投与を監督している者の専門的判断に従って、経時的に調整すべきであること、ならびに本明細書中に示す投与量の範囲は例示的なだけあり、具体化された組成物の範囲又は実行を限定することを意図しないことをさらに理解すべきである。さらに、本開示の組成物を用いた投与レジメンは、多様な要因(疾患の種類、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、病状の重症度、投与の経路、及び用いられる特定の抗体を含む)に基づきうる。このように、投与レジメンは広く変動しうるが、しかし、標準的な方法を使用して日常的に決定されうる。例えば、用量は、薬物動態学的又は薬力学的パラメーターに基づいて調整することができ、それは、臨床効果、例えば毒性効果及び/又は臨床検査値などを含みうる。このように、本開示は、当業者により決定される患者内の用量漸増を包含する。適した投与量及びレジメンの決定は、関連技術において周知であり、一度、本明細書中に開示する教示が提供されると、当業者により包含されることが理解されるであろう。
【0148】
腫瘍治療のための有効量は、患者における疾患進行を安定化する及び/又は症状を寛解させる能力、ならびに、好ましくは、例えば、腫瘍サイズを低下させることにより疾患進行を逆転させるその能力により測定してもよい。がんを阻害する、本開示の抗体、抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子の能力は、インビトロアッセイ(例、実施例において記載されるように)により、ならびにヒト腫瘍における有効性を予測する適切な動物モデルにおいて評価されうる。適切な投与レジメンが、各々の特定の状況において最適な治療応答を提供するために選択され、例えば、単回ボーラスとして又は連続注入として投与され、各々の症例の緊急事態により示される投与量の可能な調整を伴う。
【0149】
本開示の抗体又はその抗原結合部分、抗体組成物、あるいは二重特異性結合分子は、当技術分野において受け入れられているペプチド、タンパク質、又は抗体を投与するための任意の方法により投与してもよく、典型的には非経口投与のために適切である。本明細書中で使用するように、「非経口投与」は、対象の組織の物理的な破裂及び組織における破裂を通じた投与により特徴付けられる任意の投与経路を含み、このように、一般的に、血流中への、筋肉中への、又は内臓中への直接投与をもたらす。非経口投与は、このように、注射による、外科的切開を通じた適用による、組織貫通非外科的創傷を通じた適用などによる投与を含むが、これらに限定されない。特に、非経口投与は、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、大槽内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、及び滑膜内注射又は注入を含むが、これらに限定されないことを企図する。特定の実施形態は、静脈内経路及び皮下経路を含む。
【0150】
診断的使用及び組成物
本開示の抗体及び抗原結合部分はまた、診断プロセス(例、インビトロ又はエクスビボ)においても有用である。例えば、抗体及び抗原結合部分を使用して、患者からのサンプル(例、組織サンプル、又は体液サンプル、例えば炎症性滲出液、血液、血清、腸液、唾液、又は尿など)中のFLT3のレベルを検出及び/又は測定することができる。適切な検出及び測定方法は、免疫学的方法、例えばフローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイ、及び免疫組織学などを含む。本開示は、本明細書中に記載する抗体及び抗原結合部分を含むキット(例、診断キット)をさらに包含する。
【0151】
製造品及びキット
本開示はまた、製造品、例えば、本明細書中に記載する抗FLT3抗体又はその抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子の医薬組成物、場合により追加の生物学的に活性な分子(例、別の治療薬剤)を含む1つ以上の容器(例、使い捨て容器又は複数回使用容器)、及び使用説明書を含むキットを提供する。抗体又は抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子、及び任意の追加の生物学的に活性な分子は、適切な包装、例えば非反応性ガラス又はプラスチックで作製されたバイアル又はアンプルなどの中に別々に包装することができる。特定の実施形態では、バイアル又はアンプルは、抗体又は抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子、及び場合により生物学的に活性な分子の濃縮ストック(例、2倍、5倍、10倍又はそれ以上)を保持する。特定の実施形態では、製造品、例えばキットなどは、抗体又は抗原結合部分、組成物、あるいは二重特異性結合分子及び/又は生物学的に活性な分子を投与するための医療機器(例、注射器及び針);及び/又は適した希釈剤(例、滅菌水及び生理食塩水)を含む。本開示はまた、前記物品を製造するための方法を含む。
【0152】
本明細書中で他に定義しない限り、本開示との関連において使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有するものとする。例示的な方法及び材料を以下に記載するが、本明細書中に記載するものと類似又は等価の方法及び材料をまた、本開示の実行又はテストにおいて使用することができる。矛盾する場合では、本明細書が、定義を含め、優先される。
【0153】
一般的に、本明細書中に記載する細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬品及び薬学化学、ならびにタンパク質及び核酸化学ならびにハイブリダイゼーションとの関連において使用される命名法、及びそれらの技術は、当技術分野において周知であり、一般に使用されているものである。酵素反応及び精製技術は、当技術分野において一般に達成されるように、又は本明細書中に記載するように、製造元の仕様書に従って実施される。
【0154】
さらに、文脈により他に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書及び実施形態を通じて、言葉「有する(have)」及び「含む(comprise)」、又は変形、例えば「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(comprises)」、又は「含んでいる(comprising)」などは、記載される整数又は整数のグループの包含を意味するが、しかし、任意の他の整数又は整数のグループの除外を意味しないと理解される。
【0155】
本明細書中で言及する全ての刊行物及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。多数の文書を本明細書中で引用しているが、この引用は、これらの文書のいずれかが当技術分野における共通の一般知識の一部を形成するという承認を成さない。
【0156】
本開示をより良く理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、例証だけの目的のためであり、本開示の範囲を任意の様式で限定するとして解釈すべきではない。
【0157】
実施例
【0158】
実施例1.ラットB細胞からの抗FLT3抗体のクローニング
材料及び方法
ヒトFLT3に対する抗体を、OmniRat(登録商標)ラット(Osborn et al., J Immunol. 190(4):1481-90 (2013))(完全にヒトのイディオタイプを伴う抗体を産生するLigand Pharmaceuticals Inc.からのトランスジェニックラット系統)から由来する抗体レパートリーから単離した。単一細胞選別抗体分泌B細胞(ASC)からのラット由来抗体遺伝子のクローニングを、Symplex(商標)抗体発見技術(Meijer et al., J Mol Biol 358(3):764-72 (2006))を用いて実施した。
【0159】
IgG-LALAフォーマット(下記を参照のこと)中に完全ヒト免疫グロブリンをコードする抗体レパートリー構築物をHEK293細胞中にトランスフェクトした。細胞上清を、ハイスループットフォーマットにおいてフローサイトメトリーを使用して、CHO細胞の表面上に発現されたFLT3への結合についてスクリーニングした。FLT3反応性クローンをDNA配列決定により分析し、抗体をコードするDNA配列を抽出した。選択した抗体クローンを、以下に記載するように発現させ、機能的にテストした。
【0160】
抗体をコードするcDNAフラグメントのSymplex(商標)クローニングにおける縮重プライマーの使用により導入された重鎖及び軽鎖のアミノ末端におけるミスセンス変異を、生殖系列配列に戻して修正した。表1は、17566、17526、17667、17679、17494、17543、及び17497と指定された生殖細胞系抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメインのヌクレオチド配列を示す。修正プロセスは、生殖細胞系へのアミノ末端配列の修正ならびにコドン使用の最適化を含む。ヒト生殖系列配列に一致するための標的を、重鎖及び軽鎖可変領域についてのブラスト相同性検索により同定された。表1はまた、生殖細胞系の修正を受けていないバージョンの抗体17667(17667.0)についての重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0161】
抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、及び17497の可変ドメイン、定常領域、及び相補性決定領域(CDR)のタンパク質配列をそれぞれ表2、表3、及び表4中に示す。
【0162】
結果
表1は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、及び17497の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を示す。
【表1】


【0163】
表2は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、及び17497の推定アミノ酸配列を示す。CDRを太字/下線で示す。
【表2】
【0164】
表3は、重鎖及び軽鎖定常領域のアミノ酸配列(それぞれCH及びCL)を示す。「IgG-LALA」は、IgG抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させることが公知である重鎖(L234A/L235A、IMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従って番号付けされる)における「LALA」変異の存在を指す(Hezareh et al., J Virol. (2001) 75(24):12161-8;Hessell et al., Nature (2007) 449(7158):101-4)。
【表3】
【0165】
表4は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、及び17497の重鎖及び軽鎖CDRアミノ酸配列を示し、CDRはIMGT(登録商標)システムに従って定義される。
【表4】
【0166】
表5は、抗体17566、17526、17667、17667-0、17679、17494、17543、及び174978についての配列番号情報を示す。他に記載しない限り、配列はアミノ酸配列である。
【表5】
【0167】
実施例2.EOL-1増殖アッセイにおける抗FLT3抗体のインビトロ機能スクリーニング
この実施例は、アゴニスト活性を伴うリード候補を同定する目的で、抗FLT3モノクローナル抗体のパネルのインビトロ機能評価を記載する。抗体を、FLT3発現がん細胞株EOL-1の増殖を刺激するそれらの能力について評価した。
【0168】
材料及び方法
抗FLT3抗体のパネルを、FLT3発現がん細胞株EOL-1の増殖を誘導するそれらの能力についてインビトロで評価した。EOL-1細胞を、0.5%FBS及び1% P/Sを添加したRPMI 1640 Glutamax培地中に播種し、最終濃度25μg/mLで、示された抗体を5日間にわたりインキュベートした。細胞増殖を、製造元の指示に従って、WST-1細胞増殖試薬(Roche)を使用して定量化した。
結果
抗FLT3抗体での処理後のEOL-1細胞の増殖を図1中に示す。EOL-1細胞の増殖を誘導する能力は、テストした抗体間で大きく変動した。一部の抗体は、このアッセイにおいて効果を示さなかった一方で、他の抗体は、EOL-1細胞の増殖を誘導するそれらの能力により示される刺激能力を有していた。
【0169】
実施例3.抗FLT3参照抗体類似体のクローニング
材料及び方法
表6中の抗体類似体の重鎖及び軽鎖可変ドメインをコードするアミノ酸配列を、列挙する特許出願から得た。タンパク質配列を、ヒトコドンの使用により、DNA配列に逆翻訳した。対応するDNA配列を遺伝子合成し、ヒト重鎖又は軽鎖の定常領域を含む発現ベクター中にクローニングし、全長抗体鎖の発現をもたらした。発現用に選択されたヒト抗体アイソタイプを抗体フォーマット列中に列挙している。CHO細胞に、標準的なタンパク質発現系を使用して、結果として得られた発現プラスミドをトランスフェクトした。対応する抗体上清を、標準的なプロテインA精製カラムクロマトグラフィーを使用して精製した。
【表6】
【0170】
実施例4.ヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質をトランスフェクトされたCHO-S細胞への抗FLT3抗体の直接結合
この実施例は、細胞上で一過性に発現されたヒト、マウス、及びカニクイザルFLT3タンパク質への抗FLT3抗体の結合を実証する。
【0171】
材料及び方法
CHO-S細胞上で発現されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質への7つの抗FLT3抗体の結合を評価し、IMC-EB10類似体のものと比較した。
【0172】
抗FLT3抗体を、ヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3を一過性に発現するハムスターCHO-S細胞株と4℃で30分間にわたりインキュベートした。細胞を2回洗浄し、その後にAF647コンジュゲート二次抗ヒトIgG(H+L)抗体と追加の20分間にわたりインキュベートした。洗浄工程後、抗体結合を、ハイスループットフローサイトメーターiQue Screener PLUS(Sartorius)を使用して検出し、各々のウェル中のAF647シグナルのGeoMeanを測定した。すべての濃度を三回アッセイし、12ポイントの滴定曲線を各々の抗体について作成した。
結果
細胞上に発現されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3への抗体の結合曲線を図2中に示す。アッセイされた抗体は、細胞に提示されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質に異なる効力及び有効性で結合する。
【0173】
実施例5.7つの抗FLT3抗体によるヒトFLT3へのFLT3リガンド結合の遮断
材料及び方法
組換えヒトFLT3 ECD HISタグ付き融合受容体(Sino Biological)への抗FLT3抗体の結合及びFLT3Lのそれらの遮断/非遮断を、OCTET QK384機器(ForteBio)でのバイオレイヤー干渉法(BLI)により測定した。HISタグ付きFLT3を、事前に平衡化したAnti-Penta-HIS(HIS1K)Biosensor(ForteBio)上に600秒間にわたり固定化し、500nM 抗FLT3抗体の600秒間の会合、ならびに100nM FLT3L及び500nM MABの300秒間の会合が続いた。固定化FLT3への総FLT3L結合応答を並行して測定した。データをForteBio Data Analysis(8.2)プログラムにおいて分析した。
【0174】
結果
抗体17543、17494、17679、17667、17526、17566、17497、及びコントロールmAbの遮断プロファイルを図3中に示す。抗FLT3mAbのいずれも、FLT3へのリガンドの結合を完全に遮断したIMC-EB10類似体を除き、飽和条件でFLT3へのFLT3Lの結合を遮断しなかった。
【0175】
実施例6.7つの抗FLT3抗体による、ヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質をトランスフェクトされたCHO-S細胞へのFLT3リガンドFc結合の遮断
この実施例は、抗FLT3抗体による、CHO-S細胞上で発現されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質へのFLT3リガンドFcタンパク質結合の遮断を記載する。
【0176】
材料及び方法
CHO-S細胞上で発現されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質への7つの抗FLT3抗体の結合を評価し、FLT3リガンド-Fcタンパク質の存在においてIMC-EB10類似体のそれと比較した。
【0177】
抗FLT3抗体を、ヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3を一過性に発現するハムスターCHO-S細胞株と4℃で30分間にわたりインキュベートした。細胞を2回洗浄し、その後にAF647コンジュゲートFLT3リガンドFcと追加の20分間にわたりインキュベートした。洗浄工程後、AF647コンジュゲートFLT3リガンドFcタンパク質の残留結合を、ハイスループットフローサイトメーターiQue Screener PLUS(Sartorius)を使用して検出し、各々のウェル中のAF647シグナルのGeoMeanを測定した。すべての濃度を三回アッセイし、12ポイントの滴定曲線を各々の抗体について作成した。
【0178】
結果
細胞上に発現されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3への抗体の遮断曲線を図4中に示す。アッセイされた抗体によって、細胞に提示されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質へのAF647コンジュゲートFLT3L-Fcタンパク質の結合は、テストしたいずれの濃度でも遮断されなかった。IMC-EB10類似体抗体によって、細胞に提示されたヒト、カニクイザル、又はマウスFLT3タンパク質へのAF647コンジュゲートFLT3リガンドFcタンパク質の結合が部分的に遮断された。
【0179】
実施例7.EOL-1増殖アッセイにおける抗FLT3抗体のインビトロ機能活性
この実施例では、用量依存的アゴニスト活性を実証する目的で、7つの抗FLT3モノクローナル抗体のインビトロ機能評価を記載する。抗体を、FLT3発現がん細胞株EOL-1の増殖を刺激するそれらの能力について評価した。FLT3リガンドを比較のために含めた。
【0180】
材料及び方法
7つの抗FLT3抗体を、FLT3発現がん細胞株EOL-1の増殖を誘導するそれらの能力についてインビトロでさらに詳細に評価した。EOL-1細胞を、0.5%FBS及び1%P/Sを添加したRPMI 1640 Glutamax培地中に播種し、25μg/mLから開始する、示した抗体の2倍滴定で5日間にわたりインキュベートした。1μg/mLから開始するFLT3リガンドの2倍滴定を比較のために含めた。細胞増殖を、製造元の指示に従ってWST-1細胞増殖試薬(Roche)を使用して定量化した。
【0181】
結果
抗FLT3抗体での処理後のEOL-1細胞の増殖を図5に示す。テストした全ての7つの抗体が、EOL-1細胞の増殖を誘導するそれらの能力により示されるように、用量依存的な刺激能力を実証した。
【0182】
実施例8.細胞増殖アッセイにおける異なるIgGフォーマットでの抗FLT3抗体のインビトロ機能活性
この実施例は、用量依存的アゴニスト活性を実証する目的で、IgG-LALA又はIgGフォーマットのいずれかの抗FLT3モノクローナル抗体のインビトロ機能評価を実証する。抗体を、FLT3発現がん細胞株EOL-1及びOCI-AML5の増殖を刺激するそれらの能力について評価した。
【0183】
材料及び方法
EOL-1及びOCI-AML5細胞を、0.5% FBS及び1% P/Sを添加したRPMI 1640 Glutamax培地中に播種し、25μg/mLから開始する、示した抗体の2倍滴定で5日間にわたりインキュベートした。細胞増殖を、製造元の指示に従ってWST-1細胞増殖試薬(Roche)を使用して定量化した。
結果
抗FLT3抗体での処理後のEOL-1細胞及びOCI-AML5細胞の増殖をそれぞれ図6A及び6B中に示す。選択した抗体のIgG-LALA及びIgGアイソタイプの両方が、EOL-1細胞株及びOCI-AML5細胞株の両方の増殖を誘導するそれらの能力により示されるように、用量依存的な刺激能力を実証した。
【0184】
実施例9.初代ヒトCD34幹細胞の増殖に対する抗FLT3抗体の効果
この実施例では、初代ヒトCD34幹細胞におけるアゴニスト活性を検証する目的で、7つの抗FLT3モノクローナル抗体、ならびにIgG-LALA又はIgGフォーマットでの選択された抗体のインビトロ機能評価を記載する。抗体を、初代ヒトCD34幹細胞の増殖を刺激するそれらの能力について評価した。FLT3リガンドを比較のために含めた。
【0185】
材料及び方法
初代ヒト骨髄由来CD34幹細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得た。CD34幹細胞を、50ng/mLトロンボポエチン(TPO)及び25ng/mL IL-3を添加した造血前駆細胞(HPC)増殖培地DXF(PromoCell)中に播種し、示した抗体(25μg/ mL)又はFLT3リガンド(250ng/mL)と7日間にわたりインキュベートした。細胞増殖を、製造元の指示に従ってWST-1細胞増殖試薬(Roche)を使用して定量化した。
【0186】
結果
抗FLT3抗体での処理後の初代ヒトCD34幹細胞の増殖を図7中に示す。全てのテストした7つの抗FLT3抗体が、初代ヒトCD34幹細胞の増殖を誘導したことは明らかであり、それらの刺激能力が確認された(左パネル)。IgG-LALA及びIgGフォーマットでの選択した抗体はまた、初代ヒトCD34幹細胞の増殖を誘導した(右パネル)。FLT3リガンドを陽性コントロールとして含めた。
【0187】
実施例10.ヒト初代CD34幹細胞の分化に対する抗FLT3抗体の効果
この実施例は、初代ヒトCD34幹細胞におけるアゴニスト活性を検証する目的で、IgG-LALA及びIgGフォーマットでの2つの抗FLT3モノクローナル抗体のインビトロ機能評価を記載する。抗体を、初代ヒトCD34幹細胞の分化を誘導するそれらの能力について評価した。FLT3リガンドを比較のために含めた。
【0188】
材料及び方法
初代ヒト骨髄由来CD34幹細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得た。CD34幹細胞を、10% FBS、1% PenStrep、10mM HEPES、20μM 2-メルカプトエタノール、20ng/mL IL-3、20ng/mL GM-CSF、及び20ng/mL IL-4を含むIMDM培地中に播種した。その後、抗FLT3抗体(25μg/mL)又はFLT3リガンド(250ng/mL)を培養物に加えて、細胞を2週間にわたりインキュベートした。サプリメント及び抗FLT3抗体又はFLT3リガンドを含む新鮮な培地を、2週間の培養の間に2回加えた。細胞を収集し、CD14及びCD1cの発現をフローサイトメトリーにより分析した。簡単には、細胞をPBSで2回洗浄し、Human BD Fc Block及びZombie Aqua FixableViability色素(死細胞マーカー)で、4℃で20分間にわたり染色した。その後、細胞を洗浄し、細胞表面マーカーに対する抗体(抗CD14-FITC、抗CD1c-PE-CF594、抗CD11c-BV421、抗CD123-PE、抗CD141-PerCPCy5.5)で、暗所において4℃で30分間にわたり染色した。2回の最終洗浄後、細胞を、BD FACSCelestaフローサイトメーター及びFacsDivaソフトウェアを使用して分析した。データ分析を、GraphPad Prism 5.0を使用して実施した。
【0189】
結果
2つの抗FLT3抗体のアゴニスト活性を、初代ヒトCD34幹細胞の分化を誘導するそれらの能力を通じて評価した。テストした抗FLT3抗体は両方が、未処理コントロールと比較して、CD14図8A)及びCD1c図8B)細胞、ならびに樹状細胞亜集団(pDC、cDC1、及びcDC2)(図8C)の頻度を増加させるそれらの能力により示されるように、初代ヒトCD34幹細胞の分化を誘導することができた。FLT3リガンドを陽性コントロールとして含めた。
【0190】
実施例11.Balb/cマウスにおける抗FLT3抗体のインビボ機能活性
この実施例は、免疫適格性マウスにおいて樹状細胞の増殖及び動員を誘導するその能力を検証する目的で、IgG-LALA又はIgGフォーマットでの抗FLT3モノクローナル抗体のインビボ機能評価を記載する。FLT3リガンドを比較のために含めた。
【0191】
材料及び方法
40匹の雌Balb/cマウスを、各々において5匹を伴う8つの処置群に分けた。処置は0日目に開始し、13日目に終了した。マウスはビヒクル;0.1mg/kg、1mg/kg、又は10mg/kgでの抗FLT3抗体を週2回の腹腔内注射;又は週5回の10μgのFLT3Lの腹腔内注射を受けた。終了時に、全てのマウスからの脾臓を採取し、フローサイトメトリーにより分析した。細胞を抗CD3-FITC抗体、抗CD370-PE抗体、抗CD8-PerCP-Cy5.5抗体、抗CD11b-PE-Cy7抗体、抗I-A/I-E-APC-Cy抗体、抗CD11c-BV421抗体、抗Ly6C-FITC抗体、抗CD3-PerCP-Cy5.5抗体、及び抗CD45R-APC抗体で染色した。Zombie Aquaを生/死細胞の識別のために使用した。細胞を、BD FACSVerseフローサイトメーター及びFacsDivaソフトウェアを使用して分析した。データ分析を、GraphPad Prism 5.0を使用して実施した。
【0192】
結果
IgG-LALA又はIgGフォーマットでの抗FLT3抗体のインビボアゴニスト活性を、3つの異なる用量で免疫適格性マウスにおいて樹状細胞(DC)動員を誘導するその能力に関して評価した。亜集団の大半のDC動員を誘導するためのIgG1-LALA及びIgG2フォーマットでの抗FLT3抗体の最も効率的な用量は、ビヒクルと比較した細胞数における増加倍数により実証されるように、10mg/kgであった(図9A及び9B)。FLT3リガンドを陽性コントロールとして含めた。
【0193】
実施例12.CD34ヒト化マウスにおける抗FLT3抗体のインビボ機能活性
この実施例は、ヒトCD34幹細胞で再構成された免疫不全マウス(「CD34ヒト化マウス」)において樹状細胞動員を誘導するその能力を検証する目的での、抗FLT3モノクローナル抗体のインビボ機能評価を記載する。FLT3リガンドを比較のために含めた。
【0194】
材料及び方法
36匹の雌NOD/Shi-SCID/IL-2Rγヌル(NCG)マウスを、ヒト臍帯血から単離した造血幹細胞(CD34)を使用してヒト化した。25%を上回るヒト化率(hCD45/総CD45)を伴うマウスだけを試験のために使用した。マウスを、ヒト化率及びCD34ドナーに基づいて、各々の群中に6匹の動物を伴う6つの処置群に無作為化した。処置を0日目に開始し、11日目に終了した。マウスは、週2回のビヒクル、1又は10mg/kgの抗FLT3抗体の腹腔内注射、あるいは週5回の10μgのFLT3Lの腹腔内注射を受けた。終了時に、全てのマウスからの脾臓及び骨髄を採取し、フローサイトメトリーにより分析した。細胞を抗CD1c-BV421抗体、抗CD11c-BV510抗体、抗CD14-BV650抗体、抗CD123-FITC抗体、抗CD3-PerCPVio700抗体、抗CD20-PerCPVio700抗体、抗CD56-PerCPVio700抗体、抗CD301-PE抗体、抗CD141-PE-Vio615抗体、抗hCD45-PE-Vio770抗体、抗CD370-APC抗体、及び抗HLA-DR-APC-Cy7抗体で染色した。Fixable Yellowを生/死細胞の識別のために使用した。細胞を、Attune NxTフローサイトメーター及びFacsDivaソフトウェアを使用して分析した。データ分析を、GraphPad Prism 5.0を使用して実施した。
【0195】
結果
IgG-LALA又はIgGフォーマットでの抗FLT3抗体のインビボアゴニスト活性を、2つの異なる用量でCD34ヒト化マウスにおいてDC動員を誘導するその能力に関して評価した。両方の用量での両方のフォーマットにおいて、抗体は、ビヒクルと比較した増加倍数で実証されるように、脾臓(図10A及び10B)及び骨髄(図10C及び10D)におけるサブセットの大半のDC動員を誘導することができた。FLT3リガンドを陽性コントロールとして含めた。
【0196】
実施例13.ヒト初代CD34幹細胞における遺伝子発現に対する抗FLT3抗体及びFLT3リガンドの効果
この実施例は、アゴニスト抗FLT3抗体を用いたヒト初代CD34幹細胞のインビトロ刺激によって、FLT3リガンドと類似の遺伝子発現における変化が誘導されることを実証し、類似の刺激経路のエビデンスを提供する。
【0197】
材料及び方法
初代ヒト骨髄由来CD34幹細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得た。CD34幹細胞を、10% FBS、1% PenStrep、10mM HEPES、20μM 2-メルカプトエタノール、20ng/ml IL-3、20ng/ml GM-CSF、及び20ng/ml IL-4を含むIMDM培地中に播種した。その後、抗FLT3抗体(25μg/mL)又はFLT3リガンド(250ng/ml)を培養物に加えて、細胞を2週間にわたりインキュベートした。サプリメント及び抗FLT3抗体又はFLT3リガンドを含む新鮮な培地を、2週間の培養の間に2回加えた。細胞を収集し、RNAを、製造元の指示に従ってRNeasy Micro kit(Qiagen)を使用して抽出した。100ngのRNAを、nCounter SPRINT Profilerでの遺伝子発現分析用のインプットとして使用した。遺伝子発現を、nCounter Myeloid Innate Immunity Panel(XT_PGX_huV2_Myeloid、NanoString Technologies)を使用して分析し、nSolver Analysisソフトウェアをデータ品質管理、標準化、及び遺伝子発現差分析のために使用した。スピアマンの順位相関を使用し、試験した遺伝子間での関連性を分析した。
【0198】
結果
図11中に示すように、IgG-LALA(左パネル)及びIgG(右パネル)フォーマットの両方でのテストした抗体によって、FLT3リガンドと類似の遺伝子発現における変化が誘導された。アゴニスト抗FLT3抗体及びFLT3リガンドにより誘導される遺伝子発現における観察された変化の間の強い相関は、それらが類似の方法でヒト初代CD34幹細胞を刺激することを示す。
【0199】
実施例14.ヒトFLT3への抗FLT3 Fabフラグメントの結合動力学
この実施例は、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される、ヒトFLT3ドメイン1への抗FLT3 Fabフラグメントの結合を評価する。
【0200】
材料及び方法
ヒトFLT3ドメイン1をコードするcDNA(UniProtアクセッション番号P36888)を合成し、CMVプロモーター及びヒトIgFc配列(残基P101-K330)を含むベクター中にクローニングし、C末端に対するIgFcの融合をもたらし、ExpiCHO(商標)発現系において一過性に発現させた。収集後、上清を、Carterra LSAを使用した表面プラズモン共鳴(SPR)により抗FLT3 Fabへの結合についてテストした。HC200M(Carterra)チップを、アミンカップリングを使用してヤギ抗ヒトIgFc(Southern Biotech)により機能化した。チップを、新たに調製した0.4M EDC、0.1Mスルホ-NHS、及び0.1M MES、pH5.5(1:1:1 v/v/v)により5分間にわたり活性化し、10mM酢酸ナトリウム、pH4.5中で10分間にわたり75μg/mL抗ヒトIgFcと共役させ、過剰の反応性エステルを1Mエタノールアミン、pH8.5の注入により3分間にわたりクエンチした。機器を泳動緩衝液(PBS pH7.4、0.01% Tween-20、0.5mg/ml BSA)でプライミングした。プライミング及び洗浄後、培養上清中のFLT3融合タンパク質を、チップの個々のスポット上に12分間にわたり複製として捕捉した。Fab分析物を各々、泳動緩衝液中で調製した。動態分析を、増加濃度で単量体Fabの動態滴定シリーズを適用することにより実施した。Fab会合を5分間にわたり実施し、抗原解離を5分間にわたり記録した。Fab注入の各々のサイクル後、表面を0.45% HPO、2×20秒により再生し、泳動緩衝液中で5分間にわたり洗浄した。結合応答を、CarterraのKITソフトウェアツールを使用して、処理及び分析した。処理データを、オンレート(kon又はk)、オフレート(koff又はk)、及び親和性(K)定数の算出のために、単純なラングミュア1:1結合モデルに適合した。
【0201】
結果
ヒトFLT3ドメイン1への抗体17566、17526、17667、17543、及び17497のFabフラグメントの結合動態を以下の表7中に示す。データを平均値±SEM、n=4として提示する。
【表7】
【0202】
実施例15.抗FLT3抗体のエピトープビニング
この実施例は、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定された対の競合パターンに基づくエピトープビン中への抗FLT3抗体のグループ化を記載する。異なるエピトープビンに属する抗体が、FLT3 ECD上の異なるエピトープを認識する。
【0203】
材料及び方法
対の抗体競合の研究を、IBIS-MX96機器(IBIS、オランダ)を使用して、SPRにより実施した。抗FLT3抗体をPBS中で3μg/mLに希釈し、Continuous Flow Microspotterを使用して15分間にわたり捕捉することによりG-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)上にスポットし、ハーセプチン(トラスツズマブ)による残留結合部位の遮断及びSensEye FixItキット(IBIS、オランダ)による架橋が続いた。センサー調製後、抗体競合分析を、古典的なサンドイッチアッセイを使用して実施した。組換えFLT3-his ECD抗原(Sino Biological Inc)をPBS、0.05% Tween20、200nMハーセプチン泳動緩衝液中で希釈し、100nM濃度で注入し、抗FLT3抗体のコンジュゲートアレイにより捕捉した。次に、泳動緩衝液中で100nMに希釈したFLT3抗体の各々の個別の注入を実施して、抗体競合パターンを確立した。組換えFLT3リガンド(100nM)を、リガンド遮断抗体を特徴付けるための分析物として含めた。データをエピトープビニング2.0(Wasatch、米国)により分析した。
【0204】
結果
図12は、抗FLT3mAb17667、17566、17526、及び17543、IMC-EB10類似体、ならびにエピトープビニング分析から由来するFLT3リガンド(FLT3L)のノードプロットを示す。抗FLT3抗体は、3つの別々のグループ、又はビンに分配された。ビン1(薄灰色)は、抗体17526、17543、17566、及び17667を含み、それらは全て互いに交差遮断し、これらの抗体がFLT3細胞外ドメインの類似のエピトープに結合することを示す。ビン2(灰色)はIMC-EB10類似体からなり、それは、公開データ(米国特許公開2011/0091470)と一致してFLT3Lを遮断する。ビン3(白色)は、抗体17497だけからなり、この抗体が分析において他の抗体とは異なるエピトープを認識することを示す。
【0205】
結論として、IMC-EB10類似体を除き、テストした抗体のいずれもFLT3Lを遮断しなかった。抗体17526、17543、17566、及び17667は重複するエピトープに結合する一方で、17497は別のエピトープに結合する。
【0206】
実施例16.変異誘発及び表面プラズモン共鳴による抗FLT3抗体のエピトープマッピング
この実施例は、モノクローナル抗FLT3抗体17566、17526、17667、17543、及び17497により認識されるエピトープが、FLT3細胞外ドメイン(ECD)上にどのように分布するかを例証する。線状及び立体構造エピトープを変異誘発アプローチ及び表面プラズモン共鳴(SPR)により特徴付けた。
【0207】
材料及び方法
ヒト及びラット(ドブネズミ)FLT3のタンパク質配列をUniProtからダウンロードし(それぞれアクセッション番号P36888及びA0A0G2JW59)、整列させた。線状エピトープをマッピングするために、ヒトFLT3 ECDのドメイン1のFc融合タンパク質を生成し、5つのアミノ酸により重複するセグメント中に対応するラットFLT3配列により順次交換された10アミノ酸を有する。立体構造エピトープをFLT3ドメイン1のアラニンスキャン変異誘発により特徴付けた。
【0208】
ヒトFLT3ドメイン1をコードするcDNAを合成し、CMVプロモーター及びヒトIgFc配列(残基P101-K330)を含むベクター中にクローニングし、C末端に対するIgFcの融合をもたらした。野生型(wt)及び変異型ヒトFLT3ドメイン1Fc融合コンストラクトを、標準的な遺伝子合成技術により生成して、タンパク質をExpiCHO(商標)発現系において一過性に発現させた。収集後、上清を、Carterra LSAを使用した表面プラズモン共鳴(SPR)により抗FLT3 Fabへの結合についてテストした。HC200M(Carterra)チップを、アミンカップリングを使用してヤギ抗ヒトIgFc(Southern Biotech)により機能化した。チップを、新たに調製した0.4M EDC、0.1M スルホ-NHS、及び0.1M MES、pH5.5(1:1:1 v/v/v)により5分間にわたり活性化し、10mM 酢酸ナトリウム、pH4.5中で10分間にわたり75μg/mL抗ヒトIgFcと共役させ、過剰の反応性エステルを1Mエタノールアミン、pH8.5の注入により3分間にわたりクエンチした。機器を泳動緩衝液(PBS pH7.4、0.01% Tween-20、0.5mg/ml BSA)でプライミングした。プライミング及び洗浄後、培養上清中のFLT3融合タンパク質を、チップの個々のスポット上に12分間にわたりデュプリケートとして捕捉した。Fab分析物を各々、泳動緩衝液中で調製した。動態分析を、増加濃度で単量体Fabの動態滴定シリーズを適用することにより実施した。Fab会合を5分間にわたり実施し、抗原解離を5分間にわたり記録した。Fab注入の各々のサイクル後、表面を0.45% HPO、2×20秒により再生し、泳動緩衝液中で5分間にわたり洗浄した。結合応答を、CarterraのKITソフトウェアツールを使用して、処理及び分析した。処理データを、オンレート(kon又はk)、オフレート(koff又はk)、及び親和性(K)定数の算出のために、単純なラングミュア1:1結合モデルに適合した。全てのFabフラグメントについて共通の不活性タンパク質を生成する変異を、選択解除した。結合の有意な喪失を起こすアミノ酸を同定するために、野生型ヒトFLT3と比較して結合親和性において少なくとも5倍減少した、及び/又は3を上回るzスコアを有するとのカットオフを使用して、エピトープを定義した。
【0209】
結果
抗FLT3抗体17566、17526、17667、17543、及び17497の線状及び立体構造エピトープを表8中に示す。
【表8】
【0210】
FLT3の細胞外ドメインは、5つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(D1~D5)から成る。この実施例における抗FLT3抗体は全て、FLT3 D1に結合した。表8中に示すように、抗体17566、17526、17667、及び17543が類似のエピトープに結合した一方で、マウス交差反応性抗体17497は、エピトープビニングにより予測される別のエピトープに結合した(実施例15)。
【0211】
エピトープをFLT3リガンド受容体複合体上にマッピングした(PDBエントリー:3QS9、図13)。結晶構造は、FLT3 D3の先端に結合界面を伴うFLT3リガンド(FLT3L)に二価で結合する2つの受容体分子から成る。この複合体は、N末端D1が高度に柔軟で、D1とD2の間のリンカー領域周辺に少なくとも2つの異なる方向を有し、タンパク質複合体の残り部分と相互作用しない開環様構造を形成する(Verstrate et al., Blood (2011) 1:60-68)。
【0212】
17566、17526、17667、及び17543のエピトープにおける共通セクションが、D2の開始直前のD1のC末端に位置付けられた。この共有セクションはD1の内面に位置付けられた一方で、17497のエピトープはFLT3Lに対してD1の外面に位置付けられた。リガンド受容体複合体中の各々のD1上のエピトープ間の距離は、エピトープの各々について約90Åから120Åであったが(図13)、これは2つのエピトープへのIgG分子結合の最適な距離内である(Zhang et al., Nature Communication (2020) 11:3114及びZhang et al., Scientific Reports (2015) 5:9803)。D1が高度に柔軟性であり、異なる方向に適応できる(Verstrate et al.、上記)ことを考慮すると、これらのエピトープに結合する抗体はFLT3を二量体化し、FLT3リガンドとは無関係な受容体シグナル伝達を活性化することができる可能性が高い。
【0213】
結論として、エピトープマッピング分析によって、抗体17566、17526、17667、及び17543のエピトープがFLT3 D1の内面上の残基を共有する一方で、抗体17497がD1の外面上の別のエピトープに結合することが示された。FLT3 D1上に位置付けられるエピトープは、アゴニスト抗FLT3抗体及び受容体活性化のために最適であるように思われる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
【配列表】
2023522630000001.app
【国際調査報告】