(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】プレウロムチリンの治療的使用
(51)【国際特許分類】
C07C 321/22 20060101AFI20230524BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20230524BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230524BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230524BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230524BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20230524BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230524BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230524BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230524BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C07C321/22 CSP
A61K31/22
A61P11/00
A61P31/12
A61P37/08
A61P37/00
A61P29/00
A61P17/00
A61P31/14
A61P31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562465
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2021025140
(87)【国際公開番号】W WO2021209174
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522400032
【氏名又は名称】ナブリバ セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハフナー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パオクナー、シュザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッカ、ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】リーデル、ローズマリー
(72)【発明者】
【氏名】イヴェジック - シェーンフェルト、ズリンカ
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206JA23
4C206KA08
4C206KA15
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA86
4C206NA14
4C206NA15
4C206ZA59
4C206ZA89
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZB33
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB22
4H006TA04
(57)【要約】
細菌によって媒介されない炎症性疾患の治療又は予防における特定の使用のための、式(I)の化合物であって、式中、nは0~4であり、mは0又は1であり、但し、硫黄原子及びR3は近接した位置にあり(m=0の場合、R3は位置2’にあり、m=1の場合、R3は位置1’にある)、Rはエチル又はビニルであり、R1は水素又は(C1~6)アルキルであり、R2は水素又は(C3~6)シクロアルキル、又は非置換(C1~6)アルキル、又はヒドロキシ、好ましくは1つ若しくは2つのヒドロキシのうちの1つ若しくは複数で置換された(C1~6)アルキル、メトキシ、ハロゲン、(C3~6)シクロアルキルであり、又はR1及びR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1つの窒素原子、又は1つの窒素及び1つの更なるヘテロ原子、例えばN若しくはOから選択されるものを含む5~7員複素環を形成するか、又はR1はヒドロキシであり、R2はホルミルであり、R3はOH、OR4、ハロゲン原子であり、又はR3は2’に結合し、pが2又は3である-O-(CH2)p-O-を表し、R4は非置換(C1~6)アルキル又は(C3~6)シクロアルキルである、化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝産物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌によって媒介されない炎症性疾患の治療又は予防における特定の使用のための、
式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、
nは0~4であり、
mは0又は1であり、但し、硫黄原子及びR
3は近接した位置にあり(m=0の場合、R
3は位置2’にあり、m=1の場合、R
3は位置1’にある)、
Rはエチル又はビニルであり、
R
1は水素又は(C
1~6)アルキルであり、
R
2は水素、又は
-(C
3~6)シクロアルキル、又は
-非置換(C
1~6)アルキル、又は
-ヒドロキシ、好ましくは1つ若しくは2つのヒドロキシ
のうち1つ若しくは複数で置換された(C
1~6)アルキル、
-メトキシ、
-ハロゲン、
-(C
3~6)シクロアルキルであり、又は
R
1及びR
2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、少なくとも1つの窒素原子、又は1つの窒素及び例えばN若しくはOから選択される1つの更なるヘテロ原子を含む5~7員複素環を形成するか、又は
R
1はヒドロキシであり、R
2はホルミルであり、
R
3はOH、OR
4、ハロゲン原子、又は
R
3は2’に結合し、pが2又は3である-O-(CH
2)
p-O-を表し、
R
4は非置換(C
1~6)アルキル又は(C
3~6)シクロアルキルである、化合物、
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝産物。
【請求項2】
前記化合物が、式(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)
【化2】
(式中、各場合において、n、R
1及びR
2は、請求項1に定義される通りである)
の化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記化合物が、
14-O-{[(1R,2R,4R)-4-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-{[(1S,2S,4S)-4-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-{[(1R,2R,5S)-5-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-{[(1S,2S,5R)-5-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-{[(1R,2R,4S)-4-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5R)-5-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-{[(1S,2S,5S)-5-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-{[(1R,2R,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,3S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4R)-4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4R)-4-エチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-5-エチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-5-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4S)-4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5R)-5-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,3R)-3-エチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,3S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,3R)-3-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,3S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4S)-4-(ホルミル-ヒドロキシ-アミノ)-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-5-(ホルミル-ヒドロキシ-アミノ)-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,3R/S)-3-(ホルミル-ヒドロキシ-アミノ)-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,3R/S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-2-ヒドロキシ-5-メチルアミノ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-5-アリルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-2-ヒドロキシ-5-(2-メトキシ-エチルアミノ)-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4R
*)-2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-エチルアミノ)-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4S
*)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4R
*)-4-シクロヘキシルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4S
*)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4R
*)-4-シクロプロピルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4S
*)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S
*)-4-シクロプロピルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R
*)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,4S
*)-4-シクロプロピルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,4R
*)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5R
*)-2-ヒドロキシ-5-モルホリン-4-イル-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5S
*)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S
*)-2-ヒドロキシ-5-モルホリン-4-イル-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S,5R
*)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-5-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-19,20ジヒドロ-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5S)-5-エチルアミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-19,20ジヒドロ-ムチリン及びその(1S,2S,5R)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R,5R)-5-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-19,20ジヒドロ-ムチリン及びその(1S,2S,5S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R)-4-アミノメチル-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S)ジアステレオマー
14-O-{[5-アミノ-2-クロロ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-{[4-アミノ-2-クロロ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
14-O-[(4-アミノ-1-ヒドロキシ-シクロヘキシルメチルスルファニル)-アセチル]-ムチリン
14-O-{[(1R,2R)-2-ヒドロキシ-5-(3-メチルアミノ-プロピル)-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R)-2-ヒドロキシ-4-(3-メチルアミノ-プロピル)-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R)-5-(3-アミノ-プロピル)-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S)ジアステレオマー
14-O-{[(1R,2R)-4-(3-アミノ-プロピル)-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(1S,2S)ジアステレオマー
14-O-{[(6R,8R)-8-アミノ-1,4-ジオキサ-スピロ[4.5]デカ-6-イルスルファニル]-アセチル}-ムチリン及びその(6S,8S)ジアステレオマー
14-O-{[4-アミノ-2-メトキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
並びに
14-O-{[5-アミノ-2-メトキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記化合物がレファムリンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記化合物が、塩及び/又は溶媒和物の形態であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物が、レファムリン酢酸塩又はレファムリンイタコン酸塩としての形態のレファムリンであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記炎症性疾患が、不適切な又は慢性の炎症反応の結果であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記炎症性疾患が、免疫応答の過剰反応状態、好中球優位の炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、又は皮膚科的炎症性疾患、特に免疫応答の過剰反応状態又は好中球優位の炎症性疾患であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記炎症性疾患が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む急性肺損傷(ALI)、敗血症、及びサイトカインストームを含むサイトカイン放出症候群からなる群から選択される免疫応答の過剰反応状態である、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記炎症性疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、びまん性汎細気管支炎(DPB)を含む気管支拡張症、閉塞性細気管支炎症候群、非好酸球性喘息からなる群から選択される好中球優位の炎症性疾患である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記炎症性疾患が、ウイルスによって媒介される免疫応答の過剰反応状態、特にウイルス性敗血症、又は例えばインフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)若しくはCOVID-19などのウイルス感染症に関連する急性呼吸器疾患である、請求項8又は9に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記炎症性疾患が、微生物によって媒介されない炎症性疾患であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記炎症性疾患が、ウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる状態であることを特徴とし、式Iの化合物が、前記ウイルス感染症自体を治療及び/又は予防するため、並びに前記炎症性状態を治療及び/又は予防するための両方で投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記炎症性状態が、前記ウイルス感染症に関連する又は前記ウイルス感染症によって引き起こされる不適切な又は慢性の炎症反応の結果であることを特徴とする、請求項13に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
前記炎症性状態が、前記ウイルス感染症に関連する又は前記ウイルス感染症によって引き起こされる免疫応答の過剰反応状態であることを特徴とする、請求項13に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
前記ウイルス感染症に対する治療及び前記炎症性状態に対する治療の両方を必要とする患者の治療のための、請求項13から15のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
前記ウイルス感染症が、一本鎖プラス鎖又はマイナス鎖RNAウイルスによって媒介され、
好ましくは、前記ウイルスが、
-特にヒトコロナウイルスを含むコロナウイルス科(Coronaviridae)、
-特に麻疹ウイルスなどのパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)を含むパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、及び呼吸器合胞体ウイルスなどのニューモウイルス科(Pneumovirinae)、
-特にインフルエンザウイルスを含むオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、
-特にデングウイルス及びジカウイルスを含むフラビウイルス科(Flaviviridae)、並びに
-特にライノウイルスを含むピコルナウイルス科(Picornaviridae)
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13から16のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
前記ウイルス感染症が空気感染性疾患であることを特徴とする、請求項13から17のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
前記ウイルス感染症が呼吸器疾患であることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
細菌によって媒介されない炎症性疾患を治療又は予防する方法であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、特にレファムリン、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、代謝産物のエステルを、このような治療を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記炎症性疾患が、不適切な又は慢性の炎症反応の結果である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記炎症性疾患が、免疫応答の過剰反応状態、好中球優位の炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、又は皮膚科的炎症性疾患、特に免疫応答の過剰反応状態又は好中球優位の炎症性疾患である、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記炎症性疾患が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む急性肺損傷(ALI)、敗血症、及びサイトカインストームを含むサイトカイン放出症候群からなる群から選択される免疫応答の過剰反応状態である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記炎症性疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、びまん性汎細気管支炎(DPB)を含む気管支拡張症、閉塞性細気管支炎症候群、非好酸球性喘息からなる群から選択される好中球優位の炎症性疾患である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
免疫応答の過剰反応状態が、ウイルスによって媒介され、特にウイルス性敗血症、又は例えばインフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)若しくはCOVID-19などのウイルス感染症に関連する急性呼吸器疾患である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
前記炎症性疾患が、微生物によって媒介されない炎症性疾患である、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記炎症性疾患が、ウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる炎症性状態であり、前記ウイルス感染症自体を治療及び/又は予防するため、並びに前記炎症性状態を治療及び/又は予防するための両方で投与される、請求項20から26のいずれか一項に記載の治療又は予防の方法。
【請求項28】
前記炎症性状態が、前記ウイルス感染症に関連する又は前記ウイルス感染症によって引き起こされる不適切な又は慢性の炎症反応の結果である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記炎症性状態が、前記ウイルス感染症に関連する又は前記ウイルス感染症によって引き起こされる免疫応答の過剰反応状態であることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ウイルス感染症に対する治療及び前記炎症性状態に対する治療の両方を必要とする患者の治療のための、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ウイルス感染症が、一本鎖プラス鎖又はマイナス鎖RNAウイルスによって媒介され、好ましくは、前記ウイルスが、
-特にヒトコロナウイルスを含むコロナウイルス科(Coronaviridae)、
-特に麻疹ウイルスなどのパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)を含むパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、及び呼吸器合胞体ウイルスなどのニューモウイルス科(Pneumovirinae)、
-特にインフルエンザウイルスを含むオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、
-特にデングウイルス及びジカウイルスを含むフラビウイルス科(Flaviviridae)、並びに
-特にライノウイルスを含むピコルナウイルス科(Picornaviridae)
からなる群から選択される、請求項27から30のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項32】
前記ウイルス感染症が空気感染性疾患である、請求項27から31のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項33】
前記ウイルス性疾患が呼吸器疾患である、請求項27から32のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項34】
イタコン酸との酸付加塩としての形態のレファムリン、特に、イタコン酸レファムリン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレウロムチリンの新規な治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の式の化合物であるプレウロムチリンは、
【化1】
例えば、担子菌類プレウロタス・ムチルス(Pleurotus mutilus)及びP.パスケリアヌス(P.paseckerianus)によって産生される天然の抗生物質であり、例えば、メルクインデックス、第12版、項目7694を参照されたい。
【0003】
プレウロムチリンの主要な環構造を有し、一級ヒドロキシ基で置換されているいくつかの更なるプレウロムチリンが、例えば抗菌剤として開発されている。それらの顕著な抗菌活性のために、国際公開第2008/113089号に開示されているような、一群のプレウロムチリン誘導体、アミノ-ヒドロキシ置換シクロヘキシルスルファニルアセチルムチリンが特に興味深いことが見出されている。国際公開第2008/113089号に記載されているように、14-O-{[(4-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシル)-スルファニル]-アセチル}-ムチリンは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対する活性のために特に有用な化合物である。
【0004】
プレウロムチリンに由来する医薬活性化合物(半合成化合物)は、細菌におけるリボソームタンパク質合成の阻害剤である。ヒトでの使用のための半合成プレウロムチリンの代表例は、膿痂疹及び感染性小裂傷、擦過傷又は縫合創の短期処置のために承認された局所剤であるレタパムリン(AltargetoP(登録商標)、AltabaxP(登録商標)として承認)、及び成人の市中感染細菌性肺炎(CABP)の処置のためのレファムリン(Xenleta(登録商標)として承認)である。チアムリン(Denagard(登録商標))及びバルネムリン(Econor(登録商標))は、長年にわたって獣医学において抗生物質として全身的に使用されてきた2つの他の半合成プレウロムチリン誘導体である。
【化2】
【0005】
プレウロムチリン由来の承認された半合成化合物は、とりわけ肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSAを含む)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)及び肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を含む細菌生物に対して優れた活性を示している。
【0006】
炎症性疾患は、不適切な免疫応答によって引き起こされる。炎症は、例えば、細胞傷害、虚血、外傷、アレルゲン、又は病原体への曝露、及び免疫系が身体自身の組織を攻撃する場合(自己免疫疾患)を含む様々な原因に関連し得る。制御不能な、例えば、過度に興奮した免疫応答及び/又は持続的な、すなわち慢性状態は、炎症性疾患と考えられる。
【0007】
不適切な反応の場合、炎症反応は、敗血症などの全身を巻き込んで全身化され得るか、又は主に特定の臓器に影響を及ぼし得る。これは、例えば肺を含む身体の器官の機能不全をもたらし得る。例えば、急性肺損傷(ALI)は、血管透過性の増加を伴う急性及び持続性肺炎症の症候群として定義される。肺胞-毛細血管膜への炎症性損傷、及び肺内部の過剰な制御されない炎症反応を特徴とする。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、ALIの最も重症な形態であり欠陥のある酸化及び炎症、接着分子のアップレギュレーション、サイトカイン及びケモカインの産生の増加並びに過剰な肺細胞アポトーシスを伴う。これらの症候群は、多臓器機能不全症候群の発症に関連しており、多臓器機能不全症候群は、複数回の輸血、ショック、敗血症及び虚血-再灌流を伴う患者の死亡において極めて重要な役割を果たしており、治療に対して難治性のままである。
【0008】
慢性炎症は、免疫応答が持続すると起こり、身体を一定の警戒状態に保つ。経時的に、慢性炎症は、組織及び器官に悪影響を及ぼし得る。
【0009】
バルネムリンは、気管支肺胞洗浄液中のTNF-α、IL-6及びIL-1βなどの炎症促進性サイトカインの濃度を減少させ、肺でのこれらのサイトカインの転写を抑制することが示されており(Chen,Zhang et al.2010,Inflammation 33(5):306-14)、これはインビトロ試験と一致しており(Zhang,Li et al.2009,Int Immunopharmacol 9(7-8):810-816)、リポ多糖(LPS)誘発性ALIに対する炎症反応中のオキシラジカルの効果的な捕捉及び上皮透過性の阻害を抑制し、これがバルネムリンの治療効果に寄与している可能性がある。更に、バルネムリンの前投与は、肺における肺の湿乾比(W/D)を有意に減少させ、肺水腫の発症を減弱させる可能性がある(Chen,Zhang et al.2010,Inflammation 33(5):306-14)。
【0010】
リポ多糖誘発性肺好中球症モデルにおけるレファムリンの抗炎症活性の予備的分析をプレプリントとして発表した(Hafner,Paukner,et al.2020,bioRxiv 2020.06.23.168393、doi:https://doi.org/10.1101/2020.06.23.168393)。
【0011】
レファムリンの潜在的な抗ウイルス効果及び抗炎症効果に関する特定の記述は、2020年5月11日の「Q1 2020 Nabriva Therapeutics PLC Earnings Call」(その写しは、2020年6月10日にダウンロードされたhttps://www.yahoo.com/news/edited-transcript-nbrv-oq-earnings-144108621.htmlの下で、並びに2020年5月11日のプレスリリース(https://investors.nabriva.com/news-releases/news-release-details/nabriva-therapeutics-reports-first-quarter-2020-financial)、2020年5月28日にダウンロードされた)に記載されている。
【0012】
ウイルス性疾患は、世界における罹患率及び死亡率の主要な原因の1つである。インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、特定のアデノウイルス、ライノウイルス及びコロナウイルスなどの呼吸器ウイルス、特に新たに出現した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2、COVID-19)は、公衆衛生に大きな影響を及ぼす。
【0013】
Asheshov,Igor N.et.al.,Antibiotics&Chemotherapy 4/4(1954),380-394では、プレウロムチリンの抗ウイルス活性が、2mg/mLの濃度でA型インフルエンザウイルス株(PR8)に対するプレロムチリン自体の抗ウイルス活性と共に初めて記載された。対照的に、プレウロムチリンは、この試験ではポリオウイルスに対して抗ウイルス活性を示さなかった。
【0014】
更に、Alacorn,Balbino et.al.,Antiviral Research,4(1984),231-243では、40μM(15μg/mL)のHSV-1によって誘導される細胞傷害活性の50%保護(CPE50)を付与する試験化合物濃度での、DNAウイルス及びRNAウイルスの両方、特に単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に対するプレウロムチリンの抗ウイルス活性、並びに水疱性口内炎ウイルス(VSV)に対する活性が記載されている。
【0015】
国際公開第2009/106839号では、抗ウイルス剤としてのチアムリンの使用が主張されており、バルネムリンと比較して0.1~10μg/mLのチアムリン濃度のウイルスを接種した4時間後のウイルス取り込みアッセイにおけるインフルエンザAウイルス、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)1型及び2型に対するチアムリンの効果、並びにエンドソームpHに対するチアムリンの効果が例示されている。バルネムリンは抗ウイルス活性を示さず、他のプレウロムチリン抗生物質がウイルスに効果を有することは見出されていないと述べられた。
【0016】
チアムリンによるエンドソーム又はリソソームpHの変化、並びにウイルス侵入の前提条件である、それに伴うウイルス膜とエンドソーム及びリソソームとの融合の阻止は、潜在的な作用機序として記載された。
【0017】
中国特許第103204787号及び中国特許第103242210号は両方とも、更なるプレウロムチリン誘導体を開示しており、一般に抗ウイルス薬におけるそれらの使用について言及しているが、抗ウイルス作用についての実際の証拠は開示していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚くべきことに、国際公開第2008/113089号に開示されているプレウロムチリン誘導体は、抗菌活性とは関係なく、免疫調節及び抗炎症効果を示すことが今回見出された。
【0019】
したがって、第1の態様では、本発明は、細菌によって媒介されない炎症性疾患の治療又は予防における特定の使用のための、請求項1から6に記載の化合物、特にレファムリン、又はその任意の薬学的に許容される塩、溶媒和物、代謝産物のエステルに関する。
【0020】
更なる態様では、本発明は細菌によって媒介されない炎症性疾患を治療又は予防する方法に関し、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、特にレファムリン、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、代謝産物のエステルを、このような治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0021】
更に、化合物は抗ウイルス活性を示す。したがって、化合物は、ウイルスによって媒介される疾患、すなわちウイルス感染症の治療及び予防、並びにそのような疾患を治療又は予防する方法における使用にも適している。
【0022】
したがって、別の態様では、本発明は、ウイルス感染症及びウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる炎症性状態の治療又は予防における特定の使用のための、請求項1から6に記載の化合物、特にレファムリン、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝産物に関し、式Iの化合物は、ウイルス感染症自体を治療及び/又は予防するため、並びに炎症性状態を治療及び/又は予防するための両方で投与される。
【0023】
更なる態様では、本発明は、ウイルス感染症及びウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる炎症性状態を治療又は予防する方法に関し、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、特にレファムリン、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝産物を投与することを含み、ウイルス感染症及び炎症性状態の両方が治療及び/又は予防される。
【0024】
更に別の態様では、本発明は、イタコン酸との酸付加塩としてのその形態のレファムリン、特に、イタコン酸レファムリンに関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】リポ多糖(LPS)で負荷したマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中の総細胞数を減少させることにおけるレファムリンの効果を実証する図である。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。バーの上の菱形の印は、未処置対照と比較して統計学的に有意な減少(p<0.05、マン・ホイットニー検定)を示す。
【
図2】リポ多糖(LPS)で負荷したマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球数の減少におけるレファムリンの効果を実証する図である。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。バーの上の菱形の印は、未処置対照と比較して統計学的に有意な減少(p<0.05、マン・ホイットニー検定)を示す。
【
図3A】リポ多糖(LPS)で負荷したマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中の総細胞の数に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図3B】リポ多糖(LPS)で負荷したマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球の数に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図3C】リポ多糖(LPS)で負荷したマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中のマクロファージの数に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図3D】リポ多糖(LPS)で負荷したマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球の数に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。バーの上の菱形の印は、未処置対照と比較して統計学的に有意な減少(p<0.05、マン・ホイットニー検定)を示す。
【
図4A】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にTNF-αの濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図4B】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にIL-6の濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図4C】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にIL-1βの濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図4D】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にGM-CSFの濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図4E】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にCXCL1の濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図4F】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にCXCL2の濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図4G】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にCCL2の濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。
【
図4H】肺ホモジネート中の様々なマーカー、特にMMP9の濃度に対するデキサメタゾン、レファムリン及びバルネムリンの効果を実証する図である。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。バーの上の菱形の印は、未処置対照と比較して統計学的に有意な減少(p<0.05、マン・ホイットニー検定)を示す。
【
図5】リポ多糖(LPS)で負荷したマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数を減少させることにおける、イタコン酸ナトリウム並びに酢酸塩及びイタコン酸塩の形態のレファムリンの効果を実証する図である。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。
【
図6A】インフルエンザ感染マウスモデルにおける臨床徴候、特に体重に対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図6B】インフルエンザ感染マウスモデルにおける臨床徴候、特に臨床スコアに対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図6C】インフルエンザ感染マウスモデルにおける臨床徴候、特に生存率に対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図6D】インフルエンザ感染マウスモデルにおける臨床徴候、特に肺試料組織病理スコアリングに対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図7】MDCK細胞において50%組織培養感染量(TCID
50)として決定されたインフルエンザ感染マウスモデルにおける、肺ウイルス力価に対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図8A】インフルエンザ感染マウスモデルにおける感染後3日目及び6日目の免疫細胞数に対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図8B】インフルエンザ感染マウスモデルにおける感染後3日目の骨髄サブセットに対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図8C】インフルエンザ感染マウスモデルにおける感染後6日目の骨髄サブセット(好中球、肺胞マクロファージ、マクロファージ)に対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図8D】インフルエンザ感染マウスモデルにおける感染後3日目のリンパ球サブセットに対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。
【
図8E】インフルエンザ感染マウスモデルにおける感染後6日目のリンパ球サブセットに対するレファムリン及びオセルタミビルの効果を実証する図である。通常の一元配置分散分析、溶媒対照処置に対するダネットの多重比較を各時点について実行した。
*、
**及び
***は、それぞれp<0.05、p<0.01及びp<0.001の有意水準を表す。個々のデータポイントを外れ値として除外した。
【
図9A】ウイルスによる感染後の6日目のMRC-5細胞におけるアルファコロナウイルス229E(HCoV-229E)に対するレファムリンの効果を実証する図である。
【
図9B】ウイルスによる感染後の6日目のMRC-5細胞におけるアルファコロナウイルス229E(HCoV-229E)に対するチアムリンの効果を実証する図である。
【
図9C】ウイルスによる感染後の6日目のMRC-5細胞におけるアルファコロナウイルス229E(HCoV-229E)に対するレムデシビルの効果を実証する図である。
【
図10A】ウイルスによる感染後の6日目のHEp2細胞における呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV
A2)に対するレファムリンの効果を実証する図である。
【
図10B】ウイルスによる感染後の6日目のHEp2細胞における呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV
A2)に対するチアムリンの効果を実証する図である。
【
図10C】ウイルスによる感染後の6日目のHEp2細胞における呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV
A2)に対するTMC353121の効果を実証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
レファムリンは一般式(I)の化合物のINNであり、より具体的には、レファムリンは式(VII)の化合物、
【化3】
すなわち、14-O-{[(1R,2R,4R)-4-アミノ-2-ヒドロキシ-シクロヘキシルスルファニル]-アセチル}-ムチリン(「BC-3781」としても知られる)である。
【0027】
以下では、「レファムリン」という用語は、一般に、追加の説明なしに使用される場合、遊離塩基形態のレファムリン並びにその塩及び溶媒和物の両方を包含することが意図される。
【0028】
レファムリンは、ヒトにおける重篤な細菌感染症を処置するための全身的な使用のために開発されており、2019年に米国において、市中感染細菌性肺炎(CABP)に罹患した成人を処置するための医学的使用のために承認された。
【0029】
本発明に従って使用される化合物は免疫調節効果を有することが見出された。
【0030】
実験の結果は、抗菌活性に加えて、レファムリンも免疫調節性であり、抗炎症効果を有することを示している。マウスにおけるリポ多糖(LPS)誘発性肺炎症のインビボモデルを用いた実験から明らかなように、レファムリンは、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の総細胞、特に好中球数を用量依存的様式で減少させ、すなわち細胞浸潤を阻害することを実証した。更に、実験はまた、試験した全ての用量で炎症部位における炎症促進性メディエータ(例えば、サイトカイン、ケモカイン及び他の因子、例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ9)の濃度の著しい低下を示している。
【0031】
免疫細胞(例えば好中球)浸潤は、炎症促進性メディエータ(例えば、サイトカイン、ケモカイン及びマトリックスメタロプロテイナーゼ)の放出を含む多段階の免疫学的過程である。これらのサイトカインは、毛細血管内皮上の細胞接着分子の発現をアップレギュレートし、その後、走化性勾配に基づいて好中球の肺胞腔への遊走を媒介する。疾患の他の部位における炎症過程についても同様の機構が予想される。免疫機能の変化(例えば、炎症促進性メディエータ分泌の阻害)により、不適切な(過度に興奮した又は調節解除された)又は慢性炎症反応に基づく炎症性疾患を治療又は予防することができる。
【0032】
したがって、本発明は、炎症性疾患の治療における、請求項1から6に記載の化合物、特にレファムリンの使用に関し、炎症性疾患は、不適切な(過度に興奮した又は調節解除された)又は慢性炎症反応に基づいている。疾患は、細菌によって媒介されない疾患である。
【0033】
細菌によって媒介される疾患では、抗炎症処置が望ましい場合がある。本発明は、細菌によって媒介されない炎症性疾患の治療を包含する。
【0034】
一実施形態によれば、炎症性疾患は、微生物によって媒介されない炎症性疾患であってもよい。
【0035】
本発明の目的のために、「微生物」という用語はウイルスを包含しない。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、炎症性疾患は、不適切な(過度に興奮した又は調節解除された)又は慢性炎症反応の結果であり、特に疾患は、免疫応答の過剰反応状態、好中球優位の炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー、又は皮膚科的炎症性疾患である。
【0037】
好ましい実施形態では、炎症性疾患は、例えば急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む急性肺損傷(ALI)、敗血症、及びサイトカインストームを含むサイトカイン放出症候群を含む免疫応答の過剰反応状態である。これらの状態では、免疫応答は調節解除されており、典型的には過度に興奮していると考えられる。
【0038】
特に、細菌によって媒介されない場合、そのような免疫応答の過剰反応状態は、非感染性状態(すなわち、微生物及びウイルスを含むいかなる病原体によっても媒介されない)又はウイルスによって媒介される状態であってもよい。
【0039】
一実施形態では、炎症性疾患は、ウイルスによって媒介される免疫応答の過剰反応状態である。この実施形態では、免疫応答の過剰反応状態(例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む急性肺損傷(ALI)、敗血症、サイトカインストームを含むサイトカイン放出症候群を含む)は、ウイルス感染症を伴い得る。
【0040】
特定の実施形態では、免疫応答の過剰反応状態は、ウイルスによって媒介され、特にウイルス性敗血症、又は例えばインフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)若しくはCOVID-19などのウイルス感染症に関連する急性呼吸器疾患である。
【0041】
別の好ましい実施形態では、炎症性疾患は、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、びまん性汎細気管支炎(DPB)を含む気管支拡張症、閉塞性細気管支炎症候群、非好酸球性喘息を含む好中球優位の炎症性疾患である。
【0042】
これらの疾患では、好中球顆粒球の活性によって免疫応答が支配的に調節解除される。好中球優位の炎症性疾患の治療には、古典的な抗炎症療法、例えば副腎皮質ステロイドはどれも有効ではなく、非ステロイド性抗炎症薬は好中球機能に影響を及ぼさないか、又は好中球の寿命を有害に延長する可能性があるため、医療上の必要性は明らかである。例1及び2の結果は、レファムリンの好中球細胞数に対する特異的効果を証明している。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、炎症性疾患は自己免疫疾患である。本発明によれば、自己免疫疾患としては、例えば、多発性硬化症、炎症性腸疾患(クローン病、大腸炎)、関節リウマチ、1型糖尿病、乾癬などが挙げられる。これらの疾患は、免疫応答が身体自身の組織に向けられるため、調節解除された免疫応答に基づいている。更に、これらの疾患は、典型的には慢性炎症に関連する。
【0044】
本発明の別の実施形態によれば、炎症性疾患はアレルギーである。アレルギーでは、アレルゲンに対する反応が生理的ではないため、免疫応答は調節解除されていると考えられる。
【0045】
別の態様では、炎症性疾患は、呼吸器炎症性疾患又は皮膚科的炎症性疾患であってもよく、好ましくは呼吸器炎症性疾患であってもよい。呼吸器炎症性疾患としては、例えばALI(ARDSを含む)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、COVID-19、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、びまん性汎細気管支炎(DPB)を含む気管支拡張症、閉塞性細気管支炎症候群、又は非好酸球性喘息が挙げられる。皮膚科的炎症性疾患としては、例えば、乾癬、ざ瘡又は酒さが含まれる。
【0046】
本発明の一実施形態では、疾患は細菌性肺炎ではなく、及び/又は細菌性肺炎に関連しない。
【0047】
本発明に従って使用される化合物は、抗ウイルス効果及び免疫調節効果の両方を有することが見出された。したがって、化合物は、炎症性状態がウイルス感染症に関連するか、又は炎症性状態がウイルス感染症によって引き起こされる状況において有用である。そのような状況では、二重の効果が望まれる。
【0048】
一実施形態では、炎症性状態は、ウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる免疫応答の過剰反応状態である。
【0049】
特に、化合物は、ウイルス感染症に対する治療及び炎症性状態に対する治療の両方を必要とする患者の治療のためのものである。
【0050】
好ましい実施形態では、炎症性状態は、ウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる不適切な(過度に興奮した又は調節解除された)又は慢性炎症反応の結果である。
【0051】
更なる実施形態では、ウイルス感染症に対する治療及び炎症性状態に対する治療の両方を必要とする患者の治療のための、本発明に従って投与される化合物、特にレファムリンの特定の使用が提供される。
【0052】
好ましい実施形態では、炎症性状態は、例えば急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む急性肺損傷(ALI)、敗血症、及びサイトカインストームを含むサイトカイン放出症候群を含む、ウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる免疫応答の過剰反応状態である。これらの状態では、免疫応答は調節解除されており、典型的には過度に興奮していると考えられる。
【0053】
特定の実施形態では、インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)又はCOVID-19などのウイルス感染症に関連する急性呼吸器症候群に罹患している患者を治療するための、本発明に従って投与される化合物、特にレファムリンの特定の使用が提供される。
【0054】
実験の結果(例6から15)は、その抗菌活性に加えて、レファムリンがまた、様々なウイルスによって媒介される細胞傷害活性を積極的に減少させることを示す。この抗ウイルス効果は、一本鎖プラス鎖又はマイナス鎖RNAウイルスであることを特徴とするそのようなウイルスについて特に示された。抗ウイルス活性が、エンベロープ型ウイルス及び非エンベロープ型ウイルスの両方について、特にいくつかのエンベロープ型の一本鎖プラス鎖又はマイナス鎖RNAウイルス(コロナウイルス科(Coronaviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)など)について示された。更に、麻疹ウイルスを含む調査されたウイルスのいくつかは、呼吸経路を含む伝染、特に空中伝染が知られている。コロナウイルス及び呼吸器合胞体ウイルスもまた、ヒトにおいて気道の感染を引き起こす。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、ウイルス感染症は、一本鎖プラス鎖又はマイナス鎖RNAウイルスによって媒介され、
好ましくは、ウイルスは、
-特にヒトコロナウイルスを含むコロナウイルス科(Coronaviridae)、
-特に麻疹ウイルスなどのパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)を含むパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、及び呼吸器合胞体ウイルスなどのニューモウイルス科(Pneumovirinae)、
-特にインフルエンザウイルスを含むオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、
-特にデングウイルス及びジカウイルスを含むフラビウイルス科(Flaviviridae)、並びに
-特にライノウイルスを含むピコルナウイルス科(Picornaviridae)
からなる群から選択される。
【0056】
他の実施形態では、ウイルス感染症は空気感染性疾患である。空気感染性疾患は、空気によって伝染されるウイルスによって媒介される。
【0057】
ウイルス感染症は様々な臓器に影響を及ぼす可能性がある。本発明の好ましい実施形態では、疾患は、上気道及び下気道感染症、特に下気道感染症を含む呼吸器疾患である。
【0058】
本明細書で理解されるように治療する(treating)、治療(treat)、又は治療すること(to treat)は、一方では、状態(炎症性疾患)がその終焉を迎えるように完全に治癒する(complete curing)、治癒(curation)、又は治癒すること(to cure)を含み、他方では、症状が少なくとも部分的に又は個別に軽減するように状態を改善する(ameliorating)、改善、又は改善すること(to ameliorate)も含む。
【0059】
治療は、典型的には、本発明に従って使用される化合物を、それを必要とする対象、例えば、一実施形態では、ウイルス感染症並びにウイルス感染症に関連する又はウイルス感染症によって引き起こされる炎症性状態の両方を有すると診断されている対象に投与することを含む。対象は、ウイルス感染症の早期症状及び炎症性状態の後期症状を含む病歴を有し得る、すなわち、ウイルス感染症が早期に診断され、炎症性状態が後に(同時に)診断される。したがって、好ましい実施形態では、本発明に従って使用するための化合物は、ウイルス感染症並びにウイルス感染症に関連する若しくはウイルス感染症によって引き起こされる炎症性状態の両方の症状を示すか、又は診断されている対象に投与される。
【0060】
予防すること(preventing)、予防(prevention)、又は予防すること(to prevent)は、状態が診断される前、又は状態の(全ての)疾患症状が発症する前に化合物を投与することを含む。
【0061】
例えば、本発明による予防は、対象がウイルスに感染したがウイルス感染症の症状を示さなかった場合(無症候性キャリア)、対象がウイルスに曝露された及び/又はウイルスに曝露されやすい、又は対象がウイルス感染症と診断されたがまだ炎症性状態ではない場合に考慮され得る。したがって、一実施形態では、式Iの化合物は、ウイルス感染症自体を治療し、ウイルスに関連する又はウイルスによって引き起こされる炎症性状態を予防するために投与される。
【0062】
本発明に従って投与される化合物、特にレファムリンの適切な投与量は、もちろん、例えば、個々の宿主、投与様式並びに処置される症状の性質及び重症度に応じて変化する。しかし、一般に、より大きな哺乳動物、例えばヒトにおける満足のいく結果のためには、示された1日投与量は、例えば1日に4回までの分割用量で好都合に投与される、本発明に従って使用される化合物の約0.5mg~3gの範囲にある。
【0063】
本発明に従って使用される化合物は、任意の従来の経路によって、例えば経鼻、頬側、経直腸、経口投与を含む例えば経腸的に、例えば静脈内、筋肉内、皮下投与を含む非経口的に、又は例えば肺、表皮、鼻腔内、気管内投与を含む局所的に、例えばコーティングされた若しくはコーティングされていない錠剤、カプセル、注射可能な溶液若しくは懸濁液の形態で、例えばアンプル、バイアルの形態で、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、吸入剤粉末、フォーム、チンキ剤、リップスティック、ドロップ、スプレーの形態で、又は坐剤の形態で、例えば抗生物質剤トブラマイシン又はマクロライド、例えばエリスロマイシン、例えばクラリスロマイシン又はアジスロマイシンに類似した様式で投与することができる。
【0064】
好ましくは、本発明に従って使用される化合物は、吸入によって、静脈内若しくは皮下注射によって、又は経口的に投与される。
【0065】
注射用のレファムリンの好ましい医薬組成物は、国際公開第2016/202788号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本発明に従って使用される化合物、特にレファムリンは、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩の形態で、又は遊離形態で、場合により溶媒和物の形態で投与することができる。
【0067】
一実施形態では、化合物は塩及び/又は溶媒和物の形態である。
【0068】
本発明に従って使用される化合物の塩は、酸付加塩を含む。薬学的に許容される酸付加塩としては、本発明に従って使用される化合物と酸、例えば、フマル酸水素、フマル酸、酒石酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、マレイン酸、ナフタレン-1,5-スルホン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸、すなわちL-乳酸、コハク酸、サリチル酸、アゼライン酸、2-[(2,6-ジクロロフェニル)アミノ]ベンゼン酢酸、塩酸、重塩酸、好ましくは塩酸、酢酸、L-乳酸及びマレイン酸との塩が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、レファムリンの場合、レファムリンの酢酸塩が特に好ましい。
【0070】
レファムリンの好ましい結晶形態及びレファムリンの結晶塩形態は、国際公開第2011/146954号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。これらのうち、国際公開第2011/146954号に開示されている結晶形態Bのレファムリンの酢酸塩が特に好ましい。
【0071】
本発明はまた、イタコン酸との酸付加塩としてのその形態のレファムリン、特にイタコン酸レファムリンを提供する。イタコン酸レファムリン、すなわちイタコン酸塩の形態の式VIIの化合物は、新規化合物(例3)として本明細書に開示されている。イタコン酸は脱プロトン化され、アニオンのイタコン酸水素及びイタコン酸イオンになることができる。カチオンとしてのレファムリン及びイタコン酸由来のアニオンを含む酸付加塩は、レファムリン及びイタコン酸の抗炎症効果を組み合わせる(例4)。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明に従って使用される化合物は、レファムリン酢酸塩又はレファムリンイタコン酸塩としての形態のレファムリンである。
【0073】
本発明に従って使用される化合物、特にレファムリンは、単独で、又は1つ若しくは複数の他の薬学的に活性な薬剤と組み合わせて、本明細書で企図される薬学的治療に使用することができる。そのような他の薬学的に活性な薬剤としては、他の免疫調節剤、例えばグルココルチコイド、サイトカイン、インターフェロンなど、又は抗ウイルス剤が挙げられる。そのような抗ウイルス剤は、好ましくは、ヌクレオシド類似体及びヌクレオチド類似体並びにRNAポリメラーゼ阻害剤、例えば、レムデシビル又はリバビリン、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、例えば、ロピナビル又はリトナビル、ウイルスノイラミニダーゼ阻害剤、例えば、オセルタミビル、並びに抗ウイルス療法に使用される他の薬剤、例えば、ヒドロキシクロロキン、インターフェロン(インターフェロンアルファ及び/又はベータ)からなる群から選択することができる。
【0074】
組み合わせとしては、2つ以上の薬学的に活性な薬剤が同じ製剤中にある固定された組み合わせ、別々の製剤中の2つ以上の薬学的に活性な薬剤が、例えば同時投与のための説明書と共に同じパッケージで販売されるキット、及び薬学的に活性な薬剤が別々に包装されているが、同時投与又は逐次投与のための説明書が与えられている自由な組み合わせが挙げられる。
【0075】
別の実施形態では、本発明に従って使用される化合物、特にレファムリンは、ウイルス感染症並びにウイルス感染症に関連する若しくはウイルス感染症によって引き起こされる炎症性状態と診断されている患者に投与される唯一の活性薬剤である。すなわち患者は、ウイルス感染症及び炎症性状態の両方を治療及び/又は予防するためにただ1つの活性薬剤で治療される。
【0076】
本発明に従って使用される化合物、特にレファムリンを含む医薬組成物は、更に、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、例えば担体又は希釈剤、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、流動調整剤、潤滑剤、糖及び甘味料、香料、保存剤、安定剤、湿潤剤及び/又は乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩及び/又は緩衝剤を含むことができる。
【0077】
そのような医薬組成物は、例えば、従来の方法と同様に、例えば、混合、造粒、コーティング、溶解、噴霧乾燥、又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。単位剤形は、例えば、約0.5mg~約3000mg、例えば、10mg~約600mgを含有することができる。
【0078】
本発明によって企図される処置を必要とする対象は、細菌によって媒介されない炎症性疾患に罹患している任意の生きている対象であってもよい。対象は、ヒト又は動物であってもよい。
【0079】
例
本明細書では、例を含めて、以下の略語が使用される。
1H-NMR プロトン核磁気共鳴分光法
℃ 摂氏
μM マイクロモル濃度
ALI 急性肺損傷
ARDS 急性呼吸窮迫症候群
BALB/c 実験用マウス系統
BALF 気管支肺胞洗浄液
BC-3781 レファムリン
CC 細胞対照
CCL2 ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2
CoV コロナウイルス
CPE 細胞傷害活性、特にウイルス誘発性
CXCL1 ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1
CXCL2 ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド2
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
eq 当量
EC50 半数(50%)効果濃度
FBS ウシ胎仔血清
GM-CSF 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
HeLa 不死性ヒト上皮細胞株
HEp2 ヒト上皮細胞株
Huh7 ヒト肝細胞株
IL-1β インターロイキン1ベータ
IL-6 インターロイキン6(IL-6)
IN 鼻腔内
IP 腹腔内
LPS リポ多糖
MDCK メイディン・ダービー・イヌ腎臓細胞
MMP9 マトリックスメタロペプチダーゼ9
MOI 感染多重度
MRC-5 イギリス医学研究審議会細胞株5
M モル濃度
MS 質量分析
m/z 質量/電荷比
MTBE メチル-tert-ブチルエーテル
nm ナノメートル
PBS リン酸緩衝液
PO 経口
SC 皮下
TC50 半数(50%)毒性濃度
TCID50 50%(半数)組織培養感染量
TNF-α 腫瘍壊死因子アルファ
VC ウイルスCPEの減少
XTT 2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキサニリド
【0080】
例1
目的:LPS投与の4時間後にBALF中の総細胞数及び好中球数を決定することによって、LPS誘発性肺好中球症のモデルにおいて、レファムリンの抗炎症効果を調べた。
【0081】
方法:それぞれ8匹のBALB/cマウスからなる6群の動物を試験した。化合物レファムリンを、鼻腔内LPS負荷の30分前に投与した35、70及び140mg/kgの皮下用量で試験した。既知の臨床的に使用される抗炎症薬である参照化合物デキサメタゾンを、0.5mg/kgの用量でLPS負荷の1時間前に経口投与した。全てのマウスをLPS負荷前に麻酔し、ケタミン塩酸塩とキシラジン塩酸塩の混合物を腹腔内注射した。健常対照マウスに50μLの生理食塩水を投与し、他の全ての動物に5μgの大腸菌(E.coli)由来LPS/50μL生理食塩水を鼻腔内投与して、肺好中球増加症を誘導した。LPS投与の約4時間後、過剰用量の麻酔薬をマウスに腹腔内投与して安楽死させた。気管切開術を行い、気管内に気管カテーテルをクランプした。肺を冷PBSで総体積1mL(0.4、0.3及び0.3mL)で3回洗浄した。回収したBALFをエッペンドルフ試験管に入れ、卓上エッペンドルフ遠心機(5分/3500rpm/4℃)で遠心分離した。得られた細胞プラグをボルテックスによって600μLのPBSに再懸濁した。BALFを、自動血液分析装置Sysmex XT-2000iVで総細胞数及び差次細胞数について直ちに分析した。統計分析を、GraphPad Prismバージョン5.04(米国カリフォルニア州ラホーヤのGraphPad Software,Inc.)を使用して行った。マン・ホイットニー検定を使用して群間差を決定し、P<0.05の場合に統計学的に有意であるとみなした。
【0082】
結果
鼻腔内LPS負荷の4時間後のBALF分析(総細胞数及び好中球細胞数)の結果を
図1~2に示す。LPS負荷は、生理食塩水負荷対照と比較して、総細胞数及び好中球数の統計学的に有意な増加を誘導した。LPS負荷動物と比較して、負荷の1時間前に参照物質デキサメタゾンPOで前処置したマウスは、BALF中の総細胞数及び好中球細胞数の両方の統計学的に有意な減少を示した。用量依存的様式で、指示された用量でレファムリンで処置した全ての群において、総細胞数及び好中球細胞数の統計学的に有意な減少もあった(リポ多糖負荷に対してp<0.05)。細胞流入のほぼ完全な障害が140mg/kgの最高用量で観察された。BALF細胞数のレファムリンに関連する減少は、全てのレファムリン用量で、既知の抗炎症薬である基準物質デキサメタゾンでの処置後に見られるものと同等であった。注目すべきことに、1日あたり70mg/kgのレファムリンのSCへの曝露は、細菌性肺炎の治療のために2×600mg経口又は2×150mg静脈内の承認された臨床1日用量を投与した場合にヒトにおいて達成される曝露に対応する。
【0083】
ARDSの初期段階では、肺胞上皮及び内皮バリアの破壊を伴う広範囲の好中球性肺胞炎があり、これは間質及び肺胞腔におけるタンパク質に富む浮腫の形成をもたらす好中球肺浸潤の阻害は有益である可能性がある(Matthay,Ware et al.2012,Clin Invest 122(8):2731-2740)。
【0084】
例2
目的:上記に匹敵する第2の試験では、BALF中の細胞数の決定に加えてサイトカイン及びケモカイン濃度の評価を含む、マウスのLPS誘発性肺好中球症モデルにおいて、10、30及び100mg/kgの用量のレファムリンの活性を更に調査し、バルネムリンと比較した。
【0085】
方法:鼻腔内(IN)LPS投与の前に、ケタミンとキシラジンの組み合わせを用いてマウスを腹腔内(IP)麻酔した。IN点滴注入のために、マウスを、(約1分間の)点滴注入の期間中及び期間後に頭を足の上に60度~75度まで上げて、傾けた仰臥位で保持した。負荷は、50μLの生理食塩水/マウス中の5μgのLPSによる処置の30分後に行った。非負荷対照マウスに50μLの生理食塩水を与えた。群の大きさは、1群あたり8匹の動物であった。
【0086】
LPS負荷の30分前に、1mg/kgの参照化合物デキサメタゾン(陽性対照)を腹腔内(IP)投与した。デキサメタゾンを水中0.5%メチルセルロースに溶解した。投与量は10mL/kgであった。10、30、又は100mg/kgのレファムリン又はバルネムリンを、LPS負荷の30分前に、肩の間に皮下(SC)投与した。レファムリン及びバルネムリンを0.9%生理食塩水に溶解した。0.9%生理食塩水を溶媒対照として使用した。投与量は10mL/kgであった。LPS負荷の4時間後、マウスをケタミン(200mg/kg)及びキシラジン(16mg/kg)の過剰投与によって屠殺し、その後、BALF及び肺組織をサンプリングした。
【0087】
気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収するために、カニューレを気管に挿入し、その後、肺を3体積のPBS(0.4、0.3及び0.3mL、合計1mL)で洗浄した。回収したBALFをエッペンドルフ試験管に入れ、卓上エッペンドルフ遠心機(5分/1303xg/4℃)で遠心分離し、ボルテックス上で閉じたチューブ内容物を振盪することによって細胞のプラグを600μLのPBSに再懸濁した。再懸濁したBAL細胞を、自動血液分析装置Sysmex XT-2000iVで総細胞数及び差次細胞数について直ちに分析した。
【0088】
特定のマーカーを決定するために、肺組織試料を採取した。肺を露出させ、胸部を穏やかに開き、胸骨及び肋骨の両側を切断し、後ろをトリミングすることによって切除した。肺を取り出し、予め秤量した滅菌Precellysに入れた。サンプリング後、Precellys試験管をもう一度秤量し、急速凍結し、分析まで-80℃に置いた。組織をホモジナイズした。
【0089】
CCL2、CXCL1、CXCL2、GM-CSF、IL-6及びTNF-αの濃度は、製造業者のプロトコル(R&D Systems)に従ってMouse Premixed Multi-Analyte Kitを使用して決定した。標準希釈系列及び試料を並行して調製し、ビオチン抗体カクテルと共にインキュベートした。濃度は、それぞれのストレプトアビジン-フィコエリトリンコンジュゲートを使用して決定し、Luminex200装置で読み取った。これらのマーカーの濃度を、XPONENTソフトウェア(Applied Cytometry)による標準曲線からの補間によって決定した。測定値(MFI)をブランク補正し、標準曲線適合5パラメータロジスティックを用いた。
【0090】
MMP-9及びIL-1βの分析のために、マウスの全肺を-80℃から解凍し、Precellys CK28硬組織チューブ中のプロテアーゼ阻害剤を補充した1mLのPBS中で、Precellys機器及びプログラムを使用してホモジナイズし、15秒間の休止を伴って6800rpmで30秒間振盪し、3回繰り返した。均質化後、試料を18000×g、4℃で10分間遠心分離し、分析のために上清を回収した。MMP-9及びIL-1βの濃度は、製造業者のプロトコル(R&D Systems)に従ってMouse DuoSet ELISAキットを使用して決定した。標準的な希釈系列及び試料を、MMP-9又はIL-1β捕捉抗体を用いて調製したプレートを用いて並行して処置した。それぞれの検出抗体及び読み出し用試薬を用いて濃度を決定した。吸光度を、SpectraMax i3機器を使用して450nmで測定した。試料中のMMP9及びIL-1βの濃度を、標準曲線からの補間によって決定した。
【0091】
統計分析を、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン8.1.1)を使用して行った。異常値は、Grubbs試験を用いて同定した。総細胞数及び差次的細胞数、並びにマーカー濃度の評価のために、ノンパラメトリック統計学(マン・ホイットニー検定)を行った。溶媒群に対する処置群間の差をp<0.05で統計学的に有意であるとみなした。
【0092】
結果
BALF分析(細胞数)の結果を
図3A~3Dに示す。LPS負荷は、生理食塩水負荷対照と比較して、総細胞数及び好中球数の有意な増加を誘導した。10、30、又は100mg/kgのレファムリンによる皮下前処置は、BALF中の総細胞数を用量依存的に減少させた(
図3A)。変化は、100mg/kgで統計学的に有意である(p<0.05)。以前の試験の結果のように、効果は抗炎症薬デキサメタゾン(陽性対照)に匹敵した。調べた全ての濃度のレファムリンの用量依存的かつ有意な減少が好中球細胞で観察された(
図3B)。対照的に、マクロファージ及びリンパ球の細胞数は、レファムリン又はバルネムリンによって有意に影響されなかった(
図3C及び3D)。
【0093】
炎症促進性サイトカインである腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターロイキン6(IL-6)及びインターロイキン1ベータ(IL-1β)は、生理食塩水対照と比較して、マウスモデルにおけるLPS負荷後の肺ホモジネートにおいて増加している(
図4A~
図4C)。10、30、又は100mg/kgのレファムリンによる皮下前処置は、TNF-α及びIL-6レベルを50%以上低下させた(
図4A及び
図4B)が、バルネムリンは、同じ用量と比較した場合、活性が低かった。100mg/kgのレファムリンによるIL-1β皮下前処置では、肺ホモジネート中のIL-1βレベルが24%有意に低下した(
図4C)。
【0094】
細胞遊走に影響を及ぼすことが知られているサイトカインである顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)がLPS誘発性マウスモデルにおいて増加した(
図4D)。レファムリンは、肺ホモジネート中のGM-CSFをほぼ完全に阻害した。バルネムリンはまた、GM-CSFレベルの低下を示したが、試験した全ての用量でレファムリンよりも活性が低かった(
図4D)。
【0095】
ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)、(C-X-Cモチーフ)リガンド2(CXCL2)及び(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)の濃度は、生理食塩水対照と比較して、マウスモデルにおけるLPS負荷後の肺ホモジネートにおいて増加した(
図4E~
図4G)。CXCL1及びCXCL2の両方のレベルは、10、30、又は100mg/kgのレファムリンによる皮下前処置によって有意に低下した(
図4E及び
図4F)。10及び30mg/kgのより低い用量のバルネムリンは、レファムリンと比較して、CXCL1及びCXCL2に対する効果が低かった。肺ホモジネート中のLPS誘発性CCL2増加は、検討した全ての用量のレファムリンで完全に阻害されたが、バルネムリンは特に10及び30mg/kgの用量では活性が低かった(
図4G)。
【0096】
好中球遊走の調節因子であるマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMP9)は、LPS誘発性マウスモデルにおいて増加した(
図4H)。30又は100mg/kgのレファムリンによる皮下前処置は、肺ホモジネート中のMMP9レベルをそれぞれ26又は53%低下させたが、10mg/kgではMMP9濃度を変化させなかった。バルネムリンは、調査した最高用量の100mg/kgでのみMMP9濃度を50%低下させた(
図4H)。
【0097】
結論として、この試験は、肺への好中球浸潤の阻害、並びに肺におけるサイトカイン及びケモカインレベルなどの炎症(促進性)因子の減少によって、マウスのLPS誘発性肺好中球症モデルにおけるレファムリンの抗炎症特性を実証した。
【0098】
このモデルにおけるレファムリンの阻害能は、臨床的に適切な用量で、調査されたパラメータのほとんどで、確立された抗炎症薬デキサメタゾン(陽性対照)と同程度の大きさである。同じ用量のバルネムリンと比較すると、驚くべきことに、ほとんどの炎症(促進性)マーカーについて、レファムリンはバルネムリンよりも強力な阻害剤であることが示された。
【0099】
LPS投与は、好中球浸潤及び肺内サイトカインの増加を含む、ARDS又はALIで見られるものと同様の病理学的及び生物学的変化を誘導することができ、これらは急性肺損傷の実験モデルで広く試験されている(Matute-Bello Gustavo et al.2008,Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 295:L379-399)。更に、試験は、肺への好中球動員の増加が、特に慢性疾患又はARDSにおいて組織損傷に寄与し得ることを示唆している(Giacalone,Vincent D et al.2020,Int J Mol Sci 21(3):851)。
【0100】
記載された好中球性炎症のマウスモデルにおいて低用量のレファムリン(例えば、10~30mg/kg)で既に観察された堅牢な抗炎症効果は、レファムリンがLPS誘発性炎症促進性シグナル伝達を阻害して好中球蓄積を減少させるか、又は肺へのLPS誘発性好中球浸潤を阻害してサイトカイン及びケモカインのレベルを減少させることを示唆している。両方の潜在的な機構は、レファムリン前処置後にインビボで観察される用量依存性抗炎症効果と一致する。
【0101】
例3
目的:この例は、カチオンとしてプロトン化形態のレファムリン及びジカルボキシイタコン酸から誘導されるアニオンとしてイタコン酸イオンを含む潜在的な新しい医薬品有効成分としてのイタコン酸レファムリンの合成を目的とする。
【0102】
方法及び結果
DMF(2mL)中の遊離塩基としてのレファムリン(1g、1当量)の溶液に、イタコン酸(0.5当量)を添加し、室温で一晩撹拌した。得られた反応混合物をMTBEに滴加した。得られた沈殿物を濾過し、MTBEで洗浄し、減圧下で乾燥させて、無色固体の形態のイタコン酸レファムリン(1.20g)を得た。
【数1】
【0103】
例4
目的:例1と同様にLPS誘発性肺好中球症の別の改変モデルにおいて、様々なレファムリン塩の抗炎症効果を、LPS負荷の24時間後に読み出して調査した。
【0104】
方法:試験化合物の水溶液を、鼻腔内LPS負荷の30分前に単回皮下用量として投与した(5μg/動物)。LPS負荷の直前に、ケタミン(2mg/マウス)及びキシラジン(0.08mg/マウス)の腹腔内(IP)注射によってマウス群(n=6)を麻酔した。肺好中球増加症を誘導するために、対照群のマウスに50μLの生理食塩水を投与し、他の全ての動物に5μgのLPS/50μL生理食塩水を鼻腔内投与した。対照として、生理食塩水(0.86%NaCl)をLPS負荷に対する陰性対照として鼻腔内に投与した。レファムリンをその酢酸塩の形態(Lef.Ac)及びそのイタコン酸塩の形態(Lef.Itacon、上記の例3のように合成した)で調査し、両方とも70mg/kgの用量で投与した。比較のために、イタコン酸ナトリウム(Na.Itacon)を55mg/kgの用量で調査した。未処置対照には生理食塩水(0.86%NaCl)の皮下注射を行った。
【0105】
BALF中の総細胞数及び顆粒球細胞数を、例1と同様に鼻腔内LPS負荷の24時間後に決定した。
【0106】
結果
BALF分析の結果(細胞数)を
図5に示す。酢酸レファムリンは、以前の試験(例1及び2)で示された効果に匹敵する細胞数の減少を示した。イタコン酸ナトリウム自体は、BALF細胞数のいくらかの減少を既に示した。
【0107】
免疫調節薬としてのイタコン酸及び誘導体の特性は以前に記載されている(Yu Xia-Hua et al.2019,Immunology&Cell Biology 97:134-141)。例えば、イタコン酸のエステル誘導体(イタコン酸4-オクチル)は、LPS誘発性敗血症モデルにおいて保護効果を示した(Liao,Shan-Ting et al.2019 Nat Comm 10(1);5091)。
【0108】
レファムリンのイタコン酸塩は、酢酸レファムリン又はイタコン酸ナトリウム単独と比較して、細胞数に対して最も顕著な効果を示した。この試験では、イタコン酸レファムリン処置は、最も低い総細胞数及び顆粒球細胞数をもたらし、したがって、レファムリンのイタコン酸形態の興味深い相乗効果又は相加効果を示唆している。
【0109】
例5
目的:インビボインフルエンザウイルスモデルにおいて、レファムリンの効果を調査した。インフルエンザウイルスモデルでは、マウスに適合させたインフルエンザA(H1N1)株をマウスに負荷した。マウス免疫系は、インフルエンザのマウスウイルス感染症モデルにおいてウイルス誘発性免疫応答に対する効果を試験するのに特に適している。
【0110】
方法:成体雌BALB/cマウスを15匹の動物の3つの実験群に無作為に割り当て、1週間順化させた。処置は、-1日目に皮下投与して開始した。陰性対照群には、1日2回投与される溶媒を投与した。様々な投与量でレファムリンを調査した。低用量療法では、35mg/kgのレファムリンを-1日目から6日目まで1日2回(70mg/kg/日の用量に相当)投与した。高用量療法では、レファムリンを105/mg/kg/日の用量で3回の注射で3日目まで投与し、注射部位での投与の問題のため3日目から変更した。以下の用量は、70mg/kgを1日2回投与した(140mg/kg/日に相当)。0日目に、全ての群にインフルエンザA/プエルトリコ/8/34(H1N1)を負荷した。
【0111】
試験中、異常な毛の状態(立毛)、異常な姿勢(しゃがみ)、異常な呼吸(頻呼吸及び/又は不規則な呼吸数)、運動性の低下、眼脂、閉眼及び/又は生存を含む、動物をインフルエンザウイルス感染の臨床徴候について毎日スコア化した。疾患の重症度の徴候をスコアリングシステムに追加し、5の最大可能スコアを得た。臨床徴候が重度であると判断された場合、試験の予定された終了前に個々の動物を試験から離脱させた。
【0112】
6日目に、肺組織を解剖し、肉眼的病変について評価し、固定液中に保存し、組織病理について保存した。
【0113】
肉眼的評価後、肺硬化を以下の、肺胞内の浮腫/出血が占める視野の50%超(全ての肺葉にわたる)、広範な血管変性のように評価した。6日目に取り出して固定した肺を組織病理学において顕微鏡で評価した。4つの主な読み出しを評価し(気管支/気管支変性/過形成、気管支間質性炎症、肺胞上皮炎/変性、肺胞上皮/出血)、スコア化して、16の最大総組織病理スコアを得たが、数字が小さいほど、組織病理学的異常の徴候が少ないことを示す。
【0114】
肺試料も3日目及び6日目のウイルス力価のために処置し、保存した。3日目及び6日目に、肺を回収し、ホモジナイズし、清澄化して、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞を用いたTCID50アッセイによってウイルス量を決定した。
【0115】
3日目及び6日目に、気管支肺胞洗浄液(BALF)試料を回収し、以下に詳述する抗体パネルを使用して免疫細胞成分のフローサイトメトリー分析のために細胞を処置した。フローサイトメトリー計数ビーズを使用して絶対細胞数を計数した。細胞を生存可能な単一事象からゲーティングした。免疫細胞サブセットに対する試験処置の効果を以下のマーカーCD45、TCRβ、CD3、CD4、CD8、CD19、Ly6C、Ly6G、MHCII、CD11b、CD11c、CD49b、Siglec-F、CD64及びviability dyeから分析した。3日目のオセルタミビル処置群のフローサイトメトリーデータは、処置エラーのため収集されなかった。
【0116】
結果
臨床モニタリングの結果を
図6A~
図6Dに示す。オセルタミビルによる陽性対照処置は予想通りに機能した。オセルタミビルについて、臨床スコア及び体重減少の減少が観察された。レファムリンは、調査した用量で体重に有意な影響を及ぼさなかった(
図6A)。高用量では、レファムリンは、溶媒と比較して臨床スコアの増加及び生存率の低下をもたらし、これは、調査された用量、濃度及び製剤の局所耐容性(SC)問題に関連する可能性がある(
図6B及び
図6C)。より低用量のレファムリンでは、90%の生存が達成されたが、溶媒群の20%のみが6日目まで生存した(
図6C)。
【0117】
更に、肉眼的に評価した肺硬化の有意な改善が低用量のレファムリンで観察された。組織病理学において、試験した標本内で、全体的な個々の動物スコアの範囲(4~13の範囲)が明らかになった(
図6D)。病変は、文献に記載されているものと同様であった。肺胞病態の程度/分布領域の増加は、細気管支の変性/増殖、気管支間質性炎症及び肺胞の浮腫/出血の増加と相関していた。高用量のレファムリンによる処置は、気管支変性及び肺胞炎症の有意な減少をもたらし、その結果、溶媒処置対照と比較してこの群では組織病理スコアの全体的に有意な減少をもたらし、オセルタミビルに匹敵した。
【0118】
肺のウイルス力価は、3日目と6日目の間に全ての群で減少した(
図7)。レファムリンとオセルタミビルの両方の用量では、溶媒処置対照と比較して肺ウイルス力価が低下した。
【0119】
BALFのフローサイトメトリーの結果を
図8A~
図8Eに示す。BALF中の全免疫細胞数は、全ての試験群で3日目から6日目まで増加し(
図8A)、肺組織の炎症及び細胞変性を引き起こす進行性ウイルス感染症によって誘導される予想される免疫細胞浸潤を確認した。レファムリンは、試験した両用量で6日目までに肺における全免疫細胞浸潤を有意に減少させた(p<0.05)。
図8B~
図8Eは、3日目及び6日目の特定の免疫細胞サブセットの細胞数を示す。レファムリンは、6日目までに試験した両用量で好中球浸潤を有意に減少させた(
図8C)。より高い用量で投与した場合、レファムリンは、H1N1負荷後6日目に肺における炎症性単球浸潤を有意に減少させた(
図8C)。肺におけるNK、CD4及びCD8細胞の浸潤は、試験した両用量で6日目に減少した(
図8E)。B細胞の減少は、6日目の最高用量でのみ有意であった(
図8E)。
【0120】
BALFの結果により、ウイルス疾患モデルとの関連においても、特に肺への好中球浸潤に対するレファムリンの免疫調節効果が確認された。臨床的読み出し及び肺ウイルス力価に対する減少効果は、ウイルス性疾患の治療におけるレファムリンの可能性を更に支持している。
【0121】
例6
目的:アッセイでは、様々な濃度のレファムリン(BC-3781)による、アルファコロナウイルス229E(HCoV-229E又はCoV229E)感染6日後のMRC-5細胞において、ウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び細胞生存率の阻害を測定した。
【0122】
方法:MRC-5細胞を96ウェル平底組織培養プレートに播種し(ウェルあたり3×103細胞の密度で)、一晩接着させた。その後、DMSOに溶解した希釈試験化合物(酢酸塩としてのレファムリン、フマル酸塩としてのチアムリン)をプレートに添加し、ウイルスを添加する前に4時間インキュベートした。ウイルスを所定の力価に希釈して添加すると、感染後6日で85~95%の細胞死滅が得られた(MOIは0.001)。
【0123】
37℃及び5%CO2で6日間インキュベートした後、XTTテトラゾリウム色素染色によって細胞生存率を測定した。細胞培養プレートの光学密度を、450nm及び650nmで分光光度的に決定した。ウイルス感染細胞の減少パーセント及び非感染薬物対照ウェルの細胞生存パーセントを計算して、4パラメータカーブフィット分析を使用して、細胞傷害活性の50%が阻害される有効濃度(EC50)及び細胞毒性濃度(TC50)を決定した。抗ウイルス化合物レムデシビルは陽性対照としての役割を果たした。
【0124】
結果
驚くべきことに、レファムリンは、細胞対照の生存率に細胞毒性効果を及ぼさない濃度である10μMの濃度でウイルスCPEを91.82%減少させた。計算されたEC50は3.87μMであり、50%のウイルス細胞傷害活性が阻害された。50μMのレファムリン濃度で、レファムリンは細胞毒性効果を示し、算出されたTC50は55.3μMであった。治療指数としても知られるEC50とTC50の比は14.3であった。
【0125】
対照的に、10μMの濃度のチアムリンは、ウイルスCPEを10.53%しか低下させず、細胞毒性効果は観察されなかった。次に高い試験濃度である50μMでは、CPEは81.68%減少し、細胞毒性効果が観察された。計算されたEC50は24.4μMであり、計算されたTC50は62.9μMであった。チアムリンの治療指数は2.58であり、驚くべきことに、レファムリンの治療指数よりもはるかに低かった。
【0126】
抗ウイルス化合物レムデシビルは、エボラウイルスの治療薬として開発されたものであり、コロナウイルスに対しても抗ウイルス活性を有することが知られている(臨床試験中)。したがって、レムデシビルは、本明細書において陽性対照としての役割を果たした。レムデシビルは、0.11μMのEC
50、5超のTC
50及び45.5超の治療指数を示した。
【表1】
【0127】
結果を
図9A(レファムリン)、9B(チアムリン)及び9C(レムデシビル)にグラフで示す(VCはウイルスCPEの減少、CCは細胞対照)。
【0128】
例7
目的:アッセイでは、様々な処置条件でのレファムリンに対する、アルファコロナウイルス229E(HCoV-229E又はCoV229E)感染後のMRC-5細胞において、ウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び細胞生存率の阻害を測定した。
【0129】
方法:試験候補に関して以下の違いを伴って、上記の例6と同様にアッセイを行った。ウイルス添加前の4時間、1時間又は0時間のインキュベーション及び感染1時間後の添加という異なる処置条件を用いて、レファムリン(酢酸塩として)を評価した。この特定の一連の実験では、コロナウイルスをアッセイ培地で1:200に希釈し、100μL/ウェルで添加して、未処置のウイルス対照ウェルで約90%の細胞死滅を達成した(MOIは0.001)。
【0130】
結果
抗ウイルス効果及び細胞毒性データを以下の表に要約する。レファムリンは、ウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)の阻害に対して時間依存的効果を示した。ウイルス曝露後(感染後1時間)の処置設定では、用量依存的効果が観察された。50μMの濃度で、ウイルスCPEは86.83%低下した(データは詳細に示さず)。
【表2】
【0131】
例8
目的:このアッセイでは、様々な濃度のレファムリン(BC-3781)による、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSVA2株)複製感染6日後のHEp2細胞において、ウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び胞生存率の阻害を測定した。
【0132】
方法:HEp2細胞を96ウェル平底組織培養プレートに播種し(ウェルあたり5×103細胞の密度で)、一晩接着させた。その後、DMSO中の希釈試験化合物(酢酸塩としてのレファムリン、フマル酸塩としてのチアムリン)をプレートに添加し、ウイルスを添加する前に4時間インキュベートした。ウイルスを所定の力価に希釈して添加すると、感染後6日で85~95%の細胞死滅が得られた(MOIは0.001)。
【0133】
37℃及び5%CO2で6日間インキュベートした後、XTTテトラゾリウム色素染色によって細胞生存率を測定した。細胞培養プレートの光学密度を、450nm及び650nmで分光光度的に決定した。ウイルス感染細胞の減少パーセント及び非感染薬物対照ウェルの細胞生存パーセントを計算して、4パラメータカーブフィット分析を使用して、細胞傷害活性の50%が阻害される有効濃度(EC50)及び細胞毒性濃度(TC50)を決定した。抗ウイルス化合物TMC353121(RSV融合阻害剤)を陽性対照とした。
【0134】
結果
驚くべきことに、レファムリンは、細胞対照の生存率に対して細胞毒性効果を何ら有しない濃度である10μM及び50μMの濃度で、ウイルスの細胞傷害活性(CPE)をそれぞれ92.17%及び100%低下させた。計算されたEC50は5.34μMであり、50%のウイルスCPEが阻害された。100μMのレファムリン濃度で、レファムリンは細胞毒性効果を示し、算出されたTC50は70.7μMであった。治療指数としても知られるEC50とTC50の比は13.2であった。
【0135】
対照的に、10μMの濃度のチアムリンは、ウイルスCPEを16.76%しか低下させず、この濃度で細胞毒性効果(84%生存率)が観察された。次に高い試験濃度である50μMでは、ウイルスCPEは43.28%減少し、細胞毒性効果はより顕著であった(生存率70.0%)。計算されたEC50は、67.9μMの計算されたTC50よりも高く、67.9μM超であった。したがって、チアムリンの治療指数を計算することができなかった。驚くべきことに、抗ウイルス活性及び治療指数は、チアムリンよりもレファムリンの方がはるかに高かった。
【0136】
抗ウイルス化合物TMC353121は、特異的な呼吸器合胞体ウイルス融合阻害剤として開発された(臨床試験中)。したがって、TMC353121は、本明細書において陽性対照としての役割を果たした。TMC353121は、0.006μMのEC
50、0.1μM超のTC
50及び167超の治療指数を示した。
【表3】
【0137】
結果を
図10A(レファムリン)、10B(チアムリン)及び10C(TMC353121)にグラフで示す(VCはウイルスCPEの減少、CCは細胞対照)。
【0138】
例9
目的:このアッセイでは、感染多重度(MOI)を変化させて、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSVA2株)複製後のHEp2細胞において、ウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び胞生存率の阻害を測定した。
【0139】
方法:試験に関して以下の違いを伴って、上記の例8と同様にアッセイを行った。感染後6日目に85~95%の細胞死滅が得られるように、ウイルスを所定の力価に希釈して添加し、それぞれ0.003、0.001、0.0008及び0.0004のMOIが得られるように、添加量を採用した。この試験では、レファムリン(酢酸塩として)を調査し、陽性対照についてはTMC353121を調査した。
【0140】
結果
抗ウイルス効果及び細胞毒性データを以下の表に要約する。レファムリンの低μM範囲のEC
50値は、0.0004のMOIで再現された。対照的に、より高いMOI、したがって調査した細胞に対してより高いウイルス量は、レファムリンの抗ウイルス効果を減少させた。この効果は、非常に有効な対照物質TMC353121ではあまり顕著ではない。
【表4】
【表5】
【0141】
例10
目的:このアッセイでは、2つの異なる呼吸器合胞体ウイルス株RSV ALONG及びRSV B18537の複製後のHEp2細胞において、ウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)阻害及び細胞生存率を測定した。
【0142】
方法:異なる濃度の試験化合物で4時間細胞前処置した後、ウェルあたり5×103細胞の密度で播種した細胞をウイルス株RSV ALONG又はRSV B18537とそれぞれインキュベートしたという違いを伴って、上記の例8と同様にアッセイを行った。ウイルスを希釈し、RSV ALONG及びRSV B18537についてそれぞれ0.01及び0.001のMOIを生じる量で添加した。
【0143】
結果
抗ウイルス効果及び細胞毒性データを以下の表に要約する。対照化合物TMC353121をレファムリンと並行して評価し、RSV A及びRSV Bの調査株に対して0.01nMのEC
50値を得た。レファムリンはRSV B
18537に対して17.7μMのEC
50値を得た。RSV A
LONGに対する活性は、HEp2細胞に対する細胞毒性があり、アッセイにおけるTC
50値は71.1μMであったため、決定することができなかった。
【表6】
【表7】
【0144】
例11
目的:アッセイでは、HeLa細胞における麻疹ウイルス株Edmonstonの複製中のウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び細胞生存率の阻害を測定した。
【0145】
方法:HeLa細胞を96ウェル平底組織培養プレートに播種し(ウェルあたり5×103細胞の密度で)、一晩接着させた。その後、希釈した試験化合物(酢酸塩としてのレファムリン、対照用のリバビリン)をプレートに添加し、ウイルスを添加する前に4時間インキュベートした。ウイルスを所定の力価に希釈して添加すると、感染後6日で85~95%の細胞死滅が得られた(1:50希釈、MOIは0.008)。
【0146】
細胞生存率の決定並びにEC50及びTC50の計算を、例6及び8に記載されるように行った。
【0147】
結果
抗ウイルス効果及び細胞毒性データを以下の表に要約する。リバビリンを、レファムリンと並行して対照化合物として評価し、1.88μg/mLのEC
50値を得た。驚くべきことに、レファムリンは、0.89μMという更に低いEC
50値をもたらし、81.7という高い計算されたTIを有した。
【表8】
【0148】
例12
目的:アッセイでは、Huh7細胞におけるデングウイルス株DENV2New Guineaの複製中のウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び細胞生存率の阻害を測定した。
【0149】
方法:Huh7細胞を96ウェル平底組織培養プレートに播種し(ウェルあたり5×103細胞の密度で)、一晩接着させた。その後、希釈した試験化合物(酢酸塩としてのレファムリン、対照用のリバビリン)をプレートに添加し、ウイルスを添加する前に4時間インキュベートした。デングウイルス株DENV2New GuineaをATCC(VR-1584)から入手し、ストックウイルスプールの産生のためにアカゲザル腎細胞で増殖させた。ウイルスを所定の力価に希釈して添加すると、感染後6日で85~95%の細胞死滅が得られた(MOIは0.001)。
【0150】
細胞生存率の決定並びにEC50及びTC50の計算を、例6及び8に記載されるように行った。
【0151】
結果
抗ウイルス効果及び細胞毒性データを以下の表に要約する。リバビリンを、レファムリンと並行して対照化合物として評価し、4.73μg/mLのEC
50値を得た。レファムリンは6.79μMのEC
50値をもたらした。リバビリン及びレファムリンは両方とも、それぞれ48.5μg/mL及び23.3μMの濃度でこの特定の細胞株に対して特定の細胞毒性を示した。
【表9】
【0152】
例13
目的:アッセイでは、4時間の細胞前処置後のHuh7細胞におけるジカウイルス株ZIKVPRVABC59の複製中のウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び細胞生存率の阻害を測定した。
【0153】
方法:Huh7細胞を96ウェル平底組織培養プレートに播種し(ウェルあたり5×103細胞の密度で)、一晩接着させた。その後、希釈した試験化合物(酢酸塩としてのレファムリン、対照用のソホスブビル)をプレートに添加し、ウイルスを添加する前に4時間インキュベートした。ATCC(カタログVR-1843)から入手したジカウイルス株PRVABC59をATCC(VR-1584)から入手し、ストックウイルスプールの産生のためにアカゲザル腎細胞で増殖させた。ウイルスを所定の力価に希釈して添加すると、感染後6日で85~95%の細胞死滅が得られた(MOIは0.001)。
【0154】
細胞生存率の決定並びにEC50及びTC50の計算を、例6及び8に記載されるように行った。
【0155】
結果
抗ウイルス効果及び細胞毒性データを以下の表に要約する。対照化合物ソホスブビルをレファムリンと並行して評価し、0.65μg/mLのEC
50値を得た。レファムリンは2.78μMのEC50値をもたらし、計算された治療指数は8.42であった。
【表10】
【0156】
例14
目的:アッセイでは、4時間の細胞前処置後のH1-HeLa細胞におけるヒトライノウイルス株HRV16株11757の複製中のウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び細胞生存率の阻害を測定した。
【0157】
方法:H1-HeLa細胞を96ウェル平底組織培養プレートに播種し(ウェルあたり5×103細胞の密度で)、一晩接着させた。その後、希釈した試験化合物(酢酸塩としてのレファムリン、対照用のルピントリビル)をプレートに添加し、ウイルスを添加する前に4時間インキュベートした。ウイルスHRV1611757を所定の力価に希釈して添加すると、未処置ウイルス対照ウェルで85~95%の細胞死滅が得られた(MOIは0.0005)。
【0158】
細胞生存率の決定並びにEC50及びTC50の計算を、例6及び8に記載されるように行った。
【0159】
結果
ライノウイルスの治療のために開発されたプロテアーゼ阻害剤であるルピントリビルを並行して評価し、4.90nMのEC
50値を得た。レファムリンは9.34μMのEC
50値をもたらし、計算された治療指数は2.58であった。
【表11】
【0160】
例15
目的:アッセイでは、4時間の細胞前処置後のMDCK細胞におけるインフルエンザウイルス株A/PR/8/34の複製中のウイルス誘発性細胞傷害活性(CPE)及び細胞生存率の阻害を測定した。
【0161】
方法:MDCK細胞を96ウェル平底組織培養プレートに播種し(ウェルあたり5×103細胞の密度で)、一晩接着させた。その後、希釈した試験化合物(酢酸塩としてのレファムリン、対照用のオセルタミビル)をプレートに添加し、ウイルスを添加する前に4時間インキュベートした。インフルエンザウイルス株A/PR/8/34を所定の力価に希釈して添加すると、未処置ウイルス対照ウェルで90%の細胞死滅が得られた(MOIは0.0004)。
【0162】
細胞生存率の決定並びにEC50及びTC50の計算を、例6及び8に記載されるように行った。
【0163】
結果
確立されたインフルエンザ薬物としてのオセルタミビルを並行して評価し、0.06μMのEC
50値を得た。レファムリンは、23μMを超える濃度でMDCK細胞に対して細胞毒性であった。5μMのレファムリンでインフルエンザ媒介CPEの最大阻害率18.4%が測定された。したがって、細胞毒性が50μMで観察されたので、EC
50をレファムリンについて決定することができなかった。注目すべきことに、関連するマウス適合インフルエンザA株(インフルエンザA/プエルトリコ/8/34(H1N1))を使用したインフルエンザ感染マウスモデル(上記の例5を参照)において、インビボ活性が観察された。
【表12】
【国際調査報告】