(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】負極材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20230524BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230524BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230524BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20230524BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20230524BHJP
C01B 33/32 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
C01B33/113 A
C01B33/02 Z
C01B33/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562901
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 CN2022076680
(87)【国際公開番号】W WO2022174797
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】202110193700.7
(32)【優先日】2021-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(71)【出願人】
【識別番号】521520935
【氏名又は名称】惠州市鼎元新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】謝 維
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 春雷
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 志▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【テーマコード(参考)】
4G072
4G073
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA24
4G072BB05
4G072BB09
4G072DD06
4G072DD07
4G072GG02
4G072HH01
4G072HH13
4G072JJ02
4G072JJ47
4G072KK17
4G072QQ06
4G072QQ09
4G072TT01
4G072TT05
4G072UU30
4G073BA03
4G073BA62
4G073BB03
4G073BB13
4G073BB16
4G073BB23
4G073BD18
4G073BD21
4G073CB04
4G073CB06
4G073FD01
4G073FF03
4G073FF04
4G073GA11
4G073GA12
4G073UB11
4G073UB60
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB11
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA16
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA18
5H050HA20
(57)【要約】
本開示はリチウム電池材料の分野に属し、負極材料、その製造方法及び使用に関し、負極材料の製造方法は、Li-芳香族組成物を含むリチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理する工程を含み、前記芳香族組成物は、非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含むか、又は、前記芳香族組成物は少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む。本開示で提供される負極材料、その製造方法及び使用では、リチウム挿入深さ及びリチウム挿入効率を改善し、不可逆的な容量損失を減少させ、電池容量を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li-芳香族組成物を含むリチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理する工程を含み、
前記芳香族組成物は、非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含むか、又は少なくとも2種の置換芳香族化合物を含む、負極材料の製造方法。
【請求項2】
下記特徴(1)~(10)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の製造方法。
(1)前記芳香族化合物はベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、及びピリジンのうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記置換芳香族化合物の置換基はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、エステル基、アミノ基、置換カルボニル基、及びアミド基のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記置換芳香族化合物の置換基はアルキル基を含み、前記アルキル基は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基のうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記置換芳香族化合物の置換基はアルコキシ基を含み、前記アルコキシ基は炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルコキシ基のうちの少なくとも1種を含む;
(5)前記置換芳香族化合物の置換基はアリールオキシ基を含み、前記アリールオキシ基はフェノキシ基を含む;
(6)前記置換芳香族化合物の置換基はハロゲンを含み、前記ハロゲンは-F、-Cl、-Br及び-Iのうちの少なくとも1種を含む;
(7)前記置換芳香族化合物の置換基はエステル基を含み、前記エステル基はアルキルエステル基及びアリールエステル基のうちの少なくとも1種を含む;
(8)前記置換芳香族化合物の置換基はアミノ基を含み、前記アミノ基は-NH
2、-R
2NH
2、-NHR
3及び-NR
4R
5のうちの少なくとも1種を含み、ただし、R
2は炭素数1~3のアルキレン基又は置換アルキレン基から選ばれる少なくとも1種であり、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立して炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキル基から選ばれる少なくとも1種である;
(9)前記置換芳香族化合物の置換基は置換カルボニル基を含み、前記置換カルボニル基は-COR
6を含み、ただし、R
6は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基のうちの少なくとも1種を含む;
(10)前記置換芳香族化合物の置換基の数が1以上である。
【請求項3】
前記芳香族組成物は非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含み、
下記特徴(1)~(5)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項2に記載の製造方法。
(1)前記芳香族組成物において、置換芳香族化合物の含有量が3モル%~97モル%である;
(2)前記芳香族組成物において、アルキル置換芳香族化合物の含有量が10モル%~90モル%である;
(3)前記芳香族組成物において、アルコキシ置換芳香族化合物の含有量が20モル%~80モル%である;
(4)前記芳香族組成物において、ハロゲン置換芳香族化合物の含有量が5モル%~40モル%である;
(5)前記芳香族組成物において、置換カルボニル置換芳香族化合物の含有量が10モル%~60モル%である。
【請求項4】
前記芳香族組成物は少なくとも2種の置換芳香族化合物を含み、
下記特徴(1)~(8)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記芳香族組成物において、アルキル置換芳香族化合物の含有量が10モル%~80モル%であり、且つ、アルコキシ置換芳香族化合物の含有量が20モル%~90モル%である;
(2)前記芳香族組成物において、アルキル置換芳香族化合物の含有量が60モル%~95モル%であり、且つ、ハロゲン置換芳香族化合物の含有量が5モル%~40モル%である;
(3)前記芳香族組成物において、アルコキシ置換芳香族化合物の含有量が60モル%~95モル%であり、且つ、ハロゲン置換芳香族化合物の含有量が5モル%~40モル%である;
(4)前記芳香族組成物において、1種のアルキル置換芳香族化合物の含有量が10モル%~90モル%であり、且つ、別の1種のアルキル置換芳香族化合物の含有量が10モル%~90モル%である;
(5)前記芳香族組成物において、アルキル置換芳香族化合物の含有量が20モル%~50モル%であり、ハロゲン置換芳香族化合物の含有量が20モル%~50モル%であり、及び、置換カルボニル置換芳香族化合物の含有量が20モル%~50モル%である;
(6)前記芳香族組成物において、ハロゲン置換芳香族化合物の含有量が10モル%~50モル%であり、且つ、置換カルボニル置換芳香族化合物の含有量が50モル%~90モル%である;
(7)前記芳香族組成物において、置換カルボニル置換芳香族化合物の含有量が20モル%~50モル%であり、アルコキシ置換芳香族化合物の含有量が20モル%~50モル%であり、及び、ハロゲン置換芳香族化合物の含有量が20モル%~50モル%である;
(8)前記芳香族組成物において、アルコキシ置換芳香族化合物の含有量が50モル%~95モル%であり、且つ、置換カルボニル置換芳香族化合物の含有量が5モル%~50モル%である。
【請求項5】
下記特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記芳香族組成物は非置換芳香族化合物と少なくとも2種の置換芳香族化合物とを含む;
(2)前記芳香族組成物は非置換芳香族化合物と少なくとも2種の置換芳香族化合物とを含み、前記置換芳香族化合物においてアルキル置換芳香族化合物及びアミノ置換芳香族化合物を含む;
(3)前記リチウム化溶液は主に芳香族組成物の有機溶液とリチウム源とを混合してなり、前記有機溶液の有機溶媒はエーテル系、炭酸エステル系、ベンゼン系及びケトン系溶媒のうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記リチウム化溶液は主に芳香族組成物の有機溶液とリチウム源とを混合してなり、前記芳香族組成物の有機溶液に含まれる前記芳香族組成物の濃度が0.2mol/L~2mol/Lである。
【請求項6】
前記リチウム化溶液は主に芳香族組成物の有機溶液とリチウム源とを混合してなり、
下記特徴(1)~(10)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
(1)前記リチウム源はリチウム金属、及びリチウム含有量が40%を超えるリチウム合金のうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記リチウム源は粉末、シート材及びブロック材のうちの少なくとも1種である;
(3)前記リチウム源(Li換算)と前記芳香族組成物とのモル比が2よりも大きい;
(4)前記リチウム化溶液の製造中において、前記混合の温度が10℃~30℃、前記混合の時間が5min~10minである;
(5)前記リチウム化溶液中、Li-芳香族組成物と前記負極原料とのモル比が(0.2~2):1である;
(6)前記負極原料はケイ素系材料、炭素系材料及びケイ素炭素複合材のうちの少なくとも1種を含む;
(7)前記負極原料は粉末の形態又は電極シートであり、前記粉末の粒子径が50μmよりも小さい;
(8)前記負極原料は一酸化ケイ素を含む;
(9)前記リチウム化処理後に、固液分離を行って、固体を収集して洗浄し、リチウム化処理後の負極材料を得る;
(10)前記製造方法は、リチウム化処理後の負極材料を乾燥処理して、予備リチウム化された負極材料を得る工程をさらに含む。
【請求項7】
Li-芳香族組成物を含むリチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理する工程を含み、
前記芳香族組成物は異なる電位をそれぞれ有する少なくとも2種の芳香族化合物を含む、負極材料の製造方法。
【請求項8】
前記芳香族組成物は下記特徴(1)~(3)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項7に記載の製造方法。
(1)前記芳香族化合物のリチウムに対する電位の範囲が0~0.5V vs Li/Li
+である;
(2)異なる前記芳香族化合物の間にリチウムに対する電位勾配がある;
(3)異なる前記芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li
+が、0<△V≦0.3Vを満たす。
【請求項9】
異なる前記芳香族化合物のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li
+が、0<△V≦0.1Vを満たす、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
芳香族組成物と有機溶媒を含有する混合溶液にリチウム源を加えて、Li-芳香族化合物を含むリチウム化溶液とする工程であって、前記芳香族組成物は、異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種の芳香族化合物を含むか、又は分岐鎖を有する1種の芳香族化合物、及び未修飾の芳香族化合物を含む工程と、
負極粉末材料を前記リチウム化溶液に加え、乾燥させて予備リチウム化された負極材料を得る工程とを含む、負極材料の製造方法。
【請求項11】
下記特徴(1)~(7)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項10に記載の方法。
(1)前記未修飾の芳香族化合物はベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びテトラセンのうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記分岐鎖はアルカン系分岐鎖、エーテル系分岐鎖、ハロゲン系分岐鎖、エステル系分岐鎖、アミン系分岐鎖、及びベンゼン環含有分岐鎖のうちの少なくとも1種を含む;
(3)前記分岐鎖はアルカン系分岐鎖を含み、前記アルカン系分岐鎖は-CH
3、-C
2H
5及び-C
3H
7のうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記分岐鎖はエーテル系分岐鎖を含み、前記エーテル系分岐鎖は-OCH
3、-OCH
2CH
3及び-OC
6H
5のうちの少なくとも1種を含む;
(5)前記分岐鎖はハロゲン系分岐鎖を含み、前記ハロゲン系分岐鎖は-Cl、-F、-Br及び-Iのうちの少なくとも1種を含む;
(6)前記分岐鎖はエステル系分岐鎖を含み、前記エステル系分岐鎖はベンジルエステル系分岐鎖及び安息香酸エステル系分岐鎖のうちの少なくとも1種を含む;
(7)前記分岐鎖はアミン系分岐鎖を含み、前記アミン系分岐鎖は、-NH
2、-CH
2NH
2、-CH
2CH
2NH
2、-CH(CH
3)NH
2、-N(CH
3)
2、-NHCH
2CH
3、-NHCH
2CH
2CH
3及び-NHCOCH
3のうちの少なくとも1種を含む。
【請求項12】
前記芳香族組成物は、分岐鎖を有する1種の芳香族化合物、及び未修飾の芳香族化合物を含み、
下記特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項11に記載の方法。
(1)前記芳香族組成物において、前記分岐鎖を有する芳香族化合物の含有量が3モル%~97モル%である;
(2)前記芳香族組成物において、アルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物の含有量が10モル%~90モル%である;
(3)前記芳香族組成物において、エーテル系分岐鎖を有する芳香族化合物の含有量が20モル%~80モル%である;
(4)前記芳香族組成物において、ハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物の含有量が5モル%~40モル%である。
【請求項13】
前記芳香族組成物は異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種の芳香族化合物を含み、前記異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種の芳香族化合物の組み合わせは、
アルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物10モル%~80モル%と、エーテル系分岐鎖を有する芳香族化合物20モル%~90モル%とを含むものであるか、
アルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物60モル%~95モル%と、ハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物5モル%~40モル%とを含むものであるか、又は
エーテル系分岐鎖を有する芳香族化合物60モル%~95モル%と、ハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物5モル%~40モル%とを含むものである、請求項10、11又は12に記載の方法。
【請求項14】
下記特徴(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
(1)前記芳香族組成物は、異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種の芳香族化合物、及び未修飾の芳香族化合物を含む;
(2)前記芳香族組成物は、異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種の芳香族化合物、及び未修飾の芳香族化合物を含み、かつ少なくとも1種の芳香族化合物はアルカン系又はアミン系分岐鎖を有する;
(3)前記有機溶媒はジメチルエーテル、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、炭酸エステル系、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、プロピレンオキシド及びケトン系溶媒のうちの少なくとも1種を含む;
(4)前記混合溶液に含まれる芳香族化合物の濃度が0.2mol/L~2.0mol/Lである。
【請求項15】
下記特徴(1)~(10)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
(1)前記リチウム源はリチウム金属、及びリチウム含有量が40%よりも大きいリチウム合金のうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記リチウム源中の前記芳香族組成物に対するリチウム元素のモル比が2よりも大きい;
(3)前記リチウム源の溶解時間が5min~10minであり、前記リチウム源の溶解温度が10℃~30℃である;
(4)前記負極粉末材料に対する前記Li-芳香族化合物のモル比が(0.2~2):1である;
(5)前記負極粉末材料は、ケイ素系材料、炭素系材料及びケイ素炭素複合材のうちの少なくとも1種を含む;
(6)前記負極粉末材料の粒子径が50μmよりも小さい;
(7)前記撹拌の方式は磁気撹拌、超音波撹拌及び機械的撹拌のうちの少なくとも1種を含む;
(8)前記撹拌の時間が15min~60minである;
(9)前記乾燥は、保護ガス下で行い、前記保護ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む;
(10)前記乾燥の時間は15min~60minである。
【請求項16】
芳香族組成物と有機溶媒を含有する混合溶液にリチウム源を加えて、Li-芳香族化合物を含むリチウム化溶液とする工程であって、前記芳香族組成物はアルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物とハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物とを含む工程と、
一酸化ケイ素を前記リチウム化溶液に加えて、撹拌後にろ過し、有機溶媒で洗浄してろ過し、乾燥させて予備リチウム化された一酸化ケイ素材料を得る工程とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
ナノケイ素、ケイ素酸素リチウム含有化合物及び芳香族組成物を含み、
前記ケイ素酸素リチウム含有化合物はLi
2Si
2O
5、Li
2SiO
3及びLi
4SiO
4のうちの少なくとも1種を含み、
前記芳香族組成物は、前記ナノケイ素と前記ケイ素酸素リチウム含有化合物を少なくとも部分的に被覆している、負極材料。
【請求項18】
前記負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを含み、
前記負極材料は下記特徴(1)~(12)のうちの少なくとも1つを満たす、請求項17に記載の負極材料。
(1)前記コアはナノケイ素とケイ素酸素リチウム含有化合物とを含む;
(2)前記ナノケイ素は前記ケイ素酸素リチウム含有化合物に分散している;
(3)前記コアはSiO
x(ただし、xは0.4≦x≦1.6を満たす)をさらに含む;
(4)前記芳香族組成物は異なる電位をそれぞれ有する少なくとも2種の芳香族化合物を含む;
(5)異なる前記芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li
+は、0<△V≦0.3Vを満たす;
(6)前記負極材料のメディアン径が4μm~8μmである;
(7)前記負極材料の比表面積が1.5m
2/g~4.2m
2/gである;
(8)前記負極材料のpH値が10~11.5である;
(9)前記負極材料は炭素被覆層をさらに含む;
(10)前記負極材料は炭素被覆層をさらに含み、前記炭素被覆層は前記コアを被覆している;
(11)前記負極材料は炭素被覆層をさらに含み、前記炭素被覆層におけるチャネル内及び炭素被覆層の外面に前記芳香族組成物が分布している;
(12)前記負極材料において、前記芳香族組成物の被覆量は0wt%~2wt%である。
【請求項19】
集電体と前記集電体の表面に設けられた負極層とを含み、
前記負極層は、請求項1~6のいずれか1項に記載の負極材料の製造方法によって得られた負極材料、請求項7~9のいずれか1項に記載の負極材料の製造方法によって得られた負極材料、請求項10~16のいずれか1項に記載の負極材料の製造方法によって得られた負極材料、又は請求項17又は18に記載の負極材料を含む、負極シート。
【請求項20】
請求項19に記載の負極シートを含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は2021年02月20日に中国特許庁に提出された、出願番号が202110193700.7、名称が「リチウムイオン電池用負極材料及び其予備リチウム化処理方法、リチウムイオン電池」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全内容は引用によって本願に組み込まれている。
【0002】
本開示は電池材料の技術分野に属し、本開示は負極材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池はエネルギー密度が大きく、出力が高く、サイクル寿命が長く、環境汚染が少ないなどの利点があるため、電気自動車や消費者向け電子製品に広く応用されている。電池のエネルギー密度を高めるために、ケイ素負極材料の研究開発が成熟化している。しかし、ケイ素負極材料はリチウムをインターカレーションする過程で体積膨張が大きく(>300%)、ケイ素負極材料は充放電中に粉化して集電体から落下し、活物質と集電体との間の電気的接触が失われ、大きな初回不可逆容量損失は大量の電解液と正極材料から放出されたリチウムイオンを消費し、その結果、充放電効率の低下、放電比容量及び安定性の低下をもたらし、電池のエネルギー密度とサイクル寿命を低下させる。予備リチウム化技術は、不可逆的な容量損失を解決し、クーロン効率を向上させるための有効な方法を提供する。
【0004】
電気化学的予備リチウム化、直接接触短絡法は有効で簡単な手段であり、高容量炭素材料、合金負極及び変換材料の初回不可逆損失を軽減することができ、予備リチウム化量が精密に制御でき、安定性が良い利点があるが、その環境に対する高い要件、例えば無酸素、無水、乾燥環境はその普及を制限してしまう。
【0005】
正負極予備リチウム化添加剤を用いることも可能であるが、電極製造プロセス、電解液、バインダー及び電池組立プロセスとの適合性(自身の安定性、ガス発生、毒性など)には、さらなる向上が期待される。
【0006】
一方、化学予備リチウム化技術は近年重要な研究進展を得ており、化学予備リチウム化技術を用いてリチウムを予備挿入した正負極材料を調製することは簡単で有効な方法であり、このような材料は酸化状態又は還元状態にあるため室温環境で空気、湿度などの影響を受けやすく、大規模な応用も難題である。
【0007】
上記の方法によって製造される材料は、リチウム挿入深さが限られ、初回効果が低く、ニーズに応えられない。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、
Li-芳香族組成物を含むリチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理する工程を含み、
前記芳香族組成物は非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含むか、又は、前記芳香族組成物は少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む、負極材料の製造方法を提供する。
【0009】
上記の態様では、置換基を有する芳香族化合物のさまざまな組み合わせによる相乗作用、若しくは置換基を有する芳香族化合物と非置換芳香族化合物とによる相乗作用を利用して、異なる電位の差を有する芳香族化合物の組み合わせによって、リチウム挿入電位の差の勾配通路が形成され、リチウム源と負極原料が有機溶媒にて化学リチウム挿入を自発的かつ素早く行い、これにより、リチウム挿入深さ及びリチウム挿入効率を改善し、不可逆的な容量損失を低下させ、電池容量を向上させる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記芳香族化合物は、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、及びピリジンのうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記置換芳香族化合物の置換基はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、エステル基、アミノ基、置換カルボニル基、及びアミド基のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記アルキル基は、炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基のうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記アルキル基は、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキル基のうちの少なくとも1種を含み、例えばメチル基(-CH3)、エチル基(-CH2CH3)、n-プロピル基(-CH2CH2CH3)及び/又はイソプロピル基(-CH(CH3)2)を含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記アルコキシ基は炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルコキシ基のうちの少なくとも1種を含んでもよい。好適には、前記アルコキシ基はメトキシ基(-OCH3)及び/又はエトキシ基(-OC2H5)を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記アリールオキシ基はフェノキシ基を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記ハロゲンは-F、-Cl、-Br及び-Iのうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記エステル基はアルキルエステル基及びアリールエステル基のうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記エステル基は-COOR1又はメチルカルボキシレート基を含み、ここで、R1は炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキル基、フェニル基又はベンジル基のうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記アミノ基は-NH2、-R2NH2、-NHR3、及び-NR4R5のうちの少なくとも1種を含み、R2は炭素数1~3のアルキレン基又は置換アルキレン基から選ばれる少なくとも1種であり、例えばR2は-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-などであってもよく、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキル基から選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記置換カルボニル基は-COR6を含み、R6は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基のうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記置換フェニル基の置換基の種類については前記の前記置換芳香族化合物の置換基の種類を参照すればよく、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、エステル基、アミノ基、置換カルボニル基、及びアミド基のうちの少なくとも1種であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記置換芳香族化合物の置換基の数が1以上であり、即ち、一置換でも多置換でもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物が非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含む場合、前記芳香族組成物中には、非置換芳香族化合物3モル%~97モル%と置換芳香族化合物3モル%~97モル%が含まれる。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物が非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含む場合、前記芳香族組成物中、アルキル置換芳香族化合物は10モル%~90モル%であり、アルコキシ置換芳香族化合物は20モル%~80モル%であり、ハロゲン置換芳香族化合物は5モル%~40モル%である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物が少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む場合、前記芳香族組成物中には、
アルキル置換芳香族化合物10モル%~80モル%とアルコキシ置換芳香族化合物20モル%~90モル%が含まれるか、
アルキル置換芳香族化合物50モル%~95モル%とハロゲン置換芳香族化合物5モル%~50モル%が含まれるか、
アルコキシ置換芳香族化合物60モル%~95モル%とハロゲン置換芳香族化合物5モル%~40モル%が含まれるか、
1種類のアルキル置換芳香族化合物10モル%~90モル%と別のアルキル置換芳香族化合物10モル%~90モル%が含まれるか、
アルキル置換芳香族化合物20モル%~50モル%、ハロゲン置換芳香族化合物20モル%~50モル%及び置換カルボニル置換芳香族化合物20モル%~50モル%が含まれるか、
ハロゲン置換芳香族化合物10モル%~50モル%と置換カルボニル置換芳香族化合物50モル%~90モル%が含まれるか、
置換カルボニル置換芳香族化合物20モル%~50モル%、アルコキシ置換芳香族化合物20モル%~50モル%及びハロゲン置換芳香族化合物20モル%~50モル%が含まれるか、又は
アルコキシ置換芳香族化合物50モル%~95モル%と置換カルボニル置換芳香族化合物5モル%~50モル%が含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物は非置換芳香族化合物と少なくとも2種類の置換芳香族化合物とを含む。好適には、前記置換芳香族化合物において、アルキル置換芳香族化合物とアミノ置換芳香族化合物が含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物は非置換芳香族化合物20モル%~50モル%、アルキル置換芳香族化合物20モル%~50モル%、及び置換カルボニル置換芳香族化合物20モル%~50モル%を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記リチウム化溶液は主に芳香族組成物の有機溶液とリチウム源とを混合したものである。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記有機溶液の有機溶媒はエーテル系、炭酸エステル系、ベンゼン系溶媒、及びケトン系溶媒のうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記エーテル系はエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、及びジエチルエーテルのうちの少なくとも1種を含み、前記炭酸エステル系は炭酸ジメチルを含み、前記ベンゼン系溶媒はベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも1種を含み、前記ケトン系溶媒はアセトン及びメチルエチルケトンのうちの少なくとも1種を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物の有機溶液中、前記芳香族組成物の濃度が0.2mol/L~2mol/Lである。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物の有機溶液の製造は、芳香族組成物を有機溶媒に溶解させる工程を含む。溶解中に撹拌処理が行われてもよい。好適には、前記撹拌処理の時間は10min~30minである。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記リチウム源は、リチウム金属及びリチウム含有量が40%よりも大きいリチウム合金のうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記リチウム源は粉末、シート材又はブロック材などとして芳香族組成物の有機溶液と混合してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、Li換算後の前記リチウム源と前記芳香族組成物とのモル比が2よりも大きい。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記リチウム化溶液の製造中、前記混合の温度が10℃~30℃、前記混合の時間が5min~10minである。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記Li-芳香族組成物と前記負極原料とのモル比が(0.2~2):1である。いくつかの実施形態では、前記負極原料はケイ素系材料、炭素系材料及びケイ素炭素複合材のうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記負極原料は一酸化ケイ素を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記負極原料は粉末又はシートとしてリチウム化溶液に加えられて前記リチウム化処理を受ける。好適には、前記粉末の粒子径が50μmよりも小さい。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記リチウム化処理は撹拌の条件下で行われる。好適には、前記撹拌方式は磁気撹拌、超音波撹拌及び機械的撹拌のうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記撹拌時間が15min~60minであってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記リチウム化処理後、固液分離を行って、固体を収集して洗浄し、リチウム化処理後の負極材料を得る。好適には、前記固液分離方式はろ過を含む。好適には、前記洗浄は前記有機溶媒で行われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記製造方法は、前記リチウム化処理後の負極材料を乾燥処理して、予備リチウム化された負極材料を得る工程をさらに含む。好適には、前記乾燥は保護ガス下で行われる。好適には、前記保護ガスはヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。好適には、前記乾燥時間は15min~60minである。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記リチウム化溶液の製造において、前記リチウム化処理などは保護ガス下で行われる。例えば、保護ガス雰囲気の常温常圧グローブボックスにて行われてもよい。
【0038】
本願の実施例は、
Li-芳香族組成物を含むリチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理する工程を含み、
前記芳香族組成物は電位の異なる少なくとも2種類の芳香族化合物を含む、負極材料の製造方法を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記芳香族化合物のリチウムに対する電位の範囲が0~0.5V vs Li/Li+である。
【0040】
いくつかの実施形態では、異なる前記芳香族化合物の間にリチウムに対する電位勾配がある。
【0041】
いくつかの実施形態では、異なる前記芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li+が、0<△V≦0.3Vを満たす。
【0042】
いくつかの実施形態では、異なる前記芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li+が、0<△V≦0.1Vを満たす。
【0043】
芳香族組成物が非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含む場合、非置換芳香族化合物及び置換芳香族化合物は異なる電位を有し、非置換芳香族化合物のリチウムに対する電位の差は0~0.5V vs Li/Li+であり、置換芳香族化合物のリチウムに対する電位の差は0~0.5V vs Li/Li+である。非置換芳香族化合物に対応するLi-芳香族化合物(即ちLi-非置換芳香族化合物)と置換芳香族化合物に対応するLi-芳香族化合物(即ちLi-置換芳香族化合物)との間に電位勾配がある。Li-非置換芳香族化合物及びLi-置換芳香族化合物のそれぞれは、リチウムに対する電位の差△V vs Li/Li+が、0<△V≦0.3Vを満たす。
【0044】
芳香族組成物が少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物が2種類の置換芳香族化合物を含む場合を例にして説明し、1種類の置換芳香族化合物と別の置換芳香族化合物とは異なる電位を有し、1種類の置換芳香族化合物のリチウムに対する電位の差は0~0.5V vs Li/Li+であり、別の置換芳香族化合物のリチウムに対する電位の差は0~0.5V vs Li/Li+である。1種類の置換芳香族化合物に対応するLi-芳香族化合物(即ちLi-1種類の置換芳香族化合物)と別の置換芳香族化合物に対応するLi-芳香族化合物(即ちLi-別の置換芳香族化合物)との間に電位勾配がある。Li-1種類の置換芳香族化合物及びLi-別の置換芳香族化合物のそれぞれは、リチウムに対する電位の差△V vs Li/Li+が、0<△V≦0.3Vを満たす。
【0045】
本願の実施例は、
芳香族組成物と有機溶媒を含有する混合溶液にリチウム源を加えて、Li-芳香族化合物を含むリチウム化溶液とする工程であって、前記芳香族組成物は、異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種類の芳香族化合物を含むか、又は分岐鎖を有する芳香族化合物及び未修飾の芳香族化合物を含む工程と、
負極粉末材料を前記リチウム化溶液に加えて、乾燥させて予備リチウム化された負極材料を得る工程とを含む、負極材料の製造方法を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記未修飾の芳香族化合物は、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びテトラセンのうちの少なくとも1種を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記分岐鎖は、アルカン系分岐鎖、エーテル系分岐鎖、ハロゲン系分岐鎖、エステル系分岐鎖、アミン系分岐鎖及びベンゼン環含有分岐鎖のうちの少なくとも1種を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記分岐鎖はアルカン系分岐鎖を含み、前記アルカン系分岐鎖は、-CH3、-C2H5及び-C3H7のうちの少なくとも1種を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記分岐鎖はエーテル系分岐鎖を含み、前記エーテル系分岐鎖は-OCH3、-OCH2CH3及び-OC6H5のうちの少なくとも1種を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記分岐鎖はハロゲン系分岐鎖を含み、前記ハロゲン系分岐鎖は-Cl、-F、-Br及び-Iのうちの少なくとも1種を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記分岐鎖はエステル系分岐鎖を含み、前記エステル系分岐鎖はベンジルエステル系分岐鎖及び安息香酸エステル系分岐鎖のうちの少なくとも1種を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記分岐鎖はアミン系分岐鎖を含み、前記アミン系分岐鎖は、-NH2、-CH2NH2、-CH2CH2NH2、-CH(CH3)NH2、-N(CH3)2、-NHCH2CH3、-NHCH2CH2CH3及び-NHCOCH3のうちの少なくとも1種を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物は、分岐鎖を有する芳香族化合物及び未修飾の芳香族化合物を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物中、前記分岐鎖を有する芳香族化合物のモル比が3%~97%である。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物中、アルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物のモル比が10%~90%である。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物中、エーテル系分岐鎖を有する芳香族化合物のモル比が20%~80%である。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物中、ハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物のモル比が5%~40%である。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物は、異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種類の芳香族化合物を含み、前記分岐鎖の異なる芳香族化合物の組み合わせは、
アルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物10モル%~80モル%とエーテル系を分岐鎖とする芳香族化合物20モル%~90モル%、
アルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物60モル%~95モル%とハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物5モル%~40モル%、又は
エーテル系分岐鎖を有する芳香族化合物60モル%~95モル%とハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物5モル%~40モル%を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物は、異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種類の芳香族化合物、及び未修飾の芳香族化合物を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物は、異なる分岐鎖をそれぞれ有する少なくとも2種類の芳香族化合物、及び未修飾の芳香族化合物を含み、かつ少なくとも1種類の芳香族化合物はアルカン系又はアミン系分岐鎖を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記有機溶媒は、ジメチルエーテル、炭酸ジメチル、テトラヒドロフラン、炭酸エステル系、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、及びケトン系溶媒のうちの少なくとも1種を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記混合溶液中、芳香族化合物の濃度が0.2mol/L~2.0mol/Lである。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記リチウム源はリチウム金属、リチウム含有量が40%よりも大きいリチウム合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記リチウム源中のリチウム元素と前記芳香族組成物とのモル比が2よりも大きい。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記リチウム源の溶解時間が5min~10minであり、前記リチウム源の溶解温度が10℃~30℃である。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記Li-芳香族化合物と前記負極粉末材料とのモル比が(0.2~2):1である。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記負極粉末材料はケイ素系材料、炭素系材料及びケイ素炭素複合材のうちの少なくとも1種を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記負極粉末材料の粒子径が50μmよりも小さい。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記撹拌方式は磁気撹拌、超音波撹拌及び機械的撹拌のうちの少なくとも1種を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記撹拌時間が15min~60minである。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記乾燥は、保護ガス下で行われ、前記保護ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記乾燥時間は15min~60minである。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記方法は、芳香族組成物と有機溶媒を含有する混合溶液にリチウム源を加えて、Li-芳香族化合物を含むリチウム化溶液とする工程であって、前記芳香族組成物はアルカン系分岐鎖を有する芳香族化合物とハロゲン系分岐鎖を有する芳香族化合物とを含む工程と、一酸化ケイ素を前記リチウム化溶液に加えて、撹拌後、ろ過し、有機溶媒で洗浄してろ過し、乾燥させて予備リチウム化された一酸化ケイ素材料を得る工程とを含む。
【0074】
本開示はまた、ナノケイ素、ケイ素酸素リチウム含有化合物及び芳香族組成物を含み、前記ケイ素酸素リチウム含有化合物はLi2Si2O5、Li2SiO3及びLi4SiO4のうちの少なくとも1種を含み、前記芳香族組成物は前記ナノケイ素と前記ケイ素酸素リチウム含有化合物を少なくとも部分的に被覆している負極材料を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記コアはナノケイ素とケイ素酸素リチウム含有化合物とを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記ナノケイ素は前記ケイ素酸素リチウム含有化合物に分散している。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記コアはSiOx(ここで、xは0.4≦x≦1.6を満たす)をさらに含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記芳香族組成物は電位の異なる少なくとも2種類の芳香族化合物を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、異なる前記芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li+が、0<△V≦0.3Vを満たす。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記負極材料のメディアン径が4μm~8μmである。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記負極材料の比表面積が1.5m2/g~4.2m2/gである。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記負極材料のpH値が10~11.5である。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は炭素被覆層をさらに含み、前記炭素被覆層は前記コアを被覆している。
【0085】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は炭素被覆層をさらに含み、前記コア表面、前記炭素被覆層チャネル内及び炭素被覆層の外面に前記芳香族組成物が分布している。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記負極材料中、前記芳香族組成物の被覆量は0wt%~2wt%である。
【0087】
本開示はまた、集電体と集電体の表面に設けられる負極層とを含み、前記負極層は上記のいずれか1つの前記負極材料の製造方法によって得られる負極材料又は上記のいずれか1種類の負極材料を含む、負極シートを提供する。
【0088】
本開示はまた、上記のいずれか1種類の前記負極シートを含むリチウムイオン電池を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記リチウムイオン電池は、正極シート、セパレータ及び非水電解液をさらに含む。
【発明の効果】
【0090】
本開示の有益な効果は以下を含む。
【0091】
芳香族化合物が共役π結合を有するので、リチウムの共役化合物を形成することができ、リチウムの共役化合物と材料との間のポテンシャル差によって、リチウムイオンが材料の内部の奥まで挿入され得る。本態様では、異なる電位の差を有する芳香族化合物の組み合わせによってリチウム挿入電位の差の勾配通路が構築され、リチウム源と負極原料が有機溶媒にて化学リチウム挿入を自発的かつ素早く行い、これにより、リチウム挿入深さ及びリチウム挿入効率を改善し、不可逆的な容量損失を低下させ、電池容量を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】本願の実施例で提供されるリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化処理方法のフローチャートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下は本願の実施例の好適な実施形態であり、なお、当業者にとっては、本願の実施例の原理を逸脱することなく、いくつかの改良や修飾を行ってもよく、これらの改良や修飾も本願の実施例の特許範囲とみなすべきである。
【0094】
リチウム挿入深さ及びリチウム挿入効率を改善し、不可逆的な容量損失を低下させ、電池容量を向上させるために、本願の実施例は、
Li-芳香族組成物を含むリチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理する工程を含み、
芳香族組成物は非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含むか、又は、芳香族組成物は少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む、負極材料の製造方法を提供する。
【0095】
本開示では、Li-芳香族組成物とは、リチウム源と芳香族組成物中の芳香族化合物から形成されるLi-芳香族化合物錯体である。
【0096】
なお、芳香族組成物は少なくとも2種類の芳香族化合物を含み、少なくとも1種類の芳香族化合物は置換基を含有する。
【0097】
具体的には、
図1を参照すればよく、方法は、工程S10と工程S20を含む。
【0098】
工程S10、芳香族組成物の有機溶液とリチウム源を混合してリチウム化溶液とし、芳香族組成物は非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含むか、又は、芳香族組成物は少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む。
【0099】
工程S20、リチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理し、乾燥させて予備リチウム化された負極材料を得る。
【0100】
本態様では、置換芳香族組成物を最適化させ、予備リチウム反応を固液反応に変更することによって、リチウム源とリチウム挿入源との接触面を大きくし、異なる電位の勾配を形成し、π電子雲とLiとの結合強度や形態を変化させることにより、リチウム挿入効率及びリチウム挿入深さを向上させる。芳香族組成物を有機溶媒系に溶解させ、芳香族化合物と金属リチウムから形成された共役化合物を有機溶媒に分散させたものは、電気化学電位が金属リチウムと負極原料(例えば一酸化ケイ素)との電位の間である。リチウムの共役化合物と負極原料との間のポテンシャル差によって、リチウムイオンは負極原料の内部の奥に挿入され得る。したがって、異なる電位の差を有する芳香族化合物の組み合わせによってリチウム挿入電位の差の勾配通路が構築され、リチウム源と負極原料が有機溶媒において化学リチウム挿入を自発的かつ素早く行い、これにより、リチウム挿入深さ及びリチウム挿入効率を効果的に改善し、不可逆的な容量損失を低下させ、電池容量を向上させる。
【0101】
いくつかの実施形態では、リチウム化溶液は主に芳香族組成物の有機溶液とリチウム源とを混合したものである。
【0102】
いくつかの実施形態では、芳香族化合物はベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、及びピリジンのうちの少なくとも1種を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、置換芳香族化合物の置換基はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン、エステル基、アミノ基、置換カルボニル基、及びアミド基のうちの少なくとも1種を含む。例えば、置換芳香族化合物は、ジメチルビフェニル、2-メチルビフェニル、2,6-ジメチルピリジン、アニソール、ジフェニルエーテル、4,4-ジフルオロベンゾフェノン、3-フルオロアニソール、ベンゾフェノンなどであってもよく、これらに限定されない。
【0104】
いくつかの実施形態では、アルキル基は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基のうちの少なくとも1種を含む。好適には、アルキル基は炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキル基のうちの少なくとも1種を含み、例えばメチル基(-CH3)、エチル基(-CH2CH3)、n-プロピル基(-CH2CH2CH3)及び/又はイソプロピル基(-CH(CH3)2)を含んでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、アルコキシ基は炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルコキシ基のうちの少なくとも1種を含む。好適には、アルコキシ基はメトキシ基(-OCH3)及び/又はエトキシ基(-OC2H5)を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、アリールオキシ基はフェノキシ基(-OPh)を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、ハロゲンは-F、-Cl、-Br及び-Iのうちの少なくとも1種を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、エステル基はアルキルエステル基及びアリールエステル基のうちの少なくとも1種を含む。好適には、エステル基は-COOR1又はメチルカルボキシレート基であり、ここで、R1は炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキル基、フェニル基又はベンジル基のうちの少なくとも1種を含む。例えばHCOOCH2-、-COOCH3、-COOCH(CH3)2であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0109】
いくつかの実施形態では、アミノ基は-NH2、-R2NH2、-NHR3、及び-NR4R5のうちの少なくとも1種を含み、R2は炭素数1~3のアルキレン基又は置換アルキレン基から選ばれる少なくとも1種であり、例えばR2は-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-などであってもよく、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して炭素数1~3の直鎖状又は分岐状アルキル基から選ばれる少なくとも1種である。
【0110】
いくつかの実施形態では、置換カルボニル基は-COR6を含み、R6は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基のうちの少なくとも1種を含む。好適には、置換フェニル基の置換基の種類は前記の置換芳香族化合物の置換基の種類を参照すればよく、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン、エステル基、アミノ基、置換カルボニル基、及びアミド基のうちの少なくとも1種であってもよい。
【0111】
置換芳香族化合物の置換基の数が1以上であり、即ち、一置換でも多置換でもよい。置換芳香族化合物の置換基の位置について限定はない。なお、置換芳香族化合物の置換基の数は限定されるものではなく、例えば、芳香族化合物がベンゼンである場合、置換基の数は1~6の整数、例えば1、2、3などであってもよく、芳香族化合物がビフェニルである場合、置換基の数は1~10の整数、例えば1、2、3、4、5などであってもよく、芳香族化合物がテルフェニルである場合、置換基の数は1~14の整数、例えば1、2、3、4、5、6、7などであってもよく、芳香族化合物がナフタレンである場合、置換基の数は1~8の整数、例えば1、2、3、4などであってもよく、芳香族化合物がアントラセンである場合、置換基の数は1~10の整数、例えば1、2、3、4、5などであってもよく、芳香族化合物がフェナントレンである場合、置換基の数は1~10の整数、例えば1、2、3、4、5などであってもよく、芳香族化合物がピレンである場合、置換基の数は1~10の整数、例えば1、2、3、4、5などであってもよく、芳香族化合物がテトラセンである場合、置換基の数は1~12の整数、例えば1、2、3、4、5、6などであってもよく、芳香族化合物がピリジンである場合、置換基の数は1~5の整数、例えば1、2、3などであってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、芳香族組成物が非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含む場合、芳香族組成物中には、非置換芳香族化合物3モル%~97モル%と置換芳香族化合物3モル%~97モル%が含まれる。
【0113】
非置換芳香族化合物の電位が高すぎて、リチウム挿入効率が低いため、予備リチウム化後の負極材料の初回効果が低く、非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを組み合わせて、π電子密度の空間分布を調整し、化学電位の勾配差を構成し、リチウム挿入通路を構築することによって、リチウムの挿入深さを増加するとともに予備リチウム化効率を高め、予備リチウム化材料の初回効果を向上させる。特定の実施形態では、置換基のタイプを調整して、芳香族組成物とリチウムとの化学反応の強度を変えることにより、リチウム挿入深さを増加することができる。このような固液化学反応による予備リチウム化では、熱発生量が少なく、反応が温和であり、粉体又はシートに適用でき、かつ、予備リチウム化効果が良好である。
【0114】
1種類の置換芳香族化合物の代わり、置換芳香族化合物と非置換芳香族化合物とを組み合わせることによって、金属リチウムの使用量が低下し、生産コストが削減され、しかも、負極原料(例えば一酸化ケイ素)の予備リチウム化効果が高まる。
【0115】
好適には、芳香族組成物が非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含む場合、芳香族組成物中、置換芳香族化合物は3モル%、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、97モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0116】
いくつかの実施形態では、芳香族組成物が非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含む場合、芳香族組成物中、
アルキル置換芳香族化合物10モル%~90モル%と非置換芳香族化合物10モル%~90モル%、
アルコキシ置換芳香族化合物20モル%~80モル%と非置換芳香族化合物20モル%~80モル%、又は、
ハロゲン置換芳香族化合物5モル%~40モル%と非置換芳香族化合物60モル%~95モル%を含む。
【0117】
好適には、芳香族組成物が非置換芳香族化合物とアルキル置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、アルキル置換芳香族化合物は10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0118】
好適には、芳香族組成物が非置換芳香族化合物とアルコキシ置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、アルコキシ置換芳香族化合物は20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0119】
好適には、芳香族組成物が非置換芳香族化合物とハロゲン置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、ハロゲン置換芳香族化合物は5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0120】
いくつかの実施形態では、芳香族組成物が少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、具体的には、
アルキル置換芳香族化合物10モル%~80モル%とアルコキシ置換芳香族化合物20モル%~90モル%、
アルキル置換芳香族化合物60モル%~95モル%とハロゲン置換芳香族化合物5モル%~40モル%、
アルコキシ置換芳香族化合物60モル%~95モル%とハロゲン置換芳香族化合物5モル%~40モル%、
1種アルキル置換芳香族化合物10モル%~90モル%と別のアルキル置換芳香族化合物10モル%~90モル%、
アルキル置換芳香族化合物20モル%~50モル%、ハロゲン置換芳香族化合物20モル%~50モル%及び置換カルボニル置換芳香族化合物20モル%~50モル%、
ハロゲン置換芳香族化合物10モル%~50モル%と置換カルボニル置換芳香族化合物50モル%~90モル%、
置換カルボニル置換芳香族化合物20モル%~50モル%、アルコキシ置換芳香族化合物20モル%~50モル%及びハロゲン置換芳香族化合物20モル%~50モル%、又は
アルコキシ置換芳香族化合物50モル%~95モル%と置換カルボニル置換芳香族化合物5モル%~50モル%を含む。
【0121】
好適には、芳香族組成物がアルキル置換芳香族化合物とアルコキシ置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、アルキル置換芳香族化合物は10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0122】
好適には、芳香族組成物がアルキル置換芳香族化合物とハロゲン置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、アルキル置換芳香族化合物は60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0123】
好適には、芳香族組成物がアルコキシ置換芳香族化合物とハロゲン置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、アルコキシ置換芳香族化合物は60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0124】
好適には、芳香族組成物が異なる2種類のアルキル置換芳香族化合物を含む場合、芳香族組成物中、一方のアルキル置換芳香族化合物は10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、90モル%などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0125】
いくつかの実施形態では、芳香族組成物は非置換芳香族化合物と少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、芳香族組成物は非置換芳香族化合物と少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含み、かつ置換芳香族化合物はアルキル置換芳香族化合物とアミノ置換芳香族化合物を含む。芳香族化合物の組み合わせが多いほど、モルの組み合わせについては制限が少なくなり、電位勾配の細分化により電子軌道が混成された後にエネルギー水準が細分化され、電子が遷移してエネルギーバリアの低下を解決し、リチウム挿入効率が向上するからである。
【0127】
いくつかの実施形態では、芳香族組成物は非置換芳香族化合物20モル%~50モル%、アルキル置換芳香族化合物20モル%~50モル%、及び置換カルボニル置換芳香族化合物20モル%~50モル%を含む。
【0128】
なお、ここでのモル百分率とは、異なる置換基を有する全芳香族化合物に対する特定の置換芳香族化合物のモル比を指す。もちろん、置換基がアルキル基Aである芳香族化合物と置換基がアルキル基Bである芳香族化合物との組み合わせ、又は置換基がアルコキシ基Cである芳香族化合物と置換基がアルコキシ基Dである芳香族化合物であってもよい。これらに限定されない。
【0129】
具体的には、アルキル又はアルコキシ置換芳香族化合物の電位が、ハロゲン置換芳香族化合物よりも低い。したがって、高電位のハロゲン置換芳香族化合物のモル比はアルコキシ置換又はアルキル置換芳香族化合物のモル比よりも低く設定される。ここで、異なるアルコキシで置換された芳香族化合物の電位の変動の範囲が大きく、アルコキシ置換芳香族化合物と低電位のアルキル置換芳香族化合物とを組み合わせることによって、電位調整の範囲が広くなる。
【0130】
なお、1つの置換芳香族化合物では、その構造中に2つ以上(2つを含む)の異なる種類の置換基が同時に含有されている場合、高電位置換基によって分類される(ハロゲン>カルボニル基>アルコキシ基>アルキル基)。例えば、3-フルオロアニソールは、構造中にハロゲン-Fと-OCH3の両方を含んでおり、ハロゲン置換芳香族化合物とされ、4,4-ジフルオロベンゾフェノンは、構造中にハロゲン-Fと置換カルボニル基の両方を含んでおり、ハロゲン置換芳香族化合物とされる。
【0131】
なお、アルキル置換芳香族化合物、アルコキシ置換芳香族化合物、ハロゲン置換芳香族化合物、及び上記の複数種類の置換を有する芳香族化合物では、置換基の違いにより、リチウムに対する電位及びポテンシャルの差が異なり、これに基づいて、電位勾配及びリチウム挿入通路が構築され、リチウム挿入効率の向上に有利である。
【0132】
本態様では、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、エステル基、アミノ基などの置換基を有する芳香族炭化水素化合物を組み合わせることによって、π-共役電子分布を変えるとともに、リチウム錯化構造や位置に影響を与えて、化学リチウム挿入通路を構築することができ、また、金属リチウムが置換基と反応して、例えばリチウムがヒドロキシ基又はカルボキシ基類の基と反応して水素ガスを発生させることを回避できる。
【0133】
以下、本製造方法について詳細に説明する。
【0134】
工程S10、リチウム源を芳香族組成物の有機溶液に加えて、Li-芳香族化合物錯体を含むリチウム化溶液とし、芳香族組成物は非置換芳香族化合物と置換芳香族化合物とを含むか、又は、芳香族組成物は少なくとも2種類の置換芳香族化合物を含む。
【0135】
特定の実施形態では、有機溶液の有機溶媒はエーテル系、炭酸エステル系、ベンゼン系溶媒、及びケトン系溶媒のうちの少なくとも1種を含む。好適には、エーテル系はエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、及びジエチルエーテルのうちの少なくとも1種を含み、炭酸エステル系は炭酸ジメチルを含み、ベンゼン系溶媒はベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも1種を含み、ケトン系溶媒はアセトン及びメチルエチルケトンのうちの少なくとも1種を含む。
【0136】
芳香族組成物の有機溶液の製造は、芳香族組成物を有機溶媒に溶解させる工程を含む。溶解中に撹拌処理が行われてもよく、これにより溶液の均一性が向上し、撹拌方式は磁気撹拌、超音波撹拌及び機械的撹拌のうちの少なくとも1種を含む。好適には、撹拌処理時間は10min~30minである。
【0137】
芳香族組成物の有機溶液中、芳香族組成物の濃度は0.2mol/L~2mol/Lであり、具体的には、0.2mol/L、0.4mol/L、0.6mol/L、0.8mol/L、1.2mol/L、1.5mol/L又は2mol/Lであってもよいが、記載された数値に限定されるものでなく、この数値の範囲内であれば、記載されていない他の数値も適用可能である。
【0138】
理解できるものとして、単一成分の芳香族化合物に比べて、予備リチウム化効率を高めるために、予備リチウム化溶液中の芳香族化合物の濃度が高く要求され、芳香族化合物の消費量が大きく、一方、本願の芳香族組成物の配合比を利用することによって、芳香族化合物の濃度が効果的に低下し、材料の予備リチウム化処理における芳香族化合物の損耗が減少し、予備リチウム化のためのコストが削減される。
【0139】
リチウム源を有機溶液に加えると2段反応が起こり、第一には、金属リチウム源(固相)と有機溶液中の芳香族化合物(液相)とが反応を起こし、金属錯体(Li-芳香族化合物錯体)が形成され、金属Liが有機溶媒に溶解され、液状のリチウム源となる。第二には、リチウム挿入後の芳香族化合物(Li-芳香族化合物錯体)には異なる置換基を有することにより、Li-芳香族化合物錯体は複数の電位勾配を有し、これにより、Liの移動しにくさを効果的に低減させ、予備リチウム化SiO反応中に界面付近のリチウムの濃度を保持し、リチウム挿入深さの向上や効率化を図られる。
【0140】
特定の実施形態では、リチウム源はリチウム金属及びリチウム含有量が40%よりも大きいリチウム合金のうちの少なくとも1種を含む。好適には、リチウム源は粉末、シート材又はブロック材等として芳香族組成物の有機溶液と混合してもよい。
【0141】
リチウム源(Li換算)と芳香族組成物とのモル比は2以上であり、さらに、4以上であってもよく、モル比は具体的には4、5、6、7などであってもよい。理解できるものとして、リチウム源と芳香族組成物とのモル比が4以上であれば、リチウム源が過剰であることが確保され、金属錯体(Li-芳香族化合物錯体)はリチウム化溶液において素早く飽和状態になり、これにより、予備リチウム化処理対象の材料は所望の初回効果を達成でき、十分に予備リチウム化され、効率が向上する。
【0142】
リチウム源は有機溶液に溶解されており、特定の実施形態では、リチウム源の溶解時間は5min~10min、具体的には、5min、6min、7min、8min、9min、10minなどであってもよく、リチウム源の溶解温度は常温、10℃~30℃、具体的には、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃などであってもよいが、記載されている数値に限定されるものではなく、この数値の範囲内であれば、記載されていない他の数値も適用可能である。
【0143】
なお、溶解温度の範囲内では、有機溶媒と有機化合物は液相で混合した状態となる。
【0144】
任意選択に、リチウム源を有機溶液に加えた後、適切に撹拌されてもよく、これにより、リチウム源と有機溶液とがより均一に混合され、また、加えられた負極原料はより均一に表面の予備リチウム化処理を受ける。
【0145】
工程S20、負極原料をリチウム化溶液に加えて、乾燥させて予備リチウム化された負極材料を得る。
【0146】
理解できるものとして、液相のリチウム化溶液中にLi-芳香族化合物錯体が含有されることによって、負極原料の反応界面が最大化し、反応面積が増大し、リチウムイオンの輸送抵抗が低下し、リチウム化反応中、Li+は芳香族化合物から放出されて粉末材料に入り、酸化還元反応を行い、異なる電位の差を組み合わせたLi-芳香族化合物錯体によって負極原料の予備リチウム反応の効率が制御され、リチウムの深部への挿入が行われる。
【0147】
特定の実施形態では、負極原料はケイ素系材料、炭素系材料及びケイ素炭素複合材のうちの少なくとも1種を含む。具体的には、ケイ素系材料は、具体的には、酸化ケイ素、ケイ素単体、一酸化ケイ素であってもよいし、炭素系材料は、具体的には石墨であってもよく、ケイ素炭素複合材は、具体的にはSiO+C、Si+Cなどであってもよい。具体的には、負極原料がSiO+Cである場合、Li-芳香族化合物錯体が炭素層に含浸された後、リチウム源はリチウム挿入反応を起こし、また、芳香族化合物の一部がコアケイ素粒子の表面に堆積され、炭素層中の微孔チャネル、及び炭素層の外面に、芳香族化合物堆積層が形成され、溶媒が蒸発されるとチャネル内に有機高分子結晶層が形成される。有機高分子結晶層が形成されるときに、大量の共役Li源が包まれている。したがってフォーメーションにおいて、堆積されたこれらの有機リチウム化物はSEI層の一部となり、他の活性リチウムの消費量を減少させ、フォーメーション中の初回効果が失われることを回避し、効率を向上させる。
【0148】
別のいくつかの実施形態では、負極原料をリチウム化溶液に加えて、撹拌後、ろ過し、有機溶媒で洗浄してろ過し、乾燥させて予備リチウム化された負極材料を得る。好適には、一酸化ケイ素をリチウム化溶液に加えて、撹拌後、ろ過し、有機溶媒で洗浄してろ過し、乾燥させて予備リチウム化された一酸化ケイ素材料を得る。
【0149】
負極原料がSiOである場合、リチウムがより深く且つ多く挿入され、しかも、その表面に緻密な有機層が形成される。後で炭素層を被覆する際には、高温によりこの部分の有機層は炭化され、内部には特殊な官能基とドーピング元素が分布している炭素層が形成され、これらのドーピング元素により原子レベルの分散が達成され、炭素層の導電性が向上する。
【0150】
リチウム源と負極原料とのモル比は2以上、具体的には、2、3、4、5、6、7などであってもよい。理解できるものとして、リチウム源と負極原料とのモル量の比は2以上であり、これにより、リチウム源が過剰であることが確保され、これにより、金属錯体(Li-芳香族化合物錯体)はリチウム化溶液において素早く飽和状態になり、これにより、予備リチウム化処理対象の負極材料は所望の初回効果を達成でき、十分に予備リチウム化され、効率が向上する。
【0151】
いくつかの実施形態では、負極原料は粉末又はシートとしてリチウム化溶液に加えられてリチウム化処理を行う。好適には、粉末の粒子径は50μmよりも小さく、具体的には、1nm、3nm、5nm、10nm、50nm、0.1μm、1μm、10μm、20μm、30μm又は40μmなどであってもよいが、記載されている数値に限定されるものではなく、この数値の範囲内であれば、記載されていない他の数値も適用可能である。粒子径が大きいほど、比表面積は減少し、リチウム挿入効率は低下する。所定のリチウム挿入効率を確保する上に、本願で提供される芳香族組成物の配合方式を利用することにより、粉末粒子径の適切な範囲を広くし、負極材料のメディアン径が小さいほど、好ましいが、プロセスコストを考慮して、好ましくは、負極材料のメディアン径は1nm~10nmとする。
【0152】
Li-芳香族化合物錯体と負極原料とのモル比は(0.2~2):1、具体的には、0.2:1、0.4:1、0.5:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.5:1、1.8:1又は2:1などであってもよく、これにより、低い割合で高効率の予備リチウム化処理が達成される。低い濃度比、例えばLi-芳香族化合物錯体と負極原料とのモル比が0.46である場合、予備リチウム化後の負極材料の初回効果は短時間(30min)で90%以上に達し、これにより、負極原料の予備リチウム化効率が明らかに向上する。
【0153】
いくつかの実施形態では、負極原料をリチウム化溶液に加えて撹拌し、撹拌方式は磁気撹拌、超音波撹拌及び機械的撹拌のうちの少なくとも1種を含む。撹拌時間は、15min~60min、具体的には、15min、20min、25min、30min、35min、40min、45min、50min、55min、60minなどであってもよく、記載されている数値に限定されるものではなく、この数値の範囲内であれば、記載されていない他の数値も適用可能である。具体的な実施例では、芳香族組成物の配合比に応じて、適切な撹拌反応の時間を設定してもよく、一般には、撹拌時間が長いほど、反応が十分に行われ、これは、芳香族組成物の組成により果たされる限界の予備リチウム化量に達し、材料について所望の初回効果を得ることに有利である。
【0154】
撹拌後、ろ過し、有機溶媒で洗浄し、洗浄に使用される有機溶媒は有機溶液を調製するときに使用される有機溶媒のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0155】
乾燥は保護ガス下で行われ、保護ガスは、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも1種を含む。
【0156】
乾燥時間は15min~60min、具体的には、15min、20min、25min、30min、35min、40min、45min、50min、55min、60minなどであってもよい。乾燥処理は材料の表面の溶媒を揮発させることに有利であり、溶媒の揮発速度を考慮して、乾燥時間は上記の範囲内に制御されてもよく、これは製造の効率化に有利である。
【0157】
任意選択に、アルゴンガス保護下の常温常圧グローブボックスにて自然乾燥を行い、グローブボックス内のO2含有量は0.1ppmよりも小さく、H2O含有量は0.01ppmよりも小さい。或いは、乾燥アルゴンガスを用いて粉末材料を10min~30minパージし、材料の表面に付着した有機溶媒を完全に揮発させ、乾燥させた予備リチウム化粉体を得る。
【0158】
本願の実施例は、
Li-芳香族組成物を含むリチウム化溶液にて負極原料をリチウム化処理する工程を含み、
芳香族組成物は電位の異なる少なくとも2種類の芳香族化合物を含む、負極材料の製造方法を提供する。
【0159】
いくつかの実施形態では、芳香族化合物のリチウムに対する電位の範囲は0~0.5V vs Li/Li+である。芳香族化合物のリチウムに対する電位は、参照リチウムとして4×4×4 bulk リチウムモデルを用い、ブリュアンゾーンのK点分布を9×9×9としてテストしたものである。芳香族化合物がリチウム挿入電位の差の勾配通路を構築することによって、リチウムの深部への挿入を可能としながら、予備リチウム化効率を向上させ、材料の初回効果を高める。
【0160】
いくつかの実施形態では、異なる芳香族化合物の間にリチウムに対する電位勾配を有する。
【0161】
いくつかの実施形態では、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li+が、0<△V≦0.3Vを満たす。
【0162】
いくつかの実施形態では、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li+が、0<△V≦0.1Vを満たす。
【0163】
本開示の実施例はまた、ナノケイ素、ケイ素酸素リチウム含有化合物及び芳香族組成物を含み、ケイ素酸素リチウム含有化合物はLi2Si2O5、Li2SiO3及びLi4SiO4のうちの少なくとも1種を含み、芳香族組成物はナノケイ素及びケイ素酸素リチウム含有化合物を少なくとも部分的に被覆している負極材料を提供する。
【0164】
上記の態様では、負極原料は予備リチウム化処理を受けており、負極原料の予備リチウム化処理においては、酸化ケイ素の負極原料内により多くのリチウムイオンが挿入されるので、リチウムの挿入深さ及びリチウム挿入効率が改善され、充放電中、リチウムイオンは芳香族化合物から放出されて酸化ケイ素材料に入り、酸化還元反応を起こし、酸化ケイ素負極原料中の酸素を置換し、酸化ケイ素材料の表面にアルカリ残留を形成し、これにより、材料の水系での加工性を向上させ、不可逆的な容量損失を低下させ、電池容量を向上させる。
【0165】
いくつかの実施形態では、負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、コアはナノケイ素とケイ素酸素リチウム含有化合物とを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、ナノケイ素はケイ素酸素リチウム含有化合物に分散している。
【0168】
いくつかの実施形態では、コアはSiOx(ここで、xは0.4≦x≦1.6を満たす)をさらに含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、芳香族組成物は、電位の異なる少なくとも2種類の芳香族化合物を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差△V vs Li/Li+は、0<△V≦0.3Vを満たし、具体的には、0.05V、0.1V、0.15V、0.2V、0.25V、0.3Vなどであってもよく、これらに限定されない。
【0171】
いくつかの実施形態では、負極材料のメディアン径は4μm~8μm、具体的には、4μm、5μm、6μm、7μm、8μmなどであってもよく、これらに限定されない。負極材料のメディアン径が上記の範囲内に制御されると、負極材料のサイクル性能の向上に有利である。
【0172】
いくつかの実施形態では、負極材料の比表面積は1.5m2/g~4.2m2/g、具体的には、1.5m2/g、1.8m2/g、2m2/g、2.5m2/g、3m2/g、3.5m2/g、4m2/g、4.2m2/gなどであってもよく、これらに限定されない。負極材料の比表面積が上記の範囲内に制御されると、負極材料のサイクル性能の向上に有利である。
【0173】
いくつかの実施形態では、負極材料のpH値は10~11.5、具体的には、10、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.8、11、11.2、11.5などであってもよい。理解できるものとして、材料が低いアルカリ性に保持され、材料の水系での加工性が向上し、負極材料の初回効果が高まる。
【0174】
いくつかの実施形態では、負極材料は炭素被覆層をさらに含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、負極材料は炭素被覆層をさらに含み、炭素被覆層はコアを被覆している。
【0176】
いくつかの実施形態では、負極材料は炭素被覆層をさらに含み、コア表面、炭素被覆層チャネル内及び炭素被覆層の外面に芳香族組成物が分布している。
【0177】
いくつかの実施形態では、リチウム化電池用負極材料中、芳香族化合物の被覆量は0wt%~2wt%、具体的には、0.1wt%、0.3wt%、0.5wt%、0.7wt%、1wt%、1.2wt%、1.4wt%、1.5wt%、1.6wt%、1.8wt%、2wt%などであってもよく、これらに限定されない。
【0178】
本開示の実施例はまた、集電体と集電体の表面に設けられる負極層とを含み、負極層は上記のいずれか1種類の負極材料の製造方法によって得られる負極材料又は上記のいずれか1種類のリチウムイオン電池用負極材料を含む、負極シートを提供する。
【0179】
本開示の実施例はまた、上記のいずれか1種類の負極シートを含むリチウムイオン電池を提供する。
【0180】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池は、正極シート、セパレータ及び非水電解液をさらに含む。
【実施例】
【0181】
以下、複数の実施例によって本願の実施例についてさらに説明する。ここで、本願の実施例は以下の特定の実施例に制限されるものではない。特許範囲内では、適切な変更が行われてもよい。
【0182】
実施例1
本実施例は、リチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法であって、
ベンゾフェノン(BP)と、ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)と、4,4-ジフルオロベンゾフェノン(4,4-DFBP)とを1:1:1のモル比で混合して芳香族組成物を得て、芳香族組成物0.1molをエチレングリコールジメチルエーテル(DME)200mLに溶解し、磁気撹拌により30min処理して、芳香族組成物の有機溶液を得る工程1)と、
リチウム含有量が99.5%よりも大きいリチウム片0.45molを有機溶液に加えて、10min静置し、リチウムを十分に溶解させ、リチウム化溶液とする工程であって、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差が0.071V vs Li/Li+である工程2)と、
リチウム化溶液200mLにSiO粉末(0.22mol)10gを加えて磁気撹拌によって30min(実験群1)及び60min(実験群2)処理し、吸引ろ過後、無水エタノールを用いて3回洗浄し、ろ過後、グローブボックスに入れて自然揮発により30min乾燥させ、予備リチウム化されたSiO粉末を得て、S1及びS101とする工程3)とを含む、方法を提供した。
本実施例で製造された負極材料は、コアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、4,4-DMBP、4,4-DFBPを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.5wt%であった。
上記の各芳香族化合物のリチウムに対する電位のテスト方法は以下のとおりである。参照リチウムとして4×4×4 bulk リチウムモデルが使用されており、ここで、ブリュアンゾーンのK点分布は9×9×9に設定されている。芳香族化合物の固有リチウムに対する電位については、以下の方程式によってE=-△G/nが得られ、ここで、△Gは芳香族化合物のリチウム化反応の反応エネルギー(単位eV)であり、nはリチウム化反応で移動する電子数であり、Eは固有リチウムに対する電位である。全ての数値はオープンソースソフトウェアQUANTUM-ESPRESSOにおけるものであり、上記のソフトウェアは平面波ユニットに基づく密度汎関数計算ソフトウェアである。芳香族化合物及びそのリチウム化物については単一分子モデルによって計算が行われる。PBE/GGA方式は電位の推定に用いられ、Gamma点はエネルギー計算を行う。ここでは、モデルの収束閾値は1.0E~5 eV/cell以下であり、分子間相互作用力の収束閾値は0.02eV/A3であり、計算に際しては電子スピンによる影響が考慮されなければならず、最後に、DFT-D3(0)方法によって原子(分子)間の弱相互作用エネルギーがシミュレーションされる。一方、リチウムに対する平均電位の差は芳香族化合物の固有リチウムに対する電位の差である。
【0183】
実施例2
本実施例は、リチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と、ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)と、4,4-ジフルオロベンゾフェノン(4,4-DFBP)とをモル比1:2:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S2とし、ここでは、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.076Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、4,4-DMBP、4,4-DFBPを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.3wt%であった。
【0184】
実施例3
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)と、4,4-ジフルオロベンゾフェノン(4,4-DFBP)とをモル比1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S3とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.128Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層は4,4-DMBP、4,4-DFBPを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.1wt%であった。
【0185】
実施例4
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と4,4-ジフルオロベンゾフェノン(4,4-DFBP)とをモル比1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S4とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.152Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、4,4-DFBPを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.1wt%であった。
【0186】
実施例5
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と4,4-ジフルオロベンゾフェノン(4,4-DFBP)とをモル比2:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S5とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.133Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、4,4-DFBPを含み、負極材料中、芳香族組成物からなる層の被覆量は0.3wt%であった。
【0187】
実施例6
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と、アニソールと、3-フルオロアニソールとをモル比1:1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S6とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.090Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、アニソール、3-フルオロアニソールを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.2wt%であった。
【0188】
実施例7
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と、アニソールと、ジフェニルエーテルとをモル比1:1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S7とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.094Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、アニソール、ジフェニルエーテルを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.4wt%であった。
【0189】
実施例8
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)とアニソールとをモル比1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S8とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.121Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層は芳香族化合物BP、アニソールを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.2wt%であった。
【0190】
実施例9
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と3-フルオロアニソールとをモル比1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S9とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.169Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、3-フルオロアニソールを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.2wt%であった。
【0191】
実施例10
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、以下のこと以外、実施例1を参照した。
1)ベンゾフェノン(BP)と、ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)と、4,4-ジフルオロベンゾフェノン(4,4-DFBP)とをモル比1:1:1で混合して芳香族組成物を得て、芳香族組成物0.1molをエチルセルロース(EC)と炭酸ジメチル(DMC)との混合溶媒200mLに溶解させ、かつEC:DMCのモル比を1:1とし、磁気撹拌によって30min処理し、有機溶液を得た。
2)有機溶液にリチウム含有量が99.5%よりも大きいリチウム片0.45molを加え、10min静置して、リチウムを十分に溶解させ、リチウム化溶液とし、リチウム化溶液の濃度は0.5mol/L、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.080Vであった。
3)リチウム化溶液200mLにSiO粉末(0.22mol)10gを加えて磁気撹拌によって30min処理し、吸引ろ過後、無水エタノールを用いて3回洗浄し、ろ過後、グローブボックスに入れて自然揮発により30min乾燥させ、予備リチウム化されたSiO粉末を得て、S10とした。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、4,4-DMBP、4,4-DFBPを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.5wt%であった。
【0192】
実施例11
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と、ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)と、ビフェニルとをモル比1:1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S11とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.108Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、4,4-DMBP、ビフェニルを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.3wt%であった。
【0193】
実施例12
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)とビフェニルとをモル比1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S12とした。異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.155Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層は4,4-DMBP、ビフェニルを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.2wt%であった。
【0194】
実施例13
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)と2-メチルビフェニルとをモル比1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S13とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.089Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層は4,4-DMBP、2-メチルビフェニルを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.3wt%であった。
【0195】
実施例14
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、ベンゾフェノン(BP)と2,6-ジメチルピリジンとをモル比1:1で混合して芳香族組成物を得た以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S14とし、異なる芳香族化合物の間のリチウムに対する平均電位の差は0.085Vであった。
本実施例で製造された負極材料はコアと芳香族組成物からなる層とを有し、芳香族組成物からなる層は少なくとも部分的にコアを被覆しており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、芳香族組成物からなる層はBP、2,6-ジメチルピリジンを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.2wt%であった。
【0196】
実施例15
本実施例はリチウムイオン電池用負極材料の予備リチウム化方法を提供し、負極原料には炭素被覆層を含有するSiO粉末が使用された以外、実施例1を参照した。
製造された予備リチウム化SiO粉末は、S15とする。
本実施例で製造された負極材料はコアと外被覆層とを有し、外被覆層はコアに少なくとも部分的に被覆されており、コアはSi、SiOx及びケイ酸リチウム材料を含み、外被覆層は炭素被覆層と芳香族組成物からなる層とを含み、負極材料中、芳香族組成物の被覆量は0.5wt%であった。
【0197】
比較例1
1)SiO粉末(0.22mol)10gと、Li(0.45mol)3.15gとを混合し、混合物を得た。
2)エチルセルロース(EC)と炭酸ジメチル(DMC)との混合溶媒200mLに混合物を加え、かつEC:DMCのモル比を1:1とした。
3)磁気撹拌によってそれぞれ30min(実験群1)及び60min(実験群2)処理し、吸引ろ過後、無水エタノールを用いて3回洗浄し、ろ過後、グローブボックスに入れて自然揮発により30min乾燥させ、予備リチウム化されたSiO粉末を得て、D1及びD101とした。
【0198】
比較例2
1)ベンゾフェノン(BP)0.1molをエチレングリコールジメチルエーテル(DME)200mLに溶解させ、磁気撹拌によって30min処理し、混合溶液を得た。
2)混合溶液にリチウム含有量が99.5%よりも大きいリチウム片0.45molを加え、10min静置してリチウムを十分に溶解させ、リチウム化溶液とした。
3)リチウム化溶液にSiO粉末(0.22mol)10gを加え、磁気撹拌によって30min処理し、吸引ろ過後、無水エタノールを用いて3回洗浄し、ろ過後、グローブボックスに入れて自然揮発により30min乾燥させ、予備リチウム化されたSiO粉末を得て、D2とした。
【0199】
比較例3
1)ジメチルビフェニル(4,4-DMBP)0.1molをエチレングリコールジメチルエーテル(DME)200mLに溶解させ、磁気撹拌によって30min処理し、混合溶液を得た。
2)混合溶液にリチウム含有量が99.5%よりも大きいリチウム片0.45molを加え、10min静置してリチウムを十分に溶解させ、リチウム化溶液とした。
3)リチウム化溶液にSiO粉末(0.22mol)10gを加えて磁気撹拌によって30min処理し、吸引ろ過後、無水エタノールを用いて3回洗浄し、ろ過後、グローブボックスに入れて自然揮発により30min乾燥させ、予備リチウム化されたSiO粉末を得て、D3とした。
【0200】
比較例4
1)4,4-ジフルオロベンゾフェノン(4,4-DFBP)0.1molをエチレングリコールジメチルエーテル(DME)200mLに溶解させ、磁気撹拌によって30min処理し、混合溶液を得た。
2)混合溶液にリチウム含有量が99.5%よりも大きいリチウム片0.45molを加え、10min静置してリチウムを十分に溶解させ、リチウム化溶液とした。
3)リチウム化溶液にSiO粉末(0.22mol)10gを加えて磁気撹拌によって30min処理し、吸引ろ過後、無水エタノールを用いて3回洗浄し、ろ過後、グローブボックスに入れて自然揮発により30min乾燥させ、予備リチウム化されたSiO粉末を得て、D4とした。
【0201】
比較例5
いずれの処理もしていないSiO粉末を、D5とした。
【0202】
実験群1の性能テスト:
実施例1~15で製造された負極材料サンプルS1、S101、S2~S15及び比較例サンプルD1、D101、D2、D3、D4、D5を、それぞれカルボキシメチルセルロースナトリウム、スチレンブタジエンゴム、導電性グラファイト(KS-6)及びカーボンブラック(SP)と92:2:2:2:2の割合でスラリーとし、銅箔上に均一に塗布し、ベークして負極シートを作製し、アルゴンガス雰囲気のグローブボックスにおいて組み立ててコイン型電池とし、セパレータとしてはポリプロピレンミクロポーラス膜、電解液としては1mol/Lのヘキサフルオロリン酸リチウム(溶媒は炭酸エチレン、炭素酸メチルエチル及び炭酸ジメチルの混合液)、対向電極として金属リチウム片が使用された。
【0203】
上記の22組の電池については、藍電社製のCT2001A電池テストシステムにて初回クーロン効率テスト及び可逆容量テストを行い、測定した試験データを表1に示す。
【0204】
上記の22個のSiO粉末サンプルについては、シリコン粒子、比表面積、pH値を測定し、測定したシリコン粒子のメディアン径、比表面積、pH値などのデータを表1に示す。
【0205】
【0206】
表1の実験データから分かるように、比較例1では、金属リチウム及び予備リチウム電極シート(又は粉末)についての前処理がないので、電池初回効果は向上していなかった。比較例2では、リチウム源は非置換芳香族化合物(ビフェニル)で処理され、リチウム挿入深さは大幅に制限されてしまい、予備リチウム化処理後の電池の初回効果も78.1%しかなく、このことから、非置換芳香族化合物は、リチウム化後には高電位だけを有し、SiOとの反応強度を限定していた。比較例3及び比較例4では、リチウム源は置換芳香族化合物で処理され、予備リチウム化効果はある程度達成されており、置換芳香族化合物とSiOとのモル比は0.1:0.22であり、初回効果は約83%であり、置換芳香族化合物の濃度は低く、リチウム挿入効率及びリチウム挿入深さは低下した。
【0207】
一方、実施例1~15では、異なる置換芳香族化合物の組み合わせを利用することによって、異なる置換芳香族化合物の組み合わせには一定の相乗作用があり、異なる電位の差は組み合わせられて電位勾配、リチウム挿入通路を構築し、リチウム挿入深さ及びリチウム挿入効率は明らかに改善され、初回効果のデータから分かるように、それぞれの組み合わせは、極めて高いリチウム挿入容量を示し、低温予備リチウム化処理では、シリコン粒子はほぼ成長しておらず、これにより、予備リチウム化処理における結晶粒の増大により電極シートが膨張して、電極シート上のシリコン粒子が落ちることが回避され、低温予備リチウム化によりリチウム粒子が全く成長しないようにされる。
【0208】
実施例1~15から分かるように、Li-芳香族化合物錯体と負極粉末材料とのモル比は0.1:0.22=0.46であり、低濃度比では、予備リチウム化後の粉体材料の初回効果は短時間(30min)内で90%以上に達し、粉体材料の予備リチウム化効率は明らかに向上した。置換芳香族化合物の組成物はリチウム挿入に関しては明らかな優位性があり、その組み合わせも多く選択され得ることが示されている。異なる組み合わせによる有機溶液では、選択性が最適化されており、これにより、実施例1及び15では、所定の初回効果の違いがある。
【0209】
SiOのリチウム化時間が30minから60minに増加されると、置換芳香族化合物単独又は組成物で調製されたリチウム化溶液でリチウム化処理が行われたところ、電池初回効果は全て向上しており、初回効果データから分かるように、材料は極めて高いリチウム挿入容量を有し、低濃度の置換芳香族化合物の組成物にはリチウム挿入に関しては優位性が高いことが明らかになった。
【0210】
上記の全ての試験データから分かるように、置換芳香族化合物からなる芳香族組成物は、溶媒和化や予備リチウム化処理に関しては、優位性が高く、材料は極めて高いリチウム挿入容量を有し、電池の初回効果及び容量は大幅に向上した。しかも、低濃度の置換芳香族化合物は金属リチウムの損失を低減できる。
【0211】
本願は好適な実施例を以上で開示したが、請求項を限定するものではなく、当業者であれば、本願の構想を逸脱することなく、いくつかの変化や修正を行うことができ、したがって、本願の特許範囲は本願の特許請求の範囲により定められた範囲に準じる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
前記のとおり、本開示は負極材料、その製造方法及び使用を提供する。異なる電位の差の組み合わせに対応する異なる芳香族化合物の組み合わせによってリチウム挿入電位の差勾配通路が構築され、リチウム源と負極材料は有機溶媒において化学リチウム挿入を自発的かつ素早く行い、これにより、リチウム挿入深さ及びリチウム挿入効率を効果的に改善し、不可逆的な容量損失を低下させ、電池容量を向上させる。
【国際調査報告】