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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】水溶性ポリマーブレンド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230524BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20230524BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20230524BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20230524BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230524BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230524BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230524BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20230524BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L29/04 B
B29C64/118
B29C64/40
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y80/00
C08L77/00
C08L5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563217
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 US2021028648
(87)【国際公開番号】W WO2021216877
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/014,750
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519419706
【氏名又は名称】インフィニット・マテリアル・ソリューションズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(72)【発明者】
【氏名】サーノホウス, ジェフリー, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サーノホウス, ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】オクウイグ, ナザン, ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】デプレンジャー-ゴットフリード, ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】フォレンスビー, ロバート, エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ファーレン, ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA19
4F213AA29
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL62
4J002AA001
4J002AB003
4J002AC002
4J002BB002
4J002BB032
4J002BB122
4J002BB202
4J002BD042
4J002BD122
4J002BE021
4J002BF021
4J002BG042
4J002BG052
4J002CC032
4J002CC182
4J002CD002
4J002CF001
4J002CF182
4J002CG001
4J002CH072
4J002CK022
4J002CL002
4J002CL012
4J002CL032
4J002CM042
4J002CN032
4J002CP032
(57)【要約】
水溶性ポリマーブレンド組成物は、少なくとも一つの水溶性ポリマーと少なくとも一つの非相溶性ポリマーとを含む。水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーを各自の溶融加工温度より高い温度で溶融加工し、クエンチして、非平衡状態の水溶性ポリマーブレンド組成物を形成することができ、非平衡形態を示すことができる。非平衡形態は、例えば、マイクロファイバー形態又は共連続形態を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの水溶性ポリマーと、
少なくとも一つの非相溶性ポリマーと
を含む水溶性ポリマーブレンド組成物であって、
前記少なくとも一つの水溶性ポリマー及び前記少なくとも一つの非相溶性ポリマーを、前記少なくとも一つの水溶性ポリマー及び前記少なくとも一つの非相溶性ポリマーの各溶融加工温度より高い温度で加工し、クエンチして、前記水溶性ポリマーブレンド組成物が形成され、
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が非平衡形態を有する、
前記水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物の前記非平衡形態がマイクロファイバー形態である、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物中の前記少なくとも一つの水溶性ポリマーの少なくとも一部を、水中に溶解させることによって除去し、一つ以上の非相溶性ポリマーマイクロファイバーを提供する、請求項2に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項4】
前記一つ以上の非相溶性ポリマーマイクロファイバーが、少なくとも3:1の平均長さ対直径比を有する、請求項3に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項5】
一つ以上の非相溶性ポリマーマイクロファイバーが、少なくとも5:1の平均長さ対直径比を有する、請求項3に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項6】
前記一つ以上の非相溶性ポリマーマイクロファイバーが少なくとも10:1の平均長さ対直径比を有する、請求項3に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物の前記非平衡形態が、共連続形態である、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物中の前記少なくとも一つの水溶性ポリマーの少なくとも一部を水中に溶解させることによって除去して、共連続多孔質形態を形成する、請求項7に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項9】
前記共連続多孔質形態が、少なくとも0.1ミクロンであって50ミクロンまでの平均直径を有する共連続チャネルを有する、請求項8に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項10】
前記共連続多孔質形態が、少なくとも0.5ミクロンであって25ミクロンまでの平均直径を有する共連続チャネルを有する、請求項8に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項11】
前記共連続多孔質形態が、少なくとも1ミクロンであって10ミクロンまでの平均直径を有する共連続チャネルを有する、請求項8に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項12】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が、少なくとも約160℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項13】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が、少なくとも約190℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項14】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が、少なくとも約210℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項15】
前記少なくとも一つの水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコールのコポリマーを含む、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項16】
前記コポリマーがポリビニルアルコール-コ-ビニルピロリドンである、請求項15に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項17】
前記少なくとも一つの非相溶性ポリマーが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、加硫ゴム、機能的ポリオレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリオレフィンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、エポキシ、アルキド、メラミン、フェノール類、尿素、ビニルエステル、シアネートエステル、シリコーン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項18】
前記少なくとも一つの非相溶性ポリマーが、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン11、ナイロン12、液晶ポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項19】
少なくとも一つの糖をさらに含む、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項20】
前記少なくとも一つの糖がトレハロースを含む、請求項19に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項21】
前記少なくとも一つの糖が、少なくとも186℃の融点を有する、請求項19に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項22】
少なくとも一つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項23】
前記少なくとも一つの添加剤が相溶化剤である、請求項22に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項24】
前記非平衡形態がアニーリング後に熱的に安定である、請求項23に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項25】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物がフィードストックを形成する、請求項1に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の水溶性ポリマーブレンド組成物を含む物品。
【請求項27】
少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを、前記少なくとも一つの水溶性ポリマー及び前記少なくとも一つの非相溶性ポリマーの両方の溶融加工温度よりも高い温度で溶融加工して、水溶性ポリマーブレンド組成物を形成し、
非平衡状態の前記水溶性ポリマーブレンド組成物をクエンチして非平衡形態を提供し;
前記水溶性ポリマーブレンド組成物からフィードストックを形成し、
前記水溶性ポリマーブレンド組成物を3D印刷して、水溶性サポートを形成することを含む、方法。
【請求項28】
少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを、前記少なくとも一つの水溶性ポリマー及び前記少なくとも一つの非相溶性ポリマーの溶融加工温度以上の温度で溶融加工して、水溶性ポリマーブレンド組成物を形成し、
非平衡状態の前記水溶性ポリマーブレンド組成物をクエンチして、非平衡形態を提供し、
前記水溶性ポリマーブレンド組成物からフィードストックを形成し、
前記水溶性ポリマーブレンド組成物を3D印刷し、
前記水溶性ポリマーブレンド組成物の前記少なくとも一つの水溶性ポリマーの少なくとも一部を、水中に溶解させることによって除去して、マイクロファイバー形態又は共連続多孔質形態を形成することを含む、方法。
【請求項29】
前記3D印刷ステップで物品を形成する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを溶融加工することによって形成される水溶性ポリマーブレンド組成物を含む水溶性サポートであって、
前記水溶性サポートが、少なくとも約100℃のビルドチャンバー温度で実質的に乾燥し、実質的に安定である、前記水溶性サポート。
【請求項31】
前記水溶性サポートが少なくとも約140℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項30に記載の水溶性サポート。
【請求項32】
前記水溶性サポートが少なくとも約160℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項30に記載の水溶性サポート。
【請求項33】
ビルドチャンバー中の実質的に水平なビルドプレート上に概して配置された、立体印刷されたオブジェクトと、
前記立体印刷されたオブジェクトの一つ以上の部分の周りに位置して支持する一つ以上の水溶性サポートであって、水溶性ポリマーブレンド組成物を含む前記水溶性サポートと、
を含む立体印刷物であって、
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が、少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを溶融加工することによって形成される、前記立体印刷物。
【請求項34】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が少なくとも約100℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項33に記載の立体印刷物。
【請求項35】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が少なくとも約140℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項33に記載の立体印刷物。
【請求項36】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が少なくとも約160℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項33に記載の立体印刷物。
【請求項37】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が少なくとも約190℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項33に記載の立体印刷物。
【請求項38】
前記水溶性ポリマーブレンド組成物が少なくとも約210℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定である、請求項33に記載の立体印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本願は、2020年4月24日に出願された米国仮出願第63/014,750号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書中で援用される。
技術分野
本開示は、水溶性ポリマーブレンド組成物を作製及び使用するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、立体(3D)印刷と呼ばれる積層造形プロセスは、所望のオブジェクトを構築するために使用でき、多くの産業(例えば、航空宇宙、自動車、医療など)での応用の可能性がある。例示的プロセスとしては、限定されるものではないが、バインダージェット、電子ビーム溶解(EBM)、熱溶解積層法(fused deposition modeling)(FDM)、熱溶解積層法(fused filament fabrication)(FFF)、インクジェット、薄膜積層法(LOM)、選択的レーザー焼結法(SLS)、及びステレオリソグラフィ(SL)が挙げられる。このようなプロセスを使用して、所望のオブジェクトをコンピュータ支援設計(CAD)パッケージでモデル化し、選択された造形材料を使用して印刷することができる。FDMのような堆積ベースの方法については、選択された造形材料は、典型的には、コンピュータの命令に従って、加熱されたプリンターにより層状に押し出される。例えば、ARBURG(商標)Freeformerシステムのような市販の積層造形デバイスでの印刷は、加熱及び温度制御を提供できるビルドチャンバー中で行われることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの積層造形技術は、サポート層又は構造を使用して所望のオブジェクトを構築する。しかしながら、好適なサポート方法、材料、及び構造の利用可能性が限定されているので、3D印刷はある特定のデザインタイプに限定されている。最も基本的なサポート方法は、印刷されたオブジェクトについて使用するのと同じサポート用材料を使用する。この技術を用いて、建物の足場と同様にサポートを直立させ、任意の急角度のオーバーハング又はスパンを「下支え」する。「解体性」又は「筏」サポートと称するこのタイプのサポートは、有効であり得るが、機械的破壊又はトリミングによって除去するのは面倒であり、時間がかかり、困難であり得る。カミソリの刃、外科用メス、サンドペーパー、そしてさらには電動工具を使用して3D印刷されたオブジェクトからサポート材料を取り除いたり、切り取ったりするのに何時間もかかることは珍しくない。異なるサポートや印刷物を使用する方法も問題となり得る。例えば、ある種の疎水性ポリマー(例えば、ポリプロピレン)は、サポート材料と3D印刷されるベース樹脂との間の非相溶性のために、印刷することがほぼ不可能である。
【0005】
内部のサポート材料を取り除くことはできないため、オブジェクトのデザインの種類はさらに制限される可能性がある。外部形状によっては、内部サポート材料を取り除くことが、不可能ではないにしても困難な可能性がある。何年もの間、多くの人々が、超高温の熱湯、強酸性若しくは塩基性条件、有機溶媒、又はその他のさまざまな化学物質に溶解するサポート構造を使用して、この問題を解決しようと試みてきた。このような製品は、多くの場合、扱いにくく、危険でさえあり、概してうまくいかなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
【0007】
少なくとも一つの水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコールコポリマー(PVOH))及び少なくとも一つの非相溶性ポリマー(例えば、ナイロン12)を含む水溶性ポリマーブレンド組成物は、そのような組成物が、室温の水中、中性pHで溶解又は崩壊し得ること、親水性及び疎水性ポリマーの両方と相溶性であり得ること、例えば、高温の熱可塑性プラスチックを3D印刷する場合に望ましい可能性がある、少なくとも約100℃のビルドチャンバー温度用のサポート材料として使用できること、といったいくつかの積層造形の課題を解決することができる。
【0008】
さらに、水溶性ポリマーブレンド組成物は、機械的特性、耐熱性、及び機能性の改善をもたらす非平衡形態にあるという点で独特であり得る。いくつかの実施形態は、曲げ弾性率、(高温での)貯蔵弾性率、衝撃強さ、引張強度、及び線熱膨張係数(CLTE)をはじめとする改善された機械的特性を有し、これらによって水溶性ポリマーブレンド組成物はフィラメント型プリンターを使用する3D印刷に適合される。例えば、低い曲げ弾性率(例えば、100,000psi未満)を有する材料を水溶性ポリマーで溶融加工する場合、フィラメント系3Dプリンターにおける望ましい属性である曲げ弾性率が増加した水溶性ポリマーブレンド組成物を製造することができる。そのような組成物及び形態から製造される物品の非限定的な例としては、限定されるものではないが、クッション材、織物、医療用品、自動車部品、フィルター、セパレータ、装甲、絶縁体、農業用フィルム、建築材料、可溶性サポート、マイクロファイバー、微孔性フィルター、バッテリーセパレータ、及び微細発泡体が挙げられる。
【0009】
いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物は、少なくとも一つの水溶性ポリマーと少なくとも一つの非相溶性ポリマーとを含む。水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーは、水溶性ポリマーブレンド組成物が非平衡形態を有するように、各自の溶融加工温度より高い温度で加工し、クエンチして、水溶性ポリマーブレンド組成物を形成することができる。非平衡形態は、マイクロファイバー又は共連続形態を含み得る。水溶性ポリマーブレンド組成物の水溶性ポリマーの少なくとも一部は、水中に溶解させることによって除去することができ、その結果、より高い割合の非相溶性ポリマーが残る。水溶性ポリマーブレンド組成物は、水溶性ポリマーの少なくとも一部の溶解後に、マイクロファイバー形態又は共連続多孔質形態を含む独特の形態を示すことができる。非相溶性ポリマーマイクロファイバーは、マイクロファイバー形態を有する水溶性ポリマーブレンド組成物の水溶性ポリマーの少なくとも一部を溶解することによって遊離される。
【0010】
いくつかの実施形態では、立体印刷物は、ビルドチャンバー中の実質的に水平なビルドプレート上に概して配置された立体印刷されたオブジェクトと、立体印刷されたオブジェクトの一つ以上の部分の周りに位置してサポートする、水溶性ポリマーブレンド組成物を含む一つ以上の可溶性サポートとを含む。水溶性ポリマーブレンド組成物は、水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーを溶融加工することによって形成できる。水溶性ポリマーブレンド組成物は、例えば、少なくとも約100℃のビルドチャンバー温度で実質的に安定であり得る。他の実施形態において、立体印刷物の造形材料は水溶性ポリマーブレンド組成物を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、水溶性サポートは、水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーを溶融加工することによって形成される水溶性ポリマーブレンド組成物を含む。水溶性サポートは、少なくとも約100℃のビルドチャンバー温度で実質的に乾燥し、実質的に安定である。
【0012】
いくつかの実施形態において、水溶性サポートは、水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーを各自の溶融加工温度より高い温度で溶融加工して、水溶性ポリマーブレンド組成物を形成し;非平衡状態の水溶性ポリマーブレンド組成物をクエンチして、非平衡形態を提供し;水溶性ポリマーブレンド組成物からフィードストックを形成し;水溶性ポリマーブレンド組成物を3D印刷して、水溶性サポートを形成することによって、形成することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、例えば、マイクロファイバー形態又は共連続多孔質形態をはじめとする様々な独特の非平衡形態は、水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーをそれらの溶融加工温度以上の温度で溶融加工して、水溶性ポリマーブレンド組成物を形成し;非平衡状態の水溶性ポリマーブレンド組成物をクエンチして、非平衡形態を提供し;水溶性ポリマーブレンド組成物からフィードストックを形成し;水溶性ポリマーブレンド組成物を3D印刷し;水中に溶解させることにより水溶性ポリマーブレンド組成物の水溶性ポリマーの少なくとも一部を除去して、独特の形態を形成することによって、形成することができる。
【0014】
上記概要は、開示された各実施形態又はすべての実施を説明することを意図するものではない。以下の詳細な説明は、例示的実施形態をより詳細に示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、水溶性ポリマーの除去後の水溶性ポリマーブレンド組成物におけるマイクロファイバー形態を示す、1000Xでの走査電子顕微鏡画像である。
図2図2は、水溶性ポリマーの除去後の水溶性ポリマーブレンド組成物における共連続多孔質形態を示す、800Xでの走査電子顕微鏡画像である。
図3図3は、200℃で30分間アニーリングし、続いて水溶性ポリマーを除去した後の水溶性ポリマーブレンド組成物における共連続多孔質形態を示す、1000Xでの走査電子顕微鏡画像である。
図4図4は、水溶性ポリマーの除去後の水溶性ポリマーブレンド組成物におけるマイクロファイバー形態を示す、1000Xでの走査電子顕微鏡画像である。
図5図5は、200℃で30分間アニーリングし、続いて水溶性ポリマーを除去した後の水溶性ポリマーブレンド組成物におけるマイクロファイバー形態を示す、500Xでの走査電子顕微鏡画像である。
図6図6は、水溶性ポリマーの除去後の水溶性ポリマーブレンド組成物における共連続多孔質形態を示す、1000Xでの走査電子顕微鏡画像である。
図7図7は、200℃で30分間アニーリングし、続いて水溶性ポリマーを除去した後の水溶性ポリマーブレンド組成物における共連続多孔質形態を示す、1000Xでの走査電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
【0017】
文脈上別段の指示がない限り、以下の用語は以下の意味を有し、単数形及び複数形に適用される。
【0018】
「a」、「an」、「the」、「少なくとも一つ」、及び「一つ以上」という語は交換可能に使用される。したがって、例えば、「一つ」の水溶性ポリマーを含む水溶性ポリマーブレンド組成物は、水溶性ポリマーブレンド組成物が「一つ以上」の水溶性ポリマーを含み得ることを意味する。
【0019】
「積層造形」、「立体印刷」、「3D印刷」、又は「3D印刷された」という語は、材料の連続層がコンピュータ制御下で形成される、立体オブジェクトを創出するために使用される任意のプロセス(例えば、電子ビーム溶解(EBM)、熱溶解積層法(FDM)、インクジェット、薄膜積層法(LOM)、選択的レーザー焼結法(SLS)、及びステレオリソグラフィ(SL))を指す。
【0020】
「ビルドチャンバー」という語は、多くの場合、積層造形デバイス内に封入されるか、または積層造形デバイスによって利用される容積であって、その中で所望のオブジェクトを印刷できる容積を指す。ビルドチャンバーの非限定的な例は、ARBURG(商標)Freeformer(独国ロスブルクのArburg GmbHから商業的に入手可能)で見出すことができる。
【0021】
「ビルドチャンバー温度」という語は、積層造形中にビルドチャンバー内で提供される温度を指す。
【0022】
「造形材料」という語は、積層造形プロセスを使用して三次元で印刷して、所望のオブジェクトを製造する材料であって、多くの場合、可溶性サポートの除去後に残る材料を指す。
【0023】
「ビルドプレート」という語は、多くの場合、フィルム又はシートから取り外し可能であって、造形材料又は可溶性サポートをその上に印刷できる基体を指す。
【0024】
「共連続形態」という語は、少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを溶融加工することによって製造される水溶性ポリマーブレンド組成物であって、水溶性ポリマー相及び非相溶性ポリマー相の両方が水溶性ポリマーブレンド組成物全体にわたって非平衡連続構造を有する、水溶性ポリマーブレンド組成物を指す。
【0025】
「共連続多孔質形態」という語は、共連続形態を有し、少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを溶融加工することによって製造される水溶性ポリマーブレンド組成物であって、その後、水溶性ポリマーの少なくとも一部が組成物から除去される、水溶性ポリマーブレンド組成物を指す。
【0026】
「相溶化剤」という語は、水溶性ポリマーブレンド組成物中の水溶性ポリマーと非相溶性ポリマーとの間の界面張力を低減する添加剤を指す。
【0027】
「組成物」という語は、多成分材料を指す。
【0028】
「コポリマー」という語は、実際に(例えば、共重合によって)又は概念的に、複数のモノマー種から誘導されるポリマーを指す。二つのモノマー種から得られるコポリマーはバイオポリマーと呼ばれる場合があり;三つのモノマーから得られるコポリマーはターポリマーと呼ばれる場合があり;四つのモノマーから得られるコポリマーはクォーターポリマーと呼ばれる場合があるなどである。コポリマーは、例えば、線状コポリマー及び分枝コポリマーとしてなど、構造における分枝の配置に基づいて特徴づけることができる。コポリマーはまた、例えば、交互コポリマー、周期的コポリマー、統計的コポリマー、グラフトコポリマー、及びブロックコポリマーとしてなど、モノマー単位がどのように配置されているかに基づいて特徴づけることもできる。
【0029】
「結晶性」という語は、ASTM規格D3418-12「示差走査熱量測定によるポリマーの転移温度並びに融解及び結晶化のエントロピーの標準試験法」に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定して、90%を超える結晶度を有するポリマー組成物を指す。
【0030】
「二糖(disaccharide)」、「二糖(double sugar)」、又は「二炭糖」という語は、実際的か概念的かを問わず、二つの単糖又は単糖残基間のグリコシド結合によって形成される糖化合物を指す。
【0031】
「フィードストック」という語は、積層造形プロセスにおいて(例えば、造形材料又は可溶性サポートとして)利用できる材料の形態を指す。非限定的なフィードストック例としては、ペレット、粉末、フィラメント、ビレット、液体、シート、成形プロファイル(shaped profile)などが挙げられる。
【0032】
「高温熱可塑性プラスチック」という語は、典型的には約220℃以上での溶融加工されるポリマー又はポリマー組成物を指す。高温熱可塑性プラスチックの非限定例としては、限定されるものではないが、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(Nylon)、ポリエステル(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリエーテルイミド(PEI)が挙げられる。
【0033】
「非相溶性の」又は「非相溶性」という語は、複数のガラス転移温度及び/又は融点(例えば、示差走査熱量測定を使用して試験する場合)を有する組成物によって示されることが多い、2以上の相系の予想される挙動を組成物が示すような、組成物(例えば、水溶性ポリマーブレンド組成物)中の材料の相溶性を指す。
【0034】
「非相溶性ポリマー」という語は、水溶性ポリマーブレンド組成物中の水溶性ポリマーに関して非相溶性であるポリマーを指す。
【0035】
「溶融加工技術」という語は、熱及び力学的エネルギーを適用して、ポリマー又は組成物を再形成、ブレンド、混合、又は他の方法で再結成するための技術、例えば、配合、押出、射出成形、ブロー成形、回転成形、又はバッチ混合を指す。熱可塑性プラスチック及びエラストマー溶融加工可能な材料の印刷に有用な3D印刷プロセスは溶融加工技術の例である。
【0036】
「溶融加工温度」という語は、アモルファス、結晶性、又は半結晶性ポリマーのガラス転移温度又は融点のうちの高い方を指す。
【0037】
「マイクロファイバー形態」という語は、少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを溶融加工することによって製造される水溶性ポリマーブレンド組成物を指し、非相溶性ポリマーは、平均直径が50ミクロン未満で、アスペクト比が少なくとも5:1(長さ:直径)の非相溶性ポリマーマイクロファイバーと非平衡繊維状形態を有する。
【0038】
「混合」という語は、組み合わせるか又は一緒にして、単一の物質、質量、相、又はより均質な状態を形成することを意味する。これは、限定されるものではないが、すべての物理的ブレンド法、押出技術、又は溶解方法を含み得る。
【0039】
「モノマー」という語は、重合されてポリマーの基本構造に構造単位を提供し得る分子を指す。
【0040】
「単糖」という語は、単純な糖であり、加水分解してさらに単純な糖にすることができない分子を指す。この語には、アルドース、ケトース、及び様々な誘導体、例えば糖アルコールが含まれる。そのような誘導体は、例えば、実際的か概念的かを問わず、酸化、脱酸素、他の置換基の導入、ヒドロキシ基のアルキル化及びアシル化、並びに鎖分岐によって形成することができる。単糖の非限定的な例としては、三炭糖、四炭糖、グリセルアルデヒド、及びジヒドロキシアセトンが挙げられる。
【0041】
「非平衡形態」という語は、非平衡状態に動力学的にトラップされ(すなわち、クエンチされ)、水溶性ポリマーブレンド組成物の溶融加工温度より高い温度に加熱された場合に視覚的形態変化(例えば、ブレンド合体、アスペクト比の変化等)をもたらす、水溶性ポリマーブレンド組成物の形態を指す。
【0042】
「オリゴ糖」という語は、共有結合した低数(例えば、2~6、又は2~4)の単糖残基を意味する。
【0043】
「ポリマー」及び「ポリマーの」という語は、高い相対的分子質量の分子であって、その構造が、実際的または概念的に、低い相対的分子質量の分子から誘導される単位の複数の繰り返しを基本的に含む分子を指す。「ポリマー」という語は、「コポリマー」を指す場合がある。
【0044】
「多糖」という語は、グリコシド結合した多くの単糖単位、二糖単位、オリゴ糖単位、又はその残基からなる化合物(例えば、デンプン)を指す。
【0045】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、ある特定の状況下である特定の利益をもたらし得る実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も、同じか又は他の状況下で好ましい可能性がある。さらに、一つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、他の実施形態を請求される範囲から除外することを意図するものではない。
【0046】
「クエンチした」及び「クエンチする」という語は、水溶性ポリマー又は非相溶性ポリマーのいずれかのガラス転移温度及び/又は融点より低い温度に水溶性ポリマーブレンド組成物を急速に冷却して、水溶性ポリマーブレンド組成物を非平衡状態に動力学的にトラップして非平衡形態を提供することを指す。
【0047】
「半結晶性」という語は、ASTM規格D3418-12「示差走査熱量測定によるポリマーの転移温度並びに融解及び結晶化のエントロピーの標準試験法」に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定して、5%を超えるが90%未満の結晶度を有するポリマー組成物を指す。
【0048】
「可溶性サポート」、「可溶性サポート材料」、又は「水溶性サポート」という語は、積層造形プロセスを用いて三次元で印刷して、3D印刷の間に造形材料を物理的にサポート又は補強し、積層造形プロセスの間又は積層造形プロセス後に所望により化学的溶媒化又は溶解によって除去できる材料を指す。
【0049】
「実質的に乾燥している」という語は、物質が、水溶性ポリマーブレンド組成物の重量に基づいて標準的条件で、約15重量%以下の揮発性物質を、好ましくは約10重量%以下の揮発性物質を含むことを意味する。
【0050】
「実質的に安定」又は「実質的安定性」という語は、印刷加工温度(例えば、ビルドチャンバー温度)で、主に寸法安定性(例えば、流動、溶解、又は変形が最小限である)を示す材料を指す。
【0051】
「糖」という語は、限定されるものではないが、Cn(H2O)nの化学量論式を有し得る、アルドース又はケトースなどの、炭素、水素、及び酸素を含む化合物を指す。この語は、任意の単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖並びに、実際的か概念的を問わず、これらから、カルボニル基(アルジトール)の還元によるか、一つ以上の末端基をカルボン酸に酸化することによるか、又は一つ以上のヒドロキシ基を水素原子、アミノ基、チオール基、若しくは類似の基で置換することによって誘導される化合物を指す可能性がある。この語はまた、実際的か概念的かを問わず、そのような化合物からの誘導体を指す可能性もある。
【0052】
「水溶性」という語は、水の存在下で、吸収、膨潤、溶解、崩壊、又は分解する材料を指す。
【0053】
「水溶性ポリマーブレンド組成物」という語は、少なくとも一つの水溶性ポリマーと少なくとも一つの非相溶性ポリマーとを含み、任意選択的に糖及び/又は添加剤を含み得る組成物を指す。
【0054】
終点を使用した数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1~5には、1、1.5、3、3.95、4.2、5などが含まれる)。
【0055】
本開示の水溶性ポリマーブレンド組成物は、少なくとも一つの水溶性ポリマーと少なくとも一つの非相溶性ポリマーとを含む。別の実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物は、疎水性ポリマーへの溶解度及び接着性を増強できる様々な糖を用いる。さらに別の実施形態において、水溶性ポリマーブレンド組成物は、結果として得られる水溶性ポリマーブレンド組成物に対してある特定の特性及び機能性を付与できる様々な添加剤を用いる。別の実施形態では、相溶化剤を水溶性ポリマーブレンド組成物に添加して、水溶性ポリマーブレンド組成物の混合、相溶性、及び機械的特性の改善を助ける。
【0056】
様々な水溶性ポリマーを水溶性ポリマーブレンド組成物において用いることができる。水溶性ポリマーの非限定例としては、四級ポリアミン、ポリジアリルアンモニウムクロリド(polyDADMAC)、及びジシアンジアミド樹脂などの凝固剤;ノニオン性、アニオン性、及びカチオン性材料などの凝集剤;両性ポリマー;ポリエチレンイミン;ポリアミド-アミン;ポリアミン系ポリマー;ポリエチレンオキシド;スルホン化化合物;ポリビニルピロリドン;ポリ乳酸;ポリラクトン;ポリアクリレートタイプの分散剤;ポリビニルアルコール;セルロース誘導体;並びにそれらのコポリマー又は組み合わせが挙げられる。水溶性コポリマーの非限定例としては、ポリビニルアルコール-コ-ビニルピロリドン(PVOH-コ-PVP)、ポリビニルアルコール-コ-ビニルアミン、ポリビニルアルコール-コ-ビニルアセテート、ポリビニルアルコール-コ-ブタンジオールビニルアルコール、ポリビニルアルコール-コ-ビニルアセテート、ポリビニルアルコール-コ-ポリアクリレート、及びポリビニルアルコール-コ-ポリメタクリレートをはじめとするポリビニルアルコール(PVOH)のコポリマーが挙げられる。市販の水溶性コポリマーの非限定例としては、Seikisui CorporationからULTILOC4005(商標)として販売されているPVOH-コ-PVP;Nippon GosheiからNICHIGO GPOLYMER(商標)として販売されているBVOH;Polymer Chemistry Innovations,Inc.からAQUAZOL(商標)として販売されているポリ-2-エチルオキサゾリン;及びDow Chemical Co.からAFFINISOL(商標)として販売されているヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0057】
様々な非相溶性ポリマーを水溶性ポリマーブレンド組成物中で用いることができる。非相溶性ポリマーは、限定されるものではないが、高温での材料の粘度又は弾性率の増加をはじめとする、ある特定の物理的特性を付与することができる。非相溶性ポリマーの非限定例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、架橋ポリエチレン(PEX)、加硫ゴム、ポリオレフィン系イオノマー、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン-ブテン、エチレン-オクテン、エチレンビニルアルコール)をはじめとする機能的ポリオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー(例えば、SIS、SEBS、SBS)、エポキシ樹脂、アルキド、メラミン、フェノール類、尿素、ビニルエステル、シアネートエステル、シリコーン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、非相溶性ポリマーとしては、ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン11、ナイロン12、Vectra V400P(ケンタッキー州フローレンスのCelanese,Incから商業的に入手可能)をはじめとする液晶ポリマー、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
様々な装填レベルの水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーを水溶性ポリマーブレンド組成物で用いることができる。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物は、例えば、少なくとも約1wt%の水溶性ポリマー、又は少なくとも約10wt%の水溶性ポリマー、又は少なくとも約20wt%の水溶性ポリマー、又は少なくとも約40wt%の水溶性ポリマーで、約50wt%までの水溶性ポリマー、又は約85wt%までの水溶性ポリマー、又は約90wt%までの水溶性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物は、例えば、1~99wt%の非相溶性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物は、少なくとも約0.1wt%の非相溶性ポリマー、又は少なくとも約1wt%の非相溶性ポリマー、又は少なくとも約2wt%の非相溶性ポリマー、又は少なくとも約5wt%の非相溶性ポリマー、又は少なくとも約20wt%の非相溶性ポリマーで、約50wt%までの非相溶性ポリマー、又は約75wt%までの非相溶性ポリマー、又は約90wt%までの非相溶性ポリマー、又は約95wt%までの非相溶性ポリマー、又は約99.9wt%までの非相溶性ポリマーを含み得る。好ましい実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物は5~90wt%の非相溶性ポリマーを含む。最も好ましい実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物は10~80wt%の非相溶性ポリマーを含む。
【0059】
様々な糖を任意選択的に水溶性ポリマーブレンド組成物中で用いてもよい。そのような糖は、疎水性ポリマーに対する溶解度及び接着性を増強することができる。糖の非限定的な例としては、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、糖アルコール、又はその誘導体が挙げられる。商業的に入手可能な糖の非限定的な例は、Nagase Corporation(日本国東京)からTREHA(商標)糖として販売されているトレハロースである。他の例示的糖としては、限定されるものではないが、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、セロビオース、八酢酸キトビオース、コージビオース、八酢酸ニゲロース、イソマルトース、イソマルツロース、β,β-トレハロース、α,β-トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース(gentiobiulose)、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース(melibiulose)、ラクチノース(ructinose)、ラクチヌロース(ructinulose)、メレチトース、キシロビオース、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ペルセイトール、ボレミトール(volemitol)、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、又はマルトテトライトール(maltotetraitol)が挙げられる。
【0060】
少なくともある特定の融点を有する水溶性ポリマーブレンド組成物中の糖を用いるのが望ましい場合がある。例えば、少なくとも85℃、少なくとも100℃、少なくとも125℃、少なくとも140℃、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも175℃、少なくとも180℃、少なくとも185℃、少なくとも186℃、少なくとも190℃、少なくとも195℃、少なくとも196℃、少なくとも200℃、少なくとも203℃、少なくとも210℃、少なくとも215℃、少なくとも250℃、少なくとも253℃、少なくとも300℃、又は少なくとも304℃の融点を有する糖を用いるのが望ましい場合がある。いくつかの例示的糖及び各自の融点を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
様々な添加剤を水溶性ポリマーブレンド組成物において任意選択的に用いてもよい。好適な添加剤の非限定的な例としては、抗酸化剤、光安定剤、繊維、膨張剤、発泡添加剤、ブロッキング防止剤、熱反射材料、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、殺生物剤、抗菌添加剤、相溶化剤、可塑剤、粘着剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、熱伝導体、電気伝導体、触媒、難燃剤、脱酸素剤、蛍光タグ、フィラー、ミネラル、及び着色剤が挙げられる。添加剤は、粉末、液体、ペレット、顆粒として、又は任意の他の押出可能な形態で水溶性ポリマーブレンド組成物に組み入れてもよい。水溶性ポリマーブレンド組成物中の従来型添加剤の量及び種類は、ポリマーマトリックス及び完成した組成物の所望の特性に応じて変わる可能性がある。本開示を考慮して、当業者であれば、完成された材料において所望の特性を達成するために、添加剤及びその量を選択できることを理解するであろう。典型的な添加剤装填レベルは、例えば、組成物配合物の約0.01~5wt%であり得る。
【0063】
一実施形態において、相溶化剤を水溶性ポリマーブレンド組成物に添加して、水溶性ポリマーブレンド組成物の混合、相溶性、及び機械的特性の改善を助ける。相溶化剤は、典型的には、特定の水溶性ポリマーブレンド組成物に応じて当業者によって選択される。相溶化剤の非限定的な例としては、官能化ポリマー、ブロックコポリマー、シラン、チタネート、ジルコネート、両親媒性ポリマー、及びコポリマーが挙げられる。例えば、官能化ポリオレフィン(例えば、マレイン化ポリエチレン又はマレイン化ポリプロピレン)は、ポリオレフィンとブレンドされる水溶性ポリマーの有用な相溶化剤である。好ましい実施形態では、マレイン化ポリプロピレン(例えば、Linxidan 4435)は、水溶性ポリマー及びポリプロピレンのブレンドの有用な相溶化剤である。典型的な相溶化剤装填レベルは、例えば、水溶性ポリマーブレンド組成物配合物の約0.01~5wt%であってよい。
【0064】
別の実施形態では、フィラーを水溶性ポリマーブレンド組成物に添加する。フィラーは、ポリマー材料を使用して作製される最終用途物品の機械的特性を当業者が調節できるようにする点で有用である。フィラーは、ポリマー材料の機械的及び熱的特性を改善するように機能できる。フィラーはまた、ポリマー物品の熱膨張係数(CTE)を低減するために利用できる。フィラーの非限定的な例は、カーボネート、シリケート、タルク、マイカ、珪灰石、クレイ、シリカ、アルミナ、カーボンファイバー、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、グラファイト、グラフェン、火山灰、発泡(expanded)火山灰、パーライト、ガラス繊維、固体ガラス微小球、ガラス中空微小球、セノスフェア、セラミックをはじめとする無機及び有機フィラー、並びに木粉、木材繊維、おがくず、木くず、新聞印刷用紙、紙、亜麻、大麻、麦わら、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル麻、ピーナッツの殻、大豆皮、又は任意のセルロース含有材料をはじめとする伝統的なセルロース系材料である。溶融加工後の水溶性ポリマーブレンド組成物中のフィラーの量は、典型的には、1~60wt%である。好ましい実施形態では、フィラー装填レベルは1~50wt%である。最も好ましい実施形態では、フィラー装填レベルは1~30wt%である。
【0065】
水溶性ポリマーブレンド組成物は、混合、加工、又はそれらの組み合わせによって調製できる。選択されたポリマーマトリックスに応じて、これは、本開示を考慮して当業者に公知の様々な混合プロセスを使用して行うことができる。水溶性ポリマー、非相溶性ポリマー、並びに任意の糖及び/又は添加剤を、例えば、コンパウンディングミル、Banburyミキサー、又は混合押出機によって組み合わせることができる。別の実施形態では、ベント型二軸押出機が用いられる。材料は、例えば、粉末、ペレット、又は顆粒生成物の形態で使用することができる。混合操作は、水溶性ポリマー若しくは非相溶性ポリマーの溶融加工温度より高い温度で、又は水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマー両方の溶融加工温度より高い温度で最も都合よく実施される。結果として得られる溶融加工された水溶性ポリマーブレンド組成物は、最終製品形状の形態に直接押し出すことができるか、又は溶融加工装置から、その後の使用のために組成物をペレット化する二次操作へペレット化若しくは供給することができる(例えば、ペレットミル又はデンシファイアー(densifier)を使用)。別の実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物及び任意の糖及び/又は添加剤を3D印刷することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーをそれらの溶融加工温度より高い温度で加工し、結果として得られる混合物を加工中にクエンチして、非平衡形態を有する水溶性ポリマーブレンド組成物を形成する。水溶性ポリマーブレンド組成物の形態が非平衡状態にあるか否かは、水溶性ポリマーブレンド組成物を水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーの両方の溶融加工温度より高い温度でアニーリングすることによって判定される。アニーリングによって形態が変化する場合、水溶性ポリマーブレンド組成物は非平衡状態にある。アニーリングによるこの形態変化の一例は、図2及び3の比較によって示される。図2及び3は、水溶性ポリマーブレンド組成物200の断面を示す。図2は、水溶性ポリマーの除去後の水溶性ポリマーブレンド組成物200を示し、図3の水溶性ポリマーブレンド組成物200は水溶性ポリマーの除去前にアニーリングした。水溶性ポリマーブレンド組成物200の形態変化は、アニーリングされていない図2とアニーリングされた図3を比較することによって示される。
【0067】
別の実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物形態は、相溶化剤を水溶性ポリマーブレンド組成物に添加することによりアニーリング後も熱的に安定である。相溶化剤は、水溶性ポリマーブレンド組成物の水溶性ポリマーと非相溶性ポリマーとの間の界面張力を低下させることによってアニーリング後の形態変化を防止する。これの一例は、図6及び7の比較によって示される。図6及び7は、相溶化剤としてマレイン化ポリプロピレンを含む水溶性ポリマーブレンド組成物600の断面を示す。図6は、水溶性ポリマーの除去後の水溶性ポリマーブレンド組成物600を示し、図7の水溶性ポリマーブレンド組成物600は水溶性ポリマーの除去前にアニーリングしたものである。水溶性ポリマーブレンド組成物600に形態変化がないことは、アニーリングされていない図6をアニーリングされた図7と比較することによって示される。相溶化剤による形態変化の防止は、アニーリングされていない図6及びアニーリングされた図7の水溶性ポリマーブレンド組成物600を、アニーリングされていない図2及びアニーリングされた図3の水溶性ポリマーブレンド組成物200と比較することによってさらに理解できる。
【0068】
水溶性ポリマーブレンド組成物の非平衡形態は、マイクロファイバー形態又は共連続形態のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物の非平衡形態は、溶融加工の間にインサイチュで創出されるマイクロファイバー形態である。別の実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物中の水溶性ポリマーの少なくとも一部は、水中に溶解させることによって除去され、非相溶性ポリマーマイクロファイバーが得られ、その一例を図1に示す。図1は、水溶性ポリマーブレンド組成物100の断面を示す。水溶性ポリマーブレンド組成物100の水溶性ポリマーを水中に溶解させることによって除去して、非相溶性ポリマーマイクロファイバー102を得た。一実施形態において、非相溶性ポリマーマイクロファイバーは、少なくとも0.1ミクロンで50ミクロンまでの平均直径を有する。好ましい実施形態では、非相溶性ポリマーマイクロファイバーは、0.5~25ミクロンの平均直径を有する。最も好ましい実施形態では、非相溶性ポリマーマイクロファイバーは、1~10ミクロンの平均直径を有する。一実施形態において、非相溶性ポリマーマイクロファイバーの平均長さ対直径比(L:D)は少なくとも3:1である。好ましい実施形態では、非相溶性ポリマーマイクロファイバーの平均L:Dは少なくとも5:1である。最も好ましい実施形態では、非相溶性ポリマーマイクロファイバーの平均L:Dは少なくとも10:1である。
【0069】
他の実施形態において、水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーを、それらの溶融加工温度より高い温度で加工し、結果として得られる混合物をクエンチして、水溶性ポリマー相及び非相溶性ポリマー相がバルク材全体に亘る連続した経路を有するように共連続形態を有する水溶性ポリマーブレンド組成物を形成する。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマーブレンド組成物中の水溶性ポリマーの少なくとも一部は、水中に溶解させることによって除去されて、共連続多孔質形態が得られる。水溶性ポリマーブレンド組成物の共連続多孔質形態は共連続チャネルを含み、その例を図2に示す。図2は、水溶性ポリマーの除去後の水溶性ポリマーブレンド組成物200の共連続多孔質形態の断面を示す。水溶性ポリマーブレンド組成物200の共連続多孔質形態は共連続チャネル204を含む。一実施形態において、水溶性ポリマーブレンド組成物中の共連続チャネルの平均直径は、少なくとも0.1ミクロンから50ミクロンまで及ぶ。好ましい実施形態では、共連続チャネルの平均直径は、少なくとも0.5ミクロンから25ミクロンまで及ぶ。最も好ましい実施形態では、共連続チャネルの平均直径は、少なくとも1ミクロンから10ミクロンまで及ぶ。
【0070】
別の実施形態では、結果として得られるマイクロファイバー形態又は共連続多孔質形態は、水溶性ポリマーブレンド組成物前駆体を使用して物品を3D印刷した後に創出される。印刷後、水を用いて水溶性ポリマーを除去する。別の実施形態では、水溶性ポリマーの溶解速度を増強するために、水は、水の沸点までの高温である。
【0071】
水溶性ポリマーブレンド組成物は、所望の最終用途のためのさらなる加工を受けることができる。水溶性ポリマーブレンド組成物は、熱溶解積層法(FDM)におけるフィードストックとして使用できる。いくつかの好ましい実施形態では、フィードストックはフィラメントであってよいが、他のフィードストック(例えば、フィルム、シート、成形プロファイル、粉末、ペレットなど)も使用できる。FDMフィードストックについては、剛性と強靭性との適切なバランスを有することが望ましい。これは、FDM系3Dプリンターを使用して加工する場合、材料は適切に機能しなければならないからである。材料が柔らかすぎる場合、駆動システムがフィラメント押出機ヘッドにフィラメントを出し入れしようとする際に、曲がる傾向がある。フィラメントが充分強靭でない場合、フィラメント押出機ヘッドへの経路を移動する際に破損する傾向がある。当業者は、FDMフィラメント組成物がFDM型プリンターで機能するために剛性と強靭性との適切なバランスを有するように設計されるべきであることを理解するであろう。
【0072】
積層造形では、半結晶性及び結晶性ポリマーは、緩和させるとビルドチャンバー内で収縮する傾向があるので、これらを印刷することは困難である可能性があることは周知である。この結果、反りや巻きが起こり得る。驚くべきことに、水溶性ポリマーブレンド組成物は、半結晶性であるにもかかわらず、反りが少ない印刷された部品を提供する。これは、一つには、水溶性ポリマーブレンド組成物の様々な造形材料及びビルドプレートに対する優れた接着性のためである可能性がある。水溶性ポリマーブレンド組成物はまた、ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン(UMHWD)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン12)、ポリイミド(例えば、Kapton)、ポリエーテル-イミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリル(例えば、PMMA)、ポリカーボネート(PC)などをはじめとする広範囲のビルドプレート及び造形材料に対して顕著な接着性を示し得る。
【0073】
水溶性ポリマーブレンド組成物は、造形材料として、又は水溶性サポートを作製するためのサポート材料として、積層造形において使用することができる。水溶性ポリマーブレンド組成物はまた、配合、押出、成形、及びキャスティングなどの通常の溶融加工技術、又は積層造形プロセスを使用して物品に変換することもできる。積層造形プロセスにおいて使用するために、様々な積層造形デバイスは、例えば、水溶性サポート又は造形材料として水溶性ポリマーブレンド組成物を用いることができる。そのような積層造形デバイスの非限定的な例としては、限定されるものではないが、Dremel DigiLab 3D45 3D Printer、LulzBot Mini 3D Printer、MakerBot Replicator+、XYZprinting da Vinci Mini、Ultimaker 3、Flashforge Finder 3D Printer、Robo 3D R1+Plus、Ultimaker 2+、Ultimaker 5s、及びAON M2が挙げられる。
【0074】
水溶性ポリマーブレンド組成物は、ビルド若しくはサポート材料(例えば、溶解によるか若しくは機械的に)のいずれかとして、手作業で、自動的に(例えば、コンピュータ制御された溶解)、又はそれらの組み合わせにより、選択的に除去できる。例えば、水溶性ポリマーブレンド組成物は、水にさらされると溶解又は崩壊し得るので、水溶性ポリマーブレンド組成物及び造形材料を用いて製造された三次元部品から容易に除去される。すでに上記で開示したものなどの様々な糖及び/又は添加剤を水溶性ポリマーブレンド組成物に添加して、物品を形成することができる。
【0075】
一実施形態において、水溶性サポートを製造する方法は、少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーの溶融加工温度以上の温度で溶融加工して水溶性ポリマーブレンド組成物を形成し、非平衡状態の水溶性ポリマーブレンド組成物をクエンチして非平衡形態を提供し、水溶性ポリマーブレンド組成物からフィードストックを形成し、水溶性ポリマーブレンド組成物を3D印刷して水溶性サポートを形成することを含む。
【0076】
別の実施形態では、例えば、マイクロファイバー形態又は共連続多孔質形態を含む、様々な独特の非平衡形態は、少なくとも一つの水溶性ポリマー及び少なくとも一つの非相溶性ポリマーを水溶性ポリマー及び非相溶性ポリマーの溶融加工温度以上の温度で溶融加工して、水溶性ポリマーブレンド組成物を形成し、非平衡状態の水溶性ポリマーブレンド組成物をクエンチして非平衡形態を提供し、水溶性ポリマーブレンド組成物からフィードストックを形成し、水溶性ポリマーブレンド組成物を3D印刷し、水中に溶解させることによって水溶性ポリマーブレンド組成物の水溶性ポリマーの少なくとも一部を除去して、マイクロファイバー形態又は共連続多孔質形態を形成することによって、形成することができる。
【0077】
水溶性ポリマーブレンド組成物は多くの利点を提供できる。例えば、水溶性ポリマーブレンド組成物は、少なくとも約100℃、又は少なくとも約140℃、又は少なくとも約160℃、又は少なくとも約180℃、又は少なくとも約190℃、又は少なくとも約200℃、又は少なくとも約210℃で約300℃までのビルドチャンバー温度で実質的に安定にあり得る。水溶性ポリマーブレンド組成物を使用して水溶性サポートを形成する場合、水溶性サポートはまた、少なくとも約100℃、又は少なくとも約140℃、又は少なくとも約160℃、又は少なくとも約180℃、又は少なくとも約190℃、又は少なくとも約200℃、又は少なくとも約210℃で約300℃までのビルドチャンバー温度で実質的に安定であり、少なくとも約100℃のビルドチャンバー温度で実質的に乾燥している。
【0078】
水溶性ポリマーブレンド組成物及びそのような組成物を含む物品は、限定されるものではないが、積層造形を含む多くの産業で幅広い有用性を有する。これらの組成物及び物品は、プラスチックコンパウンダー及びコンバーターに大きな価値を提供することができる。開示された組成物及び物品は、疎水性ポリマーに対する増強された溶解度及び接着性、調節可能なレオロジー特性、並びにより高い温度で増大した剛性を提供する。そのような組成物から製造される物品の非限定的な例としては、限定されるものではないが、クッション材、織物、医療用品、自動車部品、フィルター、セパレータ、装甲、絶縁体、農業用フィルム、建築材料、可溶性サポート、マイクロファイバー、微孔性フィルター、バッテリーセパレータ、及び微細発泡体が挙げられる。
【0079】
以下の実施例において、別段の記載が無い限り、すべての部品及びパーセンテージは重量基準である。
【実施例
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
サンプル調製:配合物1~16
【0083】
配合物1~16の各々を表3の重量比にしたがって調製した。配合物1~16をまずプラスチック袋中でブレンドし、27mm二軸押出機(40:1L:D、Leistritz Extrusiontechnik GmbH,Germanyから商業的に入手可能)に重量測定法で供給した。配合物1~4、7、及び8の配合は、ゾーン1~10において以下の温度プロファイルを用いて実施された:それぞれ、40、250、250、250、250、250、240、230、220、220℃、及び220℃のダイ温度。配合物5及び6の配合は、ゾーン1~10において以下の温度プロファイルを用いて実施された:それぞれ40、300、300、300、300、250、240、230、220、220℃、及び220℃のダイ温度。配合物9及び10の配合は、ゾーン1~10において以下の温度プロファイルを用いて実施された:それぞれ40、200、260、260、260、250、250、240、230、230℃、及び230℃のダイ温度。配合物11及び12の配合は、ゾーン1~10において以下の温度プロファイルを用いて実施された:それぞれ40、180、180、180、180、180、180、180、180、180℃、及び180℃のダイ温度。配合物13及び14の配合は、ゾーン1~10において以下の温度プロファイルを用いて実施された:それぞれ40、170、200、200、190、190、190、190、190、190℃、及び190℃のダイ温度。配合物15及び16の配合は、ゾーン1~10において以下の温度プロファイルを用いて実施された:それぞれ40、200、200、200、200、200、190、190、190、190℃、及び190℃のダイ温度。押出機のスクリュー速度は約300rpmであり、出力レートは約10kg/hrであった。次いで、混合物を空冷されたベルトコンベヤ上に押し出し、ペレット化して約2.5mm×2.5mmの円筒形ペレットにし、プラスチック袋中に集めた。
水溶性ポリマーの除去:配合物7及び13
【0084】
配合物7及び13の水溶性ポリマーブレンド組成物の水溶性ポリマーを以下の手順に従って除去した。配合物7及び13のペレットを80℃の200mLの脱イオン水中に16時間入れ、次いで80℃にて真空下で乾燥させた。次いで、ペレットを液体窒素中に沈め、凍結割断して、ペレット断面SEM画像を得た。図4では、マイクロファイバー形態を有する配合物7の水溶性ポリマーブレンド組成物400は、水溶性ポリマーの除去により非相溶性ポリマーマイクロファイバー402を含む。図6では、配合物13の水溶性ポリマーブレンド組成物600は水溶性ポリマーの除去後の共連続多孔質形態を示す。図6の水溶性ポリマーブレンド組成物600の共連続多孔質形態は共連続チャネル604を含む。
アニーリング及び水溶性ポリマーの除去:配合物7及び13
【0085】
配合物7及び13の水溶性ポリマーブレンド組成物をアニールし、次いで水溶性ポリマーを以下の手順に従って除去した。配合物7及び13のペレットを200℃で30分間アニールした。結果としてのアニールされた配合物7及び13のペレットを80℃の200mLの脱イオン水中に16時間入れ、次いで80℃にて真空下で乾燥させた。ペレットを次いで液体窒素中に沈め、凍結割断してペレット断面SEM画像を得た。図5は、アニーリングとそれに続いて水溶性ポリマーを除去した後の配合物7の水溶性ポリマーブレンド組成物400のマイクロファイバー形態を示す。図7は、アニーリングとそれに続いて水溶性ポリマーを除去した後の配合物13の水溶性ポリマーブレンド組成物600の共連続多孔質形態を示す。図7の水溶性ポリマーブレンド組成物600の共連続多孔質形態は共連続チャネル704を含む。
実施例1:配合物7のフィラメント調製
【0086】
配合物7のフィラメント調製は、以下の手順に従って実施した。配合物7のペレットを90℃で4時間乾燥させ、次いでバリアスクリューを有する1.75”一軸押出機、24:1のL:Dを使用し、20rpmのスクリュー速度で、すべての押出機ゾーンについて240℃の温度プロファイル、10kg/hrの出力レートで押し出した。フィラメントを丸ダイスから押し出し、空冷し、3”コアを有するスプール上に巻き付けた。
実施例2:ULTIMAKERフィラメント配合物7
【0087】
実施例1にしたがって製造した、太さ2.85mmの配合物7のフィラメントを、以下の条件を使用してULTIMAKER 5S(商標)プリンター(Ultimaker Inc.から商業的に入手可能)で印刷した。押出機温度は240℃であった。ビルドプレート温度は115℃である。印刷速度は15mm/sである。
実施例3:配合物13のフィラメント調製
【0088】
配合物13のフィラメント調製は、以下の手順に従って実施した。配合物13のペレットを80℃で4時間乾燥させ、次いでスクリューを有する1.75”一軸押出機、24:1のL:Dを使用し、15rpmのスクリュー速度で、すべての押出機ゾーンについて180℃の温度プロファイル、7kg/hrの出力レートで押し出した。フィラメントを丸ダイスから押し出し、空冷し、3”コアを有するスプール上に巻き付けた。
実施例4:ULTIMAKERフィラメント配合物13
【0089】
実施例3にしたがって製造した、太さ2.85mmの配合物13のフィラメントを、以下の条件を使用してULTIMAKER 5S(商標)プリンター(Ultimaker Inc.から商業的に入手可能)で印刷した。押出機温度は230℃であった。ビルドプレート温度は120℃である。印刷速度は25mm/sである。
崩壊法試験1:配合物1~10
【0090】
配合物1~10の各々について、5グラムのペレットサンプルを約80℃で約200mLの脱イオン水中に入れた。崩壊時間は、サンプルが完全に崩壊して、ペレットが観察されない時間で報告した。結果を表4に提示する。
【0091】
【表4】
【0092】
溶解法試験1:配合物8、10~16
【0093】
配合物8及び10~16の各々について、5グラムのペレットサンプルを約80℃の約200mLの脱イオン水中に16時間入れ、その後、真空下で80℃にて乾燥した。観察される質量損失を溶解前の質量と溶解後の質量との間の質量損失%として報告する。結果を表5に提示する。
【0094】
【表5】
【0095】
DSC/TGA特性決定
【0096】
示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA)研究をWSP1及び配合物1~16に関して実施した。WSP1及びすべての配合物を空気中、室温から350℃まで10℃/minの傾斜率で加熱した。表6は、この特性決定の結果、特に、重要なDSCガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、及び分解温度を示す。
【0097】
【表6】
【0098】
キャピラリーレオロジー特性決定
【0099】
キャピラリーレオメータ(マサチューセッツ州フランクリンのDyniscoから商業的に入手可能)を使用して配合物WSP1及び1-16に対してキャピラリーレオロジーを実施した。全ての配合物をまず220℃で分析した。220℃で溶融/加工しなかった配合物について、温度を240℃まで上昇させた。220℃での粘度が低すぎる配合物について、温度を190℃まで低下させた。220℃、240℃、又は190℃で加工しなかった配合物は試験しなかった。配合物を100~30,0000s-1のせん断率で分析した。表7は、この特性決定、特に、試験した温度での見かけの粘度の結果を示す。
【0100】
【表7】
【0101】
このように特定の実施形態を記載してきたが、当業者は、本明細書中でみられる教示が添付の特許請求の範囲内のさらに別の実施形態に適用できることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】