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特表2023-522693BTK阻害剤を使用するサイトカインストームを包含する急性呼吸窮迫症候群および他の障害の処置
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  • 特表-BTK阻害剤を使用するサイトカインストームを包含する急性呼吸窮迫症候群および他の障害の処置 図1
  • 特表-BTK阻害剤を使用するサイトカインストームを包含する急性呼吸窮迫症候群および他の障害の処置 図2
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  • 特表-BTK阻害剤を使用するサイトカインストームを包含する急性呼吸窮迫症候群および他の障害の処置 図8-3
  • 特表-BTK阻害剤を使用するサイトカインストームを包含する急性呼吸窮迫症候群および他の障害の処置 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】BTK阻害剤を使用するサイトカインストームを包含する急性呼吸窮迫症候群および他の障害の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230524BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P11/00
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K39/395 M
A61K31/519
A61K31/341
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563376
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 US2021028381
(87)【国際公開番号】W WO2021216696
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/013,784
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513288724
【氏名又は名称】プリンシピア バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クレア・ラングリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ドルカ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ステファニ・ウォルフ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB332
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA03
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
治療有効量の低分子BTK阻害剤を使用して哺乳動物において急性呼吸窮迫症候群、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、びまん性肺胞傷害、マクロファージ活性化症候群、続発性血球貪食性リンパ組織球症、サイトカイン放出症候群、および全身性炎症反応症候群から選択される疾患を処置する方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
急性呼吸窮迫症候群、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、びまん性肺胞傷害、マクロファージ活性化症候群、続発性血球貪食性リンパ組織球症、サイトカイン放出症候群、および全身性炎症反応症候群から選択される疾患を処置する方法であって、該処置を必要とする哺乳動物に小分子であるブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む前記方法。
【請求項2】
BTK阻害剤は式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法:
【化1】
式中、
は-N-またはCRであり、ここでRは水素およびアルキルから選択され;
およびRは独立して水素、メチル、クロロ、フルオロ、シクロプロピル、ヒドロキシ、メトキシ、シアノ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから選択され;
およびRは独立して水素、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、およびシアノから選択され;
-Z-EWG-は-アルキレン-NR’CO-、-アルキレン-NR’SO-、
【化2】
から選択され、ここで
【化3】
はそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
-アルキレン-NR’CO-、-アルキレン-NR’SO-、
【化4】
中のカルボニル基またはスルホニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
R’は独立して水素およびアルキルから選択され;
はアルキル、ハロアルコキシ、置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルキレン-NR、およびシクロアルキレン-アルキレン-NRから選択され;
およびRは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、および3~6員飽和単環式ヘテロシクリルから選択され、ここで
ヘテロシクリルはN、O、およびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含み;
ヘテロシクリルはヒドロキシ、アルキル、およびフルオロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されている。
【請求項3】
は-N-である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
-Z-EWG-は
【化5】
であり、ここで
【化6】
は独立して、アルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており、
【化7】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合している、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
-Z-EWG-は
【化8】
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
BTK阻害剤は
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
2-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-(3,4-ジクロロフェノキシ)-3-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(3,4-ジクロロフェノキシ)-3-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ-[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(2-フルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(3-フルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(2,3-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(3,5-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(2,5-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-(フェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;および
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(4-(2,3-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
-Z-EWG-は
【化9】
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
BTK阻害剤は
2-(2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(4-(3-フルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(4-(2,6-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(4-(2,3-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(4-(3,5-ジフルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(4-(2-フルオロフェノキシ)フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(S)-2-{2-[4-アミノ-5-(4-フェノキシ-フェニル)-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イルメチル]-ピロリジン-1-カルボニル}-3-シクロプロピル-アクリロニトリル;
(S)-2-(2-((4-アミノ-6-メチル-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(S)-2-(2-((4-アミノ-6-メチル-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-4-(ジメチルアミノ)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
(S)-2-(2-((4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(4-(2,3-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
(S)-2-(2-((4-アミノ-3-(4-(2,3-ジフルオロフェノキシ)-2-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-シクロプロピルアクリロニトリル;
2-((S)-2-((4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-4-(エチルアミノ)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
2-((R)-2-((4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-4-(エチルアミノ)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
2-((S)-2-((4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-4-(シクロプロピルアミノ)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
2-((S)-2-((4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-4-(2-メトキシエチルアミノ)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(2-((4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-カルボニル)-3-(1-アミノシクロプロピル)アクリロニトリル;
2-[(2S)-2-[[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]メチル]ピロリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-モルホリノ-ペンタ-2-エンニトリル;
2-[(2R)-2-[[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]メチル]ピロリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-モルホリノ-ペンタ-2-エンニトリル;
2-[(2R)-2-[[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]メチル]ピロリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-(1-ピペリジル)ペンタ-2-エンニトリル;
2-[(2S)-2-[[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]メチル]ピロリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-(1-ピペリジル)ペンタ-2-エンニトリル;および
2-[(2S)-2-[[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]メチル]-ピロリジン-1-カルボニル]-3-(3-メチルオキセタン-3-イル)プロパ-2-エンニトリル;
または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
はアルキルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
はt-ブチルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
BTK阻害剤は(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリル(化合物(IA))、および/または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化合物は(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリル(化合物(IA))、および/またはその薬学的に許容される塩の実質的に純粋な(E)または(Z)異性体である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリルの少なくとも約85%(w/w)または(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリルの薬学的に許容される塩の少なくとも約85%(w/w)は(E)異性体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
は置換アルキルである、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
は-C(CH-(4-R-ピペラジン-1-イル)であり;
は水素、アルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アルキルスルホニル、アルコキシカルボニル、アシル、およびオキセタン-3-イルより選択され;
ピペラジニル環はさらに場合により独立して1個または2個のアルキルで置換されている、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
BTK阻害剤は
2-[[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]-ピリミジン-1-イル]-ピペリジン-1-イル]カルボニル]-4-メチル-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ペンタ-2-エンニトリル;
2-((R)-3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-メチル-4-(ピペラジン-1-イル)ペンタ-2-エンニトリル;
2-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]-ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-(4-エチルピペラジン-1-イル)-4-メチル-ペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-(4-イソプロピルピペラジン-1-イル)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-(4-(tert-ブチル)ピペラジン-1-イル)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-(4-(2-メトキシエチル)ピペラジン-1-イル)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-メチル-4-(4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-メチル-4-(4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペラジン-1-イル)ペンタ-2-エンニトリル;
2-((R)-3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-メチル-4-((3S,5R)-3,4,5-トリメチルピペラジン-1-イル)ペンタ-2-エンニトリル;
2-((R)-3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;
(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-メチル-4-(4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル)ペンタ-2-エンニトリル;
(R)-4-(4-アセチルピペラジン-1-イル)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4-メチルペンタ-2-エンニトリル;および
(R)-メチル-4-(5-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-シアノ-2-メチル-5-オキソペンタ-3-エン-2-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート;
または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
はオキセタン-3-イルである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
BTK阻害剤は2-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル(化合物(IB));および/または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
BTK阻害剤は2-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル(化合物(IB))、またはその薬学的に許容される塩の実質的に純粋な(E)または(Z)異性体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
2-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの少なくとも約85%(w/w)または2-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの薬学的に許容される塩の少なくとも約85%(w/w)は(E)異性体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
医薬組成物は副腎皮質ステロイド療法の代わりに投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
医薬組成物は副腎皮質ステロイド療法との組合せで投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
医薬組成物は非副腎皮質ステロイド性免疫抑制剤および/または抗炎症剤との組合せで投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物は副腎皮質ステロイド維持療法との組合せで投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物はヒトである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
医薬組成物はインターフェロンα、インターフェロンγ、シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、ダプソン、スルファサラジン、アザチオプリン、抗CD20剤、抗TNα剤、リガンドまたはその受容体に対する抗IL6剤、リガンドまたはその受容体に対する抗IL17剤、リガンドまたはその受容体に対する抗IL1剤、リガンドまたはその受容体に対する抗IL2剤、抗CD2剤、抗CD3剤、抗CD80/86剤、抗スフィンゴシン-1-リン酸受容体剤、抗C5剤、抗mTOR剤、抗カルシニューリン剤、抗BAFF/BlyS剤、レフルノミド、およびテリフルノミドから選択される医薬品有効成分との組合せで投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
医薬組成物はリツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、もしくはベルツズマブ、または上記のいずれかのバイオ後続品との組合せで投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
医薬組成物は少なくとも1つの抗ウイルス剤との組合せで投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
抗ウイルス剤は、侵入阻害剤、脱殻阻害剤、逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、転写阻害剤、およびプロテアーゼ阻害剤から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗ウイルス剤はレムデシビルを含む、請求項28または29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年4月22日に出願の米国仮出願第63/013,784号の優先権を主張するものであり、その内容はあらゆる目的で参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の概要
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、びまん性肺胞傷害(DAD)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、続発性血球貪食性リンパ組織球症(sHIH)、サイトカイン放出症候群(CRS)、および全身性炎症反応症候群(SIRS)から選択される疾患を処置する方法であって、それを必要とする哺乳動物に小分子であるブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤(BTKi)と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、疾患はCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。
【背景技術】
【0003】
新たな臨床データは、多くの重症COVID-19患者において炎症性免疫応答の調節不全が生じていることを示唆している。重症COVID-19患者は、静脈血栓合併症、補体活性化、および血餅が線維素溶解により分解される際に作り出される小さなタンパク質断片である高レベルのD-ダイマーを示し(非特許文献1)、これらの因子は高い死亡率に強力に関連している。さらに、一部のCOVID-19患者は「サイトカインストーム」に罹患しており(非特許文献2)、これは急性肺損傷(ALI)および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発生の一因となることがある(非特許文献3)。
【0004】
肺への好中球の遊走の有意な増加はARDSの特徴である。複数の研究は肺胞腔内の好中球の数とARDS疾患の重症度との間の相関を示している(非特許文献4)。COVID-19患者においては、好中球数および好中球対リンパ球比の増加が、疾患重症度の上昇および臨床予後の不良を示すようである(非特許文献5)。常在性肺胞マクロファージおよび動員マクロファージも、ARDS患者において生じる炎症反応プロセスにおいて重要な役割を果たすようであり(非特許文献6)、単球/マクロファージの過剰活性化および関連サイトカインストームと重症COVID-19疾患関連合併症とを結び付ける証拠は増え続けている(非特許文献7)。
【0005】
したがって、COVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している疾患、例えばARDS、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、DAD、マクロファージ活性化症候群MAS、sHIH、CRS、およびSIRSを処置する新規方法が求められている。
【0006】
酵素BTKはTecファミリー非受容体チロシンキナーゼのメンバーである。BTKは、B細胞を含む大部分の造血細胞、ならびに好中球、マクロファージ、およびマスト細胞などの自然免疫細胞において発現される免疫標的である。この酵素は、炎症反応に関与する血小板内でも発現されて、補体生成を支援し、サイトカイン放出、凝固、および好中球NET形成を促進する(非特許文献8)。BTKは、B細胞の発生および活性化において役割を果たし、B細胞受容体、Fc受容体、インテグリン、Toll様受容体、およびケモカイン受容体を包含するシグナル伝達経路を含む種々のシグナル伝達経路を通じて免疫細胞の機能を制御する(非特許文献9)。さらに、BTKは、損傷組織中の好中球の脱顆粒、遊走、および保持(非特許文献10)、ならびに単球/マクロファージの活性化および分化のプロセス(非特許文献9)において重要な役割を果たす。BTK阻害により、免疫細胞を枯渇させることなく、増殖、分化、およびサイトカイン産生などの様々な炎症性免疫細胞の活性が調節される(非特許文献9)。
【0007】
理論により拘束されることは望ましくないが、BTK阻害剤は、様々な免疫応答を調節する上で潜在的可能性があることから、ARDS、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、DAD、マクロファージ活性化症候群MAS、sHIH、CRS、およびSIRSの処置において有用でありうる。BTK阻害剤はALIおよびARDSのげっ歯類モデルにおいて保護性であり、BTK阻害剤が投与されたげっ歯類において肺病態、炎症、および肺機能不全の減弱が観察される。肺内では、BTKi処置により肺胞マクロファージおよび全身性好中球の活性化が減少し、単球および好中球のさらなる流入が実質的に減少した。また、BTK阻害により、急性肺損傷の病因となる炎症性サイトカインの放出、好中球NET形成、およびマトリックスメタロプロテアーゼが防止された(非特許文献11;非特許文献6;非特許文献12)。肝モデルでは、BTKi処置は、組織炎症および組織損傷の部位において、好中球の活性化および遊走を阻害し、好中球蓄積の潜在的に有害な効果を逆転させることが可能であった(非特許文献10)。BTK阻害後に、炎症性血小板機構の阻害による抗血栓効果も観察された。幸いなことに、BTK阻害により血小板の正常な止血機能が保存される(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Thachil J,et al.ISTH interim guidance on recognition and management of coagulopathy in COVID-19.J Thromb Hemostasis.2020.https://doi.org/10.1111/JTH.14810
【非特許文献2】Mehta P,et al.COVID-19:consider cytokine storm syndromes and immunosuppression.The Lancet.2020.395 (10229):1033-1034.https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30628-0
【非特許文献3】Murphy S,et al.Care for Critically Ill Patients With COVID-19.JAMA Insights.2020.https://doi.org/10.1001/jama.2020.3633
【非特許文献4】Krupa A,et al.Silencing Bruton’s tyrosine kinase in alveolar neutrophils protects mice from LPS/immune complex-induced acute lung injury.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.307(6):L435-L448,2014.
【非特許文献5】Cao X.COVID-19:immunopathology and its implications for therapy.Nat Rev Immunol.2020.https://doi.org/10.1038/s41577-020-0308-3
【非特許文献6】Huang X,et al.The Role of Macrophages in the Pathogenesis of ALI/ARDS.Mediators Inflamm.2018.https://doi.org/10.1155/2018/1264913
【非特許文献7】Zhang D,et al.COVID-19 infection induces readily detectable morphological and inflammation-related phenotypic changes in peripheral blood monocytes,the severity of which correlate with patient outcome.2020.https://doi.org/10.1101/2020.03.24.20042655
【非特許文献8】Busygina K,et al.Oral Bruton tyrosine kinase inhibitors selectively block atherosclerotic plaque-triggered thrombus formation in humans.Blood.2018.131(24):2605-2616.https://doi.org/10.1182/blood-2017-09-808808
【非特許文献9】Rip J,et al.The role of Bruton’s Tyrosine Kinase in immune cell signaling and systemic autoimmunity.Crit Rev Immunol,38(1):17-62,2018.https://doi.org/10.1615/CritRevImmunol.2018025184.
【非特許文献10】Herter JM,et al.PRN473,an inhibitor of Bruton’s tyrosine kinase,inhibits neutrophil recruitment via inhibition of macrophage antigen-1 signalling.Br J Pharmacol,2018,175(3):429-439.https://doi.org/10.1111/bph.14090
【非特許文献11】Florence JM,et al.Inhibiting Bruton’s tyrosine kinase rescues mice from lethal influenza-induced acute lung injury.Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.2018.315(1):L52-L58.https://doi.org/10.1152/ajplung.00047.2018
【非特許文献12】DePorto AP,et al.Btk inhibitor ibrutinib reduces inflammatory myeloid cell responses in the lung during murine pneumococcal pneumonia.Mol Med.2019.25(3).https://doi.org/10.1186/s10020-018-0069-7
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ARDS、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、DAD、マクロファージ活性化症候群MAS、sHIH、CRS、およびSIRSから選択される疾患を処置する方法であって、それを必要とする哺乳動物に小分子であるBTK阻害剤と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を投与することを含む方法が本明細書で開示される。本開示のいくつかの実施形態では、BTK阻害剤は式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化1】
【0010】
式中、
は-N-またはCRであり、ここでRは水素およびアルキルから選択され;
およびRは独立して水素、メチル、クロロ、フルオロ、シクロプロピル、ヒドロキシ、メトキシ、シアノ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから選択され;
およびRは独立して水素、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、およびシアノから選択され;
-Z-EWG-は-アルキレン-NR’CO-、-アルキレン-NR’SO-、
【化2】
から選択され、ここで
【化3】
はそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
-アルキレン-NR’CO-、-アルキレン-NR’SO-、
【化4】
中のカルボニル基またはスルホニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
R’は独立して水素およびアルキルから選択され;
はアルキル、ハロアルコキシ、置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルキレン-NR、およびシクロアルキレン-アルキレン-NRから選択され;
およびRは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、および3~6員飽和単環式ヘテロシクリルから選択され、ここで
複素環はN、O、およびSから独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含み;
複素環はヒドロキシ、アルキル、およびフルオロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されている。
【0011】
式(I)の化合物は、国際公開第2012/158764号として公開されているPCT/US2012/038092、および国際公開第2014/039899号として公開されているPCT/US2013/058614に開示されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、Zは-N-である。
【0013】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
-Z-EWG-は
【化5】
であり、ここで
【化6】
は独立して、アルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており、
【化7】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合している。
【0014】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化8】
である。
【0015】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化9】
である。
【0016】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、下記表1に示される化合物のいずれか、または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される。
【0017】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0018】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化10】
である。
【0019】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化11】
である。
【0020】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、下記表2に示される化合物のいずれか、または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される。
【0021】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【0022】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化12】
であり、ここで
【化13】
はアルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
【化14】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
はアルキルである。
【0023】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化15】
であり、ここで
【化16】
はアルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
【化17】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
はt-ブチルである。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリル(化合物(IA))、または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される。化合物(IA)の非フッ素化類似体は国際公開第2012/158764号の実施例3に開示されている。化合物(IA)は下記構造を有する。
【化18】
【0025】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリル(化合物(IA))、またはその薬学的に許容される塩の実質的に純粋な(E)または(Z)異性体である。
【0026】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化19】
であり、ここで
【化20】
はアルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
【化21】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
は置換アルキルである。
【0027】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化22】
であり、ここで
【化23】
はアルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
【化24】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
は-C(CH-(4-R-ピペラジン-1-イル)であり、ここで
は水素、アルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アルキルスルホニル、アルコキシカルボニル、アシル、およびオキセタン-3-イルより選択され;
ピペラジニル環はさらに場合により1個または2個の独立して選択されるアルキルで置換されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化25】
であり、ここで
【化26】
はアルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
【化27】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
は-C(CH-(4-R-ピペラジン-1-イル)であり、ここで
は水素、アルキル、アルコキシアルキル、ハロアルキル、アルキルスルホニル、アルコキシカルボニル、アシル、およびオキセタン-3-イルより選択され;
ピペラジニル環はさらに場合により1個または2個の独立して選択されるアルキルで置換されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、下記表3に示される化合物のいずれか、または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される。
【0030】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0031】
いくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は-N-であり;
-Z-EWG-は
【化28】
であり、ここで
【化29】
はアルキル、ヒドロキシ、およびハロから独立して選択される0個、1個、または2個の置換基で置換されており;
【化30】
中のカルボニル基は-C(CN)=CHRに結合しており;
は-C(CH-(4-R-ピペラジン-1-イル)であり、ここでRはオキセタン-3-イルである。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態では、BTK阻害剤は、2-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル(化合物(IB));および/または上記化合物のいずれかの薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、ならびに(E)および(Z)異性体の混合物から選択される。
【0033】
化合物(IB)はPRN1008またはリルザブルチニブ(rilzabrutinib)としても知られており、下記化学構造を有する。
【化31】
【0034】
化合物(IB)中のアルケン炭素における
【化32】
線は、化合物(IB)またはその薬学的に許容される塩が(E)異性体、(Z)異性体、または(E)および(Z)異性体の混合物であることができることを示す。
【0035】
化合物(IB)は、2013年9月6日に出願されて国際公開第2014/039899号として公開されているPCT出願番号PCT/US2013/058614の実施例31に開示されている。開示されている合成は、化合物(IB)が、カラムクロマトグラフィーによる精製を必要としており、溶媒の除去後に泡状物を生じさせ、これを破砕することで粉末を得ることができるということを示している。
【0036】
化合物(IA)、化合物(IB)、およびそのいずれかの薬学的に許容される塩は強力なブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤である。化合物(IB)はBTK経路の経口阻害剤である。それは循環から速やかに除去されるように設計された可逆的共有結合性阻害剤であり、ベースラインBTK活性(占有率により測定)は数日以内に回復する。現在、化合物(IB)は尋常性天疱瘡(PV)および免疫性血小板減少症(ITP)の両方の処置について臨床試験中である。
【0037】
BTKiは、COVID-19患者の処置のための代替的な免疫調節アプローチを実現する。BTK阻害剤、例えば式(I)の化合物、例えば化合物(IA)または化合物(IB)による免疫調節は、COVID-19患者におけるARDSおよび炎症の処置に有益であることができる。BTKiは、肺内で基礎組織炎症ならびに有害な好中球およびマクロファージの蓄積を標的とするための抗炎症アプローチを実現することができる。また、BTKiは、血小板の正常な止血機能を保存しながら、血小板の炎症性機構の阻害を通じて抗血栓効果を示すこともできる。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態では、化合物(IA)もしくは化合物(IB)またはそのいずれかの薬学的に許容される塩の少なくとも約80% (w/w)、少なくとも約85%(w/w)、少なくとも約90%(w/w)、少なくとも約95%(w/w)、少なくとも約96%(w/w)、少なくとも約97%(w/w)、または少なくとも約99%(w/w)は(E)異性体である。(E)異性体対(Z)異性体の比は、当技術分野において周知の方法により計算することができる。このような1つの方法の非限定的な例としてはHPLC総面積正規化法がある。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、びまん性肺胞傷害(DAD)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、続発性血球貪食性リンパ組織球症(sHIH)、サイトカイン放出症候群(CRS)、および全身性炎症反応症候群(SIRS)から選択される疾患を処置するための副腎皮質ステロイド療法の代替物として式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの化合物を使用する方法を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、びまん性肺胞傷害(DAD)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、続発性血球貪食性リンパ組織球症(sHIH)、サイトカイン放出症候群(CRS)、および全身性炎症反応症候群(SIRS)から選択される疾患を処置するための代替治療薬として式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの化合物を使用する方法を提供する。いくつかの実施形態では、副腎皮質ステロイドは前記疾患を処置するための第一選択または第二選択療法として使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は副腎皮質ステロイドの代わりに使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は副腎皮質ステロイドとの組合せで使用される。いくつかの実施形態では、副腎皮質ステロイドは前記疾患のための第一選択または第二選択維持療法として使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は副腎皮質ステロイドの代わりに使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は副腎皮質ステロイドとの組合せで使用される。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、敗血症誘導急性肺損傷、びまん性肺胞傷害(DAD)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、続発性血球貪食性リンパ組織球症(sHIH)、サイトカイン放出症候群(CRS)、および全身性炎症反応症候群(SIRS)から選択される疾患の処置における慢性維持療法において使用される副腎皮質ステロイドの治療量を無くすかまたは減少させることを、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、該哺乳動物に治療有効量の式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、副腎皮質ステロイドは第一選択または第二選択処置薬として使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は副腎皮質ステロイドの代わりに使用される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は副腎皮質ステロイドとの組合せで使用される。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの化合物は非副腎皮質ステロイド性免疫抑制剤および/または抗炎症剤との組合せで投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物はインターフェロンα、インターフェロンγ、シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、ダプソン、スルファサラジン、アザチオプリン、抗CD20剤(例えばリツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、もしくはベルツズマブ、または上記のいずれかのバイオ後続品)、抗TNα剤(例えばエタネルセプト、インフリキシマブ、ゴリムマブ、アダリムマブ、もしくはセルトリズマブペゴル、または上記のいずれかのバイオ後続品)、リガンドまたはその受容体に対する抗IL6剤(例えばトシリズマブ、サリルマブ、オロキズマブ(olokizumab)、エルシリルマブ(elsililumab)、もしくはシルツキシマブ、または上記のいずれかのバイオ後続品)、リガンドまたはその受容体に対する抗IL17剤(例えばセクキヌマブ、ウステキヌマブ、ブロダルマブ、もしくはイキセキズマブ、または上記のいずれかのバイオ後続品)、リガンドまたはその受容体に対する抗IL1剤(例えばリロナセプト、カナキヌマブ、もしくはアナキンラ、または上記のいずれかのバイオ後続品)、リガンドまたはその受容体に対する抗IL2剤(例えばバシリキシマブもしくはダクリズマブ、またはそのいずれかのバイオ後続品)、抗CD2剤(例えばアレファセプトまたはそのバイオ後続品)、抗CD3剤(例えばムロモナブ-cd3またはそのバイオ後続品)、抗CD80/86剤(例えばアバタセプトもしくはベラタセプト、またはそのいずれかのバイオ後続品)、抗スフィンゴシン-1-リン酸受容体剤(例えばフィンゴリモドまたはそのバイオ後続品)、抗C5剤(例えばエクリズマブまたはそのバイオ後続品)、抗インテグリンα4剤(例えばナタリズマブまたはそのバイオ後続品)、抗αβ剤(例えばベドリズマブまたはそのバイオ後続品)、抗mTOR剤(例えばシロリムスまたはエベロリムス)、抗カルシニューリン剤(例えばタクロリムス)、抗BAFF/BlyS剤(例えばベリムマブ、VAY736、もしくはブリシビモド(blisibimod)、または上記のいずれかのバイオ後続品)、レフルノミド、およびテリフルノミドから選択される医薬品有効成分との組合せで投与される。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの化合物は少なくとも1つの抗ウイルス剤、例えばレムデシビルとの組合せで投与される。抗ウイルス剤としては、例えば侵入阻害剤、脱殻阻害剤、逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、およびプロテアーゼ阻害剤を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】PRN1008処置による抗GBM(抗糸球体基底膜)マウス糸球体腎炎モデルにおける用量依存性阻害を調査するための試験設計を示す。マウス抗GBM糸球体腎炎モデルは抗体媒介性自己免疫を包含するものであり、このモデルはヒトにおける糸球体腎炎に組織学的および機構的に類似している。このモデルは、糸球体基底膜を標的とする免疫複合体(IC)の腎沈着も含む。
図2】マウス抗GBM糸球体腎炎モデルにおけるPRN1008処置による血清血中尿素窒素(BUN)レベルの用量依存的阻害を示す。BUNレベルは腎機能の尺度を示す。
図3】マウス抗GBM糸球体腎炎モデルにおけるPRN1008処置による重症蛋白尿の用量依存的阻害を示す。
図4】マウス抗GBM糸球体腎炎モデルにおけるPRN1008処置による蛋白尿の減少を示す。
図5】マウス抗GBM糸球体腎炎モデルにおけるPRN1008処置による腎重量増加の用量依存的阻害を示す。腎重量増加は腎炎症の代替指標である。
図6】マウス抗GBM糸球体腎炎モデルにおいてPRN1008が腎病態をステロイド比較物質(Dex)よりも優れて著しく減少させたことを示す。図1図6中、Dexとは、ステロイドホルモンの糖質コルチコイドクラスの強力な合成メンバーであるデキサメタゾンを意味する。
図7】生物学的経路に関連するBioMAPバイオマーカー活性の解釈、ならびにインビボでの相関および予測において使用される、BioMAP Diversity PLUSパネルを示す。
図8-1】PRN1008のBioMAPプロファイルを示す。
図8-2】図8-1の続き。
図8-3】図8-2の続き。
図9図9Aは、化合物(IA)で処置された動物において、好中球の遊走活性が、クローリングした停止細胞に関して、媒体対照と比べて著しく減少したことを示す。図9Bは、スピニングディスク経時的顕微鏡観察を使用して得られた熱傷4時間後の壊死区域(ヨウ化プロピジウム、赤色)への好中球(eGFP、緑色)動員の代表的顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
本明細書において使用される実体「a」または「an」とは、1つまたは複数の当該実体を意味し、例えば、「1つの化合物(a compound)」とは、別途記載がない限り、1つもしくは複数の化合物、または少なくとも1つの化合物を意味する。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0046】
本明細書において使用される用語「約(about)」は、「概して(approximately)」、「~の近く(in the region of)」、「ほぼ(roughly)」、または「およそ(around)」を意味する。用語「約」は、数値範囲との組合せで使用される際に、記載される数値の上方および下方に境界を広げることで当該範囲を修正する。一般に、用語「約」は、本明細書において、数値を、記載される値の上方および下方に10%の変動で修正するように使用される。
【0047】
本明細書において使用される「小分子」とは、分子量500g/mol未満を有する、化合物の原子が炭素、水素、酸素、窒素、リン、および硫黄を含む有機化合物を意味する。
【0048】
本明細書において使用される「化合物(IA)」とは、下記構造を有する(R)-2-(3-(4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボニル)-4,4-ジメチルペンタ-2-エンニトリルの(E)異性体、(Z)異性体、または(E)および(Z)異性体の混合物を意味する。
【化33】
【0049】
本明細書において使用される「化合物(IB)」とは、下記構造を有する2-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル、またはその薬学的に許容される塩の(E)異性体、(Z)異性体、または(E)および(Z)異性体の混合物を意味する。
【化34】
【0050】
化合物(IA)または化合物(IB)中のアルケン炭素における
【化35】
線は、化合物(IA)もしくは化合物(IB)、またはそのいずれかの薬学的に許容される塩が(E)異性体、(Z)異性体、または(E)および(Z)異性体の混合物であることができることを示す。
【0051】
化合物(IA)および化合物(IB)のすべての多形および水和物は、本明細書およびそれに添付される特許請求の範囲の範囲内である。
【0052】
当業者であれば、化合物が(R)異性体として示される場合、該化合物が対応する(S)立体異性体を不純物として、すなわち(S)立体異性体を約1重量%未満で含むことがあり、逆もまた同じであるということを理解するであろう。
【0053】
幾何形態または異性形態に関して本明細書において使用される「実質的に純粋な」とは、化合物の70重量%超が所与の異性形態として存在する、化合物(IA)または化合物(IB)などの化合物を意味する。例えば、「化合物(IA)は実質的に純粋な(E)異性体である」という語句は、化合物(IA)が少なくとも70重量%またはモル%の(E)異性形態を有することを意味し、「化合物(IA)は実質的に純粋な(Z)異性体である」という語句は、化合物(IA)が少なくとも70重量%またはモル%の(Z)異性形態を有することを意味する。上記は化合物(IB)にも同等に当てはまる。いくつかの実施形態では、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも80重量%またはモル%は(E)形態であり、あるいは、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも80重量%またはモル%は(Z)形態である。いくつかの実施形態では、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも85重量%またはモル%は(E)形態であり、あるいは、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも85重量%またはモル%は(Z)形態である。いくつかの実施形態では、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも90重量%またはモル%は(E)形態であり、あるいは、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも90重量%またはモル%は(Z)形態である。いくつかの実施形態では、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも95重量%またはモル%は(E)形態であり、あるいは、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも95重量%またはモル%は(Z)形態である。いくつかの実施形態では、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも97重量%もしくはモル%または少なくとも98重量%もしくはモル%は(E)形態であり、あるいは、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも97重量%もしくはモル%または少なくとも98重量%もしくはモル%は(Z)形態である。いくつかの実施形態では、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも99重量%またはモル%は(E)形態であり、あるいは、化合物(IA)または化合物(IB)の少なくとも99重量%またはモル%は(Z)形態である。固体混合物中の(E)および(Z)異性体の相対量は、当技術分野において公知である標準的な方法および技術に従って確定可能である。
【0054】
本明細書において使用される「急性」とは、急速な発症および/または短い過程を伴う疾患を意味する。
【0055】
本明細書において使用される、化合物の「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を有する、塩を意味する。これらの塩としては以下が挙げられるがそれに限定されない:
塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸によって形成されるか;またはギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸によって形成される酸付加塩;または
親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンで置き換えられるか、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基に配位する際に形成される塩。薬学的に許容される塩が無毒であることが理解されよう。
【0056】
好適な薬学的に許容される塩に関するさらなる情報はRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985に見ることができ、好適な薬学的に許容される塩に関するその一部分は参照によって本明細書に組み入れられる。Berge at al.,Pharmaceutical Salts,Journal of Pharmaceutical Sciences,1,Volume 66,Number 1,January 1997を参照。
【0057】
多くの場合、処置の決定は公式または非公式のアルゴリズムガイドラインに従う。多くの場合、処置選択肢を治療方式、すなわち第一選択治療、第二選択治療、第三選択治療などにランク付けまたは優先付けすることができる。第一選択治療とは、試行される第1の治療のことである。通常、他の選択肢に対してそれが優先されることは、(1)効能、安全性、および忍容性に関するその最良利用可能な組合せについての臨床試験エビデンスに基づいて公式に推奨され;または(2)医師の臨床経験に基づいて選択される。第一選択治療が問題を解決できないかまたは忍容されない副作用を生じさせる場合、さらなる(第二選択)治療、続いて第三選択治療などを代わりに使用するかまたは処置レジメンに追加することができる。したがって、本明細書において使用される「第一選択」治療とは、誰かが特定の疾患または状態であると診断される際に通常行われる治療を意味する。第一選択治療は標準治療と分類されることがある。
【0058】
本明細書において使用される「維持治療」とは、疾患を有する患者に実行される初期治療過程に続いて実行される治療、治療レジメン、または治療過程を意味する。維持治療を使用することで、疾患の進行を停止させ、鈍化させ、さらには逆転させること、初期処置により実現された健康の改善を維持すること、および/または初期治療により実現された利益を増大させることができる。
【0059】
「薬学的に許容される担体または賦形剤」とは、概して安全で、無毒で、かつ生物学的にも他の点でも望ましくないということがない医薬組成物を製造する上で有用な担体または賦形剤を意味するものであり、獣医学用途およびヒト薬学用途に許容される担体または賦形剤を含む。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体または賦形剤」とは、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を意味する。
【0060】
本明細書において使用される「処置すること」、「処置する」、または「処置」とは
(1)疾患を阻害すること、すなわち疾患もしくはその臨床症状の発生を停止もしくは減少させること;または
(2)疾患を軽減させること、すなわち疾患もしくはその臨床症状の退行を引き起こすことを含む。
【0061】
本明細書において使用される「治療有効量」とは、疾患を処置するために哺乳動物、特にヒトに投与される際に、疾患について当該処置を実行するために十分である、本開示の化合物の量を意味する。「治療有効量」とは、化合物、疾患およびその重症度、ならびに処置される哺乳動物の年齢、体重などに応じて変動する。
【0062】
本明細書において使用される「QD」とは1日1回を意味する。
【0063】
本明細書において使用される「BID」とは1日2回を意味する。
【0064】
本明細書において使用される「哺乳動物」とは、イヌ、ネコ、およびヒトなどの動物を意味する。
【0065】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは、息切れ、呼吸促迫、および/または帯青色の皮膚着色を特徴とする状態のことである。それは肺内での炎症を含む呼吸不全の一種である。ARDSは、酸素と二酸化炭素とを交換する肺の能力を損なうものである。ARDSの原因としては敗血症、膵炎、外傷、肺炎、および誤嚥を挙げることができる。本開示のいくつかの実施形態では、ARDSはコロナウイルス疾患2019(COVID-19)によって引き起こされるかまたはそれに関連している。COVID-19によって引き起こされるARDSは、COVID-19ウイルスに感染した患者における主な死因である(Mehta 2020;Ryan 2020)。
【0066】
続発性血球貪食性リンパ組織球症(sHLH)とは、多臓器不全を伴う劇症性(すなわち重症かつ突然発症する)および致死性の高サイトカイン血症(高度に上昇したレベルの様々なサイトカインを伴う、サイトカインと免疫細胞との間のポジティブフィードバックループを示す免疫反応)を特徴とする、過剰炎症症候群のことである(Mehta 2020)。sHLHは、感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、または他の免疫負荷によって誘発される後天型の血球貪食性リンパ組織球症(HLH)である。sHLHを有する救命医療患者の症状としては発熱、臓器機能不全、リンパ節腫脹、ならびに潜在的には肝腫大および/または脾腫大がある。本開示のいくつかの実施形態では、sHLHはCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。
【0067】
敗血症(敗血症(septicemia)および血液中毒としても知られる)とは、感染症によって引き起こされる炎症性免疫応答のことである。それは、感染症に応答している間に身体が自身の組織および臓器に対する損傷を引き起こす際に存在する、生命を脅かす状態である。感染症は細菌(最も一般的である)、真菌、ウイルス、および原虫により引き起こされることがある。敗血症の症状としては発熱、心拍数増加、低血圧、呼吸数増加、および錯乱を挙げることができる。本開示のいくつかの実施形態では、敗血症はCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。
【0068】
急性炎症症候群としても知られる、全身性炎症反応症候群(SIRS)とは、全身を冒す炎症状態のことである。SIRSは、感染性または非感染性の攻撃に対する身体の応答である。SIRSは炎症性成分および抗炎症性成分の両方を有する。SIRSは、全身炎症、臓器機能不全、および臓器不全に関連しており、様々なサイトカインが異常制御されるサイトカインストームのサブセットである。また、それは敗血症にも密接に関連するものであり、この場合、患者はSIRSの判定基準を満たしており、感染症を有することが疑われるかまたは証明されている。SIRSの合併症としては急性腎損傷、ショック、および多臓器機能不全症候群を挙げることができる。SIRSの原因としては微生物感染症、マラリア、外傷、火傷、膵炎、虚血、出血、手術合併症、副腎不全、肺塞栓症、大動脈瘤、心タンポナーデ、アナフィラキシー、および薬物過剰投与を挙げることができる。本開示のいくつかの実施形態では、SIRSはCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。
【0069】
サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストーム症候群(CSS)は、SIRSの一形態であり、感染症および特定の薬物などの種々の因子によって誘発されることがある。薬物投与の結果として生じる場合のCRSは輸注関連反応(IRR)または輸注反応としても知られている。多数の白血球が活性化されて炎症性サイトカインを放出し、炎症性サイトカインがさらなる白血球を活性化する際に、この症候群が生じる。CRSは、いくつかのモノクローナル抗体薬および養子T細胞治療薬の有害作用であることがある。CRSの症状としては発熱、疲労、食欲不振、筋肉痛および関節痛、悪心、嘔吐、下痢、発疹、頻呼吸、頻拍、低血圧、発作、頭痛、錯乱、せん妄、幻覚、振戦、ならびに調整失調を挙げることができる。本開示のいくつかの実施形態では、CRSはCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。
【0070】
敗血症誘導急性肺損傷(ALI)は浮腫、炎症性細胞浸潤、およびガス交換障害を特徴とする。患者の状態は、低酸素症によって悪化することがあり、多臓器不全を引き起こすことがある。敗血症患者の約40%はALIを発生させる。本開示のいくつかの実施形態では、敗血症性ALIはCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。
【0071】
びまん性肺胞傷害(DAD)とは、肺組織中の損傷に対する応答のことである。それは肺胞内滲出液(多くの場合、硝子膜と記述される)と、細胞学的に多形性であることがあるII型肺細胞の過形成とからなる(King 2007)。DADは、AIDS/HIV-1感染症による死亡者での剖検において観察されており、ありうる病因としてはウイルス感染症または日和見感染症(例えばニューモシスチス肺炎菌(P.jirovecii))、成人呼吸窮迫症候群、および酸素中毒を挙げることができる。臨床的には、それは呼吸窮迫およびびまん性肺浸潤を特徴とする(Kattan et al.2012)。DADは、死後検査および肺生検でのARDSに関する黄金律の病理所見と考えられている(Maley et al.2020)。本開示のいくつかの実施形態では、DADはCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。
【0072】
マクロファージ活性化症候群(MAS)とは、リウマチ状態に関連する血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の一形態のことである。それは、Tリンパ球およびマクロファージの活性化および無制御の増殖により生じる、血球貪食およびサイトカインの過剰産生を特徴とする(Manappallil 2016)。本開示のいくつかの実施形態では、MASはCOVID-19によって引き起こされるかまたはそれに関連している。重症COVID-19関連肺炎患者は、続発性血球貪食性リンパ組織球症(sHLH)としても知られているマクロファージ活性化症候群(MAS)またはサイトカインストームという総称で呼ばれる全身性過剰炎症の特徴を示すことがある。これは、原発性HLHと呼ばれる免疫不全状態に関連するHLHとは明確に異なっており、両状況では治療戦略が根本的に異なる。通常、MASを伴うCOVID-19感染は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を有する患者において生じ、歴史的には、ARDSにおける非生存はIL-6およびIL-1上昇の持続に関連していた(McGonagle et al.2020)。
【0073】
本明細書において使用される「アシル」とは、Rがアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロシクリルアルキルから選択され、さらに、単独での、または別の基、例えばアラルキルの一部としてのアリール環、ヘテロアリール環、またはヘテロシクリル環が場合によりアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、またはアルコキシカルボニルから独立して選択される1個、2個、または3個の置換基で置換されている、-COR基、例えばアセチル、プロピオニル、ベンゾイル、またはピリジニルカルボニルを意味する。Rがアルキルである場合、この基は本明細書においてアルキルカルボニルとも呼ばれる。
【0074】
本明細書において使用される「アルキル」とは、1~6個の炭素原子の直鎖飽和一価炭化水素基または3~6個の炭素原子の分枝飽和一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル(すべての異性形態を含む)、またはペンチル(すべての異性形態を含む)を意味する。
【0075】
本明細書において使用される「アルキレン」とは、1~6個の炭素原子の直鎖飽和二価炭化水素基または3~6個の炭素原子の分枝飽和二価炭化水素基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、ブチレン、またはペンチレンを意味する。
【0076】
本明細書において使用される「アルキルチオ」とは、Rがアルキルである-SR基、例えばメチルチオまたはエチルチオを意味する。
【0077】
本明細書において使用される「アルキルスルホニル」とは、Rがアルキルである-SO基、例えばメチルスルホニルまたはエチルスルホニルを意味する。
【0078】
本明細書において使用される「アルコキシ」とは、Rがアルキルである-OR基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシまたは2-プロポキシ、n-、イソ-、またはtert-ブトキシを意味する。
【0079】
本明細書において使用される「アルコキシアルキル」とは、少なくとも1個のアルコキシ基、例えば1個または2個のアルコキシ基で置換された、1~6個の炭素原子の直鎖一価炭化水素基または3~6個の炭素の分枝一価炭化水素基、例えば2-メトキシエチル、1-、2-、もしくは3-メトキシプロピル、または2-エトキシエチルを意味する。
【0080】
本明細書において使用される「アルコキシカルボニル」とは、Rがアルキルである-C(O)OR基、例えばメトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルを意味する。
【0081】
本明細書において使用される「アラルキル」とは、Rがアリールである-(アルキレン)-R基を意味する。
【0082】
本明細書において使用される「アリール」とは、6~10個の環原子の一価単環式または二環式芳香族炭化水素基、例えばフェニルまたはナフチルを意味する。
【0083】
本明細書において使用される「カルボキシ」とは-COOHを意味する。
【0084】
本明細書において使用される「シクロアルキル」とは、1個または2個の炭素原子がオキソ基で置き換えられることがある、3~10個の炭素原子の環状飽和一価炭化水素基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルを意味する。
【0085】
本明細書において使用される「シクロアルキルアルキル」とは、Rがシクロアルキルである-(アルキレン)-R基、例えばシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルエチル、またはシクロヘキシルメチルを意味する。
【0086】
本明細書において使用される「シクロアルキレン」とは、1個または2個の炭素原子がオキソ基で置き換えられることがある、3~10個の炭素原子の環状飽和二価炭化水素基、例えばシクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、またはシクロヘキシレンを意味する。
【0087】
本明細書において使用される「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。
【0088】
本明細書において使用される「ハロアルキル」とは、1個または複数のハロゲン原子、例えば1~5個のハロゲン原子、例えばフッ素または塩素で置換された、上記定義のアルキル基(異なるハロゲンで置換されたものを含む)、例えば-CHCl、-CF、-CHF、-CHCF、-CFCF、または-CF(CHを意味する。
【0089】
本明細書において使用される「ハロアルコキシ」とは、Rがハロアルキルである-OR基を意味する。
【0090】
本明細書において使用される「ヘテロアラルキル」とは、Rがヘテロアリールである-(アルキレン)-R基を意味する。
【0091】
本明細書において使用される「ヘテロアリール」とは、1個または複数、例えば2個または3個の環原子がN、O、およびSから独立して選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素である、5~10個の環原子の一価単環式または二環式芳香族基を意味する。非限定的な例としてはピロリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、フラニル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、およびテトラゾリルが挙げられる。
【0092】
本明細書において使用される「ヘテロシクリル」とは、1個または2個の環原子がN、O、およびS(O)(ここでnは0~2の整数である)から独立して選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCである、4~8個の環原子の飽和または不飽和一価単環式基を意味する。ヘテロシクリル環は場合によって1個のアリール環またはヘテロアリール環に縮合しているが、これはアリール環およびヘテロアリール環が単環式であることが条件である。単環式アリール環またはヘテロアリール環に縮合しているヘテロシクリル環は、本明細書において「二環式ヘテロシクリル」環とも呼ばれる。さらに、ヘテロシクリル環中の1個または2個の環炭素原子は場合によって-CO-基で置き換えられることがある。ヘテロシクリルの非限定的な例としてはピロリジノ基、ピペリジノ基、ホモピペリジノ基、2-オキソピロリジニル基、2-オキソピペリジニル基、モルホリノ基、ピペラジノ基、テトラヒドロピラニル基、およびチオモルホリノ基が挙げられる。ヘテロシクリル環が不飽和である場合、環が芳香族ではないという条件で、1個または2個の環二重結合を含んでもよい。ヘテロシクリル基が少なくとも1個の窒素原子を含む場合、本明細書においてヘテロシクロアミノとも呼ばれ、ヘテロシクリル基のサブセットとなる。ヘテロシクリル基が飽和環であって上記のようにアリール環またはヘテロアリール環に縮合していない場合、本明細書においては飽和単環式ヘテロシクリルとも呼ばれる。
【0093】
本明細書において使用される「ヘテロシクリルアルキル」とは、Rがヘテロシクリルである-(アルキレン)-R基、例えばテトラヒドロフラニルメチル、ピペラジニルメチル、またはモルホリニルエチルを意味する。
【0094】
本明細書において使用される「ヒドロキシアルキル」とは、2個のヒドロキシ基が存在する場合は両方が同じ炭素原子上にあることがないという条件で1個または2個のヒドロキシ基で置換された、1~6個の炭素原子の直鎖一価炭化水素基または3~6個の炭素の分枝一価炭化水素基を意味する。非限定的な例としてはヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチル、および2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピル、好ましくは2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、および1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0095】
本明細書において使用される「オキソ」または「カルボニル」とはC=(O)基を意味する。
【0096】
本明細書において使用される「置換アルキル」とは、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルチオ、アルキルスルホニル、ハロ、-CONRR、-NRR、およびヘテロシクリル(例えばヘテロシクロアミノ)から独立して選択される1個、2個、または3個の置換基で置換されたアルキル基を意味し、ここで
各Rは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、およびアルコキシアルキルから選択され;
各R’は独立して水素、アルキル、およびシクロアルキルから選択され;
ヘテロシクリル基は場合により、アシル、アルキル、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、ハロ、ハロアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、および-CONR*R’’から独立して選択される1個または2個の基で置換され;
は水素、アルキル、シクロアルキル、およびヒドロキシアルキルから選択され;
R’’は水素、アルキル、およびシクロアルキルから選択される。
【0097】
製剤および投与
一般に、本開示の化合物は、治療有効量で、同様の有用性を提供する薬剤について許容される投与様式のいずれか(例えば経口投与)で投与される。本開示の化合物の治療有効量は1日当たり患者体重1kg当たり約0.01~約500mgの範囲とすることができ、これを単一用量または複数用量で投与することができる。好適な投与量レベルは1日当たり約0.1~約250mg/kg、例えば1日当たり約0.5~約100mg/kgであることができる。
【0098】
また、好適な投与量レベルは1日当たり約0.01~約250mg/kg、例えば1日当たり約0.05~約100mg/kg、さらに例えば1日当たり約0.1~約50mg/kgであることもできる。この範囲内で、投与量は1日当たり約0.05~約0.5、例えば約0.5~約5、さらに例えば約5~約50mg/kgであることができる。経口投与では、組成物を、有効成分約1~約1000ミリグラム、特に有効成分約1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900、および1000ミリグラムを含む錠剤の形態で与えることができる。本開示の化合物、すなわち有効成分の実際の投与される量は、処置される疾患の重症度、患者の年齢および相対的健康、利用される化合物の効力、投与経路および投与形態、ならびに他の要因などの数多くの要因に依存する。
【0099】
一般に、本開示の化合物は、医薬組成物として、以下の経路、すなわち経口投与、全身投与(例えば経皮投与、鼻腔内投与、もしくは坐薬による投与)、または非経口投与(例えば筋肉内投与、静脈内投与、もしくは皮下投与)のうちいずれか1つにより投与される。好ましい投与様式は、罹患度に従って調節可能である好都合な1日投与量レジメンを使用する経口投与である。組成物は錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体剤、散剤、持続放出製剤、溶液剤、懸濁液剤、エリキシル剤、エアロゾル剤、または任意の他の適切な組成物の形態を取ることができる。
【0100】
製剤の選択は薬物投与の様式(例えば、経口投与では、腸溶コーティングまたは遅延放出型の錠剤、丸剤、またはカプセル剤を含む錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態の製剤が好ましい)および原薬のバイオアベイラビリティなどの様々な要因に依存する。近年、特に低いバイオアベイラビリティを示す薬物の医薬製剤が、表面積を増加させることで、すなわち粒径を減少させることでバイオアベイラビリティを増加させることができるという原理に基づいて開発された。例えば、米国特許第4,107,288号では、有効物質が巨大分子の架橋マトリックスに担持されている粒径範囲10~1,000nmの粒子を有する医薬製剤が記載されている。米国特許第5,145,684号では、原薬を表面改質剤の存在下でナノ粒子(平均粒径400nm)に微粉砕した後、液体媒体に分散させることで、著しく高いバイオアベイラビリティを示す医薬製剤を得るという、医薬製剤の製造が記載されている。医薬製剤に関する両特許の部分は参照によって本明細書に組み入れられる。
【0101】
一般に、組成物は薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた本開示の化合物を含む。薬学的に許容される賦形剤は無毒であり、投与を促進するものであり、本開示の化合物の治療効果に悪影響を与えることがない。これらの賦形剤は、当業者に一般に利用可能な任意の固体賦形剤、液体賦形剤、半固体賦形剤、またはエアロゾル組成物の場合は気体賦形剤であることができる。
【0102】
固体医薬賦形剤としてはデンプン、セルロース、タルク、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルクなどが挙げられる。液体賦形剤および半固体賦形剤はグリセリン、プロピレングリコール、水、エタノール、および石油起源、動物起源、植物起源、または合成起源の油を含む様々な油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などから選択可能である。特に注射用溶液剤向けの、好ましい液体担体としては、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、およびグリコールが挙げられる。
【0103】
圧縮ガスを使用して本開示の化合物をエアロゾル形態に分散させることができる。この目的に好適な不活性ガスとしては窒素、二酸化炭素などがある。
【0104】
他の好適な薬学的賦形剤およびそれらの製剤化はRemington’s Pharmaceutical Sciences,edited by E.W.Martin (Mack Publishing Company,20th ed.,2000)に記載されており、薬学的賦形剤およびそれらの製剤化に関する部分について参照によって本明細書に組み入れられる。
【0105】
製剤中の化合物のレベルは、当業者により使用される最大範囲内で変動することがある。通常、製剤は、製剤全体に対する重量パーセント(重量%)比で0.01~99.99重量%の本開示の化合物を含み、残りは好適な薬学的賦形剤である。例えば、本化合物は約1~80重量%のレベルで存在する。数値範囲0.01~99.99に関して、「約」は0.01%未満を示す。数値範囲1~80に関して、「約」は1に対して0.05を示し、80に対して10を示し、したがって0.05~90重量%の範囲を網羅する。
【0106】
本開示の化合物を、1つまたは複数の他の薬物との組合せで、本開示の化合物または他の薬物が有用性を示すことができる疾患または状態の処置において使用することができる。これらの他の薬物は、そのために一般的に使用される経路および量で、本開示の化合物と同時に、例えば固定用量の組合せとして、または本開示の化合物と連続的に、投与可能である。本開示の化合物を1つまたは複数の他の薬物と同時に使用する場合、これらの他の薬物および本開示の化合物を含む単位投与形態での医薬組成物、すなわち固定用量調合物が好ましい。しかし、併用治療は、本開示の化合物および1つまたは複数の他の薬物を異なる重複するスケジュールで、さらには重複しないスケジュールで投与する治療を含んでもよい。また、1つまたは複数の他の有効成分との組合せで使用される場合に、本開示の化合物および他の有効成分が、それぞれが単独で使用される場合に比べて少ない用量で使用可能であるという状況が生じることも想定される。
【0107】
本明細書において言及されるすべての刊行物および特許は、本開示の特定の部分が具体的に組み入れられない限り、個々の各刊行物または特許が参照によって組み入れられるように具体的かつ個々に指示されるかのように、全体として参照によって本明細書に組み入れられる。
【0108】
群の少なくとも2つのメンバー間の「または(or)」または「および/または(and/or)」を含む主張または記述は、背反する指示がない限り、または文脈から別途明らかではない限り、群のメンバーのうち1つ、2つ以上、またはすべてが所与の生成物または方法に存在するか、それに使用されるか、または他のやり方でそれに関連する場合に、満たされるものと見なされる。本開示は、群のうちちょうど1つのメンバーが所与の生成物または方法に存在するか、それに使用されるか、または他のやり方でそれに関連する実施形態を含む。本開示は、群のメンバーのうち2つ以上またはすべてが所与の生成物または方法に存在するか、それに使用されるか、または他のやり方でそれに関連する実施形態を含む。
【0109】
さらに、本開示は、列挙される請求項のうち少なくとも1項に由来する少なくとも1つの限定、要素、文節、および記述語が別の請求項に導入されるすべての変形、組合せ、および順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基礎請求項に従属する任意の他の請求項に見られる少なくとも1つの限定を含むように修正されることがある。要素がリストとして例えばマーカッシュ群の形式で提示される場合、要素の各部分群も開示されるものとし、任意の(1つまたは複数の)要素が群から除外可能である。一般に、本開示または本開示の態様が特定の要素および/または特徴を含むものと称される場合、本開示または本開示の態様の実施形態が当該の要素および/もしくは特徴からなるかまたはそれから本質的になるということを理解すべきである。単純化する目的で、本明細書においては、それらの実施形態はその通りの言葉で具体的に記載されていない。範囲が示される場合は終点が含まれる。さらに、別途指示がない限り、または文脈および当業者の理解から別途明らかでない限り、範囲として表される値は、本開示の多様な実施形態において、記載される範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、文脈上別途明らかに指示がない限り、当該範囲の下限の単位の10分の1まで想定可能である。
【0110】
当業者は、ごく日常的な実験を使用して、本明細書に記載の開示の特定の実施形態の多くの均等物を認識するかまたは確認可能であるであろう。これらの均等物は以下の特許請求の範囲に包含されるように意図されている。
【0111】
実施例
以下の実施例は例示的であるように意図されており、本開示の範囲を限定するようには決して意図されていない。
【実施例1】
【0112】
マウス抗GBM糸球体腎炎モデル
化合物(IB)(PRN1008とも呼ばれる)の効能を、副腎皮質ステロイドデキサメタゾン(Dex)との比較で、マウス抗GBM糸球体腎炎モデルにおいて、図1に示す設計に従って試験した。簡潔に言えば、糸球体腎炎を誘発するために、マウスをヒツジIgG/FCAで予備感作した(試験-5日目)。5日後(試験0日目)、マウスは抗GBMヒツジIgGを投与された。様々な投与レジメンでの媒体、化合物(IB)、またはDexによる処置(化合物(IB):10mg/kg、20mg/kg、もしくは40mg/kg QDまたは20mg/kg BID;Dex:1mg/kg QD;媒体:QDまたはBID)が、試験-1日目、すなわち抗GBMヒツジIgGの注射の1日前に始まった。処置は試験10日目まで続き、処置は合計11日間であった。尿タンパク質分析を試験-6、-4、-1、1、3、6、8、および10日目に行った。試験10日目の後、マウス血清BUNレベルを腎機能の尺度として分析し、腎組織診断を行った。マウス抗GBM糸球体腎炎モデルにおいて、血清BUNレベル(図2)、重症蛋白尿(図3)、および腎重量増加(腎炎症の代替指標)(図5)の用量依存的阻害が観察された。さらに、化合物(IB)での処置により試験中の蛋白尿が減少し(図4)、化合物(IB)により腎病態が減少し(図6)、Dexに比べて好ましい結果が得られた。
【実施例2】
【0113】
BioMAP Diversity PLUSパネル
BioMAP Diversity Plusパネル(図7)は、薬学的に有効な薬剤の広範な表現型プロファイルを示す。このパネルは、複数の組織および疾患状態に対する薬物効果を予測的にモデリングするための12の個々のBioMAPヒト初代細胞ベース共培養系を使用することで、148の臨床的に関連するバイオマーカー読取値を与える。BioMAPプロファイルにより例示されるPRN1008のいくつかの主要活性(図8)としては抗増殖活性、炎症関連活性、免疫調節活性、組織リモデリング活性、止血関連活性、およびLDLR減少が挙げられる。LDLR遺伝子は、血中でコレステロールを運ぶ低密度リポタンパク質に結合する低密度リポタンパク質受容体に関連している。内皮細胞、T細胞、B細胞、冠動脈平滑筋細胞、および線維芽細胞に関する抗増殖活性を灰色の矢印で示す。MCP-1、sTNFα、エオタキシン-3、ICAM-1、IL-1α、およびIL-8の減少ならびにsPGE2の増加はPRN1008の炎症関連活性に関連している。CD38、sIgG、sIL-17A、sIL-2、sIL-6、およびM-CSFの減少ならびにCD69の増加はPRN1008の免疫調節活性に関連している。MMP-9、uPA、およびPAI-Iの減少はPRN1008の組織リモデリング活性に関連している。トロンボモジュリン(TM)の減少および組織因子(TF)の調節はPRN1008の止血関連活性に関連している。したがって、PRN1008のBioMAP Diversity Plusパネルデータはその抗炎症機構およびサイトカイン阻害機構を裏付けるものである。
【実施例3】
【0114】
好中球遊走試験
癒着後補強の後に、好中球は、遊出前に血管壁の血管側に対するMac-1(インテグリンの1つ)依存性遊走活性を示す(Herter and Zarbock 2013)。以前の研究は、この段階が好中球動員の成功に重要であることを強調した(Phillipson et al.2006)。白血球動員カスケードのこの段階に対するBtk阻害の効果を調査するために、インビボでのfMLP(N-ホルミルメチオニン-ロイシル-フェニルアラニン)媒介停止後の腔内クローリングを調査した。
【0115】
生体内顕微鏡観察を使用して、好中球の血管内クローリングを以前に記載のように調査した(Phillipson et al.2006)。簡潔に言えば、Alexa Fluor 488(Molecular Probes、米国オレゴン州ユージーン)で標識された抗Gr-1抗体(クローンRB6-8C5)を、実験前にカニューレ挿入済み頸動脈を通じて注射した。準備および体外露出の後、精巣挙筋をfMLP(10μM)で灌流し、経時的顕微鏡観察を2時間行った。接着細胞の数を確定した。
【0116】
化合物(IA)で処置された動物において、好中球の遊走活性が、クローリングした停止細胞に関して、媒体対照に比べて著しく減少した(図9A)。また、化合物(IA)は、無菌性肝損傷後に好中球動員を消失させることがわかった(図9B)。図9Bは、スピニングディスク経時的顕微鏡観察を使用して得られた熱傷4時間後の壊死区域(ヨウ化プロピジウム、赤色)への好中球(eGFP、緑色)動員の代表的顕微鏡写真を示す。
【0117】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
【国際調査報告】