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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】治療薬を送達する装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20230524BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20230524BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M5/142
A61M5/172
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563414
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021028342
(87)【国際公開番号】W WO2021216669
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/013,082
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031830
【氏名又は名称】ジャイン, ディーパク
(71)【出願人】
【識別番号】519031841
【氏名又は名称】ベルトラム, ティモシー エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン, ディーパク
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム, ティモシー エー.
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066EE11
4C066FF04
4C066QQ24
4C066QQ31
4C066QQ72
4C066QQ74
4C066QQ80
4C066QQ92
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、特に、位置安定性を維持しながら、例えば定量注入機能を使用して患者内の標的部位に医薬流体製剤を血管外送達する装置、方法、及びシステムである。例示的な装置は、流体の非連続的な流れ又はボーラスを標的部位に送達するように構成することができる。或る特定の実施形態において、注入装置は、トロカールが注入装置に安定的な送達機構を提供するように、自身のシャフト上に1つ以上の安定化機構を有するように構成されている例示的なトロカールと係合することができる。トロカールは、注入装置に取り付けられる注射針を中に受け入れるように構成されており、注入装置は、中を通じて流体を標的組織部位に送達することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエーター、流体受入れ部、及び流体送達機構を有する本体と、
前記本体から遠位に延びる取外し可能な注射針と、
を備え、
前記流体送達機構は、前記注射針を通じて前記流体のボーラス又は連続的な流れを送達するように構成されている、医薬流体製剤送達装置。
【請求項2】
前記流体送達機構は、中央処理装置及びポンプを有する電気機械システムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置の配置及び前記流体の送達の間に、前記注射針に平行に近位及び遠位に平行移動するように構成されたバルブを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記バルブは、遠位及び近位に約2cm平行移動するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記流体受入れ部は、流体リザーバーを取外し可能かつ交換可能に受け入れるように構成されており、前記流体リザーバーは、既知の投与量の流体を含む少なくとも1つのカートリッジを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記流体受入れ部は、複数のカートリッジを同時に受け入れるように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記流体は、腎臓病の治療のための治療用細胞又はその生成物を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置の動作を制御するように構成されたタッチディスプレイを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ディスプレイは、圧力及び体積のうちの少なくとも一方を含む、前記流体の送達に関する1つ以上のパラメーターを設定するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ディスプレイは、送達中に前記流体のリアルタイムの吐出情報を提供するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記アクチュエーターは、トリガー、プランジャー、スイッチ、又はボタンのうちの1つである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
トロカールと取外し可能に係合するように構成された、前記本体の遠位端部における係合機構を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
近位端部及び遠位端部を有する細長い本体であって、その前記近位端部におけるヘッドと、前記ヘッドから遠位に延びる細長いシャフトと、前記近位端部から中を貫いて前記遠位端部まで延びる内腔とを有する、細長い本体と、
組織表面に対して前記細長い本体の前記遠位端部を安定化させるように構成されている、前記細長いシャフトの遠位部分における安定化手段と、
を備える、トロカール。
【請求項14】
前記安定化手段は、作動時に前記組織表面を解放可能に把持するために展開するように構成された1つ以上の係合構成要素を含む、請求項13に記載のトロカール。
【請求項15】
前記係合構成要素は複数の足部を含む、請求項14に記載のトロカール。
【請求項16】
前記足部がマイクロフックを有する、請求項16に記載のトロカール。
【請求項17】
前記係合構成要素が、接着要素、吸引要素、及び挟持要素のうち少なくとも1つを含む、請求項14に記載のトロカール。
【請求項18】
前記細長い本体の前記内腔を通って延びるように構成された取外し可能なスタイレットを更に備え、前記スタイレットが、取外し時に前記係合構成要素を作動させるように構成されている、請求項14に記載のトロカール。
【請求項19】
前記細長いシャフトの少なくとも一部が、前記細長いシャフトの長手方向軸線に平行に遠位及び近位に平行移動するように構成されている、請求項13に記載のトロカール。
【請求項20】
前記細長いシャフトの前記少なくとも一部が、遠位及び近位に約2cm平行移動するように構成されている、請求項19に記載のトロカール。
【請求項21】
組織に医薬流体製剤を送達する方法であって、
注入装置をトロカールに取り付けることであって、前記トロカールが、中を貫く内腔と、中に配置されるスタイレットとを有することと、
前記注入装置に流体源を接続することと、
前記注入装置及びトロカールを患者の外側組織表面を通して前進させ、内側組織標的部位を貫通させることと、
前記トロカールから前記スタイレットを取り外し、前記注入装置と前記トロカールとの係合を解除することと、
前記注入装置に注射針を取り付けることと、
前記トロカールを通じて前記注射針を前記組織標的部位に挿入することと、
前記注入装置を作動させて、前記流体源から前記注射針を通じて前記組織標的部位に流体の連続的な流れ又はボーラスを送達することと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記トロカールを通じて前記注射針を挿入する前に、前記トロカールの遠位部分における安定化手段を展開して、前記組織標的部位に対して前記トロカールの前記遠位端部を安定化させることを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記安定化手段の展開が、前記スタイレットの取外しによって作動する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記流体の送達中に前記注射針を引き込むことを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記注入装置の作動中に、平行移動バルブを使用して前記注入装置を安定化させ、前記トロカールの圧縮ばね部を使用して前記トロカールを安定化させることを更に含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、化合物、組成物、細胞、又はエキソソーム等の細胞産物等の治療薬を送達する装置、方法、及びシステムに関する。非限定的な例では、本明細書において提供される装置は、定量注入機能を有し、位置安定性を維持しながら患者内の標的位置に薬剤を血管外送達するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
細胞治療とは、様々な異なる疾患を治療するために、細胞材料を患者に注入して治療効果を得る治療法であり、特に患者の体内の特定の臓器を標的として行われる。或る種の細胞治療では、細胞材料を患者から抽出し、治療効果が得られるように処理し、治療部位又は送達部位において患者に再注入することができる。或る特定のケースでは、細胞の送達を成功させるためには、注入される細胞も、一般には損傷のない生きた細胞でなければならない。細胞治療の送達は、血管内送達又は血管外送達等、いくつかの異なる方法で達成することができる。血管内送達は、血管から注入される細胞治療薬を伴う。この方法で或る特定の臓器を治療対象とすることは、様々な方法で可能である。しかしながら、効率が低いことがあり、患者の体が自然に行うフラッシングのために、臓器(複数の場合もある)に供給された治療用細胞材料の滞留時間が短くなることがある。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において提供されるのは、特に、化合物、組成物、細胞、及び細胞産物等の治療薬を送達する装置、方法、及びシステムである。或る特定の実施の形態において、本明細書において提供される装置及びシステムは、細胞治療薬の投与を行うように構成されている。或る特定の実施の形態において、本明細書において提供される装置及びシステムは、定量注入機能を含む。或る特定の実施の形態において、本明細書において提供される装置及びシステムは、位置安定性を維持しながら、臓器の内部等の患者内の標的位置に治療薬を血管外から送達するように構成されている。例えば、例示的な1つの実施の形態において、アクチュエーター、中に流体を有する流体リザーバー、及び流体送達機構を有する本体を備える、細胞治療薬送達装置が提供される。或る特定の実施の形態において、着脱可能な注射針が本体から遠位に延びており、流体送達機構は、注射針を通じて流体の連続した流れ又はボーラスを送達するように構成されている。或る特定の実施の形態において、臓器は腎臓である。或る特定の実施の形態において、患者は癌を有し、臓器は腫瘍を含む。
【0004】
本装置は、多数のバリエーションを有することができる。或る特定の実施の形態において、流体送達機構は、中央処理装置及びポンプを有する電気機械システムを含むことができる。或る特定の実施の形態において、本装置は、装置の配置及び流体の送達の間、注射針に平行に近位及び遠位に平行移動するように構成されたバルブを備えることもできる。或る特定の実施の形態において、バルブは、遠位及び近位に約2cm平行移動するように構成することができる。或る特定の実施の形態において、本装置は、流体リザーバーを取外し可能かつ交換可能に受け入れるように構成された流体受入れ部を備えることができる。或る特定の実施の形態において、流体リザーバーは、既知の投与量の流体を含む少なくとも1つのカートリッジを含むことができる。或る特定の実施の形態において、流体受入れ部は、1つ以上(例えば1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ)のカートリッジを無菌的に受け入れるように構成することができる。或る特定の実施の形態において、流体受入れ部は、複数のカートリッジを連続的に受け入れるように構成することができる(例えば、1つのカートリッジの内容物が使用され、カートリッジが取り出されると、必要に応じて1つ以上の追加のカートリッジが挿入されて投与を継続する)。或る特定の実施の形態において、流体受入れ部は、複数のカートリッジを同時に受け入れるように構成することができる。或る特定の実施の形態において、流体は、腎臓病の治療のための治療用細胞又は細胞産物を含むことができる。或る特定の実施の形態において、流体は、癌の治療のための抗癌剤を含むことができる。或る特定の実施の形態において、本装置は、装置の動作を制御するように構成することができるタッチディスプレイを備えることができる。或る特定の実施の形態において、ディスプレイは、圧力及び体積のうちの少なくとも一方を含む、流体を送達するための1つ以上のパラメーターを設定するように構成することができる。或る特定の実施の形態において、ディスプレイは、送達中に流体のリアルタイムの吐出情報を提供するように構成することができる。或る特定の実施の形態において、アクチュエーターは、トリガー、プランジャー、スイッチ、又はボタンのうちの1つであることができる。或る特定の実施の形態において、本装置は、トロカールと取外し可能に係合するように構成された、本体の遠位端部における係合機構を備えることもできる。
【0005】
一態様において、近位端部及び遠位端部を有する細長い本体を備えるトロカールが提供される。或る特定の実施の形態において、本体は、その近位端部におけるヘッドと、ヘッドから遠位に延びる細長いシャフトと、近位端部から中を貫いて遠位端部まで延びる内腔とを有する。或る特定の実施の形態において、細長いシャフトの遠位部分に安定化手段が設けられており、組織表面に対して細長い本体の遠位端部を安定化させるように構成されている。
【0006】
トロカールは、多数のバリエーションを有することができる。或る特定の実施の形態において、安定化手段は、作動時に組織表面を解放可能に把持するために展開するように構成された1つ以上の係合構成要素を含むことができる。或る特定の実施の形態において、係合構成要素は、複数の足部を含むことができる。或る特定の実施の形態において、足部は、マイクロフックを有することができる。或る特定の実施の形態において、係合構成要素は、接着構成要素、吸引構成要素、及び挟持構成要素のうちの少なくとも1つを含むことができる。或る特定の実施の形態において、トロカールは、細長い本体の内腔を通って延びるように構成された取外し可能なスタイレットを含むことができる。或る特定の実施の形態において、スタイレットは、取外し時に係合構成要素を作動させるように構成されている。或る特定の実施の形態において、細長いシャフトの少なくとも一部は、細長いシャフトの長手方向軸線に平行に遠位及び近位に平行移動するように構成することができる。或る特定の実施の形態において、細長いシャフトの少なくとも一部は、遠位及び近位に約2cm平行移動するように構成することができる。
【0007】
一態様において、トロカールに注入装置を取り付けることを含む、組織に医薬流体製剤(pharmaceutical fluid formulation)を送達する方法が提供される。或る特定の実施の形態において、トロカールは、中を貫く内腔と、中に配置されるスタイレットとを有する。或る特定の実施の形態において、本方法はまた、流体源を注入装置に接続することと、注入装置及びトロカールを患者の外側組織表面を通して前進させ、内側組織標的部位を貫通させることとを含む。或る特定の実施の形態において、本方法は、トロカールからスタイレットを取り外し、注入装置とトロカールとの係合を解除することと、注入装置に注射針を取り付けることとを更に含む。或る特定の実施の形態において、本方法はまた、トロカールを通じて組織標的部位に注射針を挿入することと、注入装置を作動させて、流体源から注射針を通じて流体の連続的な流れ又はボーラスを組織標的部位に送達することとを含む。或る特定の実施の形態において、医薬流体製剤は、細胞の集団又はその生成物と、流体の薬学的に許容される担体とを含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる。或る特定の実施の形態において、細胞治療薬は、幹細胞、前駆細胞、一次細胞、又は細胞株を含む。或る特定の実施の形態において、組織標的部位は腎臓である。或る特定の実施の形態において、患者は、腎臓病を有する。或る特定の実施の形態において、腎臓病は、慢性腎臓病である。或る特定の実施の形態において、細胞治療薬は、生物活性腎細胞を含む。或る特定の実施の形態において、細胞治療薬は、選択された腎細胞を含む。或る特定の実施の形態において、細胞治療薬は、細胞及び温度感受性生体材料を含む液体製剤を含む。或る特定の実施の形態において、細胞治療薬は、Neo-Kidney Augment(NKA)である。或る特定の実施の形態において、細胞は、スフェロイド又は細胞クラスターの形態である。或る特定の実施の形態において、医薬流体製剤は、ベシクル、例えば、マイクロベシクル又はエキソソーム等の細胞産物を含む。或る特定の実施の形態において、医薬流体製剤は、化合物を含む。或る特定の実施の形態において、医薬流体製剤は、抗癌剤を含む。或る特定の実施の形態において、患者は、癌を有する。或る特定の実施の形態において、組織標的部位は、腫瘍である。
【0008】
本方法は、多数の方法で変化することができる。例えば、本方法は、トロカールを通じて注射針を挿入する前に、トロカールの遠位部分における安定化手段を展開して、トロカールの遠位端部を組織標的部位に対して安定化させることを更に含むことができる。或る特定の実施の形態において、安定化手段の展開は、スタイレットの取外しによって作動させることができる。或る特定の実施の形態において、本方法は、流体(例えばその連続的な流れ又はボーラス)の送達中に注射針を引き込むことを含むこともできる。或る特定の実施の形態において、本方法は、注入装置の作動中に、平行移動バルブを使用して注入装置を安定化させることと、トロカールの圧縮ばね部を使用してトロカールを安定化させることとを更に含むことができる。
【0009】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読み進めることにより、本発明は更に完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】腹臥姿勢の患者の図である。
図2】側臥姿勢の患者の図である。
図3】対象を治療する目的で市販の装置を使用するための例示的なプロセスを詳述した図である。
図4A図3のプロセスに従って患者に治療を提供するための市販の装置の使用の一実施形態を示す図である。
図4B図3のプロセスに従って患者に治療を提供するための市販の装置の実施形態を示す図である。
図4C図3のプロセスに従って患者に治療を提供するための市販の装置の実施形態を示す図である。
図5】トロカールの1つの実施形態の側面図である。
図6】カニューレの1つの実施形態の側面図である。
図7】スタイレットが中に挿入されたトロカールを取り付けた状態の注入装置の1つの実施形態の側面図である。
図8】ボーラス流体送達プロファイルの簡略化した図である。
図9】連続的な流体送達プロファイルの簡略化した図である。
図10】カートリッジの1つの実施形態を示す図である。
図11図7のトロカールの側面図を示す図である。
図12図7のトロカールが展開された状態の側面図である。
図13】トロカールの一実施形態が挿入された状態の側面図である。
図14図13のトロカールが展開された状態の側面図である。
図15図13のトロカールが展開された状態の側面図である。
図16A】乾式壁アンカーの1つの実施形態が展開される様子の側面図である。
図16B図16Aの乾式壁アンカーが展開される様子の側面図である。
図16C図16Bの乾式壁アンカーが展開される様子の側面図である。
図16D図16Cの乾式壁アンカーが展開される様子の側面図である。
図17】表面形状部を有する針の1つの実施形態の遠位部の図である。
図18A】スタイレットの1つの実施形態の遠位先端部の図である。
図18B】スタイレットの別の実施形態の遠位先端部の図である。
図18C】スタイレットの別の実施形態の遠位先端部の図である。
図18D】スタイレットの別の実施形態の遠位先端部の図である。
図19】注射針の1つの実施形態の簡略図である。
図20】腎被膜の切断側面図である。
図21】最適な針のサイズを見つけるための対処図である。
図22】注射針の遠位端部及び定規を示す図である。
図23図22の注射針の遠位端部及び定規を、遠位端部の穴の配置を強調して示す図である。
図24】より良好にコントロールできるように小型注射器を保持する例示的な方法を示す図である。
図25】腎臓における図7のトロカールの配置に関する簡略化した断面図を示す図である。
図26図25の腎臓における図7のトロカールの配置に関する簡略化した断面図を示す図である。
図27A】治療薬の複数のボーラスを腎臓に送達する一実施形態を示す図である。
図27B】治療薬の複数のボーラスを腎臓に送達する一実施形態を示す図である。
図27C】治療薬の複数のボーラスを腎臓に送達する一実施形態を示す図である。
図27D】治療薬の複数のボーラスを腎臓に送達する一実施形態を示す図である。
図27E】治療薬の複数のボーラスを腎臓に送達する一実施形態を示す図である。
図27F】治療薬の複数のボーラスを腎臓に送達する一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記で言及した図面は、必ずしも正しい縮尺ではなく、本開示の基本原理を例示する様々な好ましい特徴をいくらか簡略化した表現として提示していることを理解されたい。例えば、特定の寸法、方向、位置、及び形状を含む、本開示の特定の設計上の特徴は、特定の意図された用途及び使用環境によって部分的に決定される。
【0012】
以下では、本開示の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。当業者には、記載されている実施形態が、全て本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な異なる方法で修正され得ることが認識されるであろう。さらには、本明細書の全体を通じて、類似する参照数字は、類似する要素を指す。
【0013】
本明細書において使用されている用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定するようには意図されてない。本明細書で使用されているとき、数量を特定しないもの(the singular forms "a," "an," and "the")は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数形も含むように意図されている。本明細書で使用されるとき、「含む」及び/又は「備える」という用語は、記載されている特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素が存在することを指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。本明細書で使用されるとき、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意の組合せ及び全ての組合せを含む。「結合された」、「係合した」等の連結用語は、構成要素が互いに直接接続されているか、又は1つ以上の中間構成要素を介して間接的に接続されている、2つの構成要素間の物理的関係を示している。
【0014】
本明細書で使用される「患者」という用語又は他の類似する用語は、本明細書に開示されている治療を実施することのできる任意の対象(ヒト又は動物)を含むことを理解されたい。本明細書で使用される「ユーザー」という用語は、装置とインタラクトするか又は装置を制御することができる任意の実体を包含する。「ユーザー」は「患者」であってもよく、又は「ユーザー」と「患者」とが、本明細書に記載されるように、別個の実体であってもよい。或る特定の実施形態において、対象は、生きている動物である。或る特定の実施形態において、対象は、犬、猫、馬、ウサギ、動物園の動物、牛、豚、羊、ヤギ、ラクダ、マウス、ラット、又はモルモット等の哺乳動物である。或る特定の実施形態において、対象は、ヒト、チンパンジー、オランウータン、サル、又はヒヒ等の霊長類である。或る特定の実施形態において、対象は、ヒトである。或る特定の実施形態において、対象は、腎臓病の1つ以上の兆候、症状、又は他の指標を経験している、又は経験した、治療の対象となる患者である。そのような対象には、新たに診断された対象、又は以前に診断され、現在、再発若しくは再燃している対象、又は原因に関係なく腎臓病のリスクを有する対象が、限定されることなく含まれる。或る特定の実施形態において、対象は、腎臓病に関して以前に治療を受けたことがあってもよく、又はそのような治療を受けたことがなくてもよい。或る特定の実施形態において、対象は、糖尿病を有する。或る特定の実施形態において、対象は、I型糖尿病を有する。或る特定の実施形態において、対象は、II型糖尿病を有する。或る特定の実施形態において、対象は、慢性腎臓病を有する。或る特定の実施形態において、対象は、腎臓及び/又は尿路の先天性異常を有する。或る特定の実施形態において、対象は、腎臓及び尿路の先天性異常を有するヒトである。或る特定の実施形態において、対象は、腎臓病、貧血、又はエリスロポエチン(EPO)欠乏症等の臓器関連疾患の1つ以上の兆候、症状、又は他の指標を経験している、又は経験したことがある。或る特定の実施形態において、対象は、糖尿病を有しない。或る特定の実施形態において、対象は、I型糖尿病を有しない。或る特定の実施形態において、対象は、II型糖尿病を有しない。或る特定の実施形態において、対象は、腎臓病を有しない。或る特定の実施形態において、対象は、癌を有する。或る特定の実施形態において、癌は、固形腫瘍を含む。
【0015】
一態様において、本明細書において提供される装置、システム、及び方法は、患者に抗癌剤又は化学療法薬を投与するのに有用である。或る特定の実施形態において、抗癌剤を投与することは、対象の内部組織部位又は器官に抗癌剤又は化学療法薬を供給することを含む。或る特定の実施形態において、患者は、固形腫瘍を有する。或る特定の実施形態において、固形腫瘍は、臓器内部である、臓器上である、臓器に侵入している、又は臓器の一部である。或る特定の実施形態において、内部組織部位又は臓器は、腎臓、肺、心臓、脾臓、胃、膵臓、膀胱、脳、小腸、結腸、直腸、虫垂、卵巣、子宮、食道、肝臓、胆嚢、甲状腺、副甲状腺、副腎、乳房、リンパ節、筋肉、脊髄、精巣、前立腺、咽頭、喉頭、骨、又は気管である。或る特定の実施形態において、対象は、癌を有する。或る特定の実施形態において、癌は、黒色腫(例えば、臓器等の内部部位に転移した転移性黒色腫)、神経内分泌腫瘍、癌腫、又は肉腫である。或る特定の実施形態において、患者は、肉腫、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、子宮頸癌、結腸癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、腎臓癌、骨髄腫、甲状腺癌、白血病、前立腺癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ、エストロゲン受容体(ER)陽性、ER陰性、化学療法耐性、ハーセプチン耐性、HER2陽性、ドキソルビシン耐性、タモキシフェン耐性、乳管癌、小葉癌、原発性乳癌、又は転移性乳癌)、卵巣癌、膵臓癌、肝臓癌(例えば肝細胞癌)、肺癌(例えば非小細胞肺癌、扁平上皮肺癌、腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、カルチノイド、又は肉腫)、多形膠芽腫、神経膠腫、黒色腫、前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、膠芽腫、卵巣癌、肺癌、扁平上皮癌(例えば頭、首、又は食道)、又は大腸癌を有する。或る特定の実施形態において、対象は、甲状腺、内分泌系、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、食道、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、肉腫、胃、及び子宮の癌、髄芽腫、神経芽腫、神経膠腫、多形膠芽腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、原発性血小板減少症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、尿路膀胱癌、精巣癌、甲状腺癌、食道癌、泌尿器癌、悪性高カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌、甲状腺髄様癌、髄様甲状腺癌、転移性黒色腫(例えば臓器等の内部部位に転移した黒色腫)、大腸癌、甲状腺乳頭癌、肝細胞癌、乳頭パジェット病、葉状腫瘍、小葉癌、管状癌、膵臓星状細胞の癌、肝星状細胞の癌、又は前立腺癌を有する。「肉腫」という用語は、一般に、胚性結合組織のような物質から構成される腫瘍であって、一般に、線維性又は均質な物質に埋め込まれた密な細胞から構成される腫瘍を指す。本明細書において提供される装置、システム、又は方法を使用して治療され得る肉腫としては、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アバネシー肉腫(Abemethy's sarcoma)、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、胞巣状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫、絨毛癌腫、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽細胞性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉肉腫、傍骨性骨肉腫、網状肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、又は毛細血管拡張性肉腫が挙げられる。「黒色腫」という用語は、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から発生する腫瘍を意味する。本明細書において提供される装置、システム、又は方法を使用して治療され得る黒色腫としては、例えば、肢端黒子型黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング-パッシー黒色腫(Harding-Passey melanoma)、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、又は表在拡大型黒色腫が挙げられる。或る特定の実施形態において、黒色腫は、患者の内部部位(臓器又はリンパ節等)に転移した転移性黒色腫である。「癌腫」という用語は、周辺組織に浸潤して転移を生じさせる傾向のある上皮細胞からなる悪性新生物を指す。本明細書において提供される装置、システム、又は方法を使用して治療され得る例示的な癌腫としては、例えば、甲状腺髄様癌腫、家族性甲状腺髄様癌腫、腺房癌腫、房状癌腫、腺嚢癌腫、腺様嚢胞癌腫、腺腫様癌腫(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質の癌腫、肺胞癌腫、肺胞上皮癌腫、基底細胞癌腫、基底細胞癌腫(carcinoma basocellulare)、類基底細胞癌腫、基底扁平細胞癌腫(basosquamous cell carcinoma)、気管支肺胞上皮癌腫、細気管支癌腫、気管支原性癌腫、大脳様癌腫(cerebriform carcinoma)、胆管細胞癌腫、絨毛癌腫、粘液癌腫、面皰癌腫、子宮体癌腫、篩状癌腫、鎧状癌腫(carcinoma en cuirasse)、皮膚癌腫、円柱状癌腫(cylindrical carcinoma)、円柱細胞癌腫、管癌腫、腺管癌腫、癌腫デューラム(carcinoma durum)、胎児性癌腫、脳様癌腫、類表皮癌腫、腺様上皮癌腫(carcinoma epitheliale adenoides)、外向発育癌腫、潰瘍性癌腫、線維癌腫、膠様癌腫(gelatiniforni carcinoma)、コロイド腺癌腫、巨細胞癌腫、巨細胞癌腫(carcinoma gigantocellulare)、腺癌腫、顆粒膜細胞癌腫、毛母癌腫、血様癌腫(hematoid carcinoma)、肝細胞癌腫、ヒュルトレ細胞癌腫、硝子様癌腫(hyaline carcinoma)、副腎様癌腫(hypernephroid carcinoma)、小児胎児性癌腫、上皮内癌腫(carcinoma in situ)、表皮内癌腫、上皮内癌腫(intraepithelial carcinoma)、クロムペッヘル(Krompecher)癌腫、クルチツキー(Kulchitzky)細胞癌腫、大細胞癌腫、レンズ状癌腫、レンズ状癌腫(carcinoma lenticulare)、脂肪腫様癌腫、小葉癌腫、リンパ上皮癌腫、髄様癌腫、髄様癌腫(medullary carcinoma)、黒色癌腫、モレ(molle)癌腫、粘液癌腫(mucinous carcinoma)、粘液分泌癌腫、粘液細胞癌腫(carcinoma mucocellulare)、粘表皮癌腫、粘液癌腫(carcinoma mucosum)、粘液性癌腫、粘液腫様癌腫、鼻咽頭癌腫、燕麦細胞癌腫、骨化性癌腫、類骨癌腫(osteoid carcinoma)、乳頭癌腫、門脈周囲癌腫、前浸潤癌腫、有棘細胞癌腫、髄質様癌腫(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞癌腫、予備細胞癌腫、肉腫様癌腫(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダー癌腫、硬性癌腫、陰嚢癌腫、印環細胞癌腫、単純癌腫、小細胞癌腫、ソラノイド癌腫(solanoid carcinoma)、スフェロイド細胞癌腫、紡錘細胞癌腫、海綿様癌腫、扁平上皮癌腫、有刺細胞癌腫、ストリング癌腫(string carcinoma)、毛細管拡張性癌腫、毛細血管拡張症様癌腫、移行上皮癌腫、結節癌腫、管状癌腫、結節性癌腫、疣状癌腫、又は絨毛癌腫が挙げられる。
【0016】
「抗癌剤」は、癌の治療又は予防に使用される治療薬である。或る特定の実施形態において、抗癌剤は、高分子(例えば、少なくとも2000ダルトンの分子量を有するタンパク質又は他の有機化合物)又は低分子(例えば、2000ダルトン未満の分子量を有する有機化合物)であることができる。例示的な抗癌剤としては、抗体、低分子、及び高分子、又はそれらの組合せが挙げられる。或る特定の実施形態において、抗癌剤は、免疫細胞等の細胞を含む。或る特定の実施形態において、免疫細胞は、腫瘍細胞を攻撃するか又は腫瘍細胞に対する免疫応答を促進するように(例えば遺伝学的に、及び/又は腫瘍抗原への曝露を介して)改変されている。或る特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞(CD4 T細胞、CD8 T細胞又はそれらの組合せ等)又は樹状細胞(形質細胞性樹状細胞等)である。或る特定の実施形態において、免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞のように、遺伝子的に改変されている。或る特定の実施形態において、抗癌剤は、細胞の成長又は増殖を阻害する。或る特定の実施形態において、抗癌剤は、化学療法剤である。或る特定の実施形態において、抗癌剤は、癌を治療する方法において有用性を有する本明細書において識別されている薬剤である。或る特定の実施形態において、抗癌剤は、癌を治療するために、米国食品医薬品局(FDA)又は米国以外の国の類似の規制機関によって承認された薬剤である。抗癌剤の例としては、以下に限定されないが、MEK(例えば、MEK1、MEK2、又はMEK1及びMEK2)阻害剤(例えば、XL518、CI-1040、PD035901、セルメチニブ/AZD6244、GSK1120212/トラメチニブ、GDC-0973、ARRY-162、ARRY-300、AZD8330、PD0325901、U0126、PD98059、TAK-733、PD318088、AS703026、BAY869766)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレア、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロロエタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メイファラン)、エチレンイミン及びメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホン酸塩(例えばブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン)、トリアゼン(デカルバジン))、代謝拮抗薬(例えば、5-アザチオプリン、ロイコボリン、カペシタビン、フルダラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、ラルティトレキセド、葉酸アナログ(例えばメトトレキサート)、又はピリミジンアナログ(例えば、フルオロウラシル、フロクスリジン、シタラビン)、プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)等)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル、ドセタキセル等)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポサイド(VP16)、リン酸エトポシド、テニポシド等)、抗腫瘍性抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン等)、白金系化合物又は白金含有剤(例えば、シスプラチン、オキサロプラチン、カルボプラチン)、アントラセンジオン(例えばミトキサントロン)、置換尿素(例えばヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えばプロカルバジン)、副腎皮質抑制剤(例えばミトタン、アミノグルテチミド)、エピポドフィロトキシン(例えばエトポシド)、抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン)、酵素(例えばL-アスパラギナーゼ)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼシグナル伝達の阻害剤(例えば、U0126、PD98059、PD184352、PD0325901、ARRY-142886、SB239063、SP600125、BAY 43-9006、ワートマニン、又はLY294002、Syk阻害剤、mTOR阻害剤、抗体(例えばリツキサン)、ゴシポール、ゲナセンス、ポリフェノールE、クロロフシン(Chlorofusin)、オールトランスレチノイン酸(ATRA)、ブリオスタチン、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、5-アザ-2’-デオキシシチジン、オールトランスレチノイン酸、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、ゲルダナマイシン、17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、フラボピリドール、LY294002、ボルテゾミブ、トラスツズマブ、BAY 11-7082、PKC412、PD184352、20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3、5-エチニルウラシル、アビラテロン、アクラルビシン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、ALL-TKアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アミドックス、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラフォリド、血管新生阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリックス、抗背側化形態形成タンパク質-1(anti-dorsalizing morphogenetic protein- 1)、前立腺癌用の抗アンドロゲン、抗エストロゲン、抗ネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アフィジコリングリシネート、アポトーシス遺伝子モジュレーター、アポトーシス調節因子、アプリン酸、アラ-CDP-DL-PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスラクリン(asulacrine)、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、BCR/ABL拮抗剤、ベンゾクロリン、ベンゾイルスタウロスポリン、ベータラクタム誘導体、ベータアレチン、ベータクラマイシンB、ベツリン酸、bFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビサジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレフレート、ブロピリミン、ブドチタン、ブチオニンスルホキシミン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カンプトテシン誘導体、カナリポックス(canarypox)IL-2、カペシタビン、カルボキサミド-アミノトリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、CaRest M3、CARN700、軟骨由来阻害剤、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS)、カスタノスペルミン、セクロピンB、セトロレリックス、クロリン、クロロキンオキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シスポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クラムベスシジン816(crambescidin 816)、クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、クラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビンオクフォスフェート、細胞溶解因子、シトスタチン、ダクリキシマブ、デシタビン、デヒドロデムニンB、デスロレリン、デキサメタゾン、デキシフォスファミド、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、ジアジコン、ジデムニンB、ジドックス、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ-5-アザシチジン、9-ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エデルフォシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、エレメン、エミテフル、エピルビシン、エプリステリド、エストラムスチン類似体、エストロゲン作用薬、エストロゲン拮抗薬、エタニダゾール、リン酸エトポシド、エキセメスタン、ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フルアステロン、フルダラビン、フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin)塩酸塩、フォルフェニメックス、フォルメスタン、フォストリエシン、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イルモフォシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫賦活ペプチド、インスリン様成長因子-1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、ヨーベングアン、ヨードドソルビシン、4-イポメアノール、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリンNトリアセテート、ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病抑制因子、白血球αインターフェロン、リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン、リュープロレリン、レバミソール、リアロゾール、線状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リッソクリナミド7、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロニダミン、ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリライシン阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、メノガリル、メルバロン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトクロプラミド、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテフォシン、ミリモスティム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、マイトトキシン線維芽細胞成長因子-サポリン、ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロフィン、モノホスホリルリピドA+マイオバクテリア細胞壁sk、モピダモール、多重薬剤耐性遺伝子阻害剤、多重腫瘍抑制1ベースの治療剤、マスタード抗癌剤、ミカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミリアポロン、N-アセチルジナリン、N-置換ベンズアミド、ナファレリン、ナグレスチップ(nagrestip)、ナロキソン+ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素調節剤、窒素酸化物抗酸化剤、ニトルリン、06-ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導剤、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペグアスパルガーゼ、ペルデシン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾ-ル、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニール、塩酸ピロカルピン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲン活性化阻害剤、白金錯体、白金化合物、白金トリアミン複合体、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニゾン、プロピルビス-アクリドン、プロスタグランジンJ2、プロテアソーム阻害剤、プロテインA系免疫調節剤、プロテインキナーゼC阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類、プロテインチロシンホスファタ

ーゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、rafアンタゴニスト、ラルティトレキセド、ラモセトロン、rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ras阻害剤、ras-GAP阻害剤、レテリプチン脱メチル化、レニウムRe186エチドロネート、リゾキシン、リボザイム、RIIレチンアミド、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメクス、ルビギノンB1、ルボキシル、サフィンゴール、サイントピン、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチン、Sdi 1模倣体、セムスチン、老化誘導阻害剤1(senescence derived inhibitor 1)、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達モジュレーター、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフラン(sizofuran)、ソブゾキサン、ナトリウムボロカプテート、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォシン酸(sparfosic acid)、スピカマイシンD、スピロムスチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スティピアミド、ストロメリシン阻害剤、スルフィノシン、超活性血管活性腸ペプチド拮抗剤、スラディスタ(suradista)、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、チオコラリン、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣体、チマルファシン、チモポエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、二塩化チタノセン、トプセンチン、トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、ティルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、尿路性器副鼻腔由来成長抑制因子(urogenital sinus-derived growth inhibitory factor)、ウロキナーゼ受容体拮抗剤、バプレオチド、バリオリンB、赤血球遺伝子療法用のベクター系、ベラレゾール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、ビノレルビン、ビンキサルチン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチンスチマラマー、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール塩酸塩、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、ビサントレン塩酸塩、ビスナフィドジメシレート、ビゼルシン、ブレオマイシン硫酸塩、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシン塩酸塩、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジコン、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキサート、エフロルニチン塩酸塩、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、エピルビシン塩酸塩、エルブロゾール、エソルビシン塩酸塩、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、エトポシドリン酸塩、エトプリン、ファドロゾール塩酸塩、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、フルダラビンリン酸エステル、フルオロウラシル、フルオロシタビン、フォスキドン、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、ヒドロキシ尿素、イダルビシン塩酸塩、イホスファミド、イイモフォシン(iimofosine)、インターロイキンII(組換えインターロイキンII、又はrILを含む)、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-nl、インターフェロンアルファ-n3、インターフェロンベータ-la、インターフェロンガンマ-lb、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸リュープロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトレキサートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトマルシン、ミトマイシン、ミトスペル、ミトタン、ミトキサントロン塩酸塩、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、ペガスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペプロマイシン硫酸塩、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、ピロキサントロン塩酸塩、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルホサートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフール、テロキサントロン塩酸塩、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、ツブロゾール塩酸塩、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンロイロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、ゾルビシン塩酸塩、G2-M相で細胞を停止する薬剤及び/又は微小管の形成若しくは安定性を調節する薬剤(例えば、タキソール(登録商標)(すなわちパクリタキセル)、タキソテール(登録商標)、タキサン骨格を含む化合物、エルブロゾール(すなわちR-55104)、ドラスタチン10(すなわちDLS-10及びNSC-376128)、イセチオン酸ミボブリン(すなわちCI-980として)、ビンクリスチン、NSC-639829、ディスコデルモライド(すなわちNVP-XX-A-296として)、ABT-751(Abbott、すなわちE-7010)、アルトリルチン(Altorhyrtins)(例えばアルトリルチンA及びアルトリルチンC)、スポンジスタチン(例えばスポンジスタチン1、スポンジスタチン2、スポンジスタチン3、スポンジスタチン4、スポンジスタチン5、スポンジスタチン6、スポンジスタチン7、スポンジスタチン8、及びスポンジスタチン9)、セマドチン塩酸塩(すなわちLU-103793及びNSC-D-669356)、エポチロン(例えばエポチロンA、エポチロンB、エポチロンC(すなわちデスオキシエポチロンA又はdEpoA)、エポチロンD(すなわちKOS-862、dEpoB及びデスオキシエポチロンB)、エポチロンE、エポチロンF、エポチロンB N-オキシド、エポチロンA N-オキシド、16-アザ-エピシロンB、21-アミノエポチロンB(すなわちBMS-310705)、21-ヒドロキシエポチロンD(すなわちデスオキシエポチロンF及びdEpoF)、26-フルオロエポチロン、オーリスタチンPE(すなわちNSC-654663)、ソブリドチン(すなわちTZT-1027)、硫酸ビンクリスチン、クリプトフィシン52(すなわちLY-355703)、ビチレブアミド、ツブリシンA、カナデンソール、センタウレイジン(すなわちNSC-106969)、オンコシジンAl(すなわちBTO-956及びDF E)、フィジアノライドB、ローリマライド、ナルコシン(NSC-5366としても知られている)、ナスカピン、ヘミアステリン、バナドセンアセチルアセトナート、モンサトル(Monsatrol)、イナノシン(Inanocine)(すなわちNSC-698666)、エレウテロビン類(デスメチルエウテロビン、デサエチルエウテロビン、イソエウテロビンA、Z-エウテロビン等)、カリベオシド、カリベオリン、ハリコンドリンB、ジアゾナミドA、タッカロノリドA、ジオゾスタチン、(-)-フェニルアヒスチン(Phenylahistin)(すなわちNSCL-96F037)、ミオセベリンB、レスベラスタチンリン酸ナトリウム、ステロイド(例えばデキサメタゾン)、フィナステリド、アロマターゼ阻害剤、ゴセレリン又はリュープロリド等のゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)、副腎皮質ホルモン(例えばプレドニゾン)、プロゲスチン(例えばヒドロキシプロゲステロンカプロエート、メゲストロールアセテート、メドロキシプロゲステロンアセテート)、エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(例えばタモキシフェン)、アンドロゲン(例えばプロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン)、抗アンドロゲン(例えばフルタミド)、免疫賦活剤(例えばバシルスカルメットゲラン(BCG)、レバミソール、インターロイキン-2、α-インターフェロン等)、モノクローナル抗体(例えば抗CD20、抗FLER2、抗CD52、抗ULA-DR、抗VEGFモノクローナル抗体)、免疫毒素(例えば抗CD33モノクローナル抗体-カリケアマイシン結合体、抗CD22モノクローナル抗体-シュードモナスエキソトキシン結合体等)、放射線免疫療法(例えば抗CD20モノクローナル抗体とU1ln、90Y、又はmIとの結合体等)、トリプトリド、ホモハリントニン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、トポテカン、イトラコナゾール、ビンデシン、セリバスタチン、ビンクリスチン、デオキシアデノシン、セルトラリン、ピタバスタチン、イリノテカン、クロファジミン、5-ノニルオキシトリプタミン、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、EGFR阻害剤、上皮成長因子受容体(EGFR)標的治療又は治療(例えばゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、バンデタニブ(Caprelsa(登録商標))、アファチニブ/BIBW2992、CI-1033/カネルチニブ、ネラチニブ/HKI-272、CP-724714、TAK-285、AST-1306、ARRY334543、ARRY-380、AG-1478、ダコミチニブ/PF299804、OSI-420/デスメチルエルロチニブ、AZD8931、AEE788、ペリチニブ/EKB-569、CUDC-101、WZ8040、WZ4002、WZ3146、AG-490、XL647、PD153035、BMS-599626)、ソラフェニブ、イマチニブ、スニチニブ、ダサチニブ、ホルモン治療

剤等が挙げられる。
【0017】
「含む(including)」、「含む(containing)」、又は「~によって特徴付けられる」と同義の「備える(comprising)」という移行語は、包括的又は開放的であり、追加の記載されていない特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素を除外するものではない。対照的に、「からなる(consisting of)」という移行句は、指定されていない特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素を除外する。「本質的に~からなる」という移行句は、請求項の範囲を、指定された特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素、並びに請求された発明の「基本的かつ新規な特徴(複数の場合もある)に重大な影響を与えないもの」に限定する。
【0018】
本明細書において使用されるとき、数値又は範囲の文脈における「約」という用語は、文脈から更に限定された範囲が要求される場合を除き、記載又は請求された数値又は範囲の±10%を意味する。
【0019】
「周囲温度」という用語は、本開示の製剤が対象に投与される温度を指す。一般に、周囲温度は、温度制御された環境の温度である。周囲温度は、約18℃~約30℃の範囲である。或る特定の実施形態において、周囲温度は、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、又は約30℃である。
【0020】
「医薬流体製剤」は、患者に送達される(すなわち投与される)時点で液体である医薬組成物である。或る特定の実施形態において、医薬流体製剤は、化合物、細胞、又は細胞産物等の活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む。或る特定の実施形態において、薬学的に許容される担体は、温度感受性生体材料である。
【0021】
本明細書において提供される装置、システム、及び方法は、一般に、臓器(例えば実質臓器)等の組織部位に医薬流体製剤を送達するのに有用である。或る特定の実施形態において、組織部位は、腫瘍(例えば固形腫瘍又は硬性腫瘍)である。或る特定の実施形態において、組織部位は、癌細胞又は腫瘍を含む臓器である。或る特定の実施形態において、組織部位は、腫瘍細胞を含む。或る特定の実施形態において、組織部位は、腫瘍細胞を含むリンパ節である。しかしながら、或る特定の実施形態において、本主題は、腎臓病を有する患者の腎臓に生物活性腎細胞(生物活性腎細胞、例えば選択された腎細胞等)を送達するために特に有用である。
【0022】
本明細書で使用する「生物活性腎細胞」又は「BRC」という用語は、対象の腎臓に投与されたときに、次の特性、すなわち、慢性腎臓病又はその症状の悪化又は進行を軽減する(例えば遅らせる、又は止める)能力、腎機能を高める能力、腎臓の恒常性に影響(改善)する能力、腎臓組織又は腎臓の治癒、修復、及び/又は再生を促進する能力、のうちの1つ以上を有する腎細胞を意味する。或る特定の実施形態において、これらの細胞は、機能的な尿細管細胞(例えば、クレアチニン排泄及びタンパク質保持の改善に基づく)、糸球体細胞(例えば、タンパク質保持の改善に基づく)、血管細胞、及び皮髄境界部の他の細胞を含むことができる。或る特定の実施形態において、BRCは、腎臓組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。或る特定の実施形態において、BRCは、生物活性細胞を選択する方法を用いての腎臓組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。或る特定の実施形態において、BRCは、腎臓に対する再生効果を有する。或る特定の実施形態において、BRCは、選択された腎細胞(SRC)を含む、又は選択された腎細胞(SRC)から本質的になる、又は選択された腎細胞(SRC)からなる。或る特定の実施形態において、BRCはSRCである。
【0023】
或る特定の実施形態において、SRCは、適切な腎組織源からの腎細胞の単離及び増殖から得られる細胞であり、SRCは、出発腎細胞集団と比較して、1つ以上の細胞型の割合が多く、1つ以上の他の細胞型を欠くか又はその割合が低い。或る特定の実施形態において、SRCは、出発腎細胞集団と比較して、増加した割合のBRCを含む。或る特定の実施形態において、SRC集団は、腎臓病の治療において使用する、すなわち腎機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生を提供するために、特定の生物活性成分及び/又は細胞型については豊富に存在する、及び/又は、特定の不活性及び/又は望ましくない成分又は細胞型については欠乏している、単離された腎細胞集団である。SRCは、出発集団と比較して、優れた治療及び再生の結果を提供する。或る特定の実施形態において、SRCは、腎臓生検により患者の腎皮質組織から得られる。或る特定の実施形態において、SRCは、1つ以上のマーカーの発現に基づいて(例えば蛍光活性化細胞選別又は「FACS」によって)選択される。或る特定の実施形態において、SRCは、細胞型に関する1つ以上のマーカーの発現に基づいて、1つ以上の細胞型が枯渇している(例えば蛍光活性化細胞選別又は「FACS」による)。或る特定の実施形態において、SRCは、生物活性腎細胞の集団から選択される。或る特定の実施形態において、SRCは、増殖した腎細胞(expanded renal cells)の密度勾配分離によって選択される。或る特定の実施形態において、SRCは、密度境界、密度障壁、又は密度界面を超える遠心分離による、又は単一段階不連続段階勾配分離(single step discontinuous step gradient separation)による、増殖した腎細胞の分離によって選択される。或る特定の実施形態において、SRCは、低酸素条件下で培養された増殖した腎細胞の連続又は不連続の密度勾配分離によって選択される。或る特定の実施形態において、SRCは、少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間、又は24時間にわたり低酸素条件下で培養された増殖した腎細胞の密度勾配分離により選択される。或る特定の実施形態において、SRCは、低酸素条件下で培養された増殖した腎細胞の密度境界、密度障壁、又は密度界面を超える遠心分離による分離によって、選択される。或る特定の実施形態において、SRCは、少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間、又は24時間にわたり低酸素条件下で培養された増殖した腎細胞を、密度境界、密度障壁、又は密度界面を超えて遠心分離することによって、選択される(例えば単一段階不連続密度勾配分離)。或る特定の実施形態において、SRCは、主として腎尿細管細胞から構成される。或る特定の実施形態において、他の実質(例えば血管)細胞及び間質(例えば集合管)細胞がSRC中に存在することができる。或る特定の実施形態において、SRCの集団における細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が、血管細胞である。或る特定の実施形態において、SRCの集団における細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が、集合管細胞である。或る特定の実施形態において、SRCの集団における細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が、血管細胞又は集合管細胞である。
【0024】
「Neo Kidney Augment(NKA)」という用語は、ゼラチン系ハイドロゲルから構成される生体材料に封入された自己の選択された腎細胞(SRC)から構成される注射剤である生物活性細胞製剤を意味する。
【0025】
本明細書で使用される「腎臓病」という用語は、血液を濾過し、血液から余分な水分、電解質、及び老廃物を除去する腎臓の機能が失われた結果としての急性又は慢性腎不全のあらゆる段階又は程度に関連する障害を意味する。腎臓病には、貧血(エリスロポエチン欠乏症)、ミネラルバランスの崩れ(ビタミンD欠乏症)等の内分泌機能障害も含まれることがある。腎臓病は、腎臓に起因する場合もあれば、心不全、高血圧、糖尿病、自己免疫疾患、又は肝臓疾患を含む(ただしこれらに限定されない)、様々な疾患に続発する場合もある。腎臓病は、腎臓に急性損傷が発生した後に発症する慢性腎不全の状態である場合もある。例えば、虚血及び/又は毒物への曝露による腎臓の損傷が、急性腎不全を引き起こすことがある。急性腎不全の後の不完全な回復が、慢性腎不全の発症につながることがある。
【0026】
「スフェロイド」という用語は、単層での成長とは対照的に、3次元的な成長を可能にするように培養された細胞の凝集体又は集合体を指す。「スフェロイド」という用語は、凝集体が幾何学的な球体であることを意味するものではないことに留意されたい。或る特定の実施形態において、凝集体は、明確に定義された形態として高度に組織化されていてもよく、又は凝集体は、組織化されていない塊であってもよい。或る特定の実施形態において、スフェロイドは、単一の細胞型又は2つ以上の細胞型を含むことができる。或る特定の実施形態において、細胞は、一次分離物、又は永久細胞株、又は2つの組合せであってもよい。或る特定の実施形態において、スフェロイド(例えば細胞凝集体又はオルガノイド)は、スピナーフラスコ内で形成される。或る特定の実施形態において、スフェロイド(例えば細胞凝集体又はオルガノイド)は、3次元マトリックス内で形成される。
【0027】
腎臓病に関して、文脈によっては、「治療」とは、腎臓病、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害の治療及び予防措置の両方を指し、その目的は、対象となる障害又は症状を逆行させる、予防する、又は遅らせる(軽減する)ことである。治療を必要とする者としては、腎臓病、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害を既に有する者のみならず、腎臓病、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害を有する傾向のある者、又は腎臓病、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害を予防しようとする者が含まれる。或る特定の実施形態において、治療は、腎機能の安定化及び/又は改善を含む。癌に関して、治療には、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍増殖速度の減少、腫瘍抗原に対する免疫応答の増加、癌細胞成長の減少、癌細胞増殖の減少、又は癌細胞生存の減少(例えば腫瘍細胞のアポトーシス又は壊死等の死の増加)を含むことができる。
【0028】
治療薬の投与
血管外送達は、注射器、カテーテル、トロカール等の1つ以上の装置を介して、臓器の中、例えば臓器の間質等に医薬流体製剤(例えば治療用細胞を含む医薬流体製剤)を直接注入することを含むことができる。「血管外注入」とは、血管の外側に注入することにより送達することを意味する。血管外送達では、治療用細胞の滞留時間をより長くすることができる。例えば、クリアリングプロセス又はフラッシングプロセスは、送達部位における局所的な外傷及び浮腫の除去に関連付けられるクリアリングプロセスに依存することができる。送達効率もまた高くなり得る。しかしながら、治療用細胞又はその生成物をうまく送達することが困難なことがある。例えば、送達装置の入口孔を通じた治療用細胞材料の溢出(extravasation)は、様々な異なる問題によって引き起こされる問題であり得る。溢出は、標的注入部位からの流体の漏れ(特に意図しない漏れ)であると考えることができる。例えば、呼吸等による患者の動き(したがって標的部位の動き)により送達標的が自然に動くと、送達標的が不安定になることがある。また、投与中の動きによって引き起こされる送達器具による衝撃及び切断による治療部位の外傷によって、治療用細胞材料の不正確な送達が引き起こされることもある。さらに、送達は、標的部位への連続的な投与流による等、治療用細胞又はその生成物の注入がどのように行われるかに起因して困難となることがある。
【0029】
これらの理由及び他の理由から、医薬流体製剤(細胞治療薬等)を送達するための改良された装置、方法、及びシステムが必要とされている。本明細書において提供されるのは、特に、化合物、細胞、又は細胞産物を含む組成物等の治療用組成物を送達するための改良された装置、方法、及びシステムである。
【0030】
一態様において、本明細書には、位置安定性を維持しながら、例えば定量注入機能を使用して患者内の標的位置に細胞治療薬を血管外送達する装置、方法、及びシステムが含まれる。細胞治療薬の使用は、様々な異なる疾患を治療するための非常に一般的で成功率の高い方法である。例えば、細胞治療薬の血管外送達は、治療部位での治療用細胞材料の滞留時間を長くし、送達効率を高めることに成功している。しかしながら、血管外送達は、患者の動き(したがって標的部位の動き)、患者の動きによって引き起こされる送達器具による衝撃及び切断による治療部位の外傷、並びに治療部位への連続した投与流による治療用細胞材料の注入のような要因によって引き起こされる治療用細胞材料の溢出等の問題を呈している。したがって、例えば物理的に安定した送達プロセスと、治療用細胞材料の非連続的な投与流とを提供することによって、治療薬(細胞材料、例えば、細胞又はエキソソーム等のその生成物)の送達を安定化させるように構成された装置、方法、及びシステムが提供される。
【0031】
一態様において、本明細書に含まれるのは、位置安定性を維持しながら、例えば定量注入機能を使用して患者内の標的位置に医薬流体製剤(例えば細胞治療薬)を血管外送達する装置、方法、及びシステムである。本明細書において提供される装置、システム、及び方法は、腎臓病及び癌を含むがこれらに限定されない、様々な異なる疾患を治療するために使用することができる。
【0032】
或る特定の実施形態において、本明細書において提供される注入装置は、流体の連続的な流れを標的部位に送達するように構成されている。或る特定の実施形態において、本明細書において提供される注入装置は、流体の非連続的な流れ又はボーラスを標的部位に送達するように構成されている。本明細書において提供される例示的な装置は、細胞又は細胞産物を含む医薬流体製剤等の流体の非連続的な流れ又はボーラスを標的部位に送達するように構成することができる。ボーラスは、医薬組成物(医薬流体製剤等)の単一の物理的部分であると考えることができる。或る特定の実施形態において、ボーラスは、単一のイベントとして送達される医薬組成物(医薬流体製剤等)の一部分である。或る特定の実施形態において、ボーラスは、例えば、医薬組成物の投与中に次々と送達される複数の部分(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の部分)の一部として送達される、医薬組成物(医薬流体製剤等)の一部分である。或る特定の実施形態において、単一のボーラスが送達される。或る特定の実施形態において、複数の離散的なボーラスの間に、医薬組成物は送達されない。或る特定の実施形態において、医薬組成物のいくつかの連続的な流れがある。或る特定の実施形態において、送達は連続的であるが、医薬組成物の量はパルス状である(すなわち流れは止まらないが、時間とともに増減する)。或る特定の実施形態において、本明細書において提供される装置は、片手で操作するように構成されている。或る特定の実施形態において、本注入装置は、トロカールが注入装置に安定した送達機構を提供するように、シャフト上に1つ以上の安定化機構を有するように構成された例示的なトロカールと係合することができる。或る特定の実施形態において、トロカールは、注入装置に取り付けられる注射針を中に受け入れるように構成されており、注入装置は、注射針の中を通る流体の連続的な流れとして用量を標的組織部位に送達することができる。或る特定の実施形態において、トロカールは、注入装置に取り付けられる注射針を中に受け入れるように構成されており、注入装置は、流体をボーラス用量で(in bolus doses)注射針を通じて標的組織部位に送達することができる。或る特定の実施形態において、本明細書において提供される装置、システム、及び方法は、患者の腎実質/間質区画内の複数の血管外注入部位に、治療用細胞又は細胞産物を含む流体を直接送達することによって、(例えば慢性腎臓病等の腎臓病を有する患者の)腎臓に治療用細胞又は細胞産物の定量投与を行う等、様々な治療において使用することができる。或る特定の実施形態において、患者は、図1及び図2に示されるように、腹臥姿勢又は側臥姿勢に配置される。「実質」は、結合組織及び支持組織と区別される臓器の機能的組織である。「間質」は、結合組織及び血管からなる、上皮性器官(epithelial organ)、腫瘍、生殖腺等の支持組織である。或る特定の実施形態において、対象は、後期不全(late-stage failure)を有する。しかしながら、本開示では腎臓の治療について説明しているが、本装置、システム、及び方法は、広く利用することができる。或る特定の実施形態において、本明細書において提供される装置、システム、及び方法は、固形腫瘍等の癌細胞を有する組織部位に治療用細胞又は細胞産物の定量投与を行う等、様々な治療において使用することができる。或る特定の実施形態において、組織部位は、癌細胞(例えば転移性癌細胞又は腫瘍)を有するか又は有することが疑われる臓器である。
【0033】
或る特定の実施形態において、本明細書において提供される装置、システム、及び方法は、癌細胞又は固形腫瘍を含む臓器に、及び/又は腫瘍に直接、医薬流体製剤を経皮的に注入するのに有用である。或る特定の実施形態において、臓器内に製剤をできるだけ広く分布させることが重要である。或る特定の実施形態において、臓器又は腫瘍内に製剤を分布させることは、臓器又は腫瘍内に製剤を可能な限り広く沈着させることができる角度で臓器又は腫瘍に入ることによって達成される。或る特定の実施形態において、個々の患者の特徴に応じて、超音波ガイドを使用して、又は軸方向コンピューター断層撮影(CT)イメージングを使用して、臓器又は腫瘍が縦方向又は横方向のアプローチにおいて撮像される。或る特定の実施形態において、注入は、注射針が徐々に引き抜かれるときの複数の堆積を含む。或る特定の実施形態において、製剤の全量を、単一又は複数の入口点において沈着させることができる。或る特定の実施形態において、最大で2つの入口点を使用して、治療用製剤の全量を臓器又は腫瘍に沈着させることができる。
【0034】
或る特定の実施形態において、本明細書において提供される装置、システム、及び方法は、腎臓の腎皮質に医薬流体製剤を経皮的に注入するのに有用である。或る特定の実施形態において、腎皮質中に製剤をできるだけ広く分布させることが重要である。或る特定の実施形態において、腎皮質中に製剤を分布させることは、腎皮質中に製剤を可能な限り広く沈着させることを可能にする角度で腎皮質に入ることによって達成される。或る特定の実施形態において、個々の患者の特徴に応じて、超音波ガイドを使用して、又は軸方向CTイメージングを使用して、腎臓が縦方向又は横方向のアプローチにおいて撮像される。或る特定の実施形態において、注入は、注射針が徐々に引き抜かれるときの複数の堆積を含む。或る特定の実施形態において、製剤の全量を、単一又は複数の入口点において沈着させることができる。或る特定の実施形態において、最大で2つの入口点を使用して、治療用製剤の全量を腎臓に沈着させることができる。或る特定の実施形態において、1つ以上の入口点、例えば1つ又は2つの入口点を使用して、注入を単一の腎臓に投与することができる。或る特定の実施形態において、注入は、各腎臓において1つ以上の入口点、例えば1つ又は2つの入口点を使用して、両方の腎臓に行われる。
【0035】
本明細書において提供される装置及びシステムは、市販の装置に勝る利点を提供する。図3及び図4は、患者の腎臓に対して市販の部品を使用して細胞治療を行うためのプロセスの概要を示している。例えば、針、トロカール/スリーブ、ルアーフィッティング、ストップコック、チューブ、3cc注射器、及び10cc注射器等の市販の部品は、治療用細胞材料を処理する場所にストックしておくことができる。各種の針及びトロカール/スリーブのサイズに幅を持たせ、上記の品目をそのまま含むキットを準備しておくことができる。針のゲージサイズには、10cm、15cm、20cmという長さの範囲を用意することができる。細胞治療薬を無菌的に充填できる、パッケージで使用できる10ccの注射器を充填することができる。充填された注射器は、輸送中に細胞治療薬を約4℃~8℃に維持する温度制御パッケージに入れて、処置の現場まで別々に輸送することができる。処置現場では、プロトコルを実行して注射器を温め、注入システムを組み立て、ユーザーのための備品を整理して準備することができる。例えば、注射器を約30分等の制御された時間をかけて約26℃~28℃に温めることができる。次いでユーザーは、製品の生存能力のための割り当てられた時間(例えば約1.5時間であり得る)内に処置を開始することができる。図4は、上述した非限定的な注入システムを示しており、3cc注射器が3方向ストップコックを介して10cc注射器に接続されている。ストップコックからの出力は、患者に装着されたトロカール/スリーブ内の注射針におけるルアー接続部にチューブを介して送られる。最初に細胞治療薬を10ccのプランジャーを介して3ccの注射器に移動させることができ、その後、小さい方の注射器によってプランジャーの動きを制御するとともに容易にしながら患者の腎臓に注入することができる。細胞治療薬の注入は、トロカール、針、及び注入システムを安定化させながらプランジャーを動作させるために、少なくともリードユーザーの両手と、しばしば別の手を補助として必要とすることのある困難な作業であり得る。本明細書に含まれる装置及びシステムは、図3及び図4に示されているプロセス及び構成要素に勝る利点として、治療薬の送達中の安定性の向上(及び損傷の低減)、及び治療薬のより一貫性のある送達(例えば量及び位置)を提供する。
【0036】
図5は、本明細書で使用することができるトロカール20の非限定的な1つの実施形態を示している。非限定的な例として、その最も単純な形態において、トロカールは、一端に少なくともやや鋭い三角形尖端部を有するほぼペン型の器具とすることができ、しばしば、手術中にアクセスポートを提供する目的で、スリーブを通すことのできる身体内への開口部を形成するために、カニューレ又はスリーブとして知られる中空管の内部で使用される。或る特定の実施形態において、トロカールは、カニューレ又はスリーブとして知られる中空管の内側で、一端に鋭い三角形尖端部を有する、中実のオブチュレータ/スタイレットという2つの部分を有するペン型器具である(例えばトロカールは、身体への開口部を形成するために用いられ、スタイレットは、内部構造へのアクセスポートを設けるためにスリーブを残して取り外すことができる)。図5に示したトロカール20は、ハンドル22、細長いシャフト24、シールド26、及びシールド解放部28を有することができる。中を貫いて内腔が延びていることができる。図6は、本明細書において使用することのできるカニューレ30の非限定的な一例を示している。カニューレ30は、ハンドル32及びスリーブ34を有し、中を貫いて延びる内腔を有することができる。トロカール20等のトロカールが患者に配置されるとき、トロカールの固定は、主として2か所において達成される。トロカールの摩擦による把持は皮膚通過部で発生し、同様のより弱い相互作用は腎臓の被膜等の内部組織によってトロカール上に発生する。トロカールの侵入深さが浅いため、内部組織における摩擦による把持は比較的弱い。しかしながら、処置中に腎臓等の組織へのトロカールの侵入深さを安定化させることは、組織への外傷を回避し、治療用細胞材料のより円滑な注入を支援するために有益である可能性があり、腎臓等の内部組織アンカー点に対する真皮アンカー点の不利な移動が発生し得る。
【0037】
注入装置
図7は、着脱式トロカール200を使用して片手操作用に構成することのできる注入装置100の非限定的な一例を示しており、着脱式トロカール200は、中にスタイレット300を有し、装置100の長手方向軸線L1に沿って装置100から遠位に延びている。注入装置100は、ハウジング101と、ハンドル102と、アクチュエーター104と、流体受入れ部106と、ディスプレイ108と、トロカール係合機構110とを有する。或る特定の実施形態において、ディスプレイ108は省かれる。或る特定の実施形態において、装置100内には、ポンプ(図示せず)、圧力、流量、温度等の様々な条件を検出するように構成された1つ以上のセンサー(図示せず)、電池等の電源(図示せず)、及び/又は中央処理装置(CPU)(図示せず)が存在する。図7では、ハンドル102は、ハウジング101から延びており、ピストルグリップの形状である。しかしながら、様々なハンドル、グリップ、制御装置等を使用することができる。
【0038】
アクチュエーター104はトリガーであり、以下でより詳細に説明する注入装置100の遠位端部におけるバルブ120を通じた、流体受入れ部106からの流体の送達を作動させるように構成されている。アクチュエーター104はトリガーとして示されているが、アクチュエーターは、プランジャー、ボタン、スイッチ、電子式作動、CPUによって作動する手段、ディスプレイ108に組み込まれる等、様々な形態を有することができる。アクチュエーター104は、ハンドル102に向かって手動で押し下げられるように構成されている。或る特定の実施形態において、アクチュエーター104が押し下げられるときにユーザーに触覚フィードバックを提供するように、アクチュエーター104を構成することができる。或る特定の実施形態において、触覚フィードバックは、アクチュエーター104を手動で押し下げることから物理的に形成することができ、又はシミュレートすることができる。例えば、装置100は、実際には電気機械式でありCPUによって制御されるアクチュエーター104の機械的作用をシミュレートするように構成された1つ以上の触覚フィードバック機構を内蔵することができる。或る特定の実施形態において、アクチュエーター104の押し下げは、図8に示したように流体の離散的なボーラス122を標的部位に送達することを含むパルス送達パターンにおいて流体を流体受入れ部106からバルブ120を介して送達するように構成されており、送達される流体のための拡張空間を可能にするために、流体送達中に標的部位から注射針を引き込むように構成されている。或る特定の実施形態において、流体の離散的なボーラス122は、互いに直接接触しないように構成することができ、これにより、標的組織部位からの溢出を防止又は低減することができる。或る特定の実施形態において、本装置は、代替的に、図9に示したように流体の連続的な流れ123及び/又はこれら2つの組合せを送達するように構成することができる。或る特定の実施形態において、パルス送達パターン及び針の引込みは、装置100内のポンプ機構を有する電気機械システムによって形成することができ、ポンプ及びCPUによって形成することができる。しかしながら、ポンプ及び引込み機構は、本質的に機械的なものであってもよく、又は装置100全体を純粋に機械的なものとすることができる。或る特定の実施形態において、流体は、流体受入れ部106と係合した流体リザーバーから取り出すことができる。
【0039】
或る特定の実施形態において、流体受入れ部106は、図7に示したように、装置100の上面に配置されている。しかしながら、流体受入れ部106は、装置100の任意の位置に組み込むことができる。或る特定の実施形態において、流体受入れ部106は、図10に示したカートリッジ130又は注射器等の流体リザーバーから流体を受け取るように構成されており、アクチュエーター104の作動時にバルブ120に流体を送達するように構成されている。或る特定の実施形態において、流体受入れ部106は、カートリッジ130を少なくとも部分的に受け入れて、内部の無菌隔壁貫通要素(aseptic septum-piercing element)を使用してカートリッジ130を穿孔するように構成されている。しかしながら、流体受入れ部106は、代替的に、1つ以上のカートリッジ130を完全に受け入れて、1つ以上の流体ライン等に接続するように構成することができる。さらにこれに代えて、流体受入れ部106は、流体リザーバー(複数の場合もある)に接続するために1つ以上のバルブ、接続具、係合部等を有することができる。或る特定の実施形態において、流体受入れ部106は、カートリッジ130の温度を制御するために、ハウジング101に組み込まれた温度制御部を有することもできる。或る特定の実施形態において、カートリッジ130は、溶けて液体になるまで加熱されるヒドロゲル(例えばゼラチンベースのヒドロゲル)を含む。或る特定の実施形態において、治療薬(例えば細胞集団又はエキソソーム等の細胞産物)は、ヒドロゲル及び/又は流体全体に(例えば均一に)分散される。
【0040】
カートリッジ130等の流体リザーバーは、アクチュエーター104の作動時に、装置100を通じて1種類以上の流体を標的部位に送達するように構成されている。図10に示したカートリッジ130は、ゴムダイヤフラム接続部(rubber diaphragm interface)を有するガラスバイアルカートリッジであり、ゴムダイヤフラム接続部は、流体受入れ部106の無菌隔壁貫通要素によって穿孔されたときに流体を送達するように構成されている。或る特定の実施形態において、カートリッジは、治療薬(細胞治療薬等)の粘度を考慮した材料特性を備えており、したがって、治療薬がカートリッジの内壁に付着して失われることを防止する。或る特定の実施形態において、カートリッジ130は、無菌環境において装置100と組み付けることができ、装置100を通る流体経路に接続されるようにカートリッジに入る吸引経路は、例えばカートリッジ130が反転された場合等のカートリッジ130の様々な使用例の方向におけるアクセスによる流体の損失を防止するように構成することができる。さらに、カートリッジ130は、流体受入れ部106内で装置100によってしっかりと保持されるように構成することができる。或る特定の実施形態において、流体リザーバーは、ポリマー、ゴム等の様々な材料から作製することができ、ポート、バルブ等を介する等の様々な手段で流体リザーバー106と接続できるパウチ、流体ライン(fluid lines)、容器等、様々な形態を有することができる。さらに、カートリッジ130は、例えば中の流体を送達した後に、取外し可能かつ交換可能であるように構成することができる。或る特定の実施形態において、カートリッジ130は、ユーザーが所望の治療に応じて1回の治療中に複数のカートリッジ130を使用できるように、予め選択された用量及び/又は構成において提供することができる。これに代えて、装置100は、単回使用を意図された内蔵の流体リザーバーを有することができる。或る特定の実施形態において、装置100は、ディスプレイ108(後述する)の使用を通じて等、カートリッジ130からのカスタマイズされた用量を設定するための1つ以上の機構を有することもできる。或る特定の実施形態において、カートリッジ130は、挿入時に装置100と接続して、カートリッジ130の内容物、推奨用量、流量、タイミング等に関する詳細を提供する1つ以上のコンピューターチップを有することができる。コンピューターチップは、流体受入れ部106に配置された有線接続を介して、及び/又は無線を介して等、1つ以上の手段を通じて装置100のCPUと接続することができる。
【0041】
或る特定の実施形態において、カートリッジ130は、接続時に最小のデッドボリュームが発生するように装置100と接続するように構成することができ、カートリッジ130は、細胞治療薬に必要なだけ製造場所において流体を無菌充填し、約0℃~約20℃、より具体的には約2℃~約8℃又は約4℃~約8℃の輸送温度を維持しながら手術室に輸送されるように構成することができる。或る特定の実施形態において、装置100は、上記に詳述したように、低下した輸送温度を有し得るカートリッジ130を受け取り、選択可能な時間内に、患者への送達のための温度までカートリッジ130を温め、別の選択可能な時間にわたり、及び/又はカートリッジ130が使用されるまで、使用するための許容可能な温度にカートリッジ130を維持するように、構成することができる。例えば、装置100は、内容物が約4℃~約8℃等の輸送温度にあるカートリッジ130を受け入れるように構成することができる。次いで、装置100は、カートリッジ130を、15分以内、30分以内、又は45分以内等の或る特定の時間内に、約20℃~約40℃、より具体的には約25℃~約37℃等の、患者において使用するための温度まで温めることができる。次いで、装置100は、カートリッジ130が使用されるまで、又は一定時間、例えば約1.5時間にわたり、カートリッジ130の温度をほぼ一定に保持するように構成することができる。いくつかの非限定的な例では、装置100は、カートリッジ130が不正確に加熱された場合、及び/又はカートリッジ130がサンプルの生存能力のための割り当てられた時間枠内で使用されていない場合、ユーザーに知らせるように構成することができる。或る特定の実施形態において、装置100は、サンプルの生存能力が許容できないものと装置100が判断した場合に、装置100の作動を防止する等、ユーザーがカートリッジ130を使用することを防止することができる。カートリッジ130の容量は、所望の治療に応じて変化することができる。例えば、細胞治療に使用される容量の範囲は、約1ml~約15ml、より具体的には約3ml~約8mlとすることができる。腎臓治療時の使用では、使用されるカートリッジ130の容量は、患者の腎臓の質量に依存することができる。表1は、腎臓を治療するときに本明細書においてオプションとして使用することができる例示的な投与量を示している。
【0042】
【表1】
【0043】
医薬流体製剤は、液体中に懸濁させた治療用細胞及び/又はエキソソーム等のその生成物等、様々な治療処置薬を含むことができる。例えば、腎臓での使用では、例えば約1.05cP~1.35cPの粘度を有する、治療用細胞及び支持ヒドロゲルを含む流体を利用することができる。流体の粘度に関連して、注射針、並びにバレル及びプランジャーを備えた注射器等、本明細書に開示されている構成要素を使用するときに更なる考慮事項がもたらされ得る。例えば、注射針等の構成要素から流れを開始するためには、流れが始まっているときに流れを維持するために必要な力よりも大きな力を注射器のプランジャーに加える必要がある。さらに、注射針から治療用細胞及び支持ハイドロゲル等の流体が最初に押し出されることがあるが、これは注射器のプランジャーを手動で制御できないほどである。いったん流れが始まると、プランジャーの力を取り除いても流体の流れが止まらないことがある。注射器のバレル内の圧力上昇にヒステリシスが存在し、プランジャーを引き戻すことでしか流体の流出を止められない場合がある。このような理由で、ユーザーは、針からの流れのより良好な制御を維持するために、使用中にプランジャーを脈打たせるように操作することがある。
【0044】
或る特定の実施形態において、治療薬(細胞治療薬、例えば細胞を含む医薬流体製剤等)の粘性によって、治療薬の一部が失われる状況、すなわち、治療薬(例えばその一部)がカートリッジの内側に付着して、装置の通常のプロセスを通じて除去することができない状況が発生する傾向が起こり得る。或る特定の実施形態において、カートリッジの内側表面は疎水性である。或る特定の実施形態において、カートリッジの内側表面は超疎水性である。或る特定の実施形態において、治療薬(例えば細胞治療薬)のカートリッジへの濡れ及び付着を低減するために、カートリッジの内側表面は疎水性又は超疎水性である。或る特定の実施形態において、治療薬(例えば細胞治療薬)のカートリッジへの濡れ及び付着を防ぐために、カートリッジの内側表面は疎水性又は超疎水性である。
【0045】
2012年11月27日に発行された米国特許第8,318,484号、2011年11月17日に公開されたPCT国際公開第2011/143499号、2017年8月8日に発行された米国特許第9,724,367号、2017年10月5日に公開された米国特許出願公開第2017/0281684号、及び2016年4月14日に公開された米国特許出願公開第2016/0101133号に記載されているもの等、様々な流体を本明細書において使用することができ、これらの文書全てはその全体が引用することにより本明細書の一部をなす。したがって、流体受入れ部106は、カートリッジ130をバルブ120と流体的に接続し、流体がバルブ120を通って送達されるように構成されている。
【0046】
図7に示した例示的な装置では、バルブ120は、トロカール200が装置100に接続する装置100の遠位端部において、装置内部に配置されている。或る特定の実施形態において、バルブ120は、流体が中を通って送達されるように注射針と接続するように構成されたルアーハブである。しかしながら、注射針に接続するように構成された様々なバルブを使用することができる。或る特定の実施形態において、バルブ120は、注射針を通る流体流路にほぼ平行である装置100の軸線L1に沿って遠位及び近位に長手方向に平行移動するように構成された柔軟な取付部を介して、装置100のハウジング101と係合する。或る特定の実施形態において、バルブ120は、最大で約5cm(例えば最大で約1cm、2cm、3cm、4cm、又は5cm)、より具体的には最大で約2cm、遠位及び近位に平行移動することができる。したがってバルブ120は、装置100の作動時に遠位及び近位に平行移動して、自身を通じて流体を吐出するように構成されており、流体を標的送達部位により安定的に送達することと、流体送達中に標的部位から注射針を近位方向に引き込むこととを可能にする。
【0047】
或る特定の実施形態において、I/Oタッチスクリーン等のディスプレイ108は、図7に示したような装置100の近位端部に配置されている。或る特定の実施形態において、ディスプレイ108は、CPUとインタラクトして、ユーザーが装置100の様々な機能及び特徴を制御できるように構成されている。例えば、ディスプレイ108は、ユーザーが、注入パラメーターを設定する、注射針を準備する、様々な圧力レベル及び送達される流体を監視する、構成要素間のインターロックを解除する、リアルタイムの投与情報を提供すること等を可能にすることができる。一例では、ディスプレイ108は、複数の入力コントロールが表示されたタッチスクリーンである。しかしながら、ディスプレイ108は、代替的に及び/又は追加的に、装置100の機能の1つ以上を制御するための1つ以上の物理的なボタン、コントロール、スイッチ、ダイヤル、計器、トグル等を有することができる。ディスプレイ108は、装置100の上部又は側面等、装置100上の任意の場所に配置することもできる。
【0048】
装置100の或る特定の実施形態において、ハウジング101は、軸線L1に沿って延びているスタイレット除去内腔140を有することもでき、スタイレット除去内腔140は、トロカール200(後述する)の配置後に自身を通してスタイレット300を除去できるように構成されている。内腔140は、例えば、スタイレット300が内腔140の近位端部から近位に延びて手動で把持できるように構成される等、スタイレット300の手動除去を可能にすることができ、又は、内腔140は、例えば、1つ以上の歯車、ホイール、フック、移動トラック等を使用することによってスタイレット300の除去を提供するための1つ以上の機械的機構及び/又は電気的機構を組み込むことができる。注入装置の或る特定の実施形態において、針の貫通深さは、装置自体に可変的に設定することができる。
【0049】
装置100は、必要に応じて様々なサイズを有することができ、例えば、幅約300mm×奥行き約200mm×高さ約100mmの空間内に収まることができ、より具体的には、幅約205mm×奥行き約105mm×高さ約70mmの空間内に収まることができる。装置100は、必要に応じて様々な重量及び/又は質量を有することができる。或る特定の実施形態において、装置100は、約2000g未満の質量、より具体的には約1400g未満の質量を有することができる。装置100は、金属、樹脂等の様々な材料、又は材料の組合せから製造することができる。装置100は、単回使用であるように構成することができ、又は再滅菌を必要とする再使用可能な装置であるように構成することができる。或る特定の実施形態において、細胞に接触する材料は、浸出物のリスク及び(複数のサイクルにわたる)滅菌との適合性等の問題に対処するために、ISO10993等の或る特定の使用要件を満たすように構成されている。ISO10993に関連する記述は、Use of International Standard ISO 10993-1, "Biological evaluation of medical devices - Part 1: Evaluation and testing within a risk management process", U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Devices and Radiological Health(www.fda.gov/downloads/medicaldevices/deviceregulationandguidance/guidancedocuments/ucm348890.pdfにて入手可能)というタイトルのGuidance for Industry and Food and Drug Administration Staff(発行日:2016年6月16日)に提供されており、この文書の内容全体は引用することにより本明細書の一部をなす。装置100に使用される材料も、クラスI/II装置に関する規制に準拠していることができ、装置100は、治療用細胞材料の生存能力に影響を与えないように、オプションとして潤滑剤を使用しないようにすることができる。クラスI/II装置に関する記述は、2018年3月27日に更新されたMedical Devices 「Classify Your Medical Device」U.S. Food & Drug Administration(www.fda.gov/MedicalDevices/DeviceRegulationandGuidance/Overview/ClassifyYourDevice/ucm2005371.htmから入手可能)に提供されており、この文書の内容全体は引用することにより本明細書の一部をなす。様々な実施形態において、装置100は、装填された任意のカートリッジ130又は治療用細胞材料の偶発的な展開を防止するためのインターロックを有することができる。さらに、腎臓の被膜等の組織の貫通を支援するための動的注入システムを組み込む他の非限定的な実施形態において、装置が組織に対して適切な位置にないときに偶発的にトリガーすることを防止するために、インターロックシステムを使用することができる。いくつかの実施形態において、装置100は、電源を必要とすることができ、電源は、再充電可能であることができる。例えば、装置は、USBインターフェース等の充電インターフェースを組み込むことができる。或る特定の実施形態において、ボタンインタフェースは、IEC 62366に記載されているユーザビリティ規格に準拠する必要がある可能性が高い。例えば、国際電気標準会議(2014)「Application of usability engineering to medical devices, International IEC Standard 62366 edition 1.1 2014-01. International Electrotechnical Commission」を参照されたい。この文書の内容全体は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0050】
装置100は、様々な異なる摩擦嵌合開口部、スナップ、フック、レバー等を含むことができる係合機構110を介して、着脱式トロカール200に結合することができる。
【0051】
スタイレットを有するトロカール
図11は、トロカールの非限定的な一例を示している(これは例えば本明細書において提供される装置に着脱可能とすることができる)。トロカール200は、患者内に配置されて、腎臓腫瘍を含む臓器、又は腫瘍等の内部組織部位へのアクセスを提供するように構成されている。図11のトロカール200は、拡張(flared)ヘッド202と、そこから遠位に延びる中空の細長い円筒形シャフト204とを有する。ヘッド202は、係合機構110において軸線L1に沿って装置100に取外し可能かつ交換可能に取り付けられるように構成されている。ヘッド202及び細長いシャフト204を通って内腔が延びており、内腔は、スタイレット300及び注射針等の器具を、中を通して受け入れるように構成されている。細長いシャフト204は、テーパー状の遠位端部206と、遠位部分における安定化機構220とを有する。シャフト204は、圧縮ばね部208及び中実部210を有する。圧縮ばね部208は、患者の動き及び装置100との相互作用に伴って圧縮及び拡張するように構成されている。したがって、ばね部208は、軸線L1に沿っての近位及び遠位への平行移動運動を可能にし、組織とのより静止した相互作用、標的組織部位への流体のより円滑な送達、及び流体送達中の標的部位から近位方向への注射針の引込みが可能になる。或る特定の実施形態において、ばね部208は、最大で約5cm(例えば最大で約1cm、2cm、3cm、4cm、又は5cm)、より具体的には最大で約2cm、遠位及び近位への平行移動を可能にすることができる。圧縮ばね部208は、シャフト204の中間部分に示されている。しかしながら、圧縮ばね部208は、シャフト204に沿った様々な点、例えば、シャフト204の中間点よりも手前の位置、又は中間点よりも遠い位置に配置することができる。中実部210は、シャフト204の遠位部分に配置されており、その上に安定化機構220を有する。
【0052】
安定化機構220は、トロカール200が患者の真皮等の外側組織表面を通って配置されたときに、患者内の内側組織部位に対してトロカール200を安定化させるのを支援するように構成されている。したがって安定化機構220は、器具がトロカール200を通過する際に、トロカール200を組織に対して固定の位置に可逆的に維持するように構成されている。例えば、トロカール200が腎臓の治療中に使用されるとき、安定化機構220は、トロカール200の遠位端部206を腎臓の表面250に対して所定の位置に可逆的に固定するように構成することができる。図11及び図12に示した安定化機構220は、ヒンジ点224においてシャフト204と係合したシャフト223上の3つの足部222を含む。或る特定の実施形態において、足部222は、シャフト204の周りに半径方向に対称に配置されており、標的部位において展開して組織を可逆的に係合するように構成されている。或る特定の実施形態において、足部222は、図12に示したように、ヒンジ点224の周りにシャフト204から離れる方向に係合位置まで回転することによって、例えば患者にトロカール200を挿入している間のシャフト204における収容された位置から、例えば使用時にトロカール200を安定化させている間の拡張した位置まで移動するように構成されている。収容された位置では、足部222は、足部222がシャフト204の外面と同一平面になるように、収容ポケット226の中に受け入れることができる。足部222は、展開時、組織と係合するために、90度から180度の間、例えば約100度だけ、シャフト204から離れる方向に回転するように構成することができる。
【0053】
足部222の回転を引き起こすために、歯車、ばね、電子モーター、シャフト、電気加熱式ニチノール支柱等を含む、様々な回転機構をシャフト204に組み込むことができる。例えば、スタイレット300の取外し時にスタイレット300上の1つ以上の形状部に係合するように構成することのできる小さなカム(図示せず)を、ヒンジ点224付近においてシャフト204に組み込むことができ、スタイレット300を取り外すことによって、カムを作動させて足部222の回転を引き起こすように構成することができる。安定化機構220は、一般に、スタイレット300の取外し時に作動する1つ以上の展開手段を有することができる。或る特定の実施形態において、足部222は、例えば、最初の表面接触時に組織と可逆的に係合するように構成された生体模倣型マイクロフック等、1つ以上の係合手段を有することができる。マイクロフックは様々なサイズを有することができ、例えば約100μm~500μmのスケールである。このようにして、トロカール200は、ユーザーがトロカール200を抜こうとして足部222が解放されるまで、著しい外傷を引き起こすことなく所定の位置に固定される。様々な他の係合手段が可能であり、例えば、生体模倣型又は他のフック、一時的な接着剤、能動的な吸引、摩擦、ばね力、ヤツメウナギのラッチ機構に類似する機構等である。係合手段は、犠牲的及び/又は生分解性とすることもできる。3つの足部222が示されているが、複数の足部を設けることができる。さらに、安定化機構220は、足部222以外の様々な代替及び/又は追加の実施形態を有することができる。例えば、安定化機構は、挟込み機構、フック、様々な接着剤及び粘着剤、吸引、摩擦嵌合等を含むことができる。
【0054】
トロカール200は、患者の真皮におけるトロカール200の入口点等、患者に配置されたときに組織と係合してトロカール200を更に安定化させるための1つ以上の追加又は代替の係合機構を有することもできる。例えば、示したトロカール200は、配置されたときに患者の真皮によって摩擦的に把持されるように構成されている。しかしながら、追加の係合機構も可能であり、例えばトロカール200に類似するトロカール600のシャフト602に組み込むことができる可逆的に折り畳み可能な拡張要素500等である。図13図15に示した或る特定の実施形態において、拡張要素500は、乾式壁アンカーと同様に動作することができる(例えば図16A図16Dに示した例示的な乾式壁アンカーシステムであり、これらの図は、ドリルで穴を開けることと、例示的な乾式壁アンカーを打ち込むことと、ドライバーを使用してアンカーアームを拡張することと、最後にねじを所定の位置にねじ込むこととを概略的に示している)。拡張要素500は、シャフト602が患者の真皮620を通って挿入される図13に示した配置位置と、図14及び図15に示した拡張位置との間で移動するように構成されている。拡張要素500は1つ以上の脚部502を有し、脚部502は、自身に沿ったほぼ中間点504(図13には破線で示してある)においてヒンジ式である、又は曲げることができる。或る特定の実施形態において、1つ以上の拡張機構をシャフト602に組み込むことができ、拡張機構は脚部502を外側に拡張させるように構成されており、例えば、(図13に矢印で示したように)脚部502が外側に拡張して(図14及び図15に示したように)真皮620の内面に対して固定されるように、トロカール600が真皮620内に位置決めされた後にトロカール600の遠位部分を近位側に引き込むように構成されたねじ切り部(threading)である。拡張要素500は、ユーザーがトロカール600を患者から取り外したいときに、ユーザーによって配置位置に戻されるように構成されている。
【0055】
したがって例示的なトロカール200は、トロカール200が患者内に配置されたときに、内部の標的組織(腎臓等の臓器又は固形腫瘍等)の表面と、患者内へ組織を通過する入口点(真皮内等)との2点において、上述した機構のうちの1つ以上を使用して安定化及び/又は固定されるように構成されている。トロカール200の安定化は、展開中に組織への安定した侵入深さを可能にするように構成され、これにより組織の損傷が防止又は低減され、組織のずれ及び患者の動き(臓器の自然な動き及び患者の呼吸等)によって生じる、ずれた器具から注入中に過剰な治療用細胞又は細胞産物が失われることが減少する。或る特定の実施形態において、超音波下等でトロカール200の位置を良好に視覚化し、したがって患者内のより正確な配置を提供するように構成された、突起、溝、穴、マーキング等の1つ以上の表面形状部を、トロカール200のシャフト204の遠位外面に追加することもできる。図解を目的として、図17の超音波生検針の非限定的な実施形態には、例示的なエコー源性表面形状部272を示してある。エコー源性とは、超音波画像化において可視であるという特性を有することを意味すると考えることができる。非限定的な例として、図示した針は、Cook Medical EchoTip(登録商標)である。トロカール200は、オプションとして、少なくとも約20gの大きさのトロカールスリーブ等の所望のカニューレ又はトロカールスリーブと共に使用することができ、患者の腎臓等の内部標的組織部位内に約3mm~5mm等の様々な深さまで患者に貫入するためのサイズ及び形状とすることができる。トロカール200は、約5cm~25cm、より具体的には10cm~20cm、更に具体的には約15cm~20cm等、様々な長さを有することができる。ばね部208は、約5cm~10cm等、様々な長さを有することができる。
【0056】
スタイレット300は、患者内にトロカール200を前進させて配置する間、軸線L1に沿ってトロカール200の内腔内に受け入れられるように構成されている。スタイレット300は、遠位先端部304を有する細長いスタイレットシャフト302を有する。シャフト302は、トロカール200内に受け入れられて、トロカール200から遠位及び近位の両方に延びるようなサイズ及び形状である。例えば、遠位先端部304は、遠位先端部304が組織を突き通すことができるようにトロカール200のテーパー状遠位端部206から遠位に延びるように構成することができ、スタイレット300の近位端部は、スタイレット300を取り除くためにトロカール200から近位に延びることができる。例示的な遠位先端部304は、図18Aに示したような尖っていない円錐形状を有するが、図18Bに示したような角錐形、図18Cに示したような尖った円錐形、及び図18Dに示したような尖っていない形状等、様々な他の形状を使用することができる。様々な先端部を使用することができるが、或る特定の実施形態において、尖っていない円錐形の先端部は、最初にトロカール200をスタイレット300と共に腎臓等の標的組織部位に挿入するときに生じる外傷を最小限にするように構成されているため、腎臓組織において効果的に使用することができる。スタイレット300は、トロカール200を患者内に配置した後に取り外されるように構成することができる。スタイレット300は、装置100がトロカール200と係合していないときに、トロカール200から直接手動で取り外されるように構成することができ、又は、上述したように、手動、機械的、電気的、若しくは何らかの組合せによって、装置100のオプションの除去内腔140を介してトロカール200から取り外されるように構成することができる。或る特定の実施形態において、スタイレット300は、スタイレット300をトロカール200から取り外すときにトロカール200の安定化機構220の展開を作動させるように構成された1つ以上の形状部を有することができる。例えば、スタイレット300は、トロカール200におけるカムを作動させて足部222の回転を引き起こすように構成された、遠位先端部304に向かって配置されている1つ以上の歯状形状部(gear-tooth features)を有することができる。
【0057】
したがって、非限定的な例では、トロカール200(スリーブを有するか又は有しない)は、スタイレット300の作用によって患者の皮膚を突き通すように構成することができる。臓器(例えば腎臓)等の組織内へのトロカール200及び/又はスリーブの例示的な目標侵入深さは、スタイレット300が取り外されたとき、約2mm~6mm、より好ましくは約3mm~5mmとすることができる。スタイレット300が取り外されると、トロカール200(すなわちトロカールのスリーブ)を所定の位置に固定することができる。トロカール200(すなわちトロカールのスリーブ)の固定は、少なくとも2か所において、すなわち、真皮通過部での摩擦による把持と、トロカール(すなわちトロカールのスリーブ)200が貫通する組織(腎臓の被膜等)における同様のより弱い相互作用とにおいて、達成することができる。トロカール(すなわちトロカールのスリーブ)200は、処置中に、臓器(例えば腎臓)等の組織内への侵入深さにおいて安定化されるように構成することができる。しかしながら、組織を貫通する構成要素の配置は、臓器(例えば腎臓)等の組織がずれ得ること、及び患者の呼吸サイクルによって、動的であり得る。したがって、臓器(例えば腎臓)等の内部組織のアンカー点に対する真皮のアンカー点の不利な移動が生じることがあり、したがって、安定化機構220等の本明細書において提供される構成要素を使用して移動を最小化することができる。臓器(例えば腎臓)等の組織の外傷を最小化することは、いかなる治療の全体的な成功にとっても有益であり得る。例えば、外傷は、臓器(例えば腎臓)等の組織に裂傷を発生させる、トロカール200内での針400の意図しない動きがあるときに発生し得る。また外傷は、例えば、スタイレット300の遠位先端部304が何らかの切断作用(上述した角錐形又は尖った円錐形の設計において発生する尖端部等)を有する場合、トロカール200を臓器(例えば腎臓)等の組織内に最初に挿入するときに生じ得る。したがって、トロカール200の安定化は、針400の意図しない動きを低減又は排除することによって、組織に対する外傷を低減又は排除するのに役立ち、臓器(例えば腎臓)等の組織を突き通す目的に、尖っていない円錐形の先端部を使用して、外傷を最小化することができる。
【0058】
或る特定の実施形態において、外傷は2つの原因から発生し得る。1)スタイレット/針の先端形態が、組織に損傷を与えやすいものである、2)処置中のトロカール/針の意図しない動きによって、腎臓に裂傷が生じ得る。或る特定の実施形態において、図18A図18Dに示したスタイレット尖端部のうち、腎臓を突き通して外傷を最小限に抑えるためには、尖っていない円錐形が推奨される。或る特定の実施形態において、針の先端は、尖っておらず、切断性がない。針のゲージサイズも、外傷に対して大きな影響がある。或る特定の実施形態において、針が小さいほど、発生する外傷が少ないが、線維性の被膜を突き通すのに有効でないことがある。或る特定の実施形態において、大きな針サイズは、配置を確認するために超音波によってより容易に見ることができる。したがって、或る特定の実施形態において、小さな針で効果的に被膜を突き通すための動的モード(dynamic mode)を含む設計解決策では、外傷が少なく、被膜を突き通すのに失敗するリスクが少なくなるが、可視化の問題が生じ得る。或る特定の実施形態において、スリーブと針との差が大きいと、スリーブ内で小さい針が曲がることがあり、装置は、スリーブ内の針の曲がりを最小限にするように構成される。
【0059】
注射針
図19は、トロカール200が患者内の所定位置にあるときに、装置100と係合し、トロカール200を通じて挿入されるように構成された注射針400の非限定的な例を示している。或る特定の実施形態において、針400は、装置100から、臓器(例えば腎臓)等の標的内部組織部位に医薬流体製剤(細胞及び/又はその生成物を含む製剤等)を送達するように構成されている。図示した針400は、係合ヘッド402と、中を貫く内腔及び遠位先端部406を有する細長いシャフト404とを有する。遠位先端部406は、針400から遠位に流体が流れることを可能にする穴を有する。係合ヘッド402は、係合機構110において軸線L1に沿って装置100に取外し可能かつ交換可能に取り付けられるように構成されている。ヘッド402は、取り付けられるとバルブ120と係合するように構成されている。ヘッド402及び細長いシャフト404の内腔は、装置100の作動時、流体受入れ部106に接続された流体リザーバー内の流体のための流体流路として、流体リザーバーからバルブ120を通りシャフト404の内腔に沿って遠位先端部406の開口部から出る流体流路を形成するように構成されている。さらに、針400は、作動時に流体が供給されるとき、標的組織内の位置から引き込まれるように構成されている。注射針400のサイズ、長さ、及びゲージは、可変である。例えば、針400は、約25g~約20gとすることができる。針のゲージサイズは、組織部位の外傷に対して大きな影響があり、より大きなゲージサイズ(より小さな針である)では、発生する外傷が減少し得る。
【0060】
臓器(例えば腎臓)の治療に適用される針のサイズを考慮するとき、腎被膜の貫通と、組織に生じ得る外傷との間でバランスを求めることができる。図20に示したように、腎被膜は、腎臓を取り囲む丈夫な繊維性の層である。したがって、腎被膜を貫通するためには、より大きな針がより有用である。しかしながら、より大きな針は、腎臓により多くの外傷を引き起こす可能性がある。そのため、図21に示したように、これらの相反する要因を考慮した最適な針のサイズを求めることができる。
【0061】
より小さい針は、組織を突き通すのにあまり効果的ではないことがあるが、本明細書においてトロカール200及びスタイレット300と共に使用される針400は、組織をうまく突き通すことと、より小さい針を配置することとの両方を可能にするように構成することができる。本明細書では、様々な異なる針を使用することができる。表2は、本明細書においてオプションとして使用することができる追加の例示的な針のゲージサイズを示している。
【0062】
【表2】
【0063】
或る特定の実施形態において、針は、18ゲージ~30ゲージの針である。或る特定の実施形態において、針は20ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は21ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は22ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は23ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は24ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は25ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は26ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は27ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は28ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約20ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約21ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約22ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約23ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約24ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約25ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約26ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約27ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約28ゲージである。或る特定の実施形態において、針は29ゲージよりも小さい。或る特定の実施形態において、針は約29ゲージである。
【0064】
或る特定の実施形態において、針の内径は0.84mm未満である。或る特定の実施形態において、針の内径は0.61mm未満である。或る特定の実施形態において、針の内径は0.51mm未満である。或る特定の実施形態において、針の内径は0.41mm未満である。或る特定の実施形態において、針の内径は0.33mm未満である。或る特定の実施形態において、針の内径は0.25mm未満である。或る特定の実施形態において、針の内径は0.20mm未満である。或る特定の実施形態において、針の内径は0.15mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は1.27mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は0.91mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は0.81mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は0.71mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は0.64mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は0.51mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は0.41mm未満である。或る特定の実施形態において、針の外径は0.30mm未満である。或る特定の実施形態において、針は、次の表のサイズのうちの1つを有する。
【0065】
【表3】
【0066】
針400は、例えば、約10cm~20cmの距離等、装置100から比較的長い距離だけ離れている内部組織部位に注射することができる。このような例では、トロカール200は、比較的大きな距離で内部組織部位の中に貫通した結果として発生し得るキンクに対して針400を機械的に支持することもできる。或る特定の実施形態において、針400の長さは、針400の遠位部分の約5cm~約6cmがトロカール200の最遠位端部を超えて延びるように構成することができる。例えば、図22に示したように、針400の約5.3cm(例えば約5.5cm、6cm、又は6.5cm)がトロカール200の遠位最端部を超えて遠位に延びるように構成することができる。この長さは、治療用細胞又は細胞産物を沈着させるために、臓器(例えば腎臓)等の標的組織内への針400の十分な侵入深さを可能にすることができる。注入装置の或る特定の実施形態において、針の侵入深さは、可変的に設定することができる。或る特定の実施形態において、そのような長さにおいて、針400の遠位先端部406の穴は、図23に示したように、トロカール200の最遠位端部を約5.1cm過ぎた位置に配置することができる。或る特定の実施形態において、針の穴は、針の先端から約0.2cm横方向に位置することが好ましく、穴は、5.3cmの長さのときにトロカールを5.1cm過ぎた位置にある。或る特定の実施形態において、約6cmの長さのとき、穴は、トロカールを約5.8cm過ぎた位置にある。或る特定の実施形態において、出口穴の横方向の位置決めは、針がノンコアリングであることを保証しながら、細胞治療薬の押出し及び配置に対して有益な効果を有する。或る特定の実施形態において、穴はオプションとして横方向に位置させることができ、このことは、標的組織部位における治療用細胞又は細胞産物の押出し及び配置に対して有益な効果を与えることができる。様々な例においては、超音波下等で針400の位置を良好に視覚化し、したがって患者内でのより正確な配置を提供するように構成された、突起、溝、マーキング等の1つ以上の表面形状部を、トロカール200と同様に針400の細長いシャフト404の遠位外面に追加することもできる。所望の治療に応じて、様々なサイズの2つ以上の針400を使用することもできる。いくつかの例では、針のゲージサイズは、外傷に対して大きな影響を与えることがある。例えば、より大きなゲージサイズ(より小さな針である)は、発生する外傷が少なくなり得るが、線維性被膜等の組織を突き通すのに効果的でないことがある。したがって本明細書では、小さい針で被膜等の組織を効果的に突き通すために、動的モード及び/又は動的運動を通じて支援することができるトロカール200等の構成要素が提供される。これにより、外傷が少なくなり、被膜等の組織を貫通することに失敗するリスクが少なくなり得る。
【0067】
或る特定の実施形態において、本明細書における構成要素は、本装置を利用する外科医等のユーザーのニーズに対応する様式で設計することができる。使用において、可動面(moving surfaces)等の本明細書における構成要素の全ては、好ましくは、持ちやすく、男性及び/又は女性の広範囲の手のサイズにフィットすることができる。本明細書に説明されている1つ以上の構成要素に、オプションとして滑り止め表面を組み込むことができ、例えば、外科用手袋とよく相互作用して滑りを防止する表面特徴、表面、及び/又は材料を提供する。或る特定の実施形態において、入力インターフェースは、手袋をはめた指を使用して容易に表示して容易に作動させることができる。或る特定の実施形態において、インターフェースのうちの1つ以上は、アクティブにされたときに触覚フィードバックを提供することができ、注入プロセスのいずれかの部分が機械的である場合、触覚フィードバックは、例えば、治療用細胞材料等の流体が腎腔(renal space)等の組織内に注入されるときに、本明細書に開示される構成要素を適切に使用するうえで重要であり得る。小型の注射器ほど、その内容物を注入するために必要な力が小さく、また図24に非限定的な例で示したように、より良好に制御するために特殊な手の位置で保持されることがあるため、ユーザーはしばしばより小型の注射器を好む。したがって、本明細書における構成要素の人間工学及びフィット感を考慮することができる。或る特定の実施形態において、1つ以上の指示、使用説明、ガイド、ビデオ、操作マニュアル等を提供することができ、これらはエンドユーザー(外科医等)のニーズに合わせて作成することができる。指示等は、契約エンジニアリング組織の設計プロセスのニーズに従って、及び/又はそれによって定義されるように、構成することができる。
【0068】
装置100、トロカール200、及び針400は、様々な異なる方法で使用することができる。例えば、注入装置100は、スタイレット300がトロカール200内の所定の位置にある状態で、トロカール200に取り付けることができる。カートリッジ130又は他の流体リザーバーは、この時点で、又は注入前に、装置100に係合させることができる。次に、トロカール200及びスタイレット300を操縦して、(上述したような)所望の深さで患者の真皮等の外側組織表面、及び臓器(例えば腎臓)等の内側組織標的部位を貫通することができる。次いでスタイレット300を、除去内腔140を通じてトロカール200から除去することができる。スタイレット300の除去によって、トロカール200の安定化機構220の作動をトリガーすることができる。図12に示したように、足部222が展開して、組織を把持又は組織と係合することができる。トロカール200を装置100から切り離すことができ、使用中のこの時点で、トロカール200は、真皮との摩擦による相互作用を通じて、及び安定化機構220の使用を通じて、支持される。非限定的な例示的な例では、図25は、腎臓に対して使用されているトロカール200の簡略図を示しており、トロカール200は、真皮との摩擦による相互作用を受けており、また、腎臓の皮質(腎臓のうち腎被膜と腎髄質の間の外側部分で、患者ごとに厚さが異なり得る)に対して安定化機構220の使用を通じて安定化作用を受けている。例えば、皮質の厚さは、約3mm~12mm、より具体的には約3.2mm~11mmであり、平均値は約5.9mmである。注射針400を装置100に係合させることができる。次いで、針400は、(上述したように)所望の深さにおいてスタイレット300によって形成された同じ穴を通って標的組織を貫通するまでトロカール200内に挿入することができ、装置100のアクチュエーター104を作動させて、治療用細胞又は細胞産物等の流体を標的部位に送達することができる。安定化機構220は、トロカール200の圧縮ばね部208及びバルブ120の柔軟な取付部と協働して、ユーザーによる装置100の保持及び作動に対する臓器(例えば腎臓)等の組織部位の動きを吸収することができる。流体が送達されるとき、針400を、標的組織部位内の貫通位置から引き込むことができる。トリガーレバーは、針が引き込まれるにつれて針の管路内に治療溶液のパルスを送達する電気機械システムを作動させる。臓器等の同じ組織部位への複数の注入を実行することができる。
【0069】
あるいは、トロカール200及びスタイレット300を、装置100に取り付けずに、患者内の所定の位置に送り込むことができ、スタイレット300を取り外してトロカール200の安定化機構220を作動させることができる。次いで、流体の送達のために、装置100と係合した針400をトロカール200に挿入することができる。スタイレット300を有するトロカール200を、装置100に取り付けられた状態で患者内に配置することもでき、その後、装置100をトロカール200から取り外し、スタイレット300を手動で取り外した後、針400を取り付けてトロカール200に挿入することができる。トロカール200が、可逆的に折り畳み可能な拡張要素500等の追加の係合機構を有する場合、スタイレット300がトロカール200内の所定の位置にある状態で、注入装置100をトロカール200に取り付けることができる。次いで、トロカール200及びスタイレット300を操縦して、外側組織表面及び内側組織標的部位を貫通させることができる。スタイレット300を取り外して装置100を切り離した後、ただし針400を挿入する前に、拡張要素500を展開させることができる。しかしながら、この順序は、異なる係合機構の使用メカニズムに応じて変化し得る。装置100が特に腎臓を治療するために使用されるときには、潜在的に線維性組織の領域である腎臓の被膜を突き通して、腎臓に規定量を送達し、同時に針400を引き抜きながら治療用細胞又は細胞産物の送達ボーラス用の拡張空間を可能にするために、トロカール200、スタイレット300、及び針400を上述したように使用することができる。本明細書で使用されるとき、文脈によっては、「線維性」は、線維性細胞外基質の堆積を意味する又は表すが、ここは通常では周囲の組織よりも高密度である。高密度に線維化した組織は、しばしば慢性疾患状態の結果である。或る特定の実施形態において、線維性組織は、慢性疾患状態の結果である。或る特定の実施形態において、高密度に線維化した組織は、慢性疾患状態の結果である。或る特定の実施形態において、線維性組織は、本明細書において提供される装置、システム、又は方法による治療を受ける(例えば、装置、システム、又は方法を使用して送達される組成物の送達部位である)臓器に存在する。
【0070】
或る特定の実施形態において、使用前に、カートリッジ130を、約25℃~30℃、より具体的には約26度~28℃に温めることができる。或る特定の実施形態において、使用前に、カートリッジ130を、約25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃に温めることができる。或る特定の実施形態において、温めは、約5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、若しくは60分、又は約15分~約45分にわたる等、制御された時間にわたり行うことができる。或る特定の実施形態において、カートリッジ130が温められたら、中の流体の送達は、カートリッジ130を廃棄することを避けるために、好ましくは約0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、又は2.5時間以内に行うことができる。
【0071】
或る特定の実施形態において、流体を送達して標的組織部位及びトロカール200から注射針400を引き抜いた後、プラグ700(ヒドロゲルプラグ又はプレジェット等、例えばGelfoam(登録商標)プレジェット)をトロカール200に手動で挿入し、押し下げてトロカール200の遠位端部206から出し、貫通の傷口を密閉することができる。装置100及びトロカール200は、プラグの送込みに対応するように構成することができる。或る特定の実施形態において、約2mm~約4mm×約10mmとして開始されるプレジェット(Gelfoam(登録商標)プレジェット等)を、トロカール内に挿入(例えば手動で挿入)できるように圧縮し、押し下げてトロカールの先端から出して、腎臓被膜の傷口を密閉する。或る特定の実施形態において、プレジェットは、吸収性のコットン又は他の柔らかい材料(ヒドロゲル等)の小さな詰め物である。或る特定の実施形態において、プレジェット又はプラグは、身体又は臓器の傷口又は他の開口部を塞ぐために使用される。或る特定の実施形態において、本装置は、この末端傷口を密閉するプロセスに対応するように構成されている。非限定的な例示的な例において、図26は、腎臓に対して使用されているトロカール200の簡略図を示しており、プラグ700がトロカール200を通じて「マスケット装填(musket loaded)」される、又は手動で所定の位置に配置される。次いで、トロカール200を患者から取り外すことができる。したがって、本明細書に開示されるプロセス全体を通して、1つ以上の構成要素は、線維性の腎臓被膜等の組織を手動で突き通すことと、治療用細胞材料等の流体を円滑かつ制御下で送達することと、患者の動的な環境においてトロカールを位置的に安定化させること(この結果として組織の外傷を最小限にしながら治療用細胞材料の送達に安定性を与える)とを支援することができ、これらは他の方法では課題が生じたが、本明細書に示した1つ以上の構成要素は、これらに対処するように構成することができる。
【0072】
標的組織部位及び/又は標的臓器として腎臓に焦点を当てて説明したが、本明細書における構成要素は、多数の臓器及び/又は内部組織部位及び/又はそれぞれの治療に広く適用することができる。非限定的な例として、本明細書で説明した構成要素は、臓器のような疾患部位(腎臓又は腫瘍部位等)の実質区画及び/又は間質区画等の1つ以上の標的組織部位に(細胞治療薬等の)1つ以上の注入量を送達するように設計された手持ち式注入装置の構成要素である。したがって、或る特定の実施形態において、本明細書の構成要素は、潜在的に腎臓内の線維性組織の領域である腎臓被膜のような臓器部位等の組織部位の外面を突き通し、治療用細胞材料のボーラス等の送達される容量のための拡張空間を可能にするために同時に注射針を引き抜きながら、注入経路に沿って規定量を送達することができる。或る特定の実施形態において、臓器等の同じ標的部位への複数回の注入が可能であり得る。或る特定の実施形態において、本明細書における構成要素は、臓器等の標的組織部位の表面に対して、トロカールの展開を通じて自身を安定化させる手段を有することができ、治療用細胞材料溶液等の容量を含む充填済み無菌カートリッジを受け入れることができ、外科医等の意図する操作者に対して人間工学的とすることができる。或る特定の実施形態において、本明細書における構成要素は、直観的であり、指定されたサイズの範囲内の皮下注射針を受け入れることができ、可変の注入量又は吐出量及び貫通深さを設定する能力を有することができる。
【0073】
或る特定の実施形態において、本注入装置は、カートリッジベースの治療用量を受け入れることができる単一の物理的装置からなることができる。或る特定の実施形態において、標準的なトロカール/スリーブ/針の組合せを、市販の個別にパッケージされ滅菌された備品から装置に組み込むことができる。そのような例では、対象サイズは、様々な標準サイズから交換することができ、例えば皮下注射針が最小約25g~最大約20gの範囲であり、トロカール/スリーブの組合せが少なくとも約20gである。或る特定の実施形態において、トロカール/スリーブのサイズは約21g~約18gである。或る特定の実施形態において、対象は高い肥満度指数(例えば少なくとも約35kg/m、36kg/m、37kg/m、38kg/m、39kg/m、又は40kg/mのBMI)を有する。BMIは、肥満の指標であり、高いBMIは、高い肥満に関連付けられる。或る特定の実施形態において、高いBMIの患者に対しては、約20g~約18gのスリーブサイズと、約21gかつ約20cm~約30cm(例えば25cm)の長さの針が使用される。或る特定の実施形態において、本明細書において提供されるのは、正常なBMIの患者と高いBMIの患者との両方を治療するのに有用な装置又はシステムである。或る特定の実施形態において、臓器等の標的部位への注射針の注入経路は、トロカールとの組合せによって提供することができる。或る特定の実施形態において、トロカールは、注入装置から約5cm~25cm、より具体的には約10cm~20cm等の比較的大きな距離だけ離れた位置で臓器等の標的組織内に貫通する結果として場合によっては発生し得るキンクに対して、注射針を機械的に支持する役割を果たすことができる。
【0074】
本明細書における構成要素のうちの1つ以上の或る特定の実施形態において、構成要素には、適切な規制機関の文書(例えば、合衆国連邦規則集21巻801章)に従って、ISO準拠の安全ラベルを貼り付けることができる。或る特定の実施形態において、本明細書における構成要素は、様々なハウジング及び製品スキン(product skins)が所定の位置にあり固定されている場合、制御されないアクセスに対して安全であると考えることができ、本明細書における構成要素は、オプションとして、様々なトロカール、スリーブ、及び針の構成要素を除き、外部からアクセスできる約0.5mm未満の半径を有する鋭い縁部を有しないことができる。或る特定の実施形態において、構成要素は、約5.25VDCにおいて約1.0Aよりも大きい電力を供給することができる、外部からアクセス可能な電気接続部を有しないことができる。或る特定の実施形態において、プラスチック等の任意の材料、及び/又は仕上げは、UL94 V-0以上の燃焼性定格を有することができる。
【0075】
或る特定の実施形態において、本明細書における構成要素は、診療所及び病院等の温度制御された室内環境で使用されるように構成することができ、構成要素は、表3に示したように或る範囲の環境条件にわたり性能要件を満たすように構成することができる。
【0076】
【表4】
【0077】
或る特定の実施形態において、本明細書に開示される構成要素は、ガンマ線、エチレンオキシド、電子ビーム、又はガスを使用する等の様々な滅菌処理(例えば標準的な滅菌処理)の後に正常に動作するように構成することができる。1種類以上のプラスチックを組み込む或る特定の実施形態において、プラスチックは、滅菌処理によって脆化しないように構成することができ、脱色又は色の変化を最小限にすることができる。1つ以上の電気機械構成要素を組み込む本明細書の或る特定の実施形態において、電子機器と互換性のある滅菌処理を使用することができ、滅菌処理は、滅菌されて1つ以上の構成要素の作動要素を無菌的に含むことができる除去可能なスキン及び/又は表面を除去する等の様々なステップ及び追加の特徴を組み込むことができる。表4及び表5は、様々なタイプの滅菌に適合する樹脂材料を提示している。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
或る特定の実施形態において、パッケージングされた本明細書の1つ以上の構成要素は、長期間経過した後に動作環境範囲に戻したときに正常に動作するように構成することができる。例えば表6は、パッケージが72時間の保管期間中に様々な環境条件にさらされた後、構成要素が正常に動作する状況を示している。
【0081】
【表7】
【0082】
パッケージングされた或る特定の実施形態において、パッケージングされた構成要素は、商業輸送業者によって輸送されたときに機能上又は目に見える外観上の損傷を受けないように構成及びパッケージングすることができる。さらに、本明細書における構成要素の様々なパッケージングされた実施形態は、約1メートルの高さから落下したときに機能上又は目に見える外観上の損傷を受けないように構成及びパッケージングすることができる。
【0083】
上述した各構成要素は、互いに独立して使用する、完全に一緒に使用する、又はこれらの任意の組合せで使用することができる。例えば構成要素は、エンドユーザーに、独立して提供することができる、又は、様々な組合せ、システム、及びキットとして提供することができる。カートリッジ130の様々な組合せ、及び/又は、針400、トロカール200、及び/又はスタイレット300のサイズ範囲及び種類を、装置100と共に提供することもできる。或る特定の実施形態において、1つ以上の構成要素又は全ての構成要素を、パッケージから取り出したときにエンドユーザーがすぐに動作させることのできる完全に組み立てられたユニットとして、パッケージング及び出荷することができる。或る特定の実施形態において、組立て及び/又は使用に関する説明、例えば、エンドユーザーが約10分未満で1つ以上を組み立てるか又は構成して動作させることを可能にする説明を、任意の構成要素と共に提供することができる。
【0084】
注入可能製剤の非限定的な例
本明細書において提供される装置及びシステムは、異なる医薬流体製剤を送達するために構成することができる。或る特定の実施形態において、流体製剤は、活性剤(細胞、細胞産物、又は化合物等)及び温度感受性生体材料を含む。或る特定の実施形態において、温度感受性生体材料は、活性剤のための薬学的に許容される担体である。或る特定の実施形態において、製剤は、対象に投与される生物活性腎細胞等の活性剤のための好ましい環境を作り出す特性を有する生体材料を組み込んでいる。
【0085】
或る特定の実施形態において、流体製剤はヒドロゲルになることができ、例えば、製剤は溶融温度以上のヒドロゲルである。
【0086】
或る特定の実施形態において、本明細書において提供される装置及びシステムは、溶融するのに十分な温度、又は別様に組成物が液体であることを保証するのに十分な温度まで加熱された製剤(NKA等)を送達するように構成されている。或る特定の実施形態において、装置は、製剤を温めるように、又は製剤が液体である温度を維持するように、構成されている。
【0087】
或る特定の実施形態において、製剤の温度感度は、製剤中の生体材料の割合を調整することによって変化させることができる。例えば、溶液中のゼラチンの割合を調整して、最終的な製剤(例えば、液体、ゲル、ビーズ等)中のゼラチンの温度感度を調節することができる。
【0088】
或る特定の実施形態において、温度感受性生体材料は、(i)約8℃以下では実質的に固体の状態であり、(ii)周囲温度以上では実質的に液体の状態であり得る。或る特定の実施形態において、周囲温度は、室温程度である。
【0089】
或る特定の実施形態において、温度感受性生体材料の状態は、約8℃以下の温度において実質的に固体の状態である。或る特定の実施形態において、実質的に固体の状態は、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、又は約8℃において維持される。或る特定の実施形態において、実質的に固体の状態は、ゲルの形態を有する。或る特定の実施形態において、温度感受性生体材料の状態は、周囲温度以上において実質的に液体の状態である。或る特定の実施形態において、実質的に液体の状態は、約25℃、約25.5℃、約26℃、約26.5℃、約27℃、約27.5℃、約28℃、約28.5℃、約29℃、約29.5℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、又は約37℃において維持される。或る特定の実施形態において、周囲温度は、室温程度である。
【0090】
或る特定の実施形態において、温度感受性生体材料の状態は、周囲温度程度又はそれ以下の温度において実質的に固体の状態である。或る特定の実施形態において、周囲温度は、室温程度である。或る特定の実施形態において、実質的に固体の状態は、約17℃、約16℃、約15℃、約14℃、約13℃、約12℃、約11℃、約10℃、約9℃、約8℃、約7℃、約6℃、約5℃、約4℃、約3℃、約2℃、又は約1℃において維持される。
【0091】
或る特定の実施形態において、送達される細胞集団及び調製物は、温度感受性生体材料で被覆される、温度感受性生体材料の上に堆積される、温度感受性生体材料に埋め込まれる、温度感受性生体材料に付着する、温度感受性生体材料に播種される、温度感受性生体材料に懸濁される、又は温度感受性生体材料に包含されてもよい。或る特定の実施形態において、細胞集団は、温度感受性生体材料内で三次元細胞アグリゲート若しくはスフェロイド又は三次元管状構造として構築されてもよい。
【0092】
或る特定の実施形態において、温度感受性生体材料は、第1の状態と第2の状態との間の遷移状態を有する。或る特定の実施形態において、遷移状態は、約8℃の温度と周囲温度程度との間の固体から液体への遷移状態である。或る特定の実施形態において、周囲温度は、室温程度である。或る特定の実施形態において、固体から液体への遷移状態は、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、及び約18℃のうちの1つ以上の温度において起こる。
【0093】
或る特定の実施形態において、温度感受性生体材料は、所与の温度において、センチポアズ(cP)単位で測定される或る特定の粘度を有する。或る特定の実施形態において、生体材料は、25℃において、約1cP~約5cP、約1.1cP~約4.5cP、約1.2cP~約4cP、約1.3cP~約3.5cP、約1.4cP~約3.5cP、約1.5cP~約3cP、約1.55cP~約2.5cP、又は約1.6cP~約2cPの粘度を有する。或る特定の実施形態において、生体材料は、37℃において約1.0cP~約1.15cPの粘度を有する。37℃における粘度は、約1.0cP、約1.01cP、約1.02cP、約1.03cP、約1.04cP、約1.05cP、約1.06cP、約1.07cP、約1.08cP、約1.09cP、約1.10cP、約1.11cP、約1.12cP、約1.13cP、約1.14cP、又は約1.15cPとすることができる。或る特定の実施形態において、生体材料は、ゼラチン溶液である。ゼラチンは、溶液中に約0.5%(w/v)、約0.55%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.65%(w/v)、約0.7%(w/v)、約0.75%(w/v)、約0.8%(w/v)、約0.85%(w/v)、約0.9%(w/v)、約0.95%(w/v)、又は約1%(w/v)で存在する。一例において、生体材料は、PBS中の0.75%(w/v)ゼラチン溶液である。或る特定の実施形態において、0.75%(w/v)溶液は、25℃において約1.6cP~約2cPの粘度を有する。或る特定の実施形態において、0.75%(w/v)溶液は、37℃において約1.07cP~約1.08cPの粘度を有する。ゼラチン溶液は、PBS、DMEM、又は別の適切な溶媒中で提供することができる。
【0094】
或る特定の実施形態において、流体製剤はゼラチンベースである。ゼラチンは、間葉系組織の細胞外マトリックス(ECM)の主要成分であるコラーゲンに由来する、非毒性で生分解性の水溶性タンパク質である。コラーゲンは、動物体内の様々な結合組織の細胞外スペース中の主要な構造タンパク質である。コラーゲンは、結合組織の主成分として、哺乳類では最も多く含まれるタンパク質であり、全身のタンパク質含有量の25%~35%を占める。コラーゲン組織は、ミネラル化の程度により、硬いもの(骨)、柔軟なもの(腱)、又は硬いものから柔軟なものへの勾配を持つもの(軟骨)がある。コラーゲンは、細長いフィブリル状であり、主として腱、靭帯及び皮膚等の線維組織に存在する。また、角膜、軟骨、骨、血管、腸、椎間板、及び歯の象牙質にも多く含まれている。筋肉組織では、コラーゲンは筋内膜の主成分の役割を果たしている。コラーゲンは筋肉組織の1%~2%を占め、強靭な腱のある筋肉の重量の6%を占めている。コラーゲンは、体内の様々な場所に存在している。しかし、人体に存在するコラーゲンの90%以上はI型である。
【0095】
現在までに、28種類のコラーゲンが同定され、記載されている。これらは、形成する構造によっていくつかのグループに分けることができ、繊維形成性(I型、II型、III型、V型、XI型)、非繊維形成性FACIT(三重らせんが途切れたフィブリル結合コラーゲン(Fibril Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(IX型、XII型、XIV型、XVI型、XIX型)、短鎖(VIII型、X型)、基底膜(IV型)、マルチプレキシン(途切れを持つ複数の三重らせんドメイン(Multiple Triple Helix domains with Interruptions))(XV型、XVIII型)、MACIT(三重らせんが途切れた膜結合型コラーゲン(Membrane Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(XIII型、XVII型)、その他(VI型、VII型)である。最も一般的な5種類は、I型:皮膚、腱、血管結節、臓器、骨(骨の有機部分の主成分)、II型:軟骨(軟骨の主なコラーゲン成分)、III型:網状(細網線維の主成分)(I型と並んでよく見られる)、IV型:基底層、基底膜の上皮分泌層(epithelium-secreted layer)を形成している、V型:細胞表面、毛髪、胎盤である。
【0096】
ゼラチンは、細胞接着、増殖、幹細胞分化を促進するアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含む情報シグナルを保持する。ゼラチンの特徴的な特性として、ゼラチンは上限臨界溶解温度挙動(UCST)を示す。特定の温度閾値を超えると、ゼラチンは柔軟でランダムなシングルコイルを形成して水に溶解することができる。冷却すると、水素結合及びファンデルワールス相互作用が起こり、三重らせんが形成される。このコラーゲン様の三重らせんが接合部として機能し、ゾル-ゲル転移を引き起こす。ゼラチンは、医薬用途及び医療用途において広く使用されている。
【0097】
或る特定の実施形態において、流体注入可能な細胞製剤は、ブタゼラチンに基づいており、ブタゼラチンはブタ皮膚から供給されてもよく、例えばNitta Gelatin NA Inc社(NC、米国)又はGelita USA Inc.社(IA、米国)から商業的に入手することができる。ゼラチンは、例えば、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に溶解して、異なる温度でゲル化及び液化できる熱応答性ヒドロゲルを形成してもよい。或る特定の実施形態において、注入可能な細胞組成物を処方するために使用されるヒドロゲルは、この技術分野における当業者に既知の方法論を使用して発現及び精製された組換えヒトゼラチン又は動物ゼラチンに基づいている。或る特定の実施形態において、I型、αI型ヒトコラーゲンのcDNAの全て又は一部を含む発現ベクターは、酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)で発現される。他の発現ベクター系及び生物は、この技術分野における当業者に既知である。或る特定の実施形態において、本開示のゼラチンベースヒドロゲルは、室温(22℃~28℃)以上では液体であり、冷蔵温度(2℃~8℃)に冷却されるとゲル化する。
【0098】
当業者には、上述した実施形態に基づく本発明の更なる特徴及び利点が理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に図示及び説明したものによって限定されるものではない。本明細書で引用された全ての刊行物及び参考文献は、その全体が引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
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図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図27C
図27D
図27E
図27F
【国際調査報告】