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特表2023-522795SARS-CoV-2感染に対するタンパク質及びワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2感染に対するタンパク質及びワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/50 20060101AFI20230524BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20230524BHJP
   C07K 14/245 20060101ALI20230524BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 15/81 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230524BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230524BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230524BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230524BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C12N15/50
C07K14/165 ZNA
C07K14/245
C07K14/435
C12N15/81 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12N15/86 Z
A61P31/12
A61P31/14
A61K39/00 H
A61K39/39
C12N15/70 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507847
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2020116109
(87)【国際公開番号】W WO2021169255
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202010113054.4
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522043943
【氏名又は名称】ウエストバック バイオファーマ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WestVac Biopharma Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】No. 552 Fenghuang Road, Chengdu Tianfu International Bio-Town, Chengdu, Sichuan, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シァウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,グァンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジンリャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジンユン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ユーチュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヂェンリン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ,ヂーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,グオブォ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG32
4B064BH20
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD45
4B065CA45
4C085AA03
4C085AA38
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4C085FF13
4C085FF14
4C085FF19
4C085FF21
4C085GG01
4C085GG03
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA11
4H045CA40
4H045CA51
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA29
4H045EA53
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
4H045GA30
(57)【要約】
SARS-CoV-2感染に対するタンパク質及びワクチンであって、前記タンパク質はSARS-CoV-2のSタンパク質においてアンジオテンシン変換酵素2受容体と結合するドメインを含む。SARS-CoV-2感染を予防及び/又は治療するワクチンであって、前記SARS-CoV-2感染に対するタンパク質、及び薬学的に使用可能な補助材料添加剤又は補助性成分とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2感染を防止するタンパク質であって、
SARS-CoV-2のSタンパク質においてアンジオテンシン変換酵素2受容体と結合するドメインを含むことを特徴とする、タンパク質。
【請求項2】
前記ドメインのアミノ酸配列はSEQ ID No:1又はSEQ ID No:2であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
アミノ酸配列がSEQ ID No:1、SEQ ID No:2、SEQ ID No:3、SEQ ID No:4から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の前記タンパク質の前駆体であって、
前記SARS-CoV-2感染を防止するタンパク質にシグナルペプチド及び/又はタンパク質タグが接続され、
さらに、前記タンパク質タグがヒスチジンタグ、チオレドキシンタグ、グルタチオン転移酵素タグ、ユビキチン様修飾タンパク質タグ、マルトース結合タンパク質タグ、c-Mycタンパク質タグ、Avi tagタンパク質タグ、窒素源利用物質Aタンパク質タグから選択される少なくとも一種であることを特徴とする、前駆体。
【請求項5】
前記SARS-CoV-2感染を防止するタンパク質には、さらに、タンパク質タグを切断するプロテアーゼ識別ドメインが接続され、
さらに、前記プロテアーゼがエンテロキナーゼ、TEVプロテアーゼ、トロンビン、凝固因子Xa、カルボキシペプチダーゼA、ライノウイルス3cプロテアーゼから選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項4に記載の前駆体。
【請求項6】
アミノ酸配列がSEQ ID No:5、SEQ ID No:6、SEQ ID No:7、SEQ ID No:14から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項4又は5に記載のタンパク質。
【請求項7】
請求項1~3の何れか一項に記載の前記タンパク質及び/又は請求項4~6の何れか一項に記載の前記前駆体の、SARS-CoV-2感染を予防及び/又は治療する薬品の調製における用途。
【請求項8】
SARS-CoV-2感染を予防及び/又は治療するワクチンであって、
請求項1~3の何れか一項に記載の前記タンパク質及び/又は請求項4~6の何れか一項に記載の前記前駆体と、
薬学的に使用可能な補助材料添加剤又は補助性成分とを含むことを特徴とする、ワクチン。
【請求項9】
前記補助性成分は免疫補助剤アジュバントであり、
さらに、前記免疫補助剤アジュバントはアルミニウム塩、カルシウム塩、植物サポニン、植物多糖、モノホスホリルリピッドA、ムラミルジペプチド、ムラミルトリペプチド、スクワレン水中油型乳剤、細菌毒素、GM-CSFサイトカイン、脂質、陽イオン脂質体材料から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
以下の項目の少なくとも一つを満たすものであり、
前記アルミニウム塩は水酸化アルミニウム、明礬から選択される少なくとも一種であり、
前記アルミニウム塩はリン酸三カルシウムであり、
前記植物サポニンはQS-21又はISCOMであり、
前記植物多糖はオウギ多糖であり、
前記スクワレン水中油型乳剤はMF59であり、
前記細菌毒素は組換えコレラ毒素、ジフテリア毒素から選択される少なくとも一種であり、
前記脂質はホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、コレステロール、ジオレオイルホスホエタノールアミンから選択される少なくとも一種であり、
前記陽イオン脂質体材料はN-(2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)-N,N-ジメチルメタンアミニウム、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、カチオン性コレステロール、トリフルオロ酢酸ジメチル-2,3ジオレオイルオキシプロピル-2-(2-スペルミンホルミルアミノ)エチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドから選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
前記ワクチンは注射剤であり、
さらに、前記注射剤が筋肉注射剤であることを特徴とする、請求項8~10の何れか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
ポリヌクレオチドであって、
請求項1~3の何れか一項に記載の前記タンパク質、請求項4~6の何れか一項に記載の前記前駆体をコーディングすることを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項13】
ヌクレオチド配列がSEQ ID No:8、SEQ ID No:9、SEQ ID No:10、SEQ ID No:11、SEQ ID No:12、SEQ ID No:13から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
組み換えベクターであって、
請求項12又は13に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、組み換えベクター。
【請求項15】
バキュロウイルス発現ベクター、哺乳動物細胞発現ベクター、大腸菌発現ベクター、酵母発現ベクターのうちの少なくとも一種を用いて、
さらに、前記バキュロウイルス発現ベクターがpFastBac1であり、
さらに、前記大腸菌発現ベクターがpET32aであり、
さらに、前記酵母発現ベクターがpPICZaAであり、
さらに、前記哺乳動物細胞発現ベクターがCHO細胞発現ベクターであり、さらに、前記CHO細胞発現ベクターがpTT5又はFTP-002であることを特徴とする、請求項14に記載の組み換えベクター。
【請求項16】
宿主細胞であって、
請求項14又は15に記載の組み換えベクターを含むことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項17】
昆虫細胞、哺乳動物細胞、大腸菌、酵母のうちの少なくとも一種を用いて、
さらに、前記昆虫細胞がsf9細胞、sf21細胞、Hi5細胞から選択される少なくとも一種であり、
さらに、前記哺乳動物細胞がCHO細胞であることを特徴とする、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~3の何れか一項に記載のタンパク質の調製方法であって、
請求項16又は17に記載の宿主細胞を培養して、前記タンパク質又は前記前駆体を発現させた後、前記タンパク質を回収するステップを含むことを特徴とする、調製方法。
【請求項19】
請求項1~3の何れか一項に記載の前記タンパク質の調製方法であって、
請求項12又は13に記載のポリヌクレオチドを含む組み換えベクターを構築し、人体に対し免疫を行い、前記タンパク質を生成するステップを含むことを特徴とする、調製方法。
【請求項20】
前記ベクターはmRNA、DNAワクチン、アデノウイルス、ワクシニアアンカラウイルス(vaccinia Ankara virus)、アデノ随伴ウイルスから選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項19に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2感染に対するタンパク質及びワクチンに関するものであり、医薬品の分野である。
【背景技術】
【0002】
SARS-CoV-2は、世界保健機関が命名した新型ベータコロナウイルスである。ウイルスはエンベロープを持ち、粒子は円形又は楕円形で、多くの場合、多形で直径60-140 nmである。SARS-CoVやMERS-CoVとは遺伝的に異なり、これまで人間に確認されていない新しいコロナウイルスの一派である。コウモリはSARS-CoV-2の自然宿主である可能性があり、さらに、一部の研究では、パンゴリンもウイルスの動物由来である可能性が示した。新型コロナウイルスSARS-CoV-2は数万人が感染しており、予防や治療に有効な抗ウイルス剤がないため、このウイルスに対するワクチンの開発が重要な課題となっている。
【0003】
SARS-CoV-2の主な構造タンパク質には、スパイクタンパク質(Spike, S)、エンベロープタンパク質(Envelop, E)、膜タンパク質(Membrane, M)、ヌクレオキャプシド(Nucleocapsid, N)があり、Sタンパク質はウイルスの感染と毒性に重要な役割を担っている。アンジオテンシン転移酵素2(ACE2)はSARSコロナウイルスの機能性受容体であり、最近の研究では、SARS-CoV-2もACE2受容体との結合によって宿主細胞に入り、ウイルスの感染及び複製が発見された。SARS-CoV-2のSタンパク質は、S1とS2の2つの構造ドメインからなり、S1タンパク質はACウイルスと宿主細胞の受容体との結合、細胞膜との融合、ウイルスの侵入・感染E2受容体に結合する構造ドメインで、受容体結合領域(RBD, Receptor-binding domain)である。ウイルスと宿主細胞の受容体との結合、細胞膜との融合、ウイルスの侵入・感染を担っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先行技術に存在する技術的問題の少なくとも1つを解決することを目的とする。このため、本発明の目的は、抗SARS-CoV-2感染のタンパク質を提供することにある。本発明のもう1つの目的は、SARS-CoV-2感染症の予防及び/又は治療のために、上記のタンパク質を含むワクチンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、抗SARS-CoV-2感染のタンパク質を提供するものである。アンジオテンシン転移酵素2受容体に結合するSARS-CoV-2のSタンパク質の構造ドメインを含む。
【0006】
さらに、上記構造ドメインの構造基盤は、Sタンパク質における受容体結合領域のRBDのアミノ酸319~541であり、アミノ酸319のアルギニンが欠損していてもよい。
【0007】
さらに、上記構造ドメインのアミノ酸配列が、SEQ ID NO:l又はSEQ ID NO:2である。
【0008】
さらに、上記タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4の中から少なくとも1つが選択される。
【0009】
SEQ ID NO:l:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNF
SEQ ID NO:2:
VQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNF
SEQ ID NO:3:
RVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNG
SEQ ID NO:4:
VQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNG
SARS-CoV-2ウイルスのSタンパク質の細胞外ドメインの構成を図13に示す。SP、シグナルペプチド;NTD、N末端ドメイン;RBD、受容体結合領域;FP、膜融合ペプチド;IFP、内部融合ペプチド;HRL、ヘプタッドリピート領域1;HR2、ヘプタッドリピート領域2;PTM、膜近傍ドメイン;TM、膜貫通ドメイン。
【0010】
SEQ ID NO:lに示される上記タンパク質は、受容体結合領域、すなわちRBD(アミノ酸319~541)に基づく抗SARS-CoV-2薬である。本発明のタンパク質のアミノ酸配列にタンパク質タグを挿入するために、配列の1位のアミノ酸Rも欠落していてもよく、すなわち、アミノ酸配列がSEQ ID NO:2のように示される。
【0011】
さらに、SEQ ID NO:3に示されるようなタンパク質は、アミノ酸541の後に4アミノ酸 NFNG延長されていることである。すなわち受容体結合領域(RBD)は、実際にはアミノ酸319~545であり、本発明の抗SARS-CoV-2タンパク質の安定性を向上できる。本発明のタンパク質のアミノ酸配列にタンパク質タグを挿入するために、配列の1位のアミノ酸Rも欠落していてもよく、すなわちアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示される。
【0012】
さらに、タンパク質のC末端に8xHisタンパク質タグを融合することで、タンパク質の精製を促進することができる。
【0013】
本発明は、上記タンパク質の前駆体を提供する:上記抗SARS-CoV-2感染のタンパク質に、シグナルペプチド及び/又はタンパク質タグが結合されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、上記タンパク質タグは、ヒスチジンタグ、チオレドキシンタグ、グルタチオン転移酵素タグ、ユビキチン様修飾タンパク質タグ、マルトース結合タンパク質タグ、c-Mycタンパク質タグ、Avi tagタンパク質タグ、窒素源利用物質Aタンパク質タグの中から少なくとも1つが選択される。
【0015】
さらに、上記前駆体は、上記抗SARS-CoV-2感染のタンパク質に、タンパク質タグを切断のプロテアーゼ認識領域を連結している。
【0016】
さらに、上記プロテアーゼは、エンテロキナーゼ、TEVプロテアーゼ、トロンボン、凝固因子Xa、カルボキシペプチダーゼA、ライノウイルス3cプロテアーゼの中から少なくとも1つが選択される。
【0017】
さらに、上記前駆体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、 SEQ ID NO:14の中から少なくとも1つが選択される。
【0018】
SEQ ID NO:5(昆虫細胞シグナルペプチド+Sタンパク質RBD+Hisタグのアミノ酸配列):
MLLVNQSHQGFNKEHTSKMVSAIVLYVLLAAAAHSAFAADVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRV
VVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGHHHHHHHH
SEQ ID NO:6(昆虫細胞シグナルペプチド+大腸菌Trx(チオレドキシン)+Sタンパク質RBDのアミノ酸配列):
MLLVNQSHQGFNKEHTSKMVSAIVLYVLLAAAAHSAFAADSDKIIHLTDDSFDTDVLKADGAILVDFWAEWCGPCKMIAPILDEIADEYQGKLTVAKLNIDQNPGTAPKYGIRGIPTLLLFKNGEVAATKVGALSKGQLKEFLDANLAGSGSGHMHHHHHHSSGDDDDKVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNG
SEQ ID NO:7(昆虫細胞シグナルペプチド+昆虫Trx(チオレドキシン)+Sタンパク質RBDのアミノ酸配列):
MLLVNQSHQGFNKEHTSKMVSAIVLYVLLAAAAHSAFAADSIHIKDSDDLKNRLAEAGDKLVVIDFMATWCGPCKMIGPKLDEMANEMSDCIVVLKVDVDECEDIATEYNINSMPTFVFVKNSKKIEEFSGANVDKLRNTIIKLKLAGSGSGHMHHHHHHSSGDDDDKVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNG
SEQ ID NO: 14(人IL6タンパク質シグナルペプチド+8×Hisシグナルペプチド+EK制限酵素切断部位+RBD 320-545 226aaのアミノ酸配列):
MNSFSTSAFGPVAFSLGLLLVLPAAFPAPHHHHHHHHDDDDKVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNG
本発明は、SARS-CoV-2感染の予防及び/又は治療薬の調製において、上記タンパク質及び/又は上記前駆体の使用を提供する。
【0019】
本発明は、上記タンパク質及び/又は上記前駆体、並びに薬学的に許容される添加剤又は補助成分を含み、SARS-CoV-2感染の予防及び/又は治療のためのワクチンを提供する。
【0020】
さらに、上記の補助成分は、免疫アジュバントである。
【0021】
さらに、上記の免疫アジュバントは、アルミニウム塩、カルシウム塩、植物サポニン、植物多糖、モノホスホリルリピッドA(MPL)、ムラミルジペプチド、ムラミルトリペプチド、スクワレン水中油型乳剤(MF59)、組み換えコレラ毒素(rCTB)、GM-CSF細胞因子、脂質、陽イオン脂質体材料、CpG ODN(メチル化されていないシトシン及びグアニンジヌクレオチドをコア配列としているヌクレオチド配列、人工合成CpG)の中から少なくとも1つが選択される。
【0022】
さらに、上記のアルミニウム塩は、水酸化アルミニウム、ミョウバンの中から少なくとも1つが選択される。
【0023】
さらに、上記のカルシウム塩は、リン酸三カルシウムである。
【0024】
さらに、上記の植物サポニンは、QS-21又はISCOMである。
【0025】
さらに、上記の植物多糖は、レンゲ多糖類(APS)である。
【0026】
さらに、上記の脂質は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、コレステロール(Choi)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)の中から少なくとも1つが選択される。
【0027】
さらに、上記の陽イオン脂質体材料は、N-(2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロピル)-N,N-ジメチルメタンアミニウム(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(N-[1-2,3-dioleyoxy, propyl]-n,n,n-trimethylammonium chloride(DOTMA))、カチオン性コレステロール(DC-Chol)、トリフルオロ酢酸ジメチル-2,3ジオレオイルオキシプロピル-2-(2-スペルミンホルミルアミノ)エチルアンモニウム(DOSPA)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、セチルジメチルエチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)の中から少なくとも1つが選択される。
【0028】
また、上記のワクチンは、注射製剤である。
【0029】
さらに、上記のワクチンは、筋肉内注射製剤である。
【0030】
本発明は、ポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドコードのタンパク質又は前駆体を提供する。
【0031】
また、上記のポリヌクレオチドの塩基配列はSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13の中から少なくとも1つが選択される。
【0032】
SEQ ID NO:8(昆虫細胞シグナルペプチド+Sタンパク質RBD+Hisタグ、それに相応する最適化された塩基配列である):
GGATCCATGCTGCTGGTCAACCAATCTCATCAGGGCTTCAACAAAGAACATACTTCAAAAATGGTCTCCGCTATCGTGCTGTACGTGCTCCTCGCTGCTGCTGCTCACTCTGCTTTCGCTGCTGACGAATTCAGGGTGCAGCCAACCGAATCTATCGTCAGATTCCCAAACATCACTAACCTGTGCCCTTTCGGAGAGGTGTTCAACGCTACCAGGTTCGCCAGCGTCTACGCTTGGAACCGCAAGCGTATCAGCAACTGCGTCGCCGACTACTCTGTGCTGTACAACTCCGCTAGCTTCTCTACTTTCAAGTGCTACGGCGTGTCACCTACCAAGCTGAACGACCTGTGCTTCACTAACGTCTACGCCGACTCCTTCGTGATCCGCGGAGACGAAGTCCGTCAGATCGCTCCTGGACAGACCGGAAAGATCGCTGACTACAACTACAAGCTGCCAGACGACTTCACTGGCTGCGTGATCGCTTGGAACTCAAACAACCTGGACTCCAAGGTCGGTGGCAACTACAACTACCTGTACAGGCTGTTCAGAAAGTCAAACCTGAAGCCTTTCGAGCGCGACATCTCAACCGAAATCTACCAGGCTGGTTCCACTCCCTGCAACGGTGTGGAGGGCTTCAACTGCTACTTCCCCCTGCAGTCCTACGGTTTCCAGCCAACCAACGGAGTCGGTTACCAGCCTTACCGTGTGGTCGTGCTGAGCTTCGAACTGCTCCACGCTCCTGCTACTGTGTGCGGTCCCAAGAAGTCTACTAACCTGGTCAAAAACAAATGTGTCAACTTCAACTTCAACGGTCACCACCACCACCACCACCACCACTGATAAGCTT
SEQ ID NO:9 (昆虫細胞シグナルペプチド+大腸菌Trx(チオレドキシン)+Sタンパク質RBDに相応する塩基配列である):
GGATCCATGCTGCTGGTCAACCAGAGCCACCAGGGCTTCAACAAGGAACACACTTCCAAGATGGTGTCCGCCATCGTCCTGTACGTGCTGCTGGCCGCCGCTGCTCACAGCGCTTTCGCCGCTGACAGCGACAAGATCATCCACCTGACTGACGACAGCTTCGACACTGACGTGCTGAAGGCTGACGGTGCTATCCTGGTCGACTTCTGGGCCGAGTGGTGCGGCCCTTGCAAGATGATCGCTCCCATCCTGGACGAGATCGCCGACGAGTACCAGGGTAAACTGACTGTGGCCAAGCTGAACATCGACCAGAACCCCGGTACTGCTCCTAAGTACGGCATCCGTGGTATCCCCACTCTGCTGCTGTTCAAGAACGGTGAGGTGGCCGCTACCAAGGTCGGTGCTCTGAGCAAGGGCCAGCTGAAGGAGTTCCTGGACGCTAACCTGGCTGGTTCCGGCAGCGGCCACATGCACCACCACCACCATCACAGCAGCGGCGACGACGACGACAAGGTGCAGCCAACCGAATCTATCGTCAGATTCCCAAACATCACTAACCTGTGCCCTTTCGGAGAGGTGTTCAACGCTACCAGGTTCGCCAGCGTCTACGCTTGGAACCGCAAGCGTATCAGCAACTGCGTCGCCGACTACTCTGTGCTGTACAACTCCGCTAGCTTCTCTACTTTCAAGTGCTACGGCGTGTCACCTACCAAGCTGAACGACCTGTGCTTCACTAACGTCTACGCCGACTCCTTCGTGATCCGCGGAGACGAAGTCCGTCAGATCGCTCCTGGACAGACCGGAAAGATCGCTGACTACAACTACAAGCTGCCAGACGACTTCACTGGCTGCGTGATCGCTTGGAACTCAAACAACCTGGACTCCAAGGTCGGTGGCAACTACAACTACCTGTACAGGCTGTTCAGAAAGTCAAACCTGAAGCCTTTCGAGCGCGACATCTCAACCGAAATCTACCAGGCTGGTTCCACTCCCTGCAACGGTGTGGAGGGCTTCAACTGCTACTTCCCCCTGCAGTCCTACGGTTTCCAGCCAACCAACGGAGTCGGTTACCAGCCTTACCGTGTGGTCGTGCTGAGCTTCGAACTGCTCCACGCTCCTGCTACTGTGTGCGGTCCCAAGAAGTCTACTAACCTGGTCAAAAACAAATGTGTCAACTTCAACTTCAACGGT
TAA AAGCTT
SEQ ID NO:10(昆虫細胞シグナルペプチド+昆虫Trx(チオレドキシン)+Sタンパク質RBDに相応する塩基配列である):
GGATCCATGCTGCTGGTCAACCAGAGCCACCAGGGTTTCAACAAGGAACACACCAGCAAGATGGTGAGCGCTATCGTGCTGTACGTCCTGCTGGCCGCTGCTGCTCACAGCGCTTTCGCTGCTGACTCCATCCACATCAAGGACAGCGACGACCTGAAGAACCGTCTGGCCGAGGCCGGTGACAAGCTGGTCGTCATCGACTTCATGGCCACTTGGTGCGGTCCTTGCAAGATGATCGGCCCTAAGCTGGACGAGATGGCTAACGAGATGTCCGACTGCATCGTGGTCCTGAAGGTGGACGTCGACGAGTGCGAGGACATCGCCACCGAATACAACATCAACAGCATGCCCACCTTCGTGTTCGTGAAGAACAGCAAGAAGATCGAGGAATTTTCCGGCGCTAACGTCGACAAGCTGCGTAACACCATCATCAAGCTGAAGCTGGCCGGCTCCGGCTCCGGCCACATGCATCACCACCACCACCATTCCTCCGGTGACGACGACGACAAGGTGCAGCCAACCGAATCTATCGTCAGATTCCCAAACATCACTAACCTGTGCCCTTTCGGAGAGGTGTTCAACGCTACCAGGTTCGCCAGCGTCTACGCTTGGAACCGCAAGCGTATCAGCAACTGCGTCGCCGACTACTCTGTGCTGTACAACTCCGCTAGCTTCTCTACTTTCAAGTGCTACGGCGTGTCACCTACCAAGCTGAACGACCTGTGCTTCACTAACGTCTACGCCGACTCCTTCGTGATCCGCGGAGACGAAGTCCGTCAGATCGCTCCTGGACAGACCGGAAAGATCGCTGACTACAACTACAAGCTGCCAGACGACTTCACTGGCTGCGTGATCGCTTGGAACTCAAACAACCTGGACTCCAAGGTCGGTGGCAACTACAACTACCTGTACAGGCTGTTCAGAAAGTCAAACCTGAAGCCTTTCGAGCGCGACATCTCAACCGAAATCTACCAGGCTGGTTCCACTCCCTGCAACGGTGTGGAGGGCTTCAACTGCTACTTCCCCCTGCAGTCCTACGGTTTCCAGCCAACCAACGGAGTCGGTTACCAGCCTTACCGTGTGGTCGTGCTGAGCTTCGAACTGCTCCACGCTCCTGCTACTGTGTGCGGTCCCAAGAAGTCTACTAACCTGGTCAAAAACAAATGTGTCAACTTCAACTTCAACGGT
TAA AAGCTT
SEQ ID NO:11には、酵素切断部位BglII(1~6)+EK酵素切断部位(7~21)+大腸菌でバイアスコドン最適化されたS-RBD(aa320-545)+酵素切断部位Xho I(最後の6位)を含む。
AAGCTTGACGACGACGACAAGGTGCAGCCGACCGAAAGCATTGTGCGCTTTCCGAACATTACCAACCTTTGTCCTTTCGGTGAGGTATTCAATGCAACACGCTTTGCTTCAGTTTATGCTTGGAACCGCAAACGCATTTCAAACTGTGTTGCTGATTATTCAGTTCTTTATAACTCAGCTTCATTCTCCACCTTTAAATGTTATGGCGTTTCACCTACAAAGCTGAATGATCTTTGTTTCACCAATGTTTATGCTGATTCATTTGTTATTCGCGGCGATGAAGTTCGCCAGATTGCTCCTGGCCAGACAGGCAAGATAGCCGATTATAACTATAAACTTCCTGATGATTTCACGGGATGTGTTATTGCTTGGAACTCAAACAACCTTGATTCAAAGGTCGGTGGCAACTATAACTATCTTTATCGCCTGTTCCGGAAGTCAAACCTTAAACCTTTCGAGAGAGATATTTCAACAGAAATTTATCAGGCTGGCTCAACACCTTGTAACGGCGTTGAAGGCTTTAACTGTTATTTCCCACTGCAAAGCTATGGCTTTCAGCCTACAAACGGCGTTGGCTATCAGCCTTATCGCGTTGTTGTTCTTTCATTTGAACTTCTTCATGCTCCTGCTACAGTTTGTGGCCCTAAGAAAAGCACTAATCTGGTGAAAAACAAATGTGTGAACTTTAACTTTAACGGCTGATAACTCGAG
SEQ ID NO: 12には、酵素切断部位XhoI(1~6)+シグナルペプチド切断部位(7~21)+大腸菌でバイアスコドン最適化されたS-RBD(aa320-545)+酵素切断部位XbaI(最後の6位)を含む。
CTCGAGAAAAGAGTTCAACCTACAGAATCAATCGTTAGATTTCCTAACATCACAAACCTTTGTCCTTTCGGCGAGGTCTTCAATGCCACAAGATTTGCATCAGTTTATGCATGGAACAGAAAGCGTATATCAAACTGTGTTGCAGATTATTCAGTTCTTTATAACTCAGCATCATTCTCTACCTTTAAATGTTATGGAGTTTCACCTACAAAGCTCAATGATCTTTGTTTCACTAATGTTTATGCAGATTCATTTGTTATCAGAGGAGATGAAGTTAGACAAATCGCACCTGGACAAACAGGAAAGATTGCCGATTATAACTATAAACTTCCTGATGATTTCACCGGCTGTGTTATCGCATGGAACTCAAACAATCTCGACAGCAAAGTAGGTGGGAATTACAATTACTTGTACCGGCTATTTAGGAAGTCCAACCTCAAGCCGTTCGAGCGCGATATCTCAACAGAAATCTATCAAGCAGGATCAACACCTTGTAACGGAGTTGAAGGATTTAACTGTTATTTCCCGCTACAATCATATGGATTTCAACCTACAAACGGAGTTGGATATCAACCTTATAGAGTTGTTGTTCTTTCATTTGAACTTCTTCATGCACCTGCAACAGTTTGTGGACCTAAGAAGTCTACGAACCTTGTTAAGAATAAGTGTGTTAACTTTAACTTTAACGGATGATAATCTAGA
SEQ ID NO:13(ヒトIL6タンパク質シグナルペプチド+8×Hisシグナルペプチド+EK酵素切断部位+RBD 320-545 226aa):
ATGAACAGCTTCAGCACCAGCGCCTTCGGCCCCGTGGCCTTCAGCCTGGGCCTGCTGCTGGTGCTGCCCGCCGCCTTCCCCGCCCCCCACCACCACCACCACCACCACCACGACGACGACGACAAGGTGCAGCCCACCGAGAGCATCGTGAGGTTCCCCAACATCACCAACCTGTGCCCCTTCGGCGAGGTGTTCAACGCCACCAGGTTCGCCAGCGTGTACGCCTGGAACAGGAAGAGGATCAGCAACTGCGTGGCCGACTACAGCGTGCTGTACAACAGCGCCAGCTTCAGCACCTTCAAGTGCTACGGCGTGAGCCCCACCAAGCTGAACGACCTGTGCTTCACCAACGTGTACGCCGACAGCTTCGTGATCAGGGGCGACGAGGTGAGGCAGATCGCCCCCGGCCAGACCGGCAAGATCGCCGACTACAACTACAAGCTGCCCGACGACTTCACCGGCTGCGTGATCGCCTGGAACAGCAACAACCTGGACAGCAAGGTGGGCGGCAACTACAACTACCTGTACAGGCTGTTCAGGAAGAGCAACCTGAAGCCCTTCGAGAGGGACATCAGCACCGAGATCTACCAGGCCGGCAGCACCCCCTGCAACGGCGTGGAGGGCTTCAACTGCTACTTCCCCCTGCAGAGCTACGGCTTCCAGCCCACCAACGGCGTGGGCTACCAGCCCTACAGGGTGGTGGTGCTGAGCTTCGAGCTGCTGCACGCCCCCGCCACCGTGTGCGGCCCCAAGAAGAGCACCAACCTGGTGAAGAACAAGTGCGTGAACTTCAACTTCAACGGCTGA
本発明は、上記のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターを提供する。
【0033】
また、上記の組換えベクターは、昆虫バキュロウイルス発現系ベクター、哺乳類動物細胞発現系ベクター、大腸菌発現系ベクター、酵母発現系ベクターの中から少なくとも1種が用いられる。
【0034】
さらに、上記の昆虫バキュロウイルス発現系ベクターはpFastBaclである。
【0035】
さらに、上記の大腸菌発現系ベクターはpET32aである。
【0036】
さらに、上記の酵母発現系ベクターはpPICZaAである。
【0037】
さらに、上記の哺乳類動物細胞発現系ベクターはCHO細胞発見系ベクターである。
【0038】
さらに、上記のCHO細胞発見系ベクターはpTT5或いはFTP-002である。
【0039】
本発明は、上記の組換えベクターを含有する宿主細胞を提供する。
【0040】
また、上記の宿主細胞は、昆虫細胞、哺乳類動物細胞、大腸菌、酵母の中から少なくとも1つが用いられる。
【0041】
さらに、上記の昆虫細胞は、sf9細胞、sf21細胞、Hi5細胞の中から少なくとも1つが選択される。
【0042】
さらに、上記の哺乳類動物細胞はCHO細胞である。
【0043】
本発明は、上記タンパク質の調製法を提供する。調製法には次のステップを含む。上記宿主細胞を培養し、上記タンパク質又は前駆体を発現させ、上記タンパク質を回収する。
【0044】
本発明は、上記タンパク質の調製法を提供する。調製法には次のステップを含む。上記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを構築し、ヒトに免疫し、上記タンパク質を産生する。
【0045】
さらに、上記ベクターは、mRNA、DNAワクチン、アデノウイルス、ワクチニアウイルスアンカラ、アデノに関するウイルスの中から少なくとも1つが選択される。
【0046】
本発明は、抗SARS-CoV-2感染のタンパク質及びワクチンを提供し、主にSARS-CoV-2ウイルスに対するSタンパク質を提供し、特にSタンパク質のACE2受容体結合ドメインを遮断することにより、体内で抗体などの免疫応答を誘発し、SARS-CoV-2のSタンパク質と宿主細胞ACE2受容体との結合を遮断し、宿主がコロナウイルス感染に抵抗することを助ける。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】試験例1における本発明のタンパク質とACE2タンパク質との親和性測定結果を示す図である。
図2】試験例2における抗体力価測定結果を示す図である。
図3】試験例3におけるELISAによる新型コロナウイルス肺炎患者の抗体と本発明タンパク質との反応結果を測定する図である。
図4】試験例4におけるRBDタンパク質とACE2受容体との結合の遮断実験結果図である。
図5】試験例5における中和抗体力価測定結果を示す図である。
図6】試験例5における肺組織のウイルスgRNA及びsgRNAコピーの測定結果を示す図である。
図7】試験例5における咽頭スワブのウイルスgRNA及びsgRNAコピーの測定結果を示す図である。
図8】試験例5における肛門スワブのウイルスgRNAとsgRNAコピーの検査結果である。
図9】試験例5における肺組織切片染色の画像である。
図10】試験例6におけるマウスを用いたSARS-CoV-2ウイルスのチャレンジ試験の結果である。
図11】試験例7におけるサイトカインIFN-γとIL-4の検査結果である。
図12】試験例8におけるサイトカインレベル検査の結果である。
図13】SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質細胞外ドメインの構成図である。
図14】実施例3における大腸菌でベクターpET32aを発現させるスペクトログラムである。
図15】実施例4における酵母でベクターpPICZaAを発現させるスペクトログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例を併せて、本発明のプロトコルを説明する。技術者は、以下の実施例が、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものとは見なされないことを理解する。実施例において特定の技術又は条件が示されていない場合は、当該分野の文献に記載されている技術又は条件又は製品取扱説明書が適用されるものとする。特定のメーカーが示されていない試薬又は装置は、すべて市販の従来品である。
【0049】
Sタンパク質は、糖化タンパク質である。天然のSタンパク質をより良く得るため、さらに、昆虫バキュロウイルス発現系又は哺乳動物細胞発現系(CHO発現系)が使用される。具体的な調製方法は、以下のように記述されている。
【0050】
実施例1 昆虫バキュロウイルス発現系を用いて本発明に開示される抗SARS-CoV-2感染のタンパク質を調製する
ベクターの構築:昆虫バキュロウイルス発現系を用いて産生された組換えタンパク質は、主にSタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)を利用するものである。SARS-CoV-2 Sタンパク質は、ウイルスエンベロープ上に位置するタンパク質であり、その分泌過程をシミュレートするため、Sタンパク質受容体結合部位(RBD)を構築する際にGP67シグナルペプチドをN末端に付加し、タンパク質の分泌発現を促進した。このシグナルペプチドは、タンパク質の分泌過程中に昆虫細胞によって自発的に切除された。同時に、タンパク質の精製を容易にし、水溶性を高めるために、チオレドキシンタグ及びエンテロキナーゼ(EK)の制限酵素切断部位も配列に導入された。完全なヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO: 10に示されている。Sタンパク質RBDの発現ベクターは、pFastBac1ベクター(アミシリン耐性)に基づいて構築され、pFast-bacIベクターにBamHI及びHindIII制限酵素切断部位が挿入され、最適化のために大腸菌バイアスコドンが使用された。
【0051】
組換えバキュロウイルスの増幅:Bac-to-Bac発現系を用いて、細菌トランスポゾンの原理でTn7転位エレメントを介した部位特異的転座を発生させ、大腸菌(DH10Bac、bacmid (カナマイシン耐性)及び helper plasmid(テトラシシン耐性)を含む)で組換えbacmidを構築した。正常に組み換えられたbacmidを抽出し、Cellfectin IIでsf9昆虫細胞にトランスフェクトし、標的遺伝子を発現できる組換えバキュロウイルスを生成した。第一世代のウイルスは、トランスフェクションの72時間後に回収され、次いでP2からP4に増幅された。P3又はP4ウイルスは、タンパク質を発現するために使用された。
【0052】
タンパク質の発現:P3又はP4ウイルスを用いてHi5昆虫細胞(sf9とsf21細胞も使える)を感染多重度(MOI)0.5-10で感染させ、48-72 h培養された後培養上清を回収した。ウイルスの最適な回収時間はウイルス量と細胞状態によって異なる可能性があり、通常顕微鏡で観察された細胞病変は50%の程度であると適切である。
【0053】
タンパク質の精製:回収された培養上清を4 ℃・高速度で遠心分離した後、0.22 umフィルダーでろ過した。その後、まずアフィニティ精製法(Histrapニッケルカラム)で組み換えタンパク質を精製し、そしてMono QカラムとSuperdex 200 10/300GLモレキュラーシーブを用いて組み換えタンパク質を更に精製した。タンパク質の純度はSDS-PAGEによって測定し、95%以上に達する必要がある。酵素消化バッファーで調整されたタンパク質を1-5 mg/mLまで溶解又は希釈した。50μgの組み換えタンパク質は1 Uのエンテロキナーゼ(EK酵素)で切断した。その比率で相当のエンテロキナーゼ(EK酵素)を加えて混合し、25℃で16 h静置すると、組み換えタンパク質のタグを切断できた。そのうち、SEQ ID NO:8で示されるヌクレオチドはタンパク質SEQ ID NO:3を、SEQ ID NO:10で示されるヌクレオチドはタンパク質SEQ ID NO:4を発現した。得られた組み換えタンパク質は後続の動物免疫研究等に用いられた。
【0054】
実施例2 CHO細胞発現系を用いて本発明に開示される抗SARS-CoV-2感染のタンパク質を調製
CHO細胞を用いて生成された組み換えタンパク質ワクチンは主にSタンパク質の受容体結合ドメイン(S-RBD)に作用した。これらの断片はコドンの好みに基づいて遺伝子合成され、ポリヒスチジンは精製タグ(6His)として用いられた。完全なヌクレオチド配列はSEQ ID NO:13に示されていた。その後、高発現ベクターpTT5に構築され、SEQ ID NO:14に示すようなアミノ酸配列を持つ前駆体タンパク質は発現された。
【0055】
実施例3 大腸菌で本発明に開示される抗SARS-CoV-2感染のタンパク質を発現
発現ベクター(図 14のプラスミドマップを参照)として使用するpET32a(Novagen社)はT7プロモーターを含み、下流の標的遺伝子の転写がpET32aでIPTGによって調節された。発現産物のN末端とチオレドキシン(Trx)は融合され、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって1段階精製した。標的タンパク質の精製後、Trxを除去するため、Trxの後にエンテロキナーゼ切断部位を加えた。完全なヌクレオチド配列はSEQ ID NO:11に示されていた。
【0056】
組換え発現プラスミドをそれぞれ大腸菌株BL21(DE3)で発現させた。電気泳動の結果では、得られた標的タンパク質のサイズが予測されたサイズに類似しており、Western Blotによって検証されていることを示していた。標的タンパク質は、含有量が総タンパク質の30%以上に達することができ、主に封入体の形で存在した。なお、変性条件下では金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって1段階精製することができ、純度は95%以上に、生産量は200-400 mg/Lに達した。標的タンパク質は透析によって再生することができ、再生効率は50%より高かった。
【0057】
製造コストを削減するために、金属キレートカラムの代わりに逆相カラムを用い、同じく1段階精製で95%を超える高純度の標的タンパク質が得られた。
【0058】
実施例4 酵母による本発明に開示される抗SARS-CoV-2感染のタンパク質の発現
SEQ ID NO:12に示すヌクレオチド配列を酵母の発現ベクターpPICZaA(Invitrogen社製、酵母の発現ベクターpPICZaAは図15を参照)の2つ制限酵素(Xho I/Xba I)の切断部位にクローンし、メタノール酵母のa因子分泌シグナルでタンパク質が分泌発現された。
【0059】
pPICZaAプラスミドを用いてS-RBD遺伝子をメタノール酵母の染色体に組み込んだ後、メタノールによって標的タンパク質の発現を誘導した。発現した標的タンパク質は、メタノール酵母の培地中に可溶性の形で存在し、逆相クロマトグラフィーにより1段階精製ができ、発現量は200-400 mg/Lに達した。
【0060】
実施例5 本発明に開示される抗SARS-CoV-2感染のワクチンの調製
抗原を無菌状態で調製した。5 mmol/Lリン酸緩衝液(pH 7.2)で、精製された組換えタンパク質抗原(実施例1-4に従って調製)の濃度を80 mcg/mLまで希釈した。アジュバントを無菌状態で調製した。5 mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)で、アルミニウムアジュバント原液(アルミニウム含有量は14.55 mg/mL)を2.0 mg/mLまで希釈した。無菌状態で抗原とアジュバントに吸着させた。希釈されたタンパク質抗原液を、希釈後の水酸化アルミニウムアジュバント作業溶液に速度20 mL/min、体積比(V/V)1:1で滴下し、混合溶液中の組換えタンパク質抗原の最終濃度を40 mcg/mL、アルミニウムアジュバントの最終濃度を1.0 mg/mLにした。反応温度を25℃に保ち、撹拌速度を800 rpmとした。滴下終了後、25℃、800 rpmの撹拌速度で60分間吸着を継続した。混合後の溶液のpHを7.2に調整し、4℃で遮光保存した。吸着完了後のワクチン製剤に対し、粒子径、サイトポジション(site position)、抗原含有量、アジュバント含有量、吸着率、pH、エンドトキシン、アジュバント-抗原の吸着率、吸着力及びその保持状態、吸着後の抗原の完全性及び安定性等を評価した。製剤の充填について、検査に合格したワクチン製剤を1 mL滅菌バイアル/アンプルに充填した(1 mL/本)。充填の時には撹拌を継続し、充填液を均一にした。充填した後すぐにキャップを圧着し、番号のついたラベルを貼付き、4℃で遮光保存した。
【0061】
以下の試験例により、本発明の有益な効果が証明された。
【0062】
試験例1 表面プラズモン共鳴法(Surface plasmon resonance, SPR)による本発明のタンパク質とACE2タンパク質の親和性の検出
高分子間相互作用解析装置Biacore 8K(スウェーデンのGE Healthcare社)を用いて、表面プラズモン共鳴を検出した。ACE2-Fc抗体を~~100RUのキャプチャー応答値(response unit, RU)でSensor Chip Protein Aチップ表面に固定化した。動態学的解析を行う際には、SEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列を有する本発明のRBDタンパク質を2倍段階希釈の濃度勾配(1、2、4、6、8、16、32nM)でチップ表面に流し、もう一つのチャンネルをブランクコントロールとして設定した。HBS-EP+解離溶液を用い、流速30 mL/minで抗原を300秒間解離させ、その後、チップの再生溶液としてpH1.5のグリシン溶液を用いて60秒間再生した。そのうち、ACE2-Fc抗体と本発明のRBDタンパク質の結合定数(Ka)及び解離定数(Kd)を測定し、親和性(KD)を算出した。
【0063】
結果は図1の通りで、本発明のRBDタンパク質はACE2受容体タンパク質と効率的かつ特異的に結合できることを示し、なお、本発明のRBDタンパク質は完全な空間構造を保有し、ウイルスのSタンパク質RBDと同じくACE2受容体の能力を有するという可能性を示唆している。これは体外で組み換えられたSタンパク質RBDをワクチンとして使用するための強力なサポートとなった。その親和性KDは1.52×10-8M(mol/L)に達し、解離定数Kdは4.41×10-2(S-1)、結合定数Kaは3.85×106(Ms-1)であった。
【0064】
試験例2 本発明のワクチンは、ワクチン接種を受けたマウスにおいてRBD特異的抗体を誘導した
免疫動物実験:BALB/cマウス又はC57BL/6マウスを用い、投与した組換えタンパク質(アミノ酸配列番号はSEQID No.3に示す)の用量は0.1 ugから10.00 ug/1匹で、1群5~10匹のマウスとした。マウス1匹あたり50μLの容量でワクチン(実施例5に基づき調製した)を右後肢に筋肉内投与(im)した。免疫接種スケジュールは次の2種類に分けられる。1つ目は1日目、7日目、21日目で、2つ目は1日目、14日目、21日目である。
【0065】
ELISA(酵素結合免疫吸着試験)によるマウス血清抗体の測定:マウスの各回免疫後の7日目に、毛細血管眼窩採血法を用いて各群5匹ずつマウス血漿を採取した。室温で1~2時間放置して凝固させた後、4℃、3000 rpm/minで10分間遠心分離し、血清上層を取り、-20℃で保存した。ELISAによる血清IgG及びサブクラスの測定方法: 50 mM炭酸塩コーティングバッファー(PH9.6)で調製した1μg/mLの組換えタンパク質S-Fc又はRBD-Fc溶液を、100μL/ウェルで96ウェルのコーティングプレート(Thermo Scientific社、NUNC-MaxiSorp)に加え、4℃で一晩コーティングした。50 mM炭酸塩コーティングバッファー(PH9.6)の調製には、0.15 gのNa2CO3と0.293gのNaHCO3を秤量し、再蒸留水で溶解した後、pHを9.6に調整してから100mlに定容し、4℃で保存した。翌日、0.1% Tween20を含むPBS溶液(PBST)で3回洗浄した後、1% BSA又は5%スキムミルクを含むブロッキング溶液(PBSTに調製)を用い、室温で1時間ブロッキングし、PBSTで1回洗浄した。マウス血清をブロッキング溶液で異なる割合に希釈し、100μL/ウェルで加え、37℃で1~2時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄した。次に、100 μL /ウェルでHRPヤギ抗マウスIgG又はHRP-抗マウスIgG1、IgM及びその他のサブクラス抗体 (全てブロッキング溶液に1:5000で希釈)を加え、37℃で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄した。最後に、100μL/ウェルで3,3',5,5'-テトラメチルフェニレンジアミン(TMB) を加え、遮光発色10~15分後、50μL/ウェルで1M H2SO4停止液を加え、混合後マイクロプレートリーダーの450nm波長で読み取った。1M H2SO4停止液の調製には、2.7 mLの濃硫酸(98%)を47.3mLの再蒸留水に滴下する。
【0066】
結果は図2に示すように、組換えタンパク質によって誘導されたRBD特異的抗体の力価を測定するために、血清を連続的に異なる倍数で希釈した後滴定法で測定し、同時にA450光学濃度値を測定した。図2では、組換えタンパク質ワクチンが明らかなSタンパク質RBD特異的抗体を誘導し、ワクチン接種後7日目に採取された血清が強力な抗体応答を示し、IgG(図2A)とIgM(図2B)が異なる比率で上昇したことを示している。これは、本ワクチンが迅速に免疫応答を誘導でき、コロナウイルス肺炎の予防に非常に重要であることを示唆している。一方、生理食塩水を接種した対照群のA450光学濃度値は明らかに低かった。この結果は、組換えSタンパク質RBDワクチンがマウスの体内において高度な免疫原性を有することを示している。
【0067】
試験例3 ELISA法による新型コロナウイルス感染症患者の抗体と本発明に開示されるタンパク質との反応の測定
本試験はSARS-CoV-2感染患者16例の血清サンプルを収集し、本発明に開示されるRBDタンパク質が人体における免疫原性の研究が目的である。検測時に用いるELISA測定法について具体的な操作方法は以下の通りである。
【0068】
RBDタンパク質(アミノ酸配列はSEQ ID NO:3参照)で96ウェルプレートをコートし、コーティング液の濃度は0.2μg/ウェルで、100μL/ウェル、4℃の条件で一晩放置した。コーティング時に陰性対照ウェルを設置した。翌日に96ウェルプレートを取り出し、室温回復0.5時間後、PBSでプレートを4回洗い、1回あたり1分間とした。1%BSAを96ウェルプレートに封じ込め、100μL/ウェル、37℃で、30分間インキュベーションを実施し、PBSでプレートを4回洗い、毎回1分間とした。血清を5倍に希釈し、すなわち各ウェルに血清20μLにpbs 80uLを加えた。37℃で60分間インキュベーションを実施し、再びPBSでプレートを4回洗い、1回あたり1分間とした。次にHRP表記の二次抗体(ヒト抗IgG/IgM抗体)を加えた:原液は1:2000で希釈後各ウェルに100uLを加え、37℃で30分間インキュベーションを実施した。PBSでプレートを4回洗い、1回あたり1分間とした。呈色:各ウェルにA液50μLを注入し、次にB液50μLを加えた。室温で15分間放置した。終止:各ウェルに終止液100μLを加えた。10分間以内にマイクロプレートリーダーで色を見比べた。本実験にIgM抗体を検測時、サンプルを加える方法として、各ウェルに15μL血清に15μL PBSを注入し、次にIgG吸着剤150μLを加えた。10000rpm遠心分離し、10分後上清100μLを取り検測した。
【0069】
結果は図3で示したように、16例SARS-CoV-2感染患者から取得された血清は本発明に開示されるRBDタンパク質に対する反応が明らかであり、IgM及びIgGが陽性反応であった。一方で、10名健康人の血清に対して陰性反応であった。SARS-CoV-2のSタンパク質RBDはワクチンとして患者の体内に高度な免疫原性を有することが分かり、本発明によるRBDタンパク質が人体の免疫システムによって認識することが可能である。
【0070】
試験4 RBDタンパク質とACE2受容体結合の阻害実験
本実験は細胞発見のACE2を使用し、当該タンパク質が天然配座を保留できると認識され、フローサイトメーターでRBD結合活性を検測するに便利である。具体的な操作方法は以下の通りである。
【0071】
インビトロ培養のACE2細胞株(肺がんA549)をフローサイトメトリーに剥離・収集し、106個細胞/チューブ、PBS/HBSSで数回洗浄した。各チューブ中の細胞に最終濃度1μg/mLの組換えRBD-Fcタンパク質を加え、投与済みの抗RBDマウスの血清(試験2で取得したマウス血清を50倍に希釈し使用)を加え、室温で30 min間インキュベーションした。一つの陽性対象チューブに抗血清を加えず、或いは未接種のマウスの正常血清を加えた。PBS/HBSSで数回洗浄し、Anti-Human IgG(Fc Specific)-FITC(SIGMA)蛍光二次抗体(1:100-1:200)を加え、光を避け室温で30minインキュベーションした。PBS/HBSSで数回洗浄し、1%パラホルムアルデヒド含有のPBS を500μL加え、固定し、フローサイトメーターで検測した。
【0072】
結果は図4のように、RBD-Fcタンパク質を添加することより、ACE2発現細胞と明らかに結合した。RBD-Fcタンパク質(陰性対照)を未添加の場合は、背景信号しか検出できなかった。マウス抗血清は有効にRBD-Fcタンパク質がACE2発現細胞との結合を阻害し、一方で、同じ希釈度の未接種或いは接種前の血清において抑制活性を有しないことが分かった。
【0073】
試験例5 生きたSARS-CoV-2を用いた非ヒト霊長類(アカゲザル)のウイルスチャレンジ試験
1、実験方法
非ヒト霊長類動物の研究に関するすべてのプロセスは、中国医学科学院医学生物学動物保護・使用委員会の審査と承認を経て、中国雲南省昆明国家高レベル生物安全霊長類動物研究センターの動物生物安全4級(ABSL-4)施設で行われた。本実験で用いたRBDタンパク質はアミノ酸配列がSEQID No.4に示す本発明のタンパク質であり、ワクチンは実施例5に従って調製された。12匹の非ヒト霊長類(アカゲザル)(5‐9歳)を生きたSARSーCoVー2ウイルスチャレンジ試験に用い、以下のようにグループ化した。(a)1剤当たり40μg RBDタンパク質質に水酸化アルミニウムアジュバントを添加したワクチン群(4頭)、(b)1剤当たり20μg RBDタンパク質質に水酸化アルミニウムアジュバントを添加したワクチン群(3頭)、(c)生理食塩水対照群(3頭)、(d)水酸化アルミニウムアジュバント対照群(2頭)。非ヒト霊長類に0日目と7日目で筋肉内投与し、次いで初回投与後28日にSARS-CoV-2チャレンジウイルス(0.5 mL、106 pfu/mL)を鼻腔内投与した。SARSーCoVー2感染の中和作用を評価するために、初回投与後28日目と35日目(ウイルス投与後5日目)に中和抗体検査用の血清を採取した。Vero E6細胞(5×104/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートした。100倍TCID 50(50%組織培養感染量)のSARSーCoVー2と等体積の希釈血清を予備インキュベートし、37℃で1時間インキュベートした後、その混合物をVero
E6細胞に添加した。感染後3日目に、顕微鏡下で細胞病変効果(CPE)を記録し、EC 50阻害(50%中和)を産生した血清希釈液の中和力価を算出した。対照群には、生理食塩水によって又は水酸化アルミニウム単独で処理されたサル血清が含まれた。
【0074】
ウイルスゲノムRNA(gRNA)及びウイルスサブゲノムRNA(sgRNA、ウイルスの複製を表す)の含有量は、定量的リアルタイム逆転写PCR(qRTーPCR)によって測定された。WHOと中国疾病管理センターが推奨する配列に基づき、qRT-PCR法を用いて肺組織、咽喉スワブ及び肛門スワブ中のウイルス負荷を測定し、またその中で用いたプライマー及びプローブ配列はNP遺伝子の由来であった。
【0075】
フォワード:5'-GGGGAACTTCTCCTGCTAGAAT-3'(SEQID No.15);
リバース:5'-CAGACATTTGCTCTCAAGCTG-3'(SEQID No.16);
プローブ:5'-FAM-TTGCTGCTGCTGCTTGACAGATT-TAMRA-3'(SEQID No.17);
TaqMan Fast Virus 1-Step Master Mix(貨物番号:4444434)取扱説明書を参照し、反応系は10μL(フォワードプライマー1 μL、リバースプライマー1 μL、プローブ0.25 μL、mRNAテンプレート2.5μL、Master Mix 2.5μL、RNase-Free H202.75μL)であった。PCRプログラムの設定と操作はBioRad CFX
384 Real Time PCR Systemの操作手順を参照した。具体的には、逆転写(25℃で2 minインキュベート、50 ℃で15 minインキュベート)、イニシエーション(95℃で2 minインキュベート)、2段階増幅し、40サイクル(95℃で5 sインキュベート、58℃で31 sインキュベート)である。
【0076】
ウイルス複製を示すSARS-CoV-2 E遺伝子のサブゲノムmRNA(sgmRNA)の含有量を測定し、その中で使用されるプライマー及びプローブの配列は以下の通りである。
【0077】
フォワード:5;-GCTAGAGAACATCTAGACAAGAG-3'(SEQ IDNo.18);
リバース:5;-ACACACGCATGACGACGTTATA-3'(SEQ IDNo.19);
プローブ:5'-FAM-TGTGATCGGTAGGAATGACGCGAAGC-Quencher-3'(SEQ ID NO:20);
反応系及びPCR手順はgRNA測定と一致した。
【0078】
パラフィン包埋切片は、組織を採取し、10%中性ホルマリンで固定後、パラフィンに包埋した。切片は5μmの厚さで、ヘマトキシリン・エオジン(HE)で染色した。
【0079】
2、実験結果
図5に示すように、ワクチンを接種したすべての非ヒト霊長類で生きたSARS-CoV-2に対する中和抗体が検出されたが、いずれの2つの対照群では中和抗体は検出されなかった。
【0080】
定量的リアルタイム逆転写PCR(qRT-PCR)検査を用いて、ウイルスゲノムRNA(gRNA)及びウイルスサブゲノムRNA(sgRNA、ウイルスの複製を表す)を検出した。感染後7日目に非ヒト霊長類の肺組織を採取し、ウイルスの複製状態を評価した。対照群(生理食塩水群、水酸化アルミニウムアジュバント群)の肺組織では、ウイルスgRNAとsgRNAの過剰なコピーを示した。一方、20μg又は40μgのRBDタンパク質とアジュバントを接種した群では、ウイルスの複製は検出されなかった(図6)。また、対照群(生理食塩水群、水酸化アルミニウムアジュバント群)では接種3日後に咽頭スワブのウイルスgRNA曝露量のピークが観察され、このウイルスピークはワクチンで阻止できたが、20μgと40μgワクチン群ではウイルス曝露量はわずか100万分の1.6と3.8であった。重要なことは、ウイルス感染後の20μg及び40μgワクチン群の咽頭スワブでは測定可能なsgRNAが観察されなかったのに対し、対照群(生理食塩液群、水酸化アルミニウムアジュバント群)ではsgRNAが多く観察され、ウイルス複製を示している(図7)。接種後5日目及び6日目に、対照群(生理食塩水群、水酸化アルミニウムアジュバント群)の肛門スワブでは、ウイルスgRNA及びsgRNA曝露量のピークが観察されたが、ワクチン接種群では極めて低いレベルの曝露量しか検出されず、20μg及び40μgワクチンを接種した非ヒト霊長類の肛門スワブにはsgRNAが検出されなかった(図8)。以上の結果より、本発明のRBDタンパク質ワクチンを接種することにより、SARS-CoV-2感染を予防できることが示めされた。
【0081】
2つの対照群(生理食塩水、水酸化アルミニウムアジュバント)の肺組織には、COVID-19の主要な特徴であるSARS-CoV-2ウイルス性間質性肺炎の典型的な病理組織学的変化が示された。図9に示すように、顕微鏡で観察すると肺胞壁は著しく肥厚し、間質性の単核炎症細胞が多数浸潤していた。また、肺胞腔内には多量の炎症性浸潤と漿液性の滲出液が存在し、識別可能な肺組織構造の喪失も伴っていた。さらに、びまん性出血とII型肺細胞増殖が観察された。一方、RBDタンパク質(20μg又は40μg)を接種した非ヒト霊長類では、顕著な病理組織学的変化は認められず、正常な肺組織の外観を有していた。
【0082】
試験例6 マウスSARS-CoV-2ウイルス感染チャレンジ試験
マウス免疫、6~8週齢のBALB/c又はC57 BL/6マウスに異なる用量(0.1~20μg当たり)と間隔で組換えRBDタンパク質ワクチン(アミノ酸配列はSEQID No.3に示すタンパク質であり、ワクチンは実施例5に従って調製された。)を筋肉内投与した。例えば、0日目でマウスに投与し、7日目で血清の採取を行い、また対照群マウスに水酸化アルミニウム免疫アジュバント又は生理食塩水のみを投与した。免疫後7日目に再び血清を採取し、実験に使用するまで血清を4℃で保存した。北京連合医学院実験動物科学研究所により設立されたSPFグレードのhACE2トランスジェニックマウスをSARS-CoV-2感染の動物実験に使用した。初回接種後7日目に0.8 mLの血清を採取し、ワクチンで免疫したマウス血清を実験群とし、生理食塩水で処理したマウス正常血清を対照群とし、SARS-CoV-2ウイルス感染(経鼻内感染、用量は105 TCID50である。)の1日前にhACE2トランスジェニックマウスに腹腔内投与した。さらに、当該ウイルスに感染し、血清を受けていないマウスを対照とした。ウイルス感染後5日目にマウスを殺処分し、マウスの肺とその他の器官を切り取った。肺組織はウイルス複製の検出に用いられ、又は10%緩衝ホルマリン溶液で固定化され、組織病理学的解析に使用される。PowerUp SYBG Green Master Mixキット(Applied Biosystems、USA)を用い、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (qRT-PCR) 反応を行った。SARSーCOVー2に感染されたマウス肺組織中のウイルスRNAコピー数を測定し、肺組織のRNAコピー数/ mLで表した。qRTーPCRに用いられるプライマー配列は、下記の通り、SARSーcovー2に対するエンベロープ(E)遺伝子である。
【0083】
フォワード:5'-TCGTTTCGGAAGAGACAGGT-3'(SEQ ID NO:21)
リバース:5'-GCGCAGTAAGGATGGCTAGT-3'(SEQ ID NO:22)
切片をヘマトキシリン・エオジン染色し、光学鏡で組織病理学的変化を観察した。
【0084】
本実験では、ワクチン接種後の初期液性免疫がマウスのSARS-CoV-2感染を防ぐことができるかどうかを検証した。ヒトACE-2トランスジェニックマウスをSARS-CoV-2ウイルスに感染させ、ウイルスチャレンジの5日後にマウスの肺組織を採取し、免疫血清(ワクチン接種1回目7日後の血清)又は対照群血清を受けた後のウイルス複製状況を測定した。図10に示すように、RBD タンパク質ワクチンによって誘導された免疫血清でマウスを処理した後、定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)でウイルス複製が検出されず、対照群マウスの肺組織のウイルス複製レベルが比較的に高かった。それに応じて、対照群マウスの肺組織に明らかな間質性肺炎の組織病理学的変化が現れ、肺胞壁の明らかな肥厚、間質大量単核細胞とリンパ細胞の浸潤、塞栓、及び肺胞腔に血清滲出物があった。それと対照的に、組換えRBDタンパク質ワクチンで免疫したマウスの血清で処理したマウスに、組織病理学的変化又はわずかな滲出は見られなかった。また、免疫血清処理を受けたマウスの体重は感染後5日間でわずかに増加し(約8%)、対照群マウスの体重は増加せず、未処理群マウスの体重は8%減少した。本実験では、RBDタンパク質ワクチンによって誘導産生された抗体はウイルス感染を完全に阻害できることがさらに実証された。
【0085】
試験例7 本発明のRBDタンパク質ワクチンによる細胞性免疫応答の誘導
マウス免疫:6~8週齢のBALB/c又はC57BL/6マウスに、異なる用量(各0.1-20μg)と間隔時間で組換えRBDタンパク質ワクチン(SEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、ワクチンは実施例5に従って調製された)を筋肉内接種した。例えば、マウスには、0日目に接種し、7日目に採血した。対照群のマウスには水酸化アルミニウム免疫アジュバントを又は生理食塩水のみを注射した。免疫後7日目に再び脾臓からTリンパ球を採取した。細胞性免疫応答を究明するために、Sタンパク質RBD又はPBSで免疫したマウスを殺処分し、そのリンパ球を採取し、ELISA 法によりIL-4、IFN-γを検出した。即ち、マウスの脾臓リンパ球(1×106/mL)の培養はRPMI 1640培地(10%ウシ胎児血清、100 U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、1 mMピルビン酸、50μM β-メルカプトエタノール、20 U/mL IL-2を含む。)を用い、同時に1μg/mLのRBDタンパク質を加え、72時間培養・刺激した。RBDタンパク質で刺激されていない細胞は陰性対照として使用された。上清液を採取し、ELISA検査を実施した。
【0086】
細胞性免疫応答がSARS-CoV-2感染の除去に役立つ可能性があり、CD4とCD8陽性T細胞がSARSウイルス感染に対する免疫応答に関与している。そのため、本試験ではワクチンに関する潜在的な細胞性免疫反応についても検討した。ワクチン初回接種後7日目にリンパ球を採取し、リンパ球が産生したINF-γやIL-4などのサイトカインをELISA法で検出した。分離されたリンパ球を組換えRBDタンパク質で刺激した結果、ワクチンを接種したマウスのリンパ球は、より多くのIFN-γとIL-4を産生したことがわかった。一方、生理食塩水で処理されたマウスのリンパ球を組換えRBDタンパク質で刺激した後、バックグラウンドレベルのIFN-γとIL-4のみが検出された(図11)。
【0087】
試験例8 本発明のワクチンに関する安全性試験
本発明のワクチンを用いてマウスを免疫した。6~8週齢のBALB/c又はC57BL/6マウスに、異なる用量(各0.1~20μg)と間隔時間で組換えRBDタンパク質ワクチン(SEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、ワクチンは実施例5に従って調製された。)を筋肉内接種した。心臓、脳、肝臓、脾臓、肺、腎臓等には病理学的な変化を発見せず、血球及び血液の生化学的指標の変化も見られなかった。例えば、本試験では、ワクチン接種が全身性炎症反応におけるサイトカインの変化を引き起こすかどうかを確認するために、血液中のサイトカイン濃度を測定した。マウスには、0日目にワクチンを一回接種し、7日目に採血した。対照群のマウスには水酸化アルミニウム免疫アジュバント又は生理食塩水のみを注射した。初回接種後7日目にマウスの血清を採取し、ELISA 法で血清中のTNF-α(腫瘍壊死因子-α)、IFN-γ(γ-インターフェロン)、IFN-α(α-インターフェロン)、IFN-β(β-インターフェロン)、IL-6(インターロイキン-6)及びIL-4(インターロイキン-4)を検出した。血清中のサイトカイン含有量は、Thermo Fisher Scientific-eBioscience Elisaキットを用いて測定された。簡単に言うと、操作は以下の通りである。抗原をコーティングし、コーティング緩衝液を使用して200μL/ウェルのプレートで抗原を希釈し、そして密封して温度4℃で一晩放置してインキュベーションした。コーティング後にコーティング液を捨て、>250μL/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄した。200μLのELISA/ELISPOT希釈液(l×)で室温で1時間密閉保存した。説明書の濃度要求に従って標準品を調製し、最高濃度の標準品を2倍希釈して合計8点、ELISA/ELISPOT希釈液(l×)を対照として用いた。使用のためにELISA/ELISPOT希釈液(l×)で血清を希釈した。ウェルプレートを洗浄後、ウェルプレートに標準品及び測定する試薬を100μL加えて密閉し、室温で2時間インキュベートした。ELISA/ELISPOT 希釈液(l×)で検出抗体を希釈し、ウェルプレートを3~5回洗浄後、すべてのウェルに100μL/ウェルの希釈した検出抗体を加え、ウェルプレートを密閉して室温で1時間インキュベートした。HRP標識抗体をELISA/ELISPOT希釈液(l×)で希釈し、ウェルプレートを3~5回洗浄後、希釈した抗ビオチンタンパク質HRPを1ウェルあたり100μL加え、ウェルプレートを密閉して室温で1時間インキュベートした。ウェルプレートを5~7回洗浄し、100μL/ウェルの1X TMB溶液を加え、室温で10~15分間発色させ、100μL/ウェルの停止液を加えて停止させた。検出波長450nm、参照波長570nmの条件下でプレートリーディングした。
【0088】
実験の結果、ワクチン免疫群のマウスと対照群のマウス(水酸化アルミニウム免疫アジュバント又は生理食塩水のみ)では、血液中のサイトカイン濃度に差がないことが判明した(図12)。以上の実験結果から、本発明のワクチンの接種は、必ず全身性炎症反応を引き起こすとは限らないことが示唆された。
【0089】
特に、本資料に記載された具体的な特徴、構造、材料又は特徴は、任意の1つ或いは複数の実施例において適切な方法で組み合わせることができる。さらに、互いに矛盾ではない場合に、本分野の技術者は本資料に記載された異なる実施例及び異なる実施例の特徴を結合・組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図14
図15
【配列表】
2023522795000001.app
【国際調査報告】