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特表2023-522833陰圧創傷療法を提供するためのデュアルモードの陰圧源の動作
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】陰圧創傷療法を提供するためのデュアルモードの陰圧源の動作
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557893
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021060655
(87)【国際公開番号】W WO2021214286
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】2005928.3
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.FIREWIRE
3.THUNDERBOLT
4.Linux
5.WINDOWS
6.VXWORKS
7.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】397070118
【氏名又は名称】ティージェイ スミス アンド ネフュー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アスクム、ベン、アラン
(72)【発明者】
【氏名】エルダー、デイヴィッド、マイケル
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA39
4C267BB62
4C267CC01
4C267JJ14
(57)【要約】
陰圧源を創傷被覆材に流体的に接続することができ、創傷被覆材を、創傷の少なくとも一部分を覆うように位置付けることができ、陰圧源を制御して、流体流路を介して創傷に陰圧を供給することができる。陰圧源のアクチュエータを制御して、比例積分(PI)制御または比例積分誘導体(PID)制御とパルス制御との間で移行させることによって、デュアルモードで動作させることができる。アクチュエータの失速を防止することができ、療法を、中断することなく提供することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧創傷療法デバイスであって、
流体流路を介して、創傷被覆材によって覆われた創傷に接続される陰圧源であって、前記陰圧源が、前記流体流路を介して前記創傷に陰圧を供給するように構成されている、陰圧源と、
前記流体流路内の圧力を測定するように構成された圧力センサと、
前記陰圧源を制御するように構成されたコントローラであって、前記コントローラが、
前記創傷における所望の陰圧に対応する陰圧設定値と、前記圧力センサによって測定された圧力との間の圧力差を決定することと、
前記圧力差が、前記流体流路内に低い流れを提供するように前記陰圧源のアクチュエータが動作していることを示す低い流れの閾値を満たさないと決定することに応答して、前記アクチュエータに、前記圧力差に基づいて決定された第1の駆動信号を適用することであって、前記第1の駆動信号の前記適用により、前記圧力差を減少させる、適用することと、
前記圧力差が前記低い流れの閾値を満たすと決定することに応答して、前記アクチュエータに第2の駆動信号を適用することであって、前記第2の駆動信号により、前記アクチュエータを、第1の期間にわたって稼働させ、前記第1の期間に続く第2の期間にわたって休止させる、適用することと、を行うようにさらに構成されている、コントローラと、を備える、陰圧創傷療法デバイス。
【請求項2】
前記第1の駆動信号により、前記アクチュエータを、比例積分(PI)制御または比例積分誘導体(PID)制御のうちの少なくとも1つに従って動作させる、請求項1に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項3】
前記第2の駆動信号により、前記アクチュエータを、パルス制御に従って動作させる、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項4】
前記第1の駆動信号により、前記アクチュエータを、前記第1の駆動信号の持続時間にわたって稼働させる、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項5】
前記アクチュエータが、モータを備え、前記低い流れの閾値が、ポンプモータの失速に対応する、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項6】
前記低い流れの閾値が、前記流体流路内の遮断に対応する、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項7】
陰圧創傷療法デバイスであって、
流体流路を介して、創傷被覆材によって覆われた創傷に接続される陰圧源であって、前記陰圧源が、前記流体流路を介して前記創傷に陰圧を供給するように構成されている、陰圧源と、
前記流体流路内の圧力を測定するように構成された圧力センサと、
前記陰圧源を制御するように構成されたコントローラであって、前記コントローラが、
前記創傷における所望のレベルの陰圧と前記圧力センサによって測定された圧力との間の圧力差が、前記モータの失速の閾値を満たさないという決定に応答して、前記陰圧源のモータを、比例積分(PI)制御に従って動作させることと、
前記圧力差が、前記モータの前記失速の閾値を満たすという決定に応答して、前記モータを、パルス制御に従って動作させることと、を行うようにさらに構成されている、コントローラと、を備える、陰圧創傷療法デバイス。
【請求項8】
前記モータの前記失速の閾値が、前記モータを失速させる電圧または電流のレベルに対応する、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項9】
パルス制御が、前記モータの稼働および休止の期間を交互に行うことを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項10】
陰圧創傷療法デバイスであって、
流体流路を介して、創傷被覆材によって覆われた創傷に接続される陰圧源であって、前記陰圧源が、前記流体流路を介して前記創傷に陰圧を供給するように構成されている、陰圧源と、
前記流体流路内の圧力を測定するように構成された圧力センサと、
前記陰圧源を制御するように構成されたコントローラであって、前記コントローラが、
前記陰圧源のアクチュエータに第1の駆動信号を適用して、前記陰圧源に、前記流体流路を介して前記創傷に陰圧を供給させることと、
前記圧力センサを使用して、前記創傷における陰圧を監視することと、
前記監視された陰圧と陰圧設定値との間の差に基づいて、前記アクチュエータに適用される前記第1の駆動信号を調整することと、
低い流れの閾値が満たされているという決定に応答して、前記第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号を前記アクチュエータに適用することであって、前記第2の駆動信号の適用により、前記アクチュエータに、前記創傷において前記陰圧設定値を確立または維持する動作を続けさせる、適用することと、を行うようにさらに構成されている、コントローラと、を備える、陰圧創傷療法デバイス。
【請求項11】
前記コントローラが、前記第1の駆動信号を調整して、前記監視された陰圧と前記陰圧設定値との間の前記差を最小化するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項12】
前記コントローラが、前記差が圧力差の閾値を満たすことに応答して、前記低い流れの閾値が満たされていると決定するようにさらに構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項13】
前記コントローラが、前記第1の駆動信号を繰り返し調整するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項14】
前記コントローラが、
前記監視された陰圧が圧力の閾値よりも小さいという決定に応答して、前記第2の駆動信号を適用することを中止し、前記第1の駆動信号を前記アクチュエータに適用するようにさらに構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項15】
前記コントローラが、前記低い流れの閾値がもはや満たされていないという決定に応答して、前記第2の駆動信号を適用することを中止し、前記第1の駆動信号を適用するようにさらに構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項16】
前記コントローラが、前記低い流れの閾値に関連付けられた電力レベルを閾値の電力レベルだけ超える電力レベルで、前記第1の駆動信号を適用するように構成されている、請求項14または15に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項17】
前記コントローラが、
前記監視された陰圧が前記陰圧設定値を満たさないという決定に応答して、前記差に基づいて前記第1の駆動信号を調整することを続けるようにさらに構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項18】
前記第1の駆動信号により、前記アクチュエータを、比例積分(PI)制御または比例積分誘導体(PID)制御のうちの少なくとも1つに従って動作させる、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項19】
前記第2の駆動信号により、前記アクチュエータを、前記アクチュエータの稼働および休止の期間を交互に行うパルス制御に従って動作させる、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項20】
前記アクチュエータが、モータを備える、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項21】
前記低い流れの閾値が、前記モータの失速に関連付けられている、請求項20に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項22】
前記コントローラが、前記アクチュエータの最大電力レベルよりも低い電力レベルで前記第2の駆動信号を適用するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイス。
【請求項23】
先行請求項のいずれか一項に記載の陰圧創傷療法デバイスを動作させる方法。
【請求項24】
命令を記憶しているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令が、陰圧創傷療法デバイスのコントローラによって実行されたときに、前記コントローラに請求項23に記載の方法を実施させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項25】
例示および/または記載される陰圧創傷療法デバイス、装置、および/またはシステム。
【請求項26】
例示および/または記載される陰圧創傷療法デバイス、装置、および/またはシステムを動作させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、例えば、陰圧創傷療法と組み合わせて被覆材を使用する、創傷を治療する装置、システム、および方法に関する。
【0002】
関連技術の説明
多数の異なるタイプの創傷被覆材が、ヒトまたは動物の治癒プロセスを補助するものとして知られている。これらの異なるタイプの創傷被覆材には、異なるタイプの材料および層、例えば、ガーゼ、パッド、発泡体パッド、または多層創傷被覆材が含まれる。局所陰圧(TNP)療法は、真空補助閉鎖療法、陰圧創傷療法、または減圧創傷療法とも称されることがあり、創傷の治癒率を改善するための有益な機構として広く認識されている。そのような療法は、手術創、開放創、および腹部創などの広範な創傷に適用可能である。TNP療法は、組織浮腫を軽減し、血流を促し、肉芽組織の形成を促進させ、過剰な滲出物を除去することによって創傷の閉鎖および治癒を促し、細菌負荷を低減し得る。したがって、創傷への感染を減少させる。その上、TNP療法は、創傷の外部障害を減らし、より迅速な治癒を促す。
【発明の概要】
【0003】
陰圧創傷療法デバイスは、陰圧源と、圧力センサと、コントローラと、を含み得る。陰圧源は、流体流路を介して、創傷被覆材によって覆われた創傷に接続され得る。陰圧源は、流体流路を介して創傷に陰圧を供給するように構成され得る。圧力センサは、流体流路内の圧力を測定するように構成され得る。コントローラは、陰圧源を制御するように構成され得る。コントローラは、創傷における所望の陰圧に対応する陰圧設定値と、圧力センサによって測定された圧力との間の圧力差を決定するように構成され得る。コントローラは、圧力差が、流体流路内に低い流れを提供するように陰圧源のアクチュエータが動作していることを示す低い流れの閾値を満たさないと決定することに応答して、アクチュエータに、圧力差に基づいて決定された第1の駆動信号を適用するように構成され得る。第1の駆動信号の適用により、圧力差を減少させることができる。コントローラは、圧力差が低い流れの閾値を満たすと決定することに応答して、アクチュエータに第2の駆動信号を適用するように構成され得る。第2の駆動信号により、アクチュエータを、第1の期間にわたって稼働させ、第1の期間に続く第2の期間にわたって休止させることができる。
【0004】
先行段落の陰圧創傷療法デバイス、および/または本明細書に開示される装置、システム、もしくはデバイスのいずれかは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。第1の駆動信号により、アクチュエータを、比例積分(PI)制御または比例積分誘導体(PID)制御のうちの少なくとも1つに従って動作させることができる。第2の駆動信号により、アクチュエータを、パルス制御に従って動作させることができる。第1の駆動信号により、アクチュエータを、第1の駆動信号の持続時間にわたって稼働させることができる。アクチュエータは、ポンプモータを含み得る。低い流れの閾値は、ポンプモータの失速に対応し得る。低い流れの閾値は、流体流路内の遮断に対応し得る。
【0005】
陰圧創傷療法デバイスは、陰圧源と、圧力センサと、コントローラと、を含み得る。陰圧源は、流体流路を介して、創傷被覆材によって覆われた創傷に接続され得る。陰圧源は、流体流路を介して創傷に陰圧を供給するように構成され得る。圧力センサは、流体流路内の圧力を測定するように構成され得る。コントローラは、陰圧源を制御するように構成され得る。コントローラは、創傷における所望のレベルの陰圧と圧力センサによって測定された圧力との間の圧力差が、モータの失速の閾値を満たさないという決定に応答して、陰圧源のモータを、比例積分(PI)制御に従って動作させるように構成され得る。コントローラは、圧力差が、モータの失速の閾値を満たすという決定に応答して、モータを、パルス制御に従って動作させるように構成され得る。
【0006】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法デバイス、および/または本明細書に開示される装置、システム、もしくはデバイスのいずれかは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。モータの失速の閾値は、モータを失速させる電圧または電流のレベルに対応し得る。パルス制御は、モータの稼働および休止の期間を交互に行うことを含み得る。
【0007】
陰圧創傷療法デバイスは、陰圧源と、圧力センサと、コントローラと、を含み得る。陰圧源は、流体流路を介して、創傷被覆材によって覆われた創傷に接続され得る。陰圧源は、流体流路を介して創傷に陰圧を供給するように構成され得る。圧力センサは、流体流路内の圧力を測定するように構成され得る。コントローラは、陰圧源を制御するように構成され得る。コントローラは、陰圧源のアクチュエータに第1の駆動信号を適用して、陰圧源に、流体流路を介して創傷に陰圧を供給させるように構成され得る。コントローラは、圧力センサを使用して、創傷における陰圧を監視するように構成され得る。コントローラは、監視された陰圧と陰圧設定値との間の差に基づいて、アクチュエータに適用される第1の駆動信号を調整するように構成され得る。コントローラは、低い流れの閾値が満たされているという決定に応答して、第1の駆動信号とは異なる第2の駆動信号をアクチュエータに適用するように構成され得る。第2の駆動信号の適用により、アクチュエータに、創傷において陰圧設定値を確立または維持する動作を続けさせることができる。
【0008】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法デバイス、および/または本明細書に開示される装置、システム、もしくはデバイスのいずれかは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。コントローラは、第1の駆動信号を調整して、監視された陰圧と陰圧設定値との間の差を最小化するように構成され得る。コントローラは、差が圧力差の閾値を満たすことに応答して、低い流れの閾値が満たされていると決定するように構成され得る。コントローラは、第1の駆動信号を繰り返し調整するように構成され得る。コントローラは、監視された陰圧が圧力の閾値よりも小さいという決定に応答して、第2の駆動信号を適用することを中止し、第1の駆動信号をアクチュエータに適用するように構成され得る。コントローラは、第2の駆動信号を適用することを中止し、低い流れの閾値がもはや満たされていないという決定に応答して第1の駆動信号を適用するように構成され得る。コントローラは、低い流れの閾値に関連付けられた電力レベルを閾値の電力レベルだけ超える電力レベルで、第1の駆動信号を適用するように構成され得る。
【0009】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法デバイス、および/または本明細書に開示される装置、システム、もしくはデバイスのいずれかは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。コントローラは、監視された陰圧が陰圧設定値を満たさないという決定に応答して、差に基づいて第1の駆動信号を調整することを続けるように構成され得る。第1の駆動信号により、アクチュエータを、比例積分(PI)制御または比例積分誘導体(PID)制御のうちの少なくとも1つに従って動作させることができる。第2の駆動信号により、アクチュエータを、アクチュエータの稼働および休止の期間を交互に行うパルス制御に従って動作させることができる。アクチュエータは、モータを含み得る。低い流れの閾値は、モータの失速に関連付けられ得る。
【0010】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法デバイス、および/または本明細書に開示される装置、システム、もしくはデバイスのいずれかは、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。コントローラは、アクチュエータの最大電力レベルよりも低い電力レベルで第2の駆動信号を適用するように構成され得る。
【0011】
本明細書において、先行段落のいずれかの陰圧創傷療法デバイス、および/または本明細書に開示されるデバイス、装置、もしくはシステムのいずれかを動作させる方法について開示する。本明細書において、命令を記憶しているコンピュータ可読記憶媒体であって、命令が、陰圧創傷療法デバイスのコントローラによって実行されたときに、コントローラに、本明細書に開示される方法のいずれかを実施させる、コンピュータ可読記憶媒体について開示する。
【0012】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法デバイス、および/または本明細書に開示されるデバイス、装置、もしくはシステムのいずれかと、1つ以上の創傷被覆材と、を含むキットについて開示する。
【0013】
本明細書に開示される装置の実施形態のいずれか、および本明細書に開示される陰圧創傷療法の実施形態のいずれかを含むが、これらに限定されない、本出願に開示される配列もしくは実施形態のいずれかの特徴、構成要素、または詳細のいずれかは、新しい配列および実施形態を形成するために、本明細書に開示される配列もしくは実施形態のいずれかの任意の他の特徴、構成要素、または詳細と相互に組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】陰圧創傷療法システムを例示する。
図1B】別の陰圧創傷療法システムを例示する。
図2A】デバイスのポンプアセンブリから引き離されたキャニスタを示す、陰圧創傷療法デバイスおよびキャニスタの等角図である。
図2B図2Aに示される陰圧創傷療法デバイスの背面図である。
図2C】ユーザインターフェースを示す、図2Aに示される陰圧創傷療法デバイスの上面を例示する。
図3】陰圧創傷療法デバイスの制御システムの概略図を例示する。
図4】別の陰圧創傷療法システムを例示する。
図5A】比例積分(PI)制御を使用して、例示的な陰圧創傷療法デバイスによって供給された圧力を表すグラフを例示する。
図5B】パルス制御を使用して、例示的な陰圧創傷療法デバイスによって供給された圧力を表すグラフを例示する。
図5C】制御がパルス制御からPI制御へと移行する際に、例示的な陰圧創傷療法デバイスによって供給された圧力を表すグラフを例示する。
図6】陰圧創傷療法デバイスのデュアルモード動作のプロセスの流れ図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示される実施形態は、創傷を治療および/または監視するシステムならびに方法に関する。本明細書に開示される陰圧創傷療法デバイスのいくつかの実施形態は、流体流路を介して、創傷被覆材によって覆われた創傷に接続および/または流体的に連結され、創傷に陰圧を提供するように構成された陰圧源を含み得る。
【0016】
本明細書全体を通して、創傷についての言及がなされる。創傷という用語は広く解釈され、皮膚が断裂、切開、もしくは穿孔される、または外傷によって挫傷が引き起こされる開放創および閉鎖創、あるいは患者の皮膚における任意の他の表面もしくは他の病状または不完全状態、あるいは減圧治療によって利益を得る他のものを包含する。したがって、創傷は、流体が生成されるか、またはされない場合がある、組織の任意の損傷領域として広く定義される。そのような創傷の例としては、腹部創傷、または手術、外傷、胸骨切開、筋膜切開、あるいは他の状態のいずれかの結果としての他の大規模または切開性の創傷、裂開創傷、急性創傷、慢性創傷、亜急性創傷および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、ストーマ、術創、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0017】
本明細書に開示されるシステムおよび方法の実施形態は、局所陰圧(「TNP」)または減圧療法システムとともに使用され得る。簡単に言えば、陰圧創傷治療は、組織の浮腫を低減し、血流および顆粒組織形成を促し、過度の滲出物を除去することによって、「治癒が困難な」創傷の多くの形態の閉鎖、および治癒を支援し、細菌負荷(および、それゆえ感染リスク)を低減することができる。加えて、治療によって、創傷の不安を減らすことが可能になり、より早期の治癒に導く。TNPシステムはまた、流体を除去することによって、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援することができる。TNP療法は、閉鎖の反対位置の組織を安定化するのに役立つことができる。TNP治療のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片およびフラップにおいて見出すことができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、-XmmHgなどの減圧または陰圧レベルは、760mmHg(または1atm、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当し得る、平常の周囲大気圧に対する圧力レベルを表す。したがって、-XmmHgの陰圧値は、760mmHgよりもXmmHg低い圧力、または、言い換えれば、(760-X)mmHgの圧力を反映する。加えて、XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、大気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低くなる)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、大気圧からより遠い圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高くなる)。場合によっては、局所的な周囲気圧は、基準点として使用され、そのような局所的な気圧は、必ずしも、例えば、760mmHgでなくてもよい。
【0019】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、洗浄、超音波、加熱もしくは冷却、神経刺激、またはこれに類するものなどの減圧療法に加えて、またはその代わりに、他のタイプの治療で使用され得る。場合によっては、開示されたシステムおよび方法は、追加の療法の適用なしに創傷監視に使用することができる。本明細書に開示のシステムおよび方法は、圧縮被覆材、減圧被覆材、またはこれに類するものを含む、被覆材とともに使用され得る。
【0020】
医師、看護師、またはこれに類するものなどの医療従事者は、例えば、圧力レベルまたは適用時間を指定するTNP処方を提供することができる。しかしながら、治癒プロセスは患者ごとに異なり、処方は、臨床医または医療提供者が処方を考案する際に予想しなかった方法で治癒プロセスに影響を与え得る。医療提供者は、創傷が治癒する(または治癒しない)際に、処方を調整しようとし得るが、こうしたプロセスは、時間がかかり、かつ反復的であり得る様々な予約を必要とし得る。本明細書に開示される実施形態は、TNP処方を効率的に調整し、効果的なTNP療法を送達するシステム、デバイス、または方法を提供する。
【0021】
創傷治療システム
図1Aは、陰圧創傷治療システム100(減圧または陰圧創傷療法システム、TNPシステム、または創傷治療システムとも呼ばれる)を概略的に例示する。本明細書に開示される任意の実装例では、必要ではないが、陰圧創傷治療システム100は、創傷104(空洞であってもよい)の上または内側に設置される創傷充填材102を含み得る。創傷104は、創傷カバー106が創傷104と流体連通し得るように、ドレープであってもよい創傷カバー106によってシールされ得る。創傷カバー106と組み合わされた創傷充填材102は、創傷被覆材と称され得る。管または導管108(本明細書では、可撓性吸引アダプタまたは流体コネクタとも称される)を使用して、創傷カバー106を、減圧または陰圧を供給するように構成された創傷療法デバイス110(全体として、または部分的に「ポンプアセンブリ」と称される場合もある)と接続することができる。導管108は、単一内腔菅であっても、多重内腔管であってもよい。コネクタ112を使用して、導管または管142を導管108と取り外し可能かつ選択的に連結することができる。
【0022】
本明細書に開示されるシステムのいずれかにおいて、創傷療法デバイスは、キャニスタレスであってもよく、例えば、限定されるものではないが、創傷滲出物は、創傷被覆材の中に収集されるか、または別の場所で収集するために導管を介して移される。しかしながら、本明細書に開示される創傷療法デバイスのいずれかは、キャニスタを含み得るか、またはキャニスタを支持し得る。
【0023】
さらに、本明細書で開示される創傷療法システムのいずれかでは、創傷療法デバイスのいずれかは、被覆材に装着され得るか、もしくは被覆材によって支持され得、または被覆材に隣接し得る。創傷充填材102は、親水性または疎水性の発泡体、ガーゼ、膨張可能なバッグなどのような、任意の好適なタイプであってもよい。創傷充填材102は、創傷充填材102が創傷104の空洞を実質的に充填するように、創傷104に適合可能であってもよい。創傷カバー106は、創傷104の上に実質的に流体不浸透性のシールを提供し得る。創傷カバー106は、頂部側および底部側を有し得る。底部側は、例えば、創傷104の周りの皮膚とシールすることによって、創傷104と接着剤で(または任意の他の好適な方法で)シールすることができる。導管108または本明細書で開示される任意の他の導管は、ポリウレタン、PVC、ナイロン、ポリエチレン、シリコーン、または任意の他の好適な材料から形成され得る。
【0024】
創傷カバー106は、導管108の端を受けるように構成されたポート(図示せず)を有し得る。場合によっては、導管108は、別のやり方では、創傷104内に所望のレベルの減圧を維持するように、減圧を創傷104に供給するために創傷カバー106を通って、または創傷カバー106の下を通過し得る。導管108は、創傷療法デバイス110によって提供される減圧を創傷104に供給するように、創傷療法デバイス110と創傷カバー106との間に少なくとも実質的にシールされた流体流の経路または通路を提供するように構成された任意の好適な物品であってもよい。
【0025】
創傷カバー106および創傷充填材102は、単一の物品または一体型の単一ユニットとして提供され得る。場合によっては、創傷充填材は提供されず、創傷カバー自体が、創傷被覆材とみなされ得る。次いで、創傷被覆材は、導管108を介して、創傷療法デバイス110の陰圧の供給源に接続され得る。場合によっては、必要ではないが、創傷療法デバイス110は、小型化され、持ち運び可能とすることができるが、より大きな従来の陰圧源(またはポンプ)を使用することもできる。
【0026】
創傷カバー106は、治療される創傷部位の上に位置し得る。創傷カバー106は、創傷の上に、実質的にシールされた空洞または包囲空間を形成することができる。創傷カバー106は、余剰流体の蒸発を可能にする高い水蒸気浸透性を持つフィルムを有し得、かつ創傷滲出物を安全に吸収するために内部に含有された超吸収性材料を有し得る。場合によっては、本明細書に記載のTNPシステムの構成要素は、少量の創傷滲出物を滲出する切開創傷に特に適し得る。
【0027】
創傷療法デバイス110は、滲出物キャニスタの使用の有無に関わらず動作させることができる。場合によっては、例示されるように、創傷療法デバイス110は、滲出物キャニスタを含み得る。場合によっては、導管108を創傷療法デバイス110から迅速かつ容易に取り外すことができるように創傷療法デバイス110および導管108を構成することにより、必要に応じて、被覆材またはポンプを変更するプロセスを容易にするか、または改善することができる。本明細書で開示されるポンプアセンブリのいずれかは、導管108とポンプとの間の任意の好適な接続を有し得る。
【0028】
創傷療法デバイス110は、およそ-80mmHg、または約-20mmHg~-200mmHgの陰圧を送達し得る。これらの圧力は、正常な周囲大気圧と相対的であり、つまり、-200mmHgが、実際的には約560mmHgであり得ることに留意されたい。場合によっては、圧力範囲は、約-40mmHgと-150mmHgとの間であり得る。あるいは、-75mmHg以下、-80mmHg以下、または80mmHg超過の圧力範囲が使用され得る。また、場合によっては、-75mmHgを下回る圧力範囲も使用され得る。あるいは、およそ-100mmHg、またはさらには-150mmHg超の圧力範囲が、創傷療法デバイス110によって供給され得る。
【0029】
以下でより詳細に記載されるように、陰圧創傷治療システム100は、別個のまたは遠隔のコンピューティングデバイス334に対する接続332を提供するように構成され得る。接続332は、有線または無線(Bluetooth、Bluetooth低エネルギー(BLE)、ニアフィールドコミュニケーション(NFC)、WiFi、またはセルラーなど)であってもよい。遠隔のコンピューティングデバイス334は、スマートフォン、タブレット、ラップトップもしくは別のスタンドアロン型のコンピュータ、サーバ(クラウドサーバなど)、別のポンプデバイスなどであってもよい。
【0030】
図1Bは、別の陰圧創傷治療システム100’を例示する。陰圧創傷治療システム100’は、図1Bに示され、かつ/または本明細書に記載される陰圧創傷治療システム100’の構成要素、特徴、もしくはその他の詳細のいずれかと組み合わせて、またはこれらの代わりに、図1Aに例示される陰圧創傷治療システム100または図4に例示される陰圧創傷治療システム400を含むが、これらに限定されない、本明細書に開示される他の陰圧創傷治療システムのいずれかの構成要素、特徴、またはその他の詳細のいずれかを有し得る。陰圧創傷治療システム100’は、創傷104をシールし得る、創傷104の上に創傷カバー106を有し得る。単一内腔菅または多重内腔管などの導管108’を使用して、創傷カバー106を、減圧または陰圧を供給するように構成された創傷療法デバイス110’(全体として、または部分的に「ポンプアセンブリ」と称される場合もある)と接続することができる。創傷カバー106は、創傷104と流体連通し得る。
【0031】
図1Bを参照すると、導管108’は、近位端部分および遠位端部分(遠位端部分は近位端部分よりも創傷104に近い)を有し得るブリッジ部分130と、可撓性吸引アダプタ(または導管)108’を形成する、ブリッジ部分130の遠位端にあるアプリケータ132と、を有し得る。図1Bに示される導管108のブリッジ部分130の長さに沿って延在しチャネルのうちの少なくとも1つに接続するように、コネクタ134がブリッジ部分130の近位端に配置され得る。キャップ140を、導管108の一部分と連結することができ、場合によっては、例示されるように、コネクタ134に取り付けることができる。キャップ140は、流体がブリッジ部分130の近位端から漏れ出るのを防止する際に有用な場合がある。導管108’は、Smith&Nephewが製造したSoft Portであってもよい。上述のように、陰圧創傷治療システム100’は、導管108’を通って創傷104に陰圧を供給することができるデバイス110’などの陰圧の供給源を含み得る。必要ではないが、デバイス110’はまた、創傷滲出物、および創傷から除去され得る他の流体を貯蔵するためのキャニスタまたは他の容器を含み得る。
【0032】
デバイス110’は、導管または管142を介してコネクタ134に接続され得る。使用時、アプリケータ132は、好適に準備された創傷または創傷104の上に置かれたカバー106内に形成されたアパーチャの上に設置され得る。その後、創傷療法デバイス110’が管142を介してコネクタ134に接続された状態で、創傷療法デバイス110’を稼働させて、創傷に陰圧を供給することができる。陰圧の適用は、創傷の所望のレベルの治癒が達成されるまで適用され得る。
【0033】
ブリッジ部分130は、下部チャネル材料または層が中間層と底部層との間に位置付けられた状態で、上部層と中間層との間に位置付けられた上部チャネル材料または層を備え得る。上部層、中間層、および下部層は、近位端と遠位端との間に延在する細長い部分を有し得、かつ流体不浸透性の材料、例えば、ポリウレタンなどのポリマーを含み得る。当然のことながら、上部層、中間層、および下部層は各々、半浸透性の材料を含む異なる材料から構築され得ることが理解されよう。場合によっては、上部層、中間層、および下部層のうちの1つ以上は、少なくとも部分的に透明であってもよい。いくつかの実例では、上部層および下部層は、上部層および下部層の長さの大部分にわたって湾曲していても、丸みを帯びていても、外向きに凸状であってもよい。
【0034】
上部チャネル層および下部チャネル層は、ブリッジ130の近位端から遠位端まで延在する細長い層であってもよく、かつ各々が、好ましくは、例えば、ポリエチレンまたはポリウレタンなどのオープンセル発泡体を含む多孔質の材料を含み得る。場合によっては、上部チャネル層および下部チャネル層のうちの1つ以上は、例えば、編まれたもしくは織られたスペーサ布帛(編まれたポリエステル3D布帛、Baltex 7970.RTM.、もしくはGehring 879.RTM.など)、または不織布材料、あるいはテリー織りもしくはループパイル材料から構成され得る。繊維は必ずしも織られるわけではなく、フェルトおよびフロック繊維材料(Flotex.RTM.などの材料を含む)を含み得る。選択される材料は、好ましくは、創傷滲出物を創傷から離すように導き、陰圧または排出された空気を創傷部位へ伝達するように置かれ、かつまた、ある程度のねじれ抵抗または閉塞抵抗をチャネル層に与え得る。1つの実施例では、上部チャネル層は、ポリウレタンなどのオープンセル発泡体を含み得、下部チャネル層は、布帛を含み得る。別の実施例では、上部チャネル層は、任意選択であり、システムは、代わりに、開いた上部チャネルを備えて提供され得る。上部チャネル層は、湾曲しているか、丸みを帯びているか、または上向きに凸状である上部表面と、実質的に平坦な下部表面と、を有し得、下部チャネル層は、湾曲しているか、丸みを帯びているか、または下向きに凸状である下部表面と、実質的に平坦な上部表面と、を有し得る。
【0035】
ブリッジ130の任意の構成要素の布帛または材料は、三次元(3D)構造を有し得、1つ以上のタイプの繊維は、繊維が全三次元方向に延在する構造を形成する。そのような布帛は、場合によっては、ウィッキング、流体輸送、または陰圧の伝達を助ける場合がある。場合によっては、チャネルの布帛または材料は、互いの上に積み重なった、または層状にされた材料のいくつかの層を含み得、これは、場合によっては、陰圧の適用下で、チャネルが崩壊するのを防止する際に有用な場合がある。導管108’のいくつかの実装例に使用される材料は、適合可能かつ柔軟性であってもよく、これは、場合によっては、褥瘡性潰瘍および患者の皮膚に押し付けられた創傷治療システムによって生じ得る他の合併症を回避するのに役立ち得る。
【0036】
上部層、中間層、および下部層の遠位端、ならびにチャネル層は、(創傷部位の上に設置される)該層の遠位端で拡張され得、「涙滴」または他の拡張形状を形成し得る。少なくとも上部層、中間層、および下部層の遠位端、ならびにチャネル層はまた、少なくとも1つの貫通アパーチャを備えて提供され得る。このアパーチャは、創傷滲出物を抜くため、および創傷に陰圧を適用するためだけでなく、これらのアパーチャが、これらのそれぞれの層を適切に整列させるために使用され得るため、デバイスの製造中にも有用な場合がある。
【0037】
いくつかの実装例では、制御されたガスリーク部146(ガスリーク部、空気リーク部、または制御された空気リーク部と称される場合もある)は、ブリッジ部分130の上、例えば、ブリッジ部分130の近位端に配置され得る。この空気リーク部146は、空気リーク部146がブリッジ部分130の上部チャネルと流体連通するように、ブリッジ部分130の上部層を通って延在する開口部またはチャネルを備え得る。導管108への吸引の適用時に、ガス(空気など)が、ガスリーク部146を通って入り、ブリッジ部分130の上部チャネルに沿って、ブリッジ部分130の近位端からブリッジ部分の遠位端まで移動し得る。次いで、上部層、中間層、および下部層の遠位端を通して、アパーチャを通過させることによって、ガスをブリッジ部分130の下部チャネル内に吸引することができる。
【0038】
空気リーク部146は、フィルタを含み得る。好ましくは、空気リーク部146は、創傷滲出物または他の流体が空気リーク部146またはフィルタと接触し、空気リーク部146またはフィルタを閉塞または妨害する可能性を最小化するように、ブリッジ部分130の近位端に位置する。いくつかの実例では、フィルタは、微生物および細菌を排除することができ、45μmより大きい粒子を濾過することができ得る、微孔質膜であってもよい。好ましくは、フィルタは、1.0μmよりも大きい粒子、より好ましくは、0.2μmよりも大きい粒子を排除することができる。有利には、いくつかの実装例は、例えば、水、シャンプーなどの一般的な家庭用液体、および他の界面活性剤に対して、少なくとも部分的に化学的に耐性のあるフィルタを提供し得る。場合によっては、吸引アダプタへの真空の再適用またはフィルタの露出した外側部分の拭き取りは、フィルタを閉塞する任意の異物を一掃するのに十分であり得る。フィルタは、アクリル、ポリエーテルスルホン、またはポリテトラフルオロエチレンなどの好適に耐性のあるポリマーから構成され得、かつ油性または疎水性であってもよい。場合によっては、ガスリーク部146は、追加の陰圧が導管108’に適用されたときに、認め得るほどに増加しない比較的一定のガス流を供給し得る。陰圧創傷治療システム100の実例では、ガスリーク部146を通るガス流は、追加の陰圧が適用されたときに増加し、好ましくは、この増加したガス流は、最小化され、それに適用される陰圧に比例して増加しないことになる。本明細書に開示される陰圧創傷治療システムの任意の実装例で使用され得る、そのようなブリッジ、導管、空気リーク部、およびその他の構成要素、特徴、ならびに詳細のさらなる説明は、本明細書に完全に記載されているかのように全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,801,685号に見出される。
【0039】
本明細書に開示される創傷療法デバイス(デバイス110または110’など)のいずれかは、連続的または断続的な陰圧療法を提供し得る。連続的な療法は、0mmHgより上、-25mmHg、-40mmHg、-50mmHg、-60mmHg、-70mmHg、-80mmHg、-90mmHg、-100mmHg、-120mmHg、-125mmHg、-140mmHg、-160mmHg、-180mmHg、-200mmHg、または-200mmHgより下で送達され得る。断続的な療法は、低い陰圧設定値(set point)と高い陰圧設定値との間で送達され得る(設定値(setpoint)と称される場合もある)。低い設定値は、0mmHgより上、-25mmHg、-40mmHg、-50mmHg、-60mmHg、-70mmHg、-80mmHg、-90mmHg、-100mmHg、-120mmHg、-125mmHg、-140mmHg、-160mmHg、-180mmHg、または-180mmHgより下に設定され得る。高い設定値は、-25mmHgより上、-40mmHg、-50mmHg、-60mmHg、-70mmHg、-80mmHg、-90mmHg、-100mmHg、-120mmHg、-125mmHg、-140mmHg、-160mmHg、-180mmHg、-200mmHg、または-200mmHgより下に設定できる。断続的治療中、低い設定値での陰圧を第1の持続時間にわたって送達することができ、また第1の持続時間の終了時には、高い設定値での陰圧を第2の持続時間にわたって送達することができる。第2の持続時間の終了時には、低い設定値での陰圧を送達することができる。第1および第2の持続時間は、同一の値または異なる値とすることができる。
【0040】
動作時、創傷充填材102は、創傷104の空洞内に挿入され得、創傷カバー106は、創傷104をシールするように設置され得る。創傷療法デバイス110’は、創傷カバー106に陰圧を提供することができ、これは、創傷充填材102を介して創傷104に伝達され得る。流体(創傷滲出物など)は、導管108’を通って引き出され、キャニスタ内に貯蔵され得る。場合によっては、流体は、創傷充填材102または1つ以上の吸収層(図示せず)によって吸収される。
【0041】
本出願のポンプアセンブリおよびシステムとともに利用され得る創傷被覆材としては、Smith&Nephewから入手可能なRenasys-F、Renasys-G、Renasys AB、およびPico被覆材が挙げられ得る。そのような創傷被覆材、ならびに本出願のポンプアセンブリおよびシステムとともに使用され得る陰圧創傷療法システムの他の構成要素のさらなる説明は、米国特許公開第2012/0116334号、同第2011/0213287号、同第2011/0282309号、同第2012/0136325号、米国特許第9,084,845号、および国際特許第PCT/EP2020/078376号において見出され、これらの文献の各々は、本明細書に完全に記載されているかのように全体が参照により本明細書に組み込まれる。場合によっては、他の好適な創傷被覆材が利用され得る。
【0042】
図2A図2Cは、陰圧創傷療法デバイス110’を示す。例示されるように、ポンプアセンブリ160およびキャニスタ162を接続し、それによって、創傷療法デバイス110’を形成することができる。図2Cを参照すると、ポンプアセンブリ160は、ディスプレイ172を有するインターフェースパネル170、1つ以上のインジケータ174、または例えば、療法の開始および一時停止ボタン180もしくは警報/警告ミュートボタン182を含むが、これらに限定されない、1つ以上の制御もしくはボタンを含み得る。インターフェースパネル170は、ポンプアセンブリ160またはインターフェースパネル170の任意の機能を制御するために使用され得る、1つ以上の入力制御またはボタン184(3つが示される)を有し得る。例えば、限定されるものではないが、ボタン184のうちの1つ以上を使用して、ポンプアセンブリ160をオンもしくはオフにすること、療法を開始もしくは一時停止すること、ポンプアセンブリ160を動作させ、動作を監視すること、ディスプレイ172上に表示されたメニュー内をスクロールすること、またはその他の機能を制御もしくは実施することができる。場合によっては、コマンドボタン184は、プログラム可能であってもよく、かつ触覚性で柔らかいゴムから作製され得る。
【0043】
さらに、インターフェースパネル170は、1つ以上のボタン184のうちのどれが稼働中であるかを示すことができる視覚的インジケータ186を有し得る。インターフェースパネル170はまた、様々なボタン(例えば、ボタン184)またはディスプレイ172の機能を選択的にロックまたはロック解除するように構成され得る、ロック/ロック解除制御またはボタン188を有し得る。例えば、療法設定の調整は、ロック/ロック解除制御188を介してロック/ロック解除され得る。ロック/ロック解除ボタン188がロック状態にある場合、様々なその他のボタンのうちの1つ以上またはディスプレイを押下することにより、ポンプアセンブリ160が、デバイスの任意のディスプレイ機能または性能機能を変更させることはない。このように、インターフェースパネル170は、様々なボタンまたはディスプレイが偶発的にぶつけられること、または触れられることから保護されることになる。インターフェースパネル170は、ポンプアセンブリ160の上部部分の上、例えば、限定されるものではないが、ポンプアセンブリ160の上向きに面する表面の上に位置し得る。
【0044】
LCDスクリーンなどのスクリーンであってもよいディスプレイ172は、インターフェースパネル170の真ん中の部分に装着され得る。ディスプレイ172は、タッチスクリーンディスプレイであってもよい。ディスプレイ172は、指示ビデオなどの視聴覚(AV)コンテンツの再生をサポートし、ポンプアセンブリ160の動作を構成、制御、および監視するためのいくつかのスクリーンまたはグラフィカルユーザインターフェース(GUI)をレンダリングすることができる。
【0045】
1つ以上のインジケータ174は、照明(LEDなど)であってもよく、警報条件およびまたはポンプのステータスの視覚的指標を提供するように構成され得る。例えば、限定されるものではないが、1つ以上のインジケータ174は、ポンプアセンブリ160、または導管108’もしくは創傷カバー106を含むが、これらに限定されない、陰圧創傷治療システム100’のその他の構成要素のステータスの視覚的指標を提供するように構成され得る(通常の動作、低バッテリ、漏れ、キャニスタが満杯、遮断、過圧などの指標を提供するなどのために)。視覚的、聴覚的、触覚的インジケータなどのような任意の1つ以上の好適なインジケータを、さらにまたは代替的に使用することができる。
【0046】
図2Bは、図2Aに示される創傷療法デバイス110’の背面または後方図を示す。示されるように、ポンプアセンブリ160は、音声を生成するためのスピーカ192を含み得る。例えば、限定されるものではないが、スピーカ192は、療法送達の偏り、療法送達の不遵守、または任意の他の同様のもしくは好適な病状、あるいはこれらの組み合わせに応答して、音響警報を発生させ得る。スピーカ192は、ディスプレイ172上に表示され得る1つ以上の指示ビデオに付随する音響を提供することができる。
【0047】
ポンプアセンブリ160は、抗菌フィルタなどの、ポンプアセンブリ160の1つ以上のフィルタへの容易なアクセス(ポンプアセンブリのケーシング上のアクセスドアなど)を提供するように構成され得る。これにより、ユーザ(医療従事者または患者など)は、そのようなフィルタに対するより容易なアクセス、検査、または交換を行うことができる。ポンプアセンブリ160はまた、ポンプアセンブリ160に電力を提供するため、または内部電源(バッテリなど)を充電および再充電するための電力ジャック196を含み得る。ポンプアセンブリ160のいくつかの実装例は、1つ以上のバッテリなどの、使い捨てまたは再生可能な電源を含むことができ、その結果、電力ジャックは必要ない。ポンプアセンブリ160は、ポンプアセンブリ160の把持を容易にするために、内部に形成された凹部198を有し得る。
【0048】
キャニスタ162は、創傷104から吸い出された流体を保持し得る。例えば、キャニスタ162は、800mL(もしくはおよそ800mL)の容量、または300mL以下の容量~1000mL以上の容量、またはこの範囲内の任意の容量レベルを有し得る。キャニスタ162は、流体流路を形成するために、導管108’に接続するための管類を含み得る。キャニスタ162は、キャニスタ162が流体で充填されている場合などに、別のキャニスタと交換することができる。図2Aを参照すると、創傷療法デバイス110’は、キャニスタ162と流体連通するキャニスタ入口管200(本明細書では、被覆材ポートコネクタとも称される)を含み得る。例えば、限定されるものではないが、キャニスタ入口管200を使用して、導管108’と接続することができる。
【0049】
キャニスタ162は、ポンプアセンブリ160に対して選択的に連結可能および取り外し可能であってもよい。図2Aを参照すると、場合によっては、キャニスタ解放ボタン202が、キャニスタ162をポンプアセンブリ160から選択的に解放するように構成され得る。図2Bを参照すると、キャニスタ162は、ユーザに示すため、およびキャニスタ162内に貯蔵された流体または滲出物の量を示すための、1つ以上の充填線または目盛り204を有し得る。
【0050】
創傷療法デバイス110’は、創傷療法デバイス110’を持ち上げるか、または運ぶために使用することができる、ハンドル208を有し得る。ハンドル208は、ポンプアセンブリ160と連結することができ、かつ創傷療法デバイス110’に対して回転可能であってもよく、その結果、ハンドルを、創傷療法デバイス110’またはポンプアセンブリ160を持ち上げるか、もしくは運ぶために上向きに回転させること、またはハンドルが使用されていないときに、よりコンパクトな位置に下部輪郭へと回転させることができる。場合によっては、ハンドル208は、固定された位置でポンプアセンブリ160と連結され得る。ハンドル208は、ポンプアセンブリ160の上部部分と連結され得るか、または創傷療法デバイス110’から取り外し可能であってもよい。
【0051】
図3は、創傷療法デバイス110’など、本明細書に記載の創傷療法デバイスのいずれかに用いられ得る制御システム300の概略図を例示する。電気構成要素は、ユーザ入力を受け入れること、ユーザに出力を提供すること、陰圧源を動作させること、接続を提供することなどを行うように動作し得る。第1のプロセッサ(メインコントローラ310など)が、ユーザ活動を担当することができ、第2のプロセッサ(ポンプコントローラ370)が、ポンプ390などの別のデバイスを制御することを担当することができる。
【0052】
入力/出力(I/O)モジュール320を使用して、ポンプ390、1つ以上のセンサ(例えば、流体流路の1つ以上の場所で圧力を監視するように構成された1つ以上の圧力センサ325)などのような、別の構成要素もしくはデバイスへの入力および/または出力を制御することができる。例えば、I/Oモジュールは、シリアル(例えば、I2C)、パラレル、ハイブリッドポートおよびこれに類するものなどの1つ以上のポートを介して1つ以上のセンサからデータを受信し得る。圧力センサのいずれかが、創傷療法デバイスまたはキャニスタの一部であってもよい。場合によっては、圧力センサ325のいずれかが、創傷に、または創傷の近くに(例えば、被覆材または被覆材を創傷療法デバイスに接続する導管内に)位置付けられるなど、創傷療法デバイスに対して遠隔にあってもよい。そのような実装例では、遠隔の圧力センサのいずれかが、有線接続を介してI/Oモジュールと通信し得るか、または無線接続を介して1つ以上のトランシーバ340と通信し得る。
【0053】
メインコントローラ310は、1つ以上のUSBポート、SDポート、コンパクトディスク(CD)ドライブ、DVDドライブ、FireWireポート、Thunderboltポート、PCI Expressポートなどのような、1つ以上の拡張モジュール360との間でデータを受信および提供することができる。メインコントローラ310は、他のコントローラまたはプロセッサとともに、メインコントローラ310の内部または外部にあってもよいメモリ350(1つ以上のメモリモジュールなど)にデータを記憶することができる。RAM、ROM、磁気メモリ、固体メモリ、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)などの揮発性または不揮発性メモリを含む任意の好適なタイプのメモリを使用し得る。
【0054】
メインコントローラ310は、低電力プロセッサまたは特定用途向けプロセッサなどの汎用コントローラであってもよい。メインコントローラ310は、制御システム300の電子アーキテクチャ内で「中央」プロセッサとして構成され得、かつメインコントローラ310は、ポンプコントローラ370、1つ以上の通信コントローラ330、および1つ以上の追加のプロセッサ380などの、その他のプロセッサの活動を調和させることができる。メインコントローラ310は、Linux、Windows CE、VxWorksなどのような、好適なオペレーティングシステムを動かすことができる。
【0055】
ポンプコントローラ370は、陰圧または減圧を発生させ得るポンプ390の動作を制御することができる。ポンプ390は、膜ポンプ、蠕動ポンプ、回転ポンプ、回転ベーンポンプ、スクロールポンプ、ねじポンプ、液封式ポンプ、圧電気変換器によって操作される膜ポンプ、ボイスコイルポンプなどの好適なポンプであり得る。ポンプコントローラ370は、1つ以上の圧力センサ325から受信したデータを使用して、流体流路内の圧力を測定すること、流体流量を計算すること、およびポンプを制御することができる。ポンプコントローラ370は、所望のレベルの陰圧が創傷104内で達成されるように、ポンプアクチュエータ(モータなど)を制御することができる。所望のレベルの陰圧は、圧力設定またはユーザによって選択され得る。ポンプコントローラ370は、パルス幅変調(PWM)またはパルス制御を使用して、ポンプ(例えば、ポンプモータ)を制御することができる。ポンプを駆動するための制御信号は、0~100%のデューティサイクルPWM信号であり得る。ポンプコントローラ370は、流量計算を実施すること、および警報を検出することができる。ポンプコントローラ370は、メインコントローラ310に情報を通信することができる。ポンプコントローラ370は、低電力プロセッサであってもよい。
【0056】
1つ以上の通信コントローラ330のいずれかが、接続(有線または無線接続332など)を提供し得る。1つ以上の通信コントローラ330は、データを送信および受信するために1つ以上のトランシーバ340を利用することができる。1つ以上のトランシーバ340は、1つ以上のアンテナ、光学センサ、光学トランスミッタ、振動モータもしくは振動変換器、振動センサ、音響センサ、超音波センサなどを含み得る。1つ以上のトランシーバ340のいずれが、通信コントローラとして機能し得る。そのような場合には、1つ以上の通信コントローラ330を省略することができる。1つ以上のトランシーバ340のいずれを、無線通信を容易にする1つ以上のアンテナに接続することができる。1つ以上の通信コントローラ330は、以下のタイプの接続のうちの1つ以上を提供し得る。グローバルポジショニングシステム(GPS)、セルラー接続(例えば、2G、3G、LTE、4G、5Gなど)、NFC、Bluetooth接続(もしくはBLE)、無線周波数識別(RFID)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)、WiFi接続、インターネット接続、光学接続(例えば、赤外線、QRコードなどのバーコードなどを使用する)、音響接続、超音波接続など。接続は、ポンプアセンブリの場所追跡、アセット追跡、コンプライアンス監視、遠隔選択、ログ、警報、および他の動作データのアップロード、ならびに療法設定の調整、ソフトウェアまたはファームウェアのアップグレード、ペアリングなどのような、様々な活動のために使用され得る。
【0057】
1つ以上の通信コントローラ330のいずれかが、デュアルGPS/セルラー機能を提供し得る。携帯電話機能は、例えば、3G、4G、または5G機能であり得る。1つ以上の通信コントローラ330は、メインコントローラ310に情報を通信することができる。1つ以上の通信コントローラ330のいずれかが、内部メモリを含み得るか、またはメモリ350を利用することができる。1つ以上の通信コントローラ330のいずれかが、低電力プロセッサであってもよい。
【0058】
制御システム300は、GPSデータ、療法データ、デバイスデータ、およびイベントデータなどのデータを記憶することができる。このデータは、例えば、メモリ350に記憶することができる。このデータには、1つ以上のセンサによって収集された患者データが含まれ得る。制御システム300は、療法および他の動作データを追跡およびログ記録することができる。こうしたデータは、例えば、メモリ350に記憶され得る。
【0059】
1つ以上の通信コントローラ330によって提供される接続を使用して、制御システム300は、デバイス334などの、遠隔のコンピューティングデバイスに、制御システム300によって記憶、維持、または追跡されたデータのいずれかをアップロードすることができる。制御システム300は、療法の選択、ならびにパラメータ、ファームウェアおよびソフトウェアのパッチおよびアップグレードなどの様々な動作データを(例えば、デバイス334への接続を介して)ダウンロードすることもできる。1つ以上のユーザインターフェース(1つ以上のディスプレイなど)を制御するためのプロセッサなどの、1つ以上の追加のプロセッサ380を利用することができる。場合によっては、制御システム300の例示または記載される構成要素のいずれかを、制御システム300が使用される、創傷の監視または治療システムの一実施形態に応じて省略することができる。
【0060】
本明細書に記載される陰圧創傷療法デバイスのいずれかは、米国特許第9,737,649号または米国特許公開第2017/0216501号に開示されている1つ以上の特徴を含んでもよく、これらの文献の各々は、全体が参照により組み込まれる。
【0061】
複数被覆材陰性創傷治療
図4は、別の陰圧創傷治療システム400を例示する。システム400は、創傷療法デバイス110’などの、創傷部位(複数可)に陰圧を供給することができる創傷療法デバイスを含み得る。創傷療法デバイス110’は、創傷104aおよび104bなどの1つ以上の創傷に陰圧を供給するように、1つ以上の創傷被覆材406a、406b(集合的に406と称する)と流体連通し得る。第1の流体流路は、創傷療法デバイス110’から第1の創傷被覆材406aへの流体接続を提供する構成要素を含み得る。非限定的な例として、第1の流体流路は、創傷療法デバイス110’との流体接続における、創傷被覆材406aから創傷療法デバイス110’までの通路、または第1の創傷被覆材406aから分岐取り付け部(もしくはコネクタ)444の入口446までの通路を含み得る。同様に、第2の流体流路は、創傷療法デバイス110’から第2の創傷被覆材406bへの流体接続を提供する構成要素を含み得る。
【0062】
システム400は、複数の創傷104aおよび140bがシステム400によって治療されていることを除いて、システム100’と同様であってもよい。システム400は、第1の創傷と第2の創傷とを区別するために、付加された文字「a」または「b」とともに図4に例示される、システム100’の構成要素(創傷104aおよび104b、カバー106aおよび106bなど)のうちの任意の1つ以上を含み得る。例示されるように、システム400は、アダプタ108’などの複数の吸引アダプタを介して創傷療法デバイス110’と流体連通する、複数の創傷被覆材406a、406b(および対応する流体流路)を含み得る。吸引アダプタは、第1の創傷と第2の創傷とを区別するために、付加された文字「a」または「b」とともに図4に例示される、アダプタ108’の構成要素(ブリッジ部分130aおよび130b、コネクタ134aおよび134b、ならびにキャップ140aおよび140bなど)のうちの任意の1つ以上を含み得る。
【0063】
創傷療法デバイス110’は、管142を介して、コネクタ444の入口446と流体的に連結され得る。コネクタ444は、分岐445a、445b、および管または導管442a、442bを介して、管または導管130a、130bと流体的に連結され得るコネクタ134a、134bと流体的に連結され得る。管または導管130a、130bは、被覆材406a、406bと流体的に連結され得る。すべての導管および被覆材の構成要素が連結され、動作可能に位置付けられると、創傷療法デバイス110’を稼働させ、それによって、流体流路を介して創傷430a、430bに陰圧を供給することができる。陰圧の適用は、創傷430の所望するレベルの治癒が達成されるまで適用され得る。2つの創傷および創傷被覆材が図4に例示されているが、創傷療法デバイス110’のいくつかの実装例は、(例えば、コネクタ444の未使用の分岐445aもしくは445bを閉じることによって)単一の創傷に、または(例えば、コネクタ444に分岐を追加することによって)3つ以上の創傷に治療を提供することができる。
【0064】
システム400は、米国特許公開第2020/0069850号または国際公開第WO2018/167199号に開示されている1つ以上の特徴を含み得、これらの文献の各々は、全体が参照により組み込まれる。
【0065】
陰圧源を動作させるための多重モード
本明細書に記載される陰圧デバイスのいずれかは、流体流路に陰圧を供給するように構成された陰圧源を含み得る。陰圧源は、ポンプヘッドを移動させるように構成されたアクチュエータを含み得る。例えば、正変位ポンプの場合、アクチュエータは、ダイアフラム、ベーン、ピストン、ロータ、ねじなどを移動させることができる。アクチュエータは、モータ、圧電気変換器、ボイスコイルなどであってもよい。本明細書に記載されるように、陰圧創傷療法デバイスは、陰圧療法を提供するアクチュエータの動作を制御するコントローラを含み得る。コントローラは、1つ以上のモードに従ってアクチュエータの動作を制御することができる。例えば、アクチュエータは、比例積分(PI)モード、パルス制御モード、またはこれらの組み合わせに従って動作し得る。これらのモードの各々を順に説明する。簡略化のために、本明細書に開示されるある特定の実施例は、モータをアクチュエータとして参照する。しかしながら、本開示は、他のタイプのアクチュエータを有する陰圧源を動作させるために適用可能である。
【0066】
PIモード
PIモードは、ポンプモータの駆動信号を発生させるために使用可能なエラー信号を計算することができる閉ループ制御スキーム(フィードバック制御スキームと称される場合もある)である。場合によっては、エラー信号は、出力(流体流路内の測定された圧力など)と基準入力(目標または設定値の圧力など)との間の差として計算される。このようにして、コントローラは、エラー信号を使用して、ポンプモータに適用された駆動信号に対する修正を行うことができ、これにより、陰圧源によって供給された圧力を調節することができる。閉ループ制御スキームの例としては、比例積分誘導体(PID)制御スキームおよび比例積分(PI)制御スキームが挙げられるが、これらに限定されない。PIモードは、任意の閉ループ制御スキームを含むことができ、比例積分(PI)制御スキームまたは比例積分誘導体(PID)制御スキームに限定されるべきではないことが理解されよう。PIモードでは、モータの駆動信号を、連続的に(または毎ミリ秒以下もしくは毎ミリ秒以上など、定期的に)発生させることができ、モータを連続的に駆動して、エラー信号を最小化することができる。
【0067】
PIモードは、設定値を達成するための滑らかな駆動信号および正確な圧力調節を提供し得る。しかしながら、場合によっては、PIモードで動作している間に、ポンプモータが失速しやすくなり得る。例えば、モータは、エラー信号が失速の閾値(モータ失速の閾値と称される場合もある)を満たす(例えば、下回る)場合に失速し得る。失速の閾値を満たすために、エラー信号が非常に小さいため、モータに対して証明された電力の量が、モータを回すのに不十分である可能性がある。例えば、流体流路内の陰圧のレベルが、陰圧源の動作に起因して増加するにつれて、設定値と測定された圧力との間の差は、最終的に失速の閾値が満たされるまで低下し得る。したがって、場合によっては、流体流路内の低い流れの条件によってモータの失速が引き起こされる場合があり、この間、流体の流れのレベルは、流体の遅い流れを示す低い流れの閾値を満たす。いくつかの実例では、流体流路内の遮断によって低い流れの条件が引き起こされ得る。ポンプモータの失速により、流体の流れが停止し、圧力が(例えば、流体流路内に存在する1つ以上の漏れの結果として)落ちる場合がある。最終的に、PIモードは、ポンプモータに、もはや満たされていない(例えば、失速の閾値を超える)駆動信号を提供することによって、圧力の降下を補償し、ポンプモータを再始動させることができる。場合によっては、失速の閾値が到達される前に、ポンプモータを休止させることができる。しかしながら、場合によっては、ポンプモータをPIモードでのみ駆動することにより、ポンプモータが失速し、再始動される場合があり、これは、乏しい圧力調節、(例えば、モータが失速したときにモータに電力を供給し続けることによる)電力の非効率的な使用、モータまたは陰圧源の他の構成要素への損傷、間で陰圧源が周期的に失速条件に入れられ、失速条件から引き出される「モータボーティング」動作などのうちの1つ以上をもたらし得る。
【0068】
図5Aは、例示的なPIモードで動作するポンプモータに関連付けられた圧力510を表すグラフを例示する。例示されるように、圧力は、上側の閾値512および下側の閾値514の範囲内で滑らかに調節されている。上側の閾値512および下側の閾値514は、ヒステリシス限界によって調整された陰圧設定値によって指定され得る。領域516は、ポンプモータの失速に対応し得る。
【0069】
パルス制御モード
パルス制御モードでは、ポンプモータを、ある持続時間にわたって稼働させた後、ある期間にわたって休止させることができる。このシーケンスを繰り返すことができる。場合によっては、パルス制御モードは、ポンプモータが第1の期間にわたってオンになり、次いで、第2の期間にわたってオフになる、パルス制御された配置を使用する制御スキームである。ポンプモータは、特定のデューティサイクル(または1分など、ポンプモータが特定の期間にわたって稼働中である時間の持続時間)で制御され得る。パルス制御モードにより、ポンプモータは、設定値の周りの指定されたヒステリシス内で圧力調節を維持することができる。
【0070】
場合によっては、パルス制御モードは、PIモードに関連付けられた失速の問題のうちの少なくともいくつかを克服することができる。例えば、パルス制御モードは、流量および所望のヒステリシスによって決定されたデューティサイクルを使用して、定格電圧(または電流)でポンプモータを駆動することを含み得る。場合によっては、ポンプモータは、パルス制御モードでは失速しないか、またはまれに失速することになる。しかしながら、場合によっては、パルス制御モードに従ってポンプモータを駆動することにより、ポンプモータが連続的にパルス制御をオンオフされることに対応する、刺激的な可聴ノイズを生成する場合がある。そのようなノイズは、ユーザにとって刺激的であり得る。加えて、開始および停止が電気モータおよびポンプヘッドの機械的構成要素に対してより大きな応力を生成する場合があるため、連続的なパルス制御により、ポンプモータを早期に経時変化させる可能性がある。
【0071】
図5Bは、例示的なパルス制御モードに関連付けられた圧力520を表すグラフを例示する。圧力は、(上側の閾値512および下側の閾値514など)上限値と下限値との間で「跳ね返る」場合がある。
【0072】
デュアルモード
ポンプモータを制御して、デュアルモードで動作させることができる。例えば、コントローラは、ポンプモータを、本明細書に記載される、PIモードとパルス制御モードとの間で動的に移行させることによって、駆動することができる。一例として、コントローラは、最初にPIモードでポンプモータを駆動し得る。PIモードの間、コントローラは、駆動信号を繰り返し調整して、設定値を達成または維持するように陰圧を調節することができる。ある特定の失速条件に応じる場合、コントローラは、パルス制御モードでポンプモータを交換および駆動することができる。パルス制御モードの間、コントローラは、ポンプモータが失速するのを防止するような方法で、ポンプモータを駆動することができる。例えば、コントローラは、低い流れの条件の存在下であってもモータが失速することがないように、失速の閾値を上回る電力を供給することによってポンプモータを駆動することができる。コントローラは、ノイズを減少させるために、(全電力または実質的に全電力を供給するのではなく)失速の閾値をかろうじて上回る電力を供給することによってポンプモータを駆動することができる。例えば、コントローラは、失速の閾値を上回る(または該閾値よりも大きい)閾値量の電力である電力を供給することができる。
【0073】
デュアルモードでポンプモータを動作させることにより、PIモードおよびパルス制御モードの個々の利点のうちの少なくともいくつかを組み合わせることができ、一方で、これらのモードの個々の欠点のうちの少なくともいくつかを回避するか、または少なくすることができる。例えば、デュアルモードでは、コントローラは、PIモードによって提供されるように流体流路内の圧力に対する正確な制御を保つこと、パルス制御モードによって提供されるようにポンプモータの失速を回避もしくは制限すること、ポンプモータに関連付けられたノイズを回避するか、もしくは減少させること(パルス制御モードでモータにより低い量の電力を供給し、パルス制御モードからPIモードにできるだけ早く切り替えることによって)などができる。有利には、デュアルモード動作は、陰圧創傷療法の実質的に中断のない送達を提供し得る。
【0074】
図5Cは、ポンプモータがパルス制御モードからPIモードに移行する例示的なデュアルモードに関連付けられた圧力530を表すグラフを例示する。パルス制御モードでは、ポンプ駆動信号の電圧(または電流)は、圧力が約0.7~2.5秒の間に上昇する際、失速の閾値をかろうじて上回る、固定された低い電圧(もしくは電流)またはPWM駆動であってもよい。ポンプ駆動信号またはPWM駆動の電圧(もしくは電流)は、圧力が落ちる際、約2.5~4.2秒の間で実質的にゼロであってもよい。約4.2秒で、流れが増加し、固定された低い電圧(もしくは電流)のパルス制御された駆動またはPWM駆動が、陰圧設定値を維持するのに不十分になると、PIモードへの移行が起こる。移行は、540で起こるように例示されている。
【0075】
図6は、創傷に陰圧を供給するためのプロセス600の流れ図である。陰圧源を創傷被覆材に流体的に接続することができ、創傷被覆材を、創傷の少なくとも一部分を覆うように位置付けることができ、陰圧源を制御して、流体流路を介して創傷に陰圧を供給することができる。プロセス600は、図3のポンプ制御プロセッサ370など、本明細書に記載される任意の1つ以上のコントローラによって実施され得る。参照を容易にするために、プロセス600は、陰圧源と通信するコントローラによって概して行われるものとして論理的に関連付けられているが、以下の例示用の実施例は、限定として解釈されるべきではない。
【0076】
ブロック602で、プロセス600は、第1の駆動信号を、陰圧源のポンプモータに適用することができる。場合によっては、第1の駆動信号の適用により、陰圧源に、流体流路を介した創傷への陰圧の供給を開始させる。場合によっては、第1の駆動信号の適用により、陰圧源に、陰圧の供給を調整させる。例えば、本明細書に記載されるように、第1の駆動信号を繰り返し調整して、陰圧設定値に対して陰圧を調節することができる。陰圧設定値は、所望のレベルの陰圧に対応し得、ユーザによって設定または選択された圧力であってもよい。場合によっては、第1の駆動信号の適用は、本明細書に記載されるように、PIモードへの移行を示すか、または別様に対応する。ポンプモータの失速が重大な懸念にはなり得ないように、設定値と流体流路内の陰圧との間の差が陰圧創傷療法の開始(または再始動)時では十分に大きい可能性があるため、第1の駆動信号は、PIモードに対応し得る。
【0077】
第1の駆動信号(または本明細書に記載される他の駆動信号のいずれか)は、パルス幅変調(PWM)信号であってもよいし、または別の好適な変調技術によって変調することができる。場合によっては、第1の駆動信号(または本明細書に記載される他の駆動信号のいずれか)は、変調することができない。例えば、第1の駆動信号のデューティサイクルは、0~100%の間の任意のデューティサイクルであってもよい。場合によっては、第1の駆動信号のデューティサイクルは、ポンプモータに供給される電圧(もしくは電流)、設定値などのうちの少なくとも1つに基づく。場合によっては、第1の駆動信号のデューティサイクルは、以下の方程式に従って決定される。
DrivePWM=SetPressure×k1+k2 (1)
式中、DrivePWMは、第1の駆動信号のデューティサイクルであり、SetPressureは、設定値である。方程式1の定数k1およびk2は、制御されている特定のタイプのポンプに対して選択および調整され得る。方程式1に従って決定される駆動信号は、陰圧創傷療法の開示時、または陰圧創傷療法の送達の一時停止後に、モータに供給され得る。場合によっては、方程式1のDrivePWMは、初期PWM(またはモータ失速の閾値)に対応し得る。いくつかの実例では、方程式1を非線形方程式で置き換えることができるか、または圧力によって指標化されたルックアップテーブルを使用することができる。
【0078】
ブロック604で、プロセス600は、モータ失速の閾値が満たされているかどうかを識別することができる。本明細書に記載されるように、場合によっては、PIモードで動作させることにより、ポンプモータが失速し得る。PIモードでの動作中にモータが失速する可能性を減少させるために、プロセス600は、モータ失速の閾値を監視し、該閾値が満たされたときを決定することができる。場合によっては、モータ失速の閾値を満たすことは、モータが失速していること、またはモータが現在の駆動信号(もしくは駆動モード)を使用して動作し続けた場合に、ポンプモータが、ある期間内に失速する可能性が高いことを示す。したがって、モータ失速の閾値が満たされているかどうかを識別することは、モータが失速する可能性が高いかどうか、またはモータがいつ失速する可能性が高いかを決定する際に有用なインジケータとなり得る。さらに、モータ失速の閾値が満たされているかどうかを識別することは、いつPIモードからパルス制御モードに移行するかを決定する際に有用なインジケータとなり得る。
【0079】
モータ失速の閾値は、ポンプモータの失速点、または失速点からかろうじて離れた値に対応し得る。場合によっては、失速点を、試験中に見出し得るか、または決定し得る。例えば、遮断条件が流体流路内に作り出されている場合、モータ(例えば、モータ電流)による電力の引き出しを監視しながら、駆動信号を徐々に下げることができる。失速したモータが回っていない可能性があり、逆電磁力(EMF)を発生させない可能性があるため、モータが失速したときにモータによって引き出される電力は、負荷時であっても、モータが動いているときに引き出される電力よりもはるかに高い可能性がある。この電力の増加を測定および使用して、モータ閾値の閾値を決定または設定することができる。
【0080】
モータ失速の閾値は、様々な方法で決定することができる。例えば、モータ失速の閾値は、モータに対する駆動信号の電圧、駆動信号の電流、駆動信号のデューティサイクル、創傷におけるまたは流体流路内の圧力、モータのトルク、モータの速度、逆EMFなどのうちの1つ以上の任意の組み合わせに関連付けられ得る。
【0081】
いくつかの実装例では、モータ失速の閾値は、駆動信号に関連付けられた電圧が、モータ失速を示す電圧の閾値を満たすという決定に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。一例として、駆動信号に関連付けられた電圧が電圧の閾値を下回って落ちた(または場合によっては、該閾値を超えた)場合、モータ失速の閾値は満たされ得る。電圧の閾値は、ポンプまたはポンプモータの特性、設計制約などに応じて変動し得る。例えば、場合によっては、モータ失速の閾値は、ポンプモータが逆らって作動する静圧に基づいて変動し得る(例えば、より高い静圧は、より高いモータ失速の閾値に対応し得る)。
【0082】
場合によっては、モータ失速の閾値は、駆動信号に関連付けられた電流が電流の閾値を満たすという決定に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。一例として、電流が、駆動信号の電流が電流の閾値を下回って落ちた(または場合によっては、該閾値を超えた)ときに関連付けられている場合、モータ失速の閾値は満たされ得る。本明細書に記載されるように、電流の閾値は、ポンプまたはポンプモータの特性、設計制約などに応じて変動し得る。
【0083】
さらに、モータ失速の閾値は、ポンプモータのトルクがトルクの閾値を満たすという決定に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。一例として、ポンプモータのトルクがトルクの閾値を下回って落ちた(または場合によっては、該閾値を超えた)場合、モータ失速の閾値は満たされ得る。本明細書に記載されるように、トルクの閾値は、ポンプまたはポンプモータの特性、設計制約などに応じて変動し得る。場合によっては、トルクの閾値は、0ニュートンメートル(N・m)またはいくつかの他のトルクに等しい。
【0084】
場合によっては、モータ失速の閾値は、駆動信号のデューティサイクルがデューティサイクルの閾値を満たすという決定に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。一例として、駆動信号に関連付けられたデューティサイクルがデューティサイクルの閾値を満たさない場合、モータ失速の閾値は満たされ得る。本明細書に記載されるように、デューティサイクルの閾値は、ポンプまたはポンプモータの特性、設計制約などに応じて変動し得る。
【0085】
場合によっては、モータ失速の閾値は、ポンプモータの速度が速度の閾値を満たすという決定に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。例えば、ポンプモータ速度(例えば、毎分回転数(RPM)で測定される)は、ポンプモータ上に位置付けられた光学エンコーダ、Hull効果センサなどからのデータといった、センサデータに基づいて決定され得る。場合によっては、ポンプモータの速度が速度の閾値を下回って落ちた(または場合によっては該閾値を超えた)場合、モータ失速の閾値は満たされ得る。本明細書に記載されるように、デューティサイクルの閾値は、ポンプまたはポンプモータの特性、設計制約などに応じて変動し得る。場合によっては、モータ失速の閾値は、逆EMFの欠如に対応し得る。モータの失速は、モータが逆EMFを生成しないという検出に応答して決定され得る。例えば、逆EMFは、米国特許第8,494,349号および米国特許公開第2013/0150813号に記載されるように、電圧を測定することによって、フリーホイールモード動作中(電力がモータに適用されていない場合など)に決定され得、これらの文献の各々は、全体が参照により組み込まれる。
【0086】
プロセス600は、モータ失速の閾値が満たされていない場合にはブロック606に進むことができ、またはモータ失速の閾値が満たされている場合にはブロック608に進むことができる。
【0087】
ブロック606で、プロセス600は、エラー信号に基づいて第1の駆動信号を調整し得る。プロセス600は、ポンプによって供給された陰圧を調節するために、エラー信号を使用して、第1の駆動信号に対する修正を行うことができる。場合によっては、第1の駆動信号のデューティサイクルは、以下の方程式に従って調整される。
調整されたDrivePWM=(IGAIN×PressureIntergralError+PGAIN×PressureError) (2)
式中、IGAINは、積分ゲイン(例えば、特定のポンプに対して選択される定数)に対応し、PressureIntergralErrorは、蓄積されたエラー信号(蓄積されたPressureError信号など)に対応し、PGAINは、比例ゲイン(例えば、特定のポンプに対して選択される定数)に対応し、PressureErrorは、エラー信号に対応する。方程式2は、比例積分(PI)制御が利用されている場合に使用することができる。方程式2を使用して決定される第1の駆動信号は、陰圧源に適用され得る。
【0088】
PID制御を使用する場合など、場合によっては、第1の駆動信号のデューティサイクルは、以下の方程式に従って調整される。
調整されたDrivePWM=(IGAIN×PressureIntergralError+PGAIN×PressureError+DGAIN×PressureDifferentialError) (3)
式中、DGAINは、差ゲイン(例えば、特定のポンプに対して選択される定数)に対応し、PressureDifferentialErrorは、エラー信号の誘導体に対応し、IGAIN、PressureIntergralError、PGAIN、およびPressureErrorは、方程式2に関連して説明される。方程式3を使用して決定される第1の駆動信号は、陰圧源に適用され得る。
【0089】
場合によっては、エラー信号は、創傷における所望の陰圧に対応する陰圧設定値と、流体流路内の(または創傷における)測定された圧力との間の圧力差に基づく。しかしながら、測定された圧力以外のメトリクスを利用して、エラー信号を決定することができることが理解されよう。例えば、図5Aに例示されるように、場合によっては、駆動信号の電圧(または電流)は、創傷における圧力に比例し得る。一部のそのような場合には、プロセス600は、駆動信号の電圧(または電流)に基づいて第1の駆動信号を調整することができる。
【0090】
場合によっては、ブロック602および606は、PIモードで動作するポンプモータに対応し得る。例えば、ブロック602および606では、プロセス600は、駆動信号を繰り返し調整して、陰圧設定値に対して陰圧を調節することができる。このように、設定値を達成または維持するための圧力調節は、実質的に正確であってもよく、ポンプ駆動は、本明細書に記載されるように滑らかであってもよい。
【0091】
ブロック608で、モータ失速の閾値が満たされたと決定することに応答して、プロセス600は、第1の駆動信号の代わりに第2の駆動信号を適用することができる。第2の駆動信号により、モータをパルス制御モードで動作させることができる。第2の駆動信号は、本明細書に記載されるような、好適なデューティサイクルに関連付けられ得る。
【0092】
プロセス600は、ブロック608からブロック610に移行することができる。ブロック610で、プロセス600は、制御をPIモードに切り替えることができるかどうかを決定することができる。本明細書に記載されるように、パルス制御モードでは、モータは、モータの稼働および休止の期間を交互に行うことによって制御され得る。結果として、流体流路内に存在する1つ以上の漏れにより、陰圧の減少(または損失)が起こり得る。これは、エラー信号が増加し、PIモードでモータが失速する可能性が少なくなることにつながる場合がある。
【0093】
ブロック610では、プロセス600は、測定された圧力が、PIモードへの切り替えに関連付けられた圧力の閾値を満たすかどうかを決定することができる。圧力の閾値は、パルス制御モードでの予測される最も低い陰圧よりも陽性である好適な圧力値に設定され得る。例えば、パルス制御モードでは、プロセス600は、最大および最小の陰圧レベルによって定義される範囲内で流体流路内の(または創傷における)圧力を維持することができる。そのような実施例では、圧力の閾値は、最小の陰圧レベルよりも低い陰圧値に設定され得る。
【0094】
場合によっては、本明細書に記載のように、ブロック610で、プロセス600は、エラー信号、モータに供給された電力(電圧または電流など)、モータのトルク、モータの速度、逆EMFなどのうちの1つ以上を利用して、制御をPIモードに切り替えるべきかどうかを決定することができる。
【0095】
ブロック610で、プロセス600は、圧力の閾値が満たされていないと決定することに応答して、ブロック608に戻って移行することができる。例えば、プロセス600は、測定された圧力が圧力の閾値よりも陰性であると決定することに応答して、ブロック608に移行することができる。圧力の閾値が満たされている場合、プロセス600は、ブロック612に移行することができる。
【0096】
ブロック612で、プロセス600は、第1の駆動信号をリセットして、パルス制御モードからPIモードへの滑らかな移行を提供することができる。例えば、滑らかな移行は、創傷に供給されている陰圧の超過をもたらし得ない。これは、失速の閾値をかろうじて上回るレベルに第1の駆動をリセットすることによって達成され得る。場合によっては、プロセス600は、第1の駆動信号を、方程式1によって決定されるデューティサイクルにリセットすることができる。
【0097】
プロセス600は、ブロック612からブロック602に移行することができ、ここで、第1の駆動信号をモータに供給することができる。
【0098】
図6の様々なブロックは、様々な順序で実施することができ、プロセス600は、所望に応じて、ブロックのうちの1つ以上を同時に実施し得、かつ/または順序を変更し得ることが理解されよう。さらに、より少ないブロック、より多くのブロック、または異なるブロックを、プロセス600の一部として使用することができることが理解されよう。例えば、プロセス600は、ブロック602の代わりにブロック608で始まってもよい。
【0099】
本明細書に記載される陰圧創傷療法デバイスのいずれかは、全体が参照により組み込まれる、米国特許第8,308,714号に開示されている1つ以上の特徴を含み得る。
【0100】
他の変形例
いくつかの実施形態は、陰圧創傷療法を記載するが、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および/または方法は、スタンドアロンで、またはTNP療法に加えて、使用可能な他のタイプの療法に適用され得る。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および/または方法は、任意の医療デバイス、特に任意の創傷治療デバイスに拡張され得る。例えば、本明細書に開示されるシステム、デバイス、および/または方法は、超音波療法、酸素療法、神経刺激、マイクロ波療法、活性剤、抗生物質、抗微生物剤、またはこれに類するもののうちの1つ以上を提供するデバイスとともに使用され得る。こうしたデバイスは、さらにTNP療法を提供することができる。本明細書に開示されるシステムおよび方法は、医療デバイスに限定されず、任意の電子デバイスによって利用され得る。
【0101】
本明細書に記載されるデータの任意の送信は、安全に実施され得る。例えば、暗号化、httpsプロトコル、安全なVPN接続、エラーチェック、送達の確認、またはこれに類するもののうちの1つ以上を利用することができる。
【0102】
本明細書に提供される閾値、限界値、期間などのいかなる値も、絶対的な値であることを意図するものではなく、したがって、およその値であり得る。加えて、本明細書に提供される任意の閾値、限界値、期間などは、自動的にまたはユーザによってのいずれかで、固定されるかまたは変動し得る。さらに、本明細書で使用される場合、参照値に関連した、上回る、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、参照値と等しい場合も包含することが意図される。例えば、正の参照値を超えることは、参照値以上であることを包含することができる。加えて、本明細書で使用される場合、参照値に関連した、上回る、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、参照値に関連した、下回る、未満、超などの開示された関係とは逆のものも包含することが意図される。
【0103】
特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載される特徴、材料、特性、もしくは群は、本明細書に記載の他の任意の態様、実施形態、または実施例と矛盾しない限り、それらに適用可能であることを理解されたい。(あらゆる特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書において開示されるすべての特徴、および/またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのすべての工程は、そのような特徴および/または工程のうち少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。保護対象は、前述の任意の実施形態の詳細に限定されない。保護対象は、本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示される特徴のうちの任意の新規のもの、もしくは任意の新規の組み合わせ、または同様に開示される任意の方法もしくはプロセスのステップのうちの任意の新規のもの、もしくは任意の新規の組み合わせに及ぶ。
【0104】
ある特定の実施形態が説明されているが、これらの実施形態は、単に例として提示されており、保護対象の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に説明される新規の方法およびシステムは、様々な他の形態で具現化され得る。さらに、本明細書に記載の方法およびシステムの形態において、様々な省略、置換、および変更がなされ得る。一部の実施形態では、図示および/または開示されたプロセスにおいて実施される実際の工程は、図に示された工程とは異なり得ることを、当業者は認識するであろう。実施形態によっては、上述したステップのうちのある特定のステップが除かれる場合もあれば、他のものが追加される場合もある。例えば、開示されるプロセスで実施される実際のステップおよび/またはステップの順序は、図で示したものとは異なり得る。実施形態によっては、上述したステップのうちのある特定のステップが除かれる場合もあれば、他のものが追加される場合もある。例えば、図に例示されるか、または本明細書に開示される様々な構成要素が、プロセッサ、コントローラ、ASIC、FPGA、および/または専用ハードウェア上の、ソフトウェアおよび/またはファームウェアとして実装されてもよい。ソフトウェアまたはファームウェアは、非一時的コンピュータ可読メモリに記憶されている命令を含み得る。命令は、プロセッサ、コントローラ、ASIC、FPGA、または専用ハードウェアによって実行され得る。コントローラ、プロセッサ、ASIC、FPGAおよび類似のものなど、ハードウェア部品は論理回路を含み得る。さらに、上記に開示された特定の実施形態の特徴および特性は、異なる方式で組み合わされて追加の実施形態を形成し得るが、そのすべては本開示の範囲内に収まる。
【0105】
本明細書で図示され、説明されるユーザインターフェーススクリーンには、追加の構成要素および/または代替の構成要素が含まれ得る。これらの構成要素には、メニュー、リスト、ボタン、テキストボックス、ラベル、ラジオボタン、スクロールバー、スライダー、チェックボックス、コンボボックス、ステータスバー、ダイアログボックス、ウィンドウなどが含まれ得る。ユーザインターフェーススクリーンには、追加の情報、および/または代替の情報が含まれ得る。構成要素は、任意の好適な順序で配置され、グループ化され、表示され得る。
【0106】
「し得る(can)」、「し得る(could)」、「可能性がある(might)」、または「場合がある(may)」などの条件付き言い回しは、別途具体的に記載されない限り、または使用される文脈の範囲内で別途解釈されない限り、ある特定の実施形態が、ある特定の特徴、要素、および/または状態を含む一方で、他の実施形態は含まないということの伝達を意図するのが通例である。したがって、こうした条件付き言い回しは、特徴、要素、および/もしくは状態が1つ以上の実施形態に多少なりとも必要とされるという示唆、またはこれらの特徴、要素、および/もしくは状態が特定の任意の実施形態に含まれているかどうか、もしくは該実施形態で実施されるべきかどうかを、作者入力または命令の有無に関わらず決定するためのロジックが、1つ以上の実施形態に必然的に含まれているという示唆を必ずしも意図するものではない。「備える」、「含む」、および「有する」等の用語は、同義語であり、包含的に、オープンエンドの様式で使用され、追加の要素、特徴、行為、動作などを排除するものではない。また、「または」という用語は、包括的な意味で(排他的な意味ではなく)使用されることにより、例えば、要素の列記をつなぐのに使用される場合、「または」という用語は、列記内の要素のうちの1つ、いくつか、またはすべてを意味する。加えて、「各々」という用語は、本明細書で使用される場合、その通常の意味を有することに加えて、「各々」という用語が適用されている一連の要素の任意のサブセットも意味し得る。さらに、本明細書で使用される場合、「本明細書での(herein)」、「上記(above)」、「下記(below)」および類似する言葉は、本出願で使用される場合、本明細書の全体を指し、本明細書の特定の部分を指すものではないことを意味する。
【0107】
特に明記されない限り、「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という語句などの結合言語は、項目、用語などが、X、Y、またはZ、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得ることを一般的に伝達するために使用される文脈で理解されるべきである。したがって、こうした結合言語は、ある特定の実施形態がXのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、およびZのうちの少なくとも1つが各々存在する必要があることを暗示することを一般的に意図するものではない。
【0108】
本明細書で使用される程度を表す言い回し、例えば、本明細書で使用される「およそ」、「約」、「概して」、および「実質的に」という用語は、依然として所望の機能を果たすかまたは所望の結果をもたらす所定の値、量、または特性に近似した値、量、または特性を表す。例えば、「およそ」、「約」、「概して」、および「実質的に」という用語は、所定の量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、および0.01%未満以内である量を指し得る。別の例として、ある特定の実施形態では、「概して平行」および「実質的に平行」という用語は、丁度平行である状態から15度以下、10度、5度、3度、1度、または0.1度逸脱する値、量、または特性を指す。
【0109】
別段の明示的な記載がない限り、「a」または「an」などの記事は、一般的に、1つ以上の記載項目を含むと解釈されるべきである。したがって、「ように構成されたデバイス」などの語句は、1つ以上の列挙されたデバイスを含むことが意図される。こうした1つ以上の列挙されたデバイスはまた、述べられた列挙を行うように集合的に構成されてもよい。
【0110】
本開示には、ある特定の実施形態、例、および適用が含まれるが、本開示は、具体的に開示された実施形態の範囲を超えて、他の代替の実施形態および/または使用ならびにその明らかな変形およびその等価物にまで及び、これには本明細書に記載された特徴および利点のすべてを提供しているとは限らない実施形態が含まれることは、当業者に理解されるはずである。したがって、本開示の範囲は、本明細書における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、本明細書に提示されるまたはこの後に提示される特許請求の範囲によって定義され得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】