(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】三次元印刷用レベリング装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20230525BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20230525BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20230525BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230525BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230525BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/357
B33Y40/00
B33Y30/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563106
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 IL2021050487
(87)【国際公開番号】W WO2021220274
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルデケイ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】グラスマン、バラク
(72)【発明者】
【氏名】ライン、キリル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AQ01
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL52
4F213WL74
4F213WL87
(57)【要約】
三次元印刷システムのレベリング装置が、回転可能ローラ、廃棄物回収槽、液状廃棄物をローラから槽内へ除去するためのブレード、及び複数の管状構造体を備える。各管状構造体は、槽の基部付近の入口と、ポンプ装置に接続可能な出口とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元印刷システムのためのレベリング装置であって、
回転可能なローラと、
前記ローラを回転させるためのモータと、
廃棄物回収槽と、
液体廃棄物を前記ローラから前記槽内へ除去するためのブレードと、
複数の管状構造体と、
を備え、
各管状構造体は、前記槽の基部付近における入口と、ポンプ装置に接続可能な出口とを有する、装置。
【請求項2】
前記基部は複数の分離された凹部領域で構成され、各管状構造体に関して前記入口は前記凹部領域の1つに所在する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基部は波状形状を有する非平坦面であり、前記凹部領域は前記波状形状の谷部である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記非平坦面は、前記波状形状を形成する複数の傾斜部を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ローラの前記回転を示す信号を生成するための回転センサを更に備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記回転センサは磁気センサを備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記磁気センサはホール効果センサを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記三次元印刷システムに接続可能な筐体を備え、前記ローラ及び前記廃棄物回収槽の少なくとも一方は前記筐体に取り付けられる、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記槽の前記筐体への取り付けを示す信号生成のための配置センサを更に備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記配置センサは機械的スイッチを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記配置センサは光学センサを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ローラ及び前記廃棄物回収槽の少なくとも一方は、迅速解放機構によって前記筐体に着脱可能に取り付けられる、請求項8~請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記迅速解放機構は、弾性クリップコネクタ及び磁気コネクタから成る群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記管状構造体の少なくとも1つはサイフォンとして形成される、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
三次元印刷システムであって、
構築材料を吐出するノズルのアレイと、
請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のレベリング装置と、
前記管状構造体の前記出口に接続されたポンプ装置と、
少なくとも前記ノズルのアレイを操作するように構成されたコンピュータ化されたコントローラと、
を備えるシステム。
【請求項16】
前記ポンプ装置は、それぞれが異なる管状構造体の各出口に接続された少なくとも2つの別々のポンプを備え、前記コントローラは、前記ポンプのそれぞれを個別に起動及び停止を行うように構成される、請求項14に記載の三次元印刷システム。
【請求項17】
前記ノズルから吐出される構築材料を受けるためのトレイを備え、前記トレイの作動領域の幅は前記アレイの長さより広く、前記ローラの長さは、少なくとも前記作動領域の前記幅である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記トレイに対する前記アレイの位置に基づいて、前記ポンプのそれぞれを起動及び停止するように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記レベリング装置は、前記槽が前記ローラの下に配置されたことを示す信号を生成するための配置センサを備え、前記コントローラは、前記配置センサからの前記信号を受信して、前記槽が適正位置にない場合には警報を生成するか前記ノズルを停止するかの少なくともいずれかを行うように構成される、請求項15~請求項18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記レベリング装置は、前記ローラの前記回転を示す信号を生成するための回転センサを備え、前記コントローラは、前記回転センサからの前記信号を受信して、回転速度がゼロ又は所定の閾値より低い場合に警報を生成するか前記ノズルを停止するかの少なくともいずれかを行うように構成される、請求項15~請求項19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記レベリング装置は前記三次元印刷システムに接続された筐体を備え、前記廃棄物回収槽は、迅速解放機構によって前記筐体に着脱可能に取り付けられる、請求項15~請求項20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
請求項15~請求項21のいずれか一項に記載のシステムの保守を実行する方法であって、
前記廃棄物回収槽を筐体から取り外すことと、
前記槽が取り外されているときに少なくとも1つの保守操作を実行することと、
前記廃棄物回収槽を前記筐体に取り付けることと、
を含む方法。
【請求項23】
三次元印刷中における構築材料の層のレベリング方法であって、
前記ローラと前記層との相対運動中に、前記層の最表面を請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の前記レベリング装置の回転ローラに係合させ、それにより前記槽内に余剰の構築材料を回収することと、
前記管状構造体の少なくとも1つを介して、前記余剰の構築材料の少なくとも一部を前記槽から除去するために前記ポンプ装置を作動させることと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年4月27日出願の米国仮特許出願第63/015,728号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はそのいくつかの実施形態において三次元印刷に関し、より具体的には、これに限るものではないが三次元印刷のためのレベリング装置に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は、任意形状をした構造物を付加的な形成ステップを介してコンピュータデータから直接的に製造可能とする技術である。任意のAMシステムの基本操作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面部分にスライスし、その結果を二次元位置データに変換し、そのデータを3次元構造を層状に作製する制御装置に供給することから成る。
【0004】
付加製造は、3Dインクジェット印刷などの三次元(3D)印刷を含む製造方法への多くの異なるアプローチを伴う。3Dインクジェット印刷は、構築材料を層ごとにインクジェット印刷で堆積することにより遂行される。したがって、一組のノズルを有する吐出ヘッドから構築材料が吐出されて、支持構造体上に層状に堆積される。その層が次にレベリング装置により平坦化されて、硬化又は固化される。
【0005】
様々な3次元印刷技術が存在し、例えば、すべて同一譲受人の米国特許6,259,962号、6,569,373号、6,658,314号、6,850,334号、7,183,335号、7,209,797号、7,225,045号、7,300,619号、7,479,510号、7,500,846号、7,962,237号、8,784,723号、及び9,031,680号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、三次元印刷システム用のレベリング装置が提供される。レベリング装置が、回転可能ローラ、ローラを回転させるためのモータ、廃棄物回収槽、ローラからの液体廃棄物を槽内へ除去するためのブレード、及び複数の管状構造体を備える。各管状構造体は、槽の基部付近の入口と、ポンプ装置に接続可能な出口とを有する。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、基部は複数の分離された凹部領域で構成され、各管状構造体に対して入口がその凹部領域の1つにある。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、基部は波状形状を有する非平坦面であり、凹部領域はその波状形状の谷部である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非平坦面は、波状形状を形成する複数の傾斜部を備える。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レベリング装置は、ローラの回転を示す信号を生成するための回転センサを備える。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、回転センサは磁気センサを備える。本発明のいくつかの実施形態によれば、磁気センサはホール効果センサを備える。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レベリング装置は三次元印刷システムに接続可能な筐体を備え、ローラ及び廃棄物回収槽の少なくとも1つは筐体に取り付けられる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レベリング装置は筐体への槽の取り付けを示す信号を生成するための配置センサを備える。本発明のいくつかの実施形態によれば、配置センサは機械的スイッチである。本発明のいくつかの実施形態によれば、配置センサは光学センサである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ローラ及び廃棄物回収槽の少なくとも1つは、迅速解放機構によって筐体に着脱可能に取り付けられる。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、迅速解放機構は、弾性クリップコネクタ及び磁気コネクタから成る群から選択される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、管状構造体の少なくとも1つはサイフォンとして形成される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、三次元印刷用の印刷システムが提供される。この印刷システムは、構築材料を吐出するノズルのアレイと、前述し、また任意選択によりかつ好ましくは以下で詳述するレベリング装置と、管状構造体の出口に接続されたポンプ装置と、少なくともノズルアレイを作動させるように構成されたコンピュータ化されたコントローラとを備える。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポンプ装置は少なくとも2つの分離したポンプを備え、それぞれが別々の管状構造体の各出口に接続される。ここでコントローラは、ポンプのそれぞれを個別に起動及び停止を行うように構成される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、印刷システムは、ノズルから吐出される構築材料を受けるためのトレイを備える。そのトレイの作動領域の幅はアレイの長さより広く、ローラの長さは、少なくとも作動領域の幅である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、トレイに対するアレイの位置に基づいて、ポンプのそれぞれを起動及び停止するように構成される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レベリング装置は、槽がローラの下に配置されたことを示す信号を生成するための配置センサを備え、コントローラは、配置センサからの信号を受信して、槽が適正位置にない場合には警報を生成するかノズルを停止するかの少なくともいずれかを行うように構成される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レベリング装置は、ローラの回転を示す信号を生成するための回転センサを備え、また、コントローラは、回転センサからの信号を受信して、回転速度がゼロ又は所定の閾値より低い場合に警報を生成するかノズルを停止するかの少なくともいずれかを行うように構成される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レベリング装置は三次元印刷システムに接続された筐体を備え、廃棄物回収槽は、迅速解放機構によって筐体に着脱可能に取り付けられる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、印刷システムの保守を実行する方法が提供される。この方法は、筐体から廃棄物回収槽を取り外すことと、槽が取り外されているときに少なくとも1つの保守操作を実行することと、廃棄物回収槽を筐体に取り付けることと、を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、三次元印刷中における構築材料層のレベリング方法が提供される。この方法は、ローラと層との相対運動中に、前述し、また任意選択によりかつ好ましくは以下で詳述するレベリング装置の回転ローラを層の最表面に係合させ、それにより余剰構築材料を槽内に回収することと、その余剰構築材料の少なくとも一部を、管状構造体の少なくとも1つを介して槽から除去するために、ポンプ装置を作動させることと、を含む。
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料が本発明の実施形態の実行又は試行に使用可能であるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記述する。矛盾する場合には、定義を含む本発明の明細書が優先される。さらに、材料、方法及び実施例は例示に過ぎず、必ずしも制限的であることを意図するものではない。
【0027】
本発明の実施形態の方法及び/又は装置の実施は、選択されたタスクを手動、自動又はそれらの組み合わせで実行又は完了させることを含み得る。さらに、本発明の方法及び/又は装置の実施形態の実際の計装機器及び設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを用いたソフトウェア又はファームウェア及び/又はそれらの組合せによって実施可能である。
【0028】
例えば、本発明の実施形態による、選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装可能である。ソフトウェアに関しては、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを用いるコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装可能である。本発明の例示的実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又は装置の例示的実施形態による1以上のタスクは、複数の命令を実行するコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサにより実行される。任意選択により、データプロセッサには、命令及び/又はデータを格納する揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを格納する不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブル媒体、が含まれる。任意選択により、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボードやマウスなどのユーザ入力装置もまた任意選択で提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態は、添付図面を参照して例示としてのみ本明細書に記載する。ここで、図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細事項は一例であって、本発明の実施形態の例示的議論を目的とするものであることが強調される。これに関し、図面と共に行われる説明により、本発明の実施形態がどのように実行され得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1D】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図4C】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図4D】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図4E】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図4F】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図4G】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図4H】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の概略図である。
【
図5A】本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置の筐体、槽及びローラの概略分解図である。
【
図5B】本発明のいくつかの実施形態による、三次元印刷システムへのレベリング装置の組込を容易にすることができる桁材の正面の概略斜視図である。
【
図5C】本発明のいくつかの実施形態による、三次元印刷システムへのレベリング装置の組込を容易にすることができる桁材の背面の概略斜視図である。
【
図6A】廃棄物回収槽及び管状構造体をより詳細に示す概略図である。
【
図6B】廃棄物回収槽及び管状構造体をより詳細に示す概略図である。
【
図6C】廃棄物回収槽及び管状構造体をより詳細に示す概略図である。
【
図6D】廃棄物回収槽及び管状構造体をより詳細に示す概略図である。
【
図6E】廃棄物回収槽及び管状構造体をより詳細に示す概略図である。
【
図6F】廃棄物回収槽及び管状構造体をより詳細に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明はそのいくつかの実施形態において、三次元印刷に関し、より具体的には、これに限るものではないが三次元印刷のためのレベリング装置に関する。
【0032】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に提示され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される、構成要素の構造と配置及び/又は方法の詳細に、その適用が必ずしも限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、また様々な方法で実行又は実施することが可能である。
【0033】
本実施形態の方法及びシステムは、コンピュータ物体データに基づいて、その物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することにより、三次元物体を層ごとに製造する。コンピュータ物体データは、これに限るものではないが、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、OBJファイルフォーマット(OBJ)、3D製造フォーマット(3MF)、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適する他の任意のフォーマットを含む、任意の既知のフォーマットであってよい。
【0034】
本明細書で使用の「物体」という用語は、物体の全体又はその一部を指す。
【0035】
各層は、2次元表面を走査してそれをパターン化する付加製造装置によって形成される。走査中に装置は2次元の層すなわち表面上の複数の標的位置に行き、各標的位置又は一群の標的位置に対して、その各標的位置又は一群の標的位置を構築材料で覆うべきか否か、またそこにどの種類の構築材料を送達するべきか、を決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、AMは3次元印刷、より好ましくは3次元インクジェット印刷で構成される。これらの実施形態では、構築材料が1以上のノズルアレイを有する印刷ヘッドから吐出されて、支持構造体上に構築材料を層状に堆積する。AM装置はこうして構築材料物をそれで覆うべき標的位置に吐出し、他の標的位置を空のままにする。この装置は通常複数のノズルアレイを含み、そのそれぞれが異なる構築材料を吐出するように構成可能である。これは通常、互いに分離されて相互に流体連通しないようにされた複数の流体チャネルを有する印刷ヘッドを設けることで達成される。各チャネルには、分離された入口を介して異なる構築材料が流れ、それが別々のノズルのアレイに配送される。
【0037】
したがって、異なる標的位置を異なる構築材料で占有することが可能である。構築材料の種類は、造形材料と支持材料の大きく2つに分類される。支持材料は、製造プロセス中に物体又は物体の部分を支持するため、及び/又は、例えば中空又は多孔性の物体を提供するためなどの他の目的で、支持母体又は構造体として機能する。支持構造体には、例えば支持強度を上げるために造形材料物要素を追加的に含むこともあり得る。
【0038】
造形材料は一般に、付加製造に使用するために配合された合成物であり、それ自体で、すなわち他のいかなる物質との混合も組合せも必要とせずに、3次元物体を形成可能である。
【0039】
最終的な3次元物体は、造形材料あるいは複数の造形材料の組み合わせあるいは造形材料と支持材料、又はそれらの変形物(例えば硬化後のもの)で作られる。これらのすべての操作は、固体自由成形分野の当業者には周知である。
【0040】
本発明のいくつかの例示的実施形態によれば、物体は2以上の異なる造形材料の吐出により製造され、各材料はAM装置の(同一又は異なる印刷ヘッドの)異なるノズルアレイから吐出される。いくつかの実施形態では、異なる造形材料を吐出する2以上のそのようなノズルアレイが、いずれもAM装置の同一印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、異なる造形材料物を吐出するノズルアレイは別々の印刷ヘッドに配置される。例えば第1の造形材料を吐出する第1のノズルアレイが第1印刷ヘッドに配置され、第2の造形材料を吐出する第2のノズルアレイが第2印刷ヘッドに配置される。
【0041】
いくつかの実施形態では、造形材料を吐出するノズルアレイと、支持材料を吐出するノズルアレイの両方が、同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、造形材料を吐出するノズルアレイと、支持材料を吐出するノズルアレイが、別々の印刷ヘッドに配置される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態による、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的な例を
図1Aに示す。システム110は、複数の印刷ヘッドを備えた吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは好ましくは、以下で説明する
図2A~
図2Cに示すようなオリフィス板121に通常取り付けられた1以上のノズルアレイ122を備え、それを介して液体の構築材料124が吐出される。
【0043】
好ましくは、ただし必須ではないが、装置114は3次元印刷装置であり、その場合印刷ヘッドは印刷ヘッドであり、構築材料はインクジェット技術を介して吐出される。これは必ずしもそうである必要はない。なぜなら、いくつかの用途では、付加製造装置が3次元印刷技術を使う必要がないこともあるからである。本発明の様々な例示的実施形態によって企図される付加製造装置の代表的な例には、熱溶解積層造形装置及び熱溶解材料積層装置が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0044】
各印刷ヘッドは、任意選択によりかつ好ましくは、1以上の構築材料タンクを介して供給され、そこには温度制御ユニット(例えば温度センサ及び/又は加熱装置)と、材料レベルセンサが任意選択で含まれ得る。構築材料を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術におけると同様に、印刷ヘッドに電圧信号が印加され、印刷ヘッドノズルを介して材料の液滴を選択的に堆積する。別の例としてはサーマルインクジェット印刷ヘッドがある。このタイプのヘッドでは、構築材料と熱接触するヒータ素子があり、電圧信号によってヒータ素子を作動させることにより、構築材料を加熱してそこにガス気泡を形成する。ガス気泡が構築材料に圧力を発生させ、構築材料の液滴をノズルを介して噴出させる。圧電式及びサーマル式印刷ヘッドは、固体自由成形分野の当業者には知られている。任意のタイプのインクジェット印刷ヘッドに関して、ヘッドの吐出速度は、ノズルの数、ノズルの種類、及び印加電圧信号レート(周波数)に依存する。
【0045】
好ましくは、ただし必須ではないが、吐出ノズル又はノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半分が支持材料の吐出用であり、吐出ノズルの半分が造形材料の吐出用となるように選択される。すなわち、造形材料を噴射するノズルの数が、支持材料を噴射するノズルの数と同じである。代表的な例である
図1Aでは、4つの印刷ヘッド16a、16b、16c、16dが示されている。各ヘッド16a、16b、16c、16dはノズルアレイを有する。この例では、ヘッド16a、16bは造形材料用であり、ヘッド16c、16dは支持材料用であってよい。このように、ヘッド16aは1つの造形材料を吐出し、ヘッド16bは別の造形材料を吐出し、またヘッド16c、16dの2つは支持材料を吐出することが可能である。代替実施形態では、例えばヘッド16c、16dを組み合わせて、支持材料を堆積するための2つのノズルアレイを有する単一ヘッドとすることも可能である。さらなる代替実施形態において、任意の1以上の印刷ヘッドが、2以上の材料を堆積させるために2以上のノズルアレイを有してもよい。例えば2つの異なる造形材料、又は1つの造形材料と1つの支持材料のための2つのノズルアレイであり、各配合物が異なるアレイ又は異なる数のノズルを介して堆積される。
【0046】
ただしこれは本発明の範囲を限定することを意図するものではないこと、及び造形材料の印刷ヘッド(造形ヘッド)の数と支持材料の印刷ヘッド(支持ヘッド)の数が異なり得ることを理解されたい。一般的に、造形材料を吐出するノズルアレイの数、支持材料を吐出するノズルアレイの数、及びそれぞれのアレイにおけるノズルの数は、支持材料の最大吐出速度と造形材料の最大吐出速度との間に所定の比aを与えるように選択される。所定の比aの値は好ましくは、形成された各層において造形材料の高さと支持材料の高さが等しくなる様に選択される。aの典型的な値は、約0.6から約1.5である。
【0047】
本明細書を通じて使用されるように、「約」という用語は±10%を指す。
【0048】
例えば、a=1では、すべてノズルアレイが動作する場合、支持材料の全体の吐出速度は造形材料の全体の吐出速度とほぼ等しい。
【0049】
好適な実施形態では、それぞれがp個のノズルのアレイをm個有する造形ヘッドM個と、それぞれがq個のノズルのアレイをs個を有する支持ヘッドS個を備え、M×m×p=S×s×qであってよい。M×m個の造形アレイとS×s個の支持アレイのそれぞれは、個別の物理的ユニットとして製造可能であり、複数のアレイの群から組み立て及び分解が可能である。この実施形態において、そのようなアレイのそれぞれは、任意選択によりかつ好ましくは、各自の温度制御ユニットと材料レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0050】
装置114はさらに、凝固装置324を備える。これは、堆積された材料を固化させ得る光、熱等を放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば、凝固装置324は1以上の放射線源を含むことができる。これは、使用される造形材料に応じて、例えば紫外線、可視光、若しくは赤外線のランプ、あるいは他の電磁放射線源、あるいは電子線源であってよい。本発明のいくつかの実施形態では凝固装置324は造形材料を硬化又は凝固させる機能をはたす。
【0051】
凝固装置324に加えて、装置114は任意選択によりかつ好ましくは、溶媒を蒸発させるための追加の放射線源328を備える。放射線源328は、任意選択によりかつ好ましくは、赤外線を発生させる。本発明のいくつかの実施形態では、凝固装置324が紫外線を発生させる放射線源を備え、放射線源328が赤外線を発生させる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、装置114は、1以上のファンなどの冷却装置134を備える。
【0053】
印刷ヘッド及び放射線源は好ましくはフレーム又はブロック128に取り付けられる。好ましくは、ブロック128は、作業面として機能するトレイ360の上方に取り付けられる。ここで、ブロック128とトレイ360の少なくとも一方は、トレイ360とブロック128が相対的な往復運動を確立するように往復移動動作をする。本発明のいくつかの実施形態では、放射線源はブロックに取り付けられ、吐出ヘッドの軌跡を追従して印刷ヘッドによって吐出されたばかりの材料を少なくとも部分的に硬化又は凝固させるようになっている。トレイ360は水平に配置される。一般的な慣習に従って、X-Y平面がトレイ360に平行になるようにX-Y-Zデカルト座標系が選択される。トレイ360は好ましくは、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下向きに移動するように構成される。本発明の様々な実施形態においては、装置114はレベリング装置32をさらに備える。これは以下で詳細を述べるように、ローラ420と、任意選択によりかつ好ましくはブレード434を備え得る。レベリング装置32は、新たに形成された層を、次の層がその上に形成される前に矯正、平坦化し、及び/又は厚さを定めるように機能する。レベリング装置32は、レベリング中に発生する余分な材料を回収するための廃棄物回収槽432を含むことが好ましい。廃棄物回収槽432は、後で更なる詳細を述べるように、廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに材料を送達する機構を含んでもよい。
【0054】
使用時に、ユニット16の印刷ヘッドは、本明細書ではX方向と称する走査方向に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で構築材料を所定の構成で選択的に吐出する。構築材料は通常、1種類以上の支持材料及び1種類以上の造形材料を含む。ユニット16の印刷ヘッドの通過に続いて、放射線源126による造形材料の硬化が行われる。ヘッドが堆積し終えた層の出発点に戻る逆方向への移動中に、所定の構成に従って構築材料を追加吐出することもあり得る。こうして形成された層は、印刷ヘッドの順方向又は逆方向への移動中に、レベリング装置32よって矯正することが可能である。これは順方向及び/又は逆方向への移動時の印刷ヘッドの経路に沿うことが望ましい。印刷ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、印刷ヘッドは、本明細書でY方向と呼ぶ割出し方向に沿う別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層の構築を続けることが可能である。これに代わって、印刷ヘッドは、順方向及び逆方向の移動の間に、又は2回以上の順方向-逆方向移動の後に、Y方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために印刷ヘッドによって実行される一連の走査を、本明細書では単一走査サイクルと称する。
【0055】
その層が完了すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360は、Z方向に所定のZレベルまで下降される。この手順が繰り返されて、3次元物体112が層毎に形成される。
【0056】
別の実施形態では、トレイ360は、ユニット16の印刷ヘッドの順方向及び逆方向の通過の間に、層内でZ方向に変位されてもよい。そのようなZ変位は、レベリング装置と表面を一方向で接触させ、かつ反対方向で接触させないようにするために実行される。
【0057】
システム110は、任意選択によりかつ好ましくは、構築材料容器又はカートリッジを含みかつ複数の構築材料を製造装置114に供給する、構築材料供給システム330を含む。
【0058】
コンピュータ化されたコントローラ20は、製造装置114を制御し、任意選択によりかつ好ましくは供給システム330も制御する。コントローラ20は通常、制御操作を実行するように構成された電子回路を含む。コントローラ20は好ましくはデータプロセッサ24と通信し、これが、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマット等の形式でコンピュータ可読媒体上に表されたCAD構成などの、コンピュータ物体データに基づいて、製作命令に係わるデジタルデータを送信する。通常、コントローラ20は、各印刷ヘッド又は各ノズルアレイに印加される電圧、及びそれぞれの印刷ヘッド又はそれぞれのノズルアレイにおける構築材料の温度を制御する。
【0059】
製造データがコントローラ20に読み込まれると、コントローラは、ユーザの介入なしで動作可能である。いくつかの実施形態では、コントローラ20は、例えばデータプロセッサ24を用いて、あるいはコントローラ20と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータからの追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えば、これに限らないがキーボード、タッチスクリーンなどの当分野で公知の任意の種類であってよい。例えばコントローラ20は、追加の入力として、1以上の構築材料の種類及び/又は、例えば、これに限らないが、色、特性歪み及び/又は転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などの属性を受信することができる。他の属性及び属性群もまた考慮される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態による物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的実施例を
図1B~
図1Dに示す。
図1B~
図1Dは、システム10の平面図(
図1B)、側面図(
図1C)、及び等角図(
図1D)を示す。
【0061】
本実施形態において、システム10はトレイ12と、それぞれが1以上の分離されたノズルを有するノズルアレイを1以上有する、複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。三次元印刷に使用される材料は、構築材料供給システム42によってヘッド16に供給される。トレイ12は円板形状であってもよいし、あるいは環状であってもよい。垂直軸を中心に回転可能であれば、非円形の形状も考えられる。
【0062】
トレイ12とヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16の間で相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12が垂直軸14を中心にヘッド16に対して回転する構成、(ii)ヘッド16が垂直軸14を中心にトレイ12に対して回転する構成、又は(iii)トレイ12及びヘッド16の両方が垂直軸14を中心に回転し、ただし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)する構成、によって達成可能である。以下においては、システム10のいくつかの実施形態を、トレイが垂直軸14を中心にヘッド16に対して回転するように構成された回転トレイである構成(i)に特に重点を置いて記載するが、本出願はシステム10に関して構成(ii)及び(iii)をも企図していることを理解されたい。本書に記載のシステム10の実施形態はいずれも、構成(ii)及び構成(iii)のいずれにも適用できるように調整することができ、本明細書に記載の詳細が与えられれば、当業者にはそのような調整の仕方がわかるであろう。
【0063】
以下の説明では、トレイ12に平行で軸14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに直交する方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に垂直な方向をここでは垂直方向zと称する。
【0064】
システム10の半径方向rはシステム110の割出し方向yを規定し、方位角方向φがシステム110の走査方向xを規定する。したがって、半径方向は本明細書においては互換的に割出し方向と称し、方位角方向は本明細書においては互換的に走査方向と称す。
【0065】
本明細書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸14から特定の距離にあるトレイ12上又はトレイ12の上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸14から特定の距離にあり、その中心が軸14にある円を成す点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0066】
本明細書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上又はトレイ12の上方の位置を指す。従って、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を成す直線となる点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0067】
本明細書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0068】
トレイ12は、三次元印刷のための造形プラットフォームとして機能する。1以上の物体が印刷される作業領域は、通常はトレイ12の総面積より小さい。ただし必ずしもそうである必要はない。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は符号26で示される。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中、同一方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は、任意選択によりかつ好ましくは取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは所望であれば、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために行うことができる。本発明のいくつかの実施形態では、システム10には1以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2以上のトレイが異なる種類(例えば異なる重量)の物体、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために選定される。トレイ12の交換は、所望により手動又は自動とすることができる。自動交換が使用される場合、システム10は、ヘッド16の下の位置からトレイ12を取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と置き替えるように構成されたトレイ交換装置36を含む。
図1Bの代表図においてトレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を有する駆動装置38として示されているが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0069】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、これに限らないがシステム110及びシステム10を含む上記の任意のAMシステムに使用可能である。
【0070】
図2A~
図2Bは、1つ(
図2A)及び2つ(
図2B)のノズルアレイ22を有する印刷ヘッド16を示す。アレイ内のノズルは好ましくは、直線に沿って線状に配列される。特定の印刷ヘッドが2以上の線形ノズルアレイを有する実施形態において、ノズルアレイは、任意選択によりかつ好ましくは、互いに平行であってよい。印刷ヘッドが2以上のノズルアレイを有する場合(例えば
図2B)、そのヘッドのすべてのアレイには同一構築材料が供給されてもよいし、あるいは同一ヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる構築材料が供給されてもよい。
【0071】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、割出し方向に沿って配向され、それらの走査方向に沿う位置は互いにずれて配置される。
【0072】
システム10に類似のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、半径方向に(半径方向に平行に)配向され、それらの方位角位置が互いにずれて配置される。従って、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは互いに平行ではなく、むしろ互いにある角度を成す。その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれにほぼ等しい。例えば、1つのヘッドが半径方向に配向されて方位角位置φ1に配置され、別のヘッドが半径方向に配向されて方位角位置φ2に配置されることが可能である。この例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ1-φ2であり、2つのヘッドの線形ノズルアレイ間の角度もまたφ1-φ2である。
【0073】
いくつかの実施形態では、2以上の印刷ヘッドを組み合わせて1つの印刷ヘッドブロックにすることが可能である。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは通常互いに平行である。いくつかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックを
図2Cに示す。
【0074】
いくつかの実施形態では、システム10はヘッド16の下に位置する安定化構造30を含み、トレイ12がトレイ安定化構造30とヘッド16との間にくる。安定化構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が作動する際に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減するように機能することができる。0
【0075】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、垂直方向zに沿って垂直軸14に平行に移動するように構成されて、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変更可能とする。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離を変更する構成では、安定化構造30も好ましくはトレイ12と共に垂直方向に移動する。トレイ12の垂直位置を固定したままで、ヘッド16によって垂直方向に沿う垂直距離を変更する構成では、安定化構造30もまた固定垂直位置に保持される。
【0076】
垂直移動は、垂直駆動装置28によって行うことができる。ある層が完了すると、次に印刷する層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大させることができる(例えばトレイ12をヘッド16に対して下降させる)。この手順を繰り返して、三次元物体を層毎に形成する。
【0077】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、及び任意選択によりかつ好ましくはシステム10の1以上の他の構成要素の動作、例えばトレイ12の移動は、コンピュータ化されたコントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路と、回路によって読出し可能な不揮発性記憶媒体とを有することができ、記憶媒体は、回路によって読み出されたときに、以下でさらに詳述するような制御動作を回路に実行させるプログラム命令を格納する。
【0078】
コントローラ20はまた、コンピュータ物体データに基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。
デジタルデータは例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットである。物体データフォーマットは通常デカルト座標系に従って構成される。このような場合、コンピュータ24は好ましくは、コンピュータ物体データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、任意選択によりかつ好ましくは、変換された座標系で製作命令を送信する。代替として、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提供された元の座標系で製作命令を送信することができる。その場合、座標変換はコントローラ20の回路によって実行される。コントローラ20は、前に詳述したユーザインタフェース116と通信することもできる。
【0079】
座標変換により、回転トレイ上での三次元印刷が可能となる。固定トレイを有する非回転システムでは、印刷ヘッドは通常固定トレイ上を直線に沿って往復運動する。そのようなシステムでは、ヘッドの吐出速度が均一であるとすれば、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。システム10においては、非回転システムとは違って、ヘッドポイントの全てのノズルが同じ時間の間にトレイ12上の同じ距離をカバーするわけではない。座標変換は、任意選択によりかつ好ましくは、異なる半径方向位置において余剰材料が等量となるように実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表例を
図3A~
図3Bに示す。これは物体の3つのスライス(各スライスが物体の異なる層の製作命令に対応する)を表し、
図3Aは、デカルト座標系でのスライスを示し、
図3Bは、それぞれのスライスに座標変換手順を適用した後の同じスライスを示す。
【0080】
通常、コントローラ20は、製作命令に基づき、かつ以下で説明する格納されたプログラムの指示に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0081】
一般的に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に印刷ヘッド16を制御して構築材料の液滴を層状に吐出させ、トレイ12上に三次元物体を印刷させる。
【0082】
システム10は、任意選択によりかつ好ましくは、1以上の放射線源18を備える。これは、使用される造形材料に応じて、例えば紫外線、可視光若しくは赤外線のランプ、あるいは他の電磁放射線源、あるいは電子線源であってよい。放射線源は、これに限らないが発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗加熱ランプ等を含む任意の種類の放射線放出装置を含むことができる。放射線源18は造形材料を硬化又は凝固する役割りをはたす。本発明の様々な例示的実施形態では、放射線源18の動作は、コントローラ20によって制御され、それは、放射線源18の起動及び停止を行い、かつ任意選択により放射線源18によって発生する放射線量の制御も可能とする。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態において、システム10はレベリング装置32を更に備える。これは以下で詳述するように、任意選択によりかつ好ましくはブレードを有するローラと、任意選択により廃棄物回収装置(図示せず、
図1A参照)もまた備え得る。レベリング装置32は、新たに形成した層を、その上に次の層を形成する前に矯正する役目をする。
【0084】
いくつかの任意選択の実施形態では、レベリング装置32は円錐ローラの形状を有し、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、かつその表面がトレイ表面と平行になるように配置される。この実施形態をシステム10の側面図で示す(
図1C)。円錐ローラは、円錐又は円錐台の形状を有することができる。
【0085】
レベリング装置32の動作は、任意選択によりかつ好ましくはレベリング装置32を起動及び停止することのできるコントローラ20によって制御される。いくつかの任意選択の実施形態において、コントローラ20は位置レベリング装置32が垂直方向(軸14に平行)、及び/又は半径方向(トレイ12に平行で軸14に向かうか軸14から離れる方向)に沿うように制御する。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の半径方向の幅より短いときに有用である。半径方向へのヘッド16の運動は、任意選択によりかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0087】
いくつかの実施形態は、(同一又は異なる印刷ヘッドに属する)異なるノズルアレイから異なる材料を吐出することにより物体を作製することを想定する。これらの実施形態は、とりわけ、所定数の材料から材料を選択し、かつ選択された材料及びそれらの特性の所望の組合せを定める機能を提供する。本実施形態によれば、各材料を層状に堆積する空間位置は、異なる材料で異なる三次元空間位置を占有させるか、2以上の異なる材料を実質的に同一の三次元位置又は隣接する三次元位置に配置し、堆積後にその層内での材料を空間的に混合させて、それによってそれぞれの単一又は複数の位置に複合材料を形成させるか、のいずれかによって規定される。
【0088】
造形材料の堆積後の任意の組み合わせ又は混合が考えられる。例えば、特定の材料が吐出された後、それはその元の特性を維持することができる。しかし、それが別の造形材料又は他の吐出材料と同時に、同じ位置あるいは近傍位置で吐出される場合、吐出された材料とは異なる単一又は複数の特性を有する複合材料が形成され得る。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態では、システムは、複数層の少なくとも一つに対してデジタル材料を吐出する。
【0090】
本明細書及び当分野で使用される「デジタル材料」という用語は、異なる材料のピクセル又はボクセルがある領域において相互に交錯するような、ピクセルレベル又はボクセルレベルでの2以上の材料の組み合わせを言う。そのようなデジタル材料は、材料の種類及び/又は2以上の材料の比率及び相対的な空間分布の選択によって影響される新しい特性を示すことができる。
【0091】
本明細書で使用するように、層の「ボクセル」は、層内の物理的な3次元の要素体積のことを指し、層を記述するビットマップの単一ピクセルに対応する。ボクセルの寸法は、構築材料が個々のピクセルに対応する位置に吐出され、平坦化され、凝固された後に、構築材料により形成される領域の寸法にほぼ等しい。
【0092】
こうして本実施形態は、広範囲な材料の組合せを堆積可能とし、かつ物体の各部分の特徴づけに要求される特性に応じて、異なる部分が複数の異なる材料の組合せから構成され得る物体の作製を可能にする。
【0093】
本実施形態に適するAMシステムの原理及び動作の更なる詳細は、米国公開特許出願第20100191360号明細書に示されており、参照によりその内容を本明細書に援用する。
【0094】
次に
図4A~
図4Hを参照する。これは本発明のいくつかの実施形態によるレベリング装置32をより詳細に示す概略図である。レベリング装置32は、三次元印刷中に形成される層の平坦化に有用であり、したがって、任意の三次元印刷システム、好ましくは、これに限らないがシステム10又はシステム110に組み込むことができる。
【0095】
【0096】
本発明の好適な実施形態において、レベリング装置32は、回転可能なローラ420と、回転ローラ420のためのモータ422とを備える。
図4Aの概略図においモータ422は、ローラ420の軸426をモータ422の軸428に接続する伝達ベルト424によってローラ420を回転させるように構成された電気モータである。好ましくは、ローラ420とモータ422は、レベリング装置の筐体430に取り付けられる。
【0097】
レベリング装置32は、廃棄物回収槽432、ローラ420から廃棄物を除去して槽432に入れるブレード434、及び複数の管状構造体450も備える。槽432は好ましくは細長い。槽432の長さは、少なくともローラ420の長さであることが望ましい。管状構造体450は、例えばポンプ装置452によって構築材料を槽432から廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジ(図示せず)へ送達する機構として作用する。したがって、各管状構造体450は槽432の基部436の近くに入口454と、ポンプ装置452に接続可能な出口456とを有し、ポンプ装置は任意選択によりかつ好ましくは、印刷システムのコントローラ(例えばコントローラ20)によって制御される。ポンプ装置452は、構造体450の出口456に接続される、例えばマニホールドの形態をした複数の入り口ポートを有する単一のポンプとして実現可能である。これに代わり、ポンプ装置452は複数の個別のポンプとして実現され、2以上のポンプが別々の管状構造体450に接続されてもよい。本発明のいくつかの実施形態によるポンプ装置452の動作を以下で記述する。
【0098】
図4A~
図4Hに示す概略図において、槽432はねじ402によって筐体430に取り付けられている(
図4G参照)。ただし、これは必ずしもそうである必要はなく、通常、槽432は保守のためにレベリング装置232から定期的に取り外されるので、保守を容易にするという観点から、本発明のいくつかの実施形態によれば、これに限るものではないが弾性クリップコネクタ又は磁気コネクタなどの迅速解放機構によって槽432を筐体430に接続する構成もまた想定される。好ましくは管状構造体450はその入口454が、槽432に固定されずに槽432内に位置するように配置される。これらの実施形態の利点は、管状構造体450の出口456をポンプ装置452から切り離す必要がないために、槽432を筐体430から容易かつ迅速に取り外せることである。
【0099】
レベリング装置32を組み立て、三次元印刷システム(例えばシステム10及び110)内にレベリング装置32を組み込むための例示的手法を、
図5A~
図5Cに概略的に示す。
【0100】
図5Aは本発明のいくつかの実施形態による筐体430、槽432及びローラ420の分解図であり、レベリング装置32の組み立て手法を示す。好ましくは、レベリング装置32は、槽430が筐体430の背面側に取り付くように組み立てられる。筐体430は、ローラ420のベアリング482を収容するための一対のベアリングホルダ480と、モータ422の軸428を受ける開口490と、管状構造体450(
図5A参照)をそこに固定するためのスロット492とで構成される。ベアリングホルダ480は好ましくは片側(本実施例では底面側)が開放され、その場合にはベアリング482はホルダ480の開放側を通して導入される。ベアリング482は、任意選択によりかつ好ましくは弾性を有するクリップ484によってベアリングホルダ480内に固定可能である。これらの実施形態の利点は、軸426の傾きを容易に調整可能なことである。したがって、印刷システムに据え付けられると、それは水平配向を取る。好ましくは、軸426の傾き調整はハウジング430を印刷システムに据え付ける前に行われる。
【0101】
ベルトホイール488は好ましくは、モータ422の回転軸428との機械的連係を提供するためにローラ420の軸426に取り付けられる。
図5に示す概略図では、クリップはねじ486で筐体430に接続される。ただし常にそうである必要はない。それはいくつかの実施形態では、保守のためのローラ420の取り外し及びその交換又は設置を容易かつ迅速にするために、クリップ484は迅速解放型であるからである。
【0102】
図5B及び
図5Cは、桁材500の正面側(
図5B)及び背面側(
図5C)の斜視図を示す概略図である。これは、三次元印刷システムのトレイの上にレベリング装置32を取り付けるために本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができる。
【0103】
廃棄物回収槽432及び管状構造体450が
図6A~
図6によく示されている。槽432は、基部436、側壁438と、任意選択によりかつ好ましくはカバー440も備える。カバー440の利点は、装置324の放射線源からの照射を阻止するように構成可能なことであり、それにより槽432内に回収された構築材料の凝固が防止される。
図6A~
図6Cはそれぞれ、側面図(
図6A)、斜視図(
図6B)、及び
図6Bのカバー440なしの槽432の切断線A-Aに沿った断面図(
図6C)を示す。また
図6D~
図6Fはそれぞれカバー440付きの槽432の、斜視図(
図6D)、
図6Dの切断線A-Aに沿った断面図(
図6E)、及び分解図(
図6F)を示す。槽432がカバー440を含む実施形態では、カバー440には好ましくは管状構造体450を受ける開口462が設けられる。
【0104】
図6A-
図6Fは、槽432の長さ方向に3つの管状構造体450がある好適な構成を示しているが、本発明のいくつかの実施形態では、管状構造体450が4以上又は2以下の構成も想定されることを理解されたい。1以上の管状構造体450は、任意選択によりかつ好ましくはサイフォンの形状を有する。これらの実施形態の利点は、そのような形状により管状構造体450の上部分における残留液体の槽432への逆流が防止されることである。
【0105】
図6Fに示す分解図を参照すると、ブレード434は好ましくは、直線状でその全長にわたって延びるブレード端464を有する細長の形状である。ブレード434の長さは少なくともローラ420の長さであり、任意選択によりかつ好ましくはローラ420の長さより長い(例えば、約1~5mmだけ長い)。ブレード434の幅は、約0.02mmから約0.2mmであってよく、例えば約0.05mmである。ブレードとローラ420の表面の法線との間の角度は、好ましくは約50°から約80°であり、例えば約65°である。好ましくは槽432の正面側壁438にはピン466があり、ブレードにはピン466を受けるように構成された複数の孔468がある。そのような構成の利点は、槽432が筐体430に取り付けられると、ブレード434の位置合わせが確実に行われることである。いくつかの実施形態において、ブレード434は細長いブレードホルダ470によって正面側壁438へ固定される。ブレードホルダ470は、溶接(例えば超音波溶接)、接着などの任意の取り付け技術によって壁438に取り付けることができる。
【0106】
本発明の様々な実施形態において、槽432の基部436は複数の分離された凹部領域442を備える。これらの実施形態においては、1以上の管状構造体450(例えば、各管状構造体)に対し、入口454は
図6Eに示すように凹部領域442の1つに位置する。凹部領域442は、液体の構築材料を重力によってそれらの領域442に流れ込ませる液体回収器の機能を果たす。凹部領域442は任意の形状で構成され得る。例えば、基部436は波状形状を有する非平坦面であり、その場合凹部領域442はその波状形状の谷部である。波状形状は湾曲している必要はない。例えば
図6Eに示す実施形態では、基部436の非平坦面は波状形状を形成する複数の傾斜部444を備える。凹部領域442に関してその他の形状も考えられる。例えば、凹部領域442が、垂直の壁、傾斜壁、段差壁、又は湾曲壁を有する井戸形状であってもよい。
【0107】
基部436上の複数の異なる位置に管状構造体450を使用することは、廃棄物の排出の仕方に柔軟性を持たせることができるので有利である。ポンプ装置452がすべての管状構造体の出口に繋がる単一のポンプを有する場合、その単一のポンプの吸引動作がすべての管状構造体に同時に負圧を発生させ、それによって廃棄物を基部436の全領域から排出する。ポンプ装置452が別々の管状構造体450に接続された2以上の別々のポンプを有する場合、別々のポンプは集合的に、あるいはより好ましくは個別に作動可能である。ポンプを集合的に作動させる場合、状況は単一ポンプを使用する場合と同様であり、異なる管状構造体に異なる圧力レベルを適用可能であることを除けば、すべての管状構造体に同時に負圧を発生させられる。
【0108】
ポンプを個別に作動させる場合、コントローラは所定の手順に従ってポンプのあるものを作動させ、そのほかのポンプを停止する。例えば、印刷システムのトレイ(例えば、システム10のトレイ12又はシステム110のトレイ360)の作業領域上に形成される層の幅が、構築材料を吐出するノズルアレイの長さより広い場合、その層を完成させるためには2以上の吐出パスが必要である。ここでノズルアレイを各パスごとに割出し方向に変位させる。他方で、ローラ420を十分に長くして、その長さが少なくともトレイの作業領域(例えば
図1Bの作業領域26を参照)の幅となるようにすることができる。その結果、吐出のパスとパスの間でローラを割出し方向(
図1Bのr方向)に移動させる必要がなくなる。この場合、各パスにおいて、ローラ420には構築材料に接触しない部分がある。その結果基部436には廃棄物を受け取らない部分が存在する。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態によれば、それらの廃棄物を受け取らない基部436の部分に入口を持つ管状構造体の出口に接続されたポンプは作動されない。これはポンプ装置452の複数のポンプの動作を、トレイに対するノズルアレイの位置に同期させることによって確保できる。こうして、本発明のいくつかの実施形態によれば、印刷システムのコントローラ(例えばコントローラ20)は、ノズルアレイがカバーする割出し方向の領域内にある、割出し方向位置に入口を有する管状構造体に接続された1又は複数のポンプを作動させる。この動作方式の利点は、エネルギを節約でき、保守間隔を長くできることである。
【0110】
再び
図4A~
図4Hを参照すると、本発明のいくつかの実施形態において、レベリング装置32はローラ420の回転を示す信号を生成する回転センサ446を備える(
図4A及び
図4D参照)。センサ446は、任意選択によりかつ好ましくはブラケット448又は他の任意の種類の支持構造によって筐体430に取り付けられる。センサ446によって生成された信号は、三次元印刷システムのコントローラ(例えば、システム10又はシステム110のコントローラ20)に送信される。センサ446からの信号に応答して、コントローラは印刷システムの1以上の構成要素の動作を起動、停止、又は違う形で変更させる。通常、ローラ420の回転速度がゼロ、あるいはゼロでなくても所定の閾値より低い場合には、コントローラは例えばユーザインタフェース116を利用して警告信号を発し、また任意選択によりかつ好ましくは(例えば、アレイ内の全ノズルを停止し、印刷ブロックとトレイの間の相対運動を終了させることによって)印刷ジョブを終了させる。所定の閾値は、例えばモータ422の回転速度に基づいて選択することができる(例えばモータの回転速度、あるいはモータの回転速度の90%など)。
【0111】
本実施形態では、これに限らないが、ホール効果センサ、巨大磁気抵抗効果センサなどの磁界センサで構成される回転センサを想定する。これらの実施形態では、任意選択によりかつ好ましくは永久磁石427がローラ420の軸426に取り付けられ、回転センサ446はその磁石427から発生する磁場の変化に応答する。
【0112】
あるいは、回転センサは、これに限らないが例えば光学式エンコーダなどの光学センサ、又はこれに限らないが例えば導電式エンコーダなどの電気機械式センサであってもよい。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態において、レベリング装置32は、筐体430への槽432の取り付けを示す信号を生成するための配置センサ460(
図4A及び
図4C参照)を備える。センサ460によって生成された信号は、三次元印刷システムのコントローラ(例えば、システム10又はシステム110のコントローラ20)に送信される。センサ460からの信号に応答して、コントローラは印刷システムの1以上の構成要素の動作を起動、停止、又は違う形で変更させる。通常、センサ460からの信号が槽432が配置されていない(例えば、そこにないか、筐体430上に適切に取り付けられていない)ことを示す場合、コントローラは例えばユーザインタフェース116を利用して警告信号を発し、また任意選択によりかつ好ましくは(例えば、アレイ内の全ノズルを停止し、印刷ブロックとトレイの間の相対運動を終了させることによって)印刷ジョブを終了させる。
【0114】
配置センサ460は、好ましくは筐体430の槽432の近傍、例えば配置センサ460を収納するように構成された壁の窪み494(
図5A参照)に取り付けられ、これに限らないが電気機械式スイッチや光学センサを含む任意のタイプであってよい。
【0115】
本明細書で使用されるように、「約」という用語は±10%を指す。
【0116】
「例示的」という用語は、本明細書では、「例、実例、例示に供する」という意味で使用される。「例示的」として記述される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好適又は有利であると解釈されるべきではなく、及び/又は他の実施形態の特徴を組み込むことを排除するものではない。
【0117】
「任意選択により」という用語は、本明細書においては、「ある実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するように使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が相反しない限り、複数の「任意選択の」特徴を含み得る。
【0118】
用語「備える」、「備えた」、「含む」、「含んだ」、「有する」、及びそれらの活用形は、「含むがそれに限らない」ことを意味する。
【0119】
「から成る」という用語は、「を含み、かつ限定される」ということを意味する。
【0120】
「本質的に~から成る」という用語は、組成、方法又は構造が追加的な成分、ステップ及び/又は部品を含み得るが、その追加的な成分、ステップ及び/又は部品が特許請求の組成、方法又は構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0121】
本明細書で使用の、単数形の「1つの(a、an)」、「その(the)」は文脈が明確にそうでないことを規定しない限り、複数の言及も含む。例えば、「1つの化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物をそれらの混合物も含めて包含し得る。
【0122】
本出願を通じて、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式の記述は、単に便宜的かつ簡潔化のためのものであって、本発明の範囲の一定不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記述は、その範囲内の個別の数値と共にすべての可能な部分範囲を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、1~6というような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、並びにその範囲内の個別の数値、例えば1、2、3、4、5、6を有すると見なされるべきである。このことは、範囲の広さに拘わらず適用される。
【0123】
本明細書で数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数値(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の指定数と第2の指定数「の間の範囲の/範囲にある」という句、及び、第1の指定数「から」第2の指定数「まで」の「範囲の/範囲にある」という句は、本明細書では互換的に使用されて、第1の指定数と第2の指定数、並びにその間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0124】
本発明の特定の特徴は、明確にするために別々の実施形態の文脈に記述されていても、組み合わせて1つの実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈中に記述される本発明の様々な特徴は、別々又は任意の適切な部分的組合せで提供されることも、又は本発明の任意の他の説明される実施形態に適切であるように提供されることも可能である。様々な実施形態の文脈において記述される特定の特徴は、それらの要素なしではその実施形態が機能不能とならない限りは、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0125】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、当業者には多くの代替、修正、変形が明らかなことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にあるそのような代替、修正及び変形のすべてを包含することが意図されている。
【0126】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許及び特許出願が具体的かつ個別的に参照により本明細書に組み込まれるように表示された場合と同じ程度に、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願内のいかなる参照の引用又は特定も、そのような参照が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。セクション見出しに使用される限りでは、それらは必ずしも制限的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権文書は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】