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特表2023-522925カラム方式の単一チューブPCR用核酸分離のためのバッファ組成物及びこの用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】カラム方式の単一チューブPCR用核酸分離のためのバッファ組成物及びこの用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230525BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230525BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12N15/10 120Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563450
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2021014744
(87)【国際公開番号】W WO2022154214
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0005968
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522408658
【氏名又は名称】ジェネツーアス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュ、スンホ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、核酸分離用バッファ組成物、これを含むメンブレンフィルターが装着された核酸分離用キット及び核酸分離方法に関するもので、前記核酸分離用バッファ組成物は、多様な素材のメンブレンフィルターとの適合性に優れ、多様なサンプルから核酸を優秀に分離することができ、特に、これを含む核酸分離用キットは、カラム方式の単一チューブPCRが可能であり、これを活用した核酸分離方法は、別途の溶出過程なく核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちにPCRに適用可能なことを確認したところ、本発明による核酸分離用組成物、キット及び分離方法は、現場における迅速な診断に有用に活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール(Ethanol)、SDS(Sodium Dodecyl Sulfate)、塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及びTris-HClを含むワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物。
【請求項2】
前記バッファ組成物は、20%(v/v)~50%(v/v)のエタノール(Ethanol)、0.1%(w/v)~0.5%(w/v)のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)、0.5M~1Mの塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)、1mM~100mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及び1mM~50mMのTris-HClを含むことを特徴とする、請求項1に記載の核酸分離用バッファ組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の核酸分離用バッファ組成物を含み、メンブレンフィルター(membrane fliter)が装着されたカラム(Column)を含むワンステップ(one-step)核酸分離用キット。
【請求項4】
前記メンブレンフィルターは、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、ナイロンフィルター(nyron filter)、セルロースニトリートフィルター(celluose nitrate filter)、紙フィルター(paper filter)、ガラス繊維フィルター(glassfiber filter)及びシリカフィルター(silica filter)からなる群より選択されたいずれか一つであることを特徴とする、請求項3に記載の核酸分離用キット。
【請求項5】
前記キットは、注射器形態であることを特徴とする、請求項3に記載の核酸分離用キット。
【請求項6】
前記核酸は、DNA、RNA及びPNAを含む群より選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項3に記載の核酸分離用キット。
【請求項7】
請求項3に記載のワンステップ(one-step)核酸分離用キットを利用してサンプルから核酸を分離する方法。
【請求項8】
前記方法は、下記の段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載のサンプルから核酸を分離する方法。
サンプルを請求項1または請求項2に記載の核酸分離用バッファに浸漬して溶解する段階;
常温で前記サンプルが溶解された溶液をインキュベーション(incubation)する段階;
前記サンプルが溶解された溶液をメンブレンフィルター(membrane fliter)が装着されたカラムに移す段階;及び
前記カラムに圧力をかけてフィルターに核酸を固定しろ過液は除去する段階。
【請求項9】
前記方法は、下記の段階を含むことを特徴とする、請求項7に記載のサンプルから核酸を分離する方法。
サンプルを請求項1または請求項2に記載の核酸分離用バッファに浸漬して溶解する段階;
常温で前記サンプルが溶解された溶液をインキュベーション(incubation)する段階;
前記サンプルが溶解された溶液をメンブレンフィルター(membrane fliter)が装着されたカラムに移す段階;
前記カラムに圧力をかけてフィルターに核酸を固定しろ過液は除去する段階;
前記核酸が固定されたカラムに溶出溶液を入れてメンブレンフィルターを通過させる段階;及び
前記溶出溶液を得る段階。
【請求項10】
前記溶出溶液は、蒸留水、TEバッファ(T ten E one buffer、TE buffer)及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか一つであることを特徴とする、請求項9に記載のサンプルから核酸を分離する方法。
【請求項11】
前記インキュベーション(incubation)は、2分~10分間行われることを特徴とする、請求項8に記載のサンプルから核酸を分離する方法。
【請求項12】
前記サンプルは、生物学的または非生物学的サンプルであることを特徴とする、請求項7に記載のサンプルから核酸を分離する方法。
【請求項13】
前記生物学的サンプルは、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、気管分泌物(organ secretions)、喀痰(sputum)、涙(tears)、唾(saliva)、細胞(cell)、細胞分離物(cell extract)、全血(whole blood)、血漿(plasma)、血清(serum)、粘液(mucus)、鼻洗浄液(nasal washes)、小便(urine)、精液(semen)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、腹水(ascites)、嚢腫液(cystic fluid)、脳脊樺膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、白血球(leukocytes)、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)、白血球層(buffy coat)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、及び脳脊樺液(cerebrospinal fluid)からなる群より選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項12に記載のサンプルから核酸を分離する方法。
【請求項14】
前記非生物学的サンプルは、化学的に合成されたPNAを含むことを特徴とする、請求項12に記載のサンプルから核酸を分離する方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法で分離した核酸を鋳型としてPCRを行う段階を含む核酸の増幅方法。
【請求項16】
前記PCRは、重合酵素連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)、逆転写重合酵素連鎖反応(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、RT-PCR)及び等温増幅(isothermal amplification)PCRからなる群より選択されたいずれか一つであることを特徴とする、請求項15に記載の核酸の増幅方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸を迅速かつ容易に分離するための核酸分離用バッファ組成物、これを含む核酸分離用キット及び核酸分離方法に関するもので、カラム方式の単一チューブ(one-tube)PCRが可能な技術的特徴を保有する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、各種の疾病の診断、遺伝子組換え植物の検査などを実施するために、検査目的に合う組織、血液、毛根、細胞、植物、菌株などのサンプルから核酸を精製する過程が先に行われる。
生物学的物質で迅速に核酸を分離する方法は、診断プロセスにおいて何よりも重要であるため、細胞溶解溶液内に含まれた様々な種類の物質から核酸のみを選択的に分離することができる効果的かつ再現性のある方法に対する多様な研究がなされてきた。
通常使用される核酸精製方法は、採取されたサンプルを溶解バッファ(Lysis buffer)内で一定時間培養して細胞壁及び細胞膜などを破壊した後、核酸を露出させるように溶解する前処理過程を実施し、上記破壊された不純物を除去する段階を含む。
さらに詳しくは、サンプルを溶解バッファに入れてインキューベートして前処理した後に核酸がバインディングされるメンブレン(membrane)が備えられたスピンカラム(spin column)に仕込む。前処理された核酸サンプルが仕込まれたカラムは、遠心分離と洗浄過程を交互に複数回実施してスピンカラム内部のメンブレンに核酸をバインディングさせる。前記核酸がバインディングされたメンブレンを利用して乾燥過程と共にTEバッファ(T ten E one buffer、TE buffer)、溶出バッファ(elution buffer)及び水などを利用した、メンブレンから核酸を分離する過程を行って純粋な核酸を分離する。
したがって、既存のカラムを利用した核酸分離方法は、前処理過程、遠心分離過程、洗浄過程、乾燥過程及び遺伝子分離過程を経ることにより、前処理バッファ、遠心分離装置(Centrifuge)、乾燥装置及び分離バッファのような多様な装置とマイクロピペット(micro pipette)等の道具が必要であり、サンプルを移動しながら各過程を実施するため、多くの時間と人力を要する。これと共に、核酸のメンブレンへのバインディングまたは不純物洗浄のための複数回の洗浄過程も、所要時間の増大に寄与している。また、これを通じて得た核酸をPCR反応に活用するためには、非常に少ない量のμl単位の核酸サンプルを特定の道具(マイクロピペット)を使用して得なければならないため、研究室ではない場所で核酸抽出とその後のPCR反応を行うには困難がある。
カラムを使用した核酸分離方法は、使用者の必要な上逹水準が非常に低く有用性が高いため、上記のような問題点を解決して活用可能な方案を設けることが非常に重要である。
一方、去る20年間、人類は重症呼吸器症候群を起こすSARS-CoV(Se-vere acute respiratory syndrome-Coronavirus(2002-2003))とH1N1新種インフルエンザ(2009)のようなウイルス性伝染病を経験した。最近、2012年と2015年には、中東呼吸器症候群(Middle East respira-tory syndrome、MERS)を起こすMERSコロナウイルス(Coronavirus)がサウジアラビアと韓国で地域的に流行(epidemic)した。
さらに、2019年12月31日にWHO(World Health Organization)に初めて報告された新種コロナウイルス19(2019 novel Coronavirus、2019-nCoV;COVID-19)が発生した。かかるウイルス性伝染病は、伝播速度が非常に速く、これによる患者が持続的に速く増加しており、非常に致命的な被害が発生している。
したがって、現場での速い診断が何よりも重要であるが、従来のカラムを利用した核酸分離技術は上記のような問題点を有しており、現場での活用度が落ちるため、これを改善した迅速かつ容易な核酸分離技術の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、核酸を分離するための新規な核酸分離用バッファ組成物と、これを含むメンブレンフィルターが装着されたカラム方式の核酸分離用キットを製造し、これを利用して直ぐPCRに適用する、単一チューブ(one-tube)PCRまたは核酸が固定されたメンブレンフィルターを別途抽出してPCRを行った時に多様なサンプルから核酸を迅速かつ正確に分離することができることを確認して、別途の遠心分離、洗浄過程及び乾燥過程などが不要な核酸分離技術を開発して本発明を完成した。
したがって、本発明の目的は、カラム方式の単一チューブPCRに適用可能なワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、ワンステップ(one-step)核酸分離用キットを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、サンプルから核酸を分離する方法を提供することにある。
本発明のさらにまた他の目的は、核酸の増幅方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、エタノール(Ethanol)、SDS(Sodium Dodecyl Sulfate)、塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及びTris-HClを含むワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物を提供する。
また、上記の他の目的を達成するために、本発明は、本発明による核酸分離用バッファ組成物を含み、メンブレンフィルター(membrane fliter)が装着されたカラム(Column)を含むワンステップ(one-step)核酸分離用キットを提供する。
また、上記のまた他の目的を達成するために、本発明は、本発明による核酸分離用キットを利用してサンプルから核酸を分離する方法を提供する。
また、上記のさらに他の目的を達成するために、本発明は、本発明による方法で分離した核酸を鋳型としてPCRを行う段階を含む核酸の増幅方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明による核酸分離用バッファ組成物、これを含むメンブレンフィルターが装着された核酸分離用キット及び核酸分離方法は、ワンステップ(one-step)で多様なサンプルから核酸を迅速かつ正確に分離することができ、特に、別途の溶出過程なく核酸が固定されたメンブレンフィルターを含むカラムにPCR反応混合物(PCR reaction mix)を入れることで直ちにPCRに適用することができる。既存のカラムを利用した核酸分離方法は、複雑な過程を通じて行われたため多様な装置と道具が必要であり、過度な時間、資本及び人力が必要であった。それだけでなく、分離した核酸が各段階を行うことにより、一部損失または汚染するおそれもある。これに対し、本発明による核酸分離用組成物、キット及び分離方法は、カラム方式基盤の単一チューブPCR方法に適用可能であるため、特別な装置が不要で、容易かつ迅速に核酸を分離可能なだけでなく、分離した核酸の損失または汚染のおそれが少なく、安価で提供されることができる。また、核酸が固定されたメンブレンフィルターをカラムから分離し別途のチューブに入れてPCRまたはRT-PCRも行うことができるため、多様なPCR方法に適用可能で活用度が高いため、現場における迅速な診断に有用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】Aは、本発明による核酸分離用バッファ組成物及びメンブレンフィルター(membrane filter)が装着された注射器を利用して、分離した核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちに適用してPCR(等温PCR、一般PCR、またはRT-PCRを含む)を行う過程を示したイメージであり、Bは、前記核酸が固定されたメンブレンをカラムから分離して溶出溶液で核酸を抽出した後、これを利用してPCR(等温PCR、一般PCR、またはRT-PCRを含む)を行う過程を示したイメージである。
図2】本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用して、溶出過程が除かれた、核酸が固定されたメンブレンフィルターをPCRに直ちに適用した核酸分離方法において、SDS及びEtOHの最適濃度を確認した図面である。
図3】本発明の核酸分離用バッファ組成物と商業的メンブレンフィルター(Commercial membrane filter)の適合性において、適合なメンブレンフィルターの気孔サイズを確認した図面である。
図4】本発明の核酸分離用バッファ組成物とシリカメンブレンフィルター(silica membrane filter)の適合性を確認した図面である。
図5】本発明の核酸分離用バッファ組成物とガラス繊維フィルター(glass microfiber filter)の適合性を確認した図面である。
図6】本発明の核酸分離用バッファ組成物及びガラス繊維フィルターが装着された注射器を利用して核酸を分離した後、前記ガラス繊維フィルターのgDNA固定有無を確認した図面である。
図7】本発明の核酸分離用バッファ組成物とガラス繊維フィルターの活用において、前記ガラス繊維フィルターのPCR反応に適合な最適のサイズを確認した図面である。
図8】本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用してワンステップで分離した核酸が固定されたガラス繊維フィルターを適用したPCRにおいて、gDNA量による敏感度を確認した図面である。
図9】本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用してワンステップで分離した核酸が固定されたガラス繊維フィルターを適用したPCRにおいて、核酸が分離する細胞数による敏感度を確認した図面である。
図10】本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用してワンステップで分離した核酸が固定されたガラス繊維フィルターを適用したPCRにおいて、バクテリアgDNA(bacteria genomic DNA)分離効率を確認した図面である。
図11】本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用してワンステップで分離した核酸が固定されたガラス繊維フィルターを適用したPCRにおいて、pHによるRNA分離効率を確認した図面である。
図12】本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用して、溶出過程が除かれた、核酸が固定されたガラス繊維フィルターを直ちに適用したPCRにおいて、pHによるPCR反応を確認した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、エタノール(Ethanol)、SDS(Sodium Dodecyl Sulfate)、塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及びTris-HClを含むワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物を提供する。
本発明による核酸分離用バッファ組成物は、ワンステップ(one-step)で核酸を分離し、カラム方式の単一チューブPCRに適用して、単一チューブで核酸分離からPCR反応まで進行することに技術的特徴がある。本発明は、これを通じて既存のカラムを利用した核酸分離方法が有する多様な溶液が必要な複雑な分離方法、追加装備の必要性及び過度な時間、資源、人力浪費に対する問題点を解決することに目的がある。
特に、gDNA分離方法において、細胞溶解及びメンブレンフィルターとgDNAの結合のために、多量の塩(NaClなど)及びEtOHが必要であるが、前記塩及びEtOHによってPCR結果が影響を受けるという問題が引き起こされることがある。したがって、本発明の核酸分離用バッファ組成物を利用してワンステップ(one-step)で核酸を分離した後、前記分離した核酸が固定されたメンブレンフィルターを利用して直ちにPCRを行う場合、溶出溶液を利用した精密な分離過程及び別途の洗浄過程がないため、メンブレンフィルターから溶け出す前記塩とEtOHがPCR結果に及ぶ影響を最小化することができる組成が非常に重要である。
【0008】
本発明の一実施例において、本発明の組成物を活用したワンステップDNA分離において前記SDS及びEtOHの最適化条件を確認してみたところ、50%(v/v)以下のEtOH及び1%(w/v)以下のSDSが含まれた組成物が優秀に核酸が分離可能なことを確認した。
したがって、本発明のワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物において、前記エタノール(Ethanol)は、10%(v/v)~50%(v/v)、10%(v/v)~40%(v/v)、10%(v/v)~30%(v/v)、10%(v/v)~20%(v/v)、20%(v/v)~50%(v/v)、20%(v/v)~40%(v/v)、20%(v/v)~30%(v/v)、30%(v/v)~50%(v/v)、30%(v/v)~40%(v/v)または40%(v/v)~50%(v/v)で含まれることができ、さらに好ましくは、20%(v/v)~50%(v/v)で含まれることができる。前記エタノールが50%(v/v)を超える濃度で含まれる場合、一部のgDNA分離はなされることができるが、バッファを常温で保管する時にNaClの結晶化が発生するという問題が引き起こされる。
さらに、前記SDS(Sodium Dodecyl Sulfate)は、0.1%(w/v)~0.9%(w/v)、0.1%(w/v)~0.8%(w/v)、0.1%(w/v)~0.7%(w/v)、0.1%(w/v)~0.6%(w/v)、0.1%(w/v)~0.5%(w/v)、0.1%(w/v)~0.4%(w/v)、0.1%(w/v)~0.3%(w/v)、0.1%(w/v)~0.2%(w/v)、0.2%(w/v)~0.9%(w/v)、0.2%(w/v)~0.8%(w/v)、0.2%(w/v)~0.7%(w/v)、0.2%(w/v)~0.6%(w/v)、0.2%(w/v)~0.5%(w/v)、0.2%(w/v)~0.4%(w/v)、0.2%(w/v)~0.3%(w/v)、0.3%(w/v)~0.9%(w/v)、0.3%(w/v)~0.8%(w/v)、0.3%(w/v)~0.7%(w/v)、0.3%(w/v)~0.6%(w/v)、0.3%(w/v)~0.5%(w/v)、0.3%(w/v)~0.4%(w/v)、0.4%(w/v)~0.9%(w/v)、0.4%(w/v)~0.8%(w/v)、0.4%(w/v)~0.7%(w/v)、0.4%(w/v)~0.6%(w/v)、0.4%(w/v)~0.5%(w/v)、0.5%(w/v)~0.9%(w/v)、0.5%(w/v)~0.8%(w/v)、0.5%(w/v)~0.7%(w/v)、0.5%(w/v)~0.6%(w/v)、0.6%(w/v)~0.9%(w/v)、0.6%(w/v)~0.8%(w/v)、0.6%(w/v)~0.7%(w/v)、0.7%(w/v)~0.9%(w/v)、0.7%(w/v)~0.8%(w/v)、または0.8%(w/v)~0.9%(w/v)で含まれることができ、さらに好ましくは、0.1%(w/v)~0.5%(w/v)で含まれることができる。
前記塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)は、0.1M~1M、0.1M~0.9M、0.1M~0.8M、0.1M~0.7M、0.1M~0.6M、0.1M~0.5M、0.1M~0.4M、0.1M~0.3M、0.1M~0.2M、0.2M~1M、0.2M~0.9M、0.2M~0.8M、0.2M~0.7M、0.2M~0.6M、0.2M~0.5M、0.2M~0.4M、0.2M~0.3M、0.3M~1M、0.3M~0.9M、0.3M~0.8M、0.3M~0.7M、0.3M~0.6M、0.3M~0.5M、0.3M~0.4M、0.4M~1M、0.4M~0.9M、0.4M~0.8M、0.4M~0.7M、0.4M~0.6M、0.4M~0.5M、0.5M~1M、0.5M~0.9M、0.5M~0.8M、0.5M~0.7M、0.5M~0.6M、0.6M~1M、0.6M~0.9M、0.6M~0.8M、0.6M~0.7M、0.7M~1M、0.7M~0.9M、0.7M~0.8M、0.8M~1M、0.8M~0.9Mまたは0.9M~1Mで含まれることができ、さらに好ましくは、0.5M~1Mで含まれることができる。
前記EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)は、1mM~100mMで含まれることができ、前記Tris-HClは、1mM~50mMで含まれることができる。
本発明のワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物は、好ましい具体例として、20%(v/v)~50%(v/v)のエタノール(Ethanol)、0.1%(w/v)~0.5%(w/v)のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)、0.5M~1Mの塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)、1mM~100mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及び1mM~50mMのTris-HClを含むことができる。
また、好ましくは、前記バッファ組成物は、バッファ組成物100重量部に対して、20%(v/v)~50%(v/v)のエタノール(Ethanol)1~5重量部、0.1%(w/v)~0.5%(w/v)のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)1~5重量部、0.5M~1Mの塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)2.5~10重量部、1mM~100mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)1~5重量部、及び1mM~50mMのTris-HClが1~5重量部含まれることができ、さらに好ましくは、前記バッファ組成物は、バッファ組成物100重量部に対して、20%(v/v)~50%(v/v)のエタノール(Ethanol)2.5重量部、0.1%(w/v)~0.5%(w/v)のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)2.5重量部、0.5M~1Mの塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)5重量部、1mM~100mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)2.5重量部及び1mM~50mMのTris-HClが2.5重量部含まれることができる。
【0009】
本発明の一実施例では、より好ましい具体例として、50%(v/v)のエタノール(Ethanol)、0.25%(w/v)のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)、0.25Mの塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)、12.5mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及び25mMのTris-HClを含む水溶液を製造した。
本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用してgDNAを分離する場合、前記Tris-HClはpH8であることが好ましい。
さらに、本発明の一実施例によると、本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用して総RNA(total RNA)を分離する場合、pH4~7で行うことが好ましいことを確認した。
したがって、本発明に核酸分離用バッファ組成物を利用して総RNAを分離する場合、前記Tris-HClのpHは、pH4~7であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、本発明によるワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物を含み、メンブレンフィルター(membrane fliter)が装着されたカラム(Column)を含むワンステップ(one-step)核酸分離用キットを提供する。
さらに、本発明のワンステップ(one-step)核酸分離用キットは、カラムの上部に圧力をかけてメンブレンフィルターで溶液をろ過した後、ろ過液を下部で除去可能な形態で、より好ましくは、注射器形態であることができる。前記キットが注射器形態で製造される場合、遠心分離機などの別途の道具が不要であり、携帯用で現場で直ちに検出可能であるという長所を有する。
前記メンブレンフィルターは、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、ナイロンフィルター(nyron filter)、セルロースニトリートフィルター(celluose nitrate filter)、紙フィルター(paper filter)、ガラス繊維フィルター(glassfiber filter)及びシリカフィルター(silica filter)からなる群より選択されたいずれか一つであることができ、下記の実施例において、本発明のワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物と前記各メンブレンフィルターとの適合性に優れることを確認した。
【0011】
本発明の一実施例で確認したものによると、本発明の核酸分離用バッファ組成物とPVDF素材の商業的メンブレンフィルターを利用したDNA分離において、気孔サイズ0.1μmフィルターが最も高いDNA分離効率を示したことを確認した。
一方、PVDFメンブレン、シリカメンブレン及びガラス繊維メンブレンフィルターのような負電荷メンブレンフィルター(negative charged membrane filter)は、負電荷のgDNAを捕捉(capture)するために、正電荷(positive charge)の中間媒介として多量の塩(salt)を必要とする(0.1~1MのNaCl)。したがって、別途の精製なくgDNAが捕捉されたガラス繊維フィルターにPCR反応混合物を添加した後にPCRを行うと、前記ガラス繊維フィルターから溶け出したNaClによってPCR反応の阻害が引き起こされるおそれがあるため、本発明のまた他の実施例において、本発明の核酸分離用バッファ組成物との活用においてガラス繊維フィルターの最適なサイズを確認した。その結果、総ボリューム50ul当たりガラス繊維フィルターは、2×2mmサイズ以下が最適であることを確認した(0.25MのNaCl基準)。
前記核酸は、DNA(deoxyribonucleic acid)、RNA(Ribonucleic acid)及びPNA(pentose nucleic acid)を含む群より選択されたいずれか一つ以上であることができる。
【0012】
さらに、本発明は、本発明による核酸分離用キットを利用してサンプルから核酸を分離する方法を提供する。
また、本発明は、本発明の核酸分離方法を通じて分離した核酸を鋳型としてPCRを行う段階を含む核酸の増幅方法を提供する。
さらに詳しくは、上記方法は、サンプルを本発明による核酸分離用バッファに浸漬して溶解する段階と、常温で前記サンプルが溶解された溶液をインキュベーション(incubation)する段階と、前記サンプルが溶解された溶液をメンブレンフィルター(membrane fliter)が装着されたカラムに移す段階と、前記カラムに圧力をかけてフィルターに核酸を固定しろ過液は除去する段階とで行われるか、サンプルを本発明による核酸分離用バッファに浸漬して溶解する段階と、常温で前記サンプルが溶解された溶液をインキュベーション(incubation)する段階と、前記サンプルが溶解された溶液をメンブレンフィルター(membrane fliter)が装着されたカラムに移す段階と、前記カラムに圧力をかけてフィルターに核酸を固定しろ過液は除去する段階と、前記核酸が固定されたカラムに溶出溶液を入れてメンブレンフィルターを通過させる段階と、前記溶出溶液を得る段階とで行われることができる。
本発明による核酸の増幅方法において、鋳型となる核酸は、核酸が固定されたフィルターを直接的に利用するか、溶出溶液に含まれた形態で利用されることができる。
この時、前記核酸が固定されたフィルターを直接的に利用する場合、図1のA及びBのように、核酸が固定されたフィルターが装着されたカラム自体にPCR反応混合物を直ちに添加してPCRを行うか、核酸が固定されたフィルターを分離してこれを別途のチューブに移した後、PCR反応混合物と反応させてPCRを行うことができる。この時、核酸が固定されたフィルターは適切なサイズに切ることができる。
この時、前記PCR反応は、分離された核酸を確認するための方法であって、その他に分離した核酸が確認可能な方法であれば、当分野に公知された如何なる方法でも適用可能である。好ましくは、重合酵素連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)、逆転写重合酵素連鎖反応(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、RT-PCR)及び等温増幅(isothermal amplification)PCRであることができるが、これに制限されるものではない。
前記溶出溶液は、当分野に公知された溶出溶液(elution buffer)であれば制限なく使用可能である。好ましくは、蒸留水、TEバッファ(T ten E one buffer、TE buffer)及びこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか一つであることができるが、これに制限されるものではない。さらに、上記当分野に公知された溶出溶液は、TEバッファ(10mMのTris-HCl、pH8.0、0.1mMのEDTA))または溶出バッファ(10mMのTris-HCl、pH7.5~8.5)であることができるが、これに制限されるものではない。
本発明の核酸分離方法において、前記インキュベーション(incubation)は、細胞を溶解(lysis)させる過程で2分~10分間行われることができ、より好ましくは、5分間行われることができる。
前記インキュベーションは、サンプルを1~5mlの本発明による核酸分離用バッファに浸漬し振りながら混合した後に行われることができるが、これに制限されるものではない。
また、前記サンプルは、生物学的または非生物学的サンプルであることを特徴とする。
前記生物学的サンプルは、DNA及びRNAを含むサンプルとして、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、気管分泌物(organ secretions)、喀痰(sputum)、涙(tears)、唾(saliva)、細胞(cell)、細胞分離物(cell extract)、全血(whole blood)、血漿(plasma)、血清(serum)、粘液(mucus)、鼻洗浄液(nasal washes)、小便(urine)、精液(semen)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、腹水(ascites)、嚢腫液(cystic fluid)、脳脊樺膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、白血球(leukocytes)、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)、白血球層(buffy coat)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、及び脳脊樺液(cerebrospinal fluid)からなる群より選択されたいずれか一つ以上であることができるが、これに制限されるものではない。
さらに、前記非生物学的サンプルは、化学的に合成されたPNAを含むことを特徴とする。
本発明の核酸分離用バッファ組成物、これを含むメンブレンフィルターが装着された核酸分離用キット及び核酸分離方法は、ワンステップ(one-step)で多様なサンプルから核酸を優秀に分離することができ、特に別途の溶出過程なく核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちにPCRに適用することができる技術的特徴がある。
これは、既存のカラムを利用した核酸分離方法が保有した過度な時間、資本及び人力の必要性、分離した核酸の損失または汚染発生の危険性などの問題点を優秀に改善したもので、核酸を迅速に分離して現場における迅速な診断に活用しようとする。
上述した本発明の内容は相互矛盾しない限り、互いに同一に適用され、当該技術分野の通常の技術者が適切な変更を加えて実施することも本発明の範疇に含まれる。
以下、本発明を実施例を通じて詳しく説明するが、本発明の範囲が下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0013】
実施例1.核酸分離用バッファ組成物の製造
本発明者らは、核酸分離のためのバッファ組成物の好ましい実施例として、バッファ組成物100mlを基準として2.5mlの50%(v/v)のエタノール(Ethanol)、2.5mlの0.25%(w/v)のSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)、5mlの0.25Mの塩化ナトリウム(sodium chloride、NaCl)、2.5mlの12.5mMのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)及び2.5mlの25mMのTris-HClを含む水溶液を製造した。
一方、既存の核酸分離方法は、前処理過程、遠心分離過程、洗浄過程、乾燥過程及び遺伝子分離過程の複雑な過程を通じて行われる。このため、溶解バッファ(lysis buffer)、結合バッファ(binding buffer)、洗浄用バッファ、溶出バッファ(elution buffer)などが各段階別に必要であり、遠心分離機のような特別な装置も必要であり、過度な時間、資本及び人力が所要される。それだけでなく、分離した核酸が各段階を行うことにより、一部損失または汚染するおそれもある。さらに、追加的に分離した核酸を利用してPCRを行うためには、分離したDNAをマイクロピペット(micro pipette)とピペットチップ(pipette tips)などを使用して1~5μl程度の極少量を採取する必要があるが、これは上記道具が具備されていない現場で行うには困難がある。一方、上記実施例1で製造した本発明の核酸分離用バッファ組成物は、全ての構成要素が一つで混合された組成物で、ワンステップ(onestep)で核酸分離が可能で迅速に分離可能なだけでなく、分離した核酸の損失または汚染のおそれが少なく、さらに必要な装備がないため、現場でより容易かつ迅速にリアルタイムで検出可能である。
【0014】
実施例2.核酸分離用バッファ組成物を利用した核酸分離方法
2-1.溶出過程が除かれた核酸分離方法
本発明の核酸分離方法において、核酸が固定されたフィルターを別途の溶出過程なく直ちにPCRに適用して結果を直ちに確認することができる。
先ず、綿棒を利用してサンプルを採取し、上記実施例1で製造した2mlの核酸分離用バッファ組成物に浸漬し振って混合した後、これを常温で5分間インキュベーション(incubation)して細胞を溶解(lysis)させた。
インキュベーションの終了後、前記溶液をメンブレンフィルターが装着された注射器に移した後、ゆっくりと圧力をかけて溶液をメンブレンフィルターで通過させて核酸を固定しろ過液を除去した。その後、前記核酸が固定されたメンブレンフィルターを利用してPCRを行った。
さらに詳しくは、核酸が固定されたメンブレンフィルターを含む注射器にPCR反応混合物(25μlの2X i-TaqTMPCR mix、1μlの10pmol/μl正方向プライマー(forward primer)、1μlの10pmol/μl逆方向プライマー、23μlの蒸留水(distilled water)で、総ボリューム50μl)を添加した。その後、PCR反応させ、この時下記のようなPCR条件下で行った。初期変性(initial denaturation):94℃、2分、30回(cycle)(変性(denaturation):94℃、20秒;結合(annealing):55℃、10秒;伸長(extension):72℃、30秒;最終伸長(final extension):72℃、5分)。
2-2.溶出過程が含まれた核酸分離方法
さらに、核酸が固定されたメンブレンフィルターを溶出溶液を利用して溶出した後、これをPCRに適用することができる。
メンブレンフィルターに核酸を固定するまでの段階は、上記2-1の方法と同一に行った。ろ過液が除去された注射器に蒸留水を入れてメンブレンフィルターを通過させた後、これを得た。この時、蒸留水を入れる前に選択的に不純物をろ過するために100%のEtOHで一度洗浄することができる。最終的に得た溶液からDNAまたはRNAを含むか否かを上記実施例2-1と同一の方法で確認した。
【0015】
実施例3.ワンステップ(one-step)核酸分離用バッファ組成物の最適条件の確認
gDNA分離において細胞溶解及びメンブレンフィルターにgDNAが結合するためには、多量の塩を必要とし、EtOHも含有されるべきである。したがって、本発明による核酸分離用バッファ組成物を利用してワンステップ(one-step)で核酸を分離した後、前記核酸が固定されたメンブレンフィルターを利用して直ちにPCRを行う場合、前記塩とEtOHの影響を最小化することができる組成が非常に重要である。
これを確認するために、構成要素であるSDS(0.5%または1%)、Nacl(0.5Mまたは1M)、またはEtOH(50%または70%)をそれぞれ含んだ核酸分離用バッファ組成物のDNA分離効率を確認し、その結果を図2に示した。この時、各実験群に合わせて上記実施例2-1または2-2の方法と同一に行い、メンブレンフィルターとしてはガラス繊維フィルター(glass microfiber filters、GF/C、Whatman co)を使用し、293T細胞(SV40大型T抗原の突然変異を発現するHEK293細胞株で派生したヒト細胞株)を1.75×10で同一に使用した。分離したサンプル5μlとダイ(dye)1μlを混合して0.8%アガロースゲル(Agarose gel)にローディング(loading)した後、GelDoc(電気泳動イメージングシステム)を利用して結果を確認した。
図2において、1番ラインは、100bpラダー(ladder)であり、2番ラインは、陰性対照群(核酸を入れずPCRを行った後、これをローディング)であり、3番ラインは、5μlのGAPDHに対するプライマー(forward primer:TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号1)、reverse primer:CGCATGGACTGTGGTCATGAG(配列番号2))のみをローディングした結果であり、4番ラインは、陽性対照群(positive control(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)をPCRする)であり、5番ラインは、上記実施例2-1のように、サンプルと本発明による核酸分離用バッファが混合した混合物をメンブレンフィルターにろ過し、これをローディングした結果であり(AB(attach and bind) elutionと記載)、6番ラインは、上記実施例2-2のように、前記5番ラインにおいて、混合物がろ過されたメンブレンフィルターを蒸留水で溶出した後、前記蒸留水をローディングした結果であり(AB(attach and bind)と記載)(上記5番ライン及び6番ラインは、メンブレンフィルターのgDNA結合有無を確認するための実験群)、7番ラインは、2mlの上記実施例1のバッファ組成物を適用して上記実施例2-1のように行って得たものをローディングした結果であり(ST(standard concentration)と記載)、8番ラインは、2mlの高濃度SDS(1%、HS(High SDS)と記載)を適用した結果であり、9番ラインは、2mlの中濃度SDS(0.5%、MS(Medium SDS)と記載)を適用した結果であり、10番ラインは、2mlの高濃度NaCl(1M、HN(High NaCl)と記載)を適用した結果であり、11番ラインは、2mlの中濃度NaCl(0.5M、MN(Medium NaCl)と記載)を適用した結果であり、12番ラインは、2mlの高濃度EtOH(70%、HE(High EtOH)と記載)を適用した結果であり、13番ラインは、2mlの中濃度EtOH(50%、ME(Medium EtOH)と記載)を適用した結果である。
図2に示すように、メンブレンフィルターのgDNAの結合有無を確認した結果、5番ラインに対して6番ラインの発光が明らかであるため、メンブレンフィルターに核酸がよく結合しており(5番ライン参照)、蒸留水を利用してこれから核酸を優秀に分離可能(6番ライン参照)なことを確認することができた。
さらに、EtOHは、50%以下の場合のみに溶出過程なく直ちにメンブレンフィルターを適用したPCRが行われることができた(13番ライン参照)。またSDSの場合、1%SDSを含む場合は、PCRが行われないことを確認した(8番ライン参照)。
したがって、本発明の核酸分離用バッファ組成物を利用して、溶出過程が除かれた、核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちに適用した核酸分離方法において、前記SDSは、1%以下で含まれることが好ましく、前記EtOHは、50%以下で含まれることが好ましいことを確認した。
【0016】
実施例4.メンブレンフィルターによる核酸分離効率の確認
4-1.商業的メンブレンフィルター(Commercial membrane filter)
多様な気孔サイズ(pore size)を有するPVDF素材の商業的メンブレンフィルターのうち、本発明による核酸分離用バッファ組成物に適合なフィルターを確認した。
そこで、0.1μmのPVDFフィルター、0.22μmのPVDFフィルター、0.45μmのPVDFフィルター、または紙フィルター(paper filter(3M paper filter))が装着された注射器及び本発明の核酸分離用バッファ(GB(gDNA extraction buffer))を利用した。HEK 293T細胞(1.0×10)を5mlの本発明による核酸分離用バッファを利用して溶解し、上記実施例2のうち2-1.と同一の方法でゲノムDNA(genomic DNA、gDNA)を分離し、それぞれの分離効率を確認して図3に示した。各実験群の条件によって得たサンプル5μlとダイ1μlを混合し、0.8%アガロースゲル(agarose gel)を利用して100vで30分間ローディングした。
図3において、1番ラインは、1kbラダー(ladder)であり、2番ラインは、gDNA対照群(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)をPCRする)であり、3番(気孔サイズ0.1μmフィルター)、5番(気孔サイズ0.22μmフィルター)、7番(気孔サイズ0.45μm)及び9番ライン(paper filter)は、100μlの上記実施例2によって分離したgDNA(10μg)+300μlの本発明による核酸分離用バッファを各メンブレンフィルターにろ過させた実験群(ろ過後、メンブレンに結合していない、核酸分離用バッファに残ったgDNAの量を確認するための実験群)であり、4番(気孔サイズ0.1μmフィルター)、6番(気孔サイズ0.22μmフィルター)、8番(気孔サイズ0.45μm)及び10番ライン(paper filter)は、上記実施例2のうち2-2の方法において最終段階で400μlのHOで溶出して核酸を得た実験群である。この時、4番、6番、8番及び10番ラインにおいて、不純物をろ過するために、メンブレンフィルターを400μlの100%EtOHで一度洗浄した。
図3から確認したように、4番ラインで明らかなバンドを確認することができた。したがって、多様な気孔サイズを有するPVDF素材の商業的メンブレンフィルターにおいて、気孔サイズ0.1μmのフィルターが最も高いDNA分離効率を示すことを確認した。一方、気孔サイズ0.45μmのフィルターの場合、gDNAがメンブレンフィルターに結合されず、ろ過された溶液で相当量のgDNAを確認することができた。従って、PVDF素材のフィルターにおいて、気孔サイズ0.1μmのフィルターが本発明の核酸分離用バッファ組成物と最も適合なことを確認した。
4-2.シリカメンブレンフィルター(silica membrane filter)
シリカメンブレンフィルターと本発明による核酸分離用バッファ組成物との適合性も評価した。
そこで、シリカフィルターが装着された注射を利用して実施例2のうち2-1.と同一の方法で293T細胞からゲノムDNA(genomic DNA、gDNA)を分離し、それぞれの分離効率を確認して図4に示した。この時、溶出溶液の量によって溶出される核酸の量を確認した(シリカフィルターイールーション1~5(silica filter elution 1~5)と記載)。
図4において、1番ラインは、1kbラダー(ladder)であり、2番ラインは、陽性対照群(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)と本発明の核酸分離用バッファ400μlを混合した後、0.1μMのPVDFメンブレンフィルターにろ過した後、前記メンブレンフィルターを200μl蒸留水で溶出させた実験群)であり、3番ラインは、上記2番ラインの一度溶出されたメンブレンフィルターを再び200μl蒸留水を使用して溶出させた実験群であり(溶出後にgDNA残量がないことを確認するための実験群)、4番ラインは、1μgのgDNAを含有した本発明の核酸分離用バッファをシリカメンブレンフィルターでろ過させた後、これを利用した実験群であり(シリカメンブレンフィルターにgDNAが結合したか否かを確認するための実験群)、5番ラインは、前記シリカメンブレンフィルターを50μlの蒸留水で溶出した実験群であり、6番ラインは、前記シリカメンブレンフィルターを50μlの蒸留水で2回繰り返し溶出した実験群であり、7番ラインは、前記シリカメンブレンフィルターを50μl蒸留水で3回繰り返し溶出した実験群であり、8番ラインは、前記シリカメンブレンフィルターを50μlの蒸留水で4回繰り返し溶出した実験群であり、9番ラインは、前記シリカメンブレンフィルターを50μl蒸留水で5回繰り返し溶出した実験群である。
したがって、図4に示すように、本発明の核酸分離用バッファ組成物とシリカメンブレンフィルターを利用した場合もgDNA分離効率に優れることを確認した。特に、5番~9番ラインで明らかなバンドを確認することができ、これを参考としたところ、溶出溶液のボリュームは100~200μl程度が適正なことを確認した。
4-3.ガラス繊維フィルター(glass microfiber filter)
1)適合性の確認
ガラス繊維フィルターと本発明による核酸分離用バッファ組成物との適合性も評価した。
そこで、ガラス繊維フィルターが装着された注射器を利用して上記実施例2のうち2-1.と同一の方法で293T細胞からゲノムDNA(genomic DNA、gDNA)を分離し、それぞれの分離効率を確認して図5に示した。
図5において、1番ラインは、1kbラダー(ladder)であり、2番ラインは、陰性対照群として、gDNAなしに200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物のみを入れた実験群であり、3番及び4番ラインは、1μgのgDNAを含有した本発明の核酸分離用バッファをガラス繊維フィルターでろ過させた後、50μlの蒸留水で溶出した、同じ条件で2回繰り返した実験群であり、5番ラインは、前記ガラス繊維フィルターを100μlの蒸留水で溶出した実験群であり、6番ラインは、前記ガラス繊維フィルターを200μlの蒸留水で溶出した実験群である。
図5に示すように、ガラス繊維フィルターを使用した実験群である1番ライン~4番ラインが明らかなバンドを示すため、gDNAが分離したことを確認した。したがって、本発明の核酸分離用バッファ組成物とガラス繊維フィルターを利用した場合も、gDNA分離効率に優れることを確認した。
さらに、ガラス繊維フィルターのgDNA固定有無を目視で確認し図6に示した。このため、ガラス繊維フィルターにEtBr(Ethidium bromide)を処理した後、UV下で発光を確認してガラス繊維フィルターのgDNA固定有無を確認して図6に示した。
図6において、1番及び4番は、対照群として、gDNAなしに200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物のみを入れた実験群であり、2番及び3番は、同じ条件で繰り返し行った実験群として、PCRを行っていない実験群であり、5番及び6番は、同じ条件で繰り返し行った実験群として、PCRを行った実験群である。
gDNAが結合したガラス繊維メンブレンフィルターを溶出過程なくUV相で確認した図6の結果、2番及び3番ラインで明らかなバンド発光が確認可能であるため、ガラス繊維メンブレンフィルターにgDNAがよく結合されていることを確認した。さらに、ガラス繊維メンブレンフィルターを利用した、溶出過程を除いて直ちにPCRする場合において、ガラス繊維メンブレンフィルターのgDNA残量を確認した結果、PCRをする前より若干減少することを確認した。これは、PCR過程中に一部のgDNAがPCR反応混合物に溶けたことを示すと判断された。
したがって、本発明の核酸分離用バッファ組成物とガラス繊維メンブレンフィルターを利用した場合もgDNA結合と分離効率に優れることを確認した。
2)最適のサイズ確認
一方、PVDFメンブレン、シリカメンブレン及びガラス繊維メンブレンフィルターのような負電荷メンブレンフィルター(negative charged membrane filter)は、負電荷のgDNAを捕捉(capture)するために正電荷(positive charge)の中間媒介として多量の塩(salt)を必要とする(0.1~1MのNaCl)。したがって、核酸を含んでいるガラス繊維フィルターは、gDNA結合媒介体である多量のNa+を含有しているため、別途の精製なくPCRを行うと、PCR反応の阻害を引き起こし得る。これを防止するための最も効率的な方法は、PCRボリューム(volume)に比べてガラス繊維フィルターをできるだけ小さくしてNa+による影響を最小化することである。しかし、小さ過ぎると、ガラス繊維メンブレンフィルターが装着されたカラム形態の核酸分離用キットを製作し難いという留意点がある。従って、本発明の核酸分離用バッファ組成物との活用においてガラス繊維フィルターの最適のサイズを確認した。
上記実施例2のうち2-1.と同一の方法で293T細胞からゲノムDNA(genomic DNA、gDNA)を分離し、それぞれの分離効率を確認して図7に示した。
この時、PCR生成物の確認のために0.8%アガロースゲル(agarose gel)を使用し、100vで30分間ローディングした。さらに、PCRは、総50μlのボリュームで行い、サンプル5μlとダイ(Dye)1μlを混合してローディングした。
図7において、1番ラインは、100bpラダー(2μlのラダー+3μlのHO)であり、2番ラインは、陰性対照群としてgDNAなしに200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物のみを入れた実験群であり、3番ラインは、5μlのGAPDHに対するプライマー(正方向プライマー:TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号1)、逆方向プライマー:CGCATGGACTGTGGTCATGAG(配列番号2))のみをローディングした実験群であり、4番ラインは、陽性対照群(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)をPCRする)であり、5番ラインは、1μgのgDNAを含有した本発明の核酸分離用バッファをガラス繊維フィルターでろ過させた後、前記ろ過されたバッファをPCRした実験群であり(6番ラインの対照群)、6番ラインは、1μgのgDNAを含有した400μlの本発明の核酸分離用バッファをガラス繊維フィルターでろ過させ、これを1/8サイズ(4×4mm)に切った後、PCR反応を行った実験群であり、7番ラインは、1μgのgDNAを含有した400μlの本発明の核酸分離用バッファをガラス繊維フィルターでろ過させ、前記ろ過されたバッファをPCRした実験群であり(8番ラインの対照群)、8番ラインは、1μgのgDNAを含有した400μlの本発明の核酸分離用バッファをガラス繊維フィルターでろ過させ、これを1/16サイズ(2×2mm)に切った後、PCR反応を行った実験群である。
図7のように、総ボリューム50μlのPCR反応基準として、8番ラインで明らかなバンドが観察されるところ、2×2mmサイズで(1/16)成功的にPCRが行われたことを確認した。一方、6番ラインのように、4×4mmサイズ(1/8)ではPCRが行われなかったことを確認した。したがって、総ボリューム50ul当たりガラス繊維フィルターは、2×2mmサイズ以下が最適であることを確認した(0.25MのNaCl基準)。
【0017】
実施例5.ワンステップ(one-step)核酸分離方法の核酸分離効率の確認
5-1.gDNA量による敏感度(sensitivity)確認
本発明の核酸分離用バッファ組成物を利用して、溶出過程が除かれた、核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちにPCRに適用する核酸分離方法において、少量のgDNAもPCRで検出可能であるかを確認した。ガラス繊維フィルターを利用する場合、gDNA量(μg(microgram)からpg(picogram)単位)による敏感度を検証する必要がある。
このため、商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して293T細胞からDNAを抽出した。抽出された総120μgのgDNAを400μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物と混合した後、この1/10である40μlを360μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物と混合し、前記混合した溶液の1/10を本発明による核酸分離用バッファ組成物と再び希釈する、連続的希釈(serial dilution)を7回行った後、それぞれをガラス繊維フィルターを通じてろ過した。その後、前記フィルターを2×2mmに切り、これをPCR反応混合物に入れてPCR増幅有無を確認した。
この時、0.1%アガロースゲル(agarose gel)を使用し、100vで30分間ローディングした。さらに、PCRは、総50μlのボリュームで行い、サンプル5μlとダイ(Dye)1μlを混合してローディングした。
図8において、1番ラインは、100bpラダーであり、2番ラインは、陰性対照群として、gDNAなしに200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物のみを入れた実験群であり、3番ラインは、5μlのGAPDHに対するプライマー(正方向プライマー:TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号1)、逆方向プライマー:CGCATGGACTGTGGTCATGAG(配列番号2))のみをローディングした実験群であり、4番ラインは、陽性対照群(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)をPCRする)であり、5番ラインは、120μgのgDNAをガラス繊維フィルターに固定させた後、これを2×2mmサイズに切った後、PCR反応混合物に入れてPCR増幅有無を確認した実験群であり、6番ラインは、12μgのgDNAのPCR結果であり、7番ラインは、1.2μgのgDNAのPCR結果であり、8番ラインは、120ngのgDNAのPCR結果であり、9番ラインは、12ngのgDNAのPCR結果であり、10番ラインは、1.2ngのgDNAのPCR結果であり、11番ラインは、120pgのgDNAのPCR結果であり、12番ラインは、12pgのDNAのPCR結果である。
図8に示すように、12番ライン(12pgのgDNA)でも明らかなバンドを確認することができるため、少量のgDNAにもPCR増幅が優秀になされることを確認した。
5-2.細胞数による敏感度(sensitivity)の確認
本発明の核酸分離用バッファ組成物を利用して、溶出過程が除かれた、核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちにPCRに適用する核酸分離方法において、少ない個数の細胞で得られたgDNA量による敏感度を検証する必要がある。このため、ガラス繊維フィルターを利用する場合、10万個の細胞から100単位のgDNA量による敏感度を確認した。
このため、10万個の293T細胞を400μlの水に溶解させ、その中で200μlを採取して新しいチューブに移した後、200μlの水を添加して混合する方式で1/2ずつ連続希釈した(希釈後に各チューブのボリュームは200μlである)。本発明による核酸分離用バッファ組成物(GB、gDNA extraction buffer)を利用して細胞を溶解させ、ガラス繊維フィルターを通じて溶出した後、2×2mmサイズに切ったガラス繊維フィルターをPCR反応混合物に入れてPCR増幅有無を確認した。
この時、0.1%のアガロースゲル(agarose gel)を使用し、100vで30分間ローディングした。さらに、PCRは、総50μlのボリュームで行い、サンプル5μlとダイ(Dye)1μlを混合してローディングした。
図9において、1番ラインは、100bpラダー(2μlのラダー+3μlのHO)であり、2番ラインは、GAPDHに対するプライマー(正方向プライマー:TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号1)、逆方向プライマー:CGCATGGACTGTGGTCATGAG(配列番号2))のみをローディングした実験群であり、3番ラインは、陽性対照群(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)をPCRする)であり、4番ラインは、陰性対照群(gDNAなしに200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物のみを入れた実験群、AB-control)であり、5番ラインは、陽性対照群(1μgのqDNAと本発明による核酸分離用バッファ組成物200μl、AB+control)であり、6番ラインは、100,000個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、7番ラインは、50,000個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、8番ラインは、25,000個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、9番ラインは、12,500個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、10番ラインは、6,250個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、11番ラインは、3,125個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、12番ラインは、1,563個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、13番ラインは、781個の細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群である。
図9に示すように、781個の少ない細胞個数にもかかわらず、gDNAで成功的にPCR増幅が行われることを確認した(13番ライン参照)。
5-3.バクテリアgDNA(bacteria gDNA)分離効率の確認
本発明の核酸分離用バッファ組成物を利用して、溶出過程が除かれた、核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちにPCRに適用する核酸分離方法において、ガラス繊維フィルターを利用する場合、細胞壁(cell wall)を有しているバクテリアgDNAも分離可能であるか否かを確認した。
このため、10個のE.coli(大膓菌)細胞と400μlの本発明による核酸分離用バッファを混合して溶解させた後、その中で200μlを採取して新しいチューブに移し、200μlの本発明による核酸分離用バッファを添加して混合する方式で1/2ずつ連続希釈した(希釈後に各チューブのボリュームは200μlである)。これをガラス繊維フィルターを通じて溶出した後、2×2サイズに切ったガラス繊維フィルターをPCR反応混合物に入れてPCR増幅有無を確認した。
バクテリアgDNAで増幅するために使用したプライマーは、uidA遺伝子に対するプライマーであり、正方向プライマー(uidA Up):TATGGAATTTCGCCGATTTT(配列番号3)、逆方向プライマー(uidA Down):TGTTTGCCTCCCTGCTGCGG(配列番号4))を使用した。さらに、使用したPCR反応混合物とPCR条件は、上記実施例に記載した通りである。
この時、0.1%アガロースゲル(agarose gel)を使用し、100vで30分間ローディングした。さらに、PCRは、総50μlのボリュームで行い、サンプル5μlとダイ(Dye)1μlを混合してローディングした。
図10において、1番ラインは、100bpラダーであり、2番ラインは、陰性対照群(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)であり、3番ラインは、5μlのE.coli遺伝子に対するプライマーのみをローディングした実験群であり、4番ラインは、陽性対照群(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)をPCRする)であり、5番ラインは、1.75×10細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、6番ラインは、1.75×10個のE.coli細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、7番ラインは、1.75×10個のE.coli細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、8番ラインは、1.75×10個のE.coli細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、9番ラインは、1.75×10個のE.coli細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、10番ラインは、1.75×10個のE.coli細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、11番ラインは、1.75×10個のE.coli細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群であり、12番ラインは、1.75×10個のE.coli細胞(200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物)実験群である。
図10に示すように、175個程度の少ない個数のバクテリアgDNAでも成功的にPCR増幅が行われたことを確認した(12番ライン参照)。
5-4.pHによるRNA分離効率の確認
本発明の核酸分離用バッファ組成物を利用して、溶出過程なく核酸が固定されたメンブレンフィルターを利用した核酸分離方法において、細胞のpHによる総RAN分離効率を確認した。
細胞から総RNAを分離するためには、DNAとは異なるpHの変化が必要であるため、多様なpH変化下で本発明による核酸分離用バッファ組成物とガラス繊維フィルターを利用して、総RNAを分離しフィルターに固定した後、溶出して総RNA分離有無を確認した。この時、細胞は293T細胞であり、1×10で同一に使用した。
上記細胞を2mlの本発明による核酸分離用バッファ組成物(GB、gDNA extraction buffer)2mlと混合し、5分間インキュベーションして溶解させた。その後、ガラス繊維フィルターを通じて溶出してガラス繊維フィルターに総RNAを固定させ、蒸留水で溶出して総RNA抽出有無を確認した。pHによる総RNA抽出効率を分析するために、pH4~pH8の25mMのTris-HClを使用した。
この時、1%アガロースゲル(agarose gel)を使用し、100vで30分間ローディングした。さらに、PCRは、総50μlのボリュームで行い、サンプル5μlとダイ(Dye)1μlを混合してローディングした。
図11において、1番ラインは、100bpラダー(2μlのラダー+3μlのHO)であり、2番ラインは、陽性対照群(商業的総RNA分離キット(total RNA extraction using AccuPrep(登録商標)Universal RNA Extraction Kit of Bioneer)を利用して分離した総RNA(1μg))であり、3番ラインは、また他の対照群として、前記2番ラインのように商業的総RNA分離キットを利用して得た総RNA(1μg)を2mlのpH8の25mMのTris-HClが含まれた本発明の核酸分離用バッファ組成物で溶解させた実験群であり、4番ライン~8番ラインは、細胞をそれぞれpH4~8の25mMのTris-HClが含まれた本発明の核酸分離用バッファ組成物で溶解した実験群である。
図11に示すように、gDNAに適合なpHであるpH8では、総RNA分離がよく行われなかったが、pH7以下では、総RNAがよく分離したことを確認した。したがって、本発明による核酸分離用バッファ組成物とガラス繊維フィルターを利用して、溶出過程なく核酸が固定されたメンブレンフィルターを利用した総RNAの分離方法において、pH4~7で行うことが好ましいことを確認した。
5-5.pHによるRNA分離後にPCR効率の確認
本発明による核酸分離用バッファ組成物とガラス繊維フィルターを利用して、細胞から総RNAを分離してメンブレンフィルターに固定した後、総RNAが固定されたメンブレンをPCRチューブに入れて直ちにPCR反応が可能であるかを確認した。
DNAと違ってRNAを分離するためには、DNAとは異なるpHのbuffer組成の変化が必要であるため、pHによるtotal RNA抽出後にPCR反応に与える影響を分析するために、pH4~pH8の25mMのTris-HClを使用した。多様なpH変化下でこれを本発明による核酸分離用バッファ組成物2mlを利用して1×10個の293T細胞を5分間インキュベーションして溶解させた。ガラス繊維フィルターを通じて溶出してガラス繊維フィルターにtotal RNAを固定させ、2×2mmサイズに切りPCR反応混合物に入れてPCR増幅有無を確認した。
この時、1%アガロースゲル(agarose gel)を使用し、100vで30分間ローディングした。さらに、PCRは、総50μlのボリュームで行い、サンプル5μlとダイ(Dye)1μlを混合してローディングした。
図12において、1番ラインは、100bpラダー(2μlのラダー+3μlのHO)であり、2番ラインは、陰性対照群として、200μlの本発明による核酸分離用バッファ組成物のみを入れた実験群であり、3番ラインは、5μlのGAPDHに対するプライマー(正方向プライマー:TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号1)、逆方向プライマー:CGCATGGACTGTGGTCATGAG(配列番号2))のみをローディングした結果であり、4番ラインは、陽性対照群(商業的総RNA分離キット(total RNA extraction using AccuPrep(登録商標)Universal RNA Extraction Kit of Bioneer)を利用して分離した総RNA(1μg))であり、5番ラインは、前記4番ラインのように商業的総RNA分離キットを利用して得た総RNA(1μg)を2mlのpH8の25mMのTris-HClが含まれた本発明の核酸分離用バッファ組成物で溶解させた実験群であり、6番ラインは、陽性対照群(商業的gDNA分離キット(gDNA extraction using AccuPrep(登録商標)Genomic DNA Extraction Kit(K-3032) of Bioneer)を利用して分離したgDNA(1μg)をPCRする)であり、7番ラインは、前記6番ラインのように商業的gDNA分離キットを利用して得たgDNA(1μg)を2mlのpH8の25mMのTris-HClが含まれた本発明の核酸分離用バッファ組成物で溶解させた実験群であり、8番ライン~12番ラインは、細胞をそれぞれpH4~8の25mMのTris-HClが含まれた本発明の核酸分離用バッファ組成物を利用して溶解した実験群である。
図12に示すように、細胞をpH4~7の25mMのTris-HClが含まれた、本発明の核酸分離用バッファ組成物で溶解した後、これをガラス繊維フィルターでろ過させ、直ちにPCRチューブに入れてPCRを行っても成功的に行われることを確認した。
総合的に本発明による核酸分離用バッファ組成物及びこれを含むメンブレンフィルターが装着された核酸分離用キットは、単一チューブ(one-tube)でPCR反応まで行うことができ、ワンステップ(one-step)で多様なサンプルから核酸を分離することができ、前記核酸分離用バッファ組成物は、多様な素材のメンブレンフィルターと適合性に優れることを確認した。さらに、これを適用した核酸分離方法において、別途の溶出過程なく核酸が固定されたメンブレンフィルターを直ちにPCRに適用可能なことを確認したところ、本発明による核酸分離用組成物、キット及び分離方法は、現場における迅速な診断に有用に活用されることができる。
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【国際調査報告】