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特表2023-522928インターロイキン阻害剤と組み合わせたCLEVER-1阻害による疾患の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】インターロイキン阻害剤と組み合わせたCLEVER-1阻害による疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20230525BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230525BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20230525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230525BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K39/395 U
A61K38/21
A61P35/00
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563492
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 FI2021050281
(87)【国際公開番号】W WO2021214382
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】20205400
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504459559
【氏名又は名称】ファロン ファーマシューティカルズ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤルカネン、ユホ
(72)【発明者】
【氏名】マンデリン、ヤミ
(72)【発明者】
【氏名】カルボネン、マッチ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA44
4C084DA21
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB26
4C084ZB32
4C084ZB33
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
(57)【要約】
疾患の治療において、インターロイキン及び/又はそれぞれの受容体の阻害剤と組み合わせた、及び任意選択的に更に、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と組み合わせた、CLEVER-1発現を阻害すこと又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん、感染性疾患、慢性感染症、重度インフルエンザ又はコロナウイルス感染症、敗血症、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される疾患の治療又は予防に使用するための、治療有効量の
(a)CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤と、
(b)インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と、
の組み合わせであって、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な前記薬剤が、インターロイキンの阻害剤及び/又は前記それぞれのインターロイキン受容体の阻害剤の投与前に個体に、並びにCLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な前記薬剤の投与開始後に、インターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8レベルの上昇を診断された、治療される個体に、投与される、組み合わせ。
【請求項2】
CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な前記薬剤が、抗体又はその断片、ペプチド、RNA、小分子又は高分子、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項3】
CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な前記薬剤が、ヒト化モノクローナル抗CLEVER-1抗体、好ましくはベクスマリリマブ(DSM ACC3361)又はベクスマリリマブバリアント又はベクスマリリマブバイオシミラーにおける抗体を含む、請求項1又は2に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項4】
インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤が、IL-1阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-6阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-8阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項5】
インターロイキン又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤が、前記インターロイキンと前記それぞれの受容体との間の相互作用を遮断することが可能な、抗体又はその断片、ペプチド、RNA、小分子又は高分子、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項6】
前記組み合わせが、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項7】
インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な前記薬剤が、外因性1型インターフェロンである、請求項6に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項8】
CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な前記薬剤が、インターロイキンの阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤と同時に、並びに/又はインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と同時に、個体に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項9】
CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な前記薬剤の投与が、インターロイキンの阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤の投与後に、並びに/又はインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤の投与後に、個体に継続される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項10】
インターロイキンの阻害剤及び/又はそれぞれの受容体の阻害剤が、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と同時に個体に投与される、請求項6~9のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項11】
インターロイキンの阻害剤及び/又はそれぞれの受容体の阻害剤が、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤の後に個体に投与される、請求項6~10のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項12】
前記ヒト化抗CLEVER-1抗体ベクスマリリマブが、患者の体重に応じて、0.3~10mg/kg、好ましくは0.3mg/kg~3mg/kgの範囲で投与される、請求項3~11のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項13】
CLEVER-1に結合することが可能な薬剤が患者に投与されたときに、抗CLEVER-1療法に対する患者の反応をモニタリングし、インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤を含む組み合わせ療法の必要性を評価するための方法であって、前記方法が、
-CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与する前の最初の時点で、前記患者から試料を得ることと、
-CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与した後のより遅い時点で、前記患者から試料を得ることと、
-前記得られた試料からインターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルを測定することと、
-より遅い時点で得られた前記試料から測定されたIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルを、最初の時点で得られた前記試料から測定されたIL-1、IL-6、及び/又はIL-8の発現レベルと比較することであって、インターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルの上昇が、IL-1阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-6阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-8阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせの同時投与を開始するための指標である、比較することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記方法が、IFNγ反応を測定することを更に含み、IFNγが、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与する前の最初の時点で得られた前記試料と、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与した後のより遅い時点で得られた前記試料と、から測定され、前記測定されたレベルが、比較される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が、血液試料、好ましくは血清試料である、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の治療における、インターロイキン及び/又はそれぞれの受容体の阻害剤と組み合わせた、CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤の使用に関する。本発明はまた、抗CLEVER-1療法に対する患者の反応をモニタリングし、インターロイキン及び/又はそれぞれの受容体の阻害剤を含む組み合わせ療法の必要性を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間に、炎症の概念は、熱、腫れ、痛み、及び発赤から先に進み、炎症における細胞経路及び分子メディエーターに関する詳細な理解が、現在、がん、心臓疾患、自己免疫、及び感染性疾患などの研究領域に適用されている[非特許文献1]。
【0003】
炎症は、損傷細胞及び瀕死細胞、化学性刺激物、並びに病原体などの多種多様な刺激に起因し、これらの反応は、病原性侵襲中の有効な免疫反応に重要である。炎症反応の2つの主要な柱は、先天性サイトカインである、インターロイキン及び1型インターフェロンである[非特許文献1]。
【0004】
結核及び肝炎などの疾患、インフルエンザ及びコロナウイルスなどのウイルス生物、並びにがんは、いずれも疾患部位の周囲に炎症を引き起こし、炎症誘発性サイトカインによる炎症の柱を通過し、インターロイキン及び1型インターフェロンは、宿主反応の開始である[非特許文献1]。
【0005】
最近、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のような感染性生物が、ウイルスとその下流の苦痛及び合併症との両方に対処するための様々な開発戦略の巨大な波を引き起こしている。重篤な合併症には、敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び多臓器不全(MOF)が含まれ、これらは、生死に関わる状態である。ARDS及びMOFは、危機的な状態であり、この合併症を有する患者は、ICUで治療されるが、ICUで可能なその状態についての治療は限定的であり、かつ特定の治療が存在しない。患者は、その病気の治療としてステロイドを投与されるか又は人工呼吸器を装着される[非特許文献2]。炎症誘発性サイトカインのレベルの増加は、ARDSにおける予後不良と関連している[非特許文献3]。
【0006】
ステロイドなどの現在の治療の選択肢は、臨床的利益を示さない。ステロイドは呼吸不全及び循環性ショックの解消を加速させたが、二次感染のリスクも増加した。敗血症、重度のCOVID-19感染症、及びがんで見られる一般的な特徴は、免疫系の疲弊である。最近、SARS-CoV-2のパンデミックにおいて、T細胞における疲弊マーカーが、がん及び慢性感染症患者に見られるものと同等であることが観察されている[非特許文献5~8]。
【0007】
がん細胞は、宿主免疫系のために多くの腫瘍関連抗原を産生する膨大な数の遺伝子変化及びエピジェネティックな変化を有し、それによって、腫瘍が、上述の炎症の機序に対する特定の免疫耐性を発達させることが必要になる。
【0008】
がん、ARDS、COVID-19感染症、及び敗血症に関与する重要な免疫耐性機序は、免疫阻害経路であり、そこで、単一分子は、免疫系活性(免疫チェックポイントと呼ばれる)を制御し、側副組織の損傷を軽減するために免疫寛容を正常に媒介し得る。最近の免疫系活性の制御における大部分の突破口は、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質-1(PD-1)、及びそのリガンドPD-L1の発見、理解、及び調節に起因する。過去の研究では、がんのマウスモデルにおけるCTLA-4の抗体遮断が抗腫瘍免疫を誘発したことが示されている。更に、PD-1のような免疫チェックポイント受容体は、組織内のT細胞エフェクター機能を制限する。PD-1のリガンドを上方調節することにより、腫瘍細胞は、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫反応を遮断する[非特許文献9、10]。臨床での使用について承認されている免疫チェックポイント調節剤が多く存在し、患者の約10~20%で有効な結果を示した転移性黒色腫から始まり、他の腫瘍(例えば、前立腺がん、乳がん、及び直腸結腸がん)において試験されているが、これらのレジームは依然としてそれらに対して難治性である。チェックポイント阻害に良好に反応する患者は、通常、高密度のインターフェロン(IFN)-γ-産生CD8+T細胞を特徴とする既存の抗腫瘍免疫反応を有する[非特許文献10、11]。
【0009】
これらの利用可能な薬物に対する腫瘍の反応率を増加させるために、腫瘍が炎症状態でなければならないことが理論化され、したがって炎症腫瘍状態を達成するための戦略の開発が合理的である。
【0010】
これを達成するための多くのアプローチが、診療所で試みられてきたが、これらはすべて、腫瘍に対する長期持続免疫を刺激するための新抗原の量を増加させるために、アントラサイクリンなどのアポトーシス細胞死を誘発する化学療法レジメンに基づいている[非特許文献12、13]。アポトーシス細胞死の間、インターロイキン発現が炎症性シグナルの結果として増加し、主にインターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、及びインターロイキン8(IL-8)並びにそれらの受容体が一般的であり、これは、アポトーシスシグナル中の腫瘍増殖及び細胞死に対する耐性に不可欠である[非特許文献1、10]。IL-1、IL-6、及びIL-8は、多くの下流経路を有し、近年、両方ともが、臨床開発のためではあるが異なる理由のための興味深い治療標的となっている。IL-1活性化は、下流に腫瘍壊死因子関連因子(TRAF)6活性化をもたらし、更に、活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NF-κB)活性化が生じる。IL-6は、下流のヤヌスキナーゼ(JAK)並びに下流のシグナル伝達因子及び転写活性化因子3(STAT3)のリン酸化を停止させることを標的としているが、一方、対処するために、IL-8は、2つのGタンパク質結合受容体(CXCR1及びCXCR2)を標的とすることに関与しているため、この経路における下流シグナル伝達を停止する。
【0011】
IL-1、IL-6、及びIL-8又はそれらの受容体を阻害する承認された抗がん剤は存在しない。抗IL-1及び抗IL-1受容体阻害剤は、遺伝性障害だけでなく筋骨格障害のために市販されている。抗IL-6又は抗IL-6受容体抗体は、リウマチ性疾患の抗炎症薬として市販されている。
【0012】
IL-1、IL-6、及びIL-8は、炎症誘発性サイトカインであり、1型インターフェロンと並行して、炎症プロセスにおける主要な役割を果たしている。これらのサイトカインは、腫瘍表面上、並びに結核又は敗血症及びARDSなどの急性重症疾患状態における肉芽腫などの慢性感染症に関連する組織で豊富に過剰発現された受容体に結合する。
【0013】
IL-1、IL-6、及びIL-8受容体は、腫瘍浸潤性好中球及び腫瘍関連マクロファージなどの腫瘍微小環境(TME)での腫瘍及び炎症に関連する他の細胞にも豊富に存在する[非特許文献12]。TMEは、結核及び肝炎における肉芽腫と比較され得る。
【0014】
しかしながら、がんと結核及び肝炎などの慢性感染症との両方に見られるマクロファージなどの先天性免疫細胞[非特許文献7]は、T細胞活性化を抑制し、腫瘍細胞の高い突然変異荷重にもかかわらず腫瘍の進行に寄与し得る。腫瘍に関連する免疫抑制に寄与し、かつ腫瘍増殖を補助するシグナルを提供するマクロファージは、これらの細胞が、様々な腫瘍に豊富に存在し、非常に塑性であり、T細胞活性化及び腫瘍又は感染拒絶を補助する炎症誘発性マクロファージに変換することができるため、標的療法のための非常に適格な候補であり得る[非特許文献15、16]。これまで、臨床開発中のマクロファージ標的化戦略は、マクロファージコロニー刺激因子受容体の阻害を利用して、腫瘍中のマクロファージ集団を枯渇させる[非特許文献17]。しかしながら、これらのアプローチに対する耐性が、すでに報告されている[非特許文献18]。したがって、これらの細胞を利用してがんと闘うための新規の方式を見つける必要性がある。
【0015】
近年、異なる刺激に対するマクロファージ反応の調節におけるスカベンジャー受容体の寄与に、ますます注目が払われている。CLEVER-1(Stabilin-1としても知られている)は、抗炎症性マクロファージのサブセットに捕捉能力を付与する多機能分子である[非特許文献19、20]。これらの細胞では、CLEVER-1は、受容体媒介性エンドサイトーシス及びリサイクリング、細胞内選別、並びに変化した自己構成要素及び正常な自己構成要素のトランスサイトーシスに関与する。より最近、がん増殖及び転移の進行が、Stab1-/-(CLEVER-1ノックアウト)マウス、及び抗CLEVER-1療法で治療したマウスにおいて減衰することが見出されている[非特許文献20]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第03/057130号
【特許文献2】国際公開第2017/182705号
【非特許文献】
【0017】
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【非特許文献2】Griffiths MJD et al. Guidelines on the management of acute respiratory distress syndrome. BMJ Open Respiratory Research 2019; 6 (1).
【非特許文献3】Meduri, GU et al. Persistent elevation of inflammatory cytokines predicts a poor outcome in ARDS. Plasma IL-1 beta and IL-6 levels are consistent and efficient predictors of outcome over time. Chest. 1995 107 (4) 1062-73.
【非特許文献4】Bauer TT et al. Comparison of systemic cytokine levels in patients with acute respiratory distress syndrome, severe pneumonia, and controls. Thorax. 2000. 55. 46-52.
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【非特許文献19】Kzhyshkowska J, Workman G, Cardo-Vila M, Arap W, Pasqualini R, Gratchev A, et al. Novel function of alternatively activated macrophages: stabilin-1-mediated clearance of SPARC. J Immunol 2006;176(10):5825-32.
【非特許文献20】Karikoski M, Marttila-Ichihara F, Elima K, Rantakari P, Hollmen M, Kelkka T, et al. Clever-1/Stabilin-1 Controls Cancer Growth and Metastasis. Clinical Cancer Research 2014;20(24):6452-64.
【発明の概要】
【0018】
ここで、驚くべきことに、深く免疫抑制されたがん患者におけるがんの抗CLEVER-1治療が、宿主免疫系が敗血症及び完全な免疫疲弊と闘うことを可能にする免疫系の活性化をもたらすことが見出された。また、驚くべきことに、CLEVER-1阻害により駆動されるか、又は疾患進行及び免疫耐性により駆動される免疫反応からのインターロイキンの増加が存在する場合を除いて、抗CLEVER-1治療が、抗腫瘍反応をもたらすことも見出された。したがって、抗CLEVER-1治療は、インターロイキン阻害療法と一緒に、並びに/又は抗CLEVER-1治療にかかわらずIL-6及び/若しくはIL-8などのインターロイキン発現レベルの増加を有する患者において、I型インターフェロンをCLEVER-1阻害と共に投与することにより抗CLEVER-1薬剤により達成される免疫反応を更に誘導することによって、使用することが有益であることが見出された。抗インターロイキン療法は、インターロイキン及びそれらのそれぞれの受容体、例えば、IL-6若しくはIL-6受容体(IL-6R)、IL-8若しくはIL-8受容体(IL-8R)、並びに/又はIL-1若しくはIL-1受容体IL-1Ra及び/若しくはIL-1Rbを阻害している。この免疫反応はまた、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、又はがんなどの他の点では反応性でない状態におけるより有効な疾患療法のためのCLEVER-1阻害と組み合わせた外因性I型インターフェロンなどのインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤によって引き起こされ得る。
【0019】
特に、CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤と、インターロイキン及び/又はそれらのそれぞれの受容体の阻害剤との組み合わせが、CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤の単独療法に反応しない腫瘍、慢性感染症、及び免疫疲弊をもたらす急性炎症性感染症の治療に好適であることが見出された。更に、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤は、免疫反応を誘導するための治療に使用することができる。抗IL-1及び/若しくは抗IL-6及び/若しくは抗IL-8治療並びに/又はI型インターフェロン受容体(IFNAR)の活性化は、単独療法として有効ながん治療ではないが、他の適応症において活性を示している。抗CLEVER-1薬剤と組み合わせることで、抗腫瘍及び抗感染活性を有することが見出された。
【0020】
したがって、本発明の目的は、がんのための新規の治療を提供することであり、特に、現在治療することができないか、又は抗CLEVER-1治療に所望の反応を提供しない腫瘍型に対して治療方法を提供することである。
【0021】
本発明の更なる目的は、最初の深刻な状態と闘うために必要とされた疲弊した免疫系を利用して、原因生物又は後の日和見感染に対する免疫反応を補助するための、感染性疾患及びそれらの致命的な急性疾患状態、例えば、敗血症及びARDSのための新規の治療を提供することである。
【0022】
更に、本発明の目的は、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤がすでに患者に投与されている場合に、抗CLEVER-1療法に対する患者の反応をモニタリングし、インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤を含む組み合わせ療法の必要性を評価するための方法を提供することである。
【0023】
とりわけ、上述の目的を達成するために、本発明は、添付の独立請求項の特徴付け部分で提示されるものによって特徴付けられる。本発明のいくつかの好ましい実施形態は、他の請求項に記載される。
【0024】
この文書で言及される実施形態及び利点は、該当する場合、必ずしも常に具体的に言及されるものではないが、上記薬剤の組み合わせ、方法、及び本発明による使用の両方に関する。
【0025】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、がん、感染性疾患、慢性感染症、重度インフルエンザ又はコロナウイルス感染症、敗血症、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される疾患の治療に使用するための、治療有効量の
(a)CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤と、
(b)インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と、
の組み合わせであって、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤が、インターロイキンの阻害剤及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤の投与前に個体に投与され、並びに抗CLEVER-1治療を開始した後(すなわち、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な上記薬剤の投与開始後)に、インターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8レベルの上昇を診断された、治療される個体に投与される、組み合わせに関する。
【0026】
特に、本発明は、治療有効量の
(a)CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤と、
(b)IL-1、IL-6、及びIL-8などのインターロイキン並びに/又はそれらのそれぞれの受容体IL-1Ra、IL-1Rb、IL-6R、及びIL-8Rの阻害剤と、
の組み合わせであって、
炎症誘発性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8)の高発現を示す、及び/又は抗CLEVER-1治療単独に反応しないか、若しくは抗CLEVER-1治療中に循環インターロイキンのレベルの増加を示す、適応症と診断された個体における、がん、感染性疾患、慢性感染症、重度インフルエンザ又はコロナウイルス感染症、敗血症及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される疾患の治療に使用するための、組み合わせに関する。更に、外因性1型インターフェロンなどのインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤は、CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤と、免疫反応を誘導し、かつIL-6及び/又はIL-8発現レベルに影響を及ぼすためのIL-1、IL-6、及びIL-8などのインターロイキン並びに/又はそれらのそれぞれの受容体IL-1Ra、IL-1Rb、IL-6R、及びIL-8Rの阻害剤とに加えて使用することができる。
【0027】
本発明によれば、インターロイキン及び/若しくはそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤は、抗CLEVER-1治療と組み合わせて使用されるか、又はインターロイキン及び/若しくはそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤並びにインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤は、抗CLEVER-1治療と組み合わせて使用される。
【0028】
抗CLEVER-1治療に対する反応性は、典型的には、IL-1、IL-6、及びIL-8レベルの低下に関連しているが、抗CLEVER-1治療に対する非反応性は、IL-6及びIL-8血漿/血清レベルの増加に関連している。抗CLEVER-1治療は、T細胞の腫瘍及び肉芽腫への浸潤の増加をもたらし、このようにして、抗IL-1及び/若しくは抗IL-6及び/若しくはIL-8阻害剤、並びに/又はIFNARのアゴニストのいずれかによる標的とする療法の改善のために、IL-1R及び/又はIL-6R及び/又はIL-8R発現を減少させる。したがって、本発明は、がん、慢性感染症、感染性疾患、又は他の免疫疲弊状態、例えば、敗血症及びARDSにおけるT細胞の負の調節を遮断することを標的とする抗CLEVER-1治療と組み合わせる場合に、抗IL-1及び/若しくは抗IL-6及び/若しくはIL-8治療、並びに/又は1型インターフェロン(IFN)の改善された有効性を提供する。COVID-19感染症においても最近観察されたT細胞上の疲弊マーカーは、がん及び慢性感染症患者に見られるものと同等である[非特許文献5~8]。したがって、本発明による組み合わせ治療は、免疫疲弊をもたらす重度インフルエンザ、及び新型コロナウイルス(Sars-Cov及びSars-Cov2)などのコロナ感染症の治療にも好適である。本発明は、免疫系の活性化を必要とする患者のための、抗CLEVER-1薬剤との、インターロイキン阻害及び/又は1型インターフェロンの組み合わせた治療を提供する。
【0029】
一態様によれば、本発明は、個体におけるがんを治療するか、又はがんの進行を遅らせるための方法であって、CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1を結合することが可能な治療有効量の薬剤を、インターロイキン及び/又はそれらのそれぞれの受容体の阻害剤と組み合わせて、並びに任意選択的に更に、1型インターフェロンなどのインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と組み合わせて、個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0030】
別の態様によれば、本発明は、個体における慢性感染症、感染性疾患、他の免疫疲弊状態、例えば、敗血症及びARDSを治療及び予防するための方法であって、CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能な治療有効量の薬剤を、インターロイキン及び/又はそれらのそれぞれの受容体の阻害剤と組み合わせて、並びに任意選択的に更に、1型インターフェロンなどのインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と組み合わせて、個体に投与することを含む、方法を提供する。
【0031】
更に、本発明の一態様によれば、本発明は、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤が患者に投与されたときに、抗CLEVER-1療法に対する患者の反応をモニタリングし、インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤を含む組み合わせ療法の必要性を評価するための方法を提供し、この方法は、
-CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与する前の最初の時点で、患者から試料を得ることと、
-CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与した後のより遅い時点で、患者から試料を得ることと、
-得られた試料からインターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルを測定することと、
-より遅い時点で得られた試料から測定されたIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルを、最初の時点で得られた試料から測定されたIL-1、IL-6、及び/又はIL-8の発現レベルと比較することであって、インターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルの上昇が、IL-1阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-6阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-8阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせの同時投与を開始するための指標である、比較することと、を含む。
【0032】
加えて、好ましい用量範囲が、本発明による上記疾患の治療のための免疫刺激を提供するためのベクスマリリマブなどのヒト化抗CLEVER-1抗体を使用するために、患者の体重に応じて、0.3~10mg/kg、好ましくは0.3mg/kg~3mg/kgであることが見出されている。最大耐量で使用される従来の薬理学的疾患治療とは異なり、抗CLEVER-1抗体治療は、免疫反応を作り出す。低用量では、免疫反応は発生せず、高用量では、免疫系は、例えば、CLEVER-1発現の増加又はIL-8の分泌を通して、達成された免疫活性化のバランスを取るための新しい方式を作り出す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】抗CLEVER-1治療中の患者の血清中のIFNγ、IL-6、及びIL-8の変化、並びに進行性疾患(PD)を有する患者と比較した、抗腫瘍反応、すなわち、安定した疾患又は部分反応(SD/PR)を有する患者間の比較。IL-6及びIL-8の下方調節以外のIFNγの上方調節は、抗腫瘍に関連している。
図2】IFNγ、IL-6、及びIL-8は、異なる用量に応じて、抗CLEVER-1治療中に変化する。最も好ましい免疫学的反応は、0.3mg/kg、1mg/kg、及び3mg/kgの用量で見られる。
図3】抗CLEVER-1抗体(FP-1305)による、深く免疫抑制されたがん患者の免疫再活性化。これにより、患者1は敗血症を克服することができた。抗CLEVER-1治療の前に、患者の末梢血細胞は、LPS刺激に決して反応しなかった。LPSは、細菌断片からなる。ヒト化抗CLEVER-1抗体を投与した後、患者の血液細胞は、LPS刺激に「正常に」反応し、感染に対抗するために必要なサイトカインを産生した。免疫疲弊からの免疫活性化が達成された。C=治療サイクル、D=日
【発明を実施するための形態】
【0034】
CLEVER-1は、特許文献1のCommon Lymphatic Endothelial and Vascular Endothelial Receptor-1に開示されているタンパク質である。CLEVER-1(Stabilin-1としても知られている)は、抗炎症性マクロファージのサブセットに捕捉能力を付与する多機能分子である[非特許文献19、20]。
【0035】
「CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤」、「CLEVER-1阻害剤」、及び「抗CLEVER-1薬剤」という用語は、置き換え可能であり、CLEVER-1の機能を遮断するため、又はCLEVER-1と疾患病因に関与する細胞との相互作用を遮断するために、CLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1に結合することが可能である、抗体及びその断片、ペプチドなどを含む薬剤を指す。この薬剤は、任意の他の阻害剤、例えば、RNA療法、CLEVER-1受容体に結合するのに十分な親和性若しくはその発現を低減する及び/若しくはそのタンパク質活性を阻害する能力を有する、小分子阻害剤又は高分子であってもよい。「抗体、その断片又は分子」という用語は、最も広い意味で、個体においてCLEVER-1発現を阻害すること、又はCLEVER-1分子に結合することが可能である抗体、その断片又は小分子であるかどうかにかかわらず、任意の療法剤を包含するように使用される。特に、所望の生物学的活性を示す限り、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は霊長類化抗体、並びに抗体断片及び一本鎖抗体(例えば、Fab、Fv)を含むと理解されなければならない。特に有用な薬剤は、抗CLEVER-1抗体及びその断片である。したがって、本発明のある実施形態によれば、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤、すなわち、CLEVER-1阻害剤又は抗CLEVER-1薬剤は、抗体又はその断片、ペプチド、RNA、小分子又は高分子、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。抗CLEVER-1治療又は抗CLEVER-1療法は、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤の投与を含む、治療又は療法を指す。
【0036】
本発明によるある実施形態では、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤は、ヒト化モノクローナル抗CLEVER-1抗体を含む。本発明のある実施形態では、抗CLEVER-1抗体は、ヒト化モノクローナル免疫グロブリンG4κ抗体ベクスマリリマブ(提案されたINNとしてWHO Drug Information,Vol.33,No.4(2019)において、及び推奨されたINNとしてWHO Drug Information,Vol.34,No.3(2020),pages 699-700において開示されているような、国際一般名称(INN))、又はベクスマリリマブバリアント若しくはベクスマリリマブバイオシミラーにおける抗体である。
【0037】
ベクスマリリマブバイオシミラーとは、ベクスマリリマブバイオシミラーとして上市するために、いずれかの国において規制当局によって承認される生物学的製品を意味する。ある実施形態では、ベクスマリリマブバイオシミラーは、薬物物質としてベクスマリリマブバリアントを含む。ある実施形態では、ベクスマリリマブバイオシミラーは、ベクスマリリマブと実質的に同じアミノ酸配列の重鎖及び軽鎖を有する。本明細書で使用される場合、「ベクスマリリマブバリアント」とは、軽鎖CDRの外側に位置する位置に1つ以上の保存的アミノ酸置換、及び/又は重鎖CDRの外側に位置する1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する、例えば、バリアント位置が、フレームワーク領域又は定常領域中に位置する以外は、ベクスマリリマブと同一の重鎖及び軽鎖の配列を含む抗体を意味する。換言すれば、ベクスマリリマブ及びベクスマリリマブバリアントは、同一のCDR配列を含むが、その全長軽鎖及び重鎖の配列中の他の位置に保存的アミノ酸置換を有することに起因して、互いに異なっている。ベクスマリリマブバリアントは、CLEVER-1に対する結合親和性に関して、ベクスマリリマブと実質的に同じである。
【0038】
本発明のある実施形態によれば、療法用抗CLEVER-1抗体ベクスマリリマブ(FP-1305)を産生する細胞株は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に基づいて、DSMZ-ジャーマン コレクション オブ マイクロオーガニズム アンド セルカルチャー ゲーエムベーハー(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH)、ドイツ連邦共和国、デー-38124 ブラウンシュヴァイク、インホッフェンシュトラーセ 7ベー(Inhoffenstrasse 7B, D-38124 Braunschweig, Germany)に2020年5月27日に寄託されており、受託番号DSM ACC3361を有する。寄託された実施形態は、本発明の一態様の単一の例示として意図されており、機能的に同等である任意の培養物が、本発明の範囲内であるため、本発明は、寄託された培養物によって範囲が限定されるべきではない。本明細書における材料の寄託は、本明細書に含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む本発明の任意の態様の実施を可能にするのに不十分であることを認めることを構成するものではなく、また、それが表す特定の例示に特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0039】
本発明によれば、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤は、免疫系の活性化において、インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と組み合わせて使用される。加えて、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体IFNARに結合することが可能な薬剤は、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤、並びにインターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と一緒に使用することができる。特に、上記組み合わせは、炎症誘発性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8)の高発現を示す、及び/又は抗CLEVER-1治療単独に反応しないか、若しくは抗CLEVER-1治療中に循環インターロイキンのレベルの増加を示す、適応症と診断された個体における治療に使用される。本発明によれば、上記組み合わせ治療は、がん、感染性疾患、慢性感染症、重度インフルエンザ又はコロナウイルス感染症、敗血症、重度インフルエンザ又はコロナウイルス感染症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、及び多臓器不全(MOF)からなる群から選択される疾患の治療又は予防に使用される。
【0040】
「治療」又は「治療すること」という用語は、疾患又は障害の完全な治癒、並びに上記疾患又は障害の改善又は軽減を含むと理解されなければならない。「治療有効量」という用語は、所望の療法結果をもたらすのに十分な、本発明による任意の量の薬剤を含むことを意味する。
【0041】
本発明のある実施形態では、インターロイキン及び/若しくはそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤は、IL-1阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-6阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-8阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。本発明において、抗IL-1及び/又は抗IL-6及び/又は抗IL-8療法は、IL-1/IL-1R又はIL-6/IL-6R又はIL-8/CXCR1又はCXCR2であるIL-8Rシグナル伝達経路のいずれかを遮断することが可能である阻害剤を指す。
【0042】
IL-1及びIL-1R阻害剤は、IL-1及びその受容体IL-1Rの会合を阻害するように作用する。IL-1が下流の腫瘍壊死因子関連因子(TRAF)TRAF6と結合すると。
【0043】
IL-6及びIL-6R阻害剤は、IL-6及びその受容体IL-6Rの会合を阻害するように作用する。シグナル伝達因子及び転写活性化因子3(STAT3)の活性化された下流リン酸化においてIL-6が下流のヤヌスキナーゼ(JAK)に結合すると。
【0044】
IL-8及びIL-8R阻害剤は、IL-8のその受容体CXCR1及び/又はCXCR2(IL-8R)との会合を阻害するように作用する。IL-8がいずれかの受容体に結合すると、複数の経路の下流シグナル伝達を引き起こす。IL-8シグナル伝達は、その一次エフェクターホスファチジル-イノシトール3-キナーゼ(PI3K)又はホスホリパーゼCの活性化を促進し、Akt、PKC、カルシウム動員、及び/又はMAPKシグナル伝達カスケードの下流活性化を促進する。
【0045】
本発明のある実施形態によれば、インターロイキン又はそれぞれの受容体の阻害剤は、上記インターロイキンとそれぞれの受容体との間の相互作用を遮断することが可能な、抗体又はその断片、ペプチド、RNA、小分子又は高分子、及びそれらの任意の組み合わせを含む。本発明によるある実施形態では、IL-1/IL-1R阻害剤は、IL-1/IL-1R結合アンタゴニストであり、これは、IL-1とその受容体IL-1Rとの間の相互作用を遮断する抗体若しくはその断片、ペプチド、又は分子であり得る。抗体若しくはその断片、ペプチド、又はその分子は、IL-1とIL-1Rとの間の相互作用を中断し、下流シグナル伝達を阻害するために、IL-1又はIL-1Rに特異的に結合し得る。抗IL1/IL-1R抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはモノクローナル抗体、又はその任意の断片若しくは分子であり得る。本発明によれば、IL-1/IL-1R阻害剤は、任意の好適なIL-1/IL-1R阻害剤であり得、それは、必要な治療に基づいて選択される。本発明による例示的な実施形態では、抗IL-1/IL-1R抗体若しくはその断片、ペプチド、又は分子は、選択された任意の現在の開発資産、例えば、Anakinra(Swedish Orphan Biovitrium)及びそれらの任意の組み合わせであり得る。これらの開発的な抗IL-1/IL-1R抗体若しくはその断片、ペプチド、又は分子は、当該分野で開発されている、現在開示され、かつ既知の開発抗体、断片、ペプチド、及び分子の例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。
【0046】
本発明によるある実施形態では、IL-6/IL-6R阻害剤は、IL-6/IL-6R結合アンタゴニストであり、これは、IL-6とその受容体IL-6Rとの間の相互作用を遮断する抗体若しくはその断片、ペプチド、又は分子であり得る。抗体若しくはその断片、ペプチド、又はその分子は、IL-6とIL-6Rとの間の相互作用を中断し、下流シグナル伝達を阻害するために、IL-6又はIL-6Rに特異的に結合し得る。抗IL-6/IL-6R抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはモノクローナル抗体、又はその任意の断片若しくは分子であり得る。本発明によれば、IL-6/IL-6R阻害剤は、任意の好適なIL-6/IL-6R阻害剤であり得、それは、必要な治療に基づいて選択される。本発明による例示的な実施形態では、その断片の抗IL-6/IL-6R抗体、ペプチド、又は分子は、選択された任意の現在の開発資産、例えば、Tocilizumab(Hoffmann-La Roche SA)及びSiltuximab(EUSA Pharma-ceuticals Ltd)並びにそれらの任意の組み合わせであり得る。これらの開発的な抗IL-6/IL-6R抗体若しくはその断片、ペプチド、又は分子は、当該分野で開発されている、現在開示され、かつ既知の開発抗体、断片、ペプチド、及び分子の例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。
【0047】
本発明によるある実施形態では、IL-8/IL-8R阻害剤は、IL-8/IL-8R結合アンタゴニストであり、これは、IL-8とその受容体IL-8Rとの間の相互作用を遮断する抗体若しくはその断片、ペプチド、又はその分子であり得る。抗体若しくはその断片、ペプチド、又はその分子は、IL-8とIL-8Rとの間の相互作用を中断し、下流シグナル伝達を阻害するために、IL-8又はIL-8Rに特異的に結合し得る。抗IL-8/IL-8R抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはモノクローナル抗体、又はその任意の断片若しくは分子であり得る。本発明によれば、IL-8/IL-8R阻害剤は、任意の好適なIL-8/IL-8R阻害剤であり得、それは、必要な治療に基づいて選択される。本発明による例示的な実施形態では、抗IL-8/IL-8R抗体、断片、又は分子は、選択された任意の現在の開発資産、例えば、Reparixin(Dompe Farmaceutici SpA)、AZD-5069(AstraZeneca Plc)、BMS-986253(Bristol-Myers Squibb Co)、及びNavarixin(Merck&Co Inc)又はそれらの任意の組み合わせであり得る。これらの開発的な抗IL-8/IL-8R抗体、断片、又は分子は、当該分野で開発されている、現在開示され、かつ既知の開発抗体又はその断片、ペプチド、及び分子の例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤は、受容体に結合し、Tyk2及びJak1を誘導することが可能な薬剤であり、これにより、シグナル伝達因子及び転写活性化因子(STAT)が生じる。
【0049】
本発明のある実施形態によれば、IFNARに結合することが可能である薬剤は、任意の1型インターフェロン(I型IFN)結合アゴニストであり得、これは、下流経路を誘導する受容体IFNARに結合する抗体若しくはその断片、ペプチド、又はその分子であり得る。抗体、その断片又は分子は、I型インターフェロン受容体IFNARに特異的に結合し、下流シグナル伝達を誘導する。1型IFN抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはモノクローナル抗体、又はその任意の断片若しくは分子であり得る。本発明のある実施形態によれば、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤は、外因性1型インターフェロン又は同様の効果を誘導することが可能な薬剤である。外因性1型インターフェロンには、インターフェロンアルファ及びインターフェロンベータのサブタイプが含まれる。本発明のある実施形態では、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤は、インターフェロンアルファ又はインターフェロンベータを含む。本発明のある実施形態によれば、外因性I型インターフェロンは、インターフェロンベータ-1a又はインターフェロンベータ-1bであり得る。本発明によれば、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤は、必要な治療に基づいて選択される。本発明による例示的な実施形態では、IFNARに結合することが可能な薬剤は、選択された任意の現在の開発資産、例えば、インターフェロンベータ-1aを含むRebif(Merck and Co)、インターフェロンベータ-1aを含むAvonex(Biogen)、インターフェロンベータ-1bを含むBetaseron(Bayer)、及びインターフェロンベータ-1aを含むTraumakine(Faron Pharmaceuticals)、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。これらの1型IFN薬物製品は、現在開示され、かつ既知の開発I型IFNアゴニストの例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。
【0050】
本発明のある実施形態によれば、がん、感染性疾患、慢性感染症、敗血症、重度インフルエンザ又はコロナウイルス感染症、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される疾患を治療又は予防するための方法は、個体に、治療有効量の
-CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤、例えば、抗CLEVER-1抗体又はその断片、ペプチド、RNA、小分子又は高分子、及びそれらの任意の組み合わせと、
-抗IL-1及び/又はIL-1R阻害剤、例えば、IL-1又は受容体IL-1Rα又はIL-1Rβに特異的に結合し、これらの手段によってIL-1の活性を阻害する、抗IL-1/IL-1R抗体、その断片又は分子、
-抗IL-6及び/又はIL-6R阻害剤、例えば、IL-6又は受容体(IL-6R)に特異的に結合し、これらの手段によってIL-6の活性を阻害する、抗IL-6/IL-6R抗体、その断片又は分子、及び
-抗IL-8及び/又はIL-8R阻害剤、例えば、インターロイキン8(IL-8)又は受容体CXCR1若しくはCXCR2に特異的に結合し、これらの手段によってIL-8の活性を阻害する、抗IL-8/IL-8R抗体、その断片又は分子、並びに
任意選択的に更に、外因性1型インターフェロンなどのインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤である、阻害剤/薬剤のうちの少なくとも1つと、を投与することを、含む。
【0051】
本発明は、単一薬剤としての抗CLEVER-1薬剤又はインターロイキン阻害剤及び/若しくはそれらのそれぞれの受容体又は1型インターフェロンに反応しない、疲弊した免疫反応を有する疾患状態を治療するために有用であり得る。本発明のある実施形態によれば、インターロイキン阻害剤及び/又はそれらのそれぞれの受容体と組み合わせた、並びに任意選択的に1型インターフェロンと組み合わせた、抗CLEVER-1薬剤は、がん、感染症、敗血症、及びARDSに関連する免疫疲弊の疾患状態と診断された個体の治療に使用される。本発明によれば、インターロイキン阻害剤と組み合わせた、及び任意選択的に1型インターフェロンと組み合わせた、抗CLEVER-1薬剤は、がん、感染性疾患、慢性感染症、敗血症、重度のインフルエンザ又はコロナ感染症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される疾患の治療又は予防に使用することができる。感染性疾患は、細菌、ウイルス、寄生虫、又は真菌などの病原性微生物によって引き起こされ、疾患は、ある人物から別の人物へ直接的又は間接的に拡散され得る。感染性疾患は、インフルエンザ及びコロナウイルスなどのウイルス生物によって引き起こされ得る。免疫疲弊を伴う炎症組織又は感染組織は、高マクロファージ浸潤及び/若しくは低T細胞浸潤によって、又は血液試料を介して得られたT細胞集団に対するチェックポイント阻害剤の発現の上昇によって特徴付けられ得る。
【0052】
本発明のある実施形態によれば、インターロイキン阻害剤及び/又はそれらのそれぞれの受容体と組み合わせた、並びに任意選択的に1型インターフェロンと組み合わせた、抗CLEVER-1薬剤は、悪性腫瘍増殖を低減することによって、及び/又は転移形態を阻害することによって、がんを治療するために使用され、これは、すべての形態のがんに適用可能である。したがって、任意の良性若しくは悪性腫瘍又は悪性腫瘍の転移を治療することができる。本発明のある実施形態によれば、インターロイキン阻害剤と組み合わせた、並びに任意選択的にそれらのそれぞれの受容体及び/又は1型インターフェロンと組み合わせた、抗CLEVER-1薬剤は、感染性病原体に対する免疫反応を作り出すために使用される。
【0053】
本発明は、CLEVER-1阻害によるIL-6及びIL-8などの血漿/血清インターロイキンの増加が、CD8+T細胞、NK細胞、及び血漿IFNγの増加によって観察されている免疫活性化の達成にもかかわらず、抗腫瘍反応と関連していないという発見に基づく。血漿中のインターロイキンの減少は、腫瘍の縮小に関連している。本発明は、IL-6及び/又はIL-8の高発現と関連する腫瘍と診断された患者にとって最も有用であり、これは、CLEVER-1の阻害が、冷たい腫瘍を高温に変換し、このような療法に正常に反応をしない患者における免疫療法の有効性を増加させることができるからである。
【0054】
本発明のある実施形態によれば、抗CLEVER-1治療の開始後のインターロイキンレベル、典型的には、IL-1、IL-6、及び/又はIL-8の発現レベルなどの血漿/血清インターロイキンレベルの上昇と診断された個体が治療される。
【0055】
本発明のある実施形態では、IL-1、IL-6、及び/又はIL-8の発現レベルは、同時インターロイキン阻害剤及び/又はそれらのそれぞれの受容体治療の必要性を決定するために、並びにまた、同時1型インターフェロン治療の必要性を決定するために、患者から測定される。本発明のある実施形態では、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤が患者に投与されたときに、抗CLEVER-1療法に対する患者の反応をモニタリングし、組み合わせ療法の必要性を評価するための方法は、
-CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与する前の最初の時点で、患者から試料を得ることと、
-CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与した後のより遅い時点で、患者から試料を得ることと、
-得られた試料からインターロイキンIL-1、インターロイキンIL-6、及び/又はIL-8のレベルを測定することと、
-より遅い時点で得られた試料から測定されたIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルを、最初の時点で得られた試料から測定されたIL-1、IL-6、及び/又はIL-8の発現レベルと比較することであって、インターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8のレベルの上昇が、IL-1阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-6阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、IL-8阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせの同時投与を開始するための指標である、比較することと、を含む。本発明によるある実施形態では、インターロイキンIL-1、IL-6、及び/又はIL-8レベルは、血液試料、好ましくは血清試料から測定される。
【0056】
本発明のある実施形態によれば、この方法は、IFNγ反応を測定することを更に含み、IFNγは、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与する前の最初の時点で得られた試料と、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤を患者に投与した後のより遅い時点で得られた試料と、から測定され、測定されたレベルは、比較される。本発明のある実施形態では、同時インターロイキン阻害剤及び/又はそれらのそれぞれの受容体治療を開始すること、並びにまた、同時1型インターフェロン治療の必要性を決定することの決定は、IFNγの上昇とインターロイキンIL-1、IL-6及び/又はIL-8レベルの上昇との両方が観察された後に行われる。
【0057】
本発明はまた、がん、感染性疾患、慢性感染症、敗血症、重度インフルエンザ又はコロナウイルス感染症、及び免疫疲弊を伴う急性呼吸窮迫症候群(ARDS)からなる群から選択される疾患を患者が患っている場合に、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤の患者への投与を、IL-1、IL-6、及びIL-8などのインターロイキン並びに/又はそれらのそれぞれの受容体IL-1Ra、IL-1Rb、IL-6R、及びIL-8Rの阻害剤の投与と組み合わせて、並びに任意選択的に更に、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤の投与と組み合わせて含む、治療方法に関する。特に、本発明の実施形態による上記組み合わせの治療方法は、患者が最初に抗CLEVER-1治療単独で治療され、患者が炎症誘発性サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8)の高発現を示す、及び/又は抗CLEVER-1治療中の循環インターロイキンのレベルの増加を示す場合に有益である。
【0058】
本発明によるある実施形態では、治療の方法は、抗CLEVER-1薬剤を患者に投与することと、その後、インターフェロン-ガンマ並びに/又はIL-1、IL-6、及び/若しくはIL-8レベルなどのインターロイキンを測定することと、を含む。所望の反応が観察されない場合、IL-1、IL-6、及びIL-8などのインターロイキン並びに/又はそれらのそれぞれの受容体IL-1Ra、IL-1Rb、IL-6R、及びIL-8Rの阻害剤と組み合わせて抗CLEVER-1薬剤を投与することによって、治療を継続する。測定されたインターフェロンガンマ並びにIL-1、IL-6、及びIL-8などのインターロイキンの値を、抗CLEVER-1治療の開始前に上記患者から測定された値、又は抗CLEVER-1治療中の以前の測定値と比較する。IL-1、IL-6、及び/又はIL-8反応が所望されない場合、IL-1、IL-6、及びIL-8などのインターロイキン並びに/又はそれらのそれぞれの受容体IL-1Ra、IL-1Rb、IL-6R、及びIL-8Rの阻害剤を投与することによって、抗CLEVER-1治療の有効性が改善され得る。更に、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤を投与することによって、反応が改善され得る。
【0059】
本発明のある実施形態によれば、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合すること可能な薬剤は、インターロイキンの阻害剤及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤の投与前に個体に投与される。本発明のある実施形態によれば、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤は、IFNARに結合することが可能な薬剤の投与の前に、個体に投与される。本発明の別の実施形態によれば、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤は、インターロイキンの阻害剤及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と同時に個体に投与され、それらは、単一の組成物として混合されてもよく、又は同時に投与されてもよい。本発明のある実施形態では、IFNARに結合することが可能な薬剤はまた、CLEVER-1に結合することが可能な薬剤、並びに/又はインターロイキンの阻害剤、及び/若しくはそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と同時に投与され、それらは、単一の組成物として混合されてもよく、又は同時に投与されてもよい。本発明によるある実施形態では、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤、並びにインターロイキンの阻害剤及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤、並びに任意選択的にまた、IFNARに結合することが可能な薬剤は、順次投与されてもよく、抗CLEVER-1薬剤の少なくとも一部は、インターロイキン阻害剤及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤及び/又はIFNARに結合することが可能な薬剤の前に投与される。投与は、例えば、1回、複数回、及び/又は1つ以上の延長期間にわたって実行されてもよい。
【0060】
本発明のある実施形態によれば、CLEVER-1発現を阻害することが可能な、又はCLEVER-1に結合することが可能な薬剤の投与は、インターロイキンの阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤の投与後、並びに/又はインターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤の投与後に、個体に継続される。本発明のある実施形態では、患者は、最初に、インターロイキン阻害剤及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤で、1型IFNと組み合わせて治療され得、所望の治療反応が達成されていないことを通知した後に、抗CLEVER-1薬剤を、インターロイキン阻害剤及び/若しくはそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤並びに/又は1型IFN阻害剤と組み合わせて投与することによって、治療を継続することができる。
【0061】
本発明のある実施形態によれば、インターロイキン阻害剤若しくはそれぞれの受容体の阻害剤は、IFNARに結合することが可能な薬剤の前に個体に投与されるか、又はインターロイキン阻害剤及び/若しくはそれぞれの受容体の阻害剤は、最初の治療の後に反応が見られない場合に、IFNARに結合することが可能な薬剤の後に個体に投与される。本発明のある実施形態では、インターロイキン阻害剤及び/又はそれぞれの受容体の阻害剤は、IFNARに結合することが可能な薬剤と同時に個体に投与される。
【0062】
「投与すること」は、当業者に既知の様々な方法及び送達システムのいずれかを使用した、個体への上記療法剤を含む組成物の物理的な導入を指す。本発明で使用される薬剤は、その意図した目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、投与は、経口、吸入、静脈内、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、皮下、又は例えば、注射による他の非経口投与経路であり得る。薬理学的に活性な化合物に加えて、上記薬剤の薬学的調製物は、好ましくは、活性薬剤を、薬学的に使用可能な調製物に処理するのを容易にする賦形剤及び補助剤を含む好適な薬学的に許容される担体を含有する。選択される用量は、悪性腫瘍増殖を低減する、並びに/又は転移形成を阻害する、並びに/又はがん、慢性感染症、感染性疾患、若しくは他の免疫疲弊状態、例えば、敗血症及びARDSにおけるT細胞の負の調節を遮断するのに十分でなければならない。
【0063】
本発明による治療方法では、インターロイキン阻害剤及び/又は1型インターフェロン並びに抗CLEVER-1薬剤に加えて、任意の他の抗がん剤も使用してもよい。
【0064】
本発明のある実施形態によれば、ヒト化モノクローナル抗CLEVER-1抗体は、患者の体重に応じて、0.3~10mg/kg、好ましくは0.3mg/kg~3mg/kgの範囲で投与される。本発明によるある実施形態では、ヒト化モノクローナル抗CLEVER-1抗体は、療法用抗CLEVER-1抗体ベクスマリリマブ(FP-1305)を含み、それは、患者の体重に応じて、0.3~10mg/kg、好ましくは0.3mg/kg~3mg/kgの範囲で投与される。上記用量範囲は、上記疾患の免疫刺激を提供するための提示された組み合わせ治療においても好ましい。本発明によるある実施形態では、患者の体重に応じた0.3~10mg/kg、好ましくは0.3~3mg/kgのベクスマリリマブ(FP-1305)などのヒト化モノクローナル抗CLEVER-1抗体は、インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と組み合わせて、並びに任意選択的にまた、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と組み合わせて使用される。典型的には、治療される患者は、療法用抗CLEVER-1抗体ベクスマリリマブ(FP-1305)治療単独などの抗CLEVER-1治療に所望の反応を示さなかった、及び/又はIFN-ガンマレベルが上昇し、かつ反応を示したが、抗CLEVER-1治療開始後にIL-1、IL-6、及びIL-8などのインターロイキンレベルの上昇を診断した。
【実施例
【0065】
以下の研究は、本発明の原理を例示するものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0066】
がんの治療のためのClever-1阻害に関するヒト試験
CLEVER-1阻害剤である抗CLEVER-1抗体FP-1305は、進行した固形腫瘍を有する患者における第I/II相試験において、安全性及び予備的有効性について現在試験されている(clinicaltrials.gov NCT03733990:A Study to Evaluate Safety,Tolerability and Preliminary Efficacy of FP-1305 in Cancer Patients(MATINS))。
【0067】
抗CLEVER-1抗体FP-1305は、以前に特許文献2に提示されているヒト化モノクローナルCLEVER-1抗体である。より正確には、FP-1305(DSM ACC3361)は、ヒト化モノクローナル免疫グロブリンG4κ抗体ベクスマリリマブである(提案されたINNとしてWHO Drug Information,Vol.33,No.4(2019)において、及び推奨されたINNとしてWHO Drug Information,Vol.34,No.3(2020),pages 699-700に開示されているような国際一般名称(INN))。
【0068】
本研究では、第1の(投与前)血清試料がFP-1305を開始する前に採取される。第2の血清試料(投与後)がFP-1305治療を開始してから7日後に採取され、その後は、抗CLEVER-1治療を開始してから14日目、21日目、及び42日目及び63日目に採取される。その後、抗Clever-1治療を開始する前に行った既存のスキャンと比較したCTスキャンを繰り返して、腫瘍の進行又は退縮を評価する(図1)。進行性疾患(PD)は、がんが増殖していることを意味する。MATINS試験などにおいて、進行性あるいは治療不可であるがんにおいては肯定的な効果である、腫瘍サイズに有意な変化がないことは、安定疾患(SD)と表示され、良好な反応とみなされる。腫瘍縮小は、治療反応を評価するために使用されるRECIST基準によれば、部分反応(PR)と称される。
【0069】
血漿/血清IL6及びIL8の増加は、抗CLEVER-1抗体(FP-1305)で治療したがん患者における非反応と関連している。
抗CLEVER-1抗体FP-1305は、上に説明した設定で、臨床開発を開始した。このファーストインヒューマン試験(clinicaltrials.gov NCT03733990)では、任意の利用可能な療法に反応しなかった転移性結腸直腸がん、黒色腫、及び卵巣がん患者が、抗腫瘍反応を示した。これらは、これまでのところ、すべてが治療中の血清IFNγレベルの増加と関連している(図1)。IFNγ、IL-6、及びIL-8血清レベルを、多重サイトカインパネルを使用して測定した。驚くべきことに、IFNγ反応とは反対に、IL-6レベル及びIL-8レベルの増加は、非反応、すなわち進行性疾患と関連していた。したがって、抗CLEVER-1抗体FP-1305治療は、インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤を、並びに任意選択的にまた、IL-6及び/又はIL-8レベルを低下させるために、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と共に、患者に投与することによって、改善され得る。
【0070】
加えて、異なる用量を比較した場合、IFNγ上昇によって測定された最良の免疫活性化は、患者の体重に応じて0.3mg/kg~3mg/kgの範囲のFP-1305用量を使用して達成された。同様に、IL-6及びIL-8における最も好ましい変化は、患者の体重に応じて0.3mg/kg~3mg/kgの範囲のFP-1305用量で見られた。最小用量の0.1mg/kgのFP-1305は、有意な免疫学的変化を有さなかったが、最高用量の10mg/kgは、IL-6及びIL-8における最大の上昇と関連していた(図2)。したがって、患者の体重に応じた0.3~10mg/kg、好ましくは0.3mg/kg~3mg/kgの用量範囲のヒト化モノクローナル抗CLEVER-1抗体FP-1305は、インターロイキン及び/又はそれぞれのインターロイキン受容体の阻害剤と組み合わせて、並びに任意選択的にまた、インターフェロン-アルファ/ベータ受容体(IFNAR)に結合することが可能な薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0071】
抗CLEVER-1は、疲弊した免疫系を再活性化させ、敗血症と闘う一助となる。
進行中の抗CLEVER-1抗体FP-1305ファーストインヒューマン試験(clinicaltrials.gov NCT03733990)では、極度に疲弊した免疫系を有する結腸直腸がん患者(図3の患者1)を参加させて、患者の体重に応じて1mg/kgの用量で抗Clever-1抗体FP-1395治療を受けさせた。抗CLEVER-1抗体FP-1305療法を受ける前に、細菌の末梢血球断片、すなわちリポ多糖(LPS)を患者に与えることによって、完全な免疫疲弊が見られた。患者の血液細胞は、与えられたLPSに反応することができず、これは、重大な感染の場合、患者の免疫系が必要な免疫反応を生成することができず、感染が患者の死をもたらす可能性が最も高いことを意味する。第1の用量のFP-1305の投与から24時間後、LPS実験を繰り返した。今では、患者の末梢神経はLPS刺激に対して正常に作用し、外来病原体に対する免疫反応を上昇させるために必要なサイトカイン及び炎症シグナルを生成した。その後、患者は、胆汁うっ滞により敗血症となったが、FP-1305を受けたため敗血症を克服することができた。治療を受けなければ、患者は、敗血症に適切に反応することができなかっただろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】