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特表2023-522975アリールシクロプロピルカルボン酸の形成に関するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(54)【発明の名称】アリールシクロプロピルカルボン酸の形成に関するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/285 20060101AFI20230525BHJP
   C07C 61/40 20060101ALI20230525BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20230525BHJP
   C07C 69/753 20060101ALI20230525BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20230525BHJP
   C07C 43/313 20060101ALI20230525BHJP
   C07C 47/353 20060101ALI20230525BHJP
   C07C 43/305 20060101ALI20230525BHJP
   A01N 53/02 20060101ALI20230525BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C07C51/285 ZNA
C07C61/40
C07C67/08
C07C69/753 A
C07C51/09
C07C43/313
C07C47/353
C07C43/305
A01N53/02
A01P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564216
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 US2021028280
(87)【国際公開番号】W WO2021216629
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/014,758
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】コルテバ アグリサイエンス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】カブレラ,ベンチュラ,パブロ ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ナクイェン
(72)【発明者】
【氏名】グッド,ステファン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】リー,ファンチェン
(72)【発明者】
【氏名】マッカスカー,エリザベス オー.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,パトリック ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ニッセン,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,マシュー アーネル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール,テイ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H011
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB02
4H006AC46
4H006AC48
4H006BA66
4H006BE60
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM20
4H006BM71
4H006BM72
4H006BS20
4H006GP01
4H006KA03
4H006KC20
4H011AC01
4H011BB15
(57)【要約】
本開示は、節足動物門(Phyla Arthropoda)、軟体動物門(Mollusca)及び線形動物門(Nematoda)の害虫に対する殺虫用途を有する分子を形成するのに有用なアリールシクロプロピルカルボン酸を形成するためのプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒の存在下において、酸化剤でS1aをS1bに酸化させること
【化1】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)(1)各Rは、独立して、(C~C)アルキルであるか、又は
(2)両方のRは、2つの酸素原子間の(C~C)アルキル結合を形成する)
を含むプロセス。
【請求項2】
酸及び(C~C)アルコールの存在下において、S1bをS2aにエステル化すること
【化2】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)Rは、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルである)
を含むプロセス。
【請求項3】
水及び任意選択的に水性緩衝液の存在下において、1つ以上のカルボキシルエステルヒドロラーゼを使用して、S2aをS3aに加水分解すること
【化3】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)Rは、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルである)
を含むプロセス。
【請求項4】
(A)極性溶媒の存在下において、酸化剤でS1aをS1bに酸化させる工程
【化4】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)(1)各Rは、独立して、(C~C)アルキルであるか、又は
(2)両方のRは、2つの酸素原子間の(C~C)アルキル結合を形成する)、続いて、
(B)酸及び(C~C)アルコールの存在下において、S1bをS2aにエステル化する工程
【化5】

(式中、
、R、R、R、R、R及びRは、(A)において上記の通りであり;及び
は、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルである);続いて、
(C)水及び任意選択的に水性緩衝液の存在下において、1つ以上のカルボキシルエステルヒドロラーゼを使用して、S2aをS3aに加水分解する工程
【化6】

(式中、
、R、R、R、R、R、R及びRは、(B)において上記の通りである)
を含むプロセス。
【請求項5】
アリールシクロプロピルカルボン酸を生成するのに有用な分子であって、
(a)
【化7】

(E)-1-(3,3-ジエトキシプロパ-1-エン-1-イル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(b)
【化8】

trans-rac-1-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルバルデヒド;
(c)
【化9】

trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(d)
【化10】

trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート;
(e)
【化11】

(E)-4-(3,3-ジエトキシプロパ-1-エン-1-イル)-1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(f)
【化12】

trans-rac-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルバルデヒド、
(g)
【化13】

trans-rac-4-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(h)
【化14】

trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート;
(i)
【化15】

trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート;
(j)
【化16】

trans-rac-エチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート;及び
(k)
【化17】

trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート
からなる群から選択される分子。
【請求項6】
S3a
【化18】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;及び
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIである)
のエナンチオマーに富む調製物であって、S3aの(R,R)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率は、80%超、90%超又は95%超である、エナンチオマーに富む調製物。
【請求項7】
前記S3aの(R,R)-エナンチオマーの前記エナンチオマー過剰率は、96%超、97%超又は98%超である、請求項6に記載の調製物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のエナンチオマーに富む調製物を含む殺虫製剤。
【請求項9】
及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;且つR及びRは、Clである
【化19】

(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸
、請求項6又は7に記載の調製物。
【請求項10】
及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;且つR及びRは、Clである
【化20】

(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸
、請求項8に記載の殺虫製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月24日に出願された米国仮特許出願第63/014758号明細書の利益を主張するものであり、この出願は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、節足動物門(Phyla Arthropoda)、軟体動物門(Mollusca)及び線形動物門(Nematoda)の害虫に対する殺虫用途を有する分子を形成するのに有用なアリールシクロプロピルカルボン酸を形成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
アリールシクロプロピルカルボン酸の形成は、国際公開第2016/168056号パンフレット、国際公開第2016/168058号パンフレット、国際公開第2016/168059号パンフレット、国際公開第2018/071320号パンフレット及び国際公開第2018/071327号パンフレットに記載されている。
【0004】
電子的に提出された配列表の参照
配列表の正式な写しは、12キロバイトのサイズを有し、本明細書と同時に提出される、2021年4月19日に作成された81306_ST25.txtという名称のファイルによるASCIIフォーマットの配列表として、EFS-Webを介して電子的に提出される。このASCIIフォーマット文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示で使用される定義
これらの定義に与えられる例は、網羅的なものではなく、本開示を限定するものと解釈するべきではない。置換基は、それが結合している特定の分子に関して、化学結合規則及び立体的適合性の制限に従うべきであることを理解されたい。これらの定義は、本開示の目的のためにのみ使用されるものである。
【0006】
「アルコキシ」という用語は、さらに炭素-酸素単結合からなるアルキル、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ及びtert-ブトキシを意味する。
【0007】
「アルキル」という用語は、炭素及び水素からなる非環式、飽和、分岐又は非分岐置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル及びtert-ブチルを意味する。
【0008】
「アリール」という用語は、水素及び炭素からなる環式の芳香族置換基、例えばフェニル、ナフチル及びビフェニルを意味する。
【0009】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0010】
「ハロアルコキシ」という用語は、さらに1~可能な最大数の同一の又は異なるハロからなるアルコキシ、例えばフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2-ジフルオロプロポキシ、クロロメトキシ、トリクロロメトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ及びペンタフルオロエトキシを意味する。
【0011】
「ハロアルキル」という用語は、さらに1~可能な最大数の同一の又は異なるハロからなるアルキル、例えばフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロプロピル、クロロメチル、トリクロロメチル及び1,1,2,2-テトラフルオロエチルを意味する。
【0012】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、1つ以上のヒドロキシ基を含有するアルキル、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシイソブチル、1,3-ジヒドロキシブチル及び1,3,5-トリヒドロキシヘキシルを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、アリールシクロプロピルカルボン酸の形成に関するプロセスである。
【0014】
スキーム1の実施形態1では、
スキーム1
【化1】

(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)(1)各Rは、独立して、(C~C)アルキルであるか、又は
(2)両方のRは、2つの酸素原子間の(C~C)アルキル結合を形成する。
【0015】
スキーム1の実施形態2では、R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つ各Rは、Cである。この分子(「S1a-1」)は、以下のように表される。
【化2】

trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
【0016】
スキーム1の反応は、S1aをS1bに酸化させる酸化剤の存在下で実施される。換言すれば、酸化剤により、-C(OR又は-C(-O((C~C)アルキル)O-)が-C(=O)OHに機能的に酸化する。酸化剤の例は、酸素(O)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、オゾン(O)、過酸化水素(H)、有機過酸(-OOH)及び他の無機酸化剤、例えばカリウムペルオキシモノサルフェート、カリウムペルサルフェート、カリウム水素ペルオキシモノサルフェートサルフェート(OXONE(登録商標)(E.I.du Pont de Nemours and Company又はその関連会社の登録商標)としてE.I.du Pont de Nemours and Company又はその関連会社から入手可能である、式2KHSO・KHSO・KSO[CAS 70693-62-8]を有する3つの塩)である。一般に、S1aの1モル当たり約0.1モル~約3モルの酸化剤、より好ましくはS1aの1モル当たり約0.5モル~約1.5モルの酸化剤が使用され得る。一般に、過酸化水素(H)溶液を使用する場合、約1w/w%~約70w/w%の濃度を使用し得るが、しかしながら、現在では約20w/w%~約50w/w%が好ましい。酸化剤の混合物を使用し得る。
【0017】
スキーム1の反応は、極性溶媒の存在下で実施される。極性溶媒の例は、極性非プロトン性溶媒及び極性プロトン性溶媒である。極性非プロトン性溶媒の例は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル(「ACN」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)及びジメチルスルホキシド(「DMSO」)である。極性プロトン性溶媒の例は、酢酸(「AcOH」)、n-ブタノール(「n-BuOH」)、イソプロパノール(「i-PrOH」)、n-プロパノール(「n-PrOH」)、エタノール(「EtOH」)、メタノール(「MeOH」)、ギ酸(「HCOOH」)、tert-ブチルアルコール(「t-BuOH」)及び水(「HO」)である。任意選択的に、そのような極性溶媒の混合物を使用し得、例を下記の表S1-MRに示す。
【0018】
【表1】
【0019】
スキーム1の反応は、周囲温度及び周囲圧力で実施され得る。しかしながら、より高い及びより低い温度及び圧力を使用し得る。一般に、約0℃~約80℃の温度を使用し得、好ましくは約20℃~約60℃の温度を使用し得る。一般に、約10キロパスカル(kPa)~約1000kPaの圧力を使用し得、好ましくは50kPa~約150kPaの圧力を使用し得る。
【0020】
任意選択的に、酸触媒及び水を使用してアセタールからアルデヒドの転化を促進し得、続いて酸への酸化を受けることができる。酸触媒の好適な例は、有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸)、無機酸、例えば塩化水素又は塩酸(HCl)、シリコアルミネート(ゼオライト、アルミナ、シリコアルミノホスフェート)、硫酸化ジルコニア(硫酸化ジルコニウム(IV)酸化物)及び多くの遷移金属酸化物(チタン、ジルコニウム及びニオビウム)である。強酸性スルホン酸基を含むポリスチレン系イオン交換樹脂を使用することが好ましく、その一例は、Amberlyst(登録商標)15(CAS番号39389-20-3)である。(Amberlystは、Dow Chemical Company又はDowの関連会社の登録商標である)。硫酸(HSO)を使用することがさらにより好ましい。一般に、酸と酸化剤とのモル比は、1:4~1:400、より好ましくは1:20~1:200の範囲で変動し得る。酸の混合物を使用することができる。
【0021】
スキーム2の実施形態1では、
スキーム2
【化3】

(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)Rは、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルである。
【0022】
スキーム2の実施形態2では、R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つRは、CHである。この分子(「S2a-1」)は、以下のように表される。
【化4】

trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート
【0023】
スキーム2の実施形態3では、R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つRは、CHCHである。この分子(「S2a-6」)は、以下のように表される。
【化5】

trans-rac-エチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート
【0024】
スキーム2の反応は、酸の存在下で実施され、アルコールの存在下でS1bのエステル化を促進すると、S2aが得られる。酸の例は、硫酸(HSO)、p-トルエンスルホン酸一水和物、メタンスルホン酸、スカンジウム(III)トリフレート及び他の酸性樹脂、例えばAmberlyst(登録商標)15、Nafion(商標)(ペルフルオロ化樹脂(CAS番号:31175-20-9);Nafion(商標)はChemours Company FC、LLCの商標である)並びにこれらの混合物である。一般に、S1bの1モル当たり約0.001モル~約5モルの酸、より好ましくはS1bの1モル当たり約0.05モル~約0.5モルの酸が使用され得る。
【0025】
スキーム2の反応は、(C~C)アルコールの存在下で実施される。(C~C)アルコールの例は、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、エチレングリコール、tert-ブチルアルコール及びこれらの混合物である。任意選択的に、このようなアルコールの混合物を多様なモル比においてトルエン、四塩化炭素、ベンゼン、ジエチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン及びジクロロメタンなどの溶媒の存在下で使用し得る。例えば、2つの成分の混合物の場合、1:1、1:5;1:10、1:50及び1:100の比率を使用し得る。
【0026】
スキーム2の反応は、周囲温度及び周囲圧力で実施され得る。しかしながら、より高い又はより低い温度及び圧力を使用し得る。一般に、約0℃~約100℃の温度を使用し得、好ましくは約50℃~約70℃の温度を使用し得る。一般に、約10kPa~約1000kPaの圧力を使用し得、好ましくは約50kPa~約150kPaの圧力を使用し得る。
【0027】
反応によって生成された水を除去するために任意の有機又は無機乾燥剤を使用し得る。S1bの1モル当たり約0.1~約5モルの乾燥剤を使用し得、好ましくはS1bの1モル当たり約0.2~約2モルの乾燥剤を使用し得る。乾燥剤として、オルトエステル、特に式[Ry1C(ORy2](式中、Ry1は、水素又は(C~C)アルキルであり、及びRy2は、(C~C)アルキルである)のオルトエステルを使用することが好ましい。そのような乾燥剤の例は、オルト酢酸トリエチル、CHC(OCHCH;オルト酢酸トリメチル、CHC(OCH;オルトギ酸トリエチル、HC(OCHCH;及びオルトギ酸トリメチル、HC(OCHである。加えて、モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸ナトリウムを使用し得る。任意選択的に、乾燥剤の混合物を使用し得る。
【0028】
スキーム3の実施形態1では、
スキーム3
【化6】

(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つがHではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)Rは、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルである。
【0029】
スキーム3の実施形態2では、R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つRは、CHであり、この分子は、上記のスキーム2に示され、trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1としても知られている)と命名されている。
【0030】
スキーム3の実施形態3では、R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;且つR及びRは、Clである。この分子(「S3a-1」)は、以下のように表される。
【化7】

(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸
【0031】
スキーム3における転化は、一方のエナンチオマー(この場合、S2aの(R,R)-エナンチオマー)の他方(S2aの(S,S)-エナンチオマー)に対する選択的転化を促進するためにキラル触媒又は試薬を使用することと、化学的及び/又は物理的方法によって分離することができるエナンチオマーに富む出発物質及び生成物の混合物を得ることとを含む不斉速度論的分割であり得る。ラセミ混合物(この場合、S2a)が同量の2つのエナンチオマーから構成される場合、同様の速度論的分割の理論収量は、約50%である。参考文献:Keith,J.M.;Larrow,J.F.;Jacobsen,E.N.Adv.Synth.Catal.2001,343,5。スキーム3の実施形態2では、2つの主要成分、(S,S)-エステル及び(R,R)-酸生成物のエナンチオマーに富む部分がこの転化によって生成され、少量の(S,S)-酸及び(R,R)-エステルも存在し得る。この転化後、従来の分離及び単離手法を使用して(R,R)-酸を回収することができる。
【0032】
スキーム3の転化は、ヒドロラーゼ、好ましくは酵素委員会番号EC3の「ヒドロラーゼ」の下で分類されたヒドロラーゼ;より好ましくは酵素委員会番号EC3.1の下で分類されたヒドロラーゼ(エステル結合に作用する);最も好ましくは酵素委員会番号EC3.1.1の下で分類されたヒドロラーゼ(カルボキシルエステルヒドロラーゼ)の存在下で実施する。好適な加水分解は、S2aのラセミ混合物中のエステルを、エナンチオマーに富むS3aの混合物に加水分解する。S2aの生成値(PV、式1で計算される)は、20%超、より好ましくは30%超、最も好ましくは40%超である場合が好ましい。好ましくは、(R,R)-エナンチオマーである場合のS3aのエナンチオマー過剰率(ee、式2で計算される)は、80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、最も好ましくは99%超である。使用するのに好適なカルボキシルエステルヒドロラーゼは、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)リパーゼE、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)リパーゼC、シュードモナス・フルオレンセンス(Pseudomonas fluorencens)リパーゼ、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼA及びバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼBから選択され得る。他の酵素を使用し得るが、これらの酵素の相同性は、上述のカルボキシルエステルヒドロラーゼの少なくとも1つと少なくとも90%相同であること、好ましくは少なくとも95%相同であることが好ましい。ヒドロラーゼ、エステラーゼ及びリパーゼの量は、S2aに対して約0.01重量%~約200重量%、好ましくはS2aに対して約0.1重量%~1重量%であり得る。商業的に、ヒドロラーゼは、種々の供給者、例えばAlmac Group Limited;Amano Enzyme USA Co.,Ltd.;c-LEcta GmbH;Creative Enzymes;Codexis Inc.;Enzymaster(Ningbo)Bio-Engineering Co.,Ltd.;名糖産業株式会社;Novozymes A/Sから入手可能である。詳細は、Enzyme Catalysis in Organic Synthesis,3 Volume Set edited by Karlheinz Drauz,Harald Groeger,and Oliver May,Chapter 46,by David Rozzell(例えば、1852~1854ページを参照されたい);及び“Tabular Survey of Available Enzymes”p 1849-1985,copyrighted 2012 by Wiley-VCh Verlag GmbH&Co.KGaA,and published 2012 Wiley-VCh Verlag GmbH&Co.KGaAを参照されたい。任意選択的に、酵素をさらなる使用のために回収できるように、ヒドロラーゼは、ポリマー、シリカ又は他の支持材料に固定化又は支持され得る。この転化のために、以下の配列又は90%超のアミノ酸配列相同性を有する配列が使用され得る:AND61386(配列番号1);AAA50466(UniProt P22088)(配列番号2);AAC60400(UniProt P25275)(配列番号3);EGD05490(UniProt F0FZ41)(配列番号4);CAA83122(配列番号5);BBC47796(配列番号6);UniProt P20261(配列番号7)。
【0033】
スキーム3の転化は、水(HO)、好ましくは脱イオン水の存在下で実施される。
【0034】
スキーム3の転化は、任意選択的に水性緩衝液の存在下で実施され、この場合、ヒドロラーゼは、可溶性であることが好ましい。好適な緩衝液の例は、リン酸ナトリウム、2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(「ビス-トリスメタン」)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(「HEPES」)、リン酸カリウム、3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸(「MOPS」)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(「PIPES」)、クエン酸ナトリウム、3-{[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ}プロパン-1-スルホン酸(「TAPS」)、リシン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(「TRIS」)及びこれらの混合物である。緩衝液の濃度は、約0.0001モル(M)~約0.5M、好ましくは約0.05M~約0.2Mであり得る。
【0035】
スキーム3の転化は、任意選択的に、アミン塩基の存在下で実施され得る。アミン塩基の例は、リシン、エタノールアミン、グリシン及びこれらの混合物である。従って、リシンは、緩衝液としても使用され得る。アミン塩基の量は、S2aの重量を基準にして約0.1wt%~約150wt%、好ましくは約10wt%~約40wt%である。
【0036】
スキーム3の転化は、共溶媒の存在下で実施され得る。共溶媒の例は、アセトン、アセトニトリル、メチルテトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン及びこれらの混合物である。共溶媒は、S2aの溶解度を増大させるのに有用であり得る。使用される共溶媒の量は、全体積の約1体積%~約90体積%、好ましくは全体積を基準にして約10体積%~約40体積%であり得る。
【0037】
スキーム3の転化は、周囲温度及び周囲圧力で実施され得る。しかしながら、より高い又はより低い温度及び圧力を使用し得る。一般に、約0℃~約80℃の温度を使用し得、好ましくは約15℃~約60℃の温度を使用し得、より好ましくは約25℃~約50℃の温度を使用し得る。一般に、約10kPa~約1000kPaの圧力を使用し得、好ましくは約50kPa~約150kPaの圧力を使用し得る。転化混合物のpHは、約pH5~約pH11、好ましくは約pH6~約pH10の範囲でなければならない。
【実施例
【0038】
これらの実施例は、例示の目的のためであり、本開示をこれらの実施例に開示される実施形態のみに限定するものと解釈するべきではない。
【0039】
商業的供給源から入手した出発物質、試薬及び溶媒は、さらに精製することなく使用した。無水溶媒は、AldrichからSure/Seal(商標)として購入し、そのまま使用した。融点は、Thomas Hoover Unimeltキャピラリー融点装置又はStanford Research Systems社製OptiMelt自動融点システムで取得し、補正しない。「室温」という語を用いた実施例は、約20℃~約24℃の範囲の温度において、温度及び湿度が調節された実験室で行った。分子は、ISIS Draw、ChemDraw又はACD Name Pro内の命名プログラムに従って命名された公知の名称で示す。このようなプログラムによって分子を命名することができない場合、従来の命名規則を使用してこのような分子を命名する。特に明記しない限り、H NMRスペクトルデータは、ppm(δ)であり、300、400、500又は600MHzで記録し、13C NMRスペクトルデータは、ppm(δ)であり、75、100又は150MHzで記録し、19F NMRスペクトルデータは、ppm(δ)であり、376MHzで記録した。
【0040】
実施例1a:(E)-1-(3,3-ジエトキシプロパ-1-エン-1-イル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの合成
【化8】

撹拌棒を装着した3リットル(L)の一口フラスコ内において、(E)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アクリルアルデヒド(290グラム(g)、1081ミリモル(mmol))をエタノール(360ミリリットル(mL))中で撹拌した。オルトギ酸トリエチル(187mL、1125mmol)を添加し、続いてピリジン-1-イウム4-メチルベンゼンスルホネート(PPTS;0.544g、2.163mmol)を添加した。懸濁液を20℃で撹拌した。4時間後、4-メチルモルホリン(2.378mL、21.63mmol)を添加して酸をクエンチした。回転蒸発(45℃)によって混合物を濃縮し、エタノールを除去した。濃縮物をヘプタンと水(pH7)との間で分配した。有機部分を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させて濃縮し(45℃、<1トール)、黄色の油状物を得た(341g、93%):H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 7.82(s,2H),7.76(s,1H),6.80(dd,J=16.2,1.2Hz,1H),6.36(dd,J=16.1,4.6Hz,1H),5.12(dd,J=4.6,1.3Hz,1H),3.87-3.35(m,4H),1.27(t,J=7.1Hz,6H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ -63.05.
【0041】
実施例1aに開示及び例示される手順に従い、以下の分子を調製した。
(E)-4-(3,3-ジエトキシプロパ-1-エン-1-イル)-1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン
【化9】

H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.62(dd,J=6.9,2.3Hz,1H),7.56(ddd,J=7.5,4.7,2.3Hz,1H),7.15(t,J=9.3Hz,1H),6.69(d,J=16.1Hz,1H),6.19(dd,J=16.1,4.9Hz,1H),5.07(dd,J=4.9,1.2Hz,1H),3.71(dq,J=9.5,7.1Hz,2H),3.56(dq,J=9.4,7.1Hz,2H),1.26(t,J=7.1Hz,6H);GC-MS m/z 292.1.
【0042】
実施例1b:trans-rac-1-2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-1)の合成
【化10】

オーバーヘッドスターラー、バッフル、冷却管、温度プローブ及び窒素導入口を備えた5Lのジャケット付き反応器内において、(E)-1-(3,3-ジエトキシプロパ-1-エン-1-イル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(125g、365mmol)及び塩化ベンジルトリエチルアンモニウム(0.412g、1.826mmol)をクロロホルム(1180mL)及びヘプタン(535mL)の混合物中で撹拌した。50%の水酸化ナトリウム(NaOH、水性;484mL、9130mmol)を添加漏斗により30分かけて添加した。ジャケット温度を45℃に設定した。反応が90~95%の転化率に達するまで反応混合物を45℃で激しく撹拌した。反応混合物を20℃に冷却した後、反応器に水(1.2L)を充填し、混合物を5分間撹拌した。層を分離した後に水層を除去し、有機層をさらなる水(1.2L)で洗浄した。有機層を真空下で濃縮し、所望の生成物、S1a-1を含有する茶色の油状物を得た(85%、ポット内)。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.83(s,1H),7.71(s,2H),4.64(d,J=6.1Hz,1H),3.82-3.55(m,4H),2.94(d,J=8.4Hz,1H),2.35(dd,J=8.5,6.1Hz,1H),1.32(t,J=7.0Hz,3H),1.21(t,J=7.1Hz,3H);19F NMR(471MHz,CDCl)δ -62.87.
【0043】
実施例1bに開示及び例示される手順に従い、以下の分子を調製した。
trans-rac-4-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-2)
【化11】

H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.50(dd,J=6.7,2.3Hz,1H),7.43(ddd,J=7.4,4.5,2.4Hz,1H),7.19(t,J=9.3Hz,1H),4.60(d,J=6.2Hz,1H),3.83-3.56(m,4H),2.83(d,J=8.4Hz,1H),2.26(dd,J=8.4,6.2Hz,1H),1.31(t,J=7.0Hz,3H),1.20(t,J=7.1Hz,3H);GC-MS m/z 375.1.
【0044】
実施例1c:trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1)の合成
【化12】

メカニカルスターラー、温度プローブ及び冷却管を装着した3Lの四つ口フラスコ内において、trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-1;96.5g、227mmol)を酢酸(779mL)中で撹拌した。水(82mL)を添加した。OXONE(登録商標)(140g、227mmol)を添加した。混合物を30℃に加熱した。30分後、温度を45℃までゆっくりと上昇させた。20時間後、混合物を25℃に冷却した。亜硫酸水素ナトリウム(23.6g、227mmol)を添加し、残留過酸化物をクエンチした。30分間撹拌した後、ヨウ化カリウム(KI)紙で検査すると、過酸化物は、存在しなかった。アセトニトリル(1.5L)を添加した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。濃縮物を酢酸エチル(500mL)とブライン(200mL)との間で分配した。酢酸エチル部分を濃縮し、オレンジ色の油状物を得た。油状物をアセトニトリル(500mL)とヘプタン(300mL)との間で分配した。ヘプタン部分をアセトニトリル(100mL)で抽出した。アセトニトリル部分を濃縮し、オレンジ色の油状物として生成物S1b-1を得た(81.8g、93%):H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.89(s,1H),7.73(s,2H),3.60(d,J=8.2Hz,1H),2.99(d,J=8.3Hz,1H);19F NMR(471MHz,クロロホルム-d)δ -62.90.
【0045】
実施例1d:trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1)の合成
【化13】

メカニカルスターラー、温度プローブ、冷却管及び窒素導入口を備えた1Lのジャケット付き反応器内において、trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-1;127g、299mmol)をアセトニトリル(478mL)中で撹拌した。水(118mL)を添加した。OXONE(登録商標)(184g、299mmol)を添加した。反応混合物を35℃に加熱した。24時間後、分析によって完全に転化したことが示された。反応混合物を20℃に冷却した。混合物を検査すると、過酸化物が陽性であった。混合物の検査で過酸化物が陰性となるまで、亜硫酸水素ナトリウム(10.88g、105mmol)を少しずつ添加した。酢酸エチル(1.5L)を添加した。有機部分を分離して濃縮し、黄色の油状物を得た。油状物をアセトニトリル(600mL)中に取り込み、n-ヘプタン(2×200mL)で分配した。アセトニトリル層を濃縮した。アセトニトリル部分を濃縮して乾燥させ、残渣をn-ヘプタン(800mL)中で撹拌して、一晩撹拌した。混合物を水浴で冷却した。2時間後、スラリーを真空濾過し、固体を回収して真空乾燥し、S1b-1を得た(102.6g、95%)。
【0046】
実施例1e:trans-rac-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-2)の合成
【化14】

温度プローブ、冷却管及び窒素導入口を備えた1Lの四つ口フラスコ内において、trans-rac-4-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-2;30g、80mmol)を酢酸(276mL)中で撹拌した。水(27.6mL)を添加した。混合物を40℃に加熱した。16時間後、H-NMR分析により、trans-rac-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルバルデヒドが完全に形成されたことが示された(>99%の転化率):H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 9.55(d,J=4.0Hz,1H),7.50(dd,J=6.6,2.3Hz,1H),7.50-7.42(m,1H),7.24(t,J=9.1Hz,1H),3.57(d,J=7.9Hz,1H),2.93(dd,J=8.0,4.0Hz,1H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ -61.51(d,J=12.9Hz),-113.97(q,J=12.4Hz).
【0047】
従って、OXONE(登録商標)(30.4g、49.4mmol)を反応混合物に添加した。混合物を50℃に加熱し、20時間撹拌した。混合物を23℃まで放冷した。亜硫酸水素ナトリウム(3.95g、38mmol)を分割して添加し、残留過酸化物をクエンチした。混合物をアセトニトリル(500mL)で希釈した。1時間撹拌した後、混合物を濾過し、濃縮した。濃縮物を酢酸エチルと水との間で分配した。有機部分を乾燥させて濃縮し、オレンジ色の油状物としてS1b-2を得た(24g、95%):H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 7.53-7.42(m,2H),7.23(t,J=9.2Hz,1H),3.48(d,J=8.3Hz,1H),2.88(d,J=8.3Hz,1H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ -61.49(d,J=12.9Hz),-114.27(q,J=12.7Hz).
【0048】
実施例1f:trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1)の合成
【化15】

温度プローブ及び窒素導入口を備えた100mLの反応器に酢酸(280mL)及び水(28.0mL)を添加した。反応混合物を50℃に加熱した。trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-1;30g、70.6mmol)を一度に添加した。反応の進行をH-NMR及びGC-MS分析によってモニターした。60分後、出発物質からtrans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルバルデヒドに完全に転化したことが観察された(>99%の転化率):H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 9.61(d,J=3.7Hz,1H),7.92-7.85(m,1H),7.78-7.67(m,2H),3.67(d,J=8.0Hz,1H),3.05(dd,J=8.0,3.7Hz,1H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ -62.92;GC-MS m/z 315.
【0049】
従って、OXONE(登録商標)(43.4g、70.6mmol)を反応混合物に一度に添加した。穏やかな発熱が観察された。3時間後、H NMR分析により、所望のカルボン酸生成物に完全に転化したことが示された。混合物を20℃に冷却し、一晩撹拌した。混合物を5℃に冷却し、水(30mL)中の亜硫酸水素ナトリウム(9.54g、92mmol)でクエンチした。混合物を25℃に温め、水(200mL)で希釈した。メチルtert-ブチルエーテル(MTBE;300mL)を添加した。水層をMTBE(300mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(3×200mL)で洗浄して回収し、乾燥させて(MgSO)濾過し、濃縮した。残渣をヘプタン(200mL)で希釈し、濃縮して乾燥させた。固体のラセミ生成物の結晶核を添加した。固体の形成が始まった。この固体をn-ヘプタン(200mL)で粉砕し、濾過してn-ヘプタンで洗浄し、所望の生成物を得た(23.5g、91%)。
【0050】
実施例1g:trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1)の合成
【化16】

温度プローブ、窒素導入口及びオーバーヘッドスターラーを装着したジャケット付き反応器内において、trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-1;127g、78.6wt%の純度、235mmol)を酢酸(538mL、9391mmol)中に溶解させた。硫酸(0.63mL、11.7mmol)を添加した。混合物を50℃まで温めた。過酸化水素(30wt%;48mL、470mmol)を8時間かけて添加した。過酸化水素の添加を完了した後、混合物を50℃で14時間保持した。亜硫酸水素ナトリウム(29.3g、282mmol)を10wt%の水溶液として添加した。30分後、反応混合物をヨウ化カリウム(KI)デンプン紙で検査すると、残留過酸化物が陰性であった。606.8gの蒸留物が取り出されるまで、混合物を蒸留した(15~38トール、60~70℃)。残渣にヘプタン(743mL)を60~70℃で添加し、層を分離した。ヘプタン層を水(127mL)で2回洗浄した。255gの蒸留物が回収されるまで、ヘプタン層を蒸留することによって濃縮した。濃縮物を-5℃に冷却し、60分間保持した。得られた固体を真空濾過によって回収し、真空乾燥させてS1b-1を得た(71.7g、82%)。
【0051】
実施例1h:trans-rac-2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-3)の合成
【化17】

撹拌棒を装着した100mLの一口フラスコ内において、trans-rac-2-クロロ-4-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-1-フルオロベンゼン(Heemstra et al.,国際公開第2016168059 A1号パンフレットの通りに調製した;4.246g、12.43mmol)を酢酸(28.5mL)中で撹拌した。硫酸(0.61g、0.621mmol)を添加した。混合物を50℃に加熱した。過酸化水素(30wt%、2.54mL、24.86mmol)を8時間かけて添加した。22時間後、混合物を25℃に冷却した。亜硫酸水素ナトリウム(1.552g、14.91mmol)を10wt%の水溶液として添加し、残留過酸化物をクエンチした。混合物を真空下で約2分の1の体積まで濃縮した。水(14mL)を添加した。混合物をジクロロメタン(10mL)で3回抽出した。合わせた抽出物を真空下で濃縮し、S1b-3を得た(3.18g、90%):H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.39-7.34(m,1H),7.20-7.15(m,2H),3.43(d,J=8.2Hz,1H),2.88(d,J=8.3Hz,1H);13C NMR(126MHz,クロロホルム-d)δ 158.16(d,J=250.6Hz),129.40(d,J=4.0Hz),128.69(d,J=7.4Hz),121.57(d,J=18.2Hz),116.99(d,J=21.5Hz);19F NMR(471MHz,クロロホルム-d)δ -115.20.
【0052】
実施例2a:trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)の合成
【化18】

メカニカルスターラー、温度プローブ及び冷却管を装着した3Lの一口フラスコ内において、trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1;123.6g、337mmol)をメタノール(1362mL、33700mmol)中で撹拌した。硫酸(1.077mL、20.20mmol)を添加した。混合物を加熱して緩やかに還流した(約65℃)。20時間後、混合物を放冷した。4-メチルモルホリン(3.33mL、30.3mmol)を添加した。混合物を濃縮した。濃縮物をヘキサン(1.5L)中に取り込み、水(500mL)で洗浄した。ヘキサン部分を乾燥させて濃縮し、固体としてS2a-1を得た(123.72g、92%):H NMR(300MHz,クロロホルム-d)δ 7.87(s,1H),7.71(s,2H),3.88(s,3H),3.58(d,J=8.3Hz,1H),2.95(d,J=8.3Hz,1H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ -62.93.
【0053】
スキーム2に開示され、実施例2aに例示される手順に従い、以下の分子を調製した。
trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-2)
【化19】

H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.52-7.41(m,2H),7.22(t,J=9.2Hz,1H),3.86(s,3H),3.48(d,J=7.4Hz,1H),2.85(d,J=8.3Hz,1H);19F NMR(376MHz,クロロホルム-d)δ -61.48(d,J=12.8Hz),-114.60(q,J=12.5Hz).
trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-3)
【化20】

H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.45(d,J=8.3Hz,1H),7.35(dd,J=2.1,0.7Hz,1H),7.11(ddd,J=8.3,2.1,0.7Hz,1H),3.85(s,3H),3.42(d,J=8.3Hz,1H),2.82(d,J=8.3Hz,1H).
【0054】
実施例2b:trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)の合成
【化21】

電磁撹拌棒を装着したガラス製バイアル内において、trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1;1.0g、2.72mmol)及びオルトギ酸トリメチル(0.343mL、3.13mmol)を添加した。硫酸(5.45mg、0.054mmol)のメタノール(0.441mL、10.90mmol)溶液を一度に添加した。反応混合物を65℃に加熱し、19時間撹拌した。温度を75℃まで上昇させ、揮発物を1時間蒸留して除いた。残渣を50~55℃に冷却し、続いてヘプタン(4.0mL)及び水(2.0mL)中炭酸カリウム(0.015g、0.11mmol)を添加した。混合物を15分間撹拌し、続いて層を分離した。ヘプタン層を真空下で濃縮し、S2a-1を得た(1.0g、96%)。
【0055】
スキーム2に開示され、実施例2bに例示される手順に従い、以下の分子を調製した。
trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3,5-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-4)
【化22】

H NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ 7.35-7.33(m,1H),7.17-7.14(m,2H),3.85(s,3H),3.41(d,J=8.3Hz,1H),2.84(d,J=8.3Hz,1H);13C NMR(126MHz,クロロホルム-d)δ 166.62,135.94,135.32,128.63,127.47,61.30,53.21,39.37,37.46.
【0056】
実施例2c:trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)の合成
【化23】

電磁撹拌棒を装着したガラス製バイアル内において、trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1;1.0g、2.72mmol)及びオルトギ酸トリメチル(0.343mL、3.13mmol)を添加した。硫酸(5.45mg、0.054mmol)のメタノール(0.441mL、10.90mmol)溶液を一度に添加した。反応混合物を65℃に加熱し、19時間撹拌した。温度を75℃まで上昇させ、揮発物を1時間蒸留して除いた。残渣を周囲温度まで冷却し、所望の生成物S2a-1を得た(1.0g、96%)。残渣を50~55℃に冷却し、続いてヘプタン(4.0mL)及び水(2.0mL)中炭酸カリウム(0.015g、0.11mmol)を添加した。混合物を15分間撹拌し、続いて層を分離した。ヘプタン層を真空下で濃縮し、S2a-1を得た(1.0g、96%)。任意選択的に、残渣をヘプタン(4.0mL)と水(2.0mL)中炭酸カリウム(0.015g、0.11mmol)との間で50~55℃において分配し得る。ヘプタン層を真空下で濃縮してS2a-1を得ることができる。
【0057】
実施例2d:trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)の合成
【化24】

メカニカルスターラー及び還流冷却器を装着したガラス製反応器内において、trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1;93wt%、260g、659mmol)及びオルトギ酸トリメチル(80.4g、758mmol)を添加した。メタノール(84.4g、2638mmol)を添加した。硫酸(1.3g、13.3mmol)を添加した。反応混合物を65℃に加熱し、12時間撹拌した。温度を75℃まで上昇させ、揮発物を蒸留によって除去した。残渣を50~55℃に冷却した。ヘプタン(712.4g)を添加した。炭酸カリウム(3.64g、26.3mmol)の水(520g)溶液を添加した。混合物を15~30分間撹拌した。層を分離し、有機層を真空蒸留によって濃縮して、所望の生成物S2a-1を得た(259g、96wt%、96%)。
【0058】
実施例2e:trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-5)の合成
【化25】

撹拌棒及び還流冷却器を装着した100mLの一口フラスコ内において、trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S1b-3;5.93g、20.93mmol)及びオルトギ酸トリメチル(2.66mL、24.05mmol)を添加した。硫酸(41mg、0.42mmol)のメタノール(3.38mL、84mmol)溶液を一度に添加した。反応混合物を65℃に加熱し、19時間撹拌した。温度を75℃まで上昇させ、揮発物を1時間蒸留して除いた。残渣を周囲温度まで冷却した。残渣をジクロロメタン(20mL)と重炭酸カリウム溶液(1.16wt%、10mL)との間で分配した。ジクロロメタン部分を分離して濃縮し、所望の生成物S2a-5を得た(5.90g、95%):H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.30(dq,J=6.8,1.3Hz,1H),7.17-7.12(m,2H),3.85(s,3H),3.42(d,J=8.3,1.0Hz,1H),2.81(d,J=8.3Hz,1H).
【0059】
実施例2f:trans-rac-エチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-6)の合成
【化26】

電磁撹拌棒、還流冷却器及び窒素導入口を備えた30mLのバイアル内において、trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S1b-1;3.0g、8.17mmol)をオルトギ酸トリエチル(1.56mL、9.40mmol)と混合した。硫酸(16mg、0.163mmol)のエタノール(1.91mL)溶液を添加した。混合物を75℃に加熱した。1日撹拌した後、エタノール(1.91mL)を添加した。3日間撹拌した後、混合物を50℃に冷却し、油状物になるまで濃縮した。油状物をヘプタン(10mL)と10wt%の重炭酸ナトリウム水溶液(10mL)との間で分配した。ヘプタン層を濃縮し、黄色の油状物として表題化合物S2a-6を得た(2.56g、79%):H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.86(s,1H),7.71(d,J=1.6Hz,2H),4.33(qd,J=7.1,1.9Hz,2H),3.57(d,J=8.3Hz,1H),2.94(d,J=8.3Hz,1H),1.38(t,J=7.2Hz,3H);19F NMR(471MHz,クロロホルム-d)δ -62.91.
【0060】
スキーム1及び2の代わりとして、S1aのS2aへの転化は、実施例2.5a及び2.5bに例示されるように実施することができる。
【0061】
実施例2.5a:trans-rac-エチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-6)の合成
【化27】

電磁撹拌棒、温度プローブ及び窒素導入口を備えた50mLの丸底フラスコ内において、trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-1;2.00g、4.70mmol)をエタノール(9.39mL)中で撹拌した。水(0.25mL、14.11mmol)を添加した。OXONE(登録商標)(2.89g、4.70mmol)を添加した。反応混合物を55℃に加熱した。72時間後、分析によって完全に転化したことが示された。反応混合物を23℃に冷却した。亜硫酸水素ナトリウム(0.538g、5.17mmol)を添加した。混合物を30分間撹拌した。混合物をヨウ化カリウム(KI)紙で検査すると、過酸化物が陰性であった。混合物を濾過した。濾液を油状物となるまで濃縮した。油状物を水(10mL)とヘプタン(10mL)との間で分配した。ヘプタン層を濃縮し、黄色の油状物として表題化合物S2a-6を得た(1.384g、75%):H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.86(s,1H),7.71(d,J=1.6Hz,2H),4.33(qd,J=7.1,1.9Hz,2H),3.57(d,J=8.3Hz,1H),2.94(d,J=8.3Hz,1H),1.38(t,J=7.2Hz,3H);19F NMR(471MHz,クロロホルム-d)δ -62.91.
【0062】
実施例2.5b:trans-rac-エチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-6)の合成
【化28】

電磁撹拌棒、還流冷却器及び窒素導入口を備えた50mLの丸底フラスコ内において、trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(S1a-1;1.00g、2.35mmol)をエタノール(4.70mL)中で撹拌した。過炭酸ナトリウム(0.369g、2.35mmol)を添加した。硫酸(0.28ml、5.17mmol)を添加した。反応混合物を70℃に加熱した。20時間後、分析によって約78%の転化が示された。反応混合物を23℃に冷却した。亜硫酸水素ナトリウム(0.073g、0.71mmol)を添加した。混合物を20分間撹拌した。混合物を検査すると、過酸化物が陰性であった(KI紙)。混合物をヘプタン(10ml)で希釈し、混合物を5分間撹拌した。混合物を濾過した。固形の濾滓をヘプタン(5ml)で洗浄した。濾液を油状物となるまで濃縮した。油状物をヘプタン(10mL)中に溶解させた。混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。混合物を濾過して濾液を濃縮し、黄色の油状物として表題化合物S2a-6を得た(65%、ポット内)。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.86(s,1H),7.71(d,J=1.6Hz,2H),4.33(qd,J=7.1,1.9Hz,2H),3.57(d,J=8.3Hz,1H),2.94(d,J=8.3Hz,1H),1.38(t,J=7.2Hz,3H);19F NMR(471MHz,クロロホルム-d)δ -62.91.
【0063】
実施例3a:(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)の合成
【化29】

直径9cmのラシュトン型インペラを備えたメカニカルスターラー、2枚の1cm幅のバッフル、温度プローブ及び冷却管を装着した5Lのジャケット付き反応器容器(直径18.4センチメートル(cm))内において、L-リシン一水和物(60g、365mmol)の脱イオン水(1800mL)溶液を充填した。280毎分回転数(RPM)で激しく撹拌しながら、trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1);300g、771mmol)のアセトン(1200mL)溶液を反応器に添加した。容器の内容物の温度を30℃に上昇させ、30分間混合した。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(Almac Group Limitedの製品コード、AH-04から入手可能;9g)を固体として反応物に添加した。反応が、trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)から(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)への生成値の45%に到達すると、反応混合物を280RPM及び30℃で24時間撹拌した。
【0064】
生成値を、式1を用いて計算した。
式1
【数1】
【0065】
HPLC分析方法は、以下の通りであった:キラルHPLCカラム:CHIRALCEL(登録商標)OJ-3R(内径150×4.6ミリメートル(mm)、3.0ミクロン(μm));温度:30℃;流量:0.625mL/分;定組成50:50のアセトニトリル中0.1%ギ酸-水中0.1%ギ酸;220ナノメートル(nm)のUV検出器。(S,S)-エステルの予想溶出時間が18.0分及び(R,R)-エステルは18.8分。
【0066】
実施例3b:(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)の単離
【化30】

傾斜翼型インペラを備えたメカニカルスターラーを装着した1Lのジャケット付き反応器容器内において、0.2Mの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール緩衝溶液(pH7)(131.25mL)及び100mg/mLのリシン溶液(70mL)を添加した。200RPMで混合しながら、trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1;7g、771mmol)のアセトン(79mL)溶液を反応器に添加した。容器の内容物の温度を30℃に上昇させ、30分間混合した。脱イオン水(35mL)中に溶解させたシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(Almac Groupの製品コード、AH-04から入手可能;70g)を反応器に添加した。反応混合物を250RPM及び30℃で24時間撹拌した。
【0067】
反応溶液を1Lの遠心分離用ボトルに採取し、4402相対遠心力(「RCF」)で5分間、Beckman Avanti J-26床置き遠心分離機で遠心分離した。S3a-1生成物の大部分を含有する上清をより高濃度の油相からデカントした。未反応のS2a-1を大量に含有するより高濃度の油相を50mLのポリプロピレン製コニカルバイアルに移し、さらにS3a-1を回収するために、Thermo Scientific Sorvall ST8内において、3100RCFで相分離を生じさせるのに十分な時間遠心分離した。この上清を前述の上清と混ぜ合わせた。残留物にS,S-メチルエステルの豊富なより高濃度の油相を含んだ、反応器から採取された298.22gの物質から、合計287.55gの上清を回収した。
【0068】
上清(47.75g)を250mLのガラス製ビーカーに添加した。0.1規定(N)の塩酸(214.8g)を、Watson Marlow 520SU臑動ポンプを0.6RPMで使用して、1時間かけて添加した。塩酸が溶液のpHを低下させ、それによりS3a-1の溶解限度が低下し、結晶化が生じた。結晶化スラリーを、Thermo Scientific Sorvall ST8内において、50mLのコニカルバイアル中3100RCFで結晶が沈降するのに十分な時間遠心分離した。濡れた結晶をガラス製シンチレーションバイアルに移し、25mmHgの減圧及び周囲温度で一晩乾燥させた。これにより、92.0%の純度の0.20413gのS3a-1が得られた。
【0069】
実施例3c:(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)の単離
実施例3aに記載した(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)の合成後、減圧下で蒸発させることによって反応混合物からアセトンを除去した。残りの混合物を、2Mの水酸化ナトリウム水溶液を添加することによってpH11.5の塩基性にした。続いて、水性混合物をメチルtert-ブチルエーテルで2回抽出した。残りの水層に反応晶析を行い、そこで3Mの塩酸水溶液をゆっくりと添加して、混合物のpHをpH4.0に調整した。得られたスラリーを室温で5時間撹拌し、続いてフリットガラス漏斗に通して濾過し、オフホワイトの固体としてS3a-1を得た(42%の単離収率)。
【0070】
実施例4a:trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)を加水分解し、(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)を合成するための酵素の活性及び選択性についてのスクリーニング
【化31】

反応:
trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)のアセトン溶液を1ミリリットル当たり200ミリグラム(mg/mL;「基質溶液」)の濃度となるように調製した。リシンの溶液を水中で200mg/mLの濃度となるように調製した(「リシン溶液」)。15mLのコニカルバイアルにリシン溶液(0.25mL)、基質溶液(1.0mL)、アセトン(0.5mL)及び脱イオン水(3.25mL)を充填した。蓋をした15mLのコニカルバイアルをチューブ反転器上で40RPMにおいて30分間回転させた。表4a-2に示されるリストから選択したリパーゼを別の15mLのコニカルバイアルに秤量した(40mg)。リパーゼを含有する各バイアルに水(1.0mL)を添加した。バイアルを3000RPMで3分間ボルテックスしてリパーゼを分散させ、部分的に溶解させた。基質、アセトン及びリシン溶液の内容物を、酵素を含有するバイアルに移した。バイアルを30℃で24時間40RPMにおいて反転させ、リパーゼが触媒する加水分解を進行させた。24時間後、HPLCで分析するために2つの試料を取り出し、S2a-1の概算転化率及びS3a-1生成物のエナンチオマー過剰率を評価した。
【0071】
アキラルHPLCによる概算転化率の分析:
十分に混合した反応溶液(333μL)を25mLのメスフラスコに秤量した。このフラスコに内部標準溶液(200μL)を添加した。4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン(8.33mg)で構成される内部標準溶液をアセトニトリル(0.5mL)及び水(0.5mL)に溶解させた。さらに1:1の体積のアセトニトリル/水を添加し、全体積を25mLとした。この溶液を30秒間ボルテックスした。一定分量をHPLCバイアルに移し、以下の方法を用いてHPLCで分析した:HPLCカラム:Agilent ZORBAX SB-Phenyl(内径150mm×4.6mm、粒径3.5μm、Agilent部品番号863953-912);温度:周囲温度(約20℃);流量:1.0mL/分;注入量:5μm;210nmのUV検出;溶媒勾配は、下記の表に従う。
【0072】
【表2】
【0073】
内部標準は、3.9分で、S3a-1は、6.2分で、及びS2a-1は、7.3分で溶出することが予想される。概算転化率は、アキラルHPLCの結果から、内部標準に基づいた定量化及び下記の式を用いて計算した。
【数2】
【0074】
キラルHPLCによるエナンチオマー過剰率の分析:
コニカル反応バイアルから50μLの試料を取り出し、アセトニトリル(400μL)が添加された濾過HPLCバイアルに入れた。フィルタープランジャを挿入し、濾過した溶液を、以下の方法を用いてHPLCで分析した:キラルHPLCカラム:株式会社ダイセルのCHIRALCEL(登録商標)OJ-3R(内径150mm×4.6mm、3μmシリカゲル);温度:30℃;流量:0.625mL/分;定組成50%:50%の水中0.1%ギ酸-アセトニトリル中0.1%ギ酸;220nmのUV検出;5.0μLの注入量。(S,S)-酸の予想溶出時間が7.2分、(R,R)-酸が7.7分、(S,S)-エステルが18.0分及び(R,R)-エステルが18.8分。エナンチオマー過剰率は、キラルHPLCの結果から以下の式を用いて計算した。
【数3】
【0075】
【表3】
【0076】
実施例4b:trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3,5-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-4)を加水分解して、(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3,5-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-4)を合成するためのシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼの活性及び選択性の評価
【化32】

反応:
リシンの溶液を水中で80mg/mLの濃度となるように調製した(「リシン溶液」)。4本の15mLのコニカルバイアルに200mgのtrans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3,5-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-4)、リシン溶液(0.5mL)及び以下の溶媒の1つ:アセトン(2.4mL)、ジメチルスルホキシド(0.45mL)、アセトニトリル(0.6mL)又はメチルtert-ブチルエーテル(3mL)を充填した。バイアルの充填体積を脱イオン水により合計で5mLにした。蓋をした15mLのコニカルバイアルをチューブ反転器上で40RPMにおいて30分間回転させた。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(Almac Group、AH-04)を脱イオン水に溶解させることによってリパーゼ溶液を調製し、2mg/mLの濃度とした(「リパーゼ溶液」)。リパーゼ溶液(1.0mL)を15mLのコニカルバイアルにそれぞれ添加した。15mLのコニカルバイアルを30℃で24時間40RPMにおいて反転させ、リパーゼが触媒する加水分解を進行させた。
【0077】
24時間後、1Nの塩酸(0.25mL)を15mLのコニカルバイアルの各々に添加した。混合物を3mLのジクロロメタンを添加することによってジクロロメタンによる抽出を2回行い、ボルテックスし、沈殿させて、ピペット操作によりジクロロメタンを除去した。2回の抽出のためにプロセスを繰り返した。ジクロロメタン抽出物を混ぜ合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。得られた油状物をアセトニトリル中に溶解させ、HPLCで分析してS2a-4の概算転化率を評価し、キラルHPLCによってS3a-4生成物のエナンチオマー過剰率を評価した。分析結果を表4b-1に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
実施例4c:trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-5)を加水分解して、(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-5)を合成するためのシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼの活性及び選択性の評価
【化33】

trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-5)のアセトン溶液を200mg/mLの濃度となるように調製した(「基質溶液」)。リシンの溶液を水中で80mg/mLの濃度となるように調製した(「リシン溶液」)。15mLのコニカルバイアルにリシン溶液(0.5mL)、基質溶液(1.0mL)、アセトン(1.4mL)及び脱イオン水(2.1mL)を充填した。蓋をした15mLのコニカルバイアルをチューブ反転器上で40RPMにおいて30分間回転させた。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(Almac Group、AH-04)を脱イオン水に溶解させることによってリパーゼ溶液を調製し、2mg/mLの濃度とした(「リパーゼ溶液」)。リパーゼ溶液(1.0mL)を15mLのコニカルバイアルにそれぞれ添加した。バイアルを30℃で24時間40RPMにおいて反転させ、リパーゼが触媒する加水分解を進行させた。
【0080】
反応溶液に1Nの塩酸(0.25mL)を添加した。混合物を3mLのジクロロメタンを添加することによってジクロロメタンによる抽出を2回行い、ボルテックスし、沈殿させて、ピペット操作によりジクロロメタンを除去した。2回の抽出のためにプロセスを繰り返した。ジクロロメタン抽出物を混ぜ合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。得られた油状物をアセトニトリル中に溶解させ、HPLCで分析してS2a-5の概算転化率を評価し、キラルHPLCによってS3a-5生成物のエナンチオマー過剰率を評価した。HPLC分析によって26%の転化率が示され、キラルHPLCの結果により、94.4%の反応生成物のエナンチオマー過剰率が示された。
【0081】
実施例5:(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3-トリフルオロメチル-4-フルオロフェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-2)の合成
【化34】

100mLのフラスコ内において、trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-2;500mg、1.510mmol)を室温でDMSO(10mL)並びに緩衝溶液(0.1Mの二塩基性及び一塩基性リン酸カリウム、pH7.0;100mL)中に溶解させた。酵素(シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ、Almac Groupの製品コード、AH-04から入手可能;250mg)を添加し、懸濁液を30℃で4日間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル及び6Nの塩酸で希釈した。酢酸エチルを主に含有する有機層を分離し、追加の水で洗浄した。有機層を真空下で蒸発させることによって濃縮し、(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸を得た(150mg、31.3%の単離モル収率、96%のエナンチオマー過剰率):H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.60-7.41(m,2H),7.30-7.17(m,1H),3.50(d,J=8.2Hz,1H),2.89(d,J=8.3Hz,1H);19F NMR(376MHz,DMSO)δ -61.48,-114.25;LCMS m/z=316([M-H]).キラルHPLC方法:カラム:CHIRALPAKZWIX(+)、粒径3μm、寸法3mm×150mm、DAIC 511584;移動相:49%アセトニトリル-49%メタノール-50ミリモル(mM)のギ酸及びジエチルアミンを含む水;流量:0.5mL/分;溶出時間:9分;温度:25℃。
【0082】
実施例6:(1R,3R)-2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-3)の合成
【化35】

DMSO(50μL)中のtrans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-3;約5mg)を4本の2mLのエッペンドルフチューブの各々に添加した。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(Almac Groupの製品コード、AH-04から入手可能)の溶液をpH7.0の0.1Mのリン酸カリウム緩衝液中で調製した。十分な体積のリパーゼ溶液及びリン酸カリウム緩衝溶液を調製し、緩衝液(950μL)中0.05mg~15mgのリパーゼを各2mLのエッペンドルフチューブに添加し、各チューブの全体積を1mLとした。反応混合物を表6-1に従ってチューブ反転器を用いて進行させ、バイアルを30℃で40~80時間、40RPMで回転させた。混合物を酢酸エチル及び6Nの塩酸で希釈した。主に酢酸エチルを含有する有機層を回収し、HPLCで分析した。それぞれの反応物の得られた転化率及びエナンチオマー過剰率を表6-1に示す。
【0083】
キラルHPLC方法:カラム:CHIRALPAKZWIX(+)、粒径3μm、寸法3mm×150mm、DAIC 511584;移動相:49%アセトニトリル-49%メタノール-50mMのギ酸及びジエチルアミンを含む水;流量:0.5mL/分;溶出時間:9分;温度:25℃。
【0084】
【表5】
【0085】
【数4】
【0086】
実施例7:(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)の合成
【化36】

trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)のアセトン溶液を200mg/mLの濃度となるように調製した(「基質溶液」)。リシンの溶液を水中で100mg/mLの濃度となるように調製した(「リシン溶液」)。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(Almac Groupの製品コード、AH-04から入手可能)の水溶液を2mg/mLの濃度となるように調製した(「酵素溶液」)。15mLのコニカルバイアルにリシン溶液(0.25mL)、エステル溶液(0.5mL)、アセトン(1mL)及び水(4.125mL)を充填した。蓋をした15mLのコニカルバイアルをチューブ反転器上で40RPMにおいて30分間回転させた。この15mLのコニカルバイアルに酵素溶液(0.125mL)を添加し、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼの質量をS2a-1の質量の0.25%と等しくなるようにした。チューブを30℃で48時間40RPMにおいて反転させ、リパーゼの分解を進行させた。コニカルバイアルから50μLの試料を取り出し、アセトニトリル(400μL)が添加された濾過HPLCバイアルに入れた。フィルタープランジャを挿入し、濾過した溶液をHPLCで分析した。
【0087】
HPLC分析方法は、以下の通りであった:キラルHPLCカラム:株式会社ダイセルのCHIRALCEL(登録商標)OJ-3R(内径150mm×4.6mm、3μmシリカゲル);温度:30℃;流量:0.625mL/分;定組成50:50の水中0.1%ギ酸-アセトニトリル中0.1%ギ酸;220nmのUV検出;5.0μLの注入量。(S,S)-酸の予想溶出時間が7.2分、(R,R)-酸が7.7分、(S,S)-エステルが18.0分及び(R,R)-エステルが18.8分。
【0088】
HPLC分析によって98.8%のエナンチオマー過剰率を有する47.7%の生成値が示され、生成値は、以下のように計算した。
【数5】
【0089】
実施例8:trans-rac-エチル-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-6)からの(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)の合成
【化37】

trans-rac-エチル-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-6)のアセトン溶液を200mg/mLの濃度となるように調製した(「基質溶液」)。無水リシンの溶液を水中で80mg/mLの濃度となるように調製した(「リシン溶液」)。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(名糖産業株式会社の製品コード、リパーゼTLから入手可能)の水溶液を2mg/mLの濃度となるように調製した(「リパーゼ溶液」)。2本の15mLのコニカルバイアルにリシン溶液(0.5mL)、基質溶液(1.0mL)、アセトン(0.5mL)及び水(3.0mL)をそれぞれ充填した。蓋をした15mLのコニカルバイアルをチューブ反転器上で40RPMにおいて30分間回転させた。一方の15mLのコニカルバイアルにリパーゼ溶液(1.0mL)を添加し、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼの質量をS2a-6の質量の1.0%と等しくなるようにした。チューブを30℃で24時間、40RPMで反転させた。各コニカルバイアルから50μLの試料を取り出し、アセトニトリル(400μL)が添加された濾過HPLCバイアルに入れた。フィルタープランジャを挿入し、濾過した溶液をHPLCで分析した。
【0090】
HPLC分析方法は、以下の通りであった:キラルHPLCカラム:株式会社ダイセルのCHIRALCEL(登録商標)OJ-3R(内径150mm×4.6mm、3μmシリカゲル);温度:30℃;流量:0.625mL/分;定組成50:50の水中0.1%トリフルオロ酢酸-アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸;220nmのUV検出;5.0μLの注入量。(S,S)-酸の予想溶出時間が7.2分、(R,R)-酸が7.7分、(S,S)-エステルが18.0分及び(R,R)-エステルが18.8分。
【0091】
エナンチオマー過剰率は、キラルHPLCの結果から、式を用いて計算した。
【数6】
【0092】
生成値は、キラルHPLCの結果から、式を用いて計算した。
【数7】
【0093】
結果を表8-1に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
実施例9:trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)を立体選択的加水分解し、(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)を合成するためのシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼの使用
【化38】

trans-rac-メチル-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)のアセトン溶液を200mg/mLの濃度となるように調製した(「基質溶液」)。無水リシンの溶液を水中で80mg/mLの濃度となるように調製した(「リシン溶液」)。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(名糖産業株式会社の製品コード、リパーゼTLから入手可能)の水溶液を2mg/mLの濃度となるように調製した(「リパーゼTL溶液」)。シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ(Almac Groupの製品コード、AH-04から入手可能)の水溶液を2mg/mLの濃度となるように調製した(「AH-04溶液」)。2本の15mLのコニカルバイアルにリシン溶液(1.0mL)、基質溶液(1.0mL)、アセトン(0.5mL)及び水(2.5mL)をそれぞれ充填した。蓋をした15mLのコニカルバイアルをチューブ反転器上で40RPMにおいて30分間回転させた。一方の15mLのコニカルバイアルにリパーゼ溶液(1.0mL)を添加し、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼの質量をS2a-1の質量の1.0%と等しくなるようにした。他方の15mLのコニカルバイアルにエステラーゼ溶液(1.0mL)を添加し、エステラーゼの質量をS2a-1の質量の1.0%と等しくなるようにした。チューブを30℃で24時間、40RPMで反転させた。コニカルバイアルの各々から50μLの試料を取り出し、アセトニトリル(400μL)が添加された濾過HPLCバイアルに入れた。フィルタープランジャを挿入し、濾過した溶液をHPLCで分析した。
【0096】
HPLC分析方法は、以下の通りであった:キラルHPLCカラム:株式会社ダイセルのCHIRALCEL(登録商標)OJ-3R(内径150mm×4.6mm、3μmシリカゲル);温度:30℃;流量:0.625mL/分;定組成50:50の水中0.1%トリフルオロ酢酸-アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸;220nmのUV検出;5.0μLの注入量。(S,S)-酸の予想溶出時間が7.2分、(R,R)-酸が7.7分、(S,S)-エステルが18.0分及び(R,R)-エステルが18.8分。
【0097】
エナンチオマー過剰率は、キラルHPLCの結果から、式を用いて計算した。
【数8】
【0098】
生成値は、キラルHPLCの結果から、式を用いて計算した。
【数9】
【0099】
結果を表9-1に示す。
【0100】
【表7】
【0101】
実施例10:trans-rac-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)を立体選択的加水分解し、(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸(S3a-1)を合成するためのシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)リパーゼの使用
【化39】

反応:
trans-rac-メチル-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート(S2a-1)のアセトン溶液を100mg/mLの濃度となるように調製した(「基質溶液」)。リシンの溶液を、出発物質として無水リシンを用いて、水中で100mg/mLの濃度となるように調製した(「リシン溶液」)。一塩基性リン酸カリウム及び二塩基性リン酸カリウムの溶液を、pH7.0を生じさせるような比率において、水中で0.1Mの濃度となるように調製した(「緩衝溶液」)。15mLのコニカルバイアルにリシン溶液(1.0mL)、基質溶液(1.0mL)、アセトン(0.5mL)及び緩衝溶液(2.5mL)を充填した。蓋をした15mLのコニカルバイアルをチューブ反転器上で40RPMにおいて30分間回転させた。シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)リパーゼ(AH-35、Almac Group)の溶液を緩衝溶液中に溶解させることによって調製し、20mg/mLの濃度となるようにした(「酵素溶液」)。15mLのコニカルバイアルに1mLの酵素溶液を添加した。バイアルを30℃で24時間、40RPMで反転させ、酵素が触媒する加水分解を進行させた。24時間後、HPLCで分析するために試料を取り出し、S3a-1生成物の生成値及びエナンチオマー過剰率を評価した。
【0102】
キラルHPLCによる分析:
コニカル反応バイアルから50μLの試料を取り出し、アセトニトリル(400μL)が添加された濾過HPLCバイアルに入れた。フィルタープランジャを挿入し、濾過した溶液を以下の方法を用いてHPLCで分析した:キラルHPLCカラム:株式会社ダイセルのCHIRALCEL(登録商標)OJ-3R(内径150mm×4.6mm、3μmシリカゲル);温度:30℃;流量:0.625mL/分;定組成50%:50%の水中0.1%トリフルオロ酢酸-アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸;220nmのUV検出;5.0μLの注入量。(S,S)-酸の予想溶出時間が7.2分、(R,R)-酸が7.7分、(S,S)-エステルが18.0分及び(R,R)-エステルが18.8分。
【0103】
エナンチオマー過剰率は、キラルHPLCの結果から、式を用いて計算した。
【数10】
【0104】
生成値は、キラルHPLCの結果から、式を用いて計算した。
【数11】
【0105】
反応バイアルの分析により、7.9%の生成値と、95%のエナンチオマー過剰率(ee)とが得られた。
【0106】
従って、上記の見地から、以下のさらなる非網羅的な開示の詳細(d)が提供される。
【0107】
1d.極性溶媒の存在下において、酸化剤でS1aをS1bに酸化させること
スキーム1
【化40】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)(1)各Rは、独立して、(C~C)アルキルであるか、又は
(2)両方のRは、2つの酸素原子間の(C~C)アルキル結合を形成する)
を含むプロセス。
【0108】
2d.R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つ各Rは、Cである
【化41】

trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
、1dに記載のプロセス。
【0109】
3d.前記酸化剤は、酸素、次亜塩素酸ナトリウム、オゾン、過酸化水素、有機過酸、カリウムペルオキシモノサルフェート、カリウムペルサルフェート、カリウム水素ペルオキシモノサルフェートサルフェート又はこれらの混合物である、1d又は2dに記載のプロセス。
【0110】
4d.使用される酸化剤の量は、S1aの1モル当たり約0.1モル~約3モルの酸化剤である、3dに記載のプロセス。
【0111】
5d.使用される酸化剤の量は、S1aの1モル当たり約0.5モル~約1.5モルの酸化剤である、3dに記載のプロセス。
【0112】
6d.前記極性溶媒は、極性非プロトン性溶媒である、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0113】
7d.前記極性溶媒は、極性プロトン性溶媒である、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0114】
8d.前記極性溶媒は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド又はこれらの混合物である、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0115】
9d.前記極性溶媒は、酢酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸、tert-ブチルアルコール、水又はこれらの混合物である、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0116】
10d.前記溶媒は、2つ以上の極性溶媒の混合物であり、前記極性溶媒は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、酢酸、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸、tert-ブチルアルコール、水、これらの混合物又は表S1-MRから選択される混合物である、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0117】
11d.約0℃~約80℃の温度で実施される、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0118】
12d.約20℃~約60℃の温度で実施される、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0119】
13d.約10kPa~約1000kPaの圧力で実施される、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0120】
14d.約50kPa~約150kPaの圧力で実施される、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0121】
15d.酸触媒の存在下で実施される、前述の詳細のいずれかに記載のプロセス。
【0122】
16d.酸及び(C~C)アルコールの存在下において、S1bをS2aにエステル化すること
【化42】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;
(c)Rは、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルであり;
任意選択的に、前記S1bは、1d~15dに従って生成される)
を含むプロセス。
【0123】
17d.R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つRは、CHである
【化43】

trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート
、16dに記載のプロセス。
【0124】
17.5d.R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つRは、CHCHである
【化44】

trans-rac-エチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート
、16dに記載のプロセス。
【0125】
18d.前記酸は、硫酸、p-トルエンスルホン酸一水和物、メタンスルホン酸、スカンジウム(III)トリフレート、これらの混合物又は酸樹脂である、16d、17d又は17.5dに記載のプロセス。
【0126】
19d.S1bの1モル当たり約0.001モル~約5モルの酸である、18dに記載のプロセス。
【0127】
20d.S1bの1モル当たり約0.05モル~約0.5モルの酸である、18dに記載のプロセス。
【0128】
21d.前記アルコールは、n-ブタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、エチレングリコール、tert-ブチルアルコール又はこれらの混合物である、前述の詳細16d~20dのいずれかに記載のプロセス。
【0129】
22d.前記アルコールは、トルエン、四塩化炭素、ベンゼン、ジエチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン又はジクロロメタンから選択される少なくとも1つの溶媒との混合物中に存在する、前述の詳細16d~21dのいずれかに記載のプロセス。
【0130】
23d.反応は、約0℃~約100℃の温度で実施される、前述の詳細16d~22dのいずれかに記載のプロセス。
【0131】
24d.反応は、約50℃~約70℃の温度で実施される、前述の詳細16d~23dのいずれかに記載のプロセス。
【0132】
25d.反応は、約10kPa~約1000kPaの圧力で実施される、前述の詳細16d~24dのいずれかに記載のプロセス。
【0133】
26d.反応は、約50kPa~約150kPaの圧力で実施される、前述の詳細16d~25dのいずれかに記載のプロセス。
【0134】
27d.乾燥剤は、使用される、前述の詳細16d~26dのいずれかに記載のプロセス。
【0135】
28d.S1bの1モル当たり約0.1~約5モルの乾燥剤は、使用され得る、前述の詳細16d~27dのいずれかに記載のプロセス。
【0136】
29d.S1bの1モル当たり約0.2~約2モルの乾燥剤は、使用され得る、前述の詳細16d~27dのいずれかに記載のプロセス。
【0137】
30d.前記乾燥剤は、式Ry1C(ORを有するオルトエステルであり、式中、Ry1は、水素又は(C~C)アルキルであり、及びRy2は、(C~C)アルキルである、前述の詳細16d~29dのいずれかに記載のプロセス。
【0138】
31d.前記乾燥剤は、オルト酢酸トリエチル、CHC(OCHCH;オルト酢酸トリメチル、CHC(OCH;オルトギ酸トリエチル、HC(OCHCH;オルトギ酸トリメチル、HC(OCH、モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム及び硫酸ナトリウム又は乾燥剤の混合物である、前述の詳細16d~30dのいずれかに記載のプロセス。
【0139】
32d.水及び任意選択的に水性緩衝液の存在下において、1つ以上のカルボキシルエステルヒドロラーゼを使用して、S2aをS3aに加水分解すること
【化45】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;
(c)Rは、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルであり;及び
任意選択的に、S2aは、16d~31dによって生成される)
を含むプロセス。
【0140】
33d.R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;R及びRは、Clであり;且つRは、CHである
【化46】

trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート
、32dに記載のプロセス。
【0141】
34d.前記1つ以上のカルボキシルエステルヒドロラーゼは、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)リパーゼE、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)リパーゼC、シュードモナス・フルオレンセンス(Pseudomonas fluorencens)リパーゼ、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼA、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼB又はそれらの混合物である、32d又は33dに記載のプロセス。
【0142】
35d.S2aの生成値は、20パーセント超である、34dに記載のプロセス。
【0143】
36d.S2aの生成値は、30パーセント超である、34dに記載のプロセス。
【0144】
37d.S2aの生成値は、40パーセント超である、34dに記載のプロセス。
【0145】
38d.S3aのエナンチオマー過剰率(ee)であって、(R,R)-エナンチオマーは、80パーセント超である、34dに記載のプロセス。
【0146】
39d.S3aのエナンチオマー過剰率(ee)であって、(R,R)-エナンチオマーは、90パーセント超である、34dに記載のプロセス。
【0147】
40d.S3aのエナンチオマー過剰率(ee)であって、(R,R)-エナンチオマーは、95パーセント超である、34dに記載のプロセス。
【0148】
41d.S3aのエナンチオマー過剰率(ee)であって、(R,R)-エナンチオマーは、99パーセント超である、34dに記載のプロセス。
【0149】
42d.前記カルボキシルエステルヒドロラーゼは、以下のリパーゼ:シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)リパーゼE、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼB、シュードモナス・フルオレンセンス(Pseudomonas fluorencens)リパーゼ、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼA又はバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼBの1つと比較して少なくとも90%の相同性を有する、詳細32d~41dのいずれかに記載のプロセス。
【0150】
43d.前記カルボキシルエステルヒドロラーゼは、以下のカルボキシルエステルヒドロラーゼ:シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)リパーゼE、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼB、シュードモナス・フルオレンセンス(Pseudomonas fluorencens)リパーゼ、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼA又はバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼBの1つと比較して少なくとも95%の相同性を有する、詳細32d~41dのいずれかに記載のプロセス。
【0151】
44d.前記カルボキシルエステルヒドロラーゼは、以下のカルボキシルエステルヒドロラーゼ:シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)リパーゼ、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼ、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)リパーゼE、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼB、シュードモナス・フルオレンセンス(Pseudomonas fluorencens)リパーゼ、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼA又はバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)リパーゼBの1つと比較して少なくとも99%の相同性を有する、詳細32d~41dのいずれかに記載のプロセス。
【0152】
45d.使用されるカルボキシルエステルヒドロラーゼの量は、S2aに対して約0.01重量%~約200重量%である、詳細32d~44dのいずれかに記載のプロセス。
【0153】
46d.使用されるカルボキシルエステルヒドロラーゼの量は、S2aに対して約0.1重量%~約5重量%である、詳細32d~44dのいずれかに記載のプロセス。
【0154】
47d.カルボキシルエステルヒドロラーゼは、ポリマー、シリカ又は他の支持材料に固定化又は支持され得る、詳細32d~46dのいずれかに記載のプロセス。
【0155】
48d.前記水性緩衝液は、リン酸ナトリウム、2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸、リン酸カリウム、3-モルホリノプロパン-1-スルホン酸、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、クエン酸ナトリウム、3-{[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ}プロパン-1-スルホン酸、リシン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール又はこれらの混合物である、詳細32d~47dのいずれかに記載のプロセス。
【0156】
49d.緩衝液の濃度は、約0.0001モル~約0.5Mである、詳細32d~48dのいずれかに記載のプロセス。
【0157】
50d.緩衝液の濃度は、0.05M~約0.2Mである、詳細32d~48dのいずれかに記載のプロセス。
【0158】
51d.反応混合物のpHは、約pH5~約pH11である、詳細32d~50dのいずれかに記載のプロセス。
【0159】
52d.反応混合物のpHは、約pH6~約pH10である、詳細32d~50dのいずれかに記載のプロセス。
【0160】
53d.アミン塩基の存在下で実施される、詳細32d~52dのいずれかに記載のプロセス。
【0161】
54d.前記アミン塩基は、リシン、エタノールアミン、グリシン又はこれらの混合物である、53dに記載のプロセス。
【0162】
55d.アミン塩基の量は、S2aの重量を基準にして約0.1重量パーセント(wt%)~約150重量パーセントである、53d又は54dに記載のプロセス。
【0163】
56d.アミン塩基の量は、S2aの重量を基準にして約10重量パーセント~約40重量パーセントである、53d又は54dに記載のプロセス。
【0164】
57d.前記反応は、共溶媒の存在下で実施され、前記共溶媒は、アセトン、アセトニトリル、メチルテトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン又はこれらの混合物である、詳細32d~56dのいずれかに記載のプロセス。
【0165】
58d.前記反応は、共溶媒の存在下で実施され、共溶媒の量は、反応物の体積を基準にして全体の体積の約1体積%~約90体積%である、57dに記載のプロセス。
【0166】
59d.前記反応は、共溶媒の存在下で実施され、共溶媒の量は、反応物の体積を基準にして全体の体積の約10体積%~約40体積%である、57dに記載のプロセス。
【0167】
60d.反応は、約0℃~約80℃の温度で実施される、前述の32d~59dのいずれかに記載のプロセス。
【0168】
61d.反応は、約15℃~約60℃の温度で実施される、前述の32d~60dのいずれかに記載のプロセス。
【0169】
62d.反応は、約25℃~約50℃の温度で実施される、前述の32d~60dのいずれかに記載のプロセス。
【0170】
63d.反応は、約10kPa~約1000kPaの圧力で実施される、前述の32d~62dのいずれかに記載のプロセス。
【0171】
64d.反応は、約50kPa~約150kPaの圧力で実施される、前述の32d~62dのいずれかに記載のプロセス。
【0172】
65d.アリールシクロプロピルカルボン酸を生成するのに有用な分子であって、
(a)
【化47】

(E)-1-(3,3-ジエトキシプロパ-1-エン-1-イル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(b)
【化48】

trans-rac-1-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルバルデヒド;
(c)
【化49】

trans-rac-1-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(d)
【化50】

trans-rac-メチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート;
(e)
【化51】

(E)-4-(3,3-ジエトキシプロパ-1-エン-1-イル)-1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(f)
【化52】

trans-rac-2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルバルデヒド、
(g)
【化53】

trans-rac-4-(2,2-ジクロロ-3-(ジエトキシメチル)シクロプロピル)-1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン;
(h)
【化54】

trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート;
(i)
【化55】

trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3,4-ジクロロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート;
(j)
【化56】

trans-rac-エチル3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボキシレート;及び
(k)
【化57】

trans-rac-メチル2,2-ジクロロ-3-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)シクロプロパン-1-カルボキシレート
からなる群から選択される分子。
【0173】
66d.(A)極性溶媒の存在下において、酸化剤でS1aをS1bに酸化させる工程
【化58】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIであり;及び
(c)(1)各Rは、独立して、(C~C)アルキルであるか、又は
(2)両方のRは、2つの酸素原子間の(C~C)アルキル結合を形成し、
任意選択的に、詳細2d、3d、4d、5d、6d、7d、8d、9d、10d、11d、12d、13d、14d及び15dのいずれか1つ以上は、(A)においても使用される);続いて、
(B)酸及び(C~C)アルコールの存在下において、S1bをS2aにエステル化する工程
【化59】

(式中、
、R、R、R、R、R及びRは、(A)において上記の通りであり;及び
は、(C~C)アルキル又は(C~C)ヒドロキシアルキルであり、
任意選択的に、詳細17d、17.5d、18d、19d、20d、21d、22d、23d、24d、25d、26d、27d、28d、29d、30d及び31dのいずれか1つ以上は、(B)においても使用される);続いて、
(C)水及び任意選択的に水性緩衝液の存在下において、1つ以上のカルボキシルエステルヒドロラーゼを使用して、S2aをS3aに加水分解する工程
【化60】

(式中、
、R、R、R、R、R、R及びRは、(B)において上記の通りであり;
任意選択的に、詳細33d、34d、35d、36d、37d、38d、39d、40d、41d、42d、43d、44d、45d、46d、47d、48d、49d、50d、51d、52d、53d、54d、55d、56d、57d、58d、59d、60d、61d、62d、63d及び64dのいずれか1つ以上は、(C)においても使用される)
を含むプロセス。
【0174】
67d.S3a
【化61】

(式中、
(a)R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、NH、NO、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、(C~C)ハロアルキル又は(C~C)ハロアルコキシであり、ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、Hではなく;及び
(b)R及びRは、それぞれ独立して、F、Cl、Br又はIである)
のエナンチオマーに富む調製物であって、S3aの(R,R)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率は、80%超、90%超又は95%超である、エナンチオマーに富む調製物。
【0175】
68d.S3aの(R,R)-エナンチオマーのエナンチオマー過剰率は、96超、97%超又は98%超である、詳細67dの調製物。
【0176】
69d.詳細67d又は68dのエナンチオマーに富む調製物を含む殺虫製剤。
【0177】
70d.R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;且つR及びRは、Clである
【化62】

(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸
、詳細67d又は68dに記載の調製物。
【0178】
71d.R及びRは、CFであり;R、R及びRは、Hであり;且つR及びRは、Clである
【化63】

(1R,3R)-3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2,2-ジクロロシクロプロパン-1-カルボン酸
、詳細69dに記載の殺虫製剤。
【配列表】
2023522975000001.app
【国際調査報告】